○
原茂君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、
核原料物質、
核燃料物質及び
原子炉の
規制に関する
法律の一部を
改正する
法律案が本
国会に提案されました
機会に、
政府の
原子力行政及び
本法改正に関連する重要問題につきまして、二、三
政府の
見解をただしたいと存じます。(
拍手)御答弁は、
佐藤総理からは全
事項にわたって、補足的に
科学技術庁長官、
外務大臣、
防衛庁長官にお願いいたしたいと存じます。
まずその第一は、
原子力潜水艦に関連する問題であります。
わが国の
原子力基本法は
原子力の
平和利用に限る三原則をきめておりますが、
政府は、この
趣旨に反し、
国民並びに
原子力科学者大多数の
反対意見を無視いたしまして、すでに二回にわたって
アメリカ原子力潜水艦の
佐世保入港を受け入れたわけでございます。特に、世界の世論に反しまして、
アメリカが
南北ベトナムへの不当なる
武力介入を開始いたしております今日のこの
情勢の中で、今後も引き続いて
原子力潜水艦の
寄港を認めるということは、
日本が
アメリカの
極東武力政策に協力をし、
アジア人である
日本人が同じ
アジア人である
ベトナム人民を敵視するのと全く同断であります。一体、
政府は、このような
アジア情勢の中で、また
国民の批判の高まりの中で、引き続いて
米原子力潜水艦寄港を受け入れ、
アメリカの
戦争政策に協力するつもりなのかどうか。この際、
政府は、
わが国並びに
アジアの平和を
確保するために、直ちに
アメリカ原子力潜水艦寄港承認を取り消し、
入港を拒否する英断を下すべきであると思うが、所見を承りたいと存じます。(
拍手)
さて、この一部
改正案によりますと、近く米
原子力商船サバンナ号の
日本への
寄港申請が行なわれることを予想して、
外国原子力船が
本邦水域に立ち入る場合、
政府の
許可を受けなければならないこととするなどの所要の
規制を加えることが
改正の大きな理由となっておるわけであります。しかしながら、この
外国原子力船のうちには軍艦は除かれるのだといたしてあります。なぜ、真に
わが国国民の安全を求める
日本政府であるなら、軍艦を除く
外国原子力船についてのみ所要の資料の
提出を求めたり、
安全審査の周到を期したりしながら、
原子力潜水艦については同様の取り扱いをしないのか、まことに判断に苦しむわけであります。(
拍手)
衆議院科学技術振興対策特別
委員会における多くの科学者の
説明によりますと、商船の
原子炉よりも
原子力潜水艦の
原子炉のほうが制御系統が簡単にしてあり、
原子炉の
安全性を犠牲にし、軍艦としての性能を高めてあることが指摘されておるのであります。
安全性の点で、
原子力潜水艦の
原子炉のほうがきわめて危険度が高いと言えるわけであります。これを
アメリカ側の言うままを受けて、
政府は不当な手続により安全であるとの結論を出しましたが、一月九日の
米国議会合同
原子力委員会でのスレッシャー号沈没事故についての証言
内容によっても、原潜の構造の実際と基準が
安全性の見地から十分ではなかったということを指摘しており、その上、米海軍の原潜の最高権威といわれるリコーバー中将も、最近原潜数隻が設計、建設、材料の不備、検査方法の欠陥などのために、危うく沈没しそうになったと証言するなど、これまでの
日本政府の
見解が否定されるような発言が行なわれておるのであります。(
拍手)
ここで特に重要なことは、さきの原潜が安全であるとの
政府並びに
原子力委員会の結論は、
わが国安全審査の最高機関である
原子炉安全審査会が科学的には全く関与しなかったという事実であります。この際、
政府は、原潜の
安全性について再
検討をし、
原子炉安全審査会の
慎重審議にかけ、科学者の政治的でない
検討にゆだねるべきだと考えますが、これを行なう決意はないか。また、本
改正案の
外国原子力船には当然軍艦をも含めるべきであると考えますが、所見を伺いたいのであります。(
拍手)
アメリカでは、
原子力商船サバンナ号の
アメリカの港に入るにあたりましても、きびしい
規制をつくり、これを実施いたしております。この
アメリカ原子力委員会、
原子炉規制局の公表した資料によりますと、その
入港にあたっては、第一に、港内非常対策計画が立てられ、
地域住民の
安全性に関する準備万端整っていることなどの六項目の条件が満たされるまでは、いかなる港にも
入港してはならないとされております。また、起こり得る最大事故を想定して緊急避難の準備を整え、たとえば、制限地域においても二時間以内に総退避できる地域を設定するというような基準の設定を行なっております。
米
原子力潜水艦が
寄港する横須賀、佐世保をはじめ、
原子力商船
寄港が予想される
わが国の港は、いずれも
人口稠密地帯であります。デンマーク
政府は、同国
原子力委員会の、
安全性についてはあらゆる角度から
検討したが資料、情報が十分でないとの答申を受けて、
アメリカ原子力潜水艦のデンマークヘの
入港を拒否し続けていることは御承知のとおりであります。そこで、
わが国においても、いまだ確実に
安全性が外的にも内的にも保証されていない今日、今後
寄港の予想される原潜はもとより、
原子力商船に対しても当然
入港を拒否すべきだと思うが、
国民の安全のために、その決意のほどを表明されたいと存じます。
また、万が一このサバンナ号の
寄港を許すといたしますなら、一体、
わが国のどの港を予定しておいでになるのか、この際、明らかにしていただきたい。
なお、原潜の
寄港地とされつつある佐世保、横須賀はもちろん、今後
原子力商船
寄港が予想される港湾のある地域において、万一起こる可能性のある事故に備え、
政府は、どのように危険区域の設定と港内管理、緊急避難の準備を整えておいでになるのか、いかなる考えがおありになるか、いかなる想定のもとに具体的対策を用意しておられるかを、ともに明らかにしていただきたいと存じます。本一部
改正案を見ましても、予想される事故対策については、ほとんど触れられておりませんし、万一、事故の発生した場合の処置などについても、何ら具体的な
規制がないのであります。これは当然
規定すべきだと思うが、いかがか。
第二に、
わが国原子力行政についての重要問題に、茨城県東海村
原子力施設地帯に隣接する米軍水戸射爆場返還の問題がございます。これらの地帯は近年急速に発展しており、
人口稠密な市街地でございます。これまで水戸米軍対地射爆場周辺市町村において明らかに確認されました飛行機による爆弾誤投下事故、墜落事故などは、百四十一件にのぼっており、茨城県全体では、死者二十名を含む約三百十六件の事故が発生いたしております。この射爆場における爆弾投下演習は、一日実に二百八十回から四百八十回にも達しており、特に昨年六月以来、F105D戦闘爆撃機の横田演習強行によって模擬爆弾の誤投下事件が頻発し、その危険度はいよいよ増大、教育並びに各
産業、人心に及ぼす障害は、はかり知れないものがございます。万一、F105D機などの墜落、誤投爆が、この隣接する
原子力施設の上に行なわれましたならば、放射能等による周辺一帯の被害は甚大、筆舌に尽くせぬものとなります。このため、茨城県知事をはじめ、わが党石野久男議員を中心に、県民すべてが、数年来、米軍水戸対地射爆場の返還と、F105D爆撃機の演習即時中止等を要求し続けておるわけでありまして、県議会と二十九に及ぶ市町村が決議を行ない、昨年中で四十五万人の
反対署名がなされるなど、衆参両院の科特委におきましても、強く返還すべきであるとの決議を行なっておりますことは、すでに御承知のとおりであります。
しかるに、
政府は、移転先がないということを口実にいたしまして、返還をいまだ実現せず、一片の誠意すら示しておりません。はたして、
政府は、これらの切実なる要求を米軍に対し真剣に要請、交渉したことがあるのか。このままに推移いたしまして、おそるべき事故が発生した場合、いかなる責任をとる決意と用意がおありになるのか、あわせて明確に御答弁願いたいと存じます。
さらに、
わが国の
原子力関係諸
法律の中に、新たに、
原子力施設周辺には危険な射爆場などの基地施設並びに危険を予想されるすべての施設を置いてはならないという
規定を設ける必要があると考えますが、
政府の
見解を承りたいと存じます。(
拍手)
すでに、三十八回
国会におきまして成立を見ました
原子力損害の賠償に関する
法律の
附帯決議におきましても、
原子力施設地帯の環境
整備を国の施策として実施すべきことが打ち出されておるのでありまして、茨城県などもその推進を強く希望いたしておりますが、具体的な施設を今日までどのように
政府は進めてこられたのか。なお、茨城県では原子燃料再処理施設
設置に
反対する決議をも行なっておりますが、これにどう対処するおつもりか、所見をあわせて承りたいと存じます。
次いで、
アメリカにおけるサバンナ号の
入港基準STS−一〇による
入港条件、
入港受け入れ条件、港内における安全管理と
措置、港湾解析
報告書等にある細部の
規定に照らしまして、本一部
改正案を通じて用意される
わが国のこれに準じた基準は、
アメリカのそれと全く同じたぐいのもになるのか、またもし違う点があるとすればいかなる点が違うものとなるのか、この際明確にその方針をお聞かせいただきたいと存じます。
さて、サバンナ号そのものについてでありますが、これは本来
アメリカの世界に対する原子科学の力を誇示するデモンストレーションに使われたものであり、すでにヨーロッパに対するデモは終わり、いよいよ
アジアにそのデモが向けられてきたと見るべきではないか、それともすでに客員貨物を運ぶ実用に使われて
わが国に
寄港するものと見るか、また、
わが国へはいつごろ
入港の予定なのか、ともにお答えいただきたいと存じます。
さらに、
海上人命安全
条約の署名国中十三カ国がいまだに批准されておりませんが、その理由は那辺にあるのか。
なお、本
改正案には
国内原子力船ということばでさらりと触れておりますが、これが
政府・自民党のお家芸の、いつの間にか自衛隊で
原子力潜水艦建造を始めてしまい、やがて
日本国民を不安におとしいれるようなことがあってはならないと存じますが、そのような計画は断じてしないと明言していただきたいと存じます。
最後に、ただいま問題になっている国産
原子力船の建造についてでありますが、コスト高並びに保障の問題などで各造船メーカーが受注建造を渋っていると聞き及んでおります。もしメーカーが保障を含めたコスト高を原因として、無理な、妥当でない安値で
原子力船をつくらざるを得なくなり、その無理が
原子炉の
安全性に及ぶことのないよう十分留意することが肝要と思うが、
政府としてはこの早期建造にどのように対処しようとされているかをお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕