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1965-03-12 第48回国会 衆議院 本会議 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十二日(金曜日)     —————————————  議事日程 第十五号   昭和四十年三月十二日    午後二時開議  第一 郵便貯金法の一部を改正する法律案(内   閣提出)  第二 郵便振替貯金法の一部を改正する法律案   (内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  海外移住審議会委員任命につき国会法第三十九   条但書規定により議決を求めるの件  売春対策審議会委員任命につき国会法第三十九   条但書規定により議決を求めるの件  在外財産問題審議会委員任命につき国会法第三   十九条但書規定により議決を求めるの件  畜産物価格審議会委員任命につき国会法第三十   九条但書規定により議決を求めるの件  日程第一 郵便貯金法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  日程第二 郵便振替貯金法の一部を改正する法   律案内閣提出)  櫻内通商産業大臣中小企業基本法に基づく昭   和三十九年度年次報告及び昭和四十年度中小   企業施策についての発言及び質疑  証券取引法の一部を改正する法律案内閣提   出)の趣旨説明及び質疑    午後二時十六分開議
  2. 船田中

    議長船田中君) これより会議を開きます。      ————◇—————  海外移住審議会委員任命につき国会法第三十九条但書規定により議決を求めるの件  売春対策審議会委員任命につき国会法第三十九条但書規定により議決を求めるの件  在外財産問題審議会委員任命につき国会法第三十九条但書規定により議決を求めるの件  畜産物価格審議会委員任命につき国会法第三十九条但書規定により議決を求めるの件
  3. 船田中

    議長船田中君) おはかりいたします。  内閣から、海外移住審議会委員に本院議員福永一臣君、参議院議員青柳秀夫君、売春対策審議会委員に本院議員伊藤よし子君、同井村重雄君、同小林進君、同田中龍夫君、同中野四郎君、同本島百合子君、参議院議員柏原ヤス君、同藤原道子君、同丸茂重貞君、同森田タマ君、在外財産問題審議会委員参議院議員青木一男君、畜産物価格審議会委員に本院議員東海林稔君、同谷垣專一君、同長谷川四郎君、参議院議員温水三郎君、同矢山有作君を任命するため、それぞれ国会法第三十九条但書規定により本院の議決を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。      ————◇—————  日程第一 郵便貯金法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第二 郵便振替貯金法の一部を改正する法律案内閣提出
  5. 船田中

    議長船田中君) 日程第一、郵便貯金法の一部を改正する法律案日程第二、郵便振替貯金法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
  6. 船田中

    議長船田中君) 委員長報告を求めます。委員長内藤隆君。     —————————————   〔報告書本号末尾に掲載〕     —————————————   〔内藤隆登壇
  7. 内藤隆

    内藤隆君 ただいま一括議題となりました内閣提出の二法律案につきまして、逓信委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、郵便貯金法の一部を改正する法律案について申し上げます。  その改正点の第一は、郵便貯金預金者一人の貯金総額制限額は、現在五十万円でありまするが、これを百万円に引き上げようとするものでありまして、なお、これに伴い、積み立て貯金定額貯金及び定期貯金預入金額もあわせて引き上げることであります。  第二は、郵便貯金の権利が消滅しない場合の事由として、新たに印章の変更の届け出その他省令で定める請求または届け出があった場合等を追加することであります。  第三は、郵便貯金に預入することができる証券等範囲を拡大することであり、そのほか郵便貯金払い戻し金について、現金の交付にかえて小切手をもって払い渡すことができるように改めることであります。  次に、郵便振替貯金法の一部を改正する法律案について申し上げます。  まず、改正点の第一は、天災その他非常の災害に際して、被災者の救援を目的とする寄付金を、地方公共団体共同募金会等郵便振替貯金を利用して送金する場合には、その料金を免除することができるように改めようとするものであります。  第二は、電気、ガス、水道等、これら公益事業等料金定期に継続して支払う場合には、支払い人及び事業者振替貯金口座を通じ、簡便な手続によって支払うことができる定期継続振替制度を創設しようとするものであります。  第三は、郵便振替貯金払い込み金に充てることができる証券等範囲を拡大することであり、そのほか、小額の払い出し金については、払い渡し郵便局指定を任意とすること、及び電信による振替または払い出し請求を直接口座所管庁にすることができること等、加入者の利便をはかるための改正をいたそうとするものであります。  以上の両法律案は、いずれも去る二月八日逓信委員会に付託されたのでありまするが、委員会においては、同月十二日政府より提案理由説明を聴取し、慎重審査を行ない、三月十一日、質疑を終了、討論を省略し、一括議題としてそれぞれ採決の結果、両法律案とも全会一致をもって可決した次第であります。  なお、委員会は、郵便貯金法の一部を改正する法律案に対して、預金者に対するサービスの拡充並びに預金者貸し付け制度等検討方内容とする附帯決議を付することに決しました。  以上をもって御報告を終わります。(拍手)     —————————————
  8. 船田中

    議長船田中君) 両案を一括して採決いたします。  両案の委員長報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  9. 船田中

    議長船田中君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  櫻内通商産業大臣中小企業基本法に基づく   昭和三十九年度年次報告及び昭和四十年度   中小企業施策についての発言
  10. 船田中

    議長船田中君) 櫻内通商産業大臣から、中小企業基本法に基づく昭和三十九年度年次報告及び昭和四十年度中小企業施策について発言を求められております。これを許します。通商産業大臣櫻内義雄君。   〔国務大臣櫻内義雄登壇
  11. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 中小企業基本法に基づきまして先般政府国会に提出いたしました、昭和三十九年度中小企業に関する年次報告及び昭和四十年度において講じようとする中小企業施策概要を御説明いたします。  まず、中小企業の最近の動向を見ますと、その生産等事業活動の面につきましては、大企業のそれとほぼ軌を一にして、昭和三十八年の景気回復期には順調な上昇を示し、景気調整下にありました昭和三十九年におきましても堅調に推移いたしました。しかしながら、この間中小企業の多くは財務内容悪化を続け、収益性低下傾向を示し、これを反映して、特に昭和三十九年には、企業倒産手形不渡り等が著しく増加いたしました。  中小企業につきましてこのような特徴的な動きをもたらしたものといたしましては、金融機関からの借り入れの伸びが縮小したこと、売り上げ債権の著しい増大に対し買い入れ債務がそれほど増加しなかったことなど、金融引き締め影響と申すべき要因があげられます。しかしながら、昭和三十八年度の景気回復期におきましても、中小企業経営は困難の度を加えていったことからも推測されますとおり、より基本的な構造的要因がそこに働いていることを指摘しなければならないのであります。  わが国経済が急速に拡大する過程におきまして、中小企業は、これに適応するため多くの努力を払ってまいりまして、全体として相応の発展を示し、その従業者の所得もかなりの向上を見たのでありますが、資本技術の点でなお大きな格差があるため、その国民経済に占める地位は低下せざるを得なかったのであります。このような状況のもとで中小企業と大企業との間の付加価値生産性格差も、昭和三十五年までは年々拡大してまいりました。しかし、昭和三十六年から昭和三十八年までの三年間におきましては、格差は徐々に縮小傾向を見せているのであります。このような格差縮小傾向は、中小企業体質改善が進みつつあることを示すものでありますが、また最近は、重化学工業部門の大企業昭和三十四−三十六年のような急速な生産性向上を見せなかったことによる面も大きいと見られるのでありまして、今後とも格差縮小傾向が続くとは、必ずしも断定しがたいと考えられます。しかも、格差の絶対的な水準の開きが製造業を例にとりますと、大企業に対して、四七%となお大きいことが問題でありまして、このような大きな格差存在にあらわれております中小企業近代化のおくれが、中小企業経営に困難をもたらす最も基本的な要因となっているのであります。  このような生産性格差存在とともに、中小企業をめぐる外部条件にも大きな変化が生じつつあるのであります。  第一に、労働力需給関係は特に若年労働力中心として最近一そうきびしくなってきております。このような情勢に適応するため、中小企業賃金上昇福利厚生費増大等を余儀なくされており、賃金格差も年々縮小するとともに中小企業従業者生活及び福祉向上には見るべきものがありますが、他方、企業自己資本の蓄積という点に影響が及んでおりまして、このため生産性向上必要性がますます強まってきているのであります。  第二に、技術革新消費パターン変化などが急速に進展いたしましたが、これに伴って中小企業におきましても、設備近代化合理化が必要となってきており、また生産流通を通じて企業の大規模化が進展し、中小企業の分野に大企業が進出する例もかなり見られるに至っております。  第三に、開放経済体制への移行を契機としまして、親企業合理化が進むとともに、下請中小企業に対する品質向上コスト引き下げ要請がきびしくなり、これに対応するため合理化必要性が強まってきています。  以上述べてまいりました外部条件変化もまた最近における中小企業経営に困難をもたらした構造的要因であると考えられるのであります。  このような状況に適応するため、中小企業設備投資技術水準向上あるいは経営管理改善等近代化合理化努力を行なってまいりました。しかしながら、このような過程におきまして、すでに述べましたような財務状況悪化あるいは投資効率低下などの問題が出てきております。これは、総合的な経営管理体制とその機能の整備がおくれていること、良質な資金の調達が困難なことなどを反映するものでありまして、今後一そう診断指導拡充金融税制関係の諸施策充実等により事態改善するとともに、協業化により中小企業の効率的な近代化をはかる必要性が強く認められるのであります。また、成長性の高い中小企業におきましては近代化が比較的進んでおりますが、下請企業産地企業あるいは商業などの小規模企業の多い部門におきましては、外部的諸条件変化過程におきまして近代化のおくれと経営不安定性が強く認められるのであります。  産業構造変動外部条件変化による近代化要請は、単に製造業のみならず、流通部門にも強まっておりまして、商店の大型化流通経路短縮等動きが見られるほか、商品の多様化に対応して一般小売り商などでは扱い商品専門化傾向も進んでおります。このような趨勢に対応するため、卸売り業でも小売り業でも協業化団地化など、幾つかの合理化動きが出てきております。  以上述べてまいりました諸問題に適応しようとする中小企業者努力を支援助長するため、政府といたしましては、昭和三十九年度において、まず最も基本的に必要とされます近代化高度化を推進するための資金供給円滑化技術及び経営指導事業充実労働力確保のための職業訓練福利厚生施設設置目的とする融資拡充、また、総合性を持った業種別近代化計画作成推進、さらに小規模企業者のための経営改善普及事業等措置強化いたしましたほか、特に、金融引き締め下における中小企業金融円滑化をはかるため、財政投融資の増額、下請企業取引条件に関する指導監督等施策を進めるとともに、大企業進出に対する事業活動調整のための措置を制度化いたしました。  次に、昭和四十年度におきましては、中小企業基本法の定める諸施策を着実に強化し具体化することを基本的な態度として、次のような諸施策を推進いたしたい所存であります。  中小企業施策の重点といたしましては、  まず第一に、中小企業生産性向上市場競争力強化をはかりつつ、経済構造変動に即応してその存立基盤を確立するため、設備近代化中小企業構造高度化を一そう強力に推進するものとし、特に中小企業近代化促進法に基づき近代化計画の策定された業種につきましては、その計画に沿って業種別実態に即した近代化を総合的に推進いたします。また、立ちおくれの著しい流通機構合理化をはかるため、卸商業団地の造成、共同施設設置等流通経路合理化をはかりますとともに、小売り商業店舗共同化資金による寄り合い百貨店共同スーパー等協業化商店街近代化資金による町ぐるみ近代化を強力に促進することといたしております。  第二に、中小企業技術向上経営合理化を推進するため、診断指導事業管理者技術者研修事業を積極的に実施いたしますとともに、開放試験室巡回技術指導等による技術指導事業拡充日本中小企業指導センター事業内容強化拡充をはかることといたしております。  第三に、中小企業の需要の増進取引条件向上をはかるため、輸出の振興中小企業者事業活動の機会の確保下請取引適正化下請企業育成振興等施策につきまして、適切な施策を講ずることといたしております。  第四に、中小企業従業者福祉向上をはかるため、労働条件改善労働環境整備を促進し、あわせて技能者教育等充実をはかるなど、中小企業における労働力確保をはかることといたしております。  第五に、中小企業のうち大きな比重を占める小規模企業につきましては、一般的な近代化施策を加え、特にその経営改善発達をはかるため、経営改善普及事業強化いたしますと同時に、小規模企業従事者生活水準向上に資するよう、金融上、税制上特別の配慮を加えることといたしております。さらに、新たに小規模企業者退廃業者生活の安定と福祉増進目的とする小規模企業者の拠出による共済制度を実施し、あわせて小規模企業振興に寄与するため、小規模企業共済事業団を創設いたします。  第六に、以上の諸施策を推進してまいるためには、中小企業金融の一そうの円滑化租税負担適正化をはかることも必要であります。すなわち、政府関係中小企業金融機関に対する財政投融資を増額いたしますとともに、中小企業者の信用力不足を補うため、特別小口保険制度を創設する等信用補完事業充実することとし、あわせて民間金融機関に対して中小企業金融適正化円滑化をはかるよう指導強化することといたしております。  また、税制面におきましても、中小企業自己資本充実設備近代化及び中小企業構造高度化等をはかるため、同族会社留保金課税軽減法人税率引き下げ等措置を講じますとともに、家族専従者控除事業主控除引き上げ等小規模事業者税負担軽減をはかることといたしております。  以上、年次報告及び昭和四十年度中小企業施策について、その概要を御説明した次第であります。(拍手)      ————◇—————  中小企業基本法に基づく昭和三十九年度年次報告及び昭和四十年度中小企業施策についての発言に対する質疑
  12. 船田中

    議長船田中君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。田中武夫君。   〔田中武夫登壇
  13. 田中武夫

    田中武夫君 私は、ただいま行なわれた昭和三十九年度中小企業に関する年次報告及び昭和四十年度において講じようとする中小企業施策、すなわち、いわゆる中小企業白書に対し、日本社会党を代表して、佐藤総理以下関係閣僚に若干の質問をいたします。(拍手)  御承知のごとく、中小企業は、昨年来毎月企業倒産の記録を更新する等、まことに深刻な事態を示し、本院においても昨年末、中小企業危機打開に関する決議を行なったのであります。こうした点からも、今回の白書に対しては、中小企業者はもとより、国民全部が多大の関心と期待を寄せていたのであります。しかるに、その内容は、現象的、平面的、かつ、冷酷な作文に終始し、中小企業政策に対する熱意責任が全く認められないのであります。(拍手)特に全体の基調として、今日の中小企業の困難な状況政府の全く関知せざる自然現象であるかのごとく述べられており、その無責任態度に義憤を感じたのは、おそらく私一人ではないでしょう。(拍手)  いまさら言うまでもなく、中小企業に今日の不振停滞をもたらした根本原因は、保守党政府の一貫した経済政策、特にここ数年来の高度経済成長政策という、大企業偏重中小企業虐待経済政策にあるのであって、決して自然的現象ないし歴史的必然の結果ではなく、まさに政策的、人為的な中小企業の苦境なのであります。こうした本質的な問題にことさら目をおおっている白書基本的態度は、大企業の立場から見おろした中小企業白書であり、さか立ちしたアクロバット白書と断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  政府が真に中小企業政策を推進する熱意を有するならば、いまこそ今日まで一貫してとってきた大企業中心政治姿勢を改め、その上に立って中小企業政策を遂行すべきであり、この意味において、私は、白書の個々の問題に入る前に、まず、総理に対し中小企業政策の転換を強く要求するものであります。  中小企業白書の問題の第一は、今日の中小企業現状分析にあたって、経済構造全般の本質を究明し、これとの関連において中小企業問題を把握するという、最も基本的、かつ、重要な点が全く欠除していることであります。  最近におけるわが国経済は、開放体制に対応して国際競争力強化産業構造高度化の観点から、大規模化重化学工業化が進行しており、大企業中心とするこうした方向は、金融財政税制等、あらゆる面で政策的にバックアップされているのが実情であり、特に設備投資中心とする大企業資金調達については、財政資金はもとより、都市銀行、地方銀行の集中的融資日銀貸し出しによる特殊な金融方式等が行なわれ、本来中小企業専門機関である相互銀行、信用金庫の資金さえ、コール市場を通じて大企業へ吸収されているのであります。(拍手)こういう経済政策、二重構造的な金融のメカニズムに根本的なメスを入れない限り、たまたま恵まれた上位中小企業幾つかがわずかに大企業偏重政策のおこぼれを受けるにとどまり、一般中小企業不振停滞におちいり、記録的な企業倒産が続くのは、むしろ当然の結果というべきであります。(拍手)  しかるに白書は、中小企業不振停滞原因循環的要因構造的要因に分けてはいるが、いずれも平面的、かつ、自然現象であるかのごとき説明に終始するのみならず、両者の関係についても理解があいまいであり、発想が根本的に誤っているのであります。これでは政府中小企業政策に期待することは、百年河清を待つにひとしいといわざるを得ません。総理並びに通産大臣の御所見を承りたい。  問題の第二は、中小企業倒産及び不渡り手形についてであります。  中小企業倒産は、昨年来未曾有の件数負債金額で推移し、本年に入ってからも、負債金額一千万円以上の倒産は、一月で四百二件、四百二十億円、二月は五百二十一件、四百六十億円に達しており、三月は件数負債金額とも最高に達するであろうといわれておるのであります。白書は、このような驚異的な倒産は、生産性格差等構造的欠陥金融引き締めが加わって生じたものとし、この対策として、昨年度下半期に政府系中小企業金融機関財政投融資を追加支出したことを述べ、さらに昨年末以降の金融緩和によっても、構造的要因の解消なくしては根本的解決はないと述べているのでありますが、私は、白書のいう構造的欠陥及び金融引き締めをもたらした経済構造こそ問題にすべきであると考えるものであります。(拍手)この点の検討なくして真の倒産対策は成り立ち得ないのであります。しかも、政府は、史上最大倒産について、その実情すら正確に把握することができず、民間機関の行なっている一定規模以上の倒産調査に依存している始末であり、われわれの再三の要求にもかかわらず、依然として倒産実態調査を実施する意思がなく今日に至っているのであります。さらに、中小企業資金需要の過半を供給する都市銀行等の異常な金融引き締めに対して、何ら具体的な措置を講ずることなく、補完的金融機関である政府系金融機関に若干の財政資金を投じた程度では、この問題に対してほとんど無為無策黒字倒産関連倒産に対しても、傍観者的態度をとっていると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  一体政府は、この異常な企業倒産に対して、いかなる責任を感じ、現実に効果をあげ得るいかなる対策を講じようとしているのか、総理並びに大蔵通産大臣の御所見を承りたい。  企業倒産の中には、いわゆる黒字倒産関連倒産が相当数含まれているが、これらは自己責任に基づくものではなく、不渡り手形の取得によるものであります。手形不渡り企業倒産とともに著しく増加しており、中小企業に及ぼす影響はきわめて憂慮すべきものがあります。こうした不渡り手形による損害を救済し、黒字倒産関連倒産を防止するため、手形保険制度を創設すべきであると思うが、大蔵法務大臣の御所見を承りたい。  また、倒産原因として、いわゆる町の金融業者から法外な金利による資金借り入れがあります。中小企業、ことに零細企業は、現実一般金融機関から融資を受けることがきわめて困難な実情であり、一方、政府系金融機関もわずか八%程度資金を供給するにすぎず、しかもその手続が煩瑣で、借り入れに相当の期間を要し、急場の用に役立たない場合が多いのであります。そこでやむを得ず、手近な町の金融業者資金を、法外な高利と知りつつ利用し、これがいつの間にか利子利子を生んで、ついに倒産に立ち至る事例も少なくないのであります。このような事態を救済するため、政府系機関資金量の増加、借り入れ手続簡素化をはかるとともに、出資の受入、預り金及び金利等取締等に関する法律を直ちに改正し、最高日歩三十銭の金利を大幅に引き下げる必要があると思うのであります。また、歩積み、両建てについては、独禁法による特殊指定を行なう等、その取り締まりを一そう徹底すべきであります。大蔵通産大臣並びに公正取引委員長の御所見を承りたい。  さらに、倒産の中には、会社更生法を悪用した逃げ込み、便乗倒産あるいは計画倒産と考えられるものが少なくないのであります。これらは下請企業等の無担保債権者に多大の犠牲を与えており、下請企業にとっては大きな問題の一つであります。しかるに、白書がこの点について一言半句も触れていないことは、まことに遺憾というほかありません。(拍手)このような会社更生法の悪用を防止し、下請企業等への不当な影響を食いとめるため、一定期間内の納品にかかる債権については共益債権にするとともに、下請企業従業員一定賃金についても特別の保護を加えるよう、会社更生法改正する必要があると思うが、法務労働通産の各大臣の御所見を承りたい。  さらに、通産省は、会社更生法改正検討していると聞いておりますが、それはいかなる点を検討しており、いつ国会に出すつもりであるのか、あわせて御答弁を願いたいと思います。  問題の第三は、中小企業の自立安定に関するプログラムについてであります。  白書は、生産性格差等構造的欠陥を解消しない限り中小企業問題の根本的解決はなく、そのために近代化、協同化等の方策を推進すると述べており、それなりの目標はあるとしても、それに至る過程がきわめてあいまいであります。いまや従来の施策を単に受け継ぐだけでは問題の解決にはならないのであります。すなわち、従来の所得倍増計画を見ても、今次の中期経済計画を見ても、すべて中小企業自体の実態に即した計画がほとんどなく、ただ大企業中心経済体制に必要な上位中小企業の利用と、それ以外の中小企業の切り捨てがあるにすぎないのであります。  私は、いたずらな高度成長を目ざすことなく、また、真の意味で国民経済的見地から経済のあり方を考え、その中できめこまかい施策を講じていくならば、中小企業がおのおのその所を得、安定した発展を続けることが決して不可能ではないと確信するものであります。その意味で、大企業中小企業分野への進出については、先般の団体法改正による調整制度程度にとどまらず、われわれが従来主張してきたように、業種指定し、大企業の進出を規制することが必要であります。通産大臣の御所見を承りたい。  また、中小企業向け官公需の確保についても、白書は単に実情調査を行なう等を述べているにすぎないのでありますが、真に中小企業向け官公需の確保をはかる意思があるならば、国及び地方公共団体等が発注の一定割合を中小企業者から調達するようにすべきであります。総理並びに通産大臣の御所見を承りたい。  さらに、小売り商、サービス業と、百貨店、大型スーパーの関係は、現在大問題となっておる流通革命下においてきわめて重大でありますが、白書は、既存の資料を使って総花的に解説をしているにすぎず、流通革命進行の過程流通機構をどのようにし、その中でほとんどが零細企業である小売り商、サービス業をどう方向づけようとするのか、まことに不明確、かつ誠意がなく、展望に救いがないのであります。現在施行されておる百貨店法、小売商業調整特別措置法及び商店振興組合法だけではきわめて不十分であり、真に流通秩序を維持し、小売り商等を保護するためには、メーカー、卸、小売り間の業務分野について、商品及び地域を指定して、その調整をはかるべきであります。通産大臣の御所見を承りたい。  中小企業問題の中で特に重要な問題は、中小企業の大半を占め、生業的色彩の濃厚な零細企業の問題であります。白書は、これら零細企業については、いたずらにその非近代性、低生産性を嘆くのみで、冷たく突き放しているのであります。今国会に提出されている小規模企業共済法案も、国の補助は皆無にひとしく、みずからの積み立てで転換せよというものであります。政府は、これら零細企業に対しては、従来、経済政策の対象ではなく、社会政策の問題であるとしておるのでありまするが、真の国民経済的立場からいうならば、これはまさに経済政策の問題であり、これを抜きにして真の中小企業政策はあり得ないと思うのであります。また、もしかりに、政府の言うように社会政策の問題とするならば、零細企業転換政策の前に社会政策が先行しなければならないはずであります。ところが、現実はまことに貧弱な限りであり、小規模事業対策も、予算は四十二億円で、全体のわずか〇・二%程度であり、政策の外に置かれているというも過言ではないのであります。たとえば、中小企業等協同組合法第二十三条の二に、小組合の組合員に対して税制上、金融上特別の措置を講ずることが規定されているが、実情は全く何もされていないのであります。したがって、われわれが従来から主張しているように、勤労事業協同組合の組織により効果的な施策を実施することがぜひとも必要であります。こうした零細企業対策に関する基本的な考え方と、中小企業政策遂行の過程におけるきめこまかい施策に対して、総理並びに通産大臣の御所見を承りたい。  問題の第四は、下請企業についてであります。  下請企業の問題は、企業倒産にもあらわれているように、現下の重大課題であり、親企業者は依然として下請企業者を景気変動の安全弁としか考えていないのが実情であります。白書は、下請関係における支払い条件悪化等について、やや詳細に説明を加えているが、その基調は、下請企業の従属性を当然のごとくとらえ、下請代金支払遅延等防止法の施行状況についても十分な説明がなく、下請関係に関する確固たる考え方が見受けられないのであります。一体、下請代金支払遅延等防止法はどんな効果をあげているのか。支払い原則は順守せられているのか。延滞利息を支払った事例があるのか。その実施状況を明らかにするとともに、今後の対策について明らかにすべきであります。
  14. 船田中

    議長船田中君) 田中君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
  15. 田中武夫

    田中武夫君(続) 下請関係適正化をはかり、下請企業の独立性を確保するためには、中央、地方に常設の下請関係調整機関を設け、下請企業の交渉権、親企業の交渉応諾義務を規定することが必要であります。下請関係における最低加工賃の制度を設けて、下請企業者の団体と親企業の間で交渉した結果については、労働組合法におけるがごとく、一般的拘束力を認め、下請関係の基準が一般化せられるような制度を確立すべきであります。これら下請関係の諸点について通産大臣、公取委員長の御所見を承りたい。  問題の第五は、中小企業における労働問題についてであります。  労働力需給構造変化、特に若年、技能労働者を中心とする労働力の不足は、ひとり中小企業だけの問題ではなく、大企業を含めた一般的な問題でありますが、特に中小企業においては、賃金その他労働条件実情からきわめて深刻な問題であり、一部には、労働力不足による労務倒産さえあらわれているのであります。白書は、こうした事態に対して、近代化、協同化により労働節約的な体制を推進すると述べている程度で、何ら積極的な態度が見られないのであります。私は、国民経済的観点から最も合理的な労働力の配置が達成せられるよう、この際、全国一律の最低賃金制度の実施に踏み切るとともに、各種社会保険の全面的適用等について対策を実施すべきであると思いますが、労働大臣通産大臣の御所見を承りたい。  最後に、白書は、昭和四十年度の施策について幾つかの対策をあげておりますが、予算はわずか全体の〇・六%にすぎず、中小企業投資育成会社法、近代化促進法、同資金助成法あるいは指導法等、いずれを見ても大企業に奉仕する中小企業のための制度ばかりであり、零細企業に対する新規立法があるかと思えば、零細企業切り捨て政策のカムフラージュにすぎない始末であります。かりに政府部内で中小企業担当者が何らかの対策を打ち出しても、大企業向けの施策との見合いで排除せられるのが実態であります。この意味でも中小企業省を設置することが必要なのであります。  私は、このような、根本を誤り、血の通わない中小企業政策に対して、断固として反対し、佐藤総理に対して、重ねて大企業中心政治姿勢を改め、中小企業政策を真の姿に転換するよう、強く要求いたしまして、質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  16. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) 中小企業白書は、先ほど通産大臣から説明いたしましたごとく、現状を十分究明しておると思います。たいへん困難な状況に置かれておるその実態をそのまま白書として皆さんに報告いたしております。  本来、政府は、中小企業の健全な発達なくしては国民経済の均衡ある発展を期し得ない、かような立場に立ちまして、これが基本的立場でございまして、そこで、中小企業基本法、これを定めて、その定めるところによりまして中小企業近代化高度化を強力に推進しておるのでございます。ただいま大企業本位の経済政策だと言われますが、中小企業基本法によっておるこの態度におきまして、私は、ただいまの政策を転換する必要はないと、かように考えております。  また、中小企業金融につきまして、今日金融引き締め等のしわ寄せを一番弱い中小企業が受けるのだという、この点につきましては、私もさように考えますので、政府金融機関中心にいたしましていろいろ施策をしておることは、御承知のとおりだと思います。  また、黒字倒産、いわゆる連鎖倒産、こういうものにつきましては、政府はあらゆる手を差し伸べて、さような事態が起こらないようにと、十分の措置を講じておるのでございます。この場合に、今日の状況等から考えまして、ただ実際的な金融措置をとるばかりでなく、政府といたしましても、いま問題になっております会社更生法、あるいは手形法、あるいは下請代金支払遅延等防止法等につきましては、それが悪用されたり、あるいはまた、本来の目的に沿うような運用をされていないという、そういう点も十分反省すべきものがあると、かように考えますので、これらに検討を加え、そうして実情に即するようにいたしてまいりたいと思います。  また、官公需の問題につきまして、さらに発注を制度化すべしということを言われておりますが、これは、中小企業がそれぞれの態様をしておりますので、いわゆる一様にはなかなかまいらないと思います。しかし、建設業界等における中小企業ならば、いわゆる大企業中小企業の分野に入らないように、そういう意味合いにおける各工事の大小等によってこれを区分けをすることは容易だと思います。ただいままで、鉄道やあるいは電電等におきましては、さような措置をとってまいっておると思います。また、品物等につきましては、品質が同一であり、低廉であり、また多量なものであるというような点で、なかなか仰せのように発注を制度化することは困難かと思います。また、最近の情勢で、経済の変革からまいりまして、われわれが特に注意しなければならないことは、重化学工業や機械工業部門中小企業、これはますますその重要性を増してきたと思います。そういう意味において、中小企業の育成強化も、かような面における設備近代化あるいは技術高度化等につきまして一そうの指導をすることが必要だ、かように考えます。  最後に、省の設置についてお話がございましたが、御承知のように、中小企業はいわゆる業態でございまして、いわゆる業種ではございません。そういうような意味から、ただいまのような中小企業庁においてこの行政全般を見るというのが最もふさわしい方法ではないか、かような省設置という考え方には私は容易に賛成しないとお答えをいたしておきます。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇
  17. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 総理大臣から大体お答えがございましたが、二、三補足して御説明申し上げます。  第一は、倒産不渡り手形に対する調査等については、民間機関等に依存しておって、政府は何らの措置をしておらないというようなことでございますが、御承知のとおり、三十九年十月以降、全国銀行協会連合会が、全国の手形交換所で、負債の状態、不渡り手形の状態、また倒産の状態等十分調査をいたしております。政府もこれらの調査に基づきまして十分な措置をいたしたいと考えます。  第二は、自己責任によらない産業の黒字倒産、連鎖倒産等を防ぐために、不渡り手形の損害救済のための手形保険制度を設けてはどうか、こういう御指摘でございますが、大口倒産による連鎖倒産黒字倒産を起こしてはならないということにつきましては、各財務局等を通じまして、金融機関との連絡を十分にとりながら、黒字、連鎖倒産等を極力防ぐように措置をいたしております。  手形保険制度は、社会党の皆さんがこれを要望しておられますが、強制加入にすることもできないわけでありますし、これを任意加入にすれば、信用度の薄いものしか加入しないということになりますから、この保険制度は根本的に成り立たない、こういうことも言い得るわけでございまして、現在、手形保険の制度をつくるということに対しては、にわかに賛成できないのでございます。  第三は、町の金融機関金利を安くしなければならないということでございますが、町の金融業者の貸し付け金利につきましては、利息制限法、また、出資の受入、預り金及び金利等取締等に関する法律の制限を受けておりまして、金利最高限が規定せられておるわけでございます。また、この最高限を越えたものに対しては刑事罰が課せられることになっておることは、御承知のとおりでございます。やはり庶民金融円滑化ということを念頭に置いて考えていかなければなりませんので、この刑事罰の限度をもっと引き下げろということについては、よほど慎重に検討する必要があると思います。  第四点は、歩積み、両建ての解消による金利負担の軽減の問題でございますが、都市銀行におきましては今年の五月、相互銀行、信金等におきましては来年の五月をめどにいたしまして、過当、不当の歩積み、両建ての解消をはかりながら金利負担の軽減に処してまいりたい、こういう考えでございます。(拍手)   〔国務大臣櫻内義雄登壇
  18. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) まず、最近における倒産実情からいたしまして、私といたしましては、きわめてその事態を憂慮いたしておるわけでございますが、直接の原因といたしましては、昨年末の金融措置の決済期がきておる面があろうかと思います。政府といたしましては、年末に財投のワクを八百億円ふやしまして、また、買いオペ五百億円をいたしたのでございますが、そのうちで短期決済分が年度末にきておると思います。また、買いオペの売り戻しの時期もきておると思うのでございまして、これらに対しまして適宜措置をとっていきたい。しかしながら、この年度末の状況については、各政府機関を調べてみますと、それほど逼迫はしておらないのであります。むしろ、率直に申しますと、金融機関等の非常な警戒心が高まっておるというようなことが、現在の倒産金融逼迫に拍車をかけておるように思うのでございますが、これらの点につきましては、大蔵当局、また中小企業庁の出先、あらゆる政府機関が協力をいたしまして万全の措置を講じていきたいと思います。  会社更生法に関するお尋ねがございましたが、これについては、主務官庁は法務省でございますが、通産省としての見解をいま取りまとめまして、会社更生法の適用上欠陥がございますれば、これらについては率直に意見を申しまして、すみやかに改正をいたしたい、かように思う次第でございます。  それから、大企業の進出の規制についての御意見がございましたが、これは、御質問の中でも触れられましたとおりに、昨年の通常国会に、中小企業政策審議会の答申を得て、団体法の一部改正案を提案し成立を見たのでございまして、今後とも、行政指導強化、本改正によって設けられた特殊契約制度の活用等によってこの問題に対処していきたいと思うのでございます。  次に、大資本による百貨店、スーパーと中小小売り商との間の摩擦の問題でございますが、適切な行政指導、現行の百貨店法、小売商業調整法、団体法の適正な運用によりまして、中小小売り商に及ぼす影響を防止する考えでございます。特にあらためて何か法律を制定するというようなことについては、現在考えてはおりません。  それから、小規模企業についてでありますが、従来より、商工会、商工会議所を通じまして、経営改善普及事業小規模企業者向け融資を専門とする国民金融機関の機能の強化拡充、あるいは中小公庫、商工中金による小口融資の増強、小規模事業者税負担軽減等、各般の施策を講じておることは、田中議員もよく御承知だろうと思うのであります。さらに加えて、今回、無担保、無保証による特別小口保険制度、あるいは、零細下請企業に対して取引のあっせんを行なう下請振興協会の設立の助成、小規模企業振興策をかように大幅に拡充する考えでございます。  中小企業協同組合法第二十三条の点についての御指摘がございましたが、政府機関において、小口保険につき、担保条件の緩和、調査の簡素化等の措置を講じております。事業協同小組合の組合について、その金融円滑化をはかり、また、信用補完制度の面において、四十年度において特別小口保険制度を創設することは、いま触れたとおりでございますが、税制上の優遇措置としては、一般的には、家族専従者の控除、事業主控除額の引き上げ等措置を講じておるような次第でございます。  下請企業の組合の親企業との交渉権についてのことがございましたが、中小企業協同組合法において、事業協同組合等の事業の一つとして、組合員の経済的地位の改善をはかるため、親企業者等、組合と取引関係のあるものと加工賃、支払い条件等について団体協約の締結ができることとなっておるのでございまして、したがって、政府としては今後ともこの制度を活用してまいりたいと思います。  最後に、最近における労働需給の逼迫についてでございますが、中小企業における労働力確保は、お話のごとく非常に困難な状態でございますが、一昨年から各省をメンバーとする中小企業労務対策連絡協議会を随時開催いたしまして対処しておるような次第でございます。   〔国務大臣石田博英君登壇
  19. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 親企業会社更生法の適用を受けました結果、下請企業に連鎖倒産が起こったり、あるいは、そのほか、倒産しないまでも、種々の困難を生じ、ひいては下請企業従業員労働条件低下を来たす、これが望ましくないことはむろんでありまして、基準行政の強化を通じまして、親企業に対してその責任を分担するように強い指導をいたしておる次第でございます。しかし、いわゆる共益債権範囲の拡大につきましては、他の債権との関連でいろいろ問題があるかとは存じますけれども、しかしながら、更生法を申請した親企業経営者は、自分の個人資産を温存しているにかかわらず、その経営者を信頼して下請になった企業倒産したり、あるいは苦しんだりしておる状態は、労働行政をあずかっている者として釈然としないものがございます。したがって、これらの面の改善努力をいたしたいと存じます。  第二番目は、中小企業労働力確保についての御意見でございました。中小企業に必要労働力確保するのには、何をおいても、労働条件向上をもたらすことであります。最近は、いわゆる規模別賃金格差は次第に縮小しつつはあるのでありますけれども、しかしながら、なおその他の条件において及ばない点がたくさんございます。そこで、労働行政は、その中小企業が単独でやれないものについて、下からささえ、手伝っていくというところに重点を向けてまいっておるつもりでございます。  また、最低賃金法、これは三十八年、三十九年審議会の答申に基づきまして、目下行政効果の拡大につとめております。  さらに、失業保険、労災保険につきましてでありますが、労災保険は、保険法改正案をきわめて近日に国会に提出する予定でございます。失業保険の小規模事業場の適用でございますが、これは失業保険それ自体の運営の中に検討改善を要するものがございますので、それと相まって、できるだけすみやかに全企業に適用するように努力したいと存じております。(拍手)   〔国務大臣高橋等君登壇
  20. 高橋等

    国務大臣(高橋等君) 現行の手形制度については検討を要する点がありますが、御提案の手形保険制度につきましては、種々の問題がございまして、適当ではないと考えます。  会社の下請企業者と従業員の利益を保護すべきことは、御指摘のとおりであります。これは会社更生法の運用面のみでなく、法制上の立場においても考究を要する問題があると考えられますので、現在関係省と打ち合わせ、検討を進めておる次第でございます。(拍手)   〔政府委員渡邊喜久造君登壇
  21. 渡邊喜久造

    政府委員(渡邊喜久造君) お答えいたします。  まず、歩積み、両建ての問題でございますが、この点につきましては、昨年の衆議院大蔵委員会決議の次第もありまして、大蔵省の行政指導による金融機関の自粛状況を常時監視することとしております。大蔵省の特別検査の結果は、先般国会報告されました。それによりますと、相当の改善を見ているというようであります。しかし、公正取引委員会としましては、借り手である中小企業者の立場から、一体ほんとうにそのような改善を見ているかどうかという点をさらに検討してみるつもりで、近くそのためのアンケート調査を実施する予定でおります。  なお、金融機関の自粛状況を監視し続けるとともに、必要と判断される場合にはいつでも特殊指定を行なうことができるよう、具体的基準については引き続き検討を進めております。  次に、下請法の運用でございますが、中小企業庁の協力を得まして、できる限り努力をしております。調査の対象となった親企業者につきましては、相当の改善を見ているものと考えております。しかし、一般的にいいますと、下請代金支払い状況は、遺憾ながら、依然改善されておりません。また、最近におきましては下請代金の支払いに手形を充てる傾向が一そう顕著となっておりますし、そのサイトも長期化していると考えます。  また、遅延利息を支払った事例があるかといったような御質問もございましたが、現在のところ、この事実があったということは耳にしておりません。  公正取引委員会としましては、今後とも、下請代金支払遅延等防止法の一そう厳正なる運用につとめますとともに、また、この法律について所要の改正をしたいという考え方から、目下その案を準備しております。  次に、下請関係調整機関の処置とか、あるいは下請取引条件の基準の設置などについてお話がございましたが、公正取引委員会としましては、親企業者が下請事業者に対してその優越した地位を利用して経済力を乱用する行為を規制する、そして下請取引の公正化につとめるということが、与えられた課題でありますので、こうした課題を中心としまして今後ともいろいろ検討を加えてまいりたいと思います。(拍手)     —————————————
  22. 船田中

    議長船田中君) 内海清君。   〔内海清君登壇
  23. 内海清

    ○内海清君 私は、民主社会党を代表いたしまして、政府提出の昭和三十九年度中小企業年次報告並びに昭和四十年度中小企業施策について、主要点につき、若干の質問をいたしたいと存じます。  今回の白書において、政府は、金融引き締めが行なわれて以来、企業倒産の増加などの形で行き詰まりが表面化している、その根底には産業構造変化、すなわち労働力の不足、技術革新の進展、あるいは開放経済への移行などが強く影響しているとし、さらに、この変化に適応する力は、大企業に比べて中小企業は弱く、この力の弱さと金融引き締めの圧力の双方から、中小企業は二重の苦しみにあっているという、この現実白書は率直に認めておるのであります。  事実、中小企業は、統計にあらわれたものだけでも、三十九年中の倒産数が四千二百余件に及んでおり、しかも、この白書の発表から一週間もたたないうちに、わが国有数の特殊鋼大メーカーが会社更生法の適用を申請して、裁判所より財産保全を認められ、関連中小企業三百余社の経営は、いまや運命をともにせざるを得ないような窮地に追い込まれておるのであります。私は、このなまなましい事実と取り組みながら、質問を進めたいと存じます。  総理は、再開国会劈頭の施政方針演説でも、また、今回の中小企業白書でも、産業構造変化ということを重要視されておりますが、あなたの認識は、きわめてあいまい、かつ、不徹底だと思います。私は、今回の山陽特殊製鋼問題を例にとってあなたの御所見をお伺いいたしたいと存じます。  今回の特殊鋼大メーカーの破局の原因が、設備投資過剰、そこから生ずる金融負担の過大にあったことは、あなたもよく御承知のとおりであります。これはただ単に特殊鋼業界のみの実態ではありません。いまや、わが国の主要産業は、軒並みに過剰投資の負担に悩んでおります。しかも、その投資の七割が借り入れ資金に依存しておるのが実情であります。一方、証券市場は資金調達の機能をほとんど失っておりますので、産業の必要とする資金は増資や社債発行等の自己資金調達によることができなくなり、どうしても銀行融資をもってまかなわざるを得なくなっております。その銀行が融資をストップすればいかなる大企業といえども倒産を免れないのが、わが国経済の現状であります。すなわち、産業資本構造がいびつになっており、また、金融機関融資は、特定の大企業に向けて過大な集中融資が行なわれております。わが国経済構造変化とは、このような産業資本金融構造のますます深まりゆく大欠陥をこそ、総理は指摘すべきではありませんか。まず、この点についての総理の基本認識をお伺いいたしたいのであります。(拍手)  第二に総理に伺いたい点は、具体的な中小企業対策についてであります。  昨年じゅうに四千二百余件の中小企業倒産があり、本年二月には五百二十一件を数えておりますように、中小企業向け金融引き締めはきわめて苛烈に行なわれております。しかも、この引き締めが、大企業中小企業との間に明白な差別待遇が行なわれているところに問題があるのであります。昨年の中小企業向け金融機関の貸し出し総額の伸びは、金融引き締めによって一昨年の伸びよりも約二八%も下回っております。この間大企業向け貸し出し総額の伸びは、わずか六%程度低下したにすぎません。このような金融格差がなぜ生じたかといえば、銀行の大企業向け集中融資が固定化し、銀行と大企業との間に切っても切れない悪因縁、悪循環が生じているからであります。私は、現在の不況克服のための根本策として、かつまた、産業並びに金融構造上の欠陥を是正する具体策として、はたまた、中小企業金融の健全化対策として、総理金融政策につき、どれほどの抱負と決意を持っておられるか、お伺いいたしたいのであります(拍手)  政府は、いまや、日銀法改正案提出の用意を進められておるようでありますが、肝心なのは、まず銀行法改正ではないでしょうか。すなわち、大企業向け集中融資の制限、銀行の預貸率の改善中小企業向け融資資金確保、これらを制度化する銀行法の改正をもって金融の正常化をはかるべきではありますまいか。この点について総理の御見解をお伺いいたしたいのであります。(拍手)  もう一点、政府は、九日の本院商工委員会並びに十日の参議院予算委員会におきまして、わが党議員の質問に答えて、現行の会社更生法の不備を率直に認められました。すなわち、現行法は、昭和二十七年に立法され、その後、部分的改正は行なわれましたが、立法の構造として、下請企業に波及する被害、特に下請企業関連倒産の防止についての配慮がきわめて不足しておるのであります。また、これに関連して、親企業倒産の場合の下請企業に対する救済措置についても、政府には何らの政策の持ち合わせがありません。私は、ここで総理自身から、近い機会に会社更生法改正案を政府提案すること、並びに戦後最大の倒産事件であり、過剰投資の失敗の典型的な事例である山陽特殊製鋼問題の措置について、総理がどれほどの決意を持って臨んでおられるのか、その所信のほどをお伺いいたします。  次に、大蔵大臣にお伺いいたしますが、昨年十月から十二月にかけて、金融引き締め苛烈のさなかに発行された手形の決済時期がこの三、四月に集中いたします。したがって、大企業中小企業を通じて、この時期に金繰りが最も苦しくなるのは目に見えておるのでありますが、この際、最も強く打撃を受けるのは中小企業であります。今回の山陽特殊製鋼事件の関連倒産を食いとめ、かつ、三、四月の金融危機を切り抜けるため、政府関係機関中小企業向け財政投融資は、繰り上げ融資を迅速に発動するよう政府措置すべきであると思うのであります。これによって生ずる資金の不足は、補正予算編成の際に補てんすべきであると思いますが、この点についての御見解を承りたいのであります。(拍手)  次に、通産大臣にお伺いいたします。質問点はたくさんありますが、主として下請問題を中心にして伺いたいと存じます。  第一に、今回の山陽特殊製鋼のごとき大メーカーの整理は、現実問題として直接に関連三百余社に被害を及ぼしておるのでありますが、すでに昨年末ごろから、この企業経営内容が、経済雑誌等できびしい批判の的となり、本年二月に入ってから、急速に株価が暴落いたしたのであります。このような事実は、政府当局も知っていたはずであります。しかるに、今回の企業整理について事前に何らなすことなく、事後に及んであわてて関連倒産の防止等に努力せねばならない状態にあるのであります。このような通産行政のあり方は、無秩序な大企業間の競争に、いたずらに政府が振り回されているものだといわざるを得ないのであります。わが国で特殊鋼大メーカーの企業数は、せいぜい二十社にすぎません。特に、今回の山陽特殊製鋼はわが国最大のメーカーで、自動車産業に対する主要なる資材供給者の立場に立っております。ここが過大な設備投資計画し、しかも、それを海外に発注した事実につき通産省当局が事前に全く察知しなかったことは、私は国の制度上の重大な欠陥であると痛感いたすのであります。(拍手)大企業当事者と親銀行との話し合いのもとに、抜き打ち的に会社更生法が申請されるまで、監督官庁である通産省が、何ら介入し得る余地がないということは、まことに不可解といわざるを得ないのであります。この点について大臣の御見解をお伺いいたします。  第二、民法上、被用者の給料は、債権として租税等に次ぐ先取り特権を認められております。これは労働者の生活擁護上当然の規定でありましょう。ところが、下請企業で働く被用者の給料については、債権として先取り特権は認められておらないのであります。そこで、民法の強調する国民生活権擁護の方針を一貫して、今回のような、大企業の整理という、下請中小企業にとっては全く避けようもない事態の場合には、下請企業の給料支払いに必要な資金については、政府関係金融機関をして特別融資せしめるだけの道を講ぜしめる必要があると思うのでありますが、この点についての政府の確たる御所信を承りたいのであります。(拍手)  なお、今回の山陽特殊製鋼事件では、下請中小企業への緊急を要する支払い金額、すなわち、これだけなければ倒産続出になりかねないとみなされる金額が約二十三億五千万円でありますが、これに対する対策通産大臣にお伺いいたします。  また、政府当局がわが党に対して答弁したように、現行の会社更生法は不備なのでありますから、少なくとも下請代金の未払い部分については共益債権に繰り入れるよう、大至急改正すべきであると思うのでありますが、法務大臣通産大臣の御見解を承りたいのであります。(拍手)  通産大臣に対する質問の第三点は、政府昭和四十年度において講じようとする施策全般についてであります。  政府国会に提出した資料は、四十九ページにわたって新たな施策を述べているが、その大半は、検討する、指導強化を行なう、効率的に推進する等の、行政当局が主観的に努力を約束しているものにすぎません。施策の明確な前進として立法化された新施策は、近代化資金助成法、信用保険法、投資育成株式会社法の三法の一部改正並びに小規模企業共済事業団の新設の四つにすぎないのであります。また、国の中小企業対策費は、信用保険公庫への出資六十億円を含めて、わずかに二百十七億円にすぎません。これで産業と金融上の構造変化に適応せしめ、かつ、景気後退の難局を切り抜けようとすることは、あたかも、ラクダが針のめどを通るよりもむずかしいといわざるを得ないのであります。(拍手)私は、政府は、今国会中に、下請代金支払遅延等防止法の改正案、中小企業者の手に渡った商業手形につき救済し、損失防止に当たる不渡手形整理協会法案の二案は、緊急提案すべきであると思うのでありますが、政府の所信をお伺いいたします。  最後に、現行の中小企業基本法は、われわれも協力して成立せしめた責任があり、これが関連政策の整備につきましては、政府と与野党が共同責任を持つものと考えます。よって、政府は、野党の政策上の新提案についても謙虚に耳を傾け、中小企業政策強化推進に向けて、一路邁進されんことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  24. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  最近の経済情勢を見まして、私どもも深く考えさせられることが多いのであります。ことに、企業全般につきまして、企業のいわゆる自己責任制、かような点において欠くるものがあるのではないだろうか、こういうことをまず考えるのでございます。ことに、最近の高度経済成長のもとにおいて、全面的、本格的開放経済に向かいました場合に、中小企業のごとく、早急にこの要請にこたえるために、あるいは近代化高度化、機械化、これを取り入れなければならない、こういう部門についての場合に、いわゆる大企業との関連において政府施策がおくれているようなことがあっては相ならない、かように思っておりますので、今日まで、ただいま御指摘になりました中小企業基本法、これは与野党ともでその法律ができたのでありますので、その基本に沿いまして一そうの努力をいたしてまいるつもりでございます。  また、ただいまお話がございましたように、法律そのものは十分考えられたものであるとは思いますが、しかし、今日の現状に立って考えますときに、会社更生法自身にもどうも実情に合わないものがある、あるいはまた、下請代金支払遅延等防止法等におきましても、さらに積極的な処置をとらなければ十分その効果をあげ得ない、かように思いますので、先ほどもお答えいたしましたように、十分これらのものを検討して、そうして中小企業に対して、本来の機能を十分発揮することができるように、また国民経済自身の発展に寄与するようにいたしたいものだ、かように考えます。  ただいまの黒字倒産、また関連倒産、山陽特殊製鋼の事件につきましては、政府はあげてこれが救済に乗り出しておりますので、その実情等はよく御承知のことだと思います。しかし、もともと、かような事態が起こること自身が、政府もまことに残念に思う次第でございまして、こういう事態に対して、今後再びかようなことが起こらないようにいたしたいものだ、かように考えております。(拍手)   〔国務大臣櫻内義雄登壇
  25. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 山陽特殊製鋼の状況につきましては、昨年の十二月以来警戒をしておったところでございます。その間に、富士製鉄などに対し、この窮境を打開するようにすすめてまいりました。また、お話しの設備拡充などにつきましては、この会社が高炉を設置したいというようなときには、通産省としては、それは困るというようにとめまして、行政指導には万全を期してまいったつもりでございます。  従業員の給与の支払いのことにつきましては、これは現在大阪地方通産局を中心にいたしまして、日銀支店あるいは大蔵省財務局その他相協力いたしまして、民間金融機関に働きかける、あるいは信用保証協会を活用するというようなことで、手を打っておる次第でございますが、特に中央、地方のこの際における緊密な協力の必要があると思うのであります。兵庫県におきましても、この点を理解されまして、八億円の民間銀行への預託をする、また、保証協会への——これは中央からは七〇%のてん補率でございますが、不足分をてん補するというようなことで金融円滑化につとめておるようなわけでございます。  それから、会社更生法関係共益債権につきましては、これは先ほどお答えしたとおりに、現在これが改正のために検討しておる次第でございます。  なお、下請代金支払遅延等防止法の改正について御意見がございましたが、通産省としても、これが改善のために種々意見を公取との間に申しておるようなわけでございます。  ほかに、不渡り手形関係の御提案がございましたが、これは今後慎重に検討してまいりたいと思います。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇
  26. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 第一点は、手形の決済期日がくるであろう三、四月の金融措置を万全に行なわなければならないということでございます。三機関につきましては、先ほど通産大臣が申し述べましたとおり、三十九年度にすでに八百億円の貸し出しワクの追加を行なっております。四十年度におきましては、三十九年当初二〇%プラスでございます。第一・四半期の四−六月の貸し出しワクの設定にあたりましては、実情に即して十分配慮をいたすつもりでございます。なお、民間金融機関に対しましても十分な協力を要請いたしておりますので、万遺漏なくやってまいりたいと思います。  第二点は、現行の銀行法の改正の問題でございます。現行の銀行法はもっぱら預金者保護の観点から規定されておりまして、銀行の公的機能の発揮と国民経済における銀行の果たす役割りの重要性にかんがみますと、必ずしも現状に適応したものではないと思います。日銀法の改正に引き続きまして、銀行法の改正成案を得たいと考えておるわけであります。現行法におきましても、集中融資の排除、また預貸率の改善中小企業向けの融資強化等、格段の努力をいたす所存であります。(拍手)   〔国務大臣高橋等君登壇
  27. 高橋等

    国務大臣(高橋等君) 御指摘の下請企業関係の利益につきましては、運用上のみでなく、法制上にも考慮を要する点があると考えますので、先ほど申し上げましたように、現在関係省と打ち合わせ検討中でございます。(拍手
  28. 船田中

    議長船田中君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————  証券取引法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明
  29. 船田中

    議長船田中君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出証券取引法の一部を改正する法律案の趣旨の説明を求めます。大蔵大臣田中角榮君。   〔国務大臣田中角榮君登壇
  30. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 証券取引法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  証券業は、国民経済的立場から見ましてすこぶる重要な事業であります。また、近時、証券投資が普及し、投資者層が広く一般大衆まで拡大している実情にありますので、証券業は社会的にもきわめて公共性の高い事業であるといわなければなりません。このような状況にかんがみ、昭和三十八年六月以来、証券取引審議会におきまして証券会社に関する諸問題について鋭意検討が加えられてまいりましたが、昭和三十九年二月の中間報告を経て、現行証券取引法につき、さしあたって改正を必要とする事項として、証券会社の免許制等の問題について、昭和三十九年十二月二十二日に報告を受けたのであります。  その後、政府におきまして同報告中心にさらに検討を重ねた結果、証券会社の社会的地位の向上と投資者保護に資するため、証券業を免許制とし、これに伴い監督規定整備するとともに、証券外務員について登録制を採用することとし、今回、ここに証券取引法の一部を改正する法律案を提出した次第でございます。  以下、その改正案につきまして、その大要を申し上げます。  まず、証券会社の資質の向上をはかるため、証券業を登録制から免許制に改めることとし、免許の審査基準としては、十分な財産的基礎及び良好な収支見込み、適正な人的構成並びに国民経済的、地域的妥当性の三点を規定し、また、証券業の業務が、性質の異なる数種の業務からなっていることにかんがみ、免許は四種類に区分した業務別に与えることといたしております。  次に、免許制の採用に伴いまして、登録制が前提となっております現行の監督規定等を整備する必要がありますので、この点を改正することといたしております。そのおもな事項は、免許制採用の趣旨に従い、必要な事項を認可の対象とすること、経営の不健全化等を防止するため、是正保全の命令を行ない得るものとすること、内部留保の充実による経営の安定をはかるため、三種類の準備金の規定を設けること、証券取引に関連する証券会社及びその役職員の行為について特別に規制を行なうこと、証券会社の常務に従事する役員の兼職、兼業を承認事項とすることの五点であります。  また、外務員の職務が、証券会社の営業所から離れて、単独で顧客に接し、通常、有価証券の売買等の契約まで行なうものでありますところから、外務員が顧客との間で行なう証券取引に対する証券会社の責任を明確にして、投資者の保護と証券業の信用の向上をはかるため、外務員を登録制とし、これを大蔵大臣の監督下に置き、外務員は、証券会社にかわって、有価証券の売買その他の取引に関し、裁判上の行為を除き、原則として、一切の権限を有するものとみなす規定を設けることといたしております。  なお、これに伴いまして、証券業の免許申請手続、免許の取り消しを受けることとなる事由、外務員の登録手続、欠格事項等を規定し、罰則等について所要の整備を行なうとともに、附則におきまして、改正に伴う経過規定を設け、現在の登録証券業者については、昭和四十三年三月三十一日まで旧法が引き続いてなおその効力を有するものといたしました。  以上、この法律案の趣旨につきまして、御説明申し上げた次第であります。(拍手)      ————◇—————  証券取引法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  31. 船田中

    議長船田中君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。堀昌雄君。   〔堀昌雄君登壇
  32. 堀昌雄

    ○堀昌雄君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました証券取引法の一部改正について、総理大臣以下関係大臣に質問をいたします。  まず最初に、この法案提出の背景について触れておきたいと思います。  最近の証券市場は、皆さまも御承知のように、まことに瀕死の重体でございます。昨十一日には、旧ダウ平均株価は千百六十四円六十三銭にまで低下いたしました。出来高は、この三月に入りまして平均約五千万株程度でございます。昭和三十五年以来四年半にわたって維持されておりましたこの旧ダウ千二百円というベースは、昨年一年間は、日本銀行の一千九百億円にのぼる膨大な信用の供与による日本共同証券の買い出動によりましてからくもささえられてまいりましたけれども、ついに、この三月八日に、四年半ぶりに千二百円の大台を割るに至ったわけであります。この事実は、昭和三十六年の七月十八日にダウが千八百二十九円七十四銭でありましたのを境といたしまして、今日まで、急激に下がってまいったわけでございます。この昭和三十六年の八月というのは、前池田総理が所得倍増のバラ色のムードをふりまいて、設備投資に過大の期待をかけて、国民全体が、株は買えば上がるものだというような錯覚に基づいてこの問題に取りかかったときに、破綻を示しておったのであります。当時と比べますれば、現在の株価は、ダウでいいますならば六五%に下がっておりますけれども、単純平均で見ますならば、三十六年七月十八日に二百十八円二十七銭でありましたものが、現在では九十六円六十二銭でありますから、約四三%に下がっておるのであります。  このように、なぜそれでは株価は低落したのでありましょうか。私たちは、この株価の低落は、片方では、いま申し上げたような共同証券による買いささえ、あるいはこの一月における日本証券保有組合が千三百二十五億円も株をたな上げをしてもらっていて、さらに現在は異常な措置である増資調整ということで増資をストップをしておいて、さらにこの間三月一日の予算委員会において私が質問をいたしましたあの配当分離課税という、まことに税の公平を欠き、累進税制を破壊し、納税意欲を減退させるような天下の悪法を提案して、なお下ささえをしておる中で、今日ここに下がっておるということは、まさに日本資本主義が危殆に瀕しておるといわなければならないのでございます。(拍手)  私たちはこの問題の原因を考えてみなければなりませんが、その原因の第一は、まさに過去における証券業者の過当競争と投資家に対する不信行為にあると思います。これらの問題については、今回提案されておりますところの証券取引法の一部改正によりまして、免許制をとることによって、その業者の経営態度整備いたしますとともに、顧客に接する態度、あるいはその責任について明確化する等、おくればせではありますけれども、この面についての対策としては、われわれは現在の提案は小なくともこの対策の一つであると考え得るのであります。  しかし、そのもう一つの原因である今日の状態を招いた中には、企業側の株式の過剰発行、自分たちの資金を造成するために、任意に増資を行なって、大衆の負担能力を越えた増資を行なったことが、また一つの大きな原因でありますし、また日本経済自体の構造的な問題の中にも、この原因は深く蔵されておるのであります。  その一つは、金融の不正常な状態でございます。いまの日本は池田さんがとりました人為的な低金利政策、戦後続いておりますところの統制的な金利機能の問題、さらに短期金利が長期金利よりは割り高であるという、世界に類を見ないような、この不正常な状態が続いておる限り、私はこの瀕死の病人が生き返る可能性はないと考えるわけでございます。これらはまさに政府金融政策の誤りといわなくて何でありましょうか。(拍手)  その次には、過度の設備投資によりまして、生産が過剰ぎみとなり、損益分岐点が上昇したために、収益率が大幅に低下しておる問題でございます。株価収益率の平均を、昭和三十六年と三十九年の十月で比較してみますと、十九・七四倍でありましたものが、十二・五六倍に低下いたしました。六割三分に低下いたしておるのでありまして、この収益性低下は、いみじくもダウの低下とほぼ同様なわけでございます。  さらにもう一つは、ただいまもいろいろと論議されましたけれども、最近における企業倒産実情でございます。特に富士車輌、山陽特殊製鋼等におきましては、これらは上場会社でございますから、公認会計士の監査報告が当然ついておるわけでありますけれども、この監査報告は適正なものと認めると書いておきながら、事実は粉飾決算が数期にわたって持続された傾向が明らかであります。これはまさに所得倍増計画の誤りでありまして、政府指導性の欠除をあらわしますとともに、同時に無責任経営者の責任はきびしく追及されなければならないと思います。(拍手)  そこで、このような企業の問題、これらを考えてまいりましたときに、私たちはこれらを解決するためには、ただいま申し上げた問題点に対する対策を欠いたのでは、実は現在の証券市場の立ち直りということはほとんど不可能であると私は考えるわけでございます。  そこで、総理大臣以下各大臣にお伺いをいたしますけれども、現在のこのような状態の改善を行なうにあたりまして、日本共同証券もすでに手が詰まっております。日本証券保有組合も終わりました。さらに税制はもう出し切っております。増資調整はこれを無限にやめておくわけにはいきません。この中で一体どうやってこの事態改善することができるのか、はたして方策ありやいなや、これをお伺いをいたしたいわけでございます。  さらにもう一つは、日本経済全体の問題として、先ほど申し上げました金融正常化の問題、あるいは損益分岐点が上がっておるこの状態の中で、日本経済収益性をもたらすような状態はどうやってつくればできるのか。私は日本資本主義はようやく終えんに近づきつつあるのではないかと感ずるのでありますが、もし終えんに近づかないとするならば、確信のある御答弁をちょうだいいたしたいと思います。(拍手)  その次に、大蔵大臣にお伺いをいたします。  現在の証券取引法改正の中には、取引の規模等に基づいて免許の様態をきめると書かれておるわけでございます。これでは取引所の制度が明らかになりませんと、この証券取引法は実は部分的にしか働いてこないわけでございます。ところが、現在の日本の取引所の実情をながめますならば、東京の証券取引所におきまして大手四社のバイカイが約五割ございます。その残りの五割の中のさらに五割が四社の売買でございます。東京証券取引所の百社にのぼる他の会員業者の取引は全体の二五%にすぎません。現在では東京証券取引所はそれゆえに第五の取引所ではないのかといわれておるのが現在の実情でございます。もう一つは、取引所が会員制度になっておりますために、理事長以下の執行部に十分な権限が認められていないという点でございます。形式的には権限がありますけれども、十分な権限が行使できないために、過去におきまして株価形成等についてバイカイ等の措置についてかなり不当な問題がありながら、取引所側はこれを正当化することができなかった経緯毛あるわけでございます。さらに東京の証券取引所は全国の七二・四%の取引がありますが、大阪は二二・二%、名古屋が二・九%で、残りの六取引所に至りましては零コンマ以下の取引しかないというのが現在の実情でございます。これらを考えてみますならば、私は取引所の制度につきましては、当然公益法人の性格を与えることによって、取引所に独立性を付与するとともに、取引所の全国的な組織について新たな角度からの改善が必要だと考えるのでありますが、これらの取引所の制度の問題を含めて、今後の証券取引法改正について、大蔵大臣所見をお伺いいたしたいのでございます。  その次に、大蔵大臣にお伺いをいたしたいのは、公社債市場の育成がきわめて重要な問題であることはすでに御承知のとおりでありますが、この育成についてのプログラムをお示し願いたいと考えるわけでございます。  三番目は、投資信託が現在異常な状態にまいっております。投資信託は三十九年の七月末に残存元本が一兆二千四百億円というピークに達しましたけれども、この二月末には残存元本は一兆一千三百八十三億円と、過去七カ月間で一千二十四億円減じておるのでございます。月平均百五十億円の元本減になっておるのでございます。昭和三十五年には二千七百四十一億円ふえ、三十六年に四千二百二十六億円の増加を来たしたその当時を見るならば、まことに隔世の感がいたすわけでございます。そこでこの状態になりまして、現在基準価格が元本を割っておりますものは、二月現在で五千円額面のもので三千円台になっておりますものが二六・五%、四千円台のものが四九・二%合わせて七六%というのが実は現在元本割れの基準価格になっておるわけでございます。これらが大衆に与えておりますところの大きな損害を一体政府はどう考え、これに対してどう対処しようとするのかをお伺いいたしたいわけでございます。(拍手)  通産大臣にお伺いをいたします。  最近の設備投資の行き過ぎのために、損益分岐点が上がってきて、そのための収益性低下でありますけれども、これについて常に設備投資が行き過ぎたあとでは不況がまいっておるわけでございます。いま最も盛んに行なわれております自動車産業等について見ますならば、目前に自由化を控えて、やがてはこれもピークを越えてダウンになるということは明らかでありますけれども、これらの設備投資に対して、通産大臣として、どのような時期にどのような形で、適切な指導が行なえるのかどうか、その具体的な方針等についてお伺いをいたします。  二番目は、増資調整のために、現在増資がストップされておりますが、現在の市況では増資を再開することは当分困難であろうと考えるのであります。この長期にわたる増資抑制に対して、通産省としては一体どのような対策を持って企業側の資金需要に応じるのかをお答えいただきたいと思います。  企画庁長官にお伺いをいたします。  日本経済の来年度の見通しを政府は次のように発表いたしております。国民生産の伸び率は、三十九年度は九・四%でありましたが、これを四十年度は七・五%に押えたいということでございます。民間設備投資は一二・一%を五・四%、半減以下になります。在庫投資は横ばいでございます。鉱工業生産は一五%であったのが一〇・五%に押えることになります。輸出は二〇%が一二・五%に下がります。要するに、すべての生産活動が下がって、——損益分岐点が高いのに生産活動が下がって、はたして収益性がこの年に期待できるのかどうか。私は、この現在の見通しからするならば、世界経済のスローダウンとともに、現在の日本における経済のあり方というものは、本年はだらだらとした不況の状態で来年に持ち越すのではないか、こう考えるのでありますが、それならば現在の証券市場対策というものは、まさに瀕死の状態から抜けられないと思うのであります。これについての企画庁長官のお考えをお伺いしたいと思います。終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  33. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  本格的な開放経済体制に入りまして、企業といたしましては、こういう際にこそ長期安定資金を必要とする、そういう調達の要のある際に、証券市場が昨年末以来低迷を続けておるということ、ただいままた御指摘になりましたように、増資調整というようなことまでするということは、まことに私は遺憾な事態だと思っております。政府といたしましては、資本市場の育成強化をはかっていくということにいままでも努力してまいりましたが、今後とも市場環境の整備のための施策を前向きで進めてまいるつもりでございます。すなわち、企業、投資者及び証券業者、この三者を一体としてそうして総合的な証券行政を行なっていく。したがって、また同時に、税制金融等の面におきましても、この市場環境の整備に一そうの注意を払いまして、証券取引制度自体についても十分検討を加えて改善し、合理化の方向へいくつもりでございます。  ただいまお話がございましたが、今日の証券市場の、ような状態は、これこそ全体の資本主義経済機構の破綻ではないか、かような議論をされたのでございますが、私も、証券市場のあり方が一般経済情勢と全然別個の行動をするものではないということはよく承知をいたしております。しかして、一般経済情勢は、後ほど企画庁長官からも説明するでございましょうが、最近の国際収支の改善、同時にまた、経済の安定基調への歩み等々を考えてみますると、ただいま仰せになるような事態は絶対に起こるわけのものではございません。これは社会党の方が特別な社会主義的観点から現在の事象をいろいろに御批判になることだと思い、またその立場においての御希望もあろうかと思いますが、さような状態には絶対にならないということをこの機会にはっきりお答えをいたします。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇
  34. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 堀さん御指摘のとおり、昨年から証券市場不振をかこっておりますが、中期経済計画を見ましても、これから四十三年まで五カ年間、八・一%ずつの成長を続けなければならないわけであります。また、そうすることによって、その過程においてひずみの是正がはかれるわけであります。いままでの戦後の事業を静かに考えますと、遺憾ながら、金融にウエートを置き過ぎたということは事実でございます。でありますから、オーバーローンの問題が起き、金融は不正常になっておるのであります。金融の正常化をはかるということはだれでも言われますが、金融の正常化をはかってまいりますためには、どうしてもその一方の産業資金の場である証券市場の育成強化をはからなければ、金融の正常化はできないのであります。金融の正常化を行なうということで証券市場はどうでもいいということになれば、産業の成長率をとめる以外にはないのであります。でありますから、証券市場の育成強化、公社債市場の育成強化ということは、まさに、われわれがこれからより豊かな生活を築こうとするならば、最も緊要な施策として取り上げなければならない問題であるということは御承知いただけると思います。いま倒産の問題等がございますが、これも他人資本に依存をし過ぎておったからこういう状態になるのでありまして、堀さんは税制上の改正等御指摘がございましたけれども、日本の金融を正常化し、しかも自己資本比率を上げていくということがいかに必要であるかということに対して、ひとつもう一ぺん静かに評価をしていただきたいと思います。(拍手)  それから、証券取引法改正をお願いしておるわけでありますが、取引所の制度についてもう一ぺん改正を考えないかということでありますが、まさにそのとおりであります。これは企業責任の確立とか、公認会計士制度の問題とか、取引所の問題、こういう問題がたくさん総合的に運用せられて日本の市場が育成強化されていくわけであります。答申の法律化につきましても、取引所の制度もできるだけこれに入れたい、こういうふうに考えたのでありますが、一ぺんにこの問題を全部片づけられないということで、まず第一段におきましては証券業者の体質改善をはかるということにいたしました。第二の段階におきましては、取引所の制度、権能等に十分手をつけなければならぬことは、お説のとおりでございます。しかし、法律改正を待つまでもなく、取引所や証券流通制度の問題につきましては、法律だけではなく、現在の状態においても前向きに対処できる問題に対しては、勇気を持って対処すべきだと思います。  第二の、公社債市場の育成策はどうかということでございますが、これは申し上げるまでもなく、金融の正常化をはかっていき、税制金融等の問題で対処しながら、特に具体的には金利、発行条件の弾力化というようなものに踏み切っていかなければならぬと思います。なお、証券に対する金融に対しては特に確立をする必要があると思います。  最後に、投資信託の問題でございますが、確かに一部に慎重さを欠いておったというような面もございます。今後は堅実な運用ということを基本的に指導しなければならぬと思います。元本割れユニットにつきましては、償還期限の延長等をやったほうがいいという人たちもあるようであります。投資を継続したいという人もあるようでありますので、こういう申し出が委託会社からありますれば、無報酬で延長を考慮しようという考えでございます。(拍手)   〔国務大臣高橋衛君登壇
  35. 高橋衛

    国務大臣(高橋衛君) お答え申し上げます。  政府は、先般の中期経済計画の基本的な考え方に基づきまして、昭和四十年度の経済の運営の基本方針を、経済の成長を安定的な基調に持っていくという考え方のもとに打ち立てたわけでございます。  しこうして、お尋ねの貿易の関係を申し上げますると、これは各外国の政府の公的な発表でございますが、アメリカにつきましては、暦年で、一九六四年、昨年が五・二%の成長でございますが、今年は四・三というふうに見通しをいたしております。EECの諸国につきましては、各国それぞれ出入りはございますが、EEC全般といたしまして、一九六四年が五%、六五年が四%というふうにいささか鈍化をいたしております。その他、大洋州等に関しましては、相当な成長を政府機関も発表いたしております。ただし、低開発国につきましては、一次産品の価格が相当軟調であります等の関係からいたしまして、そう高度な伸びはとうてい期待できない、かような観察をいたしておるような次第でございます。したがって、世界貿易の伸びは、三十九年度におきましては一〇%を相当こえるという見通しでございますが、それに対して、四十年度におきましては、七・二%の世界貿易の伸びを前提といたしまして、日本の輸出の伸びを三十九年度が二二%をこえる実績になろうかと思うのでありますが、それに対して一二・五%というふうに、ある程度ダウンした、鈍化されたところの程度の伸び率を見ておる次第でございます。  しかしながら、輸出並びに個人消費の伸び、または政府の財貨サービスの程度等を総計いたしますと、実質では七・五%の成長を見ておるわけでございますが、名目におきましては二%の伸びになっておる。これに対して、鉱工業の生産は一〇・五でございます。したがって、その関係からは過剰生産等の問題が起こる心配はない、かように存じておる次第でございます。しこうして、この際申し上げておきたいことは、昭和三十九年度の相当予想を越えたところの高度な成長の上に、さらにそれだけの成長が行なわれるわけでございますから、したがって、その点はそれほどの心配はなかろう、かように見ておる次第でございます。  ただ、政府といたしましては、均衡のとれた安定的な基調に成長を持っていくためには、過去にたびたび経験いたしましたような、シェア意識に基づくところの過度の競争と申しますか、経済の過熱を来たすようなことがありますと、そういうふうな心配がございますので、そういうふうな危険のないように、政府、民間相互に十分話し合いをいたしまして、そういうふうな危険のないような措置をとりたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣櫻内義雄登壇
  36. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 設備投資についてのお尋ねでございましたが、過去における行き過ぎの状況等から考えまして、現在通産省としては、産業政策上の見地から、適切なところに融資されるようにこれを金融機関によく反映せしめたい、こういうことで、日本銀行あるいは各市中銀行との懇談をいたしておるようなわけでございます。  増資についてのお尋ねでございましたが、これが長期にストップせられておることは、健全な資金を縛る上に欠けるところがあろうかと思います。最近の国際収支の改善状況からいたしまして、通産省としては、ケース・バイ・ケースで増資のことを考えてもらいたい、こういう意見を持っております。(拍手
  37. 船田中

    議長船田中君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  38. 船田中

    議長船田中君) 本日は、これにて散会いたします。    午後四時十五分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 高橋  等君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         通商産業大臣  櫻内 義雄君         郵 政 大 臣 徳安 實藏君         労 働 大 臣 石田 博英君         国 務 大 臣 高橋  衛君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府総務長官 臼井 莊一君         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         法務省民事局長 新谷 正夫君         農林政務次官  舘林三喜男君      ————◇—————