○堀昌雄君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました
証券取引法の一部
改正について、
総理大臣以下
関係各
大臣に質問をいたします。
まず最初に、この法案提出の背景について触れておきたいと思います。
最近の証券市場は、皆さまも御承知のように、まことに瀕死の重体でございます。昨十一日には、旧ダウ平均株価は千百六十四円六十三銭にまで
低下いたしました。出来高は、この三月に入りまして平均約五千万株
程度でございます。
昭和三十五年以来四年半にわたって維持されておりましたこの旧ダウ千二百円というベースは、昨年一年間は、日本銀行の一千九百億円にのぼる膨大な信用の供与による日本共同証券の買い出動によりましてからくもささえられてまいりましたけれども、ついに、この三月八日に、四年半ぶりに千二百円の大台を割るに至ったわけであります。この事実は、
昭和三十六年の七月十八日にダウが千八百二十九円七十四銭でありましたのを境といたしまして、今日まで、急激に下がってまいったわけでございます。この
昭和三十六年の八月というのは、前池田
総理が所得倍増のバラ色のムードをふりまいて、
設備投資に過大の期待をかけて、
国民全体が、株は買えば上がるものだというような錯覚に基づいてこの問題に取りかかったときに、破綻を示しておったのであります。当時と比べますれば、現在の株価は、ダウでいいますならば六五%に下がっておりますけれども、単純平均で見ますならば、三十六年七月十八日に二百十八円二十七銭でありましたものが、現在では九十六円六十二銭でありますから、約四三%に下がっておるのであります。
このように、なぜそれでは株価は低落したのでありましょうか。私たちは、この株価の低落は、片方では、いま申し上げたような共同証券による買いささえ、あるいはこの一月における日本証券保有組合が千三百二十五億円も株をたな上げをしてもらっていて、さらに現在は異常な
措置である増資調整ということで増資をストップをしておいて、さらにこの間三月一日の予算
委員会において私が質問をいたしましたあの配当分離課税という、まことに税の公平を欠き、累進
税制を破壊し、納税意欲を減退させるような天下の悪法を提案して、なお下ささえをしておる中で、今日ここに下がっておるということは、まさに日本
資本主義が危殆に瀕しておるといわなければならないのでございます。(
拍手)
私たちはこの問題の
原因を考えてみなければなりませんが、その
原因の第一は、まさに過去における証券業者の過当競争と投資家に対する不信行為にあると思います。これらの問題については、今回提案されておりますところの
証券取引法の一部
改正によりまして、免許制をとることによって、その業者の
経営態度を
整備いたしますとともに、顧客に接する
態度、あるいはその
責任について明確化する等、おくればせではありますけれども、この面についての
対策としては、われわれは現在の提案は小なくともこの
対策の一つであると考え得るのであります。
しかし、そのもう一つの
原因である今日の状態を招いた中には、
企業側の株式の過剰発行、自分たちの
資金を造成するために、任意に増資を行なって、大衆の負担能力を越えた増資を行なったことが、また一つの大きな
原因でありますし、また日本
経済自体の
構造的な問題の中にも、この
原因は深く蔵されておるのであります。
その一つは、
金融の不正常な状態でございます。いまの日本は池田さんがとりました人為的な低
金利政策、戦後続いておりますところの統制的な
金利機能の問題、さらに短期
金利が長期
金利よりは割り高であるという、世界に類を見ないような、この不正常な状態が続いておる限り、私はこの瀕死の病人が生き返る可能性はないと考えるわけでございます。これらはまさに
政府の
金融政策の誤りといわなくて何でありましょうか。(
拍手)
その次には、過度の
設備投資によりまして、
生産が過剰ぎみとなり、損益分岐点が
上昇したために、収益率が大幅に
低下しておる問題でございます。株価収益率の平均を、
昭和三十六年と三十九年の十月で比較してみますと、十九・七四倍でありましたものが、十二・五六倍に
低下いたしました。六割三分に
低下いたしておるのでありまして、この
収益性の
低下は、いみじくもダウの
低下とほぼ同様なわけでございます。
さらにもう一つは、ただいまもいろいろと論議されましたけれども、最近における
企業の
倒産の
実情でございます。特に富士車輌、山陽特殊製鋼等におきましては、これらは上場会社でございますから、公認会計士の監査
報告が当然ついておるわけでありますけれども、この監査
報告は適正なものと認めると書いておきながら、事実は粉飾決算が数期にわたって持続された
傾向が明らかであります。これはまさに所得倍増
計画の誤りでありまして、
政府の
指導性の欠除をあらわしますとともに、同時に無
責任な
経営者の
責任はきびしく追及されなければならないと思います。(
拍手)
そこで、このような
企業の問題、これらを考えてまいりましたときに、私たちはこれらを解決するためには、ただいま申し上げた問題点に対する
対策を欠いたのでは、実は現在の証券市場の立ち直りということはほとんど不可能であると私は考えるわけでございます。
そこで、
総理大臣以下各
大臣にお伺いをいたしますけれども、現在のこのような状態の
改善を行なうにあたりまして、日本共同証券もすでに手が詰まっております。日本証券保有組合も終わりました。さらに
税制はもう出し切っております。増資調整はこれを無限にやめておくわけにはいきません。この中で一体どうやってこの
事態を
改善することができるのか、はたして方策ありやいなや、これをお伺いをいたしたいわけでございます。
さらにもう一つは、日本
経済全体の問題として、先ほど申し上げました
金融正常化の問題、あるいは損益分岐点が上がっておるこの状態の中で、日本
経済に
収益性をもたらすような状態はどうやってつくればできるのか。私は日本
資本主義はようやく終えんに近づきつつあるのではないかと感ずるのでありますが、もし終えんに近づかないとするならば、確信のある御答弁をちょうだいいたしたいと思います。(
拍手)
その次に、
大蔵大臣にお伺いをいたします。
現在の
証券取引法の
改正の中には、取引の規模等に基づいて免許の様態をきめると書かれておるわけでございます。これでは取引所の制度が明らかになりませんと、この
証券取引法は実は部分的にしか働いてこないわけでございます。ところが、現在の日本の取引所の
実情をながめますならば、東京の証券取引所におきまして大手四社のバイカイが約五割ございます。その残りの五割の中のさらに五割が四社の売買でございます。東京証券取引所の百社にのぼる他の会員業者の取引は全体の二五%にすぎません。現在では東京証券取引所はそれゆえに第五の取引所ではないのかといわれておるのが現在の
実情でございます。もう一つは、取引所が会員制度になっておりますために、理事長以下の執行部に十分な権限が認められていないという点でございます。形式的には権限がありますけれども、十分な権限が行使できないために、過去におきまして株価形成等についてバイカイ等の
措置についてかなり不当な問題がありながら、取引所側はこれを正当化することができなかった経緯毛あるわけでございます。さらに東京の証券取引所は全国の七二・四%の取引がありますが、大阪は二二・二%、名古屋が二・九%で、残りの六取引所に至りましては零コンマ以下の取引しかないというのが現在の
実情でございます。これらを考えてみますならば、私は取引所の制度につきましては、当然公益法人の性格を与えることによって、取引所に独立性を付与するとともに、取引所の全国的な組織について新たな角度からの
改善が必要だと考えるのでありますが、これらの取引所の制度の問題を含めて、今後の
証券取引法の
改正について、
大蔵大臣の
所見をお伺いいたしたいのでございます。
その次に、
大蔵大臣にお伺いをいたしたいのは、公社債市場の育成がきわめて重要な問題であることはすでに御承知のとおりでありますが、この育成についてのプログラムをお示し願いたいと考えるわけでございます。
三番目は、投資信託が現在異常な状態にまいっております。投資信託は三十九年の七月末に残存元本が一兆二千四百億円というピークに達しましたけれども、この二月末には残存元本は一兆一千三百八十三億円と、過去七カ月間で一千二十四億円減じておるのでございます。月平均百五十億円の元本減になっておるのでございます。
昭和三十五年には二千七百四十一億円ふえ、三十六年に四千二百二十六億円の増加を来たしたその当時を見るならば、まことに隔世の感がいたすわけでございます。そこでこの状態になりまして、現在基準価格が元本を割っておりますものは、二月現在で五千円額面のもので三千円台になっておりますものが二六・五%、四千円台のものが四九・二%合わせて七六%というのが実は現在元本割れの基準価格になっておるわけでございます。これらが大衆に与えておりますところの大きな損害を一体
政府はどう考え、これに対してどう対処しようとするのかをお伺いいたしたいわけでございます。(
拍手)
通産大臣にお伺いをいたします。
最近の
設備投資の行き過ぎのために、損益分岐点が上がってきて、そのための
収益性の
低下でありますけれども、これについて常に
設備投資が行き過ぎたあとでは不況がまいっておるわけでございます。いま最も盛んに行なわれております自動車産業等について見ますならば、目前に自由化を控えて、やがてはこれもピークを越えてダウンになるということは明らかでありますけれども、これらの
設備投資に対して、
通産大臣として、どのような時期にどのような形で、適切な
指導が行なえるのかどうか、その具体的な方針等についてお伺いをいたします。
二番目は、増資調整のために、現在増資がストップされておりますが、現在の市況では増資を再開することは当分困難であろうと考えるのであります。この長期にわたる増資抑制に対して、
通産省としては一体どのような
対策を持って
企業側の
資金需要に応じるのかをお答えいただきたいと思います。
企画庁長官にお伺いをいたします。
日本
経済の来年度の見通しを
政府は次のように発表いたしております。
国民総
生産の伸び率は、三十九年度は九・四%でありましたが、これを四十年度は七・五%に押えたいということでございます。民間
設備投資は一二・一%を五・四%、半減以下になります。在庫投資は横ばいでございます。鉱工業
生産は一五%であったのが一〇・五%に押えることになります。輸出は二〇%が一二・五%に下がります。要するに、すべての
生産活動が下がって、——損益分岐点が高いのに
生産活動が下がって、はたして
収益性がこの年に期待できるのかどうか。私は、この現在の見通しからするならば、世界
経済のスローダウンとともに、現在の日本における
経済のあり方というものは、本年はだらだらとした不況の状態で来年に持ち越すのではないか、こう考えるのでありますが、それならば現在の証券市場
対策というものは、まさに瀕死の状態から抜けられないと思うのであります。これについての企画庁長官のお考えをお伺いしたいと思います。終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕