○藤田高敏君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま大蔵常任
委員会理事から報告のありました
物品税法の一部を
改正する
法律案について、反対討論を行なうものであります。(
拍手)
まず、その反対
理由の第一は、今
国会に
提案をされている所得税法、法人税法及び租税特別
措置法等々一連の税制
改正の方向と
内容は、資本家や大資産家擁護、優遇の税制
改正であり、このことは、勤労大衆にとっては、逆に苛斂誅求の、物価騰貴にさえ追いつけない税制
改正であります。(
拍手)このことは、大資本あって大衆無視の態度でありまして、物品税を減税しようとしない
政府の怠慢を強く責めなければならないからであります。(
拍手)
ちなみに、その
内容の二、三を指摘するなれば、まず第一に、所得税を減税のあり方に問題点を見出すことができるのであります。すなわち、その所得税は、納税人員において、ここ二年来、毎年二百万人
程度も
増加さし、しかも、その総所得税収中に占める年間所得百万円以下の階層は、九二%にも及んでいるのであります。そして特に問題点となるのは、標準世帯五人家族における課税最低額五十四万四千二百五十九円は、大蔵省のマーケットバスケット方式による資料によりましても、そのエンゲル係数は四六・五六%であり、これは一日の食費わずか百六十七円、一食五十円のラーメン一ぱいの
生活費にしか匹敵しない貧弱なものであります。これでは、かわいい子供にさえ毎日牛乳一本、なま卵の一個さえせ食べさすことのできない食費
構成になっておるのでありまして、まさに最低
生活費を侵害している驚くべき勤労所得税といわなければなりません。(
拍手)
また、その第二の問題として、租税特別
措置法による利子分離課税をあげることができるのであります。これを卑近な計算によってみますと、サラリーマンの課税所得が百万円の場合は、その所得税は約二十万円であるにもかかわらず、利子分離課税の場合はその半分で済むのであります。これがさらに一億円の預金者で年利息五分五厘で五百五十万の利子所得者を例にとりますと、分離課税によりわずか五十五万しか所得税がかかりませんが、サラリーマンの場合には総合累進課税となり、約二百万の所得税を納めなければなりません。何と矛盾に満ちた税制でありましょうか。(
拍手)まさに驚くべき高額所得者擁護の税制
改正といわなければなりません。
いま一つ、今次税制
改正の最大の改悪点といわれている配当分離課税について、これまた身近な例をあげてみますと、勤労所得者は汗水流して働いた標準世帯五人に対し、五十四万
程度の収入に税金をかけられているにもかかわらず、片や、寝ていても配当所得だけで
生活をする者にとっては、百八十一万九千三百四十円までは無税となっており、そればかりでなく、選択
制度の新設によって、ごく部分的条件を除けば、何億何千万の配当所得があろうとも、一五%かっきりの源泉徴収だけで、総合累進課税からははずされる仕組みになっており、
日本税制始まって以来の改悪といわれるゆえんも、ここにあるのであります。(
拍手)
また、税制
調査会の答申を逆にねじ曲げた点においても、戦後最悪の税制
改正といわなければなりません。
かかる全体的な税制
改正の中にあって、いま討議されている物品税四品目を除く、たばこ、砂糖、電気ガス税等、
国民生活に直結している間接税はどうなっているでありましょうか。これら間接税は、直接税に比べて
国民の抵抗は少なく、かつ負担感の鈍い、そして取りやすいという性格を持つ間接税の弱みを巧みに利用して、今次
改正では間接税に関する限りは全く触れていないのであります。したがって、私が反対をする第二の具体的
理由は、百万長者であろうと、
生活保護世帯であろうと、所得税のかからない低所得者であろうとも、同率同額の税金のかかる逆進性の強い間接税に対しては、ここ三、四年来の物価高騰に見合うものさえ全く黙殺してしまって、何らの軽減
措置さえも講じない
政府の片手落ち不
均衡政策が、どうしても納得できないからであります。(
拍手)
直接税の
対象者は、その立場の相違によってそれぞれの不満はあろうとも、相対的に減税の
対象になっていますが、所得税の課税水準にさえ達しない低所得者層以下の者は、減税の恩典には全く浴さないのみか、物価高騰からくる
生活の重圧と不合理、不公平な税制
改正を通じて、
国民の所得格差とその矛盾はますます
拡大されているのであります。(
拍手)池田
内閣から佐藤
内閣に引き継がれた表看板政策には、所得格差の是正ということがその中心になっていたのではなかったのか。かかる矛盾
拡大の
政治が、佐藤
内閣の一枚看板ともいうべき
人間尊重の
政治といえるのか。私は、この
法律案審議を通して、
佐藤総理と
政府に対して強く反省を求めるものであります。(
拍手)
次に、私の反対する第三の
理由は、物品税それ自体の
改正内容に非常な不合理があるからであります。それは、いみじくも、税制
調査会の答申においても、今次
改正の小型乗用車、カラーフィルム、小型レコード、カラーテレビ受像機の四品目は、ここ三年来の暫定軽減
措置をとってきた目的がほぼ達成されているので、期限到来を待ってもとに返すべきだと指摘しているのであります。昨年の物品税
改正時におけるステレオ装置、自動車用クーラー、ルームクーラーと、今回の
改正品目合わせて七品目は、百品目以上にも及ぶ他の物品税
対象品目に比較すれば、高額所得者層を
対象とした軽減
措置であり、また企業利潤擁護の産業政策から出た対策であって、大多数の勤労
国民にはまだまだ縁遠い品物ばかりであります。(
拍手)これらの物品にかかる軽減
措置をとるのであれば、それ以前の政策配慮として、
国民生活にもっともっと密着している消耗品的性格としてのマッチであるとか、清涼飲料水、ジュース、化粧品やあるいはたばこ入れ、灰皿、掛け時計のごとき物品に税金をかけていること自体ナンセンスと目されるこれらの物品については、物品税を当然廃止すべきであります。(
拍手)また、消費
生活の多様化によって普及しつつある電気、ガス、石油ストーブ、扇風機等こそ、昨年と今回の
改正品目に先行して基本税率の軽減と廃止をしてこそ、物品税本来の目的に合致するものといわなければなりません。(
拍手)
最後に、反対する第四の
理由として、今次
改正によってこれら四品目に軽減
措置をとろうとする
政府のその
理由がきわめて薄弱であるからであります。すなわち、
政府は、その
改正理由として、貿易の自由化と国際競争力の
強化によりどころを求めておるのであります。このことについては、これまた先に触れた税制
調査会の答申にも逆行するものであり、その
改正を容認しなければならない積極的
理由が全然ないのであります。たとえば、これら四品目について特別
措置が講じられた
昭和三十六年当時と三十九年の対比におけるこれら物品の価格と生産高の推移を見ても、あまりにも明瞭であります。価格はいずれも低下しておりますし、生産高においては、小型乗用者は二・三倍に、カラーフィルムは二倍に、小型レコードは三倍、カラーテレビに至っては十九倍にも達しているのであります。このような実態から見ましても、貿易の自由化に名をかりてこれらの生産企業にのみ優遇
措置をとることは、他の物品税との
均衡を失することを含めて、その根拠はきわめて薄弱であり、不合理そのものであります。(
拍手)
貿易自由化に対処する基本政策は、小手先細工ともいうべき物品税の手直しにあるのではなく、自由化をするのか、それともしないのか、するとすればいつからやれるのか、それ自体が中心になるべきであります。昨年通常
国会における通産大臣の
答弁では、自動車の自由化はおそくとも本年、四十年三月までには行なうと言明しているにもかかわらず、現
内閣はいまだこれを実行していない。かかる優柔不断な態度に終始する現
内閣に、はたして貿易の自由化を口にする資格があるかどうかさえ疑問を持つものであります。(
拍手)自民党
政府の政策方針は、半ば思いつきと、さか立ちしているうらみさえあるといわざるを得ないのであります。(
拍手)
最後に、私は、あえて自動車税について付言いたしますと、物品税では軽減を行ない、片や、今
国会に
提案されている地方税法の一部
改正では自動車税の引き上げを断行しようとしているのでありまして、その政策の基本をいずれに置いているのか、これまたはなはだ理解に苦しむところであります。
以上、指摘いたしましたように、今回の物品税
改正の
理由とその根拠は、全く薄弱、かつ不
均衡と矛盾に満ちたものであり、労働者、農民大衆の立場に立つわが党としては断じて容認できません。したがって私は、
政府に対し、すみやかに一般
生活必需品の物品税を撤廃すべきであることを強く
要求いたしまして、私の反対討論を終わるものであります。(
拍手)