○大村邦夫君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
提案されました
小規模企業共済法案に対し、総理並びに
関係各
大臣に若干の
質問をいたさんとするものであります。(
拍手)
私がまずお伺いしたい点は、
政府の
中小企業政策に対する基本的な姿勢についてであります。
佐藤総理は、昨年十一月の臨時
国会での所信表明演説で、前
内閣の諸施策を正しく発展させるとともに、長期的な展望のもと、急ぎつつもあせらず、勇断をもって国政を進めると断言したのであります。しかも、世論のきびしい糾弾を受けている高度経済成長
政策のひずみ是正を取り上げ、
中小企業については設備の近代化、
事業の共同化、小規模
経営の
改善等につき、財政、金融、税制の面から格段の
措置を講ずる所存を明らかにしたのであります。しかるに、具体的な施策はいかがでありましょうか。試みに、あらゆる財源を使い果たし、超膨張をきわめた明年度予算を見まするに、
中小企業関係予算は、物価騰貴のはね返り、商工会職員のベースアップなど、
経費の当然増や既存の施策にほんの申しわけ程度の色をつけたにすぎないではありませんか。
企業数約三百五十四万、全産業の九九・八%近くを占める
中小企業の
一般会計における
対策費は、前年度比一一二%の伸び率という
政府の宣伝にもかかわらず、その絶対額はわずか百五十八億円、これに
中小企業信用保険公庫出資分六十億を加えても、約二百十八億円にすぎません。これは総予算のわずか〇・六%に満たない貧弱さで、前年度の約〇・五%とほとんど変わらないのであります。これまで
中小企業予算は、総予算に比べて常にコンマ以下だと皮肉られた
状態は、
中小企業の危機が叫ばれておる今日でも、依然として
改善されていないのでありまして、
中小企業へのひずみを拡大し続けた池田
内閣に比べて、佐藤
内閣は一体どれだけの勇断ある
措置をとっておると主張できるのか、
佐藤総理の所見をただすものであります。(
拍手)
私が
質問いたしたい第二の点は、
政府の
中小企業対策の本質が、
企業の
保護育成でなく、切り捨てにあるのではないかという点であります。
私は、試みに
昭和三十二年以来の経済白書、国民所得倍増計画、
中小企業基本法、中期経済計画など一連の
政府の問題提起なり計画なりを調べてみたのであります。ところが、
政府はその中で、
中小企業対策は、単なる
保護政策におちいってはならないとか、開放体制のもとでは
生産性の低い産業をそのままの形で残すことはできないとか、いわゆる開放体制という大義名分のもとに、明確に
中小企業の整理転換を随所に投げかけておるのであります。私は、その底に一貫して流れておる思想が、
中小企業の切り捨て
政策にあることをあらためて知ったのであります。
政府のいう
中小企業近代化は、
中小企業の上層部または系列
企業になし得るもののみの近代化であって、他は巧妙にスクラップダウンさせられているのであります。
自民党政府は、口を開けば経済の二重構造の解消といい、倍増
政策のアフターケアといい、さらに高度成長のひずみ是正といって、いかにも革命的、抜本的
中小企業政策が打ち出されるかの印象を与えながら、その
実態を大
企業偏重の
政策に終始させたことは、私がここであらためて触れるまでもないでありましょう。昨年の
中小企業の倒産がついに戦後の最高を記録し、今年に入ってもさらにその深刻な傾向を変えようとしない現実は、何よりも
政府の
中小企業切り捨て
政策の本質を雄弁に物語っているではありませんか。(
拍手)しかも、
政府が把握している倒産記録たるや、民間の統計資料に依存するという無
責任きわまるもので、それも負債額一千万円以上ということであります。負債額一千万円以下の中小零細
企業の倒産は、
調査統計資料が全くないために、その
対策は野放し
状態であります。
政府は、一体、病体の的確な診断を行なわずして、いかなる治療を施そうというのでしょうか。この
状態のもとでは、おそらく三月危機といわれる年度末に向かって、一そうの増大が予測されることを心配し、
政府の猛省と善処を促す次第であります。(
拍手)
最近、一連の金融緩和
措置がとられ、さらに四月ころには公定歩合の再引き下げさえうわさされておりますが、金融が緩和したからといって、直ちに
企業倒産が減るわけではないと、田中蔵相すらいみじくも告白しているように、金融緩和は
中小企業に潤うものではないと考えられます。逆に、選別融資を
強化し、よりドラスチックに資本の集中と、系列外
中小企業の倒産を促進することになるでありましょう。中期経済計画は、まさにその方向を示していると思われるのでありますが、開放体制のもとにおいて、
中小企業の体質をいかにして変えようと考えているのか、経済企画庁長官の
見解を
お尋ねします。また、
中小企業近代化の具体的な金融
政策について、田中大蔵
大臣の考えをお聞きしたいのであります。
以上、二つの基本的な問題点を明確にして、以下、
小規模企業共済法案について、その疑点をただしたいのであります。
本法案は、ただいまの
通産大臣の
提案説明でも明らかなとおり、二十名以下の小規模
企業の相互扶助による共済制度であります。ところが、
政府は、この運営に当たる
事業団に対して、わずかに資本金四千万円の出資と、三千万円の
事業費補助を行ない、これで零細
企業対策の能事終われりとしているのであります。あとは業者の自前による任意契約にゆだねているのでありますが、給付
内容はきわめて悪く、相互扶助制度のていすらなしていない点に、私は強い不満を表明せざるを得ないのであります。(
拍手)
共済金は、一年未満は掛け捨て、三年までのものは元金だけ、三年以上三十年に対しては逐次利息がつくというようになっているのでありますが、会社倒産などで役員の辞任を余儀なくされた場合の共済金は、契約掛け金をかけ始めてから、二十年を
経過しなければ、年利五分五厘の定期に及ばない仕組みになっています。
政府は、一体これら小規模零細
企業は、二十年、三十年先のゆうちょうな共済制度を楽しむほど、安穏な
状態に置かれているとお考えでしょうか。
佐藤総理の言われた長期的な展望とは、こんなちゃちな共済制度であったのでありましょうか。
もちろん私は共済制度そのものを否定しようというのではございません。とりわけ中小零細
企業に対しては、給付
内容のいい制度を、
政府の積極的な助成によって確立すべきことを強く主張いたします。しかし、それ以上に、こういう小規模
企業が直面しておる問題点の解明と
対策こそ、緊急に必要としているのではあるまいか。二、三十年先に、ある程度の利子がついて返ることもけっこうでございましょうが、それよりも、ここ二、三年をどう生き抜いていくかどうかが、小規模
企業の悩みであり、心配であります。しかも、
政府の
中小企業政策の本質が、切り捨て
政策にある以上、ここ二、三年の危機に際して、何らの恩典もない共済制度が、一体何の役に立つのでありましょうか。
大資本の高度成長の
犠牲を一身に受けて切り捨てられようとする小規模零細
企業に対して、わずかの出資を与えるかわりに、転換、整理の戦後処理を自前でやらせようというような、血も涙もない
政策は、革命的な
政策ではないのでありまして、この際再
検討すべきだと考えますが、櫻内
通産大臣の所見を承りたいのであります。
最後に、私は、この法案と関連して、今日
中小企業が危機に立っている
原因を指摘し、その具体的な
対策の柱を特に提起したいのであります。
中小企業の危機要因は、私
どもがしばしば指摘しておりますように、大
企業の圧迫を第一にあげなければなりません。さらに下請
企業に対する不公平な取引、過当競争の激発、
労働力の不足、構造上の矛盾の激化と、金融、税、財政の大
企業偏重
主義が、一そう拍車をかけているのであります。したがって、その
対策は、金融、財政、税制の偏重をやめること、
中小企業の市場分野を確保すること、下請条件の適正化をはかること、歩積み、両建てを廃止すること、独占的
企業の管理価格を取り締まること、貿易の振興助成策をとること、商工会指導員の身分保証を確立すること等を早急に確立すべきであります。
昨年の第四十七臨時
国会で、
中小企業の危機打開に関する決議がなされましたが、その中で金融
対策、特にやみ金利の取り締まり、倒産予防
対策、倒産
実情の
調査と
原因の
究明など、六項目にわたって緊急に
検討を加え、遺憾なき
措置を講ずるよう、
政府に要求したのであります。六項目のうち、小規模
事業の相互扶助制度の確立が、ただいま
提案された貧弱な
法律案となってあらわれているのでありますが、他の
措置はどうなっているのか、私
どもが主張する
中小企業対策とあわせて、櫻内
通産大臣の明確なる答弁を承りたいと思うのであります。
以上、私は、本法案に関連して重要な諸点について御
質問申し上げましたが、今日
政府が、そして
政治家がなすべき
政治の要諦は、ないよりまし程度の
政策や法案を言いわけ的につくることではなく、現に
政治の恩典を何ら受けていない、暗い谷間にある
人々に対し、日の当たる
政策や法案をすみやかにつくることであることを、ここに強く申し添え、私の
質問を終わるものであります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕