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1965-03-02 第48回国会 衆議院 本会議 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二日(火曜日)     —————————————  議事日程 第十号   昭和四十年三月二日     午後二時開議  第一 国会議員選挙等執行経費基準に関   する法律の一部を改正する法律案内閣提   出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  中央更生保護審査会委員任命につき同意を求め   るの件  日程第一 国会議員選挙等執行経費基準   に関する法律の一部を改正する法律案内閣   提出)  北炭夕張炭鉱爆発事故に関する緊急質問(岡   田春夫提出)  夕張炭鉱爆発事故に関する緊急質問小平忠君   提出)  小規模企業共済法案内閣提出)の趣旨説明及   び質疑    午後二時三十八分開議
  2. 船田中

    議長船田中君) これより会議を開きます。      ————◇—————  中央更生保護審査会委員任命につき同意を求めるの件
  3. 船田中

    議長船田中君) おはかりいたします。  内閣から、中央更生保護審査会委員神田多恵子君を任命したいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。      ————◇—————  日程第一 国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出
  5. 船田中

    議長船田中君) 日程第一、国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。
  6. 船田中

  7. 中村庸一郎

    中村庸一郎君 ただいま議題となりました国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、公職選挙法改正に関する調査特別委員会における審議経過並びに結果について御報告申し上げます。  本案は、前の通常国会におきまして公職選挙法の一部に所要改正が加えられ、また、最近における公務員給与改定賃金変動等に伴い、国会議員選挙等執行について国が負担する経費で、都道府県及び市区町村に交付するものの現行基準実態に即さないものとなっておりますので、これに所要改正をしようとするものでありまして、そのおもな内容は次のとおりであります。  第一に、最近における公務員給与改定賃金変動及び選挙事務執行実情にかんがみ、超過勤務手当積算単価並びに人夫賃嘱託手当及び運搬費単価をそれぞれ引き上げ、投票所及び開票所経費等基準額改定しようとするものであります。  第二に、投票管理者開票管理者投票立ち会い人開票立ち会い人等費用弁償額実情に即するよう引き上げようとするものであります。  第三に、先般の公職選挙法改正により、ポスター掲示場設置数が増加したことに伴い、この経費の額について、候補者数に応じて段階を設け、基準額合理化をはかろうとするものであります。  第四に、従来、国が都道府県及び市区町村選挙管理委員会において要した経費を交付する場合は、総額の五%相当額を削減して交付していたのでありますが、これを改め、その全額を交付しようとするものであります。  第五に、個人演説会立て札費単価及び不在者投票特別経費の額を、実情に即するよう引き上げようとするものであります。  なお、この法律は公布の日から施行することといたしております。  以上が本案のおもな内容であります。  本案は、二月二日本特別委員長に付託され、翌三日、吉武自治大臣より提案理由説明を聴取し、参考人から意見を聴取する等、慎重に審議を行なってまいりましたが、これら詳細につきましては会議録に譲ることといたします。  かくて、二月二十六日、本案に対する質疑を終了し、直ちに採決の結果、本案全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党及び民主社会党共同提案にかかる次の附帯決議を付することに決しました。  一、執行経費中個々の経費算定基準については、最近の選挙実情に即しない点があると思われるので、政府は、すみやかにその実態につき調査し、この法律の全般にわたって根本的な検討を行ない、適正な改正措置を講ずること。  一、政府は将来ポスター掲示場については、可能なところから順次恒久的設備を促進するとともに、これに要する財源措置を行ないうるように検討すること。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  8. 船田中

    議長船田中君) 採決いたします。  本案委員長報告可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  9. 船田中

    議長船田中君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  北炭夕張炭鉱爆発事故に関する緊急質問   (岡田春夫提出
  10. 海部俊樹

    海部俊樹君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  すなわち、この際、岡田春夫提出北炭夕張炭鉱爆発事故に関する緊急質問、及び小平忠提出夕張炭鉱爆発事故に関する緊急質問を順次許可されんことを望みます。
  11. 船田中

    議長船田中君) 海部俊樹君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  まず、岡田春夫提出北炭夕張炭鉱爆発事故に関する緊急質問を許可いたします。岡田春夫君。   〔岡田春夫登壇
  13. 岡田春夫

    岡田春夫君 北炭夕張鉱ガス爆発事故に関し、私は、社会党を代表して、総理大臣をはじめ関係大臣に若干の質問を行ないたいと思います。  まず、質問に入る前に、このたびの災害によって殉職されました六十一名の方々の御冥福を祈るとともに、重傷を受けられた十七名の方々の一日も早い御回復を心からお祈り申し上げます。(拍手)  質問の第一点は、一昨年の三池炭鉱における大惨事に引き続き、今回のガス爆発事故など、最折頻発する炭鉱災害根本原因についてであります。  政府は、ここ数年来、貿易自由化高度成長政策の美名に隠れて、アメリカの石油独占資本の圧力に屈し、日本民族産業である石炭企業を破局に追い込み、また、斜陽ムードをあおって、その犠牲炭鉱労働者にしわ寄せいたしてまいりました。特に昭和三十八年、有沢調査団答申以来、スクラップ・アンド・ビルド方式と称して、国みずからの手によって独占資本中心とする石炭企業の再編成を行ない、少数の大手炭鉱に対しては国家資本を集中し、他の炭鉱はスクラップとしてつぶしていくという、きわめて過酷な合理化首切り政策を強行した結果、多数の労働者は前途の希望と生活保障もないままに失業のちまたに投げやられ、反面、山に残った労働者に対しては、低賃金労働強化出炭能率の急激な引き上げが強要されて、出炭の増加が強行されてきたのであります。そのために、人命無視生産重点主義のもとに、保安対策はほとんど顧みられず、改善が放棄されていることは、三池災害の際、この同じ本会議場において、当時の池田総理大臣並びに福田通産大臣が、保安対策の抜本的な再検討を明言しておきながら、その後一年半の今日に至るまで、何ら見るべき対策実施しておらないことを考えても明らかであります。(拍手)  その具体的な事実を数字によって見るならば、全炭鉱労働者一人当たり出炭能率は、昭和三十四年、月産十四トンであったのに対して、昨年の昭和三十九年は月産三十八・八トンと、約三倍にはね上がり、その反面、労働者稼働一千人当たり事故災害率は、この五年間に三〇%増加し、特に昭和三十八年、政府石炭政策大綱決定以来、災害による死傷者が加速度にふえて、現在では炭鉱労働者三人に対して一人の死傷者が出るという、まさに戦時中と変わらない人命無視労働強化が続けられており、また、炭労の調査によると、日本の全炭鉱のうち、九三%以上の炭鉱において保安規則の違反が行なわれているという事実をもってしても明らかであります。  今回の災害は、災害直前の二月十二日、鉱山保安局許容量をこえたガス含有量を検出し、経営当事者に対して警告を発しておったことは新聞報道のとおりでありますが、それのみならず、夕張鉱においては昨年一年間に四十一件にわたる保安不備が指摘され、いわゆる危険炭鉱としてマークされていたものであり、また、夕張炭鉱労働組合は、かねてから経営者危険無視保安サボ出炭強制に対して強くこれを指摘し、要求をしてきたにもかかわらず、経営者側はこの事実を無視して採炭にかからせたところに、その直接の原因があることは言うまでもありません。  しかし、政府当局自身もまた責任を負わなければならないと思います。私は、社会党災害調査団長として、現地でその事情をつぶさに聴取いたしましたが、災害の起こった夕張炭鉱最上坑は、昨年一年間に五回にわたって保安検査が行なわれたが、保安監督官危険個所を指摘して、保安サボを行なっている経営者にその措置をゆだねるだけで、とられました経営者措置に対しては、その後再検査などの方法を行なっておらない。災害の頻発が政府合理化政策の結果であるだけではなく、人命を最も尊重すべき任務を持つ監督当局の以上の不十分な態度は、人命を顧みない経営者とともに、政府当局連帯責任を負わなければならないと考えるものであります。(拍手佐藤総理は、就任以来、人間尊重政治をスローガンにしておりますが、現実は以上の事実で明らかなとおり、まさに人間軽視政策をとりつつあるといわれても弁解の余地はないのであります。(拍手)  私は、この際、総理大臣並びに関係大臣に伺いたいことは、第一に、今回の災害原因責任はどこにあるのか、直接の責任者である経営者に対していかなる措置をとるのか。最近頻発している交通事故に対しては厳罰主義をとっておりますが、事、相手が資本家であり、経営者である場合には、自民党政府は、いろいろの事情から厳罰主義をもって断固たる措置をとり得ないのではなかろうかというのが一般の見方であります。(拍手)この点について、総理大臣見解を特にお伺いいたしたいと思います。  第二に、今後の災害防止のためにいかなる措置をとるか。この点について特に伺いたいことは、保安監督行政所管についてであります。現在、保安監督行政通産省所管であるが、このこと自体、生産至上主義であり、人命が第二であることを意味しております。この際、保安監督行政労働省に移管するとともに、被災の当事者である労働者並び労働組合意見が具体的に反映できるような行政措置をあわせ行なうべきであるが、総理大臣並びに労働大臣見解を伺いたい。  第三に、保安監督行政強化についていかなる具体的な措置をとるのか、通産大臣に伺いたいと思います。  質問の第二点は、今日の炭鉱労働者は、坑内における危険を顧みず、時間外労働労働強化を行なわなければ生活ができないという低賃金のもとに置かれております。経営者は、炭鉱斜陽であるから、ことしは不況だからということばでごまかしながら、労働者に低賃金労働強化をしいているのであります。大手炭鉱でさえ、坑内保安保障されない、炭じんの立ち込めている危険な坑内重労働賃金が、他産業重労働に比べて著しく低いのでありますから、中小炭鉱や下請け、または粗鉱山並びに組夫労働賃金は全く論外であります。こうして炭鉱労働者の低賃金体系がつくられているのであるが、政府人間尊重政治を公約するのであるならば、第一に最低賃金制を拡大是正して、少なくとも坑内夫現行一万六千円を二万四千円に、坑外夫に対しては一万八千円に定めるべきであるが、労働大臣見解はどうであるか。  第二に、炭鉱労働者特殊性にかんがみて、特別な年金制度あるいは退職金制度を新設すべきで——あると思うが、労働厚生大臣見解をお伺いしたい。  第三に、日本石炭企業は一つの転換点に立っていると思います。今日では、自己資本の蓄積をもってしてはもはや経営が不可能であり、設備投資はばく大な政府資金にたよらざるを得ないことは、資本主義的経営の限界と終末を示していると思います。それにもかかわらず、経営者国家独占資本の庇護を逆に利用して、利潤を政治資金観光事業に使っていることは、われわれ国民としては絶対に許さないところであります。この際、石炭企業あり方を抜本的に転換させて、企業国有社会化労働者発言権の確立を中心とする徹底的な経営民主化を行なうべき段階に立ち至っていると考えますし、これこそが真に人命を尊重する生産体制であるが、通産大臣はこの点についていかにお考えになるか。  質問の最後は、遺家族補償負傷者対策についてであります。  政府はこの問題について万全の措置をとらなければなりません。言うまでもなく、殉職者に対する遺族補償労災法に基づくものでありますが、今回の災害では、わずかに平均百万円程度であります。同じく災害を受けて殉職された組夫の方に対しては、これよりももっと非常な低額であることは、労働大臣も御存じのとおりであります。冬空に幼い子供をかかえた若い未亡人が、このようなわずかな金でどうして生活していけるであろうか。また、遺家族就職など、一企業のみにゆだねておくことは許されないことであります。また、重傷者に対する措置も、三池炭鉱災害のあとの経過から見て、放置すべきでないことは言うまでもありませんが、これら遺家族及び重傷者に対して、政府はいかなる措置対策をとっていろのか、この点についでもお伺いをいたしたいと用います。  以上をもって私の質問を終わりますが、再び災害を起こさないためにも、六十一名の殉職者の霊を慰めるためにも、総理大臣並びに関係大臣の真剣かつ誠意のある答弁を望むものであります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  14. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) お答えいたします前に、今回の夕張炭鉱災害で不幸にして殉職されました六十一名の方に対しまして、心から哀悼の意を表し、遺家族に対しましても、つつしんで哀悼の意を表したいと思います。また、十七名の方々がこの災害によって傷害をこうむられたことに対しまして、心からつつしんでお見舞いを申し上げる次第でございます。(拍手)  今回の災害につきましては、政府は、前回の三、池災害以来、特に、この種の災害を二度と繰り返さない、こういう立場に立ちましてあらゆる努力をしてまいりましたが、不幸にして今回のような大事故を起こしましたことは、まことに遺憾に存ずる次第であります。  ただいまその責任の所在はどこかということでお尋ねがありましたが、これにつきましては、学識経験者等からなる技術調査団を派遣いたしておりまして、今日その原因究明をいたしておるわけであります。今日までのところ、ほぼこれはガス爆発だ、かような結論を得ておるようでございますが、ガス爆発、あるいはメタンガス爆発だ、かように言われましても、その責任はだれが負うのかという問題は依然として残っておると思います。いずれ究明されることによりまして明らかになるだろうと思います。もちろん、この具体的な責任問題は別にいたしましても、かような事故が発生いたしました以上、政府並びに事業者等におきまして、一そうこの種事故が再び起こらないように最善を尽くすこと、これは当然なことだと思いますが、われわれも一そうそういう方向で努力してまいりたい、かように思います。  また、この災害につきまして、生産担当役所、また保安担当役所同一であるために、いわゆる生産第一主義ではないか、その結果この種の災害が起きたのではないかという御意見のようでございますが、私どもはかねてから人間尊重ということを申しております。人間尊重なくして何の生産ぞやと言いたいのであります。したがいまして、生産保安、これが同一個所でありましても、十分連携がとられ、また万全は期せられる、かように私どもは考えております。ただいままで、生産保安、これが表裏一体の関係にあるという立場から通産省が所掌いたしております。しかし、労働者一般保護の衝に当たっております労働省と、通産省が一そう緊密な連携をとりまして、そうして、今後ともこの災害対策に万全を期すべきだ、かように私は考えております。(拍手)   〔国務大臣櫻内義雄登壇
  15. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) お答えに先立ちまして、今回の災害でおなくなりになられた方々の御冥福を心より祈念いたし、また、御負傷をなされた御療養中の皆さま方の一日もすみやかな御回復をお祈りいたします。  ただいま保安行政あり方につきましてお尋ねでございました。人命尊重が優先することは申し上げるまでもないことであります。特に鉱山の場合におきましては、まず掘って、そうして保安が確保されて、そうしてその後に生産が行なわれるということは、これは申し上げるまでもないのであります。そのことを十分に頭に置きまして今後の経営に対処すべきであろうと思います。  ただいま保安行政についての御批判がございましたが、私は、いま申し上げた心がまえのもとに、今後の保安監督強化保安施設の充実、保安技術開発普及等につきまして万全を尽くしてまいりたいと思いますが、四十年度の予算におきましては、鉱務監督七名の増員のほか、札幌、福岡の両監督局総合監督実施、及び予防保安のための措置の総括を行なう鉱務監督管理官各一名を増員することといたしております。しかし、もとより、私は、こういうような措置がとられたからそれで万全であると申し上げておるのではありません。これからの経営者、また政府責任の衝にある私どもが、いま岡田議員の御指摘のとおりに、人命尊重をまず第一として今後の上にあらゆる努力を講じていくべきであろうと思います。  ただいま企業の形態についてのお尋ねがございましたが、この点は従来の方針どおりでまいりたいと思います。  遺家族補償問題負傷者に対する援護施策につきましては、私として、何かここでいろいろ申し上げるよりも、実行をもって示していきたい、万全を尽くしたいと思います。(拍手)   〔国務大臣石田博英登壇
  16. 石田博英

    国務大臣石田博英君) お答えを申し上げます前に、私もつつしんで犠牲者方々哀悼の誠をささげたいと存じます。  御質問の第一は、保安監督行政所管の問題でございます。現在鉱山保安行政は、御承知のごとき経緯のもとに通産省所管になっておるのでありますが、私といたしましては、今回の事故にかんがみ、この問題について検討をいたさなければならない状態にきておると考えておる次第でございます。  次に、炭鉱に働いておられる方々賃金の問題でございますが、従来、つまり現在とられておりまする石炭産業に対する措置が行なわれまする前、及び先進各国におきましては、坑内労働をされる人々賃金は重基幹産業平均の上位にありましたし、現在もあります。ところが、わが国においてはそれが中位以下になっておることは事実でございます。これは改善を要すべきものだと存じますが、ともに石炭産業の再建と並行しつつ改善をしていくことが望ましいことだと考えております。  次に、最低賃金の問題でございますが、御承知のごとく、三十八年に炭鉱坑内夫についての最低賃金実施されました。いま中小企業への援用の問題について最低賃金審議会審議中でございます。その審議を経ました後に将来にわたっての問題を検討いたしたいと考えておる次第でございます。  また、坑内労働に従っておられる人々年金制及び退職金内容等につきましては、これは第二次有沢調査団報告にもございましたので、その実現方に向かって努力をいたしたいと存じておる次第でございます。  また、遺家族補償でございますが、労働省といたしましては、法の規定に従ってすみやかにこれを支払う処置をとったことは御承知のとおりでございますけれども、しかしながら、なお将来それで十分でないことは言うまでもございません。現在の法の範囲ではそれ以上の実施は困難でございますが、遺家族方々就職あっせんその他に全幅の努力をすることによって補ってまいりたいと考えております。  なお、労災法は、ただいま遺家族補償は原則として年金制を行ないまするように法の改正案提出いたしておりまするので、すみやかに御審議の上御可決を願いたいと存じております。  なお、遺家族方々就職あっせん具体的措置でございますが、御承知のごとく、炭鉱労使間には三点にわたる妥結が行なわれております。しかしながら、特にわれわれといたしましては、就職あっせんを希望する人々に対します措置でございますが、第一に、住宅を移転しなければならない人々に対しては、移転旅費の支給と住宅あっせんを行なう準備を進めております。次に、三十歳以上の未亡人方々につきましては、職場適応訓練を行なう準備をいたしておりまして、これに対しましては訓練手当一万四千四百十円、これに事業所謝金月額五千数百円を加え、生活の安定を保障しつつ訓練を行なってまいりたいと考えておる次第であります。また、必要な方々に対しては就職資金の貸し付けの準備もいたしております。また、会社が関連産業等就職あっせんいたします場合、その関連産業事業拡張等をいたさなければならない場合につきましては、それに対する融資を迅速に行なうように準備をいたしておるところでございます。(拍手)   〔国務大臣神田博登壇
  17. 神田博

    国務大臣神田博君) 御答弁申し上げる前に、今回の犠牲者につつしんで哀悼の意を表しますとともに、入院中の方々の全快を心からお祈り申し上げます。  ただいま岡田議員お尋ねは、炭鉱労務者に特別の年金制度及び退職金制度を設ける意思がないか、こういうお尋ねでございます。炭鉱労務者については、御承知のように、一般労務者と異なり、厚生年金の取り扱いについて特別の優遇をいたしておるのでございますが、現在の年金額が少ないので、目下今回の国会提案中の厚生年金保険法改正によっていわゆる一万円年金を実現して、これらの労務者生活保障を充実したいと考えております。さらに、炭鉱労働者に特別の年金制度を設けることについては、昨年の石炭鉱業審議会答申もありますので、費用負担等の点についていろいろと問題もございますので、関係各省と協議の上検討を進めておる際でございます。(拍手)     —————————————  夕張炭鉱爆発事故に関する緊急質問小平忠   君提出
  18. 船田中

    議長船田中君) 次に、小平忠提出夕張炭鉱爆発事故に関する緊急質問を許可いたします。小平忠君。   〔小平忠登壇
  19. 小平忠

    小平忠君 私は、民主社会党を代表いたしまして、二月二十二日夜発生いたしました北炭夕張炭鉱爆発事故につきまして、政府に若干の質問を行なわんとするものであります。(拍手)  私は、この事故を聞き、党を代表して急遽夕張炭鉱にかけつけましたが、現場はきわめて悲惨な状態でありました。爆発事故による死者は六十一名にのぼり、北海道における戦後最大の爆発事故でありまして、現場関係者は、石炭産業不況とあわせて全く暗たんたる絶望のふちに追い込まれ、政治がこれを解決する以外に方法がないことを強く訴えておりました。  私は、質問に入る前に、このたびの事故犠牲者に心から哀悼の意を表し、冥福を祈るものであります。  さて、私の質問の第一は、政府がこのたびの北炭夕張炭鉱事故原因をいかに認識されておるかという問題であります。  事故原因の徹底した究明なくして今後の対策はあり得ません。私が事故現場を視察して第一に感じましたことは、このたびの爆発が切り羽のごく近くでガスが炭層から漏れている危険地帯で起こっていることからして、三十五年二月四十二名の死者を出した前回の夕張炭鉱事故のように不可抗力的なものと異なり、考えられる、防止し得る事故であったということであります。と申しますことは、ガス爆発と炭じん爆発などによる事故は、完全に防止できるものであります。すなわち、ガスの噴出量を完全に坑外に排出し得る通気を十分に送り込んでおけば、ガスは通気とともに坑外に排出されていくことは論議の余地がないところであり、しかるに、このたびのような大爆発を起こさせたことは、それに応じた通気を送り込んでいなかったということであります。また、あれだけ多くのガスが噴出しているのに、その近くでハッパをかけていたということでありますが、これは火に油を注ぐようなもので、全く危険千万なことであります。さらにまた、爆発した採炭坑の上層が以前に掘られており、古坑がそのまま残っていたのでありますが、これらにたまっていた古坑のガスなどについても、十分にして計画的な保安措置がとられていたかどうかということであります。  このような事故を誘発した原因を追及していくならば枚挙にいとまないのでありますが、夕張炭鉱は他の炭鉱に比較してガスの発生が著しく多い地帯であることは、現地監督局をはじめ関係者のひとしく承知しているところであり、特に今回の事故の起こる十日前に、札幌鉱山保安監督局の検査官が検査に来て、ガス許容量が法定の一・五%ぎりぎりに達しているので、ガスの排出に関して直ちに措置するよう指示している。これだけの指示を受けながら、十分な措置を講じなかった会社当局、さらには許容量の限界に達している危険なガス量を認めながら、何一つ具体的な指導措置をとらなかった鉱山保安監督局の職務怠慢は、私は、この一事をもってしてもきびしく厳罰をもって責めらるべきものであると思うのであります。(拍手)起こり得べく、かつ予見できた事故を、保安対策軽視のため未然に防止し得なかった政府並びに関係者の責任は、きわめて大きいと思うのでありますが、政府はこのたびの事故原因をいかに考えているか、ここで明らかにしていただきたいと思うのであります。  今日までの政府の答弁、ただいまも総理の答弁を伺っておりますと、十分なる原因調査の結果を見た上で云々と言っておられるのでありますが、現地では、爆発事故後におけるガスの多量噴出による自然発火等の理由によりまして、事故現場にはすでに注水、水没する処置をとっているのであります。かような現状から、専門家を動員して調査団を現地に派遣いたしましても、今後直ちに明確な調査は困難となっております。ともかく爆発の火源が那辺にあろうとも、ガス許容量が法定以上に達していたことだけは事実でありますので、私はこの際、佐藤総理責任ある答弁をお願いするものであります。  質問の第二は、政府が当然なすべき炭鉱保安対策についてであります。  今回の北炭夕張の大事故は、三十五年二月の同じ夕張炭鉱事故から数えて五年、三井三池の惨事から一年三カ月であります。炭鉱事故が続出しておるのに、政府の怠慢から炭鉱事故は一向に減少しておりません。通産省の調べによりますと、炭鉱災害による死者は、昨年一カ年で三百四十二人にのぼっております。この三百四十二名という数字は、鉄や銅などを含む全鉱山死者のおよそ八〇%を占めており、依然として炭鉱が危険な仕事場であることを示しております。また、このような炭鉱保安の不十分さからくる不安感は、若い人たちの採用とその定着性の確保を困難にする大きな要因となっております。最近四、五年の動きでは、三十歳未満の占める比率が、製造業、大企業において六・九%ふえておるのに対し、石炭鉱業では逆に一一・三%の減少となっており、炭鉱を立て直していく上での大きな問題となっております。昨年十二月十六日、政府答申されました石炭鉱調査団の答申でも、保安確保を最重点の一つとして取り上げ、石炭鉱山はガス爆発、自然発火、落盤などの災害が多いので、総合的な対策を確立することが必要である、具体的には、保安施設、監督指導体制、保安教育、自主保安体制を拡充強化することを述べております。  炭鉱災害が続出しておるにもかかわらず、政府のいままでの保安対策はきわめて消極的であります。このたびの災害については、三井三池の災害の教訓が生かされていないといわれておりますが、政府は今度こそ、この北炭夕張の教訓を生かして、炭鉱災害の絶滅のために保安対策に万全の措置を講ずべきであると思いますが、政府保安対策をここで私はさらに明確にしていただきたいと思うのであります。  質問の第三点は、災害犠牲者に対する救済の問題であります。  現行労災法による保険金はきわめて低額なものであり、日給の千日分となっておりますが、これでは遺族の今後の生活を安定せしめることはできないのであります。政府は、被災者に対する遺族補償、葬祭料、休業補償、療養補償などについて、いかなる措置を具体的にとろうとしておるのか、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。被災者の救済については、労災法の臨本的改正がやはり私は基本的な問題であると思うのでありますが、危険な作業に携わるこれら炭鉱労働者のため、労災法改正する意思があるかどうか、この点明らかにしていただきたいと思うのであります。  質問の第四点は、最近続発する炭鉱爆発の現状から見て、石炭産業不況打開のため増産対策に重点が置かれ、人命尊重の見地からする保安対策が軽視されておるのではないか。その証拠に、鉱山保安監督局が労働省所管ではなくて通産省所管になっておることであります。  このことに関しましては、ただいま岡田議員質問に対しまして総理は、通産、労働両省の緊密な連携によって解決していきたいということを述べられました。引き続いて労働大臣は、本件に関しては検討すべき段階にきているということを答弁されました。総理並びに所管大臣たる労働大臣見解が不統一であります。私は、本件に関しましては、過ぐる三池災害のときも、本院におきましてこのことを強く主張したのであります。したがいまして、私は、この際すみやかにこのような、いわゆる生産人命、こういうことを明確に区分いたしまして、やはりその監督行政たる労働省に移管すべきであると考えるのでありますが、佐藤総理はどのようにお考えか、もう一度お伺いをいたしたいのであります。  最後に、私は、石炭産業に対する政府の基本的な姿勢をただしたいと存じます。  炭鉱災害による犠牲者が毎年三百名をこえていることに思いをいたしますと、炭鉱災害多発の根本原因は、やはり石炭産業斜陽化にあると存ずるのであります。石炭鉱調査団による第二次答申が昨年暮れ答申されましたが、それ以後も政府は、率直に申し上げて、具体的な、積極的な措置を講じていないのであります。石炭産業の今日の窮状を打解するためには、第二次答申に基づいて、第一に、石炭需要確保のため特別の勧、奨励制度を設けること、第二に、隣接炭鉱閉鎖に伴う揚水費負担を政府資金によって補てんすること、第三に、新鋭採炭機及び支保の導入のため特別の措置を講ずること、第四に、保安教育の計画化並びに義務づけを行なうこと、などの措置が緊急に必要であると思うのでありますが、政府の今後の基本的な石炭対策をお伺いするものであります。  以上、質問の要点のみ申し述べましたが、私は、政府に対しまして、炭鉱災害の絶無、被災者に対する万全の補償、石炭不況対策のすみやかなる確立を心から要望いたしまして、私の質問を終わるものであります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  20. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  御承知のように、石炭産業は国内における重要なる基幹産業でございます。私どもは、国内におけるこの基幹産業が円滑に経営され、同時にまた、国の経済の発展に寄与するように万全を期しておるつもりであります。したがいまして、この生産も大事だが、同時にまた、保安は何よりも大事なことでありますから、保安行政生産行政、これは一体となってこの基幹産業を守っていく、こういう立場でおります。しかしながら、この種の事故が起きたということ、まことに私遺憾に存じます。  ただいま、その責任の所在はどこにあるかということで、いろいろ具体的にお尋ねがございました。ただいま技術調査団がその責任の所在を明確にすべくあらゆる努力をしておる段階でございますので、その調査の結果に待ちたい、しばらく待っていただきたいと思います。いずれにいたしましても、冒頭に申しましたような基幹産業がたいへん不安な状態に置かれておることでは、その場所において働かれる方も、また経営される方も、これはたいへんなことだと思います。こういう立場から、今回の事故の具体的責任はともかくとして、一そう政府並びに関係者が災害を再び起こさないように最善の努力を払ってまいるつもりであります。  また、最後に、この保安行政所管につきましてのお尋ねでございますが、私が先ほど答えたとおりでございますので、小平さんの御意見は御意見として伺っておきます。要は、冒頭に申しますような国内の重要な基幹産業、これを守り抜くためにどういう方法をとったら一番適当か、これは十分考えてまいりたいものだと、かように思います。(拍手)   〔国務大臣櫻内義雄登壇
  21. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 小平議員から、保安対策について総合的な、さらに拡充した施策をすべきであるという御指摘でございました。当然のことでございまして、総合検査あるいは保安計画の進捗等によりまして、各鉱山の鉱業全般について保安面から審査をいたし、総合的な保安確保につとめるとともに、保安技術の開発普及、保安施設の備整等を促進いたしたいと思います。また、昨年お願いをいたしまして鉱山保安法を改正いたしましたが、今回の災害に際しましてはこの実施が間に合っておりませんでした。まことに遺憾でございまして、この法規の順守の徹底を期したい、かように考えております。  労災関係の問題について御指摘がございましたが、先ほど労働大臣お答えしたところでございます。  また、今後の石炭対策について種々御意見がございました。御承知のように、有沢第二次報告が今回の予算の上に種々実現されておるのでございまして、私といたしましては、あの答申について、なお不十分な点もあろうかと思いますが、当面の石炭対策といたしましては、まず全般の予算から考えまして、この程度でとりあえずいきたい、かように考えておる次第でございます(拍手)   〔国務大臣石田博英登壇
  22. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 犠牲になられた方々遺家族補償措置あるいは負傷された方々の将来について、現在の労災法の規定では不十分ではないかという御意見でございます。決して十分だとは思っておりませんが、先ほど岡田議員お答えを申し上げましたとおり、法のワク内で及ばない部門につきましては、就職あっせんその他について全幅の努力を払うことによって補ってまいりますとともに、法律改正については、これを年金制に改めてまいるよう、ただいま議会に提出をいたしておる次第でございます。  それから保安行政所管についてでございますが、決して不統一ではございません。私どもは将来の問題としては検討しなければならぬことだと存じておりますが、現在は両省の緊密な連絡をとり、特に鉱山保安法にあります労働大臣の勧告権を行使いたしまして、万全の体制を整えてまいりたいと存じております。(拍手)      ————◇—————  小規模企業共済法案内閣提出)の趣旨説明
  23. 船田中

    議長船田中君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出小規模企業共済法案の趣旨の説明を求めます。通商産業大臣櫻内義雄君   〔国務大臣櫻内義雄登壇
  24. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 小規模企業共済法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  国民経済の高度成長の過程におきまして、中小企業は、重要な役割りを果たしてまいりましたが、それとともに、中小企業自体もまた全体として相応の発展を示し、中小企業従事者の福祉の向上にも着実な進展のあとが見受けられます。  しかし、開放経済体制への移行、労働需給の逼迫、技術革新の進展等に伴う市場構造の変貌など経済的諸条件の変化を通じて、中小企業が従来からよって立っていた社会的経済的存立基盤は、その根底からゆるがされつつあることも事実であります。このため、中小企業を取り巻く経済環境は、最近に至ってますますそのきびしさを加えつつありますが、特に中小企業の中でも大きな比重を占める小規模零細企業につきましては、急激に変化する経済環境への適応に立ちおくれ、経営困難の度を強める企業が増大してきており、かかる情勢にかんがみまして、政府といたしましては、昭和四十年度の中小企業対策実施するにあたり、小規模企業対策に最重点を置くこととし、設備近代化資金貸し付け制度の拡充、商工会、商工会議所を通ずる経営改善普及事業の充実、無相保、無保証人による融資の保証にかかる特別小口保険制度の創設、零細下請企業に取引のあっせんを行なう下請企業振興協会の設立助成等小規模企業対策の大幅な拡充をはかり、小規模企業の健全な発展と振興を強力に助長してまいる所存であります。  ここに提出いたしました小規模企業共済法案は、これら小規模企業振興対策の一環として、政府昭和四十年度から新たに実施してまいりたいと考えております小規模企業共済制度につき定めたものでありまして、その本旨は、小規模企業者が相互扶助の精神に基づいて退廃業後における生活の安定あるいは事業の再建、転業に備えてその拠出による共済事業を行なうことに対し、国からも所要の助成措置を講じつつ、これを安全確実な制度として確立することを目的としたものであります。  御承知のとおり、小規模企業は、その所得の水準から見ても一般の雇用者と実質的にほとんど差がないにもかかわらず、各種社会保険制度、労働保険制度の適用については、制度上十分な恩典を受けられない実情にあります。したがいまして、小規模企業者が不幸にして廃業または退職のやむなきに至った場合において、本制度により共済されるようになることは、小規模企業者の福祉の増進に寄与するとともに、その資金を再建、転業資金等に充当することが可能となり、本共済制度より生ずる余裕金の適切な運用ともあわせ、小規模企業の振興に多大の貢献をなし得るものと確信する次第であります。  次に、法案の内容につきましてその概要を御説明申し上げます。  第一に、事業団と共済契約を締結できる小規模事業者は、常時使用する従業員の数が鉱工業等においては二十人、商業またはサービス業においては五人以下の個人事業主及び会社の役員といたしております。なお、共済契約の締結につきましては、任意といたしております。  第二に、掛け金につきましては、小規模企業者の負担とし、その月額は一口五百円、小規模企業者一人につき十口を限度といたしております。  第三に、共済金は、事業の廃止または会社の解散があったとき、会社の役員が退職したとき、三十年の満期に達したとき、または六十五歳以上で二十年間掛け金を納付したときのいずれかの事由が生じたときに支給することとし、共済金の額は、掛け金納付月数に応じ、かつ、事業の廃止による場合には、特に有利な給付条件になるように定めることといたしております。  第四に、この制度の実施主体につきましては、本共済制度の性格にかんがみ、制度の永続性、積み立て金の管理の安全性と効率的な運用並びに小規模企業者に対する確実な給付を保障するため、全額政府出資による小規模企業共済事業団を設置することとし、業務として小規模企業共済制度を一元的に運営するほか、積み立て金の安全かつ効率的な運用を害しない範囲内で積み立て金の一部を小規模企業者に還元融資をできることといたしております。  なお、小規模企業者の意見をも反映させた民主的かつ適正な運営が行なわれるよう、小規模企業共済事業団に小規模企業に関し学識経験のある者からなる評議員会を設置することといたしております。  このほか掛け金につきましては、別途必要な税法上の減免措置を講ずることといたしております。  以上が、この法案の趣旨であります。(拍手)      ————◇—————  小規模企業共済法案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  25. 船田中

    議長船田中君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。大村邦夫君。   〔大村邦夫君登壇
  26. 大村邦夫

    ○大村邦夫君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案されました小規模企業共済法案に対し、総理並びに関係大臣に若干の質問をいたさんとするものであります。(拍手)  私がまずお伺いしたい点は、政府中小企業政策に対する基本的な姿勢についてであります。  佐藤総理は、昨年十一月の臨時国会での所信表明演説で、前内閣の諸施策を正しく発展させるとともに、長期的な展望のもと、急ぎつつもあせらず、勇断をもって国政を進めると断言したのであります。しかも、世論のきびしい糾弾を受けている高度経済成長政策のひずみ是正を取り上げ、中小企業については設備の近代化、事業の共同化、小規模経営改善等につき、財政、金融、税制の面から格段の措置を講ずる所存を明らかにしたのであります。しかるに、具体的な施策はいかがでありましょうか。試みに、あらゆる財源を使い果たし、超膨張をきわめた明年度予算を見まするに、中小企業関係予算は、物価騰貴のはね返り、商工会職員のベースアップなど、経費の当然増や既存の施策にほんの申しわけ程度の色をつけたにすぎないではありませんか。企業数約三百五十四万、全産業の九九・八%近くを占める中小企業一般会計における対策費は、前年度比一一二%の伸び率という政府の宣伝にもかかわらず、その絶対額はわずか百五十八億円、これに中小企業信用保険公庫出資分六十億を加えても、約二百十八億円にすぎません。これは総予算のわずか〇・六%に満たない貧弱さで、前年度の約〇・五%とほとんど変わらないのであります。これまで中小企業予算は、総予算に比べて常にコンマ以下だと皮肉られた状態は、中小企業の危機が叫ばれておる今日でも、依然として改善されていないのでありまして、中小企業へのひずみを拡大し続けた池田内閣に比べて、佐藤内閣は一体どれだけの勇断ある措置をとっておると主張できるのか、佐藤総理の所見をただすものであります。(拍手)  私が質問いたしたい第二の点は、政府中小企業対策の本質が、企業保護育成でなく、切り捨てにあるのではないかという点であります。  私は、試みに昭和三十二年以来の経済白書、国民所得倍増計画、中小企業基本法、中期経済計画など一連の政府の問題提起なり計画なりを調べてみたのであります。ところが、政府はその中で、中小企業対策は、単なる保護政策におちいってはならないとか、開放体制のもとでは生産性の低い産業をそのままの形で残すことはできないとか、いわゆる開放体制という大義名分のもとに、明確に中小企業の整理転換を随所に投げかけておるのであります。私は、その底に一貫して流れておる思想が、中小企業の切り捨て政策にあることをあらためて知ったのであります。政府のいう中小企業近代化は、中小企業の上層部または系列企業になし得るもののみの近代化であって、他は巧妙にスクラップダウンさせられているのであります。  自民党政府は、口を開けば経済の二重構造の解消といい、倍増政策のアフターケアといい、さらに高度成長のひずみ是正といって、いかにも革命的、抜本的中小企業政策が打ち出されるかの印象を与えながら、その実態を大企業偏重の政策に終始させたことは、私がここであらためて触れるまでもないでありましょう。昨年の中小企業の倒産がついに戦後の最高を記録し、今年に入ってもさらにその深刻な傾向を変えようとしない現実は、何よりも政府中小企業切り捨て政策の本質を雄弁に物語っているではありませんか。(拍手)しかも、政府が把握している倒産記録たるや、民間の統計資料に依存するという無責任きわまるもので、それも負債額一千万円以上ということであります。負債額一千万円以下の中小零細企業の倒産は、調査統計資料が全くないために、その対策は野放し状態であります。政府は、一体、病体の的確な診断を行なわずして、いかなる治療を施そうというのでしょうか。この状態のもとでは、おそらく三月危機といわれる年度末に向かって、一そうの増大が予測されることを心配し、政府の猛省と善処を促す次第であります。(拍手)  最近、一連の金融緩和措置がとられ、さらに四月ころには公定歩合の再引き下げさえうわさされておりますが、金融が緩和したからといって、直ちに企業倒産が減るわけではないと、田中蔵相すらいみじくも告白しているように、金融緩和は中小企業に潤うものではないと考えられます。逆に、選別融資を強化し、よりドラスチックに資本の集中と、系列外中小企業の倒産を促進することになるでありましょう。中期経済計画は、まさにその方向を示していると思われるのでありますが、開放体制のもとにおいて、中小企業の体質をいかにして変えようと考えているのか、経済企画庁長官の見解お尋ねします。また、中小企業近代化の具体的な金融政策について、田中大蔵大臣の考えをお聞きしたいのであります。  以上、二つの基本的な問題点を明確にして、以下、小規模企業共済法案について、その疑点をただしたいのであります。  本法案は、ただいまの通産大臣提案説明でも明らかなとおり、二十名以下の小規模企業の相互扶助による共済制度であります。ところが、政府は、この運営に当たる事業団に対して、わずかに資本金四千万円の出資と、三千万円の事業費補助を行ない、これで零細企業対策の能事終われりとしているのであります。あとは業者の自前による任意契約にゆだねているのでありますが、給付内容はきわめて悪く、相互扶助制度のていすらなしていない点に、私は強い不満を表明せざるを得ないのであります。(拍手)  共済金は、一年未満は掛け捨て、三年までのものは元金だけ、三年以上三十年に対しては逐次利息がつくというようになっているのでありますが、会社倒産などで役員の辞任を余儀なくされた場合の共済金は、契約掛け金をかけ始めてから、二十年を経過しなければ、年利五分五厘の定期に及ばない仕組みになっています。政府は、一体これら小規模零細企業は、二十年、三十年先のゆうちょうな共済制度を楽しむほど、安穏な状態に置かれているとお考えでしょうか。佐藤総理の言われた長期的な展望とは、こんなちゃちな共済制度であったのでありましょうか。  もちろん私は共済制度そのものを否定しようというのではございません。とりわけ中小零細企業に対しては、給付内容のいい制度を、政府の積極的な助成によって確立すべきことを強く主張いたします。しかし、それ以上に、こういう小規模企業が直面しておる問題点の解明と対策こそ、緊急に必要としているのではあるまいか。二、三十年先に、ある程度の利子がついて返ることもけっこうでございましょうが、それよりも、ここ二、三年をどう生き抜いていくかどうかが、小規模企業の悩みであり、心配であります。しかも、政府中小企業政策の本質が、切り捨て政策にある以上、ここ二、三年の危機に際して、何らの恩典もない共済制度が、一体何の役に立つのでありましょうか。  大資本の高度成長の犠牲を一身に受けて切り捨てられようとする小規模零細企業に対して、わずかの出資を与えるかわりに、転換、整理の戦後処理を自前でやらせようというような、血も涙もない政策は、革命的な政策ではないのでありまして、この際再検討すべきだと考えますが、櫻内通産大臣の所見を承りたいのであります。  最後に、私は、この法案と関連して、今日中小企業が危機に立っている原因を指摘し、その具体的な対策の柱を特に提起したいのであります。  中小企業の危機要因は、私どもがしばしば指摘しておりますように、大企業の圧迫を第一にあげなければなりません。さらに下請企業に対する不公平な取引、過当競争の激発、労働力の不足、構造上の矛盾の激化と、金融、税、財政の大企業偏重主義が、一そう拍車をかけているのであります。したがって、その対策は、金融、財政、税制の偏重をやめること、中小企業の市場分野を確保すること、下請条件の適正化をはかること、歩積み、両建てを廃止すること、独占的企業の管理価格を取り締まること、貿易の振興助成策をとること、商工会指導員の身分保証を確立すること等を早急に確立すべきであります。  昨年の第四十七臨時国会で、中小企業の危機打開に関する決議がなされましたが、その中で金融対策、特にやみ金利の取り締まり、倒産予防対策、倒産実情調査原因究明など、六項目にわたって緊急に検討を加え、遺憾なき措置を講ずるよう、政府に要求したのであります。六項目のうち、小規模事業の相互扶助制度の確立が、ただいま提案された貧弱な法律案となってあらわれているのでありますが、他の措置はどうなっているのか、私どもが主張する中小企業対策とあわせて、櫻内通産大臣の明確なる答弁を承りたいと思うのであります。  以上、私は、本法案に関連して重要な諸点について御質問申し上げましたが、今日政府が、そして政治家がなすべき政治の要諦は、ないよりまし程度の政策や法案を言いわけ的につくることではなく、現に政治の恩典を何ら受けていない、暗い谷間にある人々に対し、日の当たる政策や法案をすみやかにつくることであることを、ここに強く申し添え、私の質問を終わるものであります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  27. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  御承知のように、一般会計予算の伸びは一二・四でございます。しかし、中小企業に対しましては、ただいまも御指摘になりましたように一一二・六%、これはたいへんな伸び方でございます。この点を政府といたしまして特に骨を折っているんだということを御了承いただきたいのであります。前年に比べまして五十二億円の増、ことしは、いま御審議をいただいておりますものは二百十七億九千万円という金額になっております。また、すでに御承知のごとく中小企業基本法ができておりますので、中小企業についてなすべき方向は大体きまっております。この二百十七億九千万円をそれぞれの項目に従いまして近代化あるいは高度化等を早急にはかっていく、そうしていわゆるひずみを是正していく。わが国におきましては、申すまでもなく、経済は均衡のとれた発展こそわが国の繁栄をもたらすのであります。この観点に立ちまして、中小企業もおくれないように、いわゆるひずみを是正していく、これがわが内閣の方針でございます。御了承いただきたいと思います。(拍手)   〔国務大臣高橋衛君登壇
  28. 高橋衛

    国務大臣(高橋衛君) 総理からお答え申し上げましたことをふえん申し上げますが、現在の中小企業の困難の原因の一番大きい問題は、生産性の格差が存在する中で、賃金なり所得の平準化が急速に行なわれておるということ、または、需要の変化に伴ってなかなかいきにくいというような点にある次第でございます。かような観点から、中期経済計画におきましても、まず第一に、成長の基調を安定的な基調に置くということを第一の方針といたしております。さらにまた、この生産性の格差を縮小するために、中小企業の近代化または協業の助長等にあらゆる努力を傾注することを強調いたしておる次第でございます。その他、税制、金融その他の面について格般の施策を充実することによってこの問題を解決していこうというのが、中期経済計画に示されておるところでございます。  以上、お答え申し上げます。(拍手)   〔国務大臣櫻内義雄登壇
  29. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私へのお尋ねは、零細企業の切り捨て政策ではないか、こういう点が第一でございまして、切り捨てにならないように、このたびの小規模企業共済法あるいは特別小口保険制度の創設、さらには経営改善普及事業の充実その他の施策を講じていくわけであります。  今回の共済事業団に対する四千万の資本出資、三千万の補助では少ないではないか、こういうお話でございますが、私といたしましては、今回この事業団が発足いたしまして、これが実施をされるに伴いまして改善をしていきたい、かように考える次第でございます。  中小企業危機打開決議について、その後の実行状況はどうかということでございます。決議の内容が非常に広範囲でございますので、かいつまんで申し上げますと、財政投融資につきましては、今回二千四十五億円計上して、相当増額になっております。  それから、貸し出し割合の引き上げ、歩積み、両建てにつきましては、これは大蔵省の協力を得ましてその趣旨を徹底させておるわけでございます。  特別小口保険の創設は、今回の予算で実現をいたしております。  近代化資金等の融資条件の緩和につきましては、このたびの公害防止施設等について償還期間の延長その他条件の緩和をいたしております。  下請対策につきましては、公正取引委員会との緊密な連絡の上で、下請法の厳正な実施につとめまして、下請代金の支払い遅延の防止については、万全を尽くしておるようなわけでございますが、さらに、大阪及び名古屋の二カ所に下請企業振興協会の設立をする方針でございます。  倒産予防のための相談の機構と、手形取引の正常化についてはどうか、これは中小企業政策審議会下請小委員会におきまして目下立案をお願いしておるわけでございます。  いろいろございますが、こまかい点につきましては、相当広範囲でございまして、予算委員会等におきましてもすでに逐一申し上げておるところでございますので、他の機会に回していただきまして、この程度にさしていただきたいと思います。(拍手)   〔発言する者あり〕   〔国務大臣田中角榮君登壇
  30. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 政府は、中小企業金融に対して常に配意をいたしておるわけであります。  まず第一番目に、四十年度財投による中小三機関の融資額は、御承知のとおり、三十九年度当初に比べまして、二〇%アップの四千三百八十億円でございます。なお、財政資金による買いオペレーション等を行なう場合に、中小企業に対して十分の配慮をいたしておるわけでございます。  第二点は、中小企業の信用補完を期しますために、中小企業信用保険公庫への出資金、昭和三十九年四十五億でございましたものを、四十年度六十億円に増額いたしております。  また、小規模零細企業につきまして、特別小口保険制度を創設いたしたわけであります。  第三は、民間金融機関の問題でございますが、特に中小企業金融への一そうの円滑化を期しております。  なお、当面、中小企業対策としましては、倒産、不渡り等の状況を十分把握いたしまして、情勢に即応して機動的な金融措置をとらなければならないと考えておるのであります。  最後に、歩積み、両建てにつきましては、過当、不当ともいわれる歩積み、両建てが中小企業に実質金利の負担をもたらしておるということにかんがみまして、日銀及び大蔵省は随時特別監査を行ない、これが歩積み、両建ての排除に努力をいたしております。銀行につきましては本年の五月末、相互銀行、信金につきましては来年五月末をもちまして、歩積み、両建てを排除し、正常な金融確保のために努力をいたしておるわけであります。(拍手
  31. 船田中

    議長船田中君) 大蔵大臣田中角榮君。   〔国務大臣田中角榮君登壇
  32. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 中小企業対策につきまして申し上げます。  まず、通商産業省所管につきましては、中小企業高度化資金融通特別会計への繰り入れがございます。六十六億八千五百万円でございます。第二は、設備近代化の補助金が五十億円ございます。第三は、小規模事業対策費として十七億四千三百万円計上いたしております。なお、小規模企業共済事業団出資及び補助としての費用を計上いたしております。第五は、中小企業指導事業費といたしまして四億六千四百万円計上いたしております。日本中小企業指導センター出資及び補助として三億七千五百万円計上いたしております。中小企業管理者及び技術者研修事業費補助八千四百万円、機械類賦払信用保険特別会計への繰り入れ二億円、その他四億二千八百万円、計百五十億五千二百万円。  大蔵省所管は、御承知のとおり、中小企業信用保険公庫の出資金六十億円でございます。  労働省所管につきましては、中小企業労働対策費補助一億三千七百万円、中小企業退職金共済事業団補助三億七千四百万円、建設業退職金共済組合補助八千万円、事業内職業訓練費補助九千百万円、その他合計いたしまして二百十七億九千三百四十二万七千円。  次に、税制の問題を申し上げますと、来年度の税制改正にあたりまして、中小企業に対し、国税、地方税を通じまして、平年度二百四十億円の減税を行なうことにいたしております。その一つは、所得税の各種控除の引き上げ、特に専従者控除の引き上げでございます。第二は、法人税の軽減税率の二%引き下げ、第三は、同族会社の留保所得課税の軽減、第四は、中小企業近代化資金助成法に基づく小売り商業共同店舗の特別償却、第五は、中小企業者の取得する土地の取得登記の登録税率の軽減、第六は、地方税において、個人事業税の事業主控除の引き上げ等でございます。内容につきましては御承知のとおりでございます。(拍手
  33. 船田中

    議長船田中君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  34. 船田中

    議長船田中君) この際、暫時休憩いたします。    午後四時四分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         厚 生 大 臣 神田  博君         通商産業大臣  櫻内 義雄君         労 働 大 臣 石田 博英君         自 治 大 臣 吉武 恵市君         国 務 大 臣 高橋  衛君  出席政府委員         内閣法制局第四         部長      田中 康民君         法務政務次官  大坪 保雄君         通商産業省鉱山         保安局長    川原 英之君