○津田政府
委員 ただいまお尋ねの
吹原産業
関係のその後の捜査状況について御
説明申し上げます。
東京地方検察庁におきましては、去る五月十四日
吹原弘宣を詐欺罪で起訴いたし、引き続き右
吹原、
森脇、東郷隆次郎及び木村元の身柄を拘束の上、鋭意捜査中でありますが、去る五月十九日裁判官の令状を得まして、東邦地所株式会社代表取締役平本一方を恐喝未遂罪により、また株式会社
森脇文庫社員松田節を出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する
法律違反により逮捕いたしました。
右
吹原に対する公訴事実の要旨は、被告人
吹原は、自己が代表取締役をしている
吹原産業株式会社の事業資金に窮した結果、自由民主党
本部の資金約三十億円を
預金してやるという口実のもとに、株式会社
三菱銀行長原
支店より
通知預金証書を騙取しようと企て、昭和三十九年十月十六日及び同月十七日の二回にわたり、真実は右自由民主党の資金を預け入れる能力もないのに、これあるかのように装い、右長原
支店長稲野佐一郎らに対し、右自由民主党の資金を預け入れる旨通知した上、さらに同月十九日右の長原
支店次長菅原順平らに対し、本日午後には日銀小切手か
預金小切手か、現金で三十億円
預金するが、とりあえず北海道拓殖
銀行築地
支店あての自己振り出し小切手で
通知預金証書を交付されたい旨申し向け、その旨誤信した右菅原から、右長原
支店長稲野佐一郎作成にかかる玉田善利名義の額面二十億円、大川忠志名義の額面十億円の
通知預金証書各一通の交付を受け、これを騙取したというものであります。
森脇将光については、五月十日、私文書偽造、同行使及び恐喝未遂容疑で逮捕しておるのでありますが、その容疑事実の要旨は、同人は
吹原弘宣と共謀の上、昭和三十九年十月二十二、三日ごろ、行使の目的をもって黒金泰美名義を冒用して、ほしいままに「本日大和
銀行京橋
支店発行参拾億預手を
三菱銀行に振込み通知
預金弐拾億円也及通知
預金拾億円也とすることに貴方の了承を得、これが通知
預金証及届出印鑑を貴方に御引渡致しました。」旨記載した昭和三十九年十月十九日付けの念書と題する書面を作成した上、黒金と刻したあり合わせの印を押捺し、もって私文書一通の偽造を遂げた上、昭和四十年三月二十日ごろ、株式会社
三菱銀行本店において、同行業務第一
部長らに対して、かねて
吹原を通じて入手していた同行長原
支店長作成にかかる金額二十億円の
通知預金証書が真実は
預金の事実がないため無効であることを知りながら、同
証書を呈示してその元利金の支払いを求め、同
部長から
証書が無効であると
説明されるや、前記偽造にかかる念書を呈示、行使するとともに、入金がないのになぜ
証書を発行したのか、支払いに応じないなら民事、刑事の両面で訴える、三菱のやり方を社会的に糾弾するなど申し向け、支払い要求に応じなければ右
通知預金証書を発行した同行の失態を公表し、その責任を追及して同行の信用を著しく棄損しかねない
態度を示し脅迫し、同行から右元利金相当額の金員を喝取しようとしたが、支払いを拒絶されたためその目的を遂げなかったというのであります。
株式会社大和
銀行元京橋
支店長東郷隆次郎及び同
支店長代理木村元については、五月十日商法違反、特別背任罪により逮捕しておりますが、右両名に対する容疑事実の要旨は、東郷及び木村は株式会社大和
銀行京橋
支店の
支店長あるいは
支店長代理でありながら、その任務にそむき、
吹原弘宣の依頼を受けてその利益をはかり、交換決済の見込みが確実とは思われない
吹原産業株式会社振り出しの他店渡し小切手と交換に昭和三十九年十月五日、右
吹原に対し京橋
支店振り出しの額面三十億円の自己あて小切手を振り出す等、同行に対し多額の財産上の損害を与えたというものであります。
前記平本に対する容疑事実の要旨は、
森脇将光と共謀の上、
先ほど申し上げました
預金証書の支払いを求めるに際して、
預金証書元利金相当額を喝取しようとしたのでありますが、その支払いを拒絶されたためその目的を遂げなかったという事実であります。
また、松田に対する容疑事実は、松田は昭和三十八年ごろから昭和四十年四月下旬までの間、数十回にわたり東京都内において数名に対し業として合計千数百万円を
貸し付けたが、右貸し金業開始後遅滞なく大蔵大臣に対し所定の届け出をしなかったという事実であります。
なお、
吹原弘宣に対しましては別途告訴もあり、引き続き余罪について鋭意捜査中であります。
以上が概況でございます。