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肥田委員 私らも、さっきから
久保君が言っていたように、無謀
運転を戒める、無謀
運転というものに対する
罰則の強化ということについては、むしろ私らは推進したい
考え方を持っておるのですよ。けれ
ども、やはりあなた方のいま言われるこの話を聞いておると、私らの
考えておるものとの
考え方の次元が残念ながら違いますね。どういうことが違うかというと、あなた方がそういうふうに
考えておられるのなら、
交通事故を起こせば一生
運転免許証を与えないというところまで、なぜいきませんか。先ほど質問の中でこういう意見が私は
津田さんから出たと思うんですよ。生活の道を奪うというようなことがあってはいけないから、免許証は取り上げないで
刑法上の
責任を問うんだ、こういうことを言われた。これは同じでしょう、
刑法上の
責任を問うということは。生活の手段は
運転免許証があることに限らない、生活の手段というものはほかに求めることができる。
運転に適するか適しないかということまでは、
運転免許証を与えるときにそこまでは手を入れてない。学校で、うちの学校へ来なさい、うちの学校へ来たら免許証はもう必ず取れます、何々の点が免除、何々の点が免除、こういう特典がありますといって特典を並べて、そうして学校いわゆる教習所をつくって、そこへ
運転免許証取りを集めて、このごろ特別のところは別ですけれ
ども、あの
自動車学校でもうかっておらぬところはないですよ。だから生活上の手段ということに対してものを
考えるのなら、これは
考え過ぎです。ですから、そういう者については再び、一生免許証を与えない、死傷
事故を起こした者については。それからもっと罰金刑を強化する必要がある。一生払えないくらいの罰金をかけたらどうです。そうすると、もうこれはたいへんだということでハンドルを持たなくなる。法というものはある面では徹底した面がなければいけない。中途はんぱのものは決して他戒にはならない、自戒にもならない、そう私は思うのです。
それからもう一つ、あなた方と次元が違うというのは、いま
日本の
自動車は七百万台になっておる、年々八十万台から多いときには百万台もふえておる。これを
制限する道はないのです。
自動車の道はできなくても
自動車はふえることは間違いない。もう二、三年もすれば一千万台になる。そうなると、
日本のような農村と都会とはなはだしい差のあるところでは、一体どうなると思います。大都市、
東京とか大阪とかいわゆる五大都市というところに少なくとも七、八百万台の車が動いて、その他の地域でわずかに百万台程度の車が動くようなことになる。全部都市に集中するんです。私が先ほど言った次元が違うというのは、あなた方の
考えておられる範囲というのはきわめて狭いのです。たとえば
バスの例を一つとってみると、ダイヤを組んで
バスを動かすというのは、地域からの要求というものがあって、それだけの数を動かすのです。決して会社が独自に動かすということはないのです。公安
委員会の意見も聞き、それから、その土地その土地の
交通機関の運営
委員会というのがあって、いや、ここには何本よこせ、こっちには何本よこせ、こう言って配車をしていく。ですから、その時間というものは、いろいろな面を考慮して、もう最少限に見積もって立ててあるところのダイヤなんです。ところが、それでも動きがとれないというのは、いわゆる
自動車のラッシュのためにその予定どおり動かない、こういうことになる。
運転手もあせる、乗っている者もあせっておる、みんながあせっておる。こういう結果、そういう
事故が起こる場合が非常に多い。ですから、ものの
考え方の二次元というものが違うと思うのですよ。ですから、あなた方の
考えておられるようなものでこの法の制定の
趣旨があるというなら、懲役の五年ということじゃなしに、一生免許を与えない、こういうことにならなければこの他戒の目的は達せられない、こういうことになると私は思います。これは
議論になりますから、またあらたらてやります。
それからもう一つ、この機会にお伺いしておきたいのですが、これは実際に扱っておるのは
警察庁ですね。ところが、表向きには検察庁ということになっております。
交通違反の処理ですね、最近、おそらくことしは
交通違反の罰金の額は三百億になるだろう、こういうふうにいわれています。先般も大阪から陳情にやってまいりました。大阪は、実はえらい申しわけないけれ
ども、ことしは四十億ぐらいな罰金を納めなければならぬと思っておるのだ。ところが四〇億の罰金を納めるについては、それぞれの地域にあるところのいわゆる
交通違反に対する処理場というのですか、名前は知りませんが、そこで、とにかく時間を切って一日に何百人という者が出頭命令で来る。ところが、そこは狭過ぎるということ、それから建物がお粗未だということ、そうして、もちろんそういうところですから、順番を待っておる間に腰かけるところもない。あそこへ行くと、何というのですか、まるで豚箱に入れられたような
気持ちがする。罰金だけでは済まぬから、
併合罪でこういうことになっておるのかな、こういうことなんです。私も、まさかそういうことはないだろうと思うのですが、陳情の
趣旨は、そういう検察庁の支所というのですか、そういうものを処理しておるところの施設を改善をしてくれということなんです。もっと広いところで、少なくとも罰金を納めに来たのだから——
違反は
違反ですから、ですから罰金を納めに来たのだから、まるで重
犯罪を犯してきた者を置いておくような形じゃなしに、罰金を納めれば、アメリカ式にサンキューぐらいは言ったらどうだ、こういうことなんです。こういうものに対してぜひひとつ設備を改善してくれという話なんです。ところが、これはどうも、どこへ持っていったらいいかわからないということです。聞いてみると、どうも検察庁らしいということですが、そういうことなんでしょうか。もしそういうことでしたら、ひとつそういう陳情が来ておった、非常に手狭なところで、大阪では、各地方の支所を含めて何カ所ありますか、五、六カ所、もっとありますか、そこで四十億の罰金を取るのですから、少し施設の改善をしてくれという陳情がありましたから、ひとつ心にとめておいていただきたいと思うのです。
要するに最近の
交通事故というものは、
日本は非常にスケールが変わってきております。ですから、たまたま
交通事犯が悪質で困るというようなことであるとするならば、この
罰則によるところの他戒策ではなしに、もっと具体的な指導方法があるんじゃないか、こう思うのです。私の知っている範囲の例を一つ申し上げると——
警察庁はもう帰っておりませんから、ひとつ聞いておいていただきたいのですが、大体
トラックの
運転手に免許証を持っておるのが一体何人おると思いますか。たとえばある
トラック業者が
トラックを二十台持っておる。この二十台持っておる
トラックの中で、常時おる
運転手と、そこいらのアンコの
運転手を雇ってきてやる場合、ほんとうに
運転免許証を持っておるというのは数えるぐらいしかない。これはちゃんと
警察と——
警察がおらぬから言うのじゃありませんが、どうも裏話があるんじゃないかという気がする。乱暴な
運転はこういうところがら起きてくる。ダンプーカーの
運転手は、
運転免許証を持っておる者がきわめて少ない。それからもう一つは、免許証の問題はともかくとして、一番危険に感ずるのは、商店で持っておるいわゆる軽四輪程度の
運転者、これはひとつ十分
考えてもらわなければいかぬ。こういうものに対する指導は全くできていないのです。それは組織がないからです。業者の組織はあっても、その
運転者を指導する機関というものがないからなんです。曲がりなりにも労働組合なら労働組合を持って、そうして
警察あたりと絶えず折衝しながら
事故をなくしようというときには、不十分ながらも協力をするという体制にある
バス会社、タクシー会社、こういうものは例外なんです。ところが、ほんとうに
交通事故を起こす者の層を調べてみると、商店あたりで持っておる車、ここではいなかから出てきて地の利もわからない、ただ
自動車の
運転免許証を持っているというだけの者に
運転さしておる。
事故が起きるのはあたりまえなんです。それから
トラックの
運転手もこういうことになっておるんです。ですから、こういう者に対する指導がやられない限り、
交通事故を
罰則強化によってのみ他戒の成果をあげるということは非常にむずかしい。ですから、こういう結果あらわれてくる
現象を私らは非常に心配をしています。これは正規の機関で最大限の努力をして
注意を払っておるところの
路線バス、こういうところのものに案外これの適用者が多く出て、その他では思うような成果をあげられない、こういうことになるんじゃないかと思うのです。
もう一つ最後に、これは例を申し上げておきたいと思うのですが、普通一般の場合に、
注意運転をしておる者が
事故を起こさないというふうに思われておったら、結果はどうも逆なんです。無謀な
運転はともかくとして、大体無謀に見えるような、どうもぶっ飛ばしてあぶなっかしくてしかたがないというのが、残念ながら
交通違反にあまりひっかからない。慎重に慎重に
運転しているのが、ちょっと
スピードを出したときにぱかっといかれて、そうして
交通違反であげられておる。こういう例が非常に多い。あの男が
交通違反にひっかからぬのはふしぎだなんという例がたくさんあるのです。ですから、およそ法というものを適用しようという立案者の
考え方と、実際の人間社会の複雑な人間性というものが、そう簡単に割り切れない、こういうことがあります。
時間もだいぶおそくなりましたから、またあらためて残っておるところを質問したいと思います。きょうはこれで質問を終わります。