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1965-04-08 第48回国会 衆議院 法務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月八日(木曜日)    午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 加藤 精三君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 草野一郎平君 理事 小島 徹三君    理事 田村 良平君 理事 坂本 泰良君    理事 細迫 兼光君 理事 横山 利秋君       四宮 久吉君    中垣 國男君       濱野 清吾君    藤枝 泉介君       井伊 誠一君    長谷川正三君       田中織之進君  出席政府委員         法務政務次官  大坪 保雄君         検     事         (刑事局長)  津田  實君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁交通局         運転免許課長) 藤森 俊郎君         検     事         (刑事局刑事課         長)      伊藤 榮樹君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 四月八日  委員平林剛君辞任につき、その補欠として長谷  川正三君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 四月六日  改正刑法準備草案第三百六十七条に関する請願  (石井光次郎紹介)(第二五四五号)  同(大石八治君紹介)(第二五四六号)  同(毛利松平紹介)(第二七七五号)  同(佐々木義武紹介)(第二七九一号)  は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  刑法の一部を改正する法律案内閣提出第一〇  二号)      ————◇—————
  2. 加藤精三

    加藤委員長 これより会議を開きます。  刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑を続行いたします。大竹太郎君。
  3. 大竹太郎

    大竹委員 前回に引き続きまして、刑法の一部改正、特に業務上過失致死傷について質問を続行いたしたいと思いますが、この間の質問をやっておりますうちに資料を提出していただきたいものが二、三出ましたので、まず警察庁のほうへ資料要求をいたしたいと思います。  第一番目にお願いしたいのは、免許証を与えた者の数、これは全国的なのはなかなかむずかしいだろうと思いますから、東京都だけでよろしゅうございます。なお、免許証を受けた者の数を内訳していただいて、自動車教習所免許証を得たものと、一般試験によって免許証を得たものとを、最近五年くらいのものを出していただきたい。  第二番目には法令違反処分を受けた者、これも東京都だけで最近五年くらいでよろしいんですが、法令違反処分を受けた者の数を内訳していただいて、自動車教習所免許証を受けた者と一般試験で取得した者との内訳。  第三番目には、この間の御答弁で、免許証を得て後に重大な事故を起こした者について、精神障害その他を調査といいますか、試験をして免許証を取り上げてしまう場合もあるというお話でありましたが、そういう免許証を取り上げてしまった者の数、これも東京都だけでけっこうです。  それから四番目、この間御質問しました仮免許を与えた者の数、これも東京都だけで最近五年間くらいの数をお願いいたします。  資料要求はそれだけでありますが、引き続いて質問をいたしたいと思います。この間警察庁のほうへ御質問いたしたのでありますが、まだ二、三お聞きしたい点がありますのでお伺いいたします。事故をやった者に対する行政処分は、現在は就業停止は最高六カ月、それから免許取り消しの場合においては、一年間たてばもう一度試験を受ける資格があるということに現在の規定はなっておるようでありますが、刑法でいう累犯というようなことで、就業停止を何度も重大な事故をやって受ける。また、何度もやったあげくに免許取り消しになったというような場合におきましては、この六カ月とか一年という期間は、私の考えとしてはもっと延ばすべきじゃないかというふうに考えられるのでありますが、その点についてのお考えをまずお聞きいたします。
  4. 藤森俊郎

    藤森説明員 たびたび事故を起こしておりますような者につきましての行政処分は、現在停止の場合は六カ月を限度とし、それから取り消しをいたしました場合でも、その受験停止になっております期間は一カ年間ということでございます。ですが、ただいま御質問がございましたように、それでは不十分だというふうに思われます点もございます。したがいまして、私どもといたしましては、特に六カ月以上の停止に当たりますようなものは、大部分取り消しに該当するようなものではないかというふうな推定のもとに現在の制度が得られたというふうに考えております。したがいまして、問題は悪質な者が一年間で受験資格を回復するという点のほうが重大な問題ではなかろうかというふうに考えてまいりました。  この点につきまして、それでは、いかなるものを何年ぐらいで資格を回復させることが妥当であるかということにつきましては、現在検討を進めておるわけでございます。その点につきまして、実は私どもにおきましては、実証的なデータは非常に数少のうございましたものですから、そういうことに対しましての、一体どういう形態の事故、どういう危険性の多いものについては何年ぐらいでいいかという推定をするだけの確信を持たなかったわけでございます。したがいまして、昨年、一昨年来それにつきましてのデータ収集につとめてまいりました。幸い昨年から警察庁電子計算機を備えつけまして、そこに重大事故を起こしました者を全部登録するシステムを、昨年の二月から始めたわけでございます。その中にそういう悪質者データが蓄積され始めました。したがいまして、これを分析、検討いたしまして、これには酔っぱらい運転のごときもので事故を起こした者も、その前歴等を勘案して、これらは危険性の治癒が非常におそいという認定を確定いたすことができましたならば、これを三年にする、五年にするというふうな形にいたしたいということで、検討を進めておるところでございます。  それからもう一つ、そういう制度的に、これを三年にする、五年にする、あるいは終身にするということで、制度のほうを固めることができましても、現実にそれらの者が試験を受けに参りました場合に、それがそういう過去の経歴を持った者だということがわからなければ、実際その制度を確保することは困難でございます。したがって、それが確保できますような方策を講じてまいりまして、先ほどちょっと申しました警察庁に備えつけられました電子計算機は、ことしの十月になりますと、全国にそのテレタイプ網が完備いたします。そういたしますと、ことしの秋からは、全国から受験者の合格した者についての経歴を全部照合することになります。そういたしますと、過去の経歴をその不適格者名簿に登録いたしておきますれば、それが判明するという仕組みが、ことしの秋からは完成いたしますので、そういう制度を片方でつくり上げますれば、それに合って、その実効を確保できる、そういうシステムもこれででき上がるということでございます。現在そのようなことで、ただいま御指摘のございましたような点、まことに私も同感でございますので、そういうふうな方向で積極的に検討を進め、準備を進めておる、こういう段階でございます。
  5. 加藤精三

    加藤委員長 警察庁藤森運転免許課長にお尋ねいたしますが、ただいまの資料提供要求は、数日中に調整をして出してもらえますか。
  6. 藤森俊郎

    藤森説明員 大部分はできると思います。
  7. 加藤精三

    加藤委員長 委員長からもお願いしますが、委員長考え方では、現在の交通違反のめちゃくちゃが多くなった原因の相当多くの部分は、いわゆる自動車学校とか、そういうような種類自動車教習所等の簡易なる実技試験免除等に関連して、実技練習中に精神の修練もやらなければならぬものを、十分やってないというような現在の制度の大きな欠陥のためだと思うので、その欠陥があるかないかはっきりするようなぐあいに、直接受験者自動車学校卒業受験者と、それから違反内訳、それがわかるように統計をつくっていただきたい、こう思っております。
  8. 大竹太郎

    大竹委員 次にお聞きしたいのでありますが、これはもちろん裁判所にもこういう問題はあるわけでありますが、特に行政処分は各都道府県公安委員会でやっていらっしゃるわけでありますが、最近のように事犯が非常にたくさんになると、非常に不公平とでも申しますか、そういうことになっているのではないかというふうに考えられるわけですが、これについて、もちろん全国的に何とか統一するようにお考えになっておいでだと思うわけでありますが、どういう処置をとっておられるか、現在不公平になっておるかどうか、また、それをどういうようにしようとしておられるか、この点をひとつ。
  9. 藤森俊郎

    藤森説明員 ただいま御指摘になりました行政処分基準あるいはその適用が不備になっておるのではないかという点でございますが、私どもが従来から感じてまいりましたのは、行政処分基準政令に定めてございますが、これは相当概括的なものでございます。したがいまして、これを実際に適用いたします場合には、これは細目基準とでも申すべきものがそれぞれの公安委員会にあるわけでございます。ところが、従来各府県交通量というものは、前の時期におきましては相当事情が違ったように承知いたしております。したがいまして、そういう歴史的な背景がございますものですから、各公安委員会がそれぞれ制定いたしました処分実施細目基準のごときは、相当相違している面があったと私どもも承知をいたしております。この点は、特に最近の交通が広域化してまいりまして、各府県交通事情なり運転手事情なり、そういうものの相違というものが減少してまいりまして、全国的に同じような平均的な状態に近づきつつあるというふうに私ども考えたわけでございます。その点から申しましても、この基準全国的に統一されるべきである、また、細目基準に至るまで全国的に統一されるべきであるという観点のもとに、三年ばかり前から具体的にその作業に着手いたしまして、一応各県の基準の実態を明らかにいたしまして、そしてまず管区単位にその調整をはかりました。そして一昨年から昨年にかけまして、それぞれ管区単位のそういう点の細目基準調整が行なわれまして、昨年の後半からことしにかけましては、その基準現実に適用されて、大きなでこぼこはなくなってきたというふうに私どもは見ておるところでございます。ただし、まだそういう歴史的なあれや何かでローカル的な相違が残っておりますので、私ども政令基準の詳細な解釈と申しますか、その運用の細目基準につきましてそのワンステップはもうすでに踏み出したわけでございますので、その段階基準にしまして、第二段の、今度は全国細目についても異ならないという案を現在つくりつつありまして、これを各府県に示し得るのは来月くらいになり、それを実施いたしますれば、ほとんどそういった基準的な相違はなくなるというふうに考えております。
  10. 大竹太郎

    大竹委員 いま一つ行政処分に関してお聞きしたいのでありますが、たしかいまの道交法昭和三十五年にできたはずでありますが、その当時の国会の記録を見ますと、国会ではたくさんの附帯決議をつけておるのであります。その中に行政処分に対する苦情処理機関をつくれという附帯決議がついておるわけでありますが、これは現在はどういうことでこの苦情処理をしておるのか、その点を一つ
  11. 藤森俊郎

    藤森説明員 行政処分苦情処理の問題についてでございますが、国会附帯決議もございましたことでございますので、全国的にそういう苦情処理を組織的に行ないやすくするようにするということについての指示をいたしてまいった次第でございまして、現実府県によりましてそれぞれのくふうをこらしまして、あるいは苦情処理という看板をあげておるところもございますし、それから看板を別にあげても、そちらのほうにはどうしても来ない、当然普通の窓口に来て、これはおかしいじゃないかとか、そういうふうな形のほうが現実的であるという見方のところにおきましては、そういう行政処分窓口苦情処理窓口であるという心がまえのもとに、その窓口におきまして苦情処理といったような機能を果たすというふうなやり方をとっておるところがございます。ただこういうふうな問題は、私ども将来とも、努力に際限がございませんので、ますますそういうような機能が十分になるように今後努力いたしたいと思いますが、現在のところ、それ相当のくふうを重ねてきておる、それ相当機能を果たしつつあるというふうに考えておるところであります。
  12. 大竹太郎

    大竹委員 いまのお話を聞きますと、各都道府県がそれぞれいろいろ考えてやっておるというお話でありますが、この苦情処理機関というものは、それぞれの県の事情その他にもよって違う面もあってもいいかとも思うわけでありますが、それなら具体的に現在東京都ではどういうことをやっておるか、どういうシステムでやっているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  13. 藤森俊郎

    藤森説明員 私、現在東京都でどのようにしておるか、ちょっと正確に承知いたしておりませんのですが、記憶いたしておりますところでは、看板のほうはどうもよくわかりませんが、行政処分窓口におきまして相当件数苦情処理を扱い、そしてそれぞれの措置をしておるように聞いております。
  14. 大竹太郎

    大竹委員 どうも正確でないようでありますので、また次の機会もあると思いますから、十分調べておいていただきたいと思うわけであります。  次にお聞きしたいのでありますが、事故をやって行政処分を受けた運転者に対しまして、これも各都道府県によって違っておるかもしれませんが、再講習、再教育とでも申しますか、そういうものをおやりになり、そしてたとえば就業停止期間をその再教育を受けた者に対しては短縮するというような処置をとっていられるように聞いておるわけでありますが、この再教育はどういう再教育をやっておられるかということをお聞きしたいのであります。  それで私、事故をやった運転者等を見ますと、大体二つに分かれると思うのでありまして、一つはいわゆる運転技術の未熟な者と、それからもう一つは、技術はそう未熟でなくても、何といいますか、安全運転に対する観念と申しますか、一口にいえば心がけの悪い運転者であるからそういう事故を起こした、こう大体二つに分けられるように思うのでありますが、そういう者に対する再教育というものは、どうもいまぴったりいっていないのじゃないかというふうに思われる節もあるわけであります。これはそれぞれ違っておれば、よく知っていらっしゃるところについて御説明を願いたいと思います。
  15. 藤森俊郎

    藤森説明員 運転者の再教育の問題でございますが、数字はきわめて大ざっぱで恐縮でございますが、昨年一年間に約百万人の行政処分者があったわけでございますが、そのうち約半数の五十万近い者が公安委員会の行なう講習あるいは公安委員会の委託します講習に参加をしておるという実情でございます。ただ、その問題につきましては、先ほど御指摘もございましたように、現在さように数が多いというようなことからして、十分にきめのこまかい再教育として至れり尽くせりの内容になっているかどうか、こういう点については、私ども今後ずっともっと改善をしなければならない点が多々あるだろうというふうに考えておりまして、昨年来、ことしの重点目標一つといたしまして、再教育教育内容改善充実ということをあげておる次第でございます。その中身につきまして、御指摘がございましたように、技術の未熟な者、それから知識の不足な者、こういうふうな者もある程度はございます。ある程度はございますが、これに対する教育というのは、いわばその知識を与える、技能を与えるということで、比較的方法的に簡単でございますので、この点についてはある程度の成功をおさめつつあるし、将来も担保できるものというふうに思っておりますが、まさに御指摘のございましたような、何といいますか、運転者としての心がまえにおいて欠けるところがあるといったような点につきましては、これは実は大部分だと思うわけでございますが、これに対していかなる教習内容でやることが効果的であるかという問題につきまして、われわれもしょっちゅう検討をし、討論をいたしておるところでございますが、非常にむずかしい問題であり、将来十分改善を重ねなければならない問題であると思っております。その点につきまして、そのような状態でございますので、各府県違反者講習内容につきましても、そういうふうな心がまえを醸成していくというふうな点につきましてのカリキュラムと申しますか、内容というふうなものは、相当その講師なり担当者によっていろいろな角度からなされるというふうな状態でございます。これらにつきましては、私ども現在作業としてやっておりますのは、これらの内容について、それぞれ個人的色彩を加えなければならないとは思いますけれども、平均的、中心的なカリキュラムを定めることと、それに必要な教材、スライドでございますとか、そういうふうなもので事故重大性を知らしめること、あるいは普通の生活でありましたら、ほんの何でもないような過失が、自動車運転という場におきましては、それが非常な悲惨な結果になる。他人に迷惑をかけ、社会に害毒を及ぼし、しかも自分も困るというふうな状態を往々にして忘れて、そういうふうな悪い状態におちいっているというふうな者を、いかにして覚せいせしめるかというふうな点を中心としましたこのような教材カリキュラム、そういうふうなものを技術的な面からも検討していきたいということで作業をいたしておるところでございます。  将来の構想でございますが、私ども違反者講習というものを、各府県それぞれ違反者学校違反者学級ということで充実改善をいたしまして、時間数その他も十分な用意をいたすだけの財政的な措置についても考える。そしてまず片一方ではその違反者について、それぞれいろいろな種類がございますので、それらを分類をし、その内容に適した教育内容を与え得るような事務組織と申しますか、制度、そういうふうなものもあわせて検討をいたしておるわけでございます。総じて私どもは、この再教育の面につきましては、御指摘がございましたようにまだまだ改善する余地が多いと思いますので、ただいま御指摘のございましたような御意見を御激励のおことばと受け取りまして、今後さらに改善を進めたい、こういうふうに考えております。
  16. 大竹太郎

    大竹委員 いまのお答えで、私、気がついたことを二つ指摘したいと思うのであります。一つは、運転技術の未熟な者、また法規その他について知識の浅い者というのは比較的処理しやすいけれども、どうも心がけの悪いのはなかなかぐあい悪いというお話があったのでありますが、これはやはり一般試験、あるいは自動車教習所試験と申しますか、そういうものにも一つ欠陥があるのじゃないかと思うわけでありまして、何といいますか、自動車運転の基礎的な心がけというようなものについて、厳重な試験とでも申しますか、それを現在の制度では試験のときにやっておいでにならぬのじゃないか、それをむしろ試験のときに織り込むべきじゃないか。現在はその点はどうなっておるかという点と。いま一つは、お聞きしますと、再講習をやっても半分くらいの者しか現在は出てこない。結局、さっき私が申し上げましたように、教育を受ければ就業停止期間が短くなる実益があるから出るし、出ないやつは、申し渡された期間たてばまたハンドルが持てるというようなことで、そういうことになるのだろうと思うのでありまして、これはやはり少なくともやった以上は、自動車教習所を出た者なら自動車教習所責任であり、一般試験ならばそのときの試験官責任でもあるわけでありますので、再教育というものは、やはり法規の上においてやることにして、さっき私が申し上げましたように、それに出てこないような者は就業停止期間を延ばすとか、そういうようなこととあわせて、やはりこれは制度上の問題としてお考えになってしかるべきものと思うわけでありますが、その点についてお考えをひとつ伺いたいと思います。
  17. 藤森俊郎

    藤森説明員 第一点の、試験の際に心がまえ的なものについてためすべきではないかという御意見でございます。これにつきましては、私どももそういうふうにしたいという気持ちは持っておるところでございます。ただ技術的な問題といたしまして、現在年間に全国で九百万人の受験者がございます。それを処理いたします実際的処理方式といたしましては、現在法令試験構造取り扱い試験、こういう面におきましてはやむなくマルチョイ式という簡易な試験方法をとって処理しておるという状況でございます。そういう心がまえ的なものは技術的にそういう試験処理方式となかなかなじみにくい性質のものでございますので、そういう技術的な面がその点を阻害してきたというふうに考えておるわけでございます。ただわれわれは、それだからほっておいていいというふうには考えておりませんので、現在法令という問題につきまして、法令になってしまいますと、まことに味もそっけもないものになってしまって、ああすればいい、こうすればいいというだけのことになってしまうのですが、現実自動車運転ということになれば、あるいは心がけの問題となれば、そういうことでは決してよくないわけでございます。そういう点につきまして、私どもは現在道交法に基づきまして、交通ルール安全運転のためのルールというものを、これは法律がわかりにくいから、世の中の人に、ドライバーにわかりやすく知ってもらうという意味合いと、やはりそういった大事な心がけ的なものを強調していく。法令規定にはそれぞれその裏には倫理があるものと私ども考えておりますが、そういうふうなものができるだけ出ますような、そういう交通ルールというものを現在編集中でございます。それをつくり上げまして、試験問題はそういうふうなものから出していく。それによって、昔われわれ修身の授業を受けましたが、どうもその試験がどのようであったか覚えておらないわけでございますけれども、あったのかなかったのか記憶ございませんけれども、やはり法令試験構造取り扱い試験の中にそういう心がまえ的なものが何とかにじみ出るような行き方を今後ともくふうを重ねてまいりたい、かように思っておる次第でございます。  それから第二点の、現在の講習制度は、処分をまけてやるから講習に来いというふうな、裏から皮肉に申しますとそういうふうに言えるわけでございますし、またそういうつもりで来る人がずいぶん多いのではないかということについては、御指摘のとおりだと私ども思います。したがいまして、私、この制度をいい制度だとは必ずしも考えておりません。ただしかし、三十五年のこの法改正以前の状態講習命令がございまして講習をしておりました当時よりも、たくさんの人が受けに来ておるという状況のようでございますので、現在は、ともかく現在の制度を前提にいたしましてその内容をよくしていくことに全力をあげてまいりたいということで進んでおるところでございます。ただ、もうこれで内容的にだいぶよくなってまいりましたら、そういうめどがつきましたら、それと並行しまして、私は、講習を受けて矯正可能性の強いグループと、矯正可能性の非常に薄いグループとがおのずからあろうと思いますが、それの選別法、これも技術的に相当問題でございますが、それらを現在検討中でございますが、それらの開発を進めまして、矯正可能の強い者はどうしても受けさせるというようなシステムにしていくことが必要であろうということで、制度的にも検討をしておる状態でございます。
  18. 大竹太郎

    大竹委員 最後に、仮免許制度についてこの間お伺いしたのでありますが、はからずもきのうの毎日の夕刊に「交通事故ゼロ提案」という見出しで、いろいろ全国から交通事故をなくするための意見を徴したわけでありますが、その中で仮免許について出ておるのであります。この間私が質問いたしましたように、現在の仮免許制度というものは非常に私は危険きわまるものだと実は思うわけでありまして、そういうようなことで、新聞にも出ておりますが、現在のいわゆる本免許をある期間だけ仮免許にする。これはどのくらいの期間にするか、議論もあるでしょうし、私も専門家でないですから、わかりませんが、現在の本免許をある期間仮免許にして、その期間にさっき申し上げたように何か事故を起こしたというような場合には、未熟な者は再教育すればよろしいし、心がけの悪いような者は仮免許を取り上げればよろしい、そういうような方法にしたほうがいいのじゃないか、そういう意見が新聞に出ておりました。私も何となしにそんなような気がしておったわけでありますけれども、これについてのお考えはどうですか。
  19. 藤森俊郎

    藤森説明員 仮免許と関連いたしまして、一応免許を与えておいて、一年間なら一年間、何か起こせばそれをはぎ取るという制度でございますが、これにつきましては、一つの案でございますので、私どももかねがね内々に検討はしてきた点でございます。ただ、これにもいろいろ難点がございまして、たとえばその仮免許を与える場合に一体どの程度で与えたらいいのか、これを現在の程度よりもむずかしくしますれば、それまでの間の練習や何かをどういうふうなことでしていくのかという問題、それから仮免許を与えてしまいましてから、その一年の間にどの程度の事故を起こした者にははいでしまうのかという問題——事故一つ一つ具体的に取り上げてみますと、本人の責任になる部分が一〇〇%というふうなことももちろんございますが、あるいは一〇%とか二〇%とか、いろいろでございますし、それから、その違反の態様にもいろいろ情状その他ございます。そうすると、一体どの程度のときは取り上げて、新たにまた出発させたらいいのかというふうな点につきまして、実は具体的な基準をつくるところまで検討いたしたのでございますが、どうもその名案ができないままでたな上げになったといういままでの私どもの経過でございます。ただ私ども、御指摘のございました仮免許制度というものは必ずしも十分に効果をあげておる制度だとは理解をいたしておりません。現在仮免許を活用いたしておりますのは、指定教習所におきまして、その教習課程の中で路上教習というのをいたしますが、その路上教習をいたします際にこの仮免許制度を利用してやっておる。したがいまして、本来全く異なっております仮免許制度と指定教習所制度とが路上教習という形で結びつきまして運用されておるというふうな形でございます。その場合は、現在道交法規定されておりますよりも、いわばもう少し手厚い形で実際上は運営されておるということでございます。したがいまして、指定教習所における路上教習以外の仮免許制度、練習制度というものをいかなるものにしたらいいのかということにつきましては、今後とも十分に各方面の御意見を参酌しながら検討を進めてまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  20. 大竹太郎

    大竹委員 警察庁に対する御質問は大体これで終わりますが、先ほど申し上げました資料が出ました上でまた質問をすることがあるかもしれませんから、その節はお許しをいただきたいと思います。  次に、法務省の方にお聞きしたいのでありますが、御承知のように刑法改正がまじかに迫って、これは、やるやると言ってまだなかなかいっておらないわけでありますけれども、これらを見ますと、ある程度一致している面もあるわけであります。もちろん現在の、ことに自動車による交通事故というものは非常な社会問題であり、交通戦争とまでいわれてるくらいの社会問題でありますので、法務省としては非常にお急ぎになるという事情もわからぬわけではないのでありますが、やはりこういうものを一部改正するということは、どこかに不つり合いの面も出てくるわけでありまして、行政上の処分の問題また裁判所あるいは検察庁においての、悪いことばかもしれませんけれども、手心といいますか、そういうものである程度の目的が達せられるのじゃないかというふうにも考えられるわけでありまして、これをあえて急いで出された基本的なものの考え方と申しますか、これは次官にお聞きすればいいのか局長にお聞きすればいいのかわからぬわけでありますが、まずそれをお聞きしたいと思います。
  21. 津田實

    ○津田政府委員 御承知のとおり刑法の全面改正につきましては、昭和三十八年の五月二十日、法務大臣から法制審議会に対しまして、刑法に全面的改正を加える必要があるか、あるとすればその要綱を示されたいという諮問が出されまして、かねて公表されておりますところの改正刑法準備草案というものを参考資料として提出いたしてあるわけでございます。しかして、この法制審議会におきましては、その後刑事法特別部会というものを設けまして、この審議については刑事法特別部会に一応ゆだねるということになりました。さらに特別部会におきましては五つの小委員会を設けまして、個別に検討をいたしておるわけであります。これらの進行状態考えますと、本年の二月末までに各小委員会とも合計百十二回の審議をいたしておりますが、現在の進行状況からまいりますと、大体本年の夏ごろには全部の一応の第一読会が終わるということになります。昭和三十八年五月に諮問いたしましたときに、法務大臣としては約三カ年間くらいでこの審議を終えるようにという希望意見を述べております。三カ年と申しますと来年の五月ということになるわけでありますが、いまの進行状態でたいした支障がなければ、そのころまでには一応の具体案はでき上がるというふうに考えておりますけれども、これをさらに正式に決定をし国会に提出いたしますには、それからまだ若干の日時を要すると思うのでございます。  一方、交通事故による死傷者の数は年々増加いたしてまいりまして、御指摘のように交通戦争とまでいわれるようになり、これの事故防止、死傷者をできる限り少なくするということは国民の悲願というふうなことにまでなってまいったわけでございます。そこで、それに関する刑罰法規改正いたしますことは、これに対する特効薬というか、万能薬というふうには私どもはもちろん考えませんけれども、しかしながら、現在におきましては、業務上過失致死傷あるいは重過失死傷に対する社会的な非難がこれほど高まっているときはないと思うのでございます。したがいまして、この社会的非難を世論といたしまして、これをやはり法的に認めて、社会的に重い非難を加えるということをいたしまして自動車運転者に自覚を与え、そして交通事故防止対策の一つにするということは、この際やはり必要なことであるというふうに考えたわけでございます。  なお、最近のこの種事犯の増加の趨勢を見ますと、悪質重大なものが非常にふえてまいったわけでありますので、明治四十年に刑法が制定されました当時の法定刑ではおよそ予想もしなかった大きな事犯が出てきておるわけであります。それに対処いたしますためにも、この際やはり刑法の二百十一条を改正して、これにこたえる必要があるのではないかという観点から、今回の改正案を提案いたした次第でございます。
  22. 大竹太郎

    大竹委員 それで、私は先ほどとかく不均衡になるということを申し上げたのでありますが、今度は三年以下の禁錮を五年以下の懲役または禁錮にされるわけでありますが、たとえば罰金なんかの面においては改正されておらないということになっておるわけでありますが、そういう点についての一部改正の不均衡ということはお考えになっておらないのでありますか。
  23. 津田實

    ○津田政府委員 今回の改正をいたしますときには、主として自動車運転に基因する業務上過失致死傷及び重過失致死傷事犯につきまして、先ほど申し上げましたように非常に悪質重大なものが増加しておるということにかんがみまして、それらの悪質重大な事犯に対して刑罰を一そう厳正にしようというのがその趣旨でございます。ここにいま悪質重大な事犯と申しますのは、たとえば無免許で技量が非常に未熟であるのにあえて運転する、あるいは酒を相当飲んでめいていしているため、正常の運転ができないのにもかかわらず運転をして交通事故を惹起するというような、きわめて危険性が高く、また人命を軽視する態度をもって自動車の運転をした結果、致死傷事犯を起こしたというような事犯を考えますと、事犯そのものはいわゆる無謀運転に基因するもので、結果に対する予見、認識がなかったといえばそれまででありますけれども、実際問題としては故意による殺傷犯等ともほとんど紙一重の違いである。この交通がふくそうしております大都市等において、高速度運転をするというような場合には当然危険を予知しなければならぬわけであります。そういうことでありますが、ほんとうの犯人の心理的内容から申せば、あるいはこれは認識ある過失程度のものかもしれません。そういたしますと、やはり法律上は現在は禁錮三年ということになるわけでありますけれども、一般的に考えますと、この禁錮三年ではたしてこれが社会なり国民の道義感情に合うかということになると、非常に事故の結果が重大であり、きわめてわずかの注意を払えば結果を防止できたというような場合に、あえてそれをしなかったというような者に対しては、禁錮三年では軽過ぎるではないかというようなことを考えますと、この法定刑を上げなければならぬという問題が当然出てくるわけであります。と同時に、いま申し上げましたように、酒酔い運転、高速度運転あるいは技量未熟の無免許運転というようなものは、いわば故意犯とも紙一重でありますので、この際、やはり懲役を加えるということもまた相当であるというふうに考えられますし、すでに御承知の改正刑法準備草案におきましては懲役刑を採択しておるわけであります。そういう意味におきまして、これは国民感情に合致するものではないかという点を考えまして、懲役刑をも加えるというわけでございます。しかしながら、依然として禁錮刑をも存置しておきますのは、やはりこれらのものがすべて懲役刑によって非難されなければならぬというようなことではなくて、やはり禁錮刑に当たるようなものもあるわけでありますので、禁錮刑を存置することといたしておるわけであります。  一方、この罰金刑におきましては、ただいま御指摘のとおり、現在の刑法上の一千円、罰金等臨時措置法の臨時措置によりまして五万円となっておるわけでありますが、五万円をそのまま据え置いたわけでありますが、ただいま申し上げましたように、現在の交通事故と申しますのは全く千差万別でありまして、過失の程度、態様が小さく、また被害者に重大な過失がある、その他外的事情について十分しんしゃくすべきものがあるというような事犯につきましては、やはり現在程度の罰金刑をもって臨むのが相当だというのが相当あるわけであります。したがいまして、現在の通常程度と申しまするか、いま申し上げましたような事情のあるものについては、必ずしも法定刑を引き上げるという必要はないというふうに考えられますので、罰金そのものにつきましては現状をもって相当であるというふうに考えたわけでございます。これは将来の問題といたしまして、貨幣価値その他の問題から刑法全般を考えまするときは、またこれは考え直す必要があるのでありまして、現に改正刑法準備草案におきましては、もっと高い罰金の法定刑を採択しておるわけでありますが、それは刑法全般の問題として考えるべきものだというふうに考えておる次第であります。
  24. 大竹太郎

    大竹委員 ただいまの御答弁の中でも触れられたようでございますが、先ほど私が質問した中で、法の適用の上においてお考えになればある程度処置できるのじゃないかということを申し上げたように、未必の故意と申しますか、そういったことで交通事犯を取り扱って、うんと悪質なものについてはお取り扱いになっている例、私の県でも確かに問題になりました事犯があるように聞いておるわけでありまして、たとえば殺人としてお取り扱いになるというような事犯もあるように見受けるわけでありますが、主として取り扱われるのは殺人の問題だろうと思うのでありますが、この交通事故で殺人として取り扱われた件数というものは——資料が膨大なものですから、私もよく見ておらないのでありますが、この資料の中にございますでしょうか。なかったらひとつお出しをいただきたいと思います。
  25. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま御質問の点につきましては、未必の故意によりまして、殺人罪あるいは傷害罪で起訴をいたした事例はもちろんございます。ただいま御指摘のようなことが新潟にはございましたと思いますが、ただ最終的に裁判所でそれを認めて殺人罪、傷害罪というようにした事例につきましては、いま必ずしもつまびらかでないのであります。これは調査をいたしましてお答えを申し上げたいと思います。
  26. 濱野清吾

    ○濱野委員 関連して。ただいまの刑事局長のおことばのうちに、酒に酔っての運転、無免許の運転、そうして高速度の運転、これらは過失というよりは、むしろ故意による傷害と考えたほうが適当である、こういう御意見でありますが、私はこのことについては全く同感でございます。ただ、ここで一言私が重ねてお伺いしておきたいのは、高速度ということが故意にひとしい殺傷事件のそもそもの原因になるということにつきましては、現状にかんがみて非常に大きな問題が出てくるわけであります。それで法務省でも高速度運転の事故件数というものを明らかにしてもらいたい。私どもの承知しておる範囲においては、おおむね傷害事件、いまの事故の事件というものは高速度によることが多い。酒に酔ってのこともさることながら、無免許というようなこともさることながら、その事故の原因の多くは速度に原因がある。統計を見ても私どもはそう考えております。そこで、刑法で処罰する対象、すなわちそういう犯罪人をつくる前に、この委員会で、もっとそういう犯罪を起こさなくても済むような、そういう環境をつくる必要があるんじゃないか。たとえば文明はますます時間的な差を縮めていく。スピードはアップされてくる。それは世界の大勢であります。それに逆行するような制度というようなものは大いに考えなくてはならないということで、今日では飛行機も列車も自動車も、ことごとくスピードアップしておることは御承知のとおりであります。しかし、そのために今日の事故件数を見ると、アップすればするほど陸上輸送、ことに自動車等におきましては事故件数が多い。私は、新幹線といわれる日本の誇るべき列車運行についても、その危険が皆無であるとはいえないと思う。今日ではたいへんな事故はないが、間違えばあれは何千人かの人間を一ぺんに殺す可能性が十分ある。日本の技術陣はそういうことはないと言っておりますが、私ども専門家でありませんからよくわかりませんけれども、あれだけの速度で走って行くのですから、何かちょっとしたことがあれば、あの列車の転覆というのは避けられない。転覆が起きれば何千人かの人間を一挙に殺してしまう。しかし世の中は、そういう危険性を予知しながらも技術を信頼してスピードをアップしていく。これがいまの大勢です。しかし、新幹線は別として、おおむね自動車事故を対象として今回の刑法改正が行なわれるのでありますが、その行なわれる前に、そういうようなものの犯罪が非常に多い。したがって、その前に、法務省でも、それを何とか解決するくふうがありそうなものだとして、国の機関である法務省は、関係官庁とも合議してもらう必要があるのじゃないか。むろん私は、刑法改正の決定前にいろいろの役所の意見を聞き、またわれわれの意見も述べて、そうして最後のところをつくりたいと思っておりますが、いずれにしましても、高速道路ではスピードアップというものは文明の当然の帰結である、そのスピードが人を死傷している。ですから、そこに大きな矛盾があって、この刑法改正する前に打つ手があるんじゃないか。たとえば局長こういうことであります。いま運輸省では、自動車のスピードにつきましては、私はほとんどその制限を加えずにいるのが実際だ、そう思います。ところが実際、陸上輸送のような場合は、道路は御承知のとおりなのであります。アメリカやイギリスや、北欧あたりの道路の事情とは全然違う。しかも、その国とひとしきスピードでどんどん走っておるわけであります。ですから、今日あなた方が刑法改正しなければならぬという世論が出るように、そういう状態にまで追い詰められてきている。しかし、この原因も、これは日本の道路事情にもよりますし、また道路を走る車の車体構造がスピードが幾らでも出るようなそういうもので、ほとんど無制限な措置をとっている。また危険性考えざる、そういう措置をとっているところに今日の事故が頻発するのではないか。究極においては、それをなおざりにして、法務省当局は世論というものにかんがみて、この提案の趣旨を説明されているのでありますが、総合的に考えますと、実際はこの以前に、警察庁なりあるいはまた運輸省なりが、この日本の道路その他の現状に即した、そういう事故防止というようなものが行なわれるべきではなかろうか、こういうふうに考えております。ですから私は、法務省におきましても、運輸省並びに警察庁に対しまして、スピードがアップされてどんな事故件数が生まれているかというようなことを一応調べられて、そうしてこの委員会にその統計を提出してもらいたい。これは多いことは事実でありますし、またあなたのおっしゃるとおりですけれども、無免許、泥酔、それからまたスピードアップ、これは悪質な犯罪の原因であることは私も肯定するのであります。しかし、少なくとも刑法改正だけが先ばしって、そうしてその他の制度改正が行なわれませんと、これは私は国全体から考えますと、適切なる方途ではない、こう考えておるわけでありますが、この機会に一挙にひとつスピードアップによるそうした事故件数の増大もこの場合何とか抑止したい、そういう考えから私は思いをいたしておるわけであります。そこでひとつ統計を御提出いただきたい。法務省でも、刑法改正前に提案なさるのでありますから、世論はさることながら、そういうことも参考にしたのだろうと思いますから、そういう数字があれば次の機会でよろしゅうございますから、ひとつ御提出を願いたいと思います。
  27. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま手元にございます数字だけを一応申し上げておきまして、ただいまの御要望の点につきましては十分調査をいたしまして、できる限りつまびらかにいたしたいと思っております。  現在、昭和三十八年度で申しますると、道路交通違反だけで検察庁に送られてきました人員は、四百十一万八千人でございます。そのほかに、業務上過失致死傷、重過失致死傷というものが約二十万あるという状態でございます。道路交通違反の場合は、ほとんど事故になっていないわけでございますが、事故を起こしました交通事故を原因別に見ますると、昭和三十八年におきましては、速度違反は一万八百八十五件、それからめいていによるものが三万六百三十五件、それから無免許が三万一千八十八、無免許が一番多くて、無免許とめいてい運転がほぼ同じ数。速度違反のほうは、速度違反事故が起こったというものは一万ということでありますから、約三分の一、めいてい、無免許を入れますと、約六分の一という数字になっておるわけであります。そういう数字に一応なっております。  そこでただいま御指摘の点はまことにごもっともだと思います。結局、現在の道路施設あるいは信号等の施設と、現在の自動車の速度というものがアンバランスではないかという問題があるわけです。これは現在の道路交通法規の制限速度というものは、それらを勘案しているわけであります。必ずしもアンバランスとはいえないわけでありますが、実際に運行されているスピードというものは、ほとんどが——ほとんどと言っては言い過ぎかもしれませんが、最高速度をこえておるという実情だというふうに私ども理解しております。たまたまその中の何%かが違反として検挙されるということになっておる。こういうことを考えますと、現在の最高速度制限そのものに無理があるという説もございます。一面いえば、必ずしもそうではなくて、現在の道路施設等から考えればあのスピードが限界であるという考え方もございます。その点は、結局文明の進歩に見合うようなスピードを上げるということになりますと、スピードを中心にしてものを考えれば、やはり道路施設、信号施設がよくなければならないということになってくるのであります。確かに御指摘のように、その面ではアンバランスがあり、スピードは欧米並みに上げたいが、施設がそれに伴わないという事態が起こっております。全く味もなく言えば、それに合うようにしておいて、あとは施設が順応してくれば上げていけばいいじゃないかということなんですけれども、それだけでは解決しない問題であるとも考えられますので、その点は閣僚懇談会をはじめといたしまして、交通対策本部におきまして検討を始めておるわけでありますけれども、それじゃ、いまかくかくの施策を直ちに行なうんだというところまでいっておりません。その面は確かに交通施策というものがおくれておると言わざるを得ないと思いますが、その点は政府におきましても、対策本部等において最近非常に力を入れておるわけであります。その点をまず申し上げておきまして、なお御要求資料につきましては、できる限りこれを整えたいと思います。
  28. 濱野清吾

    ○濱野委員 よくわかりました。ただ私は刑法改正のチャンスに、そうした矛盾の多いいまの行政措置、各官庁のそれらがばらばらでアンバランスになっているこの措置、これを国会も協力して直してもらいたい。このことにつきましては、党派別の意見は別になかろうと思います。人命を尊重して、そうして制度を直していこうというのでありますから……。ただ私は、このことは昔から気がついているのでありますが、どうも道路の施設環境というものが非常に悪い。ところが、そこを走るところの自動車、それがトラックであろうと、バスであろうと、単車であろうと、これは欧米並みだ。むしろ欧米よりもスピードアップされているし、実に大きなものが最も小さな道路、一番非文明的な道路の上を走っている。そこに大きなアンバランスがあり、事故の原因がある。私も大竹さんも実は業者なんです。ですから、酒を飲んではいかぬ、無免許運転をやってはいかぬ、あるいはスピードアップをさせてはいかぬと言うけれども大竹さんも先ほど警察庁に質疑をいたしましたように、法規以前の人間形成というものが、実は運転手階級には未熟になっているわけです。畿ら業務命令を出してもだめなんです。この人たちが運転をするのでありますから、警察庁で道路交通法上速度制限を何キロと制限をしましても、これは押えられるものではございません。でありますから、今日ではしかたがありませんから、機械構造の中でひとつ制約を加えていったらいいのじゃなかろうか。機械構造なら速度が出ないようにできます。構造上の問題で速度をチェックするのですから。ところが、この問題につきましては、非常に進歩的だといわれる通産省が許さない。先ほど申しましたように、文化が進んでいけば、文明がどんどん進めばスピードアップされるというこの概念を動かさないで、これは通産省が反対している。非常に強く反対しておる。これがまたメーカーやその他業者も一緒に反対してくる。こういうことがあるのです。ここを何とかひとつ世論で、あるいは法務省が今度のこの刑法改正のチャンスによく納得させて、そして事故を未然に防ぎ、人命、身体というようなものを安全に守る。  先ほどの統計でちょっと。後ほど統計をいただきますが、酒を飲んで酔っぱらって運転しておれば、これは信号無視もやりますし、スピードがアップされます。スピードアップは酒が原因でありますけれども、アップされる。ですから、酒を飲んだことによって信号無視をすることもあり得ますが、これは当然にスピードアップされる。スピードアップされれば当然事故が起こる。これは原則です。ですから、どうぞその点をお考えおきくだすって、法務委員会刑法改正するこの機会に、警察庁それから運輸省、通産省、この人々の意見も十分聞いて、できれば過失傷害事件なども起きないように、ひとつスピードに対する規制というものが必要でなかろうか。文明に逆行しても、これはある時点においてはやむを得ぬのじゃないか、こういうふうに考えておるものですから、統計の提示を願ったわけであります。
  29. 加藤精三

    加藤委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後零時十三分散会