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1965-03-30 第48回国会 衆議院 法務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月三十日(火曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 加藤 精三君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 小金 義照君 理事 小島 徹三君    理事 坂本 泰良君 理事 細迫 兼光君       大石 八治君    唐澤 俊樹君       武市 恭信君    中垣 國男君       野呂 恭一君    濱野 清吾君       森下 元晴君    神近 市子君       田中織之進君    内海  清君       志賀 義雄君  出席政府委員         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 鹽野 宜慶君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木信次郎君  委員外出席者         最高裁判所事務         総長      関根 小郷君         判     事         (最高裁判所事         務総局経理局総         務課長)    田宮 重男君         日本国有鉄道参         事         (総裁室法務課         長)      上林  健君         日本国有鉄道参         事         (職員局労働課         長)      八川 光男君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 三月二十七日  委員長谷川正三辞任につき、その補欠として  小松幹君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小松幹辞任につき、その補欠として長谷  川正三君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員賀屋興宣君、馬場元治君、羽田武嗣郎君及  で西村榮一辞任につき、その補欠として武市  恭信君、野呂恭一君、大石八治君及び内海清君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員大石八治君、武市恭信君、野呂恭一君及び  内海清辞任につき、その補欠として羽田武嗣  郎君、賀屋興宣君、馬場元治君及び西村榮一君  が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十七日  経済関係罰則の整備に関する法律を廃止する法  律案内閣提出第一二八号) 同月二十九日  改正刑法準備草案第三百六十七条に関する請願  外二件(小山省二紹介)(第二一五二号)  同外三件(島村一郎紹介)(第二一五三号)  同(進藤一馬紹介)(第二一五四号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第二一八〇号)  同(進藤一馬紹介)(第二一八一号)  同外一件(長谷川正三紹介)(第二一八二号)  同(大泉寛三君紹介)(第二二一〇号)  同(小山省二紹介)(第二二一一号)  同外一件(田中榮一紹介)(第二二一二号)  同(中村高一君紹介)(第二二一三号)  同外一件(田中榮一紹介)(第二二二六号)  同(福田篤泰紹介)(第二二二七号)  同(高橋重信紹介)(第二二三八号)  同(福田繁芳紹介)(第二二三九号)  同(福田篤泰紹介)(第二二四〇号)  同(天野公義紹介)(第二三二五号)  同(大平正芳紹介)(第二三二六号)  同(加藤常太郎紹介)(第二三二七号)  同外二件(山田彌一紹介)(第二三二八号)  同(中村高一君紹介)(第二三五四号)  同外一件(木部佳昭紹介)(第二四三八号)  同(田中榮一君外五名紹介)(第二四三九号)  同(中村高一君紹介)(第二四四〇号)  同(畑和紹介)(第二四四一号)  同外二件(山花秀雄紹介)(第二四四二号)  同(浦野幸男紹介)(第二四六二号)  千葉地方裁判所等市川支部設置に関する請願  (始関伊平紹介)(第二二一四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所法の一部を改正する法律案内閣提出第  一一七号)(参議院送付)  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 加藤精三

    加藤委員長 これより会議を開きます。  裁判所法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。坂本恭良君。
  3. 坂本泰良

    坂本委員 裁判所法改正の問題では、書記官の今後の問題等についていろいろございますが、これは同僚委員から質問もあっておりますから、本日は私は改正の第二、最高裁判所庁舎営審議会設置の問題について若干お聞きしたいと思います。  提案理由説明書によりますと、「その庁舎は、わが国司法象徴ともなるべきものである」こう書いてあります。司法象徴とはどういうものか、お伺いしたい。
  4. 鹽野宜慶

    鹽野政府委員 お尋ねでございますが、最高裁判所の新しくできます庁舎につきましては、これを司法象徴というべきものであるというふうに申しているわけでございますが、これは一般的に申しまして、最高裁判所庁舎がどのようなものになるかということによって、国民が一般にそれを見まして司法というものがどういうものであるかということの印象を受けるのではなかろうかというふうに考えますので、これを司法象徴となるようなりっぱなものにいたしたい、こういう趣旨で申し上げているわけでございます。
  5. 坂本泰良

    坂本委員 そのりっぱという意味があんまり抽象的だと思うのです。象徴なんていうことは、現憲法が施行されるとき初めて、天皇国民象徴ということが出ておると思うのです。そのほかに法律上の文句として出ているのは、私、寡聞にして知りませんが、そういうのがあったら、あるところをあげてもらって、もう少し具体的にはっきりしてもらわぬと、ただ国民に印象づけるというと、あるいは大きい建物をつくったならば威嚇になるかもわからない。それだから、その象徴意味をまず明らかにしてから先の質問に進みたい。
  6. 鹽野宜慶

    鹽野政府委員 私どもも十分に研究したわけではございませんが、他の法令に象徴ということばを使った例は存じていないわけでございます。憲法の問題は別といたしまして、それ以外には承知いたしていないわけでございます。そこで、私どもがここで司法象徴と申しましたのは、いま御指摘のとおり、非常に大きなものをつくりまして威嚇するというふうな趣旨のことを考えているわけではないのでございまして、どのようなものが最高裁判所庁舎にふさわしいかということを、基本方針を定めていただくためにこの審議会をつくりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  7. 坂本泰良

    坂本委員 基本問題その他については、まず象徴というのがはっきりしなければ進まないと思うのです。だから私はここに象徴という点をはっきりして進めたい、こういうわけです。  これは事務総長も見えておられますが、やはり裁判所としてもりっぱな庁舎をつくる、そのりっぱなという意味をこれからお聞きしなければならぬのですが、少なくとも象徴ということは、憲法象徴ということばが出ましたから、みんな象徴象徴と言うんだけれども、実際ははっきりわかっていないと思うのですよ。たまたまここに国民にりっぱに印象づけるような最高裁判所庁舎をつくる、それは司法象徴、しからば象徴というのはどういうものであるか、どういう見解を持っておられるかという点をお聞きするわけです。
  8. 関根小郷

    関根最高裁判所長官代理者 ただいまの坂本委員のお問いは政府側説明理由の問題でございますけれども、一応最高裁判所といたしましても、その庁舎の問題でございますので、敷衍的に御説明してよろしゅうございますか、象徴ということばにつきまして……。
  9. 坂本泰良

    坂本委員 鹽野調査部長にもお聞きしたいのですが、やはり裁判所側も、できた庁舎というのは最高裁判所庁舎でございますから、御見解をお聞きしておきたいと思います。
  10. 関根小郷

    関根最高裁判所長官代理者 象徴ということばは非常にむずかしい表現でございますけれども、もっと具体的に申し上げますと、最高裁判所全国裁判所最終裁判をするところでございますので、最高裁判所一つ事件について裁判がございまして、これが確定いたしますと、結局全国裁判所裁判を覊束するという、これは原則論でございますが、そういう意味におきまして全国裁判所を代表するという意味象徴ということばが使われているのではないかと考える次第でございます。
  11. 坂本泰良

    坂本委員 全国裁判所を代表する裁判所であるから象徴ということばを使っている。そうすると、いま総長の言われました代表するというのはどういう意味になるのでしょうか。
  12. 関根小郷

    関根最高裁判所長官代理者 いま代表ということばは比喩的に申し上げたのでございまして、結局一つ事件最終的な判断をするという裁判所、こういう意味で申し上げたわけでございます。
  13. 坂本泰良

    坂本委員 すべての裁判最終だという、それを象徴という、こういう意味だと、憲法にいう天皇国民象徴というその象徴意味とはだいぶ違うのじゃないかと、こういうふうにも考えられますが、その点いかがですか。
  14. 関根小郷

    関根最高裁判所長官代理者 天皇象徴ということば最高裁判所全国司法象徴だという意味はあるいは違うかも存じませんが、しかし、結局のところは最高裁判所は、全体の裁判所裁判に不服があります場合は、最終的にきめる意味におきまして、全国裁判所を代表するということにおきまして象徴ということばが使われている。ですから、天皇象徴という意味と違うといえば違う。具体的な問題となりますと、それぞれの方々の御意見によって違うかと思います。
  15. 坂本泰良

    坂本委員 鹽野調査部長のほうは法務大臣を代表されると思うのですが、やっぱりいまのような意味ですか。いかがです。
  16. 鹽野宜慶

    鹽野政府委員 先ほど来申し上げておりますが、最高裁判所裁判所機構最高地位にある裁判所といたしまして、その建物司法を、いわば常識的な意味におきまして形にあらわしたものということになるのではなかろうかというふうに考えまして、この提案理由の中で象徴ということばを使ったわけでございます。
  17. 坂本泰良

    坂本委員 ごく一般的な考えでいいますと、ハトは平和の象徴である、天皇国民象徴である、こういうことを言われておりまして、非常な抽象的意味にだけしか理解していないと思うのです。私は、少なくとも一この司法象徴というのは、ハトは平和の象徴であるとか、あるいは天皇国民象徴であるというような、ごく俗に言う意味ではいいけれども、少なくとも最高裁判所庁舎を建設するにあたって、司法象徴となるべきものである、こう言う以上は、そういう一般的なことでなくて、もう少し具体的の考え方に立っておられるだろう、こう想像したものですからお聞きしたわけなんです。どうもいまのお二人の御答弁だけでは私は納得いかぬわけですが、それよりほかにはもう御答弁のあれはないわけですか、どうですか。それをお聞きしておきます。
  18. 鹽野宜慶

    鹽野政府委員 先ほど来申し上げましたような考え方のもとに、提案理由の中で司法象徴というふうにことばを使ったわけでございます。
  19. 志賀義雄

    志賀(義)委員 関連。いま象徴ということばが問題になっておりますけれども、旧憲法の第五十七条には「司法權ハ天皇ノ名ニ於テ法律ニ依り裁判所之ヲ行フ」こういうふうになっておりまして、新憲法では御承知のとおり象徴ということばは第一条に「天皇は、日本國象徴であり日本國民統合象徴であって、この地位は、主權の存する日本國民總意に基く。」こういうふうになっております。そして最高裁判所及び下級裁判所関係規定憲法司法のところにありますけれども、いま鹽野さんが言われたような意味象徴ということばはございません。やはりいまの裁判所及び法務省の中に旧憲法の第五十七条の規定にかけて、やはり象徴である天皇の名において裁判を行なう、その建物象徴というふうに言われると、これは非常に困った問題が出てくるのでございます。どうですか、象徴というのは比喩的に言っただけのことで、憲法規定で差しさわりがあるからそれは撤回しまして、ということになりませんか。ここは法務委員会ですから、そういう点を正確に御答弁なさいませんと、やはりみんな法務委員全体にかちんとひっかかってくることが出てきます。簡単なことでしょう。象徴というのはやめますとおっしゃったら一番簡単なんです。いかがですか。
  20. 鹽野宜慶

    鹽野政府委員 私どもといたしましては、さような考え方象徴ということばを使ったわけではないのでありまして、先ほど申しましたように、裁判所機関最高機関である最高裁判所、その庁舎はいわば司法権を形であらわすものであるという意味で、その庁舎の新営に関する基本的方針を決定するにはこういう審議会をつくりたい、こういう意味象徴ということばを使ったわけでございます。これはいわば立法権関係で申しますと、まあ私どものような使い方で申しますれば、それは国会議事堂で形にあらわされるものではなかろうか、それと同じような考え方裁判所司法権というものを目で見る形といたしますれば、その庁舎ということが一つ考え方になるのじゃなかろうかというような意味で、ここに象徴ということばを使ったわけでございます。
  21. 志賀義雄

    志賀(義)委員 先ほどあなたは下級裁判所を含めて司法権全体を象徴するものだと言われた。いまおっしゃることでは、司法権を形にあらわしたものが、今度のりっぱな最高裁判所をつくるということになりますね。そうすると、下級裁判所なんかを含めての司法権の問題と、建物をりっぱにするということと、そういうようにひっかけるとおかしいのじゃありませんか。とにかくいまの最高裁判所建物では機能上どうにもならないから、この際に建て直すことが必要です、こういうふうにおっしゃられればわかるのですよ。何をここに象徴なんていうよけいなことを出されるのですか。しかもいまおっしゃられるところは、最初にあなたが言われた象徴説明と違います。下級裁判所を含んで司法権全体を象徴する、初めの説明はそうです。いまになると建物という形であらわすと言う。二つの概念必ずしも首尾一貫してないのです。どうもあなた方は、一たび口を出ると、何とかそれをこじつけようとなさるから審議も長引くのですよ。だから象徴なんということは言わないで、いまの最高裁判所ではどうにも十分の機能が果たせないから、この際こういう審議会をつくってやってもらいたい、こういうふうにおっしゃられれば事は簡単です。私はあなたをやり込めているのではない。あなたの逃げ道をいま教えているのですから、どうですか。
  22. 鹽野宜慶

    鹽野政府委員 お説非常によくわかるのでございまして、この最高裁判所庁舎をつくりたい。現在の庁舎はお説のとおり古い建物でございまして、しかも手狭でございますので、新しい庁舎をつくりたい、こういうことに問題の端を発しておるわけでございます。そこでその庁舎をつくりますのにはりっぱな庁舎をつくりたい、最高裁判所というものは全国裁判所最高機関でございますから、その意味でりっぱなものをつくりたい。こういうことから、それは司法象徴ともなるべきものであるから慎重にその基本方針を決定いたしたい、こういうことを申しているわけでございます。
  23. 加藤精三

    加藤委員長 志賀君、関連質問はあまり回数を多くなく願います。
  24. 志賀義雄

    志賀(義)委員 いまの建物は、最高裁判所がりっぱな判決、正しい判決を出す上にも不十分だから、これをこの際りっぱなものにすると言われればわかるのですよ。最高裁判所機能は正しいりっぱな裁判をすることにあるのでしょう。建物ばかりりっぱにして、中身が伴わなければいけないでしょう。その肝心な点をあなたは少しも言われないのだ。最高裁判所でりっぱな建物をつくりたいと、ここでその審議会の案を出されるのも、要はりっぱな裁判をするためだ、それに盡きます。ついては十分機能を果たすために建物も相当なものをつくりたい、こういうふうにおっしゃられればいいのだが、その肝心な点が抜けておるのですね。ただりっぱなものをつくればそれが象徴になる、そうなってくると、天皇象徴と旧憲法の五十七条が結びついて、あなた方の考え方の中には、まだ少し怪しいものが残っていると疑われるから、そういうことはおよしなさいとさっきから言っているのですが、一度言ったら何とかそれをこじつけなければならないと思うから無理がくるのですよ。これだけ言っておきます。
  25. 坂本泰良

    坂本委員 私の言いたいことを志賀君が少し言ってくれましたが、そこでもう少し具体的にその象徴関連してお聞きしたいのです。  現在の最高裁判所に当たるものができたのは、私たちが生まれる前ですが、これは条約改正の問題があってやったことが非常な大きい理由だということも聞いておるわけです。その際には、あそこに菊の御紋をやって、それから大阪、名古屋、各地方裁判所には、やはり同じような建物が建てられまして、正面に菊の御紋があった。それは旧大日本帝国憲法を解しますると、ただいま志賀委員が言いましたように、やはり天皇の名において裁判をした、天皇裁判をするんだということで全国一致された。それが敗戦後国民裁判ということに大転換をいたしたわけであります。しかしながら、裁判官諸公においてはまだ旧憲法の精神が残っておって、そうして新しい憲法を理解することなく、非常にわれわれの納得いかない裁判が行なわれていたわけです。現在もまだ行なわれていると思う。ですから、この際建物を建てかえて一新をするということについて、それは基本的な問題とは違いますけれども、りっぱな最高裁判所庁舎をつくりたいというのは、旧憲法のもとの裁判と全然違った新憲法のもとにおける民主裁判の実現をはかろうとして、これが二十年続いたけれども、やはりあの建物があったのでは、菊の御紋をはずしただけではまだ庁舎自身についてもいかぬから、別なりっぱな庁舎をつくられることについてはわれわれは賛成です。しかしながら、そのりっぱな庁舎をつくるということは、りっぱな裁判をやるということが大前提にならなければならぬ。そこで私がこの提案理由を拝見いたしまして第一に気がつきましたのは、「わが国司法象徴ともなるべきものであることにかんがみ、」こうありますから、私は非常にこれを重要視して拝見もするし、またこれに対しての疑惑もどうしても解明してからやらなければいかない。こういうので政府委員高橋大臣においても、そういう点についてはもちろん反対説はあっても、確固たる信念を持ってこの法案を出された、こういうふうに私は考えておるわけです。ですから、この点については委員長にもお願いしたいのですが、大臣の御出席を願って、そうしてこれをはっきりした上でないと、ただ軽々に審議できないのですが、委員長いかがですか。
  26. 加藤精三

    加藤委員長 速記をとめて   〔速記中止
  27. 加藤精三

    加藤委員長 速記を始めてください。
  28. 鹽野宜慶

    鹽野政府委員 先ほど来御説明申し上げましたが、提案理由の中で「司法象徴」ということばを使っておりますが、これは司法正義と公正を形にあらわすものであることにかんがみて、こういう趣旨で使ったわけでございます。御了承願いたいと思います。
  29. 坂本泰良

    坂本委員 最高裁判所事務総長のほうもそういう御理解でございますか。
  30. 関根小郷

    関根最高裁判所長官代理者 そのとおりであります。
  31. 坂本泰良

    坂本委員 「その新営に関する基本的方針を決定するにあたって」、この基本方針という点について御説明を承りたい。
  32. 鹽野宜慶

    鹽野政府委員 基本方針を決定するということが審議会の仕事であるというふうに考えておりますが、この基本方針と申しますのは、新しくできます建物様式であるとか、あるいはまた経費などにつきましての大体の方針を決定していただく、こういうふうに考えておる次第でございます。
  33. 坂本泰良

    坂本委員 そこでお伺いしたいのは、様式経費等の問題とおっしゃったのですが、私は、最高裁判所庁舎新築にあたってすでに場所はきまっておる、こういうことを聞いておりますが、その点いかがですか。
  34. 鹽野宜慶

    鹽野政府委員 場所三宅坂国立劇場予定地の隣に内定しているわけでございます。
  35. 坂本泰良

    坂本委員 私はこういう重要な新築にあたって、審議会を設けるなら、少なくとも公正と正義裁判を実現する、こういうことになれば、やはり場所から審議会で検討して、そうしてやらなければ、審議会意味をなさない、こういうふうに思うわけですが、その点いかがですか。
  36. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 場所の点につきましては、ただいま法務省からお答えいたしましたように、一応予定国立劇場の隣ということになっておりますが、この審議会におきましても、場所の点につきましてもまたあらためて十分御審議いただきたい、そう考えております。
  37. 坂本泰良

    坂本委員 私は、せっかく審議会をつくるなら、場所から——場所の選定が一番重要じゃないかと思うのです。それをすでにきめてしまって、そうしてあと様式経費の点でやるのでは、正義と公正のためのりっぱな裁判をやるための庁舎としては、どうも審議会の要が半分は削減されているのではないかと私は思うのです。ですから、真にここの提案理由に申されておるような経綸を持ってこれを新築しようというならば、審議会をつくって、その審議会の中でこの提案趣旨のようなりっぱな庁舎新築する。それからやらなければならないと思うわけですが、大体もうきめておいて、審議会ではただオーケーというんじゃないかと私は想像するけれども、その点いかがですか。
  38. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 ただいまの坂本先生の御質問はまことにごもっともでございまして、敷地がどこになるかということは、建物規模その他にとってまことに重要なことでございます。現在敷地パレスハイツあとということに予定されておりますが、これは国有財産中央審議会におきまして、最高裁判所の新営予定地ということが決定されておるわけでございまして、これはあくまでも予定地という決定でございますので、この敷地がはたして適当であるかどうかということも、あわせて審議会で十分検討していただきたいというふうに考えております。
  39. 坂本泰良

    坂本委員 そういたしますと、様式経費——経費等についても大体概略の点、それから様式の点についても、様式というのは、庁舎外観その他を入れた建築——私は建築のほうの専門家じゃありませんからわかりませんけれども建物自体の外装と申しますか、そういうような点も入るかどうか、この点はもうちょっと詳しく承っておきたい。
  40. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 建物を建てる際に最も基本となる事項は、規模及び経費でございます。様式と申しますのは、外観といった具体的なことではございませんで、たとえば日本風にするとか、洋風にするとか、また時代的にも、中世風にするとか近代風にするとか、そういった趣旨でございます。これも規模がきまりますれば、おのずから様式といったものも大体きまってくる、そう考えております。  経費の点については、大体の構想は持っておりますが、何ぶんにもこれだけの建物でございますので、広く有識者の御意見を聞いた上できめたいというふうに考えております。
  41. 坂本泰良

    坂本委員 私がなぜこういうことを詳しく聞くかと申しますと、私は臨時司法制度調査会委員に出まして非常な苦い経験を持っておるのです。と申しますのは、臨時司法制度調査会では、あの法律で決定しましたいわゆるキャリア裁判改正して、そして民主裁判を実現する、こういう方針でできたわけですが、実際はいわゆる法曹一元というのはまだその準備もできていない。こういうようなことで一蹴してしまって、そうしてあとは何かというと、現官僚裁判制度を維持する、発展させる、そういうことに結論はなったんじゃないか。それでは私はあの調査会の目的をはずれてしまっておる。だから、そういうのならもう一年ぐらい延ばしてもっと検討したらどうかというと、二年間の期間は八月一ぱいで切れる、それだから急いで答申しなければならない。各論的に結論をきめたのはもうそこできまっているのだから、会議規則によってもう変更は許せない。最後に総会、総論的な、結論的な調査会をやるときになっては、もう各項についてきめたのは変更は許さない。文字の修正ぐらい、こういうようなことになるのがこの調査会の落ちである。さらにまた、この調査会には幹事会が組織されておる。幹事会できめたのは、何でもかんでも幹事会できめたというので、調査会で発言はするけれども、その幹事会できめたことに終始をする。それでは何のための調査会かわからない。だからこの審議会について見ましても、第一場所の問題、これがただいま御答弁を承りましたけれども、もちろんそうでありましょう。最終決定は審議会が答申をしてきめられるでしょうけれども、もう国有財産の関係で大蔵省のほうも済んでおる。だから審議会を設けて、それではここにこういういいところがあるがどうだということになっても、これはなかなか変更は事実上困難だと私は思う。そういうことにかんがみますと、この審議会については規模様式経費問題等だけの問題になってしまう。また、この問題についても、どんどん現在の審議会の行き方では幹事会というのをつくって、そうしてそこできめてくれば、審議会はただ若干希望意見として質問するだけであって、すすっとそこできまってしまう。そうしますと、結局審議会制度をつくって国民の声を聞く、国民の要望するようなことを審議会審議をしてやるといっても、実際はそうならないですよ。私はそうなることをおそれるから、この審議にあたってもそういう点等も明確にしておいたらいい、そういう意味でお聞きするわけですが、日本風か洋風か、あるいは中世か近代か、こういうようにいろいろありますが、こういう点等については、審議会の中で、その委員の特別な人を海外に派遣して、外国の状況等もよく調査をして、そうしてその意見等も十分取り入れた上でやる、そういうお考えがあるかどうか、お聞きしておきたい。
  42. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 一応の計画といたしましては、昭和四十一年度におきまして、委員の方々に外国に行っていただきまして十分視察、調査をしていただく予定にしております。
  43. 坂本泰良

    坂本委員 そこで外国の視察ですが、私は現在のキャリア裁判をとっておるところの国だけの視察では不十分だと思う。また世界の世論と申しますか、これは遺憾ながら二分されておる。それをいま日本の政府がとっておる、または政府がやっておるところのものだけを視察してやったのでは私はいかないと思うのです。やはり外国を視察するというならば、資本主義の国家も社会主義の国家も十分同じく視察をして、その上の検討でなければならぬ、こういうふうに思いますが、その点いかがですか。
  44. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 ただいまの御説まことにごもっともでございまして、その点も審議会で十分検討していただいてけっこうだというふうに考えております。
  45. 坂本泰良

    坂本委員 したがいまして、いまのような点はこの法律の中に盛り込んでおくべきだ。そうしないと、臨時司法制度調査会が、やはりあまり抽象的であったから、具体的の結論というのは非常に予期しないような結論も出る。こういうことがありまするから、もっと内容的にも、いわゆる最高裁判所庁舎の新営に関する重要事項を調査審議すると、こうありますけれども、この重要事項については、もっと法律的に具体的に規定しておくべきだ、こういうふうに考えますが、その点いかがですか。
  46. 鹽野宜慶

    鹽野政府委員 庁舎の新営に関する重要事項と申しますのは、先ほど申しましたように、庁舎の新営に関する基本的方針を決定していただくということでございまして、その内容といたしましては、先ほど申しましたように、新しくできます庁舎規模とか、あるいは様式経費の大要というようなことを御審議いただきますとともに、先ほど御指摘のございましたように、敷地の問題についてもあらためて御審議をいただくということもけっこうでございますので、その範囲のことを重要事項というふうに規定したわけでございます。具体的にどういうような審議の状況になりますかは、この審議会自体で審議の際に進めておきめいただくということで十分ではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
  47. 坂本泰良

    坂本委員 そこで次は委員の構成でございますが、これには国会議員、関係機関の職員、学識経験のある者、こういうことをあげてありますが、国会議員はわかりますが、関係機関の職員というのはどういうものなのでしょうか。それから学識経験の点についてはどういうような考えを持っておられるか、それをお聞きしたい。
  48. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 委員の構成メンバーにつきましては、また規則で定めることになりますので、その際十分関係機関とも協議した上決定いたしたいと考えておりますが、一応の構想といたしましては、国会議員の方々のほか、広く政界、経済界、言論界、法曹界の方々、そのほかに都市計画関係の方々、地方自治関係の方々、そのほかに建築関係の学者の方に御参加いただければ非常にありがたいというように一応考えております。
  49. 坂本泰良

    坂本委員 いつでも経済界というのが出ますが、この経済界は、その運営はいわゆる資本家がやっているでしょう。しかし、それを担当し、実際働く者は労働者なんです。しかしながら、とかくいままでこういう委員は労働者の代表というのがないと思うのです。それから、いままでのいろいろな審議会等を見ますると、農民の代表というと、農協とか、農協連合会とかいって、やはり代表者は時の政府に迎合してやる者がほとんどそれになってくる。こういうようなことがあるから、私はいまあげられたほかにも労働界の代表、働く者の代表を入れるべきである、こういうふうに思うのですが、その点いかがですか。
  50. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 その点につきましても、いずれ関係機関と十分協議した上考えたいと思っております。
  51. 坂本泰良

    坂本委員 関係機関とおっしゃると、どういうところですか。
  52. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 国会のほう並びに建設省等でございます。
  53. 坂本泰良

    坂本委員 それはいまおっしゃったのは、この建築専門の点と、大蔵省は経費の点等もあると思いますが、そこでそういうことを相談されるでしょうが、この審議会のメンバーについて、たとえば総評とか、総同盟とか、中立組合とか、こういうのがありますから、そういう代表も加えるべきだ、そういうふうに思うのですが、そういう点いかがですか。
  54. 田宮重男

    田宮最高裁判所長官代理者 御趣旨はよくわかりましたので、十分検討いたしたいと思います。
  55. 坂本泰良

    坂本委員 だから私は、こういうのはやはり法律できめておかなければ、それはいま同僚委員もいろいろありましたけれども、ものごとというのは、そういうふうにしてまあまああとで相談してやればいいというので、きまった結論というのは何であるかというと、特権階級だけである。そうしたらこの審議会の目的を達しない、そういうことがあるから、そういう点も必ず入れなければならないという点を私は要望いたしておくわけでございます。そうして、この審議会をつくったから、これは国民の総意を結集したのだというふうには決してならないように、場所の点等についてもあらためて審議会で十分審議をしなければならぬ、こういうふうに思いますから、そういう点を申し上げておいて、時間もありませんから終わることにいたします。
  56. 加藤精三

    加藤委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  57. 加藤精三

    加藤委員長 これより討論に入る順序でありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  裁判所法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔発言する者あり〕
  58. 加藤精三

    加藤委員長 裁判所法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  59. 加藤精三

    加藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次にお諮りいたします。ただいま可決せられました本法律案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 加藤精三

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  61. 加藤精三

    加藤委員長 次に、法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますのでこれを許します。神近市子君。
  62. 神近市子

    ○神近委員 いまちょうど決算委員会で日銀の地下室にあるダイヤモンドのことがいろいろ論議と調査が行なわれております。このダイヤモンドの処理はよほど慎重に処理していただかないと、いろいろな疑惑が起こっております。私どもはこの日銀の地下室にダイヤモンドが収納された前後のひとでいろいろ疑惑を持っておるものでございます。あのダイヤモンドは、十九年の七月に当時の軍需省が武器の製作に必要として国民から徴収したものでありまして、皇室からも王冠や何かが二、三提供されたはずでございますが、それが終戦後どこにいったかわからなくなっているということが出ているのでございます。王冠がどこにいったかわからない。そしてしかも、それが大阪の貴金属商の商店に出ていたことがあった。それを見た方があった。そういうようなことから、この問題は決して簡単に処理されては困るということを考えるのですが、大体私が読んだもので考えれば、いま日銀の地下室にある十六万一千カラット、これが供出されたときには大体倍以上あったのではないかということが考えられる。終戦時のごたごたのときに、軍と、それから駐留軍、それからそれを取り巻くいろいろな人たち、そういうようなところでどこかに行ってしまったということが考えられるので、私が昨年の六月でございましたか、青木美代さんと信子さんと「人命の尊重についての陳情」、こういう問題が昨年出たことがありまして、実は昨年いろいろ御質問申し上げたのでございます。刑事局長がおかわりになったので、そのときの事情をよく御存じでないかと思うのですが、そのとき調査をするというお約束があったのです。そのことで何か御存じのことがありますか、青木斌という人の大阪拘置所における死亡についてのことでございます。
  63. 津田實

    ○津田政府委員 昨年の六月二日、当委員会におきまして、ただいまの青木斌という名前が出ましたが、その人のことにつきまして御質問があり、説明員が御答弁を申し上げたという事実につきましては、当時の速記録によりまして承知いたしております。
  64. 神近市子

    ○神近委員 そのときに御質問申し上げたことはたくさんあったのですが、そのときに第一は、大体大槻検事が引き受ける番であったのが別所注太郎ですか、そういう検事さんにかわっているのです。それでそのいきさつはどういうことであったかということをそのとき御質問したわけですけれども、それはおわかりになっておりますか。
  65. 津田實

    ○津田政府委員 問題の青木という方についての被疑事件は恐喝事件でありました。その事件につきましては、別に警察から送致されました関係事件がございまして、その事件の捜査中に発覚した事件でございます。ところが、本件の問題の青木に対する逮捕状を発付されました後、当時の主任検事が病気でありましたので、急遽主任検事を変更いたしたわけでありまして、その結果、別所検事がこの事件の主任検事になったものであります。
  66. 神近市子

    ○神近委員 この問題はあとでお尋ねしたいと思うのですけれども、ダイヤモンドあるいは金、白金というようなものが終戦時に、一応軍の命令で隠匿されたのです。それを今度駐留軍が来て摘発することになって、新しい法律、隠退蔵物資の摘発報償法という法律ができたのです。そしてその法律によって、こちらでは、その報償を受ける資格のある人がこの目にあう。そして世耕さんと非常に協力して隠退蔵物資を——今日ここに書類がありますから、この点はあとでお尋ねいたしますれども、いけま日銀の地下室にある十六万一千何百カラット、そのダイヤモンドについて報償を受ける資格のある人が、世耕さんによって恐喝罪というような名目で訴えられる。それが六カ月もほっておかれて、そして急に三十一年の五月十四日ですかに連れていかれる。そして五日目に急性肺炎という名前でなくなる。それが何とも納得のできない事件なんです。これはあとでまた調査しますけれども、そのときに特別委員会ができている。そしてその調査室長かあるいは調査長、そのお役人が二人もなくなっているという事件もそばにはあるわけなんです。それでその別所検事の調査のしかたが非常に過酷であったということ、そのことについて昨年のこの委員会でいろいろお尋ねを申し上げているわけなんです。それの調査をいまあなたは、ただこの前の、去年の委員会の記録で読んだということをおっしゃっていますけれども、そのとき調査事項をお願いしたことについての御回答はできているのかどうか、それを伺いたい。
  67. 津田實

    ○津田政府委員 その後におきまして、もちろん調査をいたしておりますので、その結果については御説明申し上げられると思っておるわけでございます。
  68. 神近市子

    ○神近委員 その別所検事の取り調べ時間が非常に長かったということ、そして病気であるということがもうすでにはっきりして、脈搏だ、あるいは体温だ、あるいは消化器系統の様子だ、そういうふうなことがもうはっきりとわかっているのに、これを過酷な取り調べをしたということが一つの疑問なんです。そのことはどういうように。たとえば十六日ですか、もう病気が始まって朝からかゆを食べているというときに、十時間以上調査したというような事件があるのです。いま最高裁判所の建設について象徴ということが問題になっておりました。私はそばで聞いていて、象徴ということが出る以上、司法制度そのものの本質を出すのが象徴でなくちゃならないと思うのですけれども、まあそういうことはあまり論議されなかった。そういうところにいまの日本の司法行政というか、あるいは検察行政というか、そういうものの欠点があると思うのです。それで、この問題をしつこく食い下がるのは、そういうところに私どもと疑惑と不満があるということを理解していただいて、そしてはっきりと——これはたくさん無数にあるケースの中のほんのたった一つの問題であるけれども、はっきりと遺憾であったのかあるいはこれが当然であったのか、そういうことを私は伺いたいと思うのです。
  69. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、これは前回の御調査のときのお尋ねにつきまして調査した結果でもありますわけでございます。それにつきまして御説明申し上げます。  青木被疑者に対する別所検事の取り調べ状況は後に申し上げるとおりでありまして、別に過酷な取り調べをしたという事実はございません。青木は昭和三十一年五月十四日、東京の自宅で逮捕されまして、同日の午後五時三十分に大阪地検の別所検事のも一とに引致されたわけであります。翌十五日勾留状が発布されまして、大阪拘置所に勾留されたわけであります。別所検事の取り調べ状況は、まずその五月十五日、すなわち引致された日の翌日の午前十時四十五分から午後一時まで、及び午後一時二十五分から午後五時三十分までであります。このときは供述書調書を作成いたしておりますが、この取り調べ時間はただいま申し上げましたように合計六時間二十分になります。それから第二回目は翌五月十六日、午後六時から十時まででありまして、この取り調べ時間は四時間であります。それから第三回目は五月十七日、翌日でありますが、これが午前十時四十分から午後零時五十分まで、午後一時二十分から午後五時五十分まで、午後六時三十分から午後十時十五分まででありまして、合計十時間二十五分ということになっております。この青木被疑者は、大阪拘置所入所当時の健康診断によりますと、疾病その他の異常はなかったわけでありますが、歯は総入れ歯でありまして、当時係官に対しかゆ食を給与してほしいということを申し出、したがいまして、その意味においてかゆ食を給与しておったわけでございまして、十六、十七日は別段疾病の事実はありません。十八日は発熱をいたしたということでありますが、その日は取り調べを行なっておりません。十九日の午前十一時ころになりまして、容体が思わしくないということで、拘置所から検察官に通知があったわけであります。そこで検察官、それから当時の弁護人等と協議の結果、執行停止をして病院に入院させるほうがいいという結論で、執行停止を裁判所に求め、それで同日午後二時でありましたか、執行停止があったということになっておるわけであります。ただ大阪拘置所におきましては、五月十八日以来相当の治療をいたしておりますし、御承知のように大阪拘置所は相当大きな拘置所でありますので、医療設備は整っておりますから、そのままの状態において、拘置所において静養するということも可能であったわけでありまするけれども、やはり何と申しましても本人の心理的な状況がありますので、執行停止のほうがよいのではないかということで、弁護人と協議をいたして執行停止の職権発動を促すことを裁判所にいたした、こういう事実になっておるわけでございます。したがいまして、その間検事が被疑者を取り調べた措置、あるいは病気に関する措置については過誤はないというふうに考えております。
  70. 神近市子

    ○神近委員 別所検事の取り調べが当然のことのようにいまおっしゃるのですけれども、十八日から発熱していますね。そうすれば十七日に、あなたは十時間二十五分とおっしゃったのですけれども、私どもの計算では十時間四十分になって、そうしていまおっしゃったように、三回に分けて、夜は十時過ぎまで調べているでしょう。そういうところと、それから十七日の取り調べが非常に過酷であったということ。それからこの人は、あなた方は仲間のことですから、別所検事の取り調べに別に何とかございませんなんとおっしゃるけれども、非常に騒々しい調べ方をなさるそうです。たとえば、何か棒を持っていてテーブルをたたくとか、くつで床をたたくとか、あるいはもうもうとした喫煙をなさるとか、私ども公平と正義なんというような司法行政のことばを考えると、ちょっと想像できないような調べ方をなさる性格を持っていらっしゃる。この人に十時間四十分いじめられたら、相当私は、おかゆぐらいで——お昼は食べさせたでしょう。だけれども、ともかくもずいぶん参るということはあたりまえだと思う。だから翌日から発熱して病気になった。そのときに、これはこの前も坂本委員から御質問したことがあったのですけれども、十八日も調べることができなくておいた。十九日に、十時ごろ非常に脈搏が弱くなって、そうして熱は比較的高くないというように、非常に不均衡な状態が出てきた。十時過ぎには検事には連絡をしてあった。それでも回生病院につれていったのは夕方なんですよ。いまおっしゃったように二時何分かに拘置をはずした。だけれども、入院させたのは回生病院に入れたというのは夕方の時間だったと思います。回生病院というのは、いまこそ拘置所が新しくなって遠くなっておりますけれども、隣なんです。それでいてそういう手落ちをしたということがあるのですけれども、その点はあなた方はどういうような報告を受けていらっしゃいますか。
  71. 津田實

    ○津田政府委員 取り調べの点については、先ほど時間を申し上げたわけで、あるいは御調査の時間と若干違っておりますが、これは刑務所を出て検事の調べ室に参る時間が含まれておりますので、多少の違いはできておると思うのであります。  本件につきましては、もちろん別所検事自体がただいま御質問のような性格であるかどうかは、どういう資料によってそういう性格とお考えになっておるかは私はわかりませんけれども、私自身も別所検事はよく存じておりますけれども、さような取り調べはもちろんいたしておらないというように報告を受けておりますし、私自身もそう考えております。したがいまして、この取り調べ態度につきましてのお話につきましては、私どもはさように考えていないわけでございます。  それから、入院の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、大阪拘置所におきましては医療設備は十分整っておりますので、本来いえば刑務所で静養するということでもいいわけでありますが、本人の心理的な状況を考慮して、やはり外部で静養するほうがいいという判断をして、別個に相談をしたということになった。したがいまして、別所検事が病気であるという事実を知ったのは午前十一時過ぎであるというふうに報告を受けておりまして、裁判所における執行停止の手続等の時間がありまして、二時五十分に回生病院に入院したという事実になっております。
  72. 神近市子

    ○神近委員 あなたは別所さんをよく知っていらっしゃるから、私は公平な批判ができないと思うこともあるのですけれども、これは一般官僚組織のことでありますから触れませんが、大体十時間四十分なんというような普通の労働時間をオーバするくらいの調査は平常行なわれているのですか。その一点は、あなた方には何にも呼び起こすものはないのですか。十時間四十分、あなたは十時間二十五分とおっしゃるけれども、それで翌日は発熱している。それを考えれば、十時間四十分調べたということは、本人には心理的あるいは肉体的に非常な負担を与えたということが考えられる。おかゆを食べたのは歯が悪かったのだとおっしゃるのですけれども、それでお昼もおかゆを食べていたのかどうか知りませんが、ともかくもそういう状態の人を十時間以上糾明するということは、あまり正義と公平が行なわれる裁判じゃない。それに、これはこの次委員長に御相談して、理事会にかけて、私どもは世耗さんの扱い方を一度伺いたいと思っているのですけれども、みんな仲間は無罪になっております。一人だけ三千円の罰金をどういう名目かで科せられているけれどもあとの五、六人はみんな無罪になっているのですよ。それをこういう過酷な調べ方をする必要があったのかどうかということが、私ども検察行政のあり方についての疑惑なんです。そのことについてあなたはどうお考えですか。
  73. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ねのございました別所検事を私はよく知っておると申し上げましたが、私は多年検察官をいたしておりまたしので、相当年配の検察官はほとんど知っております。個人的にじっこんにしておるという意味ではございませんので、その点は御了承を願いたいと思います。検察官として相互に知っておるという意味でございます。  それから十七日の日に別所検事が十時間二十五分取り調べをいたしましたことは、いかにも過酷であるというようなお尋ねでございますが、勾留されておる場合の被疑者に対する検察官の取り調べと申しますのは、やはり勾留の日限の関係、それから他の被疑者との関係等いろいろございますので、本人に苦痛を与えない限度においては、ある程度長時間の取り調べはやむを得ないことと思いますし、また、そういうことによりまして勾留期間も短くできるわけでありますので、そういう意味において、ただ時間だけの問題とのては批判はできないというふうに私どもは考えております。ただ、検事の取り調べにつきましては、調書をつくる時間とか、いろいろなこともございますので、必ずしもその時間が質問あるいは陳述を求めるばかりの時間の連続といふうにはとうてい考えられないわけであります。そういう意味におきまして、前後の時間を通算すればかような時間になっておるというふうに考えておりますので、具体的の事情によって特に過酷であったと判断できない限り、過酷なものというふうには、時間だけでいうことはできないと考えております。
  74. 神近市子

    ○神近委員 時間だけじゃないですよ。翌日もう発熱して病気になっているというようなことを考えれば、これは時間が長かったからという、あなたはそれで逃げようとなさるけれども、発熱して翌日病気になっているということを考えれば、どんなに過酷であったか、そして負担が大きかったかということが私はわかると思うのですけれども、それでもあなたは同業者のよしみで、これが過酷であったというようなことは言いたくないのですか。
  75. 津田實

    ○津田政府委員 御質問ではございまするけれども、人間のからだでございますから、翌日発熱することもございますし、それはしばしばわれわれの経験しておるところでございますので、翌日発熱するかどうかという状態が取調官にわからなかったということがあっても、それはやむを得ないことである。あるいはほかの事情によって翌日発熱したかもわかりませんし、それと取り調べと因果関係があるというふうには私どもは考えておりません。
  76. 神近市子

    ○神近委員 結局、あなたもそういうことをやってきた方なんですね、いまのお話を聞いていると。やはり同じような過酷な取り調べを平気でやってきたお人なら、もうわれわれに文句を言うところはありません。それで今日の検察行政の一部を私どもはわかったような気がいたします。ここであなたがそれを認めておいでになるということを考えれば……。  その次のことでありますけども、昨年坂本委員がいろいろお尋ねいたしましたのですけれども、その中に、なくなった場合は、司法大臣とそれから家族に即刻通告をしなければならない。ところが大臣にも家族にもその通知はいっていないということになっているのですけれども、その後調査はできておりますか。
  77. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまのお尋ねのうち、私個人のことにつきまして申し上げますが、私は十年間裁判官をいたしておりまして、その後法務省に参りまして、司法行政官、それから検察官をいたしておるわけでございます。私自身といたしましては、見習いのときは別といたしまして、検察官として現場で取り調べをいたしたことはございません。でございますから、私がそういう前提であるというふうにお考えくださることは誤解というふうに申し上げざるを得ないわけであります。  そこでただいまの後のお尋ねでございますが、監獄法によりますると、病院に在監者を移送した場合には、法務大臣に申報する、あるいは家族に通報するということになっておることはただいまも仰せのとおりでございます。本件の被疑者につきましては午後二時ごろに勾留の執行停止になっておる。したがいまして、拘置所といたしましては、回生病院に送るという措置はとりましたが、これは監獄として、つまり拘置所としての権限に基づいて病院移送をいたしたものではありません。あの監獄法の規定は、拘置所の権限において拘置所で療養できないから病院移送するということで、拘束が続いておる状態の場合をさすのであります。本件は勾留執行停止になっておりますから、全く自由な身になっておる。したがいまして法律上は大臣に申報する必要はもちろんないわけでございますから、したがってそういうものはなされなかったということになるわけであります。
  78. 神近市子

    ○神近委員 それじゃ家族についてもなかったということも、同じような理由によるのですか。
  79. 津田實

    ○津田政府委員 さようであります。これは家族に通報するということと、大臣に申報する規定とは同種の規定でございますので、それはいたしておりませんが、家族については当然弁護人が承知して連絡をしておるわけであります。したがいまして勾留執行停止後は全く自由なからだの方ですから、別に拘置所は家族に通知するという問題にはならないというふうに考えます。
  80. 神近市子

    ○神近委員 それではあなたまたこうおっしゃるでしょう。この死体は二十四時間以内に焼かれておるのです。この問題は、それは監獄を出して病院に預けたのだから病院の責任ですか、どっちなんですか。
  81. 津田實

    ○津田政府委員 全くそのとおりだと思いますが、しかしながら、その点につきましては若干の調査をいたしておりますから、もし御必要であれば申し上げます。
  82. 神近市子

    ○神近委員 この案件は、これはここだけでなく、また決算でも問題になると思うのですけれども、この二十四時間以内に焼いたということ、どういうわけで急いで焼いたのか。家族はその前から切符を買ってあったから間に合った、死体に会えたので、通知もなく、それからなくなってから切符を買って行ったというのでは間に合わなかったわけなんです。おまけにこの責任者の大島源八という医師でなくして、死亡診断書は中島裕という女医さんが出しております。そうしてちゃんとはっきりと二十四時間たたないうちに焼くようなごまかしをやっておる。拘置所からきた通知と、それから病院からきた通知の間にズレがあるのです。それを私どもは伺っておるわけです。
  83. 加藤精三

    加藤委員長 調査中でございますから、ちょっと御猶予を願います。
  84. 津田實

    ○津田政府委員 先ほども申しましたように、この回生病院入院後の措置につきましては、法務省の系統においてはもちろん関知をしないことでありますけれども、その内容について前回お尋ねがあったようでございますので、調査はいたしております。これは職務上の調査ということでなく、必要関連事項として調査した結果でございますが、そういう意味でお聞き取り願いたいと思います。死亡診断書によりますると、ただいま仰せのとおり回生病院の医師中島裕、これは御婦人かどうかわかりませんが、この人の診断書になっておる。それで死亡時刻は昭和三十一年五月十九日午後七時四十分ということになっております。ところが、これがどういうわけでその翌日火葬に付されたかということの事情については判明いたしませんが、とにかく当時この青木氏がなくなられた後、遺族の方が見え、いろいろ葬儀関係者とも協議された結果、翌二十日中に火葬にしたいという遺族の御依頼があって、翌日午後八時の斎場の火葬を行なう時間の最終時間に間に合わせるようにして翌日火葬に付したというふうに私どもは調査の結果承知いたしております。したがいまして、その翌日の斎場の最終の火葬の点火時間と申しますか、それは八時だそうであります。したがいまして、十九日の七時四十分に亡くなられたとすれば、午後八時に点火すれば、二十四時間二十分たっておるということになりますので、別に火葬、埋葬関係の法令に違反するわけではないというふうになっておるようでございます。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕
  85. 神近市子

    ○神近委員 家族の要請によって二十四時間以内に焼いたとあなたはおっしゃるのですね。それは伺えばすぐわかることだから私どもも調査します。だけれども、う一つ、これも監獄法によるというのですか。これは坂本委員がいまいられないので何ですけれど、この前この質問を申し上げたときに坂本委員から出たのは、解剖をどうしてしなかったかということ、これはまた参考人の中にこの実際を見た人に出てきていただこうと思っていますけれど、非常に苦悶していた期間があったのです。廊下でもうほとんどころがるほど苦痛があったということ、それを目撃している人があるということ、それから死体に斑点が非常に多かったということで、人命尊重という要請が出たのだと思うのですけれど、どういうわけで司法解剖とか行政解剖とかというような手段をとられなかったのか、これもあなた方の逃げ口は監獄法ですか。
  86. 津田實

    ○津田政府委員 俗に申します司法解剖あるいは行政解剖と申すもの、まず行政解剖といわれておるものは死体解剖保存法第八条の規定による権限でありますが、これは都道府県知事が伝染病、中毒または災害により死亡した疑いのある死体その他死因の明らかでない死体について、死因を明らかにするため検案をさせたり、あるいは死因が判明しない場合は解剖させる、これが行政解剖の規定でございます。ところが本件につきましては、先ほど来申し上げましたように、刑務所の医師によりましても、あるいは回生病院の医師によりましても、死亡の死因は急性肺炎であります。したがいまして、行政解剖をする要件には当てはまらない、こういうことであります。それからもう一つ司法解剖と申しますのは、検察官等が捜査いたします場合の鑑定の嘱託によって裁判所の許可状を得てやる解剖でございます。しかしながら、それは死因について犯罪の疑いがあって検察官が捜査を開始して初めてできることなんで、この死因は先ほど申し上げましたように急性肺炎で、明らかでありますので捜査を発動することはできません。したがいまして、司法解剖のできる要件にも当てはまらない、こういう意味において解剖はしなかった。こういうことになるわけでございます。
  87. 神近市子

    ○神近委員 いま御説明を聞いていれば、私どもの疑っているのは、ダイヤモンドの摘発にからんだことに大きな勾留の問題があると思っているので、それで私どもはいろいろの疑惑をこの問題には持っているわけです。あなたは法文によっての御説明で、まあそれで一応この問題は解明されたとお考えになっているでしょう。だけれど、この事件のときに、昨年人権擁護局に、もう少し人間的な立場から御調査を願っておいた事項があったと思うのです。非常にたくさんありますので、時間の関係——もう少し私は鹽野調査部長にも伺いたいことがあるので、人権擁護局でどの程度のことを調べていただいたかということをちょっと伺います。
  88. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 基本的人権のうちで人の生命というものが最も尊重すべきものであることは、これは申し上げるまでもないことであります。ところが、この事件につきましては、先ほど刑事局長からるる説明がありましたように、逮捕状によって適法な手続によって逮捕された被疑者が、検察庁の取り調べ、それから本日は特にそこまで御質問が入らなかったようでありますけれども、拘置所の取り扱いに何か手落ちがあるのではないか、まあ概括的に申し上げますとそういうことであろうかと思うのであります。したがいまして、直接検察庁あるいは拘置所の仕事を担当いたします刑事局あるいは矯正局関係でまず内部の調査をされるのが適当である。その上でもし人権擁護上の問題にすべき具体的事実が出てまいりますれば、これは場合によっては私どもで調査をする必要がある。このように一般的に考えられるわけでありますけれども、現在、お聞きのとおり、私どもといたしましてはまだ具体的に人権擁護上問題とすべき点を認めるに至りませんので、したがいまして、いまだ立件の上調査するという段階には至っておらないというのが現在の実情であります。
  89. 神近市子

    ○神近委員 人権擁護局というのはその程度のものですかね。刑事局長の法文一本やりでいかれる説明と、私どもがいろいろこの問題について持っている疑惑というものの性質とは、この応答でよくおわかりだろうと思うのです。私どもは何とも納得できないものがあるからこうやって問題を持ってきているので、これはあと鹽野調査部長にお尋ねすることにも関連してくるのですけれど、人権擁護局というものはその程度の、やはり同調的な調査しかできないものだということがよくわかったような気がしますから、それで私は問題をほかに移しますが、関連があるそうですから……。
  90. 田中織之進

    ○田中(織)委員 関連して。ただいまの神近委員の津田刑事局長に対する、いわゆる執行停止後拘置所以外のところで死亡した者に対する死亡通知義務の問題でございます。執行停止という関係で完全に本人が自由な立場になっているんだという刑事局長の御答弁には、私どもやはり納得できないのです。停止条件というものがなくなれば、私はやはり当然勾留が再開せられるべき性質のものだと思うのです。この場合には、たまたま停止中に本人が死亡したという事実で、勾留再開という事情にはならなかったわけでございます。そういう意味からいえば、刑事局長の御答弁になった、本人は完全なる自由な身なので拘置所としてはその点については関知しないのだということは、やはり法解釈の上から見てもいえないのではないか。刑事訴訟法の規定でいわゆる勾留執行停止になるという場合には、必ずその家族なりそういうような者から、停止条件が解消した後における出頭義務の規定があるように私は理解をしておるのです。そういう点から見まして、本人が死亡した場合には、少なくとも病院としては拘置所に連絡をしなければならぬ。これは法的な義務であるかどうかという問題もありますけれども、私は、病院側にもその義務がありますし、拘置所としては、少なくともその通報を受けた場合における処置が当然拘置所側として出てこなければならないものだと私は思うのですが、その点、どうも刑事局長の御答弁では理解できないのです。本件の場合においては、本人が死亡したという新しい事態が起こっておるから、もうそれで拘置所の責任が全然解除されておるんだということにはならないのが——やはり執行停止といういわゆる行政処分の当然の効果として責任が拘置所側に残るものだ。万が一死亡というような事態でなければ、これはやはり勾留再開というような事態が当然出てくるのでございます。その点が私どもは納得ができないのですが、刑事局長にその点についての御見解を伺いたいと思うのであります。
  91. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、勾留の執行停止につきましては、今度は勾留の執行停止の取り消しということ、あるいは勾留執行停止期間がついておりますと、その期間の満了ということによって再び収監されるということになるわけでございます。しかしながら、その間におきましては住居の制限等をいたす場合はございまするけれども、別にその間の行動につきましては何らの束縛はないわけであります。したがいまして、拘置所のほうにおきましても、まあ本件の場合は事実として回生病院に入院しておるということも承知し、あるいは死亡したということも承知しただろうと思いますけれども、拘置所としては、法的にはこの執行停止者についてその行動を監視するとか、そういうことは何もないわけです。したがいまして、執行停止の取り消しの決定がありました場合は、検察官の指揮によってそれを収監するということでありまして、その場合に監獄看守を使えるということはございますけれども、それは司法警察官や検察事務官を使えると同じに使えるというだけのことでございます。したがいまして、もう一度執行停止を取り消す決定があって、それを検察官が執行するまでは、この被疑者は自由であるということになるわけであります。したがいまして、その間に被疑者の身分あるいは身体にどういう変動が起きたかということは、刑務所がこれを了知する方法がないわけでありますから、したがいまして、刑務所にさような義務はないわけであります。
  92. 田中織之進

    ○田中(織)委員 ただいまの御答弁で、私ますます刑事局長の御見解に疑問を抱かざるを得ないのです。ことにこの場合、刑が確定をしておるいわゆる服役中の者と、被疑者として勾留をされている者との間の相違というものもやはり出てこなければならない。特に神近委員が指摘しておる点は、まだ被疑者の段階における勾留中の問題であるというところに一つの、いわゆるこれは裁判が確定するまでは法廷で疑いを提起されている側との間に争うところの、いわゆる人権というか、被疑者の権利というものが憲法で保障されておるという立場において、やはり取り調べにおける検察官の態度というものも当然問題になるのだ、こういう一般的な前提の上に立っての質問でございます。特にそういう意味の、勾留中に病気発生という事態——もちろんあなたの御答弁では、大阪拘置所は医療設備もあるから、拘置所の中で療養する、静養するという処置もとれないことはなかったけれども、本人の精神的な関係を考慮して執行停止処分にするという場合に、執行停止処分が決定され、そうして身柄が外へ出された関係において、拘置所の責任が全然解除されるのだという点は、私はどうしてもそういうことにならないと思う。また、これは刑事訴訟法の規定は何条かはっきりいたしませんけれども、やはり執行停止処分の取り消しがなければそのままになるのだという点についても、停止という条件からくるところの、これは一般の法律概念の上から見ても、私は、やはり拘置所側に責任が残っておるものだ、こういうふうに理解をせざるを得ないのでありますが、関連質問でございますから、その点を申し上げて、もし御答弁があれば伺いますが、いずれこの件については私どももあらためて質問をいたしたいと思います。
  93. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま申し上げたのは、刑事訴訟法九十八条の規定に基いて申し上げたわけであります。私どもといたしましては、句留執行停止で刑務所外に出た人に対しては、刑務所としては何らの責任はない。むしろ勾留状が出ておる、しかも勾留停止中であるという関係だけにすぎない。拘置所あるいは刑務所としては何ら関係ないということに考えております。
  94. 神近市子

    ○神近委員 この問題はもう少しわれわれも勉強して、もう一度御質問申し上げることにいたします。  私はこの問題で一番——さっき申し上げたように、いま日銀の地下室にあるダイヤモンド、これにからんでいる問題だから、こういうようにしつこくお尋ねするわけなんですけれど、この青木という人は、いま日銀の地下室にあるダイヤモンドの摘発に全面的に協力したという、自分で考えていらっしゃる。これは世耕さんが相棒でありますから、そのときの摘発委員長でありますから、世耕さんがよく御存じだと思う。これは一度ぜひ出ていただいてお話を伺いたいと思っておるのですけれども鹽野調査部長がおいでになっておりますので、そちらにちょっと伺いたいのです。この隠匿物資摘発の報償法という法律は二十二年に廃止になっております。そうしてここに原書の控えがございますけれども、この青木さんという人がこの報償についての要請状ですか、要求書を出しています。そのときの総理大臣の吉田茂氏あて、その前には大蔵大臣の向井忠晴氏にあてて要請状を出している。私が鹽野さんにお伺いしたいのは、こういうような法律が二十二年に廃止になったとすれば、この要請状というか、要求というようなものは、その後はものをいわないということになるのか。それとも、その法律がまだあった間に、法律がまだ生きていた間にこの要請状を出して、その結末がつかないであったというものに対しては、それは継続的にこの権利があったのかどうか。これはもう大衆作家なら、たいへんこれは簡単に結論が出ると思うのですけれど、そういうわけにはいかない。ここは国会の委員会でありますから、そういうわけにはいかない。それで伺うんですが、これはどういうような効果があるのか、あるいはそのときに切られてしまうのか、そのことをちょっと伺いたいと思います。
  95. 鹽野宜慶

    鹽野政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、私どもといたしましても、すでに廃止された法律のことでございまして、いま手元に資料も用意してございませんので、なお十分調査してから御返事を申し上げたいと思います。
  96. 神近市子

    ○神近委員 この十六万一千カラットの日銀にあるところのダイヤモンドは、これによりますと、この総理大臣に対する要請の書類によりますと、ほとんど全部この人が協力して出したということになっています。それからもう一つ事実として、この安田銀行の中にあったところの四万五千カラットですか、これは暴力団や何かがからんで、そしていろいろ劇的なことが行なわれて、安田銀行の中に何人かの人が、やくざのような人たちが来て、それで渋谷署の刊事が何人か入って、その人たちを追い返すことができたというほどの劇的な場面があるわけなんです。ですから、私はこの青木という人が、このダイヤモンドの摘発に全面的に協力したということは、その一事だけでもわかると思うのです。これは渋谷署の刊事たちを呼べばすぐわかることなんで、私は、それがその間になくなったということに不審を持つということと同時に、それほどの功績のあった人に何ら報いることなく、死んだからといってほっておけるものかどうか、これは行政訴訟なり何なり起こすべきじゃないかということが私どもの今日の、まあかすかな、この問題についての終末的な処理だと思うのです。その点、私はダイヤモンドが総理府に行ったり、あるいはどこかに、あっちこっちとダイヤモンドの書類が回っていて、いま大蔵省に行ったということがわかっておりますけれど、ともかくもこの処理を目前にして大蔵省が取り返したということ、それからまた、こういうような、自分の財産をすってまでその摘発に助力した人を、死んだからといってほっておけるかということが私の最大の関心事であります。家族の人は、そのために非常に苦労して子供を育て、そしてようやくささやかな生活ができるところまできて、初めてこの夫の死にようというものに疑惑を持ったことを国会に持ち出されたんです。それまではどういう方法をとっていいかわからなかったんです。だから私は、ほっておくべきでない、何らかの形でこの故人の努力に国は報いなくちゃならない。まあ何十億とか何百億とかというようなことがいわれて、あの日銀のダイヤモンドがまためちゃくちゃになるということは私どもは許しておけないと思うのです。その点、どういうような方法があるか。そして、これは国家のものだから、その調査はすぐできます。どういうような方法によって、これをある程度自由な処理を行なわせる内容にできるかということをあなたに調査していただきたい。それでせっかくお急ぎだったのを残っていただいたのは、その調査があなたでなければできないと思ったからお願いしたのでございます。
  97. 鹽野宜慶

    鹽野政府委員 実は私自身といたしましては、ただいまの問題、本日初めて伺った問題でございます。調査部長ということで私に御指名いただいたことと存じますが、私、実は法務省司法法制調査部長でございまして、私の調査いたしますのは、司法法制並びに法務に関する統計というのが所管事項でございまして、ただいまお申し出のありました事項は、実は役所の所管から申しますと、私のところからははずれているわけでございます。  それからいまの隠匿物資の法律でございますが、だいぶ古い法律でございまして、はたして法務省の所管であるのかどうか、それから返還の請求なりについての所管が通産省であるのか、大蔵省であるのか、あるいは法務省も一部関与するような手続であったのか、これらの事情も現在のところ、私ただいまはっきりいたしませんので、それらの点につきましては、なお帰りまして研究させていただきたいと存じます。ただ問題の筋は実は私のところの所管からはちょっとはずれておりますので、その点御了承願いたいと思います。
  98. 神近市子

    ○神近委員 それは私もそういうことではないかということを考えたのですけれども、ともかくきょう出ていらしたからあなたにちょっと伺ってみたのです。この法律は二十二年の八月に廃止されまして、そうして経済調査庁に移管されて、それから今度は総理府の管轄になっていた、今度はまたそれが大蔵省に返っていったということになっているので、それで大蔵省に——昨年の六月も、ともかく総理府にお願いしてみたのですけれど、だれが責任者なのか、どこで調査ができるのか、一向わからないのです。そうしてダイヤモンドだけは、この日銀のダイヤモンドだけはみんな頭の中にあって、一昨年も、昨年も、本年も、ダイヤモンドだけは見に行っている。私はそういうところが非常に不明朗だと思うのです。だから、この所管をはっきりしていただいて、どういうわけで経済調査庁から、総理府から、今度はまた大蔵というふうに移すのか、どこにそれを握っているところがあるのか、それを、調査をあなたがおできにならないから、私のほうに、どこに行けばいいということをちょっと御通告願いたいと思います。
  99. 鹽野宜慶

    鹽野政府委員 帰りましてお返事いたします。
  100. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 志賀君。
  101. 志賀義雄

    志賀(義)委員 人権擁護局長にお聞きします。きょうは簡単な中間報告を伺いたい。  第一は、去る三月十九日の当法務委員会において、私があなたに伺ったところ、こういう御答弁がありました。これは国鉄の例の裸連行事件です。あなたの御答弁は「本件連行は被逮捕者の人権尊重について欠けるところがあったといわざるを得ない、こういう結論に達したのであります。そこで担当の東京法務局は、右鉄道公安職員らの監督者でありますところの東京鉄道公安支部長に対しまして、今後このようなことのないように部下職員を厳重に指導監督すべき旨説示をしたのであります。」こういう御答弁でありました。その説示の結果、東京鉄道公安支部長のほうからあなたに対しどういう答弁ないし意思表示がありましたか。それを伺いたい。
  102. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 説示の趣旨を尊重して今後十分注意するという趣旨のお答えがございました。
  103. 志賀義雄

    志賀(義)委員 ところで、被逮捕者は現在なお国鉄につとめておりますか。解雇されたのか、休職処分になったのか、また休職処分になったら、現在どういうふうになっているのか、その点はお調べになったことございますか。
  104. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 本件に関係いたしました三名の被告につきまして、昭和三十八年十月三十一日に免職処分せられた、このように聞いております。
  105. 志賀義雄

    志賀(義)委員 第一審で無罪の判決が出ております。そうしますと、この事件は、法律の適用上もなおいろいろ問題があると思うわけでございますが、これで無罪が確定したという場合には、この処分を当然取り消されるべきものと思いますが、その点はいかがでございますか。
  106. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 確定判決によりまして、処分の前提となりました事実が否定されたのであれば、処分権者のほうで、すでに行なわれた処分についても、何らかの是正措置をおとりになるのが妥当であろうと思います。しかしながら、この刑事事件につきましては、私どもまだその判決理由の要旨を、新聞で承知いたしました程度で、判決書本もあの写しを入手しておらず、また、その判決に対しましては、すでに三月二十二日付で控訴の提起がなされておるようでございます。したがいまして、いまのととろ、現在のこのような状況下で、任命権者のほうでどうされるのが妥当かということは、私のほうではまだその最終結論には到達していないわけでございます。
  107. 志賀義雄

    志賀(義)委員 そうしますと、とにかく第一審で無罪の判決が出ている心そういう場合に、これを有罪のものとして、そういうふうな免職処分をしたということは、これは人権上行き過ぎであるかないか、その点についての御見解はいかがでしょう。
  108. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、判決自体がまだ確定しない状況でありますから、判決としての効力は発生していないと思います。かりにまた確定いたしましても、刑事判決でありますから、その効力、正確に申しますと、訴訟法上のいわゆる既判力が当然行政処分に及ぶというわけのものでもありませんから、もしその点をお争いになるのでしたら、これはやはり別に懲戒処分取り消しの行政訴訟を提起されまして、そして裁判所の判断を求めることによって、その権利の保護をされることが適当な方法であろうかと考えます。
  109. 志賀義雄

    志賀(義)委員 ただいままだ判決の正文を見ておられないということでありますが、この問題は、先日申しましたとおり、そういう免職処分ということは、きょうこの法務委員会で初めてはっきりしたのでございますから、判決最高裁判所から当法務委員会へ回ってきた上で、あらためてこの点について伺うこととして、きょうは中間のそういう御報告を承ったことにしておきます。  国鉄から来ておられますから、法務課長に伺いますが、人権擁護局からそういうふうな説示があったのに対して、今後そういうことのないようにする、こういうことでありましたが、私どもから見るならば、行き過ぎの免職処分になっております。第一審の裁判でも、あなた方の考え方とは反対の結論が一応出ている。それからこの事件の事柄については、判決も不当労働行為、こういうふうになっているのでありますが、これについて今後どういうふうになさるか。こういう判決が第一審で出て、今後争われるにしても、法務課長としてはどういうふうにお考えでしょうか。
  110. 上林健

    ○上林説明員 ただいまの志賀先生のお話でございますが、これにつきましては、いま法務省から御答弁されたことに尽きておると思いますが、本件の訴訟はまだ確定しておらないと聞いております。したがって、事実関係につきましても、これは国鉄は国鉄としてこれが行政処分と申しますか、免職処分の対象になると考えて、四名につきまして当時免職の処分をいたしたわけでございます。かりにこの判決が確定いたしたと仮定いたしましても、一般に同一の事実につきましても、刑事処分と懲戒処分とは当然その目的とか性格とか異なるわけでございますから、事実に対する対処のしかたも、必ずしも同一でなければならないということは考えておりません。国鉄の処分は、先生御承知のように、国鉄の就業規則に基づいて処分をいたしたわけでございますから、これは正当な処分と考えており、目下のところ、これについて取り消すとかいう特段の処置をとるという考えは持っておりません。
  111. 志賀義雄

    志賀(義)委員 そうすると、懲戒処分の理由はここでは公表できませんか。就業規則に基づくとしても、どういう理由で懲戒処分して免職にされたか、その点ははっきりできませんか。
  112. 上林健

    ○上林説明員 これは実は昭和三十八年の七月十六日に、この四名の本人に事前通知を発しております。これによりますと、日本国有鉄道職員就業規則第六十六条の十七号に、その他著しく職員として不都合な行為があったとき、これに該当するものとして、結局日本国有鉄道法第三十一条の定めに基づいて懲戒処分したわけでございます。
  113. 志賀義雄

    志賀(義)委員 その就業規則のいまの条項に基づいておやりになったというのだが、今後の判決の第一には、それを一方的に適用することがこの場合には不当労働行為になる、こういうことになっております。その点について、裁判所の第一審でそういう判決が出たことについては再検討なさいましたか。まだ何らなされないのですか。
  114. 上林健

    ○上林説明員 ただいまの判決は私ども確定したものとは承知しておりません。なお、この記録につきましても、したがって、これはどういう内容であるかということについては承知しておりません。かりにそれが確定した事実であると仮定いたしましても、先ほど御答弁申し上げましたように、国鉄といたしましては、これら四人の行為はやはり職員として著しく不都合な行為である、こういうふうに認定いたしまして、就業規則によって処分をいたした次第でございます。したがいまして、これが不当労働行為であるとか、あるいは取り消すべきものであるとか、そういうふうには考えておりません。
  115. 志賀義雄

    志賀(義)委員 人権上不当な侵害をしているという説示を受けて、そして東京鉄道公安支部長のほうからも、今後はそういうことはしないようにする、こういうふうな答弁が出ているぐらいです。そうすれば、いやしくもあなたが法務課長をやっておられる以上、そういう点も含めて、今度の第一審の判決が出たら、これについていまから当然検討しておかれるべき筋合いのものであると思うのです。あなたのほうは、判決最終的に出るまでは一切そういうことは検討もしない、全然関知しないところだ、こういうふうにおっしゃるわけですか。
  116. 上林健

    ○上林説明員 その判決の内容につきましては、まだあれしておりませんが、新聞等で承知いたしました範囲内に関する限りは、やはりこのような行為は職員として非常に不都合な行為である、結局国鉄の内部規律保持のために、日国法でもって規定した三十一条の定めによりまして、懲戒処分に値する、すなわち免職処分に値するもの、こういうふうに考えておりまして、これを考え直すというようなことについては考えておりません。
  117. 志賀義雄

    志賀(義)委員 先ほど人権擁護局長が、まだその判決の正文を見ていない、こういうふうに言われた。その上でもなお考えてみるとおっしゃったが、あなたのほうは、その判決の正文を入手したら検討されるのか。いまあなたは、ほとんど暴言と思われるのですが、そういうものは第一審のことだ、別に検討する必要はない、こういうふうにおっしゃるのか。
  118. 上林健

    ○上林説明員 この判決の内容は、もちろん国鉄としても重大な関心を持っておるのでございますので、その内容がわかりましたら、もちろん精細にこれを検討さしていただきますけれども、ただし、国鉄のいたしました処分は、国鉄が独自の立場において、就業規則に違反したような行為である、こういうふうに認めておるわけでございます。したがいまして、先ほども申し上げましたように、かりにこの判決が確定するようなものであったといたしましても、国鉄は国鉄の立場において、これはやはり職員として不都合な行為である、こういうふうに認定しておるわけでございまして、これを変更するという意図は持っておりません。
  119. 志賀義雄

    志賀(義)委員 就業規則で問題になった点、入浴時間の点、これを免職された人たちが破ったから就業規則違反だ、こういうことです。その就業規則そのものが、一方的なそういう解釈は当たらないということは、今度の判決に示されておる。そういうことが出た以上、行き過ぎのないようにせよという人権擁護局長の説示に対して、東京鉄道公安支部長のほうからも答弁があったくらいですから、それは判決の正文を見てなお考えてみる、これが法務課長として当然のことであろうと思う。あなたとしては、いまの御答弁を伺っていると、だれが何と言おうとこっちはこっちだ、国鉄あるいは運輸省のほうでそういうことについて自分のほうの就業規則でやった、だれが何と言おうとそんなものは検討する必要はない、こういうふうに言われるのかどうか。これは非常な暴言であろうと思うのでありますが、あなたはどこまでもそれを固執されますか。記録にもとどまりますから、そこをはっきり言ってください。 〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕
  120. 上林健

    ○上林説明員 まず、就業規則の第六十六条十七号にいう、著しく不都合な行為、こういう行為が全く存在しなかったというなら別でございますけれども、こういう行為があった場合に、これが国鉄の就業規則の立場、すなわち、日本国有鉄道法第三十一条に基づきまして、国鉄部内秩序を維持するという見地から見た場合に、やはりこれに該当するというふうに認定しておるわけでございます。これが現在訴訟で争われておりますが、それは別の法規による判断に基づくものでございますけれども、国鉄としては一応これは別のものである、すなわち就業規則違反に該当する行為であると見ておるわけでございます。
  121. 志賀義雄

    志賀(義)委員 そうなってくると、自分のほうで就業規則をきめていれば、判決がどうなろうと、しかも第一審でいま係争中でありますが、そういうことは考慮しないと言われるのか。少なくとも第一審でこういうものが出たら、ここを再検討するという用意があるのかどうか、それを伺っている。もしあなたが相変わらずそれを言われるなら、もっと上級の責任者を通じて、あなたのきょうの暴言について、記録がすっかり残っているからやりますが、よろしゅうございますか。裁判所がかりに無罪、こういうふうにきめた場合に、あなたはやはり就業規則でどこまでもがんばられますか。第一審でそういうことが出たら、これはそういう場合の用意としていまから調べておかなければならないというのが、第一審の場合でも法務課長としての当然の責務であろうと思うが、あなたにはそういう気持ちは一片もない、それでよろしいか、これだけを最後に伺っておきます。
  122. 上林健

    ○上林説明員 いま志賀先生、無罪と言われたのでございますが、かりにこの無罪が確定いたしたという場合に、やはり同じような事実について、刑事処分を行う場合と、それからそれについて懲戒処分、これは国鉄部内の規則に照らして処分を行なうわけでございますが、この両者はやはりおのずからその目的と性格が異なるわけでございます。したがって、事実は同じであるといっても、これに対処するしかたは必ずしも同一でなければならないということはないと考えられるわけでございます。したがいまして、この判決をよく拝見いたしまして、この事実関係をよく見まして、もしこの事実関係について、国鉄が行なう懲戒処分の対象となる事実としても、やはり国鉄の認定が間違いだったといえば、これはやはり考え直す必要があろうかと思います。しかし現在のところ、こういう内容についてもまだ出ておりませんし、国鉄としては、現在のところ、やはり国鉄が認定した事実には間違いがない、こういう前提で処分をいたしておるわけでございます。
  123. 志賀義雄

    志賀(義)委員 処分をしたのはもう二年も三年も前のことでしょう。いま第一審でそういうことが出て、あなたは就業規則をたてにとられるけれども、そのことが判決理由のまっ先に掲げてあるのですよ。一方的にそういう就業規則を振りまわすことはいけない、こういうことになっているのです。そういうことが出た以上、いまあなたが言われたようなことだと、これに類似した事件が起こったときには、やはりこういうことが問題になっているという点も考慮せずに相変わらずやられるということになると、人権擁護局長の説示されたことに対しても、これは全然考慮を払っていないということになりますか。その点はいかがですか。
  124. 上林健

    ○上林説明員 先ほど私が申し上げました点、あるいは説明が不十分なためだろうと思いますが、国鉄といたしましても、この判決の内容につきましては非常に重大な関心を払っておるわけでございます。したがって、この内容については十分によく検討さしていただきたいと思います。
  125. 志賀義雄

    志賀(義)委員 十分検討してください。就業規則だけで万事が一方的にやれると思ったら大きな間違いですよ。  そこで人権擁護局長に伺いますが、先日、衆議院社会労働委員会でも問題になったのでありますが、例の興和株式会社というものの新薬実験について、人権擁護局に訴えが出ております。それについて局長は、調査をするということを先日の社会労働委員会で言われましたけれども、その後調査はどの程度に進んでおりましょうか。
  126. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 ただいま御指摘の事件につきましては、三月の二十四日に東京法務局に対しまして、その会社の薬剤師である被害者に当たる中村晴子という方から、その代理人内田弁護士を通じて、人権侵害事実調査申し立て書と題する書面の提出があったのであります。そこで調査に着手したわけでありますが、同局におきましては、まず三月二十五日に申告者本人、すなわち中村さんから事情詳細を聴取いたしまして、引き続き目下関係者を呼び出している、そういう段階でございます。
  127. 志賀義雄

    志賀(義)委員 わかりました。そこで、ごく簡単にお伺いいたしますが、問題のキセナラミンについて、イタリアのほうでは一般に発売されておって日本でも伝研並びに東北大学で調べたら別にそういうなにがなかった、こういうふうになっておりますが、その点についてすでに別の医学雑誌では、ことに臨床医師のデータで副作用として肝炎を起こすことが確認をされているということがございますけれども、その伝研及び東北大学ではそういうことについては全然考慮していなかったかどうか。その点をお調べになりましたか。
  128. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 先ほど申しました人権侵害事実調査申し立て書の中にはいろいろ書いてございますが、ただいま御指摘の事実も含めまして、その事実があるかないかということについては現在調査中でございまして、何ともまだお答えする段階に至っていないわけでございます。
  129. 志賀義雄

    志賀(義)委員 局長に希望がございます。  第一は、予期される結果を知りながら実験を行なったのかどうか、これをお調べ願いたいと思います。  また、この中村晴子さんたちに対して新薬の人体実験を行なった方法について、投薬をする前に健康診断をしなかったことが明らかでありますが、健康診断もしないで新薬の副作用を検査したのかどうか、この点をはっきりしていただきたい。非常にでたらめなのであります。というのは、一人女性の方で四カ月後に死んだ方がありますね。あれはガンが死因だった、関係はないらしいということを製薬会社の責任者並びに伝研の橘田晃という人と同時に東北大学の松本慶蔵という人が言っておりますが、そうすると、これはすでにガンが発生していた人に対して健康診断もしないでこの新薬実験をやったということだけは動かせない事実になりますね。こういうことが一体許されていいものかどうか、その点をお調べ願いたいと思います。  主としてこの二点でございますが、問題は、大渡順二という医学評論家、これはサンデー毎日その他にもよく名前の出る人でございますが、その人が言っております。「一般的にいって製薬会社は病院に研究費を出すなど製薬会社と病院には利害関係がありすぎる。」「今の様では病院側の出す資料が製薬会社のつごうのよいものばかりとカンぐられてもしようがない。」こういうふうに言っております。このキセナラミンの実験のときに東北大学並びに伝研に対して実験上の費用を提供したかどうか、出しているか出してないか。どうも私ども、ウイルス化学療法研究班東北大医学部中村隆研究室松本慶蔵氏の話というのが新聞にも出ておりますが、その点で、いま医学評論家の指摘したようなことはあるいはあるのではなかろうかということが考えられる。もう一人伝染病研究所の方ですが、ウイルス病化学療法研究班東大伝研付属病院内科橘田晃博士の話では、どうもその点で私ども釈然としないところがある。一体製薬会社から今度の人体実験について費用が出ているのかどうか、その点をお調べ願いたいと思うのであります。人権擁護局で明らかにならなければ、捜査当局のほうにお願いしなければならないことになるかと思いますが、いまかぜのアンプルその他でいろいろ問題が起こっております。こういうときに、新薬の実験について健康診断もせずにやる、医師の適当な指導のもとに実験をやらない、こういうことでは人権上非常に重大な問題になると思います。しかし、これは目下調査中ということでありますが、長引きますと、いろいろと明らかになる事実も明らかにならないようになります。そういうことがありますので、御調査を願いたいと思うのであります。それだけでございます。  もう一言だけ、これは刑事局長に伺いたいのでございますが、アメリカ兵からピストルが密輸入されて暴力団に渡っておる、こういう事件があります。これは山口地方裁判所岩国支部で、去る十九日、岩国基地海兵隊員ジョン・B・ハンセン二等軍曹が昨年五月から十一月にかけ、基地から七、八回にわたり自動小銃四丁、ピストル二十五丁、実包約三千発を持ち出し、すでに逮捕済みの日本人二人を通じて売りさばいていた疑いで、銃砲刀剣類等所持取締法違反、火薬類取締法違反の疑いで起訴され、そのときの冒頭陳述で、有元検事は「被告は去る三十八年暮れ、基地内の同僚から、銃が日本人に高く売れると聞き密売を計画、ベトナムなどから個人所有の自動小銃と短銃を仕入れていた。正規の軍用品でないため、種類はルーガー、コルト、デリンジャーなど十数種におよび、仕入れ方法も軍用機、民間機などさまざまだった」と説明しております。ベトナム問題がきわめて重大化しておるおりから、この点はきわめて重大であります。いま警察でも、暴力団に航空会社の機長その他から密輸入された銃砲類のことが問題になって追及されておりますが、こういう点について、これはこの場合の偶発的現象でございましょうか、その他にもいろいろあると推定されているのでございましょうか、その点を刑事局長から伺っておきたいと思います。
  130. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ねの点につきましては、いま私は承知いたしておりませんが、報告はきておるかと思います。取り調べてみますが、一般的に申しまして、特に駐留軍人あるいは軍属関係からの銃器の密輸入という事件は、それほど目立ってあるようにはいま感じておりませんが、なお調査をいたしてみます。
  131. 志賀義雄

    志賀(義)委員 では、まだ調査をしておられないようでありますから、ひとつ委員長からも刑事局長のほうにお話しになって、その資料を当法務委員会へ提出していただいて、その上であらためて質問いたしたい、かように考えてきょうはこれで終わりたいと思います。
  132. 加藤精三

    加藤委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十三分散会