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片山参考人 私、
片山です。与えられました時間の
関係上、結論から先に申し上げて、
理由を次に申し述べたいと思います。
日本弁護士連合会におきましては、本
委員会から招請を受けまして、急遽各
委員会の
意見を徴しました結果、全面的に本
改正案には
反対を表明せざるを得ないのであります。
まず第一の
理由は、
根本の
性格に関するものであります。
憲法三十二条の
保障する
裁判を受くる
権利は、この受くる
権利によって
判決を得た結果、これを
民事の
関係においては
執行しなければ効力はないのであります。いわゆる絵にかいたぼたもちを、あらゆる苦労をして
判決をとって、さて
執行の
段階になってこれが
目的を達しられなかった場合は意味がないのであります。この
判決を得ますために、
規定の
印紙を張らなければなりません。
権利の
行使をしようとする者は、まず
最初に、十万円を
基準といたしますと、千円の
印紙を張り、百三十円の
送達料十回分を予納させられるのであります。その途上においてさらに
証人申請、
証人の
旅費日当その他いろいろの
費用を
負担した上で
判決を得るのであります。その後においてさらに
執行吏にお願いして、この
委任に多額の
費用を要するということは、いたずらに
権利の
行使を妨げるといわなければならない。これは外国の
法制上は
国家が全部
負担するものもあるようでありますが、大体において当事者の
負担になっているようであります。しかしながら、その
負担は、
憲法の
保障する
権利の
行使をするのでありますから、最低限のものでなければならぬと思います。これが余分の
負担をかけて、その
権利の
行使を妨げるようなことがあっては、これは
憲法の趣旨にも違反するものだと
考えるのであります。
第二に
収入基準であります。
執行吏の地位というものはどの
程度のものか、調べてみますと、
執行吏任命規則二条、三条によりますと、
国家公務員の
別表による
給与規定の七
等級以上はすべて
任用資格があるわけであります。そうだとしますと、七
等級を
基準とすれば、大体標準ができると
考えられる。その七
等級の
最高給といえ
ども、大体においてあの表によりますと七
等級の十五号俸は
最高が三万五千円
程度であります。そうだとしますと、一ヵ月の
執行吏の
最高給は他の
国家公務員に比較すれば三万五千円
程度あればいいということに推論できるのであります。それで現在の
執行吏の
収入はどんな
程度かと
考えますと、各個の
収入は教えていただけないのでわかりません。しかしながら、
風評によれば
——これはあくまで
風評であります。
東京の
執行吏のごときは月額二十万を下ったことはないということであります。そうしてこの
収入がある
一定の
基準に達しない場合には
国庫が
保障しております。これはこのいただいた資料の終わりのほうへついておりますが、この
給与の額の
改定がなされて、現在は
保障額は一ヵ年十九万一千円になっております。十九万一千円ということは、一ヵ月一万六、七千円になる計算であります。そうして
執行吏は、これは実際事実を申し上げるのでありますが、
旅費を計算して
手数料のほかに取るのでありますが、
一般の
執行を
委任した場合に
旅費を予納しておきながら、各自が、
委任している者が
負担しているのが
実情であります。いなかの
執行吏のごときは公然と、一緒に一等へ乗っけていってくれるか、こういうふうに要求するのであります。現在
東京なんかは自動車を別に準備して乗っけていかなければ敏速な
執行はしていただけないのであります。これが真実であるとするならば、その
手数料以外に、その
旅費の実
収入というものはかなり多額なものになると
考えられるのであります。そうだとすれば、三十八年に
改定したこの
法律を、まだ一年有半で直らに何倍もの膨大な
値上げをする必要がどこにあるのか、発見に苦しむのであります。
次に、
物価の
上昇についてであります。
物価の
上昇がはなはだしいために
値上げの必要がある、これも
一つの
理由であります。しかしながら、よく
考えてみますと、
一般の
物価が、
別表によりますと
平均十何%上がっております。これがものによると何倍も上がっているわけです。そうしますと、
委任額が自然と
増加するのであります。だから、われわれ
弁護士の
報酬が、
物価が上がることによって
改定しようとしないのは、
目的価格が
自然増するからであります。
自然増することによって
自分の
報酬も自然に
増加しているのは当然なんであります。ことに
不動産、
土地家屋のごときは年々
評価がえをしております。
評価がえをすることによって
基準はうんと高騰していくのであります。この
自然増があるにかかわらず、さらにこの法令を
改定して何倍もにいたしますと、先ほど二十万の
報酬と申し上げましたが、これが五十万にも達するように
考えます。
かくのごとき不当な
改定は絶対に通すべきでない、私はそう
考えるのであります。
なお、
改定の
法律の各条文について拝見いたしますと、軽微な
手数料は五十円が六十円と、十円並みの上がり方で、これは問題にはなりません。しかしながら、瞬間によるもの、あるいは先ほど申しました
根本が財産の
請求金額あるいは
物件の
価格によるものについては、ばく大な、四倍にも上がったものがある。
かくのごとき
増加は二重の
増加になることは疑いないのであります。第一この
執行吏の
制度が
——委員長から先ほど
根本に触れてもらいたいという
お話がありました。
執行吏は
自由業であります。そうして
東京のごとく
合同役場を設けたのは
一つの
官庁と同じ扱いになっております。そうして
労組の問題まで起きるようであります。
執行吏は
自分の
収入は
青月何十万でありながら、安い
賃金の雇い人をたくさん使用して、それには十分な俸給を与えないで、それで赤旗が下がる結果になるのであります。
自分の
収入を、先ほど申し上げましたこの七
等級の
官吏を
基準とするならば、
労組の問題は起き得ないと
考えるのであります。
以上のごとく、なお
執行吏の
制度に関しましては、これは冒頭に申し上げましたように、どこまでも
国家機関でやるべきもの、これをいわゆる
自由業の、半
自由業の
執行吏に
事務をさすことはいろいろな点において
支障があると
考えるのであります。現在
不動産の競売は
執行吏は補助であって、
地方裁判所の
執行係においてやるのでありますから、この
執行係が当然
官吏としてすべての
執行を行なうべきであって、
かくのごとく
物価が
上昇したから
手数料を上げてくれというような問題は起きないはずなんであります。大阪は
合同役場でなしに分離した
制度になっているようでありますが、非常にうまくいっているようであります。これは自由に競争さすからでありますが、反面それによって非常な
支障が起きていることもあり、また新聞にも問題になったことがあります。いずれがいいか悪いかは問題といたしまして、これは
国家が
執行制度を
根本から
改革する必要があると
考えるのであります。現在、
委員の方は
弁護士の経験の方がおありのようですから御存じでしょう。
東京の
執行吏役場なんかは、朝行くと全く見られたものではないのであります。これは
立ち会い人、
道具屋、いわゆるごろんぼう、ごろつきみたいな者がたむろしているのであります。この
制度がこのまま存続していいはずはないのであります。これは絶対に
改革を要すると
考えるのであります。
これで終わります。