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1965-03-04 第48回国会 衆議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月四日(木曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 加藤 精三君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 小金 義照君 理事 小島 徹三君    理事 坂本 泰良君 理事 細迫 兼光君    理事 横山 利秋君       唐澤 俊樹君    中垣 國男君       濱野 清吾君    藤枝 泉介君       森下 元晴君    井伊 誠一君       長谷川正三君    田中織之進君  出席政府委員         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 鹽野 宜慶君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局民事局         長)      菅野 啓藏君         参  考  人         (日本弁護士連         合会理事弁護         士)      片山 繁男君         参  考  人         (日本執行吏連         盟会長執行吏) 長田 公麿君         参  考  人         (東京執行吏役         場労働組合執行         委員長)    広沢 豊喜君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 本日の会議に付した案件  訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第六四号)      ————◇—————
  2. 加藤精三

    加藤委員長 これより会議を開きます。  訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案について参考人より意見を聴取することといたします。  本日出席参考人は、日本弁護士連合会理事弁護士片山繁男君、日本執行吏連盟会長執行吏長田公麿君、東京執行吏役場労働組合執行委員長広沢豊喜君の三名であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中のところわざわざ御出席をいただきましてまことにありがとうございます。厚く御礼申し上げます。御承知のように本案は、最近における経済事情などにかんがみ執行吏手数料などを増額し、また一般公務員恩給増額に伴い、執行吏恩給増額する必要があるとして政府より提案せられたものであります。なお、本委員会におきましては、執行吏制度のあり方、その運用の実情などに深く関心を持ち、かねてより調査研究を加えてまいったところであります。本日は、本件に対する御意見にあわせて、これらの問題につきましても御意見を承りたく、ここに各位の御出席をわずらわした次第でございます。参考人各位におかれましては、本案はもちろん、執行吏制度全般にわたって種々御意見もおありのことと存じますので、何とぞ忌憚のない御意見を承りたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。  なお、御意見最初お一人十分程度にあらかじめお願い申し上げておきます。  それではまず、片山参考人よりお願いいたします。
  3. 片山繁男

    片山参考人 私、片山です。与えられました時間の関係上、結論から先に申し上げて、理由を次に申し述べたいと思います。  日本弁護士連合会におきましては、本委員会から招請を受けまして、急遽各委員会意見を徴しました結果、全面的に本改正案には反対を表明せざるを得ないのであります。  まず第一の理由は、根本性格に関するものであります。憲法三十二条の保障する裁判を受くる権利は、この受くる権利によって判決を得た結果、これを民事関係においては執行しなければ効力はないのであります。いわゆる絵にかいたぼたもちを、あらゆる苦労をして判決をとって、さて執行段階になってこれが目的を達しられなかった場合は意味がないのであります。この判決を得ますために、規定印紙を張らなければなりません。権利行使をしようとする者は、まず最初に、十万円を基準といたしますと、千円の印紙を張り、百三十円の送達料十回分を予納させられるのであります。その途上においてさらに証人申請証人旅費日当その他いろいろの費用負担した上で判決を得るのであります。その後においてさらに執行吏にお願いして、この委任に多額の費用を要するということは、いたずらに権利行使を妨げるといわなければならない。これは外国の法制上は国家が全部負担するものもあるようでありますが、大体において当事者の負担になっているようであります。しかしながら、その負担は、憲法保障する権利行使をするのでありますから、最低限のものでなければならぬと思います。これが余分の負担をかけて、その権利行使を妨げるようなことがあっては、これは憲法の趣旨にも違反するものだと考えるのであります。  第二に収入基準であります。執行吏の地位というものはどの程度のものか、調べてみますと、執行吏任命規則二条、三条によりますと、国家公務員別表による給与規定の七等級以上はすべて任用資格があるわけであります。そうだとしますと、七等級基準とすれば、大体標準ができると考えられる。その七等級最高給といえども、大体においてあの表によりますと七等級の十五号俸は最高が三万五千円程度であります。そうだとしますと、一ヵ月の執行吏最高給は他の国家公務員に比較すれば三万五千円程度あればいいということに推論できるのであります。それで現在の執行吏収入はどんな程度かと考えますと、各個の収入は教えていただけないのでわかりません。しかしながら、風評によれば——これはあくまで風評であります。東京執行吏のごときは月額二十万を下ったことはないということであります。そうしてこの収入がある一定基準に達しない場合には国庫保障しております。これはこのいただいた資料の終わりのほうへついておりますが、この給与の額の改定がなされて、現在は保障額は一ヵ年十九万一千円になっております。十九万一千円ということは、一ヵ月一万六、七千円になる計算であります。そうして執行吏は、これは実際事実を申し上げるのでありますが、旅費を計算して手数料のほかに取るのでありますが、一般執行委任した場合に旅費を予納しておきながら、各自が、委任している者が負担しているのが実情であります。いなかの執行吏のごときは公然と、一緒に一等へ乗っけていってくれるか、こういうふうに要求するのであります。現在東京なんかは自動車を別に準備して乗っけていかなければ敏速な執行はしていただけないのであります。これが真実であるとするならば、その手数料以外に、その旅費の実収入というものはかなり多額なものになると考えられるのであります。そうだとすれば、三十八年に改定したこの法律を、まだ一年有半で直らに何倍もの膨大な値上げをする必要がどこにあるのか、発見に苦しむのであります。  次に、物価上昇についてであります。物価上昇がはなはだしいために値上げの必要がある、これも一つ理由であります。しかしながら、よく考えてみますと、一般物価が、別表によりますと平均十何%上がっております。これがものによると何倍も上がっているわけです。そうしますと、委任額が自然と増加するのであります。だから、われわれ弁護士報酬が、物価が上がることによって改定しようとしないのは、目的価格自然増するからであります。自然増することによって自分報酬も自然に増加しているのは当然なんであります。ことに不動産土地家屋のごときは年々評価がえをしております。評価がえをすることによって基準はうんと高騰していくのであります。この自然増があるにかかわらず、さらにこの法令を改定して何倍もにいたしますと、先ほど二十万の報酬と申し上げましたが、これが五十万にも達するように考えます。かくのごとき不当な改定は絶対に通すべきでない、私はそう考えるのであります。  なお、改定法律の各条文について拝見いたしますと、軽微な手数料は五十円が六十円と、十円並みの上がり方で、これは問題にはなりません。しかしながら、瞬間によるもの、あるいは先ほど申しました根本が財産の請求金額あるいは物件価格によるものについては、ばく大な、四倍にも上がったものがある。かくのごとき増加は二重の増加になることは疑いないのであります。第一この執行吏制度——委員長から先ほど根本に触れてもらいたいというお話がありました。執行吏自由業であります。そうして東京のごとく合同役場を設けたのは一つ官庁と同じ扱いになっております。そうして労組の問題まで起きるようであります。執行吏自分収入青月何十万でありながら、安い賃金の雇い人をたくさん使用して、それには十分な俸給を与えないで、それで赤旗が下がる結果になるのであります。自分収入を、先ほど申し上げましたこの七等級官吏基準とするならば、労組の問題は起き得ないと考えるのであります。  以上のごとく、なお執行吏制度に関しましては、これは冒頭に申し上げましたように、どこまでも国家機関でやるべきもの、これをいわゆる自由業の、半自由業執行吏事務をさすことはいろいろな点において支障があると考えるのであります。現在不動産の競売は執行吏は補助であって、地方裁判所執行係においてやるのでありますから、この執行係が当然官吏としてすべての執行を行なうべきであって、かくのごとく物価上昇したから手数料を上げてくれというような問題は起きないはずなんであります。大阪は合同役場でなしに分離した制度になっているようでありますが、非常にうまくいっているようであります。これは自由に競争さすからでありますが、反面それによって非常な支障が起きていることもあり、また新聞にも問題になったことがあります。いずれがいいか悪いかは問題といたしまして、これは国家執行制度根本から改革する必要があると考えるのであります。現在、委員の方は弁護士の経験の方がおありのようですから御存じでしょう。東京執行吏役場なんかは、朝行くと全く見られたものではないのであります。これは立ち会い人道具屋、いわゆるごろんぼう、ごろつきみたいな者がたむろしているのであります。この制度がこのまま存続していいはずはないのであります。これは絶対に改革を要すると考えるのであります。  これで終わります。
  4. 加藤精三

    加藤委員長 次に長田参考人にお願いいたします。
  5. 長田公麿

    長田参考人 私は東京地方裁判所所属執行吏長田公麿でございます。  御承知のとおり執行事件民事の最終的の段階に立つものでありまして、その成果のいかんによりまして判決の有終の美をおさめるかどうかという重大な立場に立つものでありますから、われわれといたしましては常に良識の涵養と人格の陶冶につとめて、品位を保ちつつ、職務執行にあたっては迅速適正にこれを処理していきたいと常に考えておる次第であります。したがいまして、われわれの仕事は、ただいま申し上げましたように非常に重大なものでありまするが、その受くる報酬は、ただいまの片山先生お話とまるで雲泥の相違がございます。片山先生は月二十万以上あるとかいうお話でございますが、どういうところからさような風評が出たのか、私は理解に苦しむわけでございます。  御承知のとおり、一例をあげましても家屋の明け渡しは三時間まで二百五十円の手数料、そうしますると、一軒の家を三時間かかりましても二百五十円きりかいただけません。いやな思いをいたしまして家屋を一日に二軒あけたと仮定いたしましても、五百円の手数料でございます。それに対する人夫は、御承知でありましょうが、こういういやな商売でありますから、とても二百円や三百円では人夫は参りません。少なくも数千円の人夫代を使っておる。ですから、債権者の実際の負担となるべき金額は、執行吏手数料はわずかでありまして、その人夫に支払う金額がばく大なものであります。そこから推しまして、あるいは片山先生人夫に支払う金がこれこれあるからして、執行吏収入はその何倍にもなるのじゃないか、あるいはそうお考えになったかもしれませんけれども、われわれは手数料を一銭よけい取るわけにもいきませんし、減額することも、これは法律にきまっておりますから、その一定の額きりかもらえません。  それからいま基準お話が出ましたが、われわれは一年に手数料収入が十九万一千円に満たない場合には、その差額を国庫から補助するというお話でございます。これはつい三月一日に政令の二十号で改正されまして、基準額は二十一万八千円になりました。そうしますると、結局二万円くらいで、相当の収入があるとお考えかもしれませんけれども、実際の事情としまして、現在におきまして二万円くらいではとても生活できるものじゃありません。夫婦、子供二人もありますれば、少なくとも五万円くらいはかかるのじゃないか、東京実情はさようでございますから、片山先生のおっしゃった二十万円というのはどこから出たお話か、非常に理解に苦しむ次第であります。  それから、御承知のとおり昭和三十年以来据え置かれました手数料が、昨年二五%ばかり上がりましたが、これは手数料のみでありまして、旅費はそのままであります。執行吏収入というものは手数料旅費でありますが、実際の収入から見ますれば、二五%と公称ではございますが、あるいは一五%くらいではないかと思うわけでございます。ことに御承知のとおり、刑事事件は一ヵ月に一万五、六千件ありまして、それに対する事務員送達代理者従業員は相当数使用しておりまするが、これは無手数料でございまして、一銭の手数料もありません。ただ旅費のみが立てかえ金として支給されるのでありまするから、東京の場合の役場におきましては手数料だけではとうてい収支が償いません。旅費のほうを節約いたしまして、旅費から人件費なり物件費の一部をまかなって、ようやくバランスをとっておるという状態でございます。ちょっとお考えになりますれば変かもしれませんけれども手数料だけでは、ただいま申し上げましたように刑事事件は無手数料でありますし、それに対する費用は相当かかりますから、手数料だけではとても収支が償わない、赤字でございます。それですから旅費のほうを一部さいてただいま申し上げたように支出しましているわけでございます。  以上申し上げましたような実情でありまするから、何とぞぜひ、日本全国執行吏一同の希望でありまするから、増額の件を皆さんにお願いしたいと思う次第であります。
  6. 加藤精三

    加藤委員長 次に広沢参考人よりお願いいたします。
  7. 広沢豊喜

    広沢参考人 東京執行吏役場労働組合委員長広沢です。  今回、訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案法務省から法務委員会提出され審議されるにあたりまして、われわれ東京執行吏役場労働組合では、この機会に、法律改正のみならず、執行吏制度に関しましても労働組合立場から意見を述べてみたいと思います。  今回提出をされました訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案は、言いかえますと手数料値上げ案でありまするが、労働組合一般立場から申せば、公共料金その他物価値上げにつきましてはもちろん反対であります。しかしながら、執行吏東京合同役場の昨年度の執行事件委任数が約一万四千件であるということを考えますと、その公共性たるや、水道料金なり保険料等に比べればはるかに低いものであると思います。主食をはじめ医療費その他あらゆる物価値上がりの中で、執行吏手数料値上げのみを糾弾してみても、それだけ社会的な共感を得るか、はなはだ疑問といえると思います。国民反対を買い、大多数の国民生活を窮乏に追い込んでいる現在の高物価政策を改め得ずして、執行吏手数料を論じてみても始まりますまい。また執行吏手数料妥当性、すなわち、どのくらいの手数料が適切であるかということも一がいに判断できないはなはだむずかしい問題であるかと思います。われわれは過去五年間に七千円の賃上げをかちとってまいりました。その団交のたびに執行吏側は非常に台所が苦しいとこぼしております。われわれは当然今年度も賃上げの要求を執行吏側提出することになりましょうが、われわれ労働組合が強調しなければならない点はわれわれの労働条件の問題であって、手数料値上げそのものについては、法曹界なりあるいは利用者なりからの意見参考にしたほうが適切ではないか、このように考えております。  現在、東京執行吏役場には八十名の職員が働いております。そのうち六十五名が組合員となっています。職員執行吏代理という職務とそうでない一般の者とに分かれております。執行吏代理の中からさらに、執行吏と全く同等仕事に従事する執行代理裁判書類を送達する送達代理とに分かれます。これらの労働者特別職国家公務員であり、なおかつ地方裁判所職員である執行吏に雇われているわけです。もちろんわれわれは公務員ではありません。われわれの労働組合昭和二十九年に結成され、昭和三十年に労働組合執行吏東京合同役場との間に労働協約が締結されております。その労働協約の中に、執行吏側執行吏役場性格を、執行吏において組織する合議体性格を内容とする国の司法機関たる執行吏の団体、このように規定をして、執行吏代理との間は雇用関係ではなく委任関係だと主張しています。これは執達吏規則第十一条にその根拠を求めています。しかしながら、執行吏代理を含めた労働者八十名が、執行吏二十三名で構成をしております合同役場から賃金を受け取り、雇用関係にあることは否定のできない事実であります。現在六十五名の組合員平均賃金は三万二千円で、このほか送達代理者歩合給、その他の者に超過勤務手当が支払われていますが、平均勤続年数約十年、平均年齢約三十七歳、こういう状態から判断した場合、われわれは決して高い賃金ではない、低賃金であると断定せざるを得ません。高校卒初任給が一万四千八百円、大学卒が一万五千八百円という執行吏役場賃金基準一般公務員以下でさえあります。こういう賃金実態の中で、われわれは非常に忙しい事務に従事しております。昭和三十四年当時百名いた職員が現在は八十五名。十五名も減ったまま働いている現状は完全なオーバーワークであります。また執行吏役場環境衛生も最悪のものであると言わざるを得ません。戦後転々と移転すること三たび、そのたびに木造違法建築といわれる裁判所の最も古い建物に入れられ、不衛生執行記録の紙の山を相手に仕事をしなければなりません。一時ずいぶん結核患者等が続出したことも、そういう不衛生環境を物語っているといえます。現在も、霞ヶ関官庁街であまり見受けられません狭い木造建物で働いております。こういう環境に置かれたわれわれには、公務員のような恩給があるわけではないし、何ら将来に対する保障考えられておりません。昭和二十三年に出された最高裁規則第八号、執行吏任命規則の中では、われわれ一般職員にも執行吏になり得る門戸を開いているにもかかわらず、東京の場合、執行吏代理にはなれても執行吏になるという例がありません。地方では執行吏代理から執行吏になるという例がありますが、東京の場合にはかたくその門は閉ざされております。今回法務省から提出されている執行吏恩給引き上げにつきましても、われわれには全く無関係であるのみか、多くの組合員がその点に反感を持ったとしても、それは当然なことだと思います。さらに執行吏規則及び執行吏事務処理規則の中では、執行吏代理職務については明らかにされておりますが、執行吏代理ではない職員については何ら法の定めるところがありません。現在の法律から考えますと、執行吏役場で働く職員はすべて執行吏代理でなければならないというような解釈が生まれてくるかと思いますが、現在何ら身分規定めない職員が多数存在しているという点に御注目いただいて大いに今後の研究の課題にしていただきたい、こう考えます。  明治二十三年に定められました執行吏関係法律がいかに古くて現状に適さない面を持っているかは多くの人の意見の一致するところだと思います。それに伴う制度につきましても、極端にいえば七十年間、戦後にしましても二十年間、その改革の必要が関係方面で議論されてまいりました。法務省でも、執行吏執行官としてその数をふやし、各地方裁判所執行局を置くというような改正案考えられているようです。全国司法部職員労働組合、つまり裁判所職員組合である全司法でも、国民のための裁判所はいかにあるべきか、こういうような観点から司法研究集会を開催しまして、その中で執行吏制度改正の問題が出され、われわれもこの研究会に参加をしてまいりました。しかしながら、過去いろんな改正案構想が出された中で、執行吏役場で働く職員の問題に触れられていないことについては全く遺憾とするものであります。東京の場合で八十名、全国で三百名をこえる執行吏役場職員の将来について、法務省をはじめとする関係者が何らの構想をも持ち得ないということは、全くの片手落ちではないかと言わざるを得ません。今後の制度改正研究の中で、ぜひ積極的に取り上げていただくよう、われわれ労働組合はこの点について強く主張いたしたいと思います。  国家権力の最先端、いわゆる一般国民と直接触れ合う公務員である執行吏が、公務員でない職員を常時雇用し、片や執行吏には恩給支給があり、片や職員には全く将来に対する何らの保障がないという実態もぜひ検討される必要があろうかと思います。しかもわれわれ職員仕事は非常に重いものであり、執行吏同等の責任すら持たねばならない場面があります。八王子の執行吏役場でも、送達業務上の問題で執行吏代理が告訴されて裁判を受けるというような実例も過去において生じております。危険な仕事の伴う執行吏代理及び職員が、労働協約での補償以外には何ら考慮されず、国家公務員災害補償法の適用を受けないのは言うまでもありません。さらに制度改正の声が大になりますと、そのたびにわれわれ職員の中からは、一体われわれの賃金はどうなるのだろうか、そしてわれわれの将来の身分はどう取り扱われるのであろうか、こういうような不安の声が聞かれます。これは制度改正案がペーパープランにしろ、われわれの意見を公に発表する場所が設けられていなかったことに原因しているのではないか、こう考えます。このような庁舎の問題あるいは職務の性質上から生まれてくるいろいろな問題につきましてのわれわれの意見が、今後の執行吏制度改正、運営に何らかの形で反映されることを強く希望する次第です。  以上、われわれ職員の置かれた現状と、今後の制度改正の中でぜひ取り上げていただきたい問題に、労働組合立場から触れてまいりましたが、今後制度改正研究会合等の場合には、必ず労働組合則からの代表出席、参加できるよう取り計らっていただきたいということを最後にお願いをいたしまして、組合代表としての意見を終わりたいと思います。
  8. 加藤精三

    加藤委員長 ありがとうございました。  これにて参考人意見開陳は終わりました。     —————————————
  9. 加藤精三

    加藤委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  10. 横山利秋

    横山委員 非常に御三人の参考人には御多忙のところありがとうございます。いまお話を伺いまして、私どもこの法案を議論いたします過程で非常に示唆に富むお話をそれぞれ伺って感謝をいたす次第であります。  ただ時間の関係上、あらゆる角度から伺いたいのでありますが、そうもできませんので、まことに御三人の方には恐縮には存じますけれども、端的にお伺いをして失礼にわたる点もあるかと存じますが、まずもってお許しを願いたいと存じます。  問題の第一は、片山さんと長田さんとの間における非常な意見相違であります。この間も本委員会で、政府並びに最高裁判所に私から尋ねたのでありますが、やはりこの政府並びに最高裁をもっていたしましても、どのくらいの収入執行吏に実際あるのかという点については確証がないのであります。私ども片山さんが先ほどおっしゃったような風説を耳にしているわけであります。なぜそういう風説が出るかという点については、いわゆるマル公の収入以外の収入があるという判断が根拠をなしているのであります。その根拠を裏づけるかのごとく、最近における執行吏裁判並びに行政上問題になりました点を手元へ取り寄せまして、そうしてなぜそういう問題が起きたかという点につきましても、いろいろと私は見てみました。それによりますと、動産の競売その他についてお金を収受したという点が列挙をされておるのであります。これがまず現に実在をするものといえるでありましょう。  第二番目に、いま片山さんが指摘をされました、立てかえの旅費をもらって、そうして実際は債権者の車に乗り、債権者から昼めしを受け、債権者から一等に乗せてもらうということは、あり得ることだと私も思われるのであります。それがいい、悪いはともかく、今日の習慣をなしておるのではないか。はからずも長田さんは、とても手数料では食っていけない、旅費である程度埋め合わせをしておるのだ、こういうお話をなさいました。このような事実が存在をしなければならない根本的な問題は一体何か、ここを究明をしなければ、私どもがこの手数料値上げなり、その他について議論をするものさしがないのであります。ですから長田さんも、私どもの質問なり、片山さんの御意見に反駁をなさるお気持ちはよくわかるのでありますけれども、実際、私も名古屋の執行吏役場へ行って、いま広沢参考人がおっしゃったような裁判所の全く片すみで書類の中に埋まって働いておられる、まあ陰惨ともいうべき事務所の中へ行きまして、いろいろと素朴な御意見を伺ってきたわけでありますが、同情にたえない点があると私も思いました。したがいまして、長田参考人には、一体今日の、世間の誤解を受け、汚職も続発をしておる執行吏現状について、どうあればよろしいのかという点について率直な御意見を伺いたいのであります。
  11. 長田公麿

    長田参考人 ただいま横山先生から、刑事事件、汚職、不正の問題があったではないか、そういうものが陰の収入であるのではないかというようなお話でございましたが、確かに刑事事件としまして、三年前でございますか、東京で汚職事件が起きましたが、警視庁で数ヵ月かかりまして厳密に捜査いたしました結果におきましても、わずかに数回、一回千円とか二千円のわずかな車代でございます。ですから、執行吏としては、決してこれが収賄になるとか贖職になるとかという考えでなく、儀礼的に車代をいただいたわけでありまして、そういう金を毎日いただくわけではありません。ですから、それが陰の収入となって月二十万になるということは、われわれはとても想像ができないのでございます。  それから収入につきましては、東京の場合は全部事務員のほうでやっておりまして、その集計を私のほうへいただいております。そのうちから経費をいろいろ引くことになっておりまして、なお、われわれの収入のうちから退職積み立て金をしております。従業員が退職いたしますれば、退職金を支給しなければなりません規定がありますから、その退職金も徐々に積んでおる次第であります。まことにこの不詳事件は司法威信に影響する重大なものでありましたので、私らは、先ほど申し上げましたように、非常に自粛、自戒しておる次第であります。また、先ほど片山先生から、車に乗っていくじゃないかというお話もありましたが、昔は多少そういうこともありましたが、いまは絶対に車を利用しておりませんです。しかし、債権者がどうしても自分の車があるから同行してもらいたいという場合には、まあ不本意ながら同行することもありますし、なお、昼食とか夕食などというものは絶対に東京の場合は受けて、おりませんから、この点は、私、御安心いただきたいと思うのであります。
  12. 横山利秋

    横山委員 まだ私の質問を取り違えてみえるようでありますが、私はここにいろんな記録を持っているのでありますが、大阪事件、熊本事件、千葉事件、奈良事件、大津事件、徳島事件、長崎事件、最近における執行吏の犯罪の状況も入手をし、それから東京地方裁判所における贈賄事件について逐一目を通しているわけであります。これをもっていたしますと、「物件の競落に際し便宜な取り扱いを受けること並びに今後も同様便宜な取り扱いを受けたい謝礼として」金幾らを収受した。こういうことは、たまたまわかったこれだけにはとどまらないのではないかという疑惑をどうしても私は持つわけであります。私が聞いておるのは、そういうことは少ないのだとか、そういうことは今日あまりないのだなということでなくして、ほんとうは執行吏の俸給はどうあるべきか、片山さんがおっしゃったように、本来公務員できちんとしたものであるべきだとか、あるいは手数料制度であくまでもいかしてもらいたいとか、もっとこうしてもらいだいとかいう建設的な御意見を伺っておるのです。
  13. 長田公麿

    長田参考人 先ほど来執行吏制度改革のことが問題になっておりまして、われわれ執行吏一同の中には、賛成する人もありますし、現制度がよいというようなお説をするお方もありまして、結局は収入の問題に帰着するのではないかと思いますが、片山先生お話のような、二万か三万で執行吏公務員としての俸給は十分であるというようなお話ですと、とてもわれわれとしましては生活ができないのでございます。書記官の少なくも中ぐらいとか、相当のところへいきました俸給を制度改革のときにいただきたいと思っております。
  14. 横山利秋

    横山委員 長田さんに希望申し上げたいのですが、私が執行吏の方々にいろいろ御意見を伺うと、非常に明確な根本意見をお持ちになっていらっしゃる方がある。しかし、本日いらっしゃいました執行吏連盟会長としての長田さんとして、根本的に執行吏制度はどうあるべきかということについて確たる御意見をまだお持ちになっていないようであります。お望みしたいのは、いまわれわれは、政府最高裁を含めて、本格的に執行吏はいかにあるべきかという検討に入っておるときであります。したがいまして、連盟として至急ひとつ根本的な検討をされまして、そしてわれわれにも連盟としての御意見を適当な方法で開陳されるようにお望みしたいと思います。本来私の承知いたしておりますところは、連盟としての機能が不十分である、研修制度が不十分である、会議が十分に行なわれてない、これほど社会的に問題になっております執行吏自身として、この際ひとつ十分に自分たちの組織、自分たちの業務のあり方、政府、国会に希望すべき諸点、意見をまとめられるように希望いたしたいのであります。
  15. 長田公麿

    長田参考人 ただいまの横山先生からのお説は、非常にわれわれ関心を持っておるところであります。帰りまして、十分日本執行吏連盟としての今後の制度のあり方とかいろいろのものを検討いたしまして、皆さんに御返事をしたいと思いますが、ただいま申し上げましたように、いまのところはまだ全国の統一の意見が出ておりませんですから、なるべく統一いたしまして、皆さんの前へお目にかけたいと思っております。
  16. 小島徹三

    ○小島委員 関連して。私、片山先生にお尋ねしたいのですが、先ほどちょっと中座したものですから、ほかの方の意見を聞かなかったので、片山先生だけに聞きたいのです。片山先生は、この法案には反対だとおっしゃって、それは制度上から、制度に欠陥があるということが根本のようだけれども、それのみならず、この法案自体の中に反対だ。何か不動産の競売とかいうことになってくると、ばく大な費用がかかってくるから反対だということをおっしゃったのですが、そういう意味でも反対なんですね。
  17. 片山繁男

    片山参考人 そうであります。
  18. 小島徹三

    ○小島委員 制度の云々ということが根本的だけれども、そうでなくて内容自体についても反対だということなんですね。
  19. 片山繁男

    片山参考人 そうです。
  20. 横山利秋

    横山委員 片山さんにお伺いしたいのは、片山さんは根本の問題にもお触れになりました。また意見がまだ固まっていないと見られる点は、合同役場の問題でございます。根本の問題につきまして、私どもも、また最高裁のほうをもっていたしましても、執行制度に傾きつつあるわけであります。執行制度に移行いたします際にどういう点が問題になるだろうか、その問題は排除できるかどうかということが主たるこれからの検討の焦点になると思います。たとえばそれだけの優秀な人材というものが集まるであろうかどうかということが一つ。それから、一つ意見でありますけれども、いまの執行吏制度が、欠陥があるけれども、同時に債権者に割合に有利に働く機動性がある。役所になって機動性が足りなくなるのではないかという問題が二つ目であります。第三番目には、いま広沢参考人が言われたように、一体そこに働く労働者はどういう立場を占めることになるのであろうかということが三番目に問題として生ずると思います。私どもは、いま申しましたように、原則的には片山さんのお説に賛成でありますが、最高裁政府も私どもの叱咤勉励に対しまして、その支障となるべき点だけあげまして、そのために数十年をけみするというばかげたことをやっておるわけでございます。私は勇気がないといって憂えておるわけであります。これらの生ずべき問題点、もしお考えのことがございましたら、問題点と、その解決の方法について御意見を伺いたい。
  21. 片山繁男

    片山参考人 第一番の、いわゆる過渡期に支障はないだろうかという御質問のようであります。これは移行する場合に、新件についてはすべて新機構に委任するんだ。これはいわゆる裁判所執行機関にまかすのだ、こういうふうにしていって、過去のものについては一応執行吏が存続してそれを始末する。こういう状態にすればあまり支障なくいくのじゃないか、こう考えるのであります。  第二の機動性の問題ですが、これが大きなガンだと私も考えます。いわゆる役人として一定の勤務時間に行なえるものでないということは間違いないのであります。あるいは夜間執行ということもありますし、ことに一等私が問題になると思われるのは、予納金の問題であります。いわゆる裁判所の行なう執行について一般人がその費用の概算を予納するということ、これがどういう扱いになるのか、また支障が起きてこないかということは、よほど研究を要する問題だと考えるのであります。ことに機動性の問題については、おそらく当初は、改革された数年は非常に不便を感じる場合が起きることは間違いないと考えます。だが、これは一つの機構ができ上がってしまえば、執行とはそういうものだということになりますし、また役人として事を行なえばむしろスムーズに執行ができるんじゃないかという感じがするのであります。なぜかといいますと、執行吏のおえらい方がいらっしゃるから悪いのですが、現在の執行吏立ち会い人が行って激励叱咤しないと仕事はしないのであります。そこの家の債務者の顔色ばかり読んで、もし執行吏にだけまかしておいたら執行は不能に終わってしまうのであります。いつもそれが例なのであります。まじめに一人で執行してくれることは予想できないのであります。そうだとすれば、これが役所がやるということになりますと、自己の義務として遂行しますからむしろよくなるんじゃないかという予想さえ持っております。  第三の労組の問題でありますが、これは執達吏規則合同役場自分で好んで設けたがために、みずからただいま参考人意見を述べられたような労組の問題が起きてくるのであります。これは現在は半自由職業であります。その半自由職業は、食えない人はおのずから淘汰されなければならぬものなので、そうすれば腕のきく人、あるいは人員が多ければ少なくて済むわけであります。弁護士が事件を処理すると同じように、各自債権者委任を受けて執行する場合には、労組との問題は起きようがないのであります。これは、東京なんかは一つ合同役場に全部が集合しているために、八十人もの使用人を使わなければならぬ。しかも全くのお役所式であり、これは本来の性質からいえば、恩給法の準用があるために準公務員にみなされておりますが、本来は公証人と同じような性質のものであるはずなのであります。それでありますから、各自が合同役場労組の突き上げを食って、金がかかってどうとか言われるのなら、各自の執行吏の合同制をやめてしまえばできるはずなのであります。先般庁舎の移転のことにつきまして、地方裁判所の所長が、数年前でありますが、何とかして合同役場を解消させよう、せめて東京に三ヵ所くらい設けよう、こういう構想を持って始めたのでありますが、猛烈な反対があってできなかったのであります。どこにその原因があるのか、私は理解に苦しむのであります。いずれにしましても、労組の問題は、これは先ほど労組参考人自分の地位が何ら確立されないと言われましたが、これは合同役場の性質そのものがそういうものなのであります。これは私の使用人であります。
  22. 横山利秋

    横山委員 移行過程の、執行官になった場合における従業員立場を聞いておるのです。
  23. 片山繁男

    片山参考人 そうですか。それはやはり現在、何というのですか、書記官補といいますか、そういうものを訓練してやらす以外に道はない、こう考えております。
  24. 横山利秋

    横山委員 長田さん並びに広沢さんに伺いたいのでありますが、一昨日の本委員会で、私は政府側にお伺いしたのでありますが、執行吏並びにそこに働く人々は精神的な苦痛、場合によっては肉体的な危険、そういうものがある。片山さんもそれを別な意味から言って憶病になるのではないかというふうに指摘をされたわけでありますが、本質的にその精神的な負担、肉体的な危険というものが存在しておることは、片山さんの別な立場においてもやはり同感だろうと思われます。そういうことは一体どういう実態があったのか、何か実例があったらお伺いしたいのであります。といいますのは、先ほど広沢さんからおっしゃったように、執行吏は公務災害補償が適用される、執行吏代理国家の全権力を行使する立場でありながら公務員でなく、災害補償が適用されない。職員にしてみればもちろん言うまでもないという指摘は全く同感だと思われるのであります。今日までそういう精神的な負担、肉体的な危害等がございましたならば、ひとつ御両所から伺いたいと思います。
  25. 長田公麿

    長田参考人 私は数年間外に出ませんでして、内部の仕事ばかりに携わっておりますから、実際の最近の例はわかりませんですけれども、新聞でも御承知のとおり、つい最近に大阪の北役場執行吏が明け渡しの執行に参りましたときに、その部屋にガソリンをまいて放火した。そのために執行吏はえらいけがをしまして数ヵ月休んだというような事案があったということを聞いておりますが、まだその詳細の報告は本部へ来ておりませんけれども、そういう新聞記事がございまして、これがつい最近におきます執行吏に対する危害の例であります。  もと、われわれが執行に出ておりますときでも、向こうは債権者、債務者どちらもともかく先鋭化しておるものですから、その中間に立つ執行吏としては非常につろうございました。債権者に迎合すれば債務者からは文句がありますし、債務者のいいようになれば、債権者からは必ず苦情が出ますから、公平な立場に立って仕事を処理しなければなりませんから、非常に苦しい立場に立つわけであります。それにしても、往々にして債務者が執行吏に対してワイシャツをつかんで破くとか、ネクタイをつかむとかいうことはあったということは聞いております。
  26. 広沢豊喜

    広沢参考人 最近執行吏代理になったばかりの人が、朝、いわゆる早朝執行というのをやるわけです。つとめなんかに出かけて昼間できない場合に、朝やったり、夕方やったりする。つい最近、朝行ったら、寝起きから執行に来るとは何事だということで塩をまかれた。帰ってきてどうも気分が悪い。それから刃物を振り回される。それから送達の代理名が犬にかみつかれて大けがをする。あるいは送達に行ったがために暴力団等にほおをなぐられる、こういうような例もあります。これらが肉体的な危険の例でございますが、そのほかにもいろいろございます。  さらに精神的な苦痛につきましてですが、現在のわれわれの感覚からいいますと、職に貴賎はございませんし、執行吏という仕事につきましても、りっぱなと申しましょうか、一つの独立した仕事である、こういうような感覚がありますけれども、いわゆる昔ふうの感覚からいきますと、昔の執達吏、いわゆる血も涙もない冷酷な役人、そういう役柄、そういう執達吏の観念がいまだに残っている部分があるのじゃないか。執行吏というように名前は変わっても、実態としてはそういう面がある。たとえば、あなたのだんなさまはどちらへつとめていらっしゃいますか、裁判所です——東京の中でもあるいは全国の中でも、現在役場と呼称するものには、村役場はありますが、そのほかには執行吏役場と公証人役場だけです。非常に古い形のもので、役場という呼び方自体に現在のつとめ人、いわゆるわれわれ職員は必ずしも誇りを感じていない。そういう意味で、どちらにおつとめですかと聞かれると、執行吏役場というのは説明してもわからぬだろうという意味もありますが、裁判所だと答える。なかなか執達吏に対する昔ふうの偏見なり何なりがあって、どうも執達吏役場執行吏役場につとめていると声を大にして言えない面がかつてはあったと思います。昭和三十年以後組合ができまして、かなりの労使の関係も整理されましたし、われわれ自身がいわゆる非民主的な考え方は持っておりませんけれども、まだまだそういう部分が残っておるというような面から、いわゆる精神的な苦痛はあるわけです。  さらにいわゆるお客さん、債権者、債務者、特に債務者になるわけですが、それがどなり込んできて内部で応待しなくちゃならない。部屋の中ではなぐられることはありませんが、かなり頭にきた差し押えを受ける人、明け渡しを受ける人がどなり込んでくるのにも耐えて応待をしなければならない。こういうような面が苦痛としてあげられるのではないかと思います。
  27. 横山利秋

    横山委員 同僚委員の御質問もございますから遠慮してもう一問だけにいたしたいと思います。  東京広沢さんのお話を聞いても痛感されるのですが、名古屋の合同役場へ行きましても、ほんとうに地下の狭いところで、入り口がどこにあるかわからない。入ってみると、小さい窓があって、そこの窓をあけて話をしている。中に入ってみますと書類の山で、気の毒だと思う。そこで長田さんにお伺いしたいのですが、いまの合同役場の庁舎というものは裁判所とどういう契約になっているのですか。無料で借りておるのか。どうしてもう少しいいところを要求して、執行吏役場の明るさ、近代性といいますか、もっと親しみやすいというのはおかしな話だけれども、お客さんに気持ちよく応待できる零囲気ができないのか。裁判所とあなたのほうの合同役場の部屋の問題、家賃の問題をどういうふうにお考えになって行動していらっしゃるのですか。
  28. 長田公麿

    長田参考人 横山先生にお答えいたしますが、いまの庁舎は木造の非常に狭い建物でございまして、われわれといたしましても、できるだけ現代化した庁舎がほしいと思いまして、裁判所当局には始終嘆願しておるわけでございます。ちょっと聞きますと、裁判所といたしましては二、三年のうちに何とか予算をとって相当りっぱな庁舎を建てて提供するというようなお話もございますが、まだその運びには至っておりません。それから家賃というようなお話でございましたが、裁判所から庁舎は無料で提供を受けている次第でございますから、しかたなくがまんしてああいう狭隘な部屋に閉じ込められている次第であります。
  29. 加藤精三

  30. 上村千一郎

    ○上村委員 ただいま横山委員からいろいろお尋ねにもなっておりますので、できる限り重複を避けていきたいと思います。なお、本日はきわめて御多忙中、参考人におかれましては御出席くだされて、しかも示唆に富む御意見の御発表がございまして、非常に参考になったわけでございます。  私の意見といたしましては、先回当委員会におきまして質問の形式で多少意見を述べておるわけでございますが、本日は一、二の点につきまして、参考人の方々からお教えを賜わりたい、こう思うわけであります。  まず片山参考人にお尋ねしたいのでございますが、私ども考えておる点から申しますれば、執行吏制度が自由職の形態をとる、これはそのとおりでございます。しかし、弁護士とは違いまして、執行委任を受けたものを拒否してしまうわけにはいかないだろうと思います。そうしますと、非常に公共度の高いものであるということは考えなければならない。なお、公務員としての色彩はきわめて濃厚である。なお、執行吏のお仕事は、刑事の場合は送達の状態でございましょうが、民事の場合におきましては、権利の最終段階であるとともに、そこにいわば、法規則それ自体の実行ということにはなるでしょうけれども、その遂行過程におきましては、老練さと申しましょうか、人情の機微をついていくと申しましょうか、他の立場から考えておりますると、なまぬるいような感じは受けまするけれども、そこはきわめて、えて感情的になりやすい最先端というような状態にもなるという特殊な実情をも考えますると、一般公務員の給料というだけで一体割り切れるものであろうかというような感じを持つわけでございます。もちろん、この執行制度というものにつきましての基本的な改革という問題は、これはぜひ必要であろうというふうに思っておりますし、また、その意見をたびたび述べておるわけでございます。過渡的な段階といたしましては、その処遇の改善ということは考えなければならないであろう、そういうふうに感じておるわけでございますが、口弁連としては、その処遇の改善というものにつきまして、御検討されたことがあるのかどうか。要は制度自体としまして検討する、これはまあ当然でございましょうけれども、過渡的な状態としまして、そういう問題も考える必要があろう、こう考えますので、日弁連の御様子をひとつお尋ねをしておきたい、こう思うわけです。と申しますのは、何としましても、この司法関係におきますところの在野法曹という立場は、これは大きなウエートを持っておるわけでございますし、執行制度全体をきわめて妥当適正に運行する意味におきましては、御意見を大きくしんしゃくしなければならないだろうというふうにも思いまするので、お尋ねをする次第でございます。
  31. 片山繁男

    片山参考人 おっしゃるとおりで、執行吏委任されたものを拒絶はできないしきたり、規則になっておるのでありますから、当然やらなければならぬ。また公共性のあることもおっしゃるとおりなのです。ただ日弁連として遺憾に思うことは、今回の法令は一般人に重大な影響があるにかかわらず、何らの日弁連に対する連絡がなかった。私が参考人にお呼びを願って、急遽司法制度委員会なんかに集まっていただいて、そうして意見を徴したのであります。ほんの三、四日前であります。しかも、この資料として提供されたものに、最も肝心な執行吏一人に対するどの程度収入がつくかということが全然わからないのであります。役場へ行っても教えていただけないのです。だから、いま御質問の、公務員の七等級と同じ俸給でよろしいとはわれわれも考えておりません。十分これは待遇しなければならぬ。機動性を持って、あるいは時間外でやらなければならぬし、その点は十分考慮すべきだと思いますが、現実にわれわれが考えるのは、相当な収入があるのじゃないか。以前の執行吏の方たちは豪壮な御殿みたいな家をみなお建てになるわけであります。これは何にしても相当な収入があるのだという観念がわれわれにこびりついているわけで、数年前、全国弁護士会に諮問しまして、執行吏制度の改善に気づいた点があればということを聞きまして、全部の意見を徴しましたのでは、改革しなければいかぬというのが九〇%、ただ大阪のごとく合同役場を設けていないものは、現在の制度でけっこうだ、こういうのであります。  それで、その点について、待遇の問題でありますが、先ほど私が最初に申し述べましたように、改正になったと言われますが、大蔵省の保障する最低額は年額二十一万八千円だそうです。それでこの補助を受けている執行吏の方はほとんどいないようであります。そうだとすれば、それ以上の収入のあることは間違いないらしいのであります。だから公務員と同じでよろしいとは申し上げませんが、ある程度収入はあるのじゃないか。その運営のよろしきを得ないために収入の少ない方があるのじゃないかとは考えます。その程度しか私にはわかりません。その根本収入がわからないのであります。
  32. 上村千一郎

    ○上村委員 ありがとうございました。実は時間の関係もありますので、参考人に一問当てお尋ねをいたすわけです。  次に長田参考人にお尋ねをしておきたいと思います。東京執行吏の合同事務所におきましては、先ほど広沢参考人からもお触れになられましたが、執行吏の方は何名、執行吏代理は何名、送達代理は何名、これはもちろんダブっておる点があると思いますが、それから、そうでない立場の方は何名ということをお尋ねして、そしてそれからもう一つお尋ねをしたい、こう思っています。
  33. 長田公麿

    長田参考人 お答えいたします。東京執行吏役場の現在の人員は、構成から申しまして、本職が二十名でございます。それから執行吏代理が三十四名、その執行代理のうちでもって送達代理というのが相当数おりますから、この中から引かれるわけでございます。ただ、名称は執行代理になっておりますが、東京の場合には、簡裁所長の認可を受けますときに、執行代理送達代理と区別されて認可をされてまいりますので、現在の執行代理という三十四名の中には、内訳を申しますると、八名くらいが執行吏代理、それ以外の二十三、四名ば送達代理、送達専門でございます。それから事務員、すなわちそういう資格のない事務員の方が四十二名ほどおります。  それからその構成は、総務部と会計部と執行部と不動産部と送達部の五つに分かれておりまして、部長は各執行吏が内勤して取り扱っております。その下に各係の執行吏代理を配置させております。
  34. 上村千一郎

    ○上村委員 それでこれは概略でけっこうなんですか、合同費用——合同事務所の費用ですね、これは大体パーセントでいうとどのくらい収入があって、どのくらいかかるのですか。それから、もちろんその中に執行吏代理の方、あるいは送達代理の方、その他の方というような、要するに職務別によりまして給料の基準が相当違うのかどうか、その点をお尋ねしたい。
  35. 長田公麿

    長田参考人 お答えいたします。大体経費の支出は、計算してみないとわかりませんけれども、私の頭の感じでは六五%から七〇%が人件費物件費と心得ております。それから執行吏代理一定の給料俸給と、それへ、外勤した場合一定の歩合を付加しております。その歩合は、御承知の法令で十分の三以上ときめられておりますから、それ以上の支出は当然やっております。幾らくらいになりますか、ちょっとこれは総務部のほうで全部支給しておるものですから、私にはちょっと…。あらかじめ調査してこいというようなお話でもございましたら調査してまいるわけでしたが、何を聞かれるのか全然見当がつきませんでしたものですから、はなはだ失礼でございますが…。
  36. 上村千一郎

    ○上村委員 ありがとうございました。  次に広沢参考人にお尋ねしたいと思います。きょうは長田参考人広沢参考人東京執行吏合同役場に御関係が深うございますので、この点についてお尋ねしていきたいと思いますが、この合同事務所の収入、これは何か事務をやられる従業員の方、その方がきまっておって、そして処理をすることになっているのかどうか。それから、執行吏代表の方がそれをやられておるのか、それともそうでなくて従業員の方がやられておるのか。また、これは収入状態からいいますれば、あれは法律に基づきますし、執行吏収入というものについても、役場収入についても、結局そこに不明だという問題は少ないだろうと思います。そういう点から考えまして、あなた方とされましては、現在の執行吏の方の処遇についてどういうふうに改善をしてほしいというような点についてお教えを賜われば幸いだと思います。
  37. 広沢豊喜

    広沢参考人 二点に分かれておったかと思います。  まず第一点の具体的な収入の面での事務取り扱いでありますが、いわゆる手数料制度になっておりまして、執行面では、たとえば競売期日を延期する場合には一件につき百円、こういうような金額債権者なり債務者が執行吏役場の会計の窓口に納める。あるいは執行委任をする場合に二千円なり三千円の予納金を納める。あるいはその精算をする場合に会計から受けとる。こういう会計事務は一本になっておりまして、そこにはもちろん職員——組合員がタッチしております。そこで集まりました収入、いわゆるお金は、これは幹事長のほうに集中されます。したがって、全体的にわれわれがそれを把握をするというぐあいにはなっておりません。いわゆる執行面以外の送達関係もございますので、裁判所のほうから刑事送達がある、民事送達があるというようなことで費用が参っておりますし、いずれにしましても執行吏収入の元締めは、ここにいらっしゃいます幹事長のほうで一本化されておる、こういうことであります。  それから第二点目の執行吏の処遇についてでありますが、私たちは労働組合代表なんで、きょうはわれわれの処理について主張したのですが、執行吏の処遇についてということにつきましては、なかなかむずかしい質問であると思います。といいますのは、昭和三十年以前には、片山先生なり、そのほか御質問のございましたような点がかなりあったのではないかと私らも見ておるのであります。昭和三十年を境にしまして、労働組合が結成されて以後は、私らも主張しましたが、三十五年以後賃上げを毎年やっておりますし、三十年以後も昇給等がいわゆるどんぶり勘定ではなしに、労働協約ができ上がり、それまで賃金体系なんか一切なかったものが、組合ができたために賃金体系ができ上がり非常に整備されたものになった。そういう面でいろいろと、たとえば執行吏はいわゆる定年退職というものはございませんが、ほとんどが年をとられて恩給を受けるような年代の書記官が大体横すべりしてくる。そうすると、一面では裁判所における国家公務員恩給がつきます。それから執行吏に勤務することによって執行吏収入と並びに執行吏恩給もつきます。そういう面で、総合的にいえば、それは彼らの収入にそういうような恩給も入れねばならぬかと思いますが、三十年以後、裁判所当局も、汚職等の問題が起きた中で、かなり執行吏役場のほうにも、発言をしてきた中で改善をしてきたのではなかろうか。そういうふうな面で、私らが、どうこの処遇があるべきかということについて答えるにはなかなかむずかしい問題ではないかと思いますので、一応現在の実態は、三十年以前と三十年以後はかなり違ってきておるということでごかんべん願いたい。
  38. 上村千一郎

    ○上村委員 これで終えますが、実はいま私が広沢参考人にお尋ね申し上げておるのは、通常おかしくお考えになられるようだけれども、おかしくない。と申しますのは、普通の経営者と従業員との立場と、執行吏役場従業員の方と執行吏の場合の現状においては多少違う。なぜ違うかと申しますと、収入の点については、相当従業員の方方、しかもそこで会計を扱われておる以上は一番わかる。全然わけのわからぬ金が入ってくるということがあれば別です、これはアブノーマルな関係であって、ノーマルな状態ではないのだから。そうすると、従業員において執行吏の方の大体の収益なりあるいは収入というものがわかってくる。しかも全国において執行吏役場従業員というのはそう大ぜいではない。そうすると、非常にその間の実情がわかりやすい。それで、先ほどのあなたの御意見を聞いておりますと、そこに言外に、東京合同役場の一年間の受理件数というのが一万四千件ぐらいであった。だから、これのいわば手数料その他の増額というものは、なるほど物価上昇関係においてそれを上げてということは、一般の大衆なりその他というものの考えもあるだろうけれども、件数は少ないんだから他のものと同列には考えなくてもいいんじゃなかろうかというような言外の御意見がありましたから、だから私はあなたに対して、執行吏の処遇というものはもう少しよくしてあげないと、何しろ実情に沿わぬじゃなかろうかというようなお考えを持っておられるというような感じを持ちましたから、お尋ねしたわけでございまするけれども、いままでの御意見によりまして大体感じ取ることもできますので、私の参考人の方々に対するところの質問はこれにて終わらしていただきたいと思います。
  39. 加藤精三

    加藤委員長 これにて本日の参考人に関する議事は終了いたしました。  参考人各位には御多用中のところ、長時間にわたり貴重な御意見をいただきましてまことにありがとうございました。委員会代表してここに厚くお礼を申し上げます。  本日の議事はこの程度にとどめます。次会は明五日午前十時三十分より開会することといたします。  これにて散会いたします。    午後零時二分散会