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鹽野政府
委員 執行吏制度の根本的な改革につきましては、ただいま御
指摘のとおり、法務省におきまして従前から
検討を続けてきているわけでございます。現在問題になっておりますのは、根本的な
考え方といたしましては、現在の
手数料制の
執行吏を
俸給制の
執行官に切りかえまして、純粋の
国家公務員といたしまして、
執行官に
執行関係の
事務をすべて取り扱わせるという
考え方で進んできているわけでございます。しかしながら、現在
検討中でございますが、こまかく
検討してまいりますと、一元的に
執行事務を取り扱う
執行官にどの
程度までの
権限を与えたらいいのか、現在
執行裁判所が取り扱っている
権限、持っている
権限をすべてこの
執行官のほうに移して、それでスムーズにまかなっていくことができるのかどうか、あるいはまた一部は
執行裁判所の
権限として残しておかなければならないものがあるのではなかろうかという根本的な問題がまだ完全に割り切れていないわけでございます。
それからもう
一つは、そういうふうな
執行官制度をつくりました際に、その
執行官の
地位とか格づけというようなものをどういうふうに
考えていったらいいか、これはきわめて重要な問題でございまして、かりに現在
執行裁判所で取り扱っているような
事務まで、新しくできます
執行官ですべてまかなうということでございますと、ここに新しく出てきます
執行官というものは
相当高い
地位のものでなければならない。こういうことに相なりますし、それから
執行裁判所の
仕事というものを一部残していくということになりますれば、新しくできる
執行官というものは、それよりは
仕事の
重要性と申しますか、
地位もおのずから多少下に格づけされてもそれでまかなっていけるのじゃなかろうかというふうな問題があるわけでございます。そこでそういうような問題を現在
検討中でございますが、あわせて、
前回も御
説明申し
上げましたように、昨年の
臨時司法制度調査会で
簡易裁判所の
事物管轄の拡張という問題が出てまいりましたので、これと関連して
考えますと、現在の
執行制度というものは
裁判所のどの分野で担当するのが
相当かということをあらためて
検討しなければならないという問題が出てまいったわけでございます。それからさらに、
先ほど申しましたように、
執行官の
地位というものが、現在の
執行裁判所の行なっている
事務までやるということになりますと、かなり高い
地位のものであることが要求されることになります。そこでその
地位をどの
程度に格づけするかということは非常に大きな問題だと思いますが、同時に、一元の
執行官制度に切りかえます際に、
全国の
執行事務を処理するにははたしてどの
程度の人間が必要であるかということを
実態について踏んでみなければならないわけでございます。現在、
先ほど裁判所からも
お話のありましたように、
執行吏と
執行吏代理とでまかなっております
執行事務、合計しますと約六百人の
人数になると思います。これを有給の
国家公務員ですべてをまかなうということになりますと、とても同じ数ではやれないということが
考えられるわけでございます。いろいろ外国でもこの点議論されているようでございますが、まず三倍かというふうな数がいわれているわけでございます。そういたしますと、
全国的に見まして、千五百人ないし二千人というような
人員をこの
執行官に充員することがはたしてできるであろうか。これは、御
承知のとおり
執行吏の現在やっております
事務は、必ずしも人に喜ばれない、いわばいやな
事務とでもいうべきものでございます。しかしながら、これを担当する
立場に立ってみますと、
相当の
法律知識も必要でございますし、それから適正にこれを
執行していくというだけの力を持っていなければならない。また同時に、
債権者と
債務者の間に立ってトラブルの起こらないように円滑に
仕事をしていくというためには、それに
相当する人柄でなければならないというようなことも
考えられますので、その格づけされるところのものと、はたしてこれだけの
人員が
全国的に円滑に充足し得るかどうかということも非常に大きな問題となって残ってくるわけでございます。現在の
段階では、さような諸点につきまして鋭意
検討を続けているわけでございまして、
最高裁判所とも協力いたしまして、
執行事務の
実態調査な
ども進めているという
段階でございます。