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1965-02-12 第48回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月十二日(金曜日)    午前十時三十分開議  出席委員    委員長 加藤 精三君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 小金 義照君 理事 小島 徹三君    理事 坂本 泰良君 理事 細迫 兼光君    理事 横山 利秋君       草野一郎平君    四宮 久吉君       中垣 國男君    馬場 元治君       濱野 清吾君    早川  崇君       赤松  勇君    長谷川正三君  出席政府委員         法務政務次官  大坪 保雄君         検     事         (刑事局長)  津田  實君  委員外出席者         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 加藤精三

    加藤委員長 これより会議を開きます。  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。質疑のお申し出がありますので、これを許します。赤松勇君。
  3. 赤松勇

    赤松委員 実は私は日朝貿易の問題と、それから両国間の往来の問題について法務大臣質疑をしたい、こういうふうに考えておりましたが、本日は予算委員会等関係もございまして、出席が不可能のようでございます。そこでこの二点の質問を留保いたしまして、次の機会に譲りたいと思います。  刑事局長はまだお見えになりませんが、その前に政務次官にお尋ねしたいことが二点あります。  まずその第一点は、政府がいわゆる交通保安対策に全力をあげておることはまことに同慶の至りです。私どもも、ぜひこの交通違反事項が減っていくように期待をしております。本年一月三十一日の毎日新聞によりますと、福岡県議会警察委員会は一月三十日に、道路交通法違反で徴収した罰金地方自治体に還元し、交通保安対策に充てるようにしてほしいという意見書を中央に提出するということをきめておるのであります。そこでお尋ねしたいのは、この道路交通法違反罰金科料などが相当額にのぼっております。私の調査によりますと昭和三十八年は七十九億七千九百万円、三十九年度は百四十九億二千二百六十一万八千円、昭和四十年度におきましては非常に飛躍的にふえるのではないかというような予想が行なわれておるのであります。これは予算上いわゆる雑収入として国庫へ納めかつ使っておるようでございますけれども、今日この罰金科料を、福岡県議会希望しておりますように地方自治体交通保安対策に還元するか、あるいは全般の交通保安対策にこれを使っていくということが必要ではないかと思うのでありますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  4. 大坪保雄

    大坪政府委員 ただいま赤松先生のお尋ねの福岡県議会における罰金処置方に関する決議というようなことは、ただいま私まだ承知いたしておりません。しかし、一般論としまして、これは交通事犯に限らないことと思うのでございますが、こういう罰金科料等収入をもってその事態の改善のために使うということがもちろん一部でもいわれておりますし、私どもも内部では論議をいたしたりすることがございますけれども、これはもう国の会計法で定めておることでございますし、いまここで直ちにその全額について私どもの考え方を申し述べることはいかがであろうかというように存ずる次第であります。
  5. 赤松勇

    赤松委員 それではひとつ政務次官から、私の希望及び地方自治体で今日こういう希望が起きているということをお伝え願いまして、ぜひ一つ検討を願い、そして本委員会で御回答を願いたいということを希望しておきます。  それからもう一つ暴力団の問題につきまして、やはり政府のほうでは非常に力を入れておられるようでございまして、これまた私ども協力するにやぶさかではないのでございますが、特に私はこの点はひとつ法務省で十分調べてもらいたいと思うのですけれども中国新聞社暴力団に対する徹底的なキャンペーンを張っております。これは地方新聞でございますけれども、その勇気はきわめて高く評価されるものと思うのであります。広島地方におきましては、暴力団新聞記者には相手になるなという合いことばさえ生まれておるというように私は聞いておるのであります。もとより新聞社キャンペーンでありますから、政府が干渉してはならぬと思うのでありますけれども、やはりこういう自由を守り、かつ人権を守り、そのためのキャンペーンを勇敢に暴力団を向こうに回して張っておる中国新聞社のそれに対しましては、私ども心から激励をしなければならぬと思うのであります。この点について中国新聞社は、相撲協会の準本場所共催の申し入れに対しまして一蹴しております。それは、その背後に暴力団がおるということを理由といたしまして、広島プロスポーツ株式会社岩田組というのと関係があるというので、したがって相撲興業利益金暴力団の財源になることをおそれて共催を辞退しておる。こういう数々の美挙があるわけでございますけれども、この点についてひとつ十分お取り調べ上本委員会報告していただきたい、こう思いますが、いかがでございましょう。
  6. 大坪保雄

    大坪政府委員 私も赤松先生と同じように、日本の特に地方新聞等が、暴力団の不正の剔抉のために論陣を張ってくださるのみならず、新聞社収入ともなるべき広告をも暴力団に関連するということをおもんぱかって拒否されるというようなことは、非常にけっこうなことであると存じます。これがただいまお話中国新聞に限らず、全国の新聞紙がそういう正義心に基づく勇気を持って行動してくださるということであれば、ただ暴力団の取り締まりを警察検察当局のみにゆだねておる現状よりも、さらに大きく一歩を進めて、暴力団の根絶に役立つことと私どもは期待いたしておるわけでございます。この点についてただいま資料提出をお求めでございましたが、その点についても了承いたしました。
  7. 赤松勇

    赤松委員 私、いま手元に帝銀事件平沢貞通警視庁留置場における動静報告書を持っております。この動静報告書は、一昨年九月ごろ検察庁検務一課の証拠品係において、磯部弁護士と、平沢を救う会の事務局長森川氏が証拠物件の再検討をしておるときに発見したもので、平沢自供に追い込まれた前後の肉体的、精神的状況、並びに取り調べのあり方を知る上に、また人権問題上きわめて重要なものと考えまして、これを謄写を請求したところ、検察庁は今日まで委員会に必ず提出をいたします、しかしこれは裁判所のほうにただいま回っておるのでということで、私の再三の要求にもかかわらず、今日まで言を左右にして出してこなかったのであります。私は、このような証拠のない事件、しかもその自供を根拠として死刑という重大な判決が下されておるという場合に、平沢自供したその当時の環境というものは、非常に重要だと思うのです。したがって、この動静報告書というものは、ある意味でいえば、平沢がどういう環境の中で自供したかという非常に重要な問題が含まれておるわけであります。ただいまこの動静報告書はどこにございますか。前の刑事局長にしばしば質問をいたしましたが、初めの間は言を左右にして明確な答弁がなかった。再三追及いたしますると、裁判所のほうにあるということでございましたが、一体いまこの動静報告書はどこに保管されておりますか。これをお聞きしたいと思います。
  8. 津田實

    津田政府委員 ただいまの御質問事項につきましては、最近に取り調べたことはございませんが、いままでのところは、前刑事局長が御説明いたしたかと思いますが、再審請求事件につきまして東京高等裁判所に差し出しがなされておって、ただいままでのところ、それが検察庁に送還されたということにはなっていないようでございますが、なお、御質問でございますので、詳細を調査いたしまして、次の機会にお答えいたしたいと思います。
  9. 赤松勇

    赤松委員 裁判所のほうに聞きますと、検察庁にある。検察庁に聞きますと、裁判所のほうにある。こういう重要なものがどこに管理をされておるか、保管をされておるか明確でないということは非常に重要な問題でございまして、ぜひ、ひとつお取り調べの上、本委員会に明確に報告していただきたいと思うのであります。  そこで、私、この動静報告書をいろいろ検討してみました。その重要な部分を申し上げますと、彼が北海道で逮捕をされまして、そして護送され東京に着きました当日の、すなわち、昭和二十三年八月二十三日、四日の部分、さらに第一回自殺未遂直後の昭和二十三年八月二十六日、二十八日、二十九日と、それから第二回の自殺未遂から自供に至る直前の同年九月六日、十八日、十九日、さらに警視庁から小菅に移される直前の十月六日の部分がどういうものか削られておるのであります。その部分がないのであります。これは捜査第一課の警部補下川勝太郎から捜査第一課長の警視堀崎繁樹という警察官に、留置中の者に関するその動静がきわめて詳細に報告をされておるのでありますが、いま申し上げました部分がないのであります。これは一体どういうものか、もちろん刑事局長はおそらくこれはごらんになっていないと思うのでございますけれども、この一番重要な、護送されて東京に来た当日及び八月二十三日、四日、並びに第一回自殺未遂直後の八月二十六日、二十八日、二十九日、第二回自殺未遂から自供に至る直前の九月六日、十八日、十九日、さらに警視庁から小菅に移される直前の十月六日の部分がないということはふしぎでなりません。この点につきまして十分取り調べの上、この部分に関するものを提示していただきたいと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  10. 津田實

    津田政府委員 ただいまの点につきましては、私、もちろん承知いたしておりませんので、十分調査いたしまして御説明をいたします。
  11. 赤松勇

    赤松委員 さらに、昭和二十三年の八月二十一日平澤が逮捕されまして、二十三日に東京に着き、直ちに駒込警察署面通しの上、警視庁に来てまた面通しをされまして、さらに三十七号調べ室で居木井警部補を初め三人の刑事取り調べられ、拷問を受けたと平澤は言っておるのであります。この二十三日と翌日の動静報告されておりません。しかもこれは、二十四日夜の自殺未遂に至る間のことは平澤は全く忘れたと以前から言い続けております。したがいまして、これは、かなり強烈な取り調べが行なわれたものとうかがわれます。その間の状況はどうなっておるか。なぜ動静報告書にこれが記載されていないか。いま刑事局長からお話がございましたように、この部分につきましてもぜひ御報告を願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  12. 津田實

    津田政府委員 承知いたしました。
  13. 赤松勇

    赤松委員 彼が過酷な拷問を受け、そのために自供したのではないかというように判断をされますことは、この動静報告書を一覧いたしまして十分考えられることであります。これは事件を究明する上に非常に重大な問題であると思うのでありますが、特に被告が老齢であるとか、あるいは健康、睡眠時間、自殺未遂など、こういうことを無視いたしまして、連日にわたって長時間の取り調べを行なっております。  その事実を申し上げますと、まず自殺未遂事件でありますが、八月二十五日の鈴木芳三巡査報告によりますと、同房者から、午前五時十分ころ平澤毛布を取ってみると、手先から血液をたらし、昏酔状態におちいっておることを発見した。そうして、板塀には「祈清栄の父母、首実験の結果犯人に非ずと判りけむ」こういうように血書してあったそうであります。これは鈴木芳三巡査報告で明らかになっております。それから、医師診断によりますと、ガラスペン左手首橈骨動脈を切り、また突きさしたものである。しかし、これだけではこれほど重体にはならぬ、毒でも飲んだのではないかと診断書に現に医師が記載をしております。しかも、そういう状態の中でその翌日も取り調べを受けまして、十七枚の検事聴取書ができているのであります。そうして、その日の報告書が、これまた重要な報告書でございますけれども、この部分がなくなっている。この医師診断は、毒を飲んだ疑いがある、こういうことを言っておりますけれども動静報告書がないためにその辺のことが十分判明しないのでございますが、これは事件の真相を究明する上に重要な問題でございますから、ぜひ出していただきたいと思うのであります。  それから、当時取り調べ中の彼の睡眠状況はどうであったかと申しますと、たとえば八月三十一日には、被告は頭から身体全体が苦しいと看守に訴えまして、そうして頭をかかえ、寝かしてくださいと言うのに、係の巡査はすわらしたままにして、そうして寝させない。また平澤医師に、毎晩一時間ないし二時間くらいしか眠れない、眠ろうとするとピストルで撃たれたような気がして眠れない、こういうことを訴えておる。また、二、三日続いて覆面の男が鉄棒越しの窓からピストルを突きつけて自分をねらっている夢を見るということも当時訴えております。九月四日にも、九時から就寝に入りましたけれども、寝つかれない。十時まで読書をし、十一時小便に立ち、三時ごろ起き、五時十五分から、眠れないので清掃さしてください、こう言って掃除をしております。こういうような報告が随所に見受けられるのであります。  こういうように当時、精神的に肉体的に通常な状態ではなかったということは、彼が自供するというその環境そのものが非常に重大な点ではないかと思うのであります。  しからば、健康状況はどうか。九月四日、膀胱結石があるので興奮すると小便が出なくなる、こういうことを訴えております。これも動静報告書に載っておる。その他、痔の出血があるので、九月十四日には、健康診断の結果、痔のため毛布を敷いて寝るようにと命ぜられております。九月十九日には、取り調べたばこを二十一本続けて吸わせる。そうすると、もう頭がふらふらになりまして、留置場におりまして禁煙生活をしていますが、取り調べのときには、そういうように無理にたばこを立て続けに吸うように命じまして、そうして頭が昏酔状態になる。でありますから、たばこの中毒の夢を見るということも看守に訴えておるということが、この動静報告書に明らかになっております。こういうように、自分自身の正常な意思でものごとを判断する判断力を失っておったのであります。また、九月二十九日には、痔のため非常に苦しがっていると報告されております。  しからば、取り調べ状況はどうか。そういう肉体的あるいは精神的な最もひどい条件の中で非常に過酷な取り調べが行なわれた。一例をあげますと、九月の二十四日には、きょう九時間も取り調べを受け、労働基準法違反です、こう看守に言っておるということが記載されておる。九時間というと相当長時間であります。長時間にわたって取り調べを受けた。それから、その夜八時十分、また取り調べのため呼び出され、それから十一時に取り調べが終わっておるのであります。はたしてそういう取り調べというものが、客観的に見まして正しいかどうか、正しい自供ができる状態にあったかどうか、このことも非常に問題であると思います。二十九日には、午前十時から午後の十一時半まで高木検事取り調べております。午前十時から午後十一時半までであります。はたして人間としてその取り調べに耐え得るものかどうか、こういう中で彼は自白を強要されておる。三十日には、午後の四時からさらに十一時半まで取り調べを受け、十月二日には、午後十一時、高木検事取り調べのために呼び出したが、終わった時間はこの動静報告書には記載されていない。十月三日も、夜の十一時四十分に被疑者を呼び出して、そして取り調べをしたが、それが何時まで続いたかということはこの動静報告書からは削られておる。  なお、自供を始めたころから急に検事は美食責め、つまりうまいものを食わして、そして検事取り調べを当時平澤は楽しみにしているということがやはり動静報告書に載せられておる。これは異常心理でありまして、こういう状況のもとで自供したと申しましても、その自供は無価値である、こういうふうに私は判断するのであります。なお、九月の三十日、きのう取り調べに出た際、検事さんからコーヒー、イモのきんとんをごちそうしてもらった。たばこもやはり相当吸わしていただきましたと言っていることもここに書いてある。つまり、自供以前はほとんど拷問状態自供後は自供以前とまるで違う取り扱いがされておるのであります。  こういうように、現在この動静報告書その他の材料に基づいて、精神医学権威者自供価値その他の重要点の鑑定をただいま依頼しておりますが、明瞭にこれは拘禁反応が見られ、そのため自白に追い込まれていったということが裏づけられるというように私ども判断せざるを得ないのでございまして、私は、刑事局長に対しまして何もとやかく抗議をしておるのではないのであります。刑事局長は当時何も関係のない立場におりましたし、そのことを云々しておるのではなくて、その重要な動静報告書の中の部分が何ゆえか削り取られておるということをこの際指摘しておきたいと思います。  先ほどから申し上げましたように、この部分に関しましては十分に取り調べて、本委員会にぜひ報告していただきたい。もし、いや、それは裁判所にあるんだ、裁判所に聞きますと、いや、それは検察庁にあるんだ、こういった両方が全然隠しておる——どちらの言うのが正しいかわかりませんけれども、そういうことで、くさいものにふたをするような態度をおとりになりますと、ますます帝銀事件平澤のこの事件というものは、一そう疑惑を増すことになるのでございまして、幸いただいま再審のための証拠調べも進んでおるようでございます。私は、裁判官の良識と勇気を期待し、かつ、検察当局も、これは中垣法務大臣の当時、私の質問に対しまして、再審が決定しても検察当局はこれに対して妨害をしない、こういう明確な答弁もいただいております。したがって、こういう疑惑に包まれた事件については、検察当局のためにも、あるいは裁判権威のためにも、ぜひ再審をしていただきたい。かって吉田石松事件につきまして、私は当時植木法務大臣に対しまして、これを押し隠すよりも、勇気をふるって再審をすることによって、裁判権威は一そう高まるだろうということを申し上げました。まさにそのとおりに相なったのであります。これは終戦直後の、しかも占領軍日本を占領しておった当時のできごとでありまして、いろんなやむを得ない事情もこの事件にからんでおると思うのでございますが、どうぞ日本人という立場を忘れないで勇敢に、下山事件が迷宮に入った、これまた帝銀事件もうやむやに彼の死刑の執行が行なわれたということになりますというと、裁判所並びに検察当局に対する国民の疑惑が高まる一方でございまして、特にこのことを付言をいたしまして、検察当局のほうから至急、ただいま要求いたしました資料提出をしていただきたいということをお願いして、私の質問を終わります。  なお、法務大臣に対する日朝貿易並びに日朝間往来に関する質問に対しましては、これを留保しておきます。
  14. 加藤精三

    加藤委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は来たる十六日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午前十時五十九分散会