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原説明員 お手元に
がり版刷りで横に書きました「本年の
気象、
海況及び農作物の
生育状況等に関する
資料」というのがございます。その
資料によりまして御
説明をいたします。
編成は、目次でごらんいただきますとおわかりのように、第一番目に
気象関係、それから第二番目に
昭和四十
年産水稲の五月十五日現在の
統計調査部の
調査結果でございます。第三番目には、本年の
気象の
推移に対処いたしまして、
稲作においてどのような
生産対策を今日までやってまいったかという
経過でございます。第四番目に
昭和四十
年産の麦作の
状況、第五番目に桑の
被害状況、最後に
日本近海の
海況、漁況ということで
編成をしてございます。順序を追いまして御
説明をいたします。
お開きいただきますと、一ページに、五月二十日に
気象庁予報部から発表なさいました向こう三ヵ月の
予報の全文が掲載してございます。御
承知のように、
気象庁予報部におかれましては、毎月二十日現在をもちまして向こう三ヵ月の
長期予報をなさっておられますが、去る五月二十日に発表されました
発表文によりますと、
全般予報という欄に要約して書いてございますので、
全般予報の欄だけ朗読させていただきたいと思います。「
全般予報、六−八月の
予報で注目されるのは次の諸点です。1六月後半から七月にかけての
北日本の
低温、2八月の
西日本における
台風の影響と、
北日本の
変動の大きい
天候、3全
期間を通じて、山陰・
北陸および
東北地方の
局地的大雨、
本州太平洋側のか雨。」以上三点が向こう三ヵ月の
気象予報の中で特記すべき事項だという
指摘でございます。これからごらんいただきましてもわかりますように、
北日本につきましては、六月後半から七月、稲の
伸長期あるいは
幼穂形成期等にかけまして、
北日本では
低温の
予報でございます。なお、八月につきましては、
北日本では
変動の大きい
天候だということでございます。なお、
太平洋岸は比較的寡雨であろう。それから
西日本では
台風の危険が八月に大きいのではなかろうか。そのほか心配されることは、
裏日本一体で局地的に
大雨の降る
危険性があるという
指摘でございます。
以下、
月別予報につきましては、非常に長くなりますから、
省略をいたしまして、二
パージへ進みたいと思います。
ただいま
気象庁の
予報について御
紹介申し上げましたように、かなりことしは
変化、
変動の大きい
異常気象の予想される年でございますが、顧みまして、過去に、いわゆる稲を
中心といたしますが、
凶作といいますか、あるいは
不作といいましょうか、そういうあまり芳しくない年がございますが、それらのおもなるものを拾ってそこに記載してございます。
昭和九年、二十年、二十八年、二十九年、三十一年、三十九年ということでございますが、
昭和九年は、御
承知のように、
北日本が
冷害で、
西日本は干ばつ、それに
台風といたしましては、九月二十一日に
室戸台風が参っております。非常に特異な年でございまして、
昭和八年の大
豊作が七千万石を記録いたしましたが、
昭和九年になりますと、たちまち五千二百万石という、たいへんな減収になった記録的な年でございます。
昭和二十年は終戦の年でございますが、これは五月以降全
期間にわたりまして
気候不順の年でございます。当時の
統計といたしましては、
史上最低と申しましょうか、近年では非常に低い三千九百万石という米の
不作の年でございます。それから
昭和二十八年、二十九年は、最近といたしましては、非常に記憶に残る
凶作、
不作の年でございますが、二十八年はどちらかと申しますと、八月の下旬から九月にかけまして非常な
低温が
北日本に参りました。さような
関係、それから
西日本では、六月の末から七月にかけまして集中的な豪雨が北九州、
和歌山等に参った異常な年でございます。二十九年は二十八年とは多少趣が違いまして、むしろ六月、七月あるいは八月にかけまして、どちらかと申しますと、
稲作の前半にかけて
低温が参った年でございます。なお、九月二十六日には例の
洞爺丸台風、
台風十五号が
北海道に参っております。三十一年は、三十年の大
豊作の
あとを受けまして、
北海道だけが非常に
低温に見舞われたのでございます。たしか
作況指数といたしましては、最近の
北海道では最も低い五一%という記録を残しておると思います。それから、その後は
北較的天候が順調に
推移いたしまして、米作その他の
状況も順調でございますが、三十九年、昨年は、御
承知のように、
北海道が非常な
低温に見舞われたのでございます。昨年の
低温は三十一年と比較いたしますと、三十一年は、九月、十月になりましてだいぶん
天候は回復いたしましたが、三十九年は、収穫までぶっ
通し天候が悪い、そういう、むしろ三十一年以上の
異常天候の年であったわけでございます。
水稲の
作況指数といたしましては、六八%を記録いたしておりますが、
天候等の条件を考えますと、三十一年から三十九年、約八年間に、かなり
北海道の
稲作は進歩したと申しましょうか、非常に
安全性を高めてきたというふうにも考えられるのじゃないかと思います。
今年は、ただいままでの
経過は、御
承知のとおり、五月上旬まで全国的に
低温で
経過いたしまして、五月中旬、下旬は全国的に持ち直しましたが、また去る土曜日に非常に
低温が参ったという、非常に
変化の激しい
経過をたどっております。なお、今後の見通しにつきましては、先ほど
気象庁の
予報文で朗読いたしましたとおりでございます。
三
パージには、いま
口頭で申し上げましたものを、若干
年次を追加いたしまして、明治三十八年から
昭和三十九年までの、
夏低温でありました年を拾ってあげてあります。これは
気象庁で作成をいただきました
資料でございますが、札幌における夏の
気温の
変化を
中心につくったものでございます。
まん中になだらかな線がございますのが平年の
推移でございまして、でこぼこになっておりますのが
当該年次の
気温の
変化でございます。これからごらんいただきましても、それぞれの
年次に多少の特徴がございますが、
昭和九年以降のおもだった年につきましては、先ほど御
説明申し上げましたとおりの
推移を示しておることがごらんいただけるかと存じます。
次にお開きをいただきまして、四
パージでございますが、これは
統計調査部におきまして、五月十五日現在で、
北日本の
稲作状況を
調査いたした結果でございます。次回はたしか六月十日に御
調査になる予定でございますが、五月十五日現在の
状態につきましては、全体といたしまして、
一行目にございますように、
北日本の稲の苗の
生育状況は、やや不良ないし不良という
状況でございます。しかしながら、全般的に中旬から下旬にかけまして
天候が回復いたしましたので、月末
状態といたしましては、かなり回復をいたしておりまして、
草たけ等につきましては、意外に平年に近いところまで回復しているというのが
全般的状況でございますが、生
体重等につきましては、やはり平年を下回る、決してよい苗のできではないことは、申すまでもございません。その中間に
播種状況とありますが、これは
省略をいたしまして、一番下から三行目、そういった苗の
生育状況等から見まして、
田植え状況がどうかという点でございますが、御
承知のように、
田植えは、
北陸地方でございますと、例年は五月中旬から下旬に行なわれますし、
東北でございますと五月下旬から六月上旬になります。
北海道につきましてもほぼ同様でございますが、今年は苗しろの
播種がおくれましたこと、苗の
生育がおくれておりますこと等の
関係からいたしまして、平年に比べますと、おおむね三日から一週間程度の
遅延と見込まれております。五月十五日現在で
統計調査部が
調査いたしましたところによりますと、十一日以上
田植えがおくれそうだと見込まれる
面積は、
北日本で約十万町歩ございまして、その
面積割合は約八%見当と見込まれております。しかし、その後、十五日以降の
天候がやや順調に
経過いたしておりますので、こういった
田植えの
遅延等につきましては、若干回復する見込みでございます。
次の五
パージに、ただいま御
説明申し上げましたのを一表として掲載してございます。その中で一言補足さしていただきますと、
まん中ほどに7といたしまして「
苗代種類の増減」という欄がございます。御
承知のように、最近、
北日本の
稲作の進歩の一つの大きな要素は、
水苗代が減少いたしまして、
保護苗代、特に
保温折衷苗代から
畑苗代への移行ということにございますが、
保護苗代が
冷害年次におきまして非常に効果を発揮することは、申し上げるまでもございません。したがいまして、本年各県とも
保護苗代の
普及につきましては格段の御指導を願っておりますが、その結果、ごらんのとおり、
東北についてごらんいただきますと、
水苗代が七%減少いたしまして、
保護苗代が逆に七%増加する。
北陸、長野につきましても同様であります。このように
苗代改善につきましては、
冷害年次等も考慮に入れまして、農家も真剣にその
改善をはかっておるということがごらんいただけるかと存じます。
あとは
口頭で申し上げましたことが表になっておるので、
省略をさしていただきたいと思います。
次は、六
パージ以下でございますが、六
パージにございますのは、本年の
気象の
推移に対処いたしまして、
稲作生産対策でどういうことをやってまいったかということを簡単に書いてございますが、第一点は、申し上げるまでもなく、本年の
豪雪に発しました
稲作でございますので、
豪雪対策に最
重点が注がれたわけでございます。その詳細につきましては、御案内のとおり、除雪問題、それから
山間等におきましては
委託苗代、
共同苗代等の設置につきまして、格別の努力をいたしてまいったのでございます。
なお、第二の点につきましては、ただいま
統計調査部の表に関連して御
説明いたしましたように、
苗代改善をこの際
重点的に取り上げたことでございます。なお、それと一緒になりまして、
おくて品種を改良いたしまして、わせ、なかての耐冷、
耐病性品種の
普及ということに
重点を置いてまいりましたが、
品種の
変換等につきましても、ほぼわれわれの期待する方向で
改善されていると
承知しております。
なお、四月以降の
異常低温の継続に対しましては、以下ページをあらためますような指導要領を作成いたしまして、災害対策本部からそのつど、ややこまかい技術的な面にわたりますけれども、注意を喚起してまいったわけでございます。申しおくれましたけれども、四月の末に、農林省は、
異常気象に対しまして災害対策本部を設置して、全力をあげて指導に当たっておりますことは、御
承知のとおりであります。
七
パージからずっとまいりまして、十二ページ、十三ページまで、さような
経過に属する文句がございますが、非常にこまかくなりますので、
省略をいたしますが、こういったこまかい指導をやりました。最近のものは十二ページにございます。十二ページに、去る五月二十六日に、
統計調査部の先ほどの五月十五日の
調査が判明いたしました機会に、その現時点に基づきまして、当面
稲作につきまして、特に技術上配慮すべき事項を特記いたしまして、各県、また
普及員等の指導を記載いたしたものでございます。詳細につきましては、ごらんいただきますとおわかりいただけるかと思いますし、時間の
関係もございますので、
省略さしていただきたいと存じます。
十四ページにまいりますと、麦作
状況でございますが、麦作
状況にまいります前に、恐縮でございますが、十七ページの
日本近海の
海況、海の
状態についてお話を申し上げさしていただきたいと思います。
十七
パージに
日本近海の
海況について記載されておりますが、第一番目は本州
太平洋岸海域でございます。(1)にございますように、黒潮の流れ方でございますが、黒潮の流れは、九州、四国沖でやや離れておりますが、紀州沖では極端に紀州寄りに接近しておりまして、御
承知のように、この房総沖にまいりまして北東へ暖流が出てまいりますが、その北上の位置といいますか、曲がるところが、かなりことしは南に寄っているようでございます。それから表面水温でございますが、四月下旬から五月上旬の
状況を見ますと、九州沿岸から伊豆諸島近海につきましては、平年に比べて一度から三度程度の低目を記録しております。なお、房総近海におきましては二度ないし五度の低目でございますが、鹿島灘沿岸におきましては非常に冷たい水が出ておりまして、平年に比べまして八度低いという、非常に局部的に低いところがございます。それから金華山沖等におきましては三ないし五度の低目の
状態でございます。
北海道海域につきましては、沿岸部は例年に比してやや低目に
経過しておりますが、オホーツク海側、日本海側沖合いとも、平年に比べまして一度から一・五度程度低い。これは五月下旬の
状態でございます。三番目に九州西域でございますが、表面水温はやはり平生に比べまして一度から二度低い
状況でございます。日本海でございますが、黒潮の分派でございます対島暖流がやや弱いようでございます。表面水温につきましては一度から二度の低目でございます。
以上要約いたしますと、
海況全体といたしましては、日本周辺では一度ないし三度の低目となっておりますが、先ほど申し上げましたように、常磐の沿岸では親潮がたまっておりまして、極端に低いところがございます。それが非常に特記されるものと思います。
以上、大体
海況でございます。これからごらんいただきますように、
気象予報といい、あるいは
海況の現況といい、本年は必ずしも順調ではございません。むしろ非常に特異の
状況を示している現在でございます。
そこで、十四
パージに返りまして、麦作
状況につきまして、若干御
説明を申し上げたいと存じます。麦作の作付
状況等確定いたしますのは、
統計調査部において六月五日に公表をする予定でございますので、ただいまいろいろ計数整理の途中でございます。したがいまして、以下申し上げますことは、公表の際に若干変わるかもわかりませんが、麦作の最近の動きを見ますと、その表の一番右にございますように、対前年比といたしまして、
昭和三十八年には八・五%程度減少いたしましたし、三十九年には一四%の麦作全
面積の減少を見たのでございます。いろいろ理由はございましょうが、御
承知のように、麦作は二ヵ年にわたって非常な災害をこうむっておりますが、かなりの減少を見たのでございます。しかしながら、四十
年産の麦につきましては、ただいまのところ、前年比約七%程度の減少ではなかろうかと見込まれております。なお、
生育状況につきましては、北のほうでは
豪雪の被害がございますし、また全国的には春になりましてから
低温に
経過いたしておりますので、できといたしましては若干おくれております。したがって、草たけといいますか、作物のできもやや低目でございますが、病害等につきましては特段のこともございません。ただ、麦作は、何と申しましても収穫寸前までなかなか作況が動きますので、問題は、今後の
天候にかかるところが非常に大きいのではないかと存じます。
以上麦作でございます。ただ、麦作につきましては、ただいま申し上げましたように、
生育状況がかなりおくれておりますし、
稲作その他の作業と関連しまして、この春の農繁期は、
西日本におきましてもかなり労力的に逼迫するのではないかという懸念もございますので、さような方面での指導を十分にやってまいりたい、かように考えております。
次は、一六
パージにまいりますと、桑の
被害状況等を要約してございます。
北日本におきましては、
豪雪のために物理的な桑の雪折れの問題あるいは野鼠による被害、胴枯れ病等がございまして、その詳細につきましては、目下
統計調査部で
調査を行なっておる
状況でございます。御
承知のように、
低温のために全般に桑の発芽がおくれておりまして、そのために、掃き立て時期がおくれる、あるいは若干の掃き立て量等の減少も懸念されておる
状況でございます。何と申しましても、桑の発育その他非常に不良でございますので、今後の技術指導につきましては十分注意してまいりたいということでございます。
以上、
気象状況から
海況状況、それから
稲作等につきまして御
説明を申し上げ、さらに麦作、それから桑について御
説明申しましたが、何と申しましても、非常に
変動の大きい今年のこれまでの
気象経過でございますし、今後も
気象庁の
予報によりますと非常に
変動が大きいという注意もございますから、できるだけ事前に準備すべきことは準備いたしますし、また当面とるべきことはそのつどきめこまかい指導をしてまいりたいという考えで、災害対策本部といたしましては十分努力をいたしております。
以上、簡単でございますが、御
説明申し上げました。