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1965-04-28 第48回国会 衆議院 農林水産委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月二十八日(水曜日)    午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 濱地 文平君    理事 仮谷 忠男君 理事 坂田 英一君    理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 東海林 稔君 理事 芳賀  貢君       池田 清志君    金子 岩三君       亀岡 高夫君    吉川 久衛君       倉成  正君    小枝 一雄君       笹山茂太郎君    田口長治郎君       中川 一郎君    中山 榮一君       丹羽 兵助君    野原 正勝君       藤田 義光君    細田 吉藏君       兒玉 末男君    松井  誠君       松浦 定義君    森  義視君       小平  忠君    林  百郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         農林政務次官  舘林三喜男君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君  委員外出席者        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  加工原料乳生産者補給金等暫定措置法案内閣  提出第一二五号)  牛乳法案芳賀貢君外十一名提出衆法第一七  号)      ————◇—————
  2. 濱地文平

    濱地委員長 これより会議を開きます。  内閣提出加工原料乳生産者補給金等暫定措置法案及び芳賀貢君外十一名提出牛乳法案の両案を一括議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。芳賀貢君。
  3. 芳賀貢

    芳賀委員 この際社会党からも牛乳法案提出されまして、同時審議をすることになっておるわけでございますが、私はわが党の案を基礎にいたしまして、政府案に対して主要な点について大臣に御質問をいたしたいと思うわけでございます。  そこで第一の問題は、社会党の案におきましては、国内生産される全生乳制度対象にするわけでございますが、政府の場合においてはそうではなくて、生産された生乳用途別に区分いたしまして、飲用牛乳加工用牛乳というふうに区分して、その中の加工原料に供されると推定される生乳のみに対して、この制度対象にされるわけでございますが、いかなる理由生産者生産した生乳制度対象にすることができないのか、その点についてまずお尋ねいたします。
  4. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いま御指摘のような方針法律出しておるわけでございますが、全牛乳対象にしない理由はどうかというお尋ねのように承知いたしました。政府案におきましては、用途別取引に改めるということを前提といたしておるのでございますが、そういう意味におきまして、飲用乳の件でございますが、飲用乳は相当有利だというふうなたてまえに立っておるのであります。その価格につきましては、今後も需給が堅調に推移する、こういうように見込まれますので、需要供給に応じて形成されまするその価格水準は、加工乳原料に比較いたしまして相対的に高くなる。なおこの法案によって用途別に改めれば、なお有利性は確保される、こういうのでございますので、飲用乳につきましての不足払いをいたしませんで、加工原料乳の方面に不足払いをいたす、こういうわけでございます。御承知のように加工原料乳価格につきましては、乳製品国内価格国際価格に比較いたしまして割り高だ、しかも生産費、再生産を確保することが困難な水準にある、こういう現状でございますので、この加工原料乳につきまして財政上の援助が必要だ、こういうふうに考えるからでございます。このことは、主要加工原料乳地帯の多くが、今後とも酪農基幹作目として農業の振興をはかっていくことを必要とする地帯である、こういうふうにも見ております。それからまたこの地帯飲用乳の将来における供給源としても期待される地帯だ、こういうふうなことに着目をいたしまして、その観点に立ちまして、政府の案におきましては、加工原料乳についてのみ不足払いを行ないたい、こういうふうに考えたのであります。なおつけ加えて申し上げまするならば、加工原料乳につきまして、その出荷数量に応じて全国的に不足払いを行なうことにしておりますので、飲用乳地帯についても十分意義があるものだ、こういうふうに考えておるわけです。一口に申し上げますならば、飲用乳のほうは相当有利な価格形成ができる。加工原料乳のほうは国際的に見ましても非常に割り高で、生産費、再生産を確保することが困難な水準にありますので、これを取り上げまして財政上の援助をする。その結果は生乳地帯にもその効果が及ぶということを期待しておる、こういうことでございます。
  5. 芳賀貢

    芳賀委員 日本農畜産物価格保証制度現時点で見ますと、何としても食管制度中心とした米麦については、相当わが国においても強力な価格上の保護政策が講ぜられておるわけですが、牛乳畜産物の場合には、食生活の様態が外国と違う関係もありまして、昭和三十六年にようやく畜産物価格安定法が制定されて今日に至っておるわけです。したがって歴史的に見ると、やはり欧米諸国における牛乳畜産物価格保証制度のほうが、わが国現時点における制度よりも相当歴史も長いし、また制度内容についても充実しておるということは、これは大臣も御承知のとおりだと思うのです。その場合、今回の政府案を取り上げてみましたときに、ヨーロッパ諸国においても用途別加工乳だけを区分して、その加工乳に対して当初から不利益性を認めて、その分だけに価格上の保証を行なうという制度は、ほとんどないわけですね。ですから、そういうことを考えた場合においても、どういうわけで用途別に区分して、加工用生乳だけに対して制度対象にしなければならぬかという点が、これは国民としても生産者としても大きな疑問を持っておるわけです。この法律は、いわゆる今後重点を飲用乳に移行させるという政府の施策から見ても、飲用牛乳関係については全然法律は触れておらぬわけですね。この点を明らかにしてもらわぬと、法案審議になかなか入れないということになるわけです。
  6. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほど申し上げました理由によるのでございますけれども、いまお話のように日本酪農歴史は、諸外国に比べまして浅いのでございます。そういう意味におきまして生産体制もまだ整っておるとは言いかねる、そういうときに対処しまして、米のようにはっきりともう生産体制等がきまっておる、あるいは米のように国家が専売的なもので一括買い上げする、こういうものと違っております。そういう意味におきまして歴史的にまだ日が浅いので、生産体制が確立されていない前に、全部を財政的な不足払い的なもので価格保証していく、こういうことになりますると、非能率的な生産も出てくる、こういうような形になりまして、自由取引根拠の上に立っておりますので、需給等の面におきましても混乱とは申しかねますが、いろいろ需給調整がうまくいかないような面も出てくる、こういうことを考えますので、現在の段階におきましては、やはり歴史的な状態から見まして、加工原料乳不足払い財政的にやりまして、それが飲用乳地帯にも好影響を期待されるのでありますが、現段階日本酪農生産あるいは取引状況等から見まして、これが適当であろう、こういう観点に立ちまして法案審議を願っておる次第であります。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員 外国の場合においては、乳価保証価格制度を採用しておる国が比較的多数であります。そこで今回政府がお出しになった制度は、外国の既存の制度に比較した場合に、どの国の制度に最も類似しておるか、こういう点は大臣も勉強されておると思うわけですからして、参考までに御説明願いたい。
  8. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 お話のように主要酪農国におきましては、各種の価格支持制度をとっておるのでございますが、わが国の今後の酪農のあり方、それから産業の中における酪農位置等を考えてまいりますと、英国における価格支持制度が、最もいろいろな条件において似通っておる点があると思われますので、私どももこれを一つ参考にいたしたのでございます。英国におきましては生産者団体というべきものであって、それに法律上の行政権限が付せられておりますが、ミルク・ボードが五つつくられておるわけでありますが、そこで一定政府保証します乳価水準と、現実の乳の販売価格との間に差額が出ました場合に、財政による不足払い制度をとっておるのでございます。英国におきましては制度の上の不足払い算定方式は、混合乳価としての価格水準不足払い基礎になっておるのでございますけれども飲用向け乳価につきましては、これは実質的に不足払い対象となるような価格水準ではないということでありまして、実質的には個別の交渉によって決定されます加工向け原料乳価格の不利という問題が、混合乳価のところで不足払い原因に相なっておるわけでございまして、実質的には私ども加工原料乳に対する不足払い制度であるというふうに理解をいたしておるのでございます。今回の法案の構想は、英国とはいろいろな事情が違いますので、全く同様ではございませんが、比較的共通いたしておりますのは英国制度であると考えております。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 いま局長からお話がありましたが、たとえばイギリスミルク・マーケッティング・ボード制度についても、これは当初から加工用生乳というものを区分して、それに対して政府保証価格を設定して、一定額交付金を交付するということにはならぬわけですね。あくまでも全部の生乳生産というものに対して国家が計画的な期待を持って、むしろイギリスの場合の保証価格というものは、一方においては交付金対象となるべきその年度数量とか交付金金額というものは、イギリス本土における生乳生産需要に対する調整的な意味政策的に含まれているわけです。ですから生産が相当上昇して需要と合致しないような傾向が出た場合においては、交付金対象数量年度当初にある程度削減する。いわゆる交付金についてもそのような配慮を行なうということにしてあるし、それから需要が伸びて生産が不足するような場合においては、対象数量を弾力的に拡大をするとか、あるいは交付金金額を上げるとか、そういう国内における需給調整上の意味と、それから生産者に対する最低の所得保障というものが明確になっておるわけです。ですから類似点があるにしても目的において、日本のように初めから加工乳不利益なものであるということを前提にして、そして飲用乳原料になる生乳と、加工乳生乳用途別に区分するというような、そういう制度を採用しておる国は全然ないわけです。だからどうして生乳全体を制度対象にすることができないのか。これは将来政策的に市乳化に移行させる場合にも、政府の考えている制度というものが大きな障害になると思うのですね。用途別あるいは地域的に加工原料乳地帯を固定させる、定着させるというような意味が多分に含まれておるわけですから、これは国内生産された生乳を、市場的にはそれを飲用牛乳に向けるという政策とは、だいぶ目的が違ってくるのじゃないかと思っているのですけれども……。
  10. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 英国におきます生乳価格支持制度、あるいは不足払い制度というものに対する所得保障というものは、制度としてはまさに芳賀先生のおっしゃったとおりでございます。英国におきましても、乳価取引は明らかに用途別取引をいたしておるのでございますが、不足払いをいたします場合の算定の方法としては、お話のように混合乳価として農民の受け取り価格全体についての計算の上で不足払いをいたすようにいたしておるのであります。ただ先ほど申し上げましたように、実質的には飲用向け取引価格不足払いが行なわれるような価格関係にはないのでありまして、相対的に不利な加工乳部門販売があるということが不足払い原因となってあらわれておるという意味で、私は英国制度加工原料乳に対する不足払いの性格を非常に強く持っておるものであると考えておるということを申し上げるわけでございます。加工原料乳についての不足払い制度をとろうといたしておりますのは、加工原料乳について、先ほど大臣からお答え申し上げましたように、生乳の再生産を確保し得るような支払い価格を期待することは困難であるという事情に基づいて行なおうとするものでありまして、したがって加工原料乳についての不足払い一つのメルクマールになります保証価格というものは、これは加工原料乳地帯における再生産を確保しようとするものでありまして、それが確保されたものによって初めて加工原料乳としての供給が円滑に行なわれる。と同時に、そのことが飲用乳価をはばむものであると私は考えてないのでありまして、飲用乳は今後需要の増大というものに対応して供給も増大する必要がある。またそういう関係から生ずる価格形成は、加工原料乳地帯を逐次飲用乳地帯化していくことに何の支障もないというふうに私どもは考えておるわけであります。
  11. 芳賀貢

    芳賀委員 イギリスの場合は、たとえばイギリス本土において年間一千万トンの生乳生産され、それに対して国家が、たとえば八五%、九〇%の乳量に対して交付金対象数量をきめるわけです。そうしていわゆるMMB交付金は受けるわけですが、生乳販売については、MMB一元集荷をして、そうして市乳あるいは加工原料乳について必要に応じてそれを販売処理するわけですから、市乳あるいは加工原料乳販売代金政府交付金を合算してプールした価格を全生産乳量に対して精算払いをするということになっておるわけですからして、との制度構成の上から見ても明らかに政府案とは違うわけです。ですから全部の乳量に対して交付金を出すことができないということはうなずけるとしても、たとえば七〇%にしても八〇%にしても、その数量に対して交付金を交付することにして、生産者一元集荷体制というものを制度のもとで明確にして、そうして扱いとしてはやはり従来の混合乳価方式によって適切な販売を行ない、それに政府からのいわゆる交付金というものを合算したプール計算による乳価支払い制度のほうが当然妥当なことなんです。国が牛乳に対して保証価格というものを設けて、交付金にしろ補助金にしろ、そういうものを支出するという場合においては、当然これは講ぜられる措置だと思うわけです。そういう点が根本において欠けておるのでありますから、どうしてそういう生まれる初めから不具者のような法律をつくらなければならないのかということになるのです。
  12. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 英国お話が出ましたのにこだわるわけでもありませんが、イギリスミルク・マーケッティング・ボードが所管しております地域というものは、おのおの市場条件同一地域でありまして、したがって不足払いをかりに行なおうといたしました場合には、加工原料乳に限った不足払いをいたしまして、その不足払いを受けた上で価格プールを行なって混合乳価として農家に払う方式をとりましょうとも、あるいは混合乳価一定価格水準まで保証するという方式をとりましても、テクニカルにはほとんど問題がない地域だと見受けられるのであります。でございますが、今回私どもが提案をいたしておりますこの法案におきましても、一県一県を単位としての価格プールを行なうという指定生乳生産者団体を置くことにいたしておりますので、不足払いを受けるべき加工原料乳数量を策定いたしますれば、それに基づいた生産者補給交付金を交付することによりまして、当該指定生乳生産者団体の県内における価格は、すべて不足払い金額を含めてプールをいたしました上で、農家販売代金支払いを行なうということになりますので、英国におけるミルク・マーケッティング・ボード機能というものを、日本の現在の牛乳取引需給事情というものに応じて考えました場合に、府県単位で考えますれば実質的には英国ミルク・マーケッティング・ボード機能に非常に近いものとして考えられるわけでございます。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 桧垣さん、これは全然違うのですね。イギリスの場合はMMB地域というものは大別して四地域か五地域に分けてあって、そこで最終的に生産される乳代というものは若干の差はあります。問題はそれでは四地域、五地域の中のどの地域は、これは加工原料乳地帯であるというような用途別地域というものはないのですよ。そうでしょう。ですから地域的に原料乳地帯を固定させるというような政府案というものは、これはそこに大きな相違点があるわけですね。だからイギリスの場合には、四百キロ以上の遠距離にある生産地帯生乳というものは、ミルク列車を仕立てて、そうしてロンドンを中心にした大消費地にどんどん遠距離輸送をやるわけですからして、その地域内にこれを固定させて、その地域市乳に使用した以外の牛乳は必ずその地域において製品化しなければならぬ、乳製品原料として処理しなければならぬ、そういう固定した方針の上に立って地域性あるいは用途別不利益性というものをきめるということにはなっておらぬわけでしょう。だからその点大きく違っているのじゃないですか。
  14. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 英国のそれぞれのミルク・マーケッティング・ボードの所管の地域というものが、ある特定製品向け生乳生産なり販売なりということに固定をしておるものではないということはお話のとおりでございまして、私どもが今回の法案で考えておりますことも、別段というより全くといってよろしいかと思いますが、特定の県を加工原料乳地帯として固定させようというような意図は持っておらないのでございます。
  15. 芳賀貢

    芳賀委員 それではノルウェーとかオランダ保証価格制度ですが、これと比較した場合にはどう考えておられますか。
  16. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 ノルウェーオランダも同じく不足払い制度をとっておりますが、オランダにつきましては加工乳についてその不利性を補正するために、製品についての補助金を特に出しておるというやり方が、他の国と違う制度と理解しております。
  17. 芳賀貢

    芳賀委員 ですからいずれにしても政府のお出しになったような制度というものはないのですよ。そういう意味で独特のものであるといえばいえるが、その独自性というものは非常に欠陥を持てっおる。欠点を持っておるということになれば、これは当初から考え直す必要があるのじゃないですか。幸いに社会党牛乳法案というものが同時的に出ておるわけですから、むしろ社会党の案が内容が十分である、国際的に見てもこれは採用すべきものであるということであれば、別に政府案だからといってこだわる必要はないと思うわけですが、大臣におかれては社会党牛乳法案をごらんになっておるか、いかがですか。
  18. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 一応は拝見いたしております。
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 この委員会に配った対照表というのがあるのですよ。これをひとつながめながら答弁を願いたいと思うわけです。  そこで次にお尋ねしたいのは、都道府県単位地域指定をするということではありますが、これは必ずしも単一都道府県地域ということにはなっていないようです。先日の酪振法の改正のときに大臣にお尋ねした際には、生産された生乳集荷権というものは当然これは生産者にある。生産者が直接間接構成員になっておる生産者団体生乳というものは集荷すべきであり、またそれを送乳する場合、いわゆる製造業者等供給する場合の送乳事業についても、これは生産者団体が行なうべきであるということを明らかにされておるわけでございますが、先日の大臣の御趣旨からいえば、たとえば都道府県単位地域を設定する場合においては、当然都道府県単位単一にした地域ということになるのが当然であると考えますが、その点はいかがですか。
  20. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 生乳者団体指定でございますが、原則として県単位で行なうということに政府案はなっているのでございます。これは乳価形成がおおむね同一水準にある県単位で行なうことが現状に即して最も適切だ、こういうふうに考えて県単位指定を行なうということにしておるのでございます。そうしませんと、酪農民相互間の公平を確保していくことがむずかしいのではないか。県単位でありますと相互間の公平を確保して円滑な実施がはかれる。そこで生産者団体段階乳価プールして支払いをする、こういうことにつきましては、やはり最も現状に即したものであるという意味県単位指定をいたしたい、こう考えております。生産者団体全国一本で行なうお話がいまありましたが、イギリス等におきましても一本のようではございますが、五地区においてそれぞれ独自性を持っておるようでございます。それまでに日本では発達しておりませんので、一本で全国指定をするということにしますると、現在の生乳取引実態から離れていくこと、また酪農民の中ではこの制度にあずかり得ない、均てんし得ないというようなものが出てくる、あるいは地域別酪農民の利害が錯綜、混乱を招くおそれがある、こういうことを考えまして、いまの日本酪農取引生産等現状を見ますると、同一標準で大体乳価が決定されている県単位生産者団体指定するということが適当であろう、こういうことで県単位できめようといたしているのであります。
  21. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると県単位については一円的にやるということになるわけですね。そうであればいいのですよ。少なくとも都道府県単一地域にする。都道府県地域内においては、複数地域は設けないということが明らかになれば、その点はいいわけですけれどもね。
  22. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 原則として複数は設けないということでございます。ただ例外に、県単位でも価格決定標準等が違っておるような現状もございます。たとえば島とか山間僻地で、一般的にない標準価格がきまる。県の一般的標準にないようなものにつきましては例外を設けているのでございまして、原則としては県単位で一本にしていきたい、こういうふうに考えております。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 その点が非常に問題になるわけですが、たとえば従来加工原料乳が主である地区は、北海道ほか六県で、大体その生産乳量の五割以上が加工原料乳に向けられているという北海道とか県があるわけですね。これが中心的な地区になると思うわけですが、北海道をはじめ青森、岩手あるいは長野県だとか、こういう通称原料乳地帯といわれる道や県において、どうしても単一できないというような事情地域があれば事例をあげて説明してもらいたい。これは局長からでもいいです。
  24. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 法律上の原則としましては、指定生乳生産者団体というのは単数でプールをすることが筋であるということで制度化をいたしておるのでございますけれども府県単一であることが適当であるという根拠は、同一市場条件同一自然的条件を持っているということに出るものでございますから、そのような事情に当てはまらない地域はあり得るわけでございます。そのために第七条の一項一号の規定に特例をでき得る趣旨規定を置いたのでございますが、これはきわめて例外的な場合に限られると思うのでありますが、たとえて申しますと東京都の場合における伊豆七島のような、自然的条件として全く隔絶をしておる、また生乳流通消費実態、マーケットの条件も全く違うというようなものにつきましては、都道府県知事判断によりまして、そういう区域を分けるということを農林大臣が承認をして、複数生乳生産者団体指定していく場合があるということを予定をいたしているのでございます。そのほかの事例として、これは都道府県知事判断がまず前提になるわけでございますが、私どもがここで考えられますのは、九州の相当海上遠く隔たりました島嶼地域、あるいは兵庫県の淡路島等が考えられるのではないか。ただ淡路島は最近の市場条件の変動がございますのでちょっと問題だろうと思いますが、大体その程度のことが私どもには想定されているのであります。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 まさか東京都が主要な原料乳地帯ではないでしょう。そういうことはだれも考えてないですよ。ですから、具体的に北海道においてはどうであるか、青森県においてはどうであるか、岩手県においてはどうであるかとか、あるいは山形県がどうとか、長野とか鳥取とか徳島県というような、こういう従来通称原料地域と言われておる道や県の場合において、これは単一地域にするつもりでおるのか、複数になると考えておるのか、この点が一番重要なんですよ。ここにたとえば森永乳業の反対の論拠があるわけですからね。東京の伊豆の島々が除外規定になるとかならぬなんということは、天下の大勢には影響はないですよ。いま私が言った過半数が原料乳として不利益に処理されておる。北海道や他の数県の場合に、生産地域指定する場合に、それはあくまでも農林省としては単一地域と考えておるのか、知事にまかせ切って複数でやっていいと考えておるのか、その点はどうなんですか。
  26. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 大臣からもお答えをいたしましたように、私どもは一都道府県は一生乳生産者団体によって、乳価プールを行なうことが合理的であるというふうに考えておるわけでございまして、指導の方針としてはこの方向でまいりたいと考えておりますが、生乳生産者団体は、これはこの法律でも明らかにいたしておりますように、農業協同組合法による協同組合を予定をいたしておりますので、これは知事の判断の、さらにまたその前提として農業協同組合の問題があろうかと思うのでございます。でございますので、決定的に私どもがどの県についてどうだということを申し上げますことは、慎重であらねばならないと思うのでございますけれども、そういう点を御了解をいただいた上で、私のやや私見に近い考え方を申し述べますならば、これは全国地域加工原料乳については不足払い対象とするということにいたしておりますから、必ずしも主要原料生産地帯の問題のみで云々することは適当でないと思いますが、御質問でございますので、私の考えを申し述べますと、北海道については第七条一項一号のカッコ書きの地域に該当するようには思われません。自然的、経済的条件によって、これによりがたいと認められると思えないのでございます。青森、岩手、鳥取、徳島についても私は同様に考えております。山形県につきまして非常に微妙な問題がございますので、私どもは指導の方向としては一県一地区で運営できるのではないかという考えを持っておりますけれども、現実の農業団体の組織等、特異な地理的な条件等もありまして、特異な形をとっておりますので、この点についてはやや私としては判断に迷う点がございます。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 全国において原料乳に消費されるものは全部対象にするということになれば、何も都道府県単位地域指定する必要はないのではないですか。飲用乳原料に供された残りの生乳をそれは結局加工乳に落とすよりしょうがないでしょう、どうしようもないのだから。それを全部対象にするということであれば、何も都道府県ごとに指定する必要がないということになりますね。
  28. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 その点につきましては、先ほど農林大臣からもお答えを申し上げましたように、指定生乳生産者団体を通じて不足払いを行なうことの前提として、この点は諸外国の例においても全く同じでございますが、一定地域において乳価プールを行なう必要がある。乳価プールを行ないますには、その地域生乳流通の観点から見ました経済的な諸条件というものが、ほぼ均一であることが必要であります。そういう観点から、都道府県単位とするプール地域というものを考える。したがってそこではプールを行ないます生産者団体を、原則として一本に考えてまいるという考え方をとっておるのでございまして、全国対象として加工原料乳について不足払いを行なうから、全国を一地域指定をするということになりますと、現在の日本生乳取引実態というものは地域性が非常に大きいということで、指定生乳生産者団体がその区域内における乳価プールを行なうということに非常に困難な問題が出、またそのことがこの制度というものの成立を困難にするということを私どもは非常におそれたのであります。また事実、都道府県段階を越えます生乳流通の生産者団体というのは、ほとんど存在しないと言ってよいと私は思うのでございます。これを急速にその整備育成をはかるということは、事実上きわめて困難である。将来の方向として、より広域な生産者団体の整備育成ということが必要であるという点については、私は理論的にはそのお考えに反対を持つものではございませんが、不足払い制度というものを全国の農民にできる限り完全に均てんさせていくというたてまえと、生乳の流通を円滑に行なっていくという必要から申せば、現段階においては、都道府県単位をもって一つの区域にするということが適当であるというふうに私は考えております。
  29. 芳賀貢

    芳賀委員 もう少し問題を整理してもらわぬとわからぬのですけれども加工原料乳については、全国どの地域生産されたものについても、それを一〇〇%対象にするかどうかということは法律上問題があるが、農林大臣対象にするということは間違いないわけですね。
  30. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 間違いないです。そのとおりです。
  31. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると府県によっては、たとえば北海道の場合には全生産量の天体七〇%程度が、いまの状態では加工原料乳に不可避的になるのです。ところがその反対に、いわゆる市乳地帯といわれるところは、年間を通じて七割くらいが市乳供給されて、残り三割くらいがいわゆる残乳処理という形で、季節的に増減はあるが、これが加工原料乳として処理されるわけです。ですから、七割加工原料乳を持っておるところも、二割ないし三割しか加工原料乳を持っておらない地域も、それは同様に対象になるということには間違いないわけですね。
  32. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 加工原料乳につきましては、お話のとおり対象になります。三割でも、七割でも……。
  33. 芳賀貢

    芳賀委員 その場合ただいまの局長の説明によると、都道府県ごとにプール計算をするということになるわけですね。八割は市乳販売した残り二割はこれは加工乳だからして、これは対象にしてもらって、これに対して交付金が交付されたということになると、八割の市乳販売代金と、二割の加工乳のいわゆる基準取引価格による販売代金と、それに加工乳数量に対して交付される交付金というものを、これを三つ合算して、そうしてプール計算支払いをするということにこれはなるのですか。
  34. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私ども原則的にいまお話がございましたようなプールを行なうことを条件といたしたいというふうに考えておりますが、少しこまかく申し上げますと、その考え方の中でいかなるプールが合理的であるかということは、当該指定生乳生産者団体の自主的な決定を考慮してしかるべきだと考えておるのでございます。
  35. 芳賀貢

    芳賀委員 いや、それは小さい問題じゃないですよ。一番大きな問題ですよ。ですから、従来いわれておる市乳地帯であっても、原料乳地帯であっても、これは全部交付金対象になるということは、大臣の説明で明らかになっておるわけですからして、そうなると今度は都道府県ごとの混合乳価制というものは、これを機会にして実現されなければならぬということになるわけでしょう。そうじゃないでしょうか。
  36. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私はこの法案の本質からいいますと、原則的には全県プールということが基礎になっておる。ただ、おそらく私がお答え申し上げるまでもなく、芳賀先生は万事非常にお詳しい方でございますから、おわかりになっていることと思うのでございますが、同じ都道府県の範囲でございましても、県によってそれぞれ市場の形成というものが異なっておりまして、この制度が円滑に運営をされるということのために、都道府県内にプールをすべきゾーンをきめたほうがよろしいということを生乳生産者団体が自主的に定めます場合には、そういうゾーンのきめ方がこの法律の本質に照らして合理的であり、不足払い制度趣旨を生かし得るものであるという場合には、私はそれを排除するといいますか、拒否をするというようなことは、これはまたある種の困難を伴うことに相なろうかと思いますので、その点は行政指導上の姿勢としても弾力的にやってしかるべきではないかというふうに考えております。
  37. 芳賀貢

    芳賀委員 もう少し詳しく申し上げると、たとえば政府がどういう算定を用いて保証価格というものを決定するかということは、これはあとで大臣にお尋ねするわけですが、たとえば六十五円を保証価格と一もう少し高くするでしょう。しかしいままでの政府の態度を見ると、このくらいが一番底辺かもしれぬ。七十円か七十五円にすれば、これはだんだん妥当なことになるが、従来の実績から見ると六十五円くらいを保証価格とする。今度はそれを用途別に考えると、この法律がもし実現すれば、市乳用の生乳はいまより値段が上がるのですね、混合乳方式でないから。ですから、たとえば七十五円程度のところは、少なくとも八十円くらいにはすぐなるでしょう。それから一方加工乳の基準取引価格というものも幾らにおきめになるか、これはまたわからぬが、とにかくことしの畜安法による原料乳の安定基準価格が五十七円ですから、これに若干の考慮を加えて、六十円程度が基準取引価格ということにするとした場合、この計算の上に立って、たとえばその地域においては——都道府県地域ですが、飲用牛乳が大体八割は供給されるということになると、生産量の八〇%は八十円の価格販売されるということになるわけですね。それから残り二〇%については、これは基準取引価格によって六十円で取引されるということになるわけですね。しかしこの二〇%の分についても、保証価格と加工の取引価格との格差の五円というものは対象になってくるわけですからして、それを合算した場合の、いわゆるプール計算による乳価というものはどうなるかという、これは計算できるわけですね。今度は逆に、この加工用生乳が全体の七〇%である、市乳用が三〇%しかないということになると、それとちょうど逆なような形になるわけです。それに伴って交付金は、金額においては相当量来ることになるが、この二者を平均的に価格プールした場合に一体どういうことになるか。その結果が、政府保証する保証価格の六十五円をたとえば市乳地帯においてはこえておるという場合においても、なおかつこの二〇%の加工牛乳については基準取引価格との格差を交付することになるかどうかですね。これは生産者個々が一番知りたい点なんですね。事例をあげてこれはお答え願いたいと思います。ここに、場合によると外国のいわゆる保証価格制と政府の考えておる価格制の、一番相違点が出てくるのじゃないかと思うのです。
  38. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 御設問の例に出ました加工原料乳の比率が全生産量の二〇%、八〇%が飲用に向けられるという地域におきましても、二〇%分につきましてはこの法律に基づいて算定をされます不足払い金は交付をすることにいたします。もちろん逆の場合にも同様に、加工向けの数量に応じた不足払い金額を交付することに相なります。
  39. 芳賀貢

    芳賀委員 これでちょっと計算してもらいたいのですがね。わかりやすく裏返しできるようにするとすれば、飲用乳に七〇%供給された。これは一万トンでもいいですよ、計算上。一万トンのうち七〇%だから七千トンは八十円で販売された。残り三〇%の三千トンについては、この基準取引価格が六十円の場合には六十円で販売されたということになるわけですね。それに局長お話であると、この加工乳販売割合が非常に微少であっても、その分については交付金対象になるとなれば、この三〇%の三千トンについても五円の交付金というのは交付されることになるわけですから、これもやはり合算の対象になるわけですね。これをいわゆるプール計算した場合に、単位乳価が幾らになるか。これはすぐできるでしょう。それと反対に、加工用に七〇%の七千トンが六十円で販売された。残り三千トンについては市乳用ですからして、これが八十円で販売されておる。そうして七千トン分に対して、いわゆる五円の格差の交付金が交付されたという場合の、この二者の平均乳価というものはどういうことになるか。
  40. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 これは全く仮定の数字をいただいて……。
  41. 芳賀貢

    芳賀委員 仮定じゃないです。そういうことはあるでしょう、実際上。
  42. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 あり得ないとも言えないと思いますが、全く仮定の数字の計算であるというふうに御理解を願いたいのでありますが、七割が市乳に向けられ、三割が加工用に向けられるという地域について、七割はかりに一升八十円で売れる、それから加工用の基準取引価格は六十円である。保証価格が六十五円だということから、五円の不足払いが三〇%について交付されるということで計算をいたしまして、それをブールいたしますと、一升当たりの価格は七十五円五十銭という数字になるのでございます。一方七割が加工向けで、三割が市乳向けであるという場合の計算を、同じ前提に立って計算いたしますと、六十九円五十銭という金額になるわけでございます。
  43. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣にお尋ねをしますが、こういうような状態になっても、国は加工乳に対してのみ保証するということにするわけですか。
  44. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまの設例を聞いておりましたが、第一の場合には飲用乳が七割、第二の例におきましては飲用乳が三割、これは自由取引でそういうふうになっているのでございまして、初めの場合には三割に対して、加工原料用の牛乳に対して政府不足払いをする。第二の場合は七割の分に対して不足払いをする。それが県の実際の取引実態に即しているので、県と県とを比較すれば、これは受け取る額は違うと思いますけれども、県内におきましては、そういう取引実態について、加工原料乳に対しての不足払い保証した結果が、そういうふうなかっこうになるのでございますから、これは違いがあってもいたし方がない、こういうふうに私は考えております。
  45. 芳賀貢

    芳賀委員 この点が外国と違うのですね。それでは一体生産者保証する乳価というものは、どういう概念から出発しているのですか。
  46. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほど申し上げましたように、飲用乳のほうは大体価格形成が相当高くついている。しかし加工用原料乳につきましては、国際的に見ましても低水準にある、再生産を確保できないような現状である、こういうような現状でありますので、この再生産を確保できないような加工原料乳のほうに不足払いをしていく。そうして生産体制がほんとうに整ったような場合に、私はイギリスのように整った場合には、やはりそういうことを考えてもいいと思いますが、いまそれが整っていない場合に、全部に対して不足払い制度を行なうということになりますと、やはり非能率な生産を助長するようなおそれもなきにしもあらず、こういうことでは酪農の健全な伸展というものを期待できないのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。そういう意味におきまして、再生産を確保できるような意味におきまして、加工原料乳不足払いをする、こういう立場に立っているわけでございます。
  47. 芳賀貢

    芳賀委員 これはどうもわからないのですが、たとえば市乳地帯市乳七〇%、加工乳三〇%の場合も、これは都道府県単位ということになれば、個々の生産者に対してもプール計算をするわけですから、それは七割、三割ということで個々の生産者には代金が精算されるわけですね。ですからAという県の場合には、これはその地域内のどこで生産してどのように販売しても、一升七十五円五十銭の乳代を受けることができるわけですね。それからB県の場合には、加工用数量が多いということで六十九円五十銭の代金の支払いしか受けることができないということになった場合に、一体国の制度として生産者保証しなければならぬ価格というものは、どういうような算定方式の上に立ってこれを示して保証しなければならぬかということになると思うのですけれども、それは無制限に幾ら高くても保証するものはするという思想でいくのか。一定の上位の水準に達した場合、それを上回るような販売が行なわれた場合においては、それをこえる場合には保証対象にするのかしないのかということにもなるわけです。外国の場合には無制限保証ということではないのですからね。そう大まかにやれるなら、全生乳対象にしたほうがいいのじゃないですか。七十五円でも八十円でも保証するものはして交付金を払うということになれば、何のために不備の点を是正して国が再生産確保のために乳価保証しなければならぬかということになると思うのです。この辺が政府方針が全然わからぬですね。
  48. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 大臣からもお答えをいたしましたように、市乳比率の相違によって府県ごとに受け取り乳価が違うということは、これはそれぞれの県の市場の条件が違うということによって起こることで、私もやむを得ないことであるというふうに思うのであります。でございまして、酪農政策の基本的な考えとしては、将来日本全体を通じまして、市乳供給率というものを高める方向にいくということが妥当であるという考え方でございますが、加工乳につきましては、現在の実勢は、これも御説明するまでもないことでございますが、市乳地帯乳価水準加工乳地帯乳価水準とは、非常に懸隔があるわけであります。この制度をとることによって不足払いを受ける恩典は、加工乳の技術の高い地帯に多く、飲用乳地帯には薄いということは、これは市場の条件で当然起こってくることでございます。しかしながら結果的にはそういう格差が縮小されたかっこうになる。こういうような加工乳についてなぜ不足払いをするかということになりますと、これは乳製品については一応全国の市場において一物一価の法則に従って流通しておるものの原料でございますから、それはある乳製品価格水準というものを前提にして、その原料についての価格保証する場合に差別をすべきではないという考え方で、全国対象にしておるのでございます。でございまして、そういうことによって、従来低位の価格含みで形成されておりました混合乳価形成をより.明確化し、また合理的にするという意味が、当然この市乳に対する、あるいは加工原料乳に対する不足払いについて出てくるわけでございます。でございますので、現在の飲用乳市乳向けの価格は、市場の条件によって決定されておるものでございますから、加工乳に対する不足払いをすることによって当該県の受け取り価格が上がるというようなことがありましても、特に上限を押えるような必要があるという事態ではないと考えまして、特に混合乳価が上限をこえる場合に不足払いを要しないということを考えなかったのでございます。
  49. 芳賀貢

    芳賀委員 いま局長が一物一価の原則と言われましたが、社会党牛乳法案は一物一価の原則の上に立って全国どの地域生産された生乳についても、同一価格で国が保証をするのです。あなたのは一物一価ではないじゃないですか。加工乳だけについて一物一価です。おかしいじゃないですか。農家生産した牛乳の価値をきめる場合に、加工用牛乳だけが一物一価という、そういうつまらぬ言辞を弄する者はいないですよ。おかしいじゃないですか。どういうわけですか。乳製品が一物一価というが、それでは乳製品の値段は全部同じですか。バターにしてもチーズにしても脱粉にしても、国内生産された乳製品が全部あなたの言ったとおり一物一価で同一価格になっておりますか。製品について一物一価とか、商品について一物一価ということは、ちょっとおかしいじゃないか。農民が生産した米の価にしても、自由販売ではないのですから、国が規制をして、生産者から生産した米を買い入れる場合においては、全国どこの地域生産された米であっても、一物一価の原則を適用して同一価格で買い入れをする。しかし売り渡す場合においては、その消費地域の経済的の事情とか、それが生産地域であるかどうかということも判断して、四地域ぐらいに分けて消費者米価というものは異なる価格で消費者に売り渡しておるということは、あなたも御承知だと思います。たとえば農産物価格安定法に示しておるカンショでん粉あるいはバレイショでん粉の政府買い入れ価格、あるいはでん粉の原料となるカンショ、バレイショの原料価格をきめる場合にも、法律の定めは同一価格で適用しておるわけでしょう。あるいは大豆なたね交付金によるところの標準販売価格にしても、これはやはり同一価格というものを適用しておるわけでしょう。いまある畜安法の原料乳あるいは畜肉にしても、そういう思想に立っておるのじゃないですか。ですから農民が直接生産した牛乳の価というものをきめる場合においては、どの地域でそれが生産されたものであっても、国の制度対象にするという場合にあっては、販売された後の用途というものが、たとえば飲用に向けられても加工用に向けられても、それは生産者の意思によってやられたものじゃないでしょう。こういう点を考えた場合に、加工乳だけが一物一価の原則で、それ以外は違うというような暴論を吐くものではないですよ。おかしいじゃないですか。そういうつまらぬ言辞を弄して国民を愚弄する、生産者を愚弄するということは、そういう考えは妥当でないのじゃないですか。
  50. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 政策対象とすべき価格水準というものは、これは原則的には全国一律であることが望ましいことは、御説のとおりだと私も思います。でありますので、加工原料乳保証価格については全国一本できめてまいりたいというふうに思っております。ただ飲用乳、いわゆる市乳価格というものは、これは一定地域商品の性格があることはいなめないと私は思います。これはやはり飲用乳というものの持っております商品的性格からそういうものがあるわけでございますので、市乳価格というものは地域需給事情によって若干ずつの差異が出ておりますことは、これは先生も御承知のとおりと思います。でございますので、市乳についてはそういう地域需給事情に応じた価格形成が行なわれる。またその原料乳としての生乳についても、需給事情を反映した価格形成が行なわれるということは、経済の実態であるというふうに私どもは理解をいたしておるわけでございます。それが用途別の考え方をとらないで、生乳価格プールをいたしまして、混合乳価という形になって受け取り価格の差が出てまいりますのは、有利に販売できる飲用乳の比率の相違ということから出る結果でございまして、このことは現在の市場条件のもとにおいては、やむを得ないというふうに考えておるのであります。
  51. 芳賀貢

    芳賀委員 もう一点だけ。当初言ったとおり外国の例を見ると、外国の場合、主食形成は、日本の米が向こうは牛乳とかあるいは畜肉とか、麦類ということになるわけだが、外国の場合はむしろ飲用牛乳に重点を置いて、その国の国民が消費する飲用牛乳については、国がその末端価格の規制もやっておるのですよ。日本のように乳製品はなるたけ原料乳の値段を押えて安定させる、市乳は幾ら高くてもかまわぬというような、市乳を全く自由放任に置いて、乳製品部分だけを生産者の犠牲の上に立って規制するというようなやり方を採用している国はないことは、これは桧垣さんも御存じのとおりでしょう。飲用乳については放任する以外に道はないというようなあなたのものの考え方が、間違っておるのですね。そうじゃないですか。諸外国の例を見ても、飲用する牛乳については、それは、重点的に生乳価格保証はもちろんであるが、この加工処理の標準的な経費を国が規制するとか、末端の飲用乳の消費者価格というものを規制するということをいま厳格にやっておるのですよ。そういうことができないということじゃないでしょう。外国では全部やれるのを日本だけができないということは、どういうわけなんですか。それは一部の乳業者の利潤を擁護するという立場の上に立てば、これまで規制しては会社のもうけが少なくなるからわかいそうだ、これだけワク外にしようというのが、この法律趣旨じゃないですか。そこに国民の側から見ても大きな疑点があるわけです。どうして飲用牛乳に対して適正な価格規制というものを国はすることができないかということは、これは国民の側から見た大きな疑点ですよ。これは農林省は最初考えたのでしょう。厳格な小売り段階における価格規制ではないが、標準的な指標的な市乳価格というものは法律で設定するということを最初は考えておりながら、最終段階においてそれが全然放棄されて骨抜きになったわけですね。そうじゃないですか。それをいまごろしゃあしゃあとして、市乳価格に対してはこれを規制することができない、自由放任にするのが当然であるという論議というのは、神聖な国会においてすべきではないですよ。それでは何のために法律制定の過程においてそういう構想を持ったのですか。市乳については一物一価の原則は適用できないというのはおかしいじゃないですか。消費者価格については、食管法の米においても農家生産した米は有権的に政府が一方的に価格をきめてこれを買い取る。ですから買い取る場合の価格同一価格ということになっている。しかし買い入れ価格同一であっても、その地域生産県であるとか消費県であるというような事情を考慮して、消費者米価の場合においてはその価格というものについて若干の相違があるわけです。そういう点は生産地であるという場合には、政府が買い入れした米を輸送上からいっても販売上からいっても大きな費用をそれに加える必要がない。だから生産地で買い上げた米については、その生産地域の国民に対してはできるだけ費用の点を勘案して安い消費者米価を設定しておるわけでしょう。消費地の場合においては、生産地からの米の輸送であるとかいろいろな費用がかさむわけだからして、そういう地域においては同一価格にすべきであるけれども、その地域性というものを配慮して消費県の場合においては消費者米価が高いということで価格が決定されているわけですね。それと同一の考え方の上に立った場合には、当然便証する生乳価格というものは全国どこの地域においても同一であっても、それが消費される地域というものが、生産地帯であるかあるいは消費地帯であるかということによって、市乳の値段というものが変わることはあり得るのですよ。たとえば生産された市乳の値段は、社会党の主張のとおり一物一価の原則によって、最低の価格というものを適正に保証するという基礎の上に立って、生乳というものが取引されるわけです。ですから取引された地域供給量の多い地域である場合には、そこでそれを飲用午乳として消費する場合においては、遠隔までそれを輸送する必要はないでしょう。ですから地域の経済性というものを十分考慮に入れて、この生産地域の都市においては、たとえば飲用牛乳の小売り価格というものを十五円にするとか十六円にするとかきめる。しかし長距離輸送で持ってこなければ供給することのできがたい大消費地等については、それよりも一円とかあるいは二円高くなることもあり得るということは、現実の問題として肯定できるが、それを逆算して、乳製品の値段は一物一価でなければならぬ、飲用牛乳の値段は一物一価の原則でなければならぬから、それから逆算した場合も一番大事な生乳価格というものはでたらめであってもいいというような考えは間違いですよ。そう思わぬですか。
  52. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 いろいろお話がございましたので、全部にわたってお答えできますかどうか自信がございませんが、諸外国におきましても確かに飲用牛乳についての価格規制というものを行なっておる国がございます。ございますが、これはちょうど日本の米に類するような国民経済上の位置を占めておる物資であるという点で、日本の現在の飲用牛乳の位置とは著しく違う。また農業生産の中におきます位置とももちろん違うものでございます。それとほとんどの国の価格規制は、戦時統制中の制度がそのまま残っておるのが大部分でございます。現在私ども経済の体制全体の問題にもかかわることでございますが、よほど自由な流通というものに弊害がある、国家的な利害に問題があるという場合に、最低限の規制をする必要があるという点については、私どももそのように考えておるのでございますが、市乳につきましては、これはもう牛乳の流通の実態として、明らかに地域的な需給のもとで価格形成せられ、またそういう価格による流通を通じて市乳の促進もはかられておるというようなことでございますので、私はこの段階で行政的に、市乳のような非常に地域性及び商品としての流動性も大きい、たとえば単純なる加工から複雑な加工へいろいろな流動性の多いものについて、画一的な規制をすることがよいか悪いかということについては、多分に疑問を持っておるのでございます。将来の問題として、日本飲用乳というものが、諸外国におきますような高い水準の消費水準まで達し、それが安定的な需給関係というものに到達いたしました場合に、国民生活の上から飲用乳も含め、価格に対する政策の姿勢をどうするかということは検討を要する時期もあり得るかと思いますけれども、現在の段階におきまして画一的な規制を加えるということにつきましては、私どもも当初ものの施行過程といたしましては、そういうようなこともあり得ることでございますから検討いたしたのでございますが、実行性と、そのことの伴います法制的な無理というようなものも考えまして、市乳価格及びそれに対する原料乳の価格については、農業団体と加工業者との交渉による価格形成ということを通じて、また地域需給事情に応じた製品価格を検討させていくことによって、弾力的な形であることのほうが、ある場合にはまた農民、農家自身にとっても有利であるというふうな場合も考えられますので、規制ということを考えることをやめたのであります。
  53. 濱地文平

    濱地委員長 まだ御質問が続きそうに見受けられますが、この際、午後一時半から再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時二十三分休憩      ————◇—————    午後二時三分開議
  54. 坂田英一

    ○坂田(英)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き質疑を行ないます。芳賀貢君。
  55. 芳賀貢

    芳賀委員 午前の継続でありますが、先ほどの政府の答弁の中で、都道府県ごとの混合乳価方式でやるということになるわけですが、そうなれば、現在の方式全国的な混合乳価方式ですからして、むしろ分散するということのほうが、地域格差が非常に表面へあらわれて、方向としては望ましくないんじゃないかと思います。特にわが国の乳業の事情というものは、たとえば森永、雪印、明治等の半ば独占的な乳業資本というものがあって、これらがほとんど全国生産地域に処理工場を全部持っておるわけですね。だから、その生産地域だけを都道府県ごとに分断しても、取引の相手は全国に全部施設を持っているわけですからして、結局地域的にその地域における独自の製造工場とか企業体がある場合は別として、相手は全国一本を相手にしておるのに、生産者だけ分断しなければならぬということはないんじゃないですか。その点はどうですか。
  56. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 お話のように、現在の日本の乳業者は、四大メーカーが過半の集乳をいたしております。一種の寡占状態を形成しておることは、お話のとおりでございます。でございますので、今後、生産者団体が乳業者と乳価等の取引交渉をいたします際に、できる限り広域の団体組織をもちまして交渉するように進めていくことが、私は当然の方向であるというように思うのでございます。ところが、現状は、平均いたしまして一県にほぼ五十に近い生産者団体が、個々に乳業者と取引の交渉をいたしておるのが実情でございまして、そういう実情のもとでは、制度上、われわれが不足払いをいたします際のプール機関として、県単位に一本を原則として指定するということが、実情に即さない、だからその指定生乳生産者団体を機軸といたしまして、府県ごとの一元集荷の機構を整備していくことが先決であろう、そういう各県の、いわゆる市乳の集乳販売の区域というものの組織が完備しました上で、さらに農民の共販組織の問題として、さらに広域の組織化が行なわれていくということが好ましい方向でもございますし、政府としても、共販組織の強化という立場に立って指導を進めてまいる必要があろうというふうに考えておるのでございます。
  57. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、今度の政府案のねらいの中に、乳業者と生産者関係における、いわゆる乳業者から見た現在の生産者の組織は、会社の集乳組織的に系列化されたわけですね。この点は、生産者と乳業者と対等の地位で生乳取引をやるということになった場合、これが一番阻害要因をなしておったわけですが、今度の場合、この系列化とか乳業者の生産者組織に対する支配というものは、除去できるというふうに考えておるのかどうか。
  58. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私は、現在のような非常に数の多い集乳組織といいますか、出荷組織というものが存在をして、それが個々に生乳取引に関する条件等の取りきめについて交渉をするという形が、好ましい形であるとは思いませんが、ただ、現在の状態のもとで、お話のように、乳業企業、乳業資本というものが、農民の団体を単なる集乳組織として支配しておるというふうに見るべきかどうか、議論の余地もあろうかと思います。今回の指定生乳生産者団体原則として府県一本で指定をするという条項は、これはお話のように生乳という特殊の商品でございますので、販売者側に不利な条件が本来あるわけでございますから、より広域の府県一円の集乳機構というものを整備いたします方向で、お話しのような乳業者との対等の取引の立場を確立していくということに貢献し得るものと考えております。
  59. 芳賀貢

    芳賀委員 その場合、政府案によると、必ずしも全国都道府県のすべてに指定生産者団体が認定されるというわけではないでしょう。その点はどうですか。
  60. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 法案の第六条によりまして、生乳生産者団体指定につきましては、指定を受けようとする生乳生産者団体の申請によって知事が指定を行なうということに相なっておりますので、全都道府県について生乳生産者団体の側から指定を受けるという意思がございます限り、法律上は、全都道府県について生乳生産者団体指定を行なうことができるわけでございます。
  61. 芳賀貢

    芳賀委員 法文の書き方はそうなっているが、実際問題として、たとえば市乳が八割で、原料乳用が二割程度しかない。しかもそこには完全に乳業者が集乳組織を掌握しておるというような状態の中で、生産者団体指定を受けたいといって知事に申請しただけで、それで承認されるわけじゃないでしょう。第七条の各号の要件のすべてに適合しなければ指定しないということになっている。各号のいずれかに適合した場合指定するというのじゃなくて、すべてに適合しなければ指定しないということになるわけですから、指定できないという要件をそろえておるとも考えられるわけですね。一体指定したいという考えで法律をつくったのか、できるだけ指定できないようにしたいという考えで法律をつくったのか、どうなんですか。
  62. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 もちろん、できる限り各都道府県生産者団体指定をいたしたいというつもりで立法をいたしておるのでございますが、その指定さるべき生乳生産者団体は、不足払いを行なうということと、それから乳価プールを行なうという公共的な一面の仕事を備えておりますので、そのために必要な要件は、第七条で御指摘のように法律上定めておるわけでございますが、このことは、指定生乳生産者団体としてふさわしい資格、要件を規定いたしたものでございまして、できるだけ指定したくないというような意図のものでは毛頭ございません。
  63. 芳賀貢

    芳賀委員 どうもそう考えられる。では実例を申し上げますと、たとえば当該県の生産された乳量の八〇%は市乳で処理されている。これには政府は介入しないのでしょう。幾ら高く売ろうと安く売ろうと、それから市乳の小売り価格がどれほど暴騰しようと、これは放置しておく方針だから、これには国が有権的に介入するわけにいかぬでしょう。何ら恩恵も与えないし、不利益も与えないという考えの上に立っておるからして、八割分に対してはあまりとやかく言えないのじゃないですか。残る二割分だけについて政府交付金を交付するということになるから、二割の原料乳に充当される数量に対しては介入する力を持っておるが、大部分の八割に対してはこれはもう全く放任しておるという場合、この法律には、その県で生産される全乳量の半分以上を申請した生産者団体が確保する見通しがなければならぬということが、第一点に出ておるわけです。ですから、その県における市乳用の数量を除いた残りの原料用に供せられる数量の分について、その五割以上とか六割以上を申請した生産者団体が集乳して扱えるという、そういう場合というなら話はわかるのですよ。これは市乳であろうが原料乳であろうが、その地域の全数量の農林省令で定める相当の割合ということになっておるわけですから、これは少なくとも伴ば以上ということになるのじゃないですか。この点はどうなんです。原料乳だけについての集乳力というものをさすのか、法律に書いてあるとおり、その地域のあらゆる生乳数量に対しての割合ということをいうのか。
  64. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 第七条一項一号で規定をいたしております「当該区域内生産生乳数量が農林省令で定める相当の割合」ということば、これは区域内の生産製品ということを申しておりますので、これはお話のように全生乳のことでございまして、加工原料乳とかいうものに限ったものではございません。同時に、「農林省令で定める相当の割合」といっておりますところは、私どもは、農林省令で、原則的には、その集乳技術が二分の一以上の割合を占めておるものに限りたい意図を持っております。
  65. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから、法律対象になる加工用牛乳数量が、その地域生産量の二分の一以上を占めておる場合には、政府指定を受けて販売したほうが、一升に対して五円とか十円の交付金が交付されるわけですからして、進んでそういう受け入れ態勢を整えるということにはなると思うのです。ところが、交付金対象になる生乳というものは、全体の二割あるいは三割しかない。一方において、乳業者が力関係で申請が成立しないような行動を起こした場合においては、どうにもならぬと思う。こういう点は森永乳業なんかは最初から豪語しておるじゃないですか。農林省内で幾らばたばたしてみても、取引の分野においてわれわれは支配力を確立しているのだから、ああいうものは法律として出ても意味がないということを広言しておるところなんです。ですから、市乳が七割、八割を占めておる地域において、生産者団体生産者団体としての指定を受けるという条件を整えるだけでも容易ならぬことであると思うが、そういう障害がもし見受けられる場合には、政府として行政的に配慮して、指定を受けることのできるような条件を与えるという努力をするわけですか。
  66. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 この制度が、加工原料乳についての不足払いを全酪農家に均てんをさせたいという意図に出ておることから考えましても、農林省ないし関係都道府県としては、その都道府県の区域に生乳生産者団体指定を受けられるような、条件を整えるように、行政上の指導をいたしたいというふうに思っております。
  67. 芳賀貢

    芳賀委員 そうであれば、それを法律に明らかにしたらいいじゃないですか。指定生産者団体というのは、たとえば生産者が直接構成員になっておる農業協同組合あるいは連合会を政令で指定する、そうして生産者は、自分の参加しておる生産者団体、いわゆる農業協同組合に生乳販売を委託して、そして一元集荷、多元販売の形で、最も有利に生乳販売処理するという一本の路線を明確にしておく必要があるのじゃないですか。どこか逃げ道があったり、つかみどころがないような文句が随所にあらわれておるわけですが、もう少し条文を整理して、路線を明らかにしたほうがいいのじゃないですか。
  68. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私どもの考え方の範囲内では、条文は整理できておるつもりであります。都道府県の中に指定生乳生産者団体指定しようといたします場合に、いかなる団体指定するか。その団体は、この法律でも明らかにしておりますように、生乳生産者を直接また間接に構成員とする農業協同組合でございますが、ところが、先ほど申し上げましたように、現在の市乳取引の実情は、一県に数十という農業団体ないしは農民の組織というものがありまして、集乳、販売をいたしておる実情にありますので、中心となるべき生乳生産者団体、つまり、農業協同組合というものは、当該県において最も集乳力の大きいものをあげることは、当然のことかと思われるのでございまして、原則として集乳比率二分の一ということを考えましたゆえんのものも、一つは、その基準であれば、これは最も集乳力の大きい農業団体であり、かつ、その基準を設けることによって、一県一生乳生産者団体指定が行なわれるという法律上の趣旨が貫けるということから、かような規定を置いておるのであります。
  69. 芳賀貢

    芳賀委員 その場合には、午前中にも指摘したとおり、一県一単位ということであれば、第七条一項一号の、複数地域でもいいというような、こういうあいまいな条文は、削ってしまったほうがいいと思うのです。そうして当該都道府県の区域内で生産される生乳数量の二分の一を集乳できる場合ということにすれば、単一ということになれば、一つしかないということなんですからね。単一でなければならぬということになれば、その地域で二分の一以上の集乳ができなければこれは指定団体になれないわけですから、どうしても複数指定団体は出なくなるでしょう。一つ団体が二分の一確保すれば、あとは二分の一ないのですからね。この区域の中に二以上の指定団体を置けるというところに問題があるのですよ。山形県はどうも困るといっても、一体どういう条件なんですか。それは地理的条件をさすのですか、山形県においてどうしても単一にできないという場合は。
  70. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 都道府県の区域を原則として一生乳生産者団体の区域とするということについては、先般来申し上げておりますとおり、われわれの基本的な考え方であるわけでございますが、何ぶんにも同一都道府県といっても、自然的、経済的条件で全く市場条件が異なっておるというような地域を、法律の上で無理に行政区画を一単位としなければならないということはないと私どもは思っておるのでございまして、ごく例外的にそういう場合のときの規定を入れる必要があるということが、この七条一項一号のカッコの中の規定なのでございます。山形県は、ちょうど市乳加工原料乳地域に該当する県についてのおまえの考え方を言ってみろというお話でございましたので、ついつり込まれてお話を申し上げたのでございますが、山形県について、これは単一にはできないというふうに申し上げたのではございません。山形県についても、単一であることが望ましいと思われるが、その点については、山形県が、従来他の農産物の販売等の組織化というものが、地域的な事情等もあって分かれておるというような現実でありますので、私としては判断に迷うところでありますということを申し上げたのでありまして、これは地域を分けるような県だというふうに申し上げたのではございません。
  71. 芳賀貢

    芳賀委員 どうもその辺があいまいですね。だから、法律をつくる場合、山形県とか桧垣徳太郎とか、そういうものを頭の中に描いて法律をつくるというところに間違いがあるのじゃないですか、どうですか。
  72. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 お説のとおりかと思います。私どもが考えましたのは、一般的、抽象的に自然的、経済的な条件というもので、同一市場条件だとは認めにくいというようなところについての例外規定として書いたのでございまして、確かに、先ほど北海道以下の県についての見解はどうかというお話がございましときに、むしろお答えしなかったほうがよかったのではないかというふうに思います。
  73. 芳賀貢

    芳賀委員 あなたは答えなくても、こっちが質問するのだから、答えなければ審議が進まないじゃないか。一体考え方がどこにあるかということなんですよ。山形県だけに限ってどうしてもこれは単一にできないということは、それは山形県の生産者は、どのようなりっぱな法律制度が出ても、そういうものは受けたくない、交付金が一升十円ということにきまっても要らぬ、自然発生的なそういう意思に基づいて、そういう生産者団体をつくって国の税金から交付金なんかもらう必要がないということになれば、申請は出さないのですからね。申請が出ない場合はどうしようもないでしょう。しかし、法律による恩恵を受けたいという場合は、それがととのえるようにしてやらなければならないが、しかし、正しくない理由によってどうしても二つにしてくれなければいやだというようなことは、ちょっとかって過ぎるじゃないですか。どういうわけなんです。山形県だけではないでしょうが、原料乳地帯といわれる山形県においてさえも、こういう法律のすなおな適用ができないということになれば、先ほど言ったとおり、市乳数量の二分の一を占める地域においてはますます困難になるわけではないですか、あるいは一本にしなければだめだということをどうしてうたえないのですか。だめならあきらめて、そういう体制になって出てくると思うのですがね。最初からあなたのところは二本立てにできるようにしてありますよというようなことは、そういうやり方はおかしいじゃないですか。一体、山形県とあなたはどういう関係があるのです。
  74. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 ほぼ同一市場条件のもとでは、単一指定生乳生産者団体によって乳価プールを行ない、また販売を行なうということが望ましいということは、先ほど来申し上げたところでございますが、同一市場条件とは考えられないような自然的、経済的の条件であるというところに例外規定を置くということは、私は、法律の用意としては当然のことだろうと思うのであります。ただ、山形県の話は、先ほど御質問がございまして、市乳加工原料乳地帯についての見解はどうだということでございましたので、申し上げましたが、その他の県については、明らかに複数地域に分けるような条件はないというふうに思いますということを申し沿え、山形県については若干問題がございましたので、判断に迷うところでございますと申し上げましたが、私どもは、この法律趣旨に従って、単一生乳生産者団体の整備ということが望ましい方向でございますので、その方向で、われわれも山形県の実情にそれほど詳しくもございませんから、今後諸種の事情も調査をいたし、指導を加えて、その上での判断ということにいたしたいと思っておるわけでございます。
  75. 芳賀貢

    芳賀委員 これは、たとえば大豆なたね交付金制度の場合においては、国からの交付金を交付するというその交付金については、やや共通しておる点があるが、大豆なたねの場合は、農林大臣指定するいわゆる交付金団体というのは、現在三つあるのですよ。全販連と全販連と全集連、この三つを全国規模において指定しておるわけです。しかし、全販連がその九〇%くらいを扱う結果が出ておる。いまになればこれも非常に問題があるが、こういう場合には、全国的に系列的に集荷組織、集乳組織というものは乳業者が行なうということではなくて、集荷団体とか生産者団体というものが別途にそういう集荷販売の事業をやっておるという実情もあるので、比率は全販連が九〇%で、残り二団体が一〇%くらいしかないが、これは全国段階における農林大臣指定生産者団体あるいは集荷団体ということになっておるわけですが、今回の場合には、全国段階における指定生産者団体というのはないのですね。あくまでも都道府県単位で押えるという思想に立っておるわけです。そういう場合には、その地域の中における単一指定団体単一生産者団体というものが形成されるように、法律上も指導するのが当然だと思うのです。それを特にその区域の自然的条件、経済的条件に照らして単一にできないという場合には、当該都道府県知事農林大臣の承認を得て区域を分けることができるということになっておるわけですから、こういうものをわざわざ例外的に示す必要はないのじゃないですか。生乳生産するのはみんな農民でしょう生産者はお互いの利益のために経済的な行為を共同で行なうということが一番有利な経済行為ということになると思うのです。これが完全に成長できるように、新しい制度の中で促進する、育成するということが、最も大事なことなんです。そして一元集荷というものが体制的に整った暁においては、生乳取引についても、生産者と製造業者は力関係においても対等の立場で取引が行なわれるということに発展すると思うわけです。したがって、これは社会党は独自案を出しておるわけですが、政府案をお出しになる場合に、ここに一番の問題があると思うのです。それで、この法律自然的条件というものはどういう条件か。有利性と下利益性のある条件地域を分離してしまうということが自然的条件ということになるのか。経済的条件というのは、その都道府県地域の中においても、やはり全国的に見られると同じような需要関係があるわけですね。たとえば北海道の場合において、年間三百万石程度の生乳生産されるが、しかし、消費の様態は、たとえば札幌市の人口がもう六十五万人をこえておるわけです。だから札幌市という、北海道の人口の大体二二%程度を占めるそういう消費地の周辺は、これは大体市乳圏と言っても差しつかえないわけです。ですから、五十万とか百万の消費に対して、その周辺の集乳地域においては、主としてその用途は市乳用の生乳として、原料乳よりも有利にこれは販売されておるわけです。そういう経済的な有利性というものを特に認めなければならぬということになれば、北海道においでも、これは幾つかに区域を分けなければならぬということになるが、一体この自然的条件というものはどういう場合であり、経済的に異なる条件というのはどういう場合をさすのか、もう少し詳しく言ってもらいたい。
  76. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 第七条の一項一号のカッコの中でいっております「その区域の自然的経済的条件」というのは、この「自然的経済的」を一挙に読むというふうに考えておるわけでございます。でございますので、自然的な条件としても、府県全体を一区域とは認めがたい、また経済的条件にしても、同一区域と認めることが適当でないという二つの条件がある場合を規定いたしておるわけであります。  そこで、自然的条件ということにつきましては、先ほども申し上げましたように、海洋あるいは山脈等で、通常の交通等の接触が著しく制約をされておるというような条件があること、それから経済的条件ということは、これは抽象的には生乳のことでございますので、生乳の流通、消費等の条件が違う。具体的に申せば、乳価条件が著しく違うというような場合でございます。この二つの条件がいずれも同一区域と認めるためには難点になるというような場合に限って、例外扱いをいたしたいというふうに考えておるのでございます。
  77. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、不利益な自然的経済的条件地域は、同一都道府県地域の中でも、あくまでも不利益な扱いをするということになるわけですね。不利益な自然的経済的条件を少なくとも同一都道府県区域の中でできるだけ補正する、是正するということは好ましくないということになるわけですね。
  78. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 事が生乳に関することでございますので、生乳について申し上げますと、ある区域は、自然的経済的条件のために低い乳価水準になっておる。ということは、そこでは与えられた条件のために、加工向けの量が多い、比率が多いということから、そういうことになったと思うのでございます。でございますので、その不利な条件を補正することがこの法律不足払い目的でもございますので、条件の悪いところは条件の悪いままに残すのかという御質問には、そのままそうですとお答えするわけにはまいらないわけでございます。私が申し上げました自然的経済的条件から見て、二つ以上に区分をすべきではないというような条件の区域内につきましては、これは集送乳等の条件としては流動し得るという条件にあるはずでありまして、そういう流動的なものが、ある工場との結びつきの関係で有利不利が生ずることは適当でないということから、プールをすることが、生産農民のために公平を期するゆえんであるというふうに考えて、この制度をつくろうとしておるわけであります。ただ、同一の区域内におきましても、指定生産者団体として生乳の受託販売を一本化するという場合におきまして、都道府県の一区域の中で乳価形成条件というものが著しく違うというようなことのために、全県あるいは全道をプールすることが適当でないということを指定生乳生産者団体自身が考えまして、プールをすべきゾーン、地帯というものを定めてやるということでございますれば、そのことが本制度趣旨に反しない限り、午前中申し上げましたように、一がいにそのことを行政側から抑止するというようなことは適当でなかろうというふうに考えておるのでございます。
  79. 芳賀貢

    芳賀委員 これは単一にするか複数にするかは、都道府県知事判断ということが先行するわけでしょう。いまの説明からいうと、生産者団体がこれだけの区域でやりたいという場合には、それでいいということになるのですか。
  80. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 区域の区分の問題は、これは知事の判断が先行するわけでございます。区分をせず全都道府県一区域にし、あるいは区分をされた区域それぞれの中での問題は、指定生乳生産者団体の自主的な決定を合理的な範囲内では認めるべきだということを申し上げたわけであります。
  81. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣がおいでになったので、むしろ大臣のほうが率直に解明されると思うのですが、いま取り上げておる問題は、都道府県単位市乳並びに加工乳についてのプール計算を、さらに交付金を加えた合算によって、平均一升当たり八十円とか七十円ということで支払いするというような点については、あくまでも都道府県単位プール計算という説明があったわけでありますが、その場合、しからば、都道府県単位であくまでもプール計算混合乳価方式でやるということになれば、その都道府県はあくまでも単一地域として扱うのが当然じゃないかということをこちらから指摘しておるわけです。ところが、政府案によりますと、第七条の指定基準には、一項一号に、当該都道府県の区域の中で自然的経済的条件に照らして単一にできないという場合には、知事が大臣の承認を受けて数区域にこれを区分することができるということについて、この点がなかなか納得できないわけです。局長の答弁は、自然的条件と経済的条件を切り離されないのですね。一挙に棒読みにしなければ解釈が成り立たぬというわけですが、自然的条件と経済的条件というのは、不可分の相関性の上に立っておることは事実でありますが、これをもう少し明確にする場合に、しからば、この法律でうたう自然的条件というのはどういう場合か、経済的に異なる条件というのはどういう場合かということに対して、若干ただしておきたいわけです。どうも局長としての答弁が明確を欠くわけですね。明確に説明できない理由があると思うのですが、この点は大臣の率直な判断のほうがはっきりすると思うわけです。
  82. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は先ほども申し上げましたように、指定生乳生産者団体は、とにかく県単位の区域できめるというのが原則であります。それでいきたいと思います。ただ、ほんの例外に、自然的経済的というか、自然的なことが経済的に特殊な場合があると思うのです。というのは、局長が例にとりましたが、東京でいえば大島だとか島嶼、これは自然的でもありますが、経済的にもあまり加工乳地帯でないかもしれませんが、しいて例をとれば、自然的であるが、経済的にもという、こういう意味に解していいんじゃないでしょうか。大体県単位でやっていくということですから、ほんの例外を認める、こういうふうに私は解釈するのです。
  83. 芳賀貢

    芳賀委員 その場合、自然的経済的条件不利益地域と有利な地域というふうに、これは経済的判断ではそうなるでしょう。そのために区分するのかということを聞いておるわけです。
  84. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 それはそうではないと思います。これは県内の問題でありまして、府県によって自然的経済的に違っておる場合にはというような意味でない、私はこう考えます。県同士を比較すれば、こういうことがある程度はありますけれども、これは県でプールした価格が違ってくる場合があります。これはいたしかたないと思います。これはだんだん平均化するようにしなくちゃならぬと思いますけれども、それはいたしかたないと思います。
  85. 芳賀貢

    芳賀委員 自然的経済的条件に基づいてプール計算というのがあるのじゃないですか。全部同一条件なら、プール計算というのは要らぬと思うのですがね。全部市乳で八十円で売れる、全部加工乳で六十五円で売れたという場合には、何もプール計算というのは必要ないのじゃないですか。単一価格支払いできますね。その都道府県地域内で、七割は八十円で市乳販売した。三割は六十円で原料乳に販売した。その分に対して五円の交付金がきた。ですから、市乳加工乳というのは、価格上からも二十円も違うという場合には、これは経済的に販売した条件が非常に違うわけだが、しかし、都道府県単位プール制、混合乳価制ということになれば、有利に売ったというのも、不利に売ったというのも、全部一本にまとめて、交付金も全部合算して、平均一升七十五円とかいう値段で計算するわけだから、その地域内で島があったとか山があっとかいっても、それはプール計算の中に入るのじゃないですか。
  86. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 一区域内でこれはプールされるわけでありますから、その中における有利、不利というのは、プールという機能によって消されるわけであります。ところが、ある県にとって、例をしばしば東京都をとりますが、東京都の伊豆と一緒にプールするということをいたしました場合、これは将来にわたって伊豆が東京本土と同じような経済状態になり得るという見通しがあるならば、これは二つに分ける必要はないと思いますけれども、自然的に隔絶しており、経済的な市場としても、将来にわたって隔絶をしておるというところを無理に二本にということになりますと、言うなれば、非常な経済条件の格差があるわけでございまして、これをプールするために区域区分をしないということにいたしますと、ブールの結果として、本土側から島嶼側に持ち出すということになるわけでございます。そのことのために、指定生乳生産者団体指定もしくはその組織化ということがすこぶる困難になって、不足払いの均てんということが実現できないというような場合に備えて、このカッコ内の例外規定を設けておるのでございます。
  87. 芳賀貢

    芳賀委員 この伊豆大島というのは、沖縄とは違うのでしょう。沖縄の場合は、これは日本の領土であるが、アメリカに占領されて、潜在主権だけがあるというようなことで置かれておるが、伊豆の島々というのは、これは東京都の地域じゃないですか。それを本土の連中がとやかく言うのはおかしいじゃないですか。一体どういうことを言うのですか。島以外の東京都の生産者は、一緒にされては困ると言うのですか。島のほうで一緒になりたくないと言うことが予定されるのですか。
  88. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 事例に引き出しましたものですから……。現実に東京都の酪農民の人たちが、本土でどう言う、大島でどう言うということでございませんが、経済の論理として考えてまいりますと、本土と島の間に非常に乳価差というものがある。経済的条件として乳価差が大きくある。そうしてこれは自然的条件として、将来同一市場圏に入ることはむつかしいと考えられるというような場合には、島嶼部は島嶼部としての組織を持って、その間のプール計算を行ない、不足払いを受けるという資格を与えることが適当ではないだろうかというふうに考えておるからでございまして、東京都の本土の農民がどう言う、島のほうがどう言うというようなことは、何ら私ども聞いておりませんので、お答えするわけにはまいりませんが、生乳というものの流通の論理の上で、こういうふうに考えておりますということを申し上げておるわけであります。
  89. 芳賀貢

    芳賀委員 島だけで経済的な自立が行なわれていないのでしょう。東京都として、島におる都民についても、こちらの東京における都民についても、これは行政的に、東京都としても日本政府としても、同一扱いをしているのじゃないですか。国民として、都民としてそうじゃないのですか。牛乳生産者だけは別扱いということを考えるわけですか。
  90. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 もとより、島嶼部の農民の方も東京都民であり、日本国民であるわけでございまして、日本の国法の保護、恩典というものは、ひとしく受けるべきものでございます。でございますから、この不足払い制度も、島嶼部等にも円滑に交付することができるような法律的手段として、区域を分けて生乳生産者団体指定することができる方途を講じようとしておるのでございます。
  91. 芳賀貢

    芳賀委員 その場合に、東京都の地域に全部含めてプール計算して支払ったほうが、島の生産者は有利になるんじゃないですか。不利になるのですか。
  92. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 この場合には、全都を一区域といたしました場合には、島嶼部のほうが、おそらく全部乳価プールということをいたしますと有利になると思われます。
  93. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣にお尋ねするが、これは有利になるなら、やってやったほうがいいじゃないですか。島が不利になるという場合は、島の特殊事情というものを考慮して、せめて島の乳価だけは高くしてやりたいという配慮でやられることは差しつかえないと思いますが、プールの中へ入れたほうが島は有利ということになれば、これはぜひそうしてやったほうがいいと思いますが、いかがでしょう。
  94. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これにはほんとうの例外でございます。たとえば県単位生産者団体をきめるということも、全国から比較しますると、県同士で違うわけです。県内におきましてもそういう違うところがありましたならば、例外として県の希望によっては分けてもよろしいという例外でございますから、なるたけ分けないで、県でやる、そのほうが島のためにも——これは島はほんとうに一つの例にとったので、島が適当な例かどうかわかりませんが、まあ例をとれば島ぐらいなものだと思うのですが……。ですから、県のほうで、その指定団体は一緒にやったほうがいいというのが原則なんですから、そのほうでいくべきだという意向が非常に強いなら、それでいかしたほうが私はいいと思います。ですから、こういう例外は、選択を希望するかしないかによってきめたらいいんじゃないか、私はこう思います。
  95. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは大臣としては、島は入れてやりたいわけですね、農林大臣の立場から見た場合。
  96. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 できるなら私は県単位で、原則でいくのがよろしい、こう思うのです。
  97. 芳賀貢

    芳賀委員 いや、原則でなくても、島におる農民に対して、温情豊かな農林大臣として、同じ扱いにしてやりたいと思っておるのでしょう。どうなんですか。
  98. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 だから原則は、東京なら東京は全部一緒ですから、その原則でいきたい、こういうわけになれば、島まで一緒に含める、こういう考えでございます。
  99. 芳賀貢

    芳賀委員 そうなれば、ここは削除してもいいのですよ。問題は島だけなんですからね。島に対して法律立案者の大臣が同じようにしてやりたいという気持ちであれば、これは局長が間違ってこういう例外規定を入れたわけだから……。これは島というのは——山形県は理論的には成り立たないのですよ。山形県の中に島があるわけではないですね。(「山脈がある」と呼ぶ者あり)それほど大きな山脈があって、それを中心にして経済的条件が違うというわけでもないのだから、島だけについてこの条件が残ったのです。農林大臣は、当然であるが、そういう温情味を持って扱いたいということであれば、島もこれはプール計算に入れるべきです。われわれは、島が不利なら、せめて島の分だけは有利にしてやるということであればと思ったが、島が有利になるということであれば、これはプール計算対象にして扱ったほうがいいと思うのですよ。これは大事な問題ですよ、農林大臣。一人の国内の農民についても、大臣の配慮というものはすべてに及ばなければいかぬと思うのですね。島は見殺しにしてもかまわぬというのは、ちょっと赤城農林大臣としてはおかしいと思うのですよ。
  100. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 島を見殺しにするわけではございませんが、経済の実態に沿うて各県で各県ごとにプール計算をして不足払いを含めてやる、こういう考え方と同じでございまして、各県の間に差がある、県内におきましても、都内におきましても、島と差があるという経済の実態に沿うて、一応そういう実態に沿うようなことに県当局や当事者が希望するならば、そういうふうにしたらどうか、こういう例外的な考え方でございますから、少し弾力的に考えたらいいのではないでしょうか。何も島を見殺しにするというのではないのでありますから、そういう意味におきまして、やはりある程度の弾力性というものは持たしてもいい。方針といたしましてはなるべく県単位でやりたい、こう考えております。
  101. 芳賀貢

    芳賀委員 こだわるようですが、これは一番大事な問題ですよ。われわれ、都道府県単位プール計算をした乳価形成を行なうということ、これにも同意できないわけで、あくまでもこれは全国規模でやるべきであるという考え方の上に立っているからして、県だからいいというわけではないのですよ。しかし、政府案都道府県単位に行なう、それをしかも経済的、自然的条件不利益地域だけは切り離して、乳価の面についても不利益になるのはあたりまえだという、そういう冷酷な思想というものは、これは非常に問題になるわけです。プール計算というものは、送乳経費なんかも全部経費としてプールするわけですからね。そうでしょう。島と消費地の間において生乳を輸送するというような経費は、内陸よりも島のほうが——消費地が島の中にあって、そこで消費される場合には、これは別だが、消費地が島以外にあるということになれば、その供給までの経路における経費というものは、これは余分にかかるわけだから、そういう場合に初めてプール計算というものが必要になるわけですね。集送乳経費というものを生産者団体が担当して、これはあくまでもプール計算してやるということになるでしょう。それを島だけはどうしても切り離さなければならぬ、それがあたりまえだというような考えは、われわれはどうしても理解できないですよ。何のためにわざわざ法律に書いて、不利益なところはあくまで不利益になるのはあたりまえだ、そういう思想の上に立たなければならぬのですか。
  102. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は、島に対して国として不利益な取り扱いをするという考えは全然ないと思います。というのは、加工原料乳に対して不足払いをいたすのでございます。それから飲用乳につきましては、その取引実態が民間にあるのでございます。あとの加工原料乳飲用乳価格、それに不足払いを入れてプール計算をする、こういうことでございまするから、実態につきましては、国の扱いとしましては、加工原料乳に対して不足払いをするということが、島であろうと島でなかろうと、その扱いに差別はないわけでございます。私はその差別待遇はしてないと思います。ただ、飲用乳が島よりも島でないほうが高く売れる場合に、島としてはそのプールの恩恵に浴しないで、島だけでやるということになれば、それはプール計算価格が低い、こういうことになろうと思います。しかし、これは差別待遇をしているということとは違うと私は思います。そういうことじゃないと思います。経済の実態取引実態に即応しての考え方だろうと思います。それにいたしましても、せっかく県単位であるならば、できるだけ県単位でやっていきたい、こういうふうには考えるわけでございます。
  103. 芳賀貢

    芳賀委員 東京都は全部飲用牛乳になるのでしょう。東京都以外からも飲用に持ってくるわけですから……。だから、島から運んでも飲用に供されるでしょう。島のは有毒なものでも入って飲めないのでしょうか。昔のものであればまた考慮の余地もありますが、適時に輸送して処理すれば、島の牛乳でも飲用になるんじゃありませんか。
  104. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 もちろん、島嶼の乳も、本土といいますのが適当であるかどうか知りませんが、本土のほうへ運びますが、飲用乳になることは間違いはございません。なお、東京都内も全量が飲用乳ではございませんで、一部は加工乳に回っているのでございます。ただ、現在の交通情勢のもとでは、島嶼では日々生産される生乳飲用乳として本土へ運ぶということはほとんど不可能でございまして、島嶼での飲用というほかは多くは加工乳に回るというような状況になっております。
  105. 芳賀貢

    芳賀委員 最近は適切な処理をすれば、一週間ないし二週間は保存できるわけです。これは局長御存じのとおりですけれども、どうしても島を除外したいという目的があれば別ですが、島の生産乳量にしても、東京都のプール計算対象にしても、全国東京都はプール計算乳価は高くなるんじゃないかと思うのです。ほとんど全量が飲用乳に供されるということになれば……。ですから、そのくらいのことは農林大臣として指導して、島の分も一緒に扱うということであれば、このカッコ書きだけ削除すればいいわけです。あとは島以外に理由ないのですよ。「自然的経済的条件」なんてえらそうなことを言っても、しかも棒読みに読まなければ意味が通じないというのですから、内陸においては、これは理論的根拠がないということを局長から明らかにしているわけですからして、その点は私の指摘で大体明らかだと思いますが、農林大臣、どうですか。
  106. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御意見、お話はよく承っておきます。
  107. 芳賀貢

    芳賀委員 これは最終的に法案の扱いのときに、この態度を農林大臣が改めるか改めないかによって、法案の成否というものは決すると思います。小さい問題じゃない。  次にお尋ねしたい点は、今度の法案には、国が定める保証乳価あるいは農林大臣が定める基準取引価格乳製品の指標価格、そういういろいろの価格決定上のことばが出てくるわけでございますが、この際、具体的に保証価格の場合の算定方式というものはどういう計算によるか、あるいはまた基準取引価格というものは、どういうような計算によって計算されるか、あるいは乳製品の指標価格というようなものは、どういうような角度でこれを定めるようにするか、こういう点は非常に大事な点であります。  御存じのとおり、農業関係価格保障制度については、まず食管法に基づく米並びに麦に対する価格保障、それから現在においては農産物価格安定法に基づくでん粉の原料であるカンショ、バレイショの価格、それから大豆なたね交付金法におきましては、国内生産の大豆及びなたねについての価格の保障、それから畜産物価格安定法においては、現在の生乳の中の原料乳、それから畜肉あるいは原料乳を用いた指定乳製品、それらの価格上の保護制度というものがあるわけでございますが、今回の保証価格あるいは取引価格等については、現存するそれぞれの制度算定方式と同様のものがあるか、あるいはまた別個の角度から算定方式というものを案出する御方針であるか、その点も明らかにしていただきたい。
  108. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いま御指摘の農産物の支持価格あるいは保証価格といいますか、等の決定方式がございますが、米麦食管制度によるいわゆる所得補償方式によろうとするわけじゃございません。いままでの支持あるいは保証価格あるいは交付金制度、これと今度のものと同じようなものはちょっと見当たらないのでございます。  なお、局長から説明いたします。
  109. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 まず、私どもがこの法案の中で考えております保証価格の決定方式は、いままでも御説明を申し上げてまいりましたが、主要加工原料乳地帯における再生産を確保することを旨として、その他の経済事情等を考慮し定めるというふうに考えておりまして、具体的な算定方法をどういうふうにするかについては、なお資料の整備その他理論的な解明を必要とする点がございますので、最終的な方式を申し上げるわけにはまいりませんが、われわれがいま考えられる方法としては、主要加工原料乳地帯における過去一定期間の生産費の各構成要素の趨勢によって定める方法が一つあるかと思います。もう一つは、主要加工原料乳地帯における最近時の平均生産費を基準として定める方法、第三番目の方法としては、主要加工原料乳地帯における標準経営なりあるいは価格の決定年度の平均飼養規模の経営についての生産費を基準として定める方法、そういう大体三通りくらいの方法が考えられるのでございますが、いかなる算式がこの制度趣旨に合うかについては、法律規定に基づきまして、畜産物価格審議会の意見を聞きまして、また資料も整備の上で決定をいたしたいというふうに思っております。いずれにしましても、再生産を確保するということをストレートに保証しようという考え方を持っております。米が政府の全面管理制度、したがって、価格も管理価格制度をとっておりまして、いわゆる生産費・所得補償方式を用いておりますものとも違う。それから麦は、一定年次における価格の農業パリティで修正をいたしましたものを用いておるというような点から、いま私どもが考えておるものとも違う。現行の乳製品、豚肉についての価格制度は、御承知のように、製品の安定帯価格に相応する基準価格を定める、安定価格を定めるということになっておりまして、この考え方は、基本的には過去における実勢価格生産費の変動に応じて修正をしたものをもって定めるという考え方を持っておりまして、そういう意味では、今回の保証価格の性格と性質を異にしておる。また、カンショ、バレイショ、カンショなま切り干し、カンショでん粉、バレイショでん粉等の最低価格保証制度につきましても、これは一定時期における価格に対する農業パリティの変動と需給関係の係数によって修正をするというやり方をしておりますので、この制度とも違う。大豆、なたねも大体パリティ価格の思想を用い、それに生産性の向上傾向によって修正をするというやり方をいたしておりますので、これも違うという意味で、私どもがいま考えております方式は、現在の農産物価格安定制度における価格算定方式と異なっておるのでございます。
  110. 芳賀貢

    芳賀委員 奇想天外の算定方式みたいなものですね。
  111. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 奇想天外ではございませんので、加工原料乳農家受け取り価格保証すべきものとして、私どもの考えられる限りにおいては、合理的なものだというふうに思っております。
  112. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから、法律にははっきりしていないのですよ。法律の表現から言うと、従来ある農畜産物の安定措置と大体同様の表現を用いておる点もあるわけですが、それと全く別個のものであるということになれば、この法律の条文だけでは察知できないわけですね、当委員会としても。たいがいのことはみんなわかるわけですが、従来の何ものとも違うということになれば、この法律の条文を読んでおるだけではわからぬわけです。だから、法律から聞いても答えはないから、これは大臣あるいは局長から、こういうような要素を用いて、これを積み上げて価格形成が行なわれるという、その点を明らかにしてもらいたい。そういうものがわからぬで法律を出すなんというのは、おこがましいことなんですよ。そうでしょう。
  113. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 算定方式がいままでの例にあるのと違う、こういうことを申し上げたのでございますが、大体農産物の価格支持あるいは保証あるいは買い取りの方式価格算定方式に、私が考えるのには、三つあるんじゃないかと思うのです。すなわち、米のように生産費・所得補償方式、こういうのと、それからその保証価格の決定にパリティ方式でいくというのと、それから大体は再生産と確保することを旨とするというようなことがあるのが多いようでございます。それに経済事情とか……。そのうちのやはり再生産を確保する、これに重点を置いた考え方である。しかし、これを掘り下げて、しからばどういう形でその価格算定していくかということになりますと、これはおのずからまた研究、検討を掘り下げていかなくちゃならないと思います。たとえば、生産者米価におきましても、生産費・所得補償方式ということが法律上はうたってありますが、しかし、実際に算定につきましては、算定方式は相当こまかく規定されておるわけでございます。でありますので、この加工原料乳保証価格につきましても、いま畜産局長が申し上げましたように、法律は再生産を確保する。しかし、その再生産を確保するにつきまして、どういう算定方式にするかということにつきましては、いま申し上げましたように、大体三つくらいの方式をとるということに相なろうかということを御答弁申し上げた次第であると思います。  そこで、その三つの算式のどれによるか、どれが法の規定の再生産を確保するということに合致するかということでございますがそれにつきましては、価格審議会の意見も十分聞いた上にきめたほうが妥当だ、こういうふうに申し上げたと思います。でございますので、法律上は再生産を確保する、こういう規定がございます。それにどういうふうに合致させるか、こういう具体的な算式につきましては、審議会の意見等も聞いて、大体考えておりますいまの三案の中からとっていくべきものと考えます。
  114. 芳賀貢

    芳賀委員 それはおかしいじゃないですか。局長はいままである数種の価格保障制度のどれにもよらぬと言っているわけですよ。大臣は、おおよそ三つの方法があるので、そのうちのいずれかによるといま言われたわけですね。この点はどうなんです。三つのうちのいずれかによるが、まだどれによるかということが未定だということなんですか。
  115. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私が申し上げましたのは、従来の価格算定方式というものは、たとえば米のような生産費・所得補償方式、あるいはパリティできめるもの、あるいは再生産を確保するということで、再生産がそこなわれないようにということで法律規定されている、こういうものがあるのじゃないかと思います。その中でどれによっているかといいますならば、大体再生産を確保するというのによっている。ところが、法律上は再生産を確保するではあいまいじゃないか、一体どういうことで再生産を確保するのだ、法律できまっておっても、算式がきまっておらないじゃないかという御指摘があろうと思いますので、それについては先ほど畜産局長が三つばかり述べたと思います。たとえば主要加工原料乳地帯における過去の一定期間の生産費の各構成要素の趨勢によって定める、こういうことによるか、あるいは主要加工原料乳地帯における最近時の平均生産費地帯を分けて主要加工原料乳地帯をとって、それで平均生産費を基準として定めるか、あるいは主要加工原料乳地帯における経営の標準をとってきて、標準経営または価格決定年度における平均飼養規模の経営、こういうことで、その人々の生産費を基準として定めていくか、こういうふうな三つの方法が算式をきめる上において考えられる。これはせっかく畜産物価格審議会ができるので、その意見も十分聞いて、法律趣旨に沿ったような価格のきめ方をいたしたい、こういうふうに説明したと思うのでございます。
  116. 芳賀貢

    芳賀委員 再生産の確保を旨とするというのは、どの法律にもみなちゃんとあるのですよ。再生産を確保することを旨としないという法律はないのです。法律目的が再生産の確保にあるのだから、確保させるためには、どういうような算定方式を用いるかということが、それに随伴してくるわけですね。したがって、大臣の言われた米価方式生産費・所得補償方式、それからパリティ方式というのは、過去における基準年次のあるいは販売価格とか生産費というものを基準にして、それに農業パリティを基礎にして、経済事情とかその他を勘案するということになるわけであるし、もう一つは、製品からの逆算方式ですね。たとえば乳製品から逆算するとか、あるいは市場価格からの逆算ですね。そして原料となる農産物の価格をきめる。いわゆる需給均衡方式があるわけです。ですから、そのいずれにもよらぬというわけじゃないですね、局長の答弁は。
  117. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 各種の価格制度におきまして、再生産を確保することを旨とするという条文が必ずあるわけでございますが、これは価格の決定にあたって、価格というものは生産一つの重要な条件でありますから、当該農産物の再生産の確保ということを考えるべきであるという法律上の要請であると思うのであります。その再生産確保の具体的な内容は、私は非常に広いものであろうと思うのでありまして、それぞれの商品の持っております生産水準なり方式なりというようなもの、それから需給関係というもの、それから生産関係における全体の動向も考えて、いかなる形をとることがそういう趣旨に合致するかということは、かなり幅広くなり得るものであろうというふうに思うのであります。現実に先ほどもちょっと御説明申し上げましたように、生産費・所得補償方式からパリティ方式あるいは需給均衡方式というようないろいろの方法があるわけでございますが、私どもが今回考えております保証価格算定方式は、主要原料乳の生産地域における平均生産費というものを中心に考えていきたいという意味で、そういうことがこの法案趣旨に最も合致するであろうということで、それを方式として示す場合に、算式の三つが考えられるということを御説明申し上げたわけでございまして、生産費所得補償方式あるいはパリティ方式需給均衡方式などとは、いま私どもの考えておるのは、若干考え方に違いがあるということを申し上げたのでございまして、生産費中心の思想に出るものであるというふうにお答えしてよいかと思います。
  118. 芳賀貢

    芳賀委員 現在の畜安法の原料乳による算式と大体基礎は同じですね。現在においても、主要生産地域における平均的な生産費基礎にして、それにたとえばマイナス要素を使って合理化係数等で下げておるわけだが、一番基礎になるものは生産費ですか。農林省の行なう過去の生産費をあくまで基礎にしてやるということですか。ここははっきりしてもらわぬと困るのです。あとで審議会なんか開いたって何にもならぬですからね。
  119. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 生産費中心にして算定をする方式を考えておるというふうなことでございます。
  120. 芳賀貢

    芳賀委員 中心なんということばを使わないで、基礎にするとか基準にするとか、もう少し通常使っておる表現にしてもらわぬと、算定のとき中心にしてなんというのはないですよ。それは局長もわかっておって、ごまかしておるのであって、生産費を基準にするわけですね。
  121. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 先生の御理解も同様と思いますが、生産費中心という意味生産費を基準とするという意味は、それほど違ってないと思いますので、生産費を基準とする考え方であるというふうに訂正をいたしてけっこうであります。
  122. 芳賀貢

    芳賀委員 それで、平均的な生産費を基準にして、問題は、生産者の投下労働に対するいわゆる自家労賃をどのように評価するかということになると思うのですが、米価の場合には都市均衡労賃でありますね。それだけが唯一の方法ではないということは、これはわれわれも認めておる点ですが、しかし、再生産を確保するためには、どうしても生産者の投下した自家労働に対する報酬というものを規定しておかなければ、再生産ができないということですね。窮之に追い込んだ自家労働というものを犠牲にした生産方式、これはとらないでしょう。そうすると、適正な投下した自家労働に対する評価をどのような方法で行なって、それを基準となる生産費に合算して、そうして保証価格をつくるかということになると思うのですが、その点はどうですか。
  123. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 この保証価格算定にあたりまして、生産費を基準として考えるという場合の生産費の中に、生産費という意味は、農林省の統計調査部で調査したものを資料として用いたいというふうに考えております。
  124. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣は三月三十日に原料乳を告示されたわけですが、大体四十年の原料乳の場合の自家労賃はどのくらいにお考えになっておきめになったかですね。
  125. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 告示価格算定いたします過程に用いました四十年度の推定生産費の中での自家労賃の調査部分というのは、計算をいたしまして、審議会でも、また当委員会でもお答えしておるところでございますが、告示価格見合いの自家労賃部分の評価額はどうなるかということは、実は構成要素も計算はいたしておりませんので、本日はお答えいたしかねます。
  126. 芳賀貢

    芳賀委員 それは当委員会で説明のあった場合には、審議会に諮問した資料によったわけですが、あの場合は一升五十五円三十何銭ですか、端数を切り上げて五十六円にしても、それは一時間当たり九十六円で八時間労働で七百六十円というのが、大体原料乳価五十六円、端数を切り上げて五十六円にした場合の自家労賃相当部分ということになっておった。一日七百六十円、一時間九十五円、それで結局一升五十七円ですから、飲料用も上がったということになる。大きな違いはないと思うのです。ですから、大体その辺ですか、七百六十円ないし八百円というのが、昭和四十年度における原料生産者の自家労賃、そう思って差しつかえないですか。
  127. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 四十年度の告示価格五十七円ということは、当時当委員会で御説明しましたよりもやや上がっておりますので、若干の変動はあろうかと思いますが、先ほど先生からもお話がありましたように、繰り延べ可能経費というものを差っ引いたという前提のもとに、自家労賃に留保されるものがどれだけかということでございますれば、大体先生のおっしゃるような結果になろうかと思います。
  128. 芳賀貢

    芳賀委員 ところが、米価算定に用いる都市均衡労賃ということになれば、現在の時点では、一時間大体百七十四円ですか、一日千四百円程度ということになるわけですから、大体米の生産の場合と、生乳生産の場合の同一労働による自家労賃というものは、とにかく千四百円対七百六十円ということに、現状においてはなるわけです。ですから、これを今度は保証する価格、再生産ができる価格という場合においては、この労賃の加算は相当違ってくると思うのです。ですから、その場合、従来方式によるのか。いままであるどれにもこだわらぬで、新たにきめるということになれば、非常にやりやすいと思うのです。何かにこだわらないとできないが、どれにもたよらぬということになれば、思い切ったことができると思うのですが、その点はどう考えていますか。
  129. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 生産費を基準として、保証価格を定めたいということを考えておりますが、その生産費は、先ほど申し上げましたように、農林省の統計調査部の調査されます生乳生産費を資料として用いたいというふうに思っておりますので、統計調査部の生産費調査が、御承知のように、自家労賃の評価額は、同一市町村と近傍における臨時雇用労賃の額をもって充てておりますので、この場合の評価額は同様になろうと存じます。
  130. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、そういう算定でやるとえらいことになる。大臣の御趣旨はそうじゃないと思いますが、統計調査部のやる生産費調査は、自家労賃の部分については、価格形成上必要な場合には、便宜的に農村の雇用労賃の状況に当てはめることを行なう場合もあるが、過去における生産費調査でありますから、その場合は、雇用労賃は当然経費として支出するわけですが、残りの自家労賃については、自家労働の時間は明確になっておるわけですから、その自家労働に対する報酬というものが、生乳販売をした結果において、自家労賃は一時間あるいは一日幾ばくになったかということが最終的には出てくるわけです。三十九年度生産費かあるいは四十年度生産費調査の結果というもので出る。これを想定して、三十九年度は三十八年度生産費調査というものを基礎にして、そこにその年度における自家労賃を当てはめるというようなやり方は、当を得ないのです。その点を局長はわからぬわけじゃないでしょう。だから、過去の農村における雇用労賃方式をとるとなれば、重大問題だと思う。その点は大臣はどう考えていますか。統計調査部の過去の生産費調査に、自家労働に要した時間についての評価というものを、過去の農村の自家労賃の低い賃金をそこに当てはめるということでは、問題になると思うのです。
  131. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 まず申し上げたいことは、都市の製造業者の標準賃金、こういうもので計算はいたさない、米のようにはいたさないということを申し上げておきたいと思います。  同時にまた、いまお話しのように、過去の賃金で評価したのでは、これはまずいと思います。過去の賃金で見るならば、過去の賃金の趨勢といいますか、現在幾らくらいにその近辺の労働賃金が上がっておるか、そういう趨勢値といいますか、そういうものを勘案してきめませんと、いまお話しのように、売った結果が自家労賃が幾らになるかということになるのでありますから、現在売った場合の賃金がどれくらいになるかということを見込まないと、再生産を確保するという自家労賃の評価にはならないと私も考えます。
  132. 芳賀貢

    芳賀委員 その点が大事なんですよ。米価のように都市均衡労賃制度はとらないと断言することはおかしいと思うのです。農家は働くのです。黙ってながめておって乳が出るわけではないのです。毎日毎日労働を継続して生乳生産されるわけですから、労働を投下しないで生産が行なわれるという形態は、ここ当分はとても実現できないと思うのです。将来ながめておればどんどん生産が行なわれるという場合の評価は別としても、とにかく毎日毎日朝早く起きて、あるいは夜おそく乳牛の手入れをやるとか、搾乳をやるとか、あるいはそれを搬出するとかいう労働は継続するわけですから、その場合の評価というものをどうするかということを明らかにしないと、なかなか再生産の確保はできないと思う。都市労賃には絶対よらぬ。そうかといって、農村における雇用労賃、これは最も低い賃金構成ですから、これにたよるわけにいかぬわけです。しからば、その中間にたよるのか、あるいは都市均衡労賃に接近した時点をとらえるのか。これは一番大事な点ですから、もう一度大臣としてはどうお考えになるか。
  133. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 都市均衡というか、都市の製造業者の労働賃金を評価する基準にするということは、米の場合の生産費・所得補償方式にとっているところの方法なのでございます。というのは、これは再生産というものの定義がございます。再生産は、労働の再生産——あしたまたやれるだけの力を養うという再生産と、それから生活費が相当のものでなければ労働の再生産にならない、こういう二つの要素を含んでおると思うのであります。そういう意味におきましては、都市の製造業の労働者が再生産をする場合におけるその基準の生活費というものは、農村よりも相当高いわけであります。したがって、都会の製造業者の労働賃金というものは、農村よりは普通にいえば高い。ただ、労働力の需給状況によって農村が高い場合があります。けれども、一般的にいいますならば、都会は生活費が相当かかりますので、都会の労働賃金というものは高い。それに均衡させようということは、生活基準の格差をなくしようという考え方から私は出ていると思います。この場合におきましての再生産を確保するという考え方は、やはり酪農、農業をしているならしている人々のその地方における標準賃金というようなものが、やはり標準になっていいんじゃないかと思います。そういうことから考えますると、現実に行なわれている雇用賃金というのにも相当変化がありますが、やはり統計上のその地方における賃金として、自家労力が出ておるのに対して、その趨勢値といいますか、どれくらいこれは本年なら本年に取引をするときには上がっておるかという見込みといいますか、そういうものをしんしゃくするといいますか、勘案するといいますか、そういうものを入れた上の労力の評価ということが、この場合適当じゃないかと私は考えます。
  134. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、米価の場合には、全都市の民間の労働賃金ということになるわけですが、いまの大臣の説明によると、生産費調査については、これは主要な原料生産地帯の平均的な生産費ということも局長からお話があったわけですが、その主要な生産地域における労働賃金の平均的な水準を押えて、その趨勢というものを把握して、自家労賃に当てはめる、そういうことですか。
  135. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私も技術的にまだ詳しくは研究はいたしておりませんが、お話のようなふうに私は考えておるわけでございます。
  136. 芳賀貢

    芳賀委員 それは決して農業の雇用労賃ということじゃないでしょうね。その地域における民間産業、地域における労働賃金の平均値というものを求めて、それを基礎にして、一定の趨勢を求めて自家労賃にする、こういうことなんですか。
  137. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 他の一般的なことというふうにしたほうがいいんじゃないかといま私考えたのですが、いま聞くと、そういう統計はないそうです。したがって、主要加工原料乳地帯における最近時の平均生産費というのを算定する場合には、やはりその地方の農業労働賃金というのが統計に出ているというので、結局それに趨勢値といいますか、それを勘案するというようなことに相なろうかと考えるわけであります。
  138. 芳賀貢

    芳賀委員 それは絶対だめですよ。そういうばかなことをやるということは、これはもう問題にならぬですよ。一体いまの農村における農業の雇用労賃というのはどういう実態を備えているかということは、これはもう大臣がよく御存じのとおりです、これは非常に不安定で、季節的で、そうしてその労働だけに依存して生活をさせるという、そういう性質の労働力はないのですよ。最近は農村の場合には全国どこもそうだと思いますが、通年的な農村における雇用労働力というのはほとんどないですからね。だから季節的に、たとえば田植えの時期とか収穫の時期に雇う労働力というのが、雇用労働の主体を占めておるわけです。そうすると、その季節的に雇われる労働力というのはどういう実態かというと、これは主としてその地域における給料取りの奥さんたちなんです。年寄りとか夫人ですね。畜産局長程度の奥さんになればそういう安い賃金で農作業には出ないと思うが、一般の普通のその地域におる月給取りの夫人たちが、一部協力の意味もあって、季節的に農業に労力を提供しておるわけです。ですから、これを基礎にして、その平均的なものとかそこらの趨勢なんと言ったって、これは全然問題にならぬですよ。そういうことを局長大臣に知恵をつけるというのはけしからぬじゃないですか。大臣の答弁のほうが正しいですよ。生産費を主要な地域における生産費というものをとるということであれば、労賃の取り方は、その対象になった生産地域における散在しておる民間の産業の労働者の賃金というものを基礎にして、そうしてできるだけ均衡のとれた状態で自家労賃をきめるということであれば話はわかるが、同じ知恵をつけるにしても、大臣判断のほうが正しいにもかかわらず、あなたが全く大時代に帰るようなそういう進言のしかたはおかしいじゃないですか。
  139. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 保証価格というものをいかに決定するかということに関連があるわけでございますが、日本酪農経営の現状というものを考えてまいりますと、やはり今後の酪農経営の傾向等を考えます場合に、保証すべき価格というものが、需給事情等とかけ離れたものであることは適当でないと私は確信をいたしておるわけでございます。そういう観点から考えました場合に、現段階において考えます生産費というものの中にある自家労働の評価というのは、調査農家の近傍の農業雇用労賃をもって評価をすることは適当である。この評価されます労働力は、標準的な労働力について調査をされたものを充てるわけでございますから、お話のような俸給生活者の奥さんが働きにいった場合の賃金等を充てるわけではないはずであります。農村におきます雇用労賃の水準も、これも先生御承知のように、年々着実に上昇いたしておりまして、農村における労働市場といいますか、適当なことばでないかと思いますが、農村における労働力の労賃というものの一種の市場評価額というものは、これによって代表されるというふうに考えることは、私は、現段階においては適切であるという意味で、大臣に私どもの考えを申し上げた次第でございます。
  140. 芳賀貢

    芳賀委員 だからあなた、農村なら農村地域における労働賃金と、いうことなんですか、農業における雇用労賃ということなのか、どういうことですか。
  141. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 農業に従事するための農村の賃金水準ということでございます。
  142. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから、その実態はどういう実態になっているのですか、その労働の質的な実態は。
  143. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 これは私どもは、統計調査部が多くの調査職員を用いて調査した結果を利用する以外にはございません。その実態を一々申し上げかねますが、私ども承知する限りでは、当該農村地域における標準的な農業労働というものに支払われた実質賃金であるというふうに考えております。
  144. 芳賀貢

    芳賀委員 だから、その実態が、年齢的にどういう構成になっておるか、男女の性別はどういう実態になっているか、農業に対する経験においてはどうであるか、農業の労働生産性としての質的評価は専業農家の従業者とどうであるか、そういうことが明確にならぬと、それが正しい正しいと言ったって、実態がわからないじゃないですか。それではきょう明らかにならなければ、後日明らかにできるのですか。いまの農業における雇用労働の実態というものは、わかればいま明らかにしてもらいたい。
  145. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 本日私から明らかにする知識と能力とを持ち合わせておりません。
  146. 芳賀貢

    芳賀委員 そういう知識や能力がなくて、どうしていままでのどの制度にもよらない生産費価格算定方式をつくるなんということができるのですか。既存の制度より卓越した制度を案出する能力と知識があって、初めていままでのものによらぬでやるということは断言できるが、それもなければ——まあ、あなたを非難するわけじゃないですよ。農林大臣に事務的なこともまかしたほうがいいんじゃないですか。どうも大臣のほうが卓越していると思うのですがね。
  147. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私どもは事務的にものごとを検討いたしてまいっておりますが、農林省という組織の中で仕事をいたしております関係上、統計調査部の農村雇用労賃というものは、標準的な労働に対する実績賃金であるということを承知いたしておりますので、それを用いることは、酪農経営に従事した自家労賃の評価としては適当であるというふうに思っておるのでございまして、調査結果に対する組織内の信頼という関係から、そう申し上げておるわけでございます。それ以上のことにつきましては、私からお答えいたしかねますので、御了承願いたいと思います。
  148. 芳賀貢

    芳賀委員 わからぬ人に聞いてもしようがないから、これは大臣がソ連からお帰りになってからでいいですから、それまで十分勉強して明確な答弁をしてもらいたい。これは保留しておきます。  次に、基準取引価格算定はどうなさるのですか。
  149. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 基準取引価格につきましては、これは結論的に申せば、乳製品の加工採算価格できめるということでございます。その加工採算価格を導き出しますために、乳製品標準的な、指標的な価格を求める必要があるわけでございますが、法律でいう主要な乳製品のうち、指定乳製品については、この法律で定めます安定指標価格というものからスタートする。その他の乳製品につきましては、メーカーの販売価格というものからスタートをするということで、それらの価格を実現するための加工、処理、販売の経費を差し引いたものを基準取引価格にするというふうに考えておるのでございます。安定指標価格算定につきましては、また別に御質問があるかと思いますが、過去の実勢価格水準を物価水準によったものをもって当てたいというふうに思っておりますが、価格変動の少ないものにつきましては、最近における価格というものを基礎としまして算定をいたしたいというふうに思っております。
  150. 芳賀貢

    芳賀委員 現在の畜産物価格安定法指定乳製品の安定基準価格のきめ方とちょうど逆になるわけですね、原料乳と乳製品との価格の相関関係というのは。
  151. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 価格算定のコースとしては、お話のように、逆の算定コースをたどるわけでありますが、価格の性格は、これも私が申し上げるまでもなく、現在の指定乳製品の下位価格というものは、それ以上下がらないようにするための下ささえ価格であり、加工原料乳の安定基準価格も、その額を割って下がることを防止しようとする下ささえの価格であるという意味で、価格水準としての性格の相違はございますが、算定方式につきましては、いわゆる価格審議会で提案をいたしました第二方式加工原料乳の安定基準価格から積み上げ方式によって試算をいたしたものと比べますと、ちょうど逆のコースをとっております。
  152. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、お尋ねしますが、現在の畜安法の場合には、実態は逆算方式ですが、とにかく形式的には、農林大臣が定めた原料乳の安定基準価格に、乳製品を製造するに必要な諸経費を加算して、そうして安定下位価格をきめるわけですね。上位価格については、これはそれ以上高騰を防ぐための制限価格としているわけですね。形式的には、乳価から積み上げて乳製品価格を求めるということが現在の畜安法の方式ですね。今度はまず乳製品価格を先に——指標価格という名前ですが、定めて、それから加工、販売に要する経費を除いた残りが基準取引価格ということになるわけですね。そうでしょう。  そこで、問題なのは、これは乳製品価格飲用牛乳の市場価格の関連というものを農林大臣はどうお考えか。乳製品については指標価格というものを定める。できるだけ安定性の続くような価格を定めて、それから逆算して、生乳の基準取引価格をきめるわけですが、その場合、同じ市場で消費される乳製品飲用牛乳の場合が関係がないというのは変だと思う。この点は農林大臣、どうお考えになるのですか。
  153. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまの乳製品のほうは、指標価格をきめて、それからもうむき出しにして、生乳だけの価格をきめていく、こういうことでございます。これが飲用乳とどういう関係があるかということでございますが、私は特に飲用乳とは関係がないと思う。比較すれば、なまの牛乳価格飲用乳とどう違うかという結果が出てくると思います。比較の対象にはなろうかと思いますが、関連というものについては、ちょっと私考えつかないのです。
  154. 芳賀貢

    芳賀委員 いや、それは乳製品については、農林大臣乳製品の消費価格というものを安定させる目的で、まず牛乳生乳価格が幾らであるとかいうことはおかまいなしに、まず乳製品の安定指標価格というものをきめるわけです。乳製品については、消費者に対する配慮あるいは消費拡大の配慮等もあって、乳製品の指標価格をきめるわけですが、その場合、大部分が市乳化するわけですからね。飲用乳中心の消費市場というものが、今後国内において形成されるわけですからして、その場合、乳製品だけは規制するが、市乳については消費価格の面においても全く放任するということに法律上はなるわけですね。そういうやり方が一体妥当かどうかということをお尋ねしているわけです。
  155. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまお話しの中で、乳製品価格から割り出して指標価格をきめるのでございますけれども、それだからといって、乳製品価格を規制するというふうには私は見ていない。これは保証価格乳製品の中に含まれているところの牛乳価格との算定をいたしまして、保証する基準を見出すわけで、乳製品価格はそれで決定するという規制をいたそうというわけではないと私は思います。
  156. 芳賀貢

    芳賀委員 それはおかしいじゃないですか。指標価格をきめて、それから適正な販売経費あるいは製造経費というものを控除した残りを加工原料乳取引価格というふうに指示するわけですから、その価格が不当に安い場合もあるわけです。ですから、製造業者としては、従来よりも非常に有利になるわけですね。そうなると、非常に不当な安い価格原料乳を購入して、しかも製品に対しては国が何も規制しないということになるのじゃないですか。
  157. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 乳製品の安定指標価格から加工販売費を差し引いたものをもって基準取引価格を定めるということは、先ほど御説明したとおりでございますが、そこで、安定指標価格というのは、性格的には乳製品のメーカーの段階における販売価格というものの安定すべきめどとして定めるわけでございます。その指標価格というものの水準でできる限り安定をさせるということを通じて、基準取引価格の実現を可能にし、かつ安定をさせるという価格関係があるわけでございます。その現実の指標価格というものは、そのときの需給事情によりまして、安定指標価格より低い場合もありますし、高い場合もある。それが著しく下落をいたしますれば、これは基準取引価格の実現ということが経済的に不可能になるわけでございますので、これについて法律で定めておりますとおり、一定の割合を乗じた額を下回るという場合には、畜産振興事業団が市場操作に入るということによって下ささえをする。安定指標価格を著しく上回るということになりますれば、これは基準取引価格は固定できる。少なくとも改定をしない限り固定できることでございますから、メーカーの不当な利潤あるいは消費者の不当な不利益を招くことになりますので、ほかの乳製品もしくは輸入した乳製品によって市場の価格安定をはかるというようなことにしておるわけでございまして、乳製品の中間段階もしくは末端段階における市価の形成は、自由な流通の段階において形成されることにまかしておりまして、規制をする考え方はこの法案の中では持っておらないのでございます。
  158. 芳賀貢

    芳賀委員 その場合の指標価格は、いまの畜安法からいくと、乳製品の上位価格と同じようなことになるわけですね。
  159. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 現在の畜安法の乳製品価格安定の方式は、一定の安定幅の中で安定させるという思想でありますが、指標価格に当たる価格水準は、現在の現行法の制度の中にはないのでありまして、抽象的に言いますと、安定下位価格と安定上位価格との中間のいずれかの位置にあるような価格であるということになります。
  160. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、いまの乳製品の安定下位価格と安定上位価格との中間的なものですか。
  161. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私が中間的と申しましたのは、その安定幅の中にあるという意味でありまして、安定下位価格と上位価格との中心的の価格水準であるという意味ではございません。
  162. 芳賀貢

    芳賀委員 おかしいじゃないですか。どこかに位置がなければならないでしょう。安定下位価格と上位価格というものは幅があるでしょう。今度の指標価格はそのいずれにあるのですか。常に上がったり下がったりするエレベーター方式で安定性がないということですか。いまは下位価格と上位価格との間には幅があるのですよ。今度の指標価格はその幅のどこに位置するのかということです。上か下かあるいはまん中か、どこかでしょう。
  163. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 まずお答えとして間違いないお答えをするとすれば、安定下位価格よりも高く安定上位価格よりも低い価格であるということでございますが、それがそれぞれ指定乳製品ごとに上位価格、下位価格が設けられておるのでございまして、これについて指標価格を現実に算定をいたしました場合に、現在の下位価格と上位価格とのちょうど中心点になるかどうか、結果を見なければ保証をいたしかねるのでありますが、おおむね中心点に近い水準あるいは中心点よりやや高いところの水準になるのではないかと思われます。
  164. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、それから逆算するというわけですね。はたして逆算する場合に、正当な製造経費が、たとえば来年の四月一日から実施する場合に把握できるのですか。従来は畜安法制定以来今日までできなかったので、不問に付しておったわけですから……。
  165. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 指定乳製品の加工販売経費については、芳賀先生の御指摘のように、安定法発足後しばらくの間は調査の対象も少のうございますし、また調査を受ける工場側の記帳等の整理も必ずしも正確ではないということで、その信憑度というものに疑問があったことはいなめないのでありますが、三十九年度から調査対象工場もふやしましたし、またそれらの会計記帳の正確を期するための指導等も行なってまいりましたので、三十九年度に調査いたしました結果を見ますと、従来に比べまして、処理、加工販売の経費の幅というものが非常に縮まって、いわゆるばらつきが減っておるということでございますので、標準的な加工販売費について、異常な調査結果のものを除去して算定いたしますれば、私どもは行政的に十分指標にたえる数字が把握できると考えております。
  166. 芳賀貢

    芳賀委員 念のためにお聞きしておきますが、三月三十一日に告示された指定乳製品、バターについては一キロ単位で安定下位価格が四百八十五円、上位価格が六百円で百十五円の幅があるわけです。脱脂粉乳については十二・五キロで三千四百円が下位価格、四千三百五十円が上位価格、全脂加糖練乳については二十四・五キロで下位価格が四千円、上位価格が四千七百円ということになっておるわけです。したがって、現在の原料乳の価格乳製品の安定下位価格というものが大体通ずることになるわけです。そうすると、指標価格というものは、この下位価格と上位価格とのちょうど中心的な位置に決定されるということになれば、当然それから逆算される取引乳価というものは、同一時点で算定した場合においては、現在の一升当たり五十七円よりも基準取引価格においても相当上回るということになるのですね。
  167. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 さようにはならないのであります。といいます意味は、先生の論理を追っての形のようにはまいらない。と申しますことは、四十年度の安定基準価格なり、あるいは乳製品の安定下位価格、上位価格を決定いたしました場合の算定方式というのは、二種の算定方式を示したわけでございますが、お話中心になっておりますのは、原料乳の安定基準価格から積み上げた価格水準が、現行告示の安定下位価格と著しく差異のないものになっておるということだから、もっと基準取引価格が上がるだろうというお話でございますが、今回のこの法案で定めようとします安定指標価格は、この価格水準乳製品販売し、基準取引価格原料乳を購入をいたしまして、企業として成り立つという加工採算の関係を実現しなければならないわけであります。ところが、現在の安定下位価格というものは、あの算定の際にも御説明をいたしましたように、乳業者の側で、利潤でありますとか、あるいは償却費でありますとか、あるいは役員報酬、その他繰り延べ可能な経費を差し引いてみまして、そこまでがまんをしろ、がまんをしてしかるべしという水準が、安定下位価格というものの現在確実なものとほぼ近い数値が得られたという説明なのでございます。でございますから、現在の五十七円という基準価格が新しい指標価格でどの程度に動いていくかということは、明言の限りではございませんけれども、現在の下位価格というものと、原料乳の基準価格というものとの関係に相当するような引き上げが可能であるというわけにはまいらぬわけでございます。
  168. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、乳製品については現在よりも値上げすることをまず認めるというたてまえで指標価格はきめる。販売経費あるいは製造経費についてはできるだけ幅を持たせて、その残りの額についてこれを取引価格ということになれば、それでは生乳取引価格は現在の五十七円よりも下がって、そうして乳製品の指標価格は安定下位価格よりも上がるということで、大幅に乳業者に対して要求するだけの製造経費、利潤を与える、こういうことなんですね。
  169. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 そういう意味ではございません。安定指標価格水準乳製品価格が安定するならば……。
  170. 芳賀貢

    芳賀委員 局長、あと十五分しか大臣がおる時間はないのですから、そうであるかないかということだけ言ってもらえばいいです。
  171. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 どうも非常に精緻をきわめた御質問でございますので、そうだとかそうでないとか言うことがむずかしいのでございますが、要するに、結論から言えば、先生のおっしゃるとおりではございません。安定指標価格乳製品が売れ、基準取引価格で乳を買い入れて、乳業者はその水準ならばやっていけるということでございまして、現実の価格は、その指標価格から上下に変動をするということを予定をいたしておるのでございまして、その変動幅については、私のいまの感覚から申せば、上位は現在よりもやや下、下位も現在の下位よりはやや上ということで、変動の幅が縮小されることが適当ではないかというふうに考えておるのでございます。
  172. 芳賀貢

    芳賀委員 あとは農林大臣にお尋ねしますが、いま局長からお話のあったとおり、乳製品の安定的な指標価格というものは、現在の畜安法の乳製品安定下位価格よりもある程度高値になるということは明らかになったわけです。そうであれば、適正な製造経費あるいは販売経費というものが算定されて、それを控除した残りが生乳価格ということになれば、常識的に考えれば、原料乳の五十七円というものは、同一時期に算定した場合においては、もう少し上げなければならぬということに当然なるわけですね。それを取引乳価も上がらない、乳製品価格は上がるということになれば、その上がった幅と原料価格の現在よりも下がった幅というものは、それは結局製造業者のほうに配分上帰属するということになるわけです。そうなると、これは現在の畜安法の制度よりも、乳業者から見れば非常にありがたいということになるわけですね。生乳取引価格というものは、何も理論的な根拠なしに逆算してきめる、それには理論的な根拠がないわけですから。そうして製造業者が要求するだけの恣意的な経費というものをそれに与えるということになって、一方においては、製造業者はその企業の大体六〇%程度は市乳の製造販売をしておるわけですね。そのほうは全く野放しになって、幾ら市乳価格が上がってもこれは放任しておく、いままでは混合乳価方式市乳販売による利益と乳製品販売による利益というものを合算して、混合方式全国生産者に対して、地域的な差は相当ありますけれども、代金の支払いをやっておったのが、今度は用途別にこれを区分してしまう。一方市乳関係は野放しにするということになると、一そう製造業者に対して利潤を確保してやる、これを保護してやるということに当然これは帰着すると思いますが、大臣としてはどうお考えですか。
  173. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは生産者の保護といいますか、それを目的としてこの法案を御審議願っておるわけでございます。したがってメーカーがこの法案によっていままで以上の利益を得るというようなことは企図しておりません。また事実そういうふうな価格形成はいたすはずがないのでございますが、それらの価格算定等につきましては、私詳しく存じておりませんので、局長から答弁させますけれども目的がそういう目的ではないし、また結果においても、メーカーが利得するような形には相ならない、私はこういうように考えております。
  174. 芳賀貢

    芳賀委員 これはなると思うのです。大メーカーの場合は、市乳乳製品同一企業の中で経営しておるわけですから、市乳化が進めば、現在の六割、四割がそれ以上ということに当然なるわけですね。市乳の場合には、現在市乳の消費者価格が一合について十八円ですから、一升ということになれば百八十円ということになるわけです。ですから、市乳価格も大体六〇%くらいが製造業者あるいは小売り店までの経費ということで、残り四〇%が生産者市乳分の受け取り乳価ということになるわけです。これはちょうど外国と逆なんですね。外国の場合には、進んだところは、市乳価格の受け取り分は、生産者が大体六〇%、メーカー、販売店で四〇%、それより比率が少し低いところでも五五%が生産者の手取りで、残り四五%がメーカー、販売店ということになっておるわけですね。イギリスの場合は、小売りまでの経費が大体一合について四円くらいでおさまっておるわけですから、ちょうど四割しか市乳地帯においては配分を受けない。そこで、相当多額な利潤というものが想像されるわけです。去年の場合には、一升二十円市乳が上がった場合の配分というものは、原料生産者にも一升について三円程度の配分があったわけですが、これはこの法律が通れば、用途別ですから、その分には配分する必要がない。そうかといって、市乳地域に対して急激に乳価を上げるようなことはメーカーはしないと思うのですよ。将来的な判断からいうと、むしろ市乳地帯によっても、この法律が通ったときにはある程度有利になるかもしれぬが、将来を展望した場合には、やはり加工原料乳保証価格に引きつけられるという期待を政府は持っているわけですね。——いや持っていますよ。だから区分しているわけです。そういうことを考えた場合に、この法律というものは、将来においてはやはり乳業者の一方的な利益を守るということに帰着するわけですね。この点をわれわれは非常におそれておるわけです。  そこで、最後に大臣にお尋ねしますが、森永乳業の社長の大野勇君と副社長の渡部伍良君が、「かゝげよ明日の酪農・乳業へのビジョン、農林省の新乳価対策に反対する」というものを、これはわれわれ国会議員はもちろんでありますが、全国の主要な地域に全部ばらまいているわけです。森永乳業の社長、副社長の投じた一石に対して、われわれは別にそれほど影響を感じてはおらないが、しかし、政府としては、今回の法案を出される前は相当抵抗を受けたと思うわけです。結果的には、この抵抗によって、最終的な政府案というものは、全く換骨奪胎といいますか、骨がなくなったのですね。バックボーンを全く失った、変形したものが出てきたことは、大臣も残念に思っておられると思うわけです。そこで、別に国会でむきになって反論する必要もないと思いますが、こういうような反論というものは、やはり乳業界の一角において依然として相当の勢力を占めておるわけです。したがって、これにおびえて、生産者の場合においても、政府案を無批判に何とかこの国会において通してもらわぬと、このチャンスをのがした場合には再び時期は到来しないということで、政府案の決定について、将来にわたる非常な問題点を批判しないで、ノーズロースで早く通してくれという運動や要請が、私ども北海道はじめあるわけです。ですから、われわれとしては、こういう全く骨抜きになったような、森永乳業の攻撃の幻影におびえるような法案にどれだけの期待を持っているか、このままじゃ何もならぬじゃないか、しかも生産者集荷権を確立して、制度的に一元集荷、多元販売体制というものを、少なくともそれだけでも確立するような法律根拠があれば、将来生産者の自覚あるいは力によってこれを有利に打開することはあり得るとしても、いまのような法律のままで、一体生産者に対してどれだけ現実の期待を保証することができるかということを私どもは言っておるわけです。そこで、大臣、ソ連出発の前ですが、この森永乳業の社長である大野君と副社長である渡部伍良君は、農林省のこの法案に対してまっこうから反対する。いまは骨抜きにしたから、たいしたことはないと思っておると思うのですが、とにかく配付された内容は、これは反対の目標として掲げたものですから、この際、大臣から、反対の論拠に対して若干の御意見を聞かしておいてもらいたいと思うのです。
  175. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これらの反対は、政府法案の十分な理解なしにやっておるか、あるいはまたこの法案が通ると、森永だとか乳業者が不利におちいるという自己防衛からやっておるということから見れば、私は、この法案生産者のために非常にいい法案だ、こういうふうに考えております。そこで、反対意見などもちょっと見たのですが、どうも当たらないような反対意見のように思われます。たとえば、これは第二の食管制度になるということは、法案をつぶすのには一番都合がいい。特に大蔵当局などは、こう言って、法案を出そうとしたときにだいぶ反対しておったいきさつもあります。第二の食管制度にはなりませんが、そういうことを言うと、これをつぶすのに非常にいいということのために使っておるような、一つの攻撃材料のように思われる。あるいは、貿易が自由化されるのに、畜産事業団が乳製品を一括輸入するということは自由化に逆行するじゃないか、こういうことを言っておりますが、これが財源に使われるわけでもなし、これは調整をする意味におきましての乳製品の一括輸入でございますので、私はこういう点も攻撃が当たっていない、こういうふうに考えます。それから、とにかくこの制度をしくことによって、消費価格を上げて消費者に高乳価の損害を与えるのじゃないかというようなことも、本法案の企画しておるところでないことを攻撃しておる。あるいは需要を減退させるとか、酪農民の自主性を喪失させるとか、いろいろこういうことを言っておりますが、その攻撃は当たっていない。これは集送乳路線を一元化するということにつきまして、従来の権益を、とられるのではないか、こういうことを心配している向きがあるのではないかというようにも聞いておりますが、そういう意味におきましてのいろいろな観点から、政府案に対しまして反対の意向を漏らして、パンフレット等を出しておると思っておりますが、冒頭申し述べましたように、その反対意見を聞けば聞くほど、本法案生産者のためになる法案だという信念を固めるような次第でございます。
  176. 芳賀貢

    芳賀委員 これは去年の秋の最初の案は、ある程度おそれをなしていた時期もあるのですよ。それを一本一本骨を抜いてしまったのですから、いま出ている法案は向こうは何もおそれていないのです。安心して満足しておるのですよ。だから、終始一貫して当初の法案大臣が勇気をもって出したというのであれば、これは生産者のためになるということもある程度言えますが、全く骨を抜かれて、外形だけがかろうじて法案提出ということになったのですから、それほど自信を持つわけにいかぬと思います。  最後に、交付団体ですね。生産者団体は、全国段階におけるものを農林大臣がぜひ指定さるべきだと思うのです。日本の場合には、市乳地域原料地域が非常に区分されておるのですね。自然的条件の中においても。それで、消費は一年に一三%ぐらいだんだん伸びておって、飲用乳に対する需要はますます伸びておるわけです。しかし、地域的には、需要にこたえるだけの供給は、都道府県単位等ではできないわけですね。ですから、これを全国的な飲用牛乳需要に対してこたえる体制をとるということになれば、都道府県単位に分担した生産者団体指定あるいは交付金指定団体ということでは問題の解決はできないと思うのです。やはり全国一本化された指定団体というものがあって、初めて生産者の責任において、たとえば北海道地域において生産された生乳を量的に東京とか大阪の大消費地供給するという任務は、これは当然生産者の立場において行なうべき任務であるというふうに考えるわけです。それを都道府県単位にすでに飲用乳用あるいは加工乳用として取引が行なわれて、全部の生乳をその地域においては乳業者のところに帰してから、それを今度は消費地帯に送乳して、そして飲用牛乳供給するというようなことは、これは制度上からいっても体制上からいっても、欠点があるわけですね。こういう一番取り残された重要な問題を解決するためには、生産者団体指定というものは都道府県単位に行なうことも一応認めるとしても、やはり全国段階における生産者団体というものを農林大臣判断に基づいて指定する、そういうことをやらなければ実際の運用というものはできないと思うのです。その点は農林大臣としてはどうお考えになっておるか。法律上この点が全く落ちておるわけです。最初の構想ではこれはあったわけです。  もう一つは、飲用牛乳についても、国が一定の指標価格というものを示して、それが維持されるようにする。この二点が現在においては全く姿を消したわけですから、これに対する農林大臣のお考えを聞かしておいてもらいたいと思います。あとはソ連からお帰りになってから、また詳しくお尋ねしたいと思います。
  177. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お話に触れましたように、乳価プールをする範囲が、現状におきましては県単位で行なうことが適切だ、こういうふうに考えておりますので、生乳生産者団体指定県単位で行なったほうがいい、こう思います。全国一本で行なうということは、現在の生乳取引実態と離れておることが多いし、本制度に均てんできない酪農民が生ずるおそれもある、こういうふうに考えますので、地域別酪農民の利害が錯綜しないように、あるいは混乱を招くおそれがないようにするには、現在の段階では県単位が至当だ、しかし、全国を区域とする生乳生産者団体がそれぞれの要件を満たす場合には、県単位指定生産者団体となり得る道は開いてあるわけでございます。しかし、現段階におきましては県単位生産者団体が至当である、こういうふうに考えております。  それから飲用乳を含まなかったのはどういうことかということでございますが、先ほどもこれは申し上げたと思いますが、県段階におきましては、加工原料乳のほうが再生産を確保できないような状況である、飲用乳のほうは価格形成においても相当有利な立場にある、こういうような関係にありますので、加工原料乳のほうに不足払い制度を現在設けて、そして金を受け取るときにはプール計算でございますが、そういうふうにやったほうが、現在の酪農業の発展段階に即応したやり方であろう、こういうふうに考えて、飲用乳のほうの不足払いはしないたてまえでございます。
  178. 芳賀貢

    芳賀委員 いまの全国規模の、たとえば協同組合連合会が、法律の運用上それは指定されることになっておる、できるというお話でありましたが、それはわれわれとしてはそういう点は了解できないのです。私の言っておるのは、たとえば全国の全販連なら全敗連を指定生産者団体として農林大臣指定すれば、交付金の交付は中央団体に一括して交付すれば、それは都道府県の連合会、それから末端の単協に順次交付されることになるわけなんです。それは全然できないでしょう。しかも都道府県ごとに指定を受けるというのはおかしいじゃないですか。全販連が北海道でも指定を受けなければならぬ、岩手県でも指定を受けなければならぬ、長野でも指定を受けなければならぬとしても、それはあくまでもその地域における生産者団体として指定を受けるわけであるが、しかし、それは都道府県における農協組織による経済連であるとか、連合会というものがあるわけですから、北海道のホクレンとか内地府県の経済連というものが指定を受けて、そのほかに全国規模の全販連がさらに指定を受けるということにはならぬと思うのです。都道府県単位ということになれば、その都道府県地域における少なくとも二分の一以上の生乳の集荷、販売ができるという条件がまず満たされなければ、指定を受けることはできないわけですから、地域の連合会の中に割り込んで、もう一つ全国連合会が入れるということにはならぬと思います。当然これは農林大臣が直接全販連を生産者団体として指定する、さらに副次的に都道府県における地域生産者団体指定というものがあり得ても、これは差しつかえないと思いますが、その点は一体どうお考えなんです。これは大臣から直接聞かしてもらいたい。
  179. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 制度の多少こまかい法律上の仕組みもありますのと、多少の数字の問題もございますので、御参考にまず私からお答えを申し上げます。  指定生乳生産者団体を設置いたします範囲をどうするかということについては、二つ問題があると思うのであります。一つは、乳価プールを行なう範囲をどの範囲で考えることが現状において妥当であるかという問題でありまして、これを私ども県単位を適当と考えるというふうに思っておるのでございます。そこで、これをかりに全国プール地域とするということになりますれば、御承知のように、七十三、四円になると思いますが、東京乳価と五十六円という北海道乳価差のあるもとでプールを行なうことは、これは午前中に申し上げましたように、英国等の乳価の形式とは違っておるという状態でありまして、現実的にきわめて困難であります。むしろ、そういうことが、農業団体機能としては現状では非常にむずかしいということを言わざるを得ないと思うのであります。  もう一点は、県単位プールを行なうといたしまして、その指定生産者団体のいかなる構成のものを考えるかという点は、これは全国段階の農協が当該都道府県において一定の要件を満たしておる場合には、これは指定し得ることに私ども法案でもなっておるのであります。しかしながら、お話のように、そういう実態は現在ほとんどないわけでございます。でございますので、都道府県ごとに指定生乳生産者団体というものを設置いたしまして、そこでの共販体制をまず確立するということが先決である、手順であるというふうに思うのでございます。現在全国単位の農協で生乳の取り扱いをいたしております団体が二つございまして、一つは全販連、一つは全酪連でございます。全販連の生乳の取り扱い比率は、全生乳生産量の一・五八%、全酪連は一・二七%というきわめて微小な取り扱いでございまして、これが全国的に生乳を事実取り扱う関係となり得る、またプールをする機能を持つというふうになるのは、相当の年月をかけなければ実際問題として不可能であるというふうに考えておりまして、それらの事実に基づきまして、私どもは現在の法案のような機構というものを考えたわけでございます。
  180. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 局長の答弁で尽きておると思いますが、県におきまして、全国関係団体県単位団体と、二つ重なって指定されるということはございません。大体は県単位団体指定団体としてやるということに相なっております。
  181. 芳賀貢

    芳賀委員 その点がどうもあいまいなんですが、たとえば方法論としては、都道府県の連合会が当然生産者団体としてその地位を確保すると思うのですよ。その場合、これは農協組織ですから、全国の連合会が都道府県に乗り出し指定を受けるということは、事実上あり得ないわけです。むしろ、都道府県地域において指定を受けた農協連合会が、自分の加入している中央の連合会にその行為を代位させるということは、農協法から見てもできると思うのです。これはできるでしょう。できないということにはならぬでしょう、農協組織というものはそういうものなんですから。そういうことが実現する場合には、たとえば都道府県ごとの区分された生乳を移動させることも農協の力でできると思うのです。北海道から東京へ運ぶとか、岩手から東京へ持ってくるとか、あるいは鳥取県から大阪へ運ぶとか、指定された都道府県の連合会の代位ということで全国の連合会が行なうということであれば、これはいまの法律でも実現できると思いますがしかし、地方へ乗り出してそこの指定を受けるということは、全くナンセンスだと思う。この点は農林大臣の手元において明確にしておいてもらいたいと思うのです。中央団体を直接指定しない場合においても、これが行為において可能であるということは立証しておいてもらわぬと困ると思います。たとえば全国段階において総合的な全販連と専門的な全酪連があることは、これはもうだれでもみな知っておることです。しかし、これは全酪連も農協法に規定されてできているとすれば、この二つの中央にあるもののいずれか一方の連合会に会員として加入することができるわけです。ですから、そういう形でやはり全国段階というものが一本化すること、これもできるのです。全酪連が全販連の会員となることは何も阻止していないのです。ですから、全販連の酪農部門と全酪連の行なっている事業というものが、同一の部門で協力が行なわれるということ、これは農林省としても期待するところだと思うし、あるいは全酪連が主体になったほうがよいとすれば、その微小にしか扱っていないという全販連が全酪連の会員となることもできるのですから、そういうことを理由にしてこれは全国段階は不可能であるということは当を得ないですよ。通産省かどこかでそういうことを言うのであればなるほどということにもなるが、農林省の役人である畜産局長が、農協法の何たるかもわきまえないで、つまらぬことを言うのはおかしいじゃないですか。この問題は、農林大臣の手元において、ソ連からお帰りになるまでの間において明確にしてもらって、その結果われわれとしても判断を下したいというふうに考えるのですが、これはどうでしょうか。
  182. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 全国団体が地方の府県のほうへ入っていくということはあり得ないと私も思います。でありますから、県段階一つ指定団体となるということが筋だと思います。また道が開けているということだけで、事実上そういうことはあり得ないけれども、委託ということ、これはあり得ると思います。とにかく一つ団体でなければならぬし、県の指定団体というものがいまのこの法律ではノーマルな形である、こう思います。また、その全国団体の役割りというものでございますが、これは生乳販売を有利、円滑に行なうということで、指定生産者団体間でいろいろ意見や情報、あるいは事業の調整を行なって共同化を進める、これはもちろん必要だと思います。いまお話しのように、農協が二つありますが、こういうものも一本化することについて私は十分考えていったほうがいいと思います。
  183. 坂田英一

    ○坂田(英)委員長代理 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十七分散会