○林委員 私は日本共産党を代表しまして、本
法案に反対の討論をいたします。
本
法案によって
政府の企図するところは、
農業の大型化、すなわち一戸当たり二町五反の土地所有、年間の
農業所得六十万円以上という
所得格差の是正という名のもとにおける、これを
目標にした大農の育成の方向を意図しておるのであります。このことは自民党の
赤城農政が一貫して遂行してきている一部富農を残す、すなわち三割あるいは四割の一部富農を残して、六割あるいは七割の農民は専業農家としてはもう切り捨てる、こういう従来の政策を本
法案によってさらに強行するもである、こうわれわれは考えます。したがって本
法案によって、日本の
農業の中において圧到的多数を占める中貧農を
農業から結局切り離す、こういう反農民的な
法案であると言わざるを得ないのであります。これは私の質問に対しても、
政府は明確な答弁をしておらないのでありますが、一体年利三分、償還期限三十年というような、この有利な
融資を受けることのできる農民は、日本の国の六百万近くの農家のうち、幾らがこの恩恵にあずかるものであるかということに対しては、
政府は答弁をいたしません。これは言うまでもなくほんのわずかな農家しか、この
融資の恩恵を受け得るものはないのでありまして、このことを
政府はひた隠しに隠しておりますが、この
融資の
方法によって一部の富農の育成化の方向を考えている、こう思います。したがって本法によって離農する農家はますます
促進され、そしてそれに対する手だてについては、具体的な答弁は何一つなされておらない。御承知のとおり今日年間出かせぎに流出する農民が七、八十万と言われております。一方第二種兼業農家はますますふえてきております。ところが
赤城農林大臣はこれに対する
施策として、二月十日の本委員会では、具体的にまだ離農者に対してどういう
方法をとるかということについては案は立っておらない。抽象的な方向は考えているけれども、具体的な
方法は考えておらないという答弁をしております。一方今日年間農地の移動は約七万町歩と言われておりますけれども この七万町歩の土地の移動の
内容を見ますと、三十八
年度、これは
農業白書にありますけれども譲り渡すものの六七%が一町歩以下の農民、譲り受けるものの五八%が一歩町以下の農民、要するに譲り渡し、譲り受けが約六割前後は、本法の対象外の一町歩以下の農民の間に移動がされている。これを一戸当たり二町五反の土地に集約していくということになると、これはもう国家権力が当然介入せざるを得ないし、そして土地移動の中で圧倒的な多数を占めている一町歩以下の農家というものは、土地の取得については縁のないことになり、これが結局専業農家としては生活できないように、国家権力によって強制されることになる、こう思うのであります。それではこの七万町歩の土地移動の圧倒的な多数を占めている、六割のパーセンテージを占めている一町歩以下の農民が、この
法案によって土地が取得できない。さらに兼業化が
促進される。そして出かせぎに行く。出かせぎから帰ってきて失業保険を取ると、この失業保険についても、御承知のとおり非常にむずかしい
条件を出して、その
条件を受け入れないような農民に対しては、働く意思がないということで、失業保険の給付を打ち切られております。これは秋田県一県だけでも五千件が、新たに農民が失業保険を受け取ることを打ち切られております。こうして農民が
農業をやっていけないようにして、結局本
法案のねらいである、また自民党農政の基本である農村から低賃金の労働者をつくり上げようとする、これが自民党農政の本質である。この低賃金労働者は、どんな安い賃金でもいいから仕事をさがす、こういう農民を農村から毎年毎年七、八十万も流出させる。そして失業保険も取らせない。これをさらに本
法案によって
促進させようとしておる。
もう一つは、
政府は本
法案によって農地を集約し、
機械化によって
生産性を高める、そして農産物の
価格を低下させたいと言っている。しかしここにも問題が二つある。いまのような状態で農産物の
価格を低下させるということは、ただでさえ農産物の
価格が不安定で、
農業経営が苦しくなっておる中貧農を
価格の面で切り捨てていく。一方
政府の考えているように、約百万戸の富農が日本の
農業を大体独占するようになれば、今度は
価格を独占的に引き上げることを
政府は保証してやる、こういうことで、中貧農を切り捨てるまでの間は農産物の
価格を下げさして、切り捨てておいて、そして今度は
政府の考えている富農百万戸が日本の
農業を大体支配するようになったころは、農産物の
価格を引き上げさしてやる、こういうことを
政府が考えておることは間違いない。これはもう各工業部門における
経済の高度成長政策のカルテル化、独占化、これを見れば明らかであります。
その次にもう一つの問題は、これによってこの
法案は二つのことを前提としている。一つは農民の流動化、毎年毎年七、八十万の農民が農村から流れ出していく、これを前提にして、それに対しては何の手だても置いてないということ、もう一つは貿易の
自由化によって、アメリカの農産物を膨大に入れることによる日本
農業の破壊、この面については手を打たない。したがって本
法案によって専業農家を百万戸に減らすということは、それによってアメリカの余剰農産物の
輸入化は、チェックするどころか、これはこのまま自然に流していくということを前提として、本
法案がつくられていると思います。したがって本
法案によって、日本
農業が直面している一番困難な問題であるアメリカの余剰農産物の
輸入をどのようにするか、そしてこれに対して自主的な
農業の
発展をはかるための貿易をどのようにするかということについては、何らの考慮もされておらない。それからもう一つのことは、
政府は権力は介入させないのだ、土地移動を自然のままで
調整していきたいのだと言っておりますけれども、これは明らかに
農業構造
改善がいかに権力によって強行されているか、それが農民の大きな抵抗を受けて失敗しているか、それをさらにこれによって強行しようとし、今度新たに
都道府県やあるいは市町村までを介入さして、これを国家の下請機関にして権力的に土地の集約をし、そしていま失敗している
農業構造
改善を何とか持ち直させようとしている、これが本
法案のねらいだと思います。
したがって私は結論として、共産党は、もしほんとうに日本の農民のことを考えるならば、次のことをすべきである。すなわち日本
農業の自主的な
発展をはかるために、
自由化によるアメリカの農産物の
輸入をまず押える。このことについて根本的な姿勢を直す。日本
農業の保護政策を前提として、平等にして互恵の自主的な貿易政策をまず確立する。次には農産物の
価格を安定し、日本の
農業による日本の
国内市場を拡大し、そして離農や土地を手放す農民が出ないようにすることがまず第一。離農や土地を手放すことをそのままにしておいて、それをどのように
合理化するかということは、これは基本的な政策を捨てておいて、そして離農を
促進する方面を
強化するということであって、何らの政策にならない。したがって私はまず日本
農業を
価格の面と市場の面で
政府が積極的に保護してやって、離農とか土地を手放す農民が出ないようにする。この基本的なところに政策の根源を置くべきだ。そしてさらには七割の農民を切り捨てて低賃金の労働者をつくり上げ、そのために離農を
促進させるような
農業政策をやめて、自主的な
発展——同じ協業化にしても国家権力で富農へ集約するという意味の協業化ではなくて、農民の自主的な方向を
援助しながら犠牲者を出さない形で協業化をする、ここをまず考えるべきである。そして日本の
農業の真の繁栄をかちとらなければ、何ら
農業の政策にならない。この農政の不在をさらに権力をもって強行しようとするのが本
法案である。こういう意味で、日本共産党はこの
法案に反対であります。