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1965-04-23 第48回国会 衆議院 農林水産委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月二十三日(金曜日)    午前十時三十八分開議  出席委員    委員長代理 理事 坂田 英一君    理事 仮谷 忠男君 理事 谷垣 專一君    理事 長谷川四郎君 理事 本名  武君    理事 東海林 稔君 理事 芳賀  貢君       池田 清志君    宇野 宗佑君       金子 岩三君    吉川 久衛君       小枝 一雄君    笹山茂太郎君       田口長治郎君    田邉 國男君       中川 一郎君    中山 榮一君       丹羽 兵助君    野原 正勝君       藤田 義光君    細田 吉藏君       山中 貞則君    亘  四郎君       兒玉 末男君    松井  誠君       松浦 定義君    中村 時雄君       林  百郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         農林政務次官  舘林三喜男君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君  委員外出席者        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 四月二十三日  委員亘四郎君辞任につき、その補欠として山中  貞則君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 四月二十三日  甘味資源生産振興及び砂糖類管理に関す  る法律案芳賀貢君外三十二名提出衆法第二  七号)  沖縄産糖の政府買入れに関する特別措置法の一  部を改正する法律案芳賀貢君外三十二名提出、  衆法第二八号)  農業機械化促進法等の一部を改正する法律案(  内閣提出第一一九号)(参議院送付)  砂糖価格安定等に関する法律案内閣提出第  一三一号)  沖縄産糖の政府買入れに関する特別措置法の一  部を改正する法律案内閣提出第一三二号) 同月二十二日  農林年金制度改正に関する請願池田清志君紹  介)(第二八四一号)  繭糸価格安定並びに生糸輸出増進に関する請願  (湊徹郎紹介)(第二九二〇号)  乳価安定施策の確立に関する請願湊徹郎君紹  介)(第二九二一号)  昭和四十年産米の時期別格差金に関する請願(  田中彰治紹介)(第三一〇八号)  飼料需給及び価格安定に関する請願鈴木善  幸君紹介)(第三一八一号)  加工原料乳補給金等特別措置法制定に関する請  願(鈴木善幸紹介)(第三一八二号)  鶏卵、豚肉及び原料乳安定基準価格に関する  請願鈴木善幸紹介)(第三一八三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  酪農振興法及び土地改良法の一部を改正する法  律案内閣提出第一〇四号)  学校給食の用に供する牛乳供給等に関する特  別措置法案東海林稔君外二十一名提出衆法  第二九号)  学校給食の用に供する牛乳供給等に関する特  別措置法案小平忠君外一名提出、第四十六回  国会衆法第五〇号)  農地管理事業団法案内閣提出第九九号)  自作農維持資金融通法の一部を改正する法律案  (賀芳貢君外十一名提出、第四十七回国会衆法  第七号)      ————◇—————
  2. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長が所用のため、委員長指名によりまして、私が委員長の職務を行ないます。  内閣提出酪農振興法及び土地改良法の一部を改正する法律案東海林稔君外二十一名提出学校給食の用に供する牛乳供給等に関する特別措置法案及び小平忠君外一名提出学校給食の用に供する牛乳供給等に関する特別措置法案、以上三案を一括して議題といたします。  前会に引き続き質疑を行ないます。松浦定義君。
  3. 松浦定義

    松浦(定)委員 先日も一本法案につきまして質疑をいたしまして、残余の問題について保留をしておきましたので、本日この点について御質問いたしたいと思います。  実は、本法案は昨日も同僚芳賀委員から詳細にわたる質問がなされまして、関係各省に及ぶ異例の質問がなされたのでありますが、相当明らかになった点がございますので、私は、それと重複しない点について、二、三の点をただしておきたいと思うわけであります。  先般私の質問は、第二条の「酪農近代化基本方針」の中で、第三条、特に「集約酪農地域指定」の問題について質疑に入って、そこで打ち切っておったわけでありますが、今度の集約酪農地域指定の項の中で、現行法では「必要と認められる一定区域」、こういう点を改正点では「相当と認められる」というふうに変えているのでありますが、この「必要」と「相当」という字句については、これは解釈のしかたでは私は相当違ってまいると思うのであります。この相違点についてお聞きしたいのと、さらにまた「集約」ということばを捜入しておるのでありますが、最初から「集約酪農地域指定」ということで、はっきり表題を掲げておるわけであります。この「集約」ということばを挿入したということについては、どういうような内容がそれに伴うのか、この二点についてお伺いをいたしたいと思います。
  4. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 改正法案の第三条におきまして、従来「酪農振興することが必要と認められる一定区域」というところを「相当と認められる一定区域」というように変えましたことは、これは農業の発達をはかるため酪農振興することが必要であると同時に、そのことが妥当であり、客観的に酪農振興ということが可能でもあるという、より広範な意味を持たせるために、「必要と認められる」というのを「相当と認められる」というように改めたのでありまして、特に特別の理由もありませんが、単なる必要性のほかに、妥当性可能性、そういうものが客観的に認められるという意味で、集約酪農地域指定条件として完全な表現をとりたいという意味で書いただけのことであります。  それから、第二点の御質問は、従来から集約酪農地域ということば現行法にもあるわけでございますが、そこでの酪農振興計画は、単に酪農振興計画と呼んでおったのでありますけれども、現行法では、酪農振興計画計画というのは、集約酪農地域経営改善市町村のみでございまして、都道府県なりあるいは国にも何らの計画規定がなかったわけでありますが、都道府県酪農近代化計画というものを樹立する制度を今回定めることにいたしたいと考えております関係上、県の立てます酪農振興計画に二つのものが出てまいりますので、府県の全般をおおいます酪農振興計画というものは、都道府県酪農近代化計画という名称にいたし、集約酪農地域酪農振興計画集約酪農振興計画という、集約という文字を加えまして、計画区別性をはっきりさせたいという意味で、加えただけのことでございます。
  5. 松浦定義

    松浦(定)委員 確かに、いま御説明のありましたように、前段の「必要」と「相当」との差について、具体性を持たせた、こういうことについてはわからぬわけではございませんが、当時二年前にこれを改正するときには、そういう必要性といいますか、妥当性というものは、全然考えられなかったかという疑問さえ実は出てくるわけであります。字句を長くしたから、あるいはことばをたくさん入れたから、これが完全なものになったというふうには必ずしも私は理解しないのであります。たとえば「目的」の場合のときにも申し上げましたように、最初字句は非常に短かったが、今度は非常に長い「目的」の項になっておる。各条項についても、いま御説明のように、新しいことばを挿入されておる。いまお話ことばは、おそらく二年前にでも相当議論が尽くされた問題であります。私は、そういうことで条文整備するためにそういう字句を入れられたというような御説明は、理解できないわけではございませんけれども、改正をする場合においては、そういう現実を伴うか伴わないかということが明確にならないままで、字句の点だけ先行する、そういう改正はあまり好ましくないのではないか、こういう考え方を持っておりますので、いまの局長の御説明は一応了とはいたしますけれども、そういう配慮も法案整備の場合にはお考えになったほうがよろしいのではないか、こういうように考えておるわけであります。  次に、前には「生乳生産者共同集乳組織整備及び乳業合理化に関すること。」こういう字句もありまして、集乳組織の面を当時は明らかにしておったのでありますが、今度の新法は単に「集乳」と字句が二字になっておるわけであります。こういう場合には逆に字句が短くなっておる。つまり、前には同条の三号で、「生乳生産者共同集乳組織整備及び乳業合理化に関すること。」そうなっておるのが、今度の場合は「集乳及び乳業合理化に関すること。」と、これはまた非常に簡単になってしまって、生産者共同集乳組織というような点がここでは抜かれておるわけであります。この点はどういうふうなお考えでこうされたのか、お伺いしたい。
  6. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 この点につきましては、昨日も大臣並びに私からも御説明を申し上げたのですが、現行法酪農振興計画計画事項の第三号は、「生乳生産者共同集乳組織整備」という点を集乳関係ではあげておるのでございますが、この点は、本法制定当時におきましては、まだ酪農普及の段階に入ろうという時期でありまして、したがって、生産物であります生乳共同集乳組織という問題が非常に強く必要とされ、それを強調することが大事であった時期だと思われるのであります。この点は今日に至ってもなお変わらないわけでありますが、集乳関係では、共同集乳組織の問題のみを計画するということにいたしますと、集乳路線自身整備の問題、それから集乳のための施設、たとえば集乳施設でございますとか、あるいは冷却の関係施設でございますとか、そういう施設計画も要しますので、そこで、共同集乳組織整備の問題を含め「集乳合理化」ということで、組織整備の問題ももちろん計画いたしますが、そのほかに、集乳関係で必要とします施設設置等計画法律上の必要事項にしたいということで、字句は少なくなりましたが、法律内容としては、もう少し広範に集乳の問題について計画をする必要があるというふうに改めたい、こういう思想でございます。
  7. 松浦定義

    松浦(定)委員 理由があってそういうことにしたという御説明は、私はわからぬわけではありませんが、どうも今度共同集乳組織の点が削除されて、いま御説明のように、広範な問題について検討を加えることにした、こういうお答えでございますけれども、今度提案になっておりましてまだ審議に入っておりませんが、加工原料乳の問題につきまして、ここでは集乳組織といいますか、この面が非常に大きな問題となってくると思うのであります。別な法律でもってそういう点が課題になっておる。こういうときに、この酪農振興法で——どちらかといえば、これはもう基本法的なものなんです。ただ原料乳価をどうするとか、市乳をどうするかという問題は、極端に言えば、農家にしてみれば直接の関係はありますけれども、法案内容からいえば、やはりこれはもとではないわけであります。そのもとでもってこれがはずされて、今度はまた別な面にいって、さらにそれ以上の大きな問題になろうとしておるというような点を私は非常に心配をいたしましたので、お聞きしておるのであります。いまこの点について御説明がございましたが、これは、私は、あの不足払い制度の問題のときに、おそらくこの問題はまた明らかになってきて、いまの御説明がはたして妥当であるかどうかということについては、次の問題でこの点は十分議論をしていきたい、かように考えておるのであります。  そこで、次には、第四項でありますが、「その区域における農用地利用状況農業労働条件その他」こういうことになっておりますが、今度の新法では「農業労働条件」という面が削除されておるのであります。これは何か理由があって、「農業労働条件」というものはこういう中に入れなくてもいいのだという根拠があるのかないのか、この点をお聞きいたしたいと思います。
  8. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 現行法では、集約酪農地域指定要件の中に、「その区域における農用地利用状況」その次に「農業労働条件」ということが入っておりますが、改正法案の中では、「その区域における農用地利用状況その他乳牛飼養に関する条件」ということで、「農業労働条件」を落としておりますが、これはもちろん「農用地利用状況」あるいは「乳牛飼養に関する条件」という中には、労働条件がなくてはこれは成立しないものでございますが、特に本法で「農業労働条件」をうたいましたのは、成立の過程におきまする経緯を振り返ってみますと、当時はまだ農村内にいわゆる余剰労働力というものが滞留をいたしておった時代でございまして、余剰労働力燃焼という観点からの酪農普及という観念が相当強かったと考えられるのでございます。そういう条件が今日の農村労働事情のもとでは考えられなくなってきているということで、事情の変化を考えますと、今後の酪農振興は、余剰労働力燃焼方法としての酪農ということよりも、さらに省力的な技術の導入によって、生産性の高い酪農経営に持っていくということのほうが本筋であろうという考え方から、この「労働条件」というのを特にあげることをやめるということにいたしたのでございます。
  9. 松浦定義

    松浦(定)委員 どうも私は、畜産局長のお考えはお考えとして、これは一つ理屈はあると思うのです。しかし、現地の状態はやはりそういうものではないと私は思うのです。やはりなぜそういうことになったかということになると、余っておった労働力によって以前はやっておった、しかし、いまになってみたら、人が足らなくなってしまったのだから、省力的な面でそういうふうに変わっていったということだけを見て、そういう改正をされたということになりますならば、いまはむしろ逆に、共同化協業化、こういったような形で、自分の家族だけでやっておるというのでなしに、他人同士が多く集まってやる、そういうことになりますと、この労働条件では、利益の配分というものは、私は、前の家族だけでやっておる問題とは非常にウエートが違ってくると思うのです。そういうようなほうに進みつつあるにかかわらず、いまお話しのように、当時は家族でやっておった、しかしいまになったら、それが省力化され、機械化され、あるいは近代化されたから、そういう「労働条件」というものは削除してもいいのだ、こういうお考えではなく、私は、もう少し高い角度からこの労働条件というものを酪農振興の中では見るべきでないか、こういうふうに思うわけであります。だから、共同経営協業経営というものについて、現にやっておる問題については、成功か不成功かという点については、一つはまあ資金面もありますが、もう一つは、ほんとうにいままで、日本農業ばかりではございませんが、どうも共同的な精神といいますか、そういうものにやや欠けておる。ましてや、農業というものは、ほかのものと違って、朝八時から晩の五時まで八時間弁当持って働けば、それで給料がもらえるというのでなくして、やはり十時間も十五時間も働かなければならぬ。そういう農業経営の中で、これから共同経営協業経営をやらなければならぬということになると、時間的な面で大きく私は内容が変わってくると思うのです。したがって、そういう面では、この労働条件というものは、別な意味でやはりこういう政策の中でははっきりウェートを示しておく必要がある。いまのお考えですと、私は、もうそのことによって混乱すると言ったら語弊がありますけれども、この共同化協業化を進める場合の条件と相反するようなものになってしまうのではないか、そういう心配をするわけでありますが、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  10. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 今後の酪農振興をはかっていく上に、特に飼料資源等の問題を考えました場合、共同化協業化の相互の協力関係というものを強化して、そうしてそういうことを含めまして労働の問題特に労働生産性の問題について考えることが重要ではないかという先生の御質問と、私は全く同じ考えを持っているのでございます。ただ、集約酪農地域指定要件労働条件というものを掲げておきますと、従来はそういう法律上の要件がございましたので、一定土地に対する労働余力といいますか、そういうものがある地域でなければならぬという条件指定をしてまいったわけでありますが、今日そういう土地その他の労働対象というものに対して、労働余力があるような地域集約酪農地域指定するということになりますと、これはむしろ実情に沿わなくなっている、指定範囲を狭めなければならないという不合理が起こってまいりますので、この際は、労働条件ということをそういう余力のあるという観点からははずしたほうが、むしろ実情に即し、また集約酪農地帯を実態に即して指定できるようになるという考え方から、これは法律表現から落としたのでございます。
  11. 松浦定義

    松浦(定)委員 そのお気持ちは私どもわかるのでありますが、現実の問題として、いまお話しのように、労働条件が伴わなくてもこのものについては指定をする、実際問題としてはそういうことに私はならないと思うのです。だから、こういうものは入れておいて、従来からあるものはとらないでおいて、そういう点については説明を加えるということならいいのですけれども、はずしてしまって、おまえのところは労働条件がかりになくても指定してやるぞということになりますと、いままで指定されたものと、これから指定されるものとの間においては、非常な差が出てくるのではないか、こういう点を私は心配するわけであります。しかし、決定的な問題ではございませんので、一応この質問はこの程度にいたしておきます。  その次に、第二の問題につきまして、現行法では、「共同集乳組織及び乳業成立のための条件」となっているわけでありますが、今度の新法では、先ほども申し上げましたように、「共同集乳組織」が削除され、あるいはまた「乳業成立のための条件」が「乳業施設への供給条件」となっているのであります。この点はまたどういうようなお考え改正されましたか、お伺いをいたしたいと思います。
  12. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 「集乳」ということはで、生乳についての共同集乳組織というものを含めて表現をいたすことにしました点は、先ほどお答えをいたしたところでございまして、集約酪農地域指定要件としては、この集乳という中には、ただいま申し上げましたように、生乳についての共同集乳組織整備していなければならないということを明らかに条件として打ち出すつもりでございます。そのほかに、集乳についての施設、それから集乳路線整備をされておる、あるいは整備される方向であるということ、それから乳業施設への供給条件というところは、この法律施行当時から現在に至る十年の間には、牛乳市場条件、が非常に変わってまいっておりますし、また乳業施設についての技術的な進歩もあるわけでございまして、集団的に一体的に集荷せられた乳が、まとまった出荷単位として乳業施設へ出荷されるような条件があること、そういうことを政令で一定基準を示しまして、明らかにいたしたいというふうに思っておるのでございます。
  13. 松浦定義

    松浦(定)委員 それでは次にお尋ねいたしますが、第六条二、項でありますが、この指定解除についての問題であります。「第三条第二項の酪農振興計画を達成することができないと認められるときは、都道府県知事意見を聞き、集約酪農地域指定解除することができる。」こういうことに現行法ではなっておるわけでありますが、新法では「その区域における酪農振興を図るための方法として著しく不適当となるに至ったと認められるときは、」云々となっている。この著しく不適当という字句は、法文の上でも非常に誤解されるし、判定に苦しむといったような字句ではなかろうかと思うのですが、この内容について御説明を願いたいと思います。
  14. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 第六条一項、二項、いずれも集約酪農地域指定解除規定でございまして、多少御質問範囲を越えてお答えをすることになりますが、第一項の解除規定は、新しい集約酪農地域指定要件であります三条四項の各号の条件を欠くようになりましたら、これは解除しなければならないということで、必要的解除要件になっておるわけでございます。第二項のほうは、一つは三条二項の集約酪農振興計画ということが達成できないようになる、要するに、目的達成ということが明らかにできないという場合、または今回法律改正において規定しようとしております都道府県近代化計画と調和がとれなくなった、もしくは御質問の「その区域における酪農振興を図るための方法として著しく不適当となるに至ったと認められるとき」、この三つの場合には、都道府県知事意見を聞いて、農林大臣指定解除をすることができるということで、これは裁量解除要件であります。このことを法律改正をいたしましたのは、現行法はすこぶるその点が明確でないわけでございます。本法の三条の規定の四項本文のことを書いておるのか、各号のことを書いておるのか、実ははっきりしないというような難点がありましたので、書き分けて明らかにしたという点が一つあります。  それから最後の御質問の、「酪農振興を図るための方法として著しく不適当となるに至ったと認められるとき」というのはどういうときかということでございますが、これは現在の日本酪農事情あるいは牛乳、乳製品の需給事情が、いま非常に急速な勢いで変動をいたしておるのでございまして、そのために、当初の計画というものが、そういう需給事情相当かけ離れた状態になる可能性があるわけであります。例をあげますと、加工乳としての集約酪農地帯として計画をした、したがって、集送乳の設備なりあるいは処理施設なりというものをそういう方向計画をしておる、ところが、市乳圏が拡大をいたしまして、市乳地域に変わってきたということになりますと、原料乳集約酪農地域計画は、酪農振興方法としては適当でなくなるということがあるわけでございまして、そういう場合については、この指定解除をすることができる。もちろん、その指定解除をすることができるという裁量的な解除要件でございますから、計画変更等によって、解除という手段まで訴える必要はないという場合が多かろうと思いますが、法律上の扱いとしては、そういう場合については、そのまま集約酪農地域を認め、またその計画をそのままにしておくというわけにまいらぬということで、やや理屈に堕した整理ではございますが、法律上の整理として、そういうふうに書いたわけでございます。
  15. 松浦定義

    松浦(定)委員 どうもいまの説明を聞いておりますと、法律上の整理のためにこういう字句を使った、こういうお話になりますけれども、この法文酪農民側から見ると、著しく不適当になった場合ということになりますと、何だか酪農民責任でそういうことになった、そういう場合に解除するのだ、こういうふうな受け取り方をする危険性が私は最も強いと思うのです。もしいまのお話のように、そういう原料乳地帯市乳地帯に変わっていったとか、いろいろ内容が変わっていった場合においては、これは何も酪農民生産者側責任ではないと私は思います。いわゆる集約酪農地域については、条文の示すところによって、それぞれ指導し、あるいはまたそれぞれ協力をしておるわけでありますから、したがって、いま御指摘のように、そういうふうに変わっていった場合には、指導なりあるいはまたその他の面においての責任を果たす面が十分でないために、そういう変わり方をする、そういうときにはその指定解除もできるのだ、こういうようなことであると私は思うのです。そういう場合なら、何も指導者側といいますか、施行者側といいますか、そういう当局のほうから、相手方に誤解を招くような、不適当になった場合においてといったような、そういうきつい字句をこの際使わなければならぬものかどうか、こういう点があるのですが、これはどうしても法文上非常に誤解をされやすいし、相手方に責任を負わすような、それに懲罰か何か加えるような、そういう字句をどうしても使わなければならぬのか、あるいは他の保護条件の中にもこういうものが随所にあるのかどうか、こういう点をひとつお聞きしたいと思います。
  16. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 確かにお話しのように、この規定は、酪農振興計画というものが酪農振興をはかる方法として不適当となった場合ということでございますから、何ら酪農民の方々の責任によってどうこうという問題でないことは、御指摘のとおりでございます。でございますが、第二項の冒頭の要件で、酪農振興計画を達成することができないという、目的達成というものが不可能であるという場合と、その計画目的に対して不適当である場合というのは、論理的には二つあるわけでございますから、そういうことを一応書き分けて、解除要件のやや理屈に堕しますが、整理をいたしたということにすぎないのでございまして、酪農民責任に出るものでなく、行政上の指導によって回避できる、あるいは修正できるというようなものでございますので、実際の運用といたしましては、計画実情に沿って、酪農振興をはかるための方法として適当なものにさせるという方向で、単に計画振興方法として適当でないということを形式的に取り上げて解除をするというようなことは避けてまいりたい。運用の問題としては、先生の御指摘のことを十分心がけてやるべきだというふうに考えておるものでございます。  なお、他の法律にこういう同様の文句があるかどうか、ちょっと今日勉強いたしておりませんので、申し上げることをお許し願いたいと思います。
  17. 松浦定義

    松浦(定)委員 酪農振興地域指定ということにつきましては、現地酪農民は当然のこと、やはりその市町村においても、あるいは農業団体にいたしましても、非常な強い要望の中に指定をされるわけでありますから、少なくともいまお話しのような形の中でも、実際問題としては不適当になるようなことであっては困るわけなんです。発展過程においてそれが漸次変わっていくというなら別でありますが、いま方法として著しく不適当ということは法文上のあれだ、こういうようなお話でありますから、それは一応了といたしますけれども、やはりそういうような機会がいずれにしても指定地区の解除等の原因になるようなことのないように、十分ひとつこの法案改正後においての執行の面については努力をしていただきたい、これをつけ加えてお願いをしておくわけであります。  最後に、この問題について、何としても酪農振興のガンといいますか、障害になっておるものの一つとして、飼料問題があるわけであります。特に草地造成等については、政府も非常に努力をされておることはわかりますし、酪農民にいたしましても、このことの達成なくしては、おそらく日本酪農民は浮かばれない。現在の濃厚飼料だけに依存しておってはいかぬということで、ずいぶん努力をしておるわけでありますから、それぞれの計画を立てて要請し、あるいは実行をいたしておる段階にあることは言をまたないのであります。したがいまして、今度の草地造成事業を新しく計画されることによりまして、土地改良法の一部が改正されることになりますが、現行の土地改良法によってもけっこう私は農用地の造成事業として実施ができるようになっておると思うのであります。従来はそれで大いにやってきておるわけであります。特に今回土地改良法を変えてこれを実施するということについては、いろいろの理由はありまし上うけれども、そのことによって拡大的にこの農地造成ができるのかどうか、こういう点をひとつ伺っておきたいと思います。
  18. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 お話しのように、現行の土地改良法によりましても、草地の造成改良事業は土地改良法上の農用地造成事業に含まれるものでございますから、施行は可能でございます。ただし、その現行法で行ない得ます草地改良事業というものは、これはいわゆる土地改良法の三条資格者が十五名以上共同で申請をいたした場合に行なえる。いわゆる個人の使用収益に属する土地において草地の造成改良をいたす場合に限られるわけでございます。ところが、現在の日本の草地開発の可能性のあります土地資源というものは、多くは公有地等であり、また大規模に開発をいたしましたあとでは、共同的な利用によってその草地としての利用を進めることが必要であるという条件考えますと、現行土地改良法の草地改良事業では多くを期待することはできないわけでございます。事実今日まで都道府県営までの草地改良事業の実績を見ましても、大規模なものにつきましては、多くのものが公有地等の上で行なわれておるのでございます。でございますので、今回の改正は、わが国の草地資源として相当大きな面積として残っております地方公共団体、農協、農協連合会等の使用収益にかかる土地についての都道府県営、国営草地改良事業の根拠規定を設けたいということでございまして、私どもとしては、このことによって大規模な草地の開発は制度的に相当進めることが可能になるというふうに期待をいたしておるのでございます。
  19. 松浦定義

    松浦(定)委員 確かに現行法等についての制約は実はあるわけでありますが、何も私は改正するなというふうに言っているわけではありません。改正をすることによってどの程度の利点があるかということをお聞きしているのでありますが、いまの御説明でありますと、今度改正することによって、集団的な大規模の土地改良をやり、草地造成ができる、こういうことでありますが、これは先般通りました農地開発機械公団によりましても、共同利用とかあるいはまた模範牧場等の設置については、これと同様なものがやっぱり私はできると思うのであります。そうしたものがすでに実施段階に入っておるのでありますから、したがって、いまお話しのようなことによって、特に土地改良法改正をせなければならぬといったようにも私は考えられない点があると思うのですが、こういうような点についてはどのようにお考えになっておりますか。
  20. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 先般御審議をいただきまして、当委員会で御可決を願いました農地開発機械公団法の改正による共同利用模範牧場の設置につきましては、大体土地改良法の上で考えております都道府県営の草地改良に相当する面積以上のものについて、草地開発方式のモデル、また草地の共同事業のモデルというような性格の牧場を、草地改良から施設整備、家畜の導入に至る一体的な整備をして、地元にそれを譲り渡すということによって、モデル的な、模範的な牧場というものを開発したいという意図に出るものであります。これは機械公団というものの能力の限界もございます。また制度そのものが、モデル的な牧場設置という考え方に出ておりますので、そのこと自身によって大きな面積を開発するということは、私はそれほど期待するわけにはまいらないというふうに考えるのでございまして、事業としての量から考えますならば、一般の都道府県営あるいは国営、さらに個々の小規模の草地改良事業等、土地改良法改正の中で進めます草地改良事業に多くを期待せざるを得ない、またそれが本流であるべきだというふうに考えておるのでございます。
  21. 松浦定義

    松浦(定)委員 いまのお話でありますと、機械公団等によるものではあまり大規模のものはできないのだ、こういうお話であります。したがって、今度土地改良法改正されまして、いよいよ大草地ができるということになりますと、今年国営でもって全国に三ヵ所というものが実は予算の上に出ておるわけであります。そこで、私はいつもよく申し上げますけれども、やはり国営として全国に三ヵ所そういう大規模なものができることについては、私どもとしては反対はないわけであります。しかし、現在の日本酪農事情等から考えてまいりますと、それに匹敵するようなものは各地に要請があるわけであります。先般も、近く約三十ヵ所くらいにしたい、こういうようなお話がございました。しかし、それも年度の関係からいけば、要請にはなかなか私はこたえられないと思うわけであります。そこで、そういう準備として土地改良法改正も必要だというふうには理解はできます。ただ、法律はできたけれどもということでは実は困るわけでありますが、いまの国営大規模草地の設定と同時に、それに匹敵するような全国的な大規模な草地の改良、あるいはまたそればかりでなく、さらに中規模、小規模のもので、各市町村が現に調査をし、あるいは持っておるその土地を高度に利用したい、こういうような意見がたくさんあって、申請をしておると思うのでありますが、現在こういう全体的な大、中、小の酪農振興の必要に迫られて、草地造成をしたいという要望にこたえる農林省、特に畜産局の考え方、こういうものの計画的な数字なりあるいは年度別のものがございましたら、この際明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  22. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 草地の造成、改良の資源的な面から見ました調査は、実は土地改良総合計画調査の中間集計の数字で、ある程度私どもも把握いたしておるのでございます。その調査にのってまいりましたものを計画的にどのようにやるかという問題は、土地改良法に基づきます土地改良長期計画というふうな計画の一環として明らかにしてまいりたいというふうに考えております。現在、ただいま申し上げました調査の結果を見ますと、全国に草地改良の適地であり、また草地の改良、造成をしてほしいという意向のあります面積は約八十万町歩でございます。この中には、現実に調査をいたしますれば、いろいろな制約があって、なかなかむずかしいというものも含まれておると思いますが、そのうち、私どもとしては、四十六年までに約四十万町歩の草地造成を新たに起こしたい。現在約十万町歩程度の改良草地でございますので、合計五十万町歩程度の草地を用意をする必要がある、そういう方向計画的に進めてまいりたいというふうに思っております。資源的な調査を若干分けてながめてみますと、八十万町歩のうち、約四十八万町歩程度が小規模の団地でございます。大規模の団地が約三十二万町歩、地区数にしますと四百二十二地域、そのうち、下町歩未満の団地、これは都道府県営に相当するかと思いますが、それが地区数で三百三十三、面積で十六万町歩。千町歩以上、これが国営の条件に当たるわけでございますが、千町歩以上の地域数が全国で八十九、面積で約十六万三千町歩という数字が出ておるのでございます。これはさらに現地の事情についての調査を進めまして、具体的に地域の要望、それから自然的な条件、経済的な条件等を考えました上で、順次都道府県営もしくは国営で進めていきたいというふうに考えておるのでございます。
  23. 松浦定義

    松浦(定)委員 長期的な計画でお進めになることについてはよくわかるわけですが、現地の要望なりあるいは酪農の今日の現状からいたしますと、いまの局長計画のようなことではなかなか現地としては困ると思うわけでありますが、その計画がもっと早期にやれない理由というものはどういうところにあるのですか、その点をお聞きしたい。
  24. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私ども、現地の要望のありますところについては、できるだけ早期に調査をし、事業に着手したいというふうに考えておるのでございますが、端的に申し上げまして、草地改良事業が農林省で本格的に取り上げられるようになりましたのは三十七年以降だと私は思うのでございます。三十七年に初めて草地改良事業というのが公共事業としての予算の扱いを受けるようになったのでございます。したがって、草地改良の本格的な推進というのは歴史が非常に浅いということがございますために、現地からの要望自身も、実は具体的になりますと、なかなかそろってこないという問題があるわけでございます。そのことの実態的な理由といたしましては、現段階では草地資源の賦存と家畜の分布とが合っていない実情である。それから草地資源のございますところは、畜産物の販売条件に不利なところが多い。それから草地資源には多くは権利関係が非常に錯綜しておるところが多いというようなことから、今日までは、農林省としてもあるいは関係都道府県としても、草地改良に力を入れておるのでございますが、お話のように、急速な大きな伸びが見られない。ただし、最近は、私どもの考える限りにおきましては、かなり順調に事業も伸びつつあるわけでございますが、今後四十万町歩あるいは五十万町歩というような開発をしていくということにいたしますれば、われわれとしても、また関係の機関においても、一そう努力を要するということが実情であるというふうに思っておるのでございます
  25. 松浦定義

    松浦(定)委員 大臣がお見えになりましたので、最後に一点だけお伺いして、次に移りたいと思いますが、いまお話のように、八十万町歩の草地を早期にやりたい、やらなければならぬということについては、わかっておるわけでありますが、この草地予定地というものは、これはむろん原野並びに林野を含めての問題だと思うのですが、いま東北、北海道等については、特にそういう顕著な例が出ておりますが、開拓者等は土地条件の非常に悪い地帯に入っておる。したがって、そういうところの人は、離農したい、とても生活できない、こういう人がたくさんあるわけであります。そういう人が持っておる土地というものは、その地帯、地帯によっての適地適作物をつくってはおりましたけれども、それが成功しないことによって、そういう結果になったということでありますから、おそらくその地帯におきましても、将来離農するとすれば、草地として利用する以外にないのだということは、自他ともに認めておるわけであります。だから、そういうものを含めた場合には、大体現在の土地条件からいって、どのくらいになるのか、そういうものは計画の中に考えたこともないとおっしゃるのかどうか、この点をちょっとお聞きしておきたいと思います。
  26. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 農地局長がお見えになっておりますから、御承知かもしれませんが、開拓者の離農予定地調査というのは、私も聞いたことがございません。私が先ほど申し上げました草地資源の調査の面積の中には、先生のおっしゃったよらな開拓者の離農予定地というものは入っておりません。  なお、私どもは、開拓事業の用に適する土地、いわば開畑適地というものの調査については、全国に約四十一万町歩程度あるということは、省内の資料によって承知をいたしておりますが、これもおそらく離農予定地というものは入っていないと思います。これは調査もなかなかむずかしゅうございましょうし、わかりかねるのではないかと思います。
  27. 松浦定義

    松浦(定)委員 いまはっきりそういう実態がわからなくてもいいのでありますが、そういう実態、がこれから出てくると思うのであります。そういう場合に、それらの土地については、やはり農業団体等が共同利用施設に利用するとかというような問題が出てくると思うのですが、この場合に、この土地の取得といいますか、こういうものについては、市町村なりあるいは協同組合なりがこれを取得することが一番いい方法だと思うのです。おそらくこの問題については、後刻質問申し上げます農地管理事業団にそういうことをやらせるのだというような御回答があるいはあるかと思うのでありますが、いまの段階においては、そういう土地等がもし出た場合には、これは現在確かにそういう草地適地があるところについてはいいのでありますけれども、そうでなくて、やはり酪農振興のためには大いに草地を造成したい、こういう機運があるところへ、そういう開拓者等の出られた土地があるというようなことは、全国的に見ておそらく相当出てくると思うのですが、そういうような場合には、どういうようなお考えでその土地の取得だとか利用だとかいうことをお考えになっておるのか、これは農地局長でもけっこうでございますから、お伺いしたいと思います。
  28. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 開拓者が離農いたしましたあと地につきましては、その処理の実態を見ますと、残留開拓者がその土地を買いまして経営規模の拡大をする形と、それから非農業者がその土地を買う形と、それからいま先生御指摘の市町村等がその土地を買うことによって問題を解決している実態とございます。私どもといたしましては、 いまの例の中で、市町村等がその土地を購入いたしました場合に、その土地を共同利用の草地として利用したいという場合には、現在ございます草地改良の諸制度の小規模の草地造成事業、あるいは中規模の草地造成事業で、それの適格なものはそれに取り上げていくということを考えたらいかがかと、かように存じておるところでございます。
  29. 松浦定義

    松浦(定)委員 ちょうど時間もまいりましたし、大臣おいでになりましたので、酪振法についての質問は以上でもって私は打ち切りたいと思います。      ————◇—————
  30. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 内閣提出農地管理事業団法案及び芳賀貢君外十一名提出自作農維持資金融通法の一部を改正する法律案、以上両案を一括して議題といたします。  前会に引き続き質疑を行ないます。松浦定義君。
  31. 松浦定義

    松浦(定)委員 ただいま議題になりました農地管理事業団法案に対する質疑につきましては、本会議においてもわれわれの代表湯山委員から質問いたしまして、総理並びに農林大臣からそれぞれ御答弁をいただいておるわけでありますが、特にこの法案が上程されまするや、現地その他におきましても、計画当時からいろいろ関心を寄せられたものであると思うのであります。本法案の審議にあたりまして、かつて見られないほど、この法案に対して、与党の諸君御両名からもずいぶん長時間にわたっての御質問がございました。あるいはまた、民社党からもすでに反対の態度をもってこの質問をなされたのであります。また昨日は、共産党の林委員からも質問がございましたし、私ども社会党といたしましては、本会議におきます湯山委員質問でも明らかにしておりますように、本法案が提案されるまでの経過というものについては、これはいろいろ問題が多くあったということを承知いたしておるわけであります。特に農業本法制定されまして、今日五ヵ年を経過いたしておるのでありますが、いまの日本農業というものは非常な重大な危機に入っておる。農業の曲がり角だとか、これはたいへんだとかいったような意見は、ずいぶん前から聞かされておりますけれども、名実ともに私は、現在の農業というものは行き詰まりの段階にきておると思うわけであります。したがって、この危機打開につきましては、全力をあげて、これは与野党ともにいろいろ提案につきましての質疑を続けてまいって、その中で明らかにしていきたい、こう思っておるわけであります。  先般の総理大臣からの御答弁をいろいろ聞いておりましても、ことばの上では対策が立てられつつあるような御答弁であっても、ほんとうに現在の日本農業の将来を憂えるといったような、あるいはまた農民の実情を救うに値するような、誠意ある御答弁というものは、私は聞けなかったと思うわけであります。したがって、何といっても、本法案をもって現在の農民の実情を救うということにはならない、かように私は考えておるのでありまして、特に本法案が提案されるに至るまでの経過につきまして、大臣から詳しくひとつ御説明を願いたいと思うわけであります。
  32. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 農業本法にもありますように、また実際問題といたしましても、農業が他産業と比較いたしまして不利な立場にある。生産性の点におきましても、あるいは農業者等の所得の点においても、格差が相当ある。その格差を是正する方向に持っていきたいということで、努力を続けておるわけでございます。そこへまた国際的に見ますならば、開放経済体制へ日本が入っていったわけであります。そういう実態の中におきまして、日本農業が、他産業と比較しましても、あるいは国際的に比較いたしましても、競争力といいますか、強固な農業体制を確立していくということは、お話のように、非常に必要かつ重要な事柄である、こう考えます。そこで、農業の体質改善を目ざして農業の構造改善専業等を推進していただいているのでございますけれども、何といたしましても、日本農業が他産業あるいは国際的に競争力の弱いということは、一面、経営の規模が小さい、零細農の上に立っておるということだと思います。そういう意味におきまして、零細なら零細で、資本装備を充実していくということが一つ方法だと思います。でありますので、そういう方面にも努力をしなくちゃなりませんが、一面におきましては、経営規模の拡大、こういうことも考えていかなければならぬ。こういうことから、土地改良等における開墾、干拓あるいは圃場の整備というようなことで、規模の拡大も考慮してまいっておりますけれども、一面におきまして、相当農地の流動化が行なわれている現状でございますので、その流動化を経営規模の拡大に方向づけていこう、こういうことを考えてきておるわけでございます。これは単に日本ばかりの傾向ではございません。たとえばフランス等におきましても、この農地管理事業団と同じような方向におきまして経営規模の拡大をねらっておりますし、あるいは西ドイツ、オランダ等におきましても、そういうような政策を推進しております。しかし、特に日本におきましては、こういう必要性を痛感いたしております。そこで、無理のないところでそういう方向へ持っていく、こういうために、政府がやるか、政府に関連の深い公的機関でやるかということが問題になりますが、今回、公的機関によって、そのあっせんあるいは流動する土地の買い取り、売り渡しというようなことによって経営規模を拡大していこう、こういうねらいをもって本法律案を出したのでございます。  以上が大体のいきさつでございます。
  33. 松浦定義

    松浦(定)委員 私の質問いたしましたのは、この法案提出されるまでの経緯についてということでありますから、法案内容にお触れになったことは、これは当然でありますが、実は本会議でも湯山委員質問いたしておりますように、これはもう昨年の八月ごろから農林大臣一つの構想を描いておられたのでありまして、その構想は、すでに全国的に市町村、農業会議農業委員会、あるいはお聞きいたしますと自由民主党の中でも、ある程度大臣の当時の構想を承認されておった、あるいはまた非常にそれに対して支持をされておったというふうな経過もあるわけであります。私のお聞きしておるのは、そういうテレビやラジオや、あるいは新聞、雑誌に至るまで構想を発表されて、それがある程度もう国民の、特に農民の、あるいは農業指導者の頭の中へこびりついておるような内容であったものが、昨日も、あるいはまた先般も、答弁の中で聞いておりますと、非常に後退をしておるという指摘を大臣みずから受けられておるわけでありますし、私もそう言いたいのであります。いまのお考えは、私は、それは当然の結論的な問題でありまして、その経過について、大臣が特におれはこういう誠意があったのだということを、この法案が後退した前の問題として私はお聞きしたがったのであります。これは本会議で湯山委員もいろいろ指摘をいたしておりますように、当時の構想としては、私どもの立場からしても、まあこれなら何とかいけるのでないか、農民もこれはある程度了承するのでないかという、実はそういう意見を持っておったわけであります。繰り返して申し上げるようでありますけれども、十年間で三十三万町歩、事業団に五千六百億円という資金手当をして、四十年、二分でこの事業をやろう、しかも本年度は六千町歩を対象として百億の融資をする、こういうような、非常に将来性のある、現実にやや合うような、そういう法案であることを私どもは聞いておったわけでありますが、今回提案されましたのは、これとは全くの雲泥の差といいますか、そういうものがございまして、私が御指摘申し上げるばかりでなく、先般の吉川委員あるいは宇野委員等からの御質問でも、もっぱらそういう点では野党以上の強い御指摘の意見も実はあったわけであります。それでも、これはないよりいいんだということで、強引に通過をさせたいというような御意思であるかのように聞いておるのでありますけれども、この点をひとつ明らかにして、ごまかさない、ほんとうの実情をやはり農民なり農業指導者の頭の中に入れておかないと、また三年たってから何だということになるようでは私は困ると思うので、そういう経過を実はお聞きしたいのでありますが、そのことを私はかわって申し上げたような形になってしまいましたので、次に進みたいと思います。  特にこれはいまもお話しになっておりますように、農業本法というものが制定されましてから五年目、しかもこれを中心にしてそれぞれの手足あるいはまた肉をつけようとして、いろいろ苦労されておることについては、私どもはわかるわけであります。当時の農業本法制定の場合にもずいぶん議論をいたしましたが、政府としては、あくまでこれは自立農業として育成するのである、しかもこれは家族農業経営である、こういうことを強く言っておられたのであります。これに対して私どもの対案では、やはりこれは家族経営というようなものではいかない、これは共同経営でやらなければいかぬ、こういうふうに言っておったのでありますが、その終着駅では、協業と共同とがどうなるかといったような、非常にまぎらわしいことばになった点もありますけれども、基本としては、やはり家族経営といえば、日本の国民感情からいっても、自分たちだけでうちのことはやるのだということになれば、確かにそれは農業ばかりでなく、どの産業におきましても、どの階層におきましても、このことはある程度だれしも賛成を表する点であるわけであります。ところが、いまの農業経営というものはそういうふうにいかないと私は思うのです。今日でも依然としてこの法案を出される前提として、農業本法の性格である自立農業、特に家族農業経営というものは、従来に変わらないでこれを基本法の中心としていくのである、あるいは今度の場合もそれは逸脱しないのだ、こういうようにお考えになっておるのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  34. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 この法案といたしましても、また考え方といたしましても、自立経営農家の育成、こういうような基礎の上に立っておるわけでございます。しかしながら、農業本法にもありますように、協業ということも必要でございまするし、そういうものも迫られておるのが現状であると思います。したがいまして、このねらいは、自立経営農家、家族経営農業ということに基礎を置いた経営規模の拡大、こういうことにありますけれども、そればかりにとらわれてはおりません。やはり生産法人というようなものによって経営規模拡大ということも必要でございまするし、この法案とは離れますが、たとえば第二種兼業というような層が非常にふえております。こういう面におきましては、どうしても協業ということによって経営規模の単位が拡大する、一人一人の経営規模は小さくても、協業というような集まりによっての一つの単位は拡大することが望ましいことでございます。そういうことでございますので、自立経営、家族農業というものを依然として主体として進めていきますけれども、生産法人等に売り渡すというようなことがありまするので、これだけにとらわれてはおらない、こういうふうに御承知願いたいと思います。
  35. 松浦定義

    松浦(定)委員 説明をお聞きいたしますと、全くそのとおりだという点も実はあるわけでありますけれども、おそらくこれからの自立経営をやる場合、今度の法案のねらいとするところは、やはり農地の拡大にあるわけであります。水田におきましては、当時は二町五反というものを基準にして、そうして百万戸ということでございましたが、すでに先般の八郎潟の審議の場合にも、あれは五町になっておる。でありますから、二、三年で、すでに二町一五反から五町になってきた。そうなりますと、これは家族経営ではできないということは明らかであります。八郎潟のような問題については、これは集団的におやりになるから別でありますけれども、こういう形のケースに全国の農業をやるということはなかなか容易でないわけでありますから、あくまで個人の自立経営というものが中心になると思うわけであります。その場合においては、おそらくこの拡大する農地の中では、もはや家族経営というものは全然成り立たない、私はこういうふうに言っても過言ではないと思うわけであります。したがって、当時私どもが指摘いたしましたように、その当時からいまのお考えでおったなら、もっともっと前進して——たとえば、あとからも申し上げますけれども、貿易の自由化によって非常に困るといったようなことも排除されたのじゃないか、こういう点について、私は十分御理解していただけると思うわけであります。したがいまして、この点については、将来ともやはり共同化あるいは協業化といったようなものが中心にならなければいけないということが、大きな問題になったというふうに私は考えておるわけであります。  さらにもう一点、この農業本法目的を果たすためには、現在おやりになっておりまする農業構造改善事業があるわけでありますが、この農業構造改善事業というものは、今日どういうような形でやっておられるのか、あるいはまた現在の進行状況、あるいは今後の計画、そういうものについてお聞きしたい。と同時に、大臣にお聞きしたいのは、今度の構造改善事業の足とか手とか実はいわれておりますが、その一つとして、農地管理事業団というものが今度はやるのだ、あるいはまた後刻審議になろうと思います加工原料乳補給金の暫定法案等もこの一つの柱である、こういうようにお考えになっておりますが、これらの法案がかりに全部政府の言うとおりに通ったといたしまして、その結果は、農業経営というものはどういうふうになるのか、こういう点をあわせてお聞かせ願いたいと思うわけであります。
  36. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 構造改善事業の実態等につきましては、農政局長から詳しく申し上げたいと思います。  考え方といたしまして、構造改善事業を行なっておりますが、この内容は、土地基盤の整備あるいは作目をきめて共同施設をつくっていくというようなことから、体質改善構造政策を推進しておるのでございますけれども、私は、もっとそういうものの基本的な問題があるじゃないか、その基本的な問題は、先ほども申し上げましたように、やはり経営の規模を質的あるいは量的に強化拡大していくという基本がまた考えられなければならないのじゃないか。そういう意味におきまして、経営規模の拡大ということは、構造政策の基本的な問題だというふうに考えまして、この問題をおくればせながら取り上げた、こういうふうに御了解を願いたいと思います。  なお、農地管理事業団とか、あるいは加工原料乳法とか、こういうものが基本法の一環として考えられるわけでございますが、基本法といたしましても、御承知のように、あるいは生産政策、あるいは構造政策、あるいは価格政策というものをそれぞれねらいとしての方向づけを行なっておるわけでございます。そういう意味におきましては、加工原料乳の不足払いの法律というようなものは、一つの価格政災といたしまして大きく取り上げたものでございます。その他いろいろな法律、たとえば先ほど御論議を願っておりました酪農振興法等におきまして、草地造成をする、あるいは学校給食なども入っておりますが、こういういろいろな法律を出して、すでに御可決をいただいておりますもの、あるいは従来基本法が出てから施行されている法律、こういうものすべてが、農業本法に基づいて総合的に農業政策を行なっていくというもののブランチというものでありますことを、いまさら申し上げるまでもないと思いますが、御了解をお願いしておきたい、こう思っております。
  37. 昌谷孝

    昌谷政府委員 構造改善事業を始めましてから今日までの実施の状況について、簡単でありますが、申し上げますと、御承知のように、三十六年度から事業の準備を始めましたが、実際に事業に着手をいたしましたのは三十七年度からでございます。  パイロット地域として当初九十二を予定いたしておりましたが、その後、事業を進める段階で地元の同意その他の問題がございまして、現在パイロット地区としてやっておりますものは七十二地域、それから一般事業としてやっておりますものは、三十九年度まで三ヵ年を経まして七百二十一地域ということに相なります。その七百二十一地域の中には、昨三十九年度から、同じ市町村で別の地域についても希望があればやっていただくということにいたしましたので、三十二の、いわゆる第二ラウンドと申しますか、第二次地域を含んでおります。このような状況で、三十九年度までに事業を現に実行中の地域が、パイロット地域を含めまして約八百、四十年度では、予算では再度実施を含めて四竹五十の地域を予定いたしております。おおむね新規地域が四百程度と相なろうかと思っております。  そのような状況で、発足当時、理想的な進度として描きましたものから比べますと、必ずしもそのとおりにはいっておりません。多少事業のテンポはゆるんでおりますけれども、これは一面私どもとしても、地元の御意思を尊重して無理なくやってまいりたいというようなことで、県等にも指導いたしましたこととも関連をいたします。そのようなことで、当時約三千百程度は事業が実施できようかと思っておりましたのに対しまして、四十年度でそれの約四割程度は事業に着手するといったような状況になるわけであります。この事業の実行の経過を見てまいりますと、基盤整備をまずやって、その整備された基盤の上に、在来の小農技術を中心とした小農法と離れた、やや大農的な農法に基づく経営規模、耕作規模の大きな農法を、そういう地域に定着させるというような努力が現に続けられております。いわば大量生産、大量販売といったようなことを現在の土地基盤を整備しながらやっていくというのが、この事業の、作目はいろいろ分かれておりますが、共通した一つの努力目標でございます。もちろん、その過程で、純粋の五戸ないし十戸の農家の方々の協業経営がこれを契機として発足したものもございますが、むしろ、大部分は、在来の経営規模の上に十戸あるいは数十戸の農家の方々が大型の農法を共同でこなしていくというふうな、いわば協業組織の形での大型化が、大多数の市町村での共通の行き方で、その過程にいろいろ困難な問題はございますけれども、現在せっかく取り組み中でございます。それらを進めてみての過程での御議論として、御批判もありますし、われわれも感じておりますのは、やはりそういった間接的な、いわば資本装備の充実とか新しい大型農法の導入とかいうことでいくにしても、やはりもう少し個別農家の経営規模をより直接的に拡大するような方策が相伴うことを、構造改善事業を進めることと並行してもっと充実させていってほしいということと、それからやはり流通関係の諸施策がもっと十分に整っていくことが並行して進められなければいけない、その二点が強く地元実施町村からも希望されておりますし、また第三者の方々からもそういう御忠告を受けております。そういう意味合いで、今後とも個別農家の経営規模の拡大と、構造改善事業でやっておりますより直接的な農法の大型化というものを、協業組織というような形でつなぎあわせていくことが今後の方向であろうかと思っております。
  38. 松浦定義

    松浦(定)委員 そういう御答弁は、もうみんなよく聞いておりますし、わかっておるわけなんです。私はなぜそういうことをお尋ねするかといいますと、やはりいまお話ありましたように、構造改善事業にしても、当時農業本法をつくる時分は、この次に構造改善事業をやったりすれば、非常に農業が発展するのだということであったが、こういうふうな考え方でいけば、非常に後退とまでいかなくても、目的を達するのにはほど遠いのではないか。したがって、今度さらにまたこの農地管理事業団をつくり、あるいはその他価格保持のための牛乳不足払いという御意見先ほどありまして、いろいろの御計画をされておりますけれども、この構造改善事業も、いまお話にありましたように、やはり当初計画の三千百地域から見れば、これは大幅に進捗状況としてはおくれておる、こういうふうに実は考えておるわけであります。  そこで、今度の農地管理事業団にいたしましても、いままでの質疑内容をお聞きしておりますと、パイロットとしてことしに限り全国百町村、一千町歩、二十億の融資をするのだというお話であります。しかし、そうであるならば、やはり今後四十一年度からどういう計画でどの程度進めるかということについて、この点を明らかにしていただきたいと思うのでありますが、いままでお聞きしておるところによりますと、現在の年間七万町歩の移動をひとつ俎上にのせて、そして計画の中に入れてこれをやるのだ、こういうお話であります。そうしますと、これは計画の中に入れなくても、まあどうにかこうにか、いままでの農協に対する信託事業の一環とか——あるいはそれぞれ地域内においての農業委員会がこの移動には全部タッチしておりまして、農地以外のものには供させないということになっておりますので、一々このことについては交換分合等についてのタッチをしておりますから、何も不正な移動はしておるとは思わぬ。正常な移動をして七万町歩というものがあるのに、それをこれだけ大がかりなといいますか、内容については大がかりでありますが、やることについてはそれに適合しないような制度の実現でもって事足れりとお考えになる。いままでの御説明であるといたしますならば、農業構造改善と何ら変わらないような形になってしまうのではないかと私は思う。農業構造改善事業必ずしも全部だめだとは申しません。たとえばこの内容をつぶさに検討してまいりますと、いろいろの共同施設とか道路とか、そういうものについてはある程度やっております。しかし、個々の経営になると、なかなか計画どおりにはなっていない点があって、いろいろ指摘されておるのでありますから、こういう点は、これからの構造改善事業というものもずいぶん変わってくるのではないか。当然社会の進展、変化によっていろいろの事情が変わってくると思います。そこで、そういうように変わってまいりますと、農家自身は非常に困るわけであります。したがって、私は、こういうような面についても、これからの農政指導の上においても十分ひとつ恒久的な対策を持っておやりになっていただきたいということを、まずこの点では指摘いたしたいわけであります。したがって、先ほどから申し上げておりますように、やはり今度の法案を御提案になりました趣旨についてはわかるわけでありますけれども、この内容の実現について、七万町歩だけを軌道に乗せるということだけでは意味がない、こういうふうに私はこれはもう断言してはばからないと思うわけであります。したがって、そうでなくて、やはりこれは無理にやらないとはおっしゃっておりますから、農家の要望があればそういう地域指定して、その地域指定した場合においては、そこの地域内の全農民が喜んで自立経営に踏み切れる、あるいは農地を提供した者が安心して他の産業につける、こういうような一連の計画の中で進められる計画としては、最大限どういう程度までおやりになろうとお考えになっておるのか、この点ひとつ大臣から御説明を願いたいと思います。
  39. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私もいま御指摘の御趣旨のように考えております。本年度はいろいろな都合上パイロット的なものになりました。これは率直に申し上げますと、この農業経営規模の拡大ということにつきましては、消極的な、できないのじゃないかという考え方のものと、あまりでき過ぎてしまって金がかかるのではないかという財政当局の意見などもありまして、先ほどいきさつについて述べろと申されましたが、いきさつを申しますと、そういうような経過があったわけでございます。しかし、これはパイロット的な経験の上に立って全国的に行なうべきものだ、決して後退すべきものではなくて、前進すべきものだ、私はこういう考え方のもとに立って、こういう農地管理事業団による経営規模の拡大、こういうことを考えて、御審議を願っておるわけでございます。でございますので、管理事業団の構想というものも、パイロットだけの問題ということでありませんので、全国的にこれを行なっていくという前提のもとにこういうものをつくっていく、こういう考えでございます。でありますので、いまのお話のように、ほんとうに構造改善をしていこう、そうして経営規模を質的にも量的にも拡大強化していこう、こういう要望が非常に強いところを逐次選びまして、でき得るならば、いまの七万町歩だけではございません、もっと積極的にいまの方針、政策に沿うような形で、日本農業農村の構造を改めていきたい、こういうふうに考えておるのは、御指摘のとおりの考え方に立っておるのでございます。でありますので、いま数字的な計画をお示しするのは少し早くて、できかねますけれども、全国的にこれを拡大していく、こういう前提のもとに、パイロット地区としてことしはやっていく、こういうふうに考えておる次第でごごいます。
  40. 松浦定義

    松浦(定)委員 大臣の御答弁は、いままでの御答弁から少し私は前進しておると思うのです。実情に即して、この基本的な考え方に照らしてこれから大いにやりたい、こういうお話ですから、必ずしも七万町歩にこだわるわけじゃないわけです。私は先ほど申し上げました一番最初大臣の構想、三十三万町歩までにはすぐいかないとしても、そういう考え方で当然これは進めるべきものであると思うわけであります。もしそうでないといたしますと、先ほども言ったように、構造改善というものは、全国三千百ヵ地域のものが今日の段階では約八百地域くらいしかできておらない。したがって、これは町村に一地域ですから、その町村の中で全国平均が百六、七十戸くらいだ、こういう話を聞いているのですが、そうしますと、そのほかの地域の農民はその恩恵に浴さないことは明らかであります。しかし、いずれは近い機会に自分たちもそうなるのだという甘い希望を持って、このことを市町村としても設得させてやっておる。そのことがあまり成功しないものでありますから、まあまあよかったというようなことを言っている者もないわけじゃございませんが、しかし、私はそれではいけないと思うのです。この構造改善ですら、かりに成功したとしても、一地域のうちの一部の農民だけが恩恵を受ける。したがって、この管理事業団の行なう事業は、それ以上に農民の希望から見れば薄いと思うのであります。そういうような一地域あるいは一部の農民だけが恩恵を受けるようなものを、今度の農業本法の柱である、あるいは手だ、足だ、肉だといって、こうして国会で論議をする、あるいはもしそれがいいとなれば、それに対して熾烈な地域指定の争奪戦的なものが起こってくる、私はそういうような政治では困ると思うわけです。なぜ困るかと申し上げますと、たとえば農業本法制定というものは、自立農家育成、農業を守るということになりますと、何としても貿易の自由化のあらしの中に立たされておるわけでありまして、貿易の自由化のあらしに立たされておる者は——逆に都市周辺の農民は恩恵を受けておるわけであります。農業をやめて、その農地が工場に高く売れるわけでありますから、それは喜んでおるわけでありますが、少なくとも中央地帯あるいはまた山村地帯になりますと、全農民がこの貿易自由化政策によって非常な被害を受けており、犠牲になっておるわけであります。ところが、構造改善や今度の管理事業団というようなものの恩恵は、全くその全体から見れば一地域であり、一部の農民しか受けられないような、そういうものなのです。大きい政治の中でのそういう犠牲は、全農民、山の中で家族をかかえて苦しんでいる開拓者も、に受けるわけであります。しかし、法律の適用はおそらくそういうところへはいかないのであります。極端なことを申しますと、売り手ばかりあって、買い手のないような地帯の農村や部落には、おそらく今度の指定はされないと思う。もしそうでなく、買い手のない地帯に対してもどんどんこの指定をされるというなら、それは私は決して無意味法律だとは申し上げないのでありますが、そういうような点、農業本法の柱だ何だとおっしゃいますけれども、重ねて申し上げますが、貿易の自由化によって犠牲を受けておる者を救うための手段方法として、一地域、一部の者だけが——これが内容がいよいよ進んでまいりますと、いろいろまたこの中にも疑惑を受けるような地域指定もあり、また、その中における買い受け者あるいは売り主等の問題もないとは限らないと私は思うのであります。そういうような点については、先ほども、私が、この法案ができることによって農業経営は安定できるのかどうかとお聞きしたときには、相当自信を持った御答弁があったわけでありますが、いま申し上げました点について、今度の法案成立した場合にはどういうことになるのか、あるいは現政府のすでに行なっておる経済開放体制の中における貿易の自由化というものは、農民については間違いでなかったのだ、そのことのひずみはこれで直せるのだという自信を持った法案として御提案をされておるのかどうか、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  41. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 貿易の自由化に対しまして、この法律が強力なささえというか、これから守るところのものになるかどうかということは、これの進展といいますか、こういうものがどんどん行なわれてくるかこないかということにかかっておると思います。貿易の自由化に対する方法等につきましては、いろいろ申し上げたいことがありますが、農地管理事業団がその波を避けていくかどうか、これからの進展いかんによると思います。  それからなおお尋ねで、これはパイロット的だから、全国的にだれもがこういう政策に均てんしないじゃないか、これは確かにそうでございます。パイロット的でもございます。しかし、これはいたし方ない。たとえば価格政策につきましても、米の価格をきめるにいたしましても、米を売るところもあり、売らない農家も相当ある、そういう点もございます。あるいはいま御提案をして御審議を願っております加工原料乳不足払い等につきましても、牛乳生産しないものはそれの政策に均てんしない、こういうことはあるのでございまして、全部の農民にその政策が均てんしていくことが望ましいのでございますけれども、農業につきましても、いろいろな形態に分かれておることでございますので、全部に均てんするようなことには相ならぬ場合が相当あることは御了解願いたいと思います。しかし、少なくとも開放経済、自由化に対しまして、日本農業の体質を強化する、構造を改善していくということにつきまして、いま構造改善あるいは土地基盤の整備等の生産対策あるいは価格対策としてとっておる問題、こういう問題もございますけれども、根本的には経営規模の拡大というようなことをねらいとして進めていかなければ、なかなか自由経済、貿易の自由化に対処していく基礎ができないのじゃないか。ヨーロッパのEEC等におきましてもそういうような傾向が非常に強い。農業は世界的に他産業に比較してかよわい立場にあります。ことに貿易の自由化につきましては、私から申し上げるまでもなく、日本農業は非常な窮地におちいるような傾向があります。先進国からは貿易の自由化ということで迫られておりますし、後進国からは南北問題ということで、農産物を日本に輸入しろ、それに対してのいろいろな関税とかあるいは刈り当てとかをなくして自由化をしていけ、こういうふうに迫られておるのが日本農業の立場である。この日本農業をわれわれは守っていかなければなりませんが、その守り方の根本的な問題といたしまして、短日月にこれが実現するものではございませんけれども、農地管理事業団による経営規模の拡大、こういうようなことはどうしても進めていかなければならぬ問題だ、こういうふうに考える次第であります。
  42. 松浦定義

    松浦(定)委員 それはいま大臣のおっしゃいました、たとえば米価の場合には、米を売らない人にまでそういう浸透はしないのだ、あるいは乳価の場合でも、乳を売らないような人、あるいは飼ってないような人にまでそういうことはいかないのだから、一部のものにいってもこれはやむを得ぬ、こういうようなお話で、この管理事業団の農地拡大も、一部のものでもこれはやむを得ぬ、こういうような御説明でありますけれども、今度の場合は、私はそうではないと思うのです。それは米の場合あるいは乳価の場合においては、やはりある程度、売る売らぬは別としても、全体に対して私は浸透している政策だと思うのです。しかし、今度の農地の拡大の問題については、全体には何にも関係がないことだ、むしろ、そのことによって、先ほどもちょっと申し上げましたように、農民同士で問題が起こるような問題も出てくるわけなんです。ですから、この問題について、パイロットだからしかたがないというようなお話でございますけれども、近い将来において、先ほどお話しになりましたように、もっともっとこれを拡大して、それこそやるとすれば、私は全農民に行き渡る政策でいかなければいけないと思うのです。そういう点については、相当金もかかるし、他の産業といろいろの関係でやれないんだ、こういうお話もございますけれども、いまの貿易の自由化によっての農民の痛い打撃というものは、やはりいつも言っておりますように、現在一見して見られるように、この経済の急速なる伸展によりまして、農民や中小企業がひずみに会った。だからそれを直すのだという中で出された法案としては、あまりにも現実性が非常に薄いのでないか。のみならず、いま大臣の御答弁でありますと、このひずみ是正のために出された法案に対する御説明ですら、まだ他のいろいろの問題等もあってこれができないといったような、非常に引っ込み思案の中での御説明が多いのでありますが、そうでなしに、私は、農林大臣は何としても農業一本でお進みになったって一向差しつかえないと思うのです。ところが、これが大蔵大臣のところまでいくと、なかなかこれはできない。これもやはりやむを得ぬ場合もあると思います。大臣のお考えになられることは、閣僚としてはいろいろお考えにならなければならぬと思うけれども、われわれから見れば、やはり大蔵省がこうだから、あるいはまた通産省がこうだからといって、直ちに農民の意思に反してまで後退される必要はないんじゃないか。ですから、私どもは、この法案通過には、なるほどそれは最初の構想は——大臣の構想とまではいってない点については残念でありますけれども、しかし、与党の諸君だって、最初大臣の構想をある程度認められたし、あるいは先ほど言ったように、全国農民や農業団体にまである程度の好感を持たせたいという責任の上からいっても、やはりこの問題は、当時のあれまで修正したっていいと思うのです。ところが、そういうような意見一つもない。とにかく何でもいいから、ないよりいいから、通そうでないかといったような御質問が、先般も与党の諸君から出ておるわけであります。批判をしながらも最終的には通したいという。私はそれでは困ると思うのであります。通すことによって修正すればいい、来年直せばいいんだといっても、情勢が変化してくれば、またできなくなってしまう。ですから、そういう、極端に言って有名無実なものであるならば、この際、やはり断固として、与党の諸君だって、これを一時保留してでも、やはり大蔵省なりそういう関係者あるいは第三者の産業から見て、農業はいかにもかわいそうだ、あれではやはりだめなんだということになれば、この法案はやはりもっともっと生きていくのではないかと思うのですが、与党の諸君も、あるいはまたそういう関係者としても、単なる目先のことだけ考えて、われわれのもとへ、これをどうしても通してくれ、こういう御意見が出てまいりますが、私どもは、やはりこのことによって農家が自立をされ、あるいはまた農地を手放す離農者がほんとうにああよかったというような内容を持つものであるならば、必ずしも単に形式的に反対とかなんとかいうものではないと思うのであります。しかし、いまお話を申し上げ、あるいはお聞きしておるようなことで、なるほど大臣としては、今年に限ればテストケースである、来年からは何とかするとおっしゃいましても、そういう点が明らかに法律の中にない、あるいはまたそういう確言がなされない限り、これはなかなかたいへんだと私は思うのであります。ですから、私は、この法案内容につきましては、続いてまだいろいろお尋ねしたいと思いますけれども、時間の関係もございますから、かいつまんで進めてまいりたいと思います。  この法案が持っております事業団の事業の任務についてでありますが、これは私どもとしては、これからこの自立経営農家をこれによって育成し、他の産業者に匹敵するような所得をあげるということになりますと、やはりこの運営等につきましては相当思い切った内容が盛られなければならない、こういうふうに思うわけであります。この組織運営等について、ひとつ御説明を願いたいと思います。できるだけ簡単でよろしゅうございます。
  43. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 この仕事の全体の取り進め方につきましては、参考資料といたしまして、実施要領案の骨子というのを御配付いたしました。簡単に申しますれば、上からの強制的な仕事にもならぬように、かつ、各地の実情が非常に補雑でございますので、この仕事にとりかかろうという町村におきましては、農業委員会を幹事といたしまして、関係者で集まって、その村の事業量の取り進め方をきめていただきたい。事業団は、そのやり方、これを農地管理方針と申しておりますが、農地管理方針を尊重して、法律に定められましたところのあっせん、売買、貸し付けの仕事を行なう、こういう基本的な考え方をとりまして、かつ、その事業は、都道府県が相携えまして、村とともに指導に当たる、こういう基本的な考え方をとっております。機構の問題にお触れになりましたが、事業団といたしましては、できるだけ当初は数を少なくいたしまして、しかし、仕事の性質上、村には事業団の職員をぜひ一人ずつ配置いたしまして、仕事の円滑を期したい。それから県段階におきましては、経理事務の問題がございますから、三人程度の連絡事務所を置きたい。本部は東京に置きまして、当面小人数でこの仕事に当たる、かような考え方で運営していきたいと考えております。
  44. 松浦定義

    松浦(定)委員 この法案が持っております性格からいって、いまお話しになりましたように、市町村に一人ずつ置くとか、あるいはまた役員がこうであるとか、こういうお話でありますけれども、おそらくこの問題は、私は本年に限っては、調査その他の問題があるといたしましても、そんなに問題ではないと思うのです。むしろ、このウエートを市町村における農業委員会、こういうものに重点を置いて考えれば、一番最初に申し上げましたように、これらの仕事はスムーズにいく面が多くあると思うわけであります。したがって、こういう点について、ただ単なる意見を聞くとか、あるいはまた協議会をもってそれにかえるとかいうようなことでなしに、こういう問題は、もっともっと私は現地の実情に即した運営等がなされなければならぬと思うのでありますが、いまお話しになりましたような形でこれは十分であるか、あるいはまたさらに先ほどお話のありましたように、来年度からそれを拡大をして、パイロットでないといったようなことを名実ともにやる場合においても、このままの運営機構で、事足りるのかどうか、そういう点を聞いておきたいと思います。
  45. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 四十年度の経験から将来の問題を検討してまいりたいと思うわけでございますが、私どもといたしましては、法律はパーマネントに全国的にやれる法制として整理をいたしております。それから機構につきましては、事業量が著しく膨大にならぬ限りは、県段階までは当分いまのままでいいのじゃないか。問題は、事業量が拡大いたします際に、市町村に配置するスタッフの問題がそれに応じて拡大することと存じます。私ども本事業団をぜひつくりたいと思いますのは、この問題を担当し、天職と心得えてやる職員の養成も、この事業団の設立の一つの大きなねらいといたしておりますので、なれてまいりますれば、一人の人間が数ヵ村を受け持つということは可能である、かように考えて、この程度におきまして将来の充実を考えていきたい、かように考えております。
  46. 松浦定義

    松浦(定)委員 事業を拡大するに従って、当然これでいいと思ってもふやさなければならぬ面は出てくると思いますから、この点については深く触れる必要はないと思うわけでありますので、この程度にしておきます。  実は先ほど申し上げましたように、事業団の事業についても、全国各町村長とかあるいは全国農業会議所等から、それぞれの答申あるいは具体的な意見相当出されておるように聞いておりますが、こういう点のおもなるもの、たとえばこの事業に対しては非常にいいとか、あるいはこの点は悪いとか、やるとすればどうだとかなんとか、そういうような重要な点等がありましたら、ひとつ明らかにしておいていただきたいと思います。
  47. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 私どもの手元には、全国農業会議所が通常総会をいたしまして、三月五日に意見提出されております。それからごく最近でございますが、四月五日に全国町村会長会議で御意見をまとめられて御提出があります。前者、農業会議所の御意見といたしましては、「農地管理事業団法案は直接的な自立経営の育成促進施策とし七、その意義は重大である。法案内容については、農林大臣の諮問に対する中間答申におけるわれわれの提言と関連して、すでに数次にわたり施策の改善充実を要望したところである。しかしながら、兼業化の進行が急激なる現情勢下においては法案の改善すべきことは直ちにこれを改め、事後に期すべき問題は可及的速やかにその実現を期すこととして、今国会においてその審議を促進し、必らず同法案を可決成立せしめ、自立化を志向する農業者の期待に応えるよう要望する。」この中で、数次にわたり要望したところであるという問題につきましては、たとえば離農の問題というようなこともあわせて施策を進めるべきであるというような点が、前からあげられております。町村会のほうは、「今日の農村の急激なる変化に対応して、農業の構造政策を推進するためには、農地管理事業団法案は有効なものであって、今国会において成立実現を見るよう御配慮賜りたいと存じます。但し、本法案並びに関連する事項として下記の諸点を十分に考慮せられたく特に要望致します。」とありまして、一つは、管理協議会、駐在員等の運営にあたり町村財政に新たな負担をかけないこと、融資条件を年利二分、四十年にすること、それから離農を強制するごとき運用は行なわないこと、それから地価が非常に高いので、異常な高値に対して特別の措置を講ずること、二番目に関連施策として、農地法の改正の問題、それから農業委員会制度の改善の問題、それから農地価格の上昇傾向の抑制措置に関する問題、離農者の対策の万全を期する問題、農産物価格の安定策に関する問題等があげられております。
  48. 松浦定義

    松浦(定)委員 直接私どもが関係者の方々にお聞きいたしましても、これに対して、いまのそういうような要望的意見はあるもございますけれども、原則的にそれを直ちに、農民なりそういう面から聞いた場合の集計といいますか、世論調査的なものからいたしますと、おそらく半分以下かこれでもよろしいといったような空気でなかろうかというように推察されるわけあります。ですから、先ほどからもいろいろ申し上げておりますし、大臣も必ずしもこれで万全だといったようなことは、御答弁の中には聞き取れないのでありますが、少なくともこの実施段階においては、市町村なり農業委員会、特に中央における農業会議所等にいたしましても、いろいろ農業の実態を考えれば考えるほど、これから出てくる諸問題については、今後の障害にならないように、極端に申し上げますと、こういうものが出たことによって、別な新しい観点に立って討議をすることさえできなくなるような面が、ややもすると私は出てくると思うのです。これでいいのだ、あれを出したから、またこれをやるわけにいかないのだ、こういうことになりますので、そういうような意見が出てくると思いますが、この点については、これからまだ相当審議もあろうかと思いますから、十分これらの点につきましては、先ほども申し上げましたように、実施の段階で配慮をするとかなんとかいうことでなくして、この内容を明らかに修正をするなり、あるいはどうしてもできない場合には、これを十分意見を聞くまで延期をするなりするような英断をもってやらなければ、まあまあということで説き伏せて、あるいは納得しないままにこれを通すということでは、そういうような要望が出ておる限りにおいては、私は実施段階において問題が残ると思うのです。農業団体の機構を改正するとか、あるいはまた市町村の合併というようなものに関連する問題でありますと、これはおそらく今日まで相当の問題があったわけであります。ところが、この問題につきましては、先ほど申し上げましたように、直接聞いた農民は、もう全部自分がそれに該当するのだ、売りたい人は必ず買ってくれるのだ、ほしい人は低利で長期の金でもって買えるのだ、こういうふうに自分本位だけに考えておる。あるいは市町村長にしても、自分のところだけはこれによって何とかしたい、こういうふうに言い伝えられ、聞かされておりますから、わりあい問題でないわけであります。しかし、そういう点を察知して、市町村長なり農業団体は、内容はともかくも、何とかしてこれを獲得しなければというような運動がなされつつあることは、当然だと私は思うわけであります。したがって、こういう点につきましては、これから十分考えてもらわなければならぬと思いますし、私どもとしては、このような内容につきましては、了承することはなかなかできないということをひとつ御理解をしていただかなければならぬと思うわけであります。  そこで、約束の時間も大体参りましたので、私は最後にお聞きしておきたいのは、これによって離農者というものが出るわけでありますが、聞くところによりますと、この離農者対策については、当時は相当深く検討された。あるいは農業会議所あたりはその答申に基づいて相当長い期間検討して、これならばというような具体的な要望も出ておるということを実は聞いておるわけであります。しかし、大臣の御説明によりますと、今回はそれは引っ込めて、適当な機会に考える、こういうことでありますが、これではやはりパイロットとして切りかえざるを得なくなってしまうのです。もしそれが出ておれば、いろいろ問題がありましょうとも、本年度もパイロットということでなくして、ある程度軌道に乗る第一段階に着手できたと思うのですが、そういうものがありませんので、それをやるといっても、あとどうするかということで行き詰まる、そういう内容の非常に強いものでありますだけに、この離農者対策については、非常にむずかしいわけでありますが、将来といいますか、この法案をかりに来年度から強く実施し、先ほどお話のありましたように、七万町歩といったようなものを目標でなくして、少なくとも全農民の要望にこたえ得るような計画をするということになりますと、大幅な離農者対策というものも出てまいります。この点について、いま一言だけお伺いしておきたいと思います。  それからもう一つは、今度の事業を推進するにあたりまして、地域指定というものが問題になるわけであります。私はこれを大幅に分けまして、水田地帯とかあるいは畑作地帯——農業構造改善あるいはまた農業本法の示すところによりまして、選択的拡大の方針というものは、やはり何としても、水田地帯よりも畑作地帯に、あるいは酪農、果樹地帯に多いわけであります。水田地帯におきましては、貿易の自由化も、農民全体のウエートからいけば、必ずしも大きな痛手を受けるというふうには私は考えていないのであります。したがって、極端に申し上げますと、貿易の自由化を受けるのは、畑作あるいは酪農、果樹地帯であると同時に、農業本法のできたのも、やはりそうした面についての非常に強い希望が農民から出されておる。こういうことを考えてまいりますと、政府の考えとしては、今度の事業団はどういう点にウエートを置くのか。たとえば水田地帯あるいは畑作地帯、酪農、果樹といったような方面に分けてまいりますならば、全国百力町村、これからはもっとおふやしになると思うのですけれども、それだけ考えた場合においても、この地域指定とかいうものについてどういうお考えを持っておられるのか。  それから時間がございませんから、続いてお尋ねしておきますが、その場合に、畑作、酪農、果樹ということになりますと、いままでの農業の実態から申し上げましても、これは九州まで全部一貫してありますけれども、なかんずく問題の多いのは、東北から北海道にかけての畑作地帯であります。ですから、この東北あるいは北海道地帯といったようなことだけ指摘をいたしましても、このような事業団というものがもし実現するといたしました場合においては、どういうようなお考え方でもって、この点についての地域指定ばかりでなく、全体での方針をお考えになっておるのか、こういう点をひとつ明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  49. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 離農対策でございますが、農地の流動化を経営規模の拡大のほうに向けていこうというような考え方でできておるのでございますので、必ずしも離農させるということを前提としておるわけではございません。しかし、この成績をあげるといいますか、この目的を円滑に推進していくというためには、離農対策というものが伴うことが、より効果をあげることは申し上げるまでもございません。でありますので、いまもお話がありましたように、その対策等も直接考えなかったわけではございません。たとえば開拓者や海外移住者のような特殊の場合について考えているように、直接的な対策ということも考えなかったわけじゃございません。しかし、繰り返して申し上げますように、本年度におきましては、パイロット的な行き方をするということでございますので、これは後日に譲ったわけであります。離農が円滑に行なわれるためには、基本的には他産業の賃金とか雇用条件の改善、あるいは社会保障の充実、地価の安定、こういうものを伴わなくてはならないのでございますが、これとあわせて、離農者に対して農政上直接的な援護措置を講ずることも考えられます。現にフランス等におきましては、そういうものを法律上きめておるのでございます。でありますので、これは今後その方向に向かって総合的に検討を進めていく必要がある、こう考えます。  それから地区の指定でございますが、詳しくは農地局長からも御説明申し上げますが、水田とか畑作とか、あるいは果樹地帯とか、あるいは東北、北海道とかというように画一的に考えておりません。御承知のように、知事が町村等の事情をよく調査して、町村長の意見等を聞きまして、要望の強いところを選んでくることに相なっておりますので、そういう選んできました地区をよく検討いたしまして、そういう場所を指定する、こういうふうにいまのところ考えておりますので、画一的に水田とか、畑作とか、あるいは場所的にどことか、こういうふうにあらかじめ考えておらないのであります。
  50. 松浦定義

    松浦(定)委員 むろん、法文の上からいえば確かにそうでありますけれども、現地の実情というものを——私は、やはりそういう原因があるから、こういうものが出てきたと思うのです。原因も何にもなしに、こういうものがあるから——きのうも林委員からずいぶん指摘をしておりましたが、こういうものができるから、さあ申し込んでこい、こういうことでおつくりになったのじゃない。こういうものをつくらなければならないという観念に立っておつくりになったと思うのです。ですから、いまもお話しのように、知事がそういうものを言ってきたらやるんだ、これは確かに手続としてはそうであろうと思いますけれども、それじゃ知事が言ってきたものを全部取り上げるかというと、こちらでそうでもない、ああでもないといってやられるわけです。そのときに、いま大臣がおっしゃいましたように、水田とか畑作とか、あるいは果樹、酪農とか考えていない、北海道とか東北とか九州とか考えていない、こういうことでありますけれども、これはどうしてもこうしなければならぬということになれば、たとえば百町村の今度のテストにいたしましても、これがある程度一地域に偏在するようなことがあってもいいことになるのです。そうなれば、たとえば九州は平均からいえば三つしかいかないが、一地区に十やる、北海道は一つもやらぬ、こういうことにもなり得るわけですが、これはそうではなしに、均てんして、知事の強い要望——書類の整備くらいは私はどうでもできると思うのです。この書類の整備、是か非かを見る場合に、それは農林省は相当の機関を持っておられますから、出てくるまでにはある程度打ち合わせはしておるかもしれぬけれども、いよいよ現実の問題としてやるとすればたいへんだと思う。そうすると、四十六都道府県に百だから、平均的に二つ半くらいずつやる、大きなところは二つ、小さいところには一つということになったら、法の趣旨に反することになる。ということは、大臣のいまおっしゃったことと反することになるのですが、地区の指定については、そういうことにこだわらないで、実態に即して、必要とみなした場合には、ある程度の地区に偏在することもあり得ると理解してよろしいかどうか、その点だけ明らかにしていただきたい。
  51. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたしますが、実はこの仕事は各方面からいろいろ御批判がございますように、非常にむずかしい仕事でございまして、単に補助金を配るというような内容ではございませんので、やはり現地で相当慎重に御研究願って、申し出をしていただく必要がある仕事と、かように考えております。したがいまして、もし法案の御審議が終わりましたならば、私どもとしては、相当芸をこまかくして、各地にいろいろ御説明して、御慎重に御計画の上、お申し出を得たい、かように思っておるわけです。その際の考え方といたしまして、パイロットでございますから、私どもの希望から申せば、できるだけ多くの県において試みられることを期待するわけでございます。土地事情は、先般来いろいろございますように、非常に複雑でございますし、かつ近郊化しております土地等では、必ずしもこういうものが出てまいらないではないかと思われる面もございますので、必ず各県に二個とか一個とか頭から割りつけていくという考え方はとりません。その御要望と御計画のりっぱなものからぜひこれを取り上げていきたい、かように考えておる次第でございます。
  52. 松浦定義

    松浦(定)委員 りっぱなものからと言われるが、りっぱなものであるということをだれがどこでやるかということはめんどうだということを申し上げておるわけで、これはひとつ十分考えておやり願いたいと思うのであります。  それからもう一つ、これはきわめて現実的な問題でありますが、やはり先ほどもちょっと申し上げましたように、買い手のないような地帯の農地は、売り手が非常に悪いわけであります。そういう場合には、国というか、事業団が買い取って、これを適正な機関に貸しつけるなり、あるいは売り渡すなりするということはおやりになるわけですか。
  53. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 この事業は、農地として土地を売るなり処分をしようという方から農地として生産により効率的に使おうという方々に売ろうという考え方でありますので、やはり当該地区において売りと買いのバランスというものを想定いたしております。したがって、売り一方のところということに相なりますと、それを買って事業団がただ抱いておるという形では、私どもの法案では一応予想をしておらないのでございます。そういうところ、いわば後進地域で、そういう地域に対します政策は、また山村振興なり何なりの別の角度からこれを行なうべきもの、かように考えておる次第でございます。
  54. 松浦定義

    松浦(定)委員 私は、そういう点を別の角度からやるというのではなしに、この事業団でやるべきだと先ほどから申し上げておるのです。買い手のあるようなところだけ世話をするというのでは意味がないわけであります。それは何も好んで買い手のないようなところを——いままで農地法に縛られて、農地だ農地だといって苦しんでいることは、何も農民の責任ではないと私は思うのです。それは農民の経営の悪かったことも私は認めますけれども、原則として制度の上からいって、これはやはり問題にしておるのではないか。そういうものを解決するために、今度はこういうものができたのだ。極端に申し上げますと、先ほども申し上げましたように、世論は、今度の法律ができたら、おまえたちも土地を買ってやるんだ、そしてほしい人たちには安い値段で売ってやるんだ、だから今度はわれわれはこうだというようなことが伝えられまして、ずいぶんこれに対しては関心を持っておる者があると思うのです。いまの局長お話によりますと、買い手のない土地は買わないのだ、こういうことであります。そうしたら、買い手のない土地、つまり、売らなければならぬというような、非常に困っておる農家はどうなるのか。別のことで考える——これ以上のことは考えられないと思うのです。おそらく別のことは、いままでやっておるのです。別のことをやってもできないから、今度の法案ができた。私どもは、その点について、根本的に今度の法案については賛成できない点がそこにあるわけです。たとえば、別の方法考えるというなら、農地法を改正して——山村の奥地地帯の開拓はどうにもならないと思うのです。そういうような土地では、農地法を改正して、そうして山林でも何でもするというのなら、いまの事業団ではそういう心配をして買い手は買えないけれども、幾らでも木を植えるということならば、買い手がある。殺到してくるのです。いままではそういう実情なんです。その農家に木を植えさせれば買い手が幾らでもあるにかかわらず、この事業団では買えないんだ、おまえたちは別なことをやっておるから生活をせよと言われても、それは今日まで至れり尽くせりだという法律だとおっしゃると、法律全部を適用してもなおかつどうにもならなくて、負債を重ねて、出るにも出られない、こういう実態が現実に多くあるわけです。これは私は現地で見ておるわけです。だから、私は今度の法律を聞いておると、もしこの法律が出るというなら、われわれとしてはいまのところ賛成はできないけれども、もしあなた方が浮かばれるようなものであるならば考え方を変えましょうと言って、私は回答しておる。ところが、いまお話しのように、そういう人のために一つもためにならない事業団だったら、これは与党の諸君でも賛成しないと思うのです。こんな買い手のあるところで、余裕のある人たち、余分な金を持っている人に、そういう三十年、三分なんという金を貸してやるというのならば、幾らでも買い手が出てくると思うのです。売り手がなくて、買い手ばかり出てくるのが、この法案の実態ではないかと私は思う。それでは困る。買い手がない、そういうのを買ってあげましょう、だからあなた方はひとつ適当な仕事をお世話をしようというところまで親切な法案でなければならぬ。私は、農業本法の足となり、あるいに構造改善とともに歩んでいく今度の事業団ではない、こう思うわけです。そういう点で、私はどうも納得ができないわけでありますが、どうしても買えないというのならば、やはりそういう、極端に言えば熊が出るような土地は、木を植えさせる、こういうふうな意図があってお考えになっておるのかどうか。たとえば、農地法を来年度何とか考えると大臣がおっしゃっておるようでありますが、農地法が改正されましたら、必ずそういうことになるわけです。そうしたら、いま木を植えてある山は払い下げしよう、これからどうにもならない土地はどんどん木を植えさせておいて、払い下げする。山を払い下げて、木を売ってもうける、そういうのは、いま離農する農家ではできない相談なんです。そういうことに関連しておる。こういう法案でありますから、しつこくものを言っておるわけであります。ですから、私は極端に申し上げますと、買い手のないような土地でも、農業として今日まで何十年もそこで生活しておるのであります。これが大都市周辺の、あるいは極端に申し上げますならば、一つの会社の中でこういう問題が起きたらたいへんなことなんです。農業というものは、日本全体における一つの会社仕組みの中にわれわれが生活をしていると思うのです。その中で、私どもの一部の農民だけがそういうふうに置き去りを食っていく。一部の者が、先ほど申しましたように、構造改善で何とかなる、あるいは今度の事業団で土地を買ってもらう。売った人も時価で買ってもらうのですから、非常にいいわけです。その算定は別といたしましても、極端なことを言えば、そういう法律ができても、全然影も見えないような、そういう地帯におる農民のことを考えますと、私は、思い切って、これは大蔵大臣が何と言おうと、与党の責任において、今日までの政治の仕組みから生じたひずみの中で苦労しておる、そういう山村における農民に対して、大いに買って——先ほど酪農振興法の中で私は意見は保留しておきましたが、そういう土地が四十万町歩といわれますけれども、おそらく四十万町歩や五十万町歩ではないのです。そういう土地を買い上げて、大草地に造成をして酪農振興をやるということになれば、あるいはまたそこにとどまる、共同経営なら共同経営でとどまる農家も、私は相当出てくると思うのです。そういうことまでお考えにならないで、ただ今度の事業団をこのまま通せば何とかなるということでは、私は、農民はこれは非常な不信の中でこの法案を見ていくだろうと思うのです。あくまでいま局長のおっしゃいましたように、そういう土地は売れないのだというならば、農地法を改正して——おそらく来年度は考える。農地法を改正すれば、直ちに保有面積に対するところのあれがなくなり、あるいはまた自作でなくてもいいということになるならば、一挙にそういう問題は、町の金のある人あるいは農家の中でも金のある人が買ってしまって、木を植えられる、こういうことは明らかであります。ですから、私どもは、そういう点が明らかにならなければならないと思いますし、どうしてもいま局長お話しのとおりにそういうものが買えないのだ、別だということならば、買えない理由と、別の理由と、それからこの法案に適用されない理由というものをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  55. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ちょっと誤解があるようでございますが、できるだけ、バランスのとれたところ、売り手も買い手もあるところを選ぶということは考えられますが、売り手だけがあるところはどうするのだ、売り手だけがあるところは、買い手を見つけてやっていくということが一番いいことでありますから、バランスがとれないところはバランスがとれるようなことにして、経営規模の拡大をしていこうという考え方を持っておるわけであります。それから、いまのお話しのように木を植える、これは必要なところは木を植えて差しつかえない、そういうことには転用を許可しております。そういうことでございますので、これは経営規模の拡大に資しよう、こういうことでございますから、バランスがとれないところも、バランスがとれるように考えて措置をする、こういうように考えております。
  56. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 午後二時から再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時休憩      ————◇—————    午後二時十九分開議
  57. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き質疑を続行いたします。松井誠君。
  58. 松井誠

    ○松井(誠)委員 農地管理事業団法についてお尋ねをいたしたいと思いますが、この法律案は、政府として本格的に構造政策というものに取り組んだ最初法律案だと思うのです。と申しますのは、いわゆる構造改善事業という名前でその事業が行なわれておりますけれども、これは構造政策というよりも、適地通産だとか、あるいは選択的拡大だとかいう生産政策がむしろ中心であって、いわゆる構造政策というものと正面に取り組んだ政策ではなかった。それが今度初めてこういうふうに構造政策という形を正面から取り上げるという、そういうことになったという意味では、これはまさに画期的な意味を持っておると思いますけれども、しかしわれわれはこれに対しては多くの批判と不満を持っておるわけです。われわれもこの経営規模が拡大をしなければならぬ、あるいは農村の人口が減少し、農家の戸数が減少する、そういう形で就業構造が変わらなければならぬそのこと自体は、もちろん賛成なわけであります。当然歴史の流れというものに沿うものである限りは、それに反対をするつもりはもちろんない。しかし問題は、それがどういう経過を経てそれが実現をされるのかという、そういうプロセスなり方法なりというものにまた問題がある。これは大臣も御承知であろうと思うのです。われわれはこのいわゆる農民層が分解をしていく、それがほんとうに自然な形でいけるような条件整備する、それが一番この構造政策といわれるものの基本でなければならぬと思うわけです。つまり農民が農業以外のものに、よりいい環境をつくってもらって、そこへ喜んで転業をしていく、脱農をしていくという条件がつくられることが先です。そういう条件ができれば、ほんとうに水が低きに流れるごとく、自然と経営の規模の拡大ということができるのではないか。もう一つ、経営規模の拡大をしても経営がうまくやっていける、大経営がちゃんとペイするという、そういう条件をもう一つはつくる、そういう二つの条件があれば当然経営規模の拡大、農業人口の減少、そういうものは出てくるはずです。そういうものをあとにして、いきなり農地というものに手をつける、これはどうしても、あとで具体的にいろいろお伺いしますけれども、やはり何がしかの権力というものを伴わなければならぬ。つまりわれわれが首切りと言っておったその現象が、こういう政策の中ではどうしても盛られなければ意味がないし、盛られるとすればこれはもういろいろな、いわゆる高度成長政策というもののしわ寄せを、特定の農民というものの犠牲において解決する、そういう形にならざるを得ないという意味で、われわれはいわゆる首切り政策、政府の考えておる構造政策というものに反対をしてきたつもりです。そこでそういう観点から、これからあとお伺いをいたしたいと思うのでありますが、この法律案はやはり自立経営の育成、経営規模の拡大ということを目ざしておる。個別経営としての自立経営、それを依然として支柱に据えて、その政策を推し進めようとしておるわけですが、この自立経営の育成という——個別経営としての協業経営ではなくて、個別経営としての自立経営というものが、私はもうすでに破綻をしておるのではないかと思う。依然として自立経営という構想にこだわっておるということから、この際転換をすべきではないかということを私は最初にお伺いをしたい。  大臣にお伺いをしたいのですけれども、きのうの御答弁、あるいはおとといの御答弁でもはっきりしましたことは、中期経済計画では一応百万戸という数字だけは残しておるけれども、しかしそれは経営規模としてはどれくらいかという数字は削ってしまった、こういうことが一つあるわけであります。それからあとでまたお伺いをしますけれども、最初農林省が今度の管理事業団法案の予算の折衝のときに考えておったことは、伝えられるところによりますと、約一町歩以上の農家の平均にして五反歩程度の農地を増加せしむるようにということになりますと、一町五反以上の農家をつくるということになりますが、それで内地で約六十万、そういうふうに一応計算をして予算外の要求をされた。この中期経済計画には二町五反の所得倍増計画の規模というものを削ってしまう。今度の予算要求の中では一町五反以上の農家を約六十万戸つくろうという計画をお持ちであったやに聞いておるわけです。どちらにいたしましても二町五反というあの規模そのものはくずれたと考えていいのではないか、おまけに自立経営可能な規模というものは、年々歳々上昇をしておるわけです。あれやこれや考えますと、自立経営農家が所得倍増計画のときに考えられておったあの構想はこの辺で考え直して、むしろいろいろなニュアンスとして出てきておると思いますけれども、協業組織あるいは協業経営そのものにその主たる地位を与えて、むしろ自立経営というものに補完的な地位を与えるという形に、この際転換すべきである。このよう考えるのですけれども、大臣の御意見最初にお伺いしたいと思います。
  59. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 冒頭に触れました農民層の分解が自然の形でいくべきだ、こういうことにつきましては私も同感に思っております。そういう意味におきまして、この自立経営農家あるいは経営規模の拡大等につきましても、そういう自然の流れのほうに方向づけていく、大体流れてはおるとしましても、その流れが逆ではございませんけれども、それているほうを正しい流れのほうへ自然的に持っていくような方法考えようではないか、こういうような意図でございます。  そこで自立経営農家の育成ということは、協業の推進という方向に線を変えたらどうか、こういうお話であろうかと思います。私は自立経営農家、協業というものを、そう厳格に線を引いていくべきものではないと考えておるのでございますが、しかし基本をどこに置くかということでありますならば、日本の歴史的な農業体制、あるいは農業そのものが工業のようになかなか協業に適しないという性格を備えておる面から考えますならば、やはり自立経営農家の育成ということが、日本の歴史的条件あるいは農業状態から適当な行き方だ、こういうふうに考えておるわけでございます。だからといって、協業というものを無視して、自立経営農家ばかりで進めていくことが、日本農業を発展、維持させるために必要であるかというならば、私はそうではない。やはり協業というものも十分取り入れなくてはならない。農業本法におきましてもそういう考え方だと私は思います。ことに最近自立経営農家として御指摘のありました一町五反以上の農家は相当ふえております。ふえている反面、第二種兼業農家というもののも御承知のように四二%も占める、こういうような状況であります。第二種兼業農家等におきましては、日本農業が零細農業である上に、また農業の面は零細でありますし、あるいは農業が副業というような形にもなっておるような状況でございますが、所得の面から見ますならば、あるいは兼業農家というものも必然的か、こう見られますが、農業面から見ますならば、生産が上がる、あるいは生産性が向上するという面から見ますならば、兼業農家というものはそういう点で劣っているわけで、これを農業面に持ち返って、生産もあるいは生産性も高める、こういうことにいたしますのには、どうしても協業的な組織に持っていくことが必要だ、こういうふうに考えるわけでございます。特に農業全体といたしましても、労働力が非常に減ってきておる、こういう段階、機械化もしなくてはならぬ、こういう段階にありましては、協業の必要性相当増しておる、こういうふうに考えます。しかし基本的に考えますならば、やはり自立経営農家として成り立っていくという姿がほしいのでありますし、またそういう方向へできるだけ持っていきたい、こう考えます。  ところで自立経営農家の規模等でございますが、所得倍増計画等におきましては、大体耕作面積二町五反の百万戸というようなことにいたしました。それを中期経済計画におきましては、十年間という期限は持たなくなりましたが、しかしこの考え方は捨てたわけではございません。ただ二町五反とか五町とかいうふうにこれを固定したものでは私はないと思います。ある程度のめどは持ちましても、時代の動きによりまして、これはだんだん変わっていくものである。そこで自立経営農家の面積は二町五反というように所得倍増計画規定はいたしましたけれども、もう一つ考え方は、所得の面において年六十万以上の所得を持つというものを、一応の自立経営農家として考えていくべきではないか。中期経済計画の五年後においては、これは八十万ぐらいになるだろうというめどをもって、それが自立経営農家の一つの型であるというふうに見ておりますけれども、経営面積あるいは所得の面、そういう両方の面からひとつ規定して考えていったほうがいいのではないか、こういうふうに考えられます。  初めに戻りますけれども、私は協業でなくてはならない、あるいは自立経営でなくてはならぬ、こういうふうに画然と区別すべきものではなくて、その実態に応じて、自立経営であり、協業である、こういうことになろうと思いますが、根本的にどれを好ましい形でやるかといいますならば、自立経営農家の育成ということが最も、農業の実態あるいは日本農業の歴史的な形からいいまして進むべき姿だ、こういうふうに考えております。
  60. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私も何も協業か自立経営か、どっちか一つという考え方で申し上げているわけではありません。どっちに主たる座を与えるかという、どっちが補完的な地位を占めるべきかという意味で申し上げておるのでありますが、いま大臣お話ですと、個別経営としての自立経営が依然として好ましい。しかし問題は、好ましいかどうかではなしに、それが可能かどうかということが一番問題だろうと思う。  そこで二町五反という所得倍増計画の数字をはずしたのは、これは私は邪推じゃないと思いますけれども、二町五反の百万戸ということは、とうてい不可能です。そういう経営規模の二町五反という数字で自分で縛ってしまうと、抜き差しならない。そういうところからこの中期経済計画では二町五反という経営の規模の数字をはずしたのではないでしょうか。そのことと関連して先ほどちょっとお伺いいたしましたけれども、予算折衝の過程では一町五反以上の農家を内地では六十三万戸という数字そのものも、二町五反というその経営規模からは、ずれておるわけですが、これはやはり二町五反以上が自立経営という趣旨でお考えになったのか。必ずしも自立経営の規模というものとはこの数字は関係がないのか、その点もあわせてお答えをいただきたいと思います。
  61. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 私からお答え申しますと、当初農林省案で三十万町歩の移動を十年間でやった場合に、どういう効果があるかということを分析いたします際に、もしその土地が親が現に農業に専従しておりまして、子供がそれに専従しております農家の平均規模が大体一町でございますが、もしそこに集中的にこの三十万町歩をつけるならば、それらの方々が平均的に五反歩上がり得るであろうという効果をこの事業の規模は持つという意味で、事業効果の問題としてそのような分析をいたしたことは事実でございます。その一町五反が自立経営かという御質問でございますが、自立経営の問題につきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、結局農業が非常に複雑に相なってまいりまして、単なる米作だけでなく、酪農とか、果樹とか、いろいろな形のものが出てまいり、かつ資本装備が過去に比べまして非常に大きくなっておりますので、単に土地だけで考えるということは適当でない。そこで基本法の本来の目的意識でありますところの所得というところから接近したならば、どういう考えが成り立つかということで、六十万という線が一つ浮かび上がったわけでございます。そこで六十万の農家について、今度は逆に経営規模を分析してみますと、先般も申しましたとおり田作でございますれば二町三反、酪農であれば一町四反、果樹であれば一町五反という形が出ております。そこで全国平均でただ一町五反とか、一町とか、あるいは二町、こういうふうに考えるのではなくして、経営の態様によりまして一番いい生産要素としてのコンビネーションとして、どの程度の規模を与えるべきかということが、それぞれのケースとして大事であろうと思います。前に申しました一町五反というのは、三十万町歩をいま申したような形で割りつけますならば、五反程度、六十数万戸が内地では一町五反の規模になる量であるということを示したものであります。自立経営の規模をあれにきめたわけではございません。
  62. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いま農地局長から申し上げたおりでございますが、考え方といたしまして、農地管理事業団によりまして大農をつくるという考え方よりも、経営規模を拡大するにつきましては、ほんとうに農業をやっていきたいという人に農地の流動を方向づける、こういう考え方でありましたので、いまのように三十万町歩を一町に対して割りつけると五反歩ずつふやすということに考えたのも一つの根拠でございますけれども、同時に二町五反でなければならないのだというて、大きいものにのみ土地を売っていくというような形は避くべきではないか、こういうことだったものですから、一町に対して五反歩というような案を一応持ったわけでございます。でございますので、一町五反が自立経営の一つの規模だ、こういう意味での一町プラス五反、こういうことではなかったわけでございます。
  63. 松井誠

    ○松井(誠)委員 さしてこだわるわけではありませんけれども、いまの大臣の御答弁と局長の御答弁とはちょっと違う。それは事業効果ということば局長はお使いになりましたけれども、ともかく三十万町歩というものを動かすのだということだけにとどまっておるならば、それはそれでまさに事業効果としての数字だということも言えますけれども、しかし経営規模の拡大をする、しかもそれは自立経営農家を育成するということを目ざして経営規模の拡大をするのが事業団の看板であるとすれば、当然そこで出てくるほんとうの事業効果というものは、ここで一体どれだけの自立経営農家ができるのかというものを当然想定をしなければならないはずだと思うのです。ですからこれは単なる割りつけではなしに、大臣がいまの御答弁で申されたように、二町五反というような大きな百姓を大きくするというよりも、もっと一町以上の百姓を一町五反以上の百姓にするというところまで広げるのがほんとうだという、そういう趣旨があったのじゃないか。いまの大臣の御答弁は確かにそうでありましたし、そういう意味では局長の御答弁と確かに違う。大臣、そうじゃありませんか。
  64. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私の考え方を基礎として、そうしていまの三十万町歩を流動化していこうということになりますと、たまたま一町プラス五反と、こういうふうな数字が出てくる、こういうことでございます。
  65. 松井誠

    ○松井(誠)委員 さっきの御答弁と少し違いますけれども、しかしそれにしても先ほどの御答弁では、ともかく百姓として一生懸命にやっていくものを育てていこう。ということは、おそらく専業農家を育てていこうという意味じゃないかと思うのです専業農家という。ことになりますと、もういま一町五反ではとうてい専業農家が成り立たない。耕種農業は成り立たない。これは当然の事実です。そこに矛盾が出てくる。ですからほんとうに自立経営の専業農家を育成しようということならば、一町五反の二町のと言っておられない。二町五反、三町ということでなければ、ほんとうに個別経営の自立経営はできない。そういう壁にぶち当たったので、二町五反という看板をおろしたのじゃないか。私はそのように先ほどからお伺いしたわけですけれども、ともかく自立経営ということを盛んに言っておる片端から、兼業化がどんどん進んでおるということ自体、自立経営というものがいかにむずかしいものであるか、むしろ不可能に近いむずかしいものであるということを物語っておると思う。ですから私は先ほど申し上げたように、自立経営が好ましいかどうかということではなしに、可能かどうかという点を考えてみると、日本の歴史的な沿革ということを申されましたけれども、日本のこの狭い土地の零細経営の中でこそ、むしろ自立経営がむずかしいのじゃないか。協業という形でなければ、何十町歩という、そういう耕作反別を持ち得る自立経営というようなものがあり得る外国とは違って、だから日本でこそむしろ自立経営というものが不可能なんです。そういうことを思うわけですが、この自立経営の問題については、また別の機会にひとつゆっくりお伺いをしたいと思います。あまり多くお尋ねをするつもりはありませんけれども、しかし依然として自立経営というものを育成すべく経営の形態の中心に置くという考え方は、もちろん農業本法制定の当時にはあったでしょう。しかし、たとえばことしの農業白書なんかを見ても、協業経営というものが非常に進んできておると大臣も言われたように、兼業農家同士の協業というものは、むしろどうしても必要である。そういう条件が出てきておる。だから少なくとも農業本法制定当時よりも、協業というものの比重が高まつた。このことだけはお認めになっていただけると思いますけれども、これはいかがでございますか。
  66. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 自立経営農家が好ましいということばかりでなく、可能かどうか、こういうことが問題だ、まさにそのとおりでございます。そういう意味におきましては、何も私は一町五反が自立経営農家として成り立ち得るものだというように考えておるわけではございません。しかし一町五反の農家というようなものもふえてはきております。でありまするし、またこれを可能にする、むずかしいことでございますが、可能性を持たせるということが必要だ、こういう意味におきましては、やはり自立経営農家の育成ということを政策として考えていくことは至当だ、こういうふうに考えます。しかしいまお話のようにこれがなかなか困難でもありまするし、労働力も不足をいたしておりまするし、他産業が相当伸びたために、所得の面から兼業農家に走っていきましたものも相当多いのでございますので、農業本法制定当時より協業を進めていかなくてはならぬ比重が増したであろう、これはまさにそのとおりに私も考えます。
  67. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それでは次にひとつこの法律案目的である経営規模の拡大というものが、いまのままではなかなが思うにまかせない。年間七万町歩移動しておるけれども、それが政府の考えておるような経営規模の拡大に結びつかない。だからここでひとつ事業団をつくるのだというのがこの法律案の骨子でありますが、それならば逆に現在の農地移動の実態は、一体どういうことになつておるのか。その中で、確かに経営規模の拡大というものが頭打ちになっておる。一町五反、二町、三町というような経営規模の農家は、数はきわめてかすかにしかふえていない。経営規模の拡大はこういう形で実は事実上頭打ちをしておるわけですけれども、これが管理事業団ができたからといって、経営規模の拡大がするするとできるわけではもちろんないと思う。ですから私がお伺いしたいのは、現在もうすでにこの頭打ちをしておる経営規模拡大が阻害をされておるほんとうの原因は、  一体どういうところにあるのか。その原因を探ることが、この事業団がどういう役割りを果たすかという、そのことを算定するためには、どうしても必要だと思う。そこで大臣に、大まかな御説明でけっこうですけれども、現在二町から上の経営規模というものは、常識で考えれば、大きくなれば、どんどん先に三町でも五町でも大きくなれそうなものでありますけれども、むしろ三町がせいぜいの山で、その辺で経営規模の拡大は大体頭打ちになっておる。そのほんとうの原因、主たる原因というものはどこにあるか。いろいろとあると思いますけれども、それをひとつ御指摘をいただきたい。
  68. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 経営規模の拡大が頭打ちになっておるという御指摘でございますが、私どもの理解しておりますところでは、農地の経営階層別の分布、移動状態を見てみますと、一町以下層におきましては、それに見合う農家が減少いたしておる。三反未満層で一〇%、三反−一町で三%程度減少いたす反面、一町以上層におきまして若干の増加をしておる。一町から一町五反層は、三十五年から三十八年の間に動いておりませんが、一町五反から二町層は約七%、二町以上層は一一%の増加をしておる。まことに徐々にではございますが、そういう変化を示しておるという理解を持っておる。ただこれが非常に緩慢でございますので、いろいろ構造政策の緊急性の上から、この緩慢な動きに対し何らかの手が打てないのかというのが、今回の問題に当面いたしました動機でございます。第二に、二町以上の農家の伸びが二町、三町と大きくなりました際に急速に伸びないという点は、確かに御指摘のとおりだと存じます。これの原因についてはいろいろあると存じますが、私どもの考え方として最近一つの無視できない問題といたしましては、やはり労働力の問題、二町以上に相なりますと、田植え、稲刈り等におきまして、相当の雇用労働力を使わなければやってまいれないのであります。ところが失業人口の減少並びに農村部におきます労働力の減少から、そこが非常にネックに相なりまして、この形におきまして、いまの状態におきまして二町以上ないし三町、五町という仕事をやってまいろうと思うには、労働力の面においてネックがある、ここに機械化の問題を私どもが真剣に考えなければならない問題点がある、かように考えております。
  69. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 経営規模の拡大が思うように進まない原因がどこにあるかということでございます。確かに土地が七万町歩ほど全国的に見て流動はいたしております。しかしながらたとえば兼業農家に例をとりますならば、他の産業ともこれは関連があると思います。他の産業によりましてほんとうに安定して仕事をしていける、こういうような体制がまだ農村地帯において整っておるとは言いかねます。そういうことでありますので、なかなか土地を手放して思い切って他産業に入るというような決意が持てない、こういうような面が一面にあると思います。でございますので、そういう面におきましては、他の産業等における雇用の安定とか、あるいは社会保障制度というようなものと相またなければ、土地を手放すわけにはいかぬという現状があると思います。また一面におきましては、土地相当売っておるところがございます。ところがなかなか買い手が少ない。これは労働力の不足というような点から見ましても、あるいは土地の地価等から見ましても、これを買い取ってはたして採算に合うかどうか、こういう面があると思います。でありまするから、新たに土地を買って採算を合わせるというようなことは、なかなか困難であろうと思います。従来の所有の土地に付加して土地を購入していく、そのために低利、長期の金融ということをこの法案考えておるのでございますけれども、そういうような点を補っていかなければ、経営規模の拡大がすなおに進んでいかない、こういうふうに考えておりますので、土地の問題、地価の問題、労働力の問題、こういう面がなかなか進まなかった一つ理由である、こういうふうに私は考えております。
  70. 松井誠

    ○松井(誠)委員 確かに労力の問題あるいは土地の価格の問題、一方では脱農というものがなかなかうまくいかないという条件、そういうものがいろいろあって、経営規模の拡大がはばまれておるのだろうと思うのです。とすれば、そういう阻害をしている条件というものに手をつけることができなければ、この農地管理事業団が幾ら発足をしても、とうていそれだけでは経営規模の拡大にはならないのであります。極端な言い方かもしれませんけれども、この農地管理事業団というのはあとでまたお伺いをしますけれども、経営規模の拡大をほんとうにやろうとすれば強権をもってやる以外にはないし、強権をもってやらないとすれば、ほとんど無用の存在である。むしろ経営規模の拡大のために一番必要なのは、そういう脱農の条件をそろえてやるとか、あるいは労力を省くためのそういう技術体系というものをもっときちんとしてやるとか、何かそういうきわめて困難で長期で、しかも金が要る、そういう問題の解決のほうが先である。そういう問題の解決をしないでおいて、この管理事業団が先に走っていくということになると、どうしても権力という要素が入ってこざるを得ないのではないか。われわれの心配するのはそれなんです。ですから、いま大臣が経営規模の拡大を阻害をしておる理由をいろいろ言われましたけれども、それの阻害の要因というものを除去する、それが私はむしろ並行というよりも先行すべきものだと思うのです。先行すれば、冒頭に私が申し上げましたように、農地というものに手をつけないでも経営規模の拡大はできるのではないか。それを農地に手をつけるというきわめて安易な方法が先に進むために、つまりほかの方法ではなかなかうまくいかない、失敗をした、その失敗というものを、権力による再配分と言っては、いまの程度の規模では大げさかもしれませんけれども、そういう構想に走ってしまうということになりますと、そこに一番の問題があると思うのです。ですから、この経営規模の拡大を阻害をしておる問題について、少なくとも農地に手をつけるのと一緒に、むしろそれに先んじて進めるという必要がどうしてもあると私は思うのです。そういう点についての御意見伺いたいと思います。
  71. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 自立経営農の育成というようなことが、農業本法をまたなくても、大体そういう傾向で日本農業が進んできたのでございますので、農地管理事業団というようなことによらなくても、すでにそういう方向についてのいろいろな施策はしてきたわけでございます。すなわち技術の向上ということも急務でございます。ことに労働力が不足していますから、省力栽培的な技術、こういうことも必要でございますが、なおさらに必然的に機械化農業というふうに向かってきた点、こういう点など、あるいは選択的拡大というようなことで資本の装備等につきましても、金融面等につきまして相当考慮はしてきたわけでございます。   〔坂田(英)委員長代理退席、仮谷委員長代理   着席〕 しかし、そういうことだけで、決して経営規模が拡大するということになってはおらなかった。ある程度は進んだといたしましても、逆にいまお話が出ましたように、兼業農家のほうも相当ふえておる、こういう現状でございますので、これはお話のように徹底的にやるというならば、権力的なことでやらなければできないかと思います。特に土地収用というようなことまで考えてやれば、形式的には経営規模の拡大というものもでき得るかと思います。しかし私どもの立場といたしまして、権力の介入ということは極力避けていかなければならぬと思いますので、そういう方法はとらないで、管理事業団というような仲介の機関を通じてやっていくということでございますので、いささか微温的といいますか、そういう面があろうかと思います。しかしいまお話し申し上げましたように兼業農家につきましても、協業という単位においてやはり経営規模が拡大される、こういう面もございますが、一面におきましては地方の開発というような、他の省の政策あるいは国の政策等とも相まって、雇用の安定等の面も進めておりますので、そういう面、あるいは地価が高いというようなことを補うために長期、低利の金融によってそれをカバーしていく、こういうような権力的によらずして、これを同時に、いまおっしゃいました前提条件が整ってからということではなく、それと相まってこの事業を進めていくということが、日本農業全体あるいは日本の農民のあり方からいって必要なことだ、こういうふうに私ども考えまして、こういうことを御審議願っておる、そういう次第でございます。
  72. 松井誠

    ○松井(誠)委員 その経営規模の拡大が阻害をされておるものの中で、農地価格が非常に高い。この点はまあ三分、三十年という初めての農業金融の条件の中では、何がしかは解消できるかもしれません。しかしもしそれならばすでに発表されておるように、いわゆる農地銀行というようなものでもつくって、高く買って安く売るというよらな機構をつくるだけで、むしろ十分だし、それのほうがもっと能率的かもしれない。このことはまたあとでお伺いをしますけれども、この拡大を阻害しておる要因の中の一つが、先ほどの脱農、離農の条件がそろってない。伝えられるところによりますと予算要求の際に、離農円滑化ということで十数億の予算を要求された、それが全部削られたという経緯があるようでありますけれども、そのときに考えておった農林省の離農円滑化の具体的な方策というものは、どういうものですか。
  73. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 最終的にまとまりませんでした構想でございますので、当時のごく根本的な考え方だけ申し上げますと、在来拓殖基金というのがございまして、海外に移住してまいります方々の土地を買い取る方に対する買い取り資金の融通、及び出ていく方々に対する所用資金の融通につきまして、保証その他の業務をやっておったわけでございますが、この基金を海外移住者という考え方からだけでなく、さらに全国的な国内の問題にまでこれを拡充する、そういう立場で基金を造成いたしまして、そして新しく出ていかれる方々の土地及び家屋その他に対して、残った方々が買う場合にそれに融資を考える、出ていく方々に対しまして当座のいろいろの資金というものを融資する、こういう基本的な考え方で、その基金の造成に対しますところの金を十数億、当初原案としては要求をいたしたのでございます。
  74. 松井誠

    ○松井(誠)委員 いわゆる離農者年金といいますか、そういう構想は、この予算折衝の中では全然浮かんでこなかったのですか。
  75. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 事務的な立場から先に申させていただきますと、検討をいたしたわけでございますが、離農者年金の問題といたしましては、根っこに国民年金等の制度がございまして、その上に離農年金というものを乗せるということを考えるといたしますと、いろいろの問題がございまして、最終的に三十九年度の事務的な要求では、離農年金の段階までには立ち至らなかったのでございます。
  76. 松井誠

    ○松井(誠)委員 いまのお話は、大体の構想でありますけれども、大臣にちょっとお伺いをしたいのでありますが、この離農者年金も含めて、もちろんこの離農円滑化だけでは足りなくて、基本的には雇用の安定とか、社会保障の充実とかいう、そういうものがもう一つ前になければなりませんけれども、しかしそれにしても、離農者年金というようなものを中心にした離農円滑化というようなものについて、これからあと、この制度とむしろうらはらな関係にあると言ってもいいそういうものについて、これから大臣として具体的にどういうように措置をされるおつもりですか。
  77. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は離農者、ことに老齢者で離農をする人については、年金というような制度が必要だと思います。たとえば国民年金に上乗せしてもいいし、あるいは新たにそういう年金の制度を設けてもいい、こういうふうに考えまして、実はそういう案を練らしておったのでございます。何も外国の例をまねる必要もございませんけれども、御承知のようにフランスの法律等におきましては、こういう年金の制度も経営規模拡大の法律の中に入っておるわけであります。そういう例もありますので、せっかくこういう事業を進めようとする際に、私もぜひそういうものを入れたいということで検討を進めておりました。まあ予算の折衝のときには、そういう問題まで持ち上げるまでにまとまりませんので、予算の折衝では問題とはしませんでしたが、いまからでもこれを本格的に行なっていくのには、そういうことが必要だ。でございますので、こういう制度の実現には私は努力していきたい、こう考えております。
  78. 松井誠

    ○松井(誠)委員 この事業団の性格といいますか、これが強権というものをどの程度使うのか、あるいは使わないのかという点を、具体的にはあとでだんだんお伺いしますけれども、まずお伺いをしておきたいと思うのです。  最初に私も申し上げましたように、われわれはこの農地というものに手をつける、個人の所有権に手をつけるというのは、事柄の性質上いろいろな問題を含んでおる。ですから、そういう経営規模の拡大を阻害しておるいろいろな要因を除くというそのことをやれば、農地というものに手をつけなくても済むのではないか。手をつけるとしても、最後に手をつけてしかるべきものではないか。ところがいままでいろいろな間接的な経営規模の拡大をやってきたけれども、しかしどうもうまくいかない。いかないどころでなくて、兼業農家がふえてきておる。ここで農地に手をつけるべきだという形になったとすると、どうしてもその中には強権という要素が入ってこざるを得ない、そういうことを考えるわけでありますが、この農地管理事業団というのは、経営規模拡大の中にもし果たし得る役割りがあるとすれば、いま土地が高くてとても買えない、そういう面を何がしか緩和をするという機能もあるでしょう。しかしそれは私がさっき言いましたように、それだけならば農地銀行という制度でも十分間に合う。しかしそういう機能でさえも何がしかのやはり強権を使わなければできないのか。この七万町歩という自然に動いておるこの農地の移動に、国の力というものが全然加わらないならば、初めからつくる意味はない。もし意味があるとすれば、農林省の役人の隠居場をつくるというぐらいの意味はあるかもしれない。それ以上のたいした意味はない。しかしもしこれを強権をもってやるということになると、これは冒頭申し上げましたように、いまの政治のゆがみというものをそういう特定な農民にしわ寄せをするという形で、解決をするということになる。あのイソップに、旅人のマントを脱がせるために北風と太陽が競争したという話があるのですけれども、これをほんとうに経営規模の拡大をしようとするためには、まさに太陽の日であたためるということが効果的だと思うのです。効果的だけでなしに、無理やりに北風でマントをひっぱがすというのは、その人に対する不当なしわ寄せという意味でも、とうてい是認できないと思うのです。どっちにしましても、これは権力を全然使わないということになれば無用の長物であるし、権力を使うということになれば、これはとうてい是認できないというのが私の立場なんですけれども、これはどうでございましょうか、この事業団というものと権力というものとの関係は。つまり強制力、強権というものを一体使うのか使わないのか、どうなんでしょうか。
  79. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 公共事業を行なうというようなことではございませんで、自立経営農家を育成して経営規模を大きくしていくという一つ方法でございますので、これに強権を発動するといいますか、権力によって土地を収用したり、権力によって土地を買わせたりということは全然ないわけでございまするし、そういうことは避けてきたわけでございます。しからばそういう権力の行使が伴わない経営規模の拡大ならば、何も管理事業団というようなものを設ける必要はないのではないか、こういう御指摘でもあろうかと思います。一応そういうふうにも考えられないわけではございませんが、土地相当流動化してきておりますし、私はこれからも流動化の趨勢は相当ある、こう思います。経済が急速に伸びたり変化しておりますから、そういう事態がなお続く。でありますので、これは漫然と捨てておくということよりは、経営規模の拡大のほうに方向づけたほうがよろしい。その方向づけは、たとえばいまお話のように銀行で金でも貸してやる、あるいはいまの自作農創設資金を回せばそれでいいのではないかということも、一つの見方であろうとは思います。しかし公的の機関が、売る者と買う者、手放す者と取得する者の中に立ちまして、そしてそれをあっせんを行なう、あるいは取得に必要な資金の貸し付けを組織的に行なう、あるいはいままで行なっておりました信託等を進めていくというようなことにしたほうが、私はこの経営規模の拡大、構造政策としての目的を達するゆえんである、こういうような立場から管理事業団という公的な機関を設けたのでございます。でございますので、こういう機関のもとに地元というか、指定された地元関係機関、町村とか農業協同組合、あるいは農地委員会とか、そういうものの意見相当反映するようにいたしまして、一つ計画的に、ただし強権を使うというようなことではございませんので、そういうことなしに、計画的に経営規模の拡大の方向を進めていくということが私は適当か、こう思います。そういう意味におきまして、ただ漫然と従来の方策だけでなく、これを推進強化していくという意味におきまして、御審議願っているような体制でそれを行なっていきたい、こう考えるわけでございます。
  80. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そのことは抽象論ではわかりませんから、だんだん具体的な仕事の内容に触れながらお尋ねしたいと思いますが、ちょっと話がもとへ戻りますけれども、農地の流動化ということばで思い出したのですが、経営規模の拡大を阻害しておる理由一つに、一説には現在の農地法〉いうものがあげられる。農地法という桎梏があるために、流動化が阻害をされておる。それだけでなしに、農地法というものがあるために、経営規模の拡大が阻害をされておるという説があるわけですが、先ほど松浦委員のような特殊な場合は別として、現在少なくとも経営規模の拡大のために農地法が現実にネックになっておるとは思われない。たとえば経営規模の上限というものがきめられておる。しかしそれがために経営規模の拡大が頭打ちになっておるとも思われない。小作料の問題あるいは借地権の問題にしましても、そのこと自体のために経営規模の拡大が阻害されておるとは思わないのです。先ほどの阻害要因の中で農地法の問題をおあげになりませんでしたので、あえてお尋ねするほどのこともないかもしれませんけれども、念のためにそういう議論もありますので、お尋ねをしたいのです。
  81. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私も農地法があるために経営規模の拡大を阻害しておるとは考えません。ただ、いまの賃貸借による経営規模の拡大というような場合におきまする小作料が、そういう面におきましてはたして適当であるかどうか。たとえば農業協同組合で信託を受ける場合に、こういう賃貸料では信託を受けるということにちゅうちょをするという形があろうかと思います。そういう個々的なことはあると思います。でありますから農地法の改正は、この管理事業団との関係では、管理事業団の行なう経営規模を拡大するために差しさわりのあるところだけを改正としてあげておるわけでございますから、その点だけは農地法を改めたほうが、この事業を遂行するにスムーズにいく、こういう点はございます。しかし全般的に農地法があるから、経営規模の拡大が阻害されておると私は思いません。しかし別な方面から農地法というものにメスを入れるといいますか、検討していく必要はやはりある、私はこう考えます。
  82. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうしますと管理事業団法を施行するために具体的に障害になっておる点については、農地法は改正される、こういう御予定なんですか。
  83. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 この法案に出してありますように、この関連におきましては農地法を改正するということになっています。この法案に農地法の改正がこれと矛盾するという点、だけは出ております。
  84. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それは賃貸借の解除についての特例とか、そういう趣旨ですね。それ以外の問題についてはいま考えておられない、こういうことですね。わかりました。  それでは具体的にこの事業団というものが仕事をやっていく上において、それが具体的に権力としてのしかかってこないかどうか、そういうことをお尋ねしたいわけでありますが、最初管理方針というものができる。その管理方針というものが具体的にどうきめられるかということが、私は農民に対して圧力になるかならないかという一つのポイントになろうかと思うのです。この管理方針の抽象的なことは、実施要領にいろいろ書いてございますけれども、それが具体的にどういう形のものができ上がるのか、必ずしもはっきりいたしません。何かいろいろな地域によって違いはありましょうけれども、管理方針というもののいわばひな形、準則みたいなものは農林省ではすでにお考えになっておりますか。
  85. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 前回お配りいたしました実施要領の中に、管理方針の策定に関します規定整理をいたしておりますが、これをさらに具体化したものを農林省は検討しておるかという御質問でございます。私どもといたしましては、これをさらに具体化したならばどういう形になるかという問題については、常々研究は続けております。しかしこの管理方針というものは、まさにその地帯の実態に応じます姿を想定をしてつくっていただきたいという立場でございますので、あくまでそれはまだ検討の段階でございます。しかし強制力に及ぶおそれがあるかないかという立場との関係で若干補足させていただきますと、この要領の七ページに書いてございます問題としまして、たとえば水田を中心としますところの地域においてこれをつくる場合にはということを想定いたしますれば、このような地域において、水田である以上はたとえば二町程度の農家をどの程度につくっていきたい、そしてこの地域におきましては、結局在来土地の移動がこの程度にあるのであるから、その一定量を事業団の手を通じまして行なうとするならば、その仕事を何年間かかってやる必要がある、そしてそれらの人々に対してはどういうステップで逐次土地を拡大させていくか。単年度で全部やる考えは毛頭とっておりませんので、そういうスケジュールをとっていく。それからその相手方に対しては、どういう形で売っていくか、どういう優先をつくっていくか。そしてその優先的な考え方でこれを処理する場合に、事業団はそれを尊重してやってもらうという意味の役割りを果たすわけでございます。いま抽象的に検討いたしておりますのは、一つのサンプルとしては以上のようなことを検討いたしておりますが、いずれにいたしましても管理方針できめてもらいたいことは、そういう内容の事柄でございますので、その限りにおいて権力的なものが介入する余地はない、かように私ども考えております。
  86. 松井誠

    ○松井(誠)委員 その管理方針が数字というものを抜きにした抽象的なものであれば、事業団はこの管理方針を尊重してやれということになっておりますから、どっちみち事業団の運営の基本は管理方針にある。その管理方針が抽象的で非常に弾力的である場合と、具体的な数字をあげて、きわめて弾力性が少ない場合とでは、やはり圧力になり得る度合というものが違う。いまのお話では、たとえばの話ですけれども、この村なら村では二町歩なら二町歩以上の農家を何年間で何戸つくろう、そのためには農地の移動というものがどれだけなければならぬ、そしてそれから、さてそれだけの農地の移動をするためには、売る人がこれだけいなければならぬ。その場合に、この脱農をする農家の経営規模というものまできめて、何反以下の農家はこの際脱農をするというようなところまで管理方針は書くのですか。
  87. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 そこは非常に大事なところでございますので、私どもも在来から非常に注意をいたしておるところでございますが、ここにも書いておりましたとおり、「農地移動見込とこれにもとづく」というところは非常にポイントを置くべき点と、かように考えておるわけでございます。つまりこの制度が根本的にどれだけの土地を新しく移動、創設いたしましてつくっていこうという形をとっておりませんので、したがってこれだけの土地をくっつけるという場合に、供給力としての土地の出方につきましては、この当該地域におきます農地移動の過去からの実態に応じた上に立っての見込みの上で供給考える。その供給の上に、需要との間の目的を達成するのを何年間でやるというふうに考えるということで、農地移動の見込みとこれに基づく考え方という立場におきまして、あくまで農地移動の見込みの問題につきましては、当該村における数年間の農地移動の実態の数字の上から積み上げる。新しく何戸を動かして供給力をつくるという考え方は、管理方針の策定にあたりましてはとらせない、またとらないということは十分指導もいたす考えであり、管理方針もそういう立場でつくるつもりでございます。
  88. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そういたしますとこの買い受けのほうは、この実施要領に書いてあるように優先順位といいますか、というようなものまで設ける。これは二町なら二町以上の農家をこれだけつくる。そのときにまず買い受けをるものはその二町の中で、あるいは買い受けをすることによって二町に達し得るという、そういう下限のほうから優先するのか、まず二町五反の百姓をつくるということで上のほうに優先するのかわかりませんけれども、とにかくそういう形で階層別にやはり優先順位というものを、買い受けるほうの側としてはこれはきめるわけですね。
  89. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 供給力をさきに申したような立場において測定をし、仕事を数年がかりで進めるわけでございますので、一応希望のほうとぴたっと年ごとにうまく合うということほ必ずしもないわけであります。したがいましてその需要の問題はここにいろいろ書いてございますが、事前的ないろいろの調査あるいは申し出の受け付け等によりまして、把握をいたしておく必要があろうかと存じますが、そういうものを登録をいたしておきまして、供納とのからみにおきまして、これをつけていく場合に優先的にどう考えるか、いま先生がおっしゃいましたように一番早く二町、三町になるものに一挙につけていくか、あるいはより多くの人を徐々に底上げして持っていくほうがその村の計画としてよろしいか、そういう点は十分この関係の協議会で御審議を願いたい。私どもといたしましてはその自立経営たり得る、土地をつけることによって自立経営といいますか、育て上げたい経営になることの確実度の高いものを尊重してもらいたい、かように思っております。上から早く二町何反をつくるか、みんなをとりあえず少しずつ上げていくかという辺は、十分この協議会とその地域実情と御計画に合わせて優先順位をきめてもらいたい。なればこそ、国が強制的に上から順位をきめていくということを避けまして、協議会で優先順位のきめ方も定めてもらいたい、こういう立場をとっておるわけであります。
  90. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうしますと、経営規模によって優先順位をきめるというよりも、むしろ自立経営になる、それ以外の条件も含めて一番可能性のあるものにやる、そういう指導だということですね。それで売り渡しのほうですけれども、これは育成すべきその村の一種のエリートみたいなものは一応順位がきまる。しかし切り捨てられると言っては語弊があるかもしれませんけれども、とにかく農地を供給する側、それについての優先順位とか、そういうものは一切なくて、いままでの実績によって大体年間何町歩の移動があるだろうという、それだけのものですか。
  91. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 五年なら五年間のある程度の計画を策定いたします際には、その地帯におきます過去の経験の上に基づいた農地移動というものが、展望、構想の問題としては抽象的な量で仕込まれると思います。具体的な問題に相なりますれば、ここにも書いてございますが、調査活動ということと、五十四条の報告をいただくことによりまして、この報告が出て、あるいは事前に土地を売りたいという人の情報収集をやっておりますから、それらの人の土地をどこにつけるかという結びつけの形において仕事をいたすわけでございまして、何のだれべえさんから土地をその意に反して出さしてしまうというような考え方で仕事をする考えはないわけでございます。供給のほうは、具体的に当該の土地におきまして何のだれべえさんが土地を所有せんとしておるという御報告、あるいは事前の情報収集によって、その当該土地をそこにくっつけるか、買うか、あっせんするかというように働くように、事業団の方あるいは農業委員会の御協力を得る、こういう考えでございます。
  92. 松井誠

    ○松井(誠)委員 法律案によると、その指定をされた地域では、農地の移動をやる場合には報告をしなければいけない。報告をしない場合には過料に処せられる、そういう強制力はありますね。しかし報告しなければならぬ義務はあるが、さてその農地を管理方針に違反をして売買をするということも、これは少なくとも形の上では自由なわけですか。
  93. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 五十四条は報告でございます。それからあくまで情報は、事業団として当該地域の農地移動の供給を掌握するためのものでございます。そこであっせんを申し入れるか、あるいは法律にも書いてございますが、買い取りの申し入れをいたしますと、相手方がノーと言えば、それ以上には法制的にも何も権能を付与しておるわけではございません。
  94. 松井誠

    ○松井(誠)委員 ですから、具体的な移動について、単なる説得で強制力が全然ないというたてまえをとっておりながら、報告だけを義務づけるというのは一体どういうわけでしょう。逆に言えば、同じ村ですから、どこのだれべえが農地を売るというようなことは、しかも協議会というものがあって情報の収集をやっておるのですからわかる。あるいはほんとうに移動をしようと思えば、農業委員会に届けをしなければならぬ。許可の申請をしなければならぬわけですから、いやでもわかる。管理事業団に売る場合には、農業委員会には必要ないとしても、そこを経由しなければならないから、いやでもわかるわけです。それをわざわざ罰則で義務づけるということをやる。これは一体どうしてそこまでしなければならぬのか。
  95. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 先買い権のあります制度におきましては、まず報告をいただいて先買い権を発効する。本法案につきまして、先買い権を付与するかしないか、いろいろ検討いたしたわけでございますが、この段階において先買い権を付与するということは適当でない。その先売い権付与の前段階の問題としての御報告をいただくということは、この地域は申請による地域でございますから、法的にも報告をいただくということは、決して不当ということにはならない。法制的にも可能である。先生がおっしゃるとおり、情報活動で十分とれるのではないかというお話でございますが、もちろんそれによってとることには努力はいたします。法律制度といたしましては、この当該土地におきますところの権利移動については、きちっと報告をいただくという法制をとることを適当と考えた次第でございます。なお農業委員会でわかるではないかというお話でございますが、実は農地法の許可に関連いたしまして、農業委員会を経由して許可書が出てまいります。これは法律的には、契約が成立いたしまして、そして効力の発効要件としてあげておるわけであります。事業団活動といたしましては、その以前の段階におきまして、ひとつどうせ売るならばこちらに売っていただけないか、あるいは事業団自身に売っていただけないかという働きをいたす必要がございますので、契約が発生いたしております状態においては適当でなく、目的が達成できない、こういう事情もあるわけです。
  96. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうするといまの報告義務というのは、当初の原案によって先買い権というものとセットになっておったものなんですか。先買い権というものはなくなったけれども、報告義務だけがあとに残った、そういうものなんですか。
  97. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 私の申し上げますことは、先買い権の法制におきましては報告義務はみなございますというのが一点。ただしこれにおきまして先買い権を付与するかどうかということは、填車に検討する必要がある。しかし先買い権をかけなくても、報告義務をかけるといこうとは可能であるし、この事業の性格上、法的に報告義務を課するという整理をいたしたわけでありまして、たまたま残ったというわけではございません。何もない方法一つ。それから報告をもらう方法一つ。報告に基づいて先買い権をかけるという法制も一つある。そのまん中の法制をとったというのでございます。
  98. 松井誠

    ○松井(誠)委員 先ほど実施地域にするためには、農民が申請をするのだから、報告義務は課してもいいじゃないかという趣旨の話がありましたけれども、しかし申請をするのは、農民全部が連名で申請するのじゃない。あるいは意に反して実施地域になるかもしれない。ですから実施地域になったということが、報告義務を課せるということを合理化する理由にはならないと思う。  それから農業委員会の問題ですけれども、農委員会の場合には、契約をして、そうして知事の許可を効力発生の条件にするという場合もありますけれども、しかししてから契約するという場合もあるわけです。ただ先買をしたいという申請序するだけで、売買をしましたという形で申請をしないという場合もあるのですから、農業委員会の段階に来たらもう手おくれだという形にはならないのです。私がこういうことをくどくどと言うのは、これはやはり強制力というもののなごりだと思う。こういう形で罰則を強制するという、なくもがなのものをなぜ一体くっつけておるのか。こういうものがなかったらといって、その農地の移動を的確に把握できないという問題じゃないのです。それにもかかわらずこういうものが残ったというところに、私はこれが将来権力的な機構になっていく一種の足がかりになりはしないかという懸念さえ持つわけです。いまのお話ではよくわかりませんけれども、先買い権と報告義務と両方のと、何もないのと、その中間の報告義務だけのと三種あって、まん中をとったというのですが、そんなことは合理化する理由にならない。現実報告義務がなぜ必要かということがわからなければだめです。
  99. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 報告義務が必要なのは、あくまで当該地域におきまして事業団が地域指定いたしまして、農地保有の合理化の事業をやろうとする地域でございますから、そこで農地の権利移動をやろうとする方は御報告を願う。こういう立場と目的と要請から、法律上の報告義務を課したわけでございます。それに尽きるわけでございます。そんなことをせぬでも情報でわかるのではないかというのは、確かに御意見としてあるわけでございますが、法制としては、ここは報告を法律上きちっとしていこう、こういう立場をとったわけでございます。なお五十三条関係は、御承知のとおり権利移動は売り手と買い手が連名でこういう申請をいたすわけでありますが、これは売ろうとする者が報告していただくわけでございます。まだ五十三条の段階においても、連名でやるわけでございますから、契約関係は全部成立した状態においてやらざるを得ない、こういう事情もございます。なおこの法律五十四条の報告義務につきましては、確かに過料一万円の罰則を設けておりますが、これにつきましては、その扱いにつきまして、たとえば解除条件付の契約を当該地域においてもやっておきなさいというような形におきましての方法なりその他の方法考えて、いたずらに罰則の適用を受けるようなことのないような方途は、十分講ずる所存でございます。
  100. 松井誠

    ○松井(誠)委員 事業団の運営の点についてお伺いをしたいのですけれども、この実施要領を読みますと、買い手というものは常時調査をして、買い受け希望は的確に把握しておけというのですけれども、先ほど松浦委員から話がありましたが、買い手と売り手とは必ずしもバランスがとれるわけではない。農地のそういう需給状態というのは、市町村ごとにきちんとバランスがとれておるわけではもちろんありません。そういう場合に、買い手ばかりが多いところ、あるいは売り手ばかりが多いところ、そういうところは——買い手はかりが多いところは、買い受け希望があれば全部買うわけではなくて、管理方針にはみ出せば買わない。しかし管理方針にある限りは、それに相応する売り手がなくても、とにかく事業団はこれを買うというのですか。管理方針というものが必ずしも売り手と買い手の——一応管理方針そのものにはバランスはあるでしょう。年間これだけの売り手があったから、これだけのものをこういう買い手にやろうという計画を立てる。しかし現実管理方針どおりの売り手があるとは限らない。したがって売り手と買い手の量のアンバランスというものが出てくる。そういうときには、ともかく一時的に買って、無料で一時的に貸せるという方法も、おそらくそういうところからきておるのだと思いますけれども、私の聞きたいのは、管理方針のワクをはずして、管理方針には五なら五しか書いてない。ところがそれ以上に売り手が出て、それに相応する買い手がいない。そういうときには初めから買わないわけですか。
  101. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 管理方針はあくまで方針でございますから、現実にこの土地においてこの程度の農地移動はあり得る。それがあまりに架空でなくあり得るという見通しを立て、一方、その当該地域において農業でやろうという方がないなら別でございますが、確かにあり、非常に強い御要望を持っておる。したがってそれらの方々に対してややロングランで土地をつけてまいりたい。その方針そのものが客観的に確実性がありと認められる場合におきましては、時間的な差がありましても、当然買い、かつ持つことは予想をいたしておるわけでございます。
  102. 松井誠

    ○松井(誠)委員 先ほど松浦委員の話にありましたように、地域によれば買い手は非常に多いけれども、そういうところは売り手がない。逆に売り手の多いところでは買い手がないという、アンバランスの地域というものがあると思うのです。そういうものを初めから実施地域に入れないのだということなら別ですけれども、これはまたあとでちょっとお尋ねをしますけれども、こういう方法をいずれは全国に広げるということになりますと、アンバランスのあるところでも、ないところでも、全部管理方針をきめて買うということになる。そうするとそういう農地の需給のアンバランスのところは、いまは避けることができても、もし全国的な規模に広がれば避けるわけにいかない。そういうときには管理方針というものはどういうようにして立てるのでしょうか。たとえば売り手が非常に多い、しかし貫い手はあまりない。そういうところでは、買い手の範囲内でしか農地移動というものを管理方針の中にはきめないのですか。
  103. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 先ほどお話は、極端な例を私がお答えしまして、大臣が正しいお答えをされたわけでございますが、全然買い手がないことが明らかである土地を事業団が買うかという御設定であれば、事業団は土地のプール機関と申しますか、土地の受託機関だけではございませんので、それは買わない。しかし一方におきまして、その土地をもっとうまく使う御計画、御方針があって、それが可能性があるという場合におきましては、当然それを買ってまいる。明らかに予定のないものを買うのかという御質問であれば、買わない。しかしその土地をうまく使っていろいろと仕事を起こし、その地域におきます農業の発展、あるいは農業生産法人の成長、あるいは共同事業のためのいろいろの施設というようなこととして、土地を利用する可能性をつくってまいるということによって、望ましい処分の方途ができるところにおきましては、当然買ってまいる。先ほど大臣は、こういうふうに需要をつくり上げるのだという御答弁をされたわけでございますが、そういう意味ではまさにそのとおりであります。
  104. 松井誠

    ○松井(誠)委員 まだ納得できませんけれども、いま当面の問題ではありませんからそれでおきますが、いまちょっと法人の話が出ましたのでお尋ねをいたしますけれども、この買い受ける、売り渡す相手というのは、法律案によれば、自立経営と農業生産法人ということに限られておりますけれども、この二つ以外に、現実にりっぱな経営体としてやってきているものがあるとする。つまりそれは農業生産法人という形はとっていないけれども、そうかといって個別経営ではないという共同経営がある。そういうものは売り渡しの対象にしないというのはどういうわけですか。
  105. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 その前に、売る相手でございますが、自立経営そのものではございませんで、自立経営になることを目標として土地を取得しようとするものという意味でございますから、現状におきましてはその候補者、候補地であるという点をひとつ申し上げたいと思います。  そこで法人の問題でございますが、法人の農地取得につきましては先生御承知のとおり、過去におきましては農地法上は認めがたいということでございました。三十七年の改正で、特定の法人につきましてはその取得を認めることに改めたわけでございます。その法人が農地法上、農業生産法人と定義されておるわけでございます。したがって農業生産法人にあらざる法人の農地所有を認めるかどうかということは、農地法の問題に相なりますが、私ども農地法におきまして法人の農地所有を認める認め方の問題について、ずいぶんいろいろと御審議を願って、結局農業生産法人に限定いたしておりますので、農地の取得につきましては農業生産法人に限定せざるを得ない。農地法を改めない限りは不可能なわけでございます。農地法の問題として、農業生産法人をさらに改めるか、内容を改めるかという問題は、別個の問題として研究を続けておる段階でございます。
  106. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私がお伺いをしたのはそういう意味ではない。つまり農業生産法人以外の法人にもやれという意味ではない。そうではなくて、農業生産法人というのは、たとえば有限会社にしても合資会社やなんかにしても、設立がめんどう。あるいは農地組合法人にしても五名以上という制限があって、何がしかの手続が要る。そこまでいかない、二人か三人で共同経営をやっておる場合があるでしょう。その個別的なものは自立経営に準じて扱うというならそれでいい。そういう意味にとってよろしゅうございますか。
  107. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 農地の権利取得の主体が法人であります限りは、やはり問題である。それらの方方が個人として土地を取得されて、共同で御利用されるのはこれは別の問題だ。法人を持ってその人の権利として持つということに相なりますと、法人の所有は農業生産法人以外に認められない。
  108. 松井誠

    ○松井(誠)委員 ですから、法人というややこしい手続をとらないで、三名なら三名の仲間仕事、共同経営をやっておるという場合に、農地の取得としては三名の共同でやるか、そのうちの一人の名前にして事実上共同経営をやるかは別として、そういう場合法人にならない。共同経営、実質的には個別経営ではない。そういうものも、この取り扱いの上では自立経営という形で、そういう範疇に入れて扱うのかどうかという趣旨です。
  109. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 自立経営になることを目的として営む個人経営が土地を取得する。この二十六条の一項に基づきまして取得することは当然でございます。ですからそういう方々が集って共同で仕事をしておられます場合に、それらの方々の名義においてこれらの土地を得るということは、十分可能なわけでございます。
  110. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それでその点はわかりました。  最後に大臣にひとつお尋ねしたいのですけれども、この管理方針というものを具体的に立てる前提として、どうしてもそこの地域農業振興計画とか、あるいは地域開発計画とか、そういうものがなければ、なかなか村だけの管理方針というものも立てにくいのではないか。あるいは県なら県だけの地域開発計画があり、農業振興計画があり、それの一環としての市町村の計画がある。そういう計画があって、そういうワクの中で管理方針をつくるというなら、これはこれでめどがつくと思いますけれども、そういう前提がなくて、市町村で管理方針をつくれ、その管理方針というものの中には、農地の移動のほかに、何かいろいろ管理方針を策定をするための前提として、農地利用に関する計画、その他そういうものの調査や資料の収集なども必要だというように前提に書いてありますが、確かにそういうものがなければ、いきなり管理方針というものはできないと思います。そういう地域計画というものが先行をするということが、まず必要ではないでしょうか。そうしないと、管理方針というものがばらばらになる。幾ら農林省が準則をきめてやっても、そのとおりの形で管理方針が出てくるとは限らない。そういう点についてはどうお考えでございましょうか。
  111. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 管理方針をきめるにつきまして、その指定さるべき土地の利用計画とか開発計画とか、そういう基礎的事項を明確にするということが、前提要件として必要だと思います。法律におきましても、第二十二条におきまして、事業団の業務実施区域指定するのだが、その指定については、「国土資源の総合的な利用の見地からみてその区域内における土地農業上の利用の高度化を図ることが相当であると認められる農業地域」その他、こういうことが書いてあります。こういう面から見まして、そこの開発計画とか、あるいは総合的な利用計画土地の利用計画、こういうものが前提として策定されることが必要だ、こう思います。
  112. 松井誠

    ○松井(誠)委員 必要ですけれども、現実にはまだそこまでいっていないところが多いのじゃないですか。最近は地域開発ブームで、いろいろな県で総合開発計画を立てておりますけれども、必ずしもそれが全国的に行き渡っておるとは思えない。むしろそういうところまでいっていないところのほうが多いのじゃないですか。そうすると、この法律案条文に書いてあるような形の国土資源の総合的な利用という、そういった見地に立てない、そういう前提がなければなかなか立てない。この点はどういうふうにされるおつもりですか。
  113. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いまお話のように、全国的にこういう国土資源の総合的な高度化をはかるというような計画は立っておりません。また、そういうことをこの法律は予定しておりません。ただ、業務実施地域として指定を受ける。また指定をするという場合におきましても、指定されてからでも、あるいはされる前でも、やはりその地域におきましては、こういう土地利用の高度化の計画を策定する、こういうことがぜひ必要だ、またそうすべきだ、こう私は思います。   〔仮谷委員長代理退席、谷垣委員長代理着席〕
  114. 松井誠

    ○松井(誠)委員 具体的にお伺いしますけれども、たとえば新産都市というようなところ、新産都市というのは、地域は形式的には非常に広くて、農業地帯が非常に含まれているわけでありますが、それがこの条文にいうところの農業上の利用の高度化をはかることが相当だという、そういう判断の障害には別になりませんか。
  115. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 「国土資源の総合的な利用の見地からみて」という意味は、ただ、現に農地だから農業だというふうに素朴的に考えないで、これらの地域が将来を含めまして工場地帯化する、またそういうことにしようとしているというふうな問題があれば、それはそういう問題として取り上げて判断をしてみなければいけないという意味でございまして、したがって、具体的にはいま例が出されました新産地域等におきまして、その当該地域が数年後におきまして工業団地地域になる、あるいはならしめようとしているという御計画があるようなところは、この立場からいって相当とは考えられない、こういうことに相なると一応解釈をしているわけでございます。
  116. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それは、新産都市計画で、いずれはそれが工場地帯になる、あるいは住宅地帯になるというところは、もちろん問題ない。しかし、新産都市の地域というものは、そういうものとは関係のない広大な地域が含まれている。これはいろいろな必要があってのことでしょう。とにかく、新産都市の地域というものは、非常に膨大な地域になっている。そういう中で、将来とも少なくとも農業地帯としてやっていくという、そういう地域であれば、この実施地域というものになるのに障害にはならないのですね。
  117. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 新産都市の御計画を見ましても、非常に広範になって、ただ道路がそこを通るがゆえに、その地域一つ入っておるというような地域がありますが、その周辺地域としては、りっぱに農業としてやっていくし、やっていける地域があるということを私は承知しております。したがって、そういう地域は先生のおっしゃるとおりであります。
  118. 松井誠

    ○松井(誠)委員 あと一、二点お伺いして終わりにしたいと思うのですが、この事業団の規模というものについて、先般来の御答弁でやはりちょっと食い違いがある。これはともかく全くパイロット的にやるのだという、そういう御答弁があるかと思うと、そうじゃなくて、大臣はむしろパイロット的な意味でなくて、ほんとうは全国にやりたい、全国にやりたかったのだけれども、こういう予算折衝の過程で規模が縮小された、そういうような趣旨の御答弁があった。私はそのほうがほんとうだと思うのだが、規模が縮小されたということを合理化するために、パイロットだという新しい考え方をくっつけなくて、ほんとうは全国にやりたいのだけれども、しかし規模がこういう計画に縮小されたにすぎないという趣旨だと私は思うのです。したがって将来とも全国的にやるのだという、そういう第一歩という趣旨にこれは理解していいですか。
  119. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そう御了解願っていいと思います。私も、そういうつもりで第一歩を踏み出す、こういう考え方から発足したいと思っております。
  120. 松井誠

    ○松井(誠)委員 時間がきましたから、その条文の点についてひとつまとめてお尋ねをして終わりにしたいと思うのですが、この二十八条と三十一条に「一足割合」ということばがあるのですけれども、一定割合というのは具体的にどういう数字をお考えになっておるわけですか。
  121. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 「貸付金の一時償還」の二十八条二項及び三十一条の買い戻しの際の二項にも、「政令で定める一定割合」というのがございます。ここに書きました趣旨は、現に貸し付け金を受けた者が耕している面積がありまして、そこに、それからさらに事業団が金を貸したり売ったりして土地を拡大いたしますが、その拡大された者が、その後その経営耕地を処分いたしまして、「政令で定める一定割合を乗じて得た面積を下ることとなった場合には、一時償還を請求することができる。」と書いてございますが、この「政令で定める一定割合」というのは、一応八割ということを私どもは考えております。ことばをかえますと、せっかく、既存の土地に対しまして長期で土地を付与する、それがいつのときか経営縮小に回ってしまうというのを漫然と放置しておるというのでは、本来の趣旨に合わなくなりますので、それが八割以下に落ちるようなときには、それに対して前に売った代金に対しましては繰り上げ償還をかける、あるいは買い戻しの発動をする、こういう規定で一応八割ということでございます。
  122. 松井誠

    ○松井(誠)委員 いまのは三十一条ですか。
  123. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 二十八条も三十一条も同様の規定をする予定でございます。
  124. 松井誠

    ○松井(誠)委員 考え方には別に疑問があるわけではないのですけれども、こういうものを政令にまかすというのは一体どういうことですか。時に応じて八割が七割になったり六割になったりするという、そういう機動性を持たせなければならないという意味、そういう性格について——初めからちゃんと条文中に入れるというわけにはいかないのですか。
  125. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 条文で書くことも法律技術的には可能であったわけでございますが、そういう割合とかその他の数字でございますので、政令に譲る例も非常に多いわけでございます。
  126. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 東海林稔君。
  127. 東海林稔

    東海林委員 農地管理事業団法案につきましては、先般本会議で湯山委員から社会党を代表して重要な点について質問をいたしたことであり、また本日も同僚の松浦委員並びにただいま松井委員からそれぞれ質問したところでありますが、私も若干の質問をいたしたいと思います。  まず質問の態度でございますが、本事業団法案は、その発想の基本につきまして重大な疑問がありますと同時に、また実際の効果でも、この目的としておるように農地保有の合理化をはかって、農業構造の改善に寄与するのだというような目的を達することは困難であろう、こういう実際上の両面からして私は非常に多くの疑問を持っておりますので、重要な点について若干質問をしたいと思うわけです。  この事業団法案につきましては、伝えるところによりますと、赤城農相御自身の発想であり、赤城農相の基本的な重要な性格を盛っておる、こういうふうに言われておるわけでございます。そこでまずその農相御自身の発想であり、きわめて赤城農政の中心であるという点から言いますと、単にここで説明されておりますように、一年間に七万町歩も農地が移動しているのだから、それをなるべく自立経営のほうに持っていくようにするのだ、そういう事務的な簡単な説明だけではどうもはっきりしないので、その点を大臣から、ほんとうの発想の一番大事なところをはっきりしてもらいたい、こう思います。
  128. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私はこういうふうに考えておるのでございます。いま農地解放の報償金の法律案が出ておりますが、農地開放というのは、日本農業に対して非常に効果的な推進をいたしたと思います。しかし土地改革のアフターケアといいますか、同時に行なうべきものは土地基盤の整備土地改良、経営規模の拡大で、こういうものが伴ってこそ農地改革は日本農業を推進してきたのだとかねがね考えておったのであります。そういう意味におきまして、少しこれは理想的で抽象的でございますが、農地改革をした場合に、国が農地を管理している期間をある程度長くして、国が相当土地改良等を行なって、それを耕作人に売り渡すという方途をとったほうがいいのではないか。実は戦前に私は議会におりまして、農地改革のときにそういう質問をしたこともございます。しかし急速に耕作者に土地を所有させるということは、あのときの段階においてはなかなか無理かとも思いました。その後においてもやはり耕作権を所有権に移したというだけで、それは相当の意義はありますけれども、やはり土地改良を強力に推し進めなけれ、はあの改革は万全ではないということと、もう一つは、日本農業経営の零細性を克服していくためには、日本農業技術は進歩していますから、諸外国の例のように二十町だとか三十町だとか百町だとかいうような経営規模単位でなくてもいいけれども、いまのような一町そこそこの平均経営規模というようなことでは、農業が他産業あるいは国際的に非常に脆弱性を免れないという意味において、経営規模の拡大は農地改革のアフターケアということから見ても、やらなければならぬのではないかというふうに考えておったところであります。たまたま構造改善事業を行なっておりますが、これは土地改良あるいは選択的拡大の作目をきめまして共同的な施設等もやっておりますけれども、そのもとは、やはり土地の経営規模を大きくする、また大きくし得ないでも、資本装備が十分であれば、日本のような農業におきましてはやっていけないことはないのでございまして、そういうことも考えていいと思います。そういう意味におきまして、構造政策の基本的問題としてこれを取り上げていきたいというふうに考えております。
  129. 東海林稔

    東海林委員 農林大臣最初考えられた構想が、法案として提案される段階においていろいろな制約を受けて、必ずしも所期のとおりの形で出てきておらぬように、いままでのいろいろな経過からわかるわけですが、端的に申しまして、今度出てきておる法案では、農林大臣のほうで考えた点が何%くらい一体ここへ出ておりますか、はっきりお答え願いたい。
  130. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 どうもパーセンテージでここではかることは非常にむずかしいのでありますけれども、法律の構想としては全国的規模にやるという構想が出ております。予算面やいろいろな面から見ますと、まことに縮小されて、しかも売買等をやらないで、四十年度におきましてはあっせんという程度でございますので、まことに意に満たないと私も思っておるのでございますけれども、しかし法律は、全国的規模においてこれを行なっていくという前提のもとに法律案としてはできております。しかし御協力を願ってこれを推し進めていきたい、こう考えております。
  131. 東海林稔

    東海林委員 いまの点ですね。予算の関係で四十年度の仕事が非常にけちになったという点は別といたしまして、法律案自体としては、大臣は満足といかなくても、がまんできるというようないまのお話なんですけれども、初め大臣考えて、おったようなことが法律案としては一体どの程度盛られておるか、こういう点なんです。ものごとには拙速で何でもいいから、少しくらいまずくても先へやれということもありますけれども、少なくとも赤城農政の基本に関する重大問題が、御自身の満足できないような形で拙速主義でやるということについて、私は非常に問題があると思います。そこであえて法律案にはどの程度大臣が満足するようなことになっておるのか、その点も、これは赤城農政の基本をわれわれが評価する上においても大事なことでありますので、はっきりしていただきたいと思います。
  132. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 法律は、先ほど申し上げましたようにパイロット的というのではなくて、全国的な規模においてやろう、こういうことでございます。さきに考えましたことを盛っておらない点は、松井さんの質問の中にも申し上げましたように、脱農、離農についてのいろいろな方策というものがこの法律には書いてありません。  それから強権でやるかやらないかという問題、私は強権といいますか、こういう強権介入は避けたいと思うのでありますが、しかし流動しているものを他へ移さないで、経営規模の拡大に向けていこうというための先買い権、これは私は強権的ではないと思います。同じく流動しているのでございますから、まだ流動の相手方を選ぶ選択権は先買い権のために少し失わされますけれども、こういう先買い権というものがいろいろ法制上の問題で、これは法制局に引っかかりまして、この問題は削除されたのでございます。そういう意味でございます。  もう一つは、これも松井さんの質問の中に出ましたが、社会保障制度的な観点からもこの問題を進めていかなくてはならぬということで、年とった人の離農年金的な制度、こういうものも含めたいと初めは考えました。諸般の事情からそういうものがこれに盛られておらないということは、私はいささか初めの意図と違った点があります。しかし大局におきましては、この法律は私の考えておる方向へ向かって盛られておる、私はこういうふうに考えます。
  133. 東海林稔

    東海林委員 そこで次に質問を進めていきたいと思うのですが、基本法の柱は、申すまでもなく構造面での自立農家の育成と生産面での選択的拡大であるわけですが、これまでは構造面での具体化の施策としては、いわゆる構造改善事業がやられてきたわけです。ところが従来やられてきた構造改善事業というものは、基盤整備その他というような点での、ある意味での構造改善とも言い得るのでありますが、しかし基本法での構造改善の中心をなしている自立農家の育成という点から見ますと、農林省はその点は放棄してしまったのじゃないかという感じを私は持っておったわけです。と申しますのは、これまですでに三ヵ年間幾多の、何百という地区で構造改善計画を認定しまして、事業を進めておるのでありますが、私の承知しておる範囲では、自立農家の育成という方向で農地を集積するという計画が盛られているという実例を、寡聞にして一つも聞いていないのです。それで名前だけは構造改善事業でございますと、こういうことになっておったわけですが、その点を一体どのように大臣考えておられるのか。私どもから言えば、構造改善事業という名前はつけておるけれども、いわゆる政府の自立農家育成ということは、これまでの構造改善事業の中には放棄されておったのではないか、こういう感じを持つわけです。その点をどのように大臣は御認識されておりますか、お伺いしたい。
  134. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 自立給営農家を経営規模の拡大という面からのみとりますと、そういう面には欠けておったと思います。しかし自立経営農家が生活水準を上げるといいますか、農業によっての所得を増す、こういう意味、そういう意味におきましては、現段階におきましては六十万円以上の農業所得を得させる、こういう意味におきまして、構造改善の共同事業とか、あるいは土地改良によって基盤を整備していく、こういうことからやはり自立経営農家の育成という面におきまして、相当寄与してきておる、こういうふうに考えております。
  135. 東海林稔

    東海林委員 収入が六十万円、八十万円あれば自立農家経営だというような解釈も成り立つというようなお話のようですけれども、基本法の中には自立経営農家というものはちゃんと定義が書いてあるわけです。その中にはちっともそんなことは書いてないのです。それでは基本法の自立農家という趣旨とそれは違うことになったのかどうか、そこをひとつはっきりしてもらいたいと思います。基本法の中にちゃんと自立農家の定義としてわざわざ書いてある。そこに六十万円とか八十万円とか、ちっとも出ておりません。そういう点でわれわれが指摘したように、自立農家の育成というようなことは、決して中小の離農の土地を集めることによって達成できるということにはならない。あの際にすでに非常にやかましく議論したわけですが、政府はその点を非常に固執しておるわけです。ところがいままるで基本法の自立農家というものの解釈というか、定義と離れた見解を新たに出しておられるのですが、当時考えた自立農家の考え方というものは間違っておった、こういうふうに変えるのだということであればこれは了承しますけれども、基本法というものを農政の基本にしておるということを言いながら、まるで全然違ったような解釈をここで大臣から承ったので、そこではっきりしてもらわないと困る。大臣、ここで明確にしてもらいたいと思います。
  136. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 基本法のときに、ちょうど所得倍増計画というものが策定されかけておったために、先ほどから再々話がありますように、二町五反、百万戸、十年間、こういうような話があったので、自立経営農家はそういう形だというふうにとられておった向きがあるのではないかと思います。こういうことを東海林さんに説明しては失礼かもしれませんが、私は自立経営農家の定義は、農業本法十五条にありますように「自立経営」としてカッコして、「正常な構成の家族のうちの農業従事者が正常な能率を発揮しながらほぼ完全に就業することができる規模の家族農業経営で、」これは規模のほうをきめております。その次に、「当該農業従事者が他産業従事者と均衡する生活を営むことができるような所得を確保することが可能なもの」、こういうことでございますから、所得の面からもやはり自立経営農家というものを規定しておるというふうに私は解釈して、だから面積、規模ばかりでなく、所得の面でもほぼ六十万円以上の所得を持つということであれば、自立経営農家として規定してもいいのではないか、こういうふうに考えたわけです。
  137. 東海林稔

    東海林委員 その自立経営農家の定義は、一つのことを部分的にとって規定するというのは非常におかしいのでございまして、そういうふうに所得の方が合えば、あとのことはいいのだというようなことには私はならないと思うのですが、大臣にあまりそういうことを聞くのも失礼なんで、実は農政局長に来てもらってほしいと思ったのだけれども、ただ少なくとも、そうすると大臣としては、要するに農業本法の自立経営農家の定義と違う意味で自立経営を言っておるのじゃないということだけは、はっきりしていいわけでございますか。
  138. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そういう意味でございます。
  139. 東海林稔

    東海林委員 それではこの問題はもう少しあとで農政局長にも聞きますが、もう少し大事なことでひとつ……。農業白書の百十九ページから百二十ページのところを見ますと、こういうことを書いてあるわけです。特に結論的にはっきり出ておるのは百二十ページですが、「資本利子や利潤などを度外視するのでなければ農地取得の採算は成立たないのが実状である。」というような記述、その次に「専業農家が適正な家族労働報酬をえ、しかも採算にのる農業経営を行なうとすれば、現在の地価水準による農地取得は決して有利とはいえない。」こういうようなこともちゃんと書いてあるわけです。これを読みますと、農地をいまのような値段で買って経営面積をふやしても、決して経営は楽にならない、かえってマイナスだ、こういうふうに書いてあるわけです。ところが今度の事業団法は、農地をある程度買って経営を大きくしさえすれば経営が安定し、農家の所得が増大して、他産業従事者との格差がなくなるかのごとく説明して、この事業団法を出しておるわけです。この点は一体どういうふうに考えていいのか、私は理解できないわけでありますが、その点をひとつはっきりしてもらいたいと思います。
  140. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いまのお話のように、「このような高地価のものでは、農地を追加的に取得する場合でも家族労働報酬を相対的に低く評価し、資本利子や利潤などを度外視するのでなければ農地取得の採算は成立たないのが実状である。」逆にいえば、家族労働報酬を相対的に低く評価すれば成り立つ、こういうことでございますから、現金で土地を取得するということでは、家族労働報酬などを相対的に低く評価しないと、その他資本利子や利潤などを度外視しなければ採算が成り立たない、これは実際だと思います。そういう意味におきまして、まあ成り立たせると確実に保証はできませんけれども、低利の長期の資金を融通いたしまして、これが採算のひどいのを採算に近づけよう、こういう形で低利長期の三分、三十年の資金の融通ということを考えたわけでございます。
  141. 東海林稔

    東海林委員 ですから、私がさっき大臣の当初の考え方がどの程度出ておるのかということを伺ったのも、実はその点を含めてなんです。いまの価格政策というようなことも、当然並行して考えるのでなければ、こういうものは何ら役に立たない、こう思ったのです。したがってそこをさっき大臣が言い忘れたのかもしれませんけれども、当初の構想から落ちた中にそういうものが入っておって、それも近くやるのだということであれば、幾らかわかるような気がしますが、残念ながらその落ちた部分が入っていなかった。そういう意味で私はこの点が、せっかくの大臣の構想だけれども、大臣が初め考えたとおりでもなかなか満足できない点がある。まして相当大きい点が落ちておるとなると、これは非常に満足できないわけでありますが、そういう点はいかがでございましょうか。
  142. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 どうも政治でございますから、なかなか初めに意図したとおりにもいかない面もあります。たとえば二重価格というような形でいけば一番スムーズ、その次にはもっと低利の二分、四十年ということを考えて、それも二つの構想で持ったのでございますが、現実に実現するという場合に、なかなかそのとおりにいかなかった面もありまして、三分、三十年程度でおさめて、これでやっていこう、こういう一つの段階を経たわけでございます。
  143. 東海林稔

    東海林委員 そうすると、大臣の当初の構想には二重価格ということも入っておったが、それが実現できなかった、こういうことなんですか。その点初め入っておったわけですか、大臣の構想には。
  144. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 予算の折衝とか法案を出す場合の問題として二重価格を考えませんが、これはちょっとできかねますが、しかし校訂はこれもやってみました。内部検討はいたしたわけであります。しかし金融でいこう、こういうことで二分、四十年という案を出しました。
  145. 東海林稔

    東海林委員 二分、四十年にしてもやはり問題があろうと私は思うのです。大臣はよく、二町なり二町五反以上の農家だと相当所得もあって、他産業従事者との所得格差もわりかた縮まっておる、だからそれは今後の目標としてつくっていくように努力するのだ、こういうことをおっしゃっておるのを私は記憶しておる。それはしかしすでに二町なり二町五反以上の土地を持っておって、そこで経営しておる場合のそろばんです。ところが今度のは借金をして土地を取得した場合に、同じそろばんは出る勘定ではないはずです。  そこで私は伺いたいのは、かりに一町歩なら二町歩持っておる農家が二町にするには、この際一町ふやさなければならぬ。そうすると農林省で平均十七万というような反当たりの計算をしておりますから、百七十万の金が要る、こういうことになる。それを三分、三十年で借りて、一体いままでより経営が楽になるという計算はどういうようにされておるのか、その点をひとつ承りたいと思います。現に二町なり二町五反持っておる人の経営が、少ない者よりある程度いいということはわかりますが、一町百七十万かかるという場合に、借金して、それでもなおよくなるのかどうかという点が、いままで私が承った説明には出ていないように思います。そういう点は、そういう計算が農林省としてはっきりできるのか。そうでなければ二町なり二町五反がいいのだという説明にはならないと私は思います。
  146. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 この考え方は、一町五反にしようということを考えているわけではございませんで、一つのめどではございますけれども、一町でも一反歩ふやしていく、あるいは六反歩でも三反歩ふやしていくというようなことがあると思います。ほんとうに農業をやっていこうという者に考えられる制度でございます。そこで初めから全部を買って農業経営をしていこうということでは、私は相当安い金利で長期でも成り立たないと思います。ただこの場合は、相当土地を持って、それに追加的取得する場合でございますので、そういう意味におきましては、既耕地とプールといいますか、こういう形で、いま考えているような長期低利の金融でこれはやっていける、こういう立場で考えたわけでございます。
  147. 東海林稔

    東海林委員 いまのところ、農地局長からひとつ説明してもらいたいと思う。
  148. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 いろいろの分析方法もあるわけでございますが、私どもがこの問題との関係で吟味いたしております問題としましては、反二十万円としまして三分、三十年で払っていくとしますと、一年間に約一万円の負担に相なります。一方、米の生産費調査で、一町五反層以上の戸当たりの農業純収益を一反歩増すごとに、反当でどれだけふえてまいるかという計算をいたしますと約一万円で、大体とんとんに相なる。その場合に、その計算といたしましては、反収を全国平均に押えまして、物財費、雇用労働力のほかに労賃を都市近郊評価で計算をいたしまして、資本利子と租税公課を控除した残りで計算をいたしますので、土地取得前の純収益には全く手がつかない上に、新たに追加いたしました一反歩については約二万円の労働報酬がそこに落ちる、こういうかっこうに相なりまして、一反歩の追加によりまして労働報酬二万円が経営体に落ちる、そういう計算をいたしておるわけでございます。
  149. 東海林稔

    東海林委員 いまの局長お話、よくわからないのですが、そうすると大臣の御答弁によりますと、どうも一度にたくさん買ったのでは容易じゃないから、少しずつ買って、余裕ができたらだんだんよけいふやしていくというふうにも聞こえたのですが、その点、どうなんですか。私は何かいままでの説明を聞きますと、なるべくふやし得る機会があったならばよけいふやしたほうがいいと政府は考えておったのじゃないかと思うのだが、それはやはり無理なんで、少しずつ追加取得をしながら、やがて目標のところまでいくのだ、さっきの御答弁の趣旨からいいますと、こんなことになるのですか。
  150. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そういう意味ではございません。ただ初め全部買って、一つ土地をまだ持ってなかった人が、新たに農家になろうとして、そうして買ったのではなかなかいまのやり方で採算がとれるというわけにはいく願い。しかし従来から農業をしておって、それに加えての土地取得であるから、従来の農業ともプールしたといいますか、そういう意味においては採算が十分とれるというわけではなくても、やっていけることになるというふうに申し上げたわけでございます。
  151. 東海林稔

    東海林委員 私も極端な、全然ない人が土地を買ってということは何も考えているわけじゃなくて、大体一町なり一町五反をすでに持っておるが、そこに何ぼずつかふやしていくということだろうとは理解しておった。しかし農業白書では、それはかえってプラスにならないということをはっきり書いてあるのに、いまの大別の答弁なり、局長も何か、いやこのほうがよくなるのだということなんですが、そうすると農業白書はうそを書いているということなんですか。現段階においては、農業白書は正しいのだけれども、これは現段階のことで、長期的に見てそうじゃない、こういうことなんですか。その辺どういうことなんですか。
  152. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 まず農業白書で申しております問題の後段のほうは、いま二十万円のたんぼを追加で一挙に買ったのではとてもいけないということが一つ、それから平均的に考えますと、労賃を低く評価し、資本や利潤を度外視するのでなければ、農地の取得の採算は成り立たないのが現状である、これは平均的に考えてさようだと思います。ただ先ほど来御説明をいたしておりますのは、経営規模が大きいごとに、一反歩の生みますところの農業純収益が上がっておるわけでございます。経営体が大きいごとに農業の純収益が上がっておりまして、たとえば五反−一町層では六千六百円、一町−一町五反層では八千六百円、一町五反−二町層ではマージナルの一反歩は九千九百円、二町−二町五反層では一万九百円のマージナルな農業純収益を生むわけなんです。そこで私が先ほど申しましたことは、マージナルに考えて、ある程度経営の大きい層におきまして、現在の二十万の土地負担も長期にならして、その負担を負うならば、十分それで採算が合うのみならず、そのマージナルな一反歩につきまして二万円の労働報酬を自分で自分の経営体に追加していくことができるといり、自分のふところに落としていくことができる、そういう趣旨のことを申したのであります。
  153. 東海林稔

    東海林委員 同じ農業白書の中で、農家だけの立場から見て、従事者一人当たりの所得は第二種兼業農家が一番高いということが書いてあります。そうなると農家の中で第二種兼業農家でおったほうが、一番一人当たりの所得が高いというときに、そういう記述の面から見ても、農家として経営面積をふやすというような意欲は、私は出てくるはずがないというふうに現状では考えられるのですが、その点はどうなんでしょうか。別な観点から同じ問題を追及してみたいと思います。
  154. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 私どもは農家所得の問題として、実はこの管理事業団の問題を考えておるわけではございませんで、農家の中に、農業でりっぱにやっていける農家を何としても育成いたしたい。そういう農家が農業としては高い生産性を持っておる。ですから農業全体が高い生産性の上で農業を営むことが、農政としてはどうしても最大の要請でございます。そこで他産業に従事する従事者との間で均衡のある所得を農業で生ませるためには、どういう農業タイプであるべきか。それは先日来御説明しておりますが、現段階で農村の近郊の他産業従事者との比較におきまして、戸当たり農業所得で均衡する水準は六十万である。その六十力の農家についてさらに分析してみますと、田作をやっておる方は二町三反、あるいは酪農をやっておる人は一町何反である。そういう一つ土地基盤をもって営んでおられる人は、それだけの所得をあげておる。しからば土地基盤としてはそこにできるだけ持っていくということが、とりもなおさず農業として均衡のある所得を生む農家をつくっていくことにほかならない。そこで田作であれば現在の経営体をできるだけ二町なら二町の線まで追加をしていく。酪農飼料畑を持たずに酪農をやっておる方があれば、そういう方の酪農飼料基盤を一町数反歩にまで広げていく必要がある。そういうことによって、初めて農業所得によって均衡のある所得生活水準が営める。それが農政の本務であろう、かように考えて、その面から土地問題と取っ組むならば、管理事業団を通じて土地の集積を促進するという必要があるという立場に立って考えております。
  155. 東海林稔

    東海林委員 どうもはっきりしないのですが、いままでに受ける感じからいいますと、農民自体がそういうことを期待しておるというふうには受け取れないのでありまして、農林省はたまたまどうも実情に合わない基本法の自立農家中心主義に固執するものだから、何でもかんでも無理でもそこに持っていかなければならないというようなことで、どうもこの問題が出てきたような、こういう感じをわれわれは受けてしかたがないのですが、この点はそういう議論をしておってもしかたがありませんので、ちょっともとに戻りまして、農政局長が来たようですから、農政局長にお尋ねしたいのですが、いままでやってきた構造改善事業の中で、基本法の中で期待しておった自立経営農家育成という方向計画的に農地を移動したという実例は、私はいままで聞いていないのですが、何かそういう実例がありますでしょうか。農林省で認定した計画の中に、計画的に農地を基本法でいう自立農家の育成の方向に移すという計画を立てたものがございましたか。
  156. 昌谷孝

    昌谷政府委員 これはあらためて申し上げることもないと思いますが、構造改善事業は個別農家間の土地移動のことまで計画内容として特に要求をしておりません。したがいまして個別農家間の土地移動が構造改善事業地区でどの程度行なわれたかということについては、正確な資料を持ち合わしておりません。ただ御参考までに申し上げますと、個別農家の経営規模の拡大という方向で、構造改善事業が全然役に立たなかったかどうかという御質問の御趣旨でもあろうかと思います。私どもがいままでやってまいりました中で、個別農業経営の規模拡大、土地規模の拡大に確実に役立ったと思われますものとしては、一つは国有林野の活用を通じての外延的な拡張がございます。
  157. 東海林稔

    東海林委員 あまり聞かないことまで言わなくてもいい。国有林町なんて何にも関係ないじゃないですか。
  158. 昌谷孝

    昌谷政府委員 経営規模の拡大にどの程度役立ったかという御質問であろうかと思います。
  159. 東海林稔

    東海林委員 どうも質問をよく聞いてないから困るのだけれども、計画の中に計画的に農地移動をやって、基本法でいう自立農家の育成というふうに計画的に農地移動を計画したものがあるのかないのか、それを聞いておるのです。
  160. 昌谷孝

    昌谷政府委員 構造改善事業では、そういう個別経営間のことは計画内容として取り上げておりません。
  161. 東海林稔

    東海林委員 計画内容として現在は取り上げてないのだけれども、しかし、この構造改善事業というものが、基本法にいう構造改善事業への具体化の方策だということに出ておるのだから、初めからなかったのではなしに、やろうと思ったが実際はできなかったのが実情じゃないですか。
  162. 昌谷孝

    昌谷政府委員 構造改善事業の進め方について、部内で検討しておりました段階で、そういうことまでを計画内容として盛り込むべしという議論があったこともあります。むしろ構造改善事業を始める段階での外部各方面の御意見は、まだそういう個別経営の、たとえば貧農切り捨てというようなこと、あるいはそういう意味合いでの経営階層の分化を促進するようなことは、計画内容としてやるのは無理であろうという御趣旨がありましたこともあります。構造改善事業が、したがいまして事業の直接的な目的としてねらいましたことは、先生御承知のとおり個別経営規模の拡大もさることながら、より直接的には農法の拡大、耕作規模の拡大ということを事業の補助内容としては取り上げております。
  163. 東海林稔

    東海林委員 そうなってくると、どうもますます今度はわからなくなってくる。計画的にそういうふうに農地を自立農家のほうに持っていくことは、実際上困難だったから、そういうことはしなかったというようなふうに、いま受け取れるのです。そうなると今度は法律でもってそりいり方向に持っていくというのが、この法律じゃないですか。そうするとその考え方が非常に矛盾があるのですが、大臣、どうですか。いままでの構造改善事業でも、計画的にその方向に持っていくということは議論はあったけれども、できなかったというのか、やらなかったというのか。できなかったと私どもは見るのだけれども、とにかくやらなかったわけですね。ところがそれを今度は法律でもってそっちのほうに持っていこう。何かそこが話が食い違うように思うのですが、どうでしょうか。そこは——ちょっと待ってください。大臣に先に。
  164. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 構造改善に手をつけましたが、構造政策の根本までに触れなかったと私は見ております。でありますので、経営規模の拡大ということには手をつけなかった。所得の面におきましては自立経営規模の拡大強化という点には努力をして、構造改善の施薬も行なってきたと思います。経営規模の拡大、こういうことには手をつけないで、質的に土地改良等によってこれをよくしたということはやったと思いますが、そういう意味におきまして根本に立ち返って、ひとつそういうことに手をつけてみよう、手をつけていくべきじゃないかというのが今度の法案、施策、こう御理解を願いたいと思います。
  165. 東海林稔

    東海林委員 私はほんとうに構造改善事業の推進のための法律だということであるとすれば、これまで法律はなかったにしても、実際やってきた構造改善事業の実績を十分検討して、その反省の上に立ってこの法的措置を講じなければならないのではないか、こう思うのです。何かそこがちぐはぐだと思うのです。だから従来の構造改善事業についてそういう点を一体どういうふうに評価し、反省しておるか。その上に立ってこういうものが出てきたという、そういう道筋についての説明がはっきりいたしますと、われわれとしてもあるいは幾らか納得できる点があるかと思うのですが、そうではないのですね。そこら辺に非常にわれわれの疑問があるわけですけれども、何か初め構造改善事業をやる場合には、これは基本法の構造改善の実施の具体的なやり方なんだ、こういうことを盛んに説明しておったのですが、いま聞きますと、局長はそれとは少し違うような点があった。今度のものは本物なんだ、こういうお話なんで、私は率直に古いますと、少し悪口を言わせてもらえば、自民党の大事な基盤である農民について、何とか自民党に期待を持たせるために、そのときそのときに何か耳新しいことをおっしゃって、そうしてやっていくのだ。しかしそれは本気になって農民の立場に立ってやるのかどうかという点を、われわれは疑わざるを得ないような点がある。いまのところどうもはっきりいたしませんので、これは大臣でなくともけっこうですが、どなたかから、もう少し私にもわかるように、そこら辺のところを説明していただきたいと思います。
  166. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 私から先に一言申させていただきます。基本法二条に「農業経営の規模の拡大、農地の集団化、家畜の導入、機械化その他農地保有の合理化及び農業経営の近代化を図ること。」「農業構造の改善」、構造は申すまでもなく土地と資本と労働でございましょうから、構造改善促進対策事業におきまして、土地、資本の整備、あるいは畜舎その他の資本の装備をやることも当然構造改善事業でございます。その中におきまして構造改善事業が大きくとらえております意味の経営規模の拡大、農地の集団化に関する部分が、率直に申しまして資本の芸備と基盤整備と農地の集団化のほうにウエートが促進対策事業においてはかかっておる。この際もう一ぺん大きな問題である経営規模の拡大の問題に取り組む必要がある。ただあの方式におきましては、経営規模の拡大ということは非常に困難でございますので、新しくここに、先ほど来御審議いただきましたような三分、三十年というような方途を講じて、特別の機関を媒介としてもう一度この問題に補完をしようというのが、全体の構造改善促進対策事業におきます管理事業団の位置づけ、かように御理解を願えれば幸いでございます。
  167. 東海林稔

    東海林委員 こればかりやっておると時間がなくなりますから、どうも私は納得できませんけれども、もともとこれは基本的に考え方が違うのですから、なかなか納得ができないわけでありますので、次に移ります。  次にお聞きしたいのは、今年度はパイロット的にやる、こういうことでございます。やがてこれは全国的な規模でやるのだ、こういうことでございますが、私はこれに一つ疑問がありますのは、一体全国的規模にやるという場合に、これは全地域にやるという意味なんでしょうか。その点どうなんでございましょうか。何かこれを見ますと、大臣区域指定して、ある期間その事業をやって、若干の時間がたって、ある程度仕事が進めば、またその指定も取り消して、別のほうに移るというようなふうにも理解できるわけですが、第二十一条——二十二条でございますか、その点が私は法の公平というような点から見て、専任職員を設置するというような点は、仕事の多い重要なところに置くということは理解できるのですが、われわれはこういうものを期待しないのですが、かりに農民の中に期待する者がおりまして、私は土地を事業団に買ってもらいたいというような場合でも、指定地域でなければそういう期待がいれられないということでは、何か非常に問題があるように思うのですが、その点は全国的な規模において、これはやがて実施するのだということがこれまで大臣の御答弁の中にも出ておるわけですが、そういう点、少しはっきりしていただきたい。
  168. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 一つ考え方といたしまして、これは先ほどお話が出ましたが、土地金融の制度土地取得資金の金利を下げる、それを何人も利用できるという制度を開くということが一つございます。それとは別に、特に特定の地域において先ほどお話が出ておることば意味の、真の意味といっては語弊がございますが、重要な意味におきます構造改革事業をやろうとする地域には、特別に政府が手を差し伸べよう、こういう考え方でこの管理事業団を考えておるわけでございます。そこでこの全国化の問題でございますが、特別の措置として特別長期低利で金を貸したり、あるいはみずから土地を買ったりするやり方は、あくまでそこが農業として将来も成り立っていく地域である、そういうところに組織的に手を伸ばしていこうという考え方であります。そこで全国化の問題は、こういう地域でございます限りにおきましては、全国的にそういう地域はぜひやりたいという意味において、全国化の問題を先ほど来申し上げておるわけであります。ということは、いかなる町村においてても、どういう条件の町村においても、これをみなやるのだという意味ではございませんで、法の二十二条の二項に書いてある地域、そういう地域につきましては全国的に町村の数を押えるという形においてやるという意味ではなく、二十二条三項に該当する地域は全国的に取り上げるというのが全国化の意味、かように御理解願いたいと思います。
  169. 東海林稔

    東海林委員 ついでに伺いますが、さしあたってパイロットという意味であるというのですが、そのパイロットという意味は、事業団が始めたから事業団のけいこのためにやるというのですか、それとも農民に理解をさせる意味でのパイロットというのか、あるいはもっと別の意味なのか、どういう意味なのですか。
  170. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 経過を先に申しますれば、私どもの当初の原案は、全国でこういう条件に該当する地域を二千数ヵ町村と見まして、それを逐次やっていくという考え方であります。それが政府部内の意思決定の段階におきまして、政府みずからが土地を買ってこういう形でやる事業につきましていろいろ疑義がある、もう少し検討を要する問題があるということで、結局百町村につきましてパイロット的にこの仕事をやってみようということに、政府部内の意思は決定をいたしたわけでございます。ただし私どもは、先般来大臣も申しておりますとおり、いまだにこれは将来において拡大をする考えを農林省としては持っております。したがいましてパイロット的という意味一つには本制度に対しますいろいろの御不審の向きもありますから、そういう方々に対してはこの効果というものを事実をもってお示しをしたいという意味一つございます。と同時に、政府が直接こういう形におきまして、政府機関がものを買ったりするという仕事は初めてでございますから、先生おっしゃいました組織体としての事業団におきましても、この仕事を積み上げによってやっていくという意味の訓練の意味も含みます。そういう意味におきましてのパイロット的でございます。
  171. 東海林稔

    東海林委員 農林省の考え方が、一応政府全体の考え方と若干違っておるという点はわかりますが、しかしここでわれわれは政府全体の考え方としてこれは論議しなければならないと思うが そうすると問題の点もあるのでやはり試験的にやってみるというのですが、試験的にやってみて悪ければやめる、こういうことも含んでいるわけですか。
  172. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 悪ければやめるということは含んでおりません。やり方についての改善の余地はあるという意味を含めて、パイロット的という意味でございます。
  173. 東海林稔

    東海林委員 パイロット的にやるという期間は、いまのところ何年ということになっておるわけですか。
  174. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 四十年度において決定いたしておりますことは、百ヵ町村につき数カ年パイロット的にやるということが決定いたしております。四十一年度におきましては、百ヵ町村をさらにふやすという構想で、農林省はいたす考え方でございます。
  175. 東海林稔

    東海林委員 四十一年度もまだパイロット的なものが続く、こういうふうに理解していいわけですか。
  176. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 パイロット的に本事業を行なおうときまった経緯から申しまして、四十一年は、もう二年程度はパイロット的にやるということになろうかと存じます。
  177. 東海林稔

    東海林委員 この事業団によって事業をやる地域と、今後農業構造改善事業として新たに地区の設定をやっていく、その地区との関連ですが、これはどういうことに考えたらいいのですか。
  178. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 いわゆる農業構造改善促進対策事業の地区におきましては、私どもにも具体的にお話がございますが、土地と取り組みたかったけれども、制度的な裏づけがなくて思うようにまかせなかった、こういうことが行なわれるならば、それを並行してやりたいという御意思の表明を持ってこられる地区もございます。私どもの考えといたしましては、促進対策事業でいろいろやって、やはり土地問題もあわせてやるべきだという立場に立って、それらを総合して、やろうというところは、敬意を表してそういうふうに考えていくべきものと思っております。しかし構造改善促進対策事業をやらないところは、本事業をやらないというふうには考えないで、ほかの地域においてまず土地から取り組もうという地域は、それをその計画なり御方針か妥当なものである限り、それ以外にも考えていきたい、かように考えております。
  179. 東海林稔

    東海林委員 農政局ににお伺いしますが、従来の構造改善事業の計画には、計画的に個人の土地を集積させることは考えてなかったというのですが、今度この事業団法による実施区域と一緒になるというような場合には、そうすると今度いままでの考え方が変わって、計画的にそういうものも入る、こういうことになるのですか。
  180. 昌谷孝

    昌谷政府委員 先ほど十分申し上げませんでしたけれども、私どもが構造改善促進対策事業と言っておりますゆえんのものもそうでございますが、ああいった事業を通じて、将来にわたっての個別経営の規模拡大の措置をその村についてつちかっていきたいというのが、あの事業の本旨ございます。その意味で事業着手と同時に、個別経営の規模拡大というようなことで、ある程度計画的に取り上げ得るような条件。熟した村もありましょうし、またあの事業をやったことによって、さらにそういう機運の醸成を早めることの可能な地区も当然出てまいるわけでございます。ああいった事業は、先ほども事業の計画の中には含まれてないというふうに申しましたけれども、あれは御承知のように補助事業として仕組んでございます。その補助事業の事業計画という意味では、本来対象にすることの無理なそういう経営主体につながる問題でございますから、当然資本装備の改善充実を通じてのそういう将来の農業経営改善、構造改善に対しましての地盤づくりという意味で直接的な計画はあります。したがいまして構造改善促進対策事業の事業計画の中に、そういうものを含めるというものの考え方ではなくて、村の構造改善についての全体の考え方がそういうことであるならば、構造改善促進対策事業——管理事業団法で言っております農地の保有合理化と申しますか、協議会を通じてのもろもろの構想と十分かみ合って出てくるというふうにお考えいただいたらいいのではないかと思います。
  181. 東海林稔

    東海林委員 いまの点は地区における農民の意思で自発的な計画で出てきた場合は、これを尊重していく方向で指導していくということのように理解されるのですが、先ほど松井さんからもいろいろと議論が出たように、いまの構造改善促進事業のほうでこれを強制的な方向へ、そういうふうに持っていくという考えはあるのですか、ないのですか。
  182. 昌谷孝

    昌谷政府委員 構造改善対策を始めましたときにも、御承知のとおり土地収得資金、公庫を通じての金融ベースでの土地集積を、幾ぶんかでも融資面で援助をいたそうとい意味での手当てはいたしたわけであります。しかしそれはいわゆる計画という形ではなしに、もう少しゆとりのある自発的な行動として、われわれはその事業効果として期待をして今日に至っております。したがいまして構造改善をやるようなところでは、そういう機運は当然他のところよりも高まってておりましょうから、一般的な土地取得金融のほかに、 こういった土地取得についてのさらに取得者側にとって有利な制度が叩かれますれば、構造改善促進対策事業の本来趣旨といたしましたことを村で実現していくのに、より一そう効果的であろうというふうに私どもは期待しておるわけであります。
  183. 東海林稔

    東海林委員 大臣にひとつお伺いしますが、この問題を検討する過程において、いまの実施しておる構造改善事業と結びつけ、農地取得の資金を、現在ある自創資金制度その他を拡充してやるというような方策を検討されたことがあっただろうかどうか。
  184. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これと関連してという意味ではございませんが、自創資金、土地取得資金、これはやはり拡大していくという方向で常に進めておるわけでございます。
  185. 東海林稔

    東海林委員 いまの点は両方並行してやる、こういうふうに理解していいわけですね。
  186. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 さようでございます。
  187. 東海林稔

    東海林委員 時間が大体一時間になりますので、最後にもう一つお尋ねしたいのですが、兼業農家の持っておる土地を、国全体の立場からいえば、これを効率的に利用させるということが非常に大事なことだろうと思うのです。農業白書を見ますと、兼業農家は好ましくないのだと一方的にきめつけておるようなんですけれども、しかし現在のいろいろな諸情勢の中で、農民がみずからの生活を守るためには、兼業農家のほうが一番いいというような、好むと好まざるとにかかわらず、そういうような条件が出てきて、これが急速に進んでおるということだと思うのです。私はこの前本会談でグリーンレポートに対する質疑でも若干申し上げたのですが、いろいろと政策を考える場合には、やはり地域の特異性というようなことを考える必要があるのではないか。したがってたとえば都市周辺等における農業地帯においては、むしろ兼業農家というものを、これを好ましくないというふうに一方的にきめつけずに、兼業農家は兼業農家なりにこれを安定させると同時に、その保有する農地を効率的に利用されるということについての政策を、国としては積極的に考うべきではないか、こういうふうに私は考えるわけですが、そういう点についての大臣の御見解を承りたい。
  188. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 兼業農家を特に排撃するという考えは持っておりません。農家の所得からいいますれば、御承知のように農家所得としては兼業農家がいいというような例でございます。ただ農業自体から見ますと、農業生産性農業として国民に食糧を供給するという立場、こういう面からいえば兼業農家は劣るわけでございます。でございますので兼業農家につきましては、農業の面からいいまするならば共同化というようなことにして農業生産を高める、労働力の不足を克服する、こういうことが必要であります。いまお話のように都市周辺等におきましては、必ずしも経営規模、耕作反別が広いということが必要であるとばかりは言えません。狭くてもけっこうやっていける。あるいは労働力相当集約的に使ってやっていけるということもありますから、そういう意味におきましては花だとかあるいは野菜だとか、そういう面において兼業農家がその地域に適したようなことにおいて農業に寄与してもらう、こういうことは望ましいことでございますし、そういう奨励といいますか、そういう指導はしていきたい、こう考えます。
  189. 東海林稔

    東海林委員 統計によると大体推定で第二種兼業農家の保有している土地が二二%ですか、その程度ある、こういうことなんですが、いま大臣は山ことばではお話しになったのですけれども、しかし政策としてはまだ具体的に何もないように私は実は思うのですが、何かございますか。現在なければ、今後こういうふうにしてやっていきたいという、もう少しはっきりした何かがないと、どうもちょっと納得できないのです。
  190. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 組織的にどうこうということはございませんけれども、技術の指導等におきまして、都市周辺の農家が小さい、狭い耕地でもやっていける、こういうようなことは進めておるわけでありますが、それがまた兼業農家にも当てはまることである、こう思います。
  191. 東海林稔

    東海林委員 私はたくさんの疑問があるわけですけれども、なお同僚の委員が別の機会にやるということですから、この程度でやめたいと思うのですが、ただ私は率直に感じますことは、良心的な大臣なり農林省の農政に熱意を持っておる事務官などが立案する段階においては、非常に純粋に良心的な案が一応考えられるわけですね。ところがそれが与党の政調会を通り、大蔵省の予算折衝を通って出てくると、これがまた変に当初のすなおだった子供がいろいろと変な形になって出てくるような政策というものが、非常に多いように思うのです。と同時に、これを政府なり与党がその法案の持つ価値というものを、そのとおりに農民にお話しいただけばけっこうなんですが、多くの場合、私をして言わしめれば非常に過大宣伝をされまして、特に与党が過大宣伝をするがために、農民がその法律を持つ実際の力以上な期待を大きく持つ、そういう傾向が非常に多いのです。その結果、しばらくたつと、なあんだ、こういうことで農民が失望する、こういう形が私は非常に多いように思うのです。この法案でも、先ほど大臣の発想の点を聞きますと、われわれも同感をしなければならないような点が多いのだけれども、大臣自身が言われておるように、たとえばわれわれが一番問題にしております離農対策が、いつの間にかどこかへ行ってしまったとか、それから農地価格に対する対策というようなものもどこかへ行ってしまった。そして何か妙にやせ衰えた、骨と皮ばかりのような法律が出てきておるというような感じでございます。ところがこれに対する宣伝だけは、まるまると肉づきのいい、太ったりっぱなもののような宣伝をされておる。そこにわれわれとしては非常に納得できない点があるわけだし、また農民が失望したり迷惑を受ける根元がここにあると思うのです。こういう点は、大臣ばかりでなしに、与党の皆さんも十分心してもらわなければ困る、私はこう思うわけでございます。  以上、率直な感想を最後に申し上げまして、一応私の質問を終わるわけでございます。
  192. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 林百郎君。
  193. 林百郎

    ○林委員 この前私の質問大臣に対する質問が残っておりますので、きょうは大臣にお約束の時間の範囲内で三、四問お聞きしたいと思いますが、この前次官並びに局長にお聞きしたところによりますと、大体農林省の方針は、土地の移動、農業人口の移動、こういうことをそのまま許して、それをどのように効率化し、土地集約化するかということで、この法案を出したと言っておられるわけです。たとえば中期経済計画の中で政府の出しております資料によりましても、昭和三十年度以降農業就業人口が三百五十万減少しておる。三十八年度においては農業世帯員から他産業部門への就業者が九十三万四千人だ。新規学卒者で他産業への就業者は約五八%、半分以上は農村に残っておらない。それから農業労働力については、これは白書によりましてもそう書いてありますけれども、農業労働力は女子が五八%、さらに五十才以上の農業労働者は、男子が四四%、女子が三〇%だ。それから土地の移動は、三十八年には七万一千町歩、ことに北海道では三十二年では土地移動の一軒当たり反別が一町五反くらいだったのが、三十八年には二町、約五反増しの土地が移動している。こういう実情だからこれをそのまま認めて、これを効率的に調整していこう、それがこの農地管理事業団の目的だ、こういうように聞いておるのですけれども、大臣、それはそうなんですか。こういう大きな農業の崩壊というか、土地農業人口、こういうものの移動、それから就業人員からいっても女性化あるいは老朽化ですね。そういうものをそのままにして、その前提に立ってこの移動を集約化し、効率化しようとしている、こういうことなんですか。この土地の移動をどのように少なくし、農業人口の移動をどのように食いとめ、農業の老朽化、女性化をどのように防ぐかという政策からは、この農地管理事業団のたてまえが立っておらない、こういうようにわれわれは理解しているのですが、そうなんですか。
  194. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 労働力の流出ということを食いとめようといたしましても、私は食いとめ得ない問題だと思います。それはできるだけ移動を食いとめて、在村をさせたいということは考えますけれども、これを絶対的にいまのままで食いとめておくということは、私はできないことだと思う。これは農業の世界的な歴史から見ましても、日本農業の動き方から見ましても、この労働力の流動というものはある程度認めなければならない。そういう点から考えまするならば、ある程度残って、ある程度より相当程度残ってもらわなければなりませんけれども、残った者が農業をやっていって、そうして全人口に対して食糧を供給できるような体制を整えていくということが、農業政策だと思います。  それから土地の流動につきましても、これは自由経済のたてまえから経済が成り立っておりますので、この移動も全然これを禁止するというわけにはまいらぬと私は思います。その移動というものをある程度見きわめまして、その移動が有効に、すなわち相当程度残った農業者が生活も十分にやれ、農業経営もやれ、そうして全国民に食糧を相当程度供給できる。全部自給ということはできませんが、そういうような体制を整備していくということが、一つの政治ではないか。現状を維持して、どうしてもこうしても農民をくぎづけにしておく、あるいは農地を移動させない、こういう対策を講じるということではないのでございます。でございますので、いまのお話のようにその流動が好ましくない方向でなくて、好ましい方向に流動を方向づけるとか、あるいは労働力の流出につきましても、できるだけ流出を防ぐというような対策も講じなくてはなりませんが、同時にある程度はこれは認めなければならない。ある程度少なくなった労働力農業経営がやっていけるような対策、この管理事業団等もそういう立場の上た立って考えられたものであります。
  195. 林百郎

    ○林委員 その点が私と大臣の根本的な違いで、離農していく人たちが喜んで離農するはずはないので、これは政策の貧困から、どうしても農村に、残って農業経営を維持することができなくて、やむを得ず流動していくのが農村実情じゃないか。これは世界の趨勢だと言いますけれども、こんなに毎年毎年七十万も八十万も農村から人口が流出し、そして農業労働力の五八%を女子が占めて、特に五十歳以上の男子が農業人口の四四%で、女子が三〇%だ、もう女子が五割八分、五十歳以上の者が七割四分だというのですね。そして一年間に九十三万人も他産業へ流れていく。学校卒業者の五割八分も農業を見限っている。もう北海道のごときは一軒の土地移動が二町以上だ。これが世界の趨勢であるというようなことで、そしてこれが赤城農政の政治的な責任、あるいは佐藤内閣の農業政策の貧困の責任でないという立場から、農地管理事業団をつくるとかなんとかいうことは、これは私は全く無責任な態度だ、自分の責任を自覚しない態度ではないか、こういうように思います。問題は、これをどのように食いとめるか、価格の政策、あるいは貿易の自由化による外国からの無制限農産物の輸入、ことにアメリカの余剰農産物の輸入が、さらにアメリカ農産物の市場拡大のために現地通貨が使われておるような政策、これに対するチェックというようなことは考えないで、こういう大きな農村の崩壊を前提として、それを流れて出る者はしかたがない、せめて残っていく者ぐらいには何とか考えてやろうという観点自体が、私は問題だと思うのであります。  したがって、そういう前提に立って次の質問に移りたいのでありますが、この前局長の答弁ですと、権力介入というようなことはあり得ないのだ、自然に流動する土地状態を効率的に是正するだけであって、権力的な介入はないと言っていますけれども、これはしかし何らかの国家権力が介入してこないと、自然にまかしていたのでは、あなた方の考えている——私たちはあなた方の考えている集約化の方向には反対ですけれども、あなた方の立場に立って考えるときに、全然自然の状態にまかしておいて、その政策は実行できないと思うのです。たとえば局長はこの前、年間所得六十万円というようなことで、他産業との収入の格差を是正したいと思うと言っているが、まあ六十万というと、米作ですと二町から二町五反ぐらいだ。したがって米作以外の野菜や果樹になりますと、これはもうおそらくこれ以上、あるいは少なくても二町以下では、六十万からの年間所得を得て、他産業との所得の格差を是正するということはできない。そうしますと御承知のとおり、これは六〇年度の農業センサスですけれども、日本の専業農家が百九十六万戸で、平均耕作反別は一町ですね。あとは兼業農家ですけれども、この平均耕作反別を二町から二町五反にするということが、自然にまかしていてできるはずはないのじゃないですか。ことに一町未満の層の土地移動が、譲り渡す点では六七%、譲り受ける点では五八%で、同一階層の、要するに一町未満の範囲のもので土地の移動がほとんど六割ぐらいなされているのです。一町以上の自立農家の土地取得は、移動のうちの約八%といっているのです。そんな状態で六割以上が一町以下の同一階層の農民の間で移動しているのに、そこに国家が全然介入しなくて、自然に平均耕作反別一町の日本の専業農家が二町五反になるなんということはできないのじゃないですか。これは明らかに国家がそういう介入をして、そういう方向へ持っていくということを考えているのじゃないですか。自然のままにまかせておいて、そういうことができるのですか。できるとするならば、平均耕作反別二町五反以上の自立農家を育成していきたいというのは、一体いつになったらできる見通しなんですか。それをお聞きしたい。
  196. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私どもはたてまえからいたしまして、権力の介入は極力避けていくというか、これに権力の介入はいたさないわけでございます。実際問題といたしまして、土地収用法のようなものをかけてやるということならば、それは計画的にどんどん進むかもしれません。しかしそういうことは私どもがとるべき政策ではございません。しかし権力の行使はしないから、自然のままに捨てておくというわけではございません。農地管理事業団というものが、この土地の移動に介入いたすわけでございます。自然のままではなくて、買い取るほうにおきましても低利長期の金を回す、あるいは売るほうにつきましても、その指定をされた土地におきまして、市町村及び各種団体等におきまして協議会を設けて、その移動を経営規模の拡大の方向方向づける、こういうことでありますから、自然といってもただ捨てておくわけではございませんで、政府関係機関のようなものが介入いたします。しかしその介入が権力を持って介入するということは、私どものたてまえから避けて、そういうことはいたさないわけであります。権力が介入してやれば、あるいはこの目的相当果たし得るかもしれませんが、そういう無理はいたさない、こういうようなたてまえでございます。
  197. 林百郎

    ○林委員 大臣、私の言うことをちょっとメモしてください。時間が惜しいから。そうしますと、二十二条の「農林大臣は、都道府県知事の申出に基づき、一定区域を事業団の業務実施地域として指定するものとする。」「都道府県知事は、前項の申出をしようとするときは、関係市町村に協議し、かつ、都道府県農業会議意見を聞かなければならない。」この都道府県知事の申し出、さらには関係市町村に対する協議ということは、どのような協議をして、どのような申し出を農林大臣にするのか、そのことが一つと、それから罰則の中には、実施区域内の農地移動に対しては、原則として農業委員会から事業団に土地移動の管理が移るわけですね。したがって土地移動の申し出を農地管理事業団にしなくて土地移動をしたような場合は、これは御承知のとおり罰則があるわけです。罰則規定まで設けてなぜ届け出をさせる必要があるかということが一つと、それからもし売り渡し価格で、農地管理事業団の言う価格よりはよりいい価格で売買が当事者の間でなされる場合に、これは好むと好まざるとにかかわらず、土地をどうしても手放したいという者があった場合に、それが当事者の間では、農地管理事業団の計画より、より有利な条件があった場合、その当時者の間で土地移動をする。農地管理事業団がそれをあっせんする。それでもなお農民のほうとしては自分のそろばんの合ったほうに土地を移動する場合に、それは一体許されるのかどうか。そういう場合に、今度農業委員会と農地管理事業団との関係はどうなるのか。最後の質問はちょっとこまかくて、大臣に聞くのは技術的な問題であれですけれども、これらは明らかにいろいろの形で国家の権力がどういう形にしろ、陰となりひなたとなり関係してきて、農民としては自分の自由が奪われる、私たちはこういうように考えているわけなんです。しかし政府はそういうことはないと言って、それをひた隠しに隠しておるけれども、事実は農業構造改善だって、その地域に行けば、自分だけが孤立して、それから断わるわけにいかないという状態ですから、農業構造改善をさらに農業理事業団によって強力にしようというのですから、現地の実施区域の農民からいったら、自分の自由にできると国会で答弁をしたのに、現実はできない状態になる。実際の運営についていまの四点、どういう形になるか、答えていただきたい。
  198. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 失礼でございますが、いまのお話は杞憂だと思います。大体二十二条において、都道府県知事が業務実施地域指定してくれという申し出をしようとするときは、関係市町村に協議する。市町村がやりたくないところに、知事がかってにそういう申し出をするわけにはまいりません。市町村におきまして、業務指定地域指定を受けたい、こういう管理事業団のやるような経営規模拡大の構造政策をやりたいということを、市町村と協議をいたす、これはまことに民主的で、強制的なことはないと思います。その上に都道府県農業会議意見を聞く、こういうことでございますから、これは権力の介入ということではなかろうと思います。  それから五十四条でございますが、五十四条で、これは先ほども申し上げておったのですが、実はこの目的を達成するためには、農地管理事業団に先買い権を行使させたほうがよかろうという案を実は持ったわけです。これが法制局なんかで幾、ぶん権力の介入的なきらいがあるということで、これは採用いたさなかったわけでございます。そのかわり土地の移動等につきましては、これは公告をするというようなことにいたしまして、この指定地域における農地の経営規模拡大の方向づけの参考にするわけでございます。  それから罰則がございますが・これはこの事業団へ売り渡したような場合におきまして、税金の軽減というようなこともあります。そういうものとの関連におきまして、罰則というものがございます。いろいろな法律におきましてある程度の罰則的な、あるいは科料的なものがございますが、それあるがゆえに、これは権力の介入だということには、私はちょっと考えられないのではないかと思います。  それから農民が土地を売りたい、こういう場合にそれは許されないのではないか、こういうことでございます。しかし報告を受けて、この経営規模の拡大の方向方向づけようというあっせんはいたします。が、あっせんをいたしましても、それを聞かない。自分は自分の有利なほうに売るのだ、こういう者につきましては、これは自由でございますので、これを拒否する理由一つもございません。  それから農地委員会と事業団の関係はどうかということでございますが、事業団におきましては農地委員会あるいは市町村農業協同組合等に協議会を設けておりまして、その計画等を考えてもらう、こういうような関係にいたします。
  199. 林百郎

    ○林委員 二十二条の解釈については、農林大臣は非常に民主的だというのですけれども、これは御承知のとおり土地改良事業なら、その施行地域の農民の何分の幾つの賛成でもってきめて、反対の者もたとえば三分の二なら三分の二の同意があれば土地改良事業に拘束されるということはあるけれども、これは都道府県知事関係市町村ですよ。これは国家権力でなくて何ですか。この申し出でやるというのでしょう。都道府県関係市町村が農林大臣に申請するまでには、地元の農民にあの手この手でおそらく全部判を押させたりいろいろして、そしてやるわけなんですよ。それは民主的な政府のもとにおける関係市町村や都道府県なら別として、佐藤内閣のもとにおける都道府県関係市町村が権力の末端機構でないなんてだれも言わないのですよ。民主的だなんということは考え違いだと思う。われわれはそう思います。したがってこれは実際の事業実施区域の農民にとっては、知事からのいろいろの圧力、関係市町村からのいろいろな圧力、こういうものがあって農民の自由というものは非常に制限されてくる。そうしてほとんどこの実施地域に入った農民は、自分の自由がきかされないような手だてをとられて、たとえばああいう承諾書をとるとか、そういうことの結果、そういうものを固めてから各関係市町村が知事を通じて農林大臣のところへ申請してくる。あなたはあまり末端のことを御存じないようですけれども、将門のあれは書かれたそうですけれども、あれはずっと昔のことですから、最近の農民は実際の農業構造改善をされる場合、末端の農民がどのような強制力を精神的、物質的に受けるか。ましてやそれをさらに強力にする事業団の事業実施地域では、農民はどのような圧力を受けてくるかということは、大臣は十分お考えになる必要がある。民主的だという、そういう安易な考え方実情に合わぬのじゃないかと思います。  時間がありませんので、最後にもう一つだけお聞きしておきますが、これは中期経済計画の中にはっきり——局長の答弁も隠しておりますし、大臣も隠しておりますけれども、中期経済計画の中には、なるべく早い時期に百万戸程度の自立経営が育成されるように配慮するということはあるわけなんです。したがって提出希望者に対しては職業訓練、社会保障、住宅政策の充実等の施策を講じ、その円滑化をはかりたいと言っている。ただ実際にいま政府がねらっている自立農家として、佐藤内閣のもとに将来農業経営が維持できて、保護したいというのは、百万戸程度の自立経営農家だということを考えているのじゃないですか。そうでないとすれば、中期経済計画の経済審議会の答申に対して赤城農相はどうお考えになるのですか。  さらにもう一つお聞きしたいのは、この管理事業団によって土地を手放し、そうして農業から離農し、都会へ輩出される低賃金の労働者の予備軍としての農民に対しては、大臣としてどのような手だてを講ずるつもりでしょうか。現実にこれは昭和三十八年だけでも約九十三万ですかの他産業への就業希望者があるわけなんですから、こういうものに対して農林大臣としては何か考えているのですか、いないのですか。それともそれは安上がりで、黙って出ていくから財政的な配慮をしなくても、自然に百万戸自立農家の養成ができるのだから、そんなところにえらい金を使うことはもったいない、そう考えておるでしょうか、いないでしょうか。その辺をはっきり聞きたい。
  200. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 中期経済計画におきまして、いろいろ見通しや計算をいたしております百万戸の自立経営農家の育成ということは、所得倍増計画の中にもあったわけでございますけれども、自立経営農家として百万戸が十年間にでき得る見通しが薄いというようなことで期限を切らないで、そういう考え方は中期経済計画におきましても継承いたしたわけでございます。でございますが、そのために農家は百万戸だけにしてしまうのだ、自立経営農家だけにしてしまうのだ、ほかはみな切り捨てにするのだ、こういうような考えは毛頭ございません。ましてこれを権力的にやるというような考え方は持っておりません。先ほどの二十二条の問題でもございますが、何か事業団ができると権力がどうしてもつきもののように考えておるようでございますが、これは先ほど申しましたように私は全く杞憂というものだと思います。市町村がそういう計画をしようということでも、農民にそれを押しつけるわけではございませんから、市町村のある機関等にはかってみるとか、あるいは農民がそういう意向がないものを押しつけよう、またやってみても、先ほど申し上げましたように土地の売買を禁止するわけではございません。好きなところに売ってもいいわけでございますから、どうも少し色めがねで見ておるような気がいたすのでございますが、私はそういう権力を行使してやっていくというような考え方は持っておりませんし、法律内容、趣旨も毛頭そういうことは含んでおらないと思います。  それからこういうふうに出ていくのについて、何か対策を持っておるのか、これは人がいろいろな職業につくのは自由でございますので、これを林さんのおっしゃられるように、現状の千二百万近くの農業就労者をそのまま強制的にくぎづけにしていくということならば、これは権力の介入でございましょうけれども、そういうことは毛頭考えておりませんで、ある程度はこれは出ざるを得ないのでございます。そういうことから考えまして、兼業農家等もふえておるのでございますし、これは農家自身から見まするならば、所得の面からは兼業農家というものも、これは必然的にそういう方向に向くのでございます。そういう意味におきまして、あるいは地域開発によりまして、あるいは就労の機会、所得の増大というものをはかっていくべきではないか。また農業自体といたしましても、あるいは生産政策から、あるいは構造政策、あるいは価格政策から、農業も所得をふやすようなことに政策を持っていかなければならぬということは、私どもも痛切に考えておるわけでありますし、そういう面で総合的に政策を行なっていく、こういうことを申し上げる次第でございます。
  201. 林百郎

    ○林委員 これで終わりますが、結論として農林大臣考えていただきたいことは、三十八年十二月の農業調査によりますと、一九六〇年の農業センサスでは百九十六万戸あった専業農家が、百三十九万戸に減っているわけなんですね。専業農家が減っている。それから第一種兼業が百九十八万戸で三四%であって、これは大体一九六〇年と農家戸数では変わっておりませんけれども、第二種兼業が二百四十六万戸で四二%になっておる。一九六〇年では大体三分の一ぐらいずつであったものが、第二種兼業が圧倒的にふえてきている。かつて一九六〇年に百九十六万戸だった専業農家が百三十九万に減っていることは、農林大臣、どうお考えになっても、日本農業はこのままでいけば、非常に大きな階級の分化と崩壊の過程にあると思うのです。ところが今度の管理事業団は、この方向を直すのではなくして、残り得る農家、専業農家が一九六〇年百九十八万から、三十八年には百三十九万に減った。それをまたさらに百万ぐらいに減らして、これだけは何とか残して保護していこうという、自民党の富農中心の政策であって、おそらくこのことのために、膨大な農民が都会へ流れて、低賃金の労働者に流民化していくのではないか。ことにその人たちは失業保険すらとれなくなっているような状態です。私はさらにこれを促進するための国家権力による農地管理事業団法だと思いますので、私は反対です。しかし、反対のための反対ではないので一私の言うことを赤城農林大臣はよく聞いて、日本農業のこのような崩壊状態をどう救うか、ここをよくお考えになったらどうかと思います。  これで私の質問は終わります。
  202. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 次会は来たる二十六日、月曜日、開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後五時四十一分散会