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宇野委員 いまの
局長の御
答弁によりますれば、現在の
指導方針としては、これはやむを得ないかと存ぜられますが、しかし、一応やはり
国土の
最高度利用と申しますか、あるいはまたそれを通じての
農業の躍進と申しますか、そういう
立場から申しますと、下から盛り上がる声、それを尊重して
指定していくのだという
精神は、これは
民主主義の
立法精神としてまことに尊重すべきではありましょうけれ
ども、やはり
農林省があくまでも
農林行政というものを
指導するという
立場におられる以上は、もう少しくその面において私ははっきりした
計画性があってもいいんじゃないかというような気がするのであります。したがいまして、そういうように下から盛り上がる気持ちにおいて
指定をしていこうという
精神をそんたくし、また尊重して私が
考えるならば、一応今日
事業団がいろいろな
土地を取得して、これを
農民に再分配するという
構想に基づく場面において、各
町村に
アンケートをとられて、その
内容を見てみますと、一番障害を来たしておるものが、やはりその
土地買い上げに際する
時価主義である。こういうことが反対かあるいは批判の最大の理由になっているようにも私は思います。
いま申し上げたとおりに、今日
農村地帯というものは、いまなお強固なる地盤を持っておりますから、そこにおいてはお互いにそう簡単に——よほど
離農対策が確立されたとか、
わが国の
社会保障体系が確立されたから、離農してもだいじょうぶなんだということならば、
零細企業、小
企業等はいろいろとこの
事業団のごやっかいによって、では
農地を手放そうということにはなるでしょうけれ
ども、まあまあいまのところ、
農民はそういう
地帯においては手放さないんじゃないかというようなことが推測されます。ということになれば、いま最も
農地の
流動化が顕著な
山間僻地であるとか、あるいは
都市周辺というところにおいて、声が盛り上がってくるんじゃないかというようなことも言えるのでありますが、ただし、私が
考えてみますと、
都市周辺部においては、今日非常に
地価が高い。だから、
兼業農家が
農林省の
指導あるいは
パイロット事業の
推進に基づいて、ではひとつ信託あるいはまた
買い上げをしてもらって、
自立農家育成に協力しましょうというような
町村の体制があったといたしましても、今日の
地価は非常に高いので、特に
農地としてそれが
考えられておらない。言うならば、
株券を持っておるというような
考え方で、
農地が今日温存されておる面が非常に多いのであります。現に私の
町等を
考えてみましても、やはり一反、二反、三反の
農地をそう簡単に手放そうとはいたしません。ということは、やがてここは
都市周辺地帯だから
工場がやってくるだろう、
工場がやってくれば、坪二千円、三千円あるいはひどいところでは一万円で売れるんだ、しからば、変なことをするよりも、むしろ
株券を持っているか、貯金をしておるか、配当の高いところの線において握っておいたほうがいいんだというような
現状なんですね。したがいまして、なかなか
農地の
流動化を促進いたしましても、そういうような
経済観念がある以上は、容易に
農地というものが
自立農家育成のための趣旨に沿って再分配できないような面があるんじゃないかと思うのであります。したがいまして、やはり問題は
時価主義だと私は思う。現に今日の
農地というものの
価格を詳細に検討すれば、売る場合においてのみ坪千円、二千円、三千円というようなことがいわれておるわけであります。米をつくっておるときには、一向そのような
経済価値というものは痛感されておらないわけであります。現在たとえ
生産費・
所得補償方式と申し上げましても、
米価算定の際にもそのような
要素というものは勘案もされておらないわけであります。売る時点において、初めて坪千円、二千円、三千円というふうな
価値が論じられておるわけであります。私はこう
考えますと、ここに
時価主義をとることも
現状としてはやむを得ないだろうけれ
ども、しかし、それならば、やはり売りやすい
状況に持っていってあげていかなくてはならないのじゃないかというのが第一点。第二点は、買う人の
立場に立つならば、今日一応
農産物の
価格支持政策においても、まだまだ不完全ではあるけれ
ども、一応
何とか米をつくっておれば、
昭和三十九
年産米においては一万六千二円で売れたということは、その
農地を取得したときの
価格がきわめて低廉であったから、そこら辺の線でもまあまあだという声があるのじゃないかと思う。こういう
売り手、
買い手という
二つの
立場から
地価というものを論ずるときに、今日この
法案で出されておることはやむを得ないといたしましても、さらに百尺竿頭一歩を進めると申しますか、思い切って二重
価格制度というものをとることにおいて、
売り手も売りやすいし、
買い手も買いやすくするというふうな積極的な
施策がなされても妥当ではないか、こういうふうに私は
考えておったわけであります。各
町村の
アンケートを詳細に調査いたしましても、この
法案に対する批判的な回答を寄せられておる
地域においては、そのような要望が多いわけであります。したがいまして、この点に関しましては、
テストケースだから、現在は
時価主義だからということで、やってみなければわからないでありましょうけれ
ども、しかし、
農林省が本腰を入れて、
わが国の
農村をしてすべからく西欧あるいはまた国内の他
産業にも負けないだけの
自立経営農家に
育成するという
意欲があるならば、それくらいのことをやってもいいのじゃないか。全国六百万町歩のうち百万町歩に一万出して幾らの
予算ですか。十万出したといたしましても一兆円、
わが国の道路整備のためは、三兆円、四兆円というばく大な
予算がどんどん組まれておる。これも必要です。全
産業の興隆のためには
国土の開発も必要です。しかしながら、片一方におきましては、将来の
日本の食糧事情の上から申しまして、あるいは
農村の重大なる課題の面から申し上げましても、私は、そのようなことが将来行なわれてもいいのじゃないか、こういうふうに
考える次第でありますが、この辺に関する当局の御所見を承っておきます。