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1965-04-21 第48回国会 衆議院 農林水産委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月二十一日(水曜日)    午前十一時十七分開議  出席委員    委員長 濱地 文平君    理事 仮谷 忠男君 理事 坂田 英一君    理事 長谷川四郎君 理事 本名  武君    理事 赤路 友藏君 理事 東海林 稔君    理事 芳賀  貢君       池田 清志君    宇野 宗佑君       金子 岩三君    亀岡 高夫君       吉川 久衛君    倉成  正君       小枝 一雄君    笹山茂太郎君       田口長治郎君    田邉 國男君       高見 三郎君    中川 一郎君       中山 榮一君    丹羽 兵助君       藤田 義光君    亘  四郎君       千葉 七郎君    松井  誠君       松浦 定義君    森  義視君       山田 長司君    小平  忠君       中村 時雄君    林  百郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         農林政務次官  舘林三喜男君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君  委員外出席者        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 四月二十一日  委員金子岩三辞任につき、その補欠として小  金義照君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小金義照辞任につき、その補欠として金  子岩三君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農地管理事業団法案内閣提出第九九号)  自作農維持資金融通法の一部を改正する法律案  (芳賀貢君外十一名提出、第四十七回国会衆法  第七号)      ————◇—————
  2. 濱地文平

    濱地委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農地管理事業団法案及び芳賀貢君外十一名提出自作農維持資金融通法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宇野宗佑君。
  3. 宇野宗佑

    宇野委員 農地管理事業団法案に関して、若干質問をいたします。  先般、吉川先生から広範かつ詳細にわたって質問がありましたから、なるべく重複を避けたいと思いますが、要は、所得倍増計画推進に伴って、農村にひずみがきたということは事実であります。私の記憶するところでは、所得倍増計画が立案され、実施に移されようとしたとき、はたして農業でいかなる方法をとれば所得倍増が達成されるかということが、大いに議論されました。  簡単に言えば、最もシンプルな方法としては三つあったわけであります。その一つは、農産物価格が倍増される、ただし、物価は据え置きという条件がつくでしょう。第二点といたしましては、収穫が倍になること、はたしてそれが十年の間にできるかという疑問点が残されます。第三番として、経営規模が倍になる、ただし、その場合においても、農産物価格等においては物価を考慮しないというような、幾つかの条件をつけての三つのシンプルな方法をわれわれは論じてきたわけであります。  しかしながら、依然として、農産物等に関しましては、たとえそこに生産費所得補償方式が用いられているとは申せ、いまなお不安定な条件にあることは申すまでもございません。だから、さような意味合いで、三つ条件のうちの一つとして、自立農家育成し、あわせて協業推進するという二つ目的で、ここに経営規模拡大という方策として、農地管理事業団がその法案として提出されたことに対しては、私は一応敬意を表するものであります。  しかしながら、当初の計画に反しまして、今回提案されておる内容は、たいへんな後退を見ております。しこうして、農業構造改善事業推進にあたりましても、一応二町五反の基準の農家を百万戸造成するというような構想でありましたが、しかし、私から言わしめますならば、自立経営農家というのは、抽象的なものの見方であったにせよ、第一番目は、開放経営下における対外施策として、国際競争力のある農業基盤をまず培養することが自立経営農家の要点である。第二番目は、技術革新成果農家に導入して、経営近代化推進によって、魅力ある農業経営を目ざして、多くの後継者が積極的に農業に従事するという形を自立経営というものは示さなくちゃならない。第三番は、他産業従事者との賃金格差所得格差、これを何としても是正しなくちゃならぬ。そういうたてまえにおいて今回農林省もお考えになっておられたとは思いますが、しかし、現状は、二町五反の農業を百万戸つくるという方針、その方針であるにもかかわらず、今日では兼業農家農家戸数のうちの重要部面を占めて、なおかつ、それが固定化しようという現象にあるということ、あるいはまた当然そうした兼業農家をも自立農家育成のためには切り捨てていくというのが、自立農家育成になるのかどうなのかという、そうした観点から、まず農林省の御見解を承っておきたいのであります。  特に私の申し上げたいことは、協業ということばがありますが、一応二町五反程度であるのならば、まあまあ今日の統計によれば他産業との格差においてもそう大差はないという自信があるといたしましても、やはり協業という面におきましては、自立経営農家自体協業もありましょうし、また兼業農家同士協業もありましょうし、あるいは一般農村を通じてのたとえば防除事業等における協業もありましょうし、協業ということばにも非常にたくさんな分類があり、分野があると私は思う。そこで、結論といたしましては、自立経営育成か、協業助長か、両者を同時に伸ばすことができるのかということに関する当局の所見を伺っておきたいのであります。
  4. 中西一郎

    中西政府委員 お話のございますような日本農業を取り巻く諸条件の中で、まさしく現在の農政は、自立経営育成協業助長という二本柱で進められておりますし、将来もそういう方向で進めるわけでございます。お話の中にございました、自立経営につきまして二町五反、これは平均ということを言っておったのですが、百万戸というとらえ方は、今度の中期経済計画においてやや形を変えております。御承知のように、目的所得でございますので、現段階で言いますと、一戸当たり所得六十万円程度所得を得るということを一つ自立経営のメルクマールにいたしまして、そういう農家をできるだけつくる。最近の統計によりますと、いろいろな作目平均してみまして、三十八年度で六十万円以上の所得を得ておる農家平均耕作規模は一町八反強であります。面積で特に言うのでなしに、いま申し上げたような所得の大きさでもって自立経営を把握しようということですが、できるだけそういった自立経営は数多く育成したい。他方お話にございました兼業農家がずいぶんふえております。ふえておりますが、これは切り捨てということでなしに、所得の面から見ると、農業所得だけでなしに、他産業からの所得も得ております。そういう意味で明るい一つ方向でもあります。他方農業の面から見ますと、これはたとえば反収が低いというような形での生産性あるいは生産力といった観点から見まして、農業全体から見ると、好ましくないという面も見られます。そこで、協業という点につきましては、自立経営自身がより所得を伸ばすという意味合いでの協業考えられますし、自立経営に至らないいわば兼業農家等が、農業生産を維持し、さらに生産力を上げていくというために、協業が必要であるということもございます。両々兼ねましてその育成をはかってまいるということが、これからの農政の大きな筋道である。いままで抽象的にそういうことを言っておりまして、具体的施策に乏しかったのでございますけれども機械化問題等にからみまして、四十年度予算では、相当新しい着眼点予算を編成する。たとえば農協等に約二億円だったと思いますが、高性能機械を導入して、集団栽培をさせる、これは兼業農家を含めました協業組織の強化という点で、新しい仕事であると考えておりますが、そういった形で、将来の農業発展自立経営協業の二本立てではかってまいるという考えでございます。
  5. 宇野宗佑

    宇野委員 いま自立経営農家内容に関しまして、所得倍増計画というものと中期経済計画の訂正がされたということでありましたが、その間に考え方の相違があるのかないのか、この辺ははっきりしておいていただきたいと思います。
  6. 中西一郎

    中西政府委員 お話しの点でございますが、自立経営というものの基本的な観念につきましては、るる申し上げるまでもないのですが、農業基本法第十五条に規定してあるとおりに考えておるわけです。農業従事者が正常な能率を発揮しながら完全にこれらの人が就業することができる、そういう規模家族経営だ、所得の面からいいますと、他産業従事者と均衡する生活を営むことができるというようなことを要件にしております。そのもの考え方は変えていないわけです。ただ、所得倍増計画中期経済計画との間で、そういう観念である自立経営の把握の方法を変えたわけでございます。倍増計画の場合は平均二町五反、百万戸、こういっておったのですが、さらにそれだけでなしに、あの場合には粗収入をおおむね百万円、所得率六〇%として六十万円程度所得があるというようなこともあわせていっておるのでございますけれども、全体としての理解が、面積に非常に重点のあるようなとらえ方に一般理解されまして、それは必ずしも本意でないわけでございます。元来が所得重点がある。そこで、今度は中期経済計画におきまして、所得重点を置いたとらえ方を前面に打ち出して、平均二町五反といったことが、何か全部が二町五反以上なければいかぬような論議も巻き起こしましたし、あれやこれや考えまして、ああいう言い方は未熟であったということで、所得重点を置いたとらえ方のほうが、基本法観念にはまさしく正しいのではないかという理解をいたしまして、そういう経過でとらまえ方を変えてきておるわけでございます。
  7. 宇野宗佑

    宇野委員 中期経済計画においては、はっきりと面積ではなくして、むしろ所得であるというふうなとらまえ方において、自立経営農家育成をはかろうという御答弁に対しては、全くそのとおりだと思います。  しからば、事業団事業を一応テストケースとしてパイロットというふうに限定されておるけれども、私は、それならば、もっと広範囲に実施すべきじゃないか、こう思うのでありますが、その辺の見解はいかがでありますか。
  8. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 いま応答がございましたように、中期経済計画におきましても、できるだけ早い間に自立経営農家をつくり出す必要があるということが指摘されておるわけでございますが、冒頭に先生がおっしゃいましたように、所得というものに着目いたしまして、六十万円なり八十万円なり、さらに行く行くは百万円なりの所得をあげていく手段といたしましては、いろいろの手段があろうかと存じます。したがいまして、一つ施策ですべてをカバーするということは、私ども毛頭考えておりません。農業というものは、究極的には土地を使う業でございますから、経営要素としての土地拡大していく。このことのためにはあらゆる努力を惜しんではならない。したがって、計画経済として何戸をどういうふうにつくるという意味ではなくして、自立しようとする農家土地を手に入れていくことが可能になるような手段を、あらゆる方途を講じてその面はその面でやっていくということで、当初はもっと大きな規模で、全国的にもこれを行ない、事業量も相当大きい規模考えたわけでございます。しかし、政府部内でいろいろ検討の過程におきまして、こういう手段農業拡大をするということも確かに一つ考え方であるが、非常にいろいろ問題もある。ことに政府に準ずる機関が直接買って売るという方式は、外国においては発達しておりますが、日本としては初めてのことでございます。いろいろ地価をめぐる問題がある。したがって、大事をとってまいりたいというような関係の方面の意見もございます。私どももその点同感すべき点もございます。私どもといたしましては、しかし、事柄が重要でございますので、ともかくもこれを実行する機関をつくるということに一つ重点的な意味を持たせました。その機関やり方については大事をとって、当面特に御熱心な地域においてやり方を十分研究して、将来にこれを及ぼしていくという姿勢なりものの考え方そのものは反対すべきでもない、かように考えまして、当面ともかく事業団をつくる、その事業団の業務のあり方は、大事をとる意味におきまして、規模を百町村程度にいたしまして、数年間パイロット的にやってみまして、その成果を十分取り入れて全国化したい、かように私どもとしては考えております。
  9. 宇野宗佑

    宇野委員 経営基盤拡大し、土地を一応従来の所得倍増計画の二町五反というような観念ではなくして、さらに広げていくということにおいては、私も異議はないわけですが、しからば、いまのような所得の増大ということを一つの中心として、自立経営農実を増大し、あわせて当分テストケースとしてパイロット事業を行なっていくのだというわけでありますが、当分はさることながら、将来の日本農村ということを考えますと、今日の統計より見ましても、農業人口所得倍増計画によって著しく減りつつある。これはわが国の二重構造という経済の宿命を打開せんがためには、その面においてはまことにけっこうな傾向であるかもしれません。しかしながら、一応昭和三十五年あたりに三七%あった農業就業人口というものが、二一%にまでも激減してきたという傾向そのものはそれであっても、従来持っていらっしやった農民農地というものが有効適切に減って、農村として残るんだ、農業として残るんだという意欲がある農家に再分配をする意味合いにおいて、事業団も発足しただろうと思うのですが、しかし、いま現実の問題として、しからば、二町五反ならばまあまあだろうし、三町、四町、五町となればもっともっと能率があがるだろうということは、理論的にはわかるのですが、現実の問題といたしまして、いま農地を一応手放し得るような状況にあるのは、山間僻地で、ここはもう農業ではとても食っていけないから、ひとつ農地を手放そうという傾向が出ておるし、あるいは都市周辺では、ここには会社、工場が来るだろう、来た場合には手放してやろうということになっているだろうと思うのですが、いまの局長の御説明では、自立経営農家というものはこういうかっこうで将来は育てていくべきであるのだというのであるならば、日本のどこかにおいて、ここは永久に農業地であるというような一つ地域というものが指定されるのであろうか、あるいは指定されないのであろうか。現に工業推進、あるいは地域格差の是正、あるいは工場の分散、都市稠密化の防止と、幾つかの目的において新産都市というものが生まれて、新産都市の中においては、ここには将来りっぱな工場をつくるのだということになっておりますが、しからば、自立経営農家というものを育てるのだということになれば、いま政府のやっていらっしゃることは、いろいろの意味において意義はあるけれども、ここは自立経営農家育成地帯なんだと思っておりましても、それがやがては新産都市拡大されてみたり、あるいは低開発地域工業開発促進法指定地域になってみたりということでは、これはせっかくつくった自立経営農家地帯というものがつぶされていくというようなことも推測されるわけです。したがいまして、この事業を的確に連めていく、しこうしてパイロット方式として、当分の間テストケースとしてこれをやっていくんだ、だから町村指定するのだと申しましても、指定された町村性格は、言うならば、そこが農業地帯という性格を持っていかなければならないわけなんです。農林省としては、その辺に対する強い意欲を持って、あくまでもここは農村地帯として守り抜いて、そこに自立経営農家育成されていこうというのか。また将来の発展によっては、新産都市指定されて工場地帯になってもしかたがないわいと言われるのか。そこをひとつ御構想を語っておいていただきたいと思うのであります。
  10. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 御指摘のとおり、人口が相当農業内部から出ております。それから土地利用体系が、二次産業、三次産業の発達によりまして、農地を侵食いたしております。そこで、私どもといたしましては、一つ考え方といたしまして、あるいは国会等でいろいろ御指摘をいただいておりますように、国土利用工場立地あるいは農業立地として計画的に指定をすべきである、計画化すべきであるという御意見をたびたび承っておるわけで、いろいろ研究もいたしておるわけでございますが、これには非常にいろいろ問題があるようでございます。したがいまして、現在のところ、私どもといたしましては、二次産業、三次産業農業に食い込んできます段階を秩序あるものにあらしめるという立場において、受け身立場農地転用行政をやってまいったのでありますが、今度は受け身ではなくて、いま御指摘のとおり、自立経営として将来伸びていく形態に着目いたしまして、そこに土地の集積を、強制ではございませんが、経済手段を通じてやってまいろう、こういう考え方をとります以上、御指摘のとおり、その地域の選び方というものは非常にむずかしいと思います。法律におきましても、国土資源総合的利用という見地から見て、その区域における農業上の利用高度化をはかることが相当であると認められる農業地域で、かつ、その農地保有合理化をはかろうと考えられる地域について、これをやるのだという思想の宣明はあるわけであります。これは私ども考え方といたしましては、この思想の線に沿いまして、国土資源の総合的な利用という法文が入りました意味も、全体的な土地利用立場から見て、これは農業として将来もいくべきである、またいかすことが適当であるということを、現在の社会通念なり常識に限度を置きまして、そこを考えて、そういう地域からの指定のお申し出を優先的に受けてまいる。上からここをやるのだという指定方式はとっておりません。知事があげてまいりまして指定をいたします場合に、そういう姿勢でやりたい。したがいまして、考え方といたしましては、具体的にそういう出てまいりました地区につきまして、現在の諸条件を分析いたしまして、そういう地域からこの事業を始めてまいりたい、こういう姿勢をとっておる次第でございます。
  11. 宇野宗佑

    宇野委員 いまの局長の御答弁によりますれば、現在の指導方針としては、これはやむを得ないかと存ぜられますが、しかし、一応やはり国土最高度利用と申しますか、あるいはまたそれを通じての農業の躍進と申しますか、そういう立場から申しますと、下から盛り上がる声、それを尊重して指定していくのだという精神は、これは民主主義立法精神としてまことに尊重すべきではありましょうけれども、やはり農林省があくまでも農林行政というものを指導するという立場におられる以上は、もう少しくその面において私ははっきりした計画性があってもいいんじゃないかというような気がするのであります。したがいまして、そういうように下から盛り上がる気持ちにおいて指定をしていこうという精神をそんたくし、また尊重して私が考えるならば、一応今日事業団がいろいろな土地を取得して、これを農民に再分配するという構想に基づく場面において、各町村アンケートをとられて、その内容を見てみますと、一番障害を来たしておるものが、やはりその土地買い上げに際する時価主義である。こういうことが反対かあるいは批判の最大の理由になっているようにも私は思います。  いま申し上げたとおりに、今日農村地帯というものは、いまなお強固なる地盤を持っておりますから、そこにおいてはお互いにそう簡単に——よほど離農対策が確立されたとか、わが国社会保障体系が確立されたから、離農してもだいじょうぶなんだということならば、零細企業、小企業等はいろいろとこの事業団のごやっかいによって、では農地を手放そうということにはなるでしょうけれども、まあまあいまのところ、農民はそういう地帯においては手放さないんじゃないかというようなことが推測されます。ということになれば、いま最も農地流動化が顕著な山間僻地であるとか、あるいは都市周辺というところにおいて、声が盛り上がってくるんじゃないかというようなことも言えるのでありますが、ただし、私が考えてみますと、都市周辺部においては、今日非常に地価が高い。だから、兼業農家農林省指導あるいはパイロット事業推進に基づいて、ではひとつ信託あるいはまた買い上げをしてもらって、自立農家育成に協力しましょうというような町村の体制があったといたしましても、今日の地価は非常に高いので、特に農地としてそれが考えられておらない。言うならば、株券を持っておるというような考え方で、農地が今日温存されておる面が非常に多いのであります。現に私の町等考えてみましても、やはり一反、二反、三反の農地をそう簡単に手放そうとはいたしません。ということは、やがてここは都市周辺地帯だから工場がやってくるだろう、工場がやってくれば、坪二千円、三千円あるいはひどいところでは一万円で売れるんだ、しからば、変なことをするよりも、むしろ株券を持っているか、貯金をしておるか、配当の高いところの線において握っておいたほうがいいんだというような現状なんですね。したがいまして、なかなか農地流動化を促進いたしましても、そういうような経済観念がある以上は、容易に農地というものが自立農家育成のための趣旨に沿って再分配できないような面があるんじゃないかと思うのであります。したがいまして、やはり問題は時価主義だと私は思う。現に今日の農地というものの価格を詳細に検討すれば、売る場合においてのみ坪千円、二千円、三千円というようなことがいわれておるわけであります。米をつくっておるときには、一向そのような経済価値というものは痛感されておらないわけであります。現在たとえ生産費所得補償方式と申し上げましても、米価算定の際にもそのような要素というものは勘案もされておらないわけであります。売る時点において、初めて坪千円、二千円、三千円というふうな価値が論じられておるわけであります。私はこう考えますと、ここに時価主義をとることも現状としてはやむを得ないだろうけれども、しかし、それならば、やはり売りやすい状況に持っていってあげていかなくてはならないのじゃないかというのが第一点。第二点は、買う人の立場に立つならば、今日一応農産物価格支持政策においても、まだまだ不完全ではあるけれども、一応何とか米をつくっておれば、昭和三十九年産米においては一万六千二円で売れたということは、その農地を取得したときの価格がきわめて低廉であったから、そこら辺の線でもまあまあだという声があるのじゃないかと思う。こういう売り手買い手という二つ立場から地価というものを論ずるときに、今日この法案で出されておることはやむを得ないといたしましても、さらに百尺竿頭一歩を進めると申しますか、思い切って二重価格制度というものをとることにおいて、売り手も売りやすいし、買い手も買いやすくするというふうな積極的な施策がなされても妥当ではないか、こういうふうに私は考えておったわけであります。各町村アンケートを詳細に調査いたしましても、この法案に対する批判的な回答を寄せられておる地域においては、そのような要望が多いわけであります。したがいまして、この点に関しましては、テストケースだから、現在は時価主義だからということで、やってみなければわからないでありましょうけれども、しかし、農林省が本腰を入れて、わが国農村をしてすべからく西欧あるいはまた国内の他産業にも負けないだけの自立経営農家育成するという意欲があるならば、それくらいのことをやってもいいのじゃないか。全国六百万町歩のうち百万町歩に一万出して幾らの予算ですか。十万出したといたしましても一兆円、わが国の道路整備のためは、三兆円、四兆円というばく大な予算がどんどん組まれておる。これも必要です。全産業の興隆のためには国土の開発も必要です。しかしながら、片一方におきましては、将来の日本の食糧事情の上から申しまして、あるいは農村の重大なる課題の面から申し上げましても、私は、そのようなことが将来行なわれてもいいのじゃないか、こういうふうに考える次第でありますが、この辺に関する当局の御所見を承っておきます。
  12. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えを申し上げます。  たいへん有益な御指示でございますが、実は一つ申し上げたい点は、農地の移動と、それから近郊地帯におきまする農地が非農地になる移動と、二種類ございます。そして非農地になる移動を転用による移動として、これも二万町歩をこすものが片方においてございます。それから片方において、現在の地価で、これも最近年々ふえておりますが、七万近いものが農地農地として移動をいたしております。そこで、私ども考えといたしまして、いま究極的に自立経営土地を集結する手段といたしまして、一番極端な例を考えますれば、国がどんどんある程度の強制力をもって買って売っていくということも考えられます。それからいま先生指摘のように、売り手からは高く買って、買い手には安くこれを売りつけていくという方法考えられます。いろいろの角度から研究いたしたのでございますが、まず何よりもやるべきことは、現に七万町歩の土地が一定の地価で動いておるという問題でございます。そしてそれを府県別にずっと洗いましても、別に特定の県で多くて特定の県で少ないということではなくて、いろいろの理由がございまして、七万町歩程度のものは農地農地として動いておるわけであります。そのほかに、二万町歩近いものが工場敷地、宅地に別に動いておる。そこで、七万の土地移動が、自立経営育成考えたいという立場考えた場合に、はたして有効であるかどうかということで分析いたしてみますと、いろいろの事情がからみまして、極端に言うと、零細農間の移動、同じ土地がAからBにつくのに、より大きくなるほうに移動してくれれば、より効率的でございますが、必ずしも将来農業でやっていこうという方々でないところにも移動いたしますといたしますれば、この移動量の一定量なりを、せめてそこに介入いたしますことによって、これを方向づけとして、より大きいものに回すオリエンテーションができないかという立場として、実は考えておるわけでございます。考え方といたしましては、先生のおっしゃいますとおり、何兆円かかろうと、高く買って安く売るという、もっと徹底した方法考え得るわけでございます。そういうことの以前に、現に七万町歩の土地移動を単純に放置しておくということはもったいないという立場で、ひとつ手が打たれるべきではないだろうかという立場におきまして、本案は考えておるわけでございます。したがいまして、現実に売り買いされておるものでございますから、時価で差しつかえはない。そうして、売り手買い手に現に行なわれておる売買でございます。ただ、その買い手を変えるわけでございます。そこで、その地価農地としての売買の移動でございますから、使うほうも農地として使うわけです。御承知のとおり、田で二十万、田畑あわせまして平均価格十七万くらいで全国で動いておりますが、これもいろいろな角度から分析いたしますと、ある経営規模を持っておる者が、さらに買い増しをいたします場合には、それでやっていけるという現実がありますがゆえに、動いておると私どもは判断をいたしておるわけでございます。したがいまして、本案におきましては、そういう現にある農地移動を時価で事業団買い手を集めます。あるいはそれを直接事業団が自分で買って、育て伸びていっていただきたい方々に売る、こういう考え方で本案は処理をいたしておるわけでございます。しかし、それではまだ手ぬるい、いまおっしゃいましたように、もっと積極的に介入といいますか、国の姿勢を強めて、高く買って安く売るというということも、いろいろ検討はいたしたわけでございます。しかし、財政の問題がいろいろございまして、直らにそういうことも実行はむずかしい。しからば、ともかくもいま動いているものに手を染めていくことは、現段階において急務であり、かつ、そういうことを手がける組織をいまから用意するということはどうしてもやりたい、こういう立場で実は政府案を固めた次第でございます。
  13. 宇野宗佑

    宇野委員 いまの御答弁によれば、現に農地農地として流動しておるのが全国約七万町歩あって、それは特殊な地帯を問わず、各府県を通じてそういうような現象がある。しかもその地価は、田畑あわせて大体平均十七万円程度で動いておるということであります。そうすると、そういうところがおそらくやりやすいからというので、何とぞこのパイロット指定地域にしてくださいと言われた場合には、農林省現状から考えられまして、これはいとも簡単に事業団の機能をフルに発揮し得る地域であるというので、指定なされませんか。私が先ほど来言っておるのは、それも必要だ。それも必要だが、現にやはり農地というものの機能が発揮されずに、有価証券的に保有されておるところの農地というものを、その地帯における篤農家、その地帯における専業農家に再分配するという強い意思が働かなくちゃならないということを言っておるわけであります。したがいまして、まあテストケースだというておやりになられましても、私は、現在動いておる程度価格、動いておる程度面積では、この効果があがらないのじゃないかと思うことが第一点でありまするから、その点もう少しく指導性を発揮するという意味合いにおいて、しからば、全国平均よりも高い地価のところから、一応申請が出された。お百姓さんが手放すか手放さないかということは第二といたしまして、その県の知事も、また農業会議も、ここならよろしかろうというて申請された場合の配慮が、幾つか出てこようと思います。そのときに、現実農地というものは非常に高いし、知事だとか農業会議意欲を持っているが、が動かぬじゃないかというような場合には、はたして農林大臣はその地域指定されるのかされないのかという問題も、私は起こってくるだろうと思うのであります。その辺がどうであるかということをお尋ねしておきます。
  14. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 考え方といたしまして、この七万しか動かない。ある意味からいうと、七万しか動いておらないのをもっと動かそうという立場に立ちまして、なぜ七万しか動かぬかといえば、農地の財産的保有のために抱いておる方が相当多いから——逆に言うと、農地移動が少ない。したがって、この七万をもっと拡大するために、財産的土地保有として持っておる人からも土地を出させるように制度を考えることは、確かに御指摘の問題としてあると私ども重々承知しております。しかし、この七万の動きの中で全国の村々についてみますと、確かに国がかようにこの単純なる移動を放置しておくことはもったいない。この土地移動はわが村においても平均してそれぞれあるわけでございますから、この土地移動をわが村の自立経営農家の方に集約したい、そういう意思が村の指導者あるいは関係者の中に盛り上がってまいった地域でなければ、国あるいは事業団がしりをひっぱたいても、経済行為でやるわけでございますから、効果は望み得ない。したがって、私どもといたしましては、確かにわが村における農地移動を国が期待するような形の方向方向づけることを村の立場でやろうというふうに、まず意思、考え方を、備えられる村を受けて立つべきではないか。  それから今度は指定お話でございますが、指定の問題は、しからば、そういうことを言ってこられるところは、受け身でみんな指定するかという問題、しかし、いまは直ちにそこまで——数年後には明らかに工場地帯、住宅地帯になると予想される地帯で、そういうお話がございますれば、先生指摘のとおり、これは必ずしも私は適当でないと思います。したがって、法律の二十二条でも明らかなように、客観的に将来に向かっても農業地域として伸びていけるであろうと判断し、また伸ばしていきたいという願望を知事も農林省も関係者も持つ地域であって、そしてそういう御要請が出てきたものを指定していく。しかし、上からにらんで、あそこがいいから、あの村を指定しようという天下り方式はとらない。そういう地域であって、かつ、そういう御要望が出たものを受けてやってまいりたい、こういう指定の面あるいは立地の問題及び土地移動の方向づけの問題に対するその村の考え方、これらを通じてこの仕事を進めていく、こういう考え方に立ちましたときに、一挙に全国で何千もやるということはまだ適当でない。しからば、まず四十年度は百町村程度で、パイロット的に、こういう構想をうまく全国化していく場合の問題点をきわめる意味も含めまして、また経験を積む意味も含めまして、やってまいりたいということが、パイロット的な形で本事業をやろう、こういう考え方になっております。  繰り返し申し上げますが、先生のおっしゃいますとおり、これ以上突っ込んで、もっと動かない土地を動かす、財産的価値保有として持っておるものすら動かすような方途を講ずべきではないかということにつきましては、貴重な御意見として深く私どもも研究を今後続けたい、かように考えております。
  15. 宇野宗佑

    宇野委員 政務次官、いかがでございますか。
  16. 舘林三喜男

    ○舘林(三)政府委員 これは私の率直な私見としてお聞き取りいただきたいと思いますが、農地管理事業団構想、これは農地管理事業団予算折衝の過程を通じてあらわれた農地管理事業団とは、実は少し開きがあるような気がいたします。ただ、農林省といたしましては、予算の上にあらわれた、またそれと相関連して法律としてあらわれた農地管理事業団として御説明する以外にないわけでございます。さような立場から申しますると、あくまでも百町村千町歩という昭和四十年の予算パイロット的なものでございまして、そういたしますと、パイロット的な百町村をどう選ぶかということにつきまして、いろいろ意見があるわけでございまして、いま宇野委員の御意見農地局長の御説明したところにおいては、私は若干の食い違いがあるような気がいたすのであります。しかし、農林省として、また局長答えましたように、少なくとも百ヵ町村を選ぶということになりますと、宇野委員の言われるように、広域な農業の基幹地域を客観的にきめて、そこにすべての精力を集中すべきだという意見はもっともだと思いますけれども、それを実現するにしては、百ヵ町村というものは、私はあまり少な過ぎるような感じがするのであります。したがいまして、とにかく今日農林省として説明し、また言えることは、百ヵ町村ということになりますと、やはりいま局長申し上げましたとおりに、下からの盛り上がりによってこれをやる以外ないじゃないか、パイロット的に、モデル的にやる以外ないんじゃないかというふうに私は感じるのであります。まことに手ぬるい考え方でございますけれども、しかし、これをやるにつきましては、町村にも協議会も置かなければいけませんし、また一般農民の方々が管理事業団をよほど理解していただかなければいけませんし、また土地の売買等につきましても、あっせんをやり、駐在員なども、よほどこれは教養訓練しなければいけないわけでございまして、さような立場から申しますると、そんな準備とか宣伝のために昭和四十年度は日が暮れるような感じがいたすのであります。したがいまして、さようないろいろの経験を積みながら、私は、二年、三年と続けていくことによって、管理事業団が、いま宇野委員がおっしゃいますような方向に進むであろうし、また進まなくちゃいけないと思います。私はざっくばらんに、この将来ということを聞かれます場合に、一年、二年は必ずしもいい成果をおさめないかもわからない。しかし、必ず二、三年後には、いわば地すべり的な勢いで、この事業団が大きな役割りをなすだろうということを実は確信しているわけなんです。それにつきましては、いま宇野委員の言われましたように、やはり相当高い立場から、私は、農業の基幹地域というものについても適用するように漸次ならなければいけないと思います。ただ、今日の段階におきましては、PR、宣伝の時代でございますから、やはり局長の御答弁したようなかっこうで、とにかくことし一年は進むべきだというのが私の考え方でございます。
  17. 宇野宗佑

    宇野委員 いま政務次官並びに局長の御答弁、現段階においてはやむを得ないと思います。  そこで、地元の意向を尊重するというたてまえで当座は出発しなければならないというのが本事業団の任務であるとするのならば、事業団は地元の意向を反映するため、実施市町村段階でつくられる農地管理の方針に即して、今後は業務を行なっていくということがこの法案の趣旨にもなっておりますが、ひとつ管理の方針というものを具体的に御説明願いたいと思います。
  18. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 本日参考資料といたしまして、「農地管理事業団の業務による農地保有合理化促進対策実施要領案の骨子」というのをいま御配付をいたしたと存ずるわけでございますが、   〔委員長退席、坂田(英)委員長代理着席〕 その中で、実施市町村及び関係農業団体をもちまして協議会をつくっていただきまして、この協議会で農地管理実施の方針をおきめ願いたい、かように考えておるわけであります。その方針内容考え方といたしましては、結局わが村といいますか、この事業を実施する地域におきましては、農業経営というものがどういうふうに進むであろうかという、一つの展望といいますか、分析をまず関係者でやっていただく。その展望の問題、それから実施地域におきまして、現に農地の移動があるわけでございます。その現にございます農地の移動の上に立って、将来の見通しを立てていただきたい。そうして、その見通しとともに、事業団の手を通じまして農地の売買、あっせん、買い入れ、売り渡し、貸し付け等について、どういう構想でこの仕事を進めようかということをきめていただきたい。それから農地を手に入れる人の資格の要件、優先順位、そういう選定基準というようなものも協議会でおきめ願いたい。それだけでは農地だけでございますから、その対策との関連を持ちますところの土地改良事業とか、農用地開発事業等についても計画をお立てを願い、それとの調整も整理をしていただく。それから関係の方々の役割りというようなものをきめていただく。そういうものができましたならば、都道府県知事に出していただきまして、都道府県知事に目を通していただく。そうして、なるほどこういう形で進むならば、確かにこの村におきましては、農地の保有の合理化というものが相当客観的にも確実性をもって進め得るという判断でございますれば、知事はこれに認可をしてもらう。そうして事業団はそういう地区を取り上げる場合には、駐在員がおりますから、駐在員はこの協議会と連絡をとりまして、その管理方針によりまして仕事を進めるということを今度は事業団の業務方法書において規定をいたします。事業団の業務方法書におきましては、その地区において立てられた農地管理方針、知事の認可した管理方針を尊重して仕事をするというようなことを事業団の業務方法書で明定して、そうしてこれは国は事業団の義務としてやらせるという考え方で臨みたい、かように考えております。
  19. 宇野宗佑

    宇野委員 きわめて事務的な御説明でございますが、幸いにしてこの事業団が発足して、しかも一応初年度としては大体百ヵ町村くらいを指定しょうという当初の御計画であるにもかかわらず、新産都市と同じように、全国的にこの事業団に賛意を表してどっと集まってきた場合に、やはり新産都市と同じような地域指定の争奪戦が行なわれるということが、法律ができた以上は私は望ましいことではないかと思うのです。自衛隊と同じように、百ヵ町村だといってかねや太鼓を鳴らしてもなかなか集まらなかったということでは、せっかくの構想も実らないわけです。私はそう思ったときに、いま局長が御説明なされました管理方式、その中には、将来わが村におけるところの農地管理の展望、あるいは農業育成の展望、幾つかあるだろうと思いますが、やはりそうした場合に、幾つかのエレメントというものを詳細に検討されて、まあ二百出てきたうちの百を初年度は指定して、あとの百はしんぼうしてくれというような光景を想像したいのであります。そうしたことを想像いたした場合において、ある村では非常に意欲をもって申請し、知事もそれを認めたけれども、しかし、これを全国的に考えた場合に、どうも自立経営農家というにふさわしい形態が今日ただいまでは存在しないという村もあるかもしれません。いわゆる専業農家が少なくて、兼業農家が多いという場合があるかもしれません。しかし、はたしてそのような兼業農家が、いや将来おれはもっと自立農家になるのだという意欲を燃やしておられても、現段階においては、統計の上では、あるいは戸数の上では、あるいは農業従事者人口の上では、割り出せない面もあるかもしれない。そうした場合において、はたして農林省は、判定の基準として経営規模の大小であるとか、あるいは専業、兼業等の区分によって農家を選別されるのかどうかということも、ひとつ承っておきたいのであります。  第二点は、一応百ヵ町村指定なされた場合に、これまたいま局長の御答弁にもありましたとおり、当然パイロット事業を行なうにいたしましても、あるいはまた土地の売買がされ、あるいは信託がされたといたしましても、その地方の事業推進のためには、生産基盤の整備等その他の重要な農業政策もあわせて行ない、なおかつむしろ拡充しなかったならば、せっかくの事業団発足の趣旨に反するのであります。したがいまして、そうした生産基盤拡大等の拡充策に関しましては、百ヵ町村は優先的に扱われるのであるかどうかということをこの際承っておきます。
  20. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 前段の管理方針は村でつくられてまいりまして、その管理方針の中には、どういう人に売っていくか、あるいは優先的に売っていくかという考え方も出していただくつもりでございます。このどういう人にこれを売っていくかという問題につきましては、先般も本委員会でお答え申しましたとおり、私どもといたしましては、形式的に現在兼業農家であるとか専業農家であるとかという、現在における形式にこだわるべきではない。同時に、現在におきましても、自立経営という概念は、先ほどのお話にもありましたとおり、いわば理念的な概念でございまして、直ちにそれを具体的に当てはめるには相当吟味を要する概念でございますから、現に自立経営農家が何戸あるとかないとかという形の形式的な基準で審査することは、適当でないと考えております。いまの配付資料にもたしか出ておると存じますが、国の方針といたしましては、経営者及びそれのあと継ぎが農業によって生きていこう、農業によって自分の生活をりっぱに営んでいきたいという意思と考え方と技術、こういうものを持っておる方をより一般抽象的な基準としては考えていくべきである、こういう立場で、各市町村がつくります管理方針にあたっての国の一般指導はいたしたい、かように存じております。  それから、こういう地域で、実は構造改善事業等におきましても問題になっておるわけでございますが、そういう地域において、管理方針におきまして土地改良計画等が織り込まれておりますが、これはこれ自身を相当に吟味するわけでございますから、私どもとしては、極力これは尊重してまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  21. 宇野宗佑

    宇野委員 今回のこの管理事業団におきましても、農地の信託という業務があるわけでありますが、農基法制定のときに行ないました信託制度、その後の信託自体がどのようになっておるか、簡単でいいですから、御説明願いたいと思います。
  22. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 昨年の八月現在で信託に出された件数が七十五件あるということを動向に報告いたしたわけであります。最近の一番新しいデータでは、農協によりますところの農地信託の引き受け実績は、三十九年十二月末現在では九十七件。それから農業協同組合で信託規定をつくりまして知事の承認を受けたもの、つまり、組合としてはやる意思、体制を整えたものは、三十九年八月末現在で七千三百三十二農協でございます。そして引き受けの状況を見ますと、貸付信託が八十九件、売り渡し信託が六件、売り渡し貸付信託が二件、こういう態様に相なっております。その原因を見ますと、信託に出しました動機として見ますと、私どもが当初本制度をつくりましたときに想定をいたしておりましたように、九十七件のうちで四十一件は、やはり農業をやめるけれども土地の所有権は持っていたいという意味の信託でございます。それ以外は、世帯員の老齢化とか死亡とか兼業のためとかいうものでございます。大体の実情は以上のとおりでございます。
  23. 宇野宗佑

    宇野委員 いまの局長の数字によりますと、信託制度を査定を受け、承認を受けて、やらなくちゃならないという意欲を持っておる件数は非常に多いのですが、実際に実施されておるのはほんとうに取るに足らない。私は、この事業団が売買のみを主体とせずに、その方向においても今後新しい問題を解決される必要があると思いますけれども考えてみますと、やはり信託における幾つかのウィークポイントがあるわけです。その第一点は、やはり小作料という問題じゃないか。たとえばその理由に基づきましても、兼業農家で商売をやっているのだから、ひとつ思い切って商売だけでやっていこう、だから、あまり労力の要る農業は信託をやるほうがぼろいのだというような計算をした場合には、信託は進むかもしれませんが、その点やはり今日の農業におきましてはいろんな隘路があるがために、むしろ信託をしておるよりも、自分がその農地をたとえ一反であろうが二反であろうが、保有しておいて、高く売れるときまで待っておいたほうが得だというような考え方があるから、農協等において信託制度を積極的にやろうという町村がすでに七千余件もあるにかかわらず、現実に動いている件数というものは、ほんとうに蚊の涙ほどもないということがあるのじゃないかと思います。そこで、その辺において、これは将来の問題でありましょうが、全国農業会議所の中間答申案をながめさしていただきましても、「小作料については現在の最高額にかえて地域の賃貸借当事者の大多数による小作料協定を認めることとする。」というようなことも、一つの試案ではないかと思いますが、この点に関しまして、農林当局はやはり事業団推進せしめて、売買のみならず、信託等において何らか自立農家経営の促進をはかろうとおっしゃるのならば、やはりもっともっと打つ手があると思うのであります。たとえばいま申し上げた小作料の点においては、今日はどういうような構想を持っていらっしゃるか、この辺も伺っておきます。
  24. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 先生先ほど来御指摘のとおり、私どもが見まして、日本農地に対する所有者のあり方の問題は、地域によりまして非常に複雑な態様を持っておると存じております。何が何でも持っておって値上がりを待ちたいという方、この地域は、どちらかといえば南関東から太平洋ベルトラインに並んで、地価の上昇傾向の関係で非常に多い。一方、山間部あるいは北海道の一部等におきましては、そういうことではなくては、売り払ってしまいたいという意思ではあるが、買い手が逆にないというようなところもございます。そこで、非常に複雑な態様を示しておりまして、信託制度も、実は考え方といたしましては、信託という方法は、形式上有権が移りますので、信託の委託者が他町村に出ましても、所有権を実質的に保持できる道を開こうという立場考えたもの、要するに、極端に言えば、小作料が安くても、所有権だけは持っていたいという方々に対しては、こういう形で土地流動化なり利用の道はできないかという立場で実は考えたものでございます。  そこで、御質問の中心の小作料をどう考えるかという問題でございますが、小作料につきましては、私どもいろいろ検討は続けておりますが、かように存じます。結論的に申しまして、小作料というものは、小作関係といいますか、賃貸借関係と不可分である、かように考えます。賃貸借の条件、したがって賃貸借の関係、現行農地法の二十条につきまして、これが耕作権保護の考えをとっております。この耕作権の保護の考え方をいかに改めるか、いかに考えるかということと不可分の問題として、小作料は考えなければならない、かように存じております。したがいまして、現行二十条の小作条件関係の規定はそのままにして、小作料だけは集団的にきめたらいいじゃないかという御議論については、私どもは若干の疑問を持っております。やはり小作関係そのものをどう考えるかという問題とあわせて考えさせていただきたい。そして小作関係そのものの問題につきまして、研究をもう少し続けさせていただきたい、かように現在のところ考えておる段階でございます。
  25. 宇野宗佑

    宇野委員 そこで、信託にからみまして、いま局長が言われましたとおり、信託制度というものは、農地そのものを持っておって、なおかつ、たとえば不在地主となった場合において、所有権は持っておるけれども、一応それを耕作者にゆだねるという一つ方針でつくったものであると言われました。そのとおりであると思いますが、しからば、その場合において、よく私たちがこの管理事業団農地の売買をあっせんする等々の問題に関しまして問題にしたのは、実は相続の場面であります。おやじさんがせっかくパイロット事業によって二町五反のたんぼを手にした。ところが、子供が二人いたから、それぞれ均分相続であるから、子供たちがどうしてもおやじのたんぼを半分ずつくれと言えば、これはやはり後継者育成のために渡さなければならない。その趣旨は経営規模拡大のためであったが、相続の場面においてはそういうふうな面がなきにしもあらずだと私は思う。特にそのむすこ二人が農業を自分の生業として依然継承するのならば、それまたやむを得ないだろうけれども、片一方において所有権は保有した。幸い信託制度があるから、信託をしていきましょうというようなかっこうになれば、この構想に基づいてつくられた自立経営農家が零細化するという形があるわけなんです。したがいまして、この事業団の趣旨からいたしますと、一応手渡した農地というものは、農業という目的に使用されざるときには買い戻すということを一つ条件として契約をしなくちゃならないというふうに、いろいろな条件が付せられておりますけども、しかし、相続という場面と信託という場面、そうしたからみ合わせにおけるところの目的のそこを来たすんじゃないかと私は思いますが、その辺に対する格別の配慮はありますか。
  26. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。  この法律では、二十八条で、先生いま御指摘のとおり、たとえば金を貸した場合に、農地をその目的に供しないとか、せっかく土地をつけたにかかわらず返さないという場合には、繰り上げ償還なり買い戻しの規定があります。先生の御指摘の後段の相続の問題でございますが、本案におきましては、二項でこういうふうに考えております。農地につきまして、貸し付けを受けた者またはその一般承継人が、貸し付けを受けた土地と、貸し付けを受けるときに現に持っていた土地とプラスいたしましたそのトータルが、相続を含めましたその他の原因によりまして一定割合以下に処分された、この際は、やはりその当該土地は繰り上げ償還なり買い戻しの対象にいたします、こういうふうに規定をいたしまして、話し合いによりましてせっかくつけたものが細分割の形にならないように、間接的な御協力をお願いする法制をとっております。
  27. 宇野宗佑

    宇野委員 その問題は、実施の面において非常にむずかしい問題が出てこようと思うのです。これは具体的な笑い話ですが、申し上げておきます。私の町で起こったことですが、きょうだいがいて、妹が片づいておる。収穫どきに妹がオート三輪を持って兄貴のところへやってきて、米を半分載せて持って帰った。なぜ半分米を持って帰ったかといいますと、おやじさんが死んだのだから、おまえさんも半分もらえるというので、私も半分持って帰ります——近ごろこんなことが起こるかと思うような話ですが、実はきょうだいげんかが起こって、民事判裁に回っております。やはり相続の面におきまして、たとえ法律でそういうことが書かれておりましても、私は、後継者育成、ほんとうの意味の専業農家育成意味におきましては、もう少しくきめこまかく御調査賜わって、将来はやはり相続によって細分化されないように、零細化されないように、これは単に農地管理事業団を通ずる問題だけではなくて、全般の農地に対しても強力な措置をされることが必要ではないか、こういうふうに考える次第でございます。  第二番目は信託に関してでございますが、たとえばいま地主が小作人に土地を貸し与えておる。その土地が公共事業あるいは工場誘致等によって、他の目的のために転売されることがある。そのときに、一応しきたりといたしまして、離作料という問題があるわけであります。こういうことになりますと、結局今日のパーセンテージから申しますと、きついところでは七、三だというのです。七分小作者がとって、三分しか地主に戻らないといいます。やわらかいところで五分五分といいます。いずれにいたしましても、一応の何らかのしきたりが農村にあるわけであります。したがいまして、もしそれ自分の農地というものを、この地方がせっかく。パイロット事業になったのだし、奇特な人がいて、地元の役員諸氏の勧告に従って、では私の土地は信託しておいて利用してもらいましょうということがあり得たといたしましても、たとえばその場合に他の目的に転用された場合には、当然その農地は今度は事業団がまた払い戻しを受けてしまうわけでありますけれども、そうした場合における離作料というものは、信託しておいた場合に、だれが払うのだろうかという問題が出てくるわけであります。したがいまして、そういうところのきめこまかい説明がないがために、実はこの管理事業団の信託にあらずして、その先の信託制度のときに、幾つかの危惧を地主さんが持ったことは事実である。思い切って管理事業団にまかしておいたほうがよろしいと兼業農家でお考えになる方がいたといたしましても、管理事業団にまかしたばかりに、せっかく高い値で買いにきたにかかわらず、兼業農家で自分が一〇〇%手にしたものが、そちらにまかしたばかりに、言うならば、小作契約がそこにあるから、しきたりに従って離作料を払わなければならないかもしれない。うかうかなそんものに乗せるよりも、自分が握っておいたほうが、それならばパーフェクト一〇〇%入ってくる、こういう考え方一般信託に関してあったということを私も現実に、耳にいたしたわけであります。したがいまして、この信託に関する離作料——事業団に関してはおそらく買い戻してしまうのですから、他の目的に変える場合におきましても、多少そのようなトラブルがあるかしれませんが、従来までの信託という形式に置いた場合に、そういう問題はどのように処置され、だれが離作料を払うのかということをはっきりとした答弁をしておいていただきたいと思います。やはりそこら辺に信託制度が振わない一つの原因があるということを耳にするわけであります。
  28. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 たいへんむずかしいお話なのでございますが、農地法は耕作権の保護を非常に強くいたしております。したがいまして、その耕作権が侵されます場合に、耕作権の補償という意味におきまして離作料の問題が起こります。したがって、そういう例におきましても、あるいはそういう場合でなくても、一定の期限がきまして返してもらおうと思いましても、更新はなかなか認めておりません。更新は認めないたてまえが強く出ておりますので、したがって、小作人に賃貸借が進まないという実態でございまして、そこで、信託制度を考えたわけでございます。したがって、信託制度におきましては、賃貸借契約よりも、信託契約のほうを優先させたわけでございます。そして期限も長いほうがいいが、六年程度ということを基準に指導をいたしておるわけでございます。したがって、先生のいま御指摘の例でございますが、たまたま転用等の問題が起こる。一般の賃貸借におきましては、確かに耕作権が非常に強いものですから、割合も高いし、それによって時期的にもいつも離作料問題が起こる。しかし、信託におきましては、信託期間を六年程度にとめておりますれば、六年後におきましては賃貸借のほうが信託契約終了に伴いまして消滅させるわけでございますから、その際においては当然小作人は賃借権をなくすわけでございますから、信託による賃貸借におきましては、期限の調整によってその問題を緩和いたしております。しかし、それにしても、たまたま発生したらどうなのかといいますれば、信託契約に基づく期限内の賃貸借契約でございまして、やはり賃貸借の取り消しでございますから、解除、解約でございますから、当然離作料の問題は起こります。その場合におきましては最終負担者は地主でございます。
  29. 宇野宗佑

    宇野委員 いま局長答弁ではっきりしたわけですが、その辺に関しましても、ひとつ小作料と一緒に将来いろいろと検討していただかぬことには、現実が示しておりまするとおり、信託そのものの設定された効果というものがあがらないのではないか。非常にむずかしいデリケートな問題であります。農村には古いしきたりがございますから、そのしきたりを頭から近代化という一言のもとに無視するわけにはまいりません。無視するわけにはまいりませんが、やはり農地流動化をはかるというたてまえから申し上げますと、私は今後ともにひとつ大いに検討をしていただきたいと思うのであります。  それでは大臣が参りましたから、これで終わります。
  30. 坂田英一

    ○坂田(英)委員長代理 次は小平忠君。
  31. 小平忠

    ○小平(忠)委員 農林大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、戦後の日本農業の実態から見て、農業近代化が強く叫ばれておりまする今日、やはりその推進には、農業基本法なるものが不十分でありましても、その精神を貫いて農業並びに農業関係者はひとしくこのことに思いをいたしておったのであります。しかし、何といっても、日本農業の最大の問題点は、やはり決定的な過小農経営、小規模経営、これが日本農業の前進をはばむ最大の原因となっておると思うのであります。そういう観点から、農林当局が自立農業、このことに思いをいたしまして、長い間検討を加えて、今般の農地管理事業団というような形になったと思うのでありますが、ただ、すでに前者の質問を通じて逐次具体的になっております点でありますけれども、当初農林当局が考えられた案と、本年度の予算の折衝をめぐる最終的な農林、大蔵との折衝の段階で、大きく後退をしているという点においては、これは大臣もその点は率直にお認めになっておると思うのであります。少なくとも農林省が、また農林大臣が、大英断を持ってこのことだけはやらなければならぬと決意されたその趣旨から見るならば、本案のごとき、最終案のごときものであるならば、非常に問題点がたくさん含まれております。私は、これらの点について率直に大臣の意向を承りまして、その点を明らかにいたしたいと思うのであります。  第一は、この程度のものであるならば、あえて事業団をつくらなくても、農協あるいは農業委員会、特に農協が中心となってこのようなことは推進できるのではなかろうかと思うのでありますか、大臣いかがでございましょう。
  32. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 確かにいまお話しのように何といたしましても、日本農業経営規模が零細である、あるいは資本装備が弱体であるということが、国内的にも他産業との関係、国際的にも他の国の農業との競争力が非常に弱いということの根本的なことだと私も考えております。そういう意味におきまして、構造改善の根本は、やはり経営規模拡大あるいは強化ということにあると思います。そういう意味におきまして、非常に大きくといいますか、強くこれを推進しようということに考えたのでございますが、いま御指摘のように、これにつきましては、非常に一面においては危惧の念といいますか、何か強制収用力でも用いて革命的にやるのではないかという危惧の念を持つ向きもあります。ある面におきましては、実際にはこういう仕事を進めるといっても進まないじゃないか、何か強制力でもなければ、いわゆるあっせんとか買って売るというような形では進まぬじゃないか、こういうような面もありまして、いろいろな面から、再々検討あるいは折衝を重ねた結果、御案内のとおり、パイロット的、試験的にやらざるを得ないというところに落ちついたわけでございます。でございますが、ことに本年度におきましては、土地の売買等はいたしませんで、あっせんというように規模が非常に小さくなったわけでございます。でありますので、そういう小さいものならば、何も事業団という一つの公的な団体をつくらぬで、農協とかその他の既存の団体でやったらどうかというような御意見かと思います。しかし、先ほど申し上げましたように、これは日本農業を改革していく基本的な問題でございますので、ことしだけで規模の小さいパイロット的なものだけでとどめよう、こういう考えを持ってはおりませんで、将来ともこれで強く大きく前進していこう、こういう前提でこの法律がつくられております。そういう意味におきましては、こういうことを国自体がやるか、あるいは国にかわって公的な団体、事業団というようなものでやるかというところに問題が縮められていったといいますか、そういうところに考えが進んでいったわけでございます。実際問題としては、農協あるいは土地改良区等にこれを扱わしてはどうかというようなことも十分検討いたしたのでございますが、それぞれの団体の機能、目的等もございまして、やはり新たに事業団というものをつくってこれに運営をさせることが一番妥当じゃないか、こういう結論に達したわけでございます。でありますので、この事業団は試験的なものを扱うというばかりでなく、将来にわたりまして相当大きく事業を進めていく、こういう前提のもとにありますので、運営の機関として事業団というような構想を持ったわけでございます。
  33. 小平忠

    ○小平(忠)委員 現在の農地の移動状況を見ますと、年間に七万町歩前後の農地が移動しておるということでありますが、その内容は、都市周辺工場その他に転用されるのがどのくらいであって、あるいは同じ農耕地として農林省方針である自立経営農家経営規模拡大に供される面積がどのくらいであるか、そういう点についての実態はいかがでございましょう。
  34. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。  農地の移動につきましては、先ほど申しましたとおり、調査が二つございまして、二万町歩程度のものが、農地が非農地になる転用として集計されております。それから先ほど来申しております七万町歩というのは、農地法によりまして農民が農耕用に使うために権利移動をしたもののうちで、金を払って移転した、そのいわゆる農業用のための売買の数字でございます。そのほかに、たとえば贈与とかその他のものは別でございます。  それから七万の農地のうちで、どの程度自立経営に役立っておるかという御質問でございますが、要すれば、別途資料で提出いたしたいと思いますが、大ざっぱにいいまして、都府県におきまして一町歩、北海道におきまして四町歩というものを仮定いたしまして、三十八年度の実績について見ますと、農地移動の三三%は内地の一町歩以内の農家間移動でございます。それから一八%は一町ないし四町の上層内部間の移動でございます。そして一町未満層から一町以上層にいったものが二七%の割合を占めておりますが、同時に、上から下におりているものが二二%ございます。したがって、もしかりに土地の移動が一町未満層から一町以上層にいくのが経営規模拡大に役立っておると見ますならば、全体の土地移動の五%しか働いておらない、こういう実態でございます。
  35. 小平忠

    ○小平(忠)委員 農林大臣、いま農地局長が説明された点は、私は非常に重大な意義を持っておると思うのであります。何といっても、今日やはり経営規模拡大して、いわゆる自立経営育成ということにこの事業団が置かれておるとするならば、その実態を的確に把握して、それを推進するものでなければならないと思うのであります。ところが、本年度は初年度でありますから、どうしてもパイロット的、試験的な段階であることはいなめない事実でありましょう。しかし、これが将来やはり相当の英断をもってやらない限りは、どうしてもこれがいろいろな面で暗礁に乗り上げて、蹉跌を来たす結果になると思うのであります。  さらに私は、次の点をお伺いしたいのでありますが、この取り扱いにおいて、公団の融資の年限が三十ヵ年、金利三分であります。事業団の融資の三十ヵ年年賦、あるいは利率三分ということは、確かに相当の英断であろうと思うのでありますが、私は英断と思わないのです。なぜならば、先進国をごらんください。少なくとも農業経営の絶対要件である生産基盤、土地条件について、これはオランダでもスカンジナビア三国でも、過去にやっております例から見ますと、百ヵ年年賦というような形、さらに利率は全部二分以下であります。そういうようなことを考えてみるならば、私は、百ヵ年に至らなくとも、最小限五十ヵ年、利率はやはり二分というようなところまで引き下げないと、現下の農家の実態、あるいは経営規模拡大しようとする意欲を持つ農家にとりましても、この点が今後非常に困難な隘路となると思うのであります。同時にまた、もう一つは、この年三分という金利体系は、農村金融について、いままで各農業団体あるいは農業関係者から、その利率について、これを根本的に引き下げろという強い運動があるわけであります。そういうものにこたえるという腹がまえがないと、これは大きくくつがえるのであります。ですから、そういう点についても農林大臣はどのような決心をお持ちであるか。これは今回せっかく出された法案でありますけれども、これを五十ヵ年あるいは二分、こういうように思い切って金利体系なり年賦償還の方途を考える意図がないかどうかということを承りたいのであります。
  36. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 諸外国等の例は、御説示のとおり、日本農村金融の体系よりも、非常に低率で長期の金融が行なわれております。残念ながら、日本におきましては、昨年等も相当検討いたしたのでございますが、そこまで踏み切り得ないような段階にございます。そこで、この三分、三十年の条件でございますが、確かに、初めから土地を購入してこれで経営をやっていこうというのには、金利も高いし、年限も短いと私は思います。ただ、実態は、経営規模拡大しようとするものがふえた分、それが農業全収益の増加をもって、いままでの耕地も持っておる、その上につけ加えての分でございますので、まあこの程度でやっていけば、農地取得の代金の延納の意味で、そう土地取得の代金の償還に苦しまないでやっていけるのではないかというふうに見たわけでございます。でございますので、実際からいいますならば、諸外国の農村金融のようにもっと長期低利にいたしたい、こう考えておりますが、これは全体としても十分検討を続けていきたいと思っておる次第でございます。現在の制度におきましては、三分、三十年というのは、初めての日本の低利長期の農村金融だと思います。でございますので、これは全体に向かっての一つの突破口といいますか、一つの金融制度として、ここまで進めたものだということだけは買っていただきまして、他の金融につきましても、できるだけ長期低利の金融を農業金融においては進めていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  37. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それに関連しまして、ただいま三分というのは思い切った施策である、このように大臣はおっしゃられたのでありますが、他の農村金融に関しても、この際考えていきたい、こういうことであるのですが、実は昨年来農業災害が各地で全国的に頻発しております。問題の天災融資法の金利にいたしましても、これはたびたび大臣が公約いたしておりまして、今国会に近くこれの提案が正式にきまることと思うのでありますが、本件に関しまする三分五厘、七分五厘というこの金利体系について、もうそろそろ大臣の構想も固まっておると思うのですが、その点は思い切って、災害地の農民に、あるいは関係者にこたえる体制ができておるのでございましょうか。
  38. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 どうも残念ながら、思い切ってというような新金利体系にはなっておりませんが、いろいろ折衝の過程でございますけれども、なかなか私のほうの要求が十分通らないというような状況で、いま折衝をし、法案を近く出すような段階になっておる、こういうふうに申し上げたいと思います。
  39. 小平忠

    ○小平(忠)委員 どの辺まで引き下げることを期待されますか。
  40. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 せっかくでございますが、いま折衝中で、どの辺までということを申し上げても、できないときには、どうも私が微力ということになりますので、申し上げかねます。
  41. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これは農林大臣が、災害対策と農林水産委員会の合同審査で言明されたのでございますよ。それをいまになってそんなことをおっしゃっちゃひきょうですよ。  その問題はまたそのときにお伺いいたすことにいたしまして、そこで、私は劈頭に申し上げましたように、少なくともこの事業団を設立してやらせるということにおいては、ただいまもこの農地保有合理化促進対策実施要領、これがいま配付になったのですが、配付になったばかりですから、私は中をまだ見ていないのですが、問題は結局、この事業団の実態を見ますと、農林大臣が都道府県知事を通じて市町村指定し、あるいは具体的にその該当となるような問題について、非常にこれは問題があるのですよ。私の言いたいのは、結局正しい農地拡大経営規模拡大という観点から、自立経営農家育成しようという、そういうまじめな形に利用されるならばよろしいけれども、ともすれば悪用されるようなことがあってはならぬ。そういう点について十分な配慮がなければならぬが、その点について、私は明確な御答弁をいただきたいと思うのです。
  42. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お話のとおり私も考えております。これが農地の転用等によって宅地等にする場合とか、あるいはこういう低利長期の金を借りて土地を買い集めて、それをほかに使う、こういうようなことでは農地の効率的な使用になりませんし、この目的経営規模拡大、これは農耕地としての経営規模拡大、こういうふうに考えておりますので、その点は厳重にその目的に反するようなことのないようにいたしたいと思います。また地域的に見ましても、都市近郊等におきましては、これは知事、県当局等の意向もありますが、私のほうといたしましては、あまりこの事業団の仕事を行なう地域として指定をいたしたくない、純農村地帯のほうを目標として選定をしていきたい、こういうふうに考えております。
  43. 小平忠

    ○小平(忠)委員 その点はきわめて重要でありますから、今後実施の段階においては、本件については細心の注意を払わなければならぬ問題だろうと思います。  そこで、さらにもう一つ大臣にお伺いいたしたいのは、初年度だから、どうしてもパイロット的あるいは試験的な段階にならざるを得ないということは理解できるのでありますが、しかし、少なくとも農林当局が長い間検討を加えられて、この事業団設立に踏み切ったからには、法案に示される程度政府出資あるいはその基金、この程度のいわゆる手当てでは、おそらく私は中途はんぱだと思う。それは産投会計でも、国の財源やあるいは資金にも限度がありますが、もう少し率直に——大臣はどういうふうにお考えになっておるかわかりませんけれども、一体農林中金が現在都道府県の信連を通じて吸い上げている金ですね、それは的確に大臣も把握されていると思う。少なくとも膨大な資金を吸い上げているにかかわらず、それが実際に系統金融を通じて農家に還元されているのは非常に少ない。ほんとうに本腰を入れて、この事業団をやろうというならば、単に産投会計だけにたよるということでなくて、もう少し大幅な融資体系というものを考えていいはずです。私は具体的にもう一つの例を示すのですが、農林中金の金だって、これは現に系統外に流れている金が幾らあるのか、私は、その数字の実態と、これに対する考え方、さらにもっと思い切ったことができないのか、こういう点について、大臣の率直な意見を聞きたいと思うのです。
  44. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 中金の金が関連産業というような方面に相当多額に流れておるのは事実でございます。資金コストの関係もあるのでございますけれども、できるだけ農業プロパーのほうに利用されることのほうが必要であり、好ましいことでございます。そういう意味におきまして、この事業団においてもそういう金を相当利用する考えはないか、そういうお尋ねであったろうかと思います。これは事業の相当の進度等によりまして、そういう面からも十分考えなくてはならぬ問題だと思います。現在のところは、いまお話しのような。パイロット的なものでもありますし、進度等もこれから二、三年見ていきまして、お話のような点も考慮、検討をいたしていきたいと思います。
  45. 小平忠

    ○小平(忠)委員 結局、農林中金の余裕というものが、率直に申し上げて、何と三千六百億を上回るのです。そのうちの実際にプロパーで農村に還元できるという金が、むしろ農業以外に流れている金のほうが多いのです。これは毎年毎年の統計でですね。私は、このこと自体が農林行政の大きな欠陥であり、誤りであろうと思うのです。問題は、金利のコストにからんでくるといいますが、それは結局農政の妙味であって、やはり農村から吸い上げられた金は農村に還元する。結局、金利の幅というものは、政府がやはり思い切って利子補給をするところに妙味があるのであって、今回の場合も、日本農業の最大のガンは、何といっても、長い間問題となっておるこの過小農経営、小規模経営、こういう点を解消して、経営規模拡大して自立農業自立経営に持っていこうということが基本であるならば、そのために、政府が思い切った金利体系なりあるいは融資体系なり、そういうことを考えることが必要であろうと思うのです。そういう点について、この配慮が現在のこの事業団規模であるならば、ほんとうに考え方が甘いと私は思うのです。ですから、これを進める場合において、大臣はほんとうに英断を持ってやらぬ限り、直ちにこれは明年度から大きな暗礁に乗り上げることは、火を見るよりも明らかだと私は思う。これは単に私が率直に意見を申し上げるだけでなく、今後意見も出しますけれども、おそらく各界の意見を聞いても明らかだと思う。非常に重要な問題であります。したがって、当初農林当局が考えられた構想から、予算をめぐって最終的にきまった本案が、大幅に後退して——これでも一歩一前進して突破口なんだからやってみようという意欲はわかるのだけれども、しかし、やるからには相当の問題があるということを覚悟しておかなければならぬということを私は警告を申し上げたいのです。  一時までという約束の時間がまいりましたので、きょうの質問は以上にとどめますが、十分に配慮して、本案の運用については最善を尽くすべきであることを私は最後に申し上げまして、きょうの質問を終わらしていただきたいと思います。
  46. 坂田英一

    ○坂田(英)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。    午後一時五分休憩      ————◇————— 〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕