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1965-03-30 第48回国会 衆議院 農林水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月三十日(火曜日)    午前十一時八分開議  出席委員    委員長代理理事 坂田 英一君    理事 仮谷 忠男君 理事 谷垣 專一君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 東海林 稔君 理事 芳賀  貢君       池田 清志君    宇野 宗佑君       亀岡 高夫君    吉川 久衛君       倉成  正君    小枝 一雄君       笹山茂太郎君    田口長治郎君       田邉 國男君    高見 三郎君       中川 一郎君    丹羽 兵助君       野原 正勝君    細田 吉藏君       山中 貞則君    卜部 政巳君       栗林 三郎君    松浦 定義君       森  義視君    山田 長司君       湯山  勇君    小平  忠君       中村 時雄君    林  百郎君  出席政府委員         総理府事務官         (北海道開発庁         総務監理官)  小熊  清君         農林政務次官  舘林三喜男君         農林事務官         (農林経済局         長)      久宗  高君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君         林野庁長官   田中 重五君  委員外出席者         農林事務官         (大臣官房総務         課長)     安藤繁夫君         農林事務官         (農地局管理部         入植営農課長) 山下 一郎君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 三月二十九日  林道工事による財産の侵害救済に関する請願  (石田宥全君紹介)(第二三一六号)  沖繩産糖全量買上げに関する請願勝間田清一  君紹介)(第二四五一号)  豚枝肉基準価格地域差縮小等に関する請願  (池田清志紹介)(第二四八八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  開拓融資保証法の一部を改正する法律案(内閣  提出第五五号)  農林水産業振興に関する件(近畿地方等にお  ける降雪による林産物及び農作物等減収状  況)      ————◇—————
  2. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が病気のため、委員長の指名により当分の間私が委員長の職務を行ないます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、過日の近畿地方等における降雪による林産物及び農作物等減収状況について、農林省当局説明を求めます。安藤総務課長
  3. 安藤繁夫

    安藤説明員 まず近畿地方雪害について申し上げます。  近畿地方におきましては三月十六日及び十七日に、紀伊半島と日本海を東進した低気圧影響によりまして、近畿地方及び四国の一部に強風を伴う豪雪がありまして、農作物ビニールハウスビニールトンネルあるいは果樹だなの施設等被害があり、なお和歌山県、兵庫県、奈良県を中心といたしまして、森林関係相当被害が発生いたしました。  また東北地方におきましては、秋田におきまして、二月に入って西高東低の冬型気圧配置がさらに強まりまして、県内各地に多量の積雪による異状低温が見られました。特に三月に入りましてからは、連日一センチ以上の積雪がありまして、大曲、横手市の地方では、三月十日現在で百四十八センチメートルと記録的積雪量となり、融雪も平年に比べかなりおくれております。このためリンゴの枝割れ、樹木の裂傷等のほか、ナシ、ブドウ等のたなの損壊被害が見込まれております。  そのような雪の状況によりまして、現在まで県からの報告によりました数字を集計いたしますと、次のようになります。被害県秋田兵庫奈良大阪和歌山、岡山、香川県でありまして、果樹につきましては樹体損傷を含めまして四十億六千三百万円、野菜につきましては九億八百万円、花につきましては九千万円、工芸作物につきましては二百万円、その他二千八百万円、合計いたしまして五十億九千九百万円、林業関係におきましては約百二十八億円、ビニールハウスビニールトンネル果樹だな等の被害が十二億円、合計約百九十一億円という数字が一応県からあがっております。しかし農林省といたしましては、目下統計調査部中心といたしまして、詳細に被害数字その他を取り調べ中でございます。県からの報告によりますと、一応先ほど申し上げましたように、百九十一億六千万円の被害になっておる、こういうような状況でございます。
  4. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 質疑申し出がありますのでこれを許します。森義視君。
  5. 森義視

    ○森(義)委員 ただいま総務課長から、全体の農林業積雪等による被害のケースをお伺いしたわけですが、特に私は、去る三月十六、七日、近畿地方を襲いました春雪による農林業被害、わけても奈良県、和歌山兵庫大阪林業被害について、それぞれの該当県から報告のありました資料の概算をお伺いしたわけでございますが、それ以上に、さらに林野庁実情について調査、把握しておられるのがございましたら、お知らせ願いたいと思います。
  6. 田中重五

    田中(重)政府委員 現在関係の県から概報はございますけれども、さらに詳細な資料につきましては、目下営林局、県のほうで調査中でございまして、その調査の結果を待ちたいという状態でございます。
  7. 森義視

    ○森(義)委員 私どもの手元に届いております資料によりますと、特に近畿地方春雪による林業関係被害は、奈良県が総被害額の半数に近い六十四億の被害を受けておる。こういう報告をいただいておるわけです。特に東北北海道のように常時豪雪に見舞われる雪害の多い地区と違いまして、樹種あるいは施業方針によりましても、雪害に対する対策がその地区と非常に異なった方法でやっておると思われます。そういう地区における特別な被害で、まさに私はこれこそ天災だと言うべきだと思うのです。しかも今度被害を受けておる地区は、いわゆる里山地区と申しまして、平地に近い地区なんですが、そこで被害を受けた林齢を見てみますと、ようやく幼齢林の域を脱して壮齢林、これから換金できるという全く林業家にとっては大切な山がほとんどやられておる。しかも奈良県の一番大きな被害を受けた地区を見てみますと、いわゆる大森林家よりも中小、零細森林家が非常に多い。こういう特殊な形の被害が多いわけでございますが、特にそういう雪害に対しては、従来からあまりこういうものを考慮に入れなくてもいい地域でございますので、吉野仕立てと申しまして密植をやっておる。そういうところに水分を含んだ春雪が、重い雪が降って、風が吹いた、こういう形で大きな被害を受けた、こういうふうに現地からの報告で聞いておるわけです。こういう林業被害あるいは農業被害に対する、これは三月の十六、七日ですから、すでに二週間になんなんとするわけですが、現地被害県からの報告だけで、いま林野庁としては出先機関をそれぞれ持っておられますが、いま調査中でございますというふうな形ではなしに、緊急調査というものをやって、それから細部の調査、こういう二段がまえの調査をやって、現地林業農業に携わっておる人々に、とりあえず復興のための勇気を与える。こういう形の施策が非常に私は緊急に大切ではないか、こういうふうに思うわけです。そういう観点から申し上げまして、従来のそういう雪害に対する林野庁調査あるいはそれに対する救済施策、そういう問題をどういうふうにやってこられたか。さらに今度のそういう特殊な、ふだん雪害をあまりこうむらない地域における異常雪害に対する救済というものに対して、何か林野庁は特別の、従来の雪害対策以外に考慮しておられる面があるのかどうか、こういう面について長官から所見を承りたいと思います。
  8. 田中重五

    田中(重)政府委員 今回の雪害につきましては、その範囲が広範なだけに、当該県としてもその詳細な被害実態調査相当に手間と時間もかかっておる、こういうことかと思います。それで林野庁といたしましては被害発生と同時に、林野庁からも係官を派遣いたしまして、その被害概報の聴取、それからさらに続いて行なわれるであろう被害報告のしかた、そういうことについて指示をいたしまして、目下さらに県を通じてこの実態の把握につとめておるというのが、いまの実情でございます。それから従来雪害による政府側林業経営に対する救済といたしましては、たとえば幼齢造林木が雪のために倒伏をしましたものを、もし引き起こしてやれば、また生長が回復するというような場合には、引き起こすために必要ななわ代、あるいはまたごく簡易な引き起こすための引き起こし機、ウインチと言いますとちょっと大きくなりますが、その程度のもの、そういうものにつきまして国が三分の一、県が三分の一、被害者が三分の一というような助成をいたしたことがございます。それから今回の被害にはあまりないようでございますけれども、雪害のための炭がま損壊についても、同じような助成措置を講じたということがございます。その他被害を受けたあとの再造林等につきましては、これは農林漁業金融公庫からの低利融資で、その再造林を進めてまいるように指導をするというようなことをいたしてまいったわけでございます。大体この雪害の場合には、倒木起こし、それから損壊の場合には起こしても回復できないであろうと考えられるものの伐採搬出、そういうようなものがいままでの事例のほかに入ってくる、そういう仕事がある、こういうふうに考えております。
  9. 森義視

    ○森(義)委員 林野庁のほうでそれぞれの出先を通じて、実情調査をしておられるその調査は、大体いつごろに集約できるのか、このことがまず一点。それから従来の林業災害に対する天災融資法発動をやられた例があるのかないのか。あったならば、あれは政令指定なんですが、大体どういうことを基準にして天災融資法発動をやるのか、この点が第二点。それから特に第三点として、いま長官お話では、雪起こしの経費補助、これは幼齢林に対してはやっておる。幼齢林に対する雪起こしの補助、これは東北北海道のような常時雪害地区におきますと、雪害あと片づけあるいは雪起こし、これは造林融資の中に入っているわけですね。ところが今度の近畿の場合においては、造林融資の中に雪起こしとか、そういうのは入っていないですね。そういうものは、雪起こしとか雪害によるあと片づけ用のあれを農林漁業金融公庫から融資を受ける問題について、どういうふうにお考えになっているか。特に従来雪害の多い地区に対しては、実情林野庁においても十分把握しておられますけれども、雪害のない地域におけるそういう雪害については、実情を十分に把握しておられないように思うわけです。そういう点について、特殊な地域でございますので、実情を、国会のほうでも調査団を派遣して調査したほうがいいのじゃないか、こういうふうに考えるわけですが、いま申しましたような三点について、さらに林野庁長官の御答弁をお願いしたいと思います。
  10. 田中重五

    田中(重)政府委員 ただいまの県によるところの被害実態調査については、おおむね四月の中旬をめどとして資料がまとまるように進めているということでございます。  それから天災融資法発動につきましては、林業被害を主にして発動されたことはございません。  それから造林単価の問題ですが、雪積地帯といいますか、そういう地帯、特に寒冷な地帯、あるいは温暖な地帯、やはりそれぞれ造林補助の場合の補助単価積算は違っております。また拡大造林あるいは再造林の場合もまた単価が違っている。しかしながらその単価積算の中に、雪起こしという項目で単価積算はしていないということでございます。  それからなお、いま御質問の雪起こしの融資について、ごく幼齢のものだけであろうというお話でございましたが、一応農林漁業金融公庫業務方法書といたしましては、植栽の五年生程度までそういうものの保育については、造林資金対象として低利融資をしております。ただ先ほども申し上げました雪害救済に対して十五年生程度まで、その造林資金として農林漁業金融公庫融資対象にした。これは運用でそういうふうに助成の幅を広げたわけでございまして、そういう事例がございます。
  11. 森義視

    ○森(義)委員 天災融資法発動については、林業それ自体においてはなかったけれども、林業がそういうような被害を受ける場合は、当然農作物においても被害を受ける。そういう関連で天災融資法発動が従来行なわれていると思うのです。そこで政令指定になっているわけですが、どのくらいの基準というか、たとえば損害あるいは面積あるいは二府県以上にまたがるとか、天災融資法発動のいわゆる基準というものをもう一回お尋ねしたいと思うのです。  それから今度の近畿地方災害につきましては、天災融資法発動する条件が従来のあれに照らし合わせますと私のほうではある、こういうふうに考えているのですが、その辺についてどういうふうに考えておられるか、お伺いしたい。  それから確かに農林漁業金融公庫業務方法書によりますと、原則として五年以下の幼齢林に対する造林融資というものになっております。これはいま長官説明にもありましたとおり、従来災害等の場合、十五年まで延ばした、特例としてそういうことをやった、こういうことをおっしゃったわけですが、現地状態は、私も状態はよくわかっているわけですが、それよりももう少し年代のたった二十年から三十年のものが、非常に被害を受けているわけです。そうすると、この適用を受けられないということになるわけです。そういう点についてやはり現地実情に合わせた救済措置考えてもらわないと、これは実際の効果があがらない、こういうふうに思うわけです。そういう点で冒頭にも申し上げましたとおり、特別な地域におけるこういう雪害の問題については、やはり現地調査する必要がある、こういうふうに思うわけです。そういう点について従来、雪害による十五年生に対しても運用でそういうことを考えたこういう特例を、今度の場合においても考慮していただけるかどうか、こういう点についてお伺いしたいと思うのです。
  12. 安藤繁夫

    安藤説明員 天災融資法発動につきましては、あの法律に書いてありますように、国民経済に重要な影響を及ぼすと認める災害につきまして、天災融資法発動するわけであります。したがいまして現実にどの災害に対しまして天災融資法発動するかということに関しましては、そのときの災害あるいは一般情勢というものを勘案してやるわけでございますが、従来農作物天災融資法発動いたしました最小限の例といたしまして、農作物被害が、統計調査部調査によります被害が三十億円程度の場合に発動した例があるということでございます。したがいまして具体的にどの災害に対しまして天災融資法発動するかということにつきましては、その災害実態をよく調査いたしまして、発動するかどうかということをきめることに相なっております。
  13. 田中重五

    田中(重)政府委員 後段の御質問に対してお答え申し上げますが、先ほども申し上げましたように、造林資金対象として十五年生程度までの雪起こし、これについての経費融資したという例がございますが、いまお話の二十年、三十年ということになりますと、被害県報告等に徴しましても、多くの場合折損しておる場合が多い。それからもう一つは、もう相当に太くなっておりますから、倒れたものを起こして、はたして樹勢回復するかどうか、その点も疑問のように聞いております。それでむしろ二十年、三十年の壮齢樹につきましては、ことにそういう雪起こししても回復の見込みがないものについては、別にそれを伐採搬出というような面で、何か方法考えていくのが妥当ではなかろうか、こういう考え方でございます。
  14. 森義視

    ○森(義)委員 総務課長、そういう答弁ではだめなんですよ。従来三十億くらいの損害額発動したことがある、実情を聞いて、調べてやるのだ、そんなことを私は言っているのじゃない。もちろん被害状況国民経済影響を及ぼす、そういう場合に天災融資法政令発動すると、はっきり法律で書いてある。従来どういう基準政令発動のあれになっておったか、それから損害額が大体合計五十億以上だとか、あるいは被害が二県以上にまたがっておるとか——国民経済に及ぼす影響というのは、考え方によっては何でも影響を及ぼす。大きいものだけが影響を及ぼすのではなくて、小さいものでも影響を及ぼすことがあるのであって、そんなことを聞いているのじゃない。だから今度のあなたのほうに集まった資料によっても、これは天災融資法発動できる状態にあるものかどうかということを、どういうように判断するか、聞いておるのです。従来どういう基準によって天災融資法発動してきたか。三十億の場合に発動したことが、十億の場合になぜ発動できないのか、わからぬ。そういう答弁があるか。そういう答弁のしかたをせずに、従来発動した場合には、こういう場合にはこういう基準によってやったということをはっきり聞きたい。したがってもう一回、この天災融資法発動の問題について、従来発動した事例についての例を言っていただきたいと思う。
  15. 安藤繁夫

    安藤説明員 天災融資法発動する場合の基準でございますが、激甚災害法発動する場合の基準につきましては、中央防災会議できめております。御承知のとおりのA項B項基準があるわけでございます。天災融資法そのもの発動する基準につきましては、明確にきめた基準は実のところはっきりしたものがないわけでございます。したがいまして災害発生時におけるその災害の及ぼします被害実態並びに及ぼします影響等考えまして、きめておるわけでございます。過去においてどういう場合に発動したかという問題でございますが、これに対しましてはただいま手元資料がございませんので、後刻資料をまとめて御説明いたしたい、かように考えます。
  16. 森義視

    ○森(義)委員 長官林業それ自体被害による天災融資法発動はなかったというのは、天災融資法によるところのあれは金額が非常に低いですから、林業の大災害に対する天災融資法活用をしなかったという面、あるいは林業のほうから特別にそういう天災融資法発動要請が非常に少なかったということに、原因があると思うのです。ところが今度の場合は、そういう二十万円で押えられておるあれにしても、かなり適用を受けて効果のある、冒頭に申し上げましたような零細林業家が多いわけですね。だからこの天災融資法発動、それ自体活用する一つの大きなテストケースになるのではないか、こういう考え方を持っているのと、それ自体活用が効力がなくても、国が今度の災害についてほんとうに立ち上がりの現地農林業家に対して大きく配慮を払っている政治的な考慮というものが、非常にプラスになるのではないか、そういう面からぜひ——実情調査せぬとわからぬというお話ですが、いままでの資料だけでも、そういうことが十分判断でき得る資料があると思うのですぐそういうことについてぜひ御考慮願いたい、こういうように思います。  それから今度非常に大きな災害で、従来所得税減免措置の問題について、林業災害の場合にどういうふうな減免措置を講じてこられたか、そういう例があれば、長官のほうからお伺いしたいと思います。  それからもう一つは、雪起こしが済んだあと改植造林について、拡大造林と同じような助成をしてほしいという要望が重ねて地元から上がっているのですが、それについてどのようにお考えになっているか、この二点についてお伺いいたします。
  17. 田中重五

    田中(重)政府委員 今回の雪害は、御説のとおりにあの地方としては異常な災害であったと思いますし、でき得る限り政府としましても、その救済の手を差し伸べたい、また差し伸べなければならない、こう考えております。そこでそれにつきましても、そういう異常な災害であって、国民経済に甚大な影響を及ぼす程度のものであることの資料が、やはり十分に把握される必要がございますので、そこでそういう資料の整備を待って、十分検討いたしたい、こう考えている次第でございます。  それから災害を受けた場合の減免の問題でございますが、いままでの例でまいりますと、山林所得がある場合には、その必要なものを控除したあと損失控除としてコスト並びに今日までのかかった経費を加えたものを控除するということで、その被害の場合の税制上の措置をしているということでございます。  それから再造林の場合に、拡大造林並み単価ということでございますが、雪害の場合にどの程度の再造林ということになるか、これは火災の場合と違いますから、実態に応じて非常に——いわゆる伐採あと地造林とは違ってくるかと存じますが、その辺はよく実態調査する必要がありますけれども、もし再造林をするという場合には、現在の再造林の普通のあの地域単価でございますと、基準単価の四割引きということになっておりますが、それに対して少なくとも一〇〇、つまり基準単価並みに持っていくように検討いたしたい、そういう考え方でおります。  なおつけ加えますと、私が先ほど造林程度についてどうこうということを申し上げましたのは、相当に樹齢が大きいものが被害を受けて、しかも単木的あるいは群状的な被害だというような場合に、そこを再造林するというようなことになるかどうかということについての検討も必要だ、こういう意味で申し上げたわけでございます。
  18. 森義視

    ○森(義)委員 あと地片づけあるいは雪おこしで、労働力の問題について特別に現地から要請があったかどうか。あるいはあったとすれば、それに対して林野庁としてはどういうふうな配慮をしておられるのか。あと地片づけあるいは雪おこし労働力の確保の問題について、特別に現地から要請があったと思うのですが、それについて林野庁としてお考えを持っておられるかどうか、お答え願いたい。
  19. 田中重五

    田中(重)政府委員 あと地片づけについての被害地からの労働力について申し出というのは、いまのところございません。それでそういう雪おこしあるいはあと地片づけ等について、もし非常に労働力が不足しておるということでございますれば、関係県とよく相談をいたしまして、具体策を講じてまいりたい、こう考えております。
  20. 森義視

    ○森(義)委員 いずれ、先ほど申し上げましたように、四月の二十日過ぎには林野庁のほうの調査資料がまとまる。国会からも現地調査団を派遣していただきたいと思うわけですが、派遣した結果、具体的に現地実情を把握した上に立って、最も適切な措置を講じていただきたい、こういうふうに考えておるわけなんですが、いずれにいたしましても零細森林家が営々として築き上げて、ようやく換金段階に達した壮齢林がああいう形でやられて、政府救済施策が不十分な場合は、将来林業を営む者にとっては大きな希望を失っていくことになると思うのです。そういう観点から、特別に調査結果に基づく府政の助成なり施策について、十分の配慮をお願いいたしまして、質問を終わりたいと思います。      ————◇—————
  21. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 次は、開拓融資保証法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き質疑を続行いたします。卜部政巳君。
  22. 卜部政巳

    卜部委員 前回に引き続きまして質問をいたしたいと思いますが、飛び飛びになっております本委員会質問だけに、一応前回指摘をした点に重複をするかもしれませんが、しかしその面における確認がなされていない点もございますので、その点から触れていきたいと思います。  まず第一点は、この間の委員会の中で指摘をいたしましたけれども、農地局長のほうから、いざ実施をする段階になると、現在五百十億というその金が、二百五十億から三百億になるというこの点について、私は確認を求めたところでありますが、この点につきましてはことばを右左されまして、十分な理解ができなかったのでありますけれども、私の指摘をいたしたいのは、当初考えておる五百十億というこの金額というもののこの構想の半分くらいで、農林省は中庸専業農家が今後目的とするそのものについての目的が果たされるかどうかについて、ひとつ展望として明らかにしていただきたいと思います。まず第一点であります。
  23. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 開拓入植者の振興対策を実施いたします際に、いろいろ現地でどのようなことになるであろうかということを、私どもプリテストとして三十七年度にやっております。その結果、振興対策資金として五百億程度のものが要るという推計、推定をいたしたことは事実でございます。私が先日お答えをいたしましたのは、五百億を三百億とか二百億に詰めるということがいまきまっておるというようなことでお答えをいたしたわけではございませんで、プリテストでございますから、実施をいたしまして個々の地区、個々の農家につきまして振興計画を立てまして、それを積み上げてまいります数字は、五百億と変わってくるかもしれないということを申し上げたわけでございまして、決して五百億を三百億に詰めてやろうとかいうような考えは持っておらないわけでございます。積み上げた数字はどのようになろうとも、その既定のルールで取り進めておりますので、それを実現いたしたいというのが目下の農林省考え方でございます。
  24. 卜部政巳

    卜部委員 この間も触れたかとも思いますが、当時実際問題としては五百億なら五百億という構想を発表されたわけですね。しかし現実に実行してみれば、二百五十億から三百億になる、こういう状態をながめてみる場合に、私は少なくともいまの物価の上昇なり、さらに生活水準の向上などというものから考えてみた場合に、スライドされることはあったにしても、それが縮められるなどということはとうてい考えられないことではないか、こう考えるわけです。この点について、そういうように局長が押えて目標を達成することができるということであるならば、私はこれは一体何なのだろうかと考えるわけですが、実際問題としてその自信があるわけですか。
  25. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 大体振興対策を実施いたします地区が、二千四百地区程度と私ども見ておるわけです。そこで三十八年六百、三十九年六百、四十年度を五百と地区を選んでやるわけです。それぞれの地区数字が積み上がってまいりまして、三十八年度は七十三億円、三十九年度は五十八億円、こういうふうに数字が確定いたしてまいります。そこで全地区をワンラウドといたしました結果、その数字が五百億になるか、あるいは五百億をこすか、五百億を割るか、いずれにいたしましても一定の振興目標に達するように追加設備資金を融資するように、振興対策として取り進めておりますので、物価の上昇その他も当然その過程におきまして所要額として出てまいるわけでございますから、私どもといたしましてはこの現在のルールで進めております。地区別に積み上げました数字はぜひ実現をいたしたいとかたく考えておる次第でございます。
  26. 卜部政巳

    卜部委員 ではそれはおさらいとして、一応そこで保留をいたしまして、まず第一点といたしまして私が触れたいと思いますのは、農業投資の特徴といたしまして、一つには資本の効率が低い。さらに果樹、畜産は長期投資が必要である。二つには、そうしてその投資は生産、いわゆる効果の発現までに時間がかかる。その間に災害または市場の需要等価格の変動等が起こったときの、いわゆる生産の不安定が起こる。特に開拓の場合は創設農家であるから、効率がさらに低い、こういうことをあげることができるわけでありますが、この点、局長はお認めになられますか。
  27. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 農業におきます収益性の問題から見まして、金利負担が農業は二次産業等に比べまして低いということは、十分承知をいたしております。でございますから農林漁業金融公庫その他の制度金融を、及ばずながら農林省としては努力をいたし、また制度金融では一般の市中から借りるようなものよりも金利も下げて期間も長くする、そういう方向でいわゆる制度金融をやっております。さらに開拓者に相なりますと、いわば無から仕事を始めるわけでございますから、一般の農業以上にその問題は深刻である、こういうことでございますので、先生御承知のとおり、たとえば開拓者が入植して初めて営農を始めますための設備資金というようなものは、一般農業金融におきますものより引き下げまして三分六厘五毛、五年、十五年というような特別の金融体系の措置を講じております。振興対策も四分、五年、十五年というような特別の措置を講じておるのは、そういう認識からでございます。
  28. 卜部政巳

    卜部委員 いまの農地局長のおことばは、前回から引き続いて同じことの繰へ返しをなされておるわけでありますが、実際問題といたしまして、これから論議を行ないたいと思います問題、その問題を中心として触れていきたいと思いますが、またもう一つのおさらいとして確認をしていきたいことがございますので、その問題についても触れていきたいと思います。  まず、この間いわゆる開拓者資金の融通特別会計の問題に解れたわけでありますが、この点に対しまして開拓者に貸す場合にのみ資金を運用部から借りられる、そういうふうなことについてはここで確認をされたところであります。もちろんそういう性格でもあります。しかるに現今は、開拓者に貸すという趣旨から若干逸脱している面がある。すなわち計上された予算どおりにこれを貸し付けていないという面がある。こういうようなことがこの前の委員会における集約だと思いますが、その点はよろしゅうございますね。確認をしてそれから進めてまいります。
  29. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 開拓者資金融通特別会計は、おっしゃいますとおり振興対策資金あるいは営農資金等、政府資金として開拓者に金を貸すための特別会計であります。それからそのために原資として資金運用部から借りる。また逆ざやの問題がございますから、一般会計からの繰り入れも行なっておる、これも先般申し上げたところであります。そこで、ただし特別会計の歳入歳出、貸し付け計画は、貸し付け金の償還金が収入であります。それからもう一つ資金運用部からの借り入れ金が収入であります。そうしてその金で貸すものは貸し、返すべき金は返す、こういう関係になっております。そこで貸し出しワクに関しましては、償還金収入が非常に悪いと、資金繰りの立場からいって、当初の計画ワクどおり貸せない事例が出てまいります。したがって予算編成にあたりましては、償還金の見積りにつきまして、私どもは過去の実績等を考えながら、できるだけ現実と狂わないように組む、こういう努力を毎年続けておりますが、その面からの狂う問題はございますが、それ以外に資金ワクの狂いはなく、資金運用部からは予定どおり入っておるわけであります。
  30. 卜部政巳

    卜部委員 農地局長のおっしゃるとおりでありまして、借りてくるものは借りてくる、これは御承知のとおりですね。しかし実際問題として償還金がスムーズに入ってきておるのでありますか。それと同時にそういう問題について農林省自体としては、毎年毎年そこに何らかの不足が出てきておるのではないですか。この点は現実としてはどうなんですか。
  31. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 若干の予算に組みました償還金収入に比べまして、現実の償還金収入が少ないという実態は、先生御指摘のとおりでございます。
  32. 卜部政巳

    卜部委員 その原因はどこにあるのですか。
  33. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 開拓者に対しましては、御承知のとおり条件緩和法で三十六年にもう一ぺん弁済計画を立てました。その弁済計画に基づきまして、政府に入るべき金が本来償還金収入の見通しであるべきだ。それに対しまして、その計画どおり過去におきましても入らない歩どまりというようなものを考えて、一応予算を組んでおりますが、その歩どまりの見方について狂う場合には、償還金収入が当初の見込みどおり入らない、こういうことになってまいります。そこで原因は何かと申せば、結局年賦額として償還すべき額が、災害やいろいろの事情によって約束どおり入らない、こういうところに原因があるわけであります。
  34. 卜部政巳

    卜部委員 そうすると逆から言えば、貸し付けも予算面どおりの貸し付けが行なわれないことになるわけですね。
  35. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 三十五億と見たものが、三十三億くらいになるというような実例等はございます。
  36. 卜部政巳

    卜部委員 償還金が入らないという一つの理由とは別に、この間も指摘をいたしましたように、いわゆる人件費、さらには備品費などというものもこの中に入って、その償還金の中には指摘をいたしました元金とそれから利息によってまかなうという本来の目的から逸脱して、それを全部入れて計算をしておる、そういう欠陥も生じてきておるのではないだろうか、私はこう思うわけです。この点はいかんともしがたい事実ですから、局長が頭を振ったところで、これはしようがないと思います。  そこで私はその問題のみ追及してはならぬと思いますので、その問題から一歩離れまして、飛躍して、その振興計画が終了した場合の点についても指摘をいたしたところでありますが、これが打ち切られたという場合になりますと、この特別会計というものは一体どういう特別会計になるのか、こういうことを考えたときに、農林省自体、これは真剣に考えなければならない問題だと私は思うのです。この点に対する配慮というか、さらにまた将来の展望というものについて、お伺いしたいと思います。
  37. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 開拓者に対しまして特別の政府会計から金を貸す必要がなくなったときには、この特別会計は要らなくなる。しかし先ほど申したとおり二十年近い期間で貸し出しておるわけでございますから、債権管理のための特別会計の仕事というものは、当然相当後年度に残ると存じます。あとはその金が返ってまいりますれば、特別会計の清算というものは当然清算ができるわけであります。先生の御質問が、返らなかったらどうなるかという御趣旨でございますれば、私どもといたしましては、この前も通達でお示ししましたとおり、債権管理法で処理すべきものは処理をする、こういうことになるわけであります。
  38. 卜部政巳

    卜部委員 私の指摘が若干舌足らずの面があったかもしれませんが、まず第一点として、これは現在貸し付けられておる。貸してもらえるから、ことばが言い過ぎかもしれませんが、実際は金は返ってくる。しかしいまのようなかっこうで打ち切られて、金を貸さぬというときに、ほんとうに返ってくるでしょうか。実際その問題ですよ、私の言うのは。そうした場合にこの特別会計というのは、率直に言うならば、いわゆる借金取り上げの会計にしかならぬ。こういうことになると、この問題については、私は少なくとも三十五年の時点に対して、運用部資金のほうに手を打って、こちらのほうがそういう条件緩和でまけるものはまけたということになれば、資金運用部のほうに待ってくれという措置も、当然やっておかなければならなかった問題ではないだろうかと思うのです。しかしそのことは別としても、そういう事情になったときに、将来どうなるかという展望も持っておかなければならぬと私は思うのです。局長自体、おそらくこういうことになるでしょうから、特別会計云々ということをおっしゃっておりますけれども、実際その時点に立って考えたときは、次にどういうことが想定されるか、この点は私は暗たんたる気持ちなのです。そういう点について私は、責任をのがれるということではなくて、局長は、その時点になったら、だれかが今度は農地局長をやっておるだろうというような考え方ではなくて、真剣に取り組むべき要素のものではないだろうか、この点を指摘をしたい。この点は私の指摘が全然誤りでありましょうか、その点はひとつどうでしょう。
  39. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 過去におきましては、開拓者というものを十ぱ一からげにいたしまして、一生懸命振興資金を貸していった。そういたしますと、私は先生のおっしゃるような事態というものは、発生の可能性が非常に多いと存じます。私どもが答申を受けましたあとのものの考え方といたしましては、貸して返せる見込みの人には援助資金を与え、どんどんりっぱになって返してもらいたい。それからさらに追加融資をしても、どうしても無理だという方は、むしろ過去の借金を債権管理法の立場から処理をする。こういうふうに振り分けてものを考えておる。そこでまさに先生おっしゃるとおり、何でもかんでも金を貸しておれば問題であろう。ものの考え方といたしましては、貸せばさらに飛躍できる方々に貸していこうというようなことで、いま考えておるのでございますので、いま追加融資につきましては一〇〇%返えるかとおっしゃれば、いろいろ問題もありましょうけれども、性格的にあるいは貸す姿勢の問題としては、返せる余力のできるように伸びられる方に貸していこう。それから過去においては、この可能性が全然ない人にもどんどん貸しておったけれども、それは問題である。むしろ過去の借金をどう処理するか、そしてむしろほかの地域に行って、新しく立ち直っていただくならば、その御援助をする。こういうふうにものを考えて、政府資金もきりもみ的といいますか、集中的にお貸しする。かつ貸してだいじょうぶなところに貸す。それから貸すことによって、問題の解決にはならない方々には、追加融資をするのではなくて、過去の借金を、管理の問題として、国の債権でございますから、債権管理法の運用で対処する、こういうふうに考えております。決して先生御指摘のとおり、そのやり方でいって、将来について全くおそれはないかということにつきましては、たいへんありがたい御注意として十分考えて、処理いたしたいと思っております。
  40. 卜部政巳

    卜部委員 私はなぜこの問題を指摘するかというと、これからの論議に必要であるから指摘したわけでありますが、ただ、いま局長が言われた答弁の中にある貸し付け条件云々という問題と、さらにその中に含められた、無条件に貸し付けたからこうなったとか、さらにその貸し付けたものを、実際問題としては営農の場合に使わなく、生活の場合に使った云々ということばには、若干問題があるところです。その点については後ほど解明をすることにいたしまして、局長が指摘をされました債権管理法云々という問題が出てまいりました。この債権管理法では、開拓資金特別会計の債務もいわゆる適用を受けている、こういうことでありますが、どういうようなときに徴収が延期できるのでありますか。同時にどういうときに債務を免除できるのか、明らかにしていただきたい。
  41. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 債権管理法で二十四条というのがございまして、国が債権を持っております。そうしてその債権が次の各号に該当する場合に限って、履行延期の特約または処分をすることができるということが一つございます。それはたとえば「債務者が無資力又はこれに近い状態にあるとき。」その他一号から六号までいろいろあります。それから三十二条というのがございまして、「債権管理官は、債務者が無資力又はこれに近い状態にあるため履行延期の特約等をした債権について、当初の履行期限から十年を経過した後において、なお債務者が無資力又はこれに近い状態にあり、かつ、弁済することができることとなる見込がないと認められる場合には、当該債権並びにこれに係る延滞金及び利息を免除することができる。」要するに無資力でどうしても返せないという方に対しては、国の債権でございますから、乱暴に処理してはいけないという立法の精神から、一ぺん履行延期の特約をして、さらに十年間たってどうしても払えないということがはっきりした場合に、国の債権は切り捨ててもいいという権能を、行政府法律で付与されている次第であります。
  42. 卜部政巳

    卜部委員 いま御説明のとおり、したがってその運用といたしましては、政府の貸すところのいわゆる貸し付け金というものは、大臣にも申し上げたように、現実には民間では貸し付けない一番あぶないところにも貸し付けているわけですね。そういうことで一番気前よく待ってやったり、まけてやったり、こういうことをしなければならないものであろうと思うのです。ところが事実は、この金が一番まけにくい、そしてまた待ちにくいものになっておる。そうじゃありませんか、局長。
  43. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 政策的に、一般市中金融に乗らない長期低利の金を貸すということは、国の一つの政策としてとれる。同時に国の債権でありますから、これは国民との関係において軽々に処理するということは、問題であろうと私は存じます。したがって債権管理法というものが定められておるものと私どもは理解をいたしております。ただ開拓の実態とのからみにおきまして、債権管理法をできるだけ活用して処理する。国の制度金融でございますから、その債権も自由に、非常に弾力的に処理するということは、国の債権でございますので、やはり問題があるというのが考え方で、債権管理法に従って処理する。その中に問題があるわけでございますから、それによって処理をすべきものと私どもは考えております。
  44. 卜部政巳

    卜部委員 債権管理法の運用実態なんですが、いま局長はそういうふうにおっしゃいましたけれども、中金等のそれと比較をしたことがございますか。
  45. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 中金等との比較という意味でございますが、中金にいたしましても、公庫にいたしましても、業務方法書で、債権保全のために、理事者が一番いい方法という立場で条件緩和、執行猶予を非常に機動的にやれるということになっておる。国の債権は、その意味におきましては、非常にぎくしゃくしていると申しますか、かたい、こういう印象を持っております。しかしこれは国の債権だから、やむを得ないのではないかと私どもは考えております。
  46. 卜部政巳

    卜部委員 そういうことでこの問題をやり合っておりますと、時間がもったいないわけでありますから、先に進みますが、これは将来の問題としても、十分考えなければならない問題であるということだけ一点指摘をして、次へ進みたいと思います。  そこで、まず答申に入って申し上げたいと思いますが、局長も十分御承知かと思いますが、答申は不振の原因を除去して新しい振興対策をやらないと死に金になる、このように警告しておりますね。局長はどういうようにお考えでありますか。
  47. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。答申は非常に多岐にわたっておりますが、基本的な問題としては、開拓者の営農の不振の原因を五つに分けまして、いろいろの原因から発生しておるものであるから、それぞれに即応して対策を講ずるべきであるというふうに答申がされておると私どもは理解をいたしております。したがってこの不振原因の根本とのからみにおいて対策を講ずる、かように全体を読んでおります。
  48. 卜部政巳

    卜部委員 かなめにおいて対策考える、こういうことでありますね。答申にもありますけれども、まずその一つとして建設工事、これは公共事業のおくれ、これは直接営農の不振の原因にもなっておりますし、さらにまたこの補助融資によるところの旧債の固定化、こういう問題にも相なっておるわけでありますが、この問題が一つ。二つには開拓不適地への入植、さらには三番目には経済性に立脚した営農形態が確立されなかったという、いわゆる営農指導の貧困の問題も含まれておると思うのです。四番目には畑作のいわゆる災害による痛手は、早期回復が困難である。少なくとも水田の場合においては、災害特別委員会においても取り上げられますように、これは補償があるけれども、こういうものについては、畑作については補償がない。こういう問題、さらに五番目としては、旧債の重圧が振興上の大きな阻害の要因であるというので、かなめについて対策を立てられる、こういうことでありますか。
  49. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 若干先生のいまおあげになりました点は、答申にありますものとないものとありますように私伺ったわけでございますが……。
  50. 卜部政巳

    卜部委員 そうであります。私がいま要約したわけであります。
  51. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 そこで私達観いたしましておっしゃるとおりでございます。
  52. 卜部政巳

    卜部委員 そのとおりですね。そうするとさらに局長にお聞かせを願いたいところは、先ほど申し上げた二、三、四という、もう一ぺん読み上げませんけれども、このようなことを考えた場合に、開拓の旧債は通常の常識によるところのいわゆる旧債とは本質的に違う、この点も明らかですね。この点、局長、いかがでしょう。いわゆる常識的な旧債というのとは全然違うのじゃないか、いわゆる債務というものとは違うのじゃないか、二番目の開拓不適地へ入植させた、やれ増産だ増産だということで入れた。失業対策のような面で入れた。さらに営農形態というものが確立されていない。さらには畑作なんかに対する痛手は早期回復もできないままに放置され、補償もない、こういうことになってくると、常識で考えられる旧債とは違うということになろうかと思うのです。その点は私の考え方と同じだと思うのですが、どうでしょう。
  53. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 前段の開拓者が債務が多い、これは開拓者が徒手空拳で新しく農業を始めようと思いましたら、徒手空拳でやれるように、基本営農資金というものをお貸ししているわけです。それからさらに立ち直り資金というものをお貸ししているわけですから、一生懸命金をお貸しして立ち直っていただこうと思っているわけですから、やればやるほど債務はふえる。ですから債務の多きを私どもは必ずしもおそれていない。
  54. 卜部政巳

    卜部委員 旧債です。
  55. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 ただそこで先生がおっしゃった旧債というおことばでございますが、旧債とは一体何だろうか。考え方でございますが、振興対策をこの時点でこの地区から立てようというときに、過去の債務をもし旧債といいますならば、私どもが非常に杞憂いたしておりますのは、過去の債務全体でありますより、過去の債務の延滞額なんです。延滞額のほうが問題として理解をいたしております。同じ金を借りましても、役に立つ金が債務になる場合もあります。ただし返せないで現に延滞になっているという金は、確かに問題のある金であるということは自明であります。したがって普通延滞額につきましては、これが返せるか返せないかという点が問題でありますし、この延滞額の解消に役立つような施策というものは必要であろう、こういう基本的な考え方をいたしておるわけであります。
  56. 卜部政巳

    卜部委員 だからいわゆる内容自体が、率直に言うと国の責任に負うところが大きい状態考えてみたときに——局長、首を振りますが、実際そうでしょう。二、三、四というのは何も個人の責任じゃありませんよ。これは強制的にと言うとおかしいのですが、ちゃんと開拓不適地に入れたなどというのは、そういうところに入れておいて国の責任がないとは言えないでしょう。そういうところを考えてみたり、いろいろと並べませんけれども、そういうような状態考えたときに、国の責任というものは大きいのです。そういうものの負担というものがおおいかぶさってきているのに、これをもって一般の債務だ、一般の旧債だというようなことは、常識とは全然私はかけ離れておるだろうと思う。この点についてはどう考えるのだ、こう言っておるのですから、これはもう率直にそのとおりだということしかないのじゃないでしょうか、その点はどうでしょう。
  57. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 開拓者の振興対策を立てようといたします際に、旧債の問題を——その旧債の中には先生御指摘のとおり国の責任と申しますか、立地の立場から見て非常に適当でないところに入れた、そこが原因でこういうことになっている。
  58. 卜部政巳

    卜部委員 まだほかにあります。
  59. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 ほかにもございます。開墾工事の問題もございます。そういう問題がございますればこそ、私どもといたしましてはそこに移られる方というような問題に対して、政府が現なまを貸し付けておるのでございます。炭鉱と開拓者以外には、政府が現なまとしての転業資金というようなことは、やっておる例もないわけであります。そういう問題意識がございますればこそ、債権管理法の問題に対しましても、私どもとしてはこの運用によってできるだけ問題の解決をはかる義務がある。それから営農資金というものも、個々の農家の方に現なまをお渡しするという制度は、日本に他にない制度でございます。これもそういう意識——原因のからみ合った問題でございますがゆえに、われわれできるだけやっておるわけでございます。
  60. 卜部政巳

    卜部委員 農地局長、若干答弁をぼかすきらいがありますが、離農者については離農者の段階お話を申し上げますが、炭鉱の離職者と同じような取り扱いをした云々という、この問題もかなり問題もあるところでありますが、私の言わんとするのは、そうした一つの国の責任にあるところのものが、旧債にしわ寄せされておるのだということについては、一般の常識の旧債とは違うのだろうという、この点を言っておるのですから、パーシバルではありませんが、イエスかノーかです。その点はどうなんです。
  61. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 旧債、開拓者が現在不振になっておる、旧債がある、その原因にはいろいろあろうと思います。その中に先生御指摘の問題、ケースも相当ある、かような認識でございます。
  62. 卜部政巳

    卜部委員 そうするとケースもあるのじゃなくて、まあ私の言うとおりだということですね。  そこでそういうことについてあまりやりとりをしておっても時間がありませんから、前へ進めてまいりたいと思うのでありますが、私は前回指摘をいたしましたとおりに、政府の責任が内容するいわゆる開拓の債務というものと、この振興実施の過程と、いわゆる効果、いわゆる判定というものについてはさらに検討を加える必要があるということに対して、そのことを聞きたかったわけなんです。ですからこの間の委員会の中でも、なるほど形式的には一応この開拓三法の改正はありました。しかしながらこの緩和法については云々という、繰り返しませんが、そういう過酷なこともやっておるというようなことも指摘を申し上げたとおりでありますけれども、少なくとも私は、この旧債の重圧で振興が妨げられる、こういうことがないような、これは言うならば、ことばはきびしいけれども、むちですよ。ほんとうにむちだと私は思うのです。またいわゆる圧制だとも言えるのじゃないかと思うのですが、そういう問題についても、これは開拓者も困るだけではなくて、やはりこういう問題については、政府の適切な措置というものが必要だということを私は指摘をいたしたい、このように思っておるところであります。  時間がありませんから、次へ進んでまいりたいと思いますが、その次には、振興計画によるところのいわゆる振興農家の所得目標についてひとつお伺いをいたしたい、このように思うわけであります。そこでもって、中庸農業、いわゆる専業農家を想定をして、区分なり、さらに所得水準なりをきめる、こういうふうに思うわけでありますが、中庸専業農家という生活水準、あるいは所得目標というものは、一体どういうことになるのでありましょうか。この点をひとつはっきりしていただきたいと思います。
  63. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 所得目標といたしましては、農家経済調査によりまして、開拓者でないいわゆる専業農家の家族の一人当たり家計費というものを求めまして、その家計費によりまして、家族によって一家の家計費が算定されるわけでございます。そのうちそれにさらに制度資金の借り入れ残から算定いたしましたところの、年間これだけ返していかなければならぬという額を上積みいたしまして、そうしてさらに公租公課がありますので、それの五%というものを加算いたしまして、過去におきましては三十八、三十九、こうそれぞれ内地、北海道別に所得目標を定めたわけでございます。三十八年におきましては一本で定めましたが、どうも一本ではあまりぎくしゃくするということで、三十九年からは幅にいたしまして、内地で申しますれば、三十九万から三十五万程度に達し得る、これは達しさせたい目標でありますと同時に、達し得るという問題を判定する基準でございます。北海道につきましては、五人家族で、三十九万から四十三万以上の計算によって算定したものでございます。
  64. 卜部政巳

    卜部委員 生活水準は毎年上昇しておるのでありますが、いま局長がおっしゃられた形の中で、はたしてこれが基準額として妥当であるとお考えでございましょうか。
  65. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 妥当かという御質問でございますが、先ほど申したとおり、農家経済調査によります専業農家の家族一人当たりの生計費を求める。問題があるところとすれば、調査資料上それが過去のものであるところに問題がございますが、行政技術的にはこれ以上に恣意的にいじるわけにはまいりませんので、それを使っておる次第でございます。したがって私どもとしては、極端なインフレーションがある時点におきましては問題がございましょうが、おおむね妥当、かように思います。
  66. 卜部政巳

    卜部委員 これは前回から問題になっておるところだと思いますから、この点については農地局長、きわめて痛いところでもありますし、大蔵省との折衝云々という問題にも相なろうかと思いますが、「開拓の現況とその問題点」というこの調査室の資料の中においても指摘をされておりますが、いま申された基準からいっても経営規模一町、一町五反の所得はおおむね六十五万以上になるという、こういう基準があるわけです。こういうかっこうが出てきております。そういったような状態とからめたときに、この数字が妥当かどうかということを私は、その旧債の常識云々とは違い、今度はほんとうの意味の常識でお答えを願い、さらに人間らしいお答えをしていただきたいと思います。
  67. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 調査室でおつくりになった三十八年度では一般の中庸専業農家一町から一町五反の所得は、おおむね六十五万以上と推定されるので、というのは、ちょっと私どもわかりかねるわけであります。私どもといたしましては先ほど申しましたとおり、家族が多ければその家族数をかける。それから問題は一人当たりの家族家計費を専業農家から求めておるわけであります。
  68. 卜部政巳

    卜部委員 この問題については、前委員会の中でも指摘をいたしたところでありますし、農林省自体といたしましては、これが自体ガンであろうということについてもよくわかります。本日そういう意味合いにおきまして、大蔵大臣の出席を求めたのでありますが、出席がなかったのでありますので、この点については後刻十分に論議を大蔵大臣とやっていきたい、こういうふうに考えますが、しかし農地局長に特にお願いしたいのは、少なくともそういう状態をおおむね妥当でございますなどというような、そういう弱腰でもって折衝なんかしてもらいたくない、ほんとうのことを言って。これだけのものは絶対要るのだというき然たる態度を農林省は示さなければならぬと思うのであります。こういうことからするならば、私は三十八年度に計画をした開拓農家と、四十年度に計画をするところの開拓農家では、周囲の状況が一変をしておるのでありますから、この点については水準の差とでも申しましょうか、いわゆる情勢の変化とでも申しましょうか、こういうものを勘案して手直しをする、これだけの姿勢を示してもらいたいと思うのです。いかがなものでしょう。
  69. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 私どもといたしましては、先ほど申した考え方に立ちまして、四十年度におきましては、三十八年度の資料ができますので、これを使ってその考え方に従って手直しをしたい、またする所存でございます。
  70. 卜部政巳

    卜部委員 それから私は実際問題といたしまして、生活水準というものも地方によって千差万別だと思うのです。中庸農家のとり方につきましては、地方では率直に言って差がある、こういうふうに考えるわけであります。だから私は地方実態に合わない画一的ないわゆる行政というものも、やはりこれは農民に迷惑をしわ寄せをする、こういう点もひとつ十分考慮していただきたいと思うのであります。そうしてまた私は、先ほど局長が言われておりましたように、幅を持たせる云々というようなこともあったと思うのでありますが、政策といたしましては、中庸専業農家と専業農家の所得目標というものをきめるならば、やはりその地方実情に適応するような、いわゆる上下の幅を大きくすべきではないか、こういうふうに考えておるところであります。こういう点については局長、いかがでございましょうか。
  71. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 私からもぜひひとつ御理解願いたい問題がございます。と申しますのは、この所得目標は、日本の農家がここにてもういいのだという意味で私ども絶対考えておる目標ではございません。開拓者が過去におきまして所得が非常に低い、不振である、これをどうするかという問題とのからみにおきまして、先ほども申したとおり、どうにもならぬ方は別に考慮するとして、何とかお手伝いしたら、ともかくここまで持っていって、しかる後に一般農政として全体の農政の問題として所得の向上をはかっていく、戦列につける水準として考えておる意味でございます。そこで、これをあまり高くいたしますと、三類として認定せざるを得ぬじゃないか、とうていできないじゃないかという問題として、三類認定の問題にもからんでまいる、そこに非常に問題もございまして、三十九年度では幅を考えたところでございます。この幅の考えにつきましては、先生の御注意もございますので、四十年度にあたりましては十分慎重に考えてみたい、かように存じます。
  72. 卜部政巳

    卜部委員 そこで私は、振興対策については将来のビジョンというものが必要だ、こういうふうに考えるわけなんです。近代化されるところの開拓団地、開拓農家、こういうような一つのビジョンというものがなければならないと私は思うのであります。そういう面におきまして、この開拓農家のいわゆる六十万戸を振興させるという方針が出されておるわけでありますが、これをやはり一貫した方針を明らかにしないということになりますと、何かしらぬけれども、いまのように場当たり的に事なかれ主義——事なかれ主義というとおかしいのですが、糊塗的な行政というものが今日のこの開拓者を苦しめておる、こういうふうに私は考えるわけであります。したがいまして、開拓農家というものがすぐれた特色を持っておるということ、この問題については前段にも指摘をいたしたところでありますが、少なくともその面におきまして、所得目標のとり方、さらに目標に近づくところのやり方というものも、やはり場当たりではなくて、これはともどもに、農林省も農民も開拓者も一緒にやる、こういうようなことを十分考えてやるべきではないか、やはりそこにはそうした一体となった姿というものがあらわれてきてしかるべきだ、こういうふうに思うわけでありますが、いかがなものしょうか。
  73. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 全く先生のお説のとおりでございます。
  74. 卜部政巳

    卜部委員 ではその一体となることにつきましては、またあとから開拓農協の問題等につきましても触れてまいりたいと思いますが、その誠意があるということだけを確認をいたしまして、次へ進んでまいりたいと思います。  次にこの特別地域の問題でありますけれども、これも、これから終わりましたら附帯決議の中にでもぜひ入れたいと思っておるところでありますが、この全国一律の政策では不利な地域と効率の低い地域がある、こういうような地域があるわけでありますが、特に北海道だとか、さらに積雪地のいわゆる冷害地帯対策だとか、さらには構造改善事業なんかにもありますように、山林では不適当だから山林対策を検討するごとく、いろいろと問題も出てくる、こういうふうにも考えますけれども、こういう点について、東北や裏日本の場合におきましても北海道と同じように、いわゆる積雪地の冷害地帯の開拓の中にも同じような条件があるべきだ、こういうふうに私は考えるわけであります。こういう点につきましても、やはり画一的な行政は効率を引き下げる、こういうかっこうになるわけでありますから、十分に実態調査いたしまして、四十一年度の予算には適切な措置を反映すべきだというふうにも考えるわけでありますが、局長の所見はいかがでございましょう。
  75. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 いまやっております振興対策も、直接開拓者だけを見まして、画一的にやることは適当でない、答申にもございましたので、県知事さんに、市町村のビジョン——この地区はどういう方法で立て直っていくのだというビジョンを明らかにしていただきまして、その一環として個々の開拓者の振興計画を立てる、こういう立場をとっておるわけでございます。そこでおのずからその開拓地の振興に各府県、各地方の特殊性というものが反映してまいるわけでございますが、御指摘のように北海道とか積雪寒冷地帯、こういうような地域につきましては、また違った意味で特別にものを考えて行政を取り進めていくという配慮は必要であろうと私どもも存じます。
  76. 卜部政巳

    卜部委員 先ほどから論議されております救済の抜本的な対策、さらにまた金利の引き下げなんかの措置についても、当然この中に加味されるものだということも十分勘案をしていただきたい。この点はいかがでございますか。
  77. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 勘案をして、よく検討いたしてまいりたいと存じます。
  78. 卜部政巳

    卜部委員 それでは次に進めてまいりますが、開拓農協の整備について若干質問をいたしたいと思います。  一般農業協同組合の常識を越えたところの超小型のいわゆる開拓農協の設立を進めたところのいきさつと、現在の状況をひとつ御説明を願いたいと思います。
  79. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 戦後開拓適地を求めまして、比較的小さな団地におきましても、開拓者をどんどん送り込んでいる、そしてそういう地域におきまして、入った方々が組合をおつくりになった。その後そういう経過をたどりまして、現在四千三個の組合がございますが、一組合の構成員は平均三十三戸という零細性を持っております。さらに十戸未満のものが一八%、十戸から二十戸が三八%、こういうような形で五十戸以上というのが一七%というような実態でございまして、御指摘のとおりきわめて零細な開拓農協に相なっております。これらをできればもっと大きな開拓組合に合併いたしたいのでございますが、開拓地の立地条件等がございまして、必ずしも一般の農協のような合併方式だけではうまくいかないという面もございまして、一緒に事務所を持って能率的に仕事をやったらどうか、あるいはもよりの総合農協に仕事を頼んだらどうか、こういう立場から助成措置その他の指導行政を進めている現状でございます。
  80. 卜部政巳

    卜部委員 その問題について、この開拓農協が農協法によって開拓農協を設立させられたといういきさつについても聞きたかったわけでありますけれども、この点については省きまして、開拓農協と開拓行政とのいわゆる従来からの関係についてひとつお伺いをしたいと思います。
  81. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 私開拓モンロー主義を反省すべきであるということを内部でしょっちゅう言っているわけでございますが、開拓行政を戦後やります場合に、やはり開拓者をして組合を結成させる——結成させるというと語弊がありますが、結成していただきまして、その組合及び連合会を軸にして開拓行政が展開をいたしてまいった、これは歴史的に事実であろうかと思います。したがいまして、やはり開拓者資金の流し方あるいは開拓者の資材の流し方等もこの意味の系統を使って流す、それは同時にその意味におきます系統の育成策でもあったわけでございますが、現在におきましては、結局開拓者資金等は、実態上開拓農協のルートを通じて流れていく、またごめんどうを見る、また振興計画をいろいろ立てる場合でも、開拓農協の県段階の組織が中心になって仕事を進められておる。この問題についてのいろいろの検討も行ないましたが、振興対策をとげるまでの間はこの体制で一応いったらどうかという御意見も、委員会相当強かったわけであります。私どもは一応いまその体制に即して進んでおるわけでございます。
  82. 卜部政巳

    卜部委員 その問題について、若干聞きたい点がありますが、私がこれから指摘をする一、二点の問題が終わって、その問題を総合的に指摘をいたしたいと思うのであります。  では二番目に、開拓農協が開拓事業に果たしたところのよい点と悪い点、三番目には、開拓農協の負債ができたおもなる事情については、これは前回委員会の中でも私が取り上げたところではありますが、ともかくまず二番目の、開拓農協が開拓事業に果たしたよい点と悪い点をひとつ御指摘を願いたいと思うのです。
  83. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 たいへんむずかしい御質問でございますが、やはり開拓者が開拓地に入りまして、一種の同志愛の上に結成された組合であり、その上部団体でございますので、開拓をめぐる諸問題の取り組み方は非常に御熱心である。この熱心さは、やはり何としても一つの大きな長所であったと私どもは考えております。と同時に、政府といたしましても、それらの方々の御熱心さにもこたえ、また育成も考える、そういう立場から、たとえば政府資金もその系統を通じて流す、またそのための事務をお願いをいたす、あるいはいろいろ過去におきます振興計画の取りまとめ、指導その他につきましても、県の職員の営農指導員と一緒になって、この団体が非常に働いてくださった。これはある意味からいってプラスでございます。と同時に、マイナス面といたしましては、やはり資本力もない、比較的弱い。ことに販購買事業につきましては、これは実力的に見まして、率直に申しまして、弱いと存じます。そこで、結局農業でございますから、つくったものは売るわけでございますから、そういう販売活動、購買活動の面につきましては、結局、実態におきましては、総合農協に依存する傾向が近時だんだんふえてまいっておる。そこで、開拓農協のレーゾンデートルといいますか、存在価値、あり方をやはりもう一ぺん新しく考えなければならぬというような問題に現在当面いたしております。マイナス面といたしましては、やはり開拓の世界に局限されますことと、それから資本力その他が弱い。そういうために、経済活動が非常に制約されておる。こういう点はやはりマイナス面であると思います。
  84. 卜部政巳

    卜部委員 農地局長、実際問題、開拓地に入ってごらんになったことがございますか。おそらくあると思うのでありますが、少なくとも、やはり開拓地に参りますと、集団活動、集団生活をやっておるわけですね。そうすると、率直に言って、病気であろうと結婚の問題であろうと、開拓農協に寄りかかっておるのですよ。そういう状態が出てまいりますと、いうならば、これに付随をして開拓行政の貧困もあるでしょう。さらに不適地への投入と、さらにそういう指導が進められないために、どうしたらいいかという迷いがあると、全部実力以上に開拓農協に寄りかかっておる。ところが、開拓農協自体としては、それに対して政府からあたたかい、いわゆる資金の導入だとかそういうものがないために、実際問題としては、そういう困った人たちと同じように開拓農協も困るという、いわゆる運命共同体といいますか、そういうかっこうになっておる、こういう状態があるのです。そういうものがやはり今日のいわゆる欠陥というものをもたらしたのかもしれませんが、そういう問題については、これからどういうふうに指導しようとするのか、少なくともいまのおことばの中では、単に悪い欠点がこうだ、そういうことではなくて、やはりそこに政府のあたたかい政治の手の差し伸べというものがなかったのではないだろうか、私はこういう点を指摘したいと思いますが、こういう点についてはいかがお考えでございましょう。
  85. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 先ほど申しましたやはり同志愛といいますか、開拓者の集まりとして、先生のおっしゃるように、非常に血の通った一つの組織体としての相互扶助なり、めんどうを見るという角度におきましては、長所でもあり、その役割りを果たしてきておると私も存ずるわけでございます。しかし、問題は、結局そういうムードといいますか、気分だけでは——経済活動でございますから、また個々の組合員もつくったものを売り、さらに営農が伸びていかなければならないわけでございますから、協同組合の本質論にもなりますが、協同組合としてりっぱに伸びていくという立場から考えると、母体が弱いために、組織体も弱い。そこで、母体を強くすることの努力は始めておるわけでございますが、その組織体たる協同組合をその基盤の上で直ちに育成していくほうがよろしいのか。周囲に総合農協というものも相当発達をいたしてきておりますので、この同志愛的組織のあり方というものを変えて、協同組合としては、一般総合農協とうまく結んでいくという方向があり得ないかどうか、こういうことは私も考えておりますし、実は審議会等でもずいぶん議論に相なったわけでございます。おっしゃるとおり、同志愛であり、非常によくごめんどうを見ておるこの組織体を協同組合として育成すべきかどうか、これは方各面の十分の御意見を承って、今後においてきめていくべき問題であろう、かように私どもは考えております。
  86. 卜部政巳

    卜部委員 これは率直に言って、ことばがきびし過ぎるようでございますが、現在の農協運動の大きな欠陥といたしまして、やはり生産組織というものの欠除があると思うのです。何かもう販売ばかりやっている。各メーカーからのそれを焼き直しして農協だというようなかっこうで売り出しておるということでなくて、この開拓者農協というものが、率直に言って、いまのような苦しい段階の中から新しい生産組織としての芽が芽ばえつつあるということも事実だと思うのです。芽が芽ばえつつある。こういう状態について、私は、より積極的に生産組織を伸ばすという、こういう姿勢の中から健全に育てていくということが望ましいと思うのであります。その点について、いま総合農協云々ということを言われましたけれども、その総合農協が持っておる欠陥というものは欠陥として、開拓農協の中の生産、いわゆる農協としてのそれを伸ばしていくというような配慮が今後必要ではないか、私はこういうふうに考えるのでありますが、局長がいまおっしゃったことばと若干食い違いがあるようでありますが、この生産組織としての農協のとらえ方、この点はいかがでしょう。
  87. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 私、先生のおっしゃる生産組織の意味を若干誤解して申し上げたことに相なるかとも存じますが、私どもの考えとしては、生産組織といたしましては、農協法を改正いたしました農事実行組合の体制で進むほうがよろしいのではないか。農協そのものが生産組織として進むということにつきましては、一般の総合農協をめぐりましても、まだ非常に問題がある点でございます。そういう一つの生産組織としては、私どもと、しては、農事実行組合法人という道をお選びになったほうがベターであると目下のところは考えておる次第であります。
  88. 卜部政巳

    卜部委員 前々回のその中で、開拓者のよい点、悪い点、その果たした貢献度について指摘をされたときに、やはり局長も先がけであるということについての確認をされたわけであります。少なくとも、いまこういう生産組織としての好ましい芽が出ている。このことは、農事実行云々という問題も出ておりますけれども、そうした一つの先がけ的ないわゆる徴候を示しつつあるわけでありますから、そういう芽が見えてきておるものをつぶすという必要はないのじゃないか。そういう点について、ひとつこれから十分健全に育てていくという配慮を願いたい。単に総合農協に合併するだとか、さらにはそういうような何か開拓農協というものを日の当たらない方向に常に持っていこうという姿勢ではなく、先がけであるところの開拓農協というものの生産組織を伸ばすという措置を十分考慮していただきたい、この点を指摘をいたしたいと思います。よろしゅうございますね。
  89. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 貴重な御意見でありますので、今後検討さしていただきたいと思います。
  90. 卜部政巳

    卜部委員 それから、先ほど農地局長も、官民一体、農林省、さらに開拓者一体となって云々、こういうようなことも指摘をされておりましたけれども、今回四十年度に、私たちが委員会の中で指摘をいたしました開拓農家のいわゆる負債調査を行なう、こういうことになっております。開拓調査あるいは負債調査をやらないですか。やるでしょう。これは毎年負債調査をやることになっておるわけであります。よろしゅうございますか。
  91. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 毎年二月一日に開拓者の営農実績調査をやっておりまして、過去におきましては負債の調査が不十分であったわけでありますので、昨年から負債の項目を取り上げておりますので、毎年出てまいります。
  92. 卜部政巳

    卜部委員 こういうような状態考えたときに、負債調査をやるときには、ひとつ今後の発展的な要素を多分に持っておるのでありますから、開拓農協のいわゆる歴史的ないきさつ、これは一番最初に申し上げたことの中に含まっておりますが、この点についても十分考えて、生産組織の発展のためにも、ひとつ開拓者団体と共同調査を行なうというように、この問題を十分検討をしてもらいたいと思うのでありますが、いかがなものでありましょう。
  93. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 開拓者の負債の問題、開拓農協の負債外の実態の問題と分けまして、開拓農協の問題は、私ども特に四十年から、この振興計画を立てた地区におきましては、今度は組合を中心にその問題を調べてまいりたい。そして、先生先ほど来御指摘の開拓者農協の問題も今後の大きな課題として検討を進めてまいりたい。そういう意味におきましては、先生のおっしゃるように考えてまいりたい、かように存じます。ただ、全国的に開拓者の団体と一緒になって、一斉に開拓農協の負債といいますか、その調査をやるかということでございますれば、現在の準備体制といたしましては、考え方といたしましては、振興計画樹立地区で組合のほうは一応こうなっている、そこの開拓農協、こういう形に問題を取り進めてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  94. 卜部政巳

    卜部委員 私はどちらでもいいと思いますが、ただ、開拓農協の場合におきましても、これから問題を提起したいと思いますが、開拓農協の中の構成員というものは、これは率直に言って開拓者ですね。そういうような状態で、開拓農協の負債と開拓者の負債というものは不可分の関係にあると私は思うのです。だから、その点については私は事こまかくどれがいいというようなことは申し上げませんが、少なくともそういう調査にあたりましては、そういう一つの開拓者の団体というものも入れて調査を行なうという十分な調査というものをする必要があるのではないだろうか、その点をひとつ検討をしていただきたい、こういうことであります。よろしゅうございますか。
  95. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 そのように考えます。
  96. 卜部政巳

    卜部委員 離農問題についてちょっと申し上げたいと思いますが、たまたま局長は先ほど、四十五万円も現なまでもらえるのは炭鉱離職者とこの開拓離職者だ、こういうことをおっしゃいましたけれども、これも農林大臣とのやりとりの中でも私は指摘をいたしましたように、実際問題として、その四十五万をまるまるもらっていく人などというものは皆無である。この点を指摘いたしました。同時にまた、三十八年では、一千二百九十七戸あるうちで、百三十二戸は五万から十万程度、さらに二百十三戸は五万円未満、それ以下はみなゼロであるというように、四十五万円もらっても、旧債のために、実際問題としてアパートの権利金にもならない姿でもって出ていく、こういう姿が出てきておると思うのです。そこで、先ほども申し上げましたけれども、実際問題として、出ていく人々の中には、出ていってもらったのでは、いわゆる開拓農協の赤字が出てくる、さらにまた残っている人たちも負債がかたまるということのために、開拓農協から、ことばはきびしいですが、監視をされておる。こういう点から、財産を−といっても、家具を背負って、夜逃げをするというような人も、悲しいことではありますが、出てきておるということも指摘をしたわけであります。こういうような状態に対して、局長が先ほど来から述べられておりますように、あたたかい措置を行なっておる云々ということも、これは自体現実離れがしておる。その原因は何かといえば、旧債である。いわゆる債務である。こういうような状態考えたときに、十分こういう問題を考慮しなければならないと思います。そういうことにつきましては、第一点といたしましては、この対策をまず考えなくてはならないと思う。その前に、ひとつ離農された方がどういう就職をしておるのかをちょっと参考として聞きたいと思うのです。
  97. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 後段の御質問にお答えいたします前に、ぜひ先生に御理解をいただきたい問題が一つございます。それは携行資金の問題でございます。先生おっしゃいますとおり、三十八年、五万円未満が二百十二戸、それから五万−十万が百三十一戸、これは先生のおっしゃるとおりです。それ以外は全部ゼロだというのは……(卜部委員「いや、そうじゃない、そういう人もおるというのです」と呼ぶ)そういう意味でございますか。念のために申しますと、それから上は結局十万以上でございまして、三十万から四十万持っていくのが二百七戸、四十万以上が二百三十二一尺ずっと上にございます点は、ひとつ御了承をお願いいたします。  それからお答えいたしますが、三十八年の実績で申しますと、離農いたしまして、再び農業に行かれた方が、千二百九十七戸のうちで一五・三%、林業に九・三%、漁業に〇・九%、鉱業に二・三%、建設業に一五・九%、それから製造業、これは食料品、繊維、木材、化学、金属、機械、含めまして二二・五%、卸、小売り業に五・五、サービス業に四・六、公務に四・五、その他九・八、こういうように三十八年度の実績はなっております。
  98. 卜部政巳

    卜部委員 局長が数字でもって切り返されたので、私も若干切り返しておかなければなりませんが、この問題についての数字指摘したときに、私が農林大臣にこの状態を申し上げたときに、農地局長は全然逆な二十万円以上である云々ということをここで報告されておったようでありますが、私の指摘のほうが正しかったということになるわけでありますね。ただ、この二十万云々ということの上のほうは別でありましても、こういうような数字が正しかったということになりますね。その点は確認をしなくてもまあいいです。大体正しいのですから、そういうことで進めてまいりたいと思います。  そこで、局長、就職先まで世話をしておるということをおっしゃっておりますけれども、世話というよりも、そういうような姿をいま発表されましたが、炭鉱労働者とは異なって、よほど丁寧に世話をしてあげないと、開拓農民の方というのはたいへんだと思うのです。この点について私は率直に申し上げて、この問題は丁寧にしていただくことにして、具体的に離農対策といたしまして、離農者に転業資金を貸す、さらに離農者の資産処分をやりやすくする、こういう問題についてですが、この離農者の資産処分については、この間、大臣が確認をしていただけましたから、これは解決をいたしました。離農者の資産処分、さらには、同時に買い入れ、こういうふうなものについてはやるということをおっしゃいましたから、これは解決しましたが、具体的にいって、離農者に転業資金を貸すという問題についての構想はございませんか。
  99. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。  実は過去におきまして、離農資金十五万円を三十万円にいたし、さらに四十五万円にいたしていきます過程におきまして、財政当局と非常に議論をいたしたわけでございますが、これをふやしていく過程におきまして、着業資金も要るのではないか、移転の実費も要るのではないか、当座の生計費も要るのではないか、そういう立場で、この四十五万円という数字をいろいろときめてまいったのでございます。そういう立場から、この四十五万という数字ができておりますので、着業資金をこのほかに貸すということは、いま申しましたように、非常にいろいろな分野にそれぞれの御事情で行かれますので、制度的にもむずかしいと存ずるわけでございます。はたまた、四十五万円というものも、そういうものを加味しております経過もありまして、なお研究はいたしますが、なかなかむずかしいお話だと存ずる次第でございます。
  100. 卜部政巳

    卜部委員 これも先ほどの所得目標と同じように、かなり問題があるのは、やはり大蔵省にあると思うのです。そういうことでひとつ農地局長も胸を張って、この間農林大臣にもお願いをいたしましたが、少なくとも離農者対策は、それで事終わったとする考え方ではなくて、やはりそういう措置も十分考えなければならない、こういう立場に立った、勇気ある決断力を持った一つの行動を示していただきたい。具体的にいうならば、離農者についての転業資金を農林省自体考えたことがあるのですから、立案をして大蔵省とぶつかったという、そういうこともあるだけに、全然やってはいないということではないだけに、私はそこに農林省の良識を高く評価いたしたいと思いますから、そういうことが実現をする方向にひとつ御努力を願いたい。  これをもって離農者の問題は終わりまして、もう簡単でありますから、五分程度でもって在農者の問題についてもちょっと触れておきたいと思います。これも前々回から続いております委員会の中で十分論議をされたところではありますけれども、離農者があれば、そこに残っておる在農者というものがどういう状態にあるのか、こういう問題については、もう私がこまごまと申し上げることもないと思いますが、しかし、実際問題として、この間、農林大臣にもお話を申し上げましたけれども、たとえば農協のほうから肥料を持ってくる。いままで三十戸なら三十戸あったところの開拓地に向かって持ってきても、離農者が二十戸あったとすれば、あと十戸しか残っていないというかっこうの中では、コストがやはり高くなるわけでありますから、当然肥料代というものも高くなる。同時に、牛乳なんかの酪農の問題もそうでありますけれども、離農者が多くなる、そういうかっこうになってまいりますと、この地点まで牛乳を下げなさい——いままではどんなようにやっておってもよかったのに、今度は下げなさいという。そういう問題や、さらに未点灯の部落なんかの問題も出てくる、私はこういうふうに考えるわけであります。こういう点について、少なくとも離農者の問題についての就職の行き先なんかは、これは労働省がやることだなどということは、ことばとしては言えますけれども、少なくとも在農者の問題に関する限りは、私は、農林省が十分こういうものに対することは配慮をしてやらなければならないと思う。たとえば未点灯部落の場合におきましては、最低のいわゆる点灯賃ですか、そういうものは出してやるとか、さらには牛乳なんかにつきましても若干の価格補償をやる、私、はこういうような心あたたまる措置というものを残された人々にもやっていかないと、これはただ救済だとか何とかいう問題の陰に、目に見えない形でこういうしわ寄せがあるのだという状態というものを十分把握をしていただきたいと思うのです。また、そういうものの適切な措置を行なっていただきたいと思うのでありますが、いかがでありますか。
  101. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 長い間たちましたから、一つ地域の中におきましても、全部が全部りっぱにやれておられぬ、一種の階層分化が起こっておる。そこで、農業で生きていこうという方に対しましては、先ほど来申したとおり、県がその村、その地区をとらえまして、酪農でいこうというふうにきめたところは、酪農に沿うように、・国からも設備投資あるいはトラクターその他の援助をして、農業者としていけるように考える。そういう意味では、在農者の振興対策そのものが在郷者対策でございますが、先生がおっしゃるのは、もし三類農家であって、かつ離農しない者としての在郷者ということに相なりますと、これは非常に問題があって、私ども非常に苦しんでおるわけです。と申しますのは、どうしてもここで農業でやっていこうということが、あらゆる角度から見て、その方の家族構成、労働構成、あるいは能力、あるいは立地その他の条件からいって、無理であるというので、不本意ながら三類としてむしろ考えたほうがいいのではないか、こういう方々でございますから、何か社会政策的に牛乳の値段をどうのこうの、あるいは何かするということは、どうしてもやはり無理なのではないだろうか。しかし、そういうところでも、どうしてもいろいろな事情で残っておりたい、いろいろな御事情がございまして、残っておりたいという方々の生活環境に対しては、相当の心ある配慮考えるべきではないだろうか。その経済政策として農業がやれるようにというお手伝いがむずかしいという意味において、三類になっておるわけでございます。生活環境の問題はやはり慎重にまた御親切に考えてやるべきであろう、こういう基本方針をとっております。ただし、いまいろいろおっしゃったうちの、経済政策というと大げさでございますが、農業のための援助ということになりますと、その援助は私どもは二類に集中して努力をいたしたい、三類はいかんとしても経済政策の対象としてはどうにもならぬという立場で考えたものでございますから、生活環境の面では考えたい、こういう基本的な姿勢でございます。いろいろ御批判もあろうかと思いますが、目下のところさように考えております。
  102. 卜部政巳

    卜部委員 救済とは全然問題を異にして、そういう問題も残されているという事例をいまここに私は申し上げたのです。でありますから、そういう問題についても十分な御配慮を願いたいと思いますし、同時にまた、この開拓融資保証法、これに伴いますところのいわゆる機械化云々の措置等について、率直に言うならば、これは農林省の反省の一つの結実した法案だと思うのでありますが、こういう問題も含めて、全般に私は適用していただきたいいろいろな問題もたくさん持っておるわけでありますが、きょうは本会議も開かれることでもありますし、この開拓法案も先週来から飛び飛びに長く延びてまいりましたので、それを私はさらに引き延ばすということを好みませんから、問題点の特に重大な点だけを取り上げて申し上げました。しかし、いずれ申し上げたい点については、またの機会に十分この点を解明することといたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。  以上であります。
  103. 中川一郎

    ○中川(一)委員 開拓問題はきわめて重要な問題であると私は思っております。と申しますのは、人道上の問題が一つございます。もう一つは、国の使った資金がむだになっておるという二点からであると思います。そういった意味において、卜部委員が事こまかに御質問されましたので、私からいま特に申し上げることはございませんが、ただ一つ、ほんとうに農林省がその後とっておる営農振興計画あるいは開拓者離農対策、再整理等、矢つぎばやにいろいの施策をとってこられたことに対しましては、非常に敬意を表するものでございますが、これらの政策だけでこの戦後の開拓者のあと始末ができると考えておられるかどうかということについて、はっきりお聞きしておきたいと思うのでございます。と申しますのは、日本の農政がいまひずみに落ち込んでおる。中でも、貿易の自由化に伴って、畑作農業の前途というものは、なかなかたいへんである。さらに開拓地の場合には、自然的条件、あるいは経済的にもまだ立ち直っておらないという農業の中でも、一番底辺にあると言えると思うのであります。これに対して先ほど来申しますように、農林省がいろいろの政策を積極的に講じておられるのでありますが、これだけで戦後の開拓者のあと始末ができるかどうか。一人前の農家になり得るかどうか。私どもの見るところでは、どうも政策は講じてもらったけれども、それは糊塗的な一時的なことで終わってしまって、またまた次の対策を講じなければならぬ。社会問題が起きてくるのではないかというような感じがいたすのでございますが、この点について、農林省農地局長のお考えをただしておきたいと存じます。
  104. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。  畑作農業の問題にいたしましても、農産物価格の問題にいたしましても、農業者の所得の問題にいたしてましても、これは農政共通の問題として非常にむずかしく、かつ、常に国会で非常に御審議を願い、また農林省としても非常に努力いたしておるとろころであります。  私どもが開拓の問題について基本的に考えております問題は、何が開拓であるか。要するに、幾度も申しておりますが、開拓者が非常に不振である。それらの方々を、ともかく一般の農業——農業それ自身に問題がございますが、それ自身に問があるといたしましても、その農業の線列といいますか、その列に早く入っていただいて、伍間に入っていただいて、そして行政も区別なく農業全体の問題として、日本の農家の所得なり全体の価格政策なり何なりの一環として、これらの方々にさらにさらに伸びていただく、こういうふうにものを考えたい。そのために、できるだけ早い機会に開拓者に一般農家の伍間に入っていただきたい、こういう立場で私どもは考えておる次第でございます。  そこで、いま先生のおっしゃいました、開拓者がこの政策でりっぱにやれるかということは、私どもも十分心得て今後とも——いまちょうど半ばでございます。四十年度で地区も大体七十五%の地区に及ぶわけでございます。まだ半ばでございますから、この地区のワン、ラウンドにあたりまして最大の努力を傾倒いたしたいと思います。それによってともかく伍間に入っていただいて、あとは農政全般の問題として、日本国の全農家の一人として、それがりっぱに伸びる政策の対象として努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。ですから、御質問の直接のお答えになるかどうかでございますが、その意味におきます努力というものは、何とか実を結ぶように最大の努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  105. 中川一郎

    ○中川(一)委員 私が申し上げるのは、たとえば北海道に例をとりましても、戦後四万五千戸の入植者が入っております。それが二万二千戸離農して、現在二万三千戸しか残っておらない。さらに二万三千戸の中から、いま離農しようとする者が六千戸もある。そうすれば、残るのは一万七千戸。四万五千戸入れて一万七千戸しか残らないことになれば、これは四〇%。五〇%にはもちろん及びません。三〇%と四〇%の間ぐらいの定着率ということになります。そうすると、私も実は開拓担当をやってまいりましたが、開拓計画を立てたときには、経済効果といって、一戸入れたらどのくらい以上の金をかけたらだめなんだとか、あるいは開墾面積一町歩にどのくらいの金をかけたらだめだという、きびしい過酷なワクで押えてまいったわけです。ところが、その結果が、今日になって、定着戸数が三分の一になってしまったということになれば、その当時押えたことが、ちょうど安物買いの銭失いの例をまざまざと見せたといっても過言ではない。こういう過去の実績にかんがみまして、いまにしてここで少々けちなことをやめちゃって、もう少し思い切ったことをやって、その残る一万七千戸が今度は着実に残るんだ、少々の経済変動があり、あるいは冷害がきても、この戸数だけは絶対残れるんだ——これは北海道の例でありますけれども、内地についても、これだけは守れるんだという、手厚いというか、安全率をとった開拓政策というものが必要ではないか。そうでないと、いま出ていく人のことを考えましても、五万円持って出たとか十万円持って出たとか、先ほどから言っておりますが、これはもうほんとうに社会不安というか、人道上の問題であって、それらの方々のことを思うと、ほんとうにお気の毒であるばかりでなく、いまいう国家的な見地からいっても、ここで思い切った施策が必要ではないかと思うわけでございます。その点について、私は、いろいろ開拓の不振の原因はありますが、第一番目に、政府側に申し上げてみたいと思うのは、開拓行政というものは、人を扱い、金を扱い、建設工事をやる総合的な施策がなければならない。それに対して農林省のこの組織というものが、農地局の中に建設部、計画部、それから管理部ですか、こういう三本立ての制度になっておりまして、この間の連絡調整がない。建設工事は建設工事のほうで好きなように進んでいく。あるいは計画は計画で、外国流のマスタープランニングとかなんとかいう、きわめてけっこうな計画を立てている。そのあとに管理部が日本全体の金融ベースに従ってかくあるべきだとかないとかいうようなことで人を扱っていく。そうして総合的な横の調整、人を扱うところの行政であるというところに徹しておらないのじゃないか。それを扱うのは、単なる農地局長さんがその上にいらっしゃるだけである。したがって、今後開拓をやる場合にも、あるいはいままでの再整理をやる上においても、それらの横の調整を行なうところの機関をがっちり設けて、一地区、一地区について墾切丁寧な計画あるいは指導というものをやっていかなければ、これはいつまでたっても、農地局長さんがここに来て、これはこうなっておりますという、うまい数字だけの答弁で終わっていって、実際現地は、ぽろりぽろりと落ちていくのじゃないか、私はかように思うのですが、農林省の機構立て直しからひとつ考えてみる必要がないかどうかということについて、局長の御意見、できれば政務次官の御意見も拝聴いたしたいと存じます。
  106. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 たいへんごもっともな御指摘でございまして、私ども内部の行政の横の関係につきましては、最大の注意と脈絡に努力いたしておるところでございます。ただ、現在の段階まで相なりますと、この振興地区におきましては、残っておる工事を早く上げるということ、それから入っておる農家の営農対策としての仕事を推進するという形に問題が局限されてまいりまして、新しい開拓の問題は、事情がやや変わってまいりましたので、目下のところ、建設関係におきましては、工事の促進にハッパをかけていく、管理部を中心にいたしまして、既入植者の申告ということに担当さしておるわけでございます。農政局ができ、それから先ほど申しましたとおり、振興計画がどうしても地区のビジョンと結びつく必要があるということで、県庁、道庁にその点を非常にお願いをいたしておるわけでございます。いま御質問のこの段階におきまして、新しく営農振興のために部課その他をつくるかということでございますが、目下のところ、地方の庁の活用、農政局の活用をもって処するということで、このために部課の陰に入植営農課という膨大な課があるわけでございますから、それ以外の局をつくるという考えは私ども持っておりません。運用にあたりまして、最大の注意を払ってまいりたい、かように存じております。
  107. 舘林三喜男

    ○舘林(三)政府委員 開拓には、土地の生産力の点から申しましても、また開拓者の、入植者の経験の点から申しましても、あるいはまた資金の点から申しましても、一般の農業よりもさらに悪条件であることは申すまでもないわけでございまして、さような点から、緊急入植以来二十年間、文字どおりイバラの道をたどって苦しまれてきたわけでございます。そのために、政府といたしましては、開拓三法も制定いたしまして、またあらゆる衆知を集めまして、審議会をつくりまして、新振興対策ができたわけでございます。新振興対策そのものにつきましては、先ほど卜部委員の御質問とか、また中川委員のいまの御質問等にありますように、いろいろ欠点もありましょうが、しかし、とにかく今日開拓の現状にかんがみまして、とるべき政策としては、新振興対策を強力に右顧左べんしないで実行するということ以外には私はないと思うのです。別に案がありましたらお示し願いたいと思っておりますけれども、私はこれが一番最良の案だと思っております。さような意味で、ぜひひとつ開拓の振興対策を進めたい。もちろん開拓振興政策の目標そのものは、一般の農政の対象にまで高めるというだけのことでございまして、一般農政の対象としてはまだたくさんの欠点があるわけでございますが、さしあたりとしては、一般農政のところまで次元を一歩高めたい、これが私は開拓政策の目標だと思っております。さような意味で今後とも進めたいと思っております。ただ、さような政策をやるにつきまして、部局の中にいろいろの連絡が不十分だということは私も率直に認めたいと思います。やはり農林省の非常に広い分野でございますから、局と局との間にもさような問題が実はたくさんあると思うのであります。たとえば畜産の問題にいたしましても、飼料の問題は食糧庁がやるとか、あるいは農政局のほうは別に関係するとか、いろいろありますし、園芸局のごときは特にそのはなはだしい例であるわけであります。さような問題につきましては、私たち十分ひとつ大臣をお助けいたしまして、できるだけ総合的な一貫した立場からやりたい。どうぞひとつ、そんな点につきましていろいろな欠点がありましたら、今後ともよろしく御教授をお願いしたいと思います。
  108. 中川一郎

    ○中川(一)委員 この開拓融資保証法の一部改正も、開拓振興の上に非常な進歩でございまして、全面的に賛成をし、そして一日も早くこれが法案が可決することを祈るものでありますが、後ほど附帯決議も出るやに聞いておりますから、その中に私どもが言いたいことは、全部網羅してあるように思われます。たとえば保証制度の融資についても、金利の引き下げ、あるいはその他一ぱいいろいろございますから、それらの点について率直にひとつ今後検討していただきたい。  もう一つ指摘をいたしておきたいのは、開拓がうまくいかないのはあたりまえである。なぜかというと、外国の開拓においては、人が入る前に建設工事なり開墾作業なり、相当いろいろな施設をやって、そのあとは人を入れるわけです。ここで初めて開拓適地になる。ところが、日本の開拓は、これは戦後の特殊事情があったからいたし方ございませんが、人がまず入って、そのあとから五年か十年かかって道路ができて、そして五年、六年かかって開墾作業ができるというふうに、開拓不適地に五年も十年も入れておった。よくも開拓者が生き長らえて、そうして一人前の農家になったものだ。三分の一でもそこまでできたのはりっぱであると言わなければならぬような開拓の進め方であった。それはそれなりにいろいろな理由はあったわけであります。それらの点を率直にお認め願って、今後ひとつ安定した、国の投資がむだにならないように、そうして人道にもとらない開拓行政をすみやかに行なうことをお願いをいたし、また特にさっきの機構の問題について、農地局の中に別の課を設けよと申すのではございませんで、どこか三人でも五人でもけっこうです。その調整に当たる機構を、現在の機構を特にいじらないでやってもらうことが必要でないか、これも御検討願うことにいたしまして、私の質問を終わる次第であります。
  109. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 午後は本会議散会後再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時二十八分休憩      ————◇—————    午後三時十九分開議
  110. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  開拓融資保証法の一部を改正する法律案に対する質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  111. 芳賀貢

    ○芳賀委員 前回質疑の残りの分について、政務次官並びに政府委員質問をいたします。  前回にもあらかじめ予定を示しておったわけですが、きょうは新しい振興計画の問題について、若干お尋ねしたいと思うわけです。  第一点は、振興計画の対象は、類型別にいうと、主として二類農家が計画の対象になっておるわけでありますが、その二類農家が、現在までの経過を見ると、計画の認定に漏れておるものが相当多数にのぼっているわけです。したがって、一類農家でもない、三類農家でもないというものが振興計画の対象農家ということになる場合において、どういう事情ですか、二類農家が計画の対象になって申請書等を出しておるわけですが、相当大幅に認定から除外されているわけです。この理由について、まずお尋ねします。
  112. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。  初めに二類農家というものがございまして計画を立てさせるという考え方でなくて、計画を出していただきまして、審査の結果二類と認定する、こういう段取りに相なっております。ところが、この振興計画を審査いたします段階におきまして、認定の要件といたしまして、今後五年の中に過去の延滞額を解消し得る見込みがあることという要件が一つございます。この要件を厳重に解釈いたしますと、認定をしかねるというものが一部ありますことが、この認定作業をやっておりますうちに出てまいりましたので、これの扱いについて、これを直ちに三類にしてしまうということは問題があるという立場で、これらの方々を保留をいたしまして、過去の延滞額を処理する方法はないかということでいろいろ検討いたしまして、結論といたしましては、その延滞額が返せないために保留になりました方々に対しましては、関係金融機関が条件をもっと繰り延べるということをやってもらう、それをやってもらえば返せることになって認定を受けられる、こういう形のほかに、ひとつ思い切って自創資金を貸すことにしよう、自創資金のほうが条件がゆるいわけでございますから、自創資金に借りかえ措置を講ずることによって過去の延滞額が返せることになる、したがって二類農家としての要件に該当する、こういうふうに措置をすることを関係の方面できめまして、保留した方々を二類農家として認定をして対策対象にする。こういうことのために、北海道で申しますと、三十八年度におきまして千五百戸ほど保留をいたしました。これはいまの措置によって二類農家に繰り込み中でございます。
  113. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いまの説明によると、新しい営農振興対策というものは、あらかじめ類型をきめて、その類型の中で、政府が強力な政策的の助長を行なえば、これは完全に卒業できるというものを二類農家と定めて、振興計画の認定農家と扱っておるというふうにわれわれいままで理解しておったわけですが、あらかじめそういう類型を区分しないで、ただ単に振興計画に対して申請を行なった農家を検討して、これは一類であるとか二類であるとか、三類であるとか、振興計画の申請手続行為を通して類型に区分する、そういうことですか。
  114. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 抽象的には、政府が援助することによって一定の所得目標を達成し得るものを二類農家とする、こういう方針をきめております。そして十三万戸もあるものの中から、そういうものと、それからすでにそういう措置を必要としないものと、政府が援助しても客観的にどうしても困難なもの、これを振り分けしていく方法といたしまして、自分は現在その目標所得より低いけれども、こういう計画を立てることによって目標所得を達成し得ると思うから、二類農家として今後の政策の対象にしてもらいたい、こういう形で振興計画を出していただいて、承認されたものが二類農家として具体的に決定する、こういう処理をいたしておるわけであります。
  115. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは従来と違う解釈じゃありませんか。あなたのは、解釈が少し狂っているわけじゃないかもしれぬが、丹羽独特の解釈、考え方でありまして、当初から一貫した方針があるわけですから、単に局長がかわったとか部長がかわったということで解釈が変わるのはおかしいですよ。この際、担当の管理部長か課長から説明を聞いたほうがいいと思います。
  116. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 担当者からも御回答申し上げますが、答申以来私ずっとこの仕事をやっておりまして、狂いはないと思っております。なお、念のために担当者から申し上げます。
  117. 山下一郎

    ○山下説明員 ただいま芳賀先生の御質問でありますが、振興対策の進め方といたしましては、農林省といたしまして、全国に適用すべき経営形態を定めまして、どの経営形態をその地域適用すべきかということを各都道府県が具体的に定めまして、その地域において適用される経営形態による計画を農家が出す。たとえば北海道におきまして、その地域では酪農のAということに道できめました場合に、その酪農のAに合わせました計画を農家が提出する。その計画につきまして、先ほどから局長が説明いたしておりますが、書類審査をするわけであります。
  118. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あなたの説明は大体わかるのです。あらかじめ、特に全国一本ということでなくて、地域別に一定の基準に基づいて営農類型というものを設定して、それをたとえば一類とか二類とか三類とかと称するのですね。あらかじめ類型を区分して基準を設けて、これに対して自発的にあるいは自分の努力で振興計画を立てて、それに到達すたるめに努力を行なう者に対して、政府から強力な助長をしてもらいたいということで計画書を出すわけですから、出された計画書については、地域別あるいはあらかじめ設定された類型の基準にそれを照らして、この農家は二類農家として妥当である、基準に適合するということで、それをさらに負債の関係とか、あるいは建設工事の進捗状態であるとか、そういう内部的な条件というものを勘案した結果、それを採択するかしないかという認定の作業が最後に行なわれるわけですね。それに間違いないでしょう。
  119. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 この類型の問題でございますが、私が先ほど申しました、個々の農家が振興計画を立てます際に、おれは酪農でいくのだ、おれは何でいくのだというように、それがてんでんばらばらに相なってはならぬ。したがって、私どものほうで標準設計というものをつくりまして、各県にもお示しし、各県でも県の実態に応じて標準設計のタイプをつくりまして、個々の地区において、この地区は、皆さん開拓者もそろって御相談して、酪農なら酪農でいこう、その場合の類型をお示しいたす。それから一方、その地区におきまして、この開拓農家振興計画の計画書を出します際に、その地区適用されました類型を参酌して出していただく、こういう仕組みになっております。そこで、私が申しましたのは、個々の地区がその中でその類型なり何なりに従って、個々の農家が振興計画を出していただく。その際に、今度は出してこられた農家がその二類農家であるか、あるいはもうすでにその地域においての標準以上であるか、あるいはどうにもなしがたいものであるかということをどうしても分けてまいらなければなりません。そこで、振興農家として進みたい人は、計画書を提出して、かつ承認を受けていただく。これによってその農家は俗にいう二類というふうに確定いたしてまいるわけでございます。
  120. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、あらかじめ地域的に開拓者の営農の類型というものを一、二、三に区分して、それぞれそれは一定の基準——これ以上あるいはこの範囲という基準があるわけですからして、その基準はあらかじめ設けられておるのですね。しかる後にこの振興計画を提出して——政府の特別の援助あるいは助成を受けて、自立しようという意欲のある者だけが書類を出すわけですね。そういう必要はないというのに強制的に提出を求めるわけじゃないのですからして、提出された書類については、あらかじめ設定された基準、それに照らして、それが適合する場合において認定を行なうということなんでしょう。
  121. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。  御認識が違っているのではないかとも思われるのでございますが、考え方として、この地区ではこういうものが一類である、この地区ではこういうものが二類である、この地区ではこういうものが三類であるというふうにタイプをきめておるわけではないのでございまして、この振興対策の標準設計はこういうものである、それで酪農の場合はこうである、一般畑作の場合はこうであるという類型を標準設計としてきめまして、その標準設計に達し得るかいなかというのは、個人の計画書を出していただく。その認定は、確かに達し得るという人に対して認定いたしますことによって、その農家は振興農家と相なる。振興農家を俗に二類農家と私どもは言っておるわけでございます。
  122. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だからあらかじめ示すのでしょう。申請書を出す場合には、二類の場合においても、地域的にあるいは経営の内容においてもこれこれの容態がある、それを判断をして、最も効果的な設計をして出しなさいと示すのでしょう。
  123. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 開拓地ごとにその適用すべき標準設計を決定していきますことは、御指摘のとおりでございます。
  124. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それがわかっていればいいです。そこで、認定から除外されるという場合の事例は、たとえば旧債の延滞額が相当大幅にあって、その延滞債務の償還の見通しがつかない場合には対象にしない。あるいは建設工事がまだ未完了である、途中であるというような場合にも、これはそれを事由にして除外しているわけですね。あるいは資本装備等についても、その地区においてはどうしてもこれだけの資本装備が必要であるというような場合においても、これは非常に限度を圧縮して、そうしてそれを越えるような場合においては、これも除外する。きびしい、採択から除外される事項というのが非常に多いわけですね。だから問題は、これらの除外される事項というものは、本来ならば振興計画の中に取り入れられて、計画の達成とともにそれらの課題も解決するということでなければ、ほんとうの意味の振興計画でなく、またそれが達成された場合においては一切の悪条件が解消されるということにはならぬと思うのです。この点はどう考えますか。
  125. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 答申に、開拓者を分けてものを考えろという基本原則がございます。そこで、私どもといたしましては、ある条件のものは追加援助をすることによって立ち直れるというものをいかにして把握するかという問題に当面いたしたわけであります。そこで、いま申しましたとおり、過去の延滞が非常に多い、かりに十年、十五年かかってもといいますか、もっと長い間かかれば、これは払える、あるいは資本装備を極端に言うと無限大にすれば立ち直れる、いろいろなケースがあろうかと思うのであります。ただ、それは無限の援助をすることによって立ち直れるか立ち直れないかという問題に相なるわけであります。そこで、基本的には、たとえば過去の延滞額はこの五年間の間に解消し得る農家である、あるいは資本装備というものは標準設計に対して一定の割合まで援助すれば立ち直れるものである、所得目標はこの程度のものであれば五年後に達成し得るというふうに認め得るものである、そういうものを認定農家にいたしまして二類とし、要振興対策農家として措置をしよう、こういうふうに考えたわけであります。これがきついかどうかという点につきましては、いろいろ御議論があろうと思いますが、たとえば先ほど申しましたように、過去の延滞債務も自創資金に切りかえれば五年後までに処理できるというような措置もあわせ講ずるということによって立ち直れるものというふうに、これは押えたわけであります。そこで、ちなみに三十八年度で申しますと、一万七千戸が出してまいりまして、先ほど申しました要保留を別としまして、どうしても認定できないというのは三百十七戸であります。三十九年度には一万三千百五十五戸が出してまいりまして、否認定農家は三十三戸でございまして、その出してこられた方々をそう乱暴に否認いたしてはおらない、立ち上がれるものはあくまで立ち上がれるという立場で考えたいという立場は、あくまで生かしておるつもりでございます。  なお、建設工事の問題は、先ほど申しましたとおり、二千四百地区を逐次やるわけでございますから、建設工事が終わった地区からこの仕事をやっていこうということでやっておりまして、個々の農家の認定に対して、建設工事とからめてどうのこうのということはやっておらないわけであります。
  126. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それではこの延滞負債の関係ですが、これを計画の外ワクで扱った場合と計画の内ワクに入れて扱う場合と、どう違うのですか。延滞負債の処理というものを、いわゆる自作農維持資金ですね、これで行なうということは、これは言うまでもなく、政府資金でこの延滞債務というものを肩がわりにするということになっておるわけですから、これは国の施策の中に入るわけですね。それを外ワクで扱うという理由がわからぬですよ。そうじゃないですか。
  127. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 外ワクという御趣旨が実はよくわからないのでございますが、こういう要件になっているわけです。現在の延滞額が目標時の前年末日までに所得の増加額をもって確実に償還し得ると認め得るもの。そこで、いま政府資金以外にかりに百万円を借りておって、それが五年間で払う条件になっておると仮定いたしますと、一定額を毎年払っていかなければなりませんが、五年間では、所得も伸びていきましょうが、とても払えないという形に相なります。それをたとえば自創資金に百万円を借りかえますと、これは三年、二十年で払っていけばいいわけですから、年賦額が減るわけでございます。そこで、その減った程度の年賦額であれば、毎年の所得の増加で払えるという認定が可能に相なるわけですから、自創資金に借りかえることによって二類農家になれる可能性をふやしたわけです。外ワク、内ワクという御趣旨はちょっとわかりかねますが、私、先ほど来申しているのはそういう趣旨でございます。
  128. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いまの場合、マル特資金にしても限度があるのです。最高五十万なら五十万という限度がある。限度内において借りかえたものについては、これは振興計画の認定措置として取り扱いできる、これはあたりまえのことですが、しかし、たとえば北海道等の事情によると、五十万程度の延滞負債あるいは全くの固定負債、そういうものは、平均的に見ると、三十九年度は大体八十万円ですからね。去年の災害をこれに入れて、災害によって生じた負債というものは、やはり性格としては、固定的なそういう負債に転化される危険というものは多分にあるわけですから、五十万以内で、これが自作農維持資金で肩がわりできるものだけを振興計画の対象に入れる、それをこえるものは入れない、そういう区分はちょっと無理じゃないですか。
  129. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 これまた自創資金を無限に貸すという考えもありますが、結局一つの、何といいますか、全国的にバランスをとりました振興対策でございますから、五十万円というのは、去年自創維持資金を全国的にふやし、貸し付け限度をふやした。五十万円そのものが、一般論として、もっと上げるべきかどうかという問題はございます。これは一定の形におきまして、延滞があって振興農家になれない方々のいわばクッション的な処理でございますので、——延滞額でございます。借り入れ残ではございません。そこで、五十万円の範囲内におきまして自創資金に借りかえることによりまして資格が出てまいるという方は取り上げる、こういう措置をいたしておるわけでございます。したがって、北海道等におきまして、実態的にその問題がはっきりいたしますれば、なお検討いたしますが、北海道はいろいろの事情がございまして、振興計画の提出のテンポがおくれておりますが、三十九年度におきましても、振興農家として出されました方が、その意味におきまして否認を受けた例はございません。そういう事態に具体的に当面いたしますれば、十分検討さしていただきたいと思います。目下のところ、そういう意味において問題になっておるとは承知いたしておりません。
  130. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、延滞負債が六十万円ある、そのうち、五十万円はマル特資金で乗りかえができる、しかし、あとの十万円分の延滞負債は、そういう肩がわりの措置ができないという農家に対しては、それを理由にして認定からはずすでしょう。その程度はまあいいということで入れますか。
  131. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 いま先生のお話、ちょっとわかりかねたわけでございますが、要するに、延滞額というのがございまして、自創資金に借りかえて、所得の増加の範囲内で、自創資金の条件ならば延滞額をきちんきちんと払っていける、そういう状態の農家は入れる。そこで、御質問の御趣旨が、延滞額が六十万円のうち、五十万円借りかえただけで、十万円はみ出した場合に、その延滞額が払えなくなる農家もあり得るではないか、こういう御趣旨と理解するわけですが、それはそういう具体例が出れば、認定いたします。
  132. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういう場合でも認定するというのですか、しないというのですか。
  133. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 制度的な考え方といたしましては、認定いたします。
  134. 芳賀貢

    ○芳賀委員 八十万円の場合は、いまの取り扱いからいうと、五十万円だけは自創維持に切りかえがきくわけですね。しかし、本人は八十万の延滞負債を持っておるから、あと三十万というものは、これは自作農維持資金のように五分五厘、三年据え置き、二十年償還というわけにはいかぬわけです。そういう分についても、いま局長から説明のあったとおり、振興計画がちゃんと立てられれば、見通しがつけば、八十万円の延滞負債を持った者に対しても、これは事情を考慮して認定できる、こういうことになるわけでしょうか。
  135. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 いろいろ仮定のお話でございますが……(芳賀委員「仮定じゃない、そういう事例があるよ」と呼ぶ)北海道の農家の全部の借り入れ残が七十五万円でございまして、延滞額の実績は平均十一万円でございます。ですから、五十万円の延滞という実例の設定をされても、まあお話でございますが、全然ないわけでもないと存じますが、考え方としては、私は、五十万円の自創資金の借りかえ措置を講ずることで、延滞額の解消の問題は理論的には——可能性の問題としては先生おっしゃるとおりでございますが、五十万円の限度——七十万、八十万のお話でございますが、私どもの統計でも、五十万円以上というのは延滞額はほとんど取っておらないという実態でございますから、まあ五十万円の範囲内における自創資金の借りかえ措置によりまして、この条件というものは大部分処理、解消できるものと考えておるわけでございます。
  136. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、延滞負債が平均の十万円しかない、ところが、自作農に乗りかえる余裕はまだ四十万ある、そういう場合には、農地局のいわゆる延滞以外の固定負債——固定負債というのは、質的に見ると、延滞してもらってももらえぬでも払えぬというのを、われわれは通念的に固定負債というのですけれども、期限がきて償還できないのはもちんろ延滞であるが、期限がきてもこなくても、いまの経営状態では生活にやっとで、債務の弁済に充てるだけの所得余力がない、こういう開発農家あるいは一般農家もたくさんあるわけだから、延滞分以外は払えるというような、そういう甘い判断でものごとを断ずると、これは非常に危険性もあるし、そういう考え現地に行っても、だれも受け付けてくれぬわけですよ。だから、たとえば局長の言うように、平均十一万しかないという場合には、その平均の十一万円はこの自創資金の借りかえでもう簡単にできる、あと最高限度の五十万円までは、まだ四十万円の延滞負債ならざる焦げつきの、なかなか返済至難である債務というものがあるわけですから、それも合わせて五十万なら五十万のワクに取り入れて、そうして振興計画の対象にできるという措置は、これはやれるわけでしょう。すでにやっておるわけですか。
  137. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 私どもは、自創資金というのも、やはり貸し金でございますし、借金でございますし、払っていただきたいのでありますから、したがって、過去の借金が、延滞が多かった、過去の借金が多くてどうにもならぬという方は、これは基本的に、一類、二類、三類の問題としては三類にいたしまして、むしろ、それをいかにして負けてやるか、そういう方向においてものを考えたいというのが、一、二、三の分類からスタートしたものの考え方であります。あとからあとから金を貸していくだけでは、借金におちいるだけであります。そこで、過去の借金の延滞は、自創資金で御援助すれば大体返せる、それから追加して貸した金は、それによって資本装備を改善いたしまして、営農を改善して、所得の増加によって返せるという方々に追加投資をする、これが振興対策として理解しておるわけでございます。そういう方法ではどうにもならぬ方、これに金を貸してもどうにもならぬ、過去の借金をどう整理するか、これが救済対策として、私どもが別の角度から考えておるわけでございます。それを区分してそれぞれに応じて対策を講じようという方針が、いま私どもの考え方でございます。
  138. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、局長の考えは、延滞負債がある場合、それは平均的に非常に少ない金額である、この分については、政府の自作農維持資金でこれを切りかえて、利子も下がるし、長期的な返済でいいわけだから、その分については、これはいわゆる振興計画の中に認定するということであって、延滞負債以外の負債については、いかなる場合があっても、取り扱いにおいては除外する、そういうことですな。
  139. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 御質問の趣旨がよくわかりかねるのですが、要するに、二類農家というものは、過去の借金もございましょう。それは払いつつ、政府から設備資金をもらって、それも据え置きもございますが、長期間にわたって払いつつ伸びていくという農家に金を貸そう、それから過去の借金が非常に多い方、政府資金については、債権管理法で処置すると同時に、他の金融機関のほうでは、それらの方々に対する条件緩和の問題で協力してもらう、こういう体制をとっておるわけでございます。したがって、三類になった方々の借金の問題、二類になる人の借金の問題と、実は分けて考えていく。二類になる方は、すべての借金が五年の振興期間において過去の延滞額は解消する、それから引き続いて発生する弁済額は、当然所得の増加の中で払っていけるたてまえの方を二類にする、こういう考え方でございます。
  140. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これはもう少しわかりやすく話しますと、開拓者の負債というものは、その内容が延滞されておろうが、固定債務であろうが、全部が生活維持だけの資金を借りているわけじゃないのですよ。借りる場合の目的は、その資金を導入することによって、経営の内容を充実するとか、資本投下にそれを充てるというような場合が、特に制度資金を借りる場合においては一番大きな要件になっておるわけです。そういうことで、金は五十万あるいは二百万円借りたが、それには十年償還とか十五年償還とかあるいは七年償還という、ちゃんと利子とか返済の条件というものは約束されておるわけです。しかし、実際資本を投下しても、生産条件が非常に悪いために、装備が完全にでき上がらないために、毎年毎年の所得の中で、自分や家族が最低の生活をして、余りがあれば、これは当然借金を払うことはできるわけですが、生活の内容についても、生活保護者と同等あるいはそれ以下のような乏しい生活をしておる開拓者が相当おるわけですから、せっかく希望を持って資本投下のための資金を導入しても、事実上返済はできないと思うのです。いや、首を振る必要はないですよ。そういう状態だから、こういう問題ができておるのでしょう。借りたものがどんどん払えるようなことであれば、開拓政策とか離農奨励とか、そういうことはする必要はないのですよ。そういう現実の上に立って、延滞分だけが問題であるということで片づけるわけにいかぬのですよ。——ことしの延滞がたとえば十万であっても、来年償還すべきものが五万あれば、来年は十五万になるでしょう。再来年は二十万になるのじゃないですか。毎年償還できない場合には、最終年度には借り入れした全部が延滞債務ということになる場合もあると思うのです。だから、現在ある延滞負債というものは、借り入れした時点がいまから何年先であったかということに、むしろ金額の面においても問題があるのじゃないかと思うわけです。だから二年、三年たった場合において、この延滞債務というものはどういうふうに変貌するかということは、開拓者個々の場合において非常に違ってくるじゃないですか。だから認定する時限だけで、延滞の負債がどれだけあるから、これは自作農資金に切りかえて認定することができるとかできないとかといって、その点だけで判断するということは、非常に不確実なことになると思うわけなんです。だから、こういう点については、やはり二類農家として、一方においては負債整理が計画達成の道程において着実に行なわれ得るというような所得目標とか、資本装備に対する許容の限度であるとか、あるいは新しい営農を進める場合の必要資金の導入の問題であるとか、あるいは建設工事を促進して、そうして早く計画が達成できるようにするとか、それらの問題がすべて新しい振興計画の中に要素として取り入れられていなければ、これは二類だ、三類だといったって、将来において完全に実行できないということになるのじゃないですか。
  141. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 振興対策の主軸は、先ほどちょっとお触れになりました資本装備が足らないというところに着目して、資本装備を充実させて伸ばしていく、ですから、金を貸していこうというのが振興対策の基本になります。  そこで、個々の農家から個々の計画書と実態を出していただくという意味は、まさにその意味でございまして、それぞれの農家が過去にどれだけ借金を持っておる、そしてこれだけの資本装備ではまだ不十分だから、これだけの資本装備をして、そうしてこういうふうに酪農を営んで収入をあげていって——低い低いと御批判を受けていますが、この所得目標に達しようという計画を立てていただく、それによって、なるほどいけるから、この人は御援助していく、こういうふうに考えていこう。そこで、その過去の借金が非常に大きくて、とうていそういうことではどうにもならぬ、こういう方法では所得の目標まで持っていく方途がないという方々は、今度はそういう方々に金を貸すという方法でなくて、そういう方々に対しては、いかにして過去の借金の負担なり重さをゆるめていくかという立場で、借金対策としてそこを重点に置く。二類農家に対しては融資対策、それから金を貸したのではどうしてもひとりまえになれないという方々に対しては、過去の借金対策ということを重点に進めていこう、こういうのが、開拓者十三万人をひっくるめて開拓行政をやっていってはいけないという御答申以来のものの考え方であります。  ですから、あえて申し上げれば、いま先生が御指摘の、非常に借金が多くて、とうていそんなものは返せる方法はないのだという方々を振興農家として、さらに追加融資を軸にして振興をはかろうということは、これは考え方としては無理な考た方ではないかというのが、われわれの振興対策の骨格をなしておるわけであります。
  142. 芳賀貢

    ○芳賀委員 案外、あなた頑迷なところがあるのですね。これに時間を費やしても、ほかに問題もあるわけですが、私の言っているのは、これから新しく金を貸すべきであるということを言っているのじゃないのですよ。現在延滞にしろ、未償還債務にしろ、七十万とか百万ある。しかし、その負債の条件というものは、いまの開拓者の農業経営の中からは、なかなか順調に返済しがたい性質のものであるということは、これは局長もわかっておるわけですね。だから計画を立てる場合には、五十万とか百万固定しておるこの債務というものが、新しい振興計画の実行の中でどうしたならば計画的にこれが償還できるかということ、これこそやはり振興計画の中に取り入れて、振興計画の一つの課題として、達成すべき問題として、その負債についてはこういうような計画で償還するということを、計画の内部的な計画として取り入れる必要があるのではないか。だから、その百万円にたとえば年一割の利子がつく、あるいは十年間に返済しなければならぬということになれば、利子だけで当初は十万円払わなければならぬでしょう。十年でこれを分割して償還する場合には、元金も十万円払わなければならぬということになると、百万円の債務があるということによって、これは元金と利子を合わせると、初年度は二十万円くらい償還しなければ債務を減す方向にはいかないわけでしょう。ところが、所得目標というものはわずかに四十万円あるいは最高でも四十三万円であるということになれば、当然、これはそういう判断からいえば、振興計画の対象にすることはできないということになると思うのですよ。それにまた五十万とか百万貸すべきであるということを私は言っているのじゃないのです。その百万という償還しがたい条件の負債というものを、あるいは二十三年とか三十年の償還で、金利についても二分とか三分とかいうような条件、あるいは計画がある程度進むまでの三年とか五年の間は据え置きにするとか、そういうような国の行なう制度的な資金というものを貸し出して、それによって現在ある百万円の条件の悪い負債を切りかえるべきではないかということを言っているわけですよ。だから、百万円にさらに百万円貸して二百万円にすべきであるということはだれも言ってないですよ。結局そういうような措置をとっても、負債の残高は百万円ということになるわけでしょう。そうしたほうが償還ができる見通しがつくという場合には、やはりこの際、農家として残ろうとする、しかも二類農家としてやり得るという、そういう条件を備えた開拓者に対しては、負債整理計画というものを振興計画の中に積極的に取り入れて行なわせるということが当然なことだと思うわけです。それができるとかできぬとか、ぐずぐず言っているのはおかしいじゃないですか。
  143. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 振興計画は個々の農家が具体的に立てますから、それらの方々の負債があって、これをどういう形で自分は解消するかという問題は、振興計画の内容に相なります。それから政府資金以外の重いもので、それがために延滞額によってどうしてもひっかかってしまうという方は、自創資金によって解決をする、それ以外のものにつきましてはこういう方法で解消できるという方は、二類農家に認定をいたして、さらに設備投資の強化をやる。それからどうしても特別措置を講じなければできないという方は、むしろ三類農家にして、その負債の整理のほうに重点を置く。先般の通達の「営農の振興を期し難い開拓農家に対する負債対策」というのは、まさにそういう意味でございます。先生のおっしゃる意味が、それにしても、さらに二類農家の中で、過去の借金の支払い条件をもう一歩進んで政府のほうで改善したらいいじゃないかという御趣旨かとも思いますが、いま私どもがやっております振興対策といたしましては、その負債は、すでに過去の延滞に対しては特別に考えますが、それ以外のものは一応こういう計画によってそれをなしていく、そして六年目にはそういう目標に達し得るという方方を、二類農家として積極的に御援助しよう、こういう処理に相なっておるわけでございます。その内容について、もう少し検討の余地があるのではないかという御趣旨かとも思いますが、よく考えてみますが、いまの整理する考え方は、先ほど来申し上げておるとおりでございます。
  144. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、所得目標ですね。これは固定したものではなくて、毎年毎年目標というものは、客観的な情勢の変化によって変わるわけですね。三十八年度の当初の計画策定の時点と、昭和四十年度の場合と、あるいはまた最終年の昭和四十二年と、それぞれの時点において、計画目標というものは変わるのが当然だと思いますが、現在の北海道最高四十三万円、内地三十六万円、これはある程度弾力性は持たしてあるわけですが、これは四十年、四十一年、四十二年というふうに、どの程度に上限というものが引き上げられていくか、引き上げなければならぬと考えておるか、その点はいかがですか。
  145. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 考え方といたしましては、専業農家の中庸といいますか、平均といいますか、そういう家計費水準を目標に、そこまでとりあえず持っていきたいという立場でございますから、農家経済調査によりまして、専業農家の家計費が上がってまいりますれば、これに合わせて上げてまいるということでございまして、これとは無関係に四十年は幾らにする、四十二年は幾らにする、そういうふうに計画的に考えておりません。
  146. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最近は、問題として、所得目標に幅を相当持たせるべきである、少なくとも平均目標の上限、下限にそれぞれ五万円ぐらいの弾力を持たせる必要があるのではないかという強い意見や要望もあることは、局長の御承知のとおりであります。そこで、その意見等を検討しますと、大体北海道においては上限を六十万円程度に引き上げなければ実情に合致しない、内地においても上限を五十万円程度に是正する必要があるというような意見については、われわれとしても、内容を検討した結果、妥当である。しかし、その場合には、やはり上限が六十万であれば、下限は五十万とか、その程度の幅を持たせて、やはり計画を認定する場合に、計画を立てた開拓者の実態というものを十分検討する場合、ケース・バイ・ケースでやる場合においては、その程度の所得目標の幅というものがあっても差しつかえないのではないかというふうに考えるわけですが、この点はどういうふうに考えておりますか。
  147. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 いろいろの角度から検討いたしまして、三十八年の一本の線から、三十九年に上下のベルトにしたわけであります。四十年におきましても、ベルト的な考え方考えたほうがいいのではないかと思っておりますが、目下のところ、いろいろ作業中でございまして、どのくらいに開くべきが適当であるか、まだ結論は私ども持っておりません。よく研究してお答えさせていただきたい、かように思っております。
  148. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、建設工事の未完了、これは個々の建設工事が完了したる場合というのではなくて、その地区の建設工事が全面的に完了しなければ、その地区内における開拓者は振興計画の認定を受けることができないということになると、これは非常に問題があると思うわけです。言うまでもなく、四十二年で一応振興計画は作業が終わるわけですからして、そうなると、前提として、振興計画の最終年、計画を認定する最終年の四十二年までに、未完了の建設工事というものは完全に完了するという、そういう見通しが立たないと、その地区が完了しない場合には認定しないということになると、場合によっては、その地区総ぐるみで振興計画から除外されるという場合も出てくるわけですね。これは非常に大事な点だと思いますが、建設工事の完了というものについてはどういうふうな見通しを持っておられるのですか。これは内地と北海道と分けて、北海道については、特に所管の開発庁のほうから、その実情について明らかにしてもらいたいと思います。
  149. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 いまのやり方といたしましては、逐次地区を選んでいきますから、工事の完了した地区からやっております。しかし、おいおいそのテンポが進みますと、工事の終わらない地区でも当然やらなければならぬという事態になるわけでございますが、それではまずいということで、一昨年来既入植者の入っておりますところの建設工事につきましては、非常に予算面でも努力いたしまして、早く上げたいということで、これは全部がそうなるわけではございませんが、全国的に終わってしまう最後の姿の問題でございますが、内地が四十一年、北海道はまだ事業量が多くて四十二年まで一部かかると思います。そういうテンポでこの仕事を終えまして、振興計画との調節には遺憾のないように期したい、かように思っております。
  150. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、内地においては明年、昭和四十一年度中に建設工事は完了する。したがって内地府県においては建設工事がいまだ完了しないということを事由にして、その地区振興計画の認定からはずれるということは絶対になくなるわけですね。
  151. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 さようでございます。
  152. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、北海道においてはだいぶ事情が違うようですが、この点は特に開発庁のほうから具体的に説明を願いたいと思います。
  153. 小熊清

    ○小熊政府委員 北海道における開拓地の建設工事は、北海道開発庁が所掌しておるわけでございますが、お話振興計画に支障を来たしませんように、鋭意工事を進めておるわけでございます。大体国営開墾、代行開墾の基本的な工事については四十一年に終わる、残りの工事が昭和四十二年までには完全に終わるという目途で進んでおるわけであります。
  154. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、基本工事は北海道においても四十一年度に完了する。あとは付帯工事が四十二年に完了するという見込みですか。
  155. 小熊清

    ○小熊政府委員 付帯工事も含めて、四十二年度には完了する目途で進めております。
  156. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、内地においてはすでに問題がありませんし、北海道においても四十一年度で基本工事が完了するということになり、なお四十二年度中には付帯工事もすべて完了という見通しがつけば、北海道においても基本工事が終わって、あとの付帯工事は一年後には完了するという場合には、四十一年においてもその地区振興計画の認定に入るということになるわけですね。
  157. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 二千四百の地区が概算ございまして、これを三十八年以来六百、六百、五百と順次やっております。そのテンポの進み方にもよりますが、私といたしましては、なぜ基本工事が終わったところからやっていくかということは、営農の根幹でございますから、それを工事の計画だけでやっていてもまずいということで、工事の進行状況を見ながら、逐次地区を指定して振興計画を立てていくという基本的な立場でございますから、考え方といたしまして、四十二年に随伴工事なり付帯工事がかかるような地区で、営農の設計を立てるようなことについて狂いがないというようなところは、地区の進捗状況ともからみますが、取り上げていっていいのではないか、かように考えております。
  158. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは、所管の開発庁が、明年度は基本工事は全部終わります、昭和四十二年にはその付帯工事も完了しますということを明確にしておるわけだから、四十二年に全部終わってからということでなくて、四十一年に基本工事が終わるということは、今年度も相当進捗するということなんですよ。ことし全然やらぬで、来年いきなりやるというわけじゃないでしょう。だから、もうそういうはっきり完了の見通しがついておるわけだから、したがって、今年、明年にかけて基本工事の終わったものについては、すみやかにこの計画というものをむしろ出すことをすすめて、そうして妥当な計画についてはすみやかに認定するということでいかなければならぬと思いますが、いかがですか。
  159. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 全般を達観しまして、北海道振興地区の進展あるいは計画書の提出等がおくれぎみでございます。ですから、私どもはできるだけ北海道をスピードアップいたしたいと思います。したがいまして、基本工事、随伴工事の進捗に応じて、どんどんいま先生のおっしゃったように進めたい気持ちをむしろ積極的に持っておるわけでございます。具体的な地区の問題として、随伴工事の具体的な計画変更その他がまだあるような地区は、やはりそこを詰めてからの問題になろうかと思いますが、基本的には、私どもはむしろスピードアップいたしたい、道庁あたりにもむしろお願いをしている立場でございます。
  160. 芳賀貢

    ○芳賀委員 わかりました。そういうことですから、来年度の予算配分等については、そういうことを頭に入れて、予算の配分が少ないと、せっかくやる見込みがついても予算が少ないことによってできないということもあるし、そういう場合には、これは政府の責任ということになるし、農地局長の詭弁ということになるわけです。来年の予算編成まであなたが農地局長の地位にとどまるか、一段また上の位につくか、これはわからぬが、まだ農林官僚としてしばらくは在任されると思うから、これは忘れないでやってもらいたい。  もう一つは、北海道の認定がおくれておるという理由は、振興計画をつくれないのですよ。先ほど局長が言われたとおり、北海道においては、平均して約八十万の固定負債があるわけですから、そういう負債を持っておった場合に、農林省が示す設計基準等にどう当てはめてつくっていいかわからぬといって、まず振興計画を自分でつくれない。つくれないから出さぬ。つくっても、これは認定から除外されることが明らかだから、これも出さない。こういうことが大きな原因になり、さらにもう一つは、いまの建設工事が未完了地区は除外されるということが明らかになっておる。それらの事情によって、北海道における計画書の提出が、内地府県に比べて、非常に遅延しておるということになっておるわけですから、このおくれておる事由というものは、いずれも重要な事由であるわけですから、先ほど相当時間を費やした負債整理の計画を取り入れるという問題等ともあわせて、十分な配慮を、特に北海道地域における特殊な事情というものを十分考慮に入れて進めていただきたいと考えておるわけですが、いかがですか。
  161. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 開拓営農の振興対策北海道のテンポがおくれております限り、国会でもあるいは全般的にも問題が残るわけでございます。私としては、北海道を急げ急げということをやっておるわけです。率直に申して、急がしておるわけです。不幸にして、三十九年度は、いま先生御指摘の問題のほかに、加えまして冷害等の問題がございまして、どうも関係者の事務能力もだいぶそがれたようにも報告を受けております。昭和四十年度はぜひ馬力をかけたい、かように私どもは思っております。また、道庁あたりにも積極的にやってもらえということを常々私も申しておるところであります。
  162. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、第三類農家の離農する開拓者に対して、国、都道府長を合わせて四十五万円が離農手当として支給されるわけですが、この離農手当は、農林省としては、その全額を離農するための費用として使うことのできるように配慮されておるかどうか。いかがですか。
  163. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 離農の四十五万円は、できれば全額手をつけたくないのでございますが、それは絶対手をつけてはいかぬとは申しておりません。しかし、指導といたしましては、結局、移転に要する費用とか、その後の移転先における生計費とか、そういうものについては、決して食い込まないように、ほかのほうで、たとえば政府の借金を延ばすなりしてでも残して、ともかく行った先で生きていき、かつ、でき得べくんば仕事が始められる形に残すようにという指導を積極的にやっております。先ほど、三十八年におきますところの携行資金の実績につきまして、卜部先生からいろいろ質疑があったわけでございますが、特に北海道につきまして、取り急ぎ三十九年をとりましたところ、問題になりました携行資金は、たとえば十万円未満というようなものはゼロでございます。十万円以上二十万円、モードは大体二十万以上三十万円、三十万円以上四十万円辺に固まっております。考え方としては、いま申したとおり、絶対手をつけるなとは申しかねるのでございます。この資金の性格上、必要な金は残すようにという指導は相当強くやってまいっておる次第でございます。
  164. 芳賀貢

    ○芳賀委員 四十五万そのものにも問題があるわけですが、それではとりあえずの措置として、これは農地局長の通達でもいいのでありますが、この四十五万円の離農手当というものは、国の方針に基づいて開拓者が脱農してもらうのであるから、この分にまで債権の回収とか請求を及ぼしてはならぬ、及ぼさないように配慮せられたいというような行政的な通達を、この際お出しになる必要があると思いますが、場合によってはこれは次官通達でもいいのでありますが、いかがですか。
  165. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 開拓者が移転をいたします際に、資産の処理、負債の整理、携行していく金、こういういろいろな因子がからんでおります。この四十五万円だけをイヤマークするということでなくて考えさしていただきたい。それで、前々から申していますとおりに、四十五万円には一切手をつけるなということは、いささかどうかと考えられます。(「さっきの答弁の趣旨を変えてはだめだぞ」と呼ぶ者あり)趣旨は変えておらないのでございまして、いまの通達では、都道府県知事は、離農する開拓者が債権者の同意を得ようとする場合においては、移転に要する費用及び生計を維持する見込みのつくに至るまでの生活に要する相当現金は、手持ち現金として携行し得るよう、債権者と開拓者の間のあっせんその他の措置をとれという趣旨を入れたわけです。借金も、御承知のとおり政府の資金だけでもございませんし、個人負債もございますから、現実問題としてはなかなか複雑でございます。そこで、国の意思としては、移転する費用、それから落ちついて次の仕事をやれるまでの金は、これは県も一生懸命あっせんして残すようにその関係者間の話をつけなさい、こういう姿勢で現に通達もしております。
  166. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは開拓者でもちろん営農しているわけだから、土地を所有しているとか、施設もあるわけですね。そういう残存する財産というものは当然処分してから離農するか、あるいはその処分というものを開拓農家あるいは所属の農協等に委任して離農する場合もあるわけですね。しかし、国から三十万円、都道府県から十五万円というのは、離農する場合の手当ですから、皆さんでいえば旅費と同じですよ。目的があって出すわけだからね。現在の営農地を離れて、他に転居して就職しなければ生計が立たぬということになれば、それは財産処分によって相当の資金を持って出られる人もあるでしょうし、ここでいう四十五万円に手をつけてはいかぬということは、そういう財産を処分しても、それでまだ負債が若干残るとかいうような人について、初めて四十五万円に対する債権の請求ということにもなると思うのです。だから、そういう気の毒な開拓者に対しては、国が支出した三十万円、都道府県が支出した十五万円というものは、あなた方が、債権者に対して配分するためにこれは支出しておるのではない、あくまでもこれは開拓者の離農手当と次の仕事に安心して就業できるまでの間の生活費あるいに旅費等を含めた費用であるから、これに対しては請求は遠慮してもらいたい——すべきでないということは言えぬかもしれぬが、そういうような行政的な徹底、啓発ということはできないことはないと思うのです。これは最初にやるべきものを怠っておったところに問題があるわけですが、しかし、いいことはいまからでもおそくないわけですね。だから、先ほど私が言ったような行政的な措置で、少なくともこの金については、借金のかたにとられぬように守ってやるということは必要だと思いますが、これは特に政務次官からも御答弁を願いたいのです。
  167. 舘林三喜男

    ○舘林(三)政府委員 離農資金の問題は、先ほど卜部委員の御質問にもいろいろありましたが、趣旨といたしましては、やはり前向きの資金の性格を持っていると思うのです。今後の生計を維持するとか、あるいは就職についての費用をいろいろ使うとか、あるいは移転費を使うとか、さような意味で次官通牒にも掲げてあるわけでございます。ただ、もちろん、政府資金とかあるいは系統資金等につきましては、いろいろ措置をとっておりますけれども、離農する開拓者といたしましては、個人的な債務等の格差はあるわけでございまして、そんなものにつきまして、すべてそれを踏みにじってやるというようなことはやはりできないことじゃないかと思う。したがって、先ほど局長が申し上げましたとおり、いろいろ仲介あっせんの労をとるというようなことで、なるべく四十五万円に近い金だけは携行して離農していただきたいというのが趣意でございます。ただ、四十五万円につきましては、絶対別ワクなんだ、これは一切手をつけてはいかぬというかたい趣旨でないことは、御了承願いたいと思います。
  168. 芳賀貢

    ○芳賀委員 どうもこれは納得できませんが、これから政府が私どもの期待したようなことをやるかやらぬかということを当分見守って、その後に、必要があればまた問題を指摘して、その機会に取り扱っていきたいと思うわけです。  次に、開拓者が離農した場合の離農あと地、特に農地等の処理あるいは管理等については、どういうことになっておるか、この点は非常に重要な点だと思います。内地府県については局長から、北海道については開発庁から、離農あと地の処分あるいは管理等が適正に行なわれておるかどうか、この点について説明を願いたいと思います。
  169. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 実はこの離農資金が発生いたしました経緯ですが、初めはあと地を残った人に使わせるというところに着目しまして、制度化をした。したがって、その当時は過剰入植対策と称しておりまして、あと地が処分がきちんとしないと離農補助金をやらないという制度であります。そうしますと、どうもいろいろふぐあいがございまして、むしろ、どうしても出たいという方にはあまりやかましいことをいわないで、その離農補助金は出すというほうに着目いたしました関係上、今度はうらはらになりまして、離農あと地の問題がどちらかといいますと、手が抜かれてまいりました。こういう形に相なってはおるわけでございますが、いまの資料で申しますと、実は手元北海道しかございませんが、三十九年度の実績で申しますと、千六十七戸の離農者の土地は、残留開拓者の七百戸に一部と、既存農家の二百七十二戸に渡っております分と、市町村組合等に渡っております分と、そういうふうに分かれております。そして三十五年から三十八年までの残留開拓者の増地の状況を見ますと、北海道では離農あと地を手に入れまして、戸当たり五・九ヘクタール、内地では一・六ヘクタールが残った方の増地に当たっております。
  170. 小熊清

    ○小熊政府委員 北海道における離農あと地の処理の状況は、ただいま農地局長から御答弁があったとおりでございます。
  171. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それから最後に、締めくくりとしてお尋ねしたい点は、開拓農業協同組合を今後政府としてはどのように取り扱うかという点であります。これは政府から配付された資料によりましても、現在全国的に開拓農協の数は四千であります。その四千の開拓組合の構成員の状態を見ると、十戸未満の組合が七百三十八、十一戸から二十戸未満の組合が千五百二十八、二十二戸から三十戸未満の組合が五百九十二、三十二戸から五十戸未満が四百九十四、五十二戸から百戸未満が三百八十八、百戸以上が二百六十三ということになっておるわけです。そうしますと、二十戸未満の組合の数は二千二百六十六で、全体の六〇%程度を占めておることは御承知のとおりであります。したがって、農業協同組合としての生産活動あるいは経済活動をやるための組合が、構成員十戸あるいは二十戸未満というような形成をもってして、どの程度の生産活動、経済活動ができるかということは、これは明らかな点です。したがって、この状態というものを今後いつまでも放置しておく考え方であるか、これをさらに高度のものに整理強化することを考えておるかいないかということを、この際明らかにしてもらいたいわけです。従来、農地局としては、開拓農協の問題に対しては、つとめてこれを避ける態度を示されてきたわけでありますが、今回の法律改正によっても、今度は開拓者の農事組合法人というものをつくる根拠を融資保証法の中で明らかにされたわけです。そういう点を思いあわせますと、一体十戸、二十戸というような程度の開拓農業協同組合というものは、単にばく然とした農協としてこれを扱うべきか、あるいはむしろ任務を明らかにして、それが生産活動を主体にすべき法人として必要であるとすれば、場合によっては、現在の農協法の中において農事組合法人というような編成がえ等を行なって、その開拓者が形成する農事組合法人が、もちろん地域の総合農協に法人として加入し、あるいは個人として加入して、十分地域の総合農協の活動の中で利益を享受するということのほうが、前向きの態度ではないかというふうに私は考えておるわけです。ですから、この際、ちょうどいい機会ですから、全国四千に及ぶ該当農協に対して、政府としては、どのような方針で今後これを取り扱っていくかということについて、明らかにしてもらいたいと思うわけです。もう少しこの内容を分析しますと、四千の組合のうち、これを出資組合と非出資組合に分けた場合に、出資をしない農協の数がちょうど二千であります。出資組合となっておるのが二千であります。出資組合と非出資組合がちょうど五分五分ということになっておりますし、出資組合の場合においても、その組合が行なう事業として信用事業を行なっておる組合の数はわずかに百六十七しかないわけですね。この百六十七組合の信用事業を行なっておる組合についても、この中の大部分の百十四組合は、これは北海道における開拓農協ということになっておりまして、残り五十三の開拓農協だけが信用事業を行なっておるということになっておるわけです。そうしますと、北海道を除いた内地府県の地域の開拓農協というものは、たとえばそれが出資組合であっても、信用事業等を行なう能力を備えておらないということになっておりますし、信用事業を行なう能力に欠けておるということになれば、もちろ販売、購買、利用事業等においても十分な成果をあげていないのではないかというように判断されるわけです。ですから、こういう点については、単に開拓農協が農地局の所管であるということだけでなくて、これは農林省の立場に立って、やはり農政局長からも、こういう問題について一体どのように対処すべきかということを明確にしてもらいたいと思うわけです。
  172. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 三十五年から六年にかけまして審議会におはかりしましたときの一つの大きな問題点が、開拓者団体、いま御指摘の開拓農協及び総合農協の問題です。数カ月にわたりまして関係者の間で非常な御審議を願ったわけでございますが、結論的に申しますと、明快な形におきます御答申はついにいただき得なかったのでございます。ただ、いまおっしゃいましたとおり、この答申でも、その販購買等の経済事業の問題になりますと、規模がきわめて零細で、適格性を欠く組合が少なくなくて、これを別個の団体を利用する考え方をできるだけ取り入れるように考えて、次のようなことが考えられぬかという趣旨におきまして、総合農協がそういう仕事一切を引き受けると、開拓農協を吸収合併しようとする場合にはできるだけ吸収合併を促進しろ、しかし、どうしても総合農協のほうでとても引き受けるわけにいかぬというような場合には、事務の委託を受けて事務をかわってやってやるという形、それから開拓農協そのものでは、いま一組合平均三十三戸くらいでございますから、とてもいけないから、みんなが集まって合同事務所を持って仕事をやるという問題を研究し、考えろということでございまして、一方開拓者の農協サイドのほうからは、振興計画をやっている間はあまりこの問題はいじくってもらいたくないという御意見も一つございました。私どもといたしましては、その答申を受けて以来、いま申しました事務の委託、それから合同事務所につきましては、その数年後から予算を組み、援助をし、来年度もさらに援助をいたしているわけであります。  いま先生が根本的に御提示になりました、その問題をどうするかということでございますが、この根本的な問題につきましては、結論的に申しますれば、いま直ちに割り切る形にまでは至っておりません。考え方としては、先ほど卜部先生のほうからお話が出ました生産手段としての農事実行組合法人化の問題、その他いろいろ検討すべき点が非常に多いと存じますが、いま開拓振興のまつ最中でございますので、この問題については、私ども早急に結論を出す考えはいま持っておらない段階でございます。
  173. 昌谷孝

    昌谷政府委員 開拓農協の現況につきましては、御指摘の点もございます。また、組合員の総合農協への加入状況等を見ましても、内地においては七割近い組合員が総合農協へ加入しておるというような状況でもございます。それらを考えますると、今後組織をどういうふうに整備するかということが課題になるわけでございますが、やはり先般の御質疑のときに申し上げましたけれども、総合農協の組織なり運用なり、それが成熟をいたしまして、開拓者を組合員として、一般の組合員と変わりなく、金融あるいは事業面でのお世話が十分できていく、あるいは特に生産指導等の面でも十分行き届いたお世話が一般農協の組合員としてできていくというような姿に、総合農協のほうが内容が充実してくることが並行してきませんと、むずかしい問題だと思います。開拓農協自体の整備の御方針については、ただいま農地局長からもお話がございました。私どもとしても、そういった開拓の方向が無理なく受け入れられるようになるためには、やはり一般総合農協のそういった面での一そうの充実が伴っていくことが、自然に事柄がうまい方向に発展していく一つの素地でございます。今後もそういう方向での努力をしていきたいと思っております。
  174. 芳賀貢

    ○芳賀委員 両局長の答弁はまことに不満足です。われわれとしては納得できないわけですが、しかし、本日ここで決着をつけるほど性急に私は考えていないが、いままでこういう重要な問題をことさらに避けてきたということに対して、これは特に農地局においても反省する必要があると思うのです。一般農協の場合には、これは歴史的には、農協の再建整備あるいは農協の整備促進とか、あるいは農協の合併の促進とか、そういうような適切な法律がこの時点に制度化されて、相当前進しておることは事実ですが、開拓農協に関しては、こういう特別の措置というものは全然講ぜられていないわけです。ただ、農地局の所管でこれを何とか庇護するということだけで日を送ってきたにすぎないわけでありまして、これはいつまでも放任しておくことはできない。ただ、これをどうするかということになると、現在の開拓農協というものは、相当脱農しなければならないような気の毒な組合員をかかえておる。二十年近くにわたって、やはり開拓農協は、政府の開拓行政の補助的な役割りという面については相当強力に貢献してきておるわけであります。こういう点が一般農協と非常に違う点であります。それからまた、いまここで開拓農協というものを債務の上からもこれを整備するということになれば、これは相当債務的な面で解決しなければならない問題が生じてくると思うわけです。ですから、その問題は、これは当然政府の責任で、農林省として、十分その場合にはどうするという具体的な整備方針というものをいまから検討してもらわないと、単にこれは議論だけの問題ではないと思うわけです。その問題が解決つかなければ、一般の農協との間における合体の問題とか、今後農協を経済地域における広域なものに発展させるというような場合においても、当然、この開拓農協の持っておる残存債務とか、国との間における行政的ないろんな未解決の問題をどうするかということを国の責任で解決して、それから地域における農協の整備拡大の方向に進むということでなければ、これは解決にならないと私は考えておるわけです。  それからもう一つ、法案についてでありますが、先日、私は局長に対して、現行法においても、北海道においては一般農協が開拓保証協会の地方協会の会員として保証業務を行なっておることになっておるが、その現況はどうであるかということを尋ねたわけでありますが、それに対しては、よくわからない、そういうことは法律の改正上重要な問題でないというような態度を示されたわけでございますが、その後、こちらから資料の要求をしました結果、こういう点があらわれてきておるわけです。北海道において一般農協に対して保証協会の会員となるべきであるという政令に基づく指定を行なった組合の数は二十三であります。実際はまだ多くなければならないわけです。政令の規定は、一般農協における組合員のうち七〇%以上が開拓者であるということ、さらに三十人以上がその一般農協の中における構成員であることということが、指定の条件になっておるわけですからして、北海道の場合には、どのような町村における総合農協であっても、開拓者が三十人にいかないというようなところはないのです。そうすると、少なくとも二百くらいの農協というものは指定組合にならなければならないわけですが、これが二十八年に二十二、二十九年に一組合で終わっておるわけです。そうしてそのうち、指定された組合が二十三であるけれども、実際にその農協が会員となるための条件を獲得したものは、わずかに十四組合しかないわけです。そのうち、八組合がまた脱退しまして、現在においては、昭和三十九年度は、北海道全体で三つの農協だけが債務保証行為を組合員である開拓者に行なっておるにすぎないわけです。これは非常に重要な問題です。一片の法律改正だけを行なって、一般の農協が融資保証業務に協力できる道を講じても、その指定を行なっても、その組合が進んで出資をして地方保証協会の会員となって、組合員である開拓者に対してできるだけの協力援助をする、そういう体制が、残念ながら北海道においてもとられていないのです。このことは、単にこれを全国的に拡大した場合においても、内地府県はそうでないということにはならぬと思うわけです。ですから、法律を改正する場合には、このように改正した場合において、これだけの成果があがるという確実な見通しの上に立たなければ、軽々と法律改正等は行なうべきでないと思うのです。単に北海道関係から出された資料だけによっても、昭和二十八年から現在まで十数年間における経過と実態というものは明らかになっておるわけです。ですから、今回法律の改正が行なわれて拡大される場合においても、従来単にその道だけを開いて、あとは親切な行政的な誘導をやっていないところに、農林省あるいは農地局の欠陥があったわけでございますから、こういう点については、十分これを機会にして反省すべきであると思いますが、その点についての見解を明らかにしてもらいたいわけです。  もう一つ、われわれとして理解に苦しむ点は、先ほど申し上げました全国四千の開拓農協のうちで、地方協会に加入している組合の数は、そのうちの七〇%の二千八百三十六組合であるが、実際にこの制度を利用しておる組合の数は幾つかというと、四千組合のうちの三〇%の千百七十四組合しかこの制度というものを利用していないのです。こういう制度を利用していなくても、十分営農資材等は再生産の準備ができるというのであればはなはだけっこうでありますけれども、残り七〇%が利用していないというところには、やはりそれと違った理由というものが内蔵されておるのではないかというふうに考えられるわけであります。こういうような点についても、せっかく融資保証の制度というものが確立されて、政府相当額の出資をして、中央保証協会あるいは地方保証協会と分かれて、今回の場合には、一般の農業協同組合あるいは地方の公共団体もこの会員になれるというような道が開かれておるわけでございますから、従来の実績とか経過というものを十分判断して、今回法律が改正された場合においては、十分この制度というものが活用されて、少なくとも開拓者が再生産の準備をする場合の短期の営農資金等については、有利な条件であるこの保証制度というものを活用してやっていくべきである。そういうような政府の啓蒙指導、あるいは開拓農協それ自身または開拓者自身におかれても、こういう点については十分自覚の上に立って前進すべきであるというふうに考えるわけでございますが、以上三点について、農地局長あるいは農政局長考えがあれば、政務次官からも御答弁を願いたいと思うわけです。
  175. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 振興対策としましての融資保証制度をどうしたならばもっと開拓者の方々に活用し得るかという問題につきまして、関係者の間でいろいろ御審議を願っておったわけでございます。そして今回出資金が予算上許されます関係上、法案を提出するにあたりまして、あらゆる可能性を拡大しようという立場で、あわせて法律の各種の点の改正を行なったわけでございます。先般芳賀先生から御注意をいただいて、その改正点の一点のうちの、総合農協が会員になる実例は、北海道ですでに開かれておったではないか、私、率直に申しまして、その点につきましての吟味を十分いたしておりませんで、御指摘をいただきまして、急遽北海道について調べたのが、先ほど報告申し上げたような形でございます。そういう点につきましては、確かに、私ども、法案に対しまして、検討の段階で準備を尽すべき点が不十分であったという点は、深く反省をいたしておる次第でございます。  それから利用率の問題につきまして、いろいろとお教えがございましたが、確かに、組合の中で、加入組合、さらに利用組合が非常に少ない。そこから先が問題でございまして、利用しないで済んでおるのか、不便ながら利用しないでおるのかというところが、非常に問題点でございまして、私どもといたしましては、この際、出資の法案改正にあたりまして、利用し得る道をあらゆる可能性を開くことによって、利用しないで済んでおる方の問題は別として、いろいろな理由によって利用し得ない方々にも利用し得る道を開くというような補完的な立場で、今回の法律はあらゆる可能性の利用の態様を取り込んだ次第でございます。指導にあたりましては、いまのお話にありました点も十分考えまして、指導に当たりたい、かように存じております。
  176. 舘林三喜男

    ○舘林(三)政府委員 いま丹羽局長がお答えしたとおりでございまして、今般開拓融資保証法を改正いたしましたのも、どうしても開拓融資の問題としては総合農協の直接貸しの道を開くことが、現在の開拓組合の実情あるいは実力から申しまして、必要だというたてまえでやったわけでございまして、開拓者のためになれこそすれ、必ずこれは不利なものではない。さらに局長が申し上げましたようなことばを使いますと、補完的な意味で必ず開拓者のために役に立つだろうという立場でやったわけでございます。ただ、先ほど芳賀委員のおっしゃいましたような例がありましたように、北海道におきましては、実際現在までこの法律の改正前からすでにやってきたのであるけれども、実際はあまり利用していないじゃないかということはありました。かようなことも、私たち今後この改正法を実施する上においては非常に重要な参考だと思います。今後芳賀委員の御趣旨のとおりに、この新しい改正の趣旨に照らしまして、行政の指導あるいはPR等を十分にやりまして、この趣旨が徹底いたしますように努力いたしたいと思います。
  177. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  178. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もないようでありますので、これより直ちに採決に入ります。  開拓融資保証法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  179. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  180. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 この際、卜部政巳君外二名から、本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  趣旨説明を許します。卜部政巳
  181. 卜部政巳

    卜部委員 簡単に申し上げます。  御承知のように、農業白書は、端的に今後わが国の農業をめぐるところの経済情勢というものをとらえまして、今後の発展といたしましては、かなりきびしくなることを指摘をいたしております。同時にまた、一方国内におきましては、経済の成長に伴いまして、農業のいわゆる就業人口の一そうの減少が予想される、このことも強調をしておるところであります。そして、この経済成長の趨勢というものを持続しながら、三十八年から三十九年にかけるところのこの景気の局面が、激しく変化を行なっておるけれども、これに対応しつつ農業の発展をはからなければならないとしておるのであります。なるほど、政府が本年度講じようとする一般農業施策は、一応わが国の農業の今日的な問題に触れて、さらに農業予算もそれなりに増額を見ているようでありますけれども、現在の激しいこの日本の農業に対応するには、あまりにもほど遠いものがあろうと思うのであります。  このような状態の中で、密接に結びついておりますところの、この開拓者に対する施策についてでありますけれども、この内容につきましては、振興対策の進め方についても、一応軌道に乗ったという形式的な問題は出てきておりますけれども、なお検討すべき数多い問題があることは、答申でもこの点を指摘し、さらには本委員会の中において、詳細に検討し尽くされたところでございますので、省略をいたしたいと思います。  私は、これが具体化のすみやかならんことを切望いたしまして、自由民主党、日本社会党、民主社会党を代表いたしまして、ただいまより附帯決議案を提案いたしたいと思いますので、何とぞ御賛同をお願いいたしたいと思います。  では、案文を申し上げます。    開拓融資保証法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案   政府は、現在実施している開拓営農振興対策について、すみやかに左記各項を検討し、その実現に努めるべきである。     記  一、開拓融資保証制度については、出資の増額、金利の引下げ等貸付条件の改善および保証業務の刷新等を検討し制度利用の拡大と融資の円滑化をはかること。  二、営農振興対策については、経済諸情勢の推移に対応する目標所得の引上げ、営農振興資金の供給の円滑化、建設工事等基盤整備事業の早期完工と農家負担の軽減、新規計画に伴う改良工事の追加補正、災害に対する救済措置積雪寒冷地域の営農改善及び離農援助措置の充実と跡地処分の適正化をはかるよう努めること。    なお、北海道東北、裏日本等の地域については、その特殊性にかんがみ、旧債対策をはじめ振興対策の実施についてさらに改善策を講ずること。  三、開拓農業協同組合については、いまなお規模の弱小、財務等の不健全なものが多い現況にかんがみ、すみやかにその実情調査検討して開拓者に対する農協活動が十全に行なわれるよう組合体制の整備拡充について必要な措置を行なうこと。    右決議す。  よろしくお願いをいたします。(拍手)
  182. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 おはかりいたします。  卜部政巳君外二名の動議のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  183. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 起立総員。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、政府当局の所信を求めます。舘林農林政務次官
  184. 舘林三喜男

    ○舘林(三)政府委員 開拓融資保証法の一部を改正する法律案の御決議をいただきまして、ありがとうございました。  ただいま御決議されました附帯決議の趣旨につきましては、政府といたしましては、十分にその趣旨を尊重いたしまして、御趣旨に沿いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。     —————————————
  185. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 なお、本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  186. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  187. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 次会は明三十一日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五分散会