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1965-02-17 第48回国会 衆議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月十七日(水曜日)     午後一時三十七分開議  出席委員    委員長代理理事 坂田 英一君    理事 仮谷 忠男君 理事 長谷川四郎君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 東海林 稔君 理事 芳賀  貢君       池田 清志君    宇野 宗佑君       亀岡 高夫君    吉川 久衛君       倉成  正君    小枝 一雄君       笹山茂太郎君    田口長治郎君       田邉 國男君    中山 榮一君       丹羽 兵助君    野原 正勝君       細田 吉藏君    松田 鐵藏君       卜部 政巳君    兒玉 末男君       松井  誠君    松浦 定義君       森  義視君    山田 長司君       湯山  勇君    小平  忠君       中村 時雄君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         農林政務次官  舘林三喜男君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      久宗  高君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         農林事務官         (園芸局長)  林田悠紀夫君         食糧庁長官   齋藤  誠君  委員外出席者        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 二月十七日  委員兒玉末男辞任につき、その補欠として山  中日露史君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山中日露史辞任につき、その補欠として  兒玉末男君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 これより会議を開きます。  本日は委員長が不在でありますので、委員長の指命により、私が委員長の職務を行ないます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  前会に引き続き質疑を行ないます。小平忠君。
  3. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、赤城農林大臣に、わが国農政の基本問題について、若干質問をいたしたいと思うのでございます。  まず第一に、農林大臣にお伺いいたしたい点は、最近の政府農業政策あるいは本年度予算編成をめぐる態度をまじめに、また国家的視野に立って観察するのに、どうも農業基本法精神を真に生かして予算編成なりあるいは農業政策の遂行に当たっておるとは言えない点が多々あるのであります。  具体的に申し上げますならば、昭和四十年度予算編成についての態度あるいはその中身でありますが、現実に現在審議を行なっておりまする予算中身で、一般会計における農林予算の占める割合は、赤城農林大臣が本会議あるいは本委員会で強調されるような姿でないと私は思います、具体的にあらわれている数字を見ましても。こういう点について、農林大臣は、基本的に日本農業の今後のあり方についてどう考えておられるのか、まずお伺いいたしたいのであります。
  4. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 政策が、その裏づけとして、それを実行するに相当する予算の計上がなければ意味をなさない、こういうふうなお考えだと思いますが、私もそういうふうに考えています。ただ、国家財政の都合やらいろいろな関係から、予算裏づけが思うようでないということはあり得る点でございまして、思うようでないことは、まことに私としても遺憾に存じます。ただ、私は、いまのお話にありますように、総予算額に占める割合は一〇・一%で、パーセンテージ等からいいますると、非常に農林関係予算が少ないという感じを持たれると思います。しかし、いまお話にもありました中身比較のしかたによっては、相当程度予算裏づけがあるんじゃないか。たとえば食管繰り入れと同じように変動要因の多い農業近代化助成資金繰り入れとか、災害復旧等経費を控除した予算規模で見ますと、国の総予算伸び率が一二・四%に対しまして、農林関係予算が一八・一%、こういう点から比較いたしますと、かなり伸びておる。あるいはその中身でございますが、これも見方によります。あるいはまた程度の問題がありましょうけれども、農業基本法の指向するところに従って農業近代化をはかる、そのための重要施策には格段の配慮をいたした、こう思っております。すなわち、農業生産基盤整備につきまして、これは非常に伸び率が高いのでございますが、一九四%、金額にして九百二十三億、農業構造改善対策等につきましては一七・七%増しの百六十億円、畜産生産振興対策につきましては二〇・一%増しの五十六億円、農畜産物流通改善対策につきましては五四・一%増しの、額にしては少ないのでございますが、四十七億円、それぞれ大幅に増額しております。また農業基本法考えております、自立経営を指向する農家経営規模の拡大を促進するため、農地管理事業団関係経費新規に計上しております。このほか、金融面につきましては、ワクを拡大しまして、公庫の融資ワクが千七十億から千二百四十億円、農業近代化資金融資ワクを六百億円から七百億円、農業改良資金貸しつけワクを四十四億から五十七億円と、昨年度比較してそれぞれ増額いたしております。全体的に見ますと、程度の問題だと思います。農業基本法の指向する方向にやったかやらぬか。程度から見て、これではやっていないという見方もありましょうし、この程度でも相当進めたんだという見方もあろうと思います。全体的の予算ワクから見ますならば、まことに遺憾の点が多いのでございますけれども、中身をとってみれば、ことしは相当農業基本法方向に前進している、こういうふうに考えております。
  5. 小平忠

    小平(忠)委員 食管特別会計繰り入れ一千九十六億円を除きますと、一般会計の中で農林予算の占める割合は何%になるのでありますか。
  6. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 それを除いて計算をいたしますと、一般会計に占める割合は七・三%、こういうことでございます。
  7. 小平忠

    小平(忠)委員 大臣食管会計赤字をどのように理解されているか、私はただいまの大臣説明を聞いておりますと、食管会計赤字があたかも農林予算であるかのごとき考え方に立って説明されるところに、私は問題があろうと思う。食管会計赤字が一千九十六億もある。このものを農林予算の中に入れて、事ごとに、農林予算は前年度よりもこういう伸び率を示しているとか、占める割合がこうであるとかということだから、結局問題になるのであって、本来食管会計赤字というのは、消費者保護的な、あるいは国民消費者大衆に対する社会保障的な意義を持つ内容であって、この食管会計赤字一千九十六億というものは、本来から言うと、農林予算の中に入れるべきものではないのであります。ただ、処理上、扱い上はそうあっても、この観念が私間違っていると思う。したがって、ただいま大臣説明されたように、食管会計赤字一千九十六億を差し引くならば、一般会計全体に占める農林予算割合がわずか七・三%では、農業基本法精神にのっとって日本農政を強力に推進するということは言えないと私は思う。特に農林省予算課で作成された昭和四十年度農林予算説明の一の総額の劈頭に、その説明を巧みに数字であらわそうとして苦心された中身を見ると、食管特別会計繰り入れ一千九十六億円、前年度が一千八十六億円、その次に農業近代化助成資金繰り入れ零円、前年度が百億円、及び災害復旧など百六十六億円、前年度二百十八億円を控除した金額比較すると——一体、食管会計赤字と、農業近代化助成資金あるいは災害復旧資金と、何かこれは関係があるのですか。災害復旧のいわゆる予算というものと食管会計赤字なんというものは、これは全然性質が違うのです。こういうものをトータルして、あたかも前年対比増加額がふえた数字を出そうと考えておられるけれども、これは本来が筋が違うのです。私は、こういう点において農林大臣予算編成を通じて御努力されている、その熱意はよく理解できますよ。しかし、いかに努力されましても、国家全体のワク予算の中で占める割合の中で、農林予算の比率というものが、食管会計赤字を差し引いて七%というこの悲惨な状態を見るときに、理解に若しむのでありますが、その点はいかがでありましょうか。
  8. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 食管特別会計繰り入れ近代化助成資金災害復旧費用等を控除した金額、こう並べて読みますが、これは性質が同じだという意味で並べたわけではございません。変動要因が非常に多いというので並べたのでございます。そこで、食管会計赤字をどう処理するかということでございますが、小平さんは、これは社会保障的なもので、農林予算と見るべきものじゃないという御意見のようでございますが、私は、これは消費者対策であり、社会保障制度ではございませんとは思います。これは所得の多い人も少ない人も入っておるのでありますが、しかし、社会保障的といいますか、的の程度にもよりますが、的であり、あるいはまた一面においては流通対策費用になる。私は、生産者にとっては一つの有力な価格支持対策一つ費用だ、こういうふうに考えております。自由経済ということでありますならば非常に不安定でございますが、自由経済の中におきましてこういう食糧管理制度というものを採用しておりますことは、一つ見方によっては価格支持制度だ、こういうふうに考えておりますので、農林予算としてこれを考えてしかるべきものだと思います。ただ、本来的に農業近代化を推進するとか、農業政策を前向きに行なっていく費用にはなっておりません。そういう点では、あるいは前向きの農林予算に入ってないというふうな見方から、そういうものを入れて農林予算がふえたとか、あるいは維持しておるとか、そういう見方は妥当じゃないじゃないかという御批判はあろうかと思います。しかし、これは価格支持制度でもあり、あるいは流通対策費用でもある。あるいは農林と直接に関係はないけれども、やはり食糧行政を扱っている農林省といたしましては、消費者の問題も農林政策一つであるということを考えますならば、これはやはり農林予算と見てよろしいと思っています。しかし、それは別といたしましても、こういう繰り入れを除いた予算規模が七・三%というのは、私も満足いたしておるどころか、非常に不満でございます。そういう意味におきましては、私の努力も足らなかったと思っておる次第でございます。
  9. 小平忠

    小平(忠)委員 食管会計赤字を差し引いたものが、一般会計に占める農林予算割合がわずか七・三%であるということについては、まことに満足できない予算であるし、大臣が率直にこのことを認められるということは、私は非常に謙虚であると思います。しかし、最近のわが国農政の実態を、これは与党も野党も政府も全体が真剣に考えるときに、なすべきことがあまりにも多い。農業基本法精神を生かしてほんとうにやろうじゃないかという意欲は燃えておるけれども、毎年毎年予算編成期にぶつかると、結局全体のワクに押えられて、特に食管赤字一千億をオーバーする、こういう膨大なものをその中に入れてしまって、前年対比予算編成を毎年やっておるというのでは、何年たったって農業基本法精神を生かすような結果を招来しないと私は思うのです。ですから、このことが、いま大臣が率直に認められたように、ひとり大臣だけの問題でなく、国政全体をほんとうにどうすべきかということを真剣に考え政府は、この点はひとつ真剣に考えなければならぬときがきていると私は思う。この四十年度予算審議が終われば、直ちに四十一年度予算編成を、大蔵省各省に大体の積み上げをさして、その作業を始めるのです。大体役人がその計数を整理して始めてしまって、さあ各省から大蔵省予算要求だ、説明だ、あるいは査定だなんて始めてから、そして十二月に入って予算編成方針を出して、さあああだこうだなんていっておると、時期はおそいと私は思うのです。そういうようなことを考えてみるときに、最大の問題として、しからばこの食管赤字を除いた農林予算がわずか七・三%である、これを一挙にヨーロッパ先進国の二〇%近い線まで持っていくことは無理としましても、少なくとも、戦後の農林予算の最も高かった一六・八%、一五、六%までこれはすみやかに持っていくような基本的な姿勢、考え方がなければ、日本農業全般に対するあたたかい手を差し伸べるということはできない、私はこう思うのですが、赤城さんは特に農政通でもあるし、そしてまたあなたの人柄と、また長い間与党にあって閣僚にも列することが多いあなたは、ほんとうにこの問題を責任を痛感されるというだけでなく、今後どうしてこの壁を破り、どうしてこの農林予算ウエートを高めていくかということについてお考えであるかということをお伺いいたしておきたいと思います。
  10. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は、全体のワクもさることながら、やはり重点政策に対する予算裏づけということがより大事じゃないか、こういうふうに思っています。そういう意味におきまして、重点的に農業基本法の指向する方向に沿うてやっていくものについては、十分予算裏づけをやるようにこれからもつとめていかなくちゃならぬ、こういうふうに考えております。
  11. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは私は理解できないのであります。そのような考えを踏襲している間は、いわゆる日本農業の根本的な前進ということはなかなか期待できない。食管赤字を中心とした問題についての質問は、あとで食糧問題についてもっと掘り下げてお伺いしたいと思いますので、そのときに譲りたいと思うのでありますが、ただいまの説明の中にも、特に農業生産基盤整備事業について一九・四%も占めているのだという説明があったのでありますが、確かにあなたが前の農林大臣あるいは今回の農林大臣のポストにつかれて、特にこの農業生産基盤整備については相当な伸びを示していることも、また非常に前進していることも理解できるのでありますが、しかし、この生産基盤は、土地改良開拓事業重点的に推進していく中で、また日本農業技術革命というか、近代化というか、そういう面に非常に大きなウエートを占める、そういう高い観点から見た場合に、どうも各都道府県要求あるいは現実農民の期待にこたえていない。そうして手をつけたその事業が、どうもあっちにもこっちにも手をつけるが、いわゆる計画的に進んでいない。経済効率から見ても、あるいは非常にむだがある。こういう点があるのでありますが、卒直に申し上げて、この最もウエートの高い農業生産基盤整備事業について、もう少し計画的に、もう少し思い切ってこれを推進するお考えはありませんか。
  12. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 昨年土地改良法改正がございましたが、その改正をまつまでもなく、いま御指摘のように、計画的に相当強力に推し進めなければならぬものだと私も考えております。幸い土地改良法改正等におきまして、計画的に事業等をどういうふうに行なっていくかということをつくっていくことになっておりますので、そういう計画を作成するのともにらみ合わせて、計画的に強力に推し進めていくというふうに持っていきたい、こう思っております。
  13. 小平忠

    小平(忠)委員 もっと具体的にお伺いいたしますれば、従来国営の場合でも、あるいは補助事業の場合でも、調査が完了するならば、そこで新規着工ということに直ちに持っていけたのでありますが、いまは調査が完了してから、いわゆる全体設計という一つのランクがふえてしまって、全体設計は結局新規着工にあらず、全体設計が終わって、初めて新規着工というような形になっているわけです。その切実な要望が、調査から取り上げられて、ようやく全計も終わって着工だというのには五、六年もかかる。わずかな国営事業ではあるけれども、直轄事業で手をつけてから完成まで、結局十年は早いほうです。十五年なんというのはざらにある。こういう状態は、決して現下土地改良事業を強力に推進するという道ではないのです。ですから、手をつけたならば、もっとスピーディーに、計画的に推進してはどうですか。その重点的にというお考えはわかりますから、重点的に予算をそこに集中するならば、手をつけたものは単年度に完成する。それが小規模なダムの場合でも、どうも無効放流が多くて、結局経済効率があがらない、こういう点がたくさんあるのであります。こういう点をもう少し推進する方法はないのですかということをお聞きしているのです
  14. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは推進する方法がないわけではございません。予算裏づけも必要でありまするし、あるいは事務的にも指導をよくやれば、推進できると思います。御趣旨に沿うたようなふうにいたしたいと思っております。
  15. 小平忠

    小平(忠)委員 どうもたよりない御返事で…。  いまの生産基盤整備事業について、最近水田畑作との関係において、ともすれば、水田のほうはほっといてもいいが畑作のほうにとか、あるいは畑作重要性とかいうようなこともいろいろいわれておりますが、大臣は、生産基盤という面だけについて、水田畑作とどのようにウエート考えておられるのか、率直に御意見を承りたいと思います。
  16. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は、かねがね申し上げておりまするように、水田重点を置くのか、畑作重点を置くのか、こういう比較はする必要はなくて、むしろ適地適作といいますか、水田水田としての機能を十分発揮させたい。畑地畑地としての機能を十分に発揮させたい。地域的に見ますれば、東北というようなところは水田が非常に多いところでございます。これを畑作にして、畜産にかえて、たとえば水田酪農に向けろといっても、これは無理だと思います。水田として機能を発揮させたほうが、全体としてもいいし、農家のためにもいい。あるいはまたおたくの北海道のようなところは、水田も相当伸びてきておりますけれども、むしろ畑作農業の確立といいますか、そういう方面により力を入れていったほうがいいのではないか、こういうふうに考えております。要は、適地適作といいますか、地域的にも、あるいは水田と裏作というような地目別考えましても、適地適作方向で進めていくことが妥当だ、こういうふうに考えております。
  17. 小平忠

    小平(忠)委員 ただいまの大臣の答弁で私はよろしいと思うのです。ところが、その大臣考え方大蔵省主計局当局には反映されてない、あるいは大蔵大臣には反映されてない。といいますのは、一時は米が非常に足らないというときには、水田に対して予算つけ方も、どんどん新規も採択するし、非常に伸び率がいい。そうやっておるかと思うと、大体米については非常に需給が緩和されてきた、そして畑作振興がクローズアップしてくると、その畑作のほうに重点を置く。そうこうしているうちに、また米の絶対量が足らないということになってくると、それ米の増産をしなければならないというようなことで、一つ計画性がない。現に四十年度予算編成の過程を見ましても、あるいは査定なり内示の状況を見ましても、ことしは非常に水田が辛くて、新規の採択は畑作を非常に重く見よう、そういうようなことが顕著にあらわれております。私は、実際に日本農業が食糧問題という大きな役割りを果たしている立場から、国家的見地に立ってそういうことがなされるならいいのであるけれども、単にある特定の人の意見なりあるいは特定事象にこだわって、そういうように付和雷同してはいけないと思うのです。大臣がいまおっしゃられたように、水田とか畑作とか、そういう区別をするのではなくて、面面とも最大ウエートを置いてやるという考え方に立って、一つの基本的な線を進めるのが正しいと思うが、ともすれば、そういう一つ事象というか、惰性にとらわれて付和雷同するという面があるのであります。そのことが、個々の各都道府県予算編成において、また個所づけにおいて大きな支障がありますから、その点はもっといまの大臣基本方針に従って推進をしていただきたい、こう実は思うのであります。  次に、お伺いをいたしたいのは、農業基本法精神によりまして、御承知のように構造改善、いわゆる農家経営経営規模、こういったものが最近においては著しく変動を見せております。しかし、その中で、最近非常に既農家の場合も離農者が多い、あるいは農地の移動が激しい。私は、このようなことが、一歩国の施策が誤りまするならば、ゆゆしき社会問題を引き起こす結果になりはしないかということを憂えるのであります。そこで、大臣にお伺いいたしたいのは、現下の諸情勢を考えて、一体わが国適正経営規模農家は、これは地域によって異なりますが、大まかに見て、どのように考えておられるか。今後日本農業近代化して、安定した農業経営を推進する線から見て、どの程度が適正と考えておられるのか、お伺いしたいのであります。
  18. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 どの程度が適正かということは、地域的にもいろいろあると思います。農業白書分析等では、地域別に検討の余地が多いので、全国ベースの指標はつくっておりませんが、たとえば農業所得六十万円以上の経営としては、田づくりの場合の経営耕地は二町三反、野菜ならば一町二反とか、果樹作は一町五反とか、酪農は一町五反、こういうふうになっています。しかし、これは六十万円以上の農業所得ということですが、それを上げて八十万円以上というようにすれば、またこれが違ってくると思います。これは作目の種類にもよると思います。たとえば稲作等につきましては相当の面積を必要とする。あるいは野菜等とか花卉類等につきましては経営面積が少なくてもよろしい。酪農等につきましては相当な面積ほんとうは必要とするのでございまして、御承知のように、それでなければなかなか経営がやっていけないということだと思います。そこで、田畑を一緒にした耕種農業等につきましては、所得倍増計画では二町五反以上の農家百万というようなことで、二町五反というふうに見ておりますが、八郎潟なんかで、模範的な農業をやっていく基礎をあそこでつくってみようじゃないかというふうに考えておるのでは、大体五町歩ぐらいを考えております。ただ、北海道等につきましては、御承知のように、その三倍も四倍ものものでなければ適正な規模というわけにはまいらぬと思います。全国一本ではやっておるそうでございます。地域別にはきめておりませんが、いま申し上げたような状況でございます。
  19. 小平忠

    小平(忠)委員 御説のように、それは私もお伺いする場合の前提として申し上げましたように、地域により、あるいは作物により、あるいはいろいろな類型によって異なるのでありますから、一律には申せないのでありまして、大臣の御説のように、非常にこれは複雑多岐であります。ただ、私は、そういうような状態の中にも、農基法精神からどうしても近代化して、機械化していくという観点に立ちますならば、おのずから適正経営規模というものはどういうものが正しいか、はっきりした一つ指導方針、そういうものを、政府もあるいは各農業団体も、現実農業経営者もよく理解して、その努力をするということが必要であります。  それをさらに掘り下げてお伺いいたしますが、そうしますと、現在日本農耕地、さらに政府考えておる開拓地、そういうようなものを総合して、現在の開拓者も含めて、農耕地に対する農家戸数をどの程度少なくすることが必要か、あるいは現状でいいのか、そういう点をどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
  20. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現在農家戸数は五百八十三万戸だったかと記憶していますが、これをどの程度にするかということでございますが、するかというより、見通しでございますが、御承知のように、中期経済計画等につきましては、戸数はそれに伴うかもしれませんが、人で言いますと、いま千二百万の就業人口、それが少し減っております。四十、一年には千五十万、十年後には九戸万ぐらい、毎年三%程度ずつ減っていくということになりますと、そういう見通しを持っておりますので、いまの減り方からいいますと、就業人口に比例しただけの農家の戸数は減らないと思います。しいてそこへ持っていこうということではございませんが、そういうような見通しのもとに、農業政策を行なっていくということが必要であろうと思います。いまのは見通しでございます。
  21. 小平忠

    小平(忠)委員 大臣のただいまの御答弁を承っていると、ほんとうに自信があるように思えないのです。これほど大事な問題はないのです。見通しと言ってみたり、あるいはそういう一つの希望と言ってみたり、それでは一つも確信を伺うことができない。まるでその日暮らしのような考えとしか思えない。ただいまの御説明でも、私伺っておるのですが、ちょっと理解に苦しむのですが、もう一ぺんただいまの点を御説明いただきたいと思います。
  22. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ただいま農林業の就業人口が約千二百万人おります。中期経済計画の四十三年度にどれくらいの就業人口になるかというと、年に三%ぐらいずつ減っておりますので、千五十万。いまから十年後にどれくらいの見通しを持っておるかというと、農業就業人口は九百万、こういうふうな見通しを持っておるわけでございます。その見通しの就業人口に相当するところの農家戸数がどれくらいになるかということは、計算が非常にむずかしいと思うのでございます。それは、就業人口の減り方と農家戸数の減り方とが比例しておりませんので、非常にむずかしい、そういうことを申し上げたわけでございます。
  23. 小平忠

    小平(忠)委員 いまの数字が一応出るということは、結局具体的に経営規模地域別にあるいは品種別にトータルされて、この数字が出ると思うのですが、私はいま農業白書も見せていただきました。しかし、過去の数字なり、また今後の一応のアウトラインはわかるのでありますけれども、少なくとも四十一年度予算編成も、この四十年の予算が上がればすぐ着手しなければならない。そういう大事な問題がもう目前にぶら下がっておるときに、やはりこういったことについてもう少し具体的な施策考え方がなければならぬと思うのですが、農林省にはそのような、ただいま大臣説明された具体的な根拠となるべき計画があるのでありますか。
  24. 中西一郎

    ○中西政府委員 いまお話の就業人口がどうなるか、戸数がどうなるかということにつきましては、現在可能なる方法はあまりたくさんございません。そこで、積み上げて計算するというような性質のものじゃないので、ここ数年の農家労働力の減りぐあいが、先ほど大臣からお話のありましたように、年率三%程度である、その傾向が続けばどうなるかということで、見通しを立てておるわけです。また同じように、農家戸数につきましても、現在五百八十三万戸が、最近年率一%程度減っておる傾向にありますが、それが続いていくとどうなるかというようなことで推計はいたしております。それによりますと、四十三年では五百六十万戸程度、これは全国についての一本の推計でございます。したがって、北海道でどれだけ減る、九州でどうなるというようなテークダウンをする性質のものでない、そういう推計をやっておるわけでございます。
  25. 小平忠

    小平(忠)委員 そういうことを私は聞いておるのじゃなくて、基本的に今後の日本農業経営の全体を見て、農家経営の適正規模というものはこうしていくのだというものが、まず基本的にあって、初めていまのような数字が出るのです。現に先進地の国をごらんになっていただきますればわかりますように、スカンジナビア三国のデンマーク、スウェーデン、ノルウェーの場合、あるいは西ドイツ、オランダ、英国、スイスの場合でも、これらはいずれも長い間いろいろな観点から検討をして、計画的に、その経営規模というものは農業経営の安定の基礎となる観点から、検討を加えてやっておるわけです。日本農業は、世界の農業に伍して、決して技術の面では劣っているわけではないのです。問題は、やはり無計画なままに、今日、日本の百姓が非常に苦しんでいるというのは、根本的にいわゆる採算ベースに乗らない過小の経営であり、それに農畜産物価格が安定しないところに、今日のような農業経営の現状があるわけです。ですから、最も長い間しいたげられてきたこの農家を救うという面において、どうしても国が根本的にあたたかい手を差し伸べてやらなければならぬというのが農業基本法ではありませんか。農業基本法が施行されて何年目になりますか。私は、少なくとも農林省の今日の力を総動員しても、一日もすみやかに今後の営農類型、適正経営規模、こういったことについて確固たる一つの案を出して——最初は大いに試案であってもいいと思う。各界あるいは各党のいろんな意見を聞いて、一つのめどを立てていくということを私は根本的に推進すべきであろうと思いますが、農政を担当する最高責任者である農林大臣として、この点について——私は過去のことを云々するわけではありませんが、もう少しこの点についてすみやかに具体策を講じて立てるというお考えはございませんか。
  26. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまのお話で、確かに、日本農業がうまくいかないのは、採算ベースに乗らない零細農家が相当多いということ、それから価格対策が、過渡的な問題でもございますが、十分でないというところにあろうと思います。そういう考え方から農地理事業団法も考えておりますが、これはヨーロッパ等におきましても、同様そういう点に目を向けて、たとえばフランス等においても立法ができております。あるいはオランダその他におきましても、経営面積を十五町から三十町にするとか、あるいは五十町にするとかいうような方向をとっておるわけでございます。そこで、日本でも、もっと具体的に営農類型とか適正規模というものを出したらいいじゃないか、これは統制的に農業を整理してやるというならば、そういう的確なものも出ると思いますが、整理してというわけにはまいりませんので、標準のものは先ほど申し上げましたように、田の場合とか野菜づくりの場合、果樹つくりの場合、酪農の場合、それが年収六十万円以上の場合とかあるいは八十万円以上の場合はつくっております。いまの管理事業団法の関係もありますので、標準的なものはつくっていきたいと思いますが、計画的に幾ら幾らにするというようなことは、日本のいまの経済制度からいって無理だと思います。しかし、一つの標準の型というものは考える必要があると思います。
  27. 中村時雄

    ○中村(時)委員 ちょっと関連。官房長にちょっと尋ねたいのだけれども、先ほどあなたは、いまの二・五ヘクタールにしておいて、そうして将来の夢を持って、農家戸数の増減という問題を取り上げておった。そこで、農家戸数の増減という問題に関して、一点か二点お尋ねしたい。関連でありますから、簡単に言います。  農業基本法ができて、その結果において一審中心課題になったのは何かといえば、構造改善と選択的拡大の二つが支柱になっておる。その選択的拡大の中において、あるいは構造改善の中において、そういう農家の変遷をやっていく場合には、農地の拡大と農家の減少ということを中心にとっておる。そこで、農家の減少という問題を取り上げていった場合に、どういうふうな方向になるか。たとえばその内容を見てみますと、大体農家の労働力は、五人家族として一戸数三人と見ておる。ところが一方、一般の労働者に対するところの所得格差をなくしようという計算のしかたは、労働者のほうは大体一ないし一・五人と見ておる。そうすると、片方は御存じのように、いま年功序列というような線で進んでおる。だから、都市においては、一人で家族五人なら五人を養えるような方法をとっておる。ところが、農村のほうの三人労働は、都市における一人の労働と対照になったあらわれ方をしておる。そういう姿でいくならば、いつまでたっても、少なくともいまの農家の行き方は単純生産の方向をとるのであって、いまのような自由経済の中で拡大生産をとっていくような一つの労働力というものになってこない。だから、いつまでたっても希望がないということになる。農家のほうは三人で五人の家族を養わなければならぬ。所得の格差をなくそうというのが、三人労働を中心に考えておる。一方は、一ないし二人の中におけるところの所得考えておる。それを平均化していって所得の格差をなくそうというが、それではいつまでたっても、農家は夢も何もないという現状だ。その基本の上に立って実際の問題を取り上げて、ただ農家の戸数が減るという概念は受け入れられない。少なくともその面は、どのようにこの労働生産性を高め、どのようにして労働力をふやし、そうして再生産の方向をとるか。もちろん、再生産のことは生産資材の問題もあるでしょう。しかし、労働の生産性が低いということが日本農業の欠陥だ。その農業労働の生産性の低さをどのように向上さすかということが基本になって、その労働賃金を一人対都市の一人と平均をして、その上に立って経営が成り立つか成り立たぬかということを構想するのが、農業の基本的な概念でなければならぬ、こう考えておる。それに対して、一体どういうような考え方を持っていますか。その上に立って実際農家戸数を減らしてやるのだったら、農地というものを一体どの程度に購入し——農地はゼロではありません。新規農業経営者として農業が成り立つか、そのためには一体農地はどのくらい概算として購入して、新規にやってみるという計算の上に立って、いまの農家戸数が減っていくという概念を立てたか、その二点を明確に答弁してもらいたい。
  28. 中西一郎

    ○中西政府委員 農家の減っていく見通しは、自立経営を何戸つくり、その規模がどうということの関連で見通しを立てておるわけではございません。それは現状の傾向からここ数年の見通しとして、同じ傾向値を用いて推測するということをやっておるわけです。お話の労働賃金についての均衡の問題は、まさに理論的といいますか、理想的な形としてはそういうことも描けるわけですけれども、先進諸国の一部では、農業の実態がそういう計算をするにふさわしいような実態でもあって、いわゆる要素所得の均衡というようなたてまえでもって農政を進めるというようなところも、もちろんあります。ただ、わが国の現状で言いますと、農業基本法ができまして三年有余の歳月を経ておりますけれども、要素所得に分解し得るような農業経営の実態は、将来つくらなければならないと思いますけれども、現在では数少なくしか与えられていない。そこで、非常に多くの農家を一歩一歩規模の拡大あるいは生活水準の上昇に近づけていきますために、要素所得でなしに、とりあえずは混合所得考えて、家計費に着目するなり支出に着目して、そういう形の均衡を目ざすのが、とりあえず可能性のある段取りではないか。そこで、可能性のある段取りを進めながら、将来の要素所得均衡ということも展望し、期待はしていきますけれども、現段階では、それは無理ではないかというのが、いわば農林省といいますよりも、一般的なものの考え方、通説じゃないかと思うのです。といって、それに必ずしもこだわるわけではございませんけれども、問題としては、御指摘の問題十分わかります。しかし、そこへいくまでには、さらに基礎固めのための何年かがないと、いきなりそこに飛びついていくということはむずかしいのではないか、こういうふうに思います。
  29. 中村時雄

    ○中村(時)委員 関連だから簡単にして、いずれ近い将来、根本的な問題を十分に検討し合ってみたいと思うのだが、しかし、あなたのように、そういう安易な考え方によっていまのような経済拡大の方向をとっている以上は、いつまでもこれが続くものじゃない。これがいかぬから、自民党にしたって政府にしたって中期経済計画方向を立てるのでしょう。だから、その中におけるところの一つの回転の方向が生まれてこなくちゃならぬ。ただ安易にいままでの惰性でそういうようなことを考えていって、農家戸数が減るからというような現象的な問題じゃないはずだ。やはり一つの目標を持って、日本農業はかくあるべきだという基本線だけは、路程を明確にしておく。それが赤城農政の基本にならなければならない。その努力が大事なのであって、その結果が大事なんじゃない。ただ安易なそういう姿の中に立っておれば、いつまでたっても農家は救われぬと思う。やはりそういう明確な線は明確な線として、おそらく農林大臣は構想されておると思うが、そういう線の努力の上に立って、農林省は協力しながら進めていくという体制の組み合わせ方が、ほんとうの明るい一つの希望を農家に持たすのだ、私はそう思っております。そういう点に関して農林大臣はどうお考えになっているか。おそらく政府を代表するとともに、与党を代表してそういう方向を打ち出していくことが、私は、農業政策としての基本的な問題であろうと思う。個々の問題に関して、労働量の問題とか、金融処置の問題とか、土地の問題、事業団の問題も出ますから、基本的な問題は十分そのときに検討してみたいと思うけれども、その構想だけは、いま言った確固たる信念を持ってその方向の確立だけははかっておかなければならない。そういう問題について農林大臣はどういうふうにお考えになっているか。関連なんで私はこれで質問を終わります。
  30. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 あり方等につきましては、検討する必要があると思います。しかし、それを強力に推す政策としては、いろいろこれは問題があろうと思います。
  31. 中村時雄

    ○中村(時)委員 言いたくないのだけれども、問題はあろうと言うのだが、私は問題ないと思う。そのことが、いま官房長も言ったように、一つの理想としてその方向が正しいのだ、こう私は思っている。だから、少なくとも農業を志す者なら、ぜひそういう考え方に立たなくちゃならないと思う。先ほど言った労働量の問題も、生産性が低いのは労働の生産性が低いのであって、その生産性を向上さすためには、少なくとも都市における一人の労働量と農村における一労働単位とが、同率に並行するところまで向上さすということが目標でなければならない。そういう方向のためにどういうことをするかということが、政策として生まれてくる必要がある。その政策の基本をどのように樹立するかという考え方は常に持ってなくちゃ、ほんとう政策は出てこない。それが、結果においてまだ早期であるとか、あるいはそれがまだ具体的には出てこない、資金が非常に要るとかいうことは別問題として、基本的にはそういう確固たるものを持ってなくちゃならないと私は思う。それに対して問題があると言うなら、問題を提示してもらいたい。私は問題がないと思います。少なくとも農業の「の」の字でも言おうというのだったら、少なくともそういう基本線だけは、やはり志向されるところの日本農業一つのプログラムだけはきっちり持っておく必要があろう、私はこう思っている。だから、私は問題がないと思うのだけれども、農林大臣は問題があるとおっしゃる。できる、できないは別であります。私は、基本的な問題については問題がないと思っております。もし問題があるならば、その問題を提示してもらいたい。大事な問題ですよ。
  32. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 志向する基本方針については、私は問題がないと思います。しかし、いまお話しの、できるかできない、かたとえばそういうものをつくっていく場合に、それを強力に推し進める方法でございます。これには相当問題がある。たとえば企業整備のようなことをする、あるいは農業者をほかへ平和裏に移転できればいいのですが、それを何か強制してやるというようなことをしなくちゃならぬ、こういう政策を打ち出すというようなことについては問題があるというふうな一例を申し上げるわけでありますが、基本的に志向する目標をつくって、そういう方向にどういうように政策をやっていくかということについては、これは問題はありません。やるべきだと思います。このやり方についてはなかなか問題がある、こういうことを申し上げたのであります。
  33. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それは大臣、いま言ったように、やはり農業というものは、御存じのとおり、労働と土地と資本、この三つを柱にしてやっているのだが、そのうち私が言ったのは、労働に対する基本的な態度の下端を言っただけです。しかし、それは問題がない。これはだれだって問題がないと思う。そこで問題は、そういうことをしようという立場に立って、構造改善の問題であるとか、あるいは選択的拡大の問題であるとか、具体的な政策が出てきておる。だからそれに基づくように、予算措置なりいろいろな面が集約されていって、農業構造改善という本来的な農業基本法の目的が達し得るわけなんです。だから、そういう筋の通った明確な一つのイメージを持って今後農林省も推し進めてもらいたい、こういう考えなんですから、その点をやはり明確にして御努力を願いたい。私は関連質問ですからやめますけれども、そういう点では、ほんとうにど根性を据えてやってもらいたい、こう思うのです。
  34. 小平忠

    小平(忠)委員 基本的な問題については、まだまだたくさんあるのでありますが、大臣の御親切な答弁によって、もう時間がなくなりましたから、やはり約束でありますので、あと二、三点重要な点についてお伺いしたいと思うのです。私、簡単にお伺いいたしますので、また要点を簡明にお答えいただければ幸いだと思います。  戦後の農業政策の中で、今日大きな壁にぶつかっておる問題は、開拓行政であります。それは一時は殺人入植とさえ、そういうことばをわれわれは耳にするくらい、実際に全国的に開拓者の現状は、まことに言語に絶するものがあるのであります。そしていま当面問題になっているのは、努力したけれどもついに引き揚げなければならぬという、その開拓者のいわゆる離農対策、さらに努力努力したけれども、今日どうにもならない負債整理、この問題についての基本的な考え方予算の上にも、あるいはいままでの面にもあらわれておりますけれども、最も骨となるべき大臣の決意を承っておきたいのであります。
  35. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 詳しくは、担当政府委員から御答弁いたさせますが、方針といたしましては、私は開拓農家をこう見ています。農拓農家で、非常によくやっておる、これは既存農家よりも思い切ってよくやっておる農家があります。これは非常に日本農業を推進する上においてはためになっていると思います。頼もしいことだと思います。一面におきましては、開拓の営農が失敗したといいますか、地理的な、地勢的な条件、その他いろいろありましょう。本人のことばかりじゃございません。そういう人があります。こういう人につきましては、負債の整理、あるいは整理して離農するということにつきましては、離農資金、転業資金なども出してやっておりますが、他の職業に安定して入れるような方策をとっていきたい、それからまた営農を続けていこうという者につきましては、いままでの負債の問題等が軽くなるように、条件の緩和等に努力していきたい。一々やっておることにつきましては小平さんも御承知かと思いますが、なお御必要がありますならば、事務当局からやっておることにつきまして御説明いたさせます。
  36. 小平忠

    小平(忠)委員 本件は、今後本委員会審議を通じてまた具体的にお伺いをする機会があると思いますから、その際に譲りたいと思います。  食糧問題の中で、大臣の所見を承っておきたいのは、食管特別会計の四十年度予算編成されておりまする内容を見ていただきましても、依然として、一体農林大臣は、わが国の食糧を自給自足の態勢に持っていくのか、あるいは食糧は過剰であってもやはり一部輸入食糧によって結局操作していこうという考えなのか、その点が今後のわが国食糧行政の上に大きな問題となろうと思うのであります。それらのことが、いま問題になっている生産者価格と消費者価格のスライド制、こういったことにもやはり影響してくる重大問題であります。したがって、率直に申し上げて、私は、何のために、日本の今日の食糧生産の現状から見て、輸入食糧に依存する、輸入食糧を増大していくかということが理解できないのです。こういうことについて、私は大臣の所見を承っておきたいのであります。
  37. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 輸入がふえておるということの一つの原因は、食糧の需要が非常にふえているということだと思います。それからもう一つは、残念ながら日本農業が、先ほどから御説のとおり零細でございます。そういう面から、国際的に見まして、日本の農産物の価格がコスト高になっているという面もあると存じます。しかし問題は、やむを得ないといいますか、需要に見合った流通対策からの輸入がふえておると私は見ております。国内としては、私は、自給対策でいくべきだ。これはどこの国でも同じでありますし、特に日本のような米食を主とした国におきまして、輸入に依存するということは、これは国民の食生活からいいましても、あるいはまた外貨の面からいいましても好ましいことではない。ただ自給率が、三十七年までは八四%くらいでありましたが、三十八年度に入って八一%になりました。中期経済計画の四十三年度の見通しでも八〇%というふうに見られております。完全自給ということは、私はこれは困難であると思います。あるいはものによっては、自給ということがはたしていいかどうか問題があるものがあると思います。しかし、主要食糧等につきましては、私は、自給度を高めていく、全体といたしましては、八〇%を一応堅持するという方向で食糧対策は行なっていくべきだ、こういうふうに考えております。
  38. 小平忠

    小平(忠)委員 生産者米価と消費者米価の問題でありますが、これが今日の食管の大きな赤字の原因となっておるのであります。ここで農林大臣はスライド制をとりたいということを明らかにしているようでございますが、この点はいかがでございますか。
  39. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 スライド制という名前にこだわってということではございませんが、それにつきまして、いろいろ問題を起こしています。すなわち、生産者米価が上がったときに、すぐ自動的に消費者米価を上げる、そういうのをスライド制だと厳格に言えば、そうかと思います。しかし、私はしばしば申し上げておったとおり、食糧管理法には、生産者米価は生産費及び所得補償方式、消費者米価は家計の安定をそこなわないように経済事情等をしんしゃくしてきめろとかということになっておりますけれども、その前に、食糧管理法の規定以前に、同じ米を生産者消費者で売ったり買ったりして、その間に政府が中に入っているということで、米の価格というものが、生産者の価格と消費者の価格とが全く相離れて決定さるべきものではない、経済の原則から言って、そういう考え方を持ってしかるべきじゃないかと私は考えておるわけであります。でありますので、そういう関連性を——消費者米価を決定する場合に、家計の安定を害さないといった大きな原則のもとにおいて、生産者米価との関連を考えて、消費者米価の決定をする方式が考え出せないものだろうか、こういうことを私再々言っているものでありますから、それが、生産者米価と消費者米価は、生産者米価が上がった場合に、すぐに消費者米価がそのまま自動的に上がっていく、こういうふうに理解されておるようでございますけれども、私は関連性を主張して、消費者米価の価格決定の方程式の中にそういう要素が入らないだろうか、経済事情をしんしゃくしてとか、その他とかありますが、その中に生産者米価の価格のあり方というものがどういうふうになった場合に、そのものを要素として入れる場合の研究がなされないものであろうか、また研究してみたい、こういうことでございますので、生権者米価が上がった場合、消費者米価もそのまま自然上げていくという考え方をストレートに認めて、そういうものの実現をはかっていくということではございません。  なお、技術的な問題もありますので、食糧庁長官から答弁させることにいたします。
  40. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ただいまスライドの問題につきまして、一般的な考え方につきまして、大臣がお託しになったようなことに関連いたしまして、何らかの形におきまして、生産者米価というものと消費者米価というものは、米価の体系として、あるいは食管制度の運営の面から見まして、関連的な考え方を見込むべきではなかろうかという議論は、米価審議会等におきましてもたびたびあったわけでございます。米価審議会におきましても、そういう意味で小委員会を設けて、これについての研究をいたしておるような状況でございます。われわれもその研究に参加をして、研究の結果を持ちましてなお検討していきたい、こう思っておるわけでございます。
  41. 小平忠

    小平(忠)委員 意見を加えた質問をしたいのでありますが、もう時間がありませんので、次会に譲りたいと思います。  やはりその大きな原因は、今日の食管赤字が一千億という膨大なものになっておるところに、問題が出てくると思うのですが、ただいまのスライド制は、やはり再び四十年の生産者米価の決定をめぐって大きな政治問題になろうと思うのです。農林大臣はやはりいまのうちから本問題については腰を据えてかからないと、同じことを繰り返して、結果的には、食管赤字が膨大なものになるから、それを解消するためにというようなへ理屈をつける結果になります。なお、食管赤字につきましても、私は多年主張いたしておりますように、食管特別会計約一兆円という、膨大な伏魔殿的な中身を持っておるこの中で、当然一般会計において処理すべき諸経費などがありはしないか。現在、通常食糧庁の中で食糧検査事務、従来食管特別会計制度がなかった時分に、当然一般会計でまかなわれておったようなものまでが、これが食管会計において処理されておるといったようなことが、依然として改められていない。あるいは金利の問題やその他保管行政において、幾多改善をすべき点多々あろうと思うのですが、こういう点について改善処理を要すべき点はもうないのか、あるいは検討を加えてあるというのか、その点をお伺いしたいと思います。
  42. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私が前に農林大臣をしておったときにも、食管会計のいわゆるどんぶり勘定を部門別勘定に改めさしたことがございます。また、いまお話しのように、食管制度ができる前あるいは自由取引といいますか、自由の場合に、当然かかった費用、検査員の費用などが、いま特別会計に回って含まれておるわけでございます。そのために、私は赤字とは思いませんが、いわゆる赤字と称するものが相当大きくなっておるのでございます。そこで、そういうものをもう少し整理して、表面的に部内で一般会計でまかなっていくというようなものがあるだろうということは私も考えております。そういう面につきましては、なお検討を続けておるわけでございますが、これからもよく検討していきたいと思います。
  43. 小平忠

    小平(忠)委員 本件は具体的に申し上げてあるわけです。それを改めべきものは改めて、正規の軌道に乗せていくことが必要だろうと思いますから、すみやかにひとつこれを手をつけてほしい。  最後に、天災資金の金利のことでありますが、近く政府はこの改正案をお出しになる予定だと聞いておりますけれども、昨年来から北海道、東北地方で冷災害に見舞われた農家は非常に苦しんでおります。そういうことから、一日も早くこの金利の引き下げを実現してやるべきだ、こう思うのでありますが、現行では三分五厘と六分五厘という、そういう歩作によって区分されておりますが、あなたはこれをいまどの程度考えておるか、お伺いしたいと思います。
  44. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 天災資金の金利引き下げにつきましては、前国会から約束いたしております。これは引き下げなくてはなりません。しかし、どの程度に引き下げるかということは、いまちょっと検討中でございますので、まだ申し上げる段階ではございませんで、その点御了承願います。
  45. 小平忠

    小平(忠)委員 総括質問でありますから、掘り下げた内容についてお伺いできないのは、残念であります。同時に、劈頭に申し上げましたように、非常に重大な年でありまして、私は、政府が口にいたしております開放経済、そういう中で、その経済のひずみが特に最近は中小企業全般に及び、ひとり農業だけではない、全国民勤労大衆に及んでおる中で、農業の現状は、このひずみの是正というものがいかに緊急を要するかは、私が声を大にして言う必要はないと思うのです。そこで、経済は非常なスピードで前進して動いている。生きているものです。その中で、これは率直に申し上げて、一日も早く手を施せば、それだけ困っている方々を救うことができるという意味かから、大臣を中心にして担当の各局部課におかれては、われわれが野党の立場だから政府与党に対してああだ、こうだ言うとかいう問題を抜きにして、ともすれば惰性というか、どうもやり過ぎる批判があるとかというようなことにこだわるものでありますが、私は、その衝に立った者は、こうだと信じたならば英断と勇気をもって大いにどんどんやるという体勢が必要だと思います。したがいまして、私は、大臣は、少なくともあなたの人柄やあるいは過去の経験から見て、国民的にもあなたは非常に信頼され、全農民が信頼しておるのでありますから、これが正しいと思ったら、弱気と英断をもって大いに推進していただきたい、このことを最後にお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  46. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 次は兒玉末男
  47. 兒玉末男

    兒玉委員 大臣にお伺いしたいと思いますが、まず第一点は、甘味資源関係の中で、特にでん粉の問題についてお伺いいたしたいと思います。  昨年カンショの基準価格が三十円に決定されましたけれども、砂糖相場の暴落なりあるいはでん粉の需給関係等から、極度に暴落をしまして、生産農民に決定的な打撃を与えておるわけですが、大臣としては、三十九年度の甘味資源に対する指貫として、どういうふうな需給計画なり、予算措置等なり、あるいは今後のイモでん粉の価格安定等についての措置をとっていこうとするのか、大臣の御意見を承りたいと思います。
  48. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お話のように、三十九年度のカンショの出回り期におきましては、その取引価格が、でん粉の価格の低迷を反映しまして、原料基準価格を下回る状況にありました。したがいまして、政府はでん粉企業と農家との間の委託販売を一度いたしましたが、政府買い上げ対象となるでん粉は、その原料イモの原料基準価格を下回らない価格で買い入れたものに限る旨の工場通達をいたしたのであります。それとともに、生産者団体の保管していた三十八年度カンショでん粉五万トンが市況を圧迫することのないように、補正予算の成立後、直ちにこれを買い入れいたしました。しかし、でん粉の価格はなお低迷傾向にあるため、四十年度の農産物価格安定勘定におきましては、過剰と見込まれるでん粉を買い上げるための必要経費予算計上いたしております。そしてイモ価格の維持につとめたい、こういうふうな考えでございます。
  49. 兒玉末男

    兒玉委員 大体四十年度予算における必要な価格というのは、具体的にどういう内容になっているのか、長官のほうからひとつお聞かせを願いたい。
  50. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 四十年度におきます四十年産のでん粉あるいはカンショ価格については、これはことしの十月以降においてということになるわけでありますが、三十九年産のでん粉につきまして、四十年度以降におきまして、どのような考え方で対処しておるか、こういう御質問かと思います。ただいま大臣からお話がありましたように、三十八年産につきましては、一応余剰と認められる数量を政府として買い上げいたしたわけでございます。四十年度におきます三十九年産の需給の状況でございますが、ただいまのところ、カンショの生産の数量がことし減産になった関係で、でん粉は去年よりは生産量が減ると見込まれておるわけでございますが、同時に、需要のほうもそれに応じまして、若干それよりも下回るという状況で、カンショでん粉につきましては、五万六千トン程度が余剰と見られるように推算いたしております。したがって、四十年度におきます食管会計の農安勘定で、この五万六千トンを買い上げする予算を計上いたしておるわけでございます。その予算額につきましては、買い入れ総経費といたしまして三十一億五千五百方円を計上し、そのうち、買い入れ費としては二十七億五千六百万円を予定いたしておるわけでございます。しかし、これらの一応の需給の見通しを立てておりますけれども、なお状況によりましては余剰でん粉が生ずる場合もあり得るという考え方に基づきまして、バレイショでん粉を含めまして二十億の予備費を別途計上いたしておりますので、さらに必要があればその中からカンショでん粉の追加買い入れもできる、こういう措置をとっておるわけであります。大体でん粉だけのいまの需給の見込みから見ますれば、供給量が六十五万三千トン、需要量が五十九万三千トン、差し引き六万トンでございますが、期末の持ち越しもありますので、五方六千トン程度の余剰が出る、これに見合う買い上げを予算として計上しておる。こういうことで、ほぼ余剰量をこれによって処理することができるんじゃないか、こう思っております。
  51. 兒玉末男

    兒玉委員 そこで、先ほどの大正の答弁がよくわからぬ点がありましたけれども、私は非常に遺徳に考えておることは、農林省がせっかく農安法に基いて基準価格を決定しましても、それが名目だけに終わって、現実に生産地においては二十円から二十一円という、きわめて極端な価格で取引がされておるわけです。まさに生産農民は半年働いて、一銭の日当もないというような極端な状況にあるわけですが、先ほど大臣の答弁の中にあったように、政府が三十九年度のでん粉対策として、いま言われたような五方六千トン買い付けの予算措置をしている以上は、当然生産農民に対しては、三十円と現実に取り引きされたその差額について、でん粉業者なりまたは農協等に対して買い上げの対象とする分については、その差額の還元をするのが私は至当じゃないかと思うのですが、これらの点について、農林省は今後どういうふうな指導をしようとしておるのか、その点をひとつ明確にお答えをいただきたい。
  52. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 農安法におきましては、その目的とするところは、いま先生が御指摘になりましたように、イモ価格の支持をして、それによって農民の所得を維持しようという考えであります。したがいまして、でん粉の直接の買い上げあるいは売り渡しというのは、その支持の手段にすぎないわけでありまして、でん粉企業自身の救済、あるいはでん粉価格をそれによって維持することによってでん粉企業の安定をはかるということでは必ずしもないわけであります。そこで、われわれといたしましては、市場の価格がある程度の水準に安定するということになりますれば、その結果として農民に三十円の支持価格が保証されることが一番望ましい、そういうことで、先ほど大臣から申し上げましたように、出回り期当初におきましては、でん粉価格が低迷しておる。したがって、その際できるだけ委託販売みたいな形で処理することにすれば、その後においてでん粉価格が上がれば、清算払いで返ってくることになるわけであります。しかし、御承知のように、でん粉自身につきましては、そういう委託販売の形態もありますが、同時に、三分の二の企業は、農協以外の、委託販売以外の企業としてやっております。したがって、そこでは売買の形で取引せざるを得ない、こういうことになっておりますので、これに対して、すぐでん粉のその後の市況いかんによって農民に返すということにつきましては、直接的にはなかなかできないわけであります。  そこで、先ほど大臣から申し上げましたように、いま一つ方法としては、要するに、三十円以上の支持基準価格で原料を買い取ったものでなければ、将来において政府が買い上げする場合においては買い上げの対象にしないということによりまして、でん粉業者自身もイモの価格を出回り期においてたたいて、その後のでん粉が上がった場合には返さないというようなことがないようにしたいということで、指導しておるわけであります。しかし、残念ながら、出回り期においてイモを買って、その後においてでん粉が上がったりするというような場合がありますけれども、いまの形態といたしましては、売買の形をとっておる限りにおきましては、なかなかそこまでは手が回らない。しかし、考え方としましては、いま申し上げましたように、できるだけでん粉の価格を支持することによってイモの価格が維持できるように、委託販売の場合においては、清算払いができることによって所得を維持していきたい。また買い上げの場合においては、イモの支持価格を下回って原料を引き取ったようなものについては買い上げの対象にしない、こういうようなことによって、イモの価格の手取りを維持するようにはかってまいりたい、こういう考えでございます。
  53. 兒玉末男

    兒玉委員 いまの答弁は、少し理解に苦しむわけですけれども、やはりわれわれが休会中の委員会でも再三指摘しましたように、政府が基準価格の決定の時期をもう少し早くするということによって、一般のでん粉企業者等に対して、農林省が示した基準価格以下の買い付けについては政府は責任は持たない、こういうことを明確にするならば、いま長官の言われた点は十分解消できる問題じゃないか、私はこのように考えるわけです。  その点と、もう一つは、昨年は非常にイモは高かった。そのために、ことしは暴落によって業者はだいぶ赤字で苦しんでいる。そのしわ寄せは、今度は三十円の基準価格を割ったにもかかわらず、結局これがすべて生産農民にしわ寄せされるということは、われわれの納得できないところであります。ですから、基準価格の決定の時期をいま少し早目にやるべきじゃないか。同時に、三十九年度産の買い上げの際には、そのことを明確に指示して、先ほど言ったように、でん粉業者に金を還元するのではなくて、買い上げ対象とするでん粉については、その差額については必ず生産者農民に還元するような措置を指導すべきじゃないかと思うが、この点について再度お伺いしたい。
  54. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お話しの点は、私も全く同感でございまして、三十九年産のイモにつきましては、そういう点も考慮いたしまして、法律上は十月三十一日までにきめるということになりました点を、十月上旬に、最近になく早くきめたわけでございます。ただ、それ以上に九月中にきめたらどうかという御意見があるわけでありますが、やはり生産の収穫見込み統計等がある程度はっきりいたしませんと、価格の算定が困難だという事情もありますので、それらの統計の把握をできるだけ早めるという努力と相まちまして、いまお話のように、できるだけ早期にきめる、こういうことにつきましては、われわれもそういう意を体しまして、今後ともやっていきたいというふうに思っております。
  55. 兒玉末男

    兒玉委員 いままでの実績でも、私は十月以前に決定したことがあるんじゃないかと思うのですが、その辺はどうですか。それから作付反別は、すでに五月から、おそくとも六月の上旬にはきまるわけです。この基準価格の決定は法律で十月三十一日までだから、十月でなければできない——過去のでん粉の需給状況なりあるいは生産状況というものは、ほとんど統計は出ておると思うのですが、その点から考えますならば、十万トンも二十万トンも需給関係が食い違うことはないと思うのです。でありますから、私は、その点もう少しやはり検討し直す必要があるのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  56. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 やはり以前におきまして、お話しのように、私も正確には覚えておりませんが、十月の二日くらいにきめたのが一番早かったんじゃないか。そのときは、九月の作況指数に基づいてたしか算定したのじゃないかというふうに記憶いたしております。そこで、十月二日にきめたその後の作況が、やはり事実の収穫高と非常に違うというようなこともありまして、何しろイモは土の中に入っておるものですから、そういうようなこともありまして、やはりある程度の収穫見込みを立ててやるべきだというので、現在では、たしか九月の二十日か二十五日現存の収穫高を十月の八日ごろまでに詰めまして、本来ならば十月の中旬に正式発表されるものでありますが、それを繰り上げまして、十日に昨年はきめたというような経緯になっておるわけであります。その辺も、統計のほうの把握のほうと調整をとりまして、できるだけ早くしたいと思っておりますが、どうも九月一ぱいにきめるということはむずかしいのじゃないか、こう思っております。
  57. 兒玉末男

    兒玉委員 その点は、今後ひとつ問題としてさらにまた検討していただきたいと思っておりますが、先ほど長官から答弁ございましたが、食管特別会計の中に二十億の予備費ということを言われましたが、この点は、当然イモでん等のいわゆる賢い上げ対象として一定のワクのはまった二十億であるのかどうか。また、これの使用については、どういうふうな機関でこれが承認されるのか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
  58. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 先ほど申し上げましたように、さしあたりの需給の見通しとしては、五万六千トンが余剰と見られる。それを予算に計上したわけでありますが、しかしこれは推算でありますので、その後の状況いかんによりましては、過不足が当然生じてくることが予想される。そこで、そのような事能面に対処いたしまして、予備費として計上した。したがって、もしその段階になりまして、五万六千トンの買い上げ予算が不足する、なお買い上げが必要であるというようなことになれば予備費につきましては、食管会計の予備費でございますから、閣議で了解を得れば使用ができる、こういうことになっております。
  59. 兒玉末男

    兒玉委員 それから、今回のでん粉相場の下落によって、特に農協関係が相当赤字をかかえているわけですが、いろいろ調査してみますと、農協等の金繰りというのは非常に困難なために、相当暴落を促進している。こういうことで、やはり市中銀行等の借り入れ金の返済ということで、相場の低迷を来たしたように聞いているわけですけれども、そういうようないわゆる借り入れ金の返済等について、ある程度の行政指導によって、償還の期限を延ばすとか、そういうことによってやはり相場を安定させるべく指導する必要があるのじゃないかと思うのですが、こういう金融関係等の問題についてどのようにお考えになっているかお聞きしたい。
  60. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 金融の問題につきましては、ただいまのお話にありますように、すでに原料イモを入手するための資金を相当借り受けて、これを返済する場合にいま困っておる、こういう御指摘かと存じます。  当初は、出回り期における原料手当て資金について相当強い要望がありまして、これはいまお話しのような系統農協につきましては、農林中金から資金手当てができておりまして、一般の企業につきましては、商工中金からの融資のあっせんによって、大体必要量はその段階におきましてはまかなえたわけであります。なお先ほど大臣からも、お話がありましたように、五万トンの生産者団体の保管しているものを政府に肩がわりいたしましたので、その面からも、資金面としては緩和することになったと考えております。  現在、原料手当ての資金返済期にきておる。これをどうするかということでありますが、系統農協につきましては、これは農中のほうにもお願いして、必要な資金を出してもらうようにいたしております。むしろ問題は、それ以外の、地方銀行にたよって金融を受けた一般のでん粉事業者と思われるわけであります。これにつきましては、いま全国団体を通じまして所要の資金の事情を調査中でございますので、その結果によりまして、あるいは返済資金の延期をはかる、あるいはさらにその返済のために必要な資金の融通をするとかいうようなことにつきましてやりたいと考えております。去年もそういうようなことをやった例はあるわけであります。目下調査中でございますので、その状況によりまして対処したい、こう思っております。
  61. 兒玉末男

    兒玉委員 次にお伺いしたいのは、特に国内のでん粉相場を混乱さしている一つの理由として、コーンスターチの輸入というのが大きな問題になっていると思うのですが、私たちの見たところでも、昭和三十七年には大体八万五千トン、三十八年に十四万トン、三十九年には、これはでん粉年度というのかよくわかりませんが、二十二万トンから二十五万トンというばく大な輸入が予定されて、これが私は決定的な打撃を与えるのじゃないかと思うのですが、これに対して農林省としてはどういう指導をやっているのか。また、特にこういう飼料用として輸入されるコーンスターチが、このような飼料面でなくて、他の方向に転用されているというふうな事情も聞いているわけですが、この辺の規制なり——野放しの状態であるならば、これは日本の国内のイモ生産農民はまさに死を意味するような重大な意義を持つものだと思うのです。しかも、これはまさに幾何級数的なふえ方でやってきているわけですが、このコーンスターチの規制について、どういう指導と措置をしようとしているのか、特に大臣のほうからも、ひとつこの際御答弁をいただきたいと思います。
  62. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 詳しくは事務当局から御報告いたしますけれども、コーンスターチの生産が繊維とか製紙とか段ボール用途のほうにも向けられております。そういうほうの需要の増大に伴いまして、輸入がいまお話しのように相当ふえております。その結果、最近におきましては、カンショでん粉等の販路と競合いたしまして、でん粉の価格に影響をもたらしていることも、いま御指摘のとおりでございます。したがいまして、国内産イモでん粉の需給及び価格の安定を期するためにも、コーンスターチ企業の健全な発展のためにも、コーンスターチの本来の需要に見合った秩序ある生産が行なわれることが望ましいので、でん粉と競合しないように、販売分野ないし生産調整についての施策について、検討を進めていきたい所存でございます。  なお、必要がございますならば、事務当局から御答弁申し上げます。
  63. 兒玉末男

    兒玉委員 農林省から出されました「昭和四十年度において講じようとする農業施策」の四四ページの上から七段目ですが、ここに「近年急速に生産が伸びているコーンスターチについて、かんしょでん粉およびばれいしょでん粉の価格の安定と需要の確保を阻害することのないよう、関係業界を指導する。」こういうことが明確にうたってあるわけです。それで、関係業界を指導するということは、一体具体的にどういうことなのか、この点について、ひとつ長官の御答弁をお願いします。
  64. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 コーンスターチ自身固有の用途は、いま農林大臣からお話がありましたような、食料以外の分野におきましても、製紙、段ボール、繊維といったようなところの用途があるわけであります。これがある程度需要が伸びてまいりまして、それに必要なコーンスターチの量が伸びるというのは、当然の姿であっていいのじゃないかと私は思います。ただ、御指摘がありましたように、確かに生産が急速に伸びつつあることも事実でありまして、その結果、若干カンショでん粉の従来の用途先であった水あめであるとか、あるいはグルタミン酸ソーダ、あるいはビール原料だとかいったようなものと競合する関係も、若干見られてきたわけであります。  そこで、この分は、やはり何らかの形においてわれわれも調整する必要があるのじゃないかという考え方に立ちまして、昨年はこのような事態が察知されましたので、関係業界団体がございますが、その団体に対しまして、分野調整をはかるように強力な指導、勧告をいたしたわけでございます。しかし、その後におきまして、コーンスターチの生産量のふえに応じまして、若干コーンスターチ自身も過当競争のきらいが出てまいっておりまして、そのはね返りで、またでん粉市況に影響をすることが懸念される。そこで分野調整をはかりましたほかに、なお今後の調整の方法としまして、コーンスターチ企業についても、生産の規制を自主的にはかってもらうということを、いませっかくコーンスターチ関係業界と協議を進めておるわけでございます。  この生産調整をはかることにつきましては、いわば企業両の協定ということになりますと、独禁法にも抵触するということになりますけれども、でん粉の市況維持というふうな観点から、何らかの規制措置を講じまして、分野調整からさらに生産規制の調整をはかるように、せっかくいま指導をいたしておるという状況でございます。
  65. 兒玉末男

    兒玉委員 最近非常にコーンスターチに国内の大資本が進出して、かなりダンピングをやる傾向が強い、こういうことも聞かされておるわけですが、その生産規制と、それから関税措置等によって、やはりある程度問題を処理するほうがいいのではないかと考えますが、関税措置についてはどのようなお考えを持っているか、お聞きしたいと思います。
  66. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 自主的規制ということにつきましては、なかなか実行を確保できないではないか、また業界の自主的な調整だけによって、はたして十分励行できるかどうかといったようなことから、関税割り当て制度みたいなものを講じたらどうかというふうな意見もございます。それらも含めまして、いまいろいろと検討しておる、こういうことでございます。
  67. 兒玉末男

    兒玉委員 この点は、農業施策の方針にも書いてあるとおり、特に生産農民を保護する立場から、強力な指導を私は特に要望したいと思います。  次に、農業関係の公害の問題でございますけれども、これは一つの例として、私の宮崎県において、特に大淀川水系がものすごく汚染されまして、現在水産庁も調査官等を派遣しまして、非常に問題が重要視されまして、県も東京と県の間に対策委員会を設けて処理をしておるわけですが、その最大の原因がほかならぬでん粉工場の排水からきておるということは、はっきりと指摘されたわけです。この点について、府に所管の事項として、でん粉工場の施設等についてどういうふうに指導しておるのか、また、この点について何らかの報告なり調査等について、連絡がきておるのかどうか、まず、この点についてお伺いをしたいと思います。
  68. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 詳細なことは承知いたしておりませんけれども、宮崎県におきまして、でん粉工場の排水によりまして河川汚濁が問題になっておるということは、私も仄聞いたしております。  さてしからば、それに対する、どういうふうな対策を講じておるかということでありますが、現在法制的な問題といたしましては、御承知のように、工場排水等の規制に関する法律と、それから公共用水域の水質の保全に関する法律、この二法がございまして、一定の水質基準を定める必要があるような地区につきましては、指定水域としてきめますと、その指導水域に関連した工場の排水については、特定の汚水処理の施設につきまして、汚水処理方法についての届け出義務を課するとか、あるいは処理方法についての改善命令を出せるというようなことになっておるわけでございます。ただ、でん粉だけに着目して現在指定水域というものがまだ指定されていない状況でありまして、カンショでん粉につきまして、それに着目した指定水域というものが現状においてはまだ指定されてないということで、その二法の適用は、現状においてはまだカンショでん粉地域についてはないというように承知しております。  ただ、カンショでん粉からくる汚水処理の問題につきましては、非常にやっかいな困難な問題がございまして、カンショでん粉の汚水あるいはでん粉かす、これらが河川に沈でんする、その結果、河川が汚濁する、あるいは沈でんするために、魚害がそこから生ずるというような問題がいわれておるわけであります。ところが、一たんでん粉工場等で貯水槽でもつくって、その汚水をろ過して河川に流すというようなことができればいいわけでございますが、これがなかなかな膨大な施設といいますか、経費がかかる。そこで、いまの中小でん粉企業ではなかなかそれがなし得ないというようなことがあります。しかし、大きなでん粉企業、たとえば北海道におきまする合理化されたでん粉工場等につきましては、これは積極的に貯水槽を設けるというようなことを指導しておりますが、なかなか中小でん粉企業までには及ばないというような状況でございます。そして、これはやはり一方は漁民の問題であり、一方は農民の問題であるといったような利害調整の問題でございますので、できればその間において、地方産業の育成と、それに伴う被害関係の調整ということで、第一次的には、その地方で何らかの調整方法をとっていただくというようなことに現在はならざるを得ないというのが、われわれのいま置かれている状況であります。しかし、たとえば貯水槽についての導水路をつくるとかいったようなことがもっとできれば、解決できるものもありましょうし、また処理方法自身についても、何らかの改善の道があれば積極的に指導できるということも考えられますが、なかなか現在のところではそういう状態にありますので、地方の問題、利害関係の調整ということで、第一次的には地方庁でやっていただく、われわれもそれに対して必要な援助をする、こういうような段階にあるわけでございます。
  69. 兒玉末男

    兒玉委員 長官は非常に消極的な御意見を言われますけれども、もう少し——やはりこれは農林省の所管に関するものでも大きい問題でありますので、噂に宮崎県に発生したということだけではなくて、農業関係の公害というのは全国的にあると私は思うのですが、もう少し積極的な指導によって、一つの例として起きました宮崎県の場合も、出先機関を通じて十分調査をして、積極的な取り組みをしていただきたい。これを特に要望しまして、次の問題に入りたいと思います。  次は、流通機構に閲する問題でございます。これは現在参議院のほうで審議されております食糧品総合小売市場管理会法案というのですか、これは一体、どういうふうな目的で出されているのか、しかもこれに関連して、既存の零細な業者に対しても相当打撃を与える危険性というものがあると思うのですが、これに対してどういうふうな措置をとっているのか、まず、この点についてお伺いしたいと思います。
  70. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 流通の長末端における小売り価格の適正化をはかろうというようなことで、東京都に二十ほど総合小売り食品市場を設けることになっておるのでござい映す。そういう意味におきまして、小売り価格の適正化ということを考えておることと、もう一つは、小売り商に影響があるじゃないかということでございますけれども、私は、小売り商が共同等によりましてこういうものをつくっていったらどうかというような、パイロット的な模範店みたいなものを、政府と東京都と一緒になってつくっていこうということでございますので、私は、小売り商の指標というか、向かう方向をこれによって出していくというように考えておりますから、小売り商が心配しているようなことはないと考えております。しかし、その市場の設置場所等につきましては、相当影響する点もなきにしもあらずとも考えますので、そういう点につきましては慎重に考慮していく考えでございます。
  71. 兒玉末男

    兒玉委員 前の、河野さんが大臣のときには、やはりそういうふうな同じような目的で、東京都内に標準店を何か三千軒くらいつくったわけですが、一体これとはどういうふうな関係になるのか、その点どうですか。
  72. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 標準店、標準品の小売り店は、既存の経営形態の小売り商を前提にしたものであるのでございますが、今度の食料品の総合小売り市場は、小売り商業の構造的近代化ということを目的としておりますので、その間にはおのずから相違があります。標準品小売り店等におきましては、標準品の価格等を掲示しまして、それによって価格の適正化をはかるというわけでございますが、総合小売り市場は構造改善、小売り商の構造の点に入っていって、その構造面から価格の適正化をはかっていく、こういうこと、あるいはまたそういう近代化した小売り商になってほしいというモデルをつくっていくというところに、相当の相違がある、こういうふうに思われます。
  73. 兒玉末男

    兒玉委員 先ほど大臣は、既存の業者等もあまりそう反対でもないようなことを言われましたが、日にちははっきり覚えませんが、四、五日前に小売り商人等の大会が開かれて、満場一致でこの法案には反対するという決議があったように私は聞き及んでおりますが、この点いかがでございますか。大臣でも担当局長でもけっこうでございます。
  74. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 担当局長からお話申し上げたいと思いますけれども、反対を決議されるようなことにつきましては、私どものPRが足りなかったのではないかというふうな気がいたします。しかし、小売り商も、当然、従前と同じような小売りの形態で売っていくというよりは、新しい形態面でやっていくということが必要なのでございますから、その新しい形態というようなモデルをつくっていく、あるいはまた近辺の小売り商がこれに参加してもらうという道を開いておるのでございますから、小売りの適正価格が形成され、小売り価格が非常に安くなるということで、マージンが減るというようなことで反対するということでありますならば、それは反対の趣旨が適当でないと私は思います。また小売り商の商圏というか、そういうものを侵害するというようなことは、これはないので、むしろ小売り商の向かうべき方向をモデル化するということでございますので、その反対は理解が足らない面ではないかというふうに私はいま考えております。
  75. 兒玉末男

    兒玉委員 PRが足りなかったというようなことを言われますが、すでに法案は前の国会で審議をされて、現在参議院で最終的な段階に入っておるので、PRが足りないということは、少し言いわけめいた答弁ではないかと思うのです。やはり業者は実際それをはだで感ずるから、反対決議というようなことになったのではないかと思うのです。これについて、将来既存の業者から救済措置等に対する陳情なり、また請願等が相当出される可能性というものを十分考慮しなければいけないと思うのですが、これに対するいわゆる措置といいますか、対策というものは、どういうふうに考えられておるのか、全然考えられていないのか、この点について、ひとつ大臣なり担当局長のほうで御答弁いただきたい。
  76. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 小売りばかりでなく、中小企業、商工業に対しましては基本法等もできておりまするし、それに沿うて適当な措置をとっていくというふうにすることになっておりますが、なお、これとの関連において、特にそういう面がありますならば、いまの基本法の趣旨に沿うて、また商店街のほうもありますし、そういうものを活用するといいますか、そういうものにのっとって適当な措置を講じていきたい、こういうつもりでございます。
  77. 兒玉末男

    兒玉委員 次に、やはりこの流通機構の関係で、この前の新聞なりあるいは農林省施策にも、長年の懸案であります芝浦屠場の相対取引の不振を解決する、こういう意味の報道がなされておるし、またこの施策にもそのことが明らかにされておりますが、ここ十数年来の長い懸案である事項が、いま農林省なり東京都が考えているような、六十九業者を一本化した会社組織にして改善をはかるということが指摘されておりますが、現在どういうふうな状況になっておるのか、そしてこれが今年度中に解決できる確信があるのかどうか、この点についてお聞かせいただきたいと思います。
  78. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは予算委員会においても御質問がありました。いきさつから詳しく述べますと、芝浦屠場には、いまお話しのように、七十数社にのぼる卸売り業者が、公の規制のないまま相対取引を行なっております。そういう取引をしておりますが、その相対的な地位は低下してきております。取引価格の影響力からみまして、その相対的な地位は低下しておるとはいいながら、全国の中心市場たる性格を持っておりますので、その運営の改善につきましては、従来から手をつけてきております。そうして公開せり取引による価格の公表を行なうよう、東京都が開設者でございますので、東京都を指導してまいったのであります。そこで、昭和三十八年の七月九日に、生鮮食料品の流通改善対策要綱というものが、御承知のように閣議決定されました。東京都がその要綱に即して食品卸売り市場設置方針を定めましたが、その方針の中に、芝浦につきましては食肉中央卸売り市場を設置する、いわゆる中央市場化するということでございます。それからせり売りを原則とすること、それから市場の卸売り人は一社とすること、それから市場施設を可及的に整備すること、こういうことを明らかにいたしております。農林省もこの方針を支持いたしまして、中央市場の早期開設を積極的に指導してきておったわけでございます。そこで、中央市場化をはかるとともに、市場化に伴う融資措置を総額十五億円とすることを主たる内容とする都の最終方針が定められております。その方針に基づく荷受け機関、すなわち、卸売り会社の設立につきまして、既存の芝浦卸売り業者に参加の意思表示を求めておりましたところ、ことしの一月二十日に全員参加の意思表示がありました。そこで、市場の組織、業務運営等につきましては、東京都が中心となりまして、具体的検討を逐次進めてきておりますので、近く卸売り会社の発起人会が設置されることになっています。発起人の代表は東京都知事のようであります。  そういうことでありますので、政府といたしましては、芝浦市場の全国的中心市場たる性格にかんがみまして、その公共的使命とともに、市場運営の適正化が特に要求されるところから、市場化に伴う施設整備につきましても、重点的かつ優先的に助成する考えであります。そうしてその取引の健全化についても、十分指導監督して、公正明朗な市場の早期開設を期しておる、こういう段階でございます。
  79. 兒玉末男

    兒玉委員 一応考え方はわかりましたが、実際いままで長い間の慣習によってなされた問題でありますし、私は、かなりの紆余曲折を経なければ、そう簡単にいま大臣考えておるような理想的な状況というのは困難じゃないかと思うのですが、現在作業は具体的にどういうふうに進められておるのか。それから先ほど言われたとおりに、六十九社が一本になって一つの会社をつくるということでありますが、少なくとも流通過程における公平なせりをするためには、私はやはり少数複数ということが理想ではないかと思うのですが、この点について、ひとつ局長のほうから、ぜひその状況とあり方について、もう少し突っ込んでお答えをいただきたいと思います。
  80. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 芝浦の中央市場化の現状につきましては、大体大臣から御説明を申し上げたとおりでございますが、一月二十日に、東京都は、この卸売り会社を単一にする場合に、これに参加する希望者は申し出てほしいという意思表示をしたのでございますが、これに対して六十九社全員から、単一卸売り会社に参加する、株主になりたいということを申し出てまいったのでございます。その六十九社のうち、おも立った、たしか七社と思いますが、七社が東京都とともにこの新卸売り会社の発起人の予定者となっております。これは同市場における関係業界の推挙の形をとって、そういうことになっております。ただいま東京都において発起人会の設置のための商法上の手続を取り進めておるところでございます。  で、私どものほうとしましては、指導態度として、でき得れば卸売り会社の設立は本年度末、つまり、三月末までにはこれを設立する。同時に、ただいま先生からもお話がありましたように、卸売り人のほかに、小売り業者あるいは仲買い人等、そういう形の業者もおるわけでございまして、卸売り会社の設立のほかに、今後の食肉市場全般の構成をいかにするかという点は、関係業界の理解と協力を得てやる必要があるわけでございまして、東京都については、事務的に東京都にこの開設のための特別室を設置する、これが業界及び農林省との接触に専念するという体制をとりますとともに、関係業界の代表者等をもってする新市場の開設準備協議会というようなものを諮問機関的なものとして考え、そういうところの意見も聴取しつつ、大体の方針は、三月末ないし四月にかけて方向を決定し、卸売り市場の設置開設は、われわれの考えとしては、四十年度の上半期までを目途として取り進めてまいるというふうに考えて、そのような立場から私どもも指導をいたしておるところでございます。
  81. 兒玉末男

    兒玉委員 これは、芝浦屠場の取引価格というのが、全国的な畜産物の価格の一つの標準になるわけですし、非常にこれは重大な影響を持つわけでありますが、私も三年ほど前屠場の実情を見、また意見もいろいろ交換しましたが、非常に設備等においてもまだまだ改善を要する点があると思うのです。たとえば一日二千五百頭平均の屠殺がなされているわけですけれども、需給関係とか、あるいは各地域から集まってくる豚なり馬、牛等が何時間もあそこにほったらかしにされて、そのしわ寄せが全部生産者にくるという例等もあるわけですし、いわゆる内容の改革と同時に、設備の改善ということも並行的に行なわれなければ、せっかくの単一会社ができて、公平なせりが行なわれたとしても、そういう付随する設備の欠陥によって、やはり生産農民に打撃を与える、こういうことを私は指摘できるのじゃないかと思うのですが、設備面における改革はどういうふうな指導をしているのか、この点、あわせてひとつお聞かせいただきたいと思います。
  82. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 お話しのとおり、芝浦は日本最大の屠殺施設であり、また、事実上そこで取引が行なわれておるわけでございます。それだけの規模にかかわらず、関連施設が昭和二十七年ごろに一度整備をいたしましたほか、目ぼしい整備が行なわれておりませんために、不十分である、あるいは非近代的であるということは御指摘のとおりでございます。東京都といたしましても、中央卸売り市場として公開せり売りをやるということになってまいりますと、係留施設をはじめとする各種の施設の整備をはかる必要があるわけでございまして、現在東京都の中で検討中でございますが、まだ外へ明確に言えるような計画ではないようでございますけれども、私どもが説明を聴取いたしました限りでは、二十億円以上にのぼる投資をいたしまして、約五年間程度で近代的な市場設備を整備したいという希望を持っておるようであります。農林省としましても、もちろん、これに対して優先的に助成をするということは、大臣のお答えにあったとおりでございます。さしあたり、中央卸売り市場になりますと、現在の売買の場所が狭隘でございますので、お話に出ました家畜の係留施設の移転と整備とをあわせて、本年前半にその施設の整備をやるということで、これについては、東京都も本年度予算に計上するか、もしくは予備費等の支出等で、中央卸売り市場の開設が決定すれば実行したいという準備を進めておるようであります。またこれに対しまして、農林省としても、所要の助成という点について、財政当局とも話を進めておる段階でございます。
  83. 兒玉末男

    兒玉委員 これは三十七年だったかと思いますが、食肉行政に関する勧告が管理庁から出たと思うのですが、その際、特にその中で、専門的でよくわからなかったのですが、いわゆる冷蔵庫等の設備を強化して、そうして各ブロックごとに、そういうふうな流通面における改善をはかるために、現在たしか茨城県じゃないかと思うのですが、都内に大きな貯蔵設備をつくって、そして相場の安定、価格の変動に対処する、こういうふうなことを聞いたことがございますが、そういうふうな流通過程と貯蔵施設等の国の責任における設備を拡充してやるということも、たしか勧告の中に出ておったと思うのですが、そういう点についてどういうふうな指導をされておるのか、あわせましてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  84. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 行政管理庁からも指摘がありましたように、確かに、今後の食肉流通につきましては、貯蔵、保管、販売という一連の施設の整備を必要とするわけでございますが、農林省としましては、ここ数年来、産地における施設といたしましては、農協等の出資を中心といたします食肉センターの設置ということを助成をしてまいっておりまして、これは屠殺解体及び冷蔵の施設を持つようにいたしまして、生体で輸送するということを、屠体による出荷、屠体冷凍による出荷ということに順次切りかえつつあるのでございます。先ほど大臣が芝浦市場のウエートが下がったと言われたのも、この食肉センターの整備に伴って、生体出荷が芝浦へそれほど増加しないということも一つの理由であろうと思っております。消費地におきます冷蔵庫につきましては、これは現在民間冷蔵庫の余裕でそれほど不自由はない状態整備をされてきております。  なお、これは私が申し上げるのはどうかと思いますが、消費地におきましても、農林省で水産物を主たる目的として設置されました水産団体に対する助成による大規模の冷蔵庫が整備されまして、これは水産物の貯蔵能力の余裕の範囲では、食肉冷蔵の施設として利用をさせてもらいたい、また利用させてやろうというようなことに相なっております。
  85. 兒玉末男

    兒玉委員 時間もかなりたちましたが、あと農業災害補償制度と出かせぎ関係について、二、三点お伺いしたいと思います。  特に大臣にお伺いしたいのは、農政の貧困がもたらした悲劇といわれる出かせぎは、非常に深刻な課題でありまして、しかも働いているのが、ほとんど農業だけでは食っていけない、そのために、どうしても農閑期に都会に出て働かなければいけないという問題です。それで、これがきわめて劣悪な労働条件のもとで、しかも、正式な職安のルートで出ていく人は、おそらく全体の一割にも満たないという状況にありまして、一体おやじはどこで働いているのか、その連絡すらもとれないという、まことに優慮すべき状態にあるわけでございますが、大臣としては、特に出かせぎ農民の実態というものをどういうふうに把握され、一体どのような指導と措置をされようとしているのか。特にいま農村における農業労働者のいわゆる都会流出という問題は、今後のいわゆる農業問題について、私はきわめて重大な課題ではなかろうかと思うのですが、この点について大臣の御所見を承りたいと思います。
  86. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農業そのものが季節的でございますので、ことに単作地帯等におきましては、従来からも農閑期の出かせぎというものはあるにはあったのでございます。しかし、現在における出かせぎ状況は、農業の収入もさることながら、支出が非常にふえ、金銭収入を得る必要が生じて、出かせぎが相当ふえてきております。しかもこの出かせぎが、出たままで行方不明になったり、帰らないというような状況などもありまして、社会問題化しておりますことは、まことに憂うべきことだと思います。でございますので、これを正規のルートに乗せていくということ、すなわち、職業安定所等を通じていくこと、あるいは労働省関係で担当しておりまする職業の訓練等を経ていくというような、労働行政のルートに乗っていくような方向指導していきたいことが一つでございます。  もう一つは、農業ばかりの関係じゃございませんが、全体的に見まして、やはり近くに就業の機会を得るというようなことが、出かせぎの社会問題化しているのから、農業の問題のほうに移すというようなことにも相なろうかと思いますので、地方の開発等によりまして、できるだけ近くに就業の場所が得られるような方法をとるということも必要であると思います。  さらに、出かせぎ問題との関連で、いわゆる第二種兼業農家の問題、この対策をどうするかということでございます。これに対しましては、再々申し上げておりますように、農業を離れ得ない、また離れたくないというような形で、しかも金銭収入を他に求めなければならぬというようなものがあって、あるいは農業を婦人の手に、老人の手にまかせておくというような状況が相当出ております。農業面から見ますならば、先ほど言いましたように、所得の面では就業の機会を近くに得たり、あるいは職業安定所の手を経てというようなことを考えなければなりませんが、農業の面から見れば、やはり協業といいますか、農協等を中心として、労働力不足にも対処するため、機械化を進め、その機械化のもとで協業をやるというような形に進めていきたい、こういうふうに考えています。
  87. 兒玉末男

    兒玉委員 この政府から出されている施策の三十四ページ、「労働力の流動化の促進」という中で、「全国都道府県および都道府県内の農業地域の各段階に農家労働力対策協議会を設置する」、こういうことがうたってありますが、これを見ますと、労働力を確保するということじゃなくて、何か外へ出してやるというふうな関係ではなかろうかというように読み取れるわけですが、この対策協議会の任務というのはどういうものなのか。  それからもう一つは、その下のほうに、農家の就業に関する問題について相談活動を行なうために、各市町村に、一千二百の市町村において六人、その他の市町村において一人の連絡員を置くということにしておりますが、これは一体どういうことを具体的に行なおうとするのか。  この二点について大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  88. 昌谷孝

    昌谷政府委員 私から御説明申し上げます。  出かせぎの状況については、先ほど大臣から御所見があったと思いますが、農村の実態から申しますと、一方で、そういった出かせぎがふえて、またそれが長期化しております。反面、御承知のように、農繁期、田植え時期なり刈り取り時期、あるいは果樹地帯の農繁期における労働力の逼迫、こういうふうに事態が二様に起こっておることは、御承知のとおりであります。在来も、市町村農業委員会等を通じまして、そういった農村における就業構造の改善というような角度で、いろいろと諸団体の御協力によって、調査活動なりあっせん活動をしていただいておったわけでございます。特に最近のそういった状況にかんがみまして、従前やっておりましたものを特にもう少し積極的にと申しますか、本格的に展開をしたいというのが、労働力対策の明年度予算をもってやろうとしておることの骨子でございます。したがいまして、出かせぎといったような問題につきましては、先ほど大臣お話にありましたように、職業安定機構その他いわゆる正規の労働行政につなぐあっせん仲介の役目をその段階で果たしていく。縁故というか、あるいは特殊の職業的な人集めでうかうかと就業条件の悪いところへ行くというようなことを少しでも減らして、正規の就業の機会をふやしたいというのが、その任務の一つでございます。と同時に、反面で、田植え時期でありますとか、袋かけ時期等の、一時的によその地方あるいは隣の村等からの手助け労働力は、昔のような個人的なつながりだけでは確保しにくくなっておりますので、それらの点も、団体の組織活動の一環として、その同じ組織の中で、労働力需給調整という形でやることによって、比較的広域のそういった労働力需給の調整をやっていただきたい。そういう考え方を展開したものがこの予算でございます。  なお、労働省の労働行政の面におきましても、在来から職業紹介の相談員というような制度を農村に持っております。労働省関係の職業安定機構の配置分布は、在来の労働行政がそうでありましたために、どうしても都会地に片寄っております。私どもが現在の状況から見ますと、団体の活動、市町村の活動等でそれを補ってかろうじて何とかやっておりますけれども、やはり分布としては、農村地帯における労働省の出先機関の分布が手薄でございますので、労働省としては、その辺を補うものとして地方に相談員活動ということで、労働行政の一つの手足をそういう形で伸ばして補うということをやっておるわけです。後段お尋ねになりました点は、その労働省のほうの相談活動の充実ということの一環が出ておるものだというふうに思います。
  89. 兒玉末男

    兒玉委員 もちろん、これは労働省との関係があるわけですが、この連絡員というのは千二百の町村以外は一人ずつ置くということになっておりますが、少なくとも私たちの岩崎県の場合においては、約二万人の出かせぎ労働者がおるわけです。この実態の把握と調査というものは、ものすごい労力と時間を必要とするわけでありますが、この程度の配置ではたして十分であるとは脅えなくても、そういうふうな実情把握の調査ができるかどうか。特にこの点は、相談活動ということになってまいりますと、かなり繁忙をきわめて、十分所期の目的を達成することが困難ではなかろうかと思うのですが、その辺の判断はどういうふうな見地に立っておられるか、お聞かせいただきたい。
  90. 昌谷孝

    昌谷政府委員 先ほど申し上げましたように、労働行政の在来の重点が都会地、工場所在地にあったことが、やはり私どものほうからの行政需要という点から見ますと、より農村に手厚く、もう少し密度を今後は注いでいただきたいわけでありますが、早急にそういった正規の組織の整備が間に合いません。それを補うものとして、私どものほうでも、系統諸団体の御協力で、市町村単位の、先ほど申し上げましたような活動をやり、労働省のほうも、職安の一つの嘱託的な、補助員的なものとしての相談員をだんだん拡充いたしております。明年度もこれでもちろん皆さまの御期待いただくほど十分に世話がやける、対処ができるというふうに言い切ることはできない。もちろん不十分なものであろうと思いますが、しかし、明年度におきまして若干——正確に覚えておりませんが、約千人の増員が行なわれた結果のことがここに書いてあると思います。そういうことで逐年両省の関係者の話し合いの結果、そういった従来の行政の盲点についての補完を逐次進めております。まだ不十分ではございますが、一歩前進ということで、今後とも充足につとめたい、さように思います。
  91. 兒玉末男

    兒玉委員 最後に、二点だけ御質問しまして、終わりたいと思います。  最後は、農業災害補償制度の問題でありますけれども、末端の農業災害関係調査をするわけですが、この調査の結果と、それから各県単位にできている連合会、それに農林省の統計資料、こういう三つの数字が出るわけでありますけれども、常にこの災害評価についてものすごい食い違いがあるわけです。ずっとここ数年間の統計調査状況等を見てまいりますと、非常に統計関係の要員とかあるいは調査機構というものが縮小される傾向にあるやに私たちは聞き及んでおるわけですが、そこで、特に第一線の災害調査に当たる組合員なりあるいは共済組合連合合の調査に対して、やはり農民は絶対信頼を置き、同時にまた、農林統計に対してもこれは信頼を置くわけでありますけれども、常に生産農民に密着している第一線の共済組合関係調査員の資料というものについて、やはり農民は信頼を持っておるわけです。ところが、災害のあるたびに、この調査の結果に非常に数字上の食い違いがあるのは、一体どこにその原因があるのか、これをまた農林省としてはどういうふうな統計上の指導をしているのか、まず第一点に、この点をお聞きしたいと思います。
  92. 久宗高

    ○久宗政府委員 損害評価の問題につきましては、この制度の一番ポイントになりますので、私どもといたしましても一番気をつかっておりますし、また悩んでおる問題でございますが、ただ、傾向的に申しますと、実は私、十年ほど前にこれを担当しておったのでございます。当時中央まで出ております係争問題が非常に多かったわけでございます。最近になりまして、やや体をなしたと申しますか、だいぶ改善されたものと一応考えておるわけでございます。仕組みで申し上げますと、御存じのとおり、単位組合で全筆の検見をいたしまして、もちろん、組合といたしましても、特別な評価員がおりまして抜き取り調査をいたしまして、単位組合の計数を固めます。連合会といたしまして、バランスをとる関係もございますので、一組合当たりにおきまして約十八筆の実測調査をいたしまして、組合間のバランスをとって全体の数字をまとめてくるわけであります。国のほうに関連してまいりますのは、再保険につながるかどうかという問題でございます。県単位の数字につきまして、全体の被害量を先ほど御指摘のございました統計調査部の被害調査によりましてめどをつけまして、全体の仕組みをきめる。こういうやり方になっております。そこで、根本的には、このやり方といたしまして、全部第三者評価にしてしまうかという問題もあり得るわけでございますけれども、これは経費その他の点から見まして、とうてい考えられないことでございますし、また、この制度が実質的な組合におきます共済制度というものを根幹にして組み立てられておりますので、組合が評価し、連合会が評価し、再保険が評価するという、この三段階制をとりながら、調整をとっていかざるを得ないわけでございます。そこで、御指摘のございました統計調査部の数字でございますが、それは設計といたしましては、やはり県単位の損害額を推定いたしますたてまえの調査でございますので、これが個別の農家の個々の筆までを直接規制するものではないわけでございます。単位組合の評価なり連合会の評価が妥当かどうかという一つの検証をいたします数字になるわけでございます。さような点で、若干全筆の調査でもございませんし、目的もやや違いますので、これを適用いたします場合には、いろいろの統計を利用いたします場合に許容限度の最高と申しますか、三種類の数字を使いまして、その中に入るか入らないかで一応のめどをつけて、具体的な損害の認定に使っておるわけでございます。さような意味から申しますと、統計の数字そのものずばりでやっているわけではございません。相当大きな統計の許される限りの許容限度を見まして、県単位の数字の妥当性を判断させるやり方をとっておりますので、一応こういう形をとらざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。なお、今日まで損害評価が多く問題を生じたわけでございますが、御承知のとおり、昨年制度改正をしていただきまして、従来は、単位組合の責任というのは、やや形式的と申しますか、そう言うと語弊がございますけれども、全体の保険の仕組みの中ではほんの一部の保険責任しか持っておりません。したがいまして、むしろ、連合会なり国のほうに問題が多くしわが寄ってきたわけでございますが、前回の改正におきまして、仕組みを変えまして、単位組合の手持ちの保険料が相当多くありましたものが、保険経営者としての考え方として、損害の評価ができるような組み立てに直したわけでございます。さような点から、損害評価におきましても、数字の適正化が制度上もはかられるような仕組みになったわけでございます。もしこれが非常に過大評価されました場合には、当然組合単位に保険料率の改定の際に直接はね返ってまいりますので、制度自体といたしましては、損害の評価が適正になる方向に動いてきているというふうに考えております。
  93. 兒玉末男

    兒玉委員 局長の言われたことはよくわかりますが、やはり毎年毎年災害の統計数量にこういうような差がありますと、単位組合等でやったことに対するいわゆる農民の不信感、ひいては共済制度の破壊というところまで問題が発展する危険性というものが、十分考慮されるわけです。そういう点から、やはり調査上の評価高についてこのような誤差があるとすれば、どこにその問題がひそんでおるのか、また統計事務所の調査員と単位組合のそれぞれの関係者との間にもう少し相互の緊密な連絡をとってやるならば、こういうふうな倍近くも評価高というものが狂いを生ずる結果にならないのではないか、こういうような判断に立つわけですが、これから統計調査ということは、特に災害に関しては正確であり、同時にまた、適確な処理がなされなければ、今後の共済制度の大きな隘路になっていくのではないかと思います。この辺のいわゆる農林省と単位組合なり連合会との連絡調整の機関あるいは調査機関について、もう少し私は積極的な取り組みをする必要があるのではないか、このように考えるわけですが、その辺の連絡調整が欠けているから、あるいは指導面が欠除しているから、こういう結果が毎年毎年繰り返されるのではないかと思うのですが、そういうような問題点の解決について、どういうふうな措置を今後とろうとされるのか、この点について最後にお聞きしたいと思います。
  94. 久宗高

    ○久宗政府委員 被害の中身を少し詳しく調べてみますと、非常に被害のひどかったある県につきまして、全般的に被害のひどかったという場合には、数字にあまり大きな食い違いが実は出ないのであります。被害が比較的少なかったり、あるいはその県の一部の地方に非常に激甚な災害がございまして、他が普通であったというような場合に、どうしてもこの制度の現在の運用の欠陥が出まして、必ずしも数字がうまく合わないというケースが実は多いわけであります。さような点から申しますと、確かに統計の利用につきましてもう少しくふうが要るのかと思うのであります。先ほど申しましたように、どっちか一つ選ぶということになるわけです。全筆をやってしまうか、それとも、それをやはり組合が本来損害評価の適正を期してくる、それが県単位に見てもおかしくないところにいくように重点を置く。どっちが経費がかかるかという論議も含めまして、検討を進めていく必要があろうと思います。統計の利用といたしましては、やはり数字といたしましては、県単位の数字の大めどをはずさないところが一つの限界ではないかと思うわけであります。また組合について申しますと、先ほど申しましたように、制度改正をいたしました結果、相当の手持ちができましたわけで、損害の評価いかんによりましては、非常に組合単位に赤が出る、黒が出るという点がはっきりしてまいりますので、めどといたしましては、従来非常にたよりにしにくかった単位組合が、ほんとうに保険経理に相当熱心になるような形の制度に変わりましたので、本年はちょうど過渡期でございますので、まだ組合側のほうもあるいは組合の関係者のメンバーのほうも、どうもその点がよくおわかりでないかと思うのでございますけれども、一年間見ますと、評価の結果、どういう形の経理、組合側なり連合会なり、したがって、単位組合のメンバーとしてどういう利害関係が出るのかということが、やや数字的にもはっきりしてまいります。私どもといたしましては、その辺のところを御指摘のような統計関係者とも十分やりました結果を十分検討してみることは必要だと思います。ただ、やり方といたしましては、やはり統計をもっとこまかに分けてそれに乗りかえるというところまでは、おそらくやれないのではないか。やはり組合ないし連合会の評価というものをとにかく基礎といたしまして、それを調整していくということが、一応この制度としてのめどではないかと考えております。話し合いは十分いたしております。
  95. 兒玉末男

    兒玉委員 最後に、大臣に要望しておきますが、いま局長から御説明がありましたが、問題は、統計調査に関連する予算をやはりもう少しふやすことによって、調査活動が詳細に正確に把握できるのではないかという点から、今後ひとつ十分検討いただきまして、統計調査、特に農業政策の基本に関する問題だと思いますので、その点十分予算の増額につきまして御配慮を要望いたしまして、私の質問を終わります。
  96. 赤路友藏

    赤路委員 関連して。大臣に一点だけ関連質問しておきたいと思います。  先ほど兒玉委員からお話がありましたでん粉問題でありますが、大臣の御出身はカンショ県でもあるし、よくおわかりと思うのですが、三十八年の政府の支持価格は三十円、その三十円の支持したものが、四十円あるいは四十五円というような高値で買われたということ、そしてその結果は、高値で買った思惑がはずれて、最後には政府のほうへでん粉の買い上げを泣き込まなければならぬ、こういうような事態が生じて、七万五千トンですか買い付けをやった。そうすると、三十九年もやはり三十円の支持価格をした。ところが現実には、イモ価格というものは、御承知のとおり二十三円になり、二十一円になっておる。そして農民は泣かされておる。その結果は、政府の農政に対して農民は信頼を失っている、こういう現実の姿があることは御承知だと思う。いまのようなままでそのままいきますと、こういうことを何回でも繰り返すという結果になるのじゃないかということを心配するわけです。それはほんとうの農政でもなければ政治でもないので、こういう事態を繰り返させないように、何か当面政府のほうでは御検討になっておるかどうか。先ほど兒玉君の、たとえば一例ですが、質問に対して、食糧庁長官は、いまの汚水の問題でこういうことを言っています。汚水の浄化装置をするためには、非常に膨大な経費がかかる。これは中小企業ではなかなか簡単にやれることではないのだ、こういうことを言っている。私も現実にはそうだと思う。現実にはそういうことはなかなか困難だと思います。同時に、そういうような中小企業が非常にコスト高になっておるということを認めざるを得ない。いまここで考えられることは、安定さすということなんです。農民に少なくとも安心さしてイモ生産ができるということ、しかも業者は妥当な線でそれを買い上げつつ、なおかつ経営が維持していけるという線は一体どこにあるのか、こんなことはもうすでに繰り返しておるのだから、当然政府のほうでも検討しておられると思う。先ほど来の児玉君の質問に対して、そういう先々に対する見通しといいますか、計画といいますか、指針といいますか、それが一つも出されていない。それじゃ同じことを繰り返していって、農民が泣きを見るだけなんです。その点に対して、何か大臣ひとつ御感想ございましたら御発表願いたいし、なければひとつ真剣になって検討していただきたい。先ほど小平君が言ったように、遠慮しているばかりでは前に進みません。やるべきときには断固としてやる。やはりやるという強い態勢をとってもらいたいと私は思う。ひとつお答えをお願いいたします。
  97. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 でん粉の買い入れは、農民のカンショとかバレイショ等の価格を間接に支持するために、でん粉業者からでん粉を買い入れるのでございますから、目的は農民の価格を支持するというところにあります。でございますので、標準価格をきめた、この標準価格以下ででん粉業者が農民からカンショ、バレイショを買い上げたという場合におきましては、先ほどから申し上げましたように、これはでん粉の買い入れを政府がしない、でん粉は、基準が三十円で買ったもののでん粉の買い上げをするというような方法で、農民がでん粉業者からの損害といいますか、それを受けないような方法を講じております。  それからまた、計画的にどういうふうにやるかということでございますが、これは予算に計上し、また予算に足りない分は予備費から出そうというような用意をしておるのでございますが、いま申し上げた方法で十分でないということでございますならば、さらに検討いたしまして、農民に不測の損害がないようにいたしたい、こう思っております。
  98. 赤路友藏

    赤路委員 ちょっとずれているのですよ。私はそれを言っておるのではない。政府が農安法に基づいてでん粉の賢い上げをするときには、これは支持価格の原料でつくったでん粉ということは当然なんです。そのつもりで政府はおやりになっておる。それはわかるのです。私の言いたいことは、そういうことではない。そういうことをおやりになっておるが、いまのような姿のままでは、ああいった毎年毎年同じようなことを繰り返していくのではないかということを心配するわけです。ある場合は、それは何と申しますか、でん粉業者といいますか、企業者側のほうの良心云々という問題もありましょう、あるいは農協の指導力という問題もありましょうが、しかし、それだけではない。それだけ政府のほうでも手を打ってもらっておる。きょうの御説明によれば、これは五万何千トンとおっしゃっておるが、八万トンくらいになる、二十億のあれまで入れて。だから、八万トン程度のものは買い上げるだけの予算はすでに組んである。そうして農民の支持価格を維持しようという大臣のお考えはわかるわけです。それだけで解決つきますかというのです。同じようなことを繰り返していかなければならない。もっと根本的にそこに解決のめどがないのか、研究はなされないのか、していないのかというわけです。もしその点で御研究がないのなら、ひとつ御検討をお願いしたい、こういうことを私は言っておるわけです。  一例を言いましょうか。先ほど来申し上げておるように、いまの汚水問題でも、水質二法があるわけです。農林大臣の所管なんです。水質保全に関する法律の工場を取り締まるのは農林大臣です。ところが、何一つ各県に対して通達をしましたか、していない。これは出しっぱなしです。そのことが汚水問題を起こしておるという事実があるわけです。ところが、それはでん粉工場というものが小さいものが多いわけなんです。ですから、齋藤さんが言ったように、そういう小さい工場では、とてもじゃないが、汚水を浄化するような装置は、膨大な金がかかってできません。それならば、浄化設備ができるような規模にするということが考えられていかなければならぬはずなんです。しかも、そうすることによってコストダウンができていくわけなんです、安定していくわけなんです。私はそれを言っておる。そういうことに前向きになぜもっと取っ組んでいけないのか。おやりになっておりますか。やっていなければ、これからそういう面で取っ組んで本格的にこれをやっていただかないと、同じようなことを何回でも繰り返して、農民が泣き寝入りになるのです。あるいは業者自体も、また経営上非常に変な困難な状態をかもし出す、こういうことを申し上げておるわけです。  そこで、大臣に、いままで十分兒玉君の質問等をお聞き願っているのですから、ここで前向きに農林省はお取り組み願いたい、こういうことであります。
  99. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お話の趣旨、よくわかりました。砂糖等につきましても、そういう前向きの問題で検討いたしておるのでありますし、でん粉業界につきましても、いまの御趣旨の線に沿うて検討いたしたいと思います。
  100. 坂田英一

    坂田(英)委員長代理 次会は明十八日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十分散会