○伊能
委員 いまの
長官のお話で、私もよくわかるわけでございます。そこで
事務当局から御
説明は伺わないことにいたしますが、第八条の取り扱いについてはあくまで運輸省が
責任を持ってやる、あとの問題は
政府部内の
内閣の総合調整であるということについてもわかりますし、また個々のものについてまでそうこまかく触れるつもりはないが、問題はケースバイケースでやらなければこの重大な難局が乗り切れないという気持ちも、私
どもよくわかるわけでございます。そこでただいま
長官から、物価と賃金との悪循環を断ち切りたいのだという非常な勇断的な御決意も伺いましたが、結果としては
国家公務員、
地方公務員、またその他の産業、ことにいわゆる公共事業、交通等に関する公共事業については、国鉄をはじめ民間私鉄総連、あるいは国鉄労働組合、
国家公務員、
地方公務員等年々相当な額が上げられ、そのあおりを中小の各業者は受けるわけでございます。その結果が、常に非常な大きな人件費の負担となって、中小の業者が非常に困難をしておる。六大都市等については、去年あたりからついに赤字経営だというようなところまで――大きな六大都市の交通
関係、公共事業というものは持ちこたえる力があります。したがって、私
どももある程度了承できますが、中小のものは、それではとてもやっていかれない。たとえば例を申し上げますが、北陛の北陣鉄道のごとき、毎年あの三億か四億の会社が六億の赤字を出しておる。こういうところについてまでも今回の公共料金の規制によって一律に扱われたのでは、これは私はケースバイケースにならない、かように
考えるわけでございます。したがって、私
どもとしては、こういう問題についてはあくまでも
政府部内において、
経済企画庁と運輸省がもう少し全体の観点から御相談を願う。あくまでしゃにむに押える――たとえば先般、去年のあの一年間のストップに対して業者が監督官庁を相手に訴訟を起こすというようなことは、これは血を吐くような思いであろうと思います。監督官庁、
指導を受け保護を受ける、助長行政上保護を受ける
政府に対して訴訟を起こすというようなことは、私は今日まであまり
事例を見ないのじゃないか。そこまで業者としては追い詰められた気持ちになる。幸いにして判決も出、その後においては、それ以上争うことは
政府対業者間のとるべき措置ではないということで、みずから訴訟を取り下げるというようなことで事態の円満解決をわれわれもはかったわけでございますが、御
承知のように、全般の問題というお話ですが、今日物価の上昇の全般を見ましても、公共料金のうち最も引き上げ率の低いものは、交通公共料金でございます。ほかのもの、郵便切手のごとき、電話料のごときと比べて、交通料金は、戦前に比ベて、
昭和十一年を基準として百五十四倍、これよりも低いものはたった一つありますことを私は記憶しておりますが、いま具体的な
事例を忘れましたが、こういうような
状態で、賃金その他非常な上昇をしておる。中小の問題ほど強い影響を受ける。現に国会においても、また
政府においても、中小私鉄バスに対する対策
委員会をつくってこの問題を処理しなければいけないのじゃないかというような
方向にまいっております。鉄道、通運、トラック、バス、いずれも共通です。そこで私が申し上げたいことは、将来の中期経済
計画、社会資本の充実ということを
長官は仰せられましたが、この種の事業は、社会資本の充実どころではありません。現在各地で商売にならぬところの路線は、一日十往復であったものを 五往復に減らす、三往復に減らす。これではもう公共の利便にお役に立たない。こういうような結果で、かろうじて公共の利便を犠牲にして会社が何とか赤字を少なくしなければならない、こういう状況になっております。この点をひとつぜひ御勘考をいただきまして、今後の問題として私は前向きでお願いもし、お尋ねもしたいのでありまするが、いわゆる総合調整、さいぜん
法制局からも、
長官自体からもお話がありましたので、こういう問題については、ひとつ
長官の言明どおりに御処理がいただきたい。それからまた、昨年の例、具体的な例を申して恐縮ですが、昨年ガソリン、軽油の価格の問題が起こったときに、公正取引
委員会は両業者――石油業者、交通業者を家宅捜査までやって
調査をしました。そういう荒っぽいことをやり、運輸省は、
政府間において、この問題について、
経済企画庁にも、運賃を十数年ストップして、そうして油の値上げをやる、こういう問題は、いわゆる総合調整の観点からぜひ調整をしてもらいたいということを話をしたのですが、遺憾ながら、
経済企画庁はこういう問題については総合調整をなさらない。私は、かくのごとき場合においてこそ、大企業者である製油業者もしくはその出先である油販売業者といわゆる交通業者との
関係について調整をせられてしかるべきだと思うのですが、こういう問題については総合調整の実を発揮せられないで、一方的に上げられる。しかも、あくまで上げることをやっていけないからがえんじないということになると、強制召喚をしたり家宅捜査、現実にそうです。これは
長官、おそらく御存じない。私は公正取引
委員会の渡邊
委員長を国会に呼んで、この点をただしました。そうしたところが、交通業者については、東京の九社の
責任者を呼んだり家宅捜索をしたが、油の
関係は多いから、二十六社を呼んだり家宅捜索をしてやりました、こういうようなことを言っておりますが、結果一方的に値上げをした。こういうようなことでは、総合調整の実は上がっていないで、ただ弱いものだけが公共料金一年ストップとか、あるいはその他の
政府の
政策の犠牲になる。それでは、これに対する助成措置があるかといえば、何にもありません。戦前においては、地方鉄道等については、当時七百五十万円、いまの金に換算いたしますと三十数億の助成金、補助金があった。今日交通業者に対しては何にもありません。ただ犠牲だけです。これではほんとうの
長官の言う全体の調和のとれた社会の発展、
国民生活の安定向上というものが期せられないということになるので、この点について特に公共料金中、公共交通料金だけが百五十四倍に押えられて、その他のものは、ひどいのは九百倍というようなことになっておるので、こういう点の総合調整については、さいぜんの御指摘のように、全般の見地からやっていただかなければならぬ。交通公共料金、バスに例をとりましても、六大都市のようなところ、それから一般地方の交通、それから山地帯、それから雪国地帯、この四つに大体分数されて運賃というものがきめられておるわけです。したがって、その運賃の基本的なワク、これはさいぜん
法制局からも御指示がありました。現に道路運送法の第八条の第三項にその点の一部が触れられておりまするが、あくまで六大都市のような交通量の多いところはこういう基準、また、一般地方交通についてはこの程度の運賃基準、山間僻地の非常に交通量が少なくて、しかも経営費のかかるようなところにおいてはこの程度の基準、また冬四月も五月も交通のできないようなところにおいてはこういう運賃基準というものがきめられている。そういう基準に基づいて、私は総合調整がせられなければならぬと思う。個々の八会社を、おまえのところは経営がいいから押えるのだというのが、いまの調整局の現状です。具体的に申し上げますと、先般上がった北海道中央バス、あるいは栃木の関東バス、あるいは岡山の宇野自動車、これらは
日本で典型的な、模範的な労務管理と経営をやっておって、
日本の乗り合い交通事業の模範とされている。ところが、おまえのところはまだどうやら赤字を出さないから上げないといって、四年目の最後に残された。私は、これは全体の
指導上――しかも六大都市とは違います。六大都市であれば、私は若干弱小のものであっても、六大都市という一つの規制のもとに入らなければならぬから、了とする面があります。ところが、北海道だとか、関東乗り合いだとか、あるいは岡山の宇野自動車というようなところは、赤字を出さないから押えるというようなことで、四年間の運賃値上げの契機において、昨年の正月の運賃ストップにかかったからということで、さらに一年延ばされて、ついに赤字を出さざるを得ないというすれすれのところになった。これでは事業に対する意欲と経営者の
責任というものが果たせない。こういう問題について、ただいま私が言ったような一定の運輸省の基準、四つの基準、その基準に基づいて道路運送法弟八条第二項並びに第三項によりそういう問題について調整をしていただくことが、ほんとうの
内閣の物価に対する総合調整だろう。個々のく会社一つ一つについて運輸省の運賃査定と同じことをもう一ぺん調整局でやられる、これでは、私は少しこの
法律の精神、運輸省
設置法第四条、
経済企画庁設置法第四条の
法律を守らなければいけないという精神から逸脱しているのではないか、かように
考える次第ですが、この点についての
長官のひとつ明快な御回答を重ねてお願いいたします。