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1965-04-09 第48回国会 衆議院 内閣委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月九日(金曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 河本 敏夫君    理事 伊能繁次郎君 理事 佐々木義武君    理事 永山 忠則君 理事 八田 貞義君    理事 田口 誠治君       天野 公義君    井原 岸高君       岩動 道行君    池田 清志君       亀岡 高夫君    辻  寛一君       野呂 恭一君    二階堂 進君       湊  徹郎君    藤尾 正行君       受田 新吉君   茜ケ久保重光君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         国 務 大 臣 高橋  衛君  出席政府委員         内閣法制次長  吉國 一郎君         総理府総務長官 臼井 莊一君         宮内庁次長   瓜生 順良君         総理府事務官         (皇室経済主         管)      並木 四郎君         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房長)   村上孝太郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  鹿野 義夫君         大蔵事務官         (大臣官房長) 谷村  裕君         大蔵事務官         (国有財産局         長)      江守堅太郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (銀行局保険第         一課長)    中込 達雄君         専  門  員 茨木 純一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  皇室経済法及び皇室経済法施行法の一部を改正  する法律案内閣提出第一九号)  経済企画庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三一号)  大蔵省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二九号)      ――――◇―――――
  2. 河本敏夫

    河本委員長 これより会議を開きます。  皇室経済法及び皇室経済法施行法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、これを許します。受田新吉君。
  3. 受田新吉

    受田委員 この皇室経済法に関連して、まず皇室関係あるいろいろな行事を中心にお尋ねしてみたいと思います。総務長官がお帰りになられて、永山先生がお尋ねになるそうでございますから、もっぱら総務長官に質問をします。  皇室尊厳、これは民主主義国家と同様に、国民象徴としての皇室になってきておるのでございますから、いまさらその尊厳が昔のいわゆる神格化した皇室関係でないことは、はっきりしておる。国民に溶け込んだ皇室という意味でひとつお尋ねしてみたいのですが、総理府総務長官皇室に関していかなる権限を持っておられるのであるか、長官宮内庁に関する権限関係をちょっと御答弁、願っておきたいと思います。
  4. 臼井莊一

    臼井政府委員 総理府皇室関係政府の窓口と申しますか、そういうあれでございますが、特に権限というものについては、宮内庁長官おいででございますので、したがって、宮内庁長官のほうで権限ということについてはおありになると考えます。
  5. 受田新吉

    受田委員 そうすると、皇室経済法を審査するにあたって、総務長官が御所管されておる事項は、いかなるものでございましょうか。
  6. 臼井莊一

    臼井政府委員 御承知のように、総務長官内閣総理大臣を助けて、総理府府務法律的にはいっておりますが、これを整理して、したがって、宮内庁方面に関しましても、予算等政府部内においてこれを分担しておると申しますか、外局になっておりまする宮内庁のそういう方面の政治的な面とか、あるいはまた予算等に関して、受け持っておるわけでございます。
  7. 受田新吉

    受田委員 この皇室経済法提案理由説明長官がやられたわけです。そうすると、あなたは、この法律に対する責任者としては宮内庁長官よりも重みがあるのではないかと思うのですが、これはどうでしょうか。
  8. 臼井莊一

    臼井政府委員 宮内庁長官は閣僚ではございませんで、そういう意味において、政府部内においては総理大臣を助けて総務長官予算とか法律事項等に関しましては分担をしておる、こういうことになると考えます。
  9. 受田新吉

    受田委員 総務長官任務は、「内閣総理大臣を助け、府務を整理し、並びに総理府法律国務大臣をもってその長に充てることと定められている機関を除く。)所管事項について、政策及び企画に参画し、政務を処刑し、各部局及び機関事務を監督する。」というこの規定は、宮内庁長官国務大臣に充てないのだから、この規定から当然宮内庁のこの事項に関しては、そういう総務長官監督権があるんじゃないですか。
  10. 臼井莊一

    臼井政府委員 そのとおりでございます。
  11. 受田新吉

    受田委員 先ほどえらい遠慮されておられるから、これはあなたの任務を十分自覚しておらなければなりませんよ。あなたは偉大な権限があるのですよ。国務大臣をもって充てる経済企画庁とか防衛庁とかいうのとは違って、宮内庁に対してあなたの監督権が行使できる府務を整理する責任があるわけです。所管事項について企画にも参両できる、こういう非常にあなたは、重大な任務をお持ちになっておられるんですよ。決して御遠慮される必要はない。したがって、宮内庁に関する権限関係といえば、ちゃんと権限があるのですよ、監督権という権が。したがって、ここで御答弁いただくことについても、宮内庁については、総務長官として単独責任のある発言ができるわけなんです。よろしゅうございますね。したがって、その前提のもとにいまからちょいとお尋ねすることがあるのです。  皇室に関するいろいろな行事、それから天皇の御地位に伴うところのいろいろな施策、こういうものについてすでに天皇国事事項委任法というのも生まれてきた。これは前の徳安総務長官の手でやられたわけです。  そこで具体的にお尋ねしたいのでございますが、天皇国事事項委任法というものが生まれてきた以上は、これの実効をあげなければならぬわけです。法律ができただけでは意味をなさないわけです。意味のないような法律をつくっても、意味がないことになるのです。これを効果あらしめるためにあなたは総理大臣を助ける地位にあるわけです。総理府の長は総理大臣ですからね。そうですね。だから、それを助けるあなたは、ここで発言ができるわけです。天皇陛下にひとつ国賓として海外がお招きいただけるような国々がある場合には、進んで皇太子夫妻でなくして、天皇皇后陛下が代表してお出かけになるという事例を、すでに生まれた法律に基づいて、安心して海外に御旅行できる法律ができたのですから、もう実行に移される時期が来ていると思うのです。両陛下をお迎えするのに快しとする国々に対して、いろいろとその国々のバランスの問題も一応起こりましょうけれども、そろそろそういう事態をおつくりになってもいいのではないか。いい時期が来ていると思うのです。両陛下おいでを待っている国々もあるわけです。英国エリザベス女王なんかは、どんどん海外を御旅行されておる。日本天皇皇后陛下、特に天皇さまの場合は。不幸にしていままでに海外の御旅行に自由を与えられない日本の一番不幸な人であった。海外の御旅行の自由が与えられなかった一番不幸な天皇さまであったわけですから、ひとつこの辺で長い苦労を解放してあげると同時に、国際的にも天皇おいでになるということによって、より一そう国際親善の実をあげ得ると思うのです。そろそろ天皇海外旅行計画を立てられる段階に来ておりはしないかと思います。御答弁願います。
  12. 臼井莊一

    臼井政府委員 お説のように、天皇海外に御旅行できることにはなっておりますが、それには過去の経験とかそういうものから徴して慎重に検討を要する問題を含んでおりますので、したがって、これにかわってむしろお若い皇太子殿下夫妻等お出ましをいただくほうが適当であろうかという、こういうことで、従来は大体そういうふうにいたしておったわけであります。
  13. 受田新吉

    受田委員 従来の話を申し上げておるのではない。これからです。法律もできたことだから、この法律実効を伴うようにしてあげる必要がある。このことを私は言っておる。過去のことをお尋ねしているのではない。過去はそうであったから、これからどうするかということをお尋ねしておる。あなたは人格高潔な方であるけれども、やはり総理大臣にかわる答弁ができなければいかぬと思う。閣議出席権も持っておられるし、発言権もある。認証官でもいらっしゃる。すばらしい地位ですよ。先ほど来あなたは非常に謙虚なお気持ちを持ち過ぎておるのですが、そこのところはすぱっと腹をきめて、両陛下に進んで海外国際親善の目的をもって御旅行を願うことは、もう計画にのせられてもいいし、それはどこと具体的には言えないが、そういう方向に持っていくべきだと思う。方向を申し上げておる。
  14. 臼井莊一

    臼井政府委員 将来のことに関しましては、もちろんそういう陛下がじきじきお出ましいただくほうが適当である、そういう場合には、当然そうなると考えます。いまのところ、しからばどういう予定があるかというような別に計画もございません。ただ、御承知のように、皇室あたりでは特に従来の伝統を重んじますから、そこで私は過去の従来の例を顧みて申し上げたのですが、もちろんおいでになられることはできるわけでありますし、そういう場合もあろうかと思いますが、いまのところそういう予定はないということを申し上げます。
  15. 受田新吉

    受田委員 近代的な皇室として旧陋を打破して、新鮮な感覚で皇室外交というのが私は要ると思う。それを従来の伝統ばかり言っておられたんでは、何のためにこの法律ができたか意味をなさぬです。近代的国家です。近代的国家天皇として自由に皇室外交をおやりになって、国際親善実効をあげられるという、そういう時代が来ているのですよ。宮内庁次長さんも、長い間非常に謹厳な、高潔な御生活をしておられるわけでございますが、これはやはりいま長官にいろいろと意見を言っておられることについても、ひとつ前向きでお考えをいただいて、古い伝統ということにとらわれなくて、ひとつ国民の中に溶け込んだ陛下という立場から、思い切った御処置を御進言申し上げるほうが私はいいと思うのですが、宮内長次長さんどうですか。
  16. 瓜生順良

    瓜生政府委員 国事行為委任ができるような法律が昨年できまして、その際にも時の総理大臣から、これはこの際制度を整備する、そういうことが憲法で予想されておる法律であるから、その憲法で予想されておる法律をこの際整備しておくためにやるので、特にいますぐに扱うべきことを予定してやるのではないという御説明がございましたが、われわれもそのつもりでおるわけです。将来何か適当な機会がありまして、お出かけになるほうがよろしいというようなことがありますれば、お出かけになることに対してわれわれがいろいろ準備をするつもりでおりますが、いまのところはそういうような事例がまだ出ていないわけであります。よく外国から元首が何人か来られますと、その御答礼に従来皇太子殿下陛下の御名代としてお出かけになっている。では、あの法律ができたから、これからは御名代でなくて、天皇陛下自身おいでになったらどうかというようなあるいは御意見があるかとも思いますけれども各国から見えまする元首の方の数は、相当多いわけであります。現在もまだ御答礼になっていないところが相当ありますが、そこを全部お回りになるのは、なかなかたいへんであります。ある一国を皇太子殿下おいでになり、他のほうは陛下お出かけになるというようなことで、場合によっては政治的な問題が出てはいけないという点もありますし、まあ一般に考えて、この場合は陛下お出ましがもっともだというような機会があれば、お出かけになるように準備したいと思うので、そういう機会のあることを待っているというようなふうに申し上げていいかと思います。
  17. 永山忠則

    永山委員 総務長官がすぐお立ちのようですから、関連して申し上げたいのですが、ただいま受田委員が言いましたように、国事委任に関する法律をつくるときには、ただ法案を整備するということではなかったと思うのです。やはりこれが死文化することでは意義がないのでございますから、ただいまお説のように、積極的に前向きで御検討を願わなければならぬ。古い伝統をとうとびながら新しいものを創造するという、やはり積極的な方向宮内庁のほうのお考えが進むことを深く期待をするわけですから、総務長官もこの点に対して、積極的に法案つくりました当時の経緯等をよく御検討の上で、われわれ委員が満場一致で可決をいたしたものでございますから、死文化しないように、一段とひとつお願いをいたしたいと思うのであります。  ついでに、この場合総務長官任務はきわめて、重大であるし、また権限も強いものでございますから、やはり総務長官国務大臣にするということに――まあ、あなたにそういうことを言うのはどうかと思うのですが、そこへいかなければならぬときにきているのじゃないか、こう思うのです。ことに宮内庁に対する権限も、広範なる権限を持っておると同時に、やはり人事関係においても、内閣には総合した人事管理あるいはすべての指導というところがないのですよ。国家公務員行管長官であるとか、地方公務員は自治省がやるとか、公共企業体関係はこれは労働大臣だというような状態で、やはりこの人事管理指導、運営、すべての面に対しても、総務長官のところへ一元化されて、そうして進んでいくということが好ましいんだからして、認証官でせっかくあるんですし、閣議にも出席し、発言するような状態になっておりますから、一歩進めて、やはり総務長官大臣地位に置くというように進むことが、非常に好ましいと考えておるわけでありますが、この二点に対し御答弁を願いたい。
  18. 臼井莊一

    臼井政府委員 現在の法律におきましても、総理府設置法の第十九条に、「総務長官は、国務大臣をもって充てることができる。」こういう規定はあるのでございますけれども、まあ国務大臣の数も現在では限りもございます。しかし、お説のように、最近は特に総理府関係仕事もいろいろふえてまいりました。そうしてまた、このILO法案と関連して、国内法改正におきましても、また設置法との関係において、人事局総理府に置かれまして、人事局をつくって、人事関係を一応見ることになっております。そこで、今度国家公務員法の一部改正の中に、この「充てることができる」というのを国務大臣をもって「充てる」こういうことに改正をいたしますので、現在御審議をいただいておるこの法案が通れば、国務大臣、こういうことで、国務大臣定員も一名増して充てることになっております。その点は御了承いただきたいと思います。
  19. 永山忠則

    永山委員 国家公務員法ILO関係というものに関連せずに、やはり総務長官国務大臣をもって充てるという方向に進むことが好ましい、こういうように考えておるわけでございますが、これが通らなければ、関連しなければいけないという理由はどこにあるのですか。単独ではできないのですか。
  20. 臼井莊一

    臼井政府委員 これは国家公務員法改正する機会に、その中に一部改正として入れたわけであります。従来でも、いま申し上げたように、国務大臣をもって充てるということも、しようとすればできるわけでありますけれども、今度人事局をつくるのを機会に――それはかりではありませんけれども、一そう総理府総務長官仕事もますます重要性を加えつつありまするので、この人事局等をつくるのを機会に、今後はその法案さえ通りますれば、国務大臣をもって充てる、こういうことに改正になるわけであります。
  21. 受田新吉

    受田委員 長官お急ぎのようですから、長官にだけお伺いをいたします。  あなたは、そういう意味で非常に重責をになっておられます。今度臨調の答申の中でも、また変わった内閣府の構想を盛っておられるけれども、ともあれ現状においては、あなたの権限は非常に大きいのです。そこで臼井先生、あなたは、御所管事項である部内、つまり宮内庁も含めての理総府部内の政策及び企画に参画する権限を持っておられる。それから事務監督権を持っておられる。そこで政策の中に立法事項が当然入ると思うのですが、問題は憲法規定、新しい憲法には男女同梅がうたってある。にもかかわらず、それが実行されていないのに皇室典範という法律がある。この法律の中には、皇位継承権を女子に与えていない。これはかねて私は提唱してきたものでありますが、これは政策としてみても、男女同権という憲法の精神に反する皇室典範という法律が生まれておることは、これは間違いであるとお考えではないか、長官としての御見解を伺いたい。
  22. 臼井莊一

    臼井政府委員 男女同権という見地からすれば、そういう御解釈も成り立つかとも思いまするが、これも先刻申し上げましたように、皇室におかれては、特に伝統的慣習というものを重んじられますので、やはりそういう観点からいたしますると、必ずしもそうすることがいいか悪いかということについては、そこに問題もあろうかと思います。この点については十分検討を要することだ、かように考えております。
  23. 受田新吉

    受田委員 検討を要するという、おもしろいことをおっしゃるけれども伝統という問題――いまはもう近代的皇室になっているのです。国民象徴一家になっている。今度でも皇室経済法の中に、親王、その妃及び内親王とも皇室費の年額は、これは年齢に関係なく、一律に規定されておる。男女同権です。そこへいっているときに、皇位継承権だけを男子に限定するというような封建的なにおいが新時代近代的国家皇室にあるということは、これはおかしいことだと私は思います。これは憲法改正しなくてもよろしい。皇室典範をかえれば片づく問題です。政策としてこれは大事なことだと思います。どうですか。そのことは政策として検討をすべき問題だとお考えかどうか。
  24. 臼井莊一

    臼井政府委員 従来日本歴史を見ましても女帝ということもあったように承知いたしておりますが、お説のように、皇室典範でそういうことになっておりまするし、また日本におきましても、当面、そういうような解決を急に要する問題でございませんが、やはり殿下がいらっしゃる際には、男子である殿下が御継承なさるということは、これは英国でも女帝はあられますけれども、もちろん男子のあられる場合には男子である王子が継承される。こういうように私も承知いたしております。
  25. 受田新吉

    受田委員 皇祖天照大神は女神さまであった。それから御存じのとおり女帝は皇極、斉明天皇をはじめとし、また孝謙称徳天皇女帝であり、明正天皇女帝であるし、徳川時代になっても、後桜町天皇女帝としておられる。とにかくこういうふうにして、伝統からいえば明治時代に男系の男子ということで制限されたのです。しかも明治の思想は、皇嫡子皇庶子と分けてやるというようなおかしな典範までできておる。だから、明治いき方は私は家庭道徳を破壊するいき方があると思う。皇嫡子皇庶子を分けて、皇嫡子みなあらざるときは皇庶子に及ぼすというような規定ができておる。こういうような規定は、もういまはとるべきではない。皇祖女帝であった。歴代適当なときには女帝がおられる。いわんや憲法男女同権をうたっておる今日、女帝を否定するような根拠はどこにもないです。伝統からいうても、世界各国歴史からいっても、そして国民に真に女性の権威を高める意味においても、いま当面必要がないとおっしゃるのは、これは話のほかです。筋としては、皇室典範女帝を置くという政策を持つということは、筋として通ると思いませんか。
  26. 臼井莊一

    臼井政府委員 これはいま申し上げましたように、確かに一つの御意見としてあり得ることで、そこで今後ひとつこれらの問題を慎重に検討して、象徴であられる天皇でございますから、やはり国民感情等もいろいろ考慮することも必要でございますし、また将来そうすべきであるという結論が検討の結果出てまいれば、そういうことになろうかと思うのであります。
  27. 受田新吉

    受田委員 その女帝の問題は、今度政府考えておられる公式制度調査会の中に入る問題ですか、どうですか。
  28. 臼井莊一

    臼井政府委員 現在は、これはその中に入っておらないように聞いております。
  29. 受田新吉

    受田委員 これはあなたのほうで、公式制度調査会については、藤枝先生もそう仰せられており、それから徳安先生もそう仰せられておる。何かつくっておられるんじゃないかと思うのだけれども、一向ぱっとしないのですね。そこで長官、ひとつあなたの御任務として、すぱっとりっぱな機関をおつくりになることはどうですか。(「賛成だ」と呼ぶ名あり)みんな賛成しておられる。
  30. 臼井莊一

    臼井政府委員 公式制度等調査会のことでございますが、これにつきましては私どものほうでもできるだけすみやかにつくることがよかろうと考えて、現在いろいろ研究中でございますが、四十年度においてはいろいろの都合で一応見送りましたのですが、これも、私はいまお話しのような問題、そのほか公式制度については、いろいろ海外公賓等おいでの際の儀式的な問題とか、これらについてはすでに一応閣議等においてそれぞれできることはいたしておりますけれども、やはりひとつ公式制度等調査会をつくっていろいろの問題を調査検討することが必要だ、こういうふうに考えておりますので、できるだけ近い将来に私どももこれをつくりたい、こうは考えておるのでございます。
  31. 受田新吉

    受田委員 近い将来につくりたいということですが、前に藤枝さんは、ひとつつくると言うておられる。自来長官が何回かかわられて、現長官は近い将来につくりたいというようなばくとしたお答えをなさっておられる。これは残念です。  長官国葬令という勅令が現在生きておると思いますか、死んでおると思いますか。
  32. 臼井莊一

    臼井政府委員 どうもその法律になるとあれですが、その国葬令というようなものは、現在は生きていないというふうに聞いておるわけでございます。
  33. 受田新吉

    受田委員 法制局がおられましたら、ちょっと御答弁願いたい。大正十五年に公布された勅令第三百二十四号国葬令は、いま長官が言うように、もう今日廃止されておるのですかどうですか。
  34. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 これは日本国憲法施行の際、現に効力を有する勅令規定効力等に関する政令、これに基づきまして、昭和二十二年十二月三十一日限り失効しているものとわれわれは解釈いたしております。
  35. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、この現行法令輯覧の中に国葬令を入れておるのは、どういう理由からですか。参考のために入れてあるのですか。参考条文ですか。
  36. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 現行法令輯覧は、総理府総務課編さんはいたしておりますけれども、その内応につきましてまでしさいに私どものほうで指導をいたしておるわけではございませんが、従来の解釈といたしましては、国葬令昭和二十二年十二月三十一日限りその効力を失っておるというのが、ほぼ通説であろうと存じております。
  37. 受田新吉

    受田委員 通説であるならば、この廃止した法律命令法令輯覧の中に入れておるということは、どういう理由か、次会までに御答弁願いたい。
  38. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 これは総理府編さんでございますので、私が直接申し上げるわけにまいりませんが、何しろ具体的に廃止法律を出しまして、左に掲げる法律を廃止するというようなことで処理をいたしましたものにつきましては議論がございませんが、その効力として解釈上失っているとかいうようなものにつきましては、議論のあるところでございます。そのような意味で、総理府におきましても国葬令がまだ効力を有するやいなやということにつきまして、確たる議論が立たないままにこれを掲げたもの、このような命令は、特に旧憲法施行前の太政官布告であるとかあるいは行政官布告等によりまして、旧憲法施行後に法律なり勅令なりの効力を持ちましたようなものにつきましては、現在でも疑義のあるようなものが若干ございます。そのようなものにつきましては、現行法令輯覧なり現行日本法規あるいはその他の法規集におきましても、その疑義の存するまま掲げてある例もございますので、国葬令も同様な例でございますというように考えております。
  39. 受田新吉

    受田委員 官吏服務規律もまたそういう性格のものですね。  私はこの機会にはっきりしておきたいのですが、疑義があるから残しておくということになれば、当然これは検討せねばならぬ問題です。完全処理されていないという証拠にここに残しておる。疑義がある。疑義があるということは、釈然とした処理がされてないということです。だから、国葬令なるものは、釈然とした処理がされていない。だから、これは生かしておられるのです。釈然とした処理がされているのを残しているはずはない。廃止された法律が現行輯覧の中に入っているはずがない。それなら参考条令として書いてあるはずだ。これは現行ですからね。現行の法規集の中に、これは厳として残っておる。いいかげんな御答弁はされないように。こういう国葬令というものは、完全廃止になっておらぬと私は了解します。したがって、そういう国葬、それから元号の問題がある。元号の点も一向解決しない。天皇がいつなくなられたときでも、どういう次の制度をつくるかがきまっておらぬから、そのあとはたいへんな混乱におちいるという事態になる。元号なしにして西暦を用いるのかどうかということも、きまっていないのです。それから後に閣議を開いてからがたがたして、国会の承認を得るというようななまぬるいことせぬと、へまをせぬと、元号もどうするということをはっきり答えを出せと、何回かもう十何年にわたって私はこれを提唱しているが、一向解決していない。そうしてこういうものを含めた公式制度調査会は、女帝の問題をどうするか、女子の皇位継承権の問題を含めてやりたいといういま御答弁があったわけです。そうですね。だから、女子の皇位継承権の問題も含めて、法律論の場合も、政策としてどうするかも考えていくという調査会をつくりたい、それを近い将来つくりたいとおっしゃる。どうですか、早くやろうじゃないですか、もたもたせぬと。こういう疑義が残った規定をどんどん残している。法令の改廃ということはきちっとやらぬと、国民自身にしても迷いますよ。だから、もう一ぺん長官ここではっきり、この公式制度調査会は願わくは内閣機関かあるいは総理府の付属機関か、正式にこの問題を討議する機関を設ける、任意的な機関でなくして法律に基づいた公式制度調査会というものをつくって、そこに学識経験行を含め――この場合は国会などからの代表名も入れる性質のものだと私は思いますが、含めて、この機関を正式にスタートさせる。あなたの腹一つで事はきまるのです。前の徳安さんは、天皇国事行為委任事項というものを自分で推進された。長官御在任中にこの公式制度調査会をスタートさせて、そしてその中には皇位継承権などを含み、元号の問題を含んだ公式制度調査会、こういうものにもつていきたいというお考えがあれば、それをお示し願って私の質問を終わります。お示しのぐあいによっては質問を保留しておきます。質問を終わります。
  40. 臼井莊一

    臼井政府委員 この公式制度等調査会は、やはり法律でつくらなければならぬ、そういうことで藤枝長官の時分から懸案にはなっていたけれども、これが実際に実行になっていないというには、やはり何かそこに一つの理由もあろうかと思うのでございますが、私もこれをひとつできるだけすみやかにつくりたいということは、いまも申し上げたのでありますけれども、やはり政府部内で統一した考え方といいますか、意見が一致しませんと、私一存でひょいとつくるというわけにいかぬ場合もありますので、そこで慎重を期している。ただ、しかし、法律にないから元号についてもつくれないではないかというような意見も出るかと存じまするけれども、これらについては長い間の伝統歴史によっての考え方で、英国などでは成文法でなくても慣習法でずいぶんいろいろできる。あれも諸外国にもありまするので、わが国においてもそういう慣習的な問題については、ある程度は処理できるのじゃないかという観点もありますけれども、しかしお説のように、法律においてやはり国会の御審議をいただいてきっちりきめれば、一番それがはっきりするわけでございまするので、そこで公式制度度等もできるだけ早くつくるように調整をはかりたい、こういうふうに考えております。
  41. 河本敏夫

  42. 永山忠則

    永山委員 長官、忙しいからお帰りくださってけっこうですが、いま公式制度調査は、本年度の予算の中へつくり得るようになっているようでございますので、調査費はあるでしょう。したがいまして、法制的なものではなくても、ひとつ長官のところで御調査をすみやかに進めていただいて、これが結論を早くお出しいただくことを希望いたしておきます。
  43. 臼井莊一

    臼井政府委員 もちろん公式制度等調査会もできるだけ早くつくりたいと考えておりまするが、それ以前におきましても、審議室等においてこれらの問題を検討はそれぞれ十分いたしておりますが、ただ今年度、四十年度のあれには一応見送っておる形でありまするが、これは調整つき次第にできるだけ早くつくるほうがよいではないか、かように考えておることにおいては変わりはございません。
  44. 永山忠則

    永山委員 それじゃお帰りくださいましてけっこうですから、経済企画庁長官見えておりますので、きわめて簡潔に皇室経済法及び同法施行改正関係の問題についてお尋ねいたしますが、第一に、皇族費の定額を改定した理由、並びに内廷費を据え置いて皇族費だけを引き上げた理由、さしにまた独立の生計を営まない親王、その妃及び内親王の成年に達した者の皇族費年額を十分の三に引き上げられた理由について、御説明を願いたい
  45. 瓜生順良

    瓜生政府委員 皇族費を増額を必要と考えましたのは、年々この皇族方の御交際の範囲が広くなってまいります。特に海外関係では、日本の国と国交のある、つまり大公使館などを設けられている国がふえてまいりますと、その方々との交際がそれだけふえてまいります。なお、国内においてもいろいろ行事がございまして、そういうものにおいでになるというような点、そういうように国際的にまた国内的に御交際の範囲が広くなり、その関係に伴う経費というものもふえてまいります。それから第二には、いろいろ一般の物価の値上がりもありまするし、なお物価の値上がりだけではありませんで、一般国民生活が文化的に向上してまいっております。これに伴いましてこの皇族の方々も費用の面がおふえになるという面が出てまいります。そういう点。それから第三は、各宮家で雇っておられまする職員がありますが、その職員の人件費というものは、これは公務員の給与のベースアップに伴うてやはりこれを上げておいでにならなければならない。最近の宮家の職員の給与の実情を見ますると、相当改善しないと公務員と同じようにならないという点もございまするので、そういうような点を改善をしていくということ、その三つの理由でございます。  それから次にお尋ねの内廷費のほうは今度は増額をいたさないで皇族費だけを考えているという点の理由でありまするが、内廷費につきまして、これもやはり実質上いろいろ経済情勢の変化に応じて費用がおふえになるという点がございまするのですが、しかし、昨年の秋に義宮様が御結婚になって常陸宮家を御創立になりました。従来内廷におられました義宮さん関係の経費が要らなくなり、それだけの経費の余裕が出てまいりましたので、その余裕を考えますると、経済情勢の変動に伴うてこの費用がよけいお要りになるという点がカバーできるというようなことで、したがって、特に内廷費については増額を考えなくてもよろしいということでございます。  それから第三のお尋ねの、各宮家の親王、内親王で独立していないで宮家においでになる方については、そういうお子さんは、従来の規定ですと、全部同じように定額の十分の一ということになっておりましたが、成年に達せられましてもやはり十分の一ということでは、実際問題としてその点に適当でない点があるというふうに思われたわけであります。成年に達せられますと、いろいろの行事に親王、内親王はお出ましになります。御交際の面でも、成年に達せられますると、成年に達したという御資格でなさいます。そういうことで、成年に達せられますると必要な経費がふえてまいりますので、そこで従来十分の一と考えておったのを十分の三というふうに増額をしていただくことが至当だと考えられまして、十分の三に改めていただきたいということでございます。
  46. 永山忠則

    永山委員 次に、皇居造営関係でお尋ねしますが、新宮殿の造営は、どのように進んでおりますか。さらにまた、皇居付属庭園の整備等は、どういうようになっておるか。また、新宮殿造営のための寄付等は、どういうふうな取り扱いになっておるか、それをお聞きしたい。
  47. 瓜生順良

    瓜生政府委員 宮殿の造営の進捗状況でございますが、昨年の六月の末に起工式がありまして、それから実際の工事にかかっております。現在だいぶ進んでおりますが、この宮殿は、最初の予定は三十九、四十、四十一、三年度のうちに完成をしようということで着手いたしましたのですが、現在実際の進行の状況から見ますると、四十一年度、つまり暦で申しますと昭和四十二年の三月三十一日までには、完成はちょっと無理かと思います。特にいろいろな仕上げの関係、内装の関係などは、少し残ると思います。それで、いまの見込みでは、四十二年の夏かおそくては秋ごろに仕上がる、四十二年度にちょっと入るということになるかと思います。この工事につきましては、関係の人が鋭意誠心誠意やっておられますから、その進行の状況はちょっとおくれておりまするけれども、別に特にこういう点が不都合な点があっておくれておるわけではございません。  なお、この宮殿の造営の経費の関係ですが、三十九年に出発する際には、宮殿の関連経費全部合わせますと九十二億くらいを一応考えて、第一年度は十五億ということで出発したのであります。しかしながら、実際の模様を見ますると、その後のいろいろの資材の値上がり、労賃の値上がり、そういうような問題もいろいろ出ております。それから最初には、内装、つまり仕上げのこまかい点の設計がまだできていないままに、一応の概算でこの総額の大体の見込みをつけたわけでありますが、その内装の関係におきましていろいろ専門の方と検討いたしてまいりました結果、初めに考えたよりは、そういう仕上げ、内装の面なんかでも少しよけいに経費がかかりそうな面がございます。したがって、この竣工までの総経費は、三十九年に出発したときの見込みよりは幾らかふえることになると思います。いずれにしても、総額は百億をこすと思います。これはなお大蔵省の主計局なんかでもいろいろ行ってもらいまして、どれだけふえる見込みであるかということは、主計局のほうとよく相談の上できめたいと思っております。そういう状況でございます。  それから、星川の東側地区のほうを皇居の付属庭園として整備するという関係でございますが、このほうも現在整備の工事を進めておりまするが、この付属庭園が完成いたしますると、この付属庭園につきましては、皇室で御使用にならない場合は、原則として一般に公開するということで考えられて整備されておるわけであります。したがって、できるだけ早く整備されて一般に公開することができるようにしたいということで、われわれも努力してまいりましたが、最初の予定よりもこれもちょっとおくれます。最初の予定では四十年度いっぱいくらいに完成したいと思っておりましたのですけれども、いまの見込みでは、ちょっと二年ばかりおくれまして、四十二年度に完成する。これはあそこの東側地区の中に他官庁の施設が残っておるわけでございます。内閣文庫ですとか、恩給局の関係ですとか、皇宮警察の施設を移さなければいけないものがございます。そういうようないろいろな他官庁の施設等をかわりに別のところにつくられるような関係が、やはり最初に考えられたよりは幾らかおくれがちなものですから、したがって、そこらあたりの整備もおくれるというようなこともありまして、この付属庭園のほうも公開ができるようにきちっと整備するのは、完成するのはややおくれます。しかし、現在鋭意その整備を進行しておるわけでございます。  それから第三のお尋ねの、皇居造営に対する一般の国民の方からの寄付でございますが、三月末現在では五千四百万円ばかりの御寄付がございます。この御寄付の点は、これをどういうふうに使うかという問題がございますが、これは御寄付になった分でこの部分ができたということがわかるようにしたいと思っております。まだどの部分ということはさまっていませんが、最後のほうの仕上げの装飾面あるいはいろいろな設備の面で、この部分を寄付金によってつくるということをきめたいと思っております。そういうような状況でございます。
  48. 永山忠則

    永山委員 予算の不足は鋭意によく政府と折衝されまして、やはり予定どおりすみやかに実現することを期待いたしておきます。  なお、皇居奉仕でございますが、あれは非常に国民も感激いたしてうるわしい別状でございますが、申し込みが非常に多いのでございますから、あれを日にちを四日間を三日くらいに短縮して、回転率をよくして国民の熱意と希望にこたえるようにするということは、どういうようにお考えでございましょうか。
  49. 瓜生順良

    瓜生政府委員 その点はなお十分松村してみたいと思いますが、ある程度の期間――いま四日と考えておりますが、おいでになって少しなれて、そしてお仕事をしていただくというのに、まあ四日くらい来ていただいておりますと、あとのほうは相当なれて仕事をなさっていただいておる、それでよろしいというようなことがあると思いますけれども、しかしごく簡単な部分なら、あるいは三日でどうかというようなこともあるのかもしれませんし、その点はひとつ十分検討してみます。      ――――◇―――――
  50. 河本敏夫

    河本委員長 経済企画庁設置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、これを許します。伊能繁次郎君。
  51. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 今回の経済企画庁設置法改正理由によりますと、「国民生活の安定及び向上に関する総合的な施策を強力に推進するため、経済企画庁国民生活局を設置し、及び国民生活向上対策審議会を改組し、あわせて経済企画庁の職員の定員を増加する等の必要がある。」かように述べておりまするが、この間の事情について、長官に、昨年度も提案され、今年度も提案された基本の趣旨については私どももよく了承できるわけでありますが、とかく新しい役所を設置することによって行き過ぎやら摩擦等も起こりますので、今回の設置の理由について一応詳細に承りたい。
  52. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 御承知のとおり、戦後日本は非常な荒廃の焼土のうちから立ち上がって、当初は国民に対して何とかしてまず安定した食生活を与えるというような必要性から、何よりも経済の復興をはかる、経済の成長をはかるということが急務であったと存じます。また、その後さらに時代の変転とともに、日本が資源に乏しい国柄であるというふうな関係からもいたしまして、どうしても貿易に依存せざるを得ない。しかも開放経済を前にして、開放経済体制に入らなければ貿易のこれ以上の伸展が非常に困難であるというふうな時点に迫られておるというふうな事柄もございましたために、経済の成長ということに経済政策の重点を置いて今日までずっと推進されてきましたことは、御承知のとおりでございます。しかし、国民生活の水準も、また経済の水準も、全体として漸次相当急速度に成長してまいりました。したがって、いわゆる佐藤総理の言われるところの人間尊重の精神と申しますか、経済成長の成果を国民の福祉に結びつけるという面から、国民生活という町から政治を大きく考え直してみる、見直してみるという必要が、非常に強く痛感せられてまいったわけでございます。佐藤総理がいわゆる社会開発ということを言い出された趣旨の根本の精神も、またそこにあろうかと考える次第でございます。もちろんこの事柄は、ここ二、三年前からそういう必要性が漸次国民の間にも要望されてまいりましたし、また政府部内においてもそういう必要性が漸次強く要請されてまいりましたような次第でございまして、そんな関係から三十九年度の予算においてそれが計上され、この委員会に設置法についても提案されましたことは、御承知のとおりでございます。  そういうふうな観点から国民生活全体の様子をながめて見ておりますと、もちろん食生活等については相当な充実を見てまいっております。また、その一部面であるところの教育等の面においては、たとえば大学の入学率、これは同年齢層に対して約二〇%に近い一九一九というふうな率にまでいっておる。高等学校の入学率もまた七〇%に入っておるというような状況でございまして、先進諸国と比べましても、アメリカに次いで非常な高水準にあるという面がございます。また、テレビとかカメラとか電気洗濯機とか、いわゆる耐久消費財の面におきましても、日本は他の先進諸国に比べてむしろ非常な高水準にあるという状態でございます。ただ、それに関連いたしまして非常に欠陥として痛感されます点は、まず第一に住宅の問題、いま一つは、われわれの国民生活がもっと人間らしくと申しますか、健康にして文化的な生活を営むために必要な条件であるところの環境施設、つまり政府または公共団体が施設すべき部面、上下水道とか、その他ごみの処理とか、汚水処理とか、公害防除とか、そういう面についての施設が非常に立ちおくれておるということを、私どもは痛感をいたしておる次第でございます。  それで、そういう面について根本的に検討を加えて、いかにして経済の成長が国民の福祉に円滑に結びつくかという事柄について十分な検討を遂げまして、そうしてこの問題は伊能先生御承知のとおり、各省においてそれぞれ個々にそれぞれの所管事項として処理せられておる事柄でございますが、結果としてそういうふうにアンバランスが出てまいりましたゆえんは、政府全体の立場におけるところの総合調整の面が足りないという点に欠陥があったと認めざるを得ないと思うのでございます。そういう血から、この際国民生活局をつくって、全般的な、どこに重点を置いてやっていくかという面については、積極的に経済企画庁において企画、立案をし、同時に各省の権限に属する問題について、それぞれ総合調整の仕事をきめこまかくやっていきたい、そういうことによっていわゆる経済の成長の成果を国民の福祉に最も適当に結びつけるということをいたしたいのが、今回国民生活局を設置いたしたいということを御提案申し上げました趣旨でございます。
  53. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 ただいまの長官の御説明は、たいへん積極的で、しかも前向きの御議論であるので、その点については私も全幅的に賛成でございますが、具体的な仕事の処理になると、従来必ずしもそういっていないということが非常に遺憾で、私は、経済企画庁設置法第四条、そのうちの十三、十三の二、十四、ことに十四については、経済企画庁設置法第七条に一、二、三、四、五とありますが、そのうちの三に、十四に経済の基本政策云々とありますのを受けて「運輸に関する基本的な政策及び計画の総合調整に関すること。」とあって、いまのお話については、消費者行政、国民生活の安定向上という問題と同時に、同じようにそれぞれの主管の省において仕事をしておるその方面も、同様に取り扱われなければならぬと思うのでございますが、経済企画庁においては、中期経済計画その他つくられましたが、運輸に関する基本的な政策及び計画の総合調整に関する事項計画され、取り扱ったことがあるかどうか、この点を伺いたい。
  54. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 先般、この一月になりまして、かねて総理大臣から諮問されました中期経済計画についての答申が昨年の末にございましたので、その中期経済計画を基本的な考え方として、それぞれ弾力的に運用するという幾つかの条件をつけながら、政府の方針として閣議決定いたしましたことは、御承知のとおりでございます。しこうして、この中期経済計画は、これは総合的な計画でございまして、もちろん運輸関係を全然除外してその計画が成り立ち得るはずはございませんので、運輸に関しても、そういうふうな面を取り入れて、一体として計画をやっております。
  55. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 具体的に運輸に関する幕末的な政策及び計画の総合調整が、企画、立案されましたか。
  56. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 御承知のとおり、中期経済計画は、昭和四十三年度において国際収支のバランスを経常収支においてとるということ、それから消費者物価を年率二・五%に押えていく、その二つの基本的な前提条件をもとにして、それを達成するためには各間の経済運営をいかにしたらいいかということについての答えを求めたような次第でございます。したがって、そういう面からの要請と申しますか、条件が、それぞれその中期経済計画の中に織り込まれておる次第でございます。したがって、そういうふうな精神のもとに織り込まれたのでございますが、具体的にどこにどう書いてあるかという点につきましては、政府委員からひとつ御答弁いたさせたいと思います。
  57. 向坂正男

    ○向坂政府委員 お答えいたします。  中期計画では、一つは、いま長官申されました貿易外収支のうちの海運収支の改善に関連していろいろ見通しをつくり、それに対する政策を立案いたしました。それは、端的に申し上げますれば、外航船の増強によって海運運賃収入の増加をはかるということを基本にして、貿易外収支の改善をはかる。それは五年間に七百四十万トン余の船腹をつくる必要があるということでございます。  そのはか、社会資本の整備に関連しまして、陸上輸送なり、道路あるいは自動車輸送その他の交通体系のいろいろな整備について、どういうふうな方向考えたらいいかということは、社会資本分科会のほうでいろいろ討議いたしまして、それの要約したものを答申にして、それが閣議決定になっております。
  58. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 私が特にこれを伺いましたことは、先般の高度経済成長政策の際にも、海運――さいぜん長官の仰せられた、日本の今後の経済成長の基本は、国際収支、ことに前向きの姿勢においては貿易にある。この点は全面的に賛成でございます。したがって、対外的な問題あるいは経済全般の問題についてはそのとおりであり、今度の中期経済計画についても、貿易外収支、海運関係、海運の増強等についての計画は、やや具体的になっておりまするが、国民生活、ことに消費者行政、この裏づけになる公共投資、公共資本の問題については、陸上交通、なかんずく鉄道、自動車等の交通をどういうように持っていくかというような問題と、その基本の経済成長の問題と、同時に、国民生活局が今後やられようとする政策の面における運賃、料金、公共料金の規制、この問題とは、うらはらになってお進め願わないと、私は、今日のような現状が起こるのではないかと思う。御承知のように、端的に申し上げますれば、すでに経済企画庁等においても大蔵省と御相談の上で手当てをせられておると思いますが、公共料金中、公営企業については、御承知のように、税金も払わなければ、いろいろな面において法人税その他固定資産税等も払わないでも、東京都でもあんな大きな赤字になる。おそらく今回の運賃値上げによって、名古屋がややとんとん、北海道の札幌の交通局が若干息がつける程度で、その他は公営企業依然として赤字である。民間においては、血脈知のように、地方鉄道あるいは地方のトラック、バスいずれも非常な苦難をなめて、無配を何年か続けてきておる。中には、御承知のように、中小私鉄、中小バス、中小トラックが、大企業に買収せられておる。これは、ことばをかえていえば事実上の倒産なんです。やっていけないから大企業に吸収される。具体的な例をあげても、栃木県等においては、まじめにやっておるトラック事業なんか一社、あとはみんな大きな電鉄に買収される。やっていけない。こういうかっこうになっておるわけで、私は、この点で、経済企画庁設置法は、経済企画庁は左の権限を持っておる。ただし、これが施行にあたっては法律に従わなければならない。運輸省設置法第四条においても、運輸省は左の権限を持っておる。その権限を実施する上においては、法律に従わなければならないと書いてある。法律の内容について、道路運送法第八条には「自動車運送事業者は、旅客又は貨物の運賃その他運輸に関する料金を定め、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。」「運輸大臣は、前項の認可をしようとするときは、左の基準によって、これをしなければならない。」と書いてある。その第一号には「能率的な経営の下における適正な原価を償い、且つ、適正な利潤を含むものであること。」と響いてある。ところが、御承知のように、十四年間も運賃が上げられないで、大部分の会社が無配になり、欠損を生じておる。しかも、これは一昨年から昨年の、正月にかけての政府の公共料金の規制ということによって、政府の方針で押えられておる。そうすると、内閣法においても、内閣はもちろんこれは法律に基づいて仕事をしなければならない。こういうような状況で、内閣法第三条、第四条、第八条等にその関連がありますが、そこで私は法制局に伺いたいのでありますが、国の閣議における行政方針によって――この適正な利潤を与えなければならないということ、これは法律の義務事項です。義務事項を行政方針で押え得るかどうか、この点を私は法制局から伺いたいと思います。
  59. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 ただいまの御質疑にまともにお答えするような答弁になりますかどうか、ちょっと自信がございませんが、先生ただいま御指摘になりましたように、内閣法によりまして内閣が行政を執行する責任を持っておりますが、これは憲法の六十五条におきまして、行政権は内閣に属しております。また六十六条の第三項によりまして、内閣は、国会に対して連帯して行政の執行について責任を負うわけでございます。その憲法のもとにおきまして、内閣法第二条において内閣の組織を定めておりますが、その中におきまして、たとえば第六条におきましては、内閣総理大臣は行政各部に対していわゆる指揮監督権を持っておりまして「閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。」ということが規定してございます。また第八条にまいりますと、いわゆる中止権という規定がございまして、内閣総理大臣は行政各部の処分または命令を一時中止をさせまして、内閣の処置によって最終的な決定をするというようなことが規定してございます。このような規定の趣旨からいたしまして、たとえば道路運送法に基づきまして運輸大臣権限を行使されるわけでございますが、その権限の行使につきましても、重要な事項、国会に対して責任を負わなければならない内閣として、これは国政の基本にかかわる重天な問題であるというように認定をされる場合におきましては、その権限の行使につきましても、ただいま申し上げましたような憲法とか内閣法等の規定の趣旨に従いまして総合的な監督をされるわけでございます。その監督の方針といたしまして、先般来いろいろ閣議了解とか閣議決定によりまして、道路運送法のみならず、およそ公共料金に関する処分につきましては、一定の拘束が加えられたわけでございますが、この拘束といえども、ただいま先生御指摘のございました道路運送法の第八条第二項におきまして、自動車運送事業の運賃、料金の認可の基準が規定してございますが、この認可の基準は、これは法律上の基準でございまして、認可をするにあたりましては、当然その基準に従って処理をしなければならない。ただ、その基準に従って処理をするにあたって、運輸大臣がものごとをいかに考えるかということにつきまして、内閣の行政統一保持のために調整に服するということだろうと思います。
  60. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 御説明はそのとおりだろうと思いますが、具体的な問題について入ってまいりたいと思いますが、内閣の調整に服さなければならないということと法律の義務事項との限界が、どこにあるか。と同時に、総合調整とは具体的にどういう範囲をいうものであるかということを、法律上の御説明を願いたい。
  61. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 これは個別具体的な行政の問題としてあるいは原局のほうからお答えいただいたほうがいいかもしれませんが、法律的に抽象的に申し上げますならば、この第八条第二項の基準に従いまして運輸大臣が処分をされる場合におきまして、先ほど御指摘のございました「能率的な経営の下における適正な原価を償い、且つ、適正な利潤を含むものであること。」ということの認定につきましても、運輸大臣が一定の認定をされるわけでございますが、その認定のしかたにつきまして内閣としての総合調整が働くということであろうと思います。もちろん総合調整といたしましても、法律によりまして基準が定まっておりますわけでございますから、その基準の範囲内におきまして、いかなる認定をなすかということについて総合調整が行なわれるわけでございます。おのずからそこには限界があるということになると思います。ただ、事は抽象的な字句の解釈の問題でございまして、「能率的な経営と申しましても、何をもって具体的に能率的な経営と言うか、これは私、法制局でございますので、詳細なことは存じませんが、その経営の内容分析をいたしまして、はたしてこれで能率的なものであるかどうかということについて、当然認定が行なわれるものと思います。また「適正な利潤を含む」という字句につきましても、その適正な程度はいかなるものであるかということは、諸般の経済的な条件をいろいろ比較勘案いたしまして決定されるわけでございますので、その間にはおのずから若干のいわゆる法規裁量の余地があるわけでございます。その法規裁量の範囲内におきまして、いかに具体的に運賃なり料金なりを決定するかということにつきましての総合調整でございます。したがいまして、抽象的には、法律の定める基準の範囲内に決定をせられるということでございます。  それから次に、総合調整の問題でございますが、これも具体的な説明は非常に困難な問題でございますが、ある一定の事柄が行なわれるにつきまして、バスの料金というものを一つの事柄として取り上げるのでなしに、バスの料金につきましても、個々の会社の問題ではなしに、総合的にものごとを見る、またバスの料金ということばかりでなく、およそ自動車運送事業全般としてものごとを考える。さらに自動車運送事業というようなものに限定をしないで、先ほど来問題になっておりますように、公共料金全般についてこれが整斉と統一をされたものでなければならない。その当時におきまする国の経済政策の全般から見まして、一つの斉一な方向に向かっておるものでなければならないというようにものごとを取り進めるということが、総合調整の意味であろうと存じます。
  62. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 たいへんよくわかりました。私も、いまの法制局の御見解には全面的に賛成でございます。  道路運送法弟八条第二項第一号、この認定は運輸大臣がやる。能率的経営の問題、適正利潤の問題、これは当然だろうと思います。したがって、その前提のもとに内閣において経済企画庁が総合調整をやられる。総合調整をやられる際には、一官職だけの観点からやられるべきではない。同種事業全般についてなされ、さらに同種事業全般でなくて、広く交通機関全般、さらに全体の経済の一環からこの種のものをどう取り扱うかということに行なわれなければならない。私はそのとおりだろうと存じますが、現在の総合調整のやり方については、必ずもさように行なわれていないというところに問題があるわけであります。したがって、法案が通りますれば国民生活局、今日の調整局において、ただいま法制局が御説明をせられたところとどうも違う取り扱いをしておられるように私ども理解しておりますが、今日までの調整局のこの種の問題の取り扱いについて、どういう御処りをされておるか、伺いたい。
  63. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 伊能先生よく御承知のとおり、昭和三十六年度から三年度間、引き続いて日本は非常な消費者物価の高度の上昇を見てまいったわけであります。それで物価と賃金との悪循環を何とかして断ち切りたいということが政府の非常に重要な課題になっておったことは、伊能先生御存じのとおりであると思います。そういうふうな観点から、政府の措置が純理論的に言えば、必ずしもそういうことがあってしかるべきかどうかという点についていろいろ御批判があり得たかとも存ずるのでございますが、しかし、何とかして消費者物価の上昇とそれから賃金との悪循環を断ち切って、そして斉合性のある経済政策に持っていきたいというところから、ああいうふうな処置がとられたものと考えております。しこうして今年に入りまして一年間の公共料金ストップという措置を一応期限がまいりましたので、今年の一月にあらためて以後の物価に対するところの対策を十項目にわたって閣議決定をいたした次第でございます。もちろんその前におきましても、昨年の公共料金をストップするという場合におきましても、中小企業等でもって経営の困難なるものについては特に別途に考慮するというただし書きをつけておりましたので、それに準じて最小限度のものはそれぞれ措置してきたつもりではございますが、もちろん企業をやっておられる方々からごらんになれば、非常に十分ではなかったというふうな感じがあり得ると存じます。しかしながら、とにかく国全体の政策として何とかして物価を安定的な基調に持っていたい――これはもちろん物価だけをとらえて、物価だけを責めたって、これはなかなかできるものではありません。経済政策全般の立場から、言いかえば佐藤総理からいつも御答弁申し上げておりますとおり、経済の成長を安定的な基調に持っていくということが、根本でございます。そういうふうな根本の政策をとりながら、また同時に個別的な政策として物価対策を相当強い姿勢でもってやっていきたい。何と申しましても、物価について政府権限を持っている問題について、政府が相当物価に対して雨天な関心を持ち、これに対してあらゆる施策をやっているのだというお手本を示すことによって、全般的な物価上昇のムードを断ち切っていきたい。そういうふうな観点から、一年間の公共料金の停止という問題は、これは全部やめたわけでございますが、公共料金を必要最小限度の程度に抑制していくというこの考え方そのものは変えませんで、したがって、ケースバイケースということばを用いておるのでございますが、これは何もそう突っ込んでシビアーにやろうという趣旨ではございませんで、ケース、バイケースに一件一件それほど政府が重大に問題を考えて、政府の姿勢としてそういうふうな態度をとっていくのだという考え方を政治の上にあらわしたいという観点から、ケースバイケースという考え方を閣議決定の上にもはっきりと明示をいたしておるような次第でございます。したがって、そういう点についてあるいは外からごらんになりますれば、ぎくしゃくした感じが出てくる点もあろうかとは存じますが、そういうふうな精神でもってそういうふうな態度をとっておるということを特にひとつ御了承願いたいと思います。  それから先ほど法制局から御答弁申し上げましたとおり、それはどこまでも内閣の内部関係の問題でございまして、権限はどこまでも運輸大臣にある。そして運輸大臣は、道路運送法の八条に規定されておるところのこの要件に従って行なわれるということは、これまた当然のことなのでございます。そういう精神で、そういうふうな考え方のもとに、経済企画庁としては総合調整の妙を発揮しているということを、これは伊能先生に対してはなはだ失礼なことばではございますが、そういうふうな精神でやっているということを前提としておくみ取りおきをお願いいたしたいと存じます。
  64. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 いまの長官のお話で、私もよくわかるわけでございます。そこで事務当局から御説明は伺わないことにいたしますが、第八条の取り扱いについてはあくまで運輸省が責任を持ってやる、あとの問題は政府部内の内閣の総合調整であるということについてもわかりますし、また個々のものについてまでそうこまかく触れるつもりはないが、問題はケースバイケースでやらなければこの重大な難局が乗り切れないという気持ちも、私どもよくわかるわけでございます。そこでただいま長官から、物価と賃金との悪循環を断ち切りたいのだという非常な勇断的な御決意も伺いましたが、結果としては国家公務員地方公務員、またその他の産業、ことにいわゆる公共事業、交通等に関する公共事業については、国鉄をはじめ民間私鉄総連、あるいは国鉄労働組合、国家公務員地方公務員等年々相当な額が上げられ、そのあおりを中小の各業者は受けるわけでございます。その結果が、常に非常な大きな人件費の負担となって、中小の業者が非常に困難をしておる。六大都市等については、去年あたりからついに赤字経営だというようなところまで――大きな六大都市の交通関係、公共事業というものは持ちこたえる力があります。したがって、私どももある程度了承できますが、中小のものは、それではとてもやっていかれない。たとえば例を申し上げますが、北陛の北陣鉄道のごとき、毎年あの三億か四億の会社が六億の赤字を出しておる。こういうところについてまでも今回の公共料金の規制によって一律に扱われたのでは、これは私はケースバイケースにならない、かように考えるわけでございます。したがって、私どもとしては、こういう問題についてはあくまでも政府部内において、経済企画庁と運輸省がもう少し全体の観点から御相談を願う。あくまでしゃにむに押える――たとえば先般、去年のあの一年間のストップに対して業者が監督官庁を相手に訴訟を起こすというようなことは、これは血を吐くような思いであろうと思います。監督官庁、指導を受け保護を受ける、助長行政上保護を受ける政府に対して訴訟を起こすというようなことは、私は今日まであまり事例を見ないのじゃないか。そこまで業者としては追い詰められた気持ちになる。幸いにして判決も出、その後においては、それ以上争うことは政府対業者間のとるべき措置ではないということで、みずから訴訟を取り下げるというようなことで事態の円満解決をわれわれもはかったわけでございますが、御承知のように、全般の問題というお話ですが、今日物価の上昇の全般を見ましても、公共料金のうち最も引き上げ率の低いものは、交通公共料金でございます。ほかのもの、郵便切手のごとき、電話料のごときと比べて、交通料金は、戦前に比ベて、昭和十一年を基準として百五十四倍、これよりも低いものはたった一つありますことを私は記憶しておりますが、いま具体的な事例を忘れましたが、こういうような状態で、賃金その他非常な上昇をしておる。中小の問題ほど強い影響を受ける。現に国会においても、また政府においても、中小私鉄バスに対する対策委員会をつくってこの問題を処理しなければいけないのじゃないかというような方向にまいっております。鉄道、通運、トラック、バス、いずれも共通です。そこで私が申し上げたいことは、将来の中期経済計画、社会資本の充実ということを長官は仰せられましたが、この種の事業は、社会資本の充実どころではありません。現在各地で商売にならぬところの路線は、一日十往復であったものを 五往復に減らす、三往復に減らす。これではもう公共の利便にお役に立たない。こういうような結果で、かろうじて公共の利便を犠牲にして会社が何とか赤字を少なくしなければならない、こういう状況になっております。この点をひとつぜひ御勘考をいただきまして、今後の問題として私は前向きでお願いもし、お尋ねもしたいのでありまするが、いわゆる総合調整、さいぜん法制局からも、長官自体からもお話がありましたので、こういう問題については、ひとつ長官の言明どおりに御処理がいただきたい。それからまた、昨年の例、具体的な例を申して恐縮ですが、昨年ガソリン、軽油の価格の問題が起こったときに、公正取引委員会は両業者――石油業者、交通業者を家宅捜査までやって調査をしました。そういう荒っぽいことをやり、運輸省は、政府間において、この問題について、経済企画庁にも、運賃を十数年ストップして、そうして油の値上げをやる、こういう問題は、いわゆる総合調整の観点からぜひ調整をしてもらいたいということを話をしたのですが、遺憾ながら、経済企画庁はこういう問題については総合調整をなさらない。私は、かくのごとき場合においてこそ、大企業者である製油業者もしくはその出先である油販売業者といわゆる交通業者との関係について調整をせられてしかるべきだと思うのですが、こういう問題については総合調整の実を発揮せられないで、一方的に上げられる。しかも、あくまで上げることをやっていけないからがえんじないということになると、強制召喚をしたり家宅捜査、現実にそうです。これは長官、おそらく御存じない。私は公正取引委員会の渡邊委員長を国会に呼んで、この点をただしました。そうしたところが、交通業者については、東京の九社の責任者を呼んだり家宅捜索をしたが、油の関係は多いから、二十六社を呼んだり家宅捜索をしてやりました、こういうようなことを言っておりますが、結果一方的に値上げをした。こういうようなことでは、総合調整の実は上がっていないで、ただ弱いものだけが公共料金一年ストップとか、あるいはその他の政府政策の犠牲になる。それでは、これに対する助成措置があるかといえば、何にもありません。戦前においては、地方鉄道等については、当時七百五十万円、いまの金に換算いたしますと三十数億の助成金、補助金があった。今日交通業者に対しては何にもありません。ただ犠牲だけです。これではほんとうの長官の言う全体の調和のとれた社会の発展、国民生活の安定向上というものが期せられないということになるので、この点について特に公共料金中、公共交通料金だけが百五十四倍に押えられて、その他のものは、ひどいのは九百倍というようなことになっておるので、こういう点の総合調整については、さいぜんの御指摘のように、全般の見地からやっていただかなければならぬ。交通公共料金、バスに例をとりましても、六大都市のようなところ、それから一般地方の交通、それから山地帯、それから雪国地帯、この四つに大体分数されて運賃というものがきめられておるわけです。したがって、その運賃の基本的なワク、これはさいぜん法制局からも御指示がありました。現に道路運送法の第八条の第三項にその点の一部が触れられておりまするが、あくまで六大都市のような交通量の多いところはこういう基準、また、一般地方交通についてはこの程度の運賃基準、山間僻地の非常に交通量が少なくて、しかも経営費のかかるようなところにおいてはこの程度の基準、また冬四月も五月も交通のできないようなところにおいてはこういう運賃基準というものがきめられている。そういう基準に基づいて、私は総合調整がせられなければならぬと思う。個々の八会社を、おまえのところは経営がいいから押えるのだというのが、いまの調整局の現状です。具体的に申し上げますと、先般上がった北海道中央バス、あるいは栃木の関東バス、あるいは岡山の宇野自動車、これらは日本で典型的な、模範的な労務管理と経営をやっておって、日本の乗り合い交通事業の模範とされている。ところが、おまえのところはまだどうやら赤字を出さないから上げないといって、四年目の最後に残された。私は、これは全体の指導上――しかも六大都市とは違います。六大都市であれば、私は若干弱小のものであっても、六大都市という一つの規制のもとに入らなければならぬから、了とする面があります。ところが、北海道だとか、関東乗り合いだとか、あるいは岡山の宇野自動車というようなところは、赤字を出さないから押えるというようなことで、四年間の運賃値上げの契機において、昨年の正月の運賃ストップにかかったからということで、さらに一年延ばされて、ついに赤字を出さざるを得ないというすれすれのところになった。これでは事業に対する意欲と経営者の責任というものが果たせない。こういう問題について、ただいま私が言ったような一定の運輸省の基準、四つの基準、その基準に基づいて道路運送法弟八条第二項並びに第三項によりそういう問題について調整をしていただくことが、ほんとうの内閣の物価に対する総合調整だろう。個々のく会社一つ一つについて運輸省の運賃査定と同じことをもう一ぺん調整局でやられる、これでは、私は少しこの法律の精神、運輸省設置法第四条、経済企画庁設置法第四条の法律を守らなければいけないという精神から逸脱しているのではないか、かように考える次第ですが、この点についての長官のひとつ明快な御回答を重ねてお願いいたします。
  65. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 伊能先生も御承知のとおり、運輸省関係の交通業というのは、どちらかと申しますと、労賃の占める割合が非常に大きい企業でございます。しこうして、合理化ということを申しましても、なかなか合理化の困難な業種であること、これは私も十分承知をいたしているのでございます。しかしながら、先ほども申しましたとおり、何ぶんにも政府権限を持っているものについて、政府の姿勢に関する問題というふうな点から、難きを忍んで御協力をお願い申し上げている事情は、ひとつ御了承願っておきたいと存じます。しこうして、そういうふうな事業の中にも、その業績にかかわらず、実は最近は賃金所得の平準化の傾向が非常に強いというようなことのために、赤字が出ても賃金を上げざるを得なかったというふうな事態の存在していることも、また事実として認めざるを得ない、かように考えます。それで、先ほど御指摘になりましたように、非常に模範的な、そういうふうな面について経営をしておられる、合理化努力をしておられる、能率的な経営をしておられるというものについて、その調整が十分にでき得ないということがあるいはあったかと存じますが、そういう点は、これは十分に経済企画庁としても留意を要する点であろうと存じます。これはもちろん運輸省が責任を持って、そういう点について十分自信を持ち、御主張あってしかるべき点であろうかと存じます。ただ全体としての姿勢から申しまして、総合調整ということをやる、また物価の問題にこれほど政府がつらい立場に立ちながら決意をしておるのだという姿勢を示したいというような面から、多少の行き過ぎがあるいはあったかと存じますが、そういう点はそういうような精神の点から御了承のほどお願いいたしたいと存じます。  なお、これは権限規定を申し上げるわけではございませんが、このような観点から、経済企画庁の組織令の第十一条第二号におきましては、「重要物資等の価格等の調整に関すること。」ということが掲示されてございまして、そういう点について私ども二重行政をやるというような意思は毛頭ございません。どこまでも運輸省の御賛成を得て、内閣全体としての総合調整をやっていく、こういう立場に立っておるのでございまして、経済企画庁が強制するとかまたはしゃにむに無理押しをするという考え方をとるということは毛頭ないことを、この際特に申し上げておきたいと思います。
  66. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 最後に私重ねてお尋ねをいたしますが、経済企画が中期経済計画とかいろいろな総合計画を策定せられる際に、物価を抑制されるということは当然のことであります。ただ、それによってある特殊なものにだけ犠牲を与え、また社会資本の充実上支障を生ずる――政府襲業は、これは政府で常に全体を見ておられるからおくれながらもどうやら追いついていく。民間においては、こういうことで規制をされると、外へ逃げる道がない。どうしても低利で金を借りるか何らかの助成方法がなければ、やっていけないわけです。そこで御承知のように、公営交通事業については、利子補給その他で数十億の金が出される、民間は赤字を出しても野放しである、こういうことでは――私は経済計画自体についても、この規制の裏づけには、こういう面については何らか低利資金その他でやっていける道を講じなければいかぬ。国鉄のごときは、固定資産税は半分になっておる。あるいは船舶のごときも、同様にいろいろな減免税の措置がとられる。こういうドラスチックな措置をやる際には、いやしくも公共料金、公共事業として規制する場合には、私はやはりその裏づけの何らかの方途を計画の中で一方においてはきめこまかく書いて、それがどういう形で実現するかしないかは問題としても、全体として計画にはその裏づけをして、これならやっていけるのだということをおやりにならぬと、ただ一方的に規制の方面だけを計画されたのでは、犠牲を受けるほうの面が息が詰まってしまうということになりますので、今後の経済企画庁の経済計画設定に対して、ことに運輸等については、当面の国際収支、海上運送等についてはある程度のものはつくられますが、全般のものについては、過去においてもほとんどつくられていないし、今回の中期計画においても、さいぜん御説明はございましたが、私どもから見たら、失礼ながら計画にはなっていない、かように考えますので、こういう点についても、ひとつ全体としてまとまりのとれた御計画をぜひ策定していただきたい、かようにお願いをして、この点についてのお尋ねもあわせて御回答願います。
  67. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 伊能先生は、運輸についての専門家でいらっしゃるから、あるいは私の記憶間違いかもしれませんが、地方鉄道については、補助をなし得る規定は存在しておるはずでございます。しかしながら、現実の予算の措置としてそれが行なわれているかということは、最近わずかばかりあったようでございますが、あまり行なわれていない。それで、先ほど御指摘のございましたとおり、地方鉄道等につきましては、相当条件の悪いところであって、しかも国民の利便のために、つまり公共のためにその運輸事業を実行しなければならぬという点も相当あり得る、かように考えておるわけでございます。私どものほうの主管の問題で、離島振興法の問題でございますが、離島振興等におきましては、そういうふうな点も十分に配慮いたしておる次第でございます。責任のがれを申し上げるわけではございませんが、運輸行政としては、運輸省が積極的にそういう点をお取り上げ願って、そして御相談願うという形において、私どもはそのただいまの御指摘の点については十分よくわかる次第でございますので、そういうふうな方向で、今後、だれかが、つまり一部の方々だけが国策の犠牲になるような形じゃなしに、全体が円満にまとまっていくという方向に持っていきたい、かように考えておる次第でございます。
  68. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 今日の経済企画庁長官の御答弁につきましては、私は全体的に満足でございますので、これで質問を終わる次第でございます。      ――――◇―――――
  69. 河本敏夫

    河本委員長 大蔵省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑を行ないます。質疑の申し出がありますので、これを許します。受田新吉君。
  70. 受田新吉

    受田委員 事務当局にまずお尋ねしておきます。  今度の改正案の中で一番方を入れておられるのは、銀行局の下に保険部を加えるということです。保険行政にたいへんな力を入れておられる意欲はわかるのでございまするが、きのう堀委員からお尋ねされた問題に、なお釈然としない私自身の質問点を加えて御答弁を願いたいのです。保険行政の中で生命保険量業と損害保険事業が柱をなしているわけでございますけれども、その保険というものが、日本の場合は、何だか保険業者そのものがばかにてんてこ舞いをして、被保険者を獲得するためにかけ回っている、こういう形態は、正常であると思うかどうか、お答え願いたいのです。
  71. 中込達雄

    ○中込説明員 お答えいたします。  保険は、なかなか契約者が進んで入るという形態になっておりませんものでございますから、戦前から募集人をたくさん置いて募集するという形態を生保のほうはとっております。損保のほうは、これは代理店というかっこうでやられておるわけでございます。この募集人の形態につきましては、先生の御指摘のように、非常に募集活動が盛んといいますか、非常に磁極的過ぎまして、契約者に不評判の面がなきにしもあらずでありまして、また募集人はいま登録制度をとっておりますが、その人数が非常にたくさんでございまして、約五十八万人くらいございますが、これが年間の就職とそれから落ちる率というものが多うございますので、この点に関しまして、私どもも業界も約一年間いろいろ検討いたしまして、最近の審議会においてもこれを討議して、何らかいい方策を出したい、こういうように考えておる次第であります。
  72. 受田新吉

    受田委員 中込課長さんとは、昨年逓信委員会で、長時間にわたって保険業のあり方について大いに議論さしてもらったのです。当時課長からお答えいただいた問題点の解決も、いまお答え願っていることはその一部だろうと思うのです。私昨年特に指摘したことは、民間保険、生命保険の場合に、外務職員なるものを特にばかに大量採用、大量首切り――五十何万人のうちで半数以上は一年で交代するという異常の実情をどう打開するかを私お尋ねしておきました。その問題を検討されたという意味ですか。
  73. 中込達雄

    ○中込説明員 そうでございます。
  74. 受田新吉

    受田委員 私はその際申し上げたのは、外務職員の身分が安定しない。外務職員になったときから大体半年か一年くらいは親戚、知人などをかけ回っていけば、契約者や被保険者をつかまえることはやや楽ですが、その時期を過ぎると、縁切りになって実績が上がらぬともう首を切る、こういう行き方では、他の業界のように安定した地位が確保できない。終始不安にさらされ、しかも上司から叱咤激励されて苦痛を耐え忍んで仕事に当たっておるというようなみじめな状態である。したがって、五十五万人とかおっしゃったのですが、その五十五万人の外務職員の半数以上の三十万もが一年に交代するような悲劇を、こういう業界はほかにないのですから、どう直すかについては、外務職員の身分の安定、つまり基礎給というものを安定させるという方法が一つある。その基礎給を高い水準に置く。私が去年申し上げて以後に、その実績をあげた会社がありますかどうですか、具体的な例があればお示し願いたい。
  75. 中込達雄

    ○中込説明員 先生のおっしゃるような方向で協会のほうでも検討しておりまして、各社の中では、名前をあげてあれでありますが、日本生命あたりは、固定給四万円、そういう外務員をつくる。また、ほかにも幾つかそういう固定給を上げて専門的にする、そのためにとった外務員を登録はすぐしますが、すぐ実働に出さないで、十分教育して高いレベルにしてからこれにある程度の身分保障をしてやる、こういう傾向をとってきておる会社が、すでに数社あります。そのほかに、現在協会のほうから大体の答えが来ておりますが、それに基づきますと、要するに、採用いたしますが、その採用が一千八年から試験制度をとりまして採用いたしておりますけれども、どうしても採用するとすぐ使いたくなるわけでございます。使って三月、半年というところが一番脱落が多いわけでございます。そこでその間に十分見きわめて、長く使える者についてそれ相応の報酬を与えたい。それからとってすぐ使う間は、これは見習い期間である。できたら専門の者につけて募集するように、しかしその間に全然報酬を与えないというわけにいかないので、最低の報酬を保障するという案も考えられるではないかというようなことで、現に各社で検討しておる次第でございます。
  76. 受田新吉

    受田委員 簡易保険の契約後、大体二年くらいを基準にしての解約率というものは数%である。ところが民間保険のほうは、契約後二年以内に、昨年のお話しでは三割前後解約者があるようにお答えいただいたような記憶があるのですが、現在もそういう情勢ですか。
  77. 中込達雄

    ○中込説明員 はい。
  78. 受田新吉

    受田委員 ちょっとその数字をお示しいただきたい。
  79. 中込達雄

    ○中込説明員 お答えいたします。  これは計数のとり方があれでございますが、新契約に対する解約でございますが、それは金額にして、年間でございますが、二八%でございます。二年のところは現在手持ちがございませんが、少しふえまして、三二%くらいになるのではないかと思います。
  80. 受田新吉

    受田委員 大臣、大体一年か二年か――保険に入って二年のところは三二%、三分の一は解約しておるのです。たいへんな無理をして保険に加入しているわけですね。こういう実態が日本の保険業外の姿なんですね。これはあさましい話なんです、私自身も、きのう委員から指摘された問題によく似たようなものもあるのですが、私のところへもずいぶん御紹介をして入ったが、ついにかけ得ないで投げ捨てたという、逆に恨みを言われてくることがたくさん出てくる。こういうことになると、無理やりに甘言を弄して加入して、そして一たび契約者あるいは被保険者になった。事実はいまのような――特に勤労者の場合、低収入で高額の保険をかけておる現状、そこでさじを投げる、それで三割投げ捨てだ。その初期の掛け金を、何ら配当のないところの一番高い掛金、それを募集費等に振り当てるような、結果的にはそういう姿になってくる。だから、保険業者が成り立っているのは、最初の一、二回を投げ捨ててくれる人が多いほど助かるということになる。こういう異常な保険契約というものが、日本の現状にいまちゃんとそびえているのでございますが、その監督責任にあられる大臣として、これをどう判断されますか。
  81. 田中角榮

    ○田中国務大臣 御指摘のとおりでございまして、外務員制度をより合理的なものにしなければならないということで、いま業界も政府検討いたしておるわけでございます。そういう面、より合理的な保険制度つくりたいという一環として、ひとつ保険部もつくってもらいたい、こういう考え方もあるわけでございます。外務員制度は確かに問題がございまして、固定給を上げる、またいままでのような考え方だけではなく、継続給付というように、いわゆるずっと継続をした者に対しての利益と外務員に分配をするというような方法がとれないのか。また、これは仕事が、定年で退職をしたような方々が外務員をやるというようなことだけではなく、ひとつ大学を出た人がストレートに外務員になる、こういう一つの方向を十分確立しなければならない。保険会社も、こういう問題に対しては、どうすればいいのかということで非常に研究をしておるわけであります。でありますから、今度大蔵省でも登録制度をとりましたし、より合理的なものにしなければならないということで検討をいたしておるわけであります。しかし、いろいろ結果的に、御指摘になるといま言われたとおりでございますが、日本の保険の成り立ち、歴史、沿革というものが、そういう制度の中で今日が築かれてきたわけであります。一時は金融機関でも、預金を集めるのに歩合制度でもって集めた過去がございます。ところが、だんだんとそういうことがなくなって、どこかの銀行でそういうものがありましたが、現在は歩合制度というようなものはおおむね全部解消されて、現在の金融制度は成り立っておるわけであります。保険の契約員というものは自由な職業であるという観念に立っておったので、甘言をもって加入せしむる――ではなく、義理人情にからんで加入してもらう、そうしてその限度がくると脱落してくる、こういうことが実情でございます。あなたのところにも、私のところにも、選挙区からたくさん参ります。こういうことは困るのであって、保険というものが、昔の、新聞社と保険は困るといった時代から、新聞はもう非常に公器である、生活の中でもって新聞は絶対的必要なものである、こういうことになったんですが、保険はどうもまだ日本人自体、貯金というものと違って、保険に対する観念に進歩がないというところもございます。進歩がないというのは、これは行政上も国民指導しなかったという責めもあると思いますが、いずれにしましても、保険というものに対する観念そのものから変えていかなければならぬわけであります。むずかしい問題ではありますが、外務員というものは専門職であって、場つなぎとか腰かけで外務員が成り立っておっては困るということで、合理的な外務員制度をつくってまいりたいという考えでございます。保険自身も、外務員が保険契約をするからこそ保険会社が成り立つので、保険会社は外務員が一番大切なわけでありますが、保険事業でも、社長とか内勤社員が幅をきかしているというところに問題があるわけでございます。でありますので、いま御指摘になったような実情を十分把握しながら、合理的な保険制度の確立ということに努力をしていかなければならないと思います。
  82. 受田新吉

    受田委員 大臣がいますなおに御答弁いただいた中で、外務員が一番大事なんだ、それで会社は成り立っておるのだ。にもかかわらず、責任地位に立っている諸君がのさばっている傾向がある、そういうところに問題があるのだと言った。これは私も同感です。特に生命保険の場合は、相互会社というのができておる。大半が相互会社です。相互会社というのは、全社員がみな打って一丸となって会社を盛り立てるという形になっている。株式組織じゃないから、株主じゃない。その相互会社を形成している大半の保険業者が、実は株式組織と同じような形態の運営をしている。そこに問題があるのです。どうですか。相互組織というものを守り得ないものについては、もうこれは立法の精神を逸脱している分については適当な処分をされるように、大蔵省が監督権を持っておるのでございますから、行政監督の実効をあげるような厳重な御処置をされちゃいかがですかね。
  83. 田中角榮

    ○田中国務大臣 相互会社は、戦後とられた形態でございます。相互会社というものは、理論的には非常にりっぱなものでございます。非常にりっぱなものです。保険という制度の中では相互会社は理論的には一番いいのですが、中を見てみると、もう社長は永久社長というような制度も確立されるわけであります。相互会社がいいのか、それとも相互会社よりも株式会社がいいのか、こういうものもひとつ根本的に検討しなさいということで、私が大蔵省に参りました第一番目の発言として、そういうことをやっておるわけです。同時に、それだけではなく、生命保険会社の中にも、小さな、業績があまりあがらないのですが、古い資産を持っていま株式会社をやっているものもあるのです。大正生命等も株式会社であります。平和生命も株式会社だと思います。もっと実情に合うようにできないか、相互会社自身に対しても、業界でも検討してもらいたいということを、生命保険協会でも私が発言しております。三年近くたちましたら、相互会社でいいと思いますが、というようなことを私の耳にも入れておりますけれども、どうも批判が多いから、もっと政府検討するし、業界自体でも検討してもらうようにということで、いま努力をしておるわけであります。
  84. 受田新吉

    受田委員 業界自体でも、政府の部内においても、一緒に力になり合って検討しようということですから、それを了とします。お説のとおり、保障部を新しくつくるのにも、そういう問題の解決をはかる強力な意思表示があるのだ。その意味でも、これは保険部に大いに活動してもらわなければならぬ。  ただ、民間保険と簡易保険とを比べてみて、民間保険のほうが加入の手続がめんどうであるというか、有審査が本体である。簡易保険のほうは無審査である。それから途中で金が要るような場合に、証券担保の貸し付けをする場合に、民間保険のほうは八分という高い利率をとっておる簡易保険のほうは六分で済ましておる。低利簡便に金が借りられる。いろいろな点で簡易保険のほうに魅力がある。しかも最高制限額を百万円まで、前郵政大臣として田中先生が御容認になっておる。こういうようなところで、おおむね百万くらいのところまでは簡易保険でいいじゃないかという非常に安心感、相手は日の丸だ、国家だというようなところもあるし、そういう手続も簡便な、融通資金を必要とするときには、低利で貸してもらえる、いろいろな点で簡易保険の長所というものが、国民に一応浸透しているから、簡易保険のほうは二年くらいたって後にも、解約率が五%か六%かという民間保険の六分の一か七分の一という低率の解約率です。それから無理やりに加入をしておらない。生活の実態に即した、生活を限度に保険加入をしておる。こういうこともあるわけです。  大蔵事務当局でけっこうですが、解約率が非常に多いということは、生活の実態、経済生活にマッチしない高額の保険をかけてきたというところが、大きな原因になっていると思いませんか。
  85. 中込達雄

    ○中込説明員 私どもの調べでは、必ずしも高額のものが解約になっているとは限りません。やはりおっしゃるように、多少無理な契約があるということは考えられます。たとえば夫の留守に契約をしておったが、夫が帰ったときにやめろと言ったからやめたとか、あるいは無理ないというようなものもございます。たとえば急に病気になってしまって、掛け金ができないからというようなものもございます。あるいはカフェーとかなんとか、そういうようなところのホステスみたいな者もございますが、そういうのは住所が転々として、次に集金に行ったときにはいなくなってしまう、そしてやがて消えてしまう、こういうような例もございます。そこで、アメリカあたりでも一割くらいの脱落があるわけです。大体年間三割くらい脱落になるわけでございますが、その一割くらいは、どうしても個人の理由としてあり得るものでございます。そこで私どもの目標としては、まず第一に二割くらいの脱落に押えよう、そこまでまずいこうというような研究をしておるわけでございます。
  86. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いろいろの理屈は言いますけれども、これは外務員制度の中の欠陥があらわれておるわけであります。それに対して解約率の非常に多いのは、やはり義理人情にからんで、一回掛け捨ててもしようがないからやろう、こういう契約が大体みんなはずれておるわけであります。でありますから、こういうものをなくする具体的な問題としては――会社自体も業績主義であります。一人当たり幾らあったか、会社全体で幾らあったかというような業績主義でもって競争する。こういうところに問題がありまして、今度の行政指導というのは、外務員を登録制度にしたり、また地位を確保してやったり、いろいろな問題はありますが、会社の実績に対しましても、解約率が少ないほど優秀な会社だ、こういう一つの方向を確立しないと、会社自身がその業績をあげることだけに暴走する、こういうことになるわけであります。でありますから、簡易生命保険のように、国民の中に全く入り込んでしまって、非常に身近なものの考え方に立っておる。簡易生命保険との相違はそこにあるわけでありまして、業績主義よりも、良質の契約をとる、継続率ということを主にして考えなければいかぬ。そうなると、外務員に対する給与体系も、業績によってだけ払うということではなく、継続率によって、継続した利益を分配するという方式に変わっていかなければならぬわけであります。こういう問題も、十分実情に合うように検討しなければならぬと思います。
  87. 受田新吉

    受田委員 大臣、なかなかあなたは政策家としてりっぱですね。いまのおしまいの点、まことに当を得ておると思います。私そのことを考えておったのです。  そこで、中小の保険業者といえども、そうした解約率の少ない、まじめな運営をしているものには、何かの表彰制度でもおとりになって、ある基準以上にいった場合には、それを称賛するという方式をおとりになるような行き方は、お考えになりませんか。
  88. 田中角榮

    ○田中国務大臣 表彰しなくても、行政の目標というものは、いつでも良質な契約の獲得ということであります。国民から、解約ということを前提にしまして、業績さえあがれば、大体その三〇%というものは解約になる、この解約は返戻金もないのだから、これで月給を払っていける、こういうことを許さないような行政方針を立てれば、そういうことは解消されていくわけであります。
  89. 受田新吉

    受田委員 最初の一、二回の掛け金で宣伝費や職員の給与をまかなうような、ほんとうに悲惨な現象を抹殺するために、この際、保険業界のあり方に根本的なメスを入れる必要があると思います。特に相互会社という形態を持っている会社に、社長、重役というようなものが株式会社と同じような形でのさばっているような姿は、だれが見ても――保険会社などといって、相互会社を名のっておって、一方では悲惨な実態で外務職員がかけ回っておる。一方では社長、重役は、株式会社の社長、重役のような形をとっている。これは何とか早く根本的に改めて、社長、重役も一社員、一外務員ということでぽんぽんかけ回るように、そうしてほんとうに大衆に親しまれる保険会社になるように――でっかい建物で社長室にのさばるような、こういう姿の中に大衆の零細資金がかけられている。一、三回でかけ捨てられておる。それを犠牲にして、そういう特定の者がいばるような形態は、私は民主主義国家として嘆かわしい姿だと思うのです。これを保険部ができた機会に徹底的にメスを入れていただきたい。  それから社員総代会なるものが一応ある。この中に代表者を入れる入れ方に昨年私は御注意申し上げておきましたが、その後どういう措置がされておるか、お答え願います。
  90. 中込達雄

    ○中込説明員 昨年七月十七日の審議会の総会におきまして、この問題を検討して、大蔵大臣に答申しようということになりました。私どもから業界にもその研究を命じまして、約一年間検討いたしました結果、十二月に業界のほうから答申がまいりました。それをもとにいたしまして、審議会のほうもその後三回ほど会合をやりまして、去る三月二十二日大蔵大臣に対する答申が出ました。内容といたしますところは、まず御指摘のように、総代が一部のへ会社に特殊な関係のある人から選ばれるというようなことはいけないので、これを選ぶ公正な委員会みたいなものをつくる必要があるということで、選考委員会をつくりまして、そこ下第三者の意見をいれて公正に選ぶ。なお会社の運営について、常時一般社員の意思を反映さしたほうがよろしいということから、評議員会というような名前のもの――その他の名前でもけっこうですが、そういうものをつくって、絶えずその契約者の考え方を会社の経営のうちに取り入れていこう、あるいはいわゆる社外役員というようなものをできるだけ入れていくということ、なお第三者の意見を会社にストレートに反映させる方法も考えたらいいんじゃないかということで、書面をもって八会社の経営等について意見を出すというルールをはっきり書きものにいたしまして、それを保険証券とともに周知徹底させるというようなことをこれからやらしていく。それに必要な定款改正等をこの五月末に開かれる総代会において決定させまして、逐次実行させていこうというように考えております。
  91. 受田新吉

    受田委員 大体要望線を実行に移すために努力しておられるということで、私も一応了承しましょう。社外重役、第三者の公正な意見が入る方法はいろいろなことがあると思いますから、この際に外務職員の苦労も十分反映するような方法をとるとか、いろいろなことで会社の経営に近代的な成果があがるように御努力を願いたい。  もう一つ、保険料率なるものは、男女の平均余命表を基礎にしておられる。だから、死亡率がだんだんと低下してくれば、自然に保険料金を引き下げていって、だれも簡単に入れるように、そして経済能力の低い者でも相応のものに自由に入れるような姿に持っていかなければいかぬのですが、保険料率算定基礎の平均余命表というものは、男女の平均でしたね。これは大臣、簡易保険のほうは男子の平均をとって、早く死ぬほうで計算してやっておるのです。簡易保険のほうがたちが悪い。民間保険は男女の平均ということになっておって、その点は私は了承するのですが、もう一つ、必要なときに保険証券を担保に金を借りたいという状態が起こる。そのときの貸し出し利率が八分というのは高いですね。これはひとつ実情を知らしてくれませんか。八分以下のところもあるのですか。
  92. 中込達雄

    ○中込説明員 保険に契約なさった方が貸し出しを願うという場合には、私どもいわゆる約款貸し付けと称しておりますが、それに基づいて貸し出しておりまして、これは利率がいま御指摘のように八分ということになっておりますが、その他低い会社があるかどうか、ただいま資料がございませんので、調べてお答えいたします。
  93. 受田新吉

    受田委員 大臣、あなたも低金利政策を推進される大役を持っておられるのですが、これは自分のかけた掛け金の範囲内というか、返還金の範囲内で金を借りようというときに、八分という高利で金を借りなければいかぬというような残酷な姿なんです。簡易保険はこれを六分にしておるわけですれども、このあたりで貸し出し利率を下げる――一般の団体貸し付けあるいは保険会社がやっている貸し付け方法、いろいろあると思うのですが、それの利率はどのくらいになっておるのですか。
  94. 中込達雄

    ○中込説明員 保険会社の貸し出しにはいろんな種類がございますが、一番普通の一般の貸し出しと申しますと、九分から一割くらいのところです。それから特殊な公共団体になりますと、六分前後ということになっております。その八分と六分の違いでございますが、現在保険会社の総資産利回りが八分五、六厘になっておるというようなことから、八分ということが出ているかとも思われます。
  95. 受田新吉

    受田委員 保険会社が、被保険者、契約者から取り上げた保険料で株式投資などをやっておる。これは機関投資家としてなかなか実力を発揮しておる。生保筋の出動などと称すると株価がぱっと上がるというような、ある程度の力を持っておる。この投資は、株式会社の内容なども十分検討はされておると思うのですけれども、株式投資ということよりも、公社債投資というようなところに切りかえて、現在の一般金融界においても、コール安という状態が起こってきて、電電債みたいなものに切りかえるまじめな傾向もあらわれておるのですが、生保筋の出勤で株の値がどんどん上がっていくような力というものは、私は賛成しません。もっとまじめな投資に持っていくように――株価のつり上げのために生保筋が策動するというような危険もあるわけで、株価操作に相当の大役を果たすような姿というものは、私は問題だと思うのです。つまり生命保険会社が握っている資金の利用画という点について、いま申し上げたような差で配慮をすべきじゃないかと思うのですが、大臣いかがですか。
  96. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いま生命保険会社の資産運用については、十分検討いたしております。いままでも株式投資が多かったということは、戦後の特殊現象でありまして、有力な機関投資家であったということで、株式に対する資産運用が多かったということでございます。しかし、これからは公社債市場の育成も重大な問題でありますし、公社債の待ち分が一%、二%というようなものではどうにもならないと思いますので、一昨年あたりから、相互銀行、信用金庫等も、公社債に対する持ち比率を引き上げるようにつとめてまいっておるわけであります。相互銀行等が現在七%から一〇%、こういう比率まで引き上げておるのでありますから、きのうも私は申し上げましたが、生命保険会社の資産運用の対象として、公社債というものを一〇%程度くらいまで引き上げられないか、これは目の子算でございますが、事務当局も、また生保会社等の意見も聞きながら、その程度の引き上げ方を目標として、資産運用の公的な使命というものをもう少し厳密に考えていきたいという考えであります。
  97. 受田新吉

    受田委員 その意味からは、資産運用に公共性を持たせる、投機性格のものを排除する、こういうかっこうで指導しなければならぬと同時に、掛け金を続けてきた人が、資金運用の必要が起こって貸し出しを受けようとするときに、八分という高利を今日採用するということは、問題だと思うのです。公共団体などに与えている六分という線まで――自分の出した金を借りるのです。人の出した金じゃないのです。あとのものは、人の出した金を借りる。こっちは本人の出した金を借りるのに、八分という高利は適当でないと思います。大臣勇断をもって六分に引き下げなさい。
  98. 田中角榮

    ○田中国務大臣 景気よく御答弁すれば一番いいのでございますが、しかし、これは生命保険会社の資産内容をよくしていかなければならぬという大前提もございます。もう一つは、加入者に対しては配当でだんだんと掛け金を少なくしていくという面もございますが、これは社内の状態がよくなれば配当率も多くなる、こういううらはらな問題でございます。八分が高いかどうかという問題でございますが、ちょっと高いようでもございますが、内分の金を自分で借りるのだから、当座借り越しと同じような考えでやれは、六分か七分でもいいじゃないかということでありますが、あまり下げると、みな借りてしまう。だから、世間の金利というものとのバランスもございますので、角をためて牛を殺すということになっては困るので、やはり保険制度というものをだんだんよくしていきながら、加入者に対する約款貸し付けというものの合理化をはかっていく、こういうことでありますから、これは保険の内容がよくなれば、配当を多くするか、加入者貸し出しの利率を下げるほうが合理的なのか、こういう問題は、技術的にいろいろな問題がございますので、加入者に対する優遇はどっちでやったらいいかというようなバランスを考えながら、検討してまいりたいと思います。いまのところでは、八分というと高いようですが、政府関係機関、開発銀行とか中小企業金融公庫とか、こういうところを見ましても、日歩三銭を切っておる金利は必ずしも高い金利ではないわけであります。しかし、あなたのお考えのように、自分の金を自分で借りるのだから――これは不時の場合の大きな給付もあるわけでありますから、こういうようなものとのバランスがありますので、制度の中で慎重に検討するということで御了解願いたいと思います。
  99. 中込達雄

    ○中込説明員 大臣の御答弁にちょっとつけ加えさせていただきたいのでありますが、先ほど申し上げましたように、総資産の利回りが八分五厘くらいでございます。したがって、ある人に対してだけ非常に低い利率で貸しますと、その資産をもしほかに運用したら八分五厘になるわけであります。そうすると、全体の資産の利益が少なくなるわけであります。これはひいて配当が少なくなるという意味で、一般の契約者には不利になって、その人だけが得になる、そういうバランスといいますか、契約者間のバランスという面からいたしまして、保険会社がなかなか一般の利回りよりも低いのはとりにくいという事情もあるわけでございます。
  100. 受田新吉

    受田委員 いまのような理屈をこねたのでは、これは保険の新しい契約をまじめにふやすことにもならぬと思うのです。要るときは安く貸してもらえるということで、やはり一、二回でやめようかと思っている人がずっと継続していくことにもなるわけなんです。そういう点で、継続を可能ならしめるためにも、低利で融通する道を開いておかなければいかぬのです。ほかのもの、自分で出した金でない場合の金利を基準にしては問題です。それから六分以上に自分の金を借りて回そうとしたって、実際そう回るようなことはありませんよ。だから、六分という金は、これは低金利時代には非常に高い利率の金ですよ。これをひとつ十分考えていただきたい。  保険の問題はそのあたりでピリオドを打っておきましょう。保険部でしっかりがんばっていただいて、ずるい会社がたくさんあるから、保険会社を監督してもらわなければならぬ。それで、保険については大蔵省の監督権をひとつ強化してもらいたいのです。これはずるいです。向こうから進んで窓口へ保険加入にくるように、自発的にくるような状態に切りかえなければいかぬ。これはひとつやってもらいたいのです。  もう一つ、今度の改正点の重点である臨時貴金属処理部の廃止です。国有財産局にあったのを廃止することに関連をして、私のこの間から日本銀行の倉庫、穴倉も見せてもらって、ダイヤモンド等がたくさん入っておるのを見ました。吹けば飛ぶようなダイヤモンドがあるのも私は拝見しましたが、事実吹けば飛びますよ。虫めがねで見てもわからぬ。これは戦時中非常に苦労して、愛国の至情に燃えた人が家宝を提供している。私の女房もたった一つあった。これも吹けば飛ぶような中に入るダイヤモンドだと思うのですけれども、指輪を病床で捧げて間もなくこの世を去っていきましたよ。そういう私自身も体験が一つあるのでございますが、しかし、いま考えてみると、このダイヤモンドを本人に返すということになると、あの当時は愛国の至情で一応国家へおさめたものでございますから、それはもう出した人から見たら返ってくるという期待は――まあ戦争に勝っておれば何とか期待を持っても、負けた今日、それが返ってくるという期待は、私はおそらく持っておらぬと思うのです。それにまだ未練を感ずるような人は、あまり多くないと思うのです。この機会に接収した貴金属は適当に、まじめな方法で国家がこれを金にかえて――恵まれざる戦争犠牲者がたいへんだくさんあります。空襲で家を焼かれて何ら補償されない戦争犠牲者がおる。原爆で依然として長期の給付を受ける者に対して、わずかに月額二千円が今度三千円になるような法律改正しか出ておらぬという実情である。そういうことを考えるときに、ひとつこの接収した貴金属は、いま申し上げたような方法をもって、出された人には御理解を願って、同じ戦争で痛手を受け、犠牲だけ受けて何ら報いられることのない人々に、ある目的を限って、日的的政策をもってこれを処理されるという方法を私は提案します。大臣、御答弁を願います。
  101. 田中角榮

    ○田中国務大臣 今度貴金属処理部を廃止をするということは、事務が大詰めに近づいて大体終わった、こういうことでございます。あと十六万一千カラットある中に、三十件ばかり返還請求もございます。こういうものに対しても却下するとか、きちっとした結論も四十年度中には出ると思います。でありますから、あとは処分の問題でございます。処分の問題に対する基本的な考え方は、あなたと大体同じであります。これをお返しくださいという人も中にはございますが、大体法律的に処理をされて、あと残るものは国庫に帰属するわけでございますから、これをどう一体換金するかという問題でございます。私も日銀の地下室を見ましたが、何とはなく思いがこもっておるような気持ちを率直に感じました。でありますから、やはり国民は一ぺん出したものでございますから、これが社会のために貢献するならばというお気持ちであろうとは思いますが、何分にも大量なものでありますし、この処分はよほど慎重にやらなければいかぬなということを、私自身はしみじみと感じたわけでございます。でございますから、これが処分されるということになれば、これを出した人が納得するような使い方をしなければならないということは、全く同感でございます。しかし、いまでももう国際商人が日本のダイヤモンドを入札さしてくれというような申し込みもございますし、国内の人は、少なくとも日本人が出したものであるから、日本国民に払い下げるべきだ。まあ自分で出したということは確かでありますが、さだかに現物と照合できないというために却下されておるものもありますから、そういう人に対しては、それに似通ったものを払い下げたらどうか、まあいろいろ問題がございます。物が物でございますからよくわかりますが、慎重にやり、悔いを残さないようにいたしたい、こういう考えでございます。
  102. 受田新吉

    受田委員 そうすると、大臣のお考えの中には、まだはっきりしない点を私はくみ取っておるのですが、これを出した人に返すという考え方があるのですか。
  103. 田中角榮

    ○田中国務大臣 返すということになりますと、これは法律的に認定をされたものに対して返還をいたしておるわけでございます。残ったものは、これは全部国庫のものでございますから、返すというのではない。それに近いものを、私はこれだと思います、しかしそれを証する証拠がないために却下をされておるものもあるわけであります。払い下げを行なうときに、そういう人を対象にすべきだという議論もございます。ございますが、その場合には、縁故者であるから時価よりも安くするとか、いろいろな問題がきっとあるでしょう。そういう問題もいろいろございますので、ここまできたことであるから、国民の声を十分聞きながら遺憾なき処理をしなければならないということで、私はいま縁故者に払い下げるという方針をきめておるわけではございません。そういうような要求もございますし、いろいろ社会の声もありますので、そういう声にも静かに耳を傾けて、最終的に遺憾なきを期したい、こういうことを申し上げておるわけであります。
  104. 受田新吉

    受田委員 そうすると、まだ結論は出ておらぬ、これからどうしようかということのようですが、私はその結論を出していいと思うのです。私がさっき申し上げたように、出した人の気持ちというものの中にも、一ぺん国へ差し上げたんだから、その差し上げたものが国の犠牲になった人にこれが何らかの形で返るならば、出した人は大臣もう瞑目しますよ。だから、これは本人に返すという考え方をおやめになってもらいたいのです。むしろこの機会に、不幸な運命に泣いている、社会の谷間で苦労している戦争犠牲者に、何かの目的をもってこれを配付するというはっきりした方針を一応前提にして、この問題の処刑を考えていただきたい。大臣よろしゅうございますか。
  105. 田中角榮

    ○田中国務大臣 そういたしますと申し上げるにはまだ時間がちょっとかかりますが、あなたのすなおなお気持ちは、十分理解できます。私も、大体そういう姿勢で処理をすべきだという考えでおります。
  106. 受田新吉

    受田委員 そのおことばを聞いて、私は一応安心しました。あとからこれはおかしな思いを残したり、執念を感ずるような行き方は、とるべきではないのです。だれのものやらわからないような――はっきりしたものもあるでしょうが、吹けば飛ぶような、その上のクラスぐらいのところは、だれのものかわけがわからぬのです。未練はすっぱりと打ち切って、新しい時代感覚でこれを処理する。大蔵省が大綱を打ち立てて前進をされることを希望しておきます。  もう一つ、今度はこの法案関係することでございます。これはやっぱり戦争に起因した問題ですけれども、旧海軍とか陸軍とかの用地の目的のために、民間から借り上げた土地があります。この土地は、借り方そのものが非常な強権的な方法がとられておったので、承諾も何もなしにずるずるっと取り上げられた。これは全国にたくさん例があると思うのですけれども、その後、それが軍用地に転換せられてそこに軍人が住んでいたけれども、いまは一般民間人に開放して、結局、土地の旧所有主というものは、借地料を多少もらうというかっこうになっているわけです。はたしていつの日にこれを自分のところに返してくれるのだ、政府が無理やりに取り上げたものを、平和が回復した今日、これをどういうふうに片づけてくれるだろうかという、いろいろの疑念があるわけですよ。戦後二十年たちましたから、子供でいっても成年に達したのです。この機会政府は、旧軍が一時借り上げをしたものの――民法上の規定からいっても、借地権については二十年で更新するようになっているわけです。ちょうどその区切りがきたわけですから、このあたりで所有者にいかにこれを返還するかという方策をお持ちになっていると思います。全国にある旧軍用地として借り上げた土地の面積及び場所の数、そしてこれに対してとられようとしている施策を御答弁願いたい。
  107. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 借り上げておりますところの面積がどのくらいあるかということは、ただいまわからないのでございますが、相手方といたしましては、二千件ぐらいございます。これらの借り上げました土地の中には、現在国が何らかの目的に使っているものもございます。あるいはまた、進駐軍のほうに提供している土地がございます。そのはか、そういった借り上げました土地の上に建っておりました旧工員宿舎のようなものが、戦後の住宅事情のために市町村の公営住宅というようなものに利用されているものがございます。でございますので、お返ししようとしてもなかなか返せないという土地がございますけれども、全然利用していないというような土地につきましては、お話し合いがつき次第、すみやかにお返しするという措置をとっております。  現在利用しております土地につきましては、たとえば進駐軍に提供しておりますようなところにつきましては、それが解除になりますまではお返しできないわけでございますが、公営住宅などにつきましては、この公営住宅は市町村に貸しておる住宅でございますので、そうした市町村、国、あるいはその土地をお貸しいただいております地主という間で十分お話し合いがつきますれば、何らかの解決方法をとるということを進めております。ただ、現実問題といたしましては、そういった地主の方々が国に土地を返せとおっしゃる場合に、現在たとえば公営住宅として利用されておる家があるわけでございますが、それを一刻も早くきれいにして返せというような御要求があったりいたしまして、実際問題としては、はなはだ話し合いがスムーズに進まないというような例もございますけれども、基本的には、できるだけ早くお返しをしたいというつもりで仕事を進めております。
  108. 受田新吉

    受田委員 基本的な方針を承りました。現に不要となった土地は本人に返しておる、こういうことでございます。その本人に返す返し方に――この三月に広島の財務局管内でこういう事件が起こった。その家を借りた人が去年の九月にそこを引っ越して逃げてしまったので、昨年九月までしか借り主が家賃を払ってないから、地料としては九月までしか払いません、こういうことになって、九月以降払ってくれないということになっている。私は現に通知書を見たわけであります。つまりそれを借りている人が九月によそへ逃げてしまったので、それ以降のものは払えないということ、政府が強制借り上げをして管理権を握っている土地の地料は、そこを利用した人が払ったときまで打ち切るというようなことは、どうも権原の関係がはっきりしないのございますが……。
  109. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 お話の問題は、国が借りております土地の上に国の建物がありまして、それを借りておる人がどこかへ行ってしまったというお話だと思います。その場合でも、土地を借りておりますのは国でございます。契約は一年契約でございますので、九月にどこかへ行ってしまったということでございますが、その場合も地主の方に国がお払いする地代は、少なくとも三十九年度に関する限りは一年分お払いすることになるのだろうと思います。ただ、実際現地の財務局でどういうことを申しましたか、私事実を知りませんので何ともお答えいたしかねますが、少なくともたてまえは一年分の地代はお払いする。その上に建っている国の建物を借りている人が国に対して家賃を払う払わないという問題と、国が地主の方に地代をお払いするという問題とは、全然別個の問題だと思います。
  110. 受田新吉

    受田委員 それではさっそく具体例を示します。広島財務局の責任者から、岩国の旧海軍用地として払い下げた土地の返還について、九月までそこに住んでおった人が出て、家賃をそれまでしか払っておらぬので九月までしか支払いをしないといって、三月に九月分までの地代を支払ってきて、それ以後は払っておりません。私その通知書も見ております。この実態調査をお願いします。全国に類似のものがあると思いますから。いまの政府のほうの御説明であるならば、国が管理権を握っている以上は国の責任だ、この御答弁は私は筋が通ると思いますが、その御趣旨に違う措置がなされていることを通告しておきます。御調査願って回答をお願いしたいと思います。
  111. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 調査をいたしまして御回答申し上げます。
  112. 受田新吉

    受田委員 基本方針をはっきり伺って私やや安心をしておるのでございますが、しかし、地方公共団体に払い下げておるというような場合には、地方公共団体がこの処理をする責任者になっておるわけですね。そうしたら、市町村との話し合いで、適当な価格で買い上げてもらってもいいわけですか。お答え願いたい。
  113. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 地主から借りております土地の上の国の建物を市町村に払い下げた、したがって所有権は市町村が持っておるという場合は、国といたしましては、すみやかに市町村に切りかえて、市町村が借りてくれるといいわけでございます。その方向でいろいろやっておりますが、先ほど申しましたようないろいろな事情がございまして、なかなかその話もスムーズにいかないという現実の問題がございますけれども、そういった場合に、すみやかに市町村のほうが直接地主から借りられるような方向にしたいと思います。ただ、貸した地主の方は、おれは国に貸していたのだ、それが何か知らぬうちに市町村にかわられては困るというようなわけで、その上の建物はむしろ公営住宅としないで、きれいにして返せというようなお気持ちの話が多いものですから、市町村のほうに契約を切りかえるという話も、なかなか現実の問題としてうまくまいりません。そういうことはたくさんございますが、私どもとしては、できるだけそうなったら市町村のほうが直接地主から借りてくれるようにという方向仕事を進めております。
  114. 受田新吉

    受田委員 市町村に払い下げた場合、国は全然タッチしないことになったのですか。
  115. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 市町村に家を払い下げましても、その下の土地は依然として国が借りておる土地でございます。その限りにおいてもちろん国は関係があるわけでございます。私が申し上げましたのは、上の建物を市町村に払い下げた以上は、下の土地も国が借り上げておる意味はないわけでございます。市町村が借り上げてくれればいいわけです。したがって、そのようにしたいと思っているわけです。現実は、地主さんのほうは、おれは国に貸したのだ、市町村に貸したのじゃないからということで、なかなか話がうまく進まない例がたくさんございますが、そのようにしたいと思っております。
  116. 受田新吉

    受田委員 市町村にその措置をさせた例が、全国にありますか、ないですか。
  117. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 さっき申し上げましたようなことで、市町村が面接に地主から借りるように契約を切りかえた例はございます。
  118. 受田新吉

    受田委員 あるのなら、その場合の例を全国的に例示すればいいのです、どういう方法でやったか。そうしたら土地を提供した方も安心するのですね。貧弱市町村になると、ややこしいことになる。むしろ国なら親方日の丸だという気持ちがあるのですから、安心感を伴うような返還措置をすれば、契約もスムーズに運ぶと思うのです。
  119. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 そのときの問題は、むしろ向こうの地主のお立場になりますと、相手が国だから、あるいは相手が市町村だからということではありませんで、むしろ地主の方は、もうその建物をどけてくれというお話のある場合が多いわけでございます。したがって、市町村のほうに切りかえてくれと申しましても、地主の方がそんなことはいやだとおっしゃるために、なかなか話がうまくいかない例があるのでございます。ですから、地主の方が、いや貸していたのは国だった、家の所有権が市町村に移ったのだから、今度は市町村に貸しますよ、そういうお気持ちのところは、いま私が申しましたような方向でどんどん解決していく。ですが、幾らこういう解決の例があると申しましても、地主の方が、いや国には貸すが、もう市町村には貸したくないと言われておるところは、どうもなかなかうまくいかぬということなんでございます。
  120. 受田新吉

    受田委員 これを最初国が取り上げたときには、何の命令を基礎にされたのですか。法律内幕礎を明らかにしていただきたいのです。
  121. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 そのとき法律的にどういうことか――おそらく総動員法関係か何かの法律に基づきまして、強制的に土地を買い上げ、あるいは借り上げるという措置がとられたことだろうと思います。
  122. 受田新吉

    受田委員 それはやはり根拠を明らかにする必要があるんですよ。国が現に管理しておるのですから、何を根拠に、いかなる法律的な基礎で借り上げたか、それを用意しておかぬことには、根拠のないようなところでやったんじゃしょうがないですから……。
  123. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 私、少し言い過ぎたのかもしれません。おそらくその当時、実際問題としてはお互いの話し合いで、契約で借り上げ、あるいは買い上げたということだろうと思います。
  124. 受田新吉

    受田委員 契約と言うけれども、何か強制借り上げのようなかっこうになって――もちろん契約が一応成立して、貸借契約というものが形の上ではできていると思いますが、それには、何かの形でそういうことをやる基礎になる、当時の軍の命令か何かがあったんじゃないですか。
  125. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 一般的には、もちろん軍が国内全体の問題としてある計画を立てて、こういう土地は軍の利用に資したいという基本的な御方針があったと思います。ところが、現実に出先で具体的に土地を借り上げたという当事者たちの仕事のしかたは、相手方とお話し合いをして借り上げたということですが、ただその背景が、あの当時のことでございますから、契約であるけれども、非常に強い心理的の圧迫があったことは想像されますけれども、形の上では契約ということでお借りをした土地であろうと思います。
  126. 受田新吉

    受田委員 それはもちろん形は貸借契約が成り立たなければ地代を払うような筋もないわけですから、それはそういうことになっておると思うのです。ところが、貸借契約得というものはなかったわけですね。全然ないのです。
  127. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 契約書はございます。ただ、戦争末期の非常に混乱したときにおきまして急に借り上げたというようなところは、あとで契約書を作成すると言いながら実はずるずると契約書は作成されなかったというような事例もございますが、大体において借り上げました場合にも、あるいは買い上げました場合にも、契約書はございます。
  128. 受田新吉

    受田委員 契約書のないところが、相当やはりあるのです。だから、それは現に地料を払っておれば、貸借契約を各類の上でかわしたと同じじゃないかという実質的効果をねらっているわけですから、問題はそこなんです。  そこで答えをひとつお願いしたいのですが、もう二十年たった今日、いま局長さんの御答弁されたように、これをすでに返せるところは返しているという方向をとるならば、家が古くなってこれをまたつくりかえるというようなことをさせないような方法をとって、いま強制借り上げをしたところは全然更新をしない、そして漸次これを返していくという方法をとる、これが一つと、もう一つは、適当な価格で買い上げてやる。いまのような基準の高いものでなくて、通常の価格で話しあいのつくところで買い上げてあげるという方式、この方式も採用するべきじゃないかと思うのです。いかがでございましょう。
  129. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 現状を変更いたします場合には、たとえばうちがこわれかけたから新しいうちを建てるというような場合には、もちろん地主の方と御相談をして、地主の方が御承諾なされば建てますが、それ以外のものは建てないということでございます。それから、公営住宅なんかに使っておりまして、どうしても使う必要があるというような土地などにつきまして、これを買い上げるかあるいはまた交換をするかということは、その一つ一つの問題の解決の方法といたしまして、私は十分考えてまいりたいと思っております。
  130. 受田新吉

    受田委員 適当な価格で買い上げる方法も考えるということですか。
  131. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 そういうことも当然考えなければならない問題でございますが、これは何ぶん予算を伴う問題でございますので、私どもがそういうことをきめます際には、そういった一つ一つの問題の必要性と、それから全体のそういう問題を全部そういった方向で解決するという場合の財政的な関係ども、十分考慮いたさなければなりませんので、私どもとしては、この問題を解決する方法としては、買い上げる、あるいは交換するという方向検討いたしたいと思います。
  132. 受田新吉

    受田委員 局長さんの御答弁で、方向がはっきりしてきたようです。可能なところについては適当な価格で買い上げ、あるいは土地交換の方法で原所有名に報いる、こういう御方針であると了解していいですね。  大臣、この問題について、現に政府が何ら措置をしてくれない、財務局もそっぽを向いておるということで、非常に所有者が残念に思って訴訟を提起したところがあるわけなんですね。こういう場合に、訴訟でこれを争うような形ではなくて、いま局長さんのようなお説が出た以上は、できるだけ国の予算ともにらみ合わせして、年次計画的に原所有者にこれを返還する、あるいは適当な金額で買い上げるという方針にひとつ政府が乗り出していただけませんか。あなたのようなりっぱな大臣がおられるときに、これもやはり片づけてくださいませんか。
  133. 田中角榮

    ○田中国務大臣 強制借り上げをした土地で現に使用しておらないものに対しては、すみやかに旧地主に返還をする、これは間違いありません。それから現に使っておる土地は、国が使っておるという場合は、国が買い上げるかもしくは明け渡すかということになるわけでございます。それから公営住宅等に使用しておりまして、国が管理者になっておりますけれども、実際は上物を使っておるのは市町村である、こういう場合には、市町村及び国、地主の三者が話し合いをしながら、とにかくお互いが譲り合いで、買い上げるかもしくは返還するかということになるわけでございます。こういう地上物権があって用に供しておるという場合には、買い上げというほうが優先するわけであります。しかし、それがうまくいかないのは、どうも金額を非常に大きく要求する、また国の方は、現に住んでおるのだから、裁判が終わるまでには十年もかかるだろう、お互いがそういう根情ではどうにもならないわけでありますから、お互いにやはり前向きに、こういう問題は戦時中戦後のごたごたしたときに起こった事態でありますから、早く正常な状態に戻すという方針で解決をしていくべきだと思います。
  134. 受田新吉

    受田委員 大臣、非常に前向きのお答えを願っていただいたのですが、聞いてみると、全国に二千カ所あるというのですね。これはすばらしい数字ですよ。どの具にも五十カ所平均あるわけです。これは全国共通の問題として、私は非常に重大だと思います。いまお説のように、建物も、二十年も前につくったのですから、しかもあの当時ですから、急造バラックみたいなものですから、耐用年数を過ぎている。これを補修するということではなくして、これは適宜取り去って原所有者に返還するような措置をとるとか、あるいは法外な金額要求でなくて、一応正常だと思われるような妥当性を持った価格で、話し合いでこれを買い上げていく。かえ地があればかえ地を与えてあげるとか、こういう方向で前向きで前進する。それについて訴訟事件などでがたがた騒がないで、そういう問題については政府みずからが乗り出して、この現地の問題は解決するという方針でやっていただけるかどうか。土地の所有者などというのは、やはり農耕などを営んでいる人が多いですから、非常に土地に愛着を感じているわけなんです。私のいまお尋ねしたことについて、もう一度大臣から積極的な御意思を表明していただければ……。
  135. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、国民と国との間にトラブルがあるということは、政治の姿勢としても好ましいことではありません。そういう意味で、払い下げるものは払い下げる、買い上げるものは買い上げる。しかし、現実問題に対しましては、どうせ上物があって返せないのだから、倍くらいに要求する、こういうような立場をとっては、これは話がつかぬわけでありますから、国と地主と地方公共団体というものが早急に事を片づけてしまう、こういう考え方でやるべきだと思います。また、そのように行政指導もしてまいりたいと思います。
  136. 受田新吉

    受田委員 それでは国有財産局、長さん、大臣のいまの御意思、局長さんの御意思、私は非常に前向きであることを喜ぶものですが、現地の財務局などというものは、これはもう法律の基礎もなければ、われわれにはそういう手だてをする権利もないのだということで逃げ腰の傾向があるわけです。いまお二人で御答弁され、責任者として大臣から言明された線に沿うて、現地で話し合いで、買い上げか、土地交換か、あるいは返還か、いずれかでできるだけすみやかな機会に処理する、こういう方針で現地指導をしていただきたいと思いますが、よろしゅうございますね。
  137. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 そういう方針で現地指導をしてまいりたいと思いますが、さしあたりの問題といたしまして、たとえば買い上げるというような措置は、財務局長はとり得ないところでございます。これはやはり予算的な問題もございますので、こういう方針を大蔵省全体としてきめましたならば、来年度の予算に計上してそれを実行するということでございますが、それ以外の問題につきましては、大臣のお話のように、極力前向きの姿勢で解決してまいりたいと思います。  ただ、私一つ補足させていただきたいと思いますのは、絶対裁判ではやらないということにはならない問題がございます。それは借り上げた場合には、国が借りた土地でございますから、そういう土地について裁判までしてどうこうというのは、国としても非常に横暴な話でございます。これはできるだけそんなことのないようにやりたいと思いますが、軍が買った土地がございまして、これは、軍は買ったというけれども、地主のほうは、おれは売った覚えがない、金ももらってないというような土地があるわけでございます。これらはもちろん登記でもしてございましたならばはっきりいたしますが、登記もしてない。それから金を払ったのやら払ってないのやらわからぬというものがあるわけであります。これらについても、明らかに国が金を払っていないというようなものにつきましては、私ども漸次返すということをやっておりますが、どうもこれは裁判で争わなければはっきりしないという問題については、私どもが返すということをしますためにも、裁判上そういった点を明らかにしてもらいませんとできないというような問題がございます。そういったものについては、国の立場として、裁判でそういった点を明らかにしてもらわない限りは、どうも行政上の判断だけでは返せないような問題もあるということをひとつ御理解いただきたいと思います。
  138. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、側々の問題については、原則外の問題として――原則は先ほどから申された線で処理する。それで方針がそういうふうにできるだけ前向きにきめられて、それによって予算編成をして、漸次これを処理していく。こういう方針でよろしゅうございますか、大臣
  139. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、返すものは返す、また返せないものは買い上げる、こういう原則でまいりますという基本的な態度を申し上げておるわけでございます。そうして例外的なものは、これはもう裁判をしなければならないというものもございます。ただ、あえて事をかまえないで、何でもかんでもみんな裁判にずるずる引っぱっておればいいのだというようなことは、政府みずからはやりません。前向きで解決をしてまいります、こういうお答えをしておきます。財政上の制約もございますが、もちろんその方針に沿って、予算上の措置も必要であればしなければならぬ。これは当然のことであります。
  140. 受田新吉

    受田委員 予算上の措置は必要なんですよ。必要であるからこれを提唱しているので、必要でなければこれは解決しない問題です。だから、適当な予算措置をとって漸次これを買い上げていく。裁判問題なども、例外的な裁判などは別として、普通原則として、土地を返還してくれというような裁判にこれを持ち込むことは、適当でないと思います。土地の返還要求訴訟などというのは、私は好ましい姿ではないと思いますから、裁判などということでなくして、政府指導してこれを片づけていただきたい。これは戦後の大蔵省のやっかいな処理問題であるが、ひとつ前向きで御処理願いたいということを最後に要望しておきます。よろしゅうございますね。
  141. 田中角榮

    ○田中国務大臣 はい。
  142. 受田新吉

    受田委員 それでは質問を終わります。
  143. 河本敏夫

    河本委員長 次会は、来たる十三日、火曜日、午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十六分散会