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稻村(隆)
委員 私は、
松本さんが帰ってきたら、必ず私と同じ
意見になって帰ってくるだろうと思うのです。そこで、
外務省だっておそらく
情報機関を持っていらっしゃるのだから、知らないとあなたは言っているけれども、
ベトナム問題をもう少し御
勉強になって、
平和的解決のために適当な機会に乗り出されるよう、私は切に
外務大臣に希望するわけであります。
そこで、私は重ねて申し上げますが、
北ベトナムは、
南ベトナムの
ベトコンの
ゲリラ戦にはほとんど
関係ないのです。精神的な
関係しかないのです。これははっきりしています。応援するとか
人員をやるというような
関係はあるだろうけれども、
武器だとか、そういう物質的な
戦力になるものはほとんどありません。これは
南ベトナム独特の
情勢によって
ベトコンがどんどん広がっていっているのです。それは
あとで私は申し上げますが、
幾ら北ベトナムを
爆撃しても、きょう
テーラー大使の言っているような、
北ベトナム爆撃が
ベトコンとの
戦争の勝利にもならなければ、
平和的解決にも絶対ならないのです。ただ盲目的な
爆撃をして無事の
民衆を殺戮する以外の何ものでもない。私はその点はっきり言いますが、大体
アメリカは、いま一日百万ドルの金を使っているのですよ。三十五億も使っている。それでいろいろやっている。
南ベトナムの
発電所をやっている
久保田豊さんという人がおりますが、あの人は私と何十年来の友人ですけれども、この間あそこから帰ってきた人から、きのうも
向こうの実情を私は聞いているのです。どうして
ベトコンがふえるかというと、これは私もよくわかるのですよ。
アメリカが来てから三十五億ドルも金を使って、
毎日戦費を百万ドル使っておって民生安定には何にもならない。ますます
南ベトナム住民の
生活は苦しくなっているのです。
フランスのときよりも、
日本のときよりも。とにかく
フランスのときには、徹底的な
弾圧政策を過去とっていたから、非常に恨みに思っておった。
日本軍が来たときは、これを歓迎したのです。
あとで大
東亜戦争の終局のときには、徴発なんかして
日本軍の評判が非常に悪くなったけれども、
日本に対しては
好感を持っておる。そういう
状態なんです。ところが
アメリカは、決して悪意ではないと思うが、とにかく
善意かもしれぬけれども、全く間違ったことをやっている。そうして三十九億ドルも金を使って、何の民生安定にもならない。徴兵でどんどん青年が
兵隊にとられる。いやいやながらやられる。それをみんな
南ベトナムの
軍隊に狩ってくる。そうすると、いやなものだから逃げる。
農村生活はますます苦しくなってくる。ちっとも民生安定にならない。
農地改革はいいかげんでやめちゃっている。そうして大地主がばっこしている。それから税金は高くなる。
生活はできなくなる。その上、無理に
兵隊にとられる。それがみんな逃げる。
南ベトナム軍隊の逃げている数はおびただしいですよ。調べてごらんなさい。
松本さんがお帰りになったら、おそらくそれを御
報告になると思うのです。それがみんな
武器を持って
ベトコンに逃げるのです。だから、
戦争の
あとに
ベトコンの遺棄した
武器というものは、ほとんど
アメリカの
武器じゃないですか。どこに
ソ連や
北ベトナムや中岡の
武器がございますか。一丁や二丁はあるかもしれぬけれども、
ベトコンが置いて逃げた
武器は、ほとんど
アメリカの
武器でしょう。
新聞にも出ているじゃないですか。そういうばかなことに金を使って、そうして非常に恨み憎まれて、
農村へ行けない。私はこの前
ベトナムに行ったとき、あなた方は
農村をもう少しよくしなさい、そうすれば
ベトコンがなくなると育ったら、われわれは
農村に行ったら殺されちゃうので行けないと言う。
日本人は
ベトコン地帯に行ったって、危険があまりない。現に
日本工営の
人たちは、
ベトコン地区、夜は
ベトコンになり昼は
政府軍になるというようなところもある
危険地帯に入って工事をやっている。しかし、全然危害を加えない。間違って撃たれたのがたった一つある。それで、標識をしっかりしてくれ、こう言っているそうです。そして、襲うときには、あらかじめ予報してくるというのです。ここを襲うかもしれないから、そのときはいないでくれと言って予報してくる。それだけ
日本人に対して、
アジア人に対して
好感を持っている。ところが、
アメリカだったら、どんな者でも同じ、入ったら殺されるのです。そういうふうに憎まれている。そうしてしかも
じゅうたん爆撃をやっている。ここに
ベトコンが入ったということになると、不確かな
情報でもってみんなその部落を
じゅうたん爆撃をやっている。
親米主義者が反米になっている。そういうばかなことをやっているのです。しかも、それを自由の名においてやっている。自由の名において人を虐殺する権利が、どこにあるかというのです。
週間朝日の三月十二日号に、
開高健という人、私は知らない人ですが、これが
南ベトナムの
政府軍に従軍して、何かだいぶひどい目にあったのですが、その人が書いている「
ベトナムは
日本に期待する、サイゴンから帰って」というのを見ますと
——私も前からそういうことははっきりわかっておった。それによりますと、何か
ベトコンが入ったという
情報がくると、もうめくらめっぽうに
爆撃をやる。そこで
農民がおこって、二千人の
農民がデモをやった。そうすると、
政府軍がこれの
指導者を捕えて
公開銃殺をやった。こういうことをやっている。証拠もないのに
砲弾をたたき込む。そして水田を荒す。戦車で荒す。あるいは
ナパーム弾をたたき込む。それから
化学薬をまいて木を枯らしてしまう。TNTを振りまいて、ほとんど全生物をなくしてしまうようなことをやっている。だから、現に
開高健氏に
政府軍の大尉が、いや私どもの
砲弾が
ベトコンがつくりつつあるのです、こう言っているのです。これを
日本に帰ったらそのまま書いてください、こう言った。これは
週刊朝日に載っているのです。そういうふうなばかなことをやって、そして
ベトコンを製造しているのです。人間は生きなければならぬから、自由とかなんとかいう抽象的な
ことばよりも、生きなければならぬから、そこでみんな
ベトコンに追いやられてしまう。そういうふうな間違ったことをやりながら、幾ら北を
爆撃したって、
ベトコンの征伐がどうしてできますか。
ベトコンが
北ベトナムの扇動であるなどと考えたら、とんでもない間違いです。当然扇動もありましょう、激励もありましょう。しかし、それによって
ベトコンがどんどんふえたのではなくて、すでに
南ベトナムの三分の二は
ベトコンになっているというじゃないですか。そういう乱暴なことをやっている
アメリカの
外交政策、間違ったやり方、そういうものに
日本がどうしてついていかなければならぬか。そんなものを当然であるとか、
北ベトナムが
浸透してくるから、これは自衛の措置だ、そんなばかなことを、
日本の
外務大臣は言うべきじゃないですよ。
日本に期待しているのだから。一般
民衆は、むしろ
日本がまた何とかしてくれるだろうと思っている。政治家はそういうことを言わないけれども、
日本工営の人がこの間
農村に入っていったところが、とても
日本に感謝している。
日本軍が来たときに
——私は
日本軍をほめるわけでも何でもないですよ。ホウレンソウをまくことを教えたり、いろいろな農業技術をやってくれた、全く
日本はありがたかったと言っている
農村すらあったと言っている。だから、一般国民は、
日本が入ってこの問題を平和的に
解決してくれることを非常に希望しているのです。だから、こういう金を使って、世界歴史上こんなあほうなことはない。金を一日百万ドルも使って、そして何十億も使って、ますます敵をつくって、そして
南ベトナムのみならず、全
ベトナムをみんな敵にしてしまって、
ベトコンとかあるいは共産党のほうに追いやってしまう、こういうばかな
政策を
——アメリカが友邦であるとするならば、特に
アメリカと安全保障条約を結んで、いざというときには
アメリカと運命をともにしなければならぬようなことに実際自動的になっている、そういうときに、この際
日本政府やあなたは、積極的にこういう
アメリカのやり方に忠告をしてやめさせる。そうして平和的な
解決に持っていくことは当然なんだ、政治家の良心からいっても、
日本の使命からいっても。あなたは、そうお考えにならぬですか、そういう時期であると思わないですか。時期でないとしても、そういうチャンスがきたら、あなたはやりますか、積極的に。それをお尋ねしたい。