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1965-02-24 第48回国会 衆議院 内閣委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月二十四日(水曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 河本 敏夫君    理事 伊能繁次郎君 理事 佐々木義武君    理事 永山 忠則君 理事 八田 貞義君    理事 田口 誠治君 理事 村山 喜一君    理事 山内  広君       井原 岸高君    岩動 道行君       大橋 武夫君    綱島 正興君       野呂 恭一君    藤尾 正行君       保科善四郎君    前田 正男君       湊  徹郎君   茜ケ久保重光君       稻村 隆一君    角屋堅次郎君       中村 高一君    受田 新吉君  出席国務大臣         法 務 大 臣 高橋  等君  出席政府委員         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 鹽野 宜慶君         検     事         (民事局長)  新谷 正夫君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         法務事務官         (矯正局長)  大澤 一郎君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         公安調査庁長官 吉河 光貞君  委員外出席者         検     事         (大臣官房人事         課長)     辻 辰三郎君         文部事務官         (初等中等教育         局中等教育課         長)      渋谷 敬三君         専  門  員 加藤 重喜君     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一一号)      ————◇—————
  2. 河本敏夫

    河本委員長 これより会議を開きます。  法務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。茜ケ久保重光君。
  3. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 いろいろと法務省関係でお聞きしたいことがあるのでございますが、本日は少年院関係のことに限定をして、少し御質問をしたいと思うのであります。おそらくこの問題は、法務委員会でも、また当委員会ないしは予算の分科会等でも、最近の非行少年の問題として、いろいろな観点から質疑なり、あるいは法務省、文部省その他の関係当局の御説明等もあったかと思うのでありますが、私ども内閣委員会としては、設置法関連以外にこうした点について御質問を申し上げたり、御意見を聞く機会がありませんので、あるいは他の委員会なり他の場所と重複する点もあろうかと思いますが、ひとつその点は御了承の上、簡潔に御答弁願いたいと思うのであります。  私、先般法務総合研究所で発表されました昭和三十九年度の犯罪白書というのを通読させていただいたのでありますが、なかなかよくできていると思います。客観的な立場から見てありますし、それぞれ責任感じている点もありますし、この白書はかなりよくできていると思うのですが、そういった中でやはり感じますことは、青少年、特に低年層犯罪が非常にふえているという顕著な事実を見るわけであります。こうした低少年犯罪増加について、いろいろな見方がありましょうし、原因なりあるいはその責任所在等についても問題があろうかと思うのでありますが、法務大臣から最近の青少年犯罪についての、法務大臣としての御所見——これは決して法務大臣責任を追及するのじゃなくて、法務大臣としての、いわゆる少年院の当面の最高責任者である立場からの御所見を承りたいと思います。できますれば、最近の青少年犯罪に対するその原因が那辺にあるかといった点もお触れいただければ、たいへん幸いだと思うのです。
  4. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 最近の青少年、ことに少年非行は、御指摘のように、逐年増加傾向を示しております。警察で補導検挙いたしました少年は、三十一年が九十万くらいでありましたのが、三十八年になりまして、大体約その二倍強にあたります二百万近い人が補導検挙されておる。その中の百万人というものが検挙をされる、こういう状況になっております。そのうちのおもなものは、結局道路交通法違反事件が非常にふえております。三十八年度で約七十五万という数字に実はなっておるわけであります。この道交法違反がふえておるということが一つ原因でございますが、刑法犯だけを見ましても、おとなの犯罪は、御存じのように横ばいの状況であります。ところが少年のほうは、三十八年には、正確に言えば、実に二十二万九千七百十七名という戦後最高数字を示しておる。これを質的な面で見ますと、窃盗が約六割を占め、また傷害、恐喝などの凶暴犯が二割、それでこの状況を見ますと、特に粗暴犯罪風俗犯罪等悪質犯罪増加している。また年齢の低い層、いわゆる年少少年や学生、生徒による犯罪がふえておる。しかもこれが集団的な傾向を帯びるということで、全般的に見てまことに憂慮すべき状況に実はあるのでございます。  それで、この青少年に対しまする対策は、政府全体として考えなければならない。また社会国民の協力を得て、非常にしんぼう強くやっていかなければ、一朝一夕にはなかなか解決が困難である。これは戦後のいろいろな社会状況変化等、あるいは教育の問題もあるでしょうが、いろいろな状況が変化しまして、戦前のわれわれと比べまして、いまの青少年考え方は非常に違う。すなわち、家庭におけるしつけなんかにつきましてもアンバランスができているというようなことで、青少年自体の理解ということも、お互い社会人が深めてやっていくというようなところに根本的に考えなければならない問題があると思うのでございますが、この非行防止対策といたしましては、種々の角度から科学的な調査研究を行ないまして、その原因を的確に把握して施策を講ずる以外にないのでございます。先ほど申し上げました政府関係機関は、これはあげて協力せなければなりません。内閣青少年問題協議会というものをつくってやっているのもその趣旨ですが、またそれだけでなしに、教育、文化、社会福祉等あらゆる分野で国民全体の不断の努力が必要である、こういうことでございます。  一応それくらいにお答えいたしておきます。
  5. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 矯正局長、この犯罪白書を見てみますと、これは戦後非常に特異な状態でございましょうが、最近の日本少年少女体位向上が非常に驚異的なものがありまして、私どもこの向上にちょっと注意しましても、男子十五歳で身長が、昭和三十七年に百六十二・ニセンチメートル、これは大正八年時代の二十歳から二十三歳の体位よりも大きいし、昭和四年代の十八歳ごろの青年体位よりも大きい。今日十四、五歳の少年が、大正中期ないしは昭和初期の二十歳、いわゆる昔の徴兵検査といった時代青年と同じ体位であるということは、非常に驚異的な体位向上と申しましょうか、この点非常に頼もしいわけであります。さらに女子にいたしましても、女子の十四歳の身長が百五十一・六センチメートル、これは昭和初期の二十歳前後の体位、十三歳にして百四十九・〇センチメートル、これは大正初期のやはり二十歳前後の体位、先ほど法務大臣もおっしゃったいわゆる低少年、十歳をわずかしかこえない少年少女体位が、私ども青少年時代と比較すると、もう徴兵検査といわれた時代と同じ体位だ。そういう中で、したがって、統計から来る非常に年齢の低い少年犯罪というものがきわ立って多いということだけを見ますと、何か異様な感じがするのですが、この体位という点から見ますと、特にこの犯罪白書が示しております性犯罪、いわゆる強姦あるいは強姦未遂、ないしは性に関する犯罪が非常に多い。しかも最近の傾向が、十四、五歳の低年齢層に多いという実態、これはそれだけ見ると、いま言ったように何か非常に異様な感じがするのですが、また反面体位向上した面から見ると、体位自体がもうかつての二十歳ないしは二十歳を過ぎた状態にあるというと、何かわかるような気もするのです。ところが、犯罪白書でも指摘しているように、体位は非常な勢いで伸びたけれども、その少年を包む社会環境というものが、一向に体位向上と比例してないのじゃないか。もちろんいま法務大臣もおっしゃったように、いろいろな客観情勢なり、いろいろな条件もあるけれども、ちょっとこの表から割り出すだけでも、体位向上社会環境ないしはそれに対するいろいろな意味対応性というものが欠けているところにも、いわゆる低い年齢層少年少女にかなり犯罪が多いという原因があるのじゃないかと指摘しておりますが、矯正局長は、少年院に多数のこういった犯罪少年をかかえて、これが指導責任者としておられるわけでありますが、犯罪白書が示しているような、いま私が指摘した体位向上といわゆる社会環境との問題、これは社会教育的な問題が多分にあるわけでありますが、一応矯正局長としてこういう点に対する何かお考えがありますかどうか、またそれに対して何か対処する施策をお考えであるかどうか、この点をちょっと伺いたいと思います。
  6. 大澤一郎

    大澤政府委員 国民体位向上犯罪関係というようなことになってくるかと思います。私は、体位向上したことと、いわゆるこの犯罪白書指摘しております精神的な、社会的な成熟が足りないということとの関連では、別個な考え方で、体位犯罪とは関係はない、ただ性的犯罪ということになりますと、これは身体的成長と正比例するのは当然かと思いますが、少年院状況を見まして、体位がよくなって、したがって性的犯罪ということについては目立った傾向を示すでありましょうけれども、要するに犯罪につきましては、やはり社会的な、精神的な成熟度、過去の教育訓練全体にかかるのじゃないか、かように考えるわけであります。なお、初等少年院、つまり年少少年院収容者の数は、昭和三十五年から昭和三十八年まで確かに著増を示してきたのでございます。昭和三十五年には千三百五十七名初等少年院収容者でございましたし、昭和三十八年には千八百名とふえてまいったのでございますが、昭和三十九年度におきまして千七百十三名と、やや減少を示してきておるのでございます。この点から考え合わせまして、つまり本人たち体位向上はいままで以上に進んでおりますが、それと同時に、社会的な、また精神的な訓練が漸次行なわれてきたために、その点が体位向上と比例して進んでまいりました。そこに若年層犯罪化傾向がややよくなったのじゃないか、かように考えているわけでございます。したがいまして、われわれとしましては、少年院におきましても、あくまでも精神的な面の訓練ということに重点を置いていきたい、かように考えておるわけでございます。
  7. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 その点を私がお尋ねしたのは、少年院における教育と申しますか、非行少年の更生と申しましょうか、そういった面に対する施策というものは、やはり非行少年の生まれる根源をつかんでいなければできないと思うのであります。それは機械的にただ少年院送りが決定した、それを一定の期間預かっておくということであれば問題ありませんけれども、少なくとも複雑な社会情勢の中で、私から言わせると、そういった少年諸君は非常に気の毒な面を持っているし、かわいそうでもあると思うのでありますが、しかし、形の上ではやはりそういった犯罪を犯して少年院送りなりあるいはそれぞれの適当と思われるところに収容されるわけでありますが、やはり刑務所と違って教育ということが主眼でありますから、できるならばかつて犯した犯罪を忘れて、新しい素直な人生に入ることが望ましいわけでありますし、そういうことが目的であると思うのであります。それにはやはりその少年の経てきた社会環境なりあるいは家庭環境なり、そういったものが具体的につかまれて、起こした根源に私はあたたかい愛情指導がなくてはいかぬと思うのであります。これをするためには、やはりいま指摘した犯罪根源をつかむことが大事だと思うのでありますが、これはここで短い時間にあなたとお話をして、そう簡単にいくものじゃありません。いかないことだ。現在も犯罪がふえておるし、またいろいろな問題が起こるのであります。しかし、私は、矯正局長とされては根源をつかむということも大事だけれども、一番重要な点はやはり愛情のある対処と申しますか、それが非常に必要だと思うのです。そういう点では、ぜひそういう指導方針でお願いしたいと思うのですが、今回設置法を見ますと、少年院が二カ所増設されるということであります。これは少年犯罪増加からくるところのやむを得ざる処置と思うのでありますが、少年院増加もけっこうでございますが、矯正局としては、これは高年齢層も低年齢層も、いろいろあるわけでありますが、一少年院収容人員は何人くらいが最も適正か、これに対する何か方針がございますか。
  8. 大澤一郎

    大澤政府委員 少年矯正につきましては、各人の性格、環境がそれぞれ違います。また、その必要とする処遇と申しますか、本人の過去のあれから見て何が必要であるか、現在本人が置かれておる境遇において何を与えていくかという点で、一人一人違うわけであります。処遇としましては、一人一人に違った個別処遇というのが理想であろうかと思っております。しかし、一人一人に特別の処遇ということも、不可能でございます。われわれとしまして、一応四十人ないし五十人を一つ単位にして訓練していく。運動にしましても、その他の訓練にしましても、学科教育を与えるにしましても、大体小学校等単位を参酌いたしまして、四、五十名単位ということで指導していく。そしてそれが三単位ないし四単位というところが、経済的な面から見まして、また指導者の配置上から見まして、最も適当と思っておりますので、大体二百人前後が管理がよく及ぶ適正な数字じゃないか、かように考えております。
  9. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 現在あります少年院で、最高は何人収容しているのが一番多くて、それはどこで、一番小さいのはどこか、わかっておりましたら、お聞きしたいと思います。
  10. 大澤一郎

    大澤政府委員 現在多いところが北海道北海少年院でございまして、実人員四百三十六名という数字になっております。最も小さいところは、地域的に偏在しておるところ等で、あるいは精薄等を預かっている分院等でございますが、それは二十名程度のところもございます。
  11. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 今度増設されるところは二カ所ありますが、この増設される理由、これは人員増加もありましょうが、地域的なことが考慮されているのか、その点はいかがですか。
  12. 大澤一郎

    大澤政府委員 今回増設をお願いしておりますものは、北海少年院が、ただいま申し上げましたように四百三十六名でありますが、この過剰収容を解消するために、帯広青森に新設を予定しておるわけであります。そしてこれらの過剰人員を、北海道の北部のほうのものは帯広少年院に、函館地区のものは青森少年院に、かように分散いたしまして、北海少年院を定員二百二十名の線に持っていく。そしてその結果、青森帯広では、それぞれ百二十名程度ということで発足いたしたいと考えておるわけでございます。
  13. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 少年院に収容される場合——現在幾つあるか、私ちょっと失念しましたが、そうたくさんあるわけではございまませんが、その非行少年出身地と近いところに収容するのが原則か、あるいは遠いところにおやりになるのか、あるいはまたその犯罪の内容によっても違うと思いますが、そういう点いかにお取り扱いでありますか。
  14. 大澤一郎

    大澤政府委員 少年処遇につきまして、本人の必要とする処遇という面から考えますと、現在われわれの考えておるところでは、少年院にまだ義務教育修了者が相当おりますので、これらの者には学校教育修了せしめるという意味で、学校教育中心教科とする少年院というものをつくっておるわけであります。それらの者はなるべくそれに入れたい。また学校教育を終え、なおかつ本人の才能なりあるいは技能なり、りっぱな職業を覚えればいいという子供につきましては、労働省職業訓練法に基づきます訓練課程少年院内に置きまして、そしてその訓練を受けさせまして、試験を受けて、労働省関係証明書をもらって、技能を身につけて社会に出すということも考えております。かような意味合いで、それぞれ必要とする処遇というふうになりますと、そうしたものを各所の小さな一つの院の中にいろいろこしらえますと、十分な施設もできない。そういう意味で、北海道なら北海道地区におきまして、さような施設を細分しまして、専門化して、そして少年をそこに送る。しかし、反面少年はやはり家庭との連絡と申しますか、家庭とのつながり、また地域とのつながりにおいて保証し、矯正していかなければならないというような面から、なるべく本人家庭と近いところ、常に母親とも面会でき、また友人からも激励を受けやすいところ、そういう意味では出身地に近いところということになるわけでございます。そこでわれわれとしまして、その点に矛盾を感ずるわけでございますが、やはりわれわれとしての現在の方針では、最も必要とする処遇を行なう少年院に置きまして、そして家庭連絡をとって、家庭から面会にきていただくというような方針でやっておりますが、大体各矯正管区——北海道地区東北地区関東地区、それぞれその地区ごとにさような専門化をはかりまして、そうしてその地区子供をそのうちの施設に収存するというような方法をとっております。
  15. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 義務教育修了少年に対して、いただきました書類で見ますと、それぞれ少年院の中に施設をつくっておやりのようですが、非行少年ということばを使うのはあまり好きではありませんが、一応そうなっておりますから使いますが、そういった犯罪を犯した子供、これはいろいろあると思うのでございますが、一ぺん犯したけれども、ほんとうに偶発的なものであって、本人の資質はそう悪くないというもの、あるいはまたむしろ善良なものもあるわけですが、義務教育修了の者を、身柄少年院に預けておいて、その義務教育は、その少年院の近くの小学校中学校——中学校もあったと思いますが、一般中学校教育するという実例は、いままでなかったかどうか。これはまた、こういう方法ができないものかどうか。なかったとすれば、考慮する余地はないものか。この点いかがでございましょうか。
  16. 大澤一郎

    大澤政府委員 義務教育は、少年院法に基づきまして少年院で行なう、そしてそれが学校教育法による義務教育と同一となっているわけでございます。外部の学校に通わせたという前例はございません。少年院自体学校として運営しているわけでございます。われわれとしましても、やはり少年院子供をそのまま普通の中学校小学校に通学せしめるということは、やはり少年院一つの型の中と申しますか、そういう犯罪少年については、特殊な日常生活、規律のもとに送っておりますので、他の小学校に通わすとか中学校に通学させるということになりますと、やはり日常生活が乱れるのではないかという点の懸念もいたすわけでありまして、目下その点については考えておりませんが、ただいまの御説でさらに検討していきたいと思います。
  17. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 これはあなた方の立場からすると、少年院法にきまっておりますから、法律改正しなければどうにもなりませんが、私は、そこにいわゆる慣例ということばを使っては失礼ですが、日本の長い役所仕事の弊害として、型にはまって——役所というものは国民に奉仕するための役所なんですが、その目的である国民の奉仕はいつの間にか阻害されて、現在役所のために非常に国民が迷惑をこうむったり、非常なあれをする場が多いのですよ。それは私たち政治家責任でありまして、矯正しなければならぬと思うのですが、私は、幾つかの少年院を視察もしましたし、少年院に入っている子供ともだいぶ接触してまいりました。端的に申し上げて、もちろん私は少年院における義務教育がいかぬとは思いません。しかし、一歩やはり考えて、いままで皆さん方少年院とか少年院法というワクの中だけで考えたことでなくて、いま指摘したように、つまり社会生活——もちろんその子供のためには少年院教育よりも、身柄は一応これはやむを得ませんから預っておくけれども少年院でなくて、付近の普通の義務教育学校に入れることのほうが社会復帰も早いし、いいという場面もあると思うのです。またこれはなくちゃならぬと思うのです。そういう場合に、これができますと、ほかの少年にもいろいろ影響がいいと思います。少年院内における生活のいろいろなことがありますけれども少年院の中の生活のことを心配するよりも、その子の将来を思うことのほうが大切だと思うのです。したがって、少年院法がありますから、いますぐとは申しませんが、ぜひその点をひとつ考えていただいて——ども考えます。いいとなれば、少年院法改正すれば、これは簡単なんですから。しかし、なかなかそう簡単には結論が出ませんが、やはりそういうふうにがっちり考えるのでなくて、もっとほかのことも考えて、激増する非行少年防止ももちろん必要でしょうが、不幸にしてそうした立場になった少年に対して、そういう考え方があって私は決して悪くないと思うのです。これは私の希望ですが、ひとつぜひ関係者でお考えおき願いたい。私どもも協力して、できるならばそういった方向へ進めたいと思うのですが、これはひとつ法務大臣、ぜひいま申し上げた少年院法改正ということが必要でありますけれども、現在の少年院法の運営に対して、一歩前進と申しましょうか、あるいはワクを広げると申しましょうか、いわゆる何か一般社会環境の中に少しでもなじむと申しますか、適応するようなために、いま私が指摘しました少年院法改正と申しましょうか、いわゆる少年院身柄を置きながらその近所の普通の義務教育学校に通学できるようなことが可能なような方向へ、御研究、御検討をお願いしたいと思うのですが、法務大臣いかがでございましょうか。
  18. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 先ほど申し上げましたように、少年検挙数は非常に多数にのぼっております。その中で、少年院へ特に収容してこれを指導、保護しなければいけないというのは、年間大体六千人から七千人の間で、そのほかの者は、これを一般社会家庭へ帰しまして、御指摘のように一般教育施設教育をしているということも、念頭にひとつお置き願いたいのです。そういうどうしても必要な者をいまの少年院へ入れてやっておるわけでございますが、しかし、少年法全体につきましても私もいろいろ考えております点がございます。その際あわせて研究をさしていただきたい、こう思います。
  19. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 これは統計によりますと、現在少年院に収容されている少年の約二割が、再犯と申しますか、あるいはかつて少年院に在籍した少年だという統計がございます。これは私は、一般刑務所受刑者再犯なり累犯がかなり多いと思いますが、少年院でも、この表で見ますと、二割の少年がかつて少年院に在籍したということのようでございますが、少年院を出ましたあとの八割というものは、それじゃ正常な少年として社会生活に完全に復帰できているのかどうか、ないしは、もういわゆる少年法を卒業して、成人としてさらに犯罪を重ねて、刑務所なりその他のやっかいになって、かなり再犯なり累犯というものを重ねていっているのか、その間の実情はいかがでありましょうか。
  20. 大澤一郎

    大澤政府委員 少年院を出ました者が刑務所等に戻る、それを全部含めまして、約四〇%がいわゆる再犯者の中に数えられるわけでございます。いままでの統計とり方がだいぶ違っておりまして、特に少年につきましては、なるべくあとまで追跡しないというような方針がとられておりましたために、少年再犯とり方が、本年少年院に入ってきた子供が八千人、そのうちに前に悪いことをしたのが何人おるかという形で、毎年出しておるわけでございます。それが二〇%から三〇%というところだったわけでございます。それが漸次減少はしております。しかし、それが少年院の範疇から出まして、おとなの範疇に入りまして刑務所に戻ったというものについての調査が、少年であるがゆえに、追跡調査が十分できていなかった。しかし、これでは犯罪対策を立てます上に不十分でございますので、刑務所側からも少年院前歴者というものをとりまして、昨年度から追跡を始めたわけでございます。別に家庭へ行くわけではございませんが、刑務所等のカードで調査を始めたわけであります。それによりますと、少年院の卒業者のうちで四〇%が再犯者ということになっております。これとても決していいほうではございませんが、刑務所再犯率が大体五〇%から五五%という、これは長い歴史上そうなっておりますが、それから比べますと、ややいいのじゃないか、こう考えられます。これはやはり成人に対する刑罰よりも、早く少年時代に手をつけるということが、それだけやはり治療効果と申しますか、矯正効果をあげておるのじゃないか、かように考えております。
  21. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 再犯と申しますか、成年に達して約四〇%というのですが、これは決して少ない数字じゃないと思うのですね。私実はきょう特に指摘したいのは、これから触れてまいりますが、なかなか問題もあるのでございまして、これは法務大臣の政治的な手腕にも期待しておるのでありますが、私が先ほど指摘したように、幾つかの少年院を視察をし、院長先生や教官とおっしゃる方ともいろいろお話を申し上げたり、また、少年諸君とも話し合っている中で感じるのは、教官とおっしゃる方々が、普通の学校の先生とか、他の機関にいらっしゃるそういった教育関係に携わっている方たちと比べると、いろいろな意味で御苦労が非常に多いように思うのでございます。したがって、今度二つの少年院を増設されますが、現在少年院なりそういった矯正局関係でお預かりになっていらっしゃる教護院等関係で、現在教官ないしは教官に準ずる職員の充足状況はいかがでございますか。あるいはその定員が完全に充足されているのか、あるいは欠員があるのか、この点いかがでありますか。
  22. 辻辰三郎

    ○辻説明員 昨年十二月三十一日の状況でございますが、全国の少年院におきまして定員が二千七百四十五名に対しまして、現在員が二千六百五十八名、欠員が八十七名という数字になっております。
  23. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 職員と収容少年との比率はどうでございますか。職員数と在籍少年の数との比率、何人に一人ぐらいの割合でございますか。
  24. 大澤一郎

    大澤政府委員 大体少年四人に対して職員一名でございます。そういうふうになっております。
  25. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 大体欠員は二千数百人の中で八十人でございましたか。
  26. 辻辰三郎

    ○辻説明員 さようでございます。
  27. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 そう多い数とは申しませんが、不足は不足でございますね。その不足の原因がどこにあるのか。私がさっきちょっと指摘をした普通の職場とすると、気持ちの上でも、待遇の上でも、あるいは所在地との関係においても、いろいろな関係があると思うのでございますが、まあ待遇ということばで表現できると思うのですね。住宅の問題なりあるいはまあ所在地が非常にへんぴだということもありましょうし、また給与の問題もありましょうが、待遇が悪いということが原因で欠員が生ずるという具体的な事例はございませんか。いかがですか。
  28. 大澤一郎

    大澤政府委員 少年院の教官の待遇につきましては、一般事務を除きまして、日常少年に接して少年指導に当たる教官の待遇は、われわれとしましては、まあ一般公務員よりいい公安職の俸給が与えられております。また超過勤務につきましても、一般事務職員の予算額よりも二倍ないし三倍の超過勤務手当が用意されておるわけでございます。必ずしも悪いとは思えないのでございます。ただ、少年院といいますと、大体へんぴなところにございますので、職員が子女の教育、あるいは年々生活程度向上してまいりますので、奥さん、御家族の日常生活の不便さというようなことで、得にくいような点があろうかと思います。待遇そのものといたしましては、一般公務員と比較しまして、事務職員よりも相当の処遇を与えておる、かように考えております。ただ、職員が、いかにも少年教育環境ということで、都心から離れました山の中とかにございますので、その点で若い人に魅力がないというようなことがあるのではないかと思っております。その面につきましても、現在さようなことにつきまして、さような生活の不便を除去するとか、子供の通学バスをひとつ考慮するとか、そういうようなことにつきまして、目下一部の地方で施行しております。これを実施しましてさような弱い点を取り除いていきまして、職員が喜んで働いていけるように考えております。
  29. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 いまお聞きしていると、給与等は必ずしも高くはないと思うのでございますが、一般の事務職員よりもよいということでございます。私は、端的に申し上げて、現在悪くはなかろうけれども、あまりよいとも言えないと思うのです。これは私の持論でございますが、特に少年院の教官の給料表あたりは、思い切った改善を加えて——これは人事院なりあるいはいろいろな関係もございますが、ここにも先ほど指摘した日本の官僚機構のセクト主義が災いしているのですが、そういう特殊なところに思い切った処遇をして、何と申しましても先生が自分の生活に困ったり、あるいは家庭で奥さんが、御主人が少年院の先生になることについて何か世間に対して肩身の狭い思いをするということであっては、収容少年にあたたかい思いやりのある教育ができぬと思うのです。機械的にただその職にあるのだからということになると、特に少年院に在院の少年はそういうことはほんとうに敏感でございますから——おそらくどういう環境にあれ、私どもの見たところでは、犯罪少年の多くは、何らかの意味において愛情に飢えている者が多いと思うのです。これは統計を見ますと、両親のそろった、実父母のそろったものが五〇%もあるようでございますけれども、実父母がそろっているから、必ずしもその愛情に飢えていないとは言えないと思うのです。大体愛情に飢えたということが大きな原因だと思うのでございますが、少年諸君少年院にあってよほど思いやりのある先生に接触しなければ、私は、短い少年院生活で更生ができるとは考えられないと思う。これはまたしかし、反面給与が高いから必ずりっぱな方が行くとは言えませんけれども、現在少年院に教官として働いていらっしゃる方々は、私は非常に尊敬すべき方々だと思うのです。いろいろ困難を乗り越えてやっていらっしゃる。これは崇高なる使命を負っていらっしゃると思うけれども、やはりいま言ったようないろいろな関係で、少年院に行った場合には奥さんがどうしてもいやだ、先生はもう少年院子供に非常な情熱を持って働いていらっしゃるけれども、奥さんが何としてもいやだということで、その先生が非常な苦心をしておられることをお伺いしたのですが、その原因を聞くと、いまあなたがおっしゃった自分の子供教育のこと、ないしは文化的な生活もできないということ、と同時に、一つは、その奥さんの言い分は、何か少年院というと、収容されている子供が世間でいういわゆる非行少年であるから、そこにいる先生も何かそれと類似したような姿に見られるということもないわけではないわけです。これは私ども聞いてびっくりしたのですが、そういうことが、その奥さんをしてどうしても少年院の先生をやるのはいやだと言わせる原因だったらしいのですが、いまおっしゃった子供のための通学バスとか、少年院には自家用車を一、二台置いて、奥さん方がたまには一緒に都会の空気を吸うことができることも必要だと思うのです。やはりそういったことを思い切ってなさらないから、あなた方が非常に苦心をして少年院の経営に当たり、少年補導に当たっていながらも、なかなか実効が上がらずに、少年が年を取ったら四〇%も刑務所へいくという現実だと思うのです。これは私がここで指摘したからといってすぐに変わるとは思わないけれども法務大臣少年院の教官の給料表を何とかかなり思い切って改定できないものかどうか。できなければ、何かそういう一つの試案をつくっていただいてお示し願えれば、私は、与党の議員の皆さんも、こういうことにはおそらくもろ手を上げて賛成だと思うのです。ただお役所にまかしておくと、何だかんだでなかなかできませんが、私は、議員のほうからも委員会の附帯決議なり何か改正案などもつくって、人事院なりその他の関係をひっぱたいて——普通の小学校中学校と違って特殊なところでありますから、何とか私はこういう面から少年院の教官の給与の改定を、しかも思い切ったものをしなければならぬのではないかと思うのでありますが、法務大臣、ひとついままでの意識にとらわれず、そういった必要をお考えになっていると思うのでありますが、それに対するお考えと、そういう何か試案でもつくるような、研究と言ってはあるいは問題があるかもしれませんが、何かそういったようなムードができてきたらいいと思うのですが、いかがでしょうか。
  30. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 法務省の職員、まあいろいろございますが、矯正関係の職員につきましては、処遇について相当従来もいろいろと考慮をいたしてまいっております。決してよいとは申しませんが、まあ一般のものと比べますと、いまのところ人事院その他においてもある程度認めてくれておる。しかし、これはは御承知のように非常に環境が悪いし、やる仕事も非常に特殊で責任も重くて気の毒な面もあるのでございます。俸給だけでなしに、何かそうした人々に日常潤いを与えて、日常生活を楽しみながらやっていけるようなことも考えていかなければならぬ。ことに少年院等の所在地は、非常に片寄っております。家庭の主婦となりますと、環境から受ける影響も非常に多いと思うのです。また家庭子供なんかおります場合は、これは長くやれないというような人もできるだろうと思います。いま御指摘の問題は、法務省としても非常にありがたいおことばでございます。ひとつ全般にわたりまして、ことにいま御指摘少年院の教官につきまして、なお研究を続けていきたいと考えます。
  31. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 大臣は私と御一緒に長い間の内閣委員でありましたので、何度か一緒の席で刑務行政についても申し上げたことがあるのでありますが、実は私は刑務所に数年いたことがあるのでございます。中のほうにつかまってくさい飯を食ったことがある。いわゆる刑務所につながれておった立場から考えまして、私は、少年院の教官の処遇改善とともに、刑務職員の待遇改善を常に主張しているのであります。私は中にいてくさい飯を食いながら、私を看守していただいておる——看守と当時申しましたが、いま何という名前であるか知りませんが、看守の皆さんの生活を見ておりますと、私どもは政治犯、治安維持法違反の事件でありますから、精神的にはあまり卑下はしていませんけれども、何せ数年刑務所の中にいたのでありますから、かなり苦しい状態であったわけですが、中から見ましても、刑務所の看守さんという方の処遇は、あんまりよくないと思うのです。少年院でも、いま寄ったように刑務所の中でも、やはり刑罰法でなくて教育法だとおっしゃっていただいているのですから、看守は、常に罪悪感にさいなまれている受刑者に対して、これはまたよほど温情——これは温情ばかりでもいけませんけれども、しかし、私の体験では、怒るよりも温情を与えたほうがはるかにまさっている。私は、実は先般私が豊多摩刑務所におった時代に、私を長い間担当していただいた方が——これはいまだから申しますが、私に対して非常にあたたかい処遇をしていただいたわけなんです。別に法を犯してまでではございませんが、何か私が間違いを起こしても怒ることなく、常にあたたかい注意をしてもらった方がある。治安維持法違反の案件でありますから、昔、その当時転向ということばがあったのでありますが、ずいぶん教戒師の教戒も受けたし、あるいは検事諸君のいろいろな教示も受けたのですが、教戒師のお説教や検事の——当時は予審判事でありましたが、いろいろな理屈では私は当時共産主義者としての節を曲げる意思は全然なかったのですが、いま申し上げた私の担当であった一看守の実に人間的な接触というものは、理屈を越えて非常に私の気持ちをなごましたのです。私は先般三十数年ぶりにその人に会ってまいりましたが、一晩ほんとうに酒をくみながら話し合ったのですが、これは私の一生を通じて忘れ得ない人物でございます。その方は現在ある高等学校の教頭をしていらっしゃいますが、やはり三十数年もたって会って、非常に会ってみてよかったと思うのです。このことで私は、刑務行政でも、もちろん刑罰も必要だし、それは威厳も必要でしょうが、刑務官吏の諸君は、やはりそうした人間的な潤いある節度で受刑者に当たっていただくことが、非常に大きいことだと思うのです。もちろんそこにはいろいろな問題がございましょう。しかし、何といっても本質的にはそれが私の信念です。それにはやはり現在の刑務官吏の処遇ではとてもできないと思うのです。私は、終始一貫刑務官吏の待遇改善と警官の待遇改善をずっと主張しているのですが、なかなか思うようにいきません。たとえばおまわりさんについても、私は警棒と拳銃をはずせと主張している。警棒や拳銃をぶら下げて、あんなかっこうをして、安い月給で、幾ら民主警察といってもだめです。私は警官には平均四万円くらいの給与と言ったのですが、そのように刑務官吏も、少年院の教官と同じように、やはり特別な給与体系をつくって、全国何十万に達するか知りませんが、もしほんとうに受刑者を更生させるということが信条なら、そこまで思い切らなければいかぬと思うのでありますが、これはひとつ矯正局長さん、これもいまと同じでございますが、いますぐとは言わぬけれども、そういう方向へあなたの指導で持っていかなければ——私は、たとえいまここで刑務官吏の給料が上がりませんでも、あなた方自身の気持ちとして、いまの刑務官吏の給料は低いのだ、もっと給与を上げて、もっと人間的なりっぱな生活をする中から、人間としてすばらしい人が受刑者に接していくようにするのだ。したがって、昔は刑務官更は、看守は、何にもなれない、社会どこでも働けない人がいったと思うのです。いまは知りませんが。私は、もう大学を出た諸君でも、どんどんみずから進んで刑務官吏になるくらいのプライドを持たせなければ、私の長い間の刑務所生活の中からながめた状態からいって、とてもだめだと思うのです。したがって、これは私の持論です、私の主張でありますが、私は十年来主張しておりますけれども、なかなかそうもいきません。いかないけれども、私は今後も続けます。ということは、できぬことはできぬとして、政治の中からそういうことを考えているということは、私は大事なことだと思うのです。私がこの主張をしたからといって、あす変わるものではありません。けれども、政治の一部にそういう考え方とそういう主張があるということは、やっぱり大事なことです。と同時に、それはあなた方の一存ではできませんけれども、そういう考え方で刑務官吏に対してあなた方もお接しになれば、これは現在給与は上がらぬでも、感じるのですね。その感じがやはりそのまま受刑者に伝わっていくのですよ。こういった、先ほど法務大臣がおっしゃった、社会全体の気持ちなり考え方がそういう方向にいかなければ、私はどうしてもいまの状態は直らぬと思うのです。したがって、ここで私がこういう発言をしたからといって、あしたから刑務官吏の給料が上がるとももちろん思いませんが、しかし、私はこれはあらゆる意味で今後も続けてまいりたいと思います。人事院にも申し上げた。いろいろな給与体系があるけれども、特殊なものであるからということでありますけれども、なかなかいまの人事院の諸君の考え方ではどうにもなりませんが、しかし、人事院は別として、あなた方はそういう気持ちをぜひ持ってひとついってもらいたいと思うのだが、矯正局長は当面の責任者として、こういう点に対してどういうお気持ちでいらっしゃるか、お伺いしたいと思う。
  32. 大澤一郎

    大澤政府委員 私の気持ちは、ただいま茜ケ久保先生のおっしゃったと同じ気持ちでございます。刑務所の職員がみずからの心の中に不満を時っておる、あるいは満たされない点があるということになりますと、勢い他に当たるということになりかねない。これは人間の常ではないか。彼ら一線に立つ者がほんとうに心豊かになりますれば、やはりそれが自然に人に接する場合にもあらわれてくる。したがいまして、刑務官が誇りを時ってその仕事に当たられるように、社会的な環境、あるいはまた安心して職務に専念できるような給与ということが、最も必要なことではないかと思っております。われわれも、そのつもりで努力をしておるわけでございます。現在刑務所の看守の俸給も、公安職で、一般の俸給よりも一二%高くなっておるわけであります。また、超過勤務手当につきましても、一般の公務員の約三倍くらいの予算の手当、その他宿舎の確保等、われわれとしまして、ほんとうに安心して仕事ができる、誇りを持って仕事ができるということに努力もし、また今後も努力を続けていきたいと思っております。
  33. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 これは一朝一夕にはまいりませんから、ぜひそういうようなお気持ちで指導方をお願いしたいと思います。  それから、刑務官諸君の服装が、だいぶ昔とは変わってまいりました。ずいぶん変わりましたけれども、まだちょっとやはりやぼったいですね。作業中はいろいろありましょうが、通勤なりいろんな場合の服装は、もっとお考え願って、もう少しスマートにしていただいたらいいと思うのです。あなた方はせびろを着て、自分でスマートにしていらっしゃるけれども、やはりああいう——私よく見かけるのですが、いまダブルにしていただいておるが、私のダブルもあんまりどうもよくないけれども、刑務官諸君のダブルも見かけのいいものじゃないようですね。これは経費のこともありましょうけれども、新しくする場合、もうちょっと考えて、何かもっと感じのいい、スマートなものにしていただいたらいいと思うのですが、いかがなものでありましょうか。
  34. 大澤一郎

    大澤政府委員 職員の制服につきまして、職員からのいろいろ希望も聞いております。特に女子職員につきまして、ズボンをスカートにする、こういう希望もとっておりますし、いまちょっと名前は正確でございませんが、ユニホームセンターという、社団法人か何か、そういう研究団体がございまして、職員の服装あるいは収容者の服装等につきまして、彼らの日常の動作に合わせました最も合理的な、そして美的なものということで、御研究を願っておるわけであります。それらがお目にとまりましたら、徐々にではあるが改善されておるというところがあらわれておると思いますが、われわれ、職員の希望も聞き、またさような専門家にデザインも頼みまして、着々改善し、よくなったつもりでおりますが、それは毎年研究をお願いして、改善していくつもりであります。
  35. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 いろいろまだありますけれども、時間もだいぶ過ぎましたので、そろそろ終結いたしますが、私は幾つか少年院を回りました中で、これは数年前ですが、小田原の少年院の院長さんは、これは何か背刑務所長さんなんかもした方と伺っておりました。それから千葉の少年院の院長さんは、そういった関係のない、一般のいわゆる民間からお出になった方と承ったのですが、私はそのたくさん会った中で、古い行刑関係の官僚を長くされた一人である小田原の少年院長さん、もうだいぶお年でございましたから、あるいは今日はおやめかも存じませんが、非常に情熱的で、しかも長い官吏生活にもかかわらず、とらわれないお気持ちを持った、すばらしい方だと感じました。それから千葉の少年院長は、何か満州などにおられた方だそうでありまして、官吏の弊がないような方です。したがって、考え方なり態度も非常に豪放らいらくな方でございまして、私非常に打たれたのでございますが、こういう一般の方がいつでも横からお入りになり、これがいま言った待遇等の関係もございますけれども——もちろんその道で若い時分からお鍛えになった方も貴重でありますし、大事でございますが、さらに一般の、民間のそういった特殊な方がどんどんそういう——少年院に限りませんが、お入りになって、教育の衝に当たってもらいますならば、たいへんこれはいいのじゃないかと思うのです。それにはいま育った処遇もございますが、そういうことをお考え願って、幾つか指摘してまいりました少中院の運営に対しまして、いままでもたいへん大臣以下意を用い、いろいろなあたたかい処遇を願ったのですが、なお一そう進展されまして、来年のいまごろはこういう実績があがったという——私はせっかちで、何も具体的なことを言うのじゃございませんけれども、何か具体的に准度するような姿が望ましいと思うのであります。私ども議員としても、こういう面についてはひとつ与野党を通じて皆さまにも御協力申し上げますし、政治の責任も多分にございますから、私ども非行少年増加には非常に責任感じ、またこれに対する措置に対してはいろいろと考えております。どうかひとつ、いろいろと法務省としても仕事はございますけれども、私はやはりこの法務省の仕事の中でも、少年院の問題は、特殊でありますけれども考えようによっては非常に重大であるし、また仕事のしがいのあるところでございますから、ひとつ十二分にそういう点に意を用いられまして、今後一そうの御精進をお願い申しまして、私の質問を終わります。
  36. 河本敏夫

    河本委員長 村山喜一君。
  37. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私は、いままで各委員から法務省設置法案の提案されました内容については、ほとんど余すところなく触れられておりますので、少年院の問題と、法案とは面接関係ございませんが、出入国の管理の問題をめぐりまして、ちょっと質問をいたしたいのでございます。  第一点は、非行少年増加関係があります問題でありますが、最近在学少年非行増加というものが苦しくなってきた。しかも、非行年齢の低下が伝えられております。特に中学生並びに同等学校の生徒の粗暴犯といいますか、そういうものが増加しておる。暴力的な非行者の身分を調べてみると、中学校、高等学校の生徒が七〇%を占めるという状態であります。いわゆる触法少年、十四歳以下の年少者のそういうような犯罪というものが、激増している状況が生れているわけであります。これらの内容をこうして考えてまいりますと、やはり現在の学校教育体系の中に、そういうような犯罪増加の欠陥があるのではなかろうかという気がするのであります。これに対しまして、いわゆる少年犯の防止その他に当たっておられる法務省としては、現在の学校教育体制のあり方というものについて、どういう見解をお待ちなのかをお聞かせ願いたいのであります。と私の申しますのは、法務大臣も御承知のように、いま同等学校に進学をいたします生徒教は、比率にいたしまして七〇%という高さに及んでおります。ところが、学校教育の内容が、中学の三年生になりますと、進学別、コース別学級編成ということが行なわれております。そういうようなことから、三〇%の進学をしない子供たちが忘れられている。その中において、暴力的ないわゆる学校の中における番長というようなものが生まれ、そういうようなものが学校教育からもう完全にボイコットされておりますので、自分の精力のはけ口がない。こういうような形の中で、しかも学校教育にはついていけない。教育内容についていけない。だから、学校の中で何らかの自分の存在価値を示さなければならない。こういうような傾向が、非常にふえてまいりました。最近卒業式あたりで教師をたたいたりする状況は、そういうようなところにあるわけです。そこで、私たちは学校教育のあり方という問題からこの問題を取り上げて、現在の少なくとも義務教育の段階であります学校教育においては、そういうような就職コースあるいは進学コースというふうに分割して、しかも、学校教育が高等学校の受験を中心にするような教育体系であっては、すべての子供の能力を伸ばす義務教育が十分行なわれ得ない、こういうような行き方は誤りではないかということで追及をしてきたのであります。しかしながら、一向にそれが改まらないのみならず、最近はそういうような傾向に拍車をかけつつある。しかも、その間にありましては、学力テスト等が次から次へと行なわれて、そしてそれを伸ばすための今度はまた教育、いわゆる高等学校、大学につながる教育のみが中心に行なわれるという形態がある。しかも、学校の教官だけでは足りません。塾なり、家庭教師を雇うて教育をするという傾向が生まれてまいります。そういうような教育に、親がいわゆる経済的な能力も持たない、あるいは関心も持たないというような中から、その進学をしない子供たちが進学組の生徒に対して暴力をふるう、あるいは番長グループをつくりまして、その下で触法少年として育っていく、こういうような形が、今日生まれているのではないかと私たちは見るのであります。もちろん教師のしっかりしない態度にも非がありましょうし、社会環境の問題もありましょうし、本人の素質の問題もありましょう。いろいろなファクターによりましてその非行少年というものが生まれるわけでありますが、この学校教育体系の問題と、法務省が所管をいたします少年犯罪に対する関連性という問題を論議されたことがあるのかどうか、この点を法務大臣から承っておきたいと思います。
  38. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 御指摘のように年少少年、生徒たちの非行が近時目立ってきて、これが一つの特色になっている。これが対策につきましては、政府は一体として実は苦慮いたしておるところでございます。法務省におきましても、政府においても、ただいま御指摘のような、学校教育——これは学校だけじゃない。家庭社会等の問題もありますが、限りまして御答弁すれば、学校教育面等についても、いろいろとこうした問題を検討をいたしておるはずでございます。これはわれわれの法務省立場としましては、青少年対策の協議会の場を通じましていろいろとこうしたことについての意見を述べておりますが、要は、所管は文部大臣の所管でございますので、それ以上のことはひとつ文部関係のほうへ御質問をお願いいたしたい。私は、ただいまお話しの点は、そういう点については十分考慮を払わなければいかぬし、大きな原因一つがそこにあるということはここで申し上げるにやぶさかではないのでございます。
  39. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 法務大臣は、こういうような進学コースあるいは就職コースというものに対する現在の教育制度の欠陥というものをある程度認めておられるわけですが、これに対しまして、学校教育の担当の文部省はどういうような考え方に基づいて……。
  40. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 ちょっと待ってください。私はいま、その問題は文部当局の問題である、法務省がとかく意見をはさむ問題ではないのだ。まあ二つに分けておりましても、そのいわゆる進学コースから漏れた連中の指導方法その他まあいろいろな考え方が、文部省にもあるんだろうと思います。そうしたことは文部行政を通じまして善処をしていただくことでございまして、私は、この二つを分けるべきであるとか、こうしたことがあるのはいけないとかいうことは、法務大臣立場からは申し上げかねるのでございます。
  41. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 しかし、先ほど大臣は、そういうような問題は大きな欠陥があるということを言われたじゃありませんか。その前言はお取り消しになるわけですか。
  42. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 教育制度全体につきましても、欠陥があるであろう——欠陥というものは、たとえばいまの進学コースとその他というものが即欠陥であるか、進学コースとそうでないものを分けた場合に、それらに対します何らかの指導とか、あるいは少年の観察とか——観察というものを公然と行なうということは、これはまた問題があるかと思いますが、先生としてはしょっちゅうそうしたことをやったり、家庭との連絡をやったり、いろいろなことがあると思うのです。そうしたやり方について、何かまだ足らないところがあるのではないかという意味のことを申し上げたのであります。
  43. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで私は、担当の局長にお尋ねをいたしたいのは、あなた方は犯罪白書をお出しになっていらっしゃいます。この中でいろいろなケースに触れられまして分析をされました。いわゆる非行少年が激増をしていく状態が、環境の面から、いろいろな面から出されているわけであります。ところが、その動機というのは、犯罪傾向におちいっていくのにはやはりいろいろな状況が見られるわけでありますが、ただ単にこれを平面的な分析として、現在両親がそろっておっても犯罪青少年が生まれるとか、あるいは中流家庭犯罪青少年増加の中においては大きくふえてきた、こういうような分析だけでなくて、なぜその少年がそういう犯罪にかられていったのか、こういう原因を突き詰めていくところに、私は青少年犯罪を少なくしていく原因があり、それがどこにどういう行政的な欠陥があるからこうなるのだ、あるいはこの点はこうしなければならないじゃないかという、そういう突っ込みが足りないのではなかろうかと思うのでありますが、いかがでありますか。
  44. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ねの問題点は、少年非行全般の問題として考える場合もございますが、さしあたって先ほど来お尋ねをいたされております学生生徒あるいは年少少年非行原因の問題でございますが、この問題につきましては、私どもももちろんその原因そのものを研究しておりますが、これはそのこと自体が直ちに実証できるかどうかということは、非常に問題なんです。しかしながら、現在ある程度到達しておるものとして申し上げるといたしますれば、大体私ども考えでは、こういうことでございます。年少少年非行増加原因は、個人的な要因、つまりその者の資質とか性向とかいうものと、それから家庭的な原因、不和であるとか、貧困であるとか、欠損とかいうような問題、あるいは社会的な環境といたしまして、職場あるいは友人関係その他一般社会環境の問題、それからそのほかには、心理的には、幼児の間に戦時中あるいは戦後の異常事態を体験したために、心理的ないろいろな欠陥を生じておるというような問題等が考えられるわけですが、そのうちでまず具体的な要因として考えられますものは、第一には心身発育のアンバランス、先ほども御議論が出ておりましたが、非常に身体的発育が活発であるにかかわらず、学校その他における処遇が年少、すなわち非常に年少者的に扱う。身体はおとなに近いのであるが、そのほかの点では年少者に扱うというようなことで、非常に本人に対する精神的な面の抵抗を感じさせるという面が考えられます。  それからその次は、これはよくいわれておることでございまして、有害ないろいろな環境が戦後とみに出てまいりまして、その面からのいろいろな不健全娯楽問題とか、あるいは有害出版物の問題とかいうような面がございます。  それからさらに学生生徒にこれは特有でありますが、結局先ほど申されました義務教育の問題にも関連があるわけですが、進学競争の激化というのは、私どもはやはり一つ原因になっているというふうに考えられる。これは少年人口の増加がいたしてまいりますに伴いまして、進学競争が激化してくることは当然であります。そういたしますと、どうしても脱落者が出るわけです。その脱落者についての待遇と申しますか、処遇というものを十分考えてやらなければ、やはりこの問題がやがては非行のほうに移っていくんじゃないかということです。  その次に考えられますのは、やはり学校における教育の欠陥、教師と生徒の間の人格的な関係が、どうも十分ではないというようなことではないか。  それからその次は、家庭教育の問題でありまして、戦後両親が非常に子供に対する教育に自信を失ってきておる。したがいまして、指導力がなくなっておるというような問題。私どもがいままで検討いたしまして、一応考えられておる原因といたしましては、いま申し上げました大体五つになるというふうに考えておるのでございます。  それでは、どういうことをすればそれがやまるかという問題につきましては、なかなかこれはむずかしい問題でございますので、こうすればこういう効果があがるということにつきましては、まだ十分な検討、研究がついていない状態でございます。
  45. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 いまの問題について、文部省としてどういう態度、方向考えておられますか。
  46. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 私、中等教育課長をいたしておりますもので、中学校と高等学校教育を所管いたしております。その見地から申し上げます。  非行増加原因につきまして、法務省のほうからいろいろなお話がございました。家庭の問題とか、あるいは終戦後の非常に混乱期に幼児期を成長した者が、ちょうど青少年期にあるとか、あるいは戦後の道徳的な価値の混乱の問題とか、最近非常に身体の発育がいいわけでありますが、心身のアンバランスとか、いろいろなことが言われておりますが、確かに現在の学校制度にも問題があることは、事実だと思うのでございます。それで、先ほど中学校の進学コースと就職コースというお話がございましたが、中学校におきましては、そういうコースという考え方はとっておらないのでございます。ただ、中学校義務教育の最終段階といたしまして、高等学校へ進学する者もございますし、中学校で終わりまして社会へ出る者もございますので、中学校教育課程の基本方針一つといたしまして、生徒の特性、進路に応ずる適切な教育を施すという方針一つございます。そういう進路に応ずるということによりまして、必須教科は全部同じでございますが、第二学年、特に第三学年に選択教科にかなりの幅を持たせまして、高等学校へ進学する者は、数学でも、必須の数学のほかに選択教科としての数学がございます。高等学校へ進学する者は、そういうものをやる。それから就職する生徒につきましては、農業とか工業とか、そういう職業のコース、あるいは生徒によりまして必須のほかにさらに音楽とか美術、そういう選択教科がございます。そういうことでございますから、学級を分けまして進学組、就職組というようなことは、現在いたしておりません。ただ、さっき申し上げましたように、必須教科のほかの選択教科におきまして、進学する生徒は必須の数学のほかに選択としての数学をやる。就職する人はその進路に応じました選択教科を選ぶ、こういう制度になっておるわけであります。ただ、中学校義務教育になっておるわけでございますが、先ほど村山委員のお話にもございましたように、かなり教育内容、程度が高くなってきておることは、事実だと思います。中学校義務教育であるということに照らして考えました場合に、中学校で教えます教育内容なり程度が、片や時代の進展に応ずる、あるいは科学技術の振興というような、時代の進展に応ずるという面の要請もございまして、かなり程度が高いものになっておるということ、あるいは内容が少し多過ぎはしないかということは、いろいろ現場からのそういう声も聞いております。それから高等学校への進学事情は、昭和三十八年が一番生徒が多くてたいへんだったわけでありますが、年々中学卒業生が減ってまいりますので、かなり緩和される方向にございます。それから高等学校に、先ほどお話がございましたように、中卒者の七割が入ってくるようになっております。一方高等学校教育の内容というものは、かなり程度が高いものでございまして、七割もの生徒が入ってきました場合に、いまの非常に程度の高い高等学校教育、しかもそれはかなり画一的、一律的に行なわれるということでどうなのか。中学校、高等学校になりますと、かなり能力とか個性とか適性というものが非常に顕著にあらわれてくるわけでありますが、同等学校教育につきましても、それぞれの生徒の適性なり能力に応ずる教育というものをもっと考える必要があるのではないかというような問題がございます。そういうことで、学校制度そのものにつきまして、私どもも確かにいまのままでいいとは思っておりませんで、幸いいま文部省で、中央教育審議会におきまして、後期中等教育の拡充整備の問題を御検討いただいておるわけでありますが、後期中等教育のみならず、それに関連いたします前期中等教育の、中学校教育につきましても、御検討をいただいております。それから、そういうわけで学校制度につきまして、私どもも確かに程度ばかり高くなりまして、すべての入ってきた生徒のそれぞれの特性なり進路なり能力なりに応じた適切な教育が行なわれるという点で、まだまだ不十分な点があるのではないかというふうに考えておるわけであります。これは中教審でただいませっかく御審議をいただいておりますので、その答申をまちまして十分に検討をしたい、こういうことになっております。  一方、先ほどもございましたが、先生と生徒の間の問題につきまして、どうもいままでのわが国の学校教育が、各教科の学習指導という面につきましては、非常に最近いろいろ研究も盛んになり、軌道に乗ってきたわけでありますが、生徒指導といいますか、それぞれの生徒の個性を伸ばしていく、将来社会へ出て自己実現がはかれるような資質、態度を養っていく、そういう生徒指導の面が非常に弱かったことは事実でございまして、昨年度から、その方面につきましても本格的に力を入れまして、いろいろな施策を講じておるわけであります。また、近くそういう面の生徒指導の手引き書を印刷しまして、中学校、高等学校の学級担任の先生に配付いたしまして、それぞれの生徒の素質なり環境、成育歴、そういったものに照らしまして個性を伸ばしていく。将来社会で自己実現がされる、そういう資質、態度を養っていくといいますか、あるいは現在の学校生活に適応できる、そういう面につきましての指導をさらに充実していきたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  47. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 文部省のほうでは、後期中等教育のあり方の問題をめぐりまして中教審に諮問をされておることは、承知いたしております。しかし、中教審の第十九次特別委員会から出されました「期待される人間像」、これは後期中等教育の内容的なものとして諮問されていたものが、国民の期待される人間像というふうに、いつの間にかすりかわっている。しかも、その手続論においても、あるいは憲法なり教育基本法の内容から見ても、どうも疑わしい、それに相反するようなものが出されている。そういうような形の中で論議されているようなものだから、今度は後期中等教育のあり方の問題について予想されるものとしては、ますますコース別のもの、あるいは目的別のもの、そういうような方向に高等学校教育というものが向けられていく。そこには能力主義というものを中心にした考え方というものが貫かれていると、私たちは見る。しかも、学校教育体系の中で、なるほど現在の中学校の場合は、厳密な意味におけるコース制ではないでしょう。しかしながら、その選択課目の教科を履修しなければ、高等学校には合格できない、現実にこういうような形になっているのです。進学コースに入れられなかった子供、もう前途に希望を失って、ますます学校教育という体系の中から離れていく。そこに私は犯罪の第一の芽ばえがあると思うのです。そういうような意味において、青少年の行政について総合的な対策を講じなければならないと、臨時行政調査会は答申をいたしました。これに対して、総理府に青少年局をつくる考え方を出して論議をされているようでございますが、法務省としてはこれに対しては賛成なのですか。それとも反対の意見をお述べになったのですか。その点についてお伺いしておきたい。
  48. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 法務省としては、青少年局を設置いたしますということは、全面的に賛成でございます。
  49. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 文部省は賛成なのですか。反対なのですか。この問題についてはいろいろ論議をしたけれども結論が出なかったというので、今度の機構改革にあたりましても、その点については延ばされているので、その点から、それぞれ関係省の見解というものを承っておかなければなりません。これについて、文部省はどういうような態度をおとりになったのですか。
  50. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 この問題につきましては、私からお答えするのはちょっといかがかと思いますので、後ほど適当な機会に……。
  51. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 それは予算の分科会で聞きます。  そこで時間がありませんので次に進めますが、この「犯罪白書」で青少年事件の処理状況を見てみますると、昭和三十七年で、検察庁から送られましたものが七十三万五千人、そのうち家庭裁判所に送致したものが八六・四%、あるいはまた家庭裁判所から逆送致をしたもの等もあるわけでございますが、そのうち、これらの内容を見てまいりますと、家庭裁判所の受理件数九十七万件、これが三十七年に出ておるようであります。そうしていろいろ保護処分を家庭裁判所がいたしております。保護観察、あるいは少年院に送るとか、そういうようなのが出されているわけでございますが、ここで家庭裁判所が事件を受理してから終局決定に至るまでの期間一年をこえるものが、なお五千人以上にも及んでいるというのが出されている。それからまた、内容的にその決定の種別ごとに見ると、不開始というのがきわめて多く、全体の七〇%に及んでいる。次に多いのが不処分だ。あるいは三十七年には、検察官送致分が不開始の次になっているというようなことで、不開始、不処分と合わせると八〇%に達している。こういうような報告であります。そういたしますと、何らの措置もとられていないというのではなくて、訓戒を与えるとかあるいは学校職員に事実上の補導を行なわせるとか、いろいろな場合もある模様であります。こういうような形であります。そこで、私は、この家庭裁判所の裁判官なりがどういう状況で充足をされているのか、この点も承っておきたいのでありますし、また、その八〇%も不開始、不処分ということになりますと、一体家庭裁判所と少年犯罪防止という総合的な立場から、法務省がどういうふうにこの問題をお考えになっているのか。二〇%分しか処理されていない、八〇%はそういうふうな模様である、その内容についてはあまりよく知りません、と白書には出されている。一体それは、教育的な措置としてそれが可能であるという判断に基づいてこういうようなのにしたのか。それとも、少年院が足らないから、少年院に送り込んでみても、これは定員一ぱいでどうにもこうにもしょうがない、あるいは保護観察関係に移すにしても、それを担当する職員が足らないので、もうしかたがないから、二〇%程度でお茶を濁さなければしょうがない、あとの八〇%は教育的な機能に依存をしよう、こういう形なのか。それとも、それを家庭裁判所が判断を下して保護処分を決定する場合に、一体そういうようなのが合理的であり、最も正しいと判断をした上でそういうようないわゆる不開始あるいは不処分という形をとったのか。その点がはっきりいたさないので、この点についてどういうふうに考えたらいいのか、これについての見解を承っておきたいのであります。
  52. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま御指摘のように、家庭裁判所におきまして、処分の手続きの不開始、あるいは手続きを開始したが不処分であるというようなものは、かなりの数にのぼっておることは御指摘のとおりでございます。その内容に至りましては、非常に種々雑多なように考えられるのです。その考えられると申しますのは、これは個々の家庭裁判所の個々の裁判官の処分の内容になりますので、一々どういうつもりでそういうふうにしたかということについては、統計数字は私どもの手元には入っておりませんのでわかりませんが、少年法によりまして試験観察というのができますので、その試験観察という意味で、ある程度の間補導委託をしておって、試験観察の結果よろしいというので処分をしないということは、相当あり得るようです。   〔主査退席、佐々木(義)主査代理着席〕 現に、補導委託につきましても、相当の予算を持って裁判所はやっておりますので、それはかなりやっておるわけでございますが、そのほかに、家庭に対する注意的引き渡しあるいは職場に対する引き渡しとか、いろいろな形のもので不開始処分にしておるということが考えられるわけでありますが、その実態は遺憾ながら法務省としてはこれはつかめないわけです。しかしながら、数字的に申しますと、先ほどお尋ねがございましたように、非常に高い数字にのぼっておりますので、この問題は非常に問題であるということを、しばしば最高裁判所当局には申し入れておりまして、その内容についてどうすべきかということを十分考えてほしいということは申してあるわけでございますが、具体的の裁判につきまして、個々の裁判官に最高裁判所が指示することはできませんので、したがいまして、一般方針を会同等で討議はしておるかもしれませんが、それ以上のことがないという意味におきまして、そういう形になっておる。これは、現在の少年審判、少年に対する処分の問題が、独立機関である裁判所にあるということの一面から、必然的の結果であろうと思いますので、行政機関そのものが少年に対する審判を行なっておれば、そのようなことはある程度は防げるのじゃないかということは考えられますが、現在の制度におきましては、家庭裁判所、ことに個々の裁判官の独自の判断によることでありますので、その内容事態について、あとから行政当局からとやかく言うことはできないというような形になっておるわけでございます。
  53. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 いま局長が御説明をされた中で、試験観察ということを言われるのですが、試験観察は二%しかないというのも、白書に書いてあるのです。ですから、これは裁判所の権限を侵すというようなことで、私たちは言っているのじゃなくて、裁判官が合理的な保護処分を下す場合に、少年院の数、収容人員その他を見てみたら、これは入れなければならないのだけれども、とても収容できない、こういう客観的な事実があったら、しかたがないじゃないかということになるわけですから、これは裁判官といえども、その最も適正な処分を下す場合の客観的な事実に基づいての判断というものが、基礎にはあり得ると私は思う。これは行政がやればスムーズにいくんだ、こういうこともまた言えないと思う。その点は、やはり総合的な対策として私は考え一つの問題点だろうと思う。  そこでもう一つ少年保護の問題で問題になりますのは、先ほど質問がございました中にも触れられておりましたけれども少年院を退院いたしました生徒に対して、少年院法に基づいて修了証明書を渡すということになりますと、学校教育法中学校なり小学校を卒業した者と同等の資格が与えられるということになっておる。ところが、その少年が非常によい成績で退院をして、就職をした場合に、何々少年院修了生ということでは、正常な形で社会に復帰しようとしたその少年が、どうも履歴書を見ると、少年院卒業生では、雇うほうも、また就職者のほうも、気の毒だと私は思うのです。そこで、何らかの方法はないかということを聞きますと、もよりの学校の校長先生から証明をしてもらうという手があるということです。しかし、これについては、そのもよりの学校の校長先生が了解をしなければ、その卒業証明書はいただけませんということです。最近は、少年院に入っております少年の中には、いろいろな動機によって犯罪を犯した者等もあるわけですが、それが学習もまじめにやり、態度も改めて、いよいよ実社会に飛び出していきます場合に、そういう資格が与えられないということになってまいりますと、少年の保護、犯罪防止という点から見て、問題があるのではなかろうかと思うのでありますが、これに対して、基本線としてはどういう立場法務省としてはおとりになるのか。また、それを受けて、学校教育立場からは、文部省の立場からはどういう立場をとるべきか。そしてまた、現実にとっておるのか。その点をお伺いしたい。
  54. 大澤一郎

    大澤政府委員 現在の少年院法で、少年院における教育学校教育法による教育として認められ、少年院長の証明書一般学校の校長さんの証明と同じ効力を有するというたてまえになっておりますが、実際の少年教育なりその少年の将来の問題を考えますと、ただいま御指摘のように、少年院卒業者でございますということをみずから証明することになりますので、実際の取り扱いといたしましては、在学中の学籍簿等が少年院に回ってまいります。それが修了した場合に、本人が在籍していた出身校に証明書を回しまして、在籍簿を学校に戻して、出身校で証明書を出してやる、いわゆる卒業証書をいただくという便法を講じまして、やっているのが通例でございます。それが遠隔地にあるというような場合には、もよりの学校にお願いして、学校から証明書を出してもらうという方途をとりまして、最近各地の教育委員会の御理解を得まして、九割以上の者が、さような形で小学校なり中学校を卒業したという形になっております。
  55. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 現在の法制の上では、御承知のように、学校教育法少年院法、それぞれの目的のもとにつくられておるわけでございますが、それで少年院法に基づきまして、少年院におきまして中学校の課程を修了したと認められる者には、少年院の院長が証明書を発行する。その証明書学校長が授与する卒業証書と同一の効力を有するということでございますから、結局、少年院長の発行いたしました証明書も、実際には中学校を卒業したという証明書といろいろな資格の点で全く同一の効力を有する、こういうことになっておるわけでございますから、それぞれの目的がございますので、法制のたてまえはそうなるものと思いますが、実際の運用におきまして、先ほど法務省からお答えがありましたように、実情に即した運営が行なわれるということがあり得ると思っております。法制のたてまえは、それぞれの法律目的が違いますので、現行法のたてまえのように、少年院長が卒業証書を授与する。それは学校長の授与したものと全く同一の効力を有する。つまり、中学校を卒業したものと同じ効力を有する、こういうたてまえになっておるわけでありますが、実際問題としていろいろのこともございますから、運営上の便法ということもあり得る、こう考えます。
  56. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私は、そのほうがいいと思うのですが、ここで文部省に承りたいのは、それを許し得る法的な根拠、これは一体何でありましょうか。そしてまた、行政指導としてそれを行ない得るのか。この点だけははっきり第何条によってやっておるのだということをお聞かせを願っておきたいのであります。
  57. 渋谷敬三

    ○渋谷説明員 はっきり申し上げますと、正式にはやはり文部省としてそういう指導をしたことはございませんし、そうしてくれということはできないと思います。ただ、世の中の実際に即してそういう便法が講ぜられておるということは、私は、実は二年も中等課長をしておりますが、うちの課の者からはそういうことはない、こう聞いておったのでございますが、その辺をひとつごしんしゃくいただきたいと思います。文部省といたしましては、やはり法律のたてまえが違いますので、少年院長の発行するものも、法律中学校長が発行するものと同一の効力があるのでございますから、それが法律のたてまえであるし、指導としてもそういうことにならざるを得ない、こう思っております。
  58. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 もう法務大臣もおりませんし、これ以上私もきょうは続けませんが、いまのその点につきましては、まあ九割も措置されておるという実情がある。そこで、それは私は知りませんというような、そういうのではなくて、やはりどういうふうにしたらいいのか。また、制度の趣旨を曲げるという点もいろいろあるでしょうけれども、実際は一人の人間、その不幸にして少年犯罪を犯した者がやがて更生できるかできないかという問題につながる問題ですから、これはやはりそういうような教育的な立場といいますか、国民のための行政ですから、その点はよく法律的な根拠というものを文部省のほうでこれは整えてもらいたい。私は、ただ目をつぶって、それが九割も実施されるというような形では、これはぐあいが悪いのでありますから、そういうような措置を講ずることができるような方法も検討されてしかるべきだと思うので、この点は要望を申し上げておきますので、これらの点については、省内においても検討を願っておきたいと思います。  以上で本日のところは終わります。
  59. 佐々木義武

    ○佐々木(義)委員長代理 次会は、明二十五日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたしまします。    午後零時三十七分散会