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新谷政府委員 登記所の
事務量の
増加に伴いまして、
職員の
事務負担が非常に
過重になっている、と同時にそれはひいては
一般の
事件の
申請人の方々にも御迷惑を及ぼすというふうなことになってまいるわけでございまして、その間に、ただいまお説のように外部の応援も受けざるを得ないというふうな事態も発生しておるわけでございまして、この点、私
どもといたしましてもまことに残念に思っているところでございます。
事件数の
増加も、きわめてその
上昇率が高い
状況になっておりまして、ちょうど
昭和二十六年に現在の
土地台帳、
家屋台帳事務というものが完全に
税務署から
法務局に引き継がれまして、その二十六年を基点にして
事件の推移を簡単に御説明申し上げますと、
登記事件と
台帳事件を合わせました数字で客観的に申し上げますと、二十六
年度におきましては合計千四百七十八万件でございました。この
時点における
上昇率を一と見まして、逐年
件数が
増加いたしておりますが、最近のところを申し上げますと、三十四
年度におきまして五千八百三十五万件、
上昇率は三・九五でございます。三十五
年度におきまして五千九百八十九万件でございまして、
上昇率は四・〇五、三十六
年度におきましては六千六百二十七万件でありまして、
上昇率が四・四八、三十七
年度は七千七百五十八万件でございまして、
上昇率は五・二五、三十八
年度は八千三百三十三万件でありまして、
上昇率が五・六四、こういうことになっています。さらにこれは推定でございますが、三十九
年度で大体九千八百万あるいは九百万くらいのところへいくのではあるまいかという見込みを持っております。
他方、ただいま御
指摘のございました
事件の
伸びと
人員の
伸びとが不均衡ではあるまいかというふうな御
意見でございますので、
人員の点について申し上げますと、二十六
年度におきましては、これは
登記台帳事件に従事しておる
職員についてのみ申し上げますが、六千三百二十九人でございます。この
時点を一といたしますと、三十四
年度が六千九百七十八人、
上昇率が一・一、三十五
年度が七千百二十名、
上昇率が一・一二、三十六
年度が七千百四十二名、七
昇率が一・二二、三十七
年度が七千三百三十八人、
上昇率一・一六、三十八
年度七千五百三十八人、
上昇率一・一九という
状況でまいっております。したがいまして、
事件の
伸びは五倍以上になっておりますが、
人員は約一九%の
伸びということでございまして、確かに
アンバランスはあるわけでございます。それだけに、
職員の
負担も非常に
過重になってまいります。さればといって、
事件の
伸びにスライドして
人員を
増加するということも、これもまた国の財政の面からも必ずしも容易なことではございません。特に来
年度におきましては、
増員の抑制という
方針が
政府の
方針としても打ち出されております。現に昨年以来
欠員の補充が停止されまして、九月四日現在の
欠員はそのままストップするという
現状になっておるわけでございまして、その
状況下において来
年度の
増員を私
ども計画いたしたわけでございます。できますれば、
事件の
上昇に見合うようになるべく
人員も十分にいただいて、
登記事務が円滑にいくようにということを念願いたしておるわけでございますけれ
ども、先ほど申し上げましたような
状況下において、
増員ということは非常に困難な
状況にございます。従来二百人、二百人、百人というふうに、
法務局につきましては特別に御配慮いただきまして
増員を認めていただいたわけでございますが、来
年度の
増員につきましては、
政府全体の
方針といたしましても、極力
増員は押えていこうという
方針でございますので、われわれ
法務省といたしましても、その線に従ってやはり
増員は考えなければならないということになるわけでございます。
さればといって、ただ抑制された
増員をそのままでいいかということになりますと、
法務局の
実態からいたしますと、これではとうてい足りないわけでございますので、ほかの
措置を考えなければなりません。そのためには、まず何と申しましても一番大事なことは、
職員の
執務環境をよくしていくということが、
能率の増進をはかる上にも最も大切なことではあるまいかと思いまして、まず
施設の
改善をはかりたいと思っています。
さらに従来やっております
能率化の
関係でございますが、非常に大きな
作業といたしましては、
台帳事務と
登記事務が別々の
仕事になっておるということが、非常に
事務の
能率を阻害しておるような結果になっております。これは
二つの
事務が相関連いたしております。もともと
税務署と
登記所二つで所管いたしておりましたものを、ただ単純に
登記所のほうへ移管したという
状況がございましたので、双方の
事務を調整しまして、関連するものはなるべく手数を省くような形で両方の
仕事の調整はできないかということから、
台帳事務と
登記事務の
一元化ということを思いつきまして、すでに過去数年来その
作業を進めてまいっております。そのために、従来の
登記簿の
大福帳式のものを
バインダー式のものに切りかえまして、さらにその上に
台帳と
登記簿の
一元化をはかって、すでに数年その
作業を続けてまいっております。これは
登記事務の
能率を
向上させる上に非常に効果のあるものと、私
ども確信いたしております。
さらに、そのほかに戦後あるいは戦争中につくられました
登記簿の
用紙が、非常に粗悪なものでございます。せんか紙とかいろいろな粗悪なものを使っておりますために、保存上も非常にぐあいが悪い。また最近
機械を導入いたしまして謄抄本をつくることの
能率化をはかっておりますが、かっての
用紙ではとてもその
機械にも乗らないというふうな
現状にありますので、まずそういった
用紙の
改善をはかろうということで、
登記簿の
粗悪用紙の
改善をやっております。
さらに
商業登記の
関係につきましては、御
承知と思いますけれ
ども、
一つの
会社で何冊にもわたるような
登記簿ができ上がるわけでございます。これは
登記簿の様式にもその原因があるわけでございまして、
一つの
会社のために何冊も帳簿をとられるということは、非常に不都合なことでありますし、
一般の
閲覧者のためにもこれは好ましくないと考えまして、そういった
商業法人の
登記関係の
用紙の
改善等も、現に
作業に入っておるわけであります。
そういった
制度上の問題もさることながら、
一般事務管理上の問題といたしましても、本来
登記事務と申しますのは、人手を使って手でこつこつと書いてきたのが従来の
実態でございますけれ
ども、
人員によって全部をカバーすることができない
現状にかんがみますと、
機械を十分に入れて、できる限り
機械を利用するということも考えなければなりません。そこで
複写機とかあるいは
計算機とか、いろいろの最近の
能率器具を極力導入いたしまして、ことに手書きにかえて特殊な
タイプライターを――これは
登記所独特の
タイプライターでございます。そういったものも
民事局のほうでいろいろ設計させまして、特殊のものをつくらせまして、現にそれを広く各庁に配りまして、むだのないような、また
職員であればすぐ使えるような
タイプライターをつくらせまして、そういったものを導入して
登記事務の
能率の
向上をはかっておるわけでございます。
何と申しましても
人員が中心になる
役所でございますので、お説のごとく
事件数が
伸びればそれに相応して人間も伸ばしたいわけでございますけれ
ども、そうもいかない事情もございますので、私
どもといたしましては、
施設あるいは
制度の
改正、あるいは
一般の
事務的な
能率器具の導入、そういったことをあわせまして極力
登記事務の
能率の
向上をはかっていこう、こういう
方針でただいま
努力いたしておる次第でございます。