○江口
政府委員 道路交通法の一部を改正する
法律案につきまして、補足して御
説明申し上げます。
まず、第一条の改正規定から御
説明いたします。
第一に、自動車による人身
事故を防止し、その他自動車の安全運転の確保をはかるための規定の新設について御
説明いたします。
その一は、第七十一条の二の規定についてであります。
この規定は、自動二輪車の運転者は、政令で定める道路の区間においては、乗車用ヘルメットをかぶらないで自動二輪車を運転し、または乗車用ヘルメットをかぶらない者を乗車させて自動二輪車を運転してはならないこととするとともに、高速自動車国道及び都道府県公安
委員会が指定した自動車専用道路においては、自動二輪車に運転者以外の者を乗車させて運転してはならないこととしようとするものでありますが、いずれも、自動二輪車の運転者またはその同乗者の人身
事故の防止をはかろうとする
趣旨のものであります。
その二は、第七十四条の二の規定についてであります。
この規定は、一定台数以上の自動車の使用者は、自動車の安全運転に必要な業務を行なわせるため、一定の要件を備えた者のうちから、安全運転管理者を選任しなければならないこととし、これに伴う必要な監督規定を設けようとするものでありますが、自家用の自動車の安全運転の管理を制度的なものとして、その責任の所在を明らかにし、安全運転の確保をはかろうとするものであります。
第二に、自動三輪車、軽自動車等に対する運転免許の資格要件等を
強化し、その他運転免許制度の合理化をはかるための改正規定について御
説明いたします。
その一は、第三条、第八十四条等の改正規定についてであります。
まず、現行の自動三輪車、二輪の軽自動車及び第二種原動機付自転車に対する運転免許の資格要件及び運転免許試験を
強化するための改正でありますが、これは、最近における自動車等の性能の向上に伴い、現行の自動三輪車を普通自動車と区分し、現行の二輪の軽自動車及び第二種原動機付自転車を自動二輪車と区分してそれぞれ別個の運転免許を設け、その資格要件及び運転免許試験の方法を異にして定めておくことは、これらの自動車等に対する運転免許上の資格要件及び運転免許試験の方法が普通自動車または自動二輪車の運転免許上の資格要件及び運転免許試験の方法に比較して軽きに失し、
実情に沿わなくなってきていることにかんがみ、自動車等の運転免許の種類のうち、自動三輪車免許及び第二種原動機付自転車免許を廃止し、自動車等の種類としての自動三輪車を普通自動車とし、二輪の軽自動車及び第二種原動機付自転車を自動二輪車としようとするものであります。なお、この改正により、自動三輪車及びこれに対応する運転免許はそれぞれ普通自動車及び普通自動車免許と、二輪の軽自動車及び第二種原動機付自転車並びにこれらに対応する運転免許はそれぞれ自動二輪車及び自動二輪車免許となり、また、第二種原動機付自転車免許が廃止され、第二種原動機付自転車が自動二輪車となることに伴い、第一種原動機付自転車及びこれに対応する運転免許は、それぞれ原動機付自転車及び原動機付自転車免許とその名称が改められることとなります。
次に、牽引免許を新設することでありますが、これは、現行法における大型特殊自動車免許の対象には被牽引車を牽引するための自動車とロードローラ等特殊な構造の自動車との両者が含まれており、
実情に即しないので、一定重量をこえる被牽引車を牽引して自動車を運転する場合は、大型特殊自動車免許の対象から除外し、新たに、牽引免許の対象としようとするものであります。
その二は、第九十六条及び第九十七条の改正規定についてでありますが、これは、新たに設けられることとなる牽引免許及び牽引第二種免許の受験資格及び運転免許試験の方法について規定するとともに、軽自動車免許の運転免許試験を
強化するため、その試験の内容に構造試験を加えることとしようとするものであります。
その三は、第百六条の改正規定についてであります。
この改正規定は、運転免許に関する
事務について、都道府県公安
委員会から国家公安
委員会に報告すべき事項に、自動車等の運転者が自動車等の運転に関してした
道路交通法の違反事項等を加えようとするものであり、運転免許に関する
事務の適正をはかろうとする
趣旨のものであります。
その四は、第百十二条の改正規定についてであります。
この改定規定は、運転免許の効力の停止を受けた者等が都道府県公安
委員会またはその委託した者が行なう講習を受けようとするときは、講習手数料を当該都道府県に納めなければならないこととしようとするものでありますが、これまでの講習の実施の経験にかんがみ、講習の内容を充実し、その体制を
整備しようとするためのものであります。
第三に、国家公安
委員会は、高速自動車国道における危険を防止し、その他交通の安全と円滑をはかるため特に必要があると認めるときは、
道路交通法の実施に関する事項について、都道府県公安
委員会に対し必要な指示をすることができることとする第百十条の改正規定について御
説明いたします。
この改正規定は、高速自動車国道における交通が広域的かつ高速的であるという特殊性にかんがみ、これに対処するため高速自動車国道における交通の規制、交通の取り締まり等について特に必要がある場合には、これを一元的に処理するため
関係都道府県警察に対し国家公安
委員会が必要な指示をすることができることとするものでありますが、これは、高速自動車国道におきましては交通の広域性という点からは、交通の規制、交通の取り締まり等が都道府県によって異なるときは、当該道路における交通の円滑を阻害し、ひいては交通に危険を及ぼすおそれがありますし、また、交通が高速であるという点からは、一の都道府県における交通が直ちに他の都道府県に少なからぬ影響を及ぼすこととなりますので、これらの理由により、高速自動車国道における交通の規制、交通の取り締まり等は、高速自動車国道の存する地域を管轄する都道府県警察単位の判断で行なうことは適当でなく、国家公安
委員会の指示のもとに、高速自動車国道全域を一体としてこれを行なうこととする必要があると
考えられるからであります。
第四に、身体障害者が車いすによって道路を通行する場合の通行区分を明確にするため、第四条等の
関係規定を
整備することについて御
説明いたします。
これらの改正規定は、最近身体障害者の社会復帰の意欲が高まり、下肢不自由の身体障害者が車いすによって道路を通行する場合が多くなってきておりますので、従来、不明確であった通行区分を歩行者の通行化分によることとして明確化し、その保護をはかろうとする
趣旨のものであります。
次に、第二条の改正規定について御
説明いたします。
この改正規定は、四輪及び三輪の軽自動車に対する運転免許の資格要件及び運転免許試験の方法を
強化しようとするものでありますが、すでに、御
説明申し上げた自動三輪車、二輪の軽自動車及び第二種原動機付自転車に対する運転免許の資格要件及び運転免許試験の方法の
強化と同じく、最近における四輪及び三輪の軽自動車の性能の向上に伴い、軽自動車免許を廃止し、自動車の種類としての軽自動車を普通自動車としようとするものであります。
なお、この改正を第一条と区分して第二条として規定いたしましたのは、後に御
説明いたしますように軽免許の廃止による四輪及び三輪の軽自動車の運転免許の資格要件等の
強化に関する改正規定を、それ以外の部分に関する改正規定の施行より三年おくらせて施行することとする必要があるからであります。
最後に、附則について御
説明いたします。
附則におきましては、その第一条において、本則第一条の改正規定を公布の日から起算して三カ月を
経過した日から、本則第二条の改正規定を第一条の改正規定の施行日から三年を
経過した日からそれぞれ施行することといたしております。
すなわち、第一条の改正規定につきましては、自動三輪車、二輪の軽自動車及び第二種原動機付自転車に対する運転免許の資格要件等の
強化にかかる改正を含めて改正法の公布の日から三カ月後に実施することといたしておりますが、第二条の改正規定につきましては、四輪及び三輪の軽自動車の運転免許の資格要件をいま直ちに
強化することは、社会的に少なからぬ影響を及ぼすことになりますので、改正法の公布後三年三カ月を
経過した日から実施することとし、その間は、四輪、三輪のものにかぎり、自動車の種類としての軽自動車とこれに対応する運転免許として軽自動車免許をそれぞれ存置することといたしております。したがいまして、改正法の公布後三年三カ月を
経過いたしますと、軽自動車免許は廃止され、自動車の種類としての軽自動車は普通自動車となり、これに対応する運転免許は普通自動車免許となるわけであります。
なお、附則第二条以下においては、運転免許の種類の改正に伴い、改正される従前の運転免許は新法の相当規定による運転免許とみなすこととするとともに、運転免許の種類に応じて運転することができる自動車等の種類の改正に伴う必要な
経過措置についても所要の規定を設けております。
以上が
道路交通法の一部を改正する
法律案のおもな内容であります。何とぞよろしく御審議をお願いいたします。