運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1965-04-08 第48回国会 衆議院 地方行政委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月八日(木曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 中馬 辰猪君    理事 亀山 孝一君 理事 久保田円次君    理事 田川 誠一君 理事 藤田 義光君    理事 川村 継義君 理事 佐野 憲治君    理事 安井 吉典君       大石 八治君    奥野 誠亮君       亀岡 高夫君    島村 一郎君       武市 恭信君    登坂重次郎君       村山 達雄君    森田重次郎君       山崎  巖君    秋山 徳雄君       華山 親義君    細谷 治嘉君       門司  亮君    吉田 賢一君  出席政府委員         警察庁長官   江口 俊男君         警  視  監         (警察庁保安局         長)      大津 英男君         運 輸 技 官         (港湾局長)  佐藤  肇君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁刑事局         捜査第二課長) 関根 広文君         厚 生 技 官         (公衆衛生局精         神衛生課長)  鈴木 一男君         運輸事務官         (港湾局参事         官)      河毛 一郎君         労働事務官         (職業安定局雇         用調整課長)  遠藤 政夫君         建設事務官         (計画局建設業         課長)     高橋  明君         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 四月六日  地方公営企業財政確立等に関する請願外一件  (佐藤觀次郎紹介) (第二七七四号)  貨切バス自動車税増税案撤回に関する請願  (前田榮之助君紹介) (第二八一九号)  は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一〇号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 中馬辰猪

    中馬委員長 これより会議を開きます。  銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案を議題とし質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。細谷治嘉君。
  3. 細谷治嘉

    細谷委員 銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案政府が提案されておるのでありますが、この改正目的についてお尋ねします。
  4. 江口俊男

    江口政府委員 本法の改正目的につきましては、提案理由説明並びに私の補足説明で繰り返しておりますとおり、最近ピストル輸入等増加にかんがみまして、そのほうの防止に役立たしめるという意味輸入罪を新設するという点が一点。  それからもう一つは、従来銃砲刀剣というものを一括いたしまして、どういうものを持っていても同じ扱いがございましたけれども、やはり事の軽重に応じてピストル、銃というようなものと、それ以外の空気銃とか、あるいは刀剣というようなものの所持につきまして、その罰を異にする。言いかえれば、もっぱら凶器として使用されるようなものの所持につきましては、従来よりも強くこれを罰していきたいというような意味改正が第二点でございます。  それから第三点は、これは、手続上の問題でございまするけれども参議院等で問題になりましたが、火なわ銃に類する古式の銃が、現在は届け出ないと不法所持ということになりますけれども、事実上は骨とう品として存在するというようなものを救済するために、火なわ銃に限らず、そういう一定の古式の銃につきましては、正当に持てるような方法を講ずるというような点にあるのでございます。これを活用いたしまして、ひいては国内における暴力の絶滅に役立たしめようというのが最大の最後の目的であるわけでございます。
  5. 細谷治嘉

    細谷委員 ただいまの説明は、この前聞いたことと大体同じでありますが、それに関連して一点お尋ねしたいのですが、国家公安委員会からいただきました資料の五二ページ、最終のページを拝見いたしますと、第六表に「けん銃の密輸入事件検挙状況」、こういう表が載っております。これを見ますと、三十七年、三十八年、それから三十九年の一月から六月、こういう検挙状況数字が載っておるのでありますが、ふしぎに思うことは、三十七年、三十八年に比べまして、三十九年の前半、半年間における検挙件数が非常に多い、こういうかっこうになっておるのであります。これは一体どういう原因なのかお尋ねします。
  6. 大津英男

    大津政府委員 ただいま御質問がございました拳銃密輸事件検挙状況でございますが、この表にございますように、三十九年の上半期におきましての検挙が非常にふえておるという状況でございます。これは一つには、御承知のようにCRSというフィリピンで密造せられました拳銃が、国内に相当密輸入されてきた、それが暴力団等の手にわたりまして、それが検挙せられまして、それを追及してまいりましたところがこういうふうに件数が非常に多く出ておるということでございます。  拳銃の点につきましては、暴力団取り締まり一環といたしまして非常に力を入れておるのでございますが、同時に国内におけるところの拳銃が、従来のものから次第にそういう密輸入のものに移ってきておる、こういうような状況も見られるわけでございまして、CRSをはじめといたしまして、先般ございましたエールフランス航空機長ユルトレル事件等を見ましても、ああいうふうな拳銃が、外国から相当多量に入っているということからこういう数字が出ておるという実情でございます。
  7. 細谷治嘉

    細谷委員 たまたまこの時期に密輸入が急増しておったのか、あるいは過去に検挙についての何らかの警察庁当局の熱意の不足、あるいは力の不足から、こういう統計数字ができたのかという点は問題点でありまして、たまたま突然変異としてこういう統計があらわれたんだ、過去の実態はこの統計にあらわれたような形なんだ、こういうふうにお考えなのか、取り締まり強化によってこういう統計が出てきたのか、こういう点はいかがですか。
  8. 大津英男

    大津政府委員 先ほど申し上げましたCRS拳銃につきましては、やはり三十八年の末ごろからそういうものが国内に入ってきておったということが捜査の結果も出ておるというようなことでございまして、拳銃密輸が非常にふえてきておるということが一つの大きな原因でございます。と同時にいままでも拳銃につきましての捜査を非常にきびしくしておったのでございまして、決していままでその点について非常に不熱心であったということはないのでございますが、暴力団の追及ということと、先ほど申し上げました密輸拳銃増加ということが、両々相まちましてこういうような結果を生じておるということだと存ずる次第でございます。
  9. 細谷治嘉

    細谷委員 両々相まってということでございますけれども、おことばとしては、やはり密輸入の数がふえた、こういう点に重点が置かれておるようでありますが、暴力団に対する対策強化、こういう問題からこういう数字が出たのだ、こういう御説明もございます。  そこで、お尋ねいたしたいのでございますけれども、今回の法律案を見ますと、この説明にも書いてございますように、四番目に罰則強化について説明がございます。この説明の中に、最近における暴力団等による銃砲刀剣類の不法な所持及び使用に対処するために罰則強化した、こういうことでございますが、これは輸入の問題、あるいは譲渡に対する規制等でありまして、暴力団等に対する問題としては、罰則強化ということに力点を置かれておるようでありますが、罰則強化でこういう問題が解決されるお考えなのかどうか。
  10. 大津英男

    大津政府委員 罰則強化するということと同時に、たとえば輸入罪につきましては未遂も罰するというようなことがございますので、いままで以上にこういうものにつきまして検挙された者は実刑が重くなってまいるということで、この拳銃不法所持密輸入に対するところの警察のきびしい態度によって、こういう点が減ってくるということがあると思うのでございます。と同時に、私どもこの法律の運用ということにつきましては、拳銃捜査について不法所持につきましての捜査を一そう強化をいたしまして、このような事犯を一掃するという努力をさらに続けていくということでなければ、罰則だけが強化されたというだけで絶滅できるものだというふうには考えておらないのでございまして、今後ともこういう面につきまして一そうの努力を払っていきたい、かように考えているわけでございます。
  11. 細谷治嘉

    細谷委員 罰則強化と、それから警察当局体制強化と両々相まってということでございますので、次に質問をいたしたいと思うのですが、昨日社会労働委員会港湾労働法が通ったのでございますが、四月六日のある新聞に、港湾労働の問題、いわゆる銃砲刀剣等に関連して暴力団犯罪問題というのが非常な大きな問題になっておるわけでありますが、その一つの温床といわれる興行関係については、せんだって参考人等を呼んでお聞きしたのでありますので、まず港湾荷役等に関連して少し突っ込んだ質問をしてみたいと思うのです。  四月六日の新聞によりますと、「港湾暴力追放戦線に乱れ」ということが書いてございます。そして「運輸労働省が渋る」ということが書いてございます。さらに記事を読んでみますと、警察庁当局はこういうふうに見ております。関根広文捜査課長は、「警察が乗り出す以前の運輸労働行政欠陥はないだろうか」、こういうふうに新聞に書いてございます。この新聞に書いたとおりお考えなのかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
  12. 関根広文

    関根説明員 新聞記事に、私の名前で談話が載っておることにつきましては、それ以前に新聞社の取材に対しまして、いろいろとこの問題について発言をしたことがございます。それで新聞の字句は、取材した人の感じで、私が言った一字一句をそのまま伝えたものではございませんので、この機会に私のほうでそのときに申し上げました趣旨を御説明しておきたいと思うのであります。  港湾労働に関して暴力団が介入しておる。その点に対しましても取り締まり強化し、暴力事犯の根絶を期していかなければならないということは重々考えております。そのやり方として、警察として現在やっておりますことは、港湾に関する暴力団犯罪を、刑罰として警察が追及してあげる。犯罪検挙の面からこの問題を処理していくことが私ども仕事であります。ところが現在までにやっております検挙状況は、たとえばいわゆる手配師労務者に対していろいろと暴行、傷害を与えるとか、あるいはそういった人が募集仕事に関して暴力なわ張り料というようなことで、他の募集仕事をしておる人たちに対して恐喝をするというような事件とか、あるいは暴力団員労務者相手にけんか、ゆすり、たかりなどを行なっておる、あるいは賭博を行なっておるこういう事犯検挙していくのが私ども仕事で、この面については努力しておりますが、しかしながら、港湾労働という全般の問題につきましては、いろいろと複雑な問題が多いように聞いておる。したがって、そういう警察以外の問題についても、暴力追放ということで一諸になって考えていくべき問題があるのじゃなかろうかというようなことを申し上げておるのでありまして、そのことがいま記事として読まれたような文句に省略されておるというふうにお考えいただきたいと思うのであります。
  13. 細谷治嘉

    細谷委員 少し控え目なおことばでございますが、欠陥があるんじゃないかというお考えのようでありますが、次にお尋ねいたしたいのは、この新聞に書いてあることでは、「労働省は」と書いて、労働省見解が書かれてあります。「港湾荷役の労使が親分、子分のいまわしい慣行に支配されているのは事実で、それを少しでも改善しょうと今国会に港湾労働法案を上程した。法律が成立すれば、悪質な賃金ピンハネは自然消滅するだろう。労働行政の中に警察が立ち入るのは好ましくない。」こういうふうに労働省側のお考えは書かれてございます。  港湾労働法案が昨日社労委員会を通ったのでありますが、労働行政警察が立ち入るのはもちろんよろしくないわけでありますけれども、この労働法が成立すれば、こういう忌まわしいピンはね、あるいは職安法違反というような問題が阻止できるかどうか。これは新聞に書いてある労働省見解でありますが、この席でお尋ねしたいと思います。
  14. 遠藤政夫

    遠藤説明員 現在六大港におきまして十万くらいの港湾労働者が働いておりますが、その中で日雇いという形で働いておる方たちが約半数程度占めておりまして、その半数程度日雇い労働者は、ただいま先生からお話のございましたように、いわゆる手配師といったようなたぐいの人たちの手を通じて雇用されている人が、相当多数にのぼっております。そういう関係で、この手配師の手を通じて雇われております人たちは、ピンはねとか、あるいは募集の際にいろいろな刑事事犯にひっかかるような問題も多々あるように聞いております。そういった問題につきましては、今回の港湾労働法が幸いにして成立いたしますならば、この港湾労働法によります登録制度その他の施策を実施いたすことによりまして、そういったやみ手配師の介在する余地はなくなるわけでございます。したがいまして、ピンはねとか、そういった暴力が介入する余地はほとんどなくなるのではないかと私ども考えておる次第であります。
  15. 細谷治嘉

    細谷委員 一昨々日ですか、運輸委員会社会労働委員会連合審査の際に石田労働大臣が、港湾労働法の制定がされれば、同法をうまく適用してやみ手配師などの介在がなくなるようにする、こういうふうに言明をいたしておるわけでございますが、次にお尋ねいたしたいのは、運輸省のほうにお尋ねしたいのでありますけれども運輸省談話としてはこういうことが出ております。「業者運送事業法にさえ違反しなければ——といった調子だ。「正業を得て立ち直ろうとする暴力団まで締め出すことはできない。荷役会社暴力団扱いされたため、就職がきまった者までこなくなったという話だ。これで労務者不足を招き、船内荷役がストップしたら経済界は打撃を受ける」」こういうふうに書きまして、さらに「港湾荷役は直接、生産や労働に結びついている。全港振も近代化に努めているのだし時間をかしてほしい」、こういうふうに言っております。こういう、新聞に書いてあるようなお考えに立っていらっしゃるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  16. 佐藤肇

    佐藤(肇)政府委員 その記事に出ましたことは、夜電話で向こうが私に質問したことに答えたわけでございますが、私どもといたしまのては、港湾運送事業法によって免許を与えてその業を監督しておるわけでございますけれども、現在のところ確かに港湾運送事業の中には組関係のものがあるわけでございますが、港湾運送事業法によって免許する場合には免許基準に該当しておりますし、それからその後港湾運送事業法違反を犯しているという事実はないわけでございます。  もう一つ、そのあとのほうのいろいろな問題が出てまいりましたのは、神戸港におきまして、船内荷役業者が、船主関係からあぶれ補償金というものをもらっておりまして、このことが新聞に出たわけでございまして、それが暴力的に金を取っておるというようなことが記載されておったわけでございますが、私どもで調べましたところによりますと、これは昭和三十七年の船込みのときに、船内荷役労務者をどのように確保するかということがございまして、そのときに船主荷主側から、港湾荷役とのものに波動性があるわけでございますから、労働者を確保するために確保料として、両者の話し合いで出したものである、それが現在も続いておるということを聞いておったわけでございます。  ところがその後、たしか神戸新聞だと思いましたが、この新聞によりますと、現地の基準監督署長が言っておるわけでございますが、このあぶれ補償金なるものは確実に不就労の労務者に払われておるし、このことが新聞暴力的に金が授受されたというようなことが出たために、宮崎県でせっかく労務者に応募した者が、その記事のために契約を解除して来なくなったというようなことが新聞に出ておったわけであります。したがいまして、暴力ということだけで、事実をよく確かめられないで書かれておるところがあるのではないか。  それからこのこと自体は確かに港湾運送事業といいますか、港湾荷役全般にわたりまして前近代的な面があるから、こういうものを改善していかない限りにおいては、なかなか事実としての暴力というものはつかめない点があると思うので、われわれとしても港湾運送事業というものの近代化をはかりたいと思っておるので、もう少し待ってほしい、こういう趣旨で言ったと思っております。
  17. 細谷治嘉

    細谷委員 いまのもう少し待ってほしいというのは、港湾労働正常化という意味においてもう少し待ってほしいということですか。
  18. 佐藤肇

    佐藤(肇)政府委員 港湾労働法ができました場合には、労働省からお話がありましたような効果があるわけでございますが、それと港湾運送事業そのもの近代化されていくということが必要でございますので、そういうような両方の意味で申したわけでございます。
  19. 細谷治嘉

    細谷委員 いま関係官庁の、警察庁なり労働省なりあるいは運輸省の、新聞記事からの質問に対して、それぞれお答えをいただいたわけでありますが、これに対して、港湾労働問題の研究家である、ある人が「港湾荷役興行は非常に似ている。どちらも口入れ稼業に近く、その対象が芸能人か労務者かという違いだけだ。荷役業者は下請けの利ザヤで肥えてきたのだ」と言いまして、「主管官庁ナワ張り意識も指摘した。」こういうふうに書いてございます。  いま私がお聞きしたこと、あるいは新聞記事から見ますと、この問題について警察当局労働省とそれから運輸省との間に、港湾労働問題の研究家が指摘しておるようないわゆるギャップといいますか、なわ張り争いといいますか、縦割り行政の弊が出ておるのではないか、私はどうもこういう気がいたしますが保安の問題を直接担当しておる警察庁当局はどう見ておるのか、お答え願いたいと思います。
  20. 江口俊男

    江口政府委員 御指摘でございますが、私たちになわ張りというのはないわけでございます。争うべきなわ張りというのは警察は持っておりませんから、ちっともその点争うという気持ちはございません。先ほど関根課長から申し上げたように、どういう法律ができようとも、その法律によって自然に事態が動くわけではない。その法律のとおりに持っていくためにはいろいろな行政の指導なり、あるいは違反する者に対する制裁なりというものがあるわけです。それと、おのおのの主管官庁でおやりになる場合に、その間に暴力的な犯行によってやりにくいというようなことがかりにあらわれるとすれば、そういうものを排除するということは私たちの責務でございますから、あくまでも警察としては、そういう正当な行政の手助けをするという意味で、その点は用意をいたしております。  それから先ほどやはり関根課長から申しましたように、そういうことと離れて、港湾労働関係する者の間に暴力ざたというものがあれば、これは港湾荷役であるからどうとか、ほかの職業であるからどうという特別の考えではなくて、その個々の行為に着目した刑事上の取り締まりというのは、当然警察の担当すべき部門として現にやっていることでもございますし、将来においてもそういうものがあれば、それは大いにやっていかなければならぬ、こういう考えでおります。
  21. 細谷治嘉

    細谷委員 たいへん恐縮でありますが、この記事の中には重要な問題点もありますから、さらにお尋ねをしたいのであります。  労働省にお伺いをしたいのでありますが、今度の港湾労働法改正の中にもあるわけでありますけども、ある港湾労働をやっておる業者がこういうことを言っておるのです。「港湾荷役に力をいれているのは、なによりも赤化防止のためだ。労組が強くなって、ストライキが続発、港湾機能がマヒした場合、基幹産業はいったいどうなる?そのとき“港を守れ”と号令できる実力者が必要なのだ」、こういう記事が出ております。これは民主政治の中でたいへんな問題を含んでおりますが、これは人の語ったことでありますから、ここで審議をとやかくはいたしませんが、こういう考えについて運輸省労働者はどうお考えなのか、ひとつお尋ねしたいと思います。
  22. 遠藤政夫

    遠藤説明員 ただいま細谷先生からお話のございましたように、港湾労働法がここでできると、それによって港の労働者組織化といいますか、組合結成が促進されることによって、これは外国で行なわれておりますような港湾のゼネストとか、そういうことにすぐつながって港湾機能を麻痺させるおそれがある、こういうことを非常におそれたような発言をされた方があるということも聞いております。ただ、この港湾労働法ができるといなとにかかわらず、労働組合結成が促進されていく、労働組合組織化が進むということは、これは時代の趨勢でございます。私ども当然の成り行きであろうかと思っております。これは港湾労働法ができなくても、現在すでにそういった組織化の方向に進んでまいっております。むしろこういう港湾労働法ができることによって、いままでのような前近代的な労働慣行が改善されることによって、健全な労働組織ができるということがむしろ好ましいことであろう、こういうふうに考えるわけであります。  これに対しまして、企業のほうの側は、こういった労働組織に対抗するような、事業主側としての健全な労働慣行を育成するような立場で対処していただきたいということを、私どもは申し上げてきておるわけでございます。
  23. 佐藤肇

    佐藤(肇)政府委員 運輸省で所管しておりますこの港湾運送事業は、輸送の一環としての行政でございます。これにつきましては、もちろんこの港湾運送事業は、労働者を多数使うわけでございますから、労働省の御協力を得て、港湾労働法その他の立法も必要でございますし、そのもとというのは、やはり全体の産業の中で、港湾運送事業というのが非常に前近代的だということから、内閣港湾労働等対策審議会というのが設けられまして、昨年の三月三日にその答申をいただいたわけでございますが、その中にまず第一に港湾労働者雇用を安定させるということが一点でございます。その次に港湾運送事業近代化させるというのが第二点、第三点としては、港湾管理運営というものをもっと合理化するという三点になっているわけでございまして、その趣旨に従いまして、私ども港湾運送事業というものを集約し、近代化していきたいということを考えておるわけでございまして、そういう中において、労働の問題だけを特に取り上げて特殊なものとして見るわけではございませんので、いま労働省お答えになったと同じように、私ども労働問題それ自体は全体の日本の近代化とともに進んでいって、ここだけが特殊のものであるとか、その近代化をやることによって労働者を押えるとかいうようなことは、全然考えておらぬわけでございます。
  24. 細谷治嘉

    細谷委員 これは当然なことと思いますが、次に運輸省にもお尋ねいたしたいのでありますけれども当局はその雇用問題点がある、あるいは職安法という観点から見ましても問題点があることでありますが、今度の港湾労働法では常用日雇いということできちんといたしておるわけでありますけれども、現状についてひとつお尋ねしたいのであります。  私の聞いておる範囲では常用港湾労務者日雇い港湾労務者とありまして、その日雇いには優先的に雇われる者とそれから指名あるいは顔つきと言っておるそうでありますがそういうものと、それから一般の労務者、こういうのがあるそうであります。これは職安の窓口を通じて雇用されるそうでありますが、新聞等にもございますが、門前雇用というのが行なわれておるということをお聞きしておるのですが、そういう事実があるかどうかお尋ねいたします。
  25. 遠藤政夫

    遠藤説明員 先ほど申し上げましたように、六大港におきまして港湾荷役に従事しておる労務者約十万人程度だと思いますが、そのうちの五万九千くらいが常用労働者で、その他が日雇いで処理されておるわけであります。この日雇い労働者の中には今度の港湾労働法考えておりますような登録制度に類似した制度が、事実上の制度として従来行なわれておりまして、この日雇い港湾労働者として現在職安に登録されております者が、六大港で約二万一千あります。この二万一千のほかに一般の日雇い労働者として港湾荷役作業に従事しております者が相当数おります。こういった人たちが一部は職安の窓口を通じて職安紹介によって就労いしておりますが、これは法的にもあるいは制度的にも職安の手を通じなければならないという義務も規制もいたされておりませんので、したがって、業者は自由に、いわゆる門前募集のような形で労務者を集めることが許されておるわけであります。したがいまして、そういう人たちの大部分が、先ほどからお話のございますようなやみ手配師の手を通じて雇われるというような事態もあるわけであります。今後港湾労働法ができますと、港湾運送事業日雇いを雇い入れる場合には、必ず職安の窓口を通じなければならないことになっております。したがいまして、そういった門前募集、直接雇い入れというような事態は、非常に特殊の緊急の事態の場合にのみ許されることになるわけでございます。そういった関係で先ほど来申し上げておりますような、こういうやみ手配師の介在による暴力の介入といったような事態は、十分回避できると私ども考えておるわけであります。
  26. 細谷治嘉

    細谷委員 現在、門前雇用というのが、十万のうちどのくらいございますか。
  27. 遠藤政夫

    遠藤説明員 正確な数は私どもでもまだつまびらかにいたしませんが、職安に登録されておりますいわゆる日雇い港湾労働者、あるいはその他の一般の日雇い労働者の中でも、業者からの直接募集によって、雇い入れられております者も相当数ございます。あるいは職安の窓口を通したという形で雇用されております者の中でも、いわゆる先ほどお話のありましたような指名直用とか、あるいは優先班とかいうような形で、一定期間継続的に雇用されるというような形で雇用される者も相当数ございます。直接募集、いわゆる門前募集というような形でやられております者は、正確にはわかりませんが、かなりの数にのぼるのではないかと考えております。
  28. 細谷治嘉

    細谷委員 かなりの数ということで、どの程度か具体的に数字をお聞きできなかったわけですけれども、問題は、今度の港湾労働法を金科玉条として御説明いただいておるようでありますけれども、きのうも衆議院の社労委員会で附帯決議がついたように、この港湾労働法はどういう理由か知りませんけれども、二カ年以内ということになっておるのですね。二カ年以内というのは、おそらくそういうむずかしい問題が介在している、あるいはもっとうがって言いますと、この新聞に書いてあるように、主務官庁のなわ張り争い、こういうようなものが影響して二カ年以内ということになったのではないかという気もするのでありますけれども、もっと早くこの港湾労働法を軌道に乗せるべきだ。軌道に乗せますと、今度は安全に職安の窓口を通さなければならぬ。緊急の場合に窓口を通さぬ場合でも、すぐ届け出をしなければならぬ、こういうことが法律で規制されますから、そういうことになるわけでございますけれども、そういう点で問題は、やはりこの暴力団関係があるのはどうも門前雇用、こういう職安の窓口を通じておらぬところに問題点があると私は思うのです。これは今度の法律で改めるということを労働大臣も答弁しておるのでありますから、社労委員会が附帯条件をつけたようでありますが、要は一日も早くこの港湾労働法を全面的に実施していく、こういうことが望ましいと思うのでございます。  次にお尋ねいたしたい点でございますけれども、この港湾運送事業法の第四条、五条、六条に、この運送事業に関する免許なりあるいは免許の申請、免許の基準、こういうものがございます。問題はこの事業法の四条、五条、六条の運営ということがきわめて重要な問題を持っておるのではないかと私は思います。この点がうまくいきませんと、港湾労働法ができたからといっても、労働大臣の答弁したようにうまくいかないんじゃないかという気がいたします。この港湾運送事業法の運営上の問題について、反省すべき点があるとお考えなのかどうか、これをひとつ佐藤局長にお尋ねします。
  29. 佐藤肇

    佐藤(肇)政府委員 港湾運送事業法のこの基準でございますが、確かにこれの運用ということは非常に大切なことでございます。現実を申しますと、非常に中小の業者が多いということではないかと思います。したがいまして、たとえばこの第六条にも書いてございますように、「事業を適確に遂行するに足る労働者及び施設」ということがございますが、これにいたしましても、一つの小さな業としてこれを適確に遂行するに足る労働者、施設というものも考えられるわけでありますが、これが大きくなればなるほどその量も大きくなりまして、したがって港湾の稼働にもたえ得る、こういうことになりますと、必然的に常用の数が多くなる、こういうことで、事業そのものも安定するし、また労働者そのものも安定するし、処遇も改善されることになると思います。そういう趣旨が昨年三月三日に出されました港湾労働等対策審議会の答申にもあるわけでありまして、私どもはそういう趣旨に基づきまして極力集約化を進めることによって近代化をはかりたい、かように考えておるわけでございます。
  30. 細谷治嘉

    細谷委員 労働省にお尋ねいたしますが、荷役の場合に、門前雇用というような問題も含めて、特に私は船内荷役などに問題点があろうと思うのですが、人夫供給という形において職安法違反するような問題はないのかどうかこれをお尋ねいたします。
  31. 遠藤政夫

    遠藤説明員 現在港湾荷役作業は下請という形で行なわれておりまして、この下請の契約が職業安定法に規定されておる労働者供給事業に該当するかどうかということが問題であろうかと思います。現在の港湾運送事業で行なわれております請負契約による下請は、安定法の労働者供給事業には該当しないと考えております。
  32. 細谷治嘉

    細谷委員 該当しないから職安法違反ではない、こういうふうにおっしゃっておるわけですが、大体船内荷役の過半数は完全な人夫供給的な性格でやっておる、こういうふうに私は聞いておるのです。どういう拡張解釈をなさったか知りませんが、職安法から言ってもずいぶん問題のある運営がなされておるこういうふうに思うのです。  ところで、いま港湾局長さんからお聞きしたのでありますけれども港湾荷役をやる場合には、とにかく運輸省免許をもらえばよいということで、その基準というものがございます。前はただ届け出をすればよかった時代もあったようでありますが、この免許の基準あるいはその運営というものが、やはり今日までの暴力団の温床といわれる港湾労働の状態をつくったのではないかという気が私はいたすわけであります。そういう点で、労働基準法なりあるいは職業安定法なり、そういうものがございますけれども、へたをしますと、この港湾運送事業の運営というものがうまくマッチしないと、もぬけのからというふうになるのではないかという気がいたします。ある新聞にこういうことが書いてございます。この港湾運送事業法は、何らの生産手段を持たない者が、港湾労働者を雇い入れたことにして運輸省に届け出れば港湾運送業者として許可される、これはもちろんこの記事に基づいてのことでありますが、基準も常識的なことしか書いてございません。許可された以上は運輸省免許業者である。あとは日雇いを何百人も使ってピンはねをやっても、それで通るのだということで、具体的の例もあげておるわけなんです。うまくいっておれば、新聞で書き立てるようないわゆる暴力団の温床としての港湾荷役という、そういう批判というものも起こらなかったのじゃないかという気がいたしますが、この点いかがでしょう。
  33. 佐藤肇

    佐藤(肇)政府委員 私ども免許を与えます場合には基準があるわけでございまして、一例をあげますと、船内荷役につきましては、労働者及び施設といたしましては、現場監督の者が八名以上、船内基幹労働者二十四名以上及び一般労働者六名以上と、おのおの以上がついておるわけでございますが、こういうものがグループになりまして、監督をする者、また基幹労働者と申しますのは技能者でございまして、ウインチを動かしたり、そういうことをするわけでございます。これは全部活用でございますが、これに日雇いを入れて作業をするわけでございまして、労働者個々が作業をするわけではございません。やはりグループとして指揮監督を受けて仕事をやるわけでございますから、ただ単に労務供給というものではないのでございまして、ことに船内の作業になりますと、熟練度ということと重労働があるわけでございますので、使用者といたしましても相当あたたかい配慮を払い、かつまた厚生施設その他についても考えてやらない限りにおいては、労働者が定着しないということもございまして、新聞紙上で書かれているような単純な労務供給でもございませんし、経営については非常な努力をして初めてやり得るものである、こういうように理解しているわけでございます。
  34. 細谷治嘉

    細谷委員 おっしゃることばをそのまま聞きますと、問題ないようでありますけれども、現実には、全港振といわれる団体は暴力団の団体といわれております。それは百近くあるんだそうでございますけれども、そういうものもやはり大部分が暴力団だ、こういうふうにいわれておるのでありますが、警察当局はどう見ておるのでしょうか。
  35. 関根広文

    関根説明員 警察暴力団というものを把握しておりますのは、かねがねこの委員会で申し上げておりますように、犯罪常習性のある集団と警察が把握しておるものを言っておるのでございますが、その把握しておる団体の性格に、ばくち打ち的なもの、あるいはテキヤ的なもの、いろいろな種別がございまして、もっぱら港湾で、港湾を地域として暴力等を常習としておる集団というものは、いわゆる港湾暴力団ということで警察としては把握しておるわけでございます。それが全国で七十四団体と把握いたしまして、その犯罪検挙ということにつとめておるのでございますが、仰せられました業者の中に暴力団がおるかどうかということ、そういう業者の中におる暴力団と見られる者が、ここにいう港湾暴力団の中に入るかどうかということとは若干違いまして、ばく徒あるいはテキヤの集団と見られておる集団の中でも、その中のある人が港湾運送をやっておるというふうなのもございまして、いろいろな形で港湾暴力というものを警察では把握しておる次第でございます。業者の中に、警察暴力団の構成員であるというふうな見方をしておる者がいることは事実でございますが、具体的にどういった人がそれに当たるのだということは差し控えさしていただいておりますので申し上げられませんが、そういうふうに、もっぱら港を地域として犯罪を常習とする集団というふに警察で把握しておる港湾暴力団、そのほかに、業者の中にも暴力を常習とするということで警察が把握しておる人物が介在しておる。しかし犯罪を犯すという観点から警察はこれを見ておりますので、犯罪を犯す場合には当然検挙するということでやってまいりますが、それ以外の場合におきましては、単に生じた犯罪検挙すればいいという見方ではございませんで、企業を背景に暴力を行なうおそれがあるのではないかということで十分内偵はしておりますけれども、現在のところお尋ねのありましたように、業者の中の暴力団と目される人が直ちに犯罪を行なうということで検挙の対象になるというふうな具体的事実は持ち合わせておりません。
  36. 細谷治嘉

    細谷委員 少し抽象的でわからないのでありますけれども、兵庫県警が調べたという内容として、神戸港のおもな荷役会社二十七社のうち、十八社が暴力組織につながっている。これは兵庫県警が調べたとして新聞に出ております。そうしますと、全国を見ますと相当の数の荷役会社暴力団の組織につながっている、こういうふうに考えなければならぬわけであります。神戸港の場合は、二十七のうち十八社が暴力組織につながっているということであります。これは肯定なさいますか。
  37. 関根広文

    関根説明員 数字について直ちにそのとおりということは申し上げにくいと思いますが、兵庫県警の調べておりますところで、新聞で取材しております実情から、あるいは私どもがかねて報告を受けておりますところから見ましても、港湾取り扱いの業者、あるいはその関係者の中に、先ほど申し上げましたように、警察が、暴力団の構成員ということで把握しておる人物が相当いるということは事実でございます。
  38. 細谷治嘉

    細谷委員 運輸省港湾局長さんにお尋ねしたいのでありますが、第六条の二項に、「運輸大臣は、前項の規定により審査した結果、その申請が同項の基準に適合していると認めたときは、申請者が左の各号の一に該当する場合を除いて、港湾運送事業免許をしなければならない。」こういうことで一号から五号まであげております、いまお聞きいたしますと、やはり新聞に書いてあるとおり、相当暴力団につながった荷役会社があるということでございます。局長さんもおっしゃるように、暴力団というのは生まれつき暴力団ではなくて、何らかの原因でなった、そういうものをやはり善良な市民にしいくということは、これはもう運輸省ばかりではなくて、全国民が望んでおるところでありますけれども、現実にやはり悪の温床で、銃砲刀剣等のこの法律に関連する問題を起こしておるという観点からいきますと、その相当数が暴力団につながっているといいますと、この第六条の基準等に問題点があるのではないか、あるいはその運用に問題点があったのではないか、こういうことが指摘できると思うのでありますが、重ねてでありますが、いかがですか。
  39. 佐藤肇

    佐藤(肇)政府委員 この運送事業法そのものは、他の事業法と同じような標準でつくられているわけでございまして、ここに書いております欠格条項というものは、特に暴力そのものを考慮しているものではないと思います。港湾暴力ということがいろいろ言われますが、そのために港湾だけについてこの事業法を改正するのもいかがかと思うわけでございます。
  40. 細谷治嘉

    細谷委員 そういうことでこの問題の改正等には触れておらないのでありますけれども、私は新聞が言っているとおり、また取り締まり当局である警察庁もお認めになっているように、この法の基準の問題と運用の問題にやはり問題があるんじゃないか。局長さんおっしゃるように、なるほど重要でありますけれども、何といっても船内荷役がストップしたら経済界が打撃を受けるんだという運輸省当局の主たる役割り、そういうものに力点が置かれて、最近よくありますように、あまりにも生産にばかり重点を置き過ぎるので事故が絶えないんだ、炭鉱の事故も多いし、化学災害もふえているんだ、こういうことが言われておるとおり、運輸事業そのものにあまりに力点を置き過ぎたためにそういう問題の介入を許した、あるいはそういうものを清算することができなかった、こういうふうに考えざるを得ないのであります。そういう点について、この法律の規定ばかりじゃなくて、その運用上に反省すべき点があったんではないかという気がいたします。いまの局長さんのおことばですと、法律改正は他の法令等にならってやるので、改正する意思はないということでありますけれども、いずれにいたしましても、それでは運用上の問題として今日の事態はやはり問題点があるんじゃないか、こういうような気がいたします。港湾運営というものにあまりに力点を置き過ぎたために、暴力団の追放、あるいは保安という問題が軽視されてきたんじゃないか、こういう気がいたすのでありますが、いかがですか。
  41. 佐藤肇

    佐藤(肇)政府委員 暴力団の問題は、港湾もその一つでございますが、社会全体の病弊だと思います。したがいまして、私どもは各省とも協力いたしまして、それがなくなることを望んでいるわけでございます。  私がそこの新聞に出ておりますようなことを申し上げましたのは、そういういま先生がおっしゃられたような趣旨ではなかったわけでございまして、やはりこの社会的病弊がなくならぬ限りにおいて港湾運送事業の健全な発達もないし、また輸送それ自体も将来行き詰まるということは十分警戒しなければならぬことであるわけでございます。ただ、いろいろと記者に聞かれた中に、あまりにも一方的に暴力であるということをきめつけておったということと、もう一つは、私がそれの反証として、実は神戸新聞には、基準監督署長が言っているわけでありますが、あぶれ補償金として取られたものは確かに休んだときに労働者に払われておるし、それをあまり新聞が書き立てたために、宮崎県でせっかくきまった労務者の契約が破棄されたという事実があるから、そういうことは十分注意してほしい、そういう例もありますよということを申し上げたわけでございまして、いま先生がおっしゃられたように、輸送そのものをよくするといってもその面だけではだめなんでありまして、やはり根本的にはそういう暴力、社会の病弊というものをなくするために、私ども各省と力を合わせてやっていきたい、かように思っておるわけでございます。
  42. 細谷治嘉

    細谷委員 ある程度実態がわかりましたので、私がお願いしたいことは、新聞に書いてありますように、どうも港湾労働法の制定について運輸省が渋っておるんじゃないかという、巷間伝えられるようなそういうことのないように、また事実、問題点が六条の運営に関連してありますから、ひとつこういう問題を清算するように御尽力をいただきたい、こういうふうに思います。  労働省に対しましては、明らかに職安法違反考えられるようなことでも、こういう席上になりますと、いや違反でありません。こういうことなんです。しかし、職安法の四十四条ですか、そういう問題をもっとやはり厳密な運営をするということが大切であろうと思う。その点では、港湾労働法というのが今度の国会で成立しそうでありますが、この運営にあたってはやはり労働省の立場で、運輸省と対立するということではなくて、もちはもち屋という観点で、できるだけ早くこの港湾労働法の全面的な実施、それから港湾労働を正常な姿にするために御尽力を願いたい、こういうように思います。  港湾関係はこの程度にいたしまして、次に精神病者の問題についてお尋ねしたいと思います。  警察庁からいただいたのでありますが、精神異常被疑者罪種別年次比較、こういう資料を見てみますと、大体において精神異常者の犯罪というものは年間五百か六百件ぐらいのようでございますが、一方ほかの資料等を見ますと、大体刑法犯というのが三十七年度では五十七万くらいおって、その五%くらいの二万八千件くらいが精神障害者の犯罪だ、こういうふうに書かれてございます。この聞いただいたこの資料と、いま私が申し上げたような資料との関係を教えていただきたいと思います。
  43. 大津英男

    大津政府委員 先生お手持ちの資料につきまして、ちょっと私も自信がございませんが、私いまここに持っておりますもので申し上げますと、昭和三十八年の資料でございますが、六十万六千幾らという刑法犯の被疑者がございまして、そのうち精神障害者が四千二百七十五、〇・七%、こういうことでございます。そのうちでも凶悪犯、殺人、強盗、放火、強姦、こういうものが一万五千十二名で、そのうち精神障害者が五百四十五名で三・六%、それから暴行、傷害、脅迫、恐喝等の粗暴犯、これが十四万四千七十三名で、そのうち精神障害者が九百八で〇・六%、その他窃盗、詐欺、横領、ずっとございますが、トータルは先ほど申し上げましたように六十万幾らのうちの四千二百で〇・七%が精神障害者である、こういう資料を持っておるのでございます。
  44. 細谷治嘉

    細谷委員 この精神障害者の犯罪というものについては、昨年の三月下旬のライシャワー大使に対する事件の問題、あるいはことしの二月に起こりました名古屋の事件、その他銃砲刀剣等に関連いたしまして世間を騒がしたような問題が起こっております。これに対して警察庁としてはどういう対策で臨んでいらっしゃるのか、お尋ねします。
  45. 大津英男

    大津政府委員 昨年三月、ライシャワー大使事件があり、さらにことしの二月十五日に名古屋で西村貞助という者が、猟銃を発砲いたしまして殺人が行なわれた、こういうような事件もございます。  前者につきましては、すでにその後、精神障害者対策として警察でもいろいろやっていかなければならないということで、私ども、厚生省のほうに、精神障害者対策一環といたしまして、精神障害者が野放しにならないように、これの収容を大いにやってもらうという、そういう意味での対策、それから警察が発見いたしました精神障害者の通報をいたした場合に、それの収容受理の体制を敏速にしていただくということ、それからもう一つは、精神衛生法の改正をお顔いをするということでございます。精神衛生法の改正につきましては警察から要望した事項もございますが、精神衛生審議会でいろいろ検討いたしました結果、必要な事項を法案としてまとめて、この国会に厚生省から提案になっておるということでございます。私どもといたしましては、精神障害者によるところの犯罪というものが、精神障害であるがためにあるいは無罪になる、あるいは刑の減免があるということですが、やはりこういう人たちの医療保護というものを十分やっていただかなければなりません。同時に、そういう精神障害者によるところの治安の問題というものを十分考慮していただけるような対策をとらなければならないという意味で、医師の通報制とかいうようなこともお願いしておったわけでございます。これにつきましては今度の法案におきまして別段取り上げておられませんが、警察官につきましては、いままでの精神衛生法におきまして、警職法の第三条で保護をした場合に限って通報するということでございますが、今度の改正案ではもっと広く、職務中取り扱って、そういう者がわかった場合においては、積極的に通報するというようなことで、医療保護の線にこれをのせていく、そうして野放し状態がなくなることによって、ひいては治安の面にもプラスになる、こういうたてまえで進めたいということを考えてきておるわけでございます。  また、第二番目の名古屋の西村貞助の事件に関連いたしましては、銃刀法の許可を得ました猟銃を使用しておるということから、こういう者に対するところの許可にあたって、その本人が精神障害者であるということが把握できなかった、できないままで許可をしたということに一つの問題があるわけでございますが、実態は、本人の本籍地あるいは現住地、勤務先、あるいは本人と面接をいたしまして、支障ないということで許可をいたしておるのでございます。実際には本人が三重県の医大で前に医者の診断も受けており、そのときからおかしかったというような面も出ておるというようなことでございまして、しろうとではなかなかわからないようなことが実際にこういう犯罪に結果として出てきたということでもございますので、この面につきましては、許可にあたっては、精神障害であるかどうかという認定を警察官がすることは、非常に困難なことでございますので、医師の診断書を許可の申請に際して添付してもらうのがいいかどうかというような点も検討を進めておるというようなことでございまして、精神障害者によるところの犯罪をなくしていきますように、いろいろ法の改正、あるいはいま申し上げましたような対策を講じてまいりたい、かような考えで進めておる次第でございます。
  46. 細谷治嘉

    細谷委員 いま保安局長さんのおことばですと、ライシャワー事件が起こって、厚生省に申し入れた。それは治安のために通報業務を中心とした精神衛生法の改正の申し入れをなさったんでしょう。ところで、精神衛生法の問題については触れませんけれども、この警察の申し入れは今度の精神衛生法の中には取り入れておりませんね。
  47. 鈴木一男

    ○鈴木説明員 ただいま保、安局長がお答えになりましたとおり、警察官の通報義務につきましては、通報範囲を拡大するというふうな形で現在の原案に入れております。
  48. 細谷治嘉

    細谷委員 通報業務は今度の精神衛生法の中に入っているのですか。
  49. 鈴木一男

    ○鈴木説明員 医者の通報義務につきましては、精神衛生審議会で長時間をかけて審議をやっているのでございますが、いろいろ諸説が出まして結局現在諸外国の事情等、そういうものを十分検討の上、継続審議に回したいということで、医師の通報義務につきましては入っておりません。
  50. 細谷治嘉

    細谷委員 警察当局がライシャワー事件を契機として、厚生省に対して精神衛生法の、いわゆる治安上のための通報義務を課すということについては、これは新聞等でもいろいろ問題になっているのです。あるいは精神衛生審議会でも問題になっている。今度の精神衛生法の改正、これは改正自体にも新聞あるいは雑誌等でもいろいろと問題点があげられております。けれどもこれは取り入れておらない。私は警察考え方が正しいとか何とかという形で申し上げているのじゃない。その通報義務を課するということを中心として申し入れたことが実現しなかった場合に、この問題に対する警察当局対策はその中心がなくなったという感がいたすのでありますが、これに対して警察はどういうふうに対処していくつもりでありますか。
  51. 大津英男

    大津政府委員 先ほど精神衛生課長からもお話がございましたが、私のほうで厚生省にお願いをしました法の改正の通報制の問題は、警察が精神障害者についての実態を把握したい、それによってそういう精神障害者が犯罪に移行することを防ぎたいという意味もございまして、警察官も自分が発見した場合は通報いたしますけれども、医師が診断をして精神障害の疑いのある者で、自傷他害の危険があるというような場合においては、医師も保健所に通報をしてもらう、そうして保健所から警察のほうにも知らしてもらうというようなことを実は申し入れておったわけでございます。ところが、警察にそういう精神障害者の名簿が通報されるということは、本人のため非常に思わしくないことになる、いろいろなことで、名前が警察へ知らされるということになれば、もうそれによって患者が医者のところへ来なくなってしまうというおそれが多分にある、現状においてはそのおそれが多い。したがって、治安上の見地からそういうことも必要かもしれないけれども、やはり医者へ来てもらうことのほうが大事なんだから、いまの段階ではそういうことは困る。こういうことでございまして、結局私どもは、警察には知らしていただかぬでもけっこうです、そのかわりお医者さんが見てあぶなかった場合は、やはりこれは保健所には通報をしていただいて、保健所でもっと適切な方途を講ずるとか、その辺まででもやってみたらどうですかということでございましたけれども、保健所に通報するということも、非常に医師会等にも異論がございまして、非常にむずかしい問題だということで、先ほど精神衛生課長が答弁されましょうに、外国の事例その他も考えて、継続審議ということになっておるわけでございます。したがいまして、今度の改正法案にそういう点は入っておりませんけれども警察官がいままで通報しておった警職法三条の保護だけでなしに、もっと広く警察では通報していく、検察官ももっと通報していくというようなことで、発見した者はどんどん通報して医療保護の線にのせていく、そうしてその医療保護が十分に、野放しにならないように行なわれることによって治安にプラスになる。こういうことでいくべきじゃあないかということで、今度の法案については一部がこの中に入っておる、こういうことでございます。
  52. 細谷治嘉

    細谷委員 これはある精神医学の学者の意見でありますけれども、精神衛生法の今度の改正案というのはきわめて不十分なものなんだ、極端にいえば、こういう法律ができても、あすからでも改正の運動をしなければならぬのだ、こういうことをこの専門の精神医学の人が新聞に書いております。その中で、よく聞いていてください、治安のための警察への通報義務が削除されたのはせめてもの幸いである。——おっしゃるように、これは警察力でやはり精神病者を押えようとしてもだめなんであって、やはり抜本的な精神衛生法の充実ということがこういう犯罪を防ぐゆえんなんだ、こういうことを主張されておりまして、私も同感なんでありますけれども、そういう点でありますが、警察当局のライシャワー事件に対する、これをしなければいかぬ、やはり問題点があるんだといったものは、ほぼ完全に画餅に帰した、こういうふうに申し上げてもいいと思うのです。  ところで、今度のこの改正案については、そういう情勢の中で精神衛生法も不十分だ、審議会が十分に練りに練ってつくった、その審議会の最終答申ですらも、ほとんどといいますか、もぬけのからのような改正案だ、こういうことを専門の医者も指摘しております。通報業務というのもございません。そうなってまいりますと、この治安上から見た、あるいは銃砲刀剣等から見た名古屋の西村事件、あるいは火薬等の取り扱い等の問題に関連して、そういう現実に立って、精神衛生法も十分じゃないという情勢の中において、今度の法律案改正には何らそういう問題に手を触れておらぬというのは一体どういうお考えなのか、それをお尋ねいたします。
  53. 江口俊男

    江口政府委員 精神病者についての対策の問題は、これはお医者というものが必ずしも絶対のものじゃないのです。いろいろな立場から論じなければならぬと思いますが、現在はそれが継続的に研究していこうという段階でございますから、結論は差し控えますが、とにかくその病人及び家族というものの厚生救護ということを主眼にするか、あるいは社会防衛という問題とどうかみ合わせるかということで意見が分かれてくるところだろうと考えます。警察考え方というものはおのずからいままで主張したとおりでございますから、現在においても同様の考えを持っておりますが、その間のかね合いというものをどういうようにやっていくかということをお互いに研究していこう、こういう段階でございます。  それから今度の銃刀法の改正の中でそれを考えなかったか、なぜ入れてないかという点でございますが、これは考えたことは十分考えた、やはり非常な問題だということで考えましたが、ただいまも保安局長が申し上げましたとおり、正規に持たせるという場合に、その条件として精神的な欠陥がないということを証明する医者の診断書でも出させれば一番はっきりするがということで、いろいろ議論を尽くしましたが、これはいまの医者の通報義務よりももっと現実的にむずかしいのじゃなかろうかということになったわけであります。というのは、本人がお医者に、私は猟銃を持ちたいが、精神病者でないという診断書を書いてくれということで行くわけでございましょうが、その場合に、そうでなかった場合はこれは問題ない。おまえは精神上何らの欠陥がないという診断を書くのはこれは問題ないと思いますが、おまえさんはどうも頭がおかしいから——猟銃云々ということは別としても、少しおかしいぞという診断書を本人に渡すということは、これはできないのじゃなかろうかということで、どうもお医者さんの側から、あるいは本人の側から、欠点があるかどうかということを証明させることは、いまの段階じゃむずかしい。したがって、私たち努力で、いままで以上に身元調査なり従来の性向なり経歴なりを、より以上に調べ上げることによって、その欠格条件に該当するかどうかということを、こちらのほうがやはりいままで以上の努力をして排除していく以外はなかろうということで、この問題については特に正規な許可をする場合に、念を入れて調べるようにという方針をとっておるわけでございます。
  54. 細谷治嘉

    細谷委員 銃砲刀剣を持つ場合に、第四条の一号によりまして、たとえば狩猟をやる場合、これは五条の基準によりまして都道府県公安委員会が許可をするわけですが、その基準として、「精神病者、麻薬若しくは大麻の中毒者又は心神耗弱者」、それから第六号に、「他人の生命若しくは財産又は公共の安全を害するおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者」、それから第三項に同居の親族等の問題が掲げてございます。これは念には念を入れてという長官のお答えでございますけれども、専門医の鑑定とかあるいは診断とか、そういうものをおやりになるという意味の念には念を入れてという意味でございますか。
  55. 江口俊男

    江口政府委員 二号の「精神病者、麻薬若しくは大麻の中毒者又は心神耗弱者」というものにつきまして、申請の際に医者の診断を必要条件として、そうであるとかあるいはないとかいう鑑定をすることに、先ほど申し上げたようにできなかろうと考えますが、どうもおかしいというようなものを、過去の経歴をたぐっていきまする場合に、あれは精神病であったということがはっきりする場合もありましょうし、また麻薬以下の云々ということにかかるということが、警察努力でわかるというようなことでやっていこうということでございます。
  56. 細谷治嘉

    細谷委員 念には念を入れてというのは、警察努力という、まあある意味ではきわめて抽象的なお答えしか得られないのでありますが、先ほど申し上げたように精神衛生法の改正が行なわれても、この問題についての十全な対策は講じられておらぬ。しかもやはり精神異常者というのは、非常に生活の還境、生活苦、そういう問題から起こる可能性があって、いまの情勢では減るという条件はないと私は思うのです。そういう中においてどうも罰則だ、罰則強化だ、こういう問題については念には念を入れていくということだけで所期の目的が達成できるかどうかということについて、私はかなりの疑問も持っております。通報業務というのが、やはり実現しなかった。そういうことであるならば、もっと具体的に、精神衛生法の問題に関連して、警察当局としてこういう問題に関してとるべき具体的な措置を講ずべきでなかったかという気が私はいたします。  そこで、さらに御質問をいたしたいわけでございますけれども、この事故の表を見ますと、やはり空気銃とかそれから狩猟というのが相当事故が多いのです。しかも名古屋の事件なんというのは、最近は拳銃による傷害事件、殺人事件というよりもむしろ散弾による、猟銃をぶっ放すということが非常に多くなっているということは、この統計にもあらわれております。  ところが、銃砲刀剣の問題は別として、狩猟の免許をもらえば、これはもう鉄砲を買うことはできるわけですね。いま言った、念には念を入れたその基準をパスすれば、やれるわけですね。ところが、この狩猟の免許というのは、おそらくきわめて簡単にもらえるのでしょう。何か講習か何か受ければもらえるのだそうですが、そうじゃないですか。
  57. 大津英男

    大津政府委員 狩猟法におきましては免許を得ました場合に講習会が行なわれるということは御指摘のとおりでございます。なお狩猟法の中におきましても「未成年者、白痴者又ハ瘋癲者ハ狩猟免許ヲ受クルコトヲ得ス」という規定がございまして、精神障害者に対しては狩猟免許は与えないという規定もございますので、この面で狩猟免許をする場合にチェックをしていくということができる規定になっておるわけであります。
  58. 細谷治嘉

    細谷委員 その辺もきわめて簡単だと思うのです。そこへもってきて、鉄砲があったって火薬とかそういうものがなければいいのですけれども、火薬というのがまたきわめて簡単なんですね。ですから何のことはありません、猟銃を手に入れるというのは、これは新聞等に書いてありますけれども、西村という名古屋のあの事件にいたしましても、きわめて簡単に猟銃を手に入れることができる。それが火薬になると野方図、野放しという観があるのです。火薬類取締法という法律を見ますと、いとも簡単に火薬が一定量手に入る、こういうことになっております。その一定量も、普通の場合だと、おそらく一年間では使い切れないくらいの火薬がいとも簡単に入ってまいります。こういうところに問題点がある。これは通産省の所管だろうと思うのですが、こういう問題について警察当局としてはどういう対策を講じたのか、私が言うように、やはり警察当局と通産省のこういう問題についての縦割り行政の弊というものも出てきているのではないかという気がいたしますが、これについてどうお考えになりますか。
  59. 大津英男

    大津政府委員 いま狩猟法の免許を受けた者が火薬を入手することができるということでございますが、その火薬の入手につきまして火薬類取締法による一定量以下であれば、そういう免許を持っておる者は五キロ以下ですか、何かそういうふうなことがございまして買えるというふうなことがございますが、そういうことで先般の西村事件の際も、火薬をダンボール箱に詰め込んで列車の中に置いたというようなことがございまして、そういう火薬の入手状況では困るということを私ども考えておるわけでございます。したがいまして、火薬類取締法の関係につきまして通産省にもその点を要望いたしまして、一定量以下ということでございますが、その数量をひとつ検討してもらう必要があると思いますし、それから買った場合においては、それが記帳をされるというようなことにする、狩猟免許証の要にでもそういうものを書いてもらうようにするとか、そういうことを農林省とか通産省に申し入れまして、やはり火薬の入手をもっと厳格に把握することができるようにするということでもしていかなければならないのではないだろうか。もっと進んでまいりますれば、いまの火薬類取締法と銃砲刀剣取締法の関係が別々になっておるという点に問題があるので、これをどうするかということはございますが、それは法律が現在は二つに分けてやっているたてまえになっておりますので、これを改正しない限度におきましては、いま申しましたやうなことを通産、農林のほうにも相談を持ちかけまして、もっと厳密にやっていくような方途を講じていきたい、かように考えております。
  60. 細谷治嘉

    細谷委員 講じていきたいということでありますけれども、これはライシャワー事件、あるいは西村事件等——西村というのは本年の二月でございまして、もうすでにこの銃砲刀剣等改正案は警察当局でできておったのだ、間に合わなかったのだ、こういうことかもしれませんけれども、これは政令にゆだねられておるのでしょう。たとえば狩猟用の火薬なんということになると免許証を持っていきますと、五キロですか、火薬五キロ、それから雪管が二千個です。専門家の話を聞きますと、大体一狩猟期に二百発くらいしか使わぬだろう。ところが火薬を五キロ、免許証を持っていけばAの店で五キロ、Bの店で五キロ、Cの店で五キロ、これで十五キロ買えるわけです。一狩猟期間に使えそうもないような量が入ってくる。西村事件にしても、これは汽車の中で爆発しなかったからよかったのですけれども、そういう危険寸前の問題がある。そういうものの入手が簡単でありますから、銃を持っておるのがやはりそのとおり効用を発揮してくる、銃としての効用を発揮してくる。銃を持ってみたって火薬がなければいいのですから、その辺に問題があって、そういう点について通産省当局なり農林省当局とも打ち合わせをするということでありますが、打ち合わせなさって、今度のこういう法律ができたならば、直ちにそういう政令を改正するたてまえで、もっと厳重に火薬なり雷管なりの入手規制をしていくということを、警察当局として積極的に折衝する御意思があるのか、いままでやってきたのか。
  61. 大津英男

    大津政府委員 ただいま御指摘のような点につきましては、まあ法律が通ってからということでなしに、農林、通産のほうに、法律が成立した後におきましてはこういう方針でやりたいということをいまからでも申し入れていきたい、このような考えを持っております。
  62. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、いまからでもというのがやはり消極的だと思うのです。そういうような問題点があるわけですから、もういままででもこの法律を出すと一緒に、こういう点に問題があるから交渉してきたのだ、いまからそういう交渉をするというのではなくて、交渉してきたんだ、大体こういうところまで農林省なり通産省との話し合いができているという言明を私はお聞きしたがった。いまから交渉するなんというのは、これは全くなわ張り根性を警察当局御自身がお持ちだという感を強くいたしますが、これはいかがですか。
  63. 大津英男

    大津政府委員 私自身はまだ行っておりませんけれども、下のほうでは話を出しておりまして、話し合いをしておるということでございますが、私自身もこの問題で農林、通産のほうへまいりまして話し合いを促進するようにいたしたい、かように考えております。御趣旨に沿うように努力をいたしたいと思います。
  64. 細谷治嘉

    細谷委員 終わります。
  65. 中馬辰猪

    中馬委員長 華山親義君。
  66. 華山親義

    ○華山委員 警察当局に伺いますが、よく右翼団体ということば暴力団ということばがありますが、これは大体共通したもののように私たちは印象を受けがちでございますけれども、どんなふうに考えられますか。右翼団体というものであっても暴力団ではない、そんなふうな場合もあろうかと思いますが、どんなものでしょうか。
  67. 江口俊男

    江口政府委員 多少両方混合しておる分がありますけれども、別個の観念であります。
  68. 華山親義

    ○華山委員 大体これはつき合いは多いものですか。
  69. 江口俊男

    江口政府委員 大体の数というか、大勢から言えば、つき合いというものは、ほとんど大部分が関係のないものと考えます。
  70. 華山親義

    ○華山委員 きょう公安委員長がおいでにならないで、たいへん残念なのでございますけれども、せっかく暴力団というものについて粛清をお始めになったわけでございますけれども、過去におきまして、警察におきましては、あるときには強め、あるときには弱め、そういうふうな段階があったわけでございます。しかし暴力団の因襲といいますか、そういうものが非常に根強いものであって、ちっとやそっとではなかなか根絶やしにするということはできないと思うのです。それにつきまして、私はいろいろな話を聞きます。政治との関連におきまして、右翼、あるいは暴力団、こういうふうな話をいろいろ聞きますが、私は信じたくないのでございますけれども、これらの政治的な問題を越えて、警察当局は断固として将来まで続けていかれる御決心ですか。その御決意のほどを伺いたいと思います。
  71. 江口俊男

    江口政府委員 おっしゃるとおり、断固として続けていくつもりでございます。
  72. 華山親義

    ○華山委員 その点につきまして、一昨日私は参考人の方にもお話を聞きました。参考人の方は非常に遠慮しがちにおっしゃっておるようでございましたけれども、いろいろな話が私たちの耳に入る。したがって、この取り締まりが長く続くものであるかどうか、そういうことにつきまして多少不安を持っておられるようでございます。そういうふうな面につきまして、もしも一たんこれがゆるむというようなことがありますと、せっかく協力してくれている芸能界だって、あるいはいろんな面に反動的な迷惑を及ぼす場合もあるわけであります。こういう面につきまして、ただいま長官がおっしゃいましたが、これは長官がおかわりになりましても、警視総監がおかわりになりましても、警察の長い伝統として、断固としておやりになりますか、ひとつもう一ぺん伺っておきたいと思います。
  73. 江口俊男

    江口政府委員 警察というものは、そうあるべきものだと考えますので、何十年、何百年先のことを私が約束するわけにいきませんけれども、とにかく、そういう断固たる方針で意思を継続していくものだと私は信じます。
  74. 華山親義

    ○華山委員 そうあっていただきたいと思うのでありますが、このたび港湾労働につきましては、暴力団の介入というものを排除される御意思でいろいろな法律等もおつくりになったそうでありますが、そのほかに労働界におきまして、暴力団の介入しておるものがございませんでしょうか。警察のほうではどういうふうにお考えになっておりますか。
  75. 関根広文

    関根説明員 興行、それから港湾というふうに、非常に関心の持たれる問題について、ただいまあらゆる面から取り上げられてきておりますが、私どもが対象としております暴力団の根絶のためには、その行為がたとえば被害届けということで警察の面に積極的に出てくる場合と、それからただいま仰せられました労働とかあらゆる企業の面で、暴力行為が潜在化しておる場合も多いと思います。そういうふうな形で企業を仮装した中に暴力が隠されておるという問題につきましても、潜在化しておる犯罪形態をさがし出してそれを摘発するということで、将来あらゆる面から暴力犯罪というものをなくしていきたい、こういうことでいろいろ努力しておりまして、抽象的でありますが、そういうあらゆる企業面にひそむ潜在暴力についたも努力しておる、こういうことでございます。
  76. 華山親義

    ○華山委員 努力しておられるというお話でございますが、御経験としてはどういう方面にございましたか、お伺いしたい。
  77. 関根広文

    関根説明員 暴力団の資金源という面では、合法資金源、不法資金源といろいろありますが、興行にまつわる不法行為、港湾労働にまつわる不法な行為というものが現在主として問題になっております。私どもが把握しております暴力団の構成員には、片方でいろいろな職業を持っておる。その職業には土木建築業、風俗営業、それから飲食店、旅館、金融、不動産取り扱い業、そういうものがかなりの数あげられております。その他いろいろなものがありますが、そういう業態を見ながら、片方においては、たとえば金融業の表板を掲げておりながら、債権取り立てという名目で恐喝事件を行なうとか、風俗営業の面を持ちながら片方ではパチンコのなわ張りをめぐっての犯罪を起こすという形態が種々ございます。
  78. 華山親義

    ○華山委員 私のくにでは出かせぎ者が非常に多い、季節労務者が多いのでございまして、飯場で働いております。工場内で働いておる人たちにはそういう様子も見えないと思いますけれども、私は十数カ所のいわゆる土木飯場というものの実態を回って見ました。これは労働行政の及ばない、まことに非人道的な問題が多いのでございますが、私は確証を握っておるわけではございませんが、何らかそこに暴力団的なにおいがする、そういうふうな気持ちがいたします。警察のほうでは、いわゆる工事現場、工事の飯場、しかも末端的な飯場、そういうところにそういうふうな暴力団といいますか、暴力といいますか、そういうものがひそんでいるというふうにはお感じにならないのでございましょうか。
  79. 関根広文

    関根説明員 仰せられるとおり、現にそういうふうな形で犯罪が行なわれておりますものを検挙した事例もございます。したがいまして、主として土木建築関係労働の末端におきましては、特に暴力団関係者がそういうふうな業態を営む場合に起こりやすい現に潜在化しておるものもあろうかということで、そういう関係についても十分目を配っております。
  80. 華山親義

    ○華山委員 手配師ということばがございますが、これは一般的なことばなんでございましょうけれども手配師というものは暴力とは、大体においてつながるものでございますか。
  81. 関根広文

    関根説明員 いわゆる手配師というものは、私ども検挙した——検挙したと申しますか、かねて取り扱った事例から申しますと、大阪の西成地区における労働者手配師関係という点がございますし、また現に検挙しております事例から見ますと、暴力団員がいわゆる手配師——労務者を集めて、ある労働を需要しておる業者にこれを世話をする。その世話する人が暴力団構成員であって、自分が確保した労務者がほかへ散らないように、相当傷害、あるいは暴行を加えて、これを確保しておるという面における労務者に対する犯罪、それから一般のいわゆる手配師が、人集めをするために、ある地域でこれを行なっておる、この地域は自分のなわ張りだから、この地域でやるということはけしからぬ、相応のたばこ銭を出せということで、暴力団が、そういういわゆる手配師に対して恐喝をした、こういうふうな事例もございまして、手配師というものがあるいは犯罪を犯し、あるいは犯罪の被害者となるというふうなかっこうで、現在いろいろな面で暴力団犯罪取り締まりの対象にはなっておるわけでございますが、一がいに手配師が悪いというふうにはいえないのじゃないかと思います。
  82. 華山親義

    ○華山委員 労働大臣に対しまして、出かせぎ者の働いておる飯場の状態をいろいろ申し上げました。その際に労働大臣は、こういうことを言われた。現在の建設業界というものは、労働の事情といたしましてはまことに前近代的なことであって、三段、四段の末端の下請がやっている状態、今度港湾労働について、労働省は、これを正しい形、秩序ある形にしたいと思っているので、これに続いて建設業界についてもそういうふうにしたい、こういうふうに述べられましたが、労働省のおいでの方にお伺いいたしますが、そういうふうなお考えで事務当局もいらっしゃいますか。
  83. 遠藤政夫

    遠藤説明員 出かせぎ労働者につきましては、その大部分が建設業、いわゆる土建の飯場で働いておる人たちが多いわけでございます。その数は、正確には私どもまだ実態を把握できていない状態でございます。大体五十万とも、あるいは六十万ともいわれております。残念ながら、そのうち正常な就労の経路をたどっておりますもの、いわゆる安定所の窓口を通って就職いたしておりますものは十八万程度でございます。したがいまして、その他の大部分は縁故でございまするとか、あるいは先生おっしゃるようなやみ手配の経路をたどって就労いたしておるものでございまして、そういうことのために就労の実態が、非常に労働条件が悪いとか、あるいはいろいろな犯罪につながるような事態もあろうかと存じております。こういった事態に対しましては、港湾労働につきまして、港湾労働法を制定いたしまして、労働近代化をはかっていくというふうな考え方と同じように、土建の現場の作業に従事いたしております労働者につきましても、いわゆる日雇いとか、臨時工とか、こういった形でなくて、他の産業の工場、事業場等に働いております常用労働者と同じように、通年雇用というふうな形で労働正常化をしていただくように呼びかけておる次第であります。ただ出かせぎ労働者の中で、そういった通年雇用の対象になり得る人たちと、それからいわゆる農閑期だけを利用して出かせぎに出てまいります者、そういう通年化の対象にならない者もございますので、通年化の対象にならないような人たちに対しましては、できるだけこういった安定所を通って就労いたしますように就労ルートの正常化をはかっていきたい、こういうふうな努力を続けてまいるつもりであります。
  84. 華山親義

    ○華山委員 雇用関係もそうでございますけれども、現在の建築現場の飯場の状態、そういうことにつきましては、改善の手を伸ばされるというおつもりはないのでございますか。
  85. 遠藤政夫

    遠藤説明員 労働条件の問題につきましては、実は所管外でございますが、いわゆる賃金不払いでございますとか、あるいは強制労働にわたるような実態もあるような話も聞いておりますが、こういった点につきましては、安定機関といたしましては、関係労働基準監督署でございますとか、あるいは警察当局に御連絡いたしまして、そういう実態の改善をはかってまいりたい、かように考えておるわけであります。
  86. 華山親義

    ○華山委員 あなたは、飯場というものをごらんになったかどうか存じませんけれども、飯場の状態というものは惨たんたるものですよ。非人道的と言っていい。いまここで私言うのもどうかと思いますけれども、私の見たある飯場では、便所には紙を捨てちゃいけないのだ。それは紙を捨てるとくみ取りが多くなるから、したがって、便をふいた紙というものは外に積んでおくのです。大体一畳に一人住んでいる。そういうところがあるのです。それからひどいのになりますと、手配師だか棒がしらだかなんだか私知りませんけれども、それが下の部屋に奥さんだかなんだか女の人と一緒に住んでいる、そこにはりっぱな家具道具をそろえている。二階には、いなかに子供や奥さんを置いてきたところの人々が、まるでひどいふとんに、一人一畳にもならないような部屋に寝ている。押し入れなんかない。針金を張ってそこにすべてのものをぶら下げている。ある飯場では——私、見たのであります。金の出し入れはしておりませんけれども、私のたずねていった出かせぎ者はおりませんでしたが、そこには棒がしらの連中がおってばくちを打っている。金の出入りは見ませんから、あれはばくちじゃなくて、ただ花札で遊んでいたのかもしれませんけれども、あの連中が花札をやっていたら、ばくちだと思うのが常識だと思う。こういう状態なんです。こういうふうな労働の現場というものを、ほっておいていいのかどうか。そこにはおのずから暴力もあるのじゃないか、そういうふうに私は思うのであって、労働省がああいう飯場の現状というものをきれいにする、労働条件のみならず生活環境、そういうものをきれいにするお気持ちがないのか、したがって、そこには暴力等の入る余地がなくなるようになさるおつもりがないのかどうか、そういうことを伺いたいと思うのです。
  87. 遠藤政夫

    遠藤説明員 もちろんこういう前近代的な労働環境というものを改善してまいりますのは、私ども労働行政の責任でございます。労働基準法なり職業安定法なり、こういった法律規則を厳重に励行させるようにいたしまして、そういった事態をなくするように努力してまいりたいと考えております。
  88. 華山親義

    ○華山委員 このたび暴力を排除するような暴力団の介入を排除するような意味から、港湾労働について出されたような規定を、建築現場、建築業界にも適用されるような御研究をなさる意思はございませんか。
  89. 遠藤政夫

    遠藤説明員 建設業につきましては、先ほど申し上げましたようにそのほとんど大部分が有期雇用、臨時雇用でございます。こういったものにつきまして、工事の通年化に伴う雇用の恒常化ということをまず業界に働きかけて、これをぜひ実現してまいりたいということで、いま積極的に努力いたしておる最中でございます。
  90. 華山親義

    ○華山委員 あなたは労働省の立場からそういうふうに言われますけれども、通年化ができれば問題はないのですよ。通年化ができないから困る。いまここで私はそういうことを経済論から言うわけではありませんけれども、出かせぎ者というのは、農業だけでは食っていけない、しかし農業をやらなければいけない。住宅が東京にはない。からだがひまなときに東京に出てきて働く。これが実態でしょう。あなたが通年化、通年化と言われるのは、そういう出かせぎ者を雇うな、こういうことでございますか。
  91. 遠藤政夫

    遠藤説明員 出かせぎ労働者で通年化の対象にならない人ももちろんございますので、そういう方々に対しましては正常な就労ルートをたどって就労していただく。現在はどういうところで働いているか、実態さえつかめないような状態でございますので、私どもといたしましては、まずそういう人たちの実態を把握いたしまして、非常に非人道的だとおっしゃるようなそういう実態をなくするためのいろいろな措置をとってまいりたいということで、農林省ともいろいろ御相談いたしまして、まず出かせぎ者の供給地の実態の把握、それから就労先の現場の実態把握につとめてまいって、今年度いろいろ施策を立ててまいるつもりでおります。
  92. 華山親義

    ○華山委員 今年度本格的に御調査をなさいますか、伺いたい。
  93. 遠藤政夫

    遠藤説明員 今年度、主として千名以上出かせぎ者の出ておられるような地域を指定いたしまして、その地域を中心にして出かせぎ者の実態把握をいたし、同時に就労先のそういった現場のいろいろな事実、実態を十分検討いたしたい、こういうふうに考えて、現在準備を進めておる次第でございます。
  94. 華山親義

    ○華山委員 私は、暴力団の問題からこういう問題に入ってきたのでございますけれども、いわゆる棒がしらというものにつきましては、私は相当暴力的な問題も聞きます。われわれがそこにたずねていきますと、十何カ所たずねていきましたけれども、相当脅迫されますよ。あの姿からいって、私は暴力団だと思う。場合によりますと、賃金の支払いが行なわれない。こういう状態でございますが、その点は別にいたしまして、労働基準法違反はずいぶん多い。私は勇敢に、労働者の名簿を出してもらった。労働者の名簿には、山形県何々、山形県何々として、賃金を幾ら払ったとみな書いてあります。それを見ると、一見正しいようである。しかし、そのあとに、住所が浅草の山谷ですか、あそこの住所を書いているのが十人ぐらい並んでいる。それで、そこに来ている連中に、このグループの中に一緒にここの飯場で親方に使われている者がいるのかと聞きますと、おらないと言う。これは、明確に帳面をごまかしている。賃金をそれだけ多くもらって、そして山谷の分だけは自分のポケットに入れているということなんです。われわれがちょっと行って見ただけでもそういう実態なんだから、労働基準局が一生懸命にやったならば、私は幾らでも見つかると思うのです。そういうふうなことなので、ああいう連中は私は暴力団だと思うのです。それでなければあんなことができるはずはない。それは大きい暴力団の人であるか、小さなグループの暴力団であるか、私にはわかりませんけれども、そういう実態がある。粛清していただきたいと思うのでございます。  それから建設省の方においでになっていただいておりますが、建設省はいまのような建設業界の状態でいいのかどうか、もっと近代的な業態にならなくちゃいけないと思うのですが、どうお考えになっておりますか。
  95. 高橋明

    ○高橋説明員 お答えいたします。  建設業界といたしまして現在最大の問題は、中小企業に工事をいかに回すかという問題と、労働者不足をどのようにして改善するかということでございますが、このことはたいへん長期的に考えなければならない問題であります。建設業者の団体としては、どうしても労働条件の改善をはかる必要がある。いわば労働条件の改善をはかることによって労働者の建設業に参加する意欲を促進するという考え方でおりますので、はっきり具体的にいまどういう対策があるかということは申せませんが、労働者労働条件の改善のために各種の努力をしている次第でございます。  たとばえ労働者労働条件の改善をはかるために飯場の施設を改善するとか、あるいは休日を確保するとか、夜間労働をなるべくしないようにするとか、種々の方法を考えておりますので、長期的に考えてやっていきたいというふうに考えております。
  96. 華山親義

    ○華山委員 それはいいことなんですけれども、現実に私の見回ったところでは、第一次的な契約をした建設業者が人を雇ってやっておるというようなことはまずほとんどない。これが第二次になる第三次になる、第四次になる。第四次になってくると、仕事はしていない。ただ人集めなんです。飯場をつくって自分のところにとめておくだけなんです。それだけのことで、これは下請というのかどうかわからない。人入れ稼業なんです。これが実態なんです。港湾労働者もそうだと思いますけれども、そういうふうなことでは、私は日本の労働界の盲点、恥部だと思う。あんなことは、文明国家として、文化国家として許さるべき状態ではないと私は思う。どうしてもあの実態を直してもらいたい。  それから一つお願いいたしますが、第三次、第四次になってくると賃金の不払いが多い。賃金を払わないでどこかへ逃げてしまっている。出かせぎ労働者が帰る日まで払わない。出かせぎ労働者は切符を買ってしまう。西郷さんの銅像の下まで持っていくから待っていろといっておいて、実は来はしない。やむを得ず帰ってしまう。そのしりがわれわれのところにきて、何とかとってくれということになってくる。根本的には安定所を通さないからいけないといわれればそれまでの話だけれども、安定所を通さないからといって出かせぎ労働者に責任を負わすということでは私はりっぱな国家じゃないと思う。働いた者には当然賃金はいかなければいけない。それで私はいま労働災害については、下請業者が責任を遂行しない場合でも、元請業者がこれをやらなければいけないということに労働基準法ではなっていると思いますが、そうでございますか。
  97. 遠藤政夫

    遠藤説明員 さようでございます。
  98. 華山親義

    ○華山委員 そうだとすれば、労働賃金を下請業者が支払わなかった場合には、一番初めの元請業者が支払う、こういうふうな法律改正はできませんか。そうでもしなければ粛清されません。
  99. 遠藤政夫

    遠藤説明員 賃金不払いの事例もかなり多いように聞いておりますので、先ほど私申し落としましたが、出かせぎ労働者の就労地域に出かせぎの相談所を設置いたしまして、そういった賃金の支払いを受けないまま国元へ帰るようなことがないように、できるだけこういう事例を事前に御相談をしながら賃金不払いを防止してまいりたいと考えておりますが、先生おっしゃいましたような下請業者が賃金を支払わなかった場合に元請業者に責任を負わせるということにつきましては、法律的にも経済的にも問題が多いと思います。先般大臣もこういった問題につきましては十分検討いたしてと申しておりますように、関係の向きと御相談いたしまして十分検討いたしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  100. 中馬辰猪

    中馬委員長 ちょっと華山先生、五分ほどお待ちください。  実はいまの問題なんですが、実にけしからぬ問題があるのですよ。国鉄の新幹線の建設を請け負った大手業者ですが、もちろんその下請が金を払わないのです。そこで、何回言っても払わぬから、しようがないので、国鉄のほうからその建設業者に対して向こう一カ年おまえのところは指定しないということを言ったら、やっと払ったのですよ。これなんか実にけしからぬと思うのだ。たとえば、いま華山さんがおっしゃるように、ある程度強力に、下請業者の不払いは元請業者の責任であるというふうに何か法的規制を考えなければいけませんよ。強くひとつあなたのほうでも、ぼくらのほうでも考えますが、お願いします。
  101. 華山親義

    ○華山委員 私は、そういうことによって大企業者、あるいは中小企業者でも、堅実な企業者は下請を選ぶことに気をつけると思うのです。この下請業者はあぶないなと思うなら下請をさせないと思うのです。そういうことによって建設業界全般労働事情がよくなってくるんじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで、私は法律をどうしてもつくってもらいたいと思うのでございますが、法律がもしもなかなかできない、そういうふうな場合がございましたならば、私は建設省のほうにお願いしたいのでございますけれども、国の事業だと、まず国の事業について企業者と請負契約をする、その請負契約の条項の中に、下請業者が賃金を支払わなかった場合にはおまえが払うんだということを入れてもらいたい。そして、そういう条項によって請け負うのはいやだという下請業者はやってもらわなくたっていい、そういうふうにすれば、その元請業者も損害があっちゃたいへんだから、下請業者だって選ぶだろうと思うのです。そういうことを、私労働大臣に申しましたところが、労働大臣は非常におもしろい考え方だから、ひとつ建設省のほうとも相談してみましょう、こう言っておられた。幸いきょうは両方の省から出ておいでになるので、十分協議してそういう方針でお考えを願いたい。そういうことによって、国がやることによって地方もやるでしょう。また、建設省の指示によっていろいろな公団、そういうところもそういうふうな方向にいくだろうと思うのです。指導していただきたい。そうすれば、信用のできない、先ほど私が言ったような妙な飯場をつくるような下請業者、そういうものはだんだん淘汰されるんじゃないか。こういうことは、建設労働界から悪いものを除く、暴力的なものを除く、そういう意味でも私は有効な方法ではないかと思うので、両者において十分に御研究を願いたいと思うのでございますが、この点につきましては労働大臣はやりますと言っておられたから、労働省のほうは御答弁要りません。建設省のほうの御答弁を願いたい。
  102. 高橋明

    ○高橋説明員 労働大臣のお話でございますので、建設大臣のお話も入らなければならぬと思いますが、事務的には、そういう方法を通じて労務者を確保するということは非常にけっこうだと思います。十分検討してまいりたいと思います。ただ、建設省は国の工事の全部を掌握しておるわけではございませんので、この点については関係各省、つまり他の国の建設工事を担当しておる関係各省その他とも相談をしなければならぬと思いますので、相談をして検討してまいりたいと思います。
  103. 中馬辰猪

    中馬委員長 この国会中にその法律案は間に合わぬでしょうけれども考え方だけは関係各省とまとめてくださいよ。けしからぬですよ、実際。国の工事のときはいいですよ。おまえのところは指名しないのだからとおどかせばいいわけですから。民間の場合は全く手の打ちようがないのです。これはやってくださいよ。方針だけでもいいですから、お願いします。
  104. 華山親義

    ○華山委員 私は労働大臣には、協議決定してくれということを言ったのですが、ひとつお願いいたします。
  105. 中馬辰猪

    中馬委員長 安井委員。
  106. 安井吉典

    ○安井委員 もう時間がおそくなりましたから、一つだけ伺って終わりたいと思います。  港湾労働暴力団関係、さらに、いまは建設業と暴力団との関係、そういう形で問題が取り上げられました。先日は興行界やあるいは芸能人と暴力団との関係、そういうようないろいろな角度からこれまで扱ってきたわけでありますが、きょうのように港湾、建設業の関係ということになると、暴力団の動きからの側面と、もう一つは、労使関係の問題と、この二通りに分けて考えることができるのではないかと思います。  暴力団との関係から言いますと、特に港湾労働というのは、沿革的にもそういうふうな傾向を持っていたわけでありますし、最近興行界における暴力団取り締まりが相当強くなったものですから、再びもとの古巣の海湾関係に戻る、そういうような傾向もできて今日問題があらわれているのだろうと思います。ことに神戸港の問題で、社会党の市会議員が神戸の市議会で問題を取り上げたのが一つの契機になって新聞キャンペーンも始まっている、こういうふうなことだろうと思います。そしてまた、銃砲刀剣の問題をいま私ども論議している際にも、ただそれだけを取り締まっただけでは暴力団の問題が片づくわけではないので、やはりその資金源だとか、そういう社会の寄生虫のような存在が出ないような、そういう全体的な仕組みをつくり上げていく、そういう考え方からこの法案と暴力団との関係について、警察の立場でも一そう関心を持って処理していただかなくてはならないと思うわけでありますが、他面、港湾における労使関係の非近代性、こういう点は、たとえば賃金のピンはねや強制労働、未成年者の深夜労働、言うことを聞かない人に対する暴行、傷害、そういうような事件で現実にあらわれているわけですし、さらにまた、やみ手配師ですか、私立の職業安定所のような形で、半ば公然と行なわれている事実もはっきり出ているわけです。先ほどの細谷委員質問で尽きておりますから私は多くを申しませんが、労働基準法の第六条の「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」さらに、職業安定法第四十四条の「何人も、第四十五条に規定する場合を除く外、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を使用してはならない。」こういう明らかな規定があるにもかかわらず、やみ手配師というものが現存しているようです。国や地方公共団体の管理下にある港湾の中で、現にそういうふうな事態があるわけです。それがそのままに許されてきているという点に私は問題があると思うのです。この問題については、きのうも社会労働委員会港湾労働法案が一応通って、きょうの本会議で衆議院は通過するわけでありますが、それができたら問題が解決するのだ、そういうふうなお話でありますが、しかし、これは先ほどの細谷委員質問にもお答えがあったように、公布されてから二年以内に施行される、こういうことのようですね。私はいままでいろいろ法律を見ておりますけれども、二年間も暫定的な経過期間を置くというふうな法律というものはあまり知りません。どうも何か外部からの圧力でそういうふうな準備期間を長期に置かざるを得なかったんではないか、そういうふうな印象を受けるわけであります。  そこで、私労働省とそれから運輸省にこの点だけを最後に伺っておきたいと思っております。つまり、暫定期間はできるだけ短くして、施行期日を繰り上げていただく努力をしていただきたいということ、そして、それまでの段階でも登録制をぜひきびしくしてもらいたい。未登録者は絶対に使っちゃいけないという法律が効力を発生すれば、これは当然のことでありますが、それまで二年間も時間があるのですから、そしてその二年の問にいわゆる暴力団とのつながりや何かがずっと続いていくわけですから、そういうような段階の中からぜひ未登録者をいまの段階から皆無にする努力をひとつ積極的にすべきだということが一つと、それからもう一つは、これは建設の場合に華山さんが例をあげられましたけれども港湾の場合も従業員に対する福利厚生施設というのがきわめて貧弱なようです。休む場もろくすっぽない、こういうふうな事態がありますので、労働関係近代化の前提としても、福利厚生施設を完全に整備させるような、そういう努力を、これは運輸省並びに労働省において進めるべきだ、この点であります。登録制の促進の問題と、福利停止施設の促進、この二つだけを特に私は強調したいのですが、その点のお答えをひとついただきたいと思います。
  107. 遠藤政夫

    遠藤説明員 港湾労働法につきましては、附則で施行期日を二年を越えない範囲内で逐次実施する、こういうようにいたしておりますが、お説のとおりこれは二年まで実施を延期するのではございませんので、たとえば各港ごとの定数の策定でありますか、これに基づいて行なわれます登録制の実施、あるいは手当の支給、こういった非常に新しい、むずかしい問題でございますので、できるだけ慎重に準備をいたしますと同時に、なるべく早く実施したい、こういうふうに考えております。昨日の社会労働委員会の附帯決議でも、全面実施を急ぐようにというような附帯決議が出されておりますので、私どもといたしましては、できるだけ事務的な準備を急ぎまして、二年と言わず準備ができ次第実施できるような態勢をとってまいりたい、かように考えておる次第でございます。  この法律に基づきます登録制度なり、手当の支給制度、こういった新しい港湾労働法の施策が実施されますまでの間におきましても、現在事実上の制度として登録制度が行なわれております。こういったものを十分に活用いたしまして、現在のやみ手配師の存在をなるべく排除してやるような努力を続けていきたい、かように考えておる次第であります。  福祉施設につきましては、御承知のとおり港湾におきましてはいろいろな制約がございまして、他の事業場に比較いたしますと、労働者の福利厚生施設は確かに立ちおくれております。労働省といたしましては、この十年間に約三十億円を投資いたしまして、港湾労働者の宿泊施設でございますとか、あるいは福祉厚生センターというような施設、こういうようなものを設置運営いたしてまいっておりますが、本年度予算におきましても約三億五千万円を投じましてこういった施設の拡充をはかってまいる考えでございます。今後ともこういう施設の増強に努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  108. 河毛一郎

    ○河毛説明員 ただいまお話しのございました港湾労働法関係につきましては、私どもといたしましても昨年三月に出されました三三答申の趣旨に従いまして、十分にその機構が円滑に参るように努力してまいりたいと考えております。  同時に、先ほど局長からもお話し申し上げましたように、港湾企業それ自身について前近代的な問題が多々ございます。具体的には企業が非常に零細であるという点に問題があると考えますので、港湾労働近代化とバランスを失しないように、私どもといたしましてはできるだけ早い機会に港湾運送事業近代化をはかるように努力してまいりたい、こう考えておる次第でございます。  なお新しい福利関係の問題につきましては、運輸省といたしましても現在港湾運送料金の中に一定額を福利厚生分担金といたしまして原価計算に入れております。これを、福利厚生協会を各地につくりまして、そうして拠出させまして、簡易住宅その他を建設するよう現在努力中でございます。なお、さらに御趣旨に従いましてこれらの件を進めてまいたい、こう考える次第でございます。
  109. 中馬辰猪

    中馬委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時六分散会