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1965-03-25 第48回国会 衆議院 地方行政委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十五日(木曜日)    午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 中馬 辰猪君    理事 亀山 孝一君 理事 久保田円次君    理事 田川 誠一君 理事 中島 茂喜君    理事 藤田 義光君 理事 川村 継義君    理事 佐野 憲治君 理事 安井 吉典君       大石 八治君    亀岡 高夫君       島村 一郎君    武市 恭信君       登坂重次郎君    村山 達雄君       森下 元晴君    森田重次郎君       山崎  巖君    和爾俊二郎君       秋山 徳雄君    阪上安太郎君       重盛 寿治君    華山 親義君       門司  亮君    吉田 賢一君  出席政府委員         自治政務次官  高橋 禎一君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君  委員外出席者         自治事務官         (選挙局選挙課         長)      中村 啓一君         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  市町村合併特例に関する法律案内閣提出  第四一号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 中馬辰猪

    中馬委員長 これより会議を開きます。  市町村合併特例に関する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので順次これを許します。華山親義君。
  3. 華山親義

    華山委員 一昨日、この第十一条につきましてお尋ねをいたしたのでございますけれども、お答えげありましたとおり、いろいろな問題が起きてもその責任は県の選挙管理委員会にある、これは私もわかりますが、実際の実務は市町村吏員がやっております。それで、問題が起きた場合には、結局その市町村吏員がいろいろ責任をかぶるという結果になるわけでございますので、その点を心配をいたしましてお聞きしたのでございますが、そういう心配はないのだ、選挙執行にあたって、あるいは選挙の準備にあたって混乱を来たすことは決してないのだという理由を、あらためて自治省のほうからお聞かせを願いたいと思います。
  4. 佐久間彊

    佐久間政府委員 前会お答え申し上げましたように、県の選挙管理委員会指揮監督のもとに、各市町村選挙関係者が任務の執行をいたすわけでございます。市町村区域が二以上の選挙区にまたがります場合には、市町村区域を分けて開票区を設けることになるわけでございますので、当該市町村にとってみますと、若干事務量は御指摘のように増高することがあろうと思いますが、そのほかは、特に選挙執行につきましては支障はない、かように考えているわけでございます。  なお、先生が前会御指摘になりまして、投票管理者開票管理者が、自分責任がないということになりますならばかってなことをやりゃせぬか、こういう御心配の御指摘がございましたが、その点につきましては、公職選挙法の二百二十六条に、投票管理者開票管理者が職務を怠ったというような場合につきましては、これの罰則もございますので、そのような心配もない、かように存じているわけでございます。
  5. 華山親義

    華山委員 どなたかたいへん失礼でございますが、そのほうの専門局のほうから、どなたかお見えになっておりませんか。
  6. 佐久間彊

    佐久間政府委員 選挙議長が来ております。
  7. 華山親義

    華山委員 選挙課長から、簡単でよろしゅうございますが、こういう場合にはここで開票をして、ここに行って、そしてその区の選挙長がきめる、こういうふうになるんだから、そういう華山の言うような心配はないんだというようなことを、もう少し具体的に説明してくださいませんか。
  8. 中村啓一

    中村説明員 ただいまの華山先生お尋ねに御説明申し上げます。  一つ町村二つ衆議院選挙区にわたりましたような場合におきましての選挙執行上の問題でございますが、当該選管投票区はもとより、開票区も選挙区の区分に従って分けざるを得ないかっこうになります。したがいまして、選管としましては投票管理者並び開票管理者は、二つ選挙区別にそれぞれ設けるかっこうになるかと存じます。もっとも、その開票区はさらに複数投票区になりまして、数人の投票管理者が置かれる場合も当然予想されるわけでございます。それらの手続につきましては、一般の投開票管理と別段相違はございません。ただ開票管理者なり投票管理者が、複数になることかと存じます。選挙長につきましては、それぞれ選挙区が分かれますので、違った選挙長指揮監督下に入ることになるわけでございますが、衆議院選挙につきましては、事務執行基準は、国においてそれぞれ都道府県選管に示達をし、都道府県選管が各市町村選管といろいろ打ち合わせまして執行をいたしておりますので、特に事務上いろいろな問題点というものは予想できません。ただ御指摘のように、開票区がこういう複数開票管理者投票管理者、これはいずれにしても一緒でございますが、複数開票管理者があるという点につきまして若干の経費増はございますが、その面は国の選挙でございますので、国におきまして経費の面についても万全を期することが可能であると存じております。
  9. 華山親義

    華山委員 なお私としましては不安が残りますけれども、こういう問題は非常に大きな問題になりがちでございまするし、十分に気をつけてやっていただきたいと思います。  なお第十一条につきまして、私といたしまして疑問の点もございますので、その点につきまして伺いたいと思います。と申しますことは、往々にして、解釈がきちんといたしておりませんと、自後の選挙等につきまして問題が起きたときに、自治省立法趣旨はどういうことであったかということも重要なことだと思いますので、この委員会で明確にしておいていただきたいと思うのでございますが、「合併が行なわれた日以後最初に更正されるまでの間」、こうなっておりますが、当該選挙区についての更正があった場合と読むべきだと思いますけれども当該選挙区に関係のない部分につきまして別表改正があった場合も、これは本来の姿に返るものでございますか、どうですか。当該選挙区についての別表改正の場合、こういうふうに読むべきでありますかどうか、その点ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  10. 佐久間彊

    佐久間政府委員 先生の御指摘のように当該地域についての自治的な選挙区の変更のある場合というふうに私どもは考えております。
  11. 華山親義

    華山委員 この前北九州市の場合におきまして、選挙区の改正ということを、別表改正を行なわないで、附則改正選挙区のことをおきめになりましたですね。それで別表は実数的に改正されたわけです。そういうふうにして別表それ自体が改正されないで、附則等において実数的に更正されたという場合はどうなりますか。
  12. 佐久間彊

    佐久間政府委員 別表そのものではなくて、附則において選挙区が変更されました場合も含む趣旨でございます。ただ先生が例におあげになりました北九州市の場合には、附則で格別な規定をいたしませんで、その十一条と同様な規定が市の合併特例に関する法律にございましたので、その適用でいっておるわけでございます。
  13. 華山親義

    華山委員 私は間違えていたようでございます。  それからもう一つ伺いますが、今度新しく合併になりますと、従来のようにあまり境界ということがやかましくなくなってくる。共通したところの都市計画等も行なわれるであろうということも考えられる。それで字の切り方等も変わってくると思う。そういう場合にはどういうふうになるのでございますか。字がどう変わっても、昔の境界というものが現存しても、これはそれでやるのでございますか、伺っておきたい。
  14. 佐久間彊

    佐久間政府委員 お話しのように、合併をいたしました機会におきまして字あるいは町名変更、あるいは区域を合理的に再編成をするということは、これは佐々にして行なわれているところであります。それはそれぞれの市町村判断によりまして、地方自治法町名字名変更あるいは区域変更という規定がございますが、当該市町村の議会の議決を経て実施をするということになるわけでございます。
  15. 華山親義

    華山委員 伺いましたのは、その際に第十一条がどうなるか、字切りとか町名とか、そういうものがみな違っても、昔の境界選挙区の境になるかどうかということをお聞きしておる。
  16. 佐久間彊

    佐久間政府委員 それは字名町名変更にかかわらず、合併のときを基準といたしまして従前の選挙区によるということであります。
  17. 華山親義

    華山委員 あとのほうのおことばがちょっと聞こえなかったのですが、いまの選挙区の境というものはどんなふうに様子が変わろうともきちんとしておいて、そして選挙区の境をやるのだ、こういうことでございますか。
  18. 佐久間彊

    佐久間政府委員 別表が更正されますまではそのとおりでございます。
  19. 華山親義

    華山委員 それからこれとちょっと離れますが、伺っておきたいのでございますけれども町村合併がこの前やられましれときには、こういう十一条のような規定はなかったですね、その点伺っておきたい。
  20. 佐久間彊

    佐久間政府委員 前の町村合併促進法にはございませんでしたけれども、市の合併特例に関する法律、それから新産業都市建設促進法の中には、これと同様な規定を置いたのでございます。と申しますのは、市の合併あるいは新産都市に指定されます区域におきます合併は、相当大規模合併が予想されまして、衆議院議員選挙区にわたることも予想されましたので、規定を置いたわけでございます。
  21. 華山親義

    華山委員 今度の場合は、そう大規模でないのでございますけれども、どういうわけでこれを変えたのでございますか。
  22. 佐久間彊

    佐久間政府委員 この法律には、これまでございました市の合併特例に関する法律や、新産都市建設促進法の、中の町村合併に関する規定を全部ここへ吸収いたしましたので、この規定を存置することにいたしたのであります。
  23. 華山親義

    華山委員 それからちょっと伺いますが、これとは関係ないことでございますけれども市町村合併によりまして相当そういうところがなくなりましたけれども境界外隣町村との間にぽつぽつと離れ地がある。いままでもそれがございまして、離れ地の住民はたいへんに不便をしているわけでございます。いろいろな、衛生上の車も参りませんし、そういうふうなことで、住民たち自分の住んでおるところを包含しているそういう町に入りたい、こういうことを言いましても、これはできないことではないのでございますけれども、なかなか境界変更というふうなことをやらないのですね。そういうふうなことで、私は気の毒だと思うのでございますが、これは地域的共同体趣旨からいいましても、そういうものは本来あるべき町村に入れるというふうなことを立法的にでもお考えになれませんでしょうか、伺いたいと思います。
  24. 佐久間彊

    佐久間政府委員 合併の際のいきさつからいたしまして、御指摘のように飛び地ができておりますことは、私どももよく承知をいたしております。これは御承知のように、何といいましても不合理な状態でございますので、できるだけその後においては飛び地解消をいたしますように、私ども指導をいたしておるわけでございます。ただ合併当時のいろいろな経緯からいたしまして、住民感情その他から、早急に解消されていないところもあるわけでございますが、今後とも、そういうところがございますれば、私どもも県に連絡をいたしまして、できるだけ解消努力をさせるように指導をいたしたいと思います。ただこれを立法措置解消させるかということにつきましては、いろいろまた無理な点もあろうかと思いますので、その点はただいまのところ考えていない次第でございます。
  25. 華山親義

    華山委員 ただいまのは市町村合併によって飛び地が出たのじゃないのです。徳川時代からあるのじゃないかと思うのですね。殿様がおりまして、殿様の領土ということでぽつりぽつりと点在しておるのですね。それをそのまま受け継いで今日まで来ておる。それで県庁のほう等では、それは境界変更で、本来あるべきところに移したらいいじゃないかと幾ら言ったって聞かないのです。それではそこの住民というものは私は気の毒だと思うのでございますね。それで一部落がぽつんぽつんと入っているのならまだいいのです。一軒一軒入っているのですね。ちょこりちょこりと入っているのですね。全くおかしなかっこうになるので、指導でできるものならいいのですけれども、どうしてもできないところがあるものですから、ああいうのは何か立法措置でやっていただいてもいいのじゃないか、そういうような気がするものですから御研究を願いたい。
  26. 佐久間彊

    佐久間政府委員 お話しのような事情につきましては、よく調査をいたしまして検討をしたいと思います。
  27. 華山親義

    華山委員 これで終わります。
  28. 中馬辰猪

  29. 佐野憲治

    佐野委員 私、次の二点に対して見解を伺っておきたいと思いますが、その一つは、自治省のほうから、この特例法をめぐりまして「町村合併成果」という資料が出ておるわけですけれども、私は率直に申し上げまして、昔から功罪相半ばする、あるいはまた最近の熟したことばとしては、成果欠陥ということばがあるわけで、当然こうした成果資料として提出されるならば、明治二十二年、そしてまた昭和二十八年の大合併に伴う政策合併に対しまして、その成果とともに一体どういうふうな欠陥が残されておるか、地方自治根本理念に立って特に問題となる点は、一体合併の結果としてどういう点が存在しておるのか、こういう点がいろいろ関心を持たれるわけで、実は資料の中でその点が指摘されておらないのは遺憾と思いますので、この機会に率直に主要な点について御説明願いたいと思います。
  30. 佐久間彊

    佐久間政府委員 お手元に提出いたしました資料は、実は参議院で御審議をいただきました際に御要求がございまして、とりあえず手元にあります資料をもとにいたしまして作成いたしましたものでございますので、なお十分でない点はいろいろあろうかと存じます。御指摘のように、これは成果ということばかり拾っておるが、反面合併に伴う弊害もあるのじゃなかろうか、こういうことでございますが、私ども全国的に見まして、先年来行なわれておりまする町村合併につきましては、一般的に申し上げますと、ここに述べましたようなプラスの面が認められると信じておるわけでございます。ただ部分的に見てみますと、御指摘のようにマイナスの面が認められるところもないわけではございません。その一番私ども心配をいたしておりましたのは、合併に伴いまする紛争でございます。この合併に伴いまする紛争につきましては、原因もいろいろ地域によりまして異なっておるのでございまするが、いずれにいたしましても、紛争状態が残っておりますことは、せっかく合併をいたしましても、合併後のプラスの面を伸ばすことができませんので、その点につきましてはできるだけ紛争解決するようにということで、ここ数年来努力をいたしてまいっております。特に私どもの手に直接かかってまいりますのは、県にまたがる越県合併の問題でありましたが、この点につきましても、従来むずかしい問題が二、三ございましたのも、今日におきましてはほとんど解決を見ておるような状況でございます。なお、県にまたがらない市町村紛争につきましては、都道府県知事解決努力をする立場にあるわけでございまするが、若干残っておりますものにつきましても、引き続き解決努力するように私どもも督励をいたしておる状況でございます。
  31. 佐野憲治

    佐野委員 私はそうした点も重大な問題の一つだと思うが、大きな問題として、地方自治根本理念に立って町村合併がどういう結果を一体現在にもたらしているかという点に対する批判があらねばならない、かようにも考えるわけです。と申しますのも、先般二人の知事と会食する機会を持ったわけですけれども、一人の知事は、やはり皆さんが言われる町村合併成果として、団体における財政上の機能の充実その他の点は、全体としてはそうであるかもしれない。しかし、自分知事となって町村を歩いてみると、町村の中における行政的な空白があまりにも多い。総体としての数字をながめてまいりますと、なるほど前進しているかわからない。しかしながら、一つ町村における単位としてながめてまいると、そこにほとんど行政が行き届いていない、こういう欠陥に実はいろいろと心痛しておるんだという点を指摘しておられたわけです。御存じのように、なるほど教育施設充実はなされているかもしれません。町に参りますとりっぱな公民館や鉄筋コンクリートの小学校ができておる。あるいはまた市民会館がりっぱにできておるわけであります。ところが、合併編入されましたところのかつての町に行ってみますと、ほとんど放置されてしまっておる。しかも昭和三十三年、四年、五年の非常に財政が財源的にもゆとりがあったこの機会に、もし町村合併がされずしてへそのままの町村としてあった場合に、どれだけか行政水準充実をはかることができたんではないか。合併前とほとんど同じような状態の中に放置されておる旧町村が非常に多いのではないか。しかも、それは具体的にもう少し突っ込んで見てまいると、自治会町内会部落会、こういうものがかつての村がやっていたと同じことを、逆にこの税外負担として、あるいはまた新しい合併町村補完行政として行なわれてまいっておる。そういう意味から非常に税外負担も多くなっているのではないか、こういう点をやはり考えるならば、町村合併後における行政内容の改善あるいは空白に対する対策、こういう点はもっと重点的に取り上げねばならないのじゃないか、こういう点を指摘して、視察後の感じを言っておられたわけです。もう一人の知事さんとお会いしましたときも、その知事さんは昭和三十年に公選知事となって、それまで八カ年間村長をやっておられたわけでありますが、やはり自治省の促進する政策合併に対しまして、地方自治理念から住民自身が決定すべき問題であって、国が町村合併促進法をもって政策合併を進めるべきではないのではないかという考え方が一部にありましたので、住民の意思を尊重しながら、実は町村合併をしなかった。もちろん村長から知事になりましても、その村は町村合併をせずに今日まできているわけですが、しかし、今日に至って、やはり比較してみると、わずか人口四千人程度の村でありますけれども、そういう限られた財源と限られた住民の総意、あるいは発意によって、やはり自治体づくりを考えて行なった結果として、八つかある各部落には部落公民館ができる。部落部落の間における道に対しましても、舗装することができ得た。そういう一つの事実を目の前にしたとき、同じく知事に反省を与えた一つの問題は、その県におきまして一郡一市の町村合併が行なわれたわけです。しかし、その中におきまして、一郡に一つの市となりますから、いろいろな行政庁的特殊性を含んでいるものが一つの市となってまいった。そこで、昨年お話しした前後なんですけれども、そこに大きな地すべりが起こって、十何戸の家が崩壊しなければならぬという悲惨な状態が出てまいったわけです。そうした地すべりというものは、おそらく町村合併をしていない昔の村でありましたなら、村としては重大な問題であった。もうすでに地すべり前兆が出ている。一体どうするのか、この対策部落人たち県庁や市役所に日参をするけれどもほとんど顧みられない。あるいは自費を使って建設省にも参るけれども、そういう地すべりに対する実情に対して、ほとんど回答が得られない。対策が講じられなかった。そこへ地すべりが起こって大きな被害となったわけですけれども、そういう現実を見せつけられるときに、もし町村合併せずにその村としてあった場合には、重大な問題としてこれは政治的にやはり取り上げられたであろうし、それに対する対策がすでに要求として生まれてまいってきたんじゃないか。そういうことが忘れられてしまっているという中に、広域的な町村合併というものははたしてほんとうに住民の福祉をはかり、住みよい地域社会をつくることになるのかどうか、こういう疑問を投げかけておられたわけであります。このような点に対して自治省としてどのように考えておられるか、率直にお聞かせ願いたい。
  32. 佐久間彊

    佐久間政府委員 御指摘のような一面がございますことも私どもも理解をいたしております。問題は、町村の行ないます行政の中で、できるだけ広い区域を対象として処理をしたほうがよい行政と、できるだけ住民の身近なところで、きめのこまかい処理をしたほうがいいものと、両方あると思うのでございます。ただ全体として見てみますと、かつての、町村合併促進法の行なわれます前のような、全国平均人口が五千というような小さな町村の場合におきましては、広い区域を必要とするような行政はもちろんのこと、住民の身近なところできめこまかくやるようなサービスにおきましても、能力が不足しておったと考えられるわけでございます。そこで問題は、町村規模をどの程度にすることが当該地域にとりまして適正なものであるかという判断の問題になろうかと思うのでございますが、お話のように一郡一市をつくるというようなケースにおきましては、往々にして面積が非常に広過ぎて、広域的に処理する行政には便利であるけれども、身近できめこまかくしなければならぬサービスの面からすると、少し広過ぎるというような場合も起こり得たと思うのでございます。そこで個々の問題につきましては、それぞれの市町村におきましていろいろの点から合併の適正な規模検討していくべきであると思うのでございますが、私どもこの法律を成立さしていただきました場合の指導考え方といたしましては、広域的な処理を要するものがあるから何でもかんでも合併をしろというのではございませんで、広域的処理を要するものにつきましても、一部事務組合等共同処理方式活用によって処理し得るものはそれをまず研究すべきである。相当重要な多くの仕事が共同処理をする必要があるというようなことについては、これは合併検討するということもいいわけでありますが、この辺のところは画一的にわたらないように、十分合併の利害を考え、また合併していくか、共同処理方式活用でいくかというようなことにつきましても、検討をして判断をするようにというふうに指導をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  33. 佐野憲治

    佐野委員 私が一、二の例を申し上げましたのは、率直な表現としてそういうものが現実にあるのではないかということですが、全体として町村合併の結果として指摘される点は、自治意識を喪失している、自治に対する無関心、これは大いに考えたい一つ現実として出ているのではないか。第一、末端行政に対する空白、これも町内会なり自治会なりそういう地域団体、あるいは地域に多く存在する圧力団体なり、あるいはまた行政補完的組織なり半官製的な組織なり、こういうものをつくらなければやっていけないという問題点を提起していると思うのですが、これらに対して一体その解消のためにどういう考え方を持っておられるか。町村合併後における総括的な数字だけでなくて、根本である地方自治理念住民の参加、住民のコントロール、そしてまた住民自身解決していくという基本的なものが失われていっているのではないか。こういう点に対して一体どういう対策を講じようとしておられるのか。またどういう考え方を持ってながめてまいっておられるのか、こういう点をもう少しお聞きしておきたいと思うのです。
  34. 佐久間彊

    佐久間政府委員 御指摘のような面のあらわれているところも、これもまた現実でございます。ただこの自治意識の問題につきましては、区域が広くなりましたから、そこで自治意識が薄くなるということもあながちいえないのではないか。広くなりましても、その広い区域におきまして関係住民市町村行政に対する批判、監視がやりやすいようにしてくふうをしていくということが必要だと思うのであります。特にこれは制度の上の問題だけではございませんで、実際の運用上のくふうもあろうかと思いまするし、また住民に対する広報活動というようなこともさらに力を入れまして、ほんとうに住民みずからの手による行政なんだという実を持たせるように、これは市町村当局だけでなくて、関係団体あるいは県や国におきましてもみんなが協力をして解決をしていくべきではないか、かように考えておるわけでございます。  なお、合併直後の経過措置といたしまして、その点につきまして今回の改正案につきましては、従来吸収合併をいたします場合には吸収されましたところがら住民からの代表が出ないという仕組みになっておったのでございまするが、それでは住民自治の点から問題がございまするので、今回は人口比例によりましてそこから議員が出せるようにするというふうな新しい案も考えたような次第でございます。  それから、次の末端行政空白の点でございまするが、これは市町村の置かれております社会的、経済的な実態によっても違ってこようかと思うのでございます。市街地的なところにおきましては、従来のような町内会式のものがだんだんとむしろ影が薄くなってきておるというのが実情だと思うのでございまして、私どもといたしましてもそういう町内会のようなものが行政的な権限を持つということはもちろんでありますが、そういうお手伝いあまり火急なお手伝いをしていくということも、これも望ましいことではないという考え方指導をいたしておる状況でございます。
  35. 佐野憲治

    佐野委員 いろいろお話をお聞きしましたが、次官もお見えになっておりますので、私、この機会にお伺いしておきたいのは、地方自治が民主主義の基盤であるといわれる。地方自治の目的というのは政治的なものに置くべきではないか。政治的な単位としてあるいは規模その他は考えられねばならないのではないか、ただいまこういういろいろな「町村合併成果」その他の書類を見まして、かつはまた局長のお話を聞いておりますと、どうも地方自治の目的は行政の能率あるいは合理化、こういうところに目的があるのではないか、政治的な目的のためにこそ地方自治は存在しておるんだという点に対する認識が少し欠けておるんではないかという感じもいたしますので、率直に次官としてはどのように理解しておられるか、この点をお聞きしておきたいと思います。
  36. 高橋禎一

    ○高橋(禎)政府委員 合併ということに関連いたしまして、市町村のいわゆる規模がどの程度のものであるかということ、地域住民の真に福祉増進という問題とどう影響するかというようなことについての私の所見をお尋ねいただいたわけでございますが、御承知のように、町村合併促進法は、市町村合併ということによってこういう目的を達成しようと、その目的を掲げておるわけでありまして、やはり私どもといたしましては、基本的には行政能率の向上とか、自治行政の民主化、いろいろの考えなければならぬ問題がありますが、しかし基本、根本としては、さっき申し上げましたように、地域住民の福祉増進、そういうことにあるわけでありまして、この合併の問題はそれと結びつけていかなければならぬものである、このように考えるわけでございます。町村合併促進法ができまして以来、その他の合併に関する法律ができまして、そうして現在の段階におきまして、いろいろ合併が行なわれ、行なわれました市町村についての成果、これはいろいろの見方があると思いますが、私どもといたしましては、やはり国会において十分御審議願って成立をいたしました法律の考えておりました目的の達成に向かっては徐々に進んでまいっておる、相当の成果をあげておるし、残された問題についても成果をあげつつある、こういうふうに基本的には考えておるわけであります。この成果と申しますのは、やはりいろいろの問題もありますけれども、地方住民の福祉向上発展のために、すなわち佐野委員がいろいろ御懸念なさっておられますきめのこまかい自治的な地方行政ということの目的を果たしていっておる、そういう意味において成果をあげておる、そのように考えておるのでありまして、この法案に対しましての私どもの考えといたしましても、いま申し上げましたような趣旨でその成果をやはり期待いたしておる、こういうふうな次第でございます。
  37. 佐野憲治

    佐野委員 私が率直にお聞きしたがったのは、地方自治の目的は政治的なものであって、行政的な目的は副次的なものではないか、こういう点から考えてまいりますと、たとえば欧米におきまして日本よりもっと人口、面積の狭少な区域を占めておる市町村はたくさんあるわけなんです。しかもそれが数百年にわたって存在してまいっておる。しかも日本のような、そういう法律によって町村合併を促進しなくちゃならないという、そういう立法措置もとられず、日本よりもっと小さい、三千人あるいは二千人という町村単位もあるわけです。その中でやはり地方自治成果をあげておる、地方自治理念に基づいて町村がつくられて、地域社会がつくられておる。こういう点から私はお伺いしたがったのは、やはり地方自治というものは基本的人権と同じように人間固有の権利として、自然法上の権利としてやはり歴史的に成長してきておるのではないか、そういう場合における町村規模を考える場合、単なる人口、面積、あるいはそのときそのときの政治、あるいは社会的情勢に応ずる行政の必要上生まれてまいるところの目的によって変更されべきではないのではないか。あくまで政治的な単位としての市町村というものはいかにあるべきかということに対する深い配慮が必要となってくるのではないか、こういう点をお伺いしておるわけですけれども、そういう意味においていままでの、昭和二十八年にしても、明治二十二年の大合併にいたしましても、ほとんど政策的合併であって、住民の必要、住民の発意によって町村合併が推進されてまいったというのではないというところにやはり根本的な問題が残されてまいっておるのではないかという点を考えるわけですが、地方自治の目的は政治的なものであって、行政目的は副次的なものである、こういう解釈に立っておられるかどうか、この点をもう一回。
  38. 高橋禎一

    ○高橋(禎)政府委員 行政目的ということばの解釈ということも問題だと思いますが、やはり行政そのものが地域住民の福祉増進ということになければならぬ。ただ、国の行政当局の都合、また地方公共団体行政当局の便宜、そういうことによって、地域住民の福祉増進という実質的な面が犠牲にされるということがあってならぬことは申し上げるまでもないところでございまして、そういうふうな意味におきましては、市町村合併というような問題を、ただ行政当局の都合のいいようにというようなものであってはならぬと思うのでございます。どこまでも地方自治は、お話にございましたように、地域住民のいわば大きい意味における基本的人権とでも申しましょうか、われわれ個人個人の持っておる基本的人権、そしてその個人が最も密着して、最もその福祉増進のために効果的と申しまし上うか、一つ団体のもとに、この規模団体において、われわれの福祉を増進すれば最もいいという、そういう基礎的な組織と申しまし上うか、団体と申しますか、つながりと申しますか、そういうものをやはり守っていくということは、地方自治においては無視してはならないものであると考えておるのでございまして、結論的に申しますと、佐野委員のいわば御心配になっているような面については、私どもといたしましても同じような考えを持っておるわけであります。地方自治はどこまでも地域住民の福祉増進、そしてその自主性、その自治性というものを尊重していかなければならない、そこに基礎を置かなければならぬ、このように考えておるのであります。したがいまして、これは従来の市町村合併等におきましても、基本的な精神としては同様であったと思うのでありますが、ただいま私どもといたしましては、ことに地域住民の自主性、その意思をどこまでも尊重してまいっていこうという考えを持っておりますのも、その理由はそこにあるということを御了承願いたいのであります。
  39. 佐野憲治

    佐野委員 昭和二十八年の町村合併促進法が提案されましたとき、社会党は、いま申し上げました考え方に立ちまして、憲法上、地方自治の本旨に従って、この運営組織が法律をもって定めねばならないという条項に対しましても、やはり自治権は基本人権と同じように、人間固有の権利として、自然法上の権利として、憲法が確認したものにすぎないという解釈に立ちまして、政府当局が町村合併に対する一つの適正規模なりそういうことを示すことそのものが憲法に違反するのではないか、自治権に対する大きな侵害である、こういう解釈に立って反対したことは御承知のとおりだろうと思いますが、そういう意味におきましても、現に町村合併は進行してまいっておるわけでありますけれども、そういう中で一番心配になってまいりますところの地方自治の意識の没却あるいはそれに伴う末端行政の麻痺、これが地方自治の基盤そのものを脅かしておるような現実も出てきておりますので、もっと真剣に、総括的な、財政上におけるところのいまあげられておる諸問題だけではなくて、もっと実態が共同体としての社会実態を備えておるかどうか。住民の意思が、住民のコントロールができるような政治単位としてなされておるかどうか。こういう点に対しても十分検討した上において施策を講じていただきたい。こういう点を一つ希望しておきたいと思います。  第二の点といたしまして、私この特例法を読みまして感じました重要な点といたしまして、今日、町村議会が議決をする、こういう議決行為に対しまして、それぞれこの救済の措置が、直接住民の民主的参加と申しますか、直接請求権が与えられて、条例の改廃なりあるいはまた条例をつくることなり、いろいろな点において理事者と議会とのなれ合い行政に対して住民の側からも意思の反映あるいはコントロール、参加という道が自治法上に持たれておるわけです。しかしながら、この町村合併につきましては、重要な問題であり、かつまた全住民の総意なりあるいは発意なりあるいはまたその必要性の有無につきまして、十分論議を尽くさなければならない問題で、単に首長あるいは議会だけでこれが決定されるにはあまりにも重大な要素を含んでおる、かように考えるわけであります。ところが、自治法を見てまいりましても、町村合併の場合におきましては、町村が提案をする、議会がこれを議決しますと、これに対して住民の側からそれは間違っておるではないか、それを取り消してもらいたい、それを改廃してもらいたい、こういう意思が当然あらわれてまいりました場合におきましては、これを救済する、その意思を吸い上げる、そういう法的な救済措置が行なわれていないわけであります。他の場合におきましてはそういう措置が講ぜられておって、町村合併という重大な問題に関してのみそういう救済の規定が存在していないのはどういう理由によるものか、御説明願いたいと思います。
  40. 佐久間彊

    佐久間政府委員 町村合併につきましては、御説のとおりに地方自治法上におきましては、関係市町村議会の議決をもって住民の意思のあらわれというふうに考えて処置をするというたてまえをとっておるわけでございます。これは合併というものの性質からいたしまして、事態がペンディングな状態に置かれるということは、これは住民全体の福祉の上からできる、だけ避けなければならない事柄でございますので、この合併につきましては、関係議会の議決をもって住民の意思のあらわれと考えまして、事を処理するという手続にいたしておるわけでございます。もちろん例外的には、ある地域住民にどちらの市町村に帰属せしむべきかということを、特に住民の意思を問うて決定をするという手続を、御承知のように新市町村建設促進法の中では、合併後の紛争処理一つの便法といたしまして置いたことがございまするが、原則といたしましては、いま申したような考え方規定をいたしておるわけでございます。
  41. 佐野憲治

    佐野委員 そういたしますと、たとえば、最近、過去においても見られたわけですけれども、やはり地方住民からの非難あるいは反対運動をおそれるのあまりに、こっそりと町村合併に対する協議が進められておる。そして、突如提案されてまいる。しかも、住民が出かけてこない深夜の一時、二時に実は議決をしておる。こういう例が過去においても多くあったわけでありますが、そういう場合に、住民として納得でき得ない、もっと時間をかしてもらいたい、と同時に、合併後一体どうなるのかというような問題がここに提示されてくる。こういう場合に、特例法においてはそういう救済規定がないわけですから、自治法に基づいてこれに対する救済を求めようとする場合におきましては、一般におけるところの議会の解散なりあるいはその提案をした首長のリコール、こういう措置に出るよりほかに方法がないわけだと思いますが、そうした場合に、そういう決議が行なわれようとしておる、また行なわれた。そういう中で、たとえば町村長のリコールをやろうとする場合、リコール請求の代表の選任から、実際上においてリコール投票まで持っていくために幾らの期間があるか、ちょっとお知らせ願いたいと思います。
  42. 佐久間彊

    佐久間政府委員 前段のお尋ねでございますが、関係市町村が議決をいたします場合におきましては、合併ということの性質上、住民の意向をよく把握いたしまして議会が議決すべきものでございまして、お話しのように、少数のものだけでこそこそ協議をしてきめるというような行き方は、合併を決定いたします際の市町村議会の態度といたしましてはとるべきことではない、私どもはかように考えておるわけでございます。また市町村議会の議決がありました後におきまして、住民側から何かの方法はないかというお尋ねでございますが、合併は、市町村の議会の議決を経ました後に、さらに県議会に知事がはかって処分をするということになっておりますので、県議会でもう一度その合併の適否につきまして判断をする機会があるわけでございますから、県議会にその住民の意向を伝えまして、県議会でさらに検討をしていただくという方法があるわけでございます。  なお、議会を解散させるためのリコールの請求につきましての期間の点でございますが、何日になりますかちょっといま調べまして、後刻御返事を申し上げたいと思います。
  43. 佐野憲治

    佐野委員 ただいまおっしゃいましたことは、法的にも県議会があるではないか、こういうお話ですけれども、実際問題として考えてみますと、たいていそういう場合は県議会は定例県議会が開かれておる。しかも日数があまりないという時期をねらって実は議決をするということが往々にしてあるわけであります。知事にとりましても、また両関係市町村から申請が出てまいりますならば、これに対する拒否権はあり得ないわけで、当然提案しなければならない義務を生じておるわけです。そういたしますと、議会にいたしましても、次の定例議会を考え、またその期間を考えると、あるいはまた本法のような特例法が四月一日から実施される、こういうことになってまいりますと、それと見合わせて提案がなされる場合が非常に多いと思うわけですけれども、そういう場合に、少なくともリコールなり、そういうふうなことに対する住民からの反対なり、こういうものが何かの形において処理されておる、そういう処理規定があるといたしますならば、県議会としてもそれの結果を待つ。あるいはまたリコールならリコールで特殊なリコール運動がそこにあるとするならば、その結果を待って審議をしてもいいではないかと言うこともでき得ると思うのですけれども現実的にこのリコール運動を行なうために請求代表者の選任をやる。これに対して審査に時間を要する。しかも一週間告示しなければならない。それから署名運動にとりかかるわけです。署名運動にとりかかって三十日間ですか、それからまた五日間の整理期間が設けられる。その次に二十日間の著名審査が行なわれ、これに対する異議の申し立てが行なわれる。それから実際の選挙というふうになってまいりますと、相当の日数を必要とする、こういうことになってくるのじゃないかと思うのですが、大体普通の場合におきましても、一体幾らくらいの日数を要するわけですか。
  44. 佐久間彊

    佐久間政府委員 証明書を交付されましてから署名収集期間が一カ月でございます。審査が二十日間、縦覧が七日間、異議申し立てが十四日間でございます。それから署名審査が終わりまして、異議申し立てもなく確定いたしましてから六十日以内に投票をするということに相なります。
  45. 佐野憲治

    佐野委員 ですから相当の長い期間を要しなければ実際上において——そういう場合において、そういう住民の意思に反した行為が首長と議会との間でなされ、しかもこれは町村合併という重大な事項である。そういう重大な事項に対しまして、リコールをもって対抗しようとする住民の権利を発動しようとしても、実際上においては、この期間をもってすれば、もう運動途中において議決の効力が県議会において、あるいは自治大臣の告示によって成立してしまう。そうすると住民自体が参加する道が何らなく、これを救済することができなくなっているのじゃないか、これに対してどうお考えになりますか。
  46. 佐久間彊

    佐久間政府委員 先生のおっしゃいますような問題も、確かに一つの問題かと存じます。その点につきましては今後の問題として検討してまいりたいと思いますが、ただ私ども現在考えておりますのは、住民の意思をどういう方法で反映させるかという場合に、現在の地方自治法におきましては、議会において住民の意思を反映させるという、いわゆる代表民主制と申しますか、そういう方法をたてまえといたしておるわけでございます。きわめて例外的な場合に、リコールその他の直接民主制の制度を入れておりますが、原則はやはり議会に住民の意思を代表させるということでまいりませんと、事ごとに議会の意思が、これはほんとうの住民の意思ではないのだということで争いが起こりますと、これまた別の点から考えまして、民主政治の基礎を不安定にするということにもなろうかと思うのであります。したがいまして、私どもといたしましては、議会が十分住民の総意を反映した構成になり、そうしてその議会が住民の意思を十分考えて事を処理していくということが一番望ましいのじゃないか、かように考えておるわけでございます。しかし、いまのリコールが起こりました場合の先生の御指摘の問題は、それはまた別途検討してまいりたいと思います。
  47. 佐野憲治

    佐野委員 単なる平常時における条例なり、あるいはまた監査請求なり、あるいはまた職員に対するところの解職要求なり、こういうことも議会と首長、理事者だけでなくて住民も参加するのだ、こういうところに地方自治の特徴があると思います。そういう住民自治のたてまえをとっておる中で、普通のことはリコールなりその他の直接請求によって救済することができ、住民のコントロールを認めておる。しかしながら、その市町村解消する、歴史的に共同体として生まれてまいったものを解消するというような重大な問題に対しましては、当然過去の紛争を見ても住民と議会とが対立することはあり得ると思います。そうした場合に、これを救済する措置が何らなされておらない、あるいは紛争を調停する機能も設けられておらないということになってまいりますと、自治法だけにたよって、しかもこれをやろうとする場合にほとんどでき得ないのじゃないかという点が非常に問題ではないか。前の合併の場合におきましては政策合併である。これは地方自治のたてまえから考えて政策合併そのものに対しては非常に重大な疑問を持っておるわけでありますが、政策合併だから紛争その他に対してはやはり一定の規定を設けなければならなかった。ところが、そうでない場合において、特に住民と議会とが対立することはあり得ることだと思います。そういう場合に、特に過去における二十八年が政策合併だっただけに、事件は解決されたとしましてもいろんな点が内蔵されておると思います。そのときですら大きな問題を内蔵していたのに、しかも町村合併に伴う建設計画なりいろいろなものが実施されていないで、いろいろな意味において問題があるときに、合併いたしましたものがそのまま他のほうに吸収合併をするというような事態になってまいりますと、これは問題を知らせればたいへんなことになってしまうということから、住民をおそれて、住民の意思の反映を隠蔽するような方法をとらざるを得ないというところに、これからの合併問題の深刻さがあるのじゃないか。そうした場合に、そういう合併に対してやはり救済的な規定というものを設けないとたいへんなことになるのじゃないかという点を一つ考えるので、その点を指摘しておるわけです。  さらにこのリコールの問題について一、二点お尋ねしたいと思いますが、たとえば署名簿が提出された場合に、二十日間以内において審査をしなければならないという規定を置いておるわけです。ところがこの規定に対しまして、最近自治省の見解として流されておるのによりますと、この第七十四条の二はたとえば首長の解職の場合にも適用されるわけですけれども、ここで「二十日以内に審査を行い、署名の効力を決定し、その旨を証明しなければならない。」、こういう規定を置いておるのはこれは訓示規定だ、だからこれは二十日間でなくてもいいのだ、場合によれば三十日でも四十日でもいいのだということになってまいりますと、時間を急いでおるような問題に対するところの請求権を発動いたしておるのに、ここにおいては「しなければならない。」という規定を置きながら、これは二十日でもいいのだ、あるいは三十日でもいいのだ、倍の四十日でもいいのだというぐあいに、いたずらにこの期間を遅延させるということによって、実質上においてリコール運動をやっている意義自身を抹殺するという行為に出ておることに対して、自治省はこれを正当なものとして、これは訓示規定だからいいのだ、やむを得ないのだというような解釈が流布されておるわけです。こういう点に対しまして実際どうなのか。他の場合、住民の場合におけるいろんな書類の提出その他は、一日でも過ぎれば無効になるというきびしい規定を置いておる。しかしながら、行政当局におきましては、二十日で審査しなければならぬという規定を置いておりながら、これが四十日間になろうとかってなんだ、これはやむを得ないのだということで、片方は効力を失ってしまう、片方は訓示規定だという解釈をとられるのは非常に問題があるのじゃないか。そこでもう一つ、これに対して学陽書房から出ておる小六法には、この二十日以内ということに対するところの行政実例を載せておるわけですが、これには昭和二十七年十一月十八日の行政実例として、二十日の期間を経過してもなお審査が行なわれない場合には、公職選挙法の第二百二十六条による職権濫用罪が成立するのだ、こういうぐあいに行政実例には出ておるわけですが、この昭和二十七年十一月十八日の行政実例と、最近自治省行政解釈として出しておる、これは訓示規定だからこの期間に拘束されないのだ、できるだけその期間内に審査をしなければならないのだということとの間において、相当大きな相違があると思いますが、この点に対してはどういう解釈を持っておられますか、局長からお答え願いたい。
  48. 佐久間彊

    佐久間政府委員 審査の二十日間の期間につきましては、先生のおっしゃいますように、これは極力急いで審査をこの期間に終わるように選挙管理委員会としてすべきことは言うまでもございません。ただ実際問題といたしまして、非常に多数の署名があります場合に、選挙管理委員会が全力をあげて審査をいたしましても、二十日間で署名の審査がどうしても終わらないというような場合が起こり得るわけでございます。その場合に、まだ審査が終わらないのに二十日で打ち切ってしまうということは、かえって住民の権利の行使を妨げるゆえんでもございますので、この規定の解釈といたしまして、二十日はできるだけ全力をあげてやるべきであるけれども、かりにその二十日間を経過してなお残っておるものがあっても署名簿の効力には影響を及ぼさない。言いかえれば、この二十日間という期間は訓示規定と申しますか、そういうふうに読んでおるわけでございます。しかし二十七年の実例と申しますのは、その期間を経過いたしました後に、故意に選挙管理委員会が怠って審査を行なわないというような場合には、公職選挙法二百二十六条で、選挙管理委員会選挙に関する職務を怠っておるということで罰則の対象にもなるわけでございまして、今日私どもが言うておりますのも、決してこの二十七年の実例と違ったことを申しておるのではないのでございまして、できるだけ二十日間に終わるように全力を尽くせ、しかしどうしても終わらない場合は若干延びてもそれは効力には影響はない、かような解釈をとっておるわけでございます。
  49. 佐野憲治

    佐野委員 そうしますと故意であるかどうか、故意というのは非常に狭く解釈しなくちゃならない問題ではないかと思う。補助職員も置けるわけですから、二十日間で審査しなくちゃならない。しかもこれは広範囲な府県の場合においても二十日間で審査しなくちゃならない。ところが、町村の場合においても二十日間だとなってまいりますと、この二十日間内において審査できるような計画を立てる義務がここに出てきておるのではないか。それがおくれるというのはよほど重大な理由がなければならない。このように狭く解釈しなければならないのに、これを広げてしまいますと、実質上無意味になってしまう。そういう点をもう少しきびしく解釈しなければならないのを、任意規定だから延びてもいいのだという解釈が流布されますと、実際は職権濫用罪が成立するのだけれども、実際上においては職権濫用罪というものはほとんど消滅してしまうのではないか。しかも他の場合、提出の場合においては、もし一日でもおくれますと一切無効になってしまう。これは広い範囲だったからやむを得なかった、風雪もあったから実は集められなかった、この人が四、五日出かせぎに行っておった、これは住民の当然の権利だから帰ってくるのを待っておって一日おくれた、しかしながらこの場合は一切無効だ。ところが審査をする権限に対しましては一日どころではない、十日も二十日も一おくれても効力には関係がなくて、しかも故意でない以上はあくまで適法だ、こういう解釈をしておられることは私はどうかと思うのです。この点は重大な問題じゃないかと思いますので、もう一度明確にしていただきたいと思います。
  50. 佐久間彊

    佐久間政府委員 御指摘のような趣旨でこの規定の運用をしてまいるべきだと私どもも思っております。先ほども申しましたように、それでございますから、全力をあげて選挙管理委員会としては二十日間に終わらせるように審査をしていかなくちゃならぬ。しかし全力をあげてやってもどうしても二十日間で終わらなかった場合には、あとの部分を審査せずにほったらかしておくわけにはまいりませんので、若干経過することがあってもそれはやむを得ない。しかし、そのために故意に怠ってまで審査を引き延ばすようなことがあってはいけませんから、その場合には職権濫用罪にも当たるぞいうことを私ども申して指導をいたしておるわけでございます。
  51. 佐野憲治

    佐野委員 ただでさえも、請求代表権選任を一週間において審査しなければならない、これを四、五日おくらせるのはあたりまえになってしまっておる。それから三十日間に署名簿を収集しなければならない。これは一日おくれてもだめだという形で、行政当局の恣意によってぐんぐんおくらせることができる。片方において欠陥があれば、すぐそれは一切無効だという強制力が出てまいっておる。こういう規定はもう少し検討の余地があるのじゃないか。府県において二十日間だ、町村において二十日間だ、こういう規定がある以上は、やはり町村の場合はもっときびしくされねばならないのじゃないか。こういう場合に、故意というものは非常に狭い範囲に限定したものとして、政令その他においてもっと固めなければならぬじゃないかというようなことを感ずるわけです。そこで、たとえば府県においてのリコールなんというのは、福岡県の例を除いてほかに最近どこかありますか。
  52. 佐久間彊

    佐久間政府委員 府県の場合には、福岡県以外には記憶をいたしておりません。
  53. 佐野憲治

    佐野委員 ですから、直接請求権というものは、住民自治の大きな柱として自治法の中で取り上げられておるわけですし、それが民主主義の基盤として重要な役割りを果たしておるわけですけれども、実質上において府県においては成立しない。することさえでき得ない。行政の広域化の結果として、広域的な規模行政の中においては、住民の意思を反映することができない。最近、県などの中におけるところの汚職その他の不正腐敗というものが、相当数多く検察庁の手によって摘発されておる。かつまた議会と首長がなれ合っておる行政、これが非常にひんしゅくをかっておるという事態も、しばしば新聞紙に報道されておる。それに対して住民として与えられておるリコール権を発動する。それがすなわち地方自治意識、権利意識として当然ではないか。これをやらないというところに、とかく新聞においては、自治省の見解として、そういう方法もあるのにそれを発動しない権利意識の低さ、弱さというものを慨嘆しておられるのですけれども、やはり行政規模が大きくなってまいりますと、こういう問題が出てくるのじゃないか。   〔委員長退席、田川委員長代理着席〕  町村の場合におきましても、原則的に行政能力から考えて二十日間でやらなければならないのを四十日もかかっておる。こういうことの中で、行政規模を大きくすることによって、ますます住民の参加なり住民のコントロールする機能そのものをなくさしめておる原因をつくっておるのじゃないか、こういう点を心配しますので、もう少し府県に対して考えていただきたい。しかも管理委員がわずかしかいないのですから、補助職員というものを相当採用してやらなければならぬわけだろうと思います。そうしたときに、法に対する解釈をあいまいにして、いや、故意でなければいいんだという形で、範囲を広く解釈してしまいますと、リコールというものはほとんど成立してこなくなってくるのじゃないか。しかも選挙管理委員に対してリコールをやろうとすると、やはり同じ手続を踏まなければその選挙管理委員を解職することができ得ない。そうなってまいりますと、少し強引な首長がおりまして、そういう手段に出てまいりますと、住民の手によるコントロールなり、自治法にのっとるところの運動というものが、制度の上においてほとんど意義がなくなってしまうのじゃないか。終局は検察権の発動その他によって粛正をしなければおさまらぬのじゃないかということすら生まれてくるんじゃないか。もっと住民が自主的に行政処理に対して参加する、その不正、腐敗に対してみずからが自主的にコントロールする、そういう政治単位としての町村でなければならないし、いまいたずらに広げてまいりますところにそういう問題が起こってくるのではないか。実質上においてそういう手段が制度として封ぜられてしまうのではないかということをおそれるわけで、この点に対しましても十分ひとつ検討していただきたい。自治大臣はおられませんが、次官、どうですか。そういう点、先ほど申し上げましたような欧米諸国におきましては、たとえばイギリスには憲法がない。しかしながら、地方自治は自然法上の地位を確保して、地方自治が実り多いものになってまいっておる。あるいはその他の諸国を見てまいりましても、日本よりももっと小さい行政規模の中にあって、日本のように地方自治が腐敗し、あるいは不正、そういうことがひんしゅくを買っているところはない。あるいは議会と首長のなれ合い行政によって、いろいろな公金乱費その他の不正が常に新聞紙上をにぎわしておる。しかもこれに対する粛正が住民の手によってなし得ない。規模が大きくなった、財政的な、総括的な合理化はされたけれども、実質的内容において住民自治意識の萎縮という状態が生まれてまいっておる状態に対してやはり考えなければならない点があるのではないかということを含めまして、御見解をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  54. 高橋禎一

    ○高橋(禎)政府委員 佐野委員のお考えになっていることにつきましては、私どもも非常に共鳴する面が多いのであります。どこまでも地方自治は、地方住民の福祉増進のために、その意思を尊重していく、こういう基本的な態度はくずすべきではございません。ただ合併等の問題につきましては、その地域住民の意思というものの統合されたものをどういうふうにして求めていくかということになりますと、これはなかなかむずかしい問題であると思いますが、それは先ほど行政局長からも説明申し上げましたように、やはりいまの制度というものを尊重し、これによっていかなければならぬと思うのであります。すなわち、公共団体におきましては、首長が公選され、そしてまた議会議員が公選をされてそこに組織されておるわけでございますから、そこの決定する意思というものは、やはり地域住民の意思であるからということを、一般的に、基本的には認めていくべきであると思うのでございます。しかしながら、それではそういう制度になっておるから、その機関の人たちは、もう自分たちの考えで、その後に起こる具体的な諸問題について、住民の意思ということも何ら顧慮するところなく行動していいかというと、そういうようなことはまたあってはならぬと思うのでございまして、基本的に、一般的に、意思統合の法則としてできております制度のもとにおいて、今度具体的に理事者なり議会議員が行動いたしますときには、やはりその問題についての地域住民の意思がどこにあるかということをよく見て取って、いわば形の上においても、また実の上においても、地域住民の意思が尊重されるという方途に出なければならないと思うのでございます。ただ問題になりますこの前の町村合併促進法のごときは、お説にございましたように、きわめて積極的にその合併を促進していこう、そういう態度を法律が示しておりましたところに、いろいろまた今度の場合とは異なった面が私はあると思いまするし、佐野委員もその点について御着想になっておったように私は感じておるわけでございます。今度の法案におきましては、そういうふうに積極的に合併を促進しようとするのでなくして、その当時から合併をいたさなかった市町村におきまして、その後の社会情勢の変化等によって合併しようという地域住民のいわば熱意というものがそこに出てまいりましたそのものを、いろいろの妨げとなるであろうと思われるようなものを除去いたしまして、その意思がどこまでも貫徹していけるというようなことを考えておるようなわけでございます。これは地域住民の意思尊重と自治関係についての合併に関連して申し上げたところでございますが、その他の問題につきましても、やはり住民意思を具体的に尊重していこう、しかしながら、ごく少数の人が反対をするから、それで全然その公共団体としての結論が出せない、方法がとれないというようなものであってはまたならぬわけでありまして、そこにやはり理事者なりあるいは議会議員なりのいわば誠実にその公共団体の仕事をやっていくというそれに期待をし、そしてそういうふうになっていくように、平素から私どもあほうといたしましても、指導をし助言をしていくというふうにいたしまして、真に地域住民の意思が行政の上に反映をしていくように、どこまでも一努力をしていかなければならぬものである、そのように考えておるわけでございます。
  55. 佐野憲治

    佐野委員 最後が最後になりまして恐縮ですけれども、希望として私はいまの次官がおっしゃいました中で、なるほど首長も公選だ、議会も公選だ、しかしながら、自治法には住民も直接民主的に参加するという意味におけるところの直接請求権を持っておるところにやはり特徴があるのではないか、そういう点もやはり十分考えられると同時に、もうすでに住民の意思に反する合併が行なわれた後における救済という点において、少し時間をかけ過ぎたかもしれませんけれども、そうしたことが間違いが起こらないように、やはり現在の特例法の中におきましても、あるいは自治法の精神を全面的に活用する意味におきまして、もっとやはり合併問題に対する公聴会制度の活用なり、あるいは町村合併協議会の中で、学識経験者としてもっと住民からも参加させる。いまの場合におきましては、参加することができるんだという程度にとどまっておりますけれども、もっと積極的な解釈を持って、やはり学識経験者等もこれに参加させることによって、合併問題に対する自後の救済という点がほとんどないだけに、事前にそうした摩擦を起こさないために住民の創意と発意と必要性が合併問題の中に実るような、そういう形における配慮を今後やってもらいたい。そういうことを希望しておきます。
  56. 高橋禎一

    ○高橋(禎)政府委員 ただいま佐野委員のおっしゃいましたことはもっともの御意見でございますので、そのことは先ほども申し上げたところでございますが、この法案の考えておりますことは、先ほど申し上げましたように、どこまでも地域住民の意思尊重のもとに合併というものが行なわれるであろう、そういう期待の上に立っておるわけでございますが、しかしながら、ただ法律ができたからと申しましても、いま申し上げておりますような精神、佐野委員お話しのございましたような、そのお心持ちというものは、今後のこれに関する指導等において十分に徹底さすべきものであると考えておりますし、それから地域住民のいわゆる請求権問題等についてのお話もございましたが、一般的に基本的な問題として、もっとすみやかにこの地域住民の意思というものが、はたして公共団体側のやっていることに対しての関係において妥当であるかいなかというような結論が、早く出ていくというようなことについては十分検討していくべき問題だ、そのように考えておるわけでございます。
  57. 田川誠一

    ○田川委員長代理 安井吉典君。
  58. 安井吉典

    ○安井委員 私はこの法律案の内容にわたりまして少しお尋ねをしたいのでありますが、それに先立ちまして、ただいま佐野委員指摘をされていた点でありますが、この法律案が出てきた背景や町村合併の本質とでもいいますか、そういうふうな問題について若干お尋ねをいたしたいわけであります。  今日の市町村規模は、これでは困ると思われるような、そういう事態もあります。その反面、いささか過大で処理に困るというふうなものもあるようであります。つまり現在ある姿が完全無欠だと言うことはできないと思います。そういうふうな中で、この市町村合併という問題を私どもが考えていく場合には、もっと市町村合併が進められてよいのではないかと思われる、そういう場合もありますし、それから何か特定の目的でいささか無理と思われるような合併の促進が行なわれておる事例、そういう場合には例外なくトラブルが起きているわけであります。そういう二面性があるように思います。そういう立場から今度の法律案をながめてみますと、どうしても一長一短といいますか、そういうような結論になるわけで、この法律によってプラスになる面と、むしろマイナスになる面と、こういう両面がどうしても出てくるような気がするわけです。プラスになる面は取り立てて申し上げる必要もないと思うのですが、マイナスになる面に対するおそれがあるものですから、いまの佐野委員の御質問のような、そういう指摘も出てくるのではないかというように私は思うわけです。この法律案によって合併を促進するのではない、強制するのではないという御説明ではありますけれども、しかしいままでなかった特例を今度は与えるということになるわけですから、これはどうしても促進的な効果というものはあらわれてくるのではないかと思います。これはこの法律ができたことでむしろ減退するということでは決してないと思います。そういうことだけは指摘しておかなければならないと思います。あくまでこれは促進法でないのだと言いながらも、やはり促進的な効果というようなものが実質的にはねらいとなっておる。こういう点であります。そういうふうなマイナスの面が出ないように、自治省指導をしなければならないことになるのではないかと思うのでありますが、その点につきまして一応お考え方を伺っておきたいと思います。
  59. 佐久間彊

    佐久間政府委員 先生のおっしゃいましたとおりに私どもも考えておるわけでございます。したがいまして、この法律が成立いたしましてから後におきまして、御指摘になりましたようなマイナス面が出ませんように、通達の中にもそういう趣旨を織り込んでまいりたいと思いますし、また地方課長会議等適当な機会には、この国会で御審議の間にいろいろ御指摘になりましたような点は、十分に連絡をとって徹底するように指導してまいりたいと思います。
  60. 安井吉典

    ○安井委員 そこで私は考えますのに、この法律の適用は、政令指定都市は除かれているわけです。しかし政令指定都市に近いような大都市の場合は、この特例が適用になっていくわけです。今日の段階で、東京とか大阪とか、そういう大都会の過大都市化というような問題が非常に憂慮されている、ところがこれはそういう特別に大きい都会だけではなしに、地方においてもその地域における中心都市的なところに猛烈な集中が始まっている。だから国全体の大きな集中と同時に、ローカル的な集中がまた始まっているわけです。そういうことを考えますと、政令都市に関してはもうこれ以上特例的な措置をやる必要がないということで除かれておりますけれども、しかし政令都市に準ずるような大きな都市についても、むしろ合併は差し控えたほうがいいのではないか、そういうふうな指導——合併促進じゃなしに、合併制限とでもいいますか、そういいますと少し極端になるかもしれませんけれども、そういうような措置もむしろ必要になってくるのではないかと思いますが、その点いかがですか。
  61. 佐久間彊

    佐久間政府委員 一つの御意見かと思うのでございますが、本法案の立案にあたりましては、本法案の母法と申しますか、前身ともいうべき市の合併特例に関する法律におきまして、政令指定都市だけを除外をいたしておりますたてまえを、そのまま踏襲をいたした次第でございます。
  62. 安井吉典

    ○安井委員 法律のたてまえは政令都市だけが除かれているわけです。しかし政令都市に近いようなそういう都市もあるわけですね。だから、どこでその線を引くかということになりますと、これは問題があるわけでありますけれども、その点、今後の自治省指導とでもいいますか、そういうような段階において十分に御配慮を願っておかなくてはならないのではないかと私は思います。  そこで、この法律ができることによって、どれくらい合併が進むか、これはなかなか見通しを立てにくい問題かもしれませんけれども、当面どの程度の件数が予想されるか、そういうことについての見通しをお立てですか、どうですか。
  63. 佐久間彊

    佐久間政府委員 その点につきましては、まだ見通しを持っておりません。ただ参考までに申し上げますと、昨年この法律案を立案をいたします際に、全国の各県の地方課を通じまして、非公式に現在合併の動きがどの程度あるかということを照会をいたしましたところ、百四、五十件くらい回答がございました。しかしこれはまだほんの話題がぼつぼつ出ているとかあるいはちょっとある程度どうだろうかということが考えられる程度のものも含めましてのことでございますので、これがこの法律ができましたからといって、すぐ具体化するというふうには思っておりません。
  64. 安井吉典

    ○安井委員 第九次地方制度調査会が答申をいたしました際、市町村財政問題について相当の掘り下げが行なわれました。財政秩序の明確化であるとか、行政事務の再配分であるとか、そういうような問題が論ぜられまして、その際においても現在の市町村規模は完全無欠とは思えない、そういうような趣旨がたしかつけ加えられていたと記憶いたしておりますが、あの際の表現の中には、市町村合併そのものを進めさえすればそれでいいのだということではなしに、その前提として、財政秩序の明確化、あるいはまた事務配分の適正化、財源配分の適正化、そういったような問題を先行させるべきだというふうな趣旨が含まれていたように私も記憶いたしております。いまの段階では、市町村財政の本来的な問題が少しも解決していないで、合併だけを促進するというふうなことになった場合には、非常に貧弱な市町村合併をしても、零に零を幾つ足しても零になるわけです。そういうことからすれば、この市町村合併の問題を解決する前に、やはり行財政の再配分でありますとか、そういう基本的な問題の解決こそが先決ではないかと私は思うわけです。といいますのは、なるほど今日まで市町村合併が相当進みました。そうして規模の大きい市町村がたくさんできているわけでありますけれども、そういうものは現在の段階では軒並みに財政難をかこっているわけです。そういう実例からいっても、この合併の措置を進めさえずればいいということではないと私は思います。   〔田川委員長代理退席、委員長着席〕 こういうことで、いわゆる赤字合併とでもいいますか、そういうものはあるいは促進するかもしれませんけれども、それだけでは問題は何ら解決できていない、こういう点について、つまり合併をやる前にもっと政府としてなすべきことがあるのではないか、こういう点についてのお考え、これは次官からひとつ伺いたいと思います。
  65. 高橋禎一

    ○高橋(禎)政府委員 地方自治の問題につきましては、重要な問題として、ただいま安井委員からお話のございましたような諸問題が横たわっておるわけでございます。そこで現在の、すなわち第十次でありますかの地方制度調査会におきまして、府県合併の問題、地方公共団体事務配分の問題なり、あるいはまた財政問題というきわめて大きな基本的な問題の御検討を願っておるわけでございまするし、まあ自治省といたしましてもいろいろ研究をいたしておるのであります。これらの問題につきましては地方制度調査会において御答申をいただけるわけでございまして、そしてその御検討なさった過程におけるいろいろの御意見なり答申というものは尊重し、参考にして、いい結論を出したいものだ、こう考えておるわけでありますが、そういう問題が出てまいりますと、他面やはり市町村規模の問題であるとかあるいは過密都市の対策の問題等々に言及されるというようなこと、それと総合的に考えられるといったようなこともあり得るわけと存じまするし、それがどのようでありましょうとも、また自治省といたしましてはいろいろ研究しなければならないわけでございまして、お尋ねのございましたような重要問題についてはそのようにして解決していきたいものと考えておりますが、その問題はそれといたしましても、現在の状態において、今日まで合併をしておらなかった市町村の中で、その後の情勢変化等によってこの際合併をしたい。こういう地方の意思であり、地域住民もそれを望むということでありましたならば、やはりできる限りその意図が実現をするように、いろいろと便宜な方法をとってやる、とるということが必要である。大まかに申しまして、そういうところにやはり現在の状態においていろいろ問題があるが、このいま御審議を願っておりまする法律法律として、やはり意義ある必要性があるものである。そのように考えておるわけでございます。
  66. 安井吉典

    ○安井委員 政務次官はいま、第十次調査会の作業がいま始まっているのでというふうなことで、何か問題はその答申待ちというふうな、そういうような印象を受けるのですが、そうじゃないのですよ。第九次調査会では、地方財政の確立の問題を強くうたって、その中でも特に、同じ地方財政といっても、市町村財政を中心にして考えなさい、こういうところを実は強調しているわけです。私はちょうどあの調査会にも出ておりましたけれども、あの部分はたしか財政の強化という点と、もう一つ合併の促進というのがあとで導かれているわけです。で、その全体に対しては私どもは反対だということになったら、いやそれでは中を分けて決議をしましょうということにして、財政の問題については私ども賛成をして、合併の問題には反対をして、答申全体としてはそういう姿の中で決定をされた、こういう経過があるわけです。だから、市町村を中心として地方財政を強くしなさいという答申はもう出ているわけですよ。いまの作業はそのあとの作業であって、すでに出ているものを少しもおやりになってない。ただ出てきたのはこの合併特例法案だけであって、本来それよりも前にやりなさいというほうのはちっとも出してない。こういう政府のかまえ自体が私は問題だ、こういうふうに申し上げているわけです。これは自治省だけの問題ではないわけです。事務配分というようなことになりましたら、これは政府自体が全面的に取り組む課題でないかと思うのです。そういう点についてはどうですか。政府自体として、自治省自体としてではなしに、政府の重大な課題として取り組む、そういう方向に進むことが必要だと思うのですが、これは総理大臣が来て御答弁願わなければいけない問題でしょうけれども自治省はやはりそこまで持ち込む意欲をお持ちにならなければいけない、私はそう思うのですが、その点どうでしょう。
  67. 高橋禎一

    ○高橋(禎)政府委員 おっしゃるとおりでございまして、第九次地方財政調査会の答申の問題については、先ほど同調査会のということをあげてはお答えいたさなかったわけでございますが、おっしゃる御趣旨、地方財政の確立問題につきましては、これは自治省もその答申をもちろん尊重して努力をいたしておるわけでございまして、したがいまして、第十次調査会においていろいろ御検討願っておるというのも、やはりそういう方面をも考えまして、これはまあ一面のことでございまするし、なお税の問題その他財政の問題等に関連いたしまして絶えず熱意を持って努力をいたしておることをお認め願いたいと思いまするし、そして、おっしゃいましたように、全体的に、総合的に解決いたしますということは、大きな問題でございますので、やはり地方自治の制度確立、地方自治を守るに足ると申しましょうか、地方自治を守る地方財政ということについては、自治省がやはり責任を持って努力しなければならぬという認識のもとに、いろいろ考えておるわけでございますから、その点御了承願いたいと思うのであります。
  68. 安井吉典

    ○安井委員 調査会が幾ら作業をやっても、政府にその取り組みの意思がない。これではだめなんですよ。ですから、その点はひとつ十分に御配慮を願いたいことをさらに要望いたしておきたいと思います。  そこで、時間の関係もございますので、少し法案の内容にわたってお尋ねをいたしたいと思います。  第六条に職員の引き継ぎの問題があります。合併関係市町村においては、引き続き職員の身分を保有するように措置しなければならないという規定でありますが、この問題につきまして、前日も委員会で細谷委員——きょうは見えてないわけでありますが、引き続き身分は保有するとは言いながらも、しかし現実には十万人くらい職員の数が減っているではないか、こういう指摘があって、そのように議事録に、残っているわけでありますが、この点についてもう少し自治省の御見解をお示し願いたいと思います。
  69. 佐久間彊

    佐久間政府委員 細谷委員のお尋ねによりまする資料を本日お手元にお配りいたしてございます。「市町村職員数調」でございますが、これをごらんいただきますとおわかりいただけますように、昭和三十年から年々新市町村の一般職員の数は増加をいたしております。先日細谷委員が御指摘になりましたのは、昭和三十年に四十一万余ございましたのが、三十三年で三十一万余に減っておるではないか、こういうお尋ねでございましたが、よく調べましたところ、この表にございますように、三十年には四十一万と申しますのは、普通会計に属する一般職員のほかに、公営企業職員等の、普通会計以外の職員九万が合わさりましたものが四十一万余でございます。三十三年につきましては一般職員だけについて見ますと、三十年よりも二万ふえておるのでございます。  なお、細谷委員の御指摘になりました数字は、調べてみましたが、あるいはこれに基づいたかと思われますものを見ますと、実はミスプリントもございまして、誤解をお与えしたようで恐縮に存じておるわけでございますが、本日お手元にお配りした資料によってその点は御承知をいただきたいと思うのでございます。  第一ページは、合併市町村に限らず市町村職員全体の数字でございますが、第二ページは、合併をいたしました市町村についてだけとってみたわけでございます。合併も段階合併が行なわれておるような場合がございますので、それでは比較ができませんので、この表におきましては昭和二十八年に百十一件合併をいたしましたもので、その後五カ年間段階合併等のないものについて調べたものでございまして、ごらんのように同様の方法で二十九年、三十年、三十一年まで調べておりますが、いずれも合併後職員数は増加をいたしております。  それからいま一つ、細谷委員から今回、四月一日を予定いたしまして合併の話の進んでおりますところにおいて、職員の整理の申し合わせをしておるところがあるではないかというお話でございましたが、さっそく現地に連絡をいたしまして、「合併協定事項」としてお配りいたしたものをまとめたのでございます。これをごらんいただきますと、冨山県のケースにつきましては、職員のことは格別触れておりませんが、長野県のケースにおきましては、職員については「編入の際現に西春近村の職員は、そのまま伊那市に引き継ぐ。」ということが書いてございまするし、それから宮崎県のケースにつきましても、職員の身分引き継ぎについて「一般職員は新市に引継ぐものとする。」ということでございまして、この文面だけではなく、当該市町村につきましてそのような問題があるかどうかということもあわせて照会をいたしましたところ、いずれもそのようなことでトラブルの起こっているところはない、この文面どおりでやるつもりだ、かような回答でございましたのでお伝えいたします。
  70. 安井吉典

    ○安井委員 第六条第二項の、「職員のすべてに通じて公正に処理しなければならない。」という規定はどういう意味ですか。
  71. 佐久間彊

    佐久間政府委員 これは合併関係市町村におきまして従来の身分取り扱いにつきましてアンバランスがある、そういうようなものにつきまして合併後そのままの扱いをするということではなくて、合併されましたならば一市町村の職員になるわけでございまするから、すべての身分取り扱いにつきましては公正に、平等に処理をするようにすべきだ、かような趣旨でございます。
  72. 安井吉典

    ○安井委員 これは、アンバランスという意味は給与ですか、それとも職階制の身分、その両面を含むわけですか。
  73. 佐久間彊

    佐久間政府委員 これは給与その他の身分取り扱いでございまするから給与に限りませんで、その他の身分取り扱いにつきましても含めておるわけでございまするが、実際問題として給与が一番大きな問題になろうかと思います。
  74. 安井吉典

    ○安井委員 第四条に、地方議員の在任に関する特例、それから第五条には農業委員会の委員の任期等に関する特例があります。これは大体どちらも同趣旨のようでありますが、特に地方議員の在任に関する特例では、編入合併と対等合併とに分けて、それぞれ二つの場合を、二つの進め方を規定してあるようでありますが、そのどれを選択するかということは一切おまかせになるのか、あるいは選択の基準といったようなものをお示しになるのか、それをひとつ伺いたいと思います。
  75. 佐久間彊

    佐久間政府委員 これは現地の市町村の自主的な判断にゆだねるつもりでございます。
  76. 安井吉典

    ○安井委員 たとえば一つの市があって、そこに四つか五つの町村合併をする、そういうことが仮定されますと、その市のほうの議員よりも、合併される地域の議員の合計数が多い、そういうような形で議会の構成がなされるというようなことになりましたら、これはもうたいへん新市の運営というものが問題を持ってくる、こういうような場合もありますね。ですから、このどのケースによって処置をするかということは、相当慎重に検討する必要があるのではないかと思います。ですから、自治省としても、こういうような場合はこういうほうが適当ではないかとか、そういうようなサゼスチョンをするとか、あるいはそれに類するような措置をするとか、特別なお考え方はあるのですか、ないのですか。
  77. 佐久間彊

    佐久間政府委員 まあ私どもの意見を尋ねられますれば、私どもといたしましては、むしろこの三条の方法によることのほうがよろしいのではないか、かような考え方は持っておるわけでございます。しかしいろいろな事情がございましょうから、この三条をとるかあるいは四条をとるかにつきましては、それぞれ関係市町村の協議にまかせようというふうに考えているわけでございます。しかしいろいろ国会の御審議で御意見を承りますれば、それも念頭に置きましてさらに検討をいたしたいと思います。
  78. 安井吉典

    ○安井委員 第八条の地方交付税の額の算定の特例があります。従来のこの種の特例については、合併補正というふうな仕組みでやったこともあったようだし、これの場合は合併による算定に関する特例的な措置、こういったようなやり方と、いままでの仕組みから現在のこの段階に至るまでの経過において、自治省考え方がどうも、何といいますか、きちんとしたものになっていないような気がするのですが、補正的な措置でなしにこういうような措置に至った経過といいますか、これが結論なんだと思うのですけれども、そこに至った筋道につきましてちょっと御説明願いたいと思います。
  79. 佐久間彊

    佐久間政府委員 合併補正か算定がえの特例かということではございませんで、算定がえの特例町村合併促進法以来、新市町村建設促進法におきましてもさきの合併特例に関する法律におきましても設けておったのでございます。そのほかに合併補正につきましては新市町村建設促進法に規定があったのでございます。ただ合併補正のほうは合併を積極的に奨励をする意味が非常に強いように思われましたので、今回は前々から申し上げているような趣旨の立案でございますから、合併補正の規定は落としまして、交付税の算定がえの特例だけにするということにいたしたわけでございます。
  80. 安井吉典

    ○安井委員 第十条の都道府県の議会の議員の選挙区に関する特例についてでありますが、この選挙区の設定についても従前どおりの選挙区によることもできる、こういうふうな規定になっているわけです。ところが、市になったのだからそこで独立の選挙区分を設けたらという原則論もあるわけです。その原則論と、ここで特例として設けたものとの選択のしかたですが、この選択のしかたはその都道府県の条例にまかされている、こういうふうに理解されるわけです。衆議院議員選挙区に関する特例については、これは法律措置できちんとされておりますけれども、都道府県についてはそのようなことであり、この場合において特例を置いたという趣旨からすれば、この特例によるような措置で都道府県条例がつくられるのがよいというふうな理解もできるし、しかし都道府県議会の中の勢力関係からその市だけが独立した選挙区にされる、こういうような方向にいくことも考えられます。したがって、これはどっちになるかということが、この法律の条文を読むだけでは明らかでないような気がするわけです。すべてが都道府県の議会だけにまかされて、合併というふうなその渦中にある住民の意思がどこまで反映されるか、そういう問題につきまして自治省としてのお考えはどうですか。
  81. 佐久間彊

    佐久間政府委員 この規定自体から申しますと、都道府県の条例の定めるところにゆだねておるわけでございますから、都道府県が条例で自主的に適当と思う方法を選択するわけでございます。ただ、この規定をわざわざ合併特例に関する法律規定をいたしました趣旨は、これによって市町村合併を円滑に進めようという趣旨でございますから、都道府県の議会で条例を制定されます場合におきましても、その法意は念頭に置いて判断をなさるべきもの、かように考えております。
  82. 安井吉典

    ○安井委員 その地域における住民の意思がどういうふうにすれば尊重されるような仕組みになるかという点でありますが、この問題を建設計画の中に入れるというのもちょっとおかしいような気もするのですが、そういうようなことはどうかという点、それがもしおかしいのだとすれば、関係市町村議会が合併以前において議決をするとか、あるいは県に対する陳情だとか、あるいはまた市町村間における申し合わせだとか、そういうような形で住民の意思を明らかにするという実質的な措置を講ずることも一案だと思うのでございますが、その点どうでしょう。
  83. 佐久間彊

    佐久間政府委員 市町村建設計画は、御指摘のように、関係市町村で協議をしてきめるわけでございまして、市町村のやることが本体になるわけでございますが、この中で国や県に対する要望事項と申しますか、そういうようなものをあわせて掲げておくということも、往々にしても見られるところでございます。そういたしまして、関係の県に対しまして関係市町村の意思を伝達をして十分配慮をしてもらうということも、確かにおっしゃいますように一案かと思います。
  84. 安井吉典

    ○安井委員 時間がありませんので先を急ぎますが、第十三条の国や都道府県等の協力に関する規定があります。ごく抽象的な規定でありますが、ここで政府が予定されております事項、あるいは予想されている問題は、どういう点ですか。
  85. 佐久間彊

    佐久間政府委員 十三条におきましては、たとえば国が財政上、行政上、合併市町村の建設に資するような措置を考えていくというようなこともありましょうし、また、公共的団体といたしましては、公社が電話局の区域合併市町村と合わせるとか、あるいは鉄道の駅の名称を合併市町村の久称に合わせるというようなこともあろうと思います。それから、第二項におきまして合併関係市町村区域内の公共的団体の問題でございますが、たとえば、農協が合併に伴いまして統合をするようにつとめるというようなことも、その一例と存じておるわけでございます。
  86. 安井吉典

    ○安井委員 郵便局や電話局等の問題が、これまですでに合併を行なった地域においても、相変わらず問題として残っているような話を聞くわけでありますが、そういう従来からの措置が十分に進んでいない理由、さらに今回こういうふうな規定を置く際には、従来のそういうような実績、経過をも十分考慮して立案をされたのだと思いますが、関係の各省庁との連絡は、現在の段階においてどうなっているのか、それをひとつ伺いたい。
  87. 佐久間彊

    佐久間政府委員 電話局につきましては、特に合併市町村から要望も承っておりますので、私どもも随時連絡を関係省庁にいたしております。昭和三十年度から昭和三十八年度末までの実績を申し上げますと、対象になりました局が四千五百四十二局ございますが、そのうち三千六百八十局につきましては、合併に伴いまして統合をいたしましたり、あるいは市外サービスの改善を実施をいたしております。そのほか未実施のものもございますが、これらにつきましては、局舎の新築、改築の機会に実施をしたいというような事情、あるいはまた地元にそれぞれ事情がございましておくれているというようなもの等がございます。なお今後引き続き努力をしてまいりたいと思います。
  88. 安井吉典

    ○安井委員 この法律附則第九条で、地方自治法の一部を改正する法律の一部改正が行なわれるわけでありますが、これによって、人口三万で市になれるという特例昭和四十一年三月三十一日までで失効するわけです。これに該当する市町村の数はどの程度か。それからまた、参議院のほうの修正で、人口四万で市になれるという修正が行なわれているわけでありますが、これに該当するのはどの程度か、今日の段階における自治省のお見込みをひとつ伺いたいと思います。
  89. 佐久間彊

    佐久間政府委員 地方自治法附則第二項第二号に該当いたしますもので現在なお残っておりますものが、全国で七件ございます。ただ、この七件のうちで、現実合併の動きのございますところは一件だけでございます。それから、参議院で御修正になりました点につきましては、私どもといたしましてまだ調査をいたしておりませんけれども、全国知事会からの資料によりますと、全国で十数件あるようでございます。ただ、私どもの見るところでは、それはただかりに合併をすれば四万以上になるというところでありまして、現実にはこの中で合併をして市になろうという動きがある程度ございますのは、一、二件のように存じております。
  90. 安井吉典

    ○安井委員 それから、きょういただいた資料のうち「昭和四十年四月一日合併市町村合併協定事項」について、これはこの問の門司委員あるいは細谷委員からの要求で御提出になったのだろうと思うのですが、このうちたとえば宮崎県の都城市等については、議会はどうなるのかというふうなことについて触れてないように思うのですが、その点はどうなんですか。
  91. 佐久間彊

    佐久間政府委員 都城につきましては、実は三月十三日に現在の議員の任期が満了いたすことになっております。したがいまして、現行法のもとでは選挙を行なわなければならない。そこで便法として、現在三十六名の定数でございますが、荘内町が合併をいたしましたときには、その新法によって、そのところから選出されるであろう議員数六名を引きまして、三十名の定数の減少条例をつくりまして、三十名で選挙をいたすというように伺っております。
  92. 安井吉典

    ○安井委員 どうもこの前の細谷委員や、門司委員の指摘をうまくのがれるようなかっこうでこれをおつくりになったような気がするのですが、そうじゃないのですか。その点この資料は、法律もできないうちに自治省はどんどん指導してけしからぬじゃないかというこの前の指摘を少し何かゆるめるようなおつもりで、意図的におつくりになったような気がするのですが、それでいまちょっと伺ってみたわけであります。やはり法律措置がきちっとできてからでなければ、国会でどういうふうな修正が行なわれるかもしれないし、あるいは国会の通過というものがいつになるかわからないのですから、そういう点慎重な態度で自治省はお進めになるべきであろうと私も思います。  最後に、十年くらいの暫定立法というふうな形でこれが出されているわけでありますが、昔から十年一昔というのですが、やはり自治法の中にはめ込むような形で処理すべきではないかという意見も相当強いわけです。特例特例というような形で自治法そのものが——この自治法こそは地方自治の憲法であるわけでありますが、それが現実の扱いは、自治法そのものではなしに、特例法律のほうで進んでいるというような事態は、決して歓迎すべき事態ではないと私は思います。自治法の中に入れ込むということになりましたら、もっとこの法律の内容においても検討すべき点があったのではないかとも思うわけです。そういう点について自治省はどういうふうに御判断されましたか。
  93. 佐久間彊

    佐久間政府委員 立案の過程におきましては、先生のおっしゃいますようなことも検討いたしたのでございます。たとえば三条、四条の議員の任期、定数に関する特例などは、むしろ自治法の中に規定をして、合併をやります場合には恒久的にこういう特例を認めることにしてもいいのではないかという意見もあったのでございます。また地方交付税の算定の特例につきましては、交付税法の中にそういう特例を入れてもいいのではないかという意見もあったのでございますが、ただ今回の立法形式といたしましては、これまでございました市の合併特例に関する法律を土台といたしまして、その適用の対象を二市以上の対等の合併からさらに広く一般の市町村合併に広めるという考え方で整理することのほうがかえって便宜ではなかろうかというようなことで、法制局とも相談いたしましてかような立法形式をとったわけでございます。これは立法形式の問題でございますから、将来におきましては先生指摘のような御意見も十分考えてみるべきもの、かように存じております。
  94. 中馬辰猪

    中馬委員長 吉田賢一君。
  95. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 簡単に一点だけ伺っておきます。  地方において市町村合併に伴い、もしくは市町村の平素の運営におきまして、部落財産がとかく問題になっておるところがあるようであります。明らかに財産区になっておるところは別に法律規定もありまして明確になっておるのですが、そうではなしに、たとえば数名の個人名の登記がある財産で、自治体のすべての住民考え方は、部落の共有の財産である、こういうようなものはどのような行政指導をなさるのであるか、あるいはまたそういうものを一体だれが法律上の所有権の主体というふうに考えておられるのか、その辺が明確でないと思うのですが、財産処分に伴いまして地方においてはきわめて重要な問題でありますので、どのように考えておられますか。
  96. 佐久間彊

    佐久間政府委員 部落有の財産区と俗に言われておりますものの中に、公有財産といたしまして市町村有であるということを明確にいたしておりますものと、それからお話のように部落の個人名の共有財産のような形になっておりますものとございます。これは明治の初期以来のいろいろな沿革があるようでございまして、ケース、ケースによりまして事情がまことに多様にわたっておるのでございます。私ども考え方といたしましては、地方自治法の中に公有財産につきましては規定がございますし、また公有財産についての俗にいう入り会いでございますが、それは地方自治法では旧慣使用権と称しまして公法上の取り扱いをいたしておるのでございます。しかし個人名義になっておりますものにつきましては、個人の私有財産といたしましてそのような取り扱いをいたしておるわけでございます。ただ実際問題といたしますと、関係書類等も明確ではございませんで、どちらに入るか不分明なものもあって、いろいろ紛争を起こしておるところもございますが、これらにつきましては、特に個人名義になっておりますいわゆる入り会い財産につきましては農林省の関係になりますので、私どものほうとよく連絡をとりまして研究もいたしておるのでございますが、現在なおどういうふうな処理にしたらばよろしいか、明確な結論をまだ得ておらない状況でございます。しかし、はっきり公有財産として認められますものにつきましては、合併に伴いまして当然関係市町村の協議の対象になるわけでございますから、これは新しい市町村有財産といたしますか、あるいは旧村の区域における財産区のものといたしますか、その辺は協議によってきめることに相なっておる次第であります。
  97. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 これはもっと積極的に、明治もしくは旧幕時代からの慣行、あるいはその後の村における事実上の取り扱い、あるいはかりに数名の個人の登記になっておるようなものの実態、それから公有とおっしゃいますけれども、公有であることの明らかなるものはまた多く問題がなさそうであります。したがいまして、何を公有というのかということも問題だろうと思いますが、独立の法人格のない部落は、部落総会なりあるいは部落会等といたしまして代表役員があり、部落財産もみな管理をしておる。その収益は部落の公共用に利用しておる。こういうような場合に、地域開発、広域行政が盛んになってまいりますと、土地の需要等が相当旺盛になって地価暴騰、あるいはそこにあるところの部落民の池が、一挙に数千万円で売却をせられる、こういうふうなことになる。これが町村合併の一対象部落であるというようなときには、やはりその財産価値が増大してくるということをめぐりまして、法律関係が明確でないばかりに意外な紛糾が起こっておるのでございます。でありますから、これはただ単に従来の行政実例というのでなしに、やはり法律なり、慣行なり、あるいはケース、ケース等をもっと精密に実態調査をして、そして明確な指針を打ち出す。法律が不備ならば明らかにする。そしてその帰属を明確にする。したがって、これの活用も相当具体的な基本的な方針を立て得られるというよりどころを、もっとはっきりしないといけまいと思うのです。そうしませんと、いたずらに有力な者の干渉なりあるいは議会の支配なりを受けて、議会の顔色を見て、合併等に支障を来たす、あるいはそこにいろいろな山師的な開発屋が入ってくる危険もある。ことに近畿地方におきましては、そのようなケースが相当ございます。一応議会等にお預けするようなものもよくあるらしいのですが、だんだんとそのような問題を掘り下げ、掘り起こしていきますと、ずいぶん出てくると私ども見ておるのです。部落の池なんか見ますと、ことにそうであります。これは水利権者の所有であるとか、部落の所有であるとか、そうではなしに、今度工場が建って入ってきた住民の共有であるとか、みんな分けてもらわなければならぬとか、この際は少し分配したらどうかという問題にすら発展をしております。だから、部落有財産そのものの法律上の性格、事実上の扱いをどうするかということは、行政の見地から見ましてもやはり相当明確な方針を打ち出す必要があると思うのですが、法律家である政務次官、その辺、一ぺん自治省といたしまして抜本的解決に乗り出すような対策へ積極的におなりになってはどうだろうか、こう思います。
  98. 高橋禎一

    ○高橋(禎)政府委員 おっしゃるとおりでありまして、いろいろそうした問題が地方に存在して、しかもそれがその部落の感情の対立を生み、その他平和を乱すとか、あるいはまたその財産の活用ができないとか、いろいろ問題がありますので、これはおっしゃるように、法律でとか、裁判でたちどころにといったような名案もございませんが、しかし、自治省といたしましては、それらの実態を調査して解決してまいりたいという考えで、昭和四十年度の予算にもその点をお願いしておる、そういう状態でございます。
  99. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 希望だけ申し上げておきますが、やはりこれは部落に依然として保存せしめて、利用度を高めて、部落自体を、たとえば税金の要らない部落にするとか、島根県の松江の近所のある有名な温泉都市、あれは何とかいうところですが、あそこなんかはほとんど税金なしの町になっていますね。そういうようなこともあるようでありますから、今後そのような地下資源の開発等をめぐりまして、部落財産というものが相当社会的経済的に注目の対象になるべきものと思いますので、これは相当強く前向きの姿勢で掘り下げて解決の指針を打ち出していくというふうにひとつ方針を立てられることを御希望申し上げておきます。  終わります。
  100. 中馬辰猪

    中馬委員長 ほかに質疑はありませんか。——なければ、本案についての質疑はこれにて終了いたしました。  本会議終了後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十五分休憩      ————◇—————    午後二時四十七分開議
  101. 中馬辰猪

    中馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  市町村合併特例に関する法律案を議題とし、審査を進めます。  本案に対する質疑はすでに終了いたしております。  これより本案を討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  市町村合併特例に関する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  102. 中馬辰猪

    中馬委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  103. 中馬辰猪

    中馬委員長 この際、久保田円次君、安井吉典君及び吉田賢一君から、三派共同をもって本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、本動議を議題とし、その趣旨説明を求めます。久保田円次君。
  104. 久保田円次

    ○久保田(円)委員 私はただいま議題となりました市町村合併特例に関する法律案に対する附帯決議について、自民、社会、民社の三党を代表してその提案の趣旨を御説明申し上げます。  まず附帯決議の案文を朗読いたします。     市町村合併特例に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の実施にあたり、次の事項につき遺憾のないよう措置すべきである。  一、合併にあたつては、あくまでも市町村の自主性を尊重すること。  二、最近における市町村財政の実情にかんがみ、市町村に対する事務配分の合理化と自主財源の充実をはかり、すみやかに市町村自治の伸長を期すること。    右決議する。  次に、その理由を申し上げます。  まず第一は、御承知のように、今日社会的、経済的諸条件の急速な変化及び地域開発等の進展に伴いまして、広域行政の要請が増大し、これに対処するための地方公共団体区域の拡大が必要となっていることは言うをまたないところであります。この点、今回政府が、この要請にこたえて本法案を提出するに至ったことは、時宜を得たものと思うのであります。しかしながら、今日、広域行政の要請は、地域的に申しましても必ずしも同一でなく、また本法案の趣旨からいたしましても、本法の実施にあたっては、常に住民意識に裏づけられた市町村の自主性を尊重し、いやしくも合併を強制することのないよう留意すべきであると考えるのであります。  第二は、今後広域行政の進展に伴いまして、本法案に基づく合併が数多く行なわれていくことが考えられるのでありますが、政府は、市町村における行財政運営の実情にかんがみ、問題の多い国及び地方公共団体間の事務配分を合理化し、自主財源を充実することによって、今後一そう地方自治の伸長をはかるよう努力していくべきものと考えるのであります。  以上が提案の理由であります。何とぞ各位の御賛同をお願いする次第であります。
  105. 中馬辰猪

    中馬委員長 本動議について採決いたします。  本動議のとおり決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 中馬辰猪

    中馬委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は久保田円次君外二名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、高橋自治政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。高橋政務次官。
  107. 高橋禎一

    ○高橋(禎)政府委員 政府といたしましては、ただいまの附帯決議につきまして御趣旨を尊重し、善処いたしたいと存じます。     —————————————
  108. 中馬辰猪

    中馬委員長 おはかりいたします。  ただいま議決されました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   円異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 中馬辰猪

    中馬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  110. 中馬辰猪

    中馬委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十二分散会