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瀧本政府委員 まず
人事院がどういうふうにして
民間給与調査をやっておるかということを簡単に御
説明申し上げまして、以下順次御質問に
お答え申し上げます。
まず、われわれが
民間給与調査をやっておりますのは、これはやはり
民間の雇用されております
職員、あるいは労務者と申しますか、
重役でない方の賃金を
調査しておるということでございます。その
調査をいたしまする際に、いろいろ御
指摘がございましたが、たとえば、いろいろな
給与以外の便益というようなものが相当あるのではなかろうか、そういうことをつぶさに調べておるかどうかということでございまするが、実際は、たとえば住宅問題等につきまして、どういうふうに
民間では行きわたっておるか、実際に住宅が供与されておる場合には、千円や二千円
給与が高いよりもずっとそのほうが利益があるではないか、あるいは消費
関係につきまして、
会社がかりに補助をいたして、そして日常の消費物資等を供給するというようなことをやっておる場合には、そういう利益は一体どういうふうに評価したらいいか、
公務員の場合にそういうものがあるのかないのか、いろいろな問題があるわけであります。しかし、実際問題としましては、われわれ相当大規模の
調査をやっておりまする
関係上、そういう詳しいことまではやり切れないのでございます。そこでわれわれが現在やっておりまするのは、これは労働
基準法によってきめられております
民間の
会社における賃金台帳というものがございます。これにはある
程度の実物
給与がある場合には、それはもちろん金銭に見積もって書かれるような仕組みになっておるものでございまするが、その賃金台帳に書かれております範囲の賃金を調べるということをやっております。ただいま
先生のお示しのような、そこだけでは手落ちじゃないか、話をあまり広げないまでも、ごく狭い範囲の福利
厚生施設というようなものとか、あるいは勤務時間の
関係、それくらいのことは考えぬといかぬではないか。さらに言うならば、退職
給与等についても、そういう問題も含めてバランスをとらなければいけないんじゃないかという
お話はございます。しかしながら実際問題としては、そういうことまで総合してやるということは、やり切れないというのが現在の実情でございます。しいていうならば、退職
給与は退職
給与として
民間とバランスするように、また現にこれを所管しておる部局も違いまするので、そのほうが手っとり早い話でございます。また
厚生施設関係につきましても、それはそれとして見ていく、労働
基準法でいわゆる
職員に
給与される賃金ということで押えております範囲内の問題は、一応問題にする、こういうたてまえでいまわれわれ
給与を調べておるということであります。
そこで先ほどから
お話が出ておりますが、
民間におきます
重役の報酬と申しますか
給与と申しますか、これは雇用されております
一般職員と違うわけでございます。経営側でございます。現在は実際問題としてはいわゆる三等
重役、経営はしておるけれ
ども資本家ではないというような
重役があるわけですけれ
ども、少なくとも株を持った経営者側としての
重役でございますので、その
給与の仕組み等が雇用されております者と非常に違っております。また現に多くの
会社におきまして、
重役の個々の
給与あるいは報酬等を言うのを非常にきらう場合が多いのであります。われわれもそういうことを調べたいと過去何回か思ったのでありますけれ
ども、これはもう拒否される。そういうことは非公開である、こういうことに相なるのであります。したがいまして、まともな
方法ではなかなか聞き切れないという問題がございます。
それから公務の場合におきまして、現在局長あるいは部長あるいは次官、外局の長官、こういう者は一体
民間では何と対比して考えるべきか。たとえばこれは八幡製鉄の専務級であるか、あるいは
日本鋼管の
社長級であるかというように
比較するわけにまいりません。職務内容が非常に違います。社会常織として、そういう
方々はほぼどれくらいの
収入があったらいいかということをばく然と考えることはできますけれ
ども、端的に職務内容から
比較するということはできるものではございません。それからまた
民間の方は、これは利潤追求ということが第一主眼でございますし、またやっておられても調子のいい場合と悪い場合、いろいろあるわけでございます。公務の場合には、これは利潤追求ではないのでありまして、公務に専心して、公務をりっぱにやる。それに対してそれ相当の、
国民全体が納得する処遇が行なわれる、こういう
関係に相なるわけでございますので、これはわれわれの所管でない
特別職、
大臣あるいはそういう
方々でございます。そういう
方々の
給与を考えれば、端的にそういうことが言えると思います。そこで
一般職の範囲におきまして、各省次官あるいは外局の長官というようなところ、あるいは局長というようなものを考えてみますと、これはぼんやりした感じでいえば、やはり
民間の相当
大会社の
常務なり専務なりと比肩して考えていいではなかろうか。そういうようなばく然とした気持はなきにしもあらずであります。しかしながら具体的に根拠を言えというようなことになってまいりますと、これは何とも言いようがない。したがいまして、われわれは
一般職の範囲におきまして、次官、外局の長官というようなところの
給与というものは、
民間との対比できめることは非常にむずかしいわけでありますから、むしろこれは
特別職の
給与、たとえば次官の
給与を考えます際には、
大臣の
給与のどれくらいの割合であったら大体妥当しておるものであるか。そういう感じで
一般職の範囲内におきましても、次官、外局の長官というところ、または大学の学長というものも
一般職の範囲でございますが、そういう
給与は、
民間との直接の
比較ということよりも、むしろ
特別職のそういう
方々との均衡、バランス
関係というようなことできめるというやり方をやっておる。そこでわれわれが
民間給与調査をやって、大体きめます範囲は、現在の状態で申しますと行政職の一等級以下、この一等級というところは局長以下のところでございます。そういうところは
民間との対比の
関係できめていく。しかし、これもやはり次官との
関係等もございますから、多少そういう
関係も見るという
関係で現在きめておるということでございます。きめておるというより、
人事院が
勧告いたします場合には、そういうふうに考えてやっておる。したがいまして、局長が
自動車の使用を許されておるというような問題までは、これは一応
給与とは考えません。役所のそういう地位にあります者は、やはり職務に付加してそういうことになっておるという
関係で、そのことは一応
給与と切り離して考える、そういうことでございます。
それから戦前は、
公務員は
公務員自体の
給与体系があったではないか、おっしゃるとおりでございます。
公務員自体の
給与体系があったということは、制定されましたごく初期の話をいたしますれば、
民間より非常にかけ離れた
給与であったわけでございます。時が下るにしたがいまして、
民間との直接
比較が行なわれたわけではございませんけれ
ども、戦前も、
昭和十四、五年当時になってまいりますると、
公務員の
給与というものが
民間に比べて隔絶して高かったというような
状況ではございません。その当時においては、
公務員の
給与というものは下賜されるものであるというようなことで、労働の対価というようなつかまえ方をどちらかと言えばいたしていないわけでございます。そういう場合には、
公務員独自でものを考えていくということもありましょうし、また
法律できめるというのでなしに、お上できめておる。陛下の——陛下がきめるわけではありませんけれ
ども、仕組みとしては、
国民全体が関与しないところできめておるというようなことがあったわけでございます。しかし、戦後におきましては、御
承知のように
国家公務員法が制定されまして、そうして
公務員の
給与というものは、
法律でこれをきめなければならぬ。国会で御審議願っておきめ願う。
国民の代表がここで審議して、これならよかろうということできめる、こういうことになるわけであります。そうなりますると、これは現在におきましても、職務の遂行のしかたが
民間とは違うんだから、これを
比較するのはおかしいのじゃないかという
お話がありますけれ
ども、しかし、それではよりどころなしに、一体どういうふうにしてきめられるかということになってくると、なかなかこれははっきりしたよりどころがございません。たとえば局長が五万がいいのか、八万がいいのか、あるいは十五万がいいのか、よりどころがございません。したがいまして、まあこれは全体的にやはり
民間の大きい
会社の
重役級の
給与というようなものを一応目安に置いて、
特別職のほうがおきまりになるというようなことになりますれば、それとのバランスで
一般職の上位等級の
給与はきめてまいるし、またそうでないところ、大体課長級以下というようなところになってまいりますと、職務もだいぶ類似してまいりまするので、
民間との
比較が可能になりますが、そういうところでは
民間の
給与がどうなっておるかということで対比してきめて、それで
勧告をいたす、こういうやり方をやるよりしようがないということでございます。これが絶対にいい
方法とは思っておりませんけれ
ども、一番
説明がしやすい、こういうことでございます。ちなみに、諸
外国におきましても、やはり
公務員の
給与の問題はいろいろ問題になってまいりまして、どうやってきめるのがいいだろうというようなことがしばしば問題になるようでございまするが、イギリスにおきましても、
アメリカにおきましても、やはり一応
民間の
給与がどうなっておるかということを調べまして、そういうものをよりどころにして考えていくというのが、最近
一般の風潮になっておるように心得ております。