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堀越参考人 経団連の場で
融資ルールという問題につきましては、いろいろ活を伺ったり、検討もいたしております。また御何所から
お話がありましたように、野放しでいいかとなると、野放しもむずかしいという面もあります。しかし今日
一つの転換期にきておる。ということは、
企業の
経営者の
考え方というものが最近非常に大きく変わりつつある。この非常なむずかしい時期に遭遇いたしまして、みな
反省をしいられておる。そこに山陽特殊鋼のような問題もあります。そういう面から非常に私は協調的な精神がみなぎってきておるというふうに感じておるのでありますが、そこで私が特に申し上げたいのは、
融資ルールということは内容ははっきりいたしませんが、一部新聞に伝えられておりますような
財務比率、あるいは
企業の収益率、あるいはその資産の比率とか、そういった外部的な
一つの
基準で融資をするかしないかということをきめるということが、私はそんなことはあり得ないと思いますが、新聞に出ておりました。そういうことになりますと
銀行には頭取は要らないということになります。結局そういうふうな
基準をつくりますと、各会社が
金融を受けんがために紛飾を始めるようなおそれがありはしないか。
日本じゅうが山陽特殊鋼になってはたいへんだと思います。例の特振法、幸いにいたしましてあれは不成立に終わりました。通産省がいわゆる官民懇談会という非常にもっともらしい旗をあげまして、それは主として
フランスのパターンを入れようとしたようでありますが、私はそのときに非常に強く反対したのであります。私が反対いたしましたのは、特振法に盛られておる精神そのものは非常によろしい。しかしながら特振法を利用しようと考えておられる
産業界が数種ございます。あのときに約五種類くらいの業界が、ぜひ特振法を通してもらいたいといって非常に強く要望しております。その中の合成繊維などが非常に強く要望いたしております。この合成繊維の当時の要望は、特振法の最もいい面の精神を利用しようとしておったまじめな業界であったわけです。ところで今日実際合成繊維はいま官民懇談会をやりまして、通産省の役人を入れてやっております。かなり成功いたしておるのでありますが、しかし私はそこに第三者として実は入りまして見ておりますと、どうもうっかりしておると統制の芽が出るおそれがある。と申しますのは、具体的なことを申し上げてなんでありますが、御
参考までに申し上げたいのでありますけれ
ども、合成繊維の考えておりますのは、従来は
需要を想定して、その
需要想定によって各社が、全部としてはこれだけの
設備拡張が必要であるという
結論を出す。そうなりますと今度はそれこそ
シェア争いというものが起こってくる。そのきまったも一のを自分がどれだけ取ろう、どれだけ取ろうという非常な争いが起こって、結局各社ともにやりますから、それが倍にもなるという結果になる。今日やるには、どこの会社もことしは日産十トンなら十トン、それ以上のことはやらないのだという約束を取りつけようじゃないか。そうすれば各社とも十トン以上はやらないということがはっきりすればみな安心しておりますから、一応
シェア争いというものは起こらない。そして計画をした会社は、どういうわけでこれを計画したかということを懇談会の席で話しをしよう、そういうことで、非常に幼稚かもしれませんが、まずそこから始めていこう、こう考えておったわけであります。ところが通産省の役人が入ってまいりますと、その十トンだけの
基準では不十分である、
財務比率のいい会社、それから長期的な
観点から収益に大きな影響を及ぼさない、あるいは輸出に寄与するもの、そういうふうな
基準がどうしても必要ではないかということで、業界としては通産省の主張をいれて、それを
基準に入れておったのであります。ただ業界とすればそれを非常にばく然たる
ことばに直してもらって
基準に入れておったのでありますが、私はこれを見ましてすぐ通産省の人に申したのであります。これは課長、局長というあたりなら、この
基準を非常に大きな
観点から運用されるからよかろう。しかしながらこれが係長におり、係長補佐におりてくると、どうしても輸出は何%
——新しく増設したものから出た商品の輸出は何%なければならぬとか、あるいは
財務比率がどうのこうのというような比率になってくる。どうしても一役人というものは比率というか、そういう指針を持っていないと行政ができない。したがって小さな指針がだんだんできてきて、せっかくの官民協調懇談会が、結局統制になるという危険が多分にあるということを申しましたが、課、長も非常によくわかってくれまして、それではこれは
参考事項か、予備事項ということにいたしましょうというようなことで、いま化学繊維の申し合わせば、すべて任意事項ということになってやっております。これは私たちが一番おそれておりますのは、そういう問題であります。非常にこまかく統制に入っていくというところに、どうも引きずり込まれるということになりますと、非常にわれわれとしてはそれをおそれるわけでありまして、今日幸いにして、
産業界におきましては慎重ムード、行き過ぎた慎重ムードがあるといわれるくらいの慎重ムードでありますし、私がおあずかりしております通産省の
産業構造審議会の
産業資金部会に出ております各社の、各業界の
設備投資の状況を見ましても、ことしは非常に内輪な
投資の
考え方を持ってやっておるようでございますので、こういう際はそうした
一つの機運をどういうふうにして育てていくか、これが私は非常に大事な問題だと思います。
結局
一つの業界が
一つの協調ができ、
一つの申し合わせができるということになりました場合に、その協調の線に沿って
金融界が動いてくれる、これは当然そうあるべきだと私は思うのであります。ところがそれが
金融界がこれを消極的に受けるだけでいいのか、さらにできれば積極的に協調できるように、これを誘導するようなことができないかどうか、ここが私は
銀行自体の問題でありますので、いまの
銀行のあり方では非常にむずかしいだろうとは思いますが、ほんとうにわれわれとして希望したいのは、いかなる業界におきましても、見解が右と左とに分かれるような、大きな見解の相違が出るわけであります。また自分のところだけはどんどんやっていかなくちゃいかぬのだというような
内部の突き上げで、非常にいまにっちもさっちも、
社長としても動けないような
状態になっておるような会社も必ずあるわけであります。そういうところがどうしてもそういう大所高所から見たところで、ことしの
設備投資は押えるというようなことはなかなかできない
状態になっております。そういうときに
金融面からの
一つの誘導と申しますか、そういうものがあれば非常に話し合いがまとまりやすくなる。そこをできるものか、できないものか。これはまた
銀行の数が非常に多いということもあって、非常にむずかしいかと思われまするが、私はそういう点を考慮いたしまして、
融資ルールということができて一番問題にいたしましたのは、そこから来るいわゆる統制というものであります。統制に入っていくということに対しては、一番われわれとしてはおそれております。
それから
先ほどちょっと化学繊維のほうに入り過ぎまして、特振法のことを申し落としましたが、私が特振法に対して反対いたしましたのは、化学繊維のようにまじめにあの精神を生かそうという業界があるならば、その業界があればバックアップしているのなら、私はそれでけっこうだと思っておったのでありますけれ
ども、実はそうでない。他の業界ではこの特振法を利用して、新しく出てくるものを押えようと思ったり、そうしてまた中には中小
企業をこの特振法を利用して押えつけてしまおうというような考えを持っているような、いわゆる特振法を利用して、自分たちの野心と言ったら非常に言い過ぎでありますが、自分たちの希望を達成しようというような機運が一部にありまして、それでこれは非常によくないと私は見たのであります。その意味で特振法に反対をいたしました。
そういうことで私が常に一番心配いたしておりますことは、変に統制に入っていかないような道で、そうして何とか秩序をつくっていく。
安定成長なら
安定成長によって、その成定
成長にどういうような量的な裏づけをして目標をつくっていくか、そこでどういう秩序をつくっていくかということであります。それがいま一番私たちが悩んでおる点であります。これは本来人間としての
弱点でもあると思うのでありますが、実はこういうことをここで申し上げては恐縮がありますけれ
ども、昨年私が
産業資金部会におきまして一番問題にいたしました業種はセメントであります。非常に新しい規模のものがどんどんできる。こんなことでは来年は必ず
供給過多になる。そうして三日といわれたようなセメントでありましたけれ
ども、
戦前のセメントを御
承知の方はよくおわかりだと思いますが、長いことセメントは配当もできない。そうしてボーナスも出せなかったという時代がずいぶん長かった。そういう時代にまた入るぞということを私は感じたのでありますが、通産省は何らきめ手を持っていませんために、
内部の
調整もなかなかうまくまいりませんので、不幸にしていまのセメント業界のこういう事態を招いておる。去年はっきりわかっておったのにできなかった。しかし今日になりましたなら、初めてみな目がさめて、いまは協調機運が非常に出てきている。来年はこういう失敗をやるまいという機運が出てくると思います。やはり人間は一ペんこりてみなければ、なかなかものごとができないもので、困ったものでありますけれ
ども、そういう点は確かにあるようであります。そこでそういう場合に大所高所から
金融界からでも指導的な役割りが出てまいりましたならば、そういうある一部の間違った考えを押えることができるということが確かにあると思います。
それから私に課せられておりますのは、何か増資の問題、
社債の問題もあるようでございますので、いまわれわれのところで考えております増資問題を多少申し上げたいと思います。皆さまよく御
承知かと存じますけれ
ども、非常に意外な数字が
——日本は非常な増資をやっておるということであります。諸外国に比較いたしまして、
日本の増資は非常なものであります。GNPの中の増資割合を見ますと、一九六三年、
イギリスがちょっとおくれておりまして一九六二年の数字でありますが、アメリカはGNPに対する増資の
金融は〇・二八であります。
イギリスが一・〇四、これは一九六二年。
西ドイツが〇・三四。いずれも一零コンマあるいは一%、しかるに
日本は一九六三年に増資をいたしました額は、GNPの三分八厘六毛、確かにこれを見ましただけでも、
日本の増資がいかに安易に行なわれておるかということがわかるわけであります。この増資圧迫によって、
株式市場が非常な不況におちいったということも私は言えると思うのでありますが、しかし増資をストップということは、これは
証券市場といたしまして、
資本市場としては自殺行為であります。したがいましてできるだけ早く増資の再開をしてもらいたいと思います。幸いにいたしまして大体九月ないし十月ごろからぼつぼつ増資をやっていくということで、それではいかなる
基準でこれをやっていくかということで、いま検討いたしておる次第でございますが、大体きょう新聞に出ておりましたが、月二百億円くらいを大体の目安にしておるということであります。ところがそれをいたしますと、いま希望だけで、つまり株価百円以上の会社の希望しております増資だけで千五百億近くある。そうしますと、月二百億近くといたしますと、いま株価が百円以下の会社は来年でなければ増資ができない。なるほど
証券会社は株価を標準にして、株の高いほうから順々に増資をやっていくというような
考え方を持っておるようでありますが、これはなかなかむずかしい問題かと私は考えております。と申しますのは、株にはやはり仕手株というのもあります。また何と申しますか、量の非常に少ない株もあるので、したがいまして株価が高いから、ことに百円を境にいたしまして、九十円の株価と百十円の株価、その間に会社の体質がどれだけ違うかということになると非常に問題だと思うのです。私は端的に申したのでありますけれ
ども、今度はいよいよ増資につきまして、踏切を開くわけであります。それにいままでたくさんのものが踏切に来て待っておる。踏切を開いておいて、いきなり一番背の高いものから順繰りにやるというようなことをやって、一体それでおさまるのかということを、私は
証券界の方方に申し上げておるわけでありますが、これは非常にむずかしい問題であります。親が死にかけているものもおりましょうから、どうしたって速く病院へ行かなくちゃならぬというものもおるわけであります。そういうものもやはり考えてやるべきではないかというのがいまのわれわれの考えでございまして、それでどういう
基準にするかということにつきまして、いま
証券界と寄り寄り相談中でございます。
その次は
社債の問題でございますが、これは
日本銀行総裁が議会で
社債の問題にお触れになりましてから、また新聞が非常に書き立てておるようでございます。われわれといたしましても、
社債の市場、いわゆる
社債の量がふえるのならば、
条件の改定もあえてやぶさかではないのであります。ただ
産業界といたしますと、量がふえなくて、ただ
条件だけが改定されるというような結果におちいることを非常におそれているわけです。ということは、たださえ
金利負担が非常に重くなっております。
企業が
社債による
金利の負担だけが即しておる、
社債の量がふえないということになります。もう
一つ私
企業のおそれておりますのは、今度の
社債条件改定によって、万一利付
金融債も、引き上げられ、そのために長期貸し出しの
金利が上がるということになりますと、全くアブハチとらずということで、その点も非常に懸念いたしております。そこでわれわれその解決策といたしましては、ほんとうにいわゆる
先ほど木川田さんも言われましたような、
資金が偏在しております。今日地方に偏在しておる相互
銀行あるいは地方
銀行というようなところでほんとうに
条件を改定すれば、
社債を持ってくれる。ほんとうにこれらが持ってくれるということになって、
社債の量がふえるということならば、
企業界としては喜んでこの
条件改定に応ずるというのがいまの考えでございます。