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1965-05-17 第48回国会 衆議院 大蔵委員会金融及び証券に関する小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月十七日(月曜日)    午前十時十二分開議  出席小委員    小委員長 毛利 松平君       天野 公義君    奥野 誠亮君       鴨田 宗一君    木村武千代君       砂田 重民君    谷川 和穗君       藤井 勝志君    有馬 輝武君       佐藤觀次郎君    平岡忠次郎君       堀  昌雄君    春日 一幸君  出席政府委員         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君  小委員外出席者         大 蔵 委 員 藤田 高敏君         大 蔵 委 員 武藤 山治君         大 蔵 委 員 竹本 孫一君         参  考  人         (東京電力株式         会社社長)   木川田一隆君         参  考  人         (富士製鉄株式         会社社長)   永野 重雄君         参  考  人         (経済団体連合         会常任理事事務         局長)     堀越 禎三君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 五月十七日  小委員春日一幸君三月十日委員辞任につき、そ  の補欠として春日一幸君が委員長指名で小委  員に選任された。 同日  小委員渡辺栄一君四月十五日委員辞任につき、  その補欠として谷川和穗君が委員長指名で小  委員に選任された。 同日  小委員木村剛輔君小山省二君及び田澤吉郎君  同日小委員辞任につき、その補欠として鴨田宗  一君、天野公義君及び砂田重民君が委員長の指  名で小委員に選任された。 同日  小委員天野公義君、鴨田宗一君、砂田重民君及  び谷川和穗君同日小委員辞任につき、その補欠  として小山省二君、木村剛輔君田澤吉郎君及  び渡辺栄一君が委員長指名で小委員に選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融及び証券取引に関する件      ————◇—————
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議を開きます。  金融及び証券取引に関する件について調査を進めます。  本日は、お手元に配付いたしました名簿のとおり、参考人の方が出席されております。  参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただき、ありがとうございます。本小委員会は、融資ルール増資ルール等産業資金の問題につきまして調査を行なっているのでありますが、本日参考人各位の御意見を伺いますことは、本小委員会調査に多大の参考になるものと存じます。参考人各位におかれましても、何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いいたします。  それではまず参考人の方より御意見を述べていただき、その後に質疑を行ないたいと思います。最初に木川田参考人にお願いをいたします。
  3. 木川田一隆

    木川田参考人 東京電力社長木川田でございます。経済同友会のほうにも関係ございますので、問題の点につきまして一般的な、あるいは抽象的と申しますか、基本的らしきものを申し上げて、御参考になれば幸いと存じます。  時間も非常に少ないようでございますので、大体申し上げる所見に対する立場でございますが、御承知のように先進諸国は、高度の工業化を目ざしまして、いわゆる近代的な産業社会を築き上げようと努力しておるわけでございますが、その中に伍しまして、国際化自由化をバックにしまして、日本の構造的な弱点とか、いろいろなひずみの問題をかかえながら、日本経済がその国際競争力の激しい中に立ち向かわねばならぬという運命にございますことは、これは申し上げるまでもないことでございます。したがいましてすべての経済活動の基調と申しますか、ややもすれば従来経済体質を軽視したような高度の成長というものからいまの客観的情勢を見まするとき、安定を重視した成長、いわゆる安定成長路線というものが、これは一番原則的に向かうべき今日的課題であろうと私は存じます。したがいましていま御質問になっておりまする産業資金の問題につきましても、この観点に立ちまして所見を申し上げることを御理解願いたい、かように存じます。  第一番に、日本産業資金と申しますか、これの大きな欠陥、病弊をひとつ申し上げたいと存じます。産業資金供給の量と質の両面にわたる安定化がなければ、決して安定成長というものの実現は容易に望み得るものではないと存じまするが、しかるにわが国におきましては経済規模が非常に発展する、その経済規模発展に比較しまして、資本蓄積量、これが非常に不足しております。ことばをかえて申し上げれば、建設投資等物的資本蓄積が非常に高いのに比較しまして、株式とか銀行預金とか企業内部留保等のいわゆる貨幣的な資本物的資本に対しまして貨幣的な資本蓄積が非常に少ないことであります。これがいまの日本マクロ好況とかミクロ不況とか、こういうものの原因でございますし、また銀行のオーバーローンも、あるいは膨大な企業間信用も、この差額を埋めるための結果と存じます。したがいましてここら辺に、日本経済のいま当面する問題点の一番のもとのところがございます。かように私は考えます。  わが国における産業資本供給ルートを見ますと、これはよく識者が再々警告されておりますように、借入金依存傾向が非常に強うございます。しばしばこれは指摘されておるところでございまして、申し上げるまでもない例でございましょうが、三十八年度の産業設備資金調達実績を見てみますと、総額三兆二千八百九十七億円の調達ルートでございますが、証券界から二割、金融界から三割二分、政府から八分、外資から四分、これを合計いたしますると実に六割三分を外部資金をもって調達しておるのでございます。この外部資金でもって日本経済物的発展をしたということを申し上げ得ると存じます。これは西ドイツやアメリカに比較しますれば、もちろん比較にならぬ逆調でございますが、日本の歴史的な経済発展の過程におきましても、戦前とはまた逆になっております。いかに企業内部蓄積による自己金融が少ないか、あるいは膨大な設備資金に比較しまして貨幣資本蓄積が非常に劣っておるかということを示す一例と存じます。これらが企業資本コストに大きく影響しまして、今後の国際競争力の面におきまする大きなハンディキャップになることは自明の理と存じます。こうした量的不足の上におきまして、短期金利のアンバランスとか、経済合理性を無視した投資金融傾向等から見ますと、産業資金は、量、質ともに不安定の状態にあろうと存じます。すみやかに国民経済における貨幣的な資本蓄積源泉を培養しまして、金融健全化をはかり、経済全体の体質改善に資する必要が一番本義かと存ずるわけでございます。これなくしまして、単に資金供給ルート確保いたしましても、それは絶えず不安定で、ひいては金融正常化の素地はもとより、経済全体の健全化をはかることができない、かように感ずるわけでございます。こう見ますと、物的資本に対する貨幣的資本ということは、日本経済の非常な問題であり、しかもこの産業資金の問題に関する直接的な病弊である、かように感ずるわけでございます。以上のように、産業資金供給上の根本的な弱点を改めまして、安定成長基盤を強化するためには、産業資金の量、質の安定化健全化が必要となってまいるわけでございますので、量と質の問題につきまして、幾分具体的な問題に入って所見を述べたいと存じます。  まず、量の問題でございますが、第一番に企業金融供給量確保という問題であります。企業金融供純量確保すること、この点はいわゆる政府総合政策の軸としまして、この際ぜせ成長金融供給呈確保するために、安定成長を目標として、一連の政策減税等を通じて資本蓄積政策を積極的に取り上げていただかねばならぬ、かように感じます。ちょうど一九四八年の御承知のような西ドイツ通貨改革のときにおきまして、過去の苦い経験、教訓を生かしまして、非常に企業金融を重視し、その軸といたしまして貨幣経済の面から産業発展基盤健全路線に乗せたことは、非常に当を得た処置として、現に西、ドイツ貨幣蓄積量において非常に豊富な現状にあるわけでございますが、これはもともと固定資産そのものを切りかえせずに償却いたしましたので、非常に多くの償却を軸とした内部留保企業がやることができまして、そうして今日の隆盛の根本的な動因になったかと私は見ておるわけでございます。日本もこの高度成長といいますか、従来のいろいろな構造的な弱点とか、ひだというような問題等を持つわけでございまするから、ぜひとも一日本経済国際化転機にしまして、今日までの苦い経験を生かして、貨幣経済面安定充実をはかることは非常に大切である、これが量の問題の第一の問題でございます。こうした政府政策に即応いたしまして、もちろん企業自体が従来の量的発展にかまけて、内部蓄積を、いわゆる企業体質を幾分軽視したという問題点反省を加えまして、今後はいわゆる量の経営から質の経営ことばをかえますと建設投資というものの効率をよく考えて投資をする。あるいは内部留保を充実する努力をするということが即応政策と存じます。もちろんこれには単に企業といわず、政府といわず、国民全体としましても、生活の改善健全化によりまして、蓄積源泉を培養するということも必要なことは、もちろん申し上げるまでもないことでございます。  次の量の問題は、資金量的バランスの保持でございます。産業資金ルートとしまして株式とか社債銀行借り入れ内部留保等の、いわゆる需給バランスがいま失しておりますが、このバランスをはかるためには、長期的には金利固定化をやめまして、段階的に、計画的にこの金利自由化をするということが大切な方法と存じます。これはもちろん多くの需給の安定が前提でございますので、これを急激にいたしますれば、いろいろな各方面の金利に影響し、社債条件等にも影響するというわけでございます。郵便貯金にも影響するというわけでございますので、条件整備、段階的という問題を前提といたしますが、これを整えながら、できるだけすみやかに金利自由化を進めることによりまして、自由経済資金配分自律機能が働くような道を開いておくべきではないか、かように考えます。特に昨今社債条件の改定が問題になっておりますが、これは金利全体の体系のバランスというような問題も問題がございます上に、起債量がスムーズに拡大し得るよう、国民経済条件を築き上げる、整えるということが、その前提であろうと存じます。第三に量の問題として申し上げたいのは、資金偏在是正でございます。現在の資金需要都市銀行に集中しております。それにもかかわらず実際の資金は、地方その他の相互銀行等に片寄ってあるわけでございます。そのために都市銀行がいわゆる日銀借り入れの増大となったり、コールレートの異常な、先般生じたような四銭がらみの異常高を招くというような現象が出るわけでございますので、この資金偏在是正も一単にコール市場を通ずる調整というばかりでは、その機能を発揮することはむずかしいと思いますので、やはりこれは資金偏在是正して、国民経済的に資金効率を向上するという目的をもちまして、買オペと売オペを同時に使い分けて実施して、量分散調整をより機動的に推進するという政策が配慮されたい、かように存じます。  以上三点が量の問題に対する私の所見でございますが、これが根本となりまして質の問題に入るということが順序と存じます。このように量的な健全化安定化ということは、日本企業金融証券市場あるいは金融市場というものの安定につながるわけでございますが、この量的な健全化安定化ということの条件整備ができませんと、どのように質的な選別の資金供給基準をつくろうと、それは形式に流れて、適切な運用実績は望みがたいと私は思っております。日本金融構造の非常な特殊な状態英米に比較しまして非常に特殊な金融構造、しかも物的成長に追いつかない貨幣資本蓄積のおくれというような、成長金融の変則的な現実、これはわが国金融証券界の姿勢の結果というばかりではなくて、産業界経営態度という問題にもかかわる全般的な経済の問題でございますので、ここに量的調整条件整備を進めながら、現在問題となっておる投資ルール融資ルール増資調整基準等の諸問題を、民間自己責任の上に立って処理するということが必要であろうと存じます。  細目的なことを別にしまして、大綱について二つ申し上げたい。第一は、質的な基準国民経済的な安定化を可能にするような取り計らいを意図すべきである。国民経済の安定を可能にするというような方向性ものさしでもって、資金質的基準を持つ必要がある、こういう問題でございます。経済成長の伸びの程度をはなはだしく上回るような貸し出し、あるいは信用創造は、国際収支を悪化せしめ、物価騰貴を誘発するわけでございますので、総量調節の基本は経済安定成長を目安にして行なわなければならない。これは堀越参考人が特に専門にやっていらっしゃる問題でございますので、詳しく御説明があろうかと存じます。またそのほかに系列金融を改め、経済合理性に立脚した健全金融をたてまえとする、これはもとよりのことでございます。今後さらに国際競争が激化しますと、当然国際間の分業という問題が、これからの一つの大きな国際経済方向となろうと存じます。各国々がそれぞれ自分のところの特徴を生かした事業発展せしめるという観点から申しますと、経済合理性等の質的な基準に反しましても、国策的に特殊の産業を育成するためにこれの資金供給する道も開くというような、国際化されました今日、大きな方向性としまして、こういう新しいものさしをも配慮すべきである、かように考えるわけでございます。  第二の質の問題は、企業安定経営立場から申しまして、ぜひ経営財務比率基準にすべきである。これはもう常識的にも一般的にも申されておる問題でございますが、開放体制になって、いままでの経営価値尺度と申しますか、ものさしが変わったにもかかわらず、経営のわれわれの頭がなかなか転換しにくい現実と自覚の問題がございます。この問題を国際的に見ますと、内部保留が少ない、コストが高い、こういうこと自体がもうすでに日本経済企業国際競争力が弱いということでございますので、これをいかようにして是正するかという問題、たとえば資本費がいま固定化しておりまして、経営の硬直が次第に高まり、損益分岐点の上昇となって経営が非常に固定化してまいります。常に多くのコストの中で資本費固定費を払わなければならぬということ自体が、いわゆる借金依存日本経済の実態でございますので、これは国際的な価値尺度から申しますと、はなはだしい日本の立ちおくれでございます。したがいましてこれを是正するためにも、われわれ自体経営態度につきまして大いに反省努力する覚悟で進んでおりますが、政府もまたこの企業財務比率基準にする質的ないわゆる産業資金ルート確立ということを厳にせねばならぬ。厳にすると申しましても、それは法的規制をもって強制するという性質のものではなくて、どこまでも民間産業人金融人、その協調による良識によって、一つのこうした国際的価値尺度にのっとって、金融企業経営に進むという一つの慣行を確立することが、日本体制整備一つの大きな根本的問題だろう、かように考えるわけでございます。私は、量の確保、いわゆる貨幣経済確立前提にしまして、そうした上に立って徐々に質の問題を民間的な自己責任のもとに確立せねばならぬということを申し上げた次第でございます。  最後に申し上げたいのは、日本経済の長期的の安定成長を進めるためには、まずもって政府総合政策の中に安定化構想を明確にすること、これがこの金融問題にも大きな前提となり、指針となるということでございます。その中軸としましては、何らかの形で金融のメカニズムを新しい国際的な立場から秩序化する。特に物的な経済成長バランスするような貨幣経済充実策ということが、西ドイツのように非常に肝要な時期に——いま日本経済は、転機に会するこの際に、非常に肝要な時期に到達しておると感じます。それがためには政府日銀国民経済的な大きな立場から、税制の政策金融政策通貨価値の安定ということに対して新しい眼、新しい識見をもって見直すべきときであろう、かように感じます。そうして産業金融確立をはかりますとともに、民間自主性を尊重されるように希望したいものでございます。民間政府の新方向に即応しまして自己責任を再確認して、反省すべきは大いに反省して、健全金融安定経営に向かって、金融証券産業、それぞれの立場で相協調してその実現につとむる覚悟を新たにしたい、かように感ずるわけでございます。  私の陳述を終わります。
  4. 毛利松平

    毛利委員長 次に永野参考人にお願いいたします。
  5. 永野重雄

    永野参考人 われわれ産業に従事いたしております者の立場から、金融問題及び融資ルールの問題に関しましてただいま木川田氏からお話がありました。私は全面的に同じ考え方を持っております。したがいまして同じことを繰り返すのは省きまして、結論は似たことになるかもしれませんけれども、別の考え方から私の考え方を申し述べてみたいと思います。  終戦後あれだけの大きな破壊を受けて、今日世界を驚かすほどの発展をいたしたのでございますが、この中には一つには日本人負けじ魂といいますか、これが大きく作用をいたしておると思います。よく私は例にあげるのですけれども、マラソンの選手が最後まで勝つためには、一定の合理的なスピードというものがあるだろうと思います。これが負けないためにちょっと速くかけ過ぎて、その疲れが出ておるのがいまの姿だと思います。しかし本来持つ日本人の力と申しますか、底力と申しますか、そういうものから申しまして、心臓麻痺を起こして倒れてしまうようなことは絶対にないと思いますから、今日少し速度をゆるめればまた元気を回復して、発展に進んでいくという確信は持っておりますが、さような形を比喩であらわしておるものであります。その疲れ方の姿としまして、先ほどお話に出ておりましたような、たとえば企業健全化する一つ指標としてとらえております——ことに世界銀行あたりでは個々の企業健全性を見るための指標によくとるのですけれども一、たとえば財務比率を見ましても、先ほどお話が出ましたように、戦前には六十何%は自己資本であったも一のが、今日では逆転して三〇%そこそこになってしまった、これもその疲れの姿の一つ表現だと思います。いままでの速さと申しますか、あれだけの速さ、たとえば私どもの鉄の仕事を御参考までに具体的に取り上げてみましても、終戦直後に、いわゆるインゴットと申しますが、粗鋼にしまして六十万トン、これは破壊のためと原料輸送船腹不足がございましたけれども、それが今日約四千万トン、能力としてはもうちょっとございます。その間にフランスといい、イギリスといい、ドイツといい、そういう諸国を抜いて今日の姿を来たし、世界を驚かしております。また日本輸出品目の中で一品目としては最大で、今年約十億ドル、これによって加工して出る船とか機械、車両合わせますと、十三億ドル見当の外貨をかせいでいる仕事にまでなったのでございます。しかしそこまで来る問に、先ほど申し述べましたような無理な速さもあったことはいなめないかと思いますが、先ほど申し上げたとおりのような形になっております。  しかしさればと言って、金融的にのみ見た企業安全性という観点から世界でよく言われる、また日本戦前にあった姿、言いかえますと六割とか五割以上の自己資本を持ったままの姿で、今日まで伸び得たかどうかということは疑問だと思います。おそらく、これは私のかってな想像ですけれども、従来の健全と言われる財務比率の姿で来ておったならば、この四千万トンの生産量が二千数百万トン台でとまっておったのではないだろうか。もちろんイギリスドイツフランス——フランスはどうか知りませんが、イギリスドイツは抜けなかったかと思います。またそれだけ速く伸びるために、そんな大きな利益のあるものではございません。しかし二百だけお耳に達しておきたい問題は、年度ははっきり記憶いたしませんでしたけれども、たしか昭和三十一年の、あのちょっと景気のいいときがございましたが、あのときにはたとえば鉄の価格で一トン十万円ぐらいの相場までに国内で上がっております。それに対しまして当時の政府当局から、これは物価騰貴を来たす原動力にもなりかねないからという強い希望がありまして、われわれも非常に大きな利益を望まなくとも、合理的な採算ベースならばそういう際でもこれに協力すべきだと考えまして、半値の五万円で出したことがあります。その場合に私どもはもっとこの事業発展さしたいから、それも考慮に加えてくれということも申し上げたのですけれども、その当時は、それもよくわかるけれども、必要なのは資金のほうだから、資金政府のほうで相当好意的なあっせんをして、その調達に協力してもいいという話もございました。そのようなことでございまして、それやこれやが、収益以上に大きな発展を過去にしてきたけれども、今日財務比率が悪化している原因ではないかと思います。この辺の、健全にいってしかし経済が伸びないのがいいか、多少いまのような負けじ魂を過度に発揮してでも伸びたほうがよかったかということは、皆さま方結論を推察していただきたいと思いますけれども、いずれにしましてもそんなかっこうで伸びてまいったのであります。  ところが先ほど申しましたように、今日に至ってちょっと行き過ぎた、反省期だというようなこと、一方日本人負けじ魂は、これまた民族性ですから変わりません。そこで景気がよければそれでも伸びよう、不景気になっても、それではこのチャンスにまた伸びようという気持ちはありまして、当事者はそのつもりでおりましても、高い観点から国の経済の全体を見る場合に、それでいいのかという考え方もここで起きてまいりまして、そこでそういう気持ちがあるから野方図にやったのでは、その事業自身もさることながら、国の経済全体としてもおかしな形になってはいかぬということから、この資金供給量、また融資ルールの問題というのが取り上げられてきたかとも思います。国際問題はデリケートですから、国名を出すのはどうかと思いますが、たとえば国によりましては、国が大いにやれと言っても、なかなか企業家がやらない。昔からよく言われておりますが、あるいはそのままの姿で今日に適用できるかどうかは別としまして、本来の資本主義というものは、最小の資本において最大の利潤をあげるのだということでありますから、国によってはその線に固執しまして十分に伸びていかない。たとえば英国は今日われわれの産業を抜いたのでありますけれども、比較的世界的には進歩がおそい、経済発展がおそいと言われるのですけれども、こんな場合に、国としては大いに伸ばそうというので、俗に言います笛を吹けども、踊らずという形になっております。日本の場合は、先ほど申し上げました日本人負けじ魂、よく世間ではそれを具体的にシェア争いとかいろいろな表現で批判を受けておりますけれども、そういう立場を私はあとから比喩にしまして、笛を吹く前に、口に当てただけではね上がってしまう名馬、奔馬みたいなものだということをよく言うのです。  そこでいま言ったような行き過ぎの結果は、最近私どもの同業にもあります。最近話題になっております山陽製鋼設備は相当な設備を持っております。需要に対して大きな設備であるし、また近代化もいいのですけれども、度が過ぎて大きな資金を使ったその反映がああいう形になっており、一社だけでなくて各方面に広い迷惑をかけております。したがって私どもも、世界に負けない伸びをするというのは望ましいけれども、自分だけでなくて他に非常な影響を与えるのだ、これは産業人としても、また個々の企業人としても考える必要がある、こう考えまして、この融資ルール考え方には、一般経済界、ことに経団連関係で堀越さん、また経済同友会で木川田さんがおられますけれども、そういう全体的な考え方には、もう満腔の賛意を表しておるものであります。  ただ一つそういう場合にえてして、今日日本は統制経済制度をとっておるわけでございませんが、いきなり一方的な国の意思でそれに入る場合、いわゆるジャの道はヘビ、もちはもち屋でございますので、どういうものをつくればいいかとか、全部のシェアの関連で同じ金を使うならここに出してつくるのがいいとかいう点は、当業者が一番よく知っておるわけでございまして、したがいましてその当業者、当業界の考え方が中心になりまして、それが共同研究をいたしまして、その結論に従ってのみ国に資金の裏づけをしていただく、あるいは外貨の場合には国の信用を貸していただくのがいいのではないだろうか、こんなふうに考えております。比較的この考え方に近い融資方法をとっておりますのがヨーロッパの西、ドイツでございますけれども、おのおのその業界に信を置いていただきまして、そこで専門的な立場からまた総合調整をした案に裏づけをされた資金ルールを考えていただきたい。ただ先ほど申しますように、日本人負けじ魂といいますか、シェア争いといいますか、そんなようなことでなかなか当事者同士で、どうしても話のつかぬようなことが絶無とは言いかねます。その場合には放任するがいいか、それとも個々の企業の創意くふうを発展せしめるに役立つ自由主義経済の本旨のみに徹して放任するのがいいか、あるいは国の観点からそれに対して多少の総合調整を加えるべきだということにつきまして、全体の数字につきましては個々の企業よりも金融界全体とか、産業界全体とか、及び国はこれを知っておるわけでございますから、その辺の良識によりまして、そういう場合の総合調整をはかっていくことが必要ではないかと思うのであります。融資ルールの問題につきましてはこのように考えております。  ただこれにつけ加えまして、先ほど申しましたような日本経済は底が浅いと同じように、この速い伸びのために個々の企業の底も浅いのでございまして、したがいまして不況に対する抵抗力が弱い。いいときだけならそれでよろしいのですけれども、不況に対処するためにはそれだけではいかないというような観点から、そういう場合に乗り切れるように社内留保ということが大事だと思います。これは先ほど木川田さんの言われたとおりでありまして、その社内留保をつくる方法、もちろん企業の良識があります。しかし同時に税であります。社内留保して将来に備える、また不況の乗り切りに備えるためには社内留保、自己資本によって乗り切るためにはこれが一番いい方法でございますけれども、遺憾ながら今日この割合が非常に少ないのであります。それは結局は相当の高率の法人税がそれを持っていくということになっておりますので、それを調達さすために税を考えてもらいたいと思うのであります。ただここに、これは多少一個の私見にすぎないかもしれませんけれども、しかし一面には税は国の施策のもとをなすものでありまして、社会資本の充実は一面産業人としてもこれを主張いたしております。また一般の個々の民生の福祉のために家も学校も道路も要ると思いますから、必要なものを調達できない場合、たとえばわれわれの立場から考えましても、道路とか港湾とかいうものに対して非常な関心を持っております。そういう場合に、そういうものにつながる目的を立てた公債の発行ができないものであろうかということであります。これに対してよく一部には、その公債は結局現状では持つ者、余力のある者が少ないから、そこで主として都市銀行あたり、今日非常に大きな割合を銀行は負担しておる。この銀行は同時に他の資金調達と競合するわけで、そこでおのずから限度があるということになります。そこで私はただいま申し上げましたような、税で社内留保もなくなるように出すかわりに減税をしてもらえば、その減税されたものの資金の使い方、これが公債に協力していけば、個々の企業が、金融機関以外のものが協力できるのではあるまいか。と同時に、こうすることによりまして企業の形が非常によくなるのであります。国の資金調達が、同じ個々の企業としましても、税のかわりに公債を持つというということになりますから、同じ結果なんですが、形の上ではたいへんに違います。これが税で出して残りを企業資金が足りないから借金をするということになると、先ほど申しました財務比率の悪化であります。しかしこれを公債を持っているということになりますればこれが資産になりますから、財務比率は好転したと思います。また形だけでなくて、いざ資金が要るという場合に、その公債はすぐ担保等の方法をもちまして、必要資金調達の力をつけてくれます。こんなような観点から、何かそういう考え方をできるような制度を御考究いただくのも一案ではないだろうかという感じがいたします。  たいへん長くなりますので、ほかの問題もございますけれども、一応これを申し上げまして、あとは御質問がございましたらお答えしたいと思います。ありがとうございました。
  6. 毛利松平

    毛利委員長 次に堀越参考人にお願いいたします。
  7. 堀越禎三

    堀越参考人 経団連の場で融資ルールという問題につきましては、いろいろ活を伺ったり、検討もいたしております。また御何所からお話がありましたように、野放しでいいかとなると、野放しもむずかしいという面もあります。しかし今日一つの転換期にきておる。ということは、企業経営者の考え方というものが最近非常に大きく変わりつつある。この非常なむずかしい時期に遭遇いたしまして、みな反省をしいられておる。そこに山陽特殊鋼のような問題もあります。そういう面から非常に私は協調的な精神がみなぎってきておるというふうに感じておるのでありますが、そこで私が特に申し上げたいのは、融資ルールということは内容ははっきりいたしませんが、一部新聞に伝えられておりますような財務比率、あるいは企業の収益率、あるいはその資産の比率とか、そういった外部的な一つ基準で融資をするかしないかということをきめるということが、私はそんなことはあり得ないと思いますが、新聞に出ておりました。そういうことになりますと銀行には頭取は要らないということになります。結局そういうふうな基準をつくりますと、各会社が金融を受けんがために紛飾を始めるようなおそれがありはしないか。日本じゅうが山陽特殊鋼になってはたいへんだと思います。例の特振法、幸いにいたしましてあれは不成立に終わりました。通産省がいわゆる官民懇談会という非常にもっともらしい旗をあげまして、それは主としてフランスのパターンを入れようとしたようでありますが、私はそのときに非常に強く反対したのであります。私が反対いたしましたのは、特振法に盛られておる精神そのものは非常によろしい。しかしながら特振法を利用しようと考えておられる産業界が数種ございます。あのときに約五種類くらいの業界が、ぜひ特振法を通してもらいたいといって非常に強く要望しております。その中の合成繊維などが非常に強く要望いたしております。この合成繊維の当時の要望は、特振法の最もいい面の精神を利用しようとしておったまじめな業界であったわけです。ところで今日実際合成繊維はいま官民懇談会をやりまして、通産省の役人を入れてやっております。かなり成功いたしておるのでありますが、しかし私はそこに第三者として実は入りまして見ておりますと、どうもうっかりしておると統制の芽が出るおそれがある。と申しますのは、具体的なことを申し上げてなんでありますが、御参考までに申し上げたいのでありますけれども、合成繊維の考えておりますのは、従来は需要を想定して、その需要想定によって各社が、全部としてはこれだけの設備拡張が必要であるという結論を出す。そうなりますと今度はそれこそシェア争いというものが起こってくる。そのきまったも一のを自分がどれだけ取ろう、どれだけ取ろうという非常な争いが起こって、結局各社ともにやりますから、それが倍にもなるという結果になる。今日やるには、どこの会社もことしは日産十トンなら十トン、それ以上のことはやらないのだという約束を取りつけようじゃないか。そうすれば各社とも十トン以上はやらないということがはっきりすればみな安心しておりますから、一応シェア争いというものは起こらない。そして計画をした会社は、どういうわけでこれを計画したかということを懇談会の席で話しをしよう、そういうことで、非常に幼稚かもしれませんが、まずそこから始めていこう、こう考えておったわけであります。ところが通産省の役人が入ってまいりますと、その十トンだけの基準では不十分である、財務比率のいい会社、それから長期的な観点から収益に大きな影響を及ぼさない、あるいは輸出に寄与するもの、そういうふうな基準がどうしても必要ではないかということで、業界としては通産省の主張をいれて、それを基準に入れておったのであります。ただ業界とすればそれを非常にばく然たることばに直してもらって基準に入れておったのでありますが、私はこれを見ましてすぐ通産省の人に申したのであります。これは課長、局長というあたりなら、この基準を非常に大きな観点から運用されるからよかろう。しかしながらこれが係長におり、係長補佐におりてくると、どうしても輸出は何%——新しく増設したものから出た商品の輸出は何%なければならぬとか、あるいは財務比率がどうのこうのというような比率になってくる。どうしても一役人というものは比率というか、そういう指針を持っていないと行政ができない。したがって小さな指針がだんだんできてきて、せっかくの官民協調懇談会が、結局統制になるという危険が多分にあるということを申しましたが、課、長も非常によくわかってくれまして、それではこれは参考事項か、予備事項ということにいたしましょうというようなことで、いま化学繊維の申し合わせば、すべて任意事項ということになってやっております。これは私たちが一番おそれておりますのは、そういう問題であります。非常にこまかく統制に入っていくというところに、どうも引きずり込まれるということになりますと、非常にわれわれとしてはそれをおそれるわけでありまして、今日幸いにして、産業界におきましては慎重ムード、行き過ぎた慎重ムードがあるといわれるくらいの慎重ムードでありますし、私がおあずかりしております通産省の産業構造審議会の産業資金部会に出ております各社の、各業界の設備投資の状況を見ましても、ことしは非常に内輪な投資考え方を持ってやっておるようでございますので、こういう際はそうした一つの機運をどういうふうにして育てていくか、これが私は非常に大事な問題だと思います。  結局一つの業界が一つの協調ができ、一つの申し合わせができるということになりました場合に、その協調の線に沿って金融界が動いてくれる、これは当然そうあるべきだと私は思うのであります。ところがそれが金融界がこれを消極的に受けるだけでいいのか、さらにできれば積極的に協調できるように、これを誘導するようなことができないかどうか、ここが私は銀行自体の問題でありますので、いまの銀行のあり方では非常にむずかしいだろうとは思いますが、ほんとうにわれわれとして希望したいのは、いかなる業界におきましても、見解が右と左とに分かれるような、大きな見解の相違が出るわけであります。また自分のところだけはどんどんやっていかなくちゃいかぬのだというような内部の突き上げで、非常にいまにっちもさっちも、社長としても動けないような状態になっておるような会社も必ずあるわけであります。そういうところがどうしてもそういう大所高所から見たところで、ことしの設備投資は押えるというようなことはなかなかできない状態になっております。そういうときに金融面からの一つの誘導と申しますか、そういうものがあれば非常に話し合いがまとまりやすくなる。そこをできるものか、できないものか。これはまた銀行の数が非常に多いということもあって、非常にむずかしいかと思われまするが、私はそういう点を考慮いたしまして、融資ルールということができて一番問題にいたしましたのは、そこから来るいわゆる統制というものであります。統制に入っていくということに対しては、一番われわれとしてはおそれております。  それから先ほどちょっと化学繊維のほうに入り過ぎまして、特振法のことを申し落としましたが、私が特振法に対して反対いたしましたのは、化学繊維のようにまじめにあの精神を生かそうという業界があるならば、その業界があればバックアップしているのなら、私はそれでけっこうだと思っておったのでありますけれども、実はそうでない。他の業界ではこの特振法を利用して、新しく出てくるものを押えようと思ったり、そうしてまた中には中小企業をこの特振法を利用して押えつけてしまおうというような考えを持っているような、いわゆる特振法を利用して、自分たちの野心と言ったら非常に言い過ぎでありますが、自分たちの希望を達成しようというような機運が一部にありまして、それでこれは非常によくないと私は見たのであります。その意味で特振法に反対をいたしました。  そういうことで私が常に一番心配いたしておりますことは、変に統制に入っていかないような道で、そうして何とか秩序をつくっていく。安定成長なら安定成長によって、その成定成長にどういうような量的な裏づけをして目標をつくっていくか、そこでどういう秩序をつくっていくかということであります。それがいま一番私たちが悩んでおる点であります。これは本来人間としての弱点でもあると思うのでありますが、実はこういうことをここで申し上げては恐縮がありますけれども、昨年私が産業資金部会におきまして一番問題にいたしました業種はセメントであります。非常に新しい規模のものがどんどんできる。こんなことでは来年は必ず供給過多になる。そうして三日といわれたようなセメントでありましたけれども戦前のセメントを御承知の方はよくおわかりだと思いますが、長いことセメントは配当もできない。そうしてボーナスも出せなかったという時代がずいぶん長かった。そういう時代にまた入るぞということを私は感じたのでありますが、通産省は何らきめ手を持っていませんために、内部調整もなかなかうまくまいりませんので、不幸にしていまのセメント業界のこういう事態を招いておる。去年はっきりわかっておったのにできなかった。しかし今日になりましたなら、初めてみな目がさめて、いまは協調機運が非常に出てきている。来年はこういう失敗をやるまいという機運が出てくると思います。やはり人間は一ペんこりてみなければ、なかなかものごとができないもので、困ったものでありますけれども、そういう点は確かにあるようであります。そこでそういう場合に大所高所から金融界からでも指導的な役割りが出てまいりましたならば、そういうある一部の間違った考えを押えることができるということが確かにあると思います。  それから私に課せられておりますのは、何か増資の問題、社債の問題もあるようでございますので、いまわれわれのところで考えております増資問題を多少申し上げたいと思います。皆さまよく御承知かと存じますけれども、非常に意外な数字が——日本は非常な増資をやっておるということであります。諸外国に比較いたしまして、日本の増資は非常なものであります。GNPの中の増資割合を見ますと、一九六三年、イギリスがちょっとおくれておりまして一九六二年の数字でありますが、アメリカはGNPに対する増資の金融は〇・二八であります。イギリスが一・〇四、これは一九六二年。西ドイツが〇・三四。いずれも一零コンマあるいは一%、しかるに日本は一九六三年に増資をいたしました額は、GNPの三分八厘六毛、確かにこれを見ましただけでも、日本の増資がいかに安易に行なわれておるかということがわかるわけであります。この増資圧迫によって、株式市場が非常な不況におちいったということも私は言えると思うのでありますが、しかし増資をストップということは、これは証券市場といたしまして、資本市場としては自殺行為であります。したがいましてできるだけ早く増資の再開をしてもらいたいと思います。幸いにいたしまして大体九月ないし十月ごろからぼつぼつ増資をやっていくということで、それではいかなる基準でこれをやっていくかということで、いま検討いたしておる次第でございますが、大体きょう新聞に出ておりましたが、月二百億円くらいを大体の目安にしておるということであります。ところがそれをいたしますと、いま希望だけで、つまり株価百円以上の会社の希望しております増資だけで千五百億近くある。そうしますと、月二百億近くといたしますと、いま株価が百円以下の会社は来年でなければ増資ができない。なるほど証券会社は株価を標準にして、株の高いほうから順々に増資をやっていくというような考え方を持っておるようでありますが、これはなかなかむずかしい問題かと私は考えております。と申しますのは、株にはやはり仕手株というのもあります。また何と申しますか、量の非常に少ない株もあるので、したがいまして株価が高いから、ことに百円を境にいたしまして、九十円の株価と百十円の株価、その間に会社の体質がどれだけ違うかということになると非常に問題だと思うのです。私は端的に申したのでありますけれども、今度はいよいよ増資につきまして、踏切を開くわけであります。それにいままでたくさんのものが踏切に来て待っておる。踏切を開いておいて、いきなり一番背の高いものから順繰りにやるというようなことをやって、一体それでおさまるのかということを、私は証券界の方方に申し上げておるわけでありますが、これは非常にむずかしい問題であります。親が死にかけているものもおりましょうから、どうしたって速く病院へ行かなくちゃならぬというものもおるわけであります。そういうものもやはり考えてやるべきではないかというのがいまのわれわれの考えでございまして、それでどういう基準にするかということにつきまして、いま証券界と寄り寄り相談中でございます。  その次は社債の問題でございますが、これは日本銀行総裁が議会で社債の問題にお触れになりましてから、また新聞が非常に書き立てておるようでございます。われわれといたしましても、社債の市場、いわゆる社債の量がふえるのならば、条件の改定もあえてやぶさかではないのであります。ただ産業界といたしますと、量がふえなくて、ただ条件だけが改定されるというような結果におちいることを非常におそれているわけです。ということは、たださえ金利負担が非常に重くなっております。企業社債による金利の負担だけが即しておる、社債の量がふえないということになります。もう一つ企業のおそれておりますのは、今度の社債条件改定によって、万一利付金融債も、引き上げられ、そのために長期貸し出しの金利が上がるということになりますと、全くアブハチとらずということで、その点も非常に懸念いたしております。そこでわれわれその解決策といたしましては、ほんとうにいわゆる先ほど木川田さんも言われましたような、資金が偏在しております。今日地方に偏在しておる相互銀行あるいは地方銀行というようなところでほんとうに条件を改定すれば、社債を持ってくれる。ほんとうにこれらが持ってくれるということになって、社債の量がふえるということならば、企業界としては喜んでこの条件改定に応ずるというのがいまの考えでございます。
  8. 毛利松平

    毛利委員長 質疑に入るに先立ち、小委員長より要望いたしますが、御質疑は個別の企業にわたらず、一般論としてお進め願いたいと存じます。  これより質疑に入ります。通告がありますので、順次これを許します。平岡忠次郎君。
  9. 平岡忠次郎

    ○平岡小委員 ただいま産業界のお三方から、融資ルール、増資ルールを含めまして、産業資金の問題についての御見解の表明がありました。お三方に共通することは、現在までの経済成長、高度経済成長のメリットを是認しながらも、この反省期において、どういうふうにこれを打開するかということをおっしゃっておるわけであります。これは早急に結論は出ないと思いますし、皆さん自身もまだ模索の段階であると思っております。したがいまして、きょうの懇談会も、そうした模索から具体的な何ものかをつかみ取るために貴重な機会であることを、私どもは祈念いたしておるわけであります。そこで私どもの印象ということになるかもしれませんが、かいつまみましてこの問題の所在等の参考になるために見解を申し述べ、質疑を申したいと思うわけであります。  産業界は大蔵省の融資ルール案で、金融面が引き締められ、他方きびしい増資ルールをつくられたのでは、産業界資金調達はがんじがらめに縛られるという懸念を抱いておると思うのであります。しかし懸念は懸念といたしまして、国民経済的立脚点から経済の行き過ぎを是正し、安定成長を達成することを是とする限り、すなおな協力的態度が出てこなければならないはずであると私は思っております。たとえば金融の問題におきましても、従来は高度成長政策のこのまっただ中にありましても、あなた方自身は指導者ですからそうではないのかもしれません。事業会社の常套手段印は、借りられるときにはできるだけ借りて、それで金融が引き締まって、返済をしなければならぬときには、増資と社債発行で泳いできた、こういう経過があろうと思うのです。これはもっとも社債についていいますと、実質的発行者利回りが八分以上につくのですから、したがって借り入れ金のほうが得だという実利的観点が、やはりそうした趨勢を招いたことも事実であります。しかしいまやこうした点はきびしく反省されなければならぬと思っております。今日金融緩和時に際会いたしまして、潜在的設備投資意欲をコントロールするためにも、融資ルールの必要であるということ、さらに自己資金調達のための常道として証券市場健全化が必要であり、そのためには自分かってな無条件的増資再開は許されない。すなわち、増資ルールの必要であるということもいなみ得ないとする立場こそ、今日財界指導者に課せられた社会的な義務であると私どもは思っておるわけであります。しかるに私の思い過ごしであればけっこうなんですが、最近の新聞等においてわれわれが気にかかることは、かかるルール設定の必要を招いた原因が、みずからの過当競争とか、あるいは法外な設備投資の行き過ぎ、そういう結果であることに対して、いささか反省が足りない傾向があるのではないかということであります。と申しますのは、高度成長政策の自転車操業の継続是認につながる巻き返し的議論がいささか出できているのではないかと注目いたしておるわけであります。こう言い切っては御不満かもしれませんが、どんぴしゃで言いますと、企業の自己資金充足のためと称する企業減税の強化論、それからその減税財源として企業間信用の解消のためと称する公債発行の主張であります。これは節回しによっていろいろ是認されるような節回しにもなるし、これはいかぬということにもなろうと思うのです。議論は分かれるところと思うのですけれども、しかしとにかく現時点において、産業界が徹底的に反省していただきたいということがわれわれの要望であるわけであります。したがいまして今日の金融委員会での議論は、土俵として、まずもって国民経済的論議でありたいということであります。その限りにおきまして、私どもも皆さんの御発言に耳を傾けるにやぶさかではないつもりであります。従来財界のお歴々を参考人としておいで願った場合には、どうも少し強者のえてかってな議論が多いように思うのです。特に、われわれが、皆さん自身それほどお気づきになっておらぬのかもしらぬけれども、たとえばそういう議論の中で、あなた方のいわゆる強い立場の方々の間の均衡論とか、そういうことがどうも参考人の発言として出がちなんです。たとえて言いますと、減税論にしましても、利子分離課税は銀行に有利なんだから、これに対応するように証券のほうも配慮してくれ、したがって配当の分離課税もぜひやってくれというような主張が好個の例であります。しかし問題の真の所在は、税制について国民経済的には勤労所得の重課に対する資産所得の軽課こそが、実は剔快に値する租税論の大宗でなければならぬわけであります。こういう点において皆さん自身の議論が、かなり国民経済的と自負しながらも、どうも我田引水の傾向なきにしもあらず、こういうふうに私ども考えます。したがいましてきょうのこういう機会には、われわれの意見との交流において、皆さんの財界指導者というばかりでなしに、国民経済の指導者というところまでひとつ脱皮していただきたい、そういうふうに祈念してやまないわけであります。むろん釈迦に説法、今日ここにおいでの方々は、財界の指導者クラスの面々でございますので、真に国民経済的立脚点から、ものを申していただけることと思っております。  そこで、駄弁を弄しましたが、私は融資ルールの問題につきまして、具体的にお伺いしたいと思うのです。融資ルールの問題の経過を申しますと、大蔵省試案というものが出まして、けんけんがくがくの論議があり、三月二日金融制度調査会、これは会長が堀武芳さんですが、この金融制度調査会から全銀協に討議の場が移されたときに、一応たな上げされたかっこうになっております。金融機関の自主的な判断に基づいて、時間をかけて具体案を練る方針が確認されました。それで全銀協の態度といたしましては、経済の行き過ぎを是正し、経済安定成長を達成するには、融資ルールが必要だとは判断をいたしておる。ただし産業界に対する影響も見なければならないとして、大蔵省試案には全くとらわれない、幅の広い自主的な立場から、できるだけ時間をかけて多角的に検討するということ、こういう態度が出たわけであります。これは時間をかけてゆっくりということで、サボられては困るというような懸念があって、この前実は当委員会に関係者のおいでを願ったのも、こういう懸念があったからであります。いずれにいたしましても、こういうことでありますから、こまかい点まで規制するようなルールづくりを避けて、大まかな融資ルールにとどめたいとしておるわけでありましょう。したがって個々の企業に対する融資は、当然各銀行の自主的判断にゆだねられる方向をねらっておられると思うのであります。また一方、経団連の立場、これは産業界の代表的立場ということになりましょうが、三月八日にこの右に対応して、経団連財政金融委員長岩佐富士銀行頭取を囲みまして、産業界代表がルール問題について協議をされておるわけであります。その結果、金融制度調査会が調査会で融資ルールをきめることには絶対反対だ、これは官僚統制に巻き込まれるおそれがあるから反対である。第二番目に、融資の何らかのよりどころを求めるために、鉄鋼あるいは石油化学、セメント、電力等、いわゆる問題業種の産業界は、金融界と自主的に話し合う。つまり個別ではないけれども、個別的グループをもって話し合いをしていくということ。大体以上がわれわれの仄聞する融資ルール問題をめぐる各界の態度でありますが、その後この課題についてさらに前進した検討がなされたのかどうか、これは私どもの関心事であります。形式上は全銀協独自の検討待ちというところでありますけれども金融の当の相手である産業界の意向と合意なしには、金融界は決しかねることと思いますので、今日産業界の当問題に対する御意向をお示し賜われれば幸いと存じます。  次に増資問題でありますけれども、経団連の増資問題懇談会が四月二十七日にきめたと伝えられる増資再開の暫定基準なるものの概要を、もし発表できるなら発表していただきたい。発表はされておるのでしょうけれども、その概要についてお教えを願いたいのは、四月九日に証券側でまとめた瀬川野村証券社長の説明にあった増資基準案とどのような関係にあるのか。それから証券側提案との食い違いは何であるか、またその理由づけは何かということ。それから証券側提案と調整された結果であるのかどうか、この点についてお教えを願いたいと思います。
  10. 堀越禎三

    堀越参考人 先ほど融資ルールにつきまして、業界別に金融機関と話し合おうというようなことは当時話題に出ましたが、はっきりきまった問題ではなく、いま全銀協の会長の属しておられる銀行の常務が中心になってやっておられる。そこでいま経団連といたしましては事務的に連絡をしている程度で、表立った業界と金融界との話し合いという正式なものではなく、事務的に銀行と話し合っておるということであります。  それから先ほどの増資の問題でございますが、これは新聞に出ましたとおりでございますが、大体最初に百五十円以上のものは全部自由というようなことが瀬川氏の案として出ました。これは非常にみなの反対を受けたのであります。それから今度あらためて出してまいりましたのは、権利落ち株価は六十円以上のもの、配当率は一〇%以上のもの、増資後の資本金に対する税引き利益率は前記配当を維持するに足る水準のもの、こういうことになり、かなりゆるやかな基準を持ってまいりました。これによってその後さらにこまかく基準をつくろうということになって、いまその相談中で、問題は先ほど申し上げましたが、株価をどこまでも基準にしようというのが向こうの考え方でありますが、それはどうしても産業界としては受け入れがたいということで、その他の基準につきましてはさして問題はないのでありますが、株価の高いほうから順々にやっていこうという考え方に対しては非常に強く反対をいたして、まだ相談をしておる段階でございます。
  11. 平岡忠次郎

    ○平岡小委員 四月九日の懇談会で証券側から出された基準と、四月二十七日のこれはやはり懇談会でございますね、このときとの相違は、一言で言えば百五十円以上たるものという第一基準をやめさせたということ、それから四月九日の第二基準を主体にして改定をさせた、そう言われたと思うのですが、それは証券業界と合意されておるわけですか。
  12. 堀越禎三

    堀越参考人 証券業界が二十七日に出してきた案です。
  13. 平岡忠次郎

    ○平岡小委員 そういたしますと証券業界が最初に出してきたとき、株価百五十円以上たることということになりますと、当時において五十九社に限られる。これはあと株のフラクチュエーションがありますから限定できませんでしょうけれども、その当時において五十九社、資本金合計が二千五百億円と推算されております。今度六十円以上ということにして窓口を広げますと、現状における該当会社の数がどのくらいになって、その資本金合計はどのくらいになるか。
  14. 堀越禎三

    堀越参考人 上場会社の三分の二くらいです。
  15. 堀昌雄

    ○堀小委員 ちょっといまのに関連して。いまのお話の点なんですけれども、上場会社の三分の二、が適用されるとなると、これまたセレクトをしないと、これが一斉に手をあげれば一ケ月五百億とかいうことになるのじゃないかと思うのです。だから結局原則は私もそういうことでいいのじゃないかと思いますけれども、その次の段階で、経団連でお考えになっている月二百億程度にしぼっていくということになると、そのしぼるためにはそれでは一体何でしぼるかということになるところに、また細目的なルールというものが要るようになるのじゃないかと思うのですが、その点についてはどういうお考えでしょうか。
  16. 堀越禎三

    堀越参考人 その点についていまいろいろ懇談中なのでございます。その懇談中において向こうが出してまいりました案が株価の順序でいこうという。これは非常に事務的には楽なのです。ざっくばらんに申し上げれば、証券界にも競争がありますから、ばく然たる基準できめるということになりますと、いろいろ証券界の中でも問題がある。それで株価の順序でやれということになれば、これは非常に簡単なのでありますけれども、それではどうも産業界としては困る。話し合いをすれば、こっちの会社のほうがそれではあなたのほうが先になさいということもやれるのですから、そこのところはひとつ考え直してもらいたいということでいまやっております。
  17. 堀昌雄

    ○堀小委員 そこで実は最近の産業構造審議会の貸金部会で、四十年度の資金調達計画をお出しになっているのによると、株式による調達が一千八日八十三億になっております。そこでいまの一千八百八十三億の株式調達という一つの面と、もう一つは、その中には世銀借款その他特例的なものか入ってまいりますから、そういうものはそろそろ増資ができると思うのですが、それを除いたものとの間の調整を考えてみると、九月、十月ごろからの増資再開となると、いまお話の月間二百億ベースではなかなか千八百億にならない。この両万の関係はどういうふうにお考えですか。
  18. 堀越禎三

    堀越参考人 産業資金部会で最後にこの間結論を出しました。それをごらんになったのだと思うのでございますが、部会でも私も問題にしたのです、とても千八百億——しかもそのほかに、船会社はいたしませんけれども、陸運、そうした通産省の管轄外の会社で増資をしようという会社が数あるのだから、通産省所管の会社だけで千八百億はとてもできないということで訂正させようと思ったのですが、訂正いたしますといろいろな点へ響いてくるのです。それにまだ最終結論でなくて、今度は今週だったと思いますが一ぺんやりまして、そのときに最終結論を出すわけでございます。あれはただ参考として出したものでございますから、一応了承したのでありますけれども、通産省がはじきますのは、大体企画庁の数字から通産省が従来のシェアではじいてくるとああいう数字になる。そしてあの千八百億の株式をあそこで出したからといって、これを必ず調達するというわけでもないのでございます。あれはほんのめどにすぎない。ほんとうは設備投資調整のほうなんです。ただあれは裏づけがあるかどうかという数字になっているものですから、あまり強く私は言いませんでした。もう一つあれに次点がありますのは、各社が出してきておりますことしの内部留保の問題です。これを各社の出してきたのをそのまま集計しておるわけです。これも多少将来問題がある。こんなに留保がことしできるかどうか非常に問題があるということも、あのとき問題になったわけであります。
  19. 堀昌雄

    ○堀小委員 いまのとちょっと一緒に関連がございますから……。内部留保を、私も見てみますと、三十八年が九百三十三億、三十九年が一千二百八十八億で、三八%増になっておるのですが、四十年度は五九%増で二千五十八億、減価償却は設備投資がだんだんふえてきますし、税法も少し改正になりましたから、この程度のものはあるいは可能かもしれませんが、どうも内部留保の六〇%増などというのは、架空の数字ではないのか。もう一つ社債の千三百四十四億、これも一どうも、政府保証債が非常にたくさん出て圧迫をしておって、はたして千三百四十四億消化できるかどうか、これもちょっと疑問がありますし、金融方面でも興長銀、都市銀行合わせてこれだけはとても無理だ。まあ二百億くらいは内輪じゃないのか私は増資調整、増資ルール、融資ルールの問題とこの産構審の資金部会の問題が、もう少しパイプがつながってきちっとなるためにあっていいのじゃないかと思う。ところがどうもそちらのほうの——まあそれはガイドポストだと言えばそれまででございますけれども、せっかくいろいろな資料を集めて皆さんが御検討なさったものが、私はあと少しこまかく点検してみたのでございますが、必ずしも納得のできる状態になっておりません。あわせて堀越さんにちょっとお伺いしたいのですが、三十五年、六年は修正計画と実績はほぼ見合って、三十五年は達成率が一〇八・六%、少し上がっておりますけれども、三十七年、八年、九年となりますと、修正計画に対する達成率が九五・一%、八七・八%、九八・四%というふうに、修正計画よりも実績が下回っておるわけでございます。これを企業別に見ますと、きょうは電力と鉄鋼に来ていただいておりますが、三十七年の場合には電力の達成率は八九%、三十八年が八七・五%、三十九年はだいぶ上がりまして九六%になっておりますけれども、鉄鋼の場合は大体九五%、九一%、九一%というふうに、いずれも修正計画よりは最近は下回っておる。この修正計画から下回ってくる問題点というのは、企業側として、それではこの際だからやめようとおっしゃる企業サイドの問題があるのか。資金供給の側として供給がつかないために、やろうと思ったけれどもやむを得ず圧縮をしたということになったのか。ここらの経緯がちょっとよくわかりませんので、全体論としてひとつ堀越さんから、鉄鋼電力について永野さん、木川田さんから、ちょっとそこらの資金部会での修正計画を下回った理由を伺いたいと思います。
  20. 堀越禎三

    堀越参考人 総括的にとおっしゃいますと、なかなかわからないと申し上げる以外にないと思うのです。あるいは金融がつかなくてやらなかったところもありましょうし、また次期に繰り延べたものもありましょうし、またみずからやめたところもあると思います。特に産構の資金部会におきましては、企業の名前を出さないという約束になっておりますので、企業別の問題に全然入っておりません。したがってそういうところまで、いま御質問のような点をあの場ではなかなかやりにくいのでございます。
  21. 木川田一隆

    木川田参考人 先生の一つの解明になるかと存じますが、たとえばわれわれの電力におきまして、最近量の拡大から質の経営に転換いたしまして、長期計画の所要資金というような問題も効率的にあらゆる努力をいたしましてカットダウンする、それが当然ここに出てまいります。これが一つの例かと存じます。鉄鋼もあるいはそうかと存じますが、われわれれの経営の方針としてそういうことをいたしました結果が出ております。
  22. 永野重雄

    永野参考人 似たような立場にあるのですけれども、御指摘のように数年間にわたって九十何%ということがございましたが、私ども企業を受け持っております立場からいいますと、一応のこれくらいかかるだろうという予算をつくりますと、個々の企業立場からいうと、少しでも経済的なつくり方をしたいというその努力を相当傾注いたしました。これが第一です。第二には、このごろの技術の進歩は日進月歩でございまして、途中でも、もっと優秀なのができそうだ、あるいはできたという話を聞きますと、ちょっと半年くらいおくれていても、それも取り上げようじゃないかという研究をする場合もあります。もう一つは、海外から輸入する機械の場合でも、絶無ではございませんけれども、相手方に対する条件として、新しい設備を買ってくれないか、その場合に、前の設備はこういう条件にするという話があれば、これは資金量の問題からそれに乗ることは賢明な一つの措置でございます。そういういろいろな理由が重なり合いましてそうなっております。なおそれの大きな除外例としまして、三十七年の不況のときに、決定はいたしましたけれども、ただそれを無理につくっても需要がないというようなことで、賢明な使い方ではないというので、これは私の関係している企業でも、一年間意識的に延ばしたようなこともございます。そのようなこともございますけれども、大体いま申し上げましたようなことで、何%かの差額がある場合がございます。
  23. 堀昌雄

    ○堀小委員 私、いまの話、よくわかるのですが、会社の計画と修正計画との間で何%かダウンしているわけですね。それよりも実績がさらにダウンするというのは、どうも私は会社計画というのがサバを読み過ぎて出ているのかどうか。実際のほんとうにやろうというものではなしに、少しプラスアルファでこういうところに出てくるのかどうかという感じがちょっといたします。  それからもう一つ、ちょっといま鉄の問題が出ましたからあれですけれども、私ども操業の状態を少し見せていただいていると、高炉とそれから製鋼についてはかなりフルに操業が行なわれておりますけれども、ホットミルとストリップミルは三十七年、三十八年、いずれもかなり余力がある。余力がありながら毎年五百億近くも設備投資がさらに行なわれる。本年度もどうも鉄鋼については、なおかつ調整が最終的にできていない。永野さん、非常に自主調整についてお骨折りをいただいておるようですが、なかなか鉄鋼がうまく落ち着かない。私どもがここで融資ルールとかなんとかということを言い出しますもとは、やはり大体はそこにあるのですね。同友会でおっしゃる自主調整がうまくいけば、私どもがこんなところで議論する必要などは毛頭ないことだと思うのですが、かねて長い間自主調整についての御議論は承っておりますし、永野さんも鉄鋼の問題についてたいへんお骨折りをいただいておることもわれわれ見ておりますが、しかし必ずしもうまくいかない。それにはさっき木川田さんがお触れになった金融の面では系列金融のようなものがありますから、やはりどこかで話がつけば金はつくのだというような面があるのではないか。そうなってまいりますと、どうしても何かそういうものの歯どめになるものがどこかに少しあっていいのではないか。いまそこまでまいりましたので、鉄鋼については御承知のように世銀借款で、負債比率と流動比率についての規制がございます。鉄鋼各社の財務比率を私こまかく見せていただきましたけれども永野さんのところは全体の中では非常に財務比率のよろしい会社で、御努力のあとがわかるのですけれども、しかしこの世銀借款で一つの歯どめがかかっております部分と、そうでない部分とを比べてみますと、私は財務比率に格段の相違があるということは、鉄鋼各社の中でもはっきりわかるのです。ですから私は何も世銀借款の方式がいいということを申すわけではありませんけれども、いい悪いにかかわらず、そういう規制がされておれば一応そこに対する努力が行なわれて、それ以下にはなかなかなりにくい。規制のないところは非常に低い、望ましくない財務比率がそのまま行なわれているという感じがしますので、いま皆さんお受けになっていて、世銀借款による財務規制によるメリットとデメリットというような問題について、これは今後の日本融資ルールを考える場合にも参考になる点ではないかと思うので、ひとつ鉄鋼の世銀借款を受けていらっしゃる立場から、世銀借款による財務規制のメリット、デメリットについてちょっと伺いたい。
  24. 永野重雄

    永野参考人 まず最初に、設備がオーバーして、高炉と製鋼はいいけれども、圧延設備等がオーバーしておりはせぬか。裏から言いますと過当競争といいますか、むだな使い方をしておりはせぬかという御質問と思いますが、形としましていままさにそうなっております。またそういう発表もいたしておりまして、事実でございます。ただ丁百御説明を申し上げたいのは、圧延設備近代化というものは非常に早く進んでおりまして、したがってある時期に、圧延が足りないという場合に採用する機種でございますが、先ほどもちょっと触れましたように、大きな国際商品、輸出産業になっておるものですから、世界のどこにも負けないようなものでなくてはとても競争に勝てない。そんな関係で、そのときに必要な量だけをつくったのでは旧式な設備になり、単位も小さくなります。そこで将来の発展はどうせわれわれは確信をいたしておりますから、すぐには需給が伴わなくても、そのときの国際競争力にたえ得るような設備、言いかえますと単位量が大きくなってまいります。これでございますので、いまのような数字になっておりますけれども、しかし同時にそれは今日十億ドル余のものが輸出できるようになった原動力でもございます。しかしさはさりながらいま言ったように多少は過ぎている、オーバーしていることは事実でございます。しかもこれは相当資金を要する機械でございます。このごろちょっとした機械でもすぐ百億円をこすようなもあが多いのでございます。それがむだな資金を使ったのと同じ結果になったのでは相すまない。また国民経済観点の話もございましたけれども、これが国民経済に寄与する面で相すまないことになるのみならず、情けは人のためならずとでも申しますか、自分自身にはね返ってくる問題で、両面から考え合わそうじゃないか。これは業界全体に言えることだというが、圧延に対する設備規制といいますか、それのもとをなす融資調整に一番重点を置いておるというのが、いまの姿でございます。  第二の問題として世銀融資のルールの問題でございますが、本来ならば借金は多いより少ないに越したことはないのでありまして、だから経済がある程度安定している諸国、あるいは安定と申しますか、発展にしましても、もうある程度まできますと伸びがのろくなります。そういう諸国経済のあり方を前提にしたルールが、そのままで日本の形に当てはまるかどうかという点はございますが、ただ国際的には世銀等から借金をします場合に、決して理論としては間違ってないのは、そんらものはこれはきかないのだ、しかも一方資金は要るのだというわけのものでもありませんので、一般論的な、間違ってないのならそれでもよかろうといって借りてはおります。これが日本のすべての姿ではございます。したがいましてすべての産業、これは各産業を通じまして、また一つの業界内部における各企業を通じまして、その国の伸びのテンポというものが一体になっている場合はよろしゅうございますけれども、そうでない場合には、それのないところはワクがないから自由奔放にいけるが、あるところはその制約を受けるというところに、若干の差異ができる場合もございます。しかし国の求めるところは、国民経済観点から必要とするものがはたしてそのラインに合うかどうかという、やはり考えられる面が一つございます。これが第二の点でございます。  第三の点としまして、形式的な財務比率、借金と自己資本との割合を論議しますと、借金をのがれるためにいろいろな手を講ぜざるを得ない羽目に追い込まれまして、たとえば払うべき金を払わないで、あるいは受け入れの形を延ばしたかっこうをとってそれを借金に立てないというような形から、このごろよく言われます下請企業とかその他に対する不払い問題あるいは企業間の信用問題とか、いろいろな問題に転嫁をされる。これは具体的にどこがどうというのではございませんけれども、姿としてあり得る姿でございまして、だからいまの日本経済があれだけの姿で、もちろんそういう考慮は一部に入れてよろしゅうございますけれども、あれだけでいいかどうかということに対しては、われわれも考える必要があるかと思っております。
  25. 堀昌雄

    ○堀小委員 私ども融資ルールが非常に画一的にきちっとしたものであったらいいと思ってはいないのです。私は私なりの感じなんでございますが、企業財務比率は、企業別で見ましてもずいぶんフラクチュエーションが大きいのでございまして、大体商社なんというものは実にべらぼうな姿になっておりますし、建設業も非常に高い条件になっておるわけです。しかしそうかといって、いまの自己資本比率が下がってくるのをそのままほっておくということは、さっき木川田さんもおっしゃったように、国際競争力の上で非常に大きな問題点になるわけですから、徐々にではあっても自己資本比率が上がるような方向というものは、それは融資ルール一つでできるものではございませんで、全体の問題でございますけれども一つの環をなしておるような気がしますから、どこからかひとつ手をつけていくということが必要ではないか。そう考えてまいりますと、いまは税制にしろ何にしろ、借入金というものが非常に優遇されておりますから、そこらの点は、おっしゃるように税制上の問題として、増資をする場合のあり方——これについて私どもの党では少しはっきりした政策を出しておりますけれども、少なくとも配当に支払ったものが税金の対象になるというようなことでは、なかなか増資も困難で、負担費用が大きくなるものでありますから、こういうような税制上の問題は検討を要すると思いますけれども、なおかつ融資の点で業種別にバルクラインか何か引かれて、バルクライン以下のものについてはできるだけ——全然出さないというわけにはいきませすが、御遠慮願って、バルクライン以上のところはよろしいということでやっていけば、バルクラインがだんだん上に上がっていって、何年かたつうちに、徐々にではあるけれども、全体の水準が上がっていくのではないか。個々に財務比率を具体的に並べて調べてみますと、一つの業種についても上から下までにかなり差がございますから、そこらについてはそういうバルクを引いて何らかの措置を講じながら、業種、業種の特殊性がありますから、そういう普遍的な一つのルールでこれをまかなうことは困難ですが、そういう一つ考え方も取り入れれていただきたい。私も全銀協に申し上げているのは、自主的におやりになったらけっこうだし、同時に全部完成したものができると私どもは思っておりませんけれども、どうも金融が緩慢になりますと融資ルールが要らないのだというようなことは、これはちょっとおかしいと思うのでございまして、金融が緩慢になったときこそ、実は融資ルールが真剣に考えられるべきであって、金融が硬直しているときに融資ルールなんというものはとんでもないことになるのですから、この際融資ルールができて、融資ルールができても一それが働かないで金融が緩慢ならそれでけっこうでありますから、そういう意味では、日本国際競争力を強化するためにも、金利の安いのも必要でありましょうけれども、やはり資本費をいかにして減らすかということが、もうちょっと真剣に考慮されていいかと思います。融資ルールというものは、一つの意味ではそういう国際競争力の面がありますし、もう一つの面は、多少そういう歯どめがかかったほうが、金融がタイトになりかけたときに、急激にタイトにならないで、ある程度スローに上がっていくという形になるほうが、全体として金融正常化を促進するためには非常に有利なのではないか、こういうふうに感じますが、その点について、ひとつ皆さん個々の立場からお考えがございましたら伺いたいと思います。
  26. 堀越禎三

    堀越参考人 私が先ほど申しましたのは、一つのきちっとした基準で全体を律するということになりますと、その基準に合わすためにどういうことをやるかという問題があるわけですが、そうではなくて、いまおっしゃったのはメルクマールのようなことである。一つのメルクマールを置いて、みながそこへなるべくいくように何かの調整をつけていくということなら、私は考えようによってはたいへんけっこうではないか、かなり弾力性があることだと思います。
  27. 木川田一隆

    木川田参考人 堀先生のお考えのルールの設定の問題でございますが、先ほど意見の中でも申し述べましたが、根本の問題はやはり日本物的資本に対する貨幣資本バランスがとれていないという問題であるから、これを充実することが先決問題だ、こういうふうに繰り返して申し上げて、その上に立ってそれを完成するには時日を要することはもちろんでございますし、こういう予算の決定、歳入のむずかしい時期に、所得減税という問題もございますし、一般大衆のそういう問題もございますので、これらをどうかね合わせるかという非常にむずかしい問題がございます。これを逐次完成する方向に向かうという基本政策をお立てくださることが、第一番の問題であります  ただ当面の問題としまして、おっしゃるように金融緩慢のときにこそ、私も金融正常化、その問のいろいろ不合理な金融の構造を是正するという努力はすべきであると思います。しかしルールをつくるかつくらないかということは、つくるのなら自主的につくる。そうして経営自体が、さっき申し上げたように国際的な転換期で、もうすでに価値尺度が変わっておるのだからという自覚に立って、初めて自主的な責任を果たすのだということは、われわれ一人一人が覚悟しなくちゃいかぬ。こういう自覚がないと、ルールそれ自体が幾ら出ても、これの裏をくぐるのが出てまいりましょうし、その実際的効果があがらない。したがいましてその辺のかね合いというものは、客観的な条件、人間的な考え方の動きなどをよく御省察くださいまして、基本的な線だけで、それも自主的にきめて——銀行が金を貸すというときには、当然経済合理性に従って内部保留のいいもの、財務比率のいいものをやるにきまっているのですが、それ以外にも、さっき申し上げたように日本国民経済として、今後どうしても国際的な立場でパートナーシップの必要なものもありますし、運用の関係からも育てねばならぬというようなものについて、特別な配慮をせねばならぬというような問題もある。いろいろな問題が出てまいろうと思いますので、そこら辺のいろいろな問題もぜひお考えの上お進め願いたいと思います。
  28. 永野重雄

    永野参考人 全然同じ考えを持っております。さっきもちょっと申しましたが、御指摘のように財務比率そのままでいくことがいかぬと言ったのではございません。非常に参考にはなるけれども日本経済特異の事情があるということを申し上げたわけであります。また先ほどの増資の問題につきましても、堀越さんからも申し上げましたように、証券立場からいうとああいう案が一応出るのでございますけれども、しかしその中における株価というのはすべての場合に間違っているのではございませんで、できたものが売れる、処分される、また国民経済観点からも有効に活用されるという姿が、一つのあらわれでございます。これを頭から否定することはできないのでございます。したがっていまの財務比率の問題にしろ、株価の問題にしろ、それは頭の中には十分考慮に入れつつ、しかしそれだけでは片づかない問題がございますので、それらを総合して、さっき申し上げましたように業界の者が一番業界の事情はよく知っておるから、その頭で話し合いをして、同時にその話し合いは業界だけでやったのでは絵にかいたもちでございますから、それの裏づけのできるような金融の協力を得たいという考え方でございます。
  29. 堀昌雄

    ○堀小委員 いままでのお話の中で、私一つ非常に気にかかることがあるのです。それは堀越さんも二、三おっしゃったのですが、どこかで規制をかけると粉飾にいったり、裏を抜けようとする。私これは非常に大きな日本経済上の問題点だと思うのです。粉飾決算がずいぶん問題になりまして、私は二年来議論してまいりましたので、それについては公認会計士制度の改正、監査基準等改正を当委員会で要求いたしまして、徐々に動きつつあると思うのでございますけれども、しかしどうも皆さん統制は非常にきらいだとおっしゃる。私どもも必要がなければ統制をすることは要らないと思うのです。ところが経営者の皆さんがそういう粉飾決算をやる、あるいは何か必要があれば抜け道にいこうという姿勢が自主的に改まらなければ、やはり国民経済観点から外からワクをきめて、そういうことを是正していただく以外に方法がない。ですから、皆さん方のお話だけ聞いていると、何か統制は悪で、自主的にやることがいいとおっしゃる。私は全くそうだと思うのですが、裏返して言うと、そういうふうにしておられるのは一体どなたかというと、私は現在の経営者ではないかというふうな感じがするので、統制を誘発しないような自主的な経営をやっていただけば、実は当委員会でこんなことまでやる必要は全然ないと思うのです。堀越さん、その点いかがでしょうか。
  30. 堀越禎三

    堀越参考人 私は統制の悪い面を申し上げたのですが、いまのお話は、何か全部の会社が粉飾したり、全部の会社が抜け道を行こうとするようなふうにお考えのようにも思われるのですけれども、決してそうではありませんで、現に、公認会計士の監査を厳重にするということはたいへんけっこうですけれども、監査した公認会計士自身が教えられて帰ってくるような会社もあるわけです。内部監査がすっかりりっぱにできておりまして、かえって公認会計士は教えられて帰ってくる。何ら言うことはないというような会社もあるわけです。そういうようなものまで一々債権債務の確認をしなくてもいいわけです。これはいろいろな会社もありますが、中に山陽特殊鋼みたいなものが出ると、何だか会社が全部粉飾決算をしているように言われるのは、はなはだ僕は遺憾に思っております。
  31. 木川田一隆

    木川田参考人 堀先生のおっしゃることは、非常にこれは当を得たと申しては失礼でございますけれども、やはり経済の自主的な責任、自己責任の自覚は、できれば御心配をかけることなく、スムーズに新しい経済方向国際的にも向かっていきたいと存じますが、なお従来のいろいろな複雑なものが構造的にもあるいは心理的にも経営の中にございますので、次第に自覚に向かいつつある、こういう現実の段階でございます。この段階の長さ、深さというものはいろいろございましょうが、われわれは覚悟をしていま進みつつあるわけでございますので、その点はまず前提に置いていただきたいと存じます。したがいまして、粉飾決算——これは半期ごとに経理を操作するというようなことは従前もあったことでございますので、長期的に見てあるいは、粉飾は悪いですけれども、ある仮定のもとに、だから半期の決算を一年決算にするのがよろしいというような問題も出るわけでございます。そういうふうにいろいろの経営者の層はございますが、大きく見ますと、当然われわれは自覚を進めると同時に、国際的な波でもってそういう時代の尺度に合わぬ経営は没落するということはわれわれ自体が自覚しておりますから、その点も次第に自覚の度合いというものは広がってまいろう、また広げるべくわれわれの責任がある。われわれが経済自主性を主張します以上は、その覚悟でございますので、その点ぜひ御理解おき願いたいと思います。
  32. 堀昌雄

    ○堀小委員 最後に、社債発行条件の改定問題でございますが、これも、私実は社会党ですけれども、当委員会金利自由化ということをもう数年来言ってきているわけです。金利自由化の一番手をつけるべきところは、社債発行条件の改定の問題ではないかと思うのですが、新聞紙上に伝えるところによりますと、十年ものについて幾らか新しいものをお出しになるような空気になっておるようですが、ちょっと私ここで金融債の利付債との競合問題というのは確かにあると思いますけれども、あんまり中途はんぱに過ぎると、せっかく改定をしていただいても資金偏在なり、そういうものに役立たないことになるのではないか、非常にこれはかね合いのむずかしいところだと思います。思いますが、たとえばこれはもう一般の金融機関だけが買うのだという前提だけでお考えをいただくことは、私は公社債市場育成のためにちょっと問題があろうかと考えますので、やはり将来的には個人消化というものをも考えの上に置いていただいて、この社債条件の改定ということは少し考えていただく必要があるのではないか。実はコールが非常に高くなるときに私どもいつも思っておりますのは、何か特定の金融機関はコールをとってもうかるようですが、国民はその外側に置かれているわけで、きまった金利しかもらえない。これがもし正式にオープンマーケットができてくれば、もし金利が全体として上がれば、私どももそういう公社債を買うことによって高い金利のものを買える。そうすれば一般の民間から資金が流れますから、自然にそれは下がってくるということで、自然な調節作用が出てくるのではないかと思いますので、この点はひとつ相互銀行、信用銀行、地方銀行等に偏在する資金バランスをとるというコール上の問題というようなことにとどまらず、やはり本筋の公社債市場をつくっていくための民間投資というものもちょっと頭に置いて、御検討を進めていただきたいという点を特に要望したいと思いますが、その点についてどなたかお考えがあればちょっと承りたいと思います。
  33. 永野重雄

    永野参考人 ただいまの堀議員のお考え方は、われわれも同じ考え方を持っております。従来の社債市場の急減というのは、多くの場合、都市銀行、地銀間の仲介的役割りをなしておりますそちらへ負担がかかって、たしか七〇数%幾らかのものがいっておるということでございまして、これは今日オーバーローンが示しておりますように、もう手一ぱい資金を使い果たして、そのほかにまだ負担ができるかどうかということでございます。国民の一人一人が持っておる資金が直接にまた必要とみなされる企業につながるというためには、そういう行き方も必要だと思いますので、現在のような社債の出し方、またそれが出せるような姿等については、研究の必要がある問題かと思っております。
  34. 平岡忠次郎

    ○平岡小委員 公債発行の議論でございますけれども、仄聞いたしまするに、湊守篤さんの案とか、あるいは大原総一郎さんの案とか、まことに公債発行論が花盛りであります。そういうさなかで、五月の二十日ですか、経団連の総会が開催せられる予定と聞いております。そして企業減税、それから減産資金供給を織り込んだ決議がなされるということを聞いておりますが、その内容はどういうものであるのか、堀越さんからお伺いしたいと思います。それからこれに関連しまして経済同友会で考えているという景気対策の政策提案とはいかなる骨子のものであるか、これは木川田さんからひとつお教えをいただきたいと思います。
  35. 堀越禎三

    堀越参考人 五月二十日に私のほうで総会をいたしまして決議をするということで、いま寄り寄り検討いたしております。一部新聞に漏れたのでありますが、いまお話しになったような趣旨を盛り込んであります。実は私、経団連の事務局長をやっておりますので、決議の内容は理事会の議を経ませんと発表はできません。総会までお待ちを願いたいと思います。
  36. 木川田一隆

    木川田参考人 ちょっと御質問がよく……。
  37. 平岡忠次郎

    ○平岡小委員 経済同友会で景気対策の政策提言を行ないたい。これは政府に対してでしょう。あるいは佐藤総理に対してかどうか知りませんけれども、きのうの朝日新聞にそういうことが出ているわけです。
  38. 木川田一隆

    木川田参考人 内部の問題でして、われわれは個別の企業立場ではなく、国民経済的の立場からときどき政策の問題について提言するという態度をとっておりますが、いまの緊急の経済の問題ばかりでなく、社会的な諸問題も関連して起こるというような状態につきまして、何かの適宜な政策の提言をしたいと考えておりますが、その根本はやはり安定成長、従来のような一四、五%の伸びというのではなくて、六、七%を中心にした安定成長にして、質的な充実のある経済成長を期待したい。そうしますることは、ことばをかえますと、消費の面につきましてもいろいろの国民生活の健全化というような問題、すべての問題がここに集約されてまいろうと存じます。そういうものを軸にして作成いたしつつ、事をみんなで協議することにしたい、こういうところでございます。まだ何ら具体的なものはまとまっておりません。
  39. 毛利松平

    毛利委員長 関連質問を許します。藤井勝志君。
  40. 藤井勝志

    ○藤井小委員 ちょっと私、中座さしていただきます関係から、関連質問を途中でさしていただきます。  先ほど参考人のお三人の方から非常に貴重な御意見を承って、私が常日ごろ感じておりますことに対して、了解をはっきり裏づけていただいたとしう感じがいたします。ただ先ほどから各委員から御熱心に質問がされておりますが、結局いまの日本経済国際化していく。そこにお話のごとく産業構造の構造的改革というこの課題に対して、どうスムーズにこたえていくか。こういう場合、われわれは基本的に自由主義経済を原則に考えておる立場、特に金融界ないし証券界はその先端であるべきはずだ。それはへたな人為的な手を加えることによって、いわゆる角をためて牛を殺すということになりかねない。そういったことは、堀越さんからおっしゃったことは、端的にお話があって、へたをすると、もう突き詰めていけば結局は官僚統制になって、志すところと結果が逆になるということですが、ただ、いまのような大きな変革期に際会した現状においては、何かそこに政府立場においては大きなワクで誘導していくというか、そういった配慮、それにこたえて業界は自主的調整、こういったことをひとつやらなければならぬ機がまえに来ておる。いろいろな条件から言って機が熟しておる。それと呼吸を合わせてどういう指標をつくるか、この案ですね。きょうはいろいろお話がありましたが、それをどの辺で表現するか。ひとつわれわれのほうでも専門家の御意見をよく聞いて勉強したいと思いますけれども、皆さん方も一ひとつそういう指標をつくっていただいて、それが現場に実施されるようにしていただきたい。そういうことを考えますのは、こういう一つの具体的な例、最近の山陽特殊鋼から始まっての一連のものごとが非常に狂って、いろいろな現象があらわれておる。これは氷山の一角であるという見方と、これはほんの特殊な部分的な問題であって、それをもって全体を推察することは不適当である、こう両方に意見が分かれてくると思うのです。そこら辺の点は財界の現場におられる皆さんはどのようにお考えでありますか。第一の点は一般論として議論がいままで出ておりますから、お答えはいまの段階では必要ないかもしれません。けれども、後半の問題、これはどうでしょうか。私もこの問題について非常に迷っておるのです。
  41. 堀越禎三

    堀越参考人 私は大会社が寄っております団体を預かっております者として、あの事件は非常に不幸な事件でもありましたし、私は絶対氷山の一角だとは思っておりません。あの社長のああいう性格からくる一つの問題だというふうに思っております。私は常に企業は人だと思います。人さえしっかりしておれば、ああいう問題は起こらないと思います。いまのお話と関連いたしまして一つのルールといいますか、企業家の、社長のルールがあってほしいような感じがいたしますのは、あの特殊鋼から感じられますのは、すべての経営者がある計画を立てるときには、常に経理担当の者の手を通して決定していく。経理担当の者をのけて、経理担当の者が入らないところで一つの計画を決定するということを絶対にやらないということを長くやってきたある経営者は、非常に成功しております。私はやはりそういう面だと思うのであります。そういうふうなことをおのずから経営者がみな自覚してやれば、ああいうことは氷山の一角では絶対にないと私は思います。
  42. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)小委員 関連して。…−永野さん、山陽特殊鋼会社の事件は鉄鋼界にも一関連があるのですが、あなたの御意見はどうですか。
  43. 永野重雄

    永野参考人 一音で言いますと、いまの人間一人一人のものの考え方、性格が違うように、そういうたまたま回り合わせた経営者の場合にあり得ることですけれども、ただあの場合には、ものの将来の需給の観測といいますか、いいものをつくっておけば必ず売れるのだという感じが強く出過ぎて、それは需要に対するといいますか、自分の持ち得る力の限界を越えたといいますか、それがそういう結果になったのだと思います。実は私の所管の工場がたまたますぐそばにありまして、そんな関係でいろいろ相談を受けたのでございます。どうせできたものならそれを有効適切に使うのが必要ですから、技術的な指導はしてあげますということで、技術者のお手伝いをしたこともございます。ただ将来も一つともつと大きな設備をしたいのだという申し入れがありましたから、当時私は鉄鋼連の会長をいたしておりまして、全体の数字を若干つかんでおりましたので、それは少し早過ぎる、無謀に過ぎるからというのでとめた経緯もございます。あるいはそれをとめたことが多少資金ぐりは、建設資金も一流動資金も一区別があるわけではございませんので、若干の影響を与えられたことがあるかもしれませんが、いま考えてみましても、それをとめたことのほうがよかったと思っております。もつと負担が大きくなったのではないだろうかという感じがいたしますので、よかったといま思っております。ただそれの例が示しますように、先ほどちょうど統制論と自由主義経済に徹すべきという二つの考え方があるやに伺いましたけれども、ちょっとその中間のラインで考え方が非常にふくそうする問題があるのではないかと思いますのは、何でも自由経済一本でやればいいのだというちょっと野方図に各人の意欲にまかしてしまいますと、いまの例が出ましたので余分なことかも一しれませんが、関連して申しますと、非常に大きな需要を、いいものさえつくってやれば幾らでも一売れるのだと過信した場合に、そういうことが起きる。それが業界だけの負担ではなくて、近隣に大きな迷惑をかける。そこで判断資料につきましては、国の機関は相当大きな予算でもって、相当深く掘り下げて検討も一しておられるわけです。ことに海外の事情や何かは、一つ一つ企業ではわかりませんけれども一、国の機関で、これは外交機関なりジェトロ等を通ずればわかるものですから、そういう資料は微に入り細にわたって企業人に知らしていただきたい。そうすると企業人も一特殊な例は除きましてそういうものを材料にして、その中における自分の分野と申しますか、自分の責務と申しますか、それを判断し得る能力はあると思います。これがないなら経営者そのものの適格を欠いているのでありますから、問題外であります。したがいましてそういう材料は懇切丁寧に総合の材料を出して、その材料があってなおかつ判断がどういう結論を出すかという点は、非常に大事な問題だと思いますけれども、そうだとすれば私ども企業を守るために、同時に国にあるいは一般経済界に迷惑をかけないような施策をするであろうということを確信いたしまして、ただいまのようなことを申し上げておるわけです。ただ、いま言った、今度逆にこれがいいのだからこのとおりやれということになってきますと、人間はえてして依頼心を持ちがちですから、何とかしてくれるのだという意味で、よくするための最大限の創意くふうを出し得る場合もあるのではないかと思います。山登りの例で、通りやすい道をつくっていただきたい。イバラがあれば刈っていただきたい。石ころがあれば除いていただきたい。そうすれば自然みんながその道を通って行く。自由な気持ちでやっておりますから、みんなが情熱を注ぎます。そういうこうな御指導をしていただくのがいいのではない州と思います。
  44. 藤井勝志

    ○藤井小委員 これはちょっと関連質問ではございません。ちょっとお願いをして私いま中座さしていただきますが、先ほど永野参考人が公債発行論にちょっとお触れになった。私もこの問題についていろいろ考えておりますが、いまお話の何とか消化する市場を育成するという問題について、企業減税をそれに結びつけるといったこと、これは何か専門的に御検討されておるような機関があれば、ひとつ後刻御紹介願いまして、勉強させていただきたい。ちょっとお願いしておきます。どれで終わります。
  45. 永野重雄

    永野参考人 先ほど申しましたのは、これをどうして出さすかということは、広い観点から御検討をいただいております。いままた御検討いただくことを期待しておるわけですけれども、全体的に言いますと、そこに問題があるわけですから、その給源が自然公債を引き受けられるように変わっていくために、減税につながる。それと同様に、企業の形もよくなりますから、国としては財務比率から見て、かくのごとく処理できないものかという観点、及びそれは結局公債を最後に支払うのは次の時代といいますか、子孫といいますか、今日の日本経済の伸び方、あるいは社会資本を通じます道路、港湾等につきましても、少しでも早くよくすることが国際競争力をつける、また民生を向上できるという場合に、それを現代人だけの負担で負担し切れない場合には、将来の子孫の力を培養するもとに対する資金ですから、一部負担してもいいのではないだろうかという感じを持ったわけです。
  46. 毛利松平

    毛利委員長 春日委員、有馬委員、関連して佐藤委員が質問を要望されておりますが、時間は大体一時を目途としておりますので、質問者も参考人もそのおつもりで御協力願います。春日委員
  47. 春日一幸

    春日委員 きょうはわが国基幹産業の基本秩序について研習会みたいな形の懇談会ということでございますので、私もいろいろと伺いたいことがあるのですけれども、特に一つの基本的な考え方に集約して質問をし、御高見を拝聴したいと思うのであります。  きょうの当面する主要タイトルは、融資ルールあるいは投資ルール、増資ルールというような問題の周辺をめぐる問題だと思うのでありまするが、いま金融界でも、また堀越さんのほうでも、これを自主調整によって何らかのけじめをつけていこうというようなお考えのように伺っておるわけでございますが、私はそういうことが単なる自主調整で実際の効果をあげることができるであろうかどうか、これに多大の疑念を持っておるものでございます。というのは、現実の問題でいうならば、自主調整といったところで、企業間には現にあらわれておるようなシェア競争がございます。そうしてまた本質的には企業間の利害は全く相反しておる。そういうようなものが何ら拘束力を持たない自主調整で、円満にかつ効果をおさめていくことができるであろうか、これは多大の疑念を持っておる。もう一つは、そういうようなことを認めることによって、法的規制を差し控えていくというような形になると、実際の運営の面において、ボス支配をきたすような形にはならないか。現に金融なんかでも御承知のとおりでございまして、集中融資、偏向融資、系列融資、情実融資というようなものでございましょうね。この間なんか、吹原産業事件なんかで、その氷山の一角が露呈したというようなものですけれども、ボーリング場に何十億というような金を大銀行が出しておる。こんなものは融資ルールなんというものをつくったところで何もならない。だから、あなた方お三方を中心とする財界の大ボスとそれから金融界の大ボスとが、中央でサロントーキングをやって、そこできめたことを実行に移していくというようなことになりますと、一体国民の意思というものはどうなるかということでございます。  私は、銀行の金でも、これは預金者の金なんです。足りないところは、日本銀行から借りた金だとすれば、銀行家がそういうような資金源泉というものを全然念頭に置かないで、どこへ金を貸そうとわれわれの話し合いによってきまるのだ、こういうようなことは、実質にかんがみて、許されることではないと思うし、また皆さん方産業界の責任者としても、事業が大きければ大きいほど、その社会資本なり国家資本なり、そういうものの介入度が多いと思うのです。そういう事業運営についても、国家的責任とか社会的責任があるであろうが、それを単なる自主的な調整にまつということになると、国家の意思とか、国民的視野に立っての国民経済の必要性というものは、一体だれがそこの中で意見を述べるか、いかにして調整国民経済的規模においてはかり得るかという形になれば、これは私は疑義なきを得ないと思うのです。だから私は、いま堀越さんは特振法がぶっつぶれてうれしいということを言いましたが、しかし特振法はさまざまな欠陥ありといえども、いわゆる企業責任、それから企業に対して国家的規模における支援といいますか、支援と調整ですね。これは一個の片鱗が、完全なものでないにしても、そこに示されておったと思うのです。  だから、私がいま申し上げたいと思いますることは、自主調整によって、現在の経済のアンバランスを均衡の安定成長へはたして持っていくことができるかどうかということでございます。すなわち第一に、自主調整というものは、まず企業相互間の利害が相反するということ、それをそのまま全的に許すと、日本国の経済が一握りのボスの支配の手にゆだねられる心配はないかどうかということ、それからそういうことがかりにないとしても、こういうように国際経済が高度化しておりまする現状をふんまえて、そこの中に何らかの計画性というもの、日本の民族経済というか、日本の国家的経済という立場に立って、何らかの計画性というものを導入していくことの必要はないかどうか。そういうような国家的な意思をそこの中に導入していくことが必要でありとするならば、何らかの調整、国家的な一つの制御力を持つ。統制力と言わないまでも、一個の調整力を、国家的権力を加えていくことは必要なことではないか、こういうふうに思うのでありますが、私がいま申し上げましたことについて、ひとつ堀越親分からでもいいからおっしゃってもらいたい。
  48. 堀越禎三

    堀越参考人 いまボスということばを盛んにお使いになったのですが、私は財界のボスというような者がおるのかどうか存じませんが、実際のところ、いまのお話で伺っておりますると、何か財界の自主調整ということが、いかにも業界だけの利益を目標にして、非常に恣意にやっているのではないかというお話のように伺ったのでありますけれども、私は国としての一つのメルクマールといいますか、長期計画も出ておりますし、また中期計画も出ております。そしてまたはなはだ僭越ながら、通産省の産業構造審議会においては、私は審議会を預かり、その業界としての設備投資のあり方というものは出しておるわけです。そういうものの指標に基づいて自主調整をやっていくということが、われわれのいま考えておりますところでありますが、ボスが非常にかってなことをやるとおっしゃるわけですが、ちょっとことばが過ぎていはしないかという感じがするわけであります。
  49. 春日一幸

    春日委員 それはきょうは研修会の懇談会みたいなものだから、あなたのほうも言いたいことを言っておっても差しつかえないかもしれないけれども、私は実際の結果というものはそういうものじゃないと思うのです。この間、新聞に八幡製鉄の藤井丙午副社長が問わず語りに述べられておりましたが、例の増資抑制措置がとられてから、本社は何とかせざるを得ない、なぜかならば、わが社はすでに二千七百億円も借りておるのだ、これ以上金融に依存することはできないから増資するのだ。こういうような意味のことを言っておられた。一企業について二千七百億という融資、それからたしか私の記憶をもってすれば、丸善石油がお手あげしたときに銀行債務が五百億ですかね。この間山特鋼が手をあげたときに、七十億の資本金でもってかれこれ銀行債務を四百何十億じゃありませんか。こういうような集中融資、偏向融資、系列融資の支配競争からくるこういう傾向が、いま堀越さんが言われるように、何でもないのだ、これはやはり一個の計画があって、通産省のコントロールを得てやってきておるのだと言われるけれども、通産省のコントロールは、法律に基づかない単なる一個の行政指導であって、大体そんなことをやること自体が何ら——立憲法治国は法律に基づかざる行政府の権限行使は許されないと思うのです。だから、かってなことをやっているのだと思うのです。それをお互いに黙認しているだけのことだと思うのです。だからこういうような、いま日本経済金融が何といっても経済基盤になるけれども金融があんな形に現在になってきてしまっておる。三銭七厘のコールで借りて二銭で貸しておるというような、こういう逆ざやの金融をやっておって、これでは正常なる金融じゃないと思うのです。それで随所にそういうようなゆがみがあらわれてきておる。このことは、いままでやはり金融界産業界の首脳部が、いずれにしてもそれぞれ話し合いをされてやられた結果、こういう結果になってきたと思うのです。去年の四月、日特鋼、それからサンウェーブ、それから京都繊維、それから山特鋼と、こう中型企業もじゃんじゃんつぶれて、何百社という下請企業が倒れてきておる。こういうような一個の企業恐慌とも称すべき事態をあらわしてきたことは、これはやはり金融産業とが、両首脳部が話し合いをしてそのことを運んできたとはいわれておるけれども、その結果の総合大集積が現在の日本経済の実態とするならば、いままでのやり方が間違っておった、だから直さなければならない。何ほどかのプラス要因をこれに加えねばならぬとするならば、やはりこの間出された特振法のようなものを直して、すなわち重要産業基本法というようなものをつくって、そうして企業の社会的責務というものを明らかにしていかなければならぬのじゃないか。社会的責務というものがどういうものかといえば、企業の社会的責務は、まず従業員の生活を高めていく。完全雇用をはかっていく。それからいい品物を安くつくることによって、消費の利益の増大をはかっていくというようなことでありましょう。ところが現在その点に関しても、管理価格というものがあって、これはなかなか下がらない。よほど煮詰まってこなければ、管理価格があって、独占価格があって、それは下がってこない。消費者の利益というものをはかるための企業責務は、必ずしも果たされているとは考えがたい。それから株主の利益確保せねばならぬけれども、粉飾決算なんというものが、これはことごとくでないにしても、現に山陽特殊鋼においてはこれは歴然事実として暴露されておる。株主に対する企業家の責務も果たされておりません。だからこういうような実態にかんがみて、しかももう一つ忘れましたが、下請企業に対する支払い代金なんかも、大企業は二百日だ、百二十日だという代金を払っておるけれども、よそから品物を買って、そんな支払いを引き延ばしておくという企業家の道義、何と心得ておるか、ほんとうに憤慨せざるを得ないと思う。零細な下請企業は現金で支払い、現金で賃金を支払っておる。ところが資力のある者が発注者というような有位な立場の上にあぐらをかいて、そういうようなことをやっておる。公正な取引が行なわれておらない。  だから三首脳部が心を開いて御判断願わなければならぬのではないかと思われる点は、ほんとうに企業責任者に社会的責務を十分痛感せしめることのためには、あなた方お三方の精神的訓話みたいなもので、はたして実際効果があがっていくであろうかどうか。やはりこういうような場合には、自主的調整というのではなくして、やはり自由経済の妙味というものと、それから企業に対する計画性の効果というものとを加えて、そこに何らかの重要産業基本法とか、基本産業基本法とか、こういうような法律の中で資金計画もつくっていく、いろいろな企業家企業責任をはっきりと明示して、それに相当の社会的責務を負わしていく。これは進んで財界首脳部から研究されて、打ち出されてきてしかるべき段階ではないかと思うのですが、永野さん、御見解いかがでございますか。
  50. 永野重雄

    永野参考人 先ほど経団連の立場堀越さんも言いましたように、産業資金の部会というのは、結局これは経済人だけでなく、各方面の者が寄りまして、それでこれがいいであろうということを政府に出して、それで政府がそれを重要な参考にしていくわけでありまして、そういう考え方にいっていることは、もうすでに今日でもやっていることであると思います。ただ実施が満点であるかどうかという点については、生きものの経済界のことですから、まだ十分いき得ない面のあることを、われわれも認めざるを得ない点もあると思いますけれども考え方としてはそういうように思っております。  それからただいま春日議員のおっしゃいましたように、産業人、ことに大きな資金を使う大きな産業になれば、自然労働者の立場からいいましても、大ぜいの人を、しかも今日他の産業でも人手が足りないようなときに大きな人手をもらい、また資金国民蓄積の中から大きな金を出してもらうという立場もございますから、そういう立場もみんな考え合いまして、その責任を十分果たす努力はしておるつもりでございます。ただ先ほどおっしゃいましたように二、三の破綻をした事業、そういうのがあるのは、かって気ままにやっておるのではないだろうかということがあるから、したがっていま言った考え方はわかるのだけれども、それだけでは十分ではないというふうに伺ったのでございますけれども、いま言ったような大本がそうであるならば、いかなる規則をつくっても、世の中には例外で行動する者があるわけですから、それでそこだけでは片づかないのではないかと思います。要はいま言ったような企業家の自覚というものを徹底するようなお互いの励まし合い、これが大事だと思います。どうも考えてみますと、そこに帰一するのではないかと思います。繰り返すようですけれども、ただいまのような責任を果たすための努力、及び国がとっていただくある面の役割り、これについては十分していただく。その線に沿ってわれわれは企業人として責務を果たせるような最善の努力をすべく産業人同士が誓い合う、これは平素から心がけておるつもりではございます。だからこそ経団連とかあるいは経済同友会とか、その他もろもろの経団体は、最近では中核をそこに置いて共同勉強しておるようなことでございます。これを申し添えます。
  51. 春日一幸

    春日委員 この間も統計によって見ますと、わが国資本構成は、自分資本二二、三%、他人資本が七七、八%、こういうようなことになっておるというのでございますね。アメリカなんかの資本構成は大体四割対六割というようなことで、六割が自己資本であり、すなわち資本主義であるからには、やはり自分の資本の限界において事業が行なわれておる、こういうことが示されておると思うのですよ。ところが日本では自分の資本は二割二、三分で、他人の資本がその三倍以上だということになりますと、これは現実債権債務の責任は、最終的にその問題が別にあるといたしましても、しかし資本そのものは、事業活動の根源をなすものは、他人の資本によってその事業が大部分占められておるのだというこの事実関係の上に立てば、他人とはだれぞやといえば金融であり、金融とは何ぞやといえば預金者大衆であり、足らざるは日本銀行から借りた国家の金である。だとすれば、そういう資本の淵源を把握して、それらの人々の意思というものを企業の中にやはり介入せしめていく。こういうような考え方ですね。だから自由経済の中において、設備投資の計画性を国民経済にプラスを加えるという方向で何らかの社会的調整をはかっていく。しかしそれはあなた方の責任を滅却するものではなく、むろんそういう当事者の意見を尊重し、そしてそこの中にそういう国民経済的な政策を盛り込んでいって均衡をはかっていく。すでにこの間経団連で御反対があったとしても、結局はああいう特振法も出てきて、特振法は一たん流れてその後出てまいりませんけれども、これは私はあの概念というものは消滅したものじゃないと思うのです。だから私は、いずれかの機会に現状を是正することのための何らかの経済基本法というものが、すなわち重要産業基本法のごときものが国会の論議の日程にのぼってくると思うのです。単にここで、その前に、そうしてくれるな、われわれがセルフコントロールによって融資ルール投資ルールをつくっていくからと言われても、私は、われわれの経験をもってしては、皆さん方がおおむねそういうようなやり方をして現状になったのだから、現状を改革するとすれば、やはり何らかのプラスアルファを加えていかなければならぬのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。木川田さん、それについて何か別の御意見がございますか。
  52. 木川田一隆

    木川田参考人 前提お話条件、たとえば企業の社会的責任あるいは戦後の自由主義が一つの進歩と申しますか、変貌いたしまして、自由放任からさらに競争原理の上に協調というような問題を含めた基本の経営行動というような問題点、それからさらに近代産業社会の指向する能率主義、各国がいずれも個人個人の能率と幸福を願って進んでおるという観点、それからしますると、どうしても個人の自由、秩序のある中において個人の自由をできるだけ尊重し、伸ばそうというような傾向、これらの観点をすべて考えますと、先生のおっしゃるとおり、やはり経済活動の基本は秩序の中において自由濶達にやるのだという前提だけは同感でございます。われわれ経済同友会は何か空疎なことを盛んに言っておるように聞こえますが、着々とその傾向経済界一般のこの苦難を通じて実現の緒についておるわけでございます。これは一般的に浸透するということはなかなかの時日を要しましょうが、少なくともこうした諸多の内外の大きな情勢から見まして、どうしてもわれわれ自体が秩序をもって、秩序のルールの中で自由濶達に自分の能力を発揮しよう。そうでなければ国際的な競争力もパートナーシップとしての義務も果たせないという観点、これに初めて自主調整の問題が引っかかってまいるのでございます。自主調整は、できるできないという問題でなくて、やらねばならない新しい自由主義の一つの大きな根幹と存じます。したがいまして、できるかできないかという御質問でありますが、でかさねばならぬとわれわれ覚悟しておる次第でございます。したがいましてその上に立ちまするとき、強い国家権力とおっしゃいましたが、による調整というものは、当然考慮すべき問題である。ことばをかえますと、政府企業との関係は、どこまでも政府はわれわれ企業人の自由に活動できる条件を整備するという範囲の中にとどまるべきで、最近の政府の活動分野は非常に重大になってまいりましたが、しかもなおその限界は常に守っていただく、それが新しい自由の秩序の中における経済だろう、かように信じております。したがいまして私は、自主調整はやるべきである、ただしそれには社会的責任も能力の発揮も、大衆の幸福も個人個人の幸福も、みんなそこに集約した姿において実現すべきであるという意味で、先生の前段の御主張に賛成でございますが、結論が反対でございます。ただ先般つの提案としてわれわれ出したわけでございますが、政府経済の諸立法を——すべて過去のものでございます。現行のものです。これは過去のものであるいは戦時立法その他いま非常に転換して大きく条件の変わったときに、なおかつこれを実施しようというところに無理があるので、ドイツのようにやはり経済立法として新しい意味合いを込めた新しい経済立法にしていただきたいということを提案してございます。これらは先生とまた一つの相似た部面がございますが、必ずしも重要産業統制法ではございません。
  53. 春日一幸

    春日委員 わかりました。どうもありがとうございました。
  54. 毛利松平

    毛利委員長 有馬委員
  55. 有馬輝武

    ○有馬小委員 先ほどからのお三方の特に現在の経済安定成長路線に乗せる真摯な御発言に対して、敬意を表する次第でございます。  ここでちょっと最初に木川田さんにお伺いしたいと思いますことは、先ほど資金の偏在ということに触れられまして、地銀、相銀の問題等をあげられたわけでありますが、その資金の偏在ということをどういう角度でおっしゃったのか、お聞かせをいただきたいと思うのですが、現在のような形になっておるのは、やはり都市銀行の姿勢と地銀、相銀のそれぞれの姿勢の問題であって、私は資金の偏在というような形で見るべきものではないのじゃないかというような感じがいたしますので、どういう角度からおっしゃったのか、お聞かせいただきたいと思うのです。
  56. 木川田一隆

    木川田参考人 これはその前段に、日本経済の中の一つ資本的な弱点は、物的資本が非常に高まったわりあいに貨幣資本、いわゆる蓄積が少ない。この点が問題である。したがって量的な充実ということが先決問題であるということを所見として申し上げたのでありますが、その一つとしまして、その量の問題から見ますると、資金はやはり偏在しておる。たとえば都市近郊におきまして、いわゆる新しい工業化の振興は結局都市集中になりますので、都市の工業の所要資金が非常に需要が多いわりあいに、農村地方等における米の代金もございましょうし、その他の最近の社会的な生活のアップもございましょうし、そういう需要の少ない地方に金が集まって、需要の多い都市に金が少ないという現象を申し上げたわけでございます。
  57. 有馬輝武

    ○有馬小委員 本日議論を申し上げることは、これはかえって失礼になるかと思いますので……。ただそういう形で地銀、相銀が持っておるということではなくて、私さっき申し上げましたように、都市銀行の姿勢にも問題があるし、そしてあなた方から見られた偏在であって、これをぼくらから見ればちっとも偏在ではないような感じがいたしておりますので、この点だけを申し上げておきたいと思います。  それから先ほど結論的に産業界自主性について強調されたわけでありますが、いままで平岡委員、堀委員春日委員からもお話があったのですけれども、どうも私たち、皆さん方産業界の指導者の方々が、いまごろになって自主性ということを言われるので、ちょっとぴんとこないのであります。少なくとも池田内閣の高度成長の過程で、私は自主性を発揮され、そしてブレーキをかけられるのが筋ではなかったろうかと思うのでありますが、むしろシェアの拡大に狂奔されて、池田さんをかっかとさせて、いまごろになってから自主性だと言われるその立場がちょっとわかりませんので、そこら辺について木川田さんから、またこれは堀越さんからも御説明をいただきたいと思うのです。
  58. 木川田一隆

    木川田参考人 いまの問題でございますが、自主性の主張は、これは最近非常に強くなりましたが、われわれが主張したのは、もう高度成長の前から、いわゆる戦後の自由主義経済方向からしますと、能力発揮、個人個人の能力と幸福とを発揮させるという観点からしますと、どうしても個人を中心に生きねばならぬという民主社会の基本といたしまして、これを主張してまいったわけです。そして自主的にやろう。自主的にやらないから、政府の介入という問題が出ますので、政府介入を私は排撃するという前に、自分たちでやるべきことはやる。単に自己の防衛ばかりでなしに、自主的な立場から、国家的な立場からも経済を運営するというような社会的責任の問題も当然そこから出たわけでございまして、以前からわれわれは主張し、熱心にこれの実践に進みつつあったわけでございます。最近非常に経済の姿勢が各方面にくずれた姿が出てまいりましたので、この問題を大きく取り上げたことは、私はむしろ幸いでございまして、大いに御批判、論議をいただく筋合いのものだろうと思います。
  59. 堀越禎三

    堀越参考人 いまお話がございました高度成長のときになぜもう少しみずから反省しなかったかというお話でございますけれども高度成長のときにみなが乗ったと申しますよりは、私が設備投資の動向を見ておりますと、シェア競争というものがないとは申しません。けれどもあのときは世界の情勢の自由化というものに対する非常な認識だったわけです。ことしあたりからは、自由化に対処しなければならないということで、合理化投資を非常にしてきた。ここが今日非常に輸出が伸びている大きな原因なんです。あのときにもし経団連として、高度成長が行き過ぎだからということを言いましても、これはおそらく自由化というものに対処するためには、なかなか押えることはできなかったのではないかと思われます。それからわれわれが統制ということを非常にきらっておりますことは、法律をおつくりになった方が法律を運用していただけばいいのでありますけれども、法律というものは、でき上がりますと、その法律の文字をだれがこれを運用するかという問題になってくるわけです。法律の文字の運用が往々にして、全く経験のない、あまり社会的な経験を持たない人たちが運用するということに往々なりがちなんでございます。そこがわれわれの法律的統制を非常に警戒いたしておるところであります。そしてそういうことにならないように、ほんとうに自主調整をしなければいけないのではないか、これは木川田さんの言われたとおりであります。
  60. 有馬輝武

    ○有馬小委員 それから永野さんに最後にお伺いしたいと思うのですが、これは皆さん方も全部触れられた問題でありますが、融資ルール確立ということばもまたさっき木川田さんにお伺いしたようなことで、同じことばが、見る立場によっていろいろなニュアンスを持ってくるわけでございますね。ぼくらから見ておりますと、全銀協あたりでつくっておられる融資ルールというものについては、イコール選別融資というぐあいにしか受け取れませんので、そこら辺について産業界の指導者の方々としてどのような考え方を持っておられるか、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  61. 永野重雄

    永野参考人 そういう問題がございますので、先ほどちょっと話題にのぼりましたけれども、私どもの業界で話し合いをいたしております設備競争、シェア争いなんということから、自分自身のみならず、各方面に迷惑をかけるということをおそれまして、一応間接的には同じ国民全体の資金を使うのだから、賢明な使い方をしようではないかというのが、私ども設備調整の話を出しておる思想的というか、考え方のもとでございますが、似たようなことが政府にも考えられ、金融の方面にもまた産業界、おのおのにあるわけでありますけれども、私どもから言いますと資金を出すのは金融でございます。したがいまして金融人としましても、先ほどお話のように、各方面の預金を集めてそれを産業方面に出すわけでありますから、最も有効適切な使い方をせねばならぬ。またそのプライベート的措置かもしれませんけれども先ほどちょっと話題に出ましたように、一つ企業が破産をいたしますれば、一番大きな被害者は私でもございます。したがいましてその資金を有効適切に使うためには、資料を十分に持っていく必要があると思います。おそらく有力な銀行では調査網あるいは審査網を十分持っておると思いますけれども一、それ以上にその一つの業界は、一番いい資料をお互い同士持ち合っておるわけでありますから、ここで十分検討して、一番いい案に従って資金を裏づけされることが、資金の効果的利用のみならず、業界自身も金融界自身を守るためにも賢明な方途ではないでしょうか。その辺に相互の理解は理論的にも一致するわけですから、そこでまずわれわれで勉強して、その話し合いをしましようということにいたしておりますが、同時にこれは並行しまして、さらばといってそこで話が出れば、個々の企業の信用を無視してやっていいかという問題もございます。そこで相互に協調していく必要があろうかと思います。ただ先ほど政府のほうで関与する問題ですけれども、私はある程度関与していいと思うのです。ただその関与の方法が、障害を除去するという例を、山道の例をあげて申し上げたのですが、幾ら金融界あるいは個個の産業界が勉強しましても、この膨大な組織、膨大な資本を使っておる政府機構全体の調査資料がそろうわけはございませんから、そういう資料について十分に出していただいて、政府と話し合いをしつつ金融産業が共同研究して金融ルールの調整、ということばが当たるかどうかしりませんが、この問題を解決するのが一番賢明な方法ではないかというのが今日の私の気持ちでございます。
  62. 木村武千代

    ○木村(武)小委員 関連して一つ木川田さんにお願いいたしますが、先ほど資本蓄積源泉を培養する、これには政策減税を行なう、その資金のまた一つの常套としまして、公債を発行したらいかがなものか。ところがその公債を発行するという声が非常に大になってきたのでありますが、いろいろお話を承ると、現在の段階において公債を発行するところの環境をつくれという御意見があるのでございますが、いろいろございましょうけれども木川田さんには、ひとつ公債発行の環境としてどういうものがあるか、具体的な例を一、二示していただいたほうがいいと思うのですが、きょうのお話の中にはそれがございませんので、ちょっと一言承りたいと思います。
  63. 木川田一隆

    木川田参考人 減税に即応し、あるいは社会投資の充実のために公債を発行すべしという論でございますが、この問題は非常にデリケートな問題でございましたので、発言を差し控えたのでございます。それはわれわれとしましては、公債発行の条件整備が先行すべしという考え方を持っておるわけでございます。その公債発行の条件整備がまたこれがなかなかむずかしいわけでございまして、ことばをかえますれば、さっきの問題に戻るようですが、貨幣経済蓄積というものが民間的にできるということは、公債発行の民間消化の能力培養のためと……。
  64. 木村武千代

    ○木村(武)小委員 堂々めぐりのような感じがするのですが……。
  65. 木川田一隆

    木川田参考人 そこのところは非常にむずかしいので申し上げかねたわけであります。
  66. 木村武千代

    ○木村(武)小委員 鶏の問題と卵の問題のように感ずるのです。
  67. 木川田一隆

    木川田参考人 培養の問題がないと、どうしても一日銀の赤字公債になる危険性があると思いますので、この点は申し上げませんでした。
  68. 毛利松平

    毛利委員長 時間の関係がありますので、佐藤委員から一言。
  69. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)小委員 堀越さんにちょっと質問があるのですが、この前ちょうど参考人としておいでになるときに、あなた忙しくて来られなかったので、きょうたまたま顔を見たので一、二点ひとつお伺いしたいと思います。  毎外投資の問題で、あなたはウジミナスの問題を非常にいろいろやっておられるが、その経過なり現状なりについて、ぼくは一昨年堀君と一緒に行きまして現状を見まして、いろいろ情報が来たりするので、私らも非常に関心を持っておるのですが、その点どうなっていますか。時間がありませんから詳しいことは要りませんから、簡単に御説明ください。
  70. 堀越禎三

    堀越参考人 御承知のとおりことしの一月の初めやっと向こうと話し合いがつきまして、日本側から五十億出資する。それで三月末までに出資するという約束でありましたが、向こうの株主総会がおくれまして、四月の二十三日が払い込み期日ということになっておりまして、四月二十三日五十億円を送りました。しかしその中から向こうに対してこっちが持っております債権を差し引きまして、千四百万ドルに該当するのでありますけれども、約千万ドルを向こうに送りました。その千万ドルとそれからこっちの債権とを合わせまして千四百万ドル相当のものを出資として、向こうで登録してきました。その結果は全体の株式の二一・四六%ということになります。今度新たに、従来国庫から金を借りておりましたが、その国庫からの借り入れ金を資本金に繰り込みましたので、いまの資本の割合は向こうの開発銀行が五六%、それから日本が二一%、そして国庫が一二%、あとは非常に零細なものである、こういうことになっております。その三つが大きな株主ということになります。ただこれは五十万トンの生産は、八月に冷延設備が完成いたします。おそらく十月から冷延の薄板の製作が始まると思います。これはほとんど自動車に供給されるものであります。向こうは自動車需要が非常に大きいわけでございますから、十分消化能力があります。また現在非常に幸いなことには、最新の機械を持ってまいりましたので、質が非常にいいということで、アルゼンチンあたりには盛んに厚板あるいはスラブを買ってもらっております。そこでこの間世界銀行の方が調査に参りまして、ブラジルの鉄鋼業というものを調査いたしました。その結論が一九七〇年には七百万トンないし八百万トンの需要があるだろう。したがってウジミナスを早く二百万トンにしろ、こういう結論になっております。そのためには世界銀行から融資してもよろしいという結論になっております。いま専務を派遣しております。専務が実情を見て帰ってまいりますので、専務の話を聞きまして、私は六月の末、あるいは七月に向こうに参って、あとの百万トンにするにはどういう手順でやっていくか、一日も早く百万トンにしなければならぬと思いますので、そうしてどういう手順でやっていくか、日本側としてはそれにどういうふうに対処するかという問題を相談してきたいと考えております。これは百万トンになれば私は非常にいい会社になると思います。
  71. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)小委員 私、最近東南アジアに行きまして、マレーシアとかタイあたりの日本投資、これは相当いろいろな会社が行っておるのですが、私たち考えますと、ウジミナスは堀越さんも言われたように——私らが行ったときには非常に不安でありましたが、いままでは明るい見通しがついたということで安心したのですが、日本政府のやっておることと、それから産業に従事している人の関係もあるのですが、どうも無秩序ではないか。国家として海外投資をやるときに、もう少しちゃんとしたルールでもあり、またもう少し秩序のあるような投資をすべきではないかというようなことを感じておるのですが、堀越さんはどういうよにお考えになっておりますか、現状を率直に。
  72. 堀越禎三

    堀越参考人 日本人は海外投資というものになれていないということは率直に申し上げられると思います。昔、私は日本銀行におりました。日本銀行では海外、ニューヨークあるいはロンドンに駐在した者は一つのエリートになった。したがいまして私たちの間では和製重役ということばがありました。というのは、われわれ洋行から帰ってきた者は、和製で重役になった者についてはよほどことばを注意しないと、非常なコンプレックスを持っておられるぞという警戒ぎみでいった、そういうふうな空気があるのです。したがいまして外国にいくということは常に自分の出世につながるという空気であった。これは正金銀行ももちろんそうであった。しかし日本の業界ではそういう空気を持っておる事業会社というものは非常に少なかった。それが戦後急に海外投資、海外投資ということで出ていきましたので、非常に無経験であったということが確かに言えると私は思います。したがいまして向こうへいく人もなれてない、また行った人を待遇するすべも確立していないというようなことから、ある意味で蹉跌をしたものもあると思います。しかし今後はその辺、国として相当秩序づけられるのがほんとうではないかと思います。
  73. 永野重雄

    永野参考人 いまの堀越さんの発言に関連して。おっしゃるようなことがございます。ちょうど国内で過熱とか過当競争とかいうものがあるように、海外でもあるわけであります。こまかな例では二、三ございます。特に日本人はせり合うから、向こうから見て不当に悪条件を押しつけられてみたり、いろいろな影響を受けますので、最近おっしゃるような点から、むだなことをしないように、国民経済観点から一番賢明な行き方をしようじゃないかという話し合いをして、一緒にしようとか、共同事業にしようとかいうことも、ぽつぽつ話し合いが始まっております。お考えになることはわれわれとしても考えなければならない問題だと思います。
  74. 毛利松平

    毛利委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。小委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時七分散会