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1965-07-21 第48回国会 衆議院 大蔵委員会 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年七月二十一日(水曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 坊  秀男君 理事 山中 貞則君    理事 有馬 輝武君 理事 堀  昌雄君    理事 武藤 山治君       岩動 道行君    大泉 寛三君       木村 剛輔君    白浜 仁吉君       田中 正巳君    谷川 和穗君       西岡 武夫君    藤枝 泉介君       毛利 松平君    渡辺 栄一君       渡辺美智雄君    佐藤觀次郎君       只松 祐治君    日野 吉夫君       平岡忠次郎君    平林  剛君       横山 利秋君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  委員外出席者         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵政務次官  竹中 恒夫君         大蔵事務官         (大臣官房日本         専売公社監理         官)      半田  剛君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    塩崎  潤君         大蔵事務官         (主計局次長) 鳩山威一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         日本専売公社総         務理事         (企画部長)  武樋寅三郎君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      宇佐美 洵君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 七月二十一日  委員齋藤邦吉君及び地崎宇三郎辞任につき、  その補欠として田中正巳君及び白浜仁吉君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員白浜仁吉君及び田中正巳辞任につき、そ  の補欠として地崎宇三郎君及び齋藤邦吉君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計税制金融証券取引及び専売事業  に関する件  金融に関する件      ————◇—————
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制金融証券取引及び専売事業に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐藤觀次郎君。
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 福田大臣、早々でありますが、佐藤内閣財政政策についていろいろ国民疑惑を持っている点がたくさんあると思うのですが、その中でも公債を発行するといったような問題は、いつ発行するのか、また発行しないのかという問題が世間でいろいろ問題になっておるのです。福田さんは大蔵省の出身でありますし、専門家でありますが、この点について、どうも政府意見がネコの目のように変わると言われているわけです。こういう点について一体どういう企図を持っておられるのか、また、公債発行をやるとすれば、いつごろやられるのかという問題について、ひとつ率直な御意見を承りたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府として、いま経済の問題につきまして、二つの問題に取り組んでおるわけでございます。一つは、長期的な展望に立って、日本経済をどういうふうに運営していくかという問題、もう一つは、当面の不況をどういうふうに克服するか、こういう問題であります。  この二つの問題に関連をいたしまして公債問題というものが、論議せられるに至っておるのでありまするが、まず長期経済展望長期的な経済政策をどういう方向に持っていくかという問題に関連しての問題であります。  今日わが国の財政規模は非常に膨大化をいたしておるわけであります。戦前軍事費予算の約四割も占めたにもかかわらず、今日はそれが自衛隊というのでわずかに八%くらいに減っておる、それにもかかわらず、戦前財政規模に比べますと、今日の財政は四倍近くに膨張いたしておるわけであります。なぜ膨張をいたしておるかということを考えてみますと、一つは、戦後の科学技術の発展を背景とする経済環境整備、また生活環境整備というような、いわゆる社会開発投資拡大であります。それからもう一つは、社会保障制度への支出の増加、こういうことを一要因といたしまして財政規模がふくれ上がってきた結果であります。今後のことを考えてみますと、この傾向が続くであろうし、またそういう方向は、私は政府としても積極的に取り組んでいかなければならぬ方向ではなかろうかというふうに思うわけでございまするが、さてその財源を一体どういうふうに調達するか、こういう問題になるわけです。戦前はこの小さい規模予算の二割ないし三割くらいを公債をもって支弁する、したがって、税の負担は非常に軽かったわけでありますが、戦後は大体においてほとんど全部を税に依存するという税制をとっております。したがって、その膨大化された予算のほとんどすべてを税によって負担するのですから、国民に対する税の比率は非常に重い。戦前所得税納税者が七十万人であったものが、今日実に二千万人になっておるという一事をもってしてもこれは御了解願えると思うのでありますが、これからふえていく財政所要を戦後二十年間のように税をもってやっていくかということになると、私は、ここに非常に大きな問題があるのじゃないか、困難があるのじゃないか、戦後日本経済、また企業あるいは家計のあり方を見ましても、戦争で失われた資産、それを戦後二十年間まだ取り返すに至っていない、非常に底の浅い経済だといわれるゆえんのものは、この蓄積がないところにあるのじゃないか、先進国のように蓄積企業にも個人にも整えていくという考え方こそが、経済を安定する大きなかなめではないか、そういうことを考えます場合に、私は税一本で財政をささえるという考え方に対しまして、一つの変革を考うべき時期に到来しているのじゃないか、さように考えるわけであります。  そういう見地からいたしますると、何としても早く物価安定基調に持っていかなければならぬ。それと並行いたしまして通貨価値が安定するわけでありまするから、貯蓄は増強の方向に向います。税にかわるにこの増強される貯蓄を国家の所要にしばし活用する、こういう方式を考えてもいいのじゃないか、税と歳出が均衡するということばかりが健全な財政運営の姿じゃない、私はこういうふうに考えますので、そういう長期的な考え方からの公債発行ということをただいま構想をいたしておるわけであります。逐次これを具体化していきたいと思います。  それからもう一つ、いままた別の意味において、公債発行論というものがあります。それは、私がただいま申し上げました短期の問題、当面の景気を刺激しよう、こういう意味において、住宅を建設せい、あるいは道路を、そういう意味において公債を発行したらどうだというような議論があるわけでありまするが、この問題につきましては、私は、いま景気推移を見なければならぬ、また国の歳入歳出、当面の問題を総合的に考えなきゃならぬということで、まだ結論を得ておりません。そういう二つの問題があるということを御了承願いたいのであります。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 同じ佐藤内閣でも、前の田中大蔵大臣は、公債発行というものを禁句のようにしておったんですが、これをどういうように切りかえておられるか。同じいわゆる佐藤派といわれる中で、これくらい違ってくることはないと思うのですが、その点についての切りかえの道という問題をどう考えておられるかということも承りたいと思います。  減税もそれから景気政策もみんな同じ関連のあることでございますから、減税の問題で伺いたいと思うのですが、この前佐藤さんが総裁選挙のときに三千億の減税をやると言われた。しかし、実際は七百二十五億というようなわずかな減税で終わったのですが、ちょうど福田さんがアメリカに行っておられる間に、佐藤さんは、大蔵大臣のおらぬ中で、企業減税をするとか、あるいは大幅に減税するというようなことを盛んに言っておられますが、一体どういう根拠があって、この不況なおりに減税をするだけの余地があるのかということを私たちは非常に疑問に思うわけです。これは福田さんのお留守のときでございますから、御存じないかもしれませんけれども、でかでかと新聞に出ておる。これは東京都議会選挙関係じゃないかと思うほど盛んに言われておるわけです。それから参議院の選挙中にも盛んに減税減税と言われましたけれども減税なんかなかなかできるわけがないと思うのです。これは自然増収が減ってくるし、私たち一宮の税務署で聞いてみますと、法人税が大体三割か四割減だといわれております。これはおそらく福田さんも御存じだと思いますが、そういうようなときに、どらやって大幅の減税をし、どうやって企業減税をされるのかという根拠がわからないのでございますが、一体福田大蔵大臣はこれをどういうようにお考えになっておりますか、伺いたいと思います。
  6. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 佐藤総理が大幅な長期減税計画を立てる、こう申しておりますのは、ただいま私が申し上げました今後の財政金融政策あり方としての長期展望を申しておるのであります。つまり、大幅な減税をやる。もちろんお話のように、これをまかなうに経常財源、つまり租税収入などはなかなか窮屈であろうと思います。そういう際においては、ただいま私が申し上げましたように、民間資金をフルに活用する、こういう方途も考えなければならぬか、こういうふうに思いまするが、ともかくいま税が日本経済を正常化する上において非常なおもしになっておる、このおもしを取り除かなければならぬ、これは長期展望に立って、計画的にこれをやっていかなければならぬ、こういうことを言っておるのでありまして、これは佐藤総理が昨年の七月に自由民主党の総裁選挙に立候補した際に、三千億ということをおっしゃられたのですが、あれは単年度に三千億ということは常識としても考えられません。さて長期ということになりますれば、これが三年で三千億といえば小さいほうだし、五年といえばもっと小さい感じを持ちますし、これは、あのときのあの言い方は、大いに減税をするんだ、そういう気魄、意欲を示したものである、こういうふうに御了承を願いたいのであります。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 どうも政府は、池田さんでも佐藤さんでも、福田さんでもうそを言って困るのです。なぜうそだというと、所得倍増というのは、これは池田さんが主張されておったのですが、十年たって倍増になる、そんなことは言わぬでもいいけれども国民はそれでだまされて、一ぱい食ったという意見が非常に多いわけです。ですから、佐藤さんが三千億減税ということを、三年も四年もかかってやるというならいいけれども、それが三千億減税をやる、そういうような声に聞こえるので、これは政府の人は、政権を取っておるのだから、よほど慎重に、選挙の宣伝では困るのです。野党なら少しはいいと思う。しかし、少なくとも政権を取っておる人は実行力があるのですから、やればやれるはずなんですよ。そういう点、はなはだ遺憾だと思います。  そこで、一番問題になっているのはいまの景気の問題でありますが、全くそれは不景気で、目をおおうものがある。しかも、去年の九月ごろからずっと今日まで倒産は日を追うてますますふえてくるような傾向であります。こういう暗い状態がいつになったら明るくなるのか、いつになったら一体景気がよくなるかということについても、これは福田さんは専門家だから——田中さんなら私は無理な点はあると思うが、福田さんは大蔵省主税局長をやり、主計局長もやり、銀行局長までやった前歴の持ち主ですから、少なくとも国民がなるほどと納得するような答弁をしていただけると思いますが、ひとつ……。
  8. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま経済界が非常に沈滞状態にあるということは、これは御説のとおりでありまして、この沈滞は一体どこから出てくるのかと申しますと、私の見るところでは、過去における設備投資の過剰、それによる設備過剰状態がそうさしておるのだ。いま倒産というお話があります。あるいは株価の不安という問題もあります。中央地方を通じて財政が窮乏化するという問題もあります。あるいは企業収益力の低下というような問題もある。すべてこれは設備過剰状態から出ておる、こういうふうに思うわけであります。しかし、それにもかかわらず、わが日本の国全体として経済の動きというものは、なお上昇傾向にあるわけであります。その上昇傾向が非常に鈍ってきた、拡大から急に停滞期に転じておる、それが客企業に対しまして個々にいろいろ複雑な反響を及ぼしておる、その反響を受けました個々企業からいろいろな企業にそれがまた反射的に影響を及ぼしておるという状態で今日の不況がかもし出されておる、こういうふうに思うのでありまするが、私はこの設備過剰の状態に対しましては、当面どうしても需要の喚起の政策をとらなければたらない、かように考えておるのであります。そういう見地から、御承知のとおり、金融面においても、財政面においても、できる限りの施策を構じておるわけでありまするが、しかし同時に、これは企業のほうにおきましても、立ち上がりの気魄を持っていただきたい、こういうふうに思っておるわけであります。みずから立ち上がるという気魄がないのに、幾ら施しましても、その施しは効力を生じない。要するに、産業界と財界と、また政府の両方の努力が合致するところに必ず私は明るい将来が期待せられる。特に私が大きく、力強く思っておりますのは、輸出の好調である点であります。一月から五月までの輸出状態なんか見ますと、すばらしい状態でございまして、昨年の三割をこえるという状態である。国内で相当思い切った施策をいたしましても国際収支はびくともしない、こういう状態にありますがゆえに、私はこの経済の難局というものは、これはだんだんと明るい方向に持っていくことができる、かように確信をいたしております。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いろいろ政府反省も必要でありますけれども、しかし、盛んに各大臣がかってな放言をして、いかにもまだ何かなりそうなことを言っても、本質的には、いま福田さんが言われるように、貿易が伸びても貿易外収支がだいぶ赤字でございますから、そう思うようにいかないことはわかります。しかし、政府がそういう政策をやるというところはいいけれども本質的には、私は資本主義の行き詰まりや、いままでの池田さんの高度成長政策の失敗とか、いろいろ政府責任もずいぶんあると思うのです。これは民間のいろいろな面もありますけれども、私はそれは政府施策のまずさが今日の企業をどん底におとしいれた一つ原因だと思うのであります。今日政府保証債を出して景気刺激策をやるとか、あるいは住宅をたくさんつくるというようなことで、盛んに景気刺激をはかるというようなことは、これは一時的にはいいけれども本質的にはやはり本質に立ち直らなければなかなか日本経済はうまくいかないと思うのです。この点については、予算編成期になってきますが、大臣はどのようにお考えになっておられますか。こういう景気刺激策ということは、かえって将来に悪い影響を与えるのではないかと思いますが、その点は政府はどうお考えになっておりますか。
  10. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、経済運営の基本的な考え方として、常に国際収支というものを見詰めていかなければならぬ、これが最も大事な柱だ、こういうふうに思っておるわけであります。この国際収支をにらみながら、可能な限りにおいて景気回復対策をとる、こういうことかと思うのでありますが、そのとるべき程度等につきましては、これは経済界推移を見ながらやる、機動的にやる、こういうふうに考えておる次第であります。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから、いつも景気のバロメーターである証券界の現状は、福田さん御承知のように、幾ら山一証券を助けようと思っても、どんどん重荷が出てくる。手放しで応援をされておるようでありますが、しかし一般には、ああいう山一証券を援助するならば、中小証券はどうしてくれるのだという意見が非常にあると思うのです。こういう点について、やはり政府ははっきりした政策を示さないと非常に片手落ちになる。大きなやつならどんどん救済するけれども中小は捨ててもいいかという問題が起きて、非常に非難があると思うのですが、こういう点について政府はどのような方針でやっていかれるのか。これから証券会社の中で倒れるものがあったら、そういうものも山一と同じように救済されていくのかどうか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  12. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府山一証券に対して日銀法二十五条を発動したのは、山一証券を救済しようという趣旨ではないのです。山一証券に運用預かりをしておる大衆投資家を救済しようということと、同時に、山一証券というような規模会社混乱をするということになりますると、それが証券界全体に大きな影響を及ぼし、混乱を生ずる、こういうような見地から、まあ山一証券を窓口として証券界に救済の手を伸ばした、こういう性格のものと御承知願いたいと思うのであります。中小証券に対しまして何もしないじゃないかといわれまするが、中小証券といえども、これが証券全体に影響する大きな問題であるというようなものにつきましては、これはこの信用不安を防ぐというための施策は当然講じなければならぬ問題である、決して中小証券と大証券を区別して考えるわけじゃない。私ども気持ちといたしましては、むしろ中小証券の人の立場こそ、こういうような時世にはお気の毒であるという気持ちを持っていることを申し上げさせていただきます。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 気持ちだけじゃだめですよ。実際行なわなければだめだと思うのですが、それ以上のことは言いません。しかし、私は、聞くところによりますと、四大証券といえども昭和三十七年ころからすでに赤字を持っておったのにかかわらず、時の池田さんや田中さんたちが、いまそういうことをやられると困る、批判をされるということで、赤字であるということを紛飾させたというようなことを経済界人たちから聞いておるのです。少なくともそういうような事態があれば、私は、やはり政府責任があるから山一なんか助けるのは無理ないじゃないかと、うがち過ぎた意見が出るのじゃないかと思うのです。福田さんはそういうことを聞いておられたかどうか。私は、少なくともいまの日本のこういうような景気は、これは一朝一夕にこういう景気になったのではない。やはりいろいろな経済の積み重ねがこういうような不況原因になったと思う。最近はダウ千円を割るということがいわれております。こういうときに、どこまで一体山一などというような大きな証券を救済されていくのか。それは、結局国民の税金から支払わさせるのじゃないかというような危惧が生まれるわけであります。危惧だけならけっこうですが、実際はそういう赤字が出るということになるのであります。その点はどういうように考えておられますか、重ねてお伺いいたします。
  14. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四大証券損益計算池田さんや田中さんがすすめて粉飾をさせたというようなことは、私は聞いておりませんし、またあり得ざることであると思います。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから、アメリカからお帰りになって、おみやげを持ってこられたかどうか知りませんけれども、私たちは、先ほど大臣が言われたように、貿易を促進しなければならないということも大事だと思うのでありますが、その点について、中共貿易が問題になっておるし、日ソ貿易ということが問題になっておりますが、そういうものを前向きにやる意思があるかどうか、この一点をまず伺いたい。  それから、あと同僚議員の質問がありますので、時間がありませんから、もう一つ公定歩合の問題について伺いたい。この前も一厘、二厘絶対やらぬと言いながら、結局公定歩合の引き下げを日銀総裁にやらした。じりじりやっても効果がなかった。またやるのじゃないかということがいわれておりますが、公定歩合の問題も、日本経済本質上から考えて、思い切ってやるべきじゃないかということが一つ、それから第三点でございますが、私は、いままで銀行の問題について、絶えずいろいろ金融小委員会なんかでもやっておりましたし、今度佐竹さんが局長になられたので、一言申し上げますが、一体都市銀行あり方というものが、いままで非常に信用があったにもかかわらず、吹原事件のときから問題になってきたのでありますが、私はやはり姿勢を正すべき必要があると思う。これはこの際福田大蔵大臣に伺っておきたいと思いますが、ある銀行のごときは、本店より大きな支店をつくる。何か最近某銀行西荻窪にどえらい支店をつくったということを私は聞いております。こういうことが一体可能であるかどうか。私は、銀行というものは本質的にもっと姿勢を正すべき時世であるにもかかわらず、吹原事件の問題以来いろいろ調べてみますと、相当信用ある銀行が、われわれが想像した以上のことをやっておるということについて、驚きの目をみはったわけでございます。その後あなたは大蔵大臣になられたわけでありますが、一体こういう問題についてどのようにお考えになっておるのか。いまの銀行あり方でいいのかどうかということについて、私はここに相当疑惑があると思いますが、その三点について大蔵大臣からお伺いしたいと思います。
  16. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず公定歩合の問題は、これを下げる上げるということは、利害関係が非常に多い問題でありますので、これをあらかじめこういたしますというようなことは、とうていいたしかねることは御了承願えると思うのであります。  また、銀行あり方につきましては、吹原事件以来、私ども銀行自体大いに反省すべきものである、こういうふうに考えてきております。そういう見地から、全国の銀行に対しまして、こういう要領で反省をいたしてもらいたいという通達も出しておるような次第であります。この線によりまして、厳に戒めていっていただきたい、かように存じておる次第でございます。  なお、貿易の問題でございまするが、特に共産圏貿易をどうするか。いま共産圏貿易のウエートは、御承知のとおり六%台であります。その程度のものでございまするが、それにいたしましても、政経分離の原則のもとにおきましてこれが拡大されることはきわめて好ましいことである、そういう考えのもとに、これを積極的に政経を分離しながら進めていきたい、こういう考えであります。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これで終わります。
  18. 吉田重延

  19. 只松祐治

    只松委員 アメリカからお帰りになって初めての委員会でございますけれども、まず最初に、たいへん日本経済関連を持っており、したがって、そういう会議があったわけでありますが、アメリカ経済情勢をどういうふうにごらんになったか、ひとつお聞きをしておきたいと思います。
  20. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まずアメリカが言っていることを御紹介申し上げますが、アメリカ政府は、アメリカ経済につきまして非常に強気の見方をいたしておるのであります。昨年は四・八%の成長で、アメリカとしては非常な高成長だ、ことしはそれを上回る成長をするであろう、まあ総所得でいいますと六千六百億ドルくらいなものになるだろう、また設備投資、これなども非常に盛んでありまして、昨年に比べまして一二%以上の投資が行なわれるであろう、また国民の消費も堅実な伸びを示しておる、あらゆる指標が堅実であるのみならず、国際収支が非常に健全な傾向でありまして、一−三月におきましては赤字ではありましたが、四−六月におきましては黒字に転じておる、年度を通じまして国際収支は均衡を得られそうである、国際収支均衡方針はこれを堅持することにするが、国内におきましては、高度のこういう成長をここ当分の間持続し得るという確信を持っておる、こういう説明です。私どもそれを聞きまして、会議のうちそとにおきましていろいろ質問も試みてみたのでありますが、設備投資が一二%も毎年毎年繰り返し増加していくというような状況になると、将来に設備過剰を生ずるようなことはないか、わが日本の経験なんかから見まして、そういうことはないんだろうかというような質問をしてみますると、大体この一二%増の設備投資は、近代化、合理化投資であるというようなことであり、かつ、今日アメリカの全産業の稼働率は八九%くらいである、まだまだ拡張の余地があるので、そう心配はないというような説明をしております。また、日本の経験からいうと、経済がそういうふうに急に拡大すると、労働需給が逼迫してくることが見通されるのであるが、こういう点はどうかというようなことを言いますと、いま失業者は非常に減ってきておる、ことしは四・七%の失業率くらいになりそうだというようなことを言います。しかし、それにしてもまだまだ労働の失業のマージンというものはあるし、かたがたアメリカ政府としては、労働力開発計画というもの、つまり再訓練計画のようでありますが、これを進めておる、したがって労働供給力というものについては確信を持てる、こういうような説明でありまして、非常に堅調を誇っておるのでありますが、私ども見まして、おそらくここ当分の間アメリカ経済成長を続けるということにつきましては、どうもそういうふうに思えてならないのであります。ただヨーロッパ経済のほうが少し停滞ぎみでありますが、その影響を受けないとも限らない。それからまた、私が指摘したような、こういう過大投資がまた多少の設備過剰というような状態を生じないとも限るまい、そういうようなことから見まして、堅調を続けるであろうが、その堅調の中にも多少のアップ・アンド・ダウンといいますか、でこぼこというものが出てくることはやむを得ないんじゃないか、そういう見方をしてきたのであります。
  21. 只松祐治

    只松委員 まあ称賛とまでいかなくても、たいへんアメリカ経済に対していい見方をお持ちのようでございます。それにしてはアメリカの対日態度というものはきわめてきびしいと思うのです。また日本が、私たちから見るならば、ドル防衛の政策に追随をされておる、こういうことも私たちとしては二、画いたいわけでございます。  それはそれといたしまして、きょうはその問題ではなくて、一方国内はたいへんな不況でございます。これは全般にわたりまして論議するのは、二十五分でございますから、一方十分ぐらいずつの話しができませんから、なかなか各般にわたっては問題が討議できません。  資本主義の一番象徴的な面は証券の問題だと思います。御承知のように、証券界はたいへんな、まあ一種の混乱状態だと思います。池田内閣が発足しましたときに、池田さんとは経済政策について福田さんは意見が違ったわけでございますけれども、それにいたしましても、佐藤内閣は一連の責任があります。連関関係があるわけですが、池田内閣発足当時株価は幾らぐらいしておったというふうに御記憶になっておりますか。
  22. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 千百円ないし千二百円だったんじゃないかという記憶ですが、ばく然としております。
  23. 只松祐治

    只松委員 三十五年七月十九日現在でダウが千百十五円六十五銭、単純百六十七円四十銭、そのくらいです。現在は大体幾らぐらい……。
  24. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 きのう千三十九円でしたか、そんな程度でございます。
  25. 只松祐治

    只松委員 いま私が申し上げましたように、資本主義一つのバロメーター、経済のバロメーターがこの株価にあらわれておるわけであります。しかし、池田内閣発足当時は現在のように証券界に対する大きなてこ入ればなかったはずなんです。こういうてこ入れがなくて、なおかつ千百十五円を前後している。現在たいへんなてこ入れがあるにかかわらず当時を下回っておる。これは完全な高度経済成長政策の失敗、自民党の資本主義経済政策の失敗ではないか、こういうふうに私たちとしては思っておるわけです。大臣としては、いやそうではない、これは株価だけが特殊の現象でこういうふうになったのだ、こういうふうにお考えでございますか、それとも、やはり資本主義経済というものはたいへんな状態に陥っているんだ、こういうふうに株価全般の総合的な面からお考えになりますか、ひとつお聞きしたい。
  26. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 資本主義経済が、その基盤がゆらいでおるというふうな感じは持っておりません。いま株価が不振であるのは、一つは、何といっても根本的に日本経済が非常な過剰設備をかかえておる、その過剰設備が、しかも借金によって整えられてきた過剰設備で、借金をしょっておるのでありますから、これは収益が低下するのはあたりまえであります。収益力のない会社の株式に魅力があるはずがないのであります。そういうようなことからいたしまして、当面の会社収益ということを見る投資家が株価を低く評価するという傾向が出てくるのだろうと思います。それに加えまして、投資信託の解約が続いておる。投資信託会社は、その解約に備えて、持っておる株式を売り放すというようなことから株式の停迷というものが出てくるのじゃないかと考えまして、設備信託の解約につきましては、これに備えるために適当な金融措置を講じたのでありまするが、基本的な問題である収益力の問題、これに対しましては、いま当面経済不況を打開する、こういうために全力を傾けておる次第でございます。この問題が解決すると、株界の情勢もまた様相を変えてくるのではないか、そういうふうに見ております。
  27. 只松祐治

    只松委員 不振の原因、株の下落の原因は過剰設備にある、こういうお話でございます。まあこれは主要な原因一つです。しかし、この過剰設備というのは、裏を返せば、高度経済成長といって、何も資本家だけが勝手にやったのではなくて、池田内閣が盛んに高度経済成長政策を国是として推進してきたわけなんです。そこで、池田内閣とあなたは経済政策を異にしておりましたけれども、しかし自民党としてはこの高度経済成長政策を推進してきた。このたてまえからは高度経済成長政策は完全に失敗ではないか、株価にひとつあらわれたのを見ても、これはいま千三十円とおっしゃいましたけれども、あとでお聞きしたいと思いますが、直接間接に幾ら証券界にてこ入れを行なっておりますか、あるいは今後行なわなければならないわけですか。こういうことをしてやっと千三十円をささえておるのです。証券資本主義経済のバロメーターとして、そういうてこ入れをしないなら大体幾らになるとお思いですか。おそらく六、七百円になるだろう、こういうことがいわれておる。株が六、七百円になるということになれば、金融界はどんな状態になるとお思いですか。山一だけの倒産ではないわけです。だから、簡単に過剰設備だけで資本主義経済がゆらいでない。何か健全であるかのようなお話がございましたけれども証券界に対するこういう人為的なてこ入れというものをしなければ証券界はどえらいことになる。これは国会だから大蔵大臣としてなかなか答弁できないかもしれないけれども、少し静かに考えればそのことは明らかだと思います。私は完全に高度経済成長政策の失敗だと思うのです。  そこで、それではお尋ねいたしますが、現在まで証券界に直接間接どれだけ政府あるいは日銀等がてこ入れをしておるか、ひとつお知らせいただきたい。
  28. 松井直行

    ○松井説明員 流通市場対策といたしまして、三十九年中に共同証券が買い上げました株式が千九百億であります。四十年に入りまして、保有組合がことしの一−三月で千七百億、それからつい先般十五日に六百億の投資信託からの肩がわりを保有組合がやっております。これが市場対策で打たれた措置の全貌でございます。  それから信用秩序の維持のために現在まで運用預かりの引き出しに応じます緊急的な融資といたしまして、山一証券はじめ、もう一社に対して二百四、五十億の緊急融資が出ておるわけでございます。
  29. 只松祐治

    只松委員 政府関係で出しておるのだから、はっきりしてもらいたい。そのほかにいろいろ間接的に証券局のサゼスチョンで買い上げたり何かしたのがあると思いますが、この前堀さんのときにだいぶ詳しい御説明があったと思います。私はきょう議事録を持ってきておりませんが、そういうものがあったらひとつお答えいただきたいと思います。
  30. 松井直行

    ○松井説明員 すでに支出いたしました資金の全貌はその通りでございますが、この前の委員会のときにここで御説明申し上げましたのは、いま御質問の後半にありました、これ以上にさらにどういう手を用意しておるのかということであろうかと思います。それを申し上げたいと思います。  共同証券につきましては、さらに生保から二百五十億の借り入れ株をいたしております。これにつきまして、融資条件をどう見るかによりまして資金調達可能限度もいろいろ変わってまいりますが、これにより千億以上の用意があるわけでございます。さらに株式投信が持っております資産の中で公社債がございます。一部これもコールと同じように現金準備と見たいわけでありますが、市場環境その他からいいまして、これも同じようにコール準備と見るわけにはまいらない状況でございますので、これの肩がわり大体六百億の体制ができておるわけでございます。さらに保有組合につきましても、貸し付け条件の変更等によりまして、現在第三次として六百億の肩がわりを行ないましたが、条件いかんによりましては、六百億も含めまして千億近い資金調達能力が可能であるという体制を整備いたしたわけでございます。
  31. 只松祐治

    只松委員 いまお聞きしましただけでも現在まですでに五千億をこす、あるいはさらにいまから二千億以上、合わせて七千数百億の金というものが投資信託に投資をされ、あるいは今後される見通し、こういうことがほぼ明らかになったわけです。  大体この証券界というものは金融の費用調達の面を受け持っておりますので、これを混乱におとしいれることはたいへんなことでありますが、一応経済学的といいますか、常識的に申しますと、こういう面にだけこういうばく大な金を投資していく、これを人為的にささえていく、こういうことは資本主義経済の誤りである、本来なすべきことではないと思いますが、大臣はどうお考えですか。やはりこういうことをいま現実にせざるを得ないと思いますが、こういうことは正しいことだ、あたりまえなことだ、こういうふうにお思いでございますか。
  32. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 証券界に対しましてそういう措置をとること、これは非常に異例なことだと思います。つまり、いまの経済全般の落ち込みがきわめて異例な深度、幅を持っておる、それが端的に証券界にあらわれてきておる、こういうことに対処したものでありますが、私は自身の率直な考え方を申し上げますと、株式の値段が上がったり下がったりする、それにつきましてはそう苦には病んでいないのでありますが、しかしこれが証券界全体の不安につながるというような事態があると、これはたいへんであるという感覚を持っておるわけであります。いま証券局長から今後こういうふうな用意があるというふうに申し上げたわけでありますが、しかし、もしそういう不安人気があるのだ、そういうものが出そうだというような気配でもありますれば、これは政府、日銀総力をあげてこれに対処しなければならない、そういうふうに考えております。
  33. 只松祐治

    只松委員 時間がありませんので、証券問題一つを堀り下げて論議ができないわけでありますが、連日の新聞を見ましても、何かちょいと景気対策だ、何だかんだと御発表になっておられます。しかし、その御発表の中にもみずから矛盾を感じておられますように、たとえば国家予算の一部留保ということをいっており、これは刺激のために早期に使え、こういうことを言っておられる。しかし、あまり早期に使ってしまうと、今度は税の伸びがなかなか見通せない、こういうことで、補正予算を組むときもこれはえらいことになってしまう、こういうことで、その点も困るから、それじゃ公債を発行するとか、いろいろな矛盾に満ちた政策が出ておるわけですが、私が証券の問題を出したのは、こういうふうに根本的に日本経済というのはいま行き詰まっておるのだから、こういう小手先だけで——参議院選挙が終わりましたし、東京都議会選挙もあるししますから、政府としてはいろいろ何か減税太鼓もたたかなければならない、こういうことがあるかと思いますけれども国民的に非常にいま景気の問題を心配いたしております。したがって、こういう糊塗策だけではなくして、田中幹事長ではないけれども、少なくとも権力を持っている政府ですから、やはりひとつぜひもっと抜本的な景気対策というものを私は打ち立てていただきたい。こういう減税の問題にいたしましても、私たちしろらとでも全くナンセンスであるかのような減税政策——できるかできないかわからない、こういうものを出しておるけれども、そうではなくて、やはりもっと本質的な経済施策政府は樹立すべきである、こういうふうに私は思います。そのことを強くひとつ要望いたしたい。  証券問題の最後に、山一や何か、これはやむを得ないという皆さん方の御答弁でしょうが、証券といえども、あるいはほかの、たとえばこれが特殊の産業といたしますと、なおこういうことは明らかになってまいりますが、一つ企業にこうやって日銀なんかが直接融資をしていく、こういう前例を開くことは、これはいいことではないと思うのです。しかも日銀法拡大解釈いたしますと、「信用制度ノ保持」その他ということでこれはできないことはないかと思いますけれども、通常の日銀法の解釈では、こういうふうに一企業に直接融資するということは私は誤りであろう、あまりにも法の拡大解釈だ、こういうふうに思っておりますが、これを正しいとお思いですか。また今後もこういうことがあったら、証券だけではなくて、たとえばほかの製造工業等にも日録が直接融資をしていく、こう道を開く——私たちは逆に言うならば、それなら中小企業や零細企業にも日銀がひとつお貸しになったらどうです、こういうことを言いたいわけです。こういうほうは倒れほうだい、目をつぶってしまって、一企業だけはこういうことをやっておる、こういうことはたいへんけしからぬことだと思います。今後もこういうことをおやりになるつもりですか、もうこれでやめたいというお考えですか。
  34. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ああいう異例なことは、私としてはもうなるべく再びないようにと念願をいたしておるのですが、しかし信用の根本に関するような事態がありますれば、これはどうしても二十五条というものの発動ということは避けるわけにはいかない。そういう意味合いにおいてこそ私はこの二十五条というものがあるのじゃないか、しかし、あるからといって、それをみだりに使うということは、これは避けなければなりませんけれども、できる限り、そういうケースのないように経済政策を運営していくということこそが、私は基本的な考え方ではあるまいか、さように考えております。
  35. 只松祐治

    只松委員 時間がだんだんなくなってきましたので、きょうは私はほんとうは米価問題をお聞きしようかと思って、一時間くらい質問時間があると思って準備してきたのですが、時間がありませんので一つだけ伺いたい。本年度米価が一万六千三百七十五円になったわけですが、この結果六百五十億円新たに食管会計赤字がふえる、こういうことが言われておるわけです。そうすると、合わせて千七百十五億の食管会計赤字になる、こういうことになります。先ほどから申しますように、財源はない、なかなか税収の伸びもない、こういうことになりますと、当然にこれは消費者米価の値上げ、こういうことになる。政府内でもまだ意見の一致を見ておらないようですけれども大臣としてこれは年内に上げる、あるいは来年になって上げるかくらいの腹づもりというのはおおよそできておるのではないかと思いますけれども、消費者米価をいつごろお上げになりますか。もしおわかりになれば、大体どの程度の値幅を上げるかということをひとつお聞かせ願いたい。
  36. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 生産者米価の引き上げに伴いまして消費者米価をどうするかということは、これは国の財政を総合的に検討しなければならぬ、また同時に経済の見通し、特に物価の推移等も見なければならぬ、あらゆる角度から検討して結論を出すべきものだと思いますが、ただいまのところは、お尋ねではありますが、消費者米価の引き上げというものは考えておりません。
  37. 只松祐治

    只松委員 考えておらないとおっしゃるが、この前大臣がお見えではなかったので次官のほうにいろいろお尋ねをいたしました。値幅が大きいので、上げることは上げざるを得まい、こういうお話であったわけです。いまのところはないということは、年内にはしないということでございますか。IMFの増資、あるいは日韓の協力資金、災害対策、あるいは国民健保、あるいは公務員給与、こういうたいへん金の要る補正予算を必要とする面があるわけです。それと関連いたしまして食管会計は当然大きな問題になってくる。そうすると、おおよその推定といいますか、いつごろ上げてどうするくらいの腹がまえがないと、次の臨時国会には出さなければならないことになるが、まだそこまで予想が立っていないということですか。年内には上げないということですか。
  38. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま申し上げましたような総合的な検討がまだできる段階ではない、こういうことであります。
  39. 只松祐治

    只松委員 上げない、前にはそういうように聞き取ったのですが、いまのはわからないということですが、上げないのですか。それとも上げるか上げないかわからないということですか、どっちですか。
  40. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまのところは上げる考えはありません、こういうことであります。
  41. 只松祐治

    只松委員 時間もありませんし、あとから同僚議員からお尋ねがあるそうですが、私も一つだけ。と申しますのは、私は前々から専売公社のいろいろな交付金その他についてお尋ねをしたことがあるのですが、そのときも、どうも選挙その他にも使われておる、そういう話を聞いておるということを、私はこの席で質疑をしたことがある。ところが、現にそういうことで小林何がしという人の参議院選挙で非常な違反があって、そういうようなにおいが出てきておるようでありますけれども、事件は検察庁の手に渡っておりますから、事件の内容は聞きませんけれども、少なくともやはりこういう国家公務員の地位を利用したきわめて悪質なものが大蔵省管下に起こっておるわけでありますが、大臣はこれに対していかなるお考えをお持ちですか。このところだけ聞いておきます。
  42. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私もそのことを新聞で見まして、実はびっくりしまして、総裁にもそのいきさつ等を聞いてみたのであります。しかし、総裁にも実ははっきりしたことがわかっていない。ただ、ただいまお話しのような公務員の地位利用でありますとか、そういうような疑惑を受けるようなものが多数専売部内に出ましたことをまことに遺憾に思っておりまして、今後はそういうことがないように極力慎んでいかなければならぬ。私からも厳重にその旨を総裁に指示をいたしておる次第であります。
  43. 吉田重延

    吉田委員長 横山利秋君。
  44. 横山利秋

    ○横山委員 大臣は雌伏何年といいますか、今度光を沿びて大蔵大臣になられてどんなことをなさるか、各方面から非常な期待をされております。そしてあなたの人となりからいって、大臣が果敢断行ということをなさるであろうと世間は見ておるわけです。  そこで、私は二点お伺いをするのですが、まず第一の問題は、いま質問もありましたが、選挙違反に関する問題であります。あなたにお伺いしたいのですが、清水亘という人をあなたは御存じですか。
  45. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 承知しております。
  46. 横山利秋

    ○横山委員 清水亘氏は、御承知のように諸派でありまして、言うならば右翼に類する人であります。先般清水亘氏の奥さんが選挙違反に問われまして、いま検挙されておるという話を聞いております。その清水亘に対して、大蔵大臣福田赳夫氏が応援をなさっておるという事実が見られるわけでありますが、どういうことでございましょうか。
  47. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は清水さんという人を、私が自由民主党の幹事長をしておるとき知り合いになりまして、自来思いがけないときにぼつんぽつんとたずねるようなことで知っておりますが、別にその選挙を応援する——清水さんが選挙に出て当選できるとも思いません。したがいまして、これを応援するようなことはありません。
  48. 横山利秋

    ○横山委員 私が某地方の遊説に出かけました際、選挙のポスターに推薦人大蔵大臣福田赳夫と書いて、全県くまなく張ってある、これは何としたことですか。
  49. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 初めて伺うわけでありまして、私としてもまことに心外の至りであります。
  50. 横山利秋

    ○横山委員 心外と言われるけれども、これは少なくともあなたも公的な地位であり、一党の幹部であり、国務大臣であり大蔵大臣であるあなたが、全国に張りめぐらされておるそのポスターに自分の名前が使われておるということを、あなたはもちろん見て回らないかもしれませんけれども、だれかが自由民主党の人は見ておるわけです。自民党の人が私にあれは何だというわけです、私のほうが聞きたい、こういうわけです。全然あなたの耳に入らなかったということはよもあるまいと思うのです。何かの関係で入っておると思うのです。入っておって、それを何ら手配をしないというのは、これはまたどういうことであろうか、私はふしぎでかなわないのであります。何かあなたが、ああ、あいつのことだったら、おこったってしょうがないからやらしておけということではあるまいか、あるいはあなたの側近がそういうことになったのではあるまいか、そう言わせる何かがあるのではあるまいか、こういうふうにわれわれは感ずる。われわれは政治家でありますから、いろんな張りめぐらされた情報網その他でそれなりに推察をするわけでありますが、一般の国民から見れば、これはそんなことはわかりません。少なくともポスターに大蔵大臣福田赳夫氏が独立何とか党の諸派の、しかも右翼に属した清水亘氏の推薦人となっておる事実というものは見のがしがたいことであると言わなければなりません。あなたは初めて聞いたというなら、初めて聞いて、どういうふうに措置をなさるか、お伺いしたい。
  51. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は寝耳に水の話でありまして、そういうことがあることはまことに憤激にたえません。何とか処置を……。(横山委員「どうなさる」と呼ぶ。)とっさのことで、どうするかということはここで申し上げられませんが、さようなことに対しましては、でき得る限りの措置をとってみたい、そういうふうに考えております。
  52. 横山利秋

    ○横山委員 いま申しましたように、奥さんも選挙違反に問われておる、これは選挙事務所を選挙の前につくったということ、無検印のポスターを張ったということ、無検印のポスターの中にも推薦人福田赳夫氏があるわけです。こういうことは、私が冒頭に言いましたように、あなたがかってに自分の名前を使われた、ないしはかってに利用されたということだけでは、個人福田赳夫ならともかくとして、閣僚であり大蔵大臣である福田赳夫としては、かってに使われたでは済まされぬ。御自身の地位、御自身の名前というもの、常に身辺を清潔にしておいていただかねばならぬあなたが、いま適当な措置をとるとおっしゃるのでありますから、その措置は、どういうことだかよくお考えの上やっていただきたいと思います。  第二番目には、いま話がありました専売公社の選挙違反問題であります。たばこを吸わない日はあっても、専売公社の小林派の選挙違反の記事が新聞に載らない日はないですよ。そうして、たばこだけだと思ったら塩までです。塩なめさせてしばりつけたんでしょう。ほんとうにこれはもう全国津々浦々といっていいほどの選挙違反であります。一体これはどういうふうに大臣としては考えられるか。先ほどもちょっと聞いておれば、あなたはあとで聞いた、どういうことだと思っておるというくらいのことであります。これでは済みません。こんな前古未曽有というほど専売公社の機能がじゅうりんされて、次から次へと幹部が引っぱられて、そうしててんやわんやの大騒ぎをしておるときに、大蔵大臣が、私は聞きましたけれども、ようわかりませんでは、これは済みません。言うならば、果散断行、責任をとってほしい、監督大臣としての責任をとってほしいのであります。どうなさるのか、それはこれから伺うのでありますが、私の聞いたところによりますと——監理官が来ていらっしゃるからちょっと事情をお伺いしたいと思うのであります。  まず第一にお聞きしたいことは、何か私に言ってきた人の話を聞きますと、まず第一に、たばこ屋の認可がいままで二年であったが、今度三年になった。三年になって、今度の選挙です。三年おきに参議院選挙があるのですから、その選挙の直前になってぱっと出てくる、こういう話ですよ。うそかほんとか、認可の状況はどうなっておるか、一ぺん聞かしてほしい。
  53. 半田剛

    ○半田説明員 ただいまの横山委員の御質問は専売の免許更新の制度だと思います。たばこ専売法を見ましても、塩でも大体同じような規定がございますが、三年以内に更新するとなっております。しかし、それにつきまして横山委員の言われるように、その更新制で、それをもって選挙云々とおっしゃられますけれども、私もそれは新聞なりあるいは公社から聞いたわけでございますが、実際上はいま当局が捜査しておる段階であります。私たちとしては、実際上の通常の運営におきましては、大体が自動更新制になっております。法律上は更新制でありますが、大体は自動更新制になるような仕組みになっていると承っておりますので、私としてはそういうことはない、こういうふうに信じておる次第でございます。
  54. 横山利秋

    ○横山委員 それはあなたあいまいに言っていらっしゃるけれども、どうやら私の言うことが妥当らしい。言ってきた小売人の話が妥当らしい。三年で更新される自動更新制ではあるけれども、法律上はやはりもう一ぺんあらためて認可をする、三年ごとですからね。参議院選挙の直前に認可する、こういうふうに持っていったというのです。今度の問題でも、あれは二、三ヵ月や何かで認可できる自動更新のやつをずらしたと、こうある。専売公社の業務が忙しいとかなんとかいって、参議院選挙の直前まで持っていって、そこでやったというのです。これはたちが悪いですよ。どうですか、大臣おわかりだと思うのですが、この三年目、二年目、それが悪いとは言わないですよ。けれども、参議院選挙関連される期間といろものは、これは誤解や悪用が必ずつきまとう。善処してください。どうです。
  55. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そういうことはなるべく誤解のないようにいたすべきだと思います。
  56. 横山利秋

    ○横山委員 それは大臣にお約束願いまして、次はこういう話であります。  これは具体的な例の引用でありますからばかばかしい話でありますが、このたばこ屋さんはあるほかの候補者を——私そんなことはちっとも気がつかぬものですから、そのたばこ屋さんが、横山さん、私のところ認可取り消しになるらしい、それで何とかしてほしいと言ってきた。あなたのところは商売忙しいが、サービスはいいかと言ったら、忙しいことは忙しい。専売公社に聞いてみたら、接客態度が悪いと言う。一生懸命やらせるからひとつ何とかやってくれと言ったら、一年試行期間にいたしました、こう言う。そこまではよかったが、私はちょっとぼんやりしておった。あとで話がおさまってから聞いてみたら、そこはよその候補者の選挙事務所になっておった。ははあと思って、いろいろ事情を聞いてみたら、よその候補者——これは社会党じゃないのです、残念ながら自民党なんです。よその候補者の選挙事務所になって、もうそこで夢中になって一生懸命やっておったやつだから、ひとつやったれという気持がどうもあったようです。そんなことまで利用しておる。それから今度はたばこのケースです。認可のときにたばこのケースを備えつける。何か聞くところによりますと、たばこのケースが、専売公社の御指定のケースでないとぐあいが悪い。その御指定のケースは市価で買うよりも倍もかかるわけです。けれども、御指定のケースならちっとも文句はない。自分がつくって家具屋から持ってきてやると、あすこがいかぬ、ここを削れとかなんとか、必ず問題がある。私も聞いて驚いて、あきれ果てた。こういうようなこともやはり選挙関係がある。いまこういうことになりましたものですから、いろいろと調査をしてみますと、今度の選挙違反というものは全く言語道断と私には思われるような状況なんです。いま最後のトップのところへ問題が集結をしておるそうでありますけれども、私、きょう専売公社の総裁なり副総裁なりにおいで願って、総裁、副総裁としてのお考えを伺いたいと思っておったんだが、どうも敬遠されたらしいから、法務委員会へ来てもらいたいと思っている。けれども、それは法律上の問題である。監督上の問題として、こういうめちゃくちゃな状況について、大蔵大臣として一体どうなさるのか、御所見を伺いたい。
  57. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまお話のような疑惑を専売公社が受けるということはまことに遺憾千万であります。こういうことがないように厳重に措置したいと思います。
  58. 横山利秋

    ○横山委員 厳重にやるというと、一体どうなさるのですか。予算まで流用されているしらいですね。それはどういう方法でやるかというと、たばこのサービスの説明会ということに便乗して、そこでごあいさつされたり、頼まれたりするわけです。これは明らかに国民の税金が選挙に使われておるのですよ。もうわかり切ったことなんです。地位が利用されているのですよ。それから認可権が利用されているのですよ。税金や地位や認可権が一切利用されて、そして選挙に当選しておるわけです。明らかに国民をばかにしたやり方なんです。こういうようなことができないように、今後を期していろいろと具体的に措置されるかどうか、まず伺いたいのです。第二番目に、こういうようなことを起こした責任者は一体どうなるのだ、監督上の責任はどうなるのだ、それをおやりになるつもりか、やらぬつもりか、その二つをあなたに伺いたい。
  59. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま刑事事件になっております。これは本質的には刑事事件の成り行きを見なければならぬ問題でありまするが、しかし、さらばといって、行政的な監督の問題というものを妨げる趣旨ではないと思いますから、私は、こういうことが反復せられないように、まず行政問題として監理官をして事件をよく調べさせてみる。また、その調べに基づきまして、責任をどうするかというようなことは考えてみたいと思いますけれども、その後の問題は、その調査を待ってどうするということを考えるほかないと思います。
  60. 横山利秋

    ○横山委員 私は法務委員会委員でもありますから、念のために言うておきますが、起訴されて、裁判が決着つくまでその様子を見て、なんて言っておりますと、最高裁まで少なくとも数年かかるわけです。行政上の責任、監督上の責任というものは、国民の世論に対する責任をとるということなんですから、この裁判の結果を待ってなんて言っておったのでは、あなたがやらぬということですよ。その点をしかとあなたに善処をお願いしたい。  それから二番目の御質問は、減税の問題であります。一言に申しますと、一体大蔵大臣として減税に対する態度が誠実でないと私は思います。あなたの責任に全部嫁するつもりは決してありません。けれども、よく考えてみますと、三千億だという、次が一千億だという、次が国税と地方税と両方だという、その次は長期的な減税だという、どんどん身をかわしているわけです、あなたの減税についての態度は。どこが一体本音だと国民は聞きたいところなんです。こういうような歴年の減税態度というものはいままでありませんでした。一番最初は、それは総裁になったんだからとか、あるいは総裁になるための政策だとか、参議院選挙があるから何か言わなければならぬとか、そういう原因だとは思いますけれども、歴年減税をやる政府の態度なりあるいは政党の態度からこれは逸脱しておる。だから、あなた方いま何とおっしゃっても、どこか態度に不誠実な点があると私ども思うし、国民の皆さんも思っている。いまになっては、いま大臣の説明によりますと、短期的な明年度だけの減税長期的な減税で、そうして短期的なやつはもうだめですと、なるべく国民が文句を言わぬように長期的な減税で何とかするというふうに、もう予防的な態度で終始しているような気がします。これは誠実ではありません。もうこの際もっとはっきりと、減税についての基本的態度を明確にすべき段階だと思います。  したがって、その意味において私は二、三お伺いしたいと思うのでありますが、まず第一に長期的な方針です。短期、長期といったところで、本年税制調査会が答申をし、それから法律をつくるのでありますが、その中で長期的と無縁のものはないのですから、長期的に大蔵大臣として減税をどういうふうにするかという点で私は一、二伺いたいのですが、租税特別措置法を大なたをふるって、公平減税に邁進する意思があるかどうか。  それから第二番目に、前の大蔵大臣にお伺いしたのですが、本年度の減税措置によって中学を卒業して、そうして初めて就職した者の一万五千円くらいに初めて税金がかかる、そういう事態が生じました。それで大臣に、中学卒業生に税金がかかる、こういうばかげたことがあるかと言ったら、いやそうなっちゃった、こういうことです。それでここで大問題にいたしたわけでありますが、要するに、私は、長期減税は低額所得者の所得減税に中心を置くべきである、こういう考えでなければおかしいと思う。なるほど企業減税一つの方法だけれども長期的にはやはり低額所得者に減税をし、所得税で減税をして、そうして税金を出す層の数を少なくする、こういうふうに向かわなければならぬと思う。  第三番目に、間接税について一言もおっしゃらないのはどういうことか。間接税と直接税との関係をどういうふうにお考えなのか、問題としては三つ出しましたけれども、いま短期的な一千億以内だ、それは平年度だ、それで明年度はもっとがたんと下がる、おそらく四分の三か半分くらいになるでしょう。そうなったときの国民の反発をおそれるのあまり、何かわけのわからぬ、いつ実行するかもわからぬ長期減税に身を隠すならば、長期減税方向、大道というものを明らかになさるべきだ。もしもそんなことができない、明らかにしないというならば、税制調査会に答申をする前にああでもない、こうでもないと、かってなことは言うことを慎むべきだ、言った以上ははっきりすべきだ、こういうのが私の意見です。どうです。
  61. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私どもが言っておりますのは、先ほど申し上げましたように、長期並びに短期双方について言っているわけです。具体的な内容につきましては、私は税制調査会にこれをはかりたい。税制調査会は八月初めごろこれを開催いたしまして、こういう長期的な考えを持っているのだが、どういうふうにお考えでしょうか、また、内容はどういうふうにいたしたらよろしかろうか、こういうふうな諮問のいたし方をいたしたい、かように考えているわけであります。  それはそれといたしまして、いろいろ御質問があるようですから申し上げますが、租税特別措置法は、これはあくまで特別措置であります。したがって、これは特別措置をする必要がなくなれば廃止すべきものである、そういうふうに考えますけれども、ただいま私がさわりましたところでは、さして多額の削除をなし得るような状態ではないように見受けております。それから個人と企業のバランスをどうとるか、こういうお話でありますが、これはもとより私は所得税を中心にいたしたいという考えであります。しかし、ただいま企業が非常に蓄積が弱い、そういうようなことから経済界もいろいろな変動を来たす、こういうようなことを考えますと、企業減税もこれも軽視はできない、これにも一つ大きなウエートを置いていこう、こういう考えであります。  それから第三に、間接税と直接税の問題、間接税をもう少し増徴したらどうかという意見を言う人がありますが、なかなか適当な方法がないのであります。まあ私はある程度間接税ということを考えていいような気もするのでありますが、どうもいろいろ考えまして、私まだ適当な課税対象なり課税方法というものを発見できないという状態でございます。まあこのバランスについて特別どうこうするという考えは現在持っておりません。
  62. 横山利秋

    ○横山委員 長期減税ということが、いまお話のようなことであれば、まさに私どもが皮肉を言うわけじゃないけれども、明年度の減税規模があまりにも少ないので、国民の不満を買うのをそらすためにアドバルーンを上げた、それは何の方向規模考え方もきまっていない、こう考えてよろしいですか。
  63. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 さようなことではないのでありまして、先ほど申し上げましたように、戦後二十年租税に依存してきた日本財政あり方をこの辺で反省し、日本経済全体に寄与する方向への税制に持っていくべきではないか、そういう基本的な財政経済運営の態度から出発しているものであります。
  64. 横山利秋

    ○横山委員 そういう抽象的なことでは、大臣も私が納得すると思っておられないと思うのですが、どういう方向で、どういう減税規模で、どういうふうにやるかという骨格なりでもあなたの腹の中にいまないのですか。
  65. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 方向は非常に大幅な減税をいたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。つまり、いま個人なり企業を通じまして税が重い、それが企業、個人の蓄積を圧迫する。そこで、余裕を持ち得るような状態ですね、蓄積を持ち得るような状態をどうしてもつくりあげていきたい、これが私は今後の経済運営一つの大きな中心をなすべきものである、こういう考え方を持っておるわけであります。そういう意味合いを持ちまして、いままでも減税減税と言っておりますが、もう少し規模の大きい減税をやっていきたい、それを年次的、計画的にやっていきたい、こういう考えであります。
  66. 横山利秋

    ○横山委員 時間がございませんから不十分でありますが、いまの大臣の御答弁では非常に不満であります。また機会をあらためまして質問いたします。  最後に一つだけ明年度の減税について意向を聞きたいのでありますけれども、私の承知しておるところによりますと、明年度の自然増収は、本年度に比べますと、よくいってせいぜい三千億くらいではなかろうか、地方交付金やあるいは当然増や本年度の減税の標準化やあるいは新規の剰余金の減少等を勘定に入れますと、せいぜい自由財源四百億ないしはゼロということになると思うのです。そこへ平年度減税一千億をなさるというのであるから、とにかくこれはむずかしいことだと思われる。政府与党のベースではむずかしいことだと思われる。そうしますと、あくまで平年度国税、地方税を道じてとおっしゃっておるのだし、非常に逃げ道をつくっていらっしゃるのだから、初年度の国税は非常に少ないというふうに考えられる。そてれで私が聞きたいのは、この初年度において国税の減税規模はどのくらいになるか、その中で六十万円までは標準家族は無税にするというお約束があるんだから、それはもう動かない数字が出ておるわけですね。だから、その動かない数字は幾らくらいである、そしてそのほかの国税の減税規模は幾らくらいか、この点をひとつお伺いしたい。
  67. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま自由民主党と相談をいたしまして、来年の減税規模をどうするかということをきめておるわけなのですが、それはただいまお話のように、所得税の課税最低限を六十万円まで持っていく、こういうこと、それから来年において減税すべき額の規模は平年度中央地方を通じまして、一千億円以上、こういうことであります。その以上といいます額がどういうふうになりますか、一千億円プラスアルファになるかプラスゼロになるか、プラスアルファがどういうふうになるか、これはこれから四十一年度の予算の編成が始まるわけでありますが、財政需要、財政の需要に対する財源、そういうものと総合的に勘案いたしましてこれを進めていきたい。ただしかし、約束をしているような形になっております一千億円以上ということと、それから所得税の課税最低限を六十万円まで持っていくということは、いかなるケースにおきましてもこれはほうり込む、こういう考えであります。
  68. 横山利秋

    ○横山委員 最後に意見を宿し上げますが、平年度一千億以上かどうか知りませんが、一千億という規模は普通の減税ではない。減税でない、そう言っても過言ではない。そんなことなら主税局はもう開店休業で、遊んでおれ、だれでもやる。また福田さんでなくてもだれでもやれる、こう思われるのです。そんなことなら、大きな声で言いなさる必要はなかろう。しかも国税と地方税を含めて一千億、しかも平年度一千億だから、初年度はまるっきりさびしい限りである、大臣におなりになって初めて減税をやる態度としては。しかも、この手続論といいますか、三千億、一千億、それから国税地方税両方、それから長期減税に逃げたやり方、その手続論からいっても、まことに不評判きわまるものです。選挙も過ぎたことですから、この際新しい力をふるい起こして、いままでの選挙関係したものの言い方を全部やめて、オーソドックスに、まじめな態度で国民の納得の得られる規模減税をひとつ考えていただきたいことを希望して、私の質問を終わります。
  69. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。有馬輝武君。
  70. 有馬輝武

    ○有馬委員 ただいま横山君の質問に対しまして、選挙違反の件について御答弁がありました。横山君から質問がありましたことは、閣僚の一人として、大蔵大臣としてどう処理するか、また、事後の問題についてどのような態度で臨むかという意味での質問であったと思うのです。高級官僚の参議院あるいは衆議院への進出ということについては、これは決して排除すべきことではないと思います。ただその方法論として非常に問題があるのでして、ただ単に専売公社でたまたまあらわれましたけれども、これは一つの氷山の一角としてあらわれただけで、大臣も御承知のように、各省庁とも同じようなケースが他にも出ております。目に余るものがあります。とにかく重要な位置にある者が、選挙の前に用もないのに出張をする、そして下僚を集めて指示する——これは、具体的な例を出せとおっしゃれば幾らでも出しますけれども大臣のほうがよく御承知のはずであります。それで、私たちがお伺いしたいのは、こういう事態について、たとえば官僚がそのまま出るというようなことは避けて、二年なり三年なりおいてから立候補させるとか、そういう制限を設けるとか、何か具体的な答弁があってしかるべきだと思って私は大臣の答弁をお伺いしております。ところが、横山君の指摘をしましたように、司直の手を待ってとかというようなことでは、何もやらないということと同じなんです。ですから、私がお伺いしたいのは、やはり佐藤内閣として、この問題についてどのように取り組むのか、たまたま問題の起こったところの大臣として、ぼくは何らかの具体的な方途というものがあってしかるべきだと思うのです。この点についてぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  71. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まことにこういう事態が起こったのは遺憾に思っておるのですが、とにかく真相がはっきりすることが必要だと思うのです。先ほども申し上げましたが、大蔵省には専売公社監理官もおることでありますので、至急この問題の実情を行政監督の範囲内において調べさせてみる、その上でこれに対する反省の方法というものを考えてみたい、かように考えております。
  72. 有馬輝武

    ○有馬委員 実態は明らかなんですよ。もとより詳細に調べる必要もあるでしょう。がしかし、現在あらわれておる時点で考えなければならないことが多いんじゃないか、こういうことを申し上げておるのです。それは、調べればいろんなことが出てまいりますでしょう。しかし、そういったさまつ的な問題よりも、もっと根本的な問題がありはしないか。それに対して佐藤内閣としてどのように対処するか。政治の姿勢を正す、これが私は佐藤内閣としての一つの大きな目標だったと思うのです。それに対してほおかぶりして、司直の手によって明らかになり、あるいは事態をよく調べてからというのでは、私は説得力が全然ないんじゃないかと思うのです。その点をお伺いしているのです。
  73. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 おっしゃられることはよく私もわかります。わかりますが、私が申し上げておりますのは、まあ、いま問題になっておるのは現実の問題なんですから、この現実の問題につきましては、現にどういうことがあるんだろうか、これは行政監督の範囲内においてできる限りの調査をして、そうして善処をする、こういうことなんです。また、広く制度的に高級官僚の立候補制限をどうするか、こういうような問題は、私がいまここでお答えするわけにはまいらないのでございます。しかし、こういうことが再びないようにできる限りの反省はしておくべきである、かようなことを申し上げたいのであります。
  74. 吉田重延

    吉田委員長 武藤山治君。
  75. 武藤山治

    ○武藤委員 時間が非常に制限されておりますから簡単に質問をいたします。端的にお答えを願いたいと思います。  最初は景気不況状況の認識でありますが、私たちは、日本経済の状況を把握するには、企画庁の発表やあるいは日銀、あるいは経営者の見通し、こういうものにたよって一応日本経済の状況というものを認識をしているわけでありますが、本年、企画庁は、当初においては、六月ころから景気は上昇するという見通しを月例報告で立てておった。五月になると、七、八月ころには景気は回復するだろうといっておった。ところが、今度は六月の月例報告を見ると、国内需要の増大は予想できない状況にあるといい出している。とうとう七月からは、もう見通しは書かない。企画庁の見通しが当たったためしがない。こういう実情であります。そこで、私は大臣アメリカへ行っている留守に大蔵省の役人に、一体経済の見通しをどう把握しているんだ、景気は底をついているのか、上昇に転換をするきざしというものは一体あるのか、そこらについて、大蔵省独自の判断は一体那辺にあるのかという質問をしたわけでありますが、大臣でなければそういう判断が言えないということで、的確な答えがもらえなかったわけでありますが、大臣は、今日の不況状況というものは底をついているのかどうなのか、どういう認識をされておりますか、端的にひとつお示し願いたいと思います。
  76. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 経済の現状につきましては、私はこれを非常に深刻に見ておるわけであります。しかし、今日の状態をもって底にしたい、こういうことから、いま景気対策というものに熱意を持って取り組んでおるような次第であります。この景気対策は、先ほども申し上げたのでありますが、国際収支の状況が非常に堅実でありますから、相当のことができます。したがいまして、私はこれを底として逐次つま先上がりの明るさを取り戻していくことが可能である、かように考えております。
  77. 武藤山治

    ○武藤委員 大臣は、現状を底にしたいという期待感でありますが、一体科学的にいまを底にしたいという期待どおりに実勢が動くのかどうかというところに問題があるわけであります。大臣も御承知のように、五月は四百五十件の企業倒産をしておる。六月はさらに五百二十六件にふえた。銀行取引停止処分においても、五月は九百三十二件、三月が九百三十三件ですから、取引停止処分も横ばいをいたしておりまして、最も悪かったときとずっと同じような趨勢をたどっておる。こういう趨勢は、現状においては低下する傾向にあるのか。七月の大蔵省の現在の情勢判断では、一体これは低下の傾向にあるのか、それとも倒産は当分横ばいでいくのか、そういう見通しについて大臣はどう把握されておりますか。
  78. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 本年の景気全体として見ますと、とにかく、いわゆるマクロ的には名目で七、八%くらいの成長があるというふうに見るのが通説のようでございますが。いわゆるミクロ的という個々企業の問題になりますと、これはいろいろ激しい経済変動期でありまするから、いろいろとでこぼこが出てきておるようであります。そういうようなことで倒産が一体どうなるだろうか、こういうような傾向は、具体的にふえるか減るか横ばいかということになると、的確には私お答えしにくいのでありますが、景気全体といたしましては、もう大体この辺が底であろう、底にしなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  79. 武藤山治

    ○武藤委員 私どもの判断では、まだ景気が底をついたという判断ではなく、もっと悪くなるだろう、もうちょっとひどくなるだろうという心配を実はいたしておるのであります。御承知のように、四、五、六月の鉱工業生産は低下の傾向をたどっておる。出荷の傾向も低下の傾向をたどっておる。ところが、在庫のほうは逆にふえる傾向になっておる。在庫は減らない。こういうような実勢をどう直し、どう転換をし、どういう目標に持っていければ景気は上昇に向かったと言えるか。一体大臣はどういう程度にいまの経済の状況が変われば景気は上昇に向いた、回復に向かった、こういうことを国民に言明できるのですか、その認識をどの程度に置いておるのですか。
  80. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いまの経済情勢は、大数的な観察をいたしますと、消費は、昨年よりは伸びは落ちておるけれども、それにいたしましても九%というような程度の伸びを示しておるわけであります。それから特に住宅投資なんかは一五、六%も伸びそうである、貿易方面におきましても非常に堅調でございます。また財政支出も予定されたとおりにただいま進行をいたしておるような次第でございます。総合しますと、日本経済全体のあれは伸びておるわけです。ところが、いままでは非常に高度に伸びてきた、それが停滞的な伸び方になってきた。そこで、個々企業になりますと、いろいろな変動を受けておるわけであります。そういうようなことから非常に不況状態というものがかもし出されておる、こういうふうに見るわけでありますが、そういう諸指標がだんだんと改善される傾向になってくるということが、私は経済が上向きになるということであろうというふうに存じます。
  81. 武藤山治

    ○武藤委員 あなたが借りぎぬの池田内閣から新しい佐藤内閣にかわった新大臣として、いままで一割の一般会計予算の留保を指示をしたあなたの見識からするならば、そう簡単に動かせない指示が、今回六百五十億円は支出をする、留保は三百五十億円にとどめる、こう百八十度の転換をいたさねばならなかった、これは、需要を造出する政策をとらざるを得ないという一つのあらわれでありますけれども、需要造出策として、大蔵省としては財源上非常にむずかしいときにもかかわらず、当面緊急な需要増大をはからなければならない。聞くところよると、一般会計予算、財投あるいは三公庫に対する融資、さらに三公社五現業、地方公共団体の予算の繰り上げ支出、こういうものを大蔵省としては期待をし、すでに通達をしておるようであります。一体これらの大蔵省が直ちに通達をして現実に繰り上げ支出される額というのは、総額でどのくらいを目安にしておるのですか。
  82. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一般会計におきまして大体一千億円であります。それから財政投融資計画で繰り上げをするものが千三百億円くらいになると思うのであります。さらに追加支出を財政投融資においていたすものが二百八十億円以上になるわけです。なお、その他いろいろのことを考えておりますが、以上になるわけです。それから、さらに今後の経済推移に応じましていろいろと考えてみたい、かように存じておるのであります。
  83. 武藤山治

    ○武藤委員 大臣が留守中に、私の質問に対して次会までには三公社五現業、地方公共団体、これに対しても政府は要請をする、こういう答弁があったわけでありますが、これらの概数は大体どの程度見通しがつくのですか。
  84. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 御質問のように、前回の委員会におきまして武藤委員から資料の御要求がありました。私ども鋭意現在資料を作成中でございます。何ぶん国の一般会計あるいは財政投融資計画と違いまして、三公社五現業その他につきましての事業の繰り上げは、現在のところまだ十分把握するに至っておりません。さらに地方団体につきましても、先般申し上げましたように、自治省から国の措置に準じて繰り上げ支出するように、こういう要請をしたところでございます。団体数約三千もございまして、これが具体的にまだ確実に把握しませんが、かりに地方財政計画に基づきまして国のような措置に準じて繰り上げ支出が行なわれるならば、約八百億円くらいの繰り上げ支出が期待されるのではないか、このような見通しでございます。しかし、これは二つの仮定を置いておろ資料でございますので、いずれまた詳細でき上がりましたら、武藤委員のほうに御連絡申し上げましてお答え申し上げたい、かように存じております。
  85. 武藤山治

    ○武藤委員 ただいまの政府の発表を見ても四、五千億円、この程度ですね。下村治博士によると、今日の需要不足というのは三兆円だ。設備投資が多過ぎたのか、あるいは国民が買い控えておるのか、鶏と卵の論争でありましょうが、いずれにしても、とにかく需要を喚起しなければ景気は浮揚しない。景気を浮揚させるために一体どこまでの繰り上げ支出なり、あるいは新規に、藤山企画庁長官が言うような住宅投資一千億円を思い切ってこれから政府保証債を発行する、しかもこの四十年度内にこれをやる、来年回しではない、こういう政策を実行いたしましても、下村さんの言う三兆円にはほど遠い。あるいは銀行筋の言う一兆六千億円程度の需要不足ではないかとも言われておるが、三兆と一兆六千億の幅を見ても、とにかくいまのような状態では、景気浮揚力としてこれが景気回復、上昇に向かう大きな潤滑油になるかどうか、こういう点の心配を私はしておるわけです。大臣はどう考えておりますか。
  86. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 幾らの需要を喚起したら浮揚力になるかということになりますと、これは非常にむずかしい問題で、私にも見当はつきません。しかしながら、ともかく金融は緩和し、金融面施策につきましては相当手は打ったつもりでございます。残されておる手は財政方面である。財政方面において経済の動向とにらみ合わせながらできる限りの手を打つ、こういう以外にないのではないかと考えております。ただ、これはいつも国際収支という点は十分にらみながらやらなければならぬ。これは幾らでも財政支出すれば、それは景気はよくなりますが、しかしそれにも限度があるわけであります。しかし、その限度内においてはできる限りの手を打たせていただきたい、かように考えております。
  87. 武藤山治

    ○武藤委員 たいへん不満足な答弁でありますが、時間に際限がありますから先に進んでいきますけれども住宅投資一千億円の新規政府保証債の発行はやるのですか、やらないのですか。
  88. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまではやるともやらないとも申し上げかねるのでありますが、経済界推移を見てまた考えていくべき問題である、かように考えております。
  89. 武藤山治

    ○武藤委員 けさの日本経済新聞を見ても、すでに佐藤総理大臣と打ち合わせをしてこれをやるというようなことが新聞に発表されております。それを、今度国会になると、やるともやらぬともまだきまらぬ、問題は二十六日の何とか政策会議できめると逃げようとするのでありましょうが、国民は心理的に今日の不況感というものに襲われておるのですから、大臣、憶病にならずに、これはやろう、これはいい政策だと思うものは果敢にここで全国民に声明するくらいの土性骨がなければ、この不況はなかなか乗り切れぬですよ。国民の心理的な効果をねらわなかったらだめです。いままでは人間不在の数字の経済政策をやってきたところに間違いがあるのですから、今度は人間不在じゃなくて、いつも国民が存在するような立場で大臣は言明せぬと私はいかぬと思うのです。あなたも人間不在の池田政策を批判したのですから、ここらで転換しなければならぬと思うのです。そこで私はあなたに提案したいのでありますが、新しく住宅を建設するといって一千億出しても、土地も見つけなければならぬ、住宅公団や設計者やいろいろな問題で、なかなかそれが有効需要になって末端に流れるというのには時間がかかると思うわけですが、私は、直ちにこれが全国に平らに流れるような住宅問題というものが考えられると思う。たとえば、農家の麦わらぶき解消の資金です。現在麦わら屋根をかわら屋根にするのに農協を通じて四十万円まで貸してくれるわけです。しかし、それには全体のワクが非常に狭いために、農民が希望してもなかなか借りられないわけであります。今日信連やあるいは中央団体はかなりの余裕資金を持っておるわけで、いままでコールにどんどん回しておるわけですから、この一年間は、特に大蔵大臣は、農家の麦わらぶきを全部解消するのだというくらいの意気込みで、この金をどっと使わせたらどうですか。農家も喜ぶし、農家の衛生上もいいし、火災の危険もなくなるし、一石三鳥ですよ。かわら屋ももうかるでしょうが、土建屋さんももうかる。これは全国のすみずみに平らに金が流れることになり、有効需要喚起の方策としては非常にいい案だと思いますが、大臣のお考え、いかがですか。群馬県にもだいぶまだ麦わら屋根がありますが……。
  90. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず第一に、武藤委員が、きのう私が総理と会って住宅一千億円の建設計画のために政府保証債を出すのだという話が新聞に出ておるということでございますが、それは何かの見間違いでございまして、私の関知せざるところであり、また新聞を私も一応見ましたけれども、別にそういうことは出ておりません。あれは藤山企画庁長官が何かそういう構想をお持ちだと出ておるようでございます。ただいまの農家住宅の問題につきましても、私は、これは従来から非常に関心を持っておる問題であります。しかし、それをいま景気対策として取り上げるべき問題であるかどうかということにつきましては、これは慎重に考えてみたい、かように存じます。
  91. 武藤山治

    ○武藤委員 なぜ慎重に考える必要があるのですか。何か弊害がありますか。そのマイナスの面があるとするならば、その感じをひとつ述べてください。
  92. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 マイナスということではございませんけれども景気に及ぼす効果等も考えなければいかぬ、こういう意味合いでございます。
  93. 武藤山治

    ○武藤委員 藤山さんの構想である住宅投資一千億円をやるなら、これと並行していまの麦わら屋根解消をやったらなお効果があるのですから、大臣、十分ひとつその点は、あなたも農家の票をたくさんもらっておるのですから、この際は農家の近代化という問題を含めて大いに考えてもらいたい。  それから次に、大臣アメリカに行って日米経済委員会に出席をして、アメリカ側から何か極東の緊迫せる情勢に関連した経済問題の話し合いがおそらく私はあったと思うのですが、過般の日本の新聞に、アメリカが軍需品を日本で大量に調達をしたいという報道がなされました。そういたしますと、各新聞に、一般市民から死の商人の手助けをすることは困るという投書が、私が読んだだけでも朝日、毎日と出ておりました。それは六月二十八日でございますか、米国防省特別補佐官のブリックという人が明らかにしたのですが、それは米軍が日本で調達する兵器、軍需物資について、日本政府が業界に対し円で支払い、米軍がその立てかえ金に見合う米国製兵器を日本の自衛隊に提供するという方針で、これは両国にとってドルの海外流出を防ぐのみならず、それぞれの軍需産業に対する需要喚起という二重の効果をねらったものとされて注目されている。極東でアメリカ軍が必要とする軍需品を日本で製造しよう、こういう意向が、日米委員会に行って、アメリカ側からほのめかされた事実があるかどうか。この不況のときだから、待ってましたとばかりこれに飛びつくようでは、私としては困ると思うのでありますが、そういうアメリカ側がすでに日本の自衛隊に申し入れている問題について、日米委員会に出席したときに、あなたは何もそういう話は聞いておらぬですか。ないとして、これからもしあったら、あなたの態度としては一体どういたしますか。
  94. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 アメリカに参りまして、アメリカ特需の話は、私の関係する範囲内においては全然出ておりません。
  95. 武藤山治

    ○武藤委員 次に、経済の大きな目標あるいは観点としておかなければならないといわれている問題点は輸出の振興、これはどうやら成功いたしております。消費者の物価安定、これはどうも佐藤内閣においてもさっぱり効果があがらぬという方向に進んでいる。中小企業の育成、この柱も、どうも倒産がばたばた、銀行取引停止が一千件に及ぼうとしている、これもどうも佐藤内閣は失敗をしている。資本市場の育成、これもどうも、金をばんばん出しているがダウ平均は落ち込む一方、千二百円ダウ平均防衛もついに失敗、今度は千円台を守れるかどうかという問題が当面の心配であります。こう見てみますと、佐藤内閣長期政策の目標として掲げてある中で、どうやら拍手が送れるのは輸出の振興程度で、あとはほとんどもう軒並み経済政策は失敗の状態であります。もちろんあなたの責任じゃない。前の大蔵大臣が少々、私に言わせるならば経済政策に対する甘さがあった。そういう点からこういう結果に相なったわけでありますが、まず第二番目の消費者物価安定について、一体大蔵省はき然とした態度でやれるのかどうか、閣議の中であなたはがんばれるのかどうか、一まつの不安を持つのであります。最近私鉄大手十四社が運賃の値上げを運輸省に申請しております。帝都高速度交通営団、地下鉄も三〇%の値上げを運輸省に申請をいたしたようであります。これでは軒並また諸物価がだっと上がるという見通しになる。こういうような値上げムードに対して、大蔵大臣はこれを閣議の中で阻止するだけの勇気を持って努力をいたしますか、どうでしょう。
  96. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 物価の問題は、私は政府の最大の課題の一つであると、こういうふうな意識を持って取り組んでいきたいと思います。ただ、公共料金につきまして、これをどうするかという問題は、経済全体の情勢、またその公共料金の関係する企業体の経理の内容、そういうものから総合的に判断すべきものであって、これは公共料金の一部のものを上げたからもう物価政策を放棄したのだというようなことにはならない性格のものである、こういうふうに判断しておるわけであります。いま御指摘の運賃の問題、私は詳しいことは存じませんけれども、そういう角度でこれに対処していくという考えであります。
  97. 武藤山治

    ○武藤委員 そういたしますと、公共料金の値上げは別に消費者物価の安定という概念の中に入らぬから、これは別問題だというように私は聞いたのでありますが、そういたしますと、ある程度の採算性ということを検討して、まあ私鉄十四社の値上げはやむを得ないかもしらぬ、現在はこの程度の心境でございますか。
  98. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公共料金は物価問題とは別だとは考えておりません。むしろ逆に、非常に重大な関係を持っておるということでございますが、さらばといって、あらゆる公共料金が、これをくぎづけにしておかなければならぬというほど窮屈な考えを持つべきではない。公共料金によりましては、他の経済情勢との見合いをとることは必要でございまするが、時によって、まあ例外的な考え方をとらざるを得ない場合もある、こういうことを申し上げておるわけであります。
  99. 武藤山治

    ○武藤委員 どうも福田大臣の私鉄運賃値上げについては、やむを得ずこれは閣議の中でも賛成せざるを得ないわというようなニュアンスだというような受け取り方をいたします。まことに不満であります。しかし、やむを得ません。  次に、税収の問題でありますが、大臣承知の四月、五月までの累計の税収の実情を見ますと、去年は一般会計分で合計一五・二%の収入歩合であった、それが今回は二・二%という歩合であります一こうなりますと、四十年度も当初見積もりというものを大きく割る心配がもう明らかに出てまいります。大体四十年度のいまの趨勢ではどのくらいの予算に対する歳入欠陥になりますか。財源不足になりますか。
  100. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは今後の経済情勢推移、また九月期の法人決算がいかが相なるか、そういうものを見ないと的確なことはどうも予想できないわけであります。しかし、今日までの推移から見ますと、予算に比べまして相当の額が不足になってくるのじゃないかと、非常に心配をいたしておるわけであります。
  101. 武藤山治

    ○武藤委員 主税局長大蔵省の発表によると、新聞報道では約一千七百億円の歳入欠陥になるだろうという見通しを立てておる、これは的確な数字じゃないと思いますが、大体その程度になりそうですが。主税局長の見解はどうですか。
  102. 泉美之松

    ○泉説明員 五月末日におきまして、お話のように、前年度が予算に対しまして一五・二%の収入割合でありましたのが、本年は二・三%になっております。これは御承知のとおり、四月の歳入の整理期間内に、従来四十年度の収入にいたしておりました間接税の延納分と、それから所得税及び法人税の延納分を三十九年度の歳入に繰り入れることにいたしました金額が七百億余りあるわけでございます。その分を調整いたしてみますと、五月末現在で一五・〇%でございまして、わずかではありますが、〇・二%歳入割合が悪いという状況であるのでございます。今後これがどういうふうになるかにつきましては、先ほど大臣お話しなさいましたように、九月決算の様子、今後の経済の動きによって変わっていくわけでございまして、まだ的確に本年度幾らの歳入減になるかということは申し上げかねる段階でございます。いろいろ試算をいたしてみますと、お話のような数字も出る、こういうことでございます。
  103. 武藤山治

    ○武藤委員 田中大蔵大臣福田さんと違って、この前もう予算を目一ぱい、国有財産の払い下げを六十億円ふやす、たばこの売り上げも六十億円ふやす、あるいは国債整理基金を財政法を改正してまで二分の一のやつを五分の一に減らして、財源を洗いざらいみんな予算に見積もったわけです。十二月に補正を組んでまで財源をいじったわけであります。その天罰がいまざあっと押し寄せてきているわけですね。これはちょうど東京都の参議院選挙で自民党二人がおっこちたのと同じように、天罰ですよ。今日の経済がこうなっておるのは、過去のこういう放漫なやり方が今日福田さんがしりぬぐいをしなければならぬという天罰である、こう私は考える。そこで、一体福田大蔵大臣になりましたら、守り続けてきたいまの財政法を簡単に改正をするというようなこそくな手段はとらぬ、財政法は堅持するぞ、こう言明できますか、どうでしょう。
  104. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 財政法のどういう点のお話か存じませんけれども経済の秩序を守り抜く、財政面から破綻を来たすようなことはいたさないということだけははっきりここで申し上げます。
  105. 武藤山治

    ○武藤委員 そこで、大蔵省がこういういまの財源状況では、あの手この手で財源をひねり出さぬとどうにも予算編成ができない。たとえば、今回の第一次補正でもインベントリーを取りくずし、さらに日本銀行にある金の評価がえをしたその差額を予算財源にしておるでしょう。こんなのはもう健全財政ではないんですよ。こういう財源で補正予算を組まなければならぬというのは不健全財政ですよ。さらにおまけに、これから間もなく予想される食管会計赤字の問題、公務員給与ベアの問題医療費国庫負担の問題、災害対策費の予算計上、ざっと見ただけでも補正に組まなければならぬのがこれだけあるわけです。ところが、税収財源は一千七百億円からの収入欠陥になりそうな実情です。反面、企業はどうも青息吐息でもって、このごろは減収、減益になりそうな会社が百五十社のうち半分も三月決算で出ておるわけですね。九月決算だっておそらくそういう実情で推移すると見なければならぬ。これはたいへんな事態ですよ。そこで、福田大蔵大臣田中さんのような気持ちを持っておると、私は、おそらく大蔵省証券を年度越し制度にする、そうして大蔵省証券でいまの限度は二千億円となっておるけれども、これを三千億ぐらいのワクにきめる、それから年度越しにするためには財政法の改正をしなければならぬ、こういう問題がことしの大蔵委員会の大きな課題として出てくるのではないだろうかという推測をいたしておるわけであります。ですから私は、財政法をあなたが堅持するという気持ちがあるのかないのかというのを冒頭に伺ったのはそういう見通しに立つからであります。大蔵省証券で一応年度末、十二月ごろは切り抜けようとするのではないでしょうか。それ以外に一体何か手だてがありますか。三公庫に対しては、もう資金はあるだけ繰り上げ支出をする、一般会計もでさるだけ繰り上げ支出をする、財政投融資もやる、年度末の一、二、三月期になったらお手上げだ、一体蔵相はどうするか。公債発行は、福田大蔵大臣アメリカから帰った早々わざわざ羽田で本年は公債発行はしないと言明しておるんですよ。ですから、あなたはさむらいですから、一回言ったことを、いや、公債発行をやりますよ——武士に二言はないはずですから、そうなったら、あなたはひっくり返ることをやったことになり、代議士の士の字を取らなければならぬ。(笑声)そうなると、やはり大蔵省証券の発行をやる以外に、あの手この手を考えてもどうも名案がなさそうです。まだそれ以外に資金運用部資金から一般会計へ借金をするという方法もあるでしょう。しかしこれはどうも原資のほうがもうあっちこっちから使いたくてわっさわっさ要求があるから、どうもあまり使えないような気がする。一般会計から特別会計に繰り入れるのを全部ストップする、これをやれば特別会計が半身不随になる、これもどうもやれない。これは八方ふさがりの実情で、いまやり得ると大蔵省考えられるのは大蔵省証券の発行で、年度越しをやる。これは事実上の公債発行であります。こういう形でいって、私の心配しているのは、一年後、一年半後一体どうなるか、どうにもならなくなってくる。もう予算を縮小する以外になくなってしまう。縮小すれば、自民党は選挙で不利になって社会党がふえる。これは自民党としては困る。何とかここを切り抜けなければならぬという、これは福田さんにとっては、私は重大なピンチだと思うのです。とにかくピンチヒッターがホームランを打てるか、三振になるかという大蔵大臣の力だめしの年ですね。これはあなたが将来自民党の総裁になられるかなられないかも、このピンチをどう切り抜けられるか、私は重大な岐路に立たされておる福田大蔵大臣だろうと思うのです。そこでぜひヒットを出すように、あなたは私の隣の県で、私は栃木ですから、あなたが名声を博するのを期待しておるのですから、あなたもひとつどういう方法でこのピンチを切り抜けられるか、最後に大臣の明快な、なるほどというようなことを言明をしてもらいたい。以上で私は終わりますから、明快に答えてもらいたい。
  106. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 財政上、財源が窮迫をする反面、支出要因はふえる、そのバランスをどうするかということは、ほんとうにあなたのいまおっしゃったとおり、むずかしい問題なんです。しかし、むずかしいからといって、これを放置するわけにはいかないのであります。いまどういうふうにこれを切り抜けていくかということについて日夜心胆を砕いておるところでございまして、ただいませっかくのお話でございますが、ここで申し上げることはまだできない段階でございます。しかし、何とか皆さんの納得のいく形でこれを切り抜けていかなければならぬ、そういう決意で努力をいたしたいと思います。
  107. 武藤山治

    ○武藤委員 終わります。
  108. 吉田重延

    吉田委員長 午後一時三十分より委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      ————◇—————    午後一時三十二分開議
  109. 吉田重延

    吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  ただいま宇佐美日本銀行総裁が参考人として出席しておられます。  参考人には御多用中のところ御出席をいただきありがとうございました。  まず、当面の金融情勢について宇佐美日本銀行総裁から御意見を述べていただき、そのあと質疑を行なうことといたします。宇佐美日本銀行総裁。
  110. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 日本銀行総裁の宇佐美でございます。  それでは委員長の御命令によりまして、最近の金融経済情勢について、御参考に所見を述べさしていただきます。  日本銀行は、御承知のように、去る一月と四月に公定歩合をそれぞれ一厘ずつ引き下げました。一昨年末以来の金融引き締めの政策を解除いたしました。その後の情勢について見ますると、国際収支面では依然として輸出の好調、輸入の落ちつきという状態が続き、貿易収支はかなりの黒字基調を持続しておるのであります。一方国内経済面について見ますると、その間、金融市場は緩和の方向をたどり、コールレートは年初来かなり急速に低下を見るに至っております。一方、銀行貸し出し動向は引き締め解除後も引き続き落ちついた推移をたどっていますが、これは銀行の融資態度が慎重であることにもよりますが、基本的には企業活動の停滞を映じて、資本需要自体が鎮静していることによるものと判断いたしております。企業金融も、業種により区々でございますが、総じて見れば、漸次緩和が進んできております。しかしながら、かかる金融の緩和にもかかわらず景気は引き続き停滞基調を脱しておりません。そうして今日に至っておるように思うのであります。これをたとえば鉱工業生産について見ますると、昨年十一月以来ほぼ横ばい基調を続けているのでありますが、ごく最近の指数では四月、五月と連続して減少を示しております。このように生産の停滞が続いているのは、多くの業界で引き続き生産調整が続けられているためでもありますが、それにもかかわらず現状ではまだ製品在庫の調整、商品市況の立て直しは、あまりはかばかしい成果をあげているとは言えないのであります。もちろん一部の業界についてはこのところ製品在庫の調整が次第に進んできており、また商品市況につきましても、ごく最近では鉄鋼など一部に市況持ち直しの動きが見られるなど、部分的にはやや明るい面も出てきておりますが、総じて申しますと、需給状態はまだまだ改善の度合いが少なく、商品市況もさえない状態が続いております。このような状況は引き締め解除後も需要の伸びが総体として低調であるためであると考えております。もちろん輸出は依然好調であり、また個人消費、住宅建設、財政支出などもまずまず堅調な伸びを続けていると言えますが、企業投資が在庫投資設備投資とも引き続き停滞基調を改むるに至っておりません。特に過去においては金融緩和に伴って原材料、在庫を中心とする在庫投資の回復が中々に起こったのでありますが、今回の場合は現在までのところそういった動きはまだ見られるに至っておりません。また、設備投資につきましても、機械受注統計より見まする限り、目先もしばらくの間はさしたる回復がないのではないかと予想される状態でございます。こうした情勢は、結局のところ企業収益の悪化とか、さらには企業間信用の累積だとか、昨年来顕著になってきました企業経営上の諸問題が各企業にとりかなり深刻な問題となっていることの反映ではないかと判断されます。すなわち、設備過剰や資金コスト、資本コストの増大から、このところ企業の収益基盤は現在ではかなり弱いものとなっており、これが金融緩和後といえども企業の生産投資態度をかってない消極的ならしめている基本的な要因であると考えられます。  以上のごとき情勢にかんがみまして、日本銀行は、去る六月二十五日、公定歩合をさらに一厘引き下げることを決定、これと同時に、昨年一月以来続けてきました市中銀行に対する貸し出し増加額規制、いわゆる窓口規制というものを七月以降撤廃することといたしました。さらに七月八日には準備預金制度の準備率引き下げを決定、十六日から実施することにいたしました。これによって公定歩合は一銭五厘と、二十六年十月以降の最低となり、また準備率も準備預金制度実施後最低の水準となったのであります。公定歩合の引き下げのねらいは、これによって銀行が実質的に貸し出し金利を一そう引き下げ、企業の金利負担を軽減することによって、企業の体質改善や経営基盤の健全化を推し進め、景気回復の条件を醸成せんとするものにあります。また、準備率の引き下げも同様の趣旨でありまして、これによってさらに金融の緩和をはかり、公定歩合の引き下げと、あわせて銀行の貸し出し金利の低下を促進せんとしたのであります。  今後の見通しでございますが、前に述べましたごとく、現在の景気はまだかなり停滞の色が強いのでありますが、それでも各業界はいずれも本腰を入れて需給の調整につとめており、今回の措置によって金利の低下が促進されれば調整のやりやすい条件も整ってくると思われますので、商品需給バランスがおいおい改善に向かうことは十分期待していいと思うのであります。  一方、需要面では輸出、個人消費の堅調な伸びに加えまして、財政面からの対策も漸次その効果を発揮してくるであろうと思われますので、これらを通じて景気は次第に回復に転ずるものと考えております。ただ、過去においては景気の回復を指導する役割りを演じました在庫投資設備投資につきましては、現在企業が経営面にいろいろと問題をかかえていることもありまして、投資態度が全般に相当慎重となっていることからして、目先はそれほど急速な増加が期待できないと思われます。したがって、景気回復のテンポという点では、やはり過去に比べましてゆるやかなものにとどまらざるを得ないのであります。  最近のわが国経済は、労働需給関係の変貌とか、供給余力の増大とかへ一般成長商品の需要一巡とか、いろいろの面で環境変化を来たしていると思います。したがって、今後は金融機関も企業も、こうした経済環境に相応した経営の態度を整えていくことが肝要でありまして、それには、この際何よりも経営面のひずみといわれるもろもろの問題を可及的に是正していくことが要請されるわけであります。日本銀行といたしましても、今後このような観点から、情勢の推移を注意深く見守りつつ、弾力的な政策を講じていく所存でございます。  簡単でございますが、以上御参考に申し上げました。     —————————————
  111. 吉田重延

    吉田委員長 続いて質疑に入ります。通告がありますので、順次これを許します。平岡忠次郎君。
  112. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私の本日の日銀総裁に対する質問は、第一に近ごろ議論のやかましい公債政策について、金融当局としての日銀の考え方を御明示願いたいこと。第二には、去る五月二十九日に主務大臣の認可を得て、あえて日銀法第二十五条の発動に踏み切った根拠についてお伺いしたいと思っております。  まず順を追いまして公債政策についてのあなたの御所見をお伺いしたいと思うのであります。  七月の十七日、赤坂の病院で、田中幹事長を呼びまして首相が、長期減税を行ないたいとの考えを明らかにしまして、自民党側でその実施計画を検討するように指示いたしておるわけであります。減税構想の内容、実体は何か、私どもに必ずしも明らかになっておりませんが、減税計画の実施について、減税財源を税の自然増収分以外から求めてもこれを行なうという発言をいたしておることは重大であると考えております。 この発言は、必然的に減税のために公債発行を行なうということにも通ずることであるわけであります。しかも、首相のねらいが、所得減税ではなしに、これはむしろ財界からの突き上げで企業減税考えている節が多分にあるのであります。公債消化の環境整備いまだしの現状におきまして、公債を発行してまで企業減税をする必要を国民はとうてい納得しませんし、かりに公債発行の原資をもって所得減税に引き当てられるといたしましても、タコ足的な減税、つまりインフレによって相殺させられるところの減税に対しましては、これまた大衆はこれを歓迎しないこと明らかであります。しかも首相の発言は、四十八国会におけるところの首相自身の言明である、四十二年度までは公債発行はしないという、その言明と食言的な言明であることに留意しなければならぬと思っております。その上、福田大蔵大臣との見解に違いがありまして、いたずらに国民に不安を与えるものであるとわれわれは遺憾に思っておるわけであります。現に福田大蔵大臣は、先般の大蔵委員会におきまして、私の質問に答えまして、公債を発行してまで企業減税等を行なうことは考えていないとしておりますし、当面、企業、個人の蓄積、蓄財をふやし、公債消化をなし得る環境をつくった上で、しかも減税のための公債というのではなく、大幅に社会開発などの土木事業を興して景気を刺激していくべきである、そのためには個人にも企業にも、貯蓄をしてもらう、その大前提として、物価の引き下げ、安定が必要となる、物価の引き下げ、安定をはかることが佐藤内閣の第一の使命であるというふうに答えておるわけであります。私はそうした経過から見まして、ここに議論されておる公債論の去就がいかに決着するかわりませんけれども財政金融当局の最高の座にあられる日銀総裁に、この公債政策の問題につきましての御見解をちょうだいしたいと思うのであります。
  113. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいま公債の問題につきまして御質問がございましたが、これは本来政府の問題でございまして、むろん私として個人的の意見もございますけれども、こういう公の立場で述べるもいかがかと思うのであります。ただ、ただいまのお話でお示しくださいましたように、まだ政府でもいろいろ議論中だろうと思うのであります。したがって、いま私が総理大臣意見のほうがいいとか、大蔵大臣意見のほうがいいとかということを申し上げることは、はなはだ不謹慎のきわみだと思いますし、もう政府がいろいろ御検討になる間に、また私ども考えておることを、何か問題が出てくれば、そのとき大蔵大臣に申し上げるという程度で、いま私がこの問題についてお答えする立場にないことを御了承いただきたいと思います。ただ、やはり公債を発行する以上、その目的なり条件なり環境なりというものは十分考えていただかなければならないと思うのであります。それだけ申し上げて、はなはだ御不満だろうと思うのですが、私の立場を御理解願いたいと思うのであります。
  114. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 御指摘のように、これは政府の側にその責任があるということは、私も承知いたしております。しかし公債発行は、理念的にも歴史的、具体的にも必ずインフレーションに結びくつものであります。そういたしますと、通貨価値の安定をもって至上命令とする日銀総裁が、公債問題から完全に解放されているとは私は思っておりません。  そういう意味で重ねてお伺いをしたいのでありますが、通貨価値の安定を至上命令とする日銀は、これに抵触しない公債発行の方途が、現在四十一年度予算編成上あり得ると思われますかどうですか。お伺いしたいのであります。たとえば、国民にインフレの禍害を与えることなしに、企業減税をスプリングボードといたしまして、企業の自己資本充実の道は存在し得るかどうか、企業本位ではなしに、国民経済的な立場からお答えをいただきたいのであります。  あえて私がこの質問を申し上げますのは、五月十五日にあなたが京都の記者会見において発言をされたとして情報が伝えられておるからであります。これによりますと、これまで幾度か企業の体質改善が論ぜられてきたが、いまや財界の中に政府の援助によってのみ体質的改善が可能であるという判断が生じ、必然的に広く国民一般に引き受けてもらえる公債発行という条件が厳守される限り、宇佐美総裁もこれを是認するという趣旨の報道が行なわれているわけであります。この報道が事実であるかしからざるか、あるいは誇張されたものか、あなたの言わんとすることと違う点があるのかどうか、それは私は知りません。あなたの真意も含めまして、以上につきましてあなたの御所見を承りたいのであります。
  115. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 過般、関西に参りましたときに、京都におきまして新聞記者からそういう質問を受けたことは事実であります。そのときの質問は、はっきりことばは覚えておりませんけれども、要するに、どうも財政もたいへん苦しいようだ、そこで公債問題はどうだろうかというような、軽い質問があったわけであります。これは当時の私の全く私見でございますが、やはり日本公債問題を研究する段階にきておるのではないか。公債はもう絶対に将来永久に出してはならぬということではなくて、やはり研究をする、その研究の範囲は非常に広いのであります。まず第一に、そのときにも言いましたが、その消化の問題も非常に大きな問題です。ただ日本銀行が簡単にこれを引き受けるというようなことでは、はなはだインフレにもつながる問題じゃないかと思うので、その点は十分慎重に考えなければならないのだ、こういう話をしたわけであります。それを、いろいろ聞いている記者諸君がどういうふうにとりましたか、何でございますが、私はいまでもそういうふうにこの問題は考えております。  ただ、いつから、四十一年度から出したらいいかとかなんとか、これはまた政府でいろいろ予算関係もございますし、どういうふうにされるか、それをよく承ってからでないと、むろん意見の申し上げようもないわけであります。しかし、やはり将来の問題として研究すべき段階にきている、いつ出すか出さぬかというようなことは政府でおきめになる問題だろう、こういうふうに考えておるわけであります。  お話のように、日本銀行通貨価値の保持ということが最も大きな使命の一つでありますから、その面について動揺を来たすような政策をとられますと非常に困ることは申すまでもないのであります。また、政府におかれましても、そういう点は十分考慮して、いろいろお考えになることを確信いたしておる次第であります。  この問題は、冒頭に申し上げましたとおり、まだ私からとやかく申し上げる段階ではないと思いますので、御了承願いたいと思います。
  116. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 あなたのお答えの焦点は、広く国民に引き受けてもらえる条件がなければいかぬということ、つまり民間消化が前提となるべきであるという御主張がその焦点であると私は判断いたします。ただ、この五月十五日の京都談話につきましての報道は、憶側かもしれませんけれども、あなたの公債問題についての御発言のねらいは、老朽設備買い上げ公債ということを一応考えているのではないかということ、そしてかなり詳しくそういう解説的報道をしている向きがあるわけであります。そういう点で、あなた御自身とすれば、まだ政府自身の態度が確定的に打ち出されない前にあまりこの議論はしたくないというお気持ちはあるかもしれません。しかし、これは大蔵委員会という公の場であり、国民の関心を持たれているこういう場でありますから、やはりそう消極的にならずに、活発に応答をいただきたいと私は念願するものであります。したがいまして、もうしばらくこの問題につきましての御質問を許していただきたいのであります。  結局、広く国民に引き受けてもらえる条件ということは、ことばでは言えますが、そのような条件は何かというとなかなかはっきりしておりません。私は、まず公債発行論には大別して二つのカテゴリーがあると考えております。その一つは、減税とからめての企業の体質的改善目的のための公債発行論、その二は、財政的需要の財源のかね合いからの公債論、すなわち公共投資、社会開発用財源としての公債論の二つがあると思うのであります。いずれも論者はインフレは困るということを一様に言うております。この点では一致をいたしておるわけであります。しかし、前述の二つのカテゴリーの公債論を通じまして、具体的な民間消化についての核心的な条件提示はないのであります。あえて言うならば、藤山さんの交付公債論による公債市場の漸進的育成の試案程度のものであろうと思っております。しかし、この藤山さんのお考えは、現在行なわれておりますところの財政投融資計画の政府保証債の範疇を出るものではございません。したがいまして、一般会計による公債発行論に当面の議論からははずれるように思います。藤山さん自体の提案それ自体としては価値がありますが、いわゆる公債論というのは一般会計関連することですから、こうした意味のオーソドックスな公式の議論としては、藤山さん的な考え方は除外さるべきであると思っております。  それから、この藤山さんの御発言にいささか関連し、同じ類型的なものがあると思うのです。それは、けさほど岩佐凱実富士銀行頭取さんのテレビでの御発言であります。きわめて短いテレビでの御発言ですからその真意のほどはよくわかりませんが、岩佐さんは何か岩佐委員会という組織でこの公債問題をいま研究中だそうでありますが、その中間報告ともいうべききょうのテレビでの御発言は、政府保証債については市中銀行に消化余力がでてきたと発表いたしておるわけであります。これは財政投融資計画でやっている政府保証債、つまり優先債を消化してなお余りがあり、したがって、政府保証債に近いような形で一定の目的に限ってやる一般会計からの公債も引き受けできるし、消化できるというのかどうか、この点も実は不明なのであります。それから第一に、岩佐さんの考えておられる公債の額それ自身もテレビ放送では明確ではございません。こういうことで、岩佐さん自身の御発言の内容そのものが明確にはまだ把握はできないのでありまするけれども、どうやらこれも政府から企業減税のための公債政策を誘い出そうとする財界のアドバルーン程度にしか聞かれないと思うのであります。いずれにいたしましても、結局公債を出すということになりますれば、インフレとのかね合いがございまして、どうしても歯どめのある公債を出さなければいかぬというのが、これはもう一般の意見であろうと存じます。これは大蔵大臣も言っておられますし、日銀総裁もおそらく御同様と存じます。財界も一部そう言っているわけであります。歯どめの土俵の中で採択し得る公債発行とは一体何であるのか、この点につきまして、あなたから具体的御見解をお示し願いたいのであります。歯どめの土俵の中で採択し得る公債発行といったものは一体どういう方式のものなのか、いかなる条件具備のものか、この点につきまして御教示いただきたいのであります。
  117. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 公債の問題について、いろいろ御質問あるいは私の意見を述べよというお話でございますが、たとえば、いまお話しの岩佐頭取の発言にしましても、おっしゃるとおり、私実はそのテレビも聞かなかったもので、はなはだなんですが、非常にむずかしい問題で、そういう聞かない案について、またすでに明らかでないとおっしゃる質問にお答えするのは、はなはだ私としても何と申し上げていいかわからないのでありますが、ただ、おっしゃるとおり、公債というものをかりに出すとしますれば、やはり歯どめというものは必要で、無制限にどんどん出すというようなことはできないと思います。それではその土俵は何だということになりますと、これはまたなかなかむずかしい問題で、ここで土俵の姿、大きさを簡単に申し上げることもできないのでありますが、やはり私、日本銀行の立場から言いますと、その土俵の第一は通貨価値の安定を阻害するようなこと、つまりいえばインフレにつながるようなこと、それをさらに具体的に言いますと、私が国民全体と言いましたのは、国民個々というわけでは決してないのでありまして、いろいろ銀行だとか保険とか、そういうものもございますし、とにかく資金を吸収しているところでこれを消化するという形でないとやはりインフレにつながっていくのではないか、かように考えておるわけでございます。  いろいろのお説が出ておりますし、それから先ほど、おまえの言っている底意に老朽機械の買い上げがあるのではないかという御質問がございましたが、私はまだそこまで決して考えておりません。そういう説もあることは聞いておりますけれども、そういう一つの説として聞いている程度であります。私自身はまだそこまで何も、どれがいいとかなんとかいうことを申し上げるような状態ではないわけであります。  いずれにいたしましてもこの問題は、やはり政府で、先ほどおっしゃったように、いろいろのまだ考え方がございますので、私としては、政府がそういう問題について固まらないうちにとやかく申し上げるのはかえっていけないんではないか、かように考えておる次第であります。あしからず御了承願いたいと思います。
  118. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 やはり抽象的にいまあなたの申された老朽施設置い上げ云々ということだけではわかりかねるから、記録をとるためにも申し上げておいたほうがいいと思うのです。これは例の「金融財政事情」でございますが、これの五月二十四円号一六ページに、「宇佐美総裁の公債発行論の真意」という見出しで、かなり詳細に書かれておるわけです。前後を省略しますが、かいつまんで申し上げますと、「宇佐美日銀総裁赤字公債には反対であると発言しているのであるから、総裁は別の方策を頭においているものと推定される。」、「たとえば、経済同友会で検討中の議案、「民間小業の老朽設備を政府公債で買い上げ、……企業は設備の売却資金を全額銀行借入金の返済にあて、銀行はこれで日銀借入金を返済する」(五月十四日「毎日新聞」)ようなアイデアが想定されているのではないかということである。要するに、民間の老朽設備の一兆四千億円を政府が買い上げて、同額の公債を交付する。企業は、その公債銀行借入金の返済に充当する。そうすれば、企業のバランスシートの負債資本勘定合計から一兆四千億円の借入金が消され資産勘定の機械設備の簿価がそれだけ切り捨てられる。たしかに、企業の資本構成は改善される。しかも、銀行は受け取った公債を日銀借入金の返済に充当するから、銀行の固定貸しはそれだけ減少し、また日銀の貸し出しも縮小する。まことに、妙案である。もちろん、政府が発行した公債の一兆四千億円は日本銀行の資産勘定中の公債手持ちに計上されるわけである。要するに今日の日銀貸し出しは全部消えて、それ以上の額が公債手持ちに振り替えられるだけのことである。ここまでで、政府企業銀行間の流通がストップすれば、政府公債の日銀引き受けと同じことになる。日銀総裁がとくに、こうした公債発行に条件をつけたのは、日銀手持ちの公債が、ふたたび民間に売られて、日銀勘定にそれが堆積しないという経済的条件が必要であるとくぎをさしたわけであろう。もっとも「国民が引き受ける」といっても、個人が公債を購入する分は、きわめて少ないだろうから、結局、このことは民間金融機関の資金余力が十分あるということを前提としなければならないであろう。それにしても、政府の買い入れた設備は当然スクラップにされるわけであろうから、はたして、世論が、それを素直に受け取るかいなかに問題が残されることになる。」こういうふうに書かれているわけなんです。これは推測的に記者が書かれたのであろうと思いますけれども、しかし、むしろ政府公債論を言うべきことを、逆に宇佐美さん自身のほうから発言をされたというふうな付せんもついているわけでありまして、その点に積極的な御主張を持たれていることは、私は当然の見識であり、けっこうであると思うのであります。しかし、この議論自身は、あなたのおっしゃるとおり、まだ政府それ自体においても未熟な段階でありますので、私は最後に、この問題につきましては多少の私見を申し述べまして終わりたいと思うのであります。  私は、結論的には、歯どめのきく公債というものは何もないと思っております。たとえば、財界で言っている減税の範囲内でやればいいとか、または政府保証債に近いような形で、一定の目的に限ってやればいいとか、宇佐美さん御自身の本意ではないのかもしれませんが、いわゆる宇佐美論の老朽設備買い上げ公債論、いずれにいたしましても、現在のごとく、政治の態勢とか、予算が圧力団体に左右されるような状態が続く限りにおきましては、最後の歯どめはないと考えております。  歯どめとは何かというと、これは民間消化と同意語でありまして、インフレを招来しない公債発行は、これが限界点であります。要するに、民間で消化されなければならない、これだけがインフレのない公債発行の限界点であります。そういたしますと、具体的には、市中金融機関の貯蓄の増加の何割かを引き受けさせるということになろうと思うのです。そういたしますと、前述いたしましたごとく、現在の財政投融資計画でやっている政府保証債の消化とどう違うかということに帰着すると思うのであります。結論的には、一般会計財政計画という、入れものの違うところの政保債ということになると思うのです。ですから、そういう限りでは、やはり現状を見詰めながら、従来財投でやっておりましたところの政府保証債、この幅を可能な限り広げていくというような常識論に落ちつけるべきものと考えております。私は、佐藤首相はもと大蔵大臣もやりましたけれども選挙とか他の要因が周囲にありましたために、かなり思い切ったことを言っているのにすぎず、そうした佐藤さん自身の御発言のような行き方では、国民に迷惑をかける結果になる公算が大だと思いますので、むしろ消極的ではあるかもしれませんが、日銀総裁のほうでちょうどうまくかじをとっていただくためにひとつ最大の努力をお願いしたいと思うのです。福田さんと首相の間に見解の違いがある。福田さんの言うのはむしろ大蔵省の見解、事務当局の見解であろうと思いますが、こう四つに組んだようなときは、あなたの力の入れ方自身がキャスチングボートになって、非常に政策策定効果上違ってくるわけですから、その点を心いたしまして、ぜひ通貨価値安定を至上命令とするあなたの立場を貫くような視点から、この公債問題につきましてひとつ積極的に議論に御参価をいただきたいと思います。  以上、要望を申し上げる次第でありますが、何か御意見がございましたらおっしゃっていただきたいと思います。
  119. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 最後に御意見と御激励をいただいて、まことに恐縮の至りであります。  ただ、どうぞひとつお願いしておきたいことは、私が言わないことをいろいろ、何か先ほど伺っておりますと、はなはだ失礼な言い分なんですが、私はそんなことを言ったのかなと自分自身が思うようなことがありまして、それがまた宇佐美論的というような発言になってきましていろいろ引用をされるとはなはだ困りますので、そういうことでなく、ひとつぜひお願いしておきたい。そういう論もあることを承知しておりますが、それについて私は一度も批評、批判を加えたこともございませんし、そういうのを一々日銀総裁の立場から批判するというのはいかがかと思って、ひそかに内部ではいろいろやっておるようでございますけれども、そういう点で御了解を願いたい。御激励まことにありがとうございました。
  120. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 では、第二の質問を申し上げます。  先ほども申したとおり、去る五月二十九日、主務大臣大蔵大臣の認可を得まして、あえて日銀法第二十五条発動に踏み切った根拠は何かという質問でございます。  日銀法第二十五条は、御承知のとおり次のごときものであります。「日本銀行ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ信用制度ノ保持育成ノ為必要ナル業務ヲ行フコトヲ得」、こういうことです。ですから、拡大的に読めば幾らでも拡大的な適用もできそうなものになっておりますが、これは、過去におきましては昭和の初頭に一回だけ発動されたということで、そう軽々しく発動さるべき条文ではないと思います。あなたがあえてこの発動に踏み切った根拠をここであらためてお示し願いたいのでありまます。
  121. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 この問題につき才しては、もうすでに先生方もよく御承知だと思いますが、私としましては、切めて御要望がございましたので申し上げたいと思います。  古いことはとにかくといたしまして、御承知のように、三十六年に非常に株が高く、千八百円台というようなことがございました。それをピークといたしまして、その後、著しい例はアメリカの利子平衡税の場合に非常に暴落したのでありますが、だんだん下がるばかりでございます。そこに持ってきまして金融引き締めというようなこともございましたが、何にいたしましても、企業状態がだんだん収益面でよくないというようなこと、さらに三十五年くらいからだと思うのでございますが、増資をずっと続けてまいりまして、株式の需要供給の関係もだんだんアンバランスになってきたというようなこと、さらに証券会社も、そういう状態をそうはつきりも考えていなかったのでございましょうが、日本経済はもうとめどもなくふくらむというような安易な気持ちで先を見通して、業容の拡大というようなこともやったりなんかいたしまして、非常に株式が曲がって下がってまいったことは御承知のとおりであります。それで、ことに昨年以来、去年の九月の企業の決算が悪くなってまいりまして、さらに三月には相当悪くなるだろうというような予想が出てきまして、国際収支のほうは幸いによくなったのでありますけれども、従来ならこれが非常に株式にもいい影響があるはずでございますが、各企業設備投資あるいは在庫投資の過重であるとか、あるいはまた、それが結局オーバープロダクションというようなことで各企業が非常に悪くなる、これが根本的の原因でございますが、ただいま申し上げたようなことで下がってまいりました。そこに山陽特殊鋼のような問題が起きまして、いよいよ日本経済はたいへんなことになるんではないかというような不安が出てまいりました。さらに五月になりまして、実は山一証券が——これも詳しく申し上げるといろいろあるわけでございますが、昨年来、ちょうど私も三菱銀行におりましたときでございますが、どうも情勢がはかばかしくないというので、主力銀行の間で相談をいたしまして、そして昨年にはまず経営者をかえる必要があるんじゃないかというようなことも考えたわけでございます。ところが、だんだん調べてまいりますと、一般の市況が非常に悪くなったということも加わりまして、山一状態はかなり容易ではないというようなことで五月に至って関係銀行の間でいろいろ相談をして、銀行の貸し出しについてたな上げをしよう、利子たな上げというところまで相談が進んだわけでございます。ところが、これが一部の新聞に漏れましたために非常に不安人気も強くなる、そして五月の末に至りまして、山一証券の一番不安の焦点は運用預かりというところに集まってまいりました。運用預かりというのは、御承知のとおり、これはたいへん銀行の預金に性質が似ております。そういうような点で有価証券の運用預かりという点が最も不安に思われまして、東京、大阪のみならず、地方に山一に対する不安が非常に強く起こってまいりました。そこでさらに、場合によっては一般証券会社の運用預かり、さらに証券全体にわたって非常な不安人気が起こるのではないかというふうに判断をいたしまして、大蔵省にも御相談して二十五条の発動をお願いしたような次第でございます。これは非常に突如として扱いましたので、非常に各方面に反響が多かったわけでございますが、しかし、私どもの真意は、いまのままほうっておいては、山一をきっかけにして全体の証券界の問題になるのではないか、こういうふうに判断をいたしまして、結局山一で火をとめないと全体に及ぶおそれありということで山一に特融をいたしましたので、一見そういう感じがございますけれども、私どもの真意は、あくまでも山一を壁にして、あるいは火をふき出しそうなところをとめることによって全体の秩序を守らなければいけない、こういう考えでやったわけでございます。したがって、その後に至りまして山一証券をなぜあんなに助けたのだというような御質問は、私としては非常に遺憾なわけであります。あの当初、あるいはもっといい説明をすべきではなかったか、説明が悪かったという御批判に対しては、私どもも率直に、もっとそうではないんだということを——ただあの場合に、あんまりほかもたいへんだという発言もいかがか、こういうことで、大蔵大臣とも御相談してああいう発言になったわけでありますが、結果から見ると、少し足りなかったのではないかという気もいたします。しかし、真意は決して山一だけをどうしようというのではない、山一だけというよりも全体を対象にして考えてとった処置だ、ぜひかように御了承を願わなければならないのであります。そういうことでやったわけでございますが、その結果は、むろんまだ完全にその火は消えておりませんけれども、しかし、その後追加いたしました大井証券の場合と同じように、毎日毎日詳しい報告をわれわれも聞いておりますが、予想を立て、その結果をその日のうちにまた聞くというふうに、きびしく成り行きを調査いたしております。特に今度のは運用預かりを主体とするものでございまして、山一証券自体については、これは別個の問題として取り扱っておるわけであります。山一証券自体の問題についても、結局関係がございますのでわれわれとしても注意はいたしておりますが、その一般の通常業務につきましては、やはりわれわれとしては、山一証券というものあるいは大井証券というものがいろいろ合理化をいたしまして、再建できる、また市況も直ってくれば再建できるという前提のもとに、いま社長以下を激励して、また関係銀行もこれに熱心に協力されておるように私は確信いたしております。したがいまして、この真意はぜひひとつ御了解を願いたいと思うわけであります。
  122. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 山一が象徴的なものであったということ、よって、これは単なる山一救済のため二十五条を発動したのではない、この趣旨はよくわかっております。山一不安の本質は、いまあなたの御指摘のとおり、運用預かり株券の取り戻し要求、すなわち運用預かり契約の解除要求が殺到したということ、運用預かりは山一だけで五百五十億円、相次ぐ解除要求のために、今日現在日本銀行は二百三十四億円のてこ入れをいたしておることも御承知のとおりであります。また、大井証券に対して三十六億円、合計二百七十億円が支出されております。ところで、証券十九社の運用預かり総額が、六月末現在で二千六百十億円でございますから、すでに一〇%をこえる解除要求があったわけであります。私は、この程度でとどまっておればいいと思うのですが、今後の見通しについて少しく御見解を伺いたいのであります。  それは、いま千円台の大台につきましての攻防戦が展開されておるわけですが、池田前総理大臣の御親戚であられる近藤荒樹さんは、新聞紙上で、このダウ平均は八百円まで下がるんだということを御主張になっておられるわけです。だから、一千円台の攻防戦が八百円ぐらいということになりますと、一〇%程度のてこ入れではとても間に合わない事態ができてくると思うのです。そういたしますと、まさかと思った二千六百十億円の極限度まで、あなたのほうがこの運用預かりの株券の取り戻し要求の処理のために支出しなければならぬことも、論理的にはあり得る、そういう可能性もないことはないと思うのであります。私は喜んでそういうことを言っておるわけではなくて、そういうことがないことを望んでおるのですけれども、しかし、打つ手は別になければならぬと思うのです。いままで証券業界の価格維持のためにすでに五千億円ほどが投ぜられ、なお二千億円程度が待機中ということが、午前中の大蔵省の当局者からの答弁にあったわけですが、この大規模動員偏重が少しく的をはずれているのではないか、と言うては言い過ぎかもしれませんが、もっと大事なことがあるのではないかと思うのです。  私の申し上げたいのは、第二段の打つ手としては、結局いまの政府のてこ入れの中心は、運用預かりの取り戻し要求を遮断するということが一つありますが、そのほかの重点認識は、結局投資信託自身が目下の市場の売りの元凶だということ、この点から、投資信託自身に対する対策がかなりよくなされておると思うのです。  その一、二例をあげますと、投資信託組み入れの公社債担保金融は決定されておりますし、投資信託の手持ちの株式の肩がわりの再度の実施等も準備されておるわけです。そういうわけで、日銀、大蔵省の第二の鎮火目標は、投資信託の動きそのものに向けられておるわけでございます。当然なことですが、投信再編成に向けられているわけでありましょう。それで、市場目下の元凶ともいうべき投資信託の救済方式は、現状でも至れり尽くせりであると私は思っております。これまでは、しょせんは株安の応急血どめ策にすぎないということ、株価安定のための応急血どめ策にすぎないのではないかという疑問が私にはあります。血どめはあくまでも血どめでありまして、投信そのものが大衆から信頼を失って見放されておることが致命的なわけでございますから、この根源をつくところの救済策を、言うなれば構造的に考え直さなければならぬのではないかと思います。現下の投資信託救済諸対策は、株価対策のための一手段に堕してしまって、これのみでは証券市場回復のめどは立ち得ないと私は思っておるのであります。千円台の攻防戦というがごとき株価現象に目を奪われる結果でありましょうが、投信の体制的な改善を忘れてはならないのではないかというのが私の意見であります。すでに株価に対しまして、先ほど申したように五千億円、さらに二千億円というような大金が用意されながら、そこにまだ決定的な効果が出てこないということに思いをいたすならば、第二の対策はそういうところにはないんだということにお考えをいただきたいのであります。  その点につきまして、七月十二日付の朝日新聞に「経済気象台」という欄がありますが、その匿名五輪氏の所論は非常に示唆的であると思います。  かいつまんで論旨を申し上げますと、投資信託の期限を無期限とせよ、安定経済に移行しつつある現実を考えれば、英米流の二十年ないし無期限として、長期投資に徹せしむるべきである、投信の期限は、受益者にとっては何かの都合で解約するときが満期となる、こういう考えに徹すべきであるということが書いてあります。これを画一的に五年にしておくから満期日が一時期に集中して、いまみたいなときには株安の激化の要因となる。第二に指摘されておることは、各社の投資信託にそれぞれの特徴を持たすべきだ。配当も期間も同じであり、値下がりの率だけが違うということでは大衆は逃げ出すばかりである。投信は多様さに欠け、目移りの楽しさがない。既製服のほうがよほど種類が豊富で、需要者の要望をはるかに満たしている。いずれにせよ、マーケットリサーチのセンスに欠けているのが現行の投資信託である。また、元本割れの投信の償還延期などは、延期すれば額面で返ってくるがごとき錯覚を与え、大衆の投資に対する正しい理解を妨げているだけだ。新しい投資ファンは生まれてこないであろうと結んでおるわけであります。  以上は非常に示唆的なものと存じます。  日銀必死のてこ入れも、その本来的な成果はいまのところ生まれてきていませんし、私は、近い将来になお効果的にこれが生まれてくるとも思っておりません。私があえて申し上げたいのは、あくまでも、いままでの大蔵省、日銀の対策は血どめの対策であるわけであって、血どめは血を防ぐための応急措置であり、病体の回復のための治療はまたおのずから別個だという認識に徹すべきだと思うのであります。これは、治療のほうは大蔵省の担当だということであるならば話はそれまででありますが、二十五条の発動、無制限的な資金投入それ自体が万能薬ではないということ、むしろ私は、ほんとうの株式市場の回復というものには、大衆の買い出動参加を裏づけられるような証券市場の本質的改善のための手段がなければならぬと思うのであります。たとえば、投資信託は、投資委託会社が現在十社ございますが、これも早晩再編成されるでありましょう。しかし、四社を中心に系列会社を井てれぞれくっつけてみたり、あるいは力のない二級会社を寄せ集めてこれを合併させてみても、大衆の信用不在の形はやはり依然として残ると思うのです。そこで、人呼んで会社型投信方式の導入とかいうようなこともやはり耳を傾けるべきであって、既成の四大証券中心主義に未練も固執もせずに、投信会社の再編成には思い切って新形態を導入する。たとえば、生命保険とかあるいは銀行とかを核とする、四社以外に多様多彩な投信委託会社をつくっていく、現行の十社のうち、三社はとにかくとして、山一以下七社等は、むしろそうした新しい核の中に組み入れて発展解消をさせる。そういう方式をとり、そしてそのそれぞれの多様な新しい投信委託会社におきましては、先ほど申したように、無期限投信委託会社あるいは公社債投信の専用の会社等々、形態にぐんと幅を持たせて新規まき直しで出直して、大衆の離散した気持ちを集める方途を大胆に打ち出すべきではないか。特に投信委託会社は資本金は徴々たるもので足りまして、せいぜい二、三億円もあれば出発できるわけでありますので、大衆心理の訴えの上からは、土台の腐った既成の証券会社救済に管見的な血道を上げるばかりが能ではないということ、こういう点に新しい配慮をぜひともしていただく、このことを強く申し上げたいのであります。  時間の制約がありまして、私の言いっぱなしになりましたが、これは参考になったらひとつ取り上げていただく、参考にならなければこれは捨てていただきましょう。しかし、いま申し上げた点に最大の御考慮を願えるならば幸いであります。与党諸君、またわれわれの仲間に対しましても、少しく時間が超過したことに対しましては遺憾の意を表しておきます。  これをもちまして、私の質問を終わります。
  123. 吉田重延

    吉田委員長 春日一幸君。
  124. 春日一幸

    ○春日委員 私は、山一証券に対する救済特別融資に関する二、三の疑義について総裁に御意見を求めたと思います。  私ども承知いたしておりまする範囲では、今回の特別融資にあたって銀行証券会社の手形を担保として日銀から貸し出しを受けるが、その手形の掛け目は八掛けだから、銀行は担保の不足分、すなわち手形の二掛けを別途有価証券の担保提供で埋めておる、こういうふうに伺っておるわけでございまするが、そこで、この場合、証券会社の手形というものはそのもの自体が無担保である、したがって、日銀の貸し出しといたしましては、その貸し出しの八掛け相当部分は全く無担保である、こういうふうに承知をいたしておりまするが、そのとおりでございますか。
  125. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの御質問でございますが、八掛けというのは、日本銀行で貸し出しをしますときに普通八掛けを担保をとるというふうにしておるわけでございます。したがいまして、本来いえば、山一の手形が十分担保力があればいいのでありますが、担保力が不十分でございますので、そこで二十五条の申請をしたわけでございます面これは、山一の今度の特別融資が今後どうなるかということでございます。三それで私どもは、山一証券が再建計画というものを片一方に出されております。その再建計画は、その後の証券界の事情によりまして、初めに出してきた計画よりも業界が非常にきびしくなっておりますので、その点、そのままその再建計画が確実なものだと思わないわけでありますが、一方において、山一証券自体は社長以下非常な合理化をやって、そうしてその当初の計画が不十分である点を自主的に埋めようと思って、いま努力をいたしておるようなところでございます。したがいまして、私どもは、もうしばらくその情勢をながめて、そうして日々のしぶりを監督しながら、いまの再建計画をどういうふうにやっていくか、その再建計画の当面の金融機関としては主力銀行が当たっておるわけでございまして、主力銀行とも打ち合わせをしながら、あるいはまた再建計画の練り直しということも必要だと思いますが、現在非常に動揺しておりますので、もうしばらく情勢を見て考えたい、いま、決してこれをなおざりにしているのではなくて、日々検討しながらやっておるような次第であります。
  126. 春日一幸

    ○春日委員 総裁もおからだがお悪いようでございまするし、なお時間の制約もございますので、私も簡単に質問をいたしますので、御答弁もそういうふうにお願いいたします。  お伺いをいたしましたことは、日銀の貸し出しにとって、その貸し出しの八掛け相当部分は無担保であるのかどうか、この一点を伺いたい。  第二点は、銀行が補充担保として差し出しております有価証券の二掛け分、これの意義と目的は一体何であるのか、この点の御説明を願いたいと思います。
  127. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいま、八掛けの分は無担保か、こういう御質問でございます。これは、私どもは、担保としては山一証券及びその関係会社山一の場合は五社でございますが、連帯保証をさした手形を担保として取っております。したがって、ある意味において、山一証券がつぶれた場合にはその手形も全部なくなるわけでございますが、しかし、私どもは、何とかしていま山一証券が懸命の努力をしている再建、さらに時間はかかるでありましょうけれども次第に業界の立て直しができれば、山一証券の再建も確実になってまいりますし、したがってその手形は有効な手形になるというふうに考えて、目下のところその再建をバックにいたしまして、そうしてこの手形をとったわけであります。しかしいま、あるいは会社あるいは関係銀行が努力しているこの再建というものを、ここでわれわれは否定することはできないわけであります。したがいまして、その場合を予想して、これが全然無価値なものか、こういう御質問には、私どもはこれを何とかして——現在の時点におきましては、不完全なものでございますけれども、これをりっぱなものに、有効なものにしたい、こういうのが念願でございます。したがって、私どもは、山一証券がせっかく努力中でありますので、再建を期待しておるわけであります。したがって、残りの二割は一体何だということにつきましても、以上の答弁によって御了解を願いたいと思うのであります。
  128. 春日一幸

    ○春日委員 この特別融資を大蔵大臣が認可を与えたということにおいて、やはり一個の国家責任があると思うのでございます。私は伺いたいのでありますが、政府は認可をした以上は、それに対する一個の見通しもあるでありましょうし、またその再建ができるという見通しがもし裏目に出てまいりました場合における政治的責任というものもかねて覚悟の上であろうと思うのでございます。ですから、私が伺っておりますことは、政府が従来いろいろな見通しを立ててまいりましたが、必ずしもその見通しどおりに現実は実現を見ておりません。みんながそれぞれプランを立てますが、プランが立てられたとおりに結果が得られるものとは限っていないこと、これは神ならぬ人の身、やむを得ないことと思っております。しかし、日本銀行が国立銀行である、中央銀行であるという特殊性格にかんがみまして、見通しが誤った場合、誤っておったではしょうがないと思うのでございます。したがって、私は、そのリスクに関する事項というものが当然同時、並行的に明確にされなければならぬ、国民の前に明確にされなければならぬと存ずるのでございます。すなわち、その再建計画のごとくに再建されなかった場合、日本銀行はその損害をいかに補てんするのであるか、その損失の責任はいずこに帰属するものであるか、この点をひとつ明らかにお示しを願いたいと思います。
  129. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの御質問は、これが再建計画ができずに、そうしてまた立て直しもできなかったという場合の責任はどうだ、こういうことだろうと思うのでありますが、その場合につきましては、いまここでそういう仮定の御質問に対しては私も抽象的にしか答えられないわけであります。その責任は、当時この問題をやりましたときに、日本銀行政府の間において、今後の情勢によってこれを処理していこうということになっております。そうしてまたその情勢は刻々変わってまいりまして、先生方御存じでしょうが、昭和二年当時、今度の例ととかく比較されます事件がございましたが、それは実に二十五年にわたって完全に解消しておるというようなことでございます。私どもは、当時の、昭和二年の金融恐慌と現在の日本状態がいろいろの点で全く違っておることを考えまして、決してそんなに長い時間かかるとは思っておりませんが、必ず日本の再建が回復する、いまの状態が回復しなければならぬ、その底力はあるというふうに考えております。しかし、御質問のような点が万一起こりましたら、それはそのときの状態によって違いましょうけれども、十分責任は感じなければいかぬ、かように考えております。
  130. 春日一幸

    ○春日委員 これは異様なる御答弁だと思うのです。私は、資本主義社会、自由経済のもとにおいては、自己責任制度のルールというものが絶えず確立されていなければ相ならぬと思う。あなたがここにみずから発意して、その意思を持って大蔵大臣の認可を求められた以上は、あなたにやはり一個の責任がある。だから、万が一損失を生じた場合にその責任はいずこに帰属するのであるか。政府との間に当然最終的な話し合いがなくして、こんなことを無責任に——回収できなくなったときにはそのときに相談しましょうというようなことで、何百億という膨大なる融資がなし得るのでございますか。私は常識上許されないことだと思う。この日本銀行法第二十五条、信用制度の保持育成に関する条項、これは高橋君の解説書を読んで見ましても、「日本銀行ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ信用制度ノ保持育成ノ為必要ナル業務ヲ行フコトヲ得」こうあるのでございますが、この規定には、一つ本質的な面、すなわち金融制度、それから金融機構の整備という問題があろう、それからもう一つは、今回のごとく恐慌等非常事態における金融秩序の維持という応急的な面があると思うのであります。私は、この一については、これは立法手続を要するものやあるいは政府金融行政の権限の範囲でなし得ることもあると思うのでございますが、この二の面については、これは本来中央銀行の、日本銀行の職責の範囲のこととは考えられない。これは現実の問題といたしまして、金融行政というか、そういう政府本来の職責、責務であると考えられる。けれども、この場合、立法措置や適当な措置、必要な措置をとるいとまがなかったという面もあり、幸いこの条項があるものですから、すなわち、この二十五条を拡大解釈され、これを援用されてこの措置がされたものと見るのでありますが、それにしても、すでにお手上げをしたのです。しかも主力銀行がこれに対する救済融資について大蔵省銀行当局のあっせんが事前にあったにもかかわらず、それを拒否した、できないということでお断わりをしたのですね。そういうような状態でこれをほうっておけば、これは山一証券がとりあえず閉店せざるを得ない、さすれば、これがだんだんと証券業界に波及してくる、証券不安がくる、それが金融機関に波及してくれば信用パニックに至るおそれなしとしない、こういうことで、いま平岡君に御説明がありましたとおり、予防的、事前的措置として非常の措置がとられたのです。だから、これは表面的には二十五条の発動という形になっておるけれども、これはその経過にかんがみて、大蔵省がいろいろと金融機関との間に介在してあっせんしたが、これが不調に終わった、何らかの措置をとらなければならないが、国会が閉会中でできないということで二十五条の発動になり、あなたが申請を求めて、大蔵大臣が承認を与えておる、銀行がこれは救済融資の対象にならぬといって応諾し得なかったその経過にかんがみて、これの再建計画については相当の不安な要素が包蔵されておるものと理解すべきである、そのような認識があってしかるべきだと思う。さすれば、回収不能になるおそれなしとは断じがたい。そのような場合、数百億の融資を行なわんとする中央銀行責任者が、最悪の場合のリスク、これに対する明確なる取りきめを行なわずしてこういうことをなしておるとは考えない。私は何らかの話し合いが政府との間になされておらなければならぬと思うのです。なされておらないとするならば、私はあなたは大きな冒険をされたと思う。あるいはずさんな執行をされた職責怠慢のそしりを免れないと思うのです。その点どうなっておるのですか、真相を明らかにされたい。私たちの立法常識でいいまするならば、すなわち最終的に損失を生じたる場合は、国の責任において、大蔵大臣がこういう許可認可を与えたのでございますから、したがって何らかの法的措置を講ずることによって国家が日本銀行の損失を補償すべきものであるとわれわれは考えておる。それでなければ、あなたのほう、日本銀行が破産したら、それは実際問題としてどうなるのです。また、あなたは中央銀行の総裁として、日本銀行の信用を保持することのために、そのいわれのない損失を日本銀行がこうむるがごとき執行を許されないと思うのです。私は当然のことじゃないかと思う。だから私は、いまあなたの御説明の中にありますとおり、当事者の諸君の再建の努力、また善良なる管理者としてそれぞれの取引銀行並びに日銀の管理、これがなされてしかるべきではあると思うが、さりながらそのような善良なる努力にもかかわらず結果が逆にになった、こういう場合、あなた方は当然国民の前に責任をとらねばならぬ。だから、そのリスクの帰属というものは、貸し出しと同時に同時、並行的な明確なる取りきめがあってしかるべきだと思う。あるべかりしものがなかったのか、そのことがずさんであったのか、それとも相当の話し合いは尽くされておるのであるか、国民の前に明らかにいたされたい。
  131. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまいろいろの点で御質問がございましたが、ただ、まず第一に、都市銀行というか主力銀行がこれを拒否したというお話でございますが、そのうちの大きな原因は、やはり、あるいはこの問題の解決が時間が長くかかりやしないかという点で不安もあったんだろうと思うのでありまして、われわれも、私自身都市銀行におりましたのでよくそのいろいろの事情がわかりますので、日本銀行大蔵省に申請をしたような次第であります。この責任につきましては、むろん大蔵省日本銀行の間で具体的の問題でなく、最後の責任については話し合いができております。しかし、具体的にどうするかということは、一番困ることは、損失が幾らかということがわからない点であります。これからこの問題がどういうふうに発展するか、おそらく私どもは全力を尽くしてこの株式証券界というものを健全な姿にしなければならないわけであります。これをほうっておいて、そうして日本証券界がつぶれるだろうというような前提でものを考えることは、われわれはとうていできないわけであります。その間におきまして山一がこの問題をどういうふうに処理していくかということが問題なんでありまして、このいろいろの具体的の方法につきましては、日本銀行として現在も真剣に考えておりますし、あるいは皆さまに申し上げなければならぬ時期もあるかと思いますが、当面いまの事態がどう動くかということについて私どもは最大の関心を持っておるわけであります。先ほど申し上げましたとおり、最後の責任は、一体どういう形でこれをおさめるのかということは、一方においてこれから研究しますが、問題は、繰り返して申しますけれども山一証券がどういうふうに再建するか、そうして、いま日本銀行から主力銀行を通じて借りておる金をどうやって返せる状態になるかというところが問題でございまして、これをいますぐにどういうふうな方法でやるということを申し上げる段階ではないと思います。これは決して責任を回避することではないと思うのであります。
  132. 春日一幸

    ○春日委員 私は了解できません。国立銀行、中央銀行がこのような融資を政府の承認のもとに貸し出した以上、それが回収不可能になった場合の措置というものは、これは日銀の責任であるのか、政府責任であるのか、あるいはここに補充担保として出しておる二割の有価証券の担保、これは一体そのそれぞれの銀行がその責任を負うものであるのか、こういう問題が何ら明確にされないで貸し出しの行為が行なわれるというようなことは、いかにも八百長であって——八百長といっては語弊があるかもしれませんけれども、何でも話し合いのボス支配的なやり方であって、私は、立憲法治国、法律のもとにおいて行政が行なわれるというわが国において、こんなことは許されることじゃないと思う。もしそれ、政府がそのような債務を後日負担しなければならないかもしれないような事態が予測される場合、こういう場合においては、私は財政法上何らかの規制があるはずだと思うのでありますが、いずれにしても、いまこの段階においてはその責任の帰属を明らかに述べるべき段階でないというあなたの認識は、日本銀行というものの職責、使命、性格を十分御理解なすっていらっしゃるかどうか、現実の問題として私は多大の疑念を抱かざるを得ない。しかも、その金額がいまのところ二百数十億というのでございますが、平岡君への御答弁にありますとおり、これは今後予測されるものは果てしがないものがあると思う。投資信託の解約分が続出してまいりますとか、運用預かりの解約がじゃんじゃん出てくるとか、こういうような場合は、その現在の保有額等から推計をいたしまして、日銀のこのルートによる貸し出しというものは、実際問題としてエンドレスといっても私は過言ではないと思う。そうすれば、なおさらのことその責任の帰属というものが明確でなければならぬ。五十億や三十億ならいいかもしない。あるいは百億や二百億ならいいかもしない。けれども、千億、千五百億も貸し出しをせざるを得なかったというような事態にあって、しかもそれが再建の意欲あり、努力にもかかわらず、その成果が得られなかった場合、それらの措置をとったところの政府責任並びに日本銀行責任は一体どうなるのであるか、こういう問題について事前の討議が何らなされないで、また何らの取りきめがなされないで行なわれておるということ、さらに今後行なおうとしておること、私ははなはだ不安にたえないと思う。そんなことでいいのでありますか。私は重大な問題だと思う。明日から国会が開かれますので、いずれは他の委員会においてもさらに専門的な研究がなされて、質問がなされると私は思うんだが、こんなばかなことは許されるはずはないと思う。いかがでありますか。そんなものは、結果が出てみてから、日本銀行が負うのか、国が負うのか、そのときの相談だ、こういうようなやり方ですでに二百何十億山出しておるんだから、将来とも何百億という金をそれで出していい、国民はそのような支出を承認すると思いますか。いかがです。
  133. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの御質問でございますが、これから先エンドレスに金が要るという御質問だろうと思うのですが、私は日本経済がエンドレスに金が要るとは思っておりません。ここでそういうエンドレスに出るかもしれぬというようなことは、われわれの責任上申し上げられないわけであります。何としても日本経済を建て直しをする、また日本経済がこの力のあるということを私は信じております。もしもその力がなしというようなことならば、これはまた別問題でありますが、私は、日本経済は、いまこそ苦悩をいたしておりますけれども、必ずや証券界も含めて日本経済がよくなると、かように考えておるわけであります。
  134. 春日一幸

    ○春日委員 私がエンドレスと申し上げたのは、無限のエンドレスではなくして、山一証券の運用預かりの総額が五百五十億ございますね。だから、これに対して解約がさらに続く限りこの特別融資は続行されなければならない性格のものである。だから、五百五十億までは、少なくとも山一だけにこれを局限いたしましても、これはなされるものと見通すのが常識である。そこに法律の前に国民は平等であるから、現に大井証券がそういうものの融資を求めてきておる。後日他の証券会社において、山一、大井のごとくに困ったからといって同じようなこういう特別救済融資を求めてくれば、これはある意味においてエンドレスといえるのではございませんか。エンドレスということは、もう無制限にということもありますが、すでにそういうような運用預かりの絶対量というものの極限があるが、その極限の中において無制限、そういうことをやっていかなければ、いままでの山一に対する救済の実が、実際の効果が確保し得ない。だから、山一について見れば、百五十億の運用預かりの絶対量、大井証券においてはどれだけあるか知れない、あるいは第二、第三、第四と、こういうような救援を求めてくる証券会社が絶無であるとは断じがたい。だから、こういうような特別融資を行なう以上は、リスクについて最終的な取りきめというものが同時、並行的になされておく必要があるのではないか。このことを指摘しながらなされておるのかなされていないのか、これをお伺いしているのです。何にもしないで、さらにこのままずっとやっていっても、あなたは何らの不安をお感じにならないか、この点をただしておきます。あらためて御答弁を願います。
  135. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 いまの問題は、先ほどの私の御返事を繰り返すことになりますけれども、つまり、日々私どもはこれがエンドレスに向かうかどうかということを非常にしさいに検討いたしております。そして、その問題につきましてはだんだん落ちつきを取り戻しておるというふうに考えております。大体今度の処置はそういうふうにエンドレスにならないためにとった処置であります。たとえば、いま御指摘のように、まだこれからそういう証券会社がどんどん出てきたらどうするのだ、そうなるのが困るからとった処置なんであります。その点を御了承願いたいと思います。
  136. 春日一幸

    ○春日委員 時間がございませんので、それでは明日から委員会がございますから、この点だけ明らかにしておきたいと思うのであります。したがって、後日もし回収不能におちいった場合、日銀の損失はどのように措置されるものと政府との間で話し合いがなされておるのでありますか、あるいは何ら話し合いはなされてはいないのでありますか、この点だけひとつ御答弁願います。
  137. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 政府との間に話をいたしております。しかし、先ほども申し上げましたとおり、損失がどれくらいになるかということは、全く見当がついておりません。というのは、今後の経済の復興によってこれが変化してまいります。その点で……。
  138. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、政府との間にお話をされましたその話のついております内容、条件、これをお示し願いたいと思います。
  139. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 それは政府との間の話し合いでございますので、政府と了解を得ないと私としては申し上げられませんし、また具体的の問題としては、ただいま申し上げましたとおり、今後の情勢いかんによって変化してくる問題でありますので、御返事いたしかねます。
  140. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、国会は国権の最高の機関でございます。われわれはそういう根本的な問題について承知することなくして国政調査を進めることはできません。したがいまして、政府との間に話し合いが取りきめられておりますその内容、条件、これを本委員会に明らかにいたされたい。それは当然政府との間の個別の話し合いがなされたのでございましょうから、政府との間にお打ち合わせをいただきまして、そうしてその御了解のもとに、ありのままの事実関係、これを本委員会に後日明らかになされたいと思います。  それでは、私はなおこの点について一、二お伺いをいたしたいのでありますが、なるほどこの救済融資は山一の閉店を防いだ。それから証券業者への波及、株式の暴落、証券恐慌、金利への波及、よってもって信用制度全般に対する波及を事前的に、予防的に防いだ。これはその効果でございますね。ところが、その反面、こういう金融が行なわれたその罪業としては、これは企業の自己責任の原則、それからまた社会責任の原則というものを不問に付しておるのですね。少なくとも自由主義経済にしろ、資本主義経済にしろ、債権債務に対するその質任の帰属というものが、これは資本主義経済のルールの基盤になっておると私は思うのです。借金は払わねばならぬということ、それから、借金をするときには担保を提供して、払わない場合には、それによって弁済をしてもらうということ、金利を払うということ、これら債権債務に対しまする一つ責任体制というものが、自由主義経済の私はルールの源泉だと思うのです。ところが、無利息、無期限、無担保みたいなもので金融がじゃんじゃんなされていくというようなことは、これはある意味において自由主義経済のルールを無視しておる、じゅうりんしておる、そうして、その資本主義経済の秩序の一角がこういうような行為を通じて大きく崩壊していくのではないか、これはおそるべきことじゃないかと思うのでございます。野球なんかでもそうでございましょう。三振を食らった者が、おれはヒットを打つまでバッターボックスを離れないんだといってやっておったら、野球のゲームは続行できませんよ。それと同じように、商売をやっておる者が、担保物件はないのだ、金利を払えといったって、そんなものを払っておったら、いよいようちはやれなくなるから、金利は払えない、さあ殺せというようなものですね。そういうことで要るだけくれといって、あなたのほうへ申請してくる、あなたのほうは大蔵大臣に申請して、百億持っていけ、百五十億持っていけ、こんなことをやっておったら、一般国民大衆は、とにかく額に汗して、手にまめをつくって、朝は朝星、夜は夜星、一生懸命やっておるのがばかばかしくなってしまうじゃありませんか。片方では、日本銀行に言えば、幾らでも無利息、無期限、無担保、そうしてその返済のことは日本銀行総裁と大蔵大臣との間でまだ話し合いもついておらぬ、とりあえず要るだけ持っていけというようなことでございまして、それじゃ資本主義経済の秩序は保たれないと思うのです。実際問題として、重大なことでございますよ。この点、あなたはこの特別融資の功罪を何と判断されておるか、あなたの御見解、御認識をあらためて伺いたい。
  141. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 特別融資が非常に重大なものであるということはよく認識しております。そうして、いまたいへんいろいろのおことばで、じゃんじゃん金を出しておるようにおっしゃいましたが、決してそんなにじゃんじゃん出しておりません。
  142. 春日一幸

    ○春日委員 百六十億はじゃんじゃんですよ。
  143. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 いやいや、そんなことはございません。それはわれわれがその使途を厳重に監視して、そうしてその貸し出しが証券界の、先ほどお認めになった証券界の危機をとにかく脱したという点において非常に有効なる方法だと思っております。そうしてまた、じゃんじゃん出しておりません。それは一つ一つを何に使っておるかということを非常に厳重にやっております。  それから責任の追及につきましても、私どもは目下どういう形にするか、少なくとも重役の責任のある者については、これも追及しなければならぬと、こういうふうに考えております。それがいろいろの理由があってこういうふうになったということはわかるのでありますけれども、いま先生がおっしゃたように、やはり経営者というものが責任を免れないということを知らすということが必要だと思って、この追及をやっております。その点で、決してそんなに甘い気持ちでやっていないということだけはぜひ御了承願いたいと思います。
  144. 春日一幸

    ○春日委員 シカを追う者山を見ずということばがございますが、あなた方はえらい深山幽谷の中に入ってしまって、あなた方自体がどういう立場でどういうことをやっておられるかということは、これはときに冷静なる御判断を欠く場合がなくはないと思う。日本銀行総裁が冷静な判断を欠かれておると申し上げては、これはまことに失言かもしれませんけれども国民はそう見てないですよ。金を借りるについては、担保がなければ、返済期限を明示しなければ、金利をこれこれ払うという確約なくんば、だれも貸してくれませんよ。現在の日本経済秩序の中ではそのような金融を受けることは不可能である。にもかかわらず、同じ日本経済の中における日本国民が無利子、無期限、無担保で——じゃんじゃんじゃないと言われるけれども、一億の金だってじゃんじゃんですよ。百何十億、将来とも何百億になるかもしれないというような金が出されるということについて非常な不信感がある。一体どういうことであろうか。なるほどこれは運用預かりをしておった大衆投資家を救済するためだ、目的はわかるけれども、現象的にはそのように国民には印象づけられないのです。われわれには貸してくれない、あの人は借り入れたということですね。だから、この点については国民がどのような眼とどのような感覚でこの問題を判断するか、よく客観的に事物をあやまたず御判断願って、その執行を進められたい。  そこで、私はその意味を兼ねて一言あなたにお伺いいたしたい。わが国経済はいよいよ不況が深刻でございます。破産、倒産相次いでおる。一千万円以上の負債で倒れるものが一日十七件から二十件、ざっと五百何十件から六百件ということでございますね。こういうような不況のときには、企業相互間には優勝劣敗、それがやがて弱肉強食になってくる。そうすると、経済的弱者たる中小企業にしわが寄ってくるのですね。よって中小企業は犠牲になること避けがたい。これを放置することは、経済的不安であるばかりではなくして、これは一個の社会的不安を醸成するもとになってくる。私どもはこの三月、例の山陽特殊製鋼ですね、七十四億の払い込み資本、四百何十億で手をあげました。二百何十件の下請諸君が関連倒産のうき目にさらされておるのである。その後ずっとそういう関連倒産、自己責任によらずして関連的に倒産する中小企業の続出を見ておるのである。こういう事態を放置しておいていいとお考えになりますか。日本銀行法の第二十五条では、日本銀行は主務大臣の認可を得さえすれば、信用制度の保持育成のため、そういうような社会不安、信用不安をなくすることのために適切なる融資を行なうことができると定められて、現に行なわれておる。機会均等でなければならず、国民は法律の前に平等でなければならぬ。だとすれば、このような破産、倒産が現実に多発しておることにかんがみまして、この際中小企業に対しても、信用制度の保持育成上これは看過すべきではないと同様にお考えにはならないか。そうしてこの際、日銀法第二十五条を活用されまして、中小企業に対しても別ワクで、たとえば中小企業緊急救済基金などのごときものを設けて、そうして続出してくるところの不渡り手形、これを何とか救済をしていく、関連倒産を何とかして防止していく、そうして信用制度の保持育成のため、日銀の機能を最大限に発揮される道はないのか、私はいま切々としてそのような必要性というものが濃縮されつつあると思うのであります。国会はいよいよ明日から開かれるのでございまして、当然こういうような中小企業救済対策、不況克服対策が論じられるではございましょうが、いまここに二十五条の発動があったことにかんがみ、かつはこれを契機として、同じような中小企業関連倒産、自己責任によらざるところの倒産があることにかんがみまして、そのような事情の金融特別措置ですから、これをひとつ御考慮願うべき段階にあると思うが、総裁の御見解はいかがでございましょうか。私は意地悪い、こういうことをやったんだからこうやれというような皮肉な立場でこの政策論を行なっておるのじゃございません。この間うちもあちらこちらで破産、倒産が相次いでおる。中には、一家心中、夜逃げなんか続出いたしております。何らかの政府の特別の救済措置をとらなければならない段階にあることを私は痛感することのあまり、ここに関連して申し上げておるのでありまするが、見解はいかがでありますか。
  145. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 最初に、山一の問題につきまして、特別融資につきましてもっときびしくやれという点は、よく御趣旨もわかりますし、私も今後ますますその点で努力して、なるべく最小限度にこの損失が食いとまるように早くやっていきたいと思っておるわけであります。  次に、中小企業の問題でございますが、中小企業がいま非常に困っておる、いろいろな意味で困っておることもよく承知をいたしておりますし、またそのいろいろのケースが御承知のとおりあるわけであります。それらの問題について、どうふうに金融面からやっていくかということにつきましては、政府側も十分考えておるでしょうが、私どももいろいろ考えておるわけであります。ただ、いま御質問の二十五条を適用しようということでございますね。これは、二十五条というものはできるだけやらないで、ほかに手があればやっていく性質のものだろうと思うのです。そうしてそれが国全体の信用秩序を乱す、むろん中小企業が非常に各方面で困っておられるということは、ある意味において信用秩序を乱しつつあるということも言えるかもしれませんけれども、しかし、やはりこれはほかの手が何かないかということを私は政府としても考えてもらわなければいけない問題だろうと思う。二十五条の乱用ということは厳に慎まなければなりません。中小企業に出すということが決して乱用だと申し上げるわけではありませんが、しかしそれかといって、これをいろいろなものにすべて出したら、これはたいへんなことになると思うのであります。だから問題は、中小企業の問題についてはほかに手がないでしょうか、それを私は考えておるわけであります。中小企業というものも決して軽視してはいかぬし、そう思うのでありますが、ほかに手はないものかということについて、もうほかに手はないんだ、こういうことになれば、私ども考えなくちゃならないと思っております。
  146. 春日一幸

    ○春日委員 手は幾らもありますけれども、しかし大企業、大財閥にだけしか自民党は一向やらないのです。あなたがここに二十五条を発動されて、社会不安、信用不安を解消することのためにこういうような日銀の執行もあり得るということでその手を打たれたんだから、一視同仁ということで——中小企業はいま夜逃げ、一家心中、関連倒産、将棋倒し、こういう中でいろいろ社会問題になっている。もう政治不安になって高まりつつある。だから、あなたの英断、この間山一の救済のために大蔵大臣に申請されたような英断ですね。そのひとしき英断を求めておるわけであります。しかし、ほかに手はないかということならば、ほかに手もいろいろありますが、きょうは時間もこんな状態でございますから、席を改めてあなたにまた御質問したり、アドバイスしたりいたしたいと思います。  きょうは御不例のところ長いことありがとうございました。失礼いたしました。
  147. 吉田重延

    吉田委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  148. 吉田重延

    吉田委員長 それでは、速記を始めてください。有馬輝武君。
  149. 有馬輝武

    ○有馬委員 総裁もお疲れでありますし、それから時間も経過しておりますから、私は、最初に時間を切って、五十分まで十五分間質問をいたしたいと思います。それで、私も簡単に質問いたしますから、総裁のほうも簡単にお答えをいただきたいと思います。  まず第一に、山一に対しましてあの措置をとられたときに、三つの条件がつけられたというふうに聞いております。その中の一つに、経営責任のあった旧役員に退職金の返済を求めることが入っておりましたが、これは現在幾ら入っているか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  150. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 三つの条件と、非常にやかましく言ったわけではないのでありますが、現在私の知っておる限りでは、日本銀行がこれを回収するという段階には至っておりません。ただ、約束はいたしております。
  151. 有馬輝武

    ○有馬委員 簡単にやってください。幾ら入っておるのか。全然入ってないのか、これを……。
  152. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 全然入っていないと思います。
  153. 有馬輝武

    ○有馬委員 それはいつまでと期限をつけておられますか。
  154. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまこの条件につきまして、山一証券に申しております。できるだけ早く提供させたいと思っております。
  155. 有馬輝武

    ○有馬委員 それから、二十五条を適用するにはいろんなめどというものがあってされたと思いますが、大体ダウ平均を幾らくらいに回復したいというぐあいに考えておらたのか、その時期と、それから平均をどの程度に持ってこれるかという、そのめどはっけられないでやられたのか。もしめどをつけてやられたとするならば、それについてどういう考え方があったのか。きのうのダウ平均は千四十五円三十八銭です。千二百円どころか、千百円を大きく割っていることは御承知のとおりであります。これについて、めどがあったのか、なかったのか。
  156. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ダウ平均を幾らに持っていこうという計算はいたしておりません。そのときの考慮の中には入っておりません。
  157. 有馬輝武

    ○有馬委員 それから第三番目に、第二日証金の設立について日銀と大蔵省との間で話し合いが進められておるやに伝えられておりますが、この事実があるのかどうか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  158. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 第二日証金というのはどういうのか、私は、第二日証金という構想については、何にも考えておりません。現在においては。
  159. 有馬輝武

    ○有馬委員 現在その有価証券を担保にして市銀融資をすることにもおのずから限界があるというようなことで、なおまた、今度のような特別融資が市中銀行を経由することにも問題があるということで、証券界には第二日証金ということについての根強い要望というものがあることは、これは総裁も御承知だろうと思います。将来この問題が検討される余地があるのか。その際に、日銀総裁としてはこの問題についてどのような考えを持たれるのか、この点をお聞きしたいということであります。
  160. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 今後の株式金融につきましていろいろの問題も確かにあるだろうと思うのでございますが、現在の段階において第二日証金というようなものは考えておりません。
  161. 有馬輝武

    ○有馬委員 第二にお伺いしたいと存じますことは、本年初めからの公定歩合の操作、それから預金準備率の操作、こういう一連の動きについてであります。  先ほど総裁は一応効果を示し始めるのではないかというような意味合いのことをおっしゃったわけであります。ところが財界には、現在の経済の実態に対してやはり危機意識というものが非常に根強くあることは御承知のとおりでありまして、これが単なる公定歩合の操作によって回復するとは考えられないということが強くいわれております。これは岩佐さんにしても、あるいは日産の川又さんにしても、すべてが口を合わせたように言っておるのであります。私どもここ数年来の公定歩合の操作を見ておりまして、一つには、前の山際さんのときにはやはり政府のそのときどきの意向によって左右されたきらいがあったのではないか。もちろん総裁としてそういうことはないということをしばしば言明されてきました。ところが、私どもタイミングを誤った場合が非常に多かったと思うのであります。今度の場合には、私はタイミングの問題を抜きにいたしまして、いま申し上げますように、現在の経済危機に関する見方というもの——あなたが出てこられた財界と総裁としてのあなたとの見方の間にズレがあるのじゃないか。それはいま申し上げましたように、単なる公定歩合の操作によってはこの危機は回復できないのだ、こういう見方がありますが、この点についての見解をお聞かせいただきたいと思うのであります。
  162. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 公定歩合の効果につきまして、民間とおまえとの見解が違うのじゃないかということでございますが、私が知っている限りにおきまして、表現はいろいろでございますけれども、やはり先ほども申し上げましたとおり、私どもがいま念願しておりますのは、公定歩合で全部のいまの不況が直るなんということは、ちっとも考えておらないわけですし、そういう考えは間違っておると思うのでありますが、しかし金融面からいろいろいまの日本経済を直すのにできるだけの手を打ちたい、これは決して万能薬ではないのであります。それぐらいはわれわれもよく承知しておるわけでありますが、しかしわれわれのとれる一番の大きいものは、やはり金融面が非常に引き締まっておる、要る金が出せないというものを、これはゆるめようじゃないかということで窓口規制をはじめ、そのほかのいろいろな廃止をやったりして、金融の量を銀行を通じて出せるような処置をとっております。また、さらに根本的の問題として、われわれは、いま企業は金利負担が相当多い、また現にそうでありますが、そういう問題につきまして、これを少しでも軽減していこうというために公定歩合もだんだん下げていって、そしてこれが銀行を通じて、銀行が貸し出し金利を下げられるような措置をつくっておいて、銀行がもし下げない場合は、どうして下げないのだということをやっていきたい、かように考えておる次第であります。また、金融面からそういう処置をとりましたので、ほかの、いま生産調整とかいろいろの話し合いが進んでおりますが、そのほうもだんだん出しよくなるのではないか。決して金融だけでいまの状態がよくなるというふうには考えておりません。
  163. 有馬輝武

    ○有馬委員 万能薬でないこともおっしゃるとおりでありますし、問題は、私がお伺いしておるのは、日産の川又さんあたりが言っておりますように、逆な現象を引き起こすのじゃなかろうか。いわゆる信用膨張の解消その他には役立つかもしれないけれども、逆にまた過剰生産というような形の導火線になるのではないかという心配もあるわけです。それだけに私は、公定歩合操作というものはよほど慎重にやらなければならぬ、これが佐藤さんや田中幹事長の景気刺激策一つに使われるというような筋合いのものではないと思うのです。もっと根本的な問題ではないか、そういう意味合いからお尋ねをいたしておるわけです。  それと、いま一つこれと関連してお伺いしたいことは、この三回の操作というものが金利の自由化への道を切り開くその前提ではないかというぐあいに受け取っておるわけです。そうなりますと、それから必然的に選別融資の問題その他が露骨になってくる。そうなると、勢い弱小企業というものは置き忘れられていく、そういう必然の流れをたどっていくのではなかろうかというぐあいに考えておりますので、あわせて金利の自由化の問題についてもお聞かせ願いたいと思うのです。
  164. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 公定歩合を軽々しくやるものではないという点はお説のとおりであろうと思います。また、今回を含めまして三回の公定歩合の引き下げが、景気刺激策そのものでないこともお説のとおりであります。私どもはこれを通じて間接的には景気にもいい影響があるということを思っておりますけれども、むしろねらうところはやはり企業の体質改善なり基盤の改善というものをねらっておるつもりでございます。  それから、金利の自由化への道ではないかということでありますが、金利の自由化というものは、私は今後もやはりそういうことによって必要なところに金が出ていくというふうにしなければいけないと思っておりますけれども、現段階におきましては、そんなことよりも、日本の金利水準をできるだけ下げて、そしていまお話しのように、中小企業にも均てんするように、その引き下げが及ぶようにしていかなけばならない。先般の準備率の引き下げの際にも特に比較的規模の小さい銀行によけい引き下げをやりましたのも、そういう銀行中小企業等に取引が多いであろうということでやったつもりなのであります。中小企業の問題は、先ほども春日先生からお話がございましたが、この問題は、やはりわれわれとしては、あくまでもどうしたらやっていけるのかというふうに考えておるような次第でございます。
  165. 有馬輝武

    ○有馬委員 次にお尋ねをしたいと存じますが、預金金利の問題について、特に郵便貯金なり割引金融債なり、あるいは金銭信託なり貸付信託、こういった預金金利について、金利体系を調整すべき時期にきておると考えられるかどうか。簡単でけっこうです。
  166. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 いま金利全体の問題について、私はやはり考える時期にきておると思います。ただ、金利というものは比較の問題が非常に多い問題でございます。一つをいじりますと必ずほかとの関連が生じます。過般来コールレートが非常に下がってまいりました。これは体制を直そうというために下がってきたものではないのでありますが、とにかくコールレートが下がってきておるということは、やはり結果から見ますと、金利全体の姿がよくなってきた。こういう機会をつかまえて直すべきだと思うのでありますが、ことにまた一方、最近ここまで金利が下がりますと、外国との金利の関係考えなければならぬ、いろいろ考えなくちゃならぬ問題がありますので、なかなか具体的に一ついじるというわけにはいかぬという点に、この金利体制の問題があるわけでございます。やはり長短金利のアンバランスとか、いろいろございますので、なるべく早い機会に、こういう金利の安いときに直すということが必要ではないかと考えております。
  167. 有馬輝武

    ○有馬委員 約束の時間まであと二分ありますので……。私はこの前の本委員会における佐藤委員の質問に対する総裁の答弁というもので合点がいかない面が多うございました。それは、総裁はいわゆる民間人として多くの期待と信頼を寄せられて、いわゆるチャンピオンとして日本銀行総裁になられました。そして最も信用を重んずるところの銀行の御出身であります。その銀行の御出身である中央銀行総裁が、たとえば、かつてのあなたが頭取時代の問題について、私は三月まで知らなかったというような御答弁がありまして、そして事の理非曲直が明らかになった際には、というような御答弁でありましたが、私ども民間をかけずり回っておりまして、その総裁のお態度に対してふっ切れないものを抱いておるのが国民大多数の気持ちではなかろうかと存じます。民間の期待をになって、国民の期待をになってこられただけに、私は総裁のあのような答弁では納得しがたい、ふっ切れないものがどうしても残ります。この点について、いま一度総裁の御見解をお聞かせ願いたいと存じます。
  168. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 私の問題について御質問を受けて、はななだ恐縮に存ずる次第であります。私が三菱銀行時代に起きた問題に対する責任のとり方についての御質問だろうと思うのでありますが、当時本委員会において御答弁申し上げましたとおり、司直で調べられております。その結果を待って御返事したいということを申し上げておったのでありますが、まだその結果を聞いておらないわけであります。つきましては、いま、当時お答え申し上げたと同様のことを御返事申し上げるよりしかたがないわけでありますが、全国でおまえを非常に疑っておるというお話を承ると、私はただただ恐縮申し上げるよりしかたがないので、私としてみずから省みてますます精進しなければならぬというふうに考えるわけでございます。どうもそれ以上私として申し上げようがないわけであります。御了承願いたいと思います。
  169. 有馬輝武

    ○有馬委員 司直のあれが明らかにならなければというお話でございましたが、私が質問をしたのは、そういう司直の手が云々ということに対してふつ切れない気持ちが残っておる。多くの輿望と期待をになって、しかも総裁になられて以来、着実にいろいろな的確な手を打たれる、その総裁であられるだけにふっ切れないものが残るということでありまして、いまみたいな答弁を繰り返されるのでしたら、私は何もこのような質問を申し上げるあれもなかったと思うのです。それと、日本銀行総裁、中央銀行総裁という地位だけに、これを大事にしてもらいたいという気持ちかち私は質問を申し上げましたので、これで終わりたいと思います。
  170. 吉田重延

    吉田委員長 これにて宇佐美日本銀行総裁に対する質疑は終了いたしました。  参考人には、御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  本日は、これにて散会いたします。    午後三時五十五分散会