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1965-05-12 第48回国会 衆議院 大蔵委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月十二日(水曜日)    午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君       天野 公義君    岩動 道行君       木村武千代君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    谷川 和穗君       西岡 武夫君    福田 繁芳君       毛利 松平君    渡辺美智雄君       佐藤觀次郎君    只松 祐治君       日野 吉夫君    平岡忠次郎君       藤田 高敏君   米内山義一郎君       横山 利秋君    春日 一幸君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         内閣参事官         (内閣官房内閣         審議室長)   松永  勇君         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (国有財産局         長)      江守堅太郎君         運輸政務次官  大久保武雄君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  深草 克巳君         建 設 技 官         (営繕局長)  小場 晴夫君  委員外出席者         参議院議員   平島 敏夫君         外務事務官         (大臣官房外務         参事官)    西堀 正弘君         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      秋吉 良雄君         大蔵事務官         (主計官)   津吉 伊定君         大蔵事務官         (国有財産局第         一課長)    塚本孝次郎君         自治事務官         (行政局行政課         長)      倉橋 義長君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      宇佐美 洵君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 五月十一日  牛乳管理特別会計法案有馬輝武君外六名提出、  衆法第三六号)  砂糖消費税法を廃止する法律案有馬輝武君外  六名提出衆法第三七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉鎖機関令等規定によってされた信託処理  に関する法律案平島敏夫君外一名提出参法  第一六号)(予)  昭和四十年度における旧令による共済組合等か  らの年金受給者のための特別措置法等規定に  よる年金の額の改定に関する法律案内閣提出  第七九号)  昭和四十年度における公共企業体職員等共済組  合法に規定する共済組合が支給する年金の額の  改定に関する法律案内閣提出第一二三号)  国有会議場施設管理委託等に関する特別  措置法案内閣提出第一三三号)  金融に関する件      ――――◇―――――
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  閉鎖機関令等規定によってされた信託処理に関する法律案議題といたします。
  3. 吉田重延

    吉田委員長 提出者より提案理由説明を聴取いたします。参議院議員平島敏夫君。
  4. 平島敏夫

    平島参議院議員 ただいま議題となりました閉鎖機関令等規定によってされた信託処理に関する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  終戦に伴い、閉鎖機関令により、その本邦内における業務を停止し、また、その本邦内にある財産清算をなすべきものとして指定された閉鎖機関につきましては、最初は閉鎖機関整理委員会、その後は特殊清算人により清算が進められてきたのでありますが、債権者所在不明等理由で、いつまでも特殊清算を結了できないでいる閉鎖機関につきましては、昭和二十九年五月の閉鎖機関令の一部改正により特殊清算人債権者のために弁済すべき財産信託することによって、その債務を免れる道が開かれたのであり、この信託をすることによって、その後は、その信託受託者から、債権者に対する支払い事務が続行されてきたのであります。これらの債務のうち、役職員給与、賞与、強制貯蓄金積み立て金退職手当等に関しましては、昭和三十八年に至り戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正及び戦傷病者特別援護法の制定により一定の条件下で満鉄等職員軍人軍属としてこれらの法律適用対象とされ、また、恩給法等の一部改正により満鉄その他の外国特殊法人における一定在職期間恩給及び公務員関係共済年金各法による年金の基礎としての期間に算入されることになり、これに伴い、これらの法律適用上の経歴確認を機として従来不明であった役職員所在も次第に判明してきているのであります。ところが、信託契約では、当該信託行為の定めるところにより、その在続期間満了の近いものがあり、残余の短時日では、現に判明している債権者に対しても、また今後判明してくる見込みの債権者に対しても、弁済を完了する  ことは手続的に不可能なことが予想されるのであります。一例をあげてみますと、元満鉄職員であって最近漸次所在が判明してまいっております者で、まだ退職金支払いを受けていない者が一万五千人もある状態であり、その信託期間満了は本年の九月十四日となっておるのであります。  他方、これらの信託契約におきましては、その存続期間満了の際に債権者に対する支払いができないため残っている財産国庫に帰属する旨を定めており、国もその利益享受意思表示をして権利は発生しているのでありますが、この権利は本来積極的な理由により国に発生したものではありませんので、前に述べました事情考え合わせますと、信託受託者においてその意向がある限りは、なおしばらくは引き続き信託事務を行なわせ、それでも支払いを終わらなかったものについて国庫に帰属させることとするのが適当だと思われます。また、閉鎖機関令による信託のうちには右に述べました給与等以外の債権のものもありますが、これを形式上区分することは困難であるほか、終戦に伴う混乱のために弁済を受けることができないでいる債権者を特に除外するのも不適当と考えるので同様の扱いとし、さらに旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産整理に関する政令規定による信託に関しても、同様の事情があるので、同様とするのを相当考えます。ところが、この措置を講ずるには、財政法第八条の規定により、法律を必要としますので、ここにこの法律案提出することとなった次第であります。  以上が、この法律案提案理由であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  5. 吉田重延

    吉田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     ―――――――――――――
  6. 吉田重延

    吉田委員長 昭和四十年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等規定による年金の額の改定に関する法律案昭和四十年度における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律案及び国有会議場施設管理委託等に関する特別措置法案の各案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  7. 堀昌雄

    堀委員 ただいま議題になっております国有会議場施設管理委託等に関する特別措置法案の問題であります。  この法律を見ておりますと、国が京都市に国際会議等会議場を設置をしてそれを地方自治体に貸し付けることができるという特例を設けよう、さらにその特例がまた貸しになることについては政令で書く、こういうことになっております。実はこれは根本的に少し問題がある点もありますので、少し解明をしておかなければならないと思いますけれども、これまで国が新たに土地を取得し、新たに建物を建てて総計数十億円の費用を出したものが、そのまま国が使用することなく地方自治体、またはその地方自治体がまたその他の第三者に転貸をして使用させている例があるかどうかお伺いをいたします。
  8. 塚本孝次郎

    塚本説明員 現在国有財産管理委託しております例は、国有財産特別措置法の第十条におきまして旧軍財産管理委託をさせておる例と、それからそのほかは……。
  9. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと、ちょっと。私が尋ねておるのは新しく国が一般財政の中から出資をして何もないところに土地を買い、建物を数十億円もかけて建てて、新たに建てたものが何ら国が使用することなくすぐ地方自治体にそれを貸し付け、それをまた第三者に貸し付けておるような例がこれまであるのかないのか。旧軍財産等はすでにあった建物でありますからそれは答弁になりません。私の質問に正確に答えてください。
  10. 塚本孝次郎

    塚本説明員 従来そのような例はなかったかと思います。
  11. 堀昌雄

    堀委員 私はこの趣旨とするところには特に反対をする意思はないのですけれども、この取り扱いのしかたについては、いま御承知のように国有財産取り扱いということは当委員会で非常に問題になっておるわけです。少なくともそれは国が責任を持って処理ができる範囲でなければならないと思うのですが、実はこの法案を見ておりますと、まず地方自治体に貸し付けるということにはなっておりますけれども、それよりさらに一歩を進んで、「前三項に定めるもののほか、管理受託者がその委託を受けた事務を他の者に行なわせる場合における前二項の規定適用その他第一項の委託について必要な事項は、政令で定める。」こういうことで、これは明らかに第三者に行なわせることが前提となっておるのかのように感じられるわけです。この法律のたてまえは、そこでそれではちょっとお伺いしておきますが、政令ではどういうことを定めますか。
  12. 江守堅太郎

    江守政府委員 政令考えておりますことは、国がこの法律規定いたします地方公共団体管理委託いたします際に、これは私法上の契約でありますので、その契約にいかなることを定めるかというようなことをまず第一にきめたい。それからその管理委託されました団体が、その他の団体にさらに委託をするというようなことも法律が予想いたしておりますので、その委託されました団体が、この会議場管理運営いたしまして、一面収入をあげなければならぬというような問題もございますので、そういった目的を実現するためのいろいろな条件などにつきまして、この政令できめたいというふうに考えております。
  13. 堀昌雄

    堀委員 建設省にお伺いをいたしますが、土地取得代金及び建設代金総計及び内部施設等建設省として現在行政財産として処理しておるようですけれども、しかし行政財産としての最終的な総額幾らでしょうか。
  14. 小場晴夫

    小場政府委員 お答え申し上げます。  まず敷地を買収いたしました。その敷地買収にあてました金額は一億三千六百五十三万一千円でございます。それから設計につきましては、競技設計に付しております。それから現在工事しております建物設計当選者に委嘱しております。そういう設計関係費用が約七千九百万、それから工事全体につきましては、三十二億六千万、こういうような計画で進んでおります。
  15. 堀昌雄

    堀委員 三十二億六千万円の工事費用内部付帯工事を含んでおるわけですね。
  16. 小場晴夫

    小場政府委員 さようでございます。内部付帯工事と申しますと、建物全部につきまして三十二億六千万、こういうことでございます。
  17. 堀昌雄

    堀委員 私がいま伺っておるのは、完全な建物にしておそらく貸すのでしょうから、完全な建物として貸す前に国として投資をする資金の総額を聞いているわけです。だからそういう形での総帥で答えていただきたい。
  18. 小場晴夫

    小場政府委員 われわれが所管しております予算につきましては工事費だけでございます。
  19. 堀昌雄

    堀委員 そうすると工事ができてからあとで備品を入れるのはどこへ入れますか。
  20. 江守堅太郎

    江守政府委員 いまの建設費のほかに初度調弁費的な物品費用がございます。これは本年度予算でこれから実行上きめてまいることになっておりますが、まだきまっておりませんが、約二億円くらい要るというように聞いております。これはもちろん最終的にはきまっておりませんが、建設を御担当になりました建設省のほうでは、大体そのくらいの物品が要るのではないかというふうに申されております。
  21. 堀昌雄

    堀委員 その二億円はどこへ計上されておるのですか、予算項目としては。
  22. 江守堅太郎

    江守政府委員 ことしの予算を編成いたします際にどこにするかというようなことを一応検討したのでございますが、その際われわれ事務的なレベルでは本年度国際会議場使用するというようなところまでいくかどうかということについて、予算編成最終段階までにおきまして、事務的に詰めることができませんでしたので、一応どこの予算にも計上いたしておりません。でございますから、これはこれから実行上の問題といたしまして、ことしの予算のどこかからそういう金額を出してくるというとこでございまして、その際にどこに計上するかということも同時にきめたいというふうに考えております。
  23. 堀昌雄

    堀委員 ちょっとおかしくなってきましたね。そうすると、二億もの金のものがすでに本年の十月に完成をするということになっておれば、来年の三月までは使用しないのならいいですよ、譲り渡しをしないのならいいけれども、本年度内に譲り渡しをするということが予想されてこの法律が出されておると思うのに、予算項目にあがってないものが二億円どこから金が使えますか。予備費は使えませんよ。これは本来予想されておるものでありますから、予備費では流用できないとなれば、その二億円はどうするのですか。――財政当局主計局、早く入るように言ってください。
  24. 江守堅太郎

    江守政府委員 これはこの問題の経緯を多少申し上げて御理解をいただきたいと思いますが、大体ことしの秋ごろできるというふうに建設省では見当をつけておられましたが、ただし、それはことしの予算を編成いたしますときにおきましては、ことしの秋できるといいましても、幾らの金を入れるとことしの秋にできるかということでございますが、建設省のほうでは、四十年度におきまして十五億余りの金を入れれば、秋までに完成をするというお考えであったのであります。それでまあ主計局その他と事務的の打ち合わせをいたしました際には、本年度におきましては、主計局のほうはそういった金額を入れない、したがって、本年度じゅうには完成をしないというような考えでずっと事務的に進んでおったのであります。それが予算最終段階になりまして、全額をつける、そして今年度じゅう完成をして使用することにするということになったのでございます。したがいまして、その際、当然いま仰せ物品についても同時に手当てをしなければならなかったのでございますが、まあそういった関係もございまして、物品のほうはあと回しになってしまった。この物品の問題は、本年度予算実行の過程において流用その他のことで生み出していこう、場合によっては予備費ということも考えざるを得ないのではないかというふうに私考えておりますが、最終的な御返事は主計局のほうから求めていただきたいと思います。
  25. 吉田重延

    吉田委員長 担当主計官がすぐ入ってまいりますから……。
  26. 堀昌雄

    堀委員 それでは、いまの問題はそこまでにしまして、要するに、三十五億か四十億かの金を国は一般会計の中から支出をして、この建物を建てます。大体、国のこういうものを建てて、それを国自体行政財産として使用する場合には、私はそれについての償却等考える必要はないと思います。これは本来の使用目的にかなって国が使っておるからいいわけですが、ほかのものに転貸借をさせて、そこから生じた収益転貸借者のものになる、こうこの法律はなっておるのです。よろしいですか。国の施設を、一般会計で三十五億なら三十五億、新しいものをつくって、それを第三者に貸して、第三者は、それは賃貸料がどうなるのか知りませんが、それから収益があがるならば、その収益はその転貸借者のものにするということは、私はどうも国有財産取り扱い措置上問題があると思う。国が何か建物を建てて、それによって金もうけができるような結果が起きるようなことは問題があるので、運営上費用問題等については、収支償わなくては問題があるかもしれませんけれども、その運営上の問題として収支が多少足らなければ、その収益があった部分についてそれを落とすなり、収益が十分にあるならば、それに基づいて転貸借費用等が考慮されるなり、何らかの形で、国が本来の国の行政目的使用していない普通財産の場合においては、それらの設備が合理的な範囲において考えられるのが当然だろうと思う。そこでこの転貸借をする場合の価格はどうなりますか。
  27. 江守堅太郎

    江守政府委員 これは貸借ではございませんで、あくまで管理委託し、それを再委託するということでございます。再委託を受けた団体がどのようにこれを運営してまいって、どのような収益をあげるか、非常にばく大な収益をあげることができるならば、いま仰せのような、どうもおかしいじゃないかというような問題も出てまいるかと思います。でございますが、この国際会議場運営をどこでするかというようなことをわれわれがずっと長い間事務的に考えてまいりました際に、一番の問題は、この運営は非常な赤字が出る仕事であるということがございまして、それでどこがやるかということもなかなか難航したのでございます。でございますが、結局この法案提出いたしますような形で解決がついたのでございますが、要するに現在のわが国の実情では、国際会議場と申しましても、京都国際会議場を一年のうち相当部分これに活用するというような事態はまずまずここ当分はない。私どもといたしましては、そういった学術的なものも含めましての国際会議というだけの使用日数考えますと、せいぜい年間六十日余り日数しか使えない。したがって、そのあとのものをどうするかということが、非常にこの会議場運営して収支どのように償うかということのポイントになるわけでございますが、それにつきましては、今後できますところの団体にこの事業をやっていただく。その事業については、もちろんこれは国際会議場ということが本質でございますので、その事業に支障のないような、またああいったりっぱな建物でございますので、それをあまりきずつけることのないような使用方法をやっていただく。しかもその使用の際には、こういった会議場でございますので、その使用料などにつきましても、できるだけ安い使用料を取っていただく。目安は、通常の運営費をまかなう程度使用料でできるような仕事をしていただく。したがって、私どもとしては、この運営をまかされた団体がこれによってたくさんの黒字を出すというようなことは考えておりません。ほぼ収支償う程度でできる事業をやっていただくというふうに考えておりますので、いまお話しのような事態はないというふうに考えておるわけでございます。
  28. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、その収益のほうでは問題がない。まあ将来のことですからわかりませんけれども……。そうすると、この会館の維持費は一体どのくらい予定しているのですか。年間の正常な維持費ですね、いまあなたの言う破損等の起こらない正常な維持費幾らですか。
  29. 塚本孝次郎

    塚本説明員 これはその維持程度によりまして違ってくるわけであります。たとえば人件費の見方におきましてもいろいろ試算があるわけでございますが、現在までの試算では、大体七千万ぐらいから一億一千万ぐらいの間にいろんな推定の費用があるわけでございます。切り詰めてやれば、大体七千万程度で済むのじゃないかというふうに考えております。
  30. 堀昌雄

    堀委員 年間ですね。
  31. 塚本孝次郎

    塚本説明員 年間でございます。
  32. 堀昌雄

    堀委員 そこで、私も一この中身がよくわかりませんが、六階建てで延べ八千坪ということですね。これは宿泊施設その他も一中に入るのですか。この建物の今後の運営宿泊施設その他も入るとなれば、これは民営ホテル等を圧迫することにもなるだろうし、要するに民営のものとの競合関係というものはどうなりますか。これは宿泊施設はないのですか、あるのですか。
  33. 江守堅太郎

    江守政府委員 宿泊施設はございません。
  34. 堀昌雄

    堀委員 しかし、宿泊施設もなくて、八千坪の専用の会議場なんというのは、世界でほかにありますか。
  35. 小場晴夫

    小場政府委員 世界に、国際会議場としてわれわれ承知しておりますのは、インドそれからパリユネスコ本部が大体そういうような性格のものでございますが、その二者は、現在京都で計画しておりますものの約半分くらいからと思います。なお国連事務局を含みません会議場でございますが、これはわれわれが計画しております分の三倍くらいあります。そういうような形において行なわれております。
  36. 堀昌雄

    堀委員 いまあなたの出しているのは、これと比較できないですね。国連会議場なんというものは、こういう国際会議だけをやる目的のために建てられているものではなく、国連の本来の機能を行なうために建てられているものである。パリユネスコだって、おそらく会議場として専門に建てたものではなくて、ネネスコ活動部分的な補完として建てられておるものであって、これはだれがこんなことを言い出したのか知らぬけれども、まことに国費の乱費というか、私はこのやり方も大体けしからぬと思うのです。そうしてその第一段階として三十億も金をかけてこれだけのものを建てておる点にも問題があるし、運営上の問題としていまの話を聞けば、年間運営費用をかりに九千百万円とすれば、一カ月八百万円の経費ということになる。いまの国有財産局長答弁では、二カ月ぐらいが使用の限度だとなれば、一千六百万円しか入らないから、当分年間八千万円の赤字ができる。この赤字一また国が持つのじゃないでしょうね。ここをはっきりしておかなければならぬ。
  37. 江守堅太郎

    江守政府委員 国が持つものではございません。法律にその点をはっきり書いてございます。
  38. 堀昌雄

    堀委員 それはどこが持ちますか。初めから一年間に八千万円赤字が出ることがわかっておるものを京都市が払うのですか。
  39. 江守堅太郎

    江守政府委員 先ほど申しましたように、受託を受けました団体が、会議場目的施設その他を阻害しない範囲内におきましていろいろのことに利用して、その程度収益をあげていただきたいということで、その赤字をそういった団体会議場施設利用収入以外の事業でまかなっていただきたいということを考えておるわけであります。
  40. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、これは国際会議場とは名ばかりで、当分の間は国内会議場ですね。十二カ月のうち十カ月はその他の方法によって利用せざるを得ない。国際会議場という名の国内会議場を国はつくった、こういうことですね。
  41. 吉田重延

    吉田委員長 堀委員に申し上げますが、津吉主計官がお入りになりましたから……。
  42. 江守堅太郎

    江守政府委員 国際会議場に利用いたしますことを第一の目的といたしております。今後の日本の地位からいいまして、こういった国際会議に利用される度数も逐年増加してまいると思います。それでは現実に来年、再来年はどうかと申しますと、相当程度国内会議にも利用されることになるかと思います。
  43. 堀昌雄

    堀委員 これまで日本でも相当国際会議がありましたが、外務省、昨年一年間でもいいですが日本で行なわれた国際会議というのは何回ぐらいありますか。
  44. 西堀正弘

    西堀説明員 はっきりとこちらに昨年開かれました国際会議の名称は持ってまいりませんでしたけれども、過去において日本で開かれました国際会議名の表はここに持っております。
  45. 堀昌雄

    堀委員 回数でよろしい。
  46. 西堀正弘

    西堀説明員 数で申しますと、過去十年間日本で開かれました国際会議は、政府のも一のは四十三件ございます。それから民間の会議は、私のほうに手持ちのも一のでは八件ございます。
  47. 堀昌雄

    堀委員 わかりました。過去十年間に合計五十回、これでは、いま国有財産局長は二カ月くらい使えると言ったけれども、東京も含めて日本でということでないと――あなたは二カ月は使えるという答弁をしたが、二カ月も使うほど京都国際会議がやれますか。
  48. 江守堅太郎

    江守政府委員 外務省のほうでおとりになりました会議の数はあるいは私どものとり方と違うかと思いますが、国際会議、学術会議合わせまして大体年間平均二十五、六回は開いていると思います。そんな関係から、今後ふえることも予想いたしますと、大体二カ月あるいは二カ月を少し出たところぐらいは使えるのじゃないかというふうな見当をつけているわけであります。
  49. 堀昌雄

    堀委員 いま二十五回くらいはあるということですが、実は東京にもそういう国際会議をやることを考慮をしたホテルがかなりあるわけです。どちらかというとそういう会議等については東京で行なわれる場合が依然として多いのではないか。ということになりますと、この建物は私がさっき触れたように国際会議場という名の国内会議場、それももてあましぎみということになるのではないかという点に私は問題があると考えます。特にその赤字を防ぐためにどのような形の処理が行なわれるかということについても、これは国有施設でありますから、そこで歌謡ショーなどをやるというわけにはいかぬと私は思うのです。だからこの点はよほど考慮をしておいてもらいたい。注意を喚起しておきます。  そこで、主計局が入ったから聞きますが、中の物品等の調度費が二億円かかるのは本年度予算には計上されていないといま国有財産局は答えています。話によると建設費は十五億今年度中に完工する予算をつけた。それならばこの建物は十月ごろには完成するということをはっきり考え主計局としては予算をつけた、ところがその中身の物品調度費の二億円については予算がついていない、こう言っていますが、そのとおりですか。
  50. 津吉伊定

    津吉説明員 私直接予算関係でございませんので、あまりつまびらかでございませんが、私は財政法九条の関係ということでなにしたのですけれども……。
  51. 堀昌雄

    堀委員 それじゃいいです。先にあなたのほうに財政法九条の関係伺いますけれども財政法九条は「国の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。」こういうふうにいわれておることは、私がさっき触れたような、国の一般会計等から支出をしたものが不当な処置をされてはならない、とこういうことだと思っておる。そこで、そういうことになるならば、特例として法律を設けるのだ、こういうことになるのでありますけれども、その財政法適用以外のことを設けるには、それ相当理由がなければならぬと思うのです。財政法の例外事項として規定をするためには、相当積極的な理由がなしに、何でもかんでも法律さえつくれば財政法はもう骨抜きになるんだということでは、私は財政法の権威というものは守られないと思うのです。だから、相当財政法上問題はあるけれども、国家目的使用する際に、必要だということの必要性が高くなればならぬと思うのです。ところが、いままでの経緯を聞いてみると、国家目的にそう比重のかかった施設ではないわけです。まあ、それは百年先のことを言えば知らず、少なくとも今後五年、十年の間においてこれが満度に使用される可能性もないようなものを三十数億円の金を――いま国が持っておる軍用施設であるとか、あるいは財産税ですか、何かその他で物納されたものであるとか、持っておるものをそういうものに使うというのならまだ話はわかる。ところが一般会計から三十数億の金を出しておいて、それが十分本来の目的の用途に沿わないような形で使用されるという条件が明らかでありながら、なおかつ財政法上の特例を設けるというのは、私は財政法の立場から見ていかがかと思うけれども、あなたのほうは私を納得させるに足るだけの財政法上の釈明ができるかどうか、お伺いいたします。
  52. 津吉伊定

    津吉説明員 財政法上の釈明をいたしますと、形式上の問題と実質上の問題とあると思います。まず第一に形式上の問題といたしましては、国有財産である国際会議場施設国有財産法の管理主体の特例を設けまして国家目的に適合するようにその関係地方公共団体委託をするという形式的な要件が一つと、それから国有財産国際会議場施設として適切に活用されるべきであるということを要件といたしまして、財政法の九条の特例的な法律規定を設けるということでございます。それが的確に国家目的に沿った運用がされるかどうか、されないではないかという前提で特例法を設けておるつもりはございません。
  53. 堀昌雄

    堀委員 あなたの答弁は、私に言わせると最もまずい官僚答弁だと思うのだ。ということは、まあ答弁技術を言うんじゃないですけれども、形式はいかようにでもなるのです。少なくとも形式というのは、ただ形式だけで存在するのじゃないでしょう。内容を伴わない形式なんというものは架空の話です。だから、形式と内容というのは、内容の外側にあるものは形式なんであって、その形式を規定するものは当然内容でなければならぬと思いますが、一般論として、どうですか、あなた。
  54. 津吉伊定

    津吉説明員 形式と内容という区分を一応いたしましたけれども、もちろんその形式にこだわるわけではございませんので、内容として、国有財産である国際会議場施設が国の目的に適合するように運用されるという前提におきまして、国有財産の運用に一体となる物品につきまして、あるいは国有財産物品もともに財政法九条の特例法律適用の対象としたということでございます。だから、実質的に的確に国家目的に適合するような運用がされないという前提で特例法律を設けておるというふうには考えておらないのでございます。
  55. 堀昌雄

    堀委員 あなたは、いまその目的に適合するように運営されるということが前提だ、とこう言いましたね。これは国際会議場という名前がついているのだから、それじゃその目的というのは――国際会談を行なう目的というのは、国の目的でしょう。いいですね。国際会議を行なわない部分というのは、それじゃ国の目的と違いますね。その点、ちょっとはっきりお答え願いたいと思います。
  56. 津吉伊定

    津吉説明員 非常に厳密に、施設維持管理に付帯いたしまして、国際会議場のためにのみ使用するというふうに見ますと、それ以外の使用の態様もあるいは間々入ってくるかもしれませんけれども、非常に不当な使用目的、いまおっしゃいましたような歌謡ショーとか、そういう国家目的に照らしまして非常に逸脱したような目的に供されるのはどうかと思いますけれども維持管理上、通常国際会議場の用の間に使用させるという態様は、ある程度はあろうかと思います。主たる目的国際会議であります。
  57. 堀昌雄

    堀委員 いまあなたが言った主たる目的国際会議でしょう。そうすると、主たる目的――従たる目的というものは本来ないと思うのですけれども、この会議場の国家目的国際会議をするためだと思うのです。国内の会議をするためにこんなに国が金を出しておつくりになる必要は全然ない。一般の施設京都にはたくさんあるのです。だから、国際会議をするというのが主たる目的ではなくして、それが目的である。維持管理というものはその後に起こる問題であって、それは結果の問題です。目的と結果を混同してはいかぬ。少なくとも当委員会は、もののけじめと筋を立ててはっきりさせるというのがこれまでの慣習ですから、そういうふうにごまかして通ろうということは、容赦はしない。少なくとも、答弁は、あなたが責任を持って答える範囲内においては、だれが聞いても筋が通って明確であるということでなければならぬはずである。そうすると、この国際会議場国際会議に使うことが国の目的である、それ以外は本来の国の目的ではありません、こういうふうにあなたは答弁しなければならぬと思いますが、どうですか。
  58. 津吉伊定

    津吉説明員 国際会議場の用に供する以外は本来の、と言われるその本来の意味でございますけれども……。
  59. 堀昌雄

    堀委員 じゃ、ほかのことばでもよい、あなたの言いたいように言ってください、それが目的だということを。それ以外は本来の目的じゃないということを。そうじゃないですか。違うなら違うように言いなさい。
  60. 津吉伊定

    津吉説明員 国際会議場の用に供するというのが本来の目的でございます。
  61. 堀昌雄

    堀委員 ですから私は、さっきあなたの話のときに、量が質を規定するという問題はある。量が質を規定するということは、将来、非常に先の長い話を言えば切りがありません。しかし、当面の考え方からするならば、いま国有財産局長が答えたように、六分の一しか国際会議目的はないですね。六分の一五というのは現状で実は目的に使われないです。それでは、それが一体何年たったら幾らにふえるかということについては、国有財産局長といえども保証ができないでしょう。それではちょっと伺うけれども、一体これが一〇〇%使用できるのは今後何年かかるか、国有財産局長答弁できますか。
  62. 江守堅太郎

    江守政府委員 答弁いたしかねます。
  63. 堀昌雄

    堀委員 そうでしょう。それは答弁できない。そういうきわめて不確定な要固を持って、当初は六分の一が国家目的であるというようなものに対して、形式と内容の関係からするならば、財政法特例を設けることは、これは私は財政法の権威をゆがめるものだ。少なくともあなた方大蔵省の法規担当主計官財政法を守るのが任務じゃないですか。特例法をつくるのが任務じゃないと思うのです。ところが、あなたはここへ来たら、国有財産局長の側に立場を変えたような言い方ばかりをしているから、それで私は気に入らないんだ。あなたは財政法を守る立場からものを言って、そして国有財産局で何か問題があるならば、それじゃその点を補完するのはどうするのですかとあなたのほうから言うのがあたりまえのことだと思うのです。それが逆になって、あなたは国有財産局長のかわりになって答弁をする。そんな姿勢では法規担当主計官はつとまらないと思うのです。あなたは財政法を正確に守る責任があるんだから、そういう立場からいうと、やや特例法というのは政治的な問題がありましたから、われわれとしてはやむを得ませんでしたというなら話は別です。あなた方の力の及ばぬところできまることについてあなた方を責めるつもりはない。しかし、主計局考え方というものは考え方として明らかにしてもらわないと、今後に悪例を残すと思う。ともかく大蔵省としては筋は通すという点で私は私なりに評価をしている。筋は筋でここできちんと通しておいてもらわないと、そんなだらしがない主計局では私は国の財政をまかすわけにはいかないんです。どうですか。
  64. 津吉伊定

    津吉説明員 量的な問題だけをいいますと、あるいは使われている期間はどうこうという問題になろうかと思いますけれども、そういう目的に質的に供されるという、目的を重視いたしましてわれわれは特例考えたわけでございまして、別段放漫に財政法特例を考慮したということではございません。
  65. 堀昌雄

    堀委員 私が量は質を規定するということを言ったのですが、あなたは量は質を規定すると思いますか、思いませんか。要するに、たったこればかり何かあったら、それをもって、一般論で全般を律しますか。そういこうとにはならぬでしょう。要するに量か質を規定するということは、ある程度範囲にきたときに初めてその量の範囲における質を規定するのであって、いま六分の一という例をすでに出しているわけですが、これが三分の一とか二分の一以上になれば当然いいですよ。問題はない。常識論としては二分の一以上そういう目的使用されるということなら全然異論がない。三分の一ぐらいでもがまんをする。六分の一で――二分の一まで何年かかったらできるかと言ったら答えられない。不確定要因が非常に多いわけです。国際会議場はここしか使わないという何か法律をつくって規定するなら話は別ですが、そうじゃない。要するに国際会議というのは、こちら側の主催者が外国の諸君と話し合いできめることであって、政府国際会議はここで全部やりなさいなんて規定することはできないはずです。ほかに東京にはそういう十分な施設があるということから、競合しているわけです。そういう条件の中で、もし今後五年たってもこれが六分の一なり五分の一なりであったとしたら、あなた方の責任は追及されますよ。私は責任をとるべきだと思うのです。その当時における財政当局のあなたは、たとえどこにおっても、見通しを誤ったわけですから。そういう点では、財政法の問題についてはもう少し皆さんがきびしくものを考える必要があるのではないか、こう考えるわけです。だから、政治的な問題として処理をされたからやむを得ませんというなら話は別だけれども、筋は筋として守ってもらわないと、そこから次から次に政治的にこんなことか出れば――三十数億円という金は国民の貴重な金です。それが実際に国の目的に使われないようなことに使われるということは、われわれは国民の代表として黙っておられません。
  66. 江守堅太郎

    江守政府委員 京都市にきまりましたこと、あるいはこの大きな建物をつくりましたことなどにつきましては、ある面におきまして私どもの力と関係のない問題がございます。ございますが、この建物をどのように管理運用してまいるかということは、大蔵省といたしましても各省と十分御相談をいたしましてこの法律を出したのでございます。この建物予算で獲得いたしました国有建物でございます。国有建物でございますが、その目的国際会議に利用するということでございます。ところが国際会議の利用度はいま仰せのとおり比較的少ない。今後ふえてまいると思いますが、現存のところ比較的少ない。もしこれを一年のうちほとんど大部分、一〇〇%国際会議に利用できるのだということならば、これは外務省の行政財産にいたしまして、外務省が直接会議場としてこれを管理運営するということが私は望ましい姿だと思います。ところがそれがいまできない。それでは年のうちむしろほかに利用されることのほうが多い建物を、どのように国有財産として管理、運用するのがいいのかということが問題なのでございます。たとえば近畿財務局の管財部がこの建物管理いたしまして、六十日間会議のときだけ利用する、あとの三百日はあき家として、国有財産局管理人がそこを警備しているというような形で運用していくというのも一つの方法かと思います。それがいいのかということをいろいろ考えました結果、とにかくこれは国有財産である普通財産として、京都市に管理委託するという方法が一番いいという結論に事務的に到達したのであります。その管理委託します方法といたしましては、こういった特別法を設けてやらなければならぬ。またこういった管理委託特別法はこれのみならずほかにもございます。そういった例にもならいまして、こういった方法管理委託してまいるのが最も適当であるというふうに考えてこの法律を出したのでございまして、この国際会議場管理運営について、われわれは各省とも十分事務的に検討いたしまして、これが一番いい方法であると考えて、しかもそれを実現するためにはこういった法律によらざるを得ないということでこの法律を出したのでありますということを御了承願いたいと思います。
  67. 堀昌雄

    堀委員 いまの国有財産局長答弁は、始まったところは自分たちのワクの外できまったから、そのしりぬぐいをいかにするかということで頭を悩ましてこうなったということのようですから、私も一応それで了承いたしますけれども、しかし私に言わせると、政治的にもののきまる問題というのは、本来国民的利益という立場でものがきまるようなことでなければ、行政当局は筋を通して反対すべきだと私は思う。あなた方がいまここで言っていることは、率直に言えばおそらくあなた方は私と同じ気持ちでおったのではないかと思う。しかし上から押しつけられて、しようがないから何かしりぬぐいをしなければならぬというので法律案を出したら、私に同じようなことを言われて、内心はわれわれもそう思っているということだろうけれども、ここではまさかそうも言えないからいまのような答弁をしてきたと思う。私はこういう問題は、いまの国の財政が非常に豊かで、金があり余ってしようがないというならともかく、最近の状態は金がなくて、きのうも大蔵大臣とやったけれども、四十年度は少なくとも二、三百億円の減収だろうという段階のときにそういうような措置が講ぜられるということについては、行政当局としてもう少し抵抗すべきところは抵抗すべきではないか。政務次官、あなたは政治家ですから、私の言うことがわかりますか。
  68. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 わからぬではございませんが、これは見方だと思います。現在はいま言うようにフルに使うことはなかろうなれど、将来の日本の発展を考えると相当使うようになるんじゃなかろうか。これが一つであります。それから、本来の目的でないものに使わすのは云々、それはごもっともですが、本来の目的を妨げないならばある程度のものは使わしてもいいんじゃないですか、いまの段階においては。さように考えます。
  69. 堀昌雄

    堀委員 いや、私はそんな無理なことをしなくてもいいようなやり方というのが実はあるのじゃないか。いま東京にある会議場だけで十分まかなえる。それがまかなえなくなってきたときに国が何か考えるということなら私は話はわかる。財政効率というのはそういうものでしょう。われわれは二重投資がいけないということを当委員会で盛んに言ってきている。日本のいまの生産は過剰投資による生産過剰の問題でしょう。同じことじゃないですか。日本のホテル業者がオリンピックを中心にしてたくさんホテルを建てて、さらに当初から六分の一以下しか使用量のないような二重投資を国が国の財政でするなんて、もってのほかだ。いまの政務次官の答弁については、あなたは法律家だから、財政なり経済の専門家でないから私はこれ以上言いませんけれども、われわれは少なくとも、経済学者ではないけれども、経済を担当するものとして見るならば、まことに二重投資で国の費用をむだ使いをしている感じがしてなりません。ひとつそういうことで、今後にこのような二重投資その他については、ひとつ政府はいたずらなる政治的圧力を排して、国民の側に立った筋を通すべきだということを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  70. 吉田重延

  71. 有馬輝武

    有馬委員 共済組合法の改正について二、三の点についてお伺いしたいと思いますが、今度の改正の方向というものは、本来この共済組合制度というものが社会保障制度的な色彩を強めていくという過程の中でとらえられたものと理解するのですが、その点どうなんですか。
  72. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 御質問の趣旨にあるいは的確な御答弁ではないかと思いますが、そういう意味合いが相当多分にあることはもちろんでございます。
  73. 有馬輝武

    有馬委員 その意味で、これは国家公務員の場合も公企体の場合もそうですか、国の負担割合というものをいじっておる基準といいますか、ものの考え方、それをお聞かせ願いたいと思うのです。
  74. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 共済の場合の国の負担関係の御質問でございますが、御案内のように、共済の中には長期給付と短期給付がございます。長期給付につきましては、現在国庫負担率は一五%になっております。国庫負担率と申しますか公経済の負担率が一五%、あと残りの八五%を労使折半で、それぞれ四二・五%ずつ持つというのが、長期給付のあり方でございます。それから短期給付につきましては、これは全体の社会保険を通ずる一つの原則がございまして、ただいま労使折半の五〇、五〇の割合になっております。これがどのような角度からどのように理論的にそういう数字が出かかということは、これはなかなかむずかしい問題もございまして、歴史的な問題も相当あろうかと思います。沿革的な問題もあろうかと思いますが、短期給付につきましては国庫負担が現在ございませんが、この趣旨といたしましては、長期給付は何せ相当程度金額を要するという点ももちろんございますものの、何せ長期給付につきましては、リタイアした、つまりやめたあとの問題でございます。したがって、その関係におきましては雇用関係はございません。そういった意味合いからいたしまして、国も社会保険主体としての公経済も何らかの財政援助をするという意味合いからいたしまして負担があるわけでございますが、短期給付につきましては雇用関係が継続しておる段階でございます。したがいまして労使折半、国の負担はないということだと思います。もちろん短期給付につきましては、日雇健保、国保につきましては国庫負担があることは御案内のとおりでございます。
  75. 有馬輝武

    有馬委員 私の最初に質問しましたのは、少なとくも社会保障制度の拡充について、特に総理の言明の中等でも取り上げられ、その中で日本の共済制度というものがいかにあるべきかということを考えたならば、やはりその方向に沿うような形で各国の例等が参照にされなければいかぬ。ぼくらは常に、せめてイギリス程度に持っていけということを年来主張しているのだけれども、そこまで持っていけないその最大の理由というものをこの際明らかにしてほしい。
  76. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 社会保障制度全般の問題ですから、一給与課長の共済担当の一人といたしましては、なかなか答弁の域を脱しておるかもしれませんが、あるいは私の答弁でまずいかもしれませんが、イギリス並みの社会保障という場合の問題は、これはなかなかイギリスの国民所得、それから日本の国民所得、そういった経済水準、生活水準それから社会保障の見方、あり方いろいろの点について、やはり歴史的な沿革的な相違があろうかと思います。そういう問題がございまして、なかなかイギリス並みの社会保障制度までは――しかしながら私聞くところによりますと、社会保障全体の水準といたしましては、相当程度までいっておりまして、西欧諸国並みまではいっておる。現在制度的にないのは、児童手当問題だけがない、未解決の問題になっているというふうに聞いております。  答弁といたしましては幼稚でございますが、以上でございます。
  77. 有馬輝武

    有馬委員 大久保さんにお伺いいたしますが、いまの説明の中で、たとえば所得等を一つのデーターとして、資料として考慮すること自体が間違っておるのじゃないかと思うのですが、どうですか。イギリスの国民所得と日本の国民所得を、この共済の場合に考慮の中に入れるという自体が、発想法として間違っておるのじゃないかと私は思うのですが、その点はどうですか。
  78. 大久保武雄

    ○大久保政府委員 やはり社会保障を検討するにあたりましては、給与と所得という面も考慮の一端に入るものではなかろうかと私は考えておりますような次第であります。いまおおむねヨーロッパ並みに近づいておるという大蔵省からの御答弁がありましたが、給与におきましてもかなり最近は実質的に伸びてまいっておる。運輸省所管の一例をあげますと、造船等に関しましても、先般イギリスの造船海運大臣が参りました視察の結果は、おおむね給与的にもかなりな程度に達しておる、かような批判をいたしてまいりましたような次第でございます。私も筋といたしましては、大蔵省当局に賛成をいたしておるような次第でございます。
  79. 有馬輝武

    有馬委員 私が聞いておるのは、所得の実態がイギリスのようになっておるのなら話はわかるのです。共済制度の中で、イギリスと日本の所得を比較することは間違っておるのじゃないか。むしろ裏返しで比較するなら話はわかると思うのです。年金のあり方、長期給付、短期給付のあり方というものは、むしろイギリスまでいっていないから、日本の場合には相当検討する余地があるんじゃないか、このような意味で政務次官にお伺いしたのです。その点どうなんですか。
  80. 大久保武雄

    ○大久保政府委員 所得の少ないところを社会保障でカバーしたらどうか、こういう有馬委員のお考えのように、御質問の趣旨がだんだん明確になってまいりましたが、もちろん給与所得の低い点を社会保障の面でカバーするということができ得れば非常に望ましい事態ではございますけれども、やはり給与所得に関連いたしましたあるいは所得税その他の面から、一つの社会保障のよって立つ財源といったようなものも構成されてまいりますものでもございますし、また一つの社会的なすべての有機的環境というものが自然にレベルアップしていく筋合いのものでもございますので、一つの国のそういった社会保障の段階というものは、やはり給与というものに並べながら推進していくことが、またそれを双方ともレベルアップしていくことに努力することが望ましい政治の姿ではなかろうか、かように考えております次第でございます。
  81. 有馬輝武

    有馬委員 次に課長にお伺いしますが、共済組合に関してはたびたび附帯決議を衆議院並びに参議院においてつけておるわけであります。ところがその取り扱いについて、ある附帯決議は取り上げる、ある附帯決議についてはほおかぶりをしておる。この理由についてお聞かせ願いたいと思うのであります。
  82. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 附帯決議につきましては、できるだけその線に沿いまして政府といたしましても検討することは当然のことでございます。しかしながら、いろいろ検討いたしましても、ものによりましてはどうしても附帯決議の御趣旨に沿いかねるということも、これはまたケース・バイ・ケースで当然出ることもあるいはやむを得ないかと思いますが、できるだけ御趣旨の線に沿って極力検討を遂げるということは当然のことでございます。前回の場合におきましても、これは共済組合連合会の民主化の問題につきまして参議院で附帯決議がございましたし、それから常勤的非常勤職員の組合期間の通算の問題につきましても附帯決議をちょうだいいたしましたわけでございますが、この二点につきましては私ども十分検討いたしまして一今度の法律案におきましても、常勤的非常勤職員の問題につきましては、法律案として御審議をいただいておるような次第であります。
  83. 有馬輝武

    有馬委員 当然そういうような答弁をするだろうと思ってぼくは質問したのです。財政的にできませんでしたというなら話はわかる。財政的にこれは満足じゃないけれども、非常に不満足だけれども一歩前進するようなことは手がけて、民主的な運営の問題についてはほおかぶりしておる。その理由を伺っておる。
  84. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 連合会の民主化につきましての参議院の附帯決議でございますが、これにつきましては私ども十分検討したわけでございますが、これにつきましては先般武藤委員からの御質問もございまして、なかなか法制的制度的にはいまの現行制度を変える理由が乏しい。しかしながら附帯決議の線もございまして、できるだけそういった線に沿うような事実上の方途はないかということで十分私ども検討いたしております。この線に沿いまして、御承知のように連合会の事業計画につきまして、重要な事項でございます各共済組合に重要な関係がございます。また組合員にも重要な関係がございます。そういう意味合いからいたしまして、従来にはなかったことでございますが、今回の連合会の事業計画を定めるにあたりましては、特に各単位共済の運営審議会の主管者、それから組合員を代表するそれぞれの委員の二名の方々の参集をいただきまして、特に連合会の事業計画につきまして活発な論議をちょうだいし、この点につきまして三回についてやって、極力できるだけ意見を取り入れるというようなことまでやっておりまして、事実上の何か連合運審と申しますか、そういうようなことで民主化の問題につきましては極力御趣旨に沿うように今後検討いたしたい、かように思っております。
  85. 有馬輝武

    有馬委員 国家公務員共済組合の場合に、連合会に出す代表は担当課長でなければならぬというような理由はどこにあるのですか。
  86. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 これは担当課長でなくちゃならないというどんぴしゃりの議論はございません。ただたまたま担当課長が充てられておるということでございまして、各省各庁の長がそういった委嘱をするわけでございますが、これはやはり日常総括的な立場にある人、各省共済を代表する立場にある人というふうに法律上書かれております。そういう意味合いからいたしまして、勢い日常総括的な立場にある人、それが実事上担当課長ということになるかと思います。
  87. 有馬輝武

    有馬委員 組合代表であっても、いかぬでもないでしょう。
  88. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 各共済組合を代表すべき人でございます。したがいまして組合代表――組合代表というのはどういう………。
  89. 有馬輝武

    有馬委員 職員代表。
  90. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 職員代表であってはいけないという法律上の問題はございませんが、組合を代表すべき立場にある者ということになりますと、勢い事実上はそれぞれの日常総括的な立場にある者ということになっているわけであります。
  91. 有馬輝武

    有馬委員 端的に答えてくださいよ。職員代表であってはいけないのか。
  92. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 法律上そういう規制はございませんが、各省が組合を代表すべき者として選ぶ場合には、勢い日常総括的な立場にある人ということになるかと思います。
  93. 有馬輝武

    有馬委員 ぼくは端的に聞いている。事実上そうであるかもしれないけれども、ほかの者でもいいということですね。
  94. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 私の考え方からいたしますならば、ほかの人より、職員を代表する者よりも、組合員を代表する者よりも、やはり日常総括的な立場にあるほうがいいんじゃないかということで、勢いそういう結果になっておるんじゃないかと思います。
  95. 有馬輝武

    有馬委員 ぼくが聞いているのは、現状では確かにそうなっているが、総括的立場にあるその担当課長が組合員の意向を全幅的に代表しておるかという点について疑問があるから、もしより以上に代表し得る者があったならばそれでもいいんですねということを、将来の問題として聞いておるのです。
  96. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 そういう意味であれば、そうだと思います。
  97. 有馬輝武

    有馬委員 それを、各省から担当課長以外の者が出てきても大蔵省にはそれをチェックする考え方はないというぐあいに理解していいですね。念を押しておきます。
  98. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 これは各省各庁の長が組合を代表すべき者として選ぶわけでございますから、各省各庁の長が組合を代表すべき者であるということで選ばれるならば、その限りにおいて大蔵省給与課といいますか、チェックする意味はさらさらございません。
  99. 有馬輝武

    有馬委員 次にお伺いいたしますが、現在の理事の構成また評議員会の構成、これについてもしばしば論議されてきたことは御承知のとおりであります。この構成についても大蔵省ではチェックする考え方はない、このように理解していいですか。
  100. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 連合会の理事につきましては九名以内ということになりまして、六名の者につきましては各省を代表すべき者が輪番制に当たっておるということは御承知のとおりであります。評議員会につきましては、これは法律上の規制がございまして、先ほど御議論があったのはそれでございます。
  101. 有馬輝武

    有馬委員 ぼくが聞いているのは、その構成の内容がだれが何名でなければいかぬということについて大蔵省としては特別の基準があるのかないのか、単共にまかせるのかどうか、この点をお伺いしておるわけです。民主的な運営ができるならば、お互いに話し合いがつくならば、その選出母体については――選出母体といいますか人的構成については各単共にまかせてもよろしいかどうか。
  102. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 御案内のように、役員につきましては法律の二十七条にございまして、「連合会加入組合の事務を行う組合員をもって充てる。」ということになっております。それから評議員会につきましても、これは法律三十五条でありますが、「評議員会は、連合会加入組合を代表する組合員である評議員各一人をもって組織する。」しかもそれが、「前項の評議員は、連合会加入組合に係る各省各庁の長が、その組合員のうちから任命する。」ということになっておりまして、この趣旨に合う限りにおきましては特に私どもはくちばしをいれるということはございません。
  103. 有馬輝武

    有馬委員 次にお伺いをいたしますが、この連合会の運営なんですけれども、現在では理事者が、いわゆる理事会という執行機関とそれから議決機関である評議員会に同じ人が出ておる。これは妥当な姿であると現在大蔵省は考えておられるのかどうか。
  104. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 その指摘はたまたま私どもも受けております。私どももなるほどおかしいじゃないかという感じもいたさないわけではございません。しかしながらよく考えてみますと、これは連合会でございまして、これは各共済組合を主体とする連合機関でございます。したがいまして、そういった連合機関でございますからその執行機関とそれから諮問機関である評議員会の構成メンバーに同じ人がなるのじゃないか、その点おかしいじゃないかという御指摘でございますが、これはやはり連合会でございますから連合会を各単位共済を代表すべき日常総括的な立場に立つ人が出まして、そして事務運営するほうが非常にベターにスムーズに運営ができるわけでございます。じゃ、ダブっているのがおかしいじゃないかという御質問が究極に起こるわけでございますが、これにつきましては執行機関とそれから諮問機関である評議員会のメンバーがダブります場合もございますが、しかしながらこの諮問機関は、これは評議員会が最高諮問機関でございまして最も一重要な事項につきましてはここにおいて諮問をされ十分検討をされる仕組みになるわけでございます。それ以下の段階におきましては、これはもう執行機関にまかして事務運営してもいいじゃないかという問題も起こるわけでございます。さらにまた日常ルーティン的な仕事につきましてはさらにこの九人以内の理事者じゃなしに、それぞれ専門のいわゆる三人の常勤理事によって仕事をしてもいいのじゃないかということで仕事の内容によりましてそれぞれ分担がきめられているわけでございます。したがいましてこの連合会の特殊な、単位共済の連合体であるという趣旨からいたしますならば、執行機関である理事会とそれから評議員会のメンバーがダブってもいたし方ないというふうに考えております。
  105. 有馬輝武

    有馬委員 はなはだくどくどしい説明は要らないんですよ。ぼくが聞いておるのは執行機関と議決機関の構成が同じ人でやられておることをよりベターであるとあなた方は考えておるのかどうか、これだけを聞いておる。
  106. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 現在の連合会の性格からいたしまして、いまの制度で妥当だと思います。
  107. 有馬輝武

    有馬委員 よりベターだとなぜ考えるのですか、その理由を聞いておるわけです。
  108. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 先ほど申し上げましたように連合会でございます。しかも単位共済組合からなるものでございます。したがいまして単位共済を代表するものから評議員会は構成され、その評議員会で最も重要な事業計画とか予算とか定款の変更とかそういう最も重要なものはそこにおいて審議されるわけであります。それからそれ以下の段階の多少ルーティン的なもの、これは理事会でどんどんやっていく、さらに日常的なものは専門の三人の常勤理事でやるという仕組みになっておりますから、現在の仕事の性質をうまくいく意味からいっても、それからまた連合会が単位共済からなる連合体である趣旨からいってもベターだと思います。
  109. 有馬輝武

    有馬委員 あなたが現状のままでいいという考え方は使用者側の考え方なんです。しかし共済組合というものは使用者だけのものではないのですよ。だから私はお伺いをしておる。それは使用者側にはよりベターでしょう、確かにあなたの言われるとおり。しかし共済組合に加入しておる人全体のためによろしいかどうかという点について、私はだれしもが納得し得るような説明がなければいかぬと思うのです。それをお伺いしておる。それは議決機関と執行機関と同じ人がやっておれば事務的には非常にスムーズにいくでしょう。が、しかし議決機関というものはその間のギャップを埋めるといいますか、そういったイージーな形をチェックするための評議員会だと思うのです。にもかかわらずより便利だというその理由を普遍的に見てだれが聞いてもああそうですかと言われる説明がなければいかぬ。もしそれができなければそれを改善していく方向に検討するのが筋ではなかろうか、それをお伺いしておるわけです。
  110. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 先ほど答弁したことに尽きるわけでございますが、何もこれは連合会だけが特殊な例ではないのでございまして、こういったいわゆる連合組織につきましては、こういったメカニズムが当然必要だと私は思います。これは私不勉強でございますから多少違っておるかもしれませんが、その前提のもとで答えさせていただきますが、国際連合なんかもやはりダブっておるのではないかと思います。また労働金庫とか、労働金庫連合会もそういったたぐいになっておるのではないか、これまた勉強不足でありますが、そういうことになっておるのではないかと思います。
  111. 有馬輝武

    有馬委員 労働金庫なんかを出すからしっぽを出すのだ。労働金庫の運営をよく勉強してからいまの答弁をしなさい、実情を。ですからこれはあなたはあくまで現在のあり方が正しいという主張をされる、ぼくらはそうでないと思う。そこに現在の共済組合制度に対する根本的な問題がひそんでおるので、やはりこれはあなた方の主張だけでなく、またぼくらだけの主張でなくて、客観的に見てだれしもが、やはり民主的な運営がなされておるという方向に是正をしていくその努力が必要だと思うのです。またそういった意見を取り入れる機会をあらゆる形で持たなければいかぬ。  そういうことを強く要望いたしまして、私は本日の質問を終わりたいと思います。
  112. 吉田重延

    吉田委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  113. 吉田重延

    吉田委員長 速記を始めて。  各案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     ―――――――――――――
  114. 吉田重延

    吉田委員長 これより討論に入るのでありますが、各案につきましては討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  おはかりいたします。各案を原案のとおり可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、各案はいずれも原案のとおり可決いたしました。     ―――――――――――――
  116. 吉田重延

    吉田委員長 ただいま議決いたしました各案中、昭和四十年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等規定による年金の額の改定に関する法律案及び昭和四十年度における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律案の両案につきましては、有馬輝武君外三十八名より、三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、この際、提出者より趣旨の説明を求めます。有馬輝武君。
  117. 有馬輝武

    有馬委員 私は、自由民主党、民主社会党並びに日本社会党を代表いたしまして、ただいま委員長から提案になりました附帯決議案について、原案を朗読いたしまして提案理由にかえさしていただきたいと存じます。     昭和四十年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等規定による年金の額の改定に関する法律案及び昭和四十年度における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律案に対する附帯決議案   最近における諸物価の高騰、賃金上昇等の実情にかんがみ、政府は特に今後次の諸点につき、すみやかに検討の上善処するよう要望する。  一、生活水準の向上、物価値上り並びに現職組合員の給与に即応して年金額を引上げるようスライド制について検討すること。  二、共済組合年金額引上げが、現時点においては、恩給法の改正に追随するのはやむを得ないが、将来においては、共済組合の自主性を考慮して措置するよう検討すること。  三、本改正案の三年に亘る段階的増額の措置は、恩給にならい短縮するよう措置すること。  四、短期給付については、医療費の増加に対処し組合財政の健全化及び組合員の負担が過重にならぬよう国庫負担制度についても検討すること。  以上読み上げました提案理由説明によりまして、焦点は明らかに言い尽くされております。  ただ私は、この際いまの質疑の過程でも明らかになりましたように、各委員会における附帯決議につきましては、特に三派共同で出されましたような場合には、当然政府がすみやかに措置することを祈念いたしまして附帯決議となっているのでありますから、この取り扱いについては慎重に最大の努力をするよう特に要望いたしまして、本附帯決議案の提案理由説明にかえさせていただきます。
  118. 吉田重延

    吉田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  おはかりいたします。  有馬輝武君外三十八名提出の動議のごとく決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、有馬輝武君外三十八名提出の動議のごとく、両案には三派共同提案による附帯決議を付することと決しました。     ―――――――――――――
  120. 吉田重延

    吉田委員長 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  122. 吉田重延

    吉田委員長 午後一時三十分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時十五分休憩      ――――◇―――――    午後一時三十八分開議
  123. 吉田重延

    吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は宇佐美日本銀行総裁が参考人として出席しておられます。  参考人には御多用中のところ御出席いただきありがとうございました。  まず当面の金融経済情勢について宇佐美総裁へら御意見を述べていただき、そのあとに質疑を行なうことといたします。宇佐美日本銀行総裁。
  124. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 最初に、当面の金融経済情勢に関しまして所見を申し述べて御参考に供したいと存じます。お聞き取りをお願いいたします。  日本銀行は御承知のように去る一月九日に公定歩合の一厘引き下げを行なった後に事態の推移を慎重に見守ってまいりましたが、その後も貿易収支を中心に国際収支の改善は順調に進み、一方国内経済面におきましても、生産の調整、企業マインドの鎮静など経済活動全般に落ちついた様相が定着いたしました。他方倒産の増加などを背景に行き過ぎた不況感すら台頭するに至ってまいったのであります。私どもといたしましては、このような状況になれば景気調整の効果は十分に浸透し、ここで金融引き締めのおもしを取り除いても先行きさしたる懸念はないものと判断いたしまして、また行き過ぎた不況感を払拭することにも役立つのではないかと配慮をいたし、この際さらに公定歩合を引き下げて引き締めを解除するのが適当であると考えまして、去る四月三日から日歩一厘引き下げを実施した次第でございます。  今回の引き下げと同時に、市中の貸し出し増加額規制の面におきましても、ほぼ市中の申し出額に近い規制額を定め、これにより、三十八年暮れから始まっておりました金融引き締め政策をほぼ解除したわけであります。今回の引き締めは、当初その効果があがるのはなかなか容易ではないと考えられていたのでございますが、幸い輸出の予想外の好調な伸びもございまして、さほど長期にわたることなく所期の目的を達成することができ、ましたことは、御同慶の至りに思うのであります。  しかしながら、引き締めが解徐されても、景気は御承知のとおりなかなか急速には立ち直らない様相を呈しております。それは金融引き締めが解除されても、商品の需給面における供給過剰傾向とか、あるいは個々の企業における企業収益の悪化といったような問題が、目先短期間で解決されるめどが立ちません。これが企業の態度を慎重ならしめているところと思うのでございます。供給過剰といい、企業収益の悪化といい、実は三十六、七年の引き締めが終わった後において残された問題、たとえば賃金コストの上昇、資本コストの上昇、企業財務の悪化、消費者物価の騰勢などのいろいろの点が集約されたものでございまして、これを量産と無理な売り込みといった形で解決しようとして失敗した結果残されたものであると言うことができるのではないかと思うのでございます。  過去においては、なるほどこういった問題を量産、シェアの拡大といった形で克服した例も少なくなく、またその結果として、日本経済全体として世界でも珍しい高度成長を遂げたという事実も否定し得ないのであります。しかしながら、日本経済の基盤はここ数年のうちにかなり変化してきており、過去のような形をいつまでも続けられる環境ではなくなっておるのであります。先般の山陽特殊鋼の倒産は、真に遺憾な事件でございますが、私どもとしてはその教訓をかみしめ、反省せねばならぬと考えております。  わが国が八条国となり、開放経済体制へ移行してからちょうど一年を経過したわけでございますが、その間、米国の国際収支対策の強化、ポンド不安、国際通貨制度をめぐる論議の展開などがあり、国際経済環境も必ずしもこれまでのように長短外資を大量に取り入れて経済の拡大を行なうことが安易に許されるような状態ではなくなってきております。今後のわが国経済の方向は、好むと好まざるとにかかわらず、こういった内外両面の要因から、安定成長を目ざさざるを得ないと考えております。  今後の経済の見通しについては、一部に、設備過剰、在庫過剰から景気の自律的な回復はとても期待できず、今後とも長期にわたって不況が尾を引くのではないかという見方もあるようでございますが、設備過剰や在庫過剰の傾向はむろん幾つかの業種を中心に引き続き問題ではありますが、それだからといって、全体としての景気回復が見込み得ないという状態ではないのではないかと思っております。需要面で見ますれば、輸出が著しく好調であるほか、個人消費、財政支出が今後とも着実に増加していくものと見込まれております。これらの需要が強かったにもかかわらず、昨年後半来、需要全体や生産の伸びが停滞したのは、もっぱら企業投資が減少したからでありますが、最近では原材料在庫の調整はほぼ一巡し、目先については若干の補充の動きも見込まれるような状態になってまいりましたし、設備投資につきましても、先行指標である機械受注で見ますると、このところ下げどまった傾向がややうかがわれてきておるのであります。したがって、今後は輸出、個人消費、財政支出といったような需要にささえられて、総需要の伸びは次第に回復していき、これに伴いまして景気はゆるやかながらも自律的な回復に転じていくのではないかと考えております。  もちろん過去において、引き締め解除後、比較的短期間のうちに在庫投資、設備投資が増加に転じ、これに伴いまして景気回復のテンポがかなり急速であったことに比べますと、今回の場合は、企業の投資態度が引き続き慎重であるところからして、景気が回復に転ずるといっても、そのテンポがかなり弱いものにとどまることは否定できません。しかし、現在企業の投資態度が慎重なのは、過去数年来の設備投資の行き過ぎや、これに伴う無理な量産や、売り込み競争の結果、企業経営上にいろいろの問題が表面化し、これに対する企業の反省や問題意識が強まってきたところに原因があるのであります。したがって、たとえ当面は景気の回復テンポがゆるやかでありましても、こうした企業経営上の諸問題の解決を進めるために、ここしばらくは現在見られているような業界の調整気がまえが持続されていくような環境を続けることが、長い目で見たわが国経済の発展にとっては何よりも肝心なことだろうと考えておるのでございます。  なお、当面の企業経営上の問題といたしまして、企業間信用の膨張が大きは問題になっていることは御承知のとおりでございます。企業間信用につきましては、経済規模の拡大、構造変化により、ある程度膨張するのはやむを得ない事情もあるのでありまするが、といって、現状が過大であるということも事実でありまして、これが企業の健全な経営にとって種々の困難な問題を引き起こしている点は無視できないものと考えております。日本銀行といたしましても、このような観点から、常時企業間信用の問題につきましては検討を行なっており、銀行に対しても、融資にあたって企業間信用を減少せしめる方向で考えてほしいということを指導してまいっております。ただ、現在の企業間信用の累積は、供給過剰傾向が漸次強まりつつある中で企業が与信拡張を通じて売り込みをはかったことから生じているものであり、金融面からの対策のみで一挙にこれを解きほぐすことはむずかしいと存じます。いましばらく時間をかけて、企業間信用が保々に解消していくような環境づくりに努力していきたいと思っております。  最後に企業の金利負担と関連いたしまして、公定歩合引き下げ後の市中貸し出し金利の動向でございますが、これまでのところ一月の公定歩合引き下げ後も、市中の貸し出し金利の低下のテンポは従来に比べましてやや緩慢であったように思われます。しかしこれは前回の引き下げが新規貸し出しがあまり増加していない時期に行なわれたことや公定歩合の再引き下げ待ちであったことなど、主として時間的なズレに起因しているものと思うのであります。現に三月には手形書きかえの進捗もございまして、前月、前々月に比べ貸し出し金利の下げ幅は拡大しており、今後四月以降は公定歩合再引き下げの影響も加わりまして、また四月には並手の自主規制金利も引き下げられておりますので、市中貸し出し金利の低下は今後次第に本格化するものと考えております。日本銀行といたしましては、先般市中貸し出し金利の引き下げについて配慮してほしいということを銀行協会に対して申し入れておりますが、今後ともその動向には十分注意してまいるつもりでございます。  以上、はなはだ簡単でございますが、お指図によりまして最近の金融の情勢を御報告申し上げました。
  125. 吉田重延

    吉田委員長 続いて質疑に入ります。通告がありますので順次これを許します。佐藤觀次郎君。
  126. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 ただいま総裁から金融問題についていろいろ伺ったのでありますが、私はその金融問題に触れる前に、いま総裁から山陽特殊鋼の問題がありました。その問題と関連がありませんけれども、去る国会でも問題になりました吹原産業の問題について、あなたがその当時三菱銀行の頭取としてやっておられた時代でございますので、その点についてどういうようにお考えになっておられますか。この点、私は少なくとも第一に御心境を伺いたいと思います。   〔「話が違う、理事会の話は違うじゃないか」「質問された以上は答弁してもらわなければ」と呼び、その他発言する者あり〕
  127. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 御指名をしていただければ…。
  128. 吉田重延

    吉田委員長 宇佐美参考人。
  129. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいま御質問ございましたが、非常に遺憾なことに存じております。おっしゃるとおり、この事件が起きました当時は私は三菱銀行の頭取でございました。ただ目下司直の手で調べられておると承っておりますので、その結果を待っておるところでございます。
  130. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 日銀の総裁として、日本の銀行の指導的な立場にある銀行の総裁が、少なくとも最近までやっておられた三菱銀行にあれほどの大きな事件が起きたことを、司直のことがわからなければやらぬというようなことは、私は無責任だと思うのです。少なくともあなた自身の良心に訴えて、あなたのほうの銀行で起きた問題です。あなたの支店長が起こした問題なんです。それを知らぬということは、あとで司直のあれがついてからという話では、少なくとも私は総裁としてその点は不満足だと思うのです。それでもあなたは司直できまらなければ、自分の進退のことは言えぬとおっしゃるのですか。
  131. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 私は決して、知らぬということを申し上げておりません。ただ現在司直で調べられておりますので、これを待っておる。ただ私としては非常に遺憾なことに存じておる次第でございます。
  132. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 少なくとも……。
  133. 吉田重延

    吉田委員長 佐藤委員、ちょっとお待ちください。佐藤委員に申し上げますが、理事会の申し合わせもありまして、一般金融に対しての御質疑に集約されていただきたいという理事会の申し合わせでもございますので、委員長は特に理事会の申し合わせに従って委員会運営することになっておりますので、特定のことについてあまり詳しく御質疑をいただかず、できるだけ一般金融の問題として御質疑をお願いいたします。
  134. 有馬輝武

    有馬委員 関連して。ただいま日銀総裁から当面の金融情勢についてお話がございまして、その間過当競争の問題についてもお話があり、また企業間信用の問題についてもお話がありましたし、また山陽鋼の問題についてもお話があったわけであります。その点について、佐藤委員のほうから銀行の融資の態度について調査を進められることは、もちろん限度はありますでしょう。いま委員長からお話のありましたように限度はありますでしょうけれども、都市銀行の融資態度について調査を進める、その点についてはお互いに良識を持って進めていくということで、委員長のほうにおいても、その点、限度は佐藤委員のほうもわきまえておりますので、よくお聞きの上進めていただきたい、このように要望をいたします。  また総裁にもお願いしたいと存じますが、中央銀行の総裁として、都市銀行のあり方については、いま当面の金融問題としてお触れになった限度においては、委員の質問に対してお答えいただきますようにお願いをしたいと思います。
  135. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 国会において委員会の発言を封じるということは非常に残念だと思います。そこで私は、宇佐美総裁が前に三菱銀行の頭取をやっておられて、そこで事件が起きましたので、その融資の問題はあとで触れる問題として総裁にお伺いするのであって、こういうことを一々こだわったのでは国会の審議ができないと思うのです。だから宇佐美さん自身もたびたび新聞で発表されておりますが、自分は全く事案無根だ、それだからそんなことには関係ないということを堂々と、言っておられますから、こういう公の席で私たちの言う宇佐美さんのことを――全然関係のない問題なら私は問題にしませんけれども、少なくとも私は良心を持って総裁に伺っておるのでありまして、そういう点はひとつ十分理解していただきたいと思うのです。   そこで昨年の七月ごろ、池田総理が日銀総裁を民間から起用する考えがあるのだという話を宇佐美さんに言われたそうでありますが、そのとき宇佐美さんは、自分の日ごろの信念から、民間から日銀総裁を選ぶのはいいだろう、こういうことを申されたことがあるそうでございますが、その点はそういう事実があったかどうか、これもあなたが日銀の総裁になられましたから、ちょっとお伺  いいたしたいと思います。
  136. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 そういうことばであったかどうか、はっきり記憶いたしておりませんが、雑談の間にそんな話があったように思うのであります。むろんそのときは、私は日本銀行に参るとは夢にも考えておりませんでした。そういう問題をそんなに深く真剣に二人の間で話した、そういうふうにおとり願っては困ると思うのでありますが、そういうことも一つの方法ではないかというふうにはお話ししたように思うのであります。それ以上話は全然進んでおりませんでした。
  137. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 まあ日銀の総裁になられたあなたの心境のことを聞く必要はありませんけれども、当時いろいろ競争者があって、あなたが抜てきされたということを聞いておりますが、もう一つ問題になっておりますのは、ただいま有馬理事が言われるように、融資の問題について黒金官房長官とそういう関連があったかどうか。これはいまいろいろな問題が流れておりまして、そういう問題について、あなたは当時は三菱銀行の頭取でありますから、そういう心境もこの際打ち明けていただきたいと思います。
  138. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 私が日本銀行総裁になるにつきまして、どういう話し合いが政府の間で行なわれたか、また競争者があったといういまのお話ですが、私は全然存じておりません。それから黒金氏との話について御質問がございましたが、黒金氏とは私この融資の問題などにつきまして、全然話しておりません。話したことはございません。はっきり申し上げておきます。
  139. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 そういうことになりますと、黒金さんから融資のことについて全然話がきていないという話でありますが、黒金さんとこの吹原さんという人との関連でいろいろ問題が起きておるのでありますが、あなたは吹原さんと全然会ったことがないとおっしゃっておりますけれども、事実があるのでございますけれども、それでもそういうようなお考えでございますか。
  140. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 私は会った記憶は全然ございません。
  141. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 それでは今度の十四日に出ます「財界」の中で、児玉譽士夫君がはっきりと明言しておるのでございますが、その部分をちょっと読んでみます。「それは吹原はそのほかにも新橋に二、三カ所、池田さんの席にも来ています。「私は用があるから」といって先に帰ったり、傍若無人に振るまっていたという。そんなこと、みな芸者が知っていますよ。」それで、オカヨという女中さんに「「おい、吹原来たか」というと「来ています」。「黒金さんとくるか」というと、「一緒です」。「前に宇佐美さんなんかと来たことがあるか」、「ええ、三人一緒にいらしたことがあります」。「帳簿にのっているか」、「ええ、のっています」というんだ。それでいってやった。」こういうことが出ています。これは十四日に出ます。だから、もしあなたがいま私におっしゃったようなことでございましたら、ひとつこの雑誌を告発してもらいたいと思います。それでもだいじょうぶですか。
  142. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 そういう事実は私ございません。ただ、いま告発してくれというお話でございますが、それは、そういうことをいまここでお話し申し上げて御返出する限りではないと思いますので、お許しを願いとう存じます。
  143. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 どうせ「財界」という雑誌が十四日に出ますから、この話がうそであるかどうかということはあとでいろいろあると思います。  そこで今日金融が非常に正されていない、非常に間違っているということは、何も三菱銀行だけではない。三萎銀行と大和銀行の人がここに来て話された中で、われわれは銀行がこんなにでたらめであるのかということに驚きました。少なくとも三菱銀行は三井銀行とともに非常にまじめな銀行でありまして、われわれも非常に尊敬しておりました。ところがこういう事件が置きまして、三十億の金が簡単に出されるというようなことはわれわれ想像できないのでありますが、その点はあなたは日銀の総裁としてどのように考えておられますか、伺いたいと思います。
  144. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 貸し出しの点につきましては、私は吹原産業に対しては三菱銀行の関係ではございませんが、日本銀行総裁としまして非常に遺憾な貸し出しだと存じます。貸し出しにつきましては、貸し出しをする場合に調査をすることも必要でございますし、またした場合に事後管理も非常に必要だと思うわけでございます。その点において非常に不完全であったということを遺憾に思っております。それから三菱銀行に関しまして、これは貸し出しではございませんが、預金証書の問題でございます。これもその人間を信用したという点、それでああいう便宜な扱いをするということは、非常に間違っておると考えております。こういう問題につきましては、今後各銀行とも十分注意していただかなければならぬと考えております。
  145. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 私たちの常識で、小さい長原の支店長あたりが、三十億というような金を簡単に処理できるものかどうか。これは頭取であったあなたとしてどういうようにお考えになっておるか。またいきさつもあったと思いますが、この点はどんなふうになっておりましたか、伺いたいと思います。
  146. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 この問題は実は私は三菱銀行の現在の頭取から報告を受けるまで、全然知りませんでした。したがって私自身もこういう大きな預金を、こういう形でどうして簡単に証書を渡したのか、全く理解に苦しむところでありますが、事実できたことは間違いないようでございます。もう非常に遺憾なことに存じておるわけでございます。
  147. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 私はわざわざ宇佐美さんを責めるわけではありませんけれども、たまたまあなたが三菱銀行の頭取であったということから、日銀の総裁になられたのでこういうことをお伺いするのであります。私は少なくとも最近の金融情勢、それからいまの山陽特殊鋼にしても、銀行に関連して非常に不祥事だと思うのですが、そういう点も、あなたはいま日銀の総裁として銀行に指導的な役割りを持っておられるわけでありますから、それはこの事実が司直の手でわかってから自分が責任をとるということは、少なくとも私は常識として責任をのがれておられるのじゃないかと思うのです。そういう点についてあなたはどのような処理をしていかれるのか。少なくとも、これはひとり三菱銀行だけではない、大和銀行もありますが、こういう問題、国民の銀行に対する不信というものはおそろしいものだと思うので、その点はどのようにお考えになっておられますか。
  148. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 この問題につきましては申すまでもなく私は心から遺憾に思っております。ただ、いま司直の手で調べられておりますので、その決定を待っていたすよりしかたがないと思っております。
  149. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 時間がありませんから、同僚からもいろいろ質問があるかと思いますが、御存じのようにきょうの朝日新聞にも「黒星つづきの銀行」という記事が出ております。それからおそらく今週の週刊誌とかその他の雑誌にも、銀行の問題についてあらゆる問題が出ておると思うのです。私は少なくともあなたが日銀の総裁としてこういう不正な、あるいは不明朗なことがどんどん起きたということについては、非常に責任を感じてもらわなければならぬと思うのです。そういう点で、少なくともあなたが過去のことはどうあろうとも、日銀の総裁としてどういう責任を感じておられるのか、今後どのような方法でこの不正常になった金融機関を指導していかれるのか、その御意思、いわゆるあなたの御決意を伺いたいと思います。私はまだ材料がございますが、時間が切ってありますから、最後にそれだけお伺いして同僚にかわります。
  150. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 同じ御返事を申し上げて恐縮でございますが、私としては心から遺憾に思っておるのでございますが、やはり司直の調査を待っておるのがいまの私の心境でございます。
  151. 吉田重延

  152. 有馬輝武

    有馬委員 先ほどお話のありましたことと順序が狂ってまいるかもしれませんけれども、当面の金融政策について二、三お伺いをしたいと存じます。  その一つは企業間信用の問題でありますが、現在のこの膨大な企業間信用、これについて減少するように銀行を指導するということをおっしゃって、その環境づくりについても日銀として考えていかなければならないというお話がございましたが、その環境づくりについて具体的にどのような点をお考えになっているのか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  153. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 企業間信用につきましては、前から私は非常に心配をしておったわけでございますが、日本銀行に参りましてから、この問題がやはり今後の日本の経済の上において非常に大きな問題だろうということで、調査を始めたわけでございます。その調査の結果につきましてはすでに二、三回新聞でも発表いたしまして、ごらんくださったと思うのでございますが、なかなか複雑な非常に数の多い問題でございます。また研究調査を始めますと、いろいろの点で調査がまだ不完全であるということに気づいておる次第でございます。根本的にいいますと、先ほどもちょっと申し上げましたとおり、経済の規模が大きくなりますと当然信用が膨張するのは、もう世界各国同様でございます。さらに日本のようにいろいろ構造的な変化が起こってまいります。たとえば割賦、月賦取引というものが、最近日本で非常にふえてきております。こういうような構造的な変化も起こっております。私どもの調査で現在総額売り上げ債権として二十二兆というふうに見ておりますけれども、そのうちはたしてどれくらいのものが過当のものであるというふうな認定はなかなかむずかしいのでございます。しかしいずれにいたしましても、本質から申しますと、金融がゆるみましたときは企業間信用が縮小し、引き締めますと伸びるという傾向で進むべきだと思うのでございますが、最近の情勢を見ますと、金融がゆるんだ場合でもなかなか縮小しないという点が一つの心配な点でございます。もう一つは実質の問題としまして、条件が非常に悪化しておる。ただ同じような条件のものがふくらんだというだけでなくて、条件の悪化という、たとえば支払い期間が非常に延びるというような点で、悪化の面も両方からきておるように思います。どうも経済が拡大したから、あるいは構造が変わったからというだけで、これをほうっておけない問題ではないか、かように考えております。   それでは一体どういうふうにしたらこれを縮小できるのかといいますと、根本的にいいまして、いまの供給過剰の状態が少しでも供給と需要がバランスしてくる状態になってきませんと、これはなかなか縮小しがたいものではないかと思うのでございます。バランスしないということは、要するに非常に強度の売り込みであるとか、そういう面がありまして、単に金融をゆるめたからそれが縮小するという状態ではないのではないか、かように考えております。しかしさらばといって、漫然と需給関係がバランスする、いまの供給過剰の状態が直ってくるというのを待っておるというわけにもまいりません。したがいまして私どもは銀行が現実に貸し出しをする場合には、その面でも配慮をして、そして縮小するように努力してもらいたいということを言っておるわけでございます。そのためには現に日本銀行としましては、ことしから金融を緩和の方向に持っていっております。いま現実に資金需要という問題から見ますと、やや緩和のほうに運んでおりますので、銀行が融資をする場合に、その点に配慮をしてくれば若干は直るのではないか。そうしながら一方におきまして需給関係が直ってくる。両方からいかなければいけないのではないか、かように考えておる次第でございます。
  154. 有馬輝武

    有馬委員 私はいま総裁が御指摘になりました点を進めていただくと同時に、日銀としても量の問題と同時に質の問題を考慮していただく積極的な姿勢があっていいのじゃないか、このように考えるわけです。具体的に申し上げますと、日銀としても都市銀行あるいはその他の銀行を指導する中で、特に別ワクとして、たとえば中小企業向けのものを考える。方法論は幾らでもありましょう。このメソッドについてはいろいろ論議の余地がありますが、しかしやはりそういった特別の配慮というものが必要ではないかと思うのでありますが、その点についての御意見をお聞かせ願いたい。
  155. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 中小企業の金融につきましては、政府の機関もございますし、また一般的に銀行、さらに相互銀行であるとか、信用金庫、いろいろの機関がございます。そういうところがいずれも中小企業の問題について、従来よりも一そう関心を持つということが必要だろうと思いまして、機会あるごとに中小企業の日本における非常な重要な地位というものについて話し合いを常にやっておるつもりでございます。ただ企業間信用につきましては、中小企業だけでなくて、大企業のほうを直す必要もあるのではないか、私はかように考えておる次第でございます。大企業のほうが関連の産業に対してどういうふうな態度でいるのか。むろん非常に考慮をしておられるところもございますが、なお足らないところも十分あると思います。これはまた一方から言いますと、非常に言いにくい話でございますが、その間にどうしても力関係という問題もございます。片一方において非常に物を売りたい、中小企業のほうで注文を取りたいという非常な熱意もございますし、そういうものに対して大企業のほうが、ただそういう相手の立場を理解すると同時に、そのためにどんな困難も加わっておるかということについて考えてもらわなければ、なかなか中小企業の問題としてだけでは解決しにくい問題ではないか、かように考えておるのでございます。
  156. 有馬輝武

    有馬委員 いま総裁が指摘になりました点は確にか事実でありますが、傷にたとえて申し上げますと、かさぶただと思うのです。そこにいま総裁が言われたように、こう薬を塗ることも必要でしょうけれども、根は、かさぶたは内部の疾患から出てきておりますので、私はその内部の疾患に対する注射が必要じゃないか。都市銀行にそういう要請をされる、あるいは他の銀行にそういう要請をされても、現在では先ほど御指摘になりました資金需要はある程度ゆるんできたという見方をされましたけれども、そういった一面的に把握できないところが残っているのじゃないか、その点に対する配慮というものをぜひひとつしていただきたい、こういう気持ちから御質問を申し上げておるのです。
  157. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 いまの先生のおっしゃった点は、私も全くそうだと思っております。中小企業の問題にしましても、企業間信用の問題にいたしましても、これはあるところが悪いというのではなく、全体を直さなければならぬということを申し上げたわけでありますが、特にそれでは最も悪いのはどこだということになりますと、中小企業の点も確かに大きな問題だろうと思うのであります。最近日本銀行の支店上長会議などでも、とかく大企業のほうにばかり目を向けないで、中小企業の現状を大いに研究し、また相談相手になるように、またいわゆる中小金融機関と言われております相互銀行あるいは信用金庫等につきましても、従来のようなことではなくて、ほんとうにその土地土地の企業についてもっと突っ込んでやってもらいたいということを、常に機会あるごとに話しておるようなわけでございます。単に話をするばかりでなく、全国の日本銀行の支店をもってこの点の調査を十分これからやっていきたい。そうして少しでもよくしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  158. 有馬輝武

    有馬委員 次にお伺いしたいと思いますが、いまお触れになりました景気の回復のテンポについてであります。通産省あたりは五、六月ごろから回復期に向かっていく、なおいま景気の刺激対策と申しますか、そういうことについてやるべきだ、あるいは慎重に検討すべきだという論議がかわされておりますが、このテンポについて、先ほどゆるやかにというおことばを使われましたが、具体的にはどういう時期を見ておられるのか。またこの景気の刺激対策というものは、現在とったほうがいいのか、とらないほうがいいのか、この点について日銀としてはどのような判断をなされておるか、お聞かせを願いたいと思います。
  159. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 景気の刺激策につきまして、いま各方面でいろいろ議論をされておることはよく存じております。ただ景気の刺激策と一口に申しましても、いろいろの程度があるわけでございます。非常に進めるべきだという議論をする人と、差し控えたほうがいいという議論をする人の間でも、またいろいろの違いがあるわけでございます。したがって私といたしましては非常に強烈な刺激策をとるということは、せっかくいま調整ムードあるいは日本の体質改善をはかろうという空気が強い際でございますので、そういう強い調整の機運あるいは企業の体質改善の気持ちを少しでもそこなうような、あるいはこの辺でいいのだというような気持ちを出させるような大きな刺激策はこの際は慎むべきではないか、かように考えております。したがいましてこのままもう何にもしないのだという意味ではむろんございませんし、先ほどもちょっと触れましたが、大体いまの資金需要から見まして、各銀行から要望をしてまいりましたワクというものは、ほとんど全額認めてワクをきめておるというような状態で、昨年から比べますとかなり金融はゆるめておるつもりでございます。したがいまして金融のゆるめ方といたしまして、いまの状態、いまの気分をなるべく害さないようにすることが一番大事だと思いますので、いま急に言われておるような激しい景気振興策というようなものは、ここしばらく出さないほうがいいのではないか、かように考えておるのでございます。さらばといって、全部何もかもしないというわけではないことは当然でございます。  なお、いつごろというお話でございますが、これは非常にむずかしい御質問でございますが、また私の立場からいつごろから景気がよくなると申し上げることは差し控えるべきだろうと思いますが、しかしいまの状態で参りましたから、やはり景気回復の気分というものはそんなに遠くないところできわめて緩慢と申しますか、ゆるやかではございますけれども、だんだん出てくるのではないか、かように考えておる次第でございます。時期の点はむずかしい問題であるはかりでなく、私は時期を限るということは差し控えるべきだと思いますので、御了承を願いたいと思います。
  160. 有馬輝武

    有馬委員 私の時間があと二、三分のようでございますから、最後にお尋ねをいたしたいと思いますことは、先ほども供給過剰という問題について触れられたわけでございますが、とにかく銀行自体が過当競争を行なっておる。そうしてそのしりぬぐいを日銀借り入れにたよっておる、これは正常な姿ではないと思うのです。問題は将来の方向としてではなくして、現在のこの姿をどのように是正されようとしておるか、先ほど佐藤委員が触れられました問題等についても、やはりこういった過当競争の結果、ああいう常識はずれの事態が出てきておるのでありまして、これは預金、貸し出し、いずれにいたしましても慎重に進めてまいらなければならないことだと思いますが、この過当競争を抑制する手だてとしてどのようなことを考えておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  161. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 銀行の過当競争というお話でございますが、確かに過当競争と言われてもいたし方ない点はあると思います。しかしこれは日本全体の各企業についても同様のことが起こっておるわけでございます。したがってほかの企業が起こっておるから、せめて銀行だけでも過当競争をしないようにという御意向もあると思うのでありますが、しかしやはりそれぞれの企業としての銀行の立場もございますので、決して私は行き過ぎた競争がないとは申しませんが、これはしかしいまのような、現在におきましては非常に自重といいますか、そういう点においてやたらな競争を、見せかけの競争をするというような事態は、もうだんだん過ぎ去っていくのではないか、かように考えておるのでございます。そういう点から申しまして、たとえばオーバーローンの問題につきましても、これは御質問はございませんでしたが、私の説明の一部としてお聞き取りを願いたいと思いますが、実質的にはオーバーローンというものは、一般の銀行の日本銀行からの借り入れは最近減ってきておることは事実でございます。ただ日本銀行の貸し出しが表面的に減っておりません。というのは、たとえば外国為替の貸し付け金であるとか、あるいは日証金に対する貸し付け金、あるいは貿手、そういう金額が非常にのしておりまして、直接一般銀行に対する貸し出しは、試みに申し上げてみますると、昨年の三月の残高は九千三百八十億でございましたが、いまは六千六百三十九億に減っておる、かような状態でございます。
  162. 有馬輝武

    有馬委員 終わります。
  163. 吉田重延

    吉田委員長 只松祐治君。
  164. 只松祐治

    ○只松委員 引き続いて金融問題について若干お尋ねいたしたいと思います。すでに総裁のほうからも大要の御説明があり、また有馬委員からも問題点の指摘はあったわけであります。多少そういう点で重複いたしますが、お尋ねをいたしたいと思います。  まず第一は企業間信用の問題ですが、俗なことばでは売り掛け代金というようなことが使われますが、これが二十二兆あるいは二十三兆円にのぼると、推計でありましょうが言われております。これが今日まできた原因には、日銀当局の発表あるいは大蔵省当局の発表等、多少見解の相違がございますが、いろいろ一定理由がある、こういうことを申しておりますが、ここで総裁のほうからあらためて、こういうふうに膨大な企業間信用が起こってきた主要な原因というものはどこにあるか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  165. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 企業間信用につきましては、確かに金融がもっとふえてもいいのではないか、つまり金融の引き締めの結果だというようなことも全然ないとは、私申しません。しかしいまの日本の企業間信用は、一つは非常な設備投資の結果、もう一つはそのために供給が非常にふえまして、いわゆる日本のいままでの需要が多い経済から供給が多い経済に移ってまいりました。その結果どうしても持っているものを売らなければならぬ、供給過剰の状態を、売らなければならないというために、いわゆる売り込み競争というものが起こって、金はあとでもいいからとにかく売ろうというようなことにもなってまいりましたし、買うほうもまた金が不足している、そういうぐるぐる回っておる経済でございますので、不足しているために、自分のほうの売り掛け債権と買い掛け債務とがバランスしてないために、いろいろのそういう企業間信用を利用せざるを得ないという状態になってきたのだろうと思うのであります。したがいましてさらにいろいろ延べ払い――海外の延べ払いがふえてまいりますと同時に、国内においても延べ払いがだんだんふえてくる傾向がございますし、また日本ではあまりいままでなかったのでございますが、自動車その他のいろいろの月賦払いという制度がだんだん起きてきたために、そういう金融のしわが企業間信用という形で起こってきたのではないか、かように考えておる次第でございます。
  166. 只松祐治

    ○只松委員 表面上は確かにそのような原因だけれども、実質上はむしろ三十七、八年度ごろにおける金融引き締めからこういうふうな金融のあり方になってきた、こういうことがいわれておるわけですが、そういうふうにはお思いになりませんか。やはりいまお述べになったような、特に近ごろはいまおっしゃったようなことが主因になっているかと思いますが、その発端というのはそういうことではないか。とするならば、きょうはまあ総裁としてのあれですからわれわれ与党野党の立場ではございませんが、やはり政府の高度経済成長政策にもぼくは問題点がある、まあそれはそれといたしまして、いま三十七、八年度の金融引き締めに主要な原因がある、こういうふうにはお考えになりませんか。
  167. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 確かに前回の金融引き締めの際に非常に企業間信用が膨張してきた。そうしてその次に三十八年にゆるみましたときに、これが緩和されなかったという点が問題だろうと思うのであります。企業間信用というものは、先ほども申し上げましたとおり経済が膨張し、構造が変わりますと、ふえるのはいたし方がないのであります。しかしなかなか従来の経験から見ましてそういう足どりもございましたが、前回の引き締め後の間は、三十八年におきましてはこれがあまり改善されなかったというよりも、ほとんど改善されなかったという点が、三十九年の引き締めにさらにこれに拍車をかけたということになってきたのではないか。おっしゃるとおりだろうと思います。
  168. 只松祐治

    ○只松委員 原因だけ探索してもなんでございますが、いまいわゆる一千万円以上の捕捉されておる会社でも、月間五百件あるいは七百件という倒産がある。一千万円以下の捕捉されていない会社というものは、さらに膨大な数になってくる。この中で約五分の一くらいは、表面上黒字倒産ということが言われておるわけですが、この黒字倒産の主要な原因もまたこの企業間信用の膨大、膨張ということにもあると思うのです。こういうことを考えてきますと、何らかの形で、先ほどから何か対策はしなければならぬというようなおことばはございましたけれども、何かもう少し具体的に、やはりこの問題に取り組む必要があるのではないか、こういうふうに私たちは思いますが、総裁のほうで、何かそういう国民を安心させるような、そういう特効薬というものはなかなかないと思いますけれども、これだけ重大な問題になってきまして、これは日銀の通貨政策とも重大な関連が出てきておると私は思うのです。きょうはそういうところまで論ずるわけにいきませんけれども、この企業間信用の膨張について当面打つ手がありましたら、ひとつお教えいただきたい。
  169. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 私は先ほどもちょっと申し上げましたけれども日本銀行に参りまして、まだ五カ月でございますが、最初に取り上げた問題は、企業間信用でございます。この調査につきまして、少し話がそれますけれども、統計的な調査、それからアンケート的な実質調査と両方をいま並行して、やっておるのでございます。まず実態をつかまないと、対策も出ないのであります。大体いまのところ二、三日前に結論が出まして、そして実態がわかったつもりでおりますけれども、しかしなおしさいに考えますと、いろいろの点にまだ調べなければならぬと思う点が多々あるのでございます。しかしそれはとにかくといたしまして、これをどうやって解いていくか、先年これを解くために電力会社に対して特別の融資をしたことがございます。これは私の記憶が間違いなければ、たぶん開発銀行から金が出て、政府資金でやったことがあるのではないかと思うのであります。そしてこれは電力会社が非常に設備をいたしまして、その設備をいたすために、電機メーカーに金を流しまして、そうして、その電機会社が製鉄会社に流す。いわゆるひもつき融資のようなもので、たいへんこれが効果を上げたように記憶いたしておるのでございます。もしもこういう方法がとれるならば、一体どういう業種にとったらいいかというような点も考えなければならないと私は考えておるのでございますが、いずれにいたしましても、第一は、各銀行がそういう点に対して関心を持つ、融資をする場合にその融資の相手がどういう延べ払いあるいは手形を振り出しておるのを、どういうふうにやっておるかという点について、もう少し各銀行がこまかくやっていくということが一番手っとり早い方法ではないか、それらにつきまして、いま銀行協会のほうとも話し合いを始めておるところでございます。いずれにいたしましても、大上段にいろいろ方策をつくるということも、あればけっこうでございますが、地道にきめこまかくやっていくということがさしあたり必要ではないか、かように考えておるのでございます。
  170. 只松祐治

    ○只松委員 そういたしますと、大体調査が一段落すれば何らかの形でこれに対する対策をとりたい。まあいわば夏過ぎでもそういうものを持ちたい、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  171. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 それにつきましても、ただ金を流すというだけでなく、全体の需要と供給が少しでもマッチしてこないといけないのではないか、かように思っておるのでございます。
  172. 只松祐治

    ○只松委員 次に融資、増資の問題について、さっきこれも有馬委員のほうから景気刺激をするのか、あるいは抑制をするのか、これはいろいろ両論があるわけでございます。参議院選挙を控えて与党のほうから多少刺激というようなことばも出るわけです。あるいは金融界のほうからはもっと抑制というようなことも考えられておるわけでございます。総裁はまん中をとったようなさっき発言だったと思うのです。しかし個々の事業会社にいたしましては、なかなかそう抽象論議では済まされない。たとえば増資する会社が、金繰りが悪いから何とか増資したいといってもなかなかうんと言わないし、あるいは将来の見通しも立たないということで、たいへんに困っているだろうと思う。あるいは一説に言われます株価の百五十円以上は増資してもいいんじゃないかというようなことがある。これも証券対策のときにちょっと私言ったのですが、いま粉飾決算が公然と行なわれて、山特みたいな極端な例もあるわけですが、株価を百五十円につり上げるために、たとえばいままで六分配当でやっておったのを八分配当にして百五十円にするという粉飾決算は公認会計士がこういうだらしない状態では簡単にできるわけです。こういう面から見ても増資の問題一つとっても、具体的にどうかということになるとなかなかむずかしい問題で、そう具体的な答弁はできないかもしれませんが、そういう現在もたいへん困っている先行き見通しが立たない産業界その他に立って、さっきみたいな答弁では、これはこの場だけのあれにはなると思いましても、なかなか安心した財界や何かの考えは出てこないので、私はもう少し一歩進めた御答弁をいただけたらけっこうだと思います。さっきの有馬君の質問をもう一歩進めたような形でひとつ御答弁いただきたい。
  173. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 いまの景気刺激策という問題につきましては、大体先ほど申し上げた点で、せっかくいま調整――いま日本で最大の問題でごさいます供給過多という問題につきまして、やはりこれを直す方向に向かうためには、さらにここで急激な刺激策をとるということはいかがかと思っておるわけでございます。  それからまた増資の問題につきましては、本来は株式こそ自由市場であるべきでございます。こういういまのような変則的な増資差し控えというようなことはまことに通常ではないわけでございますが、現在の株式市況から見ますると、ここに大きな増資をするということは、とうていやろうと思ってもできない状態でございます。したがいまして、これは次第に解除していかなければならないという問題ではございますけれども、その点ははっきりいたしておりますが、直し方についてはきわめて慎重にやっていくのがいいのではないか、かように考えておるわけでございます。
  174. 只松祐治

    ○只松委員 持ち時間があと二、三分になりましたので、最後に一点だけお尋ねをしたいと思いますが、先ほど佐藤委員もちょっとお尋ねになりましたが、これは総裁が別に三菱の頭取であったから、なかったから、あるいはこの事件に関係があるからとかいうことを別にいたしまして、金融問題からも三十億というような自己あて小切手が出されたりあるいは通知預金証書が出されるということは、これはおそらく総裁が銀行マンとして長い生活の間に前例のないと申しますか、知られていないことだと思います。そういう前例があればひとつ教えていただきたいと思いますがおそらくないだろう。そうするとこれだけ重要な問題、あるいは三菱だけに限って言えば、山陽特殊鋼の場合も副社長か何か重役をお出しになっている。こういういわゆる三菱銀行として、やはり天下の一流の銀行として、山特あるいはこういう問題に御関係になっておる。あるいはまたこの場合その他常識ではとても考えられないことが金融問題として行なわれておるわけなんです。こういうことについて、一体だれが責任を負うのだろうかということを私はつくづく感ずるわけなんでありますけれども、あなたはこういう金融上の大きなミスを行なったという責任は、一体だれにあるとお考えになっておられますか。直接関係されておりましたから、なかなか酷な質問のようでありますけれども、これは預金者側の国民にとっては、三十億というような金が云々されるというようなことは、きわめて不安を抱く問題であります。ひとつ金融マンとしての宇佐美さんに、責任の所在というものは一体どこにあるかということを、御感想をお聞きしておきます。
  175. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの問題でございますが、おっしゃるとおり私も銀行の仕事を始めましてから、こんなに大きな金額の間違いをしたということは夢にも思っておらなかったわけであります。したがいまして、私としてはその事件を知りましてから非常に痛切に遺憾に存じておる次第でございます。ただ責任を感ずるという問題につきましては、いま私自身の地位が非常に責任のある地位であることを考えまして、いま司直の手で調べられている問題が、全貌がはっきりいたさないうちは何とも申し上げかねる。ただ申し上げられることは、私としては現在ほんとうに遺憾に、残念に、たまらなく思っておるところでございます。
  176. 只松祐治

    ○只松委員 なかなか責任ある地位で御答弁がむずかしいと思いますけれども、こういうことが再び起こらないように、国民が安心して銀行に預けるように、単に三菱銀行の頭取ではなくて、特にいま日銀総裁になられたのですから、ひとつ十二分にこういう問題について、日銀はもちろんでございますが、全国の金融マンに強い命令はございませんでしょうが、そういう注意を喚起されんことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  177. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 どうもありがとうございました。
  178. 吉田重延

  179. 堀昌雄

    堀委員 最初に、これは日銀総裁にお伺いするのが筋だとも思いませんけれども、かつては全銀協の会長もおやりになっており、中央銀行の総裁でもありますので、御感想を伺いたいと思いますのは、最近いろいろと都市銀行に問題がございますけれども、この問題に関連をして、全国銀行協会会長というもののあり方も、少し検討を要する問題ではないのか、こう私は考えておるわけであります。ところが現在は全国銀行協会の会長は、東京の都市銀行の会長がおおむね兼任といいますか、されておるようでありますけれども、私はやはり金融機関の、特に一番大きな比重を占めております都市銀行、地方銀行の協会の会長の責任なり、その持っております。協会加盟の銀行に対する指導力なり、これらの問題はゆるがせにすべき問題ではない、こう考えますので、選任のしかたがもう少し民主的と申しますか、単に東京の都市銀行の会長が回り持ちでやるというような機械的な処理は、この際再検討を要するのではないか、もう少し広く幅を考える民主的な方法等を、都市銀行及び地方銀行の皆さんが真剣に御検討になって、もう少し全国銀行協会というものの権威といいますか、そういうものを自主的に高めることが、この際特に必要ではないか、こういうふうに感じますので、ひとつ中央銀行の総裁としてこの宇佐美さんの、これに対する御感想を承っておきたい。
  180. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの御質問につきまして、実は私がいま銀行協会に属しておりませんので、御指摘のとおり少し御返事しにくい点があるのでございますが、感想ということでございますのでお許しを得て、これは私が申し上げる問題でないということでひとつお聞き取りを願いたいと思います。  いまの銀行協会が、東京に本店を置く銀行が回り持ちで持つという慣習は、御承知でもいらっしゃいましょうが、非常に交通機関が不便なときに、どうもいろいろ用があるので、地方にいる人はなかなか常時東京にはいられないということから、慣習になりまして今日に至っておるのでございます。  したがいまして、私は銀行協会の会長をいたしておりますときに、こういうような方法はいかがかということを考えまして、率直に内輪話を申し上げますと、協会の中に委員会をつくりまして、そして私が協会長をやめた後にその委員長になりまして、いろいろ御相談をしたわけでございます。なかなかむずかしい問題がございます。それで現在もその委員会は多分協会の中に残されているだろうと思いますけれども、あまり活動はしていないように聞いておるのでございます。  それでおっしゃるとおり私も銀行協会の会長というものは、非常に大事な役だろうと思っております。これは銀行というものの日本の金融界全体におけるウエートが非常に大きうございますから、そういう点から言いましてもやはり銀行協会というものは、いろいろ協会はたくさんございますけれども、ほかの協会よりは最も大事な協会だろうと思うのでございます。したがいまして、ただ輪番的のものをやっているだけではいけないのじゃないかと思っておるわけでございます。しかし現在のところこの問題はぜひ協会として自主的に考えてもらいたい、かように考えております。
  181. 堀昌雄

    堀委員 次に、昨日私は大蔵大臣と金融一般について論議をいたしました。新聞でもごらんをいただいたかと思いますが、私、新聞紙上で拝見をいたしましたので、はたして宇佐美総裁がそうお話しになったかどうかはわかりませんが、全国銀行協会が大蔵省に要請をいたしました二年定期の問題でございますが、私が新聞紙上で拝見をしたところでは、自分個人としては賛成とおっしゃったか、必ずしも反対ではないとおっしゃったか、要するに反対でないような御意見が伝えられておったように、私記憶いたしておりますが、その点についての総裁の真意をちょっとお伺いをいたします。
  182. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 いま銀行協会が二年定期というものを出しておりますが、これにつきまして、私は、普通銀行が貯蓄推進、貯蓄増強という立場から二年定期をやりたいという気持ちはよくわかるのであります。また二年定期がどれくらい効果があるかはちょっと即答しにくいのでございますけれども、とにかく二年定期をやれば確かに銀行としては有効な方法ではないかと思うのでございます。ただ、銀行の金利というものはやはり他のいろいろの金利に影響いたします。そこでいろいろのほかの金利の研究を十分いたさないといけないのではないか、かように思うのであります。銀行協会もむろんいろいろのほかの金利の研究をいたしておりますけれども、しかし何しろほかの業界のことでございましてよくわからない点がございますので、これはやはり大蔵省においてただ形式だけでなく、ほかの金利との振り合い、あるいは全体の金利水準といいますか、大勢の上からこれがいいか悪いかということを十分真剣に研究する値打ちがあることだろうとは思うのでございます。
  183. 堀昌雄

    堀委員 この問題は中央銀行の総裁としては、やはり日本の金融の一つの側面を代表しておられるわけでありますから、いまのお話は少し明確さを欠いておると私は思います。ということは、あなたはなるほどこれまでは三菱銀行の頭取で長く都市銀行においでになりましたけれども、現在はもう中央銀行の総裁でありますから、中央銀行の総裁は少なくとも都市銀行についてのみ配慮をすべきではなくて、もし都市銀行なり地方銀行に二年定期ができれば、やはり同様に相互銀行も信用金庫も二年定期ができるわけでありますから、そういう全体の問題と同時に、金融全体ということをながめますならば、その他の金融機関も当然中央銀行の影響力の範囲にあるわけでございますから、そこでもう少し明確に中央銀行の総裁としてのお感じを私は承りたいと思うのです。と申しますのは、銀行としては二年定期をつくることがいいようなお答えでございましたが、私は昨日も銀行局長に尋ねてみましたけれども、一年定期というものの継続性というものはよくわからないけれども七、八割はあるのではないかということでございますならば、現在の資料で調べてみますと、全国の都市銀行の預金の総量は、伸び率はたいへん下がっておりますけれども、個人定期については徐徐にではありますがふえておるわけです。徐々にふえておるその土台をなす一年定期は、七、八割が借りかえをされておるということは、たとえそれが六分三厘になったから急激にふえるということではなくて――それはふえるでありましょう。ふえるでありましょうが、それによる銀行のコストの増大というものをやはり見なければならないのではないか、現在私どもサウンドバンキングという問題を強く申しておりますのは、できるだけやはり資金コストを安くして、外部負債も返してやっていただきたい、預貸率も正していただきたい、こういう考えでありますから、都市銀行としては預貸率を正す一つの道であろうというお考えもあるかもしれませんけれども、しかしこれは貸し出し金利を高くする大きな要素に必ずはね返るだろうと私は思う。ただ預金量がふえさえすればよいという問題ではないと思いますので、その点については昨日大蔵大臣はそういう考えはないとはっきりおっしゃっておったのでありますが、やはり金融全体をながめるならば、中央銀行の総裁としても、それは都市銀行の気持ちはわかるということはよろしゅうございますけれども、やはり明確なお考えを出していただかないと、大蔵大臣と中央銀行の総裁との間に考え方の相違があるというふうな誤解を受けることは金融政策上望ましくない、こう思いますので、もう少し明確な御答弁をしていただきたいと思います。
  184. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの明確でないとおっしゃった点は私も率直に認めます。と申しますのは、私は前から市中銀行におりましたときに二年定則をやったらどうかということを言っておったわけでございます。したがって、そういうことを言っておりました関係がございますので――しかしおっしゃるとおり、中央銀行、日本銀行総裁としては、それではいけないということは私は率直に認めます。ただこの問題は、お触れになりましたので、申し上げますが、おっしゃるとおり銀行全体の資金コストを下げるということにはもっと各銀行とも努力しなければいかぬ、こういう点は日ごろから思っておりまして、機会があるたびにこれはひとつ各銀行に申したいと思っておるのでございます。ただおっしゃるとおり、最近個人預金が一年定期でふえております。おそらく量的にはとにかくとして、パーセンテージは一番伸びているだろうと思うのであります。ただ、それじゃ二年定期にしたら金利だけ損ではないか、こういう点は確かに金利の点は高くなりますが、同時に事務簡捷という点には、非常に役立つのであります。それからまたこれによって多少でも――どのくらいふえるかは、おっしゃるとおりわかりませんが、ふえていけば非常に安定した銀行の資金というものになるのではないか、そうしていまはできませんけれども、将来資金コストを安くすることによって、そうしていまの金利水準を保つように努力していくということが必要ではないかと思うのでございます。ただおっしゃいますとおり、これはほかのいろいろの金融機関の預金金利に関係がございますので、いま日本銀行といたしましても、至急研究をいたしているところでございまして、大蔵大臣のそういう考えが全然ないとおっしゃった御質問に対する御答弁は、利けさ拝見いたしましたが、しかし、私は、やるやらぬはとにかくといたしまして、研究をする値打ちのあることではないか、こういうふうに考え、また現在日本銀行としても研究さしているところでございます。
  185. 堀昌雄

    堀委員 私も昨日この問題等については研究をしてもらうように大蔵省に要求をいたしました。ただその研究の角度が総裁と私とちょっと違います。現在都市銀行でそういう問題が出てきております一つの理由は、貸付信託が五年もの七分三厘七毛ということで、確かに信託銀行の預金の伸び率は、年率約三〇%くらいでありますから、都市銀行の倍くらいの伸び率になっております。ですから、このことはやはり全体のバランスの上から考えて検討を要する問題ではないか。貸付信託の金利が他の金利水準と比べてやや割り高ということがもしそういう状況を起こすのであれば、そのほうを検討するということであるならば、私は問題が前向きだと思いますけれども、そういうものを既定の事実として固定をして、金利を高くすることのほうにのみ研究が進められるならば、私はこれから触れたいと思います公社債市場をつくっていくという方向に逆行するのではないかと考えるわけであります。  私は、かつて山際総裁にたびたびお越しいただいたときに、何回か申し上げてきましたが、全体としてコールもようやく少し落ちついてきましたから、これから二銭程度のコールの中で公社債市場をつくることを少なくとも政策当局、大蔵省も、  日銀も真剣に考えていただきたい段階にきております。しかし現在この社債の金利を多少上げなければならないと思いますが、多少上げなければなりませんけれども、片や六分三厘の二年ものの定期ができるということになりますならば、そういうものに見合った社債金利というようなことになりますと、かなり大幅に上げなければバランスはとれてまいりません。やはり全体としての金利ができるだけ下げられる条件の中で、上げるとしてもできるだけ小幅に上げることが日本の国際競争力を付与することにもなるわけでありますから、公社債市場育成の問題というのは、やはり全体として人為的な低金利政策は困りますけれども、少なくとも金融緩慢の状態がある際に、それをかき乱すような措置は金融正常化に逆行するものであって、いま総裁は検討をとおっしゃったけれども、この二年定期はやらないという前提に立っての検討をどうするのか、銀行が二年定期を要求する背景というものの分析をする必要がありましょう。その分析に立って、その他の関連の中での問題を検討するのでなければ、これはうしろ向きの検討にならざるを得ないのであります。そういう検討を中央銀行がやられる。うしろ向きの検討をやられるということは、私は中央銀行としていかがであろうか、こう考えるわけであります。その点につきましては時間もございませんから触れませんが、ひとつ前向きに御検討をいただきたい、かように考えるわけでございます。  その次に、私どもいま金融制度調査会で融資ルールの問題が取り上げられておりましたが、なかなか金融機関方面でも、その他でも問題が発展をいたしません。当委員会の小委員会において取り上げまして、一応第一・四半期の終わりに全体のものができるわけはございませんから、第一・四半期のうちにできる可能の範囲のものをひとつ成案を得て処置をしていただきたい、こういう要望を先般金融界の代表の方にいたしました。私が強く融資ルールを論じておりますのも、何とかして融資に一応歯どめがかかって二銭程度のコールの条件が一年なり二年なり続く条件をつくらずしては公社債の市場をつくることは不可能でありますから、そのためには、この融資ルールというものは重要な歯どめになるし、これについては私は産業界も金融界も真剣に考えていただきたい、こういうふうなことでお願いをいたしておるわけでありますが、その融資ルールを含めて現在のそういう金融緩慢の状態について、中央銀行はコールをどの程度に置くかということは、多分に中央銀行の操作の範囲でも影響があるわけでありますから、その点を含めてお考えをちょっと承っておきたいと思います。
  186. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 二年定期の問題で研究をすると申し上げましたのは、ただいまおっしゃったとおりの趣旨でございます。全体の金利を無視して、そうして二年定期のいい、悪いは考えられない問題でございます。ことにただいま御指摘のとおり、いま公社債をはじめいろいろの金利のいびつを直さなければいけない時期であると思うのであります。ことに私は毎々申しておるのでございますが、日本の金利水準全体を何とかしてもう少し安い方向に持っていかなければならない。その調節機能として上げたり下げたりは当然でございますけれども、そうしますと、多少今度全体を直すときにその二年定期の金利がじゃまになるというふうになってはいけない、そういう意味において私は検討すべきことだろう、かように考えておるわけでございます。  それからいまの貸付信託の問題についてお話がございました例の七・三・七でございますか、それにつきましては、いま非常に伸びておることは事実でございますが、これが今後解約期にだんだん入ってくるわけでございます。はたしてこのままいまの勢いで伸びていくかどうかは、しばらく様子を見ないとわからないと思って、いまの状態でこれはみんな七・三・七のためだというふうにも一がいに言えないのではないか。ただ問題はこの五年間という長い期間でございますので、中途解約とかいろいろの問題で五年間という制限が非常にゆがめられるということになりますといけませんので、この点は一般の市中銀行の金利の水準だとか、いろいろ手数料というような形でやっておりますが、あれは、ぜひ厳守してもらわないと困る、かように考えておる次第でございます。  それからコールの問題につきましても、異常コールがようやく通常のところに戻ってまいりまして、日本銀行といたしましても、金利全体の調整をこの際するには、このコールは何とか現在以上にのぼらないようにしていかなければならない。お話しのとおり、このコールについては日本銀行の影響力は相当ございます。その点から見まして、これは慎重に考えていくと同時に、さらにいまの相互銀行であるとか、信用金庫等のいろいろの金融機関が、コールをいままで収益の場にいたしております。そういう点もこの際直すということでいろいろ問題があるわけでございますが、それらの問題を一挙に直すことはできませんが、それにつきましても、やはり公社債市場育成という問題全体を考えまして、各金利をどういうふうに直していくか、一つ一つでなく全体のビジョンをつくるということで、いま盛んに研究いたしておるところでございます。そういう意味において、二年定期も決してこれをやるという前提ではなくて、これをやるとしたらどういう影響があるか、結論としてこれはとてもできない、先生のおっしゃるような結論にもなり得るわけでございますので、しばらく研究させていただきたいと思います。
  187. 堀昌雄

    堀委員 最後に、いま大蔵省も検討しておると思いますが、公社債の発行条件の改定問題であります。私はできるだけ一年なり二年なりこのコールの状態が続くことが望ましいと思いますけれども日本の企業のバイタリティーがあることも事実でありますから、歯どめをかげながらも、この状態がそういつまでも長いこと続くとも考えられないわけであります。そこでこの問題は少し急いでどのようになるにしても私は結論を出していただきたいと思います。大蔵省に対しても私はきびしく要求いたしておりますし、大蔵省もいま日銀と協議いたしておるようでありますので、どういう結果になるかはおのおのの御検討の結果にまちまして、私もいま幾ら上げなさいとかどうとかいうことは申しません。申しませんけれども、いずれにしてもじんぜん日を送って結論がなかなか出ないといりようなことでは、またチャンスを逸するおそれもありますし、われわれも何とかこのコールの安定した状態が続くように融資ルールの歯どめを考えながら、あるいは産構審の資金部会についても少しわれわれ真剣に考えて、設備投資についてはもう少しきめのこまかい調整をするという考え方でおりますが、しかし片一方の整備を急ぎながら、片一方の肝心の問題が放置されていたのでは問題が発展いたしません。公社債市場の育成が必要だというかけ声は非常に各界に高いのでありますが、かけ声ばかりで実は実態がまだはっきりしておらない。もちろんいつから上げるなどということになれば、また売り出しもとまってしまいますから、そういうことは公定歩合操作と同じで秘密を必要とすることであります。しかし研究が全部終わり体制が内部的にできるということは一日も早いのがよいわけでありまして、それをいつやるかはまた別個の判断になるわけでありますから、ひとつ早急に日本銀行としても責任を持ってこの条件改定の問題の結論を出すようにお骨折りを願いたいと考えるのでありますが、総裁いかがでありますか。
  188. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 いまチャンスを逃がすなというおことばがございましたが、実は私も全くいまがチャンスだろうと思っておるのであります。したがいまして、ただ口先ばかりで、ちょうど公社債市場の育成の問題を何年か言っておるような態度では、また悔いを残すのじゃないかと思っておる次第でございます。早急に各方面、大蔵省とも相談して立案をいたしまして、ただこの問題は、漏れるとなかなかむずかしい問題でもございますので、そういうことを含みながらやっておるというところを御了承願いたいと思います。
  189. 堀昌雄

    堀委員 終わります。
  190. 吉田重延

    吉田委員長 春日一幸君。
  191. 春日一幸

    ○春日委員 私の時間は、遺憾ながら二十分しかありません。簡単に質問しますから、あなたも簡単に答えてください。  第一番に、現在の金融のあり方、それは大企業と中小企業とに対する貸し出しシェア、これに対する総裁の所見をお述べいただきたいと思います。  資料によりますると、現在の貸し出し総残高のうちで、特に都市銀行の貸し出しの対比率でありますが、これは総貸し出し九兆五千六百九十七億の中で、大企業向きと目すべきものがその大部分を占めておる。そうして中小企業に対するものは、わずか一兆八千百四十九億、全体に占める割合は一九%である。八〇対二〇と目すべきものでありますが、こういうようなアンバランスな貸し出し対比率を何と見られておるであろうか。なお地方銀行やその他の金融機関を含めて、全体としてこれを見ましても四割対六割というような率になっておると思うのでございます。ここに中小企業が占めておりまする割合は、総雇用、総生産、それから総輸出、それから流通部面等において占めております中小企業のシェアは、圧倒的な多数のものである。そういうわが国産業経済の中で多くの部分担当しておる中小企業に全体として四割、都市銀行としては二割・八割、こういうような貸し出し率においては、商売は元手次第といわれるんだから、元手が乏しいところの中小企業が窮乏し、十二分にその金融を満喫しておる大企業が大繁栄をする、そういうような形で企業間、産業間に大きな格差、アンバランスが生じてくることは当然の事柄であろうと思う。なお、私は、日本銀行の金融機関に対する貸し出し残高を調べてみますると、一兆三千二百六十九億の中で、都市銀行に対して日銀は九千四百三十三億貸しておる。しこうして中小企業金融機関には一銭も貸し出していない。こういうような、かたがたもって銀行も大企業偏向、集中、情実融資、日本銀行もそれをバックアップして大企業にのみ全面的に貸し込んでおって、中小企業金融機関には貸し出していない。これでは大企業が繁栄し、中小企業が窮乏し、関係従業員の賃金の所得の間にも大きな断層を生じている。当然の事柄であろうと思います。国民は法律の前に平等でなければならぬ。したがってこういう不平等な金融政策のあり方について総裁の所見は何でありますか。また、八割まで大企業に集中的に偏向的に、場合によってはこれはでたらめ的と酷評しても過言ではないほど、現に、吹原産業のごときは、ボーリング場に二十数億の金を貸しておるのですから、つぶれかけておる山陽特殊鋼に対しても四百何億の金を貸しておるのですから、どこにどういうぐあいに貸そうと自由自在というような金融無政府状態、これをあなたは一体どう考えておられますか。所見をお述べ願いたい。
  192. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの御質問でありますが、銀行といたしましても、中小企業を決して軽視しているとは思いません。ただおっしゃるとおり、パーセンテージは中小企業のほうが非常に少なくなっておりますが、これも中小企業のほうでは、御承知のように何をもって中小企業というかという点におきまして、いままで中小企業だったものが次第に中小企業から大きくなりますと上の段階のほうにいくということがございます。そういう点もございまして、必ずしも中小企業に対して、おっしゃるような都市銀行については八〇対二〇、そういうことでないと思うのでありますが、しかしいずれにいたしましても、中小企業に対してはもっと関心を持たなくちゃならぬということは当然だろうと思っておるのでございます。銀行協会に対しましても、中小企業については、全国銀行といたしまして、確かに量はふえておりますけれども、パーセンテージが伸び悩んでおることは事実でございます。したがいまして、さらにそれらのことについて一そうの関心を持つように指導をいたしておるような次第でございます。
  193. 春日一幸

    ○春日委員 簡単に言ってください。中小企業がどれだかけじめがつかないなんというお話をなされましたけれども、はなはだ私は遺憾に思います。これは政府統計、日銀統計その他さまざまな統計が明らかにリストとして報告いたしておりますとおり、中小企業というものの定義は法律できまっておる。一千万円という旧法によるか、新法資本金五千万円によるか、五千万円によった場合のパーセンテージはこれこれ、旧法、資本金一千万円によった場合はこれこれ、はっきりしておる。そのくらいのことをあなたがおわかりにならなくて、どうして放棄金融の最高の責任を負うことができますか。私は適当でないと思う。これは五千万円以上だと都市銀行の貸し出しシェアは、中小企業に対するもの二四%、旧法、一千万円の資本金を限界とすれば一九%、いずれにしても八〇対二〇というような形で、大企業に向けて偏向的に融資がなされておるということは、これはもはや天下の定説である。こういうものを緩和していくのでなければわが国の産業間、企業間の所得格差の解消はできないのではないか、こういうようなことはしばしばここで論じられておる事柄であって、中小企業の怨嗟の声はずっと高まってきておるのですよ。だからあなたが民間金融機関の出身者として、わが国金融の最高の責任を負われたこの段階において、わが国漁業経済に奉仕するところの金融がどういう形でなされておるか、まずその実態を把握して、それがアンバランスで不適当であるならばそれを是正する、こういう方向に向かって研究が進められていくのでなければ、どれが中小企業だかはっきりしないなんて、そんなとぼけたことを言っておられては、われわれは実際今後の日本銀行の運営について不安の念を禁じがたいものがある。あらためて御答弁を願いたい。
  194. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 私がその標準をいいかげんに思っているなんておっしゃっては非常に心外でございます。標準があればこそ変わっていくということを申し上げたのであります。いままで五千万円以下のものが今度は一億になります。そうしますとその五千万円のものが中小企業からはずれまして、大企業のほうに移るのであります。そのことを申し上げた。私は標準があるということを知っておればこそ、その標準が動いていくということを申し上げたのであります。どうぞ誤解のないようにお願いいたします。
  195. 春日一幸

    ○春日委員 ターザンの逆襲みたいで……。私どもが政策論議をする場合は、とにかく法律で定められておる中小企業の定義というものを対象にしている。それにピントを合わせてあなたは答弁をする責任がある。われわれが法律の定義に基づいて中小企業を対象としておるのに、それよりちょっと上のものは、たとえば五千五百万円のものは中小企業ではないとかなんとかいうようなことによって問題をぼかさでない、中小企業がはなはだ金融拘束にあえいでおるが、統計によるとこのような実績になっておるのであるから、これを改善改革するの要はないか、こういう政策論議を行なっておるのだから、したがって改善する必要があると思えば、これは改善に向かって何らかの努力がなされるべきであって、これは当然これでよろしいというならそういう信念に基づいてその答弁があってしかるべきだと思う。あらためて御答弁願います。
  196. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 私が標準を知らないとおっしゃったから、標準を知っておるということを申し上げたわけでありまして、したがいまして、それだからこそおまえは中小企業に対して非常に無関心である、こういうふうにおっしゃられては、私は非常に困るのでございます。どうぞそういうことでなく、中小企業というものは非常に大事だという点は、先生と私とそれほど考えは違わないと思います。ただ問題はその中小企業を都市銀行がどういうふうにやっていくかというところが問題だろうと思うのであります。中小企業につきましてはやはり中小企業の金融機関という特別の機関もございますので、そういう人にも一そう骨を折ってもらうという点も十分考えていかなければいかぬと思っておる次第でございます。
  197. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、ちょっとこれは一言お答えを願いたいと思うのでありまするが、日銀の貸し出し一兆三千二百六十九億の中で、都市銀行に対するものが九千四百三十三億であって、中小企業専門金融機関である相銀あるいは全信連というものについては、何らの貸し出しが行なわれてはいない。あなたのほうの金は国家的な資金である。そしてまた銀行の金といえども、当然預金者大衆の預金による金であるから、少なくとも国家的な性格を持つ日銀資金というものは、中小企業も金を欲しておるのであるから、しかも都市銀行の貸し出しシェアは、その統計が示しておるがごとくに、八割までも中小企業以外のものに融資がされておるのであるから、したがって日銀の金は何らかのパイプを通じて中小企業専門金融機関にこれを流すことによって、中小企業そのものにもこれが供与できるような形にしていく。  かつては信用金庫連合会に日銀の中小企業特別資金ワクというものが設定されて、それによって中小企業に国の金が流れた前例等もあるわけでございます。御承知のとおりであろうと思います。現在の日銀の金が国家の金であるならば、法律の前に平等であるならば、わが国産業経済の中に重きシェアを占めておる中小企業にも、日銀の金が直接流れていくように、相互銀行並びに信用金庫に対しても何らかの資金パイプを設定するの意思はないか、その必要はないと思うか、この点お答えを願います。
  198. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 現在おっしゃるとおり、日本銀行の貸し出しは都市銀行が主たるものでございます。ちょっと内容を申し上げますと、この三月現在で申しまして、日本銀行の貸し出しは一兆三千億余りでございます。一兆三千二百六十九億でございます。そのうち大体四千億外国為替の関係で出ております。それから日証金に対して二千六百億出ておりまして、結果といたしまして一般銀行には六千六百三十九億出ておるのでございます。これが三月末日の残でございます。  さて、日本銀行は都市銀行だけに金を流しておるじゃないか。国家の金を都市銀行だけに流すということは、大企業だけではないか、こういう御質問だろうと思うのでありますが、実際われわれが考えておりますところは、たとえばコール市場などを見ましても、むしろ相互銀行とか、あるいは信用金庫などのほうが資金に余裕がございます。むろん信用金庫なんか御承知のように非常な数でございますので、その中にはいろいろな資金ポジションのものもあると思いますけれども、全体としてながめますと、都市銀行のほうが資金が不足いたしまして、そういう中小金融機関のほうが余裕がある。これはどうしても私どもも認めざるを得ないのでございます。しかし御注意のように、われわれは国家の資金でございますので、そういう点についてどういうふうにしたらいいかということについては、全国の日本銀行の支店を動員いたしまして、目下それを調べさしておるところでございます。
  199. 春日一幸

    ○春日委員 いま中小企業金融機関が資金余裕があると言われておりまするけれども、私はこれは日銀総裁として認識不足もはなはだしいと思う。これは純粋にそういう資金が潤沢にして余っておるというのではなくして、制度の欠陥として、要するに貸し出しすることができないから、貸し出しすることのできない金として、彼ら中小企業金融機関に、これを流動性を確保しながら保有しなければならないからである。それは貸し出し準備金の率でございますが、預金の八割程度しか貸すことができない。こういうふうに相互銀行、信用金庫の法律によってきまっておる。普通の銀行は自分が一〇〇の預金があっても一二〇でも一一〇でも貸し出せる。これがオーバーローンですよ。オーバーローンが認められておるからこそ、そういうことになってきて、そして中小企業金融機関に自分の預金量の八割内外しか貸し出すことができない。だから二割の金は手に持っておらなければならぬのである。だからやむを得ずその金をコールに流しておるから、外面的には余裕金のごとくに見えるんだが、実際には多々ますます弁ずべきものであることは、現実の町においていろいろと御調査になれば、このことはすぐわかる歴然事項である。そのことはひとつ認識を改めていただきたい。だから本委員会においては、制度の問題としてオーバーローンを解消することのためには、とにかく中小企業金融機関の例もあることであるから、預金者の安全確保のためにも、あるいはまた信用秩序の維持のためにも、信用調整のためにも現在の銀行法を改めなければならぬという政策論議がここに行なわれておるのです。そういうような現象的な問題、これは制度の上から余儀なくしてあらわれてきておるところの流動資金というものですね。それは資金需要がないから余ってきた資金であるかのごとくに認識されておったらたいへんな間違いですぞ。御検討の上これは十分正当に御認識を改めてもらいたい。  時間がありませんから質問を進めますが、次は銀行の融資ルールというものですね。いま申し上げましたように、とにかく国家の金でやり、足らざるところは預金者大衆の金、これがどこへでも貸して差しつかえないというような現在の銀行法のあり方、銀行業務のあり方ですね。これは私は再検討を要するのではないかと思う。たとえば山特鋼に対してもあなたは御承知のとおりである。これは三菱銀行、神戸銀行が主力銀行でありましたから御承知のとおり。あるいは吹原産業について、この間三和銀行、三菱銀行、大和銀行の頭取、副頭取を呼んでみたが、これらの諸君の言っていることは何を言っているかわからない。これは冷蔵庫だといって申請があった。そうしてみたらいつの間にやらこれはボーリング場になっておる、こう言っておる。少なくとも融資というものは資金使途というものが明示されておるのであるから資本使途と変わった方向にこれが使われるということが歴然となったならば、その時点において融資を打ち切るか、出されておるものの回収をはかるか当然そのような措置があってしかるべきである。しかるにこれらの銀行はそれらの重役とか、支店長だというものが、天下何ものも恥ずるところなく、そのボーリング場の開場式にお祝いの使者として、そこに行って祝辞を述べておる、こういうばかげた現状である。全くわれわれは本委員会において、ここ十数年前において、あなたがまだ三菱の常務になられた当時からわれわれはここで論じておるのだが、千葉銀行事件というのがあった。古荘四郎彦氏という男が銀座の坂内ミノブというレインボーのマダムに十二億円貸しておったのですね。埼玉銀行事件もやってみた。ちゃらんぽらんである。今度吹原産業事件によって両銀行を調べてみたら、あなたのほうに日本銀行から借りた金が、預金者の金か知らないけれども、とにかくこれが冷蔵庫の建設資金と称して、これがボーリング場に使われて、しかもそれに対して祝福のためのごあいさつに、銀行から使者が派遣されておるというのが現在の都市銀行の金融常識である。このようなことをどのように考えておられるかということですね。あなたのほうは、日本銀行として当然融資を通じて各金融機関との間に契約に基づいて考査権限というものがあるだろう。あるいは民事上の契約に基づいて銀行の検査をやっておるだろうと思うのだが、実際に一体こういうような市中金融機関がどこへどういうぐあいに貸そうと、銀行の重役、支店長、当事者の思う存分にどこへでも貸せる、これが偏向融資、集中融資、情実融資、これを跳梁ばっこせしめて、あらゆる不義不正、こういうことを何者をもおそれず横行せしめておる原因ではないかと思う。この際銀行法を直して偏向融資、集中融資、情実融資を法律によって規制すると同時に、日本銀行というものはその業務契約なり何なりを通じて、そういうようなことをやっているところへは金を出さない。少なくとも国家の金である。そのようなでたらめ融資をなさしめるべきものではない、こういうように考えるが、所見いかがでありますか。
  200. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいま、初めの借り入れ理由と全く違ったところ、違った方法で流用されておったというようなことにつきまして御指摘がございましたが、全く一言もない、けしからぬことだろうと私は思います。ただ御理解を願いたいのですが、これが金融機関の全体であるということは、どうぞひとつ考えていただきたいと思うのであります。むろん多少でもそういうことがあって、多数の中だからいたし方がないということを私は申しているのではないのであります。そういう間違  いをしたのはほんとうに何とおわびしていいか、国民全体に対しておわびしなければならぬ問題だとは思うのですけれども、そうかといって金融機関全体の融資が非常にでたらめであり、けしからぬことだということでは、私は現在まじめに金融機関に働いておる人に非常に気の毒なことではないか、かように思うのであります。それだからといって、いま御指摘のようなもろもろのことは、決していいどころではなくて、けしからぬことでございます。しかしそうかといって、どうぞ全体を御指摘にならぬように、ひとつお考えを願いたいと思います。
  201. 春日一幸

    ○春日委員 わかります。わかりますが、私がいま申し上げたことは、たとえば本委員会において調査をしてみると、千葉銀行事件においてしかり、埼玉銀行事件においてしかりだ。今日吹原事件に関係をいたしまして、大和銀行を調べてみ、三和銀行を調べてみ、三菱銀行を調べてみると、やっておることはちゃらんぽらんじゃないか。いままで、やってきたそれらの連中よりももっと極悪非道なことばかりやっておる。預金もないのに、大和銀行のごときは三十億円にもなんなんとする銀行小切手を乱発しておる。三菱銀行のごときは全然預金がないのに十億、二十億の指定預金証書を発行して、それが詐欺にかかったということがわかっておっても、全然告発もしない。告発するまでの二週間の間に三菱は何をやっておったか。こういうようなことをやっておるようでは、これらの事態はことごとく氷山の一角と目すべきものである。全貌はいかん。調べてみたものがみんなそうでしょう。天下の大銀行である三菱、三和、大和、こういう三つの銀行を調べてみると、かくのごときありさまです。いままで調べてみたやつがみんなむちゃくちゃだということになれば、全部がそうじゃないということをあなたが断言するのはおかしいじゃありませんか。そういうことがあったことはまことに痛み入る、長く金融業界に身をささげた者としてまことにざんきにたえない、お互いに相戒めて、今後このようなことのないように日銀の立場において十分なる指導を行なっていくという御答弁があってしかるべきである。三菱や大和や三和といえば、わが国十一大銀行の中の象徴的大銀行ですぞ。このような銀行たちのやっておることが、このような業績ですね。悪いけれども、吹原のような、事業的な信頼というものも十分社会的に確立をしていない人に、三十億というような銀行小切手や指定預金証書を発行しておいて、これはもう全部じゃないのですから、そのような酷評は慎んでもらいたいというような意味合いのことを事もあろうに日銀総裁たる者が言われることがありますか。こういうようなことは全く痛み入る、今後はみんなが戒めて、公共的使命をになうところの金融機関は公正なる、堅実なる運営を心がけねばならぬというような御答弁があってしかるべきだと思うのです。これはあなたの自主的な判断だが、十分お取り入れになるところがあったら今後お取り入れを願いたいと思う。  ただ私は最後に一点だけ伺います。私は、日本銀行が銀行に対して貸し出しを行なうというそ  の立場において、各銀行の業務法のあり方というものについては重大なる関心がなければならぬと思う。そこでお伺いをいたしますが、現在われわれの国政調査によって明らかになりましたことは、現に三菱銀行の長原支店においては何十億の預金証書が支店長の単独の意思によって発行されておる。しかも預金なきものをですね。不実の預金証書が発行されておる。預金証書は、銀行の立場からいうならば、これは一個の債務証書のようなものです。これだけの金をお預かりしておりますという債務的証書であろうと思う。だから私は伺いたいのでありますが、実際問題としてこういうような巨額な債務証書を発行する権限を一支店長の恣意にゆだねておいていいとあなたはお考えになりますか。たとえば大和銀行京橋支店長のごときは、三十億円の銀行小切手――これも支払いの義務を生ずる債務証書である。債権債務関係において、大和銀行は支払いの要求があったら支払わなければならぬ。こういう巨額の資金を、頭取、副頭取の諸君が述べておったところによると、本店は知らなんだと言っておる。ほんとうは知っておるのかどうかわかりませんけれども、事実これらの答弁が偽りでないとするならば、一支店長の恣意によってこういう大いなる銀行では債務証書というものの発行がなされるのですね。このことは、預金者の安全を確保することのためにも適当でないとお思いになりませんか。したがって、もしそれ、頭取、副頭取の諸君が述べられたこと、すなわち、本店の幹部は全然関知しなかったということが事実であるとするならば、またそのような形で銀行の運営がなされておるものであるとするならば、今後あなたのほうは、日銀として、大きな金を貸し与うる債権者である立場に立って、債権保全のために、少なくとも一銀行支店長の発行するそのような預金証書あるいは銀行小切手の額はある一定の限界にとどむべきものであるとお考えにはなりませんか。この点について日銀総裁としての御所見をお伺いいたしたい。
  202. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの御質問にお答えする前に、私がたいへん不謹慎であるというようなお話がございましたが、私がいま大部分の行員は間違いもなく日々働いておるんだということを申し上げたのは、決して弁解ではないのでございます。ただ、いま御指摘になったような事件は、もう論外の、問題にならない、けしからぬことでございます。その点は全く残念なことに思う次第でございます。その点は決して、みんながまじめにやっておるから、これくらいはしかたがないだろうなんという、とんでもない、大それた考えで申し上げているのではないということを御了承願いたいと思います。おそらく銀行全体としてどの銀行も今度の事件について深く反省をしているだろうと思うのでございます。
  203. 春日一幸

    ○春日委員 私も銀行の行員諸君がことごとくそのような不正不義の中に身をゆだねておるなどとは思いません。そんなことだったらたいへんなことですわ。わが国の全融機関が総検挙されたら日本の産業も社会経済も成り立ってまいりませんよ。そんなばかなことをわれわれ国会議員が質問すると思いますか。いろいろな銀行を調べてみると、そのような事態が発覚をしておることはおそるべき事柄である。そのようなことは絶無を期さなければならぬのである。したがって、日本銀行はいろいろな貸し出し契約とか取引契約による考査権限を行使して、今後そういうようなことをなくすることのためにしかるべき善処があってよろしからんということを申し上げておるのですよ。すべての金融機関がそんなことをやっておると私が言いましたか。  それから、今度の問題なんかでも、われわれの理解できないことは、少なくとも三菱銀行のごとき大銀行が、不実の預金である吹原君にだまされたものであるということが本店に知らされたのは三月中旬でございましょう。それから三月二十日に森脇君が本店へ行ってこれを払い戻してくれと言っておる。それから告発されたのが四月三日でございますね。私は、銀行というような公的使命をになっておりまするものは、極言すれば官庁と同じようなものである。そういうようなものがそんな被害にあっておったらどうして即日告発をしないのか。三月半ばに本店に稟申をされておる。長原支店長は、思いあまって本店に持っていったというのが、伝えられるところによりますと三月二十日である。森脇君が開き直ってあれを払い戻してくれと言ったのが三月二十日で、告発されたのは四月幾日である。このような歴然事項、しかも重大事犯と称すべきものが、被害者の銀行――三菱銀行は天下の公金を預かるところの公的使命をになっているものである。それがそのような被害の当事者になったときは、即日告発されてしかるべきだと思うが、そういうことがなされていない。こういうようなあり方については、これは当然大蔵行政の中において厳重戒告があってしかるべきだと思うけれども日本銀行としても、やはり考査権限を行使して、そういうような被害にあったような場合には直ちに告発をせらるべきものである、こういうぐあいに指導されていくのが適当であると思いますが、その点についてどうお考えになりますか。
  204. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの御発言について、ほんとうにごもっともだと思います。どういう事情がありましたのか存じませんけれども、しかし、非常に意外な事件でありましたので、いろいろ調査にひまどったのではないかと想像するわけでありますが、これは私が弁解すべきことではございませんので、そういうふうに考えておる次第であります。  それから、今後こういう事件が起きないようにいろいろまことにありがたい御指示をいただいたわけであります。これをどういうふうにいたしますか十分研究をいたしますことをお約束いたします。
  205. 春日一幸

    ○春日委員 終わります。
  206. 吉田重延

    吉田委員長 これにて日本銀行総裁に対する質疑は終了いたしました。  宇佐美総裁には、御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただきありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次会は、明後十四日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時五十四分散会