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1965-05-11 第48回国会 衆議院 大蔵委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月十一日(火曜日)    午前十一時四十三分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 山中 貞則君    理事 有馬 輝武君 理事 堀  昌雄君    理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       奥野 誠亮君    鴨田 宗一君       木村武千代君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    西岡 武夫君       福田 繁芳君    毛利 松平君       渡辺美智雄君    岡  良一君       佐藤觀次郎君    只松 祐治君       野口 忠夫君    日野 吉夫君       平岡忠次郎君    平林  剛君       横山 利秋君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (日本専売公社         監理官)    半田  剛君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (国有財産局         長)      江守堅太郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君         運輸政務次官  大久保武雄君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  深草 克巳君  委員外出席者         検     事         (民事局第一課         長)      川島 一郎君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    塩崎  潤君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    向井 正文君         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      秋吉 良雄君         郵政事務官         (大臣官房郵政         参事官)    田中  隆君         日本専売公社職         員部長     山口 方夫君         日本国有鉄道理         事       豊原廉次郎君         日本電信電話公         社厚生局長   飯森  実君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 五月七日  委員濱田幸雄君、春日一幸君及び竹本孫一君辞  任につき、その補欠として藤枝泉介君、山下榮  二君及び西村榮一君が議長指名委員に選任  された。 同日  委員西村榮一君及び山下榮二君辞任につき、そ  の補欠として竹本孫一君及び春日一幸君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 五月八日  閉鎖機関令等規定によってされた信託の処理  に関する法律案平島敏夫君外一名提出参法  第一六号)(予) 同月七日  入場税撤廃に関する請願川上貫一紹介)(  第三四九三号)  同(林百郎君紹介)(第三四九四号)  酒類小売業免許制度に関する請願外一件(椎  熊三郎紹介)(第三四九五号)  同(長谷川四郎紹介)(第三四九六号)  同外一件(椎熊三郎紹介)(第三五八四号)  同(綾部健太郎紹介)(第三五九六号)  同外四件(有田喜一紹介)(第三五九七号)  同外一件(井村重雄紹介)(第三五九八号)  同外二十二件(岩動道行紹介)(第三五九九  号)  同外五件(宇野宗佑紹介)(第三六〇〇号)  同(遠藤三郎紹介)(第三六〇一号)  同(小川平二紹介)(第三六〇二号)  同(大高康紹介)(第三六〇三号)  同(仮谷忠男紹介)(第三六〇四号)  同(草野一郎平紹介)(第三六〇五号)  同(倉石忠雄紹介)(第三六〇六号)  同(小島徹三紹介)(第三六〇七号)  同(小平久雄紹介)(第三六〇八号)  同外一件(佐々木秀世紹介)(第三六〇九  号)  同外一件(坂田英一紹介)(第三六一〇号)  同外五件(櫻内義雄紹介)(第三六一一号)  同(正示啓次郎紹介)(第三六一二号)  同外一件(關谷勝利紹介)(第三六一三号)  同外一件(高見三郎紹介)(第三六一四号)  同外一件(竹下登紹介)(第三六一五号)  同外二件(竹山祐太郎紹介)(第三六一六  号)  同(渡海元三郎紹介)(第三六一七号)  同(中川一郎紹介)(第三六一八号)  同(中村幸八君紹介)(第三六一九号)  同(永田亮一紹介)(第三六二〇号)  同外一件(二階堂進紹介)(第三六二一号)  同外三件(西村直己紹介)(第三六二二号)  同(原健三郎紹介)(第三六二三号)  同(本名武紹介)(第三六二四号)  同(村上勇紹介)(第三六二五号)  同(森下國雄紹介)(第三六二六号)  同外二件(山田彌一紹介)(第三六二七号)  同外一件(椎熊三郎紹介)(第三七三二号)  共済掛金引き上げ反対等に関する請願(谷口  善太郎君紹介)(第三五八五号)  音楽、舞踊、能楽等入場税撤廃に関する請願  (泊谷裕夫紹介)(第三七三三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  参考人出頭要求に関する件  小委員会における参考人出頭要求に関する件  昭和四十年度における旧令による共済組合等か  らの年金受給者のための特別措置法等規定に  よる年金の額の改定に関する法律案内閣提出  第七九号)  昭和四十年度における公共企業体職員等共済組  合法に規定する共済組合支給する年金の額の  改定に関する法律案内閣提出第一二三号)  税制及び金融に関する件  国有財産に関する件      ————◇—————
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  昭和四十年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等規定による年金の額の改定に関する法律案及び昭和四十年度における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合支給する年金の額の改定に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 先般、私はこの法案関連をして、退職をした諸君と会いましていろいろ意見を聞いたことがございます。異口同音に陳情を受けました点は二、三にとどまらないのでありますが、その中で最も残念に思う、これくらいのことはと、声をそろえて言いましたのは、七十才未満の者については今回の改定による増加額の全部または一部の支給を三年間停止するという問題であります。六十才未満では全額停止をする。六十才以上六十五才未満では三分の二ないし二分の一、三分の一停止をされる。六十五才以上七十才未満では二分の一を停止される。まことにみみっちいやり方といわねばなりませんし、老齢の退職者諸君として、六十才ないし七十歳という段階を刻まなければならないという積極的な理由については何としても納得ができぬ、こう言うのであります。居・並びました退職者諸君の顔色を見ますと、私は小使いをやっています、私はこういうところで働いておりますけれども、からだがこんなものですというようなことを言うので、まことに気の毒にたえないような状況でありますが、このように年齢を制限をしてわずかの金額を三年間にわたって段階をつけざるを得ないという理由は一体何でありましよう。
  4. 秋吉良雄

    秋吉説明員 六十歳未満あるいは六十歳以上は——七十歳以上については全額支給ということになっておりますが、三年間にわたる段階的支給ではないかという御指摘でございます。御案内のように共済につきましては恩給方式に追随いたしまして引き上げてきておるわけでございまして、今回も恩給と同様の考え方に立ちまして引き上げておるわけでございまして、恩給引き上げ方の三年間にわたる段階的支給をそのまま採用いたしたわけでございます。  そこで問題は、恩給についてなぜこういった三年間にわたる段階的支給があるかという御指摘でございます。これにつきましては、過去におきましても三年間にわたる段階的支給であったということも一つの考慮に値いたしますが、一番大きな理由財政上の理由ではないかと思います。
  5. 横山利秋

    横山委員 恩給にならった、そうして恩給をそうしたのは財政上の理由である、こう言うのですが、この法案でいまから全額支給するとしたらどのくらいの金額が必要でありますか。
  6. 秋吉良雄

    秋吉説明員 恩給の場合のみにつきまして御説明いたしたいと思いますが、かりに恩給が四十年の十月から施行になりますとすれば、私の仄聞しておりますところによりますと約四十八億という数字と伺っております。それからこれは平年度、つまり三年たった暁においての年度所要額でございますが、これも私の数字は間違っておるかもしれませんが、約四百億足らず、三百八十四、五億というふうに伺っております。
  7. 横山利秋

    横山委員 この法案を実際にやるとしたら全額幾らですか。
  8. 深草克巳

    深草政府委員 三公社のほうの数字を先に申し上げます。  専売平年度が一億一千六百万円でございます。国鉄が三十三億一千二百万円、電電が三億九百万円でございます。初年度のそれに見合う数字は、専売が三千八百万円、国鉄が六億六千八百万円、電電が七千六百万円でございます。したがいまして初年度平年度の違いと申しますと、国鉄の場合には約二十七億くらいの相違があるわけでございます。それから電電につきましても二億三千万円、専売につきましては七千万円程度の差が出てまいっておるわけであります。
  9. 秋吉良雄

    秋吉説明員 国家公務員について申し上げます。  平年度におきまして、すべて合わせまして九億一千六百万円でございます。これは旧令年金旧法年金新法年金、三者すべてを合算いたしまして九億一千六百万円でございます。四十年度におきましては一億八千八百万円の数字でございます。
  10. 横山利秋

    横山委員 国鉄に伺いますが、私の聞いておるのは、これは三年間にきちんとやるのであるが、初年度から全額支給するとしたら余分にどのくらい要るかということを聞いておるのですよ。
  11. 深草克巳

    深草政府委員 先ほども申しましたように、三十三億と六億六千万円との差額で約二十七億何がしでございます。
  12. 横山利秋

    横山委員 三公社では初年度から実施をするとして、その財源が実行できないものであるかどうか。なるほど恩給の右へならったことではあるけれども、それぞれの財源からいって、これは初年度からやろうと思ったら実行できないものであるかどうか、それぞれ三公社から伺いたい。
  13. 豊原廉次郎

    豊原説明員 国鉄共済組合としてただいまの点を修正して財源上できないかという御質問でございますが、国鉄共済組合におきましては長期の金は、御承知のように、非常に大きな金額にのぼる年間の金を使うわけでございますが、しかし、ただいま運輸省のほうから御説明がありましたように、二十六億余りというのは非常に大きな金でございますので、財政上も非常に困難であると考えております。
  14. 半田剛

    半田政府委員 ただいまの御質問ですが、専売公社は、深草部長から言われましたとおり、平年度それから一年度との差でございますので一億一千六百万円と三千八百万円との差になる。これは専売公社といたしましては財源上できないことはございません。ただ、これはほかの公社との共通性の問題もございますし、専売公社だけというわけにいきませんのでございますが、専売公社の立場ではそういうふうなことになっております。
  15. 飯森実

    飯森説明員 ただいま政府から御答弁申し上げましたように、私のほうは二億三千万円程度でございます。私のほうの長期経理から見ますと、できないかと言われるとできないわけではございませんけれども、すでに改定された恩給関係のものとの権衡、その他他公社との関係考えましていろいろ問題はあろうかと思います。財源的にできないわけではございません。
  16. 横山利秋

    横山委員 恩給共済組合それぞれ基本的な線があるにはあるのだけれども、しかしながら専売なり電電なりはやろうと思えばできないことはないとおっしゃる。国鉄においてはいま財政事情があってできないとおっしゃる。しかしながら、その国鉄にお伺いするけれども、それだったらいまこの法案についても、絶対この法案の内容であるならば財源上問題はないのかという点について念を押しておきたいと思います。
  17. 豊原廉次郎

    豊原説明員 先ほど私の答弁が少し不明確であったかと存じますが、絶対ということになりますと、これは国鉄共済組合といたしましては、絶対できないとはあるいは言い切れないかと存じますけれども、何分にも二十数億という金は相当大きな金でございますから、ほかの財源を圧迫いたしまして非常に困難であるという意味でございます。したがいましてただいま先生の御質問は、それではいまの金ならば、絶対だいじょうぶかということでございますが、これにつきましては長期経理につきまして収支の策定、長期的な見通しに立つものをただいまやっておりますが、その結論が出まする際にもいろいろなほかの財源措置が必要であることはおおむね明らかでありますので、そういう意味におきましては所要措置を講じませんと問題が起こる、こういうことになります。
  18. 横山利秋

    横山委員 絶対できないことではないというお話を承ったわけでありますが、退職者の痛切な希望は六十才、六十五才、七十才ということに段階を置いて、そうして年金額のきりをつけるということにつきましては、どうにもやはり個々の人にしてみれば、金額としてはそうたいしたことではないのであります。担当者としての取り扱いもきわめて複雑になるわけでありますから、今回はこれによるのはやむを得ないとしましても、このやり方は早急に財源的事情考えつつでありますけれども、短縮するように努力する必要があると思うのでありますが、政府側の総合的な御意見を伺いたいと思うのであります。
  19. 大久保武雄

    大久保政府委員 横山委員から御質問がございました今回の恩給法関連いたしまして、三段階制年齢を区切りました点につきましては、横山委員の御質問まことにごもっともだと私も考えております。私も将来できるならば横山委員のお考えのような方向に向かって前向きに解決していかなければならないところであろう、かように考えておる次第であります。先ほど大蔵省の給与課長からも御説明がございましたように、今回は財源その他の点からやむなくかような次第に相なっておる次第でございます。将来前向きの姿勢で改善をいたしたいと考えておる次第でございます。
  20. 横山利秋

    横山委員 もう一ぺん念を押しておくわけでありますが、財源上困難だと言うならばいつまでたっても私は困難だと思うのです、恩給なり共済組合財源事情というものは、いつまでたっても、いつの国会でも同じことの議論を繰り返しておるわけでありますから。要するに、こういうような区分のしかたというものが退職者に対して非常ないやな感じを与えておる。しかも総体的な金額から考えれば私はできないことはないと思うのでありますから、恩給を含めてこういう段階的な増額措置は早急に改善をすべきである。改善をするにはもちろん法律案の上程をしたければなりませんが、政府側としてなるべくすみやかな機会に、この段階的増額措置というものを改善をするつもりであると承知をしてよろしいですか。
  21. 大久保武雄

    大久保政府委員 今後の予算等機会がありますごとに、すみやかなる機会におきまして、ただいま横山委員の御質問のような線に沿いまして、私どももこれが前向きの改善に努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  22. 横山利秋

    横山委員 その次に三公社退職者から陳情を特に受けましたのは、事実上差しさわりがあるかどうかは別として、法律上今回の新法年金改定請求改定になっておるということであります。これは事務上の問題で支障はないとは思いますけれども、それにしても、こういう複雑な改定請求をして、私にこういうふうに年金改定になったがこれだけ下さいと言わなければもらえないということは、年金者にとりましては幾ばくの不安が常につきまとっているわけであります。先般の本委員会におきましても、こういうようなあり方でなくして、自動的に受給者に対して改定作業が行なわれ、お金が行くようにというように同僚委員質問をし、政府側の善処を促した点でありますが、どうして一体この請求改定に引き続きしなければならないのであるか、またこれを改善することがなぜできないのであるか、ひとつその点を明らかにしてもらいたい。
  23. 深草克巳

    深草政府委員 今回の新法年金改定でございますが、仰せのように請求改定方式をとった理由は、今回の改定昭和二十八年当時の俸給表基準といたしますわけでございまして、その当時の履歴カードがそれぞれ所属個所に保管をされておるわけでございます。昭和二十八年十二月三十一日の俸給表が引き続き適用されていたならば、受けるべき俸給額というものが法律にございますが、それがそれぞれの所属個所でないと算定ができない事情にあるわけでございます。したがいまして、本人からの請求によりまして、所属個所において仮定俸給表を算出させ、それに基づいて、本部のほうで年金額改定をするというようなことにしたわけでございます。しかしながら、仰せのように、非常に不安感と申しますか、不便もございますので、こういうふうに法律改定になったということにつきましては十二分に周知徹底をはかるように、三公社のほうを督励をいたしたいというふうに思っております。
  24. 横山利秋

    横山委員 その理由はほかのところでも同じ理由でありますか。
  25. 深草克巳

    深草政府委員 同様でございます。
  26. 横山利秋

    横山委員 そういうことを改善する方法はどういうふうにしたらよろしいのですか。なぜそれができないのです。
  27. 深草克巳

    深草政府委員 結局履歴カードを全部本部に集中して管理するということになるわけでございますが、それの事務的な問題、つまりこれ以外にも履歴カードの効用というものがございますので、それを分散しておくのか、集中しておくのがいいかもう少し検討さしていただきたいと思います。
  28. 横山利秋

    横山委員 ことばがはっきりしないのですが、履歴カードをそういう所属個所に分散をしておかないで、年金受給のために集中しておいたら集中して、そして、そこで統一的にやることがなぜ不ぐあいが生ずるのでありますか。
  29. 深草克巳

    深草政府委員 分散しておくことのメリットとしましては、通常の場合、たとえばある管理局出身者は大体地元の方が多いわけでございまして、いろんな照会その他につきましても、わざわざ東京のほうに照会しなくても便利がいいというようなこともあろうかと思いますが、仰せのような問題にぶつかりますと、本部で自動的にやるというようなメリットも逆にございますので、どちらがいいか、今後どういう方法をとるべきかということにつきましてはいま少し検討さしていただきたいと思います。
  30. 横山利秋

    横山委員 退職者についての照会その他は、その履歴カードの集中したところに照会をするということが、退職者の問題については年金を扱っておるそこに照会すればすぐわかるということが徹底をすれば、あなたの言うような不ぐあいは解消すると私は思うのであります。退職者退職時につとめておったところがどこであるかということはそんなにわかるはずがない。だから世間一般には退職者の問題につきましては、履歴カードの集結をしたところに照会をすればすぐにわかるというふうにしたほうがかえって利便ではなかろうかと私は思うわけであります。こういう年金受給というものが、退職者にとりましてはもう現職人たちが結局は全部やってしまうことになるわけでありますから、形式的な請求裁定方式をいつまでも残しておかないで、実質的にこの受給者利便をはかるということが私は必要であると思うのであります。その点について改善をすみやかにされることを望みたいのでありますが、あわせてひとつ政府側の御意見を伺いたい。
  31. 深草克巳

    深草政府委員 先ほどお答え申しましたように、いろいろの要素がございますので、仰せのように至急に改善方向で検討してまいりたいと思います。
  32. 横山利秋

    横山委員 もう一つの非常に痛切な要望は、これは本委員会ばかりではないのでありますけれども、年金受給者生活水準物価の値上がり、現職組合員との給与に即応して年金額が引き合わないということであります。これはどんなにここで声を大にしましても言い足りないほど痛切な年金受給者要望であります。また本法案関連のる年金受給者ばかりでなく、すべての年金受給者の問題でありまして、いま一朝一夕にここで解決ができる問題ではもちろんございませんけれども、幾十年の歳月掛け金をかけ、そしてようやく退職をして年金をもらう。しかしその退職時における年金はまあまあということではあるけれども、すぐに物価が値上がったり、あるいは現職組合員諸君給与が向上をしているにかかわりませず、年金受給者が取り残されておる。しかも取り残し方についてばらばらな取り残し方であるという点については、何とまあそこで痛切な陳情がありましたか、私も皆さんにお話しをするすべを知らないほどの深沈たる零囲気なのであります。もちろん退職者年金受給者諸君も、必ずしもその全部が年金生活をしているわけではないわけであります。ほかに仕事を持っておる人もあるわけでありますが、しかし年金による生活の心細さ、それが一年、二年たつごとに全くスズメの涙のような年金額について禁じ得ない心細さを皆苦衷を私に言うわけであります。私ばかりでなくて、すべての国会議員がそれに対して言うすべを知らないような状況であります。われわれとしては歴年このスライド制について、国会におきましてもいろいろ議を尽くしておるわけでありますが、先般の厚生年金附帯決議にも関連をいたしますけれども、このスライド制についての検討並びに実施について、政府はどういうお考えであるか、承っておきたいと思います。
  33. 秋吉良雄

    秋吉説明員 事務的な御答弁をいたしたいと思いますが、スライド制についてはかねて幾多の議論がなされておるわけでございます。スライド制をする場合に、一体スライド制とは何かという問題がございますが、まず自動調整的なスライドという意味でものごとを考えますならば、その場合に基準というものが必要でございます。その基準につきましては、何にその基準を求めるか、あるいは消費者物価に求めるか、あるいは生活水準に求めるか、あるいは在職公務員給与ベースに求めるか、またそういった全体のものを総まとめした一つの総合的な勘案等いろいろの考え方があるわけでございまして、これらの問題については種々議論のあるところでございます。問題は、共済年金スライドをする前にもっと最低生活的なものに直結した分野がある。たとえば生活保護のほうをむしろ先考えるべきではないかというような議論、さらにまた恩給についてもスライド制考えるべきではないか、ただ単に公的年金のみならず、そういった各般にわたるいろいろの問題のスライド制というものが当然問題になってくるわけでございまして、これをどのように取り扱うかということは、非常に技術的に、またいろいろの面からいってもむずかしい問題があり、現在まで解決を見ていないわけでございます。したがいまして、御案内のように厚生年金法あるいは国民年金法におきましてはああいった形の法案が、あれは国会修正になりましてもそういった形の法案になっているわけでございます。諸外国の例を見ましても自動調整的なスライドをやっているところもありますし、またそういってやってない西独というようなところもありますし、それぞれ各国の実情によってまた相違がございます。  そういったいろいろの問題はございますが、やはり一番端的に問題になりますのはこういった物価事情あるいは給与ベース生活水準で、かりに機械的なスライド制をとるにいたしましても、それに見合う財源調達が、はたして長期的にスライドすることによる財源調達が可能であるかどうか、その見通しはどうであるかというような問題にぶつかってくるわけでございまして、国の財政力あるいは組合員の保険負担の能力、そういった問題の長期的な見通しというようなことにも当然ぶつかってくるわけでございます。  そういった点を総合勘案いたしまして十分慎重に検討いたさなければならないわけでございますが、こういった問題は公的年金制度全般を通ずる問題でございますから、したがいまして、一昨年でございますか総理府の副長官を部長といたします公務員年金制度連絡協議会というものを総理府に設けまして、各省の担当局長から構成されますこの協議会でこういう問題につきまして検討しておる段階でございます。  以上でございます。
  34. 横山利秋

    横山委員 先日、厚生年金保険法の一部を改正する法律案によって本文のほうへ「国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、すみやかに改定措置が講ぜられなければならない」とし、また附帯決議で、「年金に対するスライド方式の確立については、その具体的方式を検討するため、審議会等により、なるべく速やかに結論を出す措置を講ずること。」ということになったわけでありますが、この年金額改定に関する修正並びに附帯決議について、政府は今後どのような措置をおとりになるのか。これを伺っておきたいと思います。
  35. 秋吉良雄

    秋吉説明員 厚生年金関係につきましては私所管外でございますから、責任あるお答えはできかねますが、公的年金共済年金につきましては、現在公務員年金制度連絡協議会が総理府にございます。これらの機関を活用いたしまして、今後鋭意検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  36. 横山利秋

    横山委員 この厚生年金と対応して、本法によるスライド方式におきましても同じような問題だと思いますから、私はぜひともこの物価の値上がりなり生活水準の向上なり現職組合員との給与に即応した年金額の引き上げが行なわれることが必要であり、そういうことを本来この法律は保障をしておると考えるものでありますから、この際ひとつ大久保さんなり大蔵政務次官スライド制についての真剣な御検討をお願いしたいし、この法案を通じて、全国で期待をしております諸君のためにもスライド制の実現についての努力を願いたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  37. 大久保武雄

    大久保政府委員 横山委員から経済情勢の変動に伴う恩給年金スライド制の問題についての御発言がございましたが、これは趣旨としては私は同感でございます。公務員、公共企業体職員で長年の間一定の規律のもとに営々として忠実なる職務を果たしてこられました方々が、老後において経済上の変動によって非常な生活の困窮を来たされるということは、これは国家ないし公共企業体といたしましてまことに申しわけないと私たちは痛感をいたす次第でございます。私どもといたしましては、先ほど申しましたような内閣のこれらの制度調査会その他あらゆる機会を通じまして、経済情勢の変動に応じてこれら忠実な公務員あるいは公共企業体職員の老後の生活が安定ができますようにあらゆる努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  38. 横山利秋

    横山委員 大蔵政務次官はやはり財源関係を念頭に置かれると思うのであります。しかし財源考えたならばこういうような法律の趣旨は実行は実際問題としてできない。それが優先して考えられる限りにおいては、どんな附帯決議やどんなに抽象的な政治家的なことを言いましても絵に描いたぼたもちであると思う。問題は、お互いそうでありますが、私どももまあ国会議員として長らくつとめたら年金がもらえるというようなことになりますその額が、いまの時点においてどのくらいの額であり、それがわれわれの生活にどういう影響をもたらすかということが判断の目じるしになるのであって、それが物価が上がりあるいは生活水準が変わり、そして現職人たちは自分がもらうべき額よりもはるかに高いということになればおもしろくないことは当然であり、本来年金の額をきめた際において物価とつり合ってきめたわけでありますから、このスライド制というやり方にはいまお話があるようにいろいろあるとは思いますが、原則としてスライド制を保障する、物価に見合った年金をきめたその時点における条件を保障するということは当然のことだと私は思うのでありますが、大蔵政務次官もあわせて御意見を伺いたいと思います。
  39. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 御説のとおりだと考えます。先ほど給与課長からもお答え申したとおり、常にそれらの点に対して心がけてはおるのでございますが、時期を見て研究を怠らず御趣旨に沿うようにつとめたいと思います。
  40. 横山利秋

    横山委員 その次は、共済組合年金額の引き上げがどうしても恩給法の改正におくれる。なるほど基盤は一緒であるから恩給が改正されて同時になるものもあり一年か二年おくれるものもあるという現状なのでありますけれども、しかしどうしても恩給法がまず最初に改正されなければ、共済組合年金の額の引き上げがあとでなければならないという理由は私は何にもないと思うのであります。したがいまして、あとで私どもとして附帯決議をお願いしておるわけでありますが、この法律が単独法としてあるにはあるだけの理由があるわけでありますから、この法律について根本的論議をかりにしましても意味がない。恩給法の中で議論しなければこの法律はとても根本法規をここで討論をやったって意味がないということでは、お互いに熱意を失うわけであります。本来そういうことでなくして本法には本法の改正的な見地あるいは本法を制定された趣旨というものがあるのでありますから、この年金額の引き上げというものが関連はあるけれども、恩給が改正されなければ改正されないのだという考え方は私は間違っておると思うのであります。将来は共済組合の自主性を考慮してこれはこれで改正をするということに独自な立場というものがなされるべきではないか、こう思いますが、これはどなたに御答弁していただけますか。
  41. 深草克巳

    深草政府委員 今回の改定でございますが、旧法年金が主でございまして、これは従来からも恩給改定と全く同様な措置をしてきた経過もございまして同じような取り扱いをしたわけでございますが、しかし新法年金につきましては仰せのように恩給とは全然別個な社会保険的な性格を持っておるわけでございますので、仰せのように恩給改定方法に追随することなく独自の改定をやるべきであるということにつきましては同感でございます。しかしながら旧法年金のみならず新法年金につきましても、現在におきましては大部分の機関が過去の恩給公務員機関の占める割合が非常に大きいわけでございまして、そういう意味におきまして恩給改定に追随したというとことばは悪いのでございますが、バランスをとるという意味におきまして同じような改正をしたわけでございまして、今後につきましてもかりに独自にやると申しましてもやはり他の公的年金制度とバランスを考えなければいかぬ。どっちが先になるかという問題がございましょうが、ほかの社会保険とのバランスを考えながら自主的な改定に向か  いたいというふうに考えております。
  42. 横山利秋

    横山委員 このバランスを考えながらということが、結果として恩給法の改正以前にこの法律の改正をするということは不可能である、事実上困難であるといことであるならば、これこれはもう問答無用、意味がない。そうでなくして少なくとも恩給法の改正と同時に、ないしは恩給法の改正が大体展望ができるからそれとの関連と見合うけれども、その改正以前に改正をするということに判断をしていられるならこれは納得できる。その点はいかがですか。
  43. 深草克巳

    深草政府委員 その点につきましては先ほども給与課長からお答えしたように内閣につくってございます年金制度連絡協議会で年金制度全般のことが検討されますので、その結論が出た暁におきましてはバランスの問題はございましょうが、方針が一つきまるわけでございますので、そのような方法で先ほど申しましたように自主的な改定ができるようになるというふうに考えております。
  44. 横山利秋

    横山委員 年金額改定につきまして、一体今後財源状況がどういうふうになるかにつきましては、ひとつ十分時間をもって質疑をしたいと思っておったわけでありますが、ちょっと時間がございませんので、ひとつあなたのほうから年金額改定に対して長期的な展望並びにそれによって不足する財源についてはどういうことが考えられるかという点についてのあらましを伺いたい。
  45. 深草克巳

    深草政府委員 仰せのような非常に長期の展望というものはまだ試算をいたしておりませんが、とりあえず今回の改定は三十六年度末の給与べースに改定するわけでございます。それが財源率にどういうふうに影響しますかと申しますと、千分の〇・一六でございます。かりに三十九年度末、つい去年の暮れのベースでやりますと、千分の〇・八〇というような財源率になるわけでございます。
  46. 横山利秋

    横山委員 ちょっと急な用事がありまして時間がございませんので、この問題については時間がかかりますから別の機会にいたしたいと思いますが、最後に短期給付についての医療費の増加に伴う組合財源の困窮並びに組合員の負担増加の現状でありますから、われわれとしてはこれが健全化並びに組合員の負担の緩和をはかるためにどうしても国庫負担の実現をすべきだと考えておりますが、政府側の見解を伺いたいと思います。
  47. 深草克巳

    深草政府委員 医療関係を中心とします短期納付につきましては、現在のところ労使折半という原則になっておりまして、三十七年に出されました社会保障制度の総合調整に関する基本方策についての答申という中でもいろいろ書いてございますが、「労使折半負担の原則をつらぬくべきであり、事業主の超過負担分は附加的な給付の財源として役立てればよいと考えられる。」というふうに書かれておるわけでございまして、この原則をどういうふうに変えていくかということにつきましては、財源の問題もございましょうし、特に労使折半のほかにやはり平年度のその年度のものをその年度で処置をするというような長期給付とは全然別個なたてまえで進んでおりますので、この法律のみにつきまして短期の何割かを国庫負担にするということにつきましては、にわかにそういう方向へ向かいたいというようなお答えは、ちょっとできかねるわけであります。
  48. 横山利秋

    横山委員 しかしながら他に例のないことはないわけでございますから、私はこの短期給付について国家公務員並びに三公社五現業の組合員諸君並びに財源状況から考えますと、どうしてもいまこれから国庫負担の導入をほからなければ健全な経営並びに短期給付の運営ははかられないと私は考えるわけでありますが、あなたはその点について必要がないとおっしゃるわけでありますか。
  49. 深草克巳

    深草政府委員 国庫負担がふえますと、これは労使折半がどういうふうになりますかわかりませんが、いずれにしましてもかりに労使折半を貫くとしましてそのほかに国庫負担がございますと、労使双方掛け金、負担金が少なくて済むということは仰せのとおりでございますが、そのかわりやはり国民全体としましては税金の負担がふえるということでございまして、まあその辺が、これはやはり社会保険の一種でございまして、労使が折半をして他のごやっかいにならないというのが一つの現時点における筋合いじゃないかと私なりに考えておるわけでございますが、これを国庫負担を導入してどういうふうな割合にする、そういった問題もございますので、今後の研究問題として残していただきたいというふうに考えております。
  50. 横山利秋

    横山委員 今後の研究問題として残してもらいたいということは、政務次官にお伺いしますけれども、私はこの短期給付についてはどうしてもそういう段階にある、そうしなければだめだと考えておるのでありますから、ここでこの問題について政府側として検討することをお約束願えるでしょうか。
  51. 大久保武雄

    大久保政府委員 横山委員の御意見を尊重いたしまして検討いたしたいと考えております。
  52. 横山利秋

    横山委員 それでは国庫負担の導入について検討をお約束されたと考えます。  最後に、この運営につきまして、最近この種の問題につきましては、それぞれ共済組合の運営につきましては、働いております組合員諸君、従業買諸君意見の反映ということが非常に必要であり、うまくやっておいていただけると思うのでありますが、とかくの問題が運営上なしとしないのであります。共済組合の運営につきましては、そこに働いておる諸君の労働組合の代表と十分な協議ないしは協議の結果における同窓、それらについて遺憾のないようにしてもらいたいと思うのでありますが、その点は今後におきましてお約束を願えるでありましょうか。
  53. 深草克巳

    深草政府委員 三公社共済組合には運営審議会というのがございまして、中立の人と労使とおのおの三名ずつで構成された審議会で重要事項は審議をいたしておるわけでございます。そのほか法律のたてまえとはなっておりませんが、こういった法律改正にあたりましては、公社当局あるいはわれわれから、あるいは公社当局を通じまして、労働組合のほうにもいろいろ意向を聞いているわけでございますから、私どもとしましてはわりあいに民主的にやっているつもりでございますが、仰せのような御意見もございますので、今後とも、これはやはり労使の問題そのものでございますので、十分組合員の意向を反映するように各公社を指導してまいりたいと思っております。
  54. 横山利秋

    横山委員 その他の関係のところの御意見も同じでございますか。いまの卸意見専売公社電電公社その地回意見でございますか。
  55. 半田剛

    半田政府委員 先ほど深草部長答弁したと同じでございます。
  56. 飯森実

    飯森説明員 私のほうも同じでございます。
  57. 吉田重延

    吉田委員長 しばらく速記をやめてください。   〔速記中止〕
  58. 吉田重延

    吉田委員長 速記を始めて。     —————————————
  59. 吉田重延

    吉田委員長 国有財産に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。平林剛君。
  60. 平林剛

    ○平林委員 私は、三たび国有畦畔の問題について政府の見解をただしてまいりたいと思うのであります。特に私が問題にいたしておりますのは、昭和三十五年の十月二十八日付の関東財務局長が発した通牒であります。この通牒によりますと、「二線引畦畔地の取り扱いは、原則として大蔵省所管の普通財産に属するものであるから了知のうえ処理の適正に遺憾のないよう願いたい。」という通牒が発せられておりまして、これが一つの問題であります。もう一つは、同じく昭和三十五年八月二十五日、関東財務局長の名において「二線引の畦畔地について」こういう通牒を発しております。「二線引の畦畔地を隣接地主が地目変換に便乗し、自己所有の畦畔地として地方行政庁の証明を取付け、公図抹消を行っている事例が各所に見受けられ、特に三多摩地区において著しいものがあり国有財産管理上まことに遺憾とするところであります。ついては、これら二線引畦畔は国有畦畔として大蔵省所管の普通財産に属するものであるからこれらの申請書類は受け付けないよう特段の御配意御願いいたします。」こういう二つの通牒が発せられておるのでありまして、これらの沿革あるいはその字句の意味するところなどにつきまして、かなり詳細な文書をそれぞれ財務部長やあるいは法務局に対しまして発しておるのであります。この通牒ほど私は各方面に無用の混乱と影響を与えているものはないと思うのでありまして、そこで私はこれを三度国会で取り上げておるわけであります。そして、この通牒に書かれております二線引き畦畔ということばもまことに不可解な用語でありまして、こういうことばは明治初年の地租改正以来あらわれておらないことばでございまして、大蔵省の新造語であります。こういう不可解な新造語によりまして、国民は大きな迷惑を受けておるわけであります。たとえば、ある善良な農民が農地を宅地に地目変換をして、さてうちを、建てようといたしましても、公図に書かれております政府の称する二線引き畦畔があらわれてまいりまして、なかなか建築の許可をすることはできない、これは国のものだからということで、払い下げを申請するその手続はなかなか手間がかかって、そのうちにまた地価も上がって大きな損害を受ける、こういう事例がかなり多いのであります。また、土地利用の高度化によりまして、耕地整理や区画整理の事業が各地に進められておることは御承知のとおりであります。この耕地整理や区画整理が進められるに従って、必然的に二線引き畦畔の取り扱いが問題になるのでありまして、この間も青森県におきまして、耕作整理を行ない、十アールごとの申請をいたしますと、畦畔が問題となりまして、実際に十アール登記が認められない。一部は国有畦畔であるということで自分の土地を自分でお金を出して買うというような事態などがございまして、表にあらわれておるのであります。また私の選挙区である神奈川県におきましても第一生命本社が約二十三万坪の土地を買い入れましたところが、そのうち一割は国有畦畔であるというところから、その取り扱いがいまだに未解決であります。同時に、東名高速道路が現在建設中でございますが、この東名高速道路の用地の買収をめぐりまして、国有畦畔として政府が自分のものであると主張するならば、われわれはその土地を売らない、こういうことで東名高速道路四千名の農民は、この問題の解決をはからない限り道路建設について協力しない、こういう態度もとっておるのでございまして、そういう意味では、政府がすみやかにこの問題の解決をはかることがきわめて大事なことだと私は考えておるのであります。  そこで、私の所論を初めに申し上げますと、私の今日までこの問題について研究した結論から言いますと、昭和三十五年に発せられたこの通牒を政府は撤回いたしまして、新しい見解を徹底するとともに、この畦畔問題に関する政府の見解を改められて、畦畔は原則として民有地であるということを明らかにしてもらいたいと思うのでございます。私は、国有地ではなくて原則として民有地だということを主張して、今日まで二回にわたって論争を続けてまいったのでありますが、これはさらに問題点として後ほど詰めてまいりますから、大蔵大臣もひとつよく私が三度取り上げた趣旨というものを理解していただきたいと思うのであります。  第二は、大体土地台帳の付図に、すなわち公図に、いわゆる二線引き畦畔が残っていることが間違いなのであります。こういう不可解なるものが残っておることが、今日、先ほど指摘したような各方面にあらわれていろいろな混乱を起こすのでありまして、私はこの土地台帳付図を即刻改める必要があるという結論を持っておるのであります。私の研究した結果は、土地台帳にこうした二線引き畦畔が残っていること自体が間違いである、あるいは実在しないものがある、そういうものが残っていることは問題であるから、こうした公図は即刻訂正をする必要があるという見解を私は最終的結論として持っておるのであります。これは前二回にわたって論争してまいりましたから、私の主張点あるいは論拠は政府においてもおわかりになっておると思うのであります。この問題はきょうはひとつできるだけ結論を得たいと思いまして大臣にもおいでを願ったわけであります。しかし、その本論に入る前に、私はこの際政府にお尋ねをいたします。  私がこの問題を議論いたしまして二回にわたって論争を続けてまいりました間に、昭和四十年四月一日、大蔵省国税局長江守さんは「宅地等造成地内に所在する旧里道、畦畔等の処理について」という通牒を発せられました。私は、私と政府との間の論争が未解決の間に、昭和四十年四月一日付、ただいま申し上げました名による通牒を何ゆえに発せられたか、この通達はどういう理由で発せられたか、その内容はどういうものであるかということについて御説明をいただきたいと思うのであります。
  61. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 まず、いわゆる青地が国有地であるかどうかという根本的な議論でございますが、この点はもう二度にわたりまして平林委員とここでいろいろお話をいたしました。私どもの結論は、要するに土地台帳に載っていない無番地の土地は国有と認めざるを得ないということでございます。もちろんこれは、畦畔地がすべて国有地であるとか、あるいは公図に載っておるところのいわゆる二線引きとか青地とかいう符牒のついておりますところがすべて国有地であるということを主張しているのではございません。要するにこういったいわゆる畦畔地の中には昔からの土地制度の沿革に基づきまして国有地というものがあるということの考えは私どもとしては依然として変わっておりません。  こういうことを前提といたしまして、いまお話しのとおり、宅地を造成するとかあるいは道路をつくりますとかいうような場合に、この青地の問題が介在をいたしましてなかなか処理は複雑であり、困難であり、時もかかるというようなことが現状でございますので、この際先ほど申しましたようなことを前提としつつ、これらの仕事を早くできるようにという意味でこういった通牒を出したのでございます。廃止されました農道の引き継ぎあるいはまた宅地造成をされました中に介在をしておるところの国有地の坪数計算というようなものが、従来なかなかめんどうなことで時間がかかりましたのをできるだけ早くできるようにという趣旨で出したのがこの通牒でございます。
  62. 平林剛

    ○平林委員 畦畔が国有地であるか民有地であるかという論争についてはまだ私は最終結論がついていない。むしろ私の指摘に対して今日まで政府当局は十分なお答えをしておらない。それにもかかわらず、その論争——しかもこれは私が当委員会において論争している問題であります。大蔵委員長も、重要な問題である、この問題については特に時間をとって審査をしようという段階におきまして、四月一日に発せられた通牒は、あたかもすでにその結論はついてしまったかのごとき印象、結果になるのではないかと私は憂えるのであります。そこで、ただいま、発せられた通牒の字句をいろいろ拾ってみますと、この中に「畦畔」ということばが出ていますが、これは、いまあなたも、畦畔がすべて国有ではないあるいは青地をすべて国有とは言わない、こうおっしゃったように、ここに掲げられておる畦畔につきましても、国有畦畔として処理されたもの、それを言うのですね。民有か国有か論争のある点までも含めて国有であると片づけてしまおうという御意思じゃないのですね。
  63. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 決してそういうつもりではございませんで、国有地である畦畔というものを対象にしてこの通牒を出したのでございます。ただ具体的にケース・バイ・ケースにおいて何が国有地である畦畔かということにつきましては、先日来平林先生といろいろお話ししておりますとおり、いろいろ問題があると思います。でございますが、国有地である畦畔があるということもまた事実でございます。そういった事実上ある国有地である畦畔というものを対象にいたしましてこの通牒を出したのでございまして、従来よりも解釈を変える、あるいは解釈を拡張いたしまして、さらに国有地である畦畔はこういうものである、こういうことをこれによって何かきめようというような通牒ではございません。
  64. 平林剛

    ○平林委員 私はその点ははっきり確認をしておきたいと思うのであります。同時にこの四月一日付の通牒によりますと、「旧里道、畦畔等について早急に処理を要するものが増大しており、その処理を迅速化する必要性が痛感されるので、この種の事務処理の簡素化、合理化を図るため、下記により特例処理を行なうこととしたので通知する。」こういうことでございます。私に言わせると、政府も大資本家に対しては非常にすみやかに処理をする。しかし個々の小さな、力の弱い個人の問題については、やれ訴訟だ、やれ手続がどうだというやかましいことを言う反面、少なくともすでに工場の敷地とか、あるいはその他相当の大どころの宅地造成などの便宜のためには、特例処理をやるというような傾向がこの通牒にはあらわれているような気がしてならぬのであります。私と政府の論争が尽きない前にこれを出さなければならない、早急に処理をしなければならないというような現状があったのでございましょうか。その実情をお伺いいたしたい。
  65. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 問題が二つございまして、一つは争いのある畦畔につきまして、これが民有であるか国有であるかということをきめるということでございます。これは私どもは、先日来のいろいろのお話し合いに基づきまして、今後もさらに検討を続けて明確にしてまいりたいと思っておりますが、民有であると主張される畦畔、国は国有であると主張する、この問題をどう処理するかという問題が一つございます。この問題は、私どもの行政的な権限をもって国有であるとわれわれの思っておりますところの国有である畦畔を、いろいろな、たとえば取得時効などもその中に入ると思いますが、これは民有であると主張されたときに、行政的権限だけでこれは国有地でないといって処理する権限は私どもにはないと思っております。この点はもっとさらに明確に法的な手続を経てなされるべき問題であって、これは私どもが早急に何らかの通牒をもって処理し得る問題ではないというふうに考えております。この問題はしたがって今後相当の研究をし、かつまた相当明確な法的措置を必要とする。それからもう一つの問題は、先日来お話しになっておりますところの宅地造成あるいは道路をつくる、あるいは工場をつくるという中に介在しておりますところの、里道とか畦畔というものをどう処理するかという問題でございます。この問題はやはりこの通牒に書いてございますように、能率的に早くやるという必要がございますので、この通牒を出したのでございます。したがいまして先日来平林委員といろいろ論争をされております最も重要なポイントにつきましての通牒ではないのでございます。その点は御了承いただきたいと思います。
  66. 平林剛

    ○平林委員 一応その程度のやり取りにしておきまして、問題を残しておきたいと思います。ただ大蔵大臣、私この際お伺いしたいんですが、政府の基本的な考え方の中に、何か国有財産を払い下げることによりまして財源を確保しようとするような積極的な御意思があるのではないかという気がしてならないのであります。つまり大蔵大臣は歴代何回も大蔵大臣をおやりになり、財源不足の苦しさをひしひしと味わってこられたと思うのであります。そこでだんだんにその財源の苦しさにあれして、いよいよ国有財産の払い下げに目をつけてきたのではないかというような感じがいたしまして、ただいま私が指摘いたしましたような通牒などもその一環ではないだろうか、もしそうだとすると、あまりにもけちくさい考え方でないかという気がしてならないわけであります。しかしここで論争してまいりました明治初期以来の地租改正の歴史を見ますと、時の大蔵大臣は、しばしば地租改正の際にこの畦畔なども非常に政治的に取り扱いながら、いわゆる地租の増徴をはかってきた歴史が残っておるわけであります。そして私あとで述べますけれども、明治年間において、二回にわたって地租増徴をはかるために、あるときは国有地をふやすような努力をしたり、あるいは通牒を発したりいたしまして、財源確保をはかってきたということが歴史的にありありとするのであります。昭和になってまさか田中さんがこんなことをおやりになるとは思わないのでありますけれども、何かそうしたことが出ておるのではないかという感じを受けますが、大蔵大臣の御見解を承っておきます。
  67. 田中角榮

    田中国務大臣 私は財源をつくるために国有地を売り払うというような考えは全くございません。これはそうではなく、特に日本の公共事業などをやるときに、安いものを売っては高いものを買うというので、代替地式に国有財産はとっておきたい、私はこういう考え方を前提にしておりますので、けちくさく財源として売り払うという考えはございません。それから国有財産の問題の中で、ただ非常に長いこと紛争になっておって解決がつかないというようなものは早く片づけなさい、こういうことをいつまでもたなざらしにしておくことはいけないというので、片づけたりしたものはございますが、国有財産財源のために売り払う、こういう考え方は全くいままで私考えたことはない。これは財源として一部入っておることは事実でございますが、財源を確保するために、国有財産の売り払いを促進するということはありません。
  68. 平林剛

    ○平林委員 そんなところにまで落ちてしまったのでは国家もたいへんでございますから……。善良な国民の畦畔まで取り上げて、それを財源にしていく。しかしこれは全国的には大きいのです。一千万坪以上にわたるものでありますから、政府が計画的にそういうことをやろうとすれば、相当の財源になることは間違いないのであります。それから四月一日に発せられた通牒などについても、後ほど私は実態を調査いたしまして、それが大体どのくらいの額になったかを確めてまいりたいと思いますが、かなり膨大なものになるはずであります。そういうことを考えまして、どうも政府の方針にそんなことが入っているのではないだろうかということを感じましたので、大臣にも、ひとつあまりけちくさいお考えで国の財政のやりくりをおやりにならないように申し上げておきたいと思うのであります。  そこで初めに戻りますが、江守さん、あなたと私は従来の大蔵省の通牒を改める必要がある点につきまして、きょうは結論を出してもらいたいと思うのであります。というのは、いまもあなたがおっしゃったように、青地であってもすべてが国有とは言わない、畦畔のすべてが国有であるとは言わない、こういうお話でありました。しかし従来の通牒はそういうふうに書いてありませんね。従来の通牒におきましては、二線引き畦畔地の取り扱いは、原則として大蔵省所管の普通財産に属するものである、と明確に書いてございますね。それからまた二線引き畦畔に便乗して、自己所有の畦畔地として、地方行政庁の証明を取りつけ、公図の抹消をしてもこれからは受け付けるな、これら二線引き畦畔は、国有畦畔として大蔵省所管の普通財産に属するものであるから受け付けるな、こういうふうにすべてを国有地であると通牒を発しておりますね。またあなたのほうの所管から発せられたこれらの国有畦畔につきましては、「思うに従来はざま地青地土手代等と称呼されているもので、土地台帳附図においてははざま地は実線で帯状に囲まれており、青地は緑色、土手代は薄黒色で表示されているもので、いずれも無番地となっている。一般的について現地の実態は傾斜地である。これらは大蔵省所管の普通財産に属するものである。又一般に農地の間に存在し、一般公衆の利用に供されている農道又は畦畔は公共用財産に属するものである。」こういうふうに明確に国有地である、公共用普通財産である、こういう通牒を発せられていることは間違いないと思うのであります。したがって、大蔵委員会で私とあなたの間で論争した際に、あなたがお答えになりました点とも違っておることは間違いないと思うのであります。もしそうだとするならば、私は少なくともその点について通牒を改める必要があると思うのですが、いかがですか。
  69. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 いまいろいろお読みになりましたのは、通牒の中のいろいろのいわば説明的な点をお読みになったのではないかと思いますが、いろいろことばのやりとりの違いはございますが、要するに、ここで申しておりますことは、原則として土地台帳に載っていないところのいわゆる無番地の土地は国有の畦畔であるということを申しておるのでございます。ただそれが具体的に個々の場合に適用いたします際にはたしてどれがどれだというようなことは実態調査もしてきめていかなければならない問題でございます。したがいまして、この通牒そのものをこの際あれは誤りであるといって訂正する必要は、私はもうこの際になってはないのであって、むしろこの通牒は通牒にいたしておきまして、過日以来ここでいろいろお話をいたしまして、明確になりました点をさらに明確にいたしまして、新たな通牒を出すということにすることによってこの事態を明確にし、さらに今後の処理を促進できるというふうに考えておるの、でございます。
  70. 平林剛

    ○平林委員 私は非常に大蔵省の頭は固いと思うのであります。そんなにはっきりしていることならばあらためて通牒をお出しになって、前の誤りを是正することにより、国民に無用の混乱や心配をなくしていくことがより大事なことだ、私は田中大蔵大臣ならそうお答えになるだろうと思うのであります。ただ、私この際申し上げておきますが、古い資料を調べてみたのであります。あなたは原則として国有地であるという趣旨に基づいて通牒を発せられましたが、私は神奈川県を例にとりまして、昔の武蔵、相模両国でございますが、地租改正により明治十三年における官民有地の区分表というものを発見したわけであります。それによりますと、神奈川県におきましては、民有のいわゆる青地は二千四百三十三町歩あるわけであります。官有のいわゆる青地は百七十八町歩でございまして、明治十三年の官有地であるか民有地であるかの区分表というものは、当時におきましては税金の対象でございますから、いまのようにのんきなことを言ってないのであります。へたすると農民一揆が起きるのであります。ですからその当時の通牒というものは一言一句きわめて慎重に通達が出されているのであります。そして少なくとも官庁側が発した字句によって混乱が起きないような配慮がされているのであります。そういうときにつくられた、いわゆる官民有地区分表によりますと、二千四百三十三対百七十八であります。率に直しましてどのくらいの割合であるかは大体おわかりだと思います。つまりこれは少なくとも青地あるいは畦畔等は民有地が多かった、原則として民有地であったということを示しておる資料ではないでしょうか。私はそれをいつの問にか原則として官有地であるかのような通牒を発せられることは根本的に誤りがあると考えまして、あなたのほうのお考えを直すのが必要でないかと言っておるのであります。この点はいかがでしょうか。
  71. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 全国的に見ましていわゆる畦畔というもののうち民有地の占める部分が非常に多いということは、私も全くそのとおりだと思います。私が言っておりますのは、畦畔全体が原則として国有地であるということを申しておるのではないのでございまして、いわゆる二線引き畦畔ということばでわれわれが申しておりますところの、公図の上におきましていわゆる青地あるいは二線引きという表示のもとに示されておる畦畔が、原則として国有地であるということを申しておるわけであります。したがって全国の畦畔のうち非常に多くの部分が民有の畦畔である、比較的少ない部分が、公図上青地あるいは二線引きで表示されておる畦畔である、しかも公図上二線引きあるいは青地として表示されておる畦畔の中にも、その後民有になったというような畦畔もあるということを申しておるわけでございまして、したがいまして原則として二線引きの畦畔地は国有地であるということを申しておるのであります。いまおっしゃいましたように、民有の畦畔のほうがはるかに多いというようなことを、決して私どもは否定しておるわけではございません。
  72. 平林剛

    ○平林委員 あなたずいぶん態度を豹変したですね。私は、明治十三年の古い資料から推測をして、原則として畦畔は民有地である、こういうことを主張しておるわけです。あなたもその点は肯定をされたようですね。  大正四年七月十九日、会計検査院計算証明規程第百九条によりまして、「官有財産ヲ管理スル官吏ハ官有財産現在調書及同増減調書ヲ調製シ其年十二月限リ之ヲ提出スヘシ。官有財産現在調書及同増減ノ時期及記載事項二付テハ、各官有財産管理規則所定ノ官有財産目録及異動報告書ノ例二依ル」昔はこうした問題についてはかなり厳格でございまして、私は大正十年の神奈川県の統計書も調べてみましたら、同じように原則として民有地が多いのでありまして、官有地はわずかでございます。こういうことから考えまして、私は、きょうはあなたが原則として畦畔は民有地であるとおっしゃった点は、資料の前にはどなたも争う余地はないのでありまして、そのとおりだと思う。それは了承します。ただし、あとで言われたことがいけません。あなたは公図に残されておるところのいわゆる二線引き畦畔というものは官有地である、こうおっしゃっている。私は、残っているとが間違いなんだ、こう言っているのですよ。いいですか。土地台帳の付図にいわゆる二線引き畦畔として抹消されずに残っていること自体が間違いである。ですから、その間違いを根拠にしていろいろあれこれ推測するから無用の混乱が起きるし、間違いに残っている付図のいわゆる二線引き畦畔を頭に描いてあれこれやるから、国民の生活問題にちょっかいをかける結果になるのであります。私はその点の認識がまだあなたのほうに足りないのではないかと思うのでありますけれども、法務局おいででしょうか。
  73. 吉田重延

    吉田委員長 見えております。
  74. 平林剛

    ○平林委員 では、法務局にちょっとお尋ねをいたします。  私は、土地台帳の付図にあるところのいわゆる二線引き畦畔ということは、本来公図上から抹消すべきものだと考えておるのであります。  それからもう一つは、残っていることが間違いなんであります。それは従来の取り扱いが間違っていたからでありまして、今日その混乱が起き、あるいは不用の政府国有財産のようなものが残ってしまったという結果になるのであります。本来民有地であった、それをいろいろな登記上の問題から残されてきておるのではないかと歴史的に見まして感ずるのでありますけれども、法務局にちょっとお尋ねをいたします。大蔵省が法務局に対して「二線引(無地番)の畦畔地について」という、先ほど私が読み上げた通牒を発しまして、あなたのほうは受け取ったはずであります。そうして受け取った以上は大蔵省がそう言っておるのだから法務局の末端の支局長や出張所長に通牒を発せられたはずであります。これは昭和三十五年八月二十一日東京法務局の民事行政部長が支局長、出張所長に対しまして通牒を発せられておるのを私は入手しています。この通牒を読むと、大蔵省のようなことは言わないのですね。あなたのほうはやっぱり専門家ですから、二線引(無地番)なんていうあやしげなことばは使わないのであります。あなたのほうは「土地台帳附属地図土地番未設定の土地について、」という表現をしているわけです。やっぱり専門家ですよ。専門家だからこういうことばを使うのです。大蔵省はその経緯がよくおわかりにならないから、二線引き畦畔なんていうことばを使って世に混乱を与えるのです。専門家は違います。やっぱり「土地台帳附属地図土地番未設定の土地について、」ということでその取り扱い方をやる。どうしてこういうふうにお考えになりましたか、ひとつ御説明をいただきたいのです。
  75. 川島一郎

    ○川島説明員 ただいま仰せのように、昭和三十五年の八月に関東財務局長から東京法務局長に二線引き畦畔地の取り扱いにつきまして依頼文書が出ておりまして、この依頼に基づきまして東京法務局の民事行政部長がこの管内の支局、出張所に対しまして土地台帳附属地図の訂正申告の取り扱いに関する通達を出しております。この通達を出しました趣旨は、土地台帳の附属地図にただいま問題になっております青地、二線引き畦畔地のような地番の書き入れのない区画の土地がございます。この土地を従来の地図が間違いであるという理由で、その付近の土地の所有者がこれは自分の土地の一部であるからそのように地図を訂正してほしいと、こういう申告がありました場合に、登記所ではその申告に基づいて訂正の処理をしておったわけでございます。ただ、この訂正の処理をするにつきまして、従来は所有者であると申し出た者の申告書のほかに近隣の土地所有者に異議がないという承諾書、それからその市町村長の証明書というようなものをつけてくれば、ただいま申しましたような訂正の措置を登記所はとっていたわけでございます。関東財務局長からこの土地については問題がある、これは国有地であるから簡単に地図訂正を認めないようにしてほしい、こういう趣旨の書面があったわけでございますから、そういう国のほうからの異議があり、登記所の取り扱いがもう少し慎重にする必要があるというふうに感じたものでございますので、東京法務局では、こういう場合には国有地の所管庁である財務局の証明がない限り訂正の措置はしないという取り扱いに変えたわけでございます。
  76. 平林剛

    ○平林委員 それはわかっていますよ。大蔵省のほうから言われて、だからそういう意味では法務局もっとしっかりしてもらわなきゃ困るのですよ。大蔵省が言ったからそういうふうに言わなければだめだという考え方が間違いだ。私はもっと自主性を法務局は持ってこの沿革を大蔵省に説明してやればいいと考えておるわけであります。あなたはどうなんですか。畦畔のような場合、いわゆる二線引き畦畔、無地番があたりまえなんじゃないですか、私はあたりまえだと思うのですよ。無地番だから国有だというけれども、私は無地番があたりまえだと思っている。すなわちその本地が、田や畑が民有地であれば、それに付随する畦畔は民有地なんですよ。道路だとか河川、これは国有です。それに付随する畦畔は国有であっていいでしょう。しかし田と田の間にあるところのあぜ道が独立して存在することはあり得ないのです。その田や畑の枢要の地、必要な土地、こういうことで本地が民有であれば、その畦畔は民有地であるというのが常識なんです。私はしばしばそれを大蔵省に申し上げておるわけであります。そうしてたとえば本地に地番がついておれば、畦畔にはつかないのですよ。畦畔にはつかないのがあたりまえなんです。あなたはどなたのお宅でも行ってごらんなさい。玄関には表札は書いてあるけれども、お勝手には書いてありませんよ。しかしそのお勝手も玄関に書いてあるところの表札の所有者に変わりはないのです。畦畔というものが独立して存在するものでないということがおわかりになれば、私はそれは自明の理だと思うのです。ですから、本来は公図上に残っていることが間違い。ところがいろいろな売買や地目変更というのは土地台帳に書いてあることを中心に行なわれてしまいますから、それだけ残っちまうのですね。残っちまうというと、それは国有財産だといっていまみんなふところに入れているのが国家なんです。私はそういう意味からいきますと、畦畔は附属地図土地番がないのがあたりまえである、こう思うのですけれども、あなたはその実際の担当者としてどういう認識をお持ちでしょうか。
  77. 川島一郎

    ○川島説明員 普通の農地の畦畔でございますと、土地台帳の附属地図の上では本地の中に組み入れてございまして、そうして隣接の土地との間には一本の境界線しか引いていないのが普通でございます。いまここで問題とされております二線引き畦畔地というのは、おそらく台帳上二本の線で引いてありまして、二つの土地の間に間があいてある、その土地が地番がないために、だれの所属かわからない、こういう土地をさすものと考えられるのでございますが、御承知のように土地台帳の附属地図というのは明治時代につくられた非常に古い作製年代のものが多いわけでございまして、必ずしも正確でないものがございます。  それからなぜその地図を作製した当時にそういう土地ができたのかということも、いまとなってははっきりした資料でつかみにくいというのが現状ではないかと考えます。そこでそれが誤りである場合には、所有者の申告をまって処理をするということにいたしておるわけでございますが、これを一方的に誤りであるということで処理をいたしますと、ほかのものに対する関係で、さらにその部分についての所有権が争われておりますような場合には、やはり一方的に登記所で処置をするということが適当でありませんので、そういう処置はしないことにいたしておるわけであります。
  78. 平林剛

    ○平林委員 大蔵大臣、いまお聞きのとおりの議論のやりとりであります。ところが農林省の農地局管理課、きょうお見えになっておりますか。
  79. 吉田重延

    吉田委員長 農地局長見えております。
  80. 平林剛

    ○平林委員 あなたのほうの見解を少しお話しいただきたいと思います。私の得ておる資料によりますと、農林省農地局管理課の見解はこういうふうになっています。畦畔は田畑に付従するもので、民有が原則、国有畦畔というものは原則としてあり得ないものだ、公図上の二線引きについても、公図作成者、地主の主張、地元関係者の沿革的説明を徴して、ケース・バイ・ケースで処理すべきもの。したがって、二線引きの中には、無籍地、農道、私有畦畔が含まれていると思う。かりに脱落無籍地であったものでも、農民が十年ないし二十年以上畦畔として所有しておれば、時効取得による所有権を主張できる、こういうのが私の承知しております農林省の農地局管理課の見解でございますけれども、ただいまのところ、どういう御見解をお持ちでしょうか。
  81. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 まず初めに、畦畔の問題でございますが、統計調査部で調査をしております日本国におきます畦畔は、二十三万町歩ございます。それで先般来本委員会で、青地の問題が非常に問題になっておりますが、一千万坪というお活が出ておりますが、これは町歩に直しますと、三千町歩でございますから、二十三万対三千、物理的な畦畔が圧倒的に民有地であるということが一つ、それからこの問題に関しまして、農林省管理課のお名前が出ましたが、私のほうで調べましたところ、正式に見解を表明したことは過去においてございません。と申しますのは、先ほど来いろいろなお話のございましたように、過去におきましては、証明がスムーズに行なわれておりまして、あまり問題になっておりません。ごく最近に至りまして、転用の際、区画整理の際に問題になりました。そこでいまの段階でどう考えるかという問題でございますが、私どもの考えといたしましては、物理的にものを考えても、この問題は解決しない、かように存じております。と申しますのは、明治以来民有のものでないものは国有だという前提を国はとってきておるわけであります。そのとった結果が、公図の上で線が引かれておるわけであります。したがって、この問題は、その公図上の空閑地といいますか、無番地、無籍地をどう解消するかという問題として考えるべきであろう。その際に一応一義的に国有と考えるが、民有が保証されるか、あるいは取得時効が成り立つ場合は、民有地について、国有を主張しないということは大蔵省が本委員会で前々から主張しておるところでございます。したがって、私どもといたしましては、地図の上にございます無籍地、無番地を、かりに一切国が権利放棄をしろという御主張であれば別といたしまして、そういうものがございます際に、これをいかにトラブルなく解消するかという方法におきまして、大蔵省とも事務的に相談をいたしまして、できるだけ関係者の便宜をはかる形におきまして解決すべき問題ではないか、かように私どもとしては考えております。
  82. 平林剛

    ○平林委員 私は圧倒的に民有地が多くて、これは将来大蔵省の言うように、かりに公図上は無地番でございましても、実際に当たってみますと、その農民の所有する土地であるという場合が、私はまたかなり圧倒的に多いんじゃないかと思うのであります。そういう場合に、一々訴訟をかけておやりなさいということをやっておりましたら、これはなかなかたいへんなことである。そこで私は、関係のある農林省とか、あるいは建設省とかいうところと至急に相談し、政府の見解を統一されまして、何らか適切な措置を講ずる必要があるのではないかと思うのでございますけれども、その点大臣の御見解を承りたいと思います。
  83. 田中角榮

    田中国務大臣 分けてお話を申し上げたいと思います、一つはあなたが畦畔の大体は民有地であるということでございますが、そのとおりです。畦畔の大体は。というのは、相対的なものの中に大体は民有地であるということであって、この土地台帳にない無番地のもの、公図にはありますが、土地台帳にはない、これはこの中の大体が民有地であるということとは違いますから、これはひとつ分けて理解いただきたいと思います。そうしてこの公図の上で二線引きになっているとか、仏が塗ってあるとか、そういうことは別にいたしまして、土地台帳に載っていない無番地のところは、これは国有地だというふうに考えるのが実際は正しいと思うのです。私は先ほど農地局長も言われましたが、民有地でないものは国有地であるという観念をずっととっておりますから、これは当然国有地であるという認識をあなたもそこではっきりつけられたほうがいいと思う。しかし、これは現実的に、さて次の段階においては時効問題はどうなるかという問題は確かにあります。二十年以上もたっておりますから。時効問題はどうなるか。これは法律上は民有地であるという証拠のないものは国有地であるというふうに認定をする以外にはないわけでございます。しかしこれは実際二十年以上ですから、一体時効が完成しておらぬのか、時効が完成しておらぬというようなケースのものに対しては、これを処分するためにどうするかということに対しまして、単行法でもつくれば、その事情によっては無償でこれを渡すことができるとか、非常に安い価格でやることができる。いまの国有財産法の規定と競合しないようなそういう措置をすれば、一つずつ裁判するというような、理屈では非常に筋は通っておるが現実に合わないというものとは区別をして処理できる、法律的な処理ができる、こういうふうに分けて考えていただかないと、いわゆる公図、土地台帳にない、無番地のものでも農民のものだ。それは昔は農民のものだったとも私は思います。どうせあぜ道はあまり収穫はないから税の対象からもはずせ、こういうことは、国有地に移した経緯の中にはたくさん歴史上ありますから、そうだと思いますが、いまそれを証すべき何ものもないのですから、ですから立証できないものは国有地である。現実的にこれを農地所有者に返すか、売り渡すか、名義を変えるかということは、いまよりももっと合理的な方法考えるということで解決すべきだ、こう思います。
  84. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 いま大臣の言われたことは大体においていいのですが、この問題について、私も法律を少し知っておりますから研究したところを、いままでのあなたのをまとめて申し上げてみたいと思います。  いまそこで言われたように、官民有地の区分をしましたね。そのときに民有地というものはきまった。民有地がきまればそれに税金をかけて、しこうして、それに地券を渡しました。その前だったか、地券が渡っておる。地券を持っておるものは、地券でおれのものであるということの立証ができるわけでありました。それからだんだん調べていってずさんなところがあったものだから、今度は公図ができたわけであります。公図ができてさらにまた進んで現在は土地台帳ができておる。それだから地券を持っておった、それから土地台帳に載っておった、公図に載っておった、これならもう問題はないのです。その人の民有地である。そうでないもので、しかも先ほどから言うのは、無番地として登記のないものです。登記のないものは一応民有地にあらず、民有地にあらざれば国有地なり、こう認定する以外にない、こういうことなのです。何もかもそう全部二線引きだから国有地である、青色だから国有地である、そういうのじゃありません。二線引きのうちにも有番地、登記のあるものがあればこれは問題ございません。その他台帳をつくるときに主帳して、そのように中に入れておればこれも問題はなかったが、公図にも入っておらぬ、土地台帳にもない、登記もしてない、それならば一応国有地と見るほかない、こういうことが、いま先ほどから出ておる議論の根本でございますから、そこでいまおっしゃったように、それならば昔から、おれが占有しておったのをどうするのだ、おれがつくっておるのをどうするのだ、この問題は、それはまた別でございまして、それはそう主張する人があって、それが立証できればよろしいと思います。よろしいですが、これはこの間も議論したのですが、どうも一体そういうことを大蔵省に、これはお前のものであるということを認定する権限があるかどうかという点を考えてみると、問題だと思う。たとえば先ほどあなたがおっしゃったように、二線引きの畦畔というものは両方に民有地があるのだからその問に国有地のあるわけがないじゃないかとおっしゃるが、右のものと左のものと同一人だとまた楽なんですが、右はAという者が持っておって左はBという者が持っておる。その間の二線引きを二人がおれのものだ、おれのものだと争ったところが、民有地であるかもしれないがAのものであるか、Bのものであるか認定するわけにいきません。それらのことから考えれば、立証できれば民有地として認めていいと思いますが、それを大蔵省にその権限があるかどうか、これが問題だと思う。  もう一つの大きな問題は、いまたとえばAの申請に基づきまして、この二線引きをAのものであるとかりに認定して登記させたとすると、隣のBはいやそれは違う、それはおれのものだった、こう言って主張されたときに大蔵省はそれに対して対抗できるかどうか。あべこべに損害賠償でも請求されるととんだ目にあうから、この点はいま少し何か考えてみなければならないじゃないか、こういう結論を出しておるわけです。
  85. 平林剛

    ○平林委員 大臣並びに政務次官のお答え、部分的には私了承する点もございます。特に大蔵大臣が言われた後段の点は漸次その方向考えていくべきだと思うのでありまして、その点は同感でありますが、ただ私はまだ畦畔は民有地であるという主張は絶対に捨てません。これは確信を持って捨てません。同時に、政務次官が言われましたが、そういう民有地と民有地の間にある畦畔をどういうふうにするかということは、明治の初期からずっと地租改正以来の歴史にはそういうことができているのです。そうして慣行というのができているのです。最近も建設省はこういう通牒を出しておる。「畦畔の両側の土地に高低差のない場合、両側の土地の所有者が同一でないときは畦畔の中心線をもって両側の土地の境界線として取り扱うべきである。以上いずれの場合にも関係者間の特約または地方の慣習があればこれに従って所有権の帰属を決すべきである。」こういうふうにあったり、あるいは畦畔があれば高いほうのものに帰属するとかいう昔からの慣行が歴史的にできておるのです。ですからそういう点では争いが少ないのであります。ですから私はこれを処理するときには処理する意思がありさえすれば、従来の歴史に基づいておやりになればできることである、こう申し上げておきたいのです。  最後に、東名高速道路の問題について大臣にちょっと申し上げておきたいと思うのですが、東名高速道路の農地買収につきましても、実は沿線四千名の農民の重大な関心事になっておるわけです。この問題が片づかないともういやだ、協力しない、こういうことです。むしろそれよりも、この畦畔も補償してくれという言い分を唱えておるわけですが、相手が日本道路公団でやっておる。日本道路公団のほうは政府のほうの言い分ということになりますから、政府の言い分は大蔵省の江守国有財産局長さんの通牒によって拘束されるわけです。これではいつまでたってもすれ違いでもって、問題の解決ははかり得ないのであります。私はこういう点につきましても政府の統一的見解を立てて、この処理に当たってもらいたいと考えるのでありますが、大臣のお答えをいただきたいと思います。
  86. 田中角榮

    田中国務大臣 いずれにしましても、道路敷地は確保しなければならない問題でありますから、この問題は解決がつくように政府部内でも検討したいと思います。しかしこれは畦畔の所有権を争う。しかしこれはもう自分のものであるからこれによって補償をまた得よう、こういう考え方はどうか。しかしこれは地上権として所有権は二十年間でもって自動的に移っているということで、最終的になれば今後また当然補償という問題も起きてくる。非常に法律的にむずかしい問題でありますから十分検討いたします。
  87. 平林剛

    ○平林委員 人のさいふに百円入っておったと思ったところが百二十五円入っていた。二十五円は国有だなんという考え方はあまりよくないじゃないか。それは土地の測量技術その他によりましてかなり台帳面積と違った地積がある場合が多いですね。これは農林省の方がおいでになっていますからこれはいわゆる縄延びということなどもございまして、一万町歩を土地台帳で買った、しかし実際には一万二千町歩あった、こういうような例もございまして、そういう点から考えますと、いま台帳にないやつはおれのものだなんという考え方は、おれのさいふに百円あったと言ったじゃないか、しかし百二十五円入っているから二十五円おれのところによこせ、こういうことと同じなんでありまして、やはりそこは実際ケース・バイ・ケースによって処理をし、少なくとも先ほど大臣がお話になりましたように国はそんなものを取り上げて国の財産にするというようなけちな考えはない、こういうことでありますれば、国民の権利というものを守っていくような処理のしかたを進めてもらいたいということを、私は主張しておきたいと思います。
  88. 田中角榮

    田中国務大臣 これは私が、あまり国有財産に適当になんということになると困りますから、一言つけ加えて申し上げておきますが、これはもう国の財産権を主張するあまり、国民の利益、権益を侵害してもいいというような考え方に立っておりません。これは国民の利益ということは十分考えなければいかぬ。ただ国有財産というものに対してうやむやにするということはできないわけでありまして、これはもう正すべきは正す、こういうことでありますので、この調和を十分はかってまいるということで御了解いただきたいと思います。
  89. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。武藤山治君。
  90. 武藤山治

    ○武藤委員 先ほど大臣は取得時効問題は別に考えるべきだと言われたが、これは時効の問題ですね。そうすると実際にいま平林委員質問している問題は、ほとんど時効にかかっている当然農民の所有に帰すべき問題だ。それから二線引きの畦畔の中の問題も二線引きとは全然別な道路があったであろう、あるいは山道があったであろうというけれども、農地になっておるたんぼのまん中に道路があったことになっておる。図面上にそれが残っているのです。しかしそれは五十年も六十年も昔からそういう実情にある。当然の時効ですよ。これを政府は時効だといって、政府側から農民に裁判なんかやらなくとも取得できる方法というようなものを検討しているのか。考えているのか。大臣はもし考えていないとしたならば、一体どうしたらいいか、あなたの御見解を伺いたい。
  91. 田中角榮

    田中国務大臣 だから先ほど申し上げましたように、これは時効が完成しておりますというような証拠が提出できればこれを認めますという、大蔵省はすなおな考えに立っております。ただこれは一つ一つ裁判をするのは繁雑だから、何か統一法でも出してやれないか、こういう問題もございます。ただ先ほど何かこれをすなおにやるには別に単行法でも出さないと、いまの法律のままで大蔵省が適当に自由裁量でやるということはできません、こういうことを申し上げたわけであります。ですからやるとすればそういう手段でも講じなければならないと思います、こういうことを申し上げておるのです。それはなぜかというと、先ほど政務次官が言ったように両側があって——あなたはとにかくそういうものがありますと言うけれども、いまでも東京都内にあるのです。昔の下水のあととかそういうところがだれの所有か。がけの場合はもう上の人の所有というのはあたりまえなんですが、東京ではそうじゃなくまん中でもって割って登記をしておるものもありますから、これも一律にきめるわけにいかぬ。ですから現在は法律でもって裁判の確定があればということを言っているのですが、これを一挙に裁くということになれば単行法、いわゆる準拠法が必要だということはこれは当然だと考えます。
  92. 武藤山治

    ○武藤委員 国有財産局長にお尋ねしますが、いま大臣は非常に矛盾した答弁を前とうしろでしておるのだ。最初には大蔵省としては立証できれば、これが国有地でない、もう時効にかかっているという、二十年以上の立証ができるならば、親切に大蔵省では農民に無償で払い下げをしている。後段の話では、裁判所で立証できるならば、そういう話に変わってきている。一体大蔵省は、かつていままで三年間くらいの間に無償でこれを二十年以上もたっておるからといって裁判なしで農民に払い下げたことがありますか。
  93. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 そういうものはございません。ただ大臣が仰せになりましたことはそういうことではなく、取得時効が完成しているというものについてまで国有地であるということは主張しないということでございます。主張しないけれども、それじゃAなる者がずっと二十年平穏公正に持っていたんだから、おれによこせと言ってきたときに、財務局の出張所が、ああそうですか、それじゃ登記所に行って変えましょうというわけにはまいらない。これはむしろわれわれの権限ではできないことでありまして、それを法律的に確定するにはどうしたらいいか。ただいまでは、現行の法制では、おそらく裁判でいくよりほかあるまい。大臣が言われましたのも、さらに前向きでいえば、そこで何か準拠法をつくって、そういったものを、場合によっては大蔵省の行政判断で、ある要件に適したものには、国有地を民有地に、何らかの方法で移すことができるようなことを考えたいということを申されたのだと思います。
  94. 武藤山治

    ○武藤委員 大臣が考えたんだと思います——あなたは一体、去年も私はこういう問題を大蔵委員会質問しておるわけだ。実際には道路も何もないたんぼのまん中に道路があることになっていて、農民はえらい困っている例がたくさんある。一年間経過したのに、局長として、あなたは何か検討しましたか。このままほうっておいて、裁判があるということだけ、時効にさせようというのですか。不親切じゃありませんか。
  95. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 この問題は、初めからこの問題に対するわれわれの何といいますか処理の態度というものはどういうものかということでございますが、何ぶんたくさんあります筆数、非常に多くの坪数の、われわれが国有地と思っております畦畔等、これをどういうふうにして処理していくかということでございますが、それはまず大ぜいの人数と多くの経費を投入しまして、この際一挙にそういう国有地はいかなる範囲のものであるか、何坪のものであるかということを確定することができますれば、それはいま武藤委員仰せられましたような処理の仕方も可能でございますけれども、それはいまの人手と経費ではとうてい足りない。のみならず畦畔問題以外に、いわゆる実態調査とわれわれ称しておりますが、どこにどういう形であるかわからないと思われる国有地がたくさんあるわけでございます。それらも含めまして、いまの人手と能力でもってだんだん計画的に調査してまいろう、実態を明らかにしてまいろう、それにはおそらく今後七、八年もかかるであろうというようなことをやっておるわけでございます。この問題もそういった処理の仕方とテンポを合わせながら処理をしていくほかはない。ただここに宅地をつくる、あるいはここに新産都市をつくるというようなことで、その中にそういったものが出てきたときには処理を早くしょうということで、先ほど平林先生のお話しになりましたような通牒も出しておるわけでございます。だから基本的な態度としてはやはり出てきたものから処置していくほかないということで、もしも現実にある地域の中においてある地域を特定の人が買いたいという問題があって、その中に国有地があって処理ができないというようなことがありましたら、これは私どもとしては行政的に非常に不行き届きですから、それは先ほど申し上げましたような通牒でできるだけ早くやってまいりましょう。全体的にいま申しますような脱落地の問題については、残念ながらいまの行政のテンポでは相当時間をかけてやってまいらざるを得ないということでございます。
  96. 武藤山治

    ○武藤委員 この前国有財産の課長だと思いますが、公用財産には時効が働かないという見解を述べたことがある。公用財産、国有財産には時効は働くのか働かないのか、どうですか。
  97. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 普通財産には時効は進行いたします。でございますが、たとえばいまの畦畔に関連いたしますが、たんぼの中にあります農道、それが現実に農道として使われておるものがございます。これは建設省が所管しております行政財産でございますが、こういうものには時効は進行しないというふうに考えております。
  98. 武藤山治

    ○武藤委員 そうするといまのあぜ道とか、あるいは、ないのがあったはずになっておる図面上のたんぼのまん中の道路、こういうものは時効は全部働きますね。
  99. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 農道と申しましても実際みんなが農道として使っておりますところと、そうでなくてもう実際はずいぶん大昔から農道でなくなっておるというところがございます。こういうところは建設省のほうで公用を廃止いたしましてそうして私のほうに引き継いでこなければならない財産でございます。そういうものにつきましては時効は進行するというふうに考えております。
  100. 武藤山治

    ○武藤委員 いまここで議論しておるのは建設省やほかに関係ないのだ、どこの省の管轄でもないのだ。買いたいと申し出たときに、初めて市役所を通じて県知事のところに出して新たに台帳に載せてそれから財務局に回しているのですよ。全くどこの管轄にもない状態にある。現にぼくのうち自体がその問題にぶつかっておるのです。こういうのは当然時効なんですよ。だから親切に、もう三十年以上、二十年以上、とにかくあったはずのものが、図面上あるけれども現実にない、しかも農地になっておる。こういうものは政府としては全部時効を適用するつもりだということを天下に発表すべきだ。そのことによって農民は一斉に申請しますよ、農地になっておるものは。農地以外の宅地に売ったり何かするものは論外に考えておるのですよ。現実に農地として使っておるところで、国有地が図面上ある、五十年も六十年も昔の道なんです。こういうものは一体どうするかということです。これがまた膨大な面積ですよ。それに対する処置はどうですか。
  101. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 そういうものは実態調査の中でそういうものが出てきまして、そうしてこれは実態調査の結果、国有地でないということが明らかになればもちろん民有地として処理できるわけであります。  それから実態調査をして、先ほど申しましたようなことでこれはどうしても国有地だということですと、はたしてその上に取得時効が完成しておるかどうかという問題であります。取得時効が完成しておるかどうかという判断は先ほどから申しますように、大蔵省の国有財産局関係だけでそういう判断をして実行するということはどうも私どもの権限の中にはないので、それは裁判で明らかにするか——あるいは現行法制上は裁判で明らかにするよりほか方法がないのですから、特別法を出して何か行政的な処置でそういった時効の完成を認めて国有地を民有地に切りかえることができるというような対策を考えなければならぬと思います。この点は先日来の平林先生とのお話の間にも出てきたのでありますが、今後大いに検討してまいりたいと思います。
  102. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 ちょっと私実際の取り扱いを申し上げますが、法律上言えば援用する——あるいは裁判すると法律に書いてあるのですから、裁判所で援用してもらうことが一番です。けれどもだれも争いがなかったら、だれが見てもなるほど時効にかかっておる、昔からこの人のものだということがわかればなるべく渡すようにしたいというのがわれわれの主張です。けれども法律上どの法律によってそういうことができるかと言われれば困る。ほかに異論がなければ問題ない。  ただ一つ申し上げますが、いまのような場合一番簡便な方法は和解の申し立てをする。そうすればすぐ裁判所に一ぺんにいってやられる、いまのところそれが一番簡単だ。そのほかは他に異議の申し立てがなかったら大蔵省の認定でよろしいというような法律をつくってもらえば一番よろしいのです。      ————◇—————
  103. 吉田重延

    吉田委員長 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  金融に関する件について明十二日宇佐美日本銀行総裁に参考人として委員会に出席を求め意見な聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  金融及び証券に関する小委員会において、来たる十七日、金融及び証券取引に関する件について、経済団体連合会常任理事事務局長堀越禎三君、富士製鉄株式会社社長永野重雄君及び東京電力株式会社社長木川田一隆君に参考人として出席を求め意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  106. 吉田重延

    吉田委員長 連合審査会申し入れの件についておはかりいたします。  内閣委員会において審査中の農地被買収者等に対する給付金の支給に関する法律案につきまして、連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本会議散会後委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時五十九分休憩      ————◇—————    午後二時四十五分開議
  108. 吉田重延

    吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国有財産に関する件について質疑を続けます。平林剛君。
  109. 平林剛

    ○平林委員 私は接収貴金属の問題につきまして、さきに事務当局からお話を承りました。その際当叶いろいろな問題を呼びました接収貴金属の処理がだいぶ進められまして、昭和三十九年十二月末現在では金が約九十一億円、銀が約五十億円、白金が八億円、ダイヤモンドが七十二億円、ドル拠金二億円、その他合わせて未処理分がおよそ二百二十五億円あるというお話を聞いたのであります。大蔵大臣はこの処理状況については大体おわかりのとおりでございまして、先般内閣委員会ではこの法律案の成立に大いに努力されたことも私ども承知しておるわけですが、この保管は適正に行なわれておるでしょうか。
  110. 田中角榮

    田中国務大臣 私も日本銀行の地下室へ参りまして残っておるものを見てまいりました。金や銀は御存じのとおり非常に重いものでございますから、それを持ち出すとか、そんなことは全然できょうはずもございません。非常に適正でございます。しかしダイヤには非常にこまかいといいますか、吹けば飛ぶようなダイヤがあるわけですが、こういうものの管理というものに対しては、非常に大蔵省としても慎重にやっておりますので、現在の状態においては万全である、このように考えております。
  111. 平林剛

    ○平林委員 ただ私、大蔵大臣にこの際申し上げたい点はこういうことなんであります。  御承知のようにこの接収解除の貴金属並びにダイヤモンドがこの国会で問題になりましたのは昭和二十七年当時のことでございます。いまからもう十三年も前の話であります。このとき「政府が第十三回国会提出した「接収貴金属等の数量等の報告に関する法律案」の審議に当って、大蔵省が発表した接収解除貴金属等の品質数量はきわめて不正確であり、殊にダイヤモンドのごときは当時十八億円の予算をもって買上を強行したのであるから発表数字はあまりにも少量であるとして、その真相の究明を要請したものである。」これが行政監察特別委員会が本会議において報告をいたしました冒頭のことばであります。  私はそろそろ接収貴金属がその法律案によって処理を進められた現段階状況を、政府提出の資料で確めようと思いまして資料の提出を求めたのであります。ところが大蔵省から提出をされた金、銀、ダイヤモンド、特に銀の分につきまして数量が著しく違うのですね。もとより法施行時現在であるとか、いろいろな時限は書いてあるのですけれども、国会提出をするときは、かつて行政監察特別委員会が、その数量の発表が非常に不正確であった。そこからこの問題が提起をされた事情から考えてみても、相当厳格な態度でもって国会提出をしてもらいたいと私は考えておるわけであります。特に銀のごときは、私の手元に提出をされた資料によりますと、法施行当時現在百八十億円とございまして、かつて私が提出を求めました資料のときには、これが二百二十四億円、こうなっておるのに、それがここに提出をされたものは六十数億円も減っておるということなんです。私はこの間の事情承知しておりますから、何のために二百二十四億円が百八十億円になったかということは知っているのであります。しかしその事情を知らない者は大きな疑問を持つだろうと思うのであります。こういうことから考えますと、大蔵省の発表する保管の状況、またその事実を報告なさるときには統一した資料で今後おやりになる必要がある。そうでないと、無用な誤解を招くし、長い年限の間にはまたそこに新しい疑問もわいてくる。こういうことになると思いますので、この点は大蔵大臣にも御注意を願い、同時に事務当局もそういう態度をもって国会に資料の提出をしていただきたいと考えますが、いかがですか。
  112. 田中角榮

    田中国務大臣 この種のものでございますから、これの保管は十分気をつけなければならぬし、また保管も大体私はしっかりしていると思います。ただ資料の提出等に対して時点が違うというようなことでまちまちのものが出るということは、そうでなくても問題の多いものでありますから、十分慎重かつ適正なものを出すようにしなければならないだろうと思います。
  113. 平林剛

    ○平林委員 そこで私は、田中大蔵大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、この接収貴金属の処理が進められてまいりまして、先ほど私が申し上げましたように、多少の異同はあるかもしれませんけれども、現在保管数量としておおよそ政府の試算で二百二十五億円あるわけでございます。これについて一体政府としてどういう形で今後の処理を進められていくかお尋ねいたしたいのであります。すでに処理をされたものでございましても、たとえばそれが政府関係機関の手元にあるものもございます。未処理の分もございましょう。いずれにしても金についても相当の数量があるわけでございますが、何しろ歴史的ないわくつきの貴金属でございますから、この処理方針についてはやはり明確なものを立てていただきたいと思うのでありますが、たとえば金などは今後どういうふうになさるおつもりでございますか。
  114. 田中角榮

    田中国務大臣 いずれにしましても物が物ですから、これはもうガラス張りであり、国民全体が納得するような処分の方法でなければならないと思います。同時に処分をした後の益金といいますか、代金といいますか、こういうものにつきましても、公明な状態において納得のいく財源に充てられなければならない、このように基本的に考えております。  金はどうするか、銀はどうするか、ダイヤモンドはどうするかという問題がありますが、この処分された代金というものは、社会保障に使えとか、また別にもっといいものに使えとかいろいろな決議もございますし、十分慎重にやります。金はどうするかという端的なことでございますが、金は特別会計に移すということになるのか、日銀に移すということになるのか、そういう問題はよそへ出すということはないわけであります。銀は造幣局で大体使うということになると思います。しかしこれはもう当然代金は別に収納するわけであります。問題はダイヤモンドです。ダィヤモンドは国内でも大体十六万一千カラット残っておるわけでございますが、十三、四万カラットは原石で大体一カ年間に日本が輸入しておるものでございます。ですからそういう意味からいえば、国内でということになります。まあ外国の商社からも大蔵省に対して、いろいろな入札参加とか、払い下げてもらいたいとか、そういう書類が来ておるようであります。私はまだ見ておりませんが、事務当局からの報告でございます。外国へ出してこれを売ってしまうということが一番外貨にもなるし、あとくされがない、こう思ったのです。実際は国内に出回って、あのダイヤは私のダイヤだったというようなことが起きてはかなわぬから、これは外国が一番いいと考えてみたのですが、そう簡単にいかないようです。私はそういう意味で初めは、外国ですなあというような軽い気持ちで言っておったのですが、外国どころではなく、こういう国民の思いのかかっておるものだから、国内で処分をすべきであるという、国内の業者だけではなく一般人からの強い要望もございます。せめて売るときには、自分のものと似ているとか自分のものだと言っても証拠がないために返品にならないものを、どうしても自分で入札したいというようなたいへんな期待といいますか、この行くえというものに対しては、もういいでしょうなどと言う人もありますけれども、そんなものじゃないようです。いろいろな人がいろいろな期待をかけておりますので、よほど慎重にと申し上げる以外にないと思います。まだ国内でも国外でもこれを払い下げをするということはさだかに考えておりませんし、申し上げられるのは、やはり国内で処分をする、外国へ持っていくということはまあないでしょうということだけ申し上げられると思います。
  115. 平林剛

    ○平林委員 ダイヤモンドの件につきましてはなお若干お尋ねいたしたいと思いますが、金の取り扱いにつきましては、先回私がお尋ねしたとき政務次官から、大体これは金準備のほうに入れたいと思っておるというお答えがございましたが、いまの大臣の答弁の中にはそのお話がございませんでした。そうするとまだこれは大蔵省あるいは政府としては決定しておらないものと見てよろしいのでしょうか。
  116. 田中角榮

    田中国務大臣 これは日銀に入れて外貨準備高にするとか、金特別会計もございまして金を保有しておりますから、そこへ移すか、いろいろな問題が考えられるわけですが、現在この処分に対して決定をいたしておりません。
  117. 平林剛

    ○平林委員 ダイヤモンドの件につきまして、いま外国に売りに出すという記事を私ちょっと見たものでありますから、政府の見解をただしたいと思いましたところ、ただいま大蔵大臣は先にお答えになりました。大体の事情はわかりましたが、ただどうも、ダイヤモンドの価格を幾らに見るかという点について、政府の資料は私はあまり信用できないのではないかと思うのであります。政府提出をされた資料によりますと、十六万一千カラット、七十二億円、こうなっておるのでありますけれども、これはいつごろの評価で、単価としてはどのぐらい見て一おる計算で七十二億円と出るのでしょうか。
  118. 向井正文

    ○向井説明員 私どもいままで公式の機会に七十二億という数字を申し上げたのですが、これは二十五年、占領時代に、占領軍当局が米人の鑑定人と日本人の鑑定人とを使いまして鑑定いたした値段でございます。御存じかと思いますが、正確なところは存じませんが、戦前、昭和十二、三年ころでおそらくダイヤの輸入というものはとまっているはずであります。それから戦後もしばらくの間そうした貿易がございませんので、日本で国内的に卸市場というものがあったのかどうかよくわからぬのでございますが、そうした日本のダイヤ市場がちょっと国際的に孤立しておったというような状況でありましたために、私どもの仄聞するところによりますと、いまでもそうでございますが、当時の最大の消費市場であるアメリカ、ニューヨークの卸相場というものを標準にして、それで評価したものであるというふうに聞いておるわけであります。平均単価は、現在十六万一千カラットで七十二億ということでございますので、カラット当たり四万五千円ということになっております。
  119. 平林剛

    ○平林委員 私はいまのお答えからして問題なんです。さっき申し上げたように、昭和二十七年に行政監察特別委員会が発足いたしまして、この報告が本会議場においてなされたわけであります。そのときは、十六万一千カラットの価格は、政府の発表では六十一億六千百二十万円になっておるわけです。平均一カラット四万円という計算であります。ところが、私の求めた資料によりますと、十六万一千カラット、七十二億円、とこうなっておるわけです。国会で、本会議場における行政監察特別委員会の報告では大蔵省の発表はこうだというし、これはどうかということになってお尋ねすると、いや、それは昭和二十五年当時、とこうおっしゃったわけですね。そうすると、国会で報告をされたより二年前のことを言っておるわけですね。非常にあいまいなんです。私は、どうしてこういう問題が起きるのか、どうしてこれだけ大きな問題になったものをこう粗末にするのかという点が問題なんです。もう過ぎてしまえばこうした問題について、のほほんとしているという態度がいけないんじゃないかと思うのです。どうしてこういうふうに違いが出るのでしょうか。
  120. 向井正文

    ○向井説明員 二十七年の数字と申しますのは、占領軍当局が接収を解除いたしまして、私どものほうに引き継いでまいりましたときに、私どものほうで記録を整備し、現品を整理しまして今後の管理を厳重にやっていくという体制を整えたわけでございますが、そのときに参考のためにやった数字でございます。ただ、この数字がどういうふうに食い違っているか。まあ、これはいまとなっていろいろ想像するのはむずかしいわけでございますが、何ぶん、私どももダイヤモンドに関しましてはしろうとでございますので、鑑定人のおっしゃる数字をそのまま申し上げたのだろうと思います。ただ、わずか二年しかたっていないのにどうして食い違ったのかということでございますが、鑑定人も違っております。あるいはまた占領中ということと、占領が大体終わる時期になっておったものでございますから、あるいはそういった背景があったかも存じませんが、私どももその辺の事情は想像いたしましてもちょっとわかりかねるのでございますが、いずれにいたしましても、これは処分をいたしますときには最終的に最も確実な方法で、もちろん鑑定をいたしまして、その鑑定の結果に基づきまして処分をいたすのでございます。数字について十分御説明を申し上げられないのは非常に申しわけないのでございますが、今後は確実な、しかも、従来はおよそどれくらいのものかという見当をつけるための鑑定であったわけでございますが、今度は具体的に幾らで処分するというための鑑定でございますから、十分精密にして確実な方法で鑑定をいたしまして処分をするということでございますので、その点、御了承いただきたいと思います。
  121. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。有馬輝武君。
  122. 有馬輝武

    ○有馬委員 いま平林委員質問に対するお答えを聞いておりますと、どうしてもわれわれしろうとには納得がいかない面がたくさんあるわけです。適正な処理を期するために、大蔵大臣もこの前接収貴金属を見に行かれたようでありますが、私は年に一回ぐらいは時価幾らぐらいになっておるかということを正式な鑑定人に評価させる配慮というものが必要ではなかろうかと思うのであります。私どもも、あれは昭和何年でしたか、見に参りましたけれども、そういう意味で、たとえば何カラットのものがどの程度あってというようなことが明瞭でないと、一カラット平均幾らだと言ったって、これはもう全然話にならないのでありまして、そういう点で、何カラットのものが何個あってそれが幾らだというような資料の出し方でないとはっきりしないのではないかと思うのでありますが、そういった処理がなされておるかどうか関連してお伺いしたいと思います。最終的にはいつその鑑定をされたのか。
  123. 向井正文

    ○向井説明員 毎年鑑定したらどうかということでありますが、これはなかなかたいへんでございまして、ちょっといたしかねるのであります。と申しますのは、日本は、どうも私らも世界的なことはよく存じませんけれども、ダイヤ、一般に貴金属の市場というものは、世界的に見てはなはだ貧弱なようであります。鑑定人をわずらわすにいたしましても、皆さんそれぞれお仕事を持っておられる方に鑑定をお願いする。しかも、政府のダイヤも明細に鑑定をお願いしますと、少なくとも四、五名の方に数ヵ月くらいかかってやっていただかないと綿密な鑑定ができないわけでありまして、現実問題といたしまして、それぞれの実務を持っておられる方数名に、しかも半年くらい鑑定にかかりきっていただくということは、事実上ちょっと困難であろうと思います。私どもといたしましては、現在の段階では、いずれダイヤモンドの国庫帰属も確定いたしますので、処分の時期もそう遠い先のことではないと思いますから、その機会に鑑定をいたすということをいまのところは考えているわけでございます。  なお、一カラット当たり平均して四万五千円といったところで大して意味がないではないかというお話、まことにそのとおりでありまして、七十二億円の内容につきましては、もう少し明細な資料が御提出できるわけでございまして、ある程度のことはわかっております。
  124. 平林剛

    ○平林委員 ある程度のことはわかっておる、こうおっしゃるのですが、総額において、十六万一千カラットを細分化して区分をしていけば総トータルにおいて七十二億円以上になるという数字などがもうつかめておるのですか。
  125. 向井正文

    ○向井説明員 いま申し上げました七十二億の内訳、ある程度のところは資料として提出できるということであります。
  126. 平林剛

    ○平林委員 それは行政監察特別委員会から詳細に、どういう種類のものが何包、どういう種類のものが何包という報告がありますから、あなたのほうが提出をしなくとも、国会ではもう承知をしている点です。ただ私が問題にするのは、昭和二十七年当時でありましても、ダイヤモンドが一カラット四万円あるいは四万五千円というのは法外な安値であるというということ、鑑定人が五人程度でやったということは事実でありますが、その鑑定人が行政監察特別委員会に出席をせられて参考人として述べたことばを引用いたしますと、大体一九五〇年に進院軍が鑑定したときの相場と最近の外国相場を基準にしてやったというのですけれども、標準的なものでも一カラット十六万二千円もしているわけです。私の調べたところでは、当時の日本における価格は一カラット、特級に属するものは三十五万円、A級に属するものは三十万円、B級で二十八万円、一番安いC級のものでも二十二万円くらいしていると聞いているわけであります。ですから、政府提出された七十二億円というのは、この行政監察特別委員会に出席をされた参考人のいろいろな方の意見を総合いたしましても法外な安値であって、現在の時価に換算したならば相当な金額になるのではないか。その点を今日に至るも十分把握をしないというのは怠慢じゃないですか、私はこういうことを申し上げたいのであります。大蔵大臣、いかがでしょうか。
  127. 田中角榮

    田中国務大臣 私、もう何回もそういう御質問を承っておりますが、これをいま処分するというのではありませんで、処分をするときには当然公正な、内外の専門家の評価をしてもらって、そうして国損を来たさないように正当な値段で売るということになりますから……。これは私もいつも行って見まして、行って見るとわかるのです。正当なことをやるといっても、あの何百万個あるこまかなかいものをひっくり返すということになると、また再評価中に粒がなくなったではないかといういろいろな問題が起こってくるわけです。私もこの問題は隠退蔵物資調査特別委員会、それから不当財産取引調査特別委員会、行政監察特別委員会、ずっといきさつを知っておりますが、とてもこういうところで見たものとあそこへ行って見たものでは、びっくりしたのです、あるところにはあるものだと。これを動かすことによっていろいろ問題が起こるので、きちっと保管をしていて、最終的に売り渡すときには適正な値段でやるのだ、あまりそう専門的にひっくり返すな、大蔵省にもそういう考えはあります。そうじゃないと、しょっちゅう出たり入ったりしている人が何か小さなものを持ち出さぬという証拠はあるのか、そういう御質問もありますから、そういう意味で絶対量というものは厳重に保管いたしてございますし、ここでもって六十何億とか七十二億とか言いますが、この値段でやるわけじゃない。私がちょっと見まして、私もあなたと同じように四万円平均の四倍、二百五十億はあるね、こう言ったわけです。新聞には二百億ないし二百五十億、大臣は大体四倍と言うけれども、あの中に工業用ダイヤで四万円のもあるのであります。ですから二百億、二百二十億にならないかもしれません。すぐそういうことになるので、こういう問題はやはり厳重に封印をしてあるということで、いまの値段はただ一昨つけた値段でありまして、売り払いの値段とは関係なく、売り払いの場合には適正にやります、こういうことで御理解願いたい。
  128. 平林剛

    ○平林委員 のど元過ぎれば熱さを忘れる。法案が通ってしまえばあとは自分の言ったことを忘れるというのは、私は政府の悪い考え方だと思います。接収貴金属等の処理に関する法律案、私は参議院議員の当時審議したのであります。そのとき政府は何と言って頭を下げてきたか。ダイヤモンドの所有権についてはいろいろ問題があるけれども、金や銀の処理の問題もいろいろ問題はあるけれども、たとえば金が千百二トンあるのは国内産出の十三年分相当量だ。銀の千七百三トンは国内生産の七年分に相当する量である。白金一トンとは一年分の輸入量の相当分である。これに多量のダイヤモンドがいたずらに死蔵されておるということは年間三十数億円の損失を招くので、ぜひ法律案の成立を急いでもらいたい。処理のおくれていることは国家的な損失であると何回言って私たちに頭を下げたかわからないのですよ。あれが終わってからまだ処理がきまっていないのでありまして、計算もしてないというのじゃ筋が通らないと私は思うのです。首尾一貫しておらぬです。だから法律案を通すときにはさんざんそういうことを言っておいて、いざ法律案が通ってしまうとほったらかしておく。そういうことはいけませんよ。そこで、いたずらに死蔵されることは年間三十数億円の損失ということで、法案成立を急いでもらいたいと政府がかつて言ったように、逆に今度は私たちが、この処理がおくれていれば国民的損失というものは年間三十数億円になる。それで五年もほっておけば百六十億円運用益で違ってくるわけですよ。運用益で政府は三十数億円と言っておるわけです。運用益でそれだけ損失を招くわけです。そこでダイヤモンドの所有権については、法案成立当時においても、あるいは行政監察特別委員会の報告においても、その所有権は大部分国に帰属されることが予定されておったのであるから、これはすみやかに処理すべきだ。これを漫然日を送っていることではならぬ。国家的損失である。したがって国に所属すると見られる、少なくともダイヤモンドについては何らかの処理方針をきめて、そして国家的損失のないようにすべきじゃないか、こう思うのでありますが、その御意思はいかがですか。
  129. 田中角榮

    田中国務大臣 ダイヤモンド十六万一千カラットの問題ですが、これは確かに法律を出しますときには、いろいろ各党の議員の皆さんが寄られて、議員提案でやろうというところまでいったのですが、重大であるからということで、政府にやれということで最後は閣法になったわけであります。これはその当時の気持ちと違って、法律を通してもらったらさっぱりやらぬと言うのですが、そうじゃない。法律を通してもらって今日まで同じ感じなんですが、やはり重要でありますから慎重を期しておるわけです。しかも御承知のとおりまだ最後に問題が残っております。これは四十年度中には全部きまって、そうして今度いよいよ政府のものになる。これ一つでもいろいろな問題がありますと、これを処理するわけにはまいらぬわけでありますから、いままで時間がかかったというのは、慎重にかつ国民側から要求のあったものを処理をしてまいって、いよいよ最終段階になった、こういうことでありますので、これは初めの政府の姿勢と違って、あとはもう投げやりだということではありませんから、これはひとつ誤解のないようにしていただきたい。私もこれはあなたの言うように、そろばんをはじいてみますと、三十数億になるかならぬかわかりませんが、とにかく運用益でなにができるから早く処理してしまおう、こうも思ってみたのですが、まだ先ほど申し上げましたように最終的な帰属が一部きまっておらぬから今日に至ったわけであります。ここまでまいりますとこれをどう処理するかという具体的な問題、処理した場合の影響、この処理益というものをどうするか、何に使うか、そういう問題もありますので、国会の皆さんの御意見も十分拝聴しながらだんだんと最終的体制を囲める、こういう状態でございます。
  130. 平林剛

    ○平林委員 私は一般会計に所属する貴金属の売り払いにつきましては、やっぱり何か規定を設けまして、売り払い代金に相当する金額は社会保証制度やその他学術の振興に充てるようなことをこの際考えるべきだと思いますし、ただ漫然と予算に配付してしまうようなことは接収貴金属の歴史的な性格から見て妥当ではないし、当時のまだ忘れておらない国民の感情から考えましても適当な方法ではないと思うのでありまして、そういう意味からは政府もその考え方を貫いてもらいたいということを希望しておきたいと思います。  私ども日本社会党としては、この際接収ダイヤについてはこれを科学技術振興及び社会保障の拡充の基金特別会計というものを設けていただきまして、そして接収貴金属等の処理に関する法律により、国に所属するものの売却代金を原資として、科学技術振興及び社会保障拡充基金というものをつくる、この基金の運用益  かなりあると思うのでありますが、運用益をもって科学技術の振興や社会保障制度の拡充のためにいろいろな事業を行なったらどうであろうかという考えを持つておるわけであります。この基金の運用に伴う歳入歳出は一般会計とは切り離しまして、管理をするためにただいま申し上げましたような特別会計をつくる、この会計は大蔵大臣が法令の定めるところによって管理をしてもらいたい。そしてこの運営をはかるための審議会を設置をして、この基金の運用や事業計画については大蔵大臣が諮問して、それに応ずる形で基金運営審議会がいろいろ決定をしていく。この審議会には私どもといたしましては国会指名による国会議員や大蔵大臣の任命する学識経験者若干名を含めて構成をいたしまして、この目的を果たすようにしたらばどうだろうかということに実は考えをまとめたわけであります。こうした問題につきまして、早急に処理する必要を大臣もお認めになっておるわけでございます。国会の意思も聞きたいというお話でございましたので、私ども社会党としての考えを申し上げました。私どものこうした考え方につきましても検討していただいて、すみやかに結論を出してもらいたいと思うのですけれども、どうでしょう、時期を設定してことしじゅうにやるというような御言明はいただけませんか。
  131. 田中角榮

    田中国務大臣 私も早くやってしまおうかなと思って研究をしましたら、なかなかむずかしいということで今日になったわけですから、どうもすぐやるということを申し上げられません。しかし、こういうものはじんぜん日をむなしゅうするものではありません。ある時期に思い切ってやるべきものであるということは、事の性質上私もそう考えております。ですから、そんなに長いことではない。いままではいつやるか、どういう方法がいいかということを考えながらも、並行しまして処理をしなければならなかったわけです。ところが、今度は最終的に国の帰属になる、こういう見通しがついておることでありますので、いままでのようなことではなく、やはり具体的に考える時期に来たと考えております。  それから社会保障というような前から決議もございます。科学技術という問題もございます。またいま社会党案を提示されましたが、一つ意見であると拝承いたしました。私もこの問題を昔取り扱いましたときに、ひとつこれでガンを退治するように使ったらどうだろうかといろいろ考えた。一般会計にこれをばらばらとまいてしまって、党を優先したものではないということはわかります。ですが、これを特別会計にして、あなたがいまおっしゃったような名前のものにするかさだかにきまっておりませんが、いずれにしても国民が納得する、それで希薄にはされたけれども、思いを残しておる、そういう人たちの思いさえもすなおに満足できるというこまかい点まで配慮してこういうものはやりたい。私が見たときに、どうも女性の思いがかかっておるようで手が出しにくい、こういうことを申し上げましたが、まさにいまもそう感じております。これは国民全体として、そういう問題に対してはすなおな気持ちで出した人が納得をする、こういう姿であるべきである、こう考えております。
  132. 平林剛

    ○平林委員 終わります。      ————◇—————
  133. 吉田重延

    吉田委員長 税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。堀昌雄君。
  134. 堀昌雄

    ○堀委員 本日は当面の金融政策について、大臣の御所見を少しお伺いをいたしたいと思います。それが第一点であります。  第二点は、最近の税収見通し、経済見通し等を土台としての今後の財源のあり方、この問題を第二点で伺いたいと思います。  金融政策の中では、最初にお伺いをいたしたいのは、全国銀行協会連合会が四月二十日に二年定期の創設を大蔵省に要望したと新聞その他で伝えられております。そこで、全国銀行協会が二年定期の新設を大蔵省に申請してきました理由なりその背景というような問題について、ちょっと最初に銀行局長から少し御報告をいただきたいと思います。
  135. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 銀行協会が二年ものの定期預金をつくりたいということを決議して要望をしておりますが、これは背景といたしまして、とかく銀行協会から言わせれば、銀行の預金の伸びが十分でない、他の、たとえば貸付信託のようなものが非常に高い伸び率を示しているときに、銀行の側はさほどでないということが一点ございますし、また地方銀行などの例を見ますと、中には地方開発等に伴いまして、必ずしも短期の金融だけでなく、中期の貸し出しというふうなものも一部必要になる場合もある、そういうことから申しまして、二年くらいの定期預金があってもいいのではないか、いまの一年ものの定期がかなり高い割合でありますが、それらのものの中には継続して、一年限りで引き出しをするというのではなくて、引き続いて相当長期にわたり預け貸与を行なっていることがあると思いますので、この際そういったものを優遇するといいますか、手間が省けるという面もございますから、それとこの金利の引き上げの割合とはつり合いがとれませんけれども、継続するようなものについては二年ものの定期ということも言えるのじゃないか。実を言うと、私のほうから考えまして、あまりすっきりした理由というものも考えられませんが、概して金融の伸び率ということに着目して、銀行のシェアがむしろ次第に落ちてくるというのをこれによって挽回したいということであろうと思います。しかし、そういうことは銀行だけに認められて、他の金融機関には認めないということはできないのでありますから、シェアの問題としては何ら変わりはない。ただ、しいて言えば、貸付信託のようなものが三〇%近い伸び率を毎年続けていることに対して、そういう金融の魅力でそういう差がついているのじゃないか、それを挽回したいという気持ちが多分にあるように思います。
  136. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの問題の中で、私は都市銀行のシェアが相対的に差があるという問題は、これはこれまでの都市銀行のシェアがノーマルな状態だという前提ならばこれは別でありますけれども、これまでの都市銀行の状態というのは、日本の金融全体から見て、あれがノーマルであるのかどうか、これは多少議論の余地のあるところではないか。やはり、現在は経済は流動的に動いているわけでありますから、相互銀行、信用金庫等の中小企業金融をしておりましたものが、日本の中小企業の発達につれて、実は取引関係が増大をしてきている。そういう面でも預金の量がそのほうにかなりふえてくると、都市銀行が私どものたび重なる要請にもかかわらず、中小企業のウエートが次第に下がりつつあることが、裏返して言えば、私は都市銀行の資金の集中度を低下させてきている。こういう日本の経済構造全体の中に占める中小企業の近代化の問題と、この預金の集中の問題は不可分ではない、こういうふうに私は考えるわけです。  そこで大臣にお伺いいたしたいのは、やはりいまの問題を契機として、今後の日本におけるあるべき金融の姿といいますか、政府としてはある段階においてそうした金融の配置といいますか、あり方といいますか、そういう構造的な問題についての、ビジョン、運営上の問題もありますけれども、そういうふうなものが私はそろそろ掲げられて、そういうビジョンに基づいた金融行政の指導というようなことがされていい時期に来ているのではないのか、こういうふうに判断するのですが、いま私が前段に触れました中小企業近代化の問題との関連でひとつお答えをいただきたいと思います。
  137. 田中角榮

    田中国務大臣 これからの金融行政は何に一体主体を置くかということでありますが、これは金融正常化をはかっていくということが一つでございます。正常化の中には、金融資本だけでもって一切のものはまかなわれるということでは行き過ぎもございます。いろいろ今度問題が起こっておるのも金融偏重という一つのあらわれでありますので、金融はやはり正常な状態にしなければならない。正常な形にするというものの中に、もう一つは各分野、いわゆる長短金融というものに対しても、おのれの分野というものを守っていかなければならないということもその中の重要な問題だと思います。それから貸し出し競争、シェア競争、それから同時に預金獲得競争、こういうものも異常なものでありまして、これは金融の正常化、将来長期の展望に立っての正常な姿ではないわけでありますから、こういうものも正していかなければならない、こういうことであります。積極的な面をこの中にもう一つ申し上げるとすれば、いままで総じて銀行が中小企業というものに対しては中小企業専門機関が当たるべきだというような考え方、がひとつございましたが、中小企業というものは日本における特殊な状態であり、しかも非常に大きな諸生産に関係のあるものでありますから、生産量の、あらゆる社会に最も大きな関係がありますから、こういうものに対してどの程度の資金をさくのか、現在二〇%、二五%とか、三〇%にするとか、そういうものはひとつ前向きに、あとはいままでは大体行き過ぎだ、店舗行政にしてもあらゆる意味で行き過ぎであります。だから行き過ぎは是正をする。それで精神的にも実際的にも中小企業の面等には前向きに、少しいままでよりもピッチをあげる、こんなことを目標にしていくべきだと思います。
  138. 堀昌雄

    ○堀委員 私もいまの大臣の御答弁と大いに同感なんでありますけれども、実は最近二年もの定期の問題に関連をして、資金偏在論というようなことがかなり言われておるわけです。私はそれは資金が偏在をしておるということではなくて、やはりそれにはそれなりの理由がある、こう考えておるわけでありまして、そういうのを偏在としてとらえるかどうかはちょっと問題があると思うのです。ただしかし、私も顕著に偏在であると考えざるを得ない問題というのは、これは銀行局長にお答えを願いたいのですが、特に信用金庫の場合に、コールローン及び金融機関貸し付けに非常に預金の大きな部分を持っていっているものがかなりあるわけですね。私はかねてから金融正常化の問題の中で短期金利の低下、要するにコールレートができるだけ下がる——本来なら公定歩合よりはコールレートが下であっていいという条件であるにもかかわらず、日本の場合は常にコールレートが公定レートよりも高いというような状態が続いておるわけですけれども、そういうコールに依存をしておるものが信用金庫の中にはかなりある。コールはある程度以上に引き下げてくると信用金庫の経営上にも問題があるというようなことのために一定限度以上に下げられないというようなことも実はいわれておるわけです。  そこで、具体的に現在の信用金庫のそういう預金量に占めるところのコールの割合等についての分布の状態をちょっとお答えいただきたいと思います。
  139. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 信用金庫は、仰せのとおり資金量の中でコールローン等に回している分量が非常に高いものがございます。やや目が荒うございますが、分けて階層別に申し上げますと、金融機関貸し付け金を含めたコールローンの放出額が資金量の一〇%未満のものが五百二十八金庫のうちの百一、それから一〇%から二〇%未満のものが二百四十二金庫、二〇%から四〇%未満のものが百六十八金庫、資金量の四〇%以上をコールに放出しているものが十七金庫ございます。
  140. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、銀行局では信用金庫に対して支払い準備をある程度置くようにという指導をしておると思います。いまのそういう配分からいきますと、コールなり、金融機関貸し付けでなくてもいいのだと思いますが、そういう支払い準備としての流動性の高いものを置けというあなたのほうの指導は、何%いぐらをいま信用金庫ではやっていますか。
  141. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 原則として流動的な資産は二〇%、つまり預貸率が八〇%であることが標準である、こういうふうな指導をしております。
  142. 堀昌雄

    ○堀委員 ですから、いまのそっち側からは八〇%なんですが、いまの区分ですね。ちょっと角度は違いますけれども、まあ似たり寄ったりのことになりますから、コールローン及び金融機関貸し付けのパーセンテージで大体見ると、どこらまでがノーマルな状態で、ここから以下はアブノーマルだというのはどうなるのか、ちょっと教えていただきたい。
  143. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 中小金融機関、これは銀行でも同じでございますが、大体預貸率は八〇%程度が望ましい。現実はそれと合っておりません。信用金庫の場合にはむしろこれを下回っている状況でございます。したがいまして、その場合に貸し付け金に回さない残りの部分二〇%の中で本来短期であるべきコール等に現金に準じて運用するというふうなものは、そのまた半分以下であるということがむしろ望ましいのじゃないかと思います。一〇%でも場合によっては多過ぎるかもしれませんが、とにかくコールの放出が主たる運用になっておるというふうなことはまことに変則でございまして、コール以外の流動的資産があれば望ましい。しかし現実にはコール以外にどういう流動的な資産があるのですかという問題もございまして、われわれの考えているところよりも流動資産のうちの大部分がコールに回っているという現状をある程度容認せざるを得ないというのが現状でございます。
  144. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのあなたの発言からするならば、コールに二〇%以上出しておるところは少なくともノーマルじゃないわけですね。その二〇%以上出しておるところがいまのお話では百八十五信用金庫あります。これは私はやはり早急に大蔵省としては何らかの対案なりを考えなければならないところにきているのじゃないかと思うのです。実は融資ルールの問題その他についてできるだけ金融緩慢状態を、多少人為的であってもつくることによって公社債市場をつくっていきたいという私の念願は、当委員会で私何べん言ってきたかわからないほど言ってきておりますが、それの一つのネックに実はこれがなっておるわけです。そこで大臣、この百八十に余る信用金庫がいまのような状態であるために、そういうごくわずかのもののために経済政策が足踏みしなければならぬというのは私は非常に重大な問題だと思います。そこで、いまの金融正常化の問題の中で、何らかの具体的方法によってこの百八十余りの金庫をそういう状態から少なくともノーマルな状態に立ち返らせなければならない。それについていま、どういう方法でやるかというお考えがあれば承りたいし、もしいまなければそれについて……。
  145. 田中角榮

    田中国務大臣 信用金庫とか相互銀行、こういうところには金が非常に集まっております。偏在しておる。しかしこの偏在しておるものを自力でもって自分の資産内容をよくしろという行政指導を強くすれば、結局コールに回したり自分でもって高い利息のところに回すわけであります。去年、おととしあたりから相互銀行に対しての公社債の持ち比率をだんだんと上げて一〇%に近くしてまいりました。信用金庫に対してもそうしたい、そうしたいのでありますが、そうすると収益が下がる、こういうことになるわけですから、それではそれに見合うように公社債の金利を上げられるか、少なくとも社債の金利を上げられるか、こういう問題になるわけであります。ですから、健全経営というにも限度があるわけであります。健全経営を金融機関の自分の責任だけでやらせると、やはり偏在した金はコールというようなものに回りますし、もう少し公的な使命を考え政府もてこ入れをするというような状態になって、これを金融全般としてのいい面に使うということも考えなければならぬわけであります。ですから、私が大蔵省に参りましたときに、日本銀行が都市銀行に金を貸せるだけの中央銀行では話にならぬ、それで実際には日本の基礎産業やそういうものに資金を供給しなければならぬものは日銀信用によって金を借りて貸せる、そしてその金が偏在しておる、中小企業や何かは——レジャー産業といいますか、三銭でも三銭五厘でも四銭でもいいという産業に潤沢に資金が回る、こういう状態では困るので、中央銀行が全金融機関の調整機関、中央銀行という使命や機能を果たすには、やはりこれらのものに金が余っておるときには吸い上げるように、日銀から金を借りるという必要からだけ日銀と取引するという考え方を改めて、もう少し金融全体の調整、中央銀行の使命を果たさなければならぬ、こう私は言ったのです。その考えは  いまでも間違いないと私は思っておるのですが、金融機関そのものの財務比率をよくしろとか資産内容をよくしろ、こういうことにだけウエートを置いておるために偏在した資金が調整的になかなか使われなかったということは過去にあります。ですから、これからは公債市場の育成とか社債条件の改定とか、いろいろな問題がありますが、そういう過去の実態、現在の姿、将来の金融の全体のあり方を十分考えて金融施策をきめこまかく進める、いま申し上げたようなことを基本といたしておるわけであります。
  146. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、いまの信用金庫対策というのは少しきめのこまかい、具体的なスケジュールを考えていかなければならないと思うのです。それをしない限り、いま大臣も最後のところで公社債の条件改定なり公社債市場育成の問題に触れられましたけれども、条件改定は私も必要だと思うのですが、条件改定をしたからといって、これらの信用金庫がペイするほどに上げられるわけではないと思うのです。やはり全体として資金需要なり金利の問題から見れば、全体の土台をできるだけ下げることによって、たとえ改定したとしてもそれを小幅で済む条件をつくらなければ、問題は発展していかないと思うのです。そうすると問題は、どうしてもコールがより下がる条件を——あしたも私は日銀総裁に来ていただいてここでも論争するつもりですけれども、もう少しコールが下がるような条件を日銀考えてもいいんじゃないか。金融緩慢をもうちょっと人為的につくれば、これは下げようがあると思うのです。ただ日銀がひっかかっているのは、これらの中小金融公庫の問題が危殆に瀕するおそれがあるということでネックになっておるのだから、そうするとまずやはりそういうのがつぶれてもいいというわけにはいきません。これはやはり預金者がおるわけですからね。そこでこれを一体どうするのか、具体的にもうプログラムが組まれ、それも時間的なスケジュールも立てられるような段階に処理していかなければならぬのじゃないか、こういうふうに私は考えるのです。大臣、どうでしょううか。
  147. 田中角榮

    田中国務大臣 銀行局もいろいろ専門的に検討はいたしております。私自身もいたしております。それは日銀が事業者のめんどうを見たりいろいろなことをやっておりますが、戦前はコールは一銭ぐらいであったわけです。いま非常に高い状態でありますし、いま言ったようにコールがうんと急激に下がってくると、コールの出し手が参ってしまう、こういう問題で今日までだらだらときております。しかしここにメスを入れないと金融正常化というものが進まないわけでありますから、このコール市場の問題はいま検討いたしております。日銀がどういうふうに出るか、日銀がどういう役割りをするかという問題が中心になるわけでありますが、そういう問題も検討いたしております。具体的にどういう時期にどうすればいい、これは影響その他も非常に大きいし、申し上げられるほど固まってはおりませんが、いずれにしましても、コールや金融の正常化をはかっていくには、環境としては、時期としても非常にいい時期でありますから、そういうタイミングをはずさないように、こういうめどであらゆる角度から検討を進めております。
  148. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 どうも補足といいますか、ちょっとその点、堀先生が考えておられるのは、いまのような環境であればコールは実勢としてもっと下げられるのじゃないかという御意見のようですけれども、私どもは日本銀行が信用金庫等の採算だけを考えて無条件もの二銭というところに中心を揮え置いているというふうにも思いません。それは大切なことは、コールが一時的に相当正常だといわれるような地位まで下がりましても、これがたちまち反騰のきっかけになるのでは何にもならないのです。ですから私どもが考えている一番大事なことは、コールレートが二銭でもいいのです。これは二銭でも逆さやですから決して利益がのらないのです。大部分の信用金庫では今日においては二銭はつらい線です。それでいいのですが、それが長続きするということです。それがかりに一銭六厘のようなところまでなりましても、一年たったら三銭六厘になったのでは何にもならないのです。ですからコールレートが相当長期にわたって全然浮動しないということは無理でございますが、あまり大きな反騰をしない、それには資金需要全体のバランスが大きくくずれない、そういう予防的な金融政策をとることによってコールの安定化をはかる、それが金融正常化に通ずる基本的な問題ではなかろうかと思っております。
  149. 堀昌雄

    ○堀委員 私もいまの銀行局長のお答えと大体同じことなんですよ。同じことなんですけれども、しかしなおかつ、もし一銭九厘、八厘と下がってきたときに、四〇%以上出している十七信用金庫でこれはどうなりますか。これは下がってきたら、この十七信用金庫はそれじゃ公社債を買っていまの公社債でこれはペイするのですか。それじゃ、それから聞きましょう。
  150. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 日本銀行の貸し出しレートは、御承知のとおり一銭六厘、七厘、八厘でございます。ですから一銭八厘までは日本銀行の態度いかんによっては下げ得るわけです。その場合には一銭八厘ではもちろんペイしません。それから公社債のいまの金利、これは信用金庫の表面上の平均のレートです。それと、社債のうちのB格債ぐらいを比べると、表面的には大体とんとんでございます。しかし御承知のように債務者預金に大きく依存し、言ってみれば、両建て、歩積みで実質的な利益を上げている。ですから実際の貸し出し金利は表面金利よりも高いし、預金コストは表面に出たよりは実際高いわけです。それらを勘案  いたしますと、年利で申しまして大体八分ぐらいが平均のコストじゃなかろうかと思います。そこ  の辺まで社債が上がれば、どうやら平均のコストの均衡はペイできるが、平均でないこれより高いところは、半分以上はなおペイができない、そういう計算になるわけでございます。
  151. 堀昌雄

    ○堀委員 だから八%というのはまあまあいいところではないかと私は思います。私も、公社債金利を上げることが、必ずしも公社債市場をつくる目的ではないと思うのです。やはりこれは低いほうが望ましいのです。望ましいけれども、ただ短期金利がさか立ちになっているところに問題があるわけですから、それはできるだけ下げていくということになったときに、やはりあなたの言うように長期的な問題はもちろん片面にありますよ。ありますから、融資ルールその他の問題も歯どめをかけようといろいろやっているわけです。しかし片面につぶれる金融公庫があるなんということは、やはりこれは金融政策として足を引っぱると思うのです。あなた方ここで、そんなものつぶれてもいいというわけにはいかぬでしょう。あなたがここで、いやもう十七ぐらいはつぶれてもしかたがありませんというのなら話は別ですよ。しかしまさか幾ら高橋さんといえども、この席上で十七の信用金庫、四〇%以上もある信用金庫はつぶれてもしかたがございませんとはちょっと言い切れぬでしょう。どうですか。ですから言い切れぬのなら何とかしなければならぬのです。そういうものをやはり事前に、どういうかっこうでどういう処置をするということが多少検討をされるプログラムがない限り、さっきのように非常に苦しい状態が二年も三年も続く。また二年も三年も続かさせなければ、われわれは金融正常化はできないと思うと言っているのです。片方では少なくとも不当な歩積み両建ては切るのだ、こっちで追い込んでいるでしょう。とにかくこっちからも追い込み、こっちからも追い込む。しかもそれでつぶれないようにするのには、何か頭を使わなければどうにもならぬところにきているのではないか、どうですか。だから高橋さん、いまのつぶれてもいいかどうか。それじゃつぶさぬというためには、何か名案があるのか。
  152. 田中角榮

    田中国務大臣 もちろんつぶれては悪いわけでありますから、大蔵省はこういうものを育成強化していかなければならぬ。育成強化の方向は、具体的にいまここでは申し上げませんと先ほど申し上げましたが、それはあります。もっと率直に言えば、合併したり合理化は幾らでもあるわけでありますから、そういう問題はだんだんと正常になってくれば、いままでのように甘い考えでシェア競争に走っても、どんなことをしても、預金をしてくれれば全国一周旅行をしたり、香港まで招待したり、そんなことまでしてもやっていけるほど、正常化をすれば甘いものではありません。そういう意味で、各企業が合併したりいろいろなことをやっておりますが、やはりメリットのある合理化というものに対しては前向きでやらなくてはいかぬ、こういう問題になるわけであります。そういうことを言いたくないから黙っていたわけです。
  153. 堀昌雄

    ○堀委員 私も、何か合併とかなんとかいうことが、一つの何か吸収してどうかということでは問題があるのですけれども、いまのように合併することが合理化になって、そのことが資金コストを下げていくというような問題であるならば、私はそのほうがいいと思っているのです。だからその点は少なくとも預金者を保護するという一つの前提が、金融行政の一つの大きな柱なんですから、その点ひとつ十分配慮をして、この点は少し指導方針を明らかにしたほうがいいのではないか。くさいものにはふたで、いつまでもまあまあとやって、突然として非常な危機になってくるということは私は望ましくないと思うのですが、私はあえて金融正常化の問題で、一つその問題を提起しておくわけですから、前向きの検討をひとつお願いしておきたいと思います。  その次に、いまの二年定期の問題で、一年定期の継続のものがかなりあるのだから、それに報いなければならぬという変な話が出てきましたね。一体いまの一年定期の継続性というのは、都市銀行の総体で見て何%ぐらいあるのですか。調査されたことがありますか。
  154. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 具体的に調査するのはこれは非常にたいへんなことでございまして、はっきりした資料は出ておりませんが、かなりの部分が、一年たったらまた預けたいというふうになっているということはたしかであろうと思います。その割合が七割であるか八割であるかはっきりいたしませんが、たぶんその程度のものはあるんじゃないかと思います。
  155. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで大臣、これはやはり私、はっきり答を出すものは出したほうがいいと思うのです。そこできょうは、二年もの定期についての大蔵省の考え方を——二年定期の新設を全銀協が申請しているでしょう。これは大蔵省が許可をしなければ法律上できないのです。だから許可する意思があるのかないのか、これをきょうはっきりさしておこうと思うのです。
  156. 田中角榮

    田中国務大臣 いろいろ検討いたしましたが、現在の段階において、これを許可する気持ちはありません。
  157. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで二年定期の問題は、許可する腹がないということで、これは明らかになりましたが、あとに残っておる問題は、私はいま都市銀行が非常に目のかたきにしておるのは貸付信託の問題だと思います。そこでこの貸付信託の問題というのは、私もまだ十分に調べてないのですけれども、大体信託というものの本来の性格というものは、これは財産管理なんですね。ところが日本では、戦後そういう財産と名のつくようなものがほとんどなくなったものだから、信託銀行というものは、何か中期的な資金供給銀行といいますか、名前は信託銀行だけれども、長期銀行に対して、中期銀行というような名前が適正なような状態にきておると思うのですね。そこでこの貸付信託を含めての信託銀行のあり方の問題というのは、私はやはり長短金利問題というような、いろいろな問題が出る中の一つの大きな問題点になってきておると思うのです。先般も、武藤君が、ここで大和銀行の問題等について触れて、やや論議を呼んだわけでありますけれども、いまの貸付信託の状態というのは、それではもうこのままでいいのか。特にこの貸付信託というものが公社債その他の問題に寄与しておる点は私はあまり大きくないと思うのです。そこらにおいて、資金配分上の問題として、都市銀行は非常にたくさん公社債を引き受けさせられておって、この前私金融小委員会でもちょっと見たのですけれども、ともかく資金の量の増加よりたくさん引き受けさせられるというようなことが起きるというのは、都市銀行としては、やはり自分たちとして問題がある、こう考えるのは、私はある程度やむを得ないという気持ちがいたします。そうしてくると、今後その貸付信託というか、信託銀行のあり方というものを、いまのままでいいのか、少し検討を要する問題があるのではないか、こういう感じがいたしますけれども、大臣いかがでしょうか。
  158. 田中角榮

    田中国務大臣 この金利を引き上げるということを認めるということになれば、信託部門に対して、ひとつ今度入ってくるわけです。これを抑えるということになると、信託銀行も、普通からいえば、もっと金利を引き下げられるような状態をつくるように努力をしなければいかぬ。これは大蔵省が引き下げますというのじゃありませんが、やはり努力をしなければいかぬ。そうでなくて、いまよりもなお金利が上がるんだというような趨勢であるならば、公社債市場の育成なんというものはできるものじゃありません。社債発行条件をうんとよくしなければならぬ。うんとよくすれば、今度信託はそれに対応しようという姿勢がないのですから、信託自身が参ってしまう。こういうことになるので、やはり都市銀行の二年もの定期というものに対して、特利を認めないということになるならば、それに近いような、うんと開きがあって、金は年間五千億も六千億も信託に全部いってしまって、信託は財産管理ではなくて、のうのうと長期貸し付けをしているんだというような状態では調整がつかないわけでありますから、信託銀行もここらでひとつ大いに自粛して、自分たちも合理化をするんだという考え、自分たちがいまの状態でおるなら、公社債市場の育成というときには、社債の発行条件をうんと高くしなければいかぬ、いわゆる高金利の突破口になるんだというような役割りはしないという考え方を持たなければいかぬ。大蔵省自体も、言いにくい話ですが、やはりそういうことを相手にみんな言って、自分の特性を強調する以上は、やはり自分の義務も十分考えて、金融の正常化に協力してもらうというように、行政指導をしていくべきだと思います。私は人為的に下げていく、金銭信託や何かの金利をみな下げてしまうという考えではありません。いつでもそう取られては混乱が起きたり、いろんなことになりますが、そうではありませんので、やはりそういう姿勢で努力をするということでなければならない、こう思います。
  159. 堀昌雄

    ○堀委員 私も少し貸し付け信託はこまかい分析をしてから、一回信託銀行問題というのを少し触れてみようと思います。資金がどこにいったって、貯蓄になるのだから、いいのでありますけれども、しかし、いまの全体のバランスの中で見ると、確かに資金の伸び率は大きいわけであります。ですから、あまりに他と権衡が開き過ぎるということは、やはり何らかの格差があり過ぎるということの結果になっておるのではないか、こう思いますので、その点は少し検討の余地があると思います。ここらはひとつ大蔵省事務当局においても、今後もう少し調べて、適宜やりますから、あなた方のほうでも検討を進めていただきたいというふうにお願いをいたします。  その次に、実はけさの新聞でありましたか、見ておりますと、二回目の公定歩合が引き下げになったにもかかわらず、一般的な貸し出し金利はあまり下がっていないという実情のようです。これは新聞で見ておるだけで、私も実情がよくわかりません。そこで、ところが商社金利については四月の三十日にさかのぼって実は金利を都市銀行は軽減するということをけさの新聞でちょっと見たわけであります。私は金利の自由化を、これは大蔵委員になってからずいぶん長く議論してきましたけれども、どうも都市銀行その他に金利の自由化という問題についてはき違いがあるのではないかという感じをちょっと持っておるのです。私の言う金利の自由化という問題は、ある企業が非常にたくさん借りていて、少なくとも財務比率その他から見て、これ以上そこは借り入れをするのが適当でないときには、そういうところは金利を上げて、それが歯どめにかかるように、そこに多少のアローアンスを認めるということならば、私は金融正常化の中での金利の自由化だと思うのですが、どうも見ておると、中小企業金融のように、担保力なりその他において銀行はたいてい取っておるにもかかわらず、そういうもののほうは金利が高くて、大企業のほうはずいぶん貸していても、依然として安い金利で貸しておるということでは、金利の自由化ということではない。だから本来のあるべき金融の姿の方向に一歩ずつ進むというのならば、私はいまの臨時金利調整法の五厘幅の問題が、さらに拡大されてもかまわないと思うのですが、どうもそこらが都市銀行のほうは少しはき違えて、何か自分たちを守るのに最も都合のいいような金利のつけ方をしておるというのは、これは私は非常に問題があると思うのです。そこで最近、銀行局長のほうで、四月の三日ですか、二回目の公定歩合の引き下げがあってから、貸し出し金利はどうなっているのか、これは大臣も一回目のときには、あれで並み手の据え置きはよろしい、しかし二回目は少なくとも下げるべきだという発言をしておられたと思うのですが、私も二回目は、少なくともそれは全部一律に下げてしまえとは言いませんけれども、しかし、そういう非常に貸し出しがたくさんいっていて、これ以上貸すべきではないところは据え置いてもいいと思うけれども、そうでないところは下げるべきであろう、こういうふうに思っておったのですが、実情はどういうことになっているか、少しお話し願いたいと思います。
  160. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 二回目の引き下げからは日にちもあまりたっておりませんので、まだ統計的にも明らかではありませんが、確かに新聞等にありますように、日銀あたりの調べによりましてもあまり下がってない。しかしこれは御承知と思いますけれども、貸し出しというものは一ぺんに全部を貸しかえるというか、するわけじゃありませんで、だんだんに新しい貸し出しの分に新しいレートが適用されていくわけでございます。いままでの経験でいきますと、日歩一銭下がった場合に、半年経過いたしました後で都市銀行において一はその一銭の六〇%くらい、六割くらい、地方銀行においては四割くらいの低下が見られる、こういう状態でございます。ですから、半年たって六毛、地方銀行だと四毛ぐらいの低下にしかならない。そういうのが従来の実績で、これは上がったときもそれに近い状態でございます。つまり金利の変動を伴わない貸し出しが一部ある。都市銀行の場合のほうが、そのほうが少なく、地方銀行のほうは、そのほうが多い、こういう実績でございます。ですから、いましばらく時間をかけて見なければならないと思いますが、金利の自由化につきまして、いま堀先生が言われた点は、まことに痛いところをおっしゃるわけで、つまり自分の系列企業に対しては優遇的な金利をどんどん適用するが、そうでないものにはほとんど関係がないというふうな結果になりかねない。これが民間できめる自主的な金利のあり方を指導するにあたって私どもが一番むずかしいところだと思います。確かに財務比率、財務状態がよくないところには商い金利を要求し、財務的に見て非常に優良な会社には安い金利を適用してもいい、これが金利のメカニズムであると思いますが、現実には商社のごとく非常に銀行の土台骨をゆさふるような大きな借り入れをしておるところがあるわけです。貸し出しをしておりまして、それらの業績がこの三月期などは非常によくないのです。いろいろとひっかかりが生じまして、落とさなければならない焦げつきなどもふえておるようです。そういう点から見ると、商社のほうもかなり緊張しておるけれども、銀行もここで金利の面では多少助けてやらなければならないというふうな考え方をしやすいものでございます。そういうことが、商社なんかにはとにかく金利を下げてやろうという配慮が出て、ほかのものはあと回しになる、こういうことであろうと思います。私は、金利の自由化、そういう個別の企業に対する金利を自由にするという問題は、当然これは両建ての問題などとあわせてやるべきであって、両建てを思い切って減らすのならば、金利を上げても実質的には負担にはなりませんから、そういう方向で正常化がはかられることが一番望ましいと思っておりますし、実際にどういう企業に金利を安くし、高くするかは、相手の経営状態がいいか悪いか、財務状態のよしあしできまるわけで、大企業であるか中小企業であるかによってきめるべきものではない、この点では同感でございますが、どうやってそれを指導し、実現するか、非常に頭を使わなければならない問題で、むずかしい問題でございますが、できるだけそういう方向で指導してまいりたいと思っております。
  161. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで私は、いま商社金融で一斉に大手商社を下げるという場合に、ちょっとこれは調査をしてもらいたいのです。四月三十日から自分の系列の大手商社の金利を下げて、それによってそういう商社は何億という金利負担が軽減される。しかし、実際は、いまの中小企業のほうはちっとも恩恵に浴さないということ、それが資金偏在のもとになってきておると私は思うのです。商社だって金を借りるばかりで、そうたいして預けることのできる条件でもないと思うのです。まあある程度は、それはいろいろ操作があるでしょうけれども……。だから、やはり金融正常化の問題というのは、少しそういうけじめを正すことをきちんとしていかなければいけないのじゃないか、二年もの定期を出してくるその背景の中に、自分たちのそういう足らざる措置がそうなってもるという反省がないから、こういう問題が出てきているのじゃないか、私はこういう感じがしてしかたがないのです。ですから、この点、商社について大口の貸し出しが金利が下げられるくらいなら、中小企業についての金利をどういうふうに下げたのか、ひとつ各都市銀行について報告をとって当委員会に報告をしてもらいたい、こう思いますが、銀行局長、よろしいですか。
  162. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 四月末現在ぐらいではまだ幾らもこの効果は出ていませんから、もうちょっとお待ち願いたいと思います。
  163. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ参議院選挙が終わればまた国会もありましょうし、少なくとも大蔵委員会では、当委員会の金融小委員会も継続してずっとやりますから、その点ひとつ、この金利問題についても、都市銀行に対しての指導を明確にしていただきたいということを、特に大臣に要望いたしておきます。  その次にお伺いをしておきたいのは、本年度の経済見通しの問題で、実はいま一番顕著な問題が少し出てきていますのは、鉱工業生産の伸びがこれまで経済企画庁が出してきました経済見通しとやや狂ってきたという点であります。たしか政府の見通しでは、昭和三十八年度の鉱工業生産は一七二・幾らを予定していたのが、一七〇ぐらいに落ちてきておると思うのです。ですから、三十八年度でそれだけの相違ができてきたということと、現在の情勢を見ても、全体としてやはり在庫は必ずしもそうどんどん減っていないわけですから、鉱工業生産がそう急激に上がる要素はないのではないか、そういうことになると、政府の経済見通しというものは、これまではいつでも大幅に上へ出るというのが普通だったのですけれども、やや当初の見込みよりは低くなるのじゃないか、こういうふうに思うのですが、ひとつ事務当局のほうで具体的に答えていただきたい。
  164. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 四十年度の鉱工業生産の見通しは、堀委員御存じの、ことしの一月に立てました政府見通しでは、一〇・五%の生産の伸びを見ておるのでございます。しかし最近の情勢を見ますと、十一月ぐらいから生産の仲びが鈍化いたしておりまして、低迷しております。したがいまして、一〇・五%の生産の伸びがいくかどうか、まあ今後の状況を見なければわかりませんが、いまの状況では一〇・五%という伸びになるかどうか、少しむずかしいのではないか、こんなような状況でございます。
  165. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで大臣、私、この前証券取引法の代表質問をいたしましたときにもちょっと触れたのですけれども、本年度の大体の経済の見通しですね。政府は、大体初めはだめだけれども、後半はよくなる、こういうふうに言ってこられておるわけですが、私はそれは後半少しはよくなると思いますけれども、政府が期待するほどよくならないのではないか、いまちょっと三月決算等を見ますと、便乗減配というようなことで多少問題もあると思いますけれども、法人の法人税収はかなり下がってきておるだろう、本年度、そういうふうに見ていきますと、経済見通しとして、これまでの政府考えが、今日の時点に立つと多少修正も必要なのではないのか、こういう感じがいたしますけれども、大蔵大臣としてはいかがでしょうか。
  166. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど塩崎君が述べましたとおり、昨年の十一月ごろから一−三は悪かった。三月決算はあまりよくない。四−六の状態はまだわかりません。四十年度、名目で一一%、実質で七%ということでありますが、昨年は七・五%で、実績は九・四%、ことしは七%の見通しに対しては大体七%だろうという見通しを、私は前から申し上げておるわけです。昨年までは八%と言っても一〇%、七・五%と見っても九・四%、今度は安定成長で、企図しております。%という数字は大体七%だろう。ほっておくと七%を割るかもしらぬ。こういうような見通しを持って、年初からこまかく数字を見ておるわけであります。御承知のとおり、輸出は去年の経常で五千万ドルの黒字になっておるわけでありますし、世界各国の貿易の伸びは一一%に対して、二六%も伸びております。またことしの一−三、四−六もわれわれが考えたよりも輸出は伸びております。非常に安定成長の段階に入りながらも、国際収支は拡大一基調になっておる、好ましい状態であることは間違いありません。ただ七%がほんとうに七%というところだということになりますと、不況感というものはとれないわけであります。これは少なくとも去年の九・四%から比べると二・五%も割るわけでありますから、そういう意味で不況感というものは相当とれない。ですから不況感という、  一般的な不況感、ただ一〇%だったものが七%になったという気持ちの上で不況感に目を奪われては困る。しかし連鎖倒産とか中小企業の金繰りが非常に困るとか、こういう面は、実情から七%を多少こすような状態が起こっても、場合によってはうしろ向きということになりますが、そういう意味でも金を出してもつぶさないように、十分な配慮をしなければならぬだろう、こう考えておるわけです。ですからそうなると七%余になるかなという見方もありますが、七%ぎりぎりでしょう。場合によれば下がるかもしれぬといもうのにてこ入れをして、ちょうど七%か八%、こういう間のいままでなかった安定成長に突っ込んだ、私はこういう見方をしております。
  167. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと最後にてこ入れをして八%とおっしゃったのですけれども……。
  168. 田中角榮

    田中国務大臣 間違うと悪いから申し上げますと、だた、いままでの見方だと大体七%の見通しどおり七%だ、こういうことになっておりますが、ただその中で中小企業その他に対しては推移をそのまま待っておるというわけにはまいりません。ことしの設備投資の状況でも、四兆九千億というような大きなものの中で、急激に中小企業の分は減っておるわけでありますから、中小企業を倒産とかそういう状況に追い込むわけにはまいりませんし、当然こういう場合には中小企業にはきめこまかい施策をせなければならない。それでその部分だけが多少前向きになっている。ある意味ではうしろ向きの資金でありますが、てこ入れ的なものになるわけです。そういう場合でも、七%から八%をこすということはないでしょう、こう申し上げておるわけです。
  169. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、いま日本の全体の今後の経済に対する問題の対処のしかたは、これまでは重化学優先といいますか、そういうかっこうでいまの高度成長というものはドライブをしてきたわけです。この重化学優先できたものの部分は、おおむねみな生産過剰になっておる。構造的な問題は非常にはっきりしてきておるということになった現在の時点では、中小企業近代化のほうに多少力点を置き変えて、そういう形が多少安定成長の一番大きな柱になっていくのだ、こういう考え方に多少転換があるのだ、こう理解をしていいわけですか。
  170. 田中角榮

    田中国務大臣 中小企業につきましては、多少てこ入れぎみな状態を続けなければならないだろうという考え方でございます。
  171. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、さっき私が金融でやってきた問題が、ちょうど逆になっているわけですね。そういうふうに中小企業にてこ入れをしようと思っても、片方にはどっちかというと中小企業にてこ入れする資金的な条件というものが実はないのです。やはり重化学重点というようなかっこうの体制のままに、金融の姿勢全体がまだなっている。そうするとやはり金融政策全体を含めて、多少そういうふうな中小企業近代化の方向にやるような、具体的な何らかの指導方針というものが相当出てこないと、ただ口で、きめこまかくやると言ったところで、金がついてこなければもちろん問題は発展しないわけですから、そこらについて私はかねてから通産省の指導に非常に問題があると思っておるわけです。この間からもいろいろ問題にしておりますので、ぜひこれはそのうちに日を見て通産省も呼び、企画庁も呼び、大臣も出ていただいて、やはり通産がやっておる産業構造審議会の資金部会のような問題も、もう少しきめこまかい問題の処理がされてこなければいけなのではないか、こういう気持ちを持っておりますし、その点は実は通産は非常にそういういろいろなデータがラフであって、私に言わせるならば必要な企業別に−業種別ではなくて企業別に、その企業における稼働率の状態、そういうふうなものが明らかになって、そういう稼働率との見合いで設備投資が計画されていく、そういう見合いでできた設備投資には資金が必ずつくのだというふうな、資金的な裏づけのパイプがついて、そうして問題が発展するようになっていればいいのですが、資料も十分ないし、ばらばらでまことに不十分な措置が講ぜられておるわけであります。ですからそういう意味では、いま大臣の言われる中小企業をてこ入れするというか、近代化を促進するためには、もう少しやはり中小企業の実態を把握して、——一体中小企業は設備投資をするいっても、これはまたやや行き過ぎれば中小企業の場合ひっくり返るのですから、かなりそういう中小企業の実態を把握し、稼働率を把握し、いろいろな流通の状態を分析の上に立ってやらない限り、ただ金だけ出したら、逆目が出てくることは明らかだと思うのです。そこらについて私は政府が全体として、通産を含め、各省を含めて全体として中小企業についてのこまかい分析と、それに対してのこまかい指導、配慮なりというものが行なわれなければ、いま大臣の言われたようなことが具体的にはならないのではないか、こういうふうに考えるのですけれども、大臣、その点いかがでしよう。
  172. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、大企業は生産調整を進んでおりますし、今度の設備投資の状況を見ましても、大企業はほとんど設備投資の計画を持っておりますから、私は大企業はもう落ち込んで大体底入れだと思っておるわけでありまして、これよりも不況化を招くというような状態ではないという考えです。ただ中小企業は大企業自体が中小企業に対する下請代金の支払いもあまりよくありませんし、それから設備投資を見ますと、過去において二〇%余も中小企業が伸びておったものが、中小企業の伸びはほとんどないという状態であります。ましてまた中小企業に対しては、金融機関が大企業に貸し出しを詰めるよりも、より内容をよく把握しなければ金も貸せない、こういう状態でありますから、どう考えても中小企業に一番問題があるとしか思えないわけです。ですからこの間から私も財政投融資の中で、政府三機関等は中小企業向けの貸し出しはひとつ繰り上げても貸し出ししなさい。それからもう一つは四十年度の予算の中でも、公共投資の中で、中小企業がいい時期にやらなければならない公共投資とか、いろいろなものがあります。そういうものは、よく内訳を見て、中小企業向けのものに対しては執行をやりなさい、こういっておるわけです。そればかりではなく、いまコールが下がっておるという面もありまして、指導のいかんによっては中小企業専門金融機関である信用金庫とか相互銀行は、比較的に資金は潤沢でありますから、こういう面に対してももう少し貸し出すようにという問題もあります。地方銀行や都市銀行には相当資金募集がよくなっておりますし、中小企業に対しても先ほど申し上げたようにうしろ向きとさえいえる金も出さなければならない。あまり合理的に締めるために倒産をするというような状態は避けなければならぬという金融指導もしておるわけであります。私はその意味で、あとは下請代金の支払いというもの、これはいままで下請代金に払う金を土地やいろんなものに投資をしておった。そのために手かせ足かせになって、えらい目にあったという——今度の更生会社などの実体は大体そうですから、そういう意味で借りた金はひもつきでなくても、中小企業にストレートに流れるというような状態は昨年よりもことしは確立されておるわけであります。ですからそういう面をこまかく政府が実態を把握して、押すものを押して流すものを流せば中小企業のてこ入れにはなる。中小企業と大企業とのバランスがとれて、大体七%ないし八%の正常な経済成長が期待できるだろう、こう申し上げておるのであります。
  173. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで主税局長に伺いますけれども、いまの中小企業のほうでそういうふうにてこが入って、七%なり八%なりが維持されたとして、税収の面で見るとどうですか。中小企業の場合にはこれまでもたいてい赤字の場合が多くて、だからそこで、なるほど生産その他はふえてくるという意味で、ある意味ではそれはGNPはふえるかもしれないけれども、税収入へのはね返りという点では私は必ずしも十分な状態になってこないんじゃないか、こういうふうに思うのですが、あなたのほうは、現在までの、最近の一−三月のトレンドを見て、今後の四十年度の税収を推定するとすると、どんなぐあいになると考えていますか。
  174. 泉美之松

    ○泉政府委員 四十年度につきましてはまだ年度に入ったばかりございまして、四月の税収の実績もまだ判明いたしておりません。したがって四十年度がどういうふうになるかということを正確に申し上げるわけにはまいらないのでございますが、お話のように、この一−三月の税収の状況は芳しくございません。三十九年度におきましては、補正後予算に対しまして二百数十億税収の赤字を生ずる見込みでございまして、こういった状況からいたしますと、もちろん四十年度の予算を見積もる際におきましては、こういった三十九年度の経過中の経済の沈滞と申しますか、この点をある程度予測いたしまして税収見積もりをいたしてございますけれども、しかし現実はわれわれが予測しておったよりももっと悪い状況のように見受けられます。もちろん四十年度の経過中には、おそらく後半にはよくなっていくものと思うのでございますが、御承知のように税収のほうはそういった景気の上昇と若干ずれてまいりますので、四十年度後半期によくなりましても、税収としては四十一年度の税収になりまして四十年度の税収にならない。こういった点から考え合わせますと、三十九年度の実績が落ちた分は少なくとも四十年度の税収に影響するだろう。そういう点を考えますと、四十年度予算の租税及び印紙収入額を達成するのはなかなか困難ではないか。その金額が幾らになるかということはいま正確に申し上げられませんけれども、かなりむずかしい問題があるというふうに考えております。
  175. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、いまのように、いまのままでいくと少し落ち込むんではないか。しかし大体最近の天候の状態を見ますと、各地に冷害もだいぶ出ておるし、いろんなことでまたどうせ補正予算は組まなければならぬという問題もうしろに控えておりますし、これはもうなかなかたいへんなことになってきたなという感じがするのですが、大臣、今後のそういう税収の見通しの上に立って、しかし補正予算は何とかやはり出さなければならぬ問題というのはどうしても出てくるんじゃないか、そういった気持ちはあると思いますね。その場合における財政のあり方というのは、大臣はそれはどういうふうに処置をされるお考えか、伺いたいと思います。
  176. 田中角榮

    田中国務大臣 災害の問題につきましては、五百億の予備費を幸いとったということで、それでまかなうということになると思います。しかし補正要因はそれだけではないわけであります。義務的経費の精算というものもありますから、そういう意味では、財源は非常に苦しいということは事実でございます。ただやはり補正予算というものは組めば幾らでも自然増収があるんだ、補正予算でもって使ってしまってもまだあるんだというようなことはほんとうの財政の仲間じゃないんですね。私はやはり本格的な財政になってきた、こう思います。そうでなければ、あれも政府持ち、これも政府持ち、まあ国民が負担するとか、こういうものは合理化するとか、そういうものはなかなか進まないで、すべてが税収でまかなえる、まかなうべきだという考え方は、やはり税収というものがいままで多分にあったというところにそういうイージーゴーイングな考えが生まれるのであって、私はやはりこういう安定成長になれば、税収は当然安定的に入ってくるわけですから、その税収でどうするか、その税収が少し落ち込むとすぐ公債だ、それはだれでもやれる財政論で、そういう甘い考えではほんとうの政策は生まれないと弔う。そういう意味でたいへんではあります。たいへんではありますが、ない中からくめんしながら合理的な整備を行なう。補正財源はいまないわけですから、補正が出ないことを祈りますけれども、やはり出た以上は何とかしなければならぬしいうことで、いまから検討しなければならないし、検討しております。具体的には申し上げられませんが、いずれにしましても、そのときになればどうするかというようなことは日夜検討いたしております。
  177. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお答えになれないということですが、しかしもうあるものはきまっているのですね。インベントリーをいつするのか、ともかく何もないところから、幾ら田中さんでも、無から有を生ずるわけにはいかないのですから、やはりどっかにあるものを使うということになると思うのですね、結局。私はこの場合に特に大臣に一つ申し上げておきたいことは、税収がそういうことで非常に不十分だからといって徴税が強化されることのないようにだけは、これは十分配慮をしておいてもらわないと困ると思うのです。全体の税収が下がってきて、それを少しでも落ち込みを防ぐために——これは経済全体の形で落ち込むわけですから、徴税の問題とはおのずから別個の問題でありますから、その点はひとつ私特に大臣にこの要望をして、そういうことはやらぬという御発言をきょうはいただいておきたいのです。徴税がノーマルな状態で行なわれる。そういう税収の落ち込みとは無関係に適正な課税が行なわれるというお答えをいただいておきたいのです。  同時に、この間、総理は、財政の繰り上げによってでも、参議院選挙が当面あるので、そういう景気上昇策を講ずべきではないかというようなことが新聞に出ました。事実かどうかわかりませんが、新聞に出ました。いまの話を聞いてみると、そういうようなことができる客観情勢ではないのではないか、そういう問題を含めてちょっとお答えを願いたいと思います。
  178. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げましたが、経済は正常な状態で進むであろう、安定成長は確保できるであろうという考えでありまして、財政を繰り上げるとか、刺激をするとか、そういう考え方をいま持つべきではないという考え方で、財政投融資とか中小企業向けに対しては積極的にやりますということを申し上げているわけでございます。  それから徴税は、これはもう課税そのものが厳正公平に行なわれるべきであって、一定の数字を設けてそれに追いつくように徴税強化をする、そういうことがあってはたいへんであります。絶対にいたしませんと申し上げておきます。
  179. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  180. 吉田重延

    吉田委員長 次回は、明十二日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十九分散会