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1965-04-27 第48回国会 衆議院 大蔵委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月二十七日(火曜日)    午前十時十分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    奥野 誠亮君       鴨田 宗一君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       地崎宇三郎君    西岡 武夫君       濱田 幸雄君    福田 繁芳君       毛利 松平君    渡辺 栄一君       渡辺美智雄君    岡  良一君       佐藤觀次郎君    只松 祐治君       野口 忠夫君    平岡忠次郎君       平林  剛君    藤田 高敏君       春日 一幸君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (国有財産局         長)      江守堅太郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君  委員外出席者         大蔵事務次官  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (大臣官房長) 村上孝太郎君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         農林技官         (林野庁業務部         長)      若林 正武君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 四月二十六日  委員春日一幸辞任につき、その補欠として佐  々木良作君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員佐々木良作辞任につき、その補欠として  春日一幸君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  証券取引法の一部を改正する法律案内閣提出  第八九号)  金融及び国有財産に関する件      ————◇—————
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  先般新たに就任されました佐藤事務次官村上官房長谷村主計局長よりそれぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。佐藤事務次官
  3. 佐藤一郎

    佐藤説明員 私、今回主計局長から事務次官にかわりましたものでございますが、長い間、主計局長の時代にはたいへんどうもごやっかい、御迷惑をおかけいたしまして、心からお礼申し上げます。  事務次官になりますと、留守部隊ということで、めったに国会にお伺いする機会がございませんが、どうかひとつ今後もよろしくお願いいたします。(拍手
  4. 吉田重延

  5. 村上孝太郎

    村上説明員 今回、谷村さんのあとを受けまして新しく官房長に任命されました村上でございます。当委員会には直接、間接にいろいろごやっかいをかけることと存じますが、どうぞよろしくお願いいたします。(拍手
  6. 吉田重延

  7. 谷村裕

    谷村説明員 官房におりましたときにはいろいろ当大蔵委員会皆さま方に御叱正、御指導をいただきましてありがとうございました。  今回主計局長を拝命いたしましたが、何ぶんにも主計局の扱います仕事、いいよいよむずかしさ、困難さを加えることと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手
  8. 吉田重延

    吉田委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  9. 吉田重延

    吉田委員長 速記を始めて。      ————◇—————
  10. 吉田重延

    吉田委員長 証券取引法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐藤觀次郎君。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 今度の証取法改正については、いろいろと問題があると思うのですが、免許制になりますと、その間にいろいろな弊害が起きるんじゃないか、また免許制になればいろいろと運動があって、それぞれいろいろと標準がむずかしくなると思うのですが、その点は大臣どのようにお考えでしょうか。
  12. 田中角榮

    田中国務大臣 いままでは届け出でございまたから、届け出は比較的安易に認められ、同時にどんどんと自然淘汰をされていくということでございます。しかし免許刷になりますと、各種免許に対してきびしい免許基準があると同時に、大蔵省としましても、みずから免許をしたものにつきましては、責任をもってこれを育成強化していかなければならないということでありますから、届け出制のように安易な営業態度は許されないと思いますけれども、結論的には、証券取引業者として万全な体制がつくられるということを目標にして、免許制に切りかえるということでございます。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 証券界の一番むずかしい点は、四大証券が大体全体の七割近くの株を持っておるのですが、そのほかの群小の証券との間のつり合いという問題がいつも問題になるのですが、その点は今度の改正法の中でどういう方法を講ぜられるのか、その点も大臣に伺いたいのです。
  14. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、目標としましては、いまの証券業者実態というものが、将来の日本資本市場のにない手というものにしては規模が小さいというふうに考えております。しかし現実的な問題としては、四社と他の業者との間には格差がございますので、この格差を是正をするというのは、四社を押えて小さなものにくっつけていくというわけにはまいりませんので、四社のいわゆる正常な活動、四社が株価に影響を与えるというようなことを十分に配慮をしながら、中小業者の拡大、だんだんとレベルアップをしていくというような方向で進めてまいるというのが基本的な考え方でございます。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 証券業堅実化ということは非常にむずかしい問題であり、また大事な問題であると思います。しかし今度の不況等でも、中堅の中では、黒字を出して相当の成績をあげている業者もあるわけであります。だからそういう点から考えると、東京の取引業者は百軒ばかりあるのですが、その中でもつぶれたのが幾つもないということで、中小証券というものの存在がやはり認められておると思うのですが、これらの中小証券に対して、法律でどんなような保護をするのか、あるいは政令省令などで何らかの方法をとっていくのか。その点を伺いたいと思います。
  16. 田中角榮

    田中国務大臣 中小証券をだんだんと大きなものに発展をせしめていくというような方向で、行政指導をしてまいるというのが基本的なことでございます。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから証券界の不振ということは、いまの証券実態から考えると、ちょっと不思議なような感じがするのですが、これらの問題の中で増資の問題などがこれらの証券の不振の一つ原因をなしておるんじゃないかと思われますが、その点についても大臣どのようにお考えになっておられますか。また何らかの処置をとられますかどうか、その点を伺いたいと思います。
  18. 田中角榮

    田中国務大臣 増資に対して大蔵省がどうこうするということはございませんが、増資をする場合に、少なくとも市場における株式の状態というものはまず把握しなければなりませんし、バランスをとるためには、証券保有組合共同証券のようなものをつくってたな上げをしなければならなかったという過去の状態もございますので、増資が行なわれる場合、これ以上市場圧迫要因にならないという基本的な考え方をまず持たなければなりません。同時に、正反対な面、いわゆる今般の市場不況原因一つとしましては、いままでの日本投資家というものは、採算性目標にするということもございましたが、主として増資払い込みという問題に非常に期待をかけたり、そういう状態がございました。そういう状態は好ましい状態ではございませんが、現実的には確かにそういう面もあったわけでございます。でありますから、増資ストップをされたということが市場不人気の一つ要因であるということも言い得るわけでございます。でありますので、証券事情等十分勘案をしながら、優秀な企業に対して増資を行なうということが可能であるという判断ができました場合は、業界の自主的な判断を基礎といたしまして、しかし当然大蔵省にもお話もございますし、大蔵省としても御相談にあずかりながら、全くオールストップという状態ではなく、刺激要因にもなると思いますので、一部に対しては増資が再開をせられるという動きがあるわけでございます。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これは松井証券局長にお伺いしたいのですが、この法律が非常に大まかなところが多いので、省令とかあるいは政令などによられる点が非常に多いと思うのです。これは非常に業者に不安を与える原因をなしておりますが、この間、先日の日本経済にも発表されましたけれども、ああいう基準証取法改正政令省令については大体の構想がまとまっておるのかどうか、その点をひとつ松井局長から御説明願いたい。
  20. 松井直行

    松井政府委員 証券取引と申しますと非常に複雑多岐でございまして、経済情勢の変化に応じまして、コントロールのルールあるいは基準を変えなければならないという問題が一つと、非常に技術的な問題が一つと、二つの理由で相当程度政省令に委任した面が多いということに相なっております。これはちょうどアメリカにおきましても、法律改正をいたしまして、SECが実際法律が動くようにするのには、SECのレギュレーションでやっておるということと全く符牒を合わせておるという状況でございます。ただ、法の精神を曲げないように、かつ、現状を無視したことをやらないように、今後法律が施行されるまでに重要な点につきましては、証券界代表者との間に十分打ち合わせをいたしまして、政令省令内容をきめることにより、本審議会において審議されましたこの法の精神にのっとりまして適確行政を実施していきたい、こう考えております。
  21. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 先日参考人を招致した中で、中小証券を代表した武井参考人からの話によりますと、証券実態では、資本金が大きいというばかりでなく、むしろ業務内容ということが非常に大事だ。だから会社信用とか、いい悪いというようなことは、必ずしも資本金ということではないということを言っておられましたが、その点で、今度の免許制基準になる資本金というものが、証券界にいろいろ不安を与えておる原因をなしておりますが、その点については、資本金が大きいということだけではやはり私は免許基準にならぬと思うのですが、その点は大臣はどのようにお考えになっておられますか。
  22. 田中角榮

    田中国務大臣 もちろん資本金だけで律せられるものではございません。これは現状において、四社が無配であっても山種は有配であるという、こういう状態を見ればすぐわかるわけでありますから、これはもう資本金だけで律するということはもちろんございません。資本金もまた組織も、歴史も、その業務内容も、いろいろなものを勘案しなければなりません。しかし幾ら内容がよくとも、その資本金があまり少ないということをそのままにしておくということは、これはやはり、資本金一つ基準一つの要素であるということも間違いありませんので、いまにして最小限言われるような目標をつくりまして、それには現在の業者が十分それにこたえられるような経過規定をつくってございますので、資本金があまり小さい——いまのいろいろ問題を起こしております業者状態でも、みな自己責任というものが非常に小さいというところに問題がありますので、資本金だけで律する気持ちはございませんが、ある意味においては、やはり適当な資本金の額まで経過規定を設けて引き上げてまいりたい、こういう考えでございます。
  23. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 昭和二十三年ごろだと思うのですが、戦後初めて証券民主化というのがいろいろ議論されましたことがあることは、大臣は御存じだと思うのです。そこで、私たちは、投資家のためにも、現在のような不振の状態になるということは、やはり証券が非常に危険な投資であるというような感じを与えておると思うのです。そこで、これは安心してこの証券が買えるような状態に戻す、平常に戻すというようなことのためには、やはりこの証取法改正によって、そういうような大衆に証券というものは決して投機的なものじゃないというような、こういう空気を助長する必要があると思うのですが、その点は大臣どのように思っておられますか、伺いたいと思います。
  24. 田中角榮

    田中国務大臣 まさにそのとおりでございます。いま私は国民各層証券投資を手控えておるということは、ただに産業の不振というようなものだけではないと考えております。これは取引所が上場しておるものが相当高い配当をしておって、短い時間にすぐ倒産に近い状態になったり、でありますから、上場しておるというものに対しての基準と、少なくとも取引所が認めたものに対しては、投資者が外部的に見て信用できるというような、自信も持てるような状態にならなければなりませんし、同時に、取扱い業者というものが非常に事故を起こす、こういうような問題に対して不安を持っておりますから、業者を育成して——まあ郵便局に預けておけば非常に利息は少ないけれども、これは必ず非常に安心であります。銀行はその次に安心だ。だんだんとやっていきますと、証券のほうは近くに事故があったりというようなことで、やはり証券業者というものをもっと投資者信用してかかれるというものにもしなければならぬわけであります。でありますから、発行会社企業内容を十分よくするということ、企業内容が外部に明らかになって投資者がそれを自分の責任において判断できるような状態をつくり、取り扱い業者も正しく信用が保持できる、こういう状態をつくっていくということは、国民証券投資を活発にする一つの道だ、こういう考えでございます。
  25. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 今日証券の不振の問題の中にいろいろ議論があるのですが、そのものの一つに、証券取引所構成なり運営がまずいというような声も聞いておりますが、大臣は何かこの証券取引所などの改正について思い当たられる点があるかどうか。また、そういうものについて何らかの改革をされる御意思があるかどうかということも重ねてお伺いしたいと思うのであります。
  26. 田中角榮

    田中国務大臣 証券取引所をもっと強化したいということは基本的に考えております。今度の証券取引法改正におきましても、証券取引所をもっと強化したい、こう考えたわけでございますが、証券取引法においては、大蔵省証券届け出をした者に対して検査をすることができるという大蔵省検査権と、もう一つ証取法による公認会計士権能をどうするか、また責任をどうするか、こういう問題と、証券取引所と三つの問題があるわけです。ですから総合的に大蔵省検査権をどうする、それから証券取引所権能責任をどうする、公認会計士上場会社に対する責任をどうする、この問題を十分検討して、バランスをとらないと、どうしても早期に結論を出すことはできなかったというので、証券取引法の第二段の改正をお願いするという場合には、当然取引所構成権能、こういうものを強化していくという面で御審議をいただく、二段がまえになっておるということでございます。
  27. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いろいろお伺いしたいことはたくさんありますが、もう二、三の点だけお伺いしたいと思います。  この資本市場整備のことにつきましては、これは日本資本主義産業からいえば、これはもうやむを得ないことであるし、また至当なことだと思うのですが、しかし本委員会でもたびたび問題になりましたわが国の実情に即した職能分化制を履行させたいという声が多いのでありますが、そういう点について、何か具体的なお考えがあるかどうか、伺いたいと思います。
  28. 田中角榮

    田中国務大臣 銀行につきましては、職能分化をいたしておるわけであります。いたしておりますが、いますぐすべてのものに対して職能分化をするということにもいろいろ問題がございます。でありますから、今度の改正案では、御承知のとおり、免許をするときにはあまり規模が小さいというものに対しては職能分化を行なっておりますが、だんだん規模が大きくなって、その責任が持てるというものに対しては、総合業者になり得る、こういうことでございます。これは大体ほかの法律でも、そういうことをやっております。建設業等につきましても、ある資格を持つものはどの程度までできる、どの程度規模以上のものに対してはどういう資格、どういう組織を持たなければやれないというように、その責任という意味から、そう規定しておるわけでございます、しかしこれは職能分化を徹底的にやっておるのは、アメリカでございます。日本アメリカのように非常に市場の大きいものと同じような状態が一体できるのかという問題もございます。また中小企業等金融も確保するとかいう面に銀行職能分化をやりましたが、一体これがよかったのかというような議論がたくさんございますが、私はこのほうがすっきりとしますし、責任も明確になりますし、そういう意味で、将来だんだんと市場が大きくなる場合、職能分化というものはやはり進める、こういう基本的な態度をとっておるわけであります。
  29. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点大臣にお伺いしますが、いま問題になっておる取引所改正のほかに、証券業協会改正問題と、それから有価証券発行制度整備というような二つの問題をどのように考えておられるか、どのように実行していかれるのか、これをお伺いしたいと思います。
  30. 松井直行

    松井政府委員 証券業協会につきましては、ある意味におきまして、証券取引所と同じように、証券業者組織します団体でございます。何でもかでも政府統制下にあるというよりは、むしろ証券取引特殊性にかんがみまして、証券業者がみずから商いのルールなり態度を律するという意味におきまして、証券業協会の果たします役目は非常に大きなものがございます。現にアメリカ等におきましては、証券業者に対する検査権も実は大蔵省SECが直接発動せず、証券業協会がみずから発動する。それから証券業協会ルールに違反する不適格な業者は、みずからそういう内部規律でもって排除するということに相なっております。したがいまして、日本におきましても証券業協会を全国的に一本にするとか、自主規制の力を強めるとか、それに対応いたします大蔵大臣監督権というものにつきまして十分考慮を払いまして、自主的な機関としての機能を発揮するように、これも証券取引所の機構及び運営あり方とあわせて検討したいと思っております。  それから有価証券発行制度整備改善の問題でございますが、いま大臣からお答えになりましたように、有価証券の報告とかあるいはまた公認会計士監査証明というものにささえられている問題でございます。従来からこの制度の本来の趣旨でございます。投資家に真実の企業経理内容を公開する、その資料に基づきまして投資家が社債を買う、あるには株を買うというのが基本的な証取の一つの筋の大きな柱になっております。むろん企業が正直な財務内容を公表するということは、企業家自身責任でございますし、その自覚に待つというのが本来でございますが、大蔵省、つまり投資家企業との間に公認会計士というものを介在させまして、これによる監査証明というものを徹底させていこうということでございます。この制度アメリカから輸入し、また全面監査に移りましてから日も浅いわけでございす。昨今倒産会社が出てまいりました例にかんがみまして、公認会計士機能を十分発揮してないというおとがめはこの場でも十分受けておるところでございますので、公認会計士協会強化等、あるいは共同組織体をつくるとか、あるいは監査基準の徹底的な改正をやるとか、あるいは公認会計士に対する大蔵省監督権を厳格にいたしまして、公認会計士規律保持をもう少し徹底さそうという意味におきまして、この面につきましては現在企業会計審議会等にも諮問いたすような方法で着々検討を進めておる段階でございます。
  31. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 最後に証券局長にお伺いしますが、先ほど申しましたように、今度の法律の中では、政令省令によっていろいろ具体的な問題が出てくる場合が多いと思うのです。そこで、いつまでにこの省令政令整備されて発効されていくのか。これは施行日が十月一日となっておりますから、それほどまでにうまく省令政令というものがこの法案に並行して施行されるのかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  32. 松井直行

    松井政府委員 法が十月一日を施行日と予定いたしております。それまでにできるだけ早く内容を固めたいと思っておりますが、何ぶん複雑多岐にわたる問題もございますし、それから証券界と識者との間におきまして、相当程度意見も聞き、調整を行なうということも必要かと思いますが、本法案が上がりましたならば、少なくとも一、二ヵ月くらいのうちには、その骨子は固めてしまいたい、こういうふうに思っております。
  33. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 希望ですが、この間の参考人意見からもいろいろ伺ったのでありますが、この法律には政令省令問題等がからまって非常に不安な点も決してなしとしない点が多いので、ぜひひとつそういう点を整備して、本法案が成立した後には十分に手を打たれることを希望して私の質問を終わります。
  34. 吉田重延

  35. 堀昌雄

    堀委員 ただいまの佐藤委員質問に対しての大臣の御答弁が、ややちょっと明確を欠くような点もありますので、私は大体三点ばかりだけ確認をしておきたいと思います。  昨年の四月八日の日に、私当委員会におきまして、今後のあるべき証券会社取引所その他資本市場全体の問題について論議をいたしました。そのときに大臣おおむね私と同意見だという御答弁がありまして、今日提案されております法案というものは、大体そのときの骨子がおおむね盛られておるように私も理解いたしております。ただここで問題になりますのは、現在の証券界全体の問題とあるべき姿をいかにして結びつけていくかというところが実は一番大きな問題であります。ただ私は本日までのいろいろな審議経過を聞いておりますと、やはりどちらかというと現状のほうに比重が少しかかって、あるべき証券市場資本市場の姿がやや少し明確さを欠いてきつつあるような感じがいたしてなりません。そこでやはり今後の方針を明らかにしていただいて——もちろん私も現状を無視するものではありませんから、現状出発点として、その経過においてはいろいろと配慮されるべき点、行政上のいろいろな取り扱いがあってしかるべきだと思いますけれども、現在は非常に明確でありますが、将来がはっきりしていないと実は問題はうまく発展をしていかない、こう考えるわけであります。そこで、今回の証取法改正の中では、現在あります非会員及び会員という問題を離れて、同じように免許証券会社となるわけでありますが、そうなりますと、当然に取引所あり方というのは、この証取法との関連では現行から変わってこなければならないという必然性が実はこの証取法の中にすでに盛り込まれておるわけであります。で、証取法改正によって免許が実質的に行なわれる時期というのは、現在の業者につきましては今後三年間の猶予期間があるわけであります。そういたしますと、あとの残されております取引所の問題、証券業協会あり方等については、当然私はその免許の行なわれる三年先の時点では全体がセットとしてそろってこなければ、この証取法というものの意義が非常に減殺される、こういうふうに考えるわけであります。ですからもちろん今後先ほど大臣お答えになりましたように、公認会計士の問題、これも私が当委員会でかねてから問題を論議をしてまいっております件でもありますし、さらに公社債市場のいろいろな育成の問題それから証券金融の基本的なあり方の問題、いろいろと今後その間に整備しなければならないものはありますけれども、しかし最終時点は私はいずれにしてもこの免許制の発効する時期ということになるに間違いがない、こう考えるわけであります。ですからこの証取法改正を契機としてスタートする諸般の改正については、要するに三年以内にすべてが完了するということが当然目途でなければならない、こう考えますが、大臣いかがですか。
  36. 田中角榮

    田中国務大臣 それはまさにそのとおりだと思います。私はもっと早く、いまの株式市場資本市場状態考えても、一日も早くあらゆる法制の整備というものを行ないたい、こういう考えであります。
  37. 堀昌雄

    堀委員 私も早くできればそれに越したことはないのでありますが、しかしそれでは時期をいつと明確にできませんから、最終時点だけをいま明確にしたわけでございますから、その点はいまの御答弁で確認をいたしました。  その次に職能分化の問題についてのいまの御答弁がありましたが、やや前段のほうと後段のほうでニュアンスが違っておりましたから、この点をちょっと明確にしておきたいと思います。いま職能分化の問題で一番重要なのは小さな証券会社の問題ではないのでございます。要するに、四大証券がディーラーを片手で行ない、片やブローカーを行なってきたことの中に、実は今日の証券市場不振の一つの大きな原因が含まれておるわけでありますから、私どもは職能分化の問題の一番重点はこの四社に置いているわけです。非常に小さな証券会社になりますと、これはおのずから何をやるにも限度がありまして、ブローカーとディーラーを併用したから非常にそれによって顧客が被害を受けるという率は、四大証券の場合に加べるとやや違った角度になるわけであります。もちろん全体として私は何も四社と中小とを区別するわけではありませんけれども、証券会社あり方としては職能分化がされるということが、私がいま前段で申し上げましたあるべき証券市場の姿である、こう考えておるわけであります。ですから、その点も、これは私三年というようなせっかちな時間設定をする考えはございませんけれども、しかし、少なくとも今度の証取法改正がスタートした土台の中には、あるべき証券会社の姿というものは職能分化ということが明確にされるということがこちら側にあって、しかし現状はこういう状態だ、それをどうつないでいくかということは別として、要するに目的とするところは職能分化にあるのだということは明らかにしておいていただかないと、これはややもすると現状のほうに引っ張られがちになって、本来のこの法律が目的とした業務別免許——及び当分の間はそれに条件づきの兼業の承認といいますか免許の併用といいますかそういうことになるわけでありますけれども、ですからその点を大臣に明らかにしておいていただくことが、証券会社もみずから覚悟をきめてその方向にみずから進んで努力をされることになるのじゃないか。その点があいまいになりますと、ややもすれば現状のほうに比重がかかって発展方向が遅々として進まないというおそれもありますので、この点はひとつ大臣から明確な御答弁をいただいておきたいと思います。
  38. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、先ほどの答弁にもあいまいなところがございましたが、初め確かに私の考え方の中にあいまいなものがあったのです。それは、当初は、現状が経営が成り立たないということを主眼にいたしますとどうしても職能分化を早急に進めると、角をためて牛を殺すようになる、そういう意味で、証券業者実態をよくするには、職能分化をあまり進めてはいかぬという考え方でございましたが、この法律改正審議する過程で事務当局とも話し、また私の意見も述べたりいろいろしてみた結果、究極の目的といたしましては職能分化に踏み切った、こういう次第でございます。でございますから、職能分化を進めていくということは基本的に間違いありません。しかし、その経営が成り立たない、角をためて牛を殺すような状態になることはこの法律の企図するところではございません。現状を十分把握しながらだんだんと職能分化を進めていくという方向指導するということに間違いありません。
  39. 堀昌雄

    堀委員 いまの御答弁で、私非常にこの問題は明確になったと思います。私は、日本金融市場のいろいろな問題について分析をいたしてみますと、なるほど経済は流動的でありますからある時点で考えたことが必ずしも全部そのようにうまくいかない場合も起こり得ると思います。ただしかし、これまでの金融なり全体の行政の中ではビジョンを欠いていた点にややもすれば混迷におちいらせた一つ行政責任があるのじゃないかということを実は痛感をいたしておるわけであります。そこで、いまの証券市場あるいは資本市場の問題についても、あるべきビジョンが明らかになったときは、業者の人たちも行政を担当する人たちもそこを目途として歩けばいいわけでありますので、その点は単に資本市場の問題にとどまらず今後の金融行政全体としての総括的なビジョンがまだ私は要ると思うのであります。資本市場の問題は、あくまで金融全体の大きな問題の中の部分でありますから、この部分だけはあるべき姿になってもその他の部分が非常におくれて停滞をしておれば、これはその他の部分が足を引っ張りますから、せっかく私どもが証取法改正を行なう中でどんどん前向きに歩を進めたくてもいまお話しのように他の誘因によって角をためて牛を殺すかっこうになることもあるわけであります。ですから、その点についてはまた私ども、当委員会で今後とも日本のあるべき総合的な金融政策のあり方がより論議をされて、その一環としての資本市場あり方ということになるのが適当であるわけでありますが、何さま資本市場の問題なんというものがあり過ぎたので、ここが端緒となってこういう形が出ておるわけでありますので、大臣、今後いつまで大蔵大臣でおられるか、きょうの新聞ではもうやめたいのだというようなことを長岡かどこかに帰って言っておられるようでありますが、しかしあなたは自民党の中における幹部として今後もおやりになるのでありますから、日本の経済について非常に重要な金融の問題のあるべき姿が明確でないということは、私はやはり望ましくないと考えますので、ひとつ今後私どもは当委員会金融諸立法の改正を逐次行なうことによって日本金融のあるべき姿へ一歩ずつ近づけていくということにいたしてまいりたい、こう私は考えておるわけでありますから、そういう意味を含めて十分大臣にこの点を明確にしておいていただきたい、こう考えたわけでございます。  最後に、今後の政省令の問題でありますけれども、政令省令等の問題は、私は固定的に考えているわけです。と申しますのは、現在が出発点。それから究極の部分はかなり離れておりますから、法律は、私はこの法律で究極点までいけると思いますが、その間における政令省令はその段階その段階に応じてやはりレベルアップをしていきませんと、いつまでも一本出したものだけで停滞をしておったのでは問題が片づかないわけであります。そこで、私は少なくとも今後資本市場証券会社あり方、いろいろな金融上の諸問題等、全体の経済の状態の分析を進めながらその時点その時点に最もマッチをした政令省令等の改正が行なわれてしかるべきものであると私は考えておるのでありますが、基本的な考えについての大臣答弁を伺いたいと思います。
  40. 田中角榮

    田中国務大臣 まさにそのとおりであります。この間からの質問もございましたように、政省令に移す部分の委任立法が多いわけでありますが、それはなぜそうなったかというのは、いまあなたが指摘をしたような事実がありますから、これはもうやむを得ず政省令に委任をしなければならぬわけであります。この法律で全部を規定するということになると非常に理想的なものになる。そうすると、やはり中小業者をある程度経過規定の中においてこれを全部救済することができないことになる。これは整理法になる。ですから、政省令に委任をするのは、現状と理想をマッチさせていくためには政省令にどうしても委任をしなければならぬわけであります。また、その政省令が固定的になりますと、法文に書いたと同じことになりますから、この法律で政省令に委任した目的がそこでありますので、当然現状に合うように絶えず改定をしていくということが原則であります。
  41. 堀昌雄

    堀委員 そこで、今度のもそうでありますが、今後のそういう政省令改正については、私はこれまた当然この大蔵委員会における審議経過によって、私どもがその時点その時点におけるいろいろな問題点を指摘をし、政府にいろいろと要求をいたしたわけでありますから、いまのようなことで政省令を非常に流動的に考えるということになります以上、法律が委任をした部分でありますから、私は当然その政省令改正が行なわれることは、少なくともこの大蔵委員会審議の中であらわれた問題に沿って行なわれるべきである。これはまあ当然なことでありますが、その点も含めてひとつ大臣のほうで確認をしてもらいたい。
  42. 田中角榮

    田中国務大臣 政省令をつくりますときに、またこれを改正するとき、この委員会における審議状態を十分反映をしなければならぬということは事実でございます。また、政省令が公布をされたというときには、当然いろいろな御意見を承るという考えであります。
  43. 吉田重延

    吉田委員長 有馬輝武君。
  44. 有馬輝武

    ○有馬委員 私は最初に、共同証券と保有組合ができる過程におきまして、とにかく証券会社の間にもいろいろ問題があったにもかかわらず、下ざさえするという意味で発足した、その経緯にかんがみて、今度はやはりこの証券取引法改正に関連して、証券会社は自主性ということを言うわけです。これは大臣も御承知のとおりでありますが、この間に、私は、ものを言っている態度の中に矛盾があるではないか、むしろ現在問題にすべきは、この間の矛盾を証券会社自体がみずから解決することが筋ではなかろうかと思うのでありますが、この点について大臣の所見を承りたいと思うのであります。
  45. 田中角榮

    田中国務大臣 証券業界だけではなく、金融機関の中においてもそうでありますが、民主政治の基本の中では、業界の自主的な運用ということが好ましいことではありますが、こういうことをあまり強調し過ぎたためにいろいろな問題を起こして今日をつくっているということでありますから、まあ規制すべきは規制する、行政指導だけでもってやっていけないというものに対しては、やはり法文で規制するということも必要だということで、これからの金融諸立法の改正にあたりましても、政府がその責任を負えるという状態は、やはり最小限必要なものは規定しなければならないだろう、こう思っております。
  46. 有馬輝武

    ○有馬委員 いや、私がお尋ねしているのは、一方では一つのささえをほしがりながら、一方では自主性ということを言う。矛盾しているではないか。その矛盾をみずから解決すべきではないかと思うのです。
  47. 田中角榮

    田中国務大臣 権利のあるところには必ず義務があり、並立しなければならぬ。ところが、どうもこのごろのものの考え方は、権利は主張しますが、義務に対してはというところが確かにございます。でありますから、業界自体が解決をしなければならないということはもちろんでございますが、しかし、政府自体も当然責任があるわけでありますから、政府もあわせて責任感じながら業界の自粛、政府行政指導、また立法措置、こういうものはあわせて責任を果たしていくということになると思います。
  48. 有馬輝武

    ○有馬委員 まあ今度の取引法の改正については、時期としてはきわめてよかったと思うのですよ。もしこれが前であったならば、田中大蔵大臣も突き上げられて、まるでチョウチョウがピンで押されたみたいに何もできなかっただろうと思うのですが、少なくとも現在の情勢の中だからこれが手をつけられたと思うのですけれども、やはりこの取引法の改正だけではなくして、取引所の問題その他すべての問題について総合的に手を打つべきではなかったかと思うのですが、これだけに終わった理由についてお伺いしたい。
  49. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど申し上げたとおり、すべてのものを整理しなければならないということでございますが、一ぺんになかなか——関連のものがございます。いまの取引所の問題一つ取り上げましても、公認会計士法等大蔵省の本法による検査権、こういうものを一体どうするかという問題がありますので、第二段に譲ったということで、はなはだ遺憾であります。しかし、現状から見ますとこの法律は一歩前進だという考えであります。ただ、いままでは際限がなかったわけでありますが、今度この法律が施行されるのは十月でありますから、十月までに最小必要限度のものはどうしても措置しなければなりませんし、また、この法律が適用されて免許制が行なわれるのは三年後でありますが、三年という目標よりも、際限ができましたから、これまでに当然やらなければならぬものは全部やらなければならぬ。そういう意味で、証券の問題に対しては相当積極的な地歩々固めた、こういう考えでございます。時期がよかったということは御高説のとおりでありまして、長いこと検討しておってちょうど好機に遭遇した、こういうことでございまして、これは将来の証券市場、また、市場は歴史の上にということでありますし、日本資本市場のためにも裨益するところが相当に大きいという考えであります。
  50. 有馬輝武

    ○有馬委員 いまの大臣答弁を裏返しにして言えば——他の問題に手をつける考えがあるかどうお伺いをしたいのですけれども、裏返して言えば、次々に手を打てる状態がまだ続くというぐあいに見えるのですが、その点はどうですか。
  51. 田中角榮

    田中国務大臣 次々に手を打てるというのではなく手を打たなければならぬ、こういう状態だと思います。法律改正も当然これは通していただければ、直ちにひとつ証券取引所問題等とは取り組まなければいかぬ、成案を得れば御審議をいただく、こういう考えでございます。
  52. 有馬輝武

    ○有馬委員 私が尋ねておるのは、意地が悪いかもしれませんけれども、今度は時期がよかった、また取引所の問題に手をつけるのは近いうちにできるということを裏返して言えば、この状態がまだ続くと見ておられるのかどうか、それをお伺いしたいと思います。   〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕
  53. 田中角榮

    田中国務大臣 こういうような不振の状態を続けてはならない、これは一日も早く脱却しなければいけない、こういうことを考えております。また、あなたが先ほども指摘をせられた諸般の整備、こういう問題は証券市場のいかんにかかわらず本法の精神を十分考えながら、総合的な施策の推進を進めてまいるということであります。事情のいかんにかかわらず進めてまいるということであります。
  54. 有馬輝武

    ○有馬委員 次に、証券局長にお伺いいたしますが、これはほかの委員の方がお尋ねになったかもしれませんけれども、よく私席をはずしておりまして、その点はもしダブっておりましたら申しわけないと思いますが、現在各社の資産状況について正確に把握しておられますか。
  55. 松井直行

    松井政府委員 証券業者は一年決算でございます。昨年の九月末が一番新しい決算期でございますが、大きな会社につきましては、配当その他のことにつきまして直接指導する関係上正確につかんでおるつもりでございますし、それ以外の証券業者につきましては、大体現在二年に一回ぐらいの割合で証券検査に入るプラン、スケジュールをつくっておりますので、これらの機会を利用いたしまして、できるだけ正確につかまえるよう努力いたしておるところでございます。
  56. 有馬輝武

    ○有馬委員 私がお尋ねしておるのは、つかんでおるかどうかということです。希望じゃなくて、つかんでおるかどうかということをお伺いしておるわけです。
  57. 松井直行

    松井政府委員 いま申し上げました諸措置によりまして、つかんでおると確信いたしております。
  58. 有馬輝武

    ○有馬委員 今度は第五十四条によりまして、第一項、第二項、第三項、それぞれ実態を正確につかんでおらない限りこの第五十四条なんというものは死文化することは私が申し上げるまでもないことであります。しかも、私は証券というものはきわめて流動的で、そこに生命があると思います。それを正確に把握する具体的なプランをお持ちかどうかお聞かせをいただきたいと思います。
  59. 松井直行

    松井政府委員 仰せのとおり、五十四条は現在の登録制から免許制に変えましたことと非常に大きな関係がございまして、投資家保護の観点から、早い目に証券業者の財産内容なりあるいは業務のあり方等につきまして是正、保全命令を出すというのがこの法律の趣旨でございます。したがいまして、勧告上必要なことを命ずるという保護処分をやります関係上、この前には必ず検査を行ないまして、真実、実態をできるだけ把握した上で適正な指導をするということがこの精神になっておりますので、従来以上に増して、この法律によります是正、保全命令を出す前には、必ず的確な検査を行なって事実を把握するということにつとめたいと思っております。
  60. 有馬輝武

    ○有馬委員 ことばの上ではどんなことだって、したいと思います、できると思いますということは言えるわけですよ。それがどういう形でできるか、それをお聞かせ願いたいと思うわけです。
  61. 松井直行

    松井政府委員 繰り返しますが、有能な検査官を訓練いたしまして、訓練された検査官をもちまして証券業者のその場所に乗り込んでまいりまして、必要な資料を調査する等の方法によりまして、的確に財産状況なりあるいは営業の実態を把握するということ、この検査によってやるということが唯一かつ十分な方法であると考えております。
  62. 有馬輝武

    ○有馬委員 いまのあなたの答弁の中に、やはり机の上で考えたことと実態の流れというものの間のギャップを私は感ぜざるを得ないのです。この問題については、これは一つの懸案事項として時間をかけてまた論議する機会があろうと思いますので、十分配慮してほしいと思うのです。  それから第二点にお伺いしたいと存じますことは、今度の改正案全般を通じて感じられることは、さっき佐藤委員も触れておられたようでありますし、またこの前横山委員も触れておりますけれども、一番肝心かなめのところは政令省令にゆだねられる、この問題だと思うのです。そうでしょう。もしそうでなかったらその理由をお聞かせ願いたいと思うのですが、どうでしょう。
  63. 松井直行

    松井政府委員 法律が実際施行されます場合に、必要な内容、つまり法律が動くためには政令がないと動かないという意味におきましてはおっしゃるとおりであろうと思いますが、たとえば最低資本金の問題にいたしましても、あるいは証券業者がやってはいけない行為、あるいは証券業者の健全な経営の準則ということにつきましては、これは商取引の態様も変わってまいりますし、経済の発展に伴いまして、あるいは投資家の数がふえるというようなことにも関連いたしまして、いま不変的なものとして確定し得ない要素のものが多分にあるということが一点、それから負債とかあるいは正味資産の計算方法とか、非常に技術的にわたります問題が一つ、この二つの関係上政令省令等に委任したものが多いわけでございますが、これが実際の行政活動におきましては、先ほど大臣からも御答弁がございましたとおり、今国会の審議における趣旨並びに今後行なわれるであろう情勢の変化に対応した時点時点における証券取引に関します今国会のこの場におきます論議を十分体しまして、制定並びに改正をはかっていこうということで十分生かしていきたいというふうに考えております。
  64. 有馬輝武

    ○有馬委員 次に、大臣にお尋ねいたしますが、これは先ほど堀委員もちょっと触れたかと思うのでありますが、業種の分類、このことについてブローカー業務、ディーラー業務、こういったものの——これは資本金の問題とも関連してまいりますけれども、今度の場合にはいわゆる中小証券の育成という点に配慮が足りないのじゃないか、すんなり読むとそう感じられてしょうがないのですが、その辺はどうですか。
  65. 田中角榮

    田中国務大臣 足りないことはありません。究極の目的としては職能分離をするということでございますが、先ほども申し上げたように、角をためて牛を殺してはならない、証券業者を育成しなければならないということで、その実態を十分把握をしてこれを育て上げられるような状態を十分つくっていくということでありますから、この法律が弱小業者中小業者が整理をされるということではなく、そういう問題が十分ありますので、政令省令に委任されたところがあるわけでありまして、その政省令をつくる場合には現状に十分適合するようなものをつくって、だんだんと育成してまいるという考え方を基本といたしておるわけであります。
  66. 有馬輝武

    ○有馬委員 いまの大臣答弁と、それから先ほどの局長の答弁二つ合わせて考えてみた場合に、私は政令省令にゆだねるべき事項についてこそむしろ現在この改正案を出す本来の趣旨でなければならぬし、また趣旨だと思うのです。そういった問題をこの際明らかにしてはじめて本法律案審議する雰囲気というものはできるのじゃないかと思うのですが、それをあとにされたことは、これはできなかったことなのか、意識的に避けたことなのか、その点について局長から答弁願いたいと思います。
  67. 松井直行

    松井政府委員 お答え申し上げます。  政令省令内容の問題点、考え方等につきましては、本委員会において、まだ確定的なもの等はできてはおりませんが、こういうことを考えておりますということは、ここで御披露申し上げたわけでございます。そこで、それに関連いたしまして、大証券中小証券の問題でございますが、この職能分化という問題に関連いたしますときには、現在のブローカー、ディーラーが、できるだけブローカーに純化するという方向に持っていきたいというのがその趣旨でございますので、現在ディーラーも兼ね、あるいはアンダーライターも兼ね、あるいは投資信託を何らかの意味で持っていることによってくる不当なそういう市場支配がありとすれば、そういうものが排除できるという意味におきまして、むしろ純粋なブローカーになりましたときには、そうした不当な市場支配力、不当な経営の拡大ということがむしろ排除される方向に進むものとわれわれは考えております。中小は中小におきまして、これは普通の店舗と違いまして、表を通る人がぶらっと入ってくるのではなしに、やはり証券業者を信頼する投資家、常時いいお客をつかんでおるということが主体でございますので、大証券に比してサービスも行き届くという点もございますし、あるいは職員の訓練等につきましても、大証券以上に徹底しようと思えばできるという面もありますので、小ブローカーは小ブローカーなりに生きる道がある。従来よりもそれが大手振ってやっていけるという環境の醸成に役立てようというのが、この立法並びに施行に際しますわれわれの基本的な態度でございますので、いま仰せのような趣旨が十分生かされるものとわれわれ信じております。
  68. 有馬輝武

    ○有馬委員 附則の第一項で、この実施については半年をこえないものということになっておりますが、その間にいまみたいな手だてというものが講じられていくのか、そして講じられるとするならば、どういった形で配慮されるのか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  69. 松井直行

    松井政府委員 政省令内容の確定に関する問題でございますが、その際大中小の証券業者それぞれの規模に応じた機能を発揮するようにどういうふうな形でこれが実現されるかという御質問だと存じますが、これにつきましては、先般ここに参考人も参っておりましたとおり、大証券業者ばかりではなしに、ほんとうの中証券あるいは小証券というものの意見も代表いたします証券業協会というものを通じまして、十分にこの法律の趣旨が生きるように、十分時間をとって相互に検討してまいるということで、中小のそうした意見も尊重され、実現をはかっていきたい、こういうふうに考えております。
  70. 有馬輝武

    ○有馬委員 私の質問はこれで終わりますし
  71. 藤井勝志

    ○藤井委員長代理 武藤山治君。
  72. 武藤山治

    ○武藤委員 大臣質問しようと思って、少し政治的な大きな問題点だけ考えておったのですが、いなくなっちゃったので、急にここで九十度かじを変更してひとつお尋ねをしたいと思います。  松井局長に、証券取引法の一部を改正する法律案を逐条的に明らかにしてもらいたいと思いますが、まず最初は、第二十九条の「公益又は投資者保護のため必要な最少限度のものでなければならない。」、この「必要な最少限度のもの」というのは、大体どういう程度のものを想定しているか、これをまず明らかにしてください。
  73. 松井直行

    松井政府委員 二十九条に関するお問いでございますが、二十九条は二十八条を受けまして、二十八条で業務の種類別に免許を与える。免許するに際しては、条件を付することができる。その条件は、裁量で何でもできるものではなくて、「公益又は投資者保護のため必要な最少限度のものでなければならない。」ということでくいが打ってあるわけでございますが、この条件と申しますのは、証券業者がいろいろ条件をつけられることによって、個別の企業としてやっていけないという意味におけるがんじがらめの条件を付するつもりは全然ございません。先ほどから論議がございましたように、この条件の趣旨は実は二つあります。  一つは、できるだけ四種類に区分して免許考えます。結局職能分離ないし分化の方向に持ってまいるのですが、にわかにそうはいかないときには、ある程度兼業を承認せざるを得ない。そのときにも、ディーラー、ブローカーの兼営からくる弊害を排除するという意味におきまして、ブローカーがあわせてディーラーをやりますときには、そのディーラーの活動につきまして制限を加える。そういう職能分化にからんだ問題が一つ。  それからもう一つは、一、二、三、四号おのおの個別の業種をそのままで行ないます場合におきましても、たとえば第二号、これはブローカー業務でございますが、日本において職能分化が行なわれております唯一の例としまして、うしろにお客さんをとってない、取引所市場内におきましてコミッション・ブローカーの間の売買を取り次ぐ才取り会員という特殊なブローカーがございますが、そうした特殊なブローカーにつきましては、これは、お客さんを相手にしないのだ、取引所の場内で、証券業者のみを相手とするブローカーであるという意味における、そういう業務の本体に関します制限ないし条件というものを考えておるわけでございまして、職能分化ないしはおのおのの特定の業種がそれぞれ業種の本体に即しまして当然つけるべき条件をここでうたおうというものでございまして、証券企業が非常に窮屈になる、商いがしにくくなるという意味におきます恣意的な条件をここで付するつもりは全然持っておりません。
  74. 武藤山治

    ○武藤委員 この間参考人も述べておりましたが、引き受け業務とは一体何かということも非常に定義がむずかしいという証言をしておったわけでありますが、大体証券局で考えている引き受け業務とはどういう性質のもの、内容、形態、それをもし定義したらどういうことになりますか。同時に、その引き受け業務を行なう証券会社というのは、千四百社も上場されておる会社のうち、何か役割りを分担させようという意図はあるのかないのか、そこらをひとつ……。
  75. 松井直行

    松井政府委員 仰せのとおり、現在の証取法には、引き受け人という規定が第二条に書いてございますが、引き受けという行為自身につきましては定義はございません。ただ引き受けを行ないます業者につきまして、資本金の制限が従来ともございまして、その資本金を規定いたします政令証券業者の登録、資本の額、純財産額及び営業用純資本額等に関する政令というものがございまして、この第四条に、元引き受けの定義が書いてございます。これによって申し上げますと、「有価証券の発行者若しくは所有者」これは証券業者を省いておりますが、そういう有価証券の発行者または所有者から、「当該有価証券の全部若しくは一部を売出の目的をもって取得し、又は有価証券の募集若しくは売出に際して当該有価証券の全部若しくは一部につき他にこれを取得する者がない場合にその残部を発行者若しくは所有者から取得する契約を当該発行者若しくは所有者と締結することをいう。」これが本来の引き受けであろうとわれわれは現在解釈しております。つまり新しく会社が社債を発行する、あるいは増資のために株式を募集するという場合に、それが全額消化されるかどうか、発行者にとっては非常に不安であります。特に社債の場合には全額これが消化されるということが社債発行の条件でございますので、だれか証券業者が仲介に立ちまして、全部われわれが募集及び売り出しをしてみせるという責任を負う業者が必要になってくるわけであります。   〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕  したがいまして、証券業者といたしましても、はたしてその社債なり株式が売れるかどうか、いま株式の場合は旧株主割り当て制度でございますので、実はあとの失権株等についてのみしか引き受けという機能は現在はございません。アメリカみたいに時価発行になってまいりますと、現実にこうした引き受けということが起こってくると思うのでございますが、この際発行会社との間におきまして、幾らの有価証券を新たに発行するか、あるいはその条件をどうするかということは引き受け業者が大ぜい二十ないし三十でシンジケートといいますか、引き受け団をつくるわけでございますが、この中に実はキーといいますか、親方になる引き受け業者がございます。二ないし三、あるいは場合によっては一つという場合もございますが、この親方になります者をマネージング・アンダーライターというふうにアメリカでは呼んでおるようでありますが、このマネージング・アンダーライターが、発行会社との間におきまして、総額なりあるいは条件等についてネゴシエーションを行なう。それにその他大ぜいの引き受け業者がくっついてくる、こういうかっこうになっております。先般も申し上げましたとおり、日本におきましては、ほんとうに引き受けの危険を証券業者たる引き受け業者が負うという現実がございませんので、なかなか説明しにくい事態でございますが、将来アメリカのようなことに相なってまいりますと、おそらく証券業者の中の引き受け業者二つのグループに分かれてくるだろうと思います。そうしたマネージング・アンダーライターとその他大ぜいのシンジケートに参加する引き受け業者ということに相なろうと思います。いまおっしゃいましたこの引き受け業につきまして、資本金で階層をつけるということは非常に大きな問題になっておりますが、証券取引審議会におきまして、ほかのブローカー、ディーラーはいまにわかに資本金を引き上げることは適当ではないかもしれないが、引き受け業者については相当程度資本金を引き上げるべしという答申がございますので、実はアンダーライターの中のマネージング・アンダーライター、これこそ国際的な証券業者になる必要がある。将来そうなる可能性のある証券業者でございますので、マネージング・アンダーライターにつきましては、その資本金相当程度引き上げてしかるべきじゃないか、かように考えております。
  76. 武藤山治

    ○武藤委員 そこで、千四百もとにかく上場会社があるのでありますから、いまの引き受け業務を企業側の資本金別に引き受けるグループをつくるとか、たとえば四大証券は何億以上の会社の引き受けをやる、それ以下の中小証券会社は大体一億なり一億五千万程度の小さい規模の引き受けをやるとか、そういう階層別というか規模別の引き受け業務の指導、そういうようなことは全然考えておらないのですか。
  77. 松井直行

    松井政府委員 仰せのとおりのような傾向が現にございます。特に地方取引所といいますか、たとえば名古屋なら名古屋について申し上げますと、名古屋の地場産業資本金あるいは一回の発行額というものはそう大きなものではございませんが、何でもかんでも東京に本店を持ちます四社でもってこれを引き受けるということではなくて、地元の資本で成り立っております地元の証券業者がこれを引き受けるという慣例がございます。いまおっしゃったようなラインでございますので、そういう場合でも法律的に見れば、そういう小さな発行会社のものを地方証券業者が元引き受けをするということに相なるわけであります。もし何らかの手当てをしない場合には、そうした地方的な発行会社が発行しますものを元引き受けする場合には、やはり十億とか二十億という大きな資本が要るということになってまいります。これは非常にわれわれ不当なことであろうと思いますので、いまおっしゃったことに端を発していろいろくふうをした結果、地方産業発行会社資本金とか一回の発行額がある限度以下のものについては、こうした小さな地方証券会社でありましても、十億とか二十億にならなくて二億円のままで元引き受けができるということに整理いたすことによって、そうした中小証券のアンダーライター業務に十分に生きる道を開くという考慮が必要だと考えております。
  78. 武藤山治

    ○武藤委員 そういたしますと、いまの実態は、千四百社の中で大体四大証券が引き受けておるのと、資本金二億程度の地方の小さい証券会社が引き受けておるのと、その軒数さらに率でもけっこうですが、どのようになっておりますか。元引き受けというのは現在全国では何軒くらいの証券会社がやっておりますか。
  79. 松井直行

    松井政府委員 現在の法令によりますと、資本金二億円以上の証券業者は引き受けができるということに相なっておりまして、東京のみではございません。公社債引受協会という会をアンダーライターがつくりまして、このメンバーに相なっております。大体全国的な上場銘柄等につきましては、御存じのとおりに、この前ここで御叱正を受けましたが、事実上四社が全部あるいはかわるがわるマネージング・アンダーライターになりまして、四社で大体八〇%これを引き受け、あと証券業協会なり公社債引受協会のメンバーにこれを分配する、大証券が大部分のものを引き受けるという一種の歴史的なワクと申しますか、領域というものができ上がっておるのが現状であります。
  80. 武藤山治

    ○武藤委員 それでは時間の都合で先に進めていきますが、第三十条には、その他大蔵省令で定める書類を添付する、こういうことになっておりますが、その他とは一体どういうものをさしておるのか、それをちょっと伺います。
  81. 松井直行

    松井政府委員 お答え申し上げます。  これは免許申請書に添付いたします書類でございまして、最近時におきます株主の氏名、商号、株数等を記載した書面あるいは創立総会の議事録あるいは取締役並びに監査役の履歴書とか謄本とか、以下そうした事実的なものでございます。
  82. 武藤山治

    ○武藤委員 その次の三十一条で、「免許をしようとするときは、」という中の第一項に「健全に遂行するに足りる財産的基礎を有し、」申請者が業務を健全に遂行するに足りるという範囲、これは一体どういう認定、資本金で決定しているのか、それともその社長なり重役の私有財産の額によって判定するのか、その判定の基準は一体何をもってするのか、これをひとつ……。
  83. 松井直行

    松井政府委員 「その営もうとする業務を健全に遂行するに足りる財産的基礎」といいますのは、業容によりまして非常に店舗が多いとかあるいは全国的に支店を持っているというものと、一地方的な証券会社というものにつきましては、当然に取引いたしますお客さんに対しまして最終的な担保になります資本金というものも変わってまいることになるのは当然だと思いますが、単なる公称資本金のみではございません。その資本金に見合いました正味資産を十分持っておるかどうか、正味資産に分け入りましてこれを検討するということが必要になってくると思います。
  84. 武藤山治

    ○武藤委員 そういう基準というものは何か細則、規則、通達、そういうものできめるのですか。政令できちっときめるのかどうか。
  85. 松井直行

    松井政府委員 これは政令に委任いたしておりません。全然新たに免許を申請してまいるものもございましょうが、大体におきまして現在証券業を営んでおる者がそのまま免許申請者に切りかわるというのでございまして、その証券業者の業容といいますか、持っている陣容なり店舗なりというものは大体すでに与えられた条件でありますので、そういうものを的確に運営するに必要な財産的基礎と申しますのは、それに応じた資本金とそれに応じた正味資産というものがあることを必要とするわけでございます。事実上免許に際しましては、政令でなしにこまかい内規というものをここでつくるということに相なろうと思います。
  86. 武藤山治

    ○武藤委員 これはなかなか重大な条文ですから、かりに内規でつくる場合に、あなたはいま現在ある業者免許に切りかえるということだけを前提にしゃべっているのですが、私はそうではなくて、新たに証券業者になろうと思う人もおるた思うのです。そういう人が申請をしたときにこういう基準免許するかしないかになるわけでしょうから、これはやはり申請者の立場から見れば非常に重大な規定なんですね。そこで私は聞いておるわけです。  そこでついでに、ここ三年間くらい新規に証券業者になりたいというものは、申請却下になった件数も入れて、届け出制ですから全部許可したかどうかは別として、申請はどのくらいあったか。
  87. 松井直行

    松井政府委員 現在の法制でございますと、法が規定いたしております条件、要件を満たしますとそのまま登録をしなければならないということに相なっておりますので、この登録件数をもって申請件数だと考えますと、やはり非常に市況のよかった三十五年に新規登録が三十六件、三十六年に四十八件、三十七年には二十三件、三十八年にはうんと減ってまいりまして八件、三十九年度は全然新規登録件数はございません。
  88. 武藤山治

    ○武藤委員 そうすると、この法律が実際に公布されて効力を発するのは、登録業者については四十三年三月三十一日、登録業者でない者、新規に出す者は、直ちにこれは公布後六カ月以後はこの条文が適用されるのかどうか。
  89. 松井直行

    松井政府委員 ことしの十月以降この新法が適用されるわけでございまして、それ以降従来の法律によります要件さえ備えれば登録できるという制度はやめになりまして、免許制度というものに切りかわるわけでございますので、十月一日以降は新規の業者免許を受ける必要があるということに切りかわるわけでございます。
  90. 武藤山治

    ○武藤委員 時間が四十分までという約束ですから、あと五分ぐらいで残念ですが、三十二条第一、項一号の終わりごろに、「政令で定める金額以上の株式会社」でなければならぬとあるわけですね。その「政令で定める金額以上」というのは、まだ政令がきまっていないようでありますが、大体引き受け業務をやる者は、一応大蔵省として現在予定をしている資本金額というのはどの程度になりますか。
  91. 松井直行

    松井政府委員 お答え申し上げます。  最低資本金は従来政令で定めてまいっておりまして、実は非会員につきましてことし一ぱいに最低資本金二千万円にするというのでもって、従来の政令によります資本金の最低限が全部終わってしまうわけでございます。先ほど申し上げましたとおり、ディーラー、ブローカーあるいはブローカーオンリーである業者等につきましては、現在の政令できめられております額を動かす考え方はございません。ただアンダーライターにつきまして、先ほど申し上げましたような趣旨にのっとりまして、その引き受けという仕事の重要さ、危険負担という観点から、引き受け業者を純粋にやるという業者も出てまいりますので、純粋に引き受けのみをやるという業者につきましては、現在どの程度の陣容、どの程度資本金であるならば単独のアンダーライターとして一体独立性があるかどうかということにつきましていろいろ算定をいたしまして、それによって資本金をきめたいと思っておりますが、大体十億から二十億ぐらいのものを予定いたしております。ところが現実には四大証券のような大ブローカーがあわせて引き受け業——いまの話は元引き受け、いわゆる主幹事となるマネージング・アンダーライターの問題でございますが、大ブローカーがあわせてマネージング・アンダーライターをやるという形になるのが現実だろうと思いますが、これはそのブローカー自身の大きさとも関連いたしてまいりますので、おそらく三十億ないし五十億というところぐらいが適当じゃなかろうかと思っております。その他の引き受け業者につきましては、大体現在の二億円以上というラインをそのまま維持することによって、現状とマッチさすことが適当であろう、かように考えております。
  92. 武藤山治

    ○武藤委員 これで終わりますが、五十四条の第一項、当事者保護のために業務の全部または一部の停止をすることができるという規定の中で、「負債の合計金額の純財産額に対する比率が大蔵省令で定める率をこえた場合」この場合の大蔵省令は一体どういう内容のものであり、現在この率をいま考えている省令でもうすでにこえていると思われる会社数というのはどのぐらい現実にあるものか。現在ある証券会社で、その省令ができて直ちに停止しなければならぬような会社の数はどのぐらいあるのか、その点はどうですか。
  93. 松井直行

    松井政府委員 五十四条第一項の一号「負債の合計金額の純財産額に対する比率が大蔵省令で定める率をこえた場合」現行法ですでに負債倍率に関する規定がございますが、これはそれを承継したものでございます。ただ、内容が幾ぶん違っておりますのは、現在は政令によりまして、資産、負債とも流動資産、流動負債を計算いたしまして、流動資産が流動負債をこえる部分、それの二十倍をこえて短期の負債をしてはいけないということに相なっておりますが、いろいろ検討いたしました結果、正味資産というものがやはり証券企業の外部負債に対します最後の担保であるという観点から申し、あるいは一般の企業の財務諸表の分析等におきまして負債倍率といわれておりますのは、正味資産に対する総負債額というものでもって規定いたしております関係上、今回の場合も、純財産、正味資産を基礎にいたしまして、総負債がある限度をこえてはいけないという規定でもって証券企業の健全性を維持したいというものでございます。現在の計算方法によりますと、負債倍率は大体二十倍以内ということになっておりますが、いま申し上げたような新しい計算方法によりますと、指数といたしましてはその半分、大体七倍ないし十倍というくらいのところで押えるのが違当じゃなかろうかと思っております。現在、現行法の規定で負債倍率二十倍をこえておる企業が幾らかということでございますが、これは検査等を通じまして調査しました結果、ないし二十倍をこえた場合は本人が申告してくるという規定もございますので、昭和四十年二月末現在におきまして、現行法の規定によります負債倍率が二十倍をこえておりますものは、四百八十二業者のうち七件でございます。
  94. 武藤山治

    ○武藤委員 あと質問者に譲る時間がまいりましたので、途中ですが質問をやめますが、とにかく今回の法令を見ると、過般の参考人の御意見のように、政令事項あるいは省令、これに委任をしておるところが非常に多いわけです。なるほど中小証券の方々が心配をするのも無理ない点が感じられるわけです。そこで、この法案はきょう上げるということになっておりますので、詳細を質問できませんから、省令並びに政令の要綱、大体大蔵省としてはこういう内容省令をつくりたいという点が決定されるときに、必ず本委員会に配付を願いたい、こういう要望をしておきますから、委員長、お取り計らいを願いたいと思います。
  95. 吉田重延

    吉田委員長 いまの御要求に対しては、かねて理事会でも御相談申し上げておりますので、できるだけ早目に、できましたら配付していただくということにいたします。
  96. 堀昌雄

    堀委員 関連して。実は証取法審議の時間が、いろいろな経過のために十分尽くされていないわけです。そこで、法律の問題点についてはおおむね指摘をしてきておりますけれども、政省令委任の関係は、いまも武蔵君から要求がありましたが、実はまだつまびらかにされていないところがたくさんあるわけです。しかし与党側のたっての要望があるから、私どもも本日上げるということにしておりますので、ひとつこの件、政省令関係の問題については、ただいま私が大蔵大臣との間に確認をいたしましたように、当委員会審議経過に対して処置をしていただくという確認ができておりますので、いろいろの問題がまだ残っておりますが、これらについては本国会中に、法案審議を終了いたしましても、さらに引き続き取り扱っていただくということを委員長のほうに確認をさしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  97. 吉田重延

    吉田委員長 ただいまの御要求に対しましては、金融証券委員会もございますし、また、本委員会におきましてもできるだけそうしたことについて詳細に御検討願いたいと存じておりますので、政府のほうでもそうした機会を見て資料を出していただくということにお願いいたしておきます。  春日一幸君。
  98. 春日一幸

    春日委員 まず冒頭に申し上げますが、本日、堀理事の御発言によりますと、理事会の決定で証券取引法が上がるということでありますが、少なくとも金融証券とはわが国産業行政の二大支柱であろうと存ずるのであります。本日はその基本法であります証券取引法、この改正案審議がなされている。これに対して大臣も出ていない。これは予算委員会の関係で余儀ないといたしましても、さすれば当然政務次官が出て政策論議に応対しなければならぬ。その政務次官も出ていない。与党の委員も数名しか御出席になっていない。これはあまりひどいではありませんか。国会の正常なる運営というのに、一般の国政調査の場合はまたお互いに考慮をする点もあるでありましょうが、こういうような大法案について、政策立案の当面の責任者である大臣も政務次官も出ていない。与党の委員もほとんど出ていない。一体これはどういうことでありますか。委員長の取り回しがあまりずさんである。無責任である。本委員会を軽視するもはなはだしいものであると思うが、これは一体どういうことでありますか。急いで上げろと言っておいて与党が出ていない。政務次官も出てこない。政策論議松井局長と応対をしたところで、これは立法技術上の答弁はなされるであろうけれども、党を代表しての政策的な責任ある答弁はなかなか得がたいのではないか。質問を十分に尽くすことはできませんよ。よって、出席されるまで休憩されるか、それとも法案を上げるのを数日先に延ばされるか。委員長、いかがですか。
  99. 吉田重延

    吉田委員長 春日委員の御要求ごもっともでございます。大臣は、予定をいたしておりません予算委員会が急に開かれるようになりまして、予算委員会のほうに出席をいたしております。また政務次官は決算委員会のほうに実は出席を要求されておりますが、当委員会としてはできるだけ政務次官の出席を要請いたしておるところでございます。委員各位の出席につきましては、国対を通じてできるだけすみやかに出席を求めておりますので、どうかその点お含みくださいまして御質問をお願い申し上げたいと思います。
  100. 春日一幸

    春日委員 国政審議に協力することはやぶさかでないが、現実の問題として本委員会大蔵委員会であり、大蔵大臣大蔵政務次官の所管は本委員会である。しかも本委員会では重要法案であるところの証券取引法が本日議決されようといたしておる、こういうような情勢のもとにおいて、政府責任者が全然出てきていない。与党の理事も何もいない。こんなばかな取り扱いがありますか。委員長責任は重大だと思うのです。善良なる吉田委員長は、こういうような委員会運営ということを何と考えておられるか。不見識もはなはだしいと思う。責任をとって辞職されたらどうですか。ぼくは松井君に質問したって、立法技術上の問題ならとにかく、あなたは政治家でも何でもない。われわれは政策論議を行なう。政策論議ができないじゃありませんか。これはひとつ休憩して理事会を開いて、上げるのをとにかく一週間ばかり延ばしてください。ゴールデンウィークのあとで……。
  101. 吉田重延

    吉田委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  102. 吉田重延

    吉田委員長 速記を始めてください。
  103. 春日一幸

    春日委員 鍛冶政務次官に申し上げますが、とにかく本日は与野党の理事話し合いの中で、さまざま質疑を尽くさなければならないけれども、かかる一定の時間にこれを上げよう、こういうことでわが国産業経済の基本法の一つである証券取引法審議をしようといたしておる。予算委員会が急遽開かれたから予算委員会優先の原則によって大臣の出席を認めたのだが、そういうようなときには、当然政務次官として政策論議の質疑応答の答弁者としてあなたはそこにおられてしかるべきですね。しかるにどこかに行ってしまって、他にいかなる用あらんとも緩急前後の順位があろうと思うのです。本末転倒もはなはだしいと思う。そのために審議が非常に渋滞いたしました。その責任を十分痛感してもらいたい。  質問に入ります。今回の証券取引法改正は、もっぱら証券業者に関するものでございまして、一つには免許制の採用、二つには監督規定の整備、三つには外務員制度の改善、こういう事柄に関します限り、方向としてはおおむね妥当なものと考えるのであります。しかし、わが国の証券取引の諸制度がいかにあるべきか、これは長い年月をかけて本委員会で論じられてまいったところでございます。したがって、証券取引制度全般及び証券業協会、こういうような問題の根幹に触れての改正が見送られておるということはきわめて遺憾なことに存ずる次第でございます。すでにこの間参考人を招致いたしましたときに、こういう証券取引上の制度全般に関する現行法の有する欠陥事項でありますとか、証券業協会等に関するいろいろな不十分な点、公正を失する点等についてさまざまな指摘が行なわれたのでありますが、今回はそういう根本問題に何らの斧鉞が加えられていない、こういう問題はいつ改正するお考えでありますか。これをひとつ政務次官からお伺いいたしたい。
  104. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 証券業法といたしましては、お説のとおり根本の問題まで解決しなければならぬことは当然でございます。しかし今回はさしあたって緊急なものだけを出しましたので、これを出しますると同時に、なお深く研究をいたしまして、できるだけ早い機会に、いまお示しのような重大問題は改正案を出したい、かように考えております。
  105. 春日一幸

    春日委員 今回の改正証券業者だけに関する改正になっております。業者に関する問題も改正をせなければならぬのは、これは当然事項でございまして、本委員会においてしばしばその点も論じられたのでありますが、問題はそれよりもその証券取引所制度全般及び証券業協会そのものの運営、こういうところに問題点がより多くあると指摘されておることにもかんがみまして、いま政務次官から御答弁がございましたように、この問題の根幹に触れての根本的な改正をすみやかに御提出あらんことを重ねて要望いたしておきます。
  106. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 御説のとおり、何よりもやらなければならぬと考えておりまするのは、取引所の問題並びに協会の問題でございまして、取り急ぎ研究して皆さまの御協賛を仰ぎたい、かように考えております。
  107. 春日一幸

    春日委員 以下、今回の改正について逐次質問をいたしたいと思います。  まず第一番に職能分化の問題、関係法では二十八条、二十九条について伺います。改正案においても免許の業務をディーラー、ブローカー、アンダーライター、セーリング、この四種類にいたしまして、これら業務別に免許をすることといたしております。これによって将来職能分化が行なわれる場合の制度上の受け入れ体制を整えようと、こういうぐあいに理解されるのでございます。なお今回の改正によりますと、当面数業務の併営を認めるという前提に立って併営に伴う弊害を除去するためには免許に最小限度の条件を付することにいたしております。これは将来完全なる職能分化があり得ることを想定されての法的措置であると考えるが、そのように理解してよろしゅうございますか。将来完全なる職能分化が行なわれるが、いまここに前駆的な措置としてこういうような中間的な措置をとったものと理解をいたしてよろしゅうございますか。
  108. 松井直行

    松井政府委員 仰せのとおりでございまして、先進諸国におきましては現在のわが証券界以上に職能分化が進んでおりますことは皆さん御存じのとおりでございます。ただ、そこへいきますには、やはり税制、証券金融、あるいは機関投資家の発達等、証券市場を取り巻くいろんな環境の整備というものも必要なわけでございまして、多分にその国々の風土的な条件というものに左右されることに相なろうかと思いますが、いま申し上げましたような条件の整備と相まちまして、行政の趣旨を生かした証券界のビジョンというものをわれわれ描いておる次第でございます。
  109. 春日一幸

    春日委員 やはり証券業はいかにあるべきか、その理想像をうたうならば、職能分化を完全に遂行しなければならぬ、こういうふうに大蔵省考えておる。ところが、いまその周辺には風土的なさまざまなムードがあるから、したがって一刀両断的に問題の解決ははかり得ないから、こういう方法をとったのだ、将来は完全なる職能分化に向かって進んでいかなければ公正妥当な証券行政というものが運営されがたいと、こういうふうに大蔵省は理解しておると理解してよろしゅうございますか。
  110. 松井直行

    松井政府委員 仰せのとおりでございます。
  111. 春日一幸

    春日委員 そのような認識を前提といたしまするならば、今日見られる併営による弊害ですね、一歩前進と見られるけれども、しかしなおその前提の上に立っても私どもは今日見られておるところの弊害、たとえば具体的に申しますると、数業務の併営による大証券による市場支配と中小証券への圧迫、それから第二点にはブローカーとディーラー併営による業者と顧客との間の利害相反から起こる顧客保護、奉仕の不徹底、これはかねて論じました民法における双方代理禁止の原則、そういうものとのいろいろな抵触関係、こういうような問題を解決する方向へ進んでおるとはなかなかこれは理解いたしがたい。ことにアンダーライターとディーラー、ディーラーとブローカーの併営のごときは弊害がはなはだ顕著である。このことは本委員会においてしばしば論じ尽くされた討論終結の事柄である。そういうことでございまするから、むしろ職能分化とまっ正面から取り組んで職能分化法律をもって明確化いたしまして、そうしてこれを専業を原則とする。そうして特別の場合にのみ併営を例外的に認めるというぐあいに、実際はそういう前駆的処理としても、将来のビジョンをそこに描いておるとするならば、さらに百尺竿頭一歩を進めるということばもございまするが、これは法律の条文の中に特にこの専業を原則とし、併営を例外的に認めていくという、こういう政策、方針を法律の中に打ち出していくべきではないか、こう考えるのでありまするが、この点政務次官の政策的御見解はいかがでありますか。
  112. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 この法律をつくるときもその点は非常に議論したようでございまするが、なるべくそういうものを併営にさせないような方針でいこうと考えておるわけであります。しかしものによってはやむを得ないかもしれませんが、そういう場合には二十九条において十分条件と申しまするか、その点を厳格にやってやるようにしたい、こう考えておるわけであります。
  113. 春日一幸

    春日委員 松井証券局長の御見解をあわせて伺いたい。
  114. 松井直行

    松井政府委員 いまお説の問題、非常に基本的に重要な問題でございますが、アメリカ証取法の立法の経過をひとつ申し上げたいと思いますが、一九二九年に始まりました恐慌のあとを受けてニューディール政策の一環として非常に統制経済的な色彩が強くなり、証券銀行の分離あるいは証券業者の適格のあり力ということで一九三三年と三四年で二つ証券法と証券取引法ができております。仰せのとおりすでにディーラーとブローカーの分離につきましては、当時非常に問題になっておりまして、一九三四年法の一項に私いま厳格にその法律の条文を覚えておりませんが、ディーラーとブローカーを兼業さすことについては弊害がある。これを完全に分離できる可能性とその利点について検討すべし、一九三六年までに国会に報告すべしという条文が一九三四年法に入っております。これに従いましてSECにおきましても二ヵ年の長きにわたっていろいろ調査をいたしまして国会に報告した報告文書がございますが、その中にいまおっしゃいましたブローカー、ディーラーの兼業からきます業者とお客さんとの利害の背反と、それからディーラー活動を通じます証券市場の価格の変動に与える影響と、二点から非常に詳細な分析をいたしておりますが、その結論といたしましては法律に完全な分離を書くのには早過ぎる。SECの弾力的な行政指導でもってこの職能分化を一そう進めるのが現在の段階としては適当じゃなかろうかという答申が国会に出ておる次第でございます。その線に沿いまして、その後何べんも証券取引法改正はございますが、実はSECのそうした行政指導、まあ日本で申しますと政令省令、通達に当たるものをもちまして漸次職能分化、特にディーラー、ブローカーの分離を進めてまいりまして、現在におきましては、あえて大きな課題としてディーラー、ブローカーの分離がそう大きく取りざたされてないというのがアメリカ現状でございます。現にアメリカにおきましても、法律でもって規定すべきじゃないかという論議に対しまして長年論議が重ねられた結果、非常に複雑多岐な取引であるということ、非常に経済の変動に応じまして弾力的にものを考えなければならない問題であるということ、それから業者の分化等につきましては非常に歴史的、発生的な性格のものであること等を勘案いたしまして、執行上の問題としてSEC責任がまかされたというのがアメリカ現状でございますが、そのまま日本にはなかなか当てはまりにくい面もございますが、証券取引というこの特殊な分野、世界の特性にかんがみまして、やはりアメリカの行き方というものを一応先例として尊重してまいるということが適当じゃないかとわれわれ考えております。
  115. 春日一幸

    春日委員 資本主義経済の本山とも目されるアメリカ証券制度に関する立法例は、わが国としてもこれを参考にするのはやぶさかではないでありましょう。しかし論理は明確に打ち出して、必ずしもアメリカがこうであるからわが国の制度もそれになずんでいく、いろいろな矛盾や弊害が顕著であるにもかかわらず、あえてそれに対する法的措置を講じていかないということは適当ではないと思う。しかもアメリカの例は十何年前のSECの答申でございましょう。だといたしますれば、この十年間における世界経済の発展というもの、特にまたわが国の経済の高度の成長というものは、これはもう十年一昔といいまするけれども、隔世の感があると思うのです。そういう情勢において、本日ここに改正をするとするならば、やはり職能分化という方向へ実際の効果が確保できるような形でこれを進めていくべきではないか。特に現在専業会社にはディーラー業務の共同証券、それからセービングの投信販売会社、それから同業間のブローカーとしての才取り会員だけでございまして、したがって他はすべて二種類以上の業務を併営しておる。かかる現状を基礎として免許が与えられるといたしますならば、結局はこの現状がそのまま温存されることになりはしないかと思うのでございますね。私はこの問題を重視いたしておるのでございまして、方向をそちらへ目ざしながら、しかしながら実際のこの法律の運用の結果、現状がそのまま温存されるような結果になれば、いま前提としてあなたに質問をいたしましたいろいろな認識だとか、あるいはビジョンだとか、そういうようなものはただ心に描いた空想に終わってしまうんですね。だから私はやはり一歩進めて、弊害は弊害としてこれを除去する、私はその点を指摘しておるのでございます。でございまするから、たとえ免許に条件が付せられても実際の運営では最小限度のものになってしまう、現状そのものが温存される形になって、そして法改正方向というものは一歩も前進しない結果になるおそれありと私はこのことを深くおもんばかるのであるが、この点に対する御認識はいかがでありますか。
  116. 松井直行

    松井政府委員 まことにアメリカの前轍にかんがみて日本証券市場を意欲的にそこへ持っていこうという場合には尋常一様の努力ではだめだという御趣旨はよくわかるところでございます。先般一九三四年ごろに、アメリカにおきましてディーラー、ブローカーの分離が論議されましたときには、すでにある程度職能分化は行なわれておりました。フロアディーラー、フロアブローカー、スペシャリスト、コミッションブローカーあるいは債券ブローカー、債券ディーラー。ところが御存じのように日本におきましてはいま春日委員がおあげになりました二、三の特殊業種があるだけでもって、あとは大部分何でも屋の証券業者ということに相なっておりまして、そういう意味におきまして、まだ分化というものが非常におくれているということが事実でございますが、最大のわれわれのポイントの一つとして、付する条件のところで申し上げましたように、ディーラーとブローカーをできるだけ分離する、日本の大部分の証券業者をブローカーに純化するという方向に持ってまいりますときには、そういう意欲的な行政指導なりあるいは動きなりが、業者の中にもあるいは大蔵省行政指導の中にも生まれますときには、はたして市場の中で、ブローカーだけが提示します、お客さんの注文だけでもって正常な価格、あるいは価格の形成の継続性等が維持できるかどうかということが非常に疑問になってまいりまして、したがってそこで自然にアメリカ式のスペシャリスト、ロンドン式のジョッバーというものが私は生れてくるのではないか、意欲的にディーラー、ブローカーの分離を進めますことによって歴史的にそういうものが要請されて起こってくるものとわれわれ信じております。同じディーラーにいたしましても、たとえばそのディーラーの中で職業の特化が行なわれまして、あるいは債券専門のディーラーあるいは国債専門のディーラーというふうな分化もまた行なわれるわけであろうと思いますが、社債市場の育成とか、あるいは証券金融その他取り巻きます環境の整備がだんだんできてまいりますに従いまして、いま御趣旨のような姿を現出する希望がわいてまいるだろうと思うのでありますが、それにつきましても、行政当局の意欲的な方向づけというものがぜひ必要だということは私も同様に考えております。
  117. 春日一幸

    春日委員 まあ問題が集約されてくれば、行政当局が免許を与えるときの意欲的な措置という点で処理をするという形になるでありましょうけれども、実際はその大蔵省証券局と証券業界との力関係という形になりますと、大蔵当局のその意欲というものが、やはりその証券業界の意欲というものを完全に制圧することができるかどうか、私は問題はそこにかかってくると思う。力関係はそこに集約されてまいると思うのでございますね。なるほどアメリカにおいてディーラーとブローカー業務との法的区分規制という問題ですね、これは不可能という答申があったというのであるけれども、しかしいまアメリカにおける職能分化の態勢は日本とはもう全然違うのですね。かれこれ十分照らし合わせれば、日本においては証券デパート式に四大証券市場を圧倒的に支配をいたしている。さらにそういうような市場支配の態勢というようなものが、相場操縦の形になってきたりなんかして、本日わが国証券業界に対するこういう沈滞の原因一つもなしていると思うし、さらにまたいろいろな顧客と業者との利害相反の関係でありますとか、いろいろな根本的な問題が弊害として指摘されている。指摘されております弊害を、法改正のときに実際の効果が確保できるようにやっていかなければ何にもならぬと思う。方向だけさしても、事実上実現不可能なようなものを書いてみたところで、これは言うならば子供の落書きみたいなものになってしまって、何らその効果を及ぼさない、確保できない。だからいま松井君が言われたように、大蔵省の意欲的な行政措置によってこの条章の限界においても相当の効果がはかり得る、こういうのでありますが、結局は法律にあらずして、あなたのほうの意欲に期待するという形になるのだが、大体その意欲の構想というか、あなたのほうの決意というか、指導精神というか、それは一体どんなものですか。この際本委員会を通じて国民の前に明らかにいたされたいと思います。
  118. 松井直行

    松井政府委員 証券界の将来のビジョンあるいは資本市場をして本来の機能を発揮さすためには証券界あり方というものが非常に大きな問題でございます。その中の一つの大きな問題としてディーラー、ブローカーの分離ということを、これはもう古くしてまた新しい問題でございますが、意欲的に進めるとわれわれ申しましても、また証券界の力に圧迫せられて思うようにいかぬのじゃないかという不信感をお抱きになっておるようにわれわれ考えております。しかしいまお話がありましたように、すでにアメリカ資本市場から見ますと、後進性といいますか、時代のおくれはすでに三十年くらいあろうと思います。幸いにして先人の例というものもございますし、詳細な分析というものもある程度できておりますし、それから証券界自体におきまして、大証券といえども従来のようなディーラー、ブローカー、アンダーライターという何でも屋でもって行なうことは、市場支配力についてある時期には日本証券市場に雄飛したことはあるにいたしましても、長年の経験の結果景気の波を浴びてまいりますと、ひいてはそれが証券企業自体を危殆に瀕せしめてきた大きな原因でもあったということにつきまして、証券界自体の反省とざんげが行なわれておる、まさにその時期に際会しておるというふうに思います。わがほうのそうした意欲的な方向証券界自体の反省、ざんげというものがちょうど結びついてきた時期に際会いたしておりますので、その間におきまして協調的に意欲的にスムーズにこの問題は進み得るものとわれわれは確信いたしております。
  119. 春日一幸

    春日委員 法律のたてまえは、私は以上申し述べた理由によって、これはきわめて不明確であり、政策効果が確保できないと思うのでありますが、しかし行政指導等によってあくまでその方向づけをここで国民の前に明らかにされたことでもございますので、ひとまずはあなた方の措置を十分見守るということにいたしたいと思います。  次は四十三条関係についてお伺いをするのでありますが、改正案においては兼業禁止規定を若干改めておりますが、これは現行法と実質上は大差ないものでありますが、現行法も改正案証券業の付随業務については何にも規定がございません。したがって付随業務は当然できるものとの解釈の上に立っておるようでございますが、しかしこの四十三条を通読してみますと、付随業務と証券業以外の業務との区別の基準というものが必ずしも明確ではない。この点はどう解釈すべきでございますか、これをひとつ伺っておきたいと思います。たとえば有価証券の保護預かり、これは付随業務でございましょう。ところが運用預かりは兼業とされておると思うのです。それから有価証券の割賦販売については、これは六十六条で大臣の許可を得なければならぬことになっておるのですが、この点は一体現行法と大差ないのであるか、相当大差があるのであるか。付随業務と証券業以外の業務というものはいかに理解すべきものであるか、これをひとつ明確にしていただきたいと思います。
  120. 松井直行

    松井政府委員 現行法は「証券業以外の営業を営もうとするときは、大蔵大臣の承認を受けなければならない。」承認をする場合におきましては、そうした兼業が行なわれることによりまして、本業としての支払い能力が薄弱となるおそれがあるときにはいけないというだけの規定でございまして、証券業本来の業務に専念すべしという意図が幾ぶん薄かったように思われます。改正案におきましてはそこを明確にいたしまして、「証券会社は、証券業以外の業務を営むことができない。」ときっぱりとここで言い切ってしまっております。しかしながら、証券業につきましても、いろいろ証券業に関連いたしまして投資家の便宜をはかるために、証券業者として兼業していい業務もあるわけでございます。たとえば債券の元利金の支払いを代理する業務とか、あるいは投資信託の収益及び償還金の支払いを代理する業務、あるいは証券代行業務、あるいは貸し金庫業務、あるいは運用預かり業務、この中で特に証券代行業務等につきまして、あるいは貸し金庫業務等につきまして、お客さんとの間におきます継続的な信頼関係に立って営業が行なわれるという観点に立ちますときには、本来の証券業に関連いたします範囲内における一種の信託的業務というものもあるかと思います。こういうものについて営み得る兼業の範囲というものを明確にいたしまして、八百屋とか洗たく屋、何でもできるのだというあいまいな思想をここで払拭いたしたいと考えております。いまお示しの保護預かり等につきましては、これは通常の売買の委託業務につきまして、現金を前もって預かる、あるいは買い付けた証券を当分引き取りに来るまで預かっておくというもの等につきましては、あえて兼業承認の対象とするまでもなしに、通常の業務に付帯して行なわれる業務であろうかと思いますが、それがさらに度を越しまして、不特定多数の人が持ってくる有価証券を預かってあげる、貸し金庫もちゃんとつくってやるというような場合におきましては、これは明らかにそうした付帯業務から抜け出ておりまして、兼業の承認の対象としたほうがいいというふうに考えております。
  121. 春日一幸

    春日委員 その辺のことはいまの答弁一つの概念が示された、若干具体的にも述べられておるというのでございますが、これはやはり証券業者がその企業運営するにあたって重大なる一つの要素になるものと考えますから、ひとつ文書で御提出を願っておきたいと思います。  なお伺いますが、投資顧問業務は付随業務でありますか兼業でありますか。
  122. 松井直行

    松井政府委員 非常に新しい業務についての御質問でございますが、すでに先進国等におきましてはそれが独立の業務として成り立っておりまして、アメリカにおきましてはそういう業務を規制する法体系もできておるという状況でございますが、日本の場合におきましてはまだそういう業務が分化しあるいは独立するものとなかなかなっておりません。日本の風土にもよりまして、サービスといいますか無料ということに相なっておるのが普通でございますが、普通のブローカー業務等に関連いたしましてサービスするという範囲におきましては、これを独立の企業として兼業承認するということにもいまの段階ではなかなかまいらないと思いますが、現にいま一つのある証券業者等につきましては、一般の経済調査も含めまして、有料でお客さんから調査の依頼を受け、有料で相談に応ずるということが企業として独立体をなすという体制に漸次なってくるに違いないとわれわれは考えております。そうなりますときには兼業承認の対象にもなってまいるでしょうし、あらためてそういう業務を規制する法体系自身の必要性も検討されねばならない時期が来るんではなかろうかと思うのです。
  123. 春日一幸

    春日委員 それは私は必ずしも遠い将来の問題ではないと思うわけでございます。したがいまして、五十条第一項一号を見ますと「有価証券の売買その他の取引に関連し、株式その他価格の変動する有価証券について、価格が騰貴し又は下落することの断定的判断を提供して勧誘する行為」ということは、やはりこれは違反行為とされておるわけでございます。したがって、こういうような五十条第一項一号で明示されておりますような業務ですね、業務内容に非常に似通ったこの投資顧問業務という問題でございますね。これは証券業者にこれを認めるという形になりますと、五十条第一項一号の違反行為を誘発するのおそれはないか、そのようなおそれありとするならば、これは認むべきではないと考えるのでありますが、この点の御見解はいかがでありますか。
  124. 松井直行

    松井政府委員 この五十条一項一号の趣旨は、具体的にある特定の銘柄の証券をお客さんにすすめます際に、断定的判断を提供して、お買いなさい、売りなさいということを言ってはいけないという規定でございます。一般的に、市場全体の動きなりあるいは特定会社の分析からくる有価証券に対する投資価値等につきましては、ここに申し上げておることと別個のことでございまして、いま申し上げたとおり、有料でもってそういうものを専業にするという業種が生まれてきてもいいものとわれわれは考えております。
  125. 春日一幸

    春日委員 私の質問いたしておりますのはそういうことではございません。要するに、違反行為であるならば、これは禁止行為でありますから問題はないんだが、違反行為を誘発するおそれのあるような行為は証券業者にこれを許してはならぬのではないか、こういうことを述べておる。見解をお述べいただきたい。
  126. 松井直行

    松井政府委員 現在コンサルタント的業務が証券業者の中にあわせお客さんに勧誘するときに行なわれておるということは事実でございますが、五十条第一項一号の趣旨に反した断定的判断を提供して勧誘する行為というものは、これは条文によりまして明らかに違反でございますので、たとえコンサルタント的業務をいたすにいたしましても、一号違反とならないように厳格にこれは指導していきたい。ただ、そのけじめをどうするか、具体的に非常にけじめのむずかしい問題も起こってくると思いますが、この問題はアメリカ等におきましては、単に法律がきめるだけじゃなしに、証券業協会の規約がございます。さらにその規約に基づきます一種の凡例あるいは解釈というものが確立いたしております。したがいまして、わが国におきましてもこれを受けまして、証券業協会等におきまして従来の凡例といいますか、例示あるいは解釈を漸次積み上げ式に固めていくことによりまして、一項一号のような違反が起こらないように、ここのけじめは事前に明確にしていきたいと考えております。
  127. 春日一幸

    春日委員 当面これは、要するに投資顧問業務は付随業務であるのかあるいは兼業に該当する業務であるのか、この点はどういうぐあいに扱われておりますか、現在は。
  128. 松井直行

    松井政府委員 現在の兼業におきます態様におきましては、独立した業務として兼業承認を与えるという態勢には、一般的にはなっていないと思いますが、一部ある証券業者におきまして、従来の調査部ですか、現在証券業務の中にあります調査部を独立いたしまして、いわゆるアメリカのような投資顧問的業務を独立の事業としてやろうとして出発いたしておるところがございますが、これにつきましては当然兼業承認ということに相なろうと思います。
  129. 春日一幸

    春日委員 それでは投資顧問業務は兼業であるということが明確にされましたが、しかしそれの免許にあたりましては五十条第一項一号の規定を十分しんしゃくされまして、その条文の精神を十分生かされまして、みだりに認可がされないように、この点については十分配慮を願いたいと思うわけでございます。  次は五十四条の是正、保全命令について伺いたいと思いますが、改正案では大蔵省監督権を強化して、事前措置として是正、保全命令、これはことごとく行政指導の権限に属する、こういうことになっております。大蔵省令に全的委任ということになっております。私はこういうような広範な行政権の自由裁量権を大蔵省に認めてしまうということには相当問題があるのではなかろうか、たとえば負債比率、それから健全性の基準というようなもの、それから経営、こういうようなものは経営規模の大小を問わず、機械的に、画一的にこれは大蔵省できめてしまえば、これは当然不当に中小証券を圧迫する形になってくる。中小証券の存在理由を抹殺してしまう結果におちいるおそれなしとはしない、こういう心配はありませんか。この点についてどういうぐあいに設定する考えですか、負債比率でありますとか、健全性の基準等、こういうような是正、保全命令を発動される基礎になる基準ですね、これはどのように定める方針でおられますか。
  130. 松井直行

    松井政府委員 五十四条は是正、保全命令が出し得る場合でございまして、その一項一号に負債倍率というものが出てまいっております。これは先ほども御説明申し上げましたが、現行でもこの規定があることはあるのでございますが、およそ企業である以上、幾ら借金してもいいのだということに相なるわけではないのでございまして、ほどほどの適当な負債額というものがあってしかるべきだということで、従来企業の健全性という観点から、多年経営者が経験の上、積み重ねてまいりました準則というものがございます。一般の企業につきましても、正味資産に対する全負債額の基準というものはある程度確立されつつあるところでございますが、特に証券業者におきましては、お客さんに対する信用、受信行為の最後の担保というものが証券業者の純財産額でございますので、これにつきましては従来の二〇%という、これはアメリカにおきましても現在二〇%でございますが、長年慣行的にやってまいりましたその率にあえて支障があるとは考えておりません。ただ計算法を変えますことによりましてそれが一〇以下になってくると思いますが、それも慣行的にいろいろやってみた結果これがいいという準則をわれわれは発見しておるものでございまして、全く恣意的にこういうものをつくるつもりはございません。まして中小あるいは大等につきまして差を設けるという考え方はございません。むしろ将来あり得るとすれば、先ほどお示しになりました職能分化の関連からディーラー、ブローカー、アンダーライター等につきまして別個に規定すべきかという問題があろうと思います。  それから、第二号におきます「大蔵省令で定める健全性の準則」これも新規証券取引法のもとにおきまして二十年間いろいろの証券業者指導もしてまいりましたし、検査もしてまいりました。新規登録も認めてまいりましたし、廃業も命じてまいりました。いろいろの経験をいたしました結果、日本証券業者といたしまして、健全性の準則というのはどうあるべきかということはほぼ、ある程度準則的にわれわれ固まってまいっておる基準がございます。たとえば有価証券の保有量、あるいは貸し付け金等につきましては十分担保をとっておるかどうかということ、あるいは借り入れ金等につきましては十分流動資産に対応した借り入れ金であるべきかどうか、あるいは総資産の中で固定資産として持つ率が非常に多過ぎる、固定資産比率が非常に多過ぎるということも一つの不健全な基準に相なっておるわけでありますので、いま申し上げましたような点に着目いたし、かつ従来からの実績にかんがみまして、一種の準則的なものをここにつくり上げてくることが可能であろうと思います。証券業者も十分このことにつきましては納得できる準則であろうと思います。小あるいは中、あるいは大等によりましてへんぱな扱いをするという考えは、この準則の適用につきましては毛頭持っておらないところでございます。
  131. 春日一幸

    春日委員 私はその点が、その基準、尺度というものがひとまずここに定められますると画一的な処理が強行される心配があると思うのでございます。なるほど過去の実績において一個の実績上の基準で把握されておるとはいわれておりまするけれども、過去の中小証券の栄枯盛衰のあとをたどるならば、これはもう非常に波乱万丈と申しまするか、非常に変化が多いですね。変化の多い中から得られたところの過去の基準、実績によるところの基準というものは、要するに腰だめ的なものにならないかということですね。いままで中小証券がたくさんやってきて、たくさんつぶれてやめていったですね。そうでしょう、中小証券業者は……。そういうようなものの実績の中から、要するに健全基準というものをそのような実績の中から抽出しようと思っても正確は期しがたいということを言っておるのですよ。だからここであなたのほうが大中小の証券業者というものに対して画一的な尺度によって保全命令発動の基準を定められるような場合は、これはそのような制度並びに中小証券の存在意義というものを抹殺することになりはしないか、そのようなおそれがないか、この点を深くおもんぱかっておるのでございます。この問題は五十六条、五十七条、五十七条の二の準備金の問題等にも関連を持つのでありますけれども、要するに専業主義の立場に立って、いまも松井局長がちょっと述べられたのでありますけれども、これはやっぱり非常に単一的な尺度ではなくして、やっぱり業務別であるとか、これは準備金の場合特に強調せなければならぬ問題点であると思うのでありまするが、とにかく画一を避けて、しかもそれが省令によってなされるというところから非常にその危険性がなくはないような気がして心配されたのでありますが、こういう問題について政務次官はおもんばかられるところはありませんか。
  132. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 よほどこれは重要な問題だと思うのでありまするが、この五十四条を見ますれば、第一項の一号ないし三号まではそれぞれの基準を設けております。また二項のほうにおきましても政令で定めるところによって計算し、それから三項においては、三十六条の規定においても大蔵省でとるべき基準を定めるように聞いております。そういうものに基づいてやりまするので、ある一定の基準に従ってやるとは思いまするが、先ほどおっしゃいますように、業務というものはたいへんどうも変転きわまりないものでありまするから、ちょっとあぶないからといってよけいなことを言えばつぶれぬでもいいものがつぶれることがあり、またほうっておいていいかげんにやれば損をかけないのをついにつぶしちゃって損をかける、こういうデリケートな問題がございまするから、それらの点はよほど当該監督及び指導に当たる者は十分心得てやらなければならぬ。これは非常な研究を要するし、経験の要るものだ、そのつもりでひとつやらせなければならぬ、かように考えております。
  133. 春日一幸

    春日委員 私の申し上げておる点について御答弁を得たと思うのでありまするが、要は大蔵省令に全的に一任いたしておるところに問題点がある。そのような広範なる行政権の自由裁量によって要するに生殺与奪の権限を大蔵省に持たせるということは、何となくこれは官僚独善のきらいなしとはしない。のみならず、その複雑多岐にまたがりまするところの証券業というものの特色にかんがみまして、しかもその業務そのものが兼営を許される、こういうような事情等にかんがみまして、そのような画一的な基準の設定というものは非常に危険である。だからいま政務次官が述べられたように、それは十分実情に即して中小証券の存立を危うくすることのないように、それは格段の配慮をなさるべきである、この点を強く要望いたしておきます。  なお、関連いたしまして準備金の問題、五十六条、五十七条の問題でありまするが、これでは経営健全化のために利益準備金、それから売買損失準備金、それから証券取引責任準備金の三準備金を法定いたしまして、内部留保の充実による経営の安定、これがはかられておる、これは趣旨はわかるのでございまするが、この法律では三準備金が羅列されておるだけで、職能分化方向に向かっておるとはいいながら、その考慮が何ら払われてはいないではございませんか。これはやっぱり免許の場合と同じように専業主義の方向をとるものでありとするならば、やはり業務別に必要とする準備金を明確にしておくほうが適当ではないか。せっかく法を改正するのであるならば、職能分化という方向、専業主義の方向、この上に立って業務別に必要とする準備金、これは取引の過程においてパーセンテージはおのずからこれは違うと思うのです。だからこういう一括羅列主義というものは実情に沿わないのではないか、こう思うのでありまするが、この点松井さん。
  134. 松井直行

    松井政府委員 まことにお示しのとおりでございまして、おのおのの準備金の性格はそれぞれの職能にマッチすべきものだとわれわれは考えております。特にこの有価証券取引責任準備金、これは主としてお客さんを相手にいたしますブローカー業務について起こり得ることでございますので、ブローカー中心にこれは考えるべきものだと思います。それから売買損失準備金、これは証券業者の自己計算による取引に基づきますある事業年度の益というものをそのまま社外に流出させない、その一年先か、二年先に起こるであろう売買損のために備えさせておくということでございますので、本来的にはディーラー活動を中心にしてこれがきめられるべき問題だと思います。ただ利益準備金につきましては、これは利潤を追及いたします一企業体としての最終的な準備金を充実さそうといたす趣旨でございますので、これにつきましては、ディーラー、ブローカー関係なしに企業の内部留保を厚くするという意味におきまして共通にとられるものと思います。こういう意味におきまして運用等につきましては、いま仰せのとおりの業態の区分によりまして的確に運用してまいりたい、こう思っております。
  135. 春日一幸

    春日委員 これはやはり法律で明定することが私は適当であると思うけれども、しかしいまの段階ではなかなか困難な情勢もございましょうから、専業主義というものが一つのプリンシプルであるならば、一個のビジョンでありまするならば、やはりこういうような諸制度の運用を通じて、そういうターミナルにゴールできるように、政令の立て方、省令の立て力、そういう中でひとつ十分なる力を尽くしていただきたい。強く要望いたしておきます。  次は附則第二項について、既得権の尊重がどうなされるのであるか、これを伺っておきたいと思います。  既存業者については四十三年四月一日から免許制に移行する、それまでは営業の継続を認められることになっておりますが、大蔵省では、三年間の経過期間中に、つとめて既存業者の体質改善に協力して、この業者が円滑に免許制に移行できるように配慮しなければならぬと思うわけでございます。やはり相当高度の飛躍を願わねばならぬ業者に対して、彼ら自体が自分でそれをやれというたところで、なし得る限界はおのずからあると思うのです。したがって、これは政府の協力と申しますか、特に証券局がそれについて相当の力を与えていかなければならぬと思う。これはどういうような対策を具体的に考えられておるのであるか、ひとつこの際お述べを願っておきたいと思います。
  136. 松井直行

    松井政府委員 仰せのとおり本質的には免許を受ける資格を獲得するまで、みずから条件を充足する責任企業自身にあろうかと思います。したがいまして、大蔵省といたしまして、そうした企業主の自由とその責任を侵害するわけにはまいりません。侵害しない範囲におきまして、現存証券業者ができるだけ多く三年先にはこの免許を受けられる条件を充足し得るよう、平素の行政指導あるいは検査の結果等に基づきまして支障のない限り積極的に相談にも応じ、指導もしていきたいと思っております。したがいまして、保全命令的な——従来の登録制では全然こういうことが法律には書いてございませんが、事実上としてはやってまいりましたが、今回は五十四条の精神にのっとりまして保護処分と申しますか、手厚く前向きで前もって証券業者指導するという行政があわせ行なわれることになるでありましょうし、こういう精神に基づいて検査あり方というものも変わってまいるでありましょうし、あと三年間におきまして全証券業者にできるだけたくさん適格者を得たいという観点から、従来よりも少しピッチも上げまして、証券検査官をふやす。ただし検査するときの心がまえも、いまおっしゃったような趣旨に沿いまして、できるだけ証券業者の完全な条件充足への方向大蔵省も協力してまいりたい、こう念願いたしております。
  137. 春日一幸

    春日委員 もう少し具体的にお述べをいただきたいと思うのであります。たとえば現在業者数が五百十一社、営業所数が二千四百二十四、三十九年度末でそういうことになっておるのでありまするが、これらの諸君がこの新しい法律を受け入れることができる体制を自主的に整備するということになりますると、まことに容易ならざるものがあろうと思うのでございます。したがって、あなたのほうではどういうふうに想定されておりまするか。たとえば営業所等の企業合同の行政指導でありまするとか、あるいはその間における企業そのものの合同でありまするとか、そういうようなことにも触れて行政指導がなされるものであるのか、そういう場合の資金上の支援措置あるいは大証券あるいは強力証券との提携措置、こういうような問題の根幹に触れて行政指導がなされるものであるかどうか、そうしてそのめどは一体どの程度に置かれておるのか、業者数、営業所数、そういうものをどの程度のめどに置いておるのであるか、何らかの基本的な構想があろうと思いますが、この際お述べを願っておきたいと思います。
  138. 松井直行

    松井政府委員 仰せのとおり現在証券業者が五百十一ございます。これを三年先には何社に持っていこうという荒っぽい措置なり考え方をわれわれとっておりません。大きな業者一社ですと、小さな業者十社分、二十社分にも当たる状況でもございますので、数の上だけでこういうところへ持っていこうという、そういう荒っぽい構想はわれわれ持ち合わせてはおりません。ただ不幸にして三年間証券界不況が続いてまいりました。たとえ今回免許制というものが実施されなくても、証券業者自体がこういう状態であってはいけないという観点に立ちまして、みずから経営の基盤を強化し、脱皮するという方向に現在各企業の経営者の責任下において自主的に進んでおります。もし必要がありますならば店舗整理、人員整理その他につきまして、証券協会あるいは証券取引所等で共同で相談し合う場を持つとか、あるいは店舗整理等にいたしましても、非常に売り急ぐということがありますと有利に店舗を処分できないということがあって、たとえばどこかで一時的に店舗を適正な値で買い取ってくれる機関が必要だということに相なってまいりますなれば、証券業協会あるいは取引所、あるいは場合によっては大蔵省等もその相談に乗るというような形におきまして、証券業者の自発的な合理化というものがスムーズに行なわれるよう、できるだけわれわれ行政庁といたしましても力を尽くしたい、こう考えております。
  139. 春日一幸

    春日委員 問題は、私はこの三年間の経過措置というものが非常に重大なものであろうと思うのでございます。  いずれにしても、業界の業況にかんがみましても、相当の体質改善を必要とする実情にあると思うのでございます。したがってこれら大中小さまざまの企業がこの新法を受け入れるということについては、なかなか自己単独の努力ではその資格条件を得ることが困難な場合もあると思うのでございます。これはしょせん行政指導行政協力というものが必要不可欠の要件であろうと考えますので、その点についてはひとつ脱落者を多く出さないように、そうして不当な犠牲者を出すことがありませんように、かたがたもって証券業の健全なる発展のためにこれらの多くの諸君の協力が得られますように十分なる措置をとられたいと思いますが、これに対して政務次官からその大まかな方針を御明示願っておきたいと思います。
  140. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 お説のとおりその点は十分心してやらなければならぬとわれわれ考えております。
  141. 春日一幸

    春日委員 そういたしまするとあとは基本的な問題、冒頭に質問をいたしましたように証券取引法のいろいろな問題、もう一つ証券協会の公共性の強化に関する問題、それから取引士法に関する問題、この三つの問題を質問しなければ相なりません。  これは私はいまここに準備してまいっておるのでございますが、最もすみやかに改正措置を行なうということでございますので、この機会に同時並行的にこの質疑を通じて政府の方針も明らかにしながら、問題点を国民の前につまびらかにしていかなければならぬと思うのでございます。しかし取引士法の問題でも証券業協会の問題でも、それから証券取引所の問題でも、これはあと三分か五分しか残っておりませんので、これは理事会の御決定の時間の範囲内では論議を尽くすことができません。したがって残余の問題はできるだけ今会期中に、願わくば来週ぐらいに十分論議を尽くすことができますように委員長において善処することを要望いたしまして、私の質問はこれで終わりたいと思います。よろしゅうございますか。
  142. 吉田重延

    吉田委員長 ただいまの御要求に対しましては理事会もいたしましょうし、理事会でもよく御相談申し上げ、また小委員会もあることでございますし、先ほど堀委員の御要求に対して、政令等につきましては詳細にわたる点もございますので、政府のほうでもそうした解明すべき点についてはできるだけ資料を出し、そして御相談申し上げるということになっておりますので、善処いたすことにいたします。  しばらく速記をやめて。   〔速記中止
  143. 吉田重延

    吉田委員長 速記を始めて。  本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  144. 吉田重延

    吉田委員長 これより討論に入るのでありますが、本案につきましては討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  おはかりいたします。  本案を原案のとおり可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  145. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  146. 吉田重延

    吉田委員長 本案につきましては、金子一平君外三十八名より三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、この際提出者より趣旨の説明を求めます。金子一平君。     ————————————— 証券取引法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案) 一 証券会社に対する業務別免許制の採用を契機として、わが国の実情に即しつつ職能分化が進んで行なわれるよう配意すべきである。 二 改正法に基づく政省令の制定等改定法の運用については、本委員会審議経過にかんがみ、その意を体して証券事業全般の信用の向上、大中小証券会社のそれぞれの機能の円滑化並びに投資者の保護を期するよう慎重に配慮すべきである。 三 本法の改正は、当然証券業協会証券取引所の公的なあり方及び有価証券発行制度整備改善を含めて行われるべきものである。従ってこれらの点の改正を行なうことに依り、有価証券の公正な価格形成、発行の適正化、流通の円滑化並びに証券取引所及び証券会社責任の明確化を図り、投資者保護に万全を期すべきである。 —————————————
  147. 金子一平

    ○金子(一)委員 ただいま議題となりました証券取引法の一部を改正する法律案に対する附帯決議についてその趣旨を御説明いたします。  附帯決議の案文はお手元にお渡ししてございますので、朗読を省略さしていただきます。  以下この決議案について若干敷衍して、その意図するところを明確にいたしたいと思います。  まず第一点は、今回の改正により、証券業については業務別免許制が採用されることとなり、これにより将来職能分化が行なわれるような場合における制度上の受け入れ体制が整えられるということでありますが、業務別免許制がはたして職能分化と結びつくものであるかどうかは、法律の規定上からは何ら明確にされておらないところであります。しかしながら、たとえばアンダーライターとディーラー、あるいはディーラーとブローカーの併営が従来とかく弊害を生ずる原因となったことは明らかでありますので、このような弊害を除去するためには、わが国の実情に即しつつ職能分化が進んで行なわれることがぜひとも必要と考えるのであります。したがいまして政府におかれては、この点に十分配慮しつつ、熱意を持って職能分化の推進につとめられることを強く要望するものであります。  次に第二点は、今回の改正により、政令または省令に委任された事項は十二の多きに達しておりますが、これらは資本の額といい、負債比率といい、その他すべてが証券会社の業務にきわめて重大な関係を持つものであります。また、今回の改正により大蔵大臣は認可権、承認権、命令権といった証券会社に対する絶大なる監督権限を持つこととなっているのでありますが、これら監督権限の行使が適正に行なわれるかいなかは、やはり証券会社にとっては死活に関する重大な問題とも言えるのであります。したがいまして、以上の政令省令改正法の運用は、本委員会における審議経過にかんがみ、その意を体して慎重に行なわれなければならないのであります。政府におかれては、証券事業全般の信用の向上、大中小証券会社のそれぞれの機能の円滑化並びに投資者の保護に留意しつつ、改正法の運用については、証券業界の実情及び推移に即して、これが弾力的に行なわれるよう慎重に配慮されることを切に要望するものであります。  次に第三点は、今回の改正はもっぱら証券業者に関する部分について行なわれているのでありますが、証券取引法改正は、当然証券業協会証券取引所の公的なあり方及び有価証券発行制度等の整備改善を含めて行なわれなければ、有価証券の公正な価格形成、発行の適正化、流通の円滑化をはかることも、はたまた証券取引所及び証券会社責任の明確化をはかることもできないことは言うまでもないのであります。したがいまして、政府におかれては、これらの点の改正を行なうことにより、投資者保護に万全を期せられることを特に要望するものであります。  以上がこの附帯決議の趣旨でありますが、何とぞ御賛成あらんことを希望いたします。
  148. 吉田重延

    吉田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  おはかりいたします。  金子一平君外三十八名提出の動議のごとく決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、金子一平君外三十八名提出の動議のごとく本案に附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められております。これを許します。鍛冶大蔵政務次官
  150. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 ただいま証券取引法の一部を改正する法律案を採択されますにあたって、三点について附帯決議が行なわれたのでありますが、政府といたしましては、改正法の運用にあたりまして、十分この附帯決議の御趣旨を尊重してまいりたいと考えているのであります。
  151. 吉田重延

    吉田委員長 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  152. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  153. 吉田重延

    吉田委員長 午後一時二十五分より委員会を再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後一時九分休憩      ————◇—————    午後一時三十一分開議
  154. 吉田重延

    吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  金融及び国有財産に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。只松祐治君。
  155. 只松祐治

    ○只松委員 過日私が吹原産業の問題に関しましていろいろ資料をお願い申し上げておりました。なかなか的確な資料が今日まで得られないようでございますけれども、今日までわかっておる資料がございましたら、ひとつこの機会にお知らせをいただきたいと思います。
  156. 田中角榮

    田中国務大臣 吹原産業事件につきましての御要求の資料にかえまして、私がただいままで大蔵省でわかっておりますことを申し上げます。  過日、当委員会におきまして御要求のあった吹原弘宣及びその関係会社に対する市中銀行の融資の状況及び同人に対する三菱銀行の告訴問題につきまして、関係銀行につきまして調査いたしましたところ、現在までに判明いたしました概要は、おおむね次のとおりでございます。  その一つ。まず市中銀行の融資について申し上げたいと存じます。  大和銀行は吹原産業株式会社に対しまして、冷凍倉庫三ヵ所の建設資金といたしまして十五億円、吹原冷蔵株式会社に対しまして、五反田の冷蔵倉庫、ボーリング場建設資金といたしまして五億円の貸し出しを行なっておるようでございます。  次に、三和銀行からも、五反田の冷蔵倉庫、ボーリング場建設資金といたしまして六億円の貸し出しがございます。  なお、三菱銀行につきましては、本年四月二十日現在で、北海林産興業株式会社に運転資金として千八百六十九万円、吹原の家族名義で二千万円の貸し出しがあったのでございますが、現在は返済されております。  二といたしまして、三菱銀行の吹原弘宣に対する告訴問題につきましては、御承知のとおり、検察局におきまして目下捜査中でありますので、具体的に申し述べることを差し控えたいと存じますが、銀行を通じて承知しておる概況を以下申し上げます。  吹原弘宣は、三菱銀行長原支店に、かねてより個人預金取引があったのでありますが、昨年の十月十四日ごろより支店長の更迭祝いと称して大口預金の申し出を行ない、同月十九日、同人振り出しの他行あて小切手と引きかえに通知預金証書二通、内訳は二十億円と十億円の二通でございますが、これを巧みに騙取いたしたわけでございます。長原支店におきましては、間もなく当該小切手の資金化が困難であることに気づきまして、証書の返還を求めたのでございますが、言を左右にして応じなかったので、同日中に吹原より、本証書は入金なく無効の証書である、こういう旨の念書を徴求するとともに、その後も証書の返還を求めて五ヵ月余り推移をいたしたわけでございます。本年三月十七日、外部のうわさによりまして銀行の本部がこの問題を承知をし、同支店長を喚問いたしましたところ、右のような事実を知りまして、以後本部におきまして当該証書の返還交渉を行なってきたわけであります。四月十二日に至りまして証書のうち十億円の一通は返還をせられましたが、残り一通、すなわち二十億円額面につきましてはなお回収されておらないのでございます。  なお、同支店の勘定処理といたしましては、本件は入金がなされていないのでありますから、当然のことながら、元帳に記入されてはおりません。したがって、計数上にはあらわれてきておらないわけであります。  以上が今日ただいままでに銀行等を通じまして大蔵省が知り得た事実でございます。
  157. 只松祐治

    ○只松委員 そのほかに正規の金融機関で扱われた手形関係のものがおわかりになりますかどうか。これが第一点。それから、正規の金融機関ではございませんが、いろいろ巷間伝えられておりますように、正規の金融機関が関係していわゆる手形が動いておる、こういうことが言われておるわけでございますけれども、そういう点について大蔵省で手形その他でおわかりになって、あるいは捜査の段階もございますので発表しにくいものもあるかと思いますけれども、発表できるものがあったらひとつお知らせを願いたいと思います。やみ金融については、推測とかそういうことになるかと思いますので、なかなか本委員会で発表はむずかしいかと思いますけれども、そういう点で一般正規の金融機関を舞台にして行なわれた、こういうことが一斉にマスコミに書かれておりますので、全然監督官庁の大蔵省と無関係であるとも思われませんので、おわかりになりましたらお知らせを願いたいと思います。
  158. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 お尋ねの趣旨がちょっとはっきりしない点がありますが、いわゆる新聞等で伝えられております吹原が使った手形あるいは吹原自身が支払い人であるところの手形関係、そういうものについてはいまのところ判明しておりません。全然ないということは申し上げるわけにいきませんけれども、大体吹原に対する都市銀行等の融資関係はただいま御説明申し上げた程度のものがわかっておるだけでございます。
  159. 只松祐治

    ○只松委員 そのほかに私がお尋ねいたしました国有林、国有地、そういうものに関しまして、この前も、吹原産業だけでなくて吹原弘宣氏が関係しておる、こういうことも含めてお尋ねしたわけですが、そういうものは的確なものがないというような国有財産局のほうからおいでになった方の御説明でありますが、新聞にもたくさん書いておりますし、それから新聞の吹原産業個人の談話を見ましても、吹原産業ではないけれども、自分の指定する会社に払い下げられておる、こういうことを自分の談話としても明確にお話しになっておられるわけでございます。したがいまして、吹原産業それ自体に直接のものはないかどうか知りませんが、そういう関連のものを含んで、ありましたらひとつこの際国民の疑惑の目を解くためにも、あるならある、ないならない、ということではっきりしておきたいと思います。
  160. 田中角榮

    田中国務大臣 私も、この問題について国有財産を払い下げたというようなことが新聞に散見されますので、この間の事実は十分糾明をするように、糾明をしてしかる後に大臣に報告を求めております。現在までに吹原及び吹原産業関係各社に、大蔵省関係の国有財産として払い下げた事実はないようでございます。しかしまだ各財務局もたくさんございますから、そういうもので小さいものでも払い下げたものはないかということで、その事実を確かめるために調査をいたしております。現段階において大蔵省当局で払い下げたものはない、こういう報告でございます。  それから北海道の山林等払い下げたというようなものは、何か風倒木というように書いてございますが、林野庁関係の立木を払い下げたというような事実はあるようでございます。これも量は多くないということでありますが、私はさだかに承知しておりません。
  161. 只松祐治

    ○只松委員 きょうせっかく大臣の御出でございますから、あまりこまかいことをお尋ねして本質的な解明がなされないということになると、私たちの国会としての問題もございますので、そういう点はまた他日検察庁のほうからもいろいろお調べがあると思いますので、そういう面の資料を、お出しになり、国会のほうにもそういう点がおわかりになりましたらすみやかに、これは大蔵省だけじゃなくて、農林省のほうにも関係してくるかと思うのですが、ひとつお出しをいただきたいと思います。  それからいま若干と申しますか、明らかになっておる面だけ大臣のほうからお話しになったわけでございますが、資料をいただいておる中で、たとえば一つの三菱銀行の預金通知証書というようなものを見ましても、一支店長がこういう二十億、三十億というような預金通知証書というものが一体取り扱えるものかどうか、こういうことがいまの疑点の一番中心になっておると思うのです。そこで、その背後に何らかのものがあるんではないか、こういうことでございます。私たちが存じております範囲内においても、一支店長が取り扱えるのは、支店長が腹が大きくても、せいぜい一千万ぐらいが限度で、とても億というような金を一支店長で取り扱えるものではない、こういうことが言われております。事実いろいろ私が資料を要求いたしましても、今日までその具体的な数字を出してまいられない裏には、銀行は非常に信用を第一とする。したがって信用を失してはならないから、そういうものは今日まで公表できない、こういうことを言われておるわけです。そんなに信用を重んずる銀行が、なんでこういう莫大な金を融資したり、あるいは預金通知書三十億というようなものを正規の、しかも三菱というような、いままで一番かたいといわれておったような銀行が取り扱ったか、こういうことは常識では私はあり得ないと思うのです。銀行局長のほうなり、どうしてこういう事件が起こったか、その点についてひとつ監督官庁の立場でお答えをいただきたいと思います。
  162. 有馬輝武

    ○有馬委員 関連。
  163. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。有馬輝武君。
  164. 有馬輝武

    ○有馬委員 いま只松委員からの質問に対しまして、大臣から風倒木について若干あるようであるけれども、少額のものらしいという答弁があったわけですが……。
  165. 田中角榮

    田中国務大臣 国有財産として大蔵省所管のものを払い下げたという事実は、いままで私はつかんでおりません。ないようでございます。こういうことを申し上げておる。新聞等に風倒木云々と出ておりますが、農林省所管の立木を払い下げた、風倒木ではなく、立木を払い下げたいという事実はあるようでございますということを申し上げたわけであります。この問題につきましては、農林省からひとつお聞きいただくか、資料を出すか、こういうことでお願いしたいと思います。
  166. 有馬輝武

    ○有馬委員 風倒木ではなく立木だそうでありますが、その立木を、何石だれに、いついかなる名目で払い下げたか。当委員会に資料として出すよう、委員長のほうにおかれて林野庁に要求方お願いをいたしたいと思います。
  167. 吉田重延

    吉田委員長 一応答弁をしていただきましょう。
  168. 若林正武

    ○若林説明員 お答え申し上げます。昭和二十九年度以降の国有林の立木、及び丸太の売り払いにつきまして、関係営林局に調査をさしたのでございますが、北海林産興業株式会社に売り渡した事実は全くございません。ただ函館営林局管内の函館営林署及び江差営林署が、地元の製材工場に製材資材といたしまして売り払いをしている工場の中には、その製材をしたまくら木を北海林産興業と取引をしておるというふうな事実はあるようでございます。なお帯広局管内の新得町、北見局管内の斜里町に、北海林産興業という全く同じ名称の会社がございますが、これは吹原産業とは関係ございませんので、御了承願います。
  169. 有馬輝武

    ○有馬委員 その木材会社を通じたかどうかわかりませんけれども、少なくとも北海林産に、製材会社からある程度のまくら木が行っておるということは事実なんですね。その石数その他についてわかりませんか。
  170. 若林正武

    ○若林説明員 地元工場から、北海林産興業株式会社のほうへまくら木が行っておるという事実はございますが、数量等につきましては、私どもとしてはわからないのでございます。
  171. 有馬輝武

    ○有馬委員 問題がここまで発展しておるのでありますから、やはりそこら辺について、林野庁としては早急に明瞭にする態度があってほしいと思うのです。ここら辺を明瞭にしておきませんと、かえってなぞを深めますので、早急に調べられて、その石数その他について資料として提出方をお願いしたいと思います。
  172. 若林正武

    ○若林説明員 関係工場は八工場ございますが、この八工場に対しまして、私どものほうで売り払いをいたしました数字は、はっきりしておりますので、資料として提出をさしていただきます。
  173. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 三菱銀行ともあろうものが、なぜ三十億円という巨額の通知預金証書を詐取されたのか。それから支店で扱うにしては大き過ぎるじゃないかというお尋ねであったと思います。預金につきましては、ただいま一千万円というふうな、これは新聞で私も見ておりますが、限度があるようにおっしゃいましたが、預金を受け入れることは、支店長限りで金額の制限はございません。融資につきましては、支店長がせいぜい数百万円程度に押えられておるのが大部分であると思います。預金の受け入れだけは別段制限はございません。この場合におきまして、私ども銀行側から聞いただけでありまして、事実のほどは検察庁等の捜査にまつ以外にありませんが、銀行の申し立てたる詐取された手口といいますか、そういうことを聞きますと、要するに吹原なる人物が相当の金額を動かしておると相手に信じ込ませるという点において非常に巧みであった、三十億円というのは非常に大きいのでありますが、そういう程度の金も吹原なる人物は動かすこともあり得るのだというふうに思い込ませるようないろいろな言動があったようであります。そのことに乗ぜられたといいますか、支店長——この場合にはちょうど支店長は更迭といいますか転勤の辞令がすでに出ております。しかも引き継ぎ中のできごとでございます。ですから新しく赴任した支店長は吹原をよく知りません。——だと思います。前からおりました支店長は子供の関係で、吹原の子供と同じ学校に行っておる。何とか学園というのですか、そこに行っておりまして、PTAの役員等をしておる。しかもこの学園に吹原が相当巨額の立てかえをやっておるという事実がございます。これはどうもうそではないようでありまして、相当の巨額の立てかえをしておる。であるからかなり大きな額を動かし得る人物であるということも、そういう点からもあまり疑わなかったということでありまして、詐取されたと申しますのは、要するにたとえば銀行の振り出した自己あて小切手といいますか、そういう現金にかわるべきものをもって通帳と引きかえるということであったのに、それが直ちにはできないから、午後まで待ってくれということで、短時間のことであるからと思ってまあ油断をして、普通の小切手をいわば証書がわりに受け取った。この辺が銀行員としては重大なミスである。詐取には違いありませんが、はっきりと現金と引きかえでなければ、このような巨額の通知預金証書を渡すということはまことにおかしなことであって、その点はいかに吹原の言にうまく乗せられたといいましても、手落ちがあったといわざるを得ないのじゃないかと思います。
  174. 只松祐治

    ○只松委員 私の持ち時間はわずか三十分でございまして、一つの問題だけでも徹底的に論議いたしますと、それ以上かかります。私は問題点だけを言っておるわけですが、ただ、いまのような御答弁ですと、支店長になるのは相当のベテランでないと、二十年、三十年銀行業務に携わった人でないとなかなか支店長にはしないわけです。そういう人が簡単に、二十万、三十万なら別ですが、二十億、三十億という手形詐欺にひっかかるとか預金通知書をつくる、こういうことは常識ではあり得ない。まあ長原支店の全部の預金高なり取り扱い高が幾らあるか知りませんが、おそらく二十億、三十億というようなことはないと思います。その自分の銀行の預貯金を上回るような金を、こういうふうに簡単に取り扱うというようなことは、支店長としては常識上はあり得ないことです。そういうあり得ないことが行なわれておるから、国民は非常な疑惑の目を持って見ておるし、私もこれほど大騒ぎになるとは知らないでちょっと質問したわけでありますけれども、こういうふうに連日マスコミが取り上げる。こういうことになっておるわけです。ただいまのような答弁では、これは当委員会でもそうでしょうが、国民は納得しないと思う。だから、そういうような御答弁ではなくて、もう少しやはり国民が常識的に納得する、こういうことでないと、たいして知らなかった、そして何ヵ月かたって本店が知った、こういうでたらめなことが常識上あり得ると思いますか。あり得るならば私がさっき聞いたいろいろな資料を出してくれと言っても今日まで出さない。それは銀行信用上の問題だという。それほど信用を重んずる銀行業務が、二十億、三十億というようなこういう金を簡単に扱うということはあり得ないでしょう。だからそういうことはきょう私はこの問題を徹底的に追及しようということじゃない。大臣の所感その他を聞きたいと思って当委員会へ来てもらっているわけですから問題を追及いたしませんけれども、もう少し誠意がある答弁をしていただきたい、こういうふうに思います。それから手形の問題にしたところで、もう私が一々読み上げなくても新聞やすべてに全部各銀行、それから被害会社、藤山さんのように三億円ひっかかった、こういって告発するというような記者会見までして談話を発表されておる方もあるわけなんです。こういうものを全然銀行局が知らない、大蔵省が知らないということはおかしなことなんですね。ですからこういうものを知ったら調べた範囲内で出せるものは出す、これ以上は捜査の段階だから言えません、それを明らかにしていくのが国会における、私は国民の疑惑の目をぬぐっていく問題だと思うのです。国会まで何かそれこそ黒い霧に包まれて、自由な発言もできない、あるいは自由な答弁もできないということになったら、私はこれは日本の民主政治にたいへんな危機が訪れる、こういうふうに思っております。各紙の新聞社説も全部そのことを書いております。これは民主主義の前進ではなくて、民主主義の破壊につながっていく、こういうことを社説にも全部書いております。あえて私はそういういろいろな意味からこの問題をやはり明らかにしていく点は明らかにする必要があるのじゃないか、こういうことでお尋ねしているわけであります。政府側といたしましてもそういう点はもう少し正直に答弁をしていただきたい。  それから次に、こういう大きな事件が出てまいりまして、その中にいろいろな政治家の名前も浮かんでまいっております。よしんばこれが、政治家なりあるいは銀行関係者、財界の首脳者が、法律的には全然白、こういうことになりましょうとも、これだけいわば大きな事件を起こしますと、銀行関係者にも背任罪が成立するかどうかいたしまして、当然にやはり責任というものが出てまいります。当時の銀行、三菱なら三菱の責任者、つまり日銀総裁も当然一つ責任が出てくるでございましょう。あるいはまたこの政界で名前が出ておる人もみんな被害者、被害者、こう言っておりますけれども、何らかの意味で被害者であるか知りませんけれども、しかし関連がきわめてあるということも、私は一々具体的な事実を申しませんけれども、全新聞、全マスコミが明らかにしておるところなんです。そういたしますと、当然何らかの形でこういうものはいわゆる責任問題というものが出てくると思うのです。まあこういう問題、なかなか、特に大蔵大臣大臣としては容易でないと思いますが、佐藤内閣の実質上の実力者である田中大蔵大臣といたしまして、政界の浄化と申しますか、こういう点に関しまして所感がありましたら、所感をお伺いいたしたいと思います。あるいは今後この問題を政府としてどういうふうに取り上げていかれるか、そういう点についてお考えがありましたらひとつお聞かせ願いたいと思います。
  175. 田中角榮

    田中国務大臣 事件がいま捜査段階でございますから、また私たちも新聞を通じて知るということ、また銀行関係につきましては銀行からの報告に基づいて知るという以外には考えられないわけであります。でありますからこれらの問題は捜査が強制捜査に踏み切っておるわけでありますから、私は近く明らかにせられるであろうということを信じております。またこういうものは一日も早く明らかにせられてしかるべきものだと考えております。ただ私がいま申し上げ得る問題は、ボーリング場に二十億、三十億という金を出しておるとか、一流銀行が六億とか、それからまあ三菱銀行が三十億ひっかかったとかひっかからなかったというときには、よほどうまい手で持ってくるから詐欺ということが起こるわけでありますけれども、銀行行政をあずかっておる大蔵省から見ますと、少なくともいま中小企業が非常にたいへんな状態とかそういうことで毎日大蔵委員会でもって検討されておるわけでありますから、そういう意味で、やはり銀行に対しても、自主規制、自主的にというよりも、国民各位から預っておる金の使い方、こういうものに対してはもっと真剣な立場で対処するように、金融行政の上から十分な配慮してまいりたいと思います。私がどうも、日銀の金庫から百万円の金がなくなったということで非常にショックを受けておりましたら、今度は一流銀行がそういう詐欺にあった。どうもはなはだ遺憾でございます。でありますから、大蔵省としましても銀行局から金融行政につきましてもあまり自主的に自主的にというような状態だけで金融行政の成功が期せられるものではありませんから、この事件を契機にして十分なひとつ銀行行政を行なってまいりたい、こう考えます。
  176. 只松祐治

    ○只松委員 金融関係については当該所管の大蔵大臣として今後についても明確な御発言がございましたが、さっきから言うようになかなか微妙な問題と思いますが、為政者の中に、単に国会議員というだけでなく、当時政府の要職にあった人々がまあ私の知らない間に株主になっておった、あるいは関係しておる人々がそこの会社の取締役になっておった、あるいはそれと関連して何かそこでいろいろな仕事が行なわれておる、そして私が知らない、こういう話は世間一般に通る話ではないです。国民がそういう話を聞いて一つも疑いを残さないで、なるほどりっぱな話だ、りっぱな政治家だ、こういうふうには思わない。そういうことが平然と通るということは、現在の東京都議会あるいは地方の各議会におきましてもいろいろな問題が起こっております。やはり中央にあるわれわれ政治家が、国会議員が、率先やはりこういう問題については範をたれ、いわゆる先憂後楽というか、みずからつつしんで範をたれなければならぬ。こういう問題ができてまいりましたならば、われわれは率先して問題を明らかにして、そしてもし不明な点があれば不明をわびるということが、私は国民の代表として出てきた者の任務だと思うのですが、こういう点につきましてもなかなかまだすっきりした面がないわけです。銀行金融関係だけではなくて、政府与党の有力な閣僚であられる大蔵大臣におきましても、ぜひこの点についても御銘記をいただき、今後国民の信頼を打ち立てる政治というものを推し進めていただかんことを要望いたしまして、時間もございませんので、私の質問を終わりたいと思います。
  177. 吉田重延

    吉田委員長 武藤山治君。
  178. 武藤山治

    ○武藤委員 時間が三十分しかありませんから端的にお尋ねいたしますから、簡単明瞭に要点をお答え願いたいと思います。  まず最初は大蔵大臣の言質の問題でありますが、去る二十二日内閣委員会質問が終わったあと、おそらく記者会見をやったものと思いますが、NHKテレビは全国に田中大蔵大臣談ということで、写真入りで、この事件には大平、黒金両君は全く関係していない、こういう大蔵大臣談話を発表しております。あるいは記者会見で発表したのかもしれません。そのテレビを私も見ました。なぜ大蔵大臣がいまの時点で黒金、大平両氏がこの事件に関係がないと言ったのか、その真意をまず最初にひとつお尋ねいたします。
  179. 田中角榮

    田中国務大臣 私はそういう記事が出たということはよくわかりません。私は見ておりません。見ておりませんが、それはいまの只松さんの質問のように、内閣委員会で国会議員は、また政府はと、こういうような御発言がございましたので、私はそのときに、少しやじがございましたが、まあこういうことの真偽というものはただされてみなければわからぬことではあるが、やはりこういうことが新聞に報道されるということになると、お互い与党、野党を問わず、こう言ってやじられたわけでありますが、与党、野党を問わず、お互い議員は身の回りを正さなきゃなりませんなと、こう申し上げたわけです。それと、名前は申し上げませんがということで、非常にはっきりとしたことがございましたので、われわれの同僚である、いまうわさになっておる諸君は被害者であっても加害者ではないでありましょうと、こういうその当時の心境をそのまま私は吐露しただけでございまして、その後どこかで記者会見をして何かそんなことがあったかどうか——まあきっとなかったでしょう。あったのかよくわかりませんが、いずれにしても内閣委員会相当、私の感じたあれでは、どうも露骨なお話がございましたが、それに対して私が申し上げて、政府与党が身を正せばいいんで、野党は取り消せとかいうことがございましたが、そういうことが記事になったのじゃないかと思います。
  180. 武藤山治

    ○武藤委員 それでは黒金、大平氏は全く関係ないというNHKの放送は、これはNHKがかってに編成をしたのであって、あなたと会談をして、新聞記者会見の結果報道したのではないというあなたの弁解のようでございます。私はそれをきょうここで追及しようとは思いません。それでは関係があるかないか、現在あなたはどう考えておられるか。
  181. 田中角榮

    田中国務大臣 私はこれはないと考えております。これは大平君は私は非常に親しいものですから、おい、どうなんだいと、電話をかけてみました。全く吹原という人と会ったこともないという話でありましたから、これはもう私はそう思います。
  182. 武藤山治

    ○武藤委員 黒金さんはどうですか。
  183. 田中角榮

    田中国務大臣 黒金君は一体どうなんだということも話してみました。大平君から黒金君に直接話をしたら、新聞に書いてあるような事実であって、黒金君は被害者であっても加害者ではないそうだ、御心配いただいてありがとうございます、こういうお話がありました。大体において私はほんとうに政治家はとにかくいろいろな陳情も受けますし、名刺も書くし、こういうこともお互いにすると思いますが、詐欺であるということが十分わかっていることに対してどうしても彼らが情を知っておったとは常識的には考えられません。
  184. 武藤山治

    ○武藤委員 それでは黒金さんが吹原産業の株を八万四千株持っていること、さらに黒金さんの官房長官時代の秘書官であった滝寺和夫君が取締役になっておること、この事実については大蔵大臣は知りませんか、現在も知りませんか。
  185. 田中角榮

    田中国務大臣 これは内閣委員会だと思いますが、そういう質問がありました。ありましたし、そういう事実も聞きました。私はその事件に対しては聞いておりません。聞いておりませんが、まあ五百円株で八万株といえば四千万円でありますから、そんなに金を持っているのかなという、こういう感じだけでありまして、まあこれだけの大きな詐欺をやるような人だから、うまくやったのだな、こういう感慨でありまして、これは黒金君のものだというふうには私自身の常識では認定できません。
  186. 武藤山治

    ○武藤委員 さらに大蔵大臣、黒金さんの印鑑証明を出し、実印を押した、しかも署名をした書類を持っておる人が新聞記者会見をして発表をしている。これでも黒金さんは吹原と関係ないとお考えですか。
  187. 田中角榮

    田中国務大臣 これは新聞で見ただけでございまして、どうもこの質問、私がお答えしていいのかどうか、どうも大蔵省所管でないようでございますから、これはひとつまあ捜査の段階において明らかにせられると思います。
  188. 武藤山治

    ○武藤委員 私があなたに聞いておるのは、冒頭にお断わりしたように、あなたの言質についてお尋ねするという前置きがあるのですよ。テレビで、しかもNHKが大蔵大臣談として黒金、大平両君に限ってこの事件に関係ないと答えたから、関係あるかないかのあなたのいまの意識を聞いているのです。二十二日から本日までどう変わっておるか聞きたいと思って聞いておる。だから大蔵省の管轄でないからということではなくて、これはやはりあなたの言質について私は尋ねておるのだから、あなたの認識が二十二日から本日までどう変わってきたか、その過程をいま聞こうと思って聞いておるわけでありますから、お答え願いたいと思うのであります。私は官房長官をやっておった人が実印の印鑑証明を渡し、しかも書類に判を押しサインをしてある。秘書が取締役に入っている。これで黒金君は事件に関係ないというあなたの感覚が私はおかしいのじゃないかと思う。ここまでこういう事実が新聞に明らかに所持者から発表されておっても、まだ関係ないとお考えですか。
  189. 田中角榮

    田中国務大臣 私個人といたしましては関係はないと思います。どうしてか、こういうことは、ただ友情だけではなく、天下の三菱銀行といわれる最もかたいところから三十億も詐欺をできる能力を持つ人ですから、私は、そういう事実から考えて、こういうことはないだろう。これは私はそういうふうに信じております。
  190. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 いまそのことについて私は聞いておることがありますから、それを私の知っておる範囲で御報告申し上げます。  確かに印鑑証明と委任状は渡っておるそうです。それは、黒金君のうちを吹原が買ったのだ、そしてほかの家を黒金君が買った。その中へ吹原が入ったんで、登記をするには印鑑証明が要るから、私がやってあげますと言うて、印鑑証明つきの委任状を持っていった、こういうことを聞きました。
  191. 武藤山治

    ○武藤委員 それは政務次官、だれからお聞きになったのですか。奥さんですか、本人ですか。
  192. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 聞いた人までは言うてもらっちゃ困るが、奥さんがそう言われてそれを信用して渡したということを聞きました。
  193. 武藤山治

    ○武藤委員 そうすると、黒金さんと吹原さんとの関係は、その印鑑を渡したときが初めですか。それ以前から関係があったのですか。交友があったとお考えですか。その辺はどうですか。
  194. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 それは、個人的にはいろいろ関係があったから、そういう家の売買なんかの中へ入ったものと心得ます。
  195. 武藤山治

    ○武藤委員 どうですか、大臣。政務次官は率直にいま知っておることを答えたのです。大蔵大臣はそれを関係がないだろうというようなことで、関係という概念は一体あなた、どの程度までの範囲で言っておるのですか。吹原と黒金の関係というのは、一体どこまでの範囲が関係なんですか。あなたの認識はどうですか。
  196. 田中角榮

    田中国務大臣 どうも私、あなたのベースでずっとつい答弁を申し上げたというような気がしてなりませんが、まあしかし、こういう話でございますから、私の考え方を申し上げますと、どこが関係ないということは、もう個人として知っておったりいろいろなつき合いがあったことは、鍛冶政務次官も、いま述べたように、そう想像することが正しいと思います。しかし何か、御質問といいますか、新聞記事の中でも、そのような大きな金を出すには黒金官房長官が中へ入ったのだろうというようなニュアンスが出ておりますから、私は、少なくとも、吹原が逮捕をされていま強制捜査の対象人物でありますから、この事件とは関係ないだろう、こういうことはどうしても私はいま考えられます。
  197. 武藤山治

    ○武藤委員 そうすると、この事件というのは、詐欺の共謀とか詐欺の教唆とか、そういうてこになったとか、そういう事件の当該者ではない。しかし、吹原産業と黒金とは密接な関係がある、こう解釈していいのですか。
  198. 田中角榮

    田中国務大臣 どうもむずかしい御質問で、どうも私が先ほど一番初めからお答えしたのがおかしいようでございますが、私は、とにかく事件には関係ない、こういう考え方は持てます。
  199. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 それは私も報告を受けましたから申し上げますが、いま大臣が報告せられた、ここに書いてあることの銀行の事件に対しては、さような人は全然関係がないと報告を受けております。
  200. 武藤山治

    ○武藤委員 わかりました。関係というのには二つあるのです。事件そのものに直接タッチするような深い、事件に関係があるのと、吹原産業自体の、会社に関係があるのとは違うという、大臣は分けて関係ということを言っておられるわけです。だから私たちは、黒金さんもこの吹原産業には関係があるという前提に立ってものを言っている。ところが私は、これは意見をちょっとまじえますが、吹原さんという人を、なぜ黒金さんが株主になったり秘書官を取締役に入れたりするのかと疑わざるを得ないので、なぜそういう人と交わりを続けてきたのか。たとえば、私どもの選挙区で、やはり吹原さんの事件が、昭和三十五年二月十日に告訴された事件がある。栃木県真岡市、真岡デパートの建設をめぐって吹原が告訴をされた。そのときに彼は、背任罪、文書偽造罪、詐欺罪で告訴されておる。これを終結させるために黒金さんがやはり口を出しておる。ですから、かなり前から吹原と黒金さんとの関係というものは、友人以上の、その上に親のつく友人であることはやや想像がつくのです。国の官房長官という高い位についておる人は、そういう前のことを知ったら、早くこれは縁を切るべきだと私は思うのです。これは政府、与党のためにも、政治家としてもそう私は考えるが、大臣の見解はどうですか。
  201. 田中角榮

    田中国務大臣 そういう特定の者ではなくて、お互いにやはり政治の立場にありますし、非常に忙しい日常でございます。陳情団といえばだれでも来るわけでありますし、あまり来る人に悪い顔のできない商売でございますから、お互いにやはりそういう環境の中にあっても、正すべきは正していかねばならぬ、こういうことをしみじみと感ずるのみでございます。
  202. 武藤山治

    ○武藤委員 銀行局長、先ほどの只松君の質問に対して、二十億円の通知預金証書はどこへ渡っているかわからない、こう言う。あなたその現物はわからなくても、しかし、銀行局の調査では、どこにいっているのだろうということだけは、ほぼ目安がついておるだろうと思うけれども、いまだに二十億円の通知預金証書がどこにあるかわかりませんか。
  203. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 そこは私の所管とは違いまして、銀行の外へ出ていった証書がだれの手に渡っておるかということは、これはもうただいま捜査当局がそこに重点を置いておると思いますから、いずれ明らかになると思いますが、新聞の報ずるところ等で私の知り得たのは、森脇氏の手に渡っておるということであります。その当該人から三菱銀行に二十億円の払い戻しができないのかという問い合わせがあったそうでございますから、少なくともそこに一たんいったということは申し上げていいのじゃないかと思います。
  204. 武藤山治

    ○武藤委員 なぜ最初からそう答えないのですか。最初はどこにいったかわからないと言う。新聞の報道なり森脇の発言によれば、どこどこにありそうだと答えていいのじゃないですか。それはともかくとして、銀行局長、大和銀行が三十億円の銀行振り出しの小切手を出しておるわけですね。銀行振り出しなんです。当店当行というか当行発行の小切手と申しますか、大体小切手というものが発行される場合のノーマルな状態というのはどういう姿ですか。
  205. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 当該取引の相手方が銀行に当座預金を持っておりまして、その当座預金の残高の範囲においてのみ銀行が小切手を振り出すことができます。
  206. 武藤山治

    ○武藤委員 そうしてみますと、この事件の場合、一体三十億円の残高というものは、あったと報告を聞いておりますか。なかったと聞いておりますか。
  207. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 なおったと聞いております。
  208. 武藤山治

    ○武藤委員 全然残高がなかったのに、三十億円という大金の小切手が、しかも銀行振り出しの小切手が出てくるという経路、あなたはこれを監督する局長として、どういう筋道が想像されますか。幾つかの筋道が考えられると思いますが、もしあなたが七人の刑事の一員のつもりで考えた場合、どうですか。
  209. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 銀行の自己あて小切手は、しばらくたちまして——正確に申しますと、大体二週間くらいたちまして、銀行は取り戻しておりますので、実際はなかったような状態で、銀行は被害を受けたことになっておりません。どうしてそれがとにかく一たん何日間か吹原の手に渡ったまま戻ってこない。しかもその振り出したのはなぜかということでございますが、詳しく申し上げることは捜査当局の依頼もございまして、ここでは詳しくは申し上げられませんが、ごく概略のところを申し上げますと、吹原は御承知の預金取引を行ないまして、これは現実に預金を預けたわけでございます。そういうことからその支店と取引ができた。そのうちに、これは何回かやったようでありますが、銀行の支店長とその点については了解済みで、変な話ですが、要するに支店長はだまされたわけです。吹原という人物がいかにたいへんな人物であるかというふうに思い込まされて、そして大金を常に自由にできるのだというふうな彼の言うことを信じまして、そして残高はないけれども、吹原が他の銀行にあてて振り出す小切手、これも実際向こうに残高があるのかないのかわからぬ、おそらくないと思います。必ず向こうに残高がなければ自分で振り出すことができないわけで、不渡りになる公算が大でございますが、それを両方で自己あて小切手を渡し、吹原が振り出した小切手を受け取る、こういう方法でありますけれども、翌日交換に回って両方とも落ちてしまうのです。ですから実害はその限りにおいては生じない。しかも本店でわからなかったのは、預金の残高にほんとうは載るべきものが載ってない、そういう方法を講ぜられておる。つまり非常にくろうとのやることでございますが、かなり銀行の業務に精通していなければならないのですけれども、そういう事柄は支店長が当然行なうべきでない、絶対に許されないことでございます。銀行員としてあるまじきことだと私は思いますが、そういうことを何回か行なって、だんだん金額が大きくなりまして、そのうちに麻痺してしまったということでございましょう。支店長のほうがそういう事実に少し麻痺して、そして三十億という巨額のものを書いて渡した。もちろんその見合いとなるべき三十億円の吹原振り出しの小切手は、当然これは回したって不渡りになるにきまっているわけでございますから、依頼によってちょっと待っておった。交換に回るのを待っておる間に返ってこなくなってしまった。そこで非常にあわてて本店に報告をいたしまして、自分のいままでやってきました銀行支店長としてやってはならないことを白状いたしまして、本店のほうでそれを一生懸命吹原とかけ合い、追及いたしまして、とうとう取り戻した、こういう件でございます。
  210. 武藤山治

    ○武藤委員 日を正確に申しますと、銀行局長、あなたも知っているように、昨年十月三日に大和銀行京橋支店は三十億円の銀行振り出し小切手を吹原に渡した。十九日の日にそれが戻ってきた。その間十六日間。この十六日の間に、いま事件になっているような大きな問題に発展したわけです。ですからこのもとを探っていくと、大和銀行が詐欺をする材料を与えたようなかっこうになってしまったわけです。これは責任は重大ですよ。そういう大和銀行のルーズな小切手の振り出し方、こういうものに対して銀行法では、その銀行の頭取なりその銀行に対する制裁というのはないのですか。こういうずさんなやり方をやっておって……。その点は法的にはどうなっておりますか。
  211. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 銀行法には法的にはどうこうという規定はございません。道義的な責任の問題はもちろんあると思いますが、支店長が、先ほど申しましたように吹原のいろいろな大きな話を信用して、つい表にあらわれないものだからイージーゴーイングになっておった。その支店長と、そのすぐ下で補助として働いていた者も一、二その事情を知っているようでございますが、本来振り出してはならない自己あて小切手を振り出したということは、少なくともその支店長については重大な責任があるわけでございます。
  212. 武藤山治

    ○武藤委員 弁護士としての政務次官に一つお尋ねしますが、大体いま銀行局長答弁するように、預金が全然ないのに三十億の自分の小切手を銀行に渡して、銀行振り出しの小切手を受け取る、それを善良なる注意を、完全なる管理者としての注意をすべき支店長がそういう注意を怠って、第三者に間接的な被害を与える、もしくは特定の人に利益を得さしめようとしたのですから、これは背任罪の条項がはっきり適用されると思いますが、支店長のこの行為は背任罪になりませんか。
  213. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 ちょっとむずかしいのですが、仮定論ではいけませんが、いま話を聞いておりますと、吹原がほかの銀行の小切手を渡して、そうして銀行振り出しの小切手を受け取った、こういうのでしょう。そこでおそらく支店長はその吹原の出した小切手は落ちるものであると誤信して出したのです。だから出した者はだまされて出したのですが、それを知って、これは落ちないのだ、だけれども、頼むからやるのだということであると、これは支店長は銀行に対して背任の責任はございますが、そうではなく、ほんとうにあるものだとしてだまされたとすれば、これは詐欺にひっかかったのでございますから、刑事上の責任はないけれども、支店長としての業務上の責任があることは当然だろうと思います。
  214. 武藤山治

    ○武藤委員 問題は、あした銀行の頭取を呼びますから、支店長が落ちる小切手であったか落ちない小切手であったかはわかります。しかし先ほどの銀行局長の伝聞証拠によれば、これは初めから落ちないということがわかっておった。だから銀行振り出しの小切手にしてすぐ回収がつくように一応した。だから両方がもうわかっておったわけだ、落ちないのは。ですから、これはそうなったら背任罪じゃないですか。私はそこらがおかしいと思うのです。しかしあなたと論争してもしかたがありませんから、これはまた後日ゆっくり、連休明けもこの問題は徹底的にやることになっておりますから、ゆっくりお尋ねいたします。  それから私は三十分までということですから、あと三分ですが、ひとつ田中さんに黒金さんと大平さんにまたよく聞いてもらいたいのです。あなたが全国国民に関係ないと言っちゃったんですからね。なぜあなたがそんなに先ばしってテレビにぱっと出るほど、しかも黒金さんと大平さんの二人の写真がテレビに映って、そうして私の友人としてそういうことはない、こういう否定をあの段階に発表することが逆に疑惑を生んでいるんですよ。くさいものにはふたで、何かあるからないぞと時の天下にその力のときめく田中大蔵大臣が言えば国民信用するだろうということであなたが先ばしって言ったことだと私は推察をするのですが、もし黒金さんが吹原と全く関係がない、あの印鑑証明もでたらめだ、あの念書もうそだというのだったら、この際黒金さんの身辺を明らかにするために告訴すべきだということをあなたは黒金さんに注意したらいいと思うんですよ。吹原を告発したらいいじゃないか。それは名誉を汚され、黒金さんとしてはそういう政治生命を失墜するかどうかというたいへんな重大問題だ。もし潔白ならなぜ吹原を告発しないのか。あなたから注意してやる気持ちはありませんか。
  215. 田中角榮

    田中国務大臣 私はどこで何をしゃべって、それがNHKに出たのかはよくわかりません。わかりませんが、先ばしってやったとかそういうことはありません。これはもう内閣委員会で唐突にいろいろなことを聞かれて、私もオウム返しにばたばたと答えておったということでございますし、あのときは、ざっくばらんに言いますと、私も大蔵省設置法を上げてもらえるかどうかというところでありますから非常に努力して答えておった、こういうことでありますから、これはひとつ御理解をいただきたい。  それから黒金君にどう言うとか、そういう問題ではなく、もう強制捜査に踏み切られておるのでありますから、やはりわれわれは同僚議員のことでありますから、みずから身を正すと同時に、静かに見守る、真相は早急に明らかにせられるということのほうがいいのじゃございませんか。私は何かそんな感じがいたします。
  216. 武藤山治

    ○武藤委員 約束の二時半ということでありますから、一応質問をこれで終わります。
  217. 吉田重延

    吉田委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後二時三十分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕