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1965-03-26 第48回国会 衆議院 大蔵委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十六日(金曜日)    午後零時三分開議     —————————————  出席委員    委員長代理理事 山中 貞則君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君       天野 公義君    岩動 道行君       小沢 辰男君    亀岡 高夫君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    坂村 吉正君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       武市 恭信君    谷川 和穗君       地崎宇三郎君    塚田  徹君       二階堂 進君    西岡 武夫君       長谷川四郎君    濱田 幸雄君       福田 繁芳君    湊  徹郎君       毛利 松平君    渡辺 栄一君       渡辺美智雄君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    吉國 二郎君         大蔵事務官         (主計局次長) 鳩山威一郎君         大蔵事務官         (理財局長)  佐竹  浩君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      赤羽  桂君         専  門  員 抜井 光三君 三月二十六日  委員伊東正義君、岩動道行君、奥野誠亮君、齋  藤邦吉君、地崎宇三郎君、濱田幸雄君、福田繁  芳君及び渡辺栄一辞任につき、その補欠とし  て小沢辰男君、湊徹郎君、亀岡高夫君坂村吉  正君、武市恭信君、塚田徹君、二階堂進君及び  長谷川四郎君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員小沢辰男君、亀岡高夫君坂村吉正君、武  市恭信君、塚田徹君、二階堂進君、長谷川四郎  君及び湊徹郎辞任につき、その補欠として、  伊東正義君、奥野誠亮君、齋藤邦吉君、地崎宇  三郎君、濱田幸雄君、福田繁芳君、渡辺栄一君  及び岩動道行君が議長指名委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  財政法の一部を改正する法律案内閣提出第三  三号)      ————◇—————
  2. 山中貞則

    山中(貞)委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長が病気のため出席できませんので、指名により私が委員長の職務を行ないます。  開会に先立ち、委員長といたしまして、再三社会党の諸君に出席方を懇請いたしたのでございますが、いまだに出席がございませんので、やむなく議事を進行することにいたします。  財政法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑の通知がありますので、順次これを許します。竹本孫一君。
  3. 竹本孫一

    竹本委員 財政法の一部改正案について質問をしたいと思いますが、私は基本的にまず第一に私の考えを申し上げますが、いろいろ意見相違もあるかもしれませんけれども、私ども高度成長経済政策というものは失敗であるという考え方を持っております。しかもその高度成長経済は何をてこにして失敗の道をたどったか、こういう問題になりますと、私いろいろ検討いたしましたけれども、やはり財政需要というものがすべての経済成長推進力になっており、誘導的なてこになっておるというように考えるのであります。したがいまして、財政膨張ということは、日本経済を今日の悲局あるいは破局に立ち至らしめた一番大きな原因である。さらにまたもう一つ結論を申し上げますならば、その財政も、みずからをもってみずからをまかなうことができなくなったために、非常なやりくり算段、いわゆる財政借金政策を強化する一つてことして今回の財政法の一部改正案が出された、こういう考え方、見方を持っておるわけであります。  そこでまず最初にお伺いいたしたいのは、日本経済を、成長率九%あるいは一〇%というような成長をさしてきたその目的とか動機とかいうことではなくて、単なる因果関係について伺いたいのでありますけれども、私は民間のいわゆる設備投資ということが大きな原因のようにいわれておりますけれども、なぜ民間設備投資が大規模に行なわれたか、あるいは行なわれ得るか、こういう問題を考えてみると、これはやはり財政が一番大きな主導力になっている。すなわち財政膨張財政の増長こそが最大原因であると考えますけれども高度成長政策というものは財政てことして行なわれ、また財政主導力となって行なわれた。したがいまして、この高度成長政策というものの行き詰まり、それを改めようと思えば、財政の面にメスをふるわなければ、民間にだけ自粛を促してみても、あるいは自主調整考えてみても、それは枝葉末節である。根本は財政にある、こういう、ふうに考えますけれども、その点についてお考えを伺いたい。
  4. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 いつも申しますが、私はあまり専門じゃないから確実なことは申されませんが、高度成長政策失敗であるかどうかということについては相当議論があるところだと考えますが、財政方針によって今日のこのような状態を正常なものにするという考え方は当然あるべきことだと考えます。
  5. 竹本孫一

    竹本委員 これは理論的に非常に検討を要する問題でございますので、今日これが適当な場所であるかどうか私も疑問を持っておりますが、私の考え方だけを申し上げます。  そこで事務的な数字を伺いたいと思いますけれども、最近における財政の対前年の膨張、それをひとつ数字的に言っていただきたい。と同時にこの場合に地方財政を含めた動きを伺いたいと思います。それからもう一つ経済成長率のパーセンテージがわかればそれもひとつ、いま数字資料がなければあとでその三つを一緒にして出していただいてけっこうです。
  6. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 たいがいの数字はいま調べまして一応わかると思いますが、しばらくお時間をおかしいただきたいと思います。
  7. 竹本孫一

    竹本委員 数字あとから出してもらえばけっこうです。  さらに、主税局がいらっしゃいませんから、自然増収動きをひとつ分析してみたいと思いますが、これもあとにいたしましょう。  財政は、経済の全体の成長率以上に膨張してきておるということは、もちろん数字を見ればはっきり出ると思います。一方において自然増収動きというものはだんだん行き詰まりつつあるということも、これはどなたも異議のない点であります。  そこで第三番目に、背は財政は御承知のように長期財政計画というものがありました。あるいは十カ年間の財政計画、あるいは五カ年に短縮した計画というものがあったが、一体今日の日本財政についてはそういう長期もしくは中期計画性というものがあるのかないのか、あるとすればどういうものがあるのか、ないとすれば、これを計画的なものにするために、何らかの努力をされておるのかいないのか、その辺をひとつ伺いたいと思います。
  8. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 私直接担当の部門ではございませんで、全部をカバーした御答弁ができないのでございますが、財政長期計画というものは、これは一部に戦前に育ったという点もありますが、これもしかしよく調べてみますと、そういったほんとう計画的なものといえるものかどうかきわめて疑問な点が多うございます。非常に形式的な計画のような感じがいたします。ただいま財政自体長期計画というものは、詳細なるものとしてはつくっておりませんが、中期計画におきましては、財政の裏づけのあるところの中期計画というものを想定をして計画をいたしておるわけでありますから、そういう長期計画という意味では、中期計画をもって目標考えておる、法的な意味計画性というものはないというふうに考えております。
  9. 竹本孫一

    竹本委員 私は先ほど申しましたように、経済動きに一番大きなインフルエンスのあるのは財政である、財政が積極的になれば、おのずから民間投資というものも盛んになるのでありますから、あと消費経済動きあるいは個人消費動きというものは、購買力がばらまかれなければ動けないのですから、結局一番大きな主導力は、よく言われるように、民間設備投資である。しかし、その民間設備投資を誘発するのは財政だと思うのです。そういう意味からいえば、日本高度成長経済が成功であったか失敗であったか、これは自民党さんと私ども意見が違いますけれども、今日とにかく破産、倒産も出てきて、これが行き詰まっておるということは事実なんですから自民党さんは自民党さんの立場で、いまの政府政府立場で、いまの財政計画化ということについて考えなければならないのじゃないかというふうに私は思います。戦前ですらあれだけの——いまお話しのように、実質的な計画ということがいえるかどうか非常に疑問だ、その点は私も同感でありますけれども、とにかくそういう目標を持っておった、そういう努力をしておったということは間違いのない事実です。そうして見ると、戦後のしかもいま非常な困難に直面しておる日本経済としては、財政についてそういう計画的な努力というものが当然なされなければならぬ。この点強く私は強調いたしたいと思うのです。同時に、いま、中期経済計画の中には財政計画化という問題が取り上げられているというお話がありましたけれども、どういう形でどの程度が取り上げられているのか、お答えをいただきたいと思います。
  10. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 御説のとおりと思いますが、高度成長政策に基づきまして、日本生産の伸びたことだけは間違いございません。生産が伸びますれば、財政収入も自然伸びてまいるのでありますから、財政はそれに相応して膨張してきたことも間違いないと思います。しかし、先ほど来御指摘のように、それによって、伸びる方面はたいへんけっこうでございましたが、あおりを食う部面もありますから、当時としてはそれらを訂正いたしまして、まんべんにひとつ伸びるように安定成長方面へ持っていくという政策をとる、そういう考えで今日はきておる、かように考えております。
  11. 竹本孫一

    竹本委員 基本的な問題でございますので、いままで申し上げた点はあらためてまた議論をいたしたいと思います。  そこで、財政法に直接結びついた問題について、二、三お伺いをいたします。  第一は、先ほど申しましたように、財政が主軸になって高度成長経済を推進し過ぎた、引っぱり過ぎたということでございますが、その財政自体が、いまや、極端にいえば放漫財政の結果行き詰まりをきたした、あるいは普通な表現でいえば、財源難の大きな壁にぶち当たったということであろうと思います。  そこで、政策論議をこの際あまり戦わしても意味がないので、具体的な問題について伺いたいと思いますが、まず第一は、この財源難で、本来ならば一般会計の中に組まなければならないものを、こっそりではなかったかもしらぬが、財政投融資のほうに押し込んだと考えられるべきものはどういうものがあるか、金額においてどの程度あるか、これをひとつ主計局自体立場で良心的に説明をしていただきたいと思います。財政投融資に逃げ込んだというか、押し込んだものが、どの程度、どのくらいのものがあるか。
  12. 山中貞則

    山中(貞)委員長代理 竹本君に申し上げます。竹本君の質問財政経済の基本に関する問題については、本会議終了大蔵大臣出席の予定がございますので、その機会に再度発言の機会を与えますから、現在のところは、いまのような技術面質問に重点を置いていただきます。
  13. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 四十年度予算におきまして、従来産投会計出資をいたしておりましたものを利子補給に切りかえたものが三件ございます。これは産投会計一般会計から財源を繰り入れておりました関係で、一般会計がそれだけ少なくなったわけでありますが、それは、農林漁業金融公庫住宅金融公庫並びに住宅公団、その三政府関係機関に対しまして、従来利子負担の軽減のために資本という意味で繰り入れておりました出資を、一部利子補給に切りかえたというものが、ただいまおっしゃったものの例かと思います。そういう意味で、利子補給はそのほかに若干ほかの種類のものがございます。たとえば、石炭企業に対しまして、これは経理改善という意味で、過去の整理資金等政府機関から借りております分の利子補給をいたしております。しかし、これは一般会計財源というような意味ではありませんで、これは石炭企業経理対策という意味でございます。また、今回御審議をお願いしております新産都市関係でも、利子補給制度を導入いたしました。しかし、これはやはり新産都市建設におきまして、借り入り金で実行する地方団体に対しまして、低利資金でこの借り入れをさせるという意味で、これは新しくそういう制度を開いたわけでございますから、従来からのものをそういうふうに切りかえたということではございません。でございますから、そういった意味で、利子補給制度に切りかえたという意味では、さきに申し上げました四政府関係金融機関に対しまするものだけである、私はかように考えております。
  14. 竹本孫一

    竹本委員 利子補給のほうへ話が飛びましたから、それじゃ利子補給からやりますが、いまの計画造船中小企業近代化資金といったようなものとか、あるいはいま石炭新産都市の問題でなくて、これはまあ見解の相違があるかもしれませんけれども、本来そういうことをすべきではなかった、しかしながら財源がないので利子補給という手でうまく逃げた——というとわれわれの意見になりますけれども、とにかく財政操作をされたというものが、大体十億円以上の利予補給だと思いますけれども、もう少し具体的に説明をしていただきたい。
  15. 赤羽桂

    赤羽説明員 その関係資料はただいま手元に持っておりませんので、至急取り寄せて御答弁申し上げます。
  16. 竹本孫一

    竹本委員 どうもなかなか論議が展開されませんけれども、それではその利子補給がかりに十億円だ、しかしそれが一般会計になればこれだけの金が要ったんだということも、大体いまのがわからないようじゃ数字的にもわからないでしょうけれども、割合はどうか。という意味は、利子補給でやるということは財政あり方としては最もだらしのない方法で、大蔵省といえども従来最も注意されて避けてこられた問題じゃないかと思うのです。したがいまして、それについて一つ目安があるはずです。たとえば十億円利子補給すればこれだけの金が浮くといいますか、一般会計でこれだけの金を財源難のおりからカバーできるというようなことで、われわれのほうから言えば、そういうイージーゴーイングな行き方をすれば今後財政の放慢性というものがますます拡大される、そういう心配があるから私は伺うわけです。一つ基準といいますか、目安があるでしょう。十億円かりに利子補給をやるということによって、場合によっていろいろこれも違うでしょうけれども、一体どれだけの金を一般会計においては浮かせようとしたのか、あるいは浮かすことができるのか、できると考えられるのか。何かその辺の事務的な基準でもけっこうですから、承りたいと思います。
  17. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 利子補給関係につきましては、従来主計局といたしまして、これは極力行なわないで済むような財政措置をとってまいったことは御承知のとおりでございます。これにつきましては、やはりそのときどきの財政のバックグラウンドと申しますか、そういったものが変化をしてまいっております。これは何と言いましても、終戦直後以来財政法全体の考え方が、財政からインフレを起こしてはいけないということが最大考え方になってまいったわけでございます。したがいまして、中にはいわば本来金融でやるべき事項につきまして、税金で吸い上げた金をもって、その金を金融に回す。これは一部従来資金的にも、いろいろ政策的な金融を行ないます場合に資金量金融だけでは足りないという問題もあります。またそれとあわせて、一般的な金利水準が非常に高い。これはやはり終戦直後の資本の不足と申しますか、一般的にはそういったキャピタル・マンゲンという現象が共通的に起こるわけでございますから、そういった意味で、ある程度金融面で行なうべきことを財政がやらなければならぬというような範囲が広かったと思います。それが次第に経済が復興してまいり、したがって逐次金融正常化ということが目標としてずっと掲げられてまいっておるわけであります。そういった面で、政策的な金融にどういうふうに対処するか。従来はこれに対して税金で吸い上げた金を入れていくということで、これは一つの非常に健全なやり方と申しますか、そういったやり方がとられてきたわけでありますから、そういったものに対しまして、逐次これを金融の面のことは金融面で、資金的にはそちらでやってまいる。ただ政策的に低利にしたいというものにつきまして、それは利子補給というものを考える。これは逐次全体の金融正常化してまいる一つの過渡的な現象といたしまして、そういった手段も論理的には当然考えてよろしい、そういう時代に全体が来ておるというふうに私どもは解しております。ただ、ただいまおっしゃいました、それでは利子補給をどれだけ計画的に織り込んでいくかということにつきまして、やはりこれは先ほどの財政計画性というお考えからすれば、当然計画がなければならぬとおっしゃることはわかりますが、ただいまのところ、この数年後どういうふうに持っていくかというところまでいろいろの計画的な意味でそういった利子補給制度に振りかえていくというような計画は持っていないわけであります。私どもとしては、この利子補給というのは、論理的にはある程度当然考えていいのでありますけれども、しかしこれは非常に危険である。というのは、どこまで利子補給制度に切りかえたらいいかというその線の引き方がきわめてむずかしいのと、非常に安易な意味で、そういった金利というものは安いほうがいいということは当然のことでありますから、どこまで利子補給すべきか、また補給できるかということにつきまして、これは限界があるような、ないようなことでございますから、そういう意味で非常に安易に流れますとすると、後年度たいへんな負担になることは当然でございます。そういった意味で今回は三機関だけにつきましてそういった制度を導入いたしましたが、これをその他の機関についてもどんどんやってまいるということにつきましては、これは私どもはきわめて慎重にしなければいけないと考えております。  お答えになったかならないか、きわめて自信がございませんが、担当がいささか違うもので、非常に不十分な御答弁と思いますが……。
  18. 竹本孫一

    竹本委員 なかなかどうもお答え期待どおりでないもので議論が展開できませんが、私は利子補給を、そういう制度は好ましくない、あるいはむしろ絶対にいけないということを言っているわけです。でありますから、それにむしろ計画的に切りかえていくということは全くわれわれは反対でありますから、先ほどのお話、ちょっと間違って受け取られておるかもしれませんけれども利子補給制度というものは財政健全化あるいは計画化というたてまえから見てよくない、しかも先ほど来申し上げているように財政難の赤字切り抜け策としてそれに逃げるということは最もいけないことだという点を私は強く言っているわけであります。大蔵省も従来反対でもありましたし、いまも次長も好ましくないというお考えのようでございますから、この点は事務当局としても最も良心的に守るべき線ではないかということを私は強く指摘したいのであります。御都合主義といいますか、便宜主義でこういうことをやるということは、極端にいえば田中蔵相の悪いくせで、こういうあり方はいけないということを私は強く主張いたしたいと思います。  そこで、これも重大な関連があるわけですけれども、今回その利子補給をやる対象になっておる資金はどんなものであるか。預金部資金なら預金部資金、たとえばどのくらいであるかということを伺いたい。さらにこのくせがついてだんだんそれが伸びていくと、最後には民間資金財政が食ってしまうということになるのだ。そういう意味でもこれは非常に限界を狭く解釈しておかないと、とにかく財政の必要で民間資金を吸い上げてしまうということが第一歩を踏み出せば、これはまた日本産業自体の要求からいってもたいへんな問題になると思うのです。そういう意味で、利子補給対象になる資金というものは今回は何と何でどのくらいか、将来それを拡大される場合には何が対象になるというような見通しであるかということをちょっと伺いたい。
  19. 赤羽桂

    赤羽説明員 ただいまお尋ねの点につきまして、先ほど保留をお願いいたしました数字とあわせて御説明申し上げます。  今回新しく利子補給をいたすことにしておりますのは、御案内のとおり農林漁業金融公庫住宅金融公庫、それから日本住宅公団でございますが、まず農林漁業金融公庫でございますが、これは利子補給金といしまして四億六千七百万という数字をあげておるわけでございます。この数字農林漁業金融公庫に対しまして、同公庫特定低利資金貸し付け金利三分五厘と資金運用部からの借り入れ金利六分五厘との差額考えまして交付金を交付することといたしておるわけでございます。  次に、住宅金融公庫でございますが、補給金といたしまして予算額は二億四千七百万という数字に相なっております。住宅金融公庫に対しましては、同公庫特定低利資金貸し付け金利、これは五分五厘ということに相なっておりますが、それと資金運用部資金からの借り入れ金利六分五厘、この差額ということで計算をいたしておるわけでございます。  最後に、日本住宅公団でございますが、日本住宅公団に対しますところの補給金でございますが、これは三億三百万という数字に相なっておるわけでございます。この住宅公団に対しましては、同公団建設、管理いたしますところの賃貸住宅にかかる家賃の算定の基準となります金利、これは約四分一厘くらいになると存じますが、それと資金運用部資金等借り入れ金、同じく六分五厘でございますが、その差額を考慮して補給金をいたすというようなかっこうになっておるわけでございます。三機関に対しますところの補給金は、先ほど先生御指摘になりましたとおり、約十億程度でございます。
  20. 山中貞則

    山中(貞)委員長代理 利子補給のあれをとらなかったらどれだけ金が要ったか、それを聞いている。
  21. 赤羽桂

    赤羽説明員 ただいま担当総務課長を至急呼んでおりますので、まことにおそれ入りますが暫時お待ちを願いたいと思います。
  22. 竹本孫一

    竹本委員 私も実は急に質問することで原則的なことをただ聞いているだけですけれども、しかしいまのような数字はこの問題を論議する場合には最低限度の常識の問題を聞いているだけなんですから、ほんとうはそこらで答弁ができないということはむしろ非常に遺憾でありますが、しかしできないのはしかたがないから進めます。  いまお聞きのように、預金部資金にたよってそれを出す、それはしかし利子が高いから補給していくという、こういう形でありますが、私ども心配するのは、先ほど申しました利子補給制度に逃げ込んでいくくせをつけると、だんだん預金部資金を食い荒らしてしまう、あるいはそれでは足りなくなるということが心配される。そういう点について大蔵当局としては将来預金部資金以外の資金にさらにそれを対象にしてやるというような心配は、理論の上においても実際の上においてもない、してはならないというようなお考えをお持ちであるのかどうか、またそういう見通しを持っておられるのかどうか、その点いかがですか。預金部資金でまかなえる間はまだいい。しかしまかなえなくなる場合もあるのではないかという点をわれわれは心配するわけです。そうなるといよいよもって弊害が大きくなるが、そういう点についてはどういうお考えとお見通しを持っておられるか。
  23. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 今回利子補給制度に切りかえましたものにつきまして、これはただいま申し上げたとおり資金運用部の融資で可能であるものにつきまして補給をいたしておるわけであります。したがいまして、資金運用部で融資できないものにつきまして利子補給をするということは、利子補給制度があるとかないとかにかかわりませず、これは全体のそれぞれの住宅政策なりあるいは農林漁業政策というものの問題でございまして、したがって利子補給をやるから資金運用部で出すべきでないものまでやるということまでは、財政としてやるべきではないということは私ども全く同感であります。
  24. 赤羽桂

    赤羽説明員 いまの前の御質疑でございますが、その分の資料が手元にございますのでちょっと申し上げます。  今回の農林漁業金融公庫住宅金融公庫日本住宅公団に対しまする四十年度政府出資額といたしましては二百四億でありますが、利子補給をやらないで例年のとおりやったらどのくらいになるかというお尋ねだと思います。その場合の数字といたしましては約五百八十四億という数字でございます。したがって実際の出資額二百四億との差額が三百八十億ばかりになる、こういうことであります。  それから最初のころの御質問でありますが、一般会計並びに地方財政それから経済成長率数字はどうかというお尋ねでありますが、申し上げますと、一般会計でございますが、その伸び率は対前年比で昭和三十六年度二四・四%でございます。三十六年から三十七年度でありますが伸び率が二四・三%、それから三十七年から三十八年が一七・五%、三十八年から三十九年が一四・二%、本年度が一二・四%というのが一般会計における伸び率であります。  それに対しまして地方財政でありますが、地方財政計画のベースで申し上げますと、三十六年度の対前年度比が二四・四%、三十七年度の対前年度比が一九・五%、三十八年度が一五・三%、三十九年が一九・二%四十年度が一五・一%という数字になっておるわけであります。  一方成長率でございますが、GNPの伸びといたしましては、三十六年度対前年度比が二〇・九%であります。三十七年度同じく八・九%、三十八年度が同じく一六・三%、三十九年度が一二・九%、四十年度一一・〇%でございますが、三十九年度、四十年度はいずれも見込みでありまして、三十八年度までが実績というふうになっております。
  25. 山中貞則

    山中(貞)委員長代理 自然増収の推移と減税規模の推移をちょっと説明してください。
  26. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私ただいま参りましたので、御質問の内容がちょっとわかりませんが、一応前年度の当初予算に対して過去数年来どれくない伸びておるかということと、それから決算額の当初予算に対する割合と申しますか、期中の自然増収と二つの数字を申し上げたいと思います。  まず前年度の当初予算に対して本年度どのくらいの自然増収を見積もったかという数字でございますが、昭和三十五年の三十四年に対する割合は一一九・二%三十六年が一二四・六%、三十七年が一二二・七%、三十八年が一一二・九%となっております。  それから当初の予算額に対しまして、決算額が幾ら上回ったか、いわば期中に生じた自然増収が幾らかという点でございます。これは三十五年度が一二一・一%、三十六年度が一二一・二%、三十七年度が一〇七・五%三十八年度が一〇九・八%となっております。
  27. 竹本孫一

    竹本委員 財政民間金融を荒らすということはないのかあるのかということについては、いまだ十分な答弁がないようでありますが、これもまあいろいろな見通しの問題もありますし、むずかしい問題でありますから、他日に譲りたいと思います。  そこでちょっと、これは予算の編成上の問題でありますけれども、投資的な経費と申しますか、イギリス式に申しますとキャピタルバゼット、そういう租税でまかなわなくて投資的なもので、場合によっては公債発行をやっても許される分野と、それから租税でどうしてもまかなわなければならぬ分野と、これを分けて考える、あるいは分けていくといったような、いわゆる、キャピタルバゼットの制度というものについて、どうも大蔵省は、ことにこれが先ほども申し上げましたように、財政民間金融を、私のことばで言うと荒らす、あるいは侵食する、そういうような傾向ができれば、なおさらその調整の問題、あるいはそういう予算制度あり方というものを、もう少し真剣に考えなければならぬと思うのですけれども、そういうキャピタルバゼットの考え方について、大蔵省は現在どういうお考えを持っておられるか。
  28. 赤羽桂

    赤羽説明員 ただいまの御質疑でございますが、いわゆるキャピタルバゼットと、こうおっしゃられたわけでございます。これは予算一つの形式の問題と申しますか、立て方の問題といたしまして、昔からさようなものを考えてはどうか、国家の財政全体を、いわば経営経済的に考えたらどうか、そのために予算の形式を資本部門に改める、あるいは本来税収をもってになうべきところの経費部門というようなものに分ける、その他移転的支出に分けるというような試みが昔からなされておるわけでございます。主計局におきましても終戦直後、スウェーデン等いわゆる北欧三国において行なわれているという話がございましたいわゆる資本予算というものについて検討をいたしたこともあったわけでございます。これにつきましてはその後ずっと問題点といたしまして問題意識を持っていると思うのでございます。たとえば今回の臨時行政調査会では、資本予算というような名前ははっきりとは使ってございませんけれども予算の立て方自体を経営的な観点から考えたらどうかということをほのめかしております。それがあるいは事業別予算というようなかっこうの主張になってあらわれてくるわけでございますが、事業別予算資本予算というものは必ずしも結びついた考え方ではありません。まあ進歩の度合いから申し上げますと、事業別予算のほうが、資本予算といったことを考え一つ前の前提であるというぐあいにわれわれは考えているわけでございます。この事業別予算につきましては私らといたしましても十分検討いたしておるところでございます。この事業別予算の要素というものはかなりな程度一般会計の中に入っている、かように申し上げても過言でないかと存じます。なお、これにつきましては完全な形においてどういうぐあいに持っていくかということは、今回御質疑を願っておりますところの財政制度審議会、これをいま増員をいたしておりますが、それについていろいろと御相談をして検討を進めてまいる所存でございます。率直に申し上げますと資本予算の段階に入る前に事業別予算があるのではないか、それについて検討している段階でございまして、資本予算にすぐ入るというのはやや時期尚早ではないかというぐあいに考えております。
  29. 竹本孫一

    竹本委員 要望いたしておきますが、まあ行政調査会のほうでどういう結論が出たか、私もまだ十分勉強しておりません。しかし今回財政審議会ができる、あるいは拡充されるということでございますから、私はこれは予算制度あり方として重要な問題だと思うのです。第一は、いま申し上げましたように放漫財政といいますか、とにかく財政が赤字になってやりくり算段の段階に入ってきておる、そういうときに、将来はこれは公債発行の問題も出ると思うのですけれども、公債を発行していくべき筋合いのものか、そういうものでないのか、本来租税でまかなうべきものであるけれどもあるいは予算の合理化をやるべきものであるけれども、そういう努力をしないで、そういうふうな利子補給だとかあるいは赤字公債だとか——実質的な赤字公債ですね、そういうものにやるということになると、国の財政あるいは国の経済というものはめちゃくちゃになる。そういう意味財政も転機を迎えておる今日の段階においては、特に日本の三兆円から四兆円、これの予算がどういう内部構造になっておるか、その生産性はどんなものであるか、これは租税でまかなうべきものあるいはまかなうことを必ずしも必要としないものか、そういうものについて一つの大きなめどがなければならぬと思うのです。そういう意味で先ほど来申し上げておるような資本予算といったような考え方を十分取り入れられて、本来ならば、私は日本一般会計予算について一度全面的に検討し直してみるということも、もう必要な段階にきておるじゃないかということも考えますので、こういう問題はもう少し前向きに、真剣に大蔵省でも予算制度あり方の問題として、この段階においては取り上げてみられたらどうか、ぜひひとつ真剣に検討されるように要望をいたしておきます。  次にもう一つ、時間でございますから簡単にお伺いしたい点がございますが、今度は大体減債基金の問題と産業投資特別会計、これが一つやりくり算段の柱になっておると思うのでございますけれども、産業投資特別会計についてはどういう変改というか、あるいは財政の必要から今回は行き方を変れられたのか、金額はどれくらいそこから捻出されたか、その金額を承りたい。
  30. 赤羽桂

    赤羽説明員 先ほど数字を申し上げましたが、もし利子補給というような形式によらず従前どおりの形式でやったらどのくらい金がかかったかという、あの意味数字じゃないわけですか。その意味数字でございましたら先ほど申し上げましたように五百八十四億、そして差額が三百八十億でございます。
  31. 竹本孫一

    竹本委員 時間の関係もございますので、一つ最後に伺いますが、私どもがとにかく先ほど来申しましたように、財政膨張し過ぎておるということが一つ、それから膨張し過ぎた結果財源難におちいったので、産投のほうからもあるいは利子補給の形からもこういうふうに苦しい財源捻出をやったんだ、、そして最後にそれでもなお十分でないので、また二分の一を五分の一に下げてやるということになった、こういうふうに見ておるわけですけれども、その二分の一を五分の一にする、三分の一にするということについては、従来までそういう考え方が野党の中にもあったのです。しかし一挙に五分の一に持っていかれた理由は何か、それだけ伺って終わりにしたいと思います。
  32. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 今回剰余金の二分の一を五分の一とした理由と、その五分の一が三分の一じゃなくて五分の一にしたのはどういうわけかという御質問かと思いますが、私ども今回全般的には国債の償還、これを国債整理基金でやっておるわけでございますが、この国債整理基金の現況から申しますと、これはもっと極端に申せばゼロでもいいというような状況にあったわけでございます。しかし他方におきまして、やはり現在の基金制度というのはまあ財政法上もこれは非常に相当根本的な制度として考えられている制度でございますし、他方国際信用というような面もこれは十分考えなければいけないところでございまして、財政上の必要からいえばゼロでもいいということでございましたが、そういった面で二年間を限りまして五分の一としたわけでございますが、その二年間五分の一は暫定としては切り下げという場合に、やはり実は日本の国債整理基金の繰り入れというものをずっと振り返って見てみますと、昭和の当初からずっと見ましても、終戦後ほど多額の繰り入れをしておる時代は一度もないわけでございます。その期間におきまして最も割合の高い繰り入れをしていった時期はどこかということになりますと、これは昭和二年がこれに当たります。これは震災によりまして多額の公債を出したというものの、あと始末というものがそのころ出てまいったのでございますが、そういった昭和二年のときに繰り入れた率が二・九五%という比率を占めておるわけであります。それは昭和二年の年度初めの一般会計負担の国債が三十三億でございまして、それに対しまして繰り入れが九千八百五十五万五千円、比率にいたしまして二・九五%というもののこの繰り入れをいたしております。これが過去におきます比率的には昭和の当初から一番高い率である。それをことしにかりに引き直してみますと、これが本年の五分の一にいたしますと三%をこえまして三・三六%という数字になるわけでございます。これは実は暫定的な措置でございますから、一応この過去におきます繰り入れ率の高かった時代をめどにして、その辺までは暫定的に切り下げるということにいたして、そういった五分の一というような数字にいたしたわけであります。
  33. 竹本孫一

    竹本委員 これはまああとで大臣も見えるそうですから……。
  34. 山中貞則

    山中(貞)委員長代理 竹本君の質疑は再開後続行することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時五十六分休憩      ————◇—————    午後四時二十三分開議
  35. 山中貞則

    山中(貞)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。竹本孫一君。
  36. 竹本孫一

    竹本委員 財政法の改正について、大臣もお見えになりましたので、二、三基本的な問題についてお伺いしたいと思います。  財政法は、第一条に書いてありますように、財政の基本に関して定めたものでありまするから、これの改正につきましては財政の基本的姿勢ということが非常に重要な問題になると思うのでございます。そういう意味で、財政に関する田中大蔵大臣の基本的な考え方を伺っておきたいと思います。  第一点は、私は先ほども議論いたしたわけでありますけれども経済の高度成長というものは財政てことして行なってきた。したがいまして、経済成長あるいはその成長率、それを左右するものは、いろいろのファクターがありますけれども財政が一番大きいのではないかと思いますが、大蔵大臣のお考えを承っておきたいと思います。
  37. 田中角榮

    田中国務大臣 財政経済を動かすためのファクターとして一番大きいかということでありますが、確かに経済成長のために財政の持つウエートは非常に大きいということはそのとおりであります。日本の戦後の経済成長は、財政はもとよりでありますが、財政金融、特に金融の作用も財政に比べて劣らないほどの大きなウエートを持つものだと思います。
  38. 竹本孫一

    竹本委員 そこで財政のそういう大きな役割りということを前提にいたしますと、戦後の日本経済の立ち上がりの過程において、民間自身が設備投資を大いにやって、民間自身が経済を大いに伸ばさなければ、会社自体もやっていけない、こういうような過程におきまして、民間がいわゆる高度成長をみずからやろうとしておる、そういうときに、先ほどもお話がありましたけれども財政も同じように二四%あるいは二〇%前後の飛躍的な膨張をさしてくるということは、民間政府とが競争して、あるいは一体になって日本経済膨張させる、こういう意味で、財政の基本的な運営のあり方としてはむしろ逆ではないか、民間がどんどん伸びているときには財政はむしろ収縮して、全体としての日本経済のキャパシティというものと調和させるということがほんとうではないかと思うのでありますが、従来日本動きというものは、民間財政とが競争しながら、あるいは相協力して膨張してきた、これは財政の基本的運営の方向を誤ったものではないかと思いますが、大蔵大臣のお考えを承りたい。
  39. 田中角榮

    田中国務大臣 結果論から見ますと、高度成長の過程において財政規模も非常に大きかったということで、いまあなたが述べられたような議論一つ議論だと思います。しかし戦後の財政事情というものは、相当変わった面、いわゆる社会保障とか先進国体制に移行しなければならないということに対して、急激な国際的な平準化といいますか、そういうものが財政的に要請をせられておったわけであります。でありますから、健全財政のワクの中で、いわゆる経常収入をもって経常収支をまかなうという限度において財政がふくれた、膨張したということは、一つの要請からでございまして、まあやむを得ない事情だったと思います。しかし結果論的に見ますと、民間金融も、また民間企業者自体も高度の成長の過程にあったわけでありますから、財政に対して景気を刺激しないという限度において締めなければならなかったということは、一面の理屈としては言い得ると思います。
  40. 竹本孫一

    竹本委員 この点は議論をすれば切りがありませんが、私最終的に大臣にとくとお考えを願いたいと思いますのは、個々の経費、個々の費目について必要である、あるいは有益であるということと、それらを全部サムアップした全体が日本経済のキャパシティに合うか合わないかという問題と違うと思うんです。そういう意味で、どうも全体のキャパシティをオーバーしたからここに問題があるのではないか、そういう意味でこれからの財政の運営ということにつきましては、先ほども、あるいは最後にも伺いますが、全体としての財政計画性というものをもう少し確保しなければいけないのではないかと私は考えておるわけであります。そういう行き方あるいはあり方の間違いがたたりまして、企業倒産といったような問題も出てきておると私は思うのであります。  ついでにこの問題に関連いたしまして一つ伺いますけれども、公定歩合の問題でございます。私は、昨年の十二月十二日であったと思いますが、この委員会におきましても政府経済姿勢、経済政策あり方を転換する、こういう意味においては公定歩合を下げるべきだということをここで主張いたしました。大臣から御答弁もございましたけれでも、そのとき一厘で、一月に行なわれましたが、いま承りますと四月の中旬くらいに公定歩合を下げるということにお考えがあるようでございます。私はこれはこの際は早いほどいいと思います。そういう意味で大臣にお伺いしたい点は二つあります。一つはこれをできるだけ早く四月の上旬にでも——もう三月はほとんど終わりましたけれども、四月の上旬にでも、少しでも早くやろう、そういうふうに持っていかれる御意思はないか。もう一つ、かりに公定歩合を下げても、日本経済の基本的矛盾というものがあまりにも深刻になっておりますので、倒産は避けることはできないと思いますけれども、その点についての大臣のお考えを承りたい。
  41. 田中角榮

    田中国務大臣 公定歩合につきましては、政府の権限というよりも日銀にまかしてある権限であります。その最終的な判断は、日銀が行なうことでございますので、いま明らかにその時期を申し上げるということはできないと思います。しかし、金融政策全般につきましては、政府、日銀においては、緊密な連絡をとっておりますので、この間に意見相違はございません。また、公定歩合を引き下げる素地といいますか、引き下げてもまた設備投資が過熱をするようなおそれはないかとか、そういう問題に対しては、私はもう最終的な仕上げの段階を迎えておるものだ、こういう認識を持っております。一面、あなたが言うとおり、公定歩合を下げてもいい時期であるかという問題に関しましては、景気調整という意味で行なった金融引き締めに対しましては、おおむねその準備といいますか、前提条件は整いつつある、こういう判断でございます。  第二点の、公定歩合を引き下げても倒産が一体避けられるかということでありますが、これはこの前の一厘引き下げたときに、私は、金融緩和の方向に向かっており、公定歩合が引き下げられても倒産は皆無にはならないだろう、こういう談話を発表いたしました。私は、いまでもそういう危険性は十分あるという認識のもとで、金融緩和ということ自体よりも、中小企業の倒産を避けるために万般の施策を必要とするという考え方に立っております。
  42. 竹本孫一

    竹本委員 そこで私、大臣にお伺いいたしたいのは、倒産の問題もなかなか解決がつかない、それから物価の問題も、値下げをずいぶん政府努力されていますけれども、結果的に見てまだ功を奏したとは言えないし、また物価の値上がりというむしろ逆の傾向がある。今日のいろいろの悩みというものは、やはり日本経済自体のいわゆる構造的な矛盾というものにあると思うのです。そういう点から考えますと、これは日本経済全体が、財政も、金融もあるいは産業のあり方も全部反省をして、再出発をしなければならない転機にきておると私ども考えております。そういう意味で、全体の経済政策あるいは財政金融政策というものが再出発をし、総反省をしなければならない時期にきておると思いますけれども、この点について大蔵大臣のお考えを伺いたいし、同時に、その反省を行なうということになりますと、財政当局の、先ほど申しました財政経済に対する影響力、比重の大きいことを考えますと、財政の姿勢を正すということが、この転機に立つ日本経済危機の打開のために一番必要なことではないかと思いますけれども、この点についてのお考えを承りたいと思います。
  43. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたの言われることは十分理解できます。また賛成すべき、傾聴すべき御議論だと思います。私は、財政だけではなく、戦後非常に急激な膨張といいますか、成長を続けてまいりましたので、金融機関もその間においてひずみを出したということに対しては、十分責任も感じておると思いますし、これからの第二のスタートとも言うべき将来に向かっては、新しい姿勢をとらざるを得ないという考え方に立っておると思います。それから、産業人自身も、いままでのように、物をつくればいいんだというような観念、金を借りればいつでも返せるのだという観念よりも、率直に言うと、本格的な経営人としての目ざめというものが必要であるという経営責任ということに対しては、非常に深刻な反省をしておると思います。また、政府自体も、いままで民主政治の中で、また、そういう姿勢の中では、自主的な調整、自主的な判断、自主的な運営、こういうものにまかしておった。またそうすることが正しいのだという観念に立っておったのでありますが、これからはやはり政府が最終の責めを免れないのだというような考え方に立って、より強力な調整とか、必要なものに対しては共同責任を負えるような態勢をみずからつくるように努力をしていくという政治責任の限界というものに対しては、もっと明らかにしなければならないと思います。  それから財政の姿勢を正すということは、これは過去も、現在も、将来もそのとおりでございますが、私は財政の中で最も考えていかなければならないのは、国と地方との調和、それから地方財政の状態、それからいま問題になっておりますが、政府関係機関、公社、公団、特殊会社、事業団、こういうものが経済に対して影響を持つ度合いというものに対しては、もっと厳密な態度で評価をし直さなければならないだろうという考え方に立っております。財政全般——国、地方を問わず、全般に対して、新しい金融政策と全くマッチをして、こん然一体となった、ある意味における計画性の保たれた姿勢をとっていくべきだという考えであります。
  44. 竹本孫一

    竹本委員 財政の姿勢を正すという問題でございますし、まあこれは、いま大臣のお話もいろいろありましたけれども、しかし私は、この点につきましても、やはり先ほど申しました地方の必要もありましょう、あるいは社会開発のためにいろいろな必要な経費もありましょう。しかしながら、全体としての財政のキャパシティというものも考えなければいかぬ。国全体の経済力、その経済のキャパシティに即応したものでなければ、インフレになったり、あるいは過剰生産になったりするということが、先ほども指摘されたわけでございますけれども財政についても、財政自体一つ限界を持っておる、キャパシティに即応したものでなければならぬ。かりに社会開発であろうが、あるいは産業投資であろうが、あるいは地方財政をバックするためのものであろうが、どんなに目的がよくて、必要があるように見えても、全体のキャパシティを越したのではどうにもならない、これを私はもう一度強調いたしたいと思います。しかしこの点は、これ以上追及をいたしません。  そこで、財政の姿勢を正すということについてもう一つ、キャパシティに即応したものでなければならぬということと同時に、その反面の問題として、財政財源限界ということについても真剣に考えなければならぬ。今度の四十年度の予算編成を見ておりますと、大臣は、いろいろの要求があったという御説明でございますけれども、しかしいずれにいたしましても、それだけのものをのみ込んで、三兆六千五百億の予算を組んで、それがためにそれがむしろ私のいう財政の能力の限界を越えたものであるということのために、ずいぶん無理をしておられるというふうに私どもは見るわけでございます。先ほど来御質問もいたしましたけれども、産業投資特別会計に対する繰り入れ金が減っております。これは百二十五億になって、去年と比べましても四百四十七億円減っておる。そういうことになりますと、先ほど政府予算説明をもう一ぺん見直しましたけれども、今度政府の支出の面で昨年の当初予算に比べて減ったものはこれだけです。補正後の予算に対して減ったものは、また一つわずかな例がありますが、これは災害とかなんとかいうもので問題になりません。財政は一二・四%でありますか、膨張しておるのでありますから、当然ふえなければならないもので、しかも減っておるというものは、この産投の繰り入れ金の問題であります。しかしこれももはや限界がきて、どうにもならなくなって、ここで一方、四百四十七億、昨年の予算に比べても削っておる。それから今度、いま問題になっておりまする減債基金繰り入れの面で百九十五億円ひねり出しておるので、非常に御苦心があるといえば御苦心があることでありますけれども、しかし別な面から見れば、財政のキャパシティというものをこえてきておるのだ、あるいは限界にきておるのだということのいい証拠ではないか。そういう意味で私は、日本財政健全化を守り、あるいは財政の基本原則というものを守って、財政の姿勢をただすことがいま一番必要なときに、逆に、この財政法の改正というものは、日本財政の基本原則をじゅうりんすると申しますか、あるいはそれに反する方向に行くということになって、二重な意味ではなはだ遺憾なものではないかと思うのでございますけれども、大臣いかようにお考えになっておりますか。
  45. 田中角榮

    田中国務大臣 財政自体を引き締め基調に置かなければならないということはよくわかります。私も御説に同感であります。しかし過去の実績から考えまして、急速に引き締め体制というところまでいくと、非常に社会に対する影響というものが激しくあらわれるわけでありまして、昭和三十六年、七年、八年とずっと見てまいりますと、六年、七年の対前年度比二四・四%というようなものから、三十八年の一七・四、三十九年の一四・二、四十年の一二・四と、こういうようにだんだん引き締め基調になっておるわけであります。しかし予算のベースがだんだん大きくなっておりますから、そういう意味で、一二・四%といえども非常に大きな予算規模の膨張であるということは言い得るわけでございますが、少なくとも三年間で三千億に近いものに一般会計の規模は押えられておるわけでございます。また歳出要求というものが非常に大きいということもありますので、財政の健全性を貫きながらも、どうしても必要な歳出につきましては、ひずみの解消という意味からも予算に盛らなければならないという事情もありますので、その両方の調和点をとったのが、この一二・四%と、こういう結果になったわけであります。いままで私は、各国に比べれば非常に超健全な財政姿勢をとってきたと思います。ある意味から言いますと、国民の税負担も非常に重いというような面から考えてみて、このような姿勢をとっておるときには、国内的に景気が刺激されるということはどうして考えられないということもひとつ考えたわけでありますが、現実問題においては、非常に超高度の成長でございます。でありますから、私はすなおに申し上げると、政府財政が刺激をしたという面も否定できませんけれども、やはり民間の産業に対する姿勢、また金融というものが、非常に大きく成長に影響したものだというふうにも考えられるわけであります。今度、財政法の改正を行なって御審議を願っておりますが、これは財政が非常に不健全になるということよりも、いままで国債償還ということがなくても、そういう要請がなくても、そういうところに余剰財源をある意味においてたな上げしておる。歳出要求は非常に強いので、法律の条文を守りながら、国債整理基金に非常に高い率の金をたな上げし、それから先ほどあなたが指摘をせられましたけれども、また歳出要求があるにもかかわらずなぜこんなことをするのか、たな上げ資金をつくるのかと言いながらも、産投会計に対して原資を繰り入れるということが、一つにはたな上げの方法であります。もう一つ農林漁業金融公庫とかそういうところの金利を一厘引き下げるということで、利子補給で足りるものでも、他にも歳出要求があったのですが、原資を繰り入れる。また中には三十億、五十億の金を出して、その利息でもって運営をするというような、他の国から考えると、とんでもない超健全というような姿勢をとっておったわけでございますが、安定成長に入りまして、税収そのものも、政府が当初期待したようなものに対しても減収見込みが立つというような正常な状態に移りつつありますので、いままでも大蔵省流に超健全の姿勢をとっておったものを、普通の状態にだんだんと戻していかなければならない、そうすることが財政の効率的な運用だ、こういう判断に立っておるわけでございまして、この法律改正が財政の健全性を全く損うものだというような見方に立ってはおらないわけであります。
  46. 竹本孫一

    竹本委員 二四・四%、それが一二・四%になったのだ、確かにその過程において大臣の御苦心もあっただろうと思います。しかし同時に、私どもは二四・四%自体に問題を持っているわけなのです。いつかも申しましたけれども日本経済はランニング・ツー・ファスト、あまり早く走り過ぎているということは、その当時から外国のまじめな経済評論家あるいは経済学者が批判しておりましたので、これはいまに始まったことではない。そういう意味で、私ども予算の問題にいたしましても、やはり総花であったか、あるいは行き過ぎであったか、いずれにしてもキャパシティをこえておったと思うのであります。超健全の問題につきましても、これはまた機会をあらためて、きょうは時間もありませんので、ゆっくり一ぺん論議したいと思うのであります。と申しますのは、私は政府が金をばらまく、そうしてそれにならって民間設備投資をやる、そうして金をばらまき、購買力をあおっているのですから、税収入が上がるのはあたりまえなことです。所得税は二・五になるか幾らになるか、とにかく弾性値の問題は別にいたしまして、とにかく一方で金をまくから、それがはね返ってきて収入になる、その収入の範囲内であれば健全である、あるいは超健全であるという考え方自体に非常に問題がある。経済の再生産方式を科学的に検討してみれば、そういうむちゃな議論はできないわけですけれども、とにかく収入の範囲内でやっておるのだ、公債を出さずにやっておるのだ、日銀引き受けにもならないのだ、こういうことだから健全である、超健全であるという考え方は、経済の運行の法則というものを無視した単なる数字を合わせるだけの議論である。これは非常に基本的な問題になりますから、あらためて議論をいたしたいと思いますけれども、私ども経済全体としてほんとうに超健全な動き方をしたのであれば、いまごろ物価が騰貴したり、倒産が起こったりすることはない。やはりそのつじつまだけは一応合っていたけれども経済の内部構造、全体の経済の運動法則が脱線していたから、それが物価の騰貴になって、あるいは倒産にもなっていまごろ出てきているということを指摘したいのでありますけれども、これはこの程度にいたしておきます。  そこで、大臣にもう一つ伺いたい点は、いま利子補強のお話がございましたけれども、今度十億三百万円ですかの利子補給をされるという、先ほどの御説明によれば、実際は三百人十億という金を動かしている形になっている。大体考えまして、十億円で三百八十億、約四十倍の効率を持っているわけですね。こういう便利のいい手段とイージーゴーイングな方向が考えられ、あるいは先例をつけられると、分度この利子補給という形で、実は財政がみずから解決しなければならない課題を、そうして持っていくという、そういうイージーゴーイングな方向がますます激成されてきはしないかという点を、私どもはまじめに心配いたすのでありますが、その点についてのお考え、並びに、それが行き過ぎてくるとだんだんに資金に困って、資金運用部の金だけではなくして、そのほかにも食い荒らしていくという方向に発展するような心配はないか、この二つの点を私ども非常にまじめな意味心配をいたしておりますので、大臣のお考えを承りたいと思います。
  47. 田中角榮

    田中国務大臣 いままでは利子補給で足るものに対しても原資を繰り入れるというような状態でございましたが、今度は利子補給制度、いままでも農林等に対して行なっておったものを拡大したということであります。しかしこれは財政の上から考えて無制限にかかる処置を広範に適用すべきではないという基本的な考え方であります。利子補給につきましては、安易に考えますと、確かに幾らでも出せる、こういうことになりますが、しかしこれは非常に大きな雪だるま式にもなるわけでありまして、ある意味において公債論とも通ずるものもあるわけでありますが、この利子補給というものに対しては、最低な線でひとつ押えよう、こういう考え方を基本にしております。しかし私は、どなたが政権をとっても、いまの状態では利子補給とか財政支出に対して非常に大きな要求というものが出てくると思います。こういうものと財政の健全性というものをどこで調和させるかということは、これからの予算編成にも重大な問題だと思っておるわけでございます。  利子補給を新しく今度拡大したということで、来年はどのようになるのかというような問題もあると思いますが、原則的には利子補給といえども押えるだけ押えていくということでなければ、予算上の金額は小さくとも、実際的に動く金額は非常に大きくなる、財政膨張することになるわけでありますので、こういう面は利子補給をしないで、原資を繰り入れた場合の予算規模、財政規模というものも考えながら、これらのものを無限に拡大していくという姿勢は絶対にとらないつもりでございます。
  48. 竹本孫一

    竹本委員 今回産投会計への繰り入れ金を減らした、減債基金への繰り入れ金を減らした、あれこれで六百億円くらいの財源を浮かしたと思います。さらにいまお話しの利子補給というような形でいろいろと工作をしておる。要するにこれは収入と支出の面で、財政自体私が先ほど申しましたみずからのキャパシティの限界を越えて無理をしておる。それがいま露骨にあらわれてきたわけであります。ところが今後の問題を考えますと、今後自然増収もだんだん減ってまいりますと——きょうは時間があまりありませんから、一々具体的な論議はやめますけれども、結論として自然増収その他から多くを期待できない。一方においては当然増その他経費は、義務づけられたものもそうでないものもたくさん必要になってくる。こうなりますと、現在四十年度の予算編成は非常な無理と悩みが深刻にここへ出てきて、やりたくもない利子補給もやらなければならぬ、繰り入れを減らさなければならぬ、こういうことになった。  そこで、私は今後のことを考えると、財政のむずかしさというものはたいへんなものだと思うのです。そういう点を考えた場合に、今度の財政法の一部改正案で繰り入れ二分の一が五分の一になったということはどういう理由であるか。さらに、二カ年間の暫定措置ということでありますけれども、二カ年と切られた理由は一体どういう見通しとお考えであるか、この点を伺いたい。
  49. 田中角榮

    田中国務大臣 もう十分御承知の上での御質問でございますから、数字等は申しませんが、国債の残額と繰り入れ金の額というようなものと、また一般会計に対する国債残高の比較、こういうものは先進諸国に比べますと非常に低い状態でございます。それは率直に申し上げると、国債整理基金に入れなくとも、金が残っておれば使ってしまう可能性が十分あるからということで、いままであえて二分の一の繰り入れを行なっておったわけでございます。しかし安定成長になってだんだん税収の確保もむずかしくなりますし、いままでたなに上がっておったものを、なるべく使わせないように二分の一はたなに上げるのだ、こういう法律があったわけでありますが、歳出要求もありますし、これ自身も国民的要請でもありますので、必要な限度において繰り入れ額を減らそう、こういうことにして五分の一に暫定的にお願いをしているわけであります。  二年にしたのはなぜかということでありますが、こういう問題は原則論として健全性をいまよりも——確かに超健全を健全にするのですといっても、たな上げするものが少なくなるのですから、健全性をゆがめる、こういう議論も起きますし、国債整理基金に積み立てられておる金額と、またこれから償還等の問題もございますので、二年間くらい暫定的にひとつ五分の一にしていただいて−私は今度の予算編成で、利子補給に対しては、いままでのように超健全なことをやるベきではないので、利子補給でまかなうべきものはまかなうのだ、ただこの国債整理基金へ繰り入れの五分の一というのは、やらないでよければ、こういうものをやることによって物議をかもすからということで、最後まで私どもも非常に渋っておったわけでございますが、予備費をどうしても五百億以上残したい、それから今度補正予算等の編成も非常にむずかしくなる、そういう意味でどうしても予備費を三百億プラス二百億分くらいは法律改正でやらしてもらいたい、こういう話がございまして、最終的には私はこれを認めたわけでございます。いまにして考えてみると、もう少し時間があればいい知恵もあったかなと思っておるわけでございますが、百九十五億という金額でございまして、それと上回るものが予備費に追加計上されている、こういうところでひとつ健全性を侵さない限度においてのものだ、こういう意味でひとつ御理解いただきたいと思います。それから二年間という限度をつけたのは、原則的にこの限度が幾らでいいかという問題に対して、もっと根本的に検討したいということで、財政制度審議会の意向もありまして二年間、こういう暫定立法でお願いをしたわけでございます。いままでたな上げをしてきておった状態、私の表現でいうと超健全、こう言っておるわけでありますが、こういう財政の内容は十分御承知のはずでございますので、この程度のことをやっても、財政の健全性がゆがめられるものではない。しかし基本的に財政はより健全に、こういう意味で御発言いただいておるものと考えます。
  50. 竹本孫一

    竹本委員 時間がありませんから、あと二つだけまとめてお伺いをいたしたいと思います。  私が二年間と言った意味は、財政のバランスを考えると、だんだんにどうも悪くなっていくだけだというふうに考えます。そこで二年間で日本財政の、この台所の苦しいやりくり算段の悲惨な姿というものが解消されるような見通しを大臣は何らかの形において持っておられるのかどうか、この点を伺いたいのでございます。これが一つでございます。  それからもう一つは、それと関連いたしますけれども日本財政の運営について、どうも最近長期的な計画性というものがない。戦前には、先ほども質問いたしましたけれども、あるいは五年あるいは十年の、十カ年財政計画というものが、内容のお粗末であるということについては議論がありましても、一応そういうものがあった、またそういうものを持とうと少なくとも政府努力した。私は先ほど申しましたように、今日の日本経済の中において、財政の占める比重と影響力が非常に大きいので、少なくとも日本経済のこの破算寸前の状態というものを健全にしていくためには、あるいは経済全体に計画性を持たしていくためには、財政みずからまず計画性を持たなければならぬ、あるいは健全化をしなければならぬ、こういうふうに考えますので、その意味でお伺いをするわけでございますけれども財政自体長期計画というものを持っておられるか、あるいはこれから持つためにどういう努力をされるのか。私はどうしても——やはり中期経済計画の中にも若干そのことはあるようでございますけれども、いじれにいたしましても、財政長期計画というものが確立されて、それを軸にしてすべての中期経済計画もあるいは日本の産業全体も動いていくというように、どこかに何か心棒がなければ、日本経済——これはマルクス的にいえば生産が無政府状態ということになっておりますから、その無政府状態のような混乱する行き過ぎ、この経済一つの規制を加えるということができない。しかし規制を加えておかなければ——余談になりますけれども、池田内閣のあとを受け継いだ佐藤内閣というものは、ある意味でお気の毒だと思うのです。池田さんが食い荒らしたいほど食い荒らして、やりたいことをやったあとそのまま引き継いだのですから、また佐藤総理は私の同郷の先輩でありますから、特に同情をして見ておるわけですけれども、とにかくいずれにいたしましても池田さんは運がよかった。病院に逃げ込んで、それで終わってしまったのだからよかったのだのだけれども、佐藤内閣はこの池国内閣のこの数年間に蓄積してきた矛盾、拡大してきた矛盾をそのまま引き継いでおるのですから、これはたいへんなものです。しかし私が心配するのは、これと同じようなことを、今度は田中大蔵大臣の次の大蔵大臣田中さんのあとを引き継いだためにとんでもないひどい目にあうというようなことのないように、やはり財政計画化とか健全化ということについて、もう少し前向きに真剣にお取り組み願えないものかどうか。  御承知のように、第六条は第四条、第五条を受けて第六条になっております。でありますから、第四条の基本原則、こういう考え方というものは、あるいは第五条の問題にいたしましても、やはり第一条にいっておるように、日本財政の基本的姿勢としてこれは財政法が非常に重大な原則をうたっておると思うのです。第六条もやはりこれを受けて、第一条の精神にのっとり、四条、五条と相呼応して日本財政の基本原則を守ろうという努力をしておるわけです。その一角の第六条を修正しあるいは改正するわけでありますわから、その際には、先ほど大臣もいろいろ答弁されておりますけれども日本財政についてまじめに考え心配というものは、こういう意味で克服していくのだ、その克服に関する財政計画化の問題についてはこう考えておるのだ、こういう一番基本的な問題について大臣のお考えを承りたいと思うのです。
  51. 田中角榮

    田中国務大臣 第一点は、二年たったら一体こういうことをしないでいいのか、こういうことでございますが、これは、審議会で検討していただく必要もございますし、また国債整理基金への繰り入れというものがどういうものでなければならないということに対しては、長期的な見通しも立てて、この二年が過ぎましたら最終的な結論を出したいということでございますので、これがまた現在の二分の一に返るのか、五分の一のままに恒久的なものになるのか、そういう問題に対しては慎重に検討してまいりたいと存じます。  それから第二点の財政に対する長期計画というものをつくる必要があるではないか、これはそのとおりでございます。予算は単年度主義をとっておりますけれども、実際の問題としては中期経済計画をつくり、また公共投資等に対しては法律でみな五カ年計画、十カ年計画を策定しておるのであります。中期経済計画に対して必要なものは二つある。その一つは産業資金計画というものをつくらなければならない。これは絶対的な要請だと思います。もう一つは、それをもととしてひずみを解消しながら、財政の規模はどうあるべきか、財政のウェートはどうあるべきか、また現在の財政規模の中でどういうものが財政投資に移されるのか、どういうものが金融でまかなうべきものか、長期税制というもの、三本の柱ぐらいにして、少なくとも大蔵省の中では持っておらなければならぬと思います。これは大蔵省は持っております。大蔵省の諸君は表へは出しませんし、財政は単年度主義でそのときになってみなければなかなかわかりません、税収がなければ出せません、こう言ってはおりますが、なかなか優秀な諸君でありますから、私と話をしておりますと、五カ年間ぐらいの目標は立てておるようでございます。しかし非常に謙譲でございまして表には絶対出さぬ。こういうことでありますが、これは、私もひとつひまになりましたら十分検討して、政府の施策として、財政の将来はどうあるべきか、長期計画は、少なくとも財政はこうなります、財政負担すべきものはこうなります、こういうものはいまは財政負担しておりますが、やはりこういうものは国民自体の努力によって変わっていくべきものですというような一つ計画、ビジョンといいますかを国民の前に明らかにすることがより合理的だとも思いますので、御発言の趣旨に対しては十分研究してまいりたいと思います。  最後財政の健全性、これは十分ひとつ考えてまいります。池田内閣と佐藤内閣ということでありますが、私は両方におりまして、大いに責任を感じております。非常に苦しい時代ではありますが、しかし過去において、ここまで経済の基盤ができておるのであります。子供に牛乳をどんどん飲ましたら子供は非常に大きくなった。しかし、少しくつや服が足らないというひずみがあるわけでありますから、こういう面に対しては十分調和のとれた状態をつくるべくこん身の努力を傾けてまいりたいと思います。
  52. 竹本孫一

    竹本委員 最後にいたしますが、三本の柱という大臣のいまの御説明、私は非常に賛成で共感を覚えますが、ほんとう意味で三本の柱を確立して、財政あるいは日本経済全体のスムーズな伸展、発展ができるように期待いたしたいと思います。  これと関連して最後質問したいのですが、今度できる財政審議会といいますか、そのところはいま申しました財政長期計画化といったような問題を具体的に取り上げられるおつもりであるかどうかを伺って、終わりにしたいと思います。
  53. 田中角榮

    田中国務大臣 いままでは財政制度審議会の会長は大臣でございましたが、大臣じゃどうもいかぬということで、今度はもっとこれを強化しよう、こういうことでございます。そういう意味で拡大強化しようということでありますので、長期的なものができるとすれば、当然御審議もわずらわしたり、この場でも御討議が続けられるものと考えます。
  54. 竹本孫一

    竹本委員 これで終わります。
  55. 山中貞則

    山中(貞)委員長代理 小山省二君。
  56. 小山省二

    ○小山(省)委員 財政法の一部を改正する法律案についてお尋ねいたしたいと思いますが、だいぶ先輩の方にも御無理を願って御出席のようでありますから、問題点をしぼって、ごく簡単にいたしたいと思います。  本改正法案には、大体二つの重要と見られる改正点があるようでございます。一つは、財政の効率的な運営をはかるためという理由で第六条を改正し、二カ年に限り、特例を設け、前年度の剰余金の二分の一以上を公債または借り入れ金の償還財源に充てると定められている点を、五分の一以上と改正しようとする点でございます。第二は、以上のような問題も含めまして、国の予算、決算及び会計の制度に関する事項を調査審議する員委の定数を増加しようとする点でございます。  そこで私は、まず第一の事項から御質問を申し上げたいと思います。過ぐる三十四国会で、各派共同提案のもとに、次のような附帯決議がなされておるのであります。国債の償還等に充てるため、その財源措置として、政府は、昭和二十八年度以降三十四年度末で、毎年度本特例法により便宜的措置を講じてきておるが、歳計剰余金はその額が予測できないので、政府においては、すみやかに国債償還に関する適切なる長期計画を確立し、合理的な減債基金制度を確立すべきであると指摘いたしておるのでございます。このような決議がなされまして以来、減債基金制度にどのような改正がなされましたか。また長期計画を立てろと言われておりますが、現在どのような長期計画のもとに減債計画を進めておられますか、お伺いをいたしたいと思うのでございます。また、きょうまでその必要性があったかなかったか、それらの点もあわせて御説明願いたい。
  57. 赤羽桂

    赤羽説明員 昭和三十五年三月二十二日、衆議院大蔵委員会で、ただいま御指摘のございました決議があったわけでございます。これは御案内のとおり、昭和二十八年度から昭和三十四年度まで六年間にわたりまして、従前の国債整理基金への繰り入れでございますところの一万分の百十六の三分の一というのを停止をいたした措置でございます。これを毎年毎年単行法で一年ずつ延伸いたしまして、最後の昭和三十五年、この委員会におきます審議におきまして当分の間という現行の法律に変わったわけです。その際の御決議でございます。私らといたしましては、この御決議がございまして、財政制度審議会におきまして三十五年、三十六年それから三十七年三カ年にわたりまして約十回でございますが、財政制度審議会を中心にいたしまして、議論対象にいたしておるわけでございます。もちろんこの十回の財政制度審議会におきます議題と申しますのは、財政法全般にわたりましていろいろ御議論がある条文がございます。そういったものについて早急にやらなければならないもの、たとえて申しますと契約制度の改正、あるいは補正予算制度の改正といったような、これはいずれもその後の法律改正によりましてただいま実定法となっておるわけでございますが、このようなものを中心にして行なっておりまして、この減債基金制度並びに剰余金の処分、そればかりをやっておったわけではございません。特に御議論がございましたのは、昭和三十七年度の財政制度審議会、これは二回ばかり開いておるわけでございますが、この際財政法の諸問題の一環といたしまして、剰余金の処理の問題並びに減債基金制度をどう考えておるかという問題点の指摘をしておるわけでございます。ところが昭和三十七年度の十一月の財政制度審議会を開催いたしまして、昨年、三十九年度十二月の中旬に財政制度審議会を再び開催いたしますまで約二カ年の間休憩をいたしておるわけでございます。この休憩をいたしました理由は、ちょうど三十七年度の最後財政制度審議会をやりましてから、例の臨時行政調査会が発足をいたしまして、これが行財政全般について審議を重ねるというお話がございまして、大蔵省といたしましてもやや遠慮をいたしたというようなかっこうになっておるわけでございます。その間二カ年間ほど休憩をいたしたわけでございます。もちろん審議会中心ではなく、事務的には種々この二つの制度について、どういうふうに考えたらいいかというような点は中では検討いたしております。  今回の二分の一、五分の一の改正をお願いしておるわけでございますが、ただいま申し上げました事情のように、この前の決議がございまして、その後どういう改正が行なわれたかという点につきましては何も行なわれておらないわけでございます。どういう点を検討したかというお話でございますならば、またあらためて御答弁申し上げます。
  58. 小山省二

    ○小山(省)委員 率直に申し上げますと、多少の検討をしたあとがないではないですが、国会決議の趣旨に沿ったような長期返済計画というものは今日まで確立をせられておらない、こういうふうに解釈して差しつかえありませんか。
  59. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 国債の償還の問題でございますので、私からお答え申し上げます。  減債基金制度そのものの研究は、いま法規課長から御説明したとおりでございます。国債の償還そのものはまた別途それぞれ国債に償還期限がございます。それに応じて何年度に幾らということがきわめて明確に定まっております。それに応じて国債整理基金特別会計における国債償還計画を立てて運営をいたしておる次第でございます。
  60. 小山省二

    ○小山(省)委員 現在の国債総額というものは、それほど長期計画を立てるほどの重要な問題として政府でお考えになっておらないというふうにわれわれはとれるわけでございます。したがって現行の財政の範囲で十分償還能力があるというような点が、ややもすればそうした国会の決議の趣旨に沿ったような形になっておらないというふうにわれわれは見受けるのですが、その点はいかがですか。
  61. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 御指摘のように、戦後国債の残高というものは戦前に比べまして非常に少なくなっております。先ほど大臣から御説明のあったとおりでございます。もちろん少なくなってはおりますけれども、むろんそれに対する償還というものは厳然とあるわけでございまして、それに対して現在では国債整理基金特別会計の中におきまして、これは年によっていろいろ波がございます。そこでその波をある程度平準化するという運営上必要がございまのすで、国債平準化のための資金を現在整理基金特別会計の中で持っておりまして、それによって国債の償還に万全を期している、かような次第でございます。
  62. 小山省二

    ○小山(省)委員 大体意のあるところはわかったような気がいたします。  第二の点は、財政の効率的運営をはかるために、暫定的な特別措置として昭和三十八年度及び三十九年度の二カ年に限って今回のように改正したいと提案されておるのであります。二カ年を限度とした考え方、たとえばこの二カ年はわが国経済が高度の成長を遂げたと推定され、剰余金が比較的多額に達する見込みがある、こういうような考え方であるとか、また国債の償還金額が例年に比較して著しく低い、そのような特別な理由があったらひとつお聞かせ願いたい。
  63. 田中角榮

    田中国務大臣 特別の理由と言うべきほどのものではございません。二分の一というものを五分の一に引き下げるわけでありますから、国債が将来一体どういうようになるのか、発行するのかしないのか、また現在のものだけでもってやる場合には、いままで繰り入れたものはどうなるのかというような問題を財政審議会で検討してもらうということで、私たちのほうでこれを恒久的なものにするということにはもう少し第三者の意見を聞きたいということでございましたので、二年といたしたわけでございます。それからいまの二年の間は金がよけい入ってくるというのではなく、ざっくばらんに申し上げますと、いままでは二千億余にものぼる大きな自然増収があって、二千億、二千五百億という補正予算も組めたわけでありますが、今度は安定成長に入ってきますので、どうしてもそのような多額の自然増収ということが期待できなくなったわけでございます。たくさん自然増収があるときといいますと、歳出が対前年度非常に大幅に伸びておって、その上なお財源があるから補正予算を楽に組むというような考えになると、財政の健全性ということが貫かれないと思いますので、その二分の一は国債整理基金に入れる、はっきり申し上げますとたな上げというような思想もあったと思います。しかし今日になりますと、そのように財源が豊かでありませんので、いままで繰り入れておった額を必要限度にとどめまして、必要限度といって外国の例などにしますと、六分の一にも十分の一にもしてもいいというような数字でありますが、財源がそれほど必要なわけでもありませんので、五分の一ということにいたしたわけでございます。二年間に限ったというのは慎重を期す、こういうふうに理解していただければけっこうです。
  64. 小山省二

    ○小山(省)委員 いま大臣からの御答弁で、今後の日本経済見通しからいきまして、そう多額な自然増を見込むわけにいかない、こういうような点が改正の中に気持ちとして織り込まれている、こういうふうに御答弁いただいたのです。私の推定では本年度におきます財政の現状特に歳出の増大に対処して、できるだけ財源を求めたい、そのためには国債の償還には支障のない範囲で、できるだけ金を特別基金に繰り入れることを少なくしたい、こういう、むしろ積極的な考えより、財源を求めたいというお考えの上に立ってこのような制度に手をつけられたのではなかろうか、こういうふうに考えておりますが、いかがですか。
  65. 田中角榮

    田中国務大臣 それもございます。でありますので、財源の効率的運用をはかるため、こういっているわけでございます。いままでよけいあったから、たな上げしておった、しかしいま歳出要求はあるわけでありますから、そういう意味からそのたな上げをするほうが、より国民のためになるのか、必要限度にとどめて、いま歳出財源としてこれを使うということの評価を十分考えまして、いまの段階においては繰り入れ額を少なくして財源に使うことが、財源の効率的運用、こうなるのだ、こういう考え方でございますので、あなたが言ったとおり、財源があり余っておれば、いままでのところでもよかったわけでございます。
  66. 小山省二

    ○小山(省)委員 本年度は三十八年度の決算による剰余金が繰り入れられるわけですから、そう心配はないと思いますが、明年度におきますそれらの点について、事務当局でけっこうでございますが、見通しについてひとつお尋ねしたい。
  67. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 昭和四十年度におきます国債償還額は三百十九億円の予定でございます。これに対しましては、先ほど申し上げております平準化資金と、一般会計からはその五分の一ではございますが、前々年度の剰余金の繰り入れがございますので、これによって国債償還には何らの支障がございません。そこで四十一年度でございますが、四十一年度の国債償還見込み額は、三百四十億円でございます。三百四十億円の償還見込みに対しまして、これまた平準化資金の持ち越し等もございます。この場合に、一般会計からかりに一文も繰り入れがない場合を想定いたしましても、四十一年度については国債償還に支障はございません。
  68. 小山省二

    ○小山(省)委員 かねがね大蔵大臣が、わが国の財政は超健全だと言われている。そういう点では、いまの御説明を承りまして、たいへん心強い感じがいたすわけであります。しかし私はこの法案を出されました真意といいますか、出さなければならなくなったという現状を考えますと、これは単なる財政法の一部改正案という軽い気持ちでこれを審議するというわけにはいかないと思う。日本経済財政金融、そういう面から当然この法案に大きな関連性を持っておるような気がいたすわけでございます。私はこのような減債基金の特別会計にまで特別を設けるとか、また大臣が税制にもかなり御無理をして、御苦労をなされておりますが、問題は日本経済の高度成長という特異な現象を、少し田意不十分といいますか、しかも長期にわたってこれを続けさせようとした、いわば少々無理をした点が今日の経済の大きな原因をなしておるのではないかというふうに私ども考えるのであります。御苦心のほどはよくわかるのでございますが、私はこの辺で日本財政金融全般にわたって、一つの転機がきておるのではないかというふうな考えを持っておるのであります。大臣はしばしば超健全財政だと言われておりますが、財政の面から見ますれば、確かにそのような考え方、またそのまま私は受け取っても差しつかえないと思うのであります。しかしながら日本経済全体の姿は、必ずしもそのようにばかりは受け取りにくい要素が多分に見られるのであります。現に金詰まりであるとか過剰投資だとか、これは別の議論といたしましても中小企業から逐次大企業へと倒産の数は依然として衰えることなく、ないばかりでなく、非常な憂慮すべき状態をあらわしておるように考えておるのであります。設備近代化なれりと称する産業界も過剰生産で悩み、一方では極度の金詰まりから企業間信用へと変則的な助けを求める。また、証券界は種々対策を打ち出されたものの、いまや救いがたいどろ沼状態にあると申さねばならないのでございます。このような姿は、一口に申しますと、日本経済の現況は不況であるといえるのでありまして、一歩譲ってみましても、好況とは申しにくいように私は考えるのであります。しかしながら、このような不況と考えられます中からも明るい面が皆無だというわけではございません。景気は明らかに立ち直りの徴候を見せておるようでございます。特に大臣の多年の御苦労が実ったといいますか、輸出の大幅な改善、国際収支の好転は消費者層の増大と相まって生産も一時的には低下した面もありますが、その基調は少しも悲観の要なく、したがって物を中心とした面から見ました景気は、見方によりますれば、むしろ好況だといっても差しつかえないのではなかろうかと思うのでございます。ただ、金の面から見ますと、金詰まりは依然として解消された様子はございません。むしろ金詰まりが産業界に一段と浸透し、生産過剰が表面化し、金融のささえが非常に弱まってきておるように感ぜられるのであります。私はこのような状態は、一にかかって証券市場の不振からきておると思うのでございます。国際収支が立ち直り、経済活動に大きな変化がないとすれば、私は株価は逐次立ち直り、株式市場は多少好転をしなければならぬように考えておるのでございます。株式市場の低迷は不況感を強めておる大きな要因をなしておると思っておるのでございます。このような状況の中で、いま米価の大幅な引き上げを初め、医療費であるとか運賃であるとか、その他の公共料金並びに生活必需諸物価は大幅な値上がりを示そうとしておるのであります。したがって人件費も毎年大幅な値上げを余儀なくされておるわけでございます。不況というのにこうしたインフレに近い姿がいままさに足元に忍び寄っておるような感じを持っておるのであります。デフレとインフレが同時に進行しておるというようなきわめて悪質に近い経済状態であると思えるのでありますが、これをどのように切り抜けるか、またどのように防ぐか、それは一にかかって現内閣の政策、特に田中大蔵大臣の双肩にかかっておるような気がいたすのであります。したがって、私は今日は、財政の面でも金融の面でも一つの転機が訪れておるのではないか、こういうふうに、しろうとでございますが、感じておるわけでございます。せっかくの機会でございますので、大臣の御所信のほどをひとつ承らしていただきたいと思います。
  69. 田中角榮

    田中国務大臣 確かにあなたがいま御指摘になりましたように、非常に不況感がございます。不況感がございますが、大筋から見ますと、国際収支は改善せられておりますし、国際競争力もついて非常に輸出が伸びておるという状態でございます。これはどういうことかと申しますと、高度の成長が行なわれた過程において、おおむね輸出企業等におきましては、設備の近代化、改善ということかできておりましたので、一面におい資本圧力というものに対して非常に悩み、あえぎながらも、輸出基盤というものは非常に強固になったわけであります。その反面中小企業等はいまだ設備の近代化、改善が完全に行なわれておらないという企業間におけるアンバランスがあります。こういう意味中小企業等に対して倒産というような問題もあるわけであります。また、大企業の中で本筋の仕事をやって相当な設備の改善も行なったり、また、輸出を主にしてやってきたところは、経理面から見ますと設備投資が過大であったために資本圧力ということはありますけれども、とにかく前進体制がとれる体制でございますが、中にいまのサンウェーブとか山陽特殊製鋼とか、こういうものは非常に高度の成長をしましたけれども、バランスのとれた企業体系でなかった、こういうものがあります。個人的なワンマン経営であったというようなときに急激に業態が複雑になり伸びますと、末端までの目が届かないというような面もございます。そういう高度の成長をした過程において、一面においていろいろ正さなければならない企業の業態も存在をいたします。そういうものが倒産をするというようなことで中小企業に迷惑がかかったり、いろいろな不景気感というものがあるわけであります。ですから、いま私は証券市場などを見て、一年前、二年前と比べて、いまのほうが旧ダウ平均では下がっておりますけれども、正常な状態に向かいつつあるということは見れると思います。いままでは、例をあげてみますと、東京電力が五百円の額面である。そして東京電力の子会社である販売部門をやっているのが三百円もする。毎年毎年増資をやっても三百円を維持している。こういう異常な状態であったことも事実であります。ですから、証券投資をやった人は配当金を当てにするというのではなく、増資を当てにしてもうける、こういう異常な状態でございましたが、このごろはそういう非常に高い水準にあったものが正常な状態になり、思惑の材料になっておったようなものがだんだんと下がってきて、配当が十分できるという採算株はだんだんと上昇傾向にある。ですから、私は、ある意味において、不正常な状態であったものがだんだん正常の状態に向かいつつあるというところに、いまの株式界においては不安人気がないというのも、そこだと思います。ですから、いままで私は、高度成長のひずみの面だけをいろいろな人は言いますけれども、問題は超高度ともいわれたような状態があったことは、これから一、二年先を見ますと、日本の立ち直りが非常に早かった、開放経済に向かって一ばいたたかれると思ったけれども、この程度でもって前進体制に移ったのかというような高度成長時代の功績が再評価されるときが必ずくると思います。でありますので、いままでは伸びていくときは政府が押えようとしてもなかなか押え切れなかった面もございますが、今度は金融機関企業家も政府も、みな健全性を再認識しておりますので、いままでのような考え方ではなく、具体的に取り上げて、きめのこまかい配慮をしていかないと、落ち込むものはうんと落ち込む、こういう面があると思います。でありますので、健全性を貫きながら、財政金融の一体化、金融正常化というような面に対して、いままでよりもよりこまかい配慮が必要だ、このように考えております。また。こうすれば、私は、日本の産業は立ち直っていけるし、国際競争場裏において十分伸びていく素地はできておる、こういうふうに評価をいたしております。
  70. 小山省二

    ○小山(省)委員 高度の経済成長を遂げる中でありますから、企業家自体もその経営に非常に困難な点もございましょうし、また、自由経済というワクの中で大きな指導性を発揮するという面も非常にむずかしい点があると思うのですが、池田内閣の高度経済成長政策は、一面においては大きく評価しなければならぬ点を私自身も十分認めるわけであります。これによって日本生産が大幅に上昇し、国民の所得も非常にふえたわけです。しかしながら、そうした所得のふえる反面に、所得に比例して物価も急激な上昇を示し始めた。また物価倍増といいますか、そういう批判をできるだけ回避しようという考え方から、できるだけ公共料金等についてはストップをさせる、長期にわたって据え置いておる。それが今日になりますと、一斉にそういう公共料金をはじめといたしまして、あらゆる諸物価が値上げをしよう、こういう非常にむずかしい状態に直面しておるわけです。物価が上がれば、これまた当然賃金にはね返る。賃金が上がってくればこれもまた物価にはね返ってくる。こういうような悪循環が、いままさに繰り広げられようというような姿になってきておるわけです。したがって、いま現内閣のとられようとしております米価その他の公共料金を引き上げる、こういう形をとりません限りにおいては、いわゆる大幅な減税というようなものは、ほとんど不可能になる。また重点政策を遂行するにも財源的に非常に困難になる。したがって、日本経済のガンといわれるひずみの是正はできない。二者いずれを択一するということになりますと、私は、多少の問題はあっても、ある程度物価の値上げは犠牲にしてもやむを得ない、こういうふうなお考えの上に立っていまのような政策をとられておるのではないか、こういうふうな考え方を持っておるのですが、この点はいかがですか。
  71. 田中角榮

    田中国務大臣 非常にむずかしい問題でございます。物価値上げを抑制する——物価というものは一体どうして上がっておるのか、こういうことを端的に考えますと、簡単に言って、経済成長のために物価が上がった、こういうことを言いますけれども、私はそうじゃないと思う。経済成長が進んだということよりも、経済成長が伴わない面が一ぺんに平準化を急いだというところに一番の問題があると思います。それから戦後は特に、あしたのことを考えるよりも、まずいまのこと、われわれ自身が生産よりも分配ということにどうしてもウェートを置くわけであります。私は、そういう意味で、物価問題に対しては、責任の地位にあるお互い与党とか政府とかは、こういうものにはもっときびしい態度をるべきだったと思います。ところが、お互いに公選で出ておる者は良薬は口に苦いということを強行することはなかなかむずかしい、ということで、その結果、あなたがいま指摘されたように公共料金などをみなストップしてしまった。私は、これはストップできるものではないと思います。もちろん公益性の非常に強いものでありますから、私企業と同じように考えることはできないと思いますが、こういうものをストップしてそうしてその赤字を国の財政の中から補てんをするということになれば、どうしても国の財政が大きくなるということは避けられないわけであります。だから国の財政というものはもう少し重点的に投資を行なうということを中心にして、やはり公共料金等は、なかなか言いにくい話でございますが、実際はあまり公共料金とかそういうものを押え過ぎるとかえって物価にはね返るというふうに私は考えております。でありますが、いまの消費物価の計算のしかたは、米が上がればすぐ消費者物価に響くわけでありますし、医療費が上がればすぐ響くわけでありますが、いままでの考え方だけではなく、もう少し消費物価というものと財政というものに対してウエートを変えてものを考えなければならぬのだろう、こういうふうにも考えるわけであります。いまのように水道の問題でも、東京都はいま非常に苦労をしておりますが、私はやはり押えたほうにも相当責任があるという考えなんです。ですから東京都の水道が埼玉県よりも、千葉県よりも高い、こういうことをこのままで据え置くのがあたりまえだというような議論を前提にしておると根本的な問題はなかなか片づかないだろう、こういうふうにも考えます。
  72. 小山省二

    ○小山(省)委員 これは私の杞憂にすぎないかもわかりませんが、年々日本財政は非常な勢いで膨脹してくる。一歩誤りますとこの財政の中にインフレの要因となるような危険性をはらんでおるのではないかというふうな不安感を私は持っておるのであります。一方、金融政策を見ますと、先般一厘公定歩合を引き下げた、こういうことでございますが、これで決してデフレ化が解消したというわけにはいかないと思うのであります。インフレもデフレも安定成長には一番のガンでございます。一日も早くわれわれはインフレの要因を除き、デフレ化を防止する、そこにわが自由民主党の大きな経済政策があるのではないかという感じを持っておるわけであります。今回財政法を改正し、できるだけ財源の確保につとめなければならぬ、いわゆる財政法まで手をつけなければならぬ状態に来ておるという点に私は多少の不安感がないではないのでありますが、しかしそう大きな金額でもございません。しいていえば、別にまだ財源を確保する道もないではない。しかしそういう点を十分御勘案されまして、特に私は大蔵大臣の善処方を要望しておきたいと思うのであります。  それから次に、財政制度審議会は、御承知のとおり国の予算、決算及び会計の制度に関する事項を調査審議することと定められております。さらには剰余金の処理を含めた財政会計制度全般を検討する重要な審議会でございます。しかしながら一面にはまた、最近政府が盛んにこのような審議会をたくさんつくり過ぎているという批判もないではない。むしろ政府当局がこういう審議会の陰に隠れて、いわば責任を審議会に持たせる、こういうような批判も一部にあることは事実でございます。したがって今後このような審議会をどのような考え方を持たれて運営をなされようといたしますか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  73. 田中角榮

    田中国務大臣 財政制度審議会は非常に重要な審議会でございますので、この御意見は十分尊重してまいりたいと思います。また大蔵省財政制度に関しての検討の必要を認めましたときには、審議会に諮問をいたしまして、より高い立場からの判断を求めたいという考えでございます。ただ審議会や何かがたくさんできるということに対してのお気持ちは、私も賛成なんです。これは戦後、審議会という新しい制度政府が独善的にならないように——理論の上では非常にりっぱなものでございますが、実際問題からいいますと、忙しい方であって、結局事務当局が出したものを諮問申し上げるといろいろな意見を出しますけれども議論はあるけれども時間がないのでこれでまあがまんするか、そして答申が出てくると、これは非常に尊重いたします、国会に対する一つの隠れみのになっておるということは言い得ることであります。そういうことで行政責任の確立ということから言いますと、私は隠れみの式なものは排除していかなければならぬと思います。しかし国会にその法律をもってくると、じきに審議会をつくってやらないと、大臣が独善的にやってはいかぬ、こういうことになって、審議会は無数にふえていくわけであります。特にある審議会などは、反対意見者を必ず入れなければいかぬ、こういうことになりますと、その人選が法律できまっておるということになりますと、もう出ないうちから反対なんです。これはおかしいです。私はこういう人は公益的な——ちょうどいまの仲裁委員会のように、国民の立場に立つ者が表決を行なう、そうして利害関係者は証人として十分意見を聞く、こういうことが正しいと思うのですが、どうも審議会をつくると、反対することがわかっておってもそういう人が当然何人か入らなければならぬ。表決をすれば簡単ですが、表決というのは、やるとなかなか混乱するので、表決をしないでだらだらやることによって慎重審議だ、こういうことに対しては、はなはだ私も問題があると考えております。しかし財政制度審議会や金融制度審議会はそのようなものではなく、非常に専門家が高度な立場で検討していただいております。これは予算編成のときに私たちもより合理的に整理をするような方向で検討したいと思いますが、要はやはり国会の応援がないとどうにもならないわけでございます。いま審議会や調査会という名において政府の行政責任が明らかにされないということに対しては問題があると思いますので、これらの問題に対しては、国会の御意見も十分尊重をし、また行政審議会の答申もございますので、十分検討整理をしてまいりたいと思います。
  74. 小山省二

    ○小山(省)委員 今度の改正案を見ますと、従来は大臣が会長をされておった、それを今度は委員の互選とする、こういうことになりますと、従来ややもしますと審議会の意見は尊重するといっておりますが、現実にはまあ参考程度というようなのが従来の批判であります。ことに会長を大臣がやっておられたときと違って、委員の互選になるとややもするとそういう世評とやや合致するような姿になるおそれがないではないような感じがいたすわけであります。税制調査会等につきましても相当野党の方々から批判を受けておるような現状を考えますときに、そういう点はどういうお考えのもとに、大臣を会長でなくそういう制度に切りかえたか、何かそこに考え方がおありでしたらひとつお聞かせ願いたい。
  75. 田中角榮

    田中国務大臣 私が会長であるということになりますとどうしてもお手盛りだというような感じがいたします。私も忙しいのでなかなか出れないということもございます。そういう意味で重要な委員会でありますので、やはり会長は互選ということがいいのではないか、私が出ないと事務次官が出たり、また局長がそのまま私の代理をするというようなことは、重要なものに対しては避けていくほうがいいだろう、こういうことで現職の者が審議会の会長を兼ねるというようなことがないようにいたしたというふうに筋を立てたわけであります。
  76. 小山省二

    ○小山(省)委員 一つの見方としてはそういう見方も確かにあると思いますが、また反面には、答申を出されるその審議会の会長が大臣である。当然また大臣がかなりその審議会と食い違ったようなことはできないわけでありますから答申というものが自動的に尊重されるというような形が出てくる、こういうふうな感じも持つわけであります。したがって、委員の互選ということになると、ややもするとこの審議会というものが軽視されがちな感じを持つわけであります。しかしそういうことではないという大臣の言明でございますから、われわれも信頼いたしまして、せっかくそういう審議会をつくられるとするならば、私権威のある審議会にしていただきたい。もし不要であるとするならば、すみやかに整理統合をして、真に必要な審議会にとどめるような、そういうあり方にしていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。その点についてもう一度大臣の御所見をお伺いいたします。
  77. 田中角榮

    田中国務大臣 お説のとおりでございます。私が会長であるというよりも、私でないほうがより濶達な御意見がいただけるということは間違いございません。そういう意味で、私でないほうがいい、こういうことにいたしたわけでございます。尊重するということに対しては、私が会長であっても、他の人が会長であっても同じことでございます。これはかえって私が会長であるほうが政府考え方を押しつけるということになりやすいわけでございますので、財政制度審議会のような重要な審議会の結論に対しては十分尊重してまいりたいと思います。
  78. 小山省二

    ○小山(省)委員 以上をもって質問を終わります。
  79. 山中貞則

    山中(貞)委員長代理 速記をとめて。   〔速記中止〕
  80. 山中貞則

    山中(貞)委員長代理 速記を始めて。  次会は来たる三十日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時二十三分散会