○山中(貞)
委員 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま上程されております
関税定率法等の一部を
改正する
法律案に対する修正案を
提出いたします。
朗読いたします。
関税定率法等の一部を
改正する
法律案の一部を次のように修正する。
第三条のうち、別表の
改正に関する部分中「別表第〇四〇二号から第〇四〇四号まで、第〇七〇五号、第〇八〇一号、第〇九〇一号、第一〇〇一号、第一〇〇三号、」を削り、「第一〇〇六号」を「同表第一〇〇六号」に改め、同表の
改正に関する部分の前に次のように加える。
別表第〇四〇二号から第〇四〇四号まで、第〇七〇五号、第〇八〇一号、第〇九〇一号、第一〇〇一号及び第一〇〇三号の適用期限の欄中「
昭和四〇年三月三一日」を「
昭和四一年三月三一日」に改め、同号の次に次のように加える。
以上であります。
この修正案は、
関連農家約二百万人に及ぶと見られます国内産でん粉の保護育成のために、トウモロコシの輸入に対し、総量の九割以上を占める無税扱いの飼料用はそのままといたしまして、残りのコーンスターチ用原料を中心として関税割り当て
制度を採用しようとするものであります。
念のために現在のでん粉市況について触れますと、カンショ並びにバレイショを原料といたします国内でん粉の価格は、御承知のように低迷の一途をたどり、この現状では農産物価格安定法によって支持されております支持価格による原料イモの売り渡し並びにでん粉工業の支持価格による一千六百八十円の価格の維持は困難な状態に逢着し、したがって、三十八イモ
年度におきましも、政府におきましてはすでに二万五千トンの直接買い入れを行ないましたが、依然としてその価格は低迷、したがって、
予算のない
関係上、非常
措置といたしまして五万トンを全販による団体の調整保管をいたし、これをやがて政府が買い入れ、肩がわりをすることによって金倉を支払うしいう形式を採用せざるを得なくなり、さらに三万トンに達するブドウ糖協同
組合による調整保管、買い入れをも行なったわけでありますが、なお市況は低迷し、今日の相場では、名古屋渡し約一千六百十円から三十円の間に低迷を続けております。したがって、このままで推移いたしますれば、四十
年度の新
年度開始と同時に数万トンの政府による買い入れをもまた余儀なくされる現状にあるわけであります。
このような国内産のバレイショ、カンショでん粉の長期にわたる低迷の最も根本の原因は、一昨年の八月に行なわれました抜き打ち砂糖の輸入自由化による糖価の暴落に遠因を持っていることは自明の理でございますが、この問題につきましては、別途今
国会で農林
委員会に提案、可決すべく糖価安定事業団法が党において
審議をされておる
段階にございますので、野党の協力をも得て、これが本
国会を通過、立法されますならば、国内における粗糖相場の異常な高騰による
関連産業への圧力要因の基本的な排除がなされるかと
考えます。
しかしながら、いま
一つのでん粉産業に対する直接の圧迫要因といたしましては、同じでん粉のシェアに食い込んでまいります輸入コーンを原料といたしますコーンスターチの分野の蚕食という見のがし得ない事実が、また大きな
一つの原因をなしておることも否定できません。したがって、でん粉がいかにコーンスターチに圧迫されておるかという
事情について説明をいたしますと、実績のすでに出ております三十八年と三十九年の見通しを比べるときにりょう然でありますが、でん粉の見通しについて申しますならば、まずカンショでん粉、バレイショでん粉、コーンスターチ、それぞれの需給の状態を比べてみますと、一番大口の需要であります水あめ、ブドウ糖に対する需要が、三十八
年度の五十四万一千トンより三十九
年度は五十万六千トンに低落し、そのかわりコーンスターチによります需要が、三十八
年度の一万五千トンから一足飛びに五万トンにふくれておるわけであります。明らかにコーンスターチの蚕食によって代替された需要がまかなわれておるということが明瞭であります。こまかなものについても触れますが、繊維製品あるいは製紙原料、ダンボール等の需要に対しましては、カンショでん粉において三十八
年度は八千トンの需要がございましたものが五千トンに減り、バレイショでん粉においては一万二千トンでありました需要が七千トンに減少し、かわりにコーンスターチによります需要は、三十八
年度の八千トンが一万三千トンにふくれ上がっているのであります。また加工でん粉について見ますならば、三十八年の六千トンがカンショにおいて二千トンに減退すると同時に、コーンスターチにおきましては、二万五千トンより三万三千トンにふくれ上がっております。ビールに対しましては、カンショでん粉の需要は、三十八
年度二万トンでありましたものが四分の一の五千トンに低落し、かわりにコーンスターチを需要先といたします需要は、一万トンより二万八千トンにふくれ上がっております。またグルタミン酸ソーダにおきましては、カンショでん粉において六万トンありましたものが、三十九
年度は三万八千トンに減少し、コーンスターチにおいては、三十八
年度需要皆無でありましたものが、一挙に二万二千トンの需要を三十九
年度に見ようとしております。食用その他については、バレイショでん粉におきまして三十八
年度四万五千トンの需要が三万四千トンに減少をいたし、かわりにコーンスターチが二万二千トンから三万二千トンにふくれ上がっておるわけであります。その結果、国内産のカンショにおきましては、昨
年度供給過剰となりましたものが七万八千トンでございましたのに対し、本年は生産量において五万トン減少しておりながら、十一万トンの過剰要因となっておるわけであります。バレイショにおきましては、三十八
年度過剰を生じなかったものが、二万八千トンの過剰を生じ、したがって、政府におきましては、四十
年度予算ですでに七万六千トンの原料でん粉の買い入れを予定せざるを得ないところにまで追い込まれているということがここで明瞭になってまいるわけでございます。
さらにこのような状態を裏書きいたしますコーンスターチの生産
状況について申し上げますと、その生産の
状況は、三十五
年度二万八千トン、三十六
年度三万六千トン、三十七
年度八万一千トン、三十八
年度十四万トン、三十九
年度二十万七千トン、四十
年度推計三十三万トンより三十七万トンに達しようといたしております。すなわち、対前年比八割ないし九割の飛躍的な生産増を示しておるわけでございまして、このコストの面につきましても、輸入のコーンを原料といたしますコーンスターチにおきまして、合理化企業においてトン当たり四万六千三百二十三円となり、またつい最近一両年のうちに創業いたしました企業においては、償却その他の面において不利がありますために、五万九千七百三十三円となっておりますが、カンでんの政府支持価格による一千六百八十円を消費地ベースにおいて換算した一千七百八十円キロ当たりをトン当たりに換算いたしますと、四万七千四百六十七円となります。これをコンスに換算いたして比較をいたしますると、五万三百六十一円となり、輸入コーンによりますスターチは、国内産のでん粉に比べまして、トン当たり四千円の優位に立っておるということが明らかにされておるわけでございまして、そのために、
先ほど触れましたとおり、今日の名古屋の引き渡し相場の一千六百十円ないし三十円の相場が、コンス換算でいたしますと四万五千六百円から四万六千一百円と相なり、この四千円の力の差、コストの差そのものが実勢の流通市場にあらわれておることが明瞭に指摘されるわけでございます。
このような点から
考えまして、われわれはコーンに対する何らかの規制を必要とするということを
考えたのでございまするが、しかしながら、すでに自由化されておりまするコーンに対しまして、これの自由化をもとへ戻すという処置につきましては、今日の国際経済環境というものが、自由化をもとに戻すことについてはやや環境に逆行するきらいもあり、また後進国の一次産品でもございますので、それらの点を配慮をいたしまして、かわるべき方法といたしまして、数量を規制するかもしくは関税を
引き上げるかということを
考えたわけでありますけれ
ども、最終的に関税割り当て
制度を採用いたしまして、
先ほど冒頭に説明いたしましたごとく、一次
税率一〇%、これは
現行一〇%の
税率と同じでございますが、これによる数量規制を行ないまして、二次
税率を二五%とし、それによりまして当初の
目的を達したいと念願をしておるわけであります。これにつきまして、私
どもといたしましては、幸いにして民社党の同調を得たのでありますけれ
ども、社会党におかれましては、承りますところは、その趣旨において同感であり、
方向についても
考え方を一にするけれ
ども、この規制をさらにきびしくし、第一次関
税率を
現行一〇%より一五%に
引き上げたほうがよろしいという御
意見のようでございました。
考え方そのものについては私
どもも同感をせざるを得ない点があるのでございますが、しかし、私
どもが一次
税率一〇%を採用せざるを得なかった理由について申し上げたいのでございます。
それは、
先ほども触れましたが、国際経済の環境が関税を引き下げる
方向に向かい、自由化の趨勢にございまするときに、関税割り当て
制度を採用し、さらに一次
税率を五%
引き上げました場合に、ガットその他の
会議における報復関税その他の配慮もしなければなりませんし、また、さきに触れましたとおり、後進国の一次産品の問題がございますので、コーンに対する
措置を一挙にきびしくいたしますと、ガットその他の
会議における後進国よりの突き上げ等も配慮をせざるを得ない点等がございました。したがって、部内の調整におきまして、大蔵、外務、通産等におきまして慎重な
態度を望む声が強かったこと、さらにまた、
大蔵省といたしましては、アルコールの原料として輸入されるコーンにつきまして別ワクにさばくことが困難でありまするために、一挙にこれを同じワクの中で五%
引き上げますると、アルコール原料の値上がりとなり、酒類の値上がり等を招来いたしまするために、この点に対する若干の難色を示した点がございました。
また、これは政治的な配慮の問題でございますが、一五%に
引き上げて数量規制をきびしくいたしますると、現存いたしておりまするコーンスターチ企業のうち、推定されまするところは、大企業のわずか二社のみが生存を可能とされ、残りの六社が脱落すると申しますか企業がやっていけないというようなことになる可能性もございますので、それらの点は公平に処するべき政治の立場から、やむなく五%の
引き上げというものは一〇%にとどめて数量の規制をいたしたわけでございます。したがって、数量の規制につきましては、法を背景に置いて規制をいたすものでございませんから、欲するところではございませんでしたが、
関係省相互間並びに主管省でありまする農林省と業界との間に、申し上げまするような覚え書きを確認させた次第でございます。
まず、
大蔵省関税局長と農林省の
関係局すなわち農林経済局長、畜産局長、食糧庁長官との間に取り結びました覚え書きについて申し上げます。「関税暫定
措置法の一部修正により、とうもろこしについて関税割当
制度が採用されることに
関連し、両者はその運用につき次のとおり申合せるものとする。一、一次
税率を適用するコーンスターチ用とうもろこしの割当数量は、今後二カ年間毎会計
年度特別の
事情がない限り製品コーンスターチ換算十八万トンとする。二、一次
税率を適用する醗酵用のとうもろこし、および配合飼料用免税とうもろこしについては、それがコーンスターチ用に流用されることがないよう遺憾なきを期するものとする。三、その他の用途にかかるとうもろこしについては、当面、需要の実態が明確なものに限り、一次枠の割当を行ないコーンスターチ用に流用されることがないよう行政指導に努めるものとする。」以上でございます。
なお、農林省はコーンスターチ協会との間に次のような文章による誓約書を入れさせました。「食糧庁長官殿 誓約書 この度び貴庁より内示されましたコンス製造用とうもろこしの輸入に際して、関税割当
制度の適用(一次
税率一〇%、二次
税率二五%、一次
税率相当の原料数量はコンス換算十八万トン、実施期間二ケ年)も現状では己むを得ないと
考え実施の暁には御協力申し上げることを誓約致します。」
以上の点によりまして、法的な規制を持たざる量の規制ではございますが、この実行は間違いなく果たされるものと存じ、したがって所期の
目的は達成されるものと存じます。
なお、念のために申し上げますが、今回の編成を終わってすでに参議院に回っております
予算の収入中、関税収入には、この修正をいたしましても、見るべき影響はないということを申し上げておきます。
以上でございます。