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1965-03-23 第48回国会 衆議院 大蔵委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十三日(火曜日)    午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    奥野 誠亮君       鴨田 宗一君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    西岡 武夫君       濱田 幸雄君    福田 繁芳君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君       佐藤觀次郎君    只松 祐治君       野口 忠夫君    平岡忠次郎君       平林  剛君    藤田 高敏君      米内山義一郎君    横山 利秋君       春日 一幸君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         内閣法制局参事         官         (第三部長)  荒井  勇君         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (関税局長)  佐々木庸一君  委員外出席者         国税庁次長   喜田村健三君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 三月二十三日  委員麻生良方君辞任につき、その補欠として竹  本孫一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月二十二日  共済掛金引き上げ反対等に関する請願外十件  (有馬輝武紹介)(第一八四二号)  所得税法の一部改正に関する請願外四十六件  (天野公義紹介)(第二〇〇一号)  日銀出資証券補償に関する請願木村剛輔君紹  介)(第二〇〇三号)  税務職員配置転換に関する請願(只松祐治君  紹介)(第二〇〇四号)  入場税撤廃に関する請願佐藤觀次郎紹介)  (第二〇二二号)  同(山村新治郎君紹介)(第二〇二三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第七三号)  所得税法案内閣提出第八八号)  法人税法案内閣提出第四九号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第七八号)  所得税法及び法人税法施行に伴う関係法令の  整備等に関する法律案内閣提出第一一二号)      ————◇—————
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  所得税法案法人税法案租税特別措置法の一部を改正する法律案所得税法及び法人税法施行に伴う関係法令整備等に関する法律案、及び関税定率法等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑通告がありますので、順次これを許します。只松祐治君。
  3. 只松祐治

    只松委員 きょうは四十年度所得税法人税租税特別措置法改正案、並びに所得税法法人税法施行に伴う整備法等、膨大な、また国民にとって最も密接な問題を審議するわけでございます。そこでまず、大臣がきょうはお見えでございませんので、ひとつ政務次官お尋ねをいたしますが、こういう膨大な案を、お聞きしますところによると大体三日くらいで上げたい、こういう御意向のようでございます。どの法案一つとりましても、国民にきわめて重大な関係を持つものでございます。こういう膨大な六つからの法案をたった三日くらいで上げる、こういうことがはたして正しい国会審議であるかどうか、私は、もっとこういう重要な法案審議にあたっては慎重にすべきだと思う。もっと審議の方法もあるだろうと思う。また大蔵省当局の出し方も、こういう法案を全部関連させて出してきておられるわけですが、提出技術としてはまことにうまい出し方かしれませんけれども、少なくとも当面の四十年度改正案と、それから——次官は弁護士さんですからあれですが、たとえば刑法なり民法の基本的な全文改正というものは、これは別個に長時間の審議をして、全国民がひとつの被疑者といってはおかしいけれども関連のある問題になってくるわけです。所得税法法人税法も同じでございまして、全国民、一定の限度の所得を得る、あるいは利益を得る法人というものはすべてこれに関係をしてくるわけです。所得税がかからないように低い所得を持ったり、あるいは損失をするために法人をつくっておるのではない。当然所得税を納める、あるいは法人税を納める、そういう形で国民法人は一生懸命働いている。こういう法案を、たった二、三日で片づけるということは、ある意味では私は国民不在のやり方だ、こう言っても過言ではないと思うのです。ひとつ大臣にかわって政務次官の答弁をお願いしたい。
  4. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 ごもっともの御質問でございますが、三日でやるということは、きょうになってそういうことになったのでして、予算に伴う法案でございますので、予算とともにひとつ通していただきたい。きょうから言えば三日四日しかなくなったわけで、ございますが、なるべく早く審議してもらうことをこいねがっておったのでございますけれども、ついこういうことになったので、まことに残念ではございまするが、ひとつ事情御了察の上、ぜひとも年度内に片づけていただくことをお願いするほかございません。
  5. 只松祐治

    只松委員 先ほどから理事会でもお話し合いがあったことですから、そういう一応の方針に基づいて論議をいたしますけれども、今後たびたびこういう基本法の抜本的な改正は行なわれないと思いますが、先ほどから繰り返しますように、いやしくも国民に重大な関心のあるこういう法案の基本的な改正にあたっては、火事どろ式にこういう関連法案と一緒に出すのじゃなくて、関連するところは関連するところで整備法等のように別個のものをつくって、基本法基本法として出す、こういうことが正しい国会あり方、あるいは行政当局あり方だと思うのです。今後こういうことのないようにひとつここでかたくお約束をしておいていただきたいと思います。よろしゅうございますか。
  6. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 できるだけ御意見のとおりやらなければならぬことだと思います。今後できるだけ注意いたします。
  7. 只松祐治

    只松委員 そこでまず当面の所得税法法人税法租税特別措置法改正案について若干お尋ねをいたします。  いままで別な角度からこれについての若干の質疑があったわけでございますが、よく大蔵省国税庁当局は、この三法は税調答申に沿ったものであるということをお答えになっているわけです。ところがこの三法の中で、所得税法の中で若干の基準の引き上げとともに勧告一つポイントとなっておるのは税率改正であります。これは今度全然行なわれておらない。それから法人税法関連して一つポイントとなっておるのは、長期税制答申方針に従って、租税特別措置を順次整理統合していく、少なくとも新設をしない、こういうことが一つ勧告ポイントになっておる。ところが答弁される場合には、こういう点はおはずしになって、やったところだけを言って、大体こういうことだから勧告の線と同じである、ほとんどはずれておらない、こういうふうにお答えになっておりますが、私も今回あらためて質問するにあたって、四十年度税制改正というのをまた繰り返し読んでみますと、いま言いますように、所得税所得税法人税——直接ありませんが法人税関連する租税特別措置の中でそういう点が書かれております。ところが租税特別措置は改廃するどころか、希代の悪法といわれております。これは大蔵省事務当局の中にも強い抵抗があったと聞いております。配当所得分離課税というようなことまで行なわれた。やはりこういう基本的な点が欠けておれば、これは税調の報告に従ったものでない。全面的に反しておるとはいわないけれども、少なくとも沿ったものではない、こういうふうに解するのが私はすなおな解釈だと思うのです。主税局長はあくまでもこの四十年度改正方針税調勧告に従っておる、こういうふうにお思いでございますか。どうですか。
  8. 泉美之松

    泉政府委員 お話しのとおり、所得税法におきましては税制調査会答申税率緩和をはかるということが非常に大きなポイントになっております。ただ政府案をつくる段階におきましては、これは考え方の相違になるかもしれませんが、現在の所得税負担状況から見ると、低額所得者負担軽減をはかるのを最も優先すべきであって——もちろん税率緩和をはかることは望ましいことではありますけれども、まあ課税所得三百万円以下というところまで税率緩和をはかることがはたして適当かどうかというような問題が出ました。ことに税制調査会答申によりますと、最低税率の八%を廃止いたしましてこれを一〇%に引き上げることになっております。そのために、実は税率緩和によりまして四百六十億の減収になるところを、八%の税率を一〇%に上げることによって四百億税収をバックいたしまして、差し引き明年度六十億の減収になる、こういう案になっておったのでございますが、この案によりますと、税率の変更でありますために、どうしても所得階層別に見ますと、その負担軽減状況にいろいろ差異が出てまいります。必ずしも所得の低いものの減税割合が多くて所得の高いものの減税割合が低いというような、なだらかな傾向をとらないことになります。  それからもう一つ問題でございますのは、給与所得者の場合には給与所得控除引き上げがございますので、いずれも減税になるのでございますけれども事業所得者の場合で総所得が三十万円くらい、つまり基礎控除などの諸控除を行なった場合に税率を適用する課税所得が十万円くらいのところにおきましては、税率引き上げのために、基礎控除を二万円上げましても、何ら減税の恩典を受けることができない階層が生ずるのでございます。この階層は人員からいえばわずかでございますけれども、しかし今回の減税によって国民全般負担軽減を受ける際に、少しも負担軽減を受けることがないような階層が生ずることは問題ではないかというふうに考えられました。そのために税率改正につきましては、今回はこれを見送ることになったわけでございます。その点におきましては確かに税制調査会答申とは違っております。  それから租税特別措置につきましてはこの税制調査会長期税制答申のほうにございますように、これを設ける場合におきましてはその政策的目的が合理的であるかどうか、あるいは租税特別措置によってその政策効果が期待されるかどうか、さらにはその政策的な効果とそれから特別措置を設けることによる弊害とを比較考量いたしまして、より政策的効果が大きい、こういうふうに認められる場合に限って新設すること、あるいは拡張することは適当であるけれども、そういうテストに合格しないものについては廃止すべきである、これは税制調査会の基本的な態度でございます。大蔵省といたしましては、昭和三十二年以降租税特別措置につきましては、その目的を達成したと認められるもの、あるいは政策的効果の乏しいと認められるものにつきましては順次これを廃止する方針で今日まで進んできておるのでございます。基本税制自体にいろいろ問題のある点もありますせいもございまして、実際問題としては整理合理化をする反面、いろいろ特別措置が年々追加されてまいるというような傾向が非常に強いのでございます。私どもといたしましては税制調査会のいう基本的なテストに合格するものに厳格に限っていきたいという気持ちは強く持っておるのでございますが、まあ税負担の点からいたしますとやはりそれぞれの場合の個別的事情に適応した税負担にならないと税に対する不幸、不満が非常に強い、こういうことからいたしまして、個別的事情に応ずるようにある程度特別措置を設けざるを得ないというような事情も生じておるわけでございます。しかしながらこれにつきましては今後さらに厳格にテストを行ないまして、そういうふうな特別措置の拡充にあたりましては厳格にやっていきたい、かように考えておるのでございます。
  9. 只松祐治

    只松委員 言いわけは、もう法案がすでに出ておるわけですからいろいろ聞かなくてもいいですが、税調方針を重んじておるか重んじておらないかという結論だけ聞きたいと思いましたが、いろいろ言い回しはありましたが、不十分の点がある、こういうことのようでございます。  まず少なくとも本年度行なわれなかったとするならば来年度は来年度なりのいろいろな勧告があるかと思いますが、少なくとも税率改正は本年勧告があったわけでございますから、当然にまた本年度の春闘その他のそれに見合うベースアップというものがあると思います。こういう点から見ましても当然に税率改正は必要だと思います。諸控除引き上げとともに、来年は税率改正を行なう、こういうことをひとつお約束しておいていただきたいと思いますが、そういうことはできますか。
  10. 泉美之松

    泉政府委員 まだ本年の税制改正がきまらない段階で来年のお話を申し上げることはいかがかと思いますが、先般大蔵大臣記者会見新聞に発表されておりますように、来年減税財源がございまして減税をやるというような段階になりますれば、税率改正については優先的に考慮したい、このように大臣が言うておられますので、来年の自然増収がどの程度になり、減税財源がどの程度確保できるか、まだ現在におきましてはそうした見通しがつきませんけれども大臣のそういった御意向もございますし、われわれといたしましてもぜひ税制調査会答申を守っていきたい、こういう気持ちから、来年におきましては優先的に税率改正について考慮してまいりたい、かように考えておるのでございます。
  11. 只松祐治

    只松委員 私も全部速記録まで見ておりませんが、たぶん大臣が、来年は税率改正を本年行なわなかったものについてしたい、こういうことを参議院で答弁なさっておるように記憶しておるのです。何でしたらあとで調べてみて、大臣が来られてから質問してもよろしいのですけれども、そういうこともあって私は聞いておるので、ぜひ来年は税率改正をやっていただきたい。  それから租税特別措置法につきましても、本年は全く逆行する租税特別措置が新設されておるわけです。少なくとも今後はそういうことはやらない、基本的には税調方針に基づき、あるいは一般国民世論方向に従って租税特別措置を整理統合していく、あるいは廃止していく、こういうふうにお約束できますかどうか、お答えをいただきたい。
  12. 泉美之松

    泉政府委員 租税特別措置につきましては、先ほど申し上げましたような基本的態度をとっております。できる限り税制調査会答申に沿った方向で進めてまいりたいと思っております。  なおまた、今回所得税法及び法人税法全文改正を行ないましたので、租税特別措置法所得税あるいは法人税の特例になっている関係上、非常にわかりにくいものになっております。今後この法の整備もはかりたい、その際従来の租税特別措置について根本的な検討を加えたい、かように考えておりますが、何ぶん所得税法人税整備だけでも昭和三十五年から今日までかかりましたので、来年すぐに特別措置の根本的な税法整備を行なうということはなかなか困難ではないかと思いますが、私ども気持ちといたしましては、この国会終了後直ちにそういうことに着手いたしまして、できる限り早い機会におきましてそういう方向で処理してまいりたい、かように考えております。ただ来年は、ことしでだいぶ参っておりますので、できかねるかと存じます。できるだけ早い機会にそういう方向考えてまいりたいと思っております。
  13. 只松祐治

    只松委員 あなたたち国民の中に入って、いわゆる一般社会の現象というものになかなかうといと思うのですが、これはよく歩いたり、自動車じゃなくて電車に乗ったりして大衆の中に入らないと、なかなか国民の声というものはわからないわけです。たとえば税金にわりあい無関心であった源泉所得を差っ引かれておる人、労働組合、こういう中でも非常に税金に対する関心が出てきておる。組合の大会のスローガンにも重税ということばが使われる。あるいは東京都のいますわり込みをやっているところに行ってごらんなさい。赤い大きな字で重税反対ということが書かれておる。この間もお話がありましたが、ある面では税金に対する関心が出てきたということは喜ぶべきことである、こういう面もございましょう。しかしそれは積極的な賛意の意味関心ではなくて、税金憎悪を感ずる意味で、国民の怒りが出てきていることを御存じになっておりますか。その最も端的なものは、私たちが説明する場合もそうでございますけれども、いままでことばだに知らなかった租税特別措置という、特に今回配当分離課税が行なわれて、こういうものに対する国民憎悪が出てきておる、いわば納税意識租税特別措置によってきわめて阻害されてきておる、こういうことを御存じになっておりますか。
  14. 泉美之松

    泉政府委員 お話しのように、私ども別に雲の上におるわけじゃございません。よく新聞記者諸君とも接触いたしまして、また職員人たちとも接触いたしまして、いろいろのお気持ちを聞いております。今回のような租税特別措置が設けられますと、何と申しましても税の根本は負担の公平という点にございますので、その負担の公平が害されるということになりますと、国民の問に納税道義がすたれてくるという傾向があることは御承知のとおりでございます。それゆえにこそ、私どもといたしましては、できるだけ税の公平ということを害さないように考えて今日までやってまいったのでございます。何ぶんにも証券市場が現在のような状況でありまして、資本市場育成強化という必要から、今回のような特別措置をとらざるを得ない羽目に立ち至った次第でございます。この点からいたしましては、国民の間にそういう点に対する批判が出てきておることは十分承知いたしております。そういう意味で今後ともこの問題を考えてまいりたい、かように考えるのでございます。
  15. 只松祐治

    只松委員 そこで、たとえば一例を、ここでほんとうはあなたのほうから示していただいて、いかに租税特別措置を講じた者と額に汗して働く者との税金の差があるかということを、ほんとう大蔵省当局から説明をいただきたいところですが、そこまで事前に通告をしておりませんので、私のほうで一例を申し上げましょう。  たとえば配当所得で年百八十万円の所得があると仮定をいたします。一方、事業所得でやはり百八十万円ある、こういうふうに仮定をいたします。事業所得のほうは、所得税として三十二万四千七百九十円、住民税として、特別区民税都民税均等割り等で十一万七百九十円、事業税といたしまして七万五千五百円、総計五十一万一千八十円かかる、こういうことになっております。方、配当所得の場合には、わずかに源泉控除現行の五%といたしまして九万円かかるわけでございます。それから還付が三万五千二百十円あるわけです。次に、住民税として三万五千百九十円納付をしなければなりません。差し引き源泉控除をされただけで、あとは二十円戻ってくる、こういうことになるわけでございます。一方、額に汗して働く事業所得者は五十一万円から納めなければならぬのです。一方、配当分離課税をとる人はわずかに九万円足らず。これはただ単に納税ということではなく、あとの本文のときに論議いたしますけれども税金を納めない人は三年以下の懲役というような罰則さえもあるわけです。ちょっと納めなければ、罰則の前にとにかく重加算税なり何なり、ひどい罰金があります。またその取り立て調査もきびしいことは御案内のとおりです。ところが、法定主義といわれておる、国民に平等だといわれておるこの税金というものが、この取り方によってこれだけの違いを生じておる。まずこういうことに関して、いろいろ言いわけはけっこうでございますから、どういうふうにお思いになりますか。
  16. 泉美之松

    泉政府委員 お話しのように、所得百八十万円で扶養家族がおることを前提にいたしますと、お話しのように事業所得者の場合は所得税住民税事業税を納めなければならない。ところが、配当所得者の場合におきましては、この配当の名義を分散する等のことによって納めなくてもいい場合が出てまいります。住民税だけ納めればいい、こういうことが出てまいります。ただ、この配当所得につきましては、御案内のとおりわが国の税制におきましては、法人税所得税の前取りであるという観念になっております。もちろん、これにつきましてはいろいろ意見のあるところでございまして、外国でも必ずしもそういった考え方に基づかないで、法人は独立に課税すべきだというたてまえの税制をとっておる国もございます。日本はシャウプ勧告以来そういう制度になっております。したがって、配当所得について、所得税は納めないけれども法人税段階でその百八十万の配当所得に対しておよそ五一%に相当するくらいの法人税を納めているんだ、こういう考えに立っておりますので、所得税こそ納めないけれども、それにかわるべき法人税を納めているんだ、こういう考えでございます。ただ、そういう考え方が特に資本と経営と分離しているような大企業の場合には問題ではないか、これは確かにそういう点が問題になるのでございます。したがって、今後の法人税制考え方におきましては、いままでのように法人擬制説的な考え方ばかりでなしに考えていかなければならぬ面が出てくるかと思いますけれども現行制度では一応そういうことになっておりますので、所得税なりあるいは事業税はかからないけれども法人段階でそうした税金を納めているんだということを御了解いただきたいのでございます。  なお、配当所得の今回の措置に伴いましては、お話しのとおり所得が大きければ大きいほどその負担軽減を受ける度合いが大きいわけでございます。しかし、それだけにいろいろ問題があるわけでございます。そこで、今回の配当源泉選択にあたりましては、一銘柄五十万円以上の配当の場合、あるいはある会社の総株数の五%以上を持っている株主のその株式についての配当、こういったものについては源泉選択を認めないということにいたしまして、できるだけそういう多額な所得者の場合には、負担軽減があまり大きくならぬような方向でできるだけの負担の公平をはかるようにつとめてはおるわけでございます。
  17. 只松祐治

    只松委員 そういうことを聞いておるのではない。たとえば、事業所得を納めて、事業所得の入る前の百八十万円の所得を得るためにはいろんな品物を扱っておるわけです。その扱っておるものはどこかの工場の製品なりいろいろなところでできたものなのです。それでも、やはりその過程において税金もかかってきておるわけです。だから、法人の場合は純利益として五〇%かかっておるというようなことを言っておりますけれども、この事業所得の場合の中にも、いろいろそういうものを厳密に計算していけば税金はある。そういうことを言っておるのではなくて、いわゆる所得として出てきたものに、片一方はやっとこさかせいで、一生懸命働いてかせいだ金にこれだけの税金がかかる。片一方はいわゆる不労所得と言われるものに対しては税金が安いのではないか、こういうことを聞いておるわけです。一般国民もそういうふうに感じておるわけです。だから、あなたが言ってきているように、前にどこの段階でこういう税金がかかっておる、こういう段階はまた別個の問題、その論議はその論議としてまた私はしていいと思うのですが、きょうやっておるのはそういうことではなくて、いわゆる勤労所得不労所得というものがこれだけの差があります。こういうものがさつき言ったように、国民納税意欲というものをきわめて阻害をしてきている原因をなしている。このことはそれほど時間がございませんから、そういう例まで話しませんけれども、さっき一例をあげました一般源泉所得で、税金関心のなかった人々も非常に関心を持ってきている。事実私のところにもちょいちょいそういう話を持ってくる人が出てくるようになってまいりました。そういうことを考え合わせても、こういう非常にアンバランスな税制あり方、事実租税特別措置だからこうなっているのですね。これは別の意味租税特別措置を講じないで総合課税にしていけばこういうことにならないわけですから、そういうことをよく存じておられますかということを聞いておる。したがって、私がさきにこういうものはすみやかにお改めなさい、こういうことを言っておるわけであります。なかなかはいそうですとあなたのほうも言えないでしょうから、そこまでの返事を泉さんに求めることはむずかしいかと思いますけれども、どうです政務次官、自民党としてもこれは中小企業を重んずる、あるいは大切にする、こういうことをおっしゃっておりますけれども、この不労所得事業所得というものをごらんになっても一目瞭然、少なくとも民意を得て当選してこられた鍛冶さんならば、これはやはりひどい、中小企業者から言われたり、御相談になればそういうことを言わざるを得ないと思うのですが、どうですか、そのとおりですか。
  18. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 その面から言えば御説のとおりだと思いますが、この間大臣がいろいろ今日の財政上毀誉褒貶を超越してやらざるを得なかったと、こう言っておりますので、その方面からぜひやらなければならぬことだと思っております。   〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕
  19. 泉美之松

    泉政府委員 ちょっと補足して申し上げておきますが、配当所得につきまして一五%の配当控除を認めておりますために、配当所得のみを有しておる場合におきましては、夫婦子供三人の場合におきましては、百八十万円くらいまで納めなくてもいいということになるわけでありますが、それは租税特別措置のせいではなくて、先ほど申し上げましたように、わが国の税制考え方が、法人税は個人の所得税の前取りである、そういう観念に立っておりますために、そういう配当控除一五%認める。そこで配当所得ばかりでありますと、百八十万円までも税金を納めなくてもいい。そこに問題があることは先ほど申し上げたとおりでございます。しかしそれは租税特別措置のせいではなくて、所得税及び法人税の基本的な制度の問題でございます。そこのところにもいろいろ問題がありまして、これは今後検討していかなければならぬ点であります。その上に、今回さらに特別措置が設けられることになりますので、それが税制としては問題がいろいろある、こういうことでございます。
  20. 只松祐治

    只松委員 ついでに次官にお聞きしておきますが、こういう租税特別措置というのは、法律的に見れば不作為の脱税、こういうふうに考えることはできませんか。これは税法上ではない、法律上。
  21. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 法律に基づいて、その法律に従ってやるのですから、不法とは言われぬと思います。
  22. 只松祐治

    只松委員 次に、こういう特別措置関連して、調査にも関連してきますが、銀行預金の場合はまあ秘密性が守られておる。繰り返しいわれるように、貯蓄の増強のためということがいわれておりますが、しかしこれもたびたび申しますように、一般の労働者は一〇〇%、これはもう根元から調査されるわけです。どこにも秘密がない。それから中小事業所得者あるいは法人も、まあほとんど隠すところなく調査をされています。あとでお聞きしますが、金庫までもあけて調べられる。プライバシーというものは税務署に対しては、日本国民はないらしいですね。ところが銀行預金だけはその秘密性が守られて、税務署長とか特別の人の許可がない限りその預金調査というものはできない、こういうことになっておる。こういうことは税金という面だけではなくて、個人の権利を守っていく、こういう意味において、これは国民の権利を一方侵害し——これは調べることがあたりまえとするならば侵害ではない。しかし個人の財産の秘密を守ることができるという前提に立つならば、徹底的に調べるのは侵害、こういうことばを使ってもいいと思います。だからこれはものの考え方によって違ってきますが、一方は侵害し、一方は侵害されない、こういうことが日本国民としてあっていいことかどうか、一官庁の権限に基づいて……。
  23. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 それは個人の秘密を調べるということはもちろん個人の自由の侵害でございますから、厳格にこれをやらなければならぬ。法律に基づいてやるものでなかったらできないことは当然でございます。銀行は、私はよく知りませんが、銀行だって脱税のときはずいぶん調べておりますよ。
  24. 只松祐治

    只松委員 かってにできないですよ。
  25. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 かってにできないが、その点は最後はやっておることは間違いございませんから……。ただ、だれでも行って聞くというわけにはいかぬでしょう。その点は違いますが、それはまただれでも行って聞かれぬのは当然じゃなかろうかと考えます。特にこういう場合に限ってそれを調べることができると、こういうことの制限を守ってやることでなければならぬと、かように考えます。
  26. 只松祐治

    只松委員 いや、ところがこれは法律は常識論ですからね。一方は調べられることがあたりまえになっているのですね。銀行預金の場合は調べられないことがあたりまえになっている。預金の秘密ということで……。調べることは特定のとき以外、よほどの脱税をしたとか、何かいわゆる犯罪的な事実が濃厚になってこないと銀行預金は調べない。調べないことを前提にしている。これは大臣がたびたび答弁していることからもすべてわかる。したがって銀行預金というのは分離課税というものが行なわれてもおるわけなんです。ところが一般勤労所得税や事業所得税あるいは法人税、こういうものは調べることを前提としている。こういうことがあっていいのですか、こういうことを聞いている。これは国民の権利の問題としてなかなか大事な問題です。特に資本主義をやっておられるのだから私有権の問題です。大事なことですよ、これは。
  27. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 個人の場合は自由に調べられるという考え方がちょっと違うのじゃないですか。それは特に税法上やむを得ざるときにのみ調べるのであって、何でも調べるというものじゃなかろうと思うのです。ただ銀行においての調べ方と個人のものの調べ方は、それは銀行というものを一つ通して調べるのですからそういうことになるが、個人だって頭から何でもかんでも調べていいというものじゃないと思います。それは制限があるわけなんです。しかしながら調べなければならぬ場合に調べるもの、こういう大前提でなかったら、それは法律上解釈はできぬと私は心得ます。
  28. 只松祐治

    只松委員 どうも名弁護士さんも、こういうことになるとなかなか答弁が困難なようですが、泉さんでもけっこうでございます。どうですか。
  29. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 銀行預金の調査につきまして、ただいま銀行は原則として調べない、ただ非常に犯罪の疑いがあるというようなときだけに例外的に調べるというお話でございましたが、現在の現実の税務の行政におきましては、そのように非常に制限的に解しているわけではございません。ただもちろん銀行調査に行くときには税務署長の依頼書ですか、何かそういう書類を持って行く、こういう条件だけはつけております。それによって銀行預金の調査を制限しているという趣旨ではございません。ただその場合いきなり銀行預金から入っていく、納税者のほうの帳面も何も調べないで、いきなり預金からばく然と行って、この中から何かないかということを探してくるというような調査のやり方というのは、貯蓄の奨励という趣旨から必ずしも適当でないということで、必要ある場合には税務署長の書面を持って行く、こういう手続的な制限はいたしておりますが、趣旨といたしまして銀行預金の調査をきわめて例外的に運用しているということではございませんし、それからまた一般調査におきましても、先ほど政務次官がおっしゃったように、何でもかでも無制限にできるいうものではなくて、必要ある場合はという税法上の制限がございまして、必要のないのに何でもひっかき回すということは、こういうこと  は運用といたしましてもやっておりません。
  30. 只松祐治

    只松委員 ことばじりをとらえるわけではありませんが、署長の許可を求めて行くというのは、どういう法律的な権限なり、あるいはたとえば省令なり政令なり何なり、何かそういう特別な何か慣行に基づいてですか。
  31. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 それは国税庁長官からの下部一般職員といいますか。税務局署に対する通達というかっこうで出ております。  それから、その趣旨は、先ほどちょっと申し落としましたが、一般職員が自分の判断だけで任意に銀行調査をやるということになりますと、その担当者の恣意によりまして預金が調べられる場合と調べられない場合と、非常にアンバランスが出るということで、その統一をはかるという趣旨でいまの署長の書面を持って行くという、こういう運用をしているわけでございます。
  32. 只松祐治

    只松委員 通達の問題はあとでやりますからなにしますが、通達によってそういうことができたりできなかったりするというのはたいへんおかしわけです。一方、これは個人の金庫は非常に個人にとって大事なものなのです。金が入っておるだけではなくて、そう言っちゃなんだけれども、プライバシーの問題のラブレターが入っているか、これはいろいろなものが入っているわけなんです。金庫は税務署の人は自由自在にあけることができる。これはあなた方は笑ってそんなことできないと言うかもしれないけれども、これはちょっとあけてくださいというときに、もし拒否すれば罰則その他の条項がありますし、これはなかなか拒否できないのですね、実際問題として……。特に税務署員というものは一般国民はいま非常に畏怖の念をもって接しておるのですから、これをちょっとあけてください、こう言われたら——私の知っている人はカバンをちょっと見せてくださいと言われて、カバンを見せてえらい目にあった人があるわけです。これは必要ならあとでその事例を教えてもよろしゅうございますけれども、そのくらいカバンでも、金庫でも、一般国民はかってにあけられる。あなたのほうはおい、あけろ、こう言ってあけさせるのじゃないが、これはひとつすみませんが、ちょっとあけてくれませんか、こう言ってもこれはあけることを拒むことはできない、国民側にとっては自由自在にあけられる、こういうことになるわけです。これはだんだんいわゆる法律的な解釈から徴税の技術まで入ってきておりますけれども、こうやって片一方にはいわゆる署長の許可がないと、なかなか容易にいかない、こういうものもあります。片一方大きな金庫なんというのはなかなか私たちは持たないわけですが、そう言っては何だけれども、家族にないしょでいろいろ隠しておるのもありましょう。こういうのがあるのをやはりおいそれと税務職員に見せればたいへんなことになる。これは見せないと何か隠しているんだろう、こういうことで今度ほかのところでえらいシラミつぶしに調べられる、こういうことになってくる。金庫をあける権限というのはどこからくるのですか。
  33. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 ただいまおっしゃったように、現在の現実の質問検査のやり方といたしましては、納税者の承諾を得てそれに基づいてやってきている、こういう運用をいたしております。
  34. 只松祐治

    只松委員 それでは納税者が見せなければ、金庫なりかばんなりそういうものはあける必要はない、こういうふうに解してよろしゅうございますか。
  35. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 法律的に突き詰めていきますと、その中にたとえば帳簿類があることが大体推定できる、その調査をする必要があるというときには、質問検査権に基づいてできるわけでございます。しかし現実の運用といたしましては、そのような場合には原則として承諾を得て出してもらう、こういうことをやっております。
  36. 只松祐治

    只松委員 だから現実の問題として、それは帳簿だけでなくていろんなものが入っているわけなんですから、たとえば極端な話がそこに金の延べ棒が入っていた、こういたしましょう。これは税務署といたしましてはほかの面からの捜査の対象にはなるかもしれぬけれども、しかし警察か何かで犯罪事実として捜査しない限り金の延べ棒というものは、これは自分のものでなくて他人から預っていた、こういう場合には無関係なわけですね。ところがそういうことや何かあるためにどうしてもあけられないということになると、これは税務署の場合実際問題としてたいへんなことなんですよ。これは何かあるんだろうというわけで、ほかのものを徹低的に調べるかあるいはその日は帰ってもまたほかでやるか、今度は銀行なり取引先なりほかのところを調べてくるか、えらいことになるわけです。だから結論的にはこれをあけなければならない、こういうのがいま徴税技術の実態なんです。末端にいって私たちはそこいらの中小企業の人から大体そういうことで相談を受けるわけなんです。だからあなたたち国会できれいに答弁をしておられる、あるいは法理論的な立場で解釈しておられるのと、末端で徴税行政——そのかわり税務職員の人も一生懸命で調べておられるのは、これはたいへんなことだと思うのです。それはそれなりにわかりますけれども、しかし国民側としてはそういうふうに片一方は署長の権限がない、しかも事例というのはきわめて少ないわけです。見れない預金というものがある。それから一方は一般国民はそういうふうにことばは丁寧だけれども、あるいは態度はやさしくても事実上見せなければならない。一番秘密なプライバシーにわたる問題でもこうやってあけなければならない、こういう実態というものがあるのはおかしくないだろうか、こういうことを言っておるわけなんです。ひとつその金庫はほんとうに本人が承諾しなければあけないでいい、こういうことならばそのようにここで明確にお答えをしておいていただきたいと思います。
  37. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 金庫はいま運用としてそうやっていると申しただけでございまして、法律的に言いますと先ほど申しましたように検査ができる。その中に入っていると思われる場合には税法に基づいて検査ができるということになっておりますので、絶対あけなくてもいい、こういうふうには申し上げかねます。
  38. 只松祐治

    只松委員 刑法上の犯罪人にも自己の不利なものには黙秘権というものがあるのです。しかし税務署に対しては国民は何らの救済権というものはないということですか。
  39. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように刑事事件の場合におきましては黙秘権があるということになっておりますが、これは行政事件につきましては適用がないというのが公定解釈になっております。したがって税の調査の場合におきましては行政事件でございますので黙秘権の適用はないということになっておるのでございます。
  40. 只松祐治

    只松委員 黙秘権がないことくらいは——そういう黙秘権に類似する最終的なところの救済の手段というものはあなたたち行政庁に対してはないのですか、こういうことです。
  41. 泉美之松

    泉政府委員 それは税務職員の調査が違法である場合におきましてはその救済を求めることは当然できるわけでございます。それの手続に従って救済を求め得るわけでございます。ただ税務職員が法律に従いまして適法な権限を行使している場合にはそれに従わなければならない、こういうことになるわけです。
  42. 只松祐治

    只松委員 私はほかの論議がありますから、この問題は法律的にはこれ以上深くいたしませんけれども、かりにあなたが言うとおりに適法に行なわれておった場合に国民には拒否する権利がない、こういうふうに解釈いたしましょう。とするならば先ほど言ったように銀行には今度は事実上税務署長が許可しないと行けない、こういう権利というものが発生しているのです。あるのは通達でしょう。しかし実際上は行政法上のそういう諸般の慣行というのは英国の慣習法以上に強い規制力を持ってきているのです。これは行政庁が強いから、特に大蔵とか徴税の場合には、そういう署長さんが許可すれば行けるんだ、こうおっしゃいますけれども、事実上は一般税務職員は立ち入ることができない銀行というものがあるんですよ。   〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕 そんなかってに銀行にどんどん調べに行っていますか。調べに行った事実や何かがあったらあとで資料を要求してもよろしゅうございますが、どの程度銀行に調査に行っていますか。それは数えるほどしかないですよ。
  43. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 これは銀行は第三者ですから、納税者そのものじゃないんです。これでたいへんな違いがあると思います。それともう一つは、銀行業という特殊の業務であるというところから違うのでありまして、これは個人にしても先ほどからお話のありましたように何でもあけろと言う、そんな権利はあるものじゃないと私は信じます。中にどうもラブレターがあるかもしれぬ、変なものがあるかもしれぬ、それをあけてみろ、そんなことば不法でございます。税法上調べなければならぬ疑いがあるものがあるという目星があって初めて言えるので、そうでないのをあけろと言えばこれは確かに不法であると思います。そういう場合に限るものと私は考えております。
  44. 只松祐治

    只松委員 いま銀行は第三者とおっしゃいましたけれども、それならばAという事業所の税金のことに調査に行っている場合にB、Cという取引先やらあるいは原料仕入れ先やらその他は第三者です。こういうものには自由に行けるんですよ。こういうものは署長さんの許可を得なければいけない、こういうものじゃないです。銀行なるがゆえに貯蓄増強ということの大義名分、それから秘密性、これは資本主義社会においてかってに考え出された秘密性なんですよ。秘密は銀行預金も秘密であるかもしれぬが、個人がいろんなことをやっていておまえは幾ら月給を取っている、こういった場合に、会社や何かではお互い同士わかっていますけれども、隣近所や何かでは言いたくない場合もあると思うんですよ。そのかわり税務職員は秘密を漏らすことはできないという義務を課せられていますが、結局税務職員の前には国民は裸なんですよ。ただ預金者だけが秘密を守られておる、こういうことになっておるのです。だから私はそのことは不平等ではないかということを一番初めに触れたわけです。一方はそういうふうに預金なるがゆえに秘密が守られて手を触れられない。今日、そう言ってはなんですけれども、脱税の最も大きなものは、私は銀行預金だと思っているのです。この本論を、ただ私がさっきから言っているように、徴税の技術上の問題を中心に聞いているからあれですが、今日銀行預金はそれだけの秘密がある。どういう税金が取られているか、これも秘密ですから、推計以外にはなかなか容易でないけれども、おそらく税金の把握の一番困難なのは銀行だと思っている。把握が困難だということは脱税が行なわれているということなんですよ。だから、私は作為的な脱税だということをさっきちょっと言ったわけです。銀行預金は作為的であるか非作為的であるか、とにかく脱税が行なわれている。一般勤労所得者は一〇〇%取られている。事業所得者というものも完全に捕捉されている。こういうことが法の平等のもとにあってはならないということです。その具体的内容として、一つの問題として銀行にはなかなか調査に行けませんということを言っている。一般の個人の場合には、金庫でもあけなさいと言えばすぐあけなければならない。こういうことは国民はなかなか納得しないのではないか、こういうことを言っている。こう金庫の問題は、私は問題を持ち込まれたからたまたま聞いておるわけです。この人にはなかなか見せがたいものがあったけれども、あけなさいということだからあけざるを得なかった、こういうことなんですね。確かに帳簿の関係も金庫に入っているでしょう。しかし金庫には帳簿以外にいろいろなものが入っているんですね。そういうものもやはり税務職員の前には見せなければならない。片一方では預金なるがゆえに、預金だけの秘密があってさわることができない。しかし一般国民は税法上の問題、金の問題だけでなくて、プライバシーの問題にまでわたって税務職員の前に全部を出さなければならない、裸にならなければならない、こういう事態があるのです。こういうことはきわめて常識的にだれが考えたって不合理じゃないですか。たとえば鍛冶さんの家に——弁護士さんですし、代議士だから、そう簡単に税務職員も来ないし、また踏み込めないでしょうけれども鍛冶さんも落選されたことがあるわけですから、そういうときに何かあって、ただ選挙違反や何かなら別ですが、単なる税法上の問題で来て金庫をあけなさいといってやられてごらんなさい。これは中小企業の人だって容易じゃない。鍛冶さんだって容易なことじゃない。しかし片一方では預金なるがゆえにひとつも触れることができない。税務職員さえも触れることができないというのは、法のもと不平等ということはだれが見だって明らかですよ。そのくらいのことはあっさりとかぶとを脱いだほうが政府側としてはすなおなことだと私は思うのです。どうです。
  45. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 ただいまのお話によりますと、税務の調査におきましては銀行調査はめったにやらない、きわめて例外的にしかやらないというお話でございましたが、実際の運用はもっと——現在集計はいたしておりませんので、何%ということは申し上げかねますが、銀行調査はそんなにきわめて例外的にしか行なわれてないというものではなく、もっとたびたび行なわれている。たとえば先ほど取引先の調査についてどうかということもおっしゃいましたが、取引先調査につきましても、すべての事案について取引先調査に行っている、こういうものではなくて、何か本人を調べてみて漏れがある。そういうようなときに必要に応じて取引先調査に行くわけでございます。それと同じような関係で、本人を調べました結果何かやはり漏れがあるんじゃないか、こういうときにただ税務署長の書面を持っていく、こういう手続上の差があるだけでございまして、決して銀行についての検査が手ぬるい、こういうようなことはございません。  それから金庫の問題につきましては、先ほどお答え申したように、何でもかでも税務職員はオールマイティ、こういったような権限を持っているんじゃなくて、その場合に調査のために必要のあるときはという条件がついておりますので、調査の必要もないのに、何が入っているかと思って金庫をあけなさい、こういうことは法律的にもできない、こういうことにして運用いたしております。
  46. 只松祐治

    只松委員 それじゃ一つの誠意あるお答えじゃないですよ。銀行をお調べになるのは摘発か何か、ある意味ではそういう事件が起こらないと、一般的に調べられているのは少ないのですよ。それならあとでけっこうですから、どれだけの銀行を税務署で調べたか、資料を出してください。私がいま言っているのは一般の調査のことを言って一いるのです。あなたの言っているのは、銀行や何かを調べているのは一般の調査じゃない。脱税の摘発やいろいろなことがあった場合には銀行を調べておりますよ。一般納税申告に基づいてそれが大体適当であるか不適当であるかということで銀行を調べたことがあれば、あとで資料を出してもらいたい。  それからあとの必要があれば、こういうことなんですね。何でもがんでも調べるのじゃない、そのくらいのことはわかっていますよ。しかし必要があるからあけてくださいということです。必要があるからあけてくださいと言われればあけざるを得ないということをぼくは言っているのです。そういうことばのやりとりやその解釈論だけで私は言っているのではない。現実に徴税官と行って、一応帳簿を見て、済みませんが金庫を見せてくれませんかと言ったときに、あけざるを得ない。必要があるから言っている。必要がなければ一この中に変なところがあるから、帳簿か何か入っているからあけてくれと言われればあけざるを得ないと、こう言っている。ことばのあやではなくて、あるいは解釈論じゃなくて、実際上の徴税の問題と関連して、一方そういう租税特別措置が行なわれる。それに基づく秘密性というものがある。片一方一般国民は文字どおり裸になって税務署の前に調べられておる、こういうことを言っておるわけですから、もう少しすなおに答弁をしてください。
  47. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 先ほどの銀行の調査を何件くらいやっているかということは、現在のところ銀行調査をやった場合の集計をとっておりませんので、何%くらいについて銀行調査をやったかという資料を出せとおっしゃっても、ちょっとすぐにはつくりかねる状況でございます。ただ決してそんなに少ないものではない。先ほどおっしゃったように、査察の場合であるとかあるいは特別調査の場合であるとか、そういうきわめて例外的な場合にだけ行なっているのではなくて、もっとたびたび行なっているということは一般的には言えると思います。
  48. 只松祐治

    只松委員 どうもまともな答弁も得られませんので、押し問答式になります。またあとで同僚議員なんかがこういう問題についていろいろ御質問をいたしますので、私はそういう問題提起だけを一応いたしておきまして、次に進みたいと思います。  次に、日本の経済構造というのは二重構造であるとか、複雑であるとか、いろいろ言われておりますし、過日参考人に呼びました中小企業の代表者の人も、法人税というものは多段階的にひとつしてもらいたい、少なくとも三段階にしてもらいたいというようなお話がありました。これは当然のことだと思うのです。諸外国の例を見ましても、三段階くらいあります。まして日本のように零細企業から大企業、しかも同族会社がピンからキリまでありますけれども、日本の封建性というものが加味されて、これは全部調べて推計でおそらく九〇%以上が何らかの形で同族会社ではないか、こういうことが言われておる。こういうことやいろいろ考えまして、少なくともやはり百万か二百万以下あるいは五百万、それ以上というくらいに法人を三段階かあるいは四段階くらいにしていくのが−法人数というものが非常に多いし激増をしてきておるということは、これは事業所得税が非常に重いということも関連してくるわけですが、それはそれとしてあとで聞きますが、とにかく法人税というのは多段階にするのが一番現状に適したものだ、こういうふうに思っております。今後そういう問題について御検討される意思があるかないかひとつ伺いたい。
  49. 泉美之松

    泉政府委員 法人税につきましては、先ほど申し上げましたように、わが国の税制ではシャウプ勧告以来、法人税は個人の所得税の前取りであるという観念に立っておるわけでございます。したがいましてシャウプ勧告のときには、法人税税率は三五%一本であったわけでございます。しかしその後御承知のとおり、昭和二十八年以降租税特別措置がいろいろ設けられるに従いまして、実際問題として租税特別措置を十分利用しやすい大企業と、そうでない中小法人との間におきまして、税負担にいろいろ差異があるじゃないかというようなことから、税率を現在の二段階にいたしておるわけでございます。  そこでこれを多段階税率にするかどうかということにつきましては、もうずっと以前から税制調査会におきまして、いろいろ検討されております。その際にまず根本的に問題になりますのは、いまの法人擬制説的な考え方に基づく法人税は、個人の所得税の前取りであるという観念がいいのかどうか、法人税の本質というものを考え直す必要があるかどうか、この問題でございます。これにつきましては御承知のとおり、昨今諸外国でも法人税が転嫁されるのではないか。そういう意味では法人税は、所得税といっても、ほかの流通税と同じような部面があるのではないか。そうすれば法人擬制説に基づいて個人の所得税の前取りとだけ観念するのでなくて、法人に独立に課税すべき部分があるのではないか。こういう考え方が出てくるわけでございまして、税制調査会におきましても、昨年いろいろ実態調査をいたしたのでございますが、確かに法人税が転嫁されているというふうに認められる事跡もあるわけでございます。しかしこの点はまだ十分な結論を得ておりませんので、今後税制調査会におきまして、法人税考え方について、さらに根本的に検討することになっておるのでございます。  ただ、そういうふうに法人税考え方を再検討するのでなければ、税制調査会答申にいわれておりますように、現在の法人税考え方を前提にいたしますと、あまり法人税税率段階を多くすることは好ましくない。したがって税制調査会答申には、今回法人税税率を引き下げるときにも、段階を三段階にするのでなしに、いまの軽減税率でありますところの三三%のほうを二%引き下げるのが適当である、こういうような答申になっておるわけでございます。したがって、事は非常にめんどうでございますが、法人税の本質論をもっと検討いたしまして、転嫁されている等の事跡につきまして、さらに詳細な検討をいたしました上でそういう点を検討してまいりたい、かように考えておるのでございます。
  50. 只松祐治

    只松委員 政務次官は自民党としてお出になっておるわけでございますが、自民党としては山中さんがここに税制委員長としておいでですから、打ち合わせしてもけっこうですから、どうですか。政府側としても中小企業の味方であるということを常にPRされておるわけでございますが、これはPRという立場だけでなくて、現状の日本の経済構造というところから見ても、むしろそういうことを考えなかったのはおそきに失した。別に私がきょう質問したから、私が言ったから、多段階にするとかなんとかということでなくて、中小企業をほんとうに救うという立場からもこれは少なくとも三段階にする。零細企業一つくらいを別に二〇%くらいにして低い税率を設けて、中小企業に対処していくということが当然のことだと思うのですが、どうです、そういうふうにお思いになりませんか。
  51. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 中小企業者を保護しなければならぬということは当然でございます。ことにわが国の実際の面から、経済面から考えましても、何といってもまだまだ中小企業でございますから、中小企業を育成する、また税をできるだけ安くしなければならぬということは当然だと思います。そうかといって法人のほうにずいぶん安いことにしますと、個人とたいへんな懸隔が出てくるものですから、そこいらがよほど大事なところじゃないかと思います。実はこまかいことはあまり知りませんが、そういう意味で保護せられるだけのことをするのは当然でございますが、あまりに法人としてし過ぎてもいかぬのじゃないか、かように考えております。
  52. 只松祐治

    只松委員 もちろん法人だけ安くしろということは何も言っていないのです。ただ事業税その他と関連してやることは当然ですけれども、あまりにも百億円の大会社も、十億円の会社も、五百万円の会社も、百万円の会社も税率がほとんど変わらない。きょうは税調の問題ではありませんが、地方税に至っては——地方税は多少違ってきますけれども、国税の場合はほとんど変わらないわけです。こういうことはあまり中小企業の味方だとおっしゃることはやめになれば別でございますけれども、一生懸命にPRされる以上は当然にお考えになる。もちろん他税との関連は当然でございますけれども、そういうことを考えた上で三段階においおいしていくということが私は当然だと思います。そういうことを言っているのです。
  53. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 それはいまおっしゃるとおりに、できるだけこれを保護していく。税法においてもこれを認めて、その方針でいくべきことは当然であると思います。
  54. 只松祐治

    只松委員 それから今回の配当分離課税というものは、すでに証券界等ではパンフレットまでつくったり、雑誌までつくって宣伝しているわけです。いわば法律は年度内に通るわけですが、実際上の問題として、証券界にはもうできたということと同じ効果をもたらしている。にもかかわらず、御承知のように株価はダウでも千二百円を割っている、こういうことです。皆さん方がおっしゃっているように、この税金対策で全然一%も役に立たないとかマイナスになったということまでの極論は申しませんけれども、あなたたちが宣伝されあるいはお考えになるほど、この配当分離課税というものは株式市場の育成のためには役に立っていない。こういうことが私たち考え方ですし、一般にもそう言われている。今度のこれだけ悪評さくさくたる、世界にも例を見ない悪法だ、こういうことを言われておりますこの配当分離課税をしてどの程度——すでにいまからとおっしゃいますけれども、私はいま言ったように株価に織り込み済みになっておる。いままでの資本市場にとって効果があったか、あるいは今後あるかということのお考えをここで聞いておきたいと思います。
  55. 泉美之松

    泉政府委員 お話のとおり今回の配当についての特別措置資本市場にどの程度の影響があるか、これはなかなか容易に測定することは困難でございまして、ことに資本市場の場合におきましては、税制だけの問題でなくて、企業の収益率、したがってその配当率がどうなるかということ、あるいは金融政策がどうなるかということ、世界情勢が今後どういうふうになっていくか、日本経済の発展が今後どういうふうになっていくか、こういったいろいろな他の要因によってきめられる面が多いのでございます。したがって、税制でやったからといってすぐにそれだけで効果があるというものではなかろうと私は思います。またそれだけ税制だけにあまり過大な期待を寄せられることも困ることと思うのでございます。しかしながら、そういういろいろな条件が満たされますならば、今回の措置によって証券市場に相当な効果があるのではないかと思っておるのでございます。
  56. 只松祐治

    只松委員 それから最後に、いわゆる国税を納める関係にある外国の法人数が日本にどれだけあるか。さらにその法人の調査を担当しておる専門の調査官がどれだけおられるか。またその課税額等が、いまおわかりになればいまでもけっこうですが、そうでなければあとで資料としてひとつ御提出をいただきたい。聞くところによると、専門の調査官が少なくて、それからことばがなかなか通じないことや何かで、たとえばスペイン人に対して英語でやる。そうすると、中に立っている通訳が適当なことを言えば適当にごまかされて、なかなか完全な調査が行なわれておらないということを聞いております。外国人にはどうしても日本人というのは弱いわけでございまして、具体的な例も私は一、二知っておりますけれども、ひとつそういうことが今後ないように、銀行預金者といえども、あるいは一般勤労者といえども、それから日本国民といえども、外国人といえども、ひとつ平等にやっていただきたいと思います。そういう資料を後日御提出いただきたいと思います。きょうじゃなくてもけっこうです。
  57. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 ただいま手元に資料がございませんので、後日提出いたします。
  58. 只松祐治

    只松委員 それでは引き続きまして、所得税法法人税法全文改正関係について質疑を行なってまいりたいと思います。  これは鍛冶さんの一番お得意なところだと思いますが、租税法定主義というのは税法の基本原則になっております。租税法定主義とは一体何でしょう。御高見を承っておきたいと思います。
  59. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 私は税法には暗いので、確実な答弁はできませんが、法律によって定められたるもの以外には租税として取れないのだ、そういう原則をいうものと思います。   〔「名答弁だ、そのとおり」と呼ぶ者あり〕
  60. 只松祐治

    只松委員 いま名答弁ということばがありましたように、まことにそのとおりでございます。いわゆる国民はその国の制定した法律に基づいてのみ税金を納めればいい、こういうことでございます。そこで、これは国税庁のほうでけっこうでございますが、各国における租税法定主義の根拠と申しますか、いわば立法例ですが、そういうものを御存じでしたら、全文でなくて一、二でもけっこうですが、博学の士が国税庁には多いということですから、ひとつ教えていただきたい。
  61. 泉美之松

    泉政府委員 租税法定主義と申しますのは、先ほど政務次官からお答えいたしましたように、課税いたしまする場合におきましては、まず納税義務者がだれであり、課税標準が何であり、税率がどうなっており、納税の時期がいつまでで、どういう手続で納めるか、こういうことについて法律で規定されておらなければならないというわけでございます。その意味では、どこの国も租税法定主義のたてまえをとっておるわけでございまして、各国におきましても、それぞれ租税法典が制定されております。そういう意味では、わが国の従来の所得税法人税につきましては、条文数も比較的少なく、相当重要な事項が政令以下の段階に入っておったり、あるいはきわめて重要な事柄を国税庁長官の取り扱い通達で定めておった、こういったような事柄がございました。そこで今回の所得税法及び法人税法の全部改正におきましては、そういうことをなくするために、税の先ほど申し上げました点についての基本的な事項は法律で規定する。そういう意味で、従来取り扱い通達にゆだねておったものも、できるだけ法律で規定するようにつとめました。その意味では、今回の全文改正によりまして、わが国の税法は整理されたものになっていると思うのでございます。しかしながら御承知のとおり世の中の事柄は非常に複雑多岐でございます。したがって、税法で規定を設けた場合におきましても、その規定の解釈、運用という点は、この規定だけでなかなかわかりかねる場合が出てまいります。そこでそういう場合に、国税庁といたしましては、できるだけ課税の統一をはかる趣旨におきまして、税法に規定されているこのことばはこういう意味であるということの解釈通達を出さざるを得ない。これは外国におきましても、たとえばアメリカではやはりインターナル・レベニュー・コードが、ございますが、そのほかに、わが国の政令あるいは省令に当たるようなレギュレーションというのがございます。そのほかに国税庁の解釈通達に属するところのルーリングというのがございましてそのルーリングによって、実際問題、日々生じてくるところの複雑な事柄を処理するということになっておるのでございます。そういう意味では、わが国の税法は、今回の全文改正によってそういうところに近ずいたということが言えると思うのでございます。
  62. 只松祐治

    只松委員 御説明だけでなくて、先回りしていろいろ御答弁もありました。いままでの不備の点を今回の改正法で補うのだ、こういうお話があったわけでありますが、おいおいそういう点についても聞いてまいりたいと思います。  それではこの法定主義と最も関係があります政令、省令、通達というものの意義につきまして、これはどなたからでもけっこうでございますが、簡単にお答えをいただきたい。何ならここに法制局の書いたあれもございますから……。
  63. 泉美之松

    泉政府委員 政令と申しますのは、御承知のとおり法律の委任を受けまして、その委任の範囲内でこまかいと言ってはあれでございますが、具体的な事項を規定するのが趣旨でございます。今回の所得税法及び法人税法全文改正にあたりましては、先ほど申し上げましたように、税の基本的な事項については、すべて法律で規定いたします。ただ、たとえば引き当て金とかというようなものの限度額の計算であるとかというような、技術的な計算のこまかい点は政令で規定する、あるいは固定資産の範囲につきまして、およそはさまっておるのでありますけれども、こまかい、どういう資産が固定資産に入るか、あるいは繰り延べ資産のうち商法に規定がありますので、およそはわかっておるわけでございますが、税法上繰り延べ資産とされたものは、範囲はどこまでであるか、こういったこまかい事柄を政令で規定するということにつとめまして、省令におきましては、今回の改正におきましては手続的な事項に限るということにいたしまして、税制の基本的な事項は法律と政令を見ればわかる。手続のどういう書式でどこを経由して出すかというようなことは省令で規定する、こういうことにつとめたのでございます。  それから、通達のほうは、先ほど申し上げましたように、税法でそういう規定を設けましても、税法でとっておる用語について解釈的なことを明らかにして、課税の統一をはかるために通達を出しておるわけでございますが、これは直接国民をそれによって規制するというのではなくて、それによって税務官庁が仕事をやっていくという国税庁長官の訓令になるわけでございます。したがって、それはあくまでも課税の統一を国税庁という立場から見て、全国的にとっていく、こういう趣旨に基づいておるものでございます。
  64. 只松祐治

    只松委員 このように社会情勢が複雑になってまいりますと、これから徴税をしていく徴税事務というものはきわめてまた複雑であるし、したがって法律をつくれば相当膨大なものが必要で、勢い政令、省令あるいは通達、そういう事項にまたなければならないということは私どももわかります。しかし、この税務行政の内容というものは、ほかの、たとえば文部行政やあるいは厚生の行政、こういうものと違って、いわゆる現在の資本主義社会の根幹をなしておる私有財産制度に基づく、あるいはこの中の、これは資本主義の本質的な問題じゃないけれども、現代社会のそういう経済をささえておる貨幣制度、こういうものの一連のものをずっと考えてくる場合に、いま言いましたような、他の行政官庁と違って直接国民から金銭を受け取って、いわば国税庁側からいえば取り上げておる、こういう役所なんですね。大蔵省はそれに基づいて予算をつくって国家行政を行なっていく、こういうことでございます。単なるほかの役所と違って、したがってこういう政令、省令、通達というものは単に抽象的な問題ではなくて、国民の財産と密接な関係を持ってくるわけなんです。したがって、一片の通達あるいは政令、省令で、こういう国民の財産ときわめて重大な関係を持ってくるものを法律によらないで簡単に規定するという、定めることができるかどうか、こういう問題について順次伺っていきたいと思いますが、ひとつさっきみたいに政務次官、こういう常識的な立場からそういうものが——いまたとえばことばじりをとらえますと、通達というものは庁内の訓令事項である、こういうことを泉さんはおっしゃった。しかしこの通達というのは、まことに国税庁の通達は膨大なものであって、庁内の訓令事項だけではなくて、一般国民を全部拘束しておる。あとでそういうこともやっていきますけれども、こういうふうにとにかく単に他の官庁と違って庁内に通達を出す、訓令を出す、こういうものとは違うのですね。こういうことがはたして許されていいものかどうか、ひとつお聞きしておきたい。
  65. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 政令にしましても通達にいたしましても、法律に反するものを出していかぬことは当然でございます。さようなことは絶対にいけません。むしろ法律を施行する上において、これを適用する上においてわからぬところがあればいかぬから、それを統一してわからせるようにする。行政を行なう上において、下級官吏が間違ったことがないようにこれを指示をする、そういう意味で出すものでありまして、もしそれが本法に反するものであるならば、それは不法であって、直ちにそれを改廃すべきものだと、かように考えます。
  66. 只松祐治

    只松委員 違法行為とか何とか言っているのではない。もちろんお出しになる人が初めから違法だと思って政令や省令や通達を出す人はないと思う。そういうことではなくて、法律に規定してないことを、たとえば一番弱い通達としましょう。通達によって金額の明示その他、たとえばここで言えば政令で数額を規定しておる、こういうこともあるわけです。こういうふうに法律に規定してないことが実際上税務行政の場合には政令、省令、通達によって全部行なわれておるといっても過言ではないわけなんですが、そういうふうに法律で規定してないことをそういう内部の命令、訓令事項である通達というようなものによって行なうことができるかどうか、そういうことをお聞きしておる。
  67. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 法律を施行するたびに、法律というものはそうこまかいことまでも規定してないものですから、そこで実際にこれを当てはめるときにどういうことかという疑問の生ずる場合に、それはこれこれだといって、いわゆるこまかくわかりやすいようにやっておるのが通達だと思います。それは本法に反するものをやっておったらとんでもないことでございますが、必ずその範囲内でやるものだ、行政上それがあるから間違いなく法律が施行されるという、そういう見当のもとにやっておるものと心得ます。
  68. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。堀昌雄君。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと関連して。いまの答弁なんですけれども、私は政務次官のおっしゃるとおりに行なわれておればいいと思うのですが、事実そうではないのですね。私はちょっと行政官庁としてはそこに行き過ぎがあるのではないかという感じがしますのは、法律の解釈というものはまず立法者である私どもが立法をしておるわけですから、それを一方的に官庁がそれを解釈をして、通達で処理をするというのは、これはやはりいまの政務次官のおっしゃる原則から見ておかしいと私は思うのです。だからそうなれば、私は最初名答弁だと言ったのは、要するに租税は法律によらざれば取ってはいけないというのが原則で、外ワクはきちっときめられているわけです。よろしいですか。そうするとさっき只松君は違法ではないと思うが、こう言って法律のワク外の議論をしているわけですが、私は法律のワクの問題というものは、原則はやはり外側があると思うのですよ。それを行政官庁の便宜によって数量や何かが、ここまではいいけれどもここまでは悪いという裁量をするならば、それは違法です。法律は原則ははっきりさしているので、それは本来的には法律というものは質の問題を規定しているわけです。量的な問題を規定するとすれば、必ず両方規定しなければ、法律にならないと思うのです、立法論の原則として。だからそこでそういう質が規定されておれば、それを量的にここまではこういう質だけれども、ここからは質が変わるのだというようなことを一方的な行政解釈によって処理をするというようなことは、これは明らかに違法です。だからそういうような完全な法律のワクの中の問題もあるかもしれません。しかし現実の通達の中には、法律のワクの外に、半分は足を片一方入れているけれども、半分外に出している問題が必ずあるのです。だからあなたの答弁のとおりとするならば、今後国税庁が出す通達はまず国会へ持ってきて承認を得なければいかぬと思うのですよ。立法者の意思がはっきり確認をされたワクの範囲であるかどうかは、われわれが承認をすることであって、国税庁長官にその権限はないはずです。それが租税法定主義の原則です。鍛冶政務次官どうですか。
  70. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 法律のワクをこしたものを出したとすれば、それはまさしく違法です。ワク内でなければなりません。ただ法律をつくったのはわれわれだから、われわれの解釈が間違いないのだ、これはそうばかりはいかぬと思うのです。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 そうではないでしょう。
  72. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 いや、私らでもよく警察やそこらにいって、けんかをやるのですが、これはぼくらがこしらえた法律なんだ、君らかってなことを言っちゃいかぬ、こう言っても、いや、われわれはそういうふうに解釈をしておるのですが、あなた方の意見を聞かなかったけれども、警察全体に統一してそういう解釈をしておりまするので、いまそう言われてもそれを変えるわけにはいきませんとこう言う。結論は裁判所へ行って争うよりほかにないことになるのですが、そういうことは往々ありますが、ほんとうに間違ってそれが逸脱しておるとすれば違法でございます。そういうことがないように、深く注意しなければならぬ、かように思っております。
  73. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでいまの問題はひとつ簡単な例を引きますと、物品税なんかそうなんです。物品税というものはこれは租税法定主義というものがきちんとなっておりながら、免税点を省令で処理しているわけですよ。これなどは、法律のたてまえは、免税点をそういうことで処理しなさいなんということは本来書いていないはずです。ところが免税点が動くことによって、あの法律は根っこから土台がなくなるわけですよ。よろしいですか。これなどは私は明らかに違法だと思うのです、物品税の免税点を動かすことは。だからそういうことは、いまのそれは量的な問題であって、もう免税点がたとえばいま五万円のやつを十万円まで免税点を上げるとすれば、法律では一〇%、一五%をかけることになっておることが、自動的にかからなくなると思うのです。その点については法律を逸脱しておるわけです。最も具体的な例を一つあげたわけですけれども、だからそういうことは、私は、立法者の意見といものは——ども野党の意見ということを言っているわけではないのですよ。この当委員会における意思ということを言っているわけだから、当然私はそのワクの中だけの問題であるならばよろしいけれども、いまのように法律自体の効果を政令や通達その他がそれを減殺をして、外ワクを縮めるような処理を行なうことについては、これは少なくともその省令なり通達を出すについては当委員会にはかってその承認を受けるということにならなければ、あなたのいう租税法定主義というものは守られていないということになるのです。どうですか、いまの物品税の免税点の問題について。
  74. 泉美之松

    泉政府委員 お話しのとおり物品税につきましては免税点を政令で定めることになっております。そのために法律でこういう物品に対して幾らの税率で課税するということがきまっておりましても、免税点のきめよういかんでは課税にならないという場合が出てまいるわけであります。したがって当委員会の御意思を尊重いたしまして、物品税におきまして免税点を改正いたします際には当委員会の御意見を承る、こういうことに従来からなっております。また今後もそういうふうにいたすつもりでございます。その点は十分立法府としての御意思を反映するようにつとめているのでございます。  なお今回の所得税法人税の政令におきましても、いろいろ具体的な金額をきめることになっております。それはそれぞれ法律に委任規定がございまして、その委任で、政令で定めるところの金額を限度としてというようなことになっておりますので、その金額を政令できめるということになるのであります。その点におきましては法律の範囲内のことと考えておるのであります。
  75. 堀昌雄

    ○堀委員 ですから私が言いたいことは、だんだんと——ずっと昔、行政が非常に大きく機構化されてきている前には、私はそういうことではなかったと思うのです。最近は行政上の便宜か何か知らないが、この法律を読めば至るところにそういって政令に委任をしておる部分が実はたくさんあるのです。だからそのことは、法律の外ワクの中に底が抜けてある、たくさん底が抜けてある。そして抜いた底は国税庁が一方的に判断がやれるということでは、租税法定主義というのはいまは名ばかりになりつつある、重大な危機にあるということを、私はここで少しく警鐘を乱打をしておきたい。だからあなたも法律家でありますから、法律というものの性格は、少なくともなぜ現在の議会が生まれてきたかという歴史的な沿革にさかのぼってみるならば、これは絶対君主が一方的な税金を取ることをいかにして民衆の力でチェックをかけるかというところに、こういうパーラメントができてきた歴史的な沿革があるとするならば、この問題はまさに議会政治の最も中心的な課題につながっておるわけですから、その後における租税法定主義の問題というものがこのようになしくずしに底を抜かれて、立法府として黙っておるわけにはいかない、こういうのが私の意見なんです。鍛冶政務次官、いかがでしょう。私の意見、間違っていますか。
  76. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 いや御説のとおりであるべきものと心得ます。心得ますが、ただ政令は委任されておるので出すものですから、それでそういうことになるのですが、それはやはり立法府として常に監視せられまして、そういうことがあればそれは違法であるということでつきとめてもらうことが大切だと考えます。
  77. 泉美之松

    泉政府委員 ちょっと補足して申し上げますが、先ほど委員から何か租税法定主義が最近危機に瀕しているかのごとき御発言がございましたが、私どもは、古き昔はいざ知らず、現在におきましては租税法定主義はますます徹底してきておるのでございます。その意味では、わが国の税制上、法定主義は今回の法人税所得税全文改正によりましていよいよ徹底するものというふうに考えております。また今後ともそういった努力は続けていくべきものと考えておるのでございまして、決して租税法定主義をないがしろにするがごとき考えは毛頭持っておりません。どうか御了承を賜わりたいと思います。
  78. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、その点ですね、主税局長がそう言われれば私たいへんけっこうだと思うのです。そこで主税局長の発言を具体的に担保をする問題を私はここで提起していかなければいかぬと思うのですね。あなたのいまの御発言非常にけっこうですから、あなた方も租税法定主義を通達、政令においても生かしていきたいということだと思いますね。ますます新しい法律ではこうなるのだということを担保するためには、少なくとも省令、政令、通達その他の問題については、それは自民党にはおはかりになっておるかもしれないけれども、この場には実ははかられていないわけです。それは物品税の免税点の問題だって、私はここの場で論議がされて、幾らになったかということを私は理解したことがないのです。だから、そこでこれは主税局長の発言を担保する意味において、ひとつ政令や通達等については、それを出す事前に当委員会に、それは何も議決というところまではなかなかいまむずかしいかと思いますが、私は議決してほしいけれども、いま議決がもしできないとしても、これは事前に、ひとつそれを出す前には当委員会の了承を得るということが、私は租税法定主義のいまの主税局長の発言を担保する当然の結果だと思いますが、政務次官、いかがですか。
  79. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 法律で委任せられておる範囲内で出す政令でありますれば、ここへかけなければならぬという義務はないと思うのです。だから義務としてはそれを認めるわけにいかぬと思いますが、できるだけあらゆる機会にあなた方に御批判をしてもらい、またこの国会においていろいろ御批判を承る機会を得て間違いのないようにしていくことが最も好ましいことだと思います。
  80. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの政務次官お話で、法律で委任していますが、委任をしたことが法律の本法とどういうかかわりあいになっておるかということは、これは私どもが見なければわからないのです。政府だけが、事務当局が見て、これは委任されておってこのワクの中だと思っておっても、私どもが見てこれはワクからはずれておると思う場合もあり得るわけですから、その点は、原則としては、あとで只松君がやりますけれども、これは諸外国はさらにきびしい制度を設けておるわけですから、この点はひとつ本日以降当委員会において、少なくとも租税を担当する大蔵委員会の権威にかけて、現在の鍛冶政務次官の答弁をひとつ実行をしてもらいたいということを確認をしたいと思います。
  81. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 私の所管いたしておりますます通達だけについて申し上げますが、法律的な理屈を申すようでございますが、通達は、先ほど泉局長も申し上げましたように、国税庁が国家行政組織法十四条に基づきまして、上級官庁が下級官庁に対する指揮監督権に基づいて出す規定でございまして、その法律的な性格は下級機関を拘束するだけでございまして、一般納税者に対して拘束するものではない。つまり法規的な命令でない。つまり税法の系統、税法から政令、省令といったふうに委任された系統の法律的な内容のものではなくて、職務上の訓令である、こういうことで若干その性格が違うということが一つ、これは少し理屈ぽくなりますけれども、その点が一つ。  それからもう一つは、通達は昔は御承知のように全然公開いたしておりませんでした。内部の単なる訓令であるということで公開いたしておりませんでしたが、最近はすべて、これは法律的には職員を拘束するだけであっても、実除は納税者に相当影響があるということですべて公開をして、これに対する批判は幾らでもできるというふうな性格を持っておりますし、また現実に解釈通達を出します場合には、出しましたあとで全部その通達を大蔵委員会提出いたしまして御批判を仰ぐ、こういう措置をとっておりますので、通達が非常に膨大で、特におくれておるので早く出せといったような声も民間では非常に強いために、まず通達を出しまして、それがもし法律に反しているというようなことがあればすぐこちらは御批判に基づきまして直す、こういうような措置で、事前に御提出するというのはできればかんべんしていただきたい、こういうふうに私としては考えております。
  82. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。平岡忠次郎君。
  83. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 喜田村さん、通達の根拠はどこにあるかというと、国家行政組織法の第十四条第二項、それで国税庁長官は部下に対して拘束力を持つ通達が出せる。しかしこれは当然には国民を拘束しないということですね。ですから、それに異議があるならば、国民は裁判に訴えて理非曲直を明らかにする権利がある。それはそのとおりですね。ところがそれは非常に消極的なんだ。ですから、通達それ自身の地位を税法上どこかに明文化して、あとから追っかけていくというような形でなしに、構造的にそれを取り入れるという措置が確かに必要だと思うのです。米国にしてもドイツにしても英国にしてもみなそれをやっているわけです。さっき泉さんが、何か米国の場合においてはレベニュー・ルーリングですか、それでちゃんとていさいを整えているということを言うておりますが、各国は全部それをやっているわけです。それがないのは日本だけです。今度の改正法案にはやはりそうした点が配慮されておるのかと思っておったのですけれども、そのことが私にはないように思えます。それもこの税法上に通達の位置が与えられていないと思うのです。したがいまして、国会関係なく通達等が実施されておるということ、この点は私は日本の税法の体系において一大欠陥だと思うのです。今度の改正にそういう点が具体的に配慮され、具体的な条文となってここに載っているのなら、その点をひとつ御明示願いたいのです。ございますか。
  84. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように国税庁長官の通達の法的基礎を税法に置くことはいたしておりません。ただ私、寡聞にしてアメリカのインターナル・レベニュー・ルーリングが法律に——法律と申しましても日本のような行政組織法に基づいておることはありますが、税法そのものに基づいて出されているとは承知いたしておらないのでございます。なおその点は十分取り調べまして検討いたしたいと存じます。
  85. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 米国では通達は税法によってその位置が与えられてはいるけれども、国税庁長官が財務長官からの委任を受けてかってに制定している。換言すると、通達に対する国会の自主的コントロールは存在しない、かように理解していいのですか。あなたがおっしゃるのは、いま勉強してないから答えられないというのですけれども、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  86. 泉美之松

    泉政府委員 アメリカでインターナル・レベニューのほうでルーリングをきめるときにおきましては、もちろん大蔵省といいますか、向こうの財務省に法律顧問というのがおりまして、その法律顧問の了承を得ないと通達は出せないということになっております。わが国の場合におきましても、国税庁のほうで解釈通達を出されるときには、主税局のほうに協議願いまして、主税局が法律、政令、省令立案の段階においていろいろ問題になった点につきまして、この法律を作成して出すまでの過程においての解釈はこうであった、したがってそれと違う国税庁の解釈通達が出されることは困るというように協議をいたすことになっております。別に法律顧問的なものは置いておりませんけれども、そういう意味ではアメリカと日本とそう変わっているものとは思っておりません。ただ何分にもアメリカの法律顧問というものは相当地位の高い人でございますので、日本の場合とはそういう点で若干違っている色彩があるとは存じております。
  87. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 結局米国では、税法の国会における公式解釈書が国民のために国会から発行されておりまして、国税庁長官はその公式解釈に従って、かつ主としてその用語を使用して通達を制定する慣例になっておるわけであります。したがいまして、通達に対する国会の実質的コントロールがほぼ完全に実在しているというのが実情なんです。そういう点はやはり日本において欠けておると思います。ですから、何らかの意味でやはり国会のレギュレーションが通達とか、省令とか、政令にまで及ぶ形が、構造的にこの税法の中に取り入れられないとぐあいが悪いと思うのです。私はこの点を、今後の改正には出ておらぬので、将来の改正に向かって強く要求しておきたいところであります。
  88. 平林剛

    ○平林委員 ちょっと関連。これは私はこのまま質疑、答弁だけで済ませる問題ではないと思うのです。これは非常に重要な問題でありますから、大蔵委員長自身にもひとつ十分お考えをいただきたい。私はこう考えるのです。それは大蔵委員会にしょっちゅう通達や政令を持ってきて審議するというのは、なかなか事実上たいへんではないかという気はします。しかし本来国民の全般に影響を与えるものですから、これはわれわれゆるがせにしてはいけない、労を惜しんではいけない。国会としてはやはり租税法定主義を厳格に守っていかなければならないわけですから、労が多いからといってこれを否定してはならないのです。そこで、われわれは大蔵委員会に幸い税制委員会というものを設けておるわけですから、この税制委員会に必ずその承認を求める、こういう制度にすることが一番大事なことだと思うのです。税制委員会、これは大蔵委員の中である数を限って専門的にこれをやるということになっておるわけでございますから、この税制委員会には必ず付託して、その審議を経て承認を得る、その上において通達なり政令には数額を規定をしていく、こういう形に持っていくというのがやはり租税法定主義を貫く国会としても重要なことだと私は思う。これは私は、大蔵委員長も十分お考えをいただきたい。きょうこの質疑応答がありました機会に、これはそういう方針に持っていくというふうに委員長並びに理事においても御相談を願って、ひとつルールを確定したらいかがでしょう。私それを提案したいと思うのでございます。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 吉田重延

    吉田委員長 ただいまの御意見に対しましては、政令等につきましてはこれまで理事会で御相談いただいたこともあるかと思います。さらに、重要な問題でございますので、理事会で御相談の上、善処をしたいと思っております。
  90. 只松祐治

    只松委員 どうも私の質問は、関連質問の中から大体結論が出たようでありますが、いま同僚委員からいろいろありましたように、諸外国においては、まあ米国の話だけ出ましたが、英国におきましても、ドイツにおきましても、あるいはイタリア等におきましても、ほとんどがいま平林君が結論的に申しましたような形、あるいはそういう類似な形で、いわゆる国会がその法律に基づいて出した政令、省令、特に日本の場合は通達、この通達の解釈の事前了解あるいはそれの解釈というようなものをいたしておるわけでございます。ひとつぜひ、これは何も社会党だけが、野党だけが日本でこういうことを言っておる、そういうことではなくて、少なくとも先ほど名答弁をなされましたように、租税法定主義という、専制君主国家を脱却して、近代的なこの議会制度を確立した諸外国においては行なわれておる制度でございます。幸いにして今回こういう抜本的な税法の改正が行なわれるに際して、ぜひひとつこの問題を御考慮いただきたいことを私は重ねてお願いするとともに、一ぺん出したからそれをしゃにむに通すというのは、字句の用語をかえられてもメンツが立たぬというのがいままでの行政事務当局の態度でございますけれども、そういうことでなくて、やはり改むべきものは改めて、よりよく国民のために行政府をあらしめるのが皆さん方の公僕としての一つの使命でもあるわけでございますから、ひとつその点について十分御考慮をいただきたいと思います。大臣が来ておりませんが、事務当局としてひとつそういう点について考慮をするというくらいの良識ある答弁があってしかるべきだと思いますが、どうですか、どちらでもけっこうです、ひとつそういうふうに御答弁いただきたいと思います。
  91. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 通達だけについて申し上げますと、私のほうで出しました通達は、先ほど申し上げましたように事後に当委員会において御批判いただきまして、もしそれが法律の立法のねらったところと違うということになりますれば、その字句の修正に何らちゅうちょすることなく即座に直す、こういうことにして、立法者の意思が十分執行面に反映するようにつとめてまいりたいと存じます。
  92. 只松祐治

    只松委員 それからいわゆる近代的な租税体系からいっても、何らかの形で通達というものが税法の中に規定をされておるわけです。日本の場合は、さっき御説明がありましたように、行政組織法の十四条ですか、いわゆる組織法の中にあって、国税法の中にはないわけです。先ほどから言うように、一般的な通達と、それから財産権と直接つながりを持つ国税庁の通達というものは、一般法律論からいえば同じ通達ということになるかもしれないけれども、実質上は非常に大きなウエートの差があるわけでございます。先ほども堀委員から御発言がありましたように、具体的な例を引いてお話しすればこういうことは山ほど出てまいります。時間がありませんからそういう引例は省略いたしますけれども、ひとつ税法上どこかに規定する必要がある、こういうふうに私たち思います。それが近代的な税法体系だ、こういうふうに理解しておりますが、その点について御意見を伺いたいと思います。
  93. 泉美之松

    泉政府委員 私、先ほども申し上げましたように、イギリス、アメリカ等の税法では、国家行政組織法で本来規定すべきような国税庁の組織あるいは権限等を税法の中で規定いたしておる、そういう関係からいたしまして、国税庁長官がルーリングを定めることができるという規定が設けられておると思っておるのでございます。そういう意味では税法の立て方が、日本の場合は、国税庁の組織につきましては大蔵省設置法で規定いたしております。そうして税法の中に入ってきておりません。そういう法律のつくり方が違っておりますので、税法の中に規定しておると言われましても、それは本来行政組織法的な面において規定されていると思うのでございます。したがって、そういうのを日本では行政組織法十四条の二項で、各省各庁に通じて一本でやっておるわけでございますが、その点につきましていろいろ検討してみる必要があろうかと思いますが、ひとり大蔵省、国税庁だけの問題ではございません、なかなか検討を要する点が相当多かろうと思いますので、そういう方向で、外国の制度につきましてもさらに詳細に調査いたしました上で検討をいたしてみたいと思うのでございます。
  94. 只松祐治

    只松委員 繰り返して言いますように、それでは厚生省なり文部省なりほかのところでこれだけ膨大な通達が、しかもこういう直接国民の財産権と利害関係を持つ通達が出ておるか。あったらお示しをいただきたいと思うのです。ないと思うのです。それだけ国税庁の通達というのは特殊性を持っておる、こういうことなんです。したがって、諸外国の立法体系の中においては、税法の中に通達というものが明記されておる。  それからいま一点は、その通達、あるいは省令、政令の解釈について国会と何らかの関係を持たせる。これは専制君主、あるいはツァーと戦い、人民の国会を戦い取った西欧各国においては当然の帰結であろうかと思うのでありますが、日本においても、少なくともそういう先進的な近代国家の一員として存在しておるわけであります。厳然として、こうやって議会制度が確立されておるわけですから、当然にそういう立法体系に、特に今回のように大幅な改正があった場合には立て直してしかるべきだ、こう思うのです。そういう点について、ものの解釈なり判断というものは、どろぼうにも三分の理じゃないですが、いろいろあるし、答弁もできるわけですけれども、そういうその場ごかしの答弁や考え方ではなくて、基本的な世界の議会制度あり方、あるいは行政庁とのあり方、税務行政とのあり方、こういう観点からひとつお考えいただいて、いま要望いたしました二点について、ぜひひとつ再考をわずらわしたいということを申し上げておきたいと思います。
  95. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 また通達だけの話になってしまいますが、通達につきましてはもう先ほど申しましたように、一昨年くらいから全部国会提出いたしまして御批判を仰ぐことになっております。幸い、いままで通達につきまして法律の趣旨と違っているという御批判をいただいたこともございませんが、大体通達は法律どおり出されていると思っております。今後もそうした方法によりまして、御批判がありましたら、先ほど申しましたように即刻改めて立法の趣旨を反映させるということにつとめたいと思います。   〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕
  96. 只松祐治

    只松委員 それでは今回の法、案の中の用語の解釈や内容について若干お尋ねをしておきたい。  冒頭から申しておりますように、一方には租税特別措置その他で合法的な免税、脱税が行なわれておる一方、きわめてきつい罰則がございます。法人税法所得税法のいずれにも罰則がありますが、その中に現在まで詐偽または不正ということで、三年以下の懲役または五百万円以下の罰金というようなずっと罰則事項がございます。ところが今回はこれが「偽り」ということばに変わっております。そこでこれはさっきの名答弁以上に名答弁をしていただきたいと思うのですが、一体法律上詐欺とは何だということについてひとつお伺いをいたしたいと思います。
  97. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 詐欺というのは虚偽の事実を告げて相手方を誤らしめ、錯誤を起こさせてそれによって財産上の利益を取得するものが刑法上の詐欺ということであります。
  98. 只松祐治

    只松委員 したがって法律要件としてはどういうことが必要ですか。
  99. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 欺罔行為といいまして、事実にあらざることを相手方に告げて相手方を誤らしめるということが根本です。
  100. 只松祐治

    只松委員 大体お答えのとおり、いわゆる他人を欺罔するということが一つ必要です。それと欺罔によって他人の物を騙取するということが詐欺罪成立の要件です。未遂の場合はこれはまた別ですがね。それでは次にお尋ねいたしたい。虚偽とは一体何か。
  101. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 これはもうただ虚偽とはと言われれば、事実にあらざることを告げることでしょうな。
  102. 只松祐治

    只松委員 それでは「偽り」とは一体何ですか。
  103. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 同じだと思います。これは適用するときの場合によりますが、抽象的にいえば同じだと思います。
  104. 只松祐治

    只松委員 それでは偽り罪、虚偽罪というような罪名が、あるいは刑法上、民法上ございますか。
  105. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 ありません。ただ偽りを言うことだけでは犯罪になったり——民法上においても何ですが、ただ偽りだけで、相手方が錯誤におちいる場合でなかったら問題にならぬと思います。
  106. 只松祐治

    只松委員 弁護士出身の大蔵政務次官のおられるのに、こういう偽りや何かというようなあいまいな——これは道徳上のことばですね。法律上のことばじゃないのです。そういうものをなぜこういう全国民に影響を持つようなものに、「偽り」というようなことばをお使いになりましたか。今後詐欺罪というものがなくなって、偽り罪というものをおつくりになる予定でもございますか。
  107. 泉美之松

    泉政府委員 今回所得税法人税の脱税犯についての罰則規定におきまして、「偽りその他不正の行為により」、所得税あるいは法人税を免れたという表現が用いられております。しかしこれは従来「詐偽その他不正の行為により、」という規定になっておったのでございますが、これは私のほうから答弁申し上げるのが適当かどうか存じませんが、昭和三十七年当時から、新しい法律は従来「詐偽その他不正の行為により、」という規定になっておりましたのを「偽りその他不正の行為により、」というふうな表現に改めるように、法制局と法務省刑事局との間で話し合いがおできになっております。それに従って今回の法人税所得税改正の際においても「偽りその他不正の行為により、」という表現になっております。現に税法におきましても、物品税のように昭和三十七年に新しくつくられた法律の罰則は「偽りその他不正の行為により」という表現になっております。しからば「偽りその他不正の行為により、」という表現になった場合に、従来の「詐偽その他不正の行為により、」という構成要件と違ってくるかどうかということにつきましては、これは法制局及び法務省の見解では、違わない。ただ「詐偽」ということばの「詐」が当用漢字になくなりましたので、最近の法令はできるだけ当用漢字に従って規定するという趣旨からいたしまして、「偽りその他不正の行為」という表現を用いたものでございまして、従来の「詐偽その他不正の行為」という場合の構成要件と何ら変わるものでない、こういう解釈になっておるのでございます。
  108. 只松祐治

    只松委員 だから政務次官お尋ねしたい。  偽り罪なり虚偽罪というものを今後創設する意思があるかないのか、詐欺罪はなくなるのですか。
  109. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 偽り罪なんというものはできるわけはございません。この法律だって「偽りその他不正の行為により、」所得税を免れと、こういうのです。ここで初めて罰則になってくるので、所得税を免れたということは税務官吏を欺罔におとしいれて、誤らしめて税を免れた、こういうことになるから、それで詐欺罪と同様の取り扱いを受けるもの、かように考えております。
  110. 只松祐治

    只松委員 そこまで言われると、三百代言的になりはしませんか。さっき詐欺というものを解釈しましたように、他人を欺罔し騙取する、あなたのように税金を免れるという実行行為まで伴ってくるのはこっちに来るわけです。しかし、詐欺と偽りというのは本質的には、違いませんけれども、相当の違いがあるわけですね。詐欺と虚偽でも違うし、虚偽と偽りでも違う。もし何なら御参考のためにきのう漢和辞典を引いてきましたから、その内容までもお知らせしてもよろしゅうございますけれども、それだけの必要はないと思いますが、法律を見ても、詐欺罪、詐欺という明確なもの、これは法律的な用語ですし、法律的な構成要件というものが必要になってくるのです。虚偽あるいは偽りというのは、きわめて範囲の広い、ある意味では道徳的な、一般的な用語なのですよ。少なくとも国民被疑者としてものごとを処理していく場合に、きわめてあいまいな拡大解釈がきくこういうことばを使うべきか、あるいはできるだけ厳密に、どうしてもしようもないというようなものを対象として処分していくようにするか、これは行政府としてあるいは司法制度としてきわめて重大な問題になると思う。納税者は刑事被告人でもなければ犯人でもないのですよ。何でもない者を、ただ免れんとしたための罰則行為としてこういうことをしてあるのですが、刑法でさえもあいまいにして使わないこういうことばを、罪人でない国民に、偽りというようなきわめて拡大解釈のきくことばを行政上使うということは、きわめておそるべきことだと思う。これは堀委員等も専制的なということばを使われましたけれども、大蔵官僚、税務官僚のファッショ的なものをあらわしておると言われても言い過ぎではないと私は思うのです。  話を多少変えますが、いま資本主義社会ですね。皆さん方は資本主義政党の自民党からお出になっているわけです。資本主義社会は一銭でも一円でもよけいに利潤を追求するというのが資本主義制度の基本をなすわけです。一銭でも一円でもよけいに財物を、金をほしいとするならば、たとえば税金の場合でも税金が一銭でも安いようにと少なくともこいねがい、あるいはそういう工作をすることは全国民のひとしくやるところなんです。これは大蔵大臣といえども、あるいは佐藤総理大臣といえども政務次官といえども、その収入と国税庁に出しておる税金の問題を全部出してごらんなさい。これはわれわれ個人だってそうでしょう、あるいは税務当局の人でも——これはきのうある人から聞いた。おやめになったから名前を出しますけれども、池田さんが、税務署の給料が安い、こう言ったときに、東京の直税部長をされておったそうですが、なに、かまうことはない、出張旅費をうんと出せ、出張旅費を何とかすれば給料のカバーはできる、こういうことを言われた。現にこれは証人もいますよ、このときの税務職員の人や何かおるのだから。それはもう昔のことで時効にかかっておることだからいいの悪いの申しませんが、これだって一つ税金をのがれることですよ。これは社会主義社会になったって給料が高いという人は少ないでしょう。まして資本主義社会では一銭の金だってほしいのです。ためようとするのです。午前中から銀行預金の問題をお聞きしたのはそういうことです。それは何かというと、詐欺まではいきませんよ、偽りを言うことなのですよ。全国民、これは税法の前には犯罪人になるのですよ。全国民を対象として犯罪人にするようなこういう罰則規定を設けることは、正しいとお考えですか。またそれは資本主義制度否認になりはしませんか。皆さん方、どうです。重大な問題ですよ、これは。
  111. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 お説のとおり、人間は取るときは一厘でも多いほうを欲するし、出すときには一厘でも少ないほうを欲するものでございます。お説のとおりだが、税法のたてまえからいったら、出すのがいやさにうそ偽りを言って税を免れるということになれば、これはやはりいかぬ。ただし、その形態いかんによりまして、軽微なものであるとか何とかいうことで見のがすことは、それから、政策上こんなことくらいならよかろうということで不問に付することはあり得ることでございましょうが、理論の上から言えば、それは、さようなことはいかぬのだと言わなければいかぬと思います。  もう一つ、詐欺というのは、詐欺という一つの熟語でございますから、その内容を分析すると、先ほどから私が言ったように虚偽の事実を告げて相手方を欺罔におとしいれる、錯誤におとしいれる、こういうことでなければならぬので、ここで言う偽りというのは、虚偽の事実を告げというのと同じだろうと私は解釈いたします。そして、相手方を欺罔におとしいれて脱税という行為——結果をあらわした、こういうのでこの法律にはまるということに解釈していいものと思います。
  112. 只松祐治

    只松委員 しろうと論議ならこれはいいわけですよ。しかし、鍛冶さんも弁護士さんだ。私もそこいらの大学の法学部で勉強してきているのですし、それからこのために大学の先生や何かにもいろいろ聞いてきているのです。多少の勉強もしてきているのですよ。いわゆる立法者側として、全国民被疑者にするような立法のしかたは一これはそうでしょう。一銭でも安いほうがいいのですから、一銭でも安いほうがいいということは、だますこと、偽りを言うことなのですよ。一銭でも多ければ正直なのですから。しかし、少なくとも全国民被疑者にするような立法というものはあり得ない。また、してはならないのです。いまあなたが言うように、いや、それは軽微なものは裁量によって……。だれが裁量するのです。税務署が告発するのだから税務署が裁量する、税務署はいよいよ専制君主になるでしょう。しかし、少なくとも現在の民法上刑法上一つの詐欺罪というものがあって、厳密に詐欺の要件というものが法律上も慣習上も確立して、こういうものは詐欺だということで、そういう詐欺罪に相当するものを、税務職員を欺罔し云々でする場合には告発ということになるんでしょう。そうじゃなくて、資本主義社会制度において少しでも税金が安いほうがいいということをこいねがっておる国民、しかもさっき言ったように、片一方では免税、そういう特別措置をやり、片一方では金庫の中まで調べる。こういうときに、だれだってうそを言いますよ。うそを言わぬ人間がおったらお目にかかりたい。言ってごらんなさい。ぼくだってうそを言います。だれだってうそを言います。そういううそを言った者を、税務職員の裁量一つ、判断一つで全部ひっくくれるのですよ。そういう立法措置が世界にありますか。そういうことはいいと思いますか。これは三十七年につくったといいますけれども、三十七年当時ぼくは代議士じゃないから勉強してはいませんでした。その当時の不勉強もあるでしょうし、立法したときの趣旨なり討論をどういうふうにされたか、ぼくは知りません。しかし今日こうやって、いままである税法を変えるにあたって、根本的に変えるのに、偽りというような道徳的用語をもって全国民被疑者にするような、こういう拡大解釈のできる用語を使うということはきわめて危険なことですよ。少なくとも法律を多年勉強された鍛冶さんとして、あるいは大蔵省関係の役人諸君だって、これは技術者じゃなくて主として法律を勉強してきている諸君ですよ。そういう人々が全国民被疑者として拡大解釈できるようなことばを使うということは即刻やめるべきですよ。ぼくは百歩譲って、将来詐欺罪というものがなくなって虚偽罪とか偽り罪とかいうものができる。——日本の国語は非常にかたい。公明選挙ということばさえやめて明るく正しい選挙ですか、ということをつくったみたいに、詐欺罪というものをやめてうそ偽り罪をつくるなら、またこれはこれでいいのですよ、法律用語をそういうふうに統一していくなら。詐欺罪というものは厳然として残っております。詐欺の要件というものでいままで告発してきておった。今度はそうじゃなくて偽りという、先ほどから繰り返して言うようなこういうことばを使うということは、これはきわめておそろしいことです。そうお思いになりませんか。
  113. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 どうもあなたの考えと私の考えとちょっと違いますが、偽りによる不正行為、こういうことですね。偽りによる不正行為ということと、訴欺罪でいう、先ほどからいう虚偽の事実を告げということを違うというあなたの大前提から出ているようですが、私はことばは違わぬと思います。偽りの事実を告げ、そして免税、税を免れたものと同じだと思います。ただあなたの言われるように、こういうことをやると国民の多くが、やろうと思えばずいぶんひっかかるじゃないか、これは確かに相当考えなければなりません。だがそれはそうそう軽微なものまで一々ひっくくって歩いたり起訴したりするものじゃない。そこはやはり……。(只松委員「あるかないかは税務官吏の裁量でしょう」と呼ぶ)それならば、そういうことをやらぬように税務官吏を教育することが大事なことであって、それなるがゆえに法律できめちゃいかぬというわけにはいかぬ。あとはその行政に当たるものの裁量その他いろいろの実情から、実際において過酷にわたらぬようにするということは私は賛成でございますが、それなるがゆえにこれをやめてしまえということはちょっと問題だろうと思います。
  114. 泉美之松

    泉政府委員 ちょっと補足して御説明申し上げておきますが、御承知のとおり、刑法に詐欺罪という場合は「詐欺」の「欺」がだますほうの字になっておるわけでございます。ところで従来税法で規定されております「詐偽その他不正の行為により、」という場合の「詐偽」の「偽」は「偽り」ということばが使われておるのでございます。したがって、法令用語辞典にも、そういう「詐偽その他不正の行為により、」という場合の「詐偽」というのは、真実でないこと、いつわりのこと、というふうになっておるのでございまして、先ほど御答弁申し上げましたように当用漢字にないということから、従来の「詐偽その他不正の行為」ということばを「偽りその他不正の行為」というふうに表現を改めただけでありまして、これによって脱税犯の構成要件が変わるというのではない、したがって従来どおりの構成要件でやっていくのだということでございます。
  115. 只松祐治

    只松委員 たとえば破防法とか、政防法とか、こういうことに社会党は反対しますが、結局法律がそういういろいろな面にわたって国民を拘束してくるということに対して私たちは反対していくわけです。結局こういう場合は自民党なり皆さん方の立場からすれば、そういうものは犯罪要件になる、そういうことは好ましくないということで立法されるわけだが、納税というのは、これは社会党も自民党もないのです。ある意味では与党も野党もない。時の行政府が金を使うために取るのですから、やはり全国民ひとしく問題になると思うのです。だからこういう問題は、与野党とか、自民党とか社会党とかいう立場だけではなくて、もう少しすなおにものごとを考え、解釈していったらいいと思います。ぼくが繰り返し言っておることは、あなたがどんなに言ったって、詐偽というのは法律用語として解釈上も判例上もすべて確立してますよ。虚偽とか偽りというのはいままで道徳的には使われたけれども、法律用語としては使われてないと思うのです。したがってあなたが繰り返すように裁量によってとか、こんな軽いものはしませんよ、よほど重いものでないと。こういうように要するにいまから虚偽とか——虚偽ということばはここでは出てきませんけれども、一歩強めて虚偽とか偽りということばはいまからの運用によって出てくるのです。運用で、さっきから言われるように、いままでの詐偽ということばと同一に扱います、こういうことを答弁されております。しかしこれは国会での答弁なんですね。もし裁判でもあったときには、この国会の答弁なり論争というものは一つの参考には供せられますけれども、しかし厳密に裁判官は裁判官として、詐偽ということば、偽りということばでいき、全然その国会論議は知らない。あるいは五年なり十年なり二十年先に裁判になったときに、傷りという程度のことで国税庁が告訴したということと詐偽ということで告訴したのでは裁判所は全然違いますよ。あなたが判事なり何なりになったときに、いまだからこれは頭にありますけれども、将来において偽り程度で告訴ができるかということです。さっきから言うようにみんな必ず偽りをやっているわけですから。またその偽りの限度、百万を偽りというか、あるいは百万でもそれほど悪質でないから偽りでないというか、こういう判断をするのはどこかといったら、税務署がするんですね。ある場合一千万円でもそれほど悪質でないからということで——近ごろたとえば私のところにこういう話があった。一千七百万円の借財があったのを、形式上返したことにして、自分が持っている工場の借地権を担保というか、返したわけです。いままで担保に入っておったのを、本人は現金は一銭も入ってこないで、形の上では返した。しかし帳簿上は一千七百万円の売買をしたことになっているので、五百万円からの国税と地方税がかかってきた。本人は一銭も金が入らないで、あとで五百万円きて、たいへんだということで私のところに来た。それはぼくもどうしようもないなということでお帰り願ったのですけれども、これなんかも全然善意の——納めなければ脱税になる。まだ期限がきてませんが脱税になっちゃうのです。これもものの判断によって、一銭も金がありませんから五百万円なんてけしからぬということでやれば、ある意味ではこれくらい善意の脱税はないわけだけれども、金は全然もうけていないわけです。もうけた脱税より善意ですけれども、しかしこれを悪質だといって税務署員が告発すれば、これはきわめて悪質なものになる。これは要するに判断ですね。そういういわゆる行政官庁に判断をゆだぬべきようなことばを、少なくとも法律的にも使っていないことばを、行政官庁の判断にまかせる、こういうことはよろしくないというくらいのことはお考えになりませんか。
  116. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 議論しておってもしようがないのですが、いまの場合善意といわれたが、善意ならば偽るということはないのです。欺罔ということはないのですから、そんな場合にかってに起訴してたまるものじゃありません。そんなことをしたら、それこそそういうことをやるやつは涜職罪です。  それから、これはどうもあなたの大前提の偽りということと詐欺罪の欺罔ということと違うという、そこから出ておる議論は私はとらないのです。詐欺罪は、相手方を欺罔して財物を騙取したる者を詐欺罪というのですよ。これもやはり相手方を欺罔して脱税という行為をなしたる者を、税を免れるという結果を生ぜしめた者を罰するので、その点は私はたいした変わりはないと思いますが、この前使った「詐偽」ということばと、今日の「偽り」ということとそう懸隔のあるものとは私は思いません。その偽りを告げて相手を欺罔する、相手を錯誤におとしいれる。そしてその結果財物を騙取したら詐欺罪になる。税を免れるという結果を生じたときに、この税法によって罰せられることになる、こう解釈して差しつかえないと思います。
  117. 只松祐治

    只松委員 これで結論がつかなければ、いずれ法律学者を呼んできまして、詐偽と偽り、これは本委員会——国民に影響することですから、ひとつ先ほど平林君のほうから提案がありましたように、私としてもこの法案審議にあたって法律学者を参考人として呼んできて、詐偽と偽りというものが、いま政府側が答弁されておるように同一のものであるかどうか、全国民に、しかも犯罪者としてじゃなくて、善良な国民として納税する場合に、最も罰則の事項として関連してくる問題になってきますから、これはこのまま看過するわけにまいりません。あなたは弁護士さんですから詐偽と偽りのことばくらいはすなおに解釈されるだろう、こういうことで論議を進めてまいりましたけれども、それさえもわからない。こういうことであれば、ここでこれ以上やったって水かけ論でございますから、ひとつ法制的だけでなく——法制局はぼくらが見ておったって政府側に都合のいい答弁をするくらいのことは初めからわかっておるから、公平な第三者の一般的な法律用語を解釈する人に参考人として来ていただいて、これは普通のことなら別だけれども、全国民に影響する問題ですから、ひとつ一ぺん参考人を呼んでやりたいと思います。
  118. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 もう一ぺん答えますが、詐欺というのは相手方を欺罔して物を騙取したときは、それだけを詐欺というのですよ。欺罔するだけでは詐欺じゃないのです。相手方を欺罔におとしいれて、そして物を騙取する、これが詐欺罪なんです。この場合は相手方を偽りを言って欺罔におとしいれて税を免れるという結果を生じた、これが税法上における罰則の対象になる、この違いだけでございまして、ほかに私は、どうもそれ以上疑問があると言われればきりがありませんが、私は明瞭だと心得ております。   〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕
  119. 只松祐治

    只松委員 そういう論議はいままでずっとしてきましたよ。突き詰めていえば詐欺という用語は一番最初用語をお尋ねしましたように、あと速記録を読んでいただきたいのですが、詐欺という用語はいわゆる現行詐欺罪ということばもありますし、それから法律解釈もありますし、判例もありますし、明確ですというのです。これは確定した用語ですよ。しかし偽りということばは今度出てきたことばなんです。いわばこれは新語ですよ。新語は解釈によっていろいろ解釈が出てきます。しかも詐偽よりも虚偽——私はこういうのを読み上げなかったが、虚偽よりも偽り、こういうのが一般的に拡大解釈のできることばなんですよ。言語学上から言ったって。そういう拡大解釈のできるあいまいなことばを、刑法上でさえも使っておらない偽りということばを、一般国民が善良な国民が国家のために納める税金の問題の罰則について、こういうあいまいなことばを使う必要がどこにあるのですかと言っているのですよ。もし百歩譲って、今後詐欺罪というものをなくして偽り罪、虚偽罪というものをつくるならよろしゅうございます。しかしそうでない詐欺罪は詐欺罪として残って、偽り罪とか虚偽罪とか、そういう法律的にあいまいなことばは今後できないのですよ。できないとするならば、刑法上でさえも国民に適用しないそういうことばを、何で税法上使う必要があるかということです。いままで使っていたなら別ですよ。詐偽の偽の字をいままで使っていたなら別ですけれども、いままで使っていたことばをやめて、ことさらに拡大解釈できるように——それはぼくはほかの問題を全部、論じませんけれども、詐偽ということばはむずかしい、偽りということば国民に納得がいくからそういうふうにするというのだったら、ここの税法の中に山ほど残っているじゃありませんか。全部偽りということに変えますか。この税法を全部そういう当用漢字みたいにやさしいことばに変えますか。そこまでまた皆さん方が約束されるならば話はまた別になります。ほかのところにわけのわからぬ——この前聞いたら、あれは法律に書いてあるから、税法のことはわからない——そのとおりだ。私もわからない。そういうことばがたくさんまだ全文改正の中に残っているのですよ。なぜ罰則のところだけ拡大解釈できることばを使っているのですか。
  120. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 これは御説のとおり、難解な文字はできるだけわかりやすいものに変えることは私は好ましいことだと存じます。しかしながら、なかなかそう一々やるわけにいかぬからなんですが、ただ先ほどから言われるが、「偽り」ということばは非常に意味が広くて、何か「詐偽」と違った意味に解釈をされるように言われることが私には納得がいかないのです。偽りということはうそをつくことですよ。(只松委員「うその要件を言ってください」と呼ぶ)真実にあらざることを告げるということです。真実にあらざることを告げる、それで解釈されるといって、真実を言ってもこの法律が適用になるということなら、これはたいへんでございますが、真実にあらざることを言ったらいかぬぞ、こういうことで私は明白だと思いますが、そのほかにどうして拡大解釈ができるのか、私にはわかりません。うそを言えばということです。
  121. 泉美之松

    泉政府委員 補足して申し上げますが、先ほど申し上げましたように、この罰則規定は私どもがやっておるのでなしに、これは法務省の刑事局と法制局のほうとお打ち合わせの結果、三十七年以降の新しい法律におきましては、「詐偽」の「詐」という字が当用漢字にないということからいたしまして、従来「詐偽その他不正の行為」ということばを用いておったのを、すべて「偽りその他不正の行為」という表現に改めておるのでございます。ひとり税法だけでこういう表現を用いておるのではなくて、最近つくられております法律での罰則規定はすべて「偽りその他不正の行為」という表現になっておるのであります。
  122. 只松祐治

    只松委員 これは押し問答をしてもなかなか尽きないわけですから、私は理事にも、法制局もけっこうでございますが、法制局はつくった側の立場だから当然にこういう解釈をするのは結論を聞かぬでもわかっていることだから、これだけ全国民関連のあることでございますから、ひとつ法学者を呼んでお聞きすることをお願いします。(「反対」と呼ぶ者あり)反対なら国民にそういうことを明らかにすればいいので、私は犯罪人でもない国民がこういう危惧の念を持つ問題については、できるだけ綿密に厳格な用語を使うべきだ、またそういう罰則を拡大解釈したり重くすることによって納税義務を推進する、こういうことではなくて、むしろ罰則はなくてもこういうものは民主的な方法、税の民主化によって納税を進めていく、こういうことが本来の徴税のあり方だと思う。したがって、むしろ拡大解釈できるこういう形については私はまっこうから反対でございます。ひとつこのことを強く要望しておきます。自民党のほうで、そういう拡大解釈する文章に賛成だ、そういうことを論議することさえ反対だとおっしゃるなら、けっこうなことですから、これは国民の前に堂々とわれわれは明らかにいたします。それで委員会が流れたり法案が流れたりすればけっこうなことでありますから、幾らだって私は受けて立ちます。私は強くそのことを要求いたします。
  123. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 先ほどから何べんも申し上げますが、あなたが拡大解釈できると言われることが私はわからない。ほんとのことを言っておっても偽りだといって引っぱられる、こういうことですが、そんなばかなことがあったらたいへんです。みんなうそを言うて相手をだますということです。その点は一つも私は変わりはないと思う。それが、どうも拡大解釈できるという大前提であなたが出てこられることにちょっと食い違いがあるので、もし偽りといって拡大解釈ができれば、どのような解釈ができるのでしょう。うそをつかないでも偽りと言われるということがあるのでしょうか。そんなことは絶対にないと思う。
  124. 只松祐治

    只松委員 そこまでいくなら、前に書いた詐偽の偽と詐欺罪の欺と、ここから全部やらなくちゃなりませんが、詐偽及び不正というのはどっちがほんとうかということになれば、そういう用語をここでこれ以上論議しませんけれども、いわゆる詐欺罪というものは、さっきから言っているように、他人を欺罔し財物を騙取しといって、法律的にも、解釈的にも、それから判例的にも、すべて現行日本の刑法、民法、いわゆる法律体系の中に入っておると思います。ところが虚偽とか偽りというのは、刑法上ももちろんですが、民法その他にもないことばなんです。それで言われるのは、当用漢字として新しく法制局あたりで使っている云々ということばですけれども、いまの刑法上なりにはないのです。こういうないことばは拡大解釈される危険性があるというのはどこだってそうですよ。偽りというのは、偽ること、事実でないこと、当てにならないこと、こういうことで非常に簡単です。それから詐欺の場合、偽ることというだけでなく、偽り欺くこと、他人をだまして錯誤におちいらせる違法行為というのが漢和辞典に出ている解釈です。いわゆる法律用語としてでなくて一般の文章の解釈上でも、片方はこのくらい単純に書いてある。偽りということは俗に言えばうそということです。うそを言っただけではすべて違法行為にならないのです。税法の場合は、うそだけでなくて、うそ、偽りを言って税金を納めないように、こういうことになるわけです。しかし、単にうそを言って納めないようにということと詐欺によって他人を欺罔までしてするということとはおのずから違うということはおわかりになりませんか。弁護士さんならそのくらいのことは——たとえば「私権ノ享有ハ出生二始マル」ということばが民法の第一条にありましたでしょう。私権とは何ぞや、享有とは何ぞや、出生とは何ぞや、出生にも露出説から発声説から全部あるでしょう。法律用語というのはそのくらい厳密に解釈されるのですよ。単に国語辞典として引っぱってきてしたってこのくらいの相違があるのです。法律用語というのはそのくらいの差異があるということは、少しでも勉強した人なら御承知のとおりでしょう。したがって、まだこういうふうに解釈が一致しておらない、いまから使うというようなことばを、刑事犯罪や何かなら百歩譲ってもいいですよ、しかしこうやって善良な国民が納める税金に対して新しいことばを使う必要はないのじゃないか。刑法上やら民法上、詐欺ということばは当用漢字でないからということでこれがなくなってきて、偽り罪とかなんとかいうことばが法律用語として出てきた後に、こういう国民が納める税金の問題として使われるというのが、むしろ私は国税当局のあり方であっていいと思うのです。こういう法律上きわめてあいまいなことばを進んで使う必要はないだろう。刑法上さえもまだ使っておらないことばを使う必要はないのじゃないか、こういうことを言っておるわけであります。
  125. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 どうも、あなたのおっしゃるのと私の言っておるのと違っておるのでわからなかった。いまあなたのおっしゃったことでわかりました。詐欺というのはうそを言って相手を欺罔するのだ、しかるにこれは偽りだけだから、こう言われるが、この場合でも偽りを言って相手方を偽罔して、そして税を免れるという結果は一つも変わりはない。そこをあなたは変わりがあるものと自分でおっしゃるのだからどうにもしょうがない。変わりはありません。明瞭に私はここで責任をもってお答え申し上げます。変わりはありません。財物を騙取するということと、税を免れるということとは違っておるわけです。それだけを明瞭にしておきます。
  126. 只松祐治

    只松委員 いま、現時点において、たとえば違法行為で国税庁が告発したとしても、これだけこの解釈について論争したわけでございますから、裁判所でやった場合には当然にこれは証言になりますからけっこうだと思います。私はしたがってそういうことはさっき泉さんが言っていたから理解しているのですよ。しかし立法というものは、将来にわたって、われわれのいろいろな昔の経験からいっても、立法のときはそうでもないものが、盛んに法律を適用されて投獄されたり何したりすることがあったことは御承知のとおりだ。これは何年かたちますと、法律はいろいろな解釈というものが出てくるわけなんです。したがって制定のときには、その制定の衝に当たった者というものは、これはできるだけ国民にそういう被害がいかないようにしかも私が繰り返し言うように刑事被告人なら別として、納税者は刑事被告人ではないのですから、したがってむしろ自分の勤労した、働いたものの一部を国家に税金として納める、こういうきわめて積極的な善意の立場に立つわけですから、こういう人々に被害を与える、こういうことのないようにするのが当然だと思うのです。あなたはさっきから政府側に立つから、初めは答弁が多少違って、だんだん高姿勢になってきて、こうだと解釈します、初めは詐偽とうそとは違う——あと速記録を見ればわかりますが、そうおっしゃっておられる。私はまだそう思っておるのですからね。そのくらい疑念のある問題については、これはやはり国民の側に立った法にしてやるのが私たちの任務だと思う。そういうことで非常に強くこのことを繰り返し言っておるわけなんです。それでいま解釈をいただきましたので、当面はそういうことで済むと思いますが、ひとつこの点に関しては、理事会等で相談していただいて、この解釈をもう少し明確にしていただきたい、このように思います。  それでは予鈴が鳴りましたので、私はこれで一応中止いたします。
  127. 吉田重延

    吉田委員長 本会議散会後本委員会を開催することとし、暫時休憩いたします。    午後一時五十五分休憩      ————◇—————    午後三時十八分開議
  128. 吉田重延

    吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。平林剛君。
  129. 平林剛

    ○平林委員 きょうは所得税法並びに税三法の問題につきまして総理大臣のお考えお尋ねしたい、同時にまた私どもの希望を述べまして、政府の施策を充実してもらいたい、こういう意味で若干の質問をいたしたいと思うのであります。  最初に私お尋ねいたしたいのは、総理大臣がかつて自由民主党総裁候補の一人であったときのことばであります国民税負担をできるだけ少なくするため、所得税を中心に初年度三千億円の減税を実行したい、これは昨年七月の自由民主党総裁選挙のとき、総裁候補の一人として現内閣総理大臣佐藤榮作氏の述べられた抱負、約束であります。この佐藤榮作氏が、今日ときめく内閣総理大臣になられまして、内閣を組閣し、そして法律案を提案いたしました、今日審議しております所得税法案その他一環の法律案であります。ところがこの国会提出をされた所得税法案は、初年度八百二億円、平年度において九百二十二億円でございまして、三千億円とはけた違いであります。総理は池田路線を継承いたしましたので、私はうそを申しません、と言った総理大臣であった池田さんの路線も継承されたはずでございますけれども、この点はどうも違うのじゃないか。しかしこの三千億減税につきましては、一体どういうふうになったんだろうか、私は国民は、今日の税負担の現状から見まして、この約束を決して忘れないのではないかと思うのであります。  そこで、この問題はすでに予算委員会におきましても、あるいは本会議でも、参議院の審議段階でも、総理に対して執拗な追及が行なわれました。私もこの際ここで何回も取り上げるのはどうかと考えたのでありますけれども、御承知のように、総理はかつては大蔵大臣をおやりになって、税の問題につきましては、いささか専門家になっているのじゃないか。そういう意味から考えますと、軽率にこの三千億円減税ということをおっしゃったんでない、私はそういう立場において、さらに追及をする必要を感じておるわけでございます。初年度であるとかないとか、初年度ということを言ったとか言わないとかは今日追及しません。初年度三千億円なんて言った、それは言わない、新聞で責任は持たないということに追及しません。これはもう論外にしているのです。しかし私が聞きたいのは、大蔵大臣の経験もあり、政治家としても一流の佐藤総理が、三千億円減税をおっしゃられたときの構想はどんなものであったか、これを私はきょう聞かしていただきたいと思うのであります。
  130. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお尋ねにありますその点は、私は、御指摘にもありましたように、予算委員会あるいは本会議また参議院等でしばしば申し上げております。御承知のように、ただいまの国民負担、なかなか重いこの負担軽減したい、これを端的に表明した。ただいまも初年度に幾らだとか、そんなことはあまり言わぬとおっしゃるのですが、確かにあの表明をいたしました際には、初年度とも二年度とも言わない、二年かかったとか三年かかったとか言わないで、三千億減税、ただいまの減税をしたいということを端的に表明しますためには、やはり数字が要る。そういうことで、そのとき数字を出したわけであります。これが一年にいきなり実現しないということで、たいへん私は公約を履行しないというか、そういうような意味にとられておりますが、私は、国民の皆さまは、佐藤は、国民負担を軽くしよう、こういう意味でああいう表現をした、専門家もついてなかったからということで了承してくれているんじゃないか、かように思っております。しかしことし減税をいたしました金額は、おそらく平林さんは実情をよく御承知でございますので、政府はよくこの際にあそこまで思い切って減税した、かようにほめていただけるんじゃないかと思います。政府の腐心、努力は買っていただいてもいいんじゃないか、かように私は思うのであります。この種の問題は、一年だけで片づける趣旨のものでもないでしょう。これは二年も三年もかかって、そうして負担軽減する、そういう方向への努力を続けていきたい、かように思います。
  131. 平林剛

    ○平林委員 私はそれだけじゃ満足しないのです。なぜかというと、それはいまの国民税金が重いから軽くしたいというお気持ちはしばしばの答弁でよく承知しております。それはぜひやってもらいたいと思う。またやらなければ国民の生活というものはこれはたいへんなものでございますから、やってもらいたい。それから同時にまた、今度の税法についてはあらためて審議をしてまいりますから、あなたがおっしゃったとおり大したものであるか、そうでないものであるかはこれから明らかにしていきます。そうじゃないのです。私の言うのは、総理が当時おっしゃった三千億円減税というものには、気持ちとかなんとかいうものじゃない、数字です。これは具体的な数字になっておるわけですから、いや、それは思いつきで言ったのであるか、あるいはこれはこういう構想で私も相当検討して初年度にできるかできないかくらいのことはわかってしゃべった、とこうおっしゃっているのですから、それならばその構想をおっしゃっていただきたい、具体的数字で出ているのですから、私はそういう点を、ほかのしろうとの政治家が言うたならそんなに追及しませんよ。私は総理はしろうとでない、そう考えているから具体的なその構想をお述べになっていただきたい、こう言っているのです。
  132. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げたとおりでございまして、それより以上に具体的なものは持っておりません。またただいま御審議をいただいております法案と私の構想とは関係がありません。
  133. 平林剛

    ○平林委員 ちょっともうそれ以上あなたに言っても、言えない。そうすれば、これは具体的なものでなかったということですね。私はこれは総理、といたしましてははなはだ軽率な御発言であると思う。まだこれからあるのですよ。あなたぴんとくるやつが一ぱいあるんですよ。これはまだ序の口だ。私は総理がいまお話になったとおり、三千億円減税と言われたのは、いろいろな財政経済その他を十分検討したらできなかった。はなはだ軽率なものであった、こういうふうにおっしゃっていただければすなおに受け取りますけれども、そうでないとすれば、私は具体的な構想を伺わなければならぬわけであります。いまちょっともうこれ以上ノー・コメントのような顔色を見せたからこれ以上追及いたしません。国民はこれであなたのおっしゃった三千億円減税の正体を見たでしょう。ですから、これ以上追及しません。  そこで問題は、今回提出をなさいました所得税法の案を見ますと、先ほど私が申し上げましたように、初年度八百二億円、平年度においては九百二十二億ということでございまして、きわめて離れた数字であることは言うまでもありません。ところが私どもは、この所得税法によっては少しも国民生活によい影響を与えないばかりか、この程度の減税でございましては、総理がしばしばお話しになっておるような財産づくりなんというのはできない、こう思っておるわけであります。たとえば国民は消費者米価の改訂によりまして、昭和三十九年度においては約六百三十五億円、四十年度においては約九百三億円、これは消費者の負担になるわけでございまして、三十九年度を会計すれば約千五百三十八億円というのが国民負担の増加になっておるわけであります。これを所得税減税と比較いたしますと、もうこれだけで国民負担の増加が、あなたが総理大臣におなりになってから増加されておる。そこへもってきて、医療費の増加によりまして、国民負担の増加はどうであるかと見ますと、これまた昭和三十九年度においては、保険の負担五十三億円、患者負担が三十億円、合計約八十三億円、昭和四十年度においては保険負担が四百二十三億円、患者負担が百五十六億円でございますから、これまた五百七十九億円、これが国民負担の増加になっておるわけであります。加えてかりに物価が上昇するということに相なりますれば、政府の計算によりましても、今後おそらく四・五%という物価の上昇を見込んでおるようでございますが、実質的にはそれ以上の増加ということになるのではないか。これもあわせて考えますと、今回おやりになりました所得税減税によりましては、何ら国民は得るところがないということになるわけでございます。おまけにバス、水道料金などの公共料金が引き上げられるということになりますと、これも国民負担になってくるわけでございまして、私は、総理がもし国民負担の現状から考えてなお引き続き減税をしたい、こうおっしゃるならば、またその努力を重ねたいとおっしゃるならば、しからば来年度は一体どうするか、こういう程度の御言明があってしかるべきものだと思うのであります。私の三千億円減税に対してむっとした顔をして、これでもうあと言わないというよりは、むしろ積極的に、いや今度はこうだったから、それなら来年度はこうだと、具体的な御言明をなさるというのが、私は国民の期待にこたえるものでないかと思うのでありますが、その点はいかがでありますか。
  134. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 来年の数字はまだ言えません。これは減税はしたいという気持ちはわかりますけれども、また、そういう努力はいたしますが、財政の問題でございますから、十分見きわめて、しかる後で具体的な案はつくるということでございます。ただいま言えません。
  135. 平林剛

    ○平林委員 しかし、三千億円減税とおっしゃられて、今回八百何億円おやりになったのですから、そういう意味では、総裁の任期は二年、まあ総理はずっとおやりになるにいたしましても、やはり自分の言明についてのケリはつけなければいけない。そういうことを考えますと、来年度は少なくとも一千億円以上減税をしなければ、いよいようそを申しませんということの踏襲にはならぬわけでございましょう。そういうことを考えれば、いまは言明できないとおっしゃるけれども、やはり政治家は所信を貫いて、一たん自分の言明なさったことについてのケリはつける、こういう態度がなくてはならぬと思うのですが、いかがでしょう。
  136. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げますように、数字でございまするから、今日ただいま申し上げるわけにまいりません。
  137. 平林剛

    ○平林委員 どうもたいへんおかたい態度でございまして、まあある意味では慎重になって、うっかりしたことを言うとこれはたいへんだということで、貝のように口を閉じられるわけでございましょう。しかし私は、もう一つ心配しておることがあるのであります。いずれにいたしましても、政治家としての約束は果たさなくてはいかぬし、国会で申されましたように、積極的減税の努力をしなければいかぬ。われわれも黙っちゃいませんから、国民税負担の現状からこれを追及していく。これは何回も何回も、あなたが総理大臣である限りやるつもりでございますから、何回でも続いていくわけです。そうすると何とかせにゃならぬということになるわけです。これは総理大臣もきっとお考えになっていると思う。  私、そこで心配するのは、隣にいる田中大蔵大臣の最近の言動なんであります。なぜ心配かというと、税法審議段階において田中大蔵大臣がこのごろおっしゃっているのを傾向で見ますと、間接税の増徴ということをしばしば述べられておるわけなんです。たとえば、この間も参議院の段階において、 ガソリン税の例をお話しになりまして、昭和二十八年当時はガソリン税は大体二百数十億円だった、ところが現在ではもう二千八百億円をこえておるではないか。つまり税の負担能力のあるところからこういうものをとっていくというような考え方は決して悪いことではない。こういうことをしないと日本の税制の進歩はない。これは田中大蔵大臣のお考えです。非常に率直な意見で、話題を提供しておるわけでございます。私は、総理大臣がいま苦境に立っておるものでありますから、知恵袋のような田中蔵相が、これは何とかせにゃいかぬということで、そのアドバルーンとして上げているのがこの間接税の増徴というようなことでないかと思うのであります。非常に警戒すべきことでございます。同時に私は、これに派生して考えられる問題は、売り上げ税の創設というような問題でございまして、こういうことを考えると、幾らでも増徴できるわけです。この財源をして所得税減税に充てようなんという考え方が、政府部内から、しかも有力な政治家であられる田中大蔵大臣からも、出てくるのでないかということを私は心配するわけでございます。そこで、この問題について私の心配は、一体当たっておるか当たっておらぬか、総理大臣はこういう問題についてどういうように考えておるか、ひとつお考えを明らかにしてもらいたいと思います。
  138. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私が間接税を増徴するという前提のもとでお話をしておるのではございません。この席からも申し上げましたが、減税をしたいということは、総理大臣は三千億ということを言われましたが、三千億の減税もしたいという考え方は持っております。いままでは毎年毎年減税をやっておりますけれども、十年間累積すれば幾らでございますとか、また諸外国に比べて見て、国民所得に対する税負担率は必ずしも高くありませんとか、そういうお答えはしておりますが、すなおに見るときに、何とかして所得税を中心にした大きな減税をしたいという考えは、あなたに劣るものではないわけであります。もちろん毎日毎日攻撃を受けておる私の立場になれば、あなたが企図するものよりももっと大きなものをやりたいというくらいの気持ちがございます。しかし減税をするということになりますと、歳出要求を押えるか、もしくは他に財源を得るかということしかないわけでございます。他に財源を求めるとすれば、一つは国債のような内国債を出して、一般会計の財源として財源を得るということか、もしくは税制の合理化といいますか、よりいい税制があるならば——あなた方はよりいい税制ということに対しては、特別措置を排除して財源を得る、こういうのですが、角をためて牛を殺すということもできません。他にもうないかということを考えることは、これは自然だと思います。でありますから、私が間接税−逆進性の強いといわれておる間接税を必ずしもいますぐ増徴しようというのではございませんが、税制改正というものは、いま四十年度税制改正の御審議をいただいておりますが、絶えず減税ということは頭にありますから、自分の思うことを言って、あなたから反撃を受けるということで、こういうことでわれわれもより勉強するわけでございますので、こういう問題に対して大蔵事務当局と私との間でも、まだ議論を詰めておるわけではありませんし、私自身もいま間接税を増徴しようという考えではございません。ただフランスやイタリア、こういうところが間接税にウエートを置いておるので、いまの間接税と直接税との比率を絶対変えてはならないというような気持ちであってはならない。しかも、また過去において取引高税でもって失敗をいたしましたが、しかし取引高税というのはちょうど時期が悪かったというような議論もありますから、もう一ぺん検討してみるということは、何も悪いことではないと思います。  そういうことで私の考え方を申し上げておるのでありまして、総理大臣に来年度からの税制改正に間接税を重点にいたしますというようなことを報告もしておりませんので、総理大臣から私の発言に対して見解を求められても、私自身がまだ確定的な気持ちも持っておりませんし、私の答弁でひとつ御了承を願いたいと思います。
  139. 平林剛

    ○平林委員 総理もお聞きのとおり、私ら心配している点はそこにあるのです。財源がないということから、売り上げ税の創設であるとか、間接税、物品税をはじめその他の増徴をはかることによって、所得税減税をやるということは、私先ほど指摘いたしましたように、米価やあるいは医療費や物価の上昇分を引き去ると何も残らないと同じように、形式的な減税にすぎないということになるわけでございます。私は、総理がおっしゃっておる国民負担の現状から見て、引き続き減税はせにゃならぬという場合には、そっくりきれいな気持ち減税をやってもらいたい、こう考えるのですが、その点はどうでしょうか。
  140. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま私が言っております減税、これはほんとうにきれいな意味負担を軽くしたい、こういうつもりでございます。先ほど来三千億にこだわっていらっしゃるようでありますが、そういうものが、端的に数字で出さないとみんな了承してくれないので出した、それを先ほど来責められております。そこで、ただいま申し上げるように、他で上がっておれば困るじゃないか、あるいは公共料金が上がったとか消費者米価が上がったとかこういうことと、それが一緒になるかどうかということは、議論を進めていけば、私は、物価も公共料金も上げないで、何もかも上げないで減税だけされればこれにこしたことはないと思います。しかしこれはやはり賃金は上がりますし、お互いの生活自身も向上してまいりますし、そういう意味の支出のほうはふえるのだ——これはどうもあまり言われないで、やはり税制の上で安くなったかどうか、こういうようにとっていただきたいと思います。これがすなおな行き方だ。ただその場合に、ただいま問題になっております間接税、直接税それが一体どうなるのか、これは各国によりましてそれぞれ行き方が違っております。まあ日本のように間接税を従にしておる国と、フランスやなんかは違っておるということです。これはやはり国民になじみやすいといいますか、国民がなれている税制でないと困るのです。過去において取引高税が失敗したのもそういうところだろうと思います。だからこれは一面から申せば、所得税中心に減税をやるといった、財政上困るから片一方間接税で上げたと、これではあまり一なるほど受けるほうの、支払うほうの国民から見ますと、そこが直接に支払うものと、間接に支払うので受け方が幾らか違うと思う。だが議論を進めていけばどうもそこらは同じじゃないか、かえって国民になじまない税制が今度は幅をきかすようになると、それは困る、こういう議論も立つだろうと思います。だからそういうことはあまり考えないでただいまの間接税と直接税の比率は、日本ではこれが好ましい状況じゃないか、かようにいわれておりますから、すなおにそのとおりとったらいいだろう。ただ問題は、国の財政そのものがはたして減税が可能なような状況になっておるか、これはひとり歳入ばかりではございません。支出、歳出の面も同時にからんであるわけでございます。したがってそういう意味から減税をしたいといいましてもなかなかすなおに一足飛びに幾ら減税をするということは言いにくいのです。これは、佐藤は軽率にものを言うからぜひともこの際言質をとろう、こういうことでお責めになるかもわかりませんが、ただいま年度末、そういう際に四十一年度審議をする、その予想を立てる、これはちょっと専門家でも無理なんですよ。ましてやしろうとである私にはちょっとできにくい、その点は御了解をいただきたい、かように申しておるわけです。
  141. 平林剛

    ○平林委員 しろうとなんて頭を下げられてはあとが続かないのです。やはり私はそう考えておりません。総理は前にも大蔵大臣をやられ、通商産業大臣もおやりになり、これはそのほうのベテランであるという理解のもとにやっておる。  もう一つ、それでは私、頭を下げてもらうついでにもう一つ下げてもらいたいことがあるわけです。すなおに下げていただければ私、あと追及しないつもりでありますが、これは今回政府が提出をされました昭和四十年度における税制改正の要綱は、税制調査会答申をいたしました「今後におけるわが国の社会、経済の進展に即応する基本的な租税制度のあり方」この答申をゆがめておるのではないか。また「昭和四十年度税制改正に関する答申」に対してもこれを尊重しているとは言いがたいのではないか、こう思うのであります。  この点は昭和四十年度だけをちょっと参考に申し上げますと、税制調査会昭和四十年度における所得税減税は初年度八百九十億円、平年度千二十五億円でありましたのに対して、政府案では初年度八百二億円、平年度九百二十二億円でございますから、ここに初年度で八十八億円、平年度において百三億円削っておるわけです。  利子所得の点におきましても同様でありまして、源泉徴収税率現行五%から一〇%に引き上げる、二〇%の税率による源泉選択制度を創設すると答申にあるのに、政府案では一〇%についてはそのとおりでありますが、非課税限度額は現行五十万より百万円に引き上げると変わった措置をおやりになりましたし、配当所得に対する源泉徴収税率の特例につきましても答申と政府の考えとは相反するものをきめてしまいました。この昭和四十年度における税制改正一つを取り上げてみましても、どうも税制調査会答申を尊重していないのじゃないか、私はこう思うのでありますけれども、いかがでしょう。
  142. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府はもうかねてから尊重しておる、かように申しておりますが、この尊重、あるいは尊重してない——見方によりましては御非難も多々あるのじゃないか。政府はかねてから申しておりますように、大筋においてはこの調査会の線を守っております。ことに長期にわたっては増収分の二割程度を減税に振り向けるということを言っておる。しかしこれは正確に言えばことしは二割になっていない、一九%、こういうことですが、しかしこういうような数字は単年度で言うべきものではないだろう、かように思いますので、過去の実績等から見ましてもまあ大体自然増収分の二割、この辺が減税に振り向けられる、また今後もそうだろう、こういうふうな期待が言えるわけであります。また所得税を中心にしてという、そういう意味減税も今度七五%が所得税だった、かように思いますが、さような点を考えますと、やはり大筋は政府は十分尊重しておる。ただ行き方といたしまして今回は利子、配当等について特殊な措置をとったものですから、これはどうも税制調査会と全然別な行き方をしておる、こういう意味で批判を受けておるようですが、問題はやはり大筋、それを一体どういうように盛っておるか、そういう大まかな議論をひとつしていただくと、政府もでたらめを言っておるのではない、十分尊重をしたのだ、かように御理解いただけるのではないか、私はその点を特に申し上げるわけでございます。
  143. 平林剛

    ○平林委員 今日まで政府と私ども同僚議員との論争の中でこの問題についてやりとりしておりますけれども、基本的におおむね尊重したという、たてまえをとっておるというのは田中大蔵大臣ですね。おおむねということばとたてまえというのが入っておる。それから大体尊重している。大体ということばが入っておる、こう御理解を願いたい、無理に理解してもらいたいというふうにお願いが入っておる、こういうようなのは尊重にならないのです。いま総理も大筋においてという、これが入らないと尊重ということばを使わない、それだけ良心的であるということは言えると思うのです。そういうことばをお使いになって粉飾をされて、そうして尊重しているということばをお使いになろうということは、私はそれだけ正直であると思いますけれども税制調査会答申からは離れているのです。いま大筋において合っておるとおっしゃいましたけれども、少なくとも利子所得に対する課税の特例と配当所得に対する課税の特例については大筋において相反しておるのです。総理大臣その点の御理触が少し違うのではないか、大筋において相反しておる、私はこう考えるのでございます。  たとえば貯蓄増強の必要性を私どもは認めますけれども、しかし利子所得課税の特例が今日まで総理やあるいは政府がお考えになっておるように、貯蓄奨励の役割りを果たしておるかというとそんな役割りはちっとも果たしていない。政治的効果はない。税制調査会の資料によりましても、昭和三十四年度は利子所得課税の特例を圧縮したのにかかわらず、貯蓄のほうは昭和三十三年の一兆百八十七億円より三十四年は一兆六千億円と大幅に伸びておるのです。つまり利子所得に対する課税の特例を圧縮してそれを少なくしたのにかかわらず貯蓄のほうは伸びておるのです。その逆に昭和二十八年は利子所得の課税の特例を拡大いたしました。ところが貯蓄の伸びを見ると、昭和二十八年が五千五百二十二億円であるのに対して、昭和二十九年は五千五百十一億円と鈍化しておるわけです。つまり今日までの預貯金の傾向を見ますと、税制の優遇措置関係もなく推移しておる、こういうようなことになっておるわけでありまして、私は今回利子所得課税の特例について税調と相反した方向で政府がおとりになるその理由が貯蓄の奨励だといっても実績はそうではないということを考えますと、これは政府のおとりになった解釈というのは、政府が自分の責任でおやりになる、こういうたてまえなんですね。もしこれはおれの責任でやるんだ、こうおっしゃるならまたこれは次の経過を経て、そうしてその責任についておとりになればいいわけです。ところが税調を大筋において尊重してやっているんだという理解のもとでこういうことをおやりになるというのじゃないのじゃないですか。いかがでしょう。
  144. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど説明したとおりでございまして、私は今回調査会の松隈さんにも会いその他の方ともいろいろ懇談をいたしました。本筋といいますか、本筋は尊重したということであります。先ほど来申し上げるように、所得税中心だとかあるいは金額等におきましてもそういうことはやっておる。ただ税調のほうで全然触れてないものが取り上げられたというような意味でただいまのような御議論がございますけれども、私はこういう事柄はやはり税調税調だが、政治的にはやはり処理すべきことだ、かような判断をいたしたわけであります。それが税調を尊重しない、こういうことではない、これは十分尊重しておるということでございます。
  145. 平林剛

    ○平林委員 私も約束の時間がありませんから、最後にもう一つだけお尋ねをして終わりたいと思うのでありますが、今日までこの問題について議論をしてまいりましたが、それに対して田中大蔵大臣はじめ総理のお答えは、税制というのは時代に即応して経済情勢に合ったものにしていくというのをたてまえとしているんだというお考えがしばしば答弁の中にあらわれてくるわけです。そういうお答えなり御議論であれば、その税制調査会も社会、経済の推移に即応した税制を三年間にわたって研究をしてその結論を出したわけでございますから、私は今回政府がおとりになった二つの、特に資産所得に対する課税の特例は独断的過ぎるのじゃないか、これはすみやかに是正をしていかなければ、大筋においても反しておるという見解をとっておるわけであります。そこでむしろ時代やあるいは経済、国民生活の現状に即して税制考えるということを、百歩譲って考えるならば、私はむしろこういう情勢においては、たとえば私どもの同僚の有馬委員が提唱しておりますように、教育費の免税のようなものをおやりになる——今日教育費が国民負担に占める割合というのは漸次大きくなりまして、大学に入るにも相当のお金がなくちゃならぬ。教育の機会均等というものがございましても、これはこわれておる。高校に入るにせよ、私立、公立に入るのにいろいろ手をかけてやりますから、お金がかかるようなときであります。こういうときに教育費の負担増等のことを考えて、これはひとつ教育費の免税というのを考えたらどうか、こういうようなことはむしろ私はそのときの実情、国民生活に密着した税の措置考えられるのであります。  それから医療費がこう高くなりまして、これからも何%か上がるということになりますと医療費の増徴はたいへんであります。そこで今回も政府は医療費の控除について若干の訂正をしてまいりましたけれども、これは一つの限度額がございます。そこで私はこういう限度を設けないで、そうして国民が医療負担をしたものについてはこれを減税控除をする、こういうようなことをおやりになるとか、あるいはまた最近のように土地の値上がりが激しい、これが物価に与える影響が大きいということをお考えになりまして、土地の値上がりを防ぐための税の公課を考えるとか、こういうようなことをおやりになるということがむしろ時代、経済に即応した税制あり方として研究してしかるべき方向だと考えるのでございますけれども、こういう三つの考え方につきまして、総理のお考えはいかがでしょうか。
  146. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この税のあり方といたしまして、税の原則というものがあります。公平の原則だとか、あるいはそういうものが随時かってに融通性を持たないというものでなければいかぬというそういうような税の原則があるが、同時にまた社会党の皆さんからもこういうものに対する対策は税制、金融同時に予算、その三方面からやれということをしばしば言われる。こういうものといわゆる税制あり方というそのたてまえ論とはしばしば矛盾するのです。しかし実際の行政の面からはとにかく税でも何とかしてやりたいという気持ちがある。これは政治家としても当然のことだろうと思うのです。今回処置する場合におきましてもそういうようなものだと考えますと、非常に期間を短かくしてそうして特例措置をする、それもしかも国会で十分御審議をいただいて、そうしていわゆる税の原則を乱らないように、そういうたてまえでやるということになるわけです。今回の処置はただいま私が申し上げるような基本的線の御了承をいただくならば、これはひとつ了解してやろうかというようになるのじゃないか。ただいま申し上げるように原則論そのものからいって例外に属する、かような意味で例外的措置をするんだ、そういう例外的な措置をするだけの理由があるかどうか。今日あるいは資本市場育成強化したいとか、あるいは貯蓄を増強したいとか、あるいは輸出を振興したいとか、こういうようなことが経済の面ばかりじゃなく政治的な要請でもある。こういうような場合に、政府がただいま申し上げるような措置をとる。もちろん国会の御審議は経なければならないし、また税制調査会の御意見も聞かなければならない。税制調査会がそれに反対をされましても、やはり実情等を見まして、これは国会の御審議を願ってそうしてきめたい、こういうものが政府に出てくるわけです。まあ、ただいま申し上げるのがそういう特例だということを御了承いただきたいと思います。
  147. 平林剛

    ○平林委員 三つの問題についてお答えがいまなかったのですが……。
  148. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それから教育の問題、これは一つの理屈は私はあるように思えますけれども、これは扶養控除という方向でやることが税の公平の原則じゃないのだろうか。そこでかってに公平の原則を引っぱり出すといっておしかりを受けるかもわかりませんが、これはやはり教育費を支払う者と支払わない者とがある。義務教育だけで就職した者がある。こういうような点がありますから、これはいわゆる税の公平の原則から見て扶養控除のほうが適当だろう、かように思います。
  149. 田中角榮

    ○田中国務大臣 空閑地税の問題にお触れになりましたが、空閑地税というのは、よほど慎重に考えないとかえって地価をつくり上げるというふうな問題もあるわけであります。しかし、いま新しい考え方としては、建設省の考え方でありますが、一般的な空閑地税というような観念でなく、法律に基づいて都市計画法と同じようにある一定の地域を指定する。その中の土地を高度利用するためには私権を制限するか、その法律によって、全部換地権等をその法律が持って土地を買い上げるようにするか、もしくはその法律の使命達成に阻害になるような、値上がりを待っておるというような者に対して空閑地税という名称でかけるか、いままで観念上空閑地税といわれておったものとは別な角度で空閑地税らしきものを考えておるようでございます。いままでの普通の観念からいうと、ちょっと空閑地税というものは緑化の反対になったり都市の過密化を招いたり、いろいろな問題がございましたが、新しい観念もあるようでありますので、こういうものは検討いたしております。  それから医療費控除は今回十五万円から三十万円に上げたわけでありますが、無制限に、何百万円もかかる人もあるんだからそういうものに対して制限を撤廃しろという御議論でありますが、これは少なくとも倍額になったわけでございますし、将来の問題として、国民医療の実態に合うような状態で考えていくべきものだ、かように考えております。
  150. 平林剛

    ○平林委員 それでは時間がありませんから私の質問は終わりますが、佐藤総理に一つだけ知恵を申し上げておきたいんです。  あなた、三千億円減税のことで、私への答弁でとうとうできなかったのですが、三千億円減税はおやりになっているんですよ、初年度においても、昭和四十年度においても。それは所得税については確かに千億円足らずでございますが、租税特別措置というもので、昭和四十年度におきましても二千億円以上やっておる。貯蓄の奨励、内部留保の充実、産業の助成、その他のベースで昭和四十年に二千億円をこえるものをやっているんです。いばって、三千億円やっている、こうおっしゃってもいいんですよ。ただしこれは国民税負担の公平からいって間違った方向でございます。ですから、あまりこれでいばることはいけないと思います。しかし三千億円減税をやっておるんですよ、ことしは。ですからこういう意味から考えまして、私はいま政府がおとりになっておる減税方向というものは間違っておる、すみやかにこれを是正していく必要があるということを強調いたしまして、質問を終わっておきたいと思います。
  151. 吉田重延

  152. 有馬輝武

    有馬委員 私は、いま平林委員から質問のありました点、重複いたしますが一、二お伺いしたいと思います。  総理が三千億減税について言われた背景というものについて、私はわかるわけです。どういうぐあいにわかるかというと、やはりその中には高度成長政策に対する批判を含めてあの際は述べられていたと理解するわけです。また、この額の問題ではなくて、やはり先ほど平林委員の質問に対して答えられた中に、租税負担公平の原則というものが、かつて大蔵大臣をやられた佐藤総理としては当然頭の中にあって、そういう角度からものを言われたというぐあいにも理解できる、そういう意味で、私はその三千億減税が四千億になろうが、あるいは千五百億になろうが、問題は、その方向が正しい姿勢になっておるかどうかという点を注意深く見守ってきたわけです。そういう意味でここでお尋ねしたいのは、私が冒頭に申し上げましたように、池田内閣で続けてこられた高度成長政策というものをどういうぐあいに減税と結びつけて考えておられたか、この点をお伺いしたいと思うのであります。
  153. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょっとお尋ねの点がよくわからないのですが、どういうようにお尋ねを理解すべきですか。もちろん高度経済成長は、高度経済成長すれば税がふえていく、そういう意味に、税がふえるというだけ、その点を考えているか、こういうお尋ねでしょうか。ちょっとわかりかねます。
  154. 有馬輝武

    有馬委員 あとで申し上げましたように、私は、その高度成長政策、安定成長というものをどのように考えてその池田さんの高度成長政策というものをどのように見ておられたか。その間に私は減税をすべき分野が出てくる、そういう角度から三千億減税を言われたのではないか、もっと端的に申し上げますと、高度成長政策に対して一つ意見を持たれて言われたんではないかということでお伺いしておるわけです。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは先ほどお答えしたとおりでございます。それ以上のことは別段ございません。ただ、お話のようにこの三千億の減税を言っている場合でも、やはり所得税を中心にしての減税と申しておりますから、それは先ほどお尋ねがあった平林君に答えたと同じように、やはり所得税減税、これが中心だ、かようにおとりをいただきたい。別に高度経済成長批判、そういう意味ではございません。
  156. 有馬輝武

    有馬委員 といたしますと、たとえばその所得税減税が中心になるべきだというお考えであったとするならば、少なくとも所得税についてはまんべんなく、所得のいかんにかかわらずある程度の減税が行なわれればまだ話はわかるわけです。主税局長にお聞きになるとすぐわかりますが、ある層では名目所得その他勘案してまいりますと、むしろ増徴になる分野があるわけです。そういう点についてどう考えられますか。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょっと主税局長からお答えいたします。
  158. 泉美之松

    泉政府委員 これは参議院の予算委員会で御要求がありまして、資料としてお配りしてあるはずでございますが、所得が増加する関係で物価の上昇と相殺いたしますと、独身者の場合には、三十九年の所得が七十一万五千百五円をこえますと、物価調整による減税が十分でなくなる、あるいは夫婦者でございますと、七十五万七千三百四十九円までの者は物価調整によっての減税ができますが、それ以上は調整がきかない、夫婦子供三人の場合でございますと、百五十九万三千八百十円までは調整ができますが、それ以上は調整できない、こういう資料になっておりますが、この点につきましては、われわれとしましても、所得が一律に増加するように見ているのがはたして正しいかどうか、あるいは消費構造がそれぞれの世帯構成によって違うのに、同じように物価上昇の影響を受けると見るのが正しいかどうか、いろいろ議論のあるところでございますが、いま申し上げましたような所得のところでございますと、かなり所得の高いところまで調整はできているということは言えると思うのでございます。
  159. 有馬輝武

    有馬委員 総理、いま主税局長の説明聞かれましたとおり、ある層ではむしろ増徴になっているわけです。問題は、一番所得税負担が重くなっている、そういうことであれば、私は、少なくとも事所得税に関してはどの階層においても減税になるというような一つの租税に対する基本方針を示されることが、総理の言われた三千億減税の趣旨を生かされることではないかと思うのです。ただ野放しに、何といいますか、一つのムードとして言われるということでは、これは許されないと思うのです。野党第一党の私たちもいつ政権を担当しなければならないかわからないので、むちゃなことを言えないといういい教訓を得たと思うのです。そういう意味で、少なくとも私は税制に対して、どこを幾らにしろということは別として、何税をどうしろということぐらいは、一つ方向をきちっと示されるべきが筋ではなかったかと思うのです。また当然総理としては、先ほど平林君も言われたように、大蔵大臣をやられて、どの税がどうだという点等については大まかに理解しておられるはずなんです。それを一つも指示も与えられないということは私にはわからないわけです。その点をお聞かせ願いたいと思います。
  160. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも指示を与えなかったのが悪いとおしかりを受けているようですが、事実何にもそれより以上のことを当時はしなかった。したがって、ただいま指示をしないのが悪いと言われても、どうもしかたがございません。正直に申し上げておきます。
  161. 有馬輝武

    有馬委員 正直ついでにそれじゃもう一言お伺いしますが、今度の内閣改造までは佐藤色は出せないのだ、また出す必要もあるまいということでイージーにやってこられたのか、そこら辺はどうなのですか。
  162. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 別に佐藤色を出すとかそれを出さないとかいうような考え方ではございません。これで一生懸命やっておる、国政を担当しております以上最善を尽くしておる、それだけはいつの時代でも言い得るかと存じます。
  163. 有馬輝武

    有馬委員 前の答弁といまの答弁じゃがらっと違うのですね。少なくとも、本日は答弁されなかったけれども、平林委員の質問に対しても私の質問に対しても具体的にはおっしゃらないけれども、頭の中にはあったはずなんですよ。指示しようと思えば指示できたはずなんです。これはこれ以上追及いたしません。  ただここでいま一つお伺いしたいのは、これも平林委員お尋ねになったことでありますけれども、私は、歴代の内閣税調答申に対する態度というものについて、尊重する尊重しないということばのあやでもって対処していること自体に問題があると思うのです。私は、内閣に設けられました各種委員会で、税調ほど直剣に、しかもその回数においても努力の年月においても真摯な努力をされてきたところはないと思うのです。ですから、今後の政府のあり方として、その答申されたものをどう扱うか、私は、答申にないようなものについては手がけない、答申されたものについてはそれが八〇%になりあるいは七〇%になるかもしれないけれども、その趣旨に従っていくというような一つ態度というものを政府として確立すべき時期ではないかと思うのでありますが、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  164. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 税調委員の方々が非常に熱心であり、しかも専門的だということは、有馬さんの御指摘のとおりであります。そういう意味で私どもも敬意を表しておる。また同時に制度そのもののたてまえから申しまして、その答申は尊重する。これは政府が拘束される——尊重の意味においての拘束ですが、そういう立場にある。したがって、ただいま答申が全然ないものを取り上げるな、こういう御意見がございますが、これはひとつ今後の問題として十分研究してみたいと思います。もちろん答申されないものを政府自身がかってにきめるということでは議論が出てくるだろう。それがいかに小さな事柄であり、ささいなことであっても、それは議論を残すだろう、かように考えますから、十分将来研究することにしたい、かように思います。  また率等について変えることも、この辺は許せる、こういうような御意見でございますが、本来私税調自身についてただいまの基本的な原則はそれでいいかと思いますが、歳入歳出、しかも歳出のほうの要請が非常に強い、こういう立場になってきた国の財政、そういうもののあり方の場合に、いわゆる税負担を軽くしたいというたてまえのみから減税措置を行なうというわけにもなかなかいきかねる、そういう意味税調の方がいろいろ苦心され、各方面をにらみ合わせ、また事務当局からも材料をよくとられて、大体の歳出の規模なども予定はされつつも、ときどき政府がそのまま採用できないものがある、この点はあらかじめ御了承置き願いたいのです。しかし、原則そのものとしては、おっしゃること、しごくもっともだ、かように思います。
  165. 有馬輝武

    有馬委員 次に、私は国税と地方税の体系について考え直すべき時期に来ているのじゃないかと思うのです。もちろん交付税率をいじることも必要でありましょうけれども、私は、現在の地方財政の立場を国で根本的に財源の面その他から考え直すべき時期に来ておるのじゃなかろうかと思うのでありますが、基本的に、これをどうお考えになっておるか。  また、これに関連して総理が憤然とされるようなことをいま一つお伺いいたします。たとえば、御承知のように娯楽施設利用税というものが地方税の中にあります。マージャン屋だとかゴルフ場だとか。総理も近ごろちょいちょい出かけられて、健康のために非常にけっこうなことだと思っておりますが、その帰りがけにグリーンフィーの何%に税金がかかっておるか、ごらんになったこと、ありますか。
  166. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのゴルフ税の内容については事務当局から後に説明させたいと思います。  ただいま御指摘になりました国と地方の財政のあり方等、これは確かに問題があるだろうと思います。ことにまた国と地方との行政の区分の問題、あるいは地方の委託の問題、それとも関係があるし、またもう一つは、地方と言っておりますが、府県あるいは市町村、しかもこれが広狭、あるいは都市、農村、いろいろの不公平が生じておる現状のままにおいて、はたしてただいま言われるように単純なる結論が出てくるかどうか、私はここにちょっと問題があると思います。だから、地方制度審議会その他におきましても、行政のあり方だとかあるいはまたいまの単位等につきましても十分考究されて、しかる後でないと、財源の分配など非常に困難ではないか。ことに、いままでいつも議論されますように、赤字団体については議論される、黒字団体はそのまま置かれておる、こういうところに、いろいろあり方としてはまだまだこれから整理していかなければならない、整備していかなければならないという段階ではないかと思います。これはおそらく有馬さんもそういう意味お尋ねかと思います。
  167. 有馬輝武

    有馬委員 総理、その日の成績だけが気になって見ないで帰られるらしいですけれども、この利用税は標準税率で百分の五十なのですよ。ところが実際には百分の十二、三しか取ってないところが多いわけです。一方では地方財政の貧困をうたいながら、これは一つの例でありますけれども、そういった形で、地方財政自体にもいろいろ問題点が残されている。ですから私は、国税と地方税とを同じ場において再検討すべき時期に来ておる、このように考えますので、いま総理の答弁にありましたように、ぜひこれは近い機会に税体系自体として御検討いただくように強く要望をいたしておきたいと存じます。  あと緊急関税の問題その他の問題についてお伺いしたいことがありますが、社会党の時間が一時間半でありますので、以上をもって私の質問は終わりたいと思います。
  168. 吉田重延

    吉田委員長 横山利秋君。
  169. 横山利秋

    ○横山委員 久しぶりに大臣税金についてお伺いしたいと思うけれども思い出していただきまして、時間がございませんから端的に感じを聞きたいのであります。  具体的な問題から話します。ことし学校を卒業する中学生は大体東京では一万五千円としましょう。そうしますと、年間にボーナス三カ月を含めますと大体二十一万円です。この二十一万円の新中学卒業生に税金をかけるということを総理大臣は何と思われますか。昔の、私どもも俗にいう高等小学校卒と同じようなものでありますが、事業場へ入る、工場へ入る、銀行へ入る、その中で駅長だとか課長だとか係長が、まず税金がおれもかかるようになった、こう言っていばったものであります。いま新中学を卒業した者に税金がかかる。まさに私は国民税的な性格を持っていると思うのです。課税最低限を議論するにあたって、われわれは大蔵省が出しましたマーケットバスケット方式がいかに笑うに足るべきか、現状に合わないかということを議論しました。しかしそれよりもまして、中学校を卒業した者に税金をかけるといういまの税体系、いまの課税体系を総理大臣はどうお考えですか。
  170. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも総理大臣は何にも知らぬというか、そういうような実情になっているということをただいま御指摘を受けて、これはさらに検討してみる必要があるんじゃないだろうか。十分税務当局におきましても、ただいまなかなか把握しにくいような実情じゃないかと思いますので、これなどはよくもう一度検討するということにしたいと思います。
  171. 横山利秋

    ○横山委員 ところが、これはきわめてはっきりした問題です。課税最低限というのは税制調査会及び本委員会においても、きわめて具体的な問題として常に議論をしておるわけです。しかも今度政府がおとりになった措置によってこの問題が生じたわけであります。たとえば基礎控除答申は二万であった。それによれば平年度は課税最低限は一人で二十一万五千六百七十五円であった。ところが基礎控除を一万にした。そのために二十万二千五百二十四円になった、こういうわけであります。そのために答申では千九百八十六万人の納税者が、政府案では二千二十八万になっている。差し引き四十二万の若年者が課税になる。若年者ばかりではありません。ありませんが、新中卒に税がかかるようになった、こういうことです。これはもうお考えになる余地はない。政府の手によって新しく中学校卒業者に税金がかかるようになったということです。
  172. 田中角榮

    ○田中国務大臣 課税最低限の引き上げにつきましては、年々考えておるわけでございます。中卒者が就職して直ちに税金がかかるということは、徴税の上から見ましても、低額所得者に税がかかるということは、納税人口が非常にふえておる現状ですが、現状から見ましてできるだけ課税最低限を引き上げることによって、中卒者等にかからないようにしたいという考え方でやっていることは事実でございます。しかし初任給というものが急速に近年上がってまいりましたために、毎年課税最低限を引き上げたにもかかわらず、納税するようになった。金額は非常に少ないことでありますが、中卒者が直ちに納税人口の中に数えられるということでありますから、中卒者だからといって収入がうんとある者に税金をかけないというわけにはまいらぬのであります、有業者ということでありますから……。しかしどう考えても中学校を卒業して直ちに就職して、その収入が多かったからといって課税対象になるというようなことは、これからそういうことを避けるために課税最低限を引き上げ方向で十分検討してまいりたい、こう考えます。
  173. 横山利秋

    ○横山委員 私は適当な数字を使っているわけじゃないです。中学校卒業で一万五千円は東京ではありきたりのことだ。ありきたりのことで税金をかける、今度の答申を直した政府の手によって中卒者に税金をかけることになったのだ、こう言っている。それが間違いであるとおっしゃるならばそれはいい。けれども一万五千円というのはありきたりですよ。大臣どうですか。私はいろいろな理由からこうなったという御説明になると思う。けれども、きわめて素朴な問題として中学卒に税金をかけるのか、これにお二人とも満足にお答えができない。
  174. 田中角榮

    ○田中国務大臣 中学の卒業生だから税金をかけないという考えじゃありません。有業者であるならば、小学校卒業者でも、税金を納めておるのでありますから、そういう問題ではなくて、課税最低限の引き上げをやったわけでありますが、中学卒業生が非常に初任給が高くなったということで納税者になる、こういうことにもなるわけであります。でありますから、これらの問題に対しては、将来とも課税最低限の引き上げ考えてまいります、こうお答えをしておるのであります。
  175. 横山利秋

    ○横山委員 私は総理大臣に感じだと言って聞いておるのですが、中学卒業者の中にもいろいろの給料が地方によってはありますよ。ありますが、少なくとも中学を卒業した人間がべらぼうな給料をもらうはずがないですよ。例外がないとは言いません。一般論として中学卒業者に税金をかけることは適当でない、こう私は言っている。(「かわいそうだ」と呼ぶ者あり)ほんとうに同僚が言うとおりかわいそうだ。そこのところは総理大臣としてはどうお考えになるか。
  176. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのはもちろん中学を卒業したというだけで同情して税をかけなくてもいい、こういうようなわけにはいきません。これはやはり収入があってどうなるか、ただいま言われるような一万五千円、こういう給料の場合に一体税をかけることが適当なりやいなや、かような問題だと思う。ただいま大蔵大臣はさらにそういう点については最低限を上げていくのだ、こういうような説明をしております。ことにことしがどうなっているか、ことしの卒業生はいまの税がかからない、去年の卒業生がことしからかかる、こういうことなんです。それが一年つとめたということで、ただいま言われるような特別な状況になる、こういうことなんです。
  177. 泉美之松

    泉政府委員 ちょっと申し上げますが、月収一万五千円の場合は、税制調査会答申によりましても、また政府案の場合におきましても、年間収入が賞与三カ月分といたしますと、二十二万五千円となりまして、それはいずれの場合にも課税になる。ただもう少し、一万五千円より少し少な目でございますと、政府案の場合と税制調査会答申の場合とで一万数千円の違いがございますから、その間に入りますと、税制調査会答申でやれば課税にならないのに政府案の場合には課税になる、こういう場合が出てまいります。そういう点からいたしまして、できるだけ課税最低限を引き上げまして、中学卒業生が就職したその年は九カ月分の収入しかありませんから課税にならないのが普通でありますけれども、しかしその翌年からでもすぐに課税になるというのは好ましくないので、できるだけ課税最低限を引き上げていきたい、こういうのが私ども考えでございます。
  178. 横山利秋

    ○横山委員 全く私の言いたいのはそのとおりなんです。私どもの御意見——そっちの私どもの御意見はそうなんですよ。私はあえて国税庁や主税局を弁護したくないけれども、私がここでいう税の公平論というのは、全く国税庁や主税局の代弁者みたいにものをしゃべっている。あの人たちはりっぱな人たちが多いんですよ。ところが政策の手にかかって中学卒業生に税金をかけるようになったということです。私はこの問題について時間をとるのはあまり適当ではないから、時間がありませんから言いませんけれども、総理としては、政府の手によって中学卒業者に税金がかかるようになったことについて、私は遺憾な気持ちを持ってもらわなければ困る、これが私の意見です。
  179. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは中学卒業者、中学卒業者とおっしゃらないで、いまの給与の最低のところが税のかかるのがこの辺だ、そこがいかにも——もう少し思いやりがあって、もっと最低限というか、それを引き上げたらどうだ、こういうお話ですが、中学卒業ということにあまり重点を置かないで、小学校卒業でも収入がうんとあればそれは取る、そういうことだから、そうでなしに、もっと所得最低限、そういうものについて、ただいま言われるように、政府の扱い方と税制調査会で扱い方が二になる、そういう点はできるだけ税利調査会の意見どおりに政府は採用してくれ、こう言われるのが筋じゃないかと私は思います。いま、ただいま申し上げたのはそういう意味でございます。十分検討する、かように思っております。
  180. 横山利秋

    ○横山委員 小学校を出たって給料が多ければ、中学校を出たって給料が多ければというのはあなたらしくない答弁だと思います。せめて小学校や中学を出たほやほやに税金をかけるのは避けたいというがほんとうじゃないでしょうか。あなたがやっていらっしゃる政策減税から見ると、一番あなたの言われなければならぬところじゃないですか。私はそれを要求しているのです。小学校を卒業したほやほや、中学校を卒業したほやほやにはわれわれとしては税金をかけたくない、多少給料が多くてもこれは避けるべきだ、こういうふうにこなければうそじゃありませんか。
  181. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあうそもほんとうもない、とにかく税はやはり収入についてかけるので、学歴がどうこうというものじゃないのです。これはやはり収入が多いとか少ないとかいうことで、これが公平論だ。ただ、いま言われるように、卒業したばかりでもう税金を納める、これは実際気の毒じゃないですかと言われる。それは心は同情いたしますから、あまり多くの理屈は申しませんが、ただいま申し上げるように、事務当局いろいろくふうしているようですから、その辺は検討さしていただきたいと思います。
  182. 横山利秋

    ○横山委員 事務当局は私の側です。あなた方がこれを手直しされて改悪されたのです。しかしこれは時間の関係上、これ以上言いませんが、政府側としては深く考えてもらいたい。  その次は税外負担です。われわれもあなた方も立場の相違はあるけれども減税という点についてはいろいろやっている。けれども町における税外負担というものは、やれ道路である学校であるあるいはPTAである、その他公共負担、健康保険掛け金、まさにこの税外負担というものは、まず私は平均年間一万以上は間違いなくなっておると思うのであります。税外負担の出る根本は何かという点であります。予算コストが実情に合わないからだ、端的に私はこう表現します。学校をつくる予算はあるけれども、生徒の机や腰かけを買ってやる予算がない、いわんやがらんどうではいかぬから何かちょっと黒板をもう一つほしいというのが全部親にかかってくるわけです。予算のコストというものが実情に合わぬ。しかし政府としては増税はできぬ。したがって最近の事情はことごとくといっていいほど寄付金で、寄付金といってもまあとにかく強制的、こういうことになってしまう、この点について大臣はどうお考えですか。
  183. 田中角榮

    ○田中国務大臣 税外負担の解消こそ急速にはからなければならないということで、政府も地方自治体に対して税外負担を行なわないようにという努力もいたしておるわけでございます。三十五年からだんだんと解消せられておりますが、この税外負担の直接の原因が国の補助率が低いとかそういうものだけではございません。これは実際に仕事をする地方の自治体も税外負担をやめるということに徹底をして初めてこれが解消されるのであります。私たちが学校をつくりますと、ピアノの寄付だ何の寄付だということでもって、中には子供の親一人に幾らずつ割り当てるというような弊害のある行為に対しては絶対に排除するように努力をいたしておるわけでございます。地方財政法の改正もありまして税外負担はだんだんと解消せられておることは御承知のとおりだと思います。
  184. 横山利秋

    ○横山委員 決して解消してない、手をかえ品をかえて税外負担は増加している。そこで総理大臣、この税外負担を解消する、ないしはなくしたいという希望をどんなに表明してもだめなんです。総理として大蔵大臣にまかしておかないで、この税外負担を極力解消するような措置を各政府出先官庁、各地方自治体がとるようにあなたは指示してもらいたい、こう思いますが、いかがですか。
  185. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま税外負担についての御意見でございますが、私はもうこの点については各委員会で、予算委員会等におきましてしばしば伺っております。ただいまたいへんそういう意味国民負担が大きい、こういうことで、政府自身もいわゆる予算編成に際しての単価計算等におきまして特別な措置をとる、この点はすでに私も大蔵当局にさような要望をいたしております。しかし今日なおそれが解消されない。最近の経済上の変動等もそういう点に影響を与えているのだろう、その点で十分直らない、こういうこともあるようであります。たいへん申しわけないことで、この上とも気をつけて十分税外負担解消への努力を続けていきたい、かように思います。ただ地方におきましてもいわゆる税外負担だという立場だけではなくて、これがしばしば地方的な政治問題のために、こういう点で単価予算を無理にしているとか、こういうようなことも間々聞くのでありますが、いずれにいたしましても住民の負担が重くなるということは好ましいことではありませんし、またそういう事柄が政治をゆがめる原因にもなるのだ、かようなことを考えますと、いずれにしてもその理由はどこにあろうとも税外負担をなくするように一そう努力をしてまいりたい、かように思います。
  186. 横山利秋

    ○横山委員 重ねて恐縮なんでありますが、そういうお答えは正直のことを言っていまに始まったことではないのであります。歴代の大蔵大臣にもお願いをし、かたく約束をしておるのだけれども、実現がなかなかできないのであります。総理大臣として、まことに失礼な言い方でありますが、この場における答弁でなくて、具体的な何らかの措置をとってもらいたい、こういうふうに私はお願いしているわけです。
  187. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ことしはすでに予算編成にあたりましても、大蔵当局が特別な処置をとった、かように私は考えておりますが、しかしこれが今後実施がどうしてもできない、こういうような場合に当面したときに一体どうなるのか、いろいろやりくり算段するところもあるだろうし、全然これが実施ができない、こういうことで予算を変えろ、こういうような御要望もあるかわからない。あるいはまたことしはその仕事は見合わすとか、こういうような処置もあるだろう。とにかくいずれにいたしましても必要な工事、必要な学校または必要な施設、こういうようなことですから、そういうような不幸な事態が起こらないように、関係当局においても十分くふうし、相談し合って、そして予算などが施行できない、こういうようなことは避けてまいりたい、かように思います。できるだけその実情に沿ったように処置をとりたい、かように思っておりますが、この点は大蔵事務当局におきましても、おそらく十分その予算の使い方においてくふうしていくだろう、かように思います。これは当委員会においてもまた予算委員会においても、衆参両院におきまして、しばしば皆さま方から指摘されているし、与党からもやかましく言われておる問題でございますので、十分その施行にあたって気をつけていく、かように思います。
  188. 横山利秋

    ○横山委員 三つ目に、特にこれは税外負担ではありませんけれども、父兄から一ぺん総理大臣に言ってもらいたいということでありますから、番外でございますけれども、恐縮ですが時間を借ります。  いま入学の最盛期であります。受験のために父兄は非常なロスをしておるわけであります。つまり私の言いますのは、大学を受けるために、あるいは高校を受けるために、いろいろと三つ、四つ受ける。そしてあすこが受かってここが受かるだろうというわけで入学手続をする。ここにありますのは東京における某大学でありますが、納めるべき、手続すべき額は、十万ないし十三万円であります。しかし手続はしたけれども、そこへ入れなかった場合には、全部返さないことになっておるのであります。内訳を見ますと、たとえばあるところを見ますと、授業料が二万五千円、入学金が三万円、施設費が五万円、体育費が一千円、学生図書費が三百円、学会費が五百円、同入会金五百円、学友会費が二百円、同入会金が五十円、学生健康保険組合費が二千八百円、合計十一万三百五十円。ほかのほうを見ますと、十三万円、十二万円というのがずっと出ています。学校は入るときの約束だから、これは一厘も返さない、こう言っている。この項目を見ますと、これが入学に関する費用及びそれに関係する費用ならばいいけれども、ずっと長期の問題について一文も返さぬ約束ではある。約束ではあろうけれども、また父兄及び子供としても、一つの学校を受ければいいじゃないかといわれたらそれまでのことである。けれどもここに実に苦心惨たんたる父兄や子供の問題があるわけであります。したがいまして、大学がこれによって通常経費に充てたり、あるいは大学の建設に充てたりということについて、私は、少し考えるべき点があるのじゃなかろうか、この点について政府として今日のまま放置しておいていいものであろうか、こう考えますが、突然の御質問で恐縮でありますが、ひとつ父兄の立場に立って考えてやってもらいたい。
  189. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのお話は、私立の学校についてのお話だと思います。  これはいろいろむずかしい点があるようであります。私どもも、できのいい方が幾つも受けられる、そうしてその人はただいま言われるように入学金を納めるのですが、同時にこれはやはり競争を激化させておる、こういうことにもなりはしないか。もしもその人が一つに限ったら、おそらく他のだれかがかわって入り得るような状況でなかったか、かようにも思うのです。これは人情の面から見まして、かわいい子供、自分たちのかわいい弟あるいは娘、それを学校に入れたい、どこか評判のいいところへでも入れておけば、次の就職もよくなるだろうとかあるいはお嫁入りも楽だろうから、こういう人情の機微なんですが、そういうところへ触れる問題で、どうも私どもがちょっと政治的にこれを取り扱うのはいかがかと思います。ただいま申し上げますように、一つの学校だけ自信のあるところをねらって、そうしてやっていただく、これが一番望ましいのですが、そうもいかないでしょう。ただ、いま私立の場合でも、実際に入らないところはお金を返す、これもいい、当然そうあるべきだと思いますけれども、これはやはり自分のところで募集しておれば、それだけの生徒はぜひ自分のところに入れたいのだ、そういう意味でがんばりたい、どうもほかへやめていくというようなのは困りますと言うかもしれない。そこらちょっとむずかしいのじゃないでしょうか。  それからある学校によっては、試験を全然なしにして、そうして志願者は全部入れる、それは必ず入れるのだ、そういう学校もあるようです。しかし中に入ってからはなかなかやかましくて、落第をすれば学校から出ていただく、こういうようなところもある。だから必ず全部入っていく、こういうことが許されればいまのような問題はない。昔の物理学校などは、これは有名な学校ですが、やはり全部採用する、しかし採用してできが悪ければ今度は放校というかそういうことにするのだ、その辺もあるようです。  ただいまの点は学校審議会等でいろいろ研究さるべき筋のものかと思いますが、ここで問題を提案されただけに、やはり公的機関、そういうところで、こういう場合の扱い方をいかにすべきかというようなことがさらに審議されてしかるべきだ、かように思いますので、文部省に対しましても、ただいまのような御意見のあったことを伝えて、そうして私学振興審議会等がひとつ取り上げてみないかということを伝えることは当然いたします。御了承いただきたいと思います。
  190. 横山利秋

    ○横山委員 ぜひそれはひとつ総理の手によって、父兄の気持ちをくんで解決してやっていただきたいと思います。  時間がございませんから最後に、山陽特殊製鋼が長年赤字を出しながら長年配当しておったということが、世の中の評判になっております。各会社とも収益が悪い、悪いといっておりながら、収益をあげながら赤字の申告をしておる。特に大企業においてはそういう傾向が非常に強いのであります。われわれとしてはかねてから過当広告税ということを主張しておった。世界を回りまして日本ほど広告のはんらんをしているところはないのであります。テレビを見れば、新聞を見れば、町を歩けば、電気のネオン塔、まことに全世界をながめて見ましても、町のネオンの過当広告では日本ほど世界一のところはないと私は痛感して帰ってきました。しかも薬でもそうでありますが、広告費にべらぼうな経費を使って、それらがわれわれの口に入り、われわれのからだにつけられるわけであります。製薬会社に言わせますとまさに数十%、過半数が広告費ではないかと言われておるのであります。こういう状況からいいますと、私どもがかねて言っておりますように、過当広告税をかけるべきではないかと常に主張しておるのでありますが、いまが一番いい時期ではなかろうか。いま与党の皆さんの御意見によって交際費の制限もされる、そして企業として健全にやらなければいかぬと両大臣も言っていらっしゃるときでありますから、広告の過当なものについて課税をする適当な時期であると考えますが、いかがですか。
  191. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 過当な広告あるいは過大な広告がどういうような標準になりますか、またラジオ、テレビ、新聞、雑誌、それら広告を扱っておる面からもどういうようにやれるか、少し研究させていただかないと直ちに結論を出すわけにいかない、かように思います。これをどの辺でどういうようにやるか、一度検討してみたいと思います。
  192. 横山利秋

    ○横山委員 いまも聞いてみますと、どうもやじはみんな賛成ですよ。いわんや角榮アワーとか何だとか、私はこの際大蔵大臣に聞きたいのでありますが、あれは銀行がスポンサーになっているのですか。どうも町の評判は、角榮団地とか角榮アワーとか——団地は違ったそうで御迷惑な話でありますが、しかしテレビのあれはどういう事情か知りませんがスポンサーがあるという話でございます。もしそうだったら、これは大臣はおやめになったほうがいいと思いますが、所管大臣として過当広告税その他について御意見を伺いたいと思います。
  193. 田中角榮

    ○田中国務大臣 広告税につきましては、非常に有力な財源であることは事実でございます。いままでの税制改正の過程において十分検討したものでございますが、なかなかむずかしい、こういう結論で、ございます。この間の事情は十分あなたも御承知だと思います。しかし広告というものについて、利益を出せば税金として持っていかれる。ですから無形の資産として投資をするためには宣伝を大いにやる、それから交際費の支出もやる、こういうことで、交際費課税につきましてはいま御審議を願っておりますもので、損金算入の限度を三〇%から五〇%に引き上げる。いつもこの交際費の問題が議論になるときには広告をどうする、こういうことになるわけであります。ところがこれには非常に強力な反対もございます。(横山委員「それはわかっておるのです」と呼ぶ)わかっておると私は思います。ですからいろいろ審査をしいろいろ議論をしましたが、今日ではこれを採用できないということになっております。ただ広告課税をする場合に、資本金のどういう限度までとか、課税をする場合にはそれに見合う金額を内部留保を認めるとか、そういうことでもって前進できないかというような議論があったのですが、税のやり方から考えてなかなかむずかしいというので今日は課税しておらぬということになっております。そういうことでございます。
  194. 横山利秋

    ○横山委員 終わります。
  195. 吉田重延

    吉田委員長 春日一幸君
  196. 春日一幸

    ○春日委員 今回佐藤内閣は資産所得に対する優遇措置について、自民党用語で言うならば画期的、革命的措置をおとりになったわけでございます。このことはひとり本大蔵委員会ばかりでなく、国の内外に大きなセンセーションを投げかけていると思うのでございます。はたせるかなアメリカの徴税学者たちはこの優遇措置を批判いたしまして、去る三月十六日にわが国の有力新聞にその見解を寄稿いたしておるのでございます。特にアメリカのハーバード大学の徴税学の権威でありますオルドマン教授はこう述べられております。改正案のねらいは全くわからない。株価を上げるためというならばなぜそんな必要があるのか疑問が出てくる。利子所得と同じ扱いをしたいというのであるならば利子所得をやめればよいではないかと、はなはだ明快な批判を加えられておるのでございます。と申しますのは、由来株価というものは、上がったり下がったりするところに特殊の機能があり、そこに一つの妙味があって大衆の証券市場参加の道があるのでございますから、大体株価というものを上げるということ自体がよろしくない。安定操作を禁じておるくらいだから、上げる下げるということはよろしくない。はたせるかなオルドマン教授は、上げるというならばそんな必要は一体どこにあるか。それかといってまた利子所得と同じような処遇をするというのであるならば、所得のあるところに課税をなすという所得税の原理から案ずるならば、不当措置であるこの利子所得の特例を廃止すればよい、オルドマン教授はこのように述べられております。こういうような批判に対して総理はどのようにお考えになっておりますか、その見解をこの際お述べ願いたいと思います。
  197. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも今回の措置につきましてはいろいろ賛否半ばしておりまして、私ども各方面からいろいろ批判も伺っております。ことに与党内におきましてもそういう賛否両論がある。したがいまして民間、財界各方面にも非常な問題を提供しておる、そういうことでございますが、しかしもうすでにこういうことをきめて実施に移す、かような方向で踏み切った以上、やはりただいまのような批判は批判として、できるだけ短い期間にこういうものが正常化される、そういう方向が望ましいではないか、かように思います。今回は特別な措置として提案しておるような次第でございます。
  198. 春日一幸

    ○春日委員 きめた以上踏み切っていくというのでございますけれども、やはり民主政治は世論政治であり、国内外の世論がこのように批判的であって功撃的であるのに、われ一人行くというようなことは、これは何と言ったところで佐藤さんらしくない。人間尊重でありますとか、話し合い、調和というようなヒューマニズムを掲げられておりまして、アメリカの連中もびっくりしておるのであります。特に私は申し上げたいがシャウプ教授、これは日本の税制の生みの親です。この生みの親であるシャウプさんが何と批判をしておるかと申しますと、配当所得源泉選択課税を批判されて、富裕者の大きなグループに利益を与えるような税制は崩壊する、これは歴史が示しておるところである。もし累進所得税が日本で崩壊すれば、およそ一般売り上げ税にとってかわられ、低所得層、特に多子家庭は重圧を受けるであろう。勤労所得者のモラルは低下すること必然であると断定的に述べられておる。はたせるかな田中大蔵大臣は後日この売り上げ税を考えなければならぬというようなことを角榮アワーか何かで述べられておりますが、シャウプさんが述べられたことが角榮アワーによってすでに裏づけられておることは最も警戒を要する傾向であるといわなければならないのであります。さらにシャウプ教授は、これは別の項で経済成長や株式市場の健全化は必要だが、だからといってそのために所得税体係の崩壊という大きな犠牲を払うべきではない、もう非常にこれをきびしく戒しめておるのでございます。こういうようなシャウプさんのことばというものは、われわれがここでいろいろな反論を述べますると、大蔵大臣はこれはポリシーの相違であるといってさりげなく受け答えをせられまするけれども、シャウプというのは日本税制を生み出したところの、言うならば生みの親である。生みの親がこういうめちゃなことをやってはいかぬといって、おうのうもんもんしておるんですね。親の心をこんなにもだえさせる田中さんというものは極道息子の最たるものじゃないか、私はそう思うのです。これはひとつ総理からも見解が述べられたいし、この際角榮アワーを代表して大臣からも一個の疏弁がなければならぬと思う。ひとつ見解をお述べください。シャウプさんをこんなにもだえさせていいのかどうか。
  199. 田中角榮

    ○田中国務大臣 シャウプさんは戦後における日本税制の生みの親であるという、その功績は高く評価をいたしております。評価をいたしておりますが、しかしその生みの親である人の批判があったら日本の税制は何もできないのだ、こういう考えでは進歩がないわけであります。御承知の非常にテンポの早い国際情勢に際して、日本の実情に合うようなこういう税制をつくっていくということは、日々これ進歩をしていかなければならぬわけであります。またシャウプさんは確かに税制をつくられて、戦後恩恵を受けて今日の財政の基盤が築かれたわけでありますが、しかし必ずしも海のかなたにおられて今の情勢を的確に判断しておる、こういうことをそのまま考えなくともいいと思います。もちろんこういう税制に対しては批判のあることは私も承知をいたしておりますが、批判があっても将来の日本のために、ある時期やむを得ざることとしてこういうことをとったわけでありまして、私は中小企業などを育成しておられる春日さんはわかっていただける、こう思っていたわけでありますが、春日さんにもわかっていただけないということは悲しいことであります。しかし私はいまの日本の資本状態、また資本市場の状態、また金融の正常化をはかっていかなければならないということを考えてまいりますと、議論は存するところでございますが、この税制改正に対しましてはひとつ御協力を賜わらんことを切にお願いを申し上げておきたいと思います。
  200. 春日一幸

    ○春日委員 それはだれが何といっても断じて聞かないのだというようなことでございまして、はなはだ遺憾にたえないところなんです。やはりこの徴税理論というようなもの、また特に新しい制度を国の中に打ち立てていこうというようなときには、やはりいろいろな碩学、権威者、また現実というものを取り入れて、あやまたざる判断をしていくのでなければ、シャウプが別の項目で予言をしておりまするように、その税の体系はくずれていくのである。くずれていけば、とってかわるものが何であるかとここで示唆をいたしておることにかんがみまして、単なる特殊のグループ、すなわち証券会社であるとかあるいはそれに興味を持つ大衆であるとかいう問題ではないんでございますね。日本の税体系そのものをくずして、そのあげくの果てに大衆負担を重くする形にならざるを得ないものである、シャウプさんはこれを言っておるのでございます。だからわれわれはそのことをはなはだおそれて、いまここで警告的な質問を行なっておるのでございまするが、むしろ総理が述べられたように、なるほどシャウプさんやオルドマンの言われておるように、これははなはだ危険な要素をはらんでおる。だから角榮さんがやっちまったんだからしようがない、だからもっとすみやかにこれをもとに戻そう、こういうのであるならば、まあわからぬこともないと思うのです。どうかそういう意味で、いまこの三案が通らんとしておるときに私たちもやぼなことを言いません。時限立法としてこれが出された以上は、時限到来前といえどもこれらをオルドマンやシャウプの権威者のことばに耳を傾けて、天に口なしシャウプ、オルドマンをもってこれを言わしめる、こういう謙虚な気持ちでこれを聞かなければならぬ。何といったって聞かなければならぬ。おっかさんの言うことを聞かなければほんとうの極道者になりますぞ。  私はもうあと三分しかないから、もう一つ集約して伺っておきたいと思う重要な問題でありまするが、金融の正常化と社債市場の育成の問題、これは長い懸案でございまするが、ぜひとも私は総理と大蔵大臣のコンビネーションでこの問題の解決をはかっていただかなければならぬと思うのです。現在破産、倒産が相次いでおる。象徴的には山陽特殊製鋼の四百七十二億円の負債によるところの破綻ですね。これは重視されなければならぬと思うのですよ。すなわち企業資本がいまやオーバーローンとオーバー・ボローイングの関係でもって、自己資本二五%になってしまったという状態、七五%が他人資本である。金利負担は増大するばかり。しこうして金融機関は預金一〇〇に対して貸し出しが一〇五ないし一一〇という、こういうおそるべきオーバーローンでございますね。これを解消するにあらざれば、日本経済の安定成長というものはあり得ない。金融は経済の前提、基礎となるものでございますから、これは御両所ですみやかにこのゆがみ、これを直してもらわなければならぬ。金融機関も自転車操業だといっておるし企業も自転車操業だといっておる。自転車というものは無限に乗り続けるものではない。ある一定の目的地へ行けば自転車というものはとまらなければならぬのだから、とまったときには自転車は倒れるのである。足をふんばらなければ倒れる。自転車というものは乗ったら無限に果てしなく走っていくものではない。ある目的地に行ったらとまる。その目的地は何ぞや。目的地とは高度成長がその目的を達したときあるいはそれが鈍化したときですね。このオーバーローンとオーバーボローイングはおのずからとまってくる。とまってくればこれが外部に現象としてあらわれてくるんですね。自転車に乗っておってとまればいかなる現象が起きるか。自転車は倒れるのでございます。高度成長がある一定の段階において、それが究極の地に達すれば、極点に達すればとまるのである。とまればどうなるか。山陽特殊製鋼のごとく外に破産、倒産の形であらわれてくるのである。これは経済学の必然である。われわれ経済学者の間ではいとも簡単である。それで私はこの機会に、何事もさておいて金融の正常化ということがはかられなければならぬ。そこで田中大蔵大臣、問題は、相互銀行と信用金庫には貸し出しと預金との預貸率というのが定められておりますね。預金一〇〇%に対して貸し出しは八〇%の限界をこえざることということがある。ところが市中銀行においてはその限界がないものだから、預金の額よりもこえて貸し出しを行なうというような不健全経営を許しておくということが、歴代大蔵大臣、歴代自民党内閣の罪悪の累積である。いまにしてこれを直すにあらざれば、山陽特殊製鋼のごときものが続々とあとを断たず、これが現実の問題として大きなわが国経済のパニックになってきたら何としますか。だから最もすみやかにこれを是正するためには、銀行法を改正して、何でも銀行協会で融資ルールというものを、何かとうふのような脳みそでこね上げておるようでございますけれども、そんなものが実際どの程度の有権的な力を持つかということは、われわれは本委員会においてしばしば論じてきた。十五年間も論じてきた。結局それは百年河清を待つにひとしきものであって、何らの実効をおさめていないというのが本日その実証である。われわれは過去の経験律の上に立って将来の方策を決定しなければならぬ。過去にだめだったものは将来やったってだめだ。資金委員会法の問題だってお流れになったんですね。金融機関というものの実力の大きさにかんがみて、そのような自主的規制の実際の効果というものはあり得ない。だとすれば、この際私は田中大蔵大臣の政治力をもってして、法律を改正して、相互銀行においてなし得ること、信用金庫においてなし得ることがなぜ市中銀行においてなし得ないか、預貸率を銀行法によって法制化すべきだ、法定化すべきだ、このことを必要欠くべからざるところの経済政策として、私はその実現を要請してやまないものである。この問題に対する総理大臣の御所見はいかがでありますか。
  201. 田中角榮

    ○田中国務大臣 まず前段の税制論につきましては間々お聞きしておりますからこの席ではお答えいたしませんが、後段における金融の正常化、これは賛成でございます。高度成長の過程において確かに信用インフレ的な傾向が起こってまいったということは事実でございまして、金融の正常化をぜひはからなければならない。また金融の正常化をはかると同時に公社債市場の育成等をはかりながら、証券市場資本市場の確立もはかりたいということであります。この目的を達成するために、前段御発言がございました、あまり好ましい政策ではないと思いますが、やむを得ざる措置として利子課税及び配当課税の問題に対処をいたしたわけでございます。でありますから、あなたがいま御指摘になるように日銀の貸し出しを押える、また都市銀行に対しても預金の八〇%ないし九〇%というような財務比率を厳密に適用してこれを押えるということでございます。ある時期においてこういうことは可能かもしれませんが、あなたがいま言われたとおりのことをしたらどういう現象が起こるか。そうしたらこれは経済成長がとまるなどというものではなく、ある意味においては企業は将棋倒しになるということも言い得るわけであります。金融の正常化をはかっていくという基本的な考え方はそのとおりでございます。でありますから、オーバーローンの解消、同時にオーバーボローイングが進んでいく状態を招来するように金融政策を進めていくということでないと、混乱が起こるわけでございます。でありますから、私がいま申し上げておりますのは、銀行が日銀の貸し出しにたよらないで預金の範囲において貸し出しをする、こういうことになれば、超高度の成長も起こらなかったと思いますし、またある意味においては社会におけるひずみもいまのように大きくならなかったということは言い得るわけでございます。でありますから、金融の正常化をはかるためには、毎度申し上げますようにやはり産業資金というものを金融以外に得る道、すなわち公社債市場の育成によって公社債として長期優良な資金を得るか、もしくは証券市場の発達によって国民から産業資金を得るかという道のバランスをとって初めて金融の正常化がなされるわけであります。金融は押える、資本市場は未発達のままにしておくということになれば、産業の成長を押える以外にないのであります。そうすればもちろん物価問題も片づくでありましょうし、毎度毎度賃金を上げるということもなくなるであろうと思いますが、その過程において、急激にやると非常に大きな混乱が起きるということを十分考えながら、大きな目的は金融の正常化をはかりながら、その半面、公社債市場や資本市場の育成をはかって、バランスをとって自己資本比率を上げていくという道以外にないわけでございます。あなたがさつき申されたとおり二五%ではなく現在自己資本比率は二三%を割っております。ますます割る傾向にある。こういう事態においてOECDに加盟したり開放経済に向かっておるのでありますから、現在産業資金というものを正常な資本市場から得て、その結果論として金融の正常化がなしとげられるということでなければ、あなたが申されたような究極の目的は達成できないということを理解していただきたい。
  202. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの税の問題並びに金融の正常化の問題、さすがに春日さんその道の——経済学者と言われたのですが、とにかく聞かす——たいへん私は敬服して伺ったのでございます。  ただ問題は最初の税制でございますが、お話では日本国内にはだれも賛成者がない、外国の学者まで全部反対だ、かような非常な酷評をされておりますが、実は今回のこの税制改正につきましてもやはり支持者はあるのでございまして、私が申し上げますようにこれはやはり賛否相半ばしておる、かような状況でございます。私はむしろシャウプさんよりも日本の学者を引き合いに出されて議論されると、私どもほんとうに敬服する、これはやはり日本の税制である、こういうことを特に申し上げたいのであります。  次に、金融の正常化の問題、これはお話のごとく今日のような状態になってきますと、最も大事なことだと思います。私は何よりもこれを急いでやらなければならないと思います。昨日も経済審議会で各界の方のお集まりをいただきまして、いろいろお話を伺ったわけでありますが、私ども考えておりますように、またただいまお話がありましたように、大体全部が借金政策でやっておる、かような経済界については非常な危険があるんだ、これは借金をするのも悪いが借金を許しておるのも悪いんだ、貸しておるところに問題があるんだ、ことに貸している者が会社の重役になっていていかにも信用があるような形をしその実は日用がない、こういうようなところにも問題があるんだと各界からたいへん痛烈な批判を受けました。結論といたしまして、金融のルールを考えよう、またその正常化の方向で努力しよう、これはもちろん財界、経済界だけではなく、政府もこれと一体になりまして法律の改正をやる必要がないか十分研究すべきだ、かように考えますが、ただいまさしあたりなし得るところに、金融のルール、これはひとつりっぱな案を持ち寄ろう——先ほどはいまの連中ではたよりにならないというお話がございましたが、しかし民主的な方法としてはただいま申し上げるような会合、そういうものを通じましてルールをつくっていく、これが望ましいように思いますので、ただ話を聞いただけでなしに、早急にその方向で案をまとめるように、ただいま経済企画庁のほうにもそういうことを命じたばかりでございます。おそらく同じような立場に立ってただいまの経済界の実情を見たりあるいは今後のあり方等を例にいたしますと、ただいまお説がありましたように金融の正常化、これはほんとうに真剣に取り組むべき事柄だと思いますので、冗談は冗談としてともかくもただいま申し上げるような政府の所信を申し上げて春日さんへのお答えといたします。
  203. 春日一幸

    ○春日委員 拝聴いたしました。  私は結語を述べて質問を終わることにいたしますが、いま田中大蔵大臣から述べられました。私は本委員会においてすでに三年間あなたの説を伺っておりますし、またあなたの経歴は政調会長として十分政策と取り組まれて研究もされておると思う。ただ御反省を願いたいことは、あなたがそのような経済理論に透徹しながら、金融政策も把握しながら、そのやってこられた結果は何であるか。それが現状であるということでございます。たとえば昨年の春においては東発の問題がございました。サンウェーブの問題がございました。先月においては日本繊維の問題がございました。それから山陽特殊製鋼の問題、きょうは人の身あすはわが身、実際の話が先の見通しは全く不安である。われわれはあなた方がそのような理論の上に立って、確信を持って施策を行なわれた結果がかくのごとき現象となってあらわれてきておるものであるということを反省されるとともに十分御勉強願いたいと思う。  ただ最後に私が指摘しておきたいことは、いろいろと金融が緩和されようとしておる。公定歩合も再び下げられようとしておる。このとき、われわれは安定成長のためには再び設備投資を再燃せしめてはならぬということでございます。そのためには、設備投資に要する資金供与を遮断しなければならぬ。これがはたして金融・融資ルールによってその実際の効果をあげ得るか、あるいは法的措置を講ずるにあらざれば、その効果をあげ得ざるか、この点は十分御判断を願って、勇気を持ってその断をとられていただきたい。  私の時間が参りましたから、わが質問はこれにて終わり。     —————————————
  204. 吉田重延

    吉田委員長 ただいま議題となっております各案中、関税定率法等の一部を改正する法律案について議事を進めます。  本案に対しまして、山中貞則君外二十三名より修正案が提出されております。
  205. 吉田重延

    吉田委員長 この際、提出者の趣旨の説明を求めます。山中貞則君。
  206. 山中貞則

    ○山中(貞)委員 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま上程されております関税定率法等の一部を改正する法律案に対する修正案を提出いたします。  朗読いたします。   関税定率法等の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   第三条のうち、別表の改正に関する部分中「別表第〇四〇二号から第〇四〇四号まで、第〇七〇五号、第〇八〇一号、第〇九〇一号、第一〇〇一号、第一〇〇三号、」を削り、「第一〇〇六号」を「同表第一〇〇六号」に改め、同表の改正に関する部分の前に次のように加える。   別表第〇四〇二号から第〇四〇四号まで、第〇七〇五号、第〇八〇一号、第〇九〇一号、第一〇〇一号及び第一〇〇三号の適用期限の欄中「昭和四〇年三月三一日」を「昭和四一年三月三一日」に改め、同号の次に次のように加える。  以上であります。  この修正案は、関連農家約二百万人に及ぶと見られます国内産でん粉の保護育成のために、トウモロコシの輸入に対し、総量の九割以上を占める無税扱いの飼料用はそのままといたしまして、残りのコーンスターチ用原料を中心として関税割り当て制度を採用しようとするものであります。  念のために現在のでん粉市況について触れますと、カンショ並びにバレイショを原料といたします国内でん粉の価格は、御承知のように低迷の一途をたどり、この現状では農産物価格安定法によって支持されております支持価格による原料イモの売り渡し並びにでん粉工業の支持価格による一千六百八十円の価格の維持は困難な状態に逢着し、したがって、三十八イモ年度におきましも、政府におきましてはすでに二万五千トンの直接買い入れを行ないましたが、依然としてその価格は低迷、したがって、予算のない関係上、非常措置といたしまして五万トンを全販による団体の調整保管をいたし、これをやがて政府が買い入れ、肩がわりをすることによって金倉を支払うしいう形式を採用せざるを得なくなり、さらに三万トンに達するブドウ糖協同組合による調整保管、買い入れをも行なったわけでありますが、なお市況は低迷し、今日の相場では、名古屋渡し約一千六百十円から三十円の間に低迷を続けております。したがって、このままで推移いたしますれば、四十年度の新年度開始と同時に数万トンの政府による買い入れをもまた余儀なくされる現状にあるわけであります。  このような国内産のバレイショ、カンショでん粉の長期にわたる低迷の最も根本の原因は、一昨年の八月に行なわれました抜き打ち砂糖の輸入自由化による糖価の暴落に遠因を持っていることは自明の理でございますが、この問題につきましては、別途今国会で農林委員会に提案、可決すべく糖価安定事業団法が党において審議をされておる段階にございますので、野党の協力をも得て、これが本国会を通過、立法されますならば、国内における粗糖相場の異常な高騰による関連産業への圧力要因の基本的な排除がなされるかと考えます。  しかしながら、いま一つのでん粉産業に対する直接の圧迫要因といたしましては、同じでん粉のシェアに食い込んでまいります輸入コーンを原料といたしますコーンスターチの分野の蚕食という見のがし得ない事実が、また大きな一つの原因をなしておることも否定できません。したがって、でん粉がいかにコーンスターチに圧迫されておるかという事情について説明をいたしますと、実績のすでに出ております三十八年と三十九年の見通しを比べるときにりょう然でありますが、でん粉の見通しについて申しますならば、まずカンショでん粉、バレイショでん粉、コーンスターチ、それぞれの需給の状態を比べてみますと、一番大口の需要であります水あめ、ブドウ糖に対する需要が、三十八年度の五十四万一千トンより三十九年度は五十万六千トンに低落し、そのかわりコーンスターチによります需要が、三十八年度の一万五千トンから一足飛びに五万トンにふくれておるわけであります。明らかにコーンスターチの蚕食によって代替された需要がまかなわれておるということが明瞭であります。こまかなものについても触れますが、繊維製品あるいは製紙原料、ダンボール等の需要に対しましては、カンショでん粉において三十八年度は八千トンの需要がございましたものが五千トンに減り、バレイショでん粉においては一万二千トンでありました需要が七千トンに減少し、かわりにコーンスターチによります需要は、三十八年度の八千トンが一万三千トンにふくれ上がっているのであります。また加工でん粉について見ますならば、三十八年の六千トンがカンショにおいて二千トンに減退すると同時に、コーンスターチにおきましては、二万五千トンより三万三千トンにふくれ上がっております。ビールに対しましては、カンショでん粉の需要は、三十八年度二万トンでありましたものが四分の一の五千トンに低落し、かわりにコーンスターチを需要先といたします需要は、一万トンより二万八千トンにふくれ上がっております。またグルタミン酸ソーダにおきましては、カンショでん粉において六万トンありましたものが、三十九年度は三万八千トンに減少し、コーンスターチにおいては、三十八年度需要皆無でありましたものが、一挙に二万二千トンの需要を三十九年度に見ようとしております。食用その他については、バレイショでん粉におきまして三十八年度四万五千トンの需要が三万四千トンに減少をいたし、かわりにコーンスターチが二万二千トンから三万二千トンにふくれ上がっておるわけであります。その結果、国内産のカンショにおきましては、昨年度供給過剰となりましたものが七万八千トンでございましたのに対し、本年は生産量において五万トン減少しておりながら、十一万トンの過剰要因となっておるわけであります。バレイショにおきましては、三十八年度過剰を生じなかったものが、二万八千トンの過剰を生じ、したがって、政府におきましては、四十年度予算ですでに七万六千トンの原料でん粉の買い入れを予定せざるを得ないところにまで追い込まれているということがここで明瞭になってまいるわけでございます。  さらにこのような状態を裏書きいたしますコーンスターチの生産状況について申し上げますと、その生産の状況は、三十五年度二万八千トン、三十六年度三万六千トン、三十七年度八万一千トン、三十八年度十四万トン、三十九年度二十万七千トン、四十年度推計三十三万トンより三十七万トンに達しようといたしております。すなわち、対前年比八割ないし九割の飛躍的な生産増を示しておるわけでございまして、このコストの面につきましても、輸入のコーンを原料といたしますコーンスターチにおきまして、合理化企業においてトン当たり四万六千三百二十三円となり、またつい最近一両年のうちに創業いたしました企業においては、償却その他の面において不利がありますために、五万九千七百三十三円となっておりますが、カンでんの政府支持価格による一千六百八十円を消費地ベースにおいて換算した一千七百八十円キロ当たりをトン当たりに換算いたしますと、四万七千四百六十七円となります。これをコンスに換算いたして比較をいたしますると、五万三百六十一円となり、輸入コーンによりますスターチは、国内産のでん粉に比べまして、トン当たり四千円の優位に立っておるということが明らかにされておるわけでございまして、そのために、先ほど触れましたとおり、今日の名古屋の引き渡し相場の一千六百十円ないし三十円の相場が、コンス換算でいたしますと四万五千六百円から四万六千一百円と相なり、この四千円の力の差、コストの差そのものが実勢の流通市場にあらわれておることが明瞭に指摘されるわけでございます。  このような点から考えまして、われわれはコーンに対する何らかの規制を必要とするということを考えたのでございまするが、しかしながら、すでに自由化されておりまするコーンに対しまして、これの自由化をもとへ戻すという処置につきましては、今日の国際経済環境というものが、自由化をもとに戻すことについてはやや環境に逆行するきらいもあり、また後進国の一次産品でもございますので、それらの点を配慮をいたしまして、かわるべき方法といたしまして、数量を規制するかもしくは関税を引き上げるかということを考えたわけでありますけれども、最終的に関税割り当て制度を採用いたしまして、先ほど冒頭に説明いたしましたごとく、一次税率一〇%、これは現行一〇%の税率と同じでございますが、これによる数量規制を行ないまして、二次税率を二五%とし、それによりまして当初の目的を達したいと念願をしておるわけであります。これにつきまして、私どもといたしましては、幸いにして民社党の同調を得たのでありますけれども、社会党におかれましては、承りますところは、その趣旨において同感であり、方向についても考え方を一にするけれども、この規制をさらにきびしくし、第一次関税率現行一〇%より一五%に引き上げたほうがよろしいという御意見のようでございました。考え方そのものについては私どもも同感をせざるを得ない点があるのでございますが、しかし、私どもが一次税率一〇%を採用せざるを得なかった理由について申し上げたいのでございます。  それは、先ほども触れましたが、国際経済の環境が関税を引き下げる方向に向かい、自由化の趨勢にございまするときに、関税割り当て制度を採用し、さらに一次税率を五%引き上げました場合に、ガットその他の会議における報復関税その他の配慮もしなければなりませんし、また、さきに触れましたとおり、後進国の一次産品の問題がございますので、コーンに対する措置を一挙にきびしくいたしますと、ガットその他の会議における後進国よりの突き上げ等も配慮をせざるを得ない点等がございました。したがって、部内の調整におきまして、大蔵、外務、通産等におきまして慎重な態度を望む声が強かったこと、さらにまた、大蔵省といたしましては、アルコールの原料として輸入されるコーンにつきまして別ワクにさばくことが困難でありまするために、一挙にこれを同じワクの中で五%引き上げますると、アルコール原料の値上がりとなり、酒類の値上がり等を招来いたしまするために、この点に対する若干の難色を示した点がございました。  また、これは政治的な配慮の問題でございますが、一五%に引き上げて数量規制をきびしくいたしますると、現存いたしておりまするコーンスターチ企業のうち、推定されまするところは、大企業のわずか二社のみが生存を可能とされ、残りの六社が脱落すると申しますか企業がやっていけないというようなことになる可能性もございますので、それらの点は公平に処するべき政治の立場から、やむなく五%の引き上げというものは一〇%にとどめて数量の規制をいたしたわけでございます。したがって、数量の規制につきましては、法を背景に置いて規制をいたすものでございませんから、欲するところではございませんでしたが、関係省相互間並びに主管省でありまする農林省と業界との間に、申し上げまするような覚え書きを確認させた次第でございます。  まず、大蔵省関税局長と農林省の関係局すなわち農林経済局長、畜産局長、食糧庁長官との間に取り結びました覚え書きについて申し上げます。「関税暫定措置法の一部修正により、とうもろこしについて関税割当制度が採用されることに関連し、両者はその運用につき次のとおり申合せるものとする。一、一次税率を適用するコーンスターチ用とうもろこしの割当数量は、今後二カ年間毎会計年度特別の事情がない限り製品コーンスターチ換算十八万トンとする。二、一次税率を適用する醗酵用のとうもろこし、および配合飼料用免税とうもろこしについては、それがコーンスターチ用に流用されることがないよう遺憾なきを期するものとする。三、その他の用途にかかるとうもろこしについては、当面、需要の実態が明確なものに限り、一次枠の割当を行ないコーンスターチ用に流用されることがないよう行政指導に努めるものとする。」以上でございます。  なお、農林省はコーンスターチ協会との間に次のような文章による誓約書を入れさせました。「食糧庁長官殿 誓約書 この度び貴庁より内示されましたコンス製造用とうもろこしの輸入に際して、関税割当制度の適用(一次税率一〇%、二次税率二五%、一次税率相当の原料数量はコンス換算十八万トン、実施期間二ケ年)も現状では己むを得ないと考え実施の暁には御協力申し上げることを誓約致します。」  以上の点によりまして、法的な規制を持たざる量の規制ではございますが、この実行は間違いなく果たされるものと存じ、したがって所期の目的は達成されるものと存じます。  なお、念のために申し上げますが、今回の編成を終わってすでに参議院に回っております予算の収入中、関税収入には、この修正をいたしましても、見るべき影響はないということを申し上げておきます。  以上でございます。
  207. 吉田重延

    吉田委員長 これにて修正議案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  208. 吉田重延

    吉田委員長 関税定率法等の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  209. 吉田重延

    吉田委員長 これより原案並びに修正案について討論に入ります。  通告がありますので、これを許します。有馬輝武君。
  210. 有馬輝武

    有馬委員 同僚山中委員から提案がありましたコーンスターチの輸入数量の制限についての方向については、私どもも大いに賛意を表すると同時に、その努力に対しまして心から敬意を表したいと存じます。ただ、私たちが心配いたしますのは、コーンの輸入の中で、飼料用以外で昭和三十六年に六万一千トンでありましたものが、三十七年には十一万八千七百トン、三十八年には二十一万トン、三十九年の見込みでは二十八万トンと急激にふえてまいっております。しかも価格の面におきましてはCIFトン当たりで大体三十七年で二万七百八十一円、三十八年で二万一千五百六十一円、三十九年十一月で二万三千三百十九円となっておりますが、現況では二万六千円程度になっておるのであります。それで私どもが心配いたしますことは、このたびの割当量が十八万トンということでありますけれども、この生産が毎年二倍以上にふえてまいっております趨勢を大いに考慮しなければなりません。そういった意味合いにおきまして、私どもは、やはりいま八社について触れられたのみでありますけれども、対象農家、茨城、埼玉、栃木、千葉あるいは鹿児島、熊本、宮崎等のカンショでん粉の生産農家二百万人に及ぶ人たちと八社の立場というものを慎重に配慮せざるを得ないのであります。そういった意味合いにおきまして、やはりこの際一五%まで踏み切るべき段階にきておるのではないかと確信をいたしております。特に政府部内におきましても、やはり臨時関税等についても通産省等においてすでに考慮されつつある現在、あるいはイギリス等においては輸入課徴金その他国内産業の保護のためには、やはり世界の趨勢の中でもこれに敢然として必要な措置をとる等の配慮がなされている点等、私たちは学ぶべき点が多々あるのであります。そういった意味合いにおきまして、やはり一五%の線まで持っていく必要があることを特に強調いたしたいと思うのであります。  なおまた、先ほど山中委員からも触れられましたように、一昨年の八月の砂糖自由化が及ぼす影響について私どもは非常に憂慮をいたしておりましたが、その後百四十円台のものがすでに四十年三月十九日現在では九十三円五十銭というぐあいに低落いたしております。この国内でん粉に与えた影響がいかにひどいものであったかという点について、私たちは身近に毎日のように知らされてまいりました。そういった意味合いにおきましても、この無謀な自由化に対する事後措置として、単なるびほう策ということは許されないと思うのであります。そのゆえにいま申し上げましたように、さらにこの十八万トンを、せめて十五万程度までで押える、もとより八社に与える影響を考えないわけではありませんけれども、やはり二百万人の農家と八社ということを慎重に配慮いたしました結果、十五万トン、一五%という線をあえて主張いたしまして、いま提案されました修正案の方向については賛意を表しながらも、その割り当て規制量について希望的な意見を述べ、私どもは賛成的な立場でありながらも、あえて現状に即して反対せざるを得ないのであります。  われわれの意のあるところを数字等をもって明瞭にいたしまして、反対討論を終わりたいと存じます。(拍手)
  211. 吉田重延

    吉田委員長 これにて討論は終局いたしました。  続いて採決に入ります。  まず山中貞則君外二十三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  212. 吉田重延

    吉田委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次にただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。  これを可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  213. 吉田重延

    吉田委員長 起立多数。よって、本案は修正議決せられました。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一件願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  214. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  215. 吉田重延

    吉田委員長 次会は、明二十四日午前十時より理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十五分散会