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1965-03-17 第48回国会 衆議院 大蔵委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十七日(水曜日)    午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    岩動 道行君       鴨田 宗一君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       砂田 重民君    谷川 和穗君       西岡 武夫君    濱田 幸雄君       福田 繁芳君    毛利 松平君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君       佐藤觀次郎君    只松 祐治君       野口 忠夫君    平岡忠次郎君       平林  剛君    藤田 高敏君      米内山義一郎君    横山 利秋君       春日 一幸君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (関税局長)  佐々木庸一君         大蔵事務官         (理財局長)  佐竹  浩君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         国税庁長官   吉岡 英一君         通商産業事務官         (重工業局長) 川出 千速君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    柏木 雄介君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      赤羽  桂君         国税庁次長   喜田村健三君         大蔵事務官         (国税庁間税部         長)      松本  茂君         大蔵事務官         (国税庁間税部         酒税課長)   江口 健司君         通商産業事務官         (軽工業局雑貨         第二課長)   花岡 勝巳君         参  考  人         (日本道路公団         理事)     亀岡 康夫君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  参考人出頭要求に関する件  証券取引法の一部を改正する法律案内閣提出  第八九号)  国際復興開発銀行等からの外資受入に関する  特別措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第五二号)  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第七三号)  酒税保全及び酒類業組合等に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第八〇号)  金融に関する件      ————◇—————
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  国際復興開発銀行等からの外資受入に関する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について、本日、日本道路公団代表者参考人として委員会出席を求め、その意見を聴取することとし、参考人の人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。      ————◇—————
  4. 吉田重延

    吉田委員長 証券取引法の一部を改正する法律議題といたします。
  5. 吉田重延

    吉田委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。鍛冶大蔵政務次官
  6. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 ただいま議題となりました証券取引法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  証券業は、国民経済的立場から見ましてすこぶる重要な事業であります。また近時証券投資が普及し、投資者層が広く一般大衆まで拡大している実情にありますので、証券業は社会的にもきわめて公共性の高い事業であるといわなければなりません。このような状況にかんがみ、証券会社社会的地位向上投資者保護に資するため、証券業免許制とし、これに伴い監督規定を整備するとともに、証券外務員について登録制採用することとし、この法律案提案した次第であります。  以下、この法律案につきましてその大要を御説明申し上げます。  まず証券会社の資質の向上をはかるため、証券業登録制から免許制に改めることとし、免許審査基準としては、十分な財産的基礎及び良好な収支見込み、適正な人的構成並びに国民経済的・地域的妥当性の三点を規定し、また証券業業務が、性質の異なる数種の業務からなっていることにかんがみ、免許は四種類に区分した業務別に与えることといたしております。  次に免許制採用に伴いまして、登録制が前提となっております現行の監督規定等を整備する必要がありますので、この点を改正することといたしております。そのおもな事項は、免許制採用の趣旨に従い必要な事項を認可の対象とすること、経営不健全化等を防止するため是正保全の命令を行ない得るものとすること、内部留保の充実による経営の安定をはかるため三種類準備金規定を設けること、証券取引に関連する証券会社及びその役職員行為について特別に規制を行なうこと、証券会社の常務に従事する役員の兼職、兼業を承認事項とすることの五点であります。  また外務員の職務が、証券会社営業所から離れて、単独で顧客に接し、通常有価証券売買等の契約まで行なうものでありますところから、外務員顧客との間で行なう証券取引に対する証券会社の責任を明確にして、投資者保護証券業の信用の向上をはかるため、外務員登録制とし、これを大蔵大臣監督下に置き外務員証券会社にかわって、有価証券売買その他の取引に関し、裁判上の行為を除き、原則として一切の権限を有するものとみなす規定を設けることといたしております。  なおこれに伴いまして、証券業免許申請手続免許の取り消しを受けることとなる理由外務員登録手続欠格事項等規定し、罰則等について所要の整備を行なうとともに、附則におきまして改正に伴う経過規定を設け、現在の登録証券業者については、昭和四十三年三月三十一日まで旧法が引き続いてなおその効力を有するものといたしました。  以上がこの法律案提案いたしました理由及びその概要であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願い申し上げます。
  7. 吉田重延

    吉田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑次会に譲ります。      ————◇—————
  8. 吉田重延

    吉田委員長 酒税保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案国際復興開発銀行等からの外資受入に関する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及び関税定率法等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。只松祐治君。
  9. 只松祐治

    只松委員 あとで大臣がお見えになれば、時間があれば大臣にもお聞きしたいのですが、大蔵大臣は近ごろ間接税を重要視したい、こういう発言をときどきなさっておるわけです。直接税か間接税かというのは、いろいろその論議が分かれておりますけれども、大蔵省、特に主税局関係では将来、大臣発言のように、間接税ウエートを置いた税制考えていく、こういうふうなことをお考えでございますか。
  10. 泉美之松

    泉政府委員 直接税と間接税割合がどの程度であるべきかということにつきましては、前回横山委員にお答え申し上げたと思いますが、御承知のとおりわが国は戦前、昭和九−十一年当時は直接税が三五%、間接税が六五%というような割合で、間接税割合が多かったわけでございます。それが戦時中に、昭和十九年に直接税の割合が六五%、間接税割合が三五%というふうに逆転いたしまして、その後、戦後、企業が戦災等によりまして崩壊いたしました関係がございまして、間接税割合が少し高まったのでございます。シヤウプ勧告によりまして直接税優位主義がとられました。それによって昭和二十六年に直接税の割合が五八・八というふうに高くなりまして、これでは直接税の負担が重過ぎて、国民税負担感が高いということから、だんだんと毎年、所得税中心とした直接税の減税をやってまいったわけでございます。その結果は、昭和三十三年になりまして、直接税が四八・七、間接税が五一・三というふうに、間接税割合が少し高いといったような状態になったのでございますが、御承知のとおり三十五年以降の国民所得の伸び、これが経済の異常な成長に伴いましてふえてまいりまして、ことに昭和三十五年に三十四年の伊勢湾台風関係所得税減税を一年休みまして、そういう関係から所得税中心とした直接税の割合がふえまして、昭和四十年には直接税が五八・九、間接税が四一・一というふうに、かなり直接税の割合がふえてまいったわけでございます。これは御存じと思いますけれども、先進諸国のうちではアメリカに次いで直接税の割合が高いのでございます。イギリスでも直接税は五五・三であります。そのほか西ドイツフランスイタリアという国は、それぞれ日本よりも直接税の割合が低い。そこで各方面でいろいろの御意見があるわけでございます。もっと直接税の割合を減らして、間接税割合を高めたらどうかという御意見があるわけでございます。しかしこの直接税の割合間接税割合がどうあるべきかということは、あらかじめ一定比率というものを定めて、こうあるべきだというふうに理念的に考えることはなかなかむずかしいのでありまして、そのときにおける経済状態国民税負担感、こういったものによって動くことが多いわけでございます。わが国先ほど申し上げましたような過去の事例から見ましても、一定比率に直接税、間接税比率を保とうということは、なかなかむずかしい問題でございます。そこでわれわれがいま考えておりますのは、税制調査会長期答申でも申しておりますように、直接税と間接税比率は理念的にこうあるべきだということよりも、各税目ごとの税についてもっと負担が適正な状況に持っていく、その結果として直接税と間接税割合がきまるのだ。したがって直接税の割合を減らして間接税割合を高めなければならぬというような意識のもとに、特に税制改正をすることは適当でないというふうに考えられるわけでございます。現実を見ますと、直接税のほうは収入に対する税収弾性値が高いものでございますからどうしても、七・二%程度あるいは八・一%程度中期経済計画による経済成長が見込まれる場合におきましては、ともすれば直接税のほうの割合が高くなる傾向があるわけでございます。そこでいま最も負担の重いと思われまする所得税中心とした直接税の減税を主として行ないまして、それによって高まろうとする直接税の割合を高めないように持っていくというのがせいぜいでございまして、特に間接税割合をふやすということはあまり考えておらないわけでございます。もっとも間接税につきましてはその逆進性という問題のほかに、徴税費が安くて国民税負担感をあまり与えないで、相当税収を上げることができるというような利点は確かにあるわけでございます。しかしそれだからといって間接税割合を特に高めようという意識税制改正をするのは、必ずしも適当でないというふうに考えております。
  11. 只松祐治

    只松委員 大臣が言っておるのと事務当局のあなたたち考えておることは無関係である、こういうふうに言っていいわけですか。
  12. 泉美之松

    泉政府委員 端的にそう表現されますとお答えしにくいのでございますが、事務当局といたしましては税制調査会の従来の考え方でいくべきだと考えておるのでございますが、しかし間接税ウエートを高めようというような、これはひとり大臣だけでなしに、各方面の御意見がございます。したがいましてそういった面につきましてはよく税制調査会におはかりいたしまして、税制調査会の御意見を十分尊重しながら今後慎重に考えてまいりたい、かように考えておるのであります。
  13. 只松祐治

    只松委員 一般的に言って、いま言われたように、どちらを重くするかということにはそれぞれ論議がありますが、あなたたちがお考えになって、一般的に言ってやはり直接税を重点に置いて間接税を低くしていく、こういうことのほうがいい税制——いい悪いはまたいろいろ判定のしかたがむずかしいわけでありますが、こういうふうに言われておるし、特にアメリカを除く西欧各国等間接税の高いのは、これは第二次大戦中の取りいい税金間接税中心の増徴を行なったときの悪いなごりだ、こういうふうにいわれておるわけですが、そういうふうに判断していいですか。あなたのほうも大体そういうふうにお考えですか。
  14. 泉美之松

    泉政府委員 御承知のとおり直接税は何といいましても国民担税力に即応した税である。ところが間接税のほうは相当逆進性が高い。まあわが国の場合には個別の消費税の形をとっておりますので、一般売り上げ高税とか取引高税の場合に比べますと、その逆進程度はややゆるやかにできるようになっておりますけれども、しかしそれにしてもやはり逆進性は高いわけでございます。そういう点から言いますと、直接税より間接税のほうがいいという理屈はなかなか言いにくい。ただ直接税の負担があまり多くなりますと、国民負担感が高まりまして、税務行政執行上適正な執行を確保することが困難になります。そういう点から考えますと、直接税優位主義といいましても、そこにはある税度の限界があるわけでございまして、あまりに直接税のほうのウエートを高めることは必ずしも適当でない。そういう点から言いますと、現在程度の直接税と間接税比率を、そう変えるという必要はないのではないかというふうに考えられるのでございます。先ほど申し上げましたように、直接税のほうが収入弾性値が高いために、ともすればそのウエートが高まろうとします。そうしますと、まあ物価との関係もございますが、やはり所得税中心として国民負担軽減をはかるということによって、いま程度の直接税と間接税比率がようやく保たれる程度ではないか、このように考えておるのであります。
  15. 只松祐治

    只松委員 国税庁で出しているこの「税金とそのゆくえ」の中にも「一般に、直接税の割合が高いほど、その国の税制は進んだものであるといわれています。」こう書いてあるのです。私はいままで一般論を言ったのですが、国税庁から出しておるのにも、直接税の割合が高いほうが進んだ税制である、こう書いてあるのです。まああなたたち、さっきから聞いていると、どれもこれもあまり変わりはないような御議論だし、大臣が言っているのは、間接税も少し取ったほうがいい、こういうことを言っているのです。そうするとこういうふうに文章化したり、何かにきちっと書くときには、やはりちゃんと書かなければならないから、大体論理にかなうことが書いてある。ところがそうでないと適当に言われる。国会答弁答弁をしたり、大臣がほかのところでするときは適当なことを言っているのです。そういうことですか。それともこの国税庁の書いたものは誤りがある、こういうふうにお思いですか。
  16. 泉美之松

    泉政府委員 直接税は先ほども申し上げましたように、国民担税力に即応した税でありまして、それがすぐれた税であるということは、近代財政学の理論からいわれておるところでございまして、国税庁のその書類に書かれておることは、財政学論理からいたしまして決して間違っておるものではございません。ただ私が申し上げますのは、直接税はそのように理想的な税ではあるけれども、あまりそのウエートが高過ぎてしまうと、かえって国民負担感を強め、税務執行上困難を来たすおそれがあるので、特に所得税割合をいまからさらに高めなければならぬということでやっていくのはどうか。さりとて間接税のほうの割合を高めるということにも、その逆進性の点からいろいろ問題があるので、現在程度割合を変える必要はないのである。むしろ現在のままでいこうとするには、直接税のほうの収入弾性値が高いために、直接税のほうを毎年減税をやっていかないと、ともすれば直接税のウエートのほうが高まっていく、そういうことを申し上げておるのでございます。
  17. 只松祐治

    只松委員 そうするといいのは、確かに直接税の割合が高いほうがよいのですから、あなたたちが宣伝しているみたいに国民経済成長所得の増大に見合って、将来は直接税にウエートを置いてよいほうにいくほうが国の制度としてはよいわけですから、いくという答弁が正直な答弁だと思います。基本的な税制のあり方はそういう方向だと解釈したほうがすなおではないか。それを、今日ではいたし方がないが、今日の次元とともに、将来どういうふうにお考えですかということもあわせて聞いているのですが、将来はそういうふうに思ってよいわけですか。
  18. 泉美之松

    泉政府委員 それは先ほども申し上げておりますように、国民所得が今後一定経済成長率に伴って増大してまいりますと、繰り返して申し上げておりますように直接税の収入弾性値が高いために、どうしても直接税のほうのウエートが高まっていくという傾向は避けられません。そこで毎年直接税の減税を行ないましても、なおかつ直接税のウエートが高まろうとする傾向は避け切れないのでございます。もちろん税の種類からいたしまして、直接税が理想的な税である、これはだれしも否定しないところでございますけれども、しかしやはりその国々の実情を無視して、直接税の割合が高ければそれだけでよいのだというわけにはいきかねる。やはり直接税と間接税との割合が、その国の経済状態国民所得構成状態あるいは経済発展程度、こういったものとマッチしておる必要があるのでありまして、まあアメリカのごときは直接税の割合が八五%ないし六%というふうに非常に高いのであります。イギリスはむしろ直接税の割合が五五%程度でありまして、わが国より低い。それではイギリス税制日本税制よりおくれているのかというと、決してそうではないわけでありまして、やはりその国のそれぞれの経済状態において、直接税と間接税割合がある程度比率を保っていくということが望ましいと思うのでありまして、ただ現在のような発展状況が今後も続いていきますと、直接税のウエートは必然的にどうしても高まっていかざるを得ないであろうというのが見通しでございます。
  19. 只松祐治

    只松委員 それはそのくらいにしまして、いまのことばの中にもありましたように、間接税の一番欠点と申しますか、悪いところは、逆進性が高くなるということに問題があるわけであります。ところがアルコール関係税金というのは、いわゆる酒税というのは、そういう意味では一番大衆に密着しているわけです。酒、ビールその他、いわばこの逆進性を最も呼び起こすといいますか、関係がある、こういうのが酒税だと思うのです。あるいは砂糖消費税なんかもそういうことになるわけです。ところが日本酒税というのは、たとえば酒の一級酒で四二・三%、ビールで五二・三%というように、直接税金を取っている。たばこに次いできわめて税金が高い。そこいらへ飲みに行ったって、ビール半分以上は税金を飲んでいるわけです。ビールぴんというのは半分税金なんです。だから単なる品物ではなくて、ビールびんなんか移動しているのは、あれは税金が移動しているのだ、このくらいに思っているわけです。世界各国を見渡して、このように酒税の率の高いものがどこかございますか。ついでに、ありましたら世界のおもな各国の代表的な、たとえばフランスブドウ酒とかなんとかいうような形の、おもな国の税率がありましたら、ひとつお教えをいただきたいと思います。
  20. 泉美之松

    泉政府委員 わが国酒税率は、御承知のとおり昭和三十七年度に相当軽減を行なったところでございますが、まだ諸外国酒税率に比べますれば必ずしも低くない。高い点が相当多いことは、おっしゃるとおりでございます。いま清酒というのはわが国独特のものでございますので、それ以外の酒類につきまして、わが国税率と諸外国税率とを比較して申し上げます。わかりやすいように、外国税額を現在の為替相場に基づきまして、円に換算して申し上げてみたいと思うのでございますが、ウイスキーでございますと、七百二十ミリリットルのアルコール度四十三度のもので見ますと、わが国の場合は酒税額が六百八円四十七銭でございまして、小売り価格に対しまして四五・一%の負担になっておるわけでございます。ただウイスキーにつきましては、イギリス税率が一番高いのでございまして、このウイスキーイギリス通常のものでございますと、七百二十ミリリットルのものが酒税額が千三百九十四円九十一銭、小売り価格に対して六七・八%というふうになっております。ただこれはイギリスでは、ウイスキー世界に輸出して外貨を獲得するということからいたしまして、国内の消費を押えるという意味で、かなり酒税率高目になっておるのでございます。もっともアメリカウイスキーについては日本より——バーボンウイスキーは別といたしまして、本格ウイスキーになりますと、わが国より税率が高いのでありまして、アメリカの代表的なIWハーバーをとってみますと、七百二十ミリリットルで七百十九円四銭ということになっております。ただ、アメリカの場合には、この小売り卸マージン相当高いために、小売り価格に対しましては三〇・三%というふうに税負担割合日本より低くなっております。  それからブランデーでございますが、これは何と申しましてもフランス品物が一番いいのです。フランスとしてはこれに力を入れておるわけでございます。したがいましてフランス税率が一番安いのでありまして、同じく七百二十ミリリットルで比較いたしますと、フランス税金が二百三十九円二十四銭、小売り価格に対して一三・七%といった非常に軽いものになっております。その次が西ドイツでございまして、二百七十八円六十四銭、小売り価格に対して一八・六%、その次が日本でございまして、六百八円四十七銭、ただ小売り価格に対しましては四八・七%とかなり高いものになっております。アメリカが七百十九円四銭でございますが、先ほども申し上げましたように卸小売りマージンが多いものでございますから、小売り価格に対しましては三九・三%、その次がイギリスでございまして、千三百九十四円九十一銭の税負担でありますが、小売り価格に対しましては五五・九%ということになっております。  ブドウ酒につきましては、これはアメリカが一番安く、税額から申しますと、これもフランスが一番力を入れておる酒類でございます。フランス税金が一番安いのでありまして、七百二十ミリリットルでアルコール度十二度のもので見ますと、フランスのものは三円四銭であります。小売り価格に対して四・三%になっております。その次がイタリアでございまして、これもブドウ酒かなり力を入れております。税額が六円二十六銭、小売り価格に対して七・五%となっております。その次がアメリカでありまして、十一円六十四銭、小売り価格に対して二・六%の負担になっております。日本ブドウ酒に対する税額は、他の酒類に比べますと比較的安いのでありまして、十七円二十八銭となっておりまして、小売り価格に対しましては三・五%というものであります。その次はイギリスでありまして、税額は九十一円八十五銭、小売り価格に対して一四・四%となっております。  その次はビールでございますが、これは御承知のとおりドイツが一番力を入れている酒類でございますので、ドイツの税率が一番安いのでございます。六百三十三ミリリットル、いまのビールの大びんに換算してみますと、西ドイツでは七円三十三銭の酒税額でございます。小売り価格に対しまして八・七%、まあ税のないという点では、フランスビール税金がかかっておりません。取引高税、付加価値税のほうがかかっておりますが、酒税としてはかかっておりません。それからイタリアですが、イタリアは十四円六十九銭であります。小売り価格に対して一九・五%、その次はアメリカでありまして、十七円四十七銭の税額で、小売り価格に対して一〇・一%、イギリスが二十三円九十九銭であります。小売り価格に対して三一・一%、日本のお話のとおりビール大びん一本当り六十四円十三銭、小売り価格に対して五二・三%といたっような負担になっております。ビールはこれらの国の中では日本が一番重いということになっているのであります。  そのほかリキュール等の税負担もございますが、概して申し上げますと、ビール以外では必ずしも日本が一番高いということではないのでありますが、ビールについては先進諸国の中で日本が一番高い、こういうことになっております。
  21. 只松祐治

    只松委員 いま御説明がありましたが、たとえばイギリスウイスキーみたいに国策でやって、そういう意味で需要を押えて高いというのがございます。しかしほかのものを除いて、日本のように高いのはあまりないのですね。それから日本の場合は、酒であろうとウイスキーであろうとビールであろうと、大体酒税というのはほかの外国より全部ずば抜けて高いですね。さっきから言われているように、逆進性の高いこういうもの、たとえば普通税金を取るということになるといろいろ問題があるわけですが、一ぱい飲んでいるときには多少税金があろうとなかろうと、初めは多少税金のことを考えておっても、つい税金のことなんか考えなくなる。こういうことで、ある面では税金が非常に取りやすい。それは心理的にも取りやすい。こういうことは言えるわけです。しかし逆にそういう取りやすいことにかこつけて、日本の場合には逆進性の強い、間税の中でわけて強い砂糖とか、こういう酒とか、こういうものから国民大衆は取られている。こういうことが私ははっきりと言えると思う。ぜひこういうものはもう少し引き下げるべきだが、それとともに問題になるのは、ビールの需要の増大あるいは一般のアルコール分の需要の増大なんですね。品物というのはどんどんできてくると値下がりするのはあたりまえ、いまの物価が値下がりしないのは、独占企業がいわゆる設備投資して、いい品物がどんどんできてきても一向に値下げしない。ここらに基本的な原因があることは御承知のとおりなんです。酒やビールや、こういうものにしましても、酒でも大手の酒は機械化している。ビール会社でも、私は二、三ビール会社を見に行きまして、あとでも質問しますが、これは非常に機械化しておる。それでさっき申し上げたように、国民の需要というものはものすごく増大しておる。これは酒税の伸び、ビールの伸びを見ていけばすぐわかる。ところが一つも酒税税率の低下というものは行なわれてない。なぜ行なわれなかったか、あるいは今後も行なう意思がないのか、依然として日本はこういう取りやすい、しかも逆進性の強いこういう酒税というものをぼくは強行だと思う。強行しようとされるのか、ひとつお聞きしておきたい。
  22. 泉美之松

    泉政府委員 間接税逆進性の点から申し上げますと、実は専売益金の形をとっておりますけれども、たばこが一番逆進性が強いのでございます。その次に砂糖とか酒が逆進性が強いことはお話のとおりでございますが、そこで間接税のうち、そうった逆進性の強いものに対する税のあり方をどう考えるかということにつきましては、繰り返して申し上げておりますように、酒税を引き下げることによってそれが小売り価格に反映するというのでないと、消費者としてはあまりありがたくないわけでございますので、そのようにしますには、年々改正するということは非常に困難でございまして、四、五年にまとめて一度に行ないまして、それによって、小売り価格が下がる程度に大幅な軽減をするのが望ましいという考えで来ております。三十七年に減税を行ないましたので、ちょうど本年は三年目に当たるわけであります。来年が四年目、再来年が五年目ということでございますので、四、五年に一度はこの税率をもう一ぺん見直して、税負担のあり方を考えなければならぬということでございます。ただ間接税のうちでも他のものと違いまして酒と揮発油——これは一般間接税につきましては製造段階で課税するものは二〇%、小売り段階で課税するものは一〇%ということを一つの目標に、われわれはいま考えておるわけでございますが、酒と揮発油だけは、これは特殊な物資、特に酒は昔から財政物資として重要視されておりますので、一般間接税と同じような考えをとることはなかなかできないと思います。しかしながら酒税につきましても、いま申し上げましように諸外国との比率等から見ましても必ずしも安くない。かなり高い面がございますので、そいった点につきましては今後見直していきたいという気持ちでございます。ただビールにつきましては、諸外国と比べて非常に税率が高いことは先ほど申し上げたとおりでございますが、これは一つはわが国ビールの生産が、現在は五社でございますが、従来三社によっていわゆる寡占状態にございましたので、そういう事情から、かなり税負担をしてもらっても相当売れ行きがいいというようなこと、これが大きなもとになりまして、かなり重い負担になっていることは確かでございます。したがってこれを急激に引き下げていくということはなかなかむずかしい。ただ先ほど申し上げましたように、四、五年に一ぺんの割合間接税の検討をいたします際に取り上げて検討いたしたい、かように考えるのであります。
  23. 只松祐治

    只松委員 直接関係はありませんが、間接税の中で、酒税が三十八年一一・三%取れて、第一位ですね。西欧各国のように酒税税率が非常に低い、こういうところを見ますと、資料があればお教えいただいてもけっこうですが、おそらく西欧各国酒税が間接種の第一位、こういうことではないだろう。それから酒税がこんなに大きい額でもないと思うのですが、そうするといま酒税を下げると何か、そういうふうには言われないけれども、間接税の額なり税収全体が下がってくるからこれは急激に下げられない、こういう趣旨の答弁であります。しかし諸外国税制を見ると、もっと違う形の間接税というものがとられておる。したがってこういうふうに間接税負担率が非常に高いのだ、こういうふうに思うわけですが、そういう税制を研究すれば、必ずしも酒税を現行のように——逆進性の強い、たばこに次いで強い砂糖とか酒、こういうものを五億円取っている。松下幸之助さんも、二十万円ぐらい取っている青年の労働者も、同じ税率を納めなければならぬ、こういうばかげたことではなくて、もう少しは実情に沿った税金の取り立て方というものがあると思う。  そこでついでにお聞きしておきますが、外国のそういうところで大体第一位になっておる間接税は、何か酒税でこんなに取ってなくて、しかも間接税ウエートが多いわけなんですから、どういうものを取っておるか。もしなければあとで資料でけっこうですが、あればお教えいただきたい。
  24. 泉美之松

    泉政府委員 諸外国間接税で申し上げますと、欧州各国西ドイツフランスイタリアは御承知のとおり間接税のうちでも西ドイツ取引高税フランスは付加価値税、イタリア一般売り上げ税、こういったいわゆる流通税が相当高いウエートを占めておりまして、これが間接税の中に一番高いウエートを占めております。申し上げますと、西ドイツでは取引高税が全体の税収のうちの二五・五%でございますが、所得税の三六%に次ぐ税のウエートで高いものになっております。フランスにおきましても、付加価値税がサービス供与税と合わせますと税収のうちの三六・四%を占めておりまして、これはフランスでは税目中第一位を占めておるのでありまして、所得税のほうがむしろ一九・一%というふうに、それよりかなり低い。それからイタリアにおきましても、一般売り上げ税のうちのウエートが二二%ということでございまして、これも各税日中一番ウエートの高いものになっております。それに比較いたしましてアメリカでは、酒税が全体の税収のうちの三・三%、それからイギリスでは酒税が約七%ということになっております。イギリスではむしろあの国の従来の経緯からいたしまして、間接税のうちでは関税、ドミニオンからのいろいろ物資を調達する、その関税が一番大きくなっておるのであります。そのように間接税のうちでどういうものがウエートを占めておるかということは、それぞれの国によって違っております。ただ逆進性の点から申し上げますと、実は取引高税とか売り上げ税というほうが酒よりは逆進性が高いのでありまして、その点からいたしますと、税制としての問題は、欧州各国式のものがいいのか、日本のように個別酒税の形のほうがいいのか、これはいろいろ問題のあるところであります。
  25. 只松祐治

    只松委員 きょうは間接税論議ではございませんからその程度にしておきますが、さっき五年ごとというようなお話がございましたが、あとで話を出しますように、特にビールなんか近年需要の伸びが非常に大きいわけですね。こういうときに、あまりこういうふうにこだわらないで、下げるものは下げ、あるいは税体系をまだいろいろ研究されておるわけなんですから、こういうものと関連して、こんなに逆進性の強いものは十分考慮していくということが必要でないか。さっきからそういうふうにおっしゃいましたから、ひとつその点を確認して話を進めたいと思います。  ここ三、四年来の日本で一番大衆的なものである酒、ビール、これの売り上げ、したがって税額を見てみますと、たとえば三十八年度酒の場合一千百七十五億円、前年に比し七十二億円ふえております。それから三十九年が一千三百二十五億円、百五十億ふえております。それからいまだから予定ですか、本年は一千三百三十八億円でわずかに十三億しかふえる見込みがないわけですが、いままで年々酒は急速に伸びてきておったのですが、本年伸びる見通しが少ないというのは、何か特殊の現象でもあるのですか。
  26. 泉美之松

    泉政府委員 実は三十九年度の酒税、これは酒税全体といたしましては、予算額を確保しまして、少し余裕が出るのではないかと思っておるのでございますが、清酒の中で申し上げますと、一級の売れ行きはかなりいいのでございますが、特級がほとんど伸びませんのと、それから二級の売れ行きが最近あまり芳しくないのでございます。したがいまして清酒だけで申し上げますと、三十九年中に前年度にたいしまして百五十億円増加すると見込んだのがなかなか困難で、そういう点からいたしまして、清酒につきましては実績見込みに比べますと、四十年度には全体として七%ほど伸びるように見込んでおるのでありますが、見込みのほうが少し減りましたために、増収額として見込んだのが十三億というように減っておるわけであります。
  27. 只松祐治

    只松委員 逆にビールは、三十八年度が一千六百三十八億円で二百二十一億円プラス、三十九年度は一千八百二十四億円で二百十億円、本年度は二千二百七億円で三百八十三億円、約四百億に近い非常に大幅な伸びであります。これは本年度実績に基づいて伸びがあると思うわけでございます。どういうことですか、これは何か特殊なことがあるのですか。
  28. 泉美之松

    泉政府委員 ビールにつきましては、三十九年度の当初予算におきましては、一三%程度伸びると見ておったのでございますが、実績見込みによりますと、一八%程度伸びることになりますので、それによりまして本年の実績見込みが相当ふえまして、そこでその実績見込みを基礎にいたしまして、四十年度には一六%程度はまだ伸びるだろうという見込みを立てましたので、増収額が多くなっておるわけでございます。特別な事情があるわけではございません。
  29. 只松祐治

    只松委員 これは取ってみないとあれですが、ビール業界やそこらへ少し聞きにいったら、とてもこんなにはなかなか伸びません、こういうような話でございまして、ビール業界もだんだん行き詰まってきました、こういう話です。これは取ってみないとわかりませんが、こういうふうに酒は伸びると思っていたが伸びなかった、ビールはそれほどじゃない。まあ神さまではありませんから、税収の見当違いはあると思いますが、これは所得や何かと違って、わりあいに捕捉されいい、見通しのきく税額だと思うのです。これがこんなに大幅に、特に片一方は伸びない、片一方は伸びる、こういうことでは——これはきょうは税徴の問題ではございませんから、徴収方法その他についてまで私はやろうとは思いませんが、ひとつもう少し確たる資料に基づく検討をすべきではないか、こういうことを要望しておきたいと思います。
  30. 泉美之松

    泉政府委員 お話のとおり間接税、ことに酒のごときは、その売れる数量の見通しをかなり正確に立て得るものでございます。われわれとしてもできるだけ正確を期しておるつもりでおりますが、ただビールについて申し上げますと、これは非常に天候に支配される酒でございまして、特に夏場に売れ行きがいいわけでございますが、つゆどきに雨が非常に降りますと、ビールの売れ行きは悪い。からっと晴れて天候がよくて暑いと非常に売れ行きがいいというようなことでございまして、なかなか正確を期しにくい点があるのであります。しかし現在でございますと、千万石をこえるような大きな数字になりまして、税収のうちでも相当の高いウエートを占めてまいりますし、われわれも気象庁などに聞きまして、長期天気予報を聞いたりなどいたしておるのでありますが、必ずしも正確にいかない点もございまして、まことに恐縮に存じております。
  31. 只松祐治

    只松委員 国税庁の方おりますか。酒税、特に酒とビール税金の把握、捕捉方法をどのようにおやりになっておるか、御説明をお願いしたい。
  32. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 清酒につきましては、税務署の間税官吏が立ち会い検査に参りまして脱税——脱税と申しますか、酒税が適正に申告されているかどうかということについて、現物について年に何回か立ち会いの検査を行なうことによって、漏れのないということにつとめております。ビールも同様に、回数は清酒よりはもう少し少ない状況ではございますが、やはり同じく立ち会い検査をやる、こういうことによって酒税の申告の漏れのないように、国税庁としては検査の励行を期しておるところでございすす。
  33. 只松祐治

    只松委員 その程度のことは聞かぬだって、だれだって知っていますよ。どうやって具体的に検査し、調査し、把握し、捕捉しているか。さっきから言っているように、ビールは半分は税金が動いているのと同じなんですよ。たばこの場合は葉の一枚に至るまで、このごろ検査まではなくなったようですけれども、きちっと調べ上げて、それで売り上げから全部把握されているわけですね。そしてその工程も、公社ですから国営に準じて非常に管理されているわけです。ぼくはそういうたばこの一例を出しましたが、そういうことに比例して、酒やビール税金はどう把握されておりますか、こう聞いているのです。具体的に答えてください。
  34. 松本茂

    ○松本説明員 清酒のほうでございますが、これは原料米の割り当てをいたしまして、各企業者はその割り当てを受けた原料米をもとにいたしましてつくるというたてまえになっております。したがいましてその原料米を使いましてつくってまいります過程におきまして、仕込みの場合、あるいはまたもろみができましてそれをしぼります場合、そういった重要な点につきましては申告を受け、必要に応じましては、税務署の職員がそれに立ち会うという方法をいたしております。それから最後に仕上がりまして移出するというときには、これは申告納税制度になっておりますので、申告をもとにしてやってまいるわけでございますが、必要な場合には立ち会うということもございます。その過程におきまして、いろいろな要所要所におきまして立ち会いをいたしましたり、あるいは必要な申告書を徴しましたり、そういったことで数量を把握するというようにやっておるわけでございます。ビールのほうは、原料の割り当てとか、そういったことはありませんが、必要な場合には、税務署の職員も立ち会いをいたします。しかしビールのほうは近代的企業になっておりまして、内部の牽制も、企業組織の内部組織としてかなり徹底しておりますので、清酒に比べますと、検査等に出向きます回数は少なくなっております。大体そういう状況でございます。
  35. 只松祐治

    只松委員 その程度も大体常識としてだれでも知っているのです。だから、たとえば酒ならば原料米の割り当てがあって云々ということは知っているわけですが、いま米は、あなたたちも配給米だけで食っているわけじゃない。やみ米がうんと動いていることは御存じでしょう。米は相当自由に手に入るわけなんですよ。   〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕 だから、原料米の割り当てだけではなくて、いろいろそういう自由な米が自由に操作できるというぐらいのことは、社会常識でしょう。だから原料米の割り当てがあってそれに基づいて云々なんという、そんなことであなた、税金を全部捕捉されていると思っていますか。四〇何%ですよ、とにかく酒の中に税金国民が払っているのは。だからそういうことではなくて、もっと具体的に、たとえば仕込みのときに何人の税務職員が何日間行って、それでどういう調査をしておる、何石の酒をつくっているところに、大体延べ何日ぐらい税務職員が行っておる、こういうことが答えられないと、これは答えにならぬでしょう、いまあなたが言っているぐらいのことでは。そういうことを私は聞いているのです。
  36. 松本茂

    ○松本説明員 原料米の点につきましては、先ほど申しましたように清酒につきましては、割り当てを受けてやっておるわけでございますが、その管理につきましては、法令上もいろいろ規制がございますし、税務署のほうでもその点につきましては特に注意をいたしておる点でございまして、割り当てを受けた米域外のもので酒をつくっているということは、脱税であるとか密造とか、そういったことを除きましては、ないものと思っております。それから検査の状況でございますが、どの程度の規模のメーカーであれば、何人の職員が何日出向くかという、その資料をただいまちょっと手元に持っておりませんが、大体検査に従事しております割合考えてみますと、九〇%ぐらいの労力を、個別の検査といいますか、メーカーの製造場に行きまして、申告された場合にそれに立ち会ったり、あるいは随時こちらのほうから適当な時期に参りましたり、そういった個別の検査に充てておるわけでございまして、残り一〇%ぐらいをそういった個別の検査とは離れまして、集中検査とか総合検査とか、そういった全体的な検査の場合に投入しておる、こういうやり方でございます。
  37. 只松祐治

    只松委員 ビールはどういう検査をやっていますか。
  38. 松本茂

    ○松本説明員 ビールにつきましては、先ほど申しましたように近代的な装置産業になっておりまして、この歩合もいろいろデータがございますし、それから内部のいろいろな牽制も、企業の内部組織としてかなり行き渡って徹底して行なわれている、こういうふうに考えられますので、清酒の場合に比べますと、税務職員が現実に工場に参るというケースは少なくなっております。
  39. 只松祐治

    只松委員 全然逆なんですよ。酒造会社のほうはそれほど行っていない。しかしビール会社には大体二人ないし三人の人が隔日には行っているのですよ。国税庁の上の、特に間税部長が、自分の税務職員の動いている実態、検査している方法を知らぬでは困りますよ。ちょっとこれはこういうことでは、こまかい問題だけれども、ぼくら税金をいつもこうやっておって、こういう徴税の実態というのをいつも問題にしているのだから、全然でたらめを答弁しているのでは、こういうことでは納得できない。いま答弁されているのは、酒会社などには行っているけれどもビール会社に行っていない、全然逆ですよ。ぼくは多少——迷惑がかかるから、どこのビール会社がどうとか、まだ言いませんよ。しかしぼくが調査をした範囲内においては、全然逆なんですよ。ビール会社には大体二人ないし三人が一日おきに行っている。そういうことを知らないで、本委員会に来てのうのうとでたらめに答弁するというのでは、私はこれ以上質問を続けませんよ。
  40. 泉美之松

    泉政府委員 便宜私からお答え申し上げますが、ビール会社は、御承知のとおり、全国に二十五工場ございます。それに対しまして清酒のほうの業者は、全国で三千七百、工場数は二工場以上にわたるのがございますので、実際の検査すべき対象は三千八百ぐらいあるわけでございます。そういうことで、税務職員がそれぞれ立ち会い検査など、いろいろやっておるわけでございますが、何ぶんにも清酒業者の場合は対象業者数が多うございますので、これを各税務署におきまして、それぞれ過去の実績等からランクをつけまして、まあ従来から非常にまじめな業者であって、間違いがないというような業者のところへは、あまり回数行かない。しかしこの業者はどうもあぶなっかしいというような業者でございますと、これには回数多く行く。それをA、B、Cと三段階ぐらいに区別いたしまして、Aの業者にはそう回数行かぬでもいい、Bの業者には適当の回数、Cの業者には相当何回も行くというようなことで、ランクをつけてやっております。それからビール会社の場合には、何ぶん大工場でございますので、製造過程で、仕込んでおる段階、貯蔵しておる段階、移出しておる段階と、相当多量な仕事がございますので、先ほど只松委員のお話のとおり、ほとんど隔日ぐらいに税務職員が行って、検査などいたしておるのが実情でございます。   〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕
  41. 只松祐治

    只松委員 いま委員長のちょっと留守中に、国税庁側の答弁がでたらめだ、こういうことで私が言って、いま泉主税局長のほうから代理答弁があった。まあ泉さんのほうは私が言ったのとそれほど違いはない、大体合っていますが、しかし国税当局が答えたのと、大蔵省の主税当局が答えた調査方法とは、全然食い違ったのだ。したがって取り消すか、暫時休憩してその取り扱いを協議してもらいたい。
  42. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 あるいは私のほうの認識が不十分だったということがあるかもしれませんので、さらに実態を十分調査いたしまして、後ほど現実の調査に基づきました御報告を申し上げたいと存じます。
  43. 只松祐治

    只松委員 主税局長答弁したのと間税部長が答弁したのと違っているのですよ。内容が全然逆のことでしょう。泉さんは、ビール会社は大体隔日ぐらいに行っています、こういう答弁をされている。ところが間税部長は、大きいところであれですから、めったに行っていません、こういう全然違った答弁をしているのですよ。しかも私が言うように、初めずっと聞いてきたように、ビールびんの中身の半分は税金なんです、飲んで納めるにしたって。そういうものを、ぼくがいつも言うように、勤労者からは一〇〇%税金を取ってくる。中小企業者からは非常にきびしく税金を取る。そういうことをしながら、酒税や何か、こういう半分国民が納めている税金は、取り方や何か、その調査方法すらわかっていないじゃないですか。そんなでたらめなことで、どうして国税庁がつとまりますか。さっきから言っているように、完全に答弁が食い違っているじゃないですか。そういうことでは全然承認できませんよ。取り消すかどうかしなさい。
  44. 吉田重延

    吉田委員長 只松委員に申し上げます。いま政府間で打ち合わせておりますから、しばらくお待ちを願います。  ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  45. 吉田重延

    吉田委員長 それでは速記を始めてください。
  46. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 国税庁側の答弁が、十分な実態調査に基づかないで答弁いたしまして、主税局長答弁と食い違いがありました。まことに申しわけございません。私のほうの国税庁側の答弁を取り消しまして、なお十分実態を調査した上、はたして検査がどのように行なわれているかということを、さらに具体的に御報告申し上げたいと存じます。
  47. 只松祐治

    只松委員 後日調べて間違いのない答弁をしていただきたいと思います。私が調べた範囲内では、さっき泉さんのほうから話がありましたように、酒造会社のほうは、その会社によって多少迷うようですが、そういう調べ方です。ところがビール会社の場合には、二人か三人の人が隔日か、どうかすると三日目ぐらいに来て調べる、こういうことです。それから私は一々けちをつけようということではございませんが、さっきの答弁と食い違っているのは、国税庁が出しておるこれを見ても、これの中には、蔵出しの検査を主として行ない、それに基づいて酒税の調査を行なっておる、こう書いてあるのです。これも読んでないでしょう。あなたは読んでいますか。これはあなたのところから出しておる。これには蔵出しを中心に検査をしておるという書き方がしてある。だからあなたの答弁が違っておったら、これを書きかえるか何かしなさい。  それではお聞きしますが、繰り返し言うように、そういう検査で、われわれが五二%納めておるビール会社の税金の検査が、十分にできておるとお考えになりますか。
  48. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 われわれといたしましては、必ずしも検査の密度はあるいは十分でないかもしれませんが、これによって一応こちらとしては、現在の職員数から見まして、なし得る程度意味におきましては、ビールについて完全な検査を行なっておる、こういうふうに考えております。
  49. 只松祐治

    只松委員 ビール会社に行ってごらんなさい。仕込みも夏場は二カ月ぐらいでできるのです。冬場は三カ月なり四カ月かけるときもある。そのときによって仕込みも違うのです。仕込んで、それからずっと発酵させていく。二カ月かかるか三カ月かかるか、そのときによって違う。これは人手を要しないで、ビールびんに詰まって、出てきたのが蔵に入って、ビールは新しいほどいいですから、それがそのままトラックでどんどん出ていっているのです。税務職員もだれもいないのです。あとで蔵出し伝票を見れば、なるほどということはわかる。しかし伝票をつくりかえておった場合には、一日おきや二日おきに行って、五〇%公金である税金の入っておるビールの検査ができますか。たばこの葉の一枚というほどのことはなくなったけれども、六十何%かかっているたばこは、非常にきびしく何から何まで全部やって税を捕捉している。ビールは五二%ですが、そのかわり百十五円ですから、国民の納めておる税金の額は大きいですよ。これがどんどんトラックで運び出されている。どこで捕捉できますか。それで完全に捕捉されていると思いますか。これは立ち会いに行きますか。本委員会でも調査に行って、そこで一〇〇%捕捉されているかどうか見ましょうか。完全に捕捉していると断言できますか。できてないならできてないと言いなさいよ。
  50. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 もちろん完全なる検査をしようとすれば、かなりの人員が毎日ビール会社にずっと詰めかけている、こういうことによって把握しなければならないと考えますが、現在の職員の定数から見まして、そうした完全無欠な検査はできない。それがために、いまのように一日おきとか何日おきとかに検査に立ち会いに行く、こういうことにならざるを得ないわけでありますが、そうした検査を補うために、たとえば取引先のほうを十分調べてみるとか、あるいはそれぞれの歩合を調べてみるとか、ビール会社の申告が正しいかどうかということにつきましても、そうした各方面の検討方法によりましてこれを確かめる、こういうことで常時立ち会いに行けないという欠陥も補っているところでございます。
  51. 只松祐治

    只松委員 繰り返し言うように、五二%税金が入っているのです。半分は税金です。それが十二分に捕捉されてないということなんです。これは重大なことですよ。いま言われておるように、実は税務職員が少ないとかなんとか、理由はありましょう。しかし国民が納めておる税金なんです。酒を飲んで酔っぱらって納めておるといえばそれまでのことですけれども、酔っぱらって納めようと、徴税で中小企業者が取られようと、勤労者が源泉徴収をされようと、同じ税金に変わりはないのです。その税金を結局完全に捕捉されてない。このことがいま十分に調査されてない。十分に調査されでなければ、完全に捕捉されてないということになるのです。これは行けばわかります。このビールだけの税額を見たって、表面上本年度は二千二百七億円です。膨大なものですよ。これは捕捉されているということになるでしょう。しかしこれ以上に石数や何かがはっきりしないで、これを見れば、あなたは大体蔵出しを中心に検査しているというが、蔵出しも検査していないで、どこで捕捉されるのですか。酒なら仕込む時期が同じですから、仕込んで出てくるのは違わない。ビールの場合には二カ月か三カ月か、その製造日数も違うのですよ。どこで捕捉できるのですか。いろいろな物品税の場合は、非常にきびしく調べているところがありますね。例をあげてもいいけれども、たとえば双眼鏡とかレンズとかは、ものすごくきびしく調べているところも、いなかの税務署に行けばありますよ。しかしこういう大工場でできているビールが、しかも五〇%の税金を含んでいるというものが、ほとんど完全に調査がされていない。こういうことはどうするのですか。
  52. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 私が申し上げましたのは、完全なる捕捉ができていないということを申し上げたのではなくて、常時詰めかけての完全無欠な調査というものは、あるいは現在の体制ではできていない、こう申し上げたわけでありまして、そのために、結果として捕捉漏れが相当出てきているということは、それ以外の方法をいろいろ併用することによりまして、妨げているものと考えております。
  53. 只松祐治

    只松委員 仕込みから搬出まで、夏の二カ月でできるときもあれば、あるいは三カ月、あるいは三カ月半でできるときもある。行って聞いてごらんなさい。ちゃんと教えてくれますよ。だからビールの場合は、仕込みだけでは捕捉できないのです。搬出の場合はできたものが、オートメ化されてトラックでどんどん出ているのですから、蔵出し伝票を五枚、十枚ちょろまかしたり——そういう形のちょろまかしは大企業ですからできませんが、二重帳簿をつくれば……。なぜ専売のほうはそんなにきびしくやっているのですか。税率はほとんど変わりないのですよ。たばこは五十円から八十円ですけれども、ビールは一本百十五円で、それに含まれている税率というのは非常に高いのですよ。たばこのほうはものすごくきびしいでしょう。たばこだけでなくて、一般の税でも非常にきびしいのですけれども、酒税はどうしてこういうふうに抜け穴があるのですか。完全無欠ですか。
  54. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 先ほど申し上げましたように、われわれといたしましては現行の検査方式によりまして、ビールについては捕捉漏れがあるとは考えておりません。いろいろの方法と申し上げましたが、たとえばすべて立ち会いをしていなければ完全に捕捉できないかということになりますと、たとえば先ほど申し上げましたように、卸業者あるいは小売り業者といった取引先の調査から、脱税、課税漏れの品が出ていないかどうかということを調べる。あるいはいろいろ経理の内容とか、そういった面からも売り上げの漏れがないか、こうしたことを調べる。いろいろな方法を併用いたしまして、検査に遺漏のないように期している次第でございます。
  55. 只松祐治

    只松委員 いまの答弁、ことばじりだけを私はとらえませんけれども、私は本質的に完全ではないということを言っているのです。たとえばいまのこの卸や小売りで課税漏れはないか、一々判こを押してやりますか。何かレッテルでも張って、検査証でも張っているのですか。卸や小売りで脱税がないかどうか、どうやって調べるのですか。でたらめを言いなさんな。
  56. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 卸、小売りにはそれぞれ記帳がありまして、いつどこの会社から何本仕入れたかということがわかるようになっております。したがいましてその資料を切ってメーカーのほうに持っていく。そうするとそのとき申告した本数と違うということがもしあれば、それは課税漏れの品ではないか、こういう推定がつくわけでございますが、そういったような方法をいろいろ併用いたしておる、こういうふうに申し上げた次第でございます。
  57. 只松祐治

    只松委員 私も税務行政を全然知らぬわけでない。でたらめを言いなさんな。卸、小売りで、おっしゃるようにサッポロビールやキリンビールが、目黒の工場から、川口の工場から、あるいは吾妻橋の工場から、あるいは北海道の工場から来ているか、一々わかりますか。全国の何十億本というものを集計して、脱税があるかないか調べておりますか。そんなでたらめの答弁をしなさんな。
  58. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 どこの工場から仕入れたかということは、レッテルにしるしがございまして、どこの品であるかということはわかるようになっております。それからどこから仕入れたかということが記帳されておりますので、そうした面からも、どこの工場の品が幾ら何日に入ったかということはわかる、こういうことになっております。
  59. 只松祐治

    只松委員 そんな全国集計ができますかと言っているのですよ。全国のビール会社のものを、たばこや何かが完全に捕捉できるように、全国の集計ができますか。膨大な労力ですよ。わずかしかない工場の出庫を押えるくらいの労力や人件費じゃないですよ。そういうことを言うのだったら、ぼくは小売りから何から調べてきて質問しますが、いいですか。
  60. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 私が申し上げましたのは、すべての資料を全部集計して突き合わせるという意味ではなくて、抜き取りによりまして、その資料と移出との照合をいたしまして、漏れはないか、こういう抜き取り検査といったような方法を併用いたしまして、課税漏れのないように、検査の万全を期しておるというわけでございまして、悉皆集計突合といった作業をやっているわけでございません。
  61. 武藤山治

    ○武藤委員 いまの次長の説明のしかたが説得力がないのです。只松君の質問しているのはこういう点だと思います。酒と違って、ビールは二、三カ月でつくれるから、常に監督に行っていないと脱税されるおそれがあるじゃないか。たとえばホップを何キロ使って、もろみを幾ら使ったら、幾らのビールができるという大体の基準があるわけでしょう。したがって国税局が、その基準できちんと立ち会っているのかいないのかという問題になるわけです。人数がなくてやっていないということになれば、仕込みのときの数量もきちんと計算していないという推量も、聞いているほうでは出てくる。そんなばかなことはやっていないと思うのです。そこでまず蔵出しされるまでに、どういうところとどういうところで検査して把握されるのか、どの工場は今度の仕込みの三カ月間に何本できるのかという検査は、一体どこのところで何回ぐらいやっているかということを、もっと親切に答弁したら私は納得できると思う。そういうことを言わずに、いろいろな方法でとにかく捕捉して、脱税はありませんというだけでは説得力がない。もう一回きちんと、ビール会社で蔵出しになるまでの検査をどういう時点でやっているか、明らかにしてください。そうでないと聞いておっても納得できませんよ。あなたがわからないなら、担当官を呼んで説明するというふうに、かぶとを脱げばいい。わからぬことをわかったように説明するから誤解を生むのです。
  62. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 ビールの工場の検査がはたしてどのように具体的に行なわれているかということは、私は十分存じませんので、後ほど十分調べました上で御答弁申し上げます。
  63. 只松祐治

    只松委員 時間もだいぶおそくなりましたので、次回でもいいからひとつ十分調査して、まともな答弁をしていただきたいと思う。ただ私が調査した範囲内でも、仕入れのもろみやらホップやら、そういうのを一応調べてあります。それから蒸留がまに入れて仕込みのときも調べております。それから蔵出しのところも調べております。あなたが言うように、相当以上に綿密に調べていますよ、ビール会社というのは。調べてもなおかつぼくらが見たら、たばことかなんとか、これは専売ということもありますけれども、ほかの徴税方法から見るならば、相当の抜け穴というものがあるのではないか、こういう気がするわけですよ。するというところまでしかぼくは言っておきませんよ。そのことをぼくがなぜ強く言うかというと、間税というのは日本は非常に高いでしょう。半分税金でしょう。それで普通のもの、たとえば双眼鏡だとか何か、そういうものをつくって、売って、わずかな物品税がかかったということの脱税しているのと違うのですよ。末端にいって百十五円で売るときは、五二%税金を国庫に納めているのですよ。もしそのとき脱税があれば、ビール会社は税金を横領したことになるのですよ。そうでしょう。したがってこれだけ私は基本的に税金を下げろ、こう言っているのですよ。税金を下げるとともに、これだけ半分国民が納めておるビールとかこういうものならば、もっと徴税というものを、ほかの勤労所得税や中小企業や、こういうものを取るならば、もっとちゃんとしなさいということを言っているわけです。これは私が去年から言っているように、電子計算機の問題であるとかなんとか、大会社にはこういう大きな抜け穴というものはたくさんあるのですよ。こういう点は非常にルーズなんですよ。こういう点は非常にルーズでありながら、商店の前に二、三日立ってごらんなさいよ。あるいは立たなくたって、普通の商店ならどんな商店だって、びっくらこいて全部帳簿を出すのですよ。勤労所得税は完全に捕捉されるでしょう。しかし大法人の電子計算機が仕入れから販売まで全部やっているのが、もう優に三百社こしているのですよ。五二%国民から末端で取っておる税金ビール会社の蔵出しというのは、あなたたちが完全に捕捉されていないのですよ。なぜ税金国民から取るのに、もっと公平にしないか、こういうことの一例として私は、きょうの酒税法の問題を質問しているわけです。そういうことをよく考えて、もう少し国民に応能公平の原則に基づく税金を取っていく、こういうことをひとつぜひやってもらいたいと思う。よろしゅうございますか。
  64. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 ただいま御質問にありましたように、酒の税金税率が非常に高い。しかも税額として非常に大きなものをビール会社が納めている、こういうことはおっしゃるとおりでございまして、そのためにこうした税金について検査上の漏れがあってはならないということは、まことにそのとおりでございます。したがいましてこちらといたしましては、検査の万全を期しているつもりでございますが、さらに実態的にどのような方法をとっているかということは、先ほど申し上げましたように、後ほど御説明申し上げまして、はたしてそれで十分かどうかということにつきましては、そのときにまた御批判をいただきたい、こう考えております。
  65. 只松祐治

    只松委員 そこでさっきから迷った答弁の取り方や、したがってそれに補足されること、あと各ビール会社の蔵出し状況の石数ですか、本数になっているのですか、リットルになっているのですか、それをありましたらひとつ次会までに御提出をいただきたい。その答弁とあわせて、さっきからこの酒税法との関係その他もあるのでございますから、金曜日までに御提出をいただきたい。そのことをお願いしまして質問を終わります。
  66. 吉田重延

    吉田委員長 横山利秋君。
  67. 横山利秋

    横山委員 私もビールから入りたいと思うのですが、こまかいところからですけれども、私の承知しておるところによりますと、東京ではアサヒなり、サッポロなりいろいろな五社のビールの卸売りの併営を許しておるが、名古屋以西、関西においてはビールの卸売りの併営を許さないというのはどういうわけですか。——知りませんか。知らなければ知らぬでいいです。
  68. 泉美之松

    泉政府委員 これは私のほうからお答えするのが適当かどうかわかりませんが、これはメーカーが卸と契約を結ぶときに、そのメーカーだけの品物を扱うといういわゆる特約契約を結ぶか、それともそうではなくて、その卸売り業者はそのほかの会社の品物をも取り扱うかという点が、これは商慣習として関西方面におきましては、一つの会社の品物を取り扱うという卸売り業者が比較的多い。それに対しまして関東方面では、一つの会社の品物だけでなしに、数社の品物を扱うという風習が生じてきておりますために、関西と関東とで若干違っておるような状況でございます。しかしながらこれはそういうことではやっていけなくなる傾向がございまして、だんだんとそういういわゆる専売的な傾向がなくなってきまして、現在ではたとえばアサヒビールがわりあい、サントリービールと一緒に売るとかいうようなことになってまいりました。だんだんとそういう専売的な形は少なくなっていく傾向にございます。
  69. 横山利秋

    横山委員 だんだんとだんだんとと言って、私の質問の予防幕を張っているが、だんだんとなっていないのですよ。あなたは、将来そうするから、まあこの辺でこらえてくれと言いたそうだが、そうは許しません。いま只松君が言っていますように、ビール会社というのは私は横暴だと思う。独占が寡占独占というような状況で、とにかく特約店方式というもので、あなたの言うように、おれのところのビールしか売ってはいかぬぞ、売ったら最後おまえのところともう契約解除するというやり方なんか、強引だと思う。これはほんとうに独禁法違反だと私は思う、そういう契約をすることは。どうですか、渡邊さん、二時までしかいかぬというので、端的にあなたの御意見を伺いたい。
  70. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 確かにいまのエクスクルシブといいますか、要するによそのビールを扱ってはいかぬという取引条項は、これは問題になり得る条項だと思います。それで御承知のように、おそらくいままでそれがある程度放置されておりましたのは、キリン、アサヒ、日本——いまはサッポロ、一応ビールを扱う会社がこの三つだけであったという場合におきましては、それぞれの力が、最近におきましてはある程度違っておりますが、ある程度均衡を得ておった。それでそれぞれが一応の特約店を持っていたということで、それの弊害がそう目につかなかったというのではないかと思います。ところがその後におきまして、タカラが出てきたり、サントリーが出てきたりという場合において、従来キリンを扱っていたところに対して、タカラを扱うのなら私のところの取引はやめさしてもらいます、こういうような話が出たという具体的事実を私聞きまして、そうして実は国税庁のほうにすぐ話しまして、そういう事実があれば、これはわれわれのほうとしては、いわば一種の不公正取引として独禁法で取り締まるのだ。ただ国税庁が一応指導官庁として出ているのだから、まずもって一応そういう事実があるかないか、あるいはそれに対してどうするかということについて調べてみろという意見を求めました。これはたしか昨年のことであります。その後国税庁ビール会社のほうに警告をして、そういったような、たとえば問屋なら問屋がタカラを扱いたいというときに、従来キリンを扱っていた。ところがキリンのほうが、タカラを扱うなら私のほうの取引はやめさせてもらいますというようなことを言えば、これはまさに不公正取引に当たる、したがってそういうことのないように、十分責任を持って監督するからという話がありました。私のところでは一応その監督の状況を見守っているというのが現状であります。
  71. 横山利秋

    横山委員 それで国税庁はどうなったかということになるのですが、現状は名古屋以西は併営を許しておらぬ。これは国税庁が公取の意見を聞いて、忠実にそれを実行しておらぬ、私はそう思わざるを得ない。もしも契約条項にそういうことがあったら、そんなことはわかっておるはずでありますから、直ちにこれをなくさせてもらいたい。それからビール会社にも即時併営を許すように指導してもらいたい。いかがですか。
  72. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 先ほど公取委員長からお話のありましたように、昨年の四月に国税庁といたしまして麦酒酒造組合の代表者に対しまして、メーカーが支配力を行使して、特約販売店に対して他社製品の取り扱いを排除するような取引を行なうことのないよう警告を発しました。組合ではこの趣旨によりまして、傘下の組合員を指導しておりますので、当庁といたしましては目下その事態の推移を見守っている、こういう段階でございます。
  73. 横山利秋

    横山委員 簡単に聞いておるのですよ。ぼくは実行しておらぬと言うのだ。実行しておらぬことははっきりしておるのだ。あなたの命令は行き届いておらぬ、措置をしてもらいたい、こう言っておる。
  74. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 ただいまおっしゃいましたような事態につきまして、さらによくこちらといたしまして調査いたしまして、もしそのように行なわれていなければ、さらに十分な警告ないし指導を発していきたい、こういうふうに考えております。
  75. 横山利秋

    横山委員 これは強くしかりおきますよ。これは即時励行されるものと本委員会は期待をいたしまして、励行状況について具体的にひとつ私どものところへお知らせを願いたいと思う。  次はついでに卸ですが、卸の意見を聞きますと、こういうことを言うのです。一本について八十七銭の赤字が出ておる。これは卸屋の数字でありますから、どこまで客観性があるかわかりません。しかしながら卸屋の言いますには、私どもはいわゆる三段階価格ではなくて、手数料制度である、言うところの理論的なマージンではない、こういうわけですね。そしてビールを扱うことによって酒が売れるから、ビールをやっておる。ということは、もうからぬけれども、ビールでもやっておらぬと、卸屋の特殊性がうまくいかないからビールをやる。小売屋もまた同じようなことを、程度の差こそあれ言うわけですね。つまりそのことはビール会社が、只松君が指摘しましたように独占であるものだから、国民相当多数の人がビールを飲むものだから、ビール会社は酒屋関係の犠牲においてもうけておる、こういうことでごうごうたる非難なんです。あなたのほうでは、卸量が一本について八十七銭の損害だという点については、どういうようなお考えですか。
  76. 松本茂

    ○松本説明員 最近の卸の状況につきましては、卸の組合の方々からいろいろ御説明もいただいております。それで八十何銭の赤字になっているというお話も聞いておりますので、主要な国税局に通知いたしまして、現在サンプル的に実態を調査いたしておるところでございます。なるべく早く結論を得まして対策を考えたい、こういうふうに思っております。
  77. 横山利秋

    横山委員 そうしますとあなたのほうも、八十七銭の数字が妥当であるかは別として、一応とにかく卸屋が、ビールは名目であって、ビールをえさにしてほかに商売をやっておるという言い分については、かなり妥当性あるものとおっしゃるわけですね。
  78. 松本茂

    ○松本説明員 卸の組合のほうからはいまお話しございましたように、いろいろ実情をお話しになっておるわけでございますが、私のほうといたしましてはその実態を十分よく調査いたしました上で、今後の対策を考えていきたい、こういうふうに思っております。
  79. 横山利秋

    横山委員 ともあれビール会社及びビール関係については、きわめて問題が多いのであります。そしてこれが独占でありますために特約店制度、それから手数料制度等によって、卸、小売りに対して非常な圧力が加えられておるという現状は、われわれ見のがすわけにいかぬ。だからそれらの点について、格段の注意を促したいのであります。  その次には、時間の関係上渡邊さん関係について御質問しますが、酒類審議会で今度の法案の骨子になります不況要件の基準を相談をするというわけですね。酒類審議会と公取との関係はどういうことになりますか。私は酒類審議会の中へ公取のお方が入るように聞いておるわけでありますが、そうすると酒類審議会で決定したことについては、公取は無条件というような関係になりますか。また公取は別途の立場に立ちますか。
  80. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 酒類審議会に諮問して基準をつくって、それに該当した場合に一種の不況カルテルを認めていこうというこの立法のやり方は、実は中小企業団体法にある事例をわれわれのほうとしてはとりました。中小企業団体法の場合においては中小企業安定審議会ですか、これにやはり諮問しまして基準をつくりまして、その基準に該当するかいなかということについて、該当する場合において中小企業団体としての調整規定、これは生産制限とかいろいろございますが、そういったようなものを認めていく。いろいろ審議してみまして大蔵省とも相談したのですが、従来は御承知のように「基準販売価格を著しく下廻る」、基準価格を著しく下回るというような文句をなくした場合において、ただばく然と酒類酒税の納付が満足にいかぬという、最後の締めくくりだけでは少しぼうばくとし過ぎるのではないか。それでは一つの例として中小企業団体法——酒類業者の中には先ほど来お話しになっていますビール会社のようなものもございますが、大体この場合において主として重点を置いてねらいを置いているのは、普通の清酒の業者とか、そういう人たちだろう。そうすれば中小企業団体法というものを一つの事例に考えてよかろうかというのが、その案にわれわれが賛成したゆえんであります。  それから御質問の、酒類審議会に公取の者が入っているかという点は、これは私のほうの事務局長が入っております。それから一応基準がきまりまして——基準は一応大蔵省の責任においてきめる。ただ具体的に今度はその基準に従いまして一つの調整行為というか、カルテル行為というか、ということが行なわれる場合におきまして、それに要件が該当しているかいないかという点につきましては、これも中小企業団体法の例が同じでございますが、われわれのほうに協議がある、われわれのほうの同意が必要である、こういうふうなことになっておりまして、独禁法プロパーから見ますと、いわば基準の問題について酒類審議会に付し、大蔵省に一応まかせておりますから、その点は公取としてはその把握がちょっと弱いように見えるかもしれませんが、別に中小企業団体法の場合の例から見ましても、大蔵省にまかしておいてもそう非常識なことはないというふうな感覚を持っております。ただ、もちろんわれわれのほうの事務局長が委員に入っておりますから、事務局長としては十分われわれのほうの感覚を入れた基準をつくるべく、審議会においては発言してもらうということになっております。
  81. 横山利秋

    横山委員 そうしますと、基準をつくるときには事務局長が入っているから、その基準というものについて公取はそれを尊重するというか、その権限を認める、それからその基準によって行なわれる問題については公取がチェックする、こういうことですね。わかりました。  あなたはきのうの新聞によりますと、通産省の行政指導でも独禁法は適用される。つまり所管庁が行政指導でやったことについても独禁法は適用される。公取は役所のやったことだといったって放置しないという、私に言わせれば当然なことだと思うのでありますけれども、そういう言明をされまして、それが各新聞にわりあいに大きく載っておるわけでありますが、そういうことはいままで例があったからおっしゃるのか、念のためにおっしゃるのでありますか、どういう状況でこういうことをおっしゃったのか。
  82. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 過去において、いわゆる行政指導による操短といったような事例があったことがございます。これは事前に公取ともある程度打ち合わせがあったようであります。しかし国会においても非常に御批判がありまして、はっきり法律にそうしたいわば一種のカルテル行為なり何なりが認められているという場合はとにかくとして、いわゆる行政指導の名においてやるカルテル行為はおかしいじゃないかという御批判があり、それはわれわれもそのとおりと思っております。したがいましていましばしばいろいろ話題になっております問題においても、必要があるというなら国会の御審議を経て立法の上でやるべきであるし、単に行政指導という名前においてカルテル行為をカムフラージュするというようなことは、私どもとしてはそれをそのまま放置するわけにはいかぬ、こういう考え方を現在持っております。
  83. 横山利秋

    横山委員 私のお伺いしているのは、いろいろな場合とおっしゃる具体例を、もしお差しつかえなかったら聞かしてもらいたい、こう言っているのです。
  84. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 過去においていろいろな、いわば話題になった事例があるということにつきましては、たとえば繊維関係において、繊維三法においては設備の制限はしておりましたが、しかし生産数量の制限というような問題は別に何もしてなかった。ただそれに対して生産過剰になっていたということがあったでしょう。生産過剰になれば当然一応不況カルテルの要件に該当すれば、不況カルテルが認められるのですが、そこへ持っていかないで操業の日数を短縮するというような行政指導が行なわれ、それが実行されていたかのように聞いております。また鉄鋼の公販制というものの中にもそうしたにおいがある。そういった意味のことはわれわれのほうとしては同意できない、こういうようなつもりであります。
  85. 横山利秋

    横山委員 主税局長にお伺いしますけれども、団体法に比べて、この酒団法には団体交渉権がないのであります。団体交渉権がない理由は一体何であろうかといろいろ考えてみますが、しかし団体交渉権を付与すべき理由は、一般の中小企業と別に私は変わらないと思うのです。なぜ酒類関係にのみ団体交渉権を付与しないのかという点をお伺いしたい。
  86. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように中小企業関係法におきましては、団体交渉の規定とそれに対する応諾義務の規定があるわけであります。しかしこの団体交渉というのは、団体協約締結のために認められておるのであります。中小企業者が団体を組織するときに、その同じ業種の中に大企業がある場合におきまして、その大企業と中小企業者との間に団体交渉をする、そして団体協約を締結するということで認められておるわけでありますが、酒団法の場合には、いま特に小売りの販売組合から団体交渉の問題が提起されたのでありますけれども、それは団体協約ということを前提としておらないもののようであります。したがって中小企業関係法の場合の問題と、前提要件が違うということが第一点であります。   〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕  それから制度創設の団体交渉の規定を設けてほしいという希望は、卸、小売りあるいはメーカーという縦の流通段階の関係で団体交渉をしたいというのでありまして、同業者との間というのでないので、かなり中小企業の場合と違っておる。  もう一つは、交渉の妥結をはかるための措置といたしましては、中小企業関係法の場合におきましては主務大臣のあっせんまたは勧告によってその妥結をはかるということになっておりますが、いま要望されております問題は、生産者、卸、小売りの三層とそれに行政庁を加えて紛争処理機関を設けるということであります。そこでそういう団体交渉の問題が提起されましたので、われわれといたしましても、お酒の関係におきましては八団体という団体がありますが、その団体にもお集まり願いまして、これをどういうふうに法制化できるかというような問題を検討いたしたのでありますが、いま申し上げましたように団体協約締結のための団体交渉ではありませんので、その交渉の目的あるいは効果ということが、中小企業団体法の場合におきましては団体協約締結ということがはっきりいたしておりますが、その点がはっきりいたしておらない。その程度のことであれば、現在生産者と卸、卸と小売り、それぞれの間で、たとえば値上げが行なわれる場合に、その値上げ額のうちマージンをどれくらい、それぞれが配分を受けるかというようなことは、事実上の話し合いが行なわれておりまして、また国税庁のほうもその話し合いに参加いたしまして、三者の関係が円滑にいくような指導をいたしておりますが、それでけっこうやっていけるのではないか。特に法律上団体交渉協約ということがないのに、それを前提としたような団体交渉の規定を設けるのはどうであろうか。それから紛争の処理機関ということが、団体交渉の規定を入れると当然出てくる問題でありますが、この点についてもいま申し上げましたように従来から国税庁と生産三層の間で、それぞれ話し合いで進めてきておるので、これで適当ではないか、またこれは渡邊委員長のほうの問題でありますが、独占禁止法との関係からいきましても、そういう点は消費者に対する関係からいって、卸、小売りの間でそういう団体交渉の規定を設けることが適当かどうか。中小企業関係の場合と様子が違いますだけに、問題がありはしないか、このような関係からいたしまして、今回の酒団法の改正にあたりましては、そういった団体交渉の規定は設けないということにいたしたのであります。
  87. 横山利秋

    横山委員 泉さん、あなたはどこかでこういうことをおっしゃったそうですね。いままで酒類行政については生産に重点が置かれていたが、今後は卸や小売りの経営近代化や合理化が日程に上がっていくという意味のことをおっしゃったそうですね。御記憶ですか。私はそれは正しいと思うのです。いま基準販売価格をなくしたといったところで、実質上は大蔵省なり主税局の前と今と、そう変わらぬと思う。実際にそう変わっていない。一番変わらないと思いますのは、消費者に対して何らの恩恵も行き届いていないということが、考えなければならぬことではなかろうか。だからその間に、あなたが酒税を確保するためという立場から、今後は卸や小売りの経営近代化や合理化がひとつ日程に上がっていくだろうという判断というのは、どういう意味でおっしゃったのか知らぬけれども、正しいと思う。したがってその意味において、小売り屋が団体協約を目的としない団体交渉であったか、あるいは一般の中小企業団体法を知らずに何となく知識がなくてそう言っておるのか、その点はあなた方が、おまえはそう言ったろう、協約を締結しないと言ったじゃないか、それならだめだ、こういうようなきめつけ方のおっしゃり方はいかがかと私は思う。もしそうでなかったらそれはいいのですけれども、もう少し卸なり小売りなりの近代化、組織のあり方、それが一つのモデルとして中小企業団体法というのがあるのですから、そこへ近づけるのが、私は一つの共通の問題ではなかろうか、こう思うのです。団体交渉権を酒販業者だけ、酒類業者だけには付与する必要がないという断定のしかたでは間違っておる。いまかりにきょう日程に上がらなくても、あした必ず日程に上がっていく問題だ。いまあなたの言う、マージンの取り合いについて、いろいろ話し合いはさせているというけれども、実際はあなた方や国税庁が、引き続きやっているのじゃないですか。けんかさせておいて、自分たちがきめてこうやれと言うのじゃないですか。そういう形というものをいつまでも続けてはいかぬと私は言うのです。どうです。
  88. 泉美之松

    泉政府委員 御承知のとおり酒の関係の生産者、卸売り業者、小売り業者、それぞれ免許業者でございます。それから先ほど私ちょっと知識が不十分で申し上げましたが、中小企業関係法の場合におきましても、団体交渉というのは、普通では、ないのでございまして、中小企業者が組織をつくっておる場合に、大企業が出てきたときにだけ問題が起きるのであります。現在のところ中小企業関係法で、そういう意味での組合契約が問題になったことは一度もないのであります。酒の関係におきましては、先ほどお話がございましたように私どもといたしましては、従来酒税の確保という点に重点を置きまして、生産者に対する検査、取り締まり、あるいは生産者の体制の整備というような点に重点を置いて、酒の行政を行なってまいったと思うのでありますが、しかし現在一番問題は流通過程にあるのではないか。流通過程の合理化、近代化がはかれないといけないのではないかという感じを強く持っておりますので、お話のようなことを私、ある雑誌に書いたことがございます。そういう点から、今後酒の流通過程におきましていろいろ問題が出てくる、その問題を今後検討していかなければならぬと思っておりますけれども、いやおっしゃるようなきめつけ方で、小売り業者にそういう団体協約締結のための団体交渉はだめだというようなことを申したのではないのでございます。結局小売り業者の団体も、自分らが考えておったような団体交渉というのはなかなか問題がある、したがって他の酒の関係の団体、小売り以外の団体のほうも賛成してくれてないというようなことで、現在におきましては、制度化することは必要ないということで考えております。しかしいまお話のように、酒の値上げあるいは値下げの場合のマージンの配分につきまして、いつまでも国税庁が出ていくということは、必ずしも適切でございませんので、業者間で話し合いがまとまればけっこうなことだと思うのでございます。しかし現状におきましては、なかなか業者間の話し合いがまとまりませんので、最後に国税庁のほうで、この辺でお互いに妥協したらというようなことでやっております。そういった点は、できるだけ業者間で話し合いを進めていただくようにすることが望ましいと思っております。
  89. 横山利秋

    横山委員 私は団体交渉の付与について、案外回り回って国税庁自身、大蔵省自身が、その団体交渉権を付与することについて消極的ではなかろうか。むしろこれは積極的に他の団体法と合わせて、付与するように前進することが、今後の流通過程の近代化にしろ、合理化にしろ、それを促進する要素になると思っておるわけであります。  次に、今後「基準販売価格を著しく」ということばを、「正常の程度をこえて」というふうに法律改正をされるわけでありますが、問題は不況カルテルの認可、命令、勧告の判断の基準を酒類審議会でつくることになっておるが、その基準はおおよそどういうことを想定をしておるのかということが第一であります。  第二番目に、今度合理化カルテルに販売方法を入れたということでありますが、このリベートとか、からびん取引については、直接価格の影響があるから認められないというような立場をとっておるようであります。業界の要望からいうと、まだ不十分だと言うておるわけでありますが、方法を入れて、具体的にはどういうことをこの法律によってしようとするのか。その二点をお伺いをしたい。
  90. 泉美之松

    泉政府委員 御承知のとおり現在は基準販売価格という制度がありました当時を前提といたしまして、その不況要件の判定の一つに、酒の販売価格が「基準販売価格を著しく下廻る等」という表現を使っておったのでございますが、御承知のとおり昨年、基準販売価格の制度は残っておりますけれども、基準販売価格の告示を廃止いたしましたので、法文を整理するという意味で、この基準販売価格を著しく下回るということでの判定要件をなくしたわけでございます。それではこの不況事態を判断する基準はどのようなことかというと、これは本来の趣旨が法文を整理したというだけでございまして、従来の判断の基準と違った基準を設けるつもりはございません。ただ先ほどお話がございましたように不況事態の判断の基準を、中央酒類審議会に諮問して作成することにいたしております。その基準というのは、現在中小企業団体の組織に関する法律に基づく資格事業についての判断の基準というのがございまして、これが各省の共同告示で公布されておりますが、大体それにならったやり方でやっていきたいと思っておるのでございまして、ここの法文にございますように、結局競争が正常の程度を越えて行なわれているかどうか、取引の円滑な運行が阻害されておるかどうか、製造業者または販売業者の経営が不健全となっておるか、またはなるおそれがあるかどうか、酒税の納付が困難となっておるか、あるいはなるおそれがあるかどうか、こういった要件につきまして、それぞれさらに具体的に、どういう事態で経営が困難になっておるかというようなこと、安い値段で販売しているかどうか、あるいは酒税の滞納が起きておるかどうか、そういうような事柄をそれぞれ事項に分けまして規定をするつもりでございます。  次に合理化カルテルのお話がございましたが、これにつきましては合理化カルテルとして、いろいろ考える余地のものはあろうかと思いますが、ここにカッコ書きでありまして、「(規制に係る酒類の価格又は数量に不当に影響を与えるものを除く。)」ということになっております。したがいまして合理化カルテルとしても、リベードのようなものを規制するのは、この不当に影響を与えるおそれがございます。これは適当でない。あるいはからびん取引のものも、結局はリベートの変形というふうにも考えられます。そういうものは適当でない。したがって合理化カルテルとして認められるケースとして考えられますのは、販売代金の決済期間についての規制、あるいは景品つき販売についての規制、あるいは現在各組合でやっておりますような招待つき販売の規制、こういったものが考えられると思います。
  91. 横山利秋

    横山委員 渡邊さんに聞きますが、法文上の問題として今回の改正が、基準をつくります場合に法文上の文言が従来と何ら変わりない、こういうふうに判断をされますか。
  92. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 私のほうで大蔵省のほうから相談を受けましたときの話は、一応基準販売価格というのは条文上残っておる。したがって考えようによっては、現在の法律どおりでもかまわないという話ではあるけれども、しかし現実に基準価格というものが告示されていないから、どうも法文上残ることはおもしろくない。この大蔵委員会の御議論でも、それがだいぶ論議されたということで、その内容を検討していこうということで問題は入りました。結局不況カルテルの一般的な要件としまして、独禁法プロパーとしましては、御承知のように販売価格のほうのアベレージが平均生産費を割るということと、もう一つは相当数の企業が存立があぶなくなる、あるいはあぶなくなるおそれがあるというのが、独禁法プロパーの考え方です。中小企業団体法におきましては、これが厳格な規定が多少緩和された規定になっている。酒類業団体法におきましては、最終のところでは、酒税保全確保というところに最後の締めくくりがあるわけですが、しかし大体の考え方としては中小企業団体法——これは先ほども言いましたように、ビールなどにそのままそれが使えるとはちっとも思っておりませんが、清酒などを中心としました場合におきましては、中小企業団体法の考え方というもので、大体いいのではないだろうかということで、一応先ほど申したようにこの案に賛成したわけですが、従来の考え方とそう私は本質的にころっと変わったというふうには思っておりません。大蔵省のほうから、どちらかといえば、従来の考え方を変えるつもりはない。ただ法文の整理の関係でもって、こういうことをしたいというわけでございますから、その意味において私のほうとしましては、そうした御希望に沿いながら、同時に私のほうとして支障のない限度においてといったところで、現在の法文になっているわけでございます。  それからついでに私のほうの考え方を一、二ふえんして申し上げさせていただきますと、リベートの問題とかからびんの問題とかいうのは、これは不況カルテルの場合になれば、価格の問題が当然出ますから、そのときにおいては不況カルテルとしてなら、そうした問題は考えられるわけです。合理化カルテルというのは、御承知のように別にその企業がもうかっているとか、もうかっていないとかいうことは関係ないわけでありまして、企業として相当の利益が上がっている場合においても、よりそれが合理的な取引になるという場合には、合理化カルテルが許されるわけでございます。したがって合理化カルテルが許される要件というものは、不況カルテルの場合とだいぶ観点が違うわけでございます。したがいましてこういう価格なり数量というものに直接影響を及ぼすような販売方法といったような字句であいまいにしておきますと、それも入るのではないかというふうな議論もありましたから、それは入らない。これが認められるのは、不況カルテルの場合だけに限りますよということをはっきりさせてほしいということで、現在の案ができております。  それから先ほどの御質問で、多少横山委員が誤解があるのではないかと思いますが、団体交渉問題です。現在中小企業団体法で認められておりますのは、御承知のように従来中小企業なら中小企業の一分野としてきまっていたある業種がある。真田ひもとか、例は幾らでもありましょうが、あるいはタイルならタイルの生産に大企業が入ってくるというときに、いま大企業が入ってきてもらっては困るというようなときに、団体交渉の問題があります。と同時に、それだけが現在団体法で認められている団体交渉でありまして、酒の場合に話題になりましたメーカーと卸との間でいわば団体交渉をやるとか、あるいは問屋と小売りでもって団体交渉をやる。この関係は、たしか非鉄金属の関係で、一時非鉄金属が不況になったときがございました。それで特別法ができまして、供給者のほうと需要者のほうでもって団体交渉を持った。特殊な事情で法律的にはっきり認められた場合にだけこれは認めておりますが、それ以外の場合でございますと団体交渉が多分にカルテル行為につながりますので、もちろん不況カルテルなら不況カルテルという要件ができていれば、ないしそれのほうの前提が、法律的に手続が備わっていれば、これはいやおうなしに団体交渉になります。そうでない限りの団体交渉というのは、中小企業団体法においても別にこれを認めているという事例はないということをつけ加えておきたいと思います。
  93. 横山利秋

    横山委員 それではそれに関連してお伺いしたいのですが、伝え聞くところによりますと、三菱商事が大卸をやるということで、業界はたいへん騒いでおるようであります。もしそれをやるならば、大商社が酒類の大卸にどんどん進出をしてくる。三菱商事が大卸に進出をする。それがもし可能であるならば、どんどん商社が卸に進出する。それからビールのメーカーが特約店制度をとっている。特約店といっても、これは実際は自分の直営と同じようなものです。そういうようなことはあなたの言う団体交渉の対象の中に入るのではありませんか。まず三菱商事の問題について、国税庁なり主税局から事情を聞きたいと思います。
  94. 松本茂

    ○松本説明員 福岡県におきまして、一昨年の夏ごろから清酒の製造業者の一部の方々と三菱商事の間で、そういった方々の製造する清酒を三菱が大卸として取り扱うという話し合い、相談が進んできております。昨年の秋ごろからかなりその話が具体的になってまいりまして、三菱のほうから申請書が地元の税務署に提出されております。これにつきましては、非常に大切な問題でございますので、三菱商事がそういうふうに大卸として入ることにつきまして、今後どういうやり方でメーカーの方々と提携してやっていくのが、また従来のそういったメーカーの方々と取引をしておった卸の方々と、三菱が大卸の免許を受けましても、依然としてそういった方々を卸としてやっていくというふうな構想ではございますが、具体的にどういうふうな姿でやっていくのか、そういった点を十分明らかにいたしました上で、その利害得失をよく考えて今後の方針、取り扱いをきめていきたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  95. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 先ほど申し上げました中小企業の領域へ大企業が入ってくるということについての協約の問題でございますが、これは法律的には、頭に置いているのは、いわば企業の自由の許されている分野でございまして、したがいまして政府としてはタイルならタイルの生産に大企業が進出してきても、あの規定がありませんと、それはいかぬということは何も言えなかった。そこで団体法の改正がありまして一応団体交渉して、そうしてある程度政府としても勧告するとか、いろいろな措置をとっていたわけでございますが、酒類業者の場合においては、御承知のように免許の問題がありまして、したがって免許するかしないかというところに、大きく一つの政府の方針があらわれるわけでございますので、私の考えとしては結局大蔵省が、そうしたいわば中小企業対策といったようなものをどういうふうに頭に置いて免許をやっていくか。これは単なる団体交渉よりもはるかに強い権限を持っているわけですから、中小企業団体法における団体交渉ができるというようなことをやって団体交渉してみたら、しかし大蔵省がそれで免許するかしないかというのはまた別個な問題でありますので、大蔵省が免許するしないの前提要件としていろいろ話があることは、これは別としまして、最後の結末は免許するかしないかで締めくくりがつくわけですから、中小企業団体法の場合よりははるかに強い権限が政府にあるわけですから、政府がどういうふうな観点でその権限を行なうかということにあるとすれば、団体交渉という規定がなくても私はいいのではないか、かように考えております。
  96. 横山利秋

    横山委員 まあおっしゃるとおりだと私は思うのですけれども、これから推測するような事情では、あとでお伺いするのですけれども、まだ渡邊さんが暗に中小企業対策を考えれば、免許すべきではないと思うような印象を出されたのです。しかしいま間税部長のおっしゃるように、もしもそれが当面合理化なりあるいは近代化のために役立つという理屈がかりに生まれるとしたならば、あくまで前提ですが、単に三菱商事ばかりではなくて、商社筋が一斉に大卸に進出をする。目の前では確かにそういうことが、ビール会社が自分のマージンをはき出してやるならば、一般の卸や小売りには何の影響もない、消費者にも影響はないということは言い得られるけれども、長い目でクッションが一つふえるのでありますから、どこかで問題が力づくでやろうとするならば、結局小さいところないしは消費者へ問題が転嫁される。同時に中小企業者としての階層にしわ寄せがいくことは、理論上私は当然なことではないかと思う。だから、その意味では卸なり小売りなりが、この商社の進出に対して非常に警戒をし、自分たちもそのことばかりではないけれども、何か団結をしてこれに対抗しなければならぬと考えるのは、私はけだし当然なことだと思うのであります。団体交渉権よりもこれはもっと目の前の切実な問題でありますから、国税庁にお伺いいたしますが、一体いま泉さんのことばを引用して、酒類行政としてでなくして、むしろこれからは卸や小売りの経営近代化、合理化が日程に上がるという考え方をあなた方もお持ちであるとするならば、いま目前の三菱商事の問題については、これは当然腹をきめてもらわなければならぬことではなかろうか、こう考えるのでありますが、遠慮のないことをひとつ聞かしてもらいたい。
  97. 松本茂

    ○松本説明員 福岡県下の清酒の製造業の方々は、いままでのいろいろな歴史的な事情もあると思いますが、わりあい規模の小さいメーカーの方が多うございます。中にはかなり大規模の方もありますが、わりあい小さい規模の方が多いわけでありまして、そういう状況から何かひとつまとまって、共同のびん詰め工場をつくって統一して売り出していきたい、そういうふうな希望を持っていられる向きもあったわけであります。昨年酒類製造業の近代化の点につきまして、中小企業近代化促進法の指定業種になりまして、それに基づきますところの基本計画なり実施計画というものもきまりまして、その中に今後の近代化を進めていく方向といたしまして、そういった共同びん詰め工場をつくるというふうな協業化ということも、一つの大きな今後の進むべき方向として示されたわけでございます。そういったことで業界の方々も、そういう希望をかなり強くお持ちになる向きも出てきたわけでありますが、ちょうどそのころ三菱のほうも、酒類につきまして大卸としてやってみたいという希望もありまして、それでそういった方々と協力いたしまして、三菱もその共同びん詰め会社をつくることに協力いたしまして、そしてそこでできました酒類につきまして、三菱が大卸として取り扱っていく、そして従来からそういった方々の酒を取り扱っておられた卸、小売りのルートを通じてその酒を販売していく、そういう構想でいろいろ現地で話が行なわれたわけでございます。それで確かに今後の酒類製造業の近代化、合理化ということを考えてまいります場合には、そういうわりあい規模の小さい方々が集まって、流通機関とも協力して共同びん詰め会社をつくり、そうしてそれを販売していくということも一つの方向でございます。そういった意味におきましてメリットもあるわけでございますが、他面におきましていままで取り扱っていられた卸の方々と、どういうふうな関係になりますか。そういった方々のルートを通じて流していくということにはなりますが、その間手数料の配分とか、そういった点で具体的にどういうふうになっていくか、また従来の小売りの方々との関係もございます。そういったことで何ぶんいままでは酒類業界、清酒の業界、それからそれを取り扱います卸、小売りの段階、いずれもほとんどの方々が中小企業でございます。そういった関係で、こういう大きい資本の会社がその間に入ってくるということにつきましては、いろいろ心配される点ももっともだと思いますので、具体的にどういう利益になる点があるか、どういう問題になる点があるか、またそういった問題になる点はどういう方法を講じていけば改善されるのか、あるいはいろいろやってもそれはなかなか改善、除去されないものか、そういったことを十分よく検討いたしまして、その上で方針をきめたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  98. 横山利秋

    横山委員 私は本問題については、特に国税庁側としては慎重に取り扱われんことを重ねて要望をいたしたいと思います。  次に、最近酒屋の倒産があちらこちらであったり、あるいは基準指数の権利を売却をする人が多いのですが、これを売りました場合に、評価がゼロになっているのは五、六万くらいには売れる。ところがつぶれたときでありますから、結局法人としては設備資金にも満たぬという状況がよくあるわけであります。ところが個人の酒屋さんの場合には、一時収入であるから基礎控除がされて、またさらにその半分が一時収入の税法によって措置される。その間のつり合いがとれないではないかという意見がありますが、こういう問題は御存じでございますか。
  99. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように酒類製造業者、特に清酒の業界におきまして、基準指数を持っておりまして、その基準指数が実際上販売され、相当の対価を得ることができるようになっております。その場合に、個人の酒類業者でございますと、それは資産の譲渡所得の対象になっております。したがって譲渡所得といたしまして、その収入金額から譲渡に伴う必要な経費を控除いたしまして、その差額から三十万円ないし十五万円の控除をして、その後半額について課税する、こういうことになっております。それから法人の場合でございますと、その法人が解散するという場合に、その清算所得に対する課税、これは租税特別措置法のほうで軽減がはかられております。この個人と法人と内容が違いますので、その間のバランスが現在程度でいいかどうかという点については、問題がないとは思いませんけれども、現在のところそれで一応いいのではないかというふうに感じておるのでございます。
  100. 横山利秋

    横山委員 これは他にも影響があることですから、酒屋さんだけで議論するわけにはいきませんけれども、同じ基準指数を売却をした場合には、私は明らかに違うと思うのです。法人の場合には損をするという数字が私は出てきておると思うのです。実は私がこれを例に引きましたのは、とにかくこれから卸屋や小売り屋、また酒づくり屋でもそうでありますが、近代化、合理化をするその方向へ十分に指導をさせたいということでありますが、私が率直に感じますことは、いままで国税庁にしても大蔵省にしても、酒税を確保するということだけで見ておって、ほかの各省が所管いたします中小企業関係の指導のあり方、援助のあり方と、数段違うのではあるまいか。監督の目が常に先行をして、業者の育成をするという観点が乏しいのではあるまいか。それからさらに欠陥を言うならば、業界を援助することが、ある場合において必ずしも消費者に対する目が行き届かないのではないか。消費者を援助するという点について欠けるところがあるのではないか。つまり酒類行政については、相当視野を変える必要があるのではないか。もしそれ前者の業界の育成指導ということであるならば、いま少し援助の積極的な手を差し伸べることによって、終局的には消費者の利益ということに結びつくような、角度の高いところをやらなければいかぬのではないかと思うのであります。今後この酒類業者に対する合理化なり近代化ということはどの方向で、指導なさろうとするのであるか、具体的な案がありましたらお伺いをいたしたい。
  101. 松本茂

    ○松本説明員 清酒の製造業の点につきましては、昨年の夏に近代化実施計画ができまして、それによって方向が大体示されたわけでございます。今後はその方向に従いまして、毎年の実施計画をつくってまいることになっておりますので、その年次年次について重点の置きどころを考えてやっていきたい、こういうふうに思っております。その清酒製造業の近代化計画を考えました場合に、同時にそれと関連いたしまして、卸、小売り等の流通段階につきましても、いろいろ研究はされたわけでございますが、それ自身の段階をともかく第一の点といたしておりますので、製造段階におけるほど十分な検討が行なわれていないように思われますので、今後年次計画をつくってまいります場合には、製造業とも関連いたしまして、卸、小売りの流通段階の近代化、製造段階と流通段階の結びつきをより緊密にし、合理化していく、そういった点に一つの重点を置いて検討してまいりたい、こういうふうに思っております。  なお消費者の保護の点につきましては、業界に対しましてもいろいろ機会を得まして要望しておるところでございますが、価格の点につきましても、自分の銘柄の力をよく考えて、無理な値段にしないようにというふうに要望しておる次第でございます。現在までのところやや建て値に格差もございますが、かなりのものが一つの値段のところに片寄っているという状況でございます。今後の方向といたしましては、銘柄の力によりましてもう少し格差が出てきてもいいのではないか、こういうような考え方を持っております。
  102. 横山利秋

    横山委員 それでは関税定率法についてお伺いをいたしたいと思います。  私どもは関税定率法の審議に際しまして、常に国際的な貿易の情勢というものが、非常に影響をすると考えておるわけでありますが、最近の国際的な経済情勢の変化ということを、政府がどういうふうに考えておられるか、まずお伺いをいたしたいのであります。その意味において私が特に指摘をして政府意見を聞きたいと思いますのは、国際機構においても各国のナショナル・インタレストということが非常に強く主張をされておるということをどう受けとめておられるか。それから低開発国の国際舞台における団結というのを、われわれの国の貿易にまたどういうふうに受けとめておられるか。あるいはケネディラウンドが、各国からの例外品目の問題で非常にもめておりますが、これはどうか。ちょっと広範な質問でえらい恐縮でありますが、私の指摘をすることを基として、この関税定率法を改正するに際しての政府のかまえをお伺いをしたいのであります。その次にはイギリスのポンド危機、それからEECの成長の鈍化等々、きわめて広範な問題がありますが、関税定率法を改正するにあたって、政府として最近の貿易情勢の各国の主要な傾向についてまずお伺いをいたしたい。きわめて広範でえらい恐縮だけれども……。   〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕
  103. 佐々木庸一

    ○佐々木政府委員 たいへんに広範な問題をお出しになりましたので、私の所管の関税の面からばかり申し上げても御不満かもしれませんが、最近のわが国の貿易収支を関税統計で見てみますと、会計年度ではまだ三月が終わっておりませんので、暦年でまず申し上げますと、輸出は関税統計上六十六億四千三百万円、輸入は七十九億三千八百万円、輸出の伸びは前年に対しまして二二・四というかなり高いテンポでございます。輸入は一七・八の増加、輸出に比べて増加趨勢はそれほど強くないという傾向にあるように思います。なお最近の一、二月、きょうの新聞に載ると思いますが、三月の上旬の数字等を見ますと、輸出の伸びはいままでよりも非常に強くなっておるように思います。一月は前年に比べまして四一%強、二月も四一%、三月上旬では前年同期に比べますと五二・九%の増ということになっておりまして、国内の輸出努力、これに国際的な環境もまたそう逆ではないということになりまして、年度間の国際収支はかなり見通しよりもよくなるのではないかというふうに、関税統計の面からみておるわけであります。  先生が御指摘になりましたように最近の貿易に関します国際情勢の中で、いろいろ目立つことが起きてまいっております。ドルの裏づけをやっておりました米国保有の金の減少の問題、イギリス経済の深刻な様相がだんだん明らかになってまいりまして、ポンドに関する不安の問題、またイギリスがそれに対してとりました強烈な貿易の自由化に反するようないろいろな政策がとられておるといろ問題等があるわけであります。しかしながらいままでのところ国内の輸出がそれを上回りまして、かなり順調な伸びを見せておると見ていいと思います。  さらにまた今後の動向にかなりの影響を及ぼすものとしまして、横山委員の御指摘になりました後進国問題というものを、よく個々の政策を立てる機会におきましては、考慮に入れなければならないと考えるものでございます。後進国問題は、御承知の去年の春行なわれました国連の貿易開発会議におきましては、七十七カ国でしたが、七十五カ国でしたか、非常な強固な団結を示しまして、後進国の強い主張を通しておったわけでございます。日本の立場から申しますると、後進国に対する日本の輸出というものが、非常にウエートを持っておるということは申すまでもないことでございますが、その輸出によりましていまのところ非常な出超で、後進国側の外貨を吸収するようなかっこうになっておりますけれども、これは後進国側の輸入もまたはかりまして、均衝のとれた貿易の拡大というものを目ざさなければならないというのが基調であろうかと存じます。現実の問題といたしまして、日本の農業の問題鉱山等に関係します中小企業が非常に多くて、合理化が困難な部面についての輸入、後進国からの物を買ってくれという要請が強くなるということを、今後どうさばくかということが問題であろうと思います。  さらにまた御指摘のありましたケネディラウンドであります。いままでのところアメリカイギリスが非常に争いまして、アメリカが高い関税を半分にするのとイギリスの低い関税を半分にするのと、同じように扱われては困るというイギリスの主張等から、非常に難航を重ねておりましたところ、ともかく去年の五月の大臣会議で、まあ作業上の仮説ということになっておりますけれでも、五年間に五〇%引き下げるという原則を、今後のガットにおける作業の前提として認めるという合意が成立しまして、以降かなりの進展を見せました。御指摘になりましたように去年の十一月十六日にケネディラウンドに参加する国におきましては、工業品に関して五〇%引き下げられない品目のリストをお互いに拠出いたしました。年末それに対する審査を若干いたしましたが、双方相手の表のことなど検討するひまが十分ありませんでしたので、年を改めて各国の出しました例外の表につきまして、審査をいたしたわけでございます。審査はまず自国の出した例外の表が、やむを得ない国家上の利益から、そうせざるを得なかったということをいろいろ詳しく説明をやったわけでございます。このケネディラウンドの中で日本の立場と申しますものは、EEC、アメリカイギリスというふうな先進国グループに入りまして、日本の輸出を伸ばすためには、相手方の関税を下げさすということが非常に重要要素になるという観点から、積極的にこれに参加しようということでやっておるわけでございます。日本の出しました例外のリストにつきましては、それはかなり長いのではないかという批評を受けましたことは御承知のとおりであります。日本は非常に高い成長率を誇っておるにかかわらず、そうしてまた非常に輸出も伸びておるにかかわらず、例外品目が非常に広範囲にわたっておるし、また輸出が非常に伸びておるものにまで及んでおるというような非難めいたものもあったわけであります。いままでのところ、そのリストを修正をするまでにまだ話が詰まっておりませんが、個々の貿易上の統計数字が一体どうなっておるのか、例外にされております品目の範囲は、こまかにいろいろな品目になっておるのでございますから、どういう範囲であるかというような技術的な事項について、話が進められておる段階でございます。今後交渉におきましては、農業問題等も控えておりますので、かなり時間がかかるかと思いますが、わが国としては輸出促進のために、ケネディラウンドには積極的にこれに特に参加するという立場をとりつつ、また日本の中小企業、農業等、また今後発展さすべき新しい産業等につきましては、それが十分保護されるような配慮も払いながら、かつまた日本がいろいろ差別待遇を受けておりますものにつきまして、これを排除、解消することをまず志し、これが成功しません場合におきましては、とにかく代償を取る。与えます利益を受けます利益とのバランスをはかりながら、交渉を進めてまいるという方針でやっておるわけでございます。ケネディラウンド、後進国問題等、いろいろ控えておりますので、御審議願っております関税定率法、暫定法等におきましては、これらの進行状況を見て措置をしなければならぬものがかなりありますので、今回お願いしてあります大幅な改正というものも含んでいない次第でございます。現実の要請の差し迫ったものにつきまして、小幅な改正でお願いをしておる次第でございます。
  104. 横山利秋

    横山委員 おっしゃるように関税関係は、国際的な激動する状況の中で議論をするわけでありますが、その意味においては、一つ一つが単に国内ばかりでなくて、国際的なあらゆる問題を考慮に入れて議論をしなければならないのであります。時間がございませんので、多くの問題に言及するわけにはまいりませんが、一、二所信をただしておきたいと思いますのは、たとえばわれわれは税法という立場においては、取るべきものは取る、公平に税金を取る。その意味においては関税も同様である。しかし国家的な立場あるいは国内産業保護の立場において、関税免除なり還付制度なり、そういう暫定的なことをして関税をまける、こういう措置をとるわけであります。しかしこういうことは一般の税法の特別措置と同じ議論でありますが、一体政策効果というものが念査せられて、同時にこれは短時間であり、政策効果がもたらされたならばすみやかに旧に復するという立場でなくてはならぬと思うのです。その意味においては税と違って、補助金制度が政策効果なり念査なりができるということで、われわれは終始一貫して特別措置については本来的に好まないのであります。今回提案されております重要機械類の免税をはじめ、多くのものについて私が心配をいたしますのは、関税局というものはそういうことの念査のできる役所ではないということであります。おそらく主管省から、これは延長をしてもらいたい、これは新設をしてもらいたいと、いろいろと特別措置の要請があって、あなた方がくつを隔てて足をかくつもりで、まあいいだろうというふうに調査をされておると思うのであります。そうでなければこれこれの、たとえば重要機械類の免税にしたところが、一つ一つがこの特別措置をしたことによって、政策効果はどういうふうにあがったか、そういうことが一つ一つ御証明ができるはずであります。その点について、私は例示はいたしませんけれども、一般論ではありますけれども、あなた方はこの暫定措置について、政策効果の問題についてどうお考えでありますか。
  105. 佐々木庸一

    ○佐々木政府委員 御指摘のように暫定措置制度でやっておりますことにつきまして、毎年毎年お願いをいたしまして、奇異に思われる点があろうと思われるのであります。われわれが長い期間を置かずに、一年一年区切っておりますのは、その区切るごとに政策効果というものを確めたいという見地からおっておるものでございます。御承知のように免税の制度ないしは暫定免税の税率をきめます場合というものは、かなりたくさんございまして、一がいに申し上げることもできませんが、大ざっぱなことになりますけれども、私どもは制度の存続をきめます場合に、法律改正としてお願いするかどうかをきめます際に、各省相当に念査をしまして、政策効果を検討しておるつもりでございます。十分かという点につきましては、われわれも反省を要する点があるかと思います。さらにいろいろな免税をしましたものにつきましては、そのねらいのとおりに使われておるかどうか。税関の機構を使いまして検査することもまたやっておる次第でございます。完全に政策目的が達せられていることを証明するようなこともまた不可能ではございますけれども、政府としましては、与えられた権限と人員の範囲内で、できるだけの政策効果の確保についての配慮はいたしておるつもりでございます。
  106. 横山利秋

    横山委員 しかもこれらの免税措置、還付制度等は、列挙いたしておりますのがほとんどと言っていいほど、大企業中心のものであります。この点については、あなた方はよほど注意をなされなければいかぬ。大企業の問題については声を大きく、かつわかりやすいものでありますから、なるほどと思われるけれども、泣かぬホタルが身を焦がすといいますが、中小企業の問題についての配慮というものがほとんどないのではないか。たとえば身体障害者だとか学校だとか、そういうことについてはわかりが早い。わかりが早いけれども、事中小企業に対する問題についての配慮が、ほとんどないのではないかという批判がある。この点についてはどうですか。
  107. 佐々木庸一

    ○佐々木政府委員 私ども、中小企業についての配慮も十分にすべきであるという御主張につきましては、まことにそのとおりであると考えております。農林省におきましても通産省におきましても、同じであろうかと思いますが、ただ御指摘になりましたように、重要機械類免税の点につきましては、御批判のような見地から、これを検討します際に、資本金によって区切るというようなことは非常に適切でない例が多いように考えまして、具体的に中小企業に限り免税するというふうな、しかも法律上いわゆる中小企業に限り免税するということでは、なかなか公平にいかないという問題もあります。免税する対象物品の算定には、御指摘のような配慮を加えておりますけれども、制度上それを区切ることはいたさないでおる次第でございます。しかしながら御趣旨のような点につきましては、今後もよく考慮に入れて実施したいと考えておるものでございます。
  108. 横山利秋

    横山委員 この問題につきましては、具体的な引例をもって質問したかったのでありますが、時間がございませんので、また機会を選んで、いまのあなたの話の原則をしかと踏まえていただきたいと思います。  先ほど話がありましたケネディラウンドの問題について、ひとつ具体的な意見を聞きたいのでありますが、陶磁器産業の問題でございます。陶磁器産業は東海三県に最も地域的に偏在をしまして、輸出は生産の四五%にも達し、そして従業員も三十人以下が約六七%近くもあります。労働力不足と労賃コストの上昇並びに現実に仕事をしております零細企業では、四ちゃん工業ともいわれているくらいのことでありまして、しかも最近では後進地域で陶磁器産業の発展がありますだけに、非常な問題を呈しておる産業であります。この産業について、私どもも地元でありますから、それぞれ超党派でいろいろと心配をいたしておるわけでありますが、このケネディラウンドの例外品目にぶち当たって、まことに輸入ワク、自主規制、関税等の壁にぶつかって、非常な産業的な隘路が続出をしておるわけであります。通産省においでを願ったわけでありますが、通産省としてはこの陶磁器産業の現況について、どういう改善策を持っておられるか、まずそれから伺いたいと思います。
  109. 花岡勝巳

    ○花岡説明員 ただいま御指摘がありましたように、陶磁器は非常な危機に置かれております。現在の振興策についての御質問でございますので、私どもでいまやっておりますこと、それから今後やることを申し上げたいと思います。  陶磁器につきましては三十九年度、今年度でございますが、中小企業近代化促進法の指定をいたしまして、陶磁器工業の中で、わん、さらというような食器類と、それから置きもの、おもちゃというような、ノベルティーと称しておりますが、この二つにつきまして現在実態調査を終了いたしまして、その結果を取りまとめ中でございます。それから近く報告書をまとめまして、中小企業近代化審議会にかけていただく、こういうふうに考えております。  私どもがいま考えておりますことは、近代化ということをいかにして行なうかということに尽きるわけでございますが、それを業界の方々ともいろいろ常に連絡をとりまして進めておりますが、この食器類に関しましては、一番の問題は労務の確保かと存じます。この点につきましては近代化促進法による基本計画の中に、そしてさらには毎年毎年実施計画をいたしますが、いま考えておりますことは、この労務確保の問題が一番の壁かとも存じまして、現在の人間よりも少なくてもよろしい、それに機械の近代化による能率向上ということで、人間は現在より一割程度少なくてもやっていけるという態勢をとりたいと考えております。そういうことで生産性を向上したいと存じますので、現在一人当たりの生産額が六、七万円でございますが、それを約二倍に上げたい、こういうふうにいたしまして、特に中小企業が大部分、ほとんど全部だという御指摘のとおりでございまして、一番コストがかかります焼成——焼き入れのところでございますが、それは現在単がまでやっておりますが、それをシャトルキルンというような近代化の装置にいたして能率をあげたい、こう考えております。それからノベルティー関係につきましても、同様近代化を促進するということで、同じくシャトルキルンを考えております。ただ問題は、何といたしましても輸出産業の花形でございますし、それからほとんど一〇〇%外貨手取り率の産業でございますので、この輸出は大体過去の推移を見ますと毎年金額で一〇%ずつ伸びております。そういうふうな態勢でございますので、さらにここで近代化をほんとうに腰を据えてやるということで、いろいろ基本計画の案を練るまでに、そういうことで分科会あるいは部会というふうなものを開いて御検討をいただこう、こう思っております。  それで特に問題になりますのは、やはりこういうふうなアメリカ向けが主でございますので、デザイン関係の斬新というようなことで、デザイン関係の重視と、それから技術関係のために、たとえば技術研修制度を設けるとか、試験研究所を拡大発展させるとか、そういうふうなこともあわせて考えていくということを考えております。
  110. 横山利秋

    横山委員 近代化をさせる、労働力を確保させるというのでありますが、通産省も御存じのように、陶磁器産業というものは、流れ作業の場合にはわりあいに近代化はできるけれども、仕事それ自身はまあ家内工業的な技術でありますから、容易にその近代化がうまくできるとは、ほかの産業と違いまして必ずしも言い得ないのであります。それから労働力の確保につきましても格別の措置をしなければ、ああいう陶磁器を扱うところの環境その他からいって、なかなか集まらないところであります。御存じのとおりでありますね。したがいましてこれらの労働力の確保なりあるいはこの近代化については、他の産業、他の業種と違った努力をしなければなりませんが、この点については労働力確保については、どういうふうに通産省としてお考えなのか、近代化についてはどういう援助をなさろうとしておるのか、具体的に伺いたい。
  111. 花岡勝巳

    ○花岡説明員 これは御指摘のとおりで、まことにそういう点、力強くおっしゃっていただいてありがたいのでありますが、特に労務の確保の問題につきましては、ここで業界一致した態勢をつくっていこうという態勢が相当に強くなっておりますし、そういう点でこれは特別にこれだけというわけにはまいりませんでしょうが、私どもの所管いたしております業種の中では、私としてはこれを最重点に置いて、現在労務確保についていろいろと措置がなされておりますが、それをほんとうに一つ一つやっていきたい、こう考えております。  それから近代化促進でございますが、おっしゃるとおり流れ作業の問題に尽きるわけでございますが、これは現在中小の方々でやっておられます分の各種の生産工程の配列そのものを直すということだけでも、相当の効果があがる。その点は現在までの経験と勘でやっておったというふうな、そういう意識をこの際改めていただくということで、相当の効果があがると思いますし、それからさっき御説明をいたしましたが、シャトルキルンというふうに相なりますと、自然にこれを流れ作業にしないと処理できないということになりますので、そういう工場のレイアウトを根本的に改めていく、こういう直接機械を入れる問題と、それに従いまして工程を整備するということと、二つをあわせて行ないたいと存じております。それで、それに必要な金融措置につきましては、中小企業金融公庫に特別ワクがございまして、輸出向けということで融資の方法がございますし、そういう点で、私どもはそれを所管いたしておりますので、さらにこれに最も重点を置いて進めていきたい、こう思っております。
  112. 横山利秋

    横山委員 関税局長にお伺いしたいのでありますが、いまお聞きのように、この陶磁器産業というのは、ほかの業種と違って、非常な労務、それから近代化その他についての支障がある。しかもこれが生産の四五%までが輸出でありますから、まさに輸出が生命とさえ言い得るような状況であります。それにもかかわらず、アメリカをはじめEEC諸国、ほとんどの国がこの陶磁器に対して輸入ワク、自主規制の要求、それから関税と、壁が幾つも幾つもあって、あらゆるところでぶち当たっている。それでもなおかつ必死の努力をしておる。一方、後進地域においては、逐次この陶磁器産業が発展をしつつあるという状況であります。今度関税一括引き下げ交渉の中で、まあいろいろと各国のねらい撃ちはあるけれども、このような陶磁器産業に対する障害というものを、どういうふうにわが国としては交渉をなさろうとするのか、いまの交渉の現状並びにその展望を伺いたいと思います。
  113. 佐々木庸一

    ○佐々木政府委員 先生御指摘になりましたように、陶磁器につきましては貿易の障害はかなり多いと思います。御指摘になりましたEECなど見てみますと、たとえばフランスでございますが、食卓用の陶磁器類につきましては、二五%または二七%というふうな税率の高いものをかけましたほかに、最低税率としまして従量税の制度を設けまして、たとえば百キログラム当たり十二ドル六セントを最低とするということをコーヒーセット等にきめておりますが、安い品物についてはまた税が重くかかるような、そういう貿易の障害が設けられていることは御指摘のとおりでございます。さらにまたヨーロッパ各国におきましては、御指摘の数量制限が行なわれておりまして、ときにまた、ほかの国に対しては陶磁器について輸入制限を加えていないにかかわらず、日本からの陶磁器の輸入については、差別的に制限をするというようなことが行なわれておる面がございます。そしてまたそのワクの消化についても、必ずしもうまくいかないというふうな、非常に何重もの障害がありますことを、私ども非常に遺憾に存ずる次第でございます。しかしながら実績を見ますと、輸出は関税統計で、これは暦年でございますが、三十六年の五千七百万ドルが三十九年に七千九百万ドル。ほかの輸出に比べましてテンポが落ちてはおりますけれども、最近のところかなりの伸びがないわけではございません。最近一年では、一割余りの増加率を示しているかと思われる次第でございます。  ところでこのような状況にあります陶磁器につきまして、ケネディラウンドではどうするかという問題でありますが、最近までのところ、例外リストを提出いたしまして、そのリストに載っておる品物、実際載っておる品物の範囲はどの範囲かと  いうようなことをお互いに確め合っていますが、本格的な交渉に入っているわけではありませんので、的確な見通しを申し上げることはなかなかむずかしいのでございますが、御指摘のような非常な警戒をしております。何と申しますか、自国中小企業等に対する影響を考えまして、非常に警戒厳重な品目でございますので、交渉の前途は必ずしも容易でないと思われます。いままでの交渉におきましても、東洋風の図柄のものはいいではないかというようなことで制限からはずしましたり、いろいろな苦心を重ねておるところでございますが、各国の非常に強い警戒的態度から見まして、いま先生御指摘になりましたような貿易上の障害というものを破るということは、必ずしも容易でないと見ておるところでございます。
  114. 横山利秋

    横山委員 大臣がお見えになりましたが、ちょとお聞き願ったとおりであります。いま陶磁器産業の問題について、生産の約半分が輸出である。それだけの産業でありながら、西欧諸国においては、スエーデン、イギリス、オランダ、ベルギー、西独、イタリアフランス、すべて制限をし、EEC諸国は共通関税で障壁を重ねようとしておる。アメリカは輸出の五〇%を持っているけれども、常に輸入制限運動があって、関税は五五%ぐらいですか、全くの障壁である。私が社会党だから言うわけじゃないけれども、アメリカの最近の利子平衡税や、綿製品の輸入割り当てや、中国問題や、その後陶磁器にあらわれるように、一貫して、事商売になると、友好諸国もくそもあるものかという考え方を、非常に強く持っておるようなことであります。いま関税の一括引き下げ交渉が行なわれておるのでありますが、日暮れて道遠しとでも申しますか、よくなるどころか、悪くなるおそれのほうが非常に強いのであります。ですから私は、いまこの陶磁器を中心とする関税一括引き下げ交渉についてもっと日本が、この国家的利益といいますか、そういう立場に立って強硬にやってもらわなければいかぬのではないかということと、もう一つは、この三ちゃん農業どころではない、四ちゃん陶磁器工業という現状であって、もうその中には、この場合においては大企業も中小企業もない。全く家内工業的な仕事をやっておる陶磁器産業についての金融なりあるいは税制なり、いろいろな育成措置が必要ではないか、こういう立場で質問をしておるわけであります。先ほど通産省の話では、近代化の指定がされて、いま実態調査をしている最中だ、こういう話でありますが、なるほど輸出は花形のようではあるけれども、その背後においては、中小企業のものがつぶれてもそこで分化してまたやる。また大きくなるとまたつぶれる。常に封建的家内工業的な要素から立ち上がって近代化されるとまた分散して、そこからまた始めるというような状況でありますから、国際的な交渉におきましても、国内的なこの産業育成についても、格段の措置が必要なのではあるまいか。他の業種とは違ったこの陶磁器産業について、ひとつ大臣のお考えを伺いたいと思います。
  115. 田中角榮

    ○田中国務大臣 関税の一括引き下げにつきましては、基本的には賛成の態度をとっておるわけでございます。しかしこれが交渉の過程においては、日本に対する差別待遇等の撤廃という、当然日本が受くべき利益というものを十分考えながら、関税引き下げ品目については慎重な態度でいかなければならぬことは、御指摘のとおりでございます。また陶磁器産業が家内工業的であり、設備の近代化をしようとしてもなかなかできないというものであるということも承知をいたしておりますし、またこの分散的な小規模企業ともいわれる陶磁器企業が、輸出に非常に寄与しておるということも事実でございます。これが対日差別をやっておる障壁を除くということに対しては、十分な努力を払うことはもちろんでございますが、一次産品の自由化に対して非常にむずかしい。また一品でも自由化をする場合には、当然国内産業に対する措置を十分行なってからでなければできないということと同じように、特殊な産業である陶磁器産業の自由化に対する産業保護政策といいますか、こういうものに対しましても通産省とも十分連絡をとりながら、特に可能な限り最大な努力を払ってまいりたいと思います。私もいままで愛知等の陶磁器産業の皆さんから実情を何回も聞いておりますし、輸出に対して寄与をしておるこれら産業の実態も十分把握しながら、税制、金融その他に対しても可能な限りの配慮をすべきだという考えであります。
  116. 横山利秋

    横山委員 陶磁器産業は自由化に耐え得る産業である。政府は開放経済、自由化ということによって、国内及び国内産業に利益をもたらす面を強調して、今日まで非常な無理をしてやってきたわけであります。ところがその耐え得る産業が、アメリカをはじめ西欧諸国から、耐えられないような障害をされておるということは、理屈に合わぬことであります。しかも日本の陶磁器産業だけは制限をする、ほかのほうは制限しないということになっては、言語道断と私は言わざるを得ない。だから政府が開放経済だ、自由経済だ、こう言ってその利益を産業界に吹聴しておりながら、その受けるべき利益が阻害されておるということについては、政府の言っておったことはうそじゃないか、政府の言っておったことはこういう現状ではだめじゃないか、こういう意見になってきますのは当然なことでありまして、政府側としてはこの一括引き下げ交渉についてはよほど腹をくくってやりませんと、何のための開放経済である、何のために自由化のかきねを取っ払ったのだといわれますから、ここのところは何も陶磁器産業ばかりではありませんけれども、一番いい模範が陶磁器産業、こう考えるわけであります。いま大臣のお考えは承ってはおりましたけれども、先ほどから言っておりますように、一つには労働力が集まらぬ。集まらぬには集まらぬだけの理由がある。ですから労働力について集まるような金融のような特別の措置を講じなければなりませんし、金融につきましても、近代化の指定がされてからいつまでたっても、実際の発動ができないというようなテンポののろいものでは困る等々、格段の措置が必要だと思いますが、あわせてもう一回、できれば具体的にお答え願いたい。
  117. 田中角榮

    ○田中国務大臣 御指摘のとおり家内工業とでもいいますか、また地方色の非常に豊かな産業であり、こういうものが影響を受けますと、その地そのものがすべて参ってしまうというような事業でもあります。近代化資金の使用に対しても、決定をしてからなかなか適用しないということでございますが、先ほども申し上げたとおり、通産省とも十分相談の上、かかる種のものに対しては可及的すみやかに実施をするということで、努力をいたしたいと思います。陶磁器産業とか、新潟県にも御承知のフォーク、ナイフというようなものを町ぐるみでやっておりますが、輸出には非常に大きく寄与をしておりながら、アメリカその他の国々は、こういうものに対しての関税障壁をつくったり、自主規制をやらしたり、非常にいろいろな問題があるのであります。こういう問題に対しては、日米経済閣僚会議もあるわけでありますし、特にアメリカは、一面においていま御指摘のようにケネディラウンド、いわゆる自由化促進を言っておりながら、一面においては自主規制の名においていろいろな問題があったり、まあ問題のあることは御承知のとおりであります。外国に対してのかかる障壁を取り除くということも一つでありますし、国内的にはこれら産業が十分合理化を進めながら、輸出に寄与をしていけるような体制をつくってやらなければならぬということは御承知のとおりでありまして、十分検討いたしたいと思います。
  118. 横山利秋

    横山委員 同僚委員の質問もあるようでありますから、あと一つだけお伺いをしたいと思うのでありますが、これとはまた違った立場において、自動車の自由化が六月ごろに行なわれるという話を通産大臣がおっしゃっておるようであります。このことは、私は自動車のメーカーよりも、もっともっと手きびしく下請企業、そこに働く労働者に深刻な影響を与えておると思うのであります。この自動車の自由化について、大蔵大臣としてどのように腹をきめられておるわけでありますか、念のためにお伺いをしておきたいと思います。
  119. 田中角榮

    ○田中国務大臣 自動車の自由化は、御承知のとおり去年からやるやると言いながら、だんだんと延びてきたわけであります。三月やる、四月やる、六月やる、こういうことでありまして、六月もやれるかどうかという問題はあるようでありますが、いずれにいたしましても自由化の方向は決定しておりますから、何月やる何月やると言いながら、自由化の体制整備を急がしてきたわけでございます。私は内容をつまびらかにいたしませんが、通産大臣は六月ごろになればいよいよやらなければならぬだろうというような気持ちを漏らしておられるようであります。これが影響するところ、御指摘になったような事情もありますから、自由化の時期、その以前に行なわなければならない諸般の体制措置、こういうものに対しても、六月やるということが事実であれば、私のほうでもまた内閣の中でも、十分これが影響する面をつかんで、できるだけ対応する施策をやって、万全な体制になったときに自由化が行なわれるということが望ましいと思っております。
  120. 横山利秋

    横山委員 大臣は大蔵省関係の問題として、自動車の自由化についてまだ御相談にあずかっていらっしゃらないのですか。それとも相談にあずかってはおるけれども、自分も関係大臣としてそういう腹をきめておる、こういう立場でございますか。どっちですか。
  121. 田中角榮

    ○田中国務大臣 経済閣僚会議のメンバーでございますし、前内閣、池田内閣時代から、自動車の自由化はいつやるかということも、おととし、去年、ことしと、三年にわたって考えられておるわけでございますから、いつまで延ばせるというものではないと思いますが、自由化の及ぼす影響というものに対しては十分見きわめて、これに対する遺憾なき体制がとられることとあわせて、自由化が進められるべきものだと思います。去年、おととしあたりは、いつやるのか、一体いつできるかということで、自由化に対しては相当前向きの姿勢でございましたが、ことしになってからは、このごろぼつぼつ通産大臣が、六月ごろにはやりたいと思います、やれると思いますというようなことを伺うだけでありまして、正式に本件に対して経済閣僚で研究したということは、ことしに入ってからはございません。
  122. 横山利秋

    横山委員 最後に、私は是非は別といたしまして、もしそれをやるということになれば、国内の自動車産業全般に及ぼす深刻な影響が起こると思うのであります。もうすでに、そのうわさを聞きますや、メーカーのほうは下請のほうへコストダウンなり、あるいはサイトの延長なり、あるいは合理化、近代化の要求がもう数年前から出ておるわけでありますが、さらにそれに拍車をかけると思うのであります。大臣としては、それが実施をされる場合に、いまお話のように関連する問題について措置をしなければならぬという話でありますが、もうほんとうに六月にやるということであるならば、あらゆる点について具体的な点が検討されていなければならぬと私は思いますのにかかわりませず、これからそうしなければならぬなという話では、ちょっとこれは六月ではないのだなという気もするわけでありますが、その辺はほんとうにおやりになるならば、どういう具体案をお考えなのか。まだ準備がないとするならば、六月もまだ延ばせるというふうに判断してよろしいものやら、最後にひとつ……。
  123. 田中角榮

    ○田中国務大臣 六月やるか十月になるか、まあ六月前ということはないと思いますが、いつまでも延ばせるものではない。今年中にはどうしてもやらなければならぬものだろうということは常識的に考えられます。しかしこれが体制整備を必要とするという一般論を申し上げたわけでございまして、これからあらゆるものに対して体制を整えるということではございません。御承知のもう三十九年度からだと思いますが、自動車産業に対する体制金融の問題も採用いたしておりますし、ほんとうからいえば昨年の十一月ごろやりたいということで、おととしあたりから検討してきたわけであります。ですが、まあ及ぼす影響が非常に大きいということで、今日に至っておるわけでありますので、いよいよ六月、七月にやるということがきまれば、その前により新しい立場において、及ぼす影響ということをもう一ぺん十分つかむ必要がある、こういうことを申し上げたわけでございます。
  124. 吉田重延

  125. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 法案に関連して、いろいろな問題を大臣にお伺いしたいと思います。  御承知のようにいま問題になっているのは、金本位の復帰問題がやかましくなっておりますが、現にフランスはもう御承知のように金をどんどん買っておるというような情勢であります。日本はこの金の準備率が少ないということで、私は三年くらい前に大蔵委員会でもこの問題を問題にしたのですが、大臣はそれについて何か変わった構想を持っておられるのですか、まず伺いたいと思います。
  126. 田中角榮

    ○田中国務大臣 フランスはドゴール発言以後、金本位制に帰れというフランス政府考え方を明らかにいたしております。そして手持ち外貨三億五千万ドル程度のものを金にかえようということさえも発表いたしておりまして、なかなか手きびしい積極的な態度をとっておりますことは、御承知のとおりでございます。しかしこのフランス中心にする西欧の諸国と対立するようなかっこうで、イギリスアメリカ、カナダというような国々は、ドルやポンドがいまの国際通貨でありますから、ドルやポンドの信用確保をはかりながら、国際流動性問題についてはIMFの増資等によってこれに当たるべしだという、対立した意見を出しております。日本も金本位制に帰れるという考えは、いまのところ持っておりません。また日本の外貨保有高における金準備というものは、非常に少ないということでございますが、これはまあ原則的に金が少なくていいという考えではなく、いままで日本の外貨準備そのものがあまり豊かでなかった。でありますから外貨準備に対しても、相当流動性を確保しておかなければいけないという面もあったわけでございます。でありますから、現在約三億ドル余ということでございますが、まあ率直に言ってフランス等がいろいろなことを言いますから、すぐさま金を買わなければならぬという考えではございませんが、外貨準備がだんだんとよくなる過程において、正常な状態で金が入手できるならば、金のやはり保有高をふやしていこう、こういう考え方はございます。しかしいずれにしても四十数億ドル、五十億ドルというような外貨準備の中で七〇%、八〇%を金にし、九〇%まで金にしょう、こういうフランス考え方がいますぐ実現できるものではない。また日本もそれにいますぐ同調できるような態勢にはないということでございます。
  127. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 この委員会でもたびたび問題になっておるのでございますが、ポンドの危機が騒がれて、まあ一時的に小康を得ておるのですが、あるいはもうしばらくたったならば、ポンドの切り下げがあるのではないかというような声もあります。日本としては、この前にもお伺いしたことがあるのですが、金の買い上げをやるということは、アメリカとの関係でぐあいが悪いということも聞いておりましたが、こういう問題は経済閣僚会議等で問題になったのか。それからポンドの問題はどのように大臣、把握しておられるのか、これも関連して伺っておきたいと思います。
  128. 田中角榮

    ○田中国務大臣 ドルの問題、ポンドの問題等に対して、私から閣議に報告をしたことはございますが、経済閣僚会議で具体的にこれを取り上げてというようなことはいたしておりません。しかし大蔵省の中でも十分検討いたしておりますし、日銀との意思の疎通もはかっておりますので、政府としてこの問題に対する基本的な態度はきまっている、こう申し上げていいと思います。それからポンドの不安ということでありますが、ポンド不安は去年の十一月、労働党内閣ができましてから、急速にこの問題が出てまいったわけであります。このポンド不安に対して、IMFが一般貨し出しを十億ドルやりましたし、日本を含めた十一カ国が三十億ドルのてこ入れをやったわけであります。それの期限が延長しておりまして、五月の末になると再延長するのかどうか、こういう問題があるわけであります。普通であれば、再延長をしても国際通貨であるポンドのてこ入れはしたい、またしなければならない、こういう考え方でございます。しかしそれは無制限にいつまでもその十一カ国がやるというわけではなく、こういうてこ入れをしている過程において、イギリスそのものが国内態勢をひとつ思い切って立て直す。そうして国内態勢を立て直すことによって、ポンドの価値を維持していくという基本的な政策が両立して行なわれていくということで、五月の末までということになっているわけであります。ところがその過程において、五月には、金を出しているフランスがもう再延長には応じない、こう新聞に発表しているわけであります。少し荒っぽいことであります。また一面ではこれぐらいのことを言わないと、イギリス政府も国内態勢を立て直すのに無理だろうから、応援する意味でやっているのだという見方もありますし、金の問題やいろいろなことからあわせて考えると、フランスはほんとうに五月には再延長には応じないかもしれないという二つの見方がございます。いずれにしましても、この問題は非常に大きな問題でございますから、いまからフランス論に同調して、五月になればこれはもうフランスもだめであれば、あとの十カ国も応援もできないだろう、そうすればポンドの切り下げもあるだろう、こうなってきたらこれは不可避になるかもしれません。しかし自由十一カ国は、われわれはポンドの不安をなくしていこう、こういう立場に立っておりますから、イギリスの内政面における立て直しということを期待しながら事態は推移をしてまいっているということでございます。
  129. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 一昨年でしたか、石野大蔵次官がイギリスに行きまして、外資の導入で非常に成功したということを言われておりました。当時私はアメリカにおったのですが、そのときに、関連してスイスで外資を導入したらどうかというような声もあったのですが、そういう交渉、またそういう必要に迫られている問題があるかどうか、これも伺いたいと思います。
  130. 田中角榮

    ○田中国務大臣 イギリスにおいて外債を出したというのは、これは戦前外債の借りかえをやっただけでございまして、戦後初めて出したということでありますが、そのまま額面借りかえを行なったということでございます。  それから西欧市場は、利子平衡税の問題から、急速にヨーロッパ市場の開拓ということをやったわけでございますが、利子平衡税でニューヨーク市場が一年半ストップをしている間は、ヨーロッパ市場で何とか長期良質の外資を得てこれたわけでございます。その過程においてスイスで国債を発行いたしました。これは千百万ドル一回だけやりまして、現在ここで発行するという考えを持っておりませんが、市場においては日本に対する認識は非常にいいというように承知をいたしております。
  131. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 実はそれを伺ったのは、この間東南アジアへ行ってみますと、日本の工場の現地進出というのが非常に目ざましいので驚いたのでありますが、一昨年ブラジルへ行きまして、ウジミナスの鉄鋼所を堀君たちと一緒に、これは藤井さんも来ておりましたが、その後ばく大な借金を背負わされて、今度堀越君が社長になって再出発されるようになっておるのでありますが、このウジミナスの問題について、大臣はどのような理解をしておられるのか。またどのような方法でこの苦しい立場にあるウジミナスの鉄鋼所を処理されるのか。これは輸銀やその他ほかとの関連がありますが、今後の見通しについてちょっとお伺いしたいと思います。
  132. 田中角榮

    ○田中国務大臣 ウジミナスは、御承知のとおり日本とブラジルとの特殊関係、わが同胞も非常にたくさんお世話になっておるわけでありますし、また日本とブラジルとの友好だけではなく経済的提携という面から考えましても、ミナス鉄鋼所に対する日本の出資、投資ということは好ましいことである、こういう前提に立って出資が行なわれ、協力体制ができたわけでございます。ところが金額にして、出資とか延べ払い輸出とか全部でもって五百億有余だと思いますが、こまかい数字が必要であればあとから申し上げますが、そういう投資が行なわれたわけでございます。なぜ中途はんぱにいろいろ問題が大きかったか、こう言いますと、これはブラジルでいろいろな政変があったり、急激なインフレ態勢になった、こういうところに問題があるわけであります。でありますが、これだけの大きな問題でありますので、ブラジル側と日本側の出資者代表が去年の暮れから会いまして、ことしの三月末に日本側で約五十億円の払い込みを行なう、そういうことでおおむねの話がついたわけであります。日伯間の状態からいえば当然起こり得る事態であり、この事業に投資をし、出資をしようという考えは当然だったと思います。ところがちょうどその過程において、インフレ問題等でごたごたいたしましたが、これはやはり生みの悩みであって、将来どうしてもこの問題を円満に片づける、仕上げていく、そうすることによって両国の利益というものは確保されるものだ、こう考えておりますので、いまちょうど雨が降っているようですが、雨後晴で将来は期待をかけるべき事業である、このように考えております。
  133. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 現地で聞いてみますと、これは田中大蔵大臣ではありませんけれども、政府の責任のある人が、ウジミナスのことについては相当責任を持ってやってやるような、そういう発言をなされたということも聞いております。そこでこれはいま御承知のように、ブラジルは日本人に一番好意を持ってくれる国でありまして、これはわれわれ世界を回っても、ある程度までわれわれが理解ができる点でありますが、何かそこに誤解があるのじゃないかと思われるような、そういうことを現地でいろいろ伺いました。少なくともこのウジミナスという鉄鋼所は、世界的に有名になるところでございまして、こういうところで失敗をすると、あとで日本のやっておることはどうもアブハチとらずで、責任が持てぬじゃないかというような声を聞くことになるのじゃないか、こう思うのですが、その点について田中大蔵大臣、どのように考えておられますか。
  134. 田中角榮

    ○田中国務大臣 これは表向きは御承知の民間同志、こういうことになっておりますが、IMFの総会に参りましたときに、ブラジル側の代表も、とにかくいままでいろいろな問題がございましたが、ブラジル政府としても、州政府の仕事だけではなく、国全体としてこの問題を高く評価をし、協力体制をつくって成功させなければいかぬ、こういう強い決意を披瀝をせられておりましたし、日本もいろいろな問題がございました。インフレになって、いままで日本が投資をしたものの、インフレとの差額はもう一ぺん補償してくれとか、いろいろな問題がございましたが、とにかく最終的には円満に片づきまして、三月の末までには五十億の金を払い込む、こういうところまでまいりましたので、私はこの問題は成功するだろう、また成功させなければいかぬ、こういう考えであります。輸銀に対しても、いままでの出資証券を担保にして金を貸せますということを輸銀も言っておりますし、あるものは出資に振りかえてもいいというような、非常に好意あるものの考え方をこの問題に対してはみな持っておりますので、道行きの過程においてはいろいろな問題がございましたが、何十万かの同胞がおるブラジルの状態考えてみても、この問題は、やはり有終の美をなしたいという気持ちは、日本政府だけではなく、先方側のブラジル政府も、積極的なそういう姿勢を示しておりますので、私は今度軌道に乗れば、この問題は片付くという見通しでございます。
  135. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 ブラジルには、石川島造船もあって、なかなか意欲を燃やしておりましたが、それに関連して、この間プラント輸出でニチボーだけは認めないということになっておりますが、先日私は山際さんに会ったのですが、前に輸銀の総裁をやっておられまして、輸出入銀行というのはこういうようなプラント輸出なんかをやることが本職であって、これを政治的なあれでやめるということは、むしろそれは不自然だというようなことを、これは公の席ではありませんけれども、話をお聞きしたのでありますが、どうも私はそういう点に少し片手落ちがあるのじゃないかと思って、せっかく中共の貿易が、どうにか今年度はあるいは五億ドルぐらいいくのではないかといわれております現在において、どうもすっきりしないような形が出ておるのは、非常に日本の貿易の進展上損じゃないかと思うのですが、その点は大蔵大臣、どのように考えておられますか。
  136. 田中角榮

    ○田中国務大臣 ブラジルとの比較で中共問題、私はちょっとこう、ブラジルから中共に急にお飛びになったのかと思いましたが、そうではなく、比較でございましたので、よくわかりました。  中共問題は、いろいろ議論されておりますが、すなおに考えれば、たいした問題ではないと私は思う。なぜこう騒ぐのか、私はよくわかりません。これはこういうことであります。いま御指摘になったように、政府が輸銀の資金は絶対に使わぬとか、こう言っているわけではない。とにかく中共のプラント輸出に対しては、期限がきておるから早く輸出認可をしなさい、こういう要求があったわけであります。でありますから、その時点において時を急いでおりましたから、条件をきめたりどこを使うとかいうことをきめないで、そして輸出許可だけを与えたわけであります。早く輸出許可を与えないと、向こうがキャンセルするかもしらぬ、こういうことで政府に持ち込まれたから、政府はその時点において輸出認可をいたしたわけであります。でありますから、あとはその輸銀を使えないとか使うとか、こういう問題に対して結論を出しておらないわけであります。それからまたいますぐきめなければならぬ問題ではないわけであります。頭金が二五%、三〇%あるわけでありますから、そういう事態を十分認識していただけば、いろいろな問題は起きないのだと思いますが、どうもこの問題に対しては少し話が大き過ぎるというふうに考えておりまして、政府はいま慎重に検討しておる、こういうふうに御理解いただいてけっこうだと思います。
  137. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 今日の時代は、飛行機で香港へ三時間で行きますし、ブラジルに行くにも九時間でいくような時代になったのですから、中共の問題も、ブラジルの隣のような気持ちで、ひとつ大臣考えてもらいたいと思います。  そこで、私も東南アジアにこの間行ってきまして、日本経済、工場の進出ということもいろいろ感じて、なかなかたいしたものだということを感じてきたのですが、なぜ中共問題がやかましくなるかといいますと、せっかく最近積み上げ方式でなかなかよくなって、去年は三億ドル、今年度はおそらく五億ドルぐらいになるだろうということで、香港の総領事館でいろいろ聞いたのですが、そういうようなさなかに、急にこういうような問題で、せっかくの上向きになっておるこの貿易を、何だか政府がとめているのじゃないか、あるいは吉田さんが台湾に行ったために、何かそのことで非常にこちらの政府が何かしているのじゃないかというような、これは憶測かもしれませんけれども、どうも前向きに進まないというような感じを国民に与えておるのじゃないかと思うのです。私らは何も中共だけとの貿易ということは言いませんけれども、せっかく軌道に乗ったこの中共貿易を、この際もっと前進させるという意味で、もっと政府国民に納得いくようにやってほしい。そういうことを私は言っているのであって、大蔵大臣はどうもわからぬと言われるが、ぼくらのほうがわからないので、そのことをひとつ国民が納得いくように御説明を願いたいと思います。
  138. 田中角榮

    ○田中国務大臣 揣摩憶測、こういうことだと思います。いますぐきめなくてもいい問題である。そういうことで時間をとっておると期限が切れてしまうから、何でもいいから早く輸出許可を出してくれ、こういうことで輸出許可を出したということであります。必要な時期までによく検討しよう、こういうことでありますから、私はそのうちに片づくと思います。少なくとも中共貿易がこの問題によってストップしてしまって、未来永却どうにもならなくなるというふうには考えておりません。日中間においてはそんなことではなく、まあ経済問題だけだといっても、台湾の国民政府が文句を言えば、われわれのところには輸銀を使わないのか、輸銀を使わないことはけしからぬ、こういう話は、商売の中の話ではないのです。これはもっと高い次元における話でありまして、商売を続けて拡大していくには幾らでも話のしかたはあると思うのです。黙って契約をしてどんどんとやってしまうという問題もありますし、まあこの問題はあまり感情的にならないで、事実として日中間の貿易が拡大していく方向でお互いが見守る、こういうことのほうがいいのではないかと思います。
  139. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 その問題はそのくらいにしまして、御承知のように開放経済で、日本の自由貿易というものがやかましくなって、ただいま横山君からいろいろ話もありましたが、今度関税定率法の改正がありますが、こういうような問題についてもう少し率直な、国民にわかりやすいような、解明できるような方策があるのかないのか。現在の関税のやり方については、各国のいろいろな意見がありますけれども、どうも不徹底であるかのような印象を受けておるのですが、その点はどういうふうになっておりますか。大臣からでも局長からでもけっこうです。
  140. 田中角榮

    ○田中国務大臣 確かに関税の一括引き下げの問題に対しては、国民はよく理解していないかもわかりません。ケネディラウンドといって、アメリカが大いに自由化をやろうやろうと言いながら、アメリカ日本に対して自主規制を求めたり、関税を引き上げたり、また自由諸国家の親玉のような地位にあったイギリスが過徴金を取ったり、一体どういうことなんだ、確かにこういう懸念はあると思います。しかし平たく申し上げると、日本も輸出をしていかなければ、日本人の生活はよくならないわけであります。いま一五%以上も輸出が伸びるという状態でございますが、これ以上輸出を伸ばしていくということになれば、やはり相手国が日本に対してとっておる差別待遇を撤廃させるということでなければだめなわけであります。ですが、この撤廃の問題も、二国間交渉でいろいろやっておっても、十年かかってもなかなか話がつかぬということでありますし、ただ向こうが対日差別待遇を自主的に撤廃するわけではなく、必ず日本には一体何を求めるかということで差別待遇の撤廃をさせて、そして貿易をふやしていくということになっているわけです。ですから自分が門戸を開くということによって向こうに門戸を開かせる、そうして究極の利益は日本人が得るのだ、こういう考えから考えますと、どうしても関税一括引き下げの交渉に賛成という態度を示さざるを得ないということは事実でございます。ただ何ぶんにも日本は金利も高いし、原材料はないし、膨大もない原材料を輸入して、原材料を持っている国と自由の世界場裏において競争するわけでありますから、大きなハンディがあるわけであります。それと戦前、戦後の不自由な為替管理の状態が長く続き過ぎて、世界レベルと産業体制においてどうしても違う面がありますので、門戸を一ぺん急激にはずしてしまうと、国内的に産業が倒産したり、自由化に対応できないという問題がありますので、こういう内容を十分検討しながら、自由化の体制に対応できるものからはずしていくという処置をとらざるを得ないことは当然であります。ところが一番問題は、自動車とかいろいろなことがありますが、それよりも一次産品、低開発国との貿易そのものが特に片貿易でありますから、これが日本としては一番問題であります。でございますから、中小企業や農村に対して大いに施策をやって、できるだけ自由化の前向きの姿勢でやっていくということ以外にないと思います。
  141. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 同僚委員からたくさん大臣に対する質問がありますから、私はできるだけ簡単にしますが、ただ一つ大事な問題になっているのは、バナナの関税が非常に高いということで、これは私、三年ぐらい前に同僚の武藤委員といろいろ本委員会で質問したのでありますが、どうも非常に強い反対がありまして、これはおそらく一面には日本のミカン等のくだものとの関係、これは農林省の関係でそういうことになっていると思うのでありますが、どうも高過ぎるということは事実われわれがたびたび耳にすることであります。この点について一般国民が納得がいくように御説明を願いたいと思います。
  142. 田中角榮

    ○田中国務大臣 そこが非常にむずかしいところでございます。あれは佐藤さんも十分御承知だと思いますが、定率の七〇%を三〇%に下げたい、下げるということにきめても、リンゴだ、ミカンだ、こういうものがどんどん反対をする。反対をするだけではなく、ようやく果樹などで生計を立ててきたのが、ここで一ぺんにバナナにたたかれる——私は必ずしもバナナを食えばリンゴを食べないでいいということではなくて、やはり嗜好があるのであって、あるところまできてしまえば落ちつくと思いますけれども、農山漁村対策の最も大きな面から見ましていますぐやれないということで、暫定税率を使っておるわけであります。日本人はバナナが入ると相当食べます。ですから、外貨の面も——最高時は六千万ドルも入るということでありますから、果樹をやっている方々からいうと非常に圧迫を感ずる。ですからバナナが入って暫定税率を下げても、絶対農村の果樹に対して影響はないということを数字で説明するというところまでいかなければいかぬだろうと思います。
  143. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 ちょっと佐々木さんにお伺いしたいのですが、事務当局考えて、関税を下げると相当輸入がふえて、くだものに影響があると思われますか。その点ひとつ説明していただきたい。
  144. 佐々木庸一

    ○佐々木政府委員 バナナが入ってきますことによって、国内のくだものの価格にどういう影響を及ぼすかということは、非常に議論のあるところでございます。はなはだ妙なことを申し上げますが、数理統計的にやってまいりますと、バナナが入ってきます数量が、たとえばリンゴの価格に及ぼす影響というものは、相関係数〇・五とかいうことになっておりまして、関係がないということではありませんけれども、密接に動くという関係にもない。幅の広いところでは関係があるということでございます。現実問題として見ますと、たとえばリンゴの問題で、バナナの関税引き下げに非常に反対をされる青森県のような場合には、出荷組織に問題があると思いますけれども、出荷の交渉なんかいたします場合に、バナナがたくさん入ってきてリンゴが売れなくなるから、高い値段では買えないということが、交渉上主張されておるようでございます。そのような影響はあるわけでございます。私でも全体としまして、いまの関税でバナナは自由化後、非常な速度で伸びて入ってまいりますので、関税が障壁になっておるというよりは、七〇%の関税をこえてどんどんバナナが入ってくるという状況に、着目しなければならぬのではないかと考えておるわけでございます。このような急激なふえ方のもとでは、いまの関税を急激に下げてはいけないという主張をされます方の言い分にも、非常に根拠はあるものだと考えておる次第でございます。
  145. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 大臣に最後にお願いするのですが、少なくとも関税定率法は、私ども大蔵委員をやっていて毎年出るわけですが、どうもどこか一貫性がないような感じを受けるのです。関税定率法というのはいろいろな品目がたくさんありますし、いろいろな問題があるわけです。いまのバナナをとってみても、なかなかそれはかたいということであるので、私たちはバナナの味方でもなければ、ミカンの味方でもない、リンゴの味方でもありませんけれども、やはりある一点のところではかなりきちっとした標準をつくって、その線に乗ることが必要じゃないかと思いますが、そういう点について大臣はどういうように考えておられますか、お伺いしたい。
  146. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いま御発言になったように考えております。関税率の問題はいま法定で、非常に皆さんにお世話になっておりますが、海外との問題は、もう少し相手国との間に弾力的に行なっていく。向こうが抵抗的にやった場合にはこちらもやってみる、こういう弾力性があるというような関税をある時期には私は必要だと思います。何年かの間だけでも、日本としては非常に利害が密接なときでありますから、国内的な問題だけではなく、国際的な問題に対処する意味でも、ある時期大蔵大臣にまかしていただければ、こういう問題はもう少し国民の利益を守るというようなことも考えられるわけです。これはバナナの問題だけではなく、佐藤さんがいま言われたように関税率全体の問題として、私たちもいま考えておるところでありますが、なかなかそうもいきませんので、国会の御審議を経て、よりいいものにする以外にないだろう、こういう結論に達しておるわけです。ただ私はやはりある時期こういう問題も考える必要があるのではないかというふうに考えております。
  147. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 最後に、毎週大蔵大臣アワーをやっておられますが、ああいうような要領のいいことで、なかなか党勢拡張をやっておられますけれども、世の中はうるさいもので、大蔵大臣は賢いので、ああいうところで税金の問題を要領よくやっておられるとやっかむ向きもありますので、どうぞひとつああいうところでは国会と同じような答弁をしていただきたい。ああいうところだけ要領よくということのないように、よろしくどうぞ。
  148. 吉田重延

    吉田委員長 この際、佐竹理財局長より発言を求められております。これを許します。佐竹理財局長
  149. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 去る三月十日の本委員会におきまして、武藤先生からの御質問に関連いたしまして、若干私の説明の足らない点がございましたので、この際補足させていただきたいと思います。国際復興開発銀行等からの外資受入に関する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に関する問題でございますが、これにつきまして若干実務上の点について補足申し上げたいと存じます。従来、社会資本を充実し、国際収支を補強する等の観点から、財政投融資計画の原資の一部を、世銀借款及び外貨債発行によってまかなってまいったのでありますが、この両者につきまして、予算編成の時期までに、具体的な借り入れ機関別の割り振りや銘柄別の金額を決定することが、実はむずかしい事情があるわけでございます。すなわち昭和三十九年度におきましては、予算編成の当時におきまして、世銀借款のプロジェクトにつきましての世銀との交渉が完了しておりませんために、当方の希望内容を予算に計上することとしたのでございますが、その後世銀との折渉が難航いたしまして、それまでに実績のございました日本道路公団への借款につきましては、昨年の四月に調印を終わったのでございますが、それ以外の機関に対する借款につきましては、結局首都高速度道路公団へのものが昨年の十二月、電源開発株式会社に対するものが本年の一月に、ようやく調印できたという状況でございます。また外貨債につきましても、その発行条件、発行額等は、調印直前の外債市場の状況によって左右されるものでございますが、これを事前に確定をいたしますことがなかなか困難な事情にございます。たとえば昨年四月に発行されました東京都債の場合について見まするに、当初二千万ドルの発行を予定しておりましたところ、市場の状況がよく、二千万ドル以上の発行は可能と見込まれたのでございまして、昭和三十九年度の政府保証限度額は二千万ドルであったわけでございますが、実際には二千二百五十万ドル発行することといたしました。これはたまたま昭和三十八年度末に未実行になっておりましたもの、すなわち昭和三十九年度に繰り越されました保証限度額が二千万ドルありましたので、合計四千万ドルのワクを使用することによりまして、可能になったのでございます。この場合にも、もし繰り越し額がなければ、実際には二千万ドル以上の発行はできる状況でありましたにもかかわらず、発行額を二千万ドルに制限せざるを得ないことになったものでございます。昭和四十年度におきましても、世銀借款につきましては、昨年のIMF世銀東京総会の際、田中大蔵大臣とウッズ世銀総裁との会談の結果、総額十一億五千万ドルの借款を受けるとの了解は成立いたしたのでございますが、その機関別の割り振りにつきましては、当方から日本道路公団、阪神高速道路公団等を候補として申し入れておりますのに対し、世銀側は慎重審議の上決定したいということで、まだ最終的に決定を見るに至っておりません。また外貨債の発行につきましても、従来国債のほか、政府保証債といたしましては、日本電信電話公社、日本開発銀行、東京都及び大阪府市の外債の発行を行なってきたのでございますが、昭和四十年度につきましては、国際金融情勢の推移が予断を許さないこと等のため、外債市場の動向も予測しがたく、具体的な発行銘柄を確定し得ない状況にございます。以上のような事態は、今後においても発生することが十分予想されるのでございます。このような情勢にかんがみまして、外貨債務につきましての政府保証の限度額を総額で定めることはできることとして、そのときどきの情勢に即して円滑に事務を遂行することができるようにいたしますとともに、これに伴う所要の規定を整備する必要がございますので、この法律案を国会に提出することといたした次第でございます。  以上のような実務上のいろいろな事情がございまして、このような法律を御審議願うという次第でございますので、補足説明申し上げます。
  150. 吉田重延

  151. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 国際復興開発銀行等からの外資受入に関する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案につきましてお伺いをいたします。  大蔵大臣は昨年の九月、IMF東京総会並びに世銀の総会のさなかに、ここを先途と精力的に活躍されまして、外資導入の折衝をされましたが、その努力が実って、世銀から四十年度借り入れ一億五千万ドルの許諾が内示をされた。引き続いて今度ジョンソン大統領の特別教書で利子平衡税を課さないポンド借款が、年間一億ドルに限って日本に許可されるに至ったわけであります。ここで念のために大臣にお伺いしたいのは、両者で二億五千万ドルはだいじょうぶなのかどうかということであります。と申すのは、特別教書で一億ドルの許容決定をなされた今日において、世銀が対応的に一億五千ドルまで必要がないと判断して、これを減額する可能性があるのかどうか、これを明らかにせられたいのであります。
  152. 田中角榮

    ○田中国務大臣 四十年度に日本が世銀から受けようとするものは一億五千万ドルでございますが、これは利子平衡税で一億ドルの免税が行なわれても、減ることはないと考えております。これはウッズ総裁と私との会談の時点におきましても、これと同額ぐらい、ニューヨーク市場を含めた他の市場から獲得をせられたいと、向こうが特にそう言っておるようなことでございますから、一億五千万ドルが利子平衡税の特免のために減るというようなことは考えておりません。
  153. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 次にお伺いしたいのは四十年度産投外資に六千五百万ドル、これと同額六千五百万ドルの政府保証債の発行は、どの国からどれだけを期待しておるのか、御明示を願いたい。さらに繰り越し明許の三十九年度分がなお五千万ドルあると聞いておるのでありますが、その分もあわせてお聞きしたいと思います。これは理財局長からお願いいたします。
  154. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 四十年度の外債市場につきましては、先ほど申し上げましたように国際金融情勢がどう推移するか、それから利子平衡税免税後の米国市場では、どの程度起債が可能であるかといったような、まだいろいろわからない要素が多分にございます。また一方、ヨーロッパにおきましても、アメリカの国際収支対策の結果、ユーロダラー等がだんだん窮屈になろうかというような観測も行なわれておるわけでございまして、その点現段階におきまして、必ずしも最終的に発行銘柄並びに金額をきちっと予測をつけるということは、実は非常にむずかしい事情にございます。ただ従来やっておりました実績等から見まして、この六千五百万ドルの政府保証債の銘柄といたしましては、市場になじみが深い、同時に社会資本の充実にとって寄与度が非常に高いといったような観点から見てまいりますと、たとえば開銀債でございますとか、あるいは東京都債、その他新幹線等によりまして国際的に非常に有名になりました国鉄といったようなものも、一応この銘柄の選定にあたりましては候補に上ろうかとも考えられるわけでございますけれども、具体的な銘柄の選定並びにそれぞれの発行金額等につきましては、今後の市場の状況を見まして、そのつど逐次きめてまいらねばならぬかと、かように思っております。さらに平岡先生御指摘の繰り越しの分が約五千万ドルあるではないかというお話、全く御指摘のとおりでございまして、実はこれは本年度中に発行を予定いたしておりますもののうちで、まだ発行されておらないものがございます。一つは東京都債でございます。第二は日本電信電話公社、俗にNTT債と申しておりますが、これと、そのほかに実は先ほど大臣からお話がございましたスイスにおいて昨年三月に千百数十万ドルの国債発行がございましたが、その際にまだ若干このワクが残っておりまして、これは千二百万程度でございますが、それが繰り越してきておるものがございます。これらを合わせますと、ただいま御指摘のようにおおむね五千万ドル程度になるわけでございます。これらにつきましては、大体従来の予定されておる銘柄で発行されることになろうかと思いますけれども、その時期あるいはそれぞれの金額等につきましては、まだいまはっきりと申し上げる段階までまいっておりません。ただ一つ、一億ドルの免税を認めるというジョンソン教書が出ましたところで、非常に事態は新しくなったわけであります。そこで昨年度は、ずっとニューヨーク市場における国債、政保債の発行は見合わせておったわけでありますが、これをいよいよこういうことで免税で出せることになりましたものですから、ニューヨーク市場の再開にできるだけ早くつとめたいということから、実は先般来電電公社の債券発行について、目下いろいろ現地で打診をいたしております。これが、できれば年度内発行と思ったのでございますが、いろいろ大統領命令の交付がまだございません等の事情によりまして、多少ずれるかとも思いますけれども、できるだけ早い機会にこれを発行したい。去る十一日に、この分はワシントンの証券取引委員会登録手続をすでにいたしております。そういう次第でございます。
  155. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 機関別割り当てが必ずしもまだコンクリートになっていないというお話ですが、総額としては一億三千万ドル、プラス五千万ドル、一億八千万ドルと理解してよろしいですか。
  156. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 そのとおりでございます。
  157. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 次に世銀のほうの一億五千万ドルは、相当早くから内示もされてきまっておるわけですから、したがいまして機関別割り当ても相当コンクリートになっておると思うのです。それをお示しいただきたい。
  158. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほど理財局長が申されたとおり、一億五千万ドルの世銀の分がまだ打ち合わせ中ということでございます。ですから世銀の分につきましては、東京の上水道をやったらどうか、こういうお話がございます。向こうからも非常に強く言っておりますし、これに相当大幅にさきたいという意向もあるようであります。でありますから、この一億五千万ドルの内訳がきまりませんので、あとの一億八千万ドル程度にのぼるもの、これもこのうち一億ドルは免税になるわけでありますから、大体ニューヨーク市場ということになるでありましょう。あと残るものがヨーロッパ市場でどうなるかという問題になりますと、まだ銘柄別に金額を申し上げられる段階にないということはそのとおりであります。   〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕
  159. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 政府はいろいろなお立場があろうことから、そういう言明を避けられておりますけれども、世銀の借り入れ金の割り当て関係は、過去の実績等から勘案して、日本道路公団に対しまして、ことしても邦貨で二百七十億円ほど、つまり七千五百万ドル、それから阪神高速道路公団に対して二千五百万ドル、邦貨で九十億円、第三番目にあなたの御示唆のあった東京都上水道事業に五千万ドル、百八十億円、この程度が一応考えられておると思うのですが、もしお差しつかえなかったらお答え願いたい。
  160. 田中角榮

    ○田中国務大臣 一億五千万ドルの内訳は、大体いいところだろうと思います。いまあなたが御指摘になられたような状態で、向こうがのんでくれればと思っております。大体道路公団が半分くらいと私たち考えておるわけです。東京都の上水道の問題は、向こう側が非常に多くと、こういう希望を持っておるようでありますから、こちらと詰めればそんなことできまるかもわかりません。
  161. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 東京都上水道事業の問題につきましては後刻お尋ねしたいと思いますが、まず最近の世銀の金利はどうなっておるかにつきまして教えていただきたいのであります。コマーシャルベースの金利と理解していいかどうかということであります。というのは、第一世銀と対応的な第二世銀は低開発地域の開発資金として、世界的な制度金融ということが言えると思うのです。したがいまして経理の手数料も低く、期間も非常に長いということで、そういう期間として六十年から発足したわけですね。そういう第二世銀の発足後におきましては、第一世銀それ自身は性格的に、コマーシャルベース金融としての性格を強めてきておるのではないかと思われますので、日本がこれを利用した一九五三年から今日までの金利の趨勢もついでに御答弁願いたいところであります。
  162. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 最近におきます世銀借款の、日本側の受け入れました世銀借款の金利は、大体五分五厘と御了解いただければけっこうだと思いますが、これはだんだん年度によっていろいろ変遷がございます。大体この三十八年以来の受け入れ分につきましては、大体五分五厘でございますが、ただそれ以前の三十六年あたりのところを見ますと、当時は五カ四分の三、すなわち五分七厘五毛でございましょうか、という金利が出ておりました。またさらにその後さかのぼりまして、三十五年当時を見ますと、当時はこれは民間の製鉄業等が受け入れたものでございますが、それは六分という金利が出ておりました。それからさらにさかのぼりますと、三十三年、四年当時は、これまた再び五分七厘五毛ということに相なっております。ずっと古くさかのぼりまして、先ほどたしか一九五三年と仰せられましたが、これは昭和二十八年のことだと思いますが、二十八年に初めて第一号が入ったわけでございます。これは関西電力が受けたものでございます。開発銀行を通して関西電力が受けたものでございます。この最初に出されましたのは五分でございます。以来二十八年じゅうは大体五分で、三十一年、二年ごろになりまして一時四分台のときがございました。四分七厘三毛でございますとか四カ八分の五、八分の五というのは大体四分六厘でございましょうか、という時代もございましたが、このようにごらんいただきますと、大体やはり世界国際金利水準の動向というものをある程度反映しながら動いておる。現在の五分五厘が全くコマーシャルベースであるかということになりますと、おおむね国際水準としてはコマーシャルベースに近い、ややそれより低目であろうかという感じでございます。
  163. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 では四十年度の世銀の金利はどんなふうになっておりますか。
  164. 柏木雄介

    ○柏木説明員 世界銀行の貸し出し金利は、いま理財局長から御説明ありましたように、年々変遷になっておりますが、これは要するに世界銀行の金利と申しますのは、世界銀行の資金コストでございます。世界銀行がニューヨーク市場、あるいはヨーロッパ市場に世銀債を出しておりますが、それによって調達するときの資金コストに、大体一%ないし一・五%のせた金利で貸し出しをいたしております。したがって四十年度の世銀の金利はどうかということにつきましては、四十年度の世銀コストが一体どうなのかということでございますが、見通しとしては今日とそう違わないということでありますと、おそらく五・五という金利は当分続くのではないかというふうに考えられます。ところが昨年来世銀内部でいろいろ検討されておりますのは、五・五の金利を低開発国も先進国も同じでいいかどうかという点でございます。いま平岡委員から御指摘のように、制度金融かコマーシャルベースの金融かという点でございますが、世界銀行が借りる金利は、アメリカの国内の一流企業に比べますと若干高いでありましょうが、普通の国に比べますとよほど安い金利で借りられる。したがって世銀の資金コストというものは、おそらくほかの国ではまねができない。それに一%のせるといたしましても五・五の金利と申しますのは、やはり相当安い金利であります。コマーシャルベースと言いながらも、制度金融にかなり近い金利であります。日本の金利はそれよりもどうしても高くならざるを得ないというふうに考えられます。それで世界銀行の貸し出す、低開発国に貸します場合の金利の五・五は、問題なく制度金融的な安い金利でございます。低開発国はニューヨーク市場あるいはヨーロッパ市場で借りようといたしましても、とてもそんな安い金利では借りられない状況かと存じます。ところが先進国に貸します場合には、同じ金を扱うようになりましても、そういう国はむしろニューヨーク市場あるいはヨーロッパ市場で借りたらいいじゃないか。そういう国がよそで借りれば、むしろ世界銀行の資金がいろいろ出てきまして、低開発国に回る金がふえてまいる。したがって世界銀行の資金は全部をなるべく多くを低開発国に向けたらどうかという議論が非常に強く出まして、それに対しまして世界銀行といたしましては、低開発諸国だけの金融機関でなくて、やはり世界銀行の加盟国全部の利益のための金融機関である。先進国といえども国際収支が要る。あるいは長期の開発成長のために金が要る場合には、やはり世界銀行に来て金を調達するのは十分認めて差しつかえないのではないか。その場合にはその金利というものは必ずしも低開発国と同じに考える必要はないのではないか。ヨーロッパ市場あるいはニューヨークの国際資本市場において調達する金利と、大体同じ程度の金利で借りるようにしたらどうかということが昨年来いろいろ検討されまして、大体そういう方向でいくというふうになりました。その場合に、その金利はいかほどがいいかということでありますが、最終的にきまったということは聞いておりませんが、大体低開発国向けの金利に比べますと、一%高い金利になるのではないか。これは貸し出しの期間にもよりますが、十五年くらいの貸し付けでありますれば、一%高い六・五%で貸したらどうか。十年あるいは十二、三年のものでありますれば六・二五%とか、六%をちょっと上回る金利で貸したらどうか。したがいまして日本の四十年度の貸し付けは、おそらく十五年より長い期間の借款になると思いますから、世界銀行の現在の金利、資金コストに変化がないとすれば、おそらく六・五に近い金利になるのではないか、そういうふうに考えております。
  165. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 最初は四十年度においても五・五%が維持されるだろうと私は聞いておったのだが、それがだんだん言っているうちに結論的には六・五%になる、こういうことになりましたね。結論はどういうことなんですか。
  166. 柏木雄介

    ○柏木説明員 ちょっと混乱いたしましたが、一般的に申しますと、世界銀行の金利はおそらく五・五を維持いたします。しかし先進国——日本も先進国でありますので、先進国向けの貸し出し金利はおそらく六・五まで上がるのではなかろうかと思います。
  167. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 世銀のウッズ総裁みたいなことを言われたが、しかしこっちは借りるのだから、それは腕っこき値切るという態度でなければならぬと思うのです。世銀のウッズ総裁の説明ならあなたの説明はそれでいいと思うのですが、結局去年よりは一%上がってくるだろうということなんですね。そうするとどうやら世銀のほうが採算をとるのが相当じょうずであって、日本の資金運用部資金が六・五%なのだから、大体その辺のことなら日本でのむだろうというような、そういうことはないのですか。もしそうなら、これは国内債ですか、資金運用部資金に余裕がないということから、外債ということになったのでしょうけれども、国内で調達できるものならそのほうがいい。ですから世銀から借りるための条件としては、やはり金利として相当に低いものでなければうまみがないのですから、日本の側からはそう喜んで、何でもどんな金利でもいいから貸してくれという性質のものではなくなってきていると思うのです。その辺のところはどうでしょうか。
  168. 田中角榮

    ○田中国務大臣 世銀につきましては、もう日本のようなところには貸せない、こういう原則であります。ですからもうおととし日本は上がってしまった、こういうことで世銀のとびらは日本のためには閉ざされた、こう言っておったわけでございますが、閉ざされたものはもう一ぺんあけなさいということで、一億ドルの借款をやったわけであります。どうせ中へ入った以上、もう一ぺん貸したらどうですか。ちょうどそれに対しては利子平衡税の問題もありますから、こういうことで四十年度の一億五千万ドルという内諾を得たわけであります。その三十九年度から世銀の内部で、低開発国もざっくばらんな話で言うと非常にうるさい。自分の力でもって世界の自由市場から調達できる国に対して、なぜ世銀が金を出さなければいかぬのだ、こういうこともありますので、日本のようなレベルの高い国に世銀が貸せる場合には、世銀債をあらためて発行して、そしてひとつ原資をつくる、こういうことで低開発国との間の調整をはかる必要がある、そういう意味で必ずしも五・五%という低開発国も先進国も一律の金利をとらないで、新たに原資を調達して貸せるということになるので、その場合には特別金利をとるということをひとつ了解してもらいたい、こういうことであります。それが五・五%プラス一%になりますか、プラス二・五になるかは別にしまして、日本が外債市場でもって調達できるものが大体六分くらいでございますから、そういうものとのバランスをとって、大体どういうふうになるかわかりませんが、五・五%という低開発国と一体という考え方ではなく、新しいシステムを採用しよう、これには日本も賛成をいたしたわけでありますから、四十年度は五・五%ではないだろう、こういうことを申し上げておるわけであります。
  169. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 道路公団さんにお尋ねをしたいのです。世銀融資受け入れの代表格ともいうべき日本道路公団でありますので、特においでを願ったわけです。  日本道路公団外資利用の代表的法人でありまするが、受益法人としての経営の心がまえは何であるかという点についてお答えを願いたい。
  170. 亀岡康夫

    ○亀岡参考人 日本道路公団は申すまでもなく法律に基づいて設立された法人でありまして、主管大臣であります建設大臣、並びに協議大臣であります大蔵大臣の監督を受けまして、運営されておるわけでございます。したがいましてその経営につきましては、常にその監督下に、われわれとしましてはもちろん最高の努力をして健全な経営をやってまいる。また経理その他につきましても、十分努力のあとが見えますように監督を受けておるわけでございます。
  171. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 ではお伺いします。職員数はどのくらいおるか、それから給与水準はどうなっておるか、まずお答えいただきたい。
  172. 亀岡康夫

    ○亀岡参考人 お答えいたします。現在におきます職員数は四千六百名。それから給与水準でございますが、三万三千五百円、これは平均でございますが、そういう状況になっております。
  173. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 三万三千円と言われてもわからぬですが、政府の職員の給与ベースと比べて、私が調べた限りにおいて二、三割高いのだな。それをお認めになりますか。
  174. 亀岡康夫

    ○亀岡参考人 お答えいたします。ちょっといま資料を持ってまいっておりませんので、正確にお答えできないのですが、仰せのとおり政府職員よりもわずかながら若干高いことは事実でございます。
  175. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 若干と申されましたが、大体三割くらい高いですよ。それから総裁の報酬なんか、聞いては悪いのだけれども、一応教えてください。
  176. 亀岡康夫

    ○亀岡参考人 総裁以下理事の報酬につきましては、これまた建設大臣大蔵大臣監督下にきめていただいておりますので、総裁については三十二万円、副総裁につきましては本給二十六万円、理事につきましては二十一万円、監事につきましては十七万五千円、こういうふうに相なっております。   〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕
  177. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私がお尋ねしたのは、総じて政府の職員よりも高い給与水準にあるということ、この御確認を願ったわけです。  それから私どもは羽田なら羽田へ参りますときに、出札所で何ですか、料金のレシートなんかもらいます。そこにおられる方々は、あなたのほうの職員だろうと思うのですけれども、私の感じなんですけれども、これが非常に若い人が多いのです。労働力が非常に不足しておって、中高年層を雇うべしとする社会的要求が非常に強いおりにもかかわらず、ちゃきちゃきの青年を、単に切符を渡すというばかばかしい単純な労働に動員して、人的資源のむだ使いをしているのじゃないかという気がするのです。そういう点で、うんと給与が高いので、青年もそこに寄ってくるという、変な意味での余裕があり過ぎておるのじゃないかという気がします。どうですか。
  178. 亀岡康夫

    ○亀岡参考人 お答えいたします。ただいまお話のありました羽田というのは、これは首都高速道路公団がやっておりますので、私のほうでは羽田は管轄しておりません。その点をお断わり申し上げまして、徴収員の年齢層でございますが、仰せのとおり現在までのところは開業まだ日が浅いというような事情もございまして、デスク、いわゆる事務職員でございますが、そういうものに対する配置転換、こういうことも考えまして、主として高校卒の青年層を採用してまいりました。しかしながら今後ともこの方針でいいかどうかという点につきましては、現在検討しておりまして、ただいまの考え方といたしましては、全面的とまではいかないかと思いますが、積極的に中高年層に切りかえていく、こういう考え方で現在方針を立てつつあります。
  179. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私が指摘したのは、給与水準がべらぼうに高いであろうということと、それからいま言った若年層のちゃきちゃきのこの人的資源を浪費しているのじゃないか、こういう感じがいたしますし、気ままな経営をほしいままにしているのじゃないかと見られる節があるので、気をつけていただきたいと思うのです。有料道路料金は結局余裕を見過ぎて計算されているせいか、現在まで償還期間はおおむね短縮されている傾向にあります。期間短縮は、経営に有能であるからということではなしに、独占料金の単なる取り過ぎの結果にすぎないことを知ってもらいたいと思うのです。要するに日本の財政的危機とは言わぬまでも、危険と計算において外資を導入している。その外資の上に気楽に居すわっておってもらっては困るという感じがしますので、その点につきまして道路公団当局の御意見を述べていただきたいと思うわけであります。
  180. 亀岡康夫

    ○亀岡参考人 お答えいたします。ただいまのお尋ねの点につきましては、当初の償還期限よりも早く料金でもって投資財源が回収になるという道路も御指摘のとおりございますが、あわせて当初の償還期限に対しまして、現状どおりに推移すれば、その償還期限までに償還できないという道路も反対として出ております。これは償還期限がまいりませんと結論は出ませんが、いい道路もある、と同時によくない道路もある、こういう現状でございまして、その間、この道路の通行による料金は、財政資金と申しますか、国のお金でもってつくりましたもので、道路なるがゆえにおのずから料金が上がってくるのじゃないかということでございますが、これも事柄の性質上、そういうことも言えますが、同時に、われわれ経営者といたしましては、できるだけ料金の上がりが多くなるように、PRはもちろんのこと、通行者に対するサービスその他の点について心がけておるわけでございます。こういう事情をひとつ御了承願いまして、よろしくお願いいたしたいと思います。
  181. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 なお問題なのは、建設省において提案を予定していると伝えられた道路整備特別措置法の一部改正案のごとき悪法案を出そうとする考え方が問題であります。施設は国民に帰属すべきものでありますから、元利償還を終われば直ちに無料で開放さるべきであります。国民はその期待の上で高い料金を甘受していたのだから、法の改悪によって、無料開放の期限をあいまいにして、不採算ベースの道路を予定するがごとく、元利償還済みの道路料金をそのまま継続したり、資金プールをつくることを考えたり、また新規計画のためのリボルビング資金として無期限的にこれを延長することは、許さるべきでないものと思います。道路公団のかかる企図はほんとうにどうかと思います。道路公団の見解をあらためてお聞きしたい。
  182. 亀岡康夫

    ○亀岡参考人 償還期限がまいりまして、なおかつ料金を取る、この問題につきましては、いわゆるプール制の制度の問題であるかと思います。この点につきましては、われわれは一に監督官庁であります建設大臣並びに大蔵大臣の御指示に従ってやっておることでございまして、われわれの立場ではそういうことの是非については、意見は申し上げる立場にないと思います。よろしくお願いします。
  183. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 聞くところでは、法律は、法制局の反撃にあってだめだ。だめだとわかったので、施行令でこれをやる考えだということを聞いておるのです。法律で悪いものが施行令でいいわけはないのです。道路公団はどういうお考えでおられますか。
  184. 亀岡康夫

    ○亀岡参考人 ただいま申しましたとおり、その内容につきましては、これは建設省ないし大蔵省で御検討願っておることと存じます。どうかひとつ政府側にお尋ね願いたいと思います。
  185. 田中角榮

    ○田中国務大臣 道路は無料公開の原則に立つものでありますから、もうすっかり投資金額を収納したものに対しては、すみやかに無料公開の原則に返せ、こういう御議論であります。このことは非常によくわかります。わかりますし、私もそうあるべきだと思いますが、ある時期において、また別な考え方を採用しなければならないということもあります。それはどういうことかと申しますと、そのプール制をすることによって、だんだんといなかの道までみな有料道路に採用されてはいかぬ、こういう議論が一つございますが、もう一つの考え方は、やはり有料道路といえども、一般会計から入れている道路もございますし、いろいろなものがございますが、財政資金を使ったりいろいろなことをして、やはり料金を払っておるとはいいながら、有料道路の制度を一番初めとられたというところは、国の恩恵をたくさん受けておるわけであります。でありますからそういう意味において、日本全国にできるだけ短かい間に道路網を整備して、あまねく恩恵を与える、こういう思想から言いますと、どうしても料金をプール制にすることが合理的であり、望ましい、こういう考え方に立って料金のプール制をやろうという考えでございます。しかしこれはいままでも、つくった道路に対しては地方公共団体との間に、もう年限が切れたらこれを無料にするというようないろいろな協定もあるようでありまして、全部が全部直ちにそのまま延ばせるとは思いませんが、やはり私は、プール制ということは正しい、こういう考えであります。そうすることがより早く全国各地に道路交通網の整備が行なえるものと、こういう考え方をとっておりますので、料金のプール制に対しては、いろいろな反対もありますけれども、政府としては、プール制にするほうがよろしいと、こういうことであります。
  186. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 法律技術的に言っているのですが、法律的にそれが可能ですか。
  187. 田中角榮

    ○田中国務大臣 法律的には可能だと思います。いま建設大臣と私と相談をしておるのですが、政令の改正でできる。こういうことでございます。政令の改正でもできるというならば——法律でできないからというのではなく、政令改正でもって十分できるという建設大臣の意向でございますが、法制局の法律論からの意見も十分徴して最終的にきめたい、こういう考え方を持っております。
  188. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私が聞いておるのは、法制局の反撃にあって法律的にはできない。したがって行政的にこれを逃げてやろうじゃないかという意図ではないですか。もしそうだとするならば——いま百歩譲りまして、もしプール制もこれはもう社会的な要請もあるのだからというお考え方に立つとしても、当然厳格な限度がなければならぬと思うのです。実は私はサンフランシスコで見聞したことですが、昭和二十八年に私がサンフランシスコに参りましたときに、例のゴールデンゲートブリッジを渡りました。料金は五十セントですか、一ドルですか、取っておりました。そしてこれはあと大体三カ年間くらいで料金を取らなくとも済むという、そのときの話があったわけです。ところがその後四年か五年たちましてまた参りましたら、依然として取っておるわけですね。聞きますと、今度はサンフランシスコベイブリッジのほうの建設の事業のほうにそれを回しておるというのです。また四、五年たってからサンフランシスコに参りましたら、ゴールデンゲートブリッジも取っておるし、ベイブリッジのほうも取っておる。これはどういうわけだと言いましたら、今度はリッチモンドブリッジの建設にそれを回しておるという、こういうわけです。ですから、たとえば償還を全部終わってから二カ年なら二カ年の限度を厳に限って、資金プールのために寄与させるというふうに、それは完全な限度を置く必要がある。新しく、いま言うたようにゴールデンゲートブリッジにベイブリッジがとってかわる。そのベイブリッジの収益が上がり始めると、それでこのベイブリッジが完全償還があった後も、なお二、三年をリッチモンド用の資金のプールのために寄与させるという方法をとっていく、そういうことで足りる。ですからある程度いけば、最初のゴールデンゲートブリッジの料金は取るべきじゃないと思うのです。米国は、いろいろな事情から、そうなっておると思うのですけれどもね。日本では完全な元利債還をやった後において、限度期間を二年なら二年完全に限って置くという、そういうストリクトな規制がなければならぬと思います。  それからもう一つ、たとえばそれ自体が一単位の施設である名神道路とか、東名道路ですね。この道路の毎区間の完成と経理完了に伴って、順送りに施設の延長工事を行なうために、継続して料金をなお徴収するがごとき場合にだけ、厳重な制限のもとに許されるかどうかが精一ぱいのところであって、それ以上はかってなプールによって、無期限にこの料金徴収を続けるべきではないと思うのです。日本の国鉄の例を見たって、そういう変なところから政治路線ができ過ぎたわけです。役にも立たぬ、要らぬところにまで政治家が介入して、政治路線ができていったのですから、プールをつくること自体は、善意な意味で計画されればいいのですけれども、そういう点の弊害が私は考えられてしかるべしと思うのです。いずれにしてもこれは法律的にはいかぬという法制局の見解がある。かろうじて逃げ込めるのが政令だ。政令の場合にも土俵の広さは、いま私が例として出したような限度に限られるべきものと思うのです。政令の展望につきましても、ひとつ大臣、この際明確にお示し願いたいと思うのです。
  189. 田中角榮

    ○田中国務大臣 道路公団法や首都高速道路公団法、また阪神道路公団法をつくりますときにも、初めからプール制でいくべきかどうかということを検討したわけであります。検討したのですが、まあまあそういう制度はとらないでやろう。現行の道路法は私が議員提案で御説明を申し上げたという経緯でよく知っておりますが、それが一つの個所ずつでもってひとつ切ろうという制度になったわけであります。でありますが、あなたも先ほど申されたとおり社会的要請ということも非常に強くなっておりますし、限られた資金の中でいわば重点投資を行なうわけでありますから、時間的におくれて投資を行なわれるという人の利益を守るためにも、プール制を考えようということで、再度検討したわけであります。法制局でもいろいろ問題を検討いたしておるようでありますから、明確な結論をいま申し上げられない段階だと思いますが、あなたが言われたとおりのことを考えられば、当分の間ということもあり得るわけであります。いずれが国民のために最もいいかということもひとつ十分考えて、妥当な結論を出したい、こう考えます。
  190. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 いまの問題は、問題が多いですから、私の言いましたことに対しましてもひとつ御検討をいただきたいということを強く要求をいたしておきます。  次に、東京都上水道事業についてお伺いいたしたいと思います。四十年度の機関割り当てのうち、東京都の上水道事業に五千万ドル、邦貨で百八十億円が見込まれるとのことでありますが、東京都水道事業における値上げの問題、これに伴うべき水対策事業計画並びに資金計画について、その概要を述べていただきます。
  191. 柴田護

    ○柴田政府委員 東京都の水道事業の拡張計画でございますが、大体全体計画といたしまして、事業費といたしまして三千三百九十五億円程度の計画を持っておりまして、これを昭和四五年までに仕上げるということでやってまいったわけでございます。そのうち三十八年度までで六百五十九億円ばかりの事業が済んでおりまして、四十年度から四十五年までの拡張計画といたしまして千九百十一億円という計画を持っております。このうち新規水系分というのが三百十億円ばかりあるわけでございますが、この部分を別にいたしまして約千六百億円程度、これに改良費を入れまして約千八百億円程度事業費を基礎にいたしまして財政計画を組んでおりますが、財源その他の関係で、とりあえず四十年度から四十二年度までの三カ年計画でそのうち前半を終わりたい。その前半につきましては、中川、江戸川系の水道緊急拡張事業の残、それから第一次利根川系の水道拡張事業、これは八木沢、下久保ダムに関連するものでございます。それから第二次利根川系の水道拡張事業並びに配水施設関係の拡充事業費、これらのものにつきまして三カ年で措置をする、こういう計画でありますが、この部分の総事業費が大体千七百九十一億円、この中身は営業関係で四百七億円、それから既発行の地方債の元利償還並びにこの三年間に発行いたしまする新規借り入れ分の利子負担、それから改良費、拡張関係の経費、これを全部含めまして、常業が四百七億円、元利償還が三百九十七億円、改良費が九十億円、拡張費が八百九十七億円、合計千七百九十一億円でございます。  これに見合います資金ベースの計算で、料金収入で、現行料金収入で四百七十一億円、地方債で八百八十二億円、営業外収入その他で十六億円、合計千三百六十九億円が財源として予定されるわけでございますが、差し引き四百二十二億円程度は不足する。このうちで償還期限の延長、それから政府債の投入割合の増加等を考慮いたしまして十一億円、それから一般会計からの応援として九十二億円を繰り入れる、また事業の機械化その他によりまして十六億円の合理化による節減を見込みまして、差し引き不足分として三百三億円。これを料金に換算しまして、約六割四分程度の率になりますので、この係数を基礎にして現在議論になっておりまする水道料金の改訂案が生まれまして、これを提案をいたしまして、審議を続けておるというのが現状でございます。  なお四十三年、四十四年、四十五年につきましては、総投資額といたしましては九百九十億円、そのうちに改良が約九十億円あります。これだけのものを予定いたしておりますけれども、この間の財政計画は今回の案には含まれておりませんし、また現状では完全に明確にはなっていない状況であります。  なお東京都の案によりますと、四十五年でこの計画を終わりましたときには、区部の人口は九百八十万人、そのうち給水人口を九百万人、この九百万人の給水人口に対しましてほぼ満足な水が供給できる、こういう計画でございます。
  192. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私がさきに東京都のほうから資料を取り寄せまして大体サムアップしてみますと、こういうことになろうと思うのです。現在御承知のとおり都民は、六四・三%の水道料金の値上げに対しまして、非常に不満を持っている。ところがよく調べてみますと、この六四・三%の値上げは、四十年度から四十二年度までの三カ年間で三百三億円の増収となるのでありまするけれども、これは大ざっぱに言って都民の切望する水の量とは関係がないと言い得るわけなんです。言いかえると、水道事業拡張という積極面に用いられるという性質のものではないということ。単に経常収支の赤字カバーのために六四・三%の値上げが必要であって、しかも四十年、四十一年、四十二年度の三カ年の見込み赤字を埋め得る消極的な手当てにすぎないわけであります。それが一点。第二点は都民の望む必要な水の導入のためには、このほかに借金で水開発にかからなければならないという事情です。借金であるからには、その元利の償還をまた新たに都民はになわなければならぬ時期が必ずすぐあとに来るわけです。  ともあれ、ちゅうちょはしておられぬというので、東京都は水開発に乗り出すわけですが、水開発は利根系の水開発と千曲、笛吹系の水開発、それにこれはまだ未確定ですけれども、あるいはそれに霞ケ浦の水開発が含まれるかもしれぬ、こういう長期の展望であります。当面は利根系の水開発下あって、期間はいま財政局長から説明のあったように四十年度から四十五年度の間、つまり六ケ年間、その中に第一次利根川の開発拡張計画と第二次利根川の開発拡張事業の二つがある。第一次拡張事業のほうは資金量が約五百億円であって、六ケ年のうち前三ケ年に主力を置くものである。それから第二次拡張事業のほうは資金量は約千四百億円、それで六ケ年の後半の三カ年に主力を置き、両々相まって四十五年度までに利根系の水開発拡張工事をほぼ終わりたいとするものである、大づかみにそう言うことができると思う。それから四十六年以降五十年にかけての五カ年のものが、わずか展望として頭を出していますが、その金額が合計で約七百五十億円くらいです。だから総計で大体三千億円の大事業であるということです。  われわれが強調したいというか、注意しなければならぬことは、六四・三%値上げというのは、いま言った四十年と四十一年と四十二年の三カ年の経常的な赤字を埋め得る消極的なものだということです。ですからたいへんな問題だと思うのです。したがいまして私は政府自体としても、これをほうっておくわけにはいかぬだろうと思うのです。これは管轄は東京都であるから、かまわないのだというわけにはいかぬです。というのは、東京はやはり日本の国都ですから。ですからそういう困難な展望に立つならば、政府の積極的なてこ入れがあってしかるべきだと思うのです。私は東京都選出の代議士ではないのですけれども、ちっぽけなことと違いまして、やはり相当政府自身としても真剣に検討する必要があると思うのです。そこで今回の世銀借り入れ百八十億円というものは、四十年度から四十五年度にかけて利根川系水道拡張事業として計画されている資金量、合計千九百十億円をもってする第一次計画と第二次計画のうちの、第一次計画分約五百億円の中に入るものと考えてよろしいのかどうか、その点をまずお答え願いたい。
  193. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 先ほど申し上げましたように、世銀が東京都の上水事業にはたして五千万ドル貸してくれるかどうかという点は、実はまだ不確定でございますが、われわれとしてはそういうことを期待いたしております。そういう期待をいたします場合の一応計算の基礎としては、ただいま平岡先生御指摘のように、大体三カ年間の五百億円くらいの事業費に対して、そこへ百八十億を導入することに相なるかと思います。
  194. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 では第二次計画分の約千四百億円の中に、世銀借り入れをさらに期待できるのかどうか。いかがですか。
  195. 田中角榮

    ○田中国務大臣 それはわかりません。
  196. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 書いてある東京都の計画は、内訳としては第一次事業計画、第二次事業計画がありますが、全体としてまとめてあり、そのうちの百八十億と書いてありますから、いまのお答えが当然であろうと思います。しからば千曲川、笛吹系の事業計画は四十二年度から頭を出して、それから発足します。この計画の所要資金の中には世銀借り入れを政府は考慮するかどうか。この点はどうでしょうか。
  197. 田中角榮

    ○田中国務大臣 千曲川や笛吹川の問題もなかなかむずかしい問題であります。千曲川水系の水に対しては新潟県が反対しております。これは非常にめんどうな問題であります。ですからこれはいますぐ千曲川の水を東京へ引っぱれるか、なかなかむずかしい問題だと思います。  その以前の問題としてどういう問題があるかというと、沼田ダムをつくろうという問題もございます。利根水系の上流、藤原の下流に沼田ダムをつくって、いまの群馬県利根郡がほとんど水没する非常に大きな計画であります。何千億かかる。こういうことで水をつくって一体合うだろうか、こういう経済計算もしてみなければならぬだろうと思います。一時三十万人から三十五万人ずつ東京都の人口は自然増になったわけでありますが、昨年あたりは二十万人、二十四、五万人、まあ十八万人ぐらいにだんだん減るだろう、こういうことであります。でありますから、全国の水というと一割何分ぐらいしか使っておらないわけでありますが、利根水系等の水を考えると相当水の量も多くなります。今度は上流のダムでもって水をためるというだけでなく、御承知の利根川に河口ぜきをつくって、たまった水を全部飲料水に使おう。大阪で水を使っている姿から考えれば、東京にはまだ水資源はある、こういう考え方もございます。  いずれにしてもたいへんなことでございます。でありますからやはり東京に人が集まらないように、ほんとうに私はそういう問題を根本的に考えないと、水の問題だけではなく、交通の問題、土地の問題、すべての問題が東京中心であり過ぎるというところにも、問題があると思います。しかも現在東京の水が、六割というと非常に大きい値上げでございますが、しかし千葉県や埼玉県に比べると、東京のほうが安いのです。ですから、その国都である、首都であるということはよくわかりますが、無制限に、東京の水は国がつくるのだ、東京の都市計画は国がやるのだ、東京の地価対策は国がやるのだ、こういうことは私はやはりそうできないと思います。世銀の諸君と話をしたきも、東京ほどであれば何に金を貸しても事業としては成り立つねと、すべての国々の人がそう言っております。ですから東京というところは、国が首都としてやらなければならないものと、国民税金負担しなければならないものと、やはり応益負担で、東京へ来る人が、東京に住む人が負担するものと、こういうことの限界をきちんと分けて長期計画を立てないと、国の金を全部つぎ込んでも間に合わない。こういうことにもなるわけでありまして、まあ水の問題だけではなく、東京都の人口や東京都の産業計画をどうするのか、こういう問題とあわせて、水の問題もやはり計画を練り直す必要がある、私はそういう考え方でございます。
  198. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私も二、三日前からこれをちょっと勉強したのですが、非常におそるべきものだと思うのです。ただこのまま政府が手をつかねておるとすると、これは水のないゴーストタウンになりかねないのです。ゴーストタウンになりますよ。そのときは、今度引っ越し料はむしろ高くかかるわけですからね。そういう点で、これは東京だけに金をつぎ込むわけにいかぬとしても、世銀融資等はこれは融資なんだから、東京都の水道事業計画を世銀等からの融資の中でどう位置づけていくか、この点はやはり最大の考慮を払うべきだと私は思います。そういうことで、きょうは問題が非常に大きいと思いましたので、この際、世銀法案の出た際に、このことを私は申し上げまして、やはり政府として非常に大きな問題だという認識のもとに、これに取り組む必要があると指摘する次第です。こういう点を十分御配慮願いたいと思います。  さて、この法律案につきまして質疑を進めていくうちに、東京都水道事業日本道路公団有料道路等が、その資金を一般会計予算外の導入外資に求める場合、そのことが企業自体に有効だということはわかりますが、有効だということだけで、国際復興開発銀行等からの外資受け入れ特別措置改正案を正当化することは、私はできないと思う。疑問があるのです。理由は、外資導入を管轄する財政当局は、赤字公債の弊害を戒める財政法の基本原則は、これを、たとえ用途の特定された事業用外債募集であっても、厳正に順守するかまえに徹するべきだと私は考えておるからであります。  この法律案は、世銀等からの外貨資金の借り入れ及び外貨債の発行の円滑化に資するためとの理由で、各法人ごとに特定されてしかるべき政府保証の限度額を、予算に定めて一括計上の許諾を国会に要求したのであり、一歩誤れば財政法律主義を避けて、財政行政主義の広大な王国をつくる着手と見られないわけでもない。不特定外資の財政への導入は、外国金融市場に求める赤字公債であるという見方も成り立つ。他方、善意にして賢明な借金主義、すなわち先を見通して現時点で将来に及ぶ施設確保する、いわゆるフィスカルポリシーとしてこれを是認する立場に立って、単なる会計処理上の技術的な便宜的処置として限度額計上の要請提案であるとの見方も成り立ちます。このいずれであるかの判定は、かかって大蔵省当局の答弁いかんにかかっておる。先ほど理財局長は、事務的なことだということでるる説明がありまして、この補足的な趣旨説明としてはまことに克明なものであって、敬意を払います。しかし私の問わんとするところは次元が異なるのです。  そこで大蔵大臣の政治的判断を最後にお伺いして、締めくくろうと思うわけであります。財政法は、御承的のとおり第四条、第五条で見るがごとく、赤字公債は禁止すべきであることをうたい上げております。ただ例外的に建設事業債は、これを認めるとしておるわけでありますが、いつの間にか建設事業債許容の間隙に財政膨張の攻撃の手が集中して、赤字公債発行禁止の原則が実質上くずれつつあるのが、最近の財政の姿だと私は考えております。この攻撃の先鋒を承っておるのが、外貨資金の借り入れ及び外貨債の発行である。外資容認の風潮は、いまや抜きがたくなっておりますが、一般会計による内国債が悪であり、産投外債、政府保証外債、世銀借り入れ金等の外資導入は、これを善なりとする風潮について、ここであらためて大蔵大臣の御所見を、願わくは科学的根拠に立って御披瀝願いたいと思います。それをお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  199. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私は衆参両院でずっと一月から御質問を承っておりますが、大体金がないから政府が出せという議論でございますが、きょうは非常に健全財政に対する強い御示唆をいただきましたことを、ほんとうにありがたく思います。大蔵省も私も、大体あなたがいま御指摘になったような健全財政主義を貫いておるわけでございます。またそうでなければならないという基本的な気持ちでございます。内国債に対しては非常に敏感な反応を示しておりますが、外債に対しては少しルーズではないかということでございますが、そういう考えではございません。外債に対しましても、財政法第四条第一項のただし書き、「貸付金の財源」、こういうことで財源を得ておるわけであります。しかもこれは内国債と違いまして、外貨債には先ほどから申し上げておりますように、外国市場におけるおのずから制限がございます。でありますから外貨債が無制限に発行できる状態にないということは、これはもう御承知いただけると思います。日本の財政の中で、農林にまた中小企業に五百億、三百億、八百億と、こういう追加等をいたしますが、外貨債で一億ドルといっても三百六十億でありますが、これは非常に世界の市場としては大きい問題であります。ですからアメリカが、今次日本に対して一億ドルの政府保証債に対して特免条項をきめたということも、非常に世界の市場から考えると大きなものでございます。そういう意味で、外貨債にはおのずから限度があって、放漫財政につながるものではない、こういう考え方は申し上げられると思います。  もう一つは、やはり日本の外貨準備の問題もございまして、そういう意味で国際収支に寄与するという面もあるわけでありますから、外貨債に対しての考え方は、いま申し上げたとおり健全性をそこなわない範囲においての外貨債の発行、国力と国際的な信用に比例をして、初めて外貨債の発行限度がきめられるということでございます。今度の法律改正が事務的だ、こういう御説明があったようでありますが、これは案外事務的ではないのです。政治的であります。率直に申し上げますと、いままで電電債二千万ドル、開銀債二千万ドル、東京都債二千万ドルと、こういうことでもう予算委員会でも、予算書に書いてあるとおりでもっていろいろ御質疑もあるし、初めから公表しておりますから、世界の市場からいうと、これは全く手の内を全部見せておるわけであります。ですから、この次に調子のいい電電債が出るならば、開銀債の売れ行きが悪くなる。非常にむずかしいことでございます。ですから、銀行でもこれだけの金しかないので、これだけの割当てで貸せますということではなく、もう個別に判断をして、金を貸せると同じように、日本もやはり一定の限度額、一億三千万ドルの限度額の中で一体何を出すかということは、市況を十分見ながら、そこで当意即妙といいますか、機に応じて、臨機応変といいますか、そういうことが国際金融の道でもどうしても必要であります。そういう意味で、あまりにもあからさまな予算の状態よりも、総額において何億ドル発行するわけではありません。去年もおととしも一億二千五百万ドル、今年度は五百万ドル、プラスして一億三千万ドル、こういう総額において国会でこうして御審議をいただくのでありますから、この中で開銀債を出すか、国債を出すか、どうするかというような機に応じての取捨選択は政府におまかせいただいても、財政法の趣旨と背反するような結論にはならない、こういうふうにお考えいただきたいと思います。目的はやはりそこであると率直に申し上げておきます。  それから内国債に対しては非常に神経質であるというのは、確かに神経質であります。神経質であるべきだと思います。それはなぜかというと、戦後いまでも、自衛の問題とか国防の問題とか、そういうものに対しても、戦前の苦い経験があって、より慎重であると同じように、日本はもう戦前で内国債の実績は証明済みであります。そういう意味で、いままでこうして超健全ともいうべき財政姿勢を守ってきたのでありますから、内国債の発行ということに対しては非常に神経質であっていいのではないか、こういう気持ちであります。  また科学的に数字的な御答弁が要求されればるる申し上げますが、大体おわかりのことだと思うわけであります。
  200. 吉田重延

    吉田委員長 春日一幸君。
  201. 春日一幸

    ○春日委員 私は酒団法について質問をいたしたいと思います。  まず最初に、酒類業者の自主性尊重に関する問題についてお伺いをいたしたいと思います。酒類の基準販売価格が存続をいたしておりました当時には、酒類業者はこの基準販売価格の制度がいわゆる保護価格、すなわち強制カルテルの機能を持っておりましたので、酒類の組合も酒税保全というその大目的に従属をいたしておりましても、業界としてはその基盤がこの強制カルテルによって保護されておったのでありますから、おおむね安定をしておったものと目されるべきものと思うのでございます。しかるところ昨年の六月にこの基準価格が廃止され、しこうして価格の決定がもっぱら組合の自主性にゆだねられた。したがっていまやこの組合は組合結成の本来的使命に立ち帰って、まず業界の共同の利益を確保するというその当初目的に向かって邁進しなければならないような状態に変わってまいっておると思うのでございます。したがいまして、この酒団法というものの重点と申しますか、あるいは性格と申しますか、これの第一目的が酒税保全ということ、これは当然でございます。しかし酒税を完全に確保することのためには、その業に携わるいわゆる酒の業者の団体、これを健全に維持確保していかなければならないという事情にかんがみまして、特にまた経済情勢の変化、また要するに基準価格廃止の制度の変化等にかんがみて、これはいわゆる酒団法なるものの重点が相当に変わってきたものと私は見るべきものであると思うが、この点について大臣の御判断、これは政治的の判断だが、大臣なんでしたらこれは泉君でもいいが、こういう政策的な認識についてはやはり大臣一苦労してみたらどうですか。
  202. 泉美之松

    泉政府委員 御承知のとおり従来酒団法の考え方は、酒税保全ということと酒類業界の安定ということとは表裏一体の関係にある。酒税保全されるということ、それは結局酒類業界が経営が安定しておって取引が円滑に行なわれ、酒税の転嫁が完全になされる、そういうことによって酒税保全もはかられるのだということでまいっておったわけでございます。現在の酒団法もそのような見地から、業界の共同の利益を増進するために酒類業組合を設けることができるということでまいっておるわけでございます。しかし酒類業者につきましては、もちろん酒団法のこの規定以外に酒税法におきまして一般産業界には見られないような免許制度という制度がございます。これによっていわば実質的な保護が加えられておる、免許のない者にはそういう販売行為が認められないということでまいっておるわけでございます。もちろんこの酒類の行政をやっていく場合におきまして、先ほどもお話がございましたが、国税局税務署の系統ではとかく酒税の確保ということに意を用いがちでございまして、ほかの通産省とか農林省といったような産業行政にはなれておらない。そのためにとかく酒税の確保という点が重点になって、中小企業の保護育成であるとかいったような産業政策的な配慮がやや乏しいというようなことがいわれております。これはもちろん今後の酒の行政にあたって十分注意しなければならないことでございまして、そういう意味では酒税の確保だけでなしに酒類業界の安定、まあ中小企業の保護助成、こういった点を十分考えていく必要があるというふうに考えております。
  203. 春日一幸

    ○春日委員 もとより酒税を確保することのためには、その業者団体が安定をしておるということが基礎となり前提となるものである。これは一体不可分の関係というべきものであろうと思うのでございますが、ただ本時点において本法改正を必要とするのは、何といっても現在のような経済活動が高度化されておる段階の中において、いうならば競争が激化しておる、この経済の背景の中においておりしも保護されておったところの基準価格が廃止された。そこで過当競争が起きて、業界が事業経営が不安におちいったような場合どうするかということで、今回ここにカルテル発動要件の緩和措置を目的として、この改正がなされようとしておるのでありますね。そういう認識があるのであれば、私はただ大蔵省が産業政策に未熟であるとか、経験が乏しいとかいうようなことでは許されないと思う。酒税はいま数千億ですか、とにかくそういう膨大な徴収の大責務を負わせる業者団体が過当競争の危機にさらされておって、それに対処することのために必要十分なる法の体制を確保するのでなければ、これはむしろ後日ここに混乱を巻き起こすおそれなしとしない。十分なる認識を欠かれておるのではないか。もし大蔵省がその行政経験に乏しいというのであれば、これは団体法もありまするし、あるいはまた安定法もありまするし、またいろいろな基本法の精神等もあるのでありますから、内閣としてやはり他の法律と均衡のとれた立法をなさるべきではないかと思うのでありまするが、この辺の認識はいかがでありますか。たとえば当然団体法とこの酒団法とは、やはりその法律の機能というものは同じところをねらっておられる。しかるにこの団体法の構成と酒団法の構成とは著しくアンバランスになっておる。これは一体どういうわけであるか。この点をお伺いしたいと思う。  いま泉さんは免許制度と言われておりますけれども、いまや十数万人の免許がなされて、そうしてさらに人口増に伴うて、だんだんと新しい申請が加えられていこうというような段階においては、やはりこのような限定商品の販売に専従する店舗間の競争、これを単なる免許制度によって、これが相当の確保措置がとられていると考えるべきではない。それは一つの要因にはなり得るでありましょうけれども、これをもってして、この団体法の構成と酒団法の法の構成との間に格段の断層をつくっておいて、それで機能が果たし得ると考えるのは、私は認識不足もはなはだしいものであると思う。この点いかがでありますか。
  204. 泉美之松

    泉政府委員 先ほど申し上げましたように、いわゆる酒団法の規定は、従来から中小企業関係の団体法の規定を参照いたしまして、酒類業界の特殊性を考慮いたしまして、中小企業団体関係法律のうち、酒類業界にとっても必要であると認められる規定を入れておるのでございます。今回四十二条を改正いたしまして、この基準販売価格の制度はございますけれども、告示が昨年六月になくなりましたものですから、不況カルテルを設ける場合の一つの判断基準としての、従来とられておりました「基準販売価格を著しく下回る」販売価格になっているかどうかということについての判断を、基準販売価格でなしに、基準販売価格の制度が設けられる前の状態の姿、すなわち「酒類の販売の競争が正常の程度をこえて行なわれている」というような表現に改めたのでございます。これは春日委員の御承知のとおり、たしか昨年の国会におかれまして春日委員からそのような御発言がございまして、今回法文を整備いたした次第でございます。しかしおっしゃっておられる酒団法と他の中小企業団体法との間に、格段の相違があるという話でございますが、私どもは格段の相違があるとは思っておりません。あるいはいわゆる団体交渉の問題などについてのお話かと思いますが、その点につきましては先ほど横山委員にお答えいたしましたように、中小企業団体法の場合の団体交渉の規定は、従来から中小企業の所管に属すると思われるような業種におきまして、大企業が出てくる場合、それでは中小企業者が困るという場合に、大企業が進出するのに対して中小企業者が団体交渉をするというような規定でございまして、先ほど私が申し上げましたように、酒類業者が製造、卸、小売り全部免許制度になっておる場合、これはやや問題が違うのではないか。したがって酒類業者のうち、特に小売り業者のやっております団体交渉の制度というのは、酒類業界の場合にはなじまないのではないか、こういうふうに考えてそれを取り入れなかったのでございまして、原則として中小企業団体関係規定と酒団法の規定と、そのように大きな差異があるのではないものと思っております。
  205. 春日一幸

    ○春日委員 私どもは昭和三十二年でありましたか、中小企業団体の組織に関する法律というものをこの国会で深く論じました。その当時の記憶もありまするし、また記録もあるわけでありますが、中小企業団体法では、とにかく自由価格、自由競争のもとにおいては、アウトサイダーに対する規制といいますか、あるいは組合員でないところ、たとえば大企業に対する組合交渉でありますとか、そういうような補足措置をとることなくしては、組合の自主的なカルテルというものの効果というものが確保し得ない、こういう立場に立って、この組合協約の問題が特に団体法の中では大きく取り上げられておるわけであります。酒団法はもとより加入脱退自由の原則でありますから、免許を受けたものが組合に入ろうと入るまいと自由であると思う。入っておってもいやならば脱退することも九十日の予告を持てばこれは自由であると思う。したがって自主的ないろいろなカルテル、今回の法律に基づいて、合理化カルテルあるいは不況カルテル等についてのいろいろな改正があるが、そういうようなカルテルをつくったところで、それは員外者に対しては何にも拘束力を持たないと思うが、渡邊公取委員長、これはいかがでありますか。
  206. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 酒団法の場合におきましても、中小企業団体法の場合におきましても、組合が組合の中で調整規定をつくるという場合において、その調整規定そのものは、一応の条件が当てはまればこれは認められますけれども、しかしそれが縛るのはどこまでも組合員だけであります。それでアウトサイダーとの関係におきましては二つの方法があるわけでございます。これは中小企業団体法ですが、私、先ほど横山委員に対する説明多少不十分でありましたので、補足させていただきたいと思いますが、一つはアウトサイダーと組合員との間で協約をつくるという場合があります。この場合におきましては所管大臣の認可が必要であり、同時に公取の同意が必要でありますが、その場合のアウトサイダーとの協約は、調整規定といいますか、いわば価格カルテルならカルテルというものがまずあって、その線に沿っての範囲において限定される、こういうわけであります。さらに、アウトサイダーとの関係におきましては、アウトサイダーの規制がこの協約によってはまだ不十分である、あるいは協約がうまくいかないという場合においては、通産大臣がアウトサイダー規制命令を出すということがあり得ます、あります。  それから、なお中小企業団体法によりますと、一応商工組合として縦の協約といいますか、卸しと小売りといったような縦の協約が結び得ることになってはおりますが、これについては独禁法の除外規定は別にありません。したがいまして、内容によりましては、これは独禁法の違反というものにおのずからなり得る場合もありまして、したがってその内容がいわばきわめて簡単なものでない限りにおいては、やはり独禁法の問題になってくるということがあり得るわけです。  先ほど私、横山委員に対するお答えにおきまして、そのほかに大企業の新しい分野に対する進出の場合の、従来の中小企業者と大企業との交渉といいますか、あるいは特殊契約といいますか、その辺を重点を置いて御説明しましたが、組合契約といいますか、協約といいますか、団体交渉といいますか、その場合においてはそうしたもののほかにアウトサイダーとの関係、あるいは縦横の関係、こういうものがあるわけでございますが、アウトサイダーの場合におきましてはまずもってそこに調整規定があり、調整規定の線の範囲において、それから縦横の関係においては、それは協約そのものは結べますが、しかし内容によっては独禁法違反という問題が生じ得る、こういうわけのものでございます。
  207. 春日一幸

    ○春日委員 いま御説明になったのは団体法ですか。
  208. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 いま申し上げたのは団体法でありまして、そして今度の酒団法の関係においてはこういった意味の協約の規定というものは規定がございません。
  209. 春日一幸

    ○春日委員 私が公取委員長に質問をいたしましたのは、同じ中小企業団体の中で、四千億になんなんとする酒税保全のためにそういう大きな社会的、国家的使命をになうところの酒類の団体ですね、そういう団体はそのみずからの業界の安定をはかるために価格カルテルをつくるような場合、他の一般の中小企業団体は組合協約を結ぶことができるんですね。そうして員外者に対して、あるいは中小企業者以外のものに対して組合交渉を行なうことができる、カルテル事業者と。しかるにこの重き使命をになう酒類の団体に対しては、そういう権能を与えないでおいてはアンバランスにならないか、この端的な見解を求めておるのでございます。  中小企業団体法の解説をいま公取委員長なさいましたが、これは当時社会党時代に、代表して私がつくった法律でございまして、しかもこれについて豪華なる一冊の本まで書いておるくらいでありますから、そういう御説明を受けなくてもよくわかっておる。ただわれわれ組織法学者の間柄においては、特にこの組合協約というものがそれぞれのカルテルの機能を保全することのために必要不可欠の条件とされておる。それが今回——いままでは強制カルテルでこの酒の団体は守られてきたんです。基準価格という、これは強制価格カルテルと目すべきものであり、その機能を果たし得ておるんですが、それがなくなれば何らかの価格カルテルをつくらなければならなぬ。そこに今度の法の一つのねらいがあるのでございますね。その場合、員外者を規制するとか、関連する事業者に対する組合交渉をなさしめないでおいて、どうしてこの酒団体のそのカルテルの機能を確保することができ得ますか。このことを公取委員長にお伺いをしておるのでございますから、端的なる御見解の御表明を願いたい。
  210. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 先ほどちょっと申し漏らしましたが、インサイダーとアウトサイダーとの関係においては、酒団法の八十四条に、アウトサイダーに対して、インサイダーのほうでもってたとえば不況カルテルに対応する調整規定といいますか、カルテルをつくったときには、インサイダーに同調すべしということを勧告する、あるいは場合によってはそれに従うべきことを命令する、これはできるわけでございます。したがって、その点は先ほど私の申し上げましたように、中小企業団体法と私は平仄は同じであると思います。  それから春日委員は先ほど基準価格がある、基準価格は即それによって従来価格カルテルがあり得たのだというふうにお話しになり、それを前提としていろいろ立論をなさっているようでございますが、私どもで見ておりますところでは、基準と価格いうものはどこまでも文字どおり基準価格でございまして、別にこれに従わなければならぬといった意味のものでも何でもないと思っております。したがって、基準価格というのはどこまでも基準価格で、それに応じて各業者が判断してそれぞれ自分の値段をつくっていた程度以上のものではない、それ以上のものであれば、これは独禁法の問題に当然なり得るものでありまして、私どとしもてはそれがいわば一つのカルテル価格として存在したというふうには見ておりませんが、もしその事実があると、実はこれは独禁法の問題になるわけであります。したがって、そういった前提に立って全体の立論をするということについては、私は賛成いたしかねます。
  211. 春日一幸

    ○春日委員 それはターザンの逆襲のような気持ちで言っておられるかもしれませんけれども、私の言うのはそうではない。それは法律論としては、そういう構成になるであろうが、ただわれわれの政策論としては、基準価格というものは強制カルテル的機能を果たしておった、こういうことを私は言っている。速記を見てもらえばわかるのですが、それは強制価格カルテルそのものであるとは言っていないけれども、基準価格があって、これを守れといっている以上は、それは一つの価格カルテル的機能を果たしておった、これは間違いない。事実上そうなんです。それでなければ基準価格というものの意味はないのでございます。基準価格があって、だれでもかつての値段で売ってよろしいということならば、基準価格の制度というものは何らの意味をなさない。これを基準としてみんながこの値段で売れ、こういうことであったのでありますから、このことはやはり政策的効果というものは価格カルテルの機能を果たし得ておった。ところがそれがなくなったのだ。なくなったとすれば、やはり組合の自主性に基づいて健全なマージン確保のための価格協定や、いろいろなものをつくらねばならぬ、合理化カルテルもやらんならぬし、不況カルテルもやらんならぬ。いろいろあると思うのですね。いまここで八十四条かなんかで命令が出せるとかいう話がございましたけれども、これは一体どういう構成になっているのですか、どういう場合に大臣が、あるいは国税庁長官がそういう命令を出すことができるのか、この点の法律構成を御説明願いたい。
  212. 泉美之松

    泉政府委員 八十四条も、従来この基準販売価格を引いておりましたが、今度改正いたしましてこのようになっております。つまり「大蔵大臣は、酒類の販売の競争が正常の程度をこえて行われていることにより、酒類取引の円滑な運行が阻害され、酒類製造業又は酒類販売業の経営が不健全となっており、又はなるおそれがあるため、酒税の滞納又は脱税が行われ、又は行われるおそれがあると認められる場合においては、次に掲げる事項につき内容を定めて、酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会又は酒造組合に加入していない酒類製造業者」これは販売業者にもずっとなにするわけですが、「に対し、これに従うべき旨の勧告をすることができる。」というまず第一項で勧告をする。その勧告にいたしましても、その効果がない場合には二項におきまして命令することができるということになっておるのでございます。
  213. 春日一幸

    ○春日委員 それはどの価格に従うべき旨の命令ができますか。
  214. 泉美之松

    泉政府委員 この八十四条というものは、結局不況カルテルの規制を行なっておる場合に、その不況カルテルの内容に従えということでございます。現在酒類業団体が不況カルテルとして設けておりますのは、製造数量の制限のカルテルあるいは販売数量の制限のカルテルはございますが、まだ価格関係の協定を設けておるカルテルはございません。したがって、現段階ではそういう価格カルテルはございませんために、価格カルテルに対しては八十四条を発動するということはできません。しかし価格カルテルがもし設けられて、それが独占禁止法の関係で認められるというようなことになりますれば、八十四条がその価格カルテルに対して発動し得るということになるわけでございます。
  215. 春日一幸

    ○春日委員 これは私は大臣によく聞いてもらいたいと思うのですけれども、この八十四条は昔どおりでございましょう。今度随所に四カ所ほど改正されましたのは基準価格が廃止されたそのことについて必要なる改正がされておるのでございますね。そうでございますから、この八十四条は、いままでの基準価格がありました場合は大体その基準価格というものを基準にして、この八十四条の操作を行なうことができると思うのですけれども——そうじゃないのですか。じゃもう一ぺん御説明願いましょう。
  216. 泉美之松

    泉政府委員 八十四条に基準販売価格の規定が入っておりましたのは、先ほど申し上げました不況カルテルの要件と同じ要件である場合におきまして、そういう不況状態が発生しておる、ところがアウトサイダーがおって撹乱するためにせっかくその組合員が不況カルテルを結んでおっても、不況カルテルの効果がない、そういうような場合におきまして、大蔵大臣がその不況カルテルに従えという勧告をする、従えという勧告をしても聞かなければ命令してその不況カルテルに従わせる、こういうのでございまして、その事態は、基準販売価格があってもなくても、事態としては、もしそういう不況カルテルが設けられておれば変わりはないわけでございます。
  217. 春日一幸

    ○春日委員 けれども、この八十四条は基準販売価格を下回った等の場合と、事実上法律で書いてありますね。ところがこの基準販売価格というものはもうなくなったのでございましょう。したがって、今後大臣が命令をし得るものとか勧告をし得るものとかいうものは結局はその不況カルテルに基づく組合の協定価格、それが基準になるのでございましょう。この八十四条の場合はそういうふうな読み方をしなければ、八十四条の機能というものは全然発動できないのじゃありませんか。
  218. 泉美之松

    泉政府委員 春日委員のおっしゃるのがよくわからないのでございますが、基準販売価格があった当時は、不況カルテルを設けるとか、あるいはいま申し上げました酒税保全のための勧告、あるいは命令をする場合は不況カルテルの要件として「基準販売価格を著しく下廻る等の事態が生じた」ということが一つの判断要件であったわけです。ところが今度改正いたしまして、基準販売価格の制度はありますけれども、告示がありませんので、法文上どうもそういうふうに読むのは適当でないということからいたしまして、「基準販売価格を著しく下廻る」ということを削りまして、「酒類の販売の競争が正常の程度をこえて行われ」という表現に改めたわけでございます。したがって、不況カルテルの要件と酒税保全のための勧告あるいは命令を出す場合の要件とは同じになるわけでございます。その場合にこの勧告あるいは命令を発動する基準といたしましては、そういう不況カルテルを設けておるけれども、アウトサイダーがおるためにその不況カルテルの実効が期せられない、ということは、不況カルテルで、もし価格をやっている場合に、その価格を乱すようなアウトサイダーがおる場合ということになるわけでございます。これは基準販売価格云々を削ったことと前からあったこととの間で別段差異があるわけではないのでございます。
  219. 春日一幸

    ○春日委員 私の言うことがわからぬと言われるけれども、私の言うことがわからぬようでは困ったことですね。ただ私が言っておるのは、基準価格の制度がなくなったということで、それに基づいて今度の法改正の中では「基準販売価格を著しく下廻る等の事態が生じた」を「正常の程度をこえて行なわれている」に改めるというのでしょう。これは一体だれが認定するのです。大蔵大臣でしょう。大蔵大臣の独断ですか。大蔵大臣は、そのように判断するのは一体だれの申請に基づいてやるのですか。この関係は一体どうなるのです。
  220. 泉美之松

    泉政府委員 今度こういうふうに規定を改めまして、酒類の販売の競争が正常の程度を越えて行なわれているかどうか、そして不況カルテルを設ける要件に該当しているかどうかということにつきましては、大蔵大臣が認可する場合の基準として、中央酒類審議会に基準を諮問してきめることになっております。これは中小企業団体法におきまして御承知だと思いますが、中小企業が不況カルテルを設ける場合の基準というのが告示されておりますのと似たようなのを中央酒類審議会に諮問いたしましてきめて、これを告示する、こういうつもりでおるわけでございます。
  221. 春日一幸

    ○春日委員 そうすると、これは八十四条第一項中「正常の程度をこえて行われ、その販売価格が第八十六条に規定する基準販売価格を著しく下廻る等の事態が生じた」とあるのを、「正常の程度をこえて行なわれている」に改めるだけの改正でしょう、実際。そういう認識ですね。これは大蔵大臣がするのでございましょう。
  222. 泉美之松

    泉政府委員 まず第一に必要なのは、組合がそういう不況カルテルを設けるかどうかということで組合員が相談いたしまして、不況カルテルを設けたいということでその認可の申請を大蔵大臣にしてくる、これが第一でございます。そこで大蔵大臣が、認可するかどうかということで、その基準に照らして、その今回設けようとする不況カルテルが基準に合っているかどうかという判断をすることになるわけでございます。
  223. 泉美之松

    泉政府委員 その法文の文言はこのどこに書いてありますか、いまあなたのおっしゃったことは。
  224. 泉美之松

    泉政府委員 これは四十二条のほうに「酒類業組合は、次に掲げる事業を行うことができる。」ということになっております。そこからきております。
  225. 春日一幸

    ○春日委員 この四十二条の五号は不況カルテル、それから第六号が合理化カルテルでございましょう。そこで、その価格協定を申請することができるわけですね。できたら、この団体法の書き方は、組合がそのような価格協定を行なって、そしてアウトサイダーがその組合の価格協定に従わない、そのためにせっかく大臣の認可を受けた協定価格が維持されない、組合員自体においても維持することが困難になるので、そのような場合は、その調整組合が大臣に申請をして、こういうアウトサイダーに向かって服従命令を発してくれるように大臣に対して申請することができるという法のたてまえになっておる。そういう申請をする前に組合協約というものがなし得て、まず組合は自主性をもってアウトサイダー、値くずしグループに対してその協約を直接行なって、相手方に組合の機能をもってそういうむちゃな値くずしをしてくれるな、せっかく組合がつくった値段なんだからこれで売ってくれといって、組合交渉がととのわざる場合に、そのときに団体法はさらに大臣がその仲に立っていろいろなあっせんをすることができる規定を設けているわけです。なおあっせんのととのわざる場合において大臣が命令を発することができるという現実に三段の仕組みになっているのです。いまあなたのおっしゃるとおり、不況カルテルが四十二条の五号で将来はできる、できるからそのような価格協定ができる、できた場合にこれを受けた八十四条なるものがそれと何もつながりのある文面に書いてないじゃないか。組合が申請した場合とかあるいは不況カルテルの何とかかんとかということは何も書いてない。ただここに「正常の程度をこえて」と、正常の程度を越えて行なわれているということだけが書いてあって、その認識は大臣が行なう。この法律の八十四条から読むのでは、それ以外に読めない。いまのあなたのおっしゃるような、組合が申請して云々というようなことはここに書いてない。それは参考資料として、大臣は組合のそういう協定価格でありますとかいろいろなものを調査する場合、認識し結論を得るまでにはそういう手続を踏むことにはなるであろうけれども、この八十四条は大臣のみずから認識事項になっているんですよ。
  226. 泉美之松

    泉政府委員 八十四条は、先ほど一番最初に申し上げましたように、この酒団法の規定酒税保全ということと酒類業界の安定ということ、これが表裏一体の関係にあるという認識のもとにできておりますので、酒税保全のためにそういうカルテルができておるのにもかかわらず、アウトサイダーがおってカルテルの実効が、あがっておらないという場合におきましては、あるいは事実問題として組合のほうから話して、アウトサイダーを何とかしてくださいという場合もあるかもしれません。しかしそういうことのほかに大蔵大臣の独自の判断に基づきまして、このままにほっておいては酒税保全があぶないという見地に立って勧告をまずする。この勧告のほうの規定は御承知だと思いますが、中小企業団体法のほうにはないのでございます。そして中小企業団体法では組合協約ということでそれをやっているわけでありますが、酒団法においては勧告の規定を置きまして、業者間でやるといってもなかなかうまくいかぬだろう、したがって、まず大蔵大臣のほうから勧告をして、アウトサイダーにインサイダーのやっておる調整事業に従うようにという勧告をやる。そしてその勧告をまずやったけれどもなお聞かないという場合には従うべしという命令を出す、こういう構成になっておるのでございます。その点では中小企業団体法の場合と実効をあげ得る点においては変わりはないもの、こういうふうに考えておるのであります。
  227. 春日一幸

    ○春日委員 ただ問題は、いままでは基準価格の制度というものがあって、事前的に、予防的に不況事態に陥ることを防止しておったのですね。それだから、この法律はたとえば酒税保全するということを大眼目にしてこれに従属しておっても、大体酒税の団体はその基盤というものを健全に確保することが、事実関係としていままではでき得てきたと思うのです。ところが、今度は基準価格がなくなって自由競争になったのですね。しかも自由価格になってきたでしょう。そうなると、資本主義経済においては、自由にして公正なる競争の原則の上に立って、安ければ安いほどいいという形になってくる。そうしたへそ曲がりのアウトサイダーに対していかに規制をしていくか、この補完措置というものが八十四条にしかないけれども、八十四条はいやしくも大臣勧告でしょう。大臣が文書をもって勧告をするとかあるいは命令をするとかいうようなことは、実際問題として非常に重大事なんです。行政上大臣がみずから個々の業者に向かってこの自由なる経済活動に対して規制を加えていくということは、非常の重大事なんです。しかも民主政治というものでは、各人格の自主性を最高度に尊重するというたてまえにおいて法律というものが考慮されなければならぬと思う。そういうような場合において、この酒類の団体がみずからつくったところのカルテル価格がアウトサイダーによって守られないがゆえに、みずからのその営業ができ得なくなるような場合、その組合自体が何らかの発議をする。すなわち、自主的なる行動をみずから行なうことができ得るような法体制にするということは、私は当然の事柄であると思う。団体法だってみんなそういうふうになっている。それぞれの調整組合がみずから立てた調整計画にアウトサイダーが従わざるがゆえに、その調整の効果をおさめることができない場合においては、その調整組合の調整計画に従うべき旨大臣にその勧告を求めるとか、あるいは大臣命令を、規制命令を発してもらうように申告することができる。申告に基づいて大臣がそれを認識し、出すかどうかということは中小企業安定審議会、これでなければ別の審議会にかけて、よろしからぬということであれば発令することができる。もっぱら大臣の自主的な認識事項にしてしまって、それぞれ調整組合の自主的な意識というものが大臣に何もつながらない。自主的につながり得ないこういうような法の立て方というものは、私は団体法の立て方とあわせ比べて全くアンバランスであるのみならず、民主的な立法として適当でないということを言っておるのです。渡邊さんどう思うか。
  228. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 私は、中小企業団体法の場合においては、結局酒税保全とかそういったような問題は別にないのですから、したがって団体自身としてこれじゃアウトサイダー規制をやってもらわなければだめだということで、おのずからアウトサイダー規制の問題としてはその面がまず出てくる、それ以外に出てこないということが一応考えられますので、そうした順序を踏むように書いてあると思います。それで酒団法の場合においては、そういう業界の事情もありますが、同時に酒税保全関係もありますので、したがって、現在のように大蔵大臣による勧告、組合について別にこういう手続を踏むとか踏まないとかいうことは書いてありませんが、しかし事実問題としては組合はそういう陳情をするでしょう。それを別に阻止しているわけでも何でもありませんから、同時に組合の陳情がなくてもあるいは申請がなくても、酒団法としてはやらなければならぬ場合もあり得るというわけですから、手続のこまかい点を書いてなくても、最後のつじつまが団体法と同じなんですから、私は別に支障はないというふうに考えております。
  229. 春日一幸

    ○春日委員 いま公取委員長の御見解では、この酒の団体ではやはり酒税保全せなければならぬという特殊な使命をにのうておるから、ほかの一般中小企業団体では申請をしないような場合もあるであろうが、この場合においてはそれを見捨てておくわけにはいかぬ、だから申請があろうとなかろうと、大臣がみずからそう判断をした場合には、命令を出すときにはこういう構成だ、こうおっしゃるのですね。私はそれはわかる。そういう場合もあり得ると思うが、実際的にはあり得ない。実際的に業者がつぶれそうになってきてからおれは死んでもいいからと叫び声一つも立てないようなことはない。つぶれそうになったらつぶれてはならぬから何らかの文句を発するにきまっている。大臣に向かって、行政府に向かって何らかの善処方を求めてくることは当然だと思う。それは渡邊さんらしくない詭弁ですね。実際問題として団体法の構成というものは、独禁法から出たところの安定法、安定法から発展したところの団体法なんですね。そうでございましょう。それだから独占禁止法の精神とやはり民主的な体制の確保ということ、すなわち当事者たちの発意というものが行政府に向かってまずなし得る、またそのことによってなされていくのだ、そういうような自主性というものですね、いままでは政府から命令されたような基準価格であったけれども、今度は自主的な価格である、自主的価格で安定を期するためには協定価格である、だとすればそのような自主性を持った価格についてはその団体が自主的にその価格護持のために、それらのアウトサイダーに向かって何らかの交渉がなくちゃいけない、交渉に従わざる場合においては大臣命令を求めることができる、こういうような法の構成にしなければ、これは不完全立法なんだ。ここに本人たちが事実上申請するであろうとあなたは想定されておる。ところが団体法ではそんな想定はしてない。本人が申請せよとある。民主主義というものは自分のことは自分でやり、自分の商売が危うくなったらその救済を大臣に求めよと書いてある。この団体法にきめられておることが酒団法によって認められない、そんなことはあり得ないのです。何となく朋輩どもを弁護されておる気配があるけれども、大義親を滅すということがある。少なくとも独禁法の番人たる渡邊さんはもっと公正な理論を述べられなければならぬ。  時間でございますから、この問題は自民党の諸君もひとつ十分考えてもらいたいと思うのです。社会党の諸君は私と一心同体だと思うので、これは三党で共同修正して、この辺の組合協約、すなわちあの調整組合、これの機能を確保することのために組合協約の条項を入れるべきである、挿入すべきである。すなわち組合員の資格を有する者であって中小企業者以外の者に対して、組合が行なっているカルテル事業に関し組合協約を締結することができるようにする、それから二つには、組合員と取引関係がある事業者のうち中小企業者以外の者はその取引条件について組合協約を締結することができるようにする、そうしてその協約がととのわない場合において、やはり行政府がこれについて組合協約に関するあっせん調停、これは団体法にあるのですから、あることをそのまま踏襲していかなければアンバランスになる。この団体法はそんな不完全立法じゃないのです。やはり安定法から移行したものですからね。憲法といわれる独禁法を生かしてきておるものだから、そんなずさんな立法じゃない。そうしなければ、複雑多岐なこの経済活動というものについて公正なる規則が期しがたいという、せんじ詰めた論理の中からこういう法の体系というものが出てきておる。この点はひとつ御研究願って、金曜日までに共同修正のできるように御努力が願いたい。私の理論というものは思いつきの理論ではない。われわれ組織法学者の間では一個の定説になっておる。(笑声)  それからもう一つは、簡単にこれを伺っておきたいと思うのですけれども、これは重大なことだと思うのですが、合理化カルテルの事業として酒類販売業者の組合は販売方法に関する規制のみを認められておりますね。ところが製造業者の組合員には購入数量、購入価格または購入方法、こういう規制を、合理化カルテルの事業としてこれを認めておる。ところが酒販組合にこれを認めなかった。酒造組合に認めておるものを片っ方には認めなかった。これはどういうわけか。問題はそこですね。酒販業者の購入カルテルは、不況カルテルの場合、これは第五号のほうで認められてはおるが、第六号の合理化カルテルではこれを認めていない。したがって購入数量や価格については、あるいは政府のほうの御意見では、合理化に直結した効果がない、関係がないというような意見もあったようにちょっと伺ったけれども、しかし購入方法というものは、これは合理化効果があると思うんですよ。だからこれはやはり私は酒造組合と酒販組合との関係において、少なくとも購入方法だけはこれは合理化カルテルの中に認めていくべきだと思う。認められないとするならばその積極的理由は何か。片方の酒造組合に認めて酒販組合に認めない積極的な説得力があるか、そういう理由があるなら、この際お示し願いたい。
  230. 泉美之松

    泉政府委員 お話しのように四十二条第六号の合理化カルテルにつきましては、イといたしまして製造業者の場合におきましては「酒類の原材料の購入数量、購入価格又は購入方法に関する規制」が合理化カルテルとしてできるということになっておりますが、今回合理化カルテルの範囲を拡張するに際しまして、販売業者の場合の——これは原材料というわけにはいかないのでありまして酒類そのものでありますが、その酒類の購入方法についての規制を加えるかどうかということについて検討いたしたのでございます。ところで購入方法の規制というもので考えられまするのは、一応購入の時期であるとか購入の場所であるとかあるいは購入する際の酒類の梱包ですね。どういう容器に入れて、どういう包装をするという方法であるとか、あるいは購入代金の決済条件であるとか、こういったものが購入方法に関する規則として考えられるわけでございます。しかし現在の酒の取引実情を見てみますと、そういう仕入れる場合に、仕入れの側から見て、購入方法を改善すべきだという問題点はあまりないようでございまして、酒の団体にもいろいろ相談いたしましたけれども、業界からもそれについての希望はございませんでした。そこで本来この合理化カルテルというのは不況カルテルの場合と比較いたしまして常に問題が出てくるわけでありますが、不況カルテルに比較しますとどうしても合理化カルテルというのは合理化のための必要な範囲で制限を受けるわけでございます。そういう意味からいたしまして今回の改正では購入方法のほうは合理化カルテルの対象に加えないで販売方法に関する規制を入れるということにいたしたのでございます。  なお念のために申し上げておきますけれども、販売方法に関する規制という中には、いわゆるリベートあるいは空びん引き取りの価格といったような直接価格に関するようなのは合理化カルテルではむずかしい、価格に関するのは不況カルテルでないと設けにくい、こういうことになっておるのでございます。
  231. 春日一幸

    ○春日委員 時間がまいりましたから結論に入りますが、酒造組合には販売、製造両方とも、不況カルテルも合理化カルテルも認められたんですね。だから合理化カルテルの事業として酒販組合に対して販売方法に関する規制、これが認められたら、やはり購入方法に対する規制も認められてしかるべきなんだ。それは実際問題として合理化に役立つのだから……。私はいま言われたようなそれぞれのカルテルはみんな大臣の認可を得んならぬと思う。いまあなたのいわれるような非難事項があれば、これも削除を求めればよろしい、あるいは許可せなければよろしい、だから販売方法というものがやはりその合理化カルテルの要件であるならば、商売というものは仕入れて販売をするのだから、仕入れ方法について合理化カルテルというものが容認されていけないというはずは絶対ない。もしそれ酒造組合との間に相克摩擦を生ずるような面があれば、その方法の各項目の中において内容を制限、チェックしていけばその辺の円滑なる運営ははかり得て、なおかつ酒販組合の合理化効果というものもあがってくるんですね。これはぜひとも再検討願いたい。これは常識論です、こんなものは。商売というものは仕入れと販売があるのだから、販売のほうについて合理化カルテルを認めて仕入れのほうは認めない、そんなばかなことがありますか。それは理屈が合わない。それがこの酒類三団体の中で相克摩擦を生ずるおそれありとすれば、その合理化計画の内容においてチェックしていけばいいのであるから、この点は十分再考を願いたい。  それから最後の一点は、四十二条の第十号の経常の合理化、情報の提供に関する施設という点がございますね。ここの中に私は、酒類の販売価格の安定化のための施設を事業として行なうことができるようにこれを改正しておいてはどうかと思う。というのは、現在中央会や連合会等が基準価格撤廃後において行なっている業者に対する価格指導事業というものは現存しておるのですから、これは中央会や連合会等が現実にやっておることなんだから、それを法律の中に明定するというのは当然のことだと思う。特にこういう法律改正する際には絶好のチャンスだと思う。現在やっておることに対して法律の裏づけでこれをオーソライズしていくということは、何ら妨げることではないと思う。しかもその内容が酒類の販売価格の安定化のための施設で、これは酒類団体の安定法なんだから、安定化のための施設という一項目をこの十号の中に入れるべきだと私は思う。この点についても十分御考慮を願っておきたいが、この点について御見解はいかがでありますか。
  232. 泉美之松

    泉政府委員 最後の酒類の販売価格の安定化のための施設というのはどういう施設をさすのか、はなはだわかりにくいと思うのでございますが、お話のように現在酒の団体が組合員に対しまして、価格の安定についていろいろ指導をやっております。それはいまお話のこの十号の「組合員の事業に関する経営の合理化」等をはかるための「教育及び情報の提供に関する施設」、こういうので現在すでにりっぱに入っておるのであります。その規定に基づいてやっておるわけでございまして、あるいはこの規定ではあまり範囲が広過ぎるから、価格安定的なものもこの中に入るんだということをあらわせという御趣旨かと思いますが、それでは今度逆に販売価格の安定化のための施設ということになると、一体どういう施設をさすのかなかなかわかりにくい。むしろ現在の、経営の合理化をはかるための教育及び情報の提供に関する施設のほうがわかりいいのではないかと思うのであります。
  233. 春日一幸

    ○春日委員 あなたは官僚で、自分で原案を書いたらもうこれが金科玉条でどうにも動きがつかぬように思い込んでしまう石頭で困ってしまうのだが、実際問題としてこの酒団法の生命というものは、特にこの安定調整というものは、何といっても数量の制限に伴う価格の協定、こういうことになってくるのです。これは団体法にしろ安定法にしろ何にしろ、価格協定と生産数量制限、この二つが生命なんです。そういうようなときに、その団体の持つ施設の中に、第一の目的とする酒類の販売価格の安定化のための施設というのを入れるのが何を妨げますか。情報宣伝に関する施設の中に入る、そんなどろくさいことを言ったって、これに価格の安定に関する施設も何もかも入るといえば入るでしょうが、全然違うというような反対意見もないでしょうけれども、情報宣伝というようなところにこの団体法の骨子であるところの価格安定に関する施設というものを入れて悪いという積極的理由がありますか。施設とは何ぞやということになれば、それは中央会や連合会等がやっておること、そのことなんです。情報の施設も似たようなものだ。だからそういう施設を入れるということは当然なことじゃないかと思う。大体安定法のねらいも団体法のねらいも、扱い数量の制限とか価格協定とかいうことが二つの柱になるのだから、その一つの柱である価格安定に関する施設というものをこの十号の中に入れてどこが悪いか。
  234. 泉美之松

    泉政府委員 おことばではございますが、価格安定化のための施設ということになりますと、いわゆる不況カルテルの場合の価格カルテル自体がそこに入ってくるおそれがあるわけであります。価格カルテルは、不況要件であるこの五号の事業とした場合にのみ認め得るのでありまして、そういった不況カルテルの要件がないにもかかわらず、価格安定化のための施設ということで十号のほうにそういうものが入ってくるということは、これはでき得ないわけであります。やはり価格カルテルは五号の不況カルテルとしてのみ初めて認められるわけであります。そこはやはり違うと思います。
  235. 春日一幸

    ○春日委員 これで終わりますが、最後に申し上げておきます。  価格協定というものは、カルテルはすべて大臣の許可認可を得なければ効力を持たないのです。だからそういうものがその第五号にあって、それがここにあってどうなるかというような関連は、こういうような情報、宣伝と同じように、いろいろな現在中央会がやっている指導事務、こういうことをここでやるのだ、こんなことが法律の中でできないはずはないと思う。なお十分御検討を続けられるよう要望いたしまして質問を終わります。
  236. 吉田重延

    吉田委員長 堀昌雄君。
  237. 堀昌雄

    ○堀委員 だいぶ時間が過ぎてまいりましたけれども、私は当面する酒類行政の問題点を明らかにしていただきたいと思います。  まず最初に、最近清酒が値上げをされました。大体二月一日ごろから最近までぼつぼつとさみだれのごとく清酒の値上げが行なわれて今日に至っておるわけであります。  そこで国税庁にお伺いをいたしますけれども、今度のこの清酒の値上げというのはどこに一体原因があって、どういう必要に基づいて値上げが行なわれたのかを最初にお伺いしたいと思います。
  238. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 今回の清酒の値上げは、御承知のように原料になっております米の価格の値上がりあるいは人件費等の値上がり等からコストが高くなったということが原因だと思います。
  239. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお話で確かに米も値上がりになりましたし、人件費等も上がったと思いますが、コストの値上がりというのは、そういうことになりますと、生産者が最もコストが値上がりをしたということになるから、生産者が現在の価格では経営が維持できないから値上げをしたい、こういうことで行なわれたわけですね、いかがですか。
  240. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お話のように、原料の価格につきましては主として生産者の問題でございますが、人件費の値上がりその他は流通機構の部門においても起こっておるわけでございます。
  241. 堀昌雄

    ○堀委員 それはそうですが、一番初めに出てきたのは原料が上がり、コストが上がったということで、生産者が値上げしたいということが最初に出たんじゃないでしょうか。流通のほうで小売りが値上げしたいというのでこの問題が出てきたのではないのじゃないか、私はこう思うのですがいかがですか。
  242. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 もし違っておれば訂正させていただきたいと思いますが、人件費の値上がりその他は前からありましていろいろ値上げをしたい要素があったわけでございますが、お話のように今回の原料の米の値上がりがその契機になったことは事実だと思います。
  243. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで生産者が値上げをしたいということは、現在の価格では経営がうまくいかないから値上げをするということですから、値上げを発表すれば生産者は当然値上げをした価格で卸売りにおろすといういうのが原則ではないでしょうか。
  244. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お話のとおりだと思います。
  245. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私が聞いております範囲では技術的にある数日間を限ってはこれまでの価格で処理をしなければならぬ問題もあるやに聞いておりますが、理論的にはすでに準備をされて発表をして、それは値上げの日ではなくて、値上げの前に発表をしておるわけですから、発表をしたら実施の日からは当然私は値上げをした価格で卸売り業者に渡すということになるのが当然だと思うのでありますけれども、聞くところによると二十日間、一カ月あるいはそれ以上にわたって、業者のことばでいえば前替えという価格で、すなわち値上げ以前の価格で卸売り業者に渡されておるという事実があるわけです。私はこれまでもちょいちょいあったと思いますけれども、今度の実情を見て、一体真に値上げが必要ならば、その時期は値上げをした価格で売る日から値上げをすればいいのであって、一般に対しては値上げを先に、二月一日から一級酒は幾らですと値上げをすれば、それは消費者を拘束しますよ。消費者は二月一日からその値段で買わされておるわけです。ところが卸売り、小売り段階は二十日も一カ月も前の値段でかえるということになれば、これほど消費者をばかにした値上げというものは私はないと思いますけれども、これは大臣いかがでしょう。これは常識論です。
  246. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 補足して御説明を申し上げたいと思います。  堀先生いま御指摘のような事実が確かにございます。前替え制度なるものが商習慣と申しますか、習慣としてございまして、従来の価格改定の際には、大体習慣として一カ月程度そういうのが続くのが商習慣であったようでございます。ただ御指摘のとおりこれが長期化いたしますことは、ある意味においてリベートとあまり違わないことにもなりますし、お話のような消費者に対する問題もございますので、国税庁といたしましてはそういう商習慣があるようであるが問題である、なるべくこれを縮めるようにという内面指導をいたしました。その結果全体的に申しますと、従来は一カ月程度でありました期間がかなり縮まりまして実行されたようでありますが、なお一挙にその高習慣を排除するまでには至りません。多少御指摘のような点が残ったわけでございます。
  247. 堀昌雄

    ○堀委員 商習慣といいますけれども、私どもはこの酒の値上げも喜んで値上げをしてもらっておるわけではないのです。現在の物価情勢の中ではできればできるだけ延ばしてもらいたいし、小幅にしてもらいたいというのが私は国民の声だと思います。ところがいろいろ事情があったから今日まで私どもも黙っておりました。黙っておれば現実には依然として三十日もそういうものが横行するということになれば、私はこれは国民の立場としてはどうしても承知できないのです。そういう不当な措置は今後一切やめるということを私はひとつ大臣に確認をしてもらいたいと思う。それと同時に、今回酒造組合中央会はいろいろな経緯もあるので、前替え期間については十日以内くらいに自粛をしてもらいたいということを実は言っておるわけです。それをこえたものについては、次回の値上げについては相当期間これを認めないというディスメリットを与えるべきだ。それでなければ中央会が自主的にやろうと思ってもできないし、一方的にそんなに三十日も四十日も前の値段で出せるならば、実は上げる必要がないのです。上げて不当な利得を得ておるわけですから、その点についてはきびしい処置を今後の値上げについてお願いしたいと思うのです。
  248. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お話の御趣旨はよくわかります。われわれといたしましてもなるべく縮めるようにという指導をいたしたわけでございます。ただ堀先生十分御承知のように、昨年の六月に基準価格制度をはずしまして自由価格制度に移行してまいったわけでございます。したがって今後価格改定の問題は原則として業界の自主性にまかせるという方向にあるわけであります。ただ今回の価格改定は基準価格をはずしました最初のことでもありますので、内面指導と申しますか、そういう行政指導をいたしたわけであります。お話のように指導に反して長い前替え期間を置いたということははなはだ遺憾だと思いますが、今後の価格改定の問題となりますと、一体そういう時期がいつであるか、またそういう時期にいまの業界の自主性にまかせるということがどういう状況になっておりますか、非常に不確定な要素がございますので、ちょっと申し上げかねると思います。
  249. 堀昌雄

    ○堀委員 公正取引委員長に伺いますけれども、公正ならざる取引というの第二号には、事業者に対して特別の利益を与えるあるいは特別の利益を与えないような行為というのはいかぬ、こうなっておりますね。これはなるほどある事業者が事業者団体の中で、全体の中の一部に対して特別の利益を与えるあるいはそうでない、こういう問題になろうかと思うのですが、現在のそういう前替え制度の問題の中には、東京向けとその他地方向けの間に日数の差があるわけです。前替え期間の差がある。これは明らかに不公正な取引だと思いますけれども、委員長いかがでございましょうか。
  250. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 一般指定の第二号に、お話しのように「正当な理由がないのに、取引の条件または実施について、著しく有利な取扱をし、または著しく不利な取扱をすること。」一種のディスクリミネーションの規定はございます。この規定は、なかなかいまの御指摘の場合に当てはめてみましても、私は一がいに言い切れない。という意味は、要するに正当な理由というのが、いまの場合に、東京の分は安く売る、地方の分は早く値上げをしたということがある。それ相当の正当な理由があったかなかったかという点がやはりある。それは売り手の関係、買い手の関係、両方のほうから詰めていかなければならぬ問題でございます。ただ一応表面的にそういう区別があったというその事実はとにかくとして、その裏づけとしての正当な理由がはたしてあったのかなかったのか、いまのお話だけでは何とも答弁できない問題だと思います。
  251. 堀昌雄

    ○堀委員 実は正当な理由という問題ですが、ある業者はそういうことをしないで全部一律に値上げをして東京も地方もやっておる。ところがある業者はそういう差別をつける。同じ酒類業者が同じ行為をするときにそういうことをするということになると、やっていないところが、私どもは正当なのであるから、そういうことをやるのは正当ならざる条件だ、こう理解をする。これは一ぺん皆さんのほうでひとつ御検討をいただきたいと思うのです。  それと私に言わせれば、不公正な取引というのは企業間の問題になっていますけれども、消費者から見ますとこのことはまさに不公正な取引なんですね。ある業者を値上げをしたらその値上げをしただけ即日全部値上げをしたのでおろした。だから消費者も当然これはあたりまえなんですけれども、そうでないものは三十日も四十日も前の値段で出しているということで、消費者はその点においては不当な取り扱いを受けていると思うのです。これは公正取引委員会の問題ではありませんけれども、企業間の問題ではない、消費者との関係がありますけれども、一般論として常識的にはどうもこれは不公正な取引のような感じがいたします。実はこの問題は、なるほど基準価格が離れましたから、それじゃ自由でいいんだ、酒類の価格については自由なんだということになると、これはまた少し議論しなければならぬ問題が出てくると思うのです。それじゃ一体今度の値上げ幅が二十五円と三十五円になっているのはどういうことなんだ、こういうこともまた出てくるのです。国税庁長官、二級酒は全国で二十五円の上げ幅、一級酒は三十五円の上げ幅におおむね統一されているのは、それじゃどういうわけですか。
  252. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 先ほど申し上げましたように、今回の価格改定は、基準価格をはずれました最初の改定でございまして、業界の安定をはかることあるいは消費者の影響というようなことも考えまして、最高限と申しますか、限度としていま御指摘のように一級酒三十五年二級酒二十五円という幅と申しますか、範囲を示して指導をいたしたわけでございます。
  253. 堀昌雄

    ○堀委員 価格について指導ができるぐらいなら、販売方法については当然指導できるんじゃないですか。価格のほうがこの問題について最高の要件を示しておるんじゃないですか。おまけに、おおむね私が聞くところでは、配分についても国税庁は指導しておるようですね。価格と配分についてまで指導をしておきながら、一体なぜ前替えだけは指導ができないのですか。
  254. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お話しのように、価格その他について限度を設けるというような幅のあるもので指導いたしたわけでございますが、御指摘のように前替え制度についても、先ほど申し上げましたように、従来の商習慣に反してもなるべくこれは縮めるようにという程度の指導はいたしたわけでございます。ただ御指摘のように、一、二その指導あるいは組合からの勧奨を守らないものが多少あったかに聞いておりますが、その点については遺憾だとは存じております。
  255. 堀昌雄

    ○堀委員 遺憾だということで済めば、結局はやったものが得をするという結果になるわけですね。この際三十日も四十日も安い値段で売るということができれば、シェアが拡大できるということです。よそは高い値段になっているときに、そこだけが安い値段でどんどん売るということになればシェアの拡大になるわけですから、流通を撹乱しているわけですよ。本日ここで合理化カルテルの問題が出てきて、今後はあるいは不況カルテルまで必要かもしれないようなことがおおむね予見される段階に、そういうふうに業者の自体の中で撹乱行為が行なわれるということを、あなたのほうは遺憾だということで済ましているのですが、私は遺憾で済むような問題ではないと思います。これこそ行政指導をきちんと、そうして流通をきちんとすることが国税庁の任務であって、価格や配分の問題も必要でありましょうけれども、やはりいまの酒税保全の目的からするならば、当然そういう問題について指導があってしかるべきだと思いますが、指導できないのですか。
  256. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 ただいま申し上げました程度の指導をいたしたということでございます。先ほど申し上げましたように、大勢といたしましては基準価格をはずし、だんだんと自由にして業界の自主性にまかせるという方向でございます。御指摘のように、指導をどの程度までやるかという点はかなりむずかしいと申しますか、微妙な点だと存じますが、私どももそういう事実がありました際には厳重に注意をするつもりではおりますけれども、それ以上に御指摘のような点について何かするかどうかは、なおよく検討してみたいと思います。
  257. 堀昌雄

    ○堀委員 この問題はここまでにいたしますけれども、かなり有名銘柄がこういうことをやっておる事実があるわけですね。私は地方の非常に困っておられる銘柄がやられるということは、裏返していえばリベートみたいなことですから、ある程度やむを得ないと思います。知名の銘柄が三十日を越えてそんなことをするというのは、非常識もはなはだしいと思います。これらについては、特にひとつ善処を要望いたしておきます。  その次に主税局長にお伺いをいたしますけれども、二級酒の問題でありますが、本年度の税収見込みの基礎になっております生産高は九十四万八千四百キロリットルになっておりますね。そこで、あなた方はこれをはじくについて、三十九年の実積見込みは一体幾らと見ましたか。
  258. 泉美之松

    泉政府委員 三十九年度予算におきましては、清酒二級につきましては九十八万一千キロリットルを見込んでおったのでございますが、その後、実は清酒のほうの一級は売れ行きはいいのでありますが、二級の売れ行きがよくないということで、三十九年度の実績見込みといたしましては九十万三千二百十六キロリットルと見込みまして、それを基礎にいたしまして、消費資金の動向、消費全体の動向、これをにらみ合わせまして、清酒二級については三十九年度の実績見込みに比較いたしまして四十年度は五%ぐらい増加するだろう、こういう見込みでやっておるのでございます。結局は、三十九年度の当初予算の見込みの九十八万キロリットルというのがやや過大な見積もりであったというふうに考えております。
  259. 堀昌雄

    ○堀委員 国税庁にお伺いをいたしますが、三十八酒造年度と三十九酒造年度の精製石数の伸び率は一体幾らになりますか。
  260. 松本茂

    ○松本説明員 三十七年度におきましては、精製いたしました数量は五百五十八万石という数字でございます。三十八BYにおきましては六百九十五万石という数字でございます。本年度におきましては七百二十五万石ということを見込んでおります。
  261. 堀昌雄

    ○堀委員 片方は万石であり、片方はキロリットルであり、てんで話がつながらないのですが、伸び率で言ってください。三十七と三十八の伸び率、三十八と三十九の伸び率は一体幾らなのか。
  262. 江口健司

    ○江口説明員 三十八年度は確定してございまして、石数で六百九十五万石、それから三十九酒造年度につきましては石数で七百二十五万石の見込みでございまして、増産の幅は四・三%の増と見込んでございます。
  263. 堀昌雄

    ○堀委員 三十七年から三十八年の三〇%はいいのですね。
  264. 江口健司

    ○江口説明員 三十七年は石数で五百五十八万石でございまして、三十八年が、先ほど申し上げましたように六百九十五万石でございますので、二四%の増ということになります。
  265. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、私はよくわからないのは、片方で米を割り当てて生産をさせておるわけですから、酒というのは一年で大体消費をするという原則に清酒はなっていますね。そうすると、タイムラグは多少ありましょうけれども、主税局の見込みといまのこれとは、その点では今度は五%の伸び率ということでいいと思うのですが、前回の状態と比べると、率はだいぶ違うのですね。そこでこれはどうですか、いまの生産の状態は、税収源としては、片方は酒造年度ですから、実際に出てくる酒が、その年度へ四月から出てくるかどうか、ややタイムラグはあるでしょうけれども、増産率は四・三%、売り上げは五%というのは大体そういう生産との関係も見合いになっておるわけですか。
  266. 泉美之松

    泉政府委員 酒税収入を見込む場合におきましては、特に清酒のごときは、原料米割り当てをいたしておりますので、的確に把握できるということから、もちろん生産数量の見込みと、それからそれがどれだけ売れるかという両方からはじいておるわけでございます。ただ、もう堀委員の御承知のとおり、清酒は早いところでは十月ごろから仕込みまして、十一月の終わりから十二月にもうしぼってしまう。そしてもう年内に販売するものもおります。それから前の酒造年度の酒が余っておりますと、新しい酒を売るのが二月以降になる、こういう業者もおりまして、必ずしも会計年度の——会計年度と申しましても、御承知のとおり酒税は納期限の延長の制度もございますので、必ずしも三月に売ったものが四月の収入になるとは限っておりません。二月に移出して本来は三月に入るべきものが、納期限の関係で四月に入るというようなこともございますので、若干その間の相違もございますが、われわれとしては、生産の数量、それから前年の売れ行きに対して今年どの程度売れ行きがあるのだろうか、こういう見込みではじいておるわけでございます。ただ過去におきましてふえ方に著しい差がございますが、これは三十七酒造年度のときには、実は三十六酒造年度の生産が非常に少なかったために酒が足らないということで、業者のほうも、この際大いにつくってもうけようということでかなりつくったのでございますが、やや見込みがはずれまして、売れ行きが悪かった。そこで三十七酒造年度にあまりふやさなかった。ところがかなり売れた。そこで三十八酒造年度におきましては、相当つくろうということでたくさんつくったのでありますが、先ほど申し上げましたように、あまり売れ行きがよくなかった。そこで今度は、増加数量も四・三%ぐらいにいたしましても、前酒造年度につくった酒がございますので、それを移出すれば、酒税収入で見込みました五%増ぐらいは当然まかない切れる、こういうふうに見ておるわけであります。
  267. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私がこの問題を論議をしておりますのは、巷間伝えるところによると、最近二級酒はだんだんと売れ行きが落ちてきておる、こういうふうに聞いておりますが、国税庁、最近の二級酒の売れ行きの状態についてちょっと御報告いただきたいと思います。
  268. 松本茂

    ○松本説明員 二級酒の売れ行きでございますが、三十七年度におきましては八十万五千キロリットルでございました。前年に対しまして一二・七%の増でございます。三十八年度は八十九万三千キロリットルでございまして、前年に対しまして八・一%の増でございます。三十九年度予算では、先ほど説明いたしましたように九八・〇、三十九年度の見込みは九十万三キロリットルでございまして、前年に対しまして一・一%の増、こういうことになっております。
  269. 堀昌雄

    ○堀委員 実は最近、一級酒のほうはかなり伸び率がありますけれども、特級酒はやはりおおむね停滞をしてきましたし、同時に二級酒もだんだんと停滞をしてきておる、こういうのが大体全体の実情だと思う。それが合理化カルテルの問題となり、あるいは将来不況カルテル等へ発展をするおそれがあるということで出てきたと思うのですが、私はその点について国税庁側にやはり少し指導をする必要があるのではないかと思いますのは、私はかつて委託醸造の問題がありましたので、当委員会で、ほしい人には米をもっと与えたらどうか、基準指数があっても、必要のない人はまあまあ自分の能力でひとつおやりを願いたい、こういう議論をして、原さんが長官のころでありましたか、泉さん御存じのとおり、国税庁に対して生産石数をふやせふやせと言って今日に参りました。まさに私が言ったことは間違いではなくて、今日までは少なくとも清酒の生産については大幅に伸びてきたわけです。しかしようやくここへ来てそろそろ限度に来たのではないか、こういうふうな感じがいたします。それはいま二級酒の生産が全体に占めておりますウエートというのは、大体最近で七七%、約八〇%ぐらいを占めているわけでありますが、その八〇%を占めている二級酒の伸び率がここへ来たということは、そろそろ限界が来た。そこで私がかねてから申しておりましたアローアンスの制度というものが、それではほんとうにアローアンスの形で使われておるかというと、実は一向にアローアンスというものが所期の目的のように使われていないという事実があるわけですね。これはもう時間がありませんから私は少し急いでこちらで申し上げますけれども、かつてアローアンスの平均は三十六BYでは大体五三・五%しか全体としてはとられていなかった。三十七BYで五八・八%ということであります。大体アローアンスというのは、私の考えではこういう姿が本来の姿であって、高いところは七〇なり八〇なり一〇〇をとってもいいわけでありますが、低いところは六・五三とか七・八とかいうような姿になる。必要なものがとって必要でない人はできるだけ少量でやるということで、アローアンスの制度を私たちがここへ問題の提起をしたはずであったにもかかわらず、三十八、三十九BYはいずれも九五%もアローアンスは売られている。生産能力のあるものもないものも一斉にアローアンスを手をあげてとって、結果は実はこういう状態になってきて、二級酒の売れ行きが急激に減ってきておる。この問題はようやく日本経済全体と同じように過剰生産の峠へかかってきたと見ていいところへきたのではないか。しかし実はこの問題は、無理に割り当てて売るわけではなくて、自主的に手をあげたものにアローアンスを与えるという制度になる。だからその意味では、企業者が企業責任に徹してもらえばこういうことは起らないのですが、どういうわけか、酒類業界だけは生産者がちっとも企業責任を感じていない。企業家として一体何を考えて生産をしておられるか、私はよくわからないわけです。そこでそうは言っても、そのことによって起こる全体の被害を考えるならば、来年度のアローアンスの取り扱い方、要するに四十BYにおけるアローアンスの取り扱いについては、まずアローアンスの幅をもっと大きくしてもらいたいということなんです。いま二二%でありますが、これが三〇%ぐらいになってもいいと思う。まずアローアンスの幅を大きく上げる。その次に、その業者がリベートをして売っておるのか、どういう状態で売っておるのかについて、基準的なルールをつくってもらいたい。リベートをある一定以上出しているものについては、アローアンスはここまでしかあなたはいけませんよ、要するに、おけ売りなり販売の能力に応じて、そこに基準的なルールを一つつくって、そうして能力のあるものは一〇〇%とってよろしい、こういう条件の人は五〇%でやめなさい、こういう人は二〇%ですよという、ある一つのルールをつくって、ここで指導しない限り、いまのような状態では、この次には私は非常に混乱が起きてくるのではないかと思う。やはり生産能力のあるものが生産をする。生産能力のないものが過剰な生産をすれば、それは必ずその企業にはね返って、不当なリベート等を起こして、これは流通を阻害して全体の足を引っぱるということになるだろう。だからこの点については、ひとつ来年度は、今日から現在の流通の状態を十分分析をし調査をして、四十BYにおけるアローアンス制度の抜本的な改正を私は要求しておきたい、こう思いますが、国税庁及び大臣いかがでございましょう。
  270. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お話のように、弱小のと申しますか、生産能力と申しますよりも販売能力のない業者が必要以上に生産をいたしますことは、お話のようないろいろな点で弊害が予想されます。したがって、御趣旨のような線に沿ってわれわれも検討をしてみたいと考えます。
  271. 堀昌雄

    ○堀委員 ここは峠に来たところですから、ここらでひとつ強力な指導をすることによって、あまり混乱を起こさないような措置をお願いをして、そうしてきょうの問題でありますところのビールの値上げ問題に入りたいと思います。  午前中の委員会におきまして、ビールの値上げについて間税部長から何か御答弁がございました。ビール卸売り業の調査によっても、一本当たり八十七銭くらいの赤字になっておるということでもあるということで、何かそういう動きはあるということのようでありましたが、ひとつこのビールの値上げという問題についての現在の情勢をちょっと最初に伺っておきたいと思います。
  272. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 ビールの値上げについては、正式に業者のほうから値上げをしたいという申し出はまだ聞いておりませんが、ただ非公式にいろいろ値上げをしたいという向きもあるようなことを聞いております。ただ国税庁といたしましては、なお間税部長が御答弁申し上げたかと思いますが、製造者あるいは卸、小売りの段階につきましてどういう状況になっておるか、清酒の場合等に比べますと、原料の値上がりその他も比較的軽微であったわけでありますから、その辺をいまなお検討しておるという段階でございます。
  273. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでいまの情勢はわかりましたが、原料関係はどのくらい値上がりしておりますか、ビールは最近。
  274. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 御承知のように、清酒の場合は米の値上がりの小売り価格への影響が二・四%程度であったわけでありますが、これに対しましてビールの場合には、ビール用麦の値上がりが大体小売り価格への影響は〇・三八%程度の計算になっています。
  275. 堀昌雄

    ○堀委員 〇・三八%ということは千分の三・八ということですから、実に影響は少ないと思います。そこでお伺いしておきたいのは、前にも伺ったことがあると思うのですが、最近のビールのリベートの状況、メーカーから卸、卸から小売りへ、小売りから料飲店へと三段階のリベートがあるわけですが、この三段階のリベートの実情をちょっと伺いたいのです。
  276. 松本茂

    ○松本説明員 ビールの最近のリベートの状況でございますが、これは昨年夏ごろサンプル調査したものでございます。メーカーのほうから卸のほうが受け取っておりますリベートの額が昨年の八月ごろ一本当たり一円十九銭程度、それから小売りのほうが卸から受け入れておりますのが大体一円十六銭程度、大体そういうふうな数字が出ております。
  277. 堀昌雄

    ○堀委員 小売りが料飲店に出しておるリベートはどうですか。
  278. 松本茂

    ○松本説明員 料飲店の規模によっても非常に差があるのではないかと推測されますが、このサンプル調査の結果では大体三円八十銭程度という数字が出ております。
  279. 堀昌雄

    ○堀委員 実は値上げの問題——酒類だけではないと思いますが、酒類は特別リベートというのが複雑な状態で、過去からの商習慣か何か知りませんが、あるわけです。ですから、いまのいろいろなお話を聞いておれば、われわれ消費者は一文も値引きしないで買わされて、料飲店は消費段階で——これはどういうことかわかりませんが、三円八十銭も一本当たりで値引きがしてもらえる。ですからこれは清酒の場合でもビールの場合でも、酒だけは一般消費者だけが一番ばかを見ておるわけですね。どうしてもその他のところは安く買い、流通でかなりそういうものが吸い上げられる。このリベートの条件をひとつ頭に置いていただきたいのです。  そこでビール卸の実態調査というのをちょっと私調べてみました。ここで異常なことに気がつきますのは、なるほど八十七・一銭赤字になっておりますが、この資料の中で役員報酬というのが、三十七年度と三十八年度を比べますと六五%ふえている。一体ビールを売って赤字が出ておるのに、これを調査した対象のビール卸の役員報酬は一年間に六五%もふえさせることができるというのは、これは一体どういう角度で調査されたものか非常に疑いを持つわけです。これが第一点。  第二点は、別に私は人件費を押えろという気持ちはございません。ありませんが、ビール各社の給与の伸び率と比較をしてみますと、ここでは給料賃金はやはり三五%くらい増加をしておるわけです。そうして役員の賞与等は前年比で三二%もふえている。役員は、給料を三五%ふやしておいて賞与を三二%もふやす。取るものはすっかり取って残りで赤字が出ましたといっても、そういう調査資料が説得力があるかどうかやや疑問がある。  それからもう一つは、いまのビールの受け入れリベートと支払いリベートの問題でありますけれども、受け入れのリベートのほうが三十八年度は八十三銭になった、こう書いてある。ところが支払いリベートは一円十四銭出している。受け入れリベートにさらにおまけをしてリベートを出しておいて赤字が出るのはあたりまえなんですね。私は、ビール販売のマイナス八十七銭というのは、冷静に判断してみるとあまり説得力がないという感じがまずいたします。  次に、大臣お急ぎのようですから先を急いでこちらからずらずら少ししゃべりますが、ビール三社の財務比率はそれではどうなんだろうかということになるわけでありますけれども、ビール三社は現在配当が一割六分と一割五分でございます。そしてその一割六分と一割五分の配当というのはその他の企業ではどうか。十億円以上の食品工業の法人企業統計から見れば、平均が大体一割四分くらいです。東証第一部に上場されておるところのいまの有配会社は五百二十七だと思いますが、五百二十七の有配会社の中で、年に一三%以下の配当をしておるところが三百八十三社で六七%ある。下に六七%あるわけです。一五%、一六%というのは現在の有配会社の中でも高位のほうにある。その中でモードを調べてみると、モードは分布の中の百六十というのがモードになっておりますが、これは九%から一〇%。現在東証配当の上場株の一番多いのは百六十銘柄が大体一割くらいの配当という現状になっておる。そのうちでビールは現在一割六分も一割五分も配当しておる。配当性向を見ても負債比率を見ても、総資本利益率を見ても、売り上げ高営業利益率を見ても、決してそんなにビール三社は悪くない。こう見ますと現在の原価も上がっていないし、さらにビール三社の経営状態というものは他の日本の産業と比べるならば、現在ではかなりいいほうに実はまだあるわけです。そういう状態で、原料も千分の三ぐらいしか上がっていない。ここは人件費などあまり上げていないのです。それは上げられないという面があるかもしれませんが、あまり上がっていないという状態で見ると、いまの流通段階にも、マイナス八十七銭というのはやや疑問がある。リベートは現状のように出されておるということであるならば、ここ当分の間ビールの値上げは私は必要がないと思うのですが、大臣、ここなんです、あなたにひとつお聞きいただきたいのは。だいぶん前座が長かったけれども、省略したのです。それで、ビールは現状においては値上げの必要はない、こういうふうに判断しますが、どうですか。
  280. 田中角榮

    ○田中国務大臣 ビールの値上げに対しては慎重に考えなければいかぬと思います。現在の状態で、清酒のように原料代が上がっておるということもありませんし、いろんな状態からビールの値上げに対しては全く慎重に考えなければいかぬ、こう思います。
  281. 堀昌雄

    ○堀委員 全く慎重にやるという御発言でありますから、私、それ以上聞きません。大臣の立場ではありましょうが、全く慎重にやるということは、当分はまあまあ見送りたいという裏である。そこまで詰めません。けれども、そういうふうに私は理解をいたします。みんな一般にそう理解をすると思いますけれども、一応ビールについてはそういう答弁が出ましたから、一応時間がないようですから酒類関係の方はそれでけっこうです。      ————◇—————
  282. 吉田重延

    吉田委員長 この際、金融に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。堀昌雄君。
  283. 堀昌雄

    ○堀委員 実は先般から各種の企業が倒産をいたしまして、それについて私ども当委員会でかねてから議論をしてまいりました社内預金の行くえということについて、私どもは重大な関心を持っているわけであります。昨日の新聞を見ますと、大臣は参議院の予算委員会において、この社内預金の問題については向こう五年くらいでやめたいんだという趣の答弁をされておるように、実は新聞紙上で拝見をいたしました。この点について大臣の御見解を承りたいと思います。
  284. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私は社内預金の制度については基本的に反対であります。しかし、長い歴史と沿革を持っておりますから、これを一挙に全廃するということもなかなかむずかしいと思いますが、いつまでも労働基準法十八条の規定をそのまま存続させるということはどうも納得できない。いままで大蔵省と労働省が話をしてもなかなか結論が出なかった問題でございます。しかし、この山陽特殊製鋼等の事件を契機にして、これは時期的には一つのチャンスだと思いますので、この問題をひとつ政府部内でも十分詰めて、できれば五年間くらいで全廃するような方向こそ望ましいと思います。こういう答弁を参議院で申し上げたわけでありまして、私は前からそういう考えであります。特に、一説には五千億円といい、一兆円といい、まだその実態はつかめておりませんが、いろいろ中小企業その他を考えれば相当な金額になると思います。こういうものをそのまま存続さしておいて正常な金融政策が一体行なえるかということを考えても、この問題を看過すべきではない。ただ、新聞を見ても、日本の代表企業というようなものは三百億も持っておる。こういうことであれば、きっと資本金の何分の一かということでありましょうし、外部負債の比率も一対二か一対三か、相当大きなウエートを持っておるものだと思います。そういうことはいまの段階で、ともするといまの社内預金というものは実情やむを得ないから、これに対して保護政策を行なえ、こういう方向にいきやすい状態でありますので、私は逆に、社内預金というものに対してはけじめをつけ、全廃の方向を進めることが正しいという考え方を明らかに披瀝したわけであります。
  285. 堀昌雄

    ○堀委員 私どもはかねがね当委員会論議をしてまいりましたけれども、ようやくこのような中企業の倒産によって国民の目もここに向いてまいりましたし、政府も本日のような答弁をされるようになったことは、私非常に前進だと思います。そこで伺っておきたいのは、これはいろいろ経緯があるものですから、あなたのおっしゃるようにいけばいいと思いますが、それがだらだらするとうやむやになるおそれがある。そこで私どものほうでは政府側に統一見解を要請しているわけであります。いまのは大蔵大臣としての御見解だと思いますが、政府の見解として理解してよろしゅうございますか。
  286. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私の見解として申し上げたわけでありまして、労働大臣との間に意見を調整しておりますが、労働大臣もなかなか踏み切るわけにいかぬと思いますから、この問題を最終的にきまりをつけるならば、総理大臣が最終的結論を出してもいいじゃないか、この問題に対してはそういう態度をとっているわけであります。でありますから、労働省の立場もございますし、本件に関しては大蔵省は比較的に、われ関せずえんといいますか、いままでは労働基準法の規定に基づくものですから、労働省でしかるべくやっておられるでしょう、こういう感じだったと思います。金融政策の上から考えても、金融の正常化の上から考えても、私はやはり相当問題があると思いますし、こういう事態が現に起きておるのでありますから、労働大臣との間に話を詰めたい。事務当局でも話をしなさいと言っているのですが、事務当局でなかなかきまる問題でありません。ですから、より高い姿勢で対処すべき問題だと、このように考えております。
  287. 堀昌雄

    ○堀委員 これから政府の見解を大蔵大臣の見解のほうに統一しようと努力されるようですから、せっかくこの努力をしていだいて、鉄は熱いうちに打てということがあるわけですが、この際総理大臣を含めて政府の姿勢を明らかにしていただきたいと思います。  そこで現在の事態について基準局長にお伺いいたしますが、山陽特殊製鋼の最近における社内預金の実情、それから聞くところによると社長以下取締役も預金をしているというような実情があるやに聞いております。また一部では最近になって、更生法の適用する前になって、そういう取締役が一方的に引き出しをしたなどという、まことに道義上もってのほかの事実があるわけですが、これらについてひとつ実情を御報告していただきたいと思います。
  288. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 山陽特殊製鋼の社内預金は、昭和三十六年九月ごろからの状況を申し上げますれば、当時は約四千万円でございましたが、三十七年三月末の調査では、約九千万円と、二倍強の増加を見ております。その後漸増いたしまして、本年の一月末におきましては約三億という額に達したということに相なっております。その後、本年の二月初めごろから株価が値下がりするとか、いろいろな動きが出てまいりまして、引き出しが急激にふえた、こういう傾向をたどっておりまして、三月十日現在におきましては約一億五千万円という金額に相なっております。新聞紙などに、某重役がいち早く社内預金を引き出したというような報道がございました。私どももはなはだ遺憾に存じまして、調査をいたしましたところ、年末の年初の二回にわたりまして約八百万円を引き出したという事実が明らかになりました。事柄は労働省で所管いたしております貯蓄金管理契約の対象とならないもの、規約を見ましても明らかに除外をされておりますものが、ヤドカリ的にそのような機構に便乗した、こういう印象を強くいたしまして、昨年一月に銀行局長と連名で出しました通牒の趣旨にも反するところでございまして、はなはだ遺憾に存じておる次第でございます。  なお、金額は明確でございませんが、一億五千万という数字の中には、重役の預金がなお存在しておるというふうに聞き及んでおりますので、現在の財産保全命令及び今後の会社更生法によるところの手続の進行過程におきましては、こういうところにつきましても深甚なる注意を払いまして処置してまいりたいと考えておる次第でございます。
  289. 堀昌雄

    ○堀委員 四十年の一月末に三億円あったということでありますが、これは何か帳簿があって預け入れされているのでしょう。金のことですから。どこのだれべえが預けたわからぬということにはならぬはずですから。四十年一月末の三億円の中に社長以下の重役がその時点では一体まだ幾らあったのか。一億五千万円のほうに社長以下が入っておるのならまだしもですが、幹部のやつは全部引き出されて一億五千万の中は労働者ばかりになっておるのか、ここらはひとつあらためて精密な調査をしていただきたいと思います。まことに問題があります。  それともう一つ、これは一体どこで考えればいいのかわかりませんが、会社の幹部が社内預金に名を借りて、会社に金を貸して、正常ならざる金利をかせぐ。銀行局長、山陽特殊製鋼の金利は幾らですか。
  290. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 山陽特殊製鋼の規約を見ますと利子計算は六カ月以下におきましては月五厘、年利六分、ところが六カ月以上に相なりますと月利一分、年利一割二分というふうに、六分と一割二分ということに相なっております。
  291. 堀昌雄

    ○堀委員 会社の幹部が自分の会社に対して自分の金を一割二分で貸して、そうして会社を倒産させるなどとはまことに企業責任も何もあったものではないと思うのでありますが、ただ私は、これを一つの契機として、労働預金の預け入れ状況に対しては、労働省でひとつ厳密な調査をしてもらいたい。この問題について、いやそれは労働者の分以外は私らに関係はありません、こういうことになるかもしれませんが、社内預金制度は一応労働省のあれに基づいてせられておる。それに便乗している者があるわけですから、帳簿を見れば同じに書いてあるはずです。あなた方は管理はここまでということになるかもしれませんが、われわれは外側も見たいわけです。全国の社内預金について、この事実から見てもまことに驚くべき事実ですから、ひとつ早急に、実際に労働者の預金なのか役員の預金なのか問題については、厳密な調査をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  292. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 御承知のように、いわゆる社内預金をやっております事業場は相当多数に上りますので、悉皆調査をしてこれを行なうということになりますと、非常な時日を要します。しかしながら昭和三十八年度に実施しました相当広範囲な調査の例もあるわけでございます。それからまた先ほど大蔵大臣考え方がお示しになっておるわけでございますが、労働省といたしましても、この制度に直接かかわりのある労使の意見を徴して対策を検討したいと存じまして、最も近い機会に中央労働基準審議会において検討をわずらわしたいと考えております。その審議の過程におきましては、当然関係資料を精密に調査いたしまして、現状を正しく理解いたした上で結論を出す、こういうことに相なろうかと存じますので、いまの先生のお示しの線に従いまして、できるだけ適切な調査をいたしたいと考える次第でございます。
  293. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで今度は、例を山陽特殊製鋼にとりますが、一億五千万円、一応凍結されますね。しかしこれは共益債権でありますから、他に比べれば支払いのめどはつくと思いますけれども、そうは言っても、この間もちょっと新聞に出ていたのですが、子供の入学の費用を引き出そうとしても、それもできない。まことに労働者はたいへんなことだろうと思うのです。おまけに金利がこんなに高ければ、おそらくよそに貯金しないで、人情として貯金はみんなここに持ってきておると思う。そうするとあげてわずかな蓄積したもの全部を凍結された労働者の立場というものは、まことにみじめなものになる。この間下請代金の問題について銀行局長は、下請業者の問題は金融機関においてつなぎ融資をやるように大いに督励をしておる。こういうことのようですが、労働者の問題というものはどうなるのか性格は違いますし、労働者自身が承知でやったことだからと言えばそれまでかもしれませんが、現実にはそうはいかない問題もある。そこらはたぶん例もあるでしょうから、日本特殊鋼等はどういう処置をしたか、そういう例も含めて、共益債権の支払いのめどと、それからこのあとの凍結されておるものを緊急に救う方が救う方法があるのかないのか、そこらのところはあとは銀行局長から……。
  294. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 いま日本特殊鋼の例の御指摘もございましたが、御参考までに日本特殊鋼の例を申し上げますと、昨年の十一月三十日に会社更生法の適用申請を行なったわけであります。この日本特殊鋼の社内預金は、十一月三十日現在で一億二千万円ございました。これにつきまして労働基準局におきましても指導を行ないまして、支払いその他につきまして促進いたしたのでありますが、十一月三十日以降、預金の払い戻し等を停止しておりましたが、その後すぐでございますが、十二月十二日に一千万円、十九日に一千五百万円、二十六日に千五百万円、一月三十日に一千万円というふうに逐次払い出しをいたしまして、ことしの二月にまた二千万円払い出すということでございまして、一億二千万円の預金のうち、七千万円はすでに支払いをしたということになっております。このような措置を講じますにつきましては、労働基準監督署が直接指導いたしまして、支払い計画を適切につくっていただくということを主眼にいたしまして、実情に即した指導を行なっております。今回の山陽特殊製鋼のケースにつきましても、こういった事例が幾つかございますので、具体的な支払い計画を作成させまして、関係方面にも十分連絡をとって、その実行を担保したい、かように考えておる次第でございます。
  295. 堀昌雄

    ○堀委員 銀行局長、いまのように計画はできて、更生がきまればそれで多少出ますが、それまでは現実には一文も出せないのですね。この諸君に対して何か——さっきの下請代金なりは処置がされておる。性格は違うけれども緊急の程度においては幾らも違わない問題もあろうと思う。そこらについてはどうですか。何らかの金融的措置はとれますか。
  296. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 実際問題としては非常にむずかしい点が多いんじゃないかと思います。裁判所がこれを認めますと、いろいろ例外的な措置もできるのでございますが、この種の問題について管財人が任命される以前に、金融的な措置をとるということは非常にむずかしい。どこの金融機関から借り入れましても、黙ってやればみんな更生債権になる。裁判所はそれに対してそういうものは別扱いだ、こういうふうにすれば、一部の支払いはできるのじゃないかと思いますけれども、そういうはからいをしてくれそうには思えません。管財人が、非常に急いでおりますから、近くきまると思いますが、早くきめていただいて、そして新しい勘定といいますか、それが動き出すということで、実際には凍結が解かれていくと思いますが、個々のそういう労働者にまた別に融資を考えるということは、実際問題としては非常にむずかしいのじゃないかと思います。
  297. 堀昌雄

    ○堀委員 むずかしい問題だと思うのです。全体としての問題はあなたのおっしゃるとおりだろうと思うのですが、そうはいっても、個々の労働者の中には、どうしても金が要るという者はいると思うのです。そこで、これはひとつ国民金融公庫等で、債権はあるのだから、この人間は要するに共益債権として残っておるのは幾らありますということがはっきり証明をされるならば、それに見合うものは、一応それの見合いということで、それは全部ということじゃないですが、必要な額については国民金融公庫等において便宜処理をするというような措置を考えるわけにはいかないですか。
  298. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 国民金融公庫は、物の生産とか販売とか、何らかのそういう産業的な目的がないものには貸さない。純然たる消費資金の貸し出しということはやらないということになっておりますので、特別な措置と申しましても、そういう法的なものに触れますので、むずかしいと思います。
  299. 堀昌雄

    ○堀委員 国民金融公庫の問題は、われわれもその角度でこれまで議論しておりますから、そういうことだろうと思いますが、これはほんとうに困っておるのに、当座の問題としてどうにもできないということは非常に問題がある。だから、それはどういう措置をするか、ひとつあなた方にまかせますが、何とか緊急避難が行なえるように、私は考えてやる必要があると思います。これは預金をしたほうが悪いと言えばそれまでなんでありますけれども、議論はありますが、そういう点で考えてもらいたいということをひとつつけ加えておきます。  それから通産省にちょっとあわせてこの際に、一体日本特殊鋼、続いて山陽特殊製鋼と二つきたのですが、特殊鋼業界は、もうあとはだいじょうぶですか。
  300. 川出千速

    ○川出政府委員 特殊鋼業界は、御承知のように非常に不況でございまして、昨年も日本特殊鋼の倒産がございましたが、今回またこういう事態になったわけでございまして、不況カルテルも公正取引委員会の認可を受けてできましたし、それから現在標準価格の検討も進みつつございます。何にいたしましても、業界の協調によりまして、値段を回復をして、合理的なところまで上げる必要があるわけでございまして、その点は着々その途についておるわけでございます。  また、業界全体の態勢整備もはからなければならぬわけでございますが、これも昨年の日本特殊鋼の問題を契機にいたしまして、系列化その他の動きが進んでおります。したがって私は、今後少なくとも特殊鋼メーカーについては、このような事態はないと考えておりますが、大いにその点についても今後の努力をしなければいけないと思っております。
  301. 堀昌雄

    ○堀委員 実は最近の経過は、山陽特殊製鋼もみごとな粉飾決算を長期にわたって行なっていたということでありまして、何か粉飾決算ということはあたりまえで、ドレスしないのがおかしいような世の中になってきておるようでありますが、この点は、そういう決算がそのようなドレスをしたものばかりということでは、私は非常に重要な問題だと思いますので、特に問題業種については、一応検討してもらいたいということを要求したいわけです。あわせて、この問題は、公認会計士の制度等の問題でいま私も当委員会で要求をいたしておりますが、それは間に合いませんから、一応通産省で指導し得る範囲でひとつ指導をしてもらいたい。  私はこの問題を見ながら、この間もちょっと本会議でも触れましたが、いま一番おそれるべき問題は、やがて自動車産業にこういう問題が来るのではないかということを実はおそれているわけです。というのは、自動車産業は、外に自由化が目の前に来ましたし、内は生産過剰で、生産はようやくてっぺんに来て、なおかつ設備投資が行なわれ、世界日本ほど自動車各社が多品種生産をやっているところはない。だから、これはいまのままでいけば、もうだれが見ても、必ず自動車に今日の特殊鋼の事態が来ることは間違いない。そうすると、これは特殊鋼の比ではないと思うのです。自動車というのは完成品でありますから、そういう一次産品や二次産品をつくっておるところとは影響の範囲が大きく違う。これがガタが来たときにおける日本経済の問題は、まことに深刻な問題になると思うのです。  そこで、ちょっと新聞を見ると、通産大臣が何かやっておられるようでありますが、あなた方のほうでもう少しきちっとした指導がされないと、あと半年が、長くて一年以内にそういう事態が来ると予言をする確言が私はあるんです。これは過去の例を見れば、みなそういうことなんですから、間違いがないのです。その点について通産省は今後一体どういう指導をして、そういう危機の回避ができるようにするか。それについてひとつお答えをいただきたい。
  302. 川出千速

    ○川出政府委員 ただいま御指摘のとおり、自動車工業はたいへん多くの下請企業、関連企業をうちに抱えておるわけでございます。これが万一倒産というようなことになりますと、その与える影響はおそるべきものがあることは御指摘のとおりだろうと思います。日本の自動車工業、特に乗用車の関係は、保有台数から見てまだまだ日本の需要というものは頭打ちではないと思います。伸びていく面が非常にございます。しかしながら、競争が非常に過度になり、設備投資が行き過ぎるというようなことになりますと、そういう問題も起こる可能性もございます。したがいまして、われわれといたしましては、設備の投資につきましては、産業構造審議会の中に産業資金部会というものを設けてございまして、その中で自動車を取り上げまして、すでにいままでも規制をしてまいりましたけれども、今後はますますその点について注意していきたいと思っております。  それから販売の面でございます。これは最近相当過当販売になっておるという事実もございます。これは業界にも呼びかけて、割賦販売法等の適用をいま考えている次第であります。中古車の下取り価格の問題も非常に問題になってきておりますので、この過当販売を是正するということが大きな問題としてございます。自由化の問題に関連いたしまして、ノックダウン——外国から資本等を入れて組み立てをするということになりますと、これは関税の願も低いわけでございますので相当の影響がございます。これは認めない方針でございます。また、そういう意味外資の導入は認めない方針でおるわけでございます。  残るのは、態勢整備問題でございます。これは同一系列の中の業務の提携の強化ということでぼつぼつあらわれておりまして、この前も通産大臣は業界の首脳部を集めまして、その点について要請をしたわけでございます。これはなかなか企業の事情もございまして、早急にそういう方向に具体的に向いていくことには時間的にかかると思いますが、われわれはそういう点については一そうの努力をしたいと思っております。
  303. 堀昌雄

    ○堀委員 大体好況産業といわれたものは次々とみな峠を越して、いま残っているのは自動車くらいです。そうなれば、自動車が峠を越すのも常識として間違いないわけですから、ひとつ注意を喚起しておきます。どうも通産省の指導がよろしきを得たので、次々と今日のようなことになったのではないか。ですから、いまからでもおそらくはないから、一つくらいはこういうことにならぬように、通産省は責任がありますから、責任を持ってやってもらいたいと思います。  終わります。      ————◇—————
  304. 吉田重延

    吉田委員長 再び国際復興開発銀行等からの外資受入に関する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について質疑を行ないます。有馬輝武君
  305. 有馬輝武

    ○有馬委員 佐竹さんにお伺いいたしますが、二月十日のアメリカ大統領の国際収支特別教書で、利子平衡税の有効期間を六五年十一月三十一日以降さらに二年間延長することが決定されて、その適用範囲を期間一年以上三年未満の銀行借款にまで拡大することと、これと並行した形で、日本政府のものについて一億ドルの免除をする予定になっておるのでありますが、この点について、二年間空白があったこの米国市場で起債再開のトップバッターとして考えておられるところの銘柄、その時期等についてお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  306. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 ただいま考えておりますのは日本電信電話公社の多債でございますが、これを先般三月の十一日にニューヨーク発行ということでワシントンの証券取引委員会に登録の手続を済ませまして、目下発行の準備を進めておるところでございます。
  307. 有馬輝武

    ○有馬委員 次に、本年度の計画で残っておりました電電債二千万ドルですね。これは当初の方針どおり欧州で発行することになるのかどうか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  308. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 三十九年度予算を編成いたしました際には、例の利子平衡税の免除が行なわれるかどうかが未定でございました。したがいまして、三十九年度中の外債の発行といたしましては、ニューヨーク市場での発行は困難であるということで、ヨーロッパの市場開拓につとめてまいりましたことは御承知のとおりでございますが、先ほど先生から御指摘のございましたように、二月十日のジョンソン教書をもって実は事態が一転いたしまして新しい事態になりました。それまでは電電公社債券も一応ヨーロッパ市場での発行ということも考えられておったわけでございますけれども、ここで一億ドルの免税発行が米国内において認められるということになってまいりましたので、やはりNDD——NDDというのは日本電電公社のことですが、この債券は過去においてアメリカ市場で三回にわたって発行されておりまして、アメリカ市場に非常になじみの深いものでもございます。そういうことを考慮いたしましてニューヨーク市場で発行する、こういうことにいたしたわけであります。
  309. 有馬輝武

    ○有馬委員 そうすると、その一億ドルと合わせてこの残分についても米国であれするということですか。
  310. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 アメリカ側が申しておりますことは、つまり暦年で一億ドルまでは日本の国債または政府保証債を発行いたします場合に利子平衡税の適用を免除する、こういうことを言ってくれておるわけであります。したがいまして、米国市場においては一億ドルまではともかく免税で発行はできるという道が開かれておるわけでございまして、その場合にどの銘柄を米国市場で出すかということはおのずからそのときそのときの市場の状況によってまた動いてくることだろうとも存じます。最初の年の昭和四十暦年と申しますかにおいて一億ドル、これは正確には大統領命令が公布になりましてその日から以後年末までの間に一億ドルの免税発行が許されるということでございます。したがって、その期間において出すわけでございますので、従来電電公社債券はこの免税発行のことがなければヨーロッパで出さざるを得ないかと考えておったのでありますけれども、それが免税の道が開かれましたものでございますから、そこでニューヨークにおいて発行を行なう、こういうことにいたしたわけでございまして、三十九年度の当初の見込みではその点ヨーロッパであろうかと思っておりましたところが、事態が変わってそこでニューヨークで出せるようになった、こういう事情でございます。
  311. 有馬輝武

    ○有馬委員 その点、一億ドルの中で当初欧州市場で考えていた二千万ドルも消化していくということですか。
  312. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 これは欧州市場で考えておったと先ほど来お話がございますが、欧州市場における開拓の努力はもちろん引き続き行なうということを大蔵大臣も談話で申しております。したがって、私どもといたしましても引き続き欧州市場の開拓の努力は続けてまいるわけでございますけれども、当面の電信電話債券は欧州で出すのがいいか、あるいはアメリカで出すのがいいかという問題になりましていろいろ検討いたしましたところが、過去三回すでにニューヨーク市場で出しておる、そして非常にアメリカ市場になじみが深いものでもございますので、アメリカ市場で出すほうが条件あるいは発行額ともに有利であろう、こういう判断をいたしておるわけでございます。
  313. 有馬輝武

    ○有馬委員 欧州市場においても努力は続けていくということでありますが、直接投資の規制なりゴア条項の発効なりで、私は欧州市場というのはなかなかきびしい状況にあると思うのでありますが、これに対して努力するということでありますけれども、その見通し、どこでどんなものが消化されるのか、この点についてお聞かせいただきたいと思います。
  314. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 欧州起債市場の見通しがなかなかきびしいという点、全く有馬先生の御指摘のとおりだと私どもも考えております。そこで主としてアメリカの国際収支対策強化の影響が端的にあらわれてまいりますものは、ユーロダラーの問題であろうかと思います。ユーロダラーの金利は最近御承知のように上昇傾向を示しております。そういう意味で、ユーロダラーによる起債というものがなかなかむずかしい状態にだんだんなってこようか、こう思いますが、一方においてヨーロッパ市場の中には、先生先刻御承知のいわゆるローカルカレンシーと申しますか、すなわち西独におけるマルク建ての起債という問題がございます。昨年も西独におきましては七千五百万ドルの起債を行なった実績がございます。したがいまして、来年度におきましても西独市場における開拓をさらに進めてまいる、こういうように実は考えておるわけでございます。
  315. 有馬輝武

    ○有馬委員 欧州の場合、民間外債の発行についてはどういう見通しを持っておられますか。
  316. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 民間外債につきましてはあるいは国際金融局のほうからお答え申し上げたほうがよろしいかとも思いますが、これはなかなか現在むずかしい情勢にございます。昨年かなりの民間債が発行されたわけでありますけれども、これがいわゆる転換社債等の関係でございましたので、現在市況と申しますか、市価はかなり弱い状態、これは先生十分御承知のとおりと思いますが、そういう状況でもございますので、来年度におきましても民間外債を相当出してまいりますことはかなり困難ではないか、なかなかむずかしいのではないかと実は考えております。ただしかし、できるだけその市場開拓の努力をいたしまして、銘柄等も国際的にも非常に信用度の高いといったような銘柄にごく厳選をいたしまして、機を見て発行できれば発行する方向でまいりたい、かように考えておりますが、現実の見通しとしてはなかなかむずかしいのではないか、かように実は見ておるわけでございます。
  317. 有馬輝武

    ○有馬委員 おそくなっておりますので一問一答でいきますが、あわせて米国市場の担税発行については、私これまた相当問題があると思うのでありますが、これについての見通しをお聞かせいただきたい。
  318. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 これは全く先生御指摘のとおりでございまして、非常に問題がございます。ことに金利負担が非常に加重されるという点と、外債は御承知のように、かなり長期のものでございます。十年以上とか十五年以上といったようなものとして出るということに相なりますが、一方平衡税の取り扱いはどうなってまいりますかという点は、ただいま先生御指摘のように、本年末から向こう二カ年間延長されるということははっきりいたしておりますが、そこから先はどうなるかわかりません。かりに二カ年たって米国国際収支の改善を見た暁にはこの法案が失効する、廃止されるという事態も考えられるわけでございますが、そうなりますと、その後において出す場合と今日出す場合とわずか二年くらいの間隔を置いて、その出す金利負担相当顕著に違ってくるという問題があるわけでございます。そういう点もいろいろ考えますと、企業サイドから見てもなかなかむずかしいのじゃないか。同時に一方、米国市場における起債を国債、政府保証債、民間債全体を通じて見ました場合に、アメリカとしては国債、政府保証債については、その緊急性なり重要性なりから見て免税発行を認めようということで考えてくれておるわけでございます。民間債についてはその扱いがございません。そういう趣旨から考えましても、民間債を出していくということはなかなかむずかしいのじゃないかというふうに考えておりますので、これはあるいは国際金融局からその方針をはっきりお答え申し上げたほうがいいのかと思いますが、非常にむずかしい状況であって、当面ジョンソン教書のわが国の国際収支に及ぼす影響その他を十分に見きわめまして、並びに国債、政府保証債等の今後の発行状況等々をよく見まして、その上で十分判断しなければならぬ問題です。したがって今日民間外債発行を進めるという考え方でいくかどうかという判断を下す段階としては、どうも今日はその段階にないような感じがいたします。したがいまして、もう少し様子を見ないとなかなかわからない、ただ見通しとしては非常にむずかしいのじゃないか、かように感じております。
  319. 有馬輝武

    ○有馬委員 先ほど欧州市場の問題に関連いたしましてユーロダラーの動きについて触れられたのでありますが、わが国におけるこの前の公定歩合一厘下げ後のユーロダラーの動きというものについてお聞かせいただきたいと思います。
  320. 柏木雄介

    ○柏木説明員 公定歩合を引き下げましたあと、ヨーロッパにおけるユーロダラー金利は大体横ばいで進んでおったのですが、アメリカの国際収支対策が発表されましてからはその影響もありましてか、だんだんユーロの市場も窮屈になりまして、金利は上昇ぎみでございます。大体三カ月ものの金利で申しますれば、この一カ月以来二分の一%くらい上がっておる状況でございます。
  321. 有馬輝武

    ○有馬委員 私は日本の場合は欧州の場合と動きというものがちょっと違うのではないかと思いますが、その点はどうですか。
  322. 柏木雄介

    ○柏木説明員 御質問を聞き違えたかもしれませんが、日本の借りておりますユーロダラーの金利は大体ヨーロッパ市場におけるユーロダラー金利に平衡といいますか、スライドして動いております。ヨーロッパ市場における金利はただいま御説明いたしましたように、この一カ月以来二分の一%くらい金利が上がっております。したがって、日本の取り入れておりますユーロダラーの金利もおおむねそれにスライドして動いております。
  323. 有馬輝武

    ○有馬委員 私がお尋ねしておるのは、ヨーロッパの場合には金融引き締めで金利を上げた場合に入ってくるけれども、日本の場合には金利中心のプライスメカニズムで動かないのではないか、その点はどうかということになるのです。
  324. 柏木雄介

    ○柏木説明員 御指摘のとおり、日本におきますユーロダラー金利と、それから国内の金利とは一応乖離して動いておる状況かと思います。つまり国内の金利と海外の金利との差が非常に大きいものですから、海外における金利の動きがすぐそのまま一本の国内金利に動くというふうにはなっておりません。いまのところ日本のユーロダラーの取り入れ金利というものは、むしろ海外における動きにそのまま左右されていくという状況になっております。
  325. 有馬輝武

    ○有馬委員 海外の動きにそのまま左右されないのではないかと私は思うのですが、その点どうなんですか。
  326. 柏木雄介

    ○柏木説明員 私どもといたしましては、為替銀行の取り入れるユーロダラーにつきましては、これは一種のあまり安定した外資でございませんで、それに対する依存をあまり高めるということはいかがか、そうかといってユーロダラーの取り入れを少なくするということは非常に外貨繰りを苦しくするということから、大体ユーロダラーの取り入れを横ばいというかあるいは全体の貿易量が伸びるに従って少しずつふやしていくというふうにしたいというか、その方向に持っていきたいということで、この一両年来ずっと銀行を指導してまいっております。したがって、国内の金融が詰まるからと申しまして、むやみと金利をつり上げてユーロダラーを引っぱってくるということもいかがかと思いまして、そうかといって金利をあまり下げるように指導いたしますと、逆にユーロダラーが出ていって、そして日本の為替銀行の外貨繰りを苦しめるということになります。大体海外の金利にスライドさせてまいりますれば、総体のユーロダラーの取り入れは横ばいさせられます。そのように指導いたしております。
  327. 有馬輝武

    ○有馬委員 だから一つの時期を画してこの前の一厘下げ後の動きはどうかということをお伺いしたのですが、その動きと、それから現在の——これははっきりは言えないかもしれませんけれども、その大体の額をお知らせ願いたいと思います。
  328. 柏木雄介

    ○柏木説明員 国内の金利は、御承知のように公定歩合の引き下げ後、貸し出し金利は下がっております。ところがその金利は、海外金利に比べますと非常に乖離が大きいものですから、日本の銀行としましてはやはり海外から借りているユーロダラーは引き続き借りなければならぬ、ところがその金利は海外の金利のままに動いております。ことしの金利ははっきり覚えておりませんが、三カ月ものであれば四・五%くらいかと思いますが、その金利がその後二月半ば以来少しずつ上がってまいりまして、最近では五%近い金利に上がっております。五%と申しますと、一銭四厘くらい。国内金利よりずっと安い金利でございます。したがって、国内で公定歩合を一銭八厘を一銭七厘に下げましても、その結果すぐそのままユーロの取り入れがふえたり減ったりするというふうには直接にはいっていないと思います。
  329. 有馬輝武

    ○有馬委員 その次に佐竹さんにまたお伺いしたいと思いますが、産投への繰り入れ額、前年の二割余に削減されたのですけれども、これで特に三公庫、これが一番手痛いあれを受けることになるのですが、ふえたのは輸出入銀行だけなんですけれども、これは農林漁業、住宅公庫、住宅公団、これはやっていけるのですか。
  330. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 産投会計からの出資が昨年度八百十二億円でございましたものが、四十年度において五百五十七億円に減少いたしておるわけであります。これは先般も当委員会において大蔵大臣からいろいろと答弁がございましたが、結局は農林漁業金融公庫とそれから住宅金融公庫、それと住宅公団、この三つの機関を主といたしまして、従来出資でまかなっておりましたところを切りかえまして、一部利子補給の方式を採用した、そのために出資額がそれだけ節約に相なっておる次第でございます。したがいまして、各機関の業務の運営につきましては何ら支障のない姿になっております。
  331. 有馬輝武

    ○有馬委員 その業務の運営に何ら支障ないというその点をいま一度お聞かせいただきたいと思います。
  332. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 と申しますことは、農林漁業公庫なりあるいは住宅金融公庫なりが、それぞれ先生御承知のごとく、政策金利を出しております。つまり通常金利より低い金利を出して貸し出しをやっておるわけでございますが、その従来からやっておりますそういう業務につきましては、来年度その出資が減ったからといって、その貸し出し金利を上げなければならないとか、そういうことは全然ございません。従来どおりそういう政策金利を出していく、業務を運営するための必要な手当ができておるということを申し上げたわけでございます。
  333. 有馬輝武

    ○有馬委員 ということは、裏返して言うならば、三公庫とも相当の余裕があったということですか。
  334. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 それはそういう意味ではございませんで、つまり借り入れする金利と貸し出し金利との間に逆ざやになっておる。一番早い話が農林漁業公庫を例にとりますと、運用部資金は六分五厘でございます。一方農林漁業のほうはたとえば三分五厘とか四分とかいう貸し出し金利を出しております。そうしますと、それだけぶつけますと逆ざやで赤字になってしまいます。そこで従来はその資金コストを含めまして、三分五厘なり四分なりといったような貸し出しができますように、出資をもってこれを埋めまして——これは金利のつかないただのお金ということで埋めまして、そして全体としての資金コストを下げておったわけでございます。それを来年度におきましては、その出資を減額いたしましたかわりに、つまり金利の逆ざやの差額がございますが、そういうものを利子補給という形で一般会計から支出するということになったものでございますから、結局結果においては、従来出資でやっておりましたのと同じことになる、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  335. 有馬輝武

    ○有馬委員 私はしょっちゅう清井総裁なんかにも言っておるのですけれども、せっかく資金がありながらフルに利用されていない。と申しますのは、毎年度の残を見ますと相当なものになっているのです。いまここで数字を持ってきておりませんが、御承知だろうと思いますが、その根本的な原因は何だと思いますか。
  336. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 ただいま先生が御指摘になりましたのは農林漁業金融公庫のことでございましょうか。
  337. 有馬輝武

    ○有馬委員 そういうことです。
  338. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 農林漁業金融公庫につきましては、まさに計画に対しまして融資の進行実績と申しますか、これが過去におきまして比較的おくれておったのは事実でございます。これはなぜそういうことになるか、私どもも実はいろいろ検討をいたし、農林省からも話を聞いてまいったのですが、農林省においてお立てになりますところの農業構造改善事業といったようなものの企画その他かなり精密なものでございまして、それに合わせて各村なり農業団体あたりで計画を立てて、そして実際にこれに着手し実行してまいるというためには、どうもかなりいろいろ時間がかかるような事情があるようでございます。そういったようなことから、現実の融資が実際におくれておるということのようでございまして、むしろ年々農林漁業公庫に対する予算要求は非常に強いわけでございます。私どもとしては強いのに応じて相当な手当はいたしてまいっておりますけれども、そのつど農林省に対しては、せっかくこれだけの財政資金の手当をするからには、やはりちゃんとと申しますか融資がきちっと進むようにいろいろしてもらわなければ困るということを常々申しておるわけでございます。これは金利条件等から申しましても、先生も十分御承知のように非常に低利のものでございます。ですから金利が高いために借り手が来ないというような事情にないことは明らかでございまして、ただいま私が申し上げましたようないろいろ融資計画の審査その他の関係、農業構造改善事業計画等々の諸関係からいって、やっぱりそこにいろいろむずかしい問題があるのじゃないかなという感じを受けておるわけでございます。
  339. 有馬輝武

    ○有馬委員 私お尋ねしたのは、金利が安いにもかかわらず、いま御指摘のような状況だ、これに対して私はやっぱりそういう状況であれば何らかの手当を施さなければいかぬと思うのですよ。問題は、資金需要というものは私は相当大きいと思う。そのずれをどうやって埋めていくかという点について、佐竹さんの考え方を聞いておるわけです。
  340. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 どうも、その点が私どもも実は非常にかねがねふしぎに思っておるわけなんでありますが、先生のおっしゃるように、本来そういう低利資金に対する需要は強いはずなんでございますね。そういうふうに聞かされておるのですけれども、実際にその公庫の窓口に融資申請になって出てきますものが、先ほど御指摘のようにどうしても計画よりおくれてくる、あるいは少ないというのが実情でございます。これはやっぱり非常にむずかしい問題があるのではないか。つまり、農業構造改善事業といったようなものを立てます場合に、現在の農業生産の構造がそのままであると、何か融資事業というものを取り出して持っていくということがなかなかむずかしいような面もあるのじゃなかろうかというような感じもいたすくらいでございまして、補助金であれば、これは返さなくていい。しかし、融資でございますから、やはり元本の償還をしなければならぬ。同時に、利息も、非常に低利とはいえ、やはり払わなければならぬということになりますと、そこにおのずから投資による投資効果と申しますか、将来のつまり収益というものを十分見定めませんと、金をうかつに借りるわけにはいかぬという事情もあるのじゃないか。ですから、それやこれや、実は私どももかねがね農林省に一体どうしたらほんとうにこれがもっとうまくいくのかということを尋ねておるわけでありますが、今日までなかなか確たる納得のいくような話も実はあまり聞かないわけでございます。私どももこれは何とかしなければならぬ、全く先生のおっしゃるとおりだと思っておるのでございますが、なかなかむずかしい問題が根底にあるのじゃないかという感じで、今後とも十分検討いたしてまいりたいと考えます。
  341. 有馬輝武

    ○有馬委員 急いでおるものですから、飛び飛びであれですが、次に国債償還費についてお伺いしたいのですが、今回の措置によって、繰り入れば半分のやつが五分の一にされたのですけれども、まず第一に、来年度の償還計画といいますか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  342. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 昭和四十年度におきます国債の償還計画でございますが、内国債につきましては二百八十七億円、それと外貨債で三十二億円、合わせて三百十九億円の償還を計画いたしております。
  343. 有馬輝武

    ○有馬委員 今後これはずっとこのままの状態でいくわけですか、繰り入れ。
  344. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 この二分の一を五分の一にいたしますのは、四十年度、四十一年度の二カ年間を限っての臨時措置でございます。
  345. 有馬輝武

    ○有馬委員 なぜそういった、それこそきめこまかい手を打たなければならないのですか。長期の計画の中でこういった手が打たれたわけでしょう。
  346. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 今回、財政法六条の規定によりますところの二分の一の国債整理基金への繰り入れを五分の一にいたしたわけでございますが、実はこの六条の規定につきましては、理論的、制度論的にいままでいろいろな批判があったわけでございます。御承知のように剰余金の発生が非常に波動が激しいわけでございます。その二分の一を機械的に一般会計に経常財源として入れてしまうということはいかがかというようなことがいろいろと議論されておったわけでございます。ところが今回はむしろ逆に——かつては非常に高度成長の時代でございまして、剰余金が非常に多かったわけでございます。そういった時代におきましては、さような財源を機械的に入れてしまうということはかえって景気の刺激の原因になってしまうということがいわれておったわけでございます。今回の予算編成にあたりましては、逆に財源に対しますところの弾力性に対する要請と申しますか、そういうものが非常に強かったわけでございます。これをこのままにいたしておきますと、非常に財源の偏在が生ずるような事態に立ち至ったわけでございます。それで私らといたしましては、二分の一を五分の一にいたしたわけでございますけれども、二分の一を五分の一という根拠と申しますか、もちろん正確な数字的な根拠はないわけでございますが、一応戦前からの国債整理基金への繰り入れの額が、実額でございますが、実額が前年度の期首の国債総額に対して何%ぐらいを結果的に占めておったであろうかというような率をいろいろ調べてまいったわけでございます。そういたしますと、戦前、最高が昭和二年の二・九五%という数字に相なっておりますが、この昭和二年の二・九五%と申しますのは、ちょうど国債整理基金に繰り入れるべき資金といたしまして一万分の百十六というのが昔からあるわけでございます。それのほかに、一般会計の剰余金の四分の一をあわせて繰り入れろという制度を設定した最初の年でございます。そのときが二・九五%というパーセンテージになっておりまして、これが昭和元年以後の戦前におきまして最高を占めております。現在——現在と申しますか、戦後におきましては、剰余金の二分の一というようなのがしからば何%になったかという話になるわけでございます。これは非常に高度になっておりまして、あるいは六%あるいは八%というような数字になっておるわけでございます。今回二分の一をどの程度まで下げるかという判断の基礎といたしましては、それを一応の指標といたしまして、五分の一、六分の一ぐらいにいたしますと、実は二・八%ぐらいになるわけでございます。安全率を見込みまして五分の一といたしますと三・三%、戦前の二・九五%よりも高くなるわけでございまして、そういった意味で二分の一を五分の一ということにいたした次第でございます。  一方、ただいま理財局長から御説明申し上げたわけでございますが、この金を繰り入れられるところの国債整理基金のほうの収支の状況を見てまいりますと、四十年度並びに四十一年度はいろいろな条件を勘案いたしまして、最悪の条件を積み重ねてまいりましても償還には差しつかえない。四十一年度以降になりますといろいろとまた不確定要素が出てまいりますし、最悪の条件を積み重ねてまいりますと、その点を確実に、絶対だいじょうぶだと申し上げられる点がないわけでございます。とりあえず臨時の措置といたしまして、二カ年の臨時の措置をお願いいたした次第でございます。恒久制度につきましては、早急に政府といたしましても結論を得たいと考えておるわけでございまして、今回お願いいたしてございますところの財政法の一部改正法のもう一点の改正点として財政制度審議会の委員を動員をいたすということも、あわせてお願いいたしておるようなわけでございます。
  347. 有馬輝武

    ○有馬委員 そこで、いまの説明少し弱いのではないか。むしろ四十年度ごろが、一つの償還のピークになってくるのじゃないですか。その点どうなんです。
  348. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 償還計画のほうから申しますと、四十一年度は必ずしもピークではございません。先ほど申しましたように、四十年度は三百十九億円を予定いたしておりますが、四十一年度におきましても、それを若干上回る程度のものでございまして、むしろそれより先の年度へ参りましてから償還が相当ふえてまいるという実情でございます。
  349. 有馬輝武

    ○有馬委員 それではこれはまたそのときに論議することにいたしまして、最後に私はアジア開発銀行の問題について関連してお伺いしたいと思うのでありますが、四月にはニュージーランドでエカフェ総会にこの構想の大体の骨子が出されるというようなことも伝えられておりますし、それから佐藤総理もこれについて賛意を表しておるようなことが新聞その他で報道されておりますし、また政府の代表の方も数回にわたってこの問題についてはそれぞれの会議でタッチしておられるようでありますが、この点について日本の姿勢といいますか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  350. 柏木雄介

    ○柏木説明員 御承知のように、アジア開発銀行はエカフェにおきまして一昨年来研究されまして、昨年の秋ごろには専門家が集まりまして、具体的にいろいろの問題点を整理して、その報告ができたわけでございますが、それを今度のエカフェの総会、ちょうどただいまニュージーランドで開かれておりますエカフェの総会におきまして、今後エカフェとしてどういうふうに扱うか、いま総会において議題として取り上げられるところであります。見通しとしましては、アジア開発銀行はこれを何とか設立していこうということだろうと思います。ただ、この問題につきましては、アジア、エカフェ地域内の国だけの資力ではとてもまいりませんし、できるだけ域外の国の助けも借り、域外の資金を入れてエカフェ諸国の開発を促進しようというねらいでございますので、ことしの初夏から秋にかけてずっと域内及び域外の意見を固めて、できれば本年の末にはいよいよ設立の方向をはっきり打ち出したいということでございます。わが国といたましてもエカフェ地域とは非常に密接な関係がございまして、エカフェ諸国の発展成長には重大な関心がございます。積極的にこの問題について目下検討しておる段階でございまして、エカフェ総会におきまして何らかの報告が出ますれば、これについてさらに事務的にも詰めてまいりたいと考えております。
  351. 有馬輝武

    ○有馬委員 事務的に詰めていく前に問題点が二つあろうと思うのですよ。一つは出資の問題、これはいま域外からもというお話がございましたけれども、能力のあるものは日本なり豪州なりニュージーランドくらいしかない。そういうことといま一つの低開発国との、特に日本の国内の農業との関連がすぐ出てくるんじゃないか。それとまた低開発国のほうで、出資はしてもらいましょうが、しかし、指図は受けませんよというような空気が相当あるんじゃないか。そこで事務的に前向きで進めていくについても、こういった問題について基本的な姿勢というものがきまらなければ、せっかくの構想がなかなか実を結ばないのではないかと思うのでありますが、いまのこの二点について現在まで検討されてきた結果をお聞かせ願いたいと思います。
  352. 柏木雄介

    ○柏木説明員 いま御指摘のあったようないろいろの問題がございまして、そういう点がまさに昨年の専門家の会議で議論されたところでございます。要するに域内の国だけの金では資金が不足するし、たいしたことはできない。やはり何とかして域外の国の金を出資の形あるいは借り入れの形において調達するということが大きな眼目になっています。その場合に銀行の経営においてどういうふうな発言権を認めるか、つまり域外諸国に対してどういう発言権を認めるか。これはやはり大きな問題になってきます。それで専門家会議の一応の提案というか報告が内容といたしましては、資本金十億ドルといたしまして域内が六億、域外が四億、域内六億のうち日本の出資する分というのは、国民所得などからいろいろ基準をきめまして案分いたしますと、大体二割五分ないし三割につく。それで経営に対する発言権におきましてはやはり出資額にある程度比例した発言権を認めたい。先ほど申し上げましたように域外諸国からの出資における支援、あるいは開発銀行が債券を出すとか借り入れする場合の信用を保持する意味から経営においてある程度発言権を持たせなければならぬ。大体そういうような趣旨の報告が出ておりまして、それを今度の総会においてはかって、さらに五月か六月にかけて具体的に各国に折衝してみよう、そういう段階になっております。
  353. 有馬輝武

    ○有馬委員 第二点の日本の国内農業との関連等が出てくると思うのですが、その点について……。
  354. 柏木雄介

    ○柏木説明員 アジア開銀が具体的にどういう事業に金を貸すかという点につきましては、実は非常にラフな構想しか出ておりません。まあ学校、病院とかその他社会資本的な融資は考えておりませんが、また同時に貿易金融も考えておりませんが、結局投資的な、生産的な金融を考えております。その場合におっしゃるように農業投資というものがもちろん考えられるかと思いますが、それが日本の農業とどういうふうに結びつくかという問題は、これから開発銀行ができましてから具体的に運営する場合に検討しなければならない問題かと存じます。
  355. 有馬輝武

    ○有馬委員 私はできてからというんじゃなくて、第二世銀なり国際金融公社なりとはまた違った性格のものになるだろう、少なくともアフリカ開発銀行なり米州開発銀行、こういったものと——もちろん地域的なカラーはありますよ。あるけれども、性格的にはこういったものに近いものになるんじゃないかと思うのですが、そうなるといま私が指摘したような点がネックになるんじゃないか、こう思うのですが、その点どうですか。
  356. 柏木雄介

    ○柏木説明員 エカフェで考えております開発銀行が、ラテンアメリカ銀行のような形になるのか、あるいはアフリカの銀行のように非常にアフリカ中心の銀行になるのか、その辺はこれからの問題でございますが、日本の農業への影響という問題は、先ほど申し上げましたようにやはり今後具体的にどういうふうな部門に投資をしていくか、どういうふうな部門へ融資をしていくか、それが具体的な問題として日本の農業とどう結びつくかということでありまして、いまからその問題をあらかじめきめるということは困難ではないかというふうに考えております。
  357. 有馬輝武

    ○有馬委員 いずれこれがまた具体化しました際にお伺いすることにしまして、私のきょうの質問はこれで終わりたいと思います。      ————◇—————
  358. 吉田重延

    吉田委員長 委員派遣承認申請に関する件についておはかりいたします。  山陽特殊製鋼株式会社の倒産に関する金融問題等の実情を調査するため、議長に対し、委員派遣承認申請を行なうこととし、その手続等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  359. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次会は、明後十九日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時八分散会