○田中国務大臣 ただいま
議題となりました
所得税法案、
法人税法案及び
租税特別措置法の一部を改正する
法律案につきまして、
提案の
理由を御
説明申し上げます。
政府は、昭利四十年度
税制改正に関して、すでに物品
税法の一部を改正する
法律案等、物価税、相続税の減税をはかるための
法律案を
提出して御審議を願っている次第でありますが、今回の
税制改正の一環として
国民負担の現状に顧み、中小所得者を中心とする所得税の負担の軽減及び企業
課税の軽減を行なうとともに、
納税者の理解を容易にする見地から現行の所得
税法及び法人
税法の体系的な整備と平明化をはかるため、この両法について全面的な改正を行なうこととし、また、最近の経済情勢に応じ、当面要請される諸施策に対応する
税制上の特例
措置を講ずるため、ここに
所得税法案、
法人税法案及び
租税特別措置法の一部を改正する
法律案を
提出した次第であります。
まず、
所得税法案の
内容について、その大要を申し上げます。
第一は、中小所得者を中心とする所得税負担の軽減をはかることであります。
すなわち、基礎控除を現在の十二万円から十二万円に、配偶者控除を現在の十一万円から十二万円に引き上げることとするほか、扶養控除についても、十三歳以上の者の控除額を現在の五万円から六万円に、十三歳未満の者の控除額を現在の四万円から五万円に、控除対象配偶者がいない場合の第一人目の扶養親族の控除額を現在の七万円から八万円にそれぞれ引き上げることとしております。
また、最近における給与所得者の負担の現状に顧み、給与所得控除について、定額控除を現在の二万円から三万円に、控除率二〇%の適用範囲の限度を現在の四十万円から五十万円に、最高限度額を現在の十四万円から十五万円にそれぞれ引き上げることとしております。
さらに、最近における一船的給与水準の上昇等を考慮して、専従者控除について、青色
申告者の場合は、年齢二十歳以上の専従者の控除限度額を現在の十五万円から十八万円に、二十歳未満の専従者の控除限度額を現在の十二万円から十五万円に、白色
申告者の場合は、その専従者の控除額を現在の九万円から十二万円にそれぞれ引き上げることとしております。
以上申し述べました諸控除の引き上げにより、所得税が
課税されない所得の限度は、夫婦、子三人の計五人家族の標準世帯を例にとりますと、給与所得者では現在の約四十八万円から約五十六万円に、事業所得者のうち、青色
申告者については現在の約四十三万円から約五十万円に、白色
申告者については現在の約三十七万円から約四十二万円にそれぞれ引き上げられることになるのであります。
このほか、医療費控除について、現在十五万円とされている控除限度瀬を三十万円に引き上げることとし、また、少額貯蓄非
課税制度についても、非
課税元本の限度額を現在の五十万円から百万円に引き上げることとしております。
第二は、
納税者の理解を容易にする見地から、
規定の体系的な整備と表現の平明化を中心とする
税法の整備をはかるため、現行所得
税法の全面的な改正を行なうこととしたことであります。
今回の所得
税法の全面的な改正は、
税法の体系的な整備、表現の平明化及び
規定の整備
合理化の
三つを
基本方針としております。
まず、体系的な整備につきましては、租
税法律主義をたてまえとしつつ、同時に、一般の
納税者にわかりやすい法令体系にするため、現在、政令または省令で
規定されている事項で重要なものは
法律において
規定するとともに、細部はできる限り政令において
規定し、省令は原則として手続事項のみについて
規定することにしております。
また、
法律の構成については、総則的事項、居住者に関する事項、非居住者に関する事項等をそれぞれ別編とする等
規定の配列についても理解しやすいものにするよう配意しております。
次に、表現の平明化につきましては、条文の組み立て及び表現方法につき、各条文をできる限り簡潔平明な表現でまとめ上げることに留意し、これが複雑な
内容のものである場合には、項または号を設けて結論を読みやすくする等の配慮をしております。
さらに、
規定の整備
合理化がはかられたおもな事項について申し上げます。
まず、
課税標準及び税額の計算に関しましては、いわゆる子供銀行の預金の利子等を非
課税所得に加えるとともに、割賦販売等による所得の計上時期の特例及び返品調整引き当て金の
制度を新設する等の整備を行なうこととしております。
また、配偶者控除及び扶養控除については、従来の
確定申告書記載等の要件をはずすとともに、その他の所得控除及び税額控除についても
確定申告書への記載があれば、期限後
申告の場合でもこれを認めることとしております。
さらに、
申告、納付及び還付の手続に関しても、予定
納税制度を
合理化するとともに、予定
申告制度はこれを廃止することとするほか、資産の譲渡の対価が延べ払い条件付で支払われる場合には、五年以内の延納を認めることとする等の整備を行なうこととしております。
次に、
法人税法案の
内容について、その大要を申し上げます。
まず第一は、中小法人を中心とする法人税負担の軽減をはかることであります。すなわち、各事業年度の所得に対する留保分の法人税率を、普通法人にあっては、年三百万円以下の所得金額について現在の三三%から三一%に、年三百万円をこえる所得金額については現在の三八%から三七%に、公益法人、協同組合等にあっては、現在の二八%から二六%にそれぞれ引き下げることとするほか、同族会社の
課税留保所得を計算する場合の控除額を、現在の所得金額の二〇%と百万円とのうちいずれか大きい金額から、所得金額の二五%と百万円とのうちいずれか大きい金額に引き上げることとしております。
第二は所得
税法の場合と同様、
税法の体系的な整備、表現の平明化及び
規定の整備
合理化の
三つを
基本方針として、法人
税法の全面的な改正を行なうこととしたことであります。
まず、体系的な整備及び表現の平明化につきましては、前に申し述べました所得税の場合と同様の
方針により、できる限り、法人
税法の理解を容易にするよう配意しております。
次に、
規定の整備
合理化がはかられたおもな事項について申し上げます。
まず、
課税標準及び税額の計算に関しましては、法人
税法上の損益の計算の原則、割賦販売等の収益計上の時期、有価証券の譲渡原価の計算及び評価の方法並びに寄付金の意義等を明らかにするとともに、賞与引き当て金
制度及び返品調整引き当て金
制度等を新設する等所要の
規定の整備をはかることとしております。
次に
申告、納付及び還付の手続に関しましては、
納税者の便宜をはかる見地から、設立第一期の中間
申告を廃止し、さらに、中間納付額が二万五千円以下の場合には、中間
申告を要しないこととする等所要の
規定の整備をはかることとしております。
次に、
租税特別措置法の一部を改正する
法律案の
内容について、その大要を申し上げます。
第一は、利子所得及び配当所得の源泉徴収率の軽減
措置につき、現在の五%の税率を一〇%に引き上げてなお二年間存続することとする一方、資本市場の育成等に資するため、利子所得の分離
課税の特例の適用期限を二年間延長することとし、また、新たに、配当所得について次のような
措置を講ずることとしております。その一は、
昭和四十年一月一日から二年間に支払いを受ける株式配当金のうち一銘柄につき年五万円以下のものは、
確定申告を要しないこととすることであります。
その第二は、
昭和四十年五月一日から二年間に支払いを受ける株式配当金については、一銘柄の所有株式数が発行済み株式総数の五%以上の株式の配当と一銘柄につき年五十万円以上の配当とを除き、五%の税率による源泉選択
制度を創設することであります。
第二は、鉱産物資源の開発の促進等に資するため、鉱業を営む法人または個人について、
昭和四十年四月一日から三年間、特定鉱物の販売金額の一五%とその販売による所得金額の五〇%とのうち、いずれか少ない金額の損金算入を認める探鉱
準備金
制度を創設するとともに、法人については、その事業年度、また、個人については、その年の新鉱床探鉱費の支出額と探鉱
準備金取りくずし額とのうち、いずれか少ない金額の損金算入を認める探鉱費の特別控除
制度を創設する等の
措置を講じております。
第三は、国際競争力の強化等に資するため、技術等海外取引の特別控除
制度の適用対象に、新たに対外支払い手段を対価とする建設請負、修理加工及び映画上映権の譲渡等を加えることとし、その控除限度を建設請負及び修理加工については、その収入金額の三%と輸出所得金額の八〇%とのうちいずれか少ない金額とすることとしております。
第四は、中小企業の近代化等に資するため、中小企業近代化資金助成法の小売商業店舗共同化計画に基づく一定の共同店舗について初年度十分の一の特別償却
制度を創設することとしております。
第五は、法人の交際費の損金不算入
制度の改正であります。すなわち、最近における交際費の支出の状況に顧み、その損金不算入割合を現在の三〇%から五〇%に引き上げることとしております。
第六は、農業協同組合等の留保所得の一部非
課税措置の特例を生産事業を行なわない森林組合及び同連合会についても適用することとしております。
第七は、
山林所得に対する所得税の
課税について、
昭和四十年一月一日から三年間に
山林を伐採または譲渡した場合には、その年分の
山林所得の計算上、大蔵大臣が定めた金額の再植林費特別控除を行なうこととするほか、
山林所得の概算経費率の算定方式の
合理化をはかることとしております。
第八は、特定公共事業の用地買収等の場合の
課税の特例について、その適用対象を、買い取り等の申し出のあった日から一年以内の期間に譲渡した資産に限っておりましたが、この期間を一年から六月に短縮した上、その適用期限をなお二年間延長することとしております。
第九は、外貨債の円滑な発行及び消化に資するため、
昭和四十二年三月三十一日までに発行された民間外貨債の利子に対する所得税の税率を一〇%に軽減することとし、また、
昭和四十二年三月三十一日までに発行された償還期限五年以上の利付外貨債の償還差益を非
課税とすることといております。
第十は、特定の医療法人に対する法人税率の軽減の特例について、その軽減税率を法人税率の引き下げにならない現在の二八%から二六%に引き下げることとしております。
第十一は、ブドウ糖の消費促進をはかるため、一定の規格のブドウ糖混和砂糖については、砂糖消費税の税率を一キログラム当り現在の十六円から十一円に軽減することとしております。
第十二は、登録税の
課税の特例でありますが、
昭和四十年四月一日から三年間に中小企業近代化資金助成法の工場等集団計画などを行なう事業協同組合が取得した土地をその組合員等が取得する場合の所有権取得
登記の登録税について、その税率を現在の千分の五十から千分の六に軽減することとするほか、遠洋区域に出漁する漁船の所有権の保存
登記等の登録税について、外航船舶に準じて軽減することとしております。
第十三は、
昭和二十九年度末に期限の到来する特別
措置のうち、事業用資産の買いかえの場合の
課税の特例
措置、農業生産法人に現物出資した場合の納期限の延長の特例
措置、鉱業用坑道及び造林費の特別償却の特例
措置並びに特殊の外貨借入金の利子の税率の軽減
措置等についてなお二年間その適用期限を延長することといたしております。
以上、三
法律案の
提案の
理由及びその大要を申し述べました。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成くださいますよう
お願い申し上げます。