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1965-02-18 第48回国会 衆議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月十八日(木曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       奥野 誠亮君    鴨田 宗一君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    齋藤 邦吉君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    地崎宇三郎君       西岡 武夫君    福田 繁芳君       毛利 松平君    渡辺 栄一君       渡辺美智雄君    佐藤觀次郎君       只松 祐治君    野口 忠夫君       平岡忠次郎君    平林  剛君       藤田 高敏君    横山 利秋君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         内閣法制局参事         官         (第一部長)  関  道雄君         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (大蔵官房日本         専売公社監理         官)      半田  剛君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君  委員外出席者         大蔵事務官         (大蔵官房財務         調査官)    中嶋 晴雄君         大蔵事務官         (国有財産局国         有財産第二課         長)      村田  博君         大蔵事務官         (国税庁調査査         察部長)    志場喜徳郎君         日本専売公社総         裁       阪田 泰二君         専  門  員 抜井 光三君     ───────────── 二月十八日  委員松祐治辞任につき、その補欠として阪  上安太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員阪上安太郎辞任につき、その補欠として  只松祐治君が議長指名委員に選任された。     ───────────── 二月十七日  昭和四十年度における旧令による共済組合等か  らの年金受給者のための特別措置法等規定に  よる年金の額の改定に関する法律案内閣提出  第七九号)  酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第八〇号) 同月十八日  物品税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五六号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五八号)  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第七三号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  製造たばこの定価の決定又は改定に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第四号)  税制に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件  外国為替に関する件      ────◇─────
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  税制金融証券取引及び外国為替に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。平林剛君。
  3. 平林剛

    平林委員 きょう、私は、生命保険関係資金運用の問題を中心にいたしまして、生保資金政府行政指導、また生命保険料の問題などにつきまして、大蔵大臣の御見解をただしてまいりたいと思うのであります。時間があれば、一、二他の問題についても触れたいと思いますけれども、まず初めこの問題について政府見解をお伺いいたします。  そこで、まず生命保険業全般概要について、これは大臣でなくてもようございますが、たとえば生命保険会社契約高であるとか保有契約、特に総資金情勢につきまして御説明を願いたいと思うのであります。
  4. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 お答え申し上げます、  生命保険事業は、昭和三十年前後からわが国の通貨価値が安定するに伴いまして、非常に順調に伸びてまいりました。この十年前後、非常に順調な伸びを示しております。ただいま昭和三十九年度が終わろうとしているところでございますが、確実な資料といたしまして、昭和三十八年度の決算数字を申し上げてみたいと思います。  保有契約高で申しますと、十四兆四千四百十九億円ございます。総資産は一兆四千七百三十四億円という数字になっておりまして、最近昭和三十九年度に入りましてからも、ほぼ順調な伸びを示しておりますので、この数字はさらに一割以上の伸びを示しておる、かように考えております。ただし、戦前に比べますと、まだやはり終戦前後のインフレ期の打撃が非常に残っておりまして、戦前にまだ及ばない点がございます。たとえば全金融機関の中に占めます生命保険資金のシェアでありますとか、あるいは一件当たりの平均保険金額でありますとか、そういうものはまだ戦前に及んでおりません。
  5. 平林剛

    平林委員 生命保険業界約二十社ですか、全般保有契約高が、いま説明ございましたように、十四兆四千四百十九億、総資産においても一兆四千七百三十四億円、しかしこれは昭和三十八年度の数字でございまして、そろそろ三十九年度決算が近くなっておるということになりますと、いま御説明のように、たぶん最近の情報によりますと、保有契約高は十七兆円に達するのでないかと言われておるのでございます。また総資産においても一兆七千億円あるいはそれをこえるかもしれない。つまり、前年度に比較をいたしますと、まず三千億円あるいは三千五百億円くらいの増が見込まれておる。景気調整下におきまして、他の金融機関の総資金伸び悩みに比べますと、生命保険業界における総資金の増というものは比較的に著しい増加が見られる。これは私は最近の生命保険業界における全般概要だと思うのであります。  そこでもう一つ大臣に対する質問に入る前に、しからばその生命保険関係資金、いわゆる生保資金運用状況はどういうふうになっておるか、できれば最近の状況について御説明をいただきたいのでございます。
  6. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 概略を申し上げます。三十九年三月末で申し上げますと、一兆四千七百三十四億円の資金のうちで、貸し付け金に回しておりますのが一番多いわけでございまして、九千百二十六億円が貸し付け金に回っております。ウエートで申しますと六一・九%に及んでおるわけであります。この中には、御案内のように契約者に貸しておる資金もございまして、財務貸し付けだけを取り出しますと、七千九百六十六億円になりまして、ウエートが五四・一%に相なるわけでございます。そのほか、有価証券保有でございますとか、あるいはコールローン、預貯金、不動産等もあるわけでございますが、これらはウェートから申しますと貸し付けには及ばない、かような形になっております。この貸し付け金の中には財政投融資に対しますつき合いといたしましての住宅公団融資が含まれております。
  7. 平林剛

    平林委員 大臣もお聞きになったとおりでございまして、私これから本論に入りたいと思うのであります。ただ、いまの説明だけでは十分じゃありませんで、私から少し解説して申し上げておきたいと思うのであります。  一兆四千七百三十四億円の中で、いまお話しになりました貸し付け金が一番大きい割合で六一・九%を占め、金額として九千百二十六億円、また有価証券に対しましては現在三千五百五億円、株式が三千百七十九億円、計算してみますと大体二一%か二%くらいに当たるのではないかと思われるのであります。そのほか、不動産営繕勘定に千六百八億円、現金や預金が百六十九億円、−コルローンに百五十七億円、その他とございまして、現在の運用状況は、貸し付け金相当する分野がきわめて多い。それから次いで有価証券保有株式に対する投資という面が次いでおるという状況が、現在の政保資金運用状況になっておると思うのでございます。そこで、この生命保険業に集まった資金というものは、私は全体の金融資金から見ると、大したウエートではないかもしれませんけれども、国民経済に与える影響から考えると、きわめて慎重に取り扱うべきお金である、しかも、保険契約する人にとりましては、不慮の災害に対する準備金というべき大事な金でございますから、この扱いは相当慎重にやってもらいたいという考えが強いのでございます。  そこで、こういう生保資金に対しまして、政府としても、従来いろいろ行政指導をなさっておられたと思うのでございますけれども、最近の経済情勢、つまり特に金融機関資金量状況であるとか、あるいは先般来、この委員会議論をしてまいりました証券市場との関係などにつきまして、政府として特に、大蔵大臣といたしまして、この資金に対して、特に何か重点的な指導をなさっておられるのですか。または、こうした生保資金に対する運用の指針といいますか、考えというものが、現在どういう方向を向いておられるか、その点をひとつきょうは聞かしてもらいたいと思う次第であります。
  8. 田中角榮

    田中国務大臣 生保資金がいまどういうふうに運用せられておるかということをこちらから申し上げましたし、あなたも御発言になりましたが、大体いまの運用でいいという考え方でありますが、私が大蔵省に参りましてから、もう少し国民すべての利益になるような面がないかということに対して、検討をするようにということを指示しております。  いまの状態からいいますと、諸外国でもやっておりますように、住宅資金としてもっと効率的な運用考えたらどうかという考えであります。いままでは住宅公団資金を供給しておりましたが、私は必ずしも住宅公団資金を入れるということだけが、住宅対策としての協力だという考えではないというふうに思っております。イタリアとか、西ドイツとか、御承知先進諸国では、生保や損保の資金民間住宅長期、良質な住宅投資ということになっております。こういうことに対しては、国有地の払い下げの問題とか、地方税の中で、相当長期にわたって固定資産税の減免を行なったり、国税といたしましても、不動産取得税の免除とか、相当広範な立場保険資金効率活用ということは考えておりますので、私のほうで強く指示をする段階ではございませんが、生保としても、将来のことを考えながら、新しい投資面ということに対しても検討してもらいたいということで、このごろは子会社をつくって、住宅をつくったり、いろいろな投資考えておるようであります。  いままで保険会社契約者貸し付けだけではなく、各銀行と協調融資をして、産業資金も提供しておりますが、こういうことが悪いというのではありません。しかし、保険資金というものは、目標を持って投下をするということが、より政策的にも効果が多いのではないかということを考え、いま鋭意検討しておる次第であります。
  9. 平林剛

    平林委員 大蔵大臣としていろいろ新しい投資面の開拓をあげられたのは、住宅関係だけでございます。これはまたあとでお尋ねしてまいりたいと思います。  先ほど私があげました生保資金運用の中で、株式分野が三千百七十九億円、これは三十八年度はおおよそ二二%くらいでございます。ところが昨年あたりから株価低迷に基づきまして、共同証券の問題が起きてまいりましたし、それに対する相当のてこ入れが行なわれまして、いろいろ議論がございましたけれども、保険業界においても、私、資料検討してみますと、株の分野については相当投資をしておられる。特に株価低迷があった時代におきまして、昨年共同証券が発足以来、株を買うという面におきましては、共同証券と同じ程度の額が買われておるわけでございます。比較的目にうつらないようでありますけれども、はなばなしい共同証券の買い出動の陰で、一方においては生保業界においてもかなりの株を買っておる。こういうようなことに対して政府は何か御指導なさったのであるかどうかという点を、私はきょう聞きたかったわけなんです。こうした面についてはどういう行政指導をおやりになったんだろうかという点を、ひとつ大臣のお考えをお聞きしたい。
  10. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知生命保険会社資産運用というものにつきましては、保険業法施行規則によってその運用対象割合をきめておるわけでございます。そうすることが契約者のために安全かつ有利だという考え方に立っておるわけであります。  株式投資ないし政府保証債引き受けとか、いろいろ債券の引き受けということで、利回り考えながらやっておりますが、いままでは生命保険会社株式投資をしたことは非常に利益があったわけであります。含み資産が非常に大きかったのであります。株式市場低迷ということで、いままでのように大きな含み利益を持つことはできなくなったわけでありますしかし、日本現状における機関投資家としては一つの大きな機関でありますから、生命保険が重点的に株式の銘柄を選びながら投資をするということは安全な投資であることは事実であります。しかも、機関投資家としても、比較的に資金が毎年ふえておりますので、絶えず換金をしなければならないという投資ではないわけであります。相当長い期間保持できる機関でありますので、長い期間で平均してみますと株式投資ということが契約者の不利益をもたらすということはないわけであります。いずれにしても、日本産業を長い目で見れば、非常にたくましい成長をいたしておりますので、保険業界投資というものも安全かつ有利な投資であるというふうに認めておるわけであります。  今度の株式市況の不振の状態等に際しましては、きめられた範囲内ではあるが、余剰資金をもって株式の買い出動といいますか、買い手に回ってもらいたいというようなことを私から保険業者に申し入れたことはございます。正式に申し入れたかどうか、いまさだかに記憶しておりませんが、絶えず連絡がありますので、こういうときに、日銀さえも金を出すという時代であるので、売らないように、資金があれば買うように、こういう要請を非公式ではありますが、やったことは承知しております。
  11. 平林剛

    平林委員 その場合株式保有については、私もはっきりした根拠法規は調べてこなかったのでありますけれども、たしか三割以上はそれに回してはいかぬとか、歴年調べていくと一時は三割以上の時代もあったようでありますけれども、三割以上投資してはいかぬとかあるいは同じ会社のものはあれしていけないとか、いろいろなこまかい規定があったようでありますけれども、最近の株の低迷ということが政府にとってもまた一般産業にとっても非常に深刻な事態にございますだけに、こうした規定を越えても株式保有するということについて政府指導なさっておるのでしょうか。やはりそういう限界は心得て協力要請するという態度でございましょうか。その点をちょっときょうは聞いておきたいと思います。
  12. 田中角榮

    田中国務大臣 大体割合は守っておるということであります。守っておりますが、私が買い出動のような要請をしましたときも、先方側で、大蔵省事務当局から押えられておりますので、押えられた範囲内で協力いたします、こう言っておりますから、現在まではそれを越えて買えというようなことは言っておりません。しかし、私はいままでの比率というものが固定的なものであって絶対に動かしてならないというものではないということで、保険担当官にもこういうものは時代要請に即して比率等も弾力的に運用すべきだ、こういう意思表示をしておりますが、いままで特別にその制限を越えて大幅に買い出動したという事実はないようであります。
  13. 平林剛

    平林委員 共同証券で株の買い出動をさせるというよりは、むしろこうした生命保険資金というもので株を買っていったほうが株界に対する影響というものはぐっと比率が違うし、また株の上がり下がりに対する考え方も違うわけでありまして、そういう面では、限度については私まだ議論はありますけれども、むしろそういう方面指導のほうが適当でないかと考えておるわけでございます。  次に生保資金運用を見ますと、先ほど指摘しましたように貸し付け金の占める割合が非常に多いのでありまして、それでこの貸し付け金をどういうところにやっておるかというのを調べてみますと、現在まで電力鉄鋼海運合成化学方面が多いようでございます。そこで私は、先ほど大臣もお述べになりましたように、この貸し付け金分野の中で新しい部面を開拓させていくということが必要でないかとかねがね考えておったわけであります。つまりこうしたお金がもう少し公共的なものに——まあ電力鉄鋼海運合成化学が公共的なものでないとは言いませんけれども、やはり時の情勢に応じて、国民経済的な方向にもっと直接響くような方面活用するというほうを考えるべきでないか。そういう意味では、先ほどお述べになりました住宅関係に対する運用をはかるということは、私はきわめて奨励すべき方向だと考えておるわけです。そういう意味でこの方面に対する積極的指導を行なってもらいたいという希望を持っておるのでありますが、現状はどうなんでしょうか。さっきおあげになりましたけれども、住宅資金あるいはそうした社会福祉関係に対するかまえ、現状は一体どういうふうになっておるか、その点をひとつお話しいただきたいと思います。
  14. 田中角榮

    田中国務大臣 中小企業向け等に貸し出している件数件数の約二〇%、金額にして約八%弱でございます。その他商中とか政府保証債金融債、こういうものの消化に協力をいたしておるわけであります。いままで生命保険会社等不動産投資が非常に多いのではないか、そういう意味で地価のつり上げ等にも一役を買っているのではないかというような懸念がありましたが、御承知のとおり一兆四千七百三十四億のうち千六百億しか持っておらないということで、いまの状態から考えると大体資金運用というものはまあまあ適正な状態だと思います。しかし先ほど申し上げたとおり時代の要求によってまだまだ新しい分野、すなわち住宅投資とかそういうものが要請される分野がありますので、現在は子会社をつくってそれに住宅投資をさせたりまた土地や何かの分譲をやったり、大体年間二千戸ぐらいのものはいままで生命保険住宅としてつくられて分譲したり貸したりしております。しかしこんなことでは困る、こんなことではまだ合理的でないというので、今度生命保険二十社共同専門的住宅会社をつくろう、私設住宅公団、こう称しておりますが、社会性の非常に強い、都市都市改造にも一翼をになうというような立場で、もっと大規模な住宅投資を行なおうというような企画をいま進めておるようであります。
  15. 平林剛

    平林委員 まだ私は具体的に頭の中に入りませんけれども、こまかい問題でありますからいずれ資料でもって頭へ入れていきたいと思うのであります。  私が質問しない前に中小企業の問題についてお触れになってしまったからあれでありますけれども、これも私は調べてみたらもう少し力を入れてもらってもいい分野でないかという感じがするのであります。いま金額において八%というお話でしたけれども、私が調べてみたところでは中小企業向け金融対策についてはまだ少し力の入れ方が足りないのではないかというような気がするのでありますけれども、どうでしょうか、この面についてもう少し行政指導を強化いたしまして、それはもちろん生保資金でございますからこればかりに力を入れるというわけにはいかないでしょうけれども、中小企業対策を充実するという意味で積極的な御指導をなさる意思がございませんか。
  16. 田中角榮

    田中国務大臣 中小企業に対する貸し付け金額にして六百八十一億ということでございますから大きくないということは言えると思います。しかし先ほども申し上げましたように商工中金債とか政保債とか、大きくそういう面の分野を受け持っておりますので、そういうものが中小企業に流れていくということから見ますと、いまこの比率をどの程度変えなければならぬかというような問題は、こまかく検討をしてみてこの分野をふやすべきであるということになり、しかも適切な貸し付けの先があるということであればそういう問題は新しい立場検討をしてもいい、こういう状態だと思います。
  17. 平林剛

    平林委員 昨年でしたか、生命保険関係の法案がこの委員会で審議されたときも各委員から希望があったわけでございます。たとえば病院施設だとかあるいは保養所であるとか医学の研究であるとか、そうした社会福祉的な方面にもう少しお金を使うてもらうことがいいんではないか、生命保険関係の膨大な資金というものは、政府行政指導する場合に単なる金融機関的な役割りを果たさせるのではなくて、その集まった資金の性格から考えてそうした方面活用させるということも十分考えていいことではないかという指摘とともに、具体的な提案があったわけでございます。しかしこれらの関係状況を私調べてみますと、社会福祉基金として昭和三十八年度に全生命保険関係が使うたのは六億三千百万円程度でございまして、どうもそうした希望に即するには顕微鏡的存在である。だからそういう意味ではもう少し政府においても私どものこういう希望について指導なさってもらえないものか。そのためにはたとえば生命保険業界にいたしましてもいろいろ運営のための利回りとかあるいはそれの平均利率というものもございましょう。現在は八%とか八・五%とかあるが、そうした問題についても再検討を加えても、これはまあそういうことについて傾向を深めるというならばやむを得ないこともございます。そういう点についても政府は何かお考えになったことはございませんか。
  18. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 ただいまお尋ねの点でございますが、先ほどから大臣から申し上げておりますように生保資産運用につきまして貸し付けに重点を置くかあるいは新しい分野といたしまして不動産投資、特に住宅投資に力を入れるあるいは株式投資に力を入れていく、この辺は非常に問題のあるところでありまして新しい分野を開拓していかなければならぬと思っております。そういう指導をしております。それから第二点の剰余金の処分といたしまして、そういう社会福祉的なものに金があまり流れておらぬじゃないか、六億くらいしか流れておらぬじゃないかというお話でございます。実は生命保険会社は一定の料率を収入としてとりまして、保険金経費を払いまして残り剰余金として計上いたしますが、その九割以上を契約者に配当することになっております。現実には九割五、六分程度のものを契約者に還元しているわけでございます。残りの四、五%のものは、これは公共的に運用するように指導もいたしておりますし、事実そのように運用いたしております。例を一つ申し上げてみますと、一般契約者福祉増進基金といたしまして一億四千万円、社会福祉助成基金といたしまして、これはおそらく御質問の点だと思いますが、六億二千八百万円、それからこれは従業員福利厚生基金でございますが、一億四千二百万円、その他相当資金を公共的に使っております。これは病院とかあるいは成年病研究所と申しますかそういうものとか、そのほうに使われておるわけでございます。
  19. 平林剛

    平林委員 いまおあげになった数字は、私に言わせると全般生命保険業界収支から考えますと、ほんとうに微々たる数字なんです。私はもう少しこの点を大蔵大臣が着目されて、社会福祉関係活用ということを考えてもいいのじゃないかということをきょうは指摘をしたいわけなんであります。そこでさらに私申し上げますと、なぜこういうことを言うか、という根拠でございます。大体生命保険関係昭和三十八年度における収支をちょっと申し上げますと、三十八年度に保険料収入として四千八百八十五億円ほどあるわけです。そのほか当然株式保有とか債券を持っておりますけれども、そういう利息だとか配当金の収入が千八十五億円くらいある。そしていろいろな財産の処分をしたとか評価益とかいうことで合計六千百三十三億円が収入として入るわけです。収入として計算をされる。ところが支出の分野におきますと、実際に払う保険金というのは六百六十九億円、保険料の収入は四千八百八十五億円で保険金として支払うのは六百六十九億円、一五%にも満たない。もちろんいまお話がございましたように契約者の配当金というのがございますけれども、これも三十八年度は約五百八億円程度でございまして、事業費だとか契約者準備金の増加だとかいろいろなものを入れましても総計五千四百十七億円、差し引きずると三十八年度に約七百十五億円程度のいわゆる純利益金というものが出てきているわけです。私は三十七年度についても調べてみたのでありますけれども、三十七年度にもただいま同様の計算をいたしまして約五百七十八億円、三十六年度においても四百六十四億円という純利益金が上がってきておるわけであります。  私はそういうところから考えますと、これは保険料を下げるか、配当金をふやすか、あるいは時代要請にこたえて社会福祉関係についてもう少しウエートを広げていくかという点をやはり業界自体としても考えていくべきでないかということを考えるのであります。当面昨年来議論になっておりましたこうした面につきましてもう少し考慮を払うべきだ、もう払わないというなら、私あらためて生命保険料なりの分野について問題を提起していかなければならぬと考えておるわけでございまして、この意味大蔵大臣にもぜひひとつ頭に入れて御指導願いたいと考えております。いかがでございましょう。
  20. 田中角榮

    田中国務大臣 私もこの生命保険剰余金の問題その他に対しては、投資の問題に対して検討をいたしております。まあひとつこれは間違って報道されると困りますから非常に慎重でございますが、保険者に対して配当するということも、私たちも配当を受けておると思いますが、これは非常に数が多いので、返すものは非常に少ない金額であります。しかしこれをまとめると六百億とか八百億とか千億に近くなるわけであります。これを配当をだんだんと多くしていって、二十五年満期のものでも二十年かければあと五年かけなくてもいいのだ、こういう制度上のものは当然必要でありますが、いまの考えでは配当金というものが、非常に小さいもの、一人当たり、一件当たりは小さいものでありますが、相当金額でございます。これをもっと長期的に国家全体として考える場合、もう少し合理的な投資ができないかという問題を検討いたしまして、先ほども申し上げましたとおり西ドイツとかイタリアとか、こういうところは相当大量に及ぶ資金長期投資に振り向けさせておるわけであります。ですから労働者住宅のような非常にりっぱなものが三年か五年でほとんど完備する。また新しい道路ができた場合に、その両側にできる十階以上というような画期的な建物はほとんど保険会社の手によってなる。そういう都市改良そのものができる。これを一般会計、地方財政の中でいろいろなことを言っておっても、長い時間かかってなかなか合理的なことができない。そういう意味保険剰余金の問題とか投資とか配当とかこういう問題に対してもっと抜本的に検討していくべきではないかということも保険担当官に指示をいたしております。率直に申し上げるときょうの御発言など非常に前向きな御発言でありまして、普通ですとやはり大衆に返せという議論のほうが先行いたしまして、重点投資長期投資、それそのものが保険制度を大きくすることだということよりも、具体的問題が先行しますので、どうしても今日の段階になっておるわけでありますが、私はここで世界的な状態から見て、保険状態そのものが数字の上では戦前をはるかにこしておる、契約高においては二倍以上になっておるというけれども、国民所得からの比率考えればまだまだ戦前に及ばないというような面がありますから、そういう理想的な姿になるまでは保険料の問題その他いろいろな問題がありますが、やはり長期的な問題としてこういう問題と取り組んでいくべきだという姿勢でおるわけであります。
  21. 平林剛

    平林委員 私が所属しておる党においても、やはり生命保険資金についてはもう少し公的な指導といいますかそれを強化していく、さしあたりはそういう方針をとっておるのですよ。ですからきょう私がいまあげました点は全部ではございません。全部ではなくて、まだこのほかたとえば住宅関係投資、現在の不動産の入手などについてのやり方についても議論はあるのですけれども、全部を申し上げておる時間がございません。ただ、いまあげましたいろいろな分野について、現段階においてどういうふうに有効に活用していくべきかという点についてはいろいろな角度から議論があるのであります。ですから、私は、この問題についてはむしろ政府行政指導という公的な面をもっと強めてもいい——ただしそれは正しく運用されていかなければならぬわけでありますが、そうした公的な運営というのを何か強化することも考えていいんじゃないかと考えておるんです。先ほどから大蔵大臣、私の質問に答えて、いろいろ、大体そういうふうにやっているようでございますとか、こうでございますとかというお話でございますが、これをもう少し話し合って、そして国民的な見地から有効な分野について活用するということを考えていいんじゃないかと思うのですけれども、その点はどうですか。
  22. 田中角榮

    田中国務大臣 私もそう考えております。ただ、ここでもって申し上げておきたいことは、すべての運用金や投資に対しまして、いろいろに細分化しまして、あれにもこれにもということで効率投資にならないという面があります。まあこれは一つ保険の問題だけではありませんが、どうもすべてのものにすべてのものが関与している。私は、そういう意味よりももっと対象をしぼって、あなたがいま言うように病院関係だったら病院関係、また住宅だったら住宅——この保険剰余金とか保険投資というもので、投資メリットというものが非常にはっきりしておる、この制度そのものから生まれる利益というものが評価される、こういうことでなければならないんじゃないか。いままで戦後二十年間、どこもここも足らない足らないというところから、すべてのものに対して中小企業、すべのものに社会保障、すべてのものに教育投資という面が強調された。これはもう当然であります。しかし私はやはり新しい時代を迎えて、いままでのものをひとつ振り返ってみて、もっとまとめて投資をする、投資効率というものを高める、それがこの保険制度そのものにも直結する、こういう施策の方向に進むべきではないかということで、私も二年半来そういう議論をしておるわけでありますが、いままで長い歴史がございますので、そう、ある一部を切って他にまとめるということもできなくて今日に至っておりますが、私はやはりある時期に、慎重に検討すべきではありますが、やはり勇気を持って結論を求めて具体的な施策を進めていくべきだという考えであります。
  23. 平林剛

    平林委員 大体のお考え、わかりましたが、私、保険料の問題についても議論がないわけじゃないです。たとえば、先ほど指摘をいたしましたように、生命保険業界は現在非常な純利益をあげています。もちろんこれはこまかくいえばいろいろ議論するところはあるでしょうけれども、表にあらわれた純利益だけで昭和三十八年度七百十五億、三十七年度でも五百七十八億、三十六年度でも四百六十四億、大体において相当の利潤をあげておることは間違いございません。しかるに、社会福祉関係におけるいろいろな協力度合いというのは非常に少ない、またその行政指導の面においても、いい意味行政指導の面について私はもう少し強めていいのではないかという見解を持っておるのでありますが、一面保険料についても一言あるわけであります。なぜかというと、これは最近、昭和三十八年ですか、戦後第四回目の生命保険料の引き下げが行なわれたのは。たしかそういうふうに記憶しておるのですが、それから見ますと、ことしは昭和四十年でございますから、いま取り上げるのは時期のタイミングとして少し早いような感じはしますけれども、私は決して早いとは思わないのです。というのは、現在採用しておる生命保険会社の重要な算定基礎としておる予想死亡率ですか、これは厚生省か何かで発表する生命表というのを使っておるのでありまして、私も調べてみたところが、現在は第十回生命表だというお話でございます。この第十回生命表は、大体男が平均寿命として六十三・六歳で、女性が六十七・七歳だ。まあ薬もよくなったし、大体健康に留意をするような国民気風が出てまいりまして、そういう意味では最近のような傾向から男女とも長生の傾向があらわれてきたことは喜ばしいことでありますけれども、しかしこの第十回生命表も、大体昭和三十年程度の国勢調査の人口動態に基づいた表なんじゃないですか。もちろん発表の時期は、厚生省から昭和三十五年に発表されていますけれども、その基礎はたしか昭和三十年だというように記憶しているんです。そうすれば、もう十年たっておるわけですね。第十回の生命表を採用するまでの間には相当長い期間がたっているわけでございまして、現在はどうかといいますと、いわゆる死亡率の状況と実態というものとは即さない。即さないから、生命保険料の算定というものについてはずいぶん幅が出てくるから、相当な利潤が出てくるという勘定になるのではないですか。私はそれを考えますと、こうした面についてどういう御見解を持っているか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  24. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 たいへん問題が技術的でございますので、私からお答え申し上げます。  先ほどからお話しの、生命保険会社剰余金が非常に多い、三十八年度で申しましても七百十五億円出ているわけであります。しかしこれはその九割六分程度契約者配当に還元しているわけでございまして、残りも公共的にほとんど運用しているわけでありますから、株式会社の場合と違いまして、株主配当として社外に流出するような形にはなっていないということが言えようかと思います。  それから保険料の問題でございますが、これは御案内のように、昨年実は七%程度の引き下げをいたしました。したがいまして、ことしは契約者に対する一つの安定的なムードと申しますか、そういうものがございますので、ことしこれを引き下げるということはちょっと無理ではないかと私どもは考えているわけでございます。しかしながら、仰せのように死亡率も第十回生命表を使っておりまして、これはお話のように昭和三十年の死亡率をもとにした厚生省の第十回生命表でございます。したがいまして、その後の死亡率の低下を見込みますと、死差益が出てまいります。この死差益も契約者配当として剰余金に出てまいるわけでございますから、これもいわゆる社外流出と申しますか、そういう形にはなっていないので、契約者に還元されている。したがいまして、料率を下げるかあるいは剰余金をふやしてそのほとんどを配当として契約者に配るかどちらかという問題になろうかと思います。しかしながら、剰余金のこまかい金をどんどん配るのが資金の効率としていいのかどうか、もう少しまとめて使う方法はないのかという点につきましては、先ほど大臣お話しになりましたので、そういう点の問題もあるということをつけ加えて申し上げておきたいと思います。
  25. 平林剛

    平林委員 これは私は技術的ではなくて政治的な問題だと思っております、ほんとう言うと。私は技術の面を言っているのではないのですよ。これは大臣だって見当がつかれるでしょう。三十年に国勢調査をやったものが発表になったのが三十五年で、五年後でございます。政府関係保険では直ちに採用している。しかし生命保険関係はそれから二年か三年ぐらいおくれて採用する、こういうぐあいに動きがにぶいのですよ。ですから、そういう三十年当時調査された基礎が現在でも使われているというぐあいに幅十年もあるぐらいですから、せめてこうした国勢調査による人口動態の発表やあるいは新しい生命表と申しますか、そういうものをもうそろそろ考えていいし、それが発表されたら直ちに実行できるような態勢はとってもらいたい、とるべきがほんとうではないですかということをこの機会に申し上げておいた。特にいまお話がありました利益金七百十五億円、それがほとんど契約者の配当金のほうに回されておるというお話しですけれども、私の承知しているのでは準備金として用意されているのであって、実際の配当に回しているわけじゃないと思うのです。準備金として積み上げているのですから、だからいまあなたの言い方は七百十何億あるのだ、しかしそれは契約者の配当金に回っているのだというけれども、それは準備金として用意しているのでしょう。ですからそういう言い方はちょっと間違いを起こすのではないかと思うのです。どうですか。
  26. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 契約者配当の問題は仰せのようにまことに実は問題のある点でございまして申し上げましたのは、剰余金が出た中で九割六分程度契約者配当準備金勘定に繰り入れるということを私は申し上げたわけであります。その勘定の中から現実にその年に幾ら払われるかという点を先ほど仰せになったものだと思います。したがいましてその差額は実はその勘定の中にたまりになっております。これは平均して申しますと半年くらいでズレて出て現実に契約者に還元されておりますから、その差と申しますのは一時のたまりである、かように私どもは考えておるわけでございます。
  27. 平林剛

    平林委員 私大体この辺で終えますけれども、一つだけちょっと別の問題をお尋ねしておきたいと思います。  これは私まだ十分検討しませんでいきなり大臣にお尋ねするのはどうかと思いますけれども、最近の国際的な金融界において、フランスのドゴール大統領が金の買い付けをやりまして、いまアメリカとの間にドルの信用問題にからんでいろいろ世界的なショックを与えておる状態でございます。これは私は日本のこれからの経済におきましても、ドルに依存しておるだけにかなり重要な動きでないかと考えておるわけでございまして、この手持ちドルの交換要求に踏み切ったフランスの事情はいろいろございましょうけれども、これはまあ別といたしまして、私が直接心配するのは一体日本にはどういう影響を与えるだろうかという点なんでございます。大蔵大臣としてはこれについてどういうお考えを持っておりますか。
  28. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり国際流動性問題につきましてもフランス及びアメリカは対立した意見を持っておるわけであります。しかし去る東京総会におきまして流動性問題につきましては一応議論としては残りましたが、具体的問題としてはIMFの総会でもってきまりがついたわけでございます。その後も新しい国際通貨問題等とともに金本位制に返るべきだという議論をフランスを中心にした西欧二、三カ国がやっておるわけであります。しかし戦後新しいIMFとかこういう国際機関もできておりますし、お互いが協調、相互の協力によって国際的なお互いの国の国際収支の問題を片づけよう、こういう方向に進んでおりますので、私はいまフランスが言うように、一方においてドル防衛の問題、ポンド防衛の問題が起っておりますときに、さなきだにというときに、金本位制をぶちながら金にかえるということは適当なことではない。フランスは三億五千万ドルばかり手持ち外貨をかえようという意向のようでございますし、そのうち一億ドルかえたということも発表しておるようでございますが、日本は外貨準備の中で三億ドルくらいの金しか保有しておりませんが、いまの状態において日本が金を買わないでいいというわけではありません。しかし混乱をせしめてまで金を買うというときではないのではなかろうか。正常な状態において金が買えるなら買おうという考えでございますが、急にひとつ売り出したら買おうというような状態ではないという考えでございます。ちょうど国内においては歩積み、両建ての問題がいろいろ問題になっておりますが、日米間等においてもまた日英間においても、世界の市場において日本が預金をしながら、それに見合う以上のものもまた必要があれば借りるということで、国際決済というものは金とか手持ちの外貨だけではなく、その国の信用度、経済力の発展度というものも裏づけになるわけでありますので、いま一体金本位制に返れるのかということを考えますと、年間国際貿易の伸び率が一〇%ないし一二、三%という伸び率、日本は一五%から二〇%に及ぶという事実を考えますと、まあドゴール発言は発言として、日本がいますぐこれに巻き込まれるとか賛成をするとか、金を買おうとかいうことを考える必要はないと思います。
  29. 平林剛

    平林委員 私はすぐに金本位制に戻って全部をどうこうするというようなことを言っているわけではないのです。ただ私はきのう新聞を読みまして、丸の内の東京会館で開催中の日本生産性本部主催のトップマネージメント・セミナーで、あなたが特別講演を行なったという記事を読んだんですよ。そうしたらそこで、国際的な現在の動きから見てちょっと考えるのは、日本もこれはやはりいろいろなことを考えねばいかぬな、同時に金準備についても、いまお話しのように、三億ドル程度しかない段階で、議会でもときどき問題になって、買えるものなら買う、別に買わないわけじゃなくて機会があればそういうものを用意するんだ、こういう発言をされ、その考えでおるのかなと思ったら、記事によっては、昨年ソ連からわが国に対して二億ドルの金を売りたいという申し入れがあったのを断わったなんという記事が出ておったのですよ。これは一体どういうお考えなのかな、買えるときは買うというふうにおっしゃっておったのに、こういう機会にどうして、国際的ないろいろな金本位制復活の問題やむずかしい問題があるときに、買えるときに買うというならこういうときがほんとうの機会だったのではないかと思うのですが、それを断わったということが書いてあるのだが、これは一体どういうことか、大蔵大臣の腹を聞いてみようと思いまして、ちょっとお尋ねいたしました。
  30. 田中角榮

    田中国務大臣 私は先ほどから申し上げましたとおり、買わないというのではなく、正常な状態において買えるものは買おう、こういう考えでございます。これは間違いございません。きのうのは、これは国会の発言と違いまして、準備をした発言ではなく、唐突に話をしたことでございますから、それは一時間もしゃべったことでございますから、その中で金を買わなかったという考えではなく、いわゆるドゴール発言と日本立場、またアメリカの立場というようなものを解説的にお話をしたんです。その過程において、フランスのドゴール大統領が言っておりますように、直ちに三億五千万ドルも金にかえます、反対があってもかえますよ、こういうことに刺激をされて、日本が必ずしも金を買わないでおりますのはこういう国際的理由に基づくものでありますから、国際経済情勢における日本立場をこのように理解してもらえば、必ずしも金を買わなければならないという立場をとっておらない日本立場というものは実情にも合っておりますし間違いじゃありません、こういう中に引例でもって申し上げたわけです。ですから金は正常な状態において、混乱を来たさないという状態日本に売るというものがあれば買わないということではございません。
  31. 平林剛

    平林委員 だからソ連の金を売りたいという話があったのはいつだかわかりませんでしたけれども、そういう話があったのはいつごろなんですか。またそのときは、去年ということですが、去年は十二カ月間あるので、いつごろそういう話があったか、そんな話ちっとも顔にも出さないので、きのうひょこっとしゃべったからこれはどういうものだろうか。現在は、いま確かにドゴールの発言その他から見て、金の値段もいろいろ高騰しちゃって、これはどうのこうのという議論がありますけれども、去年の段階、早い時期ならこんな心配はない。こんなときに買わなかったらいつ買うのか、私、こう思います。去年といっても三百六十五日あるので、いつごろの話なのか、そのときのもう少しはっきりしたことを言っていただかなければ、ぴょこんと出た話ですから、私もどんなものだろうかと思っておるのです。
  32. 田中角榮

    田中国務大臣 去年のいつごろだったかよく覚えておりません。覚えておらないから国会でも申し上げなかったのです。きのう話をしておるうちにちょいと思い出した、とこういうことでございますから、これはひとつ御理解をいただきたいと思います。何かそういう話がございました。そういう話を聞いたのですが、まあ、買うということもなかろう、こういう状態だったと思います。さだかにいたしておりません。
  33. 平林剛

    平林委員 まあ、きょうは大臣熱もあるようだからこれ以上追及しませんで、一応私の質問は終わっておきます。
  34. 吉田重延

  35. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 いまの問題に関連しまして、あのドゴールの金本位制の復活の問題について、先ほど武藤君からも質問があるからとかという話ですが、私ちょっと考えたのです。御承知のように、ドルはそうでもないが、ポンドが非常に激動しております。国際通貨としてドル、ポンドというのは重要な問題ですが、まあ、田中さんは大蔵大臣になられて三年目でありますけれども、いろいろ国際通貨基金の問題などで外国に行っておられますし、それからまあ、日本の円の問題もありますが、一体、世界共通の通貨制度というもの、通貨のあれをつくったらどうかという案が昔からあったのですが、そういう点については、大臣はどういうようにお考えになっておるか、まずその点を簡単に。
  36. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、国際的には議論がございます。特に、昭和三十七年のIMF総会から国際流動性問題にからみまして、新しい通貨制度を採用すべきだということをフランスが強く主張いたしておりますが、昨年の東京総会におきまして、一応国際流動性に対してはIMFの増資においてこれを行なうという結論を得まして、日本も増資に応ずるという体制をとっておるわけであります。現在も、フランス政府は、金本位制に返れという問題が一つ、国際新通貨をつくれという考え方一つ、もう一つは、金に変えようという具体的な問題、三つの大きな問題を投げておるわけであります。日本は、現在の段階において新通貨というようなことは、学問の上、議論の上で検討をするということに対して何も反対をするわけではありませんが、いずれにしましても、新通貨をつくるというような制度はいまの段階において適当ではなく、ドル防衛、ポンド防衛に終始をしながらIMF等世界の機関活用していくべきだという姿勢をとっておるわけであります。
  37. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 この問題はまたいろいろ議論になると思いますが、きょうお尋ねしたいのは景気の問題、それから金融の問題、最後に日銀法の改正の問題について田中大蔵大臣の率直な意見を、二十四日には日銀の総裁を呼ぶことになっておりますので、あとであのときは間違っておった、熱があったから忘れたということを言わないように……。  実は、高度成長のひずみによって景気が悪いのですが、これはむろん池田内閣のときの所得倍増、それから、そういう問題が関連して当時大蔵大臣をやっておられた田中さんにも一半の責任があると思うのですけれども、どうも田中さんは人柄がいいものですから、悪いことは池田さんに、よいことだけ田中さんに残っている。しかし、その後佐藤内閣になってから、一体経済のひずみの是正ということについて、中小企業や農民に対してどのような制度、どのような政策をやっておられるか、まずこれから伺いたい。
  38. 田中角榮

    田中国務大臣 高度成長が必要であるということは、もう間々申し上げておりますので御理解をいただきたいと思います。ただ、鉱工業部門等が急速に、超高度とも言われるように伸びました結果、中小企業や農村の合理化、近代化というものがおくれて、その間に大きなひずみが生じておるということは御指摘のとおりでございます。そういう意味で、ひずみの是正という問題を池田内閣は昨年あたりから取り上げまして、今年度の予算編成につきましても、中小企業や農村施策を積極的に行なうことによりましてひずみの解消をはかりたい、こういう考え方をとっておるわけであります。
  39. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 田中さんはなかなか忙しいから選挙区へ帰らぬと思うが、われわれが帰るたびに大きな倒産があって非常に心配しているのですが、その大きな原因の一つの中で、手形の決済がおくれて——大体いまはお産手形と言われたり、相当長期にわたって手形が割れないということで中小企業は非常に困っているだろうと思うのです。そこで、これは中企庁のほうの分野かもしれませんけれども、手形の決済は少なくとも二カ月くらいですべきだというような商慣習が昔あったのですが、このごろはそういうことがない。そういうことによって倒れなくてもよいような中小企業が倒れているというような現状をわれわれは経験するのですが、その点はどういうようにお考えになっているか。手形の問題について大臣はどのようにお考えになっているか伺いたいと思います。
  40. 田中角榮

    田中国務大臣 手形は、いま御発言のとおり、戦前は六十日ということが大体基準でございました。よほどの大産業でなければ九十日の手形は出さなかったということであります。このごろは一年間というようなものがございます。特に鉄鋼製品を納入したときなどは支払いがもう一年間、こういうことのようであります。これは手形というよりも契約書だという議論もございます。特に手形の問題につきましては、大企業から下請け代金を払うときに手形で払うということが多いわけでありますから、この問題をひとつチェックしようというので、支払い遅延防止法なるものをつくりまして、六十日以上の手形に対しては法定利息を付すようになっておるわけであります。ところが、下請け企業と大企業との間にはどうしても弱い関係がありますので、手形をつかまされてしまうということになっております。私は、もうこの段階において、手形の問題に対して、下請け代金支払い遅延防止法なるものは遅延防止法ではなく、こういうものはやはり手形法の中に織り込むべきか、非常に重大な問題でありますので、そういう考えさえも持っております。これは現在公取と中小企業庁がやっておるのでありますが、どうもいまの段階ではこの法律がザル法になっているというようなことをいなむわけにいきません。まず下請け企業と親企業との代金支払いというものに対しては、もっと手きびしい措置をとるということが私は一番大きな問題だと思います。  もう一つは、手形というものを出して、その手形の中には商行為の裏づけのない融通手形というものが現在あります。金繰り上の融通手形というのでございますが、この商業上の手形ではないもの、融通手形等に対してどういう取り締まりを行なうか、これはやみの取り締まりと同じことで、非常にむずかしいと思いますが、これは不渡りになって初めてもんちゃくが起こるということでありますが、こういうものを出した場合には一体どういう制裁があるのかということを明らかにしなければならと思います。  それからもう一つは、このごろ、手形というものはよほど専門家でなければ書かなかったものが、手形なるものの法律上のことを知らぬ者が手形を書いておる。これは割賦販売制度というものが非常にはやりましたために、自動車などは三千円、五千円の手形でありますが、電気冷蔵庫や扇風機やテレビの手形になりますと、千円の手形がある。こういうものを山ほどかかえて銀行に持ち込む。これは相手を調べるわけにもいきませんし、こういうところに非常に乱れがきておるわけであります。でありますので、現行、手形法というものが、実情に合うのかどうか。こういう考え方で、まず手形法の改正を考えようということで、振り出したものが不渡りを生じた場合、・刑罰をもって臨むということも必要ではないかと思いますので、法務省と現在折衝をいたしております。  ところが、なかなか法務省も刑法の中へ取り入れるということになると、むずかしいといっておりますので、場合によっては単行法でもってやるべきかというところまできております。しかし、そういう立法措置や大きなものだけでもって処置ができませんので、金融界に対しまして、手形用紙の統一を行ないなさい、もしそっちで行なわなければ、印刷局で刷ってやる、こういうことを私が言明をいたしましたら、全国銀行協会連合会で、一月の十九日に統一手形用紙を採用することにいたしました。  これは銀行名を書いておりまして、取引のない人は、その用紙を使えないというこでございます。みずからの銀行の交付した手形用紙を使わないものは、これを落とさない、こういうことにいたすことをきめたわけであります。(「いつからやるのですか」と呼ぶ者あり)いつからやるかということは、いま具体的に、こまかいところを検討いたしておるわけであります。(「いつごろなんですか」と呼ぶ者あり)あとで銀行局長から答弁させます。  それから取引処分というものは、手形がきょう交換になりましたら、三日間あったわけです。まごまごすると、四日目に買い戻しがきいた。これは一日しか買い戻しを許さぬ。もう一つは、取引停止処分になったら、第二会社をつくって、それでもってまた取引を行なう。こういうことは、その代表者もしくは事実上代表者とみなされる者に対しては、相当長期間にわたり銀行取引を停止する。私から考えると、少しなまぬるいようでありますが、どうもいまの状態から考えますと、一挙にやりますとたいへんな混乱を起こすということで、こういう処置を除々にとっていくということで、金融の正常化をはかってまいりたいという考えであります。
  41. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 高橋さん、いまの大臣の発言の中で、最近商行為の中で、いろいろわれわれには不当だと思われるような商習慣が出てきたと思うのですが、大蔵省の管轄か、通産省の管轄か知りませんけれども、そういうことによって相当中小企業が倒れておるような情勢が見受けられるのですが、こういう点については、現実に、どのようにお考えになっておられるのか、またどのようにながめておられるのか。
  42. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いま大筋といいますか、概略は大臣説明のとおりであると思います。  最近におきましても、親企業が下請にしわ寄せをするというケースが非常に目立つ。そういうものについては、現在の下請代金支払遅延等防止法の法規そのものをもっと整備する、すなわち六十日で必ず現金が手に入るというようにすべきではないか。これはそういう諮問が行なわれて、答申が出たというふうに私聞いております。この国会であるいはそういう法的な措置をするのではないかと思いますが、いまは行政指導でだいぶやっているそうですが、しかし、数が多いことでございますし、なかなか行政指導だけではむずかしい。ですから、法規を整備するということは、相当めちゃな支払い遅延をやったものに対しては相当な制裁も加えなければいかぬと思いますが、どのように扱われるかは公正取引委員会と通産省とで協議しておきめになることと思います。  それから、今度の統一用紙の場合には、一般に手形を使う上において、振り出し日を記入しないという悪い習慣がはびこっていて、いつ振り出されたものかわからない。決済になったときにわかるわけですが、それも何日前の手形であるか書いてない。したがって、非常に長い手形を出しても、形の上にはそれが出ていないというふうなことがございます。統一用紙の場合には、必ず振り出し日を記入せよということになっておりますから、今後立ち入り検査、調査等の場合にも、どのようなむちゃな長い手形をどのくらい出しているかということは、知りたいと思えばわかるというふうになっております。  手形についてはそういうことが言えますが、そのほかにも、検収期間を長引かすというふうなことがございまして、これも一種の支払い遅延になるわけでございます。そっちのほうへ逃げていかれてはまずいので、そういう点もあわせてできにくいことを考えていかなければなりません。  そういうことになりますと、私ども大蔵省の所管と申しがたい面がございますので、こちらとしては研究するといたしまして、何かいい方法があればそういうものを取り締まることができるように考えていただきたい。こちらのほうでお願いいたします。
  43. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 いろいろとあまりこまかいところまで法律をつくるということは賛成ではないのですけれども、日本現状から考えますと、なかなか中小企業は救われない面がたくさんありますので、十分に検討していただきたいと思うのです。  それから、昨年の暮れに金利が引き下げられましたが、それによって幾分か景気の上昇の曙光が見えているようでありますが、それについてこの次はいつ金利を引き下げるかという問題と、もう一つは、これは政党政治でありますから、やむを得ないというものの、こういうような金利の引き下げが参議院の選挙目当てにやられているというような非難が一部にあるわけです。こういうことも十分注意してやってもらわないと、そういう問題が一般に商行為をやっている人に非常に大きな打撃を与えるということも考えられますので、十分検討していただきたいと思います。  もう一つは、佐藤総理や大蔵大臣などは、景気は順調にいくように非常に楽観論を持っておられるようでありますが、世界の情勢は必ずしも、いま総理が考えておるように、そんな甘く、景気がよくなるとは思われない。特にイギリスは、御承知のように、ポンドの危機を招いて、なかなか回復はいたしません。アメリカでも、いつまでも景気がいいということはあり得ないので、先は必ずしも楽観はできないように私は思っておりますので、日本の景気の上昇というものはいつごろになるだろうかということ。  大臣にこの二つをお伺いします。
  44. 田中角榮

    田中国務大臣 公定歩合の引き下げはいつ行なわれるかということでございますが、これは日銀当局に全くまかしてございます。特にあなたがいま言われた参議院選挙の道具にされては困るということは、特に私は考えておりますので、今度だけは——今度だけではありません。いずれにしましても、公定歩合操作に対しては大蔵大臣は言わぬ、こういうことでございますので、これは日銀当局の考え方によってきまるものでございます。選挙とは全然関係ございません。明かにいたしておきます。  それから、世界的景気と日本の景気との問題でございますが、世界の景気は必ずしも悪くないという方向ではございますが、大体平均年一〇%ないし一二、三%ずつ貿易量も拡大いたしておるということでございます。しかし、その質の状況から見ますと、現金決済というふうな状態であったものが、南北問題が起きましてから、貿易の量がふえておりますけれども、延べ払いと延べ払いの期間が非常に長くなるとか、そういう内容を含んでいるわけであります。アメリカは有史以来の好況といわれておりますし、すぐ景気が後退をするということは考えておりません。ただ、御指摘のように、ポンドの問題等もございますし、いままでのように、日本が一五%も二〇%も高い輸出が続くということを安易に考えていくべきでない。世界の情勢を静かに見ながら、これに対応し、国際競争力をつけながら、じみちに、しかも長期拡大的な路線をとるべく努力を重ねていくべきだと思います。私はここで率直な意見を申しますと、国際的な環境からくる影響ということよりも、やはり日本の国内的な問題、昭和二十年から二十年間という歴史の上に築かれた現在の日本産業の姿の中から、まだ合理化を要請せられる面が相当ある。いわゆる量的拡大から質的拡大に移ってきましたので、中小企業その他これに第二のスタートをする過程において、相当高い成長が続いておりましたものを、急激に安定成長に持ち込もうとするときには、どうしてもそこに摩擦が起きるわけであります。ですから一厘公定歩合が引き下げられましたけれども、中小企業の倒産というようなものはあとを断たないということがそれを示しておるわけであります。でありますので、国内的に金融政策その他をきめこまかくやりながら、黒字倒産や連鎖倒産というものを避けながら、新しい時代に対処できるような体質改善というものに十二分な配慮を続ける必要があるというふうに考えます。
  45. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 田中さんから聞く意思はなかったのですが、思い出してこの機会にお伺いしたいと思うのですが、最近御承知のように中共貿易とかプラント輸出の問題が非常にやかましくなって、吉田書簡の問題もやかましくなっておりますが、そういう半面において日韓会談、椎名さんが行っておられますが、どうしてもこの際やってしまわなければならぬというような非常に積極的な意思が見られるのですが、何か財政的にでも日本投資した問題とかあるいは財政的な、経済的な問題で早急にやらぬとぐあいが悪いようなそういう問題がひそんでおるのじゃないかというように考えられるのです。これは李ラインの問題は日本の業者との関係で、漁業の関係はだんだん向こうも納得したようでありますけれども、何かむりやりに日韓会談をおやりになるということは、裏にわれわれが知らないような、財政的なそういう関係があるのじゃないか、韓国との間に相当投資をしておった人もあるようですから、そういう点で何かわれわれが考えられないような不測ないわゆるあれがあるのじゃないかといなようにわれわれは憶測するのですが、そういうことは一体どういうことになっておりますか。あなたは外務大臣を兼任されていてちょうどいいですから……。
  46. 田中角榮

    田中国務大臣 特に特別な理由があって早くやらなければいかぬということじゃありません。十数年間もやっておることでございまして、おととしあたりからもうやるのじゃないか、同じような御質問がございましたが、機運熟さず去年になりことしになったわけであります。ちょうどILOの問題のようなものでございます。もうやったらどうか、こういう機運は確かに両国の国民の間にあると思います。これはもちろん相手のある話でございまして、こっちだけが積極的であっても向こうの情勢が整わなければできないわけであります。まあこのごろはちょうど両方とも盛り上がってきておるというふうにも考えられます。きのうあたり、戦後初めて二十年ぶりに国旗が韓国に掲げられたし、椎名外務大臣の訪韓に対してそういう国をあげて歓迎をしておられるというような報道から推測をいたしますと、非常にいい機運、両国のために好ましい機運が盛り上がりつつあるように看取せられるわけであります。
  47. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 どうも田中さん見てきたように言っておられますが、テレビで想像されるだけでございますが、それはそれとして、いま問題になっております日銀法の改正の問題が大きく問題になってくると思うのであります。私はずっと三年ばかり日銀ばかりやっておるのですが、今度の改革の中で、おそらく大蔵省の一番大きな法律だといわれておりますが、その法律をいつごろ出されるのか、また日銀との裏交渉でいろいろな問題がうまく煮詰まっておるのかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  48. 田中角榮

    田中国務大臣 日銀法の改正案は今国会に提出をいたしたいという考えでございます。しかもできるだけ早く、こういう考えでございます。いま与党である自由民主党の政調でも検討をいたしておるようでございまして、政府与党の間がまとまれば早急に国会の御審議をいただきたいという考えでございます。   〔委員長退席、山中貞委員長代理着席〕
  49. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 私らが心配しておるのは、今度の日銀法の改正の中で日銀の中立性という問題が大きな問題になってくると思うのです。これはいまの日銀法は御承知のように戦争中の昭和十七年にできた法律でありますから、そういう改正は当然でありますが、しかし中央銀行は、独立性、中立性がなければ時の政府に利用されてとんだことになるかもしれないというような事態も考えられるのですが、そういう点についてはどのように大臣考えておられますか、伺いたい。
  50. 田中角榮

    田中国務大臣 私は日銀法の改正案の審議をいたしました結果は、非常にいい法律になるというふうに考えます。私は当初考えたよりも、御指摘になった日銀の中立性を守るということに対しては、どうも少し無制限に規定しているくらいによくできております。少なくともいまの日銀法に比べてみてたいへんりっぱなものであるということは、そのように考えます。一言申し上げますと、日銀の中立性——物議をかもすために申し上げるわけではありませんが、これは国会の審議でありますからはっきり申し上げておきますと、日銀の中立性ということは、制度の上で、その特殊な任務からいってこれは守らなければならぬということは当然であります。ところが法制上のたてまえからいいますと、国会に対しては内閣は連帯して責任を負っておるのでありますし、金融政策の国会における責任者は大蔵大臣でありますから、そういう意味で最終的には日銀に対する指示権を規定するということは正しい、私はそういまでも信じております。これはもう絶対的に正しい。しかし条文上はそういう整備をしておっても、そういうことが死文になるようなことこそ望ましい、こういう考え方でございますが、しかし日銀の中立性というものに対しては非常に世論が高いのでありますから、どうせ発動しない条文をそのまま入れることもなかろう、こういうことで、まあ新憲法によった、新憲法の精神どおりの日銀法を新たにつくるならば、もう思い切って譲りなさい、こういうことで、私の真意としては、必ずしも法律の条文上そういう指示権の問題がないことは好ましいことではない、正すべきは正しておかなければいかぬという考え方でございますが、しかしこれはもうやめました。やめて、いろいろ問題になりました指示権は条文からなくいたしました。しかしこれは私は考えてみて、ほんとうに政権担当がかわって相当強い、また別な金融政策を行なうというような場合でも、指示権がないからしようがない、こういうことになることも考えられるわけであります。これは指示権があるのが普通なんです。普通ですが、あえて私はそれを強調せず、皆さんが大体御強調になっておるような線で案をまとめた次第であります。
  51. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 まあ田中さんの言っておられることを私たちは疑うわけではありませんけれども、いい法律だということは大蔵大臣に都合のいい法律だということに解釈できるわけです、かんぐれば、ですけれども。だからあなたが、これほどいい法律はない、これほどよくできた法律はないと言う裏には、大蔵省に都合がよくて日銀のほうには都合が悪いのじゃないかということも考えられる。これはいずれこれから法案が出てからの問題でありますが、その一つに政策委員会をなくするというような意見があるのですが、これは名前は政策委員会というような問題とからんできますが、いままでの政策委員会というのは日銀の中枢をなしておったと思うのですが、こういう点についての改正というのは、もっと大きな意味での政策委員会というものは私は望ましいと思うのですが、この点については大臣はどのように解釈されておりますか。この日銀の政策委員会改定についての御意見を承りたいと思います。
  52. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 多少法律的な問題を含んでおりますので、私から御答弁します。  現在の政策委員会というものは、昭和二十四年に司令部の指令といいますか、示唆に基づきまして日本銀行法の中に織り込んだわけでございます。法文のていさい等から見まして、まさしく現在の日本銀行に木に竹をついだような形になっておる。と申しますのは、政策委員会という名前がある程度示しますように、これはいってみれば一種の行政委員会的な性格を持っている。本来は、アメリカの側の意向としては、全然別個に独立の行政委員会を置いて、そしてそれが金融政策すべての責任を持つというふうなことを考えておった。ところが、それが日本の体制に合いませんから、いろいろ交渉したあげくが、日本銀行というものの上に直接そういう機関をかぶせてしまった。ですから、日本銀行総裁は、一方において総裁であると同時に、総裁のみがその政策委員会のメンバーになる。たまたま議長になっておりますけれども、そのメンバーにすぎない。その政策委員というものが、別個に、日本銀行とやや離れた感覚で、つまり上についておるわけですが、必ずしも日銀固有の機関ということになっておりません。そういうふうな性格でございます。ですから、何か非常にちぐはぐのものが乗っておりまして、法律上いかなるものであるかということははっきりとは言えないようなものになっておる。ちょうど占領中の法律改正でありますので、そういうこともあえて行なわれたというほかないわけであります。今回の改正にあたりましては、やはりそういう行政委員会的なあいまいな性格を持ったものを残すということは適当でない、日本銀行の内部における最高の意思決定機関そのものである、こういうふうな解釈をもちまして、それに合わせたような改正を行なおうとしているわけでございます。名前につきましては、あるいはどうなるかまだ決定はしておりませんが、いわば、いってみればそれは日本銀行の最高の一つ会議体である。そしてそれは、たまたま総裁独断できめるというふうな体制をとらない。昭和二十四年より前の法律では、総裁がすべてこれを決したわけでございますが、総裁の独断にゆだねないで、何名かの最高のメンバーの集約によってきめるという体制をとっております。そういう点が法律上非常に違うのでありますが、しかしその日本銀行の中立性という点におきまして、これは、そこの会議において決定されるものは、いわゆる三つの大きな柱であります公定歩合、準備率、オペレーション、こういったものについては、すべて認可を必要とせずに、もっぱら日本銀行の意思で決定できる、こういうたてまえを貫いております。
  53. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 その問題と関連して銀行局長にお尋ねしますが、理事の問題はどうなりましたですか。
  54. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 まだこれは与党との意見調整を行なって、御審査をいただいておる段階でございますので、最終的な考えを申し上げるわけにいきませんが、私どものほうのつくりました原案では、答申においては役員たる理事は一人もいなくなるということになっておりましたけれども、これはあまりにも実情とかけ離れてとても採用しがたい。そこで執行機関として総裁、副総裁を補佐するという意味での役員たる理事を残すという考え方をとっております。
  55. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 それから、この間大蔵大臣からも発言があったのですが、資本金の問題です。これは民間の持っているものを返すという意見もあるようですが、一体無資本にした場合に、この間、何か五十円か百円の券が二千円か二千五百円になっておるといわれておりますが、民間に返すのか返さないのか。いま一億円の資本金になっていますが、これは大臣どのように処理をされるのか、これを伺っておきたい。
  56. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 これも原案での話でございますが、一億円の資本金はこれを消却いたしまして無資本にするという考え方をとっております。答申もやはりそういうことでございます。したがいまして、政府の持ち分が五千五百万円、民間が四千五百万円になっておりますが、それらについて、現在の日本銀行の法律の精神から申しますと、額面百円でございますから、それに配当を四年間戦後しなかった時期もございました。これをたな上げしておりました。約二十円に相当しますが、民間の分は二十円、政府の分は七円くらいでございます。その配当のたな上げ分は、これはそういう出資権者に帰属するということが書いてありますので、それは払うことにいたします。それ以上にいま相場の話が出ましたが、これは数年前から店頭取引になっております。店頭気配相場がございます。取引も若干ございますが、あまり大口な取引があるわけじゃございません。そういった点について考慮を払うべきか払わざるべきか、まだその点についての最終的な決定はなされておりませんが、いまの出資証券というのは、言ってみれば期限の定めのない債券みたいなものでございまして、出資者と言いながら、それは日本銀行の経営その他一切干渉する権利を持っておりません。ただ、五分以下の配当を受けることが法律の上に書いてあるだけでございます。残余財産に対する請求権も、解散の場合にはないということになっておりますので、名前は出資証券でございますが、いわゆる株式のようなものとは全然性格が違う。そういう法律上の性格のものであるという点を十分考慮しなければいけないのじゃないか、そういうふうに考えております。
  57. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 いま銀行局長の事務的な意見ですが、大臣はどのようにお考えになっておられるか、伺いたいと思います。
  58. 田中角榮

    田中国務大臣 大体いま銀行局長が答弁したとおりでございますが、ただ最終的な取り扱いをどうするかということは、党の中にも幾らか議論がございます。ございますが、いま法律的にすんなり考えると、いま銀行局長が言ったように、これは時価で買うとかいうことは非常にむずかしいという考え方が大体支配的であります。しかしこれが一部ではありましても流通しているという問題がありますので、最終的にどうするかという問題は、まだ再検討を要する問題だと思います。
  59. 山中貞則

    ○山中(貞)委員長代理 関連質問を許します。武藤山治君。
  60. 武藤山治

    ○武藤委員 いまの二千円の出資証券の保有者の数でございますが、何人くらいおるか。それからもう一つ、私はいま銀行局長が言うように、日銀の出資証券なんというのは表彰状みたいなもので、永久に孫子の代まで額にでも入れてしまっておくような記念物で、このような処理を保有者がしてくれれば別に問題は起こりませんが、保有者の中で、権利があるのだ、いまの時価評価にしたらこれはたいへんな額面になるのだ、こういう主張をして、訴訟でも起こされた場合にも心配は起こらないかどうか。そこらの法律上の規定がどうなっていて、そういう心配はない、完全に話し合いで了解がつく、こう見通しておるかどうか。   〔山中委員長代理退席、藤井委員長代理着席〕
  61. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 まず出資者の数は、これは昨年の十月末現在でございますが、全体では二千九百十六名でうち個人が二千七百八十四名になっております。そのほかは金融機関五十五名、証券会社三十八名、その他法人が三十九名、名と申しましたが、そういうふうになっております。  いまのお話でございますと、いまの時価で計算すれば相当の時価になるのに、そういうものを支払われなかった場合に、訴訟等でやれるかというお話でございますが、これはいずれにいたしましても、その償却のしかたは法律で定めるわけでございます。ですから、法律で定めるという点から申しますれば、これはその段階では問題になることはありましても、訴訟等の問題にはならないものと私は考えております。
  62. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 それから今度の改正法では、日銀券の最高発行限度を廃止したらどうかというようなそういう意見があるらしのですが、この点は一体どのような理由でこういうふうになるのか。大臣からひとつ御意見を伺いたい。
  63. 田中角榮

    田中国務大臣 いままでは大蔵大臣が認可をいたしておりましたが、御承知のとおり、先ほどから議論になっておりますように管理通貨でありますので、管理通貨の趣旨を徹底せしめるためには、日銀にこれをゆだねても差しつかえないという考え方であります。
  64. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 それから大臣はこの間の施政演説の中で、日本銀行が公社債の育成のために証券金融を拡充するというようなことを言っておられますが、一体どのような範囲でやられるのか。現在も日本銀行が最近の証券不況のためにいろいろな金の融資をやっておられるようでありますけれども、これを明文化するような御意思があるようでありますが、この点はどういうお考えでこういうあれを持っておられるのですか。
  65. 田中角榮

    田中国務大臣 私は日本銀行の抜本改正を行なう場合に、そういう規定を入れようという考え方で当初考えたわけでございますが、現行の法律でも、日本銀行の独自な考えで取り引き先をきめるということになっております。でありまして、左に掲ぐるものに対して窓口取り引きを開くということにはなっておらぬわけであります。日本銀行が独自の判断に基づきまして、必要ある場合都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫にまで広げられる。もちろん金融機関だけではなく、農中その他の問題に対して、系統金融機関に対してもどうすべきかというようなこともございますが、現在の法制そのものが日本銀行の判断によって証券会社にもどこへでも出せる。いわゆる禁止規定がないわけでありますから、そのままの条文で、これを規定する必要はないという結論に達したわけであります。
  66. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 これは高橋銀行局長にお尋ねしますが、上のほうのお話——上のほうというのはおかしいのですが、あなた方の事務折衝の間で難点になっているのがあるのかないのか。あったらどういう点に日銀との交渉中に問題があるのか、これを伺いたいと思います。
  67. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 日銀とは非常に密接な連絡をし、たびたび意見の相違点の調整を行ないまして、そしてようやく原案の発表というところまでこぎつけたわけでありますが、若干向こうの希望といいますかが残っておる点は、政策委員会に関する点でございます。それは実質的には政策委員会の性格が変わるという問題、あるいは民間のいわゆる学識経験者を広く選んでだれでも任命できるというふうにするのに対して、現行法はそれぞれ業界代表というふうな形をとっております。業界代表でいくという点は、答申においてもさんざん論議された結果、やはり業界代表でないほうがいいということになったのですけれども、そういう点について、もう一度考え直す点がありはせぬかというふうな希望もあるようであります。しかし私どもはそういう実質につきましては、もうこれは答申の段階でも、またわれわれの話し合いの段階でも、少なくとも事務的にはそれでいいのだということになっておると了解しております。いまさら変える必要もないのじゃないか。  それから名前の点でございますが、政策委員会という名前を残す——答申もその点では、名前は政策委員会ということであるが、性格は全然違うのだぞというようなことを言っておりますので、その点そういう名前を使うことも、答申にある限り差しつかえないと思いますが、私どもはどうもたとえば一人の役員が一方で総裁であり、副総裁であり、それが同時に政策委員会委員であるというふうな、そういう考え方はとっていないわけです。総裁それ自体が一つの構成メンバーである、だから別個に委員会が存在するのではないのだ、そういうことを考えますと、できることならば何かもっと実質の変化にふさわしい名前のほうがいいのではないかというふうに考えておったわけですが、名前だけの問題ならというふうなことで、その点ちょっとまだひっかかりが残っておるわけです。いまのところまだ話を進めようとしておりまして、できるだけ納得のいく名前にもしたいし、誤解のないようにしたいというふうに考えて折衝中であります。
  68. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 もう時間がありませんから、最後に大蔵大臣に対してもう一つ伺うのですが、政策委員の任命はいままではたしか国会の承認を得ていたはずです。今度は国会の承認を経ずして、何か大臣でしたか総裁のほうから命ずれば、そのままなるようなそういうようなことでありますが、一体こういうような権威のあるものに対して、国会の承認を求めぬというのはどうも解せない点がある。何か理由があるのかどうか伺いたい。
  69. 田中角榮

    田中国務大臣 国会の御審議を受けておりましたものを、国会の御審議を経ないでやってもいい、こういう問題につきましては、私はまだ最終的にはどうするかということは考えておりますが、これは性格上から先ほど銀行局長申し述べたように、日銀の役員であるというふうに規定をいたすわけであります。そうすると理事と同じものであります。ただ法律によってその使命、性格というものを規定をしておるだけでありますので、このような内部機構の中にあるものを、国会の議決を経ての任命ということにするのは適当ではないじゃないか、こういう考え方で国会の承認ということを削るという案が一つできております。これはそんなにどうしても削らなければならぬというものでありませんが、性格からいって、法律論からいっても、内部のものまでみなということになりますと、国会との関係からいっても問題がありますので、いままでの日銀のように政策委員は別なものである。ちょうど電電公社の経営委員、それから国鉄の何委員ですか、そういったものはみな占領用のメモによってできたものでありますが、そういう性格を変えて日銀というものに対して内部のものにすると、その任務は別でありますが、理事と同じ性格のものでありますので、そこまでいくと国鉄の理事とか日銀の理事も国会の承認を経るのかという問題になりますので、ここはやはり明確に分けておいたほうがいいだろうという考え方で、いまわれわれの考えておるような日銀法の改正案を前提にしますと、国会の承認は必要としなというふうにも考えられるわけです。ただここには議論がございます。
  70. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 まだ成案が全部できたというわけではありませんので、いまの問題も重要なことでありますから、われわれも検討しておこうと思うのです。またいずれ法案ができましてからも十分検討したいと思うのですが、とにかくいろいろな問題もあり、何といっても日銀というのは重要な金融の元締めでありますので、十分検討して、われわれ野党にも納得のいくような法律を出していただきたいと思います。
  71. 藤井勝志

    ○藤井委員長代理 午後一時より委員会を再開す。ることとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十分休憩      ────◇─────    午後一時十八分開議
  72. 吉田重延

    吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。武藤山治君。
  73. 武藤山治

    ○武藤委員 実は大蔵大臣はまだ初耳だろうと思うのでありますが、一昨日、大蔵委員会で質疑をして、びっくりした内容がわかりましたのは、東海財務局の管轄で、春日井市内にある土地を、昭和三十八年五月十日に、大蔵省から東洋プライウッド株式会社なるものが払い下げを受けた、払い下げ価格一億四百万円の土地を、わずか五日後に松栄商事なるものに転売をいたしました。さらに松栄商事なるものはそれを一週間後の二十二日に松下電器に転売をしたわけです。その間わずか十二日間でございますが、その間に二億六千五百万円で転売をしておるわけです。一億四百万円の払い下げの土地を二億六千五百万円で転売されておる。すなわちわずか十二日間で一億五千万円の不当利得を、東プラなるものか松栄商事なるものか、この二つのうちのいずれかがあげておる。こういう、国有財産の払い下げによる不当利得をあげるようなやり方を大臣はどうお考えになりますか。
  74. 田中角榮

    田中国務大臣 私もあまりこの問題はわからなかったのですが、きのう決算委員会指摘せられまして、その後調査をいたしましたら、この東洋プライウッド株式会社に払い下げを四万二千坪ばかり二回に分けていたしたようであります。これは通産省及び春日井市からの要請がありまして、この会社の事業拡張のために払い下げてくれ、こういうことがあって、払い下げたようであります。払い下げ価格はこちらが払い下げましたものが、坪当たり三千百円であります。これが会計検査院から指摘せられましたものは、三千九百円が正しいという面だけが指摘をせられております。しかし当時は法律規定もありませんでしたし、用途指定もとれなかったわけであります。ところが、この問題が、転売をされ、不当利得を得たということになって、その後検査院からの指摘もございまして、二回にわたる分に対して追徴を行なって、四千数百万円といっておりましたが、これは事務当局からの報告でありますが、四千百万円の追徴を行なったということでございます。  それから、この二億円に及ぶ不当利益ともいわれる御指摘を受けておる面につきましては、地上の物件の除去及び整地等で九千万円ばかり金をかけたということであります。それから、一部が道路敷地に使用されたということで、表に出ておる金額よりも利益は少ないようでありますが、いずれにしましても、この三千九百円と三千百円との間のものは徴収したと思います。  なお、本件については、国有財産局と国税庁との間で、この事実の確認があったようでありまして、国税庁に対しては、国有財産局から、こういう事案に対してということで、内容は国税庁当局に通報してあるそうであります。その後の徴税の状況は知りません。
  75. 武藤山治

    ○武藤委員 私は大蔵省を管轄する大臣という立場からの御意見を聞きたいのでありますが、調べてみますと、こうべらぼうに転売をして金もうけをした東プラなるものには、財務局の前部長、管財部長ですか、さらに課長、係、五人も入社しておるのですよ。しかも東プラの重役をしておるのです。こういう財務局にいた者が重役をしておる会社に払い下げをする。その場合に、競願がなかったと最初国有財産局長は言っておったのでありますが、四者が買いたいという希望を持っておった。それを適当に手を回して、申請をおろさせておいて、東プラに払い下げをしておる。まさに綱紀の紊乱ですよ、そう思いませんか。
  76. 田中角榮

    田中国務大臣 私も財務局の古手が四、五人行っておるということを聞いて、非常にびっくりいたしました。いずれにしましても、疑いを受けるようなことをやってはならないということは御指摘のとおりであります。きのうも両院の決算委員会で本件に対する答弁はいたしております。私自身がこういうことを知らなかったということは遺憾でありますが、その後は法律の改正をせられまして、転売をするということは禁じておりますので、こういう事案はこれが最後だと思います。  いずれにしても、あまりケースのいいものではありません。国有財産局及び地方財務局に対しましては、こういう問題は再び起こらないように十分注意をいたすつもりであります。
  77. 武藤山治

    ○武藤委員 今後は十分注意することでよろしゅうございますが、このできた事案に対して、国が民事上の訴訟を起こして、その損害を埋め合わせるような指導を、大臣としてすべきだと私は思いますが、あなたの見解はいかがですか。
  78. 田中角榮

    田中国務大臣 その面につきましては、会計検査院は三千九百円、これはあとから当時の状態を想定して、適正な価格は三千九百円、こう指摘したわけであります。大蔵省が払い下げた金額は三千百円でありますから、実際問題といたしますと、三千百円と三千九百円との差額が問題になるわけでございます。しかし、当時の払い下げの状況から見ますと、そういう特殊なところに払い下げたということには問題がございますが、ただ事務当局からの説明を聞きますと、その会社の進出のために、通産省及び春日井市当局から、特にこれを払い下げてくれ、こういう強い慫慂があった。こういうことで、そういうものも採用して、払い下げを行なったということであります。ですから、これが払い下げということに対しては、春日井市や通産省当局に運動をして、その工場をつくる意思のないのに、工場をつくるがごとく仮想して払い下げを受けたということになれば、これは刑事上の問題が起きると思います。  いずれにしても、国が損をしたということは、会計検査院の御指摘の三千九百円と三千百円の差額でございますので、この問題については、追徴金を徴収いたしておるということでございます。
  79. 武藤山治

    ○武藤委員 あなたは訴訟を起こしてまでやはり正義を実現すべきだという私の見解に対しては答えていない。  それからさっき、大臣は、整地をするために九千万円ぐらい金がかかったから、実際のもうけはそんなにないと思うという答弁をしておる。こんなでたらめな答弁は許されませんよ。あなた、五月十日に大蔵省から払い下げを受けて、十二日間で整地なんかできるはずはないのです。十二日間で整地するために、九千万円払って、実際のもうけはほとんどなくなったというような最初の答弁なんというのは、隠そうとする故意にするための答ですよ。
  80. 田中角榮

    田中国務大臣 その第一点の問題は、法律上の問題であります。これは一体裁判を起こして、刑事上の責めを追及することはできても、これを取り戻すということはできないと思います。すなわち善意の第三者に移っている場合には取り戻せないということでありますから、刑事上の責任を追及するかどうかということの問題は別の問題だと思います。  もう一つの、九千万円のことは、答弁書にも書いてあったし、事務当局から聞いた話でありますが、(「十二日間でできるのか」と呼ぶ者あり)十二日間でできないということではないと思います。これは金をとっても、整地をし、地上障害物を除去するという条件であれば、それは後に行なわれてもいい、十二日の間に行なわれなくともいいと思います。いずれにしても、私が事務当局から徴した事実はそのとおりであります。
  81. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 私からお答えいたしますが、現在は松下電器に移っているはずですね。そこで、どうありましょうとも、東洋プライウッドへ払い下げた事実があることは間違いないのであります。そうして一応は東洋プライウッドの所有になった。それから松栄商事へいき、さらに松下電器がそれを買って、所有権移転の手続きをしておる。これは、内容のよしあしにかかわらず、この手続きだけはしておりまして、現在はいわゆる第三者が持っているわけであります。したがって、直ちに第三者のほうへ訴訟を起こすことは不可能でございます。  そこで問題は、この間から私は聞いておったんですが、これは詐欺でないかということが一応問題になる。詐欺で、どなたか知りませんが、告訴をせられたそうですが、それが検察庁のほうで成立しないというので、不起訴に終わったようです。問題はそこで、これは、この間から聞いているので、私の常識だけで考えるのですが、私にはどうも詐欺になるものと思えてならないのです。  というのは、なるほど財務局は、いま言われたように、通産省からぜひ払い下げてやってくれ、春日井市からぜひ払い下げてやってくれということで、それに基づいて審議会にかけて、審議会も払い下げすべきものだというので、払い下げをしたわけです。この点は間違いないと思いまするが、第一回の払い下げから転売まで九日そこそこしかなかった。それが私は一番問題だと思います。かような大きな問題を取得してから九日かそこらで向こうへ移るということは、ちょっと常識上考えられぬことで、常識で考えられぬとすれば、まさに払い下げの詐欺です。払い下げができたら、私が買おうという交渉があったと想像できるわけです。その交渉があるということは、転売するということです。それを転売する意思がないように隠して、そうして審議会までも通した。確かにこの点に疑問があると考えられますから、それが実証されれば、これは詐欺だということになります。  これが詐欺だということになれば、そこで初めて取り消すことができるのであります。ところが取り消しましても第三者が、松下電器のほうが善意であればこれは取り戻すことはできません。そうすると戻すときには悪意であったということになる。これも私だけの常識で考えるのですが、それはいまとにかく払い下げすることに一生懸命やっておるのですから、その地面であることを知っておる以上は、松下電器もこれは払い下げしたらおれのところでとってやろう、こういうことを知っておったと考えるのが常識ではなかろうか、そうすれば悪意どころか都合によっては共謀ということにならぬとも限らない。そこまでいけば、初めて訴訟なりなんなり取り戻しができるもの、かように考えます。そうでないとすぐさま松下電器から持ってこいということはできぬと思います。
  82. 田中角榮

    田中国務大臣 ちょっと間違うと悪いから申し上げますが、土地の転売の価格は第一次分が九千五百坪、第二次分が三万三千坪、合わせて四万二千五百坪、単価八千円にいたしまして三億四千万円で転売をしたわけであります。これに対して払い下げ価格は一億三千五百万円でありますから、約二億円の差金が出る、こういうことになっておりますが、この一億三千五百万円で払い下げますときには、条件がついておるのです。この条件は転売された土地の上に物件があるわけであります。これは東洋プライウッド側では必要がないということで、これを撤去、整地をしろという条件がついております。こういう条件がついておりまして、その撤去の金額は大体払い下げ金額が五千二百万円、撤去費用が千七百万円、整地費が二千万円、合計八千九百万円くらいは差し引かれるわけであります。それからなおそのほかに道路として負担をしたものが約二千二百万円ございますので、大体二億という計算が——六、七千万円ということであります。実際この整地はどうしたのか、転売をした後約一年間かかって整地が行なわれた、条件が満たされた、こういうような状態のようであります。
  83. 武藤山治

    ○武藤委員 大臣、これは騒がれたからそういう資料が次から次へとつくられてきますが、とにかく五月十日に買ったものが五日の後に転売されて、さらに一週間後にまた転売されて、一億四千万円のものが二億六千万円にはね上がる、それを直ちに財務局が取り消しなりなんなりやれないというところに問題がある。なぜやれないかということです。東プラに財務局の前部長、課長が就職しているからですよ。東プラの重役なんですよ。これはまさに綱紀の紊乱であると同町に、さっき政務次官が適当な答弁をしたように、詐偽罪に当たるかもしれぬ。政府みずからが詐偽罪で相手を告発したらいいじゃないですか。そしてこういうことのないようにきちっとけじめをつけることが、監督者の大臣としての任務だと思うのです。国の財産ですよ。
  84. 田中角榮

    田中国務大臣 きのうも大体同じような御質問がございまして、私も答えたのですが、常識的な問題とか、より合理的にという立場ではわかりますが、法律上国が告発をするというようなケースにはならないようであります。これはいまの法律が改正しておりまして、転売を禁じておる場合は別でございますが、当時の払い下げ条件の中にはそういう制限的条件がなかった。(武藤委員「申請書がうそなんだよ、ごまかされておるのですよ」と呼ぶ)それはごまかされたほうが悪いということになるのでありまして、ですから会計検査院の指摘によって四千万円の差益を徴収した、差額を徴収したということになっておりまして、法律上は国がこれを取り消すというときにはもうすでに善意の第三者に移っているということです。そういうことがないように、今度法律を改正していただいて、改正法では条件をつけるということになっておるわけであります。まあしかしいずれにしてもいま御指摘があったように、大蔵省に職を奉じた人々が何人も行っておる会社であるということは、はなはだ不幸なことでありますし、私もかかる問題に対しては厳重に将来とも注意をなすべきだと思います。
  85. 武藤山治

    ○武藤委員 私はきょうはこの問題を中心にやろうという予定ではなかったわけでありますから、この問題は特別調査委員会をつくって、あるいは綱紀粛正委員会においても徹底的に取り上げて、大臣のいまのようななまぬるい答弁では納得できませんから、これは後日に保留したいと思います。  ただ一つ大臣の耳へ入れておきたいのは、いま関東財務局においてもあるいは他の財務局においても委託業者なるものがおるということは私らの耳へたくさん入っておる。国有財産払い下げの業務を、業者が、不動産屋が委託されておるという、そういう事実を大臣は知っていますか。
  86. 田中角榮

    田中国務大臣 よくは知りませんが、そういう制度があるということは知っております。
  87. 武藤山治

    ○武藤委員 それでは大臣、この次の委員会までに各財務局の委託を受けておる不動産会社の名前、代表者、これをひとつ資料として出させてください。
  88. 田中角榮

    田中国務大臣 やります。
  89. 武藤山治

    ○武藤委員 次に、私は現在の金融構造の問題について少しくお尋ねしてみたいと思うのでありますが、いま日本金融構造というものは、長期金融短期金融というものが非常に混同されておって画然と分野が整理されていない。これはだれも認めるところだと思います。そこでいま銀行デパート化論といったような非常な暴論が私たちの耳に入ってくるわけでありますが、大蔵省は一体証券業務や公社債引き受けの業務を地方銀行都市銀行にも認めようという方向指導しておるのか、そういう業務はやはり画然と分けておく、こういう方針でおるのか、これをまず最初にお尋ねしておきたい。
  90. 田中角榮

    田中国務大臣 現在は職能分離の方向にいっておりますので、これをデパートのような方式にするという方向ではありません。ただ日本状態を見ますと、事業別に分離をせられておりまして、理論の上では非常に合理的になっておりますが、非常にシェアが小さいということによって、合理化メリットを求めるという場合になるといろいろ問題があるということは、議論の上では言われておりますが、いま行政の方向としてこれを全部合併をさせて、そして銀行でもって何でもやれるというようなこと、証券法六十五条を拡大するのかというような方向ではありません。
  91. 武藤山治

    ○武藤委員 次に、現在市中銀行は預金量は非常に伸びておりまして、預金高も一兆円をこえるような銀行が数行できてまいりました。そこで普通の短期を中心にする金融機関長期ものの定期を持つということは、長短金融を分ける上からもあまり好ましくないという議論があります。すなわちそういう市中銀行の商業用の定期預金というものは一年ではちょっと長過ぎるのではないか、一年ものは廃止したらどうか、こういう意見がありますが、そういう方向については銀行局はどう検討しておりますか。
  92. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 定期預金は現在では一年定期が中心になっております。一年が長過ぎるということは、つまり戦前は六カ月でございましたので、一年というのが長いのではないかという御意見のようでございますが、私はまあ資金源としてある程度は安定した資金を持つということ自体、これは融資の面では短期金融が中心でございますけれども、実際の例を見ましても一年定期がさらにはほとんど自動的に期限が更新されて継続して銀行に返るというものも非常に多い現状でございますから、無理にこれを半年に区切ってそして更新手続をふやすということもあまり意味がないのではないか。問題は融資面にある。ただし一部に要望されておりますような二年定期や三年定期ということになりますと、これは長短がたいへんあやしくなりますので、まあそういうことは避けたほうがいいと思いますけれども、一年程度のものはあえて長過ぎるというふうに考えなくてもいいのではないかと思っております。
  93. 武藤山治

    ○武藤委員 そこで大臣、いま預金利子の税率が五%から一〇%に引き上げられるのを機会に銀行側では二年ものの定期もひとつ創設をしたい、こういう希望があるようでありますが、大臣はそういう希望を満たしてやる意思なのか、それともいま銀行局長が言うように、一年ものがもうせいぜい最高限だ、こういうお考えでおるのか、大臣見解をひとつお伺いしたい。
  94. 田中角榮

    田中国務大臣 一年ものが必ずしも最高限であるというふうに固定的に考えることはないと思いますが、いま五%から一〇%に引き上げられたことによって直ちに二年ものを認めるというような情勢にはありません。同時にこの二年ものを認める場合には金利を引き上げよう、こういう前提があります。私は貯蓄増強論者でありますから、なるべく安定的、固定的な資金源を持つということが好ましいことだとは思いますが、いますぐ二年ものをどうするとかという問題は慎重に考えるべきだと思います。
  95. 武藤山治

    ○武藤委員 現在の様子を見ますと、長期信用銀行が一年ものの割引債を出しておったり、また貸付信託の二年ものがあったり、東京銀行の発行する三年ものの債券があるというふうに、まことにばらばらのような印象を受けるわけです。こういう長短金融分野が画然としないようなあり方というのは、一体これで好ましいのかどうか。ここいらについては銀行局はどんな検討をしておるのか、伺いたい。
  96. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いま興長銀のみならず、借券を発行しておる金融機関がその一年の割引債をかなり発行しております。これはやはり最初のスタートのときからそういうことが行なわれたのでございますが、できることならばこれはすべて長期債でまかなうのが、そういう長期金融専門機関にとってはそれが一番適当であろうと私は思います。しかし資金源の全体から見まして、やはりかなりの割合を占めるそういう割引債のようなものをこの際減らして長期債に振りかえようといたしましても、これは実際問題としてなかなか困難でございまして、そういう興長銀のような長期信用銀行をある程度育成するという立場をいままでもとってきておりますし、これからも急にその必要が非常に減るというところまでいかないわけです。一方に社債市場の発達がない。社債市場はどうやらかろうじてある程度のものを発行を続けておりますけれども、いわゆる流通市場が全く確立しておらないという状態のもとにおきましては、これらの興長銀等の果たす役割りというものを無視することができません。そこでこういう一年ものという、一つの便宜的なものと思いますけれども、やむを得ずそういうかっこうを続けていくことを私どもは容認せざるを得ないんじゃないかと思います。それから東銀債のような場合、期限と金利との関係があることは御承知と思いますが、長いものを発行しますとやはりそのコストが高くなる。幾ぶんでも金利の安いもので、しかしあまり短いものでは困るというので、やや中途はんぱといいますかそういう期限のもので資金を調達しているわけでございまして、それらは実際の東銀の立場からする資金コストというものがかなりそこに配慮されている。資金コストをあまり高くしたくないために期限を縮めているんだ、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  97. 武藤山治

    ○武藤委員 この割引債券は一応利付債券の補完的役割りとして最初認めたわけでしょう。それが補完の効果をあげ、役割りを果たした場合には、そういうものは当然整理していかないといかぬと思うのです。そういう点で私は、どうも画然としないという表現を使ったのはそこいらにあると思うのですよ。そういう点についてはどうですか。
  98. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 やはりこれは突き詰めますと私は社債市場の問題になるんじゃないかと思うのです。いまの、発行しております五年ものの金融債にいたしましても、大部分が金融機関消化にはなっておりますが、それが自由に流通するような状態にはない。ついでに申しますが、コストの点では一年もの必ずしもそう安くはないのです。一年でございますけれども、単位が非常に小さいということもありまして、また毎年毎年新しく切りかえるわけでございますから、コストの点から見ると五年ものに比べてそう著しく安いものではございません。発行者側にとってはそう変わらないわけでございますから、そういう点からいえば割引債はほんとうならば長期のほうにより多く移していくというほうが適当であろうと思いますが、結局はその長期のものを、じゃあそれにかわって十分に発行し得るかどうかという点にかかってくるわけでありまして、やむを得ない状態になっている。  それからもう一つ、そういう一年のものは実はいろいろな面で便宜に扱われている点もあります。コールのための担保として多く使われるということもありまして、そういった機能をいま全然無視するわけにはいかないのではないか。長い目で見ますと、私はやはりいまおっしゃいますように長期のほうに重点を移していくのが筋ではないかと思います。
  99. 武藤山治

    ○武藤委員 そこで、画然としてないという例の一つとして、やはりどういうわけで認めておるのか知りませんが、大和銀行は信託業務を認められておるんですね。他の銀行は認められておらない。そうすると大和銀行だけ認めておく何か積極的な理由というのがあるんですか。
  100. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 信託分離の方針は御承知と思いますが、確かにその方向に沿ってやってまいった結果、いまでは大和銀行だけが——ほかに日本信託がございますけれども、小さいところで、これは制限的にまだ信託を行なっております。これはしかし規模としては問題にならないものでございます。他の地方銀行等で少し行なっておりましたものは全部すでに整理されております。大和銀行につきましては、いままでその分離にあたりまして原則的には一つだけの分離、単独分離というものを認めておりません。必ず複合体にいたしまして、それを新しい信託銀行をつくる条件にしておったわけでありますが、大和銀行とそれから日本信託という小さいのと二つ残っているということでございます。私どもはこれはやはりどうしてもいずれは分離のほうに向けなければいかぬけれども、大和銀行の経営が非常に信託依存といいますか、それに傾いておる。これは大和銀行の経営についていろいろ問題はありますが、外部負債が非常に多い。分離いたしました場合に大和銀行の存在、銀行部門をどうするかという点が非常に問題になると思います。つまり普通の従来のような都市銀行として銀行部門だけで単独に存立し得るのかどうか、それから現在の大和銀行の経営のほうから見まして、信託を分離して直ちにうまくいくものかどうか、そういう点についてなお検討する余地があるということで今日まで見送ってまいったのでありますけれども、私どもとしては多少無理がありましても、この際、ほとんど一行でございますが、それだけが残っているという点についてはやはりこれは釈然としないものがあるので何とかしなければならぬだろうということで、目下非常に急いで検討しておる段階でございます。
  101. 武藤山治

    ○武藤委員 目下急いで検討しておるようでありますから、いつごろを大体めどに、また大和銀行側の言い分はいつごろなら一応画然とできるという返事をしておるのですか。
  102. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 日時についてははっきり申し上げられません。大和銀行の九月期における決算内容が非常に悪いわけでございます。それらにつきまして、銀行経営全体としての、何といいますか、どうするかという点について厳重な指導を行なっておる段階でございます。そういう銀行が立っていかないような指導をするわけにいきませんので、何とか生かしながらわれわれのほうの方針もあわせて貫徹したいという気持ちでございます。そう長くいつまでも放置するという考えではありませすが、いつまでということはちょっと申し上げかねます。
  103. 武藤山治

    ○武藤委員 次に長期金融のことにちょっと目を転じてみたいのでありますが、いろいろ資料をもらって数字を調べてみますと、どうもしろうとの私たちでさえもこれはなかなか金融機関としてもたいへんなことだなあという感じを持つのであります。それは長期三行の発券状況を見てみますと、利付債券、割引債券について、利付債券が一兆五千億円、それから割引債が六千億円今日残額がある。そのうち利付債券のほとんどが市中銀行と雑金融機関で消化しておる。一方公社債の発行残高を調べてみると一兆三千七百億円ある。これも九〇%以上がこれら金融機関が消化をしているという姿ですね。こういう姿は一体正常な姿なんだろうか、私は非常な疑問を持つわけであります。そこで、こんなにも金融債をどんどん発行して各金融機関引き受けるのですが、一体気持ちよく引き受けてくれているのだろうか。ぶつぶつ文句を言いながら、あとの見返りのことやいろいろ考えたり、しようことなしに引き受けておる姿ではないだろうか。そこらの実情は一体どうなっておるのか。あなたはいままで銀行監査をしておる立場上、銀行側はこういう今日の発券状況に対しては一体好ましいと思っておるのか、その辺はどうでしょう。
  104. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 興長銀等の金融債金融機関が非常に多く受けておることは事実でございます。これは言ってみれば、たとえば都市銀行にいたしましても、自分が直接長期の貸し出しをすることは適当でない、そこで興長銀債を引き受けまして、その興長銀のほうから自分の取引のある大企業等に長期の貸し出しが行なわれる、そういうものについて、ある程度金融債を買うことによって、また自分のかかえておる系列企業に対する長期の融資もやってもらうというような、暗黙のそういう了解もあるように見受けます。したがいまして、これは金融の繁閑によりまして金融債の売れ行きがよくも悪くもなるわけでありますが、比較的安定的に発行されておるという点は、他の債券、社債よりは目立つように思います。それはそういう金融機関と興長銀との結びつき等がありますので、そういった比較的安定的な状態で銀行に持ってもらうことが必要である、こういうものだと思います。  もう一つは、それらの特に長期金融債はオペレーションの種にもされておりますので、そういう点では金利のいかんにかかわらず歓迎される向きもある。いつもそうだというわけではありませんが、とにかくオペレーションの対象になっておる点は一つの強味になっておるというふうに見ております。
  105. 武藤山治

    ○武藤委員 そこで、これだけの金融債を発行して、興銀や長銀は吸い上げた資金というものを中小企業にはほとんど貸さない。長期銀行などは貸すという約束にはなっておっても、社債を発行できるような条件のいい会社に融資をする。私はどうもそこらが気に食わぬのですよ。やはりこういう金融債を雑銀行や市中銀行にどんどん消化させるならば、興銀や長銀がもっと社債発行もできないような会社にも貸せるような制度にしなければいかぬのではないか、そういう私の見解に対しては銀行局ではどうお考えですか。
  106. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 中小企業等に対しまして全く考えてないわけじゃありません。特に雑金融機関等が他方銀行以下で引き受けたものに対して、還元融資といいまして引き受けた額の何割かを代理貸しを認めておる、こういう点がございますから、言ってみれば、自分の金で債券を買ったが、そのうちのある割合は自分の取引先にまた長期資金として貸し付けておる、こういう制度がございます。また一方で商工中金債などは、これはやはり金融機関引き受けておりますけれども、これももっぱら中小企業中心に貸し出しが行なわれておりますし、不動産銀行は最近非常に急速に大きくなったわけでありますが、これの貸し出しも、その一件当たりの資金をとってみましても、中以下の企業を対象とする、大企業貸し出しということにはあまり重点を置いておりません。一年間に貸し付ける総額はかなり大きなものになっておりますが、中堅企業以下の企業を対象に貸し出しを行なっておるはずであります。また全体として大企業に対する貸し出しが興長銀等で大き過ぎるのではないかというお話もありますが、一方で社債市場等によって調達されるものが非常に少ない現状においては、都市銀行が常に資金不足の状態にある、相当な金を外部から負債として仰がなければならぬような状態でありますが、資金全体の需給バランスを見ますと、興長銀の資金が大企業にいろいろ多く行って、なおかつ都市銀行は資金繰りが非常に不足しておる、こういうふうな形になっておるので、全体としては構造的にはやむを得ない状態であるというふうに私どもは考えております。
  107. 武藤山治

    ○武藤委員 しかし銀行局長、伊勢湾台風が起こった当時までは、金融債の発行のワクというものは政府のほうで一定の規制をしてワクをつくっておったように、私は書物を通じて知っておるのでありますが、それが現在ではあまり金融債発行についての計画というか規制というかそういうものがないのではないか。そのために先ほど読み上げたような膨大な発行金額になって、しかも大蔵省資料によると、三十九年十二月に店頭消化した金額が載っておるわけでありますが、店頭数の非常に少ない発券銀行があの統計に出ているし、どう考えても店頭消化できるとは考えられない。もしあの数字が事実とすれば、半強制的に、歩積み、両建てみたいに、融資先に両建てで消化させておる、こういうような感じがするわけです。それは結局発行のほうに少しノーズロになっておって、金額に制限がないからこういうことになるんじゃないだろうか。こんなに出しておっていいだろうか。その点はどうでしょうか。
  108. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 これは発行の状況がそのときどきの資金情勢で変わっておりまして、年間で一行当たりにしますと七百億くらいしか消化できないときもあれば、千億くらいの純増を来たす場合もございます。——全体でありますが、一行当たりになりますと、不動産銀行の発行は、これは利付債に重点が置かれておりますが、これはかなり高くなってきております。興長銀と利付債においてはそう変わらない程度の消化をしておる。これが全体の発行額、毎月の発行額を大きくしている主たる原因であるように思われます。しかし最近では興長銀の長期債の消化も非常に伸びておるように思います。それについて制限を加えるべきかどうかという点は、あまりこれについて私どもが統制するような考えを持つほど、つまりそれほど危険な、いわば市場を撹乱するようなものにはなっていないというふうな見方をしておるわけでありまして、いまの全体の純増額が大き過ぎるとおっしゃりたいのでございましょうけれども、私どもはそれほどとは思っていない。その程度の消化があっても別に弊害とは言いがたいのではないか。ただ店頭での、つまり各支店における消化、そういうものが大き過ぎる陰には、何か借り入れに対して無理に持たすものがあるのではないか、両建て的なものが含まれているという点、これは私どもも注意いたしております。そういうものがほんとうに目立つようであれば、それは全然相手方が自主的に買うというものをいかぬとは言えませんけれども、押しつけて売るというふうなことは結局両建てでございますから、そういうことは禁止してまいりたいというふうに考えております。  その実情把握はなかなか容易ではございませんけれども、そういうものが中にあるということも、あながち否定いたしません。
  109. 武藤山治

    ○武藤委員 私が言いたいのは、結局、社債市場を育成拡大をするという見地から見た場合に、こういう金融債がどんどん発券されるということはあまり好ましくない。社債市場を育成するという見地からいくならば、もう少しコントロールする必要があるのではないか。あなたのいまの最後の締めでそれはわかりましたが、割り当て時間が一時間ということでありますから、まだ半分にも達しないのでありますが、次の問題に入りたいと思います。  公社債の起債総額を日銀は大いにこれからは拡大化する、大型化をねらっていく、こういうことが日経新聞に発表になって、今年の計画五千五百億円程度と、こう出されておるのでありますが、私は大蔵大臣に聞きたいのでありますが、一体大蔵大臣は、財源が苦しいから苦しいからということで、財政投融資のほうへ非常なウエートを持っていってしまって、しりぬぐいはほとんど財投がやっている。本年の財投の金額を見ても、一兆六千二百六億円、去年は一兆三千四百二億円、ここで約三千億円昨年よりもふくらんでおる。その原資の中身を見ると、政府保証債、公募地方債、借り入れ金、こういうものがどうも好ましからざる方向にふくれ上がっていっている。これはやはり民間の資金をかなり圧迫をする要因ではないか。一体そういうめどを、社債市場を育成するなり、日本金融正常化なりに政府はあたたかい援護をしていくんだという気持ちがあるならば、こういう財投計画の中の原資というものの見積もりのしかたに私は非常な無責任な見積もりのしかたがあると思うのです。これだけの公募債、借り入れ金を出すということは、大臣はそういうことは全然金融界にそう影響を与えない、こうお考えになっているのかどうか、そこらをお伺いしたいと思います。
  110. 田中角榮

    田中国務大臣 無責任に民間資金活用をやれば、当然影響があります。しかしその民間資金活用というものにはおおむね限度を設けておって、バランスをとった状態において、百億なら百億をきめておるわけであります。今年度は二千五百億でございますが、来年度は三千二百億だと思います。七百億円に近い。七百億円という民間資金活用ということは、増加になっておりますが、これはこれをきめましたときには、業界の代表が出ております資金運用審議会の議を経て、またこれらの各界の代表は大体これを受け入れられるだろうという了解のもとに、この金額をきめたわけであります。大体三千二百億というと、年間資金量が純増になる各種金融機関すべて入れますと、大体三兆四、五千億ということでございますが、この七、八%ということでありまして、いまの発行状態が、民間資金を非常に圧迫するというような段階にはないという見通しでございます。それから民間資金活用というものも、国民の蓄積を財政投融資をして、計画にのっとって効率的に投資をするということの結果が、国民利益として還元してくるということから考えますと、民間資金は、財政投融資の原資として、これを予定してはならないというような考えにはならないと思います。
  111. 武藤山治

    ○武藤委員 これは主税局ですか国税庁ですか、適当なほうでお答え願いたいのですが、割引債券が現在利子課税されておりませんね。そのされてない根拠、法的な根拠があれば法的な根拠。それからもう一つは、割引電話債券も課税されていないと私は記憶しておるわけであります。どういうわけでこの二つは税がかからぬようになっているのか、他の預金利子あるいは配当と比較した場合に、こういう制度でいいのかどうか、それをひとつお聞きしたい。
  112. 泉美之松

    ○泉政府委員 割引債券につきましては、発行価額と償還額との差額、これを償還差益と申しておりますが、その償還差益について課税するということになるわけでございますが、御承知のとおりその性格からいたしますと、経済的に見れば普通の利息相当ということが言えると思うのでございますけれども、法律的に見ますと、元木債券がありまして、それに対しての五分五厘であるとか、あるいは五分であるとかいった意味の利息債券が別についておるというものではなくて、債券の発行がされ、そしてその発行価額がきめられ、そうして一年たち、あるいは三年たち、あるいは五年たつと、これだけの金額を償還するという契約があるだけでございます。法律的に見ますと、元本債券と利息債券とが区別されておりません。したがって、償還差益というものを利子所得と見ることができないわけでございます。そこで、現在のところでは、所得税の考えでは、個人が受け取る場合におきましては、これは雑所得に入る。したがって、雑所得として申告納税していただくことになるわけでございます。ただ残念なことに雑所得でありますために、源泉徴収の対象になっておりません。そこで、申告納税する際に、それを把握して課税するということがなかなか容易でございません。この償還差益につきましては、かつて申し上げたことがございますが、税制調査会の税法整備に関する答申におきましては、償還差益をいまの法律論だけから利子所得に含めないという考え方には問題がある。したがって、その経済的機能を見て、利子所得として扱うべきではないかという答申が出ておるわけでございます。私どももその線に沿って、これをどういうふうに扱うべきかということをいろいろ検討いたしておるわけでございますが、何ぶんにもこの発行金額相当多うございますし、また現在の流通過程を見ておりますと、利子所得として源泉徴収する際には、償還の際に発行価額との差額分を利子と見て、それに対して源泉徴収の税率を適用するということになっているわけでございますが、そういたしますと、流通過程におきまして、いろいろ価額形成がなかなか円滑にいかないという点の心配がございます。そこで、一説には、そういう形でなしに、発行の際に、あらかじめ発行税的な考え方で税金を納めるような形はどうかというような意見もございました。それらの意見をそれぞれ取り合わせまして、今後どういうふうに持っていくか、証券の市場も考えながら慎重に検討いたしたいと思っております。お尋ねのいまの利子所得として取り扱わない点は、元本債券と利息債券とが区別されておらないという点にあるわけでございます。  電話債券も、もちろん割引債券という形では同じでございます。ただ長期であるという点が異なっておるだけでございます。性格的には同じものでございます。
  113. 武藤山治

    ○武藤委員 時間が経過したので、あとで資料でけっこうですから、もしこれに課税をしたらどの程度の税収になるか、その見積もりを本委員会資料として提出を願いたい。  それから大蔵大臣に対する質問を最後においたところが、時間がなくなったので、またあすでもやりたいと思うのですが、一つだけお尋ねしておきます。かつて大蔵大臣は、興長銀の合併のことをちょっと新聞に発表したことがあるのですが、大臣が合併をしたらよかろうと考えた理由、何をねらいとしてそういうことを発言したのか、その理由は、いまの制度の中に何か欠陥があるから、合併をしたらよかろうと考えたと思うのですね。そのねらいは何ですか。
  114. 田中角榮

    田中国務大臣 私はいまでも興長銀は合併したほうがいいとは思っておりますが、現実的には、なかなかむずかしい問題があるようであります。ですから非常に慎重にやっております。この興長銀の合併というのは、私は日本興業銀行、長期信用銀行、もちろんおのおの歴史があるわけでありますが、これを合わせて日本産業銀行にでもなれば非常に合理的だ、こういう考えを持ったことは事実であります。いま長期資金の供給としてこの二つがございますが、どうもあまり、まあ率直に言いまして、業務提携という問題には、理想的な状態ではないようでございます。同じような業態の会社に、Aの会社には興銀が出したから長銀は遠慮する、Bの会社には長銀が出しておるから興銀は遠慮する、こういうようなことで、必ずしも設備投資資金というものが効率的に運用されておらないという面があると思います。例をあげればあげられます。しかし両方の銀行にはそれぞれの歴史もありますし、私がこの発言をしてから非常に反響が大きかったので、私もすべてが合併しなければならないという考えでもありませんので、推移を見ておる状態でございます。
  115. 武藤山治

    ○武藤委員 割り当ての時間が終わりましたから、失礼いたします。
  116. 吉田重延

    吉田委員長 堀昌雄君。
  117. 堀昌雄

    ○堀委員 本日は、昨年の六月十二日の公認会計士法の一部改正の際に論議をいたしました公認会計士の監査の諸問題についてしぼって論議をしたいと思います。  そこでまず事務当局のほうに、最初にいまはっきり申し上げておきたいし、あわせて大臣にひとつ確認をしていただきたいのは、国会の論議の中で、大臣検討を約束したり、いろいろ約束をしたことは、事務当局はその段階において必ず検討をすべきであるし、報告しますと言ったものは報告をすべきでありますが、検討もあまりされてないようだし、報告も実はあまり出てないのが多いのです。これはやはり事務当局段階では、大臣がここで正式に答えたことについては、大臣からの命がなくとも、自発的に事務当局が処理をして、それ相応のそれに対する結果なり検討の様子なりは明らかにする責任があると私は思いますので、今後はひとつそういうことで、事務当局は漫然と大臣の答弁を聞くのではなく、大臣の答弁については責任を持ってひとつ適法なる処置をしてもらいたいということを最初に申し上げておきます。  実は、私は、だいぶん前から公認会計士の監査の問題に触れておるわけであります。古くは南旺観光の問題、日本不動産の問題、続いて高森産業、まあ上場会社が日ならずして倒産をしたりする案件が、実は過去においてもしばしばございました。そこで昨年六月十二日の委員会で、私は、公認会計士の制度の諸問題について私なりの意見を申したわけであります。それについては大臣もここに二、三答弁をしておられるわけでありますが、ちょっとお忘れになっておるかもしれませんから、あわせてあなたの答弁をここで申し上げますと、いろいろ御答弁はあるのですが、アメリカのようにはいかぬということから、「しかしいまの状態で、いずれにしても証券取引法には公認会計士の監査報告がなければならないというのでありますから、その分だけでももっと実効をあげて、実際上の証取法の規定がそのまま信用せられるようにするにはどうしなければならぬかということを検討してみるべきだというふうに考えます。」こうあるわけです。どうもどういう検討をその後されたか、私まだ聞いておりませんが、それがまず一つ。  その次に、私が、あるべき公認会計士の姿の議論をいたしましたら、なかなかそういうことをするには現在の公認会計士の数では足らぬであろう、公認会計士補助という問題も必要であろうということに触れられて、「そういう問題に対して真に証取法が要求するような実をあげるためにどうあるべきかという問題に対しては、真剣に検討いたします。」ここも「真剣に」です。ずいぶん真剣に検討することにはなっておるのですが、その次には、「ただいまの御発言に対して、仮装それから隠蔽等がある会社がございます。そういうものに対しては重加算税が課されるわけでございますから、こういうケースのものにつきましては、監査報告と比較は簡単にできるわけでございますので、そういうものはやってみたいと思います。」こういうふうに書いてあるのです。  そこでまず、こういうことが、これは私がここで議論をしましたのは、国税庁でいろいろと税務調査をしておるはずです。その税務調査をした資料が国税庁にはあるはずです。そうして片方では、そういうおかしい粉飾決算をした決算が出てきておるとすれば、それと国税庁で調べた要するに財務諸表のあり方というか、まあ真実は一つだという私の考えでありますから、そういう点から比較をして、一ぺんどういうところに問題があったのかということをひとつ点検をしてもらいたい、こういう議論をしたあとでのあなたの御答弁なんです。そこでそういうことを国税庁がやるのか、当時の理財局、今日の証券局がやるのか、それはどちらでも大蔵省がやればいいのですが、やったことがあるかどうか。大臣の答弁は言いっぱなしに終わっておるかどうか、これを確認をしておきます。  最後に、「公認会計士制度は必要である、これを拡充していかなければならないという基本的な考えに立っております。公認会計士がしかし現実に即応して、膨大化しつつある企業の内容を監査をして、第三者に対して責任を負えるような体制にするために、公認会計士の報酬はどうするか、公徳会計士そのものをどうするか、また補助員制度をとるとしたならばそれを一体どうするか、これは法制上の問題もございますし、行政指導もありますし、いずれにしましても、監査役というような内々の者でもって、第三者が信用しないという制度にかわって、公認会計士制度を採用したわけでありますから、これが充実のために格段の努力をいたしたい、こう思います。」たいへんけっこうな答弁をいただいておるわけです。事実はしかし今日田中大蔵大臣は、先般新聞で拝見をしたのでありますが、次々と起こるかなりな大きな企業の倒産について、取引所に監査制度を設ける、取引所は少し監査を行なうことが適当であろうというような趣の発言を新聞が取り上げまして、これに対しては日本経済新聞も、そういうことよりも公認会計士をきちんとしたほうがいいのではないかという社説を掲げておった事実があるわけでございます。そこで、これは前のことですから、そういう検討をしたのかどうか、比較をしたのかどうか。それから最後に言われたように、法制上の問題もあるし行政指導の問題もある。しかし、この充実のために格段の努力をしたい、こう言っておられる。どういう格段の努力をしたのか、これについて最初にちょっと伺いたい。
  118. 田中角榮

    田中国務大臣 大体私が前に申し上げたとおりの考え方を持っております。これからもそうあるべきだと思っております。  税との問題は検討してみるとなかなかむずかしいようであります。税で知り得たものを同じ省の中でも明らかにすることは、個別的にはなかなかむずかしい問題もあるようでありますし、税は税で、非常に明確にするのは、申告よりも過小申告の場合、元財産がある場合問題になります。ところが証券取引法に基づいて議論になるものは粉飾決算であって、全然逆な面が問題になっておるわけでございます。でありますから、税務署は、行ってみても全然問題にならないというような内容の悪い会社に対しては、重点を置いておらぬわけであります。でありますので、徴税上の資料とこの資料を調整をしながら実をあげるということは事実上めんどうなようであります。  それからあとの問題に対していろいろ申し上げましたが、申し上げたことを全然検討しないのか、——検討しております。これはいま証取法の改正案を出そうとしておるのですが、この証取法の改正の過程において、私も証券局といろいろ議論を戦わせまして、もっと王手飛車になるような制度を採用できないかということをいろいろ検討いたしております。しかし制度の上で現在のような事態を完全に掌握できるようなことは、なかなかたいへんだということであります。私も商法上の問題、特に監査役の監査権、公認会計士の監査権——公認会計士の監査権というものは非常に狭められております。これをもっとさかのぼって、ただ出したものが事実と違うかどうかというだけではなく、経営そのものにタッチをするようにするには一体どこで調査するのか、そういう問題を究極的に突き詰めて具体化しなさい、こう言って相当重点を置いてきたわけであります。ところが非常に複雑であり、私自身が上場会社に対しては取引所の権限強化ということと、公認会計士の制度の調和点をどうするかという問題は、重要な問題であり、そういう問題を解明していかなければならぬとは思いますが、時間的に今度国会に出す証取法では間に合わない。ですから第二段の段階、第三段の段階で、そういうものを具体的に解決をいたします、こういう証券局長の答弁でもありますし、私自身もさんざん議論してみても、なかなか一点にしぼって、こういうふうな改正でもってやろうという結論が出ないまま、今度の改正案で御審議願おうということになっております。いい手があれば、ひとつびしびしやろうという姿勢であることは間違いありません。
  119. 堀昌雄

    ○堀委員 考えは変わらぬ、大いに前向きでやるというお話ですが、済んだことはおくとして、これからのことで伺います。  まず事務当局からでけっこうですから、最近一番問題になりました倒産会社の中では、富士車輌の問題、サンウエーブの問題、日本特殊鋼の問題、この三つだけを私、限定して伺いたいのでありますが、これらはいずれも不適正意見のついたものもあるし、つかないものもあったと思うのですが、最近の決算においてだけ問題が起きたのではないであろう。大体日本特殊鋼については第一銀行その他が調査をしておるところで見ても、これは数期にわたって簿外における諸問題があったことでありますしするので、それらの経過と特に問題点、要するに監査上の問題点でどこが抜けておるかという点について、ひとつ簡単に事務当局でけっこうですから……。
  120. 松井直行

    ○松井政府委員 御指摘になりました三つの社会の監査報告と主たる決算の内容に対する監査報告の指摘された間違いについて、御報告申し上げたいと思います。  まずサンウエーブ工業株式会社でございますが、昭和三十九年八月期の粉飾決算の内容は、おもなものを申し上げますと、損益計算書におきまして、まず第一番に売り上げ総利益の過大計上十六億五千万、販売費及び一般管理費、経費でございますが、その過小計上、これが二億六千万、営業外費用の過小計上が六千万円余り、以上の結果、当期の損失が十五億五千万余になるところを、当期純利益四億三千万余と表示いたしております。これに伴いましてバランスシートの面でも、これに対応いたします粉飾事項がございます。内容を申し上げますと、売り上げ債券の過大計上二十一億三千万余、たなおろし資産の過小計上が五億七千万余、建設仮勘定の過小計上が五億一千万余、以上の結果、欠損金合計十億九千万円を利益剰余金合計七億一千万円と表示いたしております。上記の事項につきまして、いま申し上げた事項を個別的に公認会計士は限定意見を述べております。最後に総合意見といたしまして、会社の財務諸表は、昭和三十九年八月三十一日現在の財政状態並びに同日をもって終了する事業年度の経営成績を適正に表示していないと考える、いわゆる不適正意見を表明いたしております。これがサンウエーブでございます。  それから日本特殊鋼の最も新しい三十九年九月期の粉飾決算の内容を申し上げますと、大きいものは受け取り手形、売り掛け金、それから未収金のうち貸し倒れ損失として計上すべき八億七千万余を計上していない。二番目は製品及び仕掛け品のうち七億六千万余の評価減を計上すべきであるにかかわらず計上していない。それから投資有価証券、これも評価減がございますが、五千万余計上すべきところを計上していない。これがおもなものでございまして、以上の結果、当期純損失二十三億一千万余とすべきところを、三億一千万円余と表示いたしております。これに対します公認会計士の監査報告でございますが、いま申し上げました事項につきまして個別にわたりまして限定意見を述べておりまして、総合意見では、よって私は以上を総合して判断すれば、上記財務諸表は、昭和三十九年九月三十日現在の財政状態及び同日をもって終了する事業年度の経営成績を適正に表示しておるものとは認められないとして、不適正の意見を表明いたしております。  最後に富士車輌の問題でございますが、これは三十九年六月期の粉飾決算の内容とその監査報告を申し上げますが、最後の公認会計士の監査報告書におきましては、個別意見といたしまして、売り上げ原価の計上漏れ一千万円余と減価償却基準の変更を指摘いたしておりまして、総合意見として、おおむね適正というふうに報告書を書いておりますが、実はこれは監査の不徹底でございまして、相当の粉飾があったものと思われます。わがほうでその後調査——公認会計士あるいは会社等を呼びまして、これは現地へ参ったわけではございませんが、いまわかりますおもなる粉飾の内容は、売り上げの総利益の過大計上が三億二千万円余、販売費経費等の過小計上、これが九千万円余、以上の結果、当期純損失一億二千万円と表示しておりますが、四億二千万円の限度で粉飾いたしまして、当期純利益三億円余と表示いたしております。以上でございます。
  121. 堀昌雄

    ○堀委員 富士車輌は少なくともすでに数期にわたって粉飾をされて積み上がっておるはずですが、実際表には出てなかったということですね。過年度分を含めた粉飾の額が調査されていないですか。
  122. 松井直行

    ○松井政府委員 最近株主総会に通知いたしました承認を得べき決算の予定の内容を見てみますと、そこで累積欠損約四十億というふうにあとで追加して計上いたしております。
  123. 堀昌雄

    ○堀委員 これも新聞で見たわけですけれども、富士車輌の公認会計士はこの問題のあとで、すでに数期にわたって粉飾の事実を知っておった。しかしそれを発表することが、会社経営に非常に大きな影響を与えると思ったので、これには触れなかった。これは新聞で書いておることですから、真偽のほどはわかりませんから、調査をしていただきたいのです。そこで私は公認会計士法の監査基準の諸問題を少し詳しく調べてみますと、いろいろやはり制度上に問題があるということに少し気がついたものですから、きょうはまずそういう基本的な制度上の問題について伺いたいのです。法制局に伺いますが、公認会計士法第三十条第一項に、「公認会計士が、故意に、虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明した場合には、大蔵大臣は、一年以内の業務の停止又は登録の抹消の処分をすることができる。」と、こうあります。この富士車輪の問題については、あなた方のほうではこれは審問をして処理ができる法律の定めがあるわけですから、まず正当な審問を行なって、この第三十条に基づく処分を行なう必要があるのではないか。これは何人もそういう疑いがあったら、届け出でやれると法律のたてまえでなっております。そういうことなんです。私は法制局に聞きたいことは、第二項に「公認会計士が、相当の注意を怠り、重大な虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を重大な虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明した場合には、大蔵大臣は、戒告又は一年以内の業務の停止の処分をすることができる。」と、こうあるのです。ここでこの法律にある「相当の注意を怠り」というのは、どういうことを意味しているのですか。
  124. 関道雄

    ○関政府委員 相当の注意と申しますのは、公認会計士は一定の資格を備えた者が試験を受けまして、それに通過した者が公認会計士となりまして、そうしていろいろな法律に定めているところの非常に重要なる職分を営むわけでございまして、そういう職分を持った者として客観的に要求されるところの注意、それを果たすことである、こういうふうに考えます。
  125. 堀昌雄

    ○堀委員 そうするといまの答弁は、公認会計士が本来の公認会計士の職分を行なうのに必要な範囲の注意ということですね。その次に、「重大な虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類」と、こうなるのですが、どうもこういう表現は非常に困るのです。重大というのは法律的には、大体どういうことなら重大で、どこからが重大でないというのか。これは表現が私は非常に適切でないと思うのですが、この重大というのはどういうように理解しますか。
  126. 関道雄

    ○関政府委員 先生仰せのごとく重大なというのは、たとえば何円からの誤差があれば重大な経理かというような観点からいたしまして、明確を欠くようでございますが、制度の趣旨が、この公認会計士という公正な専門家が介入することによりまして、その証明をしました財務書類によれば、その会社等の経理の状況、財務の状況が適正に判断ができるというシステムを確保しよう、制度の目的はそういうことになっておるわけでございますから、ここでいう重大ということは、そういう公認会計士が証明をしました財務書類を見たときに、この会社の財務等の状況を判断するについて相当重大な錯誤を起こす。重大という言い方が悪ければ、財務の状況につきまして誤った感覚を受けるという程度の間違いがありますれば、これが重大な錯誤であります。
  127. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの最後のところでけっこうなんです。少なくとも重大というのは、大げさな表現がされておるけれども、間違ったらいけないということでしょうね。その間違いもさまつな間違いというのは、これはまあ常識の範囲としてあり得ることだけれども、間違いとして会計監査上問題になるというものは重大なんだ、こう理解をしてよろしいですね。
  128. 関道雄

    ○関政府委員 確かに間違いでございますが、それによってその会社の財務等についての判断を誤るという程度の間違いでございます。
  129. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると大臣、いまのサンウェーブ、日本特殊鋼、富士車輌だけの問題を言うわけではないのですが、ここに該当している問題は、私はこのどっちかに該当するのじゃないかと思うのです。実は知ってやっていれば、この前から議論しているのですが、故意にやればよくよくよくないことです。さっきの富士車輌の新聞記事が正しいとするならば、粉飾決算だと知っていながらこれをやったというのは、三十条第一項に該当する。ところがなかなか不十分で、当然調べるべきことすら調べてなかったということになると、これは相当の注意を怠っておるという側に該当している。ともかく私は公認会計士の制度をなぜきちんとしたいか、これはさっきあなたがお触れになりましたが、私も日本の資本市場がこういびつなかっこうで、いつまでも日本銀行におんぶしているようなことでは、これはおかしいと思いますから、あるべき資本市場の姿ということで、昨年来あなたと議論をして今日ここに来たわけですが、まあ証券会社の問題、それから今後に取引所なり協会の問題等は、一連の証取法の改正の中であるべき姿の方向にだんだんと進んでいくと思うのですが、一番問題なのは、企業側の問題が実は一つ残っておるわけです。企業の側がやはりこういうような形のことを繰り返して、そうして善意なる投資家に迷惑をかける以上、これは資本市場の再建なんて言ったって、簡単ではないわけです。ですから、いま一番重要な一つの問題点は、資本市場を確立していくためには企業側の、要するに特に証取法百九十三条の二で定めておる監査報告が権威のあるものにならないと、証取法というものの精神は宙に浮くと思うのです。  そこでちょっと順序を追って少し論議をいたしますが、現在監査報告を求めるという百九十三条の二の第三項に言う中に、「大蔵省令で定める基準」、こういうことが実は書かれておるわけです。そこをちょっと読みますと、百九十三条の二の第三項に「第一項の公認会計士の監査証明は、大蔵省令で定める基準及び手続によって、これを行わなければならない。」こうあるのです。そこでこれは事務当局でけっこうですが、大蔵省令ではどう定めていますか。
  130. 松井直行

    ○松井政府委員 財務諸表の監査証明に関する省令、昭和三十二年の省令がございますが、この第三条一項には、「監査証明は、監査を実施した公認会計士が作成する監査報告書により行うものとする。」、この次の第二項でございますが、「前項の監査報告書は、一般に公正妥当と認められる慣行に従って実施された監査の結果に基いて作成されなければならない。」とございます。
  131. 堀昌雄

    ○堀委員 証券局長、それはちょっと違うように私思うのです。私もちょっと調べてみたのですが、これではどうもあなた方のあれと違うのです。いろいろ調べたら——これは違うかもしれません。あなた方、本来省令のほうを言う人間が言っているのより、私のほうが違う意見を言うとおかしいが、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則というのが、大蔵省令第六十一号で一部改正をされて出ておるわけです。この中に適用の一般原則、第一条に「この規則において定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする。2大蔵大臣が法の規定により提出される財務諸表に関する特定の事項について、その作成方法の基準として特に公表したものがある場合には、当該基準はこの規則の規定に準ずるものとして、前項に規定する一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に優先して適用されるものとする。」だから、あなたのほうのこの大蔵省企業会計審議会中間報告なるものを、あなたのほうでは監査基準としておるようですが、これは大蔵省の中でこういう機構が出しておるのだから、私はずっとこれはこの間いろいろなものを読んで調べてみたけれども、財務諸表に関する省令の表現には何らそういう適切なことは——ただ慣行に従って公正妥当というなら、何も大蔵省のこの中間報告に基づく基準に適合しようとどうしようとかまわないので、私はどうもそうやってみると、そうではなくて、これはその作成方法の基準として特に公表したものがある場合には、これにまずよりなさい。それ以外のものについては、一般公正妥当なものによるというのでないと、一般公正妥当なものというのは、それでは何も大蔵省の基準にかかわることはないのではないか、それでは法律で定めたって、省令に定めたということになっていないのではないか、こういうふうに思うのですが、どうですか。
  132. 松井直行

    ○松井政府委員 財務諸表の監査証明に関する省令第三条、いま読み上げました監査証明の手続に関するこの条文を受けまして通達でこう解釈いたしております。「第三条に定める「一般に公正妥当と認められる慣行」とは、さしあたり、昭和三十一年十二月二十五日企業会計審議会中間報告のうち監査の実施に関する基準及び準則をいうものとする。」こういう解釈をとっておるわけでございます。
  133. 堀昌雄

    ○堀委員 わかりました。それなら、まあそれでいいのですが、大体省令で定めるといって書いてあるのに省令になっていないというのは、これは法律が第一に適正に守られていないのではないか。ワン・クッションを置いていまのあれでは公正妥当なものだと書いて、さらにこれを通達で要するに補完をして、そうして何か中間報告なるものが基準であるなどという、大体非常にこれはまどろっこいことで、私はここらを見ると、大蔵省側としてややこの問題については、検討が少しおくれておるのではないかという感じが卒直に言ってしたのです。私はいろいろ調べてみたけれども、こまかい通達までは私も専門家ではないからわからないが、読んでみたら、どうもこっちのほうが筋が通っていないかと思うくらい、あいまいな状態です。  そこで私はいまのいろいろなこの問題の中に、どこかに問題があるのではないかというふうに少し分析してみて、いまの中間報告の中には、「売掛金については、帳簿記録又は人名別及び期限別に分類した売掛金明細表により売掛金勘定残高の内容を検査し、特に必要ある場合には、債務者に確認を求める。」だから、要するにこれまでの状態は、この基準ではまあ一応会社が出したものを見て、それで判断しなさいということがたてまえです。特に必要があったときだけ債務者に確認を求めるということですが、一体債務者に確認を求めずして、売り掛け金の実情がはっきりつかめるのかどうか。それは何も非常に過去において問題がなくてきちっとしていればいいですが、一回もそういうことをやっていないとすれば、これは問題だと思います。売り掛け金の実情、いまの三件いずれもごまかされているわけですね。  その次に「棚卸資産については、責任者の証印ある棚卸表を求め、特に必要ある場合には、実地棚卸に立会を行うこととし、」云々と書いてある。特に必要がある場合には実地たなおろしに立ち会うけれども、それでなければ会社の出したものを認めなさいということなら、これは真実をつかめるかどうかということについて、きわめてあいまいな状態になる。さらに「買掛金及び未払金のうち特に必要あるものについては、その内容を証憑書類によって検査し若しくは債権者に照会して確認を求める。」みんな特に必要がなければ、この重大な売り掛け金、買い掛け金、たなおろし等の問題は、全部会社側が提示する書類だけでやれということでは、これは私は基準自体が甘過ぎて、これでは私は会社側とすれば、そううるさいことを言ってくださるな、基準がそうなっておるからこれでやってくださいと言えば、会計士側としては中に、一歩踏み込んでその真実の債務状態を監査することは、非常に困難になるのではないか、こういうふうな感じがするわけです。  そこで私は一つここで大臣に提案をしたいのです。その提案をしたいことは何かといいますと、いろいろな問題がかみ合っておりますけれども、いまどうしても必要なことは、その会社の真実の状態を第三者である投資家に知らせなければならぬ。これが一番重大な問題だ。真実を伝え得る手だてを公認会計士たちに与えなければならない。それをどうやって与えるかといえば、これらの基準がもっと明確にされるということ、これが私は当面どうしても必要ではないか。もし原則として実地たなおろしに立ち会うのだ、しかし公認会計士が必要がないと認める場合にはよろしい、こう逆になっておれば、これは非常に問題が違ってくる。売り掛け金、買い掛け金等の処理についても、これが裏返しになっておれば非常に違うと思うが、残念ながらいまの基準では——過渡的な経緯があったかもしれません。この中間報告は昭和三十一年に出されているのですから、すでに十年間実はたって、そのまま昭和三十一年当時の中間報告の基準で——その当時はいまのような倒産がこういうかっこうで起きていた時点とは違うのです。だからここ最近のような状態が続くならば、私はどうしても監査基準は、こんな中間報告などというものではなくて、大蔵省令、法律に定めるところによって、百九十三条の二第三項にいう「大蔵省令で定める基準及び手続によって、これを行わなければならない。」という法律どおりを具体的に省令に記載をして、そのことによって監査が公正に行なわれる端緒を開くべきではないか、こう思いますが、大臣、いかがですか。
  134. 田中角榮

    田中国務大臣 現行の監査基準は企業会計審議会の大蔵大臣に対する答申でありますが、法令下はございませんけれども、監査証明省令によって援用されておりますので、これを使っているということでございます。しかしそれをもっとこまかくやったほうがいい。もちろんそういう考えはございます。これらの問題に対しては、企業会計審議会にひとつ答申を求めようという考えでございます。これも公認会計士という制度はございますし、だんだんよくなりつつありますが、しかし医者が死亡診断書に対して虚偽なものを書いたとか、そういうもののように厳密に適用されないというところに問題があります。それでもう一つは、法令の書き方そのものを私もずっと読んでみましても、いわゆる企業責任者と、それから第三者に対して監査報告を出す人との間に、なるべく権限紛淆が起こらないように、企業責任者にもう必要やむを得ざる場合のみ実地検査ができる、こういうような姿勢がこの法律の基本になっておるところにも問題がございます。もちろん証取法の二百条には罰則もございます。罰則もございますけれども、こういうものでもって徴役刑になったというような例も非常に少ない。ですから医師とか、そういう非常に手きびしく法律を適用しておるのと、まあこれは商習慣の中でつぶれる会社はあったのだ、つぶれるようなときには大体びほう策をやるものだ、こういうようなものの考え方自体が、今日の事態を招いておるのであって、法制の整備も必要でありますし、もちろんこまかい省令その他の規則も必要でありますが、公認会計士と企業責任者との問題、それからその企業責任者が何年間にわたって粉飾をしてタコ配をした。タコ配をしただけだったらまだいいのですが、増資をしておる、こういうことは法律上も非常に問題があります。これは詐欺罪じゃないか、こういう問題もあって、一般刑法によって追及も受けべき問題でありますが、経済事犯に対しては非常に甘いというところに問題があるわけでございます。こういう問題に対しては証取法の改正を機会に、われわれも検討いたしておるわけでありますし、具体的な問題を提示して企業会計審議会の答申を求めたい、こういうことを考えておるわけでございます。
  135. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで私もう一つ提案がありますのは、実はいまの公認会計士が監査をすることは、法定監査は上場会社ならしてもらわなければなりません。ところがまあいえばあまりありがたいことではないというような感覚が、企業側にあるのではないかと私は思うのです。そこでこの前実は私、国税庁の問題をだいぶ議論したのですが、私は会社の実態を知るという点においては、税だって、それから監査だって、同じではないかと思うのです。会社の真実は実際は一つしかないのです。それは粉飾決算をするか、あるいは粉飾した税務申告をするかは別として、その会社の実情というのは、真実は一つしかないのだから。そこでプロセスの中で、たとえばもしたなおろしのようなことは公認会計士がやって、そしてこれは公認会計士が立ち会いをするという原則になれば、実施たなおろしの立ち会いをするということになってくれば、立ち会いをしたものについては税務署側としても一応それを認めましょう、あるいは売り掛け金、買い掛け金についても、相手方との確認をきちっとしたものについては、税務署としては取り扱い上これを一応認めましょうというようなことになれば、税務署が調査するのも公認会計士が調査するのも同じなら、公認会計士にしてもらったっていいではないかということになってきて、かなりそういうものが実は無理な負担でなく行なわれるようになる。ただ税のほうの側としては、そう言ったところで公認会計士がやった全部が信用できないと思いますから、必要に応じてまた検査すればいいわけです。  そこでもう一つ提案があるのは、公認会計士がやって、これは税として使ってくださいといって出したものと、今度は税務署が行ってきちっと調べてみたら、違った結果がもし出てきたら、この不実のものなり、相当の注意を怠ったということで、公認会計士法三十条によって処分をする。いいですか。公認会計士の権威を認めます、ひとつあなた方のそういう実地たなおろしをやった、立ち会いをしたものについては、税務署も一応認めますということになれば、責任があるのですから、それに伴う義務としては、間違ったことをやったらそのかわり処分をしますというかっこうで、表と裏で処理をして、少し税務行政上の問題の中に一種のメリットを加えてやるということになると、企業側とすれば、いまいきなり実地たなおろしの立ち会いを全部やらせるのだ、売り掛け、買い掛け全部確認するのだということになると、あまりいい顔をしないけれども、どうせ税務署でやるのも会計監査でやるのも同じことになるなら、まあ会計監査のほうがまだいいだろうという気持ちも起こり得るでしょうから、その辺どこまで踏み切るかは別として、そういうプロセスについての書類を一つ出せば、それを税務署側が見て、まあ大体このぐらいだなということなら一応認めるし、また抜き取りをして二年目に一ぺんか三年目に一ぺんは実際にやってみる、追認をするという処理をするということで、少し税務行政の問題とこの問題とがかみ合ってくると、私はこの問題がだいぶ筋金が入ってくると思うのですが、大臣、どうですか。
  136. 田中角榮

    田中国務大臣 さすが専門で御勉強でありますから、具体的な現実問題としてどうするかということになると一つの手だと思います。しかしこの税の問題は、その個人の信用、財産の取得権、こういうものは全く守りながら、徴税上やむを得ざるものということでやっておるのでありまして、税の資料とこの公認会計士制度を調和せしむるということは、事実上としてはむずかしいと思います。私はいろいろ考えましたけれども、公認会計士というものが結局その数も少ない、またアメリカのように大きな組織も持っておらない、それから四十万円という年間を通じての費用弁償のようなものも少ないし、そういう意味でどうしても雇われてしまうというような状態、こういう状態から脱却して、公認会計士というものは証取法によって検査をしなければならない義務がある、こういう制度をもっと確立するということのほうが、より合理的だ、こういうふうに結論を出しておるわけであります。ですから、これから公認会計士をしょっちゅう諮問すれば、また諮問するだけではなく、その公認会計士の報告と全く違う企業責任者を、この証取法の二百条の規定に基づいてどんどんと起訴を慫慂する、こういうふうになれば、この問題もまた相当片づいてくると思います。国税庁、いわゆる税の制度とこれを一緒にして合理性を追求するということは、私は税の立場上から考えましてむずかしいのではないかと思います。
  137. 堀昌雄

    ○堀委員 国税庁にちょっとお伺いをいたしますが、私がいま申し上げた——大臣はいまああいう御答弁なんですが、税も最終的には判断をして課税額をきめるのでしょうけれども、それに至る段階というのは、私はやはり税というのは実態調査だと思うのです。その実態調査をやる範囲において、もし公認会計士がほんとうに責任を持って実態調査をし、実地たなおろしをして、それを立ち会いをきちんとして、そしてその会社が出したたなおろし明細表と現実とが合っているかどうかを、彼らが責任を持って確認をしたという資料が出てくるならば、それを税務調査上の調査として認めるかどうかは税務署の側にあるけれども、しかし認めてはならぬということではないのではないか。不審だと思えば調査できるのですから。私がいま言っていることは、それにだけたよりなさいということを言っているのではないので、そういう調査書類が公認会計士制度のようなものから責任を持って出されるならば、一応それを信用して、その調査資料を利用してもよろしいではないか、こういうことです。それをいまの特に重要なたなおろし、売り掛け金、買い掛け金、あるいは関連会社等の経費の中で特に必要なものについては、かなりそういう実態を明らかにさせるような制度をつくる。ただ問題は、私がちょっとつけ加えたのは、とるとらないは税務署の自由であるけれども、ただそれを出して、これを使ってくださいと出したものと、実際の税務署の調査が違ったときには、そういうものは信用できないわけですから、そういう資料は信用してやろうと思ってやったけれども信用できないから、それはだめですよということになれば、それは公認会計士として当然三十条の問題に触れることになるのだから、それは何も事こまかにどうこうというのでなくて、もう明らかに調べが出ているわけですからね。こういうふうにして出してくださいという証拠書類を出しているわけですから、その面での事務的な取り扱いとしては、私は可能な範囲はあるのではないかと思いますが、事務的にはどうですか。
  138. 志場喜徳郎

    ○志場説明員 先ほど大臣がお答えになりましたのは、税法のたてまえと公認会計士の監査基準の原則との間に、必ずしも一致しない面もございましょうし、あるいは質問検査の権限範囲等につきましての立場というものが、税務職員の場合と公認会計士の場合とはおのずから違いがございましょうし、さようなわけで制度として税法のたてまえと公認会計士の監査証明とを結びつけるということには問題がある、こういうふうな立場からお述べになったのだろうと思いまして、この点につきましては、全く私どもも同様に考えております。ただ、ただいま堀先生の御指摘のような調査の実際上の点におきまして、どうせ真実は一つではないか。もっともこの真実の場合にも、客観的外部との取引の場合と、内部取引と申しますか、評価の問題とからみ合いまして、なかなか複雑な様相もございますけれども、ラフにこれを真実ということで申し上げれば、真実はどうせ調べなければならぬし、一つではないかという観点に立ちまして、なおまた最近の税務行政は、真実を追求いたしますが、同時にもしそれに誤りがあれば、今後将来にわたりまして再びこの点についてのかような誤りをしてもらっては困るという、つまりいい意味での申告指導と申しますか、今後はこういう点を注意してもらいたいということを申し上げるわけであります。そうした場合に、その注意された点につきまして、以後の会計処理におきまして、こちらから御指摘申し上げましたとおりに、はたしてやっていただいているかどうかというようなことも、翌期におきましては問題になるわけでございまして、それが翌期以後適正に処理されているということが確認されますれば、もはやその点についての再びあるいは三たびの繰り返し調査も必要でなくなります。さようないわゆる税務調査の効率化という実際の問題から申しますと、とにかく会社と直接利害関係のない公認会計士の段階におきまして、できるだけ手を尽くしてこまかい監査をされるということは、大いにプラスになる、こういうことは考えております。   〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
  139. 堀昌雄

    ○堀委員 いま大臣お聞きのように、私がまた再度質問したように、私は何も税法と一緒にということではないのですが、できるだけ効率的にそういうことを処理することが、かえって公認会計士の責任を高めることであるし、会社側としても公認会計士の協力を得たほうが有利であるということになって、いろいろな、いま見せたがらないことも全部出して見せるということになってくるのではないか、こういうふうに思いますので、これらについては今後、いまの基準の検討等にあわせて、ひとつ大蔵省としても前向きに検討をしてもらいたいと思うのです。これは制度の改正の一つの柱になり得るほどの重要な問題ではないかと思うのです。  その次に、時間もありませんから簡単に申し上げますが、現在一人で監査しているのですよ、日本の場合は。アメリカはパートナーシップということでかなり行なわれているのですが、いまのような基準がかなり高度なものになりますと、必ずこれは一人ではできなくなってくるのです。だから数名の監査を必然的に必要とするようになる。ここに非常に重要な問題がある。そうすると相互牽制が働いてきますから、これまでのように一人でやっておれば、知っておったけれども黙っておったというようなことでは、これはだんだん済まされなくなりますから、そこでこれは二名にしろ、三名にしろと強制するのではなくて、監査基準を高めることによって、必然的にそういうパートナーシップによって監査をせざるを得ないような条件をつくり出すという方向をとるのがいいのではないか。そのことがあるべき公認会計士の制度に、スムーズに発展をさしていくことができるようになるのではないか、こういうふうな考え方も持っておるわけなんですが、そういう意味で、いまの監査基準を高めることは、この制度の問題で扇のかなめのような問題点であるというふうに考えますが、大臣、それらを含めてどうでしょうか。
  140. 田中角榮

    田中国務大臣 さっきの公認会計士が監査をしたものを、国税庁に資料として送ってもらうということは、これは国税庁側としては非常にいいことでありますが、現実問題としてはなかなかいろいろな問題があるということだけは申し上げておきます。これは国税庁に資料が行くということになったら、ますます国税庁の監査は、三年に一ぺんか五年に一ぺんぶつかるかぶつからぬか。これは毎年監査したものが国税庁に書類がそのまま行くということになると、なかなかめんどうな問題が起きると思います。これは現実的に考えてみますと国税庁は税法に基づいて別な角度からやって、まあ人から調書を送ってもらうということは、国税庁の能率化のためにはいいことでありますが、現実問題として考えると、なかなか議論が存する、こういうふうに申し上げておきます。まあこれは検討いたします。そう言ってまたしかられると悪いから……。  それからいまの公認会計士の制度の中で、一人では、これは一匹オオカミといわれるような相当の実力があっても、企業が非常に複雑になってくるし、同時に融通手形だとか、さっきからいろいろ申し上げているような金融制度の上から見ても、商売の内容が非常に複雑になってきておるだけに、的確に把握はできないと私は思います。特に今度の監査の中で、専門の一流銀行が半年かかって、結論としてようやく十五億円の融通手形があったということがやっとわかった、しかもそれは期日がきたから融通手形の認定をしたのだというぐらいに、これはむずかしいわけです。ですから、いまの公認会計士の個人単位のものというのは、これは事業が大きくなってくると、だんだん対抗できなくなってくる。そして結局、調べておるうちに的確なものがつかめない。能力的につかめないのに、処罰は自分が単独で受ける。こういうことになるとたいへんなので、私は一時、弁護士会のように一つの大きなものの中で、相手といかにけんかをしてもその身分は保障される、こういうことになると非常に強いわけであります。ですから、そういう意味で弁護士とか医師に対しては非常に制裁がきびしいから、的確な業務が行なわれておる。公認会計士は非常にむずかしいから、処罰も緩に流れておる。こういうところにますますこの制度が発達しない、こういうことでございまして、まあだんだんアメリカのように企業単位が大きくなると、グループでやるようになるだろうと思います。ですから、公認会計士何々事務所といって何人かを置いて、ちょうど個人の病院から大きな病院になるように、そういう制度が発達するだろうと思いますし、また発達させなくてはいかぬ。この罰則をうんと強く適用しまして、いつも審問をやると、絶えずそういう方向が促進されると思います。
  141. 堀昌雄

    ○堀委員 実はいまの税の問題ですが、田中さんは企業家側に立って非常に心配しておられますが、経団連が「税法整備に関する経団連意見」というものを出しておるのです。その中でこういうことをいっている。「公認会計士の監査結果を税務上尊重すること。〔説明〕近年税務の取扱いが複雑になり、大規模な企業においては、税務経理のために莫大な人員・施設・費用及び時間を費やしている」。こういうふうになっているのです。どうせまた証取法に基づいて公認会計士による権威ある監査が行なわれているのだから、ひとつそのいまの私が言ったようなことについては、税務上これを是認するような方向で処理をしてもらえないか。経団連が言っているのだから、田中さん、そんなに心配しなくても、大いにそうやってやれる方向はあるのではないか。  それと一つ、審問もするけれども、基準を上げることはどういうことになるかといいますと、いま公認会計士は千八百人か千九百人しかいないでしょう。それが基準が上がってしまうと、一人でできません。そうしたら一人でできなければ、監査報告を書けません。監査報告が書けなければ、これは提出しなければならぬとなっているのでしょう。提出できなければ、法令に定めるところによって、その証券会社は——発行者は、この法令の定めるところを守らなかったら、売買を停止することが、大蔵大臣証券取引法でできるのです。だからどうしても法定監査を受けなければならない。受けるためには、こんなに基準が高くなったら、公認会計士は、私だけではできません、あと二人、三人ふやしてください、五人ふやしてくださいということに当然なるでしょう。そこで初めて売り手市場と買い手市場の条件が、いまと逆になるわけです。いまは会社側が、とにかくこいつはうまくやるのだというやつを、お前来い、金を払ってやるぞ——これではうまくいかぬです。これが基準が上がってきて、公認会計士はどんどん要るけれども、千八百人しかいないということになると、今度は公認会計士のほうが、ちゃんとした報酬をくれて、それで監査をやらして、われわれの権威を守ってもらえるならやりましょうと、売り手と買い手が逆になるわけですからね。これのかなめは、私は基準を高めることではないのか、こういうふうに思います。  そこで大臣に、これらの意見をもとにして、その審議会に諮問していただきたいのです。結論を急ぎたいのです。片や証取法は証券業者に免許制というきびしい制度をやる時期でありますからね。一体どのくらいに審議会に諮問をして、この基準は大体めどとしていつ改正してもらえますか。省令にぱちっと書いてもらえますか。ひとつ期限のめどを伺っておきます。
  142. 田中角榮

    田中国務大臣 いままでの考え方でいいますと、慣行にしたがってということでありましたが、どうも緩に流れる。また公認会計士制度そのものをもっと育てなければいかぬ。特に私は資本市場育成ということを真剣に取り組んでおる過程において考えますと、幾ら政府考えても、どんな施策をしても、きのうまで一割五分の配当をしておったのはタコ配だったということでは、これは公認会計士を処罰してもどうにもならない問題でありますから、私はいままでの感じよりも手きびしくものを考えるべきだ、こういう考えであります。またよき慣行ができてくれば、そのときにもっと直してもいいので、私はいまの段階においては多少——多少というよりも、相当積極的に基準その他も手きびしくすべきだと思います。これを審議会に諮問をして答申を求めるということになりますと、半年くらいかかると思います。しかし私は早いほどいいということで、ひまがあると、大蔵省へ帰ると絶えずこういう問題と取り組み、証券局の意見もただしておるわけであります。短兵急に一挙にはできないにしても、一つずつでも、もうあまり議論しないで、議論よりも的確にひとつこの問題を処理するという方向考えていきたいと思います。
  143. 松井直行

    ○松井政府委員 御質問に対する大臣のお答えに、少し補足させていただきたいと思います。公認会計士の監査について、メリットを高めることによって公認会計士の独立性を維持する、これは確かに大事なことであることは間違いないので、われわれも全面的に賛成するのでございます。したがって監査基準の引き上げということが問題になる、これもよくわかります。一つ気になりますことは、監査基準を、たとえば省令等の法令によって規定したらどうかという問題でございますが、これももう一ぺん、御意見ですからわれわれ考えさしてはいただきますが、何ゆえいまこういう慣行基準にしたものになっておるかという御趣旨も、もう一ぺんお考え願いたいと思うわけでございます。  それは監査基準といいますのは、単なる基準とか手続とかいうものではなしに、お読みになってもおわかりになりますように、監査するときの監査人の心がまえといいますか、そういう精神的態度というものも書いてございますし、それから実際実地作業にあたりましてとるべき手続とか、あるいは監査の結果の監査意見の記載方法とかいうようなものも書いてあるわけでございます。したがってこういう精神的態度、一種の訓示的なものというものが、はたして法令になじむかどうかという問題が一つと、それから実地作業についてとるべき手続につきましても、業種別によって非常に差もございます。それから同じ業種でも個別企業によって事情が違うというようなことがございまして、こうした一般に公認されてというか、機能的に発見された準則にのっとってやろうというのが、各国の一般的な制度になっておるという慣例に従いまして、われわれこういう手続をとっておるという実情でございますが、いまおっしゃった御意見、もう一ぺんわれわれも考え直してみたいと思いますが、そういう点よろしくお願いいたします。
  144. 堀昌雄

    ○堀委員 私の言ったのは、法律はそうなっていますから、法律が「第一項の公認会計士の監査証明は、大蔵省令で定める基準及び手続によって、」とそれに書かれているのだから、私は一応省令で書くのがたてまえだ。法律にこう書いてあるのだから、事実はそれを準用するなんと書いていない。たてまえだ。しかしその他の問題もあるでしょうから、最も必要なことは、一番肝心なところだけは省令でちょっと書いてもらいたいわけです。   〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕  その他は何々によると、こうあったっていいので、一般公正妥当なあれだなんということが省令にだけ書いてあって、それを今度は通達で受けてこれを認めろというような、そんな回りくどい行政でなくったっていいのではないかと私は思うのですが、そこはあなた方の内部事情なり、いろいろなことがあるでしょうから、触れません。要するに問題は、そういう基準を高めることが、いろいろな問題に関係をしてきて、この情勢を発展させるかなめになるということを十分認識をしてもらって、そういう方向でひとつ検討をしてもらいたいし、いま大臣、六カ月というお話なんですが、できるだけ六カ月以内にこの問題は結論が出るということで、ひとつ確認をいたしたいと思いますが、大臣、どうですか。
  145. 田中角榮

    田中国務大臣 一時も早いことがいいと思います。
  146. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  147. 吉田重延

    吉田委員長 竹本孫一君。
  148. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は二つの点についてお伺いをいたしたいと思います。  その第一は、加入者引き受けの電話債券の問題でございます。先般もちょっと日銀の佐々木副総裁に伺いましたけれども、はっきりいたしませんので、あらためて伺いたいと思います。  まず最初に、加入者引き受けの電話債券の発行残高が、大体において五千二百七十八億円、こういう巨額に達しておりまして、公募債を含めた電信電話債券の総額の八割八分、九割に近い額を占めておる。これは電信電話公社の建設資金の確保には、多大の寄与、貢献をなしておる。しかもこれは登録債券ではなくて、本券は各方面、各分野に散布せられておると思うのでございますけれども、この点は事実としてお認めになっておるかどうかを伺いたいと思います。
  149. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 そういう債券が電信電話事業に役立っておるという事実は、それはもう当然でございます。ただこの債券の特色は、電話の加入の申し込みをして許された者が強制的に買わなければならない、買わされるという、発行の時点において普通の債券の発行とは全く性質を異にした、特殊な債券であるということがいわれております。
  150. 竹本孫一

    ○竹本委員 次に、この加入者引き受けの電話債券は、流通市場がすでに開設をせられて、東京、大阪、名古屋等においては証券取引所で毎日上場されておる。したがいまして今後における公社債流通市場の再開については、一つの先駆的役割りを持っておるのだという点は、いかがですか。
  151. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 その流通性が非常に高いという声は十分認められますが、しかしそれが正常ないわゆる社債市場の先駆であるというふうに言うにしては、その債券の発行が、先ほども申しましたように特殊な経緯で行なわれますために、その権利は通常の自由な売買で、自由な応募の形で発行される社債等の条件とは、相当開きが出てまいります。毎月いやおうなしに数十億の発行が行なわれる。その何割かはダンピングのような形で、直ちに市場に売られるというものでございますから、その市場価格等の点から申しますれば、一般の社債市場の先駆というふうに言うには、少し違った面があるのではないかという感じがいたします。
  152. 竹本孫一

    ○竹本委員 もう銀行局長、大体その辺を心得て答弁されているようでございますけれども、本件に関しましてはわが党の春日委員が昨年の四月二十一日、文書をもって質問主意書を出して、これに対して四月二十八日に内閣総理大臣から、加入者引き受けの電信電話債券を日銀の適格担保取り扱いを行なうということについては、目下研究中であるという回答をいただいておるわけであります。そこでどういう検討をされておるか、またその検討の結果を伺いたいと思います。
  153. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 その点は先般佐々木日銀総裁が、国鉄利用債について検討の結果をお答え申しましたように、一般の適格担保とするものの条件は、いわゆる公募形式によるものに限りたい、私募の形式によるものを適格担保とすることには、問題があるというふうなことでございましたので、このいまの電信電話の債券につきまして、やはりこれは私募でもあり、かつ強制的に保有せしめられるというふうなものでございまして、いまの債券の制度に切りかえるときのいきさつも御承知と思いますが、これまでは加入者の負担金が大きかった。それに対して債券という形でやれば、電電公社の得る元本は大きくなる、そうして加入者の実質的な負担は変わらない。初めから引き受けた額を下回った価格で売られることを前提にしたような、そういういきさつでつくられておるものでございます。通常の正常な場で発行された債券とも、全くおい立ちが違っておりますので、そういうものにつきましてこれを適格担保として日銀貸し出しの担保に扱うという点、実際問題としてそういう必要はない。銀行等には、もちろんこれは銀行に対する貸し出しの場合でございますから、銀行が担保に不足するという事実は全くなく、先日も日本銀行のほうから説明がありましたように、銀行が適格担保として使い得るものは、いま現に借りているものの何倍もある。あえてこれらの債券について適格にしなければ困るというふうな事態にはなっておりませんし、かつまたそういう発行形式の差という点からいって、研究中であるとは申せ、ほとんどこれは担保として、適格担保として扱うには適当ではないのではないかというふうな考え方が、日本銀行の結論のように私は聞いております。
  154. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで本論になるわけですけれども、その適当でないという理由が、公募によらないものであるということだけにしぼられておると思うのですが、そう理解してよろしゅうございますか。
  155. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 原則としてそのとおりであります。
  156. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで問題は、公募によるものに限る必要がどこにあるかということを、もう一ぺん掘り下げて考えてみたいと思うのです。現実に五千数百億の金が出て、これがぐるぐる回っておる。いま発行のときのいろいろな条件なりあるいは事情が、特殊の経緯によるものであるということでございましたけれども、その経緯がどうであろうと、現実にはそれが流通市場に流れておる、出ておる。そうしてこれをまた担保にとることによって、特に重大な弊害もないということになれば、担保にしていいじゃないか。私の考えでは、それはいろいろ理屈を言いますけれども、結局これをやると、適格担保にするというようなことになると、公募債の消化力のほうに影響があるではないかという御心配から、むしろそれを押えておられるのではないか。どうも特殊な経緯によって出たものであるから担保にしない。それもごくわずかなものであれば、これはもちろん問題になりませんけれども、しかし現実にその必要があって、金額相当大きなものになるということになれば、その出てきた経緯をそれほど問題にする必要はないのではないかと思うのですけれども、その点いかがですか。
  157. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 公募の債券を適格担保にするということは、まあほかにもいろいろ理由はありますけれども、おもな理由としては、その公募による社債の発行市場が円滑にいくようにという配慮があるわけです。ところがこの電電債の場合をとらえますと、その発行を容易にするもしないも加入者の数によっておのずからきまる。加入する以上は必ずそれだけのものを引き受けせしめられるのですから、その発行を容易にするとかしないとかいう問題は生じないわけでございます。つまり一般の社債市場の育成という立場から申しますれば、この場合には特にそういう目的からは全然関係のないものになっているのではないか。一たん発行されたものが、自由に売買されているという事実はわかります。しかしそれをどうこうということは、別にその地方銀行として配慮するほどのことではない。ただ当該電電公社自体は、あまりにそれが急激に暴落したり何かすることによって加入者の負担が非常に大きくなることに対して配慮いたしまして、二十億円の資金を用意いたしまして、多少市場の操作をするということはやっております。発行者としての加入者に対する義理合いといいますか、そういうものの損失が予想されたものよりもあまり大きくならないようにということで、電電公社自体がそういうものに対してある程度のてこ入れをするような組織はでき上がっておるわけです。中央銀行としてそこまで手を差し伸べなければならぬものかどうか。もっとも自由に売買されるということは、これは自由で明らかでございますから、その変動波も実はかなり大きいのでございますが、まあ債券のそういった強制発行して毎月いやおうなしに三十億というふうなものが出るということからいって、通常の場合とはどうしても違ったものにならざるを得ない、そういう感じがいたすわけでございます。
  158. 竹本孫一

    ○竹本委員 もう一度そこを再検討していただきたいと思いますのは、いま公債市場の育成ということが当面の大きな課題になっておる。したがいましてこれをひとついいきっかけにし、前進の橋頭塗に使うということが、全体の金融政策としてむしろ必要、有益な考え方ではないかという点が一つと、それから先ほど来局長の言われる一番大事な点というのは、強制的に加入者に持たしておるのだということでございますが、それは極端にいえば逆になりまして、そういう経緯、特殊な経緯で持たしておるものだけに、かえって流通性を拡大してやるということのほうが、政治としては親切な行き方ではないか。それからもう一つ、特にそれを適格担保にとることによって、どういう弊害があるか、その点をひとつ。
  159. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 実は御説のように、非常に多く出ているそれらのものに対して、その流通性を確保してやるということがいいのではないかということはわかりますけれども、しかし社債市場というものとこれらの特殊債券というものとのつながりは、売買をするという点では全く同じものでございますけれども、一方は強権的にといいますか、必ず持たされるというふうな、発行が全く買い手の自由意思に基づかないものであるという点では、いわゆる社債市場と考えられておるものとは、全然別個のものであるという感じがいたします。それを断わる、発行についてそれを受け取らないわけにいかないという性質のものでございまして、だからそういうものと自由な市場を前提とした自由な起債市場、自由な社債市場というものとを比べてみますと、性格的には非常に違ってくるという感じがいたすわけでございます。日本銀行がこれを適格担保にすることによって、直接非常な弊害があるということは私は言いたくありませんが、しかしなぜそのようなものまで適格にするかという逆のことになりますと、そこまでの必要は感ぜられないで、かえっていわゆる自由発行形式による公募による債券のほうを優遇するというふうな態度を日本銀行が示すべきではないか、そういうところが私どもの見解であります。
  160. 竹本孫一

    ○竹本委員 この点、若干見解の相違があるようでございますけれども、一般にはこれをひとつ橋頭堡にして、公社債市場育成にさらに積極的な手を打つべきではないかという考え方がありますし、いま局長も認めておられるように、これを担保にとらないでもいいじゃないかという意見も成り立ちましょうが、同時にとったから別にどういう弊害があるということもないと思うのです。そこで一番ポイントになる点は、自由な意思によってという問題でございますけれども、自由経済のたてまえから申しますと、それも一つ考え方であります。しかし問題は、先ほど申したように強制的に持たしたものであるならば、なおさらそれを保護して、あるいは育成していくという形で臨むほうが、政治のあり方としては親切な考え方ではないかと思いますので、なおこの点については御検討を願っておきたいと思います。  次にこれは先般すでに問題になりました例の不動産のあっせん調書義務の問題について、いろいろと伺ってみたいと思います。特に私は、これは憲法論のたてまえからもこの問題を少し伺ってみたいと思います。  最初に、この所得税法第六十一条第三項の規定、これによって対象になるいわゆる不動産業者というものが、どのぐらいおるというお考えでございますか。
  161. 泉美之松

    ○泉政府委員 第六十一条第三項の規定は、御承知のとおり三十九年の改正の際挿入していただきましたものでございまして、これによりますと、不動産の売買のあっせん、あるいは地上権、賃借権、地役権の設定のあっせんをする不動産業者ということになっておりますが、省令におきましてその業者のうち、登録業者に限ってこの調書を提出する義務があるというふうに規定されております。同時にまたその対価の額が、二百万円以上の場合に限られるようになっておるわけでございます。と申しますのは、その不動産の売買件数というものは非常にたくさんございます。それから賃借権の設定、地上権の設定という件数も非常にたくさんございますので、そのようなたくさんの資料を徴収するのが目的ではなくて、譲渡所得あるいは不動産所得についての課税の適正をはかるためでございますので、二百万以上のそういったあっせんをした人が、調書の提出義務があるということでございます。現在のところ、登録業者の数はわかると思いますけれども、二百万以上のあっせんをした人が幾らおるかということになりますと、ちょっと私どものほうでわかりかねるのでございます。
  162. 竹本孫一

    ○竹本委員 それではその登録業者がどのくらいおるかということと、それからいわゆるやみ業者がどのくらいおるか、またその割合はどのくらいになっておるというお考えであるか、ひとつ伺いたい。
  163. 泉美之松

    ○泉政府委員 登録業者の数は、私あいにく手元に持っておりませんので、後ほどお知らせいたしたいと思いますが、いわゆるやみ業者の数というのは、それこそやみ業者でありますから、数がわからないのでございます。一説によりますと、地域によって違うようでございますけれども、東京とか大阪といったように、不動産の売買あるいは地上権の設定、貸し付け等が多い地区におきましては、登録業者よりも、登録をしてない業者のほうが多いというようなことも聞いております。しかしこれは地域によってだいぶ違うだろうと思っております。
  164. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、これはいわゆるやみの話ですからよくわかりませんが、半々と見るか、あるいは七割三割と見るか、いろいろ考え方があろうかと思いますが、われわれが理解しておるところでは、むしろ正式の登録した業者というものは三割か四割程度であるというふうに聞いております。しかしパーセンテージの問題は、たいした重大な問題ではありません。そこでこれは先日も横山委員も御質問になりましたように、業者が各分野においていろいろ問題を起こしておるようでありますが、念のためお伺いいたしますけれども、この新しい規定ができる前に、業界全般に重大な影響があるというようなことで、業界に何らかの話し合いをされたかどうか、その点をお伺いいたします。
  165. 泉美之松

    ○泉政府委員 この不動産の譲渡所得あるいは不動産貸し付けの所得についての課税の適正をはかりますためには、従来から法人がそういった土地建物を借りた場合、あるいは土地建物を買ってその対価として代金を支払った場合、この場合にはその法人に調書の提出義務を課しておったのでございます。それは最近のように不動産の取り引きが盛んになっても、非常に多額な不動産の取引をするのは法人が多いであろうという認識のもとに、そういうことになっておったのでございますが、最近の実情を見ますと、個人でも土地を相当多額に購入する者が出てまいりました。従来の制度のままですと、個人が買った場合あるいは個人が不動産を借りた場合、この場合には調書が出ないことになっておりますので、それでは適正な課税ができにくいということからいたしまして、こういう調書の提出の制度を設けたのでございますが、その場合に、買ったほうの個人あるいは借りたほうの個人に調書の提出義務を課するのも、これは法人と同じようなやり方で課するのも一つのやり方でございますけれども、それではなかなか記帳能力のないそういった個人に調書の提出を命ずるのもぐあいが悪かろうということから、そのあっせんをした不動産業者は記帳能力もあるわけでございますので、それに調書の提出義務を課することにしたのでございます。この法律規定する前に、そういう組合と接触は持ってございません。法律ができましたあと、この法律の事項に関しまして、そういう業者の団体にいろいろ接触はいたしましたけれども、その前に接触はいたしておりません。
  166. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで大臣に伺いたいのですけれども、いまお聞きのように、これは業界には非常に一大ショックを与えておるような重大な問題であります。ところがこれができる以前においては、その関係業者に、もちろん一々了解を得るわけにいかない点もあろうことはよくわかりますけれども、ある意味において全然これを抜き打ち的に、あとから気がついてみればそういうむずかしい規定になった。こういうようなことがいま事実いろいろと問題を起こしていると思うのです。そういう行政のあり方というものが、一体政治的にどうだという点について、これは私はある意味において非常に不親切な、いままでの大蔵省にもないやり方だと思いますが、いかがでございますか。
  167. 田中角榮

    田中国務大臣 そう御指摘になればそういうところもあるようでございますが、これは個人が売買してもなかなかつかみにくいということを現実問題として考えますと、個人に出せといってもなかなか事務能力はありませんから、不動産取引業法に基づきまして——登録業者でありますから、法律に基づいて一定の資格要件を備えた業者が、扱った案件に対して一覧表を出すということであれば、業者に対してそういう重い事務量を押しつけることでもないということで、こうなったと思います。しかし不動産業者がやって、手数料をちゃんと払って、徴税に協力をするためにそういうものまで出さなければならぬのかということに対しては、議論はあるところだと思います。ある意味においては、とにかく不動産取引業法というのは、正常な不動産の取引が行なわれるためにつくられたものが、税金の取り立ての協力をしなければならぬというようになったということに対しては、議論は存することだと思いますが、これは国に税金を納めてもらうことでございますので、ひとつがまんをしていただきたい、こう考えます。
  168. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまの点は大臣とわれわれと、ちょっと認識が違うのでございますけれども、大臣はそう重い事務負担をかけるわけではないと思うので、まあ徴税に協力してもらう意味から、不動産業者もひとつ協力してもらいたい、こういうようなお説のように伺ったのでございますけれども、これは事務的な分量からいえば、私は必ずしもたいへんな問題とは思いません。ところが実際問題としては、登録業者に頼めば一々あっせん調書を報告でされる、自分たちのふところが全部表に出される、だからああいう登録業者は敬遠して、そうでないほうに頼まなければいかぬ、こういうものがやはり一般庶民の気持ちだと思うのです。そうなれば、これは単に事務負担の分量の問題ではなくして、いわゆる極端な言い方をすれば、商売が上がったりになる。こういう意味で正規の登録をしている不動産業者には、致命的な打撃を与える。この点についての大臣のお考えを伺いたい。
  169. 田中角榮

    田中国務大臣 二百万円以下は提出不要ということになっております。税金というものは売買があったところには、ちゃんと納めることが合理的であります。ですからごまかすことには都合が悪い、こういう風潮はきっと起こるだろうと思いますが、そう考えることが大体間違いでもあります。私自身もいまの状態として、不動産売買業者でなくてやみ業者によったほうがいいといっても、買うとすぐ登記をしますから、登記をしようとすると、幾らで買った、こういうことになりますので、実際問題として課税をのがれるということは、そう簡単ではないわけであります。ですから、国の立場から見まして、法律に基づいて免許をする不動産業者に調書の提出をお願いする、こういうことがまあやむを得ないことだと思います。
  170. 竹本孫一

    ○竹本委員 ちょっとこれは大臣の認識がおかしいと思うのです。私が言っているのは、二百万円以下はいいが、それ以上のものは届けろ、それ以上のものでもうけたものは税をかけられるのはあたりまえだとか、そうでないとかいう問題を言っているのじゃないのです。あとで本論に入りますけれども、問題は不動産業者にそういう義務を課すということが、適正であるかどうかということを問題にしているわけです。でありまするから、税を納めるとか、課税をのがれるとかいった問題とは、ちょっとポイントが違う。問題は、いま申しましたように、成規の登録をしておる業者のほうには頼まなくなる。頼まなくたって、いま税はどこかでとらえられて納めなければならぬでしょう。しかしひとつ徴税の補助機関にこれを使って、おまえたちあっせん調書を出せ、そういうことを法律なりあるいは省令なりで義務づけていくということが、許されることかどうかということを、きょうは問題にしたいわけです。そういう意味から申しますと、先ほど雷われました単に事務負担の分量からいって、たいへんな分量の仕事を押しつけたのだとか、それはそれほどでもないとかいうことも、私はここで論じようとは思わないのです。問題は、政治的と法律的と二つありますが、まず政治的なほうから始めましようか。  そうしますと、登録しておる人たちのほうには頼まなくて、結果的に見るといわゆるやみのほうに頼むようになる。国家の政策の上から見ましても、やみ業者を育成すると言うと言い過ぎかもしれませんが、育成することになるし、それからそこまで言わないにしても、まじめに登録しておる人と、それからふまじめといいますか、インチキで登録してない人との間に、非常にアンバランスが出てくる。この点について調和を言う佐藤内閣として、はなはだまずいことではないか、こういう点です。
  171. 田中角榮

    田中国務大臣 そういうお考えもありますが、しかしこちらのほうは、税金は国民として正しく納めるのだ、こういう考え方であります。ですから、それを申告納税の制度で、売買をやった人同士からやらせればいいではないかという議論もありますが、個人に調書を出させるということになると、個人は事務能力もありませんし、なかなかたいへんでありますから、法律に基づいて登録されておる業者に、まあこれは昔でも営業税のもとになるように、一体売買をどこでやったか、こういうことはみな報告になったわけでありますから、そういう意味で税を取るためという考え方よりも、取るのにより合理的であり、楽だという考え方ばかりではなく、不動産業、いわゆる不動産取引業法の問題としまして、取り扱った件数はその許認可者に報告することになっておるようであります。その資料が税務署にくるから、税務署はこれを利用する、こういうことでありますから、そう悪いことでもないと思います。あまり佐藤内閣で言う人間尊重と逆行する問題でもないと思います。これは国民イコール国であり、お互いの生活をよりよくするための税金でございますから、そういうことはそんな悪いことではないような気がいたします。ないと思います。  やみ業者の育成ということは、これは結果論的にそういうことも言い得ると思いますが、やみ業者というのは、これは大いに捕捉をして税金を取ろう、こういう考えでございますし、これが捕捉された場合には徹底的にいただきますから、それはそういう不公平はあまりなくなるのではないかと思います。
  172. 竹本孫一

    ○竹本委員 念のために伺います。無登録で宅地建物の取引を業として行なった者は、三年以下の懲役または三十万円以下の罰金に処す、こういうことになっております。しかしそういうもので摘発されて処罰を受けた者の例がどのくらいありますか。
  173. 田中角榮

    田中国務大臣 例はいま警察及び検察庁に聞かなければわかりませんが、必要があれば御報告申し上げますが、あまりないと思います。しかしこれは宅地建物取引業法が施行後まだ日浅いということで、この法律を徹底せしめている段階でありますので、不動産業者というものはできるだけこの法律に背反しないようにということで、——これはいまから六、七年前ぐらい、まだ十年と歴史がないわけであります。だんだんと制度の上で、この制度の中に取り込むように努力をいたしておるわけであります。
  174. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこでもう一つ、これは政治の問題になるわけですけれども、どのくらい業者があるか、これは警察にでも聞かなければわからない。おっしゃるとおりであります。そこで問題は、結局これは不動産取り扱い業者の業界の事情にもよりますが、この業界には、私の理解するところ、登録業者よりも登録していないやみが非常に多いのだ。それがために建設省も困っておるだろうし、まじめに登録した者もはなはだ迷惑しておる。そういったところへこういう新しい義務規定ができたというので、これは先ほど申しましたように、単なる事務量がふえたという問題ではなくして、商売の上にも非常に大きな打撃があるし、業界をある意味で混乱させる問題だと思うのです。そこで宅地審議会というのがあります。これを読んでみますと、その第一条には、「宅地審議会は、建設大臣の格間に応じ」云々とあって、最後のところに宅地建物取引業に関し「重要事項を調査審議し、」こうあります。この審議会、あるいはこれの前身というか、そういうものにこれがかけられておるかどうか、その点を伺います。
  175. 泉美之松

    ○泉政府委員 宅地審議会は、お話にございましたように建設省に設けられている審議会でございまして、建設省のほうでいろいろな格間事項があるときに諮問をするわけでありますが、この問題は、全く税の支払い調書を提出してもらうというものでございます。お話のような、宅地審議会にはかってどうこうということはございません。  それから先ほど登録業者だけに調書の提出を命ずるのは、登録してない業者とのバランス上、不適当ではないかというようなお話がございましたが、本来この不動産取引業法ができました以上は、登録業者以外の者の存在は認むべきものでないのであります。したがって私どもとしては、税法上そういった登録業者にのみ調書の提出義務を課するべきであって、本来存在すべからざる者にその義務を課するのはおかしいという考えでおったわけであります。もっともそういう本来存在すべからざる業者でありましても、その者が事実不動産の売買のあっせんなどをいたしまして、所得を得ております場合は、これはもちろん所得を得ておるわけでございますから、その得た所得に対して課税することは当然でございますけれども、しかし本来資格のない業者にその義務を課するということは、本来認むべからざる者を大蔵省のほうが認めるというようなことになって、好ましくないというふうに考えたからであります。
  176. 竹本孫一

    ○竹本委員 その辺が一番重要な問題なんです。局長の御意見では、一つはこれは単なる課税上の問題だ、あるいは課税技術上の問題であるというふうなお考えでございますけれども、現実の問題の発展は、業界を不当に混乱さしておる。業者は毎日かどうか知りませんけれども、ずいぶん大会もやっておる、騒いでおるというところに、問題があるわけでございまして、これを単に徴税技術の問題であるというふうな認識そのものが、大体間違っておるのじゃないかということであります。この点についてのお考えを伺いたいし、さらにいま資格がないという者は認むべからざるもので、それに義務を課するのはおかしいとおっしゃいますけれども、それに義務を課さないことによって生ずる混乱については、政府当局としては当然これは考慮に入れておかなければならぬ。その点は一体どうであったか。  それからもう一つ、ついでに関連いたしますが、建設省との連絡は全然なかったか、現在もないのか、その点も伺っておきます。
  177. 泉美之松

    ○泉政府委員 まず最初に、建設省との間には、別段この点をめぐって建設省のほうから要望があったりしたことはございません。  それから登録業者と登録してない業者、ともに存在しておることは事実なんだから、片一方に義務を課すると、その義務のない者との間に——片一方を通ずると税務署に調書が出る、片一方を通ずると税務署に調書が出ないから、課税の場合に税務署に資料がないと安心ができるというような事実的な問題を通じて、両者の間にアンバランスが起きるではないか。これは確かにお話のような点があることは事実だと思います。ただ私どもとしては、法律のたてまえとしては、先ほど申し上げましたように、本来不動産取引法上その存在を認められておらない者に、義務を課するのはいかがであろうかという考えをとったわけでございます。ただそういうことのために、現在不動産業界でいろいろ問題が起きておることは、十分承知いたしております。ただこの業界のいろいろの騒ぎの中には、必ずしもこの問題だけではなしに、業界においてだれがヘゲモニーをとるかというような問題もからんでおるように見受けられますので、私どもとしてはそういった点については、よほど慎重に考慮しなければならぬというふうに考えておるのでございます。
  178. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣に伺いたいのですけれども、結局これは課税技術上の問題ということが中心であって、一つは、その結果業界にどれだけのショックなり悪影響を与えるかということについての総合的な判断、政治的な配慮が非常に足らなかったのではないかということについて、それからもう一つは、これはどこまでも課税技術上の問題であれば、台帳が備えつけてあって、その台帳に全部書くわけだから、それではどうして足らないかということについて、ひとつ政治判断を伺いたい。
  179. 田中角榮

    田中国務大臣 言われることはわかります。これを税法の中でもって書いたということは、非常にはっきりとして間違いのないことを書いたということだと思います。これは実利だけをとるということであれば、宅地建物取引業法の中に規定をして、これを報告しなければならないということにしておきまして、報告したものを税務署がもらうということにすれば足るわけでありますが、徴税の問題でありますから、やはり問題があっても明確に税法の中に規定しよう、こういうところに差があるわけであります。まあやみ業者がおることも事実でございますが、どうも水準を高めていかなければならないということで、宅地建物取引業法ができて、認可制度になったわけでありますから、やみ業者というものはみなこの業法に基づく業者にするようにしなければならぬと思います。法律に基づいてなった、資格のある、一定要件を備える業者は、やはり自分の行なった業務を報告するということは望ましいことだ、こういうふうに考えます。
  180. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 私この間横山委員に答えたのですが、いまあなたのおっしゃるように、混乱しておることは事実でございましょう。混乱するということはまことに遺憾なことでございます。だがなぜ混乱するかと考えてみますと、やみ業者がおるから混乱する。やみ業者というものは許すべからざるものなんです。許すべからざるものがおって混乱するから、正当なものをやめろというのは理屈にならぬと思うです。だからその許すべからざるものをひとつ徹底してないようにしよう、これが私は大前提でなければならぬと思うのです。それから出てこなければならぬ、私はそう思います。
  181. 竹本孫一

    ○竹本委員 政務次官なかなか大みえを切られますけれども、先ほどから私が言っているように、やみ業者をなくさなければならぬというのはそのとおりです。ところが現実になくなっていないじゃないか。現実に処罰を受けた人もほとんどいないじゃないか。その現実はどうするのですか。
  182. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 その点は今後ひとつあなたのおことばに従って厳重にやらなければならぬし、またやらすべきものだと思います。
  183. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは厳重にやると言う。ちょうどこれは物価を押えるという政府の言明と同じで、抽象的であって、全くナンセンスで、こんなものを保証にわれわれの議論方向を変えるわけにはまいらぬのであります。もちろん大いにやってもらいたいと思いますけれども、しかし政治のあり方としては、そういうけしからぬやつがいるのだといっても、そんなものはなくするのだといっても、現実になくならないということですから、それがあるということを前提とした行政の指導なり措置を講じなければ、これは生きた政治にはならないと思うのです。政務次官いかがですか。
  184. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 この間も申し上げたのですが、結局は税金を払うのがいやなのか、税金が高いからだ、税金が高いからそうなるというなら、これはよほど考えて税金を安くするようにしなければならぬ。法に違反しておる者はどこまでも徹底してやるということがたてまえでなければならぬと思います。政治上、税法においてももっと考うべきところがある。これは大いに政治的に考うべきことだ、こういうふうに思います。
  185. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこでそのやみを征伐するほうは鍛冶さんに大いにやってもらうことを期待することにしましょう。私は特にそのことを問題にしておるのではないのです。問題は、まじめな登録しておる業者と登録していない業者とのアンバランスの問題、あるいはやみ業者の問題も政治的な大きな問題ですけれども、これから最後に一番重大な問題になりますのは、徴税技術上の便宜のためにそういう義務を持たしていいものであるかどうかということであります。もしこれが許されれば、次から次へとこういう義務を課せられたらたまらないということについては、先般横山委員からもきびしく御質問が展開をされまして、全く同感であります。そういう意味から私はちょっと角度を変えて、それと関連するわけですけれども、この問題は先ほど来私も申しておるし、また局長も申されたように、単なる徴税上の技術的な問題でしょう。徴税の便宜の問題でしょう。そうすると、まず最初に、先ほどこれは御答弁がなかったけれども、台帳を整備するということだけではなぜ不十分であるか、その点を伺いたいのです。
  186. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話しのように、不動産業者は台帳を備えつけまして、それに記入することになっております。したがって、税務署のほうでその不動産業者のところへ行きまして、そこの備えつけてある帳簿に記載してあるものにつきまして書抜きさせていただいて、その書き抜きを持って税務署に帰るということにすれば、それはできないことではございません。しかし不動産業者の方は、その帳簿を税務署が全部調べるということになりますと、はたしていかがなものかとも思われますので、むしろまず不動産業者のほうから二百万円以上の分について資料を出していただくという考えでおったわけでございます。これは税務署のほうで手数をいとわなければ、税務署のほうから行って全部書き写すというのも一つの手でございます。それではお互いにかえって不便ではないか。件数からいたしましても、二百万円以上のような対価の支払いがなされる件数というのは比較的わずかでございまして、全体の不動産取引件数の十何%でございます。その程度のものなら、むしろ業者の方から出していただいたほうがいいんではないかというような判断をいたしたわけでございます。  なお、先ほど申し上げませんでしたが、不動産業者で登録しておられる方は、全国で三万五千五百七十九人でございます。このうち二百万円以上の対価の支払いのあるようなあっせんをされた方だけが調書の提出義務があるわけでございまして、その人の数は、これは推計でございますけれども、大体その三分の一足らずの一万七百人余りの人がそういう義務があるだろうというふうに推定いたしております。そして二月十三日現在におきまして国税庁のほうで調べてみますと、その義務のある人のうち四割六分の方はすでに提出されておるのでございます。
  187. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこでこれは大臣にお伺いしたいのですけれども、いまお聞きのように、台帳が整備されておる。それからもちろん税務署は必要な場合には質問、検査もできるでしょう。結局そうすると台帳は整備されておるんだけれども、それを税務署が行って写すのはめんどうくさい、事務量がたいへんだ、こういうことで、不動産業者三万五千人いるというお話でございますが、それに新しく義務を課すというと、これは全く税務署のお手伝いをかってにやれという天下り命令が出たという形になると思うのですけれども、いかがですか。
  188. 田中角榮

    田中国務大臣 極端にいえばそういう言い方もなくはないと思いますが、これは商行為が行なわれたところには税が起こるわけでありますから、それを的確に相手にも迷惑をかけないでより円滑に徴収をするための一つの方法であります。台帳でいいじゃないか、こう言うと、台帳は整備すべしということではありますが、税務署が行って一々調べるということはかえっていやだということはあります。銀行でも、前にございました支払い調書を税務署に送付をすることはいいけれども、銀行に来て一々やられちゃ、とにかくたいへんだ、こういうことや何かを考えますときに、まあ申告納税の制度をとっておるのだから、取引をやったら台帳に基づいて一筆出してくれ、そうすればそれに基づいて徴税を行なうということであれば非常に便利じゃないか。便利でもあるし、当然、台帳をひっくり返して、ほんとうか、じゃ相手のところにひとつ案内してくれ、こういうことを言うよりも非常に近代的な方法の一つではあります。ですから、不動産業者のほうの側で考えると、われわれだけになぜこんな義務を課するのかということになりますが、常識的に考えてみて、こういうことになじんでくることが新しい方向ではないかと思います。
  189. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間があまりありませんので結論を急ぎますが、宅地建物取引業法第十六条によると、業者は業務上の秘密を厳守しなければならぬという義務があるわけですね。その問題だけをたてにとりませんけれども、私一つ伺いたいのは、憲法の十三条に、御承知のようにこれは人間尊重のことが書いてあります。その次に生命、自由、いろいろのことがありますが、この営業なら営業の自由ということに対する国民の権利については、「公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」こう書いてある。私が一番問題にしたいのはこの点なんです。不動産業者がどうだということも大事なことですけれども、一番大事な問題は、新しい民主政治の中で一番大切な第十三条、そこに、営業の自由といったようなものが「公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と書いてある。裏から読みますと、最大の尊重をしないで、営業の自由に少し迷惑をかける、あるいは結果において制限をする、そういう形になっても、公共の福祉に反するものであればやむを得ないのだ、こういうのですけれども、この規定を設けられた経過において、一体公共の福祉に、それをやらせなければ、これがどの程度に反するのか。この点の検討はぼくはおそらくなされていないのじゃないかと思います。しかしこれは重大な問題なんです。お考えを承りたい。
  190. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたが御指摘になった条文、憲法の条文でありますから、これはもう絶対的に守らなければならない、そういう立場は同じ考えでございます。ただ率直に申し上げて、この問題は取引業法に基づいて台帳を整備しなければならない、その整備した台帳の中で、取引の案件の中で二百万円以上のものは税務署に届けるのではなく、これは認許可者に届ける、こういうことであります。でありますから、税法の中に明確な規定がなくとも、取引業法の中の規定だけでもって、出した営業報告のようなものを税務署がそのまま協定してもらってそのままやれば、私は現実問題としてはできないことはないと思いますが、いやしくも税に関することでありますから、税法の中で明らかに規定を設けてやる、こういうふうに明確にしたわけであります。これが憲法の条章に基づいて個人の権利を相当制約した、個人の自由な営業活動を大きく制約したものだ、そういうふうには理解をしないのであります。
  191. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がありませんのでこの辺で終わりたいと思いますが、もう一度第十三条をよく読みますと、これはしかし大臣、たいへん重大な問題だと思うのです。私は言いがかりをつけたりするという意味じゃないのですが、公共の福祉に反しない限り最大の尊重をすると書いてあるのです。これはおもしろくいえば、税務署の便宜に反しない限り最大の尊重をするとは書いてない。これは重大な問題ですよ。その意味において、公共の福祉に反するあるいは公共の福祉を促進する、推進するためにというわけでもない、反しない限りは全部尊重しなければいかぬという規定でございますから、この基本的人権の第十三条をきわめて厳格に解釈しなければならぬのに、その点がきわめてルーズな解釈できておるのではないか。これはまた機会をあらためて十三条との関係検討をさしていただきたいと思うのです。  それから二百万円の問題も、先ほど来いろいろ言われますけれども、今日銀座は一坪四百万円するというお話ですから、二百万円というワクが、これはやはり重大な問題だと思うのです。五千円を二百万円に上げたんだとおっしゃれば、これはたいへんワクを広げて不動産業者の迷惑も非常に軽減してやるという説明もつくでしょうけれども、現実を考えてみればいま二百万円の取引というのは、サラリーマンがちょっと土地を買おうと思っても、へたをすれば二百万円じゃ買えません。そうするとほとんど全部の取引業務は、みんなこれの申告のあっせん調書を出さなければならない対象になるわけです。そういう意味から申しますと、ここで大臣に政治判断でこの省令そのものが、また実際の前向きの締めくくりとして議論をいたしますけれども、二百万円ということは問題が低過ぎるじゃないか、かりにこれは普通のサラリーマンが土地と建物を買う場合は、その程度のことはむしろ届け出義務をはずすということにしたら、ずいぶん問題が変わってくると思うのです。そういう政治的考慮を払って、この際大蔵省令を再検討されてはいかがかと思いますけれども、大臣のお考えを承りたい。
  192. 田中角榮

    田中国務大臣 金額につきましては、二百万円でしぼったということは、取引の実情を見ますと、大半のものがやはり非常に小さいものであります。東京や大阪という坪三百万円とか、坪百万円とか、坪五十万円とか、こういうものを考えますと、非常にたくさん提出をしなければならないんじゃないかというふうに考えますが、全国の取引から考えると二百万円という数字相当大きな数字でありまして、二百万円以上ということになりますと、提出をしなければならない業者の数、また件数は非常にしぼられるということであります。まあしかし二百万円というものが実情に合っておるかどうかという問題に対して再検討することは、一向差しつかえございません。
  193. 竹本孫一

    ○竹本委員 これで質問を終わりますので、最後に希望一つ申し上げますが、いまお話あるいはお聞きのように、業界にも事前の連絡がほとんどなかった、話し合いがなかった。それから建設省のほうの建設行政の立場からもいろいろ考え方があるだろうと思うのです、複雑な業界ですから。それについても十分な連絡調整はなされていない、こういう事情でございますし、それからいま大臣は二百万円ならば大体のものがこれで救われるのじゃないかというような御答弁がありましたけれども、いささかこじつけであって、どこのサラリーマンでも二百万円で自分の家や土地が何とか買えたという話はあまり聞かない。この現実の上に立って私はあまりとらわれずに、この際不当に——憲法十三条はきょうはあまり議論しませんでしたけれども、そういうところにもひっかかりが出る重大な問題について、この際課税技術だけの問題で大蔵省が取り上げたところにミスがあったわけですから、その辺をもう一ぺん再検討されるように、大蔵省省令の検討だけでも、ずいぶん救われるわけですから、大臣の政治的な善処を要望いたしまして、私の質問を終わります。      ────◇─────
  194. 吉田重延

    吉田委員長 この際、内閣提出製造たばこの定価の決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  御質疑はありませんか。——御質疑がないようですから、これより討論に入るのでありますが、別に討論の通告がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。  おはかりいたします。  本案を原案のとおり可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  195. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  196. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  197. 吉田重延

    吉田委員長 次に、小委員会設置の件についておはかりいたします。  税制及び税の執行に関する調査、また金融及び証券に関する調査のため、それぞれ小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  198. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、設置することに決しました。  なお、両小委員会の員数はそれぞれ十三名とし、小委員及び小委員長の選任並びにその辞任補欠選任等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  199. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  では、後刻委員長において小委員及び小委員長指名し、公報をもって御通知いたします。  次会は、明十九日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十二分散会