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1965-02-16 第48回国会 衆議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月十六日(火曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊藤 正義君       奥野 誠亮君    鴨田 宗一君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    齋藤 邦吉君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       福田 繁芳君    毛利 松平君       渡辺 栄一君    佐藤觀次郎君       只松 祐治君    野口 忠夫君       平岡忠次郎君    平林  剛君       横山 利秋君    竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (国有財産局         長)      江守堅太郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君  委員外出席者         検     事         (刑事局刑事課         長)      伊藤 栄樹君         会計検査院事務         官         (第一局長)  保川  遜君         専  門  員 抜井 光三君     ───────────── 二月十六日 委員藤枝泉介君及び藤田高敏辞任につき、そ  の補欠として西岡武夫君及び山本幸一君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員山本幸一辞任につき、その補欠として藤  田高敏君が議長指名委員に選任された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第五一号)  国際復興開発銀行等からの外資受入に関する  特別措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第五二号)  金融に関する件  国有財産に関する件      ────◇─────
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案及び国際復興開発銀行等からの外資受入に関する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 吉田重延

    吉田委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。鍛冶大蔵政務次官
  4. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 ただいま議題となりました交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案及び国際復興開発銀行等からの外資受入に関する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  初めに、交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。  この法律案は、別途今国会提案することとしております地方交付税法の一部を改正する法律案において、地方財政の一そうの健全化を推進するため、地方交付税総額所得税法人税及び酒税の収入見込み額のそれぞれ百分の二十八・九から百分の二十九・五に引き上げることとしていることに伴い、昭和四十年度以後毎会計年度一般会計からこの会計に繰り入れる、地方交付税に相当する金額の算定の基礎を、これと同様の百分の二十九・五に改めようとするものであります。  次に、国際復興開発銀行等からの外資受入に関する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  国際復興開発銀行等からの外貨資金借り入れ及び外貨債発行は、社会資本の充実及び国際収支補強等観点から、わが国経済にとってきわめて大きな意義を有するものであります。昭和四十年度におきましては、国際復興開発銀行からの外貨資金借り入れについては国際復興開発銀行との間に総額一億五千万ドルの新規借款受け入れの内諾を得ているのでありますが、具体的な機関別の割り振りについては、当方としては、日本道路公団、阪神高速道路公団等に対して借款受け入れの希望を有しており、目下折衝中でありますが、国際復興開発銀行としては、同行としての立場から慎重に審査を行なっており、現在に至るまでいまだ決定するに至っておりません。  また、外貨債発行につきましては、昭和三十九年度において、現在までに、国債はドイツにおいて五千万ドル、政府保証債東京都債、開銀債及び大阪府市債につきまして計六千七百五十万ドル、総計一億一千七百五十万ドルの発行を行なうことができたのでありますが、昭和四十年度については、外債市場の動向は予断を許さず、現在のところ具体的な発行銘柄を確定できない状況にあります。しかも、このような事態は今後も充分予想されるところであります。  この法律案は、このような情勢のもとにおける国際復興開発銀行等からの外貨資金借り入れ及び外貨債発行円滑化に資するため、必要な規定を整備しようとするものであります。  その内容を申し述べますと、まず第一に、従来、国際復興開発銀行等からの外貨資金借り入れ及び外貨債についての政府保証限度額は、保証を受ける各法人ごとに定められておりましたが、これを予算をもって定める総額の範囲内で一括して定めることができることといたしております。  第二に、国際復興開発銀行等から外貨資金借り入れをしている法人のうち、国際復興開発銀行等との借り入れ契約に基づき債券を引き渡す必要があるものについて、借り入れ金額限り債券発行することができることといたしますとともに、国際復興開発銀行等に引き渡すための債券及び外貨債について、外国の銀行信託会社等への事務委託規定を設けることといたしております。  第三に、国際復興開発銀行から外貨資金借り入れをしている法人財産について、他の法律規定上、特定の者が優先弁済を受ける権利を有することとされているときは、国際復興開発銀行は、それと並ぶ優先権を有することといたしております。  第四に、国際復興開発銀行に引き渡すための債券及び政府保証契約をした外貨債の利子及び償還差益については、原則として、租税その他の公課を課さないことといたしております。  以上が交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案及び国際復興開発銀行等からの外資受入に関する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案提案理由及びその概要であります。何とぞ御審議の上すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  5. 吉田重延

    吉田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。両案に対する質疑次会に譲ります。      ────◇─────
  6. 吉田重延

    吉田委員長 金融及び国有財産に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  7. 武藤山治

    武藤委員 まず冒頭に、私は、昨年四月二十二日の大蔵委員会国有財産に関する質疑をいたしたことがあります。それに対して局長お答えをした覚えを今日まだ記憶しておりますか。
  8. 江守堅太郎

    江守政府委員 ございます。
  9. 武藤山治

    武藤委員 さらに同年の二月、決算委員会でかなり詳しい質問をされ、あなたがたいへん苦しい答弁をし、その中で資料提出するという約束をいたしておりますが、私の要求した資料提出決算委員会における資料はことごとく提出をいたしましたか、その点をどうぞ……。
  10. 江守堅太郎

    江守政府委員 二月の決算委員会のほうは、私いまちょっと記憶にございません。
  11. 武藤山治

    武藤委員 私が本日尋ねようとしておる問題は、東海財務局管轄にある東洋プライウッド株式会社なるものに、たくさんな国有地払い下げした問題です。この問題については、当時大蔵委員会決算委員会で各委員が非常な多くの質問をいたしております。それについて江守国有財産局長は、非常に多くの資料提出しますという約束をいたしたわけであります。ですから、きょう私が聞くことは、おそらく資料が整備されておって、どういう質問をされてもあの提出をされた資料に基づいて答えられる、こう私は考えて実はこれから質問に入ろうと思うわけであります。よろしゅうございますね。
  12. 江守堅太郎

    江守政府委員 かしこまりました。
  13. 有馬輝武

    有馬委員 関連。ただいま武藤委員資料提出に関する意見に対しまして、二月の決算委員会資料要求については記憶はございませんということでありましたけれども武藤委員要求確認しなかったのかどうか。もし確認しておるとすれば、その資料提出されなかった理由を明らかにしていただきたい。と申しますのは、委員会の発言については、これは国会議員全部がそれぞれの責任と確認に基づいて、また国政調査の必要上から十分な考慮を払って要求をしておるはずであります。それつにいて記憶にございませんとか、そういったいいかげんなことで国政調査を行政府みずから阻害するような態度については、これは許されない行為だ、こう考えておりますので、この点についてはこの際明らかにしていただきたい、今後のためもあるので……。
  14. 江守堅太郎

    江守政府委員 私が明らかでないと申しましたのは、去年の二月の決算委員会武藤委員からどういう御質問があり、私がそれに対してどういうお返事をしたかということについて、いま明瞭に記憶をしていないということでございます。資料は、委員会の席上御要求になりましたものにつきましては、そのつど全部出しておりますと思います。もし漏れておりましたものがございましたら御指摘いただきまして、直ちに提出をいたします。
  15. 武藤山治

    武藤委員 そこで、全部提出してあるとすれば、きょうの答弁は非常に具体的に、まごつかずに資料で答えられる、こう私は認識をして、これから質問をいたします。  さらに、法務省の刑事局からお見えになっておりますね。さらに会計検査院の第一局長さん来ておりますね。お二人にこれから私の質問をよく聞いていただきたい。というのは、会計検査院でもこの事件については不当事項として指摘をいたしております。さらに刑事局関係では、これが詐欺取得罪の告訴が出ております。さらにそれを不起訴処分にして、今日検察審査会に回っているという段階であることも刑事局は知っておるはずであります。ですから会計検査院立場から、同時に刑事局のほうの立場から、この質疑応答を通じて後に皆さん見解をただしたい、こう考えますので、直接あなたに聞くのでございませんが、少々一緒におって聞いていただきたいと思います。  まず、国有財産局長にお尋ねいたしますが、名古屋東洋プライウッド株式会社に三十八年中に払い下げをした財産、その所在地、坪数、金額、これを筆別に明らかにしていただきたい。
  16. 江守堅太郎

    江守政府委員 財産春日井市にございます旧陸軍造兵廠鷹来製造所でございます。東洋プライウッドに売り払いましたのは、三十八年の一月の九日に九万四千坪、三十八年の四月二十七日に三万三千坪、合計十二万七千坪を売っております。金額は四億六千八百万円でございます。
  17. 武藤山治

    武藤委員 私が尋ねたのは、筆別にという条件があるわけですね。それでは私のほうから言いましょう。  登記の年月日で申し上げますが、昭和三十八年一月二十八日に宅地一万七千八百三十二坪、同じく一月二十八日に番地が違いますが、宅地五千九百九十六坪、同じく一月二十八日に宅地六千三百九十九坪、同じ日に千二百六十七坪、同年の五月十日、六千六十二坪、同日一万五百三十八坪、三十八年一月二十八日、六千六百九十三坪、同じく一月二十八日に一万二千八百九十坪、三十八年の五月十日、一万五千九百八坪、みな宅地です。さらに三十八年一月二十八日に七百三十七坪、同日四百三十六坪、同日五千百三十一坪、五月十日、三百九十八坪、一月二十八日、三百七十四坪、一月二十八日に四百三十五坪、一月二十八日に一万四百四十七坪、このように何筆かの土地を二回にわたって払い下げをした事実は間違いありませんね。
  18. 江守堅太郎

    江守政府委員 そのとおりでございます。
  19. 武藤山治

    武藤委員 局長東洋プライウッド株式会社というのはどの程度の規模のどんな会社でありますか、その概況をお聞かせ願いたい。
  20. 江守堅太郎

    江守政府委員 資本金は二億円でございます。仕事輸出用合板製造を主といたしております。輸出用合板生産面では、少し古うございますが、売り払いをきめます当時名古屋通産局でお調べをいただいたのでございますが、わが国生産量の約一〇%を占めております。また輸出面におきまして、ほぼそれに近い地位を占める会社でございます。
  21. 武藤山治

    武藤委員 何年にできた会社でございますか。
  22. 江守堅太郎

    江守政府委員 二十五年の十月でございます。
  23. 武藤山治

    武藤委員 この東洋プライウッドにこんなにも膨大な面積を二回にわたって払い下げをするということが、輸出だというので、国策に沿う会社だという判定で払下げるほど会社内容規模、そういう点を財務局としては疑わずに、これだけのものをばたばた払い下げをしたのですか。
  24. 江守堅太郎

    江守政府委員 十分調査をいたしました。と申しますのは、この会社は二十五年にできた会社でございまして、先ほど申しましたように、輸出用合板仕事を相当成積をあげておやりになっておるのでありますが、その工場施設は、これまた旧軍の施設でありますところの熱田の製造所、高藏の製造所等払い下げまして、これを利用なさって、先ほど申しましたような成積をおあげになり、輸出用合板の今後の見通しというものにつきまして、当時名古屋通産局に十分お伺いをいたしまして、今後ともどんどん拡張できる仕事であるというようなお話もいただいております。また地元春日井市のほうでも、あの近くの企業誘致観点から、特にこういった輸出用合板仕事をあの辺でやってほしいという強い御要望もございました。国有財産審議会におきましても、その辺の事情を十分に御説明をいたしまして、そうしてそれでよかろうというお答えを得て、それで売り払いにきめたということでございいます。
  25. 武藤山治

    武藤委員 まず質問を、二回に払い下げたうちの前回の分は除いて、第二次払い下げの分だけに限定してこれからお尋ねいたしますが、三十八年五月十日に登記をした東洋プライウッド払い下げた三万三千坪、これの払い下げ金額幾らで、単価坪幾らに見積もって払い下げましたか。
  26. 江守堅太郎

    江守政府委員 第二次分の単価は坪三千百八十円でございます。総額は一億一千六百八十万二千円でございます。
  27. 武藤山治

    武藤委員 局長、いまの払い下げ金額間違いありませんか。あとで訂正すると言ったら私認めませんよ。もう一回よく確認してください。
  28. 江守堅太郎

    江守政府委員 間違いございません。
  29. 武藤山治

    武藤委員 しかし局長、あなたの部下である東海財務局長細見卓さんの正式回答では——東京第一弁護士会にあてて払い下げ価格回答財務局がしておるのです。それによると一億四百九十三万七百円ということになっております。あなたの答弁と違うじゃありませんか。どちらがほんとうですか。
  30. 江守堅太郎

    江守政府委員 東海財務局でいまおあげになりました数字は、土地代金でございます。このほかに立木建物工作物がある。土地は一億四百九十三万円、その他立木が五万九千二百五十円、建物が九百六十三万九千二百円、工作物が二百十七万八千四百十円、これを合わせますと、先ほど私が申し上げました一億一千六百八十万二千五百六十円ということになるわけであります。
  31. 武藤山治

    武藤委員 わかりました。私が聞いておるのは、最初から土地のことを言っておるわけです。立木建物あとで聞こうと思ったわけです。それを除いてないからそういう差が出たわけですから、それは了解いたします。  そこで、この一億四百九十三万円で払い下げ土地松下電器に、二週間たたないのですよ、十二日間経過した後に売り払われた金額幾らで、単価幾らで売られておりますか。転売されておるのですが……。
  32. 江守堅太郎

    江守政府委員 松下転売されましたのは、第一次分、第二次分合わせてでございますので、第二次分が幾らというふうには申しかねるのでございますが、それらを合わせまして、約三億四千万で売られております。逆算いたしますと、坪約八千円で売られておるということになっております。
  33. 武藤山治

    武藤委員 それは局長、第二次分は第二次分で区分して計算できるじゃありませんか。私は第二次分に焦点を置いて質問をしておるわけですから。わずか二週間足らず転売をした価格が二億六千三百九十二万一千百二十円。この金額に間違いがあるかどうか、確認をしたい。
  34. 江守堅太郎

    江守政府委員 いまおっしゃいましたその金額でございます。
  35. 武藤山治

    武藤委員 そうしますと、これは局長の良識に訴えて私はお尋ねをしたいのでありますが、五月十日に国から、大蔵省から、あなたの監督する管轄の官庁から払い下げ、五日後の五月十五日に松栄商事なるものにまた転売をし、さらにその一週間後の二十二日に松下電器登記がえがなされておる。わずか十二日間ですよ。その間に差額が一億五千八百九十九万円となっておるわけです。幾ら物価騰貴の御時勢とはいえ、二週間足らずでこれだけの、一億五千八百万の転売差額金が出るということは、一体妥当でしょうか。あなたの見解はどうです。
  36. 江守堅太郎

    江守政府委員 転売をされたということはまことに遺憾なことでございまして、それからあとも何度か、財産を取り戻すようにという交渉もいたしたわけでございますが、転売されたことはきわめて遺憾でございます。ただ、それが松下幾らで売られたか、その価格幾らであったかということにつきましては——転売をして非常なたくさんの金額をもうけたということに対してははなはだ遺憾であって、法律上許されるできるだけの措置をとりたいというふうに考えて、いろいろいままでもやってまいったのでありますが、その転売された価格がどうであるかということにつきましては、これは松下東洋プライウッドの間のお取引でございまして、私どもとしては何とも申し上げかねるというようなことではないかと思います。
  37. 武藤山治

    武藤委員 そこに問題があるのですよ。大体東洋プライウッドにこれだけの土地払い下げするという所に何かあるのです、その裏に。局長はその何か裏にあるということまでは調査をしていないのですか。今日それを何にも把握しておりませんか。
  38. 江守堅太郎

    江守政府委員 東洋プライウッドに売ったということは、そのことだけについて申しますと、私どもとしては当時十分の調査もいたし、皆さん方の御意見も伺い、やったことでございますので、売ったということ自体は、私どもとしてはあの土地輸出用合板製造工場をおつくりになる土地として適当な土地であると思っておったのでございますので、その点は私はやむを得ないのではないかと思います。問題はその後転売されたということでございます。転売されたということにつきましては、私どもはそれが転売されるというようなことは想像もしたことはないのでございます。その点について見通しが甘かったということは私ども十分甘かったのであるというふうに反省をいたしておりますが、売りましたときにおいてはそういうことは考えておりません。また、いろんな情勢から申しましても、そういうふうに利用されるのだというふうに考えておりました。また、転売されましたのは全部ではございませんで、約十二万坪あまりの土地を売りまして、そのうちの四万二千坪。残りの土地につきましてはいませっかくそこでもって東洋プライウッドがかねてのお仕事をなさるということでいろいろ計画をしておられるのでございます。また、地元も相当熱望しておりますので、転売されたということはきわめて遺憾でございますけれども、これはまた後ほど議論になるかと思います。したがいまして、転売されましたことはきわめて遺憾でございますので、何とかしてその土地そのものを取り戻すということについて会社交渉をいたしました。会社側松下からそれでは買い戻して国にお返しをいたしますというふうに約束をした時期もございます。これはその後松下のほうでそれに応じなかった。また、会社のほうでも金をくめんできなかったということで不可能になったのでございます。その辺のところは、転売されたということにつきましては私どもももう心から憤慨をいたしまして、法律上許されるならば契約解除をして取り戻したいというふうにいろいろ考えたのでございますが、先年の国有財産法改正の際にも問題になったのでございますが、当時時価で売り払いのものにつきましては、用途指定をつけなかったという、国有財産仕事の上で手落ちがございました。したがいまして、私どものやり方が不十分であったために法的に取り戻すというところまでいかなかったということでございます。法的に取り戻せませんので、話し合いで何とかそれと同じような効果が出るように会社へも協力を求めたのでございますが、それもできませんので、結局違約金に相当する金額をその後お納め願って、一応この問題はこれでそこまでということになっておるような現状でございます。
  39. 武藤山治

    武藤委員 一時期に、国に返してもいいという、そういう返事があった時期はいつごろですか。
  40. 江守堅太郎

    江守政府委員 五月に転売されたことを発見いたしまして以来、まず会社に申しましたことは、はなはだ遺憾であるから松下に売った土地を取り戻してくれということをまず最初に申しましたのです。夏以来そういう交渉をいたしまして、そうしてたしか何か秋ごろだと思いますが、秋ごろまでには必ずそういうふうにいたしますということを財務局長東プラの社長が確約いたした段階がございます。
  41. 武藤山治

    武藤委員 あなた違約金を取ったと言うけれど三千万円くらいの違約金を取ったのでしょう。その金額あとで答えてもらいますが、大体一億五千万も二週間以内にもうけちゃって、違約金を三千万くらいの金額に算定した基礎は一体何ですか。その金額も明らかにしていただきたい。
  42. 江守堅太郎

    江守政府委員 用途指定違反をいたしました際には契約解除をいたしますか、違約金を取るという扱いにいたしております。本件は先ほど申しましたように用途指定をつけておりません。その点ははなはだ不十分でございました。でございますので、契約解除ができない。それから違約金用途指定違反という意味の違約金を取るわけにはまいらない。でございますが、実態は用途指定違反である。したがって用途指定違反の場合と同じような違約金を払ってくれということで、これも会社はなかなか初めはうんと言わなかったのでございますが、取ったわけでございます。その違約金の取り方が契約金額の三割ということになっております。取りました金額は、転売された部分に相応する土地の売り払い代金の三割ということで四千六十六万一千円を去年の十月に会社から納めさせておるということでございます。
  43. 武藤山治

    武藤委員 あなた、この前の私やさらに決算委員会勝澤委員あるいは田中彰治与党議員、田中織之進委員、こういう人たちのこの問題についての質問に対して、あなたは随意契約を結んだのは競願者がなかったからだ、一カ所からだけの払い下げ申請だったから随意契約用途指定もつけずに払い下げてしまった。こういう答弁をしておるのです。ところが競願者ほんとうになかったのか。あなた部下をかばうために真相を伝えずに、財務局からだけの資料に基づいて答弁しておると、とんでもないことになるですよ、国にえらい損害を与えておるのですからね。そこで私は卒直に事実をあなたお述べになることが忠実な公務員の立場だと思うのです。そういう立場から競願は一体あったのかなかったのか、それをひとつ明らかにしていただきたい。
  44. 江守堅太郎

    江守政府委員 随意契約をいたしました理由が、競願者がなかったから随意契約をしたのだというふうには私は申し上げなかったように記憶しております。随意契約をいたしました根拠は、予決令に認められたところの重要産業保護奨励予決令規定随意契約を結んだのでございます。  それから競願者があるかないかということにつきましては、もちろん私、その当時はこの関係仕事をいたしておりませんので知りませんが、その後この事件をずっとトレースいたしました過程におきまして、名城大学がかねてからその土地を自分の学校の用地にしたいということを考えておられて、いろいろ財務局のほうにも申し出のあったことは十分承知いたしております。
  45. 武藤山治

    武藤委員 あなた競願者がいなかったということを答えておるのですよ。ここに議事録があるのですよ。そういううそを言っちゃだめですよ。ちゃんと三十九年二月六日の決算委員会答弁の中で、自民党の田中彰治委員からの質問に対して、「随意契約ができるということでございます。」その次に「私のほうに売れというような強い競願者もございません。」こう言っておるじゃありませんか。議事録に言っておるじゃありませんか。これはこの議事録がうそですか。——局長、私の割り当ての時間も大体一時間ということですから、あなたが答弁をもたもたしていたら持ち時間がなくなりますので先に進みますが、競願者があったのですよ。もしないというならその競願した人を証人として申請して呼びますよ。おもなものは東洋プライウッド、林紡績、名古屋市、名城大学、この四者で一応払い下げをしてほしいという要請をしておるじゃありませんか。それを東洋プライウッド随意契約でおろしたところにこういう間違いが出てくる。その競願は間違いですか。
  46. 江守堅太郎

    江守政府委員 名城大学があの土地払い下げについて希望を持っておったことは私よく知っております。いま申されました、名古屋市ともう一つの会社につきましては私いまここでは存じません。それから財務局のほうからも聞いておりません。
  47. 武藤山治

    武藤委員 いまわからなければよろしい。あとで証人をここへ呼んでわかるように、これは委員長あとで明らかにしてもらいたいと思います。  そこでもう一つ、局長がおそらく知らない問題だと思いますが、東洋プライウッドという会社が二十五年の十月に誕生したときに、財務局につとめておった者でやめて重役になった者はおるかおらぬか、それを知っておるか、知らぬか。
  48. 江守堅太郎

    江守政府委員 会社ができましたときに入ったのかどうか私存じませんが、東海財務局の理財部長をしておりました大塚という者がこの会社の重役に入っておりますことは承知いたしております。
  49. 武藤山治

    武藤委員 その財務局につとめておった大塚某なる者は東洋プライウッドの重役になって、現在その人がどういう会社の何をやっておるかも知っておりますか。
  50. 江守堅太郎

    江守政府委員 現在も東洋プライウッドの重役をしておるというふうに承知しておりますが、そのほかの会社に行きましたかどうか、その点は私存じません。
  51. 武藤山治

    武藤委員 さらにその部長一人でなくて、課長で当時プライウッドに入社した人、何名おって名前はわかりますか。
  52. 江守堅太郎

    江守政府委員 いま申しました理財部長をしておりました大塚のほかに経理課長をしておりました小野、財産調査課長をしておりました長谷川、管財一課の課員であります加藤、熱田の出張所長をしておりました永繩、それから管財の二課長をいたしておりました山内、これだけが東洋プライウッドに入社いたしております。
  53. 武藤山治

    武藤委員 会計検査院にちょっとお尋ねしますが、あなたのほうでわれわれに報告をした検査報告書によりますと、どうもこれはくさいというので大蔵省管轄の冒頭にこれが指摘をされておるわけですね。この調査検査をしたときに、会計検査院では、財務局におったえら方がこの東洋プライウッドに就職しているというようなことを知っておってあの程度の指摘をしたのですか、その点のいきさつはいかがですか。
  54. 保川遜

    ○保川説明員 私会計検査院の第一局長でございますが、この委員会は初めてでございます。未熟でございますけれども、どうぞよろしく。  いまお尋ねの検査の当時に幹部職員が会社に行っておったという事実は、私はいまここで初めて伺いました。
  55. 武藤山治

    武藤委員 会計検査院というのは最初一回検査をすると、あとこういう不当利得の問題あるいは背任罪に該当するような事件があっても再検査というものはできるのかできないのか、それはいかがでしょう。
  56. 保川遜

    ○保川説明員 私どもの検査はやはり経理検査ということでございまして、その経理にからんだ犯罪、これはもちろん発見いたしますれば会計検査院法に基づきまして犯罪の通告なり何なりの権限は持っております。持っておりますが、経理に関連するかどうかということで、いわゆる通常の犯罪捜査というような面はわれわれのほうではちょっといたしかねるのではないか、こう思っております。
  57. 武藤山治

    武藤委員 そうすると、犯罪という立場からでなくて、二週間足らずで現実に一億五千万円の不当利得をあげて、かりに四千万円を違約金として取ったにしても、まだ一億一千万円の不当利得をあげておるわけです。裏返せば、国がそれだけ損をしておるわけです。当然のあり得べき国の収入をそれだけ減らしたわけですから、そういう場合には犯罪捜査という立場でなくても、会計検査院はもう一回検査する必要があるのじゃないでしょうか、これはどうでしょう。
  58. 保川遜

    ○保川説明員 ただいまの利得の問題でございますが、これはわれわれ現実に検査報告に、いまおっしゃいましたような利得とは相当かけ離れた金額をはじき出しております。これは財産の評価上の問題で、現在の指摘が、大蔵省のおきめになりました算定基準と申しますか、そういったことで技術的にわれわれのほうで疑問点に修正を加えましてはじき出したものでございます。したがいまして、そういう差額の問題で不当なものがあるかどうかという点はちょっとわれわれ検討するのがむずかしいのではないか、こう考えております。
  59. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。有馬輝武君。
  60. 有馬輝武

    有馬委員 関連質問でありますから簡単に要点だけお尋ねしますが、先ほど用途指定をしてなかったので、しかし、実態は用途指定をしたのと同様であったから違約金に相当する三割の四億六十六万一千円を取ることにしたという答弁でありましたが、これは国有財産法の第何条に基づいて取ったのか、この点を明らかにしていただきたい。
  61. 江守堅太郎

    江守政府委員 法律に基づいて取ったものではございません。用途指定をしておりませんので、用途指定違反という法律に基づく契約違反という意味で取ったのではございません。ただ実態がそうである、したがって、会社と話し合いをいたしまして、これだけの金額を納めなさいという話し合いによって納めた金額でございます。
  62. 有馬輝武

    有馬委員 その話し合いによって、そういった金額についてあなた方が自由に判断して取り得る道が開けておるのですか。それはどういう形なんですか。
  63. 江守堅太郎

    江守政府委員 用途指定違反に準ずる措置として会社要求をいたしまして会社がそれに同意したということで、国の歳入の科目は雑収入ということで受け入れておるのでございます。
  64. 有馬輝武

    有馬委員 これは悪く解釈すれば、競願者があったけれども、ないことにして随意契約にします、そして一切の経緯を知っておりながらも、転売したあとでこれは用途指定はしてなかったけれども、実態に近いのだからこの程度納めたらどうだ、つうつうの関係ができるのじゃないですか。その先例を開いたことになるのじゃないですか。そういうことが許されるかどうかということをお伺いしておるわけです。
  65. 江守堅太郎

    江守政府委員 今後の問題といたしましては、国有財産の売り払いはたとえ時価売り払いの場合であってもすべて用途指定をつけるというふうに昨年の国有財産法の改正でいたしました。用途指定をつけないでできるのは政令に限定的に書いた場合だけというふうにいたしておりますので、今後はそういう問題は起きないというふうに思います。その当時におきまして当事者が転売されるということを十分予想して、しかも他に申請者があるというのをそのままにして、そういった目的でその東洋プライウッド鷹来製造所土地を売ったというふうには私どもは考えておりません。あくまでもその当時の情勢として東洋プライウッドがそのようにあの土地を御利用なさるということが適当な利用方法であるというふうに考えて売ったのでございます。
  66. 有馬輝武

    有馬委員 私が聞いておるのは、少なくともあなた方は害意で、その東洋プライウッドに売ったときにはまさか転売すると思わなかった。その経緯はいま説明があった。しかし実際には二週間後にはそういった形で転売されている。その実態をつかんだから用途指定違約金にふさわしい四千六百六万をとったのでしょう。とったからには、一つの慣例になりあるいは法規に照らして間違いない措置というものはこれは国としてとらるべきだったと私は思うのです。ところが経緯を聞いておりますと、いいかげんにその会社と話し合ってとったということです。その根拠がわからぬからお伺いしておる。
  67. 江守堅太郎

    江守政府委員 本件は法律的に契約解除をする、あるいは契約違反として違約金をとるということができますれば、そのような形でやりたいわけでございます。ところが用途指定をつけておりませんためにそういう方法はとれないわけでございます。またその売り払いが無効な売り払いである、あるいは取り消し得る売り払いであるというふうなことになりますれば、またそういった法律上の問題として追及でき得るかと思います。私どもはその当時の判断といたしまして、これは法律上は追及できない問題である。その法律上追及できないような措置であの財産を売り払ったということは不穏当であるということは私ども十分反省をいたしておりますが、事実としてそういうことである。したがって法律上はどうしても何ともならぬ。でありますが、だからといってほうっておくわけにもいかぬ。したがってまた会社のほうでも自分のほうは転売をしたということはまことに申しわけないことをした。だけれどもいざとなってみると、松下のほうから取り戻すわけにもいかぬ。会社側のほうもそういうお気持ちでありましたので、この問題をこれ以上国がいわば泣き寝入りというような形のままで済ますことができませんので、せめてそれだけの措置をとったということでございます。
  68. 有馬輝武

    有馬委員 感情としてはわからぬでもないけれども、これは個人と個人、会社会社法人法人の場合なら話はわかる。いまみたいな措置をとられても。しかし国と会社との間でそういった措置をとられた根拠が法律的にわからない。四千六百万が雑収入に入れられたということはわかる。それは雑収入にでも入れなければしょうがないだろうから。しかしその国がとった行為は妥当であったかどうかということについては私は了解できない。その点についてはあとでまた明らかにします。
  69. 武藤山治

    武藤委員 問題は方々に散らばっている不正要因というものがあるので、幅広い質問をしなければなりませんから、きょう結論を出すというわけにいかぬと思いますからさらにもう少し進めてみたいと思います。局長は当時名城大学が土地払い下げを原因として理事の更迭問題、首切り問題でごたごたしておるのを知っておったのかどうか、財務当局は、当時学校紛争と土地払い下げ問題が直接因果関係があったということを知っておって払い下げをしたのかどうか。
  70. 江守堅太郎

    江守政府委員 東海財務局では名城大学が土地を入手したいという希望のあったこと、また名城大学は内部で非常に紛争が起きておったというようなことは十分承知をいたしておりました。
  71. 武藤山治

    武藤委員 承知をしておったとなったらまことにもってこれはけしからぬ処分のしかたです。なぜならば名城大学の理事を追い出すためにだれがその理事にかわりに入ったかというと東洋プライウッドの社長ですよ。東洋プライウッドの社長の阿部広三郎という人が学校の仮理事に飛び込んでさらにそれと提携をしている親分子分のような深い関係にある人、すなわち名古屋前商工会議所会頭佐々部晩穂というのですか、この経済界に顔のきく人も理事に入れたわけです。そして払い下げ問題をめぐってこの二人の実力者に反対する者の首をちょん切ろうというので、ちょん切るために政治家を動かし財界を動かして私学紛争に関する特別法まで国会でつくらせて、公共のために国の土地を使いたいという人たちを追っ払い東洋プライウッドにこれが売り払われた。まことにもって奇々怪々な事件ですよ。そういうことを知っておって東洋プライウッド払い下げしたとなったら、まことにもって財務局の処置は手抜かり——手抜かりでは済まされない、その裏に何かがある、この事件は汚職のにおいがふんぷんとしている、そうあなたはお考えになりませんか。
  72. 江守堅太郎

    江守政府委員 国有財産審議会委員の一部の方が名城大学の仮理事になられた、そういう人を国有財産審議会委員として本件の払い下げの諮問の委員会に出席させたのはおかしいということでございます。私どもはいま申しました名城大学の仮理事と申しますものはいまの私学紛争調停法に基づきましてこの紛争を解決するために認められました公の理事でございまして、通常の名城大学の運営あるいは経営のために設けられた理事とは性質の違うところの、いわば公的立場理事でございますので、それらの方々がたまたまあるいは名古屋の市長ありあるいは知事をしておられたということで、国有財産審議会委員をしておられましたということでございますので、まあやむを得なかったのではないかというふうに考えておるのでございます。  それから名城大学の問題は、実はこの東洋プライウッド鷹来製造所土地を売るということをきめましたのは、昭和三十五年の審議会でございます。実際に売りましたのは三十八年でございます。その間に非常に長い時間を経過しております。といいますのはかねがね名城大学のほうからその土地を使いたいというお申し出はありましたが、当時の財務局見解といたしましては、名城大学がすでにあの鷹来の土地で使用しております土地は約八万坪ございます。名城大学の内容から申しまして文部省などで考えております適正規模がほぼ約八万坪ということでございます。したがって大学の施設としてはそのくらいの施設で十分である、したがってお申し出はあるけれども、あすこの土地を名城大学に売る必要はさしあたりないというふうにかねがね判断しておったのでございます。ただ八万坪の土地を使用しておりますし、その使用のしかたがあの土地の南の端に校舎が建っておりまして北のほうに寄宿舎が建っておるというふうな形になっております。でございますので、これはこのままではかっこうが悪い。したがって何か土地の調整をして、寄宿舎を校舎の建っておりますほうに寄せたほうがいいんじゃないかというような問題がありまして、これを名城大学とよく話し合いをするように、したがって審議会の席上でも、このように一応まん中の土地東洋プライウッドに売るというような方針をきめるけれども、名城大学と話がつけば北のほうにありますところの寄宿舎は少しこっちのほうに寄せて東洋プライウッドに売るところは少し向こうのほうに寄せるようになるかもしれないというようなお話もしたのでございます。でありますが、名城大学の紛争がさっき言いましたように仮理事を任命しなければもうおさまらないというような状況でございますし、しかもなおかつ相当長期にわたらなければこの紛争は解決できないというような判断も当時公の場所でなされたということもございましたために、名城大学と話し合いをつけるのはもうとうてい何年たってもできないというふうに判断したことが一つでございます。  それからもう一つは、あの土地をいつまでも遊ばせておくということについて、春日井市のほうでも、地元の産業の発展という意味からせっかく東洋プライウッドがあすこで合板仕事をやりたいといっておるんだから早く売ってくれというような希望もございました。そういったことで、あすこに売るような事情になったのでございまして、名城大学の関係は十分財務局でも考えて処置した問題でございます。
  73. 武藤山治

    武藤委員 そんなのは詭弁ですよ。そんなのは全然信用できない。あとで裁判であなたを呼び出して徹底的にそれは調べますよ、参考人にして。そんなでたらめ言ってもだめです。さらに、東洋プライウッドが買って、一週間後に松栄商事にそれをまた売りしているんだ、松栄商事がまたそれを松下電器に売るという、こういう橋渡しをしたわけだ。その松栄商事なるものは一体どんな会社かということをさぐると、これもけしからぬ。松栄商事なるものの社長は、代表取締役は東洋プライウッドの社長のせがれですよ。親子ですよ。親子の会社が国の安い財産払い下げて、一回売って、またこれを松下電器に売り払う。そういう人的な関係を、財務局でもこれは知らぬはずないですよ。それを知っておって払い下げしたというのは、さっき言った、局長以下五人も東洋プライウッドにずっと就職をしてもらって給料をもらっているから便宜をはかったんでしょう。財務局はこれは背任罪ですよ。国に損害を加えているんですよ。あなたはそういう意識が全然ないんですか。これは背任になるぞ、国が訴訟を起こしてまで買い戻さなければならぬという悲壮な決意を局長としては持たなければいかぬですよ。国が訴訟を起こして——話し合いで解決できなかったら訴訟を起こしたらいいですよ、背任罪で。どうですか。
  74. 江守堅太郎

    江守政府委員 問題は二つあると思います。東洋プライウッドに対して国が土地を戻せという訴訟は——私ども見解でございますが、これは法律的に非常に不利であろうというふうに考えます。したがいまして、先ほど申しましたような措置をとったわけでございます。  それから背任罪の問題につきましては、東海財務局の役人が背任的な行為をしたのかどうかということでございますが、これも先ほど来申しましたように、私どもといたしましては、当時財務局で十分いろいろのことを判断して売ったのでございます。背任的な行為が東海財務局の役人の中にあったというふうには考えていないのでございます。
  75. 武藤山治

    武藤委員 私の持ち時間がもうなくなりますから、これはまた日をあらためてひとつ徹底的に今度は参考人を招致して内容を明らかにしたい、私はこの要求をいたします。参考人を後日呼んでその内容を明らかにするということが取りつけられるならば、この質問は、本日はあと刑事局にだけ質問をして一応留保したいと思います。
  76. 吉田重延

    吉田委員長 ただいま武藤委員の参考人御要求に対しましては、理事会で御相談の上御返事を申し上げることにします。
  77. 有馬輝武

    有馬委員 それから、先ほどの武藤委員質問に対して、決算委員会競願者がなかったという答弁といまの局長答弁とは完全に食い違っておるわけです。この取り扱いについて委員長見解をお聞きしたい。
  78. 吉田重延

    吉田委員長 有馬委員の御要求に対しましても、速記録をよく調査いたしまして、さらにその結果を理事会に御報告申し上げ、その上で理事会で善処したいと思います。
  79. 武藤山治

    武藤委員 そこで、資料要求しておきますが、払い下げをきめた三十五年八月一日の審議会の出席者名簿、定員何名で、出席何名、どういう人が出席をしたか。同時にその審議経過、どういう審議経過で東洋プライウッド払い下げになったか、その議事録の写し。これを提出願いたい。  さらに刑事局に少々お尋ねをしておきますが、ただいまの質疑応答を通じて、あなたのほうは法の番人としての立場から、こういう事件は日本の今日の刑法上このまま許されるような事件だろうか、あるいは法にひっかかる内容を含んでいるような印象を受ける事件だろうか、これは正確にはまだきちっと第何条ではこうだという、犯罪要件から犯意から、そういう問題までは論及しないで、感じとしてあなたはどうお感じになりますか。
  80. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 先ほど来お伺いいたしておりました事実関係を率直に伺っておりますと、これが犯罪になるといたしますと、おそらく刑法所定の背任罪に当たるのではないかというふうに思われます。ただ、何ぶん背任罪の規定は主観的要件等が加わっておりまして、たとえば自己の利益をはかりあるいは他人の利益をはかるという目的でございますとか、あるいは損害を加えることの認識あるいは任務違背の認識、こういった点の犯意が必要となりますので、いま伺っておりました関係だけから直ちに背任罪の嫌疑が濃厚であるとかいうようなことは申し上げられないと存じますが、一応当たるとすれば背任罪に当たってくるのではないかというふうに思われます。  なお、ついででございますが、検察関係といたしましては、毎年会計検査院の決算検査報告書が出ますと、これを法務省刑事局において検討いたしまして、指摘事項の関係検察庁に対して報告書を送付いたします。地方の実情をよく知っております当該検察庁において、その指摘事項について検討を加えるように申しておるわけでございます。三十八年度の決算検査報告書も先月の中旬に検察庁に送付した次第でございますが、本日伺いました事柄も、この決算検査報告書の指摘内容を補充する意味において貴重な御議論かと思いますので、現地に連絡をいたしたいと存じております。  なお、本日問題になっております物件につきましての一連の関係について、これは所轄の検察庁は名古屋地方検察庁でございますが、名古屋地方検察庁で現に捜査中であるかあるいは捜査しようと思っているかいないかというような点につきましては、お答えを差し控えさせていただくのが相当ではないかと思います。
  81. 武藤山治

    武藤委員 伊藤刑事課長にもう一つ。  すでにこの事件は告発をされております。しかしそれを不起訴に名古屋ではいたしたようであります。それは証拠不十分ということのようであります。そこで、いま検察審査会で不起訴にした検事が査問をされるような実情にあるようでありますが、おそらくきょうはまだその資料をいまお持ちになっておらないと思います。お持ちになっておったらその状況をお尋ねしようと思っておりますが、もしお持ちになっておらなかったら、次会にもう一度お呼びして詳細をお尋ねしたいと思いますので、御用意を願いたいと思います。
  82. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 ただいま御指摘のように、本件に関係しまして、名城大学の元理事長でありました大橋光雄氏が、東洋プライウッド株式会社の社長の阿部広三郎氏及び名城大学の理事長の佐々部晩穂氏、この両名を詐欺罪で告発をされたことがあります。告発事実の要旨は、直ちに転売する意思であるのにこれを秘して払い下げを受けてもって詐欺をしたという詐欺罪の告発であったようであります。この関係につきましては、当時名城大学の紛争をめぐりましていろいろ告訴、告発があったわけでございますが、その一連の関係というような感覚で処理をしたのではないかと思われるわけでございますが、御指摘のとおり、詐欺の犯意を十分公判廷において立証するだけの証拠がいささか足りないというような理由で、昨年八月二十八日、嫌疑不十分ということで不起訴になっておりまして、現在検察審査会で御審査願っておるという関係でございます。そのようなわけで、一件記録が検察審査会にまいっておりましたために、準備不足で申しわけございませんが、その程度のことを承知しております。
  83. 武藤山治

    武藤委員 それは告訴のほうが間違っておったという私どものほうの判断なんです。私は、背任罪でいくべきだという判断なんです。そこで、法を守るという立場から、ひとつ検察官等も督励して、事の真相をこの次までは報告できるように実態を把握しておいていだきたいと思います。  きょうは私の持ち時間を終わりますから、あと理事会でひとつ十分御考慮いただきたい、こう付言をして質問を終わります。
  84. 吉田重延

    吉田委員長 横山利秋君。
  85. 横山利秋

    ○横山委員 私は、最近慢性的状況になっています不渡り手形の処置について、なるべくいきさつは抜きにして、この際、政府側と一問一答をいたしたいと思っております。ただ、その前提として、今日の不渡り手形が発生する根本原因、これを申さなければならないし、それについて政府意見を聞かなければなりませんが、それをやっていますと時間がかかりますので、その不渡り手形発生の根本原因は、経済論争及び政治論議に一応ゆだねることにして、当面どうあるべきかについて意見をただしたいと思うのであります。  最近、この不渡り手形が続出するにつれて、各方面から、この手形をどうすべきかという意見がどんどん出ています。その一つは、銀行協会の案であります。私の承知するところによりますと、銀行協会案の骨子は、第一に、銀行協会発行の統一手形用紙を出して、それは当座を持っている預金者にだけ預ける。第二番目には、銀行名の記入のある用紙を取引先の預金者にだけ預ける。第三番目に、以上のようなことのない取引先でかってな用紙で手形を振り出した場合には、預金口座からの支払いは認めない。第四番目に、銀行は、手形法をつくって流通を明らかにする。第五番目に、不渡り手形の撤回期限を三日から二日にする。なお、企業等の代表が不渡りを出して別の会社をつくった場合には、当座と貸し出しの便宜を与えない、こういう銀行協会案を承知をしています。民主社会党から、この不渡り手形に対する対策が発表されました。それは要するに、不渡り手形を委託をして、そうして委託された公益的な機関が回収に当たるというような骨子であると承知をしておるわけであります。そのほか、各種の案がいろいろと議論されておるのでありますが、大蔵省として、この今日の不渡り手形の現状について現実的にどういうような改善策を加えるのかという点については、不本意ながら私はまだ承知をしていないのであります。先般、私は、本委員会で、この不渡り手形をその年の損金に算入をする方式について提議をいたしましたところ、大蔵大臣から、きわめて建設的な意見であるから検討する旨の話がございました。税制面においても、この不渡りを受けた納税者が、実際問題として二割ないし三割ぐらいしか回収ができないのでありますし、その年に回収はきわめて困難でありますから、少なくとも不渡りを受けた年には最高一〇〇%の損金算入が認められるべきであると私は主張しておるわけであります。事税制面のみならず、他の面におきましても、いまや不渡り手形の慢性的状況において、政府側としてあらゆる角度から検討すべき段階にあることは申すまでもないことであります。この点につきまして、政府側の具体的な御意見を伺いたいと思います。
  86. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 税制の点につきましては、私、所管外でございますからお答えできませんが、不渡り手形が非常に多いという現状につきましては何らかの対策が必要である。そのために、いま横山委員がお述べになりましたように、銀行協会におきまして、手形用紙の統一を行ない、それらの手形を使用する場合に限って当座勘定から引き落としをするが、そのほかの手形は、これはもう自由に手形用紙を使って差しつかえないけれども銀行としては引き落としの対象とはしない、こういうふうにいたしまして、おのずからその間に、銀行が取引をして差しつかえない手形を発行いたさせて、それを銀行のほうで、責任を持つわけではありませんが、もちろんこれは完全に保証する意味ではございませんからそれは違いますけれども、そういうものについては普通の取り扱いをするが、そうでない、銀行の関知しないところで振り出された手形については、銀行の取引の対象にしないというふうな考えで、そういうふうな制度を進めることに決定しておるわけでございます。私どもそれ以外に、大蔵大臣もしばしば、手形法と申しますか、手形法の改正ということでなくても、単独立法によっても、不渡り手形を無責任に振り出す者に対する処罰を何か考えられないかということでございまして、ずっと以前に法務省にもその検討をお願いしたわけです。しかし中間的なお答えとしては、刑事罰の対象とすることはきわめて困難である。これがアメリカにおきましては、手形があまり使われませんで、そのかわり小切手が非常に現金以外に流通しておる。小切手の場合ですと、これは一覧払い、期限つきということもないではありませんけれども、一覧払い。そういうことから、振り出したときにおいてすでに口座に適当な金額があればいいけれども、初めから口座に金額がないという者あるいは全然銀行取引のない者が手形を振り出したときは、これは詐欺のようなものであるということで、刑事処分の対象にしておるわけであります。手形の場合には、期限が通常二カ月よりは長い。二カ月あるいは三カ月というのが通常でございます。したがって、その間に商取引が行なわれて、当然自分としては期日においてそれに相当する金額を取得すべきであった、しかし何らかの事情によってそれが取得できなかった、こういうことになる場合が多いわけであります。つまり、釈明としてはいかようにでも立つわけです。それに対して犯意があるとみなすには根拠があまりにも薄弱になり過ぎる、そういうことで、不渡り手形に対しては刑事罰の対象にすることがむずかしい、こういうことになっておりまして、なお重ねて私どものほうから、何か特に悪質なものでも処罰するようなことは考えられないかということをまだ法務省に依頼しております。お答えがまだ得られませんが、検討はお願いしてあるわけでございます。たいへんむずかしい問題だと思います。  そこで、いまの政府の考えとしては、不渡り手形に対するほんとうの意味のきめ手はきわめてむずかしいので、まず手形用紙の統一制度をやってみて、それで完ぺきは期し得ないまでも相当程度効果があがるということであるならば、それをさらに研究して推進してまいりたい、こういうふうに考えております。
  87. 横山利秋

    ○横山委員 一つ一つ簡潔に伺いたいのですが、銀行協会案というものは、私がいま承知したことに間違いがないか、政府側はこの協会案について了承なさったものであるかどうか。
  88. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 お述べになったところで間違いはございません。政府側は了承したかということですが、実は内面的にこちらが指導いたしまして銀行協会につくってもらった、そういういきさつでございます。
  89. 横山利秋

    ○横山委員 そうであれば一、二ただしたいと思いますけれども、かってな用紙で手形を出した場合には預金口座からの支払いは認めない、こういうことですね。それから口座を持っている預金者に用紙を渡すということは、行政運用として、その手形を振り出した金額が預金口座になければクレームをつけるという意味が含まれておるのかどうか。それから企業の代表者が不渡りを出して別会社をつくった場合は貸し出しの便宜を与えない。やる以上は、ある程度こういうようなことをも考えなければならないと思うけれども、しかしいささか過当と思われる点が中に含んでおりやせぬか。かってな用紙で手形を振り出す場合には預金口座からの支払いは認めないということは、これは一体どういう法律的根拠によるのであろうか、それを伺いたい。
  90. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いまのお尋ねの点で、市中に販売されておりますかってな用紙を使った場合に、預金口座からの引き出しを認めないというのは、この制度を確立していくという上には、その用紙を使った場合と使わない場合でもってそれだけの差を設ける必要がある。両方とも同じように扱うのであれば、この統一用紙が広く使われるというふうにならないだろう、そういうことから差別をつけたわけです。これは、法律的根拠というものは不要であると私は思います。つまり銀行が自主的に、そういうものとのそういった取引をいたしませんということでございまして、約束手形の場合には振り出し人が支払いの責めに任ずるわけでございますから、その場合に手形法のたてまえからいたしましても、支払い者は特定しなければならないが、銀行が必ず支払いの責任を負うという性質のものではない。法律の解釈の上からいっても、銀行は取り扱いを拒絶することもむろんできるわけであります。  それからもう一点、適当な金額がすでに当座の中になければ手形用紙を出さないとか、あるいは手形を振り出してはならないとかというふうにするのかというお尋ねでございますが、それは通常の常識といいますか、金融上の常識的な判断で行なわれるわけでございまして、手形を相当多額に振り出していながら当座勘定があまりにも少ないということであれば、これは銀行が取引先に対してもう少し当座勘定をふやすようにということを言うことは通常ございます。しかし、振り出した金額すべてに相当するような当座勘定を持たなければいけないというふうなことは絶対にないと思います。
  91. 横山利秋

    ○横山委員 自分の金が銀行の当座の中にあるのに、手形でそれを支払いをしようとしておるのに、手形の用紙が違うからその当座からは支払いはいたしません、こういうことになるわけですね。自分の金が銀行に預けてあるのに、用紙が銀行振り出しの用紙でないから、その金の支払いは認めないと銀行が言うわけですね。鍛冶さんどう思いますか。ちょっとおかしくはないですか。
  92. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 これは取引上のことだから、銀行と取引人との間でそういう約束をしておるものと見ていいのじゃないですか。
  93. 横山利秋

    ○横山委員 約束がなかったらどうですか。
  94. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 なくても、銀行は私のところはそういうことをやらぬのだから払いませんというときに、それじゃお前は支払いの義務があるといって訴訟を起こされることになるとちょっと問題だと思うのです。
  95. 横山利秋

    ○横山委員 どっちが問題ですか。銀行のほうが問題ですよ。
  96. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 銀行にそんな義務があるかしら……。
  97. 横山利秋

    ○横山委員 自分の金じゃありませんか。
  98. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 けれども金は預かっておっても、私のほうから出した用紙で出されたものでないと私は払いませんぞ、こう言っているのです。そういうものをいまここでやろうというのです。そういう約束がなかった場合に払えといわれて命令するわけでもないでしょう。ただ持ってきたんだが、おれのところはそういうものは払わぬことにしているから払いませんということだけじゃないですか。
  99. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いまの政務次官のお話のとおりだと思うのでございまして、当座の取引では約定というのがございます。当座取引勘定の約定をいたしまして、その約定の際に、この種の手形については、勘定があればそれから引き落としますが、こういうものについては引き落としませんという約定をすればいいのです。これは約定でございまして、銀行は一たん取引を開いた以上必ずそういうすべての手形について支払いの責務を負うというふうに約定しなければいい。これは契約の自由でございまして、これは銀行といえども特別な責任はないわけです。
  100. 横山利秋

    ○横山委員 私がそういう立場質問しますのは、この銀行協会案がやはり金融機関のベースでものを考えて割り切っている。手形の移動も銀行というベースでものを考えておるきらいがあるのじゃなかろうかという感じがするわけですよ。不渡り手形の防止ということも、銀行というベースで防止をし、銀行に問題がないように、またこれをやることによって銀行に都合のいいように、そうでないといったって結局そうなるじゃありませんか。当座貸し越しの制度はどうもだんだん影が薄れていく。当座をもっとふやしてもらいたいという話が出る。それはおれのところの用紙を使ってもらわなければ困るというやり方になる。したがって私の言いたいことは、この不渡り手形防止法の銀行協会案というものは、やはり銀行本位にものを見、銀行の都合のいいように少し考え過ぎているきらいがありはせぬか、こういう感じがするわけです。鍛冶さん、自分の金ですよ。それは約定書を最初つけて、そういう約定書でこれから小切手を振り出すときには私のところの用紙で振り出しなさい、こうくる。第二番目の、たとえば東海銀行の記入のある用紙でなければいかぬ。ところがある商店では東海にも第一にも十六にもみな当座が預金してある。それで三つからもらうわけです。三つみな約定しなければならぬというわけでしょうね。統一手形の場合にはいいかもしれないけれども、これはどう考えても金融機関本位のものの考え方が強くはないかと思うのですがどうですか。
  101. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 その意味が当座勘定、つまり両建て、歩積みのような意味での勘定をふやすためにこういう制度を考えたのだとおっしゃるのでしたら、そういう疑いもあるかもしれませんが、銀行協会はそういう考えではないとはっきり申し上げておきます。これによって当座勘定を多く持たせようという趣旨ではない。大体手形が不渡りになった場合に、銀行は、その会社と、振り出し人とまた別の関係があればともかく、通例被害者にならない。被害を受ける者はその所持人ですよ。また所持人もさかのぼって裏書き人があれば、それに遡及することはできますけれども、必ず不渡り手形を受け取った人が迷惑を受ける。これはきわめてあたりまえのことでございます。銀行は、直接はそれを不渡りとして返す。そしてあと不渡りを出した人との取引はお断りする。こういうたてまえになっているだけでございまして、これを救済しようという目的は、手形を乱発するといいますか、無責任な手形を出して、そうして所持人に迷惑をかけるというふうなことを防止しようという考え方でございます。銀行の利益のためにしているものでは決してない。ですから、この問題につきましても、銀行は、ある意味では公益的な立場から協力しましょうという立場に立っている。自己の利益を擁護するためにという考え方には立っておりません。
  102. 横山利秋

    ○横山委員 私の心配が杞憂に終われば幸いですが、この様子については、もう少し事態の経過を慎重にあなたのほうも観察して、どういう問題がこれから起こってくるかについては、あなたのほうが何回も指導されたならされただけに責任がありますから、十分注意を願いたいと思う。  第二番目に他党のことを言って恐縮でありますが、この手形問題の議論のために御意見を伺うんですけれども、民社党からいわゆるサルベージ案というものが出ましたね。サルベージ案というかどうか、適当でありませんけれども、不渡りになったやつを委託をする。そして何か準公益的な機関がそれの委託を受けて取り立てをする。そしてその間はその人に金融するのですか、どうするんですか知りませんが、いわゆるサルベージ案というものが出ました。これは、私はこう思うんです。問題は、不渡りを出したその会社なり商店なりの責任がそこで薄れてしまうのではないか。その準公益的機関に集まる不渡り手形は悪質なものばかり集まる。だから取り立てが不能になって、かえって回収困難になっていくんじゃないかという感じがいたしますが、あなたの手元へもいっていると思いますが、その点についての感想をひとつ伺いたい。
  103. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私も、大体の感じといたしましては、いま横山委員の言われた懸念が十分にあるのではないかと思う。不渡り手形をつくって全然第三者が、つまり今度は直接関係のない機関が取り立てにかかるといたしましても、そのために回収が容易になるというふうには考えられません。むしろ第三者的な立場にあって、これは暴力的な行為でもすれば別ですが、そうでない限り、不渡り手形の回収が特に容易になるものと思われませんし、またこれは全国的にそういう組織を持たなければ回収ができません。そういう機構を維持するということは容易ならぬことであるというふうに思いますし、また一方でその不渡り手形をかなりの代金で買い取るということになりますと、もちろんそれは回収の可能性から考えると、多額な金額を払うわけにいかないでしょうが、無責任な手形の発行が依然として行なわれる、どこかで救ってくれるんだということになりますと、かえって発行人がやや責任を感じなくなる危険さえある。現在でもそういう手形が相当出ております。不渡り手形の中には相当悪質なものもあるように聞いております。
  104. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 何か保証的なものの大きなものでもこしらえて、それで埋め合わせするというようなことでも考えるならどうか知れませんが、そうじゃなくて、単なる一つのそういうものをつくって取り立てをしてやるということは、これは許されぬと思います。われわれは弁護士ですから、しろうとの取り立て業を公認するということになる、これはたいへん許せぬ。何か積み立て金でもするとか、保証でもするとか、保険的なことでもするならまだ考えられますが、ちょっとそれは困難だろう。容易に肯定できない案だと思います。
  105. 横山利秋

    ○横山委員 政務次官、まことにわが意を得たことをおっしゃいました。それをごらんください。それは私ども意見でありますが、いま政務次官がおっしゃったことそのものずばり。同僚諸君にも御意見を伺いたいと思いますが、いま政務次官がおっしゃったような意味で、手形保険という構想はどうかと思うのであります。  手形交換所において約束手形が不渡り処分になった場合の受け取り人の損失を補てんするために、手形保険制度を設ける。  保険の目的たる対象物件は不渡り手形とし、保険の契約限度は一枚につき三十万円とする。ただし、振り出し人一人につき百五十万円をこえることができないものとする。  保険事故は手形交換所における手形の不渡り処分及びこれに準ずるものとする。  保険者は信用保証協会とし、金融機関に代理させることができるものとする。  保険契約者は手形の振り出し人及び裏書き譲渡人とする。  被保険者は手形の受け取り人(提示者)とする。  引き受け方法は任意契約によるものとし、保険者と保険契約者が包括契約を締結した後、保険契約者は手形振り出しのつど、当該手形につき保険者の認証を受けるものとする。  保険料率は不渡り手形発生率等を勘案し、業務方法書をもって定めるものとする。  保険金の支払い限度は、不渡り手形金額の八割とする。ただし、保険の契約限度をこえないものとする。  保険者は保険金を支払ったときは、その支払った金額の限度において、被保険者の権利を取得するものとする。  危険の分散及び平均化をはかるため、中小企業信用保険公庫が再保険するものとする。  まさに鍛冶さんがおっしゃった構想と全く意見が一致するわけであります。私はこう思うのです。先ほど局長がおっしゃったように、全くサルベージにまかしてしまえば、振り出し人の責任は、相手がそういう準公益機関であるからまあいいというので責任観念がなくなる。したがってあくまで振り出し人の責任、それから手形を受け取った人に対する義務観念、そういうものを存置をしなければならぬ。しかし一方不渡り手形を受け取った人の保証というものが、手形振り出しの最初から行なわれなければならぬ。これがこの案の骨子であります。  ただ、いま不渡り手形の状況を見ますと、大体不渡り手形の金額、平均が十六万七千円であります。私の思いましたよりはいささか金額が低いわけであります。そのことは、この不渡り手形に泣く人たちがどういう人たちであるかということをいみじくも指さし、不渡り手形を発行した人たちが、どういう人であるかということを指さしていると思うのであります。つまり圧倒的に中小企業の中で不渡り手形が伸びておる。したがって中小企業の発行いたします手形についての信用保証をつけるということが一つの方法ではないか。不渡り手形の対策を講ずるにおきましても、よってきたる根本原因は、先ほどるる申しましたように、きょうは言いませんけれども、具体的な問題としては中小企業対策として、振り出し人及び受け取り人、そういうベースを中心として考える必要がありはしないかという考えなのであります。この点についてひとつ銀行局長の御意見を伺いたい。
  106. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 この考え方に対しまして、まだ私どもは確実な御返事をするほど研究が至っておりませんので、その点はいずれ後日十分研究を行なった上で確たる御返事を申し上げたほうがいいと思います。その前提として、いまの不渡り手形の金額が低いというお話、だからそれを受け取った者は中小企業に相違ない、こういう御判断ですけれども、必ずしもそうでないんです。この金額が低いことの一つの理由は、割賦手形が最近非常に多くなっている。いろいろな割賦販売制度があったりして、これは手形を使っておるわけです。その手形が全体の不渡りのうちの、金額において二〇%、全く支払い地に指定された金融機関に取引なしというのが二〇%ぐらいあるのです。あとは、取引はあるけれども残高なしというふうな理由で不渡りになるわけですが、その取引なしのうちの六割は実は割賦手形なんですね。これは正確な数字はぴたり出ませんが、大体調べたところでは、六割ぐらいは割賦手形なんですね。全然銀行取引がない銀行を支払い場所に書いておる。これは全く無責任な話でございますが、そういう事情であるために、この割賦手形の一面当たりの金額は非常に低いわけであります。もう何千円という口からあるわけです。そういうこともあって、この不渡りになった分だけを計算いたしますと、一般の平均の一万円当たりよりもかなり低い数字が出てくる。これは金額から申しましたが、枚数から申しますと、こういう零細なものが非常に多く含まれておる。こういうことから、いまも申したように単位金額が下がっている割賦手形になりますと、受け取り人は、もちろん販売店もございますが、さかのぼっていくと大メーカーにつながっている。日本ではいわゆる消費者金融制度がアメリカ式になっておりませんので、そういう関係でメーカーが割賦の最終の金融をつけて、金融を自分で行なっているというふうな事例が多いわけであります。そういうことでございますので、いまそれらの割賦手形をいかに扱うかということをさらに銀行協会で検討しております。割賦手形が枚数としては非常に多い。銀行の事務を非常にわずらわすということでございます。不渡りになりますと一万円につきちょっとした手間がかかるわけであります。そういうような、全然自分に関係のない者から振り出しをされたためにこれを返さなければならぬということが非常に多い。それで、この割賦手形の浄化をどうするかということをいま研究しておるわけでございます。  それから、この保険につきまして私は一つ疑念がございますが、振り出し人が任意契約で保険料を支払って契約を結ぶ、この点でございますが、振り出し人がたとえば中堅以上の企業である場合に、それらの企業が、自分が不渡りを出す危険があるからという理由で——強制なら別でございますよ。強制の場合は別でございますが、任意契約であれば、自分が不渡りを出す危険があるからといって保険契約をするのはまずないのではないか。それは権威にかかわるわけであります。自分が他人に不渡りになる危険があるということを申告する者はおそらくないのではないか。これはおそらく、信用を重んずる会社からいえば、それは結びたくないということになります。そうすると実際にどういう場合に任意の方法によって契約する人がいるか。その点が実際問題として一番むずかしい点じゃないか。それで非常に悪質なんですが、これはいずれ不渡りになるかもしれぬという可能性を多分に持っておる者だけが保険契約を結ぶとなりますと、これはとても保険制度がなりたたなくなる。事故を起こす者だけが加入するというのではこれは救いようがない。非常に高い保険料をいただかないと、おそらく五割も八割も保険料を払っていただかないととても成り立たない、こういうことになるものですから、その点非常に困難だ。といって強制ということになりますとこれは重大問題であります。産業界として決してこれに応ずることはないのじゃないか。強制ではむずかしいし、任意にするときわめて悪質な者だけが加入しようとする。そうすると保険料金が高くなる。こういう循環が起こってきまして、その点をどういうふうにお考えなのか、ちょっと御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  107. 横山利秋

    ○横山委員 これはいまの信用保証制度それ自身が、あなたのおっしゃることによれば同じような問題にもなると思うのです。信用保証協会について当委員会で一ぺん私も議論したことがあると思うのですが、いまの信用保証協会が採算が合い利潤が上がるとするならば、逆にこういう言い方が言えるわけです。信用保証をしなくてもいいものを信用保証し、信用保証を実はしなければならないものは信用保証しない、こういうやり方、運営方法をすれば、信用保証協会はぐんぐん伸びるという逆説的な言い方が言えると思うのです。それから信用保証をすることを望まないというのは、やはり一般的な、いまあなたのおっしゃった見地と同じであります。金融機関へ行って信用保証をつけてもらってきてくれと言われたときにどういう感じを受けるかということは、同じことじゃなかろうかと私は思います。ただそれとこれとは多少違いますのは、あなたもお考えだと思うのですが、これが新しい制度であるから、もしそれ、これが一つの軌道に乗っていくならば、信用保証料というものは非常に格安になるということも言えるわけですから、最初信用保証制度が出発いたしましたときにも、その点は決してなしとはしなかったわけです。いまはもう公的機関として信用保証協会及びその再保険制度というものが充実をしてきましたから、そういうことはあまり口に出す人はないけれども、逆に私どもが懸念いたしますように、信用保証協会の業務運営方法のいかんによっては、本来の信用保証協会の使命が達せられていないということも逆に言えるわけです。これは兼ね合いの問題、運営の問題になるのではないだろうか。ところが最悪の場合、懸念されます不渡りになるという覚悟のやつは保証を持っていく。持っていったところで、それは業務方法書なら保証する限界というものが信用保証協会にあることは当然でございますから、この点は私は心配ない、そういうふうに考えております。これはどちらが質問か、どちらが答弁かわかりませんけれども……。
  108. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 その点、銀行が債務者に対して信用保証協会の保証を求めるという場合とほぼ似たようなものではないかとおっしゃいましたけれども、これはだいぶ違うのじゃないか。銀行はいわば金を貸す立場にある。借りる立場にある者が、いってみれば弱い立場の者が銀行に行きまして、十分な担保がないとかなんとかいうことになりますとそう危険はないけれども——これはもちろん絶対危険なものなら銀行もやはり相手にいたしません。支払い能力はまあまあであるけれども、あるかもしれぬけれども、若干の危険があるというときには、どうしても保証がないといけません、こう言う。借りるほうは、金を借りるためでありますから、信用保証もそう高くない。普通借りている金利に、ほんのわずか金利が高くなる程度のものである。そういたしますと、金を借りられないよりは、その程度の若干高い金利を払ったと考えれば差しつかえないということで借りておるわけですね。ですから銀行の側からいえば、非常に不良な者は相手にいたしませんけれども、やや懸念があると思えば要求する。要求された者は、いってみれば弱い者が強い者に巻かれるという、実情をいえばそういうことだと思うのです。借りるという弱い立場でいえば、そう言われればどうしても一応受けてこざるを得ない。手形の場合にそれを当てはめますと、親企業が下請に対して手形を払う。その次に下請が、手形はいやだというくらいに強ければいいのです。そうでない場合に、あなたのところの手形はやや危険がありますから、これはひとつ保証を、保険に入ってください。保険に入った手形ならいただきますが、そうでなければ私は困ります、そういうことが言える中小企業であればそれはいいと思うけれども、普通は、現にいま行なわれておりますように、百五十日であるとか二百十日とか、とんでもない長い手形さえ押しつけられるような環境にある。一般に弱い、つまり要求する側が非常に弱い立場にあるというケースが多いのじゃないか。だから強制的に大企業もみな入るということであれば、そういう危険のない、一般に危険率の少ない者が保険に入るということになりますと、料率は非常に安くて済むだろうと思うのですが、そうでないと危険率が非常に高くなる。だから銀行保証要求する場合と、振り出しに対して要求する者との立場の相違というものはかなりある。ちょうど逆の立場になっているケースが非常に多いような感じがするのであります。大企業が中小企業に要求することはできるのですね。強い者が弱い者に対して、おまえ手形でもけっこうだけれども、そのかわり保険に入ってこいということはこれは可能だと思うのです。逆な場合はそうでないという実情にある、そういう点もお考えいただきたいと思います。
  109. 横山利秋

    ○横山委員 危険率という点からいいますと、信用保証協会の運営の方法によってできる。ただあなたのおっしゃるみずから進んで保証をつける人間がいないではないかという点は、それはわからぬではないわけです。しかし同時に、それならばみずから進んで信用保証協会の保証をする者もいないということは言えるわけですね。問題は、この現在の不渡り手形の蔓延というものをどこでどういうふうに、食いとめることはできないにしても、徐々に少なくしていくかというきめ手がいまないわけです一根本的には経済政策の問題、根本的な景気の問題であるけれども、しかし不渡り手形の発生の状況をずっと調べてみますと、景気がよくなったから不渡り手形が名実ともに減少したということは最近ではないわけです。カーブはゆるむけれども、絶対額及び伸び率は引き続き上がっているわけなんです。したがって、この不渡り手形に対する対策について、各方面が真剣に考えておるなら——先ほどの銀行協会の案というものは私はどうも多少あなたと見解を異にしている。政府側からいわれておりますいわゆる刑事罰をもって科するということはいささか大蔵省が法務省に責任を転稼しているのではないか。大体手形法というのは国際的な統一法でありますから、そう簡単に手形法の中に刑事罰をやるわけにはいかない。単行法でやらなければならない。私も鍛冶さんも法務委員として——私は新米でありますけれども、法務の立場から言うと、いささか大蔵大臣思いつきでものを言ったな、ムードをつくるつもりかしらぬけれども、少し軽率に過ぎはせぬかという感じを持っているわけです。それはあなたのおっしゃるように、取引のない銀行を支払い場所に指定したというような問題やらあるいはまた小切手法の罰金の金額を引き上げるとかそういう特殊の問題については可能ではあるけれども、しかし一般論として不渡り手形を出した者に対して刑事罰を科するということは、いささか大蔵省どうやらストレートだという気がするわけですが、本気でそういうことを考えて、しかも可能だとお考えになっていらっしゃるわけですか。
  110. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 たまたま小切手あるいは手形について、悪質のものは刑事罰の対象にするという制度が外国に例がないことはないのです。先ほど小切手につきましてはアメリカで行なわれておると申しましたが、他の国でも窃盗罰とみなすというふうなことで、故意に悪質な手形を振り出した者、不渡りにした者に対して処分する例がないではない。ですから全く考慮の外だということではないと思います。しかしいま横山さんのおっしゃるように、手形法というものは日本だけの法律じゃない、基本的な性格は国際的なものでございます。そこでそれに刑事罰を盛り込むなんということは不適当ではないか、その点は同感でございますが、何か単独立法で、明らかに詐欺的な動機から振り出されたとみなされるものに対して、それがなまじ手形であるがゆえに、容易に刑事罰の適用にならないという面もございます。本来はそれはもう取り込み詐欺ではないかというふうに明らかに見られる場合でも、手形を受け取ったということによってそれは手形の授受が適法に行なわれたということで、そのときに取り込み詐欺の犯意があったかなかったかということを立証することは非常に困難になってしまう。そういう面もあるわけですね。明らかにこれは詐欺ではないかと思うものが、ただ単に銀行取引停止処分を受けるだけにとどまっておるという面もないではない。そういうことを考えますと非常に困難ではないかという感じはいたします。小切手の場合なら困難ではない。小切手の場合は事実が非常に明らかに証明されますから、振り出したときに全然責任なんかないということで犯意ありと推定することもできるわけですが、手形の場合には先ほど申しました事情で、刑事罰の対象にする犯意の立証が困難であるという点から、立法技術的にはたいへんむずかしい問題であるということはわかります。決して思いつきというわけではありませんけれども、また法務省に責任を転嫁するということではございませんが、研究の余地はあるのではないかといってお願いしておるだけでございます。またこの手形を全部浄化することについてどういう方法がいいかということを各方面で実は考えておるわけであります。いま銀行の方々もこれらについて無関心でいるわけではない。ただ、いままでのところどなたもなかなかいい知恵が出てこない、そういう問題でございます。
  111. 横山利秋

    ○横山委員 それではいささかあなたとしても対策がないでは済まされぬのです。  それでは最後に聞きますけれども、大蔵省として銀行局として不渡り手形対策というものをどんな角度からこれから検討をなさろうとしておるのか。銀行協会の案は私は必ずしも釈然としませんけれども政府として不渡り手形に対する措置、具体的な対策という根本的な問題をもいろいろ含むわけでありますけれども、不渡り手形に対してどういうふうに処置しようとするのか、これはきめ手というものはもちろんないと思います。しかしムードを起こして包んでいくとかあるいはいまお話のような問題とかいろいろあろうと思いますが、不渡り手形対策というものは、政府としてどんな対策を考えられておるのか、それをひとつはっきりしていただきたい。
  112. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 不渡り手形につきましては、私どもはやはり観点は不渡りの手形を渡された者、つまり支払いを受けるべくして受けることのできなかった者の救済という観点も大事でございましょうが、やはりこれを浄化するためには無責任な不渡り手形を発行した者、そういうものに対する経済的な制裁、これを強化していく、つまりだれが一体この問題についてその責めを負うべきかといえば、やはり自分で手形を発行しながら、振り出しながら支払いの責任をとらないという、そういう行為は相当に重く処罰されていいのではないか。しかし刑事罰にすることがさしあたりなかなか困難な事情にありますから、銀行協会で定めました、これは私どもの指導にもよるわけでございますが、とにかくこれはしばしば実例があるのですが、一たん不渡り手形を出して停止処分を受けながら、実はまた新しく商売をして堂々と行なっている。だから一向にこのきき目がないという事例がありますので、これは非常に困難でありますけれども、その人間が、同じ人物が別に会社を設立したり、あるいは他の会社の名義を借用いたしまして、そこの実際上の責任者となってまた同じようなことをするということに対しては厳重に銀行取引停止処分を適用して扱わない、そういう不渡り手形を出した者については、その後においてしばらくの間そういう経済的な制裁を受け、ていよく営業することができないというふうにするのが一番いいのではないか。その辺が一番適切な措置ではなかろうかと思ってこういう措置をとったわけでございます。  何か手形というものに対して非常に甘く考えておる、これはある人が言いましたように私製の紙幣である、そういうものを無責任に発行する者は厳重に処罰されてしかるべきではないか。そういうことが一般に十分に認識されてくれば、手形を振り出すということはたやすいことではない。非常に自由に認められておるけれども、それは相当責任ある行為でなければならない、そういう風潮が一般にもっと広がっていくのではないか。いままではざるのようにどこか抜けておるわけですね、制裁規定が一種のざる法的になっておる、それを厳格にする、そうしてやってみる、そういうことを実際にどの程度効果をあげられるものか、これは取り扱い銀行の方々が新しく取引を開始する場合にはよくその中の人物を——前にそういう経験がないかどうか、それを調べる。これは非常にめんどうな仕事であります。たいへんな人数でございますから、それを符合させるだけでも相当な手間だと思いますが、とにかく新しく取引を開始するわけでございますから、そういう場合には十分慎重に調べてやる、こういう指導を行ないたいと考えております。
  113. 横山利秋

    ○横山委員 これはなかなかむずかしい問題でありまして、不渡り手形だけを考えますとそういう所見ももっともだと思う。が、しかしそれが逆に善良な中小企業者に無用な繁雑さ、それから資金の融資についての制限的な雰囲気、そういうことにならぬとも限らぬわけですね。ですから、かりにそういうことをおやりになるとするならば、それだけでは根本的な中小企業金融ということをますます圧迫し、制限を与える傾向になるということも局長として御判断があると思うのです。だから、私はきょう実際出た不渡り手形を取り巻いてどうするかという問題の提起をしたわけでありますが、他方において中小企業金融というものが円滑にいくような裏打ちがなくてはこれはだめだと思うのです。本委員会でこの間も同僚委員から指摘がたしかされておったと思うのですが、不況下においては、むしろ大企業が、中小企業が獲得した資金を吸い上げておる。つまり、われわれがどんなに一生懸命に政府金融機関に財政投融資なり、投資なりをしましても、それは間接的に大企業を手形のサイトの延長ということによって助けておる。助かっておるのは大企業であって、中小企業がその間の金利負担を課せられておるにすぎないということは、累次の数字的、統計的結果から私は出ておると思うのです。したがって、今後も政府金融機関なり、あるいはいろんな手段で中小企業金融の改善をしなければなりませんけれども、それこそあなたの言うように底が抜けておって、口から入れたように見えるけれども、しりから大企業の中へ流れておるという点がいささかあいまいになっておるのではなかろうか。私どもは常に、銀行法の一部を改正して、大企業に流れる金をとめろとか、資金委員会を設置してその流れを整理しろとか、こういうことを言うておるのでありますけれども、いつかなそういう点については、政府側として決断というものが足らないために、予算を見ますと、なるほど多少ふえておる、けれども実績を見ると、必ず不況下において中小企業に流れる金が相対的に減り、むしろ大企業に流れる金が相対的にふえておる。市中銀行なんか、特に私はいい例だと思う。そういう点について銀行局長としてどう御反省なさっておられるのか伺いたいと思う。
  114. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 実はその点に対する配慮も、先ほどの銀行協会の計画案、これに含まれておるわけです。というのは、いま台風手形とか何とかと申しまして実は振り出し日が書いてないのが多いのです。私も実はあまり知りませんが、振り出し日が書いてなくて決済の日にちだけが書いてある。ですから決済になったときに、これはいつ振り出されたものであるかわからない。ですから、無責任な手形を押しつけるという場合も出てくるわけです。そこで、振り出し日を記載させて、そして第一次の取得者の名前も——第一番にだれに渡したという受け取り人の名前も記載していく、こういうふうにして、そして必要がある限り——まあ原則としてそれは私はやってもらいたと思います。極端な大企業は非常に無理かもしれませんけれども、普通の企業の場合にはそれを月々まとめて符合してもらったらどうか、これは励行させたらどうか、そうすることによって、非常に不都合な手形をどのくらい出しているかということが銀行にわかるわけですね。銀行はそのものと取引をしているわけですから、当然そういう手形の振り出し状況などによってその会社の経理内容も把握できるのではないか、つまり不渡りで、決済のときになってこれは困ったというふうな、だから無理な貸し出しもしなければならぬというようなことにならぬように、常日ごろからどういう経理内容になっているかということ、自分の銀行を支払い地に指定した手形の内容審査する。もちろんこれはすべての企業についてやることはたいへんな手間でしょうから、それは実際的でなければなりませんが、そういうことも配慮していく。もう一つは、そういった手形の振り出し日が記載されているということになりますと、支払い遅延防止法の意味において親企業が子供の、下請に対して非常に無理な手形を押しつけているのではないかということも、それを見れば把握できるわけです。こういった問題は、通産省と公取がそれぞれ共同いたしまして支払い遅延防止法の厳格な実施ということに相当立ち入った調査を最近行なっておる。その詳しい事情は存じませんが、かなりの社数を調べておる。そういうことで、二カ月内にとにかく何らかの形で現金化されなければならぬという点を追及しているわけです。これらの点も、そういった調査において、むちゃな期限の手形が非常に出ているか出ていないかということが、そういう振り出しの日付を記入することによって把握しやすい。もちろんこれは手形の面だけでありまして、それ以外の買い掛け代金等の問題、支払い遅延は依然として問題が残るわけですが、あわせてそういう点についての調査を厳重にするということで支払い遅延防止法の精神を具体的に生かしていくということが一番必要なことじゃないかと考えております。
  115. 横山利秋

    ○横山委員 時間がございませんから、もう少し根本的な問題に触れたいと思いましたけれども、きょうはそれだけにしまして質問を終わります。
  116. 吉田重延

    吉田委員長 次会は、明後十八日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十六分散会