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高橋(俊)
政府委員 健全融資のルールといいますか、いままでのいろいろな景気変動、その過程におきまして、成長が非常に早い、その
あとにかなりきつい引き締めが起こる、三回、四回と繰り返してまいりましたが、その結果を見ますと、実は最近の株式市況の盛り上がりが見られないというところにあらわれておりますように、
一般的に見まして
企業の体質がだんだんに悪くなってきておる、弱くなってきておる、収益力が低下しておる、量的には非常に大きな設備を持って、また全体としての生産量も非常に大きくなりましたけれ
ども、それに反比例いたしまして収益力が低下した。こういった情勢にかんがみまして、全体の景気変動を左右するものは、一方において財政がございますし、片方に
金融がある。財政の問題もそれ自体景気調整の手段といっては何ですが、景気の問題について相当配慮しなければならぬ面も多いと思います。それはそれとしまして、
金融のサイドにおいても非常に重要である。そういうことを完全にコントロールする。
ほんとうからいえば、
日本銀行の公定歩合の引き上げその他が適切に予防的に行なわれている限り、全体としては危険がないといってよかろうと思いますけれ
ども、
日本銀行が
——われわれ今度
日本銀行法の改正をお願いするわけですけれ
ども、いかにその中立性を保つと申しましても、やはり政策全体としてのそのときそのときの情勢にある程度左右されるということがございます。完全に神のごとく的確に情勢を判断して適切な
金融政策その他をとるということはなかなかむずかしいのではないか、これから先はできるだけそういうことを、まじめにといいますか、情勢を科学的に分析してやらにゃいかぬと思いますけれ
ども、いままでのところではどうもそうではない。そこで、ここに副
総裁おられてまことに申しわけないのですけれ
ども、これは決して
日本銀行だけの
責任ではございません。私
どもむしろこれは
政府の
考え方に問題がなかったかと思います。そこで、特に市中
銀行の中で
都市銀行がやはり指導的な立場にある。そういった大
銀行の大
企業に対する融資問題を、早くいえばなるべく行き過ぎを生じないようなふうにしたい。
日本銀行が一々引き締めをやらなくても、自分自身で適正な
貸し出しさえやれば問題ないということから、オーバーローンの問題については、二年間も討議した結果の答申が出ておりますけれ
ども、それをやってみますと、必ずしも有効とは申し上げがたい。
日本銀行でオペレーションをやった結果、
日本銀行の
貸し出しは減りましたけれ
ども、一方でコールのほうはどんどんふえっぱなしである。コールには
資金偏在という問題がからんでおりますけれ
ども、
都市銀行がしゃにむに金を引っぱってきているところに問題があるように思います。問題は、次元が低いのではないかという説もございますけれ
ども、一体的な問題としては
貸し出しそのものを何らかの形でチェックすることが必要だと思いまして、
金融制度
調査会にこの問題の討議をお願いしたわけです。そうして
最初の総会におきまして、特別
委員会をつくってそこで研究しろということになりまして、
先ほどおっしゃいましたように、十一月五日からそれをやっております。ちょうど五回開いたのでございますが、
最初の
段階におきましては、私
どものほうから、どういう点にいままで問題があったのか、どういう点をこれから研究しなければならぬのかというような
考え方につきまして、プリントをお配りして御検討をいただいたわけですが、二回ばかりやっておりますうちに、どうもこれでは抽象的な
論議に過ぎて何も手がかりがないのではないか。
大蔵省は前に世銀方式でだいぶたたかれてこりたので、今度は案を持ち出さないがどうかということで
——案というものを出しますと、すぐに新聞にぽっと出されて、それはけしからぬということでたたかれる、これではまずいので、大蔵案というのは出したくない、
皆さんのほうから知恵を出してくれといったら、忙しくてそんなことはやっておれぬ。それでスケルトンといいますか、骨子となるべき四つ、五つの
考え方をその次のときに出したわけです。そして、
銀行の代表の方も二人特別
委員会に出ておられますが、
自分たちも持って帰って部下に検討させる、それで次の機会に対案も持ってこよう、こういう
お話でございました。ところが、その後実はその対案らしきものは何も出てまいりませんで、だんだん話しておりますうちに、主として
銀行側のほうの委員の
お話としては、こういう問題はいわゆる自由主義経済体制のもとにおいてはあまり適当でないんじゃないか、そういうことは
銀行の良識にまかしてもらったほうがいいんじゃないか、かりにルールをつくるといたしましても、こういう場所で討議したものを
銀行に押しつけるというふうなことではなく、
銀行協会が自主的にきめるということでどうですかというような空気になってまいったのであります。その間いろいろたくさん
論議しておりますが、結局かいつまんで申しますと、そんなことになっております。
そこで、いわゆる
銀行以外の学識経験者の方からは、それではたとえば三月末までには
銀行協会自身が何かルールらしいものをつくり上げることができるのかということをお尋ねいたしましたところ、いやそれはむずかしい、いつになってできるということは確たる返事はできないが、とにかくこういう場所でやったものを押しつけるというふうなかっこうをとってもらいたくないというふうな意向を申されました。しかし、これは
銀行としても
銀行が全部同じ
考えだというわけじゃございません。いろいろ
考え方にニュアンスの差はあると思います。とにかく何らかのルールは必要であるということをお認めになる方は、たくさんいらっしゃる。しかし、きめ方について非常に問題があるということでございますが、私
どもはやはりこれは
銀行の自主的な決定に待っているということになりますと、はっきり申し上げて何年たってもできない。いろいろないきさつがございまして、それぞれ系列
企業を持ち、
企業の間でも
銀行の間でもお互いに競争
関係がございます、そういう方々が寄り集まって何か
自分たちを縛る、競争を制約するようなルールをつくるということについては、これはなかなか実際問題としてむずかしいと思います。ですから、やはり依然として
金融制度
調査会のような第三者を交えた舞台でこういうことを討議する。ある程度押しつけられたといっては変ですが、ある程度第三者が判断したところによって、
銀行が、少しはいやであるけれ
ども、こういうルールをつくりましょう
——決定は
銀行自身でけっこうだと思いますが、何かそれに対する方向を、指示する方向をつくり上げるというふうなことをぜひやりたい、そういうことで、場合によりましては個別にも
銀行の方々ともみな話をいたしましてよく理解していただく。理解されないで強制だけでいったのでは、これは守られませんから、
法律上の罰則つきの制度ではございませんので、できるだけ自分自身で、いやだけれ
ども、これは必要なんだということを
感じていただいた上で、こういうルールをつくり上げていきたい。それにはあまり長く時間をかけていても同じことでございますから、なるべくすみやかに結論を得たいと
考えている次第であります。