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1965-02-12 第48回国会 衆議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月十二日(金曜日)    午前十時四十分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 山中 貞則君 理事 堀  昌雄君    理事 武藤 山治君       天野 公義君    岩動 道行君       奥野 誠亮君    鴨田 宗一君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    谷川 和穗君       地崎宇三郎君    渡辺 栄一君       渡辺美智雄君    佐藤觀次郎君       野口 忠夫君    平岡忠次郎君       平林  剛君   米内山義一郎君       横山 利秋君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (理財局長)  佐竹  浩君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君  委員外出席者         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      佐々木 直君         専  門  員 抜井 光三君     ───────────── 二月十日  交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第五一号)  国際復興開発銀行等からの外資の受入に関する  特別措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第五二号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  金融に関する件      ────◇─────
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は佐々木日本銀行総裁参考人として出席されております。  参考人には御多用中のところ御出席をいただき、ありがとうございました。  まず日銀適格担保債の問題、特に今回の国鉄特別利用債の問題につきまして、佐々木総裁から御意見を述べていただき、そのあと質疑を行なうことといたします。佐々木日本銀行総裁
  3. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいま日本銀行適格債券の問題について説明をするようにというお指図がございましたが。  私のほうで有価証券適格にいたしております条件は、第一はその発行形式公募形式であるということ、第二番目はその債券市場性を持っておること、第三番目はその条件金利その他の条件一般発行されております債券と比較いたしまして適当であるかどうかという、この三点の条件がそろっておりますものを適格といたしておる次第でございます。したがいまして、最近発行れさております有価証券、ただいま申し上げますのは政府保証債金融債社債の類でございますが、その相当な大きな部分が適格と判定されておるのでございます。もっともいま申し上げましたうちで社債につきましては、いま申し上げました三つの条件のほかに、さらにその社債発行いたしております会社信用状況というようなものも判定の条件といたしておるのでございます。そういう条件考えてまいりますと、ただいまお話がございました今度発行が予定されております国鉄特別利用債は、発行形式がいままで伺っておりますところによりますと大体国鉄に縁のあるところに個々に消化を御依頼なさるというふうに承っておりますので、ただいま申し上げた適格条件のうちの公募という形から、はずれております。したがいまして、私どもとしてはただいまの条件では担保適格といたしがたいというふうに判断いたしておる次第でございます。  なお御参考までに申し上げますが、現在発行されております政府保証債地方債金融債社債、この中で担保適格というふうに考えられておりますものの総額は約四兆四千億円にのぼっております。それからまた、日本銀行貸し出しが、最近のところでは一兆二千億ばかりございますが、このうちで担保をとりまして貸し付けておりますものが約七千五百億円前後にのぼっておるという状況でございます。
  4. 吉田重延

    吉田委員長 続いて質疑に入ります。  通告がありますので、これを許します。堀昌雄君。
  5. 堀昌雄

    堀委員 ただいま副総裁のほうから適格担保債についての現在までの状況についてお話がございました。実は先回の大蔵委員会で私この国鉄特別利用債について問題にいたしたわけでありますけれども、非常に多額の六百八十八億というような特別利用債というものが出されるということは、わが国の起債市場においても例のないことだと考えておるわけであります。すでに四兆四千億も実は適格債があるわけで、その中で実際に日銀担保に使われておるのは七千五百億しかないといういまのお話でもわかりますけれども金融の筋としてはやはり公募——公募と申しましても現在の公募必ずしもほんとう公募かどうかということには疑問がありますけれども形式上は一応公募という形になっておればともかくも、本来が縁故債という性格を持っておるものが適格になるということは、実は非常にその縁故債なるものに流動性を与えようということになるわけでありまして、縁故債の目的とは反することになるのではないかというふうに感じますものですから、少なくとも金融としての筋は一つ通していかなければならないのであるということで、実はこの間論議をいたしました。そこで六百八十八億というものがなぜ出てきたかというのは、三千億から引き算をした結果が六百八十八億ということで、国鉄の側としてもやはりこの債券がなければ第三次増強計画ですかの初年度の仕事ができないという面も一面的にあろうかと思うわけです。そこでこれはだれに答えていただいたらいいのか私もよくわからないのです。それはなぜかというと、理財局にも関係があるだろうし、銀行局にも関係があるだろうし、あるいは国鉄も当事者ですから当然あるわけですけれども、まず最初に六百八十八億というものが縁故債という形で消化できるものかどうか。過去に例のないことですから。少なくとも昨年度についていえば国鉄縁故債利用債は二百五十億しか実は出されていない。本年度はその利用債縁故債を二百三十億出した上に六百八十八億出すわけですから、一体消化を可能だと考えてこういうことが行なわれたのかどうか。ここに私は最初の疑問があるわけなんです。これはどなたか答えてもらえばいいのですが、六百八十八億の消化についてはどういうめどでやるというのか、ひとつどなたか答えてください。
  6. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 六百八十八億という巨額の縁故債を出すということがあまり正常でないということは私どももよくわかっておるわけでございますが、何しろ実はこれは国鉄運賃の値上げがにわかに取りやめになったということがやっぱり原因であるように思います。それでその消化につきましては、私どもも実はこれは金融機関にいきなりはめ込むものではないという最初のお約束でございます。金融機関に初めから売るのでしたら公募でいくのがあたりまえでございますが、縁故にはめ込むということなんです。縁故先というのは、いわゆるたとえば電電公社のようなああいう縁故債とは違いまして、直接国鉄を利用する乗客に売るわけじゃない。国鉄では相当の工事を毎年行なっております。その工事関係国鉄縁故のあるもの、受注先といいますか、そういうところに、会社などにはめ込みたいというような計画のようでございます。ここに国鉄の方がいらっしゃいますので、詳しい内訳はそちらからお話しいただいたほうがいいと思いますけれども、大体いまのところではそういった先に対して、ここのこの関係幾ら、たとえば機械関係会社には幾ら、それから土建、そういう関係幾らという計画を立てておられるようです。それで大体いまの段階で申しますと、四百八十八億円はどうやらめどがついている、あとの二百億についてはまだはっきりした計画が立てられないという状況でございます。私いま適格担保の問題というのが、これは実は先ほども副総裁からお話がありましたが、適格担保になったからといってそれをすぐ——もちろんすぐということはございませんが、たとえばいまの政府保証債のように一年経過したらどうこうというふうに日本銀行貸し出しと結びつけるということは、これは担保が実は余っておるわけでございますから、しいてそれを適格担保にしなくても金を借りることにおいて別に支障はない。しかし筋としてはあまり適当でないから困難であるということを日銀は申しております。それに対しまして、私どもとしては、適格担保にして、またそれが実際に日本銀行に持ち込まれるといたしましても、これは都市銀行だけのものです。つまり、現実問題として、地方銀行は借りていませんし、日本銀行もまだいまのところ貸す態勢にありませんけれども地方銀行にとってみれば、適格担保になるということは、何の意味もないということであります。  そこで、どうしたら消化を促進できるかということですが、私どもは、それ以外の方法で、たとえば——たとえはと申しましても、それだけが方法かもしれませんが、条件の問題じゃないかと思う。発行条件がいままでのような縁故債では、かえって普通の政保債のものよりも安い六分七厘というふうな金利もあったわけです。。これではとうていやっていけないということはわかっておりますが、いまの政府保証債条件と比べましても、政府保証債シンジケートをつくっておるからこそ、どうやら消化できておるが、条件そのものとしては、正直のところ、かなり魅力がない。それで、地方銀行などから見ても、どうやらそれならば持って損はない——実際には会社に売るといいましても、会社はまたそれをすぐ銀行に売るというふうなことが予想されるわけです。その銀行がこんな条件のものでは困るというような、いまの状態はそうなんです。そういうことでなしに、もう少し持ちやすい条件にしてやることが必要ではないか。そうやったら、おそらく消化も促進されるのじゃないか。たまたまことしの場合には、それは長続きするかどうかわかりませんけれども金融は相当緩和するものと考えられます。意識的に政策で緩和するのじゃなくて、需要一般にいまのところ沈静しております。半年たったら、また変わるかもしれませんけれども、そういう情勢。去年よりはだいぶ金融的なものでゆとりがある。コールもさがっております。もっとさがるだろう、そういうことからいって、必ずしも六百八十八億が、全額かどうかわかりませんが、相当な額が消化できるのじゃないか、そういうふうに考えております。
  7. 堀昌雄

    堀委員 いまのお話ですけれども、もちろん私はいま条件の改定もけっこうだと思うのです。そのことはあと議論をいたしますけれども、将来の公社債の格づけの弾力化ということの先べんにもなり得るかと思いますから、その意味では、私はその方向は非常にけっこうだと思うのです。  ちょっとここで考えておかなければならないことは、いま事業会社が四百八十八億、あと二百億入れて六百八十八億買ったといたしましても、金があって買える企業なんてないのじゃないかと思います。そんな六百八十八億も手元流動性のあるようなところばかりじゃなくて、結局、国鉄から言われると、取引関係上やむを得ず借金をして、それを買いましょう。だから、結局それが銀行担保に入るということは、何のことはない、銀行貸し出しをしたと同じような結果に実はなるのであって、どうも私はこういう出し方が、そういう意味で、何か民間資金活用の非常に賢明な方法かもしれませんが、何ともフェアな処理のしかたではないという感じが非常にしてならないわけであります。  そこで、いまから金融がゆるむから、だから、その程度の金額というのは、何とかなるということかもしれませんが、クレジットラインに非常に余裕がありますから、その関係銀行が何とかするかもしれませんけれども、しかし、私は今後の処理としては、やはり政府関係の問題でありますから、もう少し政府の側としていろいろの措置をとって、こういう処置をするのでないと、実は予算審議をされておる今日の段階でも、まだどういうふうな処理をするかわからないというようなことは、私はどうもこれは政府全体としてもう少しはっきりしておいてもらわないといけないのではないかというふうに感じます。  国鉄のほうにお伺いいたしますが、これは非常に多額金額ですが、どうやって割り当てるのですか。その受注関係金額に応ずるとか、何を目安にさっきの四百八十八億というのは持ってもらおうと話を始められるのか。皆さんのほうはどうしても資金が要るわけです。もっともそれは時期的には、いま一度に要るわけではないでしょうから、徐々にそうなるのでありましょうけれども、ルールというほどのものではないにしても、何かきまりがなければならぬでしょう。多ければ多いほどいいですが、みな必ずしもこういうものを喜んで買うわけではないでしょう。どういうことで皆さん考えになっておりますか。
  8. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいまの堀先生の御質問にお答えする前に、御承知かと思いますが、この問題のいきさつを、私のほうの側から見た言い分をちょっと聞いていただきたいと思うのです。  実は昨年の国会におきまして、国鉄安全輸送その他通勤輸送の問題とか、各委員会で非常に論ぜられまして、国鉄を現状のままに置いてはいけない、ぜひ根本的な解決をすべきだという御議論が出まして、政府におかれては昨年の五月にわざわざ内閣国鉄基本問題調査会を設置されて、その後去る十二月まで約半年にわたりまして脇村義太郎先生を座長といたしまして、るる研究を続けてこられました。その結果は去る十二月二十五日の経済関係閣僚懇談会で御了承になっております。三行ばかり簡単でございますので、その文章を読ませていただきますと「政府は、日本国有鉄道の新長期計画を、おおむね二兆九千億円の投資規模をもって、昭和四十年度から昭和四十六年度までの七カ年間に実施するものとする。」さらに一月二十二日の閣議におきまして「政府は、昭和三十九年十二月二十五日経済関係閣僚懇談会了解の「日本国有鉄道の新長期計画の実施について」の所要資金の確保については、特段の措置を講ずるものとする。」こういう閣議口頭了解をいただいておったのであります。  ちょうど昨年の暮れの予算折衝にあたりまして、しからば二兆九千億の七カ年計画初年度をどうするかということで、いろいろ論議がございまして、結局、大臣間の折衝によりまして、初年度、すなわち昭和四十年度は三千億でスタートする。さらに三百億の債務負担行為をつけてやるから、三千三百億でとにかくスタートしろ、こういうお話がきまりまして、しからばということで、三千億の工事計画を立てたわけです。  ところが、原資の内容から申し上げますと、ごくラウンドナンバーで申し上げますと、多少入りくみはございますが、三千億の原資は、大体千億が自己資金でございます。現在の運賃から上がってまいります自己資金が千億。これはもちろん減価償却を含めて千億でございます。それから千億が財投でございます。実は財投は千六百億いただいておりますが、約五百億の債務償還をいたしますので、借りかえになりますので、実際に使えますのは約千億。結局、残りの千億をどうするかということでございます。  しからば、先ほど先生がおっしゃいましたように、いままでのような利用債縁故債幾ら消化できるかということでございまして、いままでの経過等から見まして、二百三十億くらいは何とか引き受けられる、大体百三十億が利用債、百億が縁故債。その縁故債と申しますのは、国鉄共済組合が引き受けている縁故債でございます。  それで二百三十億は一応めどがついた。残りの約七百億、正確に申し上げますと、六百八十八億については、とにかく何とかして借金をしなければならない。しかし、財投ではめんどうを見てやれない。とにかくお前のほうでできるだけのことをして金を集めてみろ。こういうお話で、私どものほうといたしましても、この計画でスタートさせなければならぬ。一方、財投もないし、自己資金もないということで、約七百億円のものは、私どもといたしましても、できるだけの努力をしてひとつ集めてみよう。しかし、この経済関係閣僚懇談会の決定に際しては、日銀総裁も御就任早々ではございましたが、出席されておりますし、この文書の冒頭に、「政府は」ということをはっきり明示しております。現在提出されておる予算政府提出予算でありまして、国鉄提出予算ではありませんので、そういう意味で、政府におかれましても、よほど援護していただきませんと、とても私のほうだけで、全く金融知識のない国鉄だけで七百億という膨大なものを消化することは非常にむずかしい。しかしながら一方、現在の通勤輸送の緩和あるいは保安対策の充実という点から見ますと、どうしてもこれだけの金がなければ国民の御要請にこたえるわけにいかない、こういう背に腹はかえられない立場から、とにかく予算に組んでいただきまして、そうしてあらゆる力をもって消化するつもりでスタートしたわけでございますが、やはりその予算案成立直後から、私どもといたしましては、ただいま先生のおっしゃったようないろいろ国鉄関係のあるところに小当たりに実は当たっておるわけでございますが、先ほど申しますとおりに、私のように全く金融関係知識がない者が金融の専門の先生方の前でこういうことを申し上げるのは私はたいへん申し上げにくいのでございますけれども、いろいろ関係業者の言うことを聞いてみますと、やはりいま先生のおっしゃったように自分たち手元資金はもちろんない、どうしたってこれは銀行から借りるのだという話になります。銀行から借りるにはやはり日銀担保適格債でなければ銀行も喜んで金を貸してくれない、こういうふうな、非常に私しろうとでございますのであるいは言い方が間違っておったらお許し願いたいのでありますが、そういうような大体の空気であったわけでございます。それでもすぐ、年が明けると早々私どものほうから、私並びにその他関係者日銀に参りまして数回にわたって日銀総裁にお目にかかってお願いしたわけでございますが、先ほど日銀総裁がおっしゃったような理由で、できない、こういう御回答があったわけでございます。ただ私どもといたしましても非常に差し迫った資金需要でございますし、さらに初めての経験でございますので、やはり引き受けてやろうというところがこういう条件でなければ困るというような条件に対しましては、できるだけそれに充足するような条件をつくっていきたいという気持ち、またつくらなければ消化できないというふうな気持ちから、さらに重ねて大蔵省に対しましてこの適格債問題をお願いして今日に至ったわけでございます。ただ、先ほどお話のように、発行条件、ことに利子あるいは償還期限等につきましてまだはっきり大蔵省のほうからの御指示もございませんし、また一方、先ほど銀行局長お話ではございますが、利率を高くするということは結局私どものほうの利子負担に当然はね返ってくるわけであります。その利子負担を一体どうするかという問題等もございますものですから、まだその点の具体的な事情はきまっておりませんですが、いずれにいたしましても、先ほど四百八十八億ぐらいはめどがついているというように銀行局長は申されましたが、もちろん的確についているわけではございませんし、条件のいかんによりましていろいろ変わってくることと思いますが、さしあたりそのうちの五十億ぐらいは、私ども職員貯金をもう少し奨励いたしまして、そうして救国貯金と申しますか、国鉄を救う貯金と申しますか、そういうようなことで貯金を集めるということも一つ考え——実は新幹線のときにはそれをやりまして金を集めましたが、そういうことも一つ方法であるし、あるいは先ほど資材納入業者等につきましてもある程度持ってもらうということをいま考えておりますが、いずれにいたしましても、その条件によりまして結局どこがどう負担するかということは、条件がきまりませんとなかなか具体的な折衝になりませんので、ただいま、たまたま申し上げております四百八十八億ぐらいというのはほんとう一つめどでございます。したがいまして、私どもといたしましてはいわゆる日銀担保適格債問題は、絶対の条件とは申し上げられないと思いますが、しかし最大の条件であるということは申し上げていいんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。  たいへん知識のない者の答弁でお気に召さないと思いますが、そういういままでの経過を申し上げました。
  9. 堀昌雄

    堀委員 今度これは理財局だろうと思うのですがね。これはどうしても政府約束したようだから、政府約束をして、何か責任国鉄になすりつけているような感じで、私ども非常に明朗でない感じがするのです。いまの副総裁答弁を聞いてもそう感ずるのです。そこでこれは公募債にはどうしてできなかったのですか。これは理財局のほうのことだろうと思うのだけれども、同じことなんでしょう。結局いまの話を聞いてみれば、私がさっき触れたように縁故債だといっても、金のないやつに縁故債を持たすということは、どうせ銀行が金は出すのですから、担保にいく。金を借りるということは、結局その業者が余分の負担をするだけのことですからね。そういうことを考えてみるならば、公募債にして、どうせ公債といっても銀行にまたシンジケートにして割り当てるわけだから、これは公募債にしてもいいと思うのですが、その点はどうなんですか。
  10. 佐竹浩

    佐竹政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの堀先生の御質問公募債にしてもよかったんじゃないか、こうおっしゃられたわけでございますが、その意味でございますが、いわゆる政府保証債として出すべきであった、こういう御趣旨でございますか。
  11. 堀昌雄

    堀委員 そうそう。
  12. 佐竹浩

    佐竹政府委員 それでございますと、先ほど磯崎総裁からお話がございましたように、財政投融資計画の中から、つまり国鉄に向けて出し得るものはどれだけかということがいろいろ論議されまして、結局千六百億円、その千六百億円というものは一部政府保証債でございますし、一部貸し付け金というような形でございます。一方政府保証債は、先生百も御承知で釈迦に説法のようなことではなはだ恐縮でございますけれども国鉄以外に各法人から出る分を合計をいたしまして、全体として明年度金融市場において幾ら調達できるか。これは金融機関資金審議会等におはかりいたしまして、どれだけならば消化可能であるかというめどをつけましていかざるを得ない経緯になっておりますが、そのぎりぎり限界というものがございますために、政府保証債のワクというものはおのずから一定の限度がございます。その中で各機関ごと配分をいたしてまいりまして、結局国鉄には一兆六千二百の財投計画の中でやはり一割見当の千六百億円というものの配分がいわばぎりぎりでございます。そういう次第でございますので、千六百億以外のものをさらに追加して、政府保証債で出すということは実際上できないということであったわけでございます。したがいまして、おっしゃるような公募にすべきではなかったか。これは公募にできれば一番よかったわけでございますけれども、ただそうやって政府責任を持って調達する金額としては千六百億がもう限度でございました。したがって、それ以外の分は国鉄自己努力によって、従来もいたしました利用債縁故債で、自己努力で調達する。政府として責任を持って千六百億、これは金融機関資金審議会におはかりいたしまして、これは確実に置いていただくという形で進んでまいっておるわけでございます。
  13. 堀昌雄

    堀委員 金融機関資金審議会財投をきめたのはいつですか。いまの一兆六千億ですか、きめたのはいつですか。
  14. 佐竹浩

    佐竹政府委員 ことしの一月十九日であったと記憶します。
  15. 堀昌雄

    堀委員 私がどうもよくわからないのは、縁故債というのをその企業が買って持っておるということが事実であり、前提であるなら、私はこんな議論をする必要はちっともないのです。しかし事実関係はそうではなくて、それを担保にして銀行から金を借りるということなんでしょう。銀行はそれを担保にして金を貸すということと、銀行がその起債を引き受けるということの差は一体何にあるかというと、銀行金利のほうが少し高いから多少もうかるということかもしれませんね。しかしそのぐらいのことなら、どうせ銀行にいくということなら、政府がさっきの話のように、こうこういうことをやりまして責任を持つと言った以上、これは同じことなら、その程度のことは銀行にやらしてもいいのではないか。六百八十八億、かなり大きいですが、必要に応じてその資金はどうせ結果としては、場合によっては日銀も見る場合もあり得るでしょうけれども、しかしそれには少なくともストレートにこれとそれとが結びつくわけではないのだから、どうも今度の処理というものはフェアでないような私は感じがしてしかたがないのです。値上げを押えるというのは政府責任でしょう。政府はそうやって値上げを押えて、責任——片一方のほうでは押えておいて、そしてあとは知らぬぞ、おまえたち、かってにやれというんじゃ、事実もう国鉄としては非常に困っておるし、おまけにこれは大体が債券を売る商売じゃないですよ、国鉄というところは。債券を売る商売じゃないところに債券を売らせるのは実際気の毒な話だと私は思っておる。しかし、そうだからといって、私は、金融の筋は筋で通しておいてもらわなければ困るから、だから、そうだからといって適格担保にすべきだとは思っていない。これはしてはならぬと思うのです。やはりしてはならない。してはならないものを消化はさせるようにしなければならぬ。こうなるのですね。そうすれば、まあさっきの話のように、銀行局長が、少し発行条件を改定したらどうか——これも私は、さっき申し上げたように、公社債弾力化の糸口になるのでけっこうだと思うけれども国鉄にすれば負担もふえるだろうし、しかし、これは五十歩百歩でして、料金を上げたらコストがかからないのです。六百八十八億出せば、これは六分七厘であれ、七分五厘であれ、金利がかかるのに間違いない。ですから、その点、別に私は絶対的な問題ではない、相対的な問題だと思いますけれども、どうも、きょういままでのお話を聞いていると、やや私は非常に政府が無責任感じがしてしかたがない。政務次官、どうですか。ちょっと無責任感じがしませんか。どうです。これは大蔵省の問題ですよ。
  16. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 無責任と言われてははなはだ困りますが、苦慮したことであることだけは御了察願いたいと思います。
  17. 堀昌雄

    堀委員 苦慮したというようなことは答弁にならぬのです。私が聞いているのは何も——苦慮するのはそっちは商売です。それをどうやるか、大いに苦慮すればいいのです。しかし取り扱い方としてはやや人に責任をなすりつけて、自分たちだけでもってやるべきことをやってないのじゃないか、こういうことですよ。どうです、次官。
  18. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 まあそのときの状況から考えていただかなければ困るので、手ぎわのいいことではなかったろうけれども、やむを得なかったのじゃないかと御了察願いたいと思います。
  19. 堀昌雄

    堀委員 これからの問題ですよ。いままだこれから六百八十八億出すのです。だれか買ってくれているのならまあ手ぎわがよくなかったで済むのですが、手ぎわをよくしなければ売れないのです。最初に私が言うように、債券屋じゃない国鉄に売らせるんだから。私は金融の筋を通して、そうしてしかしやはり売れるようにするには、これは大蔵省責任があると思うのです。どうです。それは責任ありますね、次官。
  20. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 前に閣議等できめたところから見れば責任あるものと思います。
  21. 堀昌雄

    堀委員 磯崎さん、次官がちゃんと責任があると言いましたから、まああなたも、あとのことは、金融の技術的なことはもう大蔵省にまかしていただいて、適格担保債にしてくれとかなんとか、そんなことを言う必要はないのです。要するに消化されればいいんでしょう。だから消化されるようにするといま政務次官が公式に責任を持ちますと言いましたから、金融の筋を通して、ひとつ責任を持ってもらうということで、一応この問題はここまでにします。時間がありませんから……。  そこで、きょうの本論に入りたいのでありますけれども、実はこの間から新聞にもときどき出ておりますが、政府金融制度調査会を昨年下半期に再開をして、特別委員会を設けて今後の金融緩和時における融資のあり方について調査検討を進められておるというふうに新聞では伝えております。十一月五日を皮切りにして、この二月一日まで、何回かこの特別委員会というのか行なわれておるようでありますが、まずこの金融制度調査会特別委員会における審議経過を少し簡単に御報告いただきたいと思います。
  22. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 健全融資のルールといいますか、いままでのいろいろな景気変動、その過程におきまして、成長が非常に早い、そのあとにかなりきつい引き締めが起こる、三回、四回と繰り返してまいりましたが、その結果を見ますと、実は最近の株式市況の盛り上がりが見られないというところにあらわれておりますように、一般的に見まして企業の体質がだんだんに悪くなってきておる、弱くなってきておる、収益力が低下しておる、量的には非常に大きな設備を持って、また全体としての生産量も非常に大きくなりましたけれども、それに反比例いたしまして収益力が低下した。こういった情勢にかんがみまして、全体の景気変動を左右するものは、一方において財政がございますし、片方に金融がある。財政の問題もそれ自体景気調整の手段といっては何ですが、景気の問題について相当配慮しなければならぬ面も多いと思います。それはそれとしまして、金融のサイドにおいても非常に重要である。そういうことを完全にコントロールする。ほんとうからいえば、日本銀行の公定歩合の引き上げその他が適切に予防的に行なわれている限り、全体としては危険がないといってよかろうと思いますけれども日本銀行——われわれ今度日本銀行法の改正をお願いするわけですけれども、いかにその中立性を保つと申しましても、やはり政策全体としてのそのときそのときの情勢にある程度左右されるということがございます。完全に神のごとく的確に情勢を判断して適切な金融政策その他をとるということはなかなかむずかしいのではないか、これから先はできるだけそういうことを、まじめにといいますか、情勢を科学的に分析してやらにゃいかぬと思いますけれども、いままでのところではどうもそうではない。そこで、ここに副総裁おられてまことに申しわけないのですけれども、これは決して日本銀行だけの責任ではございません。私どもむしろこれは政府考え方に問題がなかったかと思います。そこで、特に市中銀行の中で都市銀行がやはり指導的な立場にある。そういった大銀行の大企業に対する融資問題を、早くいえばなるべく行き過ぎを生じないようなふうにしたい。日本銀行が一々引き締めをやらなくても、自分自身で適正な貸し出しさえやれば問題ないということから、オーバーローンの問題については、二年間も討議した結果の答申が出ておりますけれども、それをやってみますと、必ずしも有効とは申し上げがたい。日本銀行でオペレーションをやった結果、日本銀行貸し出しは減りましたけれども、一方でコールのほうはどんどんふえっぱなしである。コールには資金偏在という問題がからんでおりますけれども都市銀行がしゃにむに金を引っぱってきているところに問題があるように思います。問題は、次元が低いのではないかという説もございますけれども、一体的な問題としては貸し出しそのものを何らかの形でチェックすることが必要だと思いまして、金融制度調査会にこの問題の討議をお願いしたわけです。そうして最初の総会におきまして、特別委員会をつくってそこで研究しろということになりまして、先ほどおっしゃいましたように、十一月五日からそれをやっております。ちょうど五回開いたのでございますが、最初段階におきましては、私どものほうから、どういう点にいままで問題があったのか、どういう点をこれから研究しなければならぬのかというような考え方につきまして、プリントをお配りして御検討をいただいたわけですが、二回ばかりやっておりますうちに、どうもこれでは抽象的な論議に過ぎて何も手がかりがないのではないか。大蔵省は前に世銀方式でだいぶたたかれてこりたので、今度は案を持ち出さないがどうかということで——案というものを出しますと、すぐに新聞にぽっと出されて、それはけしからぬということでたたかれる、これではまずいので、大蔵案というのは出したくない、皆さんのほうから知恵を出してくれといったら、忙しくてそんなことはやっておれぬ。それでスケルトンといいますか、骨子となるべき四つ、五つの考え方をその次のときに出したわけです。そして、銀行の代表の方も二人特別委員会に出ておられますが、自分たちも持って帰って部下に検討させる、それで次の機会に対案も持ってこよう、こういうお話でございました。ところが、その後実はその対案らしきものは何も出てまいりませんで、だんだん話しておりますうちに、主として銀行側のほうの委員のお話としては、こういう問題はいわゆる自由主義経済体制のもとにおいてはあまり適当でないんじゃないか、そういうことは銀行の良識にまかしてもらったほうがいいんじゃないか、かりにルールをつくるといたしましても、こういう場所で討議したものを銀行に押しつけるというふうなことではなく、銀行協会が自主的にきめるということでどうですかというような空気になってまいったのであります。その間いろいろたくさん論議しておりますが、結局かいつまんで申しますと、そんなことになっております。  そこで、いわゆる銀行以外の学識経験者の方からは、それではたとえば三月末までには銀行協会自身が何かルールらしいものをつくり上げることができるのかということをお尋ねいたしましたところ、いやそれはむずかしい、いつになってできるということは確たる返事はできないが、とにかくこういう場所でやったものを押しつけるというふうなかっこうをとってもらいたくないというふうな意向を申されました。しかし、これは銀行としても銀行が全部同じ考えだというわけじゃございません。いろいろ考え方にニュアンスの差はあると思います。とにかく何らかのルールは必要であるということをお認めになる方は、たくさんいらっしゃる。しかし、きめ方について非常に問題があるということでございますが、私どもはやはりこれは銀行の自主的な決定に待っているということになりますと、はっきり申し上げて何年たってもできない。いろいろないきさつがございまして、それぞれ系列企業を持ち、企業の間でも銀行の間でもお互いに競争関係がございます、そういう方々が寄り集まって何か自分たちを縛る、競争を制約するようなルールをつくるということについては、これはなかなか実際問題としてむずかしいと思います。ですから、やはり依然として金融制度調査会のような第三者を交えた舞台でこういうことを討議する。ある程度押しつけられたといっては変ですが、ある程度第三者が判断したところによって、銀行が、少しはいやであるけれども、こういうルールをつくりましょう——決定は銀行自身でけっこうだと思いますが、何かそれに対する方向を、指示する方向をつくり上げるというふうなことをぜひやりたい、そういうことで、場合によりましては個別にも銀行の方々ともみな話をいたしましてよく理解していただく。理解されないで強制だけでいったのでは、これは守られませんから、法律上の罰則つきの制度ではございませんので、できるだけ自分自身で、いやだけれども、これは必要なんだということを感じていただいた上で、こういうルールをつくり上げていきたい。それにはあまり長く時間をかけていても同じことでございますから、なるべくすみやかに結論を得たいと考えている次第であります。
  23. 堀昌雄

    堀委員 いまの中でスケルトンになる大蔵省考えというのがないのですか。それを……。
  24. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 非常に詳しく申し上げるのも、いろいろな差しさわりがございますので、概略のところを簡単に申し上げます。  まずその一つは、先ほど申しましたように、景気に対して指導的な役割を演ずるのは大企業である。また、これは一方から申しまして大口貸し出し先でございます。各銀行のそういった大企業に対する貸し出しを一件ごとに、一会社ごとに縛るということは、外国ではございますけれども、そういうことはなかなかむずかしいのでございます。実際問題としてとほうもない額を借りている会社がございます。銀行の自己資本の何%というようなきめ方ではとても例外ばかり多くなるので、それを集団として、それに対する貸し出し増加額にある程度のめどをつけたらどうか。ここにおられます日銀の副総裁の研究されたところによりますと、これは大企業だけでございませんが、全体の貸し出しが前年度に比べて大体一五%をこえた場合には必ず変なことが起きている。これは物価の面においてしかり、また国際収支の面においてもおかしくなっている。ですから一五%というのはぎりぎりのところでないかというようなお話がございますが、そういったことをいろいろ参考にいたしまして、増加の率とかあるいは増加額について適正な範囲を定めたらどうか。  次には、問題のある業種で、現在すでに問題が生じてしまっている非常な過剰設備をかかえてダンピングになっているというところは、すでに反省しております。まだ具体的に出てないのですけれども、反省の結果が出ておるというところまでいっておりませんが、考え方としてはこれはとてもしようがない、たとえば特殊鋼のようなところでは、ほっておけばみんなが参ってしまうような状態になっている、そういったものは、むしろ企業家自体が反省しておりますからいいのですが、これから景気上昇期にあたり非常な設備競争が行なわれる可能性のある業界がございます。たとえて申せば鉄鋼業界で、鉄鋼業界では現在も非常に反省しておりますが、そういったおそれのある業種については、銀行が個別に自分の系列会社と相談するだけでなくて、全体の関係銀行がみな寄り集まって、一体この業界に対する設備の問題はどう考えるかということを共同で話し合う場を設けていただきたい。  それからもう一つ、今度は企業ごとの場合でありますが、設備資金の調達のあり方をいろいろ資料によって検討しておりますが、大ざっぱに申しますと、これは実績では株式を含めて大体六割くらいが自己資金で、四割が他に依存しておる。しかし、その場合におきまして運転資金はどうかと申しますと、運転資金の自己調達割合は非常に低い、二割ちょっとくらいが自己資金で、あと八割くらいは借金ということになっておりますので、設備資金だけについてきめてもあまり意味がないかもしれませんが、運転資金の問題を頭に置きまして、自己調達割合というものをある程度めどをつける。しかし、このめどはたとえばそれを五割五分とかなんとかきめましても、大部分の企業がはずれてしまうのでは意味がありませんから、ある程度甘くして、そのかわり幅を設ける。幅を設けて、それに対していろいろ適用金利についても考える。絶対にできないというのはよほどひどいやつに限るというふうに考えていただきたい。要するに、いわゆる自己調達の割合に一つめどを設けたいということであります。  四番目に、自己収益率が極端に悪い、そういった企業に対しては貸し出しを厳格にすべきじゃないか。これはやむを得ず起死回生といいますか、全然別の分野に進出するというようなこともございますけれども、そういったものもほどほどにしないと、ますます借金負担だけでもって収益率は悪くなる、そういったことから極端に悪いものには貸し出しを厳格にしたほうがむしろ親切ではないかという考え方でございます。原則としてはそういうふうに考えます。どの程度悪いものをそういう対象にするかというのは研究課題であります。  それからもう一つは、日本では世界に例を見ないような商社という非常に大きな企業もございます。これが非常な投融資を行なっておる、自己資本を上回ったような投融資を行なっておる。その表面に出た投融資のみならず、いわゆる企業間信用の形における投融資もかなり巨額にのぼっております。これはほんの一部の例かもしれませんが、引き締め下にかかわらず、非常にビルが多く建った、こういうビルに対して銀行はまともに貸してないのですね。みんな間接に流れていった金がそういう建設資金に使われている。したがって、こういった商社の投融資につきましては現状がどうなっているか、ほとんど把握されておりませんので、まず現状を把握し、それから新しく行なおうとする投融資に対しては、相当厳格な方針で臨まなければならぬとか、やむを得ないものに限ったらどうかという考え方であります。すべてこういう問題につきまして例外の措置というものがどうしても必要になってまいりますが、そういう極端なものに対する例外措置というものは、当該銀行の恣意だけで決定しないで、できれば、先ほど申しました共同の話し合いの場にそういうものを持ち出して、いいか悪いかを検討するというふうな非常にフェアな融資の姿勢というものが望ましい。これはむしろ実際、扱い方も問題でございますけれども、いずれにいたしましても、全体としてこのルールというものは非常に厳格なものであってはならない、守りにくいものであってはだめでございますから、最初段階では相当の幅を設けて、弾力的に運用していく、そういうふうなルールをつくっていきたいというふうに考えております。
  25. 堀昌雄

    堀委員 実は私どもの党でも貸し出しの歯どめの問題というものは論議をしておりますけれども、三十八年のいろいろな経済の状態を見ると、やはりまさに金融がゆるんできたときに非常な貸し出し競争が行なわれた事実があるわけです。時間がありませんから、私のほうから少しく申し上げてみますと、三十八年の主要経済指標で、要するに民間設備投資は、最初の見通しは三兆五千億円だったのです。それが年度の終わりにきて三兆九千八百億円、一三・七%実績見込みでふえた。実績で四兆一千四百八十九億、一八・五%当初見込みよりふえておる。このことは、日銀の統計によるところの新規設備投資に対する貸し出しが、三十六年は九千六百八十三億、三十七年が一兆七百八十二億に対して、三十八年は一兆五千三百四十億円というように五千億円も一ぺんに新規設備投資に全国銀行貸し出しが増加をしておる。この間の状態は、三十七年の十月二十七日に一銭九厘に公定歩合が下がり、それから十一月に一銭八厘に下がり、三十八年の三月に一銭七厘になり、三十八年の四月に一銭六厘と急ピッチに、これはさっき高橋さんもちょっと触れたけれども、私たち非常に反対したけれども、人為的な低金利政策ということでやられた。金利が下がるだけならいいんですが、実際は金利は下がらなかったということなんです。これを無条件もののコールで見ると、結局二銭台に下がってきたのは、三十七年の十二月に、無条件が二銭六厘、三十八年の三月は二銭三厘、六月が二銭、九月が二銭、十二月が二銭二厘、ここらのところがやや低いところでありますけれども、要するにこの三十八年中に非常に貸し出し競争が行なわれたことは、これは間違いがない事実だと私は思うのです。  そういうふうにしてみますと、銀行貸し出し全体から見ても、大体三十八年は約三兆余り貸し出しが出ておるわけで、これまでの例年一兆五、六千億くらいのところが非常にふえておるわけですから、非常に貸し出し競争が行なわれた。今度また金融がゆるんでくると、初めのうちはしばらくはあれでしょうけれども、どうしてもまたこの貸し出し競争が起こる。貸し出し競争は何で起こるかといったら、銀行は金を貸すのが目的じゃなくて、実際は預金の競争をやるものだから、貸し出すということは、要するに預金させるということなんです。だからまたもや都市銀行を中心として各銀行間に過当競争で預金競争のための貸し出し競争というものが、必然的に出てくるのではないか。  さっき銀行局長お話しになったように、日本のいろいろな経済政策の中のガンというのは、やはり財閥があった。その後のそういう金融と産業の癒着といいますか、これが銀行と産業間にあると同時に、証券会社とさらに産業間も銀行を通じそういう系列がある。それが依然として、投資信託なりあるいは株のいろいろな問題を分析してみると、その弊害というのは、証券市場、資本市場の中にも非常に顕著に出ておる。金融市場の中にも非常に出ておる。これはどうしてもどこかである程度ヘンメンするような手だてを設けていかなければどうにもならないかというふうに私は感じまずので、実はいまの金融制度調査会の歯どめについて非常に期待をいたしておりましたけれども、残念ながら非常にテンポがおそいわけであります。ところが、いまのように銀行側が自主的におやりになるのは、私もたいへんけっこうだと思うのです。この前も、例の新格づけ基準というものをここで取り上げて、だいぶいろいろと騒がれましたけれども、これも銀行自分たちできちんとなさればいいのですが、されなければ、やはり社会的な問題としてはどこかでやらなければならぬではないか、こういう議論なんですから、このことは歯どめ問題についても私は同じだと思うのです。  そこで佐々木総裁にお伺いをいたしますが、日銀には一つ窓口規制という方法がありますね。しかし、こうだんだんとゆるんでくると、窓口規制等では事実上そういう市中銀行その他の貸し出し態度などに影響力が十分持てないのではないか、こういうふうに思うのですが、日本銀行として、そういう貸し出しに対しての影響力の範囲、これはどの程度に行なえるものでしょうか。いまのような歯どめというルールなしに、はたして……。非常に締まってきたときには影響力がありますが、ゆるんだときは影響力が非常に薄くなる時期ではないか、こういうふうに思うのですが、その点いかがでしょうか。
  26. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいまの御質問は、私どもも大体同様に考えておるわけでございまして、いままだ窓口規制を続けておりますが、これは、公定歩合を一厘下げましたけれども、引き締め前に比べますとまだ一厘高いわけであります。ですから、緩和方向には向かっておりますけれども、依然として引き締めの部分的なものは残っておるという考え方であります。したがいまして窓口規制もある程度効果を持ち得るわけであります。これで全面的に金融解除ということになりまして、公定歩合も下がるということになりますと、もし窓口規制を残しておきましてもそのきき方が非常に悪くなる、こういうことでございます。いままでの経験で見ましても、たとえば三十一年の春のように、日本銀行貸し出しがすっかり実質的にゼロになりましたときなどは、銀行貸し出し態度について日本銀行からいろいろ注文いたしましても、なかなかききが悪かったわけであります。そういうようなことから、いまやっておりますことは、いまさら御説明申すまでもありませんが、二つの方法を併用いたしておりまして、日本銀行銀行に対する貸し出しについてはクレジットラインを設ける、銀行企業に対する貸し出しには窓口規制をやる、この二つがまえでいっております。ところが、日本銀行銀行に対する貸し出しのほうは、そのときの銀行券の動き、あるいはまた財政収支の動きなどである程度機械的にきまる部分がございまして、こちらのほうだけではなかなか金融の調整の効果があがりにくいわけであります。したがいまして、全体として効果のあります公定歩合の問題でございますとか、預金準備率の上下の問題、そういうようなやり方で大筋をきめていくよりほかはないと思います。したがって、窓口規制がきかなくなるような時期には、いま銀行局長からもお話がありましたような融資ルールというものが私どもの立場からもぜひほしいわけであります。長年私も個人としてそういう気持ちでいろいろ検討してまいりましたけれども、なかなかうまい方法がございません。むしろ最近の外国の例などを見ますと、銀行貸し出し増加額について、たとえば前年末の残高の何%増にとどめるべしといったような窓口規制的なものを、相当高い機関の決定として銀行に指図をしておるような例がふえてきております。したがいまして、もし個々のやり方、個々のルールというものがなかなかできないとすれば、銀行貸し出しの増加額自体について、いまの窓口規制という、日本銀行で一方的にきめるやり方でなくて、もう少し広い場でその増加額について納得のいくきめ方ができれば、せめてそれでもやってもらえれば非常によろしいのではないかというふうなことを考えておる状況でございます。
  27. 堀昌雄

    堀委員 そこで、この間から私ども新聞で拝見しておるのですが、新しい「金融緩和と当面の産業対策について」ということで、日本銀行なり市中銀行と話をしておられる。これをちょっと見ながら、私が別に大蔵委員であるからというわけではないのですけれども、その金融の問題についていま一番金融緩和時に必要なことは何かというと、やはり歯どめのほうが日本の場合はいま必要なんであって、金が要るところに金をつけてやるということはほっといても必ずついてしまうのであって、あなたのほうでもこの場合にこういうふうに書かれておるのです。「この場合、特に留意すべきは、それぞれの業種の実態、向うべき方向に即した産業資金の効率的、重点的確保である。総花的な資金供給は、当該産業の健全な発展をそこなうのみならず、今後の経済の安定成長にも悪影響を及ぼすものと考えられる」こういっておられるが、この点全くこのとおりだと思うのですが、ちょっとここに必要なのは、この資金の重点的確保という形でいろいろあと出ているのですが、ずっと「業種別の概況と問題点」などを見ても、その中に流れている考え方というのは、要するに戦略産業を前に伸ばすためにはそこに資金を大いにつけて、ほかは整理する。どっちかというと、私どもは当委員会で、日本の条件というものは常に資金需要が強いから、どうやってこの資金需要をある程度押えるかということが金融正常化に持っていく道だと思うのです。通産の側は産業の側に立っておるからつけるということになっておると思うが、このニュアンスは、そういうポジティブの問題よりも、通産省もひとつネガティブな部分について、もう少し積極的な指導をすることによって上に出てくる部分を押えておけば、あなた方が確保したいほうは自然につくという形になるのではないか、こういう感触を私は持っておるのですが、全体の感触としてはやはりポジティブの方向にウエートがかかっておるような気がしますが、通産省の考え方というのはどういうことですか。
  28. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 御承知のように、日本経済が実質的にも開放経済体制になりましたので、やはり国内の産業の基盤という考え方よりも国際的視野に立った基盤、競争力強化ということが私は必要だと思います。それから、同時に高度成長とか安定成長とかいわれることばがございますけれども、日本がこれから国際的な経済力を持っていくためには、やはりどうしても成長をしなければならぬ。ただ、過度の成長がいろいろ問題を起こしたという点に確かに問題もあり、反省もあると思います。そういう意味では、やはりある安定をした成長に必要な成長資金というものはどうしても確保していかなければならぬと思います。ただ、ここに私どもがメモに書いた問題は、いま堀先生がお読みになりましたが、私ども考えております点は、そういう点を前提にいたしまして考えますと、いまいろいろ問題が出ましたように、金融が一応緩和の方向をたどっていくという場合に、やはりまた過度の成長と申しますか、企業でいえば先生の言われる過当競争、シェア競争という問題が起こってまいりますので、そういうことがなく、秩序ある設備投資が行なわれることが必要であろう。そういう観点に立ちますと、いまお話しのように、要するに業種業種が全体として、今後の需要供給を考えながら、供給と需要がバランスをとり、需要と生産とがバランスをとるような方向で、個々の企業だけでなしに、その一つの業種、企業全体が秩序ある投資を行ない、成長をしていくことが望ましいということを考えておるわけでございます。そうしますと、業種業種によってそれぞれ問題が起こってまいりまして、これが要するに金融緩和だけで問題が解決しない。私どもは構造問題だ、こう言っている点でございます。それはそれぞれの業種によって違いまして、やはり国際的競争力を持ち、輸出産業として成り立っていくためには、特にこれから前向きにいかなければうまくいかないという問題については、先生お話しの戦略産業といわれる面もあると思います。しかしわれわれはそれぞれの業種業種に応じまして、いま申し上げた秩序ある設備の投資をするための方法として、必要があれば抑制をしなければならぬということをここで考えておるわけであります。その抑制の方法というのは、基本的に申しますと企業がそれぞれ自主的な考え方、判断、それから最近いわれております社会的責任というものを自覚しまして、いま申し上げました安定かつ秩序ある成長に向かうように、個々の企業が国民経済的な観点に立っていくべきであるということが前提であります。私ども産業を主管している立場から、たとえばいろいろな審議会、あるいはわれわれの方と民間と、あるいは学識経験者等を入れまして、そこで話し合いをして、いま申し上げましたその業種業種全体の構造問題をどういうふうに解決しながら成長していったらいいか、場合によりましては総投資額を一応みんなで相談をして、その範囲内にとどまるような方向で各企業企業活動をしていくのが望ましい。必要があればその場合に私どもが指導したりなんかもいたしましょう、こういう考え方でございます。
  29. 堀昌雄

    堀委員 いまお話しの点わかるのですが、結局私が言いたいことは片方の大蔵省日銀は押えるほうに一生懸命かかっているわけです。通産のほうは企業の立場に立つにしても、いわゆる金融政策全体としてみると、やはりゆるむときはよほど慎重にやらないと、過去に例が何回もあるわけです。たとえばいまの民間設備投資の問題でも、あなたのほうでは産業構造審議会あるいは資金部会等でいろいろ計画を立てているはずです。しかし当初に立てるときは、四十年度の設備投資の見通し四兆九千億円に対して、これから見通しに基づいていろいろ立てるわけでしょう。経済見通しが土台になっているはずですからね。それの見通しにおいて三十八年に三兆五千億と立てたが、実際は四兆一千億になってしまうという問題は、結局私は率直に言うと、もう少し通産の側も押えるところはしっかり押えないと、ガイド・ポストとして出したものが二〇%近くも違うようなことではガイド・ポストの値打ちはないと思うのです。だからそこらについては通産の側も、つけるほうよりも押えるほうだけきちっと押える。特にここで拝見すると設備投資が行き過ぎたところがたくさんあるわけです。セメントだってそうだ。そしてどうなるかというと、逆にそういうところはせっかくの設備投資を今度は遊ばせ、減産して、場合によっては滞貨資金をよこせということがあるわけです。そういうことが事実あるのだが、それはしかしかなり早くわかるはずだと思うのです。わかっているにもかかわらずそうなってしまうというのは、やはり資本主義の無政府状態といいますか、コントロールするところがないからである。そこらについては主管省としてはやはり金融面の問題についてもうちょっと、つける側という問題もありましょうが、つけるほうは金融緩和時にはつくんだ。だからできるだけそうでないところを押えるにはどうするかという点で、これは通産、大蔵というようなところではなしに、もうちょっと日本経済全体として、政府という表現がいいのか何かわかりませんが、経済閣僚懇談会なんかもう少し権威を持ってやってもらわぬと困ると思うのです。どうもセクトセクトになってしまって、金融の問題一つについても何かうらはらの感じを私どもは受けるのです。この点は三十九年度の場合も四兆一千億の見通しを立てていて、四兆六千五百億円という実績の見通し。これは実質一三・四%上がっているのです。こういうように最近の情勢というのは毎年毎年、金融を一年間締めていても当初見通しに対して一三・四%も上がっている。これからゆるめるときに、ここに出している四十年度四兆九千億が一体幾らになるかということは、これは来年の終わりごろになればわかると思いますが、当然これもまたもっとふえるだろう。過去の例で、これが下がったなんという例はないのです、私かなり前から何年もかかって資料を調べているけれども。そういう状態ですから、これは通産の側にきょう来ていただいたのは、ひとついまの融資ルールの問題については、あなた方もそういう企業別の問題として少し融資を押える側にも一ぺん立って検討をしてもらうべきではないのか、こういうことをあなたの側、通産の側でも検討してもらえないかどうか。そのことは含んでいるのだと思いますが、感じとしてはどうもポジティブのほうにウェートがかかっているような感じがするので、その点はどうかということをちょっと簡単でいいですから……。
  30. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 いまの融資ルールの問題は、いま大蔵省のほうで、金融制度調査会で検討されておるようですが、私どもは実は承知しておらないわけです。ただ、私どもが、それはそれといたしまして考えますのは、御承知のように、私どものいま考えておる問題をもう一度申し上げますと、たとえば各企業が同じような設備投資を何社か一緒にやっていくということは、非常にこれは自由経済でございますけれども、問題があとに残ってくるわけでございます。場合によりますと、やはり同じ一定の生産のための設備投資をするなら、共同投資をやったらどうか、あるいは、企業間で提携をやったらどうか、あるいは、ある時点までに総額でそれ以上の設備投資を個々の企業がしないようにするにはどうしたらいいかということをやっていくわけでございますが、それぞれ企業のたとえば財務比率にいたしましても、資本構成にいたしましても、あるいは現在の収益等もそれぞれ違っておるわけでございます。それは日本がまだ成長の過程にあるということが言えると思います。そこで、私どもは、それぞれの業種業種の実態によりまして、その業種全体が日本に必要な需要を充足するという立場から見まして、そのときにはどういうあり方が望ましいかという問題になってまいりますと、それはその個々の産業の業種業種全体の実態に触れてこないと問題がなかなか解決してこないと私は思います。そういう意味で、いま先生お話の、必要があれば過当競争の行き過ぎを是正するには、その産業、企業自体がそういう考え方にならなければならぬと思います。同時に、御承知のように外国に比べますと資本構成も非常に悪い、おしなべて悪いのですが、そういう格差が非常にあるわけであります。それからもう一つは、わが国がまだ成長過程にあって、まだ国際競争力をつけていかなければならぬということを考えますと、やはり非常に技術革新がまだ激しいわけでございます。収益性の問題といいますのも、やはり将来の収益性を頭に置いて考えなければなりませんので、現時点において画一的にあれすることはなかなか問題だと私は思います。これはいまの金融制度調査会なりあるいは大蔵省考えているその考え方に意見を差しはさむ余地はないし、私も存じあげておりませんが、そういうことを考えますと、やはり私は、産業の実態に触れて、いま先生の言われるような方法には、企業企業がやはりそういう考え方で全体として市場安定のための話し合いということが必要ではないか。ただ個々に画一的にこれをどうするという問題よりも、産業自体の体制というものがそうなることが必要であって、各銀行貸し出し競争と各社の借り出し競争とはこれは両面でございますけれども、日本の産業の体制と、それから、これに対して銀行が、それぞれの融資系列関係という考え方にとらわれずに、全体の均衡、全体としての産業投資には産業の体制に合ったような考え方で、いま先生の言われるような方向に持っていかなくちゃならぬ、こういうふうに考えております。
  31. 堀昌雄

    堀委員 あなたの言われることはもっともなんです。そのとおりなんで、何も文句は言いませんが、これまでそういうことにちっともなっていないのですよ。なってないというのは、一体だれの責任かということも、もう少し振り返って考えてみる必要があるのじゃないか。それは企業がかってにやったので悪いといえばそれまでですけれども、やはりいまの段階では、政府がある程度そういう指導を強力に行なうことが大切なんで、今日セメントやなんかこんなことになるのは、これはともかく常識でわかることなんです。わかることだけれども、当事者は、森の中にあって森を見ずして夢中でやっているという点があるわけですから、そこらの点については、いまのお話はそのとおりだろうと思うけれども、具体的にどうやって実行してどうやって成果を上げるかというところに相当欠けておる面があるのだ。そういうのは成果が上がらないから、片一方では、しょうがないから普遍的な一律のルールででも押えようということになって、そのこと自体決して望ましいことではないけれども、そうでもしなければしかたがないというところに来ているのが、私はいまの実情じゃないか、こう思うのです。だからその点は、これから金融がゆるむに際しては、日銀もいろいろと通産省とお話し合いなりいろいろやっておられますから、その点を含んで、何とかひとつ今度の金融緩和時には、三十八年におけるようなことが起こらないようにするには、これは大蔵省を含め、通産省を含め、経済関係を担当しておられる方は真剣に考えてもらう必要のある問題ではないかと思うのです。  それにあわせて、特に私がこの歯どめについて非常に重要に思っておりますのは、過去の例を見ましても、金融正常化のためにはある程度コールがゆるんでいなければ金融の正常化というのはできないのですよ。ところが、これを見ると、ちょっとゆるむというのは大体半年ぐらいしか過去にはゆるんでいないのですよ。そうして必ずどうっとまた上がってしまうわけですね。それじゃなるほど金融正常化もできなければ公社債市場の育成もできない。何もできないんですね。ぐるぐるうしろから追われてきているから、私は何とか今度はひとつきちっと歯どめをかけて、そうしてそういう不要不急のものはできるだけ押えて——必要なものはいいでしょう。いいでしょうが、そういう押えることによって金融緩慢状態をつくった中で、そこで公社債市場をつくっていくという、本来のオーソドックスな方向にいかない限り、こういう異常な状態をいつも繰り返して、そのしわをだれが受けるかというと、現実には国民が受けるんですね。だから私は、そういう関係責任のある立場にある人はもっと真剣な反省があっていいのではないかと思っているのです。だから私は、そのうちに一ぺんまた銀行なりその他の関係者にも来ていただいて、私たちのこの声を聞いていただくつもりでありますけれども、ともかく私は、そういう責任のある立場にある方々が真剣さに欠けるのではないか。その点はもっと明確にしてもらわなければならないと思うのです。  同時に、銀行局にお願いしておきますけれども、歯どめの問題が少なくとも次の公定歩合の下がるときくらいまでにめどがつかないようならば、すみやかに政府は、銀行法の改正によって——これは自主的にやってくださいといってやってできないものは、国民のためには、銀行法を改正するなり日銀法の改正の中に入れてもよろしい、ともかく歯どめをきちっとかけることができるような措置責任を持ってやってもらいたいと思うのです。いかがでしょうか。
  32. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 私たちの目算よりは多少ずれることがあるかもしれませんけれども、いまのお話のとおり、私としてはできるだけの努力を傾けていきたいと考えております。
  33. 堀昌雄

    堀委員 そこで、まあ時間のずれならば、私は、多少のことはやむを得ないと思うのですが、時間はずれたわ、出てきた結果も不十分だったということになったら、これは率直に言って、一体何をしたかわからないですよ。そこで、きょうは大臣もいませんから、来週またもう一ぺん大臣にもやりますが、政務次官、私の言っていることは間違ったことを言っていないのです。これは社会党の意見とかそんなものじゃないのですよ。少なくとも政治に携わるもので経済を担当するものなら、当然常識として考えることを私は言っているにすぎないわけです。だから、その点についてはひとつ大蔵省の姿勢として——やはりいまの金融制度調査会における特別委員会で、特に学識経験者もこの問題については大体私は同感だろうと思うのですよ。そういう第三者的な学識経験者を含めた意見が正しければ、これはきちっと処理していく。そうすると、何か民間の側では、官僚統制とかいろいろ言われますが、そんなことはないと思うのです。官僚統制というのは、何もないところで上から押えるなら官僚統制ですよ。だけれども、御自分でおやりなさいといって問題が提起してあって、そうして自分がやらなければ、国民のためにはやむを得ない措置じゃないですか。何もやむを得ない措置をするということは、私は政府としての責任だと思う。政務次官はどうですか。
  34. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 御趣旨はよくわかります。とくと研究をいたします。
  35. 堀昌雄

    堀委員 鍛冶さん、そんなに慎重に考えなくたっていいですよ、このことは……。とくと慎重じゃなくて、それはあなたは責任を負っていいですよ。やりましょうと言ったら、これは国民のためになりますよ、ほんとうに。だから私は、むずかしいことを言っておるのじゃないのです。要するに、金融制度調査会で私たちの望むような、学識経験者が言うような結論がすみやかに出るならば、何もあなた、そんなにむずかしいことをわれわれは考える必要はない。出なかったらしかしあともありますよということになったら出るかもしれません。あとは何もないのですよ。出ないかもしれない。あとはこうこうと、きちっとしたものが出たときに私は自主的な問題の解決ができるのではないかと思うのです。そういう意味でひとつ大臣にかわって明快な答弁をしてください。いまのようなだらだら答弁ではだめですよ。
  36. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 この間銀行協会の懇談会がございまして大臣と一緒に私行っておりましたが、大臣もあなたのいまおっしゃったと同じようなことを言うておりました。したがって、そういう方向でやっておることは間違いないと思いますが、ただ法定でやるとか、特に規制するということになると相当重大だと思いますから、その点は研究させてもらいたい、方針はやっておるはずでございます。
  37. 堀昌雄

    堀委員 精一ぱいのところだとして了承いたしましょう。  そこで最後に、実は公社債金利弾力化の問題、昨年の九月二十八日に山際さんに来ていただいて、山際さんも御賛成でいろいろと各新聞その他でも論議をされてきたのですが、今日依然としてまだだめなんです。どうも見ておると、大蔵省の特に官房の辺あたりがあまり乗り気でないようなことらしいですが、しかし研究はするという答弁をこの前大臣はしているのですよ。そこでここでちょっと聞いておきたいのは、日時はいつになってもよろしいのですが、一体何を研究しているか、銀行局理財局の公社債金利弾力化についての研究の現在の状態をちょっと簡単に言ってもらいたい。ということは、どういう客観的な条件になったらどういう手だてでこれは弾力化をしますかというかっこうでいいですから、タイミングは別に触れません。これはそういう客観的な情勢、こういう情勢にもなるかならぬかわかりませんから、こういう情勢になったらここから手をつけてこうしますという——社債金利弾力化といっても引き上げですよね。これについての研究の状態をひとつ銀行局長でも理財局長でも答えていただきたい。
  38. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 この問題は現在発行されている公社債の売れ行き等に影響するということもございますので、いつからどの程度の引き上げが行なわれそうだということを言うわけにまいりませんし、公式には大蔵省の見解はまだまとまっておりません。つまり積極論と消極論とがあるというふうに申し上げるほかはないのですが、一つの問題として、たとえばコール金利社債金利を上回ったような情勢ではなかなか市場というものはつくりにくいという説がございます。私はなるほど日本のコールはときどき異常に高くなりますから、そういう点ではいわゆる正常な市場が完全な形で成り立つということはむずかしいと思いますけれども、しかしそれもある程度条件次第ではないか、このごろになりますとコールもだいぶ下がってまいっております。したがいまして信用金庫などではだいぶあわてておるようなところもあるような情勢でございます。やはり金利問題としてこれを考えていったほうがいいと思います。またコールが、引き締めがあると三銭以上になる。また公社債市場は締まってしまうということは私は必ずしもそうも考えません。いまあるのはグレーマーケットでいわゆるくろうと同士の売買でございます。個人が行って八分五厘に回るものをくださいといってもこれは電話債券以外にはなかなかくれないわけです。くろうと同士の仲間相場のようなものがございます。これは確かに高いのですが、これは一種のダンピング相場みたいなものでございますから、普通の市場を再開いたしまして、その後金融が締まってコールがかなりつり上がったといたしましても、社債市場というものはある程度値段は動かなければいけませんけれども、そうべらぼうな価格下落、大幅な価格下落までなくてもいいじゃないか、と申しますのはやはり依然として消化する主力と申しますのは金融機関でございます。金融機関というものがそう簡単に売買するわけじゃございません。戦前でもよほどの場合でないと大量に放出するということはないわけであります。価格形成の場としての社債市場——株式市場とはちょっと違うわけでございます。代表銘柄も非常に少ないし、それから戦前は特に国債が中心でございましたので、価格形成が主たる任務であって、そこを通じて大きく売買するというものじゃない。その値段を参考にして実際上売買する。それはそういうものでございますから、当分の間ある程度の日本銀行の指導が必要だと思います。日本銀行が適切な指導をやればその上下の幅というものは、いわゆるグレーマーケットにおけるような大幅なものでなくて済むのじゃないか。価格が下落したときに、利回りが上がったときに、その条件発行しなければ売れないわけですよ。外国がそうなっておりますね。やってみなければこれはわからないわけです。とにかく時期としては相当いい時期が来つつある。再開するとすれば非常にタイミングとしてはいいと思いますので、そういう点について私は前向きにぜひ考えて早く結論をまとめたいと考えておるわけでございます。
  39. 堀昌雄

    堀委員 そこでこの間の新聞で拝見したのですが、日銀総裁は四十一年度からそういうふうにしたいというふうな、新聞で拝見したのですから真偽のほどはよくわかりませんが、ただ私は期限というのはむずかしいと思うのですよ。客観的な情勢のほうに比重がかからないと、四十一年からやると言ったって、四十一年にまたコールが上がっちゃえばできないわけですね。私はきょう一日がかりでこう言っているのも、なんとかゆるんだ条件をつくって、そうしてその中でひとつ自由化をやりたいということにほかならないわけですね。そうしてこの公社債市場をちゃんとしない限り私は日本のいまの資本市場の問題は実は解決つかないと思っているのです。要するに証券業者の諸君も証券金融についていろいろと問題があるのですが、もし公社債市場がちゃんとできるならば、これはオペレーションの対象にしてやるならば、正規なルートで資金の流れがつくわけですから、私はあらゆる日本の資本市場の問題、金融市場の問題全体を含めて、これは公社債市場をつくるということが、私は五年くらいこれをやってきたけれども、今度こそはなんとかしなければならぬのではないか。片方に資本市場のああいう状態もあるのですから、どうしてもそうしなければならぬと思いますが、過去の例で見ると、三十八年の三月に一銭七厘になったときに二銭三厘、三十八年四月二十日に一銭六厘になったときに二銭になって、九月は二銭で、十二月には二銭二厘に上がっているという状態なんです。やはり二銭くらいのところがしばらく続けばなんとかできる端緒もできるのではないか、こういうふうに思いますので、その点については、これは大蔵省も、それから日銀のほうでもいまの歯どめを含めてひとつなんとかこの金融緩慢の状態が少しでも長く続くような政策を態度で推し進めながら、次への政策転換をやるような方向で、これは努力をしていただきたいということを特に要望いたしておきたいと思います。  もう一つ最後に、今度はコールの出し手の問題を、実は日銀の信用は、大体去年とことしは貸し出しも、それから債券残高も含めてやや減っているわけですね。三十八年十二月で一兆六千七百十七億が、三十九年十二月は一兆五千七百五十二億円ですから、ほぼ横ばいで終始をしておるのですが、片やコールは異常に大きくなってだんだん変形しておかしな方向に、企業間信用が膨張しながらおかしな方向に行っておるのです。この中でひとつ気がついたのは、資料で見ますと、三十八年の三月末に七千七百五十五億であったものが、昨年の十二月には一兆七千億になっておるのですね。だからコールの残高が約一兆円ふえたわけですけれども、その中の寄与率を見てみると、農中系統が四七%もあるのですね。要するに信連及び農中で四七%、金額にして四千三百七十二億円が約一兆円の中身にある。これは私、非常に問題がある点ではないかと思うのです。その次にいまの信金、それから全信連が一四・八%というようなところで、銀行の二一・二%というのもかなりウエートが高いのですけれども、特に出し手の中での農中、信連関係のコールの問題というのは、これはどうも農林省の所管か何か、大蔵省はどうもひとつ手が届かないのかもしれないけれども、ここらのところは、コールを締めればまた高くなるというのでは困るのです。困るのですけれども、何か正常な状態ではないという感じがするのですが、これらについて大蔵省としては今後何か検討を進めるあれはありますか。
  40. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 このコールの中に農中系統の占める割合が非常に高い、これは従前からもそういう傾向はございましたが、最近も非常にその傾向が顕著であります。これは要するに農林系統金融の問題というものは、非常に手をつけにくい状態にあるということはお察しいただけると思うのです。信連の各県における勢力といいますか、地位といいますか、これなんかなかなかあなどりがたいものでございまして、かなりこれは政治的な問題にもなるわけです。私ども金融的な立場からは、系統金融というものを認めた趣旨——認めたといいますか、それをある程度保護していくような趣旨、それが十分に生かされていない。預けるほうは預けますけれども、借りるほうになると片方に農林公庫というのがございまして、これはべらぼうに安い金利で、系統資金は高くて借りられない。借りるのならそちらから政府資金を借りる、そういうような循環が生じつつあるように思います。そこで先般来私どもがとっておる政策としては、農林中金の場合には債券まで発行しておりますが、その債券は何のために発行しているのだ。農林関係貸し出しに使われないで農林債券発行するのはおかしいのじゃないかというので、少なくとも農林関係貸し出しの増加額と農林債券の純増額とは同額でなければいかぬ。これはまことにおかしな話です。そうすると預金は残ってしまうのです。それだけでもとにかく預金の借り手がないということです。それからなぜふえるかという問題も一つございます。これは全体についてではありませんけれども、都市近郊におきましては農協というのですけれども、実態は農民ではないというのがございます。それらが案外に大きな預金をかかえている。それは土地の代金が一つあります。それにその地帯においては農協関係だけでなしに、ほかの金融機関も預金の伸びがいいということがありますが、特に農民の持っておった土地が住宅地等になる、一反歩の値段が一坪の値段になるというふうなことがございまして、そういうものをできるだけ確保する。なぜ預金を確保するかというと、やはりコールなんです。実はコールという非常にうまい投資先があるということ——もしこれが二銭くらいのコール金利の状態が続きますれば、これは集めてもしようがないということになる。非常に無理して集めて、場合によっては特利までつけてやっておる。農協関係だけは非常に変な話ですが、これは私ども考えているのです。一種の特利が払える仕組みだ、個人に対して。系統内でもって特利を認められておるのは、これは堂々たるものでありますが、預金者に対しても利用者配当という形で、ある程度特利が払えるような仕組みになっている。これはどうも不公平な点がありはしないか。一般の預金に対しては厳格に預金の特利は取り締まってやりますが、制度の上で認められておるという点については、私どもはこれは非常に研究しなければならぬ問題だと思います。いずれにしてもこういう無理な妙なゆがんだ金融になっているということは、コールでもって十分かせげるということがある。ですから融資のルールをつくったりするのも、そういう変動を生じないで、コールがいつも安定して適当な水準におさまっているということになれば、すべての金融問題について正常化の方向に向かう端緒になるのではないか、そういうふうに考えております。
  41. 堀昌雄

    堀委員 実はまだ少しあるのですが、日銀総裁は御用があるそうでありますから、お帰りをいただきたいのですが、最後にちょっと一言申し上げておきたいのは、実は歩積み両建ての取り締まりをやり、その粛正をお願いしていろいろやってきたのですが、そのときにちょっと討論でも触れたのですが、これをやると中小企業貸し出しの比率が下がってくるのではないかということを心配していたのですが、計数で見ると明らかに下がってきております。これは自粛預金を落としたから、自粛して、自粛対象を落としたから減ったよりも、さらに率は下がっておるわけです。特に比率については、都市銀行の場合には三十七年の三月末には総貸し出しに占める一千万円以下の中小企業貸し出しが二四・七%あったのが、この十二月末では一九%まで下がっておる。五・七%も下がっているわけです。これは総貸し出しが五兆六千億から九兆五千億にふえておる中で、実際の金額は一兆四千億から一兆八千億にしかふえていないわけで、わずかこの間四千億しかふえていない。片方の土台のほうは四兆ふえておるということで、これは都市銀行地方銀行も下がってきておりますけれども地方銀行の下がり方は少ないですけれども、やはり都市銀行といえども中小企業に対して——都市銀行というものは大企業だけ貸せばいいのだということではないものだと思いますし、その点についてはひとつ日銀の側としても何か指導の機会がある場合には、これらの点については、やはり中小企業金融という問題についても、都市銀行も配慮するような指導をしていただきたいということをお願いいたしまして、あと竹本さんが済んだらちょっと歩積みをやらせてもらいます。
  42. 吉田重延

    吉田委員長 竹本孫一君。
  43. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がありませんので、きわめて簡単に日銀総裁に二、三の点を伺いたいと思います。  私は今日の情勢の中では、日銀は非常に苦しいような困難な立場に立っておると思うのであります、それは先ほど来融資ルールの問題が出ておりますけれども、私どもはそれも非常に大切なことであるけれども金融全体を正常化するといったような問題になりますと、何と申しましても一番大事な財政のルールがはっきり確立されなければならぬ。それから先ほどお話のありました産業秩序、産業ルール、さらには企業経営のルールまで確立されなければ、すべてはうまくいかない。そういう中で、極端に申しますと政府のだらしのない点や行き過ぎた点は、ほとんど日銀におっかぶせるといいますか、金融面におっかぶさしてやっておるという形の中で、日銀の立場は非常にむずかしいものがあるのではないか、こういうふうに見ております。しかしそれはそれとして、やはり日銀のお立場からいって大きな責任がありますので、日銀金融の総元締めとしての立場というものは、もっとき然たるものがなければならぬのではないかと思っております。さらにもう一つ日銀本来の立場から申しまして、通貨価値の維持といった点もあります。こういうきわめて重大な使命を課せられておりますので、すべての点において日銀のお立場あるいは態度、政策といったものが慎重なものになる、これもよくわかります。しかしそれらを前提にいたしまして、なおかつ最近の金融の引き締めの場合にも、あるいは金融緩和の場合にも、日銀の打ち出される金融の基本的な政策というものは、何だか時期的に二カ月なり三カ月なり常におくれておるのではないか、こういうふうに私は思うのでございますが、そういう点についての事情も承りたいし、今後の国際開放経済の中においての困難な日本の経済をどう切り盛りするかという問題について、特に今回の金融緩和基調をどう展開していくかという問題については、はっきりした計画を持ち、見通しを持ってやっていただきたい。こういう意味からまず副総裁に、上半期における金融基調をどういうふうにして指導していかれるつもりであるか、そのお考えをちょっと承りたいと思います。
  44. 佐々木直

    佐々木参考人 最初お話がございました日本銀行の政策のとり方が、二、三カ月いつもおくれているのではないかという御意見でございますが、これは私どもとしてはできるだけのことをやっておるつもりでございます。ただこのころ——こういうことを言うとしかられるかもしれませんが、新聞にそういう問題が出るのが少し早いのでございます。たとえばもう三月ごろに公定歩合が下がるというようなうわさが、すでに一月ごろに出たりなどしますから、そうしますと何か一月に新聞に出ていたことが三月に実行されたというようなことで、二カ月おくれるというような感じが出る場合もあるのではないか、こういうふうに感じるのでございます。  それから第二番目の問題、ことしの上半期中の金融をどう持っていくかということでございますが、御承知のようにこの一月の初めに公定歩合を一厘下げました。しかしまだ引き締め前の一銭六厘に比べますと一厘ほど高いわけでございます。そうしてことしの一月の都市銀行貸し出しの実績を見ますと、去年の一月の貸し出しの増加額に比べて増加額がやや落ちてきております。すでに公定歩合を下げたにもかかわらず、増加額が去年の一月より下回っておるということは、銀行に対する企業資金需要がやや下回ってきたことを示しておるかと思います。こういう状況は、いまの企業の経営態度がたいへん慎重になってきておりますのと関連して、ここしばらくはそういう傾向が続くのではないかと思います。一方国際収支のほうは、私どもの予想以上によくなってきておりますので、この好調を続けていきますことが、当面の私どもとしては一番大きな課題でございます。したがいましてこの上期中は、そういったような全体の基調をあまり大きく変えないでやっていきたい、こういうふうに考えております。  物価の問題につきましては、消費者物価がどうしてもある程度上昇してきておりますので、これが金融とどういう関連に立ちますか。やはり資金の供給総量というものが、物価に及ぼす影響を否定することはできません。したがいまして消費者物価との関連におきましても、今後の金融の運びとしては、基調としては、慎重な態度を続けていく必要があろうか、こういうふうに考えております。
  45. 竹本孫一

    ○竹本委員 新聞辞令が非常に早過ぎるという問題が出ましたけれども、私は全体的に見れば、新聞はやはり大体やるべき時期にやるべき問題を取り上げておる、こういうふうに見まして、この点佐々木さんの感覚、考え方と少し違いますけれども、むしろ新聞あたりが先ばしっている場合もあるでしょうけれども、全体として見れば、大体時宜を得た経済の評論なんかも出てくるというふうに私は見ておりまして、そういう意味からこの前の山際総裁は、不手ぎわ総裁ということを私は申したこともありますけれども、とにかくかじとりというのは非常にむずかしい問題ではございますけれども、相当勇気を持ってやっていただかなければならぬのではないか、これは希望だけを申し上げておきます。  それからいまお話がありました公定歩合が一厘下がっても、あまり需要がふえないのではないか、あるいはふえていないじゃないかというような資金需要の問題がありましたけれども、私はこれは当然であると思うのです。今日のようにいわゆる過剰生産能力と申しますか、過剰生産の態勢の中で、しかも収益がどんどん減って、それこそ新聞にもよくいわれる利益なき拡大ばかりやってきておりますと、もうこの辺でいかに鈍感な経営者といえども、反省せざるを得ないということになっておりますので、その点はあまり深く心配をする必要はないのではないか、こう思いますので、まあ私自身は金融の緩和基調というものはある程度強力に、計画的に進めていただきたいという考えを持つわけであります。  そこで一つお伺いしたいことは、いままで特に日銀のおやりになる場合の、金融を締める場合、あるいはゆるめる場合に、公定歩合というものをいつも一番あと回しにされておる。一部にはこれは公定歩合じゃなくて、固定歩合じゃないかとさえいうきびしい批判もありますが、私はいまの公定歩合の果たしておる大きな機能から考えまして、政府考え方、あるいは日本の経済の運営の大きな考え方を、公定歩合が一番よく代表していると思うのです。そういう点から考えまして、公定歩合というものをもっと弾力的に動かすべきであると思いますけれども、大体日銀のおやりになること、政府のおやりになることは、常に預金準備率のほうを先にやって、公定歩合のほうをあと回しにされるのだけれども、これには特に大きな理由があるのでございますか。この辺をちょっとお伺いしたい。
  46. 佐々木直

    佐々木参考人 特に公定歩合があとでなければならないというような考え方は私ども持っておりません。昭和三十四年の十二月一日に公定歩合を一厘上げたことがございますが、このときは三十一、二年の引き締めのあと、非常に情勢が好転いたしまして、金融が緩和して、そうして三十四年の秋から暮れにかけましてやや物価が上昇し、国際収支にもちょっとの変化が出ましたので、そのときはいち早く公定歩合を上げました。そしてこれは非常に効果が出まして、約半年であったかと思いましたが、また下げることができるようになった。そういうふうに公定歩合だけを動かした例もないことはありません。
  47. 竹本孫一

    ○竹本委員 この点は時間がないのでこの辺で終わりにいたしますが、ただ先ほど来御指摘もありましたように、金融の正常化なり、資本市場の育成なりという問題から考えますと、公定歩合をさらにもう一厘引き下げるというような問題についても、よほど慎重に、同時にまた計画性を持った処置が必要であろうと思いますので、この次の公定歩合の引き下げについては十分にひとつお考えおきを願いたい。希望だけを申し添えて、最後に一口、加入者引き受けの電話債券日銀担保適格取り扱いの問題について、先ほど来関連した問題が出ておりますので、副総裁一つだけお伺いをして終わりにいたしたいと思います。  申し上げるまでもありませんけれども、電信電話公社の建設資金の確保という問題について、加入者引き受け電話債券というのは、大きな役割りを持っております。数も非常に多うございます。さらにこれは流通市場が開設されてただ一つの上場銘柄ということで、東京、大阪、名古屋の証券取引所では上場されておる。そういう意味で、それは今後の公社債市場、流通市場再開の先駆的役割りを果たしていると思うのでありますけれども、さらにまたその点から、電信電話公社も二十二億円の需給調整資金というものを設けて、いろいろ努力をされているようでありますけれども、この点について日銀のほうでは、どうも担保適格銘柄として取り扱うということについては反対であるのか、少なくとも賛成でないようにも受け取っているわけでございますけれども、どういうお考えであるか、これをひとつお伺いしたい。  これに関連いたしまして、私どものほうの春日委員が政府のほうに質問書も出しておりまして、加入者等引き受け電信電話債券日銀担保適格扱いとして取り扱うについてはどうだと申しましたときに、政府のほうは目下研究中であるというお答えをいただいているわけですけれども、この問題については、政府のほうから日銀にどういう連絡があって、どういう検討をされて、いかなる結論に達しておられるか、あわせて伺いたいと思います。
  48. 佐々木直

    佐々木参考人 加入者引き受けの電電債券日本銀行担保適格にただいまいたしておりませんが、そのいたしておりません理由は、先ほど申し上げました日本銀行の公社債担保適格条件でありますところの公募という形を取っておりません。それは電話を引く人に押しつけると言っては悪うございますが、必ず義務として持たせることになっております。したがって発行形式が、そういう特殊な形式になっておりますがゆえに、いまのところ適格担保にしていないわけであります。もう一つ問題にしておりますところは、いまは確かにお話のように市場で相場が立っておりますが、その相場は、いまの適格にしております公社債条件とは、相当隔たりのあるものでございまして、そこにもう一つの問題が存するわけでございます。  最後にお話がございました政府のほうで御研究中ということにつきましては、いま私のほうで具体的に政府と御連絡して、どういうふうにいまの扱いを変えていくようにするかどうかというような具体的な話し合いにはまだ入っておりません。
  49. 竹本孫一

    ○竹本委員 一応終わります。
  50. 吉田重延

    吉田委員長 この際、委員会を代表いたしまして委員長より一言ごあいさつを申し上げます。  佐々木総裁には、御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき、忌憚のない御意見を述べていただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申上げます。  引き続き質疑を行ないます。堀昌雄君。
  51. 堀昌雄

    堀委員 三十九年十一月末の歩積み両建て預金等の自粛対象の調査についての集計結果が発表されておりますので、ちょっとこれについて、はたしてこの程度の状態で、当初当委員会が決議をいたしましたように、あの時点から一年の以内に、都市銀行及び地方銀行については所期の目的が果たせるかどうか、それらと合わせて、この前、私前回にはちょうだいをいたしましたけれども、依然として中小企業の分に対してはまだかなりの額が実は残っておるわけでありますから、これらについて金融機関別に一おそらくこれは平均値でありますから、金融機関別には自粛対象預金がなくなるところもあり得ると思うのですが、かなり勾配があるのではないかという感じがしますので、そこらの感触を含めて、ひとつこれについての報告をいただきたいと思います。
  52. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 お手元に資料が参っておるかと思いますが、全体の感じを申しますと、この半年間の自粛措置は、予定しました大体の目標を優に越えて行なわれておると思います。ただしそのことは、当初においては比較的容易なものから片づけられておりますので、これから先の半年がもっと大事かと思いますが、おそらく見込みとしては、一年間に全部消すといった目標額、それは十分に可能ではないかと思います。相互銀行、信用金庫につきましても、二年間ということでございますが、ほぼそのペースとしては、予定の線を上回っておるというふうに考えます。  割合で申しまして、当初の目標額、これはいろいろな御審議の結果、やむを得ない、あの程度のものが一応自粛対象として差しつかえない。欲をいえばもっとあるのですけれども、そういう目標額に対しまして、都市銀行の場合には、この半年間に七二・二%、地方銀行は七四・五%、相互銀行三六・二%、信用金庫は四一・九%、それだけ整理されたことになっております。お手元にその数字が参っておりますが、中小企業についていいますと、都市銀行では、前回は五月末現在においては九・四%であったのが——これは貸し出しとの比較において九・四%が整理自粛対象であったのが、二・七に減っております。それから地方銀行の場合ですと、六・一の中小企業分が、一・八まで下がっておる。相互銀行は一三・〇%が、八・三%に下がっておる。信用金庫は一一・七%が、六・八%に下がっておるというふうな状態でございまして、おおむね良好な成績ではない  かと思います。  そのばらつき状況については、まだ詳しく検討をいたしておりませんが、いずれの金融機関をとりましても、都市銀行でおそらく五割、地方銀行では五割以下のところはないと思います。ですからいずれもがその目標に対して、適当なペースで行なわれておるということが言えるはずでございます。銀行別に店別に出てきておりますが、どの店舗をとりましても、そういう結果があらわれておる。なおその報告が適正なりやいなやということで検査を行なっておりますが、いままでに済んだ検査の状況から申しましても、ここに出ております数字よりは上回っておるという——店舗を限っておりますが、こちらで都銀なら都銀で十二行検査しております。それから地方銀行は十五行検査しております。その他も、みな十二あるいは十三行というふうな割合で選んでおりますが、そのうちのある特定の店舗を一、二選んでやりました結果によると、その数字よりも良好な結果が出ておりますので、まず間違いないだろうと思います。  なおその自粛をどういうふうにして整理したかという内訳などを見ますと、ついでに申しますが拘束解除という手段、これは内訳を見ますと拘束を解除して自由に払い戻した分もありますが、拘束解除による分が、都市銀行では約四割、それから金利措置を行なったのが約四割、残りの二割程度は相殺をしております。ですから相殺と拘束解除の分と合わせますとほぼ六〇%に近いもので、その他は金利措置をやっております。それから相互銀行の場合などはこの相殺が非常に多くて、即時両建てが多かったものと思いますが、相殺だけで四三%行なっております。あとは拘束解除が三三%、金利措置が二四%というふうな割合でありまして、まあ私どもが予想したよりは比較的、金利措置だけで逃げるということをやっておらぬで、ほかの措置もやっております。この分ならば、必ずこの委員会で御決議になりました趣旨に沿って改善できるものと考えております。
  53. 堀昌雄

    堀委員 たいへん順調に進捗しておるようでありまして、その点はけっこうだと思いますが、さっきちょっと私、佐々木総裁に申し上げた貸し出しの比率がだんだん下がってきておる問題です。これは日本の場合には中小企業も育成をしていかなければならない必然的な問題だと思うのですが、残念ながら都市銀行の場合特に著しく下がってきている。ここらはやはり、そうなればできるだけ窓口を狭くしようということでは、これは歩積み両建てを排除した、われわれがやろうとした趣旨に反した結果が中小企業に及ぶわけでありますから、これらについてはもう少し何か指導の方法はありませんか。
  54. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 この中小企業貸し出しの、総貸し出しに占める割合が常に低下の傾向をたどっておる、これは従前からもそうでございましたが、比率としてはどうしてもある程度下がらざるを得ないことはわかるのです。最近の時点で、ある銀行について調査を依頼してみたのです。どうして比率が下がるか、比率の下がる内訳を聞きますと、少なくとも半分は、五千万円の資本金のものがそれの上になってしまった。つまり中小企業のワク、五千万円ということで調べておりますから——従業員数は問題にしてないのです。資本金だけで調査しておりますので、資本金が増大して、五千万の会社が八千万になる、一億になるということで、この中小企業の分のほうがそのまま減って、左側の大企業のほうへ入ってしまうのです。つまり中小企業のうちから、全体の貸し出しは同じでも中小企業の分が減る。ですから比率としては下がるのだ、それが大体半分はあるようです。しかしその以外に、どうしてそういう比率が、変化が起こるかというと、全体の貸し出しの中にいろいろなものが入ってくる。たとえば九月と十二月とを比べてみますと、共同証券に対する銀行からの貸し出しが六百四十七億円で三カ月間に行なわれておる。これは全体の貸し出しはふくらむ。けれども中小企業には全然関係ありません。そういうことで、急に下がったという理由は、そういうこともあるということなんです。しかし引き締めをやりますと、どうしても比率が下がる傾向が顕著になるという点はございます。実質的にやはり少ししわ寄せを受けているという点があるように思うのであります。もっとも都市銀行だけについてそういうことを申しますが、他の金融機関全体から見ますと、必ずしも低下の割合が顕著ではない。都市銀行においてちょっと顕著な傾向が見られるというふうに思います。これは相互、信金のウエートが高くなればなるほど、そういう傾向になってくると思います。
  55. 堀昌雄

    堀委員 いまのお話で、一千万円以下と五千万円とで見て、かつては一千万円以下というのが二四%余りあったのが一九%になり、五千万円というのが、三十八年の九月から中小企業の概念が変わったようですが、そのときの五千万円で見ても二五・二%であったのが、三十九年の九月末には二四・八%になり、三十九年十二月末には二四%になって、約〇・八%、これは五千万円で見ても下がっているのです。この間三十九年九月末、十二月末は、総貸し出し都市銀行の場合には、四千四百億ほどふえていますから、これは共同証券なんというもののあれとあまり関係なしに、かなり率はふえているのですが、しかし中小企業貸し出しは約三百億くらいしかこの間ふえていないということで、全体の貸し出しの伸びに対して、中小企業の伸びというのは常に十分の一以下なんです。だからこれでは減るのがあたりまえなのであって、本来二五%のシェアがあるのなら、伸びに対して二五%ずつ動いていけば減らないのだけれども、その伸びに対して半減していけば、シェアが減るのは当然です。この点私はどうもいまの銀行局長答弁は、必ずしも実態がそうと信じられない面もあるわけです。そこでこの問題は、それは総体的に信金なり相互銀行ができて、中小企業のめんどうは見ていると思いますけれども、日本の場合には中小企業というのはほんとう資金不足で困っているというのが大体の実情で、しかしここを近代化していかなければ、さっき通産の言う戦略産業といえども、中小企業は逆に足を引っぱっていくことになるわけですから、そこらの面は政策的配慮としても、できるだけ中小企業金融というものは配慮の必要があるのではないかというふうに思いますので、いま一行だけお調べになったようですが、ひとつあと二、三行少し調べていただいて、それも粉飾をした答弁でなくて、ほんとうの真意を明らかにして、それに対する対策もやはり考えてみる必要があるのではないかと思いますので、まあ自粛対象預金が非常に急激に減ってきているのは望ましい反面、金は貸してもらえなくなったのでは、元も子もないということでありますから、ひとつその点は十分御検討をいただいておきたいと思います。  本日はこれで終わります。
  56. 吉田重延

    吉田委員長 次会は、来たる十六日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十三分散会