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1965-02-05 第48回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月五日(金曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       鴨田 宗一君    木村 剛輔君       小山 省二君    田澤 吉郎君       地崎宇三郎君    毛利 松平君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君       岡  良一君    佐藤觀次郎君       只松 祐治君    野口 忠夫君       平岡忠次郎君    藤田 高敏君       横山 利秋君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      日原 正雄君         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    吉國 二郎君         国税庁次長   喜田村健三君         専  門  員 坂井 光三君     ───────────── 二月三日  国立学校特別会計法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三四号) 同月四日  物品管理法の一部を改正する法律案内閣提出  第三五号)(予)  地方自治法第百五十六条第六項の規定基づ  き、税務署設置に関し承認を求めるの件(内  閣提出承認第二号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国立学校特別会計法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三四号)  地方自治法第百五十六条第六項の規定基づ  き、税務署設置に関し承認を求めるの件(内  閣提出承認第二号)  税制に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件      ────◇─────
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  国立学校特別会計法の一部を改正する法律案及び地方自治法第百五十六条第六項の規定基づき、税務署設置に関し承認を求めるの件の両案を一括して議題といたします。
  3. 吉田重延

    吉田委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。鍛冶大蔵政務次官
  4. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 ただいま議題となりました国立学校特別会計法の一部を改正する法律案及び地方自治法第百五十六条第六項の規定基づき、税務署設置に関し承認を求めるの件について、提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  初めに、国立学校特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。  現在、国立学校特別会計におきましては国立学校付属病院施設費を支弁するため必要がある場合に限り、借り入れ金をすることができることとなっておりますが、今回の改正は、これに加えて、国立学校移転が人口の過度の集中に対する対策に資することとなると認められ、その移転に伴い不用となる財産処分収入をもって償還することができる見込みがあるときには、当分の間、移転先用地取得費を支弁するための借り入れ金をすることができることとしようとするものであります。  御承知のごとく、過密都市に所在する国立学校は、これを他に移転することが教育環境の上から望ましいと考えられ、また、このような国立学校移転は、過密都市対策に資するところも大であると考えられます。したがって、その移転の円滑な実施をはかるため、移転先用地についてはたとえ一時に多額の費用を要するとしても、移転に先行し、一括してこれを取得することが必要な場合であって、かつ、その移転に伴い不用となる財産処分収入をもって、用地取得費の財源となった借り入れ金の償還ができる見込みのあるときは、いわばその間のつなぎ資金として、借り入れ金をすることができる道を開くことが適当と考え、ここにこの法律案提案いたした次第でございます。  次に、地方自治法第百五十六条第六項の規定基づき、税務署設置に関し承認を求めるの件について、その提案理由内容の概略を御説明いたします。  最近における経済の発展は、大都市において特に著しく、この間の事情を反映して、都会地税務署の管内の納税者及び課税物件等は年々増加してまいりますとともに、これらの税務署事務量人員ともに過大となり、税務指導等納税者に対するサービスの面及び事務管理の面で支障を生じようとしております。  このような事情に対処して、東京国税局において、品川税務署管轄区域を分割して旧荏原区の地域を管轄する荏原税務署を、立川税務署及び武蔵野税務署管轄区域を再編成して府中市、調布市及び北多摩郡狛江町を管轄する武蔵府中税務署をそれぞれ設置し、また、札幌国税局において、札幌税務署及び石狩税務署管轄区域を再編成して、札幌市の北部、江別市、札幌郡手稲町、石狩郡及び厚田郡を管轄する札幌北税務署設置し、納税者の利便と税務行政の円滑な運営をはかろうとするものであります。  以上が、国立学校特別会計法の一部を改正する法律案及び地方自治法第百五十六条第六項の規定基づき、税務署設置に関し承認を求めるの件の提案理由及びその概要であります。何とぞ御審議の上すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  5. 吉田重延

    吉田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  両件に対する質疑次会に譲ります。      ────◇─────
  6. 吉田重延

    吉田委員長 税制金融及び証券取引に関する件について調査を進めます。  質疑通告がありますので順次これを許します。横山利秋君。
  7. 横山利秋

    横山委員 最初に二、三要望並びに意見を申し上げたいのですが、一つは、私久しぶりに大蔵委員会へ帰ってまいりまして、あらためて勉強をし直しておるわけですが、私がずっとおりました当時の経緯をも含めまして痛感されましたことが一つございます。それは屡次この委員会において非常な審議をいたしまして附帯決議を付するのですけれども、その附帯決議の実行というものがきわめて緩慢な気がするわけです。政府側としては法案を通すために一応附帯決議を了として善処いたしますと言っているけれども、実際問題としてはそれがその場限りに終わっておるおそれがある。そこで委員長並びに政府側にお願いしたいのですが、ここ二、三年ばかりの本委員会におきましてきめました附帯決議並びにその経過について、本委員会資料として提出されることをまず要望したい。いかがでございましょうか。
  8. 吉田重延

    吉田委員長 ただいまの御要望はきわめて重要な御要望でございまして、理事会にさらに相談をいたしまして、適切な御回答を願うように政府にもお願いしたいと思います。
  9. 横山利秋

    横山委員 第二番目の要望を申し上げたいのですが、私ども法案審議いたします過程で、これはこうだと自分ながら納得をしておるのですが、それが政令となり通達となっていきます上において、どうも租税法定主義という原則が貫かれずに、法律案承知をしたことと実際現場でわれわれが体験する場合と食い違いがしばしばある一これは必ずしもわれわれが間違ったことにはならぬ。また政府側が必ずしも違法を犯しておるとは思えません。しかし提案する側と審議側との間にこの違いが何から起こるかというと、政府側説明不十分というところがあると思うのです。きわめて無理な注文かもしれませんが、本委員会に提出される法案については今後その政令案要綱——抽象的に申しますが、政令を出せとは申しません。少なくとも政令案要綱審議過程で出していただきたい。これを要望したいと思いますが、いかがでございますか。
  10. 吉田重延

    吉田委員長 ただいまの横山君の御要求、非常に重要な案件でございまして、先ほどの御要望とあわせて理事会に御相談しまして善処したいと思います。
  11. 横山利秋

    横山委員 第三番目の希望を申し上げたいのですが、本委員会税法並びに——主として私は税法を考えるのですが、税法その他本委員会に関連する問題を論議をしておる。ところが税にしろ本委員会関係いたしますことにしろ、本来ここで討議をすべきことではあるけれども、他の法律との関係上ほかの委員会審議をしている場合が少なからずあるわけです。その点についてはわれわれが承知していないことがある。たとえば大蔵省設置法なんかはこれはよくわかるけれども地方税法の一部の中に国税の問題が知らぬうちに忍び込んでおって、われわれが承知しなくて選挙区で恥をかくという場合が、かつて重大な問題としてございました。そういうこともございますから本国会において本委員会にいささかたりとも関係をいたします法律案がございましたならば、必ず本委員会資料として政府側は提出する義務を持ってもらいたい。いかがでございましょうか。
  12. 吉田重延

    吉田委員長 ただいまの御意見も当然なことと思いますけれども、前二件とともに理事会でよく相談をいたしまして御要求に沿うように善処いたしたいと思います。
  13. 横山利秋

    横山委員 委員長はことごとく当然なことと思い善処いたしますというおことばでございますが、まん中へ理事会ということばをはさまれたのが少し逃げていらっしゃると思う。しかし委員長個人としてはまことに私の意見は当然でございましょう。委員長の御賛同を得たと見てよろしゅうございましょうか。
  14. 吉田重延

    吉田委員長 大体御意見のとおりでございまして、すべて大蔵委員会は御承知のように御要求に対しては慣例として理事会にはかってその慎重を期して粗漏のないようにということで、各党の委員の方また理事の方に理事会において御相談を申し上げることになっておりますので、その点は横山委員も以前からのベテラン委員でございますし、よく御承知でございますので、さらに慎重を期して理事会に御相談の上、善処いたします。
  15. 横山利秋

    横山委員 恐縮ですが、その次もう一つあるのです。それは私どもかねて言うておるのですが、ここでいろいろ議論をしても政府側法案をつくる場合、税制を立案する場合に、われわれの意見を十分に、ここだけで聞き流して参考にしないおそれがあるということをかねがね私は痛感をしておるわけです。それで私は——ほかの委員会の諸公はそれぞれ政府審議会委員会参加をしておるわけですね。当委員会ベテラン、われら与野党ともにきっすいのベテランでありますが、それらについては国会議員としての委員会への参加をどういうものか大蔵省は敬遠をしておるということはまことに遺憾千万な気がするわけです。税制調査会にしてもあるいはその他の委員会にしても同様でございますけれども、これこそ一気に、私は委員長に強制をするわけではないが、さっきの話と一段違えて慎重な検討をしてもらいたい。今度財政制度審議会法案として財政法の一部改正で出るようでございますけれども、この機会に、全部が全部一挙とは言いませんけれども、可能な限り、まず私は財政制度審議会にはわれわれの参加を許すべきであるということを主張いたしたいのでありますが、これは前の三段は当然のこととして私は要求しているのですが、もう一つのほうは、一ぺんよくこれは私のほうから申し上げますけれども、十分に御相談をくださいまして、いきなり全部とは言いませんけれども財政法の中には国会議員学識経験者として参加をせられるように要望したいと思います。これは理事会でぜひ御相談をお願いいたします。
  16. 吉田重延

    吉田委員長 いまの横山委員の御要望に対しましては、これまでも御要求があったことと聞き及んでおります。さらに理事会で慎重に協議をいたしまして善処をいたすことにいたします。
  17. 横山利秋

    横山委員 要望はその四つであります。  では質問をいたしたいと思いますが、政務次官にお伺いしたいのでありますが、あなたは私と一緒に法務委員会におきまして法務ベテランでございますから、いまから質問いたしますことはむしろあなたに質問をいたしたい。私は実は名古屋でございますが、名古屋中村税務署暴力団テラ銭課税をいたしました。ところが聞くところによりますと、沼津税務署においても、極東組桜井一家幹部賭博でかせいだテラ銭を不労所得とみなして課税すると通告をしたそうであります。ここまではいいのでありますが、その後の結果が杳として私にはわからない。新聞には非常に好感を与えて昨年度——これは私とも持ってまいりました新聞によりますと、ある新聞社税界十大ニュース一つに数えられたそうであります。かつて私は法務委員会で、この件が出ます前に、新暴力法論議の際に、暴力団に対して一体どういうようなやり方があるかあなたと一問一答をかわしたこともあったような気もいたします。その場合に、税というものは、これは正当な所得であれ不当な所得であれ、所得あるところには課税するというのが原則であるわけであります。したがいまして、暴力団に対してテラ銭課税をする、ばくちだとかあるいは競馬場にあります問題だとか、いろいろな問題について課税をするということはこれは税法の許すところであります。問題は私がその後の消息を知らない。といいますのは一体国税庁としてこの点についておずおずやってあと始末ができていないような気がするのですが、警察国税庁との関係はいかにあるべきかということについて、まず経験豊かな政務次官にこのテラ銭課税を含む暴力団課税はいかにあるべきかということについてうんちくをひとつ承りたい。
  18. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 これは最も注意すべき問題だと思いますが、そこで問題はテラ銭を領収したということが表向きわかるのはどうしてわかったかということから詰めていかなければならぬと思うのです。税務署テラ銭が入ったということがわかるならばその以前にすでに警察検察庁にわかっておらなければならない。警察及び検察庁にわかったとすれば、当然これは起訴されて裁判所へ行くべきものだろうと思う。そうすると裁判所へ行けば不法の利得ですから、犯罪によって得たる物品になりますから、当然没収すべきものだろうと思います。ところが現金であるからよく変わるというので没収できぬという話だが、没収できなければ追徴金を取るべきもの、それが第一番の処置だろうと思うのです。しかるにそんなことはないと思うけれども、もしもそういうことをやらないで暴力団テラ銭がふところに残っておるとすれば、これは税務署税金をかけるのは当然でございますが、私はそういうことはなかろうと思うのです。きのうもそういうことで聞いてみると、どうも没収なり追徴金なりがおもしろく行っておらぬということを聞きましたので、これは私、はなはだ遺憾だと思っております。まず私は、これは税務署の問題よりもその方面で厳格にやってもらって、それでもまだ残っていれば税務署でやるべきだ。さようなことはあるべきものではないと思います。大体いままで考えることはそのように考えております。
  19. 横山利秋

    横山委員 これは大蔵省に伺いたいのですが、いまの鍛冶さんの話はどういうことなんですか。銭が残ったら税金を取る。所得は一たんあったんですね。それが裁判の結果取られた。追徴をされればもう税金はかからぬのですかどうですか。
  20. 喜田村健三

    喜田説明員 お答え申し上げます。ただいま御答弁にありましたように、裁判の結果それが没収されたということになりますと、結果的には課税を取り消すということになりまして、税金がかからないということになる。あるいはそれ以外に不法所得であるということで相手から取り消されて相手のほうに戻っていった、こういう場合にも結果的には課税にならないということになるのでございますが、それがつまり没収されるまであるいは取り消されるまでの間は課税所得として課税される、こういうことになっております。
  21. 横山利秋

    横山委員 当然だと思うのです。そこで参考のために御連絡申し上げておきましたから調査が行き届いておると思いますが、名古屋中村税務署沼津税務署におけるテラ銭課税はどういう結果になっておるか、ひとつお聞かせを願いたい。
  22. 喜田村健三

    喜田説明員 課税内容個々内容につきましては、ちょっと一般的にお答え申し上げるのでありますが、どういうような取り扱いをしたかということについて申し上げますと、たとえば暴力団所得と申しましても一つはこういうのがあるわけであります。暴力団がいろいろの事業をやっている、その事業所得についてどういう課税をするかという問題と、それからもう一つ、いまお話のありましたたとえば賭博による収入あるいは胴元としての収入、こういった収入にどういう課税をするかという問題がございます。お尋ねのありました事案につきましては、一つ貸し金業をやっておりましたその貸し金業について貸し金業としての課税をいたしました。これに対して税金をかけた。それから賭博胴元としての所得がありましたので、その胴元としての所得につきましては雑所得として課税をいたしました。それぞれ適正に計算をいたしました税額課税いたしました次第であります。
  23. 横山利秋

    横山委員 世間心配をしておりますのは、あなたの言うのは通り相場であるけれども大山鳴動ネズミ一匹、ああいうことを打ち上げたけれども結局は税務署はやらなかったのではないか、結果はどうやらネズミ一匹になってしまったのではないかという疑惑が非常に強いのです。本委員会個々納税者個々具体的事案をやることが適当であるかどうかということについては議論がございますけれども、問題はそういう悪質な刑事事件に関する問題でありますから、ここでいまあなたが名前こそ出さなくても、具体的に最初はどうであり結果がどうであるかということを言う必要があると思うのですがいかがですか。
  24. 喜田村健三

    喜田説明員 個々納税者名前、その課税額ということにつきましては、現在までこうした扱いでも発表しないということの取り扱いになっておりますで、この点につきましてはまた……。
  25. 横山利秋

    横山委員 名前を言えと言っているのではないですよ。最初と最後の結果がどうなったかという数字だけ言えということです。
  26. 喜田村健三

    喜田説明員 所得税額とそれに対して申告加算税両方を加算いたしまして、金額だけは少し御容赦願いたいと思います。
  27. 横山利秋

    横山委員 こういうような態度に終始せられると、かえって世間疑惑暴力団課税テラ銭課税だといっておるけれども税務署はその方面はいいかげんにしてしまう、暴力の権力に巻かれて、あんなことを言っておるけれども暴力団から税は結局一文も取れぬのだ、こういう疑惑が一ぱいだというのです。昨年の税問題の十大ニュース一つだといって新聞が取り立てて騒がれたけれども、結果は杳としてはっきりしない、こう言っているのですから——私はいまその名前を言えと言っているのじゃない。どういう内容で、どういう結果であるかということを言えと言っているのですから、個人の秘密を私は尊重しているのです。おっしゃいよ。どうなんです。
  28. 喜田村健三

    喜田説明員 沼津の某事件につきましては、数百万円の課税申告加算税をかけた、この程度で御了承願いたいと思います。
  29. 横山利秋

    横山委員 名古屋は……。
  30. 喜田村健三

    喜田説明員 名古屋事件は、まだこちらのほうで十分調査が行き届いておりませんので、はっきり数字をつかんでおりません。
  31. 横山利秋

    横山委員 御通告をしておいたのですから、それをそういうようなことでは私は納得できません。時間の関係上、これは省略して、ここではもうお尋ねしませんから、次会にひとつ協議をしてくださって、名前は一声えとは言いませんけれども、その経過並びに結果を本委員会に報告されるように要望します。
  32. 喜田村健三

    喜田説明員 個々納税者ということがはっきりしない程度やり方お話し申し上げます。
  33. 横山利秋

    横山委員 けっこうです。私の真意は、こういうような課税については、善良な納税者についてはいろいろとことんまでやるけれども、こういうことになると、いいかげんに終わってしまうという世論を代表しているのですから、それに答えるようにしてください。  いまいらっしゃった日原さんにお伺いするのですけれども、ちょっとお聞きになったと思うのですが、暴力団に対する課税のことをいま質問しているわけです。沼津名古屋課税をするということについて、いいかげんな結果に終わっておるという心配を私はしておるわけです。本来ならば、警察が逮捕する、あるいは捜査をする過程で、刑事事犯関係する不当所得がどのくらいあったかということはわかるはずですね。これで起訴をなさるはずです。税務署との関係というものは、その間何もないわけですね。私どもが超党派で暴力団に対して追撃を過ぐる国会からいたしておるのでありますから、税金追撃をするということが適当であるかどうかはずいぶん議論があると私は思います、思いますけれども新聞に見るところに、テラ銭数百万円をかせいだ疑いによるもの、それによって起訴するものと麗々しく新聞に載っておるのに、税務署がそれにおれたちの分野でないから知らぬ顔をしておるという状態が今日の状態だから遺憾だというのです。したがって、この際そういう明白なものについては、警察当局税務当局との連絡があってしかるべきではないか、税務当局は当然それについて警察当局から情報を得る、そして課税をするということが必要ではないか、こういうふうに考えるのですが、その場合において、捜査当局としてこれに協力し得るかどうかということです。
  34. 日原正雄

    日原政府委員 ただいま暴力団のことについて御質問がございましたが、お話のように私ども暴力団迫撃一つ手段として、金額源をつぶしていかなければだめだという考え方を持って、この方面にいろいろな手段の中の一つとして相当力を注いでおるわけでございます。もちろん私どものほうで不法資金源と目されるものにつきましては、詐欺、恐喝あるいは賭博その他いろいろな手段でもって犯罪として検挙いたしてまいっておるわけでございますが、お話の中にありました税務当局との連絡ということにつきましては、私どもも喜んで課税の面なりあるいは徴税の面なり、あらゆる面についてできるだけの協力をする、ほかに平素密接な連絡税務当局ととるように下部、末端にまで指示してございますので、その点の御懸念はないと思います。
  35. 横山利秋

    横山委員 捜査当局はそう言っているのですが、税務当局はどうなんですか。いま私がしつように言っているのですが、麗々しく新聞に出る。方々でラジオが言う。ニュースが言うというときに、あなた方がこの種の問題について課税にきわめて憶病であり、怠惰であるという点について私は強く指摘しているのですが、いまの捜査当局の御意見を聞いてどう考え、どうなさるおつもりですか。
  36. 喜田村健三

    喜田説明員 ただいま刑事局長からお話のありましたように、課税の面で不徹底である、そういうことが暴力団資金源を結果的に有利にしている、こういうことのないようにこうしたものに対しては適正な課税をやっていこう、こういうことで調査を進めることになっております。  ただ事実問題として税務署自身でそうした不法所得を把握するということ、そうした端緒をつかむということがなかなかむずかしいので、こうした点につきましては、警察のほうから資料をいただくということによりまして、適正な課税をやっていきたい、こういうふうに考えております。
  37. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 いまの点についてちょっと……。
  38. 横山利秋

    横山委員 鍛冶さん、あなたにいまお聞きしょうと思っているのです。あなたはこういう点について答弁してください。要するに警察から情報を積極的に税務当局に流すということは適当ではないと私も思いますよ、ある程度は。しかしながらそれを常に恒常的なものにするのは適当ではないと思いますけれども、いまとにかくこの暴力団のばっこについては、あなたも私も法務委員会火ばなを散らして、その点だけは共通の意識として強くやった。あれは私のほうは別な角度で心配を持ったわけですが、しかしこの面に関する限りはわれわれは一致したわけだ。したがって、これは税務当局のほうで熱心にならなければだめだということです。熱心になれば、相互の連絡協力は可能であると捜査当局は言っているわけですが、どうですか。
  39. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 これは結局は税務当局及び警察庁との連絡の問題でございますので、私いままでそれに関係したことはないから、いままでのことについては申し上げられませんが、私の常識からかくあるほうがいいだろうということを申し上げて、ひとつ御参考にしたいと考えます。これは警察庁、国税庁のほうにもよく聞いて、これからも打ち合わせをします。  いまの問題は、第一にテラ銭テラ銭といえば賭博開帳罪によって得たる利益、こうわれわれは解釈します。そうすると、やはり不法の取得、犯罪によって得たるものですが、かようなものがあるということが税務署が先立ってわかるということはほとんどないと私は思うのです。やはり警察なり検察庁で摘発せられ、捜査せられて、かような事実があった、開帳罪が成立するものだ、そしてその犯罪によって得たる金銭があった、こういうことがわかるのは、これは警察検察庁でなければできないと思います。そのときにわかれば、先ほど言ったように警察なり検察庁なりがこれを当然起訴し、起訴すれば裁判においてこれを没収し、もしくは没収し得ざるものは追徴すべきものだと思うのです。しかるにそういうことがわかったにもかかわらず、なお犯罪人のふところにその金が残っているということが私は解しかねるのです。これは警察はわかったけれども、やらなかったということになると、捨てておけないから何とかしなければならないということにはなりますけれども、先ほどからの議論を聞いておりますると、それは不法なものですから、犯罪構成物件なんですから、本人のふところに残しておいてそして収入金であるから税金をかけるということは、これは本道からはずれておると思う。やはり犯罪として取り扱うべきものだと思うのです。しかしそれでもやらなんだらどうするかとなると、むずかしいことになる。(横山委員「九百万円取ったじゃないですか。」と呼ぶ。)それは私はもっと聞いてみなければわからぬが、私は警察なり検察庁の怠慢じゃないかと思う。むしろ税務署で取るべきものでないのですから。そういう議論になると思いますよ。ただし、そう言いますけれども、ものによっては、実際においてあまり大きなものでないと警察なり検察庁で起訴せぬことがあるかもしれません。いま言う何百万円もテラ銭賭博の開帳罪で取っておったというのは起訴しないということはあり得ないと思いますが、世の中にはあります。目に余るからしかたがないからやるけれども、一一それほどのことがないならやらぬ。俗に言うショバ代、なわ張り銭のようなものだって、私は全く不法所得だと思うが、たいした金でないから目つぶしされる。それはしかたがないから税務署で取るのがいいのですが、私は、ほんとうは犯罪が成立するものなんですから、犯罪が成立した以上は刑法上でもってそれを取り上げるということが原則でなければならぬと思いますが、それでも警察でやられぬということがあれば、これは税務署協議の上で、いずれでやるかをきめる。いずれにいたしましても、横山さんの言われるように持たしておくべきでないことは間違いないので、その点は今後大いに協議の結果いずれかのものでやるということに、これを幸いによくきめておいてもらうほうがいい、かように考えます。
  40. 横山利秋

    横山委員 鍛冶さん自由濶達な御意見で、事情もあまり御存じないようですな。法務委員としてこちらのほうから質問するならいいけれども政務次官として事情を御存じなくて自由濶達な御意見を述べられると、こちらが当惑するのですよ。ただ、あなたがこの機会に協議をして本問題の処理をしたいという点を私は了承いたしたいと思います。ぜひこの機会に警察当局税務当局が、暴力団課税について情報の交換、密接な連絡、そして適正な徴収、それらについて遺憾ないように期せられたいと思います。適当な時間をおいて、その御相談の結果をまた伺いたいと思います。  次に伺いますが、本委員会で昨年所得税法第六十一条三項の規定所得税法改正によって設けられました。これが俗に言うところの不動産のあっせん調書義務の問題であります。私はこの当時大蔵委員会でございましたが、本委員質疑応答を聞いてみますと、全く簡単な条文でございますので、同僚諸君もそのままにして質疑応答がなかった、こういう話であります。最近におきまして宅建業者が非常にこの問題について事情を知らなかったということで激昂いたしまして、大会をも聞き、そしてわれわれ国会議員のところにもたくさんの陳情がまいっておるわけであります。私も当時の経緯並びにこの法文をつぶさに検討してみましたが、まず第一に非常に遺憾だと思われることがあります。それは、少なくともこういうような業界全般に影響のあることでありますならば、通常のあり方として、それぞれの関係のセクションとしては、業界の事情を非公式に聴取するなりあるいは所管省の意見を聞くなりして、そうして徴税に円滑を期するというのがあたりまえのことであります。ところが、本件に関しては何らそのような事実がなくて、法律が通ってから、業界は全く寝耳に水というわけでびっくりぎょうてんをしてたいへんな話題になっておるわけであります。少なくともこの法律の是非を論ずる前に、主税局なりあるいはそのほかの関係部局として手続に欠くる点があった、こういう点を考えるのであります。これが第一に御反省を願わなければならぬ問題であります。これにつて御意見を伺いたい。  第二番目に私が問題にいたしたいと思いますのは、この業界の事情というものが全然わかっていなかったのじゃないかということであります。いまなら、おそらくこれほど話題になっておりますから御存じだと思うのでありますが、いわゆる不動産業者というものは全国にたくさんあるのでありますけれども、そのうちで正規に届け出て正規に営業していますのはほぼ三〇%と推定されるわけでりあます。しかも法律の条文におきましては、その正規の宅建業者にのみ——まさに、のみ、この届け出義務を課しておるわけであります。したがって、あとの七〇%のいわゆるもぐりはこの法律から抜け出ておる。したがって、よく地方行政を三割行政というのですが、まさに三割行政である。しかもその三割の諸君に一月三十一日までにこの二百万円以上の取引売買についてはつぶさにそれを報告しろと書いてある。そうすると、その報告をすることを、不当な届け出してない業者はそれで免れ、三割の人々が届け出を強要される。それによって、届け出をしなかった場合には処罰がある。この法文の是非を論ずるもう一つ前に、まず一体この法律が公平に、そして業界の実態に応じて適正に行なわれる可能性を検討したかどうかということが、私の第二番目の非常に粗漏であったのではあるまいかと思う点であります。  いろいろ質問はありますが、お忘れになりますからまず二つだけ伺います。
  41. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいまお尋ねのございました不動産売買のあっせん調書の問題でございますが、横山先生は当時大蔵委員会においでになりませんで審議過程等は御存じない、私も実はいなかったので存じておりませんけれども、御承知のとおり従来の所得税法の六十一条におきましては、法人が不動産を賃借しまたは譲り受けました場合の対価の資料の提出義務があったわけでございます。しかるに、個人の同様の対価に対しての支払い調書の提出義務が欠けておりました。実際問題といたしまして、不動産の譲渡所得課税におきましては、いろいろの問題があることは御承知だと思います。個人の譲渡所得課税の際にいろいろな間接手段が講ぜられているというのも事実でございます。そういう意味で、個人の支払い調書はとれないということが不動産の譲渡その他の取引の課税をかなりゆがめているという事実がございますので、個人からの支払い調書を徴収するということが必要になったわけでございますけれども、いかんせん、個々個人の事務能力その他が支払い調書を提出するに十分ではないという認識がございますので、、営業としてこれらの取引に関与いたしました不動産業者から協力を得て課税の適正を期したいという趣旨で、六十一条にあっせん調書の創設を提案いたしまして、ここで御賛意をいただいたわけでございます。その際もちろん建設省当局等とも打ち合わせをいたしております。またいま御指摘のございましたもぐり業者の問題もあったわけでございますが、これも御案内のとおりでございまして、宅地建物取引業法におきましては、無登録業者を厳に取り締まることになっております。その場合、無登録で宅地建物の取引を業として行なった者は三年以下の懲役または三十万円以下の罰金というような規定があるくらいでございまして、さような法律の一方にございますことを考えますと、所得税法としては、他の法律とのいわば矛盾を避けるために一部の無登録業者というものについてはこれを規定せずに、正規の業者を規定したという事情がございます。その点についてのいろいろの問題も、私どももよく存じておりますが、この支払い調書の提出の趣旨等は、十分当委員会でも御了承を得ていることと思うのでございます。  そこで、実はこの法律についていろいろ御要望もあり、問題点も指摘されておりますけれども、ただいま先生おっしゃいましたとおり、すでに一月三十一日の期限というものは法律上到来しておるわけでございますので、今回の提出ということにつきましては、おそらくもう御協力いただいていることとは思いますけれども、この際、一そうの御協力をお願いしたい、かように考えておるわけであります。
  42. 横山利秋

    横山委員 私の言っていることにちっとも答えてないじゃないですか。業界に、この問題について相談をしてない。これは決してしなければならぬ義務があるというわけではない。しかし、いままであなた方は納税が適正に行なわれるようにという意味において、大体なさっている。なぜこれだけしなかったかということについて答えがない。第二番目に、どうもいつものあなたに似合わずに、答弁があまりなめらかじゃないわけですよ。事情をよく御存じだと思うのです。三割の人たちには出せ、七〇%の人にはほっておく。それなら三割の人よりもやみ業者の育成法になるじゃないか。それなら正規に登録しておるよりも、幾らも、七〇%もあるんだから、そっちでやったほうがいいというやみ業者の育成法になるじゃないか。先ほど、テラ銭課税で、不法所得であっても課税するという原則を貫いたわけですね。この税法不法な業者だけはほっておいて、そして適正に適法に届け出て適法にやっている人たちだけをねらい撃ちをする。しかもそれはたった三割ではないか。こういうことについてあなたの答弁がきわめて不十分で、もごもごしていらっしゃるのはどういうわけですか。腹の中では、ちょっとまずかったなと思っているのではないのですか。私は、一月三十一日はもう過ぎたから、これを旧に復せというつもりは、国会議員としてはありません。ありませんけれども、これからの問題について、何かやはり考え直すべき問題ではないかと思うのです。  そこでもう一つ伺いたいのですけれども、大体納税者は、納税に関していかなる書類を提出する義務があるかということです。これは何のために提出させるのですか。本来これは、売った人、買った人の利益を把握するために提出させるのでしょう。私はそうだと思うのです。宅建業者があっせん調書を出すのは、自分の利益を見てもらうために出すわけではないわけですね。どうですか。
  43. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいまお尋ねの点でございますが、このあっせん調書を提出するということをお願いしております趣旨は、仰せのとおりその不動産売買あるいは賃貸事実による所得把握をするということでございます。
  44. 横山利秋

    横山委員 そうすると、本来この件に関する限りは自分が納税者でもない者が、ほかの納税者の利益のために所得のために自分が出さなければならぬ、どこにそういう法律的義務がありますか。これはいま法律になっているが、私はさかのぼって、本来的に調書提出の義務が、どうして納税者でない者がそういうものを出さなければならぬのか、その義務が憲法上ありますか。
  45. 吉國二郎

    吉國説明員 これはよく御承知のとおりでございますが、現在の税法におきましては一定の納税義務者の所得資料といたしまして取引の相手方、取引あるいはそれに金銭支払い義務のあった者とか、そういう取引関係者に対しまして、質問検査ができるという規定を置くのが普通であります。そうしてただそれを個々に行ないます場合と、一般的にその事務と関連をいたしまして支払い調書を提出していただくという場合と両方あるわけでございまして、このあっせん調書の場合は、その取引のあっせんにあたりました取引に関係いたしましたあっせんの労をとった業者に対して営業として関与した者に対して一般的に調書を提出していただくという趣旨のものでございまして、一般の他の質問検査等と同様の性質のものと考える次第でございます。
  46. 横山利秋

    横山委員 それは詭弁ですよ。少なくとも質問検査権というものは、たとえば横山なら横山所得を把握するために横山から書類を出させる、そこまではいいでしょう。関連業者として山中商店なり坊商店に対して質問検査をするということも許される。けれども当然のことのように山中株式会社、坊株式会社から法律上この調書を提出をさせるということは、どこにも書いていませんよ。しかももしこれを許すならば、じゃ弁護士にもあっせん調書を出させなさい。弁護士にもやらせなさい。ほかの中小企業にも同じようなことをやらせなさいよ。どこに一体その法律的義務がありますか。どこに憲法上根拠がありますか、どうですか。あなたがいま法律を見なければならぬようにあなたは頭の中にない。これはいかぬ、えらい質問を受けたと思って、あわてて探しているじゃないですか。ほかの法律で、正規の納税者でない人間、その人間がこういうような書類を出さなければならぬ義務は、前例はどこにありますか。
  47. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいま御指摘のとおり、支払い調書につきましては全面的に質問検査の対象となる人全体に対して支払い調書提出の義務を課すということはございません。しかしそのうちでその取引の実態等から見て、一般的に提出が可能な者、たとえば一番いい例はここに、六十一条に並んでおりますが、公社債利子の支払い者であるとかその者の取引が直ちに所得に最も直接に結びつく場合であるとか、あるいはその業態から申しましてその支払い調書を提出することが多くの便宜のある者、そういう者が——そういう言い方は悪いかもしれませんが、法律上選択されまして、支払い調書の一般的提出義務というものが定められておると考えられておるわけでございます。もちろん一般的に支払い調書の提出義務は規定しなくとも個々の場合に、いま御指摘がございましたように横山商会の調査のために山中商会にいくという場合ももちろんございますけれども、たとえば個々の仕入れとかそういうような場合にまで一般的に支払い調書を提出するということはやっておりませんが、譲渡所得のように、その譲渡自体で所得がはっきりするというようなものについては、一般的な支払い調書を置くということは、他の例としても考えられることでございます。そういう意味でこの趣旨の提案をいたしまして御了承を得た、かように考えておるわけでございます。
  48. 横山利秋

    横山委員 もしこういう論理が許されるならば、先ほど来出た弁護士も個々事件でどれだけもらったか、あれだけもらったか、原告、被告の民事の調停その他から全部調書を出さなければならぬことになる。一般中小企業だって同じことが言えるわけです。そういうことを税務署に対して法定書類として提出する。納税者が課せられておる義務というものは制限してあるわけです。税務署納税者に対していかなる書類をも提出する義務、権利を課しておらないわけです。もしもこれが当然のことのように、これはあたりまえのことですというならば、次から次へと法律がかかる書類の提出義務、しかも自分の所得の問題ではない、人の所得の問題でその関係の書類を提出する義務を法律的に課せられるということが進みましたならば、納税者の権利というものはきわめて阻害される、こう思うのです。しかも宅建業法によって宅建業者は台帳の整備の義務が課せられておるわけです。もし必要ならば台帳が整備されておるのだから台帳を見ればいいでしょう。それを税務署の単なる御都合主義、便利主義でその取引の実績について逐一報告をしろ、「あつせんをなした不動産の売買に係る対価の支払を受ける者の氏名又は名称及び住所又は居所その年中のあっせんに係る不動産の取引金額」等々逐一出せというのは、これはいささか越権行為である。われわれは国会議員としてこの条文が税法上、憲法上いかなる影響を及ぼすかということについていささか検討不十分であったきらいがあるのですけれども、こういうようなやり方が次から次へと税務署の利便によって、税務署の御都合によって調書提出義務を法律上課せられているということは、納税者の権利にとって非常に阻害されるおそれがある。どうですか鍛冶さん、あなたは人民の権利を守る立場として常にけんけんがくがくの議論法務委員会でやっておられたのでありますから、民衆の権利、民衆の責任というものについてあなたの御意見を聞かしていただきたい。
  49. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 私はどうも税法のことはあまり詳しくないものだから、厳格に言われると困るのですが、私の法律家としての常識から申しますと、いろいろの場合にそういうものの提出の義務を課しておるものがあるように思います。捜査上において、それから各官庁間において書類を出せと要求する権利はある。それに従わなければある程度の制裁を食わせておるというのもずいぶんございます。そういうことでやったのじゃないかと思うのですが、弁護士の場合は、弁護士の業務というものは人の秘密をあずかる仕事なのです。それだから原則として弁護士の業務は秘密を守らなければならぬ。ただし何か個々のものに対して差し押えされたり、捜査状でやられればしかたがないと思うのです。問題はそういう弁護士の秘密の問題と、いまいう不動産周旋業者のあれと同等であるかどうかというところできまると思うのです。その点で私はちょっと違うのじゃないかと思うのです。あなたとここでいま論争して、どうも確実に述べるだけの力を私は持ちません。  それからもう一つ、私はこの点に対してこの間陳情も受けましたので、少しふに落ちぬところがありましたから当局と話をしてみたのですが、それもあなたの言われるように、こういうことは申告の義務はないのだ、これは憲法違反だ、こういえばもう何もかも消えていってしまいますが、問題はこれには義務を課しておるが、ほかのもぐり業者には義務を課しておらぬじゃないか、そうすると登録した者だけがばかをみるじゃないか、この点なのです。私はそれを調べてみたのですが、もぐり業者にはかってなことをしていいというのじゃないそうです。もぐりでやったら、これも科料に処せられるのだそうです。けれども大ぜいおるものだから、もぐりのほうに手が届かぬものだから、登録のほうがよけいやられるから登録者はばかをみる、こういうことになるのです。これはどうしても訂正せねばいかぬと思うのです。そこで訂正するからといって、現在の法律を直していまの人々が申告せぬでもいいということがいいのか、もぐり業者をそのままにしておくということがいいのか、これを考えてみると、もぐり業者をほっておくということは悪いことだと私は思う。だからこの法律ができた以上は、もぐり業者はどこまでも摘発して、そしてもぐりのないようにこれをやらなければならぬ。  もう一つついでだから申し上げます。ところが、そこまで考えてみたのですが、ただどうも売買したものはなるべくこれは申告してもらいたくないのですね。実際はそうでしょう。だから業者のところに行けば申告されるから、もぐりのところに行こう、こういうこともまた考えられるのです。これも防がなければならぬ。そうするとすれば、やっぱりどこまでももぐりのないようにやること、そして納税はできるだけ安くして、売買した者がそういうことをされることをきらわれぬようにすることが政治上の一番の眼目じゃないか、こう私は考えております。
  50. 横山利秋

    横山委員 たいへん常識豊かなあなたのお話だと思うのです。まことに傾聴に値します。ただあなたもことばはなかったけれども、この法律がいささか検討不十分で政府としても出されたということを暗にお認めになっていらっしゃると思うのです。私も、去年できたばかりの法律ですから、これを即刻やめてしまうということは議会の権威にも多少関係があるとは思うけれども、あなたの根底になっている本来これはちょっとまずかったというような気持ちに共感が与えられるならば、あやまちを改むるにはばかることなかれということがあるのです。ですからこれはほんとうにまだ不十分な問題だ、将来やらなければならぬにしても、公平な課税を期することは困難であるということならば、一ぺんひとつぜひお考え直しを根本的にしてもらいたい。このままでは課税の公平は期せられない。正規の業者は損をするということなんです。あなたは暫定的な解決として、もぐり業者を徹底的になくすることと、それから正規の業者の税金をなるべく安くすること、なるべく安くするということはきわめて含蓄のある話だと思うのです。ぼくはこの点についてはもう一ぺん鍛冶さんの意のあるところをよく確かめて、そして納得のできるような方法を一ぺん講じたいと思うのです。どうですか。
  51. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 私がいま考えたようなことを現行の法条でできぬという結論になければ、これは何か考えなければならぬと思います。その点はひとつ十分検討して善処したいと思います。(「かじは熱いうちに打て」と呼ぶ者あり)
  52. 横山利秋

    横山委員 それでは熱いうちに打てといいますから、さっそく後刻現行法を修正するか、現行法でできる方法があるかということをひとつ御相談いたしたいと思います。  それでは次の質問に移ります。次は中小企業の課税の問題であります。少し前の問題が時間がかかりましたので、簡単に要点について御質問したいのですが、あっせん調書の問題でもそうでありますが、中小企業が常に言っていますことは、要するにわれわれが法律を直して法人税なりあるいは所得税を安くしても、実際は税務署の窓口行政によって、さじかげんと彼らは称しておりますが、さじかげんによってどうにもならぬという行政上の不満、行政上の不服というものが常に絶えないのであります。その点について私は一、二の質問をしたいのでありますが、最近反面調査ということが行なわれる。オーソドックスにたとえば青色なら青色の帳面を調べて更正並びに決定をするときには、青色の帳面が間違っておるということから始まっていかなければならぬ。帳面からずっといって取引業者を調べるというのがオーソドックスなやり方でありますが、反面調査及び基幹調査とでも申しますか、反面調査は、まず某会社をやるについては周囲から攻め立てていく。まず某のところへ行かなくて、周囲から調べて、そうして証拠をつくって某会社へ行くというやり方が非常に最近は多い。それからもう一つは、業界調査という方式をおとりになったそうでありますが、たとえばいま出ました宅建業者を例にしましょう。宅建業者はどのくらいもうけておるかということを調査するために、その中で適当に、あいつがよかろう、横山という業者がよかろうというふうにきめて、そこを周密に徹底的に調査をする。かつて私が名古屋のウナギ屋を例にしてその実態をお話ししたことがあるのですが、その業者は立つ瀬があろうとなかろうと、そんなことは言うならば関係ない。まずそこをモデルにして調査して、そこでその業界の実態を十分に知って、効率表、標準率表をつくって、宅建業者全般の帳面づらの所得の大体のモデルをつくるというようなやり方が行なわれておる。そうなりますと、一体税務署の税務調査やり方というものは、何でもできる、いかなる方法でもやれるということになってまいるわけであります。そもそも本委員会がしばしば言っておりますように、質問検査権、所得税法、法人税法及びその他の法律による質問検査権なり令状をもって行なう捜査等には、抽象的ではあるけれども一つのリミットが厳にしてあるわけであります。そのリミットというものが実際の窓口においては何にも教育されていないのではあるまいか。青と白との調査の違いも十分に徹底していないのではないか。本来的に、帳簿を調べて帳簿の間違いから始まって、ずっと調査していくというオーソドックスな方法はどうもやりにくい、だから反面調査から調べていけ、基幹調査でモデルの業者を取っつかまえてそこを調べて、それで大体当てはめていったらどうだ、そういうやり方にこのごろはいっているのではないか。私はかねがね税務調査は合理的に、科学的にと言っておるのでありますが、その合理的、科学的ということが、税法に定められておる質問調査その他の調査の限界を越えて行なわれては断じていけないのである、こういうことを私は申し上げたいのであります。ひとつそれらについて御答弁願いたい。
  53. 喜田村健三

    喜田説明員 まず反面調査の問題でございますが、現在税務の調査をやります場合に、すべていきなり反面のほうから、取引先のほうから調査をやるといったような調査はやっておりませんで、やはり原則としては当該納税者につきまして帳簿なりあるいは在庫といったものを調べまして、それについて必要がある場合には取引先に行って反面調査をやる、こういう調査をやっております。ただ、申告書を分析してみる、あるいはいろいろ提出された資料を分析してみると、かなり脱漏があるのではないか、これは取引先も十分調べなければならない、こういったような調査事案にぶつかる場合もございます。そうした場合には、あるいはいきなり反面調査から着手するということもあるかとは思いますが、原則としては納税者調査からまず始めていく、帳簿の調査から始めていく、こうした方法を原則としております。  それから、いろいろモデル調査とおっしゃいましたが、単に業態を調べるために質問検査権である特定の業者を調査してみる、それを集めて効率なり標準率をつくる、こういったような調査が行なわれているのではないか、こういうお話でございますが、現在の調査はやはり当該納税者調査するということを第一にいたします。したがいまして、そのためにどの納税者調査すればいいかということをいろいろ選定いたしまして、その当該納税者調査をするわけであります。その結果かなり詳しく調べられた、これでたとえば売り上げの差益なりあるいは純益率、たなおろしの回転率、そうしたものがはっきりつかめたというような課税調査実績が出てきました場合に、それをその業態の基準的なものとして考える。したがいまして、それを中心にたとえば標準率、効率をつくるということも結果としてはあるわけでございますが、ただそれだけのために調査をするといったような調査ではなくて、その詳しく調べた結果がそれらのものに利用できる、こういったような現在の調査やり方になっております。したがいまして、最後におっしゃいましたように、質問検査権で何でもできるのではないか、そうしたような運用が実際に行なわれているのじゃないかという御質問でございましたが、条文では納税者調査するために「必要があるときは、」といったその必要がないのに何でも調べられるといったことは、質問検査権としては逸脱しておるわけでございまして、ただ、その「必要があるときは、」ということを、具体的に一々どのような場合にはどのような調査までできるかということを列記するということ、現在の調査があらゆる形態、具体的な形としてはいろいろな形であらわれる、そういうものを全部具体的な形で列挙するということはできないので、そこは「必要があるときは、」という抽象的な文句にいたしまして、ただ、そこの運用が良識をはずれた判定になる、あるいは個々の担当者の抽象的な、恣意的な判断になることのないように、十分そこの運用につきましては良識を持って運用する。前のいつかの質疑のときにも、税務署側からお答えいたしましたように、そのところは税務職員の個々の良識にまつ。したがいまして、その良識の涵養ということにつきましては、当面いろいろの教育なりあるいは指導ということを通じてそうした良識の涵養につとめるわけでありますが、そうした良識的な運用をはかっていく、こうしたような指導を現在やっております。そのために行き過ぎた調査というようなことのないように十分指導をしておるところでございます。
  54. 横山利秋

    横山委員 私は国税庁の出される私の目にとまる書類あるいはそのほかのいろんなものについてはなるべくずうっと一応は目を通すようにしておるわけですけれども、その中で、私の言う税務調査の限界なり税務職員の調査における限界というものについて指示をしたということは、不敏にしてあまり見たことがないのであります。あなたがいまここでおっしゃるように、必要によりとかあるいは良識とかいうような意味はあるけれども、しかしながら、質問検査権とは、こういう法律的根拠によってここまではできるけれどもここから以上はいかないぞとか、あるいは乱用とはどういうことなのかというようにして税務職員を教育し、そして逸脱行為のないように具体的に指示したという文書をまだ見たことがない。だからいかぬと私は言うのです。そこのところはむずかしいことではあるけれども納税者の今日の不満、不平からいって、ひとつあなたのほうで、税法上にきめられておる税務調査の限界、税務調査はここまではいいけれどもここから以上はいかぬ、そして段階はこういうものがあってこういうものになるのだというようなことを傘下職員に対して一ぺんはっきりさせたらどうか、こう思いますが、いかがですか。
  55. 喜田村健三

    喜田説明員 先ほど申しましたように、質問検査権のあらわれ方というのは、その納税者個々の実情に応じてそれぞれ非常に千差万別なあらわれ方をいたします。その一つ一つについて、どのようなところまでは質問検査権として発動できる、それ以上は権利の乱用であるといった具体的な基準ということをつくりますのは、技術的に見まして非常にむずかしい問題ではないかと思っております。したがいまして、たとえば税務講習所における教育であるとか、あるいは現場における上司の係員に対する指導であるとか、あるいは会議における指示連絡であるとか、そうしたところを通じまして、一般的に質問検査権の本来の趣旨と、それを運用するための良識というものを教育していく、こういった方法で行き過ぎがないように担保する、これより現在のところ方法がないんじゃないか、こういうふうに考えております。
  56. 横山利秋

    横山委員 納得できないのであります。そういうことではいかぬと私は歴年言っておるのでありますが、時間の関係もございますから、いま理事会で御相談されておるそうでございますが、税の執行に関する小委員会をなるべくすみやかに設定をしていただいて、そこでその問題についてとっくりひとついたしたいと思いますので、委員長要望しておきたいと思います。  ただ、せっかくおいでを願ったのでありますから、銀行局長に一言伺っておきたいと思いますが、銀行における税務調査の関連であります。聞くところによりますと、国税庁から銀行局に協力依頼の申し出があったそうでございますが、銀行における個人預金の秘密と税務調査に対する協力ということの関係は、いまどういうふうになっておるのかという点をお伺いします。
  57. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 国税庁のほうからお答えしてもいいのでありますが、銀行局といたしましては一般的な預金の秘密性ということを全然無視するというわけにはいきません。しかし、税の徴収の公正を期するという立場からは、具体的な案件について査察の令状が出される。それを持って銀行に調査に来られた場合には全面的にこれに協力する、そういう態度でございます。ただし、そういう令状と関係のないものについてまで進んで協力しなければならぬというのでは、やはり一般的な預金の秘密性というものが、これはいいかどうかわかりませんが、私どもとしては当面の間預金の秘密性というものはかなり重要視されなければならぬ。資本の蓄積をはかるという意味からいって非常に長い問の慣行であり、また世界的にもそのような預金の秘密性が保たれているということを無視するわけにはいきません。そこでいまお話ししましたように、具体的な案件について令状が出されて、特定の案件について調査を行なう場合には、当該銀行は全面的に協力をしなければならぬ、こういうふうに指導をしております。
  58. 横山利秋

    横山委員 令状を持ってきたときに全面的な協力であり、そのほかの場合には進んで協力する必要はないというふうに考えておるという話でありますが、その進んでという意味はどういう意味でありますか。普通の調査の場合、一般の調査の場合に、たとえば横山商店について架空名義の預金がありますかとかなんとか言ってきた場合における態度を聞いているのです。
  59. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 税務署長の、質問するための証書を持ってきた場合にはお答えするが、そうでない場合にはお答えすることもない……。
  60. 横山利秋

    横山委員 税務署は署長の証書なんか持ってこない、税務署の職員であるという表示はしますが。
  61. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 その事案について質問をするんだ、そういう意味での証書はこちらのほうから……。
  62. 横山利秋

    横山委員 銀行局長、大体こういうことになるのです。横山商店の架空名義はありませんか。ありませんね。ないはずはありませんよ、お出しにならなければ令状を持ってきますよ。こういうことですね。それで、いや、ないと思いますが。いや、ないはずはない。どこで調べたかわからないが、ないはずはないと銀行の支店長の前にすわって数時間おる。そうすると銀行としては困るということになって、そうして協力せざるを得ない。その協力というのが、ほんとうの架空名義が横山商店にあるのかないのかわからないが、とにかく居直られては協力せざるを得ない、そういう雰囲気ですね。それをどう思いますかということです。
  63. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 これは要するに国税庁側との協定といいますか、話し合いに基づきまして、法人税の調査などの場合、どうしても銀行預金を調べなければつかめない、こういう場合には、いま変だとおっしゃいましたが、税務署のほうから調査証という……。
  64. 横山利秋

    横山委員 その協定書を一ぺん読んでください。
  65. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 協定書というふうなものでございません。
  66. 横山利秋

    横山委員 何ですか。
  67. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 税務当局とこちらの側との……。いってみれば国税庁の内部指導の秘密文書だ、こう考えてもいいのですが、それには税務署長が必ず調査証というものをその署員に携行させるので、税務署長が発行する調査証を提示する、そういうことになっておるのです。ですからそれがなければお答えしませんということです。
  68. 横山利秋

    横山委員 それじゃ喜田村さんでもいいのですが、私には調査証とか税務署長のあれというのがよくわからないが、こんなものは秘密文書じゃないと思うので、それこそ正々堂々と明らかにして、こういうふうになっているから納税者も了解してもらいたいと、はっきり公開してください。
  69. 喜田村健三

    喜田説明員 文書の形式といたしましては、国税庁長官から各国税局署に対しまして出しました秘密の通達ということになっておりますが、その内容を申し上げますと、先ほど御質問のありましたように質問検査権ということで何でもできる、形式的には必要あるという各調査官の認定によって何でも調査ができるということと、あるいは預金の秘密という別な社会的な要請とどこで調整するか、この限界を内部で指示した通達でございます。その中身は、一つ納税者を調べまして、取引銀行について調査しなければ法人の経理の実体がわからないというような場合には銀行調査をやる。そして銀行調査をやる場合には各担当者だけの、各税務署員なり調査官の個々の判断というだけじゃなくて、税務署長が必要を認めたんだということを証明するために、税務署長が発行する調査証というものを持ってまいりまして、これを提示する、こういうような調査やり方を銀行調査についてやるという、そうした指示の文書であります。
  70. 横山利秋

    横山委員 それじゃ本件も、先ほど委員長にお願いしました小委員会で取り上げていただきたいと思います。  時間がまいりましたのであとの御質問は要点だけ申し上げますから、きょうお答え願えなければ後日でもよろしいのですが、問題点だけ申し上げますと、先般私はこういう体験をいたしました。一流の場所で借家にいる人が立ちのきを請求されて、立ちのき料をやるかわりに三流のところの土地建物を上げるからかわってくれというわけでかわったわけであります。その場合は、申すまでもございませんが、立ちのき料と土地建物とは大体同額でございます。しかしながらこれは租税特別措置法による交換譲渡の特例が適用されないという判断が国税庁でなされた。私も少し法律を見てみたのでありますが、なるほど現行法規においてはやや困難であるという点についてはわかりました。わかりましたが、実体問題として立ちのき料及び借家権というものが厳として社会慣習になっているときに、この適用がなされないとするならば、現在の法規において間違いがあるのではないかという判断をいたしたわけであります。簡単でありますが、御意見を伺いたい。
  71. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいま御指摘がございました、借家権に対して借地権あるいは土地等に認められておると同様の借りかえの特例が認められていないのではないかというお話でございます。現行法もまさにそのようになっております。これは、いま先生厳として確立しておるとおっしゃいましたけれども、借家権につきましては、借地権ほど取引その他において資産性が認識されていない点があるということも事実でございます。たとえば、現在税務でございますと、借地権つきましては、借地権を無償で譲渡を受けておるという場合には、贈与税を課するというようなことをやりますが、さらに借地権に強い資産性を認めまして、買いかえの特例を認めております。しかし、借家権につきましては、一般的にそのようなことをする段階ではない。借家権の価格というものも、実際上は非常に違っておりますし、借家権の収受が実際に行なわれていない場合も多いわけでございます。現在のところは、税務取り扱いといたしましては、借家権は実際収受されたときに、個別の課税関係が起こるという見方をいたしておりまして、租税特別措置におきまして買いかえを認めました際も、そういう意味から申しますと、資産としてのかなり確立した取引が行なわれておるものを対象として取り上げたわけでございまして、現在借家権まで入れていないというのは、そのような趣旨でございますので、おっしゃるように、借家権については買いかえはできないということでございます。それはそういうような理由によっておるわけでございます。
  72. 横山利秋

    横山委員 その法律ができたときに、まだ借家権について、私は厳として社会慣習上できておるという判断をしておるのですが、あなたはその当時においては、まだそこまではいっていないという判断をされておったとおっしゃる。しかしながら、借家におる人が家主の都合、ないしは土地建物を買った人の都合上出ていってくれというときに、ただで出ていくということが社会慣習上ありますか。これは私は借家権として、権利として言うかどうかについてあなたは問題があるとおっしゃるのですが、実際問題として、立ちのき料なしで出ていくということがあり得ない。この点はお認めになるでしょう。  それから、いまの実態に合わして、私のいま出しました例というものが、通常行なわれておるもの、通常行なわれておるものについて私は疑義をただしたところ、国税庁としても、なるほど、それはもっともな点だと思う、けれども、いまの法規においては、残念ながら先生のおっしゃる点については、非常に難点がある、これは将来変えなければならないように私も感ずるという国税庁の相当な方の御意見個人的な意見ではありますけれども、そういう御意見であります。したがって私は、本委員会においてこれを例示して御検討願いたいという意味で申し上げておるのですから、現行法規の説明を伺っておるわけではない。将来改正すべきものだという点について御意見を伺っておる。
  73. 吉國二郎

    吉國説明員 御承知のように、特別措置法におきましては、いろいろの買いかえの規定を置いております。たとえば、住宅の買いかえにつきましても、かつては土地、さら地を売った場合には、住居の買いかえとは認めないということになっておりましたが、その後さら地を入れる、さら地でありますと、本来買いかえにならないわけでございます。そういったわけですからということで、従来認めていなかったのですが、認めることにいたしました。そして、そういう特別措置というものの性質から申しますと、いろいろ限定もございますし、また特別措置に沿った扱いも行なわれるわけでございますが、借家権について立ちのき料というものが出されるのが普通ではないか、立ちのき料という形が多少なりとも払われるというのは、むしろ普通だと思います。借家権が借家権として取引されるという例は、これはまたかなり少ないということも事実でございます。  そこで、この立ちのき料というものを資産として買いかえをさせるかどうかという一つの問題として考えられますと、いまの資産の買いかえという制度は、そこまではいっていないわけです。これは措置法の範囲としてはやむを得ないところであると思いますが、将来借家権というものがさらに——ただいま借地借家法の改正も考えられておるようでありますが、それによって漸次借家権というものの内容が社会的にも確定し、一般化してくれば、これはまた考えられる問題でもあると思います。
  74. 横山利秋

    横山委員 あなたは他の法律ではそうであるけれども税法は常に社会の所得の変動状況において、独自なものとしてつくられておる今日の実態を御存じないはずはないと思います。いま法務委員会において、借家法、借家権その他について議論はあるけれども、そこまでは確立するまではいっていないのですよ。それは鍛冶さん御存じですね。だからそういう他の法律商法だとか、民法だとか、そういう法律改正を待っていると時間がかかる。しかも現にいまそういう社会慣習があるのだから、この際税法というものはそういうものなんだ、いい悪いは議論がありますよ。いい悪いは議論はあるけれども税法は現在の所得の状況が変動することに対して、適切に法規、通達が改正されているのが実態なんだから、他に藉口してこの問題をなおざりにするというのはあなたらしくはない。吉國ではない、悪國だ。だからひとつ検討をお願いしたい。
  75. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいま申し上げました点にちょっと誤解をいただくような言い方をいたしましたが、借地借家法が改正されればという意味ではないのでございまして、いまも借地権あるいは借家権の実態的な形成過程というものがもちろん建物保護法その他借地法、借家法の媒介に従って社会的に次第に形成されてきたという事実がございます。私が申しておりますのは、さような社会的事実が形成されてくるということを言っておるわけでございまして、またそれを媒介するための法律制度ができれば、さらにそういうものも促進されるであろうということを申し上げたわけで、税法は他の法律がないとやらないというような趣旨では決してございませんから……。
  76. 横山利秋

    横山委員 同僚諸君の質問がおくれまして恐縮でございますから、自余の質問はまた後日に回しますから、自余の質問の要旨だけ申し上げておきます。  それは第一は、この問大臣並びに木村長官お帰りになりましたけれども、木村長官に善処する旨の御答弁を得ました。手形が不渡りになりました場合に、それをその年の損金にして、そして将来一部納入された場合においては利益として計上すべき旨の点について善処する旨の答弁がございました。あとから国税庁主税局から御説明がありまして、今日の法規の実情はよくさらに承知をいたしました。それによりますと、その年にも五〇%を基準にして損金にする、ないしは引き当て金にすることができるという現状については説明がございましたが、私はその現状よりもむしろ一〇〇%以内その年に損金にすべきであるという趣旨の質問であり、それに対して善処する旨の御答弁であると理解しておるわけです。したがいまして、御説明はわかりましたが、大臣及び長官及び長官の善処する旨の結果がどういうことにしてくださるか、後刻ひとつ御回報を本委員会においてお願いをいたしたいと思います。それが第一であります。  それから、第二番目には、本日質疑をいたしたかったのは、夫婦間課税の問題であります。  現在妻の地位というものについて、本委員会もしばしば是正はいたしておりますものの、まだ不十分な点がございます。答申におきましては、この夫婦周課税の問題を取り上げておりますが、私の考えるところは、夫の収入は単に夫によってのみ得られたものではなくて、妻の、俗に申します内助の功がきわめて多いのであります。したがいまして、夫が死亡した場合における妻の相続税については、さらに格段の措置をすべき必要があり、夫婦間の贈与についても、格段の措置をすべき必要があると痛感をいたしておるわけであります。政府側からこの夫婦間課税についての今日の法律の状況について、本委員会資料を提出せられるということを希望し、その際に質問することにいたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  77. 吉田重延

    吉田委員長 只松祐治君。
  78. 只松祐治

    ○只松委員 証券問題について若干お尋ねしたいと思います。  今日証券界はいろんな意味で非常に重大な時期に遭遇をしておる。したがって、政府も非常な力の入れ方であるわけであります。したがいまして、本来ならばこれを根本的な問題からいろいろ御質疑をいたし、論議をしなければなかなかこの問題の本質をえぐり出す、こういうことはできないわけでございます。きょうはもう時間も十二時を過ぎておりまして、たいへんおそくなっております。具体的な問題を二、三お尋ねをいたしまして、いずれ日を改めまして、証券問題の本質的な問題を討議いたしたい。そういう意味から問題点だけ聞いてまいりますから、御返事のほうもひとつそういうふうにしていただきたいと思います。  まず最初に、大蔵省と証券業協会、それから証券会社、さらにいわゆる上場証券と申しますか、これはなかなか具体的にむずかしいと思いますが、証券とのその関係はどういう関係にあるのか、まあ証券法もたくさんございまして、関連事項を全部これで申し述べると容易ではないと思いますけれども、主要な点だけでけっこうでございますから、お教えをいただきたい。
  79. 松井直行

    ○松井政府委員 お答え申し上げます。大蔵省と、証券業協会と、それから証券会社と、上場証券の関係という御質問の趣旨に伺いますが、まず、大蔵省と証券業者の関係でございます。  これは証取法の第三章でございますが、第三章に証券業者という条項がございまして、現在ではこの監督関係はアメリカの制度を導入いたしまして、一定の要件を充足いたします証券会社には、免許制ではなしに登録制で証券業を営むことができる。したがいまして、すべて要件充足主義でございますので、一たん営業を開始いたしました上はちょうど——例が悪いかと思いますが、自動車がスピード違反をやったという意味における法規違反をやりますと、すぐさま登録取り消し、発生と消滅の段階においてはそういう関係でございまして、登録制に伴います本質的理由から免許制のような事前監督規定がないという特色はございますが、証券取引法によります登録業者としての監督権を大蔵省が持っております。  それから証券業協会は、これらの証券業者が任意に団体をつくりますときには、やはり証券業協会として第六十七条にございますが、大蔵省への登録ということに相なっております。これは証券業者がすでに登録制であるということと符牒を合わせまして、これが登録制ということに相なっておりまして、主要な業務内容については大蔵大臣もある程度の監督権を持っております。ただし、証券取引所のように免許制ではございませんので、そとからくる色合いの相違は幾ぶんあるかと思います。これが証券業協会でございます。  一方、取引所はこれは免許制になっております。個々に上場されます有価証券につきましては、上場規程というものを証券取引所の内部につくりまして、これは大蔵大臣の承認事項ではありますが、発行会社の収益状況、それから資産状況、それらの株主の分布状況等を主に考えまして、その証券を上場し、毎日相場を公表することによって、一般の投資家に公開をする自由な場を提供するのが適当かどうかということの判断をいたしまして、証券取引所の上場規程によって上場される株と、そうでない株の区分をいたしております。  この三つの関係でございます。
  80. 只松祐治

    ○只松委員 法律的にはおよそそういう関係だということですが、しかし証取法の中にも大蔵大臣あるいは大蔵省の監督権その他が随所にその関係が書かれてありますし、それから実際上今度の共同証券の問題、あるいはいろいろな問題にいたしましても、ほとんど大蔵省のさしがねでと申しますか、大蔵省と不離一体の関係になっていろいろな操作が行なわれておるということは、これはだれも否定できないし、大臣等もたびたびそういう答弁をしておられます。ところが、そういういわばオーソドックスな形、あるいは積極的な面においてはそういうふうでございますが、今度は個々の問題、あるいは個々の被害、そういうものについての大蔵省の監督、あるいはいろいろな指導というものはあまり十分ではないのではないか、ある意味ではほとんどそういう面においてはないのではないか、そういうことの結果が今日の証券業界のいろいろな不測の事態を招来しておる、こういうこともあるように私は聞いております。しかし、きょうはそういう大きな問題はさっき言いましたように他日論じますので、きょうはそういう問題点だけを聞いておくにとどめておきたいと思います。  それから、この証取法そのものは前にできたわけですが、たとえば四十一条に基づきまして見ましても保証金がわずかに本店開設で十万円、支店では五万円、こういうことになっております。膨大ないまの株を操作しておるのにわずか十万とか五万とか、あるいは信託法を見ましても、信託のあれで百万ぐらいなんですね。百万をこえる業者、こういうことで何千億といって預っておる信託会社が百万円ぐらいの保証金、こういうことでは——よく株の大衆化とか民主化とかあるいは国民に迷惑をかけないとか、いろいろ言っておるわけですが、いろいろな一般的な法律あるいはさっきから税金論議があったわけですが、こういう問題についてはすぐ日々法律を変えたりあるいは施行令なり通達を出して実際に適用するようにしなければこれは税金なんか取れないわけです。しかしこういう銀行、信託あるいは証券というようなあなたたちが指向されておる資本主義の一番中枢をなすものの法文というのは昔のしかもきわめて無責任といいますか、ずさんな形の保証金やらあるいは許可資金、こういうものがある。これは一連全部を見ましてもそうですが、これはたいへん遺憾だと思いますが、遺憾とお思いになりますかどうか。それから思われるならば、こういう保証金なりその他金額を、やはり大衆を納得せしめるに足る、安心させるに足る資金というものを積まないことにはほんとうの証券の民主化なりあるいは大衆投資家を安心させることはできないと思います。改められる意思がありますか。
  81. 松井直行

    ○松井政府委員 大ぜいの大衆投資家との信用関係に立ちますその負債を担保する意味におきまして、営業保証金が僅少ではないかというお話を伺いましたが、私ごもっともだろうと思います。単にこの営業保証金のみならず、実は会社の総資産でもって債務を担保するという意味におきまして、証券業者の資本金の額というものは一そうの影響が大きいものじゃなかろうか、私こう考えております。むろんいまおっしゃいました営業保証金もこれは店舗が大きくなればさらにそれ以上の担保の資産を確保さそうという意味もあるのでございますが、やはり資本金というようなもののほうがむしろ大きな問題じゃなかろうかと思います。現在の証取法は御存じのとおり政令で資本金を規定いたしておりまして、漸次上場されます有価証券の額がふえ、取引がふえ、投資家の投資の量もふえ、お客さんとの間におきます債務の額もふえてまいっておりますので、この証取法施行以来数度にわたりまして資本金の額を順次ふやしてきております。  そこでもう一つ考えますときには、単に公称資本金がどうであるかということも一つの大きなポイントではございますが、実はいま先生がおっしゃいました趣旨は実質的にほんとうにお客さんに信用され、お客さんに対する債務を履行し得る担保を確保するという意味におきましては、単なる公称資本金というものではなしに実質的な資産内容の充実ということが一そう重要になってくると思います。まだほかにもたくさん問題はございますが、そういうものもひっくるめまして証券業者が一般の投資大衆に接するときにもう少し信用される業態になって、その公共性を十分発揮するためには現在の登録制では不十分ではなかろうかという昨年来の社会党からの御指摘の趣旨に沿いまして、これを全面的に免許制に改めようといまいたしておるわけであります。これはいま申しました実質的な財産の充実ということを目ざそうといたしておるものでございますので、一そう根本に触れて解決される方向というのはそういう方向ではなかろうかといま考えております。
  82. 只松祐治

    ○只松委員 私は保証金や何か一例をあげたにすぎないわけでございますが、いまいみじくも言われましたように、実質的な資産内容ということが当然問題になってくる。極端に言うならば、どこかの部屋を借りておいて机と電話があって商売をする、こういうことがよくもののたとえのときに言われるわけでございますが、証券界の内容も、ほとんど資産がなくて、これだけの資本主義の一番中枢である株を扱うのが資産はから資産なりあるいは負債が——あとでこの次に聞きますが、コールなんか使ってばく大な利息を払っておる。むしろ借金が多いようなところで一番資本主義の重要な株を平気で扱っておる。これを大蔵省が全然指導もしなければ黙認をしている。何かあると共同証券なんかみたいにぱっとつくって応急処置をする、こういうことでは、私たちは社会主義を推進しようとしておるわけですから資本主義がくずれることは一向差しつかえないわけでございますけれども、しかし、少なくとも資本主義を健全に発展させようとしておる自民党の諸君なり、あるいはそれをささえておるいまの大蔵省というものがこういうことでは——少なくともいま日本国民は資本主義社会の中に生きておるわけですから、これはあまりにも無責任、皆さん方も無責任だろうし、国民は不安定でかわいそうなわけです。信託をとことんまで洗っていきますとこういう問題が全部出てまいります。それでいずれまたやりますけれども、今度証取法のどの程度改正案が出るか知りませんけれども、簡単なように聞いておりますが、ぜひひとつそういう意を含んで全般的な、特に実質上の資産というものについて国民が安心していける、こういうふうな法体系に変えることをお願いしたいと思いますが、いかがですか。
  83. 松井直行

    ○松井政府委員 御趣旨のとおりでございまして、過去日本の経済が非常に伸びたときに証券界も異常な過当投資をやりまして、そのはね返りがきておるわけでございますが、この苦い経験を一つの鏡といたしまして、二度とこういうことが起こらないように業者の自覚に待つことはむろんでございますが、証券業者のあり方自身につきまして、いまの登録制を免許制に変えるということでもって大蔵省の監督責任というものを一そう重大なものにして、みずからこれを引き受けていこうという決意を示そうとしておるところでございますので、御了承願いたいと思います。
  84. 只松祐治

    ○只松委員 いまから直すということは、率直に言って少なくともいままで監督が十分ではなかった、不行き届きであった、こういうことであると私は思うわけです。きょうはそういう責任追及しようとは思っておりませんけれども、ひとつぜひそういう方向で努力をしていただきたいと思います。  次に、五十八条の不正取引の行為、あるいは百二十五条の相場操縦の不正取引の不正行為の禁止、こういう証取法の中には禁止条項というのがたくさんございます。ところが実際は、こういう禁止条項はいわばくそ食らえといいますか、へのカッパといいますか、こういうのがほとんど適用されないでこういう不正行為が平然と行なわれておる、こういうふうにも聞いております。で、指導監督の立場にある大蔵省が、まだほかにもたくさんございますが、五十八条あるいは百二十五条に基づく不正行為というものがどの程度あるか、いままでたとえば摘発された、あるいはこういうことに対してこういう誤まったことがある、こういうことで指導監督をされた事件がどの程度あるか、あったらひとつお聞かせをいただきたい。
  85. 松井直行

    ○松井政府委員 五十八条違反また百二十五条違反の事例とその数は、あとで調べまして御報告申し上げたいと思いますが、実は、この法令をお読みになればおわかりになりますとおり、「何人も、」とこう書いてございます。というのは、先ほど先生おっしゃいました証券業者の資産の充実のほかに、広範な投資家を相手にし、かつ、売買という契約内容につきましても、単に物品を売るというのじゃなしに、非常に投資の形態も多岐多様でございますし、値段もしょっちゅう動いておるという関係上、証券取引という特殊な取引につきましては、商人としての証券業者の商道義というものが非常に重要視されるということは、少しほかの世界と幾ぶん違う点だろうと思います。この百二十五条にしろ、五十八条にしろ、犯罪構成要件が非常にむずかしゅうございまして、非常に立証が困難であるということでございますが、実は「何人も、」ということでもって全般を押えてありますが、これはアメリカ的思想でございまして、当然こうあるべきだと思いますが、私は、直接お客さんに接し商いをいたします証券業者につきましては、もう少し厳格に、直截的にこういう義務違反といいますか、やってはいけないことをしてはいけないという規定を置くのが、一そう行政執行上も便宜である。大蔵省も一そう投資家に対し責任を負うゆえんであろうと思いますので、むろんこれは証券会社も否めてでございますが、ここに一般人に禁止されております事項のうち、特に証券業者の商道義という観点から立って、やってはいけないという点を特に取り出しまして、行政監督の対象にでき得るように、いまおっしゃいました趣旨に沿って、今度の免許制への改正の中で取り上げるつもりにいたしております。
  86. 只松祐治

    ○只松委員 先へ先へと答弁をされたわけでございますが、そういうふうに変えるということならば、さようでございますかと、こういうことにいたすよりございませんが、実際にこれは証券取引法だけが法律じゃなくて、法律は山ほどあるわけで、しかもこれは百九十七条以下の罰則規定もあるわけですが、実際に行なわれないことをこうやって法律に書いて、しかも何年来ほうりっぱなしにしておくということは、これもまたきわめて事務当局なり指導、監督する当局としては、怠慢のそしりを免れないことだ。あとで具体的にお聞きいたしますけれども、そういうことのために大衆投資家は、これだけじゃないが、逃げていってしまうし、あるいは、直接非常に迷惑をこうむって、何十万、何百万という財産をすられても、これはどうしようもできなくて、とにかくじだんだ踏んでいる、こういう例がたくさんあるわけなんです。自動車にひかれたってこのごろは、交通事犯は非常に重く取り締まります。あるいは、普通の暴行事件でもこのごろは人命尊重で、なかなかきびしく取り締まるわけでございますけれども、こういう財産の侵害に対しては、しかも弱小者の財産の侵害に対しては、たとえば株なら株を取り扱っている限りにおいては、実際上行なわれないこういう法律がそのままになっているわけですから、これは非常な迷惑を国民はこうむっておるわけです。こういうことをそのままにしておけば、これは全く文字どおりの弱肉強食になり、これは国民を保護する、こういう立場には大蔵省は立たないで、ただ、私がちょっと聞きましたように、証券協会あるいは証券業者というものだけを保護したりそれを育成していく、あるいは守ってやる、こういう立場しか大蔵省というものは果たしておらない、こういうことを言われても、これは文字どおりそうだと思うのです。実際こういう禁止規定がある、あるいは法規定があるのに、適用されておらないわけです。いま簡単に、そういう実際上行なわれるものに改めたいと思う、こういう答弁がありましたけれども、ぜひそういうふうにしてもらいたいとともに、こういう法律があるわけですから、あれば、実際に困っておる、そういう泣いておる一般大衆投資家を救済し、その資産というものは、この法律を厳重に適用して、そうして単に証券協会なりあるいは業者を守っていくということだけではなくて、大衆を守っていく、こういうことをひとつ政府機関である以上大蔵省は果たしていってもらいたい。  そこで、さっきお残りをいただきましたので、警察庁当局に一つだけお聞きしておきたいと思いますが、百九十七条以下のこういう違反事項に対して罰則規定がいろいろあるわけです。こういう証券取引事件、あるいは、大蔵省等が指導監督——大蔵省に年に一回報告しなければならぬ義務や何かいろいろあとに述べておりますけれども、そういうことも含めて、警察庁当局で取り扱われた事件はどの程度あるか。あるいは、大蔵省等が摘発しまして、いまの「何人も、」という一般的な大衆じゃなくて、証券協会なりあるいは証券業者なりそういうものの違反行為について処理をされたものは何件になるか、お聞かせを願いたいと思います。
  87. 日原正雄

    日原政府委員 金融事犯につきましては、私ども刑事局のほうの所管じゃなくて、保安局の所管でございますけれども、保安局長はこの席にいませんので、便宜私からお答え申し上げます。  お話証券取引法違反の事件でございますが、警察で大体年間五、六件ぐらいの検挙しかできておりません。これらの事犯そのものも、ほとんどが無登録業者によるものでございます。ただ、警察に回ってまいりますときには、だんだんいろいろな証券業者その他の業態が悪くなってきて、詐欺、横領等の事犯を伴うものがほとんどでございます。そこいら辺くらいまでいったような、自転車操業の状態になってきて初めて警察に認知され検挙されるというような状態のものがほとんどでございます。ただ、その詐欺、横領等の事犯につきましては、証券取引にからむものとそうでないものと分けてございませんので、ただいまのところ統計がございません。昨年検挙いたしましたものでも、吉徳証券でございますとか、取引額百億円にのぼる、実害三億円にのぼるような事案も検挙いたしましたが、これは関係の取引三百数名にのぼっておりますけれども、これは何かやはり詐欺、横領と証券取引法ののみ行為、こういう三つの罪名で送検をいたしております。
  88. 只松祐治

    ○只松委員 そうすると、証券協会なりあるいは登録証券業者のこの証券取引法違反行為に基づくものは、いまのところない、こういうことですから、もしありましたら、いまはわからなければあとでひとつ委員長資料としても提出をいただきたい。なければしようがないが、あれば……。
  89. 日原正雄

    日原政府委員 ほとんどないと思います。
  90. 只松祐治

    ○只松委員 ほとんどないということはおそらくないことだろうと思います。なければないで、またあとで……。  そこで、具体的に問題をお聞きしたいと思いますが、たとえば大日機械製作所というのがございます。これがいま特設ポスト入りをいたしております。これは二月二日の午前中、相場は五十一円五十銭いたしております。前場終了は十一時半でございますが、そのときまで五十円と五十一円で商いがございます。午後になりまして、これは十五円で売りの希望があったけれども、商いはできなかった、こういう株でございます。この幹事証券で大商というのがございます。ところが、これは発表しておりませんが、私があるところから入手した情報によりますと、その幹事証券が午前中一万五千株売っているわけです。少なくとも幹事証券であれば、不渡りを出す、あるいは特設ポスト入りするということは、事前に相談に来ますから、あるいはいろいろわかりますから、大日機械が午後からだめになるということはわかるわけですね。そのときにとの幹事会社の大商は売りに出る。知らぬ人は買っているわけです。どんどん買って午後からぺしゃん。したがって、あくる日は特設ポスト入りして八円か九円ぐらいになってしまっておるわけです。これは先ほど私が関連条文を若干あげましたけれども、こういう行為、あるいはこれは刑法上の詐欺行為や何かにもあるいはかかってくるかと思いますけれども、当然に問題になる。  いま一つ例をあげます。日電工業というのがございます。これもいま特設ポスト入りをいたしております。これは三十九年の十月二十六日に会社更生法の申請をいたしました。そして当日、千二百万円の不渡り手形が出ました。この不渡り手形の中で一番大きいのが日電ランコ——これは日電工業も川端さんというのが社長でございますが、その同じ社長の日電ランコに対して、二百八十万円の一番大きい不渡りというのを自分の子会社に出しておるわけなんですね。二十六日に会社更生法を申請しながら、二十六日、二十七日、二十八日とずっと売っているわけです。そうして二十八日に値下げが発表になった。二十八日の午前中二十五円ぐらいしておったのが、二十八日の午後にはもう、いま言いましたように前の大日機械と同じく値下がりし、二十九日にポスト入りした、こういうことでございます。このときの幹事証券も大商と日東証券ということで、大商が関係いたしております。このときも大商と日東証券を通じて、系列のオリエント会社を通じて五十万株大商は売りに出ているわけです。またこのときはひどくて、二十六、二十七、二十八の三日間で——この会社は四百万株あるわけです。その中の百万株は二十六、二十七、二十八日の間に売りが行なわれているわけです。普通十万株か二十万株しか一般に出ておらないというのが、こういう百万株も売りに出る。これも明らかに、やはり幹事証券である大商は、資産内容も知っておるしあるいはそういうことも知っておるわけです。ところが持っている自分は売りにどんどん出て、この会社の社長も売っているわけです。日電の場合には、会社の社長も売っている。それで知らぬ人は、私の友だちもそれを買っている。ところががたんときた。ここはこまかく言う必要はありませんけれども、会社の人や何かを呼んで会社の内容はどうだと言ったら、いや実際に不渡りなんかは出しませんということで、私の友だちは言っておったところが、それが不渡りを出した。こういうことは明らかに、いわゆる証券会社あるいは特に幹事証券といわれるのが違反行為を起こしておる。こういう例を私は一、二あげましたけれども、いま中小企業で倒産している中にこういうのはたくさんあるわけです。まだほかに私は例を知っておりますが、ただ単に株式相場が混乱しているとか悪いとかいろいろ言われておりますけれども、その裏にはこういう事件がたくさんあるし、そして一般の人々が非常な損害を受けたり迷惑を受けておるわけです。ところがこういう人々に対して救済の方法は何らなされておらないし、したほうの証券なりあるいは会社側というものは、何らの制裁も行なわれておらない。こういうことは、健全な資本主義を発展させようとあなたたち思っておられるし、あるいは健全な産業、経済を望まれる皆さん方として、はたして放置していいのかどうか、私はたいへん重大なことだと思うのです。ひとつこの辺でそういう点に対する局長の御答弁をお聞きしておきたい。
  91. 松井直行

    ○松井政府委員 証券取引、特に株式の取引というのは非常に複雑怪奇でございまして、どうすれば一般の大衆にフェアな価格を公示し、その価格で取引していただけるか、その秩序を守ることが一番大事なことだと思います。それは仰せのとおりであろうと思います。しかし会社の業況あるいは景気変動あるいは外国で起こります戦争をはじめ、いろいろな新しい重大なニュースが入りますと、それがすべて株価に影響するわけでありまして、自然その間早耳筋といいますか、早く聞いた人とおそく聞いた人によってやはり差ができるというのは、ある程度やむを得ないということもあろうかと思いますが、ブローカーとして、証券業者にフェアな値段でお売りなさい、あるいは買いなさいということをあっせん申し上げるブローカーが、自分自身が先に早耳でそれを知り、しかも自分の持っている財産について被害を受けないように、あるいは特別な利益を得るように行動するということについては、いまおっしゃったとおり道義的に見ても非常に許せない行為だと思います。この法律は積極的にうその情報を流すとか、あるいは誤解せしめるような情報を流すことによってお客さんをだましたとか、そういう積極的な場合の罰則規定として読み得る条文は入っておりますが、そうした明らかにうその情報を流すとかなんとかいうことは非常につかみいいのですが、早耳筋が、特に証券業者が自分の持っているものについて資産の損害を受けないために、自分だけがいち早く逃げてしまうという点は、これは道義上の問題として非難さるべきことであろうと思います。しかし罰則の適用というのはなかなかむずかしい問題ではありましょうけれども、証券業者は普通の投資家と違って、いつでもわりあいに早く情報を獲得し得るということも事実でございます。それを利用して不当な利益をあげるというようなことがないように、今度は行政的な措置でそういうものを事前に押え、または違反した場合には行政的な手が打てるような手がないものかどうか。証券業者がやってはいけない行為、特に証券業者としてやる場合もありますし、その中の重役個人が自分の私利追求のためにやる場合がございますので、証券取引に関連して、一般的に反道義的だと考えられるそういう不正な取引を禁止いたします規定を、できるだけ今回の税制改正の中に織り込みたい、こう思っております。
  92. 只松祐治

    ○只松委員 いや道徳的ではなくて、あなたも証券局長をしておれば、ぼくらしろうとよりよほど知っている。幹事証券というのは、売りに出るときからその会社のことを全部知っているわけですね。それで不渡りを出すということまでは知らぬけれども、出たりあるいは会社更生法の申請をしたり、もう知っているわけなんです。知っているから結局売りに出てしまうのです。いま結局売りに出てしまうんですよ。いま例を二つあげましたように、下がるということを知っているから売ってしまうんですよ。それで知らぬ人は買うんですよ。だからものによっては、五十八条にもありますように不正の手段あるいは計画とか、全文を読みませんけれども、これだって明らかにこの条文でもひっかかって、あとの百九十七条以下の罰則を証券会社それ自体が負わなければならぬ。こういうことは、常識的に法律を解釈すれば明らかなんです。ただ、あなたが言うように事前に知っておったか知らなかったかということになると、いや知りませんでしたとこう逃げれば、これはなかなか立証の方法はないということになる。しかし幹事証券というのは、あなたは証券界は非常に商慣習を重んじるとおっしゃいましたけれども、商慣習を全部知っているんですよ。知っているから売ってしまうんですよ。売って、あと知らぬ人が買う。それで買ったものがぼこっと特設ポストへいってしまったらどうにもならなくなる。それで何年か会社更生法にひっかかって、買ったものが宝の持ちぐされではないけれども、息を吹き返せばいいけれども吹き返さなかったらそのままばく大な財産の損害を受ける、こういうふうになってしまうんです。こういうことは一般の詐欺行為だって明確に禁止されておるし、あるいは罰則がある。証券界だけそういうことが平然と行なわれてかまわない、こう言うのなら——年がら年じゅうこうやってどんどん会社が倒れていくというような現象はないかもしれませんけれども、特に現在のように会社がどんどん倒れていく。こういう状態のときはそういうものを何らかの形で救済していかなければ、一般の善良な投資家というのはたくさん被害をこうむっているわけです。これはただ道義上の問題とこうお考えになりますか。
  93. 松井直行

    ○松井政府委員 いまおっしゃいましたようにそういう違法ないし不当あるいは反社会的な商い、取引の実体というものはなかなかニュアンスがございましてむずかしゅうございます。私のことばが足りなかったかと思うのですが、明らかにその会社の内容が悪くて、それだけの値段で取引さるべきでないにもかかわらず誤った情報を流し、あるいは特殊な手だてをすることによって株価をつり上げておいてお客さんに売るという積極的な行為ですね。これはいまの法令にずばり当たってくると思うのでありますが、ブローカーでありながら自分自身ディーラー活動をやっておるというときに問題があると思うのです。自分自身が純粋のブローカーでお客さんに買い継いでやる。証券業者が自分自身で持ってないならいいのですが、私が申し上げましたのは、一部自己の資産でそういう株を証券業者が持っている場合に、自分がいち早く入手し得た情報をもって自分の利益のために売りにやる。これはなかなかつかみにくいわけですし、現在の条文からいってずばり非難性を与えるのは非常に困難じゃなかろうか。むしろ反道義的な、証券業者としての商道義違反という点で追及すべきではないかという意味で私申し上げたのでございまして、いいんだという意味で私申し上げてはおりません。そういうものも包摂しといいますか、証券業者があるべき商道義の確立のために必要な手は打てるだけ今後の法改正並びに行政指導の面について生かしていきたいと現在考えております。
  94. 只松祐治

    ○只松委員 警察関係の方急がれるそうですから、ちょっとここでお聞きしておきたいと思いますが、いまお話しのような事件がございます。特に一例をあげましたように、すでに会社更生法が三日前くらいから申請しておりながら——それは当然幹事証券は知っておるわけです。そういうのをどんどん売りに出しておいて、片一方しろうとは知らなかったといえばそれまで、あさはかなことだ、こういうことになるかもしれませんが、しろうとはなかなかそういう情報をキャッチするのは容易でない面があると思います。いま言いますようにその不渡りになった手形を、自分の会社の社長が子会社の同じ同一社長に振り出した、こういう事件のときに、その振り出した会社も当然一つの問題が出る。それからそれを知っておる幹事証券会社が売りに出した、こういうことになれば当然ここには犯罪要因が成立すると思います。これは具体的にずばりということはございませんが、一例をあげればこういうときには当然に証取法に違反して犯罪要因がある、こういうようにお考えになりますか。
  95. 日原正雄

    日原政府委員 御質問の点でございますが、要はやはり立証の問題にかかってくるのではないかと思います。大蔵省のほうから御説明のありましたのと同じことになりますが、非常に立証がむずかしいという点はあろうと思います。特に条文が積極的な何らかの行為に出た場合を割合と取り上げて構成要件ができ上がっておりますので、純然たる不作為の場合にどういうような形がとり得るか、どういう罰則にひっかけ穫るかということは非常にむずかしいのではないかと思います。積極的な作為がありました場合にも、虚偽の風説の流布とかあるいはいろいろな作為を用いて、あるいはお話のように詐欺の場合も出てこようと思いますが、何らか積極的な行動に出た場合には、情状次第によっては私どものほうで検挙できる場合も出てこようと思いますが、要は立証の問題で非常にむずかしい問題があるということが一つの点でございます。それからこれも同じことに帰着するわけでございますが、その取引の形態が、私どものほうの立場から申しますと検挙することによってかえって善良な投資家が不慮のいろいろなマイナス面になることが起こるというようなことも考えなければならないし、検挙の開始の時期等も考えなければならない問題であります。また業者のほうもそういうような取引をやっておれば当然またお得意先が離れるということでございまして、投資家のほうもある程度自分の判断を加えて買わなければならぬというような、証券取引についてはいろいろそういう錯綜した事情もございますので、まあ私どものほうの立場から申しますと、立証さえできるならばどしどし検挙してまいりたいというつもりではございますが、なかなかむずかしい段階があるのではないかというふうに考えます。
  96. 只松祐治

    ○只松委員 ついでにもう一つお聞きしておきたいと思いますが、さっきから言われたように、いま立証はなかなか容易ではない面もありますが、少なくとも現在までこういう証券の関係で、特に業界に一ぺんも手を入れたことがない、こういうことでございますが、さっきも言いますように銀行、証券というのは現在の資本主義経済の中枢をなすものである。したがって手入れもなかなかむずかしい面もあるかと思いますが、逆にそういう面がこういう混乱をきわめたり腐敗、堕落しておる、こういうことでもってそれを全然警察関係が手入れをしない。それでちょっとデモをやったり何かやったりするとすぐ警察が来て引っぱったり何かする、こういうことではこれはあえて社会党ならずとも片手落ちだと思う。もう少し今後こういう面に対して積極的に警察のほうでも証券の違法行為その他を勉強して手入れをする、こういうお考えがございますが、いままでどおり一切こういったところはおえらいのだからタッチしない、そこいらのデモや労働争議や何かでがちゃがちゃやってつかまえたほうが手っ取り早くて点数が上がる、こういうふうにお考えでございますか、ひとつお考えを聞いておきたいと思います
  97. 日原正雄

    日原政府委員 決してそういう考え方はないのでございまして、むしろ私どものほうは善良な投資家保護のために大義名分があるならばどしどし取り締まってまいりたい。ただ先ほど申しましたとおり非常に立証がむずかしいということと、それにも増して先ほどもちょっと触れましたように、これによって逆に善良な投資家が非常な迷惑をこうむるような事態になるような場合もあり得ますので、特に金融関係の事犯につきましてはそういう事犯が多いものですから、そういう意味で多少手控える傾向に従来あったと思います。その点はお話の点もよくわかりますので、大蔵省のほうとも私ども十分連絡を密にしまして、ほんとうの意味の善良な投資家保護のために必要があるならばできるだけの検挙をやってまいりたいと考えております。
  98. 只松祐治

    ○只松委員 きょうは問題点だけお聞きする予定にいたしておりますので、話を次に進めまして、共同証券と証券保有組合の法的な相違、それから実質的な相違と申しますか、たとえば、通俗的に話しますと、大臣はよく共同証券は株の塩づけだ、こういうことばを使っておるわけでございますが、実際上の塩づけをやっておるのはこの保有組合で、共同証券は塩づけではなくて、むしろ売買を相当やったりなにかしているのです。こういうことはこの次にお聞きしますけれども、したがって、そういう点からお尋ねしているのですが、ひとつ法的な相違と実質的な違いというものをお聞きしておきたいと思います。
  99. 松井直行

    ○松井政府委員 非常にむずかしい問題でございますので、にわかに御満足のいく回答ができるか、非常に疑問に思っておりますが、まず実質的、機能的な面から申し上げますと、いまおっしゃいましたとおりでございまして、共同証券は当面金が証券界に流れ込まない、金融機関を通じて大量の金が集まる、その金融機関に集まりました金を利用いたしまして、証券の需給のアンバランスを是正するために買い上げるということがその主目的でございまして、したがって金融機関を中心といたします資金、出資金と協調融資をもちまして共同証券というものができたわけでございます。これは性格は証券業者でございます。会員ではなしに、非会員という形をとっておりますが、機能的に申しますと、一種の特殊な機関投資家というふうに見てもらってけっこうだと思います。したがって、みずからの資本負担、資金コスト等から考えまして、優に株式を買い上げることによって採算に乗ると考えられる株を自由に自分の判断で市場から買っております。これは売ることが当面ございませんので、ある意味においては塩づけ機関ともいわれておりますが、実はしょっちゅう市場に出動してまいりまして買うわけでございますので、自由な機関投資家、これはまた別に申し上げますと、ある一定の規格なり、あるいは意思なり、あるいは国家の統制でもって株を買い上げるというのじゃなしに、一機関投資家として、自分の採算に乗るものを自由に買っていくという意味におきまして、市場に対する介入というよりも、むしろ自由な立場で市場に参加させたほうがいい、これは証券取引市場の本来の性格が自由な市場でありますので、そういう観点から市場に参加させたほうがいいという考えをわれわれも持っておったわけでありまして、現に共同証券はそういう形で機能してまいっております。  今回の保有組合は売ったり買ったりというわけじゃないのでございまして、去年一年の実験の結果、なおアンバランスというものが解消し得ない。特に投資信託におきましては、元本の純減を来たすほど新規募集が少なくて、むしろ解約のほうが多い、したがって、どんどん投資信託というものが持っております株式を現金にかえまして、逃げていくお客さんに現金で払わなければならない。去年の十一月、十二月非常に大量の株を投資信託が市場に放出をいたしております。こういう状況が長く続きますときには、いかに共同証券が活躍いたしましても、大きなパイプでまだ株が市場に入ってくるという状況でございますので、この際思い切りまして投資信託が過分に組み入れております株式の相当部分を一挙にどこかに今度は吸い上げて塩づけにする、あわせて証券業者が過分に持っております自己保有の株もある程度吸い上げることによってどこかに塩づけしてしまうというほうが、一そうアンバランスをこの際一挙に解決する方法じゃなかろうかということをねらいまして、今度は証券業者を組合員として特殊な組合をつくりました。いわばこれは借金を共同でしますシンジケートというふうにお考えになってもらっていいと思います。そこに完全に塩づけいたしまして、三年間は株を放出しない、その間の金利なり、あるいは三年後あるいは四年後保有組合が保有いたします株式がはたして高く売れるものか、いまよりも安く売れるものか見当はつきませんが、その辺の損益はすべて組合員が連帯で負担するという形でできましたものでありまして、第二回目の保有組合は証券界自体が自力で共同で証券市場の機能の回復をねらったというものでございます。したがいまして今度は、公共的性格という先ほどの面からいいますと、第一番目の、共同証券は一証券業者であり、出資者は金融機関筋を中心にいたします私企業ではございますが、かつてこの席で申し上げましたとおり、最終的には株式の需給というもののアンバランスを解消し、投資家のために適正な価格が形成されるよう、あるいは産業界にとりましては、証券市場から長期の資金が調達される、そういう状態を一日も早くつくり上げるということを目ざしまして、金融界が共同してつくったものでございますので、非常に公共的なものをねらっておるということが言い得ると思います。第二の保有組合につきましてもねらいは全く同じでございますが、今度は証券業者自体が自分たちの中で責任を負いまして、そういう共同で借金をし、共同で塩づけにするシンジケートをつくろうということになったわけでございまして、今度は民法上の組合という法的性格は違いますけれども、そのねらっております設立の趣旨というものは、同じように公共的なものをねらってやったものであるというふうに私は解しております。
  100. 只松祐治

    ○只松委員 いまの御答弁で満足するものではなくて、いろいろ問題点がございますが、御説明だけ聞いておきたいと思います。  次に、証券市場は大体その六〇%から八〇%、平均いたしますと七〇%ぐらいは四大証券で表面上いろいろ取引が行なわれ、操作されている。ところが実質上は九九%——百社ありましたが、いま九十五社くらいになりましたけれども、四大証券の系列化にあって九九%はこの四大証券によって操作をされておる、こういうふうに言われております。この四大証券の日本証券市場における諸問題についてもおいおいやってまいりたいのでございますが、きょうはその四大証券の昨年度における、いわゆる株主総会における会社の収支決算と、それから税務署に出した決算報告と、いまおわかりでしたらお知らせいただきたいし、もしわからなければあとで資料でもけっこうでございます、当然に百五十四条あるいは百五十六条の十三などで大蔵省に報告の義務があるわけでございまして、大蔵省にはどっちの報告を提出しているか知りませんが、たとえば野村なんか株主総会では黒字報告をしておいて、税務署には三億くらいの赤字報告が出ているというふうに聞いております。こういう問題はほとんどの会社がそういうふうにしていると言われておるわけですが、税務署には赤字の報告を出しておる、こういうことになっておりますと、どっちがうそなんです。そうするとこれはいま公認会計士の違反事項にもありますし、それから役員としての背任問題やなんか全部出てくるわけですが、これはいずれ私は国税当局にどっちが税法上ほんとうか、役員がうそを言って株主に報告をしたならば、これは役員は全部ひっくくらなければならぬ、あるいは税務署にうそを出したのなら国税庁として徹底的に捜査をしなければならぬ。こういう問題について私は次回にじっくりやることにいたしますけれども、とりあえずきょう四大証券でわかっておりましたらお知らせをいただきたいと思います。
  101. 松井直行

    ○松井政府委員 証券業者から証券局に参りますのは営業報告書がまいります。これはいま全国の証券業者を集計いたしております段階でございますが、提出資料は証券業者が出しました営業報告書に基づ資料でございます。一方税の申告をどう出したか、われわれまだ関知することはいまのところございませんが、商事上の決算と税法上の決算はおのおの分野が違いますから、税務調整をやるということがあり得るということは、もうつとに御存じであろうと思います。おそらく違うものがあるとすれば、そういう税務調整の分だけだろうと思うのでありまして、内容自身はそう違ったものはないと私は信じております。
  102. 只松祐治

    ○只松委員 わかったらひとつ知らしていただきたい。わからなければあとで資料でございますが、証券の場合には十月から九月の決算になっていますから、それで報告が出ているはずですから、大蔵省の手元にはあるはずです。きょうは私そこまで要求しておりませんから、わからなければ、大蔵省には当然資料で来ているはずですから資料として出していただきたい。
  103. 松井直行

    ○松井政府委員 営業報告書に基づきます資料につきましては、あとで御提出いたします。
  104. 只松祐治

    ○只松委員 それでは、以上できょうは終わります。
  105. 吉田重延

    吉田委員長 次会は、九日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十二分散会