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1965-01-29 第48回国会 衆議院 大蔵委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和三十九年十二月二十一日)(月 曜日)(午前零時現在)における本委員は、次の通 りである。    委員長 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    宇都宮徳馬君       奥野 誠亮君    鴨田 宗一君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    齋藤 邦吉君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    濱田 幸雄君       福田 繁芳君    藤枝 泉介君       毛利 松平君    渡辺 栄一君       渡辺美智雄君    卜部 政巳君       岡  良一君    小松  幹君       佐藤觀次郎君    田中 武夫君       只松 祐治君    野原  覺君       日野 吉夫君    平林  剛君       松平 忠久君    春日 一幸君       竹本 孫一君 ───────────────────── 昭和四十年一月二十九日(金曜日)    午後一時四十九分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    鴨田 宗一君       木村 剛輔君    木村武千代君       齋藤 邦吉君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    谷川 和穗君       地崎宇三郎君    西岡 武夫君       濱田 幸雄君    福田 繁芳君       毛利 松平君    渡辺 栄一君       渡辺美智雄君    岡  良一君       佐藤觀次郎君    只松 祐治君       日野 吉夫君    平岡忠次郎君      米内山義一郎君    横山 利秋君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (主計局次長) 中尾 博之君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         国税庁長官   木村 秀弘君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房文書         課長)     橋口  收君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    塩崎  潤君         日本国有鉄道参         与         (経理局長)  長瀬 恒雄君         専  門  員 坂井 光三君     ───────────── 一月十二日  委員小松幹君及び松平忠久辞任につき、その  補欠として平岡忠次郎君及び野口忠夫君が議長  の指名委員に選任された。 同月二十日  委員卜部政巳君、田中武夫君及び野原覺辞任  につき、その補欠として米内山義一郎君、横山  利秋君及び藤田高敏君が議長指名委員に選  任された。 同月二十五日  委員宇都宮徳馬辞任につき、その補欠として  地崎宇三郎君が議長指名委員に選任され  た。 同月二十九日  委員藤枝泉介辞任につき、その補欠として西  岡武夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西岡武夫辞任につき、その補欠として藤  枝泉介君が議長指名委員に選任された。     ───────────── 昭和三十九年十二月二十一日  国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律  案(安宅常彦君外九名提出、第四十六回国会衆  法第五号)  酒税法の一部を改正する法律案有馬輝武君外  十二名提出、第四十六回国会衆法第三〇号)  製造たばこ定価決定又は改定に関する法律  の一部を改正する法律案有馬輝武君外十二名  提出、第四十六回国会衆法第三一号)  入場税法の一部を改正する法律案有馬輝武君  外十二名提出、第四十六回国会衆法第三二号) 同月二十三日  製造たばこ定価決定又は改定に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第四号) 昭和四十年一月二十六日  昭和三十九年産米穀についての所得税臨時特  例に関する法律案内閣提出第一五号)(予) 同月二十七日  企業組合に対する課税適正化に関する請願(岩  動道行紹介)(第七〇号)  同(竹山祐太郎紹介)(第七一号)  同(植木庚子郎君紹介)(第一四七号)  同(白浜仁吉紹介)(第一四八号)  同外一件(床次徳二紹介)(第一四九号)  同外一件(田村良平紹介)(第一七三号)  同(成田知巳紹介)(第一七四号)  同(赤澤正道紹介)(第二五五号)  同(佐々木良作紹介)(第二五六号)  同外一件(濱田幸雄紹介)(第二五七号)  同(山下榮二紹介)(第二五八号)  同(大平正芳紹介)(第三〇一号)  バナナ輸入関税引き下げに関する請願(關谷  勝利君紹介)(第七三号)  所得税法の一部改正に関する請願上村千一郎  君紹介)(第一四四号)  同(内田常雄紹介)(第一四五号)  同(田中伊三次君紹介)(第一四六号)  同(野田卯一紹介)(第一七五号)  同(玉置一徳紹介)(第二六二号)  同(坊秀男紹介)(第二六三号)  バナナ輸入関税据え置きに関する請願(海部  俊樹君紹介)(第二五九号)  同(田澤吉郎紹介)(第二六〇号)  同(湊徹郎紹介)(第二六一号)  同(岩動道行紹介)(第三〇二号)  同(小沢辰男紹介)(第三〇三号)  同(加藤精三紹介)(第三〇四号)  同(亀岡高夫君紹介)(第三〇五号)  同(熊谷義雄紹介)(第三〇六号)  同(佐々木義武紹介)(第三〇七号)  同(佐藤孝行紹介)(第三〇八号)  同(竹内黎一君紹介)(第三〇九号)  同(登坂重次郎紹介)(第三一〇号)  同(粟山秀紹介)(第三一一号)  同(森田重次郎紹介)(第三一二号)  同(渡辺栄一紹介)(第三一三号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三一四号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件      ────◇─────
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  国の会計に関する事項税制に関する事項関税に関する事項金融に関する事項証券取引に関する事項外国為替に関する事項国有財産に関する事項専売事業に関する事項印刷事業に関する事項及び造幣事業に関する事項の各事項につきまして、今会期中国政に関する調査を行なうため、議長に対し、国政調査承認要求を行なうこととし、その手続につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  4. 吉田重延

    吉田委員長 税制金融等当面の基本施策について、大蔵大臣より説明を聴取いたします。田中大蔵大臣
  5. 田中角榮

    田中国務大臣 当面の財政金融政策基本的な考え方につきましては、先般の財政演説において明らかにしたところでありますが、本委員会において関係法律案等の御審議をお願いするにあたり、重ねて所信の一端を申し述べ、御参考に供したいと存じます。  本年に始まる昭和四十年代は、開放経済体制に移行したわが国が、引き続き着実な成長を続けつつ、先進諸国に比肩し得るような質的強化をなし遂げ、世界の繁栄にも一そう積極的な貢献をしていくべき時代であります。  開放体制のもとにおいて、わが国が、その国際的地位の一そうの向上をはかっていくためには、国際的視野に立った健全な財政金融政策運用によって通貨価値の安定につとめることはもちろん、常に国際収支均衡とその健全化に留意することが肝要となるのであります。このためには、海外市場の開拓をさらに推進するとともに、企業体質改善強化産業構造高度化産業秩序の確立並びに科学技術開発向上等を通じて、わが国輸出力を一段と増強してまいらなければなりません。  また、わが田企業が、今後、世界市場における品質、価格の競争と国際経済の波動にたえて、一そうの発展を期するためには、自由な経済原則のもとに効率を重んずる合理的な経営態度に徹することが最も肝要であると考えます。私は、この際、わが国企業が広く国際的視野に立って新しい経済環境にふさわしい合理的な経営感覚を身につけ、収益を重視し、蓄積を厚くして、その質的充実につとめられんことを強く期待したいのであります。  わが国経済の最近の動向を見ますと、調整の効果は経済の各分野に次第に浸透し、昨年秋以降、生産動向金融市場動きなどには、おおむね平静な推移が見られるに至っており、経済は自律的な調整過程に入ったものと思われるのであります。また、国際収支も、輸出の好調、輸入落ちつきによって、その均衡を回復しつつあります。  本年の海外環境は、米、英の国際収支対策をめぐる動きもあって、きびしさを増すことが予想されますが、世界経済貿易は、全体としては、なお着実な拡大を続けるものと思われます。また、わが国輸出力は、ここ数年の近代化合理化投資の成果に基づいて、年を追って強化されていくものと考えられ、さらに今回の調整過程を経て、輸出意欲が増進されつつあるのであります。  したがって、本年も輸出を大きく伸ばし、国際収支均衡をはかることは、一そうの努力を前提とするならば、十分可能であると考えるのであります。  このような情勢にかんがみ、去る一月九日には公定歩合の一厘引き下げが実施されました。今後、わが国経済は、落ちついた歩みの中で次第に明るさを増していくことが期待されますが、この際、過度の安易感によって、再び経済に行き過ぎが生ずることのないよう、金融政策においても、なお引き続き、慎重かつ機動的な運営を行ない、内外経済動向推移に備える所存であります。  さて、今回の予算編成にあたりましては、きびしい国際経済環境の中で、通貨価値の維持と国際収支均衡を確保し、わが国経済長期にわたる安定成長の路線を固めることを主眼といたしました。このため財政面から経済を刺激することのないよう、引き続き、健全均衡財政方針を堅持するとともに、極力予算規模の圧縮をはかることといたしました。  歳出の面では、その合理化重点化を一段と推進しつつ、特に、国民生活向上とその環境整備、低生産性部門近代化地域格差の解消、過密都市対策促進等社会開発を推進する重要施策を積極的に展開し、社会経済の各分野、各地域にわたり、均衡のとれた発展開発を期することをもって基本としたのであります。  また、財政金融を一体として運営する趣旨から、財政投融資計画を通じて民間資金を活用することに一層留意いたしました。このことによって、国民蓄積資金の適当な部分を、社会資本充実等公共部門整備に振り向け、資本形成における民間部門公共部門の調和を保つことを期した次第であります。  また、今回の予算編成にあたりましては、安定成長前提とする以上、従来のような大幅な租税自然増収を期待することはできず、他面、歳出増加要求は依然として強く、国民の要望である減税を行なうことには、かなりの困難があったのであります。しかし、種々くふうをこらすことによって、広く、国民一般租税負担を軽減するため、平年度一千二百億円をこえる一般的減税を行ないますほか、当面の要請にこたえ、貯蓄増強資本市場育成等のため政策的減税をも実施することとしたのであります。  主要な税制改正法案について、その概要を申し述べますと、まず、所得税におきましては、国民生活の安定に資するため諸控除を大幅に引き上げることといたしております。法人税におきましては、自己資本充実企業基盤強化に資するため、法人留保分に対する税率を特に中小法人負担の軽減に重点を置いて引き下げるほか、同族会社留保所得課税控除額の引上げを行なうことといたしました。そのほか、貯蓄増強資本市場育成等、当面要請される諸施策に対応する税制上の措置を、この際思い切って講ずることといたしております。  なお、地方税につきましても、地方財政の苦しい実情にもかかわらず、個人事業税事業主控除引き上げ電気ガス税免税点引き上げ、その他所要負担均衡化合理化をはかることといたしております。  また、関税率につきましても、最近の内外経済情勢に応じ、所要調整を行なうことといたしております。  次に、今後の金融政策について申し述べます。  過去一年にわたる調整過程を通じて、行き過ぎた企業規模拡大は必ずしも収益向上をもたらすものではないということが広く経済界に認識されつつあります。  企業の側にあっては、経営重点量的拡大から質的充実に移して、資金需要を適正化し、また、金融の側においても、折角落ちつきを見ている経済の基調をくずすことのないよう、慎重かつ堅実な融資態度を固めることを期待するものであります。  政府といたしましても、このように金融情勢が落ちついていくことを見きわめつつ、金融正常化の条件を順次整えてまいりたい所存であります。  長期資金の確保によって企業資本構成是正することは、今日の急務であり、このため、貯蓄増強資本市場育成をはかることの重要性は、一そう高まりつつあります。この見地から、政府といたしましては、今回、企業及び投資家に対する一連の税制上の施策を実施することとしておりますが、今後とも、資本市場拡大強化するため、各般の施策を積極的に推進する所存であります。  なお、資本市場の健全な発展をはかるため、証券業界体質改善と、その機能強化が今日ほど急がれているときはありません。政府といたしましても、証券業登録制免許制に切りかえて、その経営基盤と信用の強化をはかるため、証券取引法所要改正を加える所存でありまして、当委員会において御審議を願うことといたしております。  国際経済面におきましては、国際流動性問題は、先般のIMF・世銀の東京総会において、IMFの増資に関する決議が採択されたことを契機として、新たな進展を遂げたのであります。一方、先般来の英国の国際収支危機に際しては、一般借り入れ取りきめの発動、緊急借款の供与が行なわれるなど、国際金融協力はますます緊密となりつつあるのでありますが、わが国としても、積極的にこれらの協力に参加し、応分の寄与をいたしているのであります。  また、今日、開発途上にある国々に対する経済協力は、世界経済拡大発展のためにますます重要となっております。わが国としては、国連貿易開発会議における諸決議においてとり上げられているような諸問題等にも考慮を払いつつ、アジア諸国を中心に、国力の許す範囲内で協力と援助を行なっていきたい考えであります。  なお、ガットにおける関税一括引き下げ交渉は、今般例外品目表提出を終わり、いよいよ本格化する運びとなっております。この交渉にあたりましては、国内産業に対する影響に十分配慮するとともに、わが国の受ける利益相手国に与える利益均衡を確保するよう留意しつつ、今後もできる限りこれに協力していきたいと考えております。  以上、財政金融政策基本的な考え方について所信を申し述べました。  なお、本国会において御審議を願うべく予定いたしております大蔵省関係法律案等は、昭和四十年度予算に関連するもの十三件を含め三十二件でありまして、このうち、法律案三十件及び承認案一件について本委員会において御審議を願うことになるものと存じております。何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたす次第であります。
  6. 吉田重延

    吉田委員長 引き続き財政金融等について質疑の通告があります。順次これを許します。平岡忠次郎君。
  7. 平岡忠次郎

    平岡委員 池田財政下高度成長政策地域間、産業間、階層間に格差とひずみをもたらしました。池田内閣退陣後、これを受け継いだ佐藤内閣に課せられた財政金融経済政策のキーポイントは、これらひずみ是正でなければならないし、事実佐藤首相は、この課題の重要性演説の端々で肯定せられておるのであります。それには財政金融政策の持つひずみを是正することがまず政策当局に対して要請される中心問題となるべきでありますが、昭和四十年度予算編成は、むしろ従来のひずみを依然として拡大させるものではないかとの疑義なきを得ないのであります。もともと景気調整には財政金融の二つの道具を活用すべきなのでありますが、わが国の場合、財政は膨張し続け、ここ数年調整の主役はもっぱら金融であったのであります。したがって、要請される転換の基本は、財政景気調整的機能を一そう充実すべしということであると思います。財政政策では投資刺激拡大予算では行き詰まりを来たすということになろうと思います。大臣予算編成にあたって投資刺激政策をとらないとのかまえであったのかどうか、また大臣は、今回の四十年度当初予算財投計画をもって景気に対して中立的な健全予算財投計画案だと言い切れるかどうか、御所信のほどをお伺いしたいのであります。
  8. 田中角榮

    田中国務大臣 財政景気を刺激することのないように健全均衡基本的な姿勢を貫いたと考えておるわけでございます。もとより景気刺激財政規模がならないというわけにはいかないと思いますが、景気調節機能というものに対しは、金融がおもに力があるということは言い得るのであります。特に戦後の日本財政事情考えますと、ひずみの是正とか、また先進国にほど遠かった社会保障の拡充とか、財政的要求財政の持つ固有の使命というものがありますので、財政をそう切り詰めることができないという面もあることは御承知のとおりでございます。しかしいずれにしましても三十六、七年は二四・四%、二四・三%という対前年比大幅な伸びがあったのでありますが、三十八年度は一七・四、三十九年度は一四・二、今年度一般会計は一二・四%、率直な端的なお話を申し上げると、約三年間、千日くらいの間に三千億の一般会計の台を削減しておるというのでありますから、一般会計に対する歳出要求というものとバランスをとって考える場合、この程度のものが景気刺激予算であるということは言えない。やはり中立予算よりも健全均衡のほうに片寄った予算、こういうふうに見ておるのであります。財政投融資はもう御承知のとおり最終的な案は二〇・九よりも低いのでありましたが、最後に地方開発というので開発銀行地方開発資金をふやしたというようなことで二〇・八を〇・一%オーバーした二〇・九となりまして、これは年度間を通じての財投の支出とか運用のいかんによって十分カバーできるものであると考えております。
  9. 平岡忠次郎

    平岡委員 確かに今回の予算案の字ずらだけ見ますと、あなたのおっしゃったことも一応うなずけるところもあるわけであります。すなわち四十年度一般会計予算案は、総額三兆六千五百八十一億円、三十九年度当初予算の三兆二千五百五十四億円、前年度比一四・二%増に比べますと、あなたのおっしゃるとおり、一二・四%の増加にすぎません。最近五カ年間の予算伸び率を試みに拾ってみますと、三十五年度一〇・六%、三十六年度二四・四%、三十七年度二四・三%、三十八年度一七・四%、三十九年度一四・二%と、三十六年度と三十七年度をピークといたしまして、伸び率は鈍化いたし、四十年度はあなたのいまおっしゃるとおり、三十七年度の半分の伸び率と相なったわけであります。こうした点から、あなたはいま予算規模は妥当なものである、健全的均衡財政方針にかなうものであるという趣旨を仰せられました。なお蔵相は、景気に対しては、むしろこれは刺激的ではなしに、どっちかというと鎮静的なものであるという御趣旨も表明されたわけであります。しかし一般会計予算伸び率が鈍化したのは、景気抑制のねらいからではなしに、もっぱら財源事情によるものだとの批判も強いのであります。蔵相は当初自然増収を五千億円ほどに踏みまして一四%強の伸び率が確保できると見ていたと伝えられております。しかし減税規模が八百二十億円にふえた上、自然増収も思惑より下回って、四千六百四十七億円程度にとどめざるを得なかったために、一二・四%の伸び率に甘んぜざるを得なかったというのが実際の経緯だとされております。そうであるかどうか知りませんけれども、はたしてさようであるならば、蔵相の意図は、なお成長を是とするのであるけれども、ないそでは振れぬということで、財源事情によって作成した予算案が、結果として鎮静的予算案になったのではないかどうか、その点にわれわれは疑問を待つわけであります。真に景気抑制をねらう目的意識を持って、予算編成をやるのであれば、予算編成に対して、予算財政投融資計画とも、経済成長見込み一一%を下回る水準に押えていくという、画期的な英断も私はあり得たと思うのですが、予算編成最高責任者であられる田中蔵相所信をもう一度お伺いしたいのであります。
  10. 田中角榮

    田中国務大臣 財源がなかったことは事実であります。財源がなかったので結果的に健全均衡になった、こういう御指摘でございますが、そうお考えになってけっこうです。それは見方の相違でありまして、私がただ今年度予算だけで一二・四に押えたならばいいのですが、三年前、約千日前に組まれた予算は、二四・四であり、二四・三であります。それを私が漸減的に三十八年は一七、三十九年は一四、四十年は一二、こうなったのですから、もう一ぺん私が予算を組むようになるとすれば一〇%になるかもしれない。こういうことで、歴史的に見れば健全均衡財政を三年かかって、だんだん私のものにしてきた、こう見るのが正しい見方だと思います。同時に、平岡さん十分御承知だと思いますが、初め自然増収は大体四千五百億、四千五百億に対して税制調査会考えた一番初めの議論は、計画的に三年か五年減税をやるとしたら、初年度二〇%やれればこれはたいへんなものだ、二〇%はやれまい、そういう世論、大体そういうところにあったわけであります。ところが結論的には二〇%をはるかにこすというような減税案を採用したわけであります。でありますから、減税に対しては非常に積極的だったし、同時にその健全均衡ということに対しては終始一貫貫いてきた、私はそう感じておるのでありますし、国民各位もそう判断してほしいと考えておるわけであります。
  11. 平岡忠次郎

    平岡委員 さらに質問いたしますが、私どもは計数上一二・四%の伸び率にとどまったこの予算も、内実が膨張性を払拭した健全予算だとうのみにするわけにはいかないのであります。膨張性があるかどうか。すなわち景気刺激的であるかいなかは、予算と表裏一体をなす財投規模とその内容も見なければならないことでありますし、それにも増して、先進諸国で常識とされているところの成長率見込みのパーセンテージ内に予算伸び率をとどめてこそ、健全財政なりという観点に立つならば、四十年度予算財投を通じての財政規模はなお景気刺激的なものであり、たかだか財政事情のためそれがスローダウンしているにとどまると言えるのではないかどうか、その辺に私どもは疑問を持っておるわけであります。  さきの池田内閣は、財政を通じての景気刺激をもって経済成長を促進してきたのでありますが、これは毎年のように、経済成長率見込みを上回る膨張率を持つ予算を組んで、その結果として、見込みを上回るところの経済成長率が達成されてきたのであります。  昭和三十六年以降、四カ年の池田財政下におきまして、三十六年、三十七年には、それぞれ二四%をこえる一般会計の膨張、昭和三十六年、三十八年、三十九年には、それぞれ二〇%をこえる財政投融資計画増加率が見られまして、経済成長率見通し、おおむね一〇%以下の数字と比較して、きわ立った対照をなしておるわけであります。昭和四十年度予算編成におきましては、一般会計の膨張は一二・四%とやや減少しましたが、一方財政投融資計画は二〇・九%増となっており、いずれも経済成長率見通し、名目一一%をこえるものであります。国際的に見て、日本予算規模の膨張率は高きに過ぎると私どもは判断しておるわけであります。昭和二十九年を一〇〇としてみますれば、日本財政は、一般会計予算では三六六、財政投融資におきましては五七八と増大しており、年間の平均伸び率は、一般会計で一二・五%、財政投融資におきまして、約一七%であります。予算の年間平均の伸び率は、アメリカでは過去十カ年間で四・九%、イギリスでは五・四%、高い部類に入るところのフランスで八・六%、西ドイツで九・六%にすぎないのであります。もちろん、予算伸び率からだけは、日本財政のインフレ的性格だとか、ひずみがどうであるかということは、一がいに言い切れないとは思いますけれども、問題は、日本では予算規模増加経済成長の刺激という役割りを果たしてきて、そのとどまるところを知らなかったという異常性であります。  西欧諸国では、予算の膨張率は、経済成長率見込みの範囲内できめられまして、名実ともに安定成長路線の確保が至上命令とされておるのであります。この公準を是とする限り、予算の膨張率及び財政計画の増加率が経済成長率見込みの範囲を出ている四十年度財政規模を見ると、はたして健全均衡財政方針が堅持されたと見てよいのかどうか即断できないと私どもは思うのであります。佐藤内閣は四十年度予算に見られる伸び率鈍化傾向を、四十一年度以降に向けてさらに堅持していくつもりなのかどうか、また財政投融資計画増加率についても、確固たる方針を定めているのかどうか、四十年以降の中期展望を明らかにせられたいと思います。
  12. 田中角榮

    田中国務大臣 四十年度成長率は一一%であります。これは三十九年度国民生産の実績見込みに対する四十年度国民生産見通しの増加率を一一%と押えておるわけです。ところが、一般会計伸び率一二・四%は対当初予算でありますから、この成長率の一一%と一般会計伸び率を比較する場合には、別な計算をしなければならぬわけであります。私はあまり数字議論をやるつもりはございませんが、あなたが数字的に御発言になっておりますから、それをオウム返しに申し上げれば、一一%と一二・四%を比較すべきではなく、三十九年の補正後の予算との比較をやらなければならぬわけであります。そうすると一二・四%は九・五%となります。九・五%と一一%といえば、確かにその範囲内である、健全均衡である、こういう、あなたの論法で言うとそういうことになりますが、そういうことだけを私はお答えするつもりはありません。それは将来先進国健全財政と同じような姿になることが望ましいのですが、その過程においては、敗戦国の日本が二十年間で先進国のような施策をだんだんやってきたわけであります。ですから、その中には生産に直結をしないという面があります。それは言うまでもなく、社会保障の面であり、低所得者対策であり、そういうものが当然予算の中には含まれておるわけでありまして、短い時間に急速に先進国の状態まで水準を引き上げなければならぬという財政の持つ固有のといいますか、特別な要請があるわけでありますから、私は必ずしも国民生産成長率財政だけを比べて、健全均衡だとか健全均衡でないとか、そういう議論はなすべきではない。いずれにしても、この予算景気刺激の要素を持つものかどうかということだと思います。私はそういう意味からいって、金融財政全般を通じて健全均衡の線を確保しておる、こういう見方であります。  もう一つは、理想的な姿を追うにきゅうきゅうとして、一ぺんに二四・幾らから一〇%に下げ得るものか、九%に下げ得るものか、こういうものもあります。ですから漸次理想的な方向に、こういうことでありますので、その過程論からいえば、まあ努力をした予算だ、こういうように御了解願えれば幸いだと思います。  それから四十一年度からの長期見通しということでありますが、経済成長率を中期経済計画では年率八・一%に見ておりますので、安定的な成長を続けていくわけであります。でありますから、いままでのように自然増収を過大に見積もることもできません。しかし、その中でなお税負担の軽減その他を考えていかなければなりませんので、中期経済計画を承認するとともに、長期的な財政の見通しというものも考えていかなければならぬ、こういう考えであります。
  13. 平岡忠次郎

    平岡委員 私のお尋ねせんとする要点は、成長率見込み以内に伸び率をとどめるという世界的常識の線に日本財政を逐次戻していこうとするのかどうかをお伺いすることでありました。その限りでは、あなたから肯定的な御返事をいただいたのです。実は私は非常に血気横溢の田中大蔵大臣は、新機軸を開くという方針であって、こういう先進国的路線に乗らないのではないか、むしろ積極的な理由を心中お考えになっておるのではないかということを聞きたかったのであります。  と申しますのは、アメリカのイエール大学の助教授のパトリックという人が、日本財政金融政策についてかなり高く評価をしておるわけです。日本以外の工業国では、財政引き締めで消費を抑制する。そして、金融緩和で投資を助長するのが通念であるけれども、日本の場合は、財政で膨張し、金融で引き締めをするという逆の形をとって、成功していると言っておるのであります。すなわち膨張的な財政政策は、企業長期的な強気の期待を与え、民間投資需要を活発化する。他面、引き締めによるところの金融政策は、日本の利子率を外国より高め、長・短期資本の流入を容易にし、国際収支の天井を高めると述べておるのであります。今後につきましても、日本経済の支配的な性格として強い総需要が続くと考えられるけれども、もし民間投資の需要が急激に落ちたとしても、それを補うような二つの潜在的な要因がある。すなわち、その一つは、民間住宅需要と政府の総需要を拡大するような財政政策であると述べておるわけであります。何か、この所説どおり、商伸び率予算規模を今後も持続していけるし、それが妥当なりという考え方に立っておるのではないかと私は憶測いたしましたので、あなたの見解をお聞きしたわけであります。  もし、積極的な意味であなたがそういうことをお考えになっているのなら、議論はそれからまた発展のしかたが違ってくるわけです。その点をお答え願いたいのであります。
  14. 田中角榮

    田中国務大臣 私は西欧諸国のような、その通りの、俗に言われる、オーソドックスな財政論だけでは、日本はやっていけないという感じは持っております。無制限に財政を膨張させていいという持論者ではございません。  いずれにしても、健全財政伸び率は少なくとも一〇%程度、というところでもって財政の規模は将来考えなければならないだろうという考えはありますが、ただ財政規模だけを画一、一律的に低めていくという考え方では解決できない内在する問題がたくさんある。というのは、皆さんの国会における審議でも、急激に自由化を行なったということに対して、いわゆる日本産業体制が国際的な視野から見た場合には、もっとレベルアップしなければいかぬ中小企業の問題がたくさんあります。これは世界に例のない中小企業という問題があります。また、農業国として日本が長いこと立ってきたのでありますが、南北問題等考える場合には、一次産品無制限に輸入できないというような特殊な事情があります。こういうものを満たしていかなければならぬわけであります。またおくれておる社会保障というような問題も急激に財政の中で育てていかなければならぬ。  こういう特殊なものがありますから、財政論的は画一、一律的な引き締めをやってそれでいいのだという考え方はどうしても持てないわけであります。でありますから、相反する二つのものをどこで調和させていくかというところが日本財政規模財政のむずかしさであります。でありますから、そういう事実を、現実を十分考えながら、その上になお財政の規模も景気を刺激しないようにという考え方を持つべきであるということでありまして、これから五年、十年のうちに先進国のようないろいろな施策を行ない、すべてのものがレベルアップされ、そういう事態において財政規模財政の持つウエートというものがノーマルなものに落ち着くようにということを考えていかなければいかぬのではないかと思います。
  15. 平岡忠次郎

    平岡委員 私は論理的に二者択一をあなたに聞きたかったわけであります。しかし、財政も生き物でありますから、あなたのようなコンバインしてやっていくんだということに常識的に落ち着くと思うのです。  ただ、今度の編成にあたりまして、きわめて強引な財源づくりが行なわれたということが気になっておりますので、あなた自身が、むしろいま言いましたパトリック的な、積極的なことをお考えになっているのではないかと一応憶測をいたしたわけであります。  さて、この予算編成にあたっての強引な財源づくりのことでありますが、一般会計で見ますると、財政法第六条の規定を改悪して、改正して、前年度剰余金を二分の一以上を国債償還に充てなければならない規定を、五分の一として、ここで五百数十億円を浮かせたということ。国債の自動償還に関する規定は、公債発行政策への踏み切りが必至となっている今日、いよいよ堅持しなければならないと思うのでありまするが、大蔵当局の考え方は、この点につきまして一体どういうふうにお考えになっておるのか、お伺いしたいのであります。
  16. 田中角榮

    田中国務大臣 無理な財源づくり、こういうことをお指摘になっておると思うのです。その無理な財源とは何かというと、産投繰り入れが四、五百億円減ったじゃないか、いわゆる利子補給制度をとっているじゃないかという問題。もう一つは、国債整理基金への繰り入れ二分の一を少なくしたじゃないか。こういう二つによってだと思うのでございます。  三十九年から四十年を展望するときに、財政要求は非常に多い。減税もしなければいかぬ。そういう場合に、国債を発行するのか、国債を発行すべしだ、こういう論議が窓の外に相当ありました。いままでは健全均衡論を金科玉条としておった経済同友会や経済団体連合会でも、公債おそるるに足らずという荒っぽい財源論があったのであります。が、そういうことはいたしませんでした。そのとき減税はやらないんだ、減税もやりました。減税だけではなく、せめてインベントリーは取りくずすのじゃないか、インベントリーは取りくずしませんでした。それだけでなく、減債基金制度によって繰り入れているものを取りくずすのではないか。それだけではありません。利子補給制度に踏み切る場合には、当然相当大きな原資を繰り入れておって、これを資金運用部に預けておって、その利益でまかなっておるようなものを今度戻すのではないか。いろいろ憶測しましたけれども、そういうことはやらなかったのでありす。やらないで、利子補給を少し拡大しよう。それから国債整理基金に繰り入れる二分の一——これは昔からあったんです。この制度は、御承知のとおり戦後つくられた制度でありまして、こういうものはやめろということがあったのですが、守れるだけ守ろう。これをこのまま守らなければいかぬといったら、超健全制度であります、たな上げ論でありますから、たな上げをすること自体がわれわれのためにプラスをもたらすものでない。あるものは適当に使う。あるものをみな使うというのではありません。そういうことでやったわけでありますので、これが健全均衡の原則に反するということはないんだというふうにお考えいただきたい。  特に、減債基金問題で簡単にひとつ申し上げてみたいと思いますのは、一般会計負担の国債の残高との割合が幾らになっておるかと言いますと、三十八年度日本においては〇・二一である。これを外国の公債負担状況から見ますと、外国の例は三十七年度のものでありますが、米国が二・五二、英国が三・九四、西独が〇・四二、フランスが一・〇三。いわゆる西独の〇・四二に対しても、三十八年度日本の率は〇・二一で、非常に低いという数字が明らかになっておるわけです。国債残高との関係もありまして、こういう制度を開いたわけであります。これはいままでよくがんばってきたなあとさえいわれておったものでありますから、十分御理解がいただけるものと思います。
  17. 平岡忠次郎

    平岡委員 国債整理基金特別会計に関して、別途財政法の一部を改正する法律案が予定されておるようでありますが、これはかなり固定的に五分の一にするという、そういう案であるのか、それとも四十年度に限って五分の一とし、将来はその剰余金の繰り入れについて、国債残高に応じて比率償還制をとるというようなことを考えているのかどうか、五分の一に固定的に割り切って処置をするお考えなのかどうか……。
  18. 田中角榮

    田中国務大臣 二年間に限って五分の一以上、こういうことに考えたわけでございます。じゃあ、三年目にはまた二分の一になるのか、こういうことに対しては、恒久的な問題は二年間のうちに十分皆さんの御意見も聞きながら検討してまいりたい、こういう考えであります。
  19. 平岡忠次郎

    平岡委員 ついでですからお伺いします。財政投融資の原資つくりにおきましても、これも相当無理といって悪ければ、努力したあとが顕著なんですね。結局編成の過程で大蔵省原案に比べまして、六百九十億円増した復活原資の多くは相当無理に稔出されておるんじゃないかと思うのです。すなわち、さきの通常国会審議未了となって、さらに臨時国会でも可決されなかったところの厚生年金改正法、いわゆる一万円年金法でございまするけれども、この厚生年金改正に八百億円が期待されているということがその一つであります。それから郵便貯金の増加期待がその二。第三に、これら政府資金の増加を上回った規模で、公募債借入金が増大しておるわけであります。すなわち、財政資金総額の増加率二〇・九%に対しまして、公募債借入金の増加率は二八・八%に達するのを見ても判然いたすわけであります。公募債借入金の増加は民間事業債の発行を妨げるという新しい波紋を投げかける問題ですが、いずれにいたしましても、相当無理な原資つくりだと私どもは考えておりますが、財政当局のあえてこの方途を選んだ積極的理由は何か。財源事業からしてやむを得なかったからというのではなしに、積極的理由があるのならお示し願いたい。
  20. 田中角榮

    田中国務大臣 無理な財源づくりをした、こういうことですが、無理だとは考えておりません。正常な状態においてこういう考え方でございます。郵便貯金などは、現在もうすでに想定される数字がそれよりも大きいだろうといわれておるだけをもっても、おわかりになると思います。  民間資金の活用という問題は、これは民間資金の一部、国民貯蓄の一部が財政投融資の原資になって、統一的といいますか、効率的に社会資本として投下をせられ、アンバランスの是正に資するんだ、こういえば、まあ合理的なものだという考えであります。これが一時行なわれたように、三〇%とか三五%とかいうようなものでもありませんし、まあ二〇・九%の程度で原資を求めた。しかも、一般会計よりも、財政投融資の原資は経常収入をもって経常支出をまかなうという、いわゆる前のもの、前年度の剰余金とか、そういうものに一切手をつけないで、いずれにしても、当該年度における財源伸びを範囲に財政投融資のワクをきめたわけでありますから、私は、四十年度財政投融資の原資は非常に苦しという御指摘は心配に過ぎるのではないか、もう少し見ていただくと、わかると思います。ただ五月実施、五月から実行するのだというような前提でもって八百億も原資を組んだことはあぶないのじゃないか、できなかったらどうする、こういうことですが、まあ、これは国会の良識はいままで慎重にやったのですから、もう五月をこえるようなことはないだろう、こういう良識をもとにしてはかったわけでございますから、良識でひとつお考えをいただきたいと思います。
  21. 平岡忠次郎

    平岡委員 厚生年金の案件につきまして、げたを預けられても困りますが、以上私はこの大蔵委員会の初の委員会におきまして、あなたの財政演説に関しまして、基本的と覚えるところの事柄につきまして所信をただしたわけであります。いずれ予算案あるいはこれに関係する財政投融資計画及び提案を予定されておりまするところの、本委員会に付託される各法律案につきまして、それぞれこまかい質疑をいたすことにいたしまして、きょうはこれをもちまして私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  22. 吉田重延

  23. 横山利秋

    横山委員 私は、きょうは税制について、並びにその行政の運用について、特に国税庁の方にも聞いてもらうのですが、多少問題がこまかい場合もあるけれども、こういうことも大蔵大臣はぜひ聞いておいてもらいたいという意味で、税金のことばかり大臣にお伺いするつもりであります。  まず最初に、今度の税制改正の答申もゆがめられておる。いま世間で何と言っているかといいますと、税制調査会の答申が満足に行なわれることはないという折り紙がついてしまった。だから調査会の諸君はもとより、主税局の人たちも、調査会の答申は答申、出る前から腹をきめている。非常によくないことだと私は思う。大臣自身も、おそらくは答申は答申、どんなものが出ようが答申は答申、おれがそれを適当にまた変えるんだという判断がもう頭にこびりついておるのではないかという気がするのであります。お役人の名前を言ってもいいのですが、言わないでおきましょう。主税局の中でも、国税庁の中でもですよ、今度の答申を、配当分離に関する大臣の措置、ずいぶんひどいことを言っています。私は田中さんという人は、りっぱな人で、近ごろ評判のいい大蔵大臣で、そしてなかなかきけ者であるという世間の額面どおり私も信じておるのですが、税制に関してだけは、私は税制の根本的な折り目をあまりお正しにならぬという感じがしてしかたがないのです。(「歴代中最低」と呼ぶ者あり)この答申について、どうしてそういうお考えをお持ちであろうか。私も答申が完ぺきなりという立場で言っているわけではありません。しかしながら、あなたはどうも答申は答申というものの考え方がちゃんとあって、そしてどうやろうとも、おれが適当に変えるという気持ちが大臣就任以来一貫しているような気がするのです。だから先ほども言いましたが、調査会の諸君はもとより、お役人も全部が答申は答申、政府案は政府案、だから答申を尊重するというものの考え方がない。あなたはじめ全部ない。だから私は、今度調査会の方々も出てもらって——去年もずいぶん、私は、大蔵委員じゃなかったので、よその場所でひどいことを言ったのでありますが、いいかげんにやめたらどうだ、ここまでことしは言おうと思っている。そんなことでおやめになったほうがいいですよと言おうと思っている。この答申と政府案についての具体的な問題よりも、所見をひとつ……。
  24. 田中角榮

    田中国務大臣 税制調査会の答申は、基本的に尊重をするという態度であります。尊重しておらぬなんということは、大蔵省自体全然考えておりません。今度のものも大いに尊重しておる。(「歴代中最低」と呼ぶ者あり)歴代大蔵大臣の中で私が一番尊重しておるという考えであります。  それから、税制というものは答申を求めるけれども、最終責任はだれかといえば内閣であります。これはもう憲法上明らかなことであります。国会に対して内閣は責任を負っているのでありますから、いずれにしても最終的には内閣の立場において行なうということが正しいことであります。税制調査会が諮問に対して答申をし、内閣がその国民に明らかにしておる政策を行なうために、それを一部変更するということはあり得ることであります。これは一切税制に対して、税制調査会の答申どおりのもので修正が許されないものであるならば、大蔵大臣や内閣の税制改正に対する権限というものは否定せられるのでありまして、そういう考えは行き過ぎた考えであります。これはいずれにしても政府がより高い立場で国会に対して責任を負うという憲法上のこの責務に対しては、十分理解をしていただきたい。これはあなた方が内閣を組織せられて、社会党の政策と全く違う答申が出た場合、一体それでいいのか。そういうことがあり得るはずがありません。これは政府の責任において国会審議を仰ぐということは正しいことであって、現在の制度が、諸制度がみな自由民主党の政策というような保守党政策によってつくられておるものを、あなた方が変えようというときに、あらゆる法律に基づいて審議会や調査会がある、この調査会の答申を曲げることができないとしたならば、政策は行なえないということになるのであります。こういうことに対してはまじめにお考えをいただきたい。私は明らかにしておきたいと思います。  それから四十年度税制改正につきましては、答申は大いに尊重した、こういうことであります。初め税制調査会の諸君が一体何を考えておるのだろう、こういうことを私がいろいろ聞いてみたのですが、先ほど申し上げたとおり四千五百億ぐらいしか税収はないだろう。その税収のうちまず初年度二〇%、九百億がめどである。九百億を八、二に分けても、まず一般減税——所得税法人税を中心にする減税はまあ八で七百億——七百億は確保できないかもしれぬ。大臣はどうも政策減税とフィフティ・フィフティというような気持ちを持っておるようだから、これはへたすると六百億になるかもしれぬ、こういうことを考えられたようであります。が、しかし、国会提出した予算をごらんになればおわかりになるとおり、所得税法人税を中心にして千二百四十一億にも及ぶ減税をやったのでありますから、これが税制調査会の答申を無視しておるとか、大臣が適当に変更したとか、こういうことをお考えになることは間違いだと思います。私は、少なくとも政治的にも過去三年間、私の可能な限り、税制調査会の答申を尊重したという考えであります。私は政治的にはもっともっと変更したかった場合もあるのです。あるのですが、まあ基本的には大いに守るべきだ、こういうことで守ってきたのでありまして、行政権の究極的な責任と税制調査会との調和というものは、可能な限り最大にはかってきた、こう考えます。
  25. 横山利秋

    横山委員 二つの理屈を申されましたが、第一の法律論といいますか、こういうことで私はただしておるのじゃない、法律論についてはあなたの言うとおり、大臣及び政府国会に責任を持つのだから、その点はあなたと同意見でございまして、そういうことを意味して聞いておるのではない、私がそういうことで聞いておるのでないことはあなたもおわかりになっておるはずである。もしも税制調査会が政治的判断が足らないから、政治的判断はおれがやるのだということであるならば、基本的にもう税制調査会の判断とわれわれが下す判断とは違うというのであれば、政治的判断をあえて調査会が下し得るような構成にしなければだめです。これは二番目のあなたの答弁にも関連をするのでありますが、税制調査会はこのくらいしか財源はないと思っておった、思っておったからそういう答申をしたとあなたはおっしゃる、けれどもあなたは別のポケットから銭を出した、もしも別のポケットから銭を出してもいいから答申は自由濶達にやれというなら、税制調査会の諸君は今度の減税規模だって決してそういうことはしない、答申の規模ということにはならない。それをあなたが別のポケットから出したことをもって税制調査会を云々することはいかがなものかと私は思う。私が聞いておるのは法規論や何かではなくして、少なくとも各界、各構成から選出をし、あなたが任命をした税制調査会の答申の骨格を去年及び今年においても変えているではないかということを言いたい。これはもし内容的な議論になるならば、私は法律案が出ましたときに別の議論にしたいと思うのですが、少なくともあなたに直接耳に聞いておいてもらいたいのは、お役所の人間が今度の政府案について異論を呈しておるという問題です。これは決してその人が悪いのでなくて、われわれも同意見なのですから、この最後の段階にあたって、この配当だとか利子だとかそういう問題について町のスズメがどういうことを言っておるかということについても、あなたには陳情される人ばかりだから、こういう問題についてむしろ旗を掲げてそれは反対だと言ってくる人はないのですから、町でどういうようなうわさを配当や利子の問題について言っておるということをも、あなたにきょうは特に聞いてもらいたいと思ったから言うのです。どうぞ、そういう点について、税制調査会もこれはかくかくの議論をやっておるはずなんですが、それをやらなかったわけではないのです。その点は、あなたもその席には出ていない、銀行屋とか証券会社や、そういうところの御意見を聞いて、最後の操作をなすったと私は思う。そういう点に私は苦情を申し上げるのです。
  26. 田中角榮

    田中国務大臣 ちょっと待ってください。そういうあなた方の考えとは違うのです、大蔵大臣考えは。日本経済をどうしなければならぬかと、こういう立場に立ってやっておるのであります。私は現在の税制そのものが、全くのもうこれ以上修正することのできない税制だとは考えておりません。あなた方は、いまの税制そのものを全くいいものだと考えておられるかもしれませんが、私は、ある過程における一つの案である、少なくともいまの所得税を中心とした直接税中心主義の税制から、新しい間接税を加味した税制に移らなければならぬ。現在の税制は御承知の上おりのアメリカ税制であります。こういうものが完全にいまの日本の状態に合っておるかどうか議論の多いところであります。そういう議論を全然考えないで、いまの税制はいいんだという前提で議論をされることは、私としては議論があるところであります。しかも、貯蓄増強やそれから資本市場育成ということが証券業者や銀行の陳情などを聞いてなされたという考えは間違いであります。いままでの財政税制考え方では税の不均衡があってはいかぬ。それから財政的に考える場合にも、国民の税金を使うのだから、効率投資でなければいかぬし、国民全体が理解できるような投資でなければならぬということは事実であります。しかし、それをあまりにも考えるために責任回避ということが行なわれておるのです。こういう状態であってはならないから、財政的に支出をして、いまのうちにてこ入れすれば、つぶれる会社もつぶれない。しかし、つぶれるかもしれぬからというようなことで、国民の税金を使うことは、もしそういうことをした場合、議論が多過ぎるからということで、もうつぶれてしまってどうにもならないものに幾らでも金を出す、そんなことは効率投資じゃありません。ほんとうに政治の責任としてものをつぶさないようにあらかじめ投資をすることが一番効率であります。人間が危篤になってからいかに高価な注射を打っても効力は非常に薄いのです。それよりも予防的に子供のうちから牛乳を飲ませなさいというじゃありませんか。日本経営がみんな石炭産業のようになったらどうしますか。しかもOECDに加盟して資本の自由化を要請されておるのです。いま二三%の自己資本比率が毎日毎日下がっておる。こういう状態でどうして一体国際的に太刀打ちができるのでありますか。分配だけ考えておって、分配の源泉であるどうすれば金がもうかるのかということをなぜお考えにならないのですか。私は、政治の責任として、現在少なくとも貯蓄増強というものと資本の蓄積日本の政策の中で最も重要なものだ。瞬時の停滞も許さない。そうして日本企業日本経済が国際競争に耐え得るようになってから初めて税の公平というのができるのだし、それでなくて、どうして一体税の公平ができますか。私はまじめにものを考えているのです。ですから、あなた方の議論はまず分配です。私のほうでは、物をつくらなければ分配ということはあり得ないのだ、こういうものの考えです。源泉を拡大しようというのにどうして一体御反対になるのですか。私は、少なくとも一部の諸君の陳情などによって源泉選択の制度をとったのじゃない。明らかにいたします。
  27. 横山利秋

    横山委員 私が質問もせぬものを、あなたはこうであろう、あなたの意見はこうだからけしからぬ、迷惑千万な話だ。少なくとも私が証券市場なりあるいはいろいろな問題についてどういう意見を持っておるかということも聞きもせずに、あなたはこうだろう、けしからぬ、そして金をもうけてから分配を考えるべきだ、いま分配をいうのはけしからぬということは、大臣きょうはいささか興奮の度が過ぎはしませんか。私よりもあなたのほうがよほど練れていると思うのだが、きょうの大臣はどうかしていると思う。私はよくこの委員会で言ったのですけれども、この問題を奥深くやるのはまた別の機会にしたいのですが、一言だけ言っておきますけれども、税金が安くなったから株を買おうとか、税金が安くなったから銀行に預金しようとか、そういう考えというのは庶民にありません。あなたがいまやろうとしているオーソドックスなこのやり方は、まさにそれじゃありませんか。そればかりじゃないという顔をしていますけれども、いま議論の材料になっている税制というものの土台はそれですよ。税金が安くなったからおれは株を買う、銀行の預金利子の税金が安くなったから預金しよう、こういう人種がどこにおりますか。もっとオーソドックスにおやりになるならおやりなさいよ。これによって税金の公平が犠牲になってもいいなんというばかなことは、私は受け取れないというのです。これは水かけ論になりますから、またいずれ機を改めて大いに対決したいと思っております。大臣が興奮されると、私ももりもりと元気がわいてきます。  次に、先ほどの大臣平岡委員の質疑応答を聞いておりまして、ちょっと聞いておきたいと思うのですが、私の勉強した範囲内においては中期経済計画はこういうものの考え方に立っていると思うのです。なお当分の問民間設備投資を主導力として相当高率な経済成長が続けられるという判断に立っていると私は思う。ところがそれと対照的にこういう考え方があるわけです。日本経済はこれまでのような民間設備投資を主導力として急速に発展する型から漸次消費、財政輸出需要への依存度を高めてゆるやかな成長をする型へ変わらざるを得ないであろうという考えがある。先ほど大臣の話をちょっと聞いておりますと、私は後者のような考え方がにじみ出ているような感じがするのです。もう一ぺん言います。漸次消費、財政輸出需要への依存度を高めてゆるやかな成長をする型へ変わらざるを得ないのではあるまいかという考え方が、もう一つこの中期経済計画の私の解釈するものの考え方と違った考え方があると私は思う。私はむしろこの後者、いま私の聞き取り方が悪かったかもしれぬけれども、大臣はどうもそうらしいというか、そういう方向のお考えではないかという感じがしました。これは詰めた議論ではないのでありますから、大体感じとしてどちらの方向をお考えになっておられるのか、参考のためにまず承っておきたいと思います。
  28. 田中角榮

    田中国務大臣 ちょっと御質問の要旨がはっきりいたしませんが、戦後の段階は三つに分けられるというふうに考えておるわけです。戦後大体二十年から二十八年一ぱいは、何もないときでありましたから、物をつくらなければいかぬ、また物をつくりさえすれば売れる、金も借りられたし、金を借りてモーターを動かせば物ができる、物ができれば売れる、売れれば非常に利潤が出るということで、量的拡大の時代であったと思います。二十九年から初めて日本が自立体制に入ったわけでありますから、量から質にだんだんと移らなければならないという段階であったと思います。それは大体二十九年から三十九年の三月、一つのめどをつければ、そういうことだと思います。そこで質的な状態に転換をもう少し急速にしなければならない状態でありましたが、これはやはりこう動いていくように、どうしても量的な拡大にウエートが置かれた。それから第三の段階、すなわち昨年の四月一日、IMF八条国へ移行して、国際経済の波動を直接浴びるのだ、またその質も国内的なものではなく、国際的な質に転換しなければならない、国際的な質ということは、これはもう三十億になんなんとする人類の英知が築いてきた国際的な質に日本の質を合わさなければならないというときでありますから、少なくとも昭和二十年から二十八、九年、二十八、九年から三十九年までというような高度の成長ということはできるものではありません。粗製乱造でもって物をつくればいいのだという場合は非常に成長度が高いわけでありますが、精密なものになればなるほど成長度というものは落ちていくわけでありますから、その意味からいっても安定的な成長ということになるわけでございます。同時に、非常に高い成長率を一部続けた場合にはアンバランスというものが非常に大きくなっております。このアンバランスを俗にひずみと言っておるわけであります。こういうものの平準化——いま平準化が行なわれているものは何かというと、労働賃金だけが平準化が行なわれておる。非常にきれいな姿で労働賃金だけは平準化が行なわれておりますが、日本産業全体から考えると、各産業分野の中でも、また地域的にも、非常に大きな格差が出ているわけでありますから、この格差はだんだんとなくなるような状態が続くと思います。でありますから、両方の面から考えて、国内的にもまた国際的な要請から見ても、日本経済は一時のように高い成長率をたどるのではなく、安定的な——平均して非常に安定的な推移をたどるであろう。しかもこの成長率が高いということを図解してみますと、こういう幅の中で、非常に格差があるのですが、成長率が低くなる、安定的な成長になる場合には、バンドの幅は非常に少なくなって、その中にみなあらゆる業種というものが入る、こういうことが望ましいことであり、また国際的にも国内的な要請からしても、そうならざるを得ない、こういうふうに見ておるわけであります。
  29. 横山利秋

    横山委員 明確にはお答えにならぬけれども、どうも私のお伺いする範囲においては、私の質問している民間設備投資を主導力とする急激な発展が押えられて、政府の需要とかあるいは民間消費とか輸出需要とか、そういうものがある程度変わっていく。そしてベルトが薄くなって、その中で調整がされ、ゆるやかな発展をするというふうに、私は受け取れるわけです。もしもそうだとするならば、税制改正のほうはどうあるべきかということを私は別に考えるわけです。そうだとするならば、この景気変動が重視をされないで、公共目的のための資源配分という答申の中の一つの問題、もう一つの所得再配分という問題、この二つに重心が置かれていかなければいけないのじゃないか。その二つに重心が置かれるならば、一般的減税に中心が置かれなくてはならないのではないか。あなたの悪口を言ってさっきおこられたけれども、あなたの税制改正はやはり政策的減税というものが常にあなたの頭にある。一般的な公平減税というのは調査会にまかしてもいい。けれども、政策減税は常におれの領分だという感じがあるというふうに私は考えられてならない。こういう政策的減税調査会の分野ではないとか、そういうことはやっこさんたちにはわからないのだという判断は間違っていると私は思う。それが一つ。もう一つは、今後の経済の体制というものがそういう状況であるとするならば、一般減税が中心でなければあなたの政策目的は達せられないのではないか、こう考えるが、いかがですか。
  30. 田中角榮

    田中国務大臣 一般減税を必要とするということは、自民党も社会党も同じです。ここは社会党も自民党も違わないんです。ですが、それをやるためにはどうするかということになると違うんです。今度の減税が悪い悪いと言う人があるかもしれませんが、悪くないんですよ。歴代の自民党の内閣で、企業減税、政策減税から財源をとって、これを一般減税に回したということがありますか。こういういいところはさっぱり見のがしておられて、一部のものだけを取り上げられることはこれはどうもはなはだ……。しかも同時に、政策減税の面になると、これは社会党と自民党の差であります。少なくとも生産性が上がらないところには、分配には限界があるのであります。あなた方はやはり、生産性をまず向上してその後に長期的に分配をはかろうという議論はなさらない、現在がまず先だ、こういうことであります。だから私はカキの種と握りめし論をやったのです。これが一番国民がわかりやすいと思うのです。もちろんいま腹が減っているからめしを食うこともさることながら、やはりカキの種をまいて子孫のために美田を買う、そういう政策こそやらるべきなんです。そういうところが社会党と自民党の違いであります。でありますが、政策的に考えると、私は政策減税でもっていまの税制調査会の答申が必ずしも最上のものだとは考えておりません。政府が政策をやる場合、すべての政策を前進しなければならないけれども、重点的に行なうという場合には、その重点的な分野減税政策を指向するということは、これは当然あり得ることであります。そういうことによって初めて、いままであなた方に指摘をされておる国内不均衡是正したり、国際競争力をつけたり、すべての産業を少なくとも国際競争力にたえ得る水準まで上げなければいかぬ。民族の運命は分配にかかっておるのではなくて、国際競争場裏において外貨をあがなう、外貨をかせげるということに、われわれの運命がかかっておるということを考えますと、政策減税というものにも重点が指向するわけであります。ですから、政策減税というものは、あなた方はいかぬのだという考えでありますが、私はそう考えておらないのです。しかも現在の税制は、先ほど申し上げましたが、アメリカ式税制であります。世界一の金持ちであるアメリカの税制よりも、日本と同じ運命にあって、同じ二十年間で日本よりもはるかによくなったと皆さんが言う——私は必ずしもそう思いませんが、ドイツの税制をまねすべきなんです。ドイツのようにもっとやりなさいと言いながら、税制だけはアメリカ式でやれ、こう言ったって、うまくいくわけがない。ですから、ドイツが一体どういう税制をとったか。資本蓄積のためにどうしたか。借金政策をするな、こういうことをしょっちゅう言われますが、借金政策をしなければ一体どうするのでありますか。国民から貯蓄をしてもらわなければならない。国民から資本を蓄積してもらわなければならないのです。オーバーローンを解消しろ、こう言う。オーバーローンを解消するにはどうするのですか。銀行借り入れにかわる国民的資本の蓄積にまたなければならぬことは論をまたないじゃありませんか。そういうことは全部おわかりになっておるんだが、立場が違うからしようがないから、私は何も言いませんが、こんなものは小学生の議論なんです。そういうことによってやったのですから……。(横山委員委員長大臣の時間を制限してください。」と呼ぶ)質問が非常に複雑多岐にわたりますから、これはやはり同じ時間私は答弁させてもらわなければいかぬ。そうすれば、一般的な減税だけであって政策減税を加味してはならぬというような理論は生ずるはずはないのであります。
  31. 横山利秋

    横山委員 あなたは銭を使う大臣であると同時に、銭をもらう大臣です。あなたは銭を使うことは有能であると思うけれども、銭を取るほうはへただと私は思う。そこで銭を取るほう、つまり税務署の職員の立場、国税庁の立場に立って、おもむろに一ぺんあなたも考えてみる必要がある。佐藤さんではないけれども、膏血をしぼる立場に立って考えてごらんなさい。税務署員が納税者のところに行って振り回すのは、これは何といっても法律である。納税者が常に言うことは、公平にやってくれるならば文句を言わぬ、こういうことです。納税者は、法律上というよりも、むしろ実質上の公平論を言っている。法律はそうかもしれぬ、けれども隣はどうだ、お向かいの会社はどうだ、決して公平じゃないじゃないかと言われたときに、税務職員が、法律できまっていますからしかたがありませんというものの力は弱い。人間対人間で迫られたときに弱い。これが税務職員の偽らざる感懐です。あなたはそれを、あくまで大臣がいまここで私の聞きもせぬことを言っているように、納税者に対して税務職員が言うと思いますか、そんなこと言えないです。法律できまっているからしかたがありませんよと言うだけです。私は法律の執行者ですからと言うだけです。ところが、そういう説得力というものは非常に弱い。あなたも法律どおり、あそこも法律どおりと言うよりも、少なくとも公平に私はやっていますから——その公平というものは実質的な公平を考える。それに一番説得力がある。その点が大臣は平素税務職員の心境について洞察が足りない。納税者の心理について洞察が足りない。あなたの言う政策減税がどんなに利点があり、どんなに私は譲るところがあったにしても、納税者と税を徴収する税務職員の立場があまりにも薄過ぎる。私の言いたいのはここです。  そこで今度は、税務行政についてあなたに聞いてもらいたい。私が持ってまいりましたのは「税務通信」という、よく出る新聞でありますが、木村さんの年頭所感が出ている。タイトルは、おそらく新聞記者がかってにつけたと思うのですが、「公平を保証する税務行政」というタイトル。木村さんがつけたかだれがつけた知らぬけれども、まさにずばりです、これは。一番納税者に実感を与えているタイトル。しかも木村さんはその中でいろんなことを言っておるが、まあいいことばかりです。特に私が積年、原さん当時から主張しておることを毎年掲げられておることに、木村さんに敬意を表する。読んでみます。「さらに納税者の利益となる事項については進んでお知らせする心構えをもって、真に納税者の立場に立って公正な課税を行なうように努めております。」と書いてある。これは私が積年言ったことです。私が最初それを切り出したときに、あまり親切に教え過ぎるとひもがついて問題があるということがあるのかもしれないけれども、納税者が知らぬものを、利益になるように進んで教えてもらいたいと歴年強く要望して、それがいれられていることに私は敬意を表する。そういう税務行政の第一線に立っておる税務職員及び納税者が、今回の税制改正については不満ですという。それを強くあなたに申し上げておきたい。その気持ちを十分にくまなければ税務行政はう左くいかないということをまず強く申し上げておきます。  そこで、その次は感心した文章の実態に移ります。文章は感心するけれども、実態はあまり感心しない。ということは、こういうことが多く行なわれていないということを私は苦言を呈します。  私は、先般来二、三の税務についての話を税理士からも聞きましたし、納税者側からも聞きました。こういう事例に当たりました。それは、一、二の例を出しますが、修正申告をしたときに、徴収猶予の申告をしなければ徴収猶予の恩典が受けられないと法律に書いてある。修正申告をしたときに、同時に徴収猶予の申請をしなければ徴収猶予の特典はないという立場に法律は立っている。ところが修正申告するのは法人税課であり、あるいは所得税課です。その課員が徴収部や徴収課の問題について積極的に知らせない。だから、ある納税者がこれを知らなかったために非常な損害を受けた。そんなことを教えてもらえばよかったんだ。すぐやるんだった。ところが、法律に書いてあるからあとからいってもだめだというのが名古屋のこの間の事例です。  次の例は、新築家屋の登録の際に、この調書を申告しなければ新築家屋の特例が受けられないと書いてある。これもうっかりしておった。あとになってかけつけたら、あのときに調書を出してもらわなかったからだめですと、こう言う。  その次の例は、昨年、大蔵大臣とそれから国税庁長官がずいぶん宣伝をなさった最近の経済事情のもとにおける納税の緩和措置について。新聞にでかっと出ました。中小企業は不渡り倒産だからひとつこういう緩和措置をしてやると大々的な宣伝でした。これは実効があがっていますか。私はいま統計を言う時間はありませんけれども、何らの実効もあがっていない。こういうことは、納税者に利益になることはひとつやってやろうと指導をなさっているけれども、実効があがってないのです。私が累次本委員会で言っているように、税務職員の気持ちをまだ把握していないのではないか。税務職員が腹の中で納税者を説得するだけの気持ちが、一つには私が言いました税制の公平化というものが薄れかかっているのではないか、一つには税務職員の自分たちの生活問題がある。したがって、私はこの「公平を保証する税務行政」といううたい文句に大臣も耳をかしてもらいたいし、この中にある利益になるようなことはやってやれと言ってあるけれども実行はされてない。もっと税務行政という面を大臣考えてやってもらわなければ困るのではないか。これは長官についても同様です。御意見を伺いたい。
  32. 田中角榮

    田中国務大臣 税務行政は非常にむずかしい、特に徴税行政については遺憾のないように特段の指示をいたしておるわけであります。しかしその中に長い歴史、特に戦後納税法定主義、法規裁量というものがあまり強調されたために、どうも税務署は法律どおりにやればいいのだ、また法律以外に何事も考えを配慮してはならない、どうもこう考えやすいのであります。それと同時に、税務署は税務相談とか事前にいろいろなことを、法律はこうなっているのですよ、こういう手続をすれば戻しがありますよというような、そういう相談行政よりももっと徴税ということであります。あまり重点が施行されるといいますか、どうも税務署の行政というものは国民から徴収するということに徹し過ぎておったようであります。私は大蔵省へ参りましてから、国税局長会議を中心にしまして税務署そのものの考え方や業務の内容を少し変えなければいかぬ。その中には納税相談、税務相談、また申告があれば還付をするがなければそのままだというような状態をなくするように適法にものを処理するという考えを貫くと同時に、納税者側に立って十分ひとつ配慮をしてもらうようにということを、私自身も過去三年に近く相当強く指導いたしておるわけであります。また事前に納税者にいろいろ指導したり、相談にあずかったりすることが何かいやな目で見られるというようないままでのあり方そのものを直さなければならないのだということで、特に新しい立場に立った徴税機構ということに重点を置きたいという考え方を持っているのであります。ただ税務署の第一線にいる職員、私たちの親戚とか私たちの知人たちも第一線におりますが、大臣、なかなかいいことを言ってくれるけれども、どうも税務署の長い歴史といいますか、長い伝統といいますか、納税者と話をしたりいろいろなことをしておると何か飲み食いがついておらぬか、何か要らないことをしているのではないか、脱税指導をしているのではないか、こういうような目で見られるのではないかということでどうもうまくない。だからやはり税務相談とか、納税相談とか、こういうものを税務署の機構の中にきちんとして、そういう制度上のものを確立してもらわないとなかなか思うようにいかない。私も徴税の第一線の諸君の言うことも聞いておりますし、私たち自身が納税者でありますから、そういう意味でも納税者の利便をはかるということに対しては新しい施策としてもっと推進をしなければならないだろうと考えております。
  33. 横山利秋

    横山委員 主税局長ないし長官に端的に伺いますが、いまの法律の中で、納税者が知らなかった、これは前提がつきますが、善意である知らなかったために、同時に調書を出さなければだめになるという損失、これはあまりにも法律ではっきりしているのです。私も法律を見ましたけれども、残念ながらはっきりしている。こういう法律は将来善意の特別の事情がある場合というふうに付帯的条件を書かれるつもりはないか、これは主税局長。  長官に対しては、いまはっきりしているけれども、あまりにも善意の錯誤があった場合においては考える余地はないのか、これはあなたが知らしてやれと言ったのを知らせなかったという責任も含んで聞いているのです。両者の御意見を伺いたい。
  34. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のように、現在所得税あるいは法人税、そのほかの税法の中に、一定の申告を要件とする、あるいは記載を要件とするという制度がいろいろございます。これらにつきまして、納税者が善意で知らなかったために申告しなかった、あるいは申請書を出さなかった、あるいは記載を忘れておった、こういった場合に、それを全然適用しないという点について考え直す必要がないかという御質問でございます。  これらの点につきましては、現在所得税法及び法人税法につきましては、税法整備の問題といたしまして、どの程度緩和するのがいいかどうか、目下いろいろ検討をいたしております。中には申告書に記載しなくても当然認めるべき客観的事実があれば認めるべきものもありましょうし、中には期限内でなくてもいいからとにかく申告書を出してもらわないといけないというふうになる制度もありましょう。それから非常な特典である場合には、やはり一定の期限内に書類を出していただかないと認めることのできないというような性質のものもございましょう。それらの分類に従いまして、現在あります制度をどういうふうに持っていくかということをいろいろ検討いたしておるのでございます。いずれそれらの点につきましては御審議をお願いすることになるかと存じます。
  35. 木村秀弘

    木村政府委員 ただいま横山委員が御質問になりましたように、私たちはやはり何としても申告納税制度である以上は納税者の協力がなくてはこの制度は確立されないのでございまして、そういう意味ではいかにして協力を得るか、協力を得るためにはやはり十分説明をし、納得をしていただくということが基本であると思います。  そこで、ただいまの御質問でございますけれども、私たちはかねがね納税者の有利になることであって、それをたまたま法律を知らなかったがために、また専門家に相談をしなかったがために、その特典が受けられないというようなことがないように十分注意をするようにということを申し伝えておるのであります。しかしながら、御承知のように全国非常に数の多い事務を処理しております関係と、またやはり五万人職員がおりまして、必ずしもその末端までいまのような気持ちが行き届いておるかどうか、あるいはそのことを相手方に告げるだけの注意力に遺憾がなかったかどうか、そういう点についてはやはり完全は保しがたいと思います。そこで、できるだけ事前にお教えをするということが原則でございますけれども、事後にその指導に不十分な点があったがために特典を受けられなかったという場合には、これはやはり法律上はっきり拘束されておる場合にはもうやむを得ない。しかしながら、多少でも裁量の余地があるような場合には、これはできるだけ訂正をいたしまして、納税者の有利になるように処置をとらなければならぬと思っております。  それからもう一点、先ほど大臣に対する御質問の中にございました、昨年出しました納税の猶予、徴収の猶予についての通達はあまり実効がないじゃないかというお話でございますが、十二月末現在で納税の猶予、徴収の猶予を認められております者が全国で大体五万人ぐらいだと思います。金額にいたしまして大体百八十億円ぐらいになるかと思います。そのうち金額にいたしまして、約一割程度の者がこの通達による特別の措置で猶予が認められておる。私はこの数字は必ずしも高いとは申しません。しかしながら、これはいろいろ事情があるのでございまして、私もこの措置があまり利用されておらないのではないかという疑問を持っていろいろ原因を調べてみますと、やはり最近金融機関から貸し出しを受ける場合に、金融機関が納税証明書を要求する、あるいは国または地方公共団体が、入札をする場合にも納税証明書を要求する、そういう関係で少しぐらいの猶予を頼むよりもむしろやめたほうがいいという気分が一方にあるようでございます。また税務署の側といたしましても、納税の猶予をする限りにおいては納付の能力というものを認定をしなくてはなりませんので、その際帳簿が不備であるとか、あるいは認定をいたすための調査を受けるぐらいならばこういう措置の恩恵を受けたくないというような気分もあるようでございます。いずれにいたしましても、この措置をできるだけ一般の方々に周知をしてもらって、そして無理のない納税ができるように、私たちとしてはパンフレットなんかも作成いたしまして、各方面にこういうパンフレット「税金を納めにくいときは」「延納と納税猶予の手引き」というようなものを配りまして、できるだけ皆さんに周知をしていただくように努力はしておりますけれども、まだそれほど御指摘のように十分な実効があがっておるということは私どもここで確言するわけにはまいらないかと存じます。
  36. 横山利秋

    横山委員 大臣がたくさんお話しなさるので、予定の時間を過ぎてしまってまことに残念ですけれども、簡潔にひとつ伺いたいのですが、先ほど大臣税制の面できらいなアメリカ、税制の面で好きな西ドイツと言われたが、両方の国がやっておることを言いますからひとつ検討してほしいのです。それは納税裁判所です。私も長いこと同僚諸君とともに大蔵委員をやっておるのですが、協議団の改組ということを盛んに言い続けてきたのです。大臣、この協議団御存じでございますね。国税局内に置かれてある協議団は、局長が一ぺん某会社は百万円だ、判こを押す。そうすると文句が出てくる。文句が出てきて協議団へ行く。協議団できめたことがまた局長のところに来る。局長は自分で一ぺん百万円だと言いながら、自分で自分のやったことを直さなければならぬのです。ここに根本的、論理的矛盾があるということが第一。第二番目には、最近、あれ以来ずいぶん新陳代謝をやってもらったけれども、人物として温厚な人をということのためにどうしても年配者が行く。そして新進気鋭の税務職員は直税のほうへ行きたがるというわけで、協議団に希望者がわりあいに少ないわけです。論理的にも矛盾があり構成町にも問題がある。だから租税裁判所をつくりなさいと私たちは言っておるわけです。この点きょう突然で、あなたも社会党の言うことだからいかぬと言っておけばいいだろうと言わないで、あなたの好きな西ドイツでもやっておるのです、きらいなアメリカでもやっておるのです。そして租税裁判所の構成というものを私もずっと調べてみたか、なかなかうまくいっておる。ですから、査定した人と裁判をやる人が同一人で、査定した人がそれを直すということは自分のあやまちを自分で剔抉するということなんで、論理的に非常な矛盾がある。したがって、この際租税裁判所構想を検討するつもりはないか、あなたの好きな西ドイツでやっておることなんだが、どうです。
  37. 田中角榮

    田中国務大臣 非常に建設的な御発言でございました。非常に興味深く感じております。私も個人的な考えでは租税裁判所、労働裁判所、こういうものをつくったほうがいいという感じであります。しかし、大蔵大臣として考えておりますとなかなかむずかしい、というのは現行の司法制度との問題であります。私は、家庭裁判所というものができたのですから、そういう制度からいうと、この司法制度も戦前と戦後のものとの調和がようやくとれて、今日に至っておるわけであります。戦後のいろいろな組織もその後二十年間で消化をされておるということですから、家庭裁判所ができておるということであれば労働裁判所とか、それから租税裁判所の制度を持ってもいいじゃないか。特に申告納税制度でありますから、そして非常に専門的な事項であって、現在の司法制度の中でもって、これを全部片づけていくということになると、長引きますし、非常に問題もあるので、そういう専門的な裁判官を置くということはいいことである。しかも公認会計士とか税理士の問題ともからみ合わせて、ちょうど官選弁護人がおるように、専門的なそういう職能の機関を置いてもいいという考えで私も研究したこともあります。そうでないと、戦後のこういう日本人になじまなかったような、占領軍のメモケースのもの等よいものもありますし、なかなかなじまないものもある。そういうものを二十年間で消化してきたのですから、これは結論をもう少しうまくするには、何とかそういう機関が必要だということを真剣に検討したこともあります。自民党の所属代議士であっても、その中で研究したのです。研究したのですが、これから先のお話は政務次官の鍛冶さんのほうの専門分野でありまして、いまの司法制度の中でどう調和をするかという問題があるわけであります。まあしかしこういう問題は議論がありますが、だめでないということであるなら、前向きでやはり検討してみるということが必要だと思います。答弁書にはだめですと書いてあるのですが、私の個人的な考え方もつけ加えて申し上げました。
  38. 横山利秋

    横山委員 幸いにも鍛冶さんは法務委員会でベテランで、たいへんたんのうの士でありますから、ぜひひとつ鍛冶さんの御検討も含めてお願いしたい。  それからもう一つ、大臣に提案をしたいわけですが、納税の緩和措置は不十分きわるま、徹底もしてないし、条件も苛酷であって、適用があまり十分でないということを申し上げたのですが、最近手形の不渡りが多い。あなたとこの間テレビでやったときにも、あなたは融通手形その他について触れて、何とかしなければならぬと言っておられたが、税制面でこれを一ぺんとらえてもらいたい。手形が不渡りになる、なった場合には債権を放棄しなければその期に損金で落ちないわけです。手形が不渡りになると、何とか回収しようと思うと、その期はそれで利益になるわけですね。そうすると、その次の年ようやく取って二割か三割です。その間実際はその実害があるのだけれども、計上ができぬと思うのです。私の提案は、少なくとも不渡りになった手形はそのとき損金で措置させろ、将来それが決着がついたら、それを利益として扱え、おわかりでしょうな。きわめて常識的な考えです。これは多少技術的な問題もあろうかと思う。どうして念査するのだ、これをいま損金にしてしまったら将来ごまかしゃせぬかということくらいは、技術的に私は解決ができると信じている。これだけ不渡りがたくさん出るのですから、その期にこれを損金として落とせない、落とすためには債権放棄を自分が通告しなければいかぬ、こういう状況はあまりにも苛酷であると考えるが、大臣の常識的な御答弁を伺いたい。
  39. 田中角榮

    田中国務大臣 その問題、私も十分承知をいたしております。この問題は、技術的には非常にむずかしい問題があるようでありますが、私もあなたのような考え方です。これは損金処分にして、取れた場合にはその分だけを雑収入であげればいい。これは、貸借対照表や損益計算書の様式を変えて、そういうかつて損金処分にしたような不渡り手形に類するもの、そういうものは絶えずバランスの上には数字として計上していく、そうして決算の数字からは落とす、こういう制度をとればやれるのじゃないかということを、私自身考えております。これは中小企業等に非常に大きな問題があって、われわれ代議士のところにくる——お互い代議士ですから、代議士のところにくるものは大体こういうものであります。これは現実問題として、そのときは利益に計上しておっても、あとから落ちれば落ちるじゃないかと言われるけれども、税金を払わなければならないのですから、そういう問題に対して乱に流れないように、現実的な事実を把握しながら、より合理的な処置はどうすればよいか、これは技術的にも事務的にも十分検討すべき問題であります。こういう問題、ひとつ税制調査会の諸君にでも聞いてみようか、この程度の問題だと思います。
  40. 横山利秋

    横山委員 税制調査会に聞かずにひとつ大臣のところでぜひ早急に判断していただきたいと思います。  時間がなくなったというお話ですから、たくさんあるのですがしかたがないから、最後にもう一つだけ大臣に再検討をお願いしたいのですが、税理士法の問題です。参議院で継続審議になっている、まあいまや引きもならず進みもならず、両方ともそういう立場だと思います。これはまことに私は残念なことだと思う。どうしてもこの税理士法を政府が強行採決をしなければならぬものであろうかどうか。もう一ぺん大臣の手元でお考え願ったらどうであろう。税理士諸君の言い分も、私どもとしては非常に傾聴に値するところがあると思う。いままでのようなこの角度であなたのほうが中央突破をされるということのないように、くれぐれも私は要望したいと同時に、もう一ぺんあらためて税理士というものはいかにあるべきかということを、昨年の本院における論争、参議院における論争も否めて根本的にお考え直しをなさるべき政治的判断が必要ではないか。端的な言い方でありますが、御意見を伺いたい。
  41. 田中角榮

    田中国務大臣 税理士法は、私はある意味の修正は、あってもいいと思います。国税庁長官が持つ権限を大臣に移せというような、御審議過程においていろいろな問題がございましたが、こういうものがより合理的になることはいいと思いますが、税理士法の改正そのものは、ひとつ何とかして成立をせしめたい。強行する意思はありません、こういう制度法でありますから強行してまでということは考えておりませんが、すなおな気持ちでよりいい制度をつくるということには御協力いただきたいと思います。これは私しっぺ返しで言うわけではありませんが、これも税制調査会の答申に基づいてやっているわけであります。こういうことも十分ひとつお考えになられて、私どもも尊重しようというのでございますから、ひとつどうぞ御尊重のほどを切にお願いいたします。
  42. 横山利秋

    横山委員 私の質問はこれで終わります。
  43. 吉田重延

    吉田委員長 只松祐治君。
  44. 只松祐治

    ○只松委員 本国会初めての委員会でございますので、多少多岐にわたりますが、問題点だけお尋ねしておきたいと思います。  まず最初に、大蔵省は現在予算とそれから収入の面と両方把握しておるわけでございます。いわばいまの国家権力の中で最高絶大の力を持っておる、こう言っても過言ではないかと思うのでございます。しかし予算委員会のほうはそういうことで非常なウエートが置かれておりますが、なかなか大蔵委員会のほうはそういう大蔵省の管轄事項にかかわらず必ずしもそれほどのものが、私は一年間の大蔵委員会のこの審議を通じて重んじられておらない、こういうふうに感ずるわけでございますが、そういうこともあってか、きょうは、予算委員会に先立って大蔵大臣の出席が行なわれて本委員会の開催、こういうふうになったように聞いておりますが、今後もぜひそういうふうにしてもらいたい、こういうふうに思います。  そういう冒頭のお願いとともに、現在そういう関係で大蔵省の関係機関は三公社、八公庫、二銀行、その他いろいろな諸機関を加えまして百にのぼる、こういうことがいわれておるわけでございますが、こまかく全部までとは申しませんが、一体おもなものが幾つあるか、そういうものを一ぺん整理して、本委員会へ資料としてひとつ御提出をお願いいたしたい。ここで一々申していただくのはあれですから、ひとつお願いをしたいと思いますが、委員長、よろしゅうございますか。
  45. 吉田重延

    吉田委員長 ただいま只松祐治君の御要求に対しては、追って理事会で御相談の上善処いたします。
  46. 只松祐治

    ○只松委員 ぜひひとつお願いをいたしたいと思います。  それから、予算がすでに提示されたわけでございますが、予算の編成、執行にあたっていろいろなことが言われております。たとえば臨時行政調査会のこの意見書の中にも、具体的にいろいろな意見が述べられております。そういう中で、いわゆる単に予算のぶんどりがいま盛んに行なわれておるわけでございます。しかし、ぶんどったあとは、ほとんど責任を持たないといいますか、一昨日もわが党の代表者が本会議で決算問題について質疑をいたしましたけれども、こういう問題がたくさんありましたように、予算の執行について大蔵省はほとんど監視をしておらない。単に執行だけでなくして、いわゆる決算予算と申しますか、決算をもっと重要視すべきである、こういう意見もこの臨調の意見書の中に述べられておるわけでございますが、そういうことを望みたいわけでございます。そういう御意思があるかどうか、お尋ねしたいと思います。俗にいう決算予算と申しますか、決算の面から予算を見て、そしてぶんどりのときだけではなくて、もっと執行なり結果から見て、この予算がほんとうに生かされておったかどうか。これはあとでお尋ねする税金の問題とも関連してくるわけでございますが、そういう予算の執行をお願いしたい、こういうことであります。
  47. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘のとおり、予算編成に対しては非常に活況を呈しますが、予算執行というものに対してはまかせきりだ、こういうことも確かに一面あります。内部的には、各省の予算執行に対しても大蔵省も十分連絡をとりながら、また新しいケースのものに対しては事前に会計検査院と協議をしたり、一時よりも非常に執行に対しては慎重になっておるということは言い得るわけであります。しかし、非常に大きな予算を執行するわけでありますから、財政金融との一体化というような面から考えますと、やはり景気の状態、民間資金動き、こういうものをただ統計数字によってはい民間出資というように発表するだけではなく、もっと予算の執行に対しては、年度間を通じまして適切な調整というものが必要だということは、私が前々から申しておるわけであります。特に決算というものが非常におそくなって、しかも会計検査院が決算に対しては違法性だけを指摘しておるというような制度でありますので、予算の執行、決算というようなものに対しては、より合理的に考えなければいかぬと私も与えております。決算委員会等で指摘せられたようなものにつきましては、予算編成の前に各省庁にも十分第一線まで徹底をするようにいたしておりまして、いやしくも予算執行に過誤をおかさないように十分な配慮をいたしております。ここでただ申し上げたいのは、大蔵省的に考えますと、私は、大蔵省の財務局等でもって予算の執行状況とか、そういうものに対してもっとこまかくやるべきだということも考えてみたのですが、そんなことをすれば大蔵省だけでほかの省は要らぬじゃないか、もう予算は一括各省にまかせい、こういう議論と全くぶつかるわけであります。ですから、予算の執行の適正化ということでもう少し大蔵省がやりたい、こう言いますと、ほかの省とのぶつかり合いがある。この調整をどうするか、非常にむずかしい問題であります。会計検査院と大蔵省、また会計検査院と各省、むずかしい問題がありますが、予算の執行に対しては遺憾なきを期するような組織も必要であろう、こう考えます。
  48. 只松祐治

    ○只松委員 会計法の四十六条などによりましても、大蔵省は当然に予算を監査することができる、こういうことが明記してあります。いま大臣のほうからもお答えがありましたように、そういうことであまり干渉すると各省からの反撃があるということでございますけれども、国会の場合でも、野党の責務として、予算の執行をもっと監視しろという行政法上の学説がございます。ところが、国会ではこういうものを論議し、あるいは議決するだけで、あとは行政府に全部まかせっぱなし、その行政府も、各省に分けられてしまうとかって気ままに使われる、こういうことでございまして、実際丘予算の執行について、昨日総理が膏血ということばを使われましたように、国民の非常に大切な税金が使われっぱなしになっておる。あとでお聞きいたしますが、契約等の問題に関しても、そういうことが非常にずさんに行なわれておるわけでございます。大蔵省でそれができないとするならば、もっとこの予算の執行の面について別個に何か考えられる余地はないか、こういうことをお尋ねしたいと思います。
  49. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知財政法の四十六条でできることになっておりますが、先ほど申し上げましたように、各省庁に対して大蔵省の権限が強過ぎるとか、こういう問題も起こってくるわけでございます。特に占領軍の治下にあったころは、予算の執行に対しては四半期別に分けまして、第一・四半期の執行状況を見て第二・四半期に移る、また第三・四半期に移る、そういう区分をして四期に分けてやっておったわけでありますが、その後はこういうことを廃止して、各省の独自性というものをできるだけ認めていこうという制度になったわけでございます。予算が非常に大きくなり、非常に多岐にわたっておりますので、これが予算の適正執行という面に対しては、もっと各省庁の出納責任者の権限を強くするとか、各省庁でも調査とか監理とか監査とかをやっております。国鉄などに対してもみずからを監査する委員会や組織もありますが、まだまだ国会に対して批難を指摘せられるものもたくさんありますので、こういうものがないように、予算の執行には万全を期してまいりたいと思います。
  50. 只松祐治

    ○只松委員 たとえば本年度の国の契約高というのでも一兆数千億にのぼる、こういうふうにいわれております。この契約には非常に大口なものから小さいものまでいろいろあるわけでございますが、この契約が、各省あるいは庁、そういうところでばらばらに行なわれておるわけでございます。非常に小さい例をとりますと、紙一連を購入するにも、たとえば大蔵省と農林省との購入の価格が同じであるかどうかということに至っては、これは違うわけであります。これは国民からすれば安いほうがいいにきまっている。また一方、高いものを買ってくるのはむだづかいをしているということになるわけであります。こういうことは会計検査院からの違法行為としての指摘はないわけでありますけれども、しかし国民の目から見れば、これは確かにむだづかいになるわけであります。こういう非常に小さい例から始まりまして大きな土建等の入札等に至るまで、この単価というものは必ずしも一定ではないわけであります。したがいまして、こういう面から全部調査、査察を行なうならば、もっと国の予算の組み方、執行のしかたというものにいろいろな面が、いわゆる国民の喜ぶ、納得する面が出てくるのではないか。ところがこういう面につきましては、ほとんどいままで予算委員会、本委員会等でも論議が少なかったようであります。実際、そういう監視する、執行するというところがなかったわけであります。少しそういうことを言えば、いま大蔵大臣のほうから言われましたように各省からの反撃があるということは、なかなか国民がほんとうに期待する政府とはなり得ないと思います。こういうこともありますので、ぜひひとつ何らかの形で——いま言いますように、各省庁百に及ぶこういうものの民主化、合理化とともに、ひとつこういう面についてもぜひ御努力をお願いしたい、こういうふうに考えます。
  51. 田中角榮

    田中国務大臣 非常に的確な御指摘でありまもす。もちろん各省の調達に対して、単価が違うということはあります。これは前に、こういうものを統一しようということで、まず第一番目に考えたのは官庁営繕統一法というので、官庁営繕に対しては建設省に統一をするという法律をつくったわけですが、どうもなかなかうまくいかないで、昔は大蔵省営繕管財局で国費支弁に基づく営繕行為その他新営営繕は全部やっておったのですが、戦後各省にばらばらになって、これが議員提案によって建設省に一部統合せられたわけであります。そのときに一番の問題になったのは国会であります。国会は建設省には入らぬぞ、こういうことでなかなかむずかしい問題がすぐ起きてまいります。裁判所と国会と文部省と、それからもう一つは法務省の関係だけが別であります。ですから、こういうものを統一すれば単価というものが統一されるだろう。ところが戦後は、同じ病院をつくっても単価は違うし、いろいろな問題がございます。  それからもう一つは、調達庁というもので備品の調達までやるように、アメリカ式な調達庁でもってひとつやろう。アメリカは、備品等は全部調達庁でやっておるわけであります。これのまねをしようと思って備品の統一をやったのですが、これは各省から猛反撃を受けてだめになった。それは何か中小企業保護のために、長い歴史があって親子代々その省に納めておるんだから、それを規格の統一などということでとてもやれるもんじゃない。いま答弁書を持って来ますと、各省大臣の持っているのが全部違うのです。大きさも、それから縦書き、横書きありで、とにかくそういうことで大臣が持っているもの自体が違うというぐらいに問題はあります。小さな問題ではありません。これは、こういうものから正さなければならぬというので、国会自体でもって、もう十三、四年前からこういうものの統一をせよということで決算委員会等でも指摘せられておりますので、むずかしい問題ではありますが、より合理的にやるように、ひとつ英知をしぼってまいりたいと考えます。
  52. 只松祐治

    ○只松委員 次に、先ほどお述べになりました財政方針なり、本会議でされた施政演説の中から若干お聞きいたしたいと思います。  この当面の田中大蔵大臣財政演説等をめくってみたり、昨年度のものと今年度のものとを熟読玩味したわけでありますが、端的に言うならば、去年のものとことしのものは、ほとんど焼き直しと言っては失礼でございますけれども、まあ大綱、骨格はほとんど同じで、昨年後段で述べられておった意見というのを前段に持ってきてつけたとか、あるいは景気上昇の過程のところが下降の過程の中でいろいろなものをつけられた、こういうことはありますが、大綱としては違わないようでございます。むしろ大綱をそのままにしていろいろつけ足したから、たとえばこまかい、あげ足のようになりますけれども、国際情勢の中では非常にアメリカの景気はよくなったとか、世界貿易は好調であるというようなことをうたいながら、予算編成の項のくだりあたりになりますと、「今回の予算編成にあたりましては、きびしい国際経済環境の中で、」こういうことばで非常にちぐはぐな部面も——これは何人かでつくられた関係かしれませんが、できている。多少、大蔵官僚の作文としては、ずさんのきわみなきにしもあらず、こういうふうなことを感じました。  文章や内容は、それはそれといたしまして、実際上昨年度予算が三兆二千五百五十四億、それから本年度が三兆六千五百八十一億で四千二十六億円の新規財源でございます。それから財投が二千八百四億円の新規財源でございます。ところが、この中にいろいろな項目が並べられておりますけれども、まだ款項目まで全部私たちも、予算委員会でございませんので見ておりませんが、こういう昨年度、それから本年度の総ワクの予算の中から、一体政府はどういう点に主として新たな、施策を行ない、金を投下したのか、あとで順次そういう内容についても時間があればお聞きしたいと思いますが、簡単にひとつその要点だけお聞かせ願いたいと思います。
  53. 田中角榮

    田中国務大臣 予算全体が一体どういうものかひとつ縮めて言え、こういうことでありますが、まず開放経済体制になって国際的経済の波動を直接に受けるようになった日本前提にしまして、国際収支長期安定、それから物価の抑制、国内経済安定成長の確保、こういうものを前提にして予算の規模をきめ、骨格をつくってまいったわけであります。国内的に考えますと、国内不均衡是正ということ、均衡ある発展ということでございます。また特に経済政策基本をなすものは、所得倍増政策の中で答申をせられた中期経済計画、おおむねこの中期経済計画を目標にしながら日本経済発展を進めてまいろう、こういうことであります。しいて申し上げれば、その上減税は、非常に乏しい財源難の中にあっても可能な限り最大の減税をやって、そうして減税を優先さした。いままでは、主税局長もおりますが、主計局と主税局でもって話をきめてから減税は大体この程度だ、こういうことが例でありましたが、今度は、もう減税はこの程度やろう、こういうことが非常にこの予算の特徴であるということは申し上げられると思います。
  54. 只松祐治

    ○只松委員 いま述べられたようなこと、あるいは大綱を見ると項目別に述べられております。そういうことのほかに、ほんとうは時間があれば、佐藤総理の事実上のふところ刀の田中大蔵大臣に、社会開発ということがたびたび使われておりますが、一体社会開発にどういう構想で、どういうふうな金が出されたかというようなこともお聞きしたいと思うのでありますが、またこういうのはあとにいたしたいと思います。  ただこの中で、若干気になるようなことがございますからお尋ねをしておきますが、たとえば、この中に法秩序の維持と交通の確保に資するためとか、司法活動の強化、警察力の充実という、いままでにあまり大蔵大臣方針では見られなかったようなことばが出ております。こういうことは特別に何か意味しておるのか、あるいはこういうことのためにどういう膨大な費用を、わざわざ項をあげてするような費用が出されているかどうか、お聞きしたいと思います。
  55. 田中角榮

    田中国務大臣 その項目を御指摘になりましたが、そこは私が指示をしたのであります。事務当局原案にはなかったわけでありますが、私が入れなさい、こういうことで一、二条入ったと思います。これは、いままでの財政演説の中にはそういうものはみな省いてあったわけであります。何で省いたのだ、言わずもがな、こういうことでしたが、少なくとも警察に対しては、一万八千名の三カ年の警察の増員をやっております。また裁判所に対しても新しい施策もやっておりますし、特に防衛の問題を逃げなくたっていいじゃないか、そういうものはすなおに財政の中で、予算の大筋を説明するのでありますから、防衛に対してもこういう予算をつくりました、こういうことは、言うことが正しいということでただそこに申し上げただけでありまして、特別な何かをもって山をつくったということじゃありません。ですから、そこに幾つかのものを短い間にずらずらと並べた、こういうことでありますので、予算の説明の中でもって落とさなくてもいいじゃないか、そういうことは議論を呼ぶかもしれぬが、やはり演説としては国会に申し上げるべきだという考えでありまして、他意はありません。
  56. 只松祐治

    ○只松委員 他意がないということでございますから、そのままに受け取っておきたいと思います。  ここで、ついででございますから、ちょっとだけ交通の問題についてお尋ねをしておきます。これは施政方針でも述べられておりますが、交通戦争といわれるくらい交通問題は非常に に重要な問題です。特に、たとえば私の出身県の埼玉県では、通過県として非常な交通被害で、昨年度は三八・八%一昨年よりも交通被害が増大した。戸田橋の十七号国道では、十キロ当たり二・二人の死者が出るというくらい全国最高の犠牲を出している。これはそこを通っておるトラックが、百台のうち大体十五台ぐらいが埼玉県内のトラックで、あと八十五台は県外のトラックだ、こういう東京に入る、あるいは東北やその他に物資を運んでいく通過県としての役目をになっておるわけなんです。この前も私は、こういうところには、国道の走行キロ数なり被害の数なり、科学的なデータに基づいて出るわけですから、交付金なりあるいは特別の費用を出すべきであるということを申し述べたわけでございますが、そういう特別の交付金とともに、たとえばいまも東北縦貫道路なり何なりいろいろできてまいりますが、こういう道路をつくっても、跨線橋なりあるいは歩道なりガードレールなり、そういうものをつくらぬので、ただ道路をつくる費用だけ出しますから、人間の安全を守る、そういう費用というものは道路建設費の中に入っておらないわけです。したがってこの道路建設を主眼にするならば、重点を置くならば、そしてまた交通戦争というものをなくそうとするならば、政府としては、道路をつくるときにそういう跨線橋なりあるいはガードレールなり、単なる道路建設費だけではなくて、安全費を盛り込んでおくということが、事実上この交通戦争をなくしていく政府の対策だろうと思う。ところが政府は、そうではなくてただそこに道路をつくる、表面だけりっぱなアスファルトでございますけれども、そういう安全設備というものは一切つくっておらない。こういうことで、結局道をつくると非常に事故が激増する。埼玉県のような通過県は非常に事故が多い。こういうことで、三八・八%も道ができるに従って増加をしておる、こういうことになっておるわけでございます。したがって政府は、道路をこうやって、この中にもうたっておりますけれども、つくられるならば、当然にそういうことをすべきだと思います。もしいまありますように、安全施設というものが道路予算の中に入っておらないとするならば、当然に、私の言っていることが首肯されるならば、補正予算等に即刻組むべきである、これこそが事実上交通戦争をなくしていく、あるいは交通戦争対策の国民会議をつくるという首相の構想にかなうものであって、もしそういうことをしないで、ただ交通戦争をなくす国民会議をつくるということであれば、これは死んだ者にお経をあげているいまの仏教みたいな、から念仏に終わるのじゃないか、こういうふうに思いますが、大臣のお考えを承りたいと思います。
  57. 田中角榮

    田中国務大臣 埼玉県が経過地であって、非常に交通事故等も多いことは承知をいたしております。この間も、私も聞いたばかりでございます。大蔵大臣何か別に補償費でもありませんか、こういう話がございましたが、確かにそういうことを考えると思いますが、これはなかなか、そのために特別なものを予算上出すということはむずかしいと思います。  ただ、後段で御指摘になりました道路だけをつくって、跨線橋もつくらないし何もつくらない、ただ道路だけをつくって、あとは町会か何かでもって寄付でもしてつくりなさい、こういうこと自体は非常にまずいことだ、これはそのとおりでございます。これは第一の段階、いわゆる旧道路法のときなどは、路盤だけつくれば道路だ、こういうことでありました。それがこのごろは、側溝というものをつくるようになりました。流雪溝なども、ようやく道路工事費の中でこれを包含するように、昨年か二、三年前にできたと思います。道路というものに対する観念が違っておるというところに問題があるわけであります。初めから地下公共溝を幹線はつくらなければならぬとか、あるいは人口密度によって、この区間は当然一級道路をつくる場合には地下公共溝が必要であるとか、それから何メートル以上には当然跨線橋をつくるべしとか、そういう道路の観念そのものが、まだ先進国に比べては非常におくれておるということであります。乏しい予算の中で、延長さえできればということで延長に——ちょうどさっき申し上げたように、質よりも量に重点を置いておるというような結果がそのようになっておるのでありますが、これからは、あなたが御指摘になられたような事態に対処しながら、道路法による道路というものはこういうものだという新しい観念、新しい規定、そういうものを整備しながら道路をつくる場合、新しい道路が高速度道路であるというような場合は危害予防、危険予防というようなものに対して、新しい要請に沿う支出も当然考えるべきだというふうに思います。これは建設省でもそういうことを研究しております。去年、先ほど申し上げたとおり、流雪溝などは地元でやるべきだ、こういうことでやっておったものが、流雪溝も道路の費用でやろう、こういうことになったようであります。だんだんと、要請に従って予算の範囲が拡大されておるということは事実であります。
  58. 只松祐治

    ○只松委員 非常に重要な問題ですから重ねて御質問をいたしますが、金を握っており、しかも、先ほどから言いますように、重要な閣僚として政策も握っておられる田中大蔵大臣でございますから、ぜひとも建設省のほうとも連絡して立法化するなり、単なる委員会の質疑ということではなくて、ひとつぜひ立法化をお願いいたしたいと存じます。
  59. 田中角榮

    田中国務大臣 時代の要請でだんだんと拡大せられつつあるということを申し上げましたが、私自身も、跨線橋などを現在その町村とか、そういうものにまかしておるために、三百メートルに三本できたとかいうようなものもありますし、少ないところは依然として被害が非常に大きいというようなものもありますので、新しい道路法というものの考え方の中に、当然そういうものを採用していくような考え方で進めてまいりたいと思います。これは私が議員提案として昭和二十七年に現行道路法を提案したので、その道路の問題に対しては当時からも議論をされておる問題でありますので、十分考えていかなければならぬと思います。
  60. 只松祐治

    ○只松委員 それから、やはり施政方針の中で地方財政の窮迫ということが理由として述べられておりますが、一体地方財政の窮迫はどこからきたか、それはたくさんの原因があるわけでありますが、主要な原因、したがって交付金の率等も若干上げられたわけでございますが、こういうことで、はたして本年度地方財政が成り立っていくかどうか。私たちの知った中にも市長なんかが多少おりまして、ことしはどうにもならないということで、非常にお手上げ、そういうような状態のところがあります。大蔵省としてそのまま放置していいのか。それからけさほど来の日経等を見ましても、したがって公社債の起債のワクが増大するだろう、おそらく本年は五百五十億になりはしないか、こういうことが書いてありますけれども、はたしてそういう地方関係の公債というものも大幅に認めるのかどうか、そういうこととも関連してお答えを願いたいと思います。
  61. 田中角榮

    田中国務大臣 地方財政は、一時非常によくなったのですが、また二、三年前から悪くなってきたということは事実であります。ただ、そのよくなったといった当時の地方財政そのものを考えても、必ずしもよくなったのか。私は地方財政を相当研究したことがあります。地方財政は非常にむずかしい、制度の問題にまで手をつけないとなかなかむずかしいということであります。しかし、制度の問題に手をつけるということは非常にたいへんなことでありますので、地方財政の再建をはからなければならぬ、こういうことを言っておるのですが、いまのような考え方だけでもって地方財政の再建をはかろうというと、仕事をやめろということになって地域格差がますます開く、こういうことは歴然とするわけでありますから、地方開発というものを一体国と地方でどうするのかという問題は、新産業都市とか、低開発地の開発とか、産炭地振興とか、離島とか、それから工業地帯整備とか、いろいろな法律ができておりますし、地域開発も出ております。東北北海道開発法とか、できておりますが、これらの問題だけで、地方財政の将来をどうするかという問題には結論にならないと私は思っております。大体、占領軍が日本に非常に新しい制度、地方分権という制度をやったのですが、地方財政の伴わない地方分権、こういうところに大体問題があったわけであります。  もう一つは、あまり公の席上では言いにくい話でありますが、率直に申し上げると、思想的には、また理論的には非常にいい制度である公選制度——公選制度でありますから、どんな市町村でも、公選に出るときには学校を鉄筋にしょうとか、おれは道路をつくってやるとか、非常にいろいろな公約もするわけであります。ですから、地方自治体の投資というものも非常に多くなった。私は、投資が多くなることは格差がだんだんと縮まることであって、必ずしも悪いことだとは思いません。思いませんが、そういうことを前提とすると地方財政は赤字になる、こういうことであります。  税源配分等も別に考えなければいかぬじゃないかというのですが、いまの制度ですと、東京とか大阪とか、そういう消費の非常に大きいところがやはりよけい財源が要るということであって、交付税、特別交付税の制度等も戦後非常に発達し、充実をされましたが、これをもってしても万全なものだとは言い得ないわけであります。大体、日本の国内均衡をはかるにはどうすればいいのだという抜本的な問題と取り組まないと、この問題はなかなか片づかないと思います。  もう一つは、東京都はようやく全歳出の二七、八%、三〇%で人件費が上がったわけですが、低開発地ほど人件費が多いのです。いまでも総歳出の七〇%に近い人件費を持つものもあります。地方財政全体で、ベースアップの総額は、今年度年間千五百億であります。国の一般会計の規模は、ことしは三兆六千億をこすと思います。そういうふうに地方財政の規模はだんだんと大きくなっておるにもかかわらず、地方財政は豊かならざる状態を続けているということであります。これはもっと政治的に抜本的な対策を考える必要がある、私はそう考えておるのであります。  もう一つ申し上げると、月給も安い、安いけれども数も多い、こういうことで、これをどこで調和せしめるのかという問題と真剣に取り組まないと、地方財政の再建の将来的なめどは、なかなか立たないのではないかというふうにも考えております。
  62. 只松祐治

    ○只松委員 公社債のお答え、どうですか。
  63. 田中角榮

    田中国務大臣 地方開発のために地方債は拡大の方向にあるということは、そのとおりであります。そのとおりでありますし、大蔵省理財局でできるだけ締めよう、こういうことでありますが、締めれば締めるほど格差が開く、こういうことでありまして、まさに二律背反、どこで一体調整をして国内均衡をはかるという問題がありますので、真剣に考えておるわけであります。
  64. 只松祐治

    ○只松委員 次に、いまも大臣から述べられたように、重要施策の一つに物価の安定ということが言われております。しかし、私たちがこの物価問題をずっと見ておりますと、こういう敗戦から復興、復興から技術革新、こうやって日本経済が、進化といいますか、転化してまいりました。こういう過程を、日本の資本主義というのは巧みにそれをとらえて、いわゆる信用インフレ政策を進めて資本主義の再建をはかってきた、こういうふうに私たちは見るわけでございます。はたして政府は信用インフレ政策を推し進めてきたのか、しかもそれを意図的に進めてきたのか、あるいはやむを得ず、やはりこういう政策以外に方法が戦後の再建方策はなかった、やむを得ず信用インフレ政策を進めてきたのか、こういう点についてまずお聞きをいたします。
  65. 田中角榮

    田中国務大臣 意図的にオーバーローンをはかったわけではありません。いかに自民党が自由経済論者であっても、そういうことを考えるわけはありません。これは経済復興が非常に急でありまして、資金需要が非常に大きいけれども、国民貯蓄はそれに追いつかない。結局日銀信用によってこれを一町まかなわなければいかぬ。その日銀信用でまかなったもの等を十分経済復興の過程において吸収し、消化しよう、こういう考えであったものが、相当行き過ぎたということであります。これも率直な意見になり過ぎるかもわかりませんが、資金統制をしておったときから民間に自由にまかすと、過程においてはこういう現象が起きるのであります。だから、そのときに短兵急な議論をやると、じゃ政府は資金統制をしよう、こういう議論になるわけですが、それはやってはならないということで、一時非常に信用膨張が続きましたが、今度は、このような状態では経済安定成長がはかられるものではないという、企業者がだんだんとそういう気持ちになってきましたので、自己資本比率を上げよう、こういう機運がだんだんと起こってまいりましたし、昨年の十二月などは、公定歩合引き下げの前でありましたので、クレジット・ラインは、日銀は十分資金を用意したわけでありますが、クレジット・ラインをはるかにあけて資金需要がなかったということ、これは量から質の経済にだんだん入ってきておる証左であります。結局金を借りて物をつくればもうかるというような状態ではなく、借りた金は返さなければいかぬということ、同時に投資をする場合には、利潤を追求しなければならぬという必然的な結論に逢着をしたからそういう事態になってきたわけでありまして、だんだん私は、オーバーローンが解消され、金融正常化といいますか、そういうものが行なわれる曙光が見えたということは言い得ると思います。同時に、ただほうっておいては困るのです。少なくとも経済成長で四十三年までは八・一%の成長をやるわけでありますから、自己資本比率を上げるためには、国民貯蓄増強と資本蓄積に対して政策を行なって、できるだけ早い機会に正常な状態にしようということで税制上の措置などをとったわけであります。
  66. 只松祐治

    ○只松委員 やむを得ずということでございますが、しかし統制ということばで言わなくても、もっといわゆる抑制なりあるいは計画的に——過日も、日銀は政府と一体のものである、こういうふうな大臣の談話が出ておりましたけれども、できたのではないか。たとえば昭和三十五年の平均で八千五百九十二億円の日銀券の発行高が、去年では一兆六千六百五十三億と、ちょうど倍になってきております。年末高を見ますと、もっと倍増しておるわけでございますが、こういうのは、もっとやはり政府のほうでうまくやるといいますか、調整していけばできたのではないか、こういうふうに見られます。それはそれといたしまして、そういう日銀券の発行高あるいは信用インフレの増大によって、物価というものが、さっきから言うように上がってきておりますが、これとともに一番大きな問題として、日本国民は約二二%からの税金とともに二〇%前後の貯蓄をして、いますべての貯蓄を合わせますと二十兆に達する、こういうふうにいわれておりますが、これは、政府の発表どおり三〇%物価高を来たしたとするならば、約六千億円国民は損をしておる、こういうことになるわけでございます。なぜ日本国民がこういうふうに貯金をするかということは、日本政府あるいは日銀を信頼したり、あるいは非常に勤勉であるから、いろいろな説もありましょうし、論も立てられると思いますが、やはり一番基本的な原因は社会保障制度が立ちおくれておる、病気になったら、あるいは学校に子供をやるためにはと、いろいろなことで切り詰めて二〇%からしておる。特に零細者の場合、郵便貯金等の場合にはほとんどそういうことだと思います。とするならば、この六千億円からの国民の損失というものに対しては、すぐこれをそのまま六千億円補償しろ、こういう暴論は吐きませんけれども、何らかの形においてこういうものは、少なくとも政府としては、この建設の過程にあたってこの貯蓄というものは動員されて、財政投融資その他で日本の再建に役立ってきたわけです。使うのは使いっぱなしで、しかしあと信用インフレが進んできて国民が損しても、これはしっぱなしでおれは知らないのだ、こういうわけにはまいらぬと思います。ぼくは何らかの形で、これは補償と言うまでいかなくても、ちょうど戦時中の補償をいろいろな形でいま自民党が行なっておるように、こういうふうに経済の再建に動員してきた国民の預貯金というものは、何らかの形でここに感謝の意を表するというか、私たちから言うならば別途何か考慮する必要がありはしないか、こういうふうにも思います。このことは、社会保障制度と関連して当然に、いま年金その他が非常に下がってきておる、いわゆる率が若干相対的に下がってきておる、こういうことと関連してくるわけであります。こういう点は他日また問題にいたしたいと思いますが、いま申しますように、事実上の国民の預貯蓄の損失というものに対して何らかの手を打つということは、先ほどから言われておる国民の今後の預貯蓄の増大というときには、社会保障制度を充実しても預貯蓄というものはやはり一定限度を保っていく。ところが、いまみたいなことだけでは社会保障制度を低く押えておいて、けつをひっぱたいて貯金をしていけ、こういう政策をいつまでもとれるかというと、いまの若い人に見られるように、こういう政策はそう長くは続かないだろう。そうすれば当然に、この信用インフレに伴って、事実上そうした貨幣価値というものに対して何らか打つべき手はないものか、そうした点についてお伺いします。
  67. 田中角榮

    田中国務大臣 私が一番努力をしているところはそれなのです。確かに物価が上がりましたので、貯蓄をしておる人は非常に損をした、それに対して農地補償のように金をやれ、こういうことのようでありますが、そういうことはでき得るわけはありません。事実やろうとしてもむずかしいことでありますし、なかなかできるものではありません。ただ、ここでもう一歩進めて考えるときに、結局物価を安定せしむるということであります。物価を安定せしむるということは一体どうすればいいのか。物価が上がるときには貯蓄をしても合わないという結果になりますし、物価が安定もしくは下がるような状態になれば、貯蓄をしても合うということであります。日本人は、利息がどうであるとかいうことよりも、貯蓄性向の高いのは民族性であります。この民族性は——民族性と言うよりも社会保障がないからだ、こういうふうに極端に言われますが、社会保障があるときもないときも、とにかく貯蓄をする国民性であるということだけは事実であります。歴史が証明するとおりであります。とにかく物価を安定せしむるということが一番大切であります。物価が上がることには一体何が寄与しているのか、こう言うと、貯蓄や資本蓄積が少ないときは物価が上がるのであります。信用インフレになるわけであります。ですから、ちょうどその堂々めぐりであります。貯蓄や資本蓄積がどんどん行なわれるときは物価は安定の方向になり、コストは下がっていくわけであります。そういうことで、物価を下げるには貯蓄増強をやらなければいかぬ。貯蓄増強をやるには物価を下げなければいかぬ。賃金と物価との悪循環と同じことで、これは比較的にいい循環でありますが、そういう意味で、やはり貯蓄ということや、それから資本蓄積ということが非常に重大であるということを考えておるわけです。貯蓄や資本蓄積に対して、税制上そんなことをやったって集まるものか、ただ物価を下げろ、何で一体下げるのか、こういう問題で、やはり私は事実問題としてほんとうに取り組まなければならぬ。物価に寄与しておるものは何かと言うと、国民消費と財貨サービスということになるわけであります。これは私もこの予算を組むときに十分検討してみましたが、一般会計の率とか財政投融資の率を非常に厳密に言われますけれども、やはり地方財政であれ、政府関係機関であれ、三公社五現業であれ、こういうものとの調整ということを十分考えなければ、物価問題には対処できないという結論に私も達したわけであります。ですから、物価を安定して、より貯蓄をしてもらって、貯蓄者に迷惑をかけないようにするには、物価政策をひとつ十分やりたい。ですから、先ほど非常におしかりを受けましたが、その資本蓄積貯蓄に対して税制上の措置をしたことは、物価対策としては尤なるものだというふうにひとつお考えいただきたい。
  68. 只松祐治

    ○只松委員 時間がございませんので最後に一つだけ伺いますが、来年度税制改正の中で、ここをさっと見ましても、減収になるのは取引所税の七億五千万円とトランプ類税ですか、これだけくらいで、あとは全部増収になるのです。よく私言いますように、減税減税とおっしゃるけれども税の調整だ、こういうことを私は言っておるわけです。所得税をいろいろ——これはこまかくはやめますが、このときで約二百億近い減税に、源泉所得の場合なっておらないのです。わずか所得税がこのくらいのときに、法人税、わけても租税特別措置のこういう形で取引所関係、有価証券関係のものが前年度よりも減収になるということは、先ほど横山さんも多少論議されましたけれども、私たちも多少奇異に感じます。  そこで、論ずる時間がございませんので、この前段のやつはこれも資料としてひとつお願いしておきたいのですが、そういうことと相まちまして、大法人中小法人、こういうものもまた減税になってきております。中小法人の場合が二%、こういうことになります。しかし、その大蔵省から出ております租税特別措置の適用後の実効税率を見ますと、いままでこまかくデータをもらっておりませんでしたので、おもな数字だけで、なるほど近いのは近いと思った。しかし、これを見ますと、たとえば十億円の所得金額で三一・一五%、これが実効率。五億円で三一・一四%、一億では三一・〇六%、一千万で三二・四四%、八百万で三二・一九%、六百万で三一・七%、こういうふうに一千万円から五、六百万円、このくらいのときには、実効税率というのは十億円の所得よりも実際多いわけですね。こういうことが一体あってもいいのだろうかどうか。私は時間がございませんからですが、諸外国の実効税率その他を見ましても、非常に大法人中小法人の、表面税率も違っておりますが、実効税率も違っておるわけです。今回そういう中でまた法人税を下げておられる、こういうことでございます。したがいまして、今度新しい法人税率を適用した場合に、これは推定しかまいりませんが、大法人中小法人、いま分けましたようなランクでどの程度の実効税率になるか。その点を、時間がございませんので、ひとつ資料として、推定資料になりますが、出していただきたいと思います。  それから、こういう中で、いま証券関係のほうだけ減収になります。しかし、証券対策というのは、先ほどから言われましたように、こういう税金だけではなくて、いろいろな面があります。その一つとして手数料の問題があるわけでございますが、私たちが聞いているところでは、手数料が非常に高い、たとえば五十円以下で五千株以下扱って一円三十銭、あるいは百円で一円七十銭、二百円で二円、三百円で二円四十銭。株は買う、買ったものは売らないともうけにならないわけですから、往復びんたにこれがなって、三百円の株を売買した場合に二円八十銭と、約五円の金というものが——五円という金は、これは利子に換算しましても相当の利息になるわけで、いわゆる株の売買の場合、この手数料というものが非常な問題になっておる、こういうふうに聞いております。いろいろな証券問題についても、証券法の改正がありますのでそのときお聞きしますが、一言だけ大臣に、手数料の問題に関して、もっとこれを合理的にする方法はないか、その点、ずばり言うならば引き下げる方法なり何かないか、これが株の売買のときの一番ネックになっておる、こういうことを聞いておりますので、お尋ねします。
  69. 田中角榮

    田中国務大臣 売買手数料につきましては、引き下げの方向こそ望ましいというお説でありますが、私もそのとおり考えております。しかし現状から見ますと、引き上げてくれという状態であります。これはもう証券業者がどうにもならないような状態から、ひとつこれから新しいにない手になるために、いま第二の出発を考えておって非常に努力をいたしております。その過程においてはちょっと引き上げてくれということで、引き上げは押えておるわけでありますが、将来はもっと合理的なものにしたいという考えです。
  70. 吉田重延

    吉田委員長 只松君から資料要求がございましたが、先ほどの御要求とあわせて理事会で御相談しまして、はっきりした資料をお願いすることにいたします。  堀昌雄君。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 時間が三十五分しかありません。そこで、問題は四点ございますので、大臣の御答弁もできるだけ簡略にひとつお願いをしたいと思います。伺う問題は、先に申し上げておきます。第一は証券問題で、増資調整の再開の問題でございます。二番目は、国鉄の特別利用債の日銀の適格担保取り扱いについての問題でございます。あわせて公社債の金利の問題等について触れます。最後に、投資信託について時間があれば触れていきたい、こう考えますので、ひとつ簡単にお答えを願います。  最初の増資調整の問題でありますけれども、これはすでに前臨時国会等でも少し議論をいたしましたが、増資調整懇談会というものが設けられて、大蔵省、日銀、経済界等で自主的に、二月以降の払い込みはひとつやめようではないかということで今日に至っておると思います。そこで、二月以降の払い込みはやめるということが実質的な効果を及ぼすのは、実は来月からでありまして、これまでの分については、すでに割り当て等で順次増資が行なわれてきておるわけであります。ところが、私ども年末の委員会で問題にいたしました共同証券の諸般の取り扱いの問題、年末から年初にかけて行なわれました証券保有組合の問題、これはいろいろと問題がありますが、本日は時間がありませんから、日を改めてまた大臣と論議をさしていただきたいと思いますが、そういうことで、日本銀行はこれらの両機関に対して、約四千億近い信用を供与しておるわけでありますから、現在の資本市場情勢というものは、自力で運営されておるわけではなくて、まさに国家信用によってささえられておると言っても間違いではないと思います。その国家信用にささえられながら、現在は、では一体市場はどうかといいますと、大体千二百五十円を割っておるというのが現状でありまして、昨年来のような共同証券も千二百円のダウを守るために非常に公正を欠くような措置をしておったことに比べますならば、やや回復をしておるということが言えるかもわかりませんが、実はこの問題というのは、全然いま見通しが立たない情勢にあると私は判断をしております。そこで、そういう情勢であるにもかかわらず、経済団体連合会の増資懇談会というところでは、いろんな諸情勢から、六月からひとつ増資の再開をしたいのだということが新聞紙上で伝えられております。そこでお伺いをしたいことは、この問題の中には三つの問題が含まれております。一つは、世銀借款の財務比率によって世銀との契約上処理をしなければならないという問題、富士鉄、中部電力、北陸電力、神戸製鋼所、この四件だと思うのです。その次に、社債発行ワクの関係で、純資産との関係で増資を必要とする東北電力、四国電力、あるいは転換社債を出しておるもの、これとの関連で東洋運搬機においていま増資したいという問題、これらが特に特例的な問題として提起されておるわけであります。しかし私は、いま前段で申し上げたように、現在の市況は、これはかろうじて維持されておる段階であって、決して十分これからそれが安定をするというところまで来ていないという第一の判断をしております。そうすると、そこへこれらの増資をどんどん認めるということになってくるならば、これだけで心理的な効果というものが相当に市況に影響することは、私は間違いはないと思います。  そこでお伺いしたいことは、政府として、世銀借款の財務比率の取り扱いについては、アメリカ側に日本資本市場——いまの情勢なり、すべてはアメリカも知っておることでありますから、国家信用によって四千億もの信用供与をしておるというふうな資本市場は、寡聞にして世界にないわけでありますから、異例のことが行なわれておる。現在、単に世銀との関係だけによって増資を行なうというようなことについては、私は、大蔵大臣は率直にひとつアメリカの世銀当局とこの問題について日本の実情を話して、これらの措置が——対外信用という問題は、それをしたから対外信用がある、ないの問題ではなくて、私は、政府の姿勢の問題として話し合いをする余地があるのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、それが第一点です。そのことは、同じように転換社債の問題等についても、対外的な問題ではありますけれども、これは政府のこの際における姿勢を明らかにしていただくことによって処理する場合ではないのか、こういうふうに考えますので、その点について大蔵大臣のお考えを承りたいと思います。
  72. 田中角榮

    田中国務大臣 増資調整につきましては、増資懇談会をつくっておりますが、できるだけ、政府考えよりも民間の自発的意思によってやろうという基本線は貫いておるわけであります。証券市場が多少持ち直したといっても、あなたがいま指摘されたように、これでいいという状態にはありません。まだまだいろいろな施策を必要とする段階でありますので、増資というものに対しては、民間の意思を尊重はしておりますし、われわれもできるだけそういうことに対しては口をはさまないようにはしておりますが、しかし増資調整の可否というものに対しては、非常に慎重でなければいかぬということは考えてもおりますし、また私が会った人に対しては、慎重にやっていただきたいということを言っておるわけであります。世銀の問題とか輸銀の関係とか、いろいろの問題があります。こういう問題に対しても、私は昨年の九月のIMF総会に、こういう関係者と会ったときも、大体世銀借款とか輸銀借款とかができるようなものは、日本の基礎産業というぐらいに非常に内容のいいものであるし、同時に政府も相当力を入れておる産業であるから、単に財務比率というような問題にこだわらないで、こういう問題に対しては増資をやらせようとか値上げを認めるとかいうことになれば、いつでも政府ができる話でありますから、こういうものに対してはひとつ慎重に考えてもらいたい、日本政府信用というものを考えて、ひとつ弾力的に考えてもらいたいという私の考え方は十分伝えてあります。いままで、まだ増資調整に対してどうしようかという具体的な話は私は聞いておりませんが、世銀とかそういう海外の状態において、もう話し合いの余地はないのだというようなもの、それにひっかけてひとつ増資をしようとか、こういうものに対しては、実情をもっと十分検討してみたいというふうに考えております。
  73. 堀昌雄

    ○堀委員 それで、いまの世銀その他のほうはいいのですが、その純資産の関係で、社債の発行について、私は法律を詳しくまだ調べておりませんが、何か規定があるのだと思いますが、これは社債の発行ワクを資本額と関連して規制をしておるものがあるようですね。私も、ちょっとそこまで調べておらぬのですがね。ですから、国内法ですから、そういうことによって社債を出すのが適当かどうか、社債でなくて融資であってもいいじゃないかとか、時期的な問題がありますから、これは金融サイトの問題に関連があると思うのでありますけれども、これらのことは国内的な処理でできる問題ではないのか。実はここにあがっておりますものは、中部電力、北陸電力、東北電力、四国電力など、こういうことになりますと、これは地方自治体が、かなり縁故債といいますか、株や何かを持っておるのではないか。これは増資をするとなれば、そうでなくても地方自治体、特にこの付近の中部、北陸、東北、四国というのは、いわゆる赤字の地方自治体がたくさんあるところで、さらに増資ということになれば、株でも売らなければ増資ができないということになれば、増資をすることはまた市況を圧迫することになるんだ、こういうことにもなりかねないわけでありますので、これらの問題を含めて、私はきょうすぐお答えをいただくということは無理かもしれませんけれども、もう少し大蔵省側としてのはっきりした態度を表明していただいたほうが、いろいろと皆さんが苦労をしても片方で水が漏ったのではどうにもならぬと私は思いますので、この点については、ひとつ大蔵省側として、国内法の処理の問題あるいはそういう対外的処理の問題について責任のある処理をするから、しばらくこうしてもらいたいというような指導方針を早急に明らかにしていただきたいというように思います。  もう一つは、やはり日本経済の今後の見通しの関係でありますけれども、政府の発表は、今年度の見通しは、後半は上りであるというのが大体政府見解のようであります。私はそう考えておりません。世界経済の全体の成り行きを見ておりますと、大体昨年は、世界経済は非常に伸び方がよかったと思います。日本を除いた輸入伸び率というものも一〇%近くあって、日本輸出が二〇%台に伸びたのも、私は世界経済における条件の一つの反映だと思うのでありますが、本年度世界的引き締めになっておりますから、世界経済は、やはりリセッションを起こすであろうというような予測を現在立てておるところがかなりふえておるわけであります。世界経済がリセッションになる。日本金融だけゆるめてみても、やはり需要がついていけないということになれば、私は、本年度日本経済というものはよくて横ばい、必ずしも下期は上るのでなくて、逆にスローダウンをするのではないかという大まかな判断をしております。これはいろいろと議論のあるところでありますが、時間がありませんから、このくらいにします。  そうしますと、実は今後のそういう全体の日本企業収益率の問題というものは、三月期決算は九月より少し悪いだろうという判断を私はしておりますが、やはりことしの九月は三月と横ばいくらいではないのか。そういうことになりますと、市況をささえる情勢というものはあまり力がない、こう私は判断をいたします。そうすると、今後、経団連のほうでは、本年の配当総金額約三千九百億くらいは増資をしてもいいではないか、こういう考えがあるようでありますが、そう現在のところこの問題は甘くはないのだという判断のもとに、かなり慎重な対策を立てていただかないと、共同証券も大体これで一ラウンド済んだ、保有組合も一ラウンド済みました、まだあと三ラウンド、四ラウンドやらなければならぬような情勢は、起こる可能性が十分にあると私は考えております。これについては、私は少なくとも、もうここまで来ると何らかの特殊法人を設立して、根本的な対策を考えなければならぬ段階というものがあるんじゃないかと思いますけれども、これは別といたしまして、要するに、そういう情勢でありますから、増資再開の問題については払い込みが六月なのか、割り当てが六月なのかというような、そういう問題がいま出るような段階ではないのではないか。もしそうするならば、多少金融がゆるんでおる際でもあるから、これは金融によって多少でも措置する程度の処理をするということにならないと、これ以上は私は、証券市場に対して日銀の信用を供与することは適当でないと判断をしておりますので、この点について、増資再開の問題については、少し私はき然とした態度をとっていただきたいし、もし増資調整懇談会の規制力が十分でなければ、私は特別立法もやはりやむを得ないと考えておりますけれども、それらについて大臣の見解を伺いたい。
  74. 田中角榮

    田中国務大臣 証券市場及び公社債市場の育成強化ということを強力に推進しなければならないと考えております。その過程において、増資再開ということに簡単に踏み切って、しかもそれが景気過熱に通ずるというふうには考えておりませんが、しかしそれがようやく軌道に乗りかけておる証券市場をまたどうにもならないようなものにするということであれば、自縄自縛ということもありますし、開放経済下において国際的な信用にも及ぶ問題でありますので、非常に慎重なければいかぬというふうに考えております。ただ日銀信用によって四千億に近い金が出されておるということは事実でありますが、それだけ形の上ではオーバーローンの解消になっておる。ですから、増資をしたものがまた同じオーバーローン——日銀が、銀行を経由しているものが減っても株のほうでもってまた金を出さなければならぬといえば、オーバーローンが形の変わった状態でもってまた起こるということになるわけでありますので、こういう間の問題は非常に慎重にやろうというので、証券局だけの問題ではなく、証券、理財、それに銀行、こういうものが相当な長期の見通しを立てて慎重にやりなさい、こういう態度をとっておるわけであります。中にはもう増資をやりたいというような経済人もおりますが、去年さんざん苦労したんじゃないか、もう一ぺん静かにものを考えてください、こういう態度をとっておるわけでありまして、証券市場、公社債市場の育成、こういうものの見通し、また大蔵省でもいろいろ施策をいまやっておりますから、こういうものとのタイミングということを十分考えてやらなければならぬ問題だというように思います。
  75. 堀昌雄

    ○堀委員 それでいいんですけれども、要するに、指導だけで十分にいかないときには、私は特別立法もやむを得ないということを申したいわけなんです。だからあなたは、それは指導でできればいいんです。私も指導でできれば、特別立法をやりなさいと言わないのですけれども、やはり企業の側にすれば法律的な規制はないのです。これはちゃんと取締役会の決定で増資をしようと思えばできることになっておるのですから、その点についてはある過渡的な時限立法でいいから、もし、あなた方の指導力が及ばないときには特別立法によっても処理をするという姿勢がなければ、私はその指導に力がこもらない、どうですか。
  76. 田中角榮

    田中国務大臣 立法する必要はないと思います。それは、先ほど私が申し上げたとおり、なるべく官がこれを統制するような姿勢をとらないでうまくやりなさい、こう言っておるわけですが、うまくいかない場合には、こちらから、行政的にこのような施策をやっておるときに、一体これでいいと思いますか、こう言えば、法律がなくとも大体話は聞くだろうという自信がありますから、大蔵省はなるべくそういうことをやりたくない、そんなことを大蔵大臣にぎゃんぎゃん言われないうちにあなた方が自律的にやったらどうですか、こう言っている段階でありますので、立法する必要はない、立法するような状態であれば、私が行ってもっと声を大にしてやれば……。
  77. 堀昌雄

    ○堀委員 たいへんな自信ですから、ひとつお手並みをしばらく拝見することにいたしましょう。  その次に、国鉄の特別利用債というものが今度新たに登場をいたしました。国鉄は入ってますか。——理財局で大体わかっているんでしょうか。一体国鉄特別利用債というのは何ですか、それからちょっと教えてもらいたい。国鉄は現在、利用債というのを発行しておりますね。それから、縁故債というのも出しておりますね。その上、また特別利用債というのですね。特別利用債というのは利用債と違うのか、縁故債と違うのか、一体どういうものか、ちょっと簡単に教えてもらいたい。
  78. 田中角榮

    田中国務大臣 国鉄増強計画に対する答申が出たわけであります。そうしなければ人命に及ぶ、こういうことでありますので、健全財政を守りながら、減税もしながら、この輸送力増強というものにも応じなければならぬ、こういうことでありまして、いろいろ考えた末、国鉄利用債という制度をつくっておる。六百八十八億の発行を認めたということであります。
  79. 堀昌雄

    ○堀委員 その程度のことは私も聞かなくともわかっておる。私の聞きたいことは一体何か。これまでも、利用債も出ておる。縁故債も出ておる。そこへ特別利用債——いまの利用債というのは、どこかが電化をしてください。そうすると、その沿線の市や地方自治体が、これだけ持ちましょう、これだけ出すというのが利用債。縁故債というのは国鉄の共済組合や何かに買ってもらって資金調達——私のほうから説明するのはおかしいのですけれども、ところが今度特別利用債というものが出てきたのです。この特別利用債とは一体何なのか、これは沿線のものが出す式のものなのか、縁故関係の者が買うものなのか、この特別利用債というのは一体だれが買い取るのか、これをはっきりしてもらいたい。具体的にどうですか。
  80. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、従来、縁故債、利用債というものがあったわけでございます。今回の特別利用債は、特別という字をつけましたところが従来と異なるわけでございます。性質的には、いわゆる財投の計画の中にあります政府保証債とは違いまして、従来の縁故債、利用債に近いものとお考え願いたいのでございます。どういうところが違うかということでござますが、国鉄で考えておりますのは、多少、従来の縁故債の消化先的な国鉄の共済組合というものも考えておりますけれども、そのほかに、広く国鉄に関連の深い車両のメーカー、あるいは資材のメーカー、あるいは土木建築業者、そういうふうな関係の深い業種に消化をしてもらうというようなことを考えておるようでございます。
  81. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで先にお伺いしておきたいのは、理財局長、いまの利用債、縁故債というのは日銀の適格担保ですか。
  82. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 日銀の担保適格になっておりません。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの理財局長の答弁では、これは財政投融資ではありません。ですから、利用債、縁故債及び特別利用債ということだと思うのです。いいですね。石田さんは宇佐美さんのところに行って、ともかくこれは適格担保にしてもらわないと買ってもらえない、だからひとつ適格担保にしてもらいたいという話が出ておるようですね。   〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕 私は、石田さんの気持ちはわかりますよ。石田さんのほうでは、実はこんなものにしてもらいたくなかった、国に出してもらうなり、財投でやってもらうつもりでおったのでしょう。しかし田中さんが大いに腕をふるっても、金の出どころがなかったわけです。最初、田中さんがぼっと立って答えたのは、まさに田中さんがつくり出したんじゃないかという感じがする。あなたの口から言うと、政府は——ひどい話だけれども、この腕はたいしたものだと思います。しかし、それは、日本財政にとって重大な問題を提起しておる。この点はなぜかと言いますと、財政法第五条は、公債発行及び借り入れの制限ということを明らかにしておることは私が申し上げるまでもないわけですがね。では、この縁故債のようなもの、利用債のようなもの、特定のものとの間の相対で出る債券ですね。一般市場——市場もないけれども、公募的なもので出すものではない債券だ。これが適格債になるということは、これを市銀に入れて、すぐ日銀にいって金が出るということでは、なるほどワンクッション置いておる。形式は違うかわかりませんが、現実には日本銀行引き受けによるところの赤字公債の発行と何ら異なるところはない。これは筋として重大な問題です。ですから、私が伺いたいことは、あなたはこれを適格担保債にするべきであるということを新聞に発表なすっておりますが、私は、これは前からちょいちょい新聞の話をするとあなたは言ったことがないという。ここで公式に確認をいたしますが、日銀に対してこれを適格債として認めるべきであると発言なさったのかどうか、ちょっと最初に伺いたい。
  84. 田中角榮

    田中国務大臣 特別利用債は、日銀でいま検討中のようであります。私は、日銀に対して正式には申し込んでおりません。新聞記者諸君との会見において、適格債にするつもりですか、こういうようなお話があったときに、私はこう答えたと思うのです。やるのは日銀だから、適格債になるかならぬかはわからないけれども、適格債にしたほうがいいですね、こういうことは言ったのです。
  85. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 ちょっと補足して御説明しておきたいと思いますが、堀先生は、日銀の担保適格になるとすると日銀引き受けのあれを出すのと同じことになる、重大問題だとおっしゃいましたけれども、その点は多少違うかと私ども考えております。御承知のように、いまの政府保証債は当然日銀の担保適格になっております。その論法でいきますと、政府保証債を出すとすべて日銀のあれを出すということになりかねないので、必ずしもそうでないということを申し上げておきます。
  86. 堀昌雄

    ○堀委員 必ずしもそうではないという、まあ表現ですから、多少はそういうこともあると理解をいたしますけれども、それは私も何もストレートに赤字公債の発行とは言わないのです。しかしいまの形は明らかにこれはニュアンスとしては赤字公債に連なる。日銀の信用膨張であることには結果として間違いないのです。意図は別として、結果として何かそうなる可能性は間違いない。ですから、なぜこういうようなことをしなければならないのかというと、もう一度根本に立ち返ってあなた方は考える必要があるのではないかということです。私はもう数年来ここで議論をしておるけれども、結局公社債市場がないから、こういうことをやらざるを得ないということでしょう。そうじゃないでしょうか。公社債市場があるならば、これは市場へ出せばいいのですよ。それが売れるような利子をつければいいのです。そうすれば私どもはここでこんなことを言わなくても済むのです。片一方に公社債市場はない、財政の金はきまってしまっておる。しかし金を出したい。これはもう田中流のまことに明快な論理で、まあ出せるところから出してやればいいじゃないか、こういうことだろうと思いますが、私は、そういう姿勢は安易に過ぎてよくないと思うのです。あなたは盛んに首を振られるけれども、これはあなたが日銀が出したほうがいいだろうということじゃなくて、率直にいって私は日銀に対しても筋を通しておいてもらわないと困ると思うのです。大体金融がこういうかっこうで、第一、共同証券に対する問題にしても、証券保有組合の問題にしても、のど元まで書いたいほど実はたくさん問題があるのです。ただ私は黙っているだけです。それはそのことによって多数の投資信託に入っておる零細なる投資家ですね、何といいますか、善意の人たちに迷惑をかけてはならぬと思うからのど元まできても黙っているけれども、このほうはちょっと黙っていられないのです。こういうやり方のほうは、これは国の財政の筋を通すという行き方をもう少しあなたは厳粛に考えてもらわないと困るのです。  もう一つは、いまの議論はどうしても公社債の問題というものを政府は真剣に考えなければならない。これは私見でありますが、ことしもこういうあっちこっちに穴をつくって利子補給をやったりしてつじつまが合ってきたようです。それだけ無理をしておいて五百億予備費が残るというのですから、財政当局なかなかたいしたものです。あなたもぼう然としたらしいが、私もぼう然としました。しかし来年はおそらくだれが大蔵大臣になるか私は知らないけれども、インベントリーは取りくずすだろう。再来年は公債発行になるだろう。われわれは反対ですよ。しかし客観的必然性を追っていくとそういうことになりかねないということになる。公社債市場をつくるという問題が非常に緊急の問題になっているということは、あなた方はこの問題の経験の中から考えなくてはならぬと思うのです。よろしいですか、四十年度は、いますぐといっても無理でしょう。だからそれについては、大蔵当局はこういうものをやらないという方針のようにわれわれ新聞で見ておりますが、しかし何もこれは年度だけの問題ではないわけですから、その点についてはなるべくすみやかに、要するに公社債のいまのきびしい統制条件を、私も全部ゆるめろというのではないのですから、弾力的に配慮することによってやらなければ、こんなことは一ぺんにはできないのです。徐徐に徐々に徐々にやっていって自然にできていく問題であって、そういう習慣やなんかができていない日本情勢ですから、いまから始めて二年後に間に合うかどうかわからないというくらいになかなか複雑な問題だと思うのです。そういう点について金利の自由化の問題にすぐに関連をしてくるわけでございますけれども、大蔵大臣はあなたの在職中に少しめどをつける意思があるのかどうか、その点を少しはっきりしておいていただきたいと思います。
  87. 田中角榮

    田中国務大臣 公社債市場の育成は焦眉の急であるという考えでありまして、私自身もこれに手をつけたいという考えであります。、  それからあとの金利の自由化の問題とか、いろいろな問題がございますが、こういう問題は、非常に広範に影響がある問題でありますし、非常にこまかいバランスも考えなければならぬ問題でありますので、検討いたしておる段階でありまして、現在申し上げられるのは、公社債市場の育成というものはどうしてもやらなければいかぬ。こういうものの発行ということは、公社債発行というものに一つのきっかけを与えるものだとも考えておるのでありまして、私自身も、これから見ていていただければ——私いつまで現職にととまるかわかりませんが、いずれにしても一日もゆるがせにできない問題であるという考え方ではおります。
  88. 堀昌雄

    ○堀委員 ともかく非常に影響は大きいのですけれども、それをおそれておってはできないし、私さっきちょっと全体の経済情勢の分析の中で申し上げたように、今年は比較的金融がゆるむ時期だと思うのです。この時期にやらなければもうできないと思います。日本は一回ゆるんだらまた必ず締めなければならないときがくるのです。だからその時期というものは、私は少なくとも本年中だというふうに考えておりますが、大臣どうですか。そういう金融のゆるんだときでなければできない。そうすると金融がゆるむのは今年中が一番ゆるむ状況ではないかという判断に立ちまして……。
  89. 田中角榮

    田中国務大臣 大体大筋の見方は同じです。
  90. 堀昌雄

    ○堀委員 それでいまの二つ、三つ目は終わりまして、最後に投資信託についてちょっとだけ触れておきますが、実はいよいよ本年度から額面割れの投資信託の償還が起こる年になってまいりました。私もこまかくつぶさに調べてみましたけれども、前半のほうはややまだいいようでありますが、実は後半にまいりますと、現在の基準価格三千円台のものがずらっと並んでおるわけです。これは実はたいへんな問題なんです。時間がありませんから私のほうから申し上げますけれども、投資信託の応募の実情を調べてみると、一口ないし二口という応募者が全体の七七%を占めておる。一口五千円から一万円でありますから、実に零細な大衆が投資信託に参加をしておるということは明らかなんですね。そこで、私どもは、これらの零細な人たちが五千円のものだと思ったものが、三千五百円やそこらで償還をされたりするようなことは非常に困ると思うのです。こういった善意の投資家に対しては、たいへん気の毒だと思うのです。そこで、これに関連して二、三ちょっとお伺いをしておきたいのですが、一年償還を延期するという問題が出ております。後半からのものですから、来年の後半までにかかるので、それは市場の状態はよくわかりませんけれども、しかし私は、どっちにしても、いま三千円台のものが、一年延長して額面を回復したりする可能性は皆無であると判断しております。しかしそういう人たちがどこかで救済される方法というものを政府としては真剣に検討を進めるべきである、こう考えますけれども、それらについては何かお考えがございますか。
  91. 松井直行

    ○松井政府委員 お答え申し上げます。幸いにして二月、三月にはまだおっしゃるとおり、元本割れの償還というものはございません。下半期になりますと、現在の株価の状態ですと、相当悲観すべき基準価格になると思います。約款上は五年の運用でございまして、委託会社が投資家のために有利と認めるときには一年延長してもいいという約款がございますので、委託会社の判断が正確に確実に行なわれるということならば、あえて反対しなくてもいいような約款に、一般的にはなっておりますが、この問題につきましては、大蔵省といたしましても、そのときの情勢等を判断いたしまして、慎重に検討いたしたいとは思っております。たとえば、やむを得ず一年延長する場合ということを考えますときにも、いまおっしゃいましたとおり、従来どおりの委託会社あるいは受託銀行が信託報酬の全額をファンドからもらうとか、あるいはその延長されたファンドから証券を売買する手数料を全額取るというのはあまりにひどいではないかというのが感覚としてございますので、これらの問題につきましては、現在委託会社、受託銀行等につきまして、どうすれば受益者の利益になるかということを専心考えておるところでございます。一年延長いたす措置をとるにいたしましても、おりた人、おりたいといいますか、五年なら五年でやめたいという人は、普通の償還のときと同じ条件で脱出できるという自由選択権を与えておるわけでございますので、そこは、延長したからといって、みな待つというわけのものでもないと思います。先生いつかどこかで御提案しておられました、脱退するにしても、何かもう少し有利なところ、たとえば次の新しい投資信託への乗りかえ等について、ある種の恩典といいますか、ということも考えられないかという御提案があったやに私伺っておりますが、これらの問題も含めまして、現在委託会社等で慎重に検討いたしております。どうすれば一番受益者に有利に、御迷惑をかけずに済むものか、かつまた受益者がどの方法を選ぶかは自由選択権で選べるという場合をいろいろ広く提供するということが受益者の保護に徹するゆえんであろうと思いますので、先生がおっしゃいました方向で検討を進めたいと思っております。
  92. 堀昌雄

    ○堀委員 国鉄が入ってきたようですからちょっと国鉄に伺いますが、あなたのほうではこの前、利用債とか縁故債、昭和三十九年はこれは大体両方、その他合わせて二百五十億ぐらいを何とか消化しておったようですが、今度は特別利用債というものができて、これが六百八十八億、本年中にこれを消化をしなければあなた方のほうの三千億という第三次輸送計画のスタートを切れないことになるのじゃないかと思うのですね。一体六百八十八億もあなたのほうは消化できる自信がありますか。
  93. 長瀬恒雄

    ○長瀬説明員 お答えいたします。私どもといたしましては、この資金を何とかして消化することにつきまして努力いたしております。特に政府関係にも御協力いただきまして、何とかしてこれを全額消化するその方法につきまして、目下いろいろと検討いたしております。私どもとしては消化できる見込みでございます。
  94. 堀昌雄

    ○堀委員 あなた、消化できる見込みだと言いますが、二百五十億だってこれまでたいへんだったんじゃないですか。簡単に二百五十億消化できたんですか。昭和三十九年二百五十億縁故債、四十年が二百三十億ありますよ、新たに。だから六百五十億ほど買ってもらうのですよ、いまの資金情勢の中で。さっきの大臣理財局長かの答弁では、買ってもらうところは鉄道関係のところだ、これもひどい話だと思うのですよ。要するに、おまえのところ、これを買わなかったらあとは知らぬぞというような売り方をするということになれば、まことに遺憾だと思うのですがね。しかし、そんなことでもしなければ、六百五十億もの債券が、あなた売れると思いますか、いまの日本経済情勢の中で。ここであなたが答弁しておることは重大なんですよ。よろしいですか、非常に重大なことですからね、これは。売れなかったときは、いまあなた売りますと言ったら、責任とってもらわなければならぬ。ほんとですか。ほんとに自信ありますか、局長。きょうは時間がありませんから、二日の日にもう一ぺん出ていただいてこの問題をやりますが、要するに、どういうところへどういう形で売るのかという具体的な計画も示してもらいたいと思うが、どうですか、自信ありますか。その点もう一ぺん責任ある御答弁をいただきたい。
  95. 長瀬恒雄

    ○長瀬説明員 ただいま二百五十億という三十九年度のお話がございましたが、現在のところでは、三十九年度の分につきましては全部消化しております。   〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕 四十年度の分につきましては、ただいまのお話のように、たとえば縁故債、あるいは利用債的性格でもって行なう、あるいは、さらに先ほどお話があったと思いますが、関係の縁故に消化していただく。この条件につきましては、日銀の担保適格債というような条件ももちろんあったと思うのであります。私どもといたしましては、何とかしてこの消化に努力いたしまして新長期計画の遂行に支障ないようにいたしたいと考えております。
  96. 堀昌雄

    ○堀委員 適格担保債の問題は、きょうは時間がありませんからもう一ぺんやります。もう一ぺんやりますけれども、大臣に特に申し上げておきたいことは、今度日銀法の改正が当委員会に提案になるわけであります。やはり私どもは、さっき大臣のおっしゃるように、日銀は日銀としての筋を通したい問題はあると思うのです。だからあなた方の政策的な希望も私はわかりますよ。わからぬではないけれども、私はやはり金融というものには一本筋が通っていないと、この筋があまり曲げられるようなことは望ましくない、こう思うのです。その点、大臣も同感だろうと思う。筋を通すということについて反対のあろうはずがないと思うのです。ですから、どのように処理をするかは別としても、私どもが外から見て、まあ一応筋が通ったということの範囲で処理をしていただかないと困ると私は思うのです。これは、あらためてまた日銀を呼んで、日銀に対しても歯どめをかけますけれども、この点はやはり筋を通していただく。これが日本金融を正しく守っていく道だと私は思いますが、この点ちょっとたいへん御忠告めくような申し方で恐縮でありますが、十分心にとめて処理をしていただきたい。銀行局長及び理財局長もいまの発言についてはひとつ十分に心にとめていただいて、きょうは時間がありませんからこれで終わりますが、この問題はあらためて取り上げて、日銀も呼んだ上で議論か早急にやらしていただく考えでおりますから、ひとつお含みをいただきたい。  終わります。
  97. 吉田重延

  98. 竹本孫一

    竹本委員 物価の問題は、経済の問題、予算の問題を考える場合に一番大切な問題であります。したがって、私はきょうは物価に関する理論的な問題も取り上げたいと思いましたけれども、非常に時間が制約されておりますから、一、二具体的な問題を中心に意見を述べることにいたします。  まず最初にお伺いしたいのでございますけれども、消費者物価はことしは相当上がるというのが一般の心配でございますけれども、政府のほうでは去年の消費者物価が大体どれだけ上がって、ことしはどれだけ上がる見通しであるかをお伺いしたいと思います。
  99. 田中角榮

    田中国務大臣 三十九年度は大体四・七、八%程度になるのではないかというふうに考えます。四十年度は少し下がって四・五%くらい、それ以内に押えたいという考えであります。
  100. 竹本孫一

    竹本委員 その場合に、いわゆる公共料金が一年のストップの期限がきれた場合、それはどの程度に上がるのかということが前提になっておりますか。その公共料金の問題、それから国鉄の運賃の問題はどういうふうに織り込まれておるのか、医療費はどの程度織り込まれておるか。要するにことしの四・五%に抑えたいというような大臣のお話でございましたけれども、その場合の具体的な内容として、公共料金の問題や国鉄運賃の問題、医療費の問題がどの程度の見通しの上に立っておるのか、ひとつお伺いしたい。
  101. 田中角榮

    田中国務大臣 米価の植上げ及び医療費の値上げということはもうすでに発表されておるわけであります。そのほか、国鉄運賃の値上げということについては、現在のところは上げないという考え方をとっておるわけであります。
  102. 竹本孫一

    竹本委員 私は、国鉄の運賃は、初めはある程度引き上げを見込んでおったのじゃないかと思うのです。そうすると、それだけの分は消費者物価は上がらなくて済む、こういうことになりますか。
  103. 田中角榮

    田中国務大臣 国鉄の運賃の値上げは見ておりません。
  104. 竹本孫一

    竹本委員 この問題は一応それだけにいたします。  そこで、私の提案になるかもわかりませんが、消費者物価指数の問題ですけれども、消費者物価指数は七%だとか、五%だとかいろいろ意見が出るわけですけれども、この場合に庶民の一般の生活の実感ということから考えてみますと非常に違うと思うのですね。政府はあるいは消費者物価指数で見れば五%だ、七%程度しか上がっていないというけれども、自分たちの生活の実感の中では、あるいは倍になる、あるいは二割上がったというようなことで国民の生活の実感と、それから指数の動きとが非常に開きがあると思うのですけれども、そういう点、大臣はお知りになっておりますか、どうですか。
  105. 田中角榮

    田中国務大臣 物価指数は全部平均をしてとっておるわけでありますから、政府が発表しておる物価指数が間違いはありません。ただ感じの上では下がるということがあまりない、非常に上がっておるのじゃないか、特に物価問題をだれでもが取り上げておりますので、物価が下がった、安定をしたというような感じを持たれないで、上がった上がったという感じを庶民の中では持ちやすいというふうには言えます。
  106. 竹本孫一

    竹本委員 そこでひとつ大臣にお考え願いたいと思うのですが、私はいま政府の物価指数に間違いがある、インチキがあるというわけじゃありません。ただし国民の生活の実感と非常にかけ離れておる。これは事実であります。そこで問題はこの指数のとり方自身に、そこに間違いがあったのじゃないか、あるいは十分でないのではないか。たとえばこの物価指数の問題に地価の問題がどの程度ウエートを置かれておるか。特にウエートの問題ですけれども、あるいに教育費や教養費といったようなだんだんにその額がふえてくる、そういうものの面では非常に他が上がってくる。したがって負担がふえてくる。こういうような生活のほんとうの実態に即したウエートの置き方でなくて、ウエートのとり方が当時としては一応もっともであったかもしれませんけれども、少なくとも所得もだんだんふえていろいろと教養費やその他の金も要る。地代は予想以上に上がる。こういったようなその後の経済界動きというものとそのウエートの置き方に非常な開きがある。したがって、これは政府の数字を信頼してもらう上からいっても、消費者物価指数の要素にそれぞれ一ぺん再検討してみる必要があるじゃないかと私は思うのですけれども、そういう考えはないか。
  107. 田中角榮

    田中国務大臣 生活の質が変わっておるということで指数のとり方、ウエートの置き方を変えたらどうか。これは私もそういう発言をしたことがあります。どうもいまの三十五年からやっておるようなものよりも、もう少し新しい指数をとったらどうかということを経済閣僚会議でも発言をしたり、また事務的にも検討をしたみたことがありますが、どうもそういうことをやるときには、物価が下がるようなときにやらないと、政府がごまかすためにやったのだ、こういうふうにとられたら困るので、やはりいままでやっておる指数のとり方、ウエートの置き方が正しいでしょう。土台を置きかえると統計数字が全く別なものになるということで、いままでは取り上げなかったということであります。私自身は、その内容が変わっておるのだから生活の質が変わっておるということで、もっと別なとり方、その基準生計費というような面からもとることもできるでありましょうし、われわれの生活の水準に線を引いて、それを起点にするという考え方もありますし、もう少し新しい角度で検討してみてはどうかということを発言もし、また自分も考えたことはあります。
  108. 竹本孫一

    竹本委員 これはぜひひとつ生活の実態あるいは実感に沿うことのできるような内容構成に再検討をしていただきたいと希望申し上げておきます。  次に移ります。次にやはり物価の問題と関連して中期経済計画のことを簡単に申し上げて伺いたいと思うのでございますけれども、それは中期経済計画をこの際再検討する必要があるというのが私の結論であります。その第一の理由は、いろいろ言われますけれども、いままでの所得倍増計画というものをそのまま引き継いでそれを再編成した程度でございまして、何ら性格に変わりはありません。ところが実際いままでのものは量的に申しますと、御承知のように高度成長で、これは時間がありませんから論じませんけれども、過去十年間一二・三%くらいの勢いで成長率を示しておる。非常に自慢になる面もありますけれども、行き過ぎた面もある。これは議論の余地はありませんが、特にその内容を考えてみますと、昭和三十年と三十八年を比較してみた場合に、日本の場合とアメリカの場合をちょっと簡単に比較して申し上げますと、日本の場合には耐久消費財が八・五倍になっております。三十年と三十八年ではアメリカの場合には一・四五倍程度にしかなっていない。これが日本ではしかも中心になっておるということであります。次に資本財が四・六倍になっておりますが、アメリカの場合には一・三倍ぐらいにしかなっていない。さらに非耐久消費財が日本の場合には一・九倍になっておりますけれども、アメリカは一・二倍くらいにしかなっていない。以上を平均したものになるでしょうけれども、原材料は日本は二・九倍になっておって、アメリカは一・二四倍にしかなっていない。そういう点から考えてみますと、一方から言いますと家庭電気製品が生産過剰になるということの原因もよくわかりますけれども、何よりも日本経済の組み立てあるいは所得倍増計画といったようなものの内容が耐久消費財あるいは資本財というものを中心に伸びてきておるのだということであります。そういう意味から私どもはいまの経済の高度成長の中における不況というものを理論的に説明したいと思うのでございますけれども、これは時間がありません。しかしいずれにいたしましても、アメリカの場合が何も参考になると思いませんけれども、大体一・二倍や一・三倍にしかなっていないときに、日本は少ないというものはその辺で、あるいはその倍くらいで済んでおるけれども、耐久消費財のごときは八・五倍になって、アメリカの七、八倍になっておる。そういう調和のとれていないでこぼこが、日本の所得倍増計画を必要以上に混乱させておる。そういうふうな意味で、これはあとで申し上げますが、当初の計画化の問題とも関連しまして、量的な面からいってもまた内容構成からいっても、中期経済計画というものは、いままでのものをそのまま引き継いだのではそのまま矛盾を繰り返すだけで、したがって物価を上げることにしか役立たない。物価を下げるという意味から考えてみても、あるいは上げないという意味から考えても、この中期経済計画といろものは、性格改造をやるという意味の再検討を加えなければならない。  もう一つの点は、いま計画しておられる社会開発の問題でございますが、これも私どもが理解するところでは非常に話が不徹底であります。内容が不明確だという点は一応別にいたしましても、経済計画にプラスアルファで社会開発計画を立てるのだ、こういうような考え方が非常に強く出ている。しかしそれは間違いであって、プラスアルファの問題ではないのです。計画そのものの、だれかが申しました、ひずみということは正しくない、不正と書くのだということを言った人がありますけれども、そのとおりで、いままでの倍増計画のひずみというものは、いままでの倍増計画の性格そのものが間違っているのだから、それを社会開発の見地から性格改造をやらなければだめだ、社会開発というのは、単に置き忘れていたものを少し思い出したようにプラスアルファで備えつければよろしいといったものではなくて、これからの政治、これからの経済計画の根本性格に改造を加えるものでなければならぬ、私はこういう考え方に立っているわけですが、ひとつそういう意味で中期経済計画というものはこの際再検討をしなければいかぬ。いまの量の問題からいたしましても、すでに御承知のように、またたびたび大臣も言われますけれども、戦後の敗戦日本としては、経済を高度に成長させることがある意味において安定させる方法だったと思うのです。しかしこれからはそれが逆になりまして、安定させられなければ成長はしないのだ、そういう点から見ても、やはり性格を転換しあるいは改造しなければならぬ。いろいろな角度から、物価の問題とも特に関連いたしまして経済計画、特に中期経済計画というものは、社会開発の新しい理念も織り込んで、根本的に新たな見地から再検討すべきだ、その御意思があるかどうか。
  109. 田中角榮

    田中国務大臣 中期経済計画は、総理大臣が諮問をしまして答申が出たわけであります。また中期経済計画を基礎にしてこれからの経済政策を立てようということになっておるわけであります。自由民主党でも非常に議論がありました。政府が最終的にこれを閣議決定するまでの間に、党側の意見も十分聞いたわけでありますが、まあ中期経済計画は、諮問をしそれを受けて立ったというものでありますから、政府はこれを閣議決定をしよう、しかしこれが実行に当たっては非常に弾力的にものを考えて、いままでの過去のデータをそのまま使ってそのままの引き延ばしであってはならないし、世界情勢の変化、国内的な問題も十分把握をしながら一つのものさしとして、中期経済計画を止揚しながら、実情に合うように弾力的に各般の施策を行なおうということで、相当、五カ条でありますか、条件をつけて、閣議決定をしたわけであります。私も中期経済計画につきましては、これは非常に高度の機械が出した結論、まあ機械から出たものを自動的にタイプにしたわけではありませんが、その機械に提供をしたデータというものは、いままでのデータである、これを機械的に出たものをそのまま無修正で出してくれば、いままでの延長で、ひずみもそのまま大きくなるじゃないかということでございますが、機械から出たものを機械的に作文をしたのではなく、これは多少手を入れたり、いろいろないい知恵が加わって、中期経済計画というものの答申になったわけであります。しかしいずれにしても、非常に高い成長率だった当時のデータがそのまま基礎になっておるということは事実でありますので、安定成長期における長期経済の見通しを立てる場合には、これを全部これでなければいかぬというには少し問題があるので、十分中期経済計画を読んで現実に合うようた施策を立てようという考えであります。ですから、中期経済計画をもとにしてまた新しい中期経済計画をつくるというところまでは考えておりませんが、これが運用に対しては遺憾なきを期すという党側の注文もありますし、われわれもそういう気持ちでおりますので、このひずみのあるまま引き伸ばそうということは考えておりません。
  110. 竹本孫一

    竹本委員 結論を急いで——時間が足らないのでどうも不徹底になりますけれども、いま大臣も問題のあることを認めておられましたが、とにかく機械が計算したというと何だか正確のようでございますけれども、いまのお話のありましたように、それに与えるデータ自身が非常に問題がある一のですから、これはどうしてもこの際根本的に、単に条件をつけるということでなくて、やり直すべきであると思いますが、そのことを希望して次に移ります。  最後にもう一つだけ。それは物価の問題について、これが一番重要な課題であるということを総理も申され、大蔵大臣もたびたび申されております。それから政治の姿勢として、昨日も総理大臣は強調されましたが、国民とともに政治の問題を解決していくのだということをたびたび言われました。そこで私一つ提案をしたいのでございますけれども、いま国民の一番重大な問題、一番悩んでおる問題は、先ほど来お話のありました物価の問題であります。そこでこの際、国民的規模における構想を練ることのできるような、非常に構想の大きい、まあ物価安定審議会と申しますか、そういうものをひとつ政府につくられたらどうか。これは国民とともに進むという総理のお考えを具体的に生かす方法でもあります。次に超党派の努力ということが最近言われるようになったことは非常に喜ばしいことでありますけれども、問題のあります外交についてはなかなか困難が多いと思いますけれども、物価の問題に関しましては、どの党派といえども物価が上がってよろしいということはありませんので、これは結論については大体一致しております。そういう意味で、超党派の努力をひとつ結集するといういいテストケースになるではないか。さらにもう一つの理由があります。これは物価の問題につきまして、民主政治で国民を大切にする、主権者であるということをよく言いますけれども、このいまの物価の問題は、政府も消費行政を少しこれから強化するということを言っておられるわけでございますけれども、実際において、具体的に国民の声あるいは消費者の声あるいは主権者である庶民の悩みというものを政治に反映するルートが十分できていない。そういう三つの観点から、私はこの際ぜひひとつ物価安定審議会というようなものを構想せられたらどうか、これは佐藤内閣らしい一番いい取り上げ方ではないかと思うのであります。特にその点私申し上げますのは、理由はいま三つ申し上げましたけれども、先ほど来お話のありました貯蓄を奨励するといっても、結論だけぶっつけて、貯蓄をしてもらわなければ困るのだというような持っていき方では、これは問題になりません。貯蓄を奨励するにしても、消費を合理化するにしても、あるいは物価の問題に国民協力を仰ぐという点からいたしましても、これは国民的規模でこの問題を取り上げて、国民とともにひとつ超党派でみんなが協力して物価の安定に全部が力を合わせる、こういう姿勢が絶対に必要だろうと思います。こういう問題についての大臣のお考えをひとつ承りたい。
  111. 田中角榮

    田中国務大臣 それは私も考えております。私自身が物価を抑制するには貯蓄増強をしなければならないと言っても、あなたがいま指摘されたように、それだけを取り上げると非常に反対論があるわけであります。ですから、物価を抑制するにはどうすればいいのかという問題を端的に申し上げますと、消費者物価が上がるということは高度成長過程における消費需要の堅調ということが一つありますし、生産性の格差が存在する中で賃金所得の上昇が非常に急だったということ、賃金の平準化が非常に急だった、こういうもので原価を押し上げておるといっても、なかなかそれをとめるなどということを言おうものならたいへんなことになるわけであります。ですから、遠回しに、コストを下げようとか、貯蓄をしようとか、自己資本比率を上げるとか、こう言っておるのですが、私は、やはりほんとうに物価問題と取り組まむならば、あなたがいま指摘されたように、国民的な立場からこうしなければならないのだ、しかし摩擦を避けながらやるには、一体どういう具体的な方法でやるのかということを真剣に考えることが必要だということを考えております。いままで内閣で物価に対する経済閣僚懇談会をやっても、公共料金を押えるとか、流通機構をもっと整備するとか、そんなことしか出てこないのです。ほんとうに貯蓄をやろうとか、自己資本比率を上げようとか、コストダウンをやろうとか、ある時期において、まあいろいろ申し上げることはありますが、どうも私自身でも非常にはっきりとものが言えないように、これは国民に対してほんとうに物価を安定させるために協力を願うという姿勢に対しては、いろいろ問題がございます。ですから、物価安定審議会をつくるかどうかは別にしまして、今度経済企画庁の中に生活局というようなものをつくって、消費者物価の問題と正面から取り組む、こういうことでありますが、どうも官庁の内部だけの問題ではなかなか片づかない問題であって、国民の共感を呼びながら、短い間でもひとつ努力をして物価抑制策を講ずるということに踏み出さざるを得ない段階だと思います。
  112. 竹本孫一

    竹本委員 関連して申し上げますが、いま企画庁の中に一つの局をつくるというお話が出ましたが、全く同感であります。その意味で、私の考えとしては、中央にそういう審議会をつくるとともに、各府県にはどうしても物価安定協議会というようなものを、——仮の名前ですけれどもつくって、やはり婦人会、主婦の人たちにもあるいは労働組合の人にも全面的に参加してもらって、要するに国民的な規模でこれをぜひ取り上げるということにしていただきたい。これは強く私は要望しておきたいと思うのであります。  さらに、この問題に関連いたしますが、この前私資料を一つ要求をいたしまして、要するに金融費の比較を出してもらったわけです。この資料を、私から言えば不十分なんですけれども、所得政策という問題もこれからいろいろ議論になる、現になっておるわけなんでございますけれども、これもその審議会において一ぺんよく検討してもらいたい。私が調べたところによりますと、最近の賃金が上がって生産性以上になったというような時期、それからスケールというようなものは、あまり問題にならないで、むしろ問題が大きく騒がれ過ぎているといったような関係になっております。またそういうデータも持っております。しかし一番大きな問題は、賃金よりもむしろ金融費、資本費の問題であろう。最近出た政府の白書を見ましたけれども、たとえて申し上げますと、昭和三十一年と三十八年の上期までがいま出ておりますが、それによりましても、金融費用というものは当時わずかに一二%であったものが、これは主要企業における付加価値の構成の変化の問題でありますけれども、その一二%のものがいま一七%に上がっております。減価償却は一六%のものが一九%に上がっております。こういうふうにして資本費、金融費というふうなものが猛烈に上がっておる。こういう問題について、やはり私どもはこれと関連して、投資計画会議といったようなものも考えを持っておるわけですけれども、とにかく資本の電極だとかむだだとかあるいは稼働率その他を考えたほんとうに効率的な運用といったような問題について、日本の資本の活用といいますか、運用といいますか、そういう問題についてエフィシェンシーをあげるように非常に努力をしなければならぬ問題があります。こういう問題もやはりその審議会においては基本的な立場で取り上げなければならぬと思うのです。ただ感情で賃金を押えることがどうだ、一つの名案ではないかといったような非科学的な議論ではなくて、どこにほんとうに——きょうは議論の余地がないのですが、物価値上がりのほんとうの原因はどこにあるかということを、審議会においては一つの部門をつくってもう少し理論的に科学的なデータに即して論議すべきだと思います。そういうことも含めてぜひ物価審議会、地方における安定協議会といったようなものを実現していただいて、国民全体の協力の中でこの問題にはもう少し真剣に、かつ科学的に取り組むようにしていただきたい。  希望を申し述べまして、私の質問を終わります。
  113. 吉田重延

    吉田委員長 次会は来たる二月二日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十二分散会