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1965-06-18 第48回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年六月十八日(金曜日)    午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 加藤 高藏君    理事 有田 喜一君 理事 藏内 修治君    理事 中川 俊思君 理事 多賀谷真稔君    理事 滝井 義高君 理事 細谷 治嘉君       田中 正巳君    田中 六助君       中村 幸八君    野見山清造君       三原 朝雄君    山田 彌一君       伊藤卯四郎君    西尾 末廣君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         通商産業大臣  三木 武夫君         労 働 大 臣 小平 久雄君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局次長) 鳩山威一郎君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      森  五郎君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  石黒 拓爾君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         自治事務官         (財政局財政課         長)      岡田 純夫君     ————————————— 六月七日  委員受田新吉辞任につき、その補欠として伊  藤卯四郎君が議長指名委員に選任された。 同月八日  委員中村寅太辞任につき、その補欠として大  坪保雄君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員澁谷直藏君、廣瀬正雄君及び伊藤卯四郎君  辞任につき、その補欠として山田彌一君、田中  正巳君及び西尾末廣君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員田中正巳君、山田彌一君及び西尾末廣君辞  任につき、その補欠として廣瀬正雄君、澁谷直  藏君及び伊藤卯四郎君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策基本施策  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 加藤高藏

    加藤委員長 これより会議を開きます。   〔委員長退席中川(俊)委員長代理着席
  3. 中川俊思

    中川(俊)委員長代理 この際、過日、福岡山野炭鉱爆発事故実情調査のため本委員会から参りました派遣委員より、報告を聴取することにいたします。加藤高藏君。
  4. 加藤高藏

    加藤(高)委員 去る六月一日、福岡県嘉穂郡稲築町地区山野鉱業株式会社山野炭鉱で発生した災害事故につき、御報告を申し上げます。  派遣委員は、私以下現地参加委員を含めて十一名であります。  私ども一行は、六月二日夜羽田空港を出発、同日博多に一泊し、翌三日早朝山野炭鉱に向かい、現地においてまず災害対策本部長である古屋内閣官房副長官より概略の説明聴取後、原社長労働組合長職員組合長よりそれぞれ当時の模様及び本委員会に対する要望を聴取したのであります。  その後、災害の発生した第一立て坑坑口において犠牲者の冥福を祈り、次いで病院に負傷者をたずねお見舞いを申し上げてまいりました。  山野炭鉱は明治三十一年三井鉱山株式会社により開発され、最盛期には年産百万トンをこえるわが国における代表的炭鉱として活躍したのでありますが、昭和三十八年九月第二会社山野鉱業株式会社として再スタートしたのであります。  山野炭鉱筑豊炭田に属し、鉱区は東西約四・五キロ、南北四キロに及び、古第三紀層で構成され、炭層直方層群大辻層群に分けられ、二十数枚の累層であり、炭層東西に向け十六度程度の傾斜をしております。  現在の稼行炭層直方層群の三尺五尺累層中の杉谷五尺、ドマ八尺層、海軍八尺層であり、また昨年四月より西部の大焼累層開発のため大焼水平坑道と大焼卸の二坑道を掘進中であり、大焼卸災害発生当日までに延び先はドマ八尺層を通過し、海軍八月層に着炭していたのであります。埋蔵炭量理論埋蔵量として約四千万トン、実収炭量約千六百万トンといわれております。炭質は弱粘結瀝青炭であり、揮発分約三六%、灰分一二・五%の原料炭であり、製鉄、ガスコークス用に適しております。  生産状況昭和三十九年度四十八万七千トン、そのうち約六五%が原料炭、約三五%が一般炭であります。本年四月は約四万トンを生産し、能率も高く順調に操業していたようですが、この炭鉱は従来からガス発生量が高く、また災害発生率も高いので、鉱山保安法による甲種炭鉱に指定されていたのであります。  労働者数は、職員を含め、四月末現在で千九百七十四名でありますが、うち約七百二十九名が請負組夫であります。  操業状況は第一立て坑(運搬・人気坑口)、鴨生本卸坑口人気坑口)及び第二立て坑排気坑口)を有し、六百九十メートル坑道、八百メートル坑省基幹水平坑道として杉谷部内及び海八部内の二区域に三個の長壁式採炭作業場を持ち、さらに今後の採掘現場をつくるため、立て坑付近より新かに大焼層開発のための坑道を掘さく中であったのであります。なお本炭鉱は最近の周辺炭鉱縮小閉山により湧水量が激増し、現在約一分間で八トンの揚水を行なっていたのであります。  次に、災害状況について申し上げます。  災害当日一番方として本坑に入坑した者は総数五百五十二名であり、罹災者杉谷部内が最も多かったのであります。災害発生個所坑内探検模様等から杉谷部内及び大焼部内と推定されておりますが、災害発生原因等につきましては、ガス突出に基づく爆発によるものと推定されておりますが、現在関係者によって調査中でありますので、調査の結果を待つことにいたします。  災害発生は六月一日午後零時四十分ごろと推定されております。  災害発生後直ちに救護隊三班を編成し、二十二名の者が午後二時三十分に入坑し、その後周辺田川炭鉱小舟炭鉱等より七班五十九名の救護隊により探検及び救出作業を行なう一方、各地より救護隊が到着して協力した結果、六月三日現在、二百三十七名のとうとい人命が失われたことが判明したのであります。なお、重軽傷者は三十八名であります。  われわれは、現地において、臨時山野炭鉱災害対策本部責任者より災害状況を、山野炭鉱の労使よりおのおの報告要望を聞いてまいりましたが、要望のおもなるものは、罹災者遺家族援護対策についての要望とともに、保安確保に万全を期して再びこのような災害を起こさせないようにという趣旨のものであります。  罹災者に対しては、死亡者一人につき直轄組夫とも弔慰金五十万円が支給され、労災補償遺族補償費葬祭料を合わせ、山野鉱業分総額一億二千八百六十七万円、平均百四万六千円、下請関係分総額一億一千三百四十四万円、平均九十九万五千円となっております。  災害の規模は比較的小さいといわれておりますが、死亡者二百三十七名という戦後第二番目の死者を出したことは、関係者にとっても大きなショックであり、われわれも保安確保なくして生産はあり得ないという感を深くいたしました。  今回の災害に関し、現地において関係者と会合の結果から報告すべきことを二、三申し上げます。  第一は、今回のガス爆発犠牲者二百三十七名のうちに、本鉱員でない下請業者労務者すなわち組夫が百十四名もいたことであります。これは山野炭鉱三井鉱山の親会社と分離した第二会社とはいえ、ビルド鉱一つであるため、生産合理化、コストダウンに力を入れていたことはいなめないことであり、労務者確保困難性と相まって、好むと好まざるとにかかわらず、請負組夫の導入によって生産を維持していたことであります。  第二は、これら組夫会社に直接の関係がなく、したがって作業及び災害に対しても会社側に直接の責任がないことと、移動率が高い組夫の中には炭鉱に対する知識の乏しい人も多いため、災害発生を高める一つ原因となっていることであります。すなわち山野炭鉱においては、労務者総数約千九百七十四名のうち、組夫関係労務者が七百二十九名おり、今回の事故において、災害当時の入坑者総数五百五十二名中二百名以上が組夫であり、とうとい犠牲者二百三十七名の半数が組夫であることは、大いに注目すべきことであります。  以上をもって報告を終わりますが、最後に一言申し上げます。  最近、相次いで大災害が比較的優秀であるといわれていた炭鉱に発生しておりますが、本委員会といたしましても、今国会における本会議の決議の趣旨をすみやかに生かすとともに、炭鉱保安確保について万遺憾のない対策を確立するとともに、安全を犠牲にしては石炭鉱業再建はあり得ないのでありますから、率直に現在進められている石炭政策についても問題点を提起して、石炭鉱業の真の安定をはかるための方針の確立を、委員会各位に強く要望する次第であります。  なお、この際、緊急に保安確保に対する諸措置を講ずるとともに、特に予算上の措置を講ずるよう強く政府に要請する次第であります。  以上、御報告を終わります。
  5. 中川俊思

    中川(俊)委員長代理 この際、暫時休憩して、午後零時三十分より再開いたします。    午前十時四十分休憩      ————◇—————    午後二時二分開議
  6. 加藤高藏

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  まず、石炭対策基本施策について政府の所信を承ることといたします。三木通商産業大臣
  7. 三木武夫

    三木国務大臣 きょうは私には初めての特別委員会でございます。特別委員各位石炭問題の解決に非常な御努力を願っておることに対して、敬意を表するものでございます。私は山野炭鉱災害の直後に通産大臣に就任をいたしまして、その大災害のために多数の人命を失ったことに対してまことに遺憾に考えまして、この機会に深く哀悼の意を表したいと思います。  石炭鉱山災害は非常にひんぱんに最近大きな災害が起こっておりますので、これに対しての保安対策には根本的に検討を加えたい。本日の閣議におきましても、取りあえず緊急対策として、保安体制保安施設の強化に約八億の予備費を支出することをきめたわけでございます。また一方においては、この保安対策石炭産業それ自体のあり方とも非常に関連をいたしますために、石炭産業自立、安定の産業としてやっていけるように、石炭産業政策の面からと保安対策の面から、今後、あるいは石炭に関する保安協議会あるいは石炭鉱業に対する審議会、近くできる総合エネルギー調査会等にもいろいろ諮問をいたしまして、産業政策の面からと、また一方においては保安対策の面から、石炭問題に真剣に取り組みたい所存でございますので、特別委員各位の一そうの御協力をこいねがう次第でございます。
  8. 加藤高藏

  9. 小平久雄

    小平国務大臣 今回はからずも労働大臣を仰せつかりました。今後皆さんの御指導にあずかる点が非常に多いと思いますが、何とぞよろしくお願い申し上げます。  山野事故その他鉱山保安の問題につきましては、労働者としましては広く保安行政一般をあずかるという立場から、労働省といたしましても通産省に御協力を申し上げつつできるだけの努力をいたしたい、かように存じておる次第でございます。今後何分ともよろしく御指導にあずかりたいと思います。
  10. 加藤高藏

    加藤委員長 続いて質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。田中六助君。
  11. 田中六助

    田中(六)委員 ただいま三木通産大臣小平労働大臣から、最近の炭鉱災害を中心とする政府方針並びに御決意について非常な理解ある御発言がございまして、私ども委員会としても非常に喜んでおります。しかしそういう決意もさることながら、これが実行に移されなければ何にもなりませず、ことしになりましていままで三つの大きな災害がわれわれの前に展開しております。山野の場合は特に黒字経営がむしろ大きな悲しいデータとなっている状況でございまして、これらにつきましても私ども責任を痛感いたしております。国会でたびたびこういう問題について討議が行なわれたにもかかわらず、保安面に対していろんなそごがあったのじゃないかという気持ちがいたしまして、私ども非常に責任を痛感いたしております。政府がこれから先ほんとうにこれに真剣に取り組み、諸災害をなくするためにはどうしたらいいか、こういう観点政府国会あげて検討すべきがわれわれのつとめだと思います。  まず私が通産大臣にお尋ねしたいのは、わが国エネルギー政策そのものほんとうに確立しているかどうか、その中の石炭政策というものがどういう地位を占めておるのかということは、たびたび通産省あたりでも検討なさっておりますし、言われてきておりますが、あらためてこの点、世界各国情勢を見ましても、石炭石油の対立の状況はすでにそれが解消いたしまして次の時点に進んでおりますし、そうなれば石炭対策における保安安全面でも十分対策が立てられますし、この際わが国エネルギー政策そのもの、あるいは政府がこれからとろうとする政策についてお尋ねしたいと思います。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 大きく申しますならば、石炭石油原子力、こういう方向エネルギーが世界的に動いておる傾向であることは事実でございます。しかしながら、原子力の発電にいたしましても、これがコストが下がっていくためには相当な時間がかかって、やはりそれまでの間には、ある時代時代によって、方向はそれであったとしても、時間的経過というものが要る。わが国においては、石炭エネルギーに占める割合というものは相当なウエートを持っている。あるいは国際収支の面からいっても、あるいは雇用の問題からいっても、今日そういう大きなエネルギーの革命が行なわれるといっても、石炭わが国エネルギー資源の中に占める割合というものは相当に重い。したがって、今後ある出炭目標というものは確保しながら、石炭産業というものを維持育成していくことが必要である、そういうふうに考えておる次第でございます。
  13. 田中六助

    田中(六)委員 いま大臣の御答弁のように、エネルギー政策の中に石炭の占める地位、つまり安定確保という大きな原則に立つならば、確かに政府のおっしゃるとおりにわれわれも納得するわけでございます。  次に、政府石炭調査団答申に沿って、昭和四十二年までは五千五百万トン、こういう一つ目標を立てております。この出炭確保するという目標でございますが、この五千五百万トン確保の数字的な根拠をお尋ねしたいと思います。
  14. 三木武夫

    三木国務大臣 実際は五千百六十万トンということに出炭目標がなっておるわけでございます。この数字はそんなに大きなものではないということでございますが、これがどのような計算で出たかということは、事務当局をして答弁いたさせます。
  15. 井上亮

    井上説明員 ただいまお尋ねの五千五百万トンの問題でございますが、五千五百万トンは、先生も御承知のように、第二次石炭鉱業調査団におきましても、この問題について種々論議をいたしました。これはやはり今後の石炭政策を考える上の一つ目標である。といいますことは、必ず固定的にこれを考えるものではないということでございます。石炭需要につきましては、先生も御承知のように、原料炭等につきましては年々需要が増大しております。しかもこの原料炭につきましては、未開発資源相当多量にあるわけでございます。そういうわけでございますから、今後そういった開発もございます。そういうようなことを考慮いたしまして、一つの将来の目標である、固定的なものではない。特にエネルギー事情は、非常に今日なお、大臣がただいまお話しになりましたように、重油の今後の将来性の問題、あるいは原子力産業の今後の発展の問題、いろいろ今後技術の開発に伴いまして、非常に可変的ないしは流動的な面が、ございます。そういった意味で、この五千五百万トンは将来の目標、固定的ではない目標ということで現在考えておるわけでございます。したがいまして、これは現実に具体的に積み上げて固定的にこう考えたものではなくて、可能性はございますが、そういうように政策的に配慮いたしまして考えられました目標であるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、現実の年々の生産計画につきましては、これにこだわりませんで、具体的に山別の適正な出炭計画、これを炭田別に総合いたしまして、全国的な出炭計画を組んでおる、そういうような実情でございます。
  16. 田中六助

    田中(六)委員 いま石炭局長は、弾力性ある目標が五千五百万トン一だというふうに言われたと私は解釈しているわけでございますが、第二次調査団答申の中でも、結局、昭和四十二年を石炭鉱業安定化自立目標にして、この四十二年には石炭鉱業経常収支黒字となり、その後累積赤字を漸次消去して自立への基礎を固めるよう集中的、計画的に実施するということを受けて立っているわけであります。政府はその後四十二年を前半とし、四十三年からをこの対策の後半期、つまり後期というふうに仕分けをしているようでございますが、具体的にこの総合エネルギー対策中の石炭対策として、いままで何か積極的な施策をとったかどうか。
  17. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように、第二次調査団答申に基づいて炭価引き上げを行なった。原則として電力用炭三百円、原料用炭二百円、トン当たり百九十七円ぐらいの炭価引き上げになっていると計算をいたしているわけであります。それから、国会の御承認を得て利子の補給を行ない、トン当たり二十二円程度改善効果がもたらされていると考える。それから鉱害の補助率引き上げトン当たり七円ぐらいの改善効果がこれによってもたらされる。平均いたしますと、トン当たり二百二十六円程度収支改善が行なわれた。具体的にやっていることはこういうことでございます。
  18. 田中六助

    田中(六)委員 この石炭鉱業調査団答申の中に、三十七年度から四十二年度まで設備資金約一千七百億円、整備資金約八百億円を必要とするという項があるわけで、ございますが、この点について石炭局長何か……。
  19. 井上亮

    井上説明員 今後の石炭産業設備投資の問題につきましては、第二次石炭鉱業調査団におきましても、年次別に慎重な想定をいたしまして、ただいまその線に沿いまして現実投資計画実行中でございます。大体石炭産業としましては、年間におよそ二百数十億程度投資をいたしまして、坑内坑道の拡充ないし維持をはかっていくというような体制で進めている次第でございます。
  20. 田中六助

    田中(六)委員 政府のいろいろな諸施策の一端を伺ったわけでございますが、現在、四十年度の政府予算のうち石炭関係費が約百六十八億円で、そのうちほとんどをスクラップ・アンド・ビルドの合理化推進に充てているようですが、あらゆる観点からこれにライトを浴びせますと、結局保安設備整備資金が約八億円ぐらいで、非常に足らないというふうに思いますが、この点お答え願いたいと思います。
  21. 森五郎

    森説明員 四十年度の保安融資に関しまして、石炭合理化事業団から無利子融資を四十年度予算で八億円もらっております。これは四〇%の補助でございますので、したがいまして、全事業量は二十億、御指摘のとおり若干足りないということでございまして、今度の予備費でそれに追加いたしまして、二億九千七百万円の出資金を増額いたしておるわけであります。これは五〇%の補助でございますので、これに伴う事業費はその倍になります。したがいまして、事業量全体といたしましては二十六億円と相なる予定になります。
  22. 田中六助

    田中(六)委員 大臣にお尋ねしたいのですが、先ほど大臣は四十年度の需給計画供給量を五千百六十万トンとおっしゃったわけですが、この需給計画を、現在の情勢から見ますと、大きく変更せざるを得ないのではないかという気がするわけです。と申しますのは夕張、それから日鉄伊王島山野、こういう三つ事故があった上に、春闘の減産分もありましょうし、合理化近代化のおくれる分もあるし、そういうような理由から四十年度の供給量需給計画というものははたして維持できるかどうかという大きな疑問点がありますが、この点のお考えを……。
  23. 三木武夫

    三木国務大臣 田中委員も御承知のように、ストが相当長期にございました。そういうふうなこともあり、この出炭目標が多少下回るかもしれませんが、大幅な変更はないものと考えております。
  24. 田中六助

    田中(六)委員 政府のいろいろな施策がだんだん解明されて、私もその政府施策がわかっていきつつあるのでございますが、この中で問題になっておるのでございますけれども、現在の炭価がいろいろな点でネックになっておる。つまり私企業の面で、価格の問題でございますが、現在の石炭炭価ではたしていいかどうか。すでにアップして、平均二百四十円から五十円の炭価の値上げは実施されておるわけでございますが、それでもいろいろな点で問題がある。と申しますのは、世界各国状況を見ますと、やはり国が非常にこれに対する理解ある態度を示すと同時に、その国の施策も、民間の他の企業も、事石炭に対しては非常に理解ある態度を示している。そういう内外の諸施策によって、各国とも石炭については、たとえ多少の値上がりがあっても理解しておりますし、日本の炭価状態各国に比べましても非常に安い。そういう点から、やはり後半に私がお尋ねしようとする重大な問題にも結びつくというふうにも考えています。この点現在の炭価、あるいはこれに加わった炭価値上がりについての御所見を承りたいと思います。
  25. 三木武夫

    三木国務大臣 政府石炭産業の安定ということには、御承知のように意を用いておりますが、なかなか炭鉱経理企業経理が非常に明るいという状態ではない。相当にやはり赤字炭鉱が多いわけでありますので、この炭価の問題も、石炭鉱業審議会等において検討をしてみたいというふうに考えております。
  26. 田中六助

    田中(六)委員 最近爆発いたしました山野炭鉱の件でございますが、炭鉱というものは皆さんも御承知のように、深さ数百メートルあるいは千メートルという地底でいろいろ働く。特に筑豊炭鉱はそういう地下千メートルというようなのが普通のものになっておりますが、やはり人間の職場しては、千メートルも下で働くということは異常な環境状態にあるわけであります。私も戦時中飛行機に乗っておりましたが、飛行機に乗って作業をいたしますと、人間能力というものは悪くて半減、よくて三〇%くらい引かなければいけません。いろいろな保安対策、あるいはいろいろな施策を講じたといたしましても、そういう地下で働く人々あるいはこれを坑内で監督する人々能力は、かなりディスカウントして考えなければいけない。そういう環境で働く人たちの安全をあと回しにして、はたして石炭産業再建などということがあるかどうかということを強く私自身反省すると同時に、大きな疑問を持つわけであります。山野にまたこういう爆発がありまして、この点非常に残念に思いますが、この爆発による遭難者の数あるいは収容死体あるいは生存者、その中で職員鉱員組夫、死んだ人たちのそういう内訳保安局長に聞きたいと思います。
  27. 森五郎

    森説明員 事故当日入坑いたしておりました人数は、五百五十二名でございます。そのうち職員が六十二名、直轄鉱員が二百九十名、請負組夫が二百名でございます。殉職者は全部で二百三十七名、その内訳職員が十九名、直轄鉱員が百四名、請負組夫が百十四名でございます。現在入院者は全部で七名ございまして、職員が二名、直轄鉱員が二名、請負組夫が三名。なお軽傷者は全部で十五名でございます。職員が一名、直轄鉱員が十一名、請負組夫が三名でございます。
  28. 田中六助

    田中(六)委員 この中で一つの特色があるわけでありますが、組夫の数が全国的に炭鉱に多いのでありますが、組夫が二百名入坑しておりまして、その中で百十四名が死んでおるわけです。すでに組夫の就労は問題になっておりまして、福岡監督局でも福岡地検に告発している状況でございますし、明らかにこれは山野の場合、石炭鉱業合理化臨時措置法の五十七条の二に抵触しております。したがって当然の措置でございますが、このような状況はただ山野だけでなくて、各地の炭鉱組夫を使っておる状況が非常に多いということを断定できるのでありますが、この点に対して保安局長かほかの方でもけっこうですが……。
  29. 井上亮

    井上説明員 ただいま御指摘がございましたように、今度爆発を起こしました山野炭鉱におきましては、相当多数の組夫を使用いたしております。しかし、これは私のほうの見地から言いますと、一応法規違反ということではございません。これは一応合理化法に基づきまして、先生承知のように採炭、掘進、仕繰り、運搬、坑内のこういう作業に従事いたしますときには、その理由を付して承認を受ける制度になっておりますが、坑外夫のほうは御承知のように規制外で、坑内夫につきましてその四つにつきまして承認事項となっております。その中で私ども方針といたしましては、採炭には認めない方針をとっております。山野は採炭には使っておりませんでした。なお運搬、仕繰り、掘進というようなところに使っておるわけですが、この掘進の場合も山野の場合はちょっと特殊事情がございまして、事故の起こりました、特に死亡者のたくさん出ました一区杉谷部内の下部の部分で撤収をやっておったわけでございます。撤収の組夫が六十名程度そこで作業をしておられた。この方が全部なくなられた。それから大焼層の開発をやっておった。そういった新しい地域の開発をいたしますときの坑道の掘進につきましては、一応従来の考え方では認めてよろしいのではないかというような見解で、これは主として、組と申しましてもわりあい管理能力の高い新菱建設が担当いたしておりました。そういうような事情でございまして、一応組夫の数は相当多いのでございますが、そういった特殊事情もあったというふうに考えております。ただ、だからといいまして組夫使用につきまして、政策論としてこれを弁護したり擁護したりするつもりはございません。組夫使用につきましては、従来とも私もはできるだけ——本来特殊な作業は別でございます。臨時的な、あるいは一時的な、たとえばただいま申しましたような新しい鉱区を開発するための坑道の掘進とか、あるいは立て坑を開さくするとか、あるいは大きな機械を据え付けるというようなことにつきましては、組夫使用は作業の性質上技術的に見て是認いただけるのではないかというふうに考えております。しかしそれ以外の点につきましての組夫使用につきましては、私ども現在の法の運用を今後ともに再検討いたしまして、さらに組夫使用についてより合理的な形に改善してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  全国的に見ますと、数では減ってきております。たとえば昭和三十八年の七月末で見ますと、請負夫は坑内で一万六千九百名、約一万七千名でございます。これが四十年度三月末では一万四千五百名、それから坑内外合わせますと、三十八年七月末が二万四千名、これが四十年三月末では二万一千名でございます。数の上では減ってまいっておるわけでございますが、しかし先ほど申しましたように、組夫使用についてはなお私どもも問題意識を持っておりますので、今後ともこの使用につきましては保安の問題も含めまして十分再検討してまいりたいというふうに考えております。
  30. 田中六助

    田中(六)委員 組夫を雇用する、あるいは就労させるについての行政指導を今後十分やっていってもらいたいと思いますが、特に組夫と一般鉱員職員との間の補償問題、そういう問題についても、人の命ということを根本に置きまして、差別のないようにお願いをしたいと思います。  それから第二会社の問題でございますが、第二会社になりまして、非常にあちらこちらで無理があるという印象を強く受けているわけでございます。山野の場合を例にとりますと、三井鉱山直属の時代、従業員が約三千二百、現在千七百、出炭量を見ますと、これは組夫を除いた数で割っているようでございますが、一人当たり月間四十三・一トン、全国平均四十トンをはるかに上回っているわけでございますが、その逆に、山野は第二会社になって事故が二倍半に三十九年度はなっておる。これらの三つの相矛盾するデータから、結局第二会社というものの存在の中にメスを入れますときに、いろいろな疑問点がわくわけでございますが、この点石炭局長の御意見を聞きたいと思います。
  31. 井上亮

    井上説明員 御指摘のように、石炭産業の第二会社問題につきましては、これは前々から御指摘を受けているところで。ございまして、特に政府といたしましては、この第二会社につきましては、本来好ましくないという立場から、これについては行政指導をいたして一おります。ただこれは昭和二十七年四月六日にいわゆる炭労の政転闘争がありました際に、政府と総評、炭労等といろいろこの点についても討論いたしました。そのときに決定いたしました一つ方針は、第二会社政府としても好ましくない、ただし、非常に大きな労働力をかかえた、あるいはその地域社会の大きなバックボーンになっているような産炭地の実情、そういうような点からいたしまして地域経済が一気に崩壊するようなおそれがある場合、あるいはそれと同時に、何千名というような方々が失業されるわけでございますので、そういった雇用対策上の見地というような点から、労使双方がやはり経営を存続していきたいというような場合に限って第二会社をケースバイケースで認めていこうという方針に相なっているわけでございまして、私どもも以来そういった方針で行政指導をいたしておる次第でございます。  しかしお説のように、第二会社はなかなか経営が苦しい。これは第二会社に限りません。親会社でも、大臣も先ほど仰せになりましたように政府もいろいろ手厚い助成をいたしておりますが、それにもかかわらず経営が苦しいということは事実でございまして、第二会社も同様でございます。しかし、だからといって一がいに第二会社すべて悪いというふうにお思いいただきますと、必ずしもそうでない。第二会社になっても、親企業以上に労働条件もよくなり、労働時間の延長もあまりしないで、しかも企業の経営を好転させているという例もあるわけでございますから、全部が全部悪いということも言えないのじゃないか。ただ私は、そうは言いますものの、一般論としてはやはり依然として好ましくないというふうに考えております。今後ともそのような方針で行政指導してまいりたいと考えております。
  32. 田中六助

    田中(六)委員 第二会社の功罪、これはやはり相半ばするものがあると思いますけれども、これも政府の行政指導によっていい面に伸ばしていってもらいたいと思います。  次は保安問題でございます。ことしになって、北炭夕張、伊王島それから山野というふうに、大体二カ月に一度の割りで大事故が起こっておりますが、結局、国民の声として、通産省保安局は大体何をしているのだというふうな声があちらこちらに起こっておりますし、一方斜陽の石炭産業を育成するために業務違反というものを大目に見ているのじゃないかという声すら起こっております。現に、そういったものを裏づけるかどうか知りませんが、悪質な炭鉱で検査で違反を指摘されても、大事故でもない限り操業停止処分を受けたものがほとんどないというようなことも大きな疑惑を持たれる原因になっております。いままで大事故以外に検査で違反を指摘されて操業停止処分を受けた件があるかどうか、それが第一点です。  それから、さっき鉱山保安対策費は説明を受けましたが、監督官の数なども、現在全国の炭鉱五百十六、山野甲種炭鉱でございますがそれが百十六ある中に、はたして現在監督官の数はどういうふうになっておるか。その二点をお聞きしたいと思います。
  33. 森五郎

    森説明員 ただいまお尋ねの作業停止命令の件数でございますが、監督官が入りまして、実情を見て、法律違反等をやっておる、保安上おもしろくないという場合には、もちろん作業停止の命令をしておるわけでございまして、決してその点を甘くしておるというふうには考えておりません。  なお、最近一斉総合検査というものを実施いたしまして、鉱山に数人の監督官をチームとして派遣をいたし、総合的に石炭鉱山保安について調査をするということをやっておりますが、大体対象の鉱山数は四十三鉱山、これは札幌、平、宇部、福岡、全部合わせまして四十三鉱山でございますが、そのうち作業停止命令をいたした件数は、命令書によるものと監督官の口頭によるものと合わせまして六十二件やっておる状態でございます。  それから監督官がどうなっておるかというお尋ねでございますが、御承知のように、現在、地方におります監督官は、石炭鉱山のみならず、金属その他の鉱山も含めまして、全部で四百三十五人おります。そういう状態でございます。
  34. 田中六助

    田中(六)委員 政府も、通産省ももちろんそうですが、こういう諸対策についてはほんとうに真剣にやっておると思いますけれども、やはり何と申しましても、予算面で裏づけがなければどうにもなりませず、この点、本日の閣議で、通産大臣要望で約八億の予備費が支出できたことを、私、ほんとうに喜ぶと同時に、これではまだまだ足りませんめで、十分今後の配慮をお願いしたいと思います。  いろんな事件がたくさんあっておりますが、三井三池でもそうですが、正式に事故原因がどうだというようなことを二度も最近聞いたことがない。事故原因が究明されなければ、これに対する対策も立てようがないので、ございまして、この点も監督官庁としては十分頭に置いて善処していっていただきたいと思いますが、今後の事故防止対策、こういうものに対する具体策を何かお考えでありましたらお願いしたいと思います。
  35. 三木武夫

    三木国務大臣 ああいう災害原因については徹底的に究明をしたい、これがやはり次の保安対策を考える場合の前提になるわけでございます。  そこで、ああいうガスの発生による、それが引火したものだということは明らかでございますので、きょうの閣議においても私が要求をして、たとえばガスの自動警報器、あるいは異常な気圧の警報器、あるいは自動消火装置、あるいはガスのクロマトグラフ、こういうものはどうしても置く必要があるということで、これを補助の対象にしたわけであります。従来は保安施設に対しては無利子融資をしておった。しかし、これは融資というだけではいかない、将来はこれを強制したいという考えであります。しかし、まあその第一着手として五割補助ということで、こういう施設を、急に一ぺんにということには間に合いませんから、補助をしてこれを整備していってもらう、山野災害等から考えてみてぜひこういう保安施設は必要であるというようなことで、予備費の支出を要求したようないきさつがあるわけでございます。
  36. 田中六助

    田中(六)委員 保安設備についていろいろ具体的な措置をきょうの閣議でおきめになったことを非常に喜びといたします。  労働大臣にお聞きしたいのでございますが、やはりこれは監督面のことでございますが、現在鉱山保安の監督が通産省にあること自体が非常におかしいということは前からいわれておりますし、事故が次々に起こってきますと、どうしてもそういう疑問がわいてくるわけで。ございます。と申しますのは、通産省はどうしても出炭能力あるいは経営者の立場ということを考えがちなところがございますし、生産をあげなくちゃいかぬということを至上命令のように考えて、そういう点を、たとえなくても勘ぐられるおそれもありますが、こういう点、災害防止と同様に、その権限を労働省に移したがいいというような考えも持たれるわけでございますが、この点労働大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  37. 小平久雄

    小平国務大臣 ただいま田中委員の御指摘のような、鉱山保安の所管を労働省に移管したほうがよろしいのじゃないかという御主張がかねがねあることは、私も承知をいたしております。しかしながら、御承知のとおり、ただいま通産省において鉱山保安を所管いたしておりますには歴史的な事情もございまして、その後御主張のような点もたびたび話題に上がりましたが、今日に至っておるのであります。いずれにいたしましても、労働省の立場から申しますならば、労働者人命を尊重するという考えを基本にいたしまして、どういうことをどういう役所で担当いたしたならば一番その目的を達し得るか、こういうことに考えておるのでございます。しかし、いま当面の問題といたしましては、必ずしも所管が通産省にあるかということだけが別段この支障に相なっておるとも、実はそうも言い切れないのではなかろうかと考えております。ただいまの法制上からも、御承知のとおり、鉱山保安法によりますと、労働大日が通産大臣に対しまして危害の防止についての勧告をなす権限も認められておるわけでございますので、目下のところといたしましては、これらに基づきまして、労働省のほうで保安上こうしたらいいのじゃないか、ああしたらいいのじゃないかという気がついた点につきましては、十分通産省のほうにも申し上げて、本来の目的である人命の尊重、危害の防止、こういうことに十分役立たしてまいりたい、かようにただいまのところ考えておるのであります。
  38. 田中六助

    田中(六)委員 労働大臣の御見解よくわかりました。  最後に、私、お聞きしたいのですが、いろんな炭鉱災害がこのようにひんぱんにありますと、どうしてもいろんな点でこの問題についての真剣な討議がなされるわけでございますが、災害がふると、保安対策が十分であったにもかかわらず不可抗力の事故だというようなことを一部では言う人もおります。そうなるとやはり人命尊重という観点から、石炭政策全般に大きな再考慮が行われるわけです。したがって、石炭の国有国営、国家管理というようなものがどうしても考えとして浮かび上がってきますし、現にイギリスでもフランスでもそうでございます。また一方、西ドイツのように石油に課税をしてこれをカバーする、そういうような考えが浮かぶわけでございますが、あまり災害がありますと、私企業に対する限界がおきておるという観点から、保安に金がないからという理屈になりますと、結局それは保安装置に金がかかるから人命をという、人命があとになりますと、全くあべこべなものの考え方でございます。結局保安行政は予算の範囲ではなく、必要に応じて予算を、つまりあくまで人間尊重という政府方針を貫くならば、予算の範囲内でということばよりも、必要に応じて予算をというようなものの考え方が当然起こると思います。  これにからみまして、いっそのこと国家管理という声がちらほら出ておるどころか、すでに社会党ではそういう案を打ち出しておりますが、この点についての通産大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  39. 三木武夫

    三木国務大臣 生産保安という問題は、関連性があることは事実です。しかし、何としても保安というものが前提になるので、保安犠牲にした産業政策はない。そういうことで、絶対ということはなかなか人間の社会でむずかしいけれども、万全を期する努力をするということは、当然にわれわれとしても、あるいはまた経営者としてもなされなければならぬことであると思います。しかし、いまここで、企業の形態を国有国営にすることが現在の段階において私どもは適当だとは思っていない。この国としての助成、今後ますます助成というものに対しては——石炭わが国エネルギーの中における重要な国産資源でありますので、これは保護していかなければならぬけれども企業の経営形態を国有国営にするという考え方は、いろいろな弊害を伴うので、現在の段階ではそういうふうな国有国営は考えていない。これは政府の見解であると御了承を願いたいのでございます。
  40. 田中六助

    田中(六)委員 いま、この問題に対する通産大臣の御決意を承りました。私どもも結局、国営にすると国民の経済負担が大きくなる、あるいはまた能率の低下を起こすこともあり得るという観点から多少抵抗も感じますが、そういう大きな渦巻きが今後とも起こってくると考えますので、十分政府方針を確固となさることを希望いたします。  そこで最後に、私、通産大臣にもう一点お伺いしたいのですが、日本炭鉱再建問題の件でございます。  石原調査団が編成派遣されて、北九州市の地上計画、マスタープランがこの再建計画とともに生かされるように努力していただきましたことを、私、地元選出の代議士として非常に御苦労に思います。しかし、今後、この石原調査団報告は、北九州市及び直接の関係者だけでなく、いろいろ各省にもまたがると思いますので、十二分にこれが尊重されるように希望いたしますが、政府の御見解を承りたいと思います。
  41. 三木武夫

    三木国務大臣 各省との関連もありますが、十分に尊重して、そういう報告が生かされるようにしたいと思っております。
  42. 田中六助

    田中(六)委員 まだ多少お聞きしたいこともございますが、時間の都合もございますので……。ほんとうに通産、労働両大臣並びに政府各位には御苦労さまでございました。
  43. 加藤高藏

  44. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、三池の災害、さらに夕張、伊王島、山野災害と見てまいりますと、日本の炭鉱は明治から大正の初めに返った、こういう感じがいたします。百名以上一時に死亡者を出したという災害は、昭和年代にはないと私は記憶しております。少なくともこれは明治の終わり、大正の初めです。日本においては、残念ながら炭じん爆発というものが発見をされなかった、みんなガス爆発であった、こういうように考え、炭じん防止についての対策が全然行なわれなかったときに、何百名という死傷者を出した。その後ガス爆発と炭じん爆発は異なるんだ、おのずから炭じん爆発にはそれ相当の、たとえば散水であるとか、あるいは岩粉をまくとか、いろいろの方法が発明をされ、あるいは外国から紹介されて以来は、百名をこえる災害というものは全然起こってないのです。ところが、昭和三十八年代も後半期に入って、あるいは三池における四百五十八名、あるいは山野における二百三十七名という災害が起こっておるというのは非常に残念だと思うのです。一体通産大臣は、所管大臣としてどうお考えになるか、これをお聞かせ願いたい。
  45. 三木武夫

    三木国務大臣 最近にこういう炭鉱災害が三回も、あまり期間を置かずして起こったということについて、私はこの機会に、なぜこんなにひんぱんに災害が起こるかということについて、この原因を徹底的に究明してみたい。これは単にただ思いつきだけでもいかない、専門家の意見も徴して、こういう災害がこんなにひんぱんに起こる原因を、今度こそは、災害のあるたびに保安保安というようなことではあまりにも芸のないことだ、だからこれを機会に徹底的に究明をして一このことは石炭産業のあり方とも関連するものが私はあろうと思うのです。だから保安に対する保安体制の整備強化といいますか、また大きくは石炭産業との関連においてこの問題をこの機会に徹底的に究明したい。そしてこういう悲惨なる事態が再び起こらないようなできるだけの処置を講じたい。あまり大きな戦争もないときに、何百名もの犠牲者を出すということはたいへんな事件である。こういうことで、この問題に対する解明をすることがわれわれの責任であると考えておる次第でございます。
  46. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 三池災害後に、政府は海外石炭鉱業保安状況調査団というものを欧州に出した。その報告書によれば、十名以上一時に死亡者を出したというのは、過去十年間においてドイツにおいて三件、フランスが六件、イギリスが四件、日本は当時二十六件であると、その報告書には書いてある。ところがその後三件起こりましたから、二十九件ということになる。しかも出炭量はイギリスやドイツの四分の一あるいは三分の一という状態ですから、出炭から見ればたいへんな状態になっておる。この報告書には、第一には自然条件が異なっておる——この前、大臣も勉強されて閣議で報告があったということを承ったのですが、日本の炭鉱石炭紀の石炭ではない、非常に若い時代の石炭である、それだけに地殻の褶曲も多いし、断層も多い。それならばそのように保安対策というものが諸外国以上に研究が行なわれなければならぬ、こう考えるわけです。ことに第二会社への移行、大量の組夫使用、長時間労働いわば非近代的な合理化の姿が遺憾ながら石炭界にはあらわれておるわけです。ですから第二会社の問題も、当時佐藤総理が通産大臣でしたが、第二会社に移行をすれば保安が軽視される、軽視されるということになればたいへんな事態になるんじゃないかと言ったら、いや、保安を軽視するようなことはあり得ない、これは当時古河大峰を第二会社にするときに、滝井君に対して総理、当時の通産大臣が答弁をされた。それから組夫の使用については、組夫は現在においても災害が一般本鉱員に比べて二倍以上になっている。そんな、組夫を危険な場所に働かすような仕組みになっていないのです。それが現実の統計で二倍以上になっておる。先ほど石炭局長組夫の数を言っておりましたけれども、統計にあらわれない組夫を把握していないのです。現実に今度の場合の山野の千二十七名の直轄鉱員に対する組夫の七百二十九名というのは、これは統計に載っていないのです。組夫の数の一部しか載っていない。現実はこういう把握のしかたです。ですから組夫の場合は保安教育も徹底していないし、非常に危険である。ことに最近は組夫保安教育の徹底、すなわち保安のイロハも知らないというような状態から起こった事件も相当多いのです。ですから、これについては非常に警告をしておったにかかわらず、通産省は大体この組夫というのを炭鉱従業員と考えていないのです。石炭鉱業合理化臨時措置法の中には、従業員の中に入っていないのですよ。いないから離職金もやらないのです。本鉱員政府の離職金をやるけれども組夫にはやらない。組夫炭鉱従業員と見ないのです。読まないのです。そういう扱い方を現実にしておるのです。ですから、この点については今後たいへんな問題になるということを再三再四にわたって警告を発しておるのです。それにかかわらず今日のような状態になった。こう考えてみますと、私たちが杞憂しておりました問題が、杞憂でなくなって現実に露呈をして、まさに日本の石炭産業状態をはっきり国民の前に知らした、こういうような状態になっておると思うのです。そこで私は、以下大臣に対して一つ一つ質問をしてみたい、かように思います。  その前に私は、具体的に山野の問題について政府委員から答弁を願いたい。  いままでの政府として把握している災害原因はどういうものであったか、これをお聞かせ願いたい。すなわちガスが出たことは明らかである、そうしてそれは大焼層の開発部において、いわば掘進個所においてガスが出た、こういうことは大体新聞も言い、皆さん方もいろいろな点においてそういうことを言われておる。そこでそのガスは社長の話によると、海八部である、すなわち大焼の層ではなくて、その途中にある海八炭層から出た、こういうことを言っておる。しかし海八は一月ほど前に自然発火をして災害を起こしておる。同じ層ですよ、ガスが最も多い層ですよ。ですから、その部に入っていけば、当然先進ボーリングをするなり、そういう対策は講ぜられるはずですね。これが講ぜられていない。一体この大焼の開発部門はどういう作業の要員で行なわれたか。すなわち組夫であったか本鉱員であったか。その場合の保安は十全であったのか。すなわち、岩石でなくてすでに炭層があらわれておるわけですから、炭層に対しては先進ボーリングをしたかどうか。この点をまずお聞きいたしたい。
  47. 森五郎

    森説明員 お答えいたします。  今回の山野災害原因でございますが、これは御指摘のとおり、大焼層に向かって、マイナス四百九十メートルから大焼卸という斜坑がある。これは開発用の斜坑ですが、これがちょうど先生御指摘のように、海八層にぶつかったところでガス突出を起こしたものと現在推定をいたしておるわけでございます。  そこで、もちろんわれわれもこの海八層というものは下の六百九十メートルレベルあるいは八百メートルレベルにおきまして、御指摘のとおり非常にガスも多く、かつ自然発火もしやすい炭層であるということで、現にこの山野事故の前に海八層で二、三火災を起こしたという事実がございます。これは先生の御指摘のとおりでございます。したがいまして、十分それについて保安監督の準備をするように命令をしておるわけでございます。その命令に従いまして会社は先進ボーリングをいたしております。これは約四百メートル手前ごろから、そろそろ海八層を切るという手前から先進ボーリングをいたしておりまして、そのうち五本を掘坑しております。そのうち三本は炭層を切りまして下盤に到達しております。そういう状態でございましても、その先進ボーリングによりましてガスは出てこなかった、あるいはその手前に火成岩等が出ておりまして、その点ではだいぶ深部のほうとは状況が違うという状況が出ております。
  48. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この先進ボーリングは、どの企業会社でしたか。非常にむずかしいことを言うのですが、すなわち組夫であるならば新菱建設でしたのですか、三井山野炭鉱でしたのですか。
  49. 森五郎

    森説明員 大焼卸の掘進は新菱建設という組が実行いたしております。先進ボーリングは別の組の野口ボーリングというボーリング専門の組が掘坑いたしております。
  50. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先進ボーリングを野口ボーリングにやらしたけれどもガスは出なかった、こういうことですね。野口ボーリングというのはボーリング専門ですか。
  51. 森五郎

    森説明員 ボーリング専門の組でございます。
  52. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それは山野だけでやっておるのですか。それとも各会社にボーリング専門で行っているんですか。
  53. 森五郎

    森説明員 その点はまだ調査をいたしておりません。
  54. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この点は私もつまびらかにいたしませんけれども、ただ、かつて鉱員時代にボーリングをやっておったとか、あるいは職員時代にボーリングをやった経験があるというので、何人か雇ってボーリングだけやっておった、これは山野鉱業所のいわゆる下請である、こういうものと、いわゆるボーリング専門で各社の炭鉱をボーリングをしておるというのとは相当違いますよ。ですから一体ボーリング会社がどの程度の技術と専門的な知識を持っておったかということぐらいは調べておかないと、原因がはっきりしないのです。どこに怠慢があったかということすらはっきりしないでしょう。これが非常に権威あるものならば、ボーリングしたときはガスが湧出しなかったけれども、別の要因でできたということも考えられるけれども、これがいいかげんなと言ってははなはだ失礼かもしれませんけれども、これがいいかげんな報告書を出しておるということならば、これまた問題でしょう。その程度くらいはあなたのほうでつかんでおかないと……。これは大事な点ですよ。
  55. 森五郎

    森説明員 御指摘の点につきましては、今後調査いたした上御返答いたしたいと思います。
  56. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大体この程度のボーリングはみな会社がやるんですよ。しかも新菱建設といいましても、確かに三菱鉱業所の諸君がやっておるんで、あるいは普通の組よりも専門家かもしれないけれども、もう炭層にぶつかっておるわけです。ですから、普通の掘進とは違うのですから、保安には十分気をつけなければならない。これはあとから私は大臣並びに政府に聞きたいのですが、組が入っている場合は大体保安の監督系統というのがはっきりしない。こんな重大な事故を起こした場合に、だれが責任者であるのか全くはっきりしない。ですから、組夫という制度が単なるいわゆる職業安定法にいう労務供給業を禁止するだけでなくて、災害が起こった場合の保安指揮系統というものがきわめてあいまいです。これは組夫のときに一括質問したいのですが、非常に問題の点が多いのです。  次に、新菱建設の保安係からガスが九・八%も発見されたので、すぐ坑外の事務所に電話連絡をして電源を切ってくれという要請をしようとして、いろいろ努力したけれども十分連絡がとれなかった、こういう事実はあるわけですか。
  57. 森五郎

    森説明員 詳細は目下調査中でございますが、先生の御指摘のように、ガス突出が行なわれたのじゃなかろうかということを感じまして、新菱建設の係員がガスをはかりましたところ、非常な濃いガスが出るということですぐ変電所に電話いたしましたが、連絡がとれなかったというふうに聞いております。詳細は目下関係者の供述等をとりまして調査中でございます。   〔委員長退席、蔵内委員長代理着席
  58. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 電源を切ってくれという要請をして電源を切れば、扇風機も全部とまりますから、大事故だということが下部に徹底するわけです。深部に働いている者も大事故が起こったという認識になる。そうすれば、避難をする場合に迅速にできる。こういう点が非常に問題なんですよ。ですから、あぶないぞという認識、重大な事故が起こっているんだという認識を一般に知らすのに非常に時間がかかっておる。  そこで、保安職員等をただ人員整理だ、あるいは職員鉱員のバランスだということだけで、鉱員が十人おれば職員は一人でいいんだというような、ただいままでのような認識で職員を整理する、こういう点も非常に問題がある。これは一つ合理化の問題として今後検討したい、かように思うわけですが、ここにも一つ人員の不足という問題が出てきておる。  次に、一体避難訓練というのはしておるのかどうか、その前に、私は、二百三十七名のうちで一酸化炭素中毒で死んだ者は何名おるのか、これをお聞きいたしたい。
  59. 森五郎

    森説明員 この原因別の内訳につきましては、死体が坑口に上がったときの検屍官の決定を見ましてとっておるものでございますが、ガス中毒でなくなられたと考えられます数は二百十二名というふうに相なります。
  60. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そのうちCoマスクを使用しておったと考えられる者はどの程度、あるいは使用しなかったと思われるのはどの程度。さらに避難訓練ですね、これが十分であったと考えられるかどうか。たとえは排気のほうに向いて逃げていくとか、そういう点において訓練よろしければ、あるいは職員の誘導よろしければ助かったであろうと考えられる点はなかったかどうか。
  61. 森五郎

    森説明員 自己救命器でございますが、なくなられた死亡者とともに回収しました数は約八十個くらいになっております。全部の死亡者の二百三十七名のうち、死亡者がつけておられたということで死体と一諸に上がってきた自己救命器は約八十でございます。したがいまして、そのほかのものは坑道に散乱をしておるというようなことでございます。数はそういうことでございます。
  62. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、先ほどから言っている退避訓練は十分できておったですか、死体の個所等から見てどのように判断しておるか。
  63. 森五郎

    森説明員 退避訓練につきましては、保安法によってきめられておりますものはやっておりました。それから自己救命器の吸着方法その他につきましても、仕繰り場に大きく書いてあるということで注意を喚起しておったと認められますが、死体と自己救命器の散乱状況というものから考えまして、それが一〇〇%有効であったとも言い切れない点があろうかと思うわけでございます。
  64. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 自己救命器の性能の問題についてはあとから質問をしたい、かように思います。  そこで、火源の問題は常にはっきりしないで終るわけわですが、三池、夕張、伊王島等、いままでの調査をした状態をお聞きしたいのですが、時間がありませんから、別の機会に詳細に書類にして報告書を出してもらいたいと思います。いままで三池、夕張、伊王島等、いろいろな調査団が行っておるわけですから、そういう調査団の一連の報告書をひとつ本委員会へ文書で出してもらいたい。そうしてわれわれもいろいろ参考にしたい、かように思います。とにかく本山野の問題は、原因の究明については徹底的にやっていただきたい、これをひとつ大臣から御答弁願いたい。
  65. 三木武夫

    三木国務大臣 先ほども申しましたとおり、今後の対策を考える上において非常に必要なことでありますから、これは原因を徹底的に究明したい考えでございます。
  66. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そこで私は、山野炭鉱が第二会社になる以前からこの炭鉱についてはいろいろ関係をし調査をし、第二会社になるときも地域住民、当時の職員組合、労働組合等がぜひ残してもらいたい、こういうことで第二会社移行に賛成した者として非常に責任を感じておるわけです。そこで、全般的に、山野だけというわけでなくて、第二会社というものの労働条件というものは労働省ではどの程度把握しておるのか、ひとつお聞かせ願いたい。概括的でけっこうです。
  67. 村上茂利

    ○村上説明員 第二会社につきましては、先ほど石炭局長から御答弁申し上げましたとおり、やむを得ない措置として、労使の話し合いのもとに認められておるというふうに私ども承知いたしておりますが、この第二会社に雇用される労働者の賃金その他の労働条件は、一般的に申しますならば、従来とは若干変わっておるということが指摘できると思います。  第二会社移行時点における労働条件につきましては、私どもも十分注意深くその点についての調査をいたしたつもりでございますが、その後、若干の変動があり、会社によって格差がございますけれども、その後、労働条件が向上しつつあるという第二会社もございまして、これは一がいに申し上げることはできませんけれども、若干向上を見つつあるというふうに私どもは理解いたしておる次第でございます。
  68. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 三井山野当時の昭和三十八年五月の賃金実績を見ますると、坑内平均が四万百五十四円、坑外夫が二万三千七百九十一円、全鉱夫の平均が三万四千百四十九円。その後、御存じのようにベースアップが一般炭鉱においてはあっておるわけです。  ところが、昭和四十年四月の、いわゆる第二会社である山野炭鉱坑内夫は、平均月収が二万五千二百二十九円、坑外夫が一万九千八百八円、全鉱夫の平均が二万四千二円、こういう状態になっておる。  さらに、あなたのほうでは、今度の死亡者の労働災害補償金を見ればわかるでしょう。一体今度なくなられた方の労働災害補償金の平均と、さらに最低をお知らせ願いたい。
  69. 村上茂利

    ○村上説明員 山野のいわゆる本採用の鉱員の場合の平均を申し上げますと、現段階におきましては概算払いという形をとっておりまするので、精算段階においては上がると思いますが、本鉱員平均が九十一万九千五百四十六円、これは精算段階においてはおそらく百三万くらいになるだろうというふうに推定いたしております。次に、組夫平均を申し上げますると、一人平均九十八万七千七百四十三円となっております。組夫、本鉱員両方平均いたしますと、九十五万二千三百五十円でございますが、これは、ただいま申し上げましたように、概算の平均でございますから、精算いたしますと若干上がり得るというふうに考えております。  次に、最高、最低でございますが、山野関係におきましては、最高が二百二十万八千円、最低は五十三万一千円。組夫におきましては最高が百五十二万二千円、最低が五十万二千円、かようになっております。なお、概算の問題につきましては、山野鉱業の場合には、精算、概算の問題は、使用者の故意または重大な過失の関連がございまして、山野の場合には一応概算にいたしておりますが、組夫の場合はほとんど精算といったような考え方で処理をいたしておりますので、金額はそう動かないと存じます。
  70. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、本鉱員の場合は百三万、組夫の場合は九十八万、こういうふうに大体理解していいわけですね。ですから、この前ありました伊王島と比較しますと、伊王島は組夫はいなかったわけですが、本鉱員平均が百四十七万。ですから、大体その程度の差が、一般の大手の炭鉱に比べて第二会社にはある、こう考えたらいいのじゃないか。  ところが、これは基準外の労働時間作業における収入は、算出のときに当然入っておるわけでしょう。
  71. 村上茂利

    ○村上説明員 伊王島の場合は、御指摘のように、合計いたしますと、平均で百四十九万九千九百円というふうに、山野の場合よりは上回っております。  それから、賃金計算の問題でございますが、これは先生承知のように、平均賃金という方式で算定をいたしておりますので、含まれるわけでございます。
  72. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 基準外労働がそのうち非常に多いということですよ。基準外労働が、採炭夫において、三井山野時代よりも約十倍ぐらい労働時間数においては多い統計が出ておる。少なくとも山野炭鉱の場合は、拘束九時間をとっておるわけでしょう。まず所定労働時間というのは、拘束九時間でしょう。
  73. 村上茂利

    ○村上説明員 御指摘のように、労使協定によりまして、それぞれの事業場において協定をしておるわけでありますが、労働省として、いわゆる基準監督という観点から監督をいたします際には、御承知のように、八時間プラス二時間の時間延長ということで、十時間を基準にいたしまして、法違反の事実を調べておるわけでございます。  なお、実働云々の問題につきましては、御承知のように、坑口計算になっておりますので、拘束と実働という意味も、一般の事業場と若干趣を異にするわけでございまして、先生の御指摘の、坑口に入ってから云々ということでございますならば、これはまさに実働であるわけでございまして、拘束ではないというふうに私どもは解しております。
  74. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 炭鉱の場合は、拘束と実働は同じなんです、在坑時間でいくのですから。それを承知して聞いておるわけです。その拘束ということは、法律的には実働と同じように在坑時間で扱っておるのですから、問題はないわけです。ただ、実働ということばを避けたのは、一般的に誤解をされるから私は拘束ということばを使ったのです。  そこで、具体的に話をしますと時間が長くなりますけれども、いまのように第二会社とかあるいは中小炭鉱等の労働時間というのは、ほとんどが基準法違反をしておるわけです。それは労働組合のほうもあんまりそういうことを書いてくれるな、こういうだろう。ですから、おそらく基準監督署としては非常に調査もむずかしいし、告発もできない。ここに根本的に問題があるわけですよ。  通産大臣、これは労働大臣の問題じゃないですよ。企業がもう危機に瀕しておるから、賃金が安いけれども長時間労働せざるを得ないという組合としての認識、労働者のほうは、今度は、とても八時間くらい入っておったって食えないから、あえて超過労働をしておる、これで普通の保安の注意力を喚起せよというほうが無理なんですよ。  いま労働省のほうで、的確に中小鉱山や第二会社の労働時間を調べてごらんなさい。坑内の採炭夫なんというのは、平均がもう十時間以上になっていますよ。それはあなたのほうの特別な三十六条適用になるような性格じゃない。常時やっている。ですから、そこに幾ら保安督官を増してもだめなんですよ。基礎がもう注意力を喚起するような基礎になってないのですから。  労働省、一体どういうように把握しておるのですか。
  75. 村上茂利

    ○村上説明員 非常に率直な御指摘がございますので、私も率直に申し上げますが、炭鉱労働についての労働時間問題につきましては、従来労働省も監督の最重点にいたしてきたわけであります。しかし、なかなか是正困難なる問題もございましたが、特に昨年の秋から計画的に監督を実施いたしておりまして、ちょうど今月が三回目に相なります。  労働時間違反の問題につきましても、直接夫と間接夫があるわけでございますが、今日までの指導によりまして、かなり問題がありました会社におきましても相当改善されつつあります。是正の重点をまず直接夫に置きまして、直接夫につきましては、一方で長時間労働しながら、一方においては出勤率が地上の一般産業に比較して著しく低いという点から、むしろ出勤率とのかね合いにおいて見ますならば、長時間労働は是正すべきではないかといった問題、それから労務管理上の掌握の問題等もございますので、労務管理の問題とも相関連せしめまして、従来違反のございました会社につきましては、その是正計画を提出させまして、最終期限を本年の九月に置いて、いま、かつてないほど厳重に監督指導をいたしておるわけであります。その過程におきまして、たとえば山野の例について見ますると、昭和三十八年十一月ごろの労働時間と本年四月における労働時間との比較をいたしてみますると、相当改善されておるということを私どもは認めるのでありますが、この問題につきましては、山野のみならず、ほかの炭鉱につきましても、ただいま申しました是正時点を設定いたしまして、厳格に監督をしておる次第でございます。  その過程におきましては、先生御指摘のように、労働組合側からもその厳格なる監督の緩和方の申し込みが一、二あるようでございまして、私どもはこの際保安の問題とも関連いたしまして、このような問題については、いわゆるアベックは好ましくないという観点から、労働組合側についてもわれわれの厳正監督に御協力をいただくようにいろいろ呼びかけをいたしておるというような次第でございます。
  76. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 山野の統計をとるのに昭和三十八年十一月なんという統計は意味ないです。これは新会社になったばかりでしょう。がたがたしておったときですよ。人間も集まらぬときですよ。こんな統計で、改善されたなんていっても、これは保安確保だけでも労働者相当長時間労働をやらなければいけなかった時代ですよ。全然新会社として軌道に乗ってない。ですから、これはもう全然意味がない。  私は、改善されたという声を聞かないですね。みんなきついきつい、こう言っている。私の手元にある数字でも、昭和四十年四月の数字ですけれども相当の長時間労働です。これは山野だけではないと思うのです。  ですから、私は、一体労働省の監督官が十分監督しておるかどうか。いままで事故が起こったから鉱山保安局の話ばかりしておるけれども、私は労働省は十分監督しておるとは思えない。労働時間のような簡単なものでも、いまの労働省じゃできないんですか。そして、ときたま事件が起こったときに初めて、そして死んだときに初めて婦人が坑内に入っておったとわかるんですよ。これは労働省の管轄です。それから今度十六歳の人間が入坑しておった。これもなくなったときに初めてわかるんですからね。ですから、それを摘発するとかなんとかいうことは別として、一体十分な実態把握ができていないんじゃないですかと私は言っている。
  77. 村上茂利

    ○村上説明員 ただいま申し上げましたように、労働省としては炭鉱労働を監督の最重点にしておるということでございまして、山野の四月時点における労働時間違反の状況についても私ども承知をしておるつもりでございます。ただ、もとより労働組合側から見る場合と、それから私どもがそれぞれについて監督をいたした場合の数字について若干の差はあろうかと思います。しかし、その多少の誤差は別といたしましても、私どもは、法違反につきましてはこれを是正させなければならないことは当然のことでございます。  ただ、そのやり方につきまして、特定の鉱山のみを監督しておりますと他との振り合いでなかなか進まぬというような関係もございましたから、一斉に実施をする。特に昨年秋におきましては炭鉱経営者に厳重に申し入れをいたしまして、まず経営首脳者自身がこういった問題について認識を持ってもらいたいということを強く呼びかけまして、その後計画的な監督に移行しておるような次第でございます。  山野の年少労働者の使用問題につきましても、二月の監督を実施いたしました際にはまだ採用されておらず、発見されなかったのであります。その後、そういった面についての監督をいたしておりませんので、年少労働者の把握をなすに至っておらなかったわけでございまして、事故発生後戸籍謄本をとって初めてその年少労働者であることがわかった、こういうことでございまして、このことにつきましてはまことに遺憾に存じておるような次第でございます。
  78. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はすぐ摘発するとか告発するとかいうことは別にして、労働省は実態把握をしてないと率直に思うのです。労働基準監督署に行って、ある事件が起こった、ひとつ頼むといっても、監督官のあの手帳を見てごらんなさい。とてもすぐ間に合って来るような状態にはなってないです。もうずっと予定が組んであって、突発した事件があれば、もう一月くらい調査が全部おくれるんです。監督行政そのものがそうなっているのですよ。それは全体の機構がそうなっている。ですから、監督署の職員を責めるわけではないですが、第一、実態を十分把握されるような機構になってない。   〔藏内委員長代理退席、委員長着席〕  それで、こういう状態ですが、今度はひとつ、実態を全部明らかにしてもらいたい。それから政策を考えるんです。一体なぜそれだけの長時間出働をしなければ炭鉱はやっていけないのか。そういう炭鉱を残すべきかどうか。あるいは、やるためにはどういうふうにするんだろう。いまは全部あらゆる点を隠しておるのです。山野のごときも能率があがった、あがった、こういう。そして第二次有沢調査団は、山野の第二会社になってよくなった、こういう。私は率直に言ったのです、そんなによくなっているはずがない、三井鉱山がやってもうまくいかないものを、第二会社がやってうまくいくはずがない。よくなったというが、それは賃金をそれだけ下げ、組夫をそれだけ入れておるからだ。だから事件が起こっておる。この際、私は、炭鉱についても隠す必要はないと思う。全部洗いざらい出してみて、どこに問題点がある、どういうようにしなければならぬという実態を明らかにしないと、災害というものはなくなないと思う。  そこで私は、組夫について、労働省関係ですが、申し上げたい。一体この組夫というのは——私は時間がありませんから、まず第一にいろいろな点を申し上げますから、質問に答えてもらいたい。  今度の山野のような場合に、職業安定法違反の組はなかったか。その次に、鉱山保安の見地から合理化臨時措置法による認可を得ていない組がその指定された業種をやっていなかったかどうか。それから、七百二十名のうち認可を要しない組夫はどのくらいいたか。一応それだけ答弁してください。
  79. 有馬元治

    ○有馬説明員 職安法との関係でございますが、私どもが現在把握した状況によりますと、組夫の中に職安法違反による労供の関係業者はなかった、こういうふうに考えております。
  80. 森五郎

    森説明員 山野に入っておりました組は、鉱山保安監督局に対する届け出は全部出ております。
  81. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 その入っておった組は、全部届けて承認を得ているのですか。
  82. 森五郎

    森説明員 保安法では、合理化法で認可を受けて届け出ることになっているわけであります。その届け出のほうは全部出ておる、こういうことであります。
  83. 井上亮

    井上説明員 先ほども御答弁申し上げましたように、承認を要します仕事といたしましては、掘進、採炭、運搬、仕繰りでございますが、それ以外のその他といたしましては、山野におきましては八十七名、これは承認を要しません。山野のほうにつきまして、さらに掘進につきましては百六十名、採炭はゼロでございます。それから運搬は十八名、仕繰りは四十二名、そういう内訳になっております。
  84. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 その合理化法の承認を得ない八十七名は、保安法における届け出は終わっているわけですね。
  85. 森五郎

    森説明員 届け出は終わっております。
  86. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 労働省は、一体どういう認定でこの職業安定法施行規則の第四条の該当事項に全部該当すると見たのか。職業安定法ができてから炭鉱には組夫というのは一人もいなかったのですよ。そうして、組夫がいたところはみんな本鉱員に切りかえたのです。そうしてずっときたわけですね。ところが、あなたのほうで施行規則の第四条を変えた。そうして非常にルーズにした。しかし炭鉱にはいなかった。そうして最近、昭和三十三年ごろから組が入ってきた。いままで組があったのは、先ほど石炭局長が申しましたような立て坑の場合、あるいは特殊の機械を据え付ける場合、これ以外には組というのは入っていなかった。かなり大きな坑道の掘進も全部本鉱員でやっておった。ですから、あなたのほうは四条に違反した者は一人もいないと断言されるけれども一つ一つ認定しているのですか。
  87. 有馬元治

    ○有馬説明員 臨時措置法による組夫の承認制度と、それから職安法による労供の禁止規定との関係は、これは非常にやっかいな問題でございまして、措置法による承認は単なる承認数という形で作業の種類、場所、期間、規模というふうな要件で承認がなされるわけでございますが、その承認された規模の中で、どういうふうな組が具体的に現実にどういう作業をやっておるか、ここに職安法の労供問題が出てくるわけでございます。  私どもは、臨時措置法のできた経緯からいたしまして、通産大臣の承認を経ました組夫につきましては、まず職安法の禁止基準に該当しないという推定をいたしておりまするけれども現実にやっておる組作業状況をよく具体的に把握してみないと、職安法による労供違反かどうかという判定は実はやりにくいのでございます。したがいまして、今日までわれわれが把握しておる状態のもとにおいては、今度の山野鉱に入っておりました組夫関係につきましては、労供違反の疑いは現在のところはない。しかし、そういった関係でございますので、実情をよく把握いたしませんと、その辺の関係は非常にデリケートである、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。
  88. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 もう事件が起こったのですから、調べようと思えばすぐ調べられるのでしょう。たとえば、使用者として法律に規定されたすべての義務を負っておるかどうかということ。あらゆる保険なんか入っておりますか。これ一つをとっても問題ですよ。労働者の把握が十分でないのに、どうして法律上の義務が持てますか。労災というものは、比較的本人の過失とかそういうものを問いませんからね。これはあとからいろいろやって金をやるから、いままではわれわれもそれを認めているけれども、労災の分についておそらく掛け金を払っておったかどうかわからない。わからないけれども、これは労働者の問題だから、それは労災をいままで出しているのですよ。しかし、これは一たび失業した場合に失業保険をもらう資格があるかどうかわかりませんよ。組夫は厚生年金だってかけておったかどうかわからない。ですから、法律上の義務を一つとってみても、使用者としての義務を果たしているかどうかわからないですね。  それから、あとから聞きますけれども、「作業の完成」について責任を持っておったかどうか、これもわからない。これだってはっきりしない。さらに四号の「自ら提供する機械、設備、器材」というものは、これはほとんどない。あったとしても、それはみんな会社から賃貸しておる。これは選択的な要件ですからね。さらに「必要な材料、資材」、これは全部会社支給です。組はマイトなんか自分で受けてこないのです。みんな会社が出すのです。それから「専門的な技術」、あるとするなら「専門的な経験」と言いたいのだろう、専門的な経験をだれかが持っている。そうすると、一体この組の保安責任はだれが持つか。
  89. 森五郎

    森説明員 鉱山保安統括者です。
  90. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 保安統括者というのは、命令権はあるのですか。組の労働者保安の違反をしておる、これは一体だれが命令するのですか。この人には全然雇用がないのですよ。統括者はその労働者には雇用関係がないのです。その労働者保安は直接はだれが……。
  91. 森五郎

    森説明員 組の係員を通じて監督するということになっております。
  92. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そこで労働省は、一体どの組にも保安のいわゆる国家試験を受けた係員がいたかどうか。
  93. 有馬元治

    ○有馬説明員 職安法による労供かどうかという判断基準によりますと、作業責任を持つということが第一点でございますが、その観点と結びつけて坑内労働における組夫の場合を考えますと、組夫については鉱山保安法規に基づきまして、保安管理上の指揮監督権は組夫にはないわけでございます。したがいまして、保安についての責任遂行という場面は、坑内における組夫といいますか、労供の判断基準からは、除外されておる、こういうように私どもは理解しております。
  94. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そんなばかなことがありますか。職安法の施行規則第四条の第二号「作業に従事する労働者を、指揮監督するものである」のですよ。指揮監督するのに、保安責任がないものがなぜ指揮監督しますか。
  95. 森五郎

    森説明員 お答えいたします。  鉱山組夫を使う場合に、先生御存じのように、届け出をするわけですが、それには必ず保安技術職員が何名おるかということが記載されるようになっておりまして、それを確認して許しておりますから、その組には保安技術職員、すなわち坑内係員の場合にはもちろん国家試験を受けた係員ということになっております。
  96. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 保安技術職員がおりますか。ほんとうにあなたのほうでは確認しておるのですか。
  97. 森五郎

    森説明員 確認いたしております。
  98. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、それは届け出の、先ほどお話がありました八十七名についても、全部保安技術職員がおることを確認しておるのですか。
  99. 森五郎

    森説明員 われわれのほうの届け出は一カ月以上の仕事をする組でございますので、その組についてはおのおの国家試験を受けた坑内の技術職員はおるということでございます。
  100. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大体職安法から考えても、保安の面を除外するということは出てこないのですよ。要するに指揮監督する能力がないのだから、あなたのほうだけ考えてもそうなんですよ。坑内に入れるということが条件であるならば、人ごとでなくて、もう少し労働省も考えなければならない。いまの組夫の実態を見ると、施行規則四条違反が非常に多い。まず労働省のほうでチェックすべきですよ。従来、組夫というものは職安法ができてから全然入ってなかったのですから、それが非常にルーズになってきておるわけです。それは職安法施行規則の四条というものを改正した。そこでこれが造船とか鉄鋼に及んで、炭鉱がまねをした。とにかく保安の命令系統がはっきりしない。そんな状態でどうしますか。少なくともその組がユニットとして保安体制ができていない。こういうものは当然労基法、職安法違反ですよ。どうなんです。
  101. 有馬元治

    ○有馬説明員 その問題は、三十七年の八月十日付で局長通達が出ておりまして、この通達を出すにつきましては通産当局ともいろいろと相談をして出したわけでございますが、坑内における保安責任者は鉱業権者でございます。したがいまして、組が作業請負をやる場合の作業責任の問題は、鉱山保安法に基づく保安管理上の指揮監督は含まれない、こういう解釈を下して、その保安上の責任はあくまで鉱山保安法に基づく保安統括者が責任を持つ、こういう解釈に今日までなっておるのでございます。私どもは、この三十七年の通達によって坑内における組夫の職安法上の取り扱いを律しておるわけでございます。
  102. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それは役所同士が調整したのでしょうけれども保安関係を無視して組を承認するとか承認しないとかいうことは実におかしいと思う。坑内に入るのに、請負者として資格があるかどうかというのは、坑内ではまず第一に当然保安管理ができるかどうかということでしょう。それは除外するのだという、そんなかってな解釈がありますか。  大臣は時間がないそうですから、事務当局にあとから質問しますが、労働大臣通産大臣、お聞き及びのような状態です。保安監督の系統がはっきりしない。そうすると、組というのが入って、いま労働省の説明だと、組は保安管理については全然タッチしないのだという。坑内に人を入れることを請け負う人間保安管理についてタッチしないということになれば、たいへんなことですよ。ですから、いままで戦後職安法ができて、少なくとも保安責任のないような請負というものは入れなかった。そういう状態です。  そこで、これは労働省にも問題があると私は思う。それから通産省にも問題がある。両大臣からこの制度についてお聞かせ願いたい。
  103. 三木武夫

    三木国務大臣 組夫の問題については、とにかく問題が非常に多いと私は思います。だから、一ぺんにこれをやめてしまうということになれば非常に影響がありますから、臨時的な専門的なものに限るというようなことで組夫の問題というものを再検討いたそうと考えております。
  104. 小平久雄

    小平国務大臣 御指摘のようにいろいろ複雑な問題があるようでありますし、また法の適用等につきましても非常に問題があるようでございますから、よく通産省とも打ち合わせいたしまして、今後逐次改善をしていくように努力いたしたいと考えております。
  105. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 通産大臣が退席されましたから、その間他の質問をしたいと思います。  大蔵大臣が見えましたけれども、去る五月の十八日に本会議におきまして、炭鉱災害防止に関する決議案というものを決議したわけです。そして六月の一日に本委員会において、財政的措置について主計局の鳩山次長から答弁をいただいておったわけです。ところが、事保安というのはきわめて迅速を要する。ですから、質問をしておる間にも災害が起こるかもしれないということを言いながら質問をしておったら、災害が起こった。  そこで、従来の状態を見ると、保安についてはきわめて財政的な手当てがなされていないのです。たとえばスクラップ・アンド・ビルドといいましても、スクラップのほうには政府はかなり思い切ってスクラップをしてくれました。予算もつけてくれた。ところが、ビルドのほうにはなかなかできていない。ましてや保安のほうは十分でないのです。  そこで、最近における保安機器の状態を見ましても、三池の災害が起こる前に九州の大辻炭鉱という炭鉱爆発事故が起こって、所長以下坑内に救出に入って全員死んでおる。これはマスクを持たないでです。そこでマスクはどうしても必置要件として義務を課さなければならぬというので、法律まで改正をして、各炭鉱は全部義務として置くべきであるということを明記したにもかかわらず、日本においてはそれだけのメーカーの製造能力がないというので、中小炭鉱からやっておりましたところが、三池の災害が起こって、そして四百五十七名のうちの大部分が一酸化炭素の中毒で死んでおる。ですから、マスクをつけておったならばああいう大規模な死亡者は出なかったであろうと考えられる。ところが、今度の山野事故はマスクをつけておったのです。おったけれども、有効時間が三十分くらいしかなかったので、その有効時間が過ぎて、ついにその一酸化炭素中毒で二百名以上の方がなくなった。そこで私は保安機器の研究に対して政府はひとつ抜本的な援助措置を講じてもらいたい、これをひとつ答弁を願いたい。
  106. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 私もただいまお話しの五月、衆議院の院議をもって保安対策その他にで曇る限りの措置をする要請があったことは承知しております。今回の山野炭鉱の問題は、そういう議論が国会で行なわれておるというような最中に起こっておる。まことに残念に思っておりますが、政府といたしましても保安の予防的な意味における対策にも大いに意を用いなければならぬ、そういうようなところから、きょうの閣議におきまして、お話しのような意向の経費の支出ということもきめて、できる限りの協力をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  107. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この保安機器というのは、平たいことばで言えば、もうからないのですね。そこで大メーカーが保安機器について研究をするという体制にないのです。みんな小さなメーカーばかりが扱っておる。事人命に関する問題ですから、私はこれについては政府としてそういう研究体制を確立する必要がある。今度マスクをつけておってなくなった、これは実に残念なことですね。そこで私は海外石炭鉱業保安調査団報告書を見てみたわけですけれども、それには次のようなこと別言っております。「自己救命器はドイツでは入坑するときは必ず携行しなければならず、その使用可能時間も二時間(能力としては三時間)と長く、耐用年数も長い」と書いてある。一体ドイツにおいてはそういうのがあって、どうして日本にはできないのか、これを鉱山保安局長から答弁願いたいと思う。しかも「救命器も色々と新型が出来、使用時間もドイツでは二〇〇気圧の酸素ボンベで四時間使用可能のもので軽いものが常用されており、」こういうように報告書には出ておるわけです。この報告書が出ればすぐそういう研究態勢に入るなり輸入をするなり、日本の大メーカーではまだ品物ができぬのにもう青写真を買ってくるくらいですから、なぜ一体保安機器についてはで弐ないのか。こういう報告書が出されておるけれども政府はその後どういうことをしたのか、これもひとつ局長から答弁願いたい。
  108. 森五郎

    森説明員 自己救命器につきましてはただいま
  109. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 今度は科学技術庁の調整費の中から、金額はまだきまっておりませんが、そういう基礎的な問題の研究のための支出をいたしたい、こういうふうに考えております。
  110. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、工業技術院に科学技術庁の調整費から——あれは三億か五億くらい、わずかなものじゃないですか。それから出すのですか。工業技術院にその調整費から回すというこうなのですか。
  111. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 なお、今回支出いたします予備費の中にも、工業技術院のさような研究費のために一億九千七百万円を支出するということに相なっております。
  112. 滝井義高

    ○滝井委員 簡単にひとつ予備費の内容を、どういう方面に支出するか、大きい項目だけでけっこうですから、ちょっと言ってみてください。
  113. 森五郎

    森説明員 今回の予備費としては、炭鉱保安緊急対策費として大体きまったもので、ございますが、総額は先ほど申しました約七億八千四百万円でございます。その内訳といたしましては、これは通産省関係だけでございますが、保安監督の強化ということで約二千万円、保安専用器具の整備、先ほどいろいろ問題になっておりましたガス警報器であるとか、あるいは異常気圧警報器であるとか、あるいは自動消火装置、これに対する補助金並びに合理化事業団に対する出資金、合わせまして三億九千四百万円、それから保安教育の強化といたしまして三千二百万円、それからただいま大蔵大臣から御答弁がございました工業技術関係保安技術に対する試験研究に対するもの一億九千七百万円、それから保安不良炭鉱政府で買い上げるという費用が約一億三千九百万円、合計いたしまして七億八千四百万円が通産省関係の今度の予備費内訳でございます。
  114. 滝井義高

    ○滝井委員 他に……。
  115. 村上茂利

    ○村上説明員 今回労働省関係予備費といたしましては、炭鉱保安緊急対策といたしまして、監督旅費並びに備品といたしましてガス検定器等の庁費、合わせまして二百三万五千円を計上いたしておりますが、別に労災保険特別会計におきまして、いわゆる保留解除という考え方のもとに高圧酸素室の設定のために九州と北海道におのおの高圧酸素治療施設を、機械並びに病棟をもあわせまして整備をするという観点のもとに一億三千万円、ほかに試験研究費百二十万円等が認められております。予備費の二百三万五千円と合わせますと合計一億三千四百十一万の特別経費を考えております。
  116. 滝井義高

    ○滝井委員 これでけっこうです。
  117. 加藤高藏

  118. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大蔵大臣がたいへんお急ぎになるようですから、ごく簡単に二点だけお伺いをいたしておきます。  一点は、御存じのように、炭鉱のなくなったあとに炭鉱に取ってかわる近代工業を誘致しようというので、工場団地というものを炭田地区にそれぞれ相当造成しつつあります。ところが、これが坪当たり三千五百円あるいは四千円というような多額な造成費がかかる。ところが、その土地を買って工場を持ってこようとする側からすれば、不便な地区において三千五百円も四千円もの高い土地をかなり多く利用してやるということは、これはなかなかできない。だから、少なくとも坪当たり二千円以下ぐらいにしてもらわなければ、せっかくつくった土地に工場が建たないでペンペン草がはえるような状態になってしまう。この点については、産炭地域振興事業団が痛切にこの点を訴えておると思います。同時にまた、その市町村も二千円以下になることを要望しております。そういたしますと、当然大蔵省側で千五百円なり二千円なりの差額を補助の形か何らかの形で見てやらなければ、産炭地域振興事業団のみでこれは解決することができないことになっていますから、いずれ通産大臣から大蔵大臣に具体的にそういう話が出てくると思います。そういう場合に、大蔵大臣はそれを十分お聞き取りの上で、せっかく工場団地としてつくったものであるから、それが近代工業建設に利用されるようにしてこそ初めて炭鉱に取ってかわる近代工業ができるわけであります。また投入して土地をつくったその使命も達成するわけですから、そういう点についていずれ通産大臣から話があろうかと思いますが、大蔵大臣、そういう場合においての心がまえの問題というか、どういうようにお考えになるかということ等をお伺いしておきたい。
  119. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 産炭地域振興事業団がその目的を達する、これはつくったその趣旨でございます。できる限りその趣旨が達成されるような配意をいたしたいと思います。いずれ通産大臣からもそういうことについての話があろうと思います。よく話し合ってみたいと思います。
  120. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 そういう場合には、先ほどから申し上げるように、せっかくつくった団地でありますから、それが生きるようにひとつ解決されるよう強く要望いたしておきます。  いま一点お伺いいたしたいと思いますが、これはあとで労働大臣にお伺いをし、さらに労働大臣から同じく大蔵大臣に御相談のある問題でございますから、先に労働大臣に伺っておくことが順序ですけれども、大蔵大臣がお急ぎになるようですから先に伺っておきますが、実は鉱山労働者、これは炭鉱並びに金属鉱山坑内労働者も同一に見なきゃならぬと思いますが、炭鉱はだんだん人的に老朽老廃をしつつあるわけです。たとえば自分の子供だけは炭鉱夫にしたくないというので、子供にあと継ぎをやらすという者はほとんど坑内労働者にはございません。ないくらいですから、他から入ってくる若い連中はなおさらないわけです。そういう点から、先ほど石炭局長は五千五百万トンを達成するようにするとおっしゃっておりますけれども、これは人的老朽老廃の問題を解決しなければ、その五千五百万トンの目的以上の出炭をしていくことは不可能と言ってもいいと私は思います。  そこで、これはもちろん労働諸条件をよくするという問題あるいは保安の安全を期する問題等もありますけれども、もっと根本的な問題は、これは西ドイツ等でもやっておりますし、ほかでもやっておるようですが、坑内労働者に対する特殊な老齢年金制度をつくるという問題でございます。で、私どもの考えとしては、厚生年金制のような立て方で、本人もその掛け金をある程度かける。経営者側もこの厚生年金負担と同じようにかける。国もこれに対してこの負担をしていくという点から、坑内労働者が定年まで働けば、もう年をとってから、特に坑内労働者というものは、宗年以上やって外の太陽や空気に当たるようなところではなかなか働けない一つの体質ができてしまっておるのです。でありますから、定年にならない、まだほかに出ていって働けるうちに、あるいは四十過ぎか五十前に技能熟練工は出ていってしまう、子供や若い者は入ってこないということになりますから、したがって坑内労働者の中にそういう技能者が足らなくなってしまうわけです。でありますから、いま私がお尋ねしておるような特殊な老齢年金制をつくって、定年まで働けば他に行かなくても、とにかくその年金でどうやら生活ができるというような一つの安定した保険制がつくられるということになれば、自分の子供も、あるいは若い者も入ってくるだろうし、自分もまた定年まで働くだろう。そこに人的老朽老廃を防止していくことができるんじゃないか。これは私はきわめて重要な問題だと思います。この点も、労働省で案もつくらなきゃならぬ問題ですから、いずれ労働大臣からそういう案をおつくりになって御相談になると思っております。実はこの点については、さきの石田労働大臣とも話し、櫻内前通産大臣とも話してございます。最も必要ですねということを言って、十分検討させましょうということを言って、まだそのままになっておりますが、今度は新しい労働大臣にどうしてもそれをつくって出してもらおうと思っております。  そうしますと、当然、大蔵省側がそういう特殊な支出について、これまたとかく横やりを入れられるというと、ずるずるべったりになる危険性があります。大蔵省はどうもそういうことについてしまして、政府と社会党とが、あるいは民社党その他労働団体ともいろいろ打ち合わせしまして、五千五百万トンが一応適当であろうということになりました。しかし、その後第二次石炭鉱業調査団政府国会の要請に基づきまして編成して、調査に当たったわけでございますが、現下の石炭産業内部に包蔵するいろいろ困難な問題、たとえば保安確保もその一つでございます。あるいはエネルギー政策の現状、そういうような点を考慮いたしまして、今後の石炭生産体制目標はやはり五千五百万トン、しかし先ほども申しましたように、エネルギー事情はなおきわめて流動的でございますので、現実出炭計画といたしましては、やはり保安その他実情に沿った生産計画でなければならないというような見解から、第二次調査団におきましては、現状においてはおおむね五千二百万トン程度の横ばい程度が妥当ではないかというような見解も同時に述べておるわけでございます。私どもといたしましては、特に政府といたしましては、この第二次石炭鉱業調査団答申趣旨を尊重いたしまして、今日私ども指導理念といたしましては、この線に沿いまして出炭体制を考えておる次第でございます。
  121. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、五千五百万トンの目標というのはくずしておるわけではないでしょう。
  122. 井上亮

    井上説明員 目標といたしましてはくずしておりません。
  123. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣、お聞きのとおりです。したがって五千五百万トンの目標はくずしていない、現実においてその五千五百万トンを達成するについては一、二の隣路が出てきておるので、当面は、四十年度は五千百六十万トン余としておるわけです。これは条件さえだんだんそろってくれば、五千五百万トンになっていく。そのことがエネルギーの安定供給に寄与し、国際収支の均衡を保つ上にやはり重要な役割りを演ずるのだ、あるいは日本の雇用にも役立つのだ、こういう観点から五千五百万トンの目標はくずしていないのですよ。そうすると、五千五百万トンの目標をくずさずに、五千二百万トン前後を今年やっていくとすれば、いま一番陸路になっているものは何かというと、これは労働力でしょう。一番大きな問題は労働力でしょう。労働力の確保が困難であるので組夫を入れておるのです。一体この労働力の確保を困難にしたのは、だれがしたのか。第一次、第二次の調査団答申政府と経営者が守っていないのです。だから炭鉱で離職した諸君は行き場がない。就職するところがないのです。だから組に行かざるを得ない。組ならば食えるのです。最低の生活は組ならばできる。あるいは新聞や週刊誌を見ると、組は流れ者が入ってきておる。くりからもんもんを入れた入れ墨者が入ってきておる。過去に暗い影を持った人が入ってくる。われわれはここに来なければ雇用してくれる人がないのだという形で、週刊誌や新聞に、組夫というものを主題にして出ている。それは、そういう人たちに対する政府の雇用政策が何もない。はっきりしておるものがない。だから、筑豊にはいまだ何万という中高年齢層が滞留しているのです。これを滞留させないような、安定雇用に持っていくような政府施策がうまくいっていないところにも、組夫が発生する原因があるのです。組夫を活用する親分が出てくるのです。だから問題は、石炭産業からはみ出したこれらの労働者に対して安定雇用を与える。あるいは過去に暗い経歴を持っている人についても、差別なく安定雇用を与えていくということが必要なのです。いま組夫と一般鉱員との状態を見てごらんなさい。ある人はこういうことを書いている。これはアメリカの白人と黒人の差別より激しいと書いている。北海道の萩原さんの炭鉱災害が起こったときに、組夫の奥さんが何と言って泣いたか。うちのとうちゃんは生きているときに、虫けらになりたいと言っておった。組夫は虫けら以下だというのです。だから、いま黒人と白人の差別よりもひどいというのです。こういうものを労働省は平然として置いておく。これで一体労働省の行政があるかというのです。私は、こういうものは徹底的に洗わなければいかぬと思う。そのためには大蔵省がやっぱり徹底的に金を出す必要がある。それをいままで出し惜しんで、大蔵省は出していない。だから、こういう点については、少なくとも人間尊重のチャンピオンとして、あなたが佐藤内閣の政策のバックボーンを形成するために大蔵大臣として出ていらっしゃったのだから、今度はその人間尊重の政治を実行するためには、これは佐藤内閣に対する天の啓示だと私は思うのです。だから、思い切って職安行政に金を出して、一ぺん全部炭鉱組夫を洗ってごらんなさい。坑内で中学生を使っておったのがおるのです。あるいは女をまだ坑内に入れておったり、十六歳の少年を坑内に入れておる。戸籍謄本が出てきておる。当然戸籍謄本を組夫については監督署は調べるべきなのです。問題が連続して起こってきているのです。そういうものはやらない。やる人がいないのかもしれません。あるいは保安監督局でやるべきなんですが、やる予算がないのです。一週間一回ぐらい炭鉱を回れますかと言ったら、とんでもない、先生、一週間に一回とても回れませんと言うのです。監督官は四百三十五名おります。それでも一週間に一回は回れない。だからこれは、もはや政府と経営者が有沢調査団答申を守っていないのです。ここに問題がある。だから、今度は、政府がああいう有沢さんたちのような優秀な人たち答申を出したら守る。守って、まず第一に人間尊重の政治ですから、保安の強化と基準行政の強化のために特に炭鉱に重点を置いて金を出してやる。そんなに金は要らないのです。地主に千五百億出した。その地主に出した金があったら、その一年分だけ出してくれたら一ぺんにできる。いますぐ命の緊急性のない地主に千五百億もお出しになって、いま命の消えようとしている炭鉱のこういう調査には金を出さない。いままで十五億しか出していないでしょう。私たちが出してくれといって三拝九拝しても、災害が起こってからやっと八億予備費を出すというのです。ころんでけがをして、命がなくなってから金を出してくれても、そんなものは役に立たない。何百億も金を出す必要はないのです。地主や金鵄勲章に出す金があったら、命は守れるのです。ういう点は、やはり人間尊重の政治をおやりに九るというのだから、政治の緩急を考えてもらわ丸ければいかぬ。第一次、第二次の調査団の結論を政府実行していない。とりあえず、まず組夫のそういう実態調査について大蔵省は金を出す。賜るいは保安監督の強化について金を出して、一週間に一回は回れるくらいの人員をつくるべきだと思う。もう炭鉱もだんだん少なくなっている。そんなに何百億の金が要るわけじゃない。十億か二十億の金を毎年増加していけば、それで済む問題なんです。その点はどうですか。
  124. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 労働大臣と相談いたしまして極力善処いたしたいと思います。
  125. 滝井義高

    ○滝井委員 労働大臣検討して善処するそうですから、ひとつ心臓強く言ってもらわなければいかぬ。  もう一つ。これでやめますが、これも私はもう何回も言ったのです。参考人に学者を呼ぶたびごとに学者の諸先生方が言う。それは工業技術院の研究費です。ガス爆発の研究、ガス救命具の研究、こういう研究をやりたい、五億円程度の金を出してくれたらわれわれはそれでできるのですと言うのだけれども、この金を出さない。日本はこういう基礎的な研究というものに金を出さないから、科学がおくれてくる。模倣になっちゃう、こういう点については、そんなにばく大な金が要るわけでもないし、国の財政がひっくり返るわけでもないです。だから、こういう点は、やはり基礎研究について工業技術院に金を出して、存分学者を督励をして研究体制を確立をして保安の万全を期していくというのは当然のことだと思う。これは三回か四回か言ったのです。それでも、検討いたします。検討いたしますと言うけれども予算面ではついてこない。今度の八億の中にその金はついているのですか。先生の御指摘のとおりでございまして、わが国の水準が外国に比して若干おくれておるということは事実であろうかと思います。そこで政府といたしましては自己救命器のメーカーに対する技術研究補助金を支出する、あるいは科学技術庁の研究調整費を利用いたしまして、自己救命器の中の薬剤の研究、改良の問題、あるいは酸素を同時に出すような型の研究、いろいろな研究をやっておるわけでございます。
  126. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そこで、大蔵大臣だけにしぼってお尋ねいたしたいと思います。  先ほど通産大臣に質問しておったのですが、第二会社、それから組夫を使用する長時間労働、こういう形できて、いわば昔に返るような近代化合理化が行なわれておる。非近代的な合理化、そうしなければやっていけない、こういうのです。ですから実際に第二会社労働者は、賃金は六割から七割、時間は二割ぐらい長いですね。それでも労働者のほうはがまんしてやっておるのです。基準局が労働時間が長いからといえば、労働組合のほうはそんなことを摘発してくれるなというぐらい協力をしておる、それが実態なんです。そこで一体、日本の炭鉱をこのままで放置していいかどうか。ですから、今度の災害というのは石炭政策の根本の問題にかかっておる。いままでの石炭政策のひずみが全部災害で明らかになったということを言わざるを得ない。そこで石炭政策の体質改善についてどういうようにお考えであるか、これを大蔵大臣一言御答弁を願いたい。
  127. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 石炭業がこれからいよいよ近代化合理化されないと、エネルギーの中の重要な一産業といたしましてだんだんと困難な状態になってくるだろうと思います。そういう意味において石炭産業近代化合理化ということは非常に重要な問題だというのが私の認識でございます。通産大臣からいろいろ相談がありますれば、前向きの姿勢でこれに取り組んでいきたい、こういうことを申し上げておきます。
  128. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 さらに保安施設について予算は惜しみなくひとつ——むだ使いしてはいけませんが、惜しみなく出してもらいたい。とにかく研究費を出すことが特に必要である。それからやはり機器に対して、融資だけではなくて、大手といえども補助金を出さなければいまできないのです。夕張炭鉱のごとき、北炭というような名門の炭鉱で、通気坑道が狭いからというので指摘を受けているのですが、その通気坑道が狭いのが事実上ガス爆発原因になっておるのです。こういうことが現実にあるということは、私は非常に残念に思う。ですから資金、ことに命に関する資金については十分出していただきたい。  同時に、この山野炭鉱再建問題ですが、これは御存じのように、能率を上げたといってタコ配も若干しておったようです。しかしこういう災害弔慰金をかなり出した。さらにいまから原因がはっきりし、保安が十分完全になるまでは操業が停止されるでしょう。その間いわゆる休業手当を出さなければいかぬ。それから労働者には立ち上がり資金も要るでしょう。それから崩壊した坑内の整備も要るでしょう。ですからこの再建資金についてはどういうようにお考えであるのか、これをお聞かせ願いたい。
  129. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 山野炭鉱再建問題につきましては、まだ私は報告を受けておりません。けれども通産省のほうからこの問題についてお話がありますれば、積極的にこれに御協力を申し上げる、こういうふうに考えております。
  130. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 すでに炭鉱については運転資金として再建資金というのが貝島炭鉱に出され、今度おそらく日炭高松に出されることになるでしょうが、石炭鉱業審議会経理審査会の議を経て出すように法律の改正があっておるわけです。ですから、この炭鉱の場合は再建資金を出すような方式をとらないと、市中銀行もとても運転資金を貸してくれないと思うのです。ですから、制度に乗ぜて、石炭鉱業審議会において十分検討して、その必要を認めたら大蔵大臣のほうにおいてぜひ支出をしてもらいたい、このことをもう一度具体的に答弁を願います。
  131. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 通産大臣と相談をいたしまして、善処をいたします。
  132. 加藤高藏

    加藤委員長 滝井義高君。
  133. 滝井義高

    ○滝井委員 大蔵大臣がお急ぎだそうでございますので、先に大蔵大臣に一、二点お尋ねをいたしたい。  まず第一点は、最近巷間で、佐藤内閣になってから二月、四月、六月と歴代の内閣に見ざる大災害を、連続して半年以内に三回も勃発させたわけですが、これは五千五百万トンという第一次有沢調査団答申に無理があったのではないか、だから起こったのだという論が出つつあるわけです。これは私に言わしめれば、非常に認識不足ではないかという感じがするわけです。きょうの石炭局長等の答弁を見ても、そこらあたりはいままでのような五千五百万トン確保するという確信がちょっと欠けておる。非常に弾力的にいきます、これは固まったものではありません、こういうことなんです。それならば、この際政府は有沢さんの言うように、有力な炭鉱だけを残して、三千万トンくらいになってもいいということになるのかどうか。ここらあたりが、いわば政府石炭政策というものが国民的な規模において確立をしていないところなんです。これは有沢さんは絶えず指摘して、おるのです。内閣はわれわれに勉強させて答申を出させるのだが、ほんとうに五千万トンないし五千五百万トンを確保するという筋金を政府が持っておるのかどうか、これをはっきりしてくださいというのが一回、二回にわたって答申を出した有沢さんの基本的な態度なんです。災害が起こると、風にゆれるアシのように政府石炭政策が絶えずゆれてくるのです。そこでこれは、福田さん、次には自由民主党を背負う総裁の候補です。私はおだてるわけではない。しかも実質的に大蔵省を握っておる。財政のかなめを握っておる。ここはやはりエネルギー政策について国際収支にも重大な関係があるのですから、エネルギーの安定供給についてどうするのだという方針を立てないと、日本の基礎産業がぐらついておったら、いまの不況というものはなかなか克服できない。基礎産業がちっと固まった上に初めて、上部構造の他の産業というものががっちりと固まってくるのです。だから一体あなたは、頻発する災害の中で、石炭産業というものが第一次、第二次の有沢調査団答申のとおり、確固不動の方針をもって五千万ないし五千五百万トンは確保していくのだ、こういう基本方針に立っているのかどうかということなんです。
  134. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 石炭エネルギーの中でどういう位置づけをするかということは、これはずいぶん論じられてもき、有沢さんにもずいぶん御検討願って今日に至っておるわけでありますが、私いま何トンというような記憶をいたしておりませんが、しかしこれは企画庁、また通産省等におきまして、こういう方針石炭の位置づけがされるのだという方向が出されておると思います。その方向に向かって財政当局としては全面的に協力してまいる、こういうふうに御了承願いたいと思います。
  135. 滝井義高

    ○滝井委員 その数があいまいのようなことを言われるが、あいまいではないのですよ。これはもう第一次調査団が五千五百万トンを出すときも、政府、池田総理と社会党なり総評というものは、この点で非常にしのぎを削って問題の決着をつけたわけです。五千五百万トンというものが当時の数字におけるかなめであったわけです。石炭産業が安定するかどうかのかなめであったわけですよ。それをいまになって大臣が、数字はどういうものかわからぬということでは困るのです。ここをまず一本筋を立てて、その上で保安対策、労務確保を一体どうするかということが問題になってくる。これが根本が立たないようでは話にならないのですよ。ここらあたりを大蔵大臣、もう少しきちっとさせておかなければいかぬ。
  136. 井上亮

    井上説明員 五千五百万トンの問題につきましては、滝井先生がただいま御指摘のとおり、昭和三十七年の四月に、当時の政転闘争を契機といたはきわめて冷淡です。厚生省であるとか、労働省であるとか、そういう方面に対する扱い方に対してはどうも冷淡ですから、いま私が申し上げたようなこの年金制というものは、国策として私は非常に重要であると考えていますから、そういう相談が労働大臣からされた場合には、ひとつ大蔵官僚の諸君に大臣は負けないで、その支出をするということについて十分腹をきめてやってもらいたいと思うが、私がいま申し上げるようなことについて御賛成ですか、どうですか。
  137. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 石炭労働者に対する特別の老齢年金制度の構想、アイディアですね。初めて私も承るわけです。これは労働省が中心でありましょうが、厚生省なんかももちろん関係しておる問題であります。また、労働大臣とも十分話し合ってみたい、今日はさようなことでひとつ御了承願いたいと思います。
  138. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は、この問題も、通産大臣に質問をして、同席で大蔵大臣に質問したかったのですが、あとから通産大臣に質問することにして、基本的な問題です。  スクラップは、かなり進捗しておることは事実です。ところが、ビルドのほうは全然いかないわけです。スクラップ・アンド・ビルドと言ったけれども炭鉱のほうのビルドは全然進まない。そこで、どこに問題があるか。すなわち七千二百万トン程度将来掘るのだという、非常に景気のいい時期もあったわけです。そのときに立て坑方式がいいというので、ずいぶん各炭鉱立て坑を打った、あるいは打とうとした。ほとんど失敗しております。もう住友炭鉱でも、あるいは明治炭鉱にしても、あるいは近く問題になっております山野も、二つ立て坑を打って、実はそれを閉山するというので、労働者のほうから、あるいは地域住民のほうから、ぜひ残してくれという訴えが出た。隣のほうの三井田川炭鉱では、東洋一の伊加利立て坑というのを掘って、そして竣工して間もなく、その立て坑を使わないで第二会社になった。その立て坑は全然役に立たなくなった。こういうように非常にリスクが多いですね。炭鉱企業というものには非常に危険性がある。そこが第一の問題点。  それから、いまから新鉱を開発すると計画いたしましても、ざっと計算しましても、百万トンの炭鉱をつくるのには年産一トンについて一万五千円くらいかかる。ですから、百万トンなら百五十億かかる。百五十億の炭鉱が一体どのくらいの収益を得るかというと、約百万トンですから、三千五百円にすれば三十五億、四千円にすれば四十億、しかも半期は二十億。百五十億も費して二十億しか売り上げ代金がないのですよ。しかも懐妊期間が非常に長い。石油の精油工場のように、土地の造成ができればすぐ仕事ができるというわけにはいかない。少なくとも百万トンの炭鉱をつくるためには七、八年かかる。金はずいぶん寝るわけです。ですから、一体これで新鉱開発に貸す銀行があるだろうか。市中銀行は新鉱開発に金を貸さないだろうと思うのです。その会社が蓄積を持って自己資金でやれば別。一体日本の炭鉱というのは、立て坑開発して、そして主要坑道を掘って、後退式に新式にやるならば、採算がとれないのではないか。ただ明治以来のような斜坑方式をとって、近いところから石炭を掘って、ある点まで行ったら採掘をやめて、その鉱量を捨てるというつもりならできないこともない。しかし、最近の方式をとっておれば、これはどう計算をしてみてもできないです。市中銀行は金を絶対に貸しません。  ですから、新鉱開発については、大蔵大臣は一体どういうようにお考えであるか。しかも非常に危険が多いですよ。新鉱開発をやった企業ほどいま赤字が多くて、そして負債が多くて困っておるのです。大臣の御所見をひとつ承りたい。
  139. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 いま、先ほどの五千五百万トンが問題になりましたが、とにかく五千五百万トンの石炭を消化するということはまことに容易ならざる問題ですね。いろいろ特別の事業方法を考えておることは御承知のとおりであります。  そういうようなことで、でき得る限り石炭の需給について私は努力をしてみるということが一番の根本問題ではないかと思いますが、しかし、財政当局としてスクラップ・アンド・ビルドの方面につきましても、ことしから振興資金というようなことも考えておるようでありますし、また開発銀行、そういうような方面におきましてもこれはもちろん御協力を申し上げなければならぬ、こういうふうに考えるわけでありまして、ビルドの積極的計画がありますれば、これに協力をする、こういう方針で臨みたいと考えております。
  140. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 石炭は、やはり二十年後の状態を見ながら政策を決定しなければならぬ。要するに一九八〇年代の石炭の供給というものは、一九六〇年代にきまるのです。それほどきわめて長期的な見通しを持って開発をしなければできないのです。炭鉱現実に軌道に乗らない。ですから、いま五千五百万トンでも需要に困っているというようなことでは、石炭の供給力というものは非常に激減すると思う。ですから、各国とも、アメリカでも、ソビエトでも、みんな一九八〇年代にはいまよりも倍くらいの増産所画を立てているのですよ。ですから、私は、長期見通しを立てて、そうしてこの供給力を増大をするようにやっておいても、五千五百万トンの維持は将来むずかしいと思う、長い目で見るとね。  そこで、いま制度のお話があって、新鉱開発のために財政投融資金も入れるのだというお話がありましたが、いまの援助程度では、新鉱開発といいましても、独立鉱ではないのです。いままで開さくをして操業をしておった隣くらいにその炭鉱をつくって、従来の福利施設をつくっていけば、いま程度の援助措置でもできるでしょう。しかし、いまから問題のある海底炭鉱であるとか、あるいは独立炭鉱をつくるとすれば、現在程度の援助ではとても私企業ではできない。ですから、これは何らかの方式をとらなければ、銀行も金を貸さないけれども企業もやれません。ここ数年たてばもう能力そのものが、幾ら五千五百万トンとかあるいは五千万トンとかいっても、力がなくなる。ですから、ビルドの問題は、いまのような方式ではとてもだめだ。もう一度検討し直す。それができなければ、市中銀行は金を貸さないというならば、もう私企業の限界を越えているわけですから、国がやはりそれだけ将来の安全保障を見て、石炭が要るとするならば、やはり経営形態の問題に触れざるを得ないわけです。これはむしろ私は、自民党のほうが石炭の問題についてはイデオロギーに非常にこだわっているという感じがするのです。何か企業形態の話をすれば、社会党が主張しているような方向になるというような危倶を持って、企業形態については非常にこだわっているが、市中銀行が金を貸さないで自由企業でやれますか。やれないでしょう、現実に。ですから、いまやれる炭鉱は、企業として二、三あるでしょう。日本の中に残念ながら二、三しかない。ほんとう自立してやれる炭鉱というものは、日本全国の炭鉱の中で二、三しかない。そり二、三も従来は、開発したときにはインフレによって従来投下した資本の償却が非常に楽でもあったから、やれたのです。とても今後やれっこない。ですから、こういう点についてはあまりこだわらないで、白紙の状態検討してもらいた。その点、御答弁願いたい。
  141. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 私は、イデオロギーとかそういうものにこだわる考えは全然ございません。白紙の立場で十分検討してみたいと思います。
  142. 加藤高藏

    加藤委員長 大蔵大臣、御苦労さまでございました。
  143. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では、大蔵大臣退席されましたから、先ほどの質問を続けます。  労働大臣にお尋ねしたいのですが、罹災者の救援の問題でありますが、ことに今度の場合はずいぶん未亡人が出ておるわけですね。ですから、未亡人の救済についてはどういうようにお考えであるか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  144. 小平久雄

    小平国務大臣 罹災者、特に未亡人の問題でございますが、すでに、現地には罹災者の就職あっせん相談所も設けて、家庭の事情を目下調査中でございます。さらに、この未亡人の就職につきましては、もちろんその希望先等によって職業訓練等もあるいは必要な者が生ずるかと思いますが、そういうものについては十分その手段を尽くしてやってまいろう、こういうふうに考えております。
  145. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まだ構想をしたばかりですから、十分な家庭の実情調査はできていないと思いますけれども、どの程度広域職業紹介の人があるのか、あるいはまた会社はどの程度吸収するのか、あるいは親会社である三井鉱山はどの程度吸収するのか、こういう点が明瞭でないので、対策も非常にしにくいと思いますけれども、やはり現地に婦人労働力を吸収する産業企業の誘致が必要ではないか。これは全体に見ますと、やはり筑豊炭田は婦人労働力が余っておる。ですから、未亡人のみを対象にしなくても、あるいは未亡人を吸収して、なお吸収し得る余裕があるならば、他の婦人労働力を吸収するというように現地企業誘致の必要があるんではないか。  それからもう一点は、従来家政婦とかお手伝いさんとかいう形、しかも最近は夫婦共かせぎの家庭がある。また、そういった需要が都会地においては非常に多いわけです。そういう場合には、本委員会でもかつて問題になりましたが、そういう炭鉱罹災者の未亡人を収容する住宅を都会地につくって、そうして、ある一定期間そういったことに適応する訓練をして、そうしてつとめさす、こういうことも従来非常に論議をされたわけです。これは北海道では行なわれたやに聞きましたが、九州ではついに三池炭鉱の場合にも行なわれなかったのですが、そういうものを考えられる必要があるんではないか、かように思うわけですが、これについて御答弁願いたい。
  146. 小平久雄

    小平国務大臣 いま多賀谷委員から御指摘のような諸施策につきましても、労働省としても十分考慮いたしております。  特に未亡人の状況でございますが、これはすでに御承知と思いますが、職員関係で十八人、それから鉱員関係で八十七人、それから請負夫関係で九十名、合わせますと百八十五人の未亡人が不幸にして出られたわけでございますので、いま御指摘のようなもろもろの施策につきましては、十分意を用いてやってまいりたいと考えております。なお詳細につきましては、局長のほうから答弁いたします。
  147. 有馬元治

    ○有馬説明員 現在のところ、遺家族の状況は、子供もお年寄りもみな入れまして七百三十三人ございます。しかし、学校に行っておる子弟、それから大体六十歳以上の老齢者等を除いて、しかも、従来の経験からいたしまして、未亡人対策として対策を講じなければならない数字を推定いたしますと、大体百六十から二百以内の見当でございます。これを目安に、地元の企業でできるだけ吸収していただく。また、関連会社にも吸収していただく。それから、縁故その他広域職業紹介によりまして、地元以外の広域にわたって就職のあっせんをする。こういうふうな計画を現在立てて準備をしておりますが、実際は各未亡人、遺家族の個人個人の希望をもとにしまして、これから具体的な就職あっせんを行なってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  148. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は炭鉱には未亡人が非常に多いのです。この罹災者の未亡人は山野に限らない。従来罹災者の方々の未亡人は、みな炭鉱が雑役婦とか、いろいろな職業につかしておった。ところが、閉山とともにその後吸収能力がなくなりましたから、他の企業に比べて未亡人の就職問題というものは非常に大きな問題になってきておる。あにそれは山野だけの問題ではないのです。長い間の累積が全部閉山とともにあらわれておる。ですから、これはやはりこの特別なる施設というものが必要ではないか。全部こういう施設に入れるというわけではありません。しかし、何らかの施設がつくられてもいいのではないか、こういうふうに思うわけですが、もう一度局長からでも答弁を願いたい。
  149. 有馬元治

    ○有馬説明員 未亡人用の対策といたしまして、家政婦の施設を設置する、これを助成するという考え方は、三池の場合にもとったのでございますが、現実の希望者がなくて、これは不発に終わっておりまするが、今度は希望があればこの施策も講じてまいりたい。また、内職補導センターというふうなものをつくって、就業しにくい未亡人に対しましては、ここへ収容して、内職によって生計を維持できるような指導をしてまいりたい。かように考えておるわけでございます。
  150. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 通産大臣が見えましたから、本論に入りたいと思います。
  151. 加藤高藏

    加藤委員長 労働大臣の都合がありますので、伊藤卯四郎君。  伊藤君、まことに何ですが、労働大臣は時間の関係がありますので、なるべく簡単に願います。
  152. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 労働大臣、先ほどもお聞きになっておられたから、あえて繰り返して申しません。  この炭鉱労働者への特殊な老齢年金の問題を一言だけつけ加えておきたいと思うのは、先ほどから非常に重大な問題として取り上げられておりますのは、いわゆる組夫が非常に増加しているので、こういう点から災害の問題というものをとかく引き起こす可能性が多い。また、とかくこれは炭鉱全体の上からいっても相当問題であるということにも、さきの私の老齢年金制の問題は関連すると思うのです。  というのは、結局正規な常用工という技能工、熟練工が炭鉱からいなくなってしまいますから、さてそれならば計画出炭をどうするかといえば、結局請負に出す、結局組夫を使うという結果にもなるわけです。したがって、さっき私が大蔵大臣にお話ししましたような、そういう炭鉱労働者坑内労働者に対する特殊な老齢年金制というものをつくって、老後の心配はないのだという制度がつくられれば、この技能工、熟練工も炭鉱から去っていきません。そうすれば、自分の子供も二代目の坑内労働者にしようとか、あるいは炭鉱にそういう老齢年金制があれば、若い者も魅力を持って、外からも入ってくるということもあります九ら、したがって炭鉱の人的老朽老廃というものをそれによって防止するということは、申し上げるまでもないわけです。さっきお聞きのように、労働大臣からいずれそういう具体的ななにがあったら自分も相談しようということを大蔵大臣も言っておられたわけであります。先ほど申し上げましたように、さきの石田労働大臣も大体私の意見に賛成でした。それから、さきの櫻内通産大臣も大体そういうことを考えなければならぬということを言っておられました。でありますから、ひとつぜひ来たるべき通常国会にそういう法案等をつくって出してもらいたい。そうすれば、私は、政府あるいは与党の皆さんもおそらく賛成であろうと信じております。そういう意見は寄り寄りお互いの中でも話し合っておることですから、労働大臣、その点について、ひとつ積極的にそういう法案を来たるべき通常国会に提案されるように、私強く要望いたしますが、その点についてちょっとお伺いしておきたいと思います。
  153. 小平久雄

    小平国務大臣 お話しの鉱山労働者についての特殊老齢年金制度でございますが、まことにごもっとものことと存じます。鉱山労働者地下出働という特殊な事情のもとにあるわけでありますから、他の一般の労働者以上に生活の安定を期さなければならぬということも当然だと思います。そのことにつきましては、昨年の石炭鉱業調査団報告の中にも含まれておるわけでありまして、すでに厚生省あるいは通産省と労働省との間で、事務的に目下検討も加えておるようでありますから、なるべく早く結論を出すように督励いたしまして、できるだけ御希望に添うように善処いたしたいと思います。
  154. 加藤高藏

    加藤委員長 細谷治嘉君。簡単にお願いします。
  155. 細谷治嘉

    ○細谷委員 一言。私は六月四日に現地を見たわけですが、当時保安局長は巻ききゃはんで、真剣らなって調べておりました。そして、十分調べてひとつ国会委員会報告をします、こういうことで期待をしておったんですけれども、きょうお聞きしますと、何とかひとつこの委員会をごまかして表面をつくろっていこう、こういう印象を非常に強く受けた。そういうような通産省態度。先ほど大臣から、何といっても生産保安は一体だけれども保安がやはり前提なんだというおことばがあったんですが、どうもそういう態度じゃない。先ほど多賀谷委員の質問に対しても、そういう態度に労働省は引きずられておる。たとえば職安法に関係する問題、組夫の問題等についても、一体保安についてどうなるのかという多賀谷委員の質問に対しても、やはり引きずられておる。労働省としての機能を発揮しておらぬ。いわば鉱山保安局のワク内でしか労働省は動いておらぬではないか、こう思うのです。  この前の四十八国会で、前労働大臣は、一体鉱山保安行政というのはどうあるべきかという基本的な点については、自分としては、やはりこの保安の面は労働省に一元化したほうがいいんじゃないかという答弁をされた。これは労働大臣としての意見として出たわけです。新大臣、私はそういう印象を受けているのですが、この鉱山保安行政、いわゆる労働安全という点について、労働者の生命、これは人間尊重というのが現在の内閣の非常に大きなスローガンでありますから、これに対して保安行政の一元化——まあ生産というのは通産省がやっているのでありますから、ことばはどうあろうと、生産を担当するところはどうしても生産に重点がかかってきます。それが今日の炭鉱の経営が苦しい、そういうことでありますから、掘れ掘れという形できまる。組夫のほうも、端的に組長はどう言っているかというと、私ども労働者の募集係でございます、こうはっきり言っているのです。ですから、労働省としての機能が、勧告権があるとか何とか言っておりますけれども、あるいは職安法と、あるいは臨時措置法なり鉱山保安法との関係から言っても、ずいぶん問題点があるのでありますから、これについてはやはり一元化して、保安の面は労働者が労働という面からチェックしていく、主張していく、引きずられないで自主性を発揮していく、こういうことがこの段階で特に必要だと痛感されるのでありますから、ひとつずばりとした労働大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  156. 小平久雄

    小平国務大臣 鉱山保安の問題、特にその所管の問題につきましては、先ほども御答弁申し上げたところでございますが、労働省の立場といたしましては、もちろん人命の尊重、そういう基本的な立場に立って、また一般的に労働者保安問題を所管しておる立場から申しましても、鉱山保安につきましてももちろん重大な関心を常に持っていかなければならぬと心得ております。  そこで、この所管の問題をどうするかということでございますが、これにつきましても、かねがねただいま御指摘のような御主張のあることも万々承知をいたしておりますが、率直に申しまして、役所の所管の変更等がなかなか従来容易にいっていないことも事実であります。そういうことでございますので、私は形式的な所管がどうという問題、あるいは御指摘のように勧告権がどうというような問題は問題といたしましても、少なくとも内閣が一体としてこれはやらなければならぬ問題でございますから、労働行政の立場から、通産省の所管される現在の状態のもとにおきましても、むしろ積極的に申し上げるべきことは申し上げて、要は最終の目的でありますところの鉱山における保安確保するということにつとめてまいりたい、かように存じておるわけであります。その間、本来、現在の機構のもとにおきましても労働省が当然やらなければならぬ問題もあるわけですから、その点につきましても、先ほど来御指摘をちょうだいいたしたように、まだまだ不十分のところもあるようですから、まず労働省所管のことにつきましては、これも従来以上に改めるべきことは改めて積極的にやっていこう、こういう方針で臨みたいと考えておるわけでございます。
  157. 細谷治嘉

    ○細谷委員 ただいま、積極的に労働省としての役割りを演じていくのだと言われた。この前、長崎の伊王島炭鉱爆発したときに、当時の櫻内通産相は、現地を見て、もうこういう災害が二度と再び起こらないように積極的に最善の努力を払いますと言ったのですよ。そしてそれは四月。六月にまた起こったのですよ。こういうことでありますから、ほとんどやはり今日の段階では、積極的とか、二度と再びという政府の言明では、もう信用できない、こういう現況にきていると思います。  私は、なわ張り争いがあるということを知っております。しかし、今日のこういう災害が頻発する時期では、なわ張り争いをいっているような時期ではないと思うのです、幸い今度の通産大臣は、前幹事長である。とにかく通産省のなわ張りなんという小さいことにこだわっておるときではない。大ものなんですよ。ですから、大所高所からこの問題を検討するには非常に絶好の時期ではないか。内閣の構成からいっても、客観条件からいっても、そう思うのです。  その段階で、そういう時期に、労働大臣が、おれはこう行くのだという信念をはっきり言うことができないで、あるいはお考えは持っておると思うのですが遠慮されておるのじゃないか。ただ積極的ということだけでは、私も理解できない。  先ほど通産大臣、この面についてもきちんとしたお考えを述べられなかったようでありますけれども、もう一度この問題についての通産大臣の所見をひとつ伺っておきたいと思います。
  158. 三木武夫

    三木国務大臣 なわ張りの考えは私は持ってないのです。そのことがよければ、それは機構なんか改革してもいい。なわ張りなど考えるべきではないと思うのですが、いろいろ調べてみると、佐藤喜一郎さんの行政調査会、あれでもやはりいまのままでいいという答申を出しているのです。労働組合もお入りになって調査をやっている。これはやはり、保安作業というものが関連があるというところのむずかしさからですよ。しかし、こんなに災害がひんぱんに起こって、何百人もの人命が何カ月ごとに失われるということは、非常に重大な事態ですから、機構の問題をとらわれないで検討してみたい。実際問題として、ただ理屈だけで分かれたらいいというのでなしに、いろいろな坑内作業でしょうから、その作業保安というものとがはっきり分かれられない面もあって、行政調査会のようないろいろと画期的な構想が出されてたような場合においても、この行政機構の改革を提案しなかった理由だと思うのです。  しかし、御意思はよくわかりますから、役所のなわ張りというような考えを捨てて、大所高所から検討いたしますことを約束いたします。
  159. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いろいろ聞きたいのですが、まだほかの委員の質問が残っておりますから、根本について質問いたしたいと思います。  要するに、石炭産業の基盤の問題、これが一番大きな問題だと思うのです。そこで、石炭産業の基盤をどう強化するか、これが解決しなければ、幾ら保安監督だけやっても、あるいは労働基準監督行政で調査をしてみても現実に摘発すらできない。労働者を守る労働組合が遠慮してくれというのが事実であるとすれば、ゆゆしき問題だと思う。  そこで、率直に言いますと、いま炭鉱で市中銀行から融資を受ける資格のある炭鉱は、二、三を除いては日本の炭鉱にはないという現状です。三井といえども、三菱といえども、北炭といえども政府の財政投融資を受けなければ事業が成り立たないという状態です。  ですから、私は、この状態の中で基本的には一体どういうふうにお考えであるか、これをお聞かせ願いたいのです。われわれは、従来、炭鉱以外に金を投資する社会投資というものについては、規制すべきであると今日まで主張してきました。ところが、現実炭鉱が行き詰まった場合には、社会投資をして他に土地を買っておったほうが炭鉱救済になる。ある炭鉱においては、その山林を伐採して赤字補てんにした。その資金源が社会投資をしておったほうがいい。炭鉱坑道を堀っておったほうがむしろ炭鉱再建に役に立たないという状態になれば、一体私たちは、どういう方向石炭政策再建を考えたらいいか、非常に疑問なんです。一われわれ自身が非常に苦慮せざるを得ない状態です。  そこで、先ほど大臣が、現段階においては国管、国有という形態は適当でないと思っておる、こうおっしゃるけれども、それは少しイデオロギーにこだわっておりはしないかと思う。とにかく二、三の炭鉱以外には市中銀行が金を貸さないという状態で、一体私企業で成り立つかどうか。しかも、十七社のうちで経営状態の悪い三、四社は、実際問題として石炭鉱業審議会経理審査会の管理下に置かなければ再建できないという状態でしょう。そうして、あとの大部分の炭鉱は、市中銀行も金を貸さない、そして財政投融資でなければ退職金も払えないという状態、これで一体やっていけるか。  それから、先ほど大蔵大臣に質問したわけですが、新鉱開発をするといいましても、なかなかできないのですよ。それはいまの隣接鉱区の新鉱開発をするという場合なら、福利施設も従来どおりで、特別につくらなくてもいい、あるいは選炭機もつくらなくてもいいということなら、新鉱開発も可能だと思う。しかし、独立炭鉱としてここにやる以上は、とてもいまのような状態では、金利の状態、償却の状態を見ますと、確かに採算に合う企業ではない。いま例をあげたわけですけれども、百万トンの炭鉱をつくるのに百五十億程度かかる。そうすると、大体トン当たり四千円と仮定をしても四十億しか年間の売り上げがない。半期に二十億である。しかも、投資の懐妊期間は七年ないし八年かかる。これではどう考えましても私企業ではベースに乗らないわけです。ですから、幾らビルドを叫んでも、ビルドをする者はありません。しかも、ビルドをしても、もし着炭をして、その石炭が十分カロリー等が思うようになかったという場合に、現実に多くの炭鉱が閉山をしている。そして、閉山をしたことによって赤字がふえて、その企業の本体が悪くなっている。そこで大臣、この時期にはもう企業形態としても踏み切る時期が来ているのではないか、こういうように思うわけです。英国においても、フランスにおいても、イデオロギーだけでああいう形態になったのではないと私は思うのです。やはり石炭産業の固有の特異性からもそういう形態にせざるを得なくなったという状態ではないかと思うのです。ですから、それについてどういうようにお考えであるか、どういうように進めていきたいとお考えであるか、お聞かせ願いたいと思います。
  160. 三木武夫

    三木国務大臣 この石炭というものについて、総合エネルギーの立場から考えて石炭企業の位置づけというものがはっきりしていない。それから、日本の総合エネルギー政策というものがいままで欠けていた。いろいろ次々に、原子力も今日出てきたが、そういう場合に、日本のエネルギー政策というものは長期的に考えてどうなのか、どうあるべきか、こういうものから石炭というものの位置づけをして、これだけのものは日本のいろいろな角度から考えて石炭というものに対して依存せざるを得ないというならば、やはり徹底的にその石炭産業が安定してやれるような保護助成の策をとるべきである。  ところが、これを国有国営というような形に現段階でしたからといって、国有国営ということになればやはり国が全責任を負うのですし、国有国営のような企業でも独立採算制ということが言われてきているのですから、いま企業の経営形態というものを国有国営にしたら問題がすべて解決するというものではないと思うのです。日本のエネルギー政策の中における石炭の位置づけをしっかりやって、これだけはどうしてもやるんだということになれば、国がいままで保護政策をとっておることに対して、それが不徹底ではないか、これがやっていけるようにするにはこうすべきではないか、こういうことでやるならば、あえて企業の形態を国有国営にしたから問題がすべて解決されるとは考えていない。  そういう点で、もう一ぺん石炭政策というものを真剣に再検討する時期が来ている、これと私は取り組んでいきたいという考えでございます。
  161. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いまの現状で国有にするとか国管にするという、現状をそのままにおいての議論ならお説のとおりです。しかし、国有にする、国管にするというのは、現状を変えるという前提で話をしているわけです。  しからば、それだけの保護政策をする場合に、はたして国民が私企業として許すかどうか。私企業であれば配当もするでしょう。配当もする会社にどんどん利子補給もできるかどうか。永久に配当をしない会社なら、私企業として存在価値がないでしょう。しかし、利子補給もしながら、開発政府資金でやらなければできぬという状態なら、当然それは私企業でというものではないでしょう。どんどん利子補給をしながら、一方において配当が許されるというならば、国民は承知しない。しかし、永久に配当ができないような状態にするというならば、これまた私企業として成り立たない。  ですから、私は、現状において全部国有にすれば借金が解消するなんて考えていないですよ。しかし、いろいろな施策をお説のようにやるとするならば、見通しとしては、私企業の限界を越えるような保護政策をとらなければできないんだ。日本の十七社の大手、数十社の会社があるのに、二、三の会社を除いては政府資金を借りなければできないという状態でしょう。ほとんどの会社に市中銀行が金を出さないという状態です。そういう状態の中でやっていけるか。やっていけないですよ。ですから、むしろ自民党のほうが少しイデオロギーにこだわっておる。私はイデオロギーのほうから出発ぜいと言っておるのではないのです。いろいろの政策をやってみると、そういう方向にいかざるを得ない。  そこで、大臣は、少なくとも石炭鉱業審議会等に諮問をする場合には、大臣のほうから現段階において国有とか国管にする考えはないなんて言うと、委員の諸公はその形態については触れないような答申をしますよ。しかし、それは白紙に返して、一体どうあるべきものなのが至当であるか、こういう白紙に返して諮問をされるかどうか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  162. 三木武夫

    三木国務大臣 いまお話しのように、私企業上しては特殊な形態であることは事実ですよ。利子補給もやったり、いろいろなほかの産業に比べて手厚い保護をするのですから、純然たる私企業という性格からは相当離れておることは御指摘のとおりだと思います。ですから、私自身でも石炭問題に取り組んでみたいと思っておるのですよ。これはわれわれは専門家ではないのですけれども、こんなびほう策ではやっていけないのではないか。それがまた保安の問題にも関連をするのではないかという感じを私は強く持っておりますから、そういう意味で、石炭鉱業審議会にも私の考えを前提にした諮問はしないつもりであります。石炭鉱業というものに対するあり方を大所高所から検討してもらうような諮問を出して、答申を求めたいという考えでございます。
  163. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これでいいです。
  164. 加藤高藏

    加藤委員長 滝井君。
  165. 滝井義高

    ○滝井委員 きょうはおそくなって、大臣にははなはだ失礼ですけれども、私たちも非常に高いヒューマニズムをもってこの問題に取り組んでおりますし、いま大臣も、全く自分も白紙の状態になって、ひとつ本格的に炭鉱の問題に取り組んでみたいと言う。実は歴代の通産大臣でいまのようなことばを言った大臣を私は知らないのです。初めてです。それだけに、三木通産大臣のなみなみならぬ決意に私は非常に感激をいたしております。そこで、私も炭鉱の問題についてはしろうとですけれども、ヒューマニズムをもって当たれば、私はこういう事故も防げるし、日本の炭鉱はよくなると思っておるのです。ただいままで政府がそれだけの情熱を本格的に傾けなかった。幾ぶんの情熱は傾けたけれども、本格的な情熱を傾けなかったところに、今日の炭鉱の危機があると私は思うのです。  そこで、まず第一に、私お尋ねをいたしたい点は、実は六月十四日の新聞にこういう投書が出ておるわけです。「私は山野炭鉱に働いていた」という投書です。その投書は、三つの点に要約ができるのです。  まず第一は、ちょうど山野鉱が八百メートル坑道の掘進のときに、そこで働いておりました。そのときには、別あつらえの一・八リットル以上も入る水筒を持っていかなければ、そこでは仕事ができませんでした。実に暑くて仕事ができなかった。水を飲み干してしまって、さらに水をかぶって仕事をしておった。これで、いかに坑内が異常な状態であったかということがわかるわけです。  それから、監督官の巡視があると、会社がその監督官の回る順路をきめるというわけです。中には、時にみずから坑内図を見て、自分できめて入った人もあった。そういう人もあったということで、これは非常にまれなことだ。あとは全部炭鉱のほうで経路をきめる。ちょうどわれわれが選挙のポスターを張るときに、候補者の通る道だけポスターを張って、奥の道のほうは張らない。これを行幸道路と言っておるが、それと同じように、保安督官が回る道だけはどっさり岩粉をまいたり、きれいに大掃除をする、こういうことなんです。これは単に山野鉱だけではない。どうも他のところもそういう傾向が非常に強い。  それから、ある職場常会のときであった。こういう巡路をきめたり、やってくるときだけ水をまいたり岩粉をまくのじゃいかんじゃないかということを労働者の一人が指摘をした。ところが、会社側が答えていわく、監督官が来るときだけ整備するとあなたは言っているけれども、それでいいじゃありませんか、整備しないよりかましじゃないかということを答えたのをいま思い出します、という投書なんです。私はこのことばの中に、端的に通産省保安監督行政の姿があらわれていると思います。最近その山野鉱に行った保安督官山野炭鉱の寮に泊まっておったじゃないかといって、新聞が書いておる。私はそういうことはたいしたことじゃないと思う。たいしたことじゃないけれども、あの新聞記者がそういうことを書く気持ちの中に、大衆の、あるいは新聞記者の、保安督官に対する不信感がにじみ出ている、あるいは労働者の気持ちがにじみ出ているということをやっぱり忘れてはならぬと思います。こういう投書。  それから、いま一つは、組夫に対する投書が出ておる。これは長崎の人です。この中にまた、現在の労働省がよく心してもらわなければならぬのは、組夫の姿がよくあらわれている。それは、組夫の働いているところは高温多湿で条件の悪いところ、そういうところは全部組夫が入っております。こういうことです。それから、労働時間は十時間以上、賃金は七割から八割でございます。なるほど調べてみると、賃金、厚生施設の面から見ると、七割ですね。普通の本工が十もらうならば、組夫は七割です。それから、住宅も、なるほど長崎の炭鉱に行くと、本工はアパート、自分たち組夫は戦時中のバラックに住んでおります。さいぜんも言ったのですが、まさに米国の黒人以下の待遇であるということなんです。これが日本の五千五百万トンをささえておる姿なんですね。  そこで、その組夫のやっていることをずっと一つ一つ洗ってみますと、まず組夫は、多賀谷君も指摘しておるが、災害率が多い。二倍から二倍半です。そして労働時間が長い。いま言ったように、賃金と厚生施設が悪い。組夫なんというものにはほとんどないです。それから、組夫は移動が非常に多いです。これはさいぜん言ったように、流れ者、くりからもんもんの入れ墨を入れている。どこに行っても使ってくれない。組が一番天国だと思っているのです。だから、われわれにそんなに組に行くなと言っていないで、働く場を安定所は与えてもらいたいという要望をみんな持っております。好き好んで行ったわけじゃない。そこ以外に行く場所がないから、涙をのんで行っておる。だから、何十人、何百人の人が死んだときには、二つか三つ死体がわからない。名前を変えて入っておる。あるいは、あまり言いたくもないけれども、生活保護をもらって入っておる。生活保護をもらってそんなところで働いておったら、切られてしまう。切られたのでは食っていけなくなるから、偽名を使う。生活保護では本名を使い、炭鉱にいくときには偽名を使う。こういう形になっておる。こういう実態、これはお調べになったら、ざらです。  それから、移動が多いということは、たとえば山野の森田組なんというのは、三十一人くらい死んでおる。ことし入ったのが十三人おる。入って三日足らずというのもおる。これでは保安教育なんかできやしない。保安教育なんか全然できっこないです。  それから、組夫の支柱をなす人たちは、なるほどかつて大手の炭鉱をやめた人です。その人たち組夫の支柱となっておる。しかし、それを取り巻く働き手は、全く炭鉱にはしろうとの流れてきて、そこ以外に働くところがない人たちである。こういう実態です。これが日本の炭鉱をささえておる。しかも、山野のように、有沢さんが、これはもと三井が経営しておったときよりも優秀だったとおっしゃる。その炭鉱で、千七、八百人の中で七百人というのは組夫なんです。それが四十トンをこえる出炭をささえておるのですから、まさに戦時中朝鮮人労働者が日本の石炭労働をささえておったように、いまや組夫がささえておるのですよ。  私は、この二つの投書の中から、二つの問題点が出てくると思う。一つは、一体保安監督の行政を強化したら日本の炭鉱はやっていけないのかどうか。一つは、組夫をなくしたら日本の炭鉱は一体やっていけないのかどうか。  この二つの問題について、一体三木さんなり石炭局長、あるいは保安局長は、どう考えるか。あるいは労働省は、戦前においては組夫はなかった。多賀谷君が言ったように、三十年度の合理化のときから組夫が入ってきた。それまではなかったのです。さいぜん申しましたように、はなはだしいのは十六歳というのを入れておる。ある町会議員がやっておった炭鉱では、中学生を三十五人も働かせておる。あるいは婦人を三人働かせておるというのが出てきておる。こんなのが絶えたい。そうして盗掘をやっておる。  だから、こういう点は、もう少しヒューマニズムを持って厳重な監督をしたら、一体日本の炭鉱はやっていけないのかどうか。ここから私は議論を始めなければいけないと思うのです。  そこで、石炭局長三木さんが答弁できなければ、一体保安を強化する、監督を強化したら日本の石炭山はやっていけないことになるのか。労働省で、組夫を入れなかったら一体やっていけないのかどうか、こういうことです。
  166. 井上亮

    井上説明員 ただいま非常に深刻な問題につきまして御指摘を受けたわけでございますが、率直にお答えいたしますが、保安を強化いたしました場合に、それは当然に炭鉱としてはそれだけに余分の人間、余分の施設——余分と言いますか、十二分の、十分でなくて十二分あるいは十五分の施設をするということになろうかと思います。やりましても、私は、経営のやり方で日本の炭鉱はやっていけるというふうに考えております。  それから、同時に、組夫につきましては、先ほども私答弁いたしましたように、確かに先ほど平諸先生から御指摘がありましたように、現在の増働力不足を背景といたしまして、ややルーズに組夫に依存しておるという傾向がございます。このことは、やはり本来の炭鉱のあり方からしまして、私は決して好ましい姿ではないというふうに考えております。したがいまして、この点につきましては、私どもは今後組夫使用につきまして、さらに検討してまいりたいというふうに考えて去るわけでございます。  その場合に、日本の炭鉱がやっていけないかという御指摘でございますが、私は、その点につきましては、やっていけるというふうに考えております。  ただ問題は、先ほど来これまた御指摘がありましたように、今日の炭鉱の現状におきまして、やはり大きな問題点は、労働力不足と言いますか、若手の労務者が入りにくい。あるいは採鉱の技術屋すらなかなか今日炭鉱に就職を希望しないというような事実が。ございますので、こういった点につきまして、もう少し炭鉱を魅力ある形に持っていきませんと、将来の、大臣の言われる安定した炭鉱ということにはならぬと思いますので、そういった政策を伴ってやっていきますならば、組夫問題も私は解決していくというふうに考えております。  要は、先ほど来おっしゃいましたような、大臣も非常な決意を持っておられますので、私ども毎日督励、激励を受けておりますので、今後石炭政策について十分真剣な検討を行ないまして御期待に沿っていきたいというふうに考えます。
  167. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣、お聞きのように、監督を強化してもやっていける、組夫についても、なくてもやっていけるという率直な答弁があったわけです。しかしそのためには安定職場にしなければならぬ。これは当然相当金が要るわけです。金はさいぜん大蔵大臣通産大臣に御協力を申し上げますということを言って帰っておりますから、今後協力してくれるであろうと思いますけれども、それならば、ひとつ監督を強化をしてもらって、一挙には組夫を排除することはできないと思いますけれども、徐々にやはり組夫を排除していかなければならぬ。すなわち、これを本鉱員に切りかえなければならぬことになると思うのです。それはいままでは、三十年前後まではできておったわけですから、それ以後こういう形になって、できないはずがないと思うのです。だから、これをぜひ私はやっていただかなければならぬと思うのです。そうしますと、そういう組夫の問題と監督を厳重に強化するという問題が片づきますと、炭鉱はわりあいさっぱりしてくるわけです。  そこで、今度の佐藤さんになってから三回も大災害が起こった。一体その原因は何なのかということなんです。私は一ぺん原因と思われるようなものをひとつあげてみてもらいたいと思うのです。どうしてそういう大災害が起こってくるのか。実はこの前もちょっと指摘しましたが、昭和三十年ころから本格的な合理化が始まったわけです。それで三十名以上の死者を出した大災害というのは八回。しかもそれが、四十年のことしになってから八回のうち三回あったわけです。こういう災害の起こる原因らしいものというのは、一体どういうことが原因なのかということです。なるほどそれはガス爆発した火源がどこかにあったから爆発した。これはなるほど直接の原因です。しかしそういうガスの出るような姿とか火源があるような姿というものがそこにあるからこそ、災害が起こってくる。一体そういうものの原因というのは何なのかということです。これはいま多賀谷君が指摘したように、ヨーロッパには少ないですよ。日本だけに一体なぜ多いのかということです。アメリカとヨーロッパと日本はまさに自由主義陣営の三つの柱だと、池田さんはいばっておった。三つの柱だといばるならば、保安もヨーロッパと同じだといばらなければならないけれども、これだけは世界第一です。三つの柱をはるかにこえている。アベベよりも速い。世界一流です。これではマラソンのアベベ以上です。アベベ以上だということは、その原因がどこにあるかあげてみてもらう必要があると思うのです。
  168. 森五郎

    森説明員 炭鉱災害原因についてという御指摘でございますが、これは個々の炭鉱爆発事故につきましても、原因はいろいろあろうかと思われます。またその遠因というものももちろんあったわけでございますが、これはなかなか複雑でございまして、あるいは設備の不備な点、あるいは管理の体制の問題、あるいは自然の条件が非常に悪いために若干不可避的に出てきたというふうな問題もありましょう。いろいろ複雑にあるわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、今後そういった問題をもっと堀り下げて検討したいというふうに考えておるわけでございます。
  169. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、直接の原因は火源があったり、ガスがそこに一ぱいあったりいろいろあるでしょう。しかしいまあなたの言うように、その遠因は複雑だが、設備が不備であったり、管理体制が不備であったり、自然条件が悪いということになると、これだからどうにもならぬ、検討しなければならぬということになると、炭鉱災害宿命論になってしまうんですね。それでは二十世紀の宇宙旅行までしようかというわれわれにとっては、はなはだ情けないことで、設備が不備というなら、金を出せば不備は直すことができるから、これは除くことができるでしょう。それから管理体制が悪いというのは人間の問題だから、人間がきちっとすればいい。自然条件が悪いのだけは、これはいかんともしがたい。自然条件が悪いということは、すでにこれはあるんだから。しかしその面についても、これは管理なり設備をうまくやっていけば二ヵ月に一回ずつ三十人も四十人も、二百人も死ぬような災害が起こるはずはないと思うのです。もしそれができなければ、石炭をやめて全部重油に切りかえなければならぬということになる。しかしいまのわれわれとしては、そうは踏み切れぬのじゃないかと思う。だから私はもうちょっといまの設備の不備とか、管理体制とか、自然条件とかいうことをもう一歩突っ込んでみて、昭和三十年以降に三十人以上の災害がこれだけ頻発をしたというのは、合理化と増産ということが問題でないのかということを一ぺん検討してみる必要がある。このことが五千五百万トンの問題とも密接に結びついてくる。五千五百万トン体制というものを目標として維持していくか、それともそれを思い切って能率のいい炭鉱だけの三千万トンにするのか。この分岐点は日本経済全体の国際収支その他に重要な影響を及ぼしてくるのですから、ここらあたりが一つ問題点だと思う。  いま一つは、最近における坑道というものは非常に広くなっているでしょう。特に第二会社になるといままで三千人、四千人も使っておった炭鉱が、第二会社になったために、非常にがらんどらのような大きな広い坑道を、もとの半分とか三令の一の労働力で維持し、採炭をやっていく。しかも一たび爆発したら非常に大きな反響を呼んでぐるというような、こういう坑道の集約なり、切り羽の大型化というようなことも、大災害を起こす一つの大きな原因になってくると思う。一体管理体制なり設備というものをどうするか、こういう問題、これもやはり相当金を食う問題だと思う。  それからさいぜんからるる再三にわたってみんなが指摘しておるように、未熟練な組夫保安教育の徹底していない組夫というものをどうするか。多賀谷君も言っておりましたが、第二会社身どうするか、それから政府自身のこの災害防止に対する金の出し惜しみというようなものを総合的に考えてみて、これはやり得るものは全部一つ一つつぶしていかなければいかぬと思う。一つ一つ災害の起こる穴をふさいでいってしまう。これはどうしても不可抗力でやれないというものだけはしかたがないが、それだけの努力をいままでやらなかったのです。災害が起こったときには何と言ったかというと、使用者はこう言った。できるだけの保安対策はやっておったんだが……。政府、歴代の通産大臣、内閣総理大臣は、今後このようなことのないように万全の保安対策を講じます、こう言った。いつも同じことを言い、同じことを繰り返してきておる。三木さんのような謙虚な努力をしようということではなかった。実力者の三木さんが大臣になられたから、この際勇断をもって、事故原因と思われるものは徹底的に一つずつ洗ってしまってやるべきだと思う。普通の常識からいえば、坑道の通風をよくして、そしてガスの測定を絶えずやって、火源の管理さえしておけば、落盤くらいでは大量に死ぬことはない。真理はきわめて単純です。しかしそういう通風とガスの測定と火のもとを管理するということが、いつもできていない。三池以来できていない。だからそういう点については、この三つのものさえやれば大丈夫だと九大の専門家はおっしゃるのだが、その三つのものを管理することができていないのです。だから、そういう点は一つ一つつぶしてやってもらいたいと思うのです。どうですか。
  170. 三木武夫

    三木国務大臣 こういう災害が頻発したわけで、それにはいま保安局長が御答弁申しましたように、自然の条件、生産の条件、保安施設の条件、管理体制の条件、それから教育訓練の条件、こういうものが非常に背景にはある。しかしこれを今回の場合は、私も先ほど多賀谷君の御質問にお答えしたように、徹底的に今度は究明してみたい、そうしてその原因を、何でこういうことがひんぱんに最近になって起こるのかという原因を究明して、これは絶対というようなことはなかなか人間の社会でできないにしても、一つ一つやはり原因を言われるようにつぶしていくという努力が、これだけの人命犠牲があるような災害が起こるこの事態に対して、政治の大きな責任であると考えております。
  171. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひひとつ徹底的に究明をしていただいて、原因となるものを全部ひとつ排除してもらう、こういう気がまえでやってもらいたいと思います。そのためには相当の財政負担も要しますけれども、ぜひひとつやっていただきたいと思います。  それから、次にお尋ねをいたしたいのは、山野事故によって私たちが異様に思った点が三つあるわけです。その一つはこの保安教育に関連をするのですが、さいぜん八十くらいの遺体が自己救命器をつけておったということを言ったわけです。ところが、その犠牲者で自己救命器をつけておった者の中に、吸収孔のせんも開いていなかった者があったわけですね。吸収孔のせんを開かなければ、空気が入って酸素とかわらないわけですから、このことが私はやはり保安教育というものが不徹底であった、避難をする訓練、救護の訓練とともに不徹底であったという感じがするわけです。こういう点についてのあなた方はどういう見方をしておりますか。
  172. 森五郎

    森説明員 お答え申し上げます。  今度の山野炭鉱災害において自己救命器がどうであったかというお尋ねでございますが、先ほど御答弁申し上げましたように、その杉谷卸の一番深部に採炭場及び撤収の個所があったわけです。そこに、もちろん法律に基づきまして自己救命器が設置されておったわけです。爆発とともにあとガスが参りまして、その自己救命器を装着する以前に濃いCoガスを吸われたために倒れたと考えられることが相当多いように思われます。また先生御指摘のように、せんを抜いてなかった。両方抜かなければいかぬのですが、ぜんを抜いてなかったというものもあとから発見されております点から考えまして、若干保安教育と申しますか、そういった点においても必ずしも十分であったと言いがたい点もありますので、今後は自己救命器の性能の向上と、その保安教育の徹底を期したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  173. 滝井義高

    ○滝井委員 実はわれわれも炭鉱坑内に入ってみましたが、一ぺんくらい入ってもどこに自己救命器があるかわからぬ。それからあの暗いでこぼこの多い坑道を、いざ鎌倉というときに、まつ暗い中で自己救命器の置いてあるところまで来るなんていうようなことは、なかなかたいへんなんです。  それから聞くところによると、私もこれは二、三時間くらいもてると思ったら、自己救命器というのは三十分間しかもてないということなんですね。こういう問題についても、もう少し長時間もてるような研究と一それから器具の整備が必要ではないかと私は思う。そういう点についてはあまりにも通産省としては油断があったのではないか、こういう点は今度の山野炭鉱事故一つの大きな教訓で、やはり自己救命器なんかをつけてやる訓練というものはしなければいかぬ。それは入坑口に壁に図を書いてあるけだではだめだ。飛行機に乗っても、現物をもってスチュワーデスが説明をしてくれるのです。質問があったらお尋ねしなさいと言ってくれるわけですから、やはりいざ鎌倉でまつ暗な中でやるのですから、よほどこれはしてもらわなければならぬ。  もう一つは、ガスが突出した大焼層の卸坑道というのは、一本坑道ですね。その大焼層の排気は人気幹線に一緒になっていますね。したがって人気幹線で人気と排気が一緒になるのですから、大焼層の悪いガスが、八・九もある一番爆発しやすくなったメタンガスがずっと最低のほうに行って、杉谷卸か知らぬけれども火源の最低まで行って、巻き場卸と言っておりますけれども爆発したでしょう。こういうことについて一体監督をしていなかったのかどうかということです。悪い空気をよい空気の入る方向にどんどん流してしまえば危険があることはさまっておるのではないかと思う。しかも大焼層に行って働いているのは、十分な保安訓練を受けてない組夫ばかりでしょう。これはわれわれしろうとが考えても、世にも不思議なことを通産省の専門家は許すものだと、こう思うのですよ。これをあなた方はふしぎに思わなかったのだろうか。
  174. 森五郎

    森説明員 ただいま先生の御指摘の、大焼卸層におけるガスが人気坑道に入っておったということは事実でございます。したがいまして、通常こういうことをやることは、いわゆるいいことではないということでございますけれども、この山野鉱の現状から申しまして、かりにそういう場合にはもう一本坑道を連延びでおろさせるとかいうようなことが、技術的に十分な措置、あるいは人気坑道に入らぬようにするということだろうと思うのですが、やはり会社の現状その他から申しまして、現在の開発計画を施業案の認可で認めたわけでございます。したがいまして、先生御指摘のような点、おそれがあるということは、これは監督官も十分承知をいたしておったわけで、ございます。したがいまして、総合検査に参りましたときに、この点につきまして十分注意をするように会社側にも通達をしておる。そのほか先ほど多賀谷先生にお答え申し上げましたが、先進ボーリングをやるということをやらせまして、万が一ガスが出てきたときにはどうするかという管理体制、あるいは坑外で坑内の電源を全部切るというところまで準備をしておったわけでございますが、結果的に電源が切れずに爆発を起こしたということでございます。
  175. 滝井義高

    ○滝井委員 いろいろ言いわけがありますけれども、とにかく排気が人気幹線に入っておったということは事実、これがそうでなかったら起こらなかったのです。ですからそういう形を平気で通産省が許しておったということについて、こういうことを書いておる人がある。殺人が事故といわれ、殺人者が紳士として取り扱われて処罰をされない、紳士の殺人が続く、こう書いておる。当然これはわれわれが人を殺し、安保のときでも、こう集まると一挙に捕われてぶち込まれておるのですよ。しかし、こうして殺人が事故といわれて、殺人者が紳士として取り扱われて処罰されない、紳士の殺人が続く、こう言ってああいう姿を皮肉って書いておる。ですからこういう点はやはり厳重にやらなければならぬ。あまり炭鉱経理のことばかりあなた方が考えてやっていると、結局人間の命が失われてから初めて気づくということでは、後手後手となるわけです。藏内さんがよく言われるように、いまここにおられますが、後手の政治だ、保守党の政治は後手の政治だ、いかぬ、なかなか進歩的ですよ。後手ではいかぬ、死んでから、しまった、ほんとうに排気が人気に通じておったというようなばかなことはないよ、と言っても間に合わないのです。見れば、一目しろうとにもわかる。その監督をやらないところに問題がある。  もう一つ大事なことは……
  176. 加藤高藏

    加藤委員長 通産大臣はちょっと時間の都合がありますので、大臣に質問がなかったら……
  177. 滝井義高

    ○滝井委員 それでは、もう一つは、山野甲種炭鉱です。甲種炭鉱でありながら、人気の幹線坑道が特免区域ですね。立て坑の坑底から杉谷卸の巻き上げ、いわゆる火元になったと疑われる杉谷の巻き場まで千百メートル、これが特免区域になっておる。三池の三川坑が爆発したときも、あれは坑道は入気があったはずです。その人気で爆発した。まさか人気に炭じんがあろうとは思ってもいなかった。ところが人気で爆発した。普通は排気のほうに炭じんが流れていく。ところが人気であった。こういうように、自己救命器の吸収の口を二つあけていなかったとか、排気が人気と一諾になったとか、甲種の炭鉱でありながら特免地域をつくってやっておったというような甘さがあるのです。だから、これからは少し心を鬼にして——通産局だから生産第一主義だということになりますと、さいぜんから言うように、労働省にやってもらったらということになるのです。だからこれは、主管省は通産省であっても、時には労働省の監督官坑内に入れるべきだと私は思うのです。わしたちも入ることはできますと言いますけれども、やはり遠慮して入らないのです。基準局長に言わしてごらんなさい。われわれならばすぐ立ち入り禁止をするんだ、しかしどうも通産省は立ち入り禁止をやり切らぬ、こうおっしゃる。そこがやはり情けがあだになるのです。だから、時には目をつぶって、清水の舞台から飛びおりなければだめです。それが監督というものです。  そこで、監督が出ましたから、監督のことを言うわけですが、この保安監督の労働組合員の補佐員は、一体山野にはできておったのかどうか。
  178. 森五郎

    森説明員 選出されております。
  179. 滝井義高

    ○滝井委員 その人は、・今度の災害では死亡しましたか、それともどういう役割りを演じましたか。
  180. 森五郎

    森説明員 今度の事件で補佐員は死亡いたしておりません。
  181. 滝井義高

    ○滝井委員 三木通産大臣にお尋ねするんですが、実は最近通産省の中で保安督官になるのをいやがる人がだんだんふえてきた。保安督官に転勤させられれば、おれはもう通産省はやめたいなという気持ちの人がふえてきた。それくらい保安監督行政に行くのをいやがり始めた。これは私は非常に重要なことだと思うのです。みんな気持ちの中ではそう思っている。それはそうでしょう。森さんの前の局長さんは次から次に辞表を出してやめなければいかなかった。この前の局長は官房長に返り咲きましたけれども、やはりいやです。私たちがその立場になったら、いや、それはちょっとこらえてくれ、こういうことになると思う。  そこでそういう気持ちをささえるものとして、労働組合選出の保安督官をひとつ入れてみたらどうだろう。保安監督員補佐員というのがありますが、これは全くの補佐員です。なぜ私がこういうことを言うかと言うと、実はさきに鉱山保安法の審議をするときに、質問した。もう少し保安監督について労働者の発言権を許したらどうかと言ったら、保安というものは経営権である、したがって労働者が立ち入っては困る。保安が悪くて労働災害が起これば、労災で経営者が責任を持ちます、これは経営権だから、労働組合が関与してもらっては困るというので、ようやく実現したのが保安監督員の補佐員ですよ。  そこで、そういう企業内部に補佐員を置くということでは、いま言ったように、企業の経営権に介入することになるので、保安督官を労働組合から選任をして何人か配置する。九州なら九州に五人なら五人、十人なら十人配置して、森さんの指揮下に置き、立ち入り調査権、緊急時の作業停止命令、こういうものを保安督官と同じように与えてみたらどうか。これはミイラ取りがミイラになってはおしまいだが、まず一ぺんそういう画期的なことをやってみたらどうか。労働組合にもひとつそうやってくれぬかという要望があるんです。この前池田総理と太田議長との話し合いで、災害の頻発するような事業所にパトロールを置くという話があった、それは了承しております。しかしこれはなかなかうまく実現してくれないですよ。だから、もし通常の工場その他にパトロールができるならば、それをもうちょっと強化して、坑内に入れるいわゆる保安督官を置いて、立ち入り調査権なり緊急時の作業停止命令というものをやると、これは森さんたちの幾分萎縮した気持ちを、ぐっと胸を張って、上を向いて歩こうという形にできるのではないかという感じがするんです。その点ついて三木大臣の見解なり、労働省の見解を承りたい。
  182. 三木武夫

    三木国務大臣 総評がそういう主張をしておることは私も聞いておるわけです。現在の段階でそういうことが効果があがるとは私は思わない。むしろ企業ごとにおける組合の補助員、そういうことで、そういう機構を生かして、しかも事故というものは監督の強化ばかりでも防げないわけですが、保安については監督の強化ももっといたしたいと考えております。予算などについても、監督の強化のための予算も増額をしたいと思っております。しかしそればかりでなく、いろいろな総合的な保安に対する対策が進められなければなりませんので、滝井委員のせっかくの御提案でございますが、労働組合員を監督官にするという考えはいま持っておりません。
  183. 滝井義高

    ○滝井委員 そうでなく、通産局自身が峻厳な、しかも春風のような気持ちでぜひきちっとやっていただきたいと思う。  これで最後になりますが、実は今度の災害福岡県なり稲築町の努力というものは相当なものなんです。これは一番下のところから言うていくわけですが、火葬場でも、二百三十七の死体を焼くので、北九州まで持っていって火葬にするわけです。こういう経費というものは一体全部炭鉱が持つことになるのかどうかということなんです。自治体が持ってやるのか。それから救護班の活動、日赤以外の救護班が来て働いていただいたわけです。それから稲葉町に居住している死亡者負傷者に対して一体自治体は見舞い金とかなんとかというものを出しているのか。稲築町あるいはその近傍に住んでいる人も相当この二百三十七の中にはいるはずです。それから厚生省の意見を聞いてみると、あの災害が起こってから災害救助法を適用しているわけですが、これは全く異例な措置だと言っているわけです。そこで、会社は一体資本金がどのくらいあって、従業員がどのくらいおって、決算の状況赤字黒字かということで、これは特別の災害救助をやった措置なんだから、場合によっては炭鉱に金を負担させなければならぬという気持ちもあるように漏れ聞いておるわけです。あるいはそうなるのかどうかわかりませんけれども、こういう形になって、炭鉱がとてもそんなことはいまの状態では負担できませんということになると、一体これは県なり自治体が負担をしなければならぬのか、その場合自治省は、ああいう炭鉱が大災害を起こして、固定資産税なり住民税も非常に収入が滞りがちの状態になるのだが、こういうものの対策を一体どうやっておるのかということが私の質問をいたしたい点なんです。  それからもう一つは、これは三木大臣にお尋ねしたいのですが、多賀谷さんがちょっと触れてやめたんですが、山野再建です。合同葬が終わって、十七日から再建作業に入っております。ところがこの問題は三つあると思うのです。一つは、一体人員の確保ができるのかどうかということです。二百三十七名の犠牲者が出ましたが、この中にはハッパとか保安とかという相当優秀な技術を持っている人がなくなり、採炭その他の基幹的な人たちもなくなっているということで、人員の補充という問題が一つ出てくる。いま一つは、この復旧工事というものは一体どういう形でやられて、いつごろからその生産が再開される見通しになるのか。それから多賀谷君の言っておった資金繰りの問題ですね。この三つがやはりそろわないと、これは幾ら山野鉱なり稲築町なり福岡県なり、あるいはあそこの炭鉱に働いている千五、六百人の皆さん方が再建を望んでも、うまくいかないことになる。資金繰りについてはさいぜん大蔵大臣から、十分三木通産大臣のほうと相談をして協力をいたしますという言質を多賀谷君が得ているわけです。だからこの山野鉱の再建の問題と、いまの自治体の問題に関連する点についてお伺いして終わります。
  184. 三木武夫

    三木国務大臣 山野炭鉱は労働組合、経営者一体になって早期の再開を希望しておることは、お聞き及びのとおりだと思います。しかし、われわれとすれば、保安の点技術的にいろいろ検討を加えて、保安がだいじょうぶだということでなければ再開を許すわけにはいきません。それで、だいじょうぶだということになって再開を許すということになれば、資金的には再建のできるような十分の措置を講じたいと考えております。
  185. 岡田純夫

    ○岡田説明員 災害救助法を発動いたしました場合には、これは当面の地方団体の性格といいますか、それによってやられるものではありますけれども、一般的には第一次的に地方団体が乗り出すべき分野は比較的に少ないのではないかと考えております。しかしながら、たとえば財政面から申しますと、御承知のように、鉱産税の問題でありますとか、あるいは固定資産税の問題でありますとか、自然減収もございましょうし、また企業のために徴収猶予といったようなことも十分考えられると思います。それに対しましては、普通交付税をもって大半が補てんされるのであります。しかしながら歳入の面におきましても、若干は残る問題もあります。また聞くところによりますと、関係地元の町等におきましても、災害救助に関係いたしまして、救助人夫を派遣いたしておるとか、あるいは関係の遺族の方々に見舞金を差し上げたというふうに聞いております。そういったことも当然地域団体といたしまして、見るに見かねると申しますか、それが当然活動する分野が多かろうと思います。そういった面につきましては、三井三池等の前例もございます。そういった問題を研究いたしまして対処いたしたいと考えております。
  186. 加藤高藏

    加藤委員長 滝井君、簡単に願います。
  187. 滝井義高

    ○滝井委員 実は、これは三原君が質問するところであったのでありますが、ちょっと急用ができて出て行かれましたので、かわりに三点だけ大臣に聞いておいてくれ、こういうことでございますので、三点一回にお聞きします。  実は、これは山野鉱とは関係ありませんが、同じく石炭産業再建関係のある日本炭礦の再建に関する問題です。今度新しく現地調査に行って、そうして石原氏等を中心とした報告書が出たわけです。それによりますと、高松炭鉱再建については、相当国なり企業が一体になって努力をしなければいかぬということが、至るところにうたわれているわけでありますが、その中でまず第一点は、瀬板の池の下等を掘ることをやめて、屯田池の方向に海に向かって新しく開発を展開していきますと、その過程で七百五十個くらいの井戸水がなくなるという問題がすぐ出る。それから百八個くらいのため池がだめになるであろう。それから江川堤防とか屯田池の堤防のかさ上げという問題が出る、こういう問題については、たとえば水道をつくったり、ため池の補修をやったりするような問題について、第一に、国が積極的に協力してもらえるかどうかということが一つ。それから二番目は、あの屯田地区、島郷団地地区の開発の基礎になっている道路事業とか区画整理の事業とかいうのをやる場合に、道路の路線の認定その他についても、ひとつすみやかにやってもらいたい。そのことはこの石原報告書にも書いておるのですが、北九州が五市合併をして、マスタープランの基本思想というものを生かすように、国と企業とが最善の努力を払いなさいということが書いてあるわけです。そこでそのマスタープランの基本の思想というものは、道路とか区画整理というものがいわゆるマスタープランの基本思想に当たるわけです。そういうところで道路の路線の認定その他がおくれると、このマスタープランの基礎がくずれてしまうので、この点については、開発の基礎の認定について、ひとつ十分これに配慮するようにしてもらいたい。それからだんだん掘っていきますと、御承知のように三年から四年すると、掘ったあとが安定してくるわけです。そうすると、安定したあとの鉱害の復旧というものを、いままでの筑豊の例で言いますと、長く放置して、復旧がうまくいっていないわけです。筑豊の二の舞いになるようなことでは、マスタープランをつくってやっても、北九州としては絶対に困ります。お掘りになるのはけっこうです、下を掘ってもけっこうですから、ひとつあとの採掘後の復旧については十分年次計画を立てて計画的にやっていただきたい。これだけのことは、ぜひひとつ国として責任を持ってやっていただきたいということを一このくらいの要求なら、北九州としては、私はこれはなかなか大英断の御協力の要請だと思います。ひとつここで三木通産大臣の三点に対する御回答をお伺いしたいと思います。
  188. 三木武夫

    三木国務大臣 石原調整案に対しては、その趣旨を尊重してできるだけのことをしたいという気持ちで、北九州市当局ともいろいろ今後打ち合わせて、趣旨を尊重してやりたいと考えております。
  189. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもありがとうございました。
  190. 加藤高藏

  191. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣に一点だけお伺いをいたしますが、その前に御答弁は要りませんが、大臣にちょっと聞いておいてもらいたい。  それは、大臣炭鉱保安の問題について非常に熱心にお考えになっておることを伺いましたので、実は私も今後の努力を非常に期待をするわけですが、ついては、実は今日までガス爆発、炭じん爆発というものがたくさんございます。ことしになってからも三回。ところがいまだかつて、爆発の発火の原因が明らかにされたことは一回もありません。そういうところから、この間現地石炭局長保安局長、係官の人々にも、発火の原因がわからなければ今後の対策の処置もやはりとりょうもない、だから、だれの責任とかなんとかいうことをわれわれは問題にする意味でなくて、今後のために率直に発火の原因報告をしてくれということを、私は非常に露骨に注文をしておいたわけです。あるいはその報告をあとで保安局長から聞かしてもらえば、なおけっこう。しかし、まだそこまでいっておらぬといえばやむを得ませんが、このことだけをひとつ大臣に十分お聞き取りを願っておきたい。  それから、これは私がお伺いをし、ある意味において希望するということにもなります。さっき通産大臣が退席しておられるとき大蔵大臣等に質問をし、意見を伺ってみましたが、御存じのように、炭鉱がだんだんなくなってしまいます。それで炭鉱にとってかわる近代工業を炭田地区に建設しようというところから、炭田地区に工場団地を産炭地域振興事業団が造成をなしつつあるわけです。ところが、これは原価主義をとっているものですから、坪当たりやはり三千五百円も四千円もかかるというところがあるわけです。これをやはり北九州方面なり、あるいは関西方面なりから貝にくるわけです。ところが坪当たり高いものですから、こんなに高くては、多くの土地を買い入れて工場を持ってきてもたいへんだというので、一の足を踏んで帰ってしまったというのを、私も何人か知っております。そういうのはいずれも大勇なところです。したがって多くの土地を必要とする諸君です。そこで、その工場を持ってきたいという諸君の言うところによると、坪当たり二千円以上では困る、こういうことを言っておるわけです。ところが、産炭地域振興事業団では原価主義ですから、どうしても原価のかかっただけで買ってもらわなければならぬことになっておるわけです。それではせっかく何万坪もあるいは何十万坪も工場団地をつくりましても、そこに大きな工場が入ってこない。したがってペンペン草がはえてしまうという状態になってしまうというところから、産炭地域振興事業団でも、何とかこの原価主義を変えてもらって、二千円ぐらいで買ってもらえるように、ひとつ政府のほうでその二千円以上のものについて補助政策というか、何かそういうことでやってもらえれば、造成した土地が早く処分ができるのだがという、これは事業団の諸君の多くの言うところです。それから地元市町村は、なおさらのこと実はそれを熱望しておるわけです。そういう点、さっき大蔵大臣に話をいたしました。いずれ通産大臣から具体的な話があるだろうと思うが、そういう場合についてはひとつ通産大臣の意見を十分お聞きになって、尊重して、そしてせっかくつくった土地が有効に利用されるように、それからまた国策として炭鉱にとってかわる近代工業をつくるという目的を達するためにも、ぜひこの処置をとってもらうように意見を述べましたところ、大蔵大臣通産大臣の意見を十分伺って、その上でひとつ話し合いをして解決のできるようにしたいという意味の御答弁でした。そういう実情でありますから、なおこれは、ひとつこの関係者をお呼びになって、これらのせっかくの土地に、炭鉱にとってかわる近代工業の建設、地元市町村はこれを非常に熱望いたしておりますから、そういう点について、ひとつ大臣も、まだ十分お聞きになっておられぬかとも思いますが、そういうことがあることを私はお耳に十分入れておきます。なお御答弁を伺うことができれば、御開陳願っておきたいと思います。
  192. 三木武夫

    三木国務大臣 私もいま初めて承ったのですが、いろいろごもっともな理由もあると思います。大蔵大臣とひとつ改善できるように話し合ってみたいと思います。
  193. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣はよろしゅうございます。  いま一点、さっきの発火の原因についての御答弁を願うことと、時間の関係もありますから、ついでながら一点だけ、これは石炭局長に伺いますが、さっき滝井委員から、三原委員から頼まれた問題をお尋ねしておりましたが、休会中のことでもありますから、たびたびこの委員会が開かれるということもありますまいし、したがって、実際問題の解決はぐんぐん進んでいくだろうと私は思っておりますから、石炭局長にお伺いをしておきたいのです。  御存じのように、白炭の問題は、北九州市と、それから地元のそれぞれの関係者と日炭との三角関係の上において、再建石炭局長相当苦慮されておることを私はよくよく知っております。ついては、問題は、やはり鉱害復旧の問題が第一なんですけれども、鉱害復旧に伴うところの減収補償の問題をどうするか。鉱害が当然起こるのは、これはあたりまえですから、そこで鉱害の復旧は当然臨鉱法でやるか、あるいは無資格でやるか、これも間違いがありませんけれども、その間においてだんだん減収が起こってくる、そうすると減収補償を炭鉱相手では困る、国が減収補償の責任をどのように持ってくれるかということが、あそこの再建の根本的な問題であることは間違いありません。そこでこれは私の考えですが、国が減収補償、鉱害復旧等に関する炭鉱側の負担等を計算されて、その上に立って、炭鉱から出炭においてどのように負担を国が取り立てて管理をしておるか。そしてさらに国がそれにどのように追加をして、減収補償並びに鉱害復旧等の問題を地元住民の安心のいくようにやるか。この問題を国の責任においてやってくれるということが明らかになれば、そうすれば地元の諸君は、通産省のほうで再建されるという案に対しておそらく同意をするであろう、こう思いますが、いま先お尋ねした発火の原因の問題それから日炭問題の解決について、私はこれなら解決するであろうという、この私の意見に対して、石炭局長、大体解決は時間の問題になっておるようですから、その点をひとつお聞かせ願いたい。
  194. 井上亮

    井上説明員 ただいま白炭の再建をめぐりまして、北九州市との間で今後の調整をはかりますために、御承知のような石原調査団が編成されまして、これはむしろ調査団というよりも調整コミッティの形をとっているわけですが、これにつきましては私はもちろんでございますが、北九州市長もこの答申は尊重するというようなお立場で、この調整コミッティをつくったわけでございます。ただいまお尋ねの鉱害復旧の問題についても、この石原調整案には触れられております。特に御指摘のように白炭を再建いたしますためには、問題になっております島郷地域につきましてもやはり採掘をぜざるを得ない。この採掘をすることは、やはり日炭再建にとっては不可欠の要件だという立場をこの石原調整案はとっておるわけであります。そうなりますと、ただいまおっしゃられましたような鉱害復旧の問題、あるいは復旧しますまでの減収補償と言いますか、その問題、こういった問題が出てまいる。この点につきましては石原調整案にも明確にうたっておりますが、やはり国も最大限の努力をして、地元の農民の皆さま方に御迷惑をかけないように努力するという方針になっておるわけでございます。ただ、これは先生承知のように、鉱害復旧とかあるいは減収補償につきましては、やはり私どもの現在の立場から言いますと、現行法の運用のたてまえがございます。したがいまして、厳密な意味でこれを現在の時点で問いただされますと、現行法の範囲内で、運用面を加えまして最大限に努力をするという以外にないわけでございますが、ただ私といたしましては、この調整コミッティのメンバーではございませんけれども、やはり関係者、当事者といたしまして、この国も最大限に努力をすべきだということばを、実際に今後の政策にも反映をして努力していきたいというふうに考えております。
  195. 森五郎

    森説明員 今次の山野炭鉱原因は何か、これを早く調べろということ、現地において御激励を受けましたこともよく承知をいたしておりますが、目下鋭意調査中でございまして、また司法調査も行なわれておりますので、ここで確定的なことを申し上げるわけにはまいりませんが、先ほど滝井先生の御質問にもお答え申し上げましたように、ガス突出がありまして、そのガス突出が人気とともに杉谷部内に流入をいたしました。その同部内において、何らかの火源によって爆発をするということは、圧風の方向その他から判断いたしまして事実であるというふうに考えられる。では何が火源であるかということについては、目下調査中でございますが、現在までの調査結果によりますと、杉谷本卸の巻き場の付近、この辺において火源が各種ございますが、これが最も濃厚であるということになっております。
  196. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 委員長にちょっとお願いしておきます。  いまお聞きのようなことで、あれだけ現地において強く要望しておきましたけれども一まだ発火の原因というものはお聞きのような答弁でございます。それで、保安問題というものは、御存じのように、われわれお互いに非常に神経過敏になるくらい、これをどういうようにしたら完全防止ができるかということについては、御同様に考え、ずいぶん努力をしておるわけでございます。しかし、従来の例からしまして、どうも調査中、調査中といって、いつの間にか、とにかくその原因がわからないままというのがいままでの例ですから、今度は委員長のほうからも強く保安係官らに、ひとつどんなことがあっても、大体において発火の原因はそうたくさんあるわけではございません、おそらく一カ所、あるいは二カ所ぐらいなら、およそこれとこれであろうということぐらい私は出せないことはないと思いますから、そういう発火の原因について、将来のために非常に重要でございますから、委員長からぜひその発火の原因についての調査資料をお取りになってわれわれにひとつ発表していただきたい、これを委員長にお願いしておきます。
  197. 加藤高藏

    加藤委員長 伊藤先生の御趣旨を体しまして当局を鞭撻いたしまして、できるだけ早い機会にその原因等を究明した資料を提出するように努力いたします。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十七分散会