○滝井
委員 きょうはおそくなって、
大臣にははなはだ失礼ですけれ
ども、私たちも非常に高いヒューマニズムをもってこの問題に取り組んでおりますし、いま
大臣も、全く自分も白紙の
状態になって、ひとつ本格的に
炭鉱の問題に取り組んでみたいと言う。実は歴代の
通産大臣でいまのようなことばを言った
大臣を私は知らないのです。初めてです。それだけに、
三木通産大臣のなみなみならぬ
決意に私は非常に感激をいたしております。そこで、私も
炭鉱の問題についてはしろうとですけれ
ども、ヒューマニズムをもって当たれば、私はこういう
事故も防げるし、日本の
炭鉱はよくなると思っておるのです。ただいままで
政府がそれだけの情熱を本格的に傾けなかった。幾ぶんの情熱は傾けたけれ
ども、本格的な情熱を傾けなかったところに、今日の
炭鉱の危機があると私は思うのです。
そこで、まず第一に、私お尋ねをいたしたい点は、実は六月十四日の新聞にこういう投書が出ておるわけです。「私は
山野炭鉱に働いていた」という投書です。その投書は、
三つの点に要約ができるのです。
まず第一は、ちょうど
山野鉱が八百メートル
坑道の掘進のときに、そこで働いておりました。そのときには、別あつらえの一・八リットル以上も入る水筒を持っていかなければ、そこでは仕事ができませんでした。実に暑くて仕事ができなかった。水を飲み干してしまって、さらに水をかぶって仕事をしておった。これで、いかに
坑内が異常な
状態であったかということがわかるわけです。
それから、監
督官の巡視があると、
会社がその監
督官の回る順路をきめるというわけです。中には、時にみずから
坑内図を見て、自分できめて入った人もあった。そういう人もあったということで、これは非常にまれなことだ。あとは全部
炭鉱のほうで経路をきめる。ちょうどわれわれが選挙のポスターを張るときに、候補者の通る道だけポスターを張って、奥の道のほうは張らない。これを行幸道路と言っておるが、それと同じように、
保安監
督官が回る道だけはどっさり岩粉をまいたり、きれいに大掃除をする、こういうことなんです。これは単に
山野鉱だけではない。どうも他のところもそういう傾向が非常に強い。
それから、ある職場常会のときであった。こういう巡路をきめたり、やってくるときだけ水をまいたり岩粉をまくのじゃいかんじゃないかということを
労働者の一人が指摘をした。ところが、
会社側が答えていわく、監
督官が来るときだけ整備するとあなたは言っているけれ
ども、それでいいじゃありませんか、整備しないよりかましじゃないかということを答えたのをいま思い出します、という投書なんです。私はこのことばの中に、端的に
通産省の
保安監督行政の姿があらわれていると思います。最近その
山野鉱に行った
保安監
督官が
山野の
炭鉱の寮に泊まっておったじゃないかといって、新聞が書いておる。私はそういうことはたいしたことじゃないと思う。たいしたことじゃないけれ
ども、あの新聞記者がそういうことを書く気持ちの中に、大衆の、あるいは新聞記者の、
保安監
督官に対する不信感がにじみ出ている、あるいは
労働者の気持ちがにじみ出ているということをやっぱり忘れてはならぬと思います。こういう投書。
それから、いま
一つは、
組夫に対する投書が出ておる。これは長崎の人です。この中にまた、現在の労働省がよく心してもらわなければならぬのは、
組夫の姿がよくあらわれている。それは、
組夫の働いているところは高温多湿で条件の悪いところ、そういうところは全部
組夫が入っております。こういうことです。それから、労働時間は十時間以上、賃金は七割から八割でございます。なるほど調べてみると、賃金、厚生施設の面から見ると、七割ですね。普通の本工が十もらうならば、
組夫は七割です。それから、住宅も、なるほど長崎の
炭鉱に行くと、本工はアパート、自分たち
組夫は戦時中のバラックに住んでおります。さいぜんも言ったのですが、まさに米国の黒人以下の待遇であるということなんです。これが日本の五千五百万トンをささえておる姿なんですね。
そこで、その
組夫のやっていることをずっと
一つ一つ洗ってみますと、まず
組夫は、多賀谷君も指摘しておるが、
災害率が多い。二倍から二倍半です。そして労働時間が長い。いま言ったように、賃金と厚生施設が悪い。
組夫なんというものにはほとんどないです。それから、
組夫は移動が非常に多いです。これはさいぜん言ったように、流れ者、くりからもんもんの入れ墨を入れている。どこに行っても使ってくれない。組が一番天国だと思っているのです。だから、われわれにそんなに組に行くなと言っていないで、働く場を安定所は与えてもらいたいという
要望をみんな持っております。好き好んで行ったわけじゃない。そこ以外に行く場所がないから、涙をのんで行っておる。だから、何十人、何百人の人が死んだときには、二つか
三つ死体がわからない。名前を変えて入っておる。あるいは、あまり言いたくもないけれ
ども、生活保護をもらって入っておる。生活保護をもらってそんなところで働いておったら、切られてしまう。切られたのでは食っていけなくなるから、偽名を使う。生活保護では本名を使い、
炭鉱にいくときには偽名を使う。こういう形になっておる。こういう実態、これはお調べになったら、ざらです。
それから、移動が多いということは、たとえば
山野の森田組なんというのは、三十一人くらい死んでおる。ことし入ったのが十三人おる。入って三日足らずというのもおる。これでは
保安教育なんかできやしない。
保安教育なんか全然できっこないです。
それから、
組夫の支柱をなす
人たちは、なるほどかつて大手の
炭鉱をやめた人です。その
人たちが
組夫の支柱となっておる。しかし、それを取り巻く働き手は、全く
炭鉱にはしろうとの流れてきて、そこ以外に働くところがない
人たちである。こういう実態です。これが日本の
炭鉱をささえておる。しかも、
山野のように、有沢さんが、これはもと三井が経営しておったときよりも優秀だったとおっしゃる。その
炭鉱で、千七、八百人の中で七百人というのは
組夫なんです。それが四十トンをこえる
出炭をささえておるのですから、まさに戦時中朝鮮人
労働者が日本の
石炭労働をささえておったように、いまや
組夫がささえておるのですよ。
私は、この二つの投書の中から、二つの
問題点が出てくると思う。
一つは、一体
保安監督の行政を強化したら日本の
炭鉱はやっていけないのかどうか。
一つは、
組夫をなくしたら日本の
炭鉱は一体やっていけないのかどうか。
この二つの問題について、一体
三木さんなり
石炭局長、あるいは
保安局長は、どう考えるか。あるいは労働省は、戦前においては
組夫はなかった。多賀谷君が言ったように、三十年度の
合理化のときから
組夫が入ってきた。それまではなかったのです。さいぜん申しましたように、はなはだしいのは十六歳というのを入れておる。ある町
会議員がやっておった
炭鉱では、中学生を三十五人も働かせておる。あるいは婦人を三人働かせておるというのが出てきておる。こんなのが絶えたい。そうして盗掘をやっておる。
だから、こういう点は、もう少しヒューマニズムを持って厳重な監督をしたら、一体日本の
炭鉱はやっていけないのかどうか。ここから私は議論を始めなければいけないと思うのです。
そこで、
石炭局長、
三木さんが答弁できなければ、一体
保安を強化する、監督を強化したら日本の
石炭山はやっていけないことになるのか。労働省で、
組夫を入れなかったら一体やっていけないのかどうか、こういうことです。