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遠藤参考人 炭職協の
事務局長をやっております
遠藤でございます。今後の
保安確保の
対策につきまして、
保安技術職員という立場から、時間の制約もございますので、簡単に申し述べたいと思います。
まず昨年の
炭鉱災害でございますけれ
ども、
死亡者のみを見ますと、三百四十二名という史上第二番目の最低の記録をいたしまして、このことは一昨年の三池大
災害を他山の石としまして、
労使とも
ども最大の努力をしたということ、かつまたこのことが将来の
炭鉱保安に明るい展望を見出したというふうに思っておりましたが、去る二月の北炭の
災害、それからまた今月に入りましての
伊王島の
災害と発生いたしまして、一瞬にして九十余名の生命が奪われましたことをほんとうに残念に思っているわけでございます。
これらの
原因につきましては、現在の段階ではまだ明らかではございませんけれ
ども、現実に悲惨な爆発が惹起いたしたわけでございますから、この尊い犠牲を無にすることなく、今後の
保安確保のために多角的に、かつ精力的に
検討をする必要性を痛感いたしますので、以下私たちが従来から主張してまいりました問題を含めまして、述べてみたいと思います。
まず、このような重大かつ悪質な
災害がなぜ起きるのでしょうか。もちろん爆発というものは、ただ
一つの問題で起きるわけじゃなくて、幾つかの不安定な要因が重なりまして起きるわけでございます。これは申し上げるまでもございませんが、その真因はやはりいま
石炭産業が置かれている
現状がしからしめるのではないかと思います。相次ぐ急激な
合理化にもかかわらず、
石炭産業の危機克服のめどが立たない、期待する国の
政策が十分でないということから、勢い
保安優先とはいいながら、
生産優先にならざるを得ない急迫感が、従業員あるいは経営者にみなぎっておる、これがまず第一点でございます。
次に、国全体としての人命尊重のモラルが
欠除しているというふうに
考えております。したがって、基本的には確固たる
石炭政策がなされて、そして将来に対する明るい展望を持たせる、かつ人命尊重の思想啓発がなされる、こういうことが
確立されて、
保安確保の基礎が醸成されるわけでございますけれ
ども、当面の具体策としまして、次の四項目をあげたいと思います。
まず監査体制の徹底した
強化をはかっていただきたい。もちろん自主
保安の
確立につきましては内部監査の一そうの
充実が必要とされますけれ
ども、先ほど申し上げました
石炭産業の
現状からして、必然的に企業収支の感度が強くなりまして、どうしても
生産優先というかっこうになります。かつまた資金的、人的、また時間的に抜本的な向上策は期待できないと言わざるを得ません。ということから、もはや自主
保安ということの限界につきましては見直すべきであり、また現在行なわれているような内部監査あるいは外部監査の中途はんぱなやり方につきましては、根本的に
考え直す必要があるのではないか。しかしながら外部監査の
強化と申しましても、現在の
監督官の陣容あるいは現在の
監督官の待遇、こういうものからは期待しがたいのでし、したがって当面の緊急
対策としまして、各企業より経験、識見とも
ども卓越せる
保安技術職員を、各地域別に
監督官として補強する制度を設けまして、そうしてその運用につきましては、法的規制と実地
指導の両面を兼ね備えた外部監査の徹底をはかるべきではないかというふうに
考えます。もちろん
保安確保は職、労、使の上の意味での三位一体の姿勢の
確立が不可欠と
考えられますので、この
調査、勧告
事項につきましては、職、労、使、それぞれ周知徹底させる必要があり、また行政
指導の
迅速化並びに
監督官の権限
強化も必要とされるのではないかと
考えます。
もちろんこのような監査機構の
充実は、私
ども被
監督者の立場にある
保安技術職員の負荷を増大することは申すまでもありませんが、三番目に申し上げまする
係員の適正
配置によりましてその軽減をはかることと、また
鉱員層からの
係員つるし上げ等の行き過ぎを是正することを前提として、
保安技術職員として割り切るべきであるというふうに
考えます。なお、これによって一時的な出炭停滞その他企業経営に及ぼす影響が容易に予測されるところでございますけれ
ども、これにつきましては、
石炭産業の国家的な
重要性の
見地に立って国策として解決すべきであると
考えます。
次に、
技術開発と
保安教育についてでございますが、まず
保安技術の開発につきましては、技研を中心にある
程度研究がされつつありますが、
保安技術の開発、いわゆる炭じんの問題とか、あるいは
ガスの問題については、集約的になされているとは言えない
現状でございます。一企業ではなかなか対処し得ないところでありますので、国の
責任において別途
研究部門を設置し、各企業との結合をはかりつつ積極的開発をお願いしたいというふうに
考えます。
それから
保安教育の定期的義務づけでございます。
炭鉱の
採炭技術、
機械化の促進は著しいものがございますが、これに対する
保安教育は必ずしも満たされてはいない。もちろん
石炭経営者としても
予防保安の
見地に立った、
保安費用は保険金であるとの認識はしつつも、実行面ではなかなか期しがたいとの感度は改めるべきだというふうに
考えております。
ここで、
石炭産業に
従事しておる
監督者と一般産業の
監督者の立場を比較してみますと、
炭鉱の
保安技術職員ほど
生産、
保安両面に
責任が負荷されている産業はないと思います。
機械化されればされるほど
係員の
生産、
保安、こういった面の負荷が軽減されるのが常識でございますけれ
ども、むしろ
炭鉱の現実は全くその逆なんでございます。かといって、私たちはこれを回避する気持ちは毛頭ございません。むしろ積極的に取り組んで義務を果たす決意はいたしております。また
鉱員は
職場規律についてみずから
確立する意欲と、
係員の
指示に対しては忠実に従うとの一そうの
保安意識の向上が必要と判断されます。結論といたしましては、企業内においては
労使とも
ども裸になって取り組む体制、思想の
確立に努力するとともに、あわせまして国としましても次の二点にぜひ
対策を講じてもらいたいというふうに
考えます。
まず一点目は
保安センターのことでございます。現在休廃坑が相当ございますので、こういう休廃坑の施設を活用して
保安技術の
教育センターを設置して、
係員を中心に有資格者あるいは指定鉱山
労働者にも定期的な
教育を実施しまして、手帳の交付等その
教育を国として義務づける。このことは、各企業で日常また定期的に実施されてはおりますが、その
教育は多少マンネリ化している向きもございますので、その
効果が期待しがたい。この際次元の高い国としての
教育また角度を変えた
教育は、受講者の心理的影響も含め、
効果的かつ不可欠と判断をされます。次に、
保安施設の問題でございますけれ
ども、その
改善につきましては、国として思い切った助成
措置を講ずべきと
考えます。
次に三点目といたしまして、
係員の
管理密度の是正でございます。このことは私
ども前々から主張してまいったわけでございますけれ
ども、なかなかそれが実現をし得ないというような
現状でございます。先ほど第一番目に申しました外部監査による
指導の
強化とあわせまして、
現場末端におけるきめこまかい
管理、
指導の必要性は論をまたないところでございます。
保安、
生産の両面の職責をになっている
係員の職務は
機械化、
自動化による出炭増大、重装備化から、その
管理体制はすでに限度に来ておるというふう
考えておりまして、その解決は緊急かつ重要であります。したがって
係員の負荷軽減策につきまして、法
改正等も含め早急に
検討、対処さるべきと思います。
それから
最後に四点目としまして中央、地方
保安協議会の運営
充実強化でございます。現在中央、九州、北海道、常磐等にそれぞれ
保安協議会がありますが、現在のその運営は必ずしも満足とは言えません。特に地方においては、年に一回ないし二回の形式的な運営にとどまっております。
予防保安のための中央、地方の一元的な運営に加えまして、
監督行政と結合した運営がなされるべきであると
考えます。具体的には少なくとも月一同
程度は定期的に開催しまして、
監督官の勧告
事項の分析
検討、追跡
指導等を行ない、その機能を高めるべきものと
考えます。なお協議会
委員による
現地調査は、
保安確保の面からも、また各
委員の
現状認識の上からも必要と
考えられます。
その他小さいことでは、先ほど岡
事務局長のほうからも申されました超過労働に依存する出炭体制、あるいは
近代化、重装備化と労働力の不均衡、それから労働力の質的低下等ございますけれ
ども、現在もし
炭鉱災害が半分に減ったならば、人命はもとより、出炭面におきましても年間約百万トン、これは三十八年度の
実績でございますけれ
ども、百万トンの増産が可能となることも再認識すべきであると
考えます。
最後に、
保安の万全を期するためには、人命尊重に立った思い切った国の
保安施策と企業内の
労使一体の自主
保安体制は不即不離のものでございまして、いずれに欠陥があってもその万全は期せられないものであることを、私
どもの強い反省を含めままして強調いたしたいと存じます。以上で終わります。
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