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1965-04-27 第48回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月二十七日(火曜日)    午前十時十七分開議  出席委員    委員長 加藤 高藏君    理事 有田 喜一君 理事 藏内 修治君    理事 中川 俊思君 理事 中村 寅太君    理事 多賀谷真稔君 理事 滝井 義高君    理事 細谷 治嘉君       小笠 公韶君    田中 六助君       中村 幸八君    西岡 武夫君       野見山清造君    三原 朝雄君       井手 以誠君    岡田 春夫君       中村 重光君    伊藤卯四郎君  出席政府委員         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      川原 英之君  委員外出席者         参  考  人         (三菱鉱業株式         会社取締役)  井上 健一君         参  考  人         (大日鉱業株式         会社取締役)  納富 貞行君         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合事務局長) 岡  松雄君         参  考  人         (全国石炭鉱業         労働組合保安部         長)      平川久米藏君         参  考  人         (全国炭鉱職員         労働組合協議会         事務局長)   遠藤 一三君     ――――――――――――― 四月二十二日  高松炭砿再建問題に関連する北九州市の住宅計  画、用水確保等に関する請願(三原朝雄君外三  名紹介)(第三一七一号)  同(滝井義高君外二名紹介)(第三三二八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月十二日  石炭産業保安確立に関する陳情書  (第六二号)  日本炭砿株式会社高松炭鉱の施業案に関する  陳情書(第七七号)  炭鉱離職者緊急就労事業継続等に関する陳情  書(第九二号)  鉱害復旧事業に対する県費負担軽減等に関す  る陳情書  (第一九八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  派遣委員からの報告聴取  石炭対策に関する件(石炭鉱山保安問題)      ――――◇―――――
  2. 加藤高藏

    加藤委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、石炭鉱山保安問題について、本日参考人出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤高藏

    加藤委員長 御異議なしと認めさよう決しました。  なお、参考人人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 加藤高藏

    加藤委員長 御略議なしと認め、さよう決します。      ————◇—————
  5. 加藤高藏

    加藤委員長 次に、過日、日鉄伊王島鉱業所爆発事故実情調査のため、本委員会から参りました派遣委員より報告を聴取することにいたします。藏内修治君。
  6. 藏内修治

    藏内委員 去る四月九日爆発災害を起こしました日鉄鉱業株式会社伊王島炭鉱事故について、御報告申し上げます。  派遣委員は、加藤藏委員長田中六助、多賀谷真稔細谷治嘉伊藤卯四郎の各委員及び私であり、現地において倉成正中村重光の両委員が参加されました。  私ども一行は、四月十日の委員会終了後、直ちに羽田空港を出発して現地に向かい、長崎に一泊、翌十一日伊王島鉱業所において、労使並びに川原鉱山保安局長麻田福岡鉱山保安監督局長より説明を聴取した後、伊王島本坑坑口において犠牲者冥福を祈り、病院負傷者をたずねてお見舞いを申し上げ、同日夜おそく羽田空港に帰着いたしました。伊王島炭鉱は、高島炭田に属し、炭質は弱い粘結炭で、埋蔵量は約二千万トン、実収三百万トン、昭和三十八年度の出炭は約三十七万トン、三十九年度は約三十九万トンであり、四十年三月の生産能率は約三十五トン、労働者数は、職員百五十二人、労務者千六十八人、計一千二百二十人でありまして、保安関係については、従来しばしば保安優良炭鉱として表彰を受けてきた優秀な炭鉱であります。  事故の発生した個所は三区D八号払い付近でありますが、この炭層は古第三紀層に属する端島層中の三尺層であり、炭層の走向は個所により相当の変動がありますが、三区D八号払い付近はおおむね西北西に走り、傾斜は約三度ないし九度となっております。三区D八号払いは、払いの長さ百四十一メートル、坑口より距離四千三百メートル、深度約三百二十メートルないし三百四十メートル、平均傾斜約八度で、本年二月十七日から採炭を開始し、現在九十メートル進行しており、一方四十五人程度ホーベル採炭により日産約五百トンないし六百トンを出炭しております。通気は、本卸を入気とし、第四本卸、第四幹線を通り、毎分約三百立方メートル確保されていたのであります。  事故は四月九日午前六時十分ころ発生し、当日三番方としてD八号払いについた四十五人のうち、所用のため先に昇坑した一人を除き、四十四人が被災し、死亡者三十人、重傷者四人、軽傷者十人という大災害になったのであります。事故原因ガス爆発でありますが、その詳細、特に火源については現在調査中であり、まだ十分明らかになっておりません。  救援は、事故発生後直ちに救護隊十六人が人坑し、四月九日午後十一時までに全員の遺体を収容し、翌十日午前六時災害個所ガス排除を一応完了しております。負傷者に対しては日赤、長崎大学九州大学等より医師、看護婦多数が来島し、一応の手当てを終わり、軽傷の二人は九日夕刻退院し、現在長崎大学の応援のもとに炭鉱病院が治療に当たっております。  なお、今回の事故について、政府においても、櫻内通商産業大臣が直ちに現地におもむいたほか、村上通商産業政務次官を団長とする調査団派遣しており、また現地には、福岡通商産業局長福岡鉱山保安監督局長北九州財務局財務部長九州大学長崎大学の各事務局長九州地方医務局長長崎労働基準局長長崎民生労働部長、同衛生部長等をもって構成する長崎臨時伊王島災害対策協議会が設けられ、現場事務処理に当たっております。  羅災者に対しては、死亡者一人について弔慰金五万円、負傷者一人について見舞い金五千円が贈られ、補償問題は現在労使協議中でありますが、会社としては可及的すみやかに決定する方針とのことであります。労炭補償は、遺族補償費葬祭料を合わせ総額四千四百九十九万七千円、平均約百四十三万円であり、去る十七日支給を完了しております。  次に、現地において労働組合職員組合から要望された事項を申し上げますと、第一は原因究明を徹底的に行ない、これに基づいて保安対策を樹立するとともに、鉱山保安局からの指示連絡事項等は直接労働組合にも通知するよう措置すること。第二は、遺家族の今後の生活について万全の対策を講ずるとともに、負傷者の後遺症に対しては十分な救護措置を行なうこと。第三は、炭鉱災害絶滅石炭鉱業発展の最も根本的な問題であるので、保安融資充実等保安に対し国が積極的な助成を行なうこと等であります。  最後に、私どもは今回の調査を終わり、一昨年の三井三池、去る二月の北炭夕張に続き、いままた日鉄伊王島のごとき、数回にわたって保安優良表彰を受けた炭鉱がこのような大災害を引き起こしたことを心から遺憾に思うものであります。従来、炭鉱災害たびごとに部分的な鉱山保安法規改正が行なわれ、政府も再三警告を発し、業界においても保安検討班編成等自主保安確保につとめてきましたが、もはや単にこれらによって解決できる事態ではなく、保安法規保安体制はもとより、労使保安意識等のいずれかに根本的な欠陥があると考えざるを得ないのであります。この際、石炭鉱業労使並びに監督官庁は、この点を徹底的に究明するとともに、保安確保重要性を再認識し、災害絶滅の覚悟を新たにすべきであり、かりそめにも今日の困難な石炭鉱業経営状態に籍口するようなことがあっては断じてならないのであります。政府の適切な施策と労使の一段の自覚を強く要請するものであります。  終わりに、不幸今回の災害でなくなられた方々の御冥福と、負傷された方々の一日も早い回復をお祈りして報告を終わります。      ————◇—————
  7. 加藤高藏

    加藤委員長 次に、石炭対策に関する件について調査を進めます。  石炭鉱山保安問題について、参考人として次の方々の御出席をいただいております。三菱鉱業株式会社取締往井上健一君、大日鉱業株式会社取締役納富貞行君、日本炭鉱労働組合事務局長岡松雄君、全国石炭鉱業労働組合保安部長平川久米藏君、全国炭鉱職員労働組合協議会事務局長遠藤一三君の各位であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます、本日は、御多用中にもかかわらず、本委員会に御出席を賜わり、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  御承知のごとく、石炭鉱山における保安問題は、事人命にかかわるきわめて重大な問題でございますので、参考人各位におかれましては、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。参考人各位には、最初お一人十分程度それぞれ御意見をお述べいただき、そのあとで委員の質疑に応じていただきたいと存じます。  それでは、井上参考人からお願いいたします。井上参考人
  8. 井上健一

    井上参考人 私、三菱鉱業石炭採掘に約三十年間従事してきたものであります。炭鉱保安問題について私の考えておることを申し述べたいと思います。ただ、私は三菱鉱業という企業の中で仕事をしておりましたので、私の話は若干私の個人的な見解が入ると思いますが、その点御了承願いたいと思います。  炭鉱坑内は、御承知のように次第に遠く深くなりまして、温度の上昇あるいはガス増加等自然条件は悪くなってきております。これを克服するためには、まず技術近代化ということと管理強化、この二つが必要ではないかと思います。これらのことを推し進めることによって保安確保できると、私は確信いたしております。  次に、私が考えております問題点につきまして、今後特に前向きに取り上げたいと思っていることについて御説明を申し上げたいと思います。  まず設備近代化ということでありますが、これの全部について述べるには時間が足りませんので、特に代表的なものについて具体的な御説明を申し上げたほうがわかりいいのではないかと思いますので、これから二、三の例について申し上げます。  まず全般的に申し上げたいことは、掘進並びに採炭機械化ということで、これはもう説明を要するまでもないと思います。人力をできるだけ機械力にかえることによりまして、かりに事故がありましても人をいためることなく、機械がこの身がわりになるということでありまして、保安上当然いいものでありますが、私はさらに現在取り上げられつつあります次の問題について申し述べたいと思います。  それはまず、水圧鉄柱の導入であります。従来、鉄柱というものは保安生産かはっきりしないものでありましたが、これが保安面に寄与した実績は非常に驚くべきものがありまして、鉄柱によるところの事故が従来の摩擦鉄柱よりも三分の一程度に減少しております。このように保安面に非常に大きな効果が上がっておりますので、今後もこの点について強力に進めたいと考えております。  次にガス抜きであります。これは誘導設備強化ということと、さらに新しい技術として取り上げたいと思っておりますのは、試錐機、穴を掘ります機械強力化ということであります。これも今後着々と実施されていくことと思います。  次に坑内の冷房であります。これも私の会社で昨年一炭鉱に取り入れましたところ、全く予期しない効果があらわれまして、保安はもちろん生産も飛躍的に拡大しております。今後坑内環境改善ということに、こういう点も意を注ぎたいと考えております。  次に、ガス観測及び警報自動化ということであります。昨年私は保安調査団の一員として欧州各国を回りましたが、フランスあるいはイギリスでこの自動化ということがかなり進んでおります。特にメタンガス警報につきましては、日本でも数年前から研究はされており、また現在坑内にも相当なものが入っておるのでありますが、実際にこれがまだ実用化の域に達しておりませんので、この点今後さらに研究を進めまして、この実用化を推進したいと思っております。ただ、このガス自動警報器があれば坑内ガスは全部手落ちなくはかれるかというと、そういうものじゃありませんで、自動化にあまりたより過ぎるということも、この際十分頭に置いて考えなければならぬ問題であろうと思います。  もう一つは、坑内の通信の迅速化ということであります。坑内にできるだけ無線装置を備えつけまして、無線による坑内連絡、特に保安上の緊急連絡にはこれを活用したいというふうに考えております。  以上取り急ぎまして二、三の例をあげましたけれども、こういう点につきまして、政府におかれましても特に近代化融資範囲も拡大され、金額増加しまして、以上述べましたものも全部本年度の融資範囲内に含まれております。この点私としても非常に感謝にたえないところでありますが、今後さらに保安優先という見地から、保安施設にはさらに金額融資あるいは額の増加ということにつきまして絶大な御援助をひとつお願いいたしたいと思います。また、この技術改善という面につきまして、われわれ民間の会社でも今後研究開発に努力いたしますが、政府における学校、または政府における試験所、あるいはメーカー現場との緊密な連携をとって、早く実現するように研究をお願いしたいと思っております。  ヨーロッパ各国のこの点に関する実情は、まことにうらやましいものがあります。こういう試験所メーカー現場とが緊密に結びついて、非常にそういう試験研究が生かされておる。日本のようにそれぞれ自分の道を歩いていく研究というようなことではなくて、常に現場研究所あるいはメーカーとが連携をとっておる。ことに炭鉱坑内というところは非常に自然条件のむずかしいところでありますので、特にこの点が必要であろうというふうに私は思います。  次に、大きな問題としまして、管理強化ということでありますが、これは管理機構の拡充ということと、保安意識の高揚に尽きると思います。法の改正によりまして、今年の一月から炭鉱責任者すなわち所長が保安統轄者になりましたが、この保安統轄者をはじめ、保安管理者保安意識現場末端まで浸透するということが、非常に大事なことだと思います。これに関しまして大事なことは、私はやはり保安教育だと思います。組夫を含んだ鉱員教育はもちろんでありますが、特に私は現場係員中堅幹部係員教育重点を置くべきであるというふうに考えます。さらにこれをふえんして申し上げますと、現場係員鉱員、すなわち作業者との協調的な態度が必要だろうと思います。言いかえると職場規律確立ということにもなりますが、要するに末端まで趣旨が徹底するというためには、現場係員と作業する人との気持ちが一致しなければ、決して完全にいくものでないというふうに考えます。  それから、この点働く人の側にもお願いしたいと思っておりますことは、現場係員にできるだけ保安上の監督をするための時間を与えてもらいたいということであります。現在、現場係員のやっておる仕事の中で、いわゆる対労折衝といいますか、労働条件折衝という問題がかなりのウエートを占めております。こういう時間をできるだけ現場技術のほうに生かして、保安上の有効適切な指示ができるような時間の余裕を現場係員に与えたいというふうに考えております。  次に、責任観念充実ということでありますが、現在の炭鉱保安知識がない者は私はないと思います。ただ知識があっても、それを責任をもってやるかやらないかの問題であります。要するに、わかり切ったことをやらなかったということが一番問題であろう、これをどうしてなくするかということが、われわれが最も今後力を置いて指導していかなければならない問題だと思っております。  それから、これも組合のほうにお願いしたいことと思っておりますが、保安上の必要な人員配置に対する組合側協力ということであります。たとえば坑道に地圧が来て状況が悪くなった、採炭夫のほうから仕繰りのほうに行ってひとつやってもらいたいということもありましょうし、また先ほど申し上げましたガス抜きをやるために新鋭試錐機が入った、従来三人で作業しておったものが二人で作業できるというようなものがありますと、その点従来二台しか使えなかった機械が三台使えるということになるのであります。こういうときにできるだけスムーズにこういう配置がえができるように、今後組合側協力もお願いするし、われわれもそういうふうに指導していきたい、こういうことによって保安管理面充実されていくというふうに考えております。  なお、私のほうの業界では保安管理強化のために保安検討班というものを設けて実施中でありますが、また政府のやられる管理監督面につきましても、できるだけ内容充実さしていただいて、いわゆる取り締まるとか、あるいは業務停止というような検察的な面の強化ということから、できるだけ予防保安ということに指導面を置いていただいて、予防保安という指導強化していただきたいと思うのであります。交通取り締まり公開取り締まりというのをやって親切に指導するということで、効果があがっておると開いておりますが、いわゆる抜き打ち検査をやるというような非情的な方法では、私はよい環境が生まれてこないのじゃないかと思いますので、かりに言うことを聞かぬむすこであっても、温情をもってこれを導いていただきたい、こういう指導を今後特に強化していただきたいと思う次第でございます。  最後に、炭鉱保安の基盤となる点について二点だけ申し上げて私の説明を終わりたいと思いますが、前段の説明設備近代化ということに関して述べましたが、炭鉱技術で最も必要なことは基礎的な技術であろうと思います。こういうふうな新鋭機械ばかりに目を向けて、いたずらに、よくなったというふうに考えるのは誤りであります。いままでの大きな事故を振り返ってみましても、非常に単純な、いわゆる基礎的な技術欠除から起こっておるのじゃなかろうかというふうに考えます。したがって、基礎技術の演練ということが非常に大事ではなかろうかというふうに考えられます。また、どんな新鋭機械でありましても、究極はこれは人が動かしておりますものでございますから、結局はその職域に応じた責任を果たせる人の教育、あるいはその養成ということが大事だろうと考えます。  第二点といたしましては、技術の面でございますが、掘進の強化ということを申し上げたいと思います。採掘区域の前広な確認によって無理のない採掘を行なうというためには、掘進の強化がまず何よりも大事ではなかろうか。こういうことによりまして、先ほど申し上げました保安面に大きな効果のあるガス抜きのようなことも前広にできます。採炭計画も順調に推移できるということで、この掘進の強化ということを、炭鉱の今後の技術改善面でできるだけこれを実績をあげていきたいと思います。以上、私の考えを述べまして、終わります。
  9. 加藤高藏

  10. 岡松雄

    岡参考人 炭労の事務局長の岡でございます。意見を述べる機会を得たことを非常に喜んでおります。  まず第一に、私は災害現状について申し上げたいと思いますが、三十八年十一月の三池の災害、本年に入って二月の北炭夕張災害、まことに不幸なことでありますが、四月に入ってさらに伊王島災害、この三つの大災害で、五百五十人の炭鉱労働者の命を奪われる結果になりました。災害現状について詳細に述べる時間がございませんから省略をいたしたいと思います。災害発生のつど、国会調査団あるいは専門家による原因究明責任追及等措置が行なわれていますから、そのことはあえてここでは申し上げないことにいたしたいと思います。  そこで、一番問題になる原因について第二に述べてみたいと思います。私は、炭鉱災害ということを論議する場合に、現在の石炭政策合理化ということを抜きにしては考えられないというふうに思っております。たしか昨年の六月の十一日だったと思いますが、本委員会石炭鉱業現状に照らして第二次調査団派遣決議をされました。そのときの決議趣旨を伺いますと、一つ炭鉱労働者の異常な流出ということをあげられております。一つ産炭地の疲弊、こういう現状をとらえて、石炭対策委員会で、産炭地調査団派遣すべきだという決議が行なわれました。したがって、私どもはその第二次石炭鉱業調査団の活動の段階で、特に国会でも指摘をされた炭鉱労働者の異常な流出原因がどこにあるかということから強く訴えたのは第一に石炭労働者の置かれておる作業環境労働条件の向上でございます。こういったところにメスが入らなければ、結局本日議題になっておる、いかにして保安確保するのかということが非常にむずかしい。私は法律の改正なり、あるいは技術面追及だけで炭鉱保安確立されるというふうには考えられない。したがって第二次石炭鉱業調査団は、その辺に国会決議趣旨もあったわけでありますから、そこに重点を置いてしっかり現地調査をしてもらいたい、あわせてその対策確立してもらいたいということを、終始一貫述べてまいったのでありますが、残念ながら、蔵内先生も御承知のような内容でこの第二次石炭鉱業調査団答申が行なわれたわけでございます。したがって、この調査団答申からいたしますと、結局、いかにして生産体制軌道に乗せるかということは内容的に盛られておりますけれども生産体制軌道に乗せる基本的な課題である作業環境なりあるいは労働条件については、残念ながら、私どもの強い訴えにもかかわらず、答申内容に入れていただくことができませんでした。いま経営側井上参考人から保安確保技術的な見地が述べられましたけれども、私ども労働組合としても、いかにして技術的に保安確保するのかという点で、意見の相違はないわけであります。ないのだけれども、基本的には、やはり多くの問題を含んでおる石炭産業政策合理化、この辺をぜひひとつあらためて御検討をいただきたいというふうに考えておるのでございます。  第三に、対策について述べてみたいと思います。私ども組合員の生命の問題でございますから、積極的に保安確立について協力をするという考えを前提として、対策についてぜひお願いしたいと思っておるのは、第一に、冒頭申し上げた原因関係がある石炭政策確立でございます。これがなければ、いかに技術的に問題を提起をしても、あるいはそれが確立をされても、私は、保安確立は遂行できない。こういう見解をとっておる次第でございます。そこで、石炭政策確立という観点から解決を願いたいのは、炭鉱労働者労働条件労働環境でございます。若干いま炭鉱労働者の置かれておる労働環境なり労働条件について触れてみたいと思うのですが、特に石炭関係がある、重化学工業従事をする労働者賃金でございます。製鉄業従事をする労働者がきまって支給される月の賃金というのは、大体四万三千円でございます。炭鉱労働者は、坑外もございますが、坑外を除いて、坑内労働者は月額大体三万一千円であります。賃金にして一万二千円程度の差がございます。もちろん、これは稼働日数を比較しますと、大体月に四日間程度炭鉱労働者坑内夫稼働率は低下をしております。製鉄業の場合には、月平均二十四日ぐらいの稼働でございます。坑内夫は大体二十日、二〇・二ぐらいでございます。こういう差はありますけれども賃金では一万二千円の差がある。そこで、労働環境でございますが、これは災害のつど先生方も坑内等にお入りになって御承知のとおりでございます。地下労働でありますから、相当整備された大手の炭鉱坑内といえども労働環境は決してよくはございません。したがって、私どもは、坑内作業環境はもちろんでございますが、特に坑外、八時間働いて上がってきて休む住宅の問題でございます。これは第二次石炭鉱業調査団も取り上げて、特に住宅問題については積極的に施策をとり、解決するということが出されておりますけれども、残念ながら四十年度の予算ではゼロになっております。したがって、いまの石炭産業の状況から判断いたしますと、その面での住宅環境といいますか、あるいは、作業環境の整備改善ということは、きわめて困難な事情にございます。  それから、もう一つは労働時間の問題でありますが、現在大体十時間労働、法許容限度まできておるわけでありまして、坑内で十時間でございます。これは大手、中小を問わず、大体十時間の労働、ある炭鉱では十時間以上の労働をやっておりますが、これを月にならして給与を支給する、こういういかにして法をくぐるかという実例もあるわけでございます。したがって、そういう労働環境におるということは、私ども労働組合の立場からすれば、労働組合にも責任の一半があるということは重々承知をしております。しかし、こういう長時間労働の大きな原因は、やはり基本的には賃金が安いということ。したがって、賃金が安い、労働時間が長い、こういう悪循環がいまの炭鉱労働者現状である。時間を詰めて働きますと、どうしても注意が散漫になります。こういったことはささいなようなふうにとられるとろでございますが、災害はほんとうに一瞬にしてあの大きな災害に発展をするということを考えれば、私どもはこういう点も十分一つ政治と申しますか、あるいは、石炭政策と申しますか、そういう中でぜひ解決をお願いをしたいというふうに考えておるわけでございます。  さらに若干具体的に保安対策について意見を述べさしていただきたいと思います。実はこの前の本会議でもたしか討議がされたように考いておりますが、一つは鉱山保安行政を労働省に移管する必要があるのではないか。理由についてはもう国会でも討議されておりますから、あえて述べることはいたしません。  第二は、鉱務監督官の増員ということでございます。これも保安局のほうからある数が出されておりますが、残念ながらこれも予算の関係で要求が満たされる結果にはなりませんでした。ぜひこのことはひとつ御検討をいただきたいと思います。  第三は、鉱務監督官の権限を強化をしてもらいたい。これはもう先生方、北炭夕張災害調査に行かれて、私がなぜこういうことを申し上げるかということについては、御理解いただけるのではないかと思います。  第四は鉱務監督官の勧告、注意については、会社側には通告をされていますが、労働組合の側にはいままで通告されることが少ないわけでございます。保安というのは経営者だけでは守り切れる問題ではございませんから、ぜひそういう保安現状について注意、勧告があった場合には、労働組合に通知をするという点を特にお願いをしておきたいと思います。  以上、きわめて簡単でございますが、すでにもう炭鉱保安の問題については、相当多くの時間をさいて国会でも討議をされた問題でございますから、あえて私がここでお願いしたいのは、石炭政策の問題なり、その中で労働条件を解決するという方向で根本的に保安問題にメスを入れていただきたいということをお願いして、私の陳述を終わることにいたします。
  11. 加藤高藏

  12. 納富貞行

    納富参考人 私は日本におきます中小炭鉱でつくっております日本石炭鉱業連合会の代表として参りました大日鉱業の納富でございます。  石炭対策につきましては常々格段の御配慮を賜わり、厚くお礼申し上げますとともに、本日炭鉱保安に関しての意見を述べる機会を与えられましたことを深く感謝いたします。  このたびの伊王島炭鉱の不幸な災害につきましては、とうとい犠牲になられました方々に対し心から御冥福をお祈り申し上げますとともに、再びこのような事故が絶対ないように、保安確保につきまして一段と決意を新たにし、石炭連合会においても、去る二十二日総会を開きまして、保安確保について申し合わせを行なったところでございます。  炭鉱保安につきましては、われわれは常日ごろより保安あっての採炭であり、掘進であり、保安第一に考えて企業を行なっておるのであります。従業員に対しましても、この点十分徹底さしており、定期的に保安委員会を開き、検討、努力をいたしております。さいぜん炭労のお方のお話がありましたが、役所よりのいろいな保安検査のための御注意につきましては、保安委員会で必ず従業員の方に徹底するよう御説明申し上げておる次第でございます。  人命の尊重は至上のものでありますとともに、中小炭鉱にとりましては、その多くは一社一山であります関係上、一たび災害を起こしますと、その企業はつぶれるほかはありませんので、企業防衛の意味からいっても、保安にはほんとうに理屈抜きに真剣になって一ときもゆるがせにしないよう努力しているのでありますが、さらになお一段と万全を期する努力を重ねる決意であります。  これがためには根本的には、現在の企業収支の悪化している石炭鉱業を収益性のある産業として、その経営を安定せしめることであろうかと存じます。石炭政策全般についても、この上とも格段の御配慮をお願い申し上げたいと存じます。  保安確保の具体的問題につきましては、ただいま石炭協会の代表の方より述べられました物心両面における労使の確固たる心がまえの上に立って炭鉱近代化機械化の推進と保安設備充実改善を根幹とすることになろうかと存じます。このため、政府におかれましてもこの点を考慮せられ、四十年度におきましては、保安設備に対する近代化資金の対象機種の拡大、予算の増額等の措置を進められておられることは、まことに心強く思う次第でございます。  しかし中小炭鉱におきましては、せっかくのこれらの措置も、現在の融資条件ではなかなかその借り入れが困難な面もありますので、保安融資につきましては、その性質上、融資率の引き上げ、返済期間の延長、貸し付け基準の緩和等により、必要な資金が必要なときに借り入れできるようにしていただき、必要に応じては機械の貸与を行なうような措置を講ぜられますとともに、保安機器に対する国の補助金の大幅な拡大をぜひお願いいたしたいと存じます。  炭鉱保安はわれわれ自身の問題でありますので、労使一体となって事故絶滅を期し、最大の努力をいたす所存でありますので、この上とも保安確保についての皆様方の御配慮と御支援をお願い申し上げて、私の説明を終わりたいと思います。
  13. 加藤高藏

  14. 平川久米藏

    ○平川参考人 私は全炭鉱保安を担当いたしております平川でございます。  大綱的にはただ前者がいろいろ御説明されたとおりでございます。いつも災害が起こりますと、それぞれ関係者から保安対策について非常にいいことを述べられております。ところがそれがなかなか実行に移されない。それがために重大災害があとを絶たないというのが現状ではないかと思います。したがいまして、ここで全炭鉱考えております保安確保対策としての具体的な対策を御説明申し上げまして、それぞれ関係者が積極的に実行に移していただくようにお願い申し上げたいと思います。  まずその一つは、自主的な保安体制確立でございます。従来からも、自主保安体制確立ということは非常に皆さん方が唱えておるところでございますが、これもなかなか実行に移されておらないということでございます。したがいまして、まず自主的に保安管理するという面で、具体的に保安専従の係員を適正な配置にしていただきたい。それは保安を専門に検討する、あるいは調査する係員は、少なくとも一作業時、いわゆる八時間に全操業区域の保安状況を調査し、そうしてその結果に基づいて保安確保をはかり、また保安確保をはかる必要がある場合には、その作業員についてもただちに改善できるような人員の配置にしていただきたい、このように考えております。  次に大切なことは、保安教育ではないかと思います。常々叫ばれておりますが、これもなかなか実行に移されておらないというのが現状ではないかと思います。したがいまして、保安教育のために次のことを行なったらどうであろうかということを考えております。まず、保安教育を行なうために専門の学校、いわゆる保安教育センターというものを設立して、少なくとも保安職員は定期的にこのセンターに入って教育を受けるということが、技術革新の急速な進展に伴う保安対策という面ではないかというふうに考えております。その他の一般鉱山労働者につきましても、いわゆる保安のために必要な教育を定期的に行なうべきではないかと思います。現在、鉱山保安法第六条にも、必要な教育を行なえということになっておりますが、それが具体的なものでなく、なかなか各鉱山では実行に移されておらないようでございます。こういうものをやはり細目を規定して教育をさせる必要があるのではないかと思います。  その次に、新しい技術の導入の際の教育でございます。新しい技術の導入の際の教育につきましては、これが完全に現在行なわれているというふうには思っておりません。したがいまして、新しい機械を導入した場合には、一定の期間十分保安教育をして、その機械に対する保安について身につけて機械を動かしていただくというふうに、ぜひお願いいたしたいと思います。  それから次に、作業現場における保安教育でございます。たとえば、現在坑内で働いている方々、一般労働者はその個所ガス量等を知っておるかということになりますと、なかなかそうはまいっておりません。係員が測定いたしましても、それを労働者に知らせるということに行なっていないようでございます。自分がいま働いておる個所自然条件がどうなっておるのか、あるいはガス量は幾らか、こういうことも十分作業員が知っておる必要があると思います。そういう処置をやはり講じて、やはり作業員が十分自分の個所の条件というものを知っておるという制度にしていただきたいと思います。  次に、保安監督行政の強化でございます。現在巡回検査を大体二カ月に一回程度行なっておるようでありますが、これの頻度をふやしていただきたいということでございます。もちろんこれは自主保安体制確立されまして、監督官の巡回検査によって指摘されるまで改善しないということがなければ、これも必要ないということでございますが、現在のところなかなかそうはまいっていないようでございますので、少なくとも現在の巡回検査の頻度をふやしていただきたい。具体的には一カ月に一ぺんは採鉱関係あるいは自然関係ともやはり検査すべきではないか、このように考えております。  次に、検査の結果、改善命令あるいは勧告、注意事項等が普通行なわれるわけでございますが、これを厳正に行なっていただきたい。まあこのぐらいはだいじょうぶだろうというようなことで、勧告あるいは命令等をしないというようなことのないように、ひとつ厳正にお願いいたしたいというふうに考えております。  それから、検査の結果、改善あるいは勧告、注意等が行なわれた場合の追跡検査でございます。これは現在必要のつど行なっているようでございますが、そういう勧告、命令、注意等が行なわれた場合には、必ず追跡検査をしていただきたいということでございます。  次に、抜き打ち検査でございます。現在、保安監督官の巡回検査があるからひとつ手入れをしようかという炭鉱がなきにしもあらずと思いますが、そういうことではなかなか保安というものは確保できないと考えておりますので、現状では抜き打ち検査というものが必要ではないかというように考えております。  次に、今回の伊王島災害にかんがみまして、当局のほうで一斉総合点検を実施するように計画いたしております。この一斉総合点検というものも、やはり定期的に恒久的に実施すべきではないか、このように考えております。  次に、検査結果のことでございますが、現在のところ、法に基づいて行なう場合には、それを労働者に対して周知させなくてもよいようになっております。しかしこれはやはり、そういう悪い個所があるわけでありますから、そこに働いている労働者には周知徹底させる必要があるのではないかと考えております。その周知徹底させる方法といたしましては幾つかあげられます。まず保安委員会を検査後直ちに開催して通知する、あるいは文書を労働組合のほうにも提出する、あるいは坑口に掲示する、あるいは当該作業個所労働者に通知する。いろいろな方法が考えられますが、ひとつ働いている者に周知徹底させる方法を講じていただきたい、このように考えております。  それから、保安技術研究の機関の充実であります。現在日本では資源技術研究所で行なっているようでございますが、聞いてみますと予算も乏しいようで、先ほど井上参考人からも御意見が出ましたように、私も一緒に欧州の保安状況を調査してまいりましたが、欧州各国保安技術研究というものは相当発達いたしております。このようなものを十分参考にいたしまして、保安監督行政に密着した保安技術研究をしていただきたい、このように考えております。  次に、技術研究と並行いたしまして、少なくとも新技術の導入の際には、保安対策を十分検討して、その後に機械を使用していただくようにお願いいたしたいというように考えております。現在保安対策でいろいろ検討されておりますが、災害が起きた後にああしなければできない、こうしなければできないということで対策が立てられているようでございますので、少なくとも災害が起きる前に、こういう研究機関を充実して研究をしていただきたいというように考えております。  次に、保安機器等の設備でございますが、外国には非常に優秀な機械がございます。日本でも開発されているわけでございますが、いかんせん石炭産業現状では、なかなか保安に対する投資というものがなされないのが現状ではないかと思います。したがいまして、こういうものを積極的に導入するために財政措置を十分配慮願いたいと考えております。その方法といたしましてはいろいろなことが考えられますが、保安機器がどうしても財政的に買えないというようなことがございましたならば、貸与制度とか、あるいは実用段階までその費用の代弁をするとか、そういうことも十分お考え願いたいというように考えております。  次に、災害発生時の救護対策でございます。これは保安対策と若干かけ離れるかと思いますが、現在のところ、災害発生から人員の救護という段階までに非常に時間がかかっておるように見受けられます。したがいまして、やはり少なくとも各企業においては、こういう救護活動が十分できるように配慮していただきたい。  その一つといたしましては、救護隊坑口付近の住宅に集約いたしまして、災害が起これば直ちに出動できるような体制にしていただきたいということと、それから地域救護隊をぜひ設置いたしていただきまして、その地域の全般的な救護活動ができるような処置を講じていただきたいと思います。  先般伊王島災害におきまして、災害発生から救護活動に入るまで約二時間の時間を要しておるようでございます。あのD八号払いの肩付近におられた方で殉職された方がおりますが、一人生存された方がその人の模を通過する際に、おい一緒に行こうと言ったところが、おれはもう起き上がれないということで殉職されたようでございます。救護活動がもう少し迅速に行なわれておれば、この人たちの命も助かったのではないか、このように考えておりますので、救護活動の迅速化を十分御検討いただきたい、このように考えております。  以上簡略でございましたが、私の意見を終えたいと思います。
  15. 加藤高藏

  16. 遠藤一三

    遠藤参考人 炭職協の事務局長をやっております遠藤でございます。今後の保安確保対策につきまして、保安技術職員という立場から、時間の制約もございますので、簡単に申し述べたいと思います。  まず昨年の炭鉱災害でございますけれども死亡者のみを見ますと、三百四十二名という史上第二番目の最低の記録をいたしまして、このことは一昨年の三池大災害を他山の石としまして、労使ともども最大の努力をしたということ、かつまたこのことが将来の炭鉱保安に明るい展望を見出したというふうに思っておりましたが、去る二月の北炭の災害、それからまた今月に入りましての伊王島災害と発生いたしまして、一瞬にして九十余名の生命が奪われましたことをほんとうに残念に思っているわけでございます。  これらの原因につきましては、現在の段階ではまだ明らかではございませんけれども、現実に悲惨な爆発が惹起いたしたわけでございますから、この尊い犠牲を無にすることなく、今後の保安確保のために多角的に、かつ精力的に検討をする必要性を痛感いたしますので、以下私たちが従来から主張してまいりました問題を含めまして、述べてみたいと思います。  まず、このような重大かつ悪質な災害がなぜ起きるのでしょうか。もちろん爆発というものは、ただ一つの問題で起きるわけじゃなくて、幾つかの不安定な要因が重なりまして起きるわけでございます。これは申し上げるまでもございませんが、その真因はやはりいま石炭産業が置かれている現状がしからしめるのではないかと思います。相次ぐ急激な合理化にもかかわらず、石炭産業の危機克服のめどが立たない、期待する国の政策が十分でないということから、勢い保安優先とはいいながら、生産優先にならざるを得ない急迫感が、従業員あるいは経営者にみなぎっておる、これがまず第一点でございます。  次に、国全体としての人命尊重のモラルが欠除しているというふうに考えております。したがって、基本的には確固たる石炭政策がなされて、そして将来に対する明るい展望を持たせる、かつ人命尊重の思想啓発がなされる、こういうことが確立されて、保安確保の基礎が醸成されるわけでございますけれども、当面の具体策としまして、次の四項目をあげたいと思います。  まず監査体制の徹底した強化をはかっていただきたい。もちろん自主保安確立につきましては内部監査の一そうの充実が必要とされますけれども、先ほど申し上げました石炭産業現状からして、必然的に企業収支の感度が強くなりまして、どうしても生産優先というかっこうになります。かつまた資金的、人的、また時間的に抜本的な向上策は期待できないと言わざるを得ません。ということから、もはや自主保安ということの限界につきましては見直すべきであり、また現在行なわれているような内部監査あるいは外部監査の中途はんぱなやり方につきましては、根本的に考え直す必要があるのではないか。しかしながら外部監査の強化と申しましても、現在の監督官の陣容あるいは現在の監督官の待遇、こういうものからは期待しがたいのでし、したがって当面の緊急対策としまして、各企業より経験、識見ともども卓越せる保安技術職員を、各地域別に監督官として補強する制度を設けまして、そうしてその運用につきましては、法的規制と実地指導の両面を兼ね備えた外部監査の徹底をはかるべきではないかというふうに考えます。もちろん保安確保は職、労、使の上の意味での三位一体の姿勢の確立が不可欠と考えられますので、この調査、勧告事項につきましては、職、労、使、それぞれ周知徹底させる必要があり、また行政指導迅速化並びに監督官の権限強化も必要とされるのではないかと考えます。  もちろんこのような監査機構の充実は、私ども監督者の立場にある保安技術職員の負荷を増大することは申すまでもありませんが、三番目に申し上げまする係員の適正配置によりましてその軽減をはかることと、また鉱員層からの係員つるし上げ等の行き過ぎを是正することを前提として、保安技術職員として割り切るべきであるというふうに考えます。なお、これによって一時的な出炭停滞その他企業経営に及ぼす影響が容易に予測されるところでございますけれども、これにつきましては、石炭産業の国家的な重要性見地に立って国策として解決すべきであると考えます。  次に、技術開発と保安教育についてでございますが、まず保安技術の開発につきましては、技研を中心にある程度研究がされつつありますが、保安技術の開発、いわゆる炭じんの問題とか、あるいはガスの問題については、集約的になされているとは言えない現状でございます。一企業ではなかなか対処し得ないところでありますので、国の責任において別途研究部門を設置し、各企業との結合をはかりつつ積極的開発をお願いしたいというふうに考えます。  それから保安教育の定期的義務づけでございます。炭鉱採炭技術機械化の促進は著しいものがございますが、これに対する保安教育は必ずしも満たされてはいない。もちろん石炭経営者としても予防保安見地に立った、保安費用は保険金であるとの認識はしつつも、実行面ではなかなか期しがたいとの感度は改めるべきだというふうに考えております。  ここで、石炭産業従事しておる監督者と一般産業の監督者の立場を比較してみますと、炭鉱保安技術職員ほど生産保安両面に責任が負荷されている産業はないと思います。機械化されればされるほど係員生産保安、こういった面の負荷が軽減されるのが常識でございますけれども、むしろ炭鉱の現実は全くその逆なんでございます。かといって、私たちはこれを回避する気持ちは毛頭ございません。むしろ積極的に取り組んで義務を果たす決意はいたしております。また鉱員職場規律についてみずから確立する意欲と、係員指示に対しては忠実に従うとの一そうの保安意識の向上が必要と判断されます。結論といたしましては、企業内においては労使ともども裸になって取り組む体制、思想の確立に努力するとともに、あわせまして国としましても次の二点にぜひ対策を講じてもらいたいというふうに考えます。  まず一点目は保安センターのことでございます。現在休廃坑が相当ございますので、こういう休廃坑の施設を活用して保安技術教育センターを設置して、係員を中心に有資格者あるいは指定鉱山労働者にも定期的な教育を実施しまして、手帳の交付等その教育を国として義務づける。このことは、各企業で日常また定期的に実施されてはおりますが、その教育は多少マンネリ化している向きもございますので、その効果が期待しがたい。この際次元の高い国としての教育また角度を変えた教育は、受講者の心理的影響も含め、効果的かつ不可欠と判断をされます。次に、保安施設の問題でございますけれども、その改善につきましては、国として思い切った助成措置を講ずべきと考えます。  次に三点目といたしまして、係員管理密度の是正でございます。このことは私ども前々から主張してまいったわけでございますけれども、なかなかそれが実現をし得ないというような現状でございます。先ほど第一番目に申しました外部監査による指導強化とあわせまして、現場末端におけるきめこまかい管理指導の必要性は論をまたないところでございます。保安生産の両面の職責をになっている係員の職務は機械化自動化による出炭増大、重装備化から、その管理体制はすでに限度に来ておるというふう考えておりまして、その解決は緊急かつ重要であります。したがって係員の負荷軽減策につきまして、法改正等も含め早急に検討、対処さるべきと思います。  それから最後に四点目としまして中央、地方保安協議会の運営充実強化でございます。現在中央、九州、北海道、常磐等にそれぞれ保安協議会がありますが、現在のその運営は必ずしも満足とは言えません。特に地方においては、年に一回ないし二回の形式的な運営にとどまっております。予防保安のための中央、地方の一元的な運営に加えまして、監督行政と結合した運営がなされるべきであると考えます。具体的には少なくとも月一同程度は定期的に開催しまして、監督官の勧告事項の分析検討、追跡指導等を行ない、その機能を高めるべきものと考えます。なお協議会委員による現地調査は、保安確保の面からも、また各委員現状認識の上からも必要と考えられます。  その他小さいことでは、先ほど岡事務局長のほうからも申されました超過労働に依存する出炭体制、あるいは近代化、重装備化と労働力の不均衡、それから労働力の質的低下等ございますけれども、現在もし炭鉱災害が半分に減ったならば、人命はもとより、出炭面におきましても年間約百万トン、これは三十八年度の実績でございますけれども、百万トンの増産が可能となることも再認識すべきであると考えます。  最後に、保安の万全を期するためには、人命尊重に立った思い切った国の保安施策と企業内の労使一体の自主保安体制は不即不離のものでございまして、いずれに欠陥があってもその万全は期せられないものであることを、私どもの強い反省を含めままして強調いたしたいと存じます。以上で終わります。     —————————————
  17. 加藤高藏

    加藤委員長 これより本問題について質疑を行ないます。中村寅太君。
  18. 中村寅太

    中村(寅)委員 石炭産業における保安というものが非常に大切であるということは、当然のことであります。最近次々に起こってまいります異常災害に当面しまして、何か現在の保安体制にあるいは施策に大きな欠点があるのじゃないか、こういうことを痛感しておるものであります。しかし、それにどういう対策をもって当たるべきかという結論をまだ自分なりにもつかみ切れないのでありますが、石炭産業というものは他産業に比べてきわめて危険度が高いということ、これが第一点であります。その危険度の高い石炭産業における保安というものは、これは事業が成り立つとか成り立たぬとかいうこと以前の問題だと思うのです。そういうことを考えますときに、労使の面にまだ不十分な点があるのではないか。  最初に私は労働組合の幹部の方々にお尋ねしてみたいと思います。現在保安確保というのは、私は監督行政だけくらいのことではどうにもならぬと思う。まあ政府が一生懸命でやることはやっておりますけれども、これでは完ぺきでない。その証拠には、次から次に災害が起こってまいります。そこで私はこれに対しては労使ともにもっと全力をあげるべきではないか、同時に、政府ももっとできるだけのことをせなければならぬ、こう考えますが、政府にやらせることを考えましても、具体的な案がまだ出てこない。  私がまず最初に労働組合の皆さん方にお尋ねしたいのは、いまの保安の基本的な責任は経営者にございます。それについて最近、経営者の監督員に労務者のほうから補佐員を入れる、この体制でこの基本的な責任は経営者にあっても、炭鉱保安責任はやはり経営者と労務者とが同じ責任の立場に立ってこれを確保する必要があるのではないか、そういう観点から考えますときに、これは政府の施策がまずいこともあります、まだ不十分な点もあると思いますが、私は労務者の人たちの態度を見まして、はたしていいのかどうか。一例を申しますと、炭鉱労務者の炭労あたりで、保安に対する自主的な研究とか交渉とかいうようなことをやっているか。そういう点もやってないのじゃないか。一番問題は何といいましても、炭鉱の中で生活をしている人、労務者が、災害が起こったときには一番被害を受ける人ですから、私はそこに保安責任を持ってもらうということが一つのポイントじゃないかと思うのです。そういうことを考えますときに、皆さん方に全責任を持ってもらったと仮定いたしましたときに、どういうことを具体的になさるかですね。いまどういうことが欠けておるか。さっきから言われましたけれども、どうも私聞いておりますと、変な意味で言うのじゃございませんが、政府とか経営者とかに責任というものを——現在、ある程度やむを得ないけれども、どうも追及することのほうが主であって、みずからこれに取り組んでいこうという姿勢が少し弱過ぎやせぬか。私は炭鉱のしろうとでございますから、あるいは考えが違うかもしらぬが、労務者の中でいま組織がきちっとしておりますので、その組織の中で自主的に検査するということはできぬのかどうか。もしもできるけれども資材がないとか、あるいは金が要るとかということでしたら、またこれはおのずから政治の面で考えることができると思いますが、何か私はそういう自主的な検査——通産省の監督官の回っていく検査だけでは、私は何ぼやってみたって完ぺきにはならぬと思う。日常炭鉱におって働いておる皆さん方の中で、監督官と同じような気持で目をみはっていくとか、検査していくとかいうことができれば、非常にその点は補なえるのじゃないか。監督官をいまの何倍にしたって、私は決して満足はできぬと思います。そこに何か新しいくふうができないだろうか。それから教育にしても、今日の労務者組織というものは相当強い強固なものですから、自分たちで研究をするとか、あるいは何かそういうことが考えられないのかどうかという点ですね。私はそういう点からも、労働組合なんかの一つ保安に対するかまえが、みずからの力で取り組んでいこうという姿勢が少し薄いのじゃないかと思っていますが、その点について、具体的にいえば検査をするということ、これはその場合にさっき言いますように方法があるのかないのか。  それからもう一つ、これは経営者の方に、井上さんと納富さんにお尋ねしてみたいのですが、まあ経営者のほうで大体主として責任は持っておられる、そういうふうに監督官とかあるいは監督員とかあるいは補助者が中心になってやっておりますけれども、これをもっと積極的に、炭鉱労務者に一半の責任を持たせるという仕組みを考えたときに、経営の上で何かいまの段階では支障を来たすというような問題があるかどうかということですね。労務者のほうが非常に積極的に施設をしろとかいうようなことを言うてくるというような心配があるかもしれませんが、そういうことは考慮の外に置いて、まず保安確保するという立場に立ったときに、そろばんを抜きにして、労務者も対等の、五分五分の責任をもってこれに取り組んでいこうということを考えた場合に、何か経営上支障が起こる場面があるかどうか、ひとつ聞かせていただきたいと思います。こういうことでございます。最初平川さんにお答えいただきたいと思います。
  19. 平川久米藏

    ○平川参考人 労働組合保安確保についてどのような対策を講じておるかというお尋ねだと思います。全炭鉱が現在保安確保のために行なっておることを、御参考になれば御説明申し上げたいと思います。  全炭鉱を結成いたしまして、約十一年になります。結成当時から保安確保のために、保安巡視班活動というのを続けてまいっております。これはそれぞれ傘下の保安担当者によりまして、その地域の炭鉱をそれぞれ組合の立場で巡視を続けております。もちろんその山の保安状況の悪いところにつきましては、改善を求めます。自分の山と比較いたしまして保安設備が、ここはこうなっておる、うちもこういうことをしたらいいんじゃないかというような、炭鉱のためにも非常に役立つのでないかということで、現在まで実施いたしております。これは本年、伊王島災、害が起きます前に、従来行なっておりました地域ごとの保安巡視班活動ではなくて、全国的視野に立って実施したらどうかということで、第一回の全国保安担当者による巡視活動を、九州の長崎県において実施いたしました。その結果、それぞれその山の保安状況についてのいわゆる注意等もいたしました。たとえば常磐の方々が見られて、うちの炭鉱のこの機械はこういうふうなことをしている、こういうふうにしたらこういう災害が起こったので、こういうことをしたんだがどうだろうかというようなことも申し上げられますし、あるいは施ワクの状態を見ましても、ここは非常に施ワクの状態がいい、これはぜひ自分の山でも取り上げたいというようなことがありまして、大いに成果があがっておると私は確信しております。ところが、この保安巡視班活動につきましても、一部の経営者で快く受け入れてくれない経営者が現在ございます。私たちの保安に対する協力といたしますれば、やはり組合員に対する保安教育もございましょうが、われわれの目でやはり保安状況を視察して改善していくというのが、一番効果があるのではないかと思って実施いたしておりますが、先ほど申し上げましたとおり、そういうことで拒否する経営者もございますので、そのようなことのないようにお願いいたしたい、このように考えております。
  20. 中村寅太

    中村(寅)委員 いま平川さんのお話を聞くと、経営者が拒否する傾向があるということですが、私が考えておるのは、その炭鉱従事しておる職員の中で検査をするような機関をつくって、経営者と話し合いながら万全を期していくということなら、私はそれほど経営者がきらうわけはないと思う。どうもあなた方の運動は、私、批判するわけではないですが、全体的な運動で、ほかの、その炭鉱関係のないところの人たちが来てやるというところに経営者の一つのひがみというか、いろいろ何がある。私は皆さんに聞くねらいというのは、炭鉱炭鉱で経営者と労務者がほんとうに一つの気持ちになって保安と取り組んでいく、それで、その仕組みの上に立ってあるいは上部団体の労組で指導なさるということは、それは私は必要だと思いますが、やはりその炭鉱の中に入ってやるということは、その中の労務者にやれるような仕組みでないと、私はいまおっしゃったようなことが出てくるのじゃないか、そういうことが考えられるのです。  この間の長崎伊王島のあれも、監督官が何か注意をしているようですね。その後災害が起こっている。これは経営者のほうに聞きたいのですが、経営者は、やはり監督官から注意があった場合に、ガスの状態とか何かを労務者になるべく知らせるようにしているのですか。私はそれは経営者の気持ちもわかりますけれども、やはり人の生命に関する問題だから、常時その炭鉱の中の実態というものを労務者自体に知らしておくということが必要である。その上に立ってやはり保安という作業というものが進められなければ、どうもそこに相互不信ということがいままでの経営者と労務者の運動過程において起こっておりますけれども、これは一応伏せておいて今後の前向きの姿勢で考えたときに、そういうことがやはり考えられるのじゃないか。それで私さっきから言うように、これはしろうとでわからぬのかもしれないけれども、検査をする道具とか設備とかいうものに金がかかるものかどうか。かかるものでないなら、その炭鉱労使の中にそういう組織を持たせて、労務者もやはり自主的に、自分たちの命をかけた職場ですから、自分たちは自分たちなりに検査をして、いつも安全を期していこう。経営者の方針とそこに摩擦が起こるというようなことがあるということ自体がおかしいことで、これはどこかに間違いがある。そういう点は、経営者のほうで間違っておれば改めなければならぬし、それから労務者のほうで間違っておれば是正して、一つの気持ちになって確保していく体制をつくらなければいかぬのじゃないか。このごろのように、こう次から次に起こってきますと、経営者だけの着任ではない、また守り切れないと思う。また政府監督官だけの力でもだめだ。やはり労使が一体になってこれに取り組んでいくという姿勢が最善だと私は思うのです。そういうことで経営者のほうの気持ちも聞かしていただきたい。
  21. 井上健一

    井上参考人 ただいまの御質問に対してお答えいたします。  まず労使の協調ということでございますが、これは私の先ほどの全般的な説明の中でも特にそれを強調した次第でございますけれども、おっしゃるとおりだと思います。それからいわゆる責任の問題でございますが、これも私は、労使ともども一〇〇%に責任を持っていかなければいけないが、ただその責任の持ち方だと思うのであります。保安統括者から始まり、保安管理者あるいは保安技術職員というものと、実際に作業をしておる鉱山労働者というものは、それぞれの責任分野が保安法で明確にきめられております。その分野を、先ほど申し上げましたように、責任を持って守っていくということで、保安実績はほとんど完全にあがるのじゃないか。先ほど申し上げたように、どんな機械を入れても究極は人だ、その中でもやはり一番大事なのは、われわれと働く者との間の信頼感だと私は思います。先ほどあったように、監督官が来ても知らせぬのじゃなかろうか、あるいは何かくさいものにふたをしておるのじゃないかというふうな気持ちをお互いに持っておったのでは、私は保安の完ぺきは期されないと思います。私は、冒頭お断わりしましたように、三菱鉱業のことだけしか知りません。私は鉱業の保安部長をしておりまして、全社の保安監督指導を行なっておりますが、現地に参りましたときも、必ず私は労働組合保安委員の方には面接してお互いの意見を交換しております。また現場におきましても、たとえば監督官の注意事項、通達というものは必ず保安委員会にかけて周知徹底させるという方法をとっておりますが、こういう場をお互いの信頼の場としてやっていただけば、私は保安はよくなるというふうに思っております。お互いに不信感を持つというところが、私は一番問題点だというふうに思っております。  それから検査器具のことでございます。検査器具に金がかかるかということを言われましたが、現在の検査器具を十分活用することによって大きな支障はないと思います。ただ冒頭申し上げましたように、さらに今後炭鉱近代化していくということについて、これを自動的な監視方法あるいは遠隔監視の方法をとるというふうなことをこれにさらにつけ加えてやっていくということで、もう一歩前進するのではなかろうかというふうに考えておりますが、これはいままでの個人が持っております検査用具に比べますと、ばく大な設備費がかかるものでありますから、こういう点では、今度近代化資金等も拡大されましたし、そういう機種も取り上げられることになりましたが、まだまだ現在の施策では十分でないと私は思いますので、この点特に御配慮をお願いいたしたいというふうに思います。
  22. 納富貞行

    納富参考人 私、石炭鉱業会の連合会の代表で参っておりますが、私の山の実情を参考にして申し上げてみたいと思います。  私のところでも保安委員会というものをこさえております。定期的に、保安委員会をやる前には鉱員の方、職員の方、会社幹部、みんな一緒になって一切坑内の点検をやりまして、その結果保安委員会を開きます。そして約二カ月に一回は、このメンバーを主体といたしまして、見直し運動ということで一週間連続的に毎日委員が下がりましてチェックをし、また労働組合出身の方は直接組合員の方に注意をしていただく、こういうことをやっておりまして十分成果をあげているつもりでございます。結局保安の問題も人と人とのつながりです。こういうことが一番大切なことでございますので、会社幹部の者が鉱員の方に話をする時分に、フランクな気持ちで受け入れてもらうためには、こういうことをしたほうがいいんじゃないかということでいまやっております。実際炭鉱坑内というものはその日その日変化しておりまして、これは検査するにしましても、少なくとも四、五年以上山の状況を周知しておらないとわかるものでございません。私、佐賀県の炭田で約三十五年つとめておりますが、よその炭鉱を見学にいきまして、そこの炭層状況、天盤の状況、地圧のぐあい、ガスの噴出状況、こういうものを見学にいきましても全然わかりません。自分のところであれば、少なくとも四、五年以上たちますと、どういうふうな状況のときにどういうふうな事態が発生するというようなことがございまして、私のところでは、保安委員というものもそういう経験のある者をもって組織しておりまして、率直にその意見を取り上げておるつもりでございます。われわれは直接鉱員の方に御注意しましても、やはりそこに何か職制上の圧力といいますか、そういうふうな響きが出ますものですから、保安委員会の方をまじえてそういうふうな運動を行なっております。そういうふうなことで、私の山だけではいい成績をあげている自信はございます。
  23. 中村寅太

    中村(寅)委員 最後にもう一つお聞きしたいのですが、私は最近優良炭鉱というのが次々に大きな災害を起こすということで非常にショックを受けておるのです。私は先ほど平川さんのおっしゃった、災害を受けた人たちに対するあとの処置等が、社会全体から見て炭鉱だけが悪いとは考えませんけれども、これはやはり、事故でなくなった家庭の方はあとが悲惨ですから、子供から孫くらいまでは非常なふしあわせな生活に追い込まれるわけですから、いまの時点においては、なくなった人に対しては七、八百万円くらいのものをやって、子供も高等学校くらいまでの教育ができるような手が打たれなければならぬと思うのです。そういうことを考えましても、全体の制度の中では、なかなかうまくそこだけにいかない。そこで私は保安というものは、せめて保安だけくらいは国有というようなことは考えられないだろうか。先ほど井上さんのお話の中にも、相当大きい設備費がかかるということがあったようですが、設備費が大きくかかるために、経営者が設備をやり得ない。これは炭鉱の経営の状態から見て、やり得ないことだってあり得ると思うのです。そういう場合に国で設備を持って、それを貸し付けるとか何とか、とにかく保安の国有というようなことでも考えられないだろうか。そうすると国に責任がありますから、災害が起こったときに国の責任において被害者の遺家族にできるだけあたたかい手を打つということも考えられる。いまの制度の中でただそこだけに特別の措置はできませんから、何かそういうひっかかりというものが必要なのではないか、そういうことも考えられないだろうか。いろいろ自分なりに検討しているのですが、しろうとなものですから、私はこういう機会を出発点として、炭鉱労働組合と経営者と一緒になって、やはり保安というものに対して共同で何かひとつ研究をして案をつくって、考えていただく、そうしてそれを国のほうでも取り上げて、今後の災害を絶無というところまで持っていくかまえをつくる。その上で起きた場合には、今度は第二段の措置として被害者の方々に手厚い措置を、万全の措置をする、こういうことが必要だと考えます。  きょうはそれぞれ質問いたしたのでありますが、あるいは私のことばがきつくて不愉快なお気持ちをされたことがあったかもしれませんが、他意はございませんから、どうぞ今後とも労使一体になって協力をしていただくようお願い申し上げまして、質疑を終わります。
  24. 加藤高藏

  25. 中村重光

    中村(重)委員 きょうは保安対策労使の皆さんに来ていただきまして、各参考人からいろいろ貴重な御意見を伺ったわけですが、伺っておりますと、当然そういうことが守られていなければならぬ、常識的な御意見ばかり、何もむずかしいことではないわけなんです。そういうことが実施されていないということ自体が、私どもはふしぎに思うわけです。人間の生命を守らなければならぬということは、これは労働組合が幾つありましても共通の願いでありましょうし、また経営者にいたしましても、先ほどお話がございましたように、災害が発生をすると、これは大切な人間の生命を奪われるし、企業も確かに大きな負担をしょい込むことになる。だからして、人間の生命を守っていくということ、このことは企業を守ることにも続いていく、これは御意見のとおりであると思います。   〔委員長退席、中村(寅)委員長代理着席〕 ところがそういったことがなぜいままで守られていないのであろうか、私はいつも災害の発生するたびにそういう感じを深くする。  先日伊王島に参りまして労働者の皆さん方、経営者の方々からもいろいろ御意見を伺ったのです。伊王島から帰ってまいりまして、そのあくる日、大手十七社の代表の方々、経営者の力においでをいただいて忌憚のない御意見を伺った。その御意見の中で私どもが奇異に感ずることは、保安を完全にすると山をつぶすことに通ずるのだという御意見が飛び出すのですね。また伊王島では、保安委員会で取り上げた保安改善事項というものが百件ぐらいある、それが消化されていないのだというのです。それを消化するように、いわゆる完全な保安を守っていく、実施させる、こういうことになってくると、いわゆる生産がゼロになるという形になるのだ、こういう御意見労働組合のほうから聞かされるというようなことなんです。私ども保安責任というものがきわめて回避されてきているということに対して、常々政府に対してきびしく言っております。そういう保安責任ということをもっと強化していかなければならない、そのことに対しましては、皆さん方と同じような考え方でありますし、常にそういうことを強調いたしておりますが、山元においてどうもそのような考え方ということであっては、いつまでたってもこの人間の生命を大切にしていかなければならぬ、守らなければならぬということとはほど遠いことになるのじゃなかろうか。きょう皆さん方にここへおいでいただいていろいろ御意見を聞かせていただきましたけれども、そのことと、現実に山元でやっておることとは違っているのじゃなかろうか、そういう感じを私は率直に受けるわけでございます。  そこでこうしておいでになります場合は、ただいま伺いましたもろもろの御意見も私はそのとおり聞かしていただかなければなりませんけれども、山元の現実も率直にお聞かせ願いたい、こういう点があるのだ、これはどうしても直さなければならないのだけれども現状においてはそれができない、その原因はどこにあるか、岡さんから御発言がございましたように、石炭政策そのものに根本的な原因があるのだというならば、私はそういう上に立った対策を講じていかなくちゃならないのじゃなかろうか、こういう感じがありますので、こうした機会はそういつもあるわけではございませんから、ほんとうにうみをえぐり出していく、うみを出してしまう、こういう考え方の上に立って、さらにひとつ皆さん方の忌憚のない御意見を伺ってみたいと思うわけであります。いろいろ各参考人から貴重な御意見を伺いましたので、一人一人参考人の方を名ざしてお伺いをいたしたいのでありますけれども、大体内容がそう変わっておりませんので、特別に私は名ざしませんから、ただいま申し上げましたようなことに対しまして、私の質問にひとつ答えたい、答えなければならぬというような点がございますればお話しを願いたいと思うわけでございます。  経営者の方々には、先ほど労働者の代表の方々から御意見がございました点についてお尋ねをいたしますが、やはり私は、災害の根本原因というのは、労働者代表の方々から御意見がございましたように、労働強化労働条件の低下ということが根本的な原因であるという感じを深くいたします。また新しい機械が入ってくる。そういうことに対しては、その操作になれていないという面もありましょうし、また炭鉱で働く労働者平均年齢が非常に高くなってきております。そういう面から運動神経というようなものも鈍ってまいりましょうし、それから長時間労働のためにいろいろ神経も麻痺している。やはりからだも相当無理があるといったようなこと等々、どうしても労働条件が低下している。長時間労働である。それからやはり賃金が安いということになってまいりますと、お互いに、何というのですか、精神的にも参ってくる。そこへ不平不満というものも出てくる。そのようなことが災害というものをさらに大きくしていくというような結果になるのではないか。生産が非常に上がってきた。第一次有沢調査団答申に沿うような、生産能率は上がってきている、ところが労働者は減ってきた、しかし災害はかえって激化してきている。この答えは何と弁解をしようとも、やはり労働条件の低下、ここに問題があるのではなかろうかと思いますが、この点に対しての経営者の参考人方々の御意見を聞かしていただきたいと思います。
  26. 岡松雄

    岡参考人 さきに中村寅太先生、いま中村重光先生から御指摘があった点、私も若干考えているところがございますので、御説明したいと思います。  まず災害の犠牲ということになりますと、経営者は物的損失でございますが、労働者の場合には一〇〇%生命の危険ということでございます。ですから、保安に対する関心が労働者はないんではないかという御指摘は当たらないのではないか。私ども炭労としても、生命を守るということを運動の基調にしております。しかし遺憾ながら、保安確保は十分にはならない。その原因は何かということなんですが、保安の面だけをとらえて労使協調、労使協力ということが理論としては成り立ちますけれども、実態としてはなかなかむずかしいのではないか。それはなぜかということになりますと、保安生産というものは不可分の関係であります。生産ということになれば、労働条件をどうするかということになるでしょう。だから生産保安を全く分離して、保安の面だけ労使協力ということはなかなか困難な状態ではないのか、働く側の労働者もそういう感度で受け取り、したがって生産保安と全く別個のものだということになれば別ですけれども生産保安は不可分の関係にありますから、生産の面では労使なかなか協力できないが、保安の面だけということは、現実の問題としてきわめて困難な状態にあるということを一点御認識をいただきたいと思うのです。  それからもう一つは、保安については労使協調、労使一致してやれ、これは職員組合の代表からも発言があったのですが、労、職、使三位一体とならなければ保安は完全に守れないということについては、私も全く同感であります。そこでほんとうに保安の問題について労使が一致できるのかということは、いずれかの側から問題提起がなければいかぬでしょう。労働組合労働組合の要求、あるいは経営側経営側の要求があるでしょう。そういう問題提起があってほんとうにその中から労使一致できるのだ、これは結局双方の妥協になると思うのですけれども、むしろ私は労使一致して保安を守るということについて、経営側に問題があるのではないかということを大胆に言いたいと思うのです。生命を犠牲にさらされて保安を軽視するということは労働者としてはないのです。だから、労使一致ということについても全く同感です。その場合にはこんな問題提起がある、その問題提起をどう一体経営側が受けとめるかということが、一致できるか一致できないかの問題なんだということを申し上げておきたいと思います。  それから第三の問題については、私は保安という問題についてすべて政策解決を要求したって無理なことはよく承知をいたしております。結局は大部分は労使で解決しなければならないであろうというふうに理解をいたしますが、根本的にはそれではどうなんだというところから政策という問題提起を私は行ないます。いま石炭政策の中では石炭の数量の問題、価格の問題、能率の問題、それから四十二年度自立ということで、その中で労働条件の厳守等の問題があるものですから、非常に拘束を受けております。もちろん労働条件労使できめるということなんですけれども、四十二年度にどうすれば石炭産業が自立できるのかという青写真が書かれているものですから、そういうたいへんな制約を受ける。たいへんな制約を受けるから、労働条件というものが現状では大した向上はない。したがって労働者の置かれている状態というのは、先ほど陳述の冒頭に申し上げました、労働条件なり労働環境はどうなっているか。若干の例を引いてみますと、国鉄の事故のときに国会では、過密ダイヤ、機関士の疲労度ということを先生方は問題にされました。ああいう問題のとらえ方、問題提起があるならば、炭鉱労働者の不注意によってかりに災害が起こるということであれば、炭鉱労働者の疲労度は一体どうなっているか、坑内労働条件はどうなっているかということ、これはまた基本的には労使の問題ですが、いまの石炭政策労働者労働条件まで拘束するという問題がありますから、そういう点については私は抜本的に検討願いたいという問題提起を行ないます。その面では政策と不可分の関係にあるという御理解がいただけるのではないかと思うのであります。  それから第四番目ですが、先ほど井上参考人のほうから、労使協力ということを盛んに述べられました。私も同感なんですが、実は、ここで労使の恥部をさらけ出す気持ちはさらさらないのですが、若干の問題があったのは、炭労の保安調査団の問題であります。これは昨年のたしか四月に、若干条件はありますけれども、炭労の保安調査団坑内に入って保安状況を調査するということについて、経営者の同意を求めることができました。それまではなかなか炭労の調査団坑内に入ることを認められなかった。そういう状態で一体保安が保てるのかということも、具体的な例として問題提起をしておきたいと思います。  いずれにせよ、炭鉱労働者の生命の問題ですから、私ども炭労としても運動の基調として、先ほど中村寅太先生から御指摘があったのですが、組合を対象としての保安講習、保安知識の普及という活動は行なっておりませんけれども、しかしながら現状どうなっているかということ等についての調査等については、詳細なデータがございます。大体いま指摘をされた点以上だというふうに判断されますので、説明にかえておきたいと思います。
  27. 井上健一

    井上参考人 中村先生の御質問にお答えいたします。  保安を完全にやったら山がつぶれるんじゃないかというふうなお話がございましたが、これは私はあまりにも極端な表現ではなかろうかと思います。それはみんな仕事しないでじっとすわっていれば絶対けがをしないので、家の中にすわっていればいいじゃないかというようなことになるので、私どもはやはり、地下資源を掘り出すためには、保安生産、いま岡参考人も申し述べましたが、私も保安生産の調和ということ以外にないと思います。それはことばの上では保安優先であるとか、あるいはいろいろなことばがありますけれども保安だけで生産が成り立つものでもなく、また保安のない生産もないのであります。先ほど申しました鉄柱一本を例にとってみましても、これは生産に使われておるものか保安に使われておるものか区別をつけることは全くできないのであります。そういう意味で今後保安問題に取り組んでいきたいと思っております。  なお賃金問題は私の担当するところではございませんが、私、現場保安を担当しておる者としましては、それよりさらに大事なことは作業環境の整備だろうと思います。いかに賃金で人を集めてみても、非常に環境が不良で、不安全な環境であったならば、決して保安確保はできないのじゃないかというふうに思います。その点私の前の説明でも例をあげて御説明申し上げたとおりであります。  それから設備新鋭化、近代化といいますか、新しい設備によって災害がふえるのじゃなかろうか、あるいは労働条件が低下するのじゃないかというふうな御質問がございましたが、私はそうではないと思います。冒頭申し上げましたように、できるだけ現場機械化して人手の少ない作業に持っていくことが究極は保安確保になる。たとえばホーベルが切り羽で動いておるのを見ますと、いかにも石炭が勢いよく出ておる感じがいたします。そうしますと、あれを見ただけで、炭鉱を知らない人は、これは労働強化だと思うかもしれませんが、強化されているのはホーベルでありまして、人間は、従来切り羽の第一線であぶない仕事をやっていたのが立柱、抜柱の作業をやっていけばいいということであります。もしそこに足りないものがあるとするならば、冒頭に私が申し上げました設備の調和と、保安生産との調和ということにあるのじゃなかろうか。そういう点に十分気をつけて設備合理化をやっておったならば、私は御懸念のようなことにはならないし、またそういうふうにやらなければ炭鉱は生きていけないと思います。ただでさえ条件の悪い地下作業でありますから、そういう意味での改良をさらに今後倍加いたしませんと、私は炭鉱の経営は成り立っていかぬというふうに思っております。  それともう一つ、特に先生方にもお願いいたしたいと思いますのは、炭鉱災害の起こりましたときの世論といいますか、ジャーナリズムの取り上げ方にも問題があるのじゃなかろうかと思います。私は北炭夕張事故がありましたときに、九州の炭鉱調査して回っておりました。ところが九州の炭鉱で働く人たちがどういうことを心配しているかというと、摩擦鉄柱で爆発をやったのではないか、摩擦鉄柱のあるところはあぶなくて仕事ができない、あるいはガスが一・五%で爆発をやったじゃないかというようなことで、新聞の記事にはただそれだけのことが書いてあります。一・五%で爆発があったというふうにとれるような取り上げ方はまことに事実とは縁遠いような——もちろんそういう新聞記者や何かは炭鉱のことはおそらく知識は全然ない人だと思います。そういう人がジャーナリスチックな考え方からそういうふうな取り上げ方をするのもやむを得ない面もあるかと思いますが、現在の斜陽ムードに押されております炭鉱を前向きに明るくするためには、こういう取り上げ方をしたのでは私は炭鉱保安というものは決してよくならない。いたずらに、先ほど申し上げましたような不信感というものを労使の間に持たせて、何をやっているのかわからないぞというふうなことになりかねないと思うのであります。そういう点はわれわれも十分気をつけてやっていきたいと思いますが、特にこの点先生方にもこの席をかりてまことに恐縮でございますが、一言お願いをいたしたいと思います。
  28. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係もありますので、次に移ります。  岡さんからお話がございました件ですが、私が申し上げたいのは、大手十七社との話の際に出た、保安を完全にしていくということは結局生産ができないことになるのだというような御意見は、裏を返せば生産第一主義だ、保安が無視され、軽視されてくるということに通ずる。その場合に労働組合が、保安改善事項というものを取り上げられて、それを改善することが決定された、ところがその決定に基づいて実施しろということを強く迫ってくるということは、いわゆる生産を減退させる、ゼロになることに通ずるという考え方で、その改善要求をそこで控えておったならば、労働者みずから自分の生命を失うことを肯定することになるではないか、私はそういう考え方ではいけないのだ、ともかく生産がどういう結果になろうとも、人間の生命を守るという絶対的の問題があるのだから、そういうことに対してはあくまで強く要求していってもらわなければならないし、経営者は生産第一主義という考え方であってはならない、やはりあくまでも保安というものを第一義的に考えていくというかまえであってもらいたい。そこで壁にぶつかった場合は、これはやはり石炭政策の根本にも触れてくるでありましょうし、保安面についての政府に対する要求というものをさらに推し進めていく、こういう能度であってほしいという考え方から実は申し上げておるわけであります。きょうは議論をするわけではありませんから、いまの御答弁についていろいろ申し上げませんが、生産保安の調和という問題も、私は問題だというふうに思います。どういう意味で調和とおっしゃるのかわかりませんが、どうも炭鉱は不況で生産第一なんだから、保安面に対しては、こういう改善をしなければならないが、しかしそれはなかなかできない、こういういわゆるほどほどといったような形の調和ということなら問題であると思うのであります。そういう点に対しては私の受け取り方が違っていれば幸いと思いますが、あくまでも保安第一という考え方で取り組んでもらわなければならない、こう思うわけであります。  そこで具体的の問題でお尋ねいたしますが、先ほど井上参考人から、保安の意識が現場末端まで浸透するようにしなければならないのだというような御意見であるとか、現場係員保安知識はあるが責任の自覚が欠けておるのじゃないか、こういうような意味の御意見が実はあったわけであります。私は保安係員というものは十分責任を持ってもらわなければならないと思います。端的にいえば、保安係員に対して炭鉱労働者の生命を預けておるとさえ言えるのではないか、このように考えております。この保安係員が、みずからの責任に対する自覚が足りないということになってまいりますと、たいへんなことだと考えるのです。このことに対してもいろいろ議論をしたのでありますが、保安係員が処罰されるという例はわりあいに少ないのじゃないか。かりに処罰されましても経営者がこれに罰金を払ってやるということになってくると、どうも保安係というものは経営者、管理者に対して強いことが言えない。骨のある者は保安係員に任命されないという結果になるならば、たいへんなことだと私は思うわけであります。だから責任はあくまでも自覚させると同時に、保安係に対しては優遇して生活不安というものを全然ないようにしていく。これは全体の労働者もそうでありますが、そういう保安に対しては特別な配慮というものがなければならないのだと考えますが、ここらあたりに対してのお考え方を聞かせていただきたい。
  29. 井上健一

    井上参考人 ただいまの責任という問題について、私のことばが足りなかったのか、非常に大きな誤解があると思います。私はこの管理強化という中で、保安統括者をはじめ保安管理者保安意識現場に浸透させるということが大事だと申し上げましたが、これをさらにふえんいたしまして、係員鉱員、要するにそれぞれの職域に応じた責任を全うしてもらいたいということを申し上げたので、ただ責任係員のみに転嫁するように申し上げたわけではないのであります。ことに責任観念充実ということで、どうしてわかり切ったことをやらなかったか、やらせるという問題は、働く人がおのおの責任を持ってやっていただきたい。たとえば、その前に職場規律確立ということばを申し上げましたが、係員保安上の指示をする、その場合に指示をされた作業者責任を持ってその作業をやっていただきたいということを申し上げたのであります。その点、係員責任意識が欠除しているというふうにおとりになったようでございますが、それは全くそうではないのであります。現場係員ももちろん責任を持って作業の指示をしなければなりませんし、またこれを受けた作業者責任を持ってその作業を完遂するということであります。  その前に、中村寅太先生が、経営者側あるいは働く者に全部責任を持たせていいかということを言われましたが、私がいいと申し上げましたのは、鉱山保安法などに定められております責任の分野において責任を一〇〇%分担するということは当然だ、私は当然そのとおりやるべきだということを申し上げましたので、若干補足をして申し上げておきたいと思います。
  30. 中村重光

    中村(重)委員 先ほど井上さんから、ガス爆発の問題についてマスコミの取り上げ方ということについての御意見があったわけです。マスコミの取り上げ方についても、ずっと経過的に報道するというので、その間に事実に相違するような面もないとはいえないのですが、いずれにしましても、五%にならなければ爆発はしない、こういうことです。だから、爆発をしているということは、ガスの発生量が五%になっているということですね。炭坑の条件というものは時々刻々変わってくるわけです。だから、それに対応する保安体制強化していくのでなければならぬと思う。その点では先ほど来労働者代表の各参考人から貴重な御意見を伺ったわけでありますが、そこでどうすればいいかというわけです。時々刻々として変わる坑内の条件、突出ガスの問題等々いろいろあるでありましょう。そうなってくると、これを何とかして把握していくのでなければならぬ。そのためには絶えず測定をしていかなければならぬ。そしてそれを現場の作業員に知らしていくのでなければならない。いま目分がやっているこの作業現場はどういう条件にあるのだということを労働者が知っておらなければ、いつ爆発するだろうかと思うと不安で不安で仕事も何も手につくものじゃないのです。そういうことで、この発生量がいまどういう程度であるということを知る必要がある。そのためには警報器であるとか、外国でやっているような例も考えられなければならないわけですが、そういうことについて具体的に研究をされておる事実があるのか、それらのことについてどのようにお考えになるか、伺ってみたいと思います。
  31. 井上健一

    井上参考人 いまマスコミのことで、先生は五%と申されましたが、私は一・五%と申し上げましたので御訂正願いたいと思います。  それから、いまの観測の強化の問題でございますが、これは現在の技術坑内の無数といっていい個所、または刻々と変わる個所を自動的にすみずみまで検出することは、とうてい不可能だと思います。やはりこれは人の管理にまつ以外にないと思います。メタンガスはにおいもなければ色もない。ただ軽くて、上のほうに上がっていくという性質があることははっきりしております。これは見えないところに一番大きな問題があるので、もしこれに色をつけることができたならば、これは鉱山労働者一人一人にわかるわけであります。たとえばそういうような研究、一方では人間が宇宙にも行こうというような時代に、何とかしてメタンガスを目で見ればわかるような研究はできないか。これは夢のような話でありますが、私らが炭鉱に入りました三十年前には、宇宙に行くというようなことも夢のような、あるいは夢にも考えなかったことであります。こういうような研究はなかなかわれわれ企業ではできないのでありますから、たとえば技術試験所でありますとか、政府の機関で研究していただいたら非常に大きな力になるのじゃないかという大きな夢を持っておるのであります。  それからもう一つ、先ほど申し忘れましたが、優秀な保安設備が外国にもあるようでございます。これを輸入するということになると、なかなか手続もめんどうだし、金額も相当なものになる。こういうようなものは、いわゆる保安融資ということになると、またこれはほかに流用するというような御不審を持たれるならば、こういうようなものを国で買っていただいて、試験所でこれを保管して民間の企業に貸与する、そうして一定期間現場の試験をやった結果十分実用に耐えられるものであるならば、今度は企業のほうで購入して実用に供していくというようなやり方が、現在の炭鉱の実力から見て適当ではなかろうかと思いますので、そういう点にもひとつ何とぞ御配慮をお願いしたいと思います。
  32. 中村重光

    中村(重)委員 ただいまの御意見、ごもっともです。そういうように政府に対しても要求するところはどしどし要求していくという態度であっていいと思うのです。  それから、先ほどの機械近代化の問題ですね。近代化はそれなりに進めていく必要がある。同時に、保安近代化もはかっていくのでなければならぬと思うのです。生産技術だけ伸びてきたが、保安技術はおくれておるということになってくると、とんでもないことになってまいります。だからそういう炭鉱機械近代化をはかる、それにも先んじて保安近代化をはかっていく、そうして労働条件等も向上させていく、そういうことでなければならないのだ、そのように実は考えるわけなんです。  それから保安面に対してはいろいろ留意をしておられると思いますが、総合検査というようなものも保安監督局でやっているわけですね。同時に私は、山元でそういう保安点検、総合検査というものが行なわれておるのではないかと思いますが、ところがそうでないようにも感じられる。その点はどういうことなんですか。実際には一斉検査、総合検査というようなことを生産をストップしてでもやるというようなことを実施いたしておりますか。その点どうなんですか。
  33. 岡松雄

    岡参考人 私のほうから、自分の加盟組織の中でやっている実態について報告しておきたいと思いますが、最近、総合検査というようなことで生産を落としてもかまわないからやれということには、なかなか踏み切れない現状にあるのではないか。これは率直に申し上げますと、要求をすれば結局賃金が下がる、賃金が下がればこの補償をどうするというようなことがあるものですから、総合検査を恒例的にやっているという炭鉱は、いまのところないのではないかと思います。
  34. 井上健一

    井上参考人 私のほうの実態を申し上げますと、保安法ができまして、昭和二十五年以後現在まで十五年間、全炭鉱にわたりまして、毎月一回必ず定例の総合保安検査を行なっております。その総合と申しますのは、会社側と職員組合労働組合の三者からなるいわゆる保安委員会のメンバー、必要に応じましては組合の執行部から労働部長、生産部長が加わることもありますが、原則として保安委員会の全メンバーで保安の総合調査をやっております。これで坑内全部すみずみまでの保安調査をやりまして、その結果保安委員会にかけまして十分結果のトレース、チェックをやるという方法で進んでおります。この点、先ほど申し上げました労使の信頼感という上にも大いに寄与しておるのではなかろうか。私はやはり保安の検査というものは、先ほどから各参考人からも言われておりますが、やはり自分でやる以外にないと思います。いかに官庁の監督を厳格にいたしましても、常駐しておるわけではないのでありまして、きょう見たからあしたはだいじょうぶだというような自然条件ではありません。もうとにかく二十四時間チェックしなければならぬというのが実態でありますので、やはり自主保安という点からいいましても、私は山元におけるこういうような検査制度が最も有効ではなかろうかというふうに思って実施しております。
  35. 中村重光

    中村(重)委員 保安を非常に厳格に守っていく、そのためにはある場合に、生産を一時ストップしてでも一斉保安点検、総合検査をやるということになると、山元の実情というのはなかなかむずかしいというようにも感じられますけれども労働者がやはり不安があるというようなことでは、これは生産そのものがむしろ長い目で見るとマイナスになってくるという感じがいたしますから、やはり保安はどんな無理してでも完全に守っていくという取り組みであるべきであるというように私は感じるわけであります。理想論かもしれませんが、私は保安ということだけはどんなに理想論であっても理想論に過ぎることはないと思う。あくまでその点は第一義的に考えていくということでなければならないと思う。  そういうことから、実際やっていることで私が非常に意外に感じていることは、保安法の改正によって保安監督員補佐員という制度ができたわけですね。ところがそれまで保安専従係員というのがいた。ところが監督員補佐員というのはさらに権限も持つ。そして保安が非常に強化されてくるというように私どもは期待をしてこの改正案の審議をやった。ところが山元に行ってみると、監督員補佐員ができたのだから係員は要らないのだというので係員をやめてしまう、肩がわりするといったようなところが、全部ではないかもしれませんけれども出ておる。労働組合のほうもそれを了承して、肩がわりを認めてきたというようなことがあるのです。私はこれではいかぬと思う。やはり強化するということからするならば、監督員補佐員は補佐員として、この制度はあくまで活用していく。同時に係員の制度はさらにこれを強化していくということでなければならぬと思います。その点に対しては政府がどのような行政指導をされたのか。実は川原局長のときだったのですが、特にこのことは厳重に、肩がかりをさせるということをやってはだめなんです、どういうふうに指導をするかと言ったら、決して肩がわりなんかはさせません、さらに強化していくということで行政指導をいたしますとお答えになった。ところがただいま私が申し上げたような現象が起こってきておる。この点はどういうことになっておるのか、経営者側、組合側双方と、全炭鉱のほうからもこの点に対するお考え方を聞かしていただきたい。
  36. 岡松雄

    岡参考人 簡単に申し上げたいと申いますが、大体この問題については、中村先生が指摘したような実情にあるのです。そこであえて区分して申し上げますれば、監査員補佐員というのは御指摘のとおり法律によってきめられた制度でありますからそれはそれとして、保安常駐員というのは労使の労働協約で協定されておる内容であります。問題を提起されたのは、従来四千人の企業体のところに四人の常駐保安員がいる、ところが相次ぐ合理化によって二千人になっても四人あるということで、たまたま監督員補佐員制度ができてから経営側から問題提起があったということなんです。したがって炭労としては、あくまでも自主的な労使の労働協約によって協定されておる問題だから、監督員補佐員とは別に処理をしたいという申し入れをして山元協議を起こした。ところがいま申し上げたような実情にあるから、結局は、保安という問題に力関係はおかしいのですが、現状に合わせて保安常駐員の数を変更せざるを得ないという実情にあります。
  37. 井上健一

    井上参考人 いまの中村先生の保安監督員補佐員ができたので常駐員で肩がわりさせたのではなかろうかという御質問でありますが、保安常駐員で肩がわりしたも一のもあるかも一しれません。私は私の企業のことしかわかりませんので全国のことはわかりませんが、あるかもしれません。しかもまた別に、補佐員として法律できめられたものを選出したものもあります。私のところあたりはそういうもののほうが多いのではなかろうかと思っております。しかしここで考えなければならぬことは、監督するという立場の人は、量ということも必要でありますけれども、さらに必要なのは質でありまして、ただ量さえふやせばいいといって監督者層ばかりがふええていったのでは——現場保安というものは、先ほど申し上げましたように鉱山労働者は鉱山労働者現場のハッパ係員はハッパ係員、火薬係は火薬係というように、それぞれ実施義務を持っております。監督する人はただ監督する義務があるので、これをいたずらにふやしていくと、結局現場保安の実施する面がおろそかになってくるというジレンマがあるのではなかろうかと思います。そこでいたずらに監督者層をふやして保安というものを強化していくということにも、私は問題があろうかと思います。やはり実際に生産をやっていく人が保安に対する全般の責任があるわけでありますから、要するに見落としをどういうところから補佐していくか、カバーするかというおか目八目的な高いところから見るというのが補佐員であります。それにはおのずから、その山の実態に応じた常識的な数というものがあると思います。そういう意味で、現場の実態に呼応した配置をしていけばいいのではなかろうか。常駐はそのまま残しておく、補佐員は絶対に別だとか、あるいは常駐を控えればいいのだというような——保安常駐というものは労働協約によってできた、岡さんが先ほど言ったように、労使の力関係でできたかもしれません。そういうようなものと、純然たる保安監督という立場でできた補佐員というものは、若干の相違があると思いますので、そういう意味で、この際力関係でどうこうというようなことではなくて、正しい保安監督ができるという意味で保安監督員補佐員を任命すべきだというふうに私は考えております。
  38. 平川久米藏

    ○平川参考人 保安常駐員と保安監督員補佐員との問題は、私のほうの関係では、それぞれ山の実態に応じて選任をいたしております。したがいまして、従来の保安専従者をそのまま置いてやっておるところと、それから保安専従制度と切りかえて選任したところがございますが、実態から申し上げますと大体半々ぐらい、現在そういうことになっております。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 保安常駐員と監督員補佐員は、井上さんの言われたように、それぞれの任務がある。ただ監督員補佐員制度というものができたのだから、そこで常駐員というのは減らしてもいいじゃないか。常駐員が一名いるか何名おるか、それは山の規模によって違うだろうと思いますが、とにかくこれを切りかえよう。こういうような考え方というのは、いまあなたがお答えになったようなこととは違ってくると思うのです。むろん、問題は、あくまで保安強化していくという考え方に立って措置していくべきであると私は考えるのです。質さえよければいいというそんなばかなことがあってはならないのであって、質量ともに充実するという考え方でこそ、そういう問題が強調されてくるわけだから、量よりも質なんだ、何ぼ量をふやしてみたところでしようがないじゃないかという考え方というようなものは、私は当たらないのじゃないか。量をいう場合は、さらに質というものは、口にしなくたって当然の要求として考えられることですから、あくまで保安強化していく、その観点に立って取り組んでもらいたいということを要望したいと思います。  岡さんにお尋ねしますが、保安係員の専任を義務づけるというのが、あなたのほうから出た。プリントにはあるわけですが、これは私はよくわからないのですけれども、どういうようにしなければならぬというお考えなんですか。
  40. 岡松雄

    岡参考人 中村先生、単独に配付したプリントですか。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 そうじゃない。
  42. 平川久米藏

    ○平川参考人 たしか四月の十五日のプリントだと思いますが、私のほうも一部いただいておりますので、説明を受けておりますのでお答えいたしたいと思います。  それは私が当初申し上げました、保安を専門に調査して歩く係員のことでございます。それをやはりふやすべきであるということを言っておるのです。
  43. 中村寅太

    中村(寅)委員長代理 藏内委員。   〔中村(寅)委員長代理退席、多賀谷委員長代理着席〕
  44. 藏内修治

    藏内委員 参考人のお方もお忙しいと思いますので、ごく簡単に一、二点だけお伺いをしてみたいと思います。  いままでお話を伺っておりますと、労使双方とも、保安を維持するということについて努力をするという決意には変わりはないし、そのためには二重、三重のチェックをしていくということについても、両方とも御異議はないように思うのでありますが、問題は、鉱山保安行政の所管という問題がいつも起こってくるわけです。これについて、実は私ども石炭の特別委員という形で、この委員会におる限りは従来どおり、鉱山保安維持というものは経営権の一部だというような考え方で一応今日まできたわけです。ところが今日のように、産業が非常に大きくなり、産業基盤が非常に拡大されてきた、しかも、この安全を維持していくということについて政府は、通産省ばかりでなしに、内閣にも安全保持の機構をつくってこれをやっていこう、そういう全般的ないわゆる労働安全の維持という行政の趨勢というものから見まして、労働者の安全維持という行政は、大勢としては労働省の所管に一元化していこうという趨勢にある。この労働省の所管に移していこうという趨勢に対して、いままで主として鉱山経営者側が抵抗してきたのです。これもごく率直に伺いたいと思うのですが、ダブルチェック、あるいは三重チェックを重ねることが保安維持のために適当なんだということからすると、労働省の何らかの見地からする石炭炭鉱に対する監督行政、これを排除する理由がなくなってくるじゃないか。  そこで、経営者側から見て、労働省が今日のところは、労働基準法によって通産省、要するに石炭保安監督官庁と協議して監督するだけの権限は労働基準監督署に認めておりますけれども、これ以上に坑内を立ち入り検査をすることを拒否する理由があれば、率直にお答え願いたい。まず井上さんから伺わしていただきたいと思います。
  45. 井上健一

    井上参考人 民間のわれわれに政治問題を御質問になることは、答えが非常にむずかしいのでありますが、ただ、保安を担当しております者の立場から申し上げますと、私は保安をよくするためには予防保安にまさるものはないと思います。事故を起こさないために保安をやるんだ、強化するんだということがすべてであると私は思います。事故を起こした、あるいは起こしそうだからといって、先ほど言ったような、ただ作業停止をやっていくとか、処罰をしていくということだけでは、私は悪いところはよくならぬと思います。これをよくするためには、指導することが大事である。この指導ということは、炭鉱保安ということは、これは生産と全く一体のものでありまして、分離することは、先ほどの鉄柱一本の例をとりましても、不可能だと思います。ガスの状態にいたしましても、きょう見たものはあしたは違うということで、常に自然との戦いであって、一般の産業と根本的に違いますことは、自然を破壊していく仕事である。要するに、つくり出していく、組み立てていくというような単純な仕事でありません。こういうものの実態を見きわめながら正しい判断をし、正しい処置をしていくということは、私は技術屋以外にはできないことだと思います。そういう意味で、私は、保安の予防、保安という意味では、現状のままで、技術者でもってこれの指導監督をしていく。通産省においても、先ほどから監督の質の向上あるいは拡充ということを言われておりますが、こういう人たちの質をさらに向上、拡充することによって、私は指導という面、あるいは教育という面に特に力を入れていただきたい。  それから所管の問題につきましては、私の専門とは違いますが、昨年欧州を保安調査団が、労使双方、学識経験者を入れました三者で回ってまいりました。特にこの問題について関心がありましたので、ドイツ、フランス、イギリスあるいはベルギーという先進国のそういう所管問題を聞いてまいりましたけれども、例外なく動力省、いわゆる通産省と申しますか、そういうところでいわゆる技術的な面の予防保安ということに力を置いた監督をやっております。ただ、労働省との関連でありますが、おまえのところがやらなければだめだとか、おれのところのほうがいいんだというような問題でなく、労働的な問題も確かにあると思います。そういうような問題は、権限を通産のほうへ移管をしまして、労働省と非常に緊密な連絡をとって労働問題に対処しておるというのが、先進国の非常にすぐれたところじゃないかというふうに私は見てまいった次第で、私の考えといたしましては、そういうふうな行政面の強化をやっていただきたいというふうに希望いたします。
  46. 藏内修治

    藏内委員 そういうお考えに経営者の方々が、井上さんに限らず、各社ともみんなおありだろうと思うのです。これは経営者ばかりではなしに、通産省自体の考え方も大体そういう考え方です。あらゆる業種の産業、石油にしても、鉄鋼にしても、すべての生産のすべてのプロセスにわたって危険があり、災害が起こる可能性があるのだから、そのプロセスを全部われわれの専門の知識をもって予防していき、災害を防止したいという考え方なんです。この考え方に立つ限り、労働省の考えておる安全行政というものの考え方を、もしこれを主体にして考えるなら考え直さなければならぬ。また、労働省的な安全行政の一元化という考え方に立つならば、いままでの通産省の、特に鉱山保安関係の行政のあり方もまた考えなければならぬ。その辺非常にむずかしいところにあると思うのです。  いま経営者側のお話を伺いましたが、これについて炭労なり全炭のほうは、きょうここの印刷物もざっと拝見いたしましたが、これを労働省に移せという御意見はありませんけれども、この点について組合側の御意見はどうでしょうか。ごく簡単でけっこうですから、炭労の側と全炭の側と、両方から伺いたい。
  47. 岡松雄

    岡参考人 現状認識については、先生のいま述べられた判断と変わりはない。したがって、炭労としては、年来の主張なんでございますが、労働省移管を希望いたします。
  48. 平川久米藏

    ○平川参考人 炭鉱保安はやはり生産と密接な関係があるわけでございます。生産計画というものは通産省のほうでやっておられるわけでございます。そういう観点から、やはり通産省に置くべきではないかというふうに考えております。
  49. 遠藤一三

    遠藤参考人 まず企業のほうを見ますと、保安系列と生産系列というものはおのずから分離しておりますので、やはり官庁にわたっても、分離したほうがよりベターではないかというふうに考えます。
  50. 藏内修治

    藏内委員 保安行政の所管の問題はその程度にいたします。  これはちょっと川原局長さんに聞きたいのですが、保安監督行政の機関の中に、鉱山保安技術講習所というのがある。これは現在もまた講習所としての機能を維持し、継続しているのでしょうか、どうでしょうか。簡単に答えてください。全国にたしか十カ所設置してある。
  51. 川原英之

    川原政府委員 各監督局ごとに設置しておりまして、いまも機能を働かしております。
  52. 藏内修治

    藏内委員 この講習を受ける対象は、どういう人たちが受けるのですか。
  53. 川原英之

    川原政府委員 現在のところでは、係員を中心に特に許可を要する係員を講習いたしております。
  54. 藏内修治

    藏内委員 先ほど、たいへん失礼ですが、お名前を失念したのですが、どなたか参考人の方から、鉱山保安研究センターのようなものを設置しろという御意見があったのですが、せっかくこういう鉱山保安技術講習所というものがあるのですから、まあ新設してもけっこうだけれども、こういうものの中に各会社保安担当員、管理者側と労働者側の双方の保安監督職員教育あるいは研修するという場として、こういうものをもっと活用する方法はどうかという気が私はするのです。こういう官営のものじゃいかぬのだということなら、それでもけっこうですが、これの活用方法、そしてこれを役所の職員だけでなしに、民間のそういう労使双方の人まで入れるという考え方——もしこれを入れるならば、やっておる講習の内容自体も変えなければならぬ面もあるかもしれませんが、せっかくこういう機構があるのだから、これをもっと広く活用したらどうか。この点について、時間の関係もございますから、井上さんと岡さんの両方から簡単に御意見を聞かしていただきたい。
  55. 井上健一

    井上参考人 こういうようなものをできるだけ活用して、特に現場係員の再教育ということに活用したらけっことだと私は思います。ただ、これを活用するということになりますと、この内容をそれにふさわしいものに充実すべきであるというふうに考えます。
  56. 岡松雄

    岡参考人 いま先生のおっしゃった趣旨は全く賛成なんですが、それ以前の問題があるわけです。それは三池の爆発も、あるいは夕張、伊王島でも貴重な経験を得たのですが、組合員全体の保安教育、これが先決ではないかというふうに当面は考えております。
  57. 川原英之

    川原政府委員 われわれのほうも、ただいま申しましたように、係員を対象にやっておりますが、おそらく先ほど発案がありましたのは、たとえば廃止になる鉱山を現実に持っている現場の、モデル・マインを中心とした実技研修ということを考えての御発案だろうと思います。われわれもそういう考え方がないわけではありませんので、今後の問題としてやはり実技の練習、それから爆発試験とかいろいろな試験を実地にやるという場合には、どうしてもモデル・マインという形をとりますので、そういうことも現在の講習所以外に、単なる机上練習でなくして、実技を伴う講習ということも当然考えなければならぬことだと思います。
  58. 藏内修治

    藏内委員 私は坑内保安関係、また堀進関係採炭関係技術的なことは全くわかりませんけれども、いまままでの災害の状況を、ときどき私なども視察に行かされて見ておりますと、爆発の風圧などでいきなり即死の状態でなくなる、こういう方ももちろんあるし、これはもう、ちょっと起こった以上はとめようがない。しかし、炭じん爆発であるとか、坑内火災であるとか、あるいはガス爆発、それに基づいて発生する有毒ガスの中毒、こういうものが非常に数にして多い。こういうものを防止するために、災害が発生したとたんに坑外に脱出しようとしても、最近の大きな炭鉱になればなるほど坑道が非常に長くて、災害による非常に大きな肉体的、心理的なショックを受けている上に、また何千メートルも歩いて坑外に出なければならぬというところに、非常に負担がある。そういうことで、なかなか助かる人も助けられない。これについては、扇風機を回したりとめたりする操作も必要なんでしょうが、坑内の必要な個所に、何らかの待避所というようなものが坑道掘進と同時に設備される。そこには有毒ガスを何らか排除しながら、かりに短時間にしても、一時間、二時間あるいは四、五時間にしても、その間だけは何とかできるという、酸素の呼吸ができるようなボンベをそこに施設をするとか、外から有毒ガスが入らないような簡単な施設をする。数時間だけはそこで維持できる。そこまでは重傷者でもある程度はってでも行けるというような設備があれば、まだまだ私は助かるべき人が助けられるのじゃないか。そういうものは技術的には実際はとても考えられないものであるのかどうか。私は技術のことはよくわかりませんが、経営者側の井上さんと納富さん、どちらか技術のほうの担当の方があればお答え願いたいし、遠藤さんのほうからもそういう点で、そういうことはできるのだ、あるいはとてもそういうことはできないのだということについて御意見をひとつ聞かしていただきたい。
  59. 井上健一

    井上参考人 爆発等の非常事態に対して、必要な待避場所ができないかという御質問でありますが、これは一がいには申し上げられないと思います。その規模によりまして、とうていそういうものが間に合わない場合もあります。これは非常にむずかしい問題と思います。たとえばガス突出というような事故があります。こういうような警戒個所等の作業に気密室のようなものをつくっておいて、酸素欠乏であるとか、ガスが充満するというような場合に一時的に酸素補給などをやって救出するというようなことは、場合によっては考えられないこともないというふうに思います。爆発の問題について一般的にはちょっとお答えできないと思います。
  60. 納富貞行

    納富参考人 現在炭鉱で一酸化炭素簡易救命器というものを備えつけております。この問題も爆発場所によるのでありまして、爆発場所の想定というのが一番むずかしい問題です。近ければそういう一酸化炭素救命器もろとも吹っ飛ばす。それをある場所まで離しておくと、それでは間に合わない。それと、採炭夫なんか一払いに何名ときまっております。しかし職員とか電機夫とか、これは坑内各所を回っておるわけです。そうしますと、その数というものも不確定であり、われわれとしても一酸化炭素簡易救命器の設置場所という問題にもちょっといま頭を悩ましておるような状態で、そういうふうな気密室の問題も、距離の問題、坑内のほうはしょっちゅう進行しておりますので、ちょっといまのところでは私も考えにくいものだと思います。
  61. 遠藤一三

    遠藤参考人 COのいわゆる待避所ということですが、これは坑内構造とも関係があると思うのです。坑内構造、いわゆる爆発の地点に通気を短絡して、全部遮断をして、そして鉱山の労働者は安全個所に逃げるというような坑内構造からくるものはあると思うのですけれども、これをやるということになりますと、結局平常の通気が非常に悪くなるという危険性が出てくると思うのです。したがって私の考えとしましては、不可能に近い。それからガスの性質をもっともっと研究してもらいまして、先ほど井上参考人が申し述べたような、いわゆるメタンガスに色をつけるというところまでくるような段階になりますと、COも十分吸収し得るような対策が得られるのじゃないかというふうに考えます。   〔多賀谷委員長代理退席、藏内委員長代理着   席〕
  62. 藏内修治

    藏内委員長代理 多賀谷真稔君。
  63. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほどの藏内さんの待避所というような問題は、ちょうど茂尻炭鉱の爆発のときに、事実上いわば休憩所に待避した。それが残念ながら、その待避した人が一人を残して全員死亡しました。それはCOで死亡した。たまたまその一人は、そこにころがっておったパイプを口にくわえておりましたから、あとガスが逃げる間、そのパイプにあった新しい空気を吸っておったので生き残った。私はこういう例も知っております。しかしはたしてこういう待避所がいいかどうかということは、いまお話になるように、問題ではないかと思うのです。まああらゆることをわれわれは検討してみなければならない、こういうように思います。  そこで質問の第一点は、先ほど井上参考人から、監督面は予防保安指導というものを重点に置いてもらいたい、こういう話がありましたが、実は三池、北炭夕張伊王島と、日本の優良炭鉱で、技術の面においてもいわば非常に高い技術の水準にある炭鉱が爆発しておるわけです。これらは率直に言って、監督官が指導するというような技術のところではないと思うのです。これは中小炭鉱で——たいへん失礼ですけれども、その保安技術職員の優秀な方々がおられない、あるいは保安施設の悪いところでありますと、井上参考人のお話のように、そういう面があると思います。しかし私たちが最近遭遇いたしました大きな事故というものは、少なくとも保安技術の水準は非常に高いと見なければならないし、また高いと普通考えられる状態の山が事故を起こしておる。ここに非常に大きな問題があるし、いわば監督行政からまいりますと、手なしということでしょう。監督官も少ない。監督官もふやさなければならぬけれども、この水準の炭鉱事故を起こすようだったら、もういまの監督官を三倍にしても四倍にしても間に合わないのではないかという気持ちすらする。そこで一体どうしたらいいかという、実はわれわれ立法府としても考えざるを得ない状態にきておるわけです。そこでどこにそういう原因があったと経営者並びに労働組合のほうではお考えになるか。これをまず全参考人からお聞きいたしたいと思います。
  64. 井上健一

    井上参考人 多賀谷先生の御質問にお答えいたします。  三池あるいは夕張、日鉄で事故が起こっておるが、どういうわけかというような御質問でありますが、もう保安指導するとか監督するとかいう以前の問題ではないかというふうな御質問であります。実は三池にしろあとの二つにしろ、私どもはこれの原因について明確に把握しておらないのでありまして、原因が明確になった時点ではそういう点が大いに解明されるのではなかろうかというふうに私は考えます。もしやるべきことをやっていなかったということであれば、これは当然改めなければならぬというふうに考えます。  それから、私が監督行政を指導面重点を置いていただきたいというのは、非常に簡単なことばでこういうふうに言いあらわしましたので、指導する面はないのではないかというふうなことでございますが、それはこう言ってはなんですが、ほんとうに私ども炭鉱技術に関しては指導をされる必要がない、指導されるようではいかぬ、十分自信を持ってやっていかなければならぬ、いけるだけの経験なり技術なり教育を持っていなければならぬというふうに考えます。指導されなければ保安が全うされないのかというようなとられ方をされますと、全く私の考えと違っておるのであります。ただ、日本という国の古い封建的な考えといいますか、要するに役人はこわいものだというふうな考え方をなくすような行政をやってほしい。監督官ということばにすら現場の人は一つの何ものかを感じておるのではないか、いわゆるレジスタンスといいますか——私が昨年の欧州の調査団に参りましたときに、向こうでは監督官がよく回っておるようであります。全くどれが監督官か会社の係かわからぬというような形で、にこにこと笑いながら話をして、そうしていろいろサゼスチョンをしていくというような状態を見たのでありますが、私はこういうような意味で、監督官もわれわれ民間人もお互いにたよれるような立場になって、いろいろなサゼスチョンをしていただきたい。教えられることはないと口幅ったいことを申し上げましたけれども、おか目八目ということもありますし、またわれわれが、うっかりしておって知らないこともありましょう。ことに監督官がわれわれにない得がたいものを持っているのは、われわれのような井戸の中のカワズではなくて、全国の炭鉱の実態を見ておられます。そういう一つの広い経験というものがある。そういうようなものを生かして指導していただきたい、こういう意味で私は申し上げたのであります。要するにお互いに信頼感というものを監督官とわれわれ現場の者が持つ。ただ処罰して回るということでなくて、それ以前の指導ということをひとつお願いしたいということを申し上げたのであります。
  65. 納富貞行

    納富参考人 私の属しております日炭鉱は、全国の中小炭鉱でございます。中小はピンからキリまでございまして、もちろん監督官の指導を十分受ける必要がある炭鉱もあるわけでございます。それで私のほうでは、そういうふうにときどきよその炭鉱を見ていただいてお知恵を拝借するということは必要じゃないかと思います。
  66. 岡松雄

    岡参考人 私は中村重光先生の問題提起に詳細に説明をしたつもりでございますが、やはり、直接の原因については保安局長のほうから文書が出ておりますが、何といっても遠因、近因は石炭産業合理化政策にある、こういうふうに断ぜざるを得ないと思います。
  67. 平川久米藏

    ○平川参考人 私は災害を防止するためには、まず炭鉱に働く者のすべてが保安意識を高揚しなければならないというふうに考えております。たまたまガス爆発災害が最近起こっておりますが、その点をとりましても、ガスというものは法できめられた量が常に守られておれば爆発ということはあり得ないと思います。ところが法できめられた以上の量がそこにある、あのときにガスの測定をしておけばよかったというようなことのないように、きめられたものはする。あるいはそういう危いようなことがあるということになれば、やはり測定をするということを忘れないようにしていただきたいと考えております。それがためには、たとえば保安技術職員等は一応の教育を受けております。したがってすべてを知っておるようでありますが、それが長年たちますと、どうしても意識が薄くなってくるということになるわけでありますので、当初申し上げましたように、ひとつ少なくとも保安技術職員以上は一定期間たちましたら再教育して保安の意識の高揚につとめていただきたい、このように考えております。
  68. 遠藤一三

    遠藤参考人 災害が起きまして、結果を見ますと、あれもやっておけばよかった、これもやっておけばよかったということで、やっていないということが一応言われるわけでありますけれども、私ども、経営者も労働者も十分やっておるといっても、なおこういう結果がでると思います。これは先ほどから私申し上げているように、自分としてはやっていると思っても、何らかの盲点があるからこういう事故が起きる。たとえば三池にしても日鉄にしても北炭にしても、そこを何とか、内部的にはもちろんでございますけれども、外部的にも、予防保安見地に立っての指導をやってもらいたいというふうに思うわけでございます。と申しますのは、先ほど申し上げましたとおり、石炭産業の置かれている現状から、どうしても生産優先ということが起こりまして、保安の上にやっておるという自覚が非常に低いというふうに見ざるを得ません。
  69. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私も実は大炭鉱における勧告あるいは警告あるいは注意事項等を見まして、こういう優良炭鉱といわれる炭鉱でもこんなに注意事項を受けなければならぬのだろうかという危惧を持つわけです。そこで、監督官を増員するとか監督面を強化するということももちろん必要ですが、しかしよく考えてみると、これだけ優良炭鉱が受けなければならぬようだったら、監督官を幾らふやしたってきりがないという気持ちも一方においてするわけです。そこで質問をしたわけですが、井上さんも欧州に行かれて、あなた方が書かれた海外保安調査団報告書によると、ドイツでは過去十年間、十名以上の死亡が三件、フランス六件、イギリス四件、日本では二十六件、その後日本では二つ起こっておりますから、夕張と伊王島を加えれば二十八件になるわけですが、しかもドイツ、イギリスの出炭量がわが国の三倍をこえることを考えれば驚嘆に値する、こう書いたその原因の第一に、自然条件が違うということを言われておる。そこで私は、今度は逆に、自然条件が違うなら違うように保安基準を考え直さなければいかぬのじゃないかという気がするわけです。日本の場合は自然条件が違うのだ、いわば石炭紀の石炭じゃなくて、褐炭くらいのところであるけれども、地殻の収縮によって石炭になっておるのだ、ですから非常に小さな断層も多いし変化も多い、こういう状態であればこういう状態であるような保安の規則をつくる必要があるのじゃないか、こう考えるわけです。刻々切り羽も変わってくるし、油断をしておればすぐ断層が出てくる、その断層の中からガスが出てくる、こういう状態です。そういう日本自然条件に適応した規則の改正が必要ではないか。たとえばガス検定の場合の頻度の問題でも、いま頻度については作業三時間前とかあるいは作業中は甲種であれば三回ですか、こういうように書いてありますね、こういう点もひとつ考え直す必要があるのじゃないか。あるいは可燃性ガスの恕限度の問題も、一・五%ということを一応うたっておるが、この一・五%がいつ五%になるか、五%あるいは一〇%になる可能性が非常に強い。ですから、そういったものもひとつ検討する必要があるのじゃないかと考えるわけです。そこで、日本においては比較的保安規則の基準については詳細に書いてあると言われておるわけですけれども日本人は規則あるいは何かがないとなかなか順守しないというならば、そういう国民性ににらみ合わせてそういう規則の改正も必要ではないか、こう考えるわけですが、井上参考人からひとつお聞かせ願いたい。
  70. 井上健一

    井上参考人 欧州保安調査団報告書に書いてありますことはそのとおりでありまして、確かに欧州各国保安成績はわが国に比べてはるかにすぐれております。それが、まずその第一の条件は自然条件だということもそのとおりであります。自然条件日本のほうが悪いから、日本保安規則はさらにシビアーなものにすべきではないかという御意見と思いますが、これは相対的なものでありまして、私は欧州各国を見まして、欧州のほうは自然条件に合わせてゆるくしている。したがって日本のほうは欧州のほうから見ると、保安規則は私は非常にきめこまかくきめてあるというふうに思います。たとえば非常に卑近な例を申し上げますと、日本では炭車に乗ってはいかぬ、ベルトに乗ってはいかぬ。ところが欧州では非常に条件もよくないのに、炭車にも乗っておる。そういうことが規則上許されて行なわれておる。こういう点日本では、コンクリートの坑道でさえ人車には屋根をつけろというふうに非常に厳格になっております。こういうようなことをひとつ十分見ていただきたいというふうに思います。  それからもう一つは、保安規則の改正のことであります。いまガスの点について先生からちょっと述べられましたが、メタンガスの恕限度については一%とかあるいは一・五%とかいうふうにありますが、確かに一・五%だと思っておったところで爆発があったというような例もあります。実際にこれは一・五%以上あったわけであります。したがってこれをかりに〇・五%にきめても、あるいは〇・一%にきめても、その条件がはたして合致しているかということが問題だと思います。たとえば〇・一%といっても風量が非常に大きい場合と風量が非常に少ない場合と非常に差があるのであります。そういうような条件まで入れた規則をつくるということが、あるいは規則によって取り締まるということであれば、理想的じゃないかと思いますが、ではそれでどこまで規制できるかといったら、これはもうきりがないと思います。山の状況が全部違うわけであります。したがってそういうような問題は、規則で規制された保安規定というもので、山々の条件を十分取り入れたもので規制していくということ以外にないのじゃないか。私は現在の保安法あるいは省令、これを現場の実態に合わした運営をやっていくということでやれるというふうに確信しております。
  71. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次に労働者に対する周知徹底の問題ですが、よその作業場、たとえば事故の多い国鉄等で朝、朝礼をやっています。毎日九州なら九州の管区における事故を、翌日かなりしさいに報告しておるのです。どこどこでこういう事故があった。そうしてそれをみな手帳に筆記したりして、朝礼が終わって帰り、その日の職場につくわけです。ですから、まず全体の状態というものを知らす。それから個々の職場における事故の点検をやる。それでも過密ダイヤその他で事故が起こっております。  炭鉱の場合は、いま問題になっておるのは、勧告を労働組合に知らすということ。ところが労働組合すらまだ知らぬ。ましてや働いておる労働者は全然知らされていない。そういった周知徹底の問題というものが、他の産業に比べて非常におくれておるのじゃないか。これは炭鉱が、たとえば地上に出る鉱害の問題でもそうですが、よその国に比べて非常に地下の採掘状態というものを知らしていないのですね。そして知らすことが逆に紛争を巻き起こす、要らないところに、平地に波乱を起こすという気持ちが依然としてある。ですからトラブルが絶えない。こういう状態です。施業案についても秘密主義をとっておる。全体の石炭行政というものが、保安についても、あらゆる面についても秘密行政がとられておる。これは企業の秘密だという考え方になっておる。ところが御存じのように、ずっと各国を見られても、鉱業測量士なんというものがおりまして、そういうのはちゃんと一定の手続をとれば報告をし、関係者には知らすようになっておるのです。こういう点が全体としてやはり周知徹底ということが欠けておるのじゃないか、こういうように思うわけです。  そこでことに保安の問題については、少なくとも就業規則を掲示をして労働者に徹底させるというくらいなら、保安の状態ぐらいやはり掲示をして、昨日保安監督官が来たが、こういう個所に注意があったというぐらい、労働組合だけでなくて、一般の労働者にも知らす必要があるのじゃないかと思うのですね。そうして昨日どこどこの個所ガスは幾らあったと、ずっと知らしていくのです。そのくらいやはり周知徹底の義務というものが必要じゃないかと思うのです。これについてひとつ井上さん並びに炭労、全炭鉱から御意見をお聞きいたしたいと思います。
  72. 井上健一

    井上参考人 監督官が巡視されたときの注意事項あるいは通達事項というようなものを周知徹底さすべきではないかという御意見でありますが、私も同感であります。くさいものにふたをするということでは、決して信頼感が生まれないと思います。その方法でありますが、私は今後いろいろ考えなければならない問題が非常にあると思います。ポスターあるいはいまの入坑所等に掲示をするということでありますが、これは率直なところなかなか読んでもらえません。映画の広告なら見ますけれども、長く保安上しかつめらしいことが書いてあるのは、やはり自分の身に関係のあることとは知りながら、なかなか読んでもらえないという点、先ほど申し上げました、どうしてこれを読んでもらうかというところに非常にむずかしい面がある。またわれわれも坑口で、いわゆる坑口講話ということで、短時間のたとえば事例教育等をやりますけれども、大半の鉱員はうしろを向いておる。あるいはお互いに話をしておるということで、なかなか聞いてもらえない。ここのところを私は先ほど責任という問題で申し上げましたが、やはり聞いてもらう人にもひとつ責任を持って聞いてもらう。これは子供が悪いからほうっておけというわけにいきません。これはわれわれ親なり指導者の立場にありますものが、言うことを聞かない子供にも聞かせるようにしなければなりませんが、きょうあすにそんなに簡単にいくものではありませんので、しんぼう強く、いまの周知徹底ということにつきましては坑口講話あるいは掲示、あるいはまた保安委員会の活用というようなことでやっていきたい。特に作業の中心になりますものは現場係員でありますから、まずこういうところを最重点に認識を深めさせるということで、今後この問題に対処していきたい、こういうふうに考えております。
  73. 岡松雄

    岡参考人 いま多賀谷先生の問題提起に関して井上参考人から答弁があったのですが、私どもいままで相当強い希望として経営側に問題を提起しても、なかなかお答えをいただくまでにならなかったわけです。まして各炭鉱現状からすれば、多賀谷先生の御発言は、監督官の注意あるいは勧告のみならず、保安全体の様子を従業員に周知徹底させろという発言の趣旨だと思います。したがってそういうことは、炭鉱現状ではなかなか困難ではないか。そのことを明らかにできる状態にあるのかという点については、きわめて不安に思っております。したがって当面第一段階としては、監督官の注意、勧告をまず労働組合に明らかにさせる、そこから要求として坑内全体の保安確保という形で問題提起をすることが、いまとられ得る最善の策ではないか、こういう認識に立っている。しかし多賀谷先生おっしゃったように、そういう方法を両参考人もとることが必要だし、やるということでありますから、その点については、私どもも、やっていただくならそれが一番好ましい状態だ、そういうふうに判断をいたしております。
  74. 平川久米藏

    ○平川参考人 検査結果の周知徹底でございますが、前者が申し述べたとおり全く賛成でございます。ただその周知徹底の方法でございますが、ある一つだけとって、これをやればいいということでなくして、やはり多角的に考えなければいかぬのではないかと思います。まず第一点は、検査の後に監督官の講評があることになっておりますが、少なくとも労使が同席して講評を受けるという制度を設けていただきたい。これは現在その制度はございませんが、私たちの傘下の山ではこれを実施いたしておるところもございます。それからその次は、まずそういう勧告、注意事項があった場合には、直ちに現場係員にそれを知らせる、その現場係員は必ずそこに働いておる労働者に知らせるというシステムをとっていただきたい、その次は、検査後に直ちに保安委員会を開催して、その対策検討していただきたい。保安委員会からその対策が出た場合には、それを知らせる、あるいは坑口に掲示するという方法をとっていただく。一つの方法ではなくて、多角的に労働者に周知徹底させる方法を講じていただければ、非常にいいのではないかというように考えております。
  75. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 炭職協にお尋ねいたしますが、いま保安技術職員は不足しておるのですか、どうなんですか。北炭に行きましたときに、職員組合の代表から、やはり保安係員が少ない、少なくとも専任の保安係員を一方に一人ずつつけてもらいたい、こういう要望がありました。一体どういう状態になっておるか。  次に井上参考人にお聞かせ願いたいのですが、可燃性ガスの自動警報器ですね。これはもうかなり実用化されつつあるわけですが、実は私どもも、大辻炭鉱をはじめとして上清等の一連の災害が起こりましたときには、COマスクを備えつけるべきであるというので、たしか中小には補助金を出した記憶がある。大手のほうは融資ですね。現在すでに、水圧鉄柱あるいは通気坑道の拡大等については、近代化融資対象は四〇%でありますけれども、ありますが、中小の場合は少なくとも補助金を出さなければうまくいかないだろう、大手のほうはさらに融資率を拡大をして融資をしていったらどうか、こういう気持ちも持っておるわけです。この自動ガス警報器については二つ意見がありまして、つけるということは、どうも人間がそれにたよるという可能性が出てくるのではないかという意見がある。いや、それはダブルチェックになるからやはりつけるべきであるという意見がある。そこで一体どういうようにお考えですかというのが一つと、もうすでに一斉に今後つけることを義務づけ、それに助成をすれば、メーカーとしてそれに応ずる体制があるのかどうか、こういう二点をお聞かせ願いたい。
  76. 遠藤一三

    遠藤参考人 不足しておるか足りておるかということでありますが、現在やっておるから、足りるといえば足りるでしょうけれども、二十九年と対比したものを一応調べてみますと、直接、間接を含めまして坑内鉱員の方は約五〇%に減っておる。それから職員坑内のものについては六五%に減っておる。この数字から見ますと、職員の減り方が少ないように一応見受けられますけれども考えてみますと、冒頭申し上げましたとおりに、いわゆる坑内機械化あるいは重装備化によりまして——この重装備化によるものが一五〇%から三〇〇%の推進になっておりますので、当然保安技術職員としての守備範囲は拡大される。したがって人員の掌握については確かに従来よりもよくなったかに見えますけれども、全般の仕事の分野としては非常に荷が重いというふうに言わざるを得ません。この点から見ますと、特に第一線現場係員は不足しているということが言えると思います。
  77. 井上健一

    井上参考人 自動警報器の備えつけの可否については、いま先生が言われたような二様の見方があると思います。私も冒頭申し上げましたように、これにたよることは問題があると思います。坑内のすべての点を無限大に押えなければ完ぺきが期せられないわけでありますから、おそらく言うべくしてなかなかできないことだろうと思います。しかし、たとえば特免区域であるとか、あるいはガスが急激に増加する可能性があるというようなところが前もって考えられるとするならば、そういうところに重点的に設置することによって、私は継続的にその状態を把握していくということが非常に大きなプラスになると思います。そういう意味での活用範囲が非常にあるのじゃないかと思いますが、それでは現在の国産の自動警報器がはたして一〇〇%のものであるかというと、まだまだ十分でない。私はよく実態を知りませんけれども、いま日本で売れております自動警報器が現場で何%活用されておるか。いいものだろうというので買ったけれども、どうもうまくいかないからというので、修理されないままであったり、あるいは倉庫に眠っているというものがあるのではないだろうかと想像しております。と申しますのは、現在出ておりますものは、まだガスに対する順応度がおそい、いわゆる時間的な誤差がある、あるいは温度、湿度による影響を受けるというようなこと、あるいは故障を起こしやすいというようなことで、まだ十分自信を持ってこれにたよれるというところまで私いっていないと思います。そういう点で、今後さらに政府の助成等も得ままして、これの開発研究を進めていったらいいんではなかろうかと思います。現在フランスで使われておりますものは日本よりは進んでおるように見受けましたが、こういうようなものも入れてみて日本の状況に合うかどうかためしてみたい。あるいはまたイギリスで実際に動いておりますのは、昔われわれがガス検査をやっておりました、油を使った安全灯の原理を利用したガス自動警報器でありますが、これもすぐれたものだというふうに見てまいりました。むろんこれも、日本の資源技術試験所に行きますと、これと大同小異のものがありますが、あるというだけで現場にまでいっていない。こういうところに、私が冒頭に申し上げました試験所あるいはメーカー現場との結びつき、これが足りないのではないか。われわれの努力の足りない点もあろうと思いますが、お互いにこれは努力して、こういう点、もうちょっとお互い連絡を密にして、ただ研究だけやっていて、終わってしまうということではなくて、これを現場までいかにして持ち込むかということに、さらに努力を傾注すべきではないか。その点現在の炭鉱の実態としまして、使えるか使えないかわからないという程度のものに多額の金をかけて、炭鉱を実験場所にするほどの余裕はないと思います。そういうものは、できるならば、国の力で助成していただいて、そしてこれを推し進めていくということで、今後実用化に持っていけるのではないかというふうに考えます。  また、いまのガス自動警報器の備えつけを義務づけた場合に、製造能力があるかということは、私はメーカーでありませんのでわかりませんが、おそらく私は、現在のメーカーでは、とてもそれに応じる力はないと思います。もちろん備えつけの程度ですが、先ほど申し上げました、ごく重点的な範囲で備えつけようということで、備えつけ数に限度があれば可能かもしれません。これを非常に普遍的にやろうということには、製造能力にも問題があります。しかし、それ以前に、現在の製品では、十分安心してまかせられないというふうに思っております。
  78. 藏内修治

    藏内委員長代理 伊藤卯四郎君。
  79. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 時間の関係で、参考人方々にもたいへんお気の毒だと存じますが、二、三点ちょっとお聞きいたします。  最近、御存じのように、三池炭鉱の炭じんの爆発、それから夕張、伊王島ガス爆発等があり、私どもそれぞれ見てまいりました。そこで、感じましたことについて、この防止ができるということ、私も坑内夫の熟練工の一人として長年おった関係上、そういう確信を持っておりますので、ひとつごく簡単にお答え願えるような質問をいたしたいと思います。  御存じのように、炭じんの爆発というものは、炭じんをよく掃除し、それからあまり炭じんが飛ぶようであれば、水を散布しておけばいいし、さらに防止するためには、岩粉を押しつけておけば炭じんというのは絶対爆発しないということは、議論の余地はないのです。それからガスのほうも、この間の、夕張でも、伊王島でもそうでしたが、やはり採炭現場に送る通気口というものが狭すぎる。通気口の修理をするところであった。これをもっと完全なものにするためには、やはり経営上の経費の問題等もあるので、なかなか困難だということで遅々として進まないというような状態であったように、労働組合などから伺ってきました。  御存じのようにガスも、完全に排気しておけば爆発すべきものでは絶対ないのです。さきの議論を反駁するわけではございませんけれども、いまはキャップ・ランプになって、現場に働いている人はあまりガスということにおそろしいという感じを持っておりませんけれども、昔の安全灯でガスをはかって見せれば、しろうとわかりがすぐしますから、これはたいへんだということで、たいていびっくりするんです。そういう点で、むしろ昔の安全灯ではかってガスの危険性を知らせることのほうが、現場で働いている人たちにはかえって注意を深くしたというような点等もございました。そういう点で、炭じん爆発にしても、ガス爆発にしても、完全に防止ができ得るものにかかわらず、あのような大きな爆発事故を起こし、多くの犠牲者を出しておりますことは、これは何といっても経営者側がそれに対応するだけの保安設備の完全を期していなかったということは免かれることはできないと思っております。  そこで、生産保安とはある意味において一体ですから、私企業である限りにおいては、赤字であれば、したがって保安対策というものにはおのずから制限が加えられてくるということは議論の余地はございません。どうも今日までの炭鉱の経営は、黒字の山は四つか五つしかない、あとはみな赤字であるということがいわれておりました。今度炭価が御存じのように上がりましたから、その点は幾らか変わってくると思います。私は当然防止のでき得る保安対策を怠らざるを得なかったという点は、経営の上からきている問題が相当あるかと思いますが、この点は、各鉱共通の問題ですから、石炭協会なりあるいは経営者側でいろいろ御相談などもなさっておられると思うが、こういう点について、当然防止のできるものを防止せずに爆発さしたということについてのお考えをお聞かせ願いたい。
  80. 井上健一

    井上参考人 いまの御質問は、現在大きな災害が起こっているが、その原因は何かという御質問でございますか。いまの御質問はそうとってよろしゅうございますか。——私、先ほど申し上げましたように、三池の災害にしましても、北炭、伊王島にしましても、まだその原因のいわゆる細部を承知しておりません。新聞等で聞いたとおりで、特に新聞等では、北炭夕張の例を見ましても、内容にいわゆるしろうとの想像的なものが相当入っております。あれでもって私たちが原因なり実態を批判することはできないと思います。しかし、現実に爆発は起こっておるのでありますから、何かそこに欠点があったことは否定できないと思います。ただ、その欠点が単純なものであったか複雑なものであったか、ここに問題がある。というのは、ガス爆発、炭じん爆発にしましても、たった一つ原因では絶対起こらない。ガスをためなければいい。ためても、出せばいい。それも忘れたならば、火の気がなければいい。というように、火のつく動機というものは幾重にもあるのであります。したがって私はそのおのおのの責任を持っております人たちは、おのおの違った立場にあると思います。ガスをはかる人、あるいはためないようにする人、あるいは火の気を持っていかないような人、したがってこういう人たちが責任を持って自分の職責を果たせば、爆発は防止できるというふうに私は確信をしております。ただ、自分のやっておりますことは何といってもやはり自分の考えどおりになって独善になることもありましょうし、自分の力を過大視することもあると思います。そういう意味で、官庁の監督指導、こういうことも必要でありましょうし、また先ほどから自主的な保安ということで申し上げましたように、今度われわれ大手十七社の業界からそれぞれ保安の経験者を出しまして、お互いに保安技術の交流、お互いに啓発し合うということによって、さらに改善すべき点があるかないか、こういう点を目を詰めて調査検討してみたい。もうやはり現場というものはあらゆる角度から検討してみる以外にはないと思いますので、いままではこういうことはやっておりませんでしたが、こういうような方法も考えまして、各会社の違った経験、違った技術でお互いに見直してみるということ、これによってまた非常に大きく裨益される点もあるのではなかろうか、こういうふうにいろいろな方法を講じまして、もう日を詰めた監督をやっていく以外にないというふうに私は思っております。またこの目を詰めることによって、少なくとも従来の悪質重大災害というものは原因というものが一つではないということから防ぎ得るというふうに考えております。
  81. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 三池の場合においても夕張の場合においても、保安監督官から十分注意をされております。その注意をされた点が完全に守られてあったとすれば、三池の炭じん爆発も夕張のガス爆発も起こらなかったと私は思っております。というのは、これはもうあなたも専門家でございますから御存じのように、ガスは吹いておりましても、そのガスを外に吸い出すだけの一定の通気があるならば、必ずガスというものは爆発をしない。たとえば発火の原因がどこから起ころうとも、その爆発すべき炭じんなりガスの一定量というものがなければ爆発しないのですから、したがってやはり炭じんの掃除を怠っておったから、あるいは水分を十分含ましておかなかったから、あるいは採炭現場に対する通気、ガスを外へ吸い出すだけの通気を送られておらなかった、この怠りがあるところに初めて爆発が起こるのです。監督官庁ではその危険性があるので注意しておったのです。それが爆発をしておるのですから、これは何といってもやはり経営者が、それぞれ原因があっても爆発の起こらないだけの備えというものをしなかったところにこの事故があったということはこれは否定できないと私は思う。それを私が言っているのは、やはり経営上赤字で十分の備えをするだけのことができなかった。いわゆる炭価が安かったから、経常が赤字でできなかった。そういう点に保安の怠りがあったということなどの検討というものも議論の中に出ておったかどうか、それをひとつお聞かせ願いたい。
  82. 井上健一

    井上参考人 私は三池のほうへは、あの事故が起こりましてからだいぶたってからでございますが、行って見ました。あそこの状態を見ました場合に、炭鉱が赤字だから、苦しいから保安上の設備が不十分であったというふうには私は見ませんでした。ただ、しかし現実に炭じん爆発を起こしているという点に関しましては、やはり何か原因がなければ起こらないのでありますから、あるいは指摘されておったかされておらぬか、かりにされてなくても起こしておるということになれば、管理の面に何か不十分な点があったということは否定できないと思います。そうい面を今後なくすために、先ほど申し上げましたようないろいろな施策を強化することによって、その実績を積み上げていく以外にはないと思います。先ほど私前もって申し上げましたように、どんなにりっぱな新型の設備を持ってきましても、究極は人だろうと私は思うのです。ガスの自動警報器を備えつけてみても、これで坑出全部を一寸のすきもないようなチェックはできませんし、またかりに散水用の設備をしてみても、これが故障で水がとまらないということは絶対にないということは言えない。そういうものを管理していく人というもののやはり教育にあると私は思います。そういうもののチェックを怠らないで目を詰めてやっていくということが、もう最大の方法ではなかろうか、最善の方法だと私は思っております。私は夕張と伊王島のことは全然知りませんが、三池の場合を拝見しましたところ、設備に大きな欠陥があったというふうには私は見てまいりませんでした。
  83. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 その点は掘り下げるというと議論になりますから、直接の責任者でもないあなたを向こうに回して議論をするのもいかがかと思いますからやめます。ただあなたも、炭じんにしてもガスにしても、原因は何であろうと、爆発すべきものがあったから爆発したのだということについてはお認めになっておられるわけでございますから、こういう点はやはり石炭協会なりあるいは中小の連合会等でも、重大な爆発事故が起こったら、それらは一体何から起こったかということについて、一つ一つ十分検討し、それからまた監督上からも要請があるならば、やはり監督官庁政府に対しても強い要請をされる、この二つの点を強く御希望申し上げておきたい。  それからいま一点伺いたいと思いますのは、坑内職員、いわゆる係員の人が坑内を回って歩いて見て、ある個所にどうも非常に荷がさて、つぶれる危険性がある、あるいはその他いろいろ事故の起こる危険地帯がある、あるいは採炭現場に、どうもいまのままの状態ではガス爆発というか、あるいは大きな落盤というか、そういうなに等があるから、至急ひとつ手当てをする必要があるということを経営者側に進言をしても、それが急速になかなか取り上げられぬ。そういっても予算というものがあるので、そう保安のために多くの経費を使うことは許されないというようなこと等で取り上げられないのでわれわれも心外にたえぬということを、係員から私どもも何回か聞かされたことがございます。こういう点もやはり。私はあなた方のところでどうであるかは存じませんけれども、全体的に見てそういう共通したものがございます。でございますから、こういう点も、やはりいま申し上げたように石炭協会なり連合会、そういうところでもひとつお話し合いの場合に、こういうことが現場坑内係から経営者側にしばしば訴えておるけれども、赤字でやれぬ、あるいは与えられておる予算でそれだけの設備保安をなにしていくことはできないというようなことなどで事故を起こしておるということがかなりある、そういう点に対しては、やはり坑内保安係のせっかくの進言というものは、これは人命尊重の上からも、坑内事故を少なくするためにもお互いにもっと注意し合ってやろうじゃないかというようなことなど、そういう点をひとつお互いに戒め合うというか注意し合うというか、そういうことで何かおやりになっておられるということはございますか。
  84. 井上健一

    井上参考人 保安の経費の問題でございますが、保安の経費を節約したために事故が起るというようなことはあってはならないことでありますし、私はまたないと確信しております。それではそういうことを前向きに取り上げていくためにどういうことをやっておるかという御質問でございますが、まず生産計画を立てますときに、必ず保安の担当者もこの中に入れまして、保安という面を特に強調した生産計画、たとえば通気であるとか、あるいはガス抜きであるとか、あるいは支柱の問題、そういうような問題、これについては有効なものを取り上げるということは即安定した生産というものにつながるということで、先ほど中村重光先生が、私が保安生産の調和ということを申し上げましたら、いかにも生産をやるのに何とかやっとこさやっていけるくらいの保安考えておるのじゃないかというようなことをちょっと御指摘になったのですが、私が申し上げましたのはそういうことではなくて、保安というものと生産というものが不離一体になるような計画を立て、これを実行していくことが必要だということを申し上げたわけでございます。そういう意味で、まず事業計画のもとをつくりますときに保安というものを必ず取り入れて、優先するという考え方で計画を立案しております。またたとえば山元でいろいろ起業をきめるというような場合も、山元ではそれぞれの担当者の意見を必ず取り入れた計画を立案するということにしておりますので、現場保安の実態がそういう設備の面、その裏づけとなる費用の面で取り残されていくということはない、いまのやり方でやっていけるというふうに考えております。
  85. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうも、経営者を代表する人の意見を私どもはしばしば伺っておりますが、いまあなたのおっしゃるようなことをたいていおっしゃいます。しかしながら絶えずああいう大きな爆発事故が起こり、それからまた絶えず落盤事故が起こる。坑内のことですから不可抗力の場合もございます。ございますけれども経営者は口をそろえて、生産と並行し、あるいは生産以上に保安のことを考えて、それに対して予算などを制限したり何かするようなことは絶対ない、こういうことをおっしゃるけれども、私がさきにお話ししましたように、それだけのことをやっておられれば、大きな爆発の事故というものは絶対起きない。あなたもおっしゃったように起きないのです。それが起きておるということは、やはり保安に対する経費、設備、そういうものに制限されているものがあるのじゃないかということと、それから保安係の人が急速を要するというような場合においても、それが急速にその手が打たれて処置がされてないということも私は知っております。それは例をあげれば幾つも例をあげられます。しかしそれをあげてせっかくの参考人に議論をしても失礼ですから省きますが、たとえば保安監督官が現場を見て歩く、そうするといろいろ注意事項がある。そういう注意事項のあったことを、あるいは掘進なり採炭なりその他やっておる、そこで働いておる従業員に、監督官のほうからこういう厳重な注意があったぞ、その点に対しては会社としてもこういうように至急手を施すが、しかし君たちもこういうように注意をしてやってくれというようなことを逐一、現場に働いておる労働者の人たちに知らせていない例がたくさんございます。これも私事情はよくわかっておりますが、そういう点等も、やはり経営者側がもっと忠実に、保安係が報告をしたことに対しては、あるいはまた保安監督官が注意をしたことに対しては、責任を持ってそれを受け取り、そしてそれを実現してやる。そして現場の者にその状態を逐一知らしてやる。それからまた保安監督官などを中心にして、あるいは保安係あるいは現場で働いておる諸君との間に、生産委員会はよくやられておられるようですけれども保安の問題についてはどうも生産委員会をやっておられるほど厳格にやっておられぬという例も私は知っております。経営、生産を度外視した保安というものは、これは私企業の上では考えられぬことなんです。口ではどんなきれいなことを言いましても、私企業ですから、やはり経営と生産保安というものは一体の上に立って考えられなければならぬことですから、したがって保安の上に許される経費というものはおのずから制限があると思うのです。だからそういう点については経営者側に相当に考えをしてもらわなければ、この災害を防止していくことはできないじゃないかということを考えます。これは御答弁がなんでしたら、私が真心を込めて御注意を申し上げておきます。  それから労働組合の代表の方に伺いたいのですが、やはり労働組合にも生産部長あるいは保安部長というようなものをつくって、そして組合の立場からこの保安の問題を完ぺきを期するためにやっておられるわけですが、会社側の保安委員会あるいは保安係との間に絶えずそういう会合を開かれつつあるのかどうか。その場合に、組合保安責任者会社保安責任者との間でいろいろ相談し合われたことを、会社側はそれを急速に実施しておるかどうかということについて、組合責任の方に伺いたいのです。それからさらに、保安監督官から注意のあった事項を逐一、注意のあった現場労働者会社側は知らしておるかどうか。それから組合側には保安の問題について絶えずこれじゃ困るという問題の訴えがよくございます。そういう場合に経営者がなかなか実行してくれていない場合がございます。そういう場合に対して保安監督署なりに会社がなかなかこういうことを実施してくれぬので困るという訴えをされた例があるかどうか。あるいは二ヵ月に大体一回くらい回るようになっていますが、二ヵ月に一回くらいでは困る、やはり少なくとも一ヵ月に一回くらい、あるいは二ヵ月に三回くらいは回ってもらわなければ困る、そういう要求というのもきっとあろうかと思いますが、そういう保安上に対する監督官庁等との関係において、いま私がお尋ねしたような問題等について、ひとつ炭労、全炭、炭職協の代表からそれぞれ率直にお聞かせを願いたいと思うわけでございます。というのは、やはりわれわれも、私企業であるから起こった災害についてそれは経営者の責任だというだけで済ますわけにまいりません。やはり監督上厳重に産業保安を行なわせなければなりません。そのために立法処置をどうしたらいいのか、監督官をふやすには予算措置をどうしたらいいのか、そういうことについてはわれわれも大半の責任を負わなければならぬということを考えるから、以上の点についてひとつ率直にお聞かせを願いたい。
  86. 岡松雄

    岡参考人 最後のほうからお答えしたいと思いますが、いままで参考人からしばしば述べられた意見なんですが、自主保安に徹せよということについては全く私も同感でございます。しかし最善の策をとるという観点からの要請としては、監督官をぜひ増員をしてもらいたいということをお願いをしておきたいと思います。  それから第一の保安に関する労使の協議という問題なんですが、保安委員会を場としての解決はなかなかむずかしいのではないか。ただ言えることは、各炭鉱の、各支部の問題の処理のしかたはいろいろございます。したがって一がいにこういうことだということはなかなか回答がむずかしいのでございますが、保安委員会で問題処理がなかなか困難なものですから、結局は保安委員会を通して労働組合の要求として経営側のほうに出して、団体交渉の場で解決をはかるということを申し上げますと、簡単には保安問題の処理をされていないという事実だけは御判断いただけるのじゃないかと思います。  第二の監督官の注意勧告について、労働組合のほうに通告をしろという要求が出されたのでございますが、これは会社側のほうからはないわけでございます。このことがきわめて不幸な事態に発展したのは北炭夕張事件でも明らかなわけなんですが、こういうあまりにも大きかった犠牲なんですが、そういうとうとい経験の中から、私ども今度は法律的に監督官は労働組合に通知をしてもらいたいということを第二の点で申し上げる次第でございます。  第三の問題なんですが、法律によって申告ができるということになっています。炭労としてはまず自主保安、できれば労使で解決しようという基本的な方針を持っております。いまのところまだ、労使間で解決できなくて監督官庁に法律による申告をしたという例はございません。、第四の問題なんですが、いまの監督官の巡回の回数ではやはり不足しているのではないか。ところがいまの人員ではなかなかたいへんだと思います。したがってこの面からどうしても増員ということは、予算の関係等もあろうかと思いますけれども、ぜひ御検討をお願いしたいというふうに考えております。
  87. 平川久米藏

    ○平川参考人 まず最初の、保安問題で会社組合が協議しているかということでございますが、私たちの傘下の組合では、保安委員会保安問題については処理いたしております。ただ突発的な問題がございます。その場合にはやはり労使の交渉という形になってまいります。  それから監督官の注意、勧告等の労働者への周知ですが、この点につきましては、現在私たちの傘下では、先ほど申し上げましたとおり、講評の際に労使出席しておる支部もございます。それから保安委員会でこれが出されておる場合もございます。ただ保安委員会で問題を出されても、保安委員会は原則として月に一回しか開いておりません。臨時保安委員会を開いたということは、まだ私も聞いたことがございません。そういたしますと、必然的に月に一回、監督官の巡視後直ちに開けばいいわけですが、それが巡視前に開くということになりますと、まる一カ月間も問題が放置されるということになるわけです。必ずやはり巡視後保安委員会を開くようにすべきではないかというふうに思います。それから労働組合会社に対して改善要求をした場合に直ちに行なっておるかということでございますが、残念ながらこの問題については、そういうふうにはまいってないというふうに感じております。非常に労働者が不足いたしております。そうなりますと、必然的に生産面にその必要人員がさかれるという形になりまして、保安確保の面の人員が不足しておるのではないかというふうに感じられます。それから監督官に対して検査要求したことがあるかということでございますが、これは労働組合側から監督官の検査を要請したということはまだ聞いておりません。ただ私が現場で実際保安を担当しておるときに、一回そういう例は私自身ございましたが、その後ちょっと聞いておりませんので、事情をつかみかねます。  次に保安監督官の巡回頻度でございますが、現在二カ月に一回くらいの程度で行なっておるようでございますが、石炭産業現状から、やはり出炭確保というほうにどうしても経営者のほうは目を向けたがる状態でございます。必然的に保安面に注意はしておりながらも抜けたところがあるように感じます。こういうものはやはりサイドから監督監査するという制度が必要じゃないかというふうに考えます。少なくとも私は月に一回程度は巡回検査の必要があるのではないかというふうに考えております。
  88. 遠藤一三

    遠藤参考人 保安の問題についての協議でございますけれども、これはうちの傘下の職員は大半みずから計画を練って、そうして常時決裁を仰ぐということでありますので、組合としてその計画に参加するということは、いわゆる保安委員会あるいは労使協議会等で行なうだけであって、そう内容が重視されておるとは言えないと思います。  それから監督官の勧告、これは労働組合のほうにも周知徹底しなさいということでございますけれども、これについては異存はございません。ただしその前提となりますのは労、職、使、この三位が一体となって保安確保するという一つの自立性が確保されていなければならないと思います。かりそめにもそういう監督官の勧告があったことが直線的にそれを職場要求なりあるいは何かと結合したようなかっこうの要求となって、それが係員のつるし上げというようなかっこうになりますと、これは本末転倒しますので、こういうことが排除されるならば勧告の通知もけっこうなことだというふうに考えております。  それから実施されないので訴えたことがあるかということでございますけれども、これは私どものほうとしましてはございません。  それから監督官の巡回頻度でございますけれども、自主保安強化するのはけっこうであります。しかし何回も申し上げておりますように、特に職員増については、非常に企業は収支という面に対して敏感でございますので、もちろんこれをやらなければ災害が起きるんだということがわかっておれば、これはいかなる犠牲を払ってもするわけでございますけれども、この程度ならということがやはり災害に通ずる面もございますので、そういった面を考えますと自主保安というものはもう限界ではないのか。したがって当面やはり外部監査を徹底してもらって、そして保安確保をするのがよりベターではないかというふうに考えております。
  89. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうもありがとうございました。
  90. 藏内修治

    藏内委員長代理 中村重光君。本会議がございますので、簡単にお願いいたします。
  91. 中村重光

    中村(重)委員 御注意のとおり本会議がありますから、川原保安局長にちょっと。いろいろ保安面に対しては、いまあなたお聞きのとおりです。あらためてまた政府側にもお尋ねしたいと思いますが、伊王島の爆発の原因が明らかになったようであります。あなたのほうにはどう一体報告してきておるのか。さらにまた重軽傷者のその後の状態はどうなのか。遺族に対するところの対策はその後具体的にどのように講じられておるのか、まずこの三点に対して一応簡単に伺っておきます。
  92. 川原英之

    川原政府委員 お尋ねの三点につきましてお答えいたします。  第一点の爆発の原因でございますが、現在の段階におきまして、十日から継続的に坑内の実地調査を続けております。現在の段階では倒ワクその他の関係から見まして、D九号ゲート付近重点を置きまして、考えられます火源についての具体的な精査を現在行なっておる段階でございます。そのため必要な停滞試験でありますとか、あるいは必要な証拠品は現在坑外にあげましてそれぞれのテストを行なっておりまする段階で、まだ最終的にこれという断定のできる段階にまでは現在至っておりませんけれども、早晩この検討が試験の結果を待ちまして断定できるのではないか、かように思っております。もちろんその火源考えられますものはハッパでございますとか、あるいは電気関係、おそらくあのD九号ゲートの関係でございますと、その二つのところにしぼってこられると思いますが、そのいずれであるか、どの個所であるかという点につきましては、現在テストを行なっておりますので、もうしばらくお待ちをいただきたいと思います。  それから第二点の入院されました方でありますが、重傷者が三名ございますが、軽傷者のうち二名がすでに退院をされました。ほかの方も現在私ども現地から聞いております限りでは、順調な経過をたどっておるというふうに伺っております。なお重傷者のうち一名は大腿骨折でありますので、長崎医大の病院のほうに転院をされまして治療中であります。この方につきましては、骨折でありますので若干の日時を要するかと思います。  第三点の遺族の問題でございますが、まず第一の問題といたしまして、労災補償によります労災補償金は十七日に全額を支払ったと報告を受けております。なお会社側とのいろいろ交渉その他によります補償料及び今後の遺族、特に伊王島の場合には未亡人が三十名おられますが、この方たちの就職につきましては、現地に設置されました対策協議会及び県内職業安定所を含めました相談所を設置をいたしまして、もちろん第一次的には会社側のほうでこのあっせんをはかるということになると思いますが、最終的にはその機関をもってお世話をするという体制だけ整っておりますが、現在まだ労使の交渉が続いておりますのでその結果にもよりますし、また遺族の中でなお四十九日も済みませんので、今後の身の振り方等についてまだはっきり決心がきまらない方もだいぶあるようでございます。それらのお気持ちが定まってからそういう機関が御相談に応じてあっせんを申し上げるという体制だけは現在しいております。
  93. 中村重光

    中村(重)委員 以上の三点に対しましてはまたあらためていろいろお尋ねをいたしますが、政府としても組合側、経営者と十分話し合いをされて遺憾なきよう措置してもらいたいと思います。  さらにまた、あなたのほうは夕張事故の際も、全国局部長会議を開いて総合検査をひんぱんにやるんだと決定された。そうしてまた今度の伊王島事故のあとにおいても総合点検をやるんだ、こう決定された。いつも事故たびごと保安はうまくやっておったとか、総合点検をひとつ厳重にやるんだとおきめになる。おきめになるけれども、少しも実施されない。それは先ほど来各参考人からるる問題を指摘されたことによっても、あなたはおわかりだろうと思う。特に今度の伊王島の場合におきましては、二月一日、二日と巡回検査をおやりになった。ところがその後は全然検査をしていないばかりか、二月十七日からD八払いの掘進、採掘が始まったんです。それから一カ月有半。しかも九十メートル進行しているんですよ。そういう非常な採掘に対しても全然あなたのほうは検査をされなかったということは、私は職務怠慢だと申し上げたい。大体二十メートルから三十メートルくらいのときに非常な変化があるわけですから、その段階で当然あなたのほうは臨時検査をやるべきだ。それをおやりにならずに、九十メートル掘り進んでおるにもかかわらずやっていなかったということに対しては、あなたのほうとしてはそこまで直接的な事故原因でなかったにしても、その責任を十分ひとつ感じ取ってこの後の対策を講じてもらいたい。それらの点等に対しましてはあらためてまた質問をいたしますが、特にお答えがあればその点伺っておきたいと思います。
  94. 川原英之

    川原政府委員 ただいま中村先生から御指摘ございましたように、あの切り羽に対しまして、検査後の切り羽でございましたために検査をいたしておりませんことは御指摘のとおりであります。この点私も遺憾に存じますし、また申しわけなくも思います。幸いに今年度の予算が相当増額を見まして四月から実際に実行に入っておりますので、今後の巡回検査等につきましては従来より相当頻度を高めることができますと同時に、総合検査の予算も相当とっておりますので、これによって、ただいま御指摘をいただいたようなことのないように私といたしましても十分やってまいりたい、かように思います。
  95. 藏内修治

    藏内委員長代理 この際参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多忙中にもかかわらず、たいへん長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。   午後二時三十一分散会