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滝井委員 あと二問です。これで逐条は終わりました。
そこで、自治省に来ていただいておりますので、二つ
お尋ねします。
一つは、千七百五十万トンという、四十二年までに相当の山をつぶしていくわけです。そうしますと、ここで問題になるのは炭住でございます。これからだんだん大正鉱業みたいな、あるいは比較的北九州に近いような山がつぶれるばかりでなくて、大手の山も相当これは
閉山、合理化になっていくわけです。そうしますと、千戸、二千戸、はなはだしいのは六千戸の炭住というのが一挙にスラム街化するわけです。それが北九州に近いところ、あるいは町のまん中にありますと、これは非常にその当該市町村にとっては大問題なんですね。どういう面が出てくるかというと、まず、いままで
炭鉱がやっておった清掃事業、し尿のくみ取り、これらのものがストップしてしまうわけです。たまたまそこで第二
会社ができておれば、これは第二
会社がやることになるが、五千戸、六千戸の世帯、そうすると、これは一家族三人おるとすれば一万五千人になります。いままで全部それは
炭鉱でやっておったわけです。ところが、それを今度はだれがやるかということになると、簡単に市町村もそういうし尿の処理とか清掃をやれないわけです。市町村がやるとすれば、何らかの金をどこからか支給してもらわなければならぬ、こういう問題が起こるわけです。一方、炭住はスラム街化してくるわけです。いままでは
炭鉱が手入れをし、修理をしておった。ところが、
閉山をしてしまった
あとの
炭鉱の姿というくらい落莫たるものはないわけです。そこで、そういうスラム街化する千戸、二千戸の炭住というものを
一体政府としては、合理化で買い上げた後にどうするかということです。それから、し尿のくみ取りとか清掃の
措置というものを、
一体どういうような形でやっていこうとするのか。こういう問題について、私は
石炭調査団の有沢さんにもお話しした。これはなかなか重大な問題だと言っておったけれ
ども、答申の中にはその問題は出ていないわけです。御存じのとおり、
炭鉱がこれらの千戸、二千戸の炭住を建てるときには、かつて国会で問題になりましたが、復金の
資金を安い
利子で借りて建てているわけです。そうすると、いまはこれを自分のもあだとして、別
会社をつくって家賃を取るなんということは、簡単にできるものではないと私は思う。そうすると、当然町のまん中、あるいは北九州に近い、そういう何千戸に近い炭住がスラム街化しようというのを防ごうとすれば、幸いにいま
政府は労働者の財産形成の政策を打ち出しているわけです。持ち家
制度ですね。いまの社宅というものは労務管理的なニュアンスがするからいけないのだ。社宅に住み、社内預金をさせられ、老後を保障する年金を
企業年金化してしまったら、日本の労働者というものは魂を抜かれてしまったでくの坊になってしまう。そういうことではいけない。ほんとうに労働者が独立の精神をもって
企業に協力をしていくという自由と独立の精神を持つためには、まず自分の本居の家屋を自分のものにする必要がある。社宅の
制度というものはよくない。これはみなの意見の一致していることだ。だから西ドイツその他もやっておるし、石田労働大臣もそういう方向に事態を推進しようとしておると思う。そうしますとこれは、長年
炭鉱に働いて、
炭鉱がつぶれたら、そのスラム街化そうとする住宅を一挙に労働者に払い下げてやることも、一つの
方法かもしれません。しかし
政府はやはり住宅公団その他に命じて、何千戸と家が建っているのですから、しかもそれは非常に立地条件のいいところですから、ここに私は、そういう炭住を改造をして、産炭地ですから、東京みたように五階建て、六階建てなんという、住宅公団が建てているような高層アパートはできかねる、せいぜい三階
程度です。私はそれでいいと思う。その炭住の土地とそれから家屋を一挙に
合理化事業団が安く買い上げて、そうして今度は市町村に安く払い下げてやるわけです。これは
合理化事業団が買う分なら、いままでの
実績を見ても、筑豊で坪当たり百四、五十円から二百円
程度でしょう。帳簿価格
程度で買えるのです。炭住なんというのは、これは
事業団が売っているのを見ると、五戸住いの一棟が一万円か一万五千円で鶏小屋にどんどん売られているのです。筑豊はいま非常に養鶏が盛んです。農家はこれを鶏小屋に買って、屋根瓦を売ると結局鶏小屋がただで建つわけです。こういう話です。したがって安いのですから、何千戸の社宅を労働者にしばらく無料で住ませて、そうして年次
計画で三階建ての公団住宅に仕立てていくわけです。いま住んでいる人は、その土地と住宅とにいままで住んでおった権利があるのですから、一階に住ませる。しかし二階、三階は一般の住宅としていくんだ、こういう形の炭住の再編成
計画というようなものを、もう少し
長期の展望に立ったものをやる必要があると私は思う。いま大手の
炭鉱でも千戸、二千戸、はなはだしいのは六千戸の炭住というものをもてあましておるわけです。そこには全部労働者が入っておったわけでしょう。最近はその炭住がだんだんあきができるわけです。あきができますと、
一体だれが入ってくるかというと、生活保護者が入ってくるわけです。生活保護者がいま住んでいる町のあばら家よりか、まだ炭住のほうがずっと優秀です。そこで炭住に入ってくる。そうすると、家賃は安いし、ふろは近所にあるから非常に便利です。
炭鉱が終わった
あとでも、ふろは何とかやっておる。そうすると、便利ですから入ってくる。このことがやはりますますスラム街化を促進することになる。これは非常に盲点になっている大問題だと思うんですよ。これはもう大手がみんなそういう
方針をとっていく。
閉山したら大手は、炭住は買い上げてくれないですから、だれかが住まなければならぬが、より高い家賃を取って、そうして家を修理するということは不可能なんですね。家賃を取っておっても、ただ取るだけですよ。そしてこれが老朽化して倒れるまで住まわしておくという、こういう安易、こそくな、当面を糊塗する政策に終わってしまう。
そこで、これはひとつ、
石炭政策をやった
井上さん、今後地方自治体における財政問題にも関連してくるのです。これはいま言ったように、し尿の処理その他の支出が多くなる。固定資産税は住んでおる人は払いはしないのです。こういう点で画期的な政策をひとついま言ったようなぐあいに打ち出す必要があると思うんですよ。そしてそこにそういう住宅ができれば、
労働力はそこにきちっと住めることになるのです。あなた方のほうで東京商工
会議所等に、筑豊には産炭地振興
事業団が工場誘致の安い用地をつくっておる、行ってくれというと、みんなそれは行きたいという相当の希望者があるということを、このごろ新聞で私は見ました。そうすると、住宅が一番問題があるのですね。そこで、そういう住宅をだんだん再編成して、少なくとも三階建てぐらいにしておけば、一階の人はいまの人に住まわせる。二階、三階は新しい人が住めるのですから、そういう炭住の若返り政策をとる必要がある。非常に立地条件のいいところがたくさんあるわけです。この問題については、
一体政府は積極的にやる意思があるかどうかということです。これはまず事務当局のあなた方の意見を聞いて、そうして建設大臣なり通産大臣なりに来てもらって、もうしばらく、あしたでも詰めたいと思うのです。この問題をひとつ自治省の立場と通産省の立場とちょっと明白にしておいていただきたい。