○
吉國政府委員 私、おくれてまいりまして、御質疑を直接承っておりませんので、あるいは御趣旨を誤解してお答え申し上げるかもしれませんが、その場合はあらためておただしいただいてお答えしたいと思います。
公正取引委員会が定めました
懸賞の
最高限度というものにはずれて、いわばその
最高限度を越えたような
広告をした場合に、それに対して
公正取引委員会が
排除命令をすることができますが、その場合に、
懸賞広告という性格を持った
契約自体はどうなるのかという御質疑だと承っておりますが、この点につきましては、御
指摘のように、
民法第九十条に、「公ノ秩序又ハ善良ノ風俗二反スル事項ヲ目的トスル
法律行為ハ無効トス」という
規定がございますが、
公正取引委員会の定めました
懸賞金の
最高限度というような規律が「公ノ秩序」というものに当たるかどうかということにつきましては、非常にむずかしい問題があると思います。これについて、直接その問題ではございませんが、戦争中なりあるいは戦後の経済統制を行ないました場合に、たとえば現在の物価統制令あるいは戦前の価格等統制令に
違反したようなものの売買
契約の効力いかんということが裁判所でもいろいろ問題になっております。たとえば卵一個十円と定められた場合に十五円という
契約をした場合に、それが全部無効であるか、あるいは十円をこえる五円の部分が無効であるか、あるいは
契約をしたということ、あるいは卵を売買したということが、
公法上の規律に反して罰則はこうむるけれ
ども、
契約それ自体は有効であるかどうかということにつきましては、学説、判例もいろいろ分かれておりまして、下級審の判決といたしましては、当時の国が経済統制を遂行することによって国民経済を整斉と維持することができるという趣旨からいたしまして、これを完遂しなければ国民経済に重大な影響を及ぼすという趣旨から考えれば、十五円という
契約をすること自体を無効としなければ、十円をこえて
契約してはならないという規律を維持することができないという判決もございましたけれ
ども、これに対しまして、これは単に公の経済秩序を維持するという目的のためのものであるから、私
契約としては有効であるというような判例もございましたし、学説もございました。そのような経緯がございまして、経済統制法令に対する
違反が、
契約が無効になるか、あるいは無効とまでいかないで、私
契約としては存続するかということについては、ついに学説も分かれたままで今日に至っております。それを頭に置いて今度の問題を考えてみますと、これは将来裁判所に参りまして、あるいは公序良俗に反するという判決もまた出るかもしれませんけれ
ども、ただいま私
ども考えてみますと、経済統制についてさえもそのように学説が分かれているということを前提にして考えます場合に、
公正取引委員会が定めました
懸賞金の
最高限度というものが、
契約それ自体の効力まで失わしめるほど非常に絶対的に強いものであるかどうかということについてはやや疑問の念を持たざるを得ないということが結論ではないかと思いますが、民事法と経済法との交錯についての非常にむずかしい問題でございますので、ただいまの段階ではその
程度にお答え申しげ上ることでお許しをいただきたいと思います。