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1965-04-28 第48回国会 衆議院 商工委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月二十八日(水曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 内田 常雄君    理事 浦野 幸男君 理事 小川 平二君    理事 小平 久雄君 理事 中川 俊思君    理事 板川 正吾君 理事 加賀田 進君    理事 中村 重光君       小笠 公韶君    海部 俊樹君      小宮山重四郎君    田中 榮一君       田中 六助君    中村 幸八君       長谷川四郎君    古川 丈吉君       三原 朝雄君    大村 邦夫君       桜井 茂尚君    島口重次郎君       山崎 始男君    麻生 良方君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  竹中喜満太君         中小企業庁次長 影山 衛司君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局参事         官)      高見沢二郎君         通商産業事務官         (企業局次長) 乙竹 虔三君         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 本日の会議に付した案件  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第五〇  号)  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法  律案内閣提出第一二七号)  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法  律案板川正吾君外十四名提出衆法第三二  号)  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法  律案麻生良方君外一名提出衆法第三号)      ————◇—————
  2. 内田常雄

    内田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案、同じく下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案板川正吾君外十四名提出下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案及び麻生良方君外一名提出下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑の通告がありますので、これを許可いたします。島口重次郎君。
  3. 島口重次郎

    島口委員 きのう社会党大村委員から質問がありましたので、重複しない点だけ若干お尋ねしたいと思います。  今度独禁法の第十条の改正で、従来なら総資産一億円以上のものが届け出義務を有したけれども、これを五億円に引き上げるということなんですけれども、一億に限定しておりますと、届け出義務を有する会社はどの程度あるのか、特に泉北大県の状態お尋ねしたいと思います。
  4. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 総資産一億、それから総資産五億という数字による会社の数というのは、必ずしも的確には統計が出ておりません。しかし大体資本金と総資産との関係を全体的、統計的に見てまいりますと、総資産五億というのは、ほぼ資本金五千万円に当たるのじゃないか、それから資本金一億というのは、ほぼ資本金一千万円に当たるのではないかというふうな推定を前提としますと、税務統計のほうから一応数字が出ます。それでいまの資本金一千万円以上の会社総数は三十八年現在におきまして三万一千百六十七であります。それから資本金五千万円以上で切りますと、この数字が七千六百になることを予想しております。
  5. 島口重次郎

    島口委員 提案説明を見ますると、総資産が一億だと限定いたしますと、中小企業相当制約をされる、こういう説明になっております。この点は各地域によって相当違いがあると思いますけれども、特に後進地域におきましては一千万円以上の会社というのは幾らもないと思います。そういたしますれば、中央におきまして大資本とまでいかなくても一億内外の会社が、競争が激しくなって後進地域に進出をして、後進地域のあらゆる産業面が、そういう中堅企業独占されるという可能性が出てくると思いますが、どうなんでしょう。
  6. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 大都市の場合といわゆる後進地域との場合とに相当の違いがあるだろうということはわれわれも考えております。しかし、一応競争関係役員兼任あるいは株式所有によって実質的に解決されるかされないかということをつかむのが、株式所有なり役員兼任についての届け出をわれわれが法律によって要求しておるゆえんだと思います。そうしたことから考えて、過去の経験から見てまいりますと、今度の改正によりまして届け出義務を排除する、そうした資本金にすれば一千万から五千万程度、総資産にして一億から五億円程度会社においてそういうことが生まれるという事例はきわめて少ないといいますか、ほとんど見られない、こういう状態にありますので、一応届け出の手数もございますので、これをその中間届け出はとらなくてもいいようにしたらどうだろうかということを考えて改正案を出したわけであります。  ちなみに、現在の一億というのは、昭和二十八年の改正当時にきまったわけでございますが、その当時における法人総数と、それから届け出義務を負っておる会社の数との割合は一・四%程度でありました。その後、会社全体がふえたこともありますが、同時に、それぞれの会社規模が大きくなったということもございまして、現在五億でもって切りました場合において、会社総数に対する届け出義務会社の予定されておる数の割合は、やはり一・二%というか、大体その程度数字になりますので、その辺をとりあえず届け出でつかまえてまいりますれば、一応法律の要請しておる目的は達成し得るのではないだろうか、こういう感覚でもって改正案を出したわけでございます。
  7. 島口重次郎

    島口委員 ただいま五千万円以上の資本金会社に限定いたしますと七千六百という説明ですけれども、これを地域的に分けてみましたら、北海道東北関係はどうでしょうか。
  8. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 税務統計でございますから、その地域的な細部の統計はあるはずでございますが、ちょっといま手元に持っておりませんので、なんでしたらあとで御報告申し上げたいと思います。
  9. 島口重次郎

    島口委員 私、この前に北海道東北開発公庫に行きまして——あそこの融資の条件というのは一千万以上の資本金でなければならないのですね。その面から調査をしてみると、後進地域の最たるものは、相当広範地域でありましても四件か五件よりもないのです。一千万以上の資本金の株式会社、こう限定いたしましても四件なり五件である。さらに五千万ということに引き上げまするとほとんどないというような現象が出てくるんじゃないか、こう思いますが、その点どうでしょう。
  10. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 いま手元に資料がございませんので、的確なことを申し上げるだけの材料を私も持っておりませんが、後進地域におきましては、資本金の額五千万円以上という会社がそうたくさんないということは、それはおっしゃるとおりだと思います。ただ中小企業基本法などにおきましても、あるいは他の法律のいろいろな関係におきましても、一応五千万円のところでもって中小企業であるかないかの線を引っぱっておりますこともございますので、その程度までは一応届け出義務を免除していいんじゃないだろうか、こういう考え方がわれわれのほうにあるわけでございます。
  11. 島口重次郎

    島口委員 経企庁の参事官が来ておりますね。私がただいま申しました北海道東北開発公庫の中で、五千万以上で融資を受ける方がどの程度あるか。一千万以上でなければ融資をしないということになっておりますけれども、その東北北海道、特に東北の場合におきましては、県別数字をお開きしたいと思います。
  12. 高見沢二郎

    高見沢説明員 御質問の点でございますが、ただいままでの県別融資はわかっておりますが、資本金別の一千万以上あるいは五千万以上のものをいまちょっと調べておりますから、後ほどお答えさせていただきたいと思います。
  13. 島口重次郎

    島口委員 私の記憶によりますると、青森県では指折り数えるだけもないと考えます。特におくれておる青森県の津軽地帯におきましては、この前私が調査に参りましたときには、一千万以上で四件よりも融資を受けておらない、こういうような零細資本が多いのであります。そういう面から考えますると、今度五千万に引き上げる、届け出義務改正いたしますると、その程度企業がどんどん地方へ出てきまして地方産業を撹乱する、独占するおそれがすこぶる濃厚だと考えますけれども、先ほど委員長説明ではどうも納得いかないのですが、具体的にもう少し説明願いたいと思います。
  14. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 現在問題になっております届け出義務の問題は、結局役員兼任の場合あるいは株式所有の場合に、現行法では総資産一億円以上、改正案が通れば五億円以上のものが届け出義務を負う。届け出義務を負わしておりますのは、法律禁止しております競争実質的制限というものを、その届け出をひとつのきっかけとしてつかもう、こういうねらいだと思います。しかし、届け出のあるなしにかかわらず、一応法律禁止されております事態が生まれておれば、これは別途手が打てるわけでございまして、大体われわれのほうのねらいとしましては、一千万から五千万までの閥が、株式所有あるいは役員兼任といったようなところでもって独占といいますか、競争排除というようなことはあったとしてもきわめてまれなケースじゃないだろうか。したがいまして、そうしたところにおける届け出義務は一応免除してもいいのじゃないか、こういうのがわれわれの今度の改正案考え方であります。
  15. 島口重次郎

    島口委員 届け出義務というのは、委員長のおっしゃるように調査をいたします手がかりとする、この点はわかります。だけれども、あらゆる基準というものは、中央の財界なり経済界基準としてものの尺度をきめるというのは、各地域から見ますと客観的な事情を無視する可能性が出てくるのじゃないか。いまおっしゃるように手がかりの具体的な方法というのは、やはり届け出制度から出発をすると思います。そういう面から見ると、どうも五億円に引き上げるというのは問題点があるのじゃないか、こう考えるのですが、この点はどうも納得いかぬと思います。最近の状況を見ますと、建設業であろうと製造業であろうと、中央から地方にたくさん進出して中小企業分野を侵食しているのが事実であります。こういう面から、全体のパーセンテージだけからではなくて、一億から五億ということに一挙に引き上げないで、その中間的なことは考えられないですか。
  16. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 お話のようにそうした事情は、たとえば東京のような場合と、先ほど話題に出ましたいわゆる後進地域と称せられている地方の場合とでもって事情がかなり違うのじゃないか、私も同じように考えております。したがいまして競争実質制限が行なわれるか行なわれないかというような問題につきましては、これは一定の取引分野という問題になりますが、これはたとえば東京のような場合と後進地域のような場合とでは、やはりこれは業種によっていろいろ違いますが、その地域地域に応じた判断をしていくべきものだという点は私も同じように考えております。ただ、それでは東京なら東京の場合は幾ら、それでほかの地方の場合は幾らということになりますと、一体それは本店でとるのか、営業所でとるのか、いろいろな問題がからみ合ってまいりまして、なかなかその区分はしにくい。そこで先ほど申し上げましたように、一応五千万円というところで中小企業であるかないかということが線を引かれております。中小企業がいわば実質的な取引制度というようなことになる行為をするということは、これはきわめて例外的な場合以外にはあり得ないのじゃないだろうか、こういう考え方も考えられますので、今度一億から五億——まあ考えようによってはその中間もあり得るのじゃないかということも考えられないじゃありませんが、中小企業基本法あるいはその他のいろいろな法律関係が、大体資本金五千万円というところでもって中小企業一つの線が出ておりますので、それに合わせるのが妥当じゃないかと考えて改正案を出したわけであります。
  17. 島口重次郎

    島口委員 この問題と取り組むところの姿勢の問題でもありますけれども、届け出についての義務は五億にいたしましても、独占なり競争排除の面から具体的な規制が出てきますと、あなたのほうではサービスをやる、取り上げて問題にする、こういうことなんですけれども、公正取引委員会機構を見ますと、その対象が非常に複雑多岐なんですね。それで、今度十一名の増員になっておりますけれども、この程度陣容で、はたしてただいま委員長のおっしゃるとおり公正取引委員会事務が完ぺきを期することができるかどうかという点も非常に問題だと思います。そういう面からいいますと、届け出義務は、あえて五億に引き上げなくても、むしろ機構を強化いたしまして、あなた方のやるべき業務執行というものを完ぺきを期するというほうが優先すると思いますが、どうですか。
  18. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 委員会といたしましては、お話の点は実は全然同感でございます。現在の陣容あるいは今度の改正案による十一名の増員でもってわれわれのほうの責任が十分果たせるかということになりますれば——昨日もちょっと話題に出ましたが、われわれのほうも、当初は少なくとも四十五名の増員を要求していたわけでございまして、それでも、それが全部認められたとしましても、われわれの考え方としてまだまだ不十分だと思いますが、そう一挙にとも思いませんので、四十五名要求したわけですが、それが政府のほうの査定によりまして十一名と、こういうことになったわけでございます。その点は私としては非常に遺憾に思っておりますが、ただ、われわれとしましては、一応与えられた人員の範囲内においてできるだけ万全期をするようにやってまいりたい。今後ともその点については努力していくという姿勢でこの問題に取っ組んでいくつもりでございます。
  19. 島口重次郎

    島口委員 ただいまの説明のとおり、機構そのもの改正強化いたしますることが優先だと考えております。公取のほうではそういう意向を持っておるようですけれども、対政府関係でなかなか思うようにならないという説明でありますから、その線で強く御努力してもらいたいことを要請いたしておきますけれども、問題は、先ほども申し上げましたとおり、経済規模が大きくなっていることもわかる、それによって引き上げることのやむを得ざる事情等もわかるけれども、ただ、委員長説明によりますると、中小企業対策の面からむしろ五億円に引き上げるほうが妥当である、こう言うけれども、客観的な後進地域経済事情判断する把握のしかたの問題であります。この面から考えると、ただいま私が質問いたしましたのに対してまだ答弁がないから残念であるけれども、一千万以上の会社であろうとも、現段階におきましては指折り数えるしかない。それを五千万円に引き上げることが、届け出義務が緩和をされるということが、逆な面から申し上げますならば、そういう中堅企業と称するものがだんだん後進地域のほうに浸透いたしまして、後進地域における小零細企業の方の間を撹乱する可能性が出てくると思います。そういう面を十分配慮いたしまして、この法の運用を考えてもらいたいと考えます。  それから次は、下請代金支払遅延防止法の一部改正案お尋ねをいたしますが、政府案社会党案民主党案、こうあるわけでありますけれども、ただいまの規定から言うと、一千万円以上のものでなければ親会社の資格がない、こう言うけれども、一千万円以下でありましても、トンネル会社と称するものがあって、一見親会社的性格を持っているものがたくさんある。そういう場合の規定は、公取といたしましてはどういう援用をするのか、その点お尋ねいたします。
  20. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 前段の御要求、御希望あるいは御要請につきましては、われわれも十分注意した運営をしてまいりたい、かように考えております。仙台の地方事務所の増設なども、おそらくお話のような点につきましては相当役割りをしてくれるのじゃないかというふうに思っております。  それから、御質問下請代金関係におけるいわゆるトンネル会社の問題でございますが、われわれもそうした問題について全然無関心であるわけではございませんが、まだ実体的に見まして、どこまでそういう会社がどんなふうな状態になっているかということについての調査が必ずしも十分にできておりませんので、したがいまして、今度の改正案におきましては、その問題はもう少し実体をはっきり把握した後において適当な案をつくりたいというふうな考え方でございまして、一応その点についてのトンネル会社把握という問題につきましては、問題を今後に残していくというのが政府改正案であるということは、率直に認めていいと思います。
  21. 島口重次郎

    島口委員 次には、第四条の第二項の「下請代金支払につき、当該下請代金支払期日までに一般金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。」、これは、だれが一般金融業界から割引をしてもらえるかどうかの判定をするのですか。この点をお尋ねをしてみたいと思います。
  22. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 その点につきましては、実はわれわれも、法文の立案の機会において非常に苦労をした次第でございます。手形のサイトを法定化したほうがいいじゃないかという御意見もずいぶんございましたし、法制局におきましてもずいぶん検討した結果でございますが、結局一つは、とにかくその手形を受け取った、しかし法定期日までに割引することができなかった、できないというまでに至らないで、もう少し前の段階においても、困難であるというところでもう押えていいじゃないか。したがいまして、それはもちろん、親会社のほうでもってかってに判断すべきものではございませんで、むしろ下請中心としまして、下請信用状態とか信用能力とか、そういうものを中心としまして、下請がその手形通常の努力をした場合におきましてもなおかつ割り引くことがむずかしいということになれば、一応それは法定の期間内の割引が困難であるということに該当するというふうにわれわれは解釈しております。
  23. 島口重次郎

    島口委員 それでは、ただいまの説明によりますと、金融機関に行きまして割引を要請する、割引ができた場合には、金融機関割引のできる手形解釈するのですか。結果論から解釈するのですか。
  24. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 手形によって、たとえば高利貸しへ持っていけば割り引くというような問題はもちろんあり得ると思います。しかし、われわれのほうでもって改正案として出しておりますのは、一般金融機関考え方になっておりますから、都市銀行地方銀行あるいは相互銀行信用金庫とか、少なくとも大蔵省の監督を受けている一般的な金融機関において、その手形を持っていっても割り引けないというような場合におきましては、当然その割引困難であるというものに該当すると思っております。
  25. 島口重次郎

    島口議員 親会社のほうでは、市中金融機関に持っていけばだいじょうぶ割引ができる、こう認定いたしましても、できない場合があるわけですね。割引をしてもらう子会社信用状況割引されない場合もある、こういうことがあり得るわけであります。そういたしますると、割引のできない原因と称するのは、子会社のほうの原因によりましても市中金融機関で割れない、こういう解釈が出てくるのですか。
  26. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 手形割引につきましては、お話しのように、振り出し人信用状態と、それからその手形を受け取ったものの信用状態といいますか、割引を要求する裏書人信用状態と、両方が重なり合いまして、そして手形が割り引けるか割り引けないかということがきまる問題だと思っております。したがいまして、親会社のほうとしましては、やはり相手方下請信用も十分考えてやって、相手下請相当強いものであればこの程度ならば割り引けるだろう、相手信用が弱ければこの程度でもなかなか割り引けないだろうという判断を十分下した上でもって親会社としてはめんどうを見てやるべきだ。同時に下請としては、よその下請なら割り引けるんだからおまえのところだって謝り引けないことはないはずだということは親会社には言わせない。そういう両方を考えた上で親会社としては手形を耕すなら出せ、こういうような判断でこの条文は運営していくべきものだと考えております。
  27. 島口重次郎

    島口委員 ただいまの説明のとおりに、手形割引と称するのは、親会社信用状況子会社信用状況によって割引するかしないかを決定されるというが、そこでもう一度お尋ねいたしますけれども、割引のできない原因と称するのは子会社のほうにいたしましても、そういう手形を翻してはならないということであるかどうか。それからもう一点、割れる、割れないということが信用状況にもあると思うんです。経済界金融業界が不況になりまして引き締めをやってくる。従来なら割ってもらえる手形でありましても割れなくなる。こういう経済的な変化の事情等によりましても割れない場合が出てくるのであります。そういう場合の配慮はどうなるんですか。
  28. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 その全部をわれわれは総合して考えていくべきものだと思っております。したがいまして親会社のほうとして相当力のある子会社に対して出した手形、それは子会社のほうで割り引けるんだからおまえのところも翻り引けるはずだというふうな判断ではいけないんで、やはり相手方下請のほうの信用状態も十分考えてやって、そうして割り引けるか割り引けないかということはその両者を合体したところで判断すべきものだ、こういうふうに考えております。  それから、お話のように金融情勢によりまして非常に金融が逼迫していれば、通常の場合なら割り引けるものも割り引けない。あるいは緩慢であればその逆もあり得るわけですが、どちらにしましても、そうした情勢まで込めて判り引けるか割り引けないかは判断すべきだ。そういう点が、実はわれわれのほうとしましても手形期日を固定化するということに非常に困難を感じまして、そうして、なかなか何日ならいいということが言い切れないというので、いまいったような条文になっているわけでありまして、したがって、それだけにいまいったような総合的な判断をこれによって下し得るというところに、非常にばく然とした書き方でありますが、同時にそれの妙味もあるんじゃないか、かように判断して、おります。
  29. 島口重次郎

    島口委員 委員長考え方はだいぶわかりましたけれども、もう一つ具体的な例を上げてお尋ねしたいと思いますが、たとえば子会社の場合、あらゆる事業家がそうですけれども、銀行と特約をいたしまして、A会社ならA会社が一千万まで手形割り引契約をしておる。あるいはB会社のほうでは五百万まで割引手形の契約をしておる。そこで五百万一ぱい割っておりまして、親会社のほうから手形をもらいましてもあと割るワクの余裕がないという場合が多々あると思います。そういう場合にもいまの総合的な解釈の中に入るか入らないか。
  30. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 私もお話の点があることを十分承知しております。で、結論を申し上げますと、そういう点まで総合判断の中に入れて、そうして割引が困難であるかないかをきめるべきだ、かように考えております。
  31. 島口重次郎

    島口委員 これは社会党提案の案ですけれども、手形を発行いたしまして、それを割れるか割れないかというのは、銀行へ持っていきましても即座に結論が出ない場合が多々ある。そういう面から考えると、手形発行期日と称するものを支払い期日内にするような制度にしてはどうかと思いますが、この点はどうですか。
  32. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 一つ考え方だと思いますが、ただ現状を見てみますと、社会党の御提案のような線とあまりにかけ離れ過ぎているような実情にあると思います。したがいまして従来われわれも、現金払いが原理である、で、手形払いが絶対にいかぬわけではないが、しかし手形払いにしましても一応法定化されている六十日の間に割り引けるものでなければならない、こういうので指導をしてまいったつもりでございますが、なかなかそれが現在の法文におきましてははっきりしておらないために徹底を欠いていた。したがって、まずその線をとにかく実行に移していくというのが第一のステップとして適当な措置ではないかというのが現在のわれわれの考え方であります。
  33. 島口重次郎

    島口委員 政府案から考えると、法定期日の六十日間に割引をしなければならない、こういう解釈だけれども、この間の解釈事務の取り扱い等の問題でいろいろトラブルが出てくると思います。その際、総合的な解釈から割れるものでなければならない、こう言いましても、金融機関のほうの解釈いかんではなかなか馴れないというものが出てきます。そういう面に対する、親会社から発行された手形子会社の場合にも割ってもらえるという特殊な制度でもなければなかなか消化されないと考えまして、むしろ社会党案のほうが法定期日内ではっきり割り切れまして消化されますから、そのほうがよろしいと思いますが、どうなんでしょうか。
  34. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 結局金融機関のほうで割り引けないということになれば、法律による割引困難に当然当たるわけでありますから、われわれのほうとしましては、そういったような、手形でもって支払っているものについては、これは法律上適法でないという意味において当然勧告の対象になる、かように考えております。現在は、先ほど言いましたように法定期間内における現金払いが原則なのですから、その原則が現状において全部の下請について及ぼし得る情勢にあるとすれば、それはわれわれも、その面からだけから言えば好ましい姿だと思いますが、ただ現状を見てまいりますと、いわゆる親企業そのものの資金繰りなどを見ましても、一挙にそこまでいかなければならぬということに持っていくことが、はたして経済の実態に合っているかどうかという点についてむしろ非常にむずかしい問題を持っておりますので、われわれのほうでいわゆる企業信用のいろいろな調査もやっておりますが、親企業そのものがまたいろいろ苦しい面もあるような状態でもありますし、これは大きな問題になっているわけです。したがって、従来われわれが考えておりました、とにかく現金払いが原則だ、手形を出しても法定期間内に割り引けるものでなければだめだ、この線をまずとにかく実行に移していくというところが経済の実態に即した考え方じゃないかというのがわれわれの考え方であります。
  35. 島口重次郎

    島口委員 法定期日内に割引ができない、その際あなたのほうでは勧告をする等があるけれども、従来のやり方を見ておりますると、どうも勧告はするけれども刑罰的な強い線がないので、法のたてまえはそうなっておるけれども、今度の山陽特殊鋼の例などをあげましても、百五十日、百六十日、あるいは台風手形、お産手形であるというようなものが出ておるような状況であります。そういう面からいうと、もし政府案で押し通そうとするのであるならば、それに付帯いたしました罰則等のことをもっと強力にやる必要があると思いますがどうでしょう。
  36. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 山陽特殊鋼の事例などを見ましてわれわれも非常に反省する点が多いのですが、一つは、下請関係の台帳の整備といいますか、書類の整備、この関係は十分整備しておかなければ罰則の適用があるはずでありますが、その点が必ずしも十分いっておりませんので、われわれのほうが立ち入り検査した場合におきましても、伝票だけをぽこっと出されて、それをあっちこっち繰っている、そこには雑然といろいろなものが入っている、そういうところで山陽特殊鋼の場合におきましても十分目が行き届かなかったことが一つ、それからもう一つは、こちらから照会して、なかなか照会の回答が来ない、あるいは回答が来た分が必ずしも実態をそのまま写していない、こういった面も一つ問題としてあるようです。これについても、そうした虚偽の同等などについては罰則があるわけでございまして、今後におきましては、そうしたものを十分活用していくことがやはりこの法律をほんとうに生かしていくゆえんじゃないかというふうに考えております。  なお、勧告につきましては、われわれのほうで従来やってまいりました経験によりますと、大体勧告いたしますと、その勧告の線に沿って会社のほうもこれを実行していくというのが従来の例でございます。ただわれわれのほうの仕事をしてまいりますと、親会社自身がどっちかといえばかなりグロッキーになっていて、そのためには、やはりそれを是正するのにまあ三カ月とか半年とか、ある程度の期間をかしてやる必要があるような場合もあるようでございまして、そういった点はやはりやむを得ない。ただ、少なくとも誠意を持ってそうしたことに当たらなきゃいかぬということで、従来の行政指導、あるいは勧告をやってまいったわけでありますが、現在公取の内規として持っておりますそうした指導基準がもう少し——もう少しというか、もっとより厳格でなければどうも実効が上がらないんじゃないかという点を反省しまして、今度の改正を機会にそうした点についても見直していこうという気持ちは十分持っております。
  37. 島口重次郎

    島口委員 いまの法体系の面から考えると、政府案といたしましても相当前進的なものがある、こう考えます。ただ問題は、法の最大の成果を上げるというけれども、先ほどお話しを申し上げましたけれども、いまの体制で、いまの組織で、委員長の言うような実績をあげることができるかどうかに問題があるということです。最近のように破産倒産がたくさん出てきているので、この客観的な情勢に立ちおくれをしないで、情勢とともに行政の執行ができるかどうかということに非常に問題点があると思います。最近の例を見ましても、日本特殊鋼でありましても、サンウェーブでありましても、山陽特殊鋼でありましても、こういう問題をあなたのほうがひとり消化をできる体制、機構であるならば、法のたてまえがある程度緩慢でありましてもよろしゅうございますけれども、いまの陣容なり組織なりから見ますと、とてもいまの経済情勢から出てくるあらゆる原因と称するものを消化できないと思うのです。また、ただいま委員長お話にあったとおり、親企業経済関係から見ましても、直ちに現金では払えない。あるいは法の施行期日内で支払いができないということも当然あり得ることであります。ただ、しからばその親会社と称するのが、なぜ支払いができないかというような状況を検討してみますると、会社の放漫政策による場合もある。あるいは、力以上の設備投資による場合もある。そういうことを自然に押えるという姿をやるには、やはり支払制度というものを厳格に折り目をつけまして、法施行期日内で支払いをさせるんだというたてまえからいきますると、放漫政策も解消されてくる、それから力以上の設備投資も解消されてぐるという関係が出てくるから、この際、法の施行期日というものを厳格にして、手形の発行、支払い期日を決定したほうが、むしろあなた方のほうでも能率があがる、成果が出てくる、こう考えますが、この点もう一度お尋ねしたい。
  38. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 法のたてまえの問題と執行の問題とは、これはやはり並行していかなければならないものだと思います。法のたてまえから幾ら厳格に一応できておりましても、執行のほうの監査の目、監督の目が不十分であれば効果があがらない。これはお話しのとおりだと思っております。したがいまして、それじゃ現在のれわれの持っている陣容で十分かといえば、必ずしも十分とはちっとも思っておりません。しかし、下請の問題というのも、公取はよくいろいろこんな問題にぶつかりますが、むずかしい問題でして、よく私は申し上げるのですが、たとえば物を盗まれれば被害届けが警察に出てくる。そうすれば、一応警察としてはそこで事件の端緒をつかめるわけでありますが、下請関係というものは、そこにいわゆる不公正取引がありましても、なかなか訴えていくことができないようなところに下請の特殊性があるわけでして、したがいまして、結局当事者としては非常にふんまんであってもなかなかものを言ってこれないという点を第三者的な立場の者がつかまえようというところにこの執行のむずかしさがあります。しかし、われわれのほうとしては、やはり力の限度もありますので、できるだけいろいろな形において、いわゆる被害をこうむっている人からわれわれのほうへ情報を出してもらいたい。最近匿名などでいろいろ言ってくるのもありますし、それからときには、これはおそらくもう将来の下請関係を切ろうとしている人だと思いますが、名前を出してもらってもいいからとにかくこれをやってくれと言う人もございます。しかし、これは何といっても例外でございまして、したがって、われわれのほうとしましては、一つはそうした業者団体のようなもの、あるいは商工会議所のようなものを通じて、間接の声としてわれわれのほうへできるだけそうした情報を出していただきたいということも話を進めておりまして、現在協力団体としてお願いしているものが十八団体ございます。今後この線はさらに進めていきたいと思います。それから、今度の予算で、たいした額ではございませんが、この下請関係のそうした情報提供についての協力員をお願いする予算も少しつけてもらっておりますので、これもできるだけ活用していきたい、その成績いかんによっては、その数も将来はどんどんふやしていきたい、こういったようなこともあわせて用いまして万全を期していきたい。なお、同時に中小企業庁においても、この問題については大いに関心を持っていただくべき問題だと思っておりますし、昨年くらいから中小企業庁においてもかなり力を入れてきておりますので、われわれとしては、中小企業庁とも十分連絡をとりながらできるだけのことはしてまいりたい、こういうように考えております。
  39. 島口重次郎

    島口委員 委員長説明にもあるとおり、法のたてまえから申し上げますと、親会社子会社との対等な交渉をするというのがたてまえだと思います。ところが、実際取引等の中から検討いたしますると、先ほど来もお話があったように、台風手形というようなものも出ているのが事実です。そういう面から考え幸すると、子会社の諸君が公取なりあるいは中小企業庁に話を持ち出す場合には、よほど相手が悪質の場合、がまん、忍耐ができなくなった段階で出てくると思う。そういう面から考えると、法があるけれども、日常経済取引の中ではそう深刻に、厳格にやれないという内容もあると思います。そういう面から考えても、むしろ法のたてまえから申し上げますると、強く罰則規定などを設けまして、たとえばただいまの手形支払い期日にいたしましては、法施行の六十日間以内の手形発行でなければならぬ、こうやったほうがほんとうの意味において子会社を救済する、手形の行政事務の成果もあがる、効率も出てくると思いますけれども、こういう点はどうも見解の相違なようでありますけれども、もう一度お尋ねしたいと思います。
  40. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 そういったお話しのような、あるいは先ほど私の申し上げたようなむずかしい問題をはらんでいるこの問題であります。したがいまして、それは考えようによって、それだからこそ法を非常に厳格にしておいたほうがいいじゃないかという御意見もあると思いますが、同時に、法だけ厳格にすることによってむしろ実行を非常に困難な状況に追い込んでしまうというのがはたしていいだろうかどうだろうかということになりますと、むしろわれわれはそれに対して消極的に考えておりまして、やはり誠意のある親事業者であれば親事業者としては実行できるという線に一応持っておいて、それはぜひ実行しろということを強力に進めていくのが、結局この問題の解決に当たるんじゃないだろうか。親企業のほうにおいても、ちょっとそれは無理だと思うような厳格な線を出してしまいますと、かえって法自体が一応無視されてしまうような結果になってしまって、実行上かえって効果が上がらないんじゃないか。これは遺憾ながら意見の相違かもしれませんが、われわれはそういう観点に立ちまして現有の改正案を出しているわけであります。
  41. 島口重次郎

    島口委員 それでは、これ以上質問いたしましてもどうにもならぬと思いますからこれで打ち切りたいと思います。いずれまたあとで、ただいまの御答弁を聞きましたので、その上でどう対処するかを考えましてから御質問申し上げたいと思います。
  42. 内田常雄

    内田委員長 田中六助君。
  43. 田中六助

    田中(六)委員 下請代金支払遅延等防止法の一部改正法律案について、政府改正案中心質問したいと思います。  最近の経済情勢から見まして、景気は一応下降線をたどっておるのですが、下請受注額というものは、いろいろな倒産があるにもかかわらず伸びておるというような傾向もあるようですが、現時点におけるそういう現状認識についてお伺いしたいのですが、大体最近の下請受注額はどの程度ありますか。
  44. 影山衛司

    ○影山政府委員 最近の下請、特に下請受注額という点では調査をいたしておりませんけれども、大体の中小企業並びにそれを取り巻く産業界全般の金融情勢なり経済情勢というものの判断について申し上げますと、御承知のように、昨年十一月ころから非常に金融引き締めの影響度が強くなっておりまして、金融引き締めが浸透いたしまして不況感が徹底いたしまして、企業全体に非常に慎重ムードが出てきているというようなことで、経済界全体も多少沈滞ぎみであるというふうに私ども考えておる次第でございます。
  45. 田中六助

    田中(六)委員 この質問は多少無理な点があるのでしょうが、私が考えるのは、受注額の問題もさることながら、受注単価がどのように全体的に下請業者に反映していっているかという大まかな点をちょっとお聞きしたいのです。
  46. 影山衛司

    ○影山政府委員 受注単価につきましては、全般的の傾向といたしまして、金融引き締めが不況下におきましても——片一方におきましては開放経済体制という体制が進んでおることは御承知のとおりでございます。それに対処いたしますために、今後輸入の自由化等に対処をして合理化を進めていかなければならぬというような業界につきましては、下請に対する下請受注単価の引き下げ、合理化というようなものは相当強力に要請されているというふうに考えております。
  47. 田中六助

    田中(六)委員 受注単価の引き下げが下請業者の倒産に非常に響いておるというふうにいわれておりますが、大体下請業者そのものの存在につきまして。普通いわれておるのは固定資産、つまり設備投資の節約あるいは、低賃金労働、あるいはまた景気の変動の調節弁に下請業者を使っておるというふうな、大きく分ければそういうように三つの見方ができると思うのですが、そういう一つ経済的な発展といいますか、そういう点についての原則的なものにはあまり見方が変わってこないと思うのですが、それはどうでしょうか。
  48. 影山衛司

    ○影山政府委員 お説のとおりだと思います。
  49. 田中六助

    田中(六)委員 もう一点聞きたいのですが、下請業者そのもののいろいろの事情の変化もあるでしょうが、親企業つまり大企業間に格差というか、大企業そのものが大きく二つに分かれて、健全な大企業における下請業者はむしろ相互依存的なもので非常に伸びている。そういう意味では自由企業、つまり経済の自由性という点からも、悪い親企業と必然的に組んでいる下請企業が倒産するのはしかたがない、自然淘汰だという論もありますが、こういうものの見方について中小企業庁でどういうふうに見ておりますか。
  50. 影山衛司

    ○影山政府委員 先生お説のとおりに、健全な親企業の下についている下請企業というものは非常に発展しておりますし、先般来問題を起こしておりますところの山陽特殊製鋼のように不健全な経営をしておるものの下についている下請企業は非常に影響をこうむっているわけでありまして、そういう点にかんがみまして親企業、大企業のほうにおきましても非常にしっかりした経営態度を今後とってもらって、社会的責任を感じて、下請企業に不必要な悪影響を及ぼさないような経営態度をとってもらうように私ども考えているわけでございます。
  51. 田中六助

    田中(六)委員 あなたにもう一点お聞きしたいのですが、この法案の第六条で、中小企業庁長官が一応公正取引委員会に対してこの法律規定に縫い適当な措置をとるということになっているのですが、不正の調査ですが、どういう方法で調査をやっておりますか。
  52. 影山衛司

    ○影山政府委員 中小企業庁といたしましては、毎四半期大体二千の親企業に対しまして調査書を腐りまして、その回答を求めます。そのうち非常に下請代金支払遅延等防止法の違反の事例があると思われるものに対しましては、その中で特に悪質なものにつきましては立ち入り検査をいたしております。それから、その中で特に行政指導で改善ができると認められるものにつきましては、その親事業者を呼びまして行政指導で改善をさしておる。それから立ち入り検定の結果、特にまた悪質なものが認められます場合には、公正取引委員会のほうに勧告、公表の措置をとってもらうように一応移牒をいたしておるわけでございます。そういうふうな調査をいたしております。
  53. 田中六助

    田中(六)委員 公取委員長に、同じ質問ですが、公取はどういう方法でこの不正取引の調査をいたしておりますか。
  54. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 私のほうは同じようなやり方をやっておりますが、対象の親事業者は年間二千余り選びまして、年を四期に分けまして、平均五百ずつですか、これをまず第一に書面照会をしまして、その書面照会で一応ふるいにかけました上で立ち入り検査をしている。したがいまして、やり方としましては中小企業庁の場合と実は全じようなやり方をやっております。ただこの問題は、もう少しふえんして説明さしていただきますと、一昨年ごろまでは、中小企業庁のほうは下請業者を中心調査をする、それから公取のほうは親事業者を中心調査をするということでやってまいったわけですが、下請事業君を中心調査をするというのが、親事業者の数よりは下請業者の数のほうがはるかに多いわけですから、どうもうまく実効があがらないというので、中小企業庁としても親事業者をまずとっかかりにする。ただ、それじゃどういうふうに中小企業庁と公取と仕事を分担するかということにつきましては、一応中小企業庁のほうは浅いけれども広くやっていく。われわれのほうは対象をしぼりますかわりに、もっと突っ込んだ調査をしていく。照会にしましても、そうした照会をしていく。同時に中小企業庁と公取とは、その場合におきまして、調査対象について絶えず連絡をとりまして、中小企業庁の調査がいったところへ同じような時期に公取調査がいくというような意味の重複は、お互いが連絡しましてできるだけこれを排除する。公取のほうでもって対象にするものは、中小企業庁のほうでは対象にしないで、その以外のものについて中小企業庁のほうで広く浅くやっていただく。われわれのほうは、狭いけれども深く突っ込んだ調査をしていく。行き着くところは、結局われわれのほうでもって立ち入り検査をして勧告へ持っていく、そういうふうな仕事の分担が、中小企業庁のほうでも人員が限られておりますし、われわれのほうでも人員が限られておりますので、できるだけお互いのそうした限られた人員を有効に使うゆえんではないだろうかということで、昨年から現在のような調査のやり方に切りかえております。
  55. 田中六助

    田中(六)委員 限られた人員で調査することは非常にむずかしさがあるわけです。それからもう一つは、下請事業そのものが非常に複雑多岐である。そういう相関関係から、調査そのものが困難でしょうが、この下請業者に対する不正を調査する人間ですね、これは何名ぐらいいますか。
  56. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 公取のほうから申しますと、現在二十五名の人員でやっております。
  57. 影山衛司

    ○影山政府委員 中小企業関係を申し上げますと、地方の通産局の職員を含めまして、立ち入り検査に従事しておる人数は現在のところ五十四名でございますが、昭和四十年度におきましては、六十六名まで増加していくというふうに考えております。
  58. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 ちょっと補充させていただきますが、二十五名というのは現在の人員でございまして、改正案で十一名の増員になりますれば、三十名くらいにはふやし得ると思っております。
  59. 田中六助

    田中(六)委員 これは改正されて公取で三十五、六名ですか、それから中小企業庁で六十六名、こういう人数で現在の複雑な経済情勢、しかもいろいろ問題を起こしている下請業者、こういう調査をしなければならない人数がこの程度でどうかという非常に大きな疑問を持つわけですが、その点どうですか。
  60. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 公取のほうからお答えしますと、正直にいいまして、決して十分とか、それどころか実は非常にわれわれのほうとしては、この程度の人員でこの大きな仕事に取り組まなければならぬということについては非常な苦心をしております。ただ政府としても、いろいろな関係もございましょうし、まあこの程度の人員しか与えられておりません。ただそうなりますと、われわれとしましては、与えられた人数をいかに有効に活用するかということだけしか問題にならぬというお答えしかできないことを遺憾に思っております。
  61. 影山衛司

    ○影山政府委員 私どもも、この六十六名で十分であるとは思っていないわけでございます。この六十六名と申しますのは、各通産局の中で立ち入り検査証明書を持っておりまして、常時それに従事するという人数でございまして、そのほかに中小企業関係の定員が地方通産局には百九名ございます。その他商工関係の重工業とか、繊維、軽工業というような原局関係の仕事に従事しておる者もおりまして、そういう人数を必要に応じまして機動的に活用いたしましてやっていきたいと考えております。
  62. 田中六助

    田中(六)委員 公取委員長にお聞きしたいのですが、いままでといいますか、昨年度に立ち入り検査を実施した事業所の数は幾つぐらいですか。
  63. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 三十九年の事例で申しますと、書面照会した分が二千余、この中で立ち入り検査した分が四百九十三、こういう数字になります。
  64. 田中六助

    田中(六)委員 立ち入り検定をして勧告したものは幾つぐらいありますか。
  65. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 立ち入り検査した結果としまして、最終的に法律による勧告をした分は十四件でございます。
  66. 田中六助

    田中(六)委員 あとは行政指導とか、そういうことですね。
  67. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 結局、行政指導と勧告と両方合わせましたものが百九十四ございまして、その中で正式な勧告をしたものは十四、あとは行政指導でございます。ただ、この区別でございますが、従来一応の基準をもちまして、この程度のものは行政指導、この程度から先は勧告ということにやっておりますが、先ほどもちょっと触れましたように、この基準はもう少し再検討しまして、もっと勧告のほうへ持ち込むものを多くするといいますか、より厳重な措置を講ずべきじゃないだろうかということは一応考えておりまして、今度の法改正を機会にしまして、このどの部分を行政指導にし、どの部分から先を勧告にするかということについては、もう一ぺん再検討した上で、もう少しやかましい姿に持っていくべきじゃないか、こういうふうに考えております。
  68. 田中六助

    田中(六)委員 公取委員長にお聞きいたしますが、一応法律では勧告できることになっておりますが、しかも新法の改正法案も、それからもとの法律も、改正案では第七条の四項で、それから前の法律では三項で、一応公表する権限を与えられておりますが、こういうものを公表したことがあるかどうか。
  69. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 法律によりますと、勧告に応じない場合には公表ということになっておりまして、現在までのところ、公表をいやがっているせいかどうか知りませんが、勧告いたしますとその勧告に応ずるという事例が全部でございまして、したがいまして公表というところまで持ち込んだ事例はございません。
  70. 田中六助

    田中(六)委員 中小企業庁の次長にお聞きするのですが、一応代金遅払いやその他について、金融関係については比較的判定が容易なことで、これの適用も多少できるでしょうが、不当な無品とか、あるいは値引き、つまり買いたたきですね、そういう判定は困難だと思うのですが、いろいろなそういう事情について報告がきておりますか。
  71. 影山衛司

    ○影山政府委員 私どもは先ほど申し上げましたように、人間の限定の関係もございまして、支払い遅延のほうに重点を置いておりまして、あと不当返品というようなことはちょっと……。
  72. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 三十九年の処理状況を申しますと、これは行政指導まで込めての数でございますが、私のほうで不当な値引きについて取り上げたものは四件ございます。それから不当な返品の関係が一件、不当な買いたたきと認められるものが二件、それから注文書の交付遅滞とか、あるいは支払い期日が記載していない、これは法三条に関係していると思うのですが、この関係で指導した分が七十一件、こういう数字になっております。
  73. 田中六助

    田中(六)委員 いまいろいろな数字を聞いたわけですが、勧告の公表もせずして、勧告どおりやるから、そういう公表の事実はなくて済むんだというふうに委員長はおっしゃっておりますが、はたして現実に勧告だけでいろいろな問題が済まされるならば、この下請の問題がこれほど大きく扱われないと私は思うのです。したがって、この法律がいろいろな面でほんとうはざる法だというふうにいわれてきておりますし、この改正案を見ましても、これを実用に供する場合に、あまり前と実態面で違うというようなふうには私はとれないのです。したがって、今後の公取あるいは中小企業庁の行政指導などについても、ますます努力を払うことを希望するのです。  最後に一点お聞きしたいのですが、このやはり七条の規定に、利息の遅延による不利益な取り扱いをやめるべく勧告することができるというふうになっておりますが、これは社会党のほうでもいまさっき言っておりましたが、利息遅延の勧告ということだけで問題を濁しているような気がするのですが、この程度の罰則ではたしていいのか。この罰則強化というものをもう少しやらなければ、下請企業者は救われないんじゃないかという声がかなりあるのですが、この点の判断はどうですか。
  74. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 前段の点につきましては、私は法のたてまえとしては、今度の改正案程度、これで全部問題を尽くしているわけではございませんが、まずその程度をこの際としてはやるべきで、あとは今後やはり引き続いて研究しまして、必要な改正はさらに続けていくということでやるべきじゃないかと思います。問題はむしろ、結局われわれのほうの手が足りない、あるいはこの問題の複雑性のゆえに、被害者ともいうべき下請業者の方からの声がなかなかわれわれのほうへ通じてこないというところに問題があるわけでして、やはりこの執行をいかにして確保するかということにより重点を置いて考えていかないと、法律がざる法というよりも、むしろそのために結局この執行が十分でない、それでざる法だという批判があるのじゃないか。したがってその点について、われわれは将来もう少し人数を出していただくと同時に、やり方をくふうしたい、かように考えております。  それから後段の御質問でありますが、現在、御承知のように第四条の二に遅延利息の規定がございます。ただこれは現在のところですと、「支払わなければならない。」と書いてあるだけでして、したがって下請業者自身がまずこれを請求するという問題がありませんと、この条文が動いておりません。この点については、ほかに別に何ら規定がございませんで、一応下請業者にそうした意味の権利を与えているだけなんです。法を執行してみますと、この権利を実行に移している下請業者がほとんどない。したがって、この遅延利息を払った事例があるかという質問をよく受けますが、遺憾ながらわれわれのほうとしてそういう事実を開いたことがない。結局おそらく行なわれていないんじゃないかと思うわけです。したがって、先ほどの問題とも結びつきますが、従来の例によりますと、勧告をすれば大体実行しているということもございますので、したがってわれわれのほうとして、まずこの勧告の中にこの遅延利息も入れたらどうか、これも当然この勧告を受け入れないとすれば公表に結びつきますので、いわゆる刑事罰的な意味の対象にするよりも、事柄が事柄なんですから、私法的な問題ですから、やはりまずもって勧告、実行しなかったら遅延利息という問題も込めまして公表ということにしていくのが実効をあげるゆえんじゃないか、かように考えております。
  75. 田中六助

    田中(六)委員 いろいろな質問をいたしましたが、私は結局この問題に二つあると思うのです。一つは、委員長中小企業庁の言っておりますように、下請の検査をする人間が事業対象、たとえば二千人に対して公取では三十町名、中小企業庁では正式な人員は六十六名、そういうような小人数でこれだけのたくさんの複雑な下請業者を調査するということに問題がある。これはもう明らかに認めなければならないし、われわれもこの点については大いに努力するつもりです。それからもう一つは、報告書ですね、これを親企業つまり事業者だけに求めるという基本ベースの考え方が、やはり誤っていると思うのです。したがって下請業者にたくさんむしろ集中して、あるいは先ほどの方の質問の答えにありましたように、第三者の機関に対して大いに調査報告を求める、そういう観点の仕事をやってもらいたいというふうに思います。以上。
  76. 内田常雄

    内田委員長 次は古川丈吉君。——質疑撤回と認め、本日はこの程度といたします。  次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午前十一時四十七分散会