○岡崎
参考人 周総理にお会いになったときのお話は、私ら参りましても同じことを言われたのでありまして、これは周総理からだけでなしに、終戦になりましたときに私上海の大使館におりましたが、あそこを接収に来たのが湯恩伯上将でありまして、勝ち誇って入ってきた湯恩伯さんでも、われわれを呼んですぐそれを言った。そうして蒋主席もそういう
考え方なんで、決して恨みを持っているのじゃない、日本と手を握ってアジアをよくしなければいけないということを
考えておるのだからということを言って、ほんとうにきのうまで戦っておって――湯恩伯将軍というのは、日本の将軍に聞きますとほんとうにおそろしい将軍だったそうですか、その人が、自分の意見でもあり蒋主席の意見でもあると言って、その日からあたたかい手を伸べて、一緒にやろう、そしてアジアを興そう、こういうことも言われた。私
どもは、相手がどういう
制度であろうとどういう
考えであろうと、大事なことは、このおくれたアジアの文明を高め、貧乏を追放することだと思っておるのです。中国共産党政権になっても、初めはたいへん心配いたしましたが、研究しておるうちに行く機会があり、周総理に会ったわけですが、同じことを言われるのです。ですからアジアの問題に関しては、
国民政府の首脳部も共産主義のいまの北京
政府も同じではないか。これはアジアに住む者のほんとうの願いだという感じを私はしておるわけです。したがって貿易問題につきましても、南漢宸さんもそう言いますし、周総理も言われる、あるいは寥承志さんも言われるのは、できれば日本から何でも買いたい、できるだけ買いたい、ことにプラントについては日本から買いたいということを言っておるわけなんです。しかし買いたくても日本が売ってくれなければどうにもならない。また今度の吉田書簡に
関係して、日本は輸銀を使わなければ高くなるんだそうじゃないか、高いものを買えと言われても買えない、これはわが国が高いものを買っていいというわけにいかないから欧州から買わざるを得ないのだ、その点をひとつ
考えてもらいたいと言っておりましたが、日本から買えば安かったり近かったり、あるいは
技術者が来てくれる費用も少なくて済みますから、いろいろな面でいいと思っておるに違いないけれ
ども、何が何でも、どんなに屈辱を忍んでも日本から買うという、そんなみみっちい
考えでおるものではないということは私は確信できると思う。いばりではなしに、ほんとうに自分の国を興そうという人々の意気込みというものは、行って直接ごらんにならないとなかなかわかりません。そして日本でなければ売るものがないではないかということをよくいいますが、ほんとうに日本でなければ売れないというのは鉄鉱石と石炭です。それを日本はいまたくさん買ってない。大豆とかトウモロコシというものは世界的商品でありますから、何も日本が買わなくても、値段の問題は多少ございましょうが、欧州にいままで売れている。それですから、日本が買ってくれればベターではあるけれ
ども、日本でなければならぬと日本側が
考えるのは、これは手前みそだ。そういう点でもひとつ
考えなければなりません。そういう
考えの前に、アジアの問題、アジア全体として世界からおくれておる問題、これ以上アジアで争ってさらに貧乏になり、文化がおくれたら、アジア民族はどうなるかということを
考えた上でアジアの
政策を見直して
考えなければならぬ。日本人が
考えないで、向こうの
国民政府の人も
考え、あるいは共産主義のいまの北京
政府も
考えているということを日本人はもっと反省しなければならぬということを、いま
お尋ねがありましたので、この機会を
利用して申し上げました。こういう機会を与えられたことをむしろお礼を申し上げたいと思います。