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1965-04-08 第48回国会 衆議院 商工委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月八日(木曜日)    午後一時四分開議  出席委員    委員長 内田 常雄君    理事 浦野 幸男君 理事 小川 平二君    理事 田中 龍夫君 理事 中川 俊思君    理事 板川 正吾君 理事 加賀田 進君    理事 中村 重光君       小笠 公韶君    小沢 辰男君       海部 俊樹君    佐々木秀世君       田中 榮一君    田中 正巳君       三原 朝雄君  早稻田柳右エ門君       大村 邦夫君    桜井 茂尚君       沢田 政治君    島口重次郎君       田中 武夫君    山崎 始男君       山下 榮二君  出席国務大臣         通商産業大臣  櫻内 義雄君  出席政府委員         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         通商産業事務官         (軽工業局長) 伊藤 三郎君         通商産業事務官         (鉱山局長)  大慈彌嘉久君  委員外出席者         議     員 田中 武夫君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    柏木 雄介君         日本輸出入銀行         総裁      森永貞一郎君         参  考  人         (日中総合貿易         連絡協議会会         長)      岡崎嘉平太君         専  門  員 渡辺 一俊君     ――――――――――――― 四月八日  委員大村邦夫辞任につき、その補欠として佐  々木更三君が議長指名委員に選任された。 同日  委員佐々木更三君辞任につき、その補欠として  大村邦夫君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  中小企業者事業分野確保に関する法律案  (田中武夫君外十四名提出衆法第一六号)  工業に関する件(高圧ガスに関する問題)  通商に関する件(日中貿易に関する問題)      ――――◇―――――
  2. 内田常雄

    内田委員長 これより会議を開きます。  田中武夫君外十四名提出中小企業者事業分野確保に関する法律案を議題といたします。  質疑通告がありますので、これを許可いたします。海部俊樹君。
  3. 海部俊樹

    海部委員 田中先生お尋ねいたしますが、現在、いろいろなしわ寄せを受けておる中小企業実情をながめておりますと、なるほど事業分野確保して、中小企業者に非常に適したものは、大企業が今後資本力にものをいわせたりなどして進出してこないようにしてやる配慮というものは確かに必要な配慮だと思うのであります。そこで以下、特に私は憲法上の問題を中心にしまして先生のお考え方の二、三についてお尋ねをいたしたいと思います。  第一は、この法律の第三条のところに、いわゆる業種指定でありますが、「中小企業者事業分野として確保すべき業種は、製造業建設業又はサービス業に属する業種」こう限定されておるわけでありますけれども、私の考えでは、このほかに中小企業者の非常に大きな分野として商業分野があるのではなかろうか、こう考えておるのでありますが、商業分野に対してはどのようなお考えを持っていらっしゃるか、なぜここにお書きにならなかったのか、その点をまずお伺いをいたしたいと思います。
  4. 田中武夫

    田中(武)議員 お答えをいたします。  この第三条に「製造業建設業又はサービス業」こういうことで商業部門が入っていないのはなぜかというお尋ねでございますが、実は経過がございまして、この法律案をつくると同時に商業調整法というのをわが社会党考えておりました。その商業調整法によって卸、小売り、メーカーの分野をはっきりしていきたい、こう考えて、かつてはこの法律と一緒に出したわけです。ちょうどそのときに御承知小売商業調整特別措置法が出てまいりまして、それを若干修正をして成立せしめました。そこでいま問題にするのは、小売り商業事業分野を守るといいますか、小売り商を守るということだと思います。そこで大企業によるスーパーマーケットの問題を今国会におきまして百貨店法改正法案の中へ入れて別個に当委員会提出する予定であり、近く国会提出いたします。
  5. 海部俊樹

    海部委員 了解いたしました。  その次は、やはり第三条の中の問題でありますけれども、その業種指定する要件の中で、「当該業種に属する事業を営む者の総数のおおむね五分の四以上が中小企業者であり、かつ、当該業種に属する事業に係る過去一年間の生産実績又は取扱量のおおむね三分の二以上」とありまして、「おおむね」というのが二カ所に使われておるわけであります。ところが私ども考えてみますと、一体個人の権利といいますか、生存権的基本権に属する権利を制約する場合に、たとえば憲法第十三条には、「生命、自由及び幸福追求に対する国民権利については、公共福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」という規定もあるわけですけれども、「おおむね」ということばでこれがきまってまいりますと、どの辺に線を引いておきめになるお考えなのか、五分の四とか三分の二とか明確に書くことはできなかったのか、なぜ「おおむね」をお入れになったのか、この辺のところと、それから「おおむね」ということば弾力性を持たせて実情に応じて判断するんだというお考えがあるとすれば、その上下の幅というものはどの程度までになるものでしょうか、お考えを聞きたいと思います。
  6. 田中武夫

    田中(武)議員 まず「おおむね」と書いたのはなぜかということですが、実は雑多な業種の中で、あるものについては五分の四という線を引いていいものもありましょうし、あるいはある業種によってはこの五分の四を幾らか緩和しなければならぬというものもあろうと思いますが、これは一つものごとに対する規制ではなくて、いろいろな業種があるわけなんで、それに対して五分の四とか三分の二とかで画一的にきめることは困難ではなかろうか、そこである程度弾力性を持たせて、御承知のように最後に、政令によって指定する、そういうふうにいたしておるわけでございます。
  7. 海部俊樹

    海部委員 たいへんこだわるようで申しわけありませんが、「おおむね五分の四以上」「かつ」「取扱量のおおむね三分の二以上」と、「かつ」ということばが入っております以上は、どちらか一つ要件に合致しただけではだめであって、数量もそれから生産実績または取り扱い量のほうも、二つ要件に合致しなければいかぬ、こういうふうに解釈してよろしゅうございますね。
  8. 田中武夫

    田中(武)議員 そのとおりでございます。なお、海部さんがあとで触れられると思いますが、いわゆる憲法との関係もございまして、職業選択の自由という上に立って、規制はきびしいほうがいい、こういうことで「かつ」で二つ要件を合わせたわけでございます。
  9. 海部俊樹

    海部委員 さらに第三条によりますと、この二つの「おおむね五分の四以上」「おおむね三分の二以上」の問題のほかに、「経済的に中小規模企業形態による事業経営にも適切であり、」かつ、大企業進出が著しく圧迫すると認められるもの、こういう要件が付加されてきておるわけでありますが、「経済的に中小規模企業形態による事業経営にも適切であり、」ということになりますと、大規模企業経営にも適切であるが、中小規模経営にも適切である、こういうふうにも読み取れるように思いますし、またここで「かつ」という字が出てまいりますから、大企業進出が著しく圧迫するという要件と、非常にきびしい要件がここにたくさん羅列されてくるわけであります。そうしますと、提案者のせっかくの中小企業事業分野確保しようとなさる精神が、この第三条の四つにわたる規制すべてに合格をしませんと、この法律が発動できないことになりますので、その点、少しきびし過ぎるのではないかとさえ私は考えるのですが、はたしてこれだけ上要件をそろえなければならないものかどうか、お考えを聞きたいと思います。
  10. 田中武夫

    田中(武)議員 本法律案は、立案の過程で与党の諸君から、ことに当時の前尾幹事長等から、社会党がつくろうとしておる事業分野確保法律は違憲のおそれがある、そういうことがありましたので、一面において、できるだけ中小企業者事業分野確保するとともに、そういった公共福祉ということも考えまして、厳重な要件を置いたわけです。  なお、五分の四とか三分の二とかというのと後段のこれは、解釈といいますか、そのつどつどに動くものだと思います。たとえばこの時点においては中小規模の業態に適切であるけれども、あるいは将来どうかというようなものもあるだろうと思います。その時点によって、解釈に対して、一方は数字的に押えておるわけです。一方は実際の問題において弾力性を持たす、そういうことですべては政令によって整備していく、こういう考え方をとっています。
  11. 海部俊樹

    海部委員 よくわかりました。ただ私がこの際念のためお尋ねしたいことは、現在中小企業というのは、社会党がお出しになっております中小企業組織法案をながめましても、中小企業基本法と同じように、従業員にして三百人以下、資本金にして五千万円以下、こういうことになっておりますので、こういう理解の上でものを申し上げますが、現在の中小企業投資育成会社制度とかあるいはその他の法律をいろいろながめておりますと、中小企業のほうで比較的上のほうに位しておるものは、中小企業のからを破って大企業に育てていくような道がたくさんできておるわけであります。投資育成会社なんかはその最たる例だと思うのですけれども、そうなりました場合、この法律が施行されて、かりにAならAという業種が、指定を受けたときには中小企業であったけれども、それがそういったいろいろな施策によってどんどん伸びてきて大企業に成長した。もちろんそれはこの法律解釈すればそのままできるわけでありますけれども、それがどんどんシェアを拡大していって、ためにほかのほうの中小企業圧迫されるようになった、それが非常に顕著な例になってきたというような事態の発生も想定されるわけでありますけれども、そういうときには、これには全然関係なく別途のことでお縛りになるという考えでしょうか。
  12. 田中武夫

    田中(武)議員 まず中小企業定義でございますが、御承知のように、われわれは違った観念を持っております。しかし一昨年ですか中小企業基本法成立のときに、とにもかくにも社会党は賛成をいたしました。そこでこの定義中小企業基本法に合わしたわけです。しかし、この定義も未来永劫固定したものとは考えておりません。実情において中小企業が全体として伸びていく、このことは好ましいことであり、また政府施策等もそれに向けられなければならないと思います。したがって現在の五千万円があるいは一億円になる場合もあることを予想しております。そこで、現在は中小企業であるが、将来いろんな、たとえば投資育成会社の援助を受ける等によって伸びていった場合、それが現在の定義より上を越えた場合、そのときには中小企業でなくなるわけです。そうなりますと、今度は五条の新増設等についての一応の制限を受ける、こう考えております。そうするなら、海部さんはおそらく、伸びようとする中小企業を押えるんじゃないか、こういうことであろうと思いますが、われわれといたしましては、一つ企業が百歩前進するという政策よりか、百の企業がともに一歩前進するというほうへ重点を置いておるわけであります。
  13. 海部俊樹

    海部委員 先ほど田中委員も申されましたが、あとで私が質問するであろうというおことばのありました憲法公共福祉の問題についてお尋ねしたいと思います。  公共福祉というものは、申すまでもなく国民全体の利益中心としたものの考え方であって、いやしくも国家とか国家権力とか、そういったものの都合や利益が含まれないということは今日の憲法上の通説であります。二十二条の職業選択の自由の規定もございますが、「何人も、公共福祉に反しない限り、」「職業選擇の自由を有する。」こう書いてあるわけであります。そうしますと、公共福祉に反しない限りとは一体どういう考え方でいくか。私は、これはあえて議論のための議論をするわけでありますけれども中小企業者利益というものは、なるほど大企業進出をストップかけることによってはかられると思います。しかし公共福祉という概念は、国民全体すなわち最終消費者というもの、すべてを含んだ考え方だと思うのです。そうしますと、中小企業者を保護し、これを育成することにあまりにも重点をとらわれ過ぎた場合に、もし国民一般消費者利益に害が及ぶようなことがあった場合には、これは公共福祉にやはり反するということになるのではないでしょうか。
  14. 田中武夫

    田中(武)議員 公共福祉に対する考え方はあなたと同じように解します。しかしながら、この公共福祉が、いろいろな場合、国家権力者によってゆがめられておるということは皆さん御承知のとおりです。現に政府は、口を開けば、大衆運動その他に対しても、公共福祉の名において制限をいたしております。私はあくまで、憲法で保障せられた基本的人権、この解釈にあたっては、公共福祉ということはできるだけしぼって解釈するのが当然だと思う。  そこでこの問題を考えた場合、一体中小企業といわれる人及びそこに働く人たちが何人ほどおるだろうか、こう考えた場合には、国民の半数はおるんじゃないだろうか。中小企業といわれる人及びそこに働く人たち、その家族は、いわゆる大企業経営者等と比べた場合、この中小企業者のほうが、国民生活といいますか、国民の階層の中において多くの部分を占めておる。さらに大企業のこれに進出してくる理由は、よりもうけるため、より利潤を追求するため、こう思います。ところが中小企業者は自分の生活を守る。このことによって、せっかく中小企業が営々努力いたしまして開いた道を大企業進出によって荒らされてしまったために倒産をしていくという例がたくさんございます。これを中小企業者及びそこに働く労働者、その家族からいえば、まさに人権の問題です。まさに基本的人権であり、生活権の問題です。したがいまして、この程度のことで大企業進出規制することは、私はこの憲法のいう公共福祉に合致する、そのように考えておるわけなんです。
  15. 海部俊樹

    海部委員 おっしゃったとおりだと思いますが、私の調査に誤りがなければ、たとえば昭和三十六年度において中小企業事業数が二百四十二万事業場中小企業によって生活を立てておる者が三千六百万人、こういう数字が出ております。そこで私がふと考えましたことは、最終需要者利益に反することは公共福祉に反するのではないかということを申し上げたその発想の根底は、たとえば中小企業といっても大企業といっても、これは一つ製品をつくるということにおいて、資本の力とか設備の力とかいろいろありまして、どうしても中小企業の力ではコストダウンのできないような製品も実はたくさんあるわけでございます。たとえば新しい原材料についての開発製造技術の進歩によって大量生産大量販売の線に乗ることができるものがだんだんできてくる。具体的に例を申しますと、たとえば寝具であります。あれはゴムとか合繊とか、そういったものの開発によってマットレスというものが大量生産大量販売で安くなってきておる。あるいはまた繊維関係でまいりますと、昔はこの繊維というものは中小企業の専門の分野であった。ところが、柄もののように加工度商いもの中小企業で依然としてやっておりますけれども合繊開発によって学生服というものは大量生産の波に乗っている。無地ものの合繊学生服は最近、この二、三年来と思いますが、非常にいいものが安く出回るようになってきておるわけであります。こういったことがもしかりにほかの分野に行なわれるようになったときに、大企業なるがゆえに進出をしてきてはいけないんだというストップをかけますと、そのためにコストが下がって国民利益になるようなことが害されやしないか、そういう懸念を持つわけでありますが、いかがでしょうか。
  16. 田中武夫

    田中(武)議員 国民経済発展のためにということが前提であることは言うまでもありません。そこで、いまおっしゃいましたような大企業でなければできないという、この考え方をわれわれは改めてもらいたいと思うのです。中小企業合理化調度化、これは政府一つ中小企業政策の大看板じゃありませんか。大企業でなければできないということでなく、中小企業でもそういうことができるような合理化高度化をはかっていくというのが政府中小企業政策基本ではないかと思います。したがって、その上に立って考えてまいります。さらに値段の点についてはどうか、こういうことでありますが、中小企業がかりに何らかの申し合わせなりカルテルを行なってそういうことをやるということであれば、これは独禁法があります。もしかりにそういうことを前提としてあらゆる職業に対して、あらゆる業種に対して自由にせよということであるならば、たとえば許可、認可を必要とするような運送業だとかあるいは理髪業とか、こういったようなものはすべて憲法違反だということになるわけです。私はそういう観点でなく、まず中小企業合理化高度化をはかるということを前提としてこれを考えていきたい、こう考えております。
  17. 海部俊樹

    海部委員 大企業、大企業とおっしゃいますけれども、私どもは現在の中小企業者が受けておる圧迫というものは大企業に限ったものではないと、こう思うのであります。たとえば、大企業以外、中小企業以外の事業組織農業協同組合とか生活協同組合とか、そういったものはむしろ国民大衆利益に直結しておるものであります。こういったものが現実に中小企業分野圧迫しておるということは、これは事実でありまして、現に中小企業基本法ができますときに、農業協同組合の側からのいろいろな申し込みや意見等もたくさんございましたし、中小企業者自身は、大企業からの圧迫ももちろん受けておるが、その他の事業組織等圧迫も受けておるんだという発言を非常に強くしておるわけであります。大企業以外のものに対してはどのようなお考えを持っていらっしゃるのか、お尋ねしたいと思います。
  18. 田中武夫

    田中(武)議員 まず、この法案の二条二項をごらんいただきたいのです。「「大企業者」とは、事業を営む者」とうたっておるわけなんです。したがいまして、いまおっしゃいました消費生活協同組合農業協同組合等事業を営む者でなく、会員のために、組合員のために事業を行なうものだと考えております。ここに営利性の問題が一つ要件として出てまいります。そこで、いまおっしゃるように消費生活協同組合あるいは農協等組合員のためにする事業活動によって圧迫を受ける、こういう場合は、これはそれぞれの母法、すなわち消費生活協同組合法なり農協法によってものを律すべきであって、もしかりにそれらのものが組合員のためでなしに行なうということであるならば、これはある程度員外利用について認められている点もありますが、それを越えて行なわれているとするならば、むしろその消費生活協同組合なり農協のほうに問題がありまして、これはその母法によって規制を受けるべきである。  さらに、御承知のように小売りの問題が焦点になろうと思うのであります。したがいまして、中小企業あるいは小売り業者等生協農協等との関係においては、御承知のように小売商業調整特別措置法ですかの中にも、問題を起こしたときには知事にあっせんを申請するとか、あるいはわれわれとしては別にこの委員会にまた提案をいたしまするが、かつて提案をしたことがあると思いまするが、中小企業紛争処理に関する法律、こういうのを用意しておりますが、この紛争につきましては中小企業者以外の者はすべて入るのだ、こういうように考えています。この法律においては生協とか農協考えておりません。
  19. 海部俊樹

    海部委員 私ども考え方は大体同じでありまして、生協農協が直ちに中小企業圧迫する対象だから何らかの規制を加えなければならぬというようなことは毛頭考えておりません。ただ、そういったものも員内利用制度というものをきわめて尊重すると同町に、やはり員外者利用規制する小売商業調整特別措置法運用強化考えるとか、そういうふうなことで解決しなければならぬというお考えには全く敬意を表しております。  問題を次に移しますが、中小企業生産適格性を持っておる事業というものを判断されるときの、その検討の目安について何かお考えがあったらお聞かせ願いたいと思います。
  20. 田中武夫

    田中(武)議員 これはいろいろとあると思いますが、まず基本的と申しますか、原則的に考えられることは二次製品、三次製品だと思うのです。たとえば製紙あるいは紡績考えましたときにも原材料である製紙あるいは紡績、こういうのは大体大企業がやっていると思います。ところが二次製品、三次製品であるところの封筒とかあるいは便せん、あるいはまた繊維でいうならば下着類等々、本来は中小企業者がやっており、そうして長年にわたって道を切り開いてきたもの、これについて先ほど申しましたような三条の要件のもとに指定しようということであって、一体どんなものかといわれると、まず第二次、第三次製品等考えられるのじゃないか、そういうふうに考えております。
  21. 海部俊樹

    海部委員 中小規模経営に適するものとして、私どもはやはり国民経済全体の合理的な発展、そういった見地から規模刑の社会的な分業体制というものをこの辺でそろそろ考えていく必要があるのではなかろうか、そういうことからいきますと、従業員一人当たりの付加価値額というものがどうなっておるか、大企業に比べて中小企業はどうか、そういったことによって経済的な合理性から判断していくということも一つ目安でございましょうし、もっと問題をかみ砕いてまいりますと、小中規模生産に適格しておるのは大体次の三つくらいの要件に適格しておれば、それと判断していいのじゃなかろうか。たとえば、第一に需要が非常にさまざまな形で変化が激しい、したがって大量生産には向かないというようなことが一つ二つ目は、生産に非常に大規模設備や高度の技術が必要でなく、多額資金はあまりかからない、こういたものも向くと思いますし、三つ目は、生産工程が非常に分化し、非常に専門的な社会的分業が現在すでに行なわれている職種、こういったようなものは中小企業に非常に適する業種である、私はこう判断するのでありますが、いかがでしょう。
  22. 田中武夫

    田中(武)議員 いまおっしゃった三つ要件ですが、たとえばさまざまな需要であって大量生産に向かないとか、あるいは設備多額資金を要する、こういうようなものは、まさにそうだと思います。しかし、それも一つ要件であって、やはり歴史的に考える必要もあるのではないか、私はこういうように考えております。
  23. 海部俊樹

    海部委員 この問題につきまして、実は突然のあれでありましたので、準備もまだ完了でありませんので、きょうはこの程度にします。      ――――◇―――――
  24. 内田常雄

    内田委員長 次に、通商に関する件について調査を進めます。  おはかりいたします。日中貿易に関する問題について、本日、日中総合貿易連絡協議会会長岡崎嘉平太君を参考人として御出席願うことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  同君は幸い御出席になっておられますので、直ちに質疑応答の順序で発言していただくことにいたします。  参考人には、御多用中御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  質疑通告がありますので、順次これを許可いたします。田中武夫君。
  26. 田中武夫

    田中(武)委員 輸銀の総裁にお伺いをいたします。  実は当委員会で先日、通産大臣その他の政府委員に質問をいたしたのですが、あまり明確な答弁を得られなかったわけなんです。そこで、あなたにお伺いするのですが、輸銀は言うまでもなく政府機関であります。しかし、中国向けの輸出に対していまいろいろと問題になっていることは御承知のとおりでありますが、たとえば日立造船、ニチボー等は、現実に輸銀に対して融資の申し入れがあったのですか、なかったのですか。
  27. 森永貞一郎

    ○森永説明員 日立造船株式会社並びにニチボー株式会社、いずれも輸出入銀行に対しまして資金借り入れの申し込み書は提出をいたしておりません。
  28. 田中武夫

    田中(武)委員 申し入れをいたしていないのに、その前に政府が輸銀ベースで考えるとか考えないとかいう発言は、輸銀側から見てどうお感じになりますか。
  29. 森永貞一郎

    ○森永説明員 実は先般来いろいろ問題がございまして、私どももいろいろお聞きいたしておりましたのでございますが、私どものところは、ただいま申し上げましたとおり、融資の申し入れも何ら受けておりませんので、いかなる経緯になっておりますのか、正確なところは、想像はできますが、了解しかねておったところでございます。私の想像では、現在延べ払い輸出につきましては政府の許可が要るわけでございます。その許可の際にいろいろ問題が起こっておる、さような段階であるというふうに承知をいたしております。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 輸銀法についてあなたにお伺いするのはどうかと思うのですが、あなたも輸銀の総裁として、輸銀法についてどういう観念を持っておられるかを二、三伺いたい。  まず第一に、第一条の「本邦の外国との貿易を主とする」云々、この「外国」の定義は、輸銀はどう考えておられますか。
  31. 森永貞一郎

    ○森永説明員 本邦以外の国と了承いたしております。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、その貿易の、あるいはプラント輸出の相手方の国のいかんにかかわらず、輸銀としては差別的に考えない……。
  33. 森永貞一郎

    ○森永説明員 実際の運用といたしましては、ほとんどあらゆる国に対する輸出につきまして融資を実行いたしておるわけでございまして、御指摘の点は、日本がその国を正式に承認しておるかどうかという意味で区別をしておるかということかもしれませんが、その点は区別をいたしておりません。
  34. 田中武夫

    田中(武)委員 いわゆる外国はすべての外国であって、輸銀としては、輸出先がどこであろうと、これについては差別的な考え方は持っていない、こういうことですね。
  35. 森永貞一郎

    ○森永説明員 第一条のこの目的に関する限りは、御指摘のとおりでございます。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 次に、輸銀がそれに対して融資をするかどうか、こういうことをきめるのは輸銀である。政府ではない。そして輸銀は、同法第十八条以下の条文及び業務方法書があると思いますが、それに従って基準をきめるわけですね。政府からとやかく仕事の内容について制肘を加えられることはありませんね。
  37. 森永貞一郎

    ○森永説明員 この輸銀法の性格は、できるだけ業務執行の態様を詳細に法律に織り込む、そのかわりできるだけ輸銀の自主的運営にまかせる、さような立法の趣旨であったやに承知いたしておるのでございまして、そのような気持ちから実際の業務と運用いたしておるつもりでございますが、ただ先ほどもちょっと触れましたように、私どもの融資の対象になる案件につきまして、為替管理法等の上から政府の許可を必要とする場合がほとんど大部分でございます。政府の許可という前提がなければ融資もいたしかねるわけでございまして、それらの点につきましては、当然政府許可の内容に従わざるを得ない場合が多いわけでございます。政府の許可がなければ融資ができないという関係にあることを御承知いただきたいと思います。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえば、外為法等の他の法律によって政府の許可権限にかかわることは別といたしまして、少なくとも輸銀の業務これ自体は何ら政府から制肘を受けるべきものでない、このことだけははっきりしておきたいと思うのですが、いかがですか。
  39. 森永貞一郎

    ○森永説明員 延べ払い輸出につきまして政府の許可が得られまして、その許可に基づきまして日本の業者が輸出をいたします。それにつきまして資金が要る。それらのものをどういう条件で融資するか、あるいは融資するかしないか、その辺の金融判断は私どもにゆだねられておるという意味でございます。その自主的な運用に心がけておるつもりでございます。ただ、政府機関でございますので、もちろん政府の貿易あるいは金融に関する基本方針には適合するように運用をしていかなければならないわけでございまして、その意味におきましては、政府政策に協力をするということが当然の制約であるかと存じます。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、申し入れをするときに延べ払い等に対して政府の許可といいますか、あるいは外為法等の他の法律による大蔵大臣等の権限に属することは別といたしまして、少なくとも輸銀が融資をするかしないか、これは申し入れがなければ何とも言えないと思いますが、そのときの判断は政府から何らの制肘を受けないのだ、こう解釈していいのでしょう。
  41. 森永貞一郎

    ○森永説明員 金融判断に関する限りは、輸銀の自主的判断にゆだねられておると承知いたしております。ただ先ほど申し上げましたように、政府の貿易政策あるいは金融政策基本政策には適合するように私ども考えていくべきことは、これは政府機関の性格上当然であるという意味であります。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 それは政府機関としてそうであろうと思うのです。いまあなたがおっしゃったようなことは、輸銀法からどこに根拠があります。
  43. 森永貞一郎

    ○森永説明員 輸銀法には第四十二条に、監督上必要なる命令を出すことができるという規定がございまして、大蔵大臣は必要があれば輸銀に監督命令を出すことができる。これは現実には監督命令は出ておりません。ただしそういう命令を受け得る立場にある。これは政府機関として当然でございます。それから政府政策に協力しなければならぬという点は、これは当然のことでございますが、私どもの銀行で制定いたしまして政府に報告をいたしておりまする業務方法書の中にも、第五条に、「政府の貿易、海外投資及び金融に関する基本政策に適合するよう遺憾なきを期するものとする。」という、そういうみずからを律する業務方法書の規定がございます。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 私はあとでその点に触れたいと思っておったのですが、結局輸銀というものは、政府の監督を受ける範囲は、この法律の五章以下の規定にのっとったときのみであって、それ以外に監督というか制肘は受けないものである、そう解釈しておりますが、いかがです。
  45. 森永貞一郎

    ○森永説明員 具体的な案件につきまして、これを融資すべしとか融資すべからずという具体的な指令、指示を受けるような仕組みにはなっておりません。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 いまの御答弁であると、私は輸銀法からいって、大体総裁考え方は妥当である、こう考えます。したがって、輸銀が意思表示をしないのに、外為等の関係において政府が――許可するとかしないとかということは、これは別の問題です、しかし輸銀を使わすとか使わさないとかいうことは政府は言うべきでない。そのことは輸銀が考える。申し入れがあれば具体的に考えていく。そうじゃないですか。
  47. 森永貞一郎

    ○森永説明員 それは政府の問題でございますので、私からはっきりしたことをお答えいたしかねるのでございますが、ただ先ほど申し上げましたように、具体的な案件について延べ払いを政府が許可する場合に、その許可の明示あるいは黙示、いろいろございましょう。あるいはばく然たる雰囲気というようなこともございましょうが、この案件については輸銀から融資を受ける必要がなさそうだ、そういうようなものが皆無ではないわけでございまして、それが今度のような、いろいろ政治的な問題を離れてでございますが、そういうものにつきましては、外為法上の申請をする当事者が、これは輸銀の資金のごやっかいにはなりませんとかというふうなことを政府に申し出るというようなこともございましょう。あるいは政府のほうから、輸銀の資金は使わぬでもいいのじゃないかというふうなことをおっしゃるという場合もございましょうし、これはしかし延べ払いの許可の、いわば明示または黙示の条件みたいなものでございますので、そういうことはあり得るのではないか、また現にありました。
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、それはこの許可をもらうときに、融資は輸銀でしていただこうと思っていますとか、あるいはそうしなくても自己資本なり一般の市中銀行の融資等でやれると思います、こういうことは一つの話として、あるいは許可をもらうときの条件ではないけれども一つの参考意見として述べることはあると思います。今回の場合は御承知のように当事者といいますか、日立なら日立、ニチボーならニチボーという、この当事者、当該者から輸銀を使いたい、こういうことの考えが出ておるわけですね。それに対して、申し込みも何もやらない、その以前に使わさない――こういうことはあなたに言ってもしかたがないのですが、政府がそういうことを言うとは法律違反だといいますか、越権のさたと考えるのですが、政府委員いかがですか。
  49. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 たまたま私政府委員として一人しかおりませんのでお答え申し上げますが、本来は外為法の許認可にかかる問題でございます。総裁も言われましたように、事柄が非常に政治的な問題としてこういう騒ぎになっておるわけですが、日本の金利が、非常に市中金利が高いものですから、向こう側と契約をいたします場合に、延べ払いの金利を幾らにするということが当然出てまいります。五分何厘というような金利、あるいは六分前後というような金利になると、日本の市中銀行ではちょっとまかなえないような金利になります。そういうことから必然的にといいますか、輸銀を使うか使わないかということが一つのきめ手になってくるわけでございます。そういうことで、業者としては当然に輸銀を使うということを頭に置いて、その金利の交渉もしたのじゃないかと思います。その結果として、まあ希望はこうであるということが出ている。それに対して政府が、実はほかに何にもなければいいのですけれども、対台湾の問題がからんでいることは御承知のとおりで、その辺は実は第三者として非常にわかりにくい事情があるので、またわれわれ政府の内部におりましても、どの程度これがデリケートな問題であるのかはっきりいたしません。また政府首脳としましても、その点についてはっきりした腹をきめるのには、なかなか時間がかかる問題である。そういうことで、これがたまたま新聞紙上等でいろいろと論議されてまいりまして、はたから見れば何のことかわからぬというようなことになったのでございますが、とにかく許可をするにあたりまして、その金利等の条件から当然に輸銀に相当依存するということが必要だと認められる場合に、一体それを認めるか認めぬかというふうな許可そのものにかかっておりまして、当然その中に、黙っておりましてもこれは輸銀を使わなければやっていけないケースであるとか、そうではないケース――政府としてはできるならば民間の資金でやってもらいたい、こういう態度であったと思いますが、実際問題といたしましてそれでは話がつき合えませんから、そこで業者としてはあくまで輸銀を使わなければこの交渉は成り立たないというようなことを言うようになったわけであります。それが政府としてそれに対して、その条件で許可を与えるということには必ずしも踏み切れないという状態のままで今日に及んでおる。結局法律問題より、根本がそういう非常な外交上の微妙な利害を含んだ問題でございますので、その関係でいまだに未解決に近い状態になっておる。こういう事情でございますから、私ども越権であるとかないとかいうことを言いましても、そういう外交上の問題を含んでおる場合には、その判断としてはそういう越権とか何とかいうことでなしに、わが国の利害を、ただ単に経済問題としてでなしに、ほかの点も考慮してみなければならぬという点から、当然政府としてそれに対してある程度意見を述べざるを得ない、そういう立場にあると御理解をいただきたいと思います。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 私の申し上げておるのは、法律が成立したならば、政府といえども、何人といえども、その法律規制せられるというか、法律を守らなければならぬ、この点は認めますね。
  51. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 法律はむろん政府を拘束するものでございますし、その趣旨に反するようなことはあってはならないと思います。
  52. 田中武夫

    田中(武)委員 ならば、政府と輸銀との関係はすべてこの輸銀法によって律せられるものである、その点についてはいかがですか。
  53. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 輸銀との関係においては、輸銀融資との関係においてはそのとおりでございます。ただ私が申し上げましたのは、輸銀の延べ払いにつきましては外為法上の許可が条件になっておるということ、その許可をするのは政府でございまして、これは輸銀に支配されるんじゃなくて、政府自体の見解でそれがきまるものだということでございます。
  54. 田中武夫

    田中(武)委員 私はそれを聞いていないんです。政府と輸銀との関係、言うならば輸銀は、輸銀法の第五章、監督の章に掲げられておるこの範囲において監督を受ける、その以外に何らの制肘を受けない、こう解釈していいんでしょう。
  55. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 そのとおりでございます。
  56. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、これ以上あなたに聞いても無理かと思うのですが、いま政府の行なっておる発言、これは第五章の監督を越えたところの意見である、こう考えておるわけなんです。さらに、先ほど来あなたが言っております。許可にあたって外為法にそういう根拠がありますか。外為法の何条ですか。
  57. 柏木雄介

    ○柏木説明員 外為法に、輸銀融資をつけるつけないということは何も書いてありません。
  58. 田中武夫

    田中(武)委員 ならば、そのこと自体が外為法による認可、これに対しての一つの重要なポイントでありませんね。一体政府がいま発言しておるのは、銀行局長の言をもってするならば、外為法によって許可を与える、これに関連しての発言であるが、それじゃ外為法のどこに根拠を置いて政府は発言しておるんです。これは総理でないと答えられぬと思うがね。あなた、どう思うか。外為法のどこに、何条に観点を置いているか。
  59. 柏木雄介

    ○柏木説明員 ただいま申し上げましたように、輸出入銀行の融資をつけるつけないということは外為法とは直接関係ございません。
  60. 田中武夫

    田中(武)委員 ならば銀行局長、あなたの言われた許可を与えるに対しての一つ要件ではありませんね、法律上の要件ではありませんね。
  61. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 法律上の要件ではございません。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 それならば、ただ国際的な云々、こういうことだと思うのです。これを聞いてもあなた答弁できないかもわかりませんが、元総理の書簡というものは法律解釈を曲げるだけの権限を持っていますか、効果を持っていますか、効力を持っていますか。
  63. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 輸銀を使う使わないの問題は、私としてはこのように解釈しております。輸銀を使わなければこの商談はできないということを業者が言っておるわけです。というのは金利の問題なんです。要するに金利の問題、あるいは期限も入るかもしれません。そういう比較的安い金利で、比較的長期の契約をするにあたっては、民間の金融機関の資金をもってしてはとうていできそうもない、向こうとの交渉によって大体の概略の得た条件というものは、やはり輸銀を使わなければ成り立たないような条件を予定しておったわけです。業者としては、あくまでも輸銀を使わしてもらわないとこの商談は成り立たないということ、それに対しまして、だから政府が、直接それに対する答えのようなことになってしまうわけですけれども、そういう条件でも民間資金でやれるならどうぞおやりなさい、しかし輸銀を使うという問題はまた別個に外交上の問題として考慮しなければならぬ点があるので、そのことについていま直ちにイエスという答えはできません、その商談そのものを否定する気持ちは毛頭ないんだけれども、問題は輸銀資金を当然に使うという点について、これは法律上の問題としてでなしに、政治的な判断の問題として、ちょっといまイエスという答えはできないんだ、こういうことを言っておるわけでございまして、法律上輸銀を使うことが許可の条件云々ということを言っているんじゃございません。その点は、田中さんおっしゃるように、決して法律問題ではありません。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、政府といえども一たび成立した法律には従わねばならないという観点に立って申し上げる。そこでいまあなたがおっしゃったように、金利あるいは支払い条件、こういうことで必要だから輸銀をつくったのではないですか。そうでしょう。そうでなければ輸銀は要らないわけでしょう。輸銀をつくったということは、輸銀法の目的がまさにそれなんですよ。しかも政府と輸銀との関係は、先ほど来言っているように、この法律によって律せられているわけです。そうでしょう。しかも、先ほどあなたが言われましたが、そういうことを政府が許可にあたって云々ということは、外為法等法律的根拠を持たない。まさに政府法律違反であるというよりか輸銀法無視である。この辺でひとつ輸銀の総裁政府に対して何かものを言わなくちゃいかぬじゃないですか。輸銀としては、政府との関係は五章の監督以外には制肘は受けないのだ、窓口に来る前にとやかく言ってもらいたくない、こういうことぐらい言っていいのじゃないですか。まさに政府のやっていることは輸銀法無視なんです。法律無視なんです。そのことについてどうです。
  65. 森永貞一郎

    ○森永説明員 先ほど申し上げましたように、今回のような政治的な問題を含んでおりません案件につきましても、延べ払い許可に際しまして、これは特に輸銀資金を使わせる必要なしという判断を行政官庁においてされた場合には、業者の自発的な意思として輸銀への借り入れ申し込みを辞退させる場合があるわけでございます。そういう場合には私どものほうの問題に実はなってこないわけでございまして、延べ払い許可上そういう場合もあって、それが許可の一つの内容にもなり得るという意味では、輸銀のことを許可の際におっしゃっていただくのは迷惑だということが言えるほど潔癖に考える必要もないのではないか、やはり為替許可の際のケース・バイ・ケースの問題によって、業者にそれを遠慮させるという場合はあってもいいのではないか、そういうふうに考えます。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど来お聞きのように、為替許可にあたって外為法に根拠を持たない政府の行動であります。また、輸銀法に対しても何ら法律的な行動でない。また銀行局長が言われたように、法律的な問題でない、政治的な問題である、こういうことであるなら、いまの政府は、この問題に対する政府の発言、行動、すべて法律無視であるということを断言したいのですが、それについていかがですか。
  67. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 先ほど総裁から言われましたように、業務方法書ではございますけれども政府の貿易に関する基本方針に反しないようにつとめるのだ、そういうことは輸銀として自分で律しているわけです。結局、突き詰めてみますと外交上の問題ではありますけれども、さしあたり中共貿易という一つの問題についての国の基本方針の問題ではないか、貿易に関する基本方針について政府一つの見解を変えたといいますか、従来は中共貿易につきましても現にプラント輸出を認めたこともございます。しかしほかの要因から中共貿易について、一時的ではございますけれども政策のある程度の変更を余儀なくされたのが現状ではないかと思うのです。  それからもう一つ法律違反という点は、監督業務上必要な監督命令を出すことができる、これは確かに非常に狭い意味に解すべきものだと思いますけれども、広い意味では輸出入銀行のあり方といいますか、そういうものについて監督し得るということは、法律上はあるわけであります。ただこれを、運用にあたりまして、原則としては非常に狭く解して、個々の取引についてまで一々政府が指図すべきでない、そういう運用のあり方については、私はそのとおりだと思います。しかし、およそ政府に監督権というのはあり得ないのだというほど突き詰めたものではないと思います。ですから、輸銀の融資のあり方等につきましても、これは実は全くないのではないのでございまして、法律上の問題とは別にいたしましても、現に私ども、輸出入銀行のほうから具体的なケースについて、これをいかに扱ったらよいかという御相談を受けることはございます。期限が非常に長くなるとか、期限について問題があるとかいうことで、具体的なケースについて相談を受けた例がございます。そういう場合におきましては、私どもはある程度差し出がましいことになるかもしれませんが、その方向を指示することもあるわけでございまして、これは、中共貿易につきましては、もっと大きな問題であると思いますが、そういうことにつきまして、政府が何ら日本輸出入銀行に対して勧告するようなことができないというほどのものではない。ですから、法律違反というふうにきめつけるものでもありませんが、しかしいままでの論議を通じまして、なるべくなら具体的なケースについては政府は干渉しない、こういう方針は守っていくべきものと思います。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 違反というより、私は無視だと言っておる。一番最初に確認したように、第一条の外国には制限はない。ところが中共貿易だから云々ということは、第一条は何も輸銀に対しての規定だけじゃないのです。法律は、先ほど来何回も言っているように政府を拘束する。だから、政府のやっていること、言っていることは法律無視である。  どうやら本会議の振鈴も鳴ったようでございますので、この程度で中止をいたしまして、これから先は大臣を相手にいたします。
  69. 内田常雄

    内田委員長 本会議散会後まで、暫時休憩いたします。    午後二時二分休憩      ――――◇―――――    午後二時二十四分開議
  70. 内田常雄

    内田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  日中貿易に関する件について質疑を続行いたします。板川正吾君。
  71. 板川正吾

    ○板川委員 岡崎参考人にお伺いをいたします。たいへんおくれまして恐縮でございます。  前回おいでになったときから、御承知のように非常な変化がありました。日中貿易はせっかく高碕さんや岡崎さんのお骨折りで積み重ね方式がようやく軌道に乗って、これから本格的な日中貿易が行なわれようという段階になってきたとぎに、プラント輸出に関する輸銀融資を認める、認めないということで、非常に重大な危機に直面しておる、こう思うのであります。そこで、日立造船の輸銀の融資を認めないということで中国がこの契約を破棄したということが伝えられて、事実そうだろうと思うのでありますが、この中国の日立造船の船舶輸出契約の破棄、これはほんとうからいえば、仮契約が本契約に至らないということだろうと思うのです。ニチボーのビニロンプラントの場合には契約が自動的に四月三十日に有効になる、これは特別の破棄がない限り有効になるということになりましょう。しかし日立造船の場合には本契約が成立をしないということだろうと思うのですが、これに関する中国側の態度というものをこの際どういうふうにお考えであろうか。新聞等によると、中国でも、問題が解決すれば再開する用意がある、こういわれておりますから、こういった中国の態度について、岡崎さんの知り縛る範囲の観測なりを説明してほしい、こう思うのです。
  72. 岡崎嘉平太

    ○岡崎参考人 お答えいたします。  あの日立の船の契約の自然消滅についての内容の説明は聞いておりませんけれども、前からの話を総合いたしますと、せんだっての政府の統一見解では吉田書簡の影響が依然として残っておる、こういう解釈をして、それではこの契約を取り上げるわけにいかない、こういう態度だろうと思うのです。日立からも私のほうからも、あの統一見解についての解釈を十分にいたしまして、われわれは正常金融が受けられるものとの確信を持っておるから了承願いたいという電報を打っております。総理がいろいろ国会での表現は変えておられるけれども、最近には国会でも三回にわたって、台湾の干渉も受けない、中国の干渉も受けないということを声明しておられます。したがって吉田書簡を否定する点はこれできまっておると解釈できます。それから金融については別途考慮するという点は、政府の発表上はっきりはしないけれども、その内容については、いろいろないきさつ上十分正常金融を受けられるという確信を持つに至ったからという電報を打ったのですが、そういうあいまいな表現をするところにまだ何ものかがあるという推定をしたものとみえます。こちらにおる廖承志事務所の者にもその説明をいたしましたけれども、やはりどうも納得がいかない。それならばそれで、もっとはっきりした表現ができないものか、こういうことを申しておりましたから、やはり向こうも同じような解釈をしておるのだ、こう考えております。しかし、あの日立に来ました電報によりましても、私のほうに来ました電報を見ましても、この障害さえ取り除いてくれれば、もとどおりやろう、こう言っておりますから、現在のところまででは、吉田書簡が完全に否定されたということが立証されればいいということで、別にかつてあったような長崎国旗事件のようなものをいま向こうが頭に描いておるとは考えられませんです。
  73. 板川正吾

    ○板川委員 次に、ニチボーのビニロンプラントの期日が本月末ということになっております。これは自動的に契約が成立することになっておりますから、向こうから破棄の通告があれば、これまた不成立ということになろうと思います。このニチボーのビニロンプラントが、もし従来のような政府の態度であいまいのまま四月を終わるということであれば、当然これはもう向こうから破棄の通知が来るのじゃないかと思うのです。こういう事態になると、日中の貿易促進という面から見ましても、非常に重要な段階に立ち至るだろう、こう思うのです。もしニチボーのビニロンプラントまで今月中に解決しないということになれば、結果的にどういうような日中間の問題が予想されるでしょうか。
  74. 岡崎嘉平太

    ○岡崎参考人 ニチボーのプラントが成立するかしないかという問題は、御説のとおりに非常に重要だと思うのです。私の得ているいままでの印象では、あれは破棄しない、こう私は判断しております。しかし、六日にああいう電報をよこして、ニチボーの自然成立の日が来るまでに、日本側でとる態度いかんによっては、あるいは積極的に破棄ということをやりはしまいかという心配をもちろん持っております。私は向こうの代弁者じゃございませんけれども、どうもいまの日本の政府の態度が反中国的だという感じを強く持っておるのじゃないかと思うのでございます。台湾の言うことを聞いて、おれのほうは差別待遇をする、やらぬでもいいことをやっているじゃないか、それは反中国的な考え方である、また向こうの政府の言うことを聞いて自分のほうに水をさすことは、二つの中国の考えを持っておるのだというように言っております。そうすると、これから十日か十五日ばかりの間の日本政府のとる態度というものは、かなり重要じゃないかという感じがしておりますので、川島さんがインドネシアに行かれたときに周恩来なんかと接触されるという話でありますが、それがうまくいけば疑問が氷解するかもしれませんが、一度お会いになっただけでは、はっきりしたことを言われなければ、氷解ということも実際上むずかしいという感じがして、いま私どもとしてはたいへん心配しておる段階でございます。もしニチボーの契約を積極的に破棄してくるようなことがありましたら、これは単にプラントの問題だけでなしに、ほかのLT及び友好取引にもむろん影響が及んでくるのみならず、貿易を半年、一年やらないくらいのことはたいしたことはあませんけれども、アジアの中における日本と中国という大きな問題としては非常に憂うべきことになるのだ、そのほうをむしろ私は心配しておる次第であります。
  75. 板川正吾

    ○板川委員 ここまで来ますと、いま岡崎さんが言われたように、自民党副総裁の川島さんが政府代表としてバンドン会議の記念式典に出席をされる、それに野党の顧問も参加する、その機会に周総理をレセプションに招いて中国の代表団とも接触をしたい、首相も大いにその点について期待をしておるというようなことが最近新聞をにぎわしておるようでありますが、日本の全権大使という資格でありましても、初対面の人ですから、はたしてこういう込み入ったむずかしい問題が解決するかどうかということは問題だと私も思うのです。北京の松野という特派員の報道によると、日本は楽観しているような面がありますが、逆に中国はそれを期待してない。きびしい態度をとっている。こういうときに、新聞等で簡単にバンドン会議の式典で解決するような書き方をしているのはどうかと思うのです。しかし、時期としてはちょうど今月の下旬ということになりましょうし、それからわれわれの態度は別として、その前に日台間の一億五千万ドルの長期借款の問題もあるいは解決するとかという報道もされております。そういう形等があると、時期としては、この記念式典における日中の接触でこの打開をはかるほか今日においては道はないのじゃないかと思うのです。しかし、これにはやはり事前にいろいろの手を打つ必要があるのじゃないだろうか。ただ何でもなく自分の心がまえだけで入っていっても、相手が応じないという場合もあるし、最後の機会といいましょうか、日中貿易におけるある程度重大な時期ですから、相当事前に手を打って、バンドン会議記念式典における接触によって解決する方向に持っていくほか今日においては手がないのじゃないか、こう思うのですが、どうでしょう。
  76. 岡崎嘉平太

    ○岡崎参考人 外交のテクニックは私もよく存じませんから何とも申し上げられませんが、政府が新聞に伝えられるように考えておられるなら、それぞれの手をお考えになっていると思うのですが、黙って行って、最初に会って、よいかと言ったところで、それはいかぬということはたいてい想像ができる。いろいろおやりになっていることと思います。しかし、中国が考えている原則を承認するようなことを、あそこまで言わずにおるという必要もないのじゃないかと思うのです。むしろ早く言えばそれだけ問題は早く解決するし、もしあそこで言ったほうが外交上の効果が多いといわれるなら、やはりおっしゃるとおり、前もってそれを通じておくほうが効果がさらに大きいだろうと私は思うのです。だれもよく言いますように、中国は原則を非常にやかましく言う、原則が成り立てば非常に融通をきかす、こういう考え方だそうでありますから、第三国の干渉によって日中間に水をさすというやり方をやめてもらいたい、そういう原則を日本が認めるか認めないかということだけはどうしても決定しないとこの問題は片づかない。それがほんとうにわかれば、輸銀を使う使わぬという問題はもう問題にならないと思うのです。その点は、私が北京におるときに、はっきり私のほうからくぎをさしておる。ただ、先ほど申しましたように、佐藤総理が三回にわたって、台湾の干渉を受けないと言っておられたといっただけでは証拠がないという向こうの考えであろうと思いますから、それをどうして示すかということが問題なのであります。しかしわれわれ日本人の考え方からしますれば、一国の総理が最高の場所で三回も言明されたことですから、これで私どもは満足できると思うのでありますが、しかし外国ではそうは受け取れないというところで、やはりこの問題を何らかの方式で解明をする必要があると私は考えてもおりますし、政府に向かって強く希望を申し上げておる次第であります。
  77. 板川正吾

    ○板川委員 時間もないようですから簡単にひとつ。  もしこのニチボーまでも破棄になるような最悪の状態を予想した場合に、LT貿易なりの将来はどういう結果になるだろうかということが一つ。もう一つは、この秋行なわれる日工展、これも実は九分どおり意味の失われた展覧会というかっこうになるのじゃないか、こう思うのですが、この点についてどうお考えですか。
  78. 岡崎嘉平太

    ○岡崎参考人 先ほども申しましたが、私は約束は守る、友人に迷惑をかけないということは、私が北京におりましたときにも陳毅外相も言っておりましたから、単なる怒りのあまりに破棄するというようなことはしないと思っております。しかし先ほども申しましたように、こちらの態度いかんでは先がない。それならばここでやったところでおもしろくないから、むしろお断わりしたほうがニチボーのためにもなるのじゃないか、そういうような考え方で断わる。つまり、聞けば五年間つき合っていかなければならない、多くの人も向こうへ行って建設しなければならない。そのときにお互いに不愉快な目をするのはいやじゃないかというような意味で、あるいは断わるというようになりはしないか、そういう心配は実は持っております。しかしそのときに、それから起こってくるいろいろな貿易上の不便さ、あるいは貿易が減る、あるいは日工展ができない、これはもうそんな大きな問題じゃございません。それよりも日本民族の将来がどうなるかを考えたほうが私は大切なんじゃないかと思うのです。したがって、いまこの問題が大きな外交問題になるとすれば、二十年、五十年をひっくるめて考えた日本民族のことの上で今日どう処するかということを真剣に考えなければならないのではないか。もし現在いろいろな問題があっても、先を考えればこうしなければならぬということがあれば、そのために現在どっちのほうに不便があろうとも、中国側に対して怒りを買おうとも、台湾側に対して怒りを買おうとも、どっちでも、日本民族の長く生きられる、あるいはアジアの平和をほんとうに確保できる、確信のあるほうで考えなければ、単なる三億ドル、五億ドルの貿易の問題で左右されてはならない問題ではないかと思うのです。
  79. 板川正吾

    ○板川委員 もう一つ岡崎さんの意見を伺いたいのですが、日本の中には、中国はこの際ソ連からの援助を打ち切られて非常に困っておるので日本との貿易を希望しているのだというような、相手の弱みにつけ込んだ見方をする人がある。しかし実際はそうじゃなくて、中国としては、私ども昭和三十一年のときに中国へ行って周恩来首相ともあったのですが、その際にも、過去二千年間中国と日本はお互いに友人として友好関係を結んできたじゃないか、同文同種の民族じゃないか、ただその間何十年かの間日中の関係は不幸な事態が続いたけれども、それは二千年の歴史から見ればごくわずかな年限だ、だから今後はそういうごくわずかな不幸な期間をあまり念頭に置かずに、長い間お互いの友邦としてつき合ってきたことを念頭に置いて今後の友好関係を促進していこう、こういうようなことを言われておったのですが、その中国は困っているから日本から買いたいというのではなくて、できればやはり日本と友好関係を保っていきたい、そのためには、同じものならヨーロッパから買うより日本から買っていこう、こういうふうなことではないかと思うのですが、特に中国問題の通であられる岡崎さんの見解を伺って、私の質問時間がありませんから終わります。
  80. 岡崎嘉平太

    ○岡崎参考人 周総理にお会いになったときのお話は、私ら参りましても同じことを言われたのでありまして、これは周総理からだけでなしに、終戦になりましたときに私上海の大使館におりましたが、あそこを接収に来たのが湯恩伯上将でありまして、勝ち誇って入ってきた湯恩伯さんでも、われわれを呼んですぐそれを言った。そうして蒋主席もそういう考え方なんで、決して恨みを持っているのじゃない、日本と手を握ってアジアをよくしなければいけないということを考えておるのだからということを言って、ほんとうにきのうまで戦っておって――湯恩伯将軍というのは、日本の将軍に聞きますとほんとうにおそろしい将軍だったそうですか、その人が、自分の意見でもあり蒋主席の意見でもあると言って、その日からあたたかい手を伸べて、一緒にやろう、そしてアジアを興そう、こういうことも言われた。私どもは、相手がどういう制度であろうとどういう考えであろうと、大事なことは、このおくれたアジアの文明を高め、貧乏を追放することだと思っておるのです。中国共産党政権になっても、初めはたいへん心配いたしましたが、研究しておるうちに行く機会があり、周総理に会ったわけですが、同じことを言われるのです。ですからアジアの問題に関しては、国民政府の首脳部も共産主義のいまの北京政府も同じではないか。これはアジアに住む者のほんとうの願いだという感じを私はしておるわけです。したがって貿易問題につきましても、南漢宸さんもそう言いますし、周総理も言われる、あるいは寥承志さんも言われるのは、できれば日本から何でも買いたい、できるだけ買いたい、ことにプラントについては日本から買いたいということを言っておるわけなんです。しかし買いたくても日本が売ってくれなければどうにもならない。また今度の吉田書簡に関係して、日本は輸銀を使わなければ高くなるんだそうじゃないか、高いものを買えと言われても買えない、これはわが国が高いものを買っていいというわけにいかないから欧州から買わざるを得ないのだ、その点をひとつ考えてもらいたいと言っておりましたが、日本から買えば安かったり近かったり、あるいは技術者が来てくれる費用も少なくて済みますから、いろいろな面でいいと思っておるに違いないけれども、何が何でも、どんなに屈辱を忍んでも日本から買うという、そんなみみっちい考えでおるものではないということは私は確信できると思う。いばりではなしに、ほんとうに自分の国を興そうという人々の意気込みというものは、行って直接ごらんにならないとなかなかわかりません。そして日本でなければ売るものがないではないかということをよくいいますが、ほんとうに日本でなければ売れないというのは鉄鉱石と石炭です。それを日本はいまたくさん買ってない。大豆とかトウモロコシというものは世界的商品でありますから、何も日本が買わなくても、値段の問題は多少ございましょうが、欧州にいままで売れている。それですから、日本が買ってくれればベターではあるけれども、日本でなければならぬと日本側が考えるのは、これは手前みそだ。そういう点でもひとつ考えなければなりません。そういう考えの前に、アジアの問題、アジア全体として世界からおくれておる問題、これ以上アジアで争ってさらに貧乏になり、文化がおくれたら、アジア民族はどうなるかということを考えた上でアジアの政策を見直して考えなければならぬ。日本人が考えないで、向こうの国民政府の人も考え、あるいは共産主義のいまの北京政府考えているということを日本人はもっと反省しなければならぬということを、いまお尋ねがありましたので、この機会を利用して申し上げました。こういう機会を与えられたことをむしろお礼を申し上げたいと思います。
  81. 内田常雄

    内田委員長 中村重光君。  各委員に申し上げますが、岡崎参考人には御都合で、当委員会に三時までという御希望がございますので、お含みおきを願います。
  82. 中村重光

    ○中村(重)委員 時間がないようですから、一点だけ伺っておきたいと思います。  岡崎さん、日中貿易促進のために御努力を願っておることについて深く敬意を払っております。先日当委員会に御出席をいただきました際に、いまいろいろ御意見を伺ったようなことを伺った。そのときも吉田書簡によって、端的に申し上げますと、台湾の介入によって輸銀が使えなくなった、そのことが取り除かれない限りは、中国はとうてい仮契約を履行するということは考えられないのではないかというような御意見であったと思うのです。ところが今度政府が統一見解を出したわけですね。その内容は御承知のとおり、国内金融問題は別途考慮する、そういうことで、きわめて抽象的な内容になっておるようであります。その真意のほどもいろいろと解釈が分かれておるということでございますが、いずれにいたしましても、この政府の統一見解によって岡崎さんのほうでは中国に電報を打つ、そうしていろいろ努力をされておる、そのことは、この政府の統一見解によって中国が納得してくれるのではないかという期待をお持ちになったのかどうか。そうじゃなくて、政府のほうからいろいろそういったような努力をしてくれろという要請を受けてそのような努力をされたのか、そこいらをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  83. 岡崎嘉平太

    ○岡崎参考人 もちろん先ほど申しましたように、正常金融が受けられるという、その正常金融ということは、日本では一般的に長期の輸出金融というのは輸出入銀行でやっておりますから、しかも輸銀の金融を受けなければ、損をするかあるいはほとんど利益がないという状態になるわけでございますから、正常金融といえば輸出金融を受けられるものと、私どもこう感じます。通産省あたりの御解釈も、別途金融ということは、これは内容はむろんおっしゃいませんけれども正常金融、こういうふうに解釈しておられると拝察いたしましたし、前から佐藤総理に何回かお目にかかってお話を聞いたりしておるのから察しましても、決して輸銀を使わせないということが根本になっておるとはどうしても了解できませんから、ある時期が来れば、ある条件が成立すれば輸銀を使う時期が来る、こう私は確信しておったのであります。したがってそういう電報を打ったわけであります。決してあのときだけ過ごせばいいという考えではございませんでした。
  84. 内田常雄

    内田委員長 岡崎参考人には長時間にわたり御出席いただき、まことにありがとうございました。
  85. 内田常雄

    内田委員長 質疑を続けます。田中武夫君。
  86. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣にちょっとお伺いいたします。大臣は先ほど本会議前の質問のときにはおいででなかったのですが、私が先日大臣に輸銀法その他法律論をもってお伺いいたしました、あれの続きのようなことです。で、やっておるうちに政府委員からの答弁によって、輸銀に申し入れするとか、何とかする以前に、輸銀を使わせるとか使わせないということはおかしいじゃないか、こう言ったところが、それは外為法等による承認を与えるにあたっての問題だ、こういうような答弁があったわけです。大臣、やはりそうお考えになりますか。私の申し上げておるのは、この中国貿易の問題、ことに日立あるいはニチボー等で輸銀を使わせないとかいうことは、政府がそういうことを言うということは法律無視ではないかというのが私の立場なんです。それに対して、輸銀法より前の承認を与える段階においての意見だ、こういうことだったのです。それに関連してお伺いするのですが、いいですか。
  87. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 私の答弁がもし違っておれば訂正をいたしますが……。
  88. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、前に政府委員がそう言ったから、それに立って大臣にお尋ねしておるのです。
  89. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 私の見解を述べます。私としては標準外決済の際に外為法というものを考えて、輸銀は使わせないというようなそういう決済はしておりません。
  90. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、私の立場はきわめてはっきりしておるのです。こういう段階において政府が輸銀を使わすとか使わさないとかいう自体、政府自体が輸銀法その他を無視した発言である、こう言っておるわけなんです。それはお認めになりますか。
  91. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これは相当長い時日の経過がございますので、ある段階において見通しとして輸銀が使えるのか使えないのかというような場合に、それに対する見通しを述べた場合があろうかと思います。しかしながらこれは委員会でしばしば申し上げるとおりに、通産省の標準外決済を認める段階において輸銀云々ということはないのであります。
  92. 田中武夫

    田中(武)委員 どうもちょっと話が行き違いのような感じを受けるのですがね。それじゃ通産大臣は輸銀を使わせないというようなことは、大臣自体言ったことはないのですね。
  93. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これは私としては記者会見等で観測などを聞かれたことがございます。それでその場合に、それはなかなか困難でないかとか、あるいはそれは使えないんじゃないかとか、あるいはそのときどきの配慮のもとに、そういうことは聞いてもらいたくないけれども、この段階で言いますればそれはむずかしいとかいうような、そういう答え方をした記憶はございます。しかしながら私が公式に述べておることは、繰り返し申しておるとおりで、私が私の立場で輸銀云々ということはない、こう言っております。
  94. 田中武夫

    田中(武)委員 公式には言っていないが、記者会見等で言われた場合に、むずかしいとか、無理ではなかろうかとか、こういったことを言ったとおっしゃるのですね。それはどういうような根拠に立って――私が申し上げておるのは、法律が成立した以上は、政府といえどもこれを拘束する、守らねばならない、こういう上に立ってものを言っておるわけなんです。そこで大臣がそういう発言を非公式であろうともせられたときには、いかなる法律的な根拠に立たれたのであるかということです。
  95. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 それはやはり政府が同一なレベルで発言すべきだと思うのです。個々の閣僚がそれぞれ違ったニュアンスを出すのはどうか。それで国会の答弁などから、どうもこれは使えないんじゃないかとか、どうとか言われたときに、政府の答弁が食い違ってはいけないので、いや、この段階ではそう言われれば云々とかいうように、私としては何か頭に置いておったと思います。それで特にそういうことを言う場合でも、いまいろいろ聞かれるということは、実際上それは一つも前向きにならないというようなことも言っておって、私の言っておることが察しのつくようには言っておるのですが、しかしあまり政府の答弁の非常にニュアンスの違うこともいかがかといったような配慮のもとに私は申した。輸銀云々に触れるようなことを申したことは、これはないのです。
  96. 田中武夫

    田中(武)委員 どうもちょっと食い違うんだが、よろしい。ともかく、いま大臣おっしゃったように、通産省というか通産大臣の隠れたる意思というものをわれわれは推測しておった。したがって、先日私が申しましたように、こういう詰め方をする質問は遠慮しておったわけです。ところが、事ここに至ったんだからということで、この前からやったわけです。きょうも引き続きやったわけです。ところが、私はどう考えても、政府があの段階においてああいうことを言うのは法律無視なんだ、こういう立場をとっておるわけです。ところが、それについてどうも、交渉はおれがやったことはないんだ、こうなりますと、総理大臣なり大蔵大臣なりでないとはっきりしないと思うが、この点はおいておきます。私はあくまで法律無視の発言である、こう考えております。  そこで私はこれの六十三ページ、外国為替及び外国貿易管理法四十七条に、「輸出の原則」というところが掲げられておるわけです。そうして、「最少限度の制限の下に、許容されるものとする。」、したがって、この精神は通産大臣並びに通産省は堅持しておりますね。この精神は堅持しておりますか、大臣が。
  97. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 そのとおりでございます。
  98. 田中武夫

    田中(武)委員 次に、いま問題になっております日立の件をあげましたならば、これは四十八条によって輸出の承認を求める事項でありますか、ないですか。
  99. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 承認を求める事項でございます。
  100. 田中武夫

    田中(武)委員 これによると、あげて政令というところで具体的に示されておるのですが、その政令の条件はどんなことになっておりますか。
  101. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 七十五ページに輸出貿易管理令がございます。これは法律四十八条にございます「政令で定めるところにより、」というのを定めた政令でございます。これの第一条に、輸出の承認に関する規定がございまして、かくかくの場合は輸出の承認を要するということになっております。
  102. 田中武夫

    田中(武)委員 そういたしますと、日立の船舶輸出、これは承認を現在受けていますか、受けていないのですか。承認を与えておるのですか、与えていないのですか。
  103. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 承認を与えました。
  104. 田中武夫

    田中(武)委員 外為法に基づいて承認を与えておいて、なぜ輸銀の、先ほど来申し上げておるような第一条あるいは第十八条の事項に該当するのに、輸銀を使わせないとかなんとかいう問題が出てくるのですか。先ほど大臣おられたかどうか知りませんが、大蔵省の銀行局長の答弁では、この承認を与えるについて、そういう輸銀を使うほうがいいとか悪いとかということが出たのであろう、こう言っておったのですね。それとは違いますね。
  105. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 いま問題になっております日立の船の輸出につきましては、この第一条の第三号で、「大蔵省令で定める代金の決済方法」、いわゆる「標準決済方法によらないで貨物を輸出しようとするとき。」ということでございまして、標準決済方法につきましては別に規則が出ておりますが、たとえば船積み後六カ月以内に代金が回収できるものが標準決済でございまして、それをこえる場合は標準外決済ということになりますので、それに基づいて承認をいたした次第でございます。従来から輸出承認を出します場合には、その輸出につきまして国内の金融がどうなるかということは、法律上の記載事項、必要事項ではございませんので、特に書類には何も書いておりませんし、また普通の場合それについて特別な指示をするようなことは普通ございません。   〔委員長退席、小川(平)委員長代理着席〕
  106. 田中武夫

    田中(武)委員 この法律及び政令に基づいて承認を与える場合に、通産大臣、大蔵大臣に協議することになっておりますね。協議をなされた上においての承認でしょうね。
  107. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 さようでございます。
  108. 田中武夫

    田中(武)委員 ならば、大蔵大臣もこれについてとやかく言うべき立場ではありませんね。これはあなたに言ってもしかたがないのですが、そこで輸銀の総裁、お聞きのとおりでございまして、すでに承認は得ておるのであります。  そこで現実に、日立なら日立から申し入れがあった場合に、もちろん経済ベース等を考えてあなた方のほうで自主的に判断するものでありましょうが、いわゆる政治的な圧力といいますか、そういうものに左右されず、しかも船舶は輸銀法十八条第一号のトップに書いてある事項ですね。そうするならば、十八条によって適法である、あなたも先ほど承認云々ということも言われたと思うのですが、だから承認はすでにあったのです。それでは申し入れがあればあなたのほうは貸しますね。もちろんそれが業務方法書等から輸銀法並びに方法書等で合わないということは別ですが、窓口としては拒否すべきものでありませんね。
  109. 森永貞一郎

    ○森永説明員 本件の輸出承認が行なわれまして、ただいま伺いますと輸出承認の条件等は何ら付されていない輸出でございますが、私ども承知いたしておりますのは、その際輸銀融資についてはさらに検討するというような雰囲気のもとにこの承認が行なわれているのではあるまいか、そうして当事者たる日立造船もそういったことについての政府の決定があるまでは輸出入銀行にアプローチすることを控えておられる。その検討の結果が、三月三十日に国内金融については別途検討するということがありまして、その内容につきましてはいろいろ問題がございますが、日立造船としてはまだ即刻輸銀にアプローチするような時期に至ってない。そういう状態のもとにおいて日立造船が輸銀にアプローチをしてこられない、それがいまの現状だと存じます。私どもといたしましても先ほど来申し上げましたように、政府機関金融そのものは、自主的な金融判断によって可否並びに条件を自主的にきめる立場にあるわけでございますが、別途政府機関として政府の貿易並びに金融に関する基本政策に適応するように運用しなければならぬ立場にあるわけでございまして、政府の統一見解として、国内金融については別途決定するという決定が行なわれました今日といたしましては、すみやかにその別途決定を待っておる次第でございまして、それに適合するように運用しなければならないのではないか、さように心得ておる次第でございます。
  110. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど来お聞きのように、承認はすでに与えられておる。それには条件はついていない。政府が統一見解で別途考慮する、こういうことを言ったこと自体が私は法律無視だと言っておる。それはそれとして、それは早く持ってきなさい、貸しますとは言わなくてもいいが、現実に申し出があったときには窓口段階で断わらない、これははっきりしていますね。これは統一見解にあなたが左右せられるというか、そういうことであるならば、あなた自体も法律の無視を犯すわけですよ。
  111. 森永貞一郎

    ○森永説明員 政府政策、貿易政策並びに金融に関する基本政策に適合するように運用をするというのが政府機関の義務でございますので、今日の段階は私どもといたしましては、一日も早く別途決定が行なわれますことをひたすら念願をいたすのみでございます。
  112. 田中武夫

    田中(武)委員 まず、貿易政策というか、政府の貿易に対する考え方、これはお聞きのように、すでに無条件承認が出ております。いいですか。そうするならば、あなたが政府の指示を得ねばということはおかしいじゃないですか。そういう根拠はどこから出てきます。政府機関なるがゆえに政府の言うとおりにしなければならないのなら、輸銀を廃止しなさい。それはあなたに廃止せよと言ったって、あなたができるものじゃないけれども……。輸銀法という法律があって、特殊法人としてある以上は、政府との関係はすべてこの特殊法人を定めたところの輸銀法によってきめられておる。それを越えたものではない。しかも先ほど来何回も言っておるとおり、無条件承認が出ておるのに対して、あなたがとやかく言える問題じゃありません。したがって、窓口において断わるということはない、あくまでもこう解釈します。
  113. 森永貞一郎

    ○森永説明員 おことばを返すようで恐縮でございますが、おっしゃるがごとき輸銀における無条件承認が出ておりますのでございますならば、この二、三カ月以来の問題は全然なかったはずでございます。その問題があるというところが、これは事実なのでございまして、そこにやはり中共貿易に関する政府政策なり、方針がある。これは事実だと私は存じます。その方針には私どもといたしまして適合するように運用せざるを得ないのが政府機関の義務であると存ずるのでございます。おっしゃるがごとき意味での無条件承認が出ておるのでございますれば、これはもうおっしゃるとおりでございます。私どもといたしましても自主的に判断をいたすのみでございます。
  114. 田中武夫

    田中(武)委員 いま森永総裁の言った意味における無条件承認でしょうね。
  115. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これはやはり国会でしばしば申し上げましたが、その定義その他を聞かれると、またむずかしくなるのですが、たてまえは政経分離で、民間ベースだということを申してまいりました。その民間ベースはどうか。それは個々の企業者がみずから努力をしてやっていくんだ、こういうことを申しておるのであります。しこうして、今回の標準外決済をした、この承認を与えたものは、これもしばしば申し上げましたが、当初頭金でやっていけるんだ。だから、それでおやりなさい。それでやっているうちに金融の問題は別に起きてくるんだ、こういうことできたのであります。だからその間に、いまこの契約を実行する上において、私の立場から言えば、ここでそれじゃ輸銀がどうだという問題がまず先に出てくるわけじゃないのです。本来、私から言えば、中共側もこれはどんどんやったらいいじゃないか。そのうち、これはこれでそれぞれの企業者考えて、あなたの言うとおり、いま持ち込んだら輸銀はそのときの判断があるでしょう。それで私はいいと思うのですよ。少し考え過ぎだと思うのです。
  116. 田中武夫

    田中(武)委員 私はそんなことは聞いていないのですよ。あとの問題の船舶輸出、これは外国為替及び外国貿易管理法及びこれに基づく政令によって、無条件承認を与えたものなんでしょう。そうでしょう。
  117. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 従来、延べ払いの標準外決済の承認をします場合は、国内の金融については  一切触れないで承認することになっております。
  118. 田中武夫

    田中(武)委員 森永総裁、お聞きのとおり、そういうことは全然抜きにして無条件承認が出ておる。このことは確認できますか。政府委員がそう答えているのですよ。
  119. 森永貞一郎

    ○森永説明員 おっしゃるような意味での無条件承認が出ておりますのでございますれば、先般来の問題は、一体はたして何をしておったのか、あの閣議決定は一体どういう理由で生まれたのか、その辺私もふに落ちないのでございます。はたして自由に輸銀に申請書をお出しなさいというような、何らのそういった拘束、雰囲気的な意味での拘束もない承認でございまするならば、問題は全然起こらなかったはずなんでございます。その問題が起こっておるところに、本件をめぐる特殊な雰囲気がある。これは私、いままでのいきさつから、さように了承せざるを得ないのでございます。いままでのいろいろな問題が全くのから騒ぎで終わっておったというようなことがあるならば、これは問題は即刻解決するわけでございます。その辺がどうも私にはふに落ちかねるのでございます。
  120. 田中武夫

    田中(武)委員 いままではいいです。いまここで、国会委員会において、主務大臣である通産大臣及びその主務所管であるところの通商局長から、大蔵大臣と協議の上、無条件承認を与えましたという答弁を、あなたはそのまま受け取ることができませんか。
  121. 森永貞一郎

    ○森永説明員 その後におきまして、政府の統一見解として、国内金融については別途考慮する。これは政府において考慮するという意味だと私は思います。その統一見解は、これはやはり政府の、部分的ではございましょうが、貿易政策の一端なのでございまして、私どもといたしましては、その別途決定が一日も早く下されんことをこいねがう。それが今日の私の立場でございます。
  122. 田中武夫

    田中(武)委員 私が言っているのは、国会において大臣及びその所管の責任者である通商局長が、無条件承認を与えました、こう言っておるのです、法及び政令に基づいて。それをあなたはそのまま受け取れない、こうおっしゃるのですか。さらに、政府の統一見解なるものは法に優先いたしますか、法の解釈を越えますか。
  123. 森永貞一郎

    ○森永説明員 統一見解は、これは政策の問題でございます。法律との間に優劣の関係はないと存じます。法律もやはり政策によって運用が支配されるという場合があるわけでございまして、その間には優劣の関係はないと存じます。  前段につきましては、私、説明員でございますので、通産大臣ないしは通商局長にいま御質問申し上げる立場にございませんので、いまの御答弁だけで、ここで私が即刻にでも申請書を受け付けるという言明はいたしかねます。もし、お許しいただけますならば、私が通産大臣なり通商局長に伺って、はたして政府として、そういう別途決定の内容がそういうことになったのかということをお伺いするだけの時間的余裕がございませんことには、いまここで申請書が出てきたら、これを受け付けて、すぐに融資するという答弁はいたしかねることを御理解いただきたいと存じます。
  124. 田中武夫

    田中(武)委員 通商局長、その無条件承認はいつなされたか、いわゆる政府の統一見解が出た前なのかあとなのか。
  125. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 日にちのことは別でございますが、これもしばしば申し上げまするとおりに、通産省としては事務的に処理をしておるのであります。そこで、これは法律的にどういうふうになるかは別として、私は常にそのあと、これは民間ベースである、企業者がよく考えてやるべきである――これが企業者の立場を推察すれば、いろいろな動きもあって、輸銀のほうへ持っていかなかったのではないかと思うのでございます。しかし純粋にいろいろ詰めた話になれば、確かに私どもとしては標準外決済、何もそこに考慮せずに無条件に輸出承認書を与えたということになるのであります。
  126. 田中武夫

    田中(武)委員 無条件に輸出承認を与えておる。これは何回も繰り返して言われておるわけです。承認を与えて以後に、かりに政府がそのような統一見解なるものを出したとするならば、いよいよもって法律無視であります。しかしこれ以上私はやりましても、ただ通産大臣の気持ちを察してくれぐらいしか答弁はないと思うのです。  そこで輸銀の総裁に申し上げますが、まずすんなりと、いま国会答弁のあったように、無条件承認が出されておるということが一点。さらにあなたのほうの法律の第一条は、主として経済の云々となっているのですよ。いいですか。その上に立ってあなたはあくまでも輸銀総裁として輸銀法の立場に立ってものを考えねばなりません。したがって、出すか出さぬかはその当該企業の自主性にまちましょう。しかし、出てきた以上は受け付けねばならないということははっきり出ると思いますが、同じことを繰り返すようですが、はっきりとあなたが、いまの答弁のようなものであるというならばそれでよろしい。無条件承認を出されたものならば、窓口において拒否する理由はありませんね。
  127. 森永貞一郎

    ○森永説明員 無条件承認であるかどうかということについて私の疑問点を申し上げたわけでございまして、その点につきましての私の疑問は依然として残ります。おそらく私は、無条件承認とはおっしゃりながらも、日立造船が無条件に輸出入銀行に借り入れ申請書を出してもいい雰囲気ではない雰囲気のもとに承認をされたのだ、したがって日立造船も私どものほうには借り入れ申し込み書を持ってこられない、あるいは事実として、結果としてきていない、それがいまの事態であろうと存じます。したがいまして、日立造船が私どものところに借り入れ申し込み書を持ってくるにつきましては、持っていってもいいというような何らかの条件の変化があることが必要でございましょうし、そのときになって、そういう状態が出現したからこそ、日立造船は私どものほうに出してくるのでございましょうから、その際には、これは私ども通常の手続に従って案件を処理いたす所存でございます。田中(武)委員 雰囲気だとかなんとかいうことについては、あなたはその席上にはいないし、そういう権限がないわけです。あくまでも政府が、主管の通産大臣が無条件承認を与えたということ。日立が持ってくるかこないかという憶測はいいです。私の聞いておるのは、この上に立って、いわゆる無条件承認を与えている上に立って、窓口へ出た場合は拒否はできませんねということです。
  128. 森永貞一郎

    ○森永説明員 繰り返し申し上げることになりますが、日立造船が私どものところに借り入れ申し込み辞を提出するのは、何らの支障もないような状態において持ってこられるのでございますれば、これは私どもとしても通常の手続に従って処理をいたす所存でございます。
  129. 田中武夫

    田中(武)委員 さらにもう一回お伺いしまけが、日立が持ってくるかこないか、それは当該企業考え方です。それを輸銀の総裁がとかく憶測の必要はありません。したがって窓口に出た限りは拒否はできませんねと言っておるのですよ。だから前段とか何とか憶測を言わずに、できるかできないかだけ言ったらいいんですよ。できませんねと、言ておるのですよ。だからイエスかノーかでいいのです。
  130. 森永貞一郎

    ○森永説明員 政府機関でございますので、これだけいままで紛糾した問題でもございまするし、それの円満な解決を切に望むことにおきましては決して人後に落ちないつもりでございますが、現在のところは私どもがこれをすなおに許すについては、日立造船が出さないのと同じような意味での支障が起こっておる状態である、その点につきましては私はいまだにそういう状態が続いておるのではないか、もし私のこの解釈が間違いでございまして、何らそういう支障はないのだということを――政府にこれは伺います、すぐ。本日ここで御質問申し上げることができないのが残念でございますが、即刻大蔵省に、通産省からはこういう答弁をいただきましたが、はたしてもうそういう輸出承認ということで、何らそういう支障がないのかどうかということを重ねて伺いまして、その上で、まさにそういう状態であるということでございますれば、これはもういつでも申し込み書を受理するにやぶさかでございません。
  131. 田中武夫

    田中(武)委員 何だかんだとこういっておるのですがね、私そんなことを聞いてないのですよ。あなたは大臣及び政府委員国会における答弁をまだ信用できませんか。
  132. 森永貞一郎

    ○森永説明員 先ほど来申し上げましたように、全く何らの支障のない無条件承認という点につきましては、私は疑問を持っております。
  133. 田中武夫

    田中(武)委員 何を言っておるのですか。あなたは大臣及び政府委員が当委員会において答弁をしたことをすなおに受け取るか受け取れないかという質問ですよ。それをあなたは受け取れないと言うなら、事は重要です。あなたは当委員会を無視しておるということなんです。大きくいうならば国会無視だということになるのです。そういう人が政府機関の総裁ということは許されないということになるのですよ。いいですか、私の言っているのは、大臣及び政府委員がこの正式な委員会において発言したことをそのまま受け取れるのか受け取れないのか、ひいては当委員会の権威にかかわる問題です。心して発言してください。
  134. 森永貞一郎

    ○森永説明員 私は、通産大臣や通商局長のおっしゃったことはそのまま承っております。おっしゃったことにつきましては何ら誤解をいたしておりません。しかし私はもし質問を許されるならば、はたして現状において、この問題の沿革において、いまにおいて、私どもが日立造船の輸出資金借り入れ申し込み書を何らの問題なく受け付けてもいい状態において無条件承認が行なわれておるのかどうかということを、実はお尋ねしたいわけなんです。それだけの余裕は与えていただきたいということを申し上げておるのです。
  135. 田中武夫

    田中(武)委員 私の言っているのは、当委員会における発言をあなたはそのまま受け取ることができないのですか。ならばその理由を言ってください。あなたの答弁いかんによっては当委員会を侮辱したことになる。
  136. 森永貞一郎

    ○森永説明員 委員会を侮辱するなど、私毛頭考えていないことであります。通産大臣、通商局長の言われておりまする御答弁はそのまま受け取っておりますが、それで私どもの……(「受け取ればいいんだよ」と呼ぶ者あり)答弁そのものは、御答弁どおり受け取っております。
  137. 田中武夫

    田中(武)委員 そのまま受け取るならば、窓口に申し込みがあれば拒否はできませんね。
  138. 森永貞一郎

    ○森永説明員 御答弁は御答弁のとおり受け取っておりますが、別途三月三十一日の統一見解との関係を、実は通産省当局に伺いたいわけです。その点は、私は説明員でございますので、だめを押すだけのゆとりを私にお与えくださいということを申し上げておるわけです。
  139. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたが個人として後ほどそういうことを聞くことはけっこうです。しかし当委員会の大臣の発言をそのまま受け取るならば、その上に立ってものを言ってください。受け付けるのか受け付けないのか。
  140. 森永貞一郎

    ○森永説明員 私といたしましては、通産大臣、通商局長の御答弁はそのまま受け取りますが、重ねて、私どもの面接の主務大臣、主務官庁は大蔵省でございますので、別途大蔵省に統一見解との関係をただした上で態度を決するほかはございません。
  141. 田中武夫

    田中(武)委員 あとにまだ質問者が続いておるので、私は適当なところで切りたいと思うのですが、こういうことでは切れないです。政府と輸銀との関係は何によって律せられるのです。先ほどの質問で言ったように、そのための輸銀法ではありませんか。あなたがいま言っておることは、輸銀法のどこに根拠を置いて言っておられるのです。
  142. 森永貞一郎

    ○森永説明員 輸出入銀行法第四十二条、「日本輸出入銀行は、大蔵大臣がこの法律の定めるところに従い監督する。」それぞれ所管官庁、所管大臣、監督大臣が定められておる次第でございまして、ただいま大蔵大臣ということを申し上げましたのはその趣旨でございます。
  143. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、この法律の定めるところにより監督する、その監督は五章以下です。そこに、具体的に、いまあなたが発言しているような根拠をなすところの条文はありますか。
  144. 森永貞一郎

    ○森永説明員 政府が一般的な監督権を持っておりまして、それに基づく監督命令こそ出ておりませんが、大蔵大臣の監督下にあることはまず御了承いただけると存じます。それに加わるに業務方法書をもちまして輸出入銀行の運営は政府の貿易政策、金融政策に適合して行なうということになっておるわけでございまして、その内容から、これだけいろいろ問題のありました問題でもございますので、特に統一見解等も出されておることでございますので、それらとの関係を大蔵省にもよくただしました上で私の態度をきめたいと存じます。
  145. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど来言っているように法律政令の命ずるところに従って通産大臣は大蔵大臣と協議をして無条件承認を与えたのであります。あなたは国会における大臣、政府委員の答弁はそのまま認めねばなりません。それに疑問をはさむならば事は重大になります。しかも、主務大臣は大蔵大臣であることはわかっておりますが、しかし大蔵大臣がかってなことを言ったりかってなことができない。あなたがいまおあげになった四十二条ですか、この法律の定めるところによりですから、法律に定めてないことはやれないわけです。ではこの法律の定めるところは何かというと、五章以下の監督の条項ですよ。したがって、あなたがそんなにびくびくしてものが言えないのは、輸銀法の第五章監督の条項のどこに当たるのだ、こう言っておるのですよ。あなた、ないでしょう。
  146. 森永貞一郎

    ○森永説明員 四十二条を引用いたしましたのは、大蔵省の監督を受けて、そして統一見解はこれは閣議できまったわけでございまして、大蔵大臣もそれに入っておるわけでございますね。そこで私はあの統一見解が出ましたときに、大蔵省とも、本件の処理について一体いかがすべきかという点をよく打ち合わせたのでございますが、大蔵大臣といたしましては、まだ輸銀の出る幕でないというような御指示をいただいておるような事情も実はございます。したがいまして、ただいま無条件承認云々のお話もございましたが、私どもといたしましては大蔵省ともお打ち合わせをしない限りは、ここで即刻輸出資金借り入れの申し込み書を受けつけるかどうかということは即答いたしかねる。それらの点につきまして時間的余裕をいただきたいということを申し上げておるわけでございます。
  147. 田中武夫

    田中(武)委員 どうもごまかしちゃいかぬよ。大蔵省が監督をするのは輸銀法第五章の各条に基づく場合だけですよ。大蔵省あるいは政府と輸銀との関係は輸銀法によって定められておる。かってなことを政府なり大蔵大臣が輸銀に言わないように、ある意味においては、輸銀法があるわけですよ。したがって、あなたがあげたように大蔵大臣はこの法律の定めるところにより、すなわち法律に定めなきことはやれないわけなんです。いいですか。しかもその法律の定めるところは何かという第五章監督の各条であるということですよ。それ以外の何があるのです。それならあなた自体が輸銀法を否定したことになりますよ。輸銀法を否定するのですか。総裁がみずから輸銀法を否定するなら、否定いたしますと申しなさい。
  148. 森永貞一郎

    ○森永説明員 輸銀法の規定を順守してその運営に当たっておるつもりでございます。ただし、先ほど来……。
  149. 田中武夫

    田中(武)委員 それなら五章のどの条項によってあなたはものを言っておるのだ。監督の章があるでしょう。どれなんです。
  150. 森永貞一郎

    ○森永説明員 第五章の第四十二条以下に響いてありますことに直接の関係はございませんが、私が申し上げておりますのは、政府機関はやはり政府政策に協力する立場にある、そのことを輸銀みずからの内部規定でございます業務方法書にうたっておるわけでございます。政府の貿易政策、金融政策基本に適合するように運用しなければならない、そういう制約を受けるのは政府機関としては当然だと存じます。具体的な問題について政府がどういう措置をとられるか、そのよしあしにつきましてはいろいろ批判もございましょうし、私自身も意見を持っておりますが、具体的な問題につきましては、ただいまは無条件承認というお話でございましたが、それならばその後の一切の問題は起こらなかったはずであります。しかし起こっておる。統一見解等のこともあったわけでございまして、やはりそこに政府の貿易に関する政策あるいは金融に関する政策があらわれておるのではないだろうか。それで私は政府機関として、やはりその立場上それに適合するように運営をしていかなければならない立場にあるわけでございますので、したがいまして、いま申請書が出てきたら、それをすぐに受け付けるかどうかという点についての即答はしばらく御猶予をいただきたいと申し上げておるわけでございます。
  151. 田中武夫

    田中(武)委員 政府機関は政府の方針に従っていくことは当然です。しかし何もかも政府がかってなことをやれないために法律によってその行動を縛っておるわけなんです。そうでしょう。その法律とは何ぞや。輸銀法でしょう。しかもそのあなたがあげた条文自体が、この法律の定めるところによりです。この法律に定めてないことは大蔵大臣といえどもやれない。これが法のたてまえです。それではこの法律の定めるところによる大蔵大臣の監督は何かといえば、第五章監督の各条だというんですよ。だからそれ以外のことはかってなことはやれないのです。やれますか。それほどあなたは輸銀の総裁として、法律を離れても、無抵抗で政府の言うことばかりを聞いておるのですか。
  152. 森永貞一郎

    ○森永説明員 第四十二条以下の監督の規定に基づく具体的な監督命令が出ていないことは先ほど旧来申し上げているとおりでございます。しかし監督権があって、必要があれば監督命令を出すという立場にある、これは政府機関の立場としては当然でございますね。そして一方政府機関の本質として、やはり政府政策に協力するというのが、これは法律規定以前の問題として政府機関として運命づけられておるのではないでしょうか、さように私は考えるのでございます。そういう運命を裏づける意味で、業務方法書の第何条でございましたかに、政府政策に適合するようにという規定があるわけでございます。それはやはり政府機関が置かれておる必然的な制約ではないかと私は考えておるわけでございます。
  153. 田中武夫

    田中(武)委員 業務方法書は法のもとに有効なんです。ところが法律による監督命令は出ていない。しかも政府の方針によって国会において明確に無条件だと答えておるんですよ。それでもなおあなたはとやかく言うのですか。   〔小川(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  154. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 非常に法律的な問題になっておりますので、法律解釈その他は所管の大蔵省のほうにお願いしたいところでございますが、先ほど、輸出承認を出す場合に無条件ということを申し上げたのでございますが、その意味をもうちょっと明確にさせていただきたいと思います。それは、従来輸出承認をおろします場合には、標準外決済としてよろしいかどうかということを判断するのでありまして、その場合に国内の金融がどうなるかということについては、何も触れていないわけでございます。したがって、無条件という意味は、実は無条件で輸銀に持ち込んでもいいという意味でもないわけでありまして、一応遮断してお考えいただきたいと思います。  それから、出時現実に輸銀を使うことについて外交上問題が出ておったことは事実でございますが、当時事務的には外務省のほうとも話がありましたが、本件については一応国内の問題は切り離して別途の問題、白紙ということで輸出承認を出した次第でございます。したがいまして、あと金融の問題は金融の問題として独自の立場で判断をしていただくということになろうかと思います。
  155. 田中武夫

    田中(武)委員 無条件承認、白紙ということは、あなたの言うように輸銀を使いなさいということもきめていない。同時に使ってはいかぬということもきめていないでしょう。そうでしょう。ならば、総裁どうです。先ほど来の質疑の中で出てきて、輸銀法から拒否する根拠はありますか。窓口へ出た場合に、窓口において拒否する根拠がありますか。政府の統一見解が法に優先する、こういうことであるならば、その根拠を知らしていただきたい。
  156. 森永貞一郎

    ○森永説明員 政府の統一見解は、現状における政府の、全体ではございませんが、中共との貿易の中のごく一部分ではございますが、それに関する政策の決定であると存じます。私どもといたしましては、それと法律との関係等についてはいろいろむずかしい問題も御指摘のようにあろうかと存じますが、とにかく政府機関でございます以上、政府統一見解に適合するように運用せざるを得ない趣旨だと存ずる次第でございまして、ただ先ほどから通産大臣、通商局長から伺っておりますることにつきましては、即刻直接の監督大臣でございまする大蔵大臣にもお伺いを立てました上で善処をいたしたいと存じます。
  157. 田中武夫

    田中(武)委員 現在の段階において輸銀法に基づく何らの命令も出ていないのですよ。しかも承認にあたって使ってはいかぬということも出ていないのですよ。政府の統一見解というものは法の解釈を曲げることができますか。もしそうであるとするならば、三権分立の基礎を侵すほどのゆゆしい問題になります。そういう三権分立の憲法基本をあなたは乱すことを是とするのですか。
  158. 森永貞一郎

    ○森永説明員 輸出入銀行法の各条項の趣旨と先般の政府の統一見解とが法律的に矛盾しておるかどうか、これは私、専門家の見解を待たなければ、私自身何とも申し上げかねます。しかし法律の運用の問題としてああいう統一意思が出ましたわけでございまして、各閣僚御賛同の上閣議決定が行なわれる今日といたしましては、私どもといたしましては、それが私どもに示されたる政策であるというふうに考えざるを得ないわけでございまして、それに適合するようにということが私どもに課せられた制約であるというふうに考える次第でございます。
  159. 田中武夫

    田中(武)委員 どうもあなた、大蔵次官をやり、中小企業金融公庫の総裁をやり、そして輸銀の総裁と、いわゆる役人のゴールデンコースを歩んできた人としては、少し頭の回転がおそいんじゃありませんか。あるいは頭の回転を故意におそくしてのらりくらりとするところが保守党政府の気に入って、あなたがゴールデンコースを歩んだかもしれません。私の言っているのは、法律に対して、政府の統一見解というものが法律解釈なり規定を変える力があるかといったら、ないのです。私は政府の統一見解なるものは法律無視だという立場です。そこで、輸銀法あるいは外為法等の法律上、出てきた場合には断わることができるかできないか。断わることができるとするなら、法律をもって答弁願います。何条によって断われると願います。
  160. 森永貞一郎

    ○森永説明員 私は、私自身に対する田中さんの御批判は、これはもう御自由でございますので、いかなる御批判でも甘受いたす次第でございますが、私自身といたしましては、いま輸出入銀行法の各条項と先般の政府の統一見解とが法律的に矛盾をいたしておるというふうにはどうも考えられないわけでございます。しかしこの点、私は法律の専門家ではございませんので、その点は法律の専門家におただしをいただきたいと存ずる次第でございます。  とにもかくにも、私ども政府機関としての立場から、これだけ問題がございまして最終的に統一見解が出た今日、その統一見解の別途考慮の内容を全然無視して行動するわけにはいかないわけでございまして、その点は政府機関としての当然の制約から来たるものというふうに御了承をいただきたいのでございます。  それにもう一つつけ加えることを許されるならば、これは無条件承認ではあったわけですが、それにもかかわらず日立造船がすなおに申請書を出すことをちゅうちょしなければならないような何らかのものがあったのは事実でございまして、それが一体どうなるかということは、やはり私どもといたしましても注視しなければならないところで、その一つのあらわれが先般の統一見解でございまして、その別途考慮の結論が一日も早く下されるようにということを私はひたすら念願をしておるということを、繰り返して申し上げさしていただきたいと思います。
  161. 田中武夫

    田中(武)委員 法律的に拒否する根拠はどこかと聞いておるのです。ずばり言ってください。――私は、大臣をはじめ総裁政府委員がだいぶ協議してお困りのようですから、私のほうから一つの案を出します。  第一、政府統一見解の効力、これと法律との関係二つ、輸出承認を無条件で与えておるということの上に立って、輸銀法その他の法律によって、窓口に現実に出たときには、拒否できるかできないか。拒否できるとするならば、その法律的根拠。この二つを、あなたが望んでおられる大蔵大臣と御協議の上、二人の文書、これは署名捺印をして私あてにお出しを願います。その上に立って、これは前から申し上げておるように、大蔵大臣、佐藤総理及び法制局長官、これに来てもらって、事後の論議を展開いたします。署名捺印の上、文書による責任ある答弁を願います。これ以上責めてもお気の毒のようですから……。どうですか。
  162. 森永貞一郎

    ○森永説明員 先ほど来申し上げておりまするように、本件につきましては、大蔵大臣に伺いを立てました上、お答えをすることにいたします。ただいまのお話の筋は了承いたします。そのとおりいたします。
  163. 田中武夫

    田中(武)委員 じゃ、もうこれ以上詰めていてもしようがないから……。
  164. 内田常雄

    内田委員長 板川君。
  165. 板川正吾

    ○板川委員 実はもう一つ、きょうはこのほかあと二件質問があります。プロパンガスの爆発の問題を次にやりたいと思うのですが、時間がありませんから、簡単に質問いたします。  統一見解がいま盛んに議論されました。私は法律論じゃなくて政治論でございますが、統一見解について、これが三月三十日に政府で発表になった。それの内容は、契約はすみやかに履行されるべきである、国内金融については別途協議する、こういう趣旨であったと思うのです。ところがその統一見解について、統一された見解がないということで、翌三十一日に政府で、大蔵、通産両大臣了解済みという統一見解の解説書というのが出たそうであります。これは四月七日の朝日新聞にそう報道されておるのですが、その解説書によれば、佐藤総理が今国会でしばしば、国内金融についてはいかなる国からも干渉を受けず、自主的にきめるということを再三繰り返しておる。したがって、これによって吉田書簡に拘束されるとか、台湾の介入を許したという中国側の問題にした点は解決された。これが前段で、そして国内金融についてはすでに政府と銀行の間で、正常な船舶輸出の方法、つまり輸銀融資の道はついているという解説書の内容が、正常な輸出の方法を確保するということで、その正常とは輸銀の扱い、融資を認めるという了解、こういう解説書があるというのですが、そういう内容のものがあるのですか。
  166. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 大蔵大臣と私の間でそういう相談をした事実はございません。
  167. 板川正吾

    ○板川委員 そうすると、三十一日に大蔵、通産両大臣で了解済みという解説書なるものはないということなるのですね。先ほど岡崎さんは、ある意味では正常な船舶輸出の方法は政府の統一見解で了承しているんだ。正常な輸出を認めるということは、結局のところはその輸銀の融資を認めるのだという了解ということで、岡崎さんも中国側に、日立の契約を成立させるように要望した。岡崎さんはそういう意味のことを言っておったのですが、それは仮定の上に基づいた、事実無根の上に基づいた解釈ということになりますね。――じゃ、それはそれでけっこうです。  それから第二は、一体大臣は、再三統一見解なる趣旨であいまいにして、結局中国はこれに応じてほしいというようなことを言っておる。政府も大臣も、なだらかに実行していくんだというようなことを言っておったが、実際は日立の問題は、御承知のように、契約をしないということははっきりしましたね。この点は、総理も通産大臣も何とか解決をしていきたいということを言っておったことから見れば、総理は、とにかく商売が成り立つようにやるということを言明しており、大臣も、見通しとしては日立の問題は解決するんじゃないかなと思ったんだろうと思うのですが、見込みが違ったというふうな結論が出たと思うのです。  そこで問題は、今後四月中には例のニチボーのビニロンプラントの問題を解決しなければならぬ。この問題を大臣はどうされるという気持ちですか。これがもし不成立に終わるようなことになれば、日中の貿易というのは非常な暗さを持ち、これはだんだん縮小されていくようなかっこうになるのではないか。急に全面途絶ということじゃないにしましても、日工展の問題なんかも意義を失ってしまうのではないかな、こう思うのです。岡崎さんは日本民族と中国民族ということを考ええ、三十年、五十年を考えれば、そういう不幸な事態は非常に悲しいことだというような意味で言っておったのですが、このニチボーの問題を政府はどういうふうに解決しようとして考えておるのか。いまのままでいけば、私は不成立になる公算が大だ、こう思うのですが、どうでしょう。
  168. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これは中国と日本との間に相互の理解がなければいけないと思うのです。私はしばしば言うように、本来何らの問題がなければ、通産省が承認を与えるとともに、この契約が発効して頭金が出て、なだらかに契約が動いていくべきものなんです。しかしそういかないところにきわめて遺憾なことがあるわけです。そういうふうに動いていけば、その間に金融もおのずから解決をする、こういう見解がありますから、したがって政府部内にもいろいろ意見がございますが、すみやかに契約は履行されるがいい、また国内金融は別途考慮するという表現になったと思います。これは説明するまでもなく、いろいろ議論があっての結果でございます。こういうわけでございますから、今後の問題におきましても私の期待するところは、あまりこれをいろいろな角度から問題にせずに、現にさっそくにでも中国側が理解があるならば、頭金が出て、そしてどんどん仕事にかかっていく、その間に金融問題が起きてくる。それからかつては中共側も、日本の金融のつけ方を云々しておるのじゃないのだ、台湾の介入しておることについてわれわれは何としても耐えがたい、こう言われたのであります。その問題については、これも明白に私申し上げたように、二月二十四日に一国の総理が国民政府の代表である魏大使に、双方からとやかく言われたくない、自主的にやると言った以上は、これを十分理解してもらいたい、こういう見地でおるのですけれども、不幸にしてこの私の見解がどうも相手に通じない、また、おそらく相手側は、通産大臣何言っているのだという気持ちはあるいはあるかもしれない。しかし、ここのところは相互理解をもって進んでいくことがいいんじゃないか、こういうふうに私は思うのであります。
  169. 板川正吾

    ○板川委員 二月二十四日に台湾の大使に総理が、いかなる国の干渉も受けない、自主的にきめるのだというような重要な発言をしたのです。新聞にも報道された。大臣もいま言われておりますが、従来この問題は、吉田書簡から輸銀扱いの融資をしないということが問題になった。なってきて、本来ならば、先ほど田中委員が言ったように、法律的にも当然輸銀も融資を認めなければな・らない状態だ。それを吉田書簡以来それが問題になっておる。ところが台湾の大使に、いかなる国の干渉も受けずに自主的にきめるのだと言ったから、私は当然三十一日までには輸銀の扱いを認めるんじゃないか、実はそう思っておったわけです。そうでなければ台湾の大使に、自主的にきめるのだと言う必要はない。輸銀の融資をさせないというなら、あえて台湾の大使にそういう発言をする必要はない。それは台湾が希望しておることですから、台湾が輸銀の取り扱いを認めるなということを言いだし、それが吉田書簡となったことは御承知のとおりであって、台湾が言うとおりになったならば、あえて佐藤総理が二月二十四日にそうした発言をする必要はない。だからそういう発言のことから考えれば、私は当然三月三十一日には政府は輸銀の融資を認めるという結論を出すんじゃないかなと思ったら、それがそうじやない。そこらがどうしてもわれわれとしてはわからぬ。一体そういう状態で、総理の発言がそういう趣旨であるならば、輸銀の融資を認めるということをはっきり言ったらいいじゃないか。いま聞くと、金融はおのずからやっていれば解決する、金融の道はおのずから解決する。おのずから解決するということは、やっていれば輸銀を認めるということにもわれわれ解釈できる。それならば、総理もそう言っているのだし、結論として統一見解の内容は、いま解説書はないというそうですか、伝えられるところによると、正常の輸出を認める、つまり輸銀融資を認めるということになぜならなかったか、どうもその辺がどうしてもわからない。
  170. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 私が説明がへたなんで、何べんお話ししてもどうも了解点に達しないようでありますが、三月三十一日までに輸銀を使うか使わないかをきめる、こういう取り組み方をいたしますと、いずれの結論を出しても自主的な判断でない方向へ行ってしまう。輸銀を使わないといえばやはり台湾政府の介入となる、輸銀を使うといえば-遺憾ながら中共も表現が少し強かったと思うのです。三月三十一日までに輸銀を使うか使わないかが、台湾が介入するかしないかのあかしが立つんだとか、あかしを立てるというような表現をしたという、そういうところにまっこうから取っ組んでいくこと、これがいずれからもとやかく言われたくないということと非常にもとるわけでありますから、したがってそれにまともに取り組まずに、ここは契約はすみやかに履行してもらいたいし、金融のことは国内金融は別途に考えます、こういう表現になったのであります。この辺はなかなか御了解していただきにくい点があろうかと思いますが、私どもの申し上げていることもひとつこの辺で御了承いただきたいと思うのであります。
  171. 板川正吾

    ○板川委員 大臣が言った金融の道はおのずから解決するということは、具体的にどうことですか。結局は輸銀を認めていくということですか、それとも別途な、輸銀融資をしないで別な方法で認めるということですか。
  172. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これは、これまでもしばしば申し上げておるのでありますが、この問題が起きる以前に、融資の問題じゃないんだ、こういうことを中国側が正式に言っておるのであります。ですから契約が履行されていきますれば、これは船を納めるとかプラントを納める相手側には、何ら迷惑をかけるわけではないのであります。ですからこれも何べんも言うとおりに、企業者がそれぞれ考えればいいんだ。ですからこの段階であなたが、輸銀を使うのかそれともほかの方法をやるのか、こう言えば、いずれもあります。私の立場から言えば、この貿易に関連して一企業に対して不当な大きな負担をかけて輸出をさせるというようなことがあってはいけない。しかしこれはそれぞれの企業者が当然考えるべきことでございますから、これは輸銀のほうに申請をしてくれという場合もありましょうし、あるいはそうでないシンジケートでいくという方法もございましょうし、そのほかいろいろな方法がございます。でありますから、その点は別途考慮、やはりいまこの三十一日が過ぎた直後に、私がここで輸銀がどうだということにまともに取っ組んでいくということは、まだまだどうかと思うのであります。それでやはり別途考慮、だから私の言うように頭金を払って仕事をしていく、その間に処理をするということがきわめて穏当である、こういう考え方、その穏当の中にはいずれも入っているのです、方法としては。
  173. 板川正吾

    ○板川委員 じゃ、おのずから解決するという中には、輸銀を認めるという方式も一つあり、他のシンジケートなりでそうした金融の道を考えるという方法もあるということですね。そうすると、輸銀を認めないということを最終的に決定したのじゃないですね、統一解釈というのは。
  174. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 それはこの間お答えしたとおりに、もし輸銀を認めないという政府の態度が明らかなら、この際輸銀は認めないということを明白にしたと思うのであります。しかしそれをしたかったことは、金融の方法にはいろいろあって、これは自主的に判断をする、こういうことであります。
  175. 板川正吾

    ○板川委員 その点は一つわかりましたが、しかし日本はそう言ったって中国側じゃそれを理解しない。理一解しないのは、この問題はそもそも中国から問題を持ち出したのじゃなくて、台湾から油田内閣時代に問題を出されて、吉田書簡というものが、中国からいえば、日本側から出されたという形なんです。だからまあ中国側とすれば、日本側がすっきりしなくちゃならぬのに、日本側はどうも輸銀問題ですっきりしないというところで御承知のような結論が出たのですが、しかしこのヰまでいくと、どうしてもニチボーの問題も成立ボ危ぶまれるように私は思われる。そうすると、四月中に何らかの方法をもってこれを解決しなければならない。解決しなければならぬということになれば、一番いい機会は、バンドン会議記念式典において日中のそれぞれの代表が国家を代表して出席されますから、その機会に接触をして了解点を取りつけるという方法しか、ここのところないのじゃないか。しかしこの見通しについては、必ずしも明るい方向じゃないような説もあります。そこで先ほど中国関係をよく承知しておる岡崎さんに聞くところによると、周総理と川島大使、これはお互いに面識がない、面識がない者が集まって、急に一つの話をまとめるということはなかかかむずかしいのじゃないか、だからやはりそれは事前に相当の手を打っておかなくちゃならぬのじゃないか、あるいは手を打てる者を同行させる必要があるのじゃないか、こんなことも言われておりましたが、こういう点に対する政府配慮というものは考えられますか。
  176. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 外交につきましては、きわめてデリケートなんでございますから、いろいろと考えるべきことと思います。すでに総理も大使級会談の見解を述べておられますし、また、いまお話しのような、バンドン会議記念式典の機会に意思の疎通をはかろう、こういうようなことも考えられておるのでございます。いろいろな方法があろうかと思いますが、いずれにしても両国の間の意思の疎通、相互理解の深められるように進めていくことが、今後の貿易の発展の上に寄与するものと私は信じて疑いません。
  177. 板川正吾

    ○板川委員 それではひとつ、バンドン会議記念式典における接触等について、積極的な取り組みを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  178. 内田常雄

    内田委員長 中村重光君。
  179. 中村重光

    ○中村(重)委員 時間がないから、端的に大臣に尋ねますから、ひとつ率直に答えてください。  いま板川委員あるいは田中委員からのいろいろ統一見解の問題に対してお答えがあったわけですね。どうも私はあなたの答弁を聞いておって、何を言おうとするのかさっぱりわからない。私の気持ちはわかってください、いつあなたに質問してもそればかり言われる気持ちをわかってください、あなたと私どもの個人的関係ならばそれでも済むかも知らぬけれども、事いやしくも国策上の問題、それを気持ちをくみ取ってくださいということで事を済まそうとしても問題の解決にはならぬのですよ。いまの板川委員の質問に対して、こういうことをあなたは答えておられますね。三月三十一日までにきめなかった。それは輸銀を使わないときめると台湾が勝った、若干表現が違うけれども、台湾が勝った、使うということになってくると中国が勝ったということになる。だからして国内金融は自主的にきめるのだ、こういうことにして三月三十一日まできめなかった、そういうことですね。それはどうなんですか。あなたのいつも言われるような、佐藤内閣が言っているようないわゆる自主外交ということになりますか、どうなんです。
  180. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 自主外交の上から、両国と申しましょうか、一つの中国ということなんでありますが、台湾政府と北京側からいろいろ言われておることに、それにまともに答えていくということはどうか、こういう配慮もあったわけであります。
  181. 中村重光

    ○中村(重)委員 問題は輸銀を使わせるか使わせないか、その二つですよ。そのいずれをとるかということです。それでなければ、いまのような形だけでは問題の解決にならない。中国が何を言っているかということはあなたはよくわかっておられる。台湾政府の介入によって使えるべき輸銀が使えなくなったということは了解できぬ、こう言っている。だからして岡崎さんも参考意見の中で、あるいは質問に対してお述べになりましたように、吉田書簡を事実上否定をするという、そういう障害というものが除去されない限りはだめなんだ、こう言っている。そのことはいまさら新しくなったのではない。わかっておったはずなんです。だからして、ほんとうに日立の貨物船の輸出、延べ払いを成功させようとするならば、輸銀を使わせるという態度の決定以外にないと私は思う。それなくして問題の解決はあり得ないと思うのです。政府が出した統一見解のきわめて抽象的なあいまいな表現でもって、問題の解決になるとお考えになっておったのですか。ただ向こうにもこっちにも当たりさわりがないように適当な表現を使ったということだけで、問題の解決にはなりませんよ。現実になっていないじゃありませんか。そのくらいの見通しの立たないような内閣でどうする。この重大な、重要な通産行政を担当する大臣としての責務を遂行することにならぬと私は思う。新聞の伝うるところによりますと、また先ほどあなたのお答えもあったのですが、国府大使に、輸銀を使うという問題は日本政府が自主的にきめるのだということをはっきり言ったから問題はないのだといったような、そういうものの考え方というものは私はどうかと思う。問題ははっきりしなければならぬ。その点どうなんです。
  182. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これはちょっと掘り下げてごらんいただきたいと思うのですが、私もよく言っておるのですけれども、ここまで問題がならない前に、中共側は、岡崎さんにも言われたことですが、また新聞報道にも伝えられたように、別に金融の方法をとやかく言っておるのではないのだ、台湾の介入するということによって問題が起こる、これが忍びない、こう言っておるのです。だから私どもが、いま両方が、使ってはいけない、使え、こういったようなところにぶつかっていくならば、それはまたいずれかの介入を許す、こういうようなことになりますから、それにまともにぶつかっていくのはどうか。御承知のとおりにもっともっとそれよりも根本的な問題から始まったのですから、そのほうが解決されれば、この金融の問題というものはそれほどウエートの重い問題ではない、こういうふうに私は見ておるのです。しかもそれについては二月二十四日に、一国の総理の、国民政府を代表する大使との間の会談があったのだから、本来ならばこれで中共側は相当理解をしてくれていいんじゃないか、こういう見地に私はあるのですけれども、しかし私のそういう見地はいまのところ通らない。しかし通らないが、これからにおいても相互において理解をする。これは一方的に何か押しつけるということは、両国が一緒にいろいろものごとを処理するのですから、片方に、どっちにウエートがあってもいけないと思うのです。だからお互いの間の理解を深める必要がある。幸いバンドン会議記念式典の機会であるとか、あるいは総理が大使級の会談も考慮すると言われておる、その間に意思の疎通ができて、相互の理解ができるのじゃないか、それが両国のために好ましい、だからこの際における日立の船の問題については、遺憾ながらこれはマイナス点でありましょう。しかし長い将来におきましては、このマイナスが今度はプラスになっていくように私は進めていきたい、こう思っております。
  183. 中村重光

    ○中村(重)委員 そのいずれに片寄っても適当でない、そういうことが自主外交ということにはならないです。やはりこの問題を解決をしようとすれば、そう八方美人的なことで問題の解決にはならないです。  それからいま一つは、やはりこの問題の解決に役立たせようという考え方も手伝ったのだと私は思うのだけれども、台湾政府に対しては一億五千万ドルという長期低利の借款も決定をして、そして台湾政府がそれを受け入れるということを期待をしておったのです。少なくともそのときの政府考え方というものは、台湾政府のほうにはこういうことで義理を立てた、だから中共のほうには輸銀を使わせる、こういうことで事を円満に解決しようという気持ちの働きが実はあったのですよ。ところがどうも突き上げが依然としてあったのかどうか知りませんけれども、態度をあいまいにして問題の解決をしない、そしてこういう最強の事態におちいってしまったということです。先ほど来、森永総裁との間に田中委員がいろいろと法律上の立場から問題を取り上げてまいりましたけれども、その政府機関の機能すら麻痺させてしまうといったようなことを現実に起こしておるのですよ。そういうあいまいな態度をいつまで持ち続けておろうと考えておられるのか、私はこの際はっきりされる必要があると思う。どうですか。
  184. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 私は、担当の貿易の関係からいえば、ひとつもあいまいじゃないのです。私はむしろ承認を与えた直後にその契約が履行されておれば、これはもう問題がないのだ――これはおそらくこうやってしゃべっていることは中国側にも伝わらないわけはないと思うのです。本来その契約面において輸銀がどうだこうだ、ないし頭金は当然契約成立と同町に入ってくるべきものなんです。だからむしろ私は契約がどんどん進行することが好ましいのだ、そしてその間に事態は解決する、私のほうが非常にはっきりしているんだけれども、遺憾ながらどうもいろいろな条件が出て進まないということなんで、これはほんとうにそうなんですよ。普通の商行為の契約なら、契約をよろしいといったら、そのとおりやることがほんとうはたてまえだと私は思うのです。しかしそれが思うようにいかないのが残念で、はっきりしているのですよ、ぼくは。
  185. 中村重光

    ○中村(重)委員 どうもあなたは何を考えておるのかさっぱりわからない。私はあいまいじゃないと言うが、あいまいじゃありませんか。初めはなるほどそうであった。ところが途中でこの吉田書簡というものがものを言ってきた。政府部内においても、橋本官房長官が吉田書簡は関知しないと言うし、佐藤総理は色をなして、官房長官が言う関知しないということは私は関知しないなんというような妙なことばが飛び出すというようなことだったのです。聞いておるほうは全くもうあきれ果てるというようなことであったのです。あなたもあの予算委員会のときにはおられたからよく御存じだろうと私は思うのです。そういうことで、途中で問題がこう複雑になってきた。そして今日の最悪の事態に突入したのです。ところが通産大臣であるあなたは、当初無条件に延べ払いの承認を与えたのだから、今日こういう事態になっても、なったということはおれの責任じゃないのだ、こういう考え方であるかもしれませんけれども、そうじゃないですよ。やはりあなたは通産大臣として最終的に問題を解決するという、そういう責任を持って取り組んでいかなければならぬと私は思う。そうしないでおって、右を見左を見して、どちらにも当たりさわりないようにして問題を解決したい、そういうことで私の気持ちはわかってくださいとおっしゃても、どうにもならぬと私は言っているのです。ニチボーのビニロンプラントの問題も、先ほど来板川委員との間に質疑がかわされたように、このままの状態で進んでまいりますと、これもだめになってしまうでしょう。それだけではないでしょう。LT貿易というものも結局動かなくなるというような事態になると私は思う。ほんとうに貿易立国として立っていかなければならぬ日本の発展を阻害することは非常に大きいものがあると思うのです。だからいろいろと突き上げもあるかもしれないし、むずかしいところもあるかもしれないけれども、そういうことを勇敢に解決していくことが政治ではありませんか。それを果たし得ないことが私はあいまいなる態度であると言うんですよ。このような状態でいって、どういう見通しが立っておりますか。問題をいつごろ解決し得る、必ず日立の貨物船の延べ払い輸出の問題も、これは円満に解決する、ニチボーもそうなんだ、こういう確信があるお答えがあなたはここでできますか。
  186. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 この問題はもうずいぶん長いのですから、その間に私として一ぺんもこの席上で私の考え方なり方向なりをたがえたことはないのであります。ときに皆さん方に、ちょっといまデリケートだから察してくれというような、そういう内輪の話をしたこともございますが、しかし終始一貫同じ方針のもとで、同じまたお答えもしてまいってきておるのであります。しかもこれが私は何らかの形で先方にも反映していく、結局これは両国の間の理解なり協力がなければどうしても進まない問題だと思うのです。そこで私がここでそのときどきに応じた何か適当な表現をするとか適当な答えをするというよりも、一貫しておるほうがいい、それで一貫しておるのです。しかも私はそれによってこの日中貿易の打開に対する責任をのがれようともしておらないのであります。幸い私の言っていることが理解してもらえるならば、これは前向きになっていくということを信じながら、この段階ではいかにもふていさいな、不器量な話でございますけれども、しかしそれだからといって、ここでまた適当なことを言っていけばそれでよろしいのだということではないと思うのです。やはりここは一貫して、そしてその間に、先ほどからお話が出ましたようなバンドン会議記念式典の席上とか大使級の会談とか、あるいは岡崎さんのような方もおられますし、おのずからこのことが反映していって、近い機会に了解が取りつけられるものではないか、こういうふうに私は信じて行動しているわけです。
  187. 中村重光

    ○中村(重)委員 予算委員会の分科会であるとかあるいは当商工委員会、そういう際に、いま非常にむずかしいときなんで、ここであまりはっきり言うと、むしろ問題をぶちこわすかもしれない、だからいま少し時間をかしてください、こういうようなあなたのお答えを信頼し、問題は必ず前向きの形において解決されるであろう、こういう期待を持っていろいろと質疑をいたしました。問題は指摘いたしましたし、私どももそれを聞いてきた、ところが最終的にはこういう最悪の事態におちいった、だから当たりさわりのないような答弁をすることだけで問題は解決するものではないのだ、やはり解決するためには多少の刺激もあるかもしれぬけれども、除去するものを除去していく、こういう態度で進む以外に解決策はないのだということは、これはもう政府だっておわかりになっておるでありましょうし、私どもは特にそういう感を強くしておるわけなんです。だからあなたにただいま申し上げましたような問題を指摘し、質疑もしておるわけです。  そこでお尋ねしますが、統一見解に対していろいろと解釈が分かれておるようですね。その点はひとつはっきりしていただきたいということと、統一見解が出ましたあとで、佐橋次官が佐藤総理に会ってその真意をただしたということも、これまた新聞紙上に伝わっておりますが、そのことは事実なのかどうか、その点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  188. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 統一見解はやはりあくまでも文字どおりの統一見解だったと思います。これはそれぞれの立場で意見がありましたので、結局最大公約数はこの辺で、しかもこれならば問題を起こさないで済む、それで三十一日を迎えるにあたって、これにまともに答えていくよりは、このほうがいいという高度の政治的判断もあったと思います。したがって、あくまでもこの表面に出たとおりすみやかに契約が履行され、そして国内金融は別途に考慮するということだと思います。  なお、佐橋次官が総理に会ったということは事実でございます。その会見の一々のことばは私は詳細に聞いておりませんが通産省の立場における中共貿易に対する見解を詳細に報告した、こういうことだと思います。これは当然通産省内部にある事務的な見解であるとか、あるいは持っておる諸情勢の報告ということで、政治的なものではなかったと思います。
  189. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は幾つかの新聞の切り抜きを持ってきておりますが、どの新聞も大体合っておりますからこれは間違いないと思う。報告もあったかもしれませんけれども、佐橋次官は総理に対して、統一見解の具体的な内容をただしておるようですね。頭金三〇%、残り七〇%は金利五・五%で五年間の延べ払いという契約によって処理し、中共や日立造船に対しては決して迷惑をかけない、これは総理が言っていることですね。国内金融措置は、輸銀、日銀の特別措置のうちどちらになるか、これは国内の問題なので自主的に解決をする、以上のような具体的な説明を総理が行なった。そして佐橋次官はそれでよく真意がわかったので、問題は解決するだろうという期待を実は持ったというようなことが伝えられておりますね。この点どうですか。
  190. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 別に私は次官と総理の間の会談の模様がどうこうということでものごと考えておりませんが、しかしこの新聞紙上に出ておる報道というものについて私は否定はいたしません。大体はそういう見当であろうということは、おのずから従来の経緯から私自身判断がですます。したがって佐橋次官に、おまえどうだったと、そういうこまかいことなどは聞いておりません。私は私としての確信を持っておるのでありますから、大体いい見当が出ているのだろうというふうに読んだ、こういうことでございます。
  191. 中村重光

    ○中村(重)委員 どうも私は佐藤内閣の行き方がわからぬですね。佐藤さんは通産大臣もしておられた、大蔵大臣もしておられたので、非常に行政に通じていらっしゃる。それはわかります。わかるけれども、あなたは通産大臣ですよ。大蔵大臣の所管事項もあるかもしれないけれども、こういう統一見解の中の具体的な中身というものをあなたがつかんでおられないで、佐橋次官が総理大臣に会って、中身はどうでありましょうかと言ってお伺いをしてその中身が知らされる。こういう行き方はどうなんでしょうか。所管大臣がおわかりなのかおわかりでないのか知りませんけれども、あなたと次官と話をすればよい。何も総理大臣のところに行って尋ねてその真意をつかまなければならぬということはないと思う。不見識というのか、こういうようなことが新聞に伝えられては、通産大臣は当事者能力を失っておるのだろうかという感じがいたしますよ。こういう印象を受けたのは私だけではないと思うのです。あなたが否定なさらなかったのだから、その新聞談話というものは大体そうだろうと思うということをお認めになったから、私は申し上げておるわけでありますが、どうもこういう行き方は常識的でないのじゃないか、こう思います。もっとあなたは通産大臣として、しっかりつかむべきものをつかんで、そういう具体的な内容というものをあなたが把握して、そうして次官その他事務当局との間に十分推進をはかっていくという行き方でなければならないと思います。そういう感じがいたしますが、あなたはそうはお思いになりませんか。
  192. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これは誤解のないようによく御説明申し上げておきたいと思うのであります。  私は、佐橋次官が総理のところに行って、先ほど申し上げたとおりに通産省で承知しておる各種の報告をすることについては、むしろ進んでやってもらいたいと思っております。というのは、私は御承知のように国会委員会、本会議そのほかいろいろな面で時間の制約がございます。したがって、総理のほうで時間があるときに私のほうが非常に忙しい、私のほうが時間があっても総理が忙しいというようなことがあって、しばしば重要な通産行政の報告に欠ける面も出るのであります。ですから、私のかわりに次官が総理に呼ばれていって報告するということは非常によいと思っております。それでまた私は別に佐橋君がどういう報告をしたかということを聞かないでも、十分承知しておることを次官が言っておるのでありますから、たまたま新聞報道などを見て、ああこれは間違いないなあということで私は了承しておる。私はそういうことでいいと思います。特にこの間の月曜日は、御承知だったかもしれませんが、私は土、日、月は万国博の問題で関西に行っておりました。私の不在中でもございますし、まことにデリケートな問題のときでありますから、次官がそういう招致を受けて報告をするということは、非常にタイムリーなことだと私は思うのであります。決してその間に意思の疎通に欠けておることはございません。
  193. 中村重光

    ○中村(重)委員 そういう必要もあるでしょう。報告に総理のところに行くこともありましょうし、あるいは総理から聞くこともあるかもしれない。しかし、これほど大きな問題になったこのプラント輸出の問題、それに基づいて政府の統一見解というものが出て、その解釈、その具体的な内容というものが、次官が総理のところに行って尋ねなければわからないということは、私は適当でないというんですよ。少なくとも統一見解が出るまでには、通産省内におきまして、いろいろその中身というものに対しては議論をされなければならないと私は思います。少なくともどこかに行ってかん詰めにされて、だれかが案を出して、これが統一見解という形でぽっと出るのじゃないでしょう。通産省の中におきましては、通商局は言うまでもなく、こういう具体的の問題についてもいろいろと検討をして、そういうものが積み重ねられて政府の統一見解という形で出ていくのだろうと思います。それを言っておるんですよ。佐橋次官があなたと話をする時間的な制約というものはあるだろうと思います。あなたがおっしゃるとおりに、いろいろ忙しい面も私はあると思います。それをいけないとは私は言わないのです。しかし事と次第です。こういう問題が総理のところに行って初めて内容がわかりました、その真意がつかめました、こういうことを言っているんだから、それはいまあなたがお答えになったようなことでは筋が違う。だから、こういうことでなくて、こういう重大な問題については十分通産省は問題を把握して、その解決に全精力を傾倒していくのでなければならぬ。事は重大だと言っているのです。  で、いま一つ伺いますが、何としても統一見解をこのままで押していくということになりましても、解決になりません。問題を解決するように統一見解の再検討をする御意思はないのかどうか、そういうことは困難なのか。  それから、時間の節約をはかるためにお尋ねをいたしますが、こういう最悪の事態になってまいりますと、LT貿易というものは将来どういうことになるのか、その点に対してあなたはどう見通しをしておられるのか、その二つに対してお答えを願いたいのであります。
  194. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 お答えする前にちょっと申し上げておきたいのでありますが、佐橋次官が行ったのは、総理がお呼びになった、こういうことであります。これははっきりしております。その後聞いておりますから……。ただ次官が記者会見できっとその模様などを話したのでしょう。それでその結果、総理の気持ちがわかったとかどうとかいうことばが入ったと思いますが、これはすでに統一見解後に省内で十分この範囲のことはわかっておるのであります。しかし私としては、諸般の情勢上そういう詳しいことを言うがいいか悪いか、これはやはり非常にデリケートな問題でありますから、私としても胸におさめておる問題もあります。次官は次官として、この範囲はよかろうとしてしゃべる場合もありましょう。しかしいずれにしても、先ほど言ったように、新聞記事を見ても大体こういう見当かなというふうに私は了解しておる、こういうことでございます。  統一見解を再検討する要があるかどうか、こういうお尋ねでございますが、この統一見解は言うまでもなく日立の船舶の問題にからんでのことでございまして、すでに先方からの回答も来ておる段階でございます。またその回答の内容にはきわめてデリケートなニュアンスも入っておる。いますでに時日も経過しておるのに、あらためてあれは間違いだ、こうだというようなことは言うべきものでもないし、また私としてはあの統一見解でこの段階はやはり妥当である、こういうふうに判断をしております。  それから貿易の見通しにつきましては、こうやって延べ払い問題に一とんざを来たしておるのでございますから、なかなか思うようにいかないと思います。しかし昨年あたりの貿易の実績を御検討いただきますと、延べ払いを特に推進してきたわけでないが、しかし往復三億一千万ドル見当の貿易になっておるのでありますから、これはわれわれの努力次第ではないか。幸いに延べ払い問題が片づいていくならば、相当飛躍できる、私もこういう期待をしておったわけでありますが、いまそういう期待をすることは当然軽率であり、甘いと思います。しかしその他の貿易につきましては努力次第ではないかと思います。
  195. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから、新聞には伝えられておりますけれども、真相が明らかでないわけですが、国府との一億五千万ドルの借款の調印はいつごろになるのか、それからその条件はどういうことになるのか、それからいま一つ通商局長でけっこうですが、台湾との輸出入貿易の実績、中国との実績、その点を明らかにしてもらいたい。
  196. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 一億五千万ドルの国民政府との交渉は、これは外務省が接触してやっておるので、断片的にはこういうプロジェクトはどうかというようなことを、たとえば電源開発の問題などで私輝いたこともございます。しかし全般的に大体こういう見当で調印をしたいとか、大体ここまで詰まったとかいうように私は聞いておりません。
  197. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 お尋ねがございました中共との貿易と台湾との貿易について、最近の実績を申し上げます。  昨年の一月から十二月まで、暦年でございますが、中共との貿易は輸出が一億五千二百万ドル、輸入が一億五千七百万ドル、これに対しまして台湾との貿易は、輸出が一億三千七百万ドル、輸入が一億四千万ドル、いずれも通関でございます。
  198. 中村重光

    ○中村(重)委員 時間の関係がありますので、また適当な機会にお尋ねいたしますが、統一見解を、けっこうなものだ、これを変更する必要はない、こう言われた。ところがその統一見解に基づいて問題の解決にならなかった――統一見解がどうであろうとも、障害をなくするということは私はできると思う。要するにその実が伴っていきさえすればいい、こう考えます。だからして、その点に対してあなたが確信を持って問題の解決に当たりたいというような熱意が、まあないとは言わないです。あるでしょう、なければならぬと思う。ところが、残念ながらどうも私どもはどこまであなたがほんとうに問題の解決をやろうとしておるのかわからぬという感じを最近は持ってきた。それじゃだめなんだから、ともかく障害を除去する。中国も弾力的な考え方を持っておるようであります。また中国が無理を言っておるようであるならば、それに対しましてはあらゆる努力をして問題を解決をしていくということでなければならぬ。無理ということよりも、十分理解をしていないというような点があるとするならば、理解をさせるようにしていかなければならない。ともかくあまり右、左と考え過ぎないように、自主外交、自主的に問題を解決するという、その看板に偽りがないように取り組んでいかなければならないのだ、私はこう思います。せっかく最大限の努力をされるように強く要請をいたしまして、私は質問を終わります。
  199. 内田常雄

    内田委員長 輸銀総裁はじめ説明員の皆さま、長時間御苦労さまでした。      ――――◇―――――
  200. 内田常雄

    内田委員長 工業に関する仲について調査を進めます。  高圧ガスに関する問題について質疑通告がありますので、これを許可いたします。板川正吾君。
  201. 板川正吾

    ○板川委員 私は、去る五日に東京都内の小金井で起こりましたプロパンガス販売所の爆発事故に関連し、さらにプロパンがいま不足だということが、きょうの新聞あるいはテレビ等であったそうでありますが、この二点について簡単に質問をいたしたいと思うのです。  プロパンの高圧ガス取締法については、ついこの間私が質問をして法案を上げたわけでありますが、大阪で事故が起き、名古屋で起き、次は東京で起きるだろう、とにかくいまの高圧ガスの取り締まり体制というのが非常にルーズだから、よほどしっかりやらなければ、これは国民の不安を解消するわけにはいかぬだろう、こんな冗談を言っておったのですが、はからずも東京で事故が起こったようであります。この事故の内容と原因、被害、そういった問題についてひとつ簡単に説明してほしい。
  202. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 事故が発生いたしましたのは去る四月五日の午後七時三十分ごろでございます。場所は小金井市本町六丁目の関東ガス工業株式会社でございます。事故発生の状況でございますが、作業員が庭で得意先から回収したプロパンのボンベ約四十五キログラム入りでございます。これを台ばかりで計量し、地上におろすとき手をすべらせて倒しました。そのときバルブがゆるんだか、あるいははずれてガスが漏れ始め、その作業員はその場から逃げました。事務所の中で目撃をした従業員がドアをあけて外に出たために、その漏れたガスが事務所の中へ入りまして、事務所の中のストーブで火がついたのでございます。当時そこには容器が約百二十本ばかりありまして、そのうち約八本が破裂したようでございます。被害は、四戸全焼し、二戸が半焼でございます。さらに約百メートル離れたアパートの屋根にボンベが落ちまして損傷をしております。負傷者は、従業員が二名顔面に負傷いたしまして、約二週間で全治する程度でございます。なお、収納庫の中にはボンベが八本ありましたが、これは損傷を受けておりません。  以上が事故の概況でございますが、なお従業員の証言が不明な点がございますので、さらに原因を追及すべく、目下東京都の担当者がその場へ出向いて調査をいたしております。
  203. 板川正吾

    ○板川委員 損害は全部でどのくらいですか。
  204. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 金額はまだ出しておりませんが、この事業所の中の施設が、これは菓子の製造販売を兼業しておりますので、その菓子屋の建て物、それに続いております事務所、それから菓子の倉庫、これが全焼でございます。それから隣の……
  205. 板川正吾

    ○板川委員 全体でどのくらいか、時間がないから概算でいいです。
  206. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 約二千万円程度と推定されます。
  207. 板川正吾

    ○板川委員 この事故の原因はどこにあったのですか。それは、はかりの上から手をすべらせて、それでかけ込んだところのストーブが火がついておって、漏れたガスが引火して爆発したというのですが、それはそういった経過をたどったのでしょうけれども、一体どうしてこういうところに事故が起こったか。高圧ガス取締法によれば、収納施設の中にプロパン容器は収納しなくちゃいけないのでしょう。この爆発したところは収納施設じゃないじゃないですか。これはどうしてこういうところに、しかも隣の全焼した大沢さんのうち、あるいは自分のうち――自分のうちは刑としても、大沢さんのうちとは全く仕切りも何もない。庭があって、そこで何十本ものプロパンを野積みしておく、こういうようなことは法律違反じゃないのですか。どうなんです。
  208. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 こういうあき地に百本もボンベを常時置いておくということは法律違反でございまして、収納施設を設けて、その収納施設の中へ格納すべきものでございます。
  209. 板川正吾

    ○板川委員 収納施設の中に格納すべきものを、収納施設の中には、この調査表によるとお菓子なんか入れておって、大事な本もののプロパンをさっぱり収納しておかない。そして本もののプロパンは表のほうへ出して置いてやっておる。こういうようなことは高圧ガス取締法違反なんですが、一体東京都ではこうした取り締まりをどうやっているか。また、東京都にこういう販売店がどのくらいあるのか。それから、それを取り締まる人はどのくらいあるのか。それからまたこの立ち入り検査を一体どうやっているのか、この点を説明してください。
  210. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 東京都の担当者は現在三十七名でございます。こういう販売所は、格納施設以外にそういうふうにボンベを置いているという状況は、立ち入り検査によって摘発すべきものでございますが、東京都では現在立ち入り検査の実績としましては、三十九年度が千二百軒程度でございます。
  211. 板川正吾

    ○板川委員 それは全体で何軒のうちですか。
  212. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 東京都のLPガスの販売店が二千六百五十でございます。そのうち立ち入り検査をやったのは千二百二十二軒でございます。そういう状況でございますので、さらに立ち入り検査を励行する必要があると考えております。  なお、東京都の手数料収入でございますが、三十八年度が三千九百七十四万九千円でございます。これに対しまして支出が、本庁関係で人件費、事業費合わせまして三千二百三十万五千円でございます。なお、東京都は本庁関係以外に地方事務所でも一部事務を委譲いたしまして、地方事務所でやらせておるのがございます。その地方事務所関係では約十二名程度の、これは兼務の者も含めてでございますが、その十二名程度の担当者がおる状況でございます。
  213. 板川正吾

    ○板川委員 ここの立ち入り検査はいつやったのですか。いまの割合でいうと、東京都で二千六百五十ほどこうした販売店があって、三十九年度に立ち入り検査したのが千二百何軒だ。そうすると二年に一ぺんないし二年ちょっとに一ぺんというふうに全体の立ち入り検査ができる。しかし、ここは営業を開始してから十年近くたつようにいわれておるが、この前はいつ立ち入り検査をやったのですか。
  214. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 最近東京都が検査をいたしましたのは、四十年の三月に収納施設の完成検査に行っております。それが最近でございます。
  215. 板川正吾

    ○板川委員 収納施設のできたときに呼ばれていったというのですが、それじゃ立ち入り検査じゃないじゃないですか。そのときには一体このあき地ではそうした扱いをしていたのですか。発見できなかったのですか。この資料の図面によると、収納施設の隣にこうやって野積みになっておるのが、立ち入り検査に入ってわからないという理屈はないでしょう。
  216. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 その辺の事情につきましては、目下東京都並びに会社のほうから聞くことにいたしております。実は東京都のほうがちょうど都議会も重なっておりまして、なかなかその時間がないもので、おくれておりますが、至急そういう点本調査をして御報告いたしたいと思います。
  217. 板川正吾

    ○板川委員 東京都の担当者に来てもらおうと思ったらば、東京都は、本省のほうへちゃんと報告してあるから、本省の係官を呼んでもらいたい、こう言う。ところがまだ報告がきてないというんですが、それはひとつ厳重に調査してもらいたい。  それからいまの話によると、このあき地で台ばかりを置いて、そこへ使ったボンベを持ってきてはかったら、手をすべらしてひっくり返った。そこでバルブのところが何か故障して漏れ始めた。たいへんだということで事務所へ入っていくときに、ドアがあけっぱなしになっておって、ガスが漏れたやつが事務所のストーブに引火した、こういうふうに言われていますが、よそから、もうなくなりましたからといって回収してきたボンベをひっくり返して、それでそんな大火事になるほど残りがありますか。どういうのです。そうじゃなくて、これは全部充てんしたものをここに置いたときに何かでひっくり返したんじゃないですか。
  218. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 実は作業員の証言が、先ほど申しましたようにいろいろ変わるものですから、なかなか事情がつかみにくいのでございます。最初は、そのボンベを倒した作業員が事務所へ入っていった、そのために戸をあけたと言っておりましたのが、あとになりますと、どうもそうではなくして、作業員はそのまま現場から逃げていって、あと事務所の中にいた職員がその状況を見て戸をあけて出たというふうに変わってきておるような状況でございます。しかもそのボンベのバルブがゆるんだのか、あるいははずれたのかという点につきまして、さっそく軽工業局から派遣しました担当官は現場を見まして、ゆるんだのではないかというふうに言っておりますが、その後警察のほうへそういうものは科学検査をするために持っていかれております。現在のところ、そういう警察のほうの結果を待って判断を下さなければならない状況でございます。  なお、ボンベにどのくらいあったかという点が、先ほど申しましたような事情から把握しにくいのでございますが、最初行ったときの報告では、ボンベの中へ液化ガスが相当量残っておったらしいので、看貫にかけるようになったというふうな報告を受けております。
  219. 板川正吾

    ○板川委員 まあその点はたいした問題じゃないからいいとして、ボンベがひっくり返ってもバルブが容易にあかないように、家庭用燃料LPガスの取り扱い基準というものがあるのですね、大臣。これはプロパンガス協会で発行した資料ですが、その十一条によると、バルブはJIS規格に適合しなくちゃいけないのだ、充てん口はネジで少なくとも七回くらい回さないといけないということで、ちょっと倒れたくらいじゃバルブの口があくということはないようにできておるのですね。それから衝撃、震動等によって容易に容器弁が開かないようにしろ、こういうことで基準ができておる。ボンベがひっくり返ったくらいでガスがたくさん漏るというような簡単なボンベのバルブになっているのですか。  それからもう一つは、この写真を見ると、ボンベが昔の爆弾みたいなぐあいで、筒みたいになっている。この衝撃が一番問題だというなら、筒みたいなボンベはかえって取り扱い上危険じゃないかな。まあ十キロボンベなんかはまるくなっているけれども、五十キロボンベは爆弾みたいに長く、直径三十センチ、長さ一メートル半ぐらいあるのですが、ちょうど爆弾みたいなかっこうをしておる。それが空中に舞い飛んで、百メートルも飛ぶなんというような事故が起こっているが、この倒れた衝撃を防ぐためには、こういう形じゃないほうがいいんじゃないのかな。なぜ通産省は――いや、これは何も取り扱い基準に定めてあるというんじゃないですよ。万が一倒れても事故が起こらないようなボンベに容器を改良すべきじゃないですか、どうですか。
  220. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 四十五キロ、五十キロボンベは直径三十センチ、高さ一・五メートルというのが通常の形でございます。これは運搬、輸送等の便を考えますと、そういう形のほうが便利なためにそういうふうになっておると思います。しかも、バルブのところにはふたをかぶせるようになっておりまして、通常の場合、転倒さしてもバルブが直接損傷を受けないようになっておるわけでございます。たまたまこの場合には、計量をする際、あるいははずしたのかどういう事情か、なかったようでございます。バルブも、先ほど板川先生言われますように、そう簡単に漏れるようなものではないはずなんです。私ども、これがどういうふうにして漏れたか、実はその辺をできるだけ早く調べたいと思っております。先ほど言いましたように、まだそういう現物が警察のほうへ行っておりますので、そのほうの警察の調査の結果をできるだけ早く聞きまして、それによって対策を考えたいと思っております。  形状の点につきましては、さらに検討いたしますが、ただ円形にいたしましてもバルブ部分が突出いたしておりますので、転倒して高い所から落ちると、バルブ部分にやはり衝撃を受ける可能性はあろうかと思います。この場合には、約二十センチの高さの台ばかりの上へ載せておったということでございますので、約二十センチ程度の高さのところから落ちたということになるわけでございます。  形状等につきましては、さらに安全性から見て検討いたしたいと思います。
  221. 板川正吾

    ○板川委員 いまJIS基準だというのですが、JIS基準によると、販売所における収納の方法は、容器は立てておき、転倒、転落及び衝撃を受けないように措置することと、ちゃんとそういう方法でやろうとなっておる。しかし、まるい筒を立てておけば転倒しやすいですね。だからこういうものは、容器の形態から考えなくてはいけないんじゃないかと思うのです。それと、収納をするのには、収納施設の基準があって、一定量以上収納できない。ここでは、収納施設にあったボンベが、報告によると五十キロが四十本、十五キロが二十本、十キロが六十本あったというのですが、この収納施設に対してこれだけあることはどうなんですか。
  222. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 この場合、ありました容器の容量を計算しますと約二トン九百でございます。この収納施設からいきますと三トン未満でございますので、その点は違法の点はないと思います。
  223. 板川正吾

    ○板川委員 じゃ、これを収納施設に全部入れておけば、同じでも問題はなかったのですね。だから、こういうことは私はもっと監督を強化して、立ち入り検査をもっとしばしばやって、その立ち入り検査も建前のときに呼ばれていくのじゃなくて、実際の作業場を見て、こういう違法な扱いをしていたら、どんどん注意するなり摘発するなりしなくてはいけないと思う。  時間がありませんから結論を急ぎますが、こういう販売店が全国で四万七千軒あるそうです。うち東京で二千六百軒、東京は郷市ガスがありますから、少ないそうです。四万七千軒もあるのですから、方々でプロパンの販売所や充てん所の近くの人は戦々恐々なんですよ。高圧ガスで、保安距離等あったって、五十キロボンベが百メートルも火を吹いてロケットのように飛ぶのですからね。これはどういう原因か知らぬけれども、とにかく百メートルも行って、アパートの二階から落ちて、うちの中で火を吹いておったというのですね。これは保安距離等もまたさらに検討しなくてはならない。これはこの前に附帯決議がありますから、ひとつ検討してもらうとして、四万七千軒もあるところに全部立ち入り検査をしばしば行なって監督、監視するというのは、なかなかたいへんでしょうね。そこで一つの方法があるのです、大臣。こういう方法でこういう事故をなくすることをやったらどうかと思うのですが、それは高圧ガス事故がしばしば起こって、高圧ガスの保安基準というものはこういうようになっていますということを、通産省がスポンサーになって、テレビでそういう危険な状態を解説する、法律でこういうふうにやっていますということを解説する。この事件のように、収納すべきでないところに収納しておって、近所の人から再三文句がきておるのですね。こういう文句はひとつ都なりあるいは通産省なりに連絡をしてください、そうすれば、通産省なり都なりが監督官を派遣して、そういう違法な作業をさせないように指導いたします、こういうことをテレビ等なりでやれば、私は、四万七千軒のたくさんの立ち入り検査をする人がいなくても、周囲の人が非常な危険を感じていますから、これがそういう連絡をすることによって違法な作業というものはなくなっていくのじゃないかと思うのですが、こういう方式でやったらどうでしょう。
  224. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 LPガスを扱うところが全国的にきわめて多い、それに対して立ち入り検査等の不徹底であるということは、しばしば指摘されておるとおりでございまして、ただいまのような御提案はまことに時宜を得たけっこうなことだと思います。特に私がいまそういう話を聞いて気がつきますのは、高圧ガス保安協会のほうでもし幸い余裕があれば、テレビ放送をする、あるいはまたこういう問題でございますから、特に放送局に協力をしてもらってやるというようなことも考えられると思いますが、私としても十分その点現実にやれるように取り運んでみたいと思います。  なお、この間うちから、この問題を聞いて以来、いまのところ都とか県とかでわずかばかりの検査員がおる程度でございますが、こういう取り締まりの基準などを市町村、区などにも徹底をさせて、またこれらの自治体にも協力をしてもらう、あるいは消防庁などにも協力をしてもらう、警察庁にもしてもらうというような広範な対策を立てる必要があるのじゃないか、こう思います。あるいはある程度やっておるが不十分であるということであるかもしれませんが、こういう点については、これから特に配慮をしていきたいと思います。
  225. 板川正吾

    ○板川委員 大阪に次ぎ、名古屋に次ぎ、東京であったのが比較的小さな事故でよかったのですが、全国でこういう作業所なり取り扱い所が非常に多くなってきていますから、国民の不安をなくすために、保安協会を使うこともいいと思いますが、ぜひそういう方法で努力してもらいたい、こう思います。
  226. 田中武夫

    田中(武)委員 関連して。先ほど来板川委員からいろいろと先日の事故について質問があったわけなんですが、最近この種の事故が多いと思うのです。そこで皆さんとしては、高圧ガス保安審議会へ何らかの諮問なり何かをされて、保安の問題について前向きに検討しておられますか。
  227. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 高圧ガス保安審議会には、現在作業主任者等の試験に関する事項を主に諮問をいたしておりますので、保安の問題につきまして、経営者の保安意識の高揚とかあるいは保安上の技術的な基準の再検討という点については、高圧ガス保安協会に現在諮問をいたしておるわけでございます。でありますが、前回の当委員会の審議の際にも、保安審議会をもっと活用すべきであるという御意見でございますので、私どももそのとおりであると考えまして、保安審議会に対しまして、高圧ガス取締法の基本的な問題について諮問をするよう考えておるわけであります。
  228. 田中武夫

    田中(武)委員 保安協会というのは、これは民間のものでしょう、先ほどの板川提案によるテレビ等の利用についても、大臣は保安協会にやってもらうというような考え方を出したようですが、これは民間でしょう。あまりにもそういうものにたより過ぎてはいけないと思うのですよ。この高圧ガス取締法の六十八条には、作業主任者の試験とだけでなく、「高圧ガスの保安に関する重要な事項について、」云々とあるわけですね。したがって、こういう事故が起きた場合には、従来の保安基準等でいいのかどうか。ことに、外に対しての保安距離が保たれても、内部における保安距離というのが案外おろそかになっておるのじゃないだろうか。先ほど話を聞いておっても、どの程度のガスが漏れたか知らぬけれども、事務所のストーブに引火するなんということは、あまりにも作業場とそういう事務所等との間の距離がなさ過ぎるのじゃないか。かりに五十キロのボンベに入れられておるすべてのガスが出たとしても、何メートルか離れておればそんなことはなかったと思うのですよ。案外そういうところに盲点があるのじゃないですか。だからそういう保安距離等、保安全体の問題について、一応根本的な問題を審議会のほうにあらためてかけて検討をして、そして省令なりその他を直していく必要があるのじゃないか、こう思うわけです。時間がありませんから、この程度でおいておきますが、この省令によると、どういう場合は何メートル、何メートルとあるけれども、案外内部に対してはないのですね。そういうところが盲点になっておるのじゃないかと思うのですよ。
  229. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 先ほど大臣が保安協会と言われましたのは、高圧ガス保安協会を略して言われたのでありまして、この高圧ガス保安協会は高圧ガス取締法による特殊法人でございまして、去る三十八年の改正の際、民間の自主保安を強化推進するという趣旨から設立することになった団体でございます。  それから保安について、事業所の中が保安距離等盲点になっておるのではないかという御指摘でございますが、現在の保安距離は、おっしゃるとおり外部の家屋その他の特定施設に対する距離でございまして、工場の内については規定いたしておりません。たびたび御指摘もありまして、私どももこれは検討すべき問題と考えておりますので、すみやかに案をつくりまして保安協会に諮問をして制定いたしたいと考えております。なお、高圧ガス取締法上の基本的な問題につきましては、先ほども申しましたように、この法律の保安審議会に諮問するべく準備をいたしておる次第でございます。
  230. 中村重光

    ○中村(重)委員 現状を申し上げて注意を換起しておきますが、販売店というものは一つの基準ができて、そして不燃性の倉庫をつくるということになっていますが、なるほど倉庫をつくっておるのですよ。ところが非常にルーズになっておるのですね。倉庫に確かに一部入れておる。ところがめんどうだもんだから、事務所の中に置くのですね。そうして自分のところのプロパンガスを使うんだから、安いのか馬いのか知らぬけれども、ストーブをたくさんだくのですね。そしてボンベはそこに置く。ストーブは一つだけでなくて、あるいはどうかすると、私はあっちこっち行ったこともあるのですが、二つ三つもたいておる。漏れると必ず引火することになると思いますよ。そこの何か基準がないかどうか。そういうことが実情なんだから、もう少し厳重な保安取り締まりをやる必要がある。それから今度の爆発事故だって、消防法で定められておる消火器もなかったと伝えられておるし、それから取り扱い者が免許が必要なのに免許も持っていなかったということも伝えられている。そういうことの報告も上がっていると思いますが、非常にルーズになっています、そういう現状のままこれを放置すると、次から次にこういった事故が発生をしてくると思います。だから、取り締まりが地方自治体との関係上むずかしい点もありましょうけれども、十分ひとつ保安思想を注意をし、取り締まりも徹底を期してほしいということを、この際ひとつ厳重に地方自治体に通知を出してもらいたい。  それから、先般の委員会でも申し上げましたけれども、地方自治体で相当手数料を取っていますね。相当な収入があるわけです。だから、その収入も、適当な収入であれば、上げてもいい、取ってもいいでしょうけれども、保安面の取り締まりに金はほとんど使わないでおいて、そして収入だけをどんどん上げておる。こういうことで事故が次から次に起こってくるというのでは困ります。だから十分あなたのほうでも保安面に相当な力こぶを入れてもらわなければならぬ。機構的にあなたのほうで保安関係の責任者はどういう人が責任者になっておるのか、まずあなたのほうの内部機構というものから保安の面を相当強化して、通産局のほうにも、あるいは地方自治体のほうにも保安強化が第一だということで十分な運営ができるように措置してもらいたい。実情は先ほど申し上げたようなことがほんとうなんですから、ひとつ十分注意してやってもらいたいと思います。
  231. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 小金井の事故の場合でございますが、私どもの受けております報告では、販売主任者は専任をしておるそうでございます。ただ御指摘のように、屋外に、収納施設外に置いておるという事態はまことに法令違反の措置でございまして、厳重に注意すべきものと考えております。  なお小金井の事故にかんがみまして、去る七日に通産省から各都道府県知事に対しまして、取り締まりについて要請を出しております。容器を収納施設に置いてないようなものに対して厳重な注意、警告を与えるとともに、悪質な業者に対しては告発をもって臨む等徹底的に法令を順守せしめるようにしろ、それからなお事業所内の火気等の問題でございますが、省令の基準をつくりますまで持つというわけにもまいりませんので、事務所のストーブとか食堂の炊事用火気とか、そういうようなものの近くで高圧ガスを取り扱っておる業者もあるようであるが、このような場合には火災、爆発に至る危険性が非常に強い、十分に火気厳禁の範囲を設定させ、または火気を有する事務所等の窓、とびら等の位置、構造等を再検討されるように強力に指導されたいということで、事故のあとになりましたけれども、そういう事例にかんがみまして、各府県知事において強力に指導するようにという指示を去る七日付で出しております。
  232. 板川正吾

    ○板川委員 それじゃ爆発事故じゃなくて、プロパンのほうでも今度は販売のほうを鉱山局長伺います。  きょうのテレビ等でも、あるいは最近の新聞等で、プロパンガスが非常に不足をして値上がりをしておる、自動車業者がたいへん迷惑しておる、こういう苦情を聞くのですが、一体どういう実情なんですか、その不足、値上がりの実情というのは。
  233. 大慈彌嘉久

    ○大慈彌政府委員 プロパンガスでございますが、最近御指摘のように非常に逼迫している、手に入らない、したがいまして値段も高いのではないかというお話がいろいろございます。こういうふうになりました原因でございますが、需要が思ったより非常に伸びた、爆発的に伸びたとよくいわれておりますが、当初の計画に比較をしまして非常に需要が伸びたわけであります。全体のうち六五%くらいが家庭用、業務用でございまして、二〇%程度が自動車用にいっております。自動車のうち、これは営業用のハイヤー、タクシー等が主でございますが、大体これくらいがLPGに転換するであろうという見込みを当初立てておりましたのに比較しまして、非常に予定よりLPG車への転換が大きかったというようなこともいろいろございます。そういうことで需要が非常に伸びたわけでございます。  一方、供給のほうでございますが、これは御承知のように国内の生産とそれから輸入でまかなっております。生産のほうを申し上げますと、原油からLPGがとれる率といいますか、得率を現在もできるだけ技術的に可能なところまで上げるような指導をいたしておりまして、当初の計画に比較いたしまして生産のほうもLPGとしては相当上げております。しかし輸入のほうでございますが、いま日本が持っております。これは専用のタンカーでございますが、五隻ございますが、新しい船をつくろうということになりましても急場には間に合わない。それから世界的にスポットというものが非常に余っているというわけでありますが、これまた冬場にはなかなかつかまらない、そういう状況で推移しております。全体の需要量、これは自動車の台数とか世帯の数とか一戸当たりどれくらい使うかとか、いろいろ積み上げ計算、それから過去の時系列等からはじきました需要をまかなうだけのものは一応供給できる数字に符号しておりますが、実際には相当地域によって、あるいは時期によって不足であるというふうなお話を聞いております。値段のほうでございますが、生産業者なり輸入業者の系列の関係に入っておりますスタンド等はそれほどでもないと思います。私も先週都内のスタンドをずっと回ってみましたが、多少は上がっておりますが、それほどではございません。ただ、従来系列に入ってなくて町で買っていて、町で配給するといいますか、そういうスポットものには相当上がっているというような話も伺いますが、実態はあまり明瞭ではございません。
  234. 板川正吾

    ○板川委員 不足の原因は自動車が急増した、こういうことなんです。しかし燃料を供給する側とすると、自動車がふえちゃったから不足したのはやむを得ないというわけにはいきませんよ。これは不足して困るなら、運輸省とあらかじめ連絡し合って、協議し合って、ある程度向こうの予想も加味して、こちらもそれに見合った生産の指導をするという必要があるのじゃないですか。自動車がふえたから不足しちゃったということで責任をのがれるわけにはいかないのです。実はわれわれも商工委員の一人として、あっちこっちから苦情を受けておるので、どうも当たり場がなくて通産省に当たるのだ。だから運輸省に車が急増するということに対応した燃料の確保をひとつ今後やってもらいたいということと、それから夏場需要がずっと減ると思うのですが、夏場減るのを保管して、ある程度貯蔵しておいて、そして冬場これで補う、こういう指導もあっていいんじゃないですか。そういう設備をするなどということもあっていいんじゃないですか。これが一つです。  それから価格について何か十六、七円のものが四十円もしている。倍近くもしている。一晩徹夜して並ばないとタクシーに充てんできない。こういうふうな状況になったことはどうもまずいと思う。この値段については、御承知のように石油業法で標準価格というのがある。最近は標準価格をさらに延長して、指導価格なるものを通産省はやって、指導価格というもので市場の回復というものをねらっておる。このプロパンガスの、こういう急に二倍にも値段が上がっているというのは、このまま放置していいのですか。
  235. 大慈彌嘉久

    ○大慈彌政府委員 一番最初に御指摘いただきました自動車がふえ過ぎたからだということでございますが、これはやはり御指摘のとおり、ふえ過ぎたからまかなえないのだということだけでは相済まないわけでございます。運輸省と打ち合わせました上に、大体LPG車はこの程度であろうという計画で実はスタートしたわけですが、いろいろ関係がございまして、どちらも見込み違いといいますか、予定より非常にふえた。たとえば三十九年度で申しますと、運輸省と打ち合わせをした上の数字は三万五千台くらいのLPG車になるであろうといっておりましたのが、四万台をオーバーしまして、三月では六万台くらいになってしまったわけでございます。しかし、だからまかなえないというのは、御指摘のとおり供給側としてはぐあいが悪いわけであります。したがいまして、いまやっておりますことは、LPG緊急対策委員会というのを業界と一緒にやっておりまして、各系列によりまして非常に逼迫している系列と、そうでない元売り系列とございますので、そういう関係のジョイントを非常に強化するとか、それから一番逼迫している方向に重点的に配給するといいますか、計画出荷のようなことを強くやっております。何とかして冬場を通り過ぎたいというように考えておりますが、ことしはいつまでも寒いので毎朝心配になるわけであります。  それから夏場と冬場の問題でございますが、夏と冬では四割から五割も違うということで、今後は相当貯蔵施設に力を入れないといけないと思います。ただ最近は、夏、冬を通じまして非常に需要がアップカーブにございますので、冬に入る前に新しく船を認めていくというようなことで、一応順調にいっておりますが、需要の伸びがそれほどでもなくなるということになりますと、技術的に見ましても、この問題は大きな問題になろうかと思います。現在は船を認めますときに、行政指導で二・五カ月分の貯蔵能力を持ってくれというようなことでやっておりますが、いずれにしましても御指摘のとおり大切な問題だと思います。  ただ価格につきましても、先ほど申し上げました緊急安定委員会といいますか、業界中心にやっております委員会で、この際値上げということは極力自粛してほしいということをたびたび申し上げておりますが、先ほど申し上げましたように、系列以外のスポットもの、こういうものには御指摘いただいたような価格があるという話を伺っております。
  236. 板川正吾

    ○板川委員 当面、数量の確保と価格、特に価格が倍にもなっているというのじゃまずいので、ひとつぜひ緊急対策をやってもらいたい。  なお、質問の都合があるので、資料をあとで出してもらいたいということを要望して終わります。
  237. 内田常雄

    内田委員長 次会は、来たる四月十三日火曜日午前十時より理事会、午前十時十五分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十六分散会