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1965-03-26 第48回国会 衆議院 商工委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十六日(金曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 内田 常雄君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君    理事 田中 龍夫君 理事 中川 俊思君  理事 早稻田柳右エ門君 理事 板川 正吾君    理事 加賀田 進君 理事 中村 重光君       浦野 幸男君    小笠 公韶君       小沢 辰男君    海部 俊樹君      小宮山重四郎君    佐々木秀世君       田中 榮一君    田中 正巳君       田中 六助君    中村 幸八君       長谷川四郎君    三原 朝雄君       大村 邦夫君    桜井 茂尚君       沢田 政治君    島口重次郎君       田中 武夫君    山崎 始男君       山下 榮二君  出席国務大臣         通商産業大臣  櫻内 義雄君  出席政府委員         内閣法制次長  吉國 一郎君         警  視  監         (警察庁保安局         長)      大津 英男君         通商産業政務次         官       岡崎 英城君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         通商産業事務官         (通商局次長) 今村  昇君         中小企業庁長官 中野 正一君         中小企業庁次長 影山 衛司君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    塩谷 忠男君         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 三月二十六日  委員石野久男辞任につき、その補欠として勝  間田清一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員勝間田清一辞任につき、その補欠として  石野久男君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十四日  中小企業者事業分野確保に関する法律案(  田中武夫君外十四名提出衆法第一六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業近代化資金助成法の一部を改正する法  律案内閣提出第六一号)  中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(  内閣提出第九〇号)  中小企業投資育成株式会社法の一部を改正する  法律案内閣提出第九一号)  小規模企業共済法案内閣提出第七六号)  通商に関する件(日中貿易に関する問題)  中小企業に関する件(企業倒産に関する問題)      ————◇—————
  2. 内田常雄

    内田委員長 これより会議を開きます。  まず、通商に関する件について調査を進めます。  日中貿易に関する問題について質疑通告がありますので、これを許可いたします。板川正吾君。
  3. 板川正吾

    板川委員 私は、前に通産大臣に対して、日中貿易で当面問題になっております日立造船船舶輸出ニチボープラント輸出延べ払い扱いに対する輸銀扱いですね。これに対して質問をしたときに、大臣は、いま少し時間を待ってほしい、いまは何ともいえぬ、こういうことで、時間をかしてほしいということで、日立契約は、御承知のように契約期限が三月末まで延期をされております。そうして、三月末ということになると、もうすでに政府決意をしていんじゃないか、こう思うのであります。時期としては、もう決意をしていい時期じゃないか、こう思うのでありまして、一体、日立船舶輸出ニチボープラント輸出に対する輸銀扱いの問題は、その後政府考えとしてどういう方向であるのか、ひとつ大臣見解を承っておきたいと思います。  いままで、政府動きを見ますると、二月の二十四日に総理官邸総理台湾大使会談をしております。「席上、魏大使は最近国会で問題となっている対中共延べ払い問題について日本側の真意をたずねた。これに対して佐藤首相は、輸銀資金の使用にあたっては、これを使わないといえば国府政治介入ととられるし、逆に使うといえば“吉田書簡に反する”といわれるなど、複雑な問題がある。輸銀資金を使うかどうかは他の国からとやかくいわれる問題ではなく、政府はあくまで自主的にきめていく」こういうことを佐藤総理台湾魏大使に回答した。これに対して魏大使は「日本政府自主外交立ち場は理解できると答えたといわれる。」というのが二月二十四日の新聞報道であります。その後、二月二十六日の新聞によると、総理池田派幹部と懇談をした、二月二十五日ですね。この池田派幹部と懇談したときに総理発言として、「中共貿易について輸銀を使用するかどうかはわが国が自主的にきめる問題である。さきにわたくしが国民政府魏通明日大使と会ったさいにもこの点についてわが国立ち場を明らかにしておいた。いずれにしても日中貿易についてはこんご“商売”にさしさわりのないようにしていきたい」こういう発言をしたということが新聞報道されております。しかもこの会合には、ここにおられる内田商工委員長小川平二議員小平久雄議員池田派領袖が顔を並べておると報道されております。そしてまた、三月十九日になりますと、北京発特派員報道によると、中国側日立造船扱いに注目をしてることで、日本出方待ちというのが中国の状況であるようであります。  こういう動きの中からいいますと、私は、総理池田派会合意見を述べたり、あるいは台湾大使との会談の際に意見を述べた等を考えてみますと、この輸銀扱いの問題については総理自身がひとつ決断をしておるのじゃないか、こう思うのでありますが、政府考え方はどうなんでしょうか。
  4. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ニチボービニロンプラントにつきましても、また日立造船貨物船の問題にいたしましても、政府といたしましては、すでに前者は一月二十二日と記憶いたします、それから日立のほうは二月十日ごろであったかと思いますが、いずれも輸出承認を与えております。これはいまさら御説明を申し上げるまでもなく、この種の取引、すなわち代金が六カ月以上にわたるものにつきましては標準外決済の必要がございます。このために輸出承認を求めてくるのでございます。さようなことから両件とも、ニチボーは一月二十二日、日立造船は二月十一日であったかと思いますが、承認書を与えた、こういうことであります。  ただいま板川委員お話のごとくに、総理はこれらの案件について明白に、自主的に問題をきめるべきものであるということを言われておるのでございまして、私どもといたしましては、この両件は、ともにその契約がなだらかに履行されるべきものである、こういうふうに確信を持っておるのであります。すなわち、これらのものが承認を与えておるのでありますから、契約履行されていきますれば、ニチボーにつきましては、これは当初頭金として二七・四%を受領する、金額は御承知のように二千五百八十五万二千ドルのものでありますが、その二七・四%の頭金をもらった、そして仕事にかかっていく、また日立造船につきましては、これは百十六万五千ポンド、頭金は三〇%、こういうことでございますから、これらの頭金をいただきまして、忠実に契約履行されてしかるべきものだ、こう思うのであります。
  5. 板川正吾

    板川委員 なだらかにこれらの計画を進めていきたいという趣旨、それから大臣も、総理がそうした会合における発言を否定しておらないようであります。そうしますと、総理が、いずれにしても商売に差しさわりがないようにするという趣旨大臣自身も了承しておるし、そういう点で私は意思の通じがあるのではないかと思うのです。なだらかに実施していくということになると、いま新聞である線が出ておりますが、これは日立の問題についてはこの三月中に輸銀扱いを認めるようにし、それからニチボービニロンプラント契約期限は四月の末であるから、その間にさらにこれと切り離して考慮し、打開の努力を続けていく、当面は日立造船船舶輸出延べ払い輸銀扱いを認める、こういうことに踏み切っていくというお考えと解してよろしいですか。
  6. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 この輸銀という問題を正面に出して論議をしていくということは、従来の経緯にかんがみまして、自主的に判断をするということにどうもいささか触れてくるのではないかと思うのであります。輸銀を使わなければ輸出を、この契約を認めるとか認めないとかいうような非公式な話などが耳に入っております。でありますから、私としてはこの輸銀というものについてどうするこうするという論議は、どうも自主的な判断からでたい方向へ引きずり込まれるような印象が強いと思うのです。この輸銀問題ということについては、契約履行の上においてそういうことが条件にはなってこないのでありますから、私としては触れたくはないのであります。しかしいま申し上げましたように、なだらかにこの契約履行されていく、そして個々の企業者がどういうふうにして金融をつけていくのか、こういうことについて銀行に御相談がある、それに伴って、従来も言われましたように、シンジケート方式もあるじゃないか、それはそれで、この契約履行されていく過程において解決されていくべき問題であろう、こういうふうに私は見ております。
  7. 板川正吾

    板川委員 そうすると、大臣は、日立なら日立の問題にしぼってもいいのですが、輸銀扱いをさせないで、他の方法金融的措置をすれば問題は解決していくだろう、こういう見解に立っておられるのですか、どうなんですか。
  8. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは田中大蔵大臣参議院予算委員会でも、輸銀を使うとか使わないとかいってるのじゃない、こういう答弁をされておりました。日立船舶輸出をするに際して、不当に何か影響を受けるということではいけないのでありますから、適切なる金融措置が講ぜられますならば、それで差しつかえないんじゃないか。それは日立自体がこういうふうな金融方法でやってくれというようなことを独自に要望してくる、またその要望に伴って考えられることは考える、こういうことだと思うのであります。とりあえずにおきましては、頭金でいくので、そういう問題はない。だからなだらかに契約を相互に履行すべきでないか、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  9. 板川正吾

    板川委員 日立の社長はこう言っておるのですよ。この問題は輸銀扱いを認めてもらわないと契約は成立しません。その契約が成立するかしないかは三月三十一日までだ、こう言っておるのでしょう。だから日立としては、輸銀扱いを認めてほしい、こういう結論を出し、それで再三政府側にも要望しておるのじゃないですか。だからまた大蔵大臣参議院で、ニチボー・ビニロンプラント輸銀扱いは最終的にしないということを決定したわけじゃない、こう言って含みのある発言もしているのです。私は、時期がまだ若干早い、努力中で、三月三十一日までに何とかするというなら、それはそれでいいと思うのです。しかしこの問題は、この辺でいずれにしても佐藤総理の裁断をまって結論を下すべき時期にきているのじゃないか。通産省が将来の日中の貿易発展貿易振興という面、あるいは日中友好考えておるかと思いますが、とにかく熱心に日中貿易の促進に努力しておることは、当面の責任者ですから、それは努力していただいて、総理決断を願う時期にもうきているのじゃないか、こう思うのです。ただそれには、いま大臣のおっしゃったように、何とか他の資金的な方法を講ずれば、輸銀でこれの取り扱いを認めなくても何とかなるんだということは、私はそれでは何ともならぬ、結局この契約は不成功に終わることになるんじゃないか、こう思うのです。それは、最近の北京松野特派員発報道として、中日友好協会廖承志会長がこう言っておると伝えられておる。日中貿易の最大の障害は吉田書簡である。吉田書簡が消えない限り、少なくとも日中総合貿易は伸びることはあり得ない。日本政府は具体的な措置によって吉田書簡を排除したことを示すべきである、こういうことを言って、ニチボー・ビニロンプラント日立造船の輸入についての輸銀融資の問題が片づいた上で、日本を訪問したいということを言っておりますが、いまの段階としては、輸銀取り扱いを認めない限り問題の解決はないんじゃないか。大臣は再々、別に許可をするときに輸銀を扱わせるか扱わせないかは条件に決定してないんだと言うけれども、しかしプラント類輸出ということと、それから輸銀目的からいえば、それは扱わせるのがあたりまえの話じゃないですか。この前も言ったかと思うのですが、日本金利は諸外国に比較して非常に高い。だからプラントのような金額の大きい長期的な輸出をする場合には、どうしても金利競争力がない。だから輸出振興というたてまえからいうと、プラント類輸出する場合には、そういうものに対して特別の、外国と対抗できる程度金利取り扱いをするというのが輸銀目的であって、許可条件輸銀に扱わせると書いてないから、話し合いによってだという議論はおかしいと思う。当然これは輸銀融資をしてもらいたいということを希望しておるのだから、無差別にやるのがあたりまえの話である。これは総理だってそういう感じを持っておると思う。だから自主的にきめるんだといっておると思うのです。それならば、もうそろそろ決着をつけられたほうがいいのではないか、こう考えておるのですが、いかがですか。
  10. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いま、お話の中にもありましたように、私としては、契約履行の上には輸銀どうこうということは条件にはなっておらないと思います。それで、いま輸銀を使わせなければこの契約は破棄だというのは、どうもこれは正式にそういう申し出を受けたわけじゃないのですから、新聞記事や何かから見ると、穏当を欠く、われわれの自主的な判断をしようというのに対して、それは言い過ぎではないかと思います。現在、総理が自主的にやるんだと明白にしておる以上は、あっちからこっちからどうこう言われたから何するんだという、こういう方向に持っていくのはどうも筋が悪い、こういうように思うわけです。ですから、なだらかに契約履行さるべきである。しこうして、その後にこういうふうに金融をしてもらいたい、それは出てくるでしょう。しかし、それに対して、いや、こういう方法もある、これは確かにお話しのように、輸銀というものの機能は御指摘のとおりだと思います。しかしそれだからといって、また他にこういうことで大いに輸出をやってくれというのを除外すべきでもない。ただ、おっしゃっておるように、常識的にはそうだ、これは私も否定はいたしません。しかし、いまこの段階でいろいろ問題になっておる、しかも輸銀を使わせなければ認めないとまで言われておるときに、それをさながら条件にされたと考えますときに、別に契約の上ではそういうことになってないから、私はなだらかに契約履行して、そうして自主的に判断をすることが最も適当である、こう申し上げておるのであります。
  11. 板川正吾

    板川委員 問題は、輸銀融資をしないから契約を破棄するんだということの前にあるのです。これは前にも申し上げましたが、中国側では、輸銀で扱わせるとか、金融をどうするとかいうことは日本の国内問題である。だからそれはとかく言いたくはない。しかし、台湾政府申し入れ吉田書簡というものができて、吉田書簡輸銀を扱わせないということを約束したという、中国側では日本立場を見てみて、日本台湾関係はまあしかたがない、日本とアメリカの関係もとかく言うまい。しかし、中国日本との関係もよそから言わないでほしい。それを台湾申し入れによって吉田書簡ができ、その吉田書簡輸銀扱いをさせないということを約束しておるから、台湾のさしがねでそういうことになったことに対しては了承できない。だから台湾に対して、たとえば一億五千万ドルの借款問題等が起こっても、中国側ではこれに対しては、不愉快であっても反対だという条件はつけないでしょう。それは日本台湾のいまの段階における関係でやむを得ないと思っているかもしれない、向こうでは。とにかく、それは文句を言う筋合いではない。だから、中国日本との関係についても文句台湾から言われて——前の倉敷ビニロンプラントのときには輸銀延べ払いを認めて、今度は吉田書簡によってそれを認めないというところに問題がある、こう言っているのです。だから、吉田書簡台湾からの要求ですが、それがなければ中国側は、もう輸銀で扱おうがシンジケートで扱おうが、それは問題にしない、こう言っているんじゃないですか。問題はその先にあるのですよ。だから台湾の日中の問題に対する干渉ということにどうしてもがまんができないから、日本政府としては台湾干渉を受けないで自主的にやるんだ、日本中国との関係日本政府が自主的にきめるんだということであれば、台湾政府から問題となった吉田書簡ビニロン等輸銀扱いはしないということはひとつ解消してほしい、その実績を示してほしい、こういうことになっておるのでしょう。中国側輸銀で扱わせなければ契約をしないとか何とかとおどかしているところに問題があるんじゃない、問題はその前にあるんです。その誤解を解くためには、この際自主的に、これも三月三十一日になって政府がきめるんじゃ何か中国側圧力に屈してきめたようなかっこうになるんじゃないですか。ここまでくると、先へ行けば行くほどかえってきめずらくなるんじゃないですか。佐藤内閣としては、あくまでも自主的にきめたい、台湾からも中国からも圧力を受けてきめたという形をとりたくない、こう言っているのですから、それならばいまの段階が私は一番いいんじゃないか。大臣がきょうの閣議でそういう問題は実は結論を出して臨んでくれると思ったのでありますが、その結論も出ないようであります。しかし私は三月三十一日ごろそれをきめるよりも、この辺でひとつ自主的に判断をされて、前向きの、また総理発言したように、商売が拡大し、継続されるような方向にひとつ結論を出していただきたいということを強く要望いたします。いずれにしても、きょうではそれをオーケーという形の結論は出ていないようでありますから、どうかひとつ、せっぱ詰まった三月の末にきめるんじゃなくて、なるべく早い機会に自主的にきめて、商売がさらに継続するような方向結論を出していただきたいということを要望して私の質問を終わります。
  12. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先ほど板川委員が冒頭に、佐藤総理国府大使とのことにお触れになりました。私は、二月二十四日以降というものは情勢がやや違うと思うのであります。それは、佐藤総理が明白に、自主的に判断してやるということを国府大使に言っておるのでありますから、したがって、いま板川委員が、私の言っておるその前の前提があるんじゃないか、その点については、私としてはその前提ということが、少なくともこの佐藤総理自主的判断でやりますよと言ったその以後、趣が違うという立場に私は立っておるのであります。したがって、ここで輸銀問題でどうこうというよりも、なだらかに契約履行しながら金融問題、経済ベース考えていくのが至当じゃないか、こういうふうに思うのでありますが、しかし、板川委員もせっかく中共貿易に対する前向きのお気持ちで御親切におっしゃっていただいておるのでありますから、私もその辺は十分意を体しながら、わが国貿易発展の上に寄与するよう努力をしてまいりたいと思います。
  13. 板川正吾

    板川委員 それを言われると、ちょっと一言。  二月二十四日の総理発言で、その後情勢は変わっているといいますが、どうもそれは私には理解できないのです。二月二十四日に総理魏大使と会いました。これは私的な会談ですが、池田派領袖会談した際の新聞記事によると——新聞記事が間違っておると言われれば別ですよ。この記事によると、総理は、わが国が自主的にきめるんだ、そして国民政府の駐日大使と会った際にも明らかにしておいた、こう言っておいて、そしていずれにしても日中貿易については今後商売に差しさわりのないようにしていきたいと言っているのですよ。二十五日ですよ。翌日ですよ。だから、この趣旨から言えば、かえって前向きの決意をしておるのじゃないかと私は思っておるのです。二十四日以降、逆にうしろ向きになったとは思わない。だから、そういう前向きの決意をしたならば、私はせっぱ詰まって結論を出すよりも、この辺で結論を出されることが、何か圧力に屈して答えを出したということにならないんじゃないか、こう思うから、近々のうちにひとつ結論を出してもらいたい、こういうことですね。しかしこれも、何もかにも二月二十五日以降さらに情勢が変わっているんだということであれば、どうも佐藤内閣というのは言うこととやることがみんな違う。だから国民の中で、一体総理というのは何を言うんだ、ついこの間自主外交をやると言い、あるいは日中貿易の問題はこの佐藤内閣が解決するんだということを言ったかと思うと、かえって池田内閣より逆な方向に行くじゃないか、こういうことになる。三千億減税すると言いながら、それは何年かかるか約束しないと言う。佐藤内閣に対する国民の不満というのは、言うことがしょっちゅう違うこと、そういうことに問題があると言っていいのですよ。もし今度結論として、これはいろいろな問題を考えた結果、日中の貿易プラントに対する輸銀取り扱いを認めないというようなことは、これこそもう総理としての責任がない、資格なし、こうわれわれは言わざるを得ないと思うので、ひとつ、二十四日以降情勢が逆に変わったという趣旨にとれたものですから、私はそうじゃない、前向きに変わっているはずだ、それはこの発言から類推されるのじゃないか、こう思っているわけでありますから、御了承いただきたいと思います。
  14. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私の申し上げるとおり、なだらかに契約履行されていくことを一番望んでおります。いま当面の問題に取っ組んでいくと、そうすると内政干渉的なところにはまり込むじゃないかということをおそれておるので板川委員のお気持ちはよくわかりますので、私も参考にいたしたいと思います。      ————◇—————
  15. 内田常雄

    内田委員長 次に、内閣提出中小企業近代化資金助成法の一部を改正する法律案、同じく中小企業信用保険法の一部を改正する法律案、同じく中小企業投資育成株式会社法の一部を改正する法律案及び同じく小規模企業共済法案、以上四法案を議題として、質疑通告がありますのでこれを許可いたします。大村邦夫君。
  16. 大村邦夫

    大村委員 私は、内閣提出中小企業近代化資金助成法の一部を改正する法律案に対して、以下質問をしたいと思います。  その前に、まことに失礼なことをお尋ねをいたしますが、通産大臣にひとつお尋ねをしておきたい点があります。それは、昭和四十年度予算社会開発ないしひずみ是正、これを一つの、しかも重要な目標としていることは御承知のとおりであります。このことは、昨年の十二月の十八日の閣議決定予算方針や、自民党の予算編成大綱での基本方針でも明らかでありますが、さらにそれを受けた重点施策五項目の最初に、経済のひずみ是正安定成長確保が置かれております。そこでお尋ねをしたいわけでありますが、一体この経済のひずみと安定成長とはどういう関係にあるか、これは若干大臣の所管が違うかもしれませんが、通産大臣としてひとつどうお考えかをお尋ねしたいのであります。
  17. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 高度成長経済と申しましょうか、いわゆる所得倍増政策と申しますか、これの遂行上にひずみが出たということはいまさら申し上げるまでもない。したがって、そういう行き過ぎた面を考えていきますならば、今後の経済成長安定成長であるべきである、こういう結論に至ったと思います。過去における成長経済におきましても、当時政府のとっておりました成長率というものは七・二%、しかし当初は九%程度というのが、非常に予想と狂って大きく一四、五%の伸び率を示した、だから政府のねらったところと実際が非常に狂った、ここに問題があろうかと思うのでありますが、これからの日本経済の伸びを安定した姿で持っていきたい、そのことによって従来起きましたようなそういうひずみが出ないようにしていきたい、こういうことに私としては考えておるわけであります。
  18. 大村邦夫

    大村委員 そうしますと、経済の不安定を招いたのは政府、当時池田内閣でありましたが、高度経済成長政策を遂行するにあたって、そういう現象があらわれたということですか。
  19. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはいまも申し上げましたように、政府のねらったところと実態が違った、要するに過熱を生じた。もしこれをおっしゃるように受け取りますれば、その過熱を生ずるのをどうやって押えなかったのか、こういうことになろうかと思いますが、政府自身が明らかにした成長経済の行き方は間違っていなかった、実態が狂った、こういうことであります。
  20. 大村邦夫

    大村委員 いまの答弁を聞きますと、何か政府責任でないようにおっしゃいますが、ここであえてこの論争を長くやろうとは思いません。思いませんが、これは今日の常識であります。高度経済成長政策は、人と物と金とをとにかく集中的につぎ込んでは、こういう経済不安定の現象が出るのは当然でありまして、その結果経済のひずみというものが出た、私どもはこういうように認識をするわけであります。いま大臣の答弁を聞いていましても、何とかかんとか言いましても、結局は経済の不安定というのは高長政策が生んだ鬼子だ、もし政府が高長政策をとらなかったら、そういう行き過ぎも過熱も起こらなかったのだということが結論として言えると思います。それでこの高長政策の生み出したひずみ、そのひずみを是正するのは政府の当然の責任だと私は考えますが、その点はいかがでございますか。
  21. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 現実の事態に即してそれを処理していくということは、政府の当然の責任だと思います。
  22. 大村邦夫

    大村委員 当然の措置だということでありますが、思いますに、いまからちょうど一年前、御承知のように、政府は所得倍増計画の第二ラウンドということを言い出しまして、その第二ラウンドでは低生産部門の近代化、農業と中小企業の近代化に力を入れるのだということでありました。当時宮澤経済企画庁長官は、大企業のほうはすでに急速な成長を遂げた、これからは、第二ラウンドでは、農業と並んで中小企業発展強化に重点を置くのだということも強調されておったわけであります。ところがふしぎなことには、この中小企業のいわゆる革命的な対策といいますか、その中の近代化というものがいつの間にか何か置き去られたような感じが私はしてならないのです。それは政府がお出しになりました中期経済計画、それをながめましても、重化学工業化が根本方針として打ち出されておりまして、輸出産業だけでなしに、全体として重化学工業化が強く打ち出されておるということが指摘できます。ということは、中小企業の近代化とか、あるいは所得倍増の第二ラウンドとか、あるいはアフターケアとかいうのが、いつの間にか重化学工業化にすりかえられた、こういうように私どもはとらざるを街ないのでありまして、大臣がそれに対して、いやそういうことではないというお考えならば、ひとつ御指摘をお願いしたいと思います。
  23. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 今回国会で御審議をわずらわしておる四十年度予算をごらんいただきますならば、予算の全体に対する中小企業関係のパーセンテージは低いとしばしば御指摘を受けました。しかし、限りある国家の財政の中でどの程度中小企業施策を考えたか、こういう見地からまいりますと、他の予算の伸び率よりも高い伸び率で、中小企業に対する財政あるいは、投融資というものを考えておるのでございまして、このような見地からいたしますれば、第二ラウンドとしての中小企業対策というものについて、御不満の点は多々ございましても、そういう比率の上からごらんいただきますならば、政府としては重点を置いておるということは明らかではないかと思うのであります。
  24. 大村邦夫

    大村委員 私はいま政府の方針が重化学工業化の方針に力点がかかっておるということを申しました。このことは、私がこれから御質問を申し上げようとする中小企業近代化資金助成法の一部を改正する法律案と大いに関係があると思うのでございます。現に高度化資金の適用を受けて、いま工業の団地化が行なわれておる。その中心は何かというのをいろいろ調べてみますと、機械金属、つまり政府の重化学工業化の方針を受け継いで、それぞれの大独占がそういう方向にいっておるわけでありますが、その下請企業的な要素を持っての機械金属の下請企業が集団化をしておる、こういう傾向が非常に強いのでありまして、そのことを私は指摘をしたわけであります。大臣は、まだ私がいまから言おうとしておる点を先回りしておっしゃいました。結局中小企業の近代化とか高度化とかいろいろ言うけれども、国の方針に左右されて、中小企業というものはしょせん助からない。御承知のように、重工業のおもなにない手というのは大独占でありまして、この下に中小企業はいわゆる囲いの中に囲まれてのがれられないような状態の中で対策が講ぜられる。だから整理も転換も出てくるでありましょう。こういう点について私は、政府のいう中小企業のいわゆる救済というものは、およそ言うことと行なうことが違っておりはしないかということを指摘をするわけであります。この点についてどうなんですか。
  25. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 産業構造の質的変化が即中小企業に対する圧迫になるとか、あるいは中小企業施策を否定しておる、こういうふうにはとらないのであります。いまお話しのように、高度化資金の場合の団地育成は機械金属が確かに多うございまして、四十七団地、木材、木工が十八団地、繊維が十一団地、こうなっておる。また、ただいま御審議をわずらわしておる近代化資金の貸し付け状況にいたしましても、三十八年、三十九年の模様を見ますと、機械金属工業に三十八年は四七%、三十九年は四二%というように貸し付けが重点的になっておりますが、しかし、この機械金属の団地あるいは機械金属工業というものが即これは中小企業ではないんだ、こういうことではないと思います。これは申し上げるまでもないことだと思います。したがって機械金属のほうに力が入っておるからといって御批判を受けるのはどうも酷じゃないかと思うのであります。
  26. 大村邦夫

    大村委員 私は酷ではないと思うのです。それは先ほどから申し上げますように、重化学工業部門のにない手は大独占であります。その大独占が、ちょうどたくあんのおもりの石のように上へかぶさっておる。その下でいわゆる中小のそれに系列する、あるいは系列外もあるでしょうけれども、そういうものが受けておるわけであります。そうすると、結局は国が重工業に力を入れる。入れてもうかるのはだれかといえば、やはり大独占でありまして、その大独占の下で働くものが結局のしていくといいますか、そういう傾向にあるということについては、私は納得はできないのです。
  27. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは一つの御見解を述べられたと思うのでありますが、しかし、現実の機械金属工業の実態が、それじゃ大企業の単なる関連部門として現在仕事をしておるのか。そういう面もございましょう。しかし、そういう面であっても、やはり中小企業経営であることは否定はできないし、またそうでない、大企業とは別途の中小の機械金属工業というものがあるということも、これは現実ではないかと思います。
  28. 大村邦夫

    大村委員 この問題は法案の中身に入って若干触れますので、あと回しにします。  さっき大臣は、中小企業のひずみ是正についてはかなりな力を入れておる、こういうことを申されました。それは、私どもが、伸び率はなるほど多いけれども絶対額は少ないじゃないかということを再三指摘をすると、また逆に、いや伸び率が三一%もあるのだから、これはない中でもかなりな無理をしたということをおっしゃっておられます。そこで大臣お尋ねをしたいのですが、他の予算との比較で申し上げるのですが、農林関係予算は三千六百九十九億五千万円程度あるわけです。もちろんこの中では公共事業費、食管繰り入れもありまして、これを引いても二千数億円であります。一体中小企業予算あるいは通産省予算と比較をした場合に、これがはたして佐藤総理が所信表明の中で言われたような財政、金融、税制について思い切った施策を講ずるということに通ずるのかどうなのか。無理をしたといっても、これは無理をしていない、コンマ以下じゃないか、一けた違うじゃないか、私はそう指摘をせざるを得ないのですが、大臣は他の部門と比べて、これで満足いかないまでも、まあまあというところのようにお考えなんですか、どうなんですか。しかも、ちょっと触れておきますが、中小企業関係に従事する従業員、これは、大体私の調べたところでは千七百二十万名近くあります。農林関係の従事者を調べてみますと、農業で千二百三十七万名、それから林業で五十五万名合計千二百九十二万名。つまり中小のほうが従事者にしても多いということでありまして、その数段多い中小企業、しかも農業とともに非常なる立ちおくれが目立つこの中小企業予算に対して、ただ伸び率だけで私は満足するべきではないと思いますが、この点いかがですか。
  29. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 伸び率だけで満足をすべきでない、これは私もそうだと思います。しかし、行政機構というものは長年の間にできた機構でもございますし、それからまた、財政、金融、税制というものについても、これは長年の積み上げた施策の上にあると思うのであります。これを急速度にやるという場合に、はたしてそういう機構なり行政能力が備わっておるかどうかというような点も、これは考えていかなきゃならぬ問題だと思います。しかし、伸び率だけでなく絶対額をふやしてもっと大いにやれ、こういう御主張について私は否定はいたしません。
  30. 大村邦夫

    大村委員 いまの点については、毎年毎年、毎国会同じようなことを言っておるわけですが、また、御答弁のほうも同じようなことを繰り返しておられるわけでありますが、伝統がどうあれ、ここで政府責任のもとでひずみの出た中小企業については、しかも、全産業の九九・八を占めておる日本経済にとってきわめて貴重な存在である中小企業対策に対しては、それこそ池田内閣ではありませんが、抜本的な施策を講ずるよう大臣としても善処してもらいたい。これはまた次の機会に、小規模企業のところでも申し上げたいと思うのですけれども、今日政府の講じておる諸施策をながめましたときに、まことにお話にならないお粗末なものだということを指摘せざるを得ないのであります。  次に、法案に入りますが、中小工業集団化についてであります。団地づくりの国や地方公共体の考え方として、一般的な理由は、一つは、既存の工場の拡張が不可能なこと、二つ目として、中小企業の経営の合理化が、生産規模の適正化や工場の作業還境、レイアウトの根本的改善、機械設備の徹底的な更新と近代化を通じて達成されること、三つ目として、中小企業の集団的な協同化の効果が高まること、四つ目として、労務者の確保がはかられること、五つ目として、公害問題の解消をはかること、こういう点を政府としては指摘をしておられます。私もそのとおりだと思います。こうしたいろいろな目標を達成するために団地計画がつくられ、その計画が合理的、効率的に実行されるために国や地方公共団体が必要な指導を行なわなければならないのは当然であります。こういう考え方のもとで中小企業近代化資金助成法が施行されておることは御承知のとおりでありますが、昭和三十六年から本法が改定をされ、中小企業団地化助成政策がとられてから四年近くを経過しておりますが、聞くところによりますと、所期の計画が順調に軌道に乗っている団地が少ないという話を聞いております。計画と実態との間にそごが生じているおもなものはどういうものか、さらにその理由は何なのか、それについて御説明を願いたいと思います。
  31. 中野正一

    ○中野政府委員 いま御指摘の中小企業の工場団地の最近の進捗状況でございますが、昭和三十六年から始まりまして三十九年、ことしで四年になるわけでございますが、いま全国で、三十九年度を含めまして八十一の工場団地が造成中でございます。大体これは御承知と思いますが、計画を立ててから完成するのに三年はかかる。ものによってはいろいろな土地収得等がおくれるというようなことがおもな原因でございますが、四年かかるというものもございます。このうちで二十団地がほぼ完成をして操業に入っております。ところが、一つは、御承知ような団地の完成時に金融引き締め等の経済的な非常な影響がございまして、また最近は御承知のように経済情勢があまりよくないのでありますが、こういうようなことも一般的に影響しておると思います。必ずしも所期の目的を全部が達成しておるということはできないと思います。  ちょっと大体の経過を申し上げますと、三十六年に十団地でありまして、これはもう全部完成をいたしました。それから三十七年が二十団地、これはほぼ完成したものが二十団地のうちで半分の十団地、それからほぼ計画どおり進捗しておるものが五団地、計画より遅延しているものが五団地、これがまあ問題でございます。たとえば一番新聞等で取り上げられておりますのは、北九州の小倉の鉄工団地、これは倒産がそのメンバーの中で八社も出ておるというようなことのために非常にむずかしい情勢になっております。三十七年でほぼ半分は完成しております。それから三十八年は大体計画よりややおくれておるものが二十五団地のうちで六団地ということで、大体七、八割方は計画どおりいっておるのではないかというふうに見ております。先ほど申し上げましたように経済情勢の変化等によりまして、ある程度問題もありますが、もともとこの工場団地の造成ということは非常にむずかしい仕事でございまして、御承知のように中小企業者が非常にいわゆる世間で一般的に言われている過当競争ということで、お互いにしのぎを削りあってやる、こういうようなことでございまして、それが同業のものがほぼ大体一つの団地を形成して、その団地の集団化によって、全体としての生産過程の合理化、能率の向上ということをやろうというのでありますから、非常にむずかしい問題であります。したがいまして、われわれいつも言っておりますのは、まず団地をつくろうとする組合員の皆さん方の相互の協調ということが最も大事で、これがくずれればうまくいきません。この協調の上に立ってリーダーシップをとっていく指導者の方がよき指導性を発揮していただく。よき指導者を得て指導性を発揮して、組合員の皆さま方がこの困難なむずかしい仕事をやりとおしていこうという、この協調精神、これが基本でございます。これが非常にうまくいっておりますところは、資金面等で非常にむずかしい問題等がありましても、政府あるいは県当局、あるいは関係金融機関の援助等で大体うまくいっております。  それからもう一つは、先ほど申し上げましたが、やはり何といっても指導の立場に立つ府県の当局者、あるいは通産局、あるいは通産省というような行政指導が非常に大事である。それからいままでの経過を見まして、やはり一番うまくいかなかったのは、土地取得について非常に時間がかかった。これは御承知の農地転用によりますので、それに非常に時間がかかって、一年近く土地取得にかかるというようなことがあって、計画がずれる。そのために資金の調達等がうまくいかなくなるということが一つの問題でございます。  それからもう一つは、やはり資金の確保の問題で、当初の計画というものを企業診断等を受ける等で、ほんとうにがっちりと当初から金融機関の意見等も聞いてやっておったものはうまくいっておりますが、そうでないものは、当初の計画がずさんと言うことは業者の皆さん方に非常に悪いのですが、結果的にそういうふうなものが出ておって、資金の確保に困難性を感じておる。  それから最後に、でき上がった場合の市場の確保。相当の生産高で、売り上げ高はできても、十分市場確保がされないために逆に収益性が下がる。売り上げだけはふえて収益性が下がる。この土地取得資金の確保、市場確保、こういうところに問題があってうまくいかないという例もあるかと思います。
  32. 大村邦夫

    大村委員 いま、いろいろその現象なり理由について御説明がありましたが、私の把握しているのでは、具体的に言えば、いま言われたことのほかに共同施設の設置が非常におくれておるということを聞いております。この共同施設の設置がおくれている理由は何かということですね。
  33. 中野正一

    ○中野政府委員 全般的に共同施設の設置が非常におくれているというふうには私は見ておりませんが、ただ、御承知と思いますが、共同施設は、大体名人の工場を先に移転をして、そうしてその中に大体一つの工程について共同施設をやるということで、大体の計画は共同施設の最後の計画になっている関係もあるのじゃないかと思います。
  34. 大村邦夫

    大村委員 長官は、おたくのほうの政府機関で出された中小企業金融公庫月報三月号をお読みになりましたか。その中で、先ほど申しましたように、この工業団地化は順調に進んでおるところが少ないということを指摘されております。長官のお話ではだいぶうまくいっているということだが、ここに食い違いが一つある。それから、共同施設の設置が大半おくれておるということも指摘をされておる。そのおくれている理由は、いまあなたがおっしゃいましたように、協調精神が足りない点、あるいは実際に共同施設を行なおうとしても、計画には相応しておったけれども、実際に実施面ではそれほど必要性を感じない。あるいはまた、資金繰りの関係から次々に施設を延ばさざるを得ない。さらにはこういうことも指摘をしてあるようであります。同じ機械設備でなしに、宿舎等については、勤務時間や労働賃金がわかってどうも調子が悪いから、そういうことから共同施設の宿舎あたりもつくらないでおるとか、そういう点が指摘をされておりますが、いま長官が言われた、大体うまくいっておるということと少し違うように思うのですが、その点の認識の把握のしかたについてはどうなんでしょうか。
  35. 中野正一

    ○中野政府委員 確かに、御指摘のありましたように、この団地の問題は非常にむずかしい問題がいろいろ出ておりまして、私どもも実地調査をやりますし、また、関係金融機関、特に中小公庫あたりは、御指摘のように大いに応援してもらわなければならぬ。われわれはまた、中小公庫あたりの応援のしかたが足らほいのではないかといって日ごろからしかっておるのでありますが、そういうことで、そういううまくいっておらぬというような調査をされたのだろうと思うのであります。御指摘のように、共同施設については、業種によりまして、これは協調精神で共同施設をぜひやろうという計画を立ててもなかなか——特に機械金属あたりは、機械の種類にもよりますが、たとえば繊維関係で染色であるとか、こういうようなものであれば共同加工ということが比較的簡単に皆さんの意見が一致していくわけでありますが、業種によっても違うのではなかろうか。しかし、この共同施設はぜひ必要でありまして、これは計画の中に取り入れて、できるだけこれを駆使するようにやらせております。それから共同給食とか共同宿舎というものは、大体皆さん方非常に必要性を感ぜられますし、また、私のほうの金だけでなくて、年金福祉事業団というようなものの非常に長期低利の金も利用できますので、こういう方面はたいへんうまくいきつつあるのではないかというふうに見ております。
  36. 大村邦夫

    大村委員 委員長、まだこれからこの問題についての意見が少しあるのですけれども、途中ちょっと時間をかしていただきたいという委員がおられますので、了解をしてお譲りをしたい。あとでまた継続いたします。      ————◇—————
  37. 内田常雄

    内田委員長 中小企業に関する件について調査を進めます。  企業倒産の問題につきまして田中武夫君より緊急に発言を求められておりますので、この際これを許可いたします。田中君どうぞ。法案の審査中でありますので、なるべく簡潔にお順いいたします。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいま大村委員が重要な法案審議の途中でございますが、実は、来ていただいた政府委員の方々にも都合があるようであるし、また、私がいまから聞くことは、大きく言えば人命に関する問題でありますので、緊急に質問いたしたいと思います。  そこで、中小企業庁長官と警察庁にお伺いいたしますが、山陽特殊鋼が会社更生法の手続を申請いたしまして以来、史上最大、戦後最大の倒産だということで、いろいろと各方面から注目を浴びている。また、当委員会あるいは大蔵委員会等からも調査に出ましたが、ついにこれが人命に及ぶというような問題まで引き起こしてきたのであります。すでに山陽特殊鋼の従業員で投身自殺した者も出ております。しかしこの者については、単にノイローゼだということで簡単に片づけられておるようでありますが、いま私の手元にあります新聞記事によりますと、これは東京のほうではあまり大きく取り上げておりませんが、関西のほうでは大きく取り上げておるのですが、山陽特殊製鋼に感光紙等を納めておりました文房具店が、金融機関から手形を割り引いてもらっておったところが、こういう状態になったので、その手形の買い戻しを迫られまして、そういうこと等で一家四人が去る二十二日夜家出をしたといいますか、行くえをくらました。その文房具店の長女のA子さん——A子さんということにいたしておきますが、A子さんは、二十三日の日が小学校の卒業式でありましたが、その卒業式の前夜一家が姿をくらましたということが出ております。そこで近所の人々は、これは一家心中のおそれもある、そういうことで、地元の飾磨署へ保護を届けた、こういうような事実があるのですが、中小企業庁長官並びに警察庁保安局長の手元ではこういう事実をどのように把握せられ、その後どのように調査しておられますか、お伺いいたします。
  39. 中野正一

    ○中野政府委員 山陽特殊製鋼の関連の中小企業者の持っておる債権、またその手形の買い戻し等で現地で相当いろいろ問題が起こっておりますので、できるだけこれにつきましては、さしあたり期限のきた手形の買い戻しの延期等については全部手配をしておるつもりで、われわれも、現地にも私のほうの次長以下部長も派遣いたしましてやっておったのでありますが、いま御指摘のような非常に不幸な事件が三月二十四日の新聞に出ております。大体いま田中先生がおっしゃったような内容だと思いますが、さっそくわれわれのほうとしても現地にテレタイプをもちまして、情勢を的確につかんで、どういうふうになっているか、どういうふうに措置するかということを指示しておりますが、まだいままでのところでは、こういうふうな情勢だということだけちょっと申し上げるにすぎませんが、おっしゃったように、飾磨区の編塚文房具店が山特鋼に対しまして約二百万円の売り掛け金を持っておりました。山特に対するこういう関連の納入業者というものが非常に多いのですね。非常に少額の債権者です。われわれがいままで調査しておりましたのは、主として下請業者を中心にしてやっておりましたが、こういうものも非常に多いのでございまして、納入業者の組織をつくろうということで、長年この人たちに対しても勧誘しておったそうでありますが、その中に入っておらなかったそうであります。一家四人が家出をされまして、子供二人は姫路の親数に預けてある、親も帰ってきたようだということまで私のほうで把握しております。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 警察はどうですか。
  41. 大津英男

    ○大津政府委員 御質問がありました家出の件でございますが、ただいまお話のございましたような姫路市飾磨区御幸町十九の三、文具商編塚勝三十八才、妻、長女、次女の一家四人が家出をいたしたわけでございますが、子供二人は兵庫県佐用郡三日月町高橋方に預けられているということが発見されまして、家出人の義理の姉であります松本さんが、二十四日姫路の福中町の自宅にこの子供を連れ戻しておるわけでございます。二十三日になおその松本さんのところへ、両親から元気でやっているから子供を頼むという意味の手紙がまいっておりますが、消し印がはっきりいたしませんので、どこからかということが不明でございます。そういうことでございまして、まあ商売上のそういういろいろな御指摘がありましたようなことが原因しておると思われるのでございますが、そういうことで、家出は現在子供二人だけがわかっておる、こういう状況でございます。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 いま中小企業庁長官と警察庁の話では、子供二人は、これは預けられていることがわかった、親の二人も元気でやっているというような手紙がきたからおそらく心中というようなことはなかろう、こういうふうに思えますが、事人命に関することですから、警察では十分な保護について手配をしていただきたい。  そこでお伺いしたいのですが、この新聞記事によると、市内の金融機関から云々となっておるだけで、この金融機関がわからないのですが、この金融機関はわかりますか。この金融機関がいわゆる一般の、法律に定められた金融機関であるならば、われわれも現地へ参りましていろいろ懇談をいたしまして、このような買い戻しを請求する、そういうようなことは当分やらないということになっておるわけなんです。ところが、もしそういうことをやっておるならば、われわれ調査団に対する約束と違ったことをやっておることになります。またかりにこれがそういう一般の、法律に定められたところの金融機関でなく、町の金融機関だ、こういうことであるならば、問題は別な方面へいきます。そこでこの金融機関がわかっておるのか、わかっていないのか、ひとつお伺いいたします。
  43. 中野正一

    ○中野政府委員 買い戻しを請求したという事実があるかどうか、またどういう金融機関がやったかということについて現地でいま調査をさせておりますが、まだ私の手元に調査報告がきておりません。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 事は二十二日です。相当の日がたっておるのに、まだその金融機関がどこであるのかということがわからないことは、ちょっと遺憾です。  そこで、おそらく私は、法律で定められた何々銀行、あるいは何々相互銀行、こういうところではないだろうという推定をいたしております。その推定の上に立って銀行局にお伺いいたしますが、手形の割引は、銀行法第一条その他できめられておるわけなんですね。この町の金融機関、いわゆる出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律、これによって貸し金業の登録を受けた人たちは、貸し金はできても手形の割引はできない、こう思いますが、いかがでしょうか。
  45. 塩谷忠男

    ○塩谷説明員 ただいまの御質問の町の金融業者、いわゆる貸し金業者は手形の割引ができるかいなかにつきましては解釈上疑問がございますが、一応法律的にはできないと解釈するのが妥当じゃないか、かように考えております。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 できないと解すべきが妥当というより正しい。でなければ、何のために銀行法、相互銀行法等々で、銀行の業務の中に手形割引行為を明示しておるのかということになる。したがって、この明示のないところは手形の割引ができないだろう。そこで、それでは貸し金業者が手形で金を貸したということであるならば、有価証券を担保にして、手形を担保に金を貸したと解すべきではなかろうかと思う。その場合、買い戻しという行為はどういうことになりますか。担保をとって金を貸した。じゃ、その担保を買い戻せということはどういう行為になりますか。
  47. 塩谷忠男

    ○塩谷説明員 具体的な事例について詳細伺っておりませんので、的確な御返事はできかねるわけでございますが、ただいまの御指摘のような場合でありますと、通常の場合でいえば、手形担保の貸し金につきまして返済を求める、こういうことになろうかと思います。したがって、いまの場合には、貸し金の期限の問題とも関連いたします。通常の手形の買い戻しとはやや異なると思います。
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 その辺が、手形を担保に金を貸したということであるならば、その借用証書を見なければわかりませんが、期限があるはずです。それを買い戻すという行為はないはずですね。  そこで法制局の吉國次長さん、大体こういうことが町の金融機関で、実際は手形割引行為はできない、しかし手形割引と同じ行為を行なっておる。これは銀行法等の違反だと私は思います。さらに、こういう事態が起きた場合に買い戻しをしろという行為、これは有価証券を担保にしたという考え方の上に立つならば、担保の買い戻しというのは一体どういうことになるのか。これは実は、姫路地方におきまして、山陽特殊鋼の倒産に関連して、いわゆる正式な金融機関は、政府等の指導もあり、また国会からの要望もあって、買い戻し等については、ある程度余裕を持つ、そうきびしいことは言っていないだろうと思います。ところがそうでなくて町の金融機関に、いま言ったような、いわめる手形を担保にして金を借りた、これが大きな問題を引き起こすだろうと予想しておるのですが、こういう行為についてはどうなりますか。またそういうことで金を貸した、割引をしておるとするならば、これは銀行法等の違反になると思いますが、どうですか。
  49. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいま財務調査官からお答えになられましたように、いわゆる貸し金業者が手形を判り引くということは、これは銀行法等の規定に徴しましてできないことであると思います。手形を担保として貸し付けをする手形を担保とした貸し付けの形態と手形の割引の形態とが法律上どう違うか。法律的には明らかに違う行為だと思いますが、経済的な実態におきまして非常に近似した面があることは否定できないと思います。ただ、手形の割引をいたします場合と、手形を担保にとってこれに対し通常の消費貸借を行なう場合は、法律上の効果は違ってまいりますが、ただいま、仰せられましたように手形の買い戻しの問題は手形を、担保として貸し付けをする場合にはこれは生じてこないわけでございます。その意味で法律的な効果が違う。その効果が違うことを意識してあえて貸し金業者等が手形を担保にして貸し付けをすること自体は、これはもう貸し付けの問題でございますから、法律上これを行なってはならないというところまで申し上げることはできないと思いますが、経済的な実態において手形の割引に近いという御指摘の点はあると思いますので、これは解釈論としてではなしに保護政策の問題として、一方、今後貸し金業に対する取り締まりをどうやっていくかということは大蔵省等においても十分研究して、現に研究していると思いますが、今後とも研究していく必要があると考えます。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで中小企業長官に、この問題についていかなる金融機関がどのような方法でいわゆる手形割引行為として金融をしたのか、有価証券を担保というかっこうにおいて金融をしたのか、その買い戻しの請求がどういう方法でなされたのか、これをひとつ至急に調査をして当委員会に報告を願います。  さらに大蔵省銀行局は、町の金融業者が、これは否定できない当然の事実でありますが、手形割引行為をいたしておりますが、このことをいかに感ずるか、今後どのように指導するか、あるいはこれをあくまで手形担保、有価証券担保の金融とみなしていくのかどうか、そういうことについての今後の指導方針並びに実態の調査をお願いいたしますが、できますか。
  51. 中野正一

    ○中野政府委員 すでに実態の把握については現地に指令を出しておりますが、いま先生の御指摘のような点をさらに詳細に追加いたしまして現地に指令いたします。
  52. 塩谷忠男

    ○塩谷説明員 貸し金業は御存じのとおり届け出業種でございまして、貸し金業に対する監督は直接大蔵省がやっておらない点もございまして、その実態の把握等については従前必ずしも十分でなかったことは事実でございます。しかし、貸し金業の営業行為等によっていろいろな問題が起こることにつきましては、十分注意をいたさなければならない点は御指摘のとおりでございます。今後関係の方面ともよく相談いたしまして、どのような対策を打つべきか研究いたしたいと思います。
  53. 田中武夫

    田中(武)委員 この指導をはっきりしてもらいたいと思う。かりに手形割引行為を黙認しておるとするならば、銀行局自体が銀行法違反をしておる、認めているということなら。そういうものに対して、これは実際貸し金業者を監督しておるのは府県だと思います。したがって銀行局長ないし大蔵大臣通達でも出して、はっきりしておかなければならぬ。なお、違反した者に対しては、銀行法等違反としてこれを十分に取り締まる、その必要はあろうと思いますが、どうですか。
  54. 塩谷忠男

    ○塩谷説明員 御指摘の点につきましては十分検討いたしたいと思います。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 この問題についてはまだ議論をしたい点がありますが、時間の関係もあり、山陽特殊鋼の問題はまとめて大々的にやろうと思っておりますのでこの問題はこの程度にしますが、山陽特殊鋼の倒産というか会社更生手続の申請以来各党、あるいは先ほど申しましたように国会からも調査に行きまして、調べれば調べるほどおかしなものが出てくるわけです。その一つとして、きょう報ぜられたのですが、荻野社長が十二年間にわたって一億何千万円の金を会社から無断で借り出しておったという事実、こういう事実について、これは中小企業庁というよりかむしろ銀行局かと思いますが、きょう見えておる銀行局あるいは中小企業庁、警察等々で実態を把握しておられますか。
  56. 中野正一

    ○中野政府委員 私もけさほどそのニュースを聞きまして非常にびっくりしたのでありますが、さっそく通産省でどういうことかということをいませっかく調査中だと思います。私も関係方面に注意はしておきました。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 吉国さん、商法二百六十五条に取締役会社間の取引について規定がありますね。これによると、当然このような場合は取締役会の承認がなければならないことになっておりますが、この承認を得ておりません。さらにこの条文による民法百八条は適用しないということは、民法百八条はすなわち双方代理の規定です。双方代理の規定を適用しないということは、社長個人と会社の社長との人格を別個に考えての上だろうと思うのです。ところが山陽特殊製鋼は調べれば調べるほど、この区別が明確でない。言うならば、社長は会社を私物と考えておったという行為がだんだんと表面に出てきたわけです。そこでこのような金を借りた、しかも商法二百六十五条の規定に違反して借りた場合、まず第一に、借りた社長の責任はどうなるのですか、取締役会の責任はどうなるのか、こういうことについて、警察並びに法制局の見解をお伺いします。
  58. 吉國一郎

    吉國政府委員 私もけさの新聞で読んで初めて知ったわけでございますが、これは商法二百六十五条の問題と申しますよりは、あるいはそれ以前の問題かもしれないと見ております。商法の二百六十五条で、取締役と会社間の取引について一定の要件を課しておりますが、これは今度の山陽特殊製鋼でなくても、ある会社と会社の取締役との間に正式な法律行為として、たとえば金銭の消費貸借なり売買なりの行為が行なわれる場合についての規定でございます。その場合に、ただいま御指摘のように、民法百八条の双方代理の禁止の規定も適用をしないで、取締役会の承認によって会社と取締役との間に法律行為が行なわれることを規定したものでございます。ところが今回の場合は、これは新聞記事でございまするから実態を調査いたさなければなるまいと存じますが、その前の社長であったという人が(田中(武)委員「現在も社長だよ」と呼ぶ)その社長と目される人が会社から数年間にわたって莫大の借金をしたということでございますが、その場合に貸し付けをいたしましたほうが、会社として貸し付けをしたものであるかどうかということは、新聞記事だけでは判明をいたしませんで、あるいは会社の本来公の金であるべきものを経理担当の職員がいわば権限に基づかないで、それを社長たる人に交付したということも考えられますので、先ほど申し上げましたように、商法二百六十五条以前の問題、したがってもし刑法をもって論議いたしますならば、背任なり横領なりの問題も場合によっては起こってくるかもしれないというような問題であろうかと思います。繰り返して申し上げますと、二百六十五条は正式な法律行為として、片方は社長たる個人が山陽特殊製鋼という会社を代表した権限を持っておる人との間に法律行為を行なうということでございまして、もしもそのような正式な法律行為でございましたならば、いままで公にされなかったことはおそらくないのではないか。これは想像でございますからわかりませんけれども、その辺の実態を調査いたしてみませんと、最終的な判断はなかなかできないのじゃないかというふうに思っております。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 この記事だけでは十分にできませんので、これはむしろ警察に実態調査を願うのがいいんじゃないかと思います。  そこで、いま吉國次長が言われたように二百六十五条以前の行為だとするならば、これは横領あるいは背任が成立すると思います。社長だけでなくその管理しておる者、それからかりにこれが正式な会社との貸借関係だと、こう見た場合には、二百六十五条による承認を与えていなかった、知らなかったという取締役等に対する責任の追及が出てくると思います。そういうのは商法四百六十八条の特別背任罪ということになろうと思います。私はいまここで荻野社長をそういう罪名に問おうとは考えておりません。もし問おうとするなら、ほかにもたくさんあります。これはまとめてやりますが、たとえば社内預金の問題で、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律の違反も出てきております。しかしそういうことはいまやろうとは思っておりません。いずれ時期を見て、二、三の罪名をつけて告訴、告発をする場合もあるかもしれません。それはおきまして、あくまで法律論議でいきますが、いま吉國さんが言ったように、二百六十五条以前とするならば刑法の問題である。二百六十五条の問題とするならば特別背任罪等の問題が出てくる。いずれにしても、刑法あるいは刑事罰に関係すると思いますが、警察はどういう態度をおとりになりますか。
  60. 大津英男

    ○大津政府委員 私もまだ新聞を見ました程度で、事実についての報告を受けておりませんので、何とも申せないのでございますが、やはりそういう刑法上の問題があるということが出てまいりますれば、当然警察としても取り調べを始めなければならない問題である、かように考えております。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは中小企業庁、それから警察庁、この問題について調査の結果を当委員会に報告をしてもらうことをお願いいたしまして、きょうの質問を終わります。      ————◇—————
  62. 内田常雄

    内田委員長 再び中小企業関係法案に対する質疑に戻ります。大村邦夫君。
  63. 大村邦夫

    大村委員 それでは続けます。  先ほど、計画と実態との間にそごが生じておる。そのおもなものと、さらにその理由についていろいろ御説明があったわけでありますが、団地化の中には、単に工場の移転あるいは拡張を考えて、共同化のメリットの実現を推進しようとする積極的な意欲の低いものがある。こういうことも指摘をされておるようでありますが、あるいはまた先ほど若干触れられましたが、団地構成企業相互間の連帯意識が薄い、こういう点に対するところの中小企業庁の指導といいますか、どういうふうになさるおつもりでございますか。
  64. 中野正一

    ○中野政府委員 いま先生の御指摘のあったような共同の意識をもとにして集団化する企業全体が、生産工程を合理化し、全体として能率を上げていく、しかもその団地に入った皆さんが共同の力、相互協調の力でもって立ち上がるという意識が欠けておれば、これはもううまくいきっこないわけです。したがって、その点につきましては通産局、府県当局を通じまして、指導面でもっとその点に力を入れるように、したがいまして最近では特に団地化する場合には企業診断、これは府県が実施しますので、必ず企業診断をやっていろいろな角度から、いま申し上げました共同意識、相互協調の精神というものがもとでございますが、なおさらに資金計画、また共同施設の計画それから収益性の問題等々つかまえて、あらゆる角度から企業診断を十分に行なって、そうしてりっぱな計画をつくった上で、それを認可をする、こういうことにいたしておるつもりでございます。
  65. 大村邦夫

    大村委員 おるつもりが、実際にはこういう現象が出ておりますけれども、私どもはその県なり国の指導というものが的確でない、こういうように考えておるわけであります。この団地化の動機としては、いわゆる共同化がすべてではなくて、公害問題とか労務者の確保あるいは運搬隘路の打開等重要な問題もあると思います。しかし何といっても、この協業化が工場団地をつくる上では非常に重要な問題としてピックアップできると思うのですが、その重要な協業化というものがいろいろ企業の仕事の性質上なかなかうまくいっていない、あるいは協調精神が欠如しておる等々があげられておるわけであります。しかしこれから団地がどんどんできる場合に、政府としても協業化という立場から、かなり企業の選定を強化する必要があると私は考えますが、そういう点についてはどういうようにお考えですか。ただ県が企業診断を行なうとか、あるいは主として指導を行なうとかということだけでなしに、団地形成のいわゆる先行する場合の姿勢として、そこら辺は十分に配慮をする必要があるのじゃないか。というのは、何も中小企業をいじめるわけではありませんか、結果的にうまくいかないと、中小企業はそれだけ荷物を背負うわけでありまして、それがむしろ親切ではないか。今日能率の非常にあがっておるといいますか、生産性の上がっておる、全体として業績のあがっておるのは、この協業化がやられておる団地が比較的にうまくいっておるのじゃないかと考えるわけであります。そういう点について御見解をひとつ……。
  66. 中野正一

    ○中野政府委員 団地化についての今後の指導方針について、特に協業化ということが非常に大事でございまして、その点については従来からもそのつもりで指導しておるつもりでございますが、今後さらにこの点にはしっかりした方針を立ててやりたいというふうに考えております。いま御指摘のように、いたずらに団地の数をふやすということよりは、企業の選定から始まって、計画をできるだけ緻密に立てて、計画ができたものはがっちりと成功させるように指導することが最も大事じゃないか。当初国が助成をしてくれるからというようなことで、一部には安易な気持ちでこういう計画に飛び込んでいったというような面も、過去においてはあったのじゃないか。したがって、現在のところでも、いま団地を形成しつつあるもの、でき上がったもの等についても十分アフターケアとやりまして、従来からあるものをできるだけ成功さすということが一番大事じゃないかと私は考えております。
  67. 大村邦夫

    大村委員 それで、指定団地には協業化というのが、これは必要条件になるわけでありますが、現にそういう計画書を出し、許可を受けて、やっていない分について今後どうされるか。私は御意見を聞く前に若干意見を申し上げておきますが、あまり無理やりに当初の計画に載っておるからというので、それを強行するということは、やはり問題があるのじゃないかという感じがいたします。そういう点について県なり国なり、特に中小企業庁としてはどういうように対処をされるのか。当初の計画にこういうふうに載っておったから、これは是が非でも強行しなさいというように指導されるのか。これはいろいろ経済の変動もありますし、環境の変化もあるでしょうから、そういう点から、あまり強行するのは私は好ましくないのじゃないかと思うのでありますが、そこら辺はどうでしょう。
  68. 中野正一

    ○中野政府委員 いま御指摘のあったとおりだと私は思います。当初の計画を何でもかんでも無理やりに、こういう計画で助成したのだから、これを最後までやれということを言っては、かえって実態に合わない場合もあるわけでありますので、途中においてもいま診断等をやっておりますので、実態に合うように弾力的にそういう点を考えていきたいと考えております。
  69. 大村邦夫

    大村委員 先ほど長官の答弁の中に、資金計画がずさんとまではいかないが、かなり甘く見たためにうまくいかない、いかなかった中の理由として、そういう資金事情の問題をあげられました。こういう問題については、当初団地づくりの許可をする場合に、どこが一体検討するのか。私は単にこういうように企業が出したからそれでよろしい、そういうものじゃないと思うので、かなりの検討が加えられておると思うのです。あなたのほうは、何もわれわれの責任ではない、こういう言い方じゃなかったと思うのですが、しかしまた一面政府としても反省をしてみなければならない問題が私はここにあると思うのですが、その点はいかがなんですか。
  70. 中野正一

    ○中野政府委員 中小企業がこういう団地をつくってやるということで、ざっと申し上げますと、大体一つの団地に平均九億くらいの金がかかるわけでして、しかも助成をする場合には、たとえば助成の土地なり建物の単価等が実際のかかった費用よりも低いというような場合もありますし、それから実は一人当りの土地の造成が大体千坪、建物が三百坪という制限がございまして、それ以上は計画を立てられても助成はしない、こういうような事情もございまして、大体九億くらいかかるといたしますと、そのうちの大体半分以上を金融機関の借り入れに依存する、それから約二割から二割五分くらいが国、府県の助成金でやる、残りの二五%程度が自己資金、大体こんなようなことになっております。いずれにしても相当借り入れ金に依存いたしますので、当初の計画を立てる際に、事業計画そのものから関係金融機関、特に現地における商工中金、中小企業金融公庫等の意見も十分聞いて立てるようにすべきではないかというふうに考えております。いままでのところは必ずしもそういう過程を踏まずに、府県当局と組合の首脳者というようなものが相談をして計画を出してきて、もちろんこれは金融機関等には当たっておると思いますが、それを中央に持ってきて、中央で審査する前に、初めて中小公庫とか商工中金というふうな金融機関がこの計画をいろいろ審査する、こういうような段取りでいままでやっておりましたので、これではやはり当初の計画がややもすると過大というか、そういうふうになりやすい例もございますので、最近は現地のほうで十分関連金融機関を入れて計画を立てて、そうして中央へ持ってくるようにいたしておるわけでございます。
  71. 大村邦夫

    大村委員 そういう実態とすれば、やはりこの種の問題の普及、浸透というものが欠如しておると思いますね。片方は甘く見るかしれませんけれども、こういうものだというものについてはやはり十分周知徹底をさせる必要があるのではないかと私は思うわけです。私の答弁の聞き違いかもしれませんが、私は、むしろ拡大修正というよりも、無理な計画を立てるよりも、現実には計画は縮小されておるというのが実情じゃないかと思うのです。それでなおかつ資金上問題がある。その縮小というのは、結局当初大きな計画を無理して立てたから、それで縮小せざるを得ない、こういう見方もあるようですが、これをいろいろ調べてみますと、要因があるようであります。たとえば参加する予定のものがしなかったり、あるいは経済変動で少し状況を見守って、団地参加をちゅうちょしておる、そういうことから縮小されておるというのが実情であるわけです。団地に指定されればかなりの金が借りられる、心配ないということで、膨大な計画を立てて、そのことがいま言われるようないろいな資金繰りの困難を来たすというようなものでもないというような気が私はするのですが、その点はどうですか。
  72. 中野正一

    ○中野政府委員 当初の計画が過大であったのじゃないか、特にこれは金融機関筋あたりからは言われる。そういうようなこともございますので、私もそういうことを考えておりますが、しかし、大きな一つの事情は、その後の経済事情の変化というようなことから、思うよりも収益があがらないというようなことから縮小せざるを得ない、こういうようなことも相当あるかと思います。
  73. 大村邦夫

    大村委員 先ほど工場の団地づくりについて、自己資金、あるいはその他の金融機関から借り入れて調達をしなければならない借り入れ金、それから国の助成金等の関係について述べられましたが、私も、実は本法案がかかるということで、政府にも御無理をいただきまして、若干の資料をいただいたわけでありますが、どうもこれを見てみますと、いいところばかりが資料として提供されたようであります。富山とかいうような、その他ちょっと問題があるようなところがこの資料にはあまりございません。資料のとり方でも、いろいろ注文をもう少しすればよかったと思うのですが、必ずしも意を達しませんが、この資金の調達状況をながめて見ると、かなり自己調達資金というものが要るということが私はこれでわかったわけです。たとえば、これはうまくいっておるほうらしいのですが、足利のトリコット工業団地ですね。これを見てみますと、総資金が七億六千百三十九万六千円、これに対して助成金が一億六千六百五万七千円、その他はいわゆる自己資金か、あるいは自己で調達しなければならない、そういう関係になっておりまして、その割合は六対一の比率であります。六対一ですね。こういう現状では、なるほどこれはうまくいっておるように言われておりますけれども、私は、借り入れ金に対するところの利息、計算してみましたら、大体五千二百五十六万二千円年間に要るわけでありまして、これは一企業当たり年間二百六十万円という利息を払わなければならない。これに一対六の割合で、六も自己調達で、ほとんどが借り入れられておる。たとえば、いま申しました七億六千百三十九万六千円の経費に対して、自己資金というのは千百三十万六千円という、まことに微々たるものでありまして、こういうような形になりますと、一方では借り入れ金の金利、さらに今度は期間が延びまして、据え置き期間が延びたといえ、実際に償還する期間は四年ですから、そういう四年間に助成金も返し、あるいは商工中金、中小公庫、市中銀行、事業団、こういうものから借りた年平均——これは商工中金、中小公庫、市中銀行等は九分平均になると思うのですが、年利九分、これもそう長い期間じゃございませんで、ほとんど四年か五年、そういうものだと思います。そうしますと、これで一体採算がとれるのかどうか。人件費それからいまのような諸経費、負債、さらに内部保留ということになると、これはたいへんなことだと思うのですね。さらに札幌あたりを見ましても、自己の調達資金というのは一対二の割合であります。それから金沢も同じ、小倉に至りましてはやはり一対六、六がほとんど助成金以外の借り入れ金であります。他の金融機関から借りる。こういう形でいけば、当然資金繰りに困難を来たしてうまくいかないようになるのではないか、こういう気がするわけですよ。たまたまここには四つのケースしかございませんけれども、これは一体どういうようになっているか。八十一団地をすべていまそういうようにここで説明しなさいとは申しませんけれども、私は先ほど、団地形成で順調に進んでいるところは少ない、そのおもな現象は何か、理由は何かという中で、いろいろ御説明あるいはまた御回答をいただきましたけれども、こういう実態が明らかになってくると、これは自己資金の調達能力のある、いわゆる企業力のあるものでなければこういうものはやれないということになりまして、それこそ日の当らないところはますます当たらない。もともと少し手を添えれば伸びるというところに手を添えるというのがこの趣旨でありましょうけれども、手を添えたら伸びるといいながらも、自分で資金の調達能力がないとこういう恩恵に浴せないという現象が出てくるのでございまして、そういう点についてはどうお考えなんでしょうか。
  74. 中野正一

    ○中野政府委員 いま御指摘になった団地、いろいろの非常に成績のあがっている団地、成績のあがっていない団地等について資料をつくりまして、われわれもいろいろ検討いたしているわけであります。足利のトリコット団地は、御承知かと思いますが、非常にうまくいっている例でございまして、従来織物業をやっておった者が縦組のメリヤストリコットに転換して非常に成績をあげております。これは数字でちょっと申し上げますと、集団化前の一人当たり労働生産性が百八十六万円であったものが、現在は二百三十五万円ということになっておりますし、生産額でいいましても、集団化前の四十五億二千万円から六十八億一千万円というふうに相当増加をいたしております。ところが、いま御指摘のありましたように、七億六千万円三年間にかかった金の中で、助成金は一億六百万円で、自己資金がわずかに千百万円だということで、これはもう少し調べてみないとわからぬと思いますが、そういうことで、これは転換をするというようなことで、土地なんかも、これは従来から土地は持っておったということで助成の対象になっておりませんが、いずれにしても、これは自己資金が非常に少なくても相当うまくいった。ところが、もう一つのうまくいった例として、よくいわれまする札幌の木工団地、これも非常に成績をあげておりまして、これにつきましても、集団化前は一人当たりの生産性は百十九万円であったものが、百四十三万円、生産額も九億七千万円のものが十六億五千万円というふうに、相当成績をあげているわけでありますが、これについては、自己資金が一億六千万円、全体が四億六千万円、助成金が一億四千万円というようなことになって、大体バランスがとれているかと思います。全体として平均で申しますと、先ほど申し上げました大体二割程度が助成金であって、二割五分が自己資金で、残りの五割五分が他の金融機関からの借り入れ。その他の金融機関からの借り入れについては、この足利トリコット団地をごらんになってもわかりますように、商工中金が大体全体の資金の半分近くをまかなっておるというようなことで、やはり政府関係金融機関の資金というものをできるだけ流してあげるということと、助成金もできるだけふやそうということで、今度は償還期限の従来五年のものを七年にする。これによって既存の団地についても、全部償還期間が五年から七年になるわけでありますから、たとえば三十六年につくった団地については、国、県に対する借り入れの返済は従来の半額になるというようなことで、今後できるものにつきましても単価を引き上げる、あるいは建物についても従来は三分の一の助成であったものを二分の一にする、こういうふうに貸し付け条件についてもできるだけ改善をいたしたい。それと同時に、政府関係金融機関の協力を得て、できるだけ長期、低利の金をこれに注入するということによって、資金面にそごを来たさないようにやりたいというふうに考えております。たとえば償還期限等についても、団地の場合は、商工中金につきましても中小企業金融公庫につきましても、大体最大限というものを考えております。七年程度に償還期限をするように、長期の金を貸し付けるように指導いたしたいと考えております。
  75. 大村邦夫

    大村委員 政府の出された今度の改正点で、たとえば土地は従来の五年が七年になった、しかし据え置き期間が延びたということで、実際の支払い開始から終わるまでの期間は四年でありまして、あとの一年が三年になっただけで、これは当然のことだと思うのですね。そうでしょう。その団地申請をやって許可がおりて、一年でばたばたとできるというようなところはごくまれでありまして、生産開始を伴うまでには、やはり二、三年はかかっておるのでありますから、これは当然なことでありまして、これをそう、それこそ思い切った施策のように言われると、私ども奇異な感じがするのであります。生産開始をしだして四年ぐらいで返すということになりますと、これはやはりかなりきついのじゃないか。しかも商工中金は七年ということですが、利息は九分ぐらいでしょう。金利もそう安くはないし、そういうもろもろの点を考えましたら、据え置き期間を延ばされたのはまことにけっこうでありますけれども、償還期間を、さらに実際の償還期間をもっと延ばす必要があるのじゃないかという点をまず意見として申し上げておきたいと思います。  それから長官もお認めになったように、トリコットとか札幌とか、いいところの資料ばかり私はもらっています。
  76. 中野正一

    ○中野政府委員 小倉もあります。
  77. 大村邦夫

    大村委員 小倉は特殊なものでしょう。しかし問題は、両極端で、その小倉とか富山とかいうのは極端な例でありまして、むしろその中間層をなしておるところの、そこら辺が問題だと思うのです、業態を見るには。そういうところができてないので、的確には指摘できないのですが、一体この団地形成をやって、確かに生産性は上がっていると思います。たま販売も伸びております。それは一体平均どれくらいの伸びを示しておりますか。
  78. 中野正一

    ○中野政府委員 まだ平均がどうなっているかという調査は、そういう調査もだんだん整備してまいらなければいけないと思いますが、これは比較的いい例としては、先ほど申し上げましたように、札幌について、一人当たりの生産性が百十九万円が百四十三万円にのぼっておる。足利トリコットが百八十六万円が二百三十五万円に上がっておる。それから金沢の機械でございますが、百六十七万円が百七十二万円というふうに生産性が相当向上しておる。これは成績の比較的いいほうを申し上げたのでありますが、そういう点についても今後実態を十分把握しまして、実態に即するような施策を講じてまいりたいと思います。
  79. 大村邦夫

    大村委員 私は、非常に遺憾に思うのは、やはり的確な実態調査というのをやっていない、常にそういう業況というものを把握していないと、それに対するところの治療というか、措置というものが十分できないのは理の当然でありまして、あなたはそうおっしゃいますが、この中小企業金融公庫月報の三月号には、ちゃんとどれくらいという平均の伸びが出ております。ここでちゃんと指摘しております。あなたは協力が足らないからと申しましたが、これはあなたのほうがもっと注意しなければいかぬのではないですか。これにはそういうことが指摘してあります。第一に、各団地とも個別企業の生産性はかなり上昇しており、団地化以前と比較すれば三〇%から四〇%の能率上昇となっているともいわれ、というように、そういう点を指摘しております。もちろん、生産性以上に売れてもどうにもなりませんから、売りの伸びはフルにいってそれに匹敵をするものだ、こういうふうに考えるわけであります。そうしますと、その三〇%か四〇%の伸び、生産性の上昇あるいは販売の伸びから生ずる利潤ですね、これは一体どれくらいになるのでしょうか。これは非常に重要なことだと思うのです。それと、いわゆる先ほどの政府機関や民間の金融機関からまで資金を調達しますね、借りますね、これの返済に充てていかなければなりませんから、そこら辺がやはりどういう関係になっているかという点について把握しておく必要があるのではないかと思うのですが、政府のほうではどういうことをやられておりますか。
  80. 中野正一

    ○中野政府委員 従来からも、昨年も一度実態調査をわれわれのほうでいたしました。また、いま御指摘のあったように、金融機関、特に中小企業金融公庫、これはわれわれのほうの要請もありまして、所要資金を貸さなければならぬ立場でございますので、そういう立場から相当詳細な、もちろんこれは抜き取りでございますが、検査もやっております。そういう点から詰めて、やはり企業集団全体として成り立ち得るように持っていかなければならぬと思います。全般的なことを申し上げますと、売り上げは相当伸びたが、収益性はそれほど伸びていないというところに、最近の悩みがあるというように承知をいたしております。
  81. 大村邦夫

    大村委員 売り上げは伸びたが収益性は伸びていないというのは、大体平均したらどれくらいあるのですか。長官の言われるように、確かに企業の売り上げ高はかなり大幅に上昇を見たが、収益はさほど増加していない。たとえば小沢渡団地ですか、これなどは売り上げ高が二、三〇%伸びたけれども、収益はさほど伸びないから、結局借金の返済が重荷になって非常に苦しんでいる、こういうことが指摘をされておるようでありますが、売り上げが伸びたから直ちに利潤が併うものと、これは過当競争の今日ですから考えられないし、そういう点については大体物によって違うでしょうけれども、どの程度売り上げが伸びればかなりの利潤が確保できるのか、これは単に団地の問題だけじゃなしに、中小企業対策としてもこういう点については関連もあるし、重要なことだと思うのですが、当面この団地に焦点を合わせてどういうようにお考えか、ひとつ御説明を願います。
  82. 中野正一

    ○中野政府委員 この問題は非常にむずかしい問題で、各業種、それぞれの団地によっても情勢が、特に市場関係というものが非常に変わっておりますので、やはりそれぞれの団地について実態を調査して、そうして適切な、また政府のほうで応援をすることがあればやる。最近いろいろそういう問題で、過去の金融機関からの借り入れの返済等に迫られて、収益がそれほど上がらないために返済に追われるというようなこともずいぶんございまして、そういう場合には、市中の金融機関の金はどうしても短期でございますので、できるだけ長期の商工中金とか中小公庫に振りかえるようにわれわれとして指導をする。片一方、市場の確保、収益をあげるというための生産性をあげるように努力するというようなこと等と相まって、団地による集団化が効果をあげるように今後とも指導してまいるつもりでございます。
  83. 大村邦夫

    大村委員 先ほど長官の説明では、三十六年にこの法案が改正になって、そして工場団地ができるようになって、それから四年を経過して、三十九年では二十団地のうち十団地でしたかが大体完了して、あとの十団地のうち五団地がいま進捗しておる、残りの五団地は遅延をしておる、こういうことが説明されたわけですが、さらに団地づくりについては大体三年から五年くらいかかるということも御説明になりました。そうしますと、いま実際会社の中の企業内容があまりよくない、直ちに償還といったらたいへんなことになる、あるいは生産を開始してもそういうところがあるんじゃないかという気がするのですけれども、いま直ちに償還していませんから、政府としてもなかなかその辺の把握はむずかしいと思うのですけれども、そういう点について政府はどういうようにお考えになっておられるか。その場になって、いま資金繰りが困難だからどうにもならない、あるいはまたこげつきといかないまでも、今度は運転資金なり、あるいはまた当初の計画を変更して、先ほど申しましたように共同施設をおくらすとかいうような現象も出てくると思うのです。そういう点はどうなんでしょうか。
  84. 中野正一

    ○中野政府委員 先ほど申し上げましたように、これは三年で大体完成するという計画でやっております。しかし団地によりましては、特に土地の取得がおくれるというようなこともありまして、計画がくずれるということもございますので、団地の実態に合わして一年なり実施期間を延長するというような方法を講じております。  それから償還の問題は、まだあまりたいして問題になっておりませんが、このたびの改正によりまして、これも昨年実態調査をやりまして、先生が御指摘になったように、もともとが一年据え置きというのがおかしいのじゃないかといわれればそのとおりなんですが、しかしこれで三年間やってきたわけですが、しかしそれを実態調査をした結果、どうしてもこれはぐあいが悪いということで、三年の据え置き四年償還、七年にいたしたわけでございまして、だんだんそういうふうに実態に合うようにわれわれとしては努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  85. 大村邦夫

    大村委員 いま私が指摘をした点は、かなり政府としても考えていかないとたいへんなことになるのじゃないかと私は考えます。特にこの二、三年が問題のあるところでございまして、国全体の経済の動向から見ても、私は言えることじゃないかと思う。それから小倉の例があげられましたが、団地の中の特徴的なものとしては機械、金属関係のいわゆる工業団地ですね、そういう業種が集まって団地づくりをやっておるところがかなりウエートとしては高いし、あるいはその種のものはその親企業の系列下に入っておるようであります。そうしますと、山陽特殊製鋼の倒産ではありませんけれども、私はいろいろ問題が起きてくると思うのです。そういう点については、これから十分見通しを立てた上で指導善導をやらないとたいへんではないか、私はそういうふうに考えるわけです。  次に、団地づくりをやる場合に、自己資金なり、あるいは自分で調達をしなければならない資金というものがかなり高額であるという点は、先ほど私が例を引いて説明いたしましたが、そういう能力がかりにあっても、県の実情によっては、つまり地方財政の逼迫をしている今日、富裕県というものはあまりないと思いますけれども、県の財政実情によっては、これは何とかしてやりたいと思っても、地方財政が逼迫をしてそれでできないようなところもあると思うのです。そういう点について、政府のほうではもう少し弾力性を持たすような意思はないのかどうか。私は地方財政のことはあまり知りませんけれども、国の平衡交付金等でも、富裕県とそうでないところには弾力性を持たしてあるやに聞いていますけれども、この種の問題についても、そこら辺の配慮というのはかなりすべきだと私は考えます。高度化資金の都道府県別の交付額をながめてみますと、これにはいろんな要因があると思うのです。必ずしもいま私が指摘したような理由からではないと思いますけれども、東北の岩手、宮城、秋田、山形、こういう大体似たようなところを探ってみますと、宮城あたりでは二千万円ですね。それから秋田、山形あたりは六千から七千万円、こういうふうにして、岩手が非常におくれておる。これは地域的な事情もあるでしょう。つまり団地化するのにふさわしいような工場等が中小企業では少ないとか、あるいは地場産業が比較的少ないとか、そういう面もあるかもしれませんし、そこ辺までは私は検討しておりませんけれども、この交付額だけを見てみまますと、かなりアンバランスがあります。あるいは千葉等についてもそうでありますし、山梨あたりでもきわめて少額な交付状況になっております。そういうところがちょいちょいありまして、私が申しましたような要因もここにあるのではないか。あるいはまた、かなりめんどうを見れば見られるんだけれども、県自体が熱意がない、そういう要因もあるかもしれない。しかし、いずれにいたしましても、県の財政の逼迫から、企業は自己資金をかなり持っておってもできない、そういうところについて政府は弾力的な施策を講ずる意思はないのか。今日はほとんどないと思うのですが。
  86. 中野正一

    ○中野政府委員 中小企業の高度化資金の各府県の使い方等につきましては、いま御指摘あったようないろんな事情で県別の差がございます。またこの高度化資金は中央に一本で持っておきまして、各府県の工場集団化あるいは小売り商業店舗集団化等のいろいろな具体的な計画を見まして出しますので、毎年各府県によって数字も相当変わってまいるようでございます。しかし、いずれにいたしましても、この中小企業高度化資金ともう一つの設備近代化資金、この両方とも、国が金を出すと府県が同韻の金を出さなければならぬ、こういうことになっておりまして、御承知のように四十年度は、設備近代化と高度化資金の両方で百十六億八千五百万円というものを国が金を出すわけであります。これと同額のものを府県が出さなければいかぬ。そうしないと、実際にこの予算が具体化しない。こういうことで、特に財政力の貧弱な県では——この設備近代化と高度化資金は中小企業政策の一つの大きな柱でございますので、各県も非常に熱心でございます。したがって、もう少し府県でも出したいんだが、財政力に限度があってという声もちらちら私ども聞いておりまして、そういう府県については、国の出す割合を二分の一でなくてもう少し上げたらいいじゃないかという議論もございますが、これはまたなかなかむずかしい政策的な問題になりまして、いまのところは、まだ中小企業庁として、ぜひそうしたいというところまではいっておりません。しかしこれは今後の、四十一年度あたりからは大きな問題になるんじゃないか。集団化資金につきましては、各府県とも非常に最近集団化、協業化について熱心でございまして、貸し付け条件の改善を強く要望しておられます。今度の改正によりまして、この貸し付け条件の変更によりまして約十二億円ばかり、これは全国でございますが、府県の負担が増加するのじゃないか、国もよけい出しますが、そういうことになるんじゃないか。そういうことで、自治省のほうとも相談をいたしまして、四十年度府県に対する交付金は、中小企業近代化資金の貸し付け金分として、府県の交付金の積算基礎を、三十九年に比べて約三割アップということも考えて、自治省で考えてもらっております。ただこの点につきましては、まだ通産省は、どうも府県行政に対するいろいろなやり方が、比較的いままでなかった、中小企業関係をのけて府県に対する関係は薄いものですから、もう少し通産省全体として、府県行政に対する中央の応援を各方面について私も研究してまいりたいと思います。
  87. 大村邦夫

    大村委員 連絡が密でないとかなんとかでなしに、ないそでは振れないのが一つと、他の各省間との力関係も、そういっては語弊がありますが、きわめて弱い。そういう点から考えて、いろいろ府県に対しても強力な指導なりあるいは要請ができない、私はそういう認識をするわけです。いずれにいたしましても、いまのような実情ですから、地域的にきわめて不公平な現象が出ます。長官はちらほらと言いましたが、各地からあがるということですが、そのちらほらもきわめて重要な要素を含んでおりまして、これについてはぜひ私が言うような趣旨方向——やらなければならない方向に向いていないということを言われましたけれども、何とかしてこの点は弾力性を持たすように、地方財政も逼迫をして、やろうにもやれない、熱意はある、しかもかなり高度化なりあるいは近代化をしなければならないというような企業があるところについては、積極的にそういう救済措置を講じてもらうようにひとつ考えてもらいたいと思います。  それから、飛び飛びになりますが、この近代化資金の貸し付け限度額は大体三百万円のようですが、今日設備近代化資金の需要はかなり増大をしておると思うのです。これはいろいろ調べてみますと、そういう教字が出てくるわけでありまして、政府の見通しは、三十九年度の実績見通しとして昨年に比べて一一〇・九%、来年度の見通しは、三十九年度に比べて一〇四・三%、こういうように見積もりを立てておられまして、四・三%増ということのようであります。これはどこまでも見通しでありまして、今日産業構造の変化から、かなり設備投資に対するところの意欲なり近代化に対するところの意欲というのはあると思うのです。したがってこの三百万円についても、いま少し考える必要があるのじゃないか。現に近代化設備投資等についての各金融機関からの中小企業が借り受けておる実績をながめましても、そういうことが言えるのでありまして、何としてもこの三百万円についてはもう少しワクの拡大をはかる必要があるのではないか。と同時に、この償還期間については全然いらわなかったわけですね。私は、これはやはりいらう必要があると思うのです。そういう点についてはどうなんですか。いらわなかった理由ですね。これは設備投資をやればすぐ生産を開始するから、つまり据え置き期間というものは高度化資金は一年を三年にしたように、延ばす必要はない、そういう考え方じゃないかと思いますけれども、しかし、今日の中小企業の資金繰りなんかの状況から見れば、私はこの点についてもやはり償還期間は延長する必要がある、こういうように考えるのですが、どうなんですか。
  88. 中野正一

    ○中野政府委員 設備近代化資金につきましては、いま御指摘がありましたように、原則として一件当たり三百万円まで、しかし、これは三百万円をこえては絶対にいかぬというわけじゃございませんので、府県から協議がございますれば、個々の事情をみまして引き上げることをやっております。それから償還期限は、これは普通の設備機械でございまして大体五年くらいでというのが従来から相当考えられておりまして、このたびの高度化資金のほうが非常に問題が多いということで、こちらのほうに力を入れて、こちらを延ばした。もう一つは、御承知かと思いますが、設備近代化資金については、比較的収益のあがらない公害防止施設等については、従来七年でありますが、これを二年延ばして九年ということに延長をいたした次第でございます。
  89. 大村邦夫

    大村委員 繰り返しますが、償還期間についても貸し出し額のワクについても、さらに再検討する必要があるということを私は指摘しておきます。  さらに、公害問題について、いま長官触れましたが、この貸し付け予算額と実績との関係を見ますと、かなり開きがあるようですね。これは見込み違いというよりも、中小企業の資金難から、やらなければならないようなものについてもやっていない点がかなりあるのではないかと私は思うのです。そういう点についてはどうなんですか。貸してやろうといってもただ借りなかったというだけで済まされる問題かどうか。
  90. 中野正一

    ○中野政府委員 確かに公害防止の施設については、中小企業といえどもどうしてもやらなければならぬ問題でございますが、やはり何といっても力が非常に足りないというようなこともありまして、国のほうで金を用意いたしましても予算が消化し切れなかったというような実情でございます。そういうことで、このたび中小企業の公害防止対策としては、先ほど申しました設備近代化資金と工場団地の資金につきまして償還期限を、従来の七年であったものを九年に延ばすという法律案をいま御審議願っておるわけであります。  それからもう一つは、中小企業金融公庫の公害防止施設に対する貸し出しについて、これは特別ワクは設けておりませんが、約十億円程度の金を考えて、金利も七分という特別の安い金利をこの四月から適用することにしております。  それからもう一つ、これはほかの委員会にかかっておりますが、公害防止事業団を新設するということで、これもほとんどが中小企業が利用されることになると思いますが、公害防止施設を事業団自身の手でつくって、それを長期に分譲をする、あるいは年七分でもって公害防止施設について非常に長期、低利の金を貸すというようなことを公害防止事業団もやることになっております。こういうようないろいろな手で何か考えてあげないと、中小企業の公害防止施設をつくるということは、なかなか過去の経験等からみてむずかしい問題だというように考えております。
  91. 大村邦夫

    大村委員 お説のとおりでありまして、必要だからぜがひでもやらなければならないけれども、現実はなかなかそうはいかない。そこで、償還期間を延ばしたということになるようでありますが、まだ私はこれでも足らないと思うのです。それはもう先ほどその基本的な問題について大臣に若干意見を申し上げましたが、今日中小企業の置かれておる立場、またその立ちおくれをさせたのはだれなのかという点から考えてみると、もっともっと手を差し伸べてやらなければならないと私は考えるのであります。といって、この公害の問題はこれからどんどん団地づくりをやられる場合には、どうしてもこれは真剣に取り組んでもらわなければ、やらなければやらなくても済むというような形で残されると、これはいろいろ社会費に転化をしていきまして、ほかの一般国民が迷惑をしますから、そういう点についても十分お考えおきを将来とも願いたいと思うわけであります。  時間がありませんし、だいぶ経過いたしましたから、この程度で終わりますが、いずれにいたしましても、この中小企業対策の中の中心項目であり、柱とも言うべき高度化対策については、これを推進するにもいまの予算で、あるいはこれから徐々に伸ばされていくではありましょうけれども、年間二十から三十団地ぐらい、あるいは近代化資金にしましても、この大勢等を考えてみて、私は三百何十万かある中小企業にこれらが——それはないよりはましです、大いにやらなければならないけれども、政府が一枚看板にするほど、それほど大きな効果はないと私は思うのです。ですからこれで能事足れりということでなしに、もっともっと積極的に考えてもらいたい。今度の団地でも、おそらく企業数にしても千ぐらいではないかと思います。三百五十万ぐらいの中の千を毎年やってみたってたいしたことにならないと思うのです。そういう点もひとつお含みおきいただいて、積極的に中小企業政策を進めていただきたいことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  92. 内田常雄

    内田委員長 次回は、来たる三月三十日火曜日午前十時より理事会、午前十時十五分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三分散会