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黒川参考人 まずもって、この
産業界のあかとも称すべき
災害と鉱害につきまして、そのうちの
災害につきまして御討議いただくことに対しまして、深く御礼申し上げます。
私は、
災害方面に関します現在の
一般の状況につきまして、ごく簡単に申し上げたいと思います。
大体、現在
災害の
件数から申しますと、逐年下がっておるようでございます。たとえば一昨年は八十万件が七十六万件に下がった。しかしながらその
内容を見ますと、
死亡件数は逆に幾分上がっております。たとえば六千人であったものが六千四百人になっておるというように、その
災害が、
内容が
重大性を帯びてまいった
傾向があらわれております。特に、その
内容を検討しますと、三人以上の
死傷者を出した
件数は三十八年に二百八十三件でございます。これは
鉱山関係だけは除いてございますが、二百八十三件ございまして、そのうちの百六十六件は
建設業において起こった
災害でございまして、その次が
製造業といたしまして五十六件起こっております。その他の
業界は各十件
程度でございます。こういうようなことから見ますと、
建設業の
災害というものは依然多いのでありますが、これは逐年の
統計を見ますとほとんど一定でございます。ところが、
製造業に関する
災害というものは残念ながら逐年増加の
傾向にございます。しかもそういうようなことから見ますと、従来の
災害の
原因というものは
物理的原因から起こったものが多かったのでありますが、最近におきましては
化学的原因によって起こる
災害が目立っております。特にその中で
高圧ガス関係を見ますと、大体年間二、三億円の損失、それから
死傷者は二百名ほど出ております。しかもその
災害の中で
製造側に起こった
災害と
消費側に起こった
災害とを比べますと、後者のほうが約五倍ほど多いように
統計にあらわれてきております。しかもその中で、最近では
プロパンによる
事故が多いように見受けられるわけでございます。試みに三十八年の
高圧ガス関係の
統計を拝見いたしますと、全
事故が六十三件、
製造側に起きましたのが九件、
消費側に起きましたのが四十九件、その中の
プロパン事故が四十七件というような数字が出ております。したがいまして、今回
政府御
当局におきまして、
保安協会もいろいろ御相談にあずかりまして、今回
消費者側に対する
災害の
防止のために法の改正が行なわれたと考える次第でございます。
その間にありまして、一昨年法が改正されまして、この
高圧ガス保安協会というものが設けられました。
業界が自主的に
保安体制を固めて
保安効果をあげようということで、この
協会が生まれました。この
協会はまだ生まれましてから一年足らずで、日なお浅いのでございますが、でき得る限りの努力をいたしまして、すでに数個の
作業基準とかあるいは
技術基準とかいうようなものを決定いたしまして、御
当局に申達いたしました。そのほか容器の検査であるとかあるいは
作業主任、
販売主任のための
講習会を開きまして、一年間に
受講者は大体二万名に達しております。なおまた、そのほか不幸にして昨年いろいろ
事故がございまして、その
事故の調査あるいは今後の
問題点というようなことを、われわれのほうにございます
技術委員会で終始検討いたしまして、今後の指針となそうということで、これを取りまとめまして御
当局に申し上げ、またその
内容につきましては
業界にいち早く流しまして、今後そういうことがないように努力いたしてまいりました。
したがいまして、不幸にしてそういう
事故がございますが、一方
化学工業の
災害というものは、御
承知のように次第に
大型化になりまして、また
連続化になりまして、さらにまたオートメーションの発達によりまして非常に大量に取り扱うということでございますので、一
たん災害が起こりますと、その一部だけではなく、全
系列に廃品が出てまいります。しかもこのための
災害防除のいろいろな
設備というものは非常に高くなってまいりました。それからそういう
災害が起こりまして休みますと、全
系列を休まなければならぬ、あるいはまたさらにそれの
下請の
中小企業のいろいろな仕事を休まなければならぬということで、損害が非常に大きく影響してまいります。場合によっては
販売シェアまで失うというようなことがございますので、最近の
化学工業というのは、特に
安全教育あるいは
安全対策というものにつきまして留意をいたしまして、しかもこの
技術は日一日と進みますので、われわれとしましても、まだ非常に不明確な、あるいはわからない
技術が
対策として残っております。したがいまして、私
どもは
通産省にもお願いいたしまして、この
災害防止対策の
研究をもっと一そうすみやかにしていただきたいというふうに念願し、お願
いした次第でございます。
われわれといたしましても、今後いろいろな形でこの
災害を
防止いたしたいと思っておりますが、ことに
中小企業の
災害につきましては、まず第一に私は
教育であろうと思うわけでございます。これは広い
意味の
教育でございまして、
経営者から
従業員あるいはまた
下請の人、そういうものに対してそれぞれ適切な
教育を施し、かつまた実技の
指導を行なわなければならないと思うのでございます。現在までは遺憾ながらそこまで徹底しておらない
傾向がございます。それから、われわれがっくりました
技術基準が正確に守られていないという点もございまして、昨年起こりましたようないろいろな不幸が見られるのでございますので、私
どもはおそまきながら今後こういった面に力を入れまして、
教育に、あるいはまたその
技術基準が守られているかいないかということを都道府県の
あとについて、そして一緒にそういうようなことを調べて
指導していきたいというふうに考えておる次第でございます。
そこで、時間もございませんので、われわれがいま感じております
保安対策の重点について申し上げますと、ただいま申しましたように、
近代産業と
技術革新と、かつ
オートメ化のために、大量の未
経験の
危険物を
極限の
状態で、あるいは
極限状態に近い
条件で取り扱わなければならないので、
災害事故防止の観念につきましては、むしろ生産の
必須条件になってまいったというふうに感じます。
第二番目は、
災害の種類は従来の
物理的災害に加えて、さらに
化学的原因による
災害が加わってまいりましたので、それぞれこれは別個に考える必要があるように考えております。特に最近この化学的な
原因による
災害が多発の
傾向が見えておるので、この点は特に留意しなければならぬということで、私
どももできるだけこれに努力いたしたいと思っております。
この
化学災害のうちで、不用意によって起こるものが非常に多いのであります。
あとから考えてみますと、何とばからしいことであったということ、これが案外多発しておるのでございます。こういう
災害に対しましては、
管理と規制で防げるのでございますが、われわれもまだ未知の分野の
異常作業あるいは新
技術の開発のために起こってくる
災害がございます。これに対しましてはわれわれはまだ
経験が浅い、また徹底した
研究が進められておりません。そういうものに対しましては、今後
基礎研究をもっと盛んにし、これに対する
防除技術の確立ということが必要であると思います。したがいまして、今後こういった
研究をもっと盛んにしていかなければならぬと思います。なお、望むらくは、こういった専門の
安全研究所のようなものの
設立ということも切に切望しておる次第でございます。
また、
中小企業に対する
災害防止につきましては、まず
安全教育、それから
防除施設の完備、かつまた
技術基準を完全に守っていただくということが今後の大きなお役に立つことと思いまして、ひたすら今後
政府当局にお
顔いし、かつまた、これがためにはある
程度の
補助金が必要かとも考えられますが、これは行政のほうの御判断にまかせることにいたしたいと思っております。
なお、
災害をさらに自主的に防除するために多数の
防除基準をわれわれは今後つくっていいかなければならぬ、また多くの方に
教育を徹底していかなければならぬ、そういう
意味におきまして、
保安協会の使命は今後ますます重大であると思うのでございます。したがいまして、われわれ
協会員は今後専心これに努力いたす気持ちでおります。昨年不幸にして多くの
災害が出ましたことは、まことに遺憾でございまして、私
どもも深く反省するところでございます。どうかその点はひとつお許しいただきまして、今後われわれの活動を期していきたいというふうに念願しておる次第でございます。