○櫻内国務大臣
小規模企業共済法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
国民経済の高度成長の
過程におきまして、中小企業は重要な役割りを果たしてまいりましたが、それとともに中小企業自体もまた全体として相応の発展を示し、中小企業従事者の福祉の向上にも着実な進展の
あとが見受けられます。
しかし、開放経済体制への移行、労働需給の逼迫、技術革新の進展等に伴う市場構造の変貌など経済的諸条件の変化を通じて、中小企業が従来からよって立っていた社会的経済的存立基盤は、その根底からゆるがされつつあることも事実であります。このため、中小企業を取り巻く経済環境は、最近に至ってますますそのきびしさを加えつつありますが、特に中小企業の中でも大きな比重を占める小
規模零細企業につきましては、急激に変化する経済環境への適応に立ちおくれ、経営困難の度を強める企業が増大してきており、かかる情勢にかんがみまして、政府といたしましては、昭和四十年度の中小企業対策を
実施するにあたり、小
規模企業対策に最重点を置くこととし、
設備近代化資金貸し付け
制度の拡充、商工会、商工
会議所を通ずる経営改善普及
事業の充実、無担保、無保証人による融資の保証にかかる特別小口保険
制度の創設、零細
下請企業に取引のあっせんを行なう
下請企業振興
協会の設立助成等小
規模企業対策の大幅な拡充をはかり、小
規模企業の健全な発展と振興を強力に助成してまいる所存であります。
ここに
提出いたしました
小規模企業共済法案は、これら小
規模企業振興対策の一環として、政府が昭和四十年度から新たに
実施してまいりたいと考えております小
規模企業共済
制度につき定めたものでありまして、その本旨は、小
規模企
業者が相互扶助の精神に基づいて退廃業後における生活の安定あるいは
事業の再建、転業に備えてその拠出による共済
事業を行なうことに対し、国からも所要の助成
措置を講じつつ、これを安全確実な
制度として確立することを
目的としたものであります。
御承知のとおり、小
規模企業は、その所得の水準から見ても一般の雇用者と実質的にほとんど差がないにもかかわらず、各種社会保険
制度、労働保険
制度の適用については、
制度上十分な恩典を受けられない実情にあります。したがいまして小
規模企
業者が不幸にして廃業または退職のやむなきに至った場合において、本
制度により共済されるようになることは、小
規模企
業者の福祉の増進に寄与するとともに、その資金を再建、転業資金等に充当することが可能となり、本共済
制度より生ずる余裕金の適切な運用ともあわせ、小
規模企業の振興に多大の貢献をなし得るものと確信する次第であります。
次に、法案の
内容につきましてその概要を御説明申し上げます。
第一に、
事業団と共済契約を締結できる小
規模企
業者は常時使用する
従業員の数が鉱工業等においては二十人、商業またはサービス業において五人以下の個人
事業主及び会社の役員といたしております。なお、共済契約の締結につきましては任意といたしております。
第二に、掛け金につきましては、小
規模企
業者の負担とし、その月額は一口五百円、小
規模企
業者一人につき十口を限度といたしております。
第三に、共済金は、
事業の廃止または会社の解散があったとき、会社の役員が退職したとき、三十年の満期に達したときまたは六十五歳以上で二十年間掛け金を納付したときのいずれかの事由が生じたときに支給することとし、共済金の額は、掛け金納付月数に応じ、かつ、
事業の廃止による場合には、特に有利な給付条件になるように定めることといたしております。
第四に、この
制度の
実施主体につきましては、本共済
制度の性格にかんがみ
制度の永続性、積み立て金の管理の安全性と効率的な運用並びに小
規模企
業者に対する確実な給付を保障するため、全額政府出資による小
規模企業共済
事業団を設置することとし、その業務として小
規模企業共済
制度を一元的に運営するほか、積み立て金の安全かつ効率的な運用を害しない
範囲内で積み立て金の一部を小
規模企
業者に還元融資をできることといたしております。
なお、小
規模企
業者の意見をも反映させた民主的かつ適正な運営が行なわれるよう、小
規模企業共済
事業団に小
規模企業に関し学識
経験のある者からなる評議員会を設置することといたしております。
このほか掛け金につきましては、別途必要な税法上の減免
措置を講ずることといたしております。
以上が、この法案の提案理由及び要旨でございますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
次に、
総合エネルギー調査会設置法案についてその提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
エネルギーは国民生活及び産業活動に不可欠の重要基礎物資であり、したがって国民経済の順調な発展をはかり、産業構造の高度化を期するためには、エネルギーの安定的かつ合理的な供給を確保することがぜひとも必要であります。
ひるがえって広く海外におけるエネルギー事情を概観いたしますと、固体エネルギーから液体エネルギーへの移行といういわゆるエネルギー革命の進行、新エネルギー源としての原子力の出現等エネルギーに関する諸情勢は激変の様相を呈しており、欧米諸国はこれに応じて、特に基礎物資としてのエネルギー供給の確保をはかることの重要性を
認識し、このための諸施策を強力に推進している実情であります。
他方わが国のエネルギー事情を見ますと、わが国経済全般の急速な発展に伴い、また、技術革新の進展、開放経済体制への移行に応ずる産業構造の変化等の諸情勢を背景として、エネルギー源の液体化、輸入エネルギー比率の急上昇、新しいエネルギーとしての原子力による発電の実用化等、これまた現在大きな変動を示しつつあります。
これに伴いわが国のエネルギー政策に関しましても、石炭についてはその体質改善と長期的ビジョンの確立、石油については低廉かつ安定的な供給の確保をはかるための国内体制の整備と海外油田の開発、電力については広域運営の強化と原子力発電の開発推進等多くの解決を要する問題が山積している状況であります。しかもこれらの諸問題は個々の種別エネルギーに限定された問題として検討を進めるのみでは不十分であって、広く国際的かつ長期的視野のもとに、エネルギー全般を総合する観点から施策の検討が行なわれ、国民経済的利益に最も適合した望ましい供給体制が確立されるよう配慮する必要があると考える次第であります。
かかる観点から政府といたしましては、従来、エネルギー懇談会、産業構造
調査会総合エネルギー部会等の審議を通じて総合エネルギー政策の検討を行なってきており、現在は、産業構造審議会に設けられた総合エネルギー部会において検討が進められつつあります。しかしながら、総合エネルギー政策樹立推進の重要性と緊急性にかんがみ、一そう強力にかつ抜本的に総合エネルギー政策の検討を行なう必要性を痛感しているのであります。
この
意味において、さきの第四十六国会の衆参両院の本
会議において総合エネルギー政策に関する決議が行なわれ、総合エネルギー
調査会の設置が要請されましたことは、まことに時宜を得たものと考える次第であります。
政府といたしましては、この決議の趣旨をも体しまして、総合的かつ長期的観点から、各種エネルギーの将来の位置づけを行なうとともに、エネルギー政策の基本的方向の抜本的検討を行なうために、通商産業省に
調査審議のための機関として総合エネルギー
調査会を設置することとしたいと考え、この
総合エネルギー調査会設置法案を
提出する次第であります。
次に法案の概要を説明いたします。
第一に、エネルギーの安定的かつ合理的な供給の確保に関する総合的かつ長期的な施策に関する重要事項を
調査審議するため、通商産業省に付属機関として総合エネルギー
調査会を置くことがあります。
第二に、その組織につきましては、本
調査会は学識
経験者のうちから任命された委員二十人以内で組織することとしておりますが、この他にも必要があるときは
臨時委員及び専門委員を置くことができることになっております。また審議の能率化をはかる見地から必要に応じ部会を置くことができることになっております。
なお本
調査会の設置に伴い、行政機構簡素化の見地から通商審議会を廃止することとしております。
以上が本法案の要旨でございますが、政府といたしましては、この総合エネルギー
調査会の設置によりまして、強力に総合エネルギー政策の樹立推進をはかる所存でございますので、何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。